(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-27
(54)【発明の名称】リサイクル可能な人工芝生及びリサイクル可能な人工芝生用のHDPE裏地層
(51)【国際特許分類】
D03D 15/283 20210101AFI20240620BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20240620BHJP
D01D 5/42 20060101ALI20240620BHJP
D06N 7/04 20060101ALI20240620BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20240620BHJP
E01C 13/08 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
D03D15/283
D03D1/00 Z
D01D5/42
D06N7/04
B32B5/26
E01C13/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023571962
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-04
(86)【国際出願番号】 EP2022063809
(87)【国際公開番号】W WO2022243551
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503238939
【氏名又は名称】テン・ケイト・ティオロン・ビイ・ヴイ
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤング、コリン
(72)【発明者】
【氏名】セトゥナト、サリル
(72)【発明者】
【氏名】ヒーリンク、ヘイン・アントン
(72)【発明者】
【氏名】フォーゲル、ミハエル・ルネ
(72)【発明者】
【氏名】コークマン、ニルス・ゲラルドゥス
【テーマコード(参考)】
2D051
4F055
4F100
4L045
4L048
【Fターム(参考)】
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4L048EB05
(57)【要約】
本発明は、経糸及び緯糸を形成する高配向高密度ポリエチレンフィラメントから本質的に成る人工芝生基布用のポリエチレン裏地層に関し、高配向高密度ポリエチレンフィラメントは、少なくとも945kg/m
3の密度と最大2g/10minのメルトフローインデックスとを有する。本発明は更に、そのような裏地層を作るためのフィラメント、そのようなフィラメントを生産するための方法、及びそのような裏地層を含む人工芝生基布に関する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸及び緯糸を形成する高配向高密度ポリエチレンフィラメントから本質的に成る人工芝生基布用のポリエチレン裏地層であって、前記高配向高密度ポリエチレンフィラメントは、少なくとも945kg/m
3の密度と最大2g/10minのメルトフローインデックスとを有する、裏地層。
【請求項2】
前記高配向高密度ポリエチレンフィラメントは、少なくとも950kg/m
3の密度、好ましくは950kg/m
3~970kg/m
3の密度を有する、請求項1に記載の裏地層。
【請求項3】
前記高配向高密度ポリエチレンフィラメントは、1.5~2g/10min、好ましくは1.7~1.9g/10mのメルトフローインデックスを有する、請求項1又は2に記載の裏地層。
【請求項4】
前記高密度ポリエチレンは、中程度又は中程度に幅の広い分子量分布を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の裏地層。
【請求項5】
前記高密度ポリエチレンは、少なくとも125℃、好ましくは少なくとも130℃の融点を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の裏地層。
【請求項6】
前記高配向高密度ポリエチレンフィラメントのうちの少なくとも一部は、テープである、請求項1~5のいずれか一項に記載の裏地層。
【請求項7】
前記裏地層は、タフティングに適した一次裏地層である、請求項6に記載の裏地層。
【請求項8】
前記裏地層は、平織を使用して織られる、請求項7に記載の裏地層。
【請求項9】
単位長さ当たりの経糸フィラメントの数と単位長さ当たりの緯糸フィラメントの数とは、異なる、請求項7又は8に記載の裏地層。
【請求項10】
経糸フィラメントの数対緯糸フィラメントの数の比は、経糸フィラメントの線密度対緯糸フィラメントの線密度の比の逆数である、請求項9に記載の裏地層。
【請求項11】
前記裏地層は、複数の副層を備え、好ましくは、前記裏地層は、互いに同一の2つの副層から成る、請求項6~10のいずれか一項に記載の裏地層。
【請求項12】
前記高配向高密度ポリエチレンフィラメントは、100~2500dtex、好ましくは200~1700dtex、任意選択で600dtex~1200dtexの範囲内の線密度を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の裏地層。
【請求項13】
前記高配向高密度ポリエチレンフィラメントは、少なくとも20cN/Texの引っ張り強度を有し、好ましくは、前記高配向高密度ポリエチレンフィラメントは、少なくとも25cN/Texの引っ張り強度を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の裏地層。
【請求項14】
80~400g/m
2、好ましくは100~300g/m
2の生地重量を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の裏地層。
【請求項15】
個々の前記高配向高密度ポリエチレンフィラメントは、10~40%、好ましくは20~35%の破断時ひずみを有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の裏地層。
【請求項16】
前記高配向高密度ポリエチレンフィラメントは、好ましくは抗酸化物質、UV安定剤、顔料、加工助剤、酸捕捉剤、潤滑剤、帯電防止剤、充填剤、造核剤、及び清澄剤から成る群から選択された1つ以上の添加剤を更に備え得る、請求項1~15のいずれか一項に記載の裏地層。
【請求項17】
前記裏地層は、熱安定化されている、請求項1~16のいずれか一項に記載の裏地層。
【請求項18】
前記高配向高密度ポリエチレンフィラメントは、それらの長手方向に沿って溝の1つ以上の細長いリブを有する、請求項1~17のいずれか一項に記載の裏地層。
【請求項19】
高密度ポリエチレン裏地層を製造する方法であって、前記方法は、
-少なくとも945kg/m
3の密度と最大2g/10minのメルトフローインデックスとを有する複数の高配向高密度ポリエチレンフィラメントを提供することと、
-前記高密度ポリエチレン裏地層を織ることと、ここにおいて、前記複数の高配向高密度ポリエチレンフィラメントは、経糸及び緯糸の両方として使用され、
を備える、方法。
【請求項20】
前記高密度ポリエチレン裏地層は、請求項1~18のいずれか一項に記載の裏地層である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記高密度ポリエチレン裏地層を前記高密度ポリエチレンの融解温度を超えて加熱することによって前記高密度ポリエチレン裏地層を熱安定化させることを更に備える、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記熱安定化は、加熱された表面を有する本体に沿って前記高密度ポリエチレン裏地層を送り込むことによって実行され、前記高密度ポリエチレン裏地層の第1の表面は、前記加熱された表面に接触するように配置される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記熱安定化は、オーブンを通って前記高密度ポリエチレン裏地層を案内することによって実行され、好ましくは、前記オーブンは、135~155℃の温度を有し、好ましくは、前記高密度ポリエチレン裏地層は、10~120秒の滞留時間を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
ポリエチレン熱安定化人工芝生基布を製造する方法であって、前記方法は、
請求項1~18のいずれか一項に記載の高密度ポリエチレン裏地層を設けるか、又は、請求項21~23のいずれか一項に記載の裏地層を形成することと、ここで、前記裏地層は、上面及び下面を有し、
前記上面から直立するようにパイル繊維を前記裏地層に一体化することと、ここにおいて、前記パイル繊維は、ポリエチレンを備え、
繊維の引き抜きを防止するために前記パイル繊維を前記裏地層に結合することと
を備える、方法。
【請求項25】
結合は、加熱された表面を有する本体に沿って前記ポリエチレン熱安定化人工芝生基布を送り込むことによって行われ、前記裏地層の前記下面は、前記加熱された表面に接触するように配置される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記加熱された表面は、135~155℃であり、接触期間は、20~35秒、好ましくは25~30秒である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ローラが、前記裏地層を加圧するように、前記加熱された表面に対向して配置され、好ましくは、2~8Barの圧力が印加される、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
同じポリマー素材を備える前記裏地層の前記下面にホットメルト又はパウダーメルトを塗布することを更に備える、請求項24~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
ポリエチレンフィルムで前記裏地層の前記下面を積層することを更に備え、積層は、前記ポリエチレンフィルムを融解させることによって行われる、請求項24~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
ポリエチレン素材から本質的に成る人工芝生基布であって、前記人工芝生基布は、裏地フィラメントを備える裏地層と、前記裏地層から直立するパイル繊維とを備え、前記裏地フィラメントは、第1の密度を有するポリエチレンを備え、前記パイル繊維は、第2の密度を有するポリエチレンを備え、前記第1の密度と前記第2の密度との間の比は、少なくとも1.01である、人工芝生基布。
【請求項31】
ポリエチレン素材から本質的に成る人工芝生基布であって、前記人工芝生基布は、裏地フィラメントを備える裏地層と、前記裏地層から直立するパイル繊維とを備え、前記裏地フィラメントは、第1の融解温度を有するポリエチレンを備え、前記パイル繊維は、第2の融解温度を有するポリエチレンを備え、前記第1の融解温度は、前記第2の融解温度よりも少なくとも2℃高く、好ましくは少なくとも3℃高い、人工芝生基布。
【請求項32】
前記裏地層は、請求項1~18のいずれか一項に記載の裏地層である、請求項30又は31に記載の人工芝生基布。
【請求項33】
前記裏地層は、上面及び下面を有し、前記パイル繊維は、前記裏地層中にタフトされ、前記下面において互いに又は前記裏地層に結合される、請求項30~32のいずれか一項に記載の人工芝生基布。
【請求項34】
前記人工芝生基布は、少なくとも98重量%のポリエチレン、好ましくは少なくとも99重量%のポリエチレンを備える、請求項30~33のいずれか一項に記載の人工芝生基布。
【請求項35】
前記パイル繊維は、モノフィラメントの束中に配置され、各束は、10000dtex~15000dtexの線密度を有する、請求項30~34のいずれか一項に記載の人工芝生基布。
【請求項36】
前記モノフィラメントの束は、互いに少なくとも部分的に融解される、請求項30~35のいずれか一項に記載の人工芝生基布。
【請求項37】
請求項1~18のいずれか一項に記載の裏地層で使用するのに適した高配向高密度ポリエチレンフィラメント。
【請求項38】
人工芝生基布の裏地層用の高密度ポリエチレンフィラメントを製造する方法であって、前記方法は、
-少なくとも945kg/m
3の密度と1.5~2g/10minのメルトフローインデックスとを有する高密度ポリエチレン組成物を押出機に提供することと、
-フィラメントを形成することと、
-100~2500dTexの線密度を有するテープを得るために、縦方向に前記フィラメントを延伸することと
を備える、方法。
【請求項39】
前記延伸するステップにおける延伸比は、少なくとも4、好ましくは少なくとも5、より好ましくは少なくとも6である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記フィラメントは、テープであり、前記フィラメントを前記形成するステップは、
-前記高密度ポリエチレン組成物を押出フィルムに押し出すことと、
-前記押出フィルムをテープにスリットすることと
を備える、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
前記押出フィルムは、少なくとも1つのリブ付き表面を有する異形ダイを通って押し出される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記高密度ポリエチレンフィラメントは、請求項1~18のいずれか一項に記載の裏地層、又は請求項30~36のいずれか一項に記載の人工芝生基布で適用するのに適している、請求項38~41のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、人工芝生、特に、高密度ポリエチレンフィラメントで作られた人工芝生用の裏地層、及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]人工芝生は、様々な刊行物から周知であり、その現在の形態までいくつかの世代を経て開発されてきた。一般に、そのようなシステムは、それらの天然の対応物と同じ特性を達成しようとするが、ある特定の領域では、少なくとも挙動の予測可能性に関して、これらを既に上回っている場合がある。ここでは、スポーツ及び競技での使用を意図された人工芝生と、純粋に(又は主に)造園に使用される人工芝との間で区別が成される。
【0003】
[0003]第1世代のシステムは、典型的には、緑色のナイロンヤーンで作られた。パイルは非常に短く、密度が高く、スポーツ用途での使用にはあまり快適ではなかった。第2世代のシステムは、当初はナイロンヤーンで作られ、より最近ではPP及びPEに移行しているが、より長いパイルを有し、パイルを直立に保つための充填層として砂を使用している。第2世代のシステムはスポーツ用途により適していたが、それらは依然として、天然芝にあまり似ていなかった。
【0004】
[0004]典型的な第3世代の芝生システムは、直立したパイル繊維と、パイル繊維間に配設された充填層とを有するカーペット状の層を備える。カーペットは、裏地層を有し、裏地層は、上向き位置に配向されたパイル繊維を提供するように人工芝繊維がタフトされた適切な素材の織生地から成り得る。パイル繊維は、適切なポリマー素材又は素材の混合物のフィブリル化テープ又はモノフィラメントを備え得る。パイル繊維は、繊維の引き抜きを低減するためにラテックス又はポリウレタンのコーティングによって織生地に固定され得る。充填剤は、ピッチの必要とされる弾性を提供し、合成ゴムなどの柔らかい顆粒及び/又は砂又はコルクなどの天然素材を備え得る。
【0005】
[0005]第4世代の芝生システムでは、充填剤の衝撃吸収機能は、カーペットの繊維構造と一体化され得る。これは、例えば、パイル繊維よりもあまり遠くまで延在しないカール繊維のサッチ層を生産するために、異なる繊維を注意深く選択することによって達成することができる。第4世代のシステムでは、完全な人工芝生カーペットの製織が、タフティング(tufting)の代替として一般的である。裏地層とパイル繊維は、このことから、織機で織ることによって同時に生産される。ここでは、パイル繊維及び裏地構造の位置にかなりの自由度がある。
【0006】
[0006]第3世代及び第4世代のシステムの両方では、最終製品の個々の層における特質の正確な混合を達成するために、複数の異なるクラスの素材が使用される。「層」という用語は、ここでは単に便宜上使用される。所与の機能が、複数の層によって達成され得、ある層(及び機能)が、充填層がパイル層を通って延在し得るように、別の層と部分的に同一の空間を占め得ることが理解されるであろう。
【0007】
[0007]本検討に関連する少なくとも以下の層及び機能を区別することができる(ただし、確実に更なる機能が存在する):
-裏地層は、一般には織布であり、水平方向に構造的完全性を提供し、パイル繊維を保持する、
-パイル層は、スポーツ性能(ボール-の転がり、ボールの跳ね返り、摺動性能、等)を提供する、
-ロック層は、裏地層からパイルが引き抜かれるのを防止する、
-弾性層は、弾性を提供し、パイル層を直立に保つ。
【0008】
[0008]特許公報は、多くの異なる選ばれた素材のうちの任意の1つ以上をこれらの層又は機能のうちのいずれにも使用することができることを示すが、これは事実ではない。実際には、限られた数の素材が、それぞれの層の必要とされる機能を許容可能に達成することができる。特に、人工芝生は、全ての起こり得る環境条件に曝される屋外で使用されることを主に予想されることを認識されたい。
【0009】
[0009]このことから、既存の第3世代及び第4世代のシステムでは、裏地層は、一般に、織られたポリプロピレン繊維から形成される。典型的な生地重量は、80~400g/m2であり、繊維は、300~1500dtexの線密度を有する。ポリプロピレンは、屋外条件に対して優れた安定性を呈し、高い耐クリープ性を示し、優れた寿命を有する。適切な冷却設備なしで直射日光に曝される場合、ピッチ上の温度は氷点下から85℃までの間で変化し得るので、安定性は重要である。十分な耐クリープ性は、排水のための小さな傾斜さえも有するスポーツ競技場に適用される人工芝生に特に重要であり、そうしないと、静的力が、人工芝生の経時的な変形をもたらす可能性がある。
【0010】
[0010]パイル層は、典型的には、ポリエチレンから形成されるが、ポリプロピレン及びポリアミド素材もまた、時折使用され得る。ポリエチレンは、パイル層の必要とされる機能を達成するために、最も最適な特質、特に弾性を有することが見出された。コーティング及び他の素材の混合物を更に使用してこれらの機能を改善する試みが成されてきたが、PEは現在、スポーツサーフェス(sports surfaces)についての市場の約95%を占める。
【0011】
[0011]ロック層は、現在、裏地層の裏側のラテックスコーティングによって主に提供される。しかしながら、北米では、ポリウレタンが好まれている。
【0012】
[0012]充填層は、現在、おそらく素材の選択の点で最も変化に富んだ層である。多くの既存のピッチは、リサイクルされた車タイヤからのクラムラバーを依然として使用している。これは、現在段階的に廃止されており、新しい設備は、コルクなどの天然素材を好む。第4世代の芝生システムの場合、充填層/機能は、例えば、ポリオレフィンで作られたフィブリル化、カール、ニットデニット(KDK)、又はテクスチャ加工(TXT)されたヤーンのサッチ繊維によって提供され得る。
【0013】
[0013]そのようなシステムは、優れたスポーツ性能を提供するが、除去及び廃棄時に、複数の素材の存在がかなりの追加の困難及びコストをもたらす。本発明は、寿命の終わりに製品をリサイクルする能力を高めながら、同等のレベルの機能性を提供することによって、そのような人工芝生システムを更に改善することを試みる。
【発明の概要】
【0014】
[0014]それ故に、経糸及び緯糸を形成する高配向高密度ポリエチレン(HDPE)フィラメントから本質的に成る人工芝生基布用のポリエチレン裏地層が提供され、高配向高密度ポリエチレンフィラメントは、少なくとも945kg/m3の密度と最大2g/10minのメルトフローインデックス(melt flow index)とを有する。
【0015】
[0015]この文脈では、「から本質的に成る」は、裏地層の少なくとも99重量%が高配向HDPEフィラメントから成ることを意味する。各HDPEフィラメントでは、フィラメントの総重量の少なくとも90重量%又は少なくとも95重量%さえも、高密度ポリエチレン組成物であり得る。加えて、HDPEフィラメントは、充填剤、顔料、UV安定剤又は加工助剤などの添加剤を備え得る。「高配向フィラメント」という用語は、4よりも大きい、好ましくは5をよりも大きい延伸比、より好ましくは6~7の延伸比を用いた押出プロセスで形成されたフィラメントを示すために使用される。
【0016】
[0016]上記で記載したように、従来の人工芝生は、一方では裏地に、他方ではパイル繊維に異なるクラスのポリマー素材を使用する。本発明によると、ポリエチレンは、両方の層及び/又は機能のために使用される。これは理論的にはささいなことに思われ得るが、解決策は実際にはそうではない。上記で示したように、裏地層は、正確には使用中の温度変動に対する安定性及びその良好な耐クリープ性に起因して、現在までポリプロピレン(PP)から作られてきた。ポリプロピレンは、しかしながら、剛性が高すぎ、この素材では必要とされるスポーツ性能特質を達成することが依然として可能でなかったため、パイル繊維として効果的に使用することができない。
【0017】
[0017]現在、ポリエチレン(PE)が、パイル繊維に最も好ましい素材である。これは、必要とされる繊維寸法の範囲に対して許容可能なスポーツ性能特性を呈するための適切な物理的特質(例えば、可撓性)を有する。他方では、使用中に見られるような高温に曝されたとき、又は生産時、例えばコーティング層の塗布中に遭遇されたときでさえ、適切に温度が安定しないという事実に起因して、裏地層にPEを使用することは可能であるとは考えられていなかった。加えて、ポリエチレン裏地を生産する試みは、このことから、主にタフティングプロセスに関する不十分な耐クリープ性及び寸法安定性に起因して、これまで失敗してきた。実際、ポリエチレンの裏地フィラメント、特にポリプロピレンの代替品として使用するのに十分な強度のフィラメントを押し出す能力は、これまで比較的限られていた。
【0018】
[0018]本発明によると、人工芝生の耐クリープ性は、高密度ポリエチレン素材から作られた裏地層を設けることによって改善される。高密度ポリエチレン(HDPE)素材は、少なくとも945kg/m3の密度を有する。密度は、例えば、ISO 1183-1又はISO 1183-2に従って測定され得る。HDPEの使用に有利なのは、LDPEなどのより高い分岐度を有するポリエチレン素材と比較して、比較的大きな引張強度、良好な耐クリープ性及び良好な耐熱性である。より正確には、HDPEを使用することによって、PPから作られた裏地層と少なくとも同様の気候、強度、及び耐クリープ性に関する寸法安定性を有する裏地層が形成され得る。
【0019】
[0019]実施形態では、フィラメントは、それらの長手方向に沿って1つ以上のリブを有する。これは、有利なことに、表面の粗さを増大させ、そのため、フィラメントは、使用時及びタフティングプロセス中の両方で、ゆがむ傾向がより少なくなる。実施形態では、フィラメントは、片側又は両側にリブ又は溝を設けられ得る。これらは、0.01mm~1mm、特に0.1mm~0.6mmの範囲の形状特徴を有し得る押出ダイによって付与され得る。そのような特徴は、フィラメントの延伸中に比例的に低減され、最終フィラメントに単に軽い筋又は波紋として存在し得ることが理解されるであろう。それにもかかわらず、それらは、織裏地に安定性を提供するのを助けることができる。
【0020】
[0020]実施形態では、ポリエチレンは、少なくとも950kg/m3の密度を有する。945kg/m3の密度を有するHDPEで十分であり得るが、強度及び寸法安定性、例えば、収縮率及び耐クリープ性などの裏地層の機械的特質は、より低い分岐度及びより高い結晶化速度に起因して、より高い密度に対して改善され得る。
【0021】
[0021]実施形態では、密度は、950kg/m3~970kg/m3である。いくつかのタイプのHDPEについて、より低い密度は、フィラメントを形成するために使用され得る押出プロセスにおけるHDPEの加工性を改善し得る。裏地のフィラメントの強度が、それらの配向度及びそれらが曝された延伸比に大きく依存することも、当業者によって理解されるであろう。より高密度のポリエチレンは、より良好に延伸することができるが、使用中に収縮の影響も受けやすいことを認識されたい。従って、以下で更に詳述するように、使用前の裏地の熱安定化が推奨される。より高い密度はまた、より高い融点に関連し、それは、以下で更に検討する理由のために望ましい。
【0022】
[0022]実施形態では、HDPEの分子量は、200000~500000g/molである。より高い密度の効果と同様に、より大きい分子量もまた、より高い融点及び改善された耐クリープ性に寄与する。それにもかかわらず、高すぎる分子量は、押出プロセスにおける不十分な加工性をもたらし得る。
【0023】
[0023]実施形態では、HDPEは、中程度又は中程度に幅の広い分子量分布(MWD)を有する。幅の狭すぎる分子量分布を有するHDPEは、加工ウィンドウの幅を非常に狭くするので、押出プロセスにおけるHDPEの加工性を低減するであろう。それにもかかわらず、幅の狭いMWDは、より明確な融解温度に関連し得る場合があり、それは、以下で更に与えられる理由のために有利であり得る。幅の広すぎる分子量分布を有するHDPEもまた、その機械的特質の点であまり好ましくない場合がある。故に、好ましくは、HDPEは、押出プロセスにおけるHDPEの良好な加工性を維持しながら、可能な限り幅の狭い分子量分布(MWD)を有する。好ましくは、HDPEは、単峰性の重量分布曲線を有する。
【0024】
[0024]フィラメントのHDPEのメルトフローインデックス(MFI)は、最大で2g/10minである。MFIは、ISO 1133-1に従って測定される。そのような比較的低いMFIは、より高いMFIに対して裏地層の耐クリープ性がより低いため、有利である。HDPE組成物もまたある特定の最小メルトフローインデックス(MFI)を有することが当業者によって理解されるであろう。実施形態では、MFIは、少なくとも0.7g/10min又は少なくとも1.2g/10minである。
【0025】
[0025]実施形態では、フィラメントのHDPE組成物のメルトフローインデックス(MFI)は、1.5g/10min~2g/10min、好ましくは1.7g/10min~1.9g/10minである。これらの範囲内のMFIを有するHDPE組成物は、押出プロセスにおいて良好な加工性を有する。より低いMFIは、押出機中の高すぎるダイ圧力、及び結果としてより低いスループットをもたらし得る。逆に、より高いMFIは、フィラメント又は押出フィルムの伸張中に問題を生じさせ得、不均一な延伸をもたらし得る。故に、これらの範囲内のMFIは、押出プロセスにおけるHDPE組成物の加工性、及び裏地層の安定性特質の両方に有利である。
【0026】
[0026]実施形態によると、HDPEは、少なくとも125℃、好ましくは少なくとも128℃、より好ましくは約130℃の融点を有する。これは、以下の本発明の更なる態様に関連して検討するように、繊維結合強度を高めるために人工芝生基布のパイル繊維を融解するときの人工芝生基布中の裏地層のその後の使用に有利である。裏地層の融点は人工芝生基布中のパイル繊維の融点よりも高いので、パイル繊維は互いに融解され得るが、裏地層は無傷のままである。好ましくは、可能な限り高い融点を有するHDPEが選択される。現在利用可能なHDPE組成物は、約130℃の融点を有する。
【0027】
[0027]当業者は、ポリマー素材について、融解が実際にはある範囲の温度にわたって起こることを認識するであろう。以下では、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定されるピーク温度を指すであろう。これは、補外開始温度(DIN EN ISO 11357-1:2010-03に従う)と呼ばれることもある開始温度(onset temperature)とは異なる。これは、融解又は結晶化ピークの開始時における外挿基線と変曲接線との算出された交点である。本発明の態様によると、HDPE組成物は、パイル繊維の融解温度を超える開始温度を有するように選択され得る。
【0028】
[0028]裏地層中の経糸及び緯糸フィラメントは、モノフィラメント又はスリットフィルムであり得る。実施形態では、フィラメントのうちの少なくとも一部は、テープである。「テープ」という用語は、好ましくは100dTex~2500dTexの線密度(又はタイター)を有する、単方向に配向されたポリマー製品を指す。テープは、長方形又は正方形の断面を有することができ、好ましくは、押出フィルムをスリットすることによって形成される。テープは、典型的には、50~120μm、好ましくは70~100μmの厚さ、及び0.5~5mm、好ましくは1~3mmの幅を有する。これらの厚さ及び幅は、押出プロセス中に延伸され、織る準備ができたテープの厚さ及び幅を指す。より幅の広いテープは、織裏地層に障害をもたらし得、それに対して、より幅の狭いテープは、それらの不十分な強度に起因して効果的ではないであろう。
【0029】
[0029]更なる実施形態では、裏地層は、タフティングに適した一次裏地層である。一次裏地層は、タフティング後にパイル繊維が位置付けられる層として定義される。好ましくは、一次裏地層のフィラメントは、テープによって形成される。代替として、裏地層は、3次元で織られた人工芝生基布の一部であり得る。完全な人工芝生カーペットの製織は、タフティングの代替形態として一般的である。織られた人工芝生は、織機で織ることによって同時に生産される裏地層及びパイル繊維を備える。織られた人工芝生基布は、経糸及び緯糸を備える。最も好ましくは、織られた人工芝生は、パイル繊維が経糸中にも存在する対面製織プロセスで生産される。
【0030】
[0030]実施形態では、裏地層は、平織を使用して織られる。平織は、タフティングによく適している。
【0031】
[0031]実施形態では、単位長さ当たりの経糸フィラメントの数と単位長さ当たりの緯糸フィラメントの数とは、異なる。これは、裏地層のタフト性(tuftability)に有利である。人工芝生の製造では、重要な目標は、過度に規則的なパターンなどの不自然な外観を回避することである。経糸と緯糸との間の変化は、タフティングにおけるいわゆるモアレ効果を低減し、それによって、審美的欠陥も低減する。
【0032】
[0032]実施形態では、経糸フィラメントの数対緯糸フィラメントの数の比は、経糸フィラメントの線密度対緯糸フィラメントの線密度の比の逆数と実質的に同じである。ここで、「実質的に同じ」とは、比の間の最大差が15%であることを指す。これは、良好なタフト性と、経糸方向及び緯糸方向における同様の強度とを有する裏地層をもたらす。強度の点での効果は、単位長さ当たりの経糸フィラメントの数と単位長さ当たりの緯糸フィラメントの数とが実質的に同じであり、経糸フィラメント及び緯糸フィラメントが実質的に同じ線密度を有するときと同様である。経糸フィラメントの配置と緯糸フィラメントの配置とが実質的に同じである、そのようないわゆる正方形構造は、裏地層の寸法安定性に寄与し(例えば、米国特許第6897170 B2号を参照)、個々のテープが撚られることなく生地中に平らに置かれることを確実にする。これは、低い生地収縮率、及びこのことからより良好な寸法安定性を有する裏地層をもたらす。加えて、裏地層は、経糸方向及び緯糸方向の両方において同様の強度を有し得る。経糸フィラメントの数対緯糸フィラメントの数の比が経糸フィラメントの線密度対緯糸フィラメントの線密度の比の逆数と実質的に同じである生地は、正方形構造の有利な効果と良好なタフト性を有する非正方形構造とを組み合わせる。この配置は、「バイアスされた正方形構造」と呼ばれる。代替として、実施形態では、完全な正方形構造が使用され得、単位長さ当たりの経糸フィラメントの数と単位長さ当たりの緯糸フィラメントの数とが実質的に同じであり、経糸フィラメント及び緯糸フィラメントが実質的に同じ線密度を有する。
【0033】
[0033]実施形態では、裏地層は、複数の副層を備え得る。複数の副層は、互いの上に積み重ねられるか、又は互いに縫い合わされるか若しくは結合されて、水平方向に構造的完全性を提供し、パイル繊維を保持する裏地層の機能を共に果たすことができる。複数の副層は、タフティングに適した一次裏地層を共に形成する。そのような層を接合する好ましい方法は、経編によるものである。実施形態では、裏地層は、互いに同一である2つの副層から成る。
【0034】
[0034]別の実施形態では、裏地層のフィラメントは、100~2500dtex、好ましくは200~1700dtexの線密度を有する。例証的な値は、600dtex~1200dtexにあり得る。
【0035】
[0035]フィラメントは、他の制約を受けて、可能な限り強くあるべきである。実施形態では、フィラメントは、少なくとも20cN/Texの引っ張り強度を有し、好ましくは、フィラメントは、少なくとも25cN/Texの引っ張り強度を有する。より重要なことには、フィラメントは、5%の伸びで10cN/Texよりも大きいか、又は5%の伸びで12cN/Texよりも大きい引っ張り強度を有し得る。
【0036】
[0036]実施形態では、裏地層は、80~400g/m2、好ましくは100~300g/m2の生地重量を有する。そのような重量は、ほとんどのスポーツ用途における、及び主に造園に使用される人工芝における裏地層の適用性を可能にする。
【0037】
[0037]実施形態では、フィラメントは、好ましくは抗酸化物質、UV安定剤、顔料、加工助剤、酸捕捉剤、潤滑剤、帯電防止剤、充填剤、造核剤、及び清澄剤から成る群から選択された1つ以上の添加剤を更に備え得る。これらの添加剤は、好ましくは、押出前に融解物にマスターバッチとして添加され得る。実施形態では、フィラメントは、3~6重量%の顔料及びUV安定剤、並びに/又は0~2重量%の加工助剤を備える。充填剤の量は、典型的には2重量%~6重量%であり、必要とされる特性に応じて、経糸方向及び緯糸方向に使用されるフィラメントに対して異なり得る。
【0038】
[0038]実施形態では、フィラメントは、10~40%、好ましくは20~35%の破断時ひずみを有する。個々のフィラメントの低いひずみ値は、一般に、裏地層の高い耐クリープ性に対応し、このことから、人工芝生の裏地層で使用するのに有利であることが当業者によって理解されるであろう。それにもかかわらず、製織中にフィラメントが折れるのを防止するために、いくらかの弾性が必要とされる。代替として、裏地層自体のクリープが測定され得る。実施形態によると、裏地層は、5時間後に最大で1.0%/h、好ましくは最大で0.5%/h、より好ましくは最大で0.1%/hのクリープひずみ速度を有する。クリープひずみ速度は、Zwick引張試験機で、50℃で5時間、定荷重を印加することによって決定され得る。5時間後、クリープひずみ速度は、4時間のゲージ長と5時間のゲージ長との差を4時間のゲージ長で割ったものとして求めることができる。
【0039】
[0039]実施形態では、裏地層は、裏地層をHDPEの開始温度を超えて加熱することによって熱安定化されている。熱安定化は、製織プロセス中にフィラメントに発生したひずみを弛緩させる。製織は、一般に、フィラメントが所与の弾性率を有する周囲温度で行われることが理解されるであろう。製織動作は、フィラメントに屈曲及び撚りを生じさせ、それらは、プロセスが完了した後も残る。裏地層の温度が上昇すると、誘発されたひずみは、フィラメントの屈曲の弛緩及び直線化によって回復することができる。実施形態では、熱安定化は、例えば、以下で更に詳述されるような融解プロセスにおいて、パイル繊維のロックと組み合わせて行われ得る。これは、3次元で織られた人工芝生の場合に特に重要である。
【0040】
[0040]本発明の第2の態様によると、及び上記で説明した利点に従って、裏地層を製造する方法が提供される。本方法は、少なくとも945kg/m3の密度と最大2g/10minのメルトフローインデックスとを有する複数の高配向高密度ポリエチレンフィラメントを提供することと、裏地層を織ることとを備え、複数の高配向高密度ポリエチレンフィラメントは、経糸及び緯糸の両方として使用される。好ましくは、上記で検討したような本発明による裏地層が得られる。
【0041】
[0041]実施形態では、本方法は、裏地層を熱安定化させることを更に備える。熱安定化は、多様な異なる方法を使用して実行され得る。
【0042】
[0042]実施形態では、熱安定化は、加熱された表面を有する本体に沿って基布を送り込むことによって行われ、裏地層の第1の表面が、加熱された表面に接触するように配置される。加熱された表面は、当該技術分野で一般に知られているようなローラ又はカレンダであり得る。
【0043】
[0043]別の実施形態では、熱安定化は、加熱された表面と直接接触することなく、1つ以上のオーブンを通って裏地層を案内することによって実行される。例えば、テンタフレームが、オーブンを通って裏地層を案内するために使用され得る。一実施形態では、裏地層は、135~155度の温度を有するオーブンを通って、10~120秒の滞留時間で案内される。
【0044】
[0044]熱安定化プロセスの正確な詳細は、一般に、製造される特定の人工芝生製品、使用されるHDPEの具体的な種類、及び熱安定化の方法に適合されることが理解されるであろう。典型的には、このプロセスは、裏地層がポリエチレンの開始温度を超える温度まで加熱されることを確実にし得る。
【0045】
[0045]本発明の更なる態様によると、及び上記で説明した利点によると、ポリエチレン熱安定化人工芝生基布を製造する方法が提供され、本方法は、本発明による高密度ポリエチレン裏地層を設けることと、ここで、裏地層は、上面及び下面を有し、上面から直立するようにパイル繊維を裏地層に一体化することと、ここにおいて、パイル繊維は、ポリエチレンを備え、繊維の引き抜きを防止するためにパイル繊維を裏地層に結合することとを備える。
【0046】
[0046]パイル繊維は、好ましくは、タフティングを通して裏地層に一体化される。パイル繊維は、ループとして裏地層を通って突出することができるか、又はループは、切り開かれ得る。代替として、完全に織られた人工芝生基布が形成され得、裏地層は、パイル繊維の一体化と同時に形成される。
【0047】
[0047]本文脈では、パイル繊維の結合は、パイル繊維を裏地層に一体化するステップに加えて、機械的、物理的、又は化学的結合を指すことを意図される。それは、このことから、タフティング又は製織ステップのみに起因するパイル繊維の一体化後の場合よりも大きな引き抜き強度を生じさせる。それは、異なる素材を導入せず、結果として生じる基布が単一ポリマー人工芝生基布のままであるという制限を受けて、融解、融合、接着、封入、コーティングなどを伴い得る。
【0048】
[0048]以下では、「融合」という用語は、2つの構成要素又は繊維が完全に共に融解されて、即ち一体的な構成要素を形成する状況を指すために使用される。融解は、実際の結合又は融合が起こることなく、単に一方の構成要素を他方の構成要素の周りに成形させ得る。この場合、冷却されると、単に2つの構成要素、例えばパイル繊維と織裏地層との機械的な結合が存在し得る。
【0049】
[0049]一実施形態では、パイル繊維を結合することは、加熱された表面を有する本体に沿って基布を送り込むことによって達成され、裏地層の下面は、加熱された表面に接触するように配置される。これは、上述したような従来の機械を使用して達成され得る。それにもかかわらず、現在説明されている結果を達成するためにプロセスを適合させることが望ましいことに留意されたい。特に、パイルの結合を達成するために必要とされる時間及び温度は、熱安定化された裏地層を達成するために必要とされる時間及び温度とは異なり得る。結合のためには、パイル繊維の素材の融点を超えることが必要である。好ましくは、これは、基布構造及び繊維特質への著しい損傷を回避するために、瞬間的及び局所的に行われる。特定の実施形態では、加熱された表面は、裏地素材自体と直接接触することなく、パイル繊維のみと接触する。熱安定化の場合、より一般には基布構造中に、ひずみが存在する領域まで浸透すべきより低い温度が必要とされる。
【0050】
[0050]実施形態では、加熱された表面は、135~155℃であり、接触期間は、20~35秒、好ましくは25~30秒である。この期間は、裏地層を損傷することなくパイル繊維を共に結合するのに十分に長い。加熱された表面は、好ましくは、約145℃である。
【0051】
[0051]実施形態では、ローラが、裏地層を加圧するように、加熱された表面に対向して配置され、好ましくは、2~8Barの圧力が印加される。ローラ、好ましくは積層ローラは、裏地層の下側における全てのパイル繊維束が加熱された表面と良好に接触することを確実にする。圧力が印加されないか、又は不十分な圧力が印加されるとき、全てのパイル繊維が融解するわけではない場合がある。
【0052】
[0052]代替として又は追加として、結合は、ホットメルト又はパウダーメルトを裏地層の下面に塗布すること、又は裏地層の下面をポリエチレンフィルムで積層し、それによって、フィルムを融解することによって積層が行われることを備え得る。繰り返すが、これらの場合の全てにおいて、この追加の層がポリエチレンを備えることが必須要件である。これに対する唯一の例外は、追加の層がリサイクルプロセス中又はその前に容易に除去可能である場合であろう。追加の層は、パイル繊維と裏地との間の結合を更に強化し得、人工芝生を、繊維の引き抜き強度に高い要求が成される用途に適したものにし得る。
【0053】
[0053]一実施形態では、本方法は、基布を能動的に冷却し、それによってパイル繊維を裏地層に固定することを備える。熱結合又は熱安定化後、熱源、例えば加熱された表面、赤外線ビーム又は熱風ブロワを除去することによって、基布が冷却され得る。代替として、例えば、低温表面に沿ってカーペットを運ぶことによって、又は裏地層の下面に沿って低温空気を供給することによって、基布が能動的に冷却され得る。
【0054】
[0054]本発明の更なる態様によると、及び上記で説明した利点及び効果に従って、ポリエチレン素材から本質的に成る人工芝生基布が提供され、人工芝生基布は、裏地フィラメントを備える裏地層と、裏地層から直立するパイル繊維とを備え、裏地フィラメントは、第1の密度を有するポリエチレンを備え、パイル繊維は、第2の密度を有するポリエチレンを備え、第1の密度と第2の密度との間の比は、少なくとも1.01、好ましくは少なくとも1.02である。裏地層は、典型的には、少なくとも945kg/m3の密度を有し、それに対して、パイル繊維の密度は、好ましくは、945kg/m3よりも著しく低く、例えば、915~935kg/m3である。密度の差は、一般に、融解温度の差に変換される。
【0055】
[0055]本発明のまた更なる態様によると、及び上記で説明した利点及び効果に従って、ポリエチレン素材から本質的に成る人工芝生基布が提供され、人工芝生基布は、裏地フィラメントを備える裏地層と、裏地層から直立するパイル繊維とを備え、裏地フィラメントは、第1の融解温度を有するポリエチレンを備え、パイル繊維は、第2の融解温度を有するポリエチレンを備え、第1の融解温度と第2の融解温度との間の差は、少なくとも2℃、好ましくは少なくとも3℃であり、5℃よりも高くあり得る。裏地層は、好ましくは、少なくとも130℃の融解温度を有し、それに対して、パイル繊維の融解温度は、典型的には、127℃未満である。異なる融解温度は、裏地層のフィラメントを融解することなく、又は軟化させることさえなく、パイル繊維がパイル繊維の融解を通して裏地層に固定されることを可能にする。
【0056】
[0056]当業者は、押出プロセス中にフィラメント及び繊維に付与される特質が融解時に無効にされる可能性があることを理解するであろう。特に、この様式では、後の加工がフィラメントの融解温度から離れたままである場合に、裏地のフィラメント素材の分子配向を保持することができる。実施形態では、パイル繊維の結合は、裏地フィラメントの開始温度を超えることなく行われ得る。これは、パイル繊維の融解温度が裏地フィラメントの開始温度未満の場合であり得る。
【0057】
[0057]実施形態では、裏地層は、本発明による裏地層である。
【0058】
[0058]実施形態では、裏地層は、上面及び下面を有し、ポリエチレンパイル繊維は、上面から直立しており、パイル繊維は、織裏地層にタフトされ、下面において互いに又は裏地層に結合される。上記で説明したように、ポリエチレンは、その弾性に起因してパイル繊維に好ましい素材であり、裏地層及びパイル繊維の両方を同じ素材から形成することは、上記で説明したようにリサイクルを容易にする。
【0059】
[0059]一実施形態では、人工芝生基布は、少なくとも90重量%又は少なくとも95重量%又は少なくとも98重量%のポリエチレン、好ましくは少なくとも99重量%のポリエチレンを備える。リサイクルの目的のためには、ポリマー素材の重量百分率は、可能な限り100重量%に近いことが理解されるであろう。それにもかかわらず、様々な添加剤が存在する可能性があり、他の汚染が生じ得ることが理解されるであろう。少なくとも、重量百分率が、リサイクル中に著しい不利益をもたらさないように十分に高いことが重要である。
【0060】
[0060]一実施形態では、パイル繊維は、好ましくは異なる特性を有するモノフィラメントの束を備え、より好ましくは、束は、10000dtex~15000dtexである。モノフィラメントは、それら自体、フィラメント当たり1000~3000dtexであり得る。好ましい実施形態では、少なくとも断面形状は、モノフィラメント間で変化するが、色、剛性、及びパイル高さも、天然芝を模倣するように変化し得る。断面形状は、例えば、平坦、V字形状、レンズ状、湾曲状、波形状、三葉状、中空などであり得る。代替として又は追加として、パイル繊維は、フィブリル化テープを備え得る。
【0061】
[0061]一実施形態では、モノフィラメントの束は、互いに少なくとも部分的に融解される。これは、パイル繊維の個々の引き抜きを防止し、パイル繊維を裏地層中に固定する。例えば、人工芝生基布を製造するための方法に関して説明したように、そのような融解は、パイル繊維中のポリエチレンの融点を超える温度を有する加熱された表面を有する本体に沿って基布を送り込むことによって達成され得、裏地層の下面は、パイル繊維の融解又は軟化を引き起こすために、加熱された表面に接触するように配置される。
【0062】
[0062]本発明の更なる態様によると、及び本明細書の上記で説明した利点及び効果に従って、本発明による裏地層を製造するのに適した高配向高密度ポリエチレンフィラメントが提供される。裏地層を製造するためのHDPEフィラメントは容易に利用可能でなかったので、それらは、この目的のために特に設計された。任意のHDPE組成物は、押出フィルムをスリットすることによってテープを形成するための押出プロセスにおいて容易に加工することができない。従って、本発明の更なる目的は、良好な加工性、並びに人工芝生におけるその用途に必要とされるような所望の強度、安定性、及び耐クリープ性の両方を有するHDPE組成物を提供することである。
【0063】
[0063]本発明の更なる態様によると、及び本明細書の上記で説明した利点及び効果に従って、人工芝生基布の裏地層用の高密度ポリエチレンフィラメントを製造する方法が提供され、本方法は、少なくとも945kg/m3の密度と1.5~2g/10minのメルトフローインデックスとを有する高密度ポリエチレン組成物を押出機に提供することと、フィラメントを形成することと、100~2500dTexの線密度を有するテープを得るために、縦方向にフィラメントを延伸することとを備える。好ましくは、HDPEは、中程度又は中程度に幅の広い分子量分布を有する。
【0064】
[0064]実施形態によると、フィラメントは、テープであり、フィラメントを形成するステップは、ポリエチレン組成物を押出フィルムに押し出すことと、フィルムをテープにスリットすることとを備える。HDPE組成物が押出機に提供され、押出機は、HDPEをフィルムに押し出す。そのようなフィルムは、キャストフィルム押出などの押出手順を含む任意の従来のフィルム形成プロセスによって調製され得る。フィルムが形成された後、それは続いてテープにスリットされ、伸張される。フィルムをテープに切断する前にフィルムは伸張され得、フィルムは最初に切断され、その後伸張され得るか、又は切断及び伸張が同時に実施され得る。好ましくは、フィルムは、最初にテープに切断され、テープは、続いて所望の延伸比で縦方向に伸張されて、最終テープを形成する。実施形態では、フィルムは、少なくとも1つのリブ付き表面を有する異形ダイを通って押し出される。
【0065】
[0065]実施形態では、縦方向への延伸比は、少なくとも4、好ましくは少なくとも5、より好ましくは少なくとも6である。例えば、延伸比は、6~7であり得る。延伸比は、テープがその元の長さと比較して縦方向に伸張される回数を示す。
【0066】
[0066]本発明を、添付の図面を参照して、以下でより詳細に論じる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1A】[0067]第1の実施形態による熱安定化人工芝生基布の一部の斜視図を概略的に示す。
【
図1B】[0068]
図1Aの人工芝生基布のI-B方向から見た側面図を概略的に示す。
【
図2】[0069]第1の実施形態による熱安定化人工芝生基布を製造する方法を図式的に示す。
【
図3】[0070]
図2に示す方法によるパイル繊維結合ステップに使用することができる装置の第1の実施形態を示す。
【
図4】[0071]本発明によるフィラメントを形成するための押出ダイの一部の断面図を示す。
【
図5】[0072]フィラメント素材についての典型的な示差走査熱量測定曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0068】
[0073]図面は、例示のみを目的とすることを意図され、特許請求の範囲によって規定される範囲又は保護の制限としての役割を果たすものではない。
【0069】
[0074]以下は、本発明のある特定の実施形態の説明であり、例としてのみ、図面を参照して与えられる。
【0070】
[0075]
図1Aは、ポリエチレンだけで作られた、本発明による熱安定化人工芝生基布1の斜視図を概略的に示す。
図1Bは、
図1Aの人工芝生基布の側面図を示す。人工芝生基布1は、上面3及び下面4を有する裏地層2を備える。裏地層2は、HDPE押出テープとして各々形成された経糸テープ21及び緯糸テープ22を有する織生地である。上面3から、ポリエチレンパイル繊維5及びサッチヤーン7が直立している。パイル繊維5は、天然芝を可能な限り模倣するために、断面形状、緑色の色調、剛性、及び/又はパイル高さなどの異なる特性を各々有するモノフィラメントの束6として提供される。パイル繊維5は、裏地層2にタフトされ、裏地層2の下面4において、パイル繊維5の束6は、共に融合され、裏地層2の下方に融解されたパイル繊維束8を提供する。ポリエチレンコーティング層9が、追加の強度を提供するために下面4に設けられる。
【0071】
[0076]パイル繊維5は、パイル繊維5の融解された束8が裏地層2の下面4の下方で経糸方向に沿って延在するように、経糸方向に沿ってカーペットにタフトされる。融解された束8は、数ミリメートルの幅を有し、従って、複数の経糸テープ21の幅にわたって延在する。これは繊維結合をかなり強くし、パイル繊維は、引き抜かれる前に破断する。融解されたパイル繊維束8は、裏地層2の下方にジグザグパターンで配置され、約5mmの全幅にわたってジグザグになっている。経糸テープは、約1mmの幅を有し、緯糸テープは、約2mmの幅を有する。その結果、パイル繊維の融解された束は、少なくとも2つ又は3つのテープの幅に及ぶ。
【0072】
[0077]人工芝生基布1は、PP裏地層で作られた従来の人工芝生基布と同様の機械的特質を有し、パイル繊維を等しく良好に保持する。有利なことに、製品がPEのみを備えることに起因して、製品は、製品の寿命の終わりに容易にリサイクルすることができる。
【0073】
[0078]
図2は、そのような人工芝生基布1を製造するための方法を図式的に示す。まず、テープ形成ステップ10においてHDPE組成物から複数のテープ21、22が製造され、その後、ステップ11においてそれらを使用して裏地層2が形成される。その後、パイル繊維5は、好ましくはタフティングを通して、一体化ステップ12において裏地層2に一体化される。代替として、3次元人工芝生構造体1を製造するための製織技法を使用してパイル繊維5を織裏地2に織り込むことによって、織裏地2及びパイル繊維5が一体的に形成され得る。一体化されたパイル繊維5を有する裏地層2は、中間製品17と呼ばれ、それは、一般に、
図1に図示する人工芝生基布1とかなり類似しているように見えるが、パイル繊維5は、裏地層2に固定されておらず、従って、中間製品17は、最終人工芝生基布1と比較して劣った機械的特質を有する。繊維結合強度を高め、繊維の引き抜きを防止するために、中間製品17は、結合ステップ13を受け、ここにおいて、裏地層2の下面4が、パイル繊維中のPEの融点を超える温度まで加熱され、束6中のパイル繊維5を互いに及び/又は裏地層2に熱的に結合し、繊維結合を強化する。結合ステップ13中に、裏地層2は、使用時に遭遇される温度に裏地層2を安定化させるのに十分な温度まで十分な時間にわたって加熱される。結合ステップ13後に、製品は、冷却ステップ14で室温まで冷却される。
【0074】
[0079]
図1の人工芝生基布1は、異なるポリエチレン組成物の混合物で作られる。ここで、「ポリエチレン組成物」という用語は、裏地層2用のテープを形成するために、及びパイル層用のパイル繊維5を形成するために押し出される原料ポリエチレンの組成物を示すために使用される。
【0075】
[0080]裏地層2中のテープは、HDPE組成物で作られる。上記で説明したように、HDPEは、LDPEなどのより高い分岐度を有するポリエチレン素材と比較して、良好な引張強度、良好な耐クリープ性、及び良好な耐熱性を有する。
裏地フィラメント-例1
【0076】
[0081]第1の実施形態によると、HDPEは、INEOS Olefins & Polymers Europeによって製造される高密度ポリエチレンコポリマーであるELTEX B4020N1332であり、ISO 1183-1に従って測定されたときに952kg/m3の密度を有する。HDPEは、単峰性の重量分布曲線と、押出プロセスにおけるHDPEの良好な加工性を可能にするのに十分に幅の広い分子量分布(MWD)とを有する。
【0077】
[0082]HDPE組成物は、1.9g/10minのメルトフローインデックス(MFI)を有する。好ましくは、MFIは、1.5~2g/10minで選択される。より低いMFIは、押出機中の高すぎるダイ圧力、及び結果としてより低いスループットをもたらす可能性がある。逆に、より高いMFIは、伸張中に問題を生じさせる可能性があり、不均一な延伸をもたらす可能性がある。故に、1.5~2g/10minのMFIは、押出機によるHDPEの加工性に有利である。加えて、より高いMFIは、耐クリープ性を低減する。
【0078】
[0083]HDPE組成物は、押出機に提供され、押出機は、HDPEをフィルムに押し出す。そのようなフィルムは、キャストフィルム又はブローフィルム押出などの押出手順を含む任意の従来のフィルム形成プロセスによって調製され得る。フィルムが形成された後、それは、水中で急冷され、続いてテープにスリットされ、伸張される。フィルムをテープに切断する前にフィルムは伸張され得、フィルムは最初に切断され、その後伸張され得るか、又は切断及び伸張が同時に実施され得る。好ましくは、フィルムは、最初にテープに切断され、テープは、続いて所望の延伸比で縦方向に伸張されて、最終テープを形成する。延伸比6が使用され、それは、テープがその元の長さと比較して縦方向に6倍伸張されることを示す。テープは、次いで、ロール上で弛緩及びアニールされる。
【0079】
[0084]
図4は、約1メートルの全幅を有する押出機ダイ50の一部を例示する。ダイ開口部52は、0.6mmの公称開口部を有するが、その下側に、0.15mmの深さ及び0.5mmの幅を有する長方形リブ54及び溝56のパターンを設けられる。ダイ50を出るフィルムは、ダイ開口部52に対応する断面形状を有する。延伸されると、フィルムの断面は、それに応じて低減し、形状特徴は、延伸比の平方根だけ低減されるであろう。加えて、押出物の流れは、全ての特徴を軟化させる傾向があり、それによって、最終テープは、約0.2mmの間隔でその下側に浅い波紋状の表面を有するであろう。形成されたテープは、約25cN/Texの引っ張り強度を有する。
【0080】
[0085]形成されたテープは、人工芝生用の裏地層を織るために使用される。好ましくは、裏地層中の経糸テープ及び緯糸テープは、平織で織られ、いわゆるバイアスされた「正方形構造」に似るように配置される。これは、典型的には、テープの平均数、テープ幅、テープ厚さ、及びテープの線密度が、経糸方向及び緯糸方向の両方において同様であり、裏地層の寸法安定性に対して有利な効果を有することを意味する。それにもかかわらず、非正方形の織パターンも使用され得る。
裏地層-例1
【0081】
[0086]第1の例によると、裏地層2は、例えば
図1A及び1Bに示すように、単層の織生地である。裏地層2は、第1の例で説明したようなテープを使用する平織パターンを有する。経糸テープは、670dtexの線密度を有し、緯糸テープは、1200dtexの線密度を有する。平均で、1メートル当たり約860本の経糸テープ及び610本の緯糸テープが提供される。経糸テープは、1.2mmの幅を有し、緯糸テープは、約2.2mmの幅を有し、経糸テープ及び緯糸テープの両方は、58μmの厚さを有する。これは、約129g/m
2の生地重量をもたらす。
裏地層-例2
【0082】
[0087]第2の例によると、裏地層はまた、第1の例で説明したようなテープから形成される。裏地層は、互いの上に積み重ねられ、例えば第1の副層と第2の副層とを共に経編することによって互いに結合された2つの実質的に同一の副層を備える。織裏地層は、このことから、パイル支持層として機能する1つの裏地層を共に形成する経糸テープ及び緯糸テープの2つの層を備える。各副層中の経糸テープ21は、1.2mmのテープ幅、670dtexの線密度、及び1メートル当たり約840本の糸を有する。緯糸テープ22は各々、2.2mmのテープ幅、1200dtexの線密度、及び1メートル当たり約420本の緯糸を有する。経糸は、約59μmの太さを有し、緯糸は、約57μmの太さを有する。
【0083】
[0088]両方の例では、裏地層2は、経糸方向及び緯糸方向に異なる数のテープを有する。これは、裏地層2のタフト性に有利であることが分かった。正方形構造の好ましい寸法安定性を有する裏地層2を依然として得ながら、テープの数の変動のバランスを取るために、緯糸テープ22の線密度及びテープ幅は、経糸テープ21の線密度及びテープ幅よりも約2倍大きい。より正確には、幅1メートル当たり、経糸方向の線密度は、670*840=562800dTex/mであり、緯糸方向の線密度は、1200*420=504000dTex/mである。故に、偏差は、15%未満であり、従って、第2の例による裏地層において、近似的なバイアスされた正方形構造が得られる。
【0084】
[0089]第2の例では、経糸テープの数に経糸テープの線密度を乗じたものは、緯糸テープの数に経糸テープの線密度を乗じたものよりも僅かに大きい。これは、製織プロセスからのフィラメントの損傷に起因する経糸方向の強度の低減を補償し得るので、有利である。
【0085】
[0090]第1及び第2の例による生地は、人工芝生における裏地層として使用されるのに十分な強度及び寸法安定性を有する。第1及び第2の例の機械的特質を表1にまとめる。任意選択で、裏地層は、その安定性を改善するために、タフティング前に熱安定化され得る。表1は、ヒートセット前後両方の例1についての結果を示す。
【0086】
【0087】
[0091]Fmaxでの強度は、それぞれ縦方向(MD、経糸方向)又は横方向(CD、緯糸方向)に5cmの厚さのストリップを破断又は引裂するために必要とされる力[N]を指す。Fmaxでの伸びは、この試験を実行する間に生じる対応するひずみを指す。一般に、より強い生地は、より安定しており、より高い耐クリープ性を有する。
【0088】
[0092]90度での収縮は、人工芝生が直射日光に曝されたときに野外で予想される収縮を指す。それは、指定された長さを有する試料をマーキングし、15分の期間にわたって90℃に曝すことによって測定される。冷却後、マーキングされた長さが再び測定され、収縮が決定される。織裏地の作製方法に起因して、固有の応力が織裏地層の繊維に生じる。熱に曝されると、繊維は弛緩し、織構造は「拡張する」。この現象は、異なる名称を有するが、クリープ、伸張、又は拡張と呼ばれ得る。冷却時に必ずしも逆転しないので、熱膨張の単純な問題ではない。拡張は、注意深く置かれた人工芝生ピッチに、許容できないほどのしわを生じさせるか、又はしわを寄せる可能性がある。故に、収縮率は、好ましくは、可能な限り低い。
【0089】
[0093]人工芝を形成するために、パイル繊維5は、本発明による裏地層に一体化されて、中間製品17を形成する。パイル繊維用のPE組成物は、裏地層に適用されるHDPE組成物よりも低い密度及び低い融点を有する。好ましくは、パイル繊維5の融点は、115℃未満である。パイル繊維5の束6と裏地層2との間の融点のこの差は、結合ステップ13中に束6が互いに融解されることを可能にし、その一方で、裏地層2は融解しない。
【0090】
[0094]特定の実施形態では、パイル繊維5は、110℃の融解温度を有するPEで作られる。HDPE裏地層2にタフトされた束6は、各々900dtexの線密度を有し、12600dtexの総線密度をもたらす異なるモノフィラメントである。これらのパイル繊維5は、4.3cmの高さにわたって延在し、天然芝の外観を模倣するために異なる特質を有し得る。
【0091】
[0095]加えて、テクスチャ加工された又はカールされたサッチヤーン7は、あまり遠くまで延在しない裏地層2に一体化される。サッチヤーン7は、各々8本のヤーンを備える5000dtexの総線密度を有する束中に配置される。サッチヤーン7は、125℃の融解温度を有するPEで作られる。
【0092】
[0096]一般に、中間製品17の繊維結合強度は不十分であり、従って、従来技術の人工芝生システムでは、典型的には、ロック層、例えばラテックスコーティングが塗布される。これは人工芝生基布のリサイクル性を損なうので、中間製品17は、本発明によると、結合ステップ13を受け、ここにおいて、裏地層2の下面4は加熱されて、束6中のパイル繊維5を互いに及び/又は裏地層2に融解して、繊維結合を強化する。結合ステップ中に、裏地層2は、同時にヒートセットされて、使用中の人工芝生基布の拡張を低減し、寸法安定性を改善する。このタイプの結合は、ここでは「熱固定」ステップと呼ばれる。
【0093】
[0097]
図3は、繊維結合ステップ13を実施するために使用することができる装置20の例証的な実施形態を示す。一体化されたパイル繊維5を有するHDPE裏地層2から成る中間製品17は、送りローラ21によって提供され、複数の案内ローラ22を使用して装置20を通って案内される。中間製品17は、1~30m/minの速度で機械を通って運ばれ、ローラ24の加熱された表面25に沿って案内される。加熱されたローラ24は、束6中の個々のパイル繊維5を融解し、それによって、パイル繊維5と裏地層2との間の結合も増大させる。重要なことには、裏地層2自体は、ローラ24と係合せず、パイル繊維5によってローラ24から離間されたままであることである。
【0094】
[0098]任意選択では、ホットメルト接着剤又はパウダーメルトが塗布されて、繊維結合強度が更に増大され得る。例えば散布デバイスであるデバイス23が、装置20中に配置され得る。デバイス23は、中間製品17が加熱されたローラ24に沿って運ばれる前に、ホットメルト接着剤粉末を下面4に散布し得る。このホットメルト又はパウダーメルトは、人工芝生基布のリサイクル性が損なわれないように、実質的にポリエチレンから成ることができる。代替として、ホットメルト接着剤又はパウダーメルトが塗布されず、それは、生産プロセスをより複雑でなくし、そのためより安価にし、エラー傾向をより少なくする。
【0095】
[0099]上記で説明したようなHDPE組成物を有する裏地層2を加工するために、加熱された表面25は、135~155℃の範囲の温度まで加熱される。加熱された表面25は、典型的には、中間製品17が表面25に対して粘着するのを防止するために非接着性素材で作られたドラムである。案内ローラ22は、中間製品17を張力下に置き、加熱された表面25における中間製品17の滞留時間を制御するように配置される。一般に、ローラ22、24は、10~40秒の滞留時間を可能にするように互いに対して配置される。好ましくは、滞留時間は22~35秒、例えば25秒である。この接触期間は、裏地層2及び/又はパイル繊維5が十分に融解し、互いに部分的に融合して、十分に高い繊維結合強度を提供することを可能にする。部分的に融解された中間製品17は、続いて案内ローラ22によって運び去られ、更なる処理のために装置から外へ移送される。そのような更なる処理は、人工芝生基布の加速冷却又は裏地層の下面の積層を含み得る。実施形態では、冷却後の製品は、最終製品である。
【0096】
[00100]案内ローラ22は、装置20を通って中間製品17を案内し得るだけでなく、また、加熱されたローラ24に隣接して配置され、裏地層2の下面4に対する圧力を増大させて、裏地層2の経糸及び緯糸繊維とパイル繊維5との間に融解されたポリマー素材をより良好に拡張することができる圧力ローラとして使用され得る。加熱されたローラ25の温度とそのような圧力ローラに印加される圧力とは、良好な結果を達成するために、互いに依存して且つ中間製品17の特性及び質感に依存して最適化されるべきであることが当業者によって理解されるであろう。
繊維結合の方法-例1
【0097】
[00101]本方法の第1の例によると、ローラの温度は、加熱されたシリンダ上で測定される145℃、及び25秒の滞留時間に設定される。5Barの圧力が印加される。この方法は、熱安定化ステップを受けた後の第1の例証的な裏地層に対して試験された。
繊維結合の方法-例2
【0098】
[00102]本方法の第2の例によると、ローラの温度は、加熱されたシリンダ上で測定される145℃、及び30秒の滞留時間に設定される。5Barの圧力が印加される。この方法は、第2の例証的な裏地層に対して試験された。
【0099】
[00103]第1及び第2の例による人工芝生基布の機械的特質を表2にまとめる。
【0100】
【0101】
[00104]第2の裏地層は、熱固定ステップを適用する前に熱安定化されなかった。これは、製造のコスト及び複雑さを低減する。それにもかかわらず、熱固定ステップの前に裏地層が最初に熱安定化される実施形態が除外されないことが理解されるであろう。
【0102】
[00105]
図5は、典型的な示差走査熱量測定(DSC)トレースを例示する。素材の融点は、熱流についてのピーク値として決定される。点Dにおける開始温度は、融解又は結晶化ピークの開始時における外挿基線と変曲接線との交点として定義される。変曲接線は、点Bと点Dとの間に示す。外挿基線は、点Aと点Cとの間に示す。
【0103】
[00106]第1の例によるHDPEフィラメントは、約125℃の開始温度、及び約130℃の融点を有する。
【0104】
[00107]本発明は、その趣旨又は本質的な特性から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化され得る。説明した実施形態は、全ての点で例示的なものに過ぎず、限定的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、従って、前述の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示す。当業者には、本発明の代替及び等価の実施形態を着想し、実施することができることが明らかであろう。特許請求の範囲の均等物の意味及び範囲内に入る全ての変更は、それらの範囲内に包含されるべきである。
【国際調査報告】