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特表2024-523079電解銅箔の物性制御方法及びその製造方法
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  • 特表-電解銅箔の物性制御方法及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】電解銅箔の物性制御方法及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 1/04 20060101AFI20240621BHJP
   C25D 3/38 20060101ALI20240621BHJP
   C25D 21/14 20060101ALI20240621BHJP
   C25D 21/12 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C25D1/04 311
C25D3/38 101
C25D21/14 B
C25D21/12 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544706
(86)(22)【出願日】2023-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 KR2023004288
(87)【国際公開番号】W WO2023219269
(87)【国際公開日】2023-11-16
(31)【優先権主張番号】10-2022-0057727
(32)【優先日】2022-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519197594
【氏名又は名称】高麗亞鉛株式会社
【氏名又は名称原語表記】KOREA ZINC CO., LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】523275455
【氏名又は名称】ケイゼム コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョン ファン
(72)【発明者】
【氏名】ホ,セ クォン
(72)【発明者】
【氏名】ホ,ギュン
【テーマコード(参考)】
4K023
【Fターム(参考)】
4K023AA01
4K023AA04
4K023BA06
4K023CB03
4K023CB07
4K023CB13
4K023CB28
4K023DA02
4K023DA06
4K023DA07
4K023DA08
(57)【要約】
本発明の一実施例による電解銅箔の物性制御方法は、光沢度調節剤を添加して電解銅箔の光沢度を調節することによって引張強度、延伸率、及び粗さを含む物性を制御する方法であり、前記光沢度の範囲を35~400GU(60°)に調節する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光沢度調節剤を添加して電解銅箔の光沢度を調節することによって引張強度、延伸率及び粗さを含む物性を制御し、
前記光沢度の範囲は35~400GU(60°)である、電解銅箔の物性制御方法。
【請求項2】
前記光沢度を調節して下記の式1により延伸率を調節する、請求項1に記載の電解銅箔の物性制御方法。
式1:E=-3.15×10-5×G+0.006×G+7.19(G:光沢度(GU(60°))、E:延伸率(%))
【請求項3】
前記光沢度を調節して下記の式2により引張強度を調節する、請求項1または2に記載の電解銅箔の物性制御方法。
式2:T=1.25×10-4×G-0.104×G+49.8(G:光沢度(GU(60°))、T:引張強度(kgf/mm))
【請求項4】
前記光沢度を調節して下記の式3により粗さを調節する、請求項1または2に記載の電解銅箔の物性制御方法。
式3:R=7.59×10-6×G-0.005×G+1.80(G:光沢度(GU(60°))、R:粗さ(μm))
【請求項5】
前記光沢度を調節して下記の式3により粗さを調節する、請求項3に記載の電解銅箔の物性制御方法。
式3:R=7.59×10-6×G-0.005×G+1.80(G:光沢度(GU(60°))、R:粗さ(μm))
【請求項6】
前記光沢度調節剤は硫黄原子を含む化合物であるスルホン酸(sulfonic acid)またはその金属塩であり、チオフォスフォリック酸-トリス-(ω-スルホプロピル)エステルトリソジウム塩、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸(MPS)、ビス-(3-スルホプロピル)-ジスルフィドジソジウム塩(SPS)及びチオグリコール酸のうち少なくともいずれか1つを含む、請求項1に記載の電解銅箔の物性制御方法。
【請求項7】
前記光沢度調節剤の濃度は12~40ppmである、請求項1に記載の電解銅箔の物性制御方法。
【請求項8】
前記光沢度調節剤の濃度は18~28ppmである、請求項7に記載の電解銅箔の物性制御方法。
【請求項9】
銅イオンを硫酸イオンに溶かして電解液を準備し、前記電解液に延伸率の維持と向上のための延伸率調節剤、または、引張強度の維持と向上のための引張強度調節剤、またはその両方を添加する段階と、
光沢度向上のための光沢度調節剤を添加して請求項1による電解銅箔の物性制御方法により電解銅箔の物性を制御する段階と、
添加剤が添加された電解液を回転式陰極ドラムと陽極が一定の間隔を維持している製箔機に供給しながら電流を供給して電解銅箔を形成する段階とを含む、電解銅箔の製造方法。
【請求項10】
前記電解液における前記銅イオンの濃度は70g/L~100g/Lであり、前記硫酸イオンの濃度は80g/L~150g/Lである、請求項9に記載の電解銅箔の製造方法。
【請求項11】
前記延伸率調節剤はノニオン性水溶性高分子である、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、オクタンジオール-ビス-ポリアルキレングリコールエーテル及びポリグリセリンのうち少なくともいずれか1つを含む、請求項9または10に記載の電解銅箔の製造方法。
【請求項12】
前記引張強度調節剤はチオ尿素系化合物または窒素を含む複素環にチオール基が連結された化合物である、ジエチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、アセチレンチオ尿素、2-チオウラシル(2-thiouracil)と2-メルカプト-5-ベンゾイミダゾールスルホン酸ソジウム塩(2-mercapto-5-benzoimidazole sulfonic acid sodium salt)、ソジウム3-(5-メルカプト-1-テトラゾリル)ベンゼンスルホネート(Sodium 3-(5-mercapto-1-tetrazolyl)benzene sulfonate)及び2-メルカプトベンゾチアゾール(2-mercapto benzothiazole)のうち少なくともいずれか1つを含む、請求項9または10に記載の電解銅箔の製造方法。
【請求項13】
前記光沢度調節剤は硫黄原子を含む化合物であるスルホン酸(sulfonic acid)またはその金属塩である、チオフォスフォリック酸-トリス-(ω-スルホプロピル)エステルトリソジウム塩、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸(MPS)、ビス-(3-スルホプロピル)-ジスルフィドジソジウム塩(SPS)及びチオグリコール酸のうち少なくともいずれか1つを含む、請求項9または10に記載の電解銅箔の製造方法。
【請求項14】
前記光沢度調節剤の濃度は12~40ppmである、請求項9または10に記載の電解銅箔の製造方法。
【請求項15】
前記光沢度調節剤の濃度は18~28ppmである、請求項14に記載の電解銅箔の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解銅箔の光沢度だけを調節することによって他の主な物性である引張強度、延伸率及び粗さを容易に制御できる電解銅箔の物性制御方法及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、電気自動車、携帯電話等モバイル機器産業に必要な二次電池の需要が爆発的に増加するに伴い、高いエネルギー密度と安定性を持つリチウム二次電池に必要な銅箔の需要もまた、急増している。これにより、二次電池負極集電体として使用される非常に薄い銅薄膜である銅箔は、電子機器産業においてとても主要な素材の1つとして注目されている。このような銅箔は、通常、製造方法により電解銅箔と圧延銅箔とに分かれ、それぞれ長所短所があるため使い道により好まれる方式が異なる。
【0003】
特に、電解銅箔の製造工程は、主にロールツーロール(Roll To Roll)方式で連続的に生産することで大量に生産することが可能で、幅が広くて厚さの薄い銅箔を生産できる長所があるので、リチウム二次電池の場合には、電解銅箔が主に使用される。最近では厚さ10 μm以下の厚さの銅箔が求められており、特に、通常8 μm及び6 μmの厚さの銅箔が主に使用される。
【0004】
一般に、電解銅箔は引張強度、延伸率、粗さ等の物性が重要なものとして管理されている。また、電解銅箔の厚さが薄いほど銅箔の表面が引張強度、延伸率、粗さ等の銅箔の物性に影響を与えるようになるため、各物性の関係が重要視されている。
【0005】
従来、銅箔の基本的物性を実現するための物性制御方法及び技術が多数報告されている。特にこのような物性を調節する方法として有機化合物系列の添加剤を1つ、またはそれ以上のさまざまな種類の添加剤を投入し、添加剤の総投入量を複合的に変更する方法を使用している。例えば、物性を調節して電解銅箔を製造する方法として特許文献1では、チオ尿素系化合物である添加剤を使用して製造安定化を向上させて電解銅箔の強度を向上させ、硫黄原子を含む化合物であるスルホン酸(sulfonic acid)またはその金属塩を使用して電解銅箔の表面光沢を向上させる技術を開示している。また、特許文献2では、電解液の組成、電流密度または電解液に添加される添加剤の種類及び含量を適切に調節して、連続層に対する不連続層の相対的な厚さを最小化した電解銅箔を製造する技術を開示している。
【0006】
しかし、このような添加剤を使用する場合、銅箔の1つの物性のみを選択的に制御できないという問題がある。例えば、物性のうち延伸率を調節する添加剤を使用する場合、延伸率を維持または向上させることができるだけでなく、それ以外の物性である粗さまたは光沢度の変化にも影響を及ぼすので、粗さまたは光沢度に係る他の添加剤の投入量をも変更しなければならないという問題が発生する。
【0007】
このような問題を解決するために、電解銅箔の一般的な物性範囲内で延伸率、引張強度及び粗さ等の物性を簡単に調節できる電解銅箔の物性制御方法及びその製造方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国登録特許第1571064号公報
【特許文献2】韓国登録特許第1126831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものであって、電解銅箔の一般的な物性範囲内で延伸率、引張強度及び粗さ等の物性を簡単に調節可能とすることを、解決課題とする。また、本発明は他の添加剤の投入量を複合的に変更しなければならないという問題を解決して、電解銅箔の物性制御のための工程を簡素化させ、それに伴う工程費用及び添加剤にかかる費用を削減することを、解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電解銅箔の物性制御方法は、光沢度調節剤を添加して電解銅箔の光沢度を調節することによって引張強度、延伸率及び粗さを含む物性を制御し、前記光沢度の範囲は35~400GU(60°)である。
【0011】
前記光沢度を調節して下記の式1により延伸率を調節する。
【0012】
式1:E=-3.15×10-5×G+0.006×G+7.19
(G:光沢度(GU(60°))、E:延伸率(%))
【0013】
前記光沢度を調節して下記の式2により引張強度を調節する。
【0014】
式2:T=1.25×10-4×G-0.104×G+49.8
(G:光沢度(GU(60°))、T:引張強度(kgf/mm2))
【0015】
前記光沢度を調節して下記の式3により粗さを調節する。
【0016】
式3:R=7.59×10-6×G-0.005×G+1.80
(G:光沢度(GU(60°))、R:粗さ(μm))
【0017】
前記光沢度調節剤は硫黄原子を含む化合物であるスルホン酸(sulfonic acid)またはその金属塩でチオフォスフォリック酸-トリス-(ω-スルホプロピル)エステルトリソジウム塩、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸(MPS)、ビス-(3-スルホプロピル)-ジスルフィドジソジウム塩(SPS)及びチオグリコール酸のうち少なくともいずれか1つを含む。
【0018】
前記光沢度調節剤の濃度は12ppm~40ppmであり、好ましくは18ppm~28ppmである。
【0019】
本発明の電解銅箔の製造方法は、銅イオンを硫酸イオンに溶かして電解液を準備し、前記電解液に延伸率の維持と向上のための延伸率調節剤、または、引張強度の維持と向上のための引張強度調節剤、またはその両方を添加する段階;光沢度向上のための光沢度調節剤を添加して前記電解銅箔の物性制御方法により電解銅箔の物性を制御する段階;添加剤が添加された電解液を回転式陰極ドラムと陽極とが一定の間隔を維持している製箔機に供給しながら電流を供給して電解銅箔を形成する段階を含む。
【0020】
前記電解液における前記銅イオンの濃度は70g/L~100g/Lであり、前記硫酸イオンの濃度は80g/L~150g/Lである。
【0021】
前記延伸率調節剤はノニオン性水溶性高分子である、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、オクタンジオール-ビス-ポリアルキレングリコールエーテル及びポリグリセリンのうち少なくともいずれか1つを含む。
【0022】
前記引張強度調節剤はチオ尿素系化合物または窒素を含む複素環にチオール基が連結された化合物である、ジエチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、アセチレンチオ尿素、2-チオウラシル(2-thiouracil)と2-メルカプト-5-ベンゾイミダゾールスルホン酸ソジウム塩(2-mercapto-5-benzoimidazole sulfonic acid sodium salt)、ソジウム3-(5-メルカプト-1-テトラゾリル)ベンゼンスルホネート(Sodium 3-(5-mercapto-1-tetrazolyl)benzene sulfonate)及び2-メルカプトベンゾチアゾール(2-mercapto benzothiazole)のうち少なくともいずれか1つを含む。
【0023】
前記光沢度調節剤は硫黄原子を含む化合物であるスルホン酸(sulfonic acid)またはその金属塩である、チオフォスフォリック酸-トリス-(ω-スルホプロピル)エステルトリソジウム塩、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸(MPS)、ビス-(3-スルホプロピル)-ジスルフィドジソジウム塩(SPS)及びチオグリコール酸のうち少なくともいずれか1つを含む。
【0024】
前記光沢度調節剤の濃度は12~40ppm、好ましくは18~28ppmである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、電解銅箔の光沢度だけを調節して電解銅箔の引張強度、延伸率及び粗さ等の物性を容易に調節することができる。
【0026】
また、本発明によれば、光沢度という電解銅箔の1つの物性だけを調節することで、銅箔の他の物性を所望の値に調節できるので、電解銅箔の物性を調節するために種々の添加剤の投入量を複合的に調節する必要がなくなる。従って、電解銅箔の物性制御のための工程が簡素化され、それに伴う工程費用及び添加剤にかかる費用も削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明による光沢度に対する延伸率の関係を示すグラフである。
図2】本発明による光沢度に対する引張強度の関係を示すグラフである。
図3】本発明による光沢度に対する粗さの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明による電解銅箔の物性の制御方法及び銅箔の製造方法について、図面を参照してさらに詳細に説明する。
【0029】
本発明による電解銅箔は、下記の電解液を用いて製造することができる。
【0030】
(電解液の製造)
電解による電解銅箔を製造するためには、銅イオンと硫酸イオンを調節して電解液を製造し、前記電解液に銅箔の基本的な物性調節のための添加剤を含める。
【0031】
前記電解液の銅イオンの濃度は70~100g/L、硫酸イオンの濃度は80~150g/Lであり、銅と硫酸イオンの濃度は電解銅箔の製造条件に応じて異なる。
【0032】
ここで、銅イオンの原料はCu Powder、Cu Scrap (廃電線、Chopping Cu等)、硫酸銅、酸化銅、炭酸銅などのように銅を含有した原料であり、硫酸に溶解できる銅原料を全て使用することができる。
【0033】
前記電解液に銅箔の物性を調節するために必要な添加剤を含め、添加剤は通常、延伸率、引張強度、光沢度のうちいずれか1つまたはそれ以上の物性を調節する添加剤を含む。
【0034】
前記電解液に銅箔の延伸率を調節するための延伸率調節剤及び銅箔の引張強度を調節するための引張強度調節剤を添加する。
【0035】
ここで、延伸率の維持と向上のための延伸率調節剤はノニオン性水溶性高分子である、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、オクタンジオール-ビス-ポリアルキレングリコールエーテル及びポリグリセリンのうち少なくともいずれか1つを含む。
【0036】
引張強度の維持と向上のための引張強度調節剤は、チオ尿素系化合物または窒素を含む複素環にチオール基が連結された化合物である、ジエチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、アセチレンチオ尿素、2-チオウラシル(2-thiouracil)と2-メルカプト-5-ベンゾイミダゾールスルホン酸ソジウム塩(2-mercapto-5-benzoimidazole sulfonic acid sodium salt)、ソジウム3-(5-メルカプト-1-テトラゾリル)ベンゼンスルホネート(Sodium 3-(5-mercapto-1-tetrazolyl)benzene sulfonate)及び2-メルカプトベンゾチアゾール(2-mercapto benzothiazole)のうち少なくともいずれか1つを含む。
【0037】
次いで、前記電解液に銅箔の光沢度を調節するための光沢度調節剤を含めて電解銅箔を製造し、ここで光沢度向上のための光沢度調節剤は硫黄原子を含む化合物であるスルホン酸(sulfonic acid)またはその金属塩である、チオフォスフォリック酸-トリス-(ω-スルホプロピル)エステルトリソジウム塩、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸(MPS)、ビス-(3-スルホプロピル)-ジスルフィドジソジウム塩(SPS)、及びチオグリコール酸のうち少なくともいずれか1つを含む。
【0038】
光沢度調節剤は、電解液中の濃度が12~40ppm、または、好ましくは18~28ppmになるように調節して添加する。光沢度調節剤の濃度が40ppmより高ければ、銅箔の引張強度と延伸率が低くなり銅箔が破断しやすくなるという問題が発生し、光沢度調節剤の濃度が12ppmより低ければ、電解銅箔のカール(curl)特性が激しくなり銅箔の取り扱いが困難になる。
【0039】
(電解銅箔の製造方法)
電解銅箔の製造方法では、表面がTi材質である回転式陰極ドラムと、Tiに白金族元素が含まれたDSE(Dimentional Stable Electrode)極板を使用した陽極とが一定の間隔を維持している製箔機に下記条件で上述のように製造した電解液を供給する。
【0040】
電解液の温度:45~55℃
電解液の流量:1,800~3,500L/hr
電流密度:4,500~6,500A/m2
【0041】
(電解銅箔の物性を制御する方法)
本発明の一実施例によれば、光沢度調節剤を添加して光沢度を35~400GU(60°)、または、好ましくは120~250GU(60°)の範囲内で調節して引張強度、延伸率、及び粗さを含む物性を制御する。
【0042】
この場合、電解銅箔の物性は下記の式1~3により調節され、光沢度だけを調節して所望の引張強度、延伸率、及び粗さの値を得ることができるため、電解銅箔の物性を容易に制御することができる。
【0043】
式1:E=-3.15×10-5×G+0.006×G+7.19
式2:T=1.25×10-4×G-0.104×G+49.8
式3:R=7.59×10-6×G-0.005×G+1.80
(ここで、「G」は電解銅箔の光沢度(GU(60°))を、「E」、「T」、「R」はそれぞれ電解銅箔の延伸率(%)、引張強度(kgf/mm2)、及び粗さ(μm)の値を示す。)
【0044】
電解銅箔の光沢度を120~250GU(60°)に調節することによって制御される電解銅箔の延伸率は6.5~9%であり、引張強度は30~40kgf/mm2であり、粗さは0.8~1.5μmである。
【0045】
本発明の一実施例によれば、二次電池負極集電体用電解銅箔を製造することができる。
【0046】
以下では、実験条件を異にする各実験例の結果による電解銅箔の光沢度と他の物性間の相関関係式を導き出す過程について詳細に説明する。
【0047】
<実験例1>
電解液を、銅80g/L、硫酸100g/L及び延伸率調節剤(HEC)10ppm、引張強度調節剤(DTE)25ppmを含む組成にした。電解液を、その温度を54℃に維持しながら3,000L/hrの流量で回転式陰極ドラム(530φ×280w)が装着された電解槽に供給した。また、電解液に光沢度調節剤であるビス-(3-スルホプロピル)-ジスルフィドジソジウム塩(SPS)を12~40ppmの濃度に調節しながら投入した。
【0048】
銅箔の電解過程では、電流を5,769A/m2の電流密度で定電流法(Constant Current Method)で供給し、回転式陰極ドラムを1.47m/minの速度で回転させながら連続的に厚さ8μmの電解銅箔を製造した。
【0049】
<実験例2>
実験例2では、実験例1において延伸率調節剤の濃度を5~15ppm及び引張強度調節剤の濃度を20~30ppm範囲内に変更したことを除いて同一の条件で実験を行った。
【0050】
<実験例3>
実験例3では、実験例1において電解液中の銅イオンの濃度を70g/L~100g/L及び前記硫酸イオンの濃度を80g/L~150g/Lの範囲内に変更したことを除いて同一の条件で実験を行った。
【0051】
<実験例4>
実験例4では、実験例1において電流密度を4,500~6,500A/m2及び回転式陰極ドラムの回転速度を1.3~1.6(m/min)の範囲内に変更したことを除いて同一の条件で実験を行った。
【0052】
(光沢度変化による延伸率、引張強度及び粗さの測定)
実験例1~4で得られた電解銅箔を温度70℃ で18hr間熱処理した後、電解銅箔の光沢度、延伸率、引張強度及び粗さを測定した。
【0053】
図1に電解銅箔の光沢度変化による延伸率の測定値を、図2に電解銅箔の光沢度変化による引張強度の測定値を、図3に電解銅箔の光沢度変化による粗さの測定値をそれぞれ示した。
【0054】
図1は、前記実験例1~4で得られた電解銅箔の延伸率を測定して、光沢度(x軸)に対する延伸率(y軸)の関係を示したグラフである。光沢度と延伸率の物性データをプロットしたグラフによって、光沢度が35~400GU(60°)の範囲内にあるときの光沢度と延伸率の相関関係を導き出すことができる。具体的には、各光沢度と延伸率の相関関係を外挿法(extrapolation:関数値が変数のある領域内だけに知られている際に領域外における値を推定する方法)によって導き出し、光沢度と延伸率の相関関係は下記の式1の通りである。
【0055】
式1:E=-3.15×10-5×G+0.006×G+7.19
(ここで、「G」は電解銅箔の光沢度(GU(60°))を、「E」は電解銅箔の延伸率(%)を示す。)
【0056】
図2は、前記実験例1~4で得られた電解銅箔の引張強度を測定して、光沢度(x軸)に対する引張強度(y軸)の関係を表示したグラフである。光沢度と引張強度の物性データをプロットしたグラフによって、光沢度が35~400GU(60°)の範囲内にあるときの光沢度と引張強度の相関関係を導き出すことができる。具体的には、各光沢度と引張強度の相関関係を外挿法によって導き出し、光沢度と引張強度の相関関係は下記の式2の通りである。
【0057】
式2:T=1.25×10-4×G-0.104×G+49.8
(ここで、「G」は電解銅箔の光沢度(GU(60°))を、「T」は電解銅箔の引張強度(kgf/mm2)を示す。)
【0058】
図3は、前記実験例1~4で得られた電解銅箔の粗さを測定して、光沢度(x軸)に対する粗さ(y軸)の関係を表示したグラフである。光沢度と粗さの物性データをプロットしたグラフによって、光沢度が35~400GU(60°)の範囲内にあるときの光沢度と粗さの相関関係を導き出すことができる。具体的には、各光沢度と粗さの相関関係を外挿法によって導き出し、光沢度と粗さの相関関係は下記の式3の通りである。
【0059】
式3:R=7.59×10-6×G-0.005×G+1.80
(ここで、「G」は電解銅箔の光沢度(GU(60°))を、「R」は電解銅箔の粗さ(μm)を示す。)
【0060】
電解銅箔の物性が前記式1~3によって調節され得るか否か評価するために次の通り実験した。
【0061】
(電解銅箔の製造)
[実施例1~9]
電解液を、銅80g/L、硫酸100g/L及び延伸率調節剤(HEC)10ppm、引張強度調節剤(DTE)25ppmを含む組成にした。また、電解液に光沢度調節剤(SPS)を12~40ppm濃度に調節しながら投入した。
【0062】
前記電解液を、その温度を54℃を維持しながら3,000L/hrの流量で回転式陰極ドラム(530φ×280w)が装着された電解槽に供給した。
【0063】
銅箔の電解過程では、電流を5,769A/m2の電流密度で定電流法(Constant Current Method)によって供給し、回転式陰極ドラムを1.47m/minの速度で回転させながら連続的に厚さ8μmの電解銅箔を製造した。
【0064】
[実施例10~13]
実施例1において、電解液の延伸率調節剤(HEC)、引張強度調節剤(DTE)の濃度を表1のように変更したことを除いて実施例1と同一の条件で厚さ8μmの電解銅箔を製造した。
【0065】
[実施例14~17]
実施例1において、電解液の銅と硫酸濃度を表1のように変更したことを除いて実施例1と同一の条件で厚さ8μmの電解銅箔を製造した。
【0066】
[実施例18~21]
実施例1において、銅箔の電解過程で電流密度と回転式陰極ドラムの回転速度を表1のように変更したことを除いて実施例1と同一の条件で厚さ8μmの電解銅箔を製造した。
【0067】
【表1】
【0068】
(電解銅箔の物性の測定)
実施例1~21で製造された電解銅箔を温度70℃で18hr間熱処理した後、電解銅箔の光沢度、延伸率、引張強度及び粗さを含む物性を測定して表2に示した。
【0069】
(光沢度の測定)
光沢度の測定は、電解銅箔を10cm×10cmで裁断後、銅箔の流れ方向(MD方向)に沿って銅箔の表面に入射角60°で測定光を照射し、反射角60°で反射した光の強度を測定したもので、光沢度の測定方法であるJIS B 0601に準拠して測定した。
【0070】
(引張強度/延伸率の測定)
引張強度及び延伸率の測定は、JIS C 6511に準拠して測定し、電解銅箔引張試験機(MINOS-005:MTDI)を使用して測定した。測定時の条件は室温(25℃±10℃)で、チャック間距離50mm、変位速度50mm/minで測定した。
【0071】
(粗さの測定)
粗さの測定方法であるJIS B 0601(JIS 1994)に準拠して測定し、粗さ計(SJ-411:MITUTOYO)を使用して銅箔の流れ方向(MD方向)と垂直方向に測定した。
【0072】
上記測定を通じて光沢度の変化による延伸率、引張強度、及び粗さを測定し、式1~3を用いて光沢度の変化による延伸率、引張強度、及び粗さを計算した。また、前記測定値と計算値間の誤差を計算し、その結果を下表2に示した。ここで、各物性の計算値と測定値間の誤差値を((計算値/測定値)×100-100)(%)で計算した。
【0073】
【表2】
【0074】
表2によれば、電解液製造時に添加剤ビス-(3-スルホプロピル)-ジスルフィドジソジウム塩(SPS)を添加して光沢度を35~400GU(60°)、好ましくは、120~250GU(60°)の範囲内で調節すれば、式1~3を用いて電解銅箔物性である延伸率、引張強度、及び粗さを計算することができる。特に、引張強度調節剤または延伸率調節剤の濃度、電解液の銅と硫酸イオン濃度、または電解過程における電流密度と回転式陰極ドラムの回転速度の条件を異にしても式1~3を用いることができ、その結果が実際に測定した数値と誤差±5%の範囲内なので、実操業に活用可能である。
【0075】
従って、本発明によれば、光沢度という電解銅箔の1つの物性だけを調節することで、他の物性を所望の値に調節することができるので、電解銅箔の物性を調節するために種々の添加剤の投入量を複合的に調節する必要がない。光沢度だけを調節することによって電解銅箔の他の物性を適切に制御できるので、電解銅箔の物性制御のための工程が簡素化され、それに伴う工程費用及び添加剤にかかる費用も削減できる。
【0076】
本技術分野の通常の知識を有する者は、本発明をその技術的思想や必須の特徴を変更せずに他の具体的な形態で実施することができるということを理解するはずである。したがって、以上で記述した実施例は全ての面で例示的なものであり、限定的なものとして解釈してはならない。本発明の範囲は、後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、そして、その均等概念から導き出される全ての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものとして解釈されるべきである。
図1
図2
図3
【国際調査報告】