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特表2024-523081超音波誘導下で医療器具を配置するための医療ロボット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】超音波誘導下で医療器具を配置するための医療ロボット
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/20 20160101AFI20240621BHJP
   A61B 34/32 20160101ALI20240621BHJP
   A61B 8/00 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
A61B34/20
A61B34/32
A61B8/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550247
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 FR2022051136
(87)【国際公開番号】W WO2022263763
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】2106350
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520148884
【氏名又は名称】クアンタム サージカル
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】シュドレ,マチュー
(72)【発明者】
【氏名】ブロンデル,リュシアン
(72)【発明者】
【氏名】ナホム,ベルタン
(72)【発明者】
【氏名】バダノ,フェルナンド
【テーマコード(参考)】
4C130
4C601
【Fターム(参考)】
4C130AA04
4C130BA05
4C601BB03
4C601BB16
4C601FF11
4C601GA18
4C601GA21
4C601JC06
4C601JC20
(57)【要約】
本発明は、患者の皮膚における進入点と、患者の対象の解剖学的領域において治療される病変における標的点とによって画定される軌道に沿って医療器具(15)を誘導するためのツールガイド(14)を備えたロボットアーム(13)を含む医療ロボット(10)に関する。医療ロボットは、超音波プローブ(40)及びナビゲーションシステム(30)と協働し、ロボットの位置、超音波プローブの位置及び患者マーカ(22)の位置を特定することを可能にする。ロボットは、患者の少なくとも1回の呼吸周期中に超音波プローブによって取得された超音波画像から、患者マーカの位置に従って標的点の位置及び進入点の位置のモデルを生成するように構成される。こうして生成されたモデルは、したがって、医療器具を正確に誘導するために、患者マーカの位置に従ってロボットアームがリアルタイムで制御されることを可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者(20)の対象の解剖学的構造における病変を治療するための医学的介入中に施術者を支援するための医療ロボット(10)であって、医療器具(15)を誘導するように意図されたツールガイド(14)を遠位端に含むロボットアーム(13)と、前記ロボットアーム(13)を制御するように構成された制御ユニット(12)とを含み、ナビゲーションシステム(30)及び前記施術者によって前記患者の前記対象の解剖学的構造に位置決めされる超音波プローブ(40)と協働するように構成され、前記制御ユニット(12)は、前記ナビゲーションシステム(30)によって通信される情報に基づいて、前記医療ロボット(10)に取り付けられるロボットマーカ(18)の位置、前記対象の解剖学的構造の付近で前記患者(20)に位置決めされる患者マーカ(22)の位置及び前記超音波プローブ(40)に取り付けられるプローブマーカ(41)の位置を任意の時点で特定することができるように構成される、医療ロボット(10)において、
- モデル化段階中、前記制御ユニット(12)は、前記患者の少なくとも1回の呼吸周期中に前記超音波プローブ(40)によって取得された複数の超音波画像を受信し、及び前記超音波画像から、前記患者の呼吸周期で考慮される瞬間とは無関係に、前記患者マーカ(22)の前記位置に基づき、前記病変における標的点の位置及び前記患者(20)の皮膚における進入点の位置を推定するためのモデルを生成するように構成され、
- 誘導段階中、前記制御ユニット(12)は、前記ツールガイド(14)が、前記モデルにおける前記患者マーカ(22)の前記位置に関連付けられた前記標的点の前記位置及び前記進入点の前記位置によって画定される軌道に沿って前記医療器具(15)を誘導することを可能にするように、前記患者マーカ(22)の前記位置に基づいて前記ロボットアーム(13)をリアルタイムで制御するように構成されることを特徴とする医療ロボット(10)。
【請求項2】
前記モデル化段階中、前記制御ユニット(12)は、
- 受信された超音波画像ごとに、
○前記超音波プローブ(40)によって前記超音波画像が取得された時点における前記患者マーカ(22)の前記位置及び前記プローブマーカ(41)の前記位置を特定すること、
○前記超音波画像から、前記病変が可視である解析画像を得ること、
○前記解析画像上において、前記病変における標的点及び前記患者(20)の皮膚における進入点を特定することであって、前記標的点及び前記進入点は、したがって、前記医療器具(15)のために辿られる軌道を画定する、特定すること、
○前記プローブマーカ(41)の前記位置から前記標的点の位置及び前記進入点の位置を特定すること、
○前記超音波画像についてこのようにして特定された前記患者マーカ(22)の前記位置、前記標的点の前記位置及び前記進入点の前記位置間の関連付けを確立すること、
- 前記複数の超音波画像についてこのようにして得られた情報から、前記患者の呼吸周期で考慮される瞬間とは無関係に、前記患者マーカ(22)の前記位置の関数として前記標的点の前記位置及び前記進入点の前記位置をモデル化すること
を行うように構成される、請求項1に記載の医療ロボット(10)。
【請求項3】
前記誘導段階中、前記医療器具(15)の挿入時、前記制御ユニット(12)は、前記超音波プローブ(40)によって取得された新たな超音波画像を定期的に受信し、及び前記新たな超音波画像に基づいて前記モデルを更新するように構成される、請求項1又は2に記載の医療ロボット(10)。
【請求項4】
前記誘導段階中、前記医療器具(15)の挿入時、前記制御ユニット(12)は、新たな受信された超音波画像ごとに前記医療器具(15)の位置を特定し、及び前記医療器具(15)の前記位置に基づいて前記ロボットアーム(13)の前記リアルタイム制御を調整するようにさらに構成される、請求項3に記載の医療ロボット(10)。
【請求項5】
前記解析画像は、前記超音波画像であり、前記病変は、前記超音波画像上で可視である、請求項1~4のいずれか一項に記載の医療ロボット(10)。
【請求項6】
前記制御ユニットは、前記超音波画像を、前記病変が可視である術前又は介入前の基準画像とマージすることにより、前記解析画像を得るように構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の医療ロボット(10)。
【請求項7】
前記患者マーカ(22)の放射線不透過性要素(24)は、前記基準画像上で可視であり、及び前記制御ユニット(12)は、前記超音波プローブ(40)によって前記超音波画像が取得された時点における前記プローブマーカ(41)の前記位置に対する前記患者マーカ(22)の前記位置に基づくレジストレーションにより、前記超音波画像を前記基準画像とマージするように構成される、請求項6に記載の医療ロボット(10)。
【請求項8】
前記基準画像は、コンピュータ断層撮影画像、陽電子放射断層撮影画像又は磁気共鳴画像法画像である、請求項6又は7に記載の医療ロボット(10)。
【請求項9】
前記超音波プローブ(40)から受信される前記超音波画像は、Bモード超音波画像である、請求項1~8のいずれか一項に記載の医療ロボット(10)。
【請求項10】
前記制御ユニット(12)は、前記超音波プローブ(40)によって取得された超音波画像を少なくとも15画像/秒の速度で受信及び処理するように構成される、請求項1~9のいずれか一項に記載の医療ロボット(10)。
【請求項11】
前記施術者が前記解析画像を見ることを可能にする表示画面を含むユーザインタフェース(19)をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の医療ロボット(10)。
【請求項12】
前記ユーザインタフェース(19)は、前記表示画面上に表示された解析画像上において、標的点、及び/又は進入点、及び/又は前記医療器具(15)によって横切られない解剖学的領域を前記施術者が特定することを可能にする入力手段を含む、請求項11に記載の医療ロボット(10)。
【請求項13】
前記ユーザインタフェースは、前記表示画面上で前記解析画像を前記患者の身体の実際の画像と重ね合わせるための拡張現実デバイスを含む、請求項11又は12に記載の医療ロボット(10)。
【請求項14】
前記制御ユニット(12)は、超音波画像を、前記病変が可視である基準画像と比較し、及び前記超音波プローブ(40)によって取得された超音波画像が、前記病変が位置する解剖学的領域を含むように、前記超音波プローブ(40)が移動されるべき方向の指示を前記施術者に与えるように構成される、請求項1~13のいずれか一項に記載の医療ロボット(10)。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の医療ロボット(10)と、前記医療ロボット(10)と協働するためのナビゲーションシステム(30)及び超音波プローブ(40)とを含む医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、1つ又は複数の医療器具を患者の対象の解剖学的構造に挿入することを含む低侵襲の医学的介入中に施術者を支援するためのロボット装置の分野に属する。特に、本発明は、医療ロボットであって、患者の対象の解剖学的構造内の病変における標的点の移動を追跡し、及び医療器具を標的点に最適に誘導するためにロボットの多関節アームの位置をリアルタイムで調整するように構成された医療ロボットに関する。標的点の移動は、特に患者の呼吸又は医療器具の挿入によって生じる可能性がある。
【背景技術】
【0002】
従来技術
医療器具を用いて患者の対象の解剖学的構造に到達することを目的とした低侵襲の介入を準備するために、施術者は、一般に、(介入の数日前又は数週間前に得られる)術前医用画像又は(介入直前に患者が介入テーブルに乗っているときに得られる)介入前医用画像に基づいて介入計画を実施する。低侵襲の医学的介入は、特に、臓器内の腫瘍の生検若しくはアブレーションを実施すること、椎体形成術若しくは骨セメント療法を実施すること又はさらに特定の解剖学的領域を刺激することを目的とする場合がある。対象の解剖学的構造は、例えば、肺、腎臓、肝臓、脳、脛骨、膝、椎骨等であり得る。医療器具は、針、プローブ、カテーテル等であり得る。
【0003】
この計画ステップ中、施術者は、治療される対象の解剖学的構造の領域における標的点を画定する。施術者は、患者の皮膚の上に医療器具のための進入点を画定する。したがって、これらの2つの点により、医療器具が医学的介入を行うために辿らなければならない軌道が画定される。胸部領域、腹部領域又は骨盤領域に位置する軟性臓器の特定の場合、患者の呼吸に関連する移動及び/又は医療器具の挿入に起因する臓器の局所的な変形により、介入中に標的点が変位する。術前又は介入前の医用計画画像は、介入中の標的点のこの変位を予測しない。したがって、標的点の位置(すなわち対象の解剖学的構造における治療される領域の位置)は、医用計画画像の取得中と介入中とで通常異なる。したがって、医用計画画像から医療器具の挿入を計画する場合、医療器具が標的点に正確に到達しない危険性がある。
【0004】
加えて、医療器具が辿る計画された軌道が適宜調整されない場合、医療器具が挿入中に曲がり、標的点に到達しない危険性がある。
【0005】
患者の呼吸によって生じる標的点の変位を制限するために、医療器具の挿入時、医用計画画像が取得された呼吸周期の位相に対応する呼吸周期の位相で患者の呼吸を遮断することが考えられる。呼吸は、医学的介入が局所麻酔下で行われる場合、患者が自発的に遮断することができるか、又は医学的介入が全身麻酔下で行われる場合、施術者が制御された方法で遮断することができる(機械的換気の中断)。しかしながら、医用計画画像が取得された呼吸周期の位相と、介入中に患者の呼吸が遮断される呼吸周期の位相との間の正確な対応関係を得ることは、困難であるため、この解決法は、常に非常に正確であるとは限らない。さらに、この解決法は、医療器具の挿入が比較的迅速であることを前提とし、これは、患者の呼吸が遮断されている間に行われなければならないためである。
【0006】
患者の呼吸周期中にいくつかの医用計画画像を撮影し、呼吸によって生じる対象の解剖学的構造の変形及び変位が最も小さい軌道を特定することも考えられる。しかしながら、この場合にも医療器具が標的点に正確に到達しない危険性がある。
【0007】
介入中医用画像(医療器具が患者の体内に挿入されているときに取得される画像)を定期的に取得することにより、介入を通して標的点の位置を追跡することも可能である。これらの医用画像は、通常、コンピュータ断層撮影、X線又は磁気共鳴によって取得される。しかしながら、コンピュータ断層撮影又はX線の場合、こうした解決法には、介入中に患者及び施術者に著しい放射線を照射するという欠点がある。磁気共鳴画像法の場合、特に麻酔材料に対して、特に制約の多い所定の非磁性材料を使用する必要がある。この解決法では、介入を通してかさばる撮像デバイスを使用する必要もある。
【0008】
超音波画像を活用して対象の解剖学的構造内の病変の位置を追跡することも知られている。しかしながら、病変は、超音波画像において常に可視であるとは限らず、既存の解決法は、一般的に精度に欠ける。
【0009】
したがって、患者の対象の解剖学的構造内の治療される領域の標的点に医療器具を正確に挿入するための解決法を見出すことは、特に患者の呼吸に関連する移動及び/又は医療器具の挿入に起因する対象の解剖学的構造の局所的変形が介入中に標的点の変位を引き起こす場合に依然として必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の説明
本発明の目的は、従来技術の欠点、特に上記に述べた欠点のすべて又はいくつかを改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のために、第1の態様によれば、本発明は、患者の対象の解剖学的構造における病変を治療するための医学的介入中に施術者を支援するための医療ロボットが提案される。医療ロボットは、医療器具を誘導するツールガイドを遠位端に含むロボットアームを含む。医療ロボットは、ロボットアームを制御するように構成された制御ユニットも含む。医療ロボットは、ナビゲーションシステム及び施術者によって患者の対象の解剖学的構造に位置決めされる超音波プローブと協働するように構成される。制御ユニットは、ナビゲーションシステムによって通信される情報に基づいて、医療ロボットに固定されるように意図されたロボットマーカの位置、対象の解剖学的構造の付近で患者に位置決めされるように意図された患者マーカの位置及び超音波プローブに固定されるプローブマーカの位置を任意の時点で特定することができるように構成される。モデル化段階中、制御ユニットは、患者の少なくとも1回の呼吸周期中に超音波プローブによって取得された複数の超音波画像を受信し、及び前記超音波画像から、患者の呼吸周期で考慮される瞬間とは無関係に、患者マーカの位置に基づき、病変における標的点の位置及び患者の皮膚における進入点の位置を推定するためのモデルを生成するように構成される。誘導段階中、制御ユニットは、モデルにおける患者マーカの位置に関連付けられた標的点の位置及び進入点の位置によって画定される軌道に沿って医療器具を誘導するために、患者マーカの位置に基づいてロボットアームをリアルタイムで制御するように構成される。
【0012】
本出願において、「位置」という用語は、3次元基準系における物体の位置と向きとの両方を述べるものとして広義に理解されなければならない(英語の文献では「姿勢(pose)」という用語が使用されることもある)。マーカ位置(患者マーカ、ロボットマーカ及びプローブマーカ)並びに標的点の位置及び進入点の位置もロボット基準系又はナビゲーションシステム基準系で画定することができる。ロボットマーカの位置は、ナビゲーションシステムの基準系と、ロボットの基準系との両方で既知であるため、ロボットの基準系は、ナビゲーションシステムの基準系に対して相対的に画定できることに留意されたい(ロボットアームの各関節は、例えば、ロボットの基準系におけるロボットアームの各関節要素の位置を知ることを可能にするエンコーダを含み、ロボット上のロボットマーカの位置は、制御ユニットに先験的に既知である)。
【0013】
モデル化段階は、ロボットアームを対象の解剖学的構造に近づける前及び医療器具を患者の体内に挿入する前の介入の開始時に行われる。モデル化段階は、呼吸周期中の患者マーカに対する標的点の移動及び進入点の移動をモデル化するために使用される。モデル化段階中、標的点の位置及び進入点の位置が患者マーカの位置と相関され、したがって患者マーカの位置に従って標的点の位置及び進入点の位置を画定することができる。したがって、得られたモデルにより、呼吸周期の任意の瞬間において、標的点に正確に到達するために医療器具が辿らなければならない軌道に対応する標的点の位置及び進入点の位置を画定することが可能になる。
【0014】
標的点の位置及び進入点の位置が患者マーカの位置に従ってモデル化されると、ナビゲーションシステムを用いて患者マーカの位置をリアルタイムで追跡することにより、患者マーカの位置に関連付けられた標的点の位置及び進入点の位置によって画定される軌道に沿って医療器具を誘導するためにロボットアームが取るべき位置をリアルタイムで画定することが可能になる。このリアルタイムの追跡は、特に医療器具の挿入前に行うことができる。
【0015】
こうした配置により、医療器具の挿入を進めるために、呼吸周期の任意の瞬間に患者の呼吸を遮断することが可能になる。実際には、患者の呼吸が遮断される瞬間とは無関係に、ロボットアームは、所望の軌道に沿った医療器具の挿入を可能にするように正しく位置決めされる。
【0016】
さらに、介入中に患者の呼吸を遮断する必要がなくなる。実際には、ロボットアームは、医療器具を所望の軌道に沿って誘導するためにロボットアームの位置が常に調整されるようにリアルタイムで移動される。
【0017】
したがって、医療器具は、医療器具が呼吸周期中に挿入される瞬間とは無関係に、治療される領域に非常に高精度で挿入することができる。医療器具の挿入は、一般に施術者によって行われ、医療ロボットの目的は、施術者による医療器具の挿入を誘導することである。しかしながら、医療器具の挿入が自動化され、制御ユニットによって制御されることを妨げるものではない。
【0018】
さらに、呼吸周期中の標的点の位置及び進入点の位置のモデル化は、超音波画像に基づいて行われるため、介入中に患者及び施術者が電離放射線にさらされることはない。
【0019】
特定の実施形態において、本発明は、単独で又は技術的に可能なすべての組合せに従い、以下の特徴の1つ又は複数をさらに含むことができる。
【0020】
特定の実施形態では、モデル化段階中、制御ユニットは、受信された超音波画像ごとに、
- 超音波プローブによって超音波画像が取得された時点における患者マーカの位置及びプローブマーカの位置を特定すること、
- 超音波画像から、病変が可視である解析画像を得ること、
- 解析画像上において、病変における標的点及び患者の皮膚における進入点を特定することであって、標的点及び進入点は、したがって、医療器具のために辿られる軌道を画定する、特定すること、
- プローブマーカの位置から標的点の位置及び進入点の位置を特定すること、
- 超音波画像についてこのようにして特定された患者マーカの位置、標的点の位置及び進入点の位置間の関連付けを確立すること
を行うように構成される。さらに、制御ユニットは、複数の超音波画像についてこのようにして得られた情報から、患者の呼吸周期で考慮される瞬間とは無関係に、患者マーカの位置の関数として標的点の位置及び進入点の位置をモデル化するように構成される。
【0021】
特定の実施形態では、誘導段階中、医療器具の挿入時、制御ユニットは、超音波プローブによって取得された新たな超音波画像を定期的に受信するように構成される。制御ユニットは、新たな超音波画像に基づいてモデルを更新するようにさらに構成される。
【0022】
施術者が患者の体内に医療器具を挿入し始めると直ちに、患者の皮膚における進入点の位置は、固定され、ロボットアームの移動のための回転軸となる。しかしながら、医療器具の挿入の段階中にリアルタイムで取得される新たな超音波画像を用いて、標的点の位置、進入点の位置及び患者マーカの位置をリアルタイムで追跡することが依然として可能である。こうした配置により、医療器具の挿入に起因する標的点のいかなる移動も考慮することが可能になる。標的点は、実際に、医療器具の挿入中に医療器具が辿る軌道の方向に移動する場合がある(これは、到達すべき標的点が軟性臓器内の病変、例えば腫瘍内にある場合に特に当てはまる)。超音波画像を用いて標的点の位置をリアルタイムで特定することにより、医療器具が辿る軌道とともに、この軌道に沿って医療器具を誘導するためのロボットアームの位置もリアルタイムで更新することが可能になる。
【0023】
したがって、本発明により、医療器具の挿入後の軌道の横方向の再調整を最小限にすることが可能になる(こうした軌道の横方向の再調整は、一般に、医療器具が横切る器官にとって外傷となる)。
【0024】
特定の実施形態では、誘導段階中、医療器具の挿入時、制御ユニットは、新たな受信された超音波画像ごとに医療器具の位置を特定し、及び医療器具の位置に従ってロボットアームのリアルタイム制御を調整するようにさらに構成される。
【0025】
こうした配置により、挿入中に医療器具が曲がる危険性を考慮し、それに応じてロボットアームのリアルタイム制御を調整することが可能になる(それにより、医療器具が辿る軌道は、進入点と標的点との間の直線でなくなる)。
【0026】
特定の実施形態では、解析画像は、超音波画像に直接対応する。これは、特に、病変が超音波画像上で可視である場合に当てはまる。
【0027】
特定の実施形態では、制御ユニットは、超音波画像を、病変が可視である術前又は介入前の基準画像とマージすることにより、解析画像を得るように構成される。
【0028】
実際には、超音波画像上で病変が可視でない場合(等エコー源性病変)、超音波画像上で標的点の位置を直接特定することは、不可能である。したがって、病変が可視である異なるモダリティの基準画像に超音波画像をレジストレーションするべきである。基準画像は、特に、コンピュータ断層撮影、陽電子放射断層撮影又は磁気共鳴画像法によって得られた術前又は介入前の画像であり得る。超音波画像を基準画像とマージすることにより、病変が可視である解析画像が得られる。レジストレーションは、全体的(対象の解剖学的構造全体へのレジストレーション)又は局所的(対象の解剖学的構造の特定の領域への最適化されたレジストレーション)であり得る。レジストレーションは、剛体的に(平行移動及び/又は回転により)又は非剛体的に(変形を伴って)行うことができる。レジストレーションは、特に、マージされる画像上の特定の解剖学的構造の認識に基づく自動学習アルゴリズムによって実施することができる。
【0029】
特定の実施形態では、患者マーカの放射線不透過性要素は、基準画像上で可視であり、及び制御ユニットは、超音波プローブによって超音波画像が取得された時点におけるプローブマーカの位置に対する患者マーカの位置に基づくレジストレーションにより、超音波画像を基準画像とマージするように構成される。
【0030】
特定の実施形態では、基準画像は、コンピュータ断層撮影画像、陽電子放射断層撮影画像又は磁気共鳴画像法画像である。
【0031】
特定の実施形態では、超音波プローブから受信される超音波画像は、Bモード超音波画像である。
【0032】
特定の実施形態では、制御ユニットは、超音波プローブによって取得された超音波画像を少なくとも15画像/秒の速度で受信及び処理するように構成される。
【0033】
こうした配置により、標的点の位置をリアルタイムで追跡し、その結果、ロボットアームの位置をリアルタイムで調整することを保証して、医療器具が介入を通して所望の軌道に沿って誘導されるようにすることが可能になる。
【0034】
特定の実施形態では、医療ロボットは、施術者が解析画像を見ることを可能にする表示画面を含むユーザインタフェースをさらに含む。
【0035】
特定の実施形態では、ユーザインタフェースは、表示画面上に表示された解析画像上において、標的点、及び/又は進入点、及び/又は医療器具によって横切られない解剖学的領域を施術者が特定することを可能にする入力手段を含む。
【0036】
したがって、施術者は、超音波プローブによって取得された最初の超音波画像に関連付けられた解析画像に対応する介入前画像(それは、超音波画像上で病変が可視である場合、直接超音波画像であり、そうでなければ、超音波画像の病変が可視である異なるモダリティの術前画像とのレジストレーションから得られる融合画像であり得る)上でユーザインタフェースを使用して介入を計画することができる。この最初の画像上で施術者により画定される標的点及び進入点は、次の解析画像上で制御ユニットにより自動的に特定される。標的点の追跡は、特に、いくつかの連続する超音波画像における移動を追跡する方法、「スペックル」変形分析又は人工知能アルゴリズムにより行うことができる(「スペックル」は、画像の瞬間的なテクスチャに現れ、そのテクスチャに粒状の外観を与える小さい急速に変動するスポットの集合を表す)。超音波画像上で病変が可視でない場合、解析画像上で標的点を追跡するのに役立つために、超音波画像上で可視である病変に近い解剖学的構造(例えば、血管)の移動を追跡することが有利である。
【0037】
特定の実施形態では、ユーザインタフェースは、表示画面上で解析画像を患者の身体の実際の画像と重ね合わせるための拡張現実デバイスを含む。
【0038】
拡張現実デバイスにより、移動している3次元の病変及び挿入中の医療器具の経過を患者の身体の上に重ね合わせることが可能になる。このデバイスは、例えば、患者の上方の介入テーブル上に位置決めされた画面又はさらにマスク、ヘルメット若しくは拡張現実メガネであり得る。この種のディスプレイは、施術者による患者の対象の解剖学的構造の空間的表現を容易にする。
【0039】
特定の実施形態では、制御ユニットは、超音波画像を、病変が可視である基準画像と比較し、及び超音波プローブによって取得された超音波画像が、病変が位置する解剖学的領域を含むように、超音波プローブが移動されるべき方向の指示を施術者に与えるように構成される。
【0040】
基準画像は、例えば、コンピュータ断層撮影、陽電子放射断層撮影又は磁気共鳴画像法によって得られた術前又は介入前の画像である。超音波プローブが移動されるべき方向は、例えばユーザインタフェースの表示画面上で施術者に示される。他の例によれば、超音波プローブが移動されるべき方向は、光信号若しくは超音波プローブにおけるハプティックフィードバック(振動)により又は他の拡張現実ディスプレイ上で施術者に示すことができる。
【0041】
第2の態様によれば、本発明は、上述した実施形態の任意の1つによる医療ロボットと、また医療ロボットと協働するように意図されるナビゲーションシステム及び超音波プローブとを含む医療機器に関する。
【0042】
図の概要
本発明は、非限定的な例として示すとともに、図1図15を参照して示す以下の説明を読むことでよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】医療ロボット、ナビゲーションシステム及びプローブを含む、本発明による医療機器の概略図である。
図2】医療ロボットのロボットアームの概略図である。
図3】ロボットアームの端部に取り付けられるように意図されたツールガイドの概略図である。
図4】ツールガイドの端部で医療器具を保持する装置を示すツールガイドの図である。
図5】ツールガイドの図であり、ツールガイド上の医療器具及び「ロボットマーカ」を形成する、ナビゲーションシステムによって検出可能な要素の位置決めを示す。
図6】対象の解剖学的構造の近くで患者の上に位置決めされるように意図された「患者マーカ」の概略図である。
図7】超音波プローブに取り付けられるように意図された「プローブマーカ」の概略図である。
図8】モデル化段階中(超音波画像上で病変が可視である場合)、次いで医療器具を挿入する前のロボットアームのリアルタイム制御の段階中に制御ユニットによって実施される方法の主要ステップの概略図である。
図9】施術者が画像上で標的点、及び/又は進入点、及び/又は危険領域とともに、治療パラメータも特定することを可能にするユーザインタフェースの概略図である。
図10】術前又は介入前画像(図のa)部)、超音波画像(図のb)部)及び術前又は介入前画像と超音波画像とのレジストレーションからもたらされる融合画像(図のc)部)の概略図である。
図11】術前画像又は介入前画像に基づく計画段階中、次いでモデル化段階(超音波画像上で病変が可視でない場合)中に制御ユニットによって実施される方法の主要ステップの概略図である。
図12】患者の呼吸周期中の患者マーカの推定される移動の概略図である。
図13】経時的な患者マーカの位置の追跡の概略図である。
図14】患者マーカの位置に応じた標的点の位置のモデル化に基づくロボットアームの位置のリアルタイム調整の概略図である。
図15】医療器具の挿入の段階中に制御ユニットによって実施される方法の主要ステップの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
これらの図において、図間における同一の参照符号は、同一の又は類似する要素を示す。明確にするために、別段の断りのない限り、表される要素は、必ずしも同じ縮尺ではない。
【0045】
本発明の少なくとも1つの実施形態の詳細な説明
図1は、本発明による医療ロボット10を概略的に示す。医療ロボット10は、介入テーブル21の上に位置決めされた患者20の対象の解剖学的構造に対する医学的介入中、施術者を支援するために使用される。
【0046】
例として、患者の対象の解剖学的構造内の病変を治療するために、低侵襲的に又は経皮的に行われる医学的介入が考えられる。この種の医学的介入では、一般に、対象の解剖学的構造における(例えば肝臓、肺、腎臓等における)標的解剖学的領域(病変、例えば腫瘍)に到達するために、施術者が1つ又は複数の医療器具(例えば針、プローブ、カテーテル等)を患者の体内に一定の深さまで挿入する必要がある。
【0047】
医療ロボット10は、ベース11を含む。考慮する例では、医療ロボット10のベース11には、電動車輪が備えられ、電動車輪により、医療ロボット10は、並進及び/又は回転運動によって異なる方向に移動することができる。
【0048】
医療ロボット10は、多関節ロボットアーム13をさらに含み、その一端は、ベース11に接続される。ロボットアーム13の他端には、医療器具15、例えば針、プローブ、カテーテル、電極等を誘導するように意図されたツールガイド14が固定される。したがって、医療ロボット10は、医学的介入中に医療器具15の位置決め、保持又は誘導において施術者を支援するために使用することができる。そのため、医療ロボット10は、施術者にとって第3の手として作用する。
【0049】
医療ロボット10は、ロボットアーム13の移動を制御するように構成された制御ユニット12を含む。制御ユニット12は、例えば、1つ又は複数のプロセッサ122と、ロボットアーム13を位置決めする方法の様々なステップを実施するために実行されるプログラムコード命令のセットの形態でコンピュータプログラム製品が格納されるメモリ121(磁気ハードディスク、電子メモリ、光ディスク等)とを含む。メモリ121は、この方法を実施するために使用される画像及び他の情報(特にナビゲーション情報)を記録することも可能にする。
【0050】
医療ロボット10は、ユーザインタフェース19も含み、ユーザインタフェース19は、施術者が、超音波プローブ40によって取得された超音波画像又は他の医用画像(例えば、対象の解剖学的構造の術前若しくは介入前の基準画像又は超音波画像を基準画像にレジストレーションすることから得られる融合画像)を見ることができるようにする、表示画面を含む。ユーザインタフェースは、表示画面に表示された画像上において、施術者が、標的点、及び/又は進入点、及び/又は医療器具15によって横切られない解剖学的領域を特定することができるようにする、入力手段(キーボード、マウス、タッチスクリーン等)も含むことができる。
【0051】
特定の実施形態では、ユーザインタフェースは、表示画面上で超音波画像(又は融合画像)を患者の身体の実際の画像と重ね合わせるための拡張現実デバイスを含むことができる。こうしたデバイスにより、施術者にとって対象の解剖学的構造の空間的表現が容易になる。
【0052】
医療ロボット10は、ナビゲーションシステム30及び施術者が患者の対象の解剖学的構造に位置決めする超音波プローブ40と、協働するように構成される。医療ロボット10は、ナビゲーションシステム30及び超音波プローブ40とデータを交換する、制御ユニット12に接続された通信モジュールを含む。ナビゲーションシステム30及び超音波プローブ40も各々、医療ロボット10の制御ユニット12とデータを交換する通信モジュールを含む。制御ユニット12、ナビゲーションシステム30及び超音波プローブ間で確立される通信は、有線通信又は無線通信であり得る。簡略化のために、図1には通信モジュールを示していない。
【0053】
考慮する例では、ナビゲーションシステム30は光学式ナビゲーションシステムである。ナビゲーションシステム30は、赤外放射領域で動作する立体視カメラの2つのセンサに対応する2つの光学センサ31を含む。考慮する例では、ナビゲーションシステム30は、可視光領域で動作するカメラ32をさらに含む。
【0054】
制御ユニット12は、ナビゲーションシステム30によって通信される情報から、医療ロボット10に固定されるように意図されたロボットマーカ18の位置、対象の解剖学的構造に近接して患者20の上に位置決めされるように意図された患者マーカ22の位置及び超音波プローブ40に固定されるように意図されたプローブマーカ41の位置を任意の時点で特定することができるように構成される。
【0055】
本出願において、「位置」という用語は、一般に3次元座標系である所与の基準系における物体の位置及び向きの組合せに対応する。英語の文献では、空間における物体の位置及び向きの組合せを表すために「姿勢」という用語が使用される。
【0056】
制御ユニット12は、超音波プローブ40から、超音波プローブ40が取得した超音波画像を受信するように構成される。
【0057】
超音波プローブ40から受信された超音波画像とナビゲーションシステム30から受信された情報とは、制御ユニット12が、所与の瞬間における病変の位置を患者マーカ22の位置と相関させることができるように、時間的に同期させる。
【0058】
従来、超音波プローブ40は、1つ又は複数の音波送受信素子(圧電材料、静電容量式の電子トランスデューサ)を含む。超音波プローブは、間接的な圧電効果により超音波を生成する。波が解剖学的構造にぶつかるたびに、この波の一部が、反射又は散乱(「スペックル」)によってエコーの形態で返ってくる。したがって、このエコーは、直接圧電効果により電流に変換され、その後、画像に再構成される。超音波画像の再構成は、主にプローブの送受信素子の数、大きさ及び位置(横方向及び縦方向の分解能)、放射パルスの持続時間並びにエコー時間(軸方向及び/又は深さ方向の分解能)によって決まる。したがって、受信エコーのエネルギーは、グレーレベルで符号化される。エネルギーが高いほど、対応する画像部分(ピクセル)は白くなる。このグレースケール符号化は「輝度」と呼ばれ、関連する超音波モードは「Bモード」と称される。超音波プローブ40によって生成される画像は、2次元画像又は3次元画像であり得る。好ましくは、超音波プローブ40は、少なくとも15画像/秒の頻度で生成することができる。
【0059】
考慮する例では、図2に示すように、ロボットアーム13は、6自由度を与えて、医療器具15を3次元空間の任意の位置に位置決めし及び/又は移動させることを可能にする、6つのロトイド関節131~136を含む。有利には、ロボットアーム13の関節131~135は一直線に並んでおらず、互いに対してオフセットしており、それによりロボットアーム13のより多くのあり得る構成が可能になる。各関節は、その角度位置をリアルタイムで知ることを可能にする少なくとも1つのエンコーダを含む。そのため、ロボットアーム13の構成は、関節131~136が採るパラメータ値のセット(例えば、各関節の回転角度の値)に対応する。ロトイド関節136は、ツールガイド14の主軸を中心とする回転に対応する。しかしながら、医療器具の対称軸を中心とする回転を行う必要はないことに留意されたい(医療器具を誘導し解放するために、実際には5自由度で十分である)。この追加の自由度により、冗長状況になり、ツールガイド14の所与の位置に対して無限数のロボットアーム13のあり得る構成を有することが可能になる。この冗長状況は、患者の位置又は手術室の構成に関連する制約に適応するために特に有用である。例えば、ロボットアームの構成がマーカの1つを隠す場合、医療器具15に対して同じ軌道を維持しながらロボットアーム13の別の構成を採用することが可能である。
【0060】
考慮する例では、図3に示すように、ツールガイド14は、フランジ17によってロボットアーム13に固定される。ツールガイドは、図3において点線で表す主軸145を含む。ツールガイド14は、制御ユニット12が、ツールガイド14にかかる力を特定することができるように、力センサ16に結合される。この力は、特に、施術者がロボットアーム13を手動で変位させるときに施術者によってかかる場合がある。この力は、患者の身体によって医療器具15を介してツールガイド14にかかる力に対応する場合もある。
【0061】
考慮する例では、図4及び図5に示すように、ツールガイド14は、ねじ143によってフランジ17に固定されるように意図されたベース142を有する本体141と、互いに対して移動することができる2つの部分を含む保持システム146とを含む。保持システム146は、ツールガイド14の本体141の、ベース142とは反対側の端部において、医療器具15を保持するように意図される。保持システム146の2つの可動部分は、医療器具15をロック又は解放するために、歯車、カム、逆ねじ付きねじ及び/又はリニアアクチュエータ等の駆動システムによって駆動することができる。リニアアクチュエータは、可逆的(ツールガイド14の保持システム146は、その後、制御ユニット12の指令により手動で又は自動で開くことができる)又は非可逆的(ツールガイド14の保持システム146は、制御ユニットの指令により自動的にのみ開くことができる)であり得る。ツールガイド14により、例えば、異なる直径の医療器具を誘導することが可能になる。例えば、こうしたガイドにより、直径が11~21ゲージの医療器具を誘導することが可能になる。ゲージは、針、プローブ又はカテーテル等の医療器具の外径を規定するために通常使用される測定単位である(11ゲージは2.946mmの外径に対応し、21ゲージは0.812mmの外径に対応する)。
【0062】
図4及び図5に示すように、ツールガイド14は、光学マーカ181を受けるように意図されたスタッド144を含む。有利には、ツールガイド14は、少なくとも3つの光学マーカ181を含み、ツールガイド14の位置をナビゲーションシステム30の基準系の3つの空間次元において特定することができるようにする。ツールガイド14の光学マーカ181の互いに対するそれぞれの位置は、ナビゲーションデバイス30及び/又は制御ユニット12には先験的に既知である。有利には、各光学マーカ181の幾何学的形状も先験的に既知であり得る。図5に示す例では、光学マーカ181は球形の形状である。
【0063】
ツールガイド14上に存在する光学マーカ181のセットは、ロボットマーカ18に対応する。
【0064】
少なくとも3つの光学マーカ181を使用することにより、平面を画定することが可能になり、したがって、平面に垂直なz軸と、平面内のx軸及びy軸とを有する、直接的な正規直交3次元基準系を画定することが可能になり、そのため、その基準系は直接的である。これにより、ツールガイド14を表す光学マーカ181から形成される基準系の位置及び向きを特定することが可能になる。x、y及びzの3つの軸により、6自由度、すなわち軸x、y又はzの各々に沿った並進と、これらの各軸を中心とした回転とを画定することが可能になる。
【0065】
光学マーカ181は、パッシブ又はアクティブであり得る。パッシブ光学マーカは、例えば、ナビゲーションシステム30等の別の要素によって放射された光放射を反射する。パッシブ光学マーカは、例えば、赤外線立体視カメラ(これは、例えば、Northern Digital Inc.製のPolaris(登録商標)ナビゲーションシステムで使用されるもの)で検出可能な反射球又は立体視カメラ(これは、例えば、ClaroNav製のMicronTracker(登録商標)ナビゲーションシステムで使用されるもの)で可視の白黒パターンに対応することができる。アクティブ光学マーカは、それ自体が、ナビゲーションシステム30によって検出可能な光放射、例えば赤外線を放射する。
【0066】
しかしながら、球形の光学マーカ181のセットの代わりに、3次元の特徴的な幾何学的形状を有する単一の光学マーカを使用できることに留意されたい。
【0067】
図6は、対象の解剖学的構造に近接して患者20の上に位置決めされるように意図された患者マーカ22を概略的に示す。考慮する例では、患者マーカ22は4つの光学マーカ23を含み、そのため、患者マーカ22の位置をナビゲーションシステム30の基準系の3つの空間次元において特定することができる。患者マーカ22の光学マーカ23の互いに対するそれぞれの位置は、ナビゲーションシステム30及び/又は制御ユニット12には先験的に既知である。有利には、各光学マーカ23の幾何学的形状も先験的に既知であり得る。図6に示す例では、光学マーカ23は球形の形状である。球形の形状であることにより、光放射の反射を最適化することが可能になる。ツールガイド14の光学マーカ181のアクティブ又はパッシブタイプについて上述したことは、患者基準22の光学マーカ23についても当てはまる。ここでもまた、4つの球形の光学マーカ23の代わりに、3次元の特徴的な幾何学形状を有する単一の光学マーカを使用することが考えられる。
【0068】
任意選択的に、図6に示すように、患者マーカ22は、医療撮像装置により(例えば、コンピュータ断層撮影により、磁気共鳴により、超音波により、断層撮影により、陽電子放射により等)取得された医用画像上で可視である放射線不透過性マーカ24も含むことができる。放射線不透過性マーカ24の互いに対するそれぞれの位置は、ナビゲーションデバイス30及び/又は制御ユニット12には先験的に既知である。有利には、放射線不透過性マーカ24の幾何学的形状も先験的に既知であり得る。考慮する例では、患者マーカ22は4つの放射線不透過性マーカ24を含む。放射線不透過性マーカ24は、例えば、セラミックビーズであり得る。しかしながら、4つの球形の放射線不透過性マーカ24の代わりに、3次元の特徴的な幾何学的形状を有する単一の放射線不透過性マーカを使用できることに留意されたい。
【0069】
図7は、ナビゲーションシステム30が超音波プローブ40の位置を特定することができるようにするために超音波プローブ40に固定されるように意図されたプローブマーカ41を概略的に示す。考慮する例では、プローブマーカ40は、3つの光学マーカ42を含み、そのため、プローブマーカ40の位置をナビゲーションシステム30の基準系の3つの空間次元において特定することができる。プローブマーカ40の光学マーカ42の互いに対するそれぞれの位置は、ナビゲーションシステム30及び/又は制御ユニット12には先験的に既知である。有利には、各光学マーカ42の幾何学的形状も先験的に既知であり得る。図7に示す例では、光学マーカ42は球形の形状である。球形の形状であることにより、光放射の反射を最適化することが可能になる。ツールガイド14の光学マーカ181のアクティブ又はパッシブタイプについて上述したことは、プローブ基準40の光学マーカ42についても当てはまる。ここでもまた、3つの球形の光学マーカ42の代わりに、3次元で特徴的な幾何学的形状を有する単一の光学マーカを使用することを構想することができる。
【0070】
本明細書の残りの部分では、非限定的な例として、ナビゲーションシステム30の光学センサ31及び様々な光学マーカ181、23、42は、赤外線タイプの光放射で動作するように設計されると考える。また、光学マーカ181、23、42は、パッシブマーカであると考える。光学センサ31は、赤外線を放射するように構成される。この赤外線は、様々な光学マーカ181、23、42によって光学センサ31に向けて反射される。光学センサ31は、反射された赤外線を受光するように構成される。したがって、ナビゲーションシステム30は、赤外線が前記光学センサ31と前記光学マーカ181、23、42との間を往復するのにかかる時間を測定することにより、光学マーカ181、23、42と光学センサ31との間の距離を特定することができる。各光学マーカ181、23、42と各光学センサ31との間の距離が既知であり、ロボットマーカ18上、患者マーカ22上及びプローブマーカ41上の光学マーカ181、23、42の互いに対する配置が先験的に既知であることにより、ナビゲーションシステム30の基準系におけるロボットマーカ18、患者マーカ22及びプローブマーカ41の位置を特定することができる。
【0071】
本発明は、光学ナビゲーションシステムを用いて説明されることに留意されたい。しかしながら、変形例において、光学ナビゲーションシステムの代わりに電磁ナビゲーションシステムを使用することを妨げるものは何もない。この場合、ナビゲーションシステムによって検出可能な様々な「マーカ」(患者マーカ22、ロボットマーカ18及びプローブマーカ41)は、電磁センサに対応することになり、電磁センサの位置は、生成された電磁場内でナビゲーションシステムによって特定することができる。
【0072】
考慮する例では、医療ロボット10の制御ユニット12は、ナビゲーションシステム30から、ナビゲーションシステム30の基準系におけるロボットマーカ18の現在位置に関する情報を受信するように構成される。ここで、医療ロボット10の制御ユニット12には、(関節131~136のエンコーダを介して)医療ロボット10の基準系におけるロボットマーカ18の現在位置が既知である。したがって、制御ユニット12は、ナビゲーションデバイス30の基準系における位置から医療ロボット10の基準系における位置を画定するために実行される変換を特定することができる。
【0073】
制御ユニット12は、ナビゲーションシステム30から、ナビゲーションシステム30の基準系における患者マーカ22の位置及びプローブマーカ41の位置に関する情報を受信するように構成される。したがって、制御ユニット10は、医療ロボット10の基準系における患者マーカ22の位置及びプローブマーカ41の位置を画定することができる。
【0074】
所与の時点でプローブマーカ41の位置が既知である場合、その時点で超音波プローブ40によって取得された超音波画像上の可視要素の位置を特定することができる。この可視要素は、特に、治療される病変における到達すべき標的点又は患者の皮膚における医療器具の進入点であり得る。標的点及び進入点は、医療器具15が辿る軌道を画定する。標的点の位置及び進入点の位置が既知であるとき、すなわち医療器具15が辿る軌道が画定されるとき、制御ユニットは、ロボットアーム13を、ツールガイド14が画定された軌道に沿って医療器具15を誘導することができるようにする構成に自動的に移動させることができる。
【0075】
しかしながら、上記で説明したように、患者の呼吸に関連する移動が標的点の変位を引き起こす可能性がある。したがって、医療器具15が患者の呼吸周期の所与の瞬間に辿らなければならない軌道は、呼吸周期の別の瞬間に同じではない。
【0076】
この問題を解決するために、制御ユニット12は、外科的処置に先立つモデル化段階中、患者20の少なくとも1回の呼吸周期中の患者マーカ22の移動をモデル化するように構成される。モデル化段階中、標的点の位置及び進入点の位置は、患者マーカ22の位置に相関される。したがって、患者マーカの位置に応じて標的点の位置及び進入点の位置を画定することができる。したがって、得られたモデル化により、患者マーカ22の位置から、呼吸周期の任意の瞬間に、標的点に正確に到達するために医療器具15が辿る軌道に対応する標的点の位置及び進入点の位置を画定することが可能になる。
【0077】
標的点の位置及び進入点の位置が患者マーカ22の位置の関数としてモデル化されると、ナビゲーションシステム30を用いて患者マーカ22の位置をリアルタイムで追跡することにより、患者マーカ22の位置に関連付けられた標的点の位置及び進入点の位置によって画定される軌道に沿って医療器具15が誘導されるように、ロボットアーム13が取るべき位置をリアルタイムで画定することが可能になる。このリアルタイムの追跡は、特に、医療器具15を挿入する前の誘導段階中に行うことができる。ロボットアーム13は、ロボットアームの位置が所望の軌道に沿って医療器具を誘導するように常に調整されるようにリアルタイムで移動される。
【0078】
図8は、医療器具15を挿入する前のモデル化段階中、次いでロボットアームのリアルタイム制御段階中に制御ユニット12によって実施される方法の主要ステップを概略的に表す。
【0079】
モデル化段階中、制御ユニット12は、患者20の少なくとも1回の呼吸周期中に超音波プローブ40によって取得された複数の超音波画像を受信するように構成される。したがって、モデル化段階を通して以下のステップが繰り返される。
- 超音波画像の取得201(超音波画像は、病変が可視である解析画像に対応する)、
- 超音波プローブ40によって前記超音波画像が取得された瞬間における患者マーカ22の位置及びプローブマーカ41の位置の特定202、
- 解析画像上での、病変における標的点及び患者の皮膚20における進入点の特定204(標的点及び進入点は、医療器具15のために辿られる軌道を画定する)、
- プローブマーカ41の位置からの標的点の位置及び進入点の位置の特定205、
- 前記超音波画像についてこのように特定された患者マーカ22の位置と、標的点の位置と、進入点の位置との関連付け206。
【0080】
モデル化段階の終了時、制御ユニット12は、様々な超音波画像についてこのように得られた情報に基づいて、患者の呼吸周期で考慮される瞬間とは無関係に、患者マーカ22の位置の関数として標的点の位置及び進入点の位置のモデル化207を実行するように構成される。
【0081】
次に、誘導段階中、制御ユニット12は、ロボットアーム13をリアルタイムで制御するように構成される。このため、各瞬間において、制御ユニット12によって以下のステップが実行される。
- 患者マーカ22の位置の特定301、
- モデル化を使用する、患者マーカ22の位置に関連付けられた標的点の位置及び進入点の位置の特定302、
- 医療器具15が、このように特定された標的点の位置及び進入点の位置によって画定される軌道に従ってツールガイド14によって誘導されるように、ツールガイド14の位置を調整するためのロボットアーム13の変位303。
【0082】
病変における標的点及び患者の皮膚における進入点の最初の特定は、例えば最初に第1の解析画像上で実行される。その後、いくつかの連続する解析画像における移動を追跡するアルゴリズムを実施して、例えばスペックル(波の散乱による画像上の変動するスポットの集合)の変形解析を用いて又は人工知能アルゴリズムにより、新たな解析画像ごとにその上の標的点及び進入点を特定することができる。
【0083】
標的点及び進入点の最初の特定は、グラフィカルインタフェース19を用いて施術者が行うことができる。図9は、施術者が、治療される領域50における標的点51、及び/又は患者の皮膚における進入点52、及び/又は回避すべき危険ゾーン(例えば、骨又は血管)、及び/又は治療パラメータを解析画像上で特定することができるようにする、ユーザインタフェースを示す。このステップは、機械学習アルゴリズムによるいくつかの解剖学的領域(対象の解剖学的構造、治療される病変、危険ゾーン等)のセグメンテーションによって容易にすることができる。
【0084】
別法として、標的点及び進入点の最初の特定は、人工知能アルゴリズムによって自動的に行われ得る。
【0085】
しかしながら、治療される病変が例えばその病変の性質から超音波画像上で可視でない(又はほとんど可視でない)ため、超音波画像上で可視ではないことがあり得る。この場合、病変が可視である介入前の基準画像(すなわち介入の直前又は開始時に取得された画像)又は術前画像(すなわち介入の数日前又は数週間前に取得された画像)を利用するべきである。この画像は、特に、コンピュータ断層撮影画像、陽電子放射断層撮影画像又は磁気共鳴画像法画像であり得る。基準画像は、2次元画像又は3次元画像であり得る。そのため、標的点及び進入点の最初の特定を、最初の超音波画像に対して実行する代わりに、基準画像に対して実行することができる。ここでもまた、標的点及び進入点の最初の特定は、施術者により(例えば、図9に示すグラフィカルインタフェース19を用いて)又は人工知能アルゴリズムにより自動的に行うことができる。次に、超音波プローブ40によって取得された超音波画像を、基準画像の超音波画像とのマージに対応する解析画像を形成するために、基準画像にレジストレーションすることができる。したがって、解析画像上に標的点及び進入点が可視となる。
【0086】
別法として、標的点及び進入点の最初の特定は、基準画像上で行う代わりに、最初の解析画像上で行われ得る。
【0087】
図10は、基準画像の超音波画像とのレジストレーション及びマージからもたらされる解析画像(図10のc)部)を形成するために、超音波画像(図10のb)部)をレジストレーションするための術前又は介入前の基準画像(図10のa)部)の使用を概略的に示す。治療される病変50及び標的点51は、基準画像上で可視である。考慮する例では、基準画像は、コンピュータ断層撮影によって取得される。一方、超音波画像では、治療される病変50は、ほとんど可視ではない。基準画像の超音波画像とのレジストレーションからもたらされる解析画像上では、治療される病変50及び標的点51が可視となる。
【0088】
レジストレーションは、例えば、全体的に(解剖学的構造の全体のレジストレーション)又は局所的に(対象のゾーンに最適化されたレジストレーション)、剛体的に(平行移動及び回転)又は非剛体的に(変形)、対象の解剖学的構造のコンピュータ断層撮影画像を超音波画像とレジストレーションするように訓練された自動学習アルゴリズムを用いて、制御ユニット12によって実施される。このレジストレーションからもたらされる画像は、解析画像又は融合画像と称する。
【0089】
患者マーカ22の放射線不透過性要素が基準画像上で可視である場合、剛体レジストレーションは、超音波プローブ40によって超音波画像が取得された瞬間におけるプローブマーカ41の位置に対する患者マーカ22の位置に基づくこともできる。
【0090】
図11は、超音波画像上で病変が可視でない場合、術前又は介入前の基準画像に基づく計画段階中、次いでモデル化段階中に実施される主要ステップを概略的に示す。
【0091】
計画段階は、特に、術前又は介入前の基準画像を取得するステップ101と、次に、基準画像上で標的点51及び進入点52を特定するステップ102とを含む。
【0092】
モデル化段階は、図8を参照して説明したものと実質的に同じステップを含む。モデル化段階中に受信された各超音波画像に対して、制御ユニット12は、超音波画像を基準画像とレジストレーションすることにより、解析画像を生成するステップ203を実施するようにさらに構成される。次いで、超音波画像の基準画像とのレジストレーションからもたらされるこの解析画像上で標的点及び進入点の特定204が行われる(一方、図8の場合、解析画像は、超音波画像に直接対応する)。
【0093】
超音波画像上で病変が可視でない場合、解析画像上の標的点の追跡を補助するために、病変に近く及び超音波画像上で可視である解剖学的構造(例えば、血管)の移動を追跡することが有利である場合がある。
【0094】
ステップ102は、標的点及び進入点の最初の特定が、基準画像に対して実行される代わりに、最初の解析画像に対して実行される場合、任意選択的であり得ることに留意されたい。
【0095】
解析画像上で標的点51及び進入点52が特定されると、超音波プローブ40の送受信素子の位置に対するプローブマーカ41の既知の位置により、ナビゲーションシステム30の基準系における、又は医療ロボット10の基準系における剛体レジストレーションにより、それらのそれぞれの位置を特定することができる。
【0096】
図12図14は、患者マーカ22の位置の関数として標的点51及び進入点52の位置をモデル化するステップ207を示す。
【0097】
図12は、例として、患者の数回の呼吸周期に対応する所定持続時間を記録する期間中に患者マーカ22が辿った移動の記録を示す。各点は、ナビゲーションシステム30の座標系の平面XYにおいて、時間の経過中に患者マーカ22が取った位置に対応する(患者マーカ22の移動は、医療ロボット10の基準系で表すこともできる)。この例では、患者マーカ22の移動は、主に軸54に沿って起こることが分かる。
【0098】
患者マーカ22の移動は、患者の呼吸によって引き起こされる患者の胸郭の移動を表す。マーカの移動をよりよく解釈するために、また患者の呼吸周期に類似させるために、経時的なマーカの振動的な移動を示す1次元曲線を得ることが好ましい。この1次元曲線を得る種々の方法がある。例えば、マーカの移動は、主に垂直方向であるとみなし、従ってY軸のみを考慮することが考えられる。しかしながら、この場合、マーカの移動の振幅の一部が失われる。別の例によれば、マーカの位置の主成分分析を行うことが考えられる。マーカの位置を、特に、マーカの移動の主軸54に対応する主成分に沿って表示することができる。
【0099】
図13は、記録期間中、患者マーカ22の移動を主軸54に沿って経時的に記述した曲線55を示す。軸54に沿った患者マーカ22の位置(M)を縦座標に示し、時間(t)を横座標に示す。記録期間は患者20の数回の呼吸周期を含む。
【0100】
図13に示すように、患者20の胸郭の高い位置は、呼吸周期における吸気の終了に対応する。これは、経時的な患者マーカ22の位置を記述する曲線55の最大値にも対応する。患者20の胸郭の低い位置は、呼吸周期における呼気の終了に対応する。これは患者マーカ22の位置を経時的に記述する曲線55の最小値にも対応する。
【0101】
モデル化段階中、制御ユニット12は、各解析画像について、標的点の位置、進入点の位置及び患者マーカの位置を特定する。したがって、患者マーカの位置の関数として経時的に標的点の位置及び進入点の位置をモデル化するために、これらの位置を相関させることができる。
【0102】
図14は、例として、呼吸周期の吸気期間中の患者マーカの位置(M)の関数としての標的点(C)の位置のモデル56を示す。
【0103】
患者マーカの位置に基づいて標的点の位置及び進入点の位置を経時的にモデル化することにより、医療器具15が標的点の位置及び進入点の位置によって画定される軌道に沿ってツールガイド14によって誘導されるようにツールガイド14が常に位置決めされるように、ロボットアーム13がとらなければならない構成をリアルタイムで特定することが可能になる。このロボットアーム13の位置のリアルタイム調整303は、単に、患者マーカ22の位置をリアルタイムで追跡し、患者マーカの位置の関数として標的点の位置及び進入点の位置を推定することを可能にするモデルを使用することにより、行うことができる。これにより、誘導段階中にロボットアーム13の位置をリアルタイムで調整するために超音波画像を取得する必要がなくなる。
【0104】
したがって、医療器具の挿入を進めるように呼吸周期の任意の時点で患者の呼吸を遮断することが可能になる。実際には、患者の呼吸が遮断される時点とは無関係に、ロボットアームは、所望の軌道に沿って医療器具の挿入を可能にするために正しく位置決めされる。
【0105】
介入中に患者の呼吸を遮断する必要がなくなる。実際には、モデルを用いてロボットアームを誘導する段階は、医療器具の挿入中も続けることができる。その後、ロボットアームは、医療器具を所望の軌道に沿って誘導するためにロボットアームの位置が常に調整されるように、リアルタイムで制御される。しかしながら、医療器具の挿入中は、患者の皮膚の進入点の位置は、固定され、ロボットアームの移動のための回転軸となることに留意されたい。
【0106】
誘導段階は、モデル化段階中に生成されたモデルに完全に基づいて行うことができる。したがって、誘導段階で超音波画像を取得する必要はない。
【0107】
しかしながら、医療器具の挿入に起因する標的点の変位を考慮することが有利な場合がある。標的点は、実際には、医療器具の挿入中に医療器具が辿る軌道の方向に移動する可能性がある(これは、到達すべき標的点が軟性臓器内の病変、例えば腫瘍内にある場合に特に当てはまる)。したがって、医療器具が辿る軌道を調整するために標的点の位置を推定し、この軌道に沿って医療器具を誘導するためにロボットアームの位置を推定することも可能にするモデルをリアルタイムで更新することが考えられる。
【0108】
図15は、医療器具15の挿入中の誘導段階中に制御ユニット12によって実施される方法の主要ステップを概略的に示す。制御ユニット12は、超音波プローブ40によって取得された新たな超音波画像を受信するように構成される。したがって、新たな画像ごとに以下のステップが繰り返される。
- 超音波画像の取得401、
- 超音波プローブ40によって前記超音波画像が取得された瞬間における患者マーカ22の位置及びプローブマーカ41の位置の特定402、
- 超音波画像及び基準画像からの解析画像の生成403(このステップは、病変が超音波画像で直接可視である場合、任意選択的であることに留意されたい)、
- 解析画像及びプローブマーカ41の位置からの、標的点の位置、進入点の位置及び医療器具15の位置の特定404、
- モデル化段階中に最初に生成されたモデルの更新405、
- 更新されたモデルに基づくロボットアーム13の位置の調整406。
【0109】
受信される新たな超音波画像ごとに医療器具の位置を特定することにより、挿入中の医療器具のいかなる湾曲も検出し、必要に応じてロボットアームのリアルタイム制御を適宜調整することも可能になる。
【0110】
超音波プローブ40が正しく位置決めされない場合、病変が超音波プローブの視野にない可能性がある。したがって、病変が超音波プローブの視野内に入るように超音波プローブを移動させなければならない方向に関する情報を施術者に提供できることが好都合である。
【0111】
この目的のために、制御ユニット12は、超音波画像を、病変が可視である基準画像と比較し、及び超音波プローブ40によって取得された超音波画像が、病変が位置する解剖学的領域を含むように、超音波プローブ40が移動されるべき方向の指示を施術者に与えるように構成することができる。この指示は、例えば、光インジケータ又は超音波プローブのハプティックフィードバックモジュールにより提供することができる。別法として、この指示は、グラフィカルインタフェース19を介して施術者に提供することができる。
【0112】
上記の説明は、本発明が、その様々な特徴及びそれらの利点により、設定された目的を達成することを明確に例示している。
【0113】
特に、医療ロボット10は、呼吸情報を使用して、施術者による特定の操作なしに、病変の位置を正確にリアルタイムで辿るようにツールガイド14を位置決めする。
【0114】
医療器具15の挿入中、(特に軟性臓器内の)病変は、軌道の方向に移動する可能性がある。超音波画像中の病変の位置をリアルタイムで特定し、患者マーカ22の位置と相関させることにより、ロボットアームによって挿入される医療器具15の軌道をリアルタイムで更新することができる。横方向の軌道の再調整(これは、通常、対象の解剖学的構造にとって外傷となる)は最小限になる。医療器具の挿入中の位置を追跡することにより、医療器具のいかなる湾曲も補償することができる。
【0115】
ロボットアーム13の位置のリアルタイム制御は、超音波画像を用いて行われる。したがって、介入中に患者及び医療従事者が電離放射線にさらされることはない。
【0116】
超音波画像でほとんど可視でないか又は可視でない病変を、最良の可視性を提供する画像化モダリティを用いたレジストレーションによって検出することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10a)】
図10b)】
図10c)】
図11
図12
図13
図14
図15
【誤訳訂正書】
【提出日】2024-02-14
【誤訳訂正1】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0001
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0001】
発明の分野
本発明は、1つ又は複数の医療器具を患者の対象の解剖学的構造に挿入することを含む低侵襲の医学的介入中に施術者を支援するためのロボット装置の分野に属する。特に、本発明は、医療ロボットであって、患者の対象の解剖学的構造内の病変における標的点の移動を追跡し、及び医療器具を標的点に最適に誘導するためにロボットの多関節アームの位置をリアルタイムで調整するように構成された医療ロボットに関する。標的点の移動は、特に患者の呼吸又は医療器具の挿入によって生じる可能性がある。
【誤訳訂正2】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0010
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0010】
発明の説明
本出願に開示する装置及び方法の目的は、従来技術の欠点、特に上記に示した欠点のすべて又は一部を改善することである。
【誤訳訂正3】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0011
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0011】
この目的のために、第1の態様によれば、患者の対象の解剖学的構造における病変を治療するための医学的介入中に施術者を支援するための医療ロボットが提案される。医療ロボットは、医療器具を誘導するツールガイドを遠位端に含むロボットアームを含む。医療ロボットは、ロボットアームを制御するように構成された制御ユニットも含む。医療ロボットは、ナビゲーションシステム及び施術者によって患者の対象の解剖学的構造に位置決めされる超音波プローブと協働するように構成される。制御ユニットは、ナビゲーションシステムによって通信される情報に基づいて、医療ロボットに固定されるように意図されたロボットマーカの位置、対象の解剖学的構造の付近で患者に位置決めされるように意図された患者マーカの位置及び超音波プローブに固定されるプローブマーカの位置を任意の時点で特定することができるように構成される。モデル化段階中、制御ユニットは、患者の少なくとも1回の呼吸周期中に超音波プローブによって取得された複数の超音波画像を受信し、及び前記超音波画像から、患者の呼吸周期で考慮される瞬間とは無関係に、患者マーカの位置に基づき、病変における標的点の位置及び患者の皮膚における進入点の位置を推定するためのモデルを生成するように構成される。誘導段階中、制御ユニットは、モデルにおける患者マーカの位置に関連付けられた標的点の位置及び進入点の位置によって画定される軌道に沿って医療器具を誘導するために、患者マーカの位置に基づいてロボットアームをリアルタイムで制御するように構成される。
【誤訳訂正4】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0017
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0017】
本発明により、医療器具の挿入後の軌道の横方向の再調整を最小限にすることも可能となる(こうした軌道の横方向の再調整は、一般に、医療器具が横切る臓器にとって外傷となる)。
【誤訳訂正5】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0041
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0041】
第2の態様によれば、上述した実施形態の任意の1つによる医療ロボットと、また医療ロボットと協働するように意図されるナビゲーションシステム及び超音波プローブとを含む医療機器が提案される
【誤訳訂正6】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0059
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0059】
Bモードは、対象の解剖学的構造が肝臓である場合に特に好適である。しかしながら、本発明は、他の超音波モード、例えばエラストグラフィでも使用できることに留意されたい。
【誤訳訂正7】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0070
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0070】
本明細書の残りの部分では、非限定的な例として、ナビゲーションシステム30の光学センサ31及び様々な光学マーカ181、23、42は、赤外線タイプの光放射で動作するように設計されると考える。また、光学マーカ181、23、42は、パッシブマーカであると考える。光学センサ31は、赤外線を放射するように構成される。この赤外線は、様々な光学マーカ181、23、42によって光学センサ31に向けて反射される。光学センサ31は、反射された赤外線を受光するように構成される。したがって、ナビゲーションシステム30は、赤外線が前記光学センサ31と前記光学マーカ181、23、42との間を往復するのにかかる時間を測定することにより、光学マーカ181、23、42と光学センサ31との間の距離を特定することができる。各光学マーカ181、23、42と各光学センサ31との間の距離が既知であり、ロボットマーカ18上、患者マーカ22上及びプローブマーカ41上の光学マーカ181、23、42の互いに対する配置が先験的に既知であることにより、ナビゲーションシステム30の基準系におけるロボットマーカ18、患者マーカ22及びプローブマーカ41の位置を特定することができる。赤外線による光学ナビゲーションは、医療ロボットによって支援される外科的介入の分野で既知の方法であることに留意されたい。
【誤訳訂正8】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】0112
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【0112】
上記の説明は、提示された装置及び方法が、それらの様々な特徴及びそれらの利点により、設定された目的を達成することを明確に例示している。
【国際調査報告】