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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】免疫療法剤を用いる処置の増強
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/06 20060101AFI20240621BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 41/00 20200101ALI20240621BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20240621BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 35/765 20150101ALI20240621BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 31/282 20060101ALN20240621BHJP
【FI】
A61K47/06
A61P35/00
A61P37/06
A61P17/06
A61P17/00
A61P37/02
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P1/04
A61P25/00
A61P17/14
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K47/04
A61K41/00
A61K9/50
A61K9/127
A61K9/10
A61K9/14
A61K45/06
A61K47/69
A61K39/395 U
A61K39/395 T
A61K39/00 H
A61K38/19
A61K38/17
A61K35/765
A61K31/337
A61K31/282
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023565156
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2022060431
(87)【国際公開番号】W WO2022223626
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】2105691.6
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】522467183
【氏名又は名称】アクト セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ペル・クリスティアン・ソンタム
(72)【発明者】
【氏名】スヴェイン・クヴォーレ
(72)【発明者】
【氏名】スピロス・コトポウリス
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ヨン・ヒーレイ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076AA19
4C076AA30
4C076AA64
4C076AA95
4C076CC03
4C076CC18
4C076CC20
4C076CC27
4C076CC41
4C076DD02
4C076DD16
4C076DD21
4C076DD34
4C076DD35
4C076DD49
4C076DD63
4C076DD67
4C076EE59
4C084AA11
4C084AA17
4C084AA19
4C084AA20
4C084AA24
4C084DA01
4C084DA45
4C084MA02
4C084MA05
4C084MA21
4C084MA24
4C084MA38
4C084MA43
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZA021
4C084ZA661
4C084ZA891
4C084ZA921
4C084ZA961
4C084ZB022
4C084ZB051
4C084ZB081
4C084ZB092
4C084ZB151
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA06
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB11
4C085BB12
4C085EE01
4C085EE03
4C085EE05
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
4C087AA01
4C087BC83
4C087MA02
4C087MA21
4C087MA24
4C087MA38
4C087MA43
4C087NA05
4C087NA13
4C087ZA02
4C087ZA66
4C087ZA89
4C087ZA92
4C087ZA96
4C087ZB05
4C087ZB08
4C087ZB15
4C087ZB26
4C087ZC75
4C206AA01
4C206JB16
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206NA05
4C206ZB26
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、免疫療法薬剤及びレジメンの、特に、がん及び自己免疫疾患の免疫療法処置のための、超音波媒介増強に関する。特に、本発明は、体内の関心標的領域への免疫療法剤の送達及び標的病理学的状態への活性化免疫細胞浸潤の増強における使用のための、並びに固形腫瘍及び自己免疫病理の処置のための、クラスター組成物及び医薬組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物対象の病理学的状態を処置する方法において使用するための微小気泡/微小液滴クラスター組成物であって、前記方法は、
(i)前記対象に少なくとも1つの免疫療法剤(ITA)を投与する工程、
(ii)前記対象に前記微小気泡/微小液滴クラスター組成物を投与する工程であって、
前記少なくとも1つのITAが、前記クラスター組成物とは別個に、事前に、及び/又は同時に、及び/又は事後に投与される、工程、
(iii)工程(ii)からの前記クラスター組成物の前記微小液滴の拡散性成分の位相シフトを、1~10MHzの第1の周波数及び0.1~0.4の第1のメカニカルインデックスでの前記対象内の関心領域の超音波照射によって活性化する工程、
(iv)0.4~0.6MkHzの第2の周波数及び0.1~0.3の第2のメカニカルインデックスでの超音波で更に照射する工程
を含む、微小気泡/微小液滴クラスター組成物。
【請求項2】
前記工程(ii)~(iv)が1~4回繰り返される、請求項1に規定の使用のための、請求項1に記載の微小気泡/微小液滴クラスター組成物。
【請求項3】
工程(iii)の前記照射が、工程(ii)の直後に開始され、工程(iv)の前記照射が直後に続く、請求項1又は2に規定の使用のための、請求項1に記載の微小気泡/微小液滴クラスター組成物。
【請求項4】
工程(iii)の前記照射が30~120秒間続き、続いて工程(iv)の前記照射が3~10分間続く、請求項1~3のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の微小気泡/微小液滴クラスター組成物。
【請求項5】
多剤併用処置の一部として用いられる、請求項1~4のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の微小気泡/微小液滴クラスター組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つのITAを含む1~5種の治療剤が、一定の期間にわたって同時に又は順次投与され、工程(ii)~(iv)を含む少なくとも1回の、例えば1~5回のACT処置が、同じ期間中に行われる、請求項1~5のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の微小気泡/微小液滴クラスター組成物。
【請求項7】
前記方法が、別個に、事前に、及び/若しくは同時に、及び/若しくは事後に投与されたITA及び/又は炎症性サイトカインの増強された溢出及び取込み並びに/或いは標的病理への活性化免疫細胞の増強された浸潤を促進する、請求項1~6のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の微小気泡/微小液滴クラスター組成物。
【請求項8】
広帯域又は二周波数のUSトランスデューサが、工程(iii)の活性化照射及び工程(iv)の更なる照射の両方で使用される、請求項1~7のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の微小気泡/微小液滴クラスター組成物。
【請求項9】
前記クラスターが、3~10μmの範囲、好ましくは4~9μmの範囲の平均直径を有する、請求項1~8のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の微小気泡/微小液滴クラスター組成物。
【請求項10】
サイズ範囲1~10μmのクラスターのクラスター濃度が、少なくとも2500万個/mlである、請求項1~8のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1又は9に記載の微小気泡/微小液滴クラスター組成物。
【請求項11】
前記微小気泡/微小液滴クラスターの前記微小気泡のガスが、六フッ化硫黄又はC3~6ペルフルオロカーボン又はその混合物を含む、請求項1~8のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1、9又は10に記載の微小気泡/微小液滴クラスター組成物。
【請求項12】
前記微小気泡/微小液滴クラスターの前記微小液滴の油相が、部分的又は完全にハロゲン化された炭化水素又はその混合物を含む、請求項1~8のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び9~11のいずれか一項に記載の微小気泡/微小液滴クラスター組成物。
【請求項13】
前記微小気泡が、負に荷電した界面活性剤を任意選択で添加された、リン脂質、タンパク質、又はポリマーを含む第1の安定剤を含み、前記微小液滴が、正に荷電した界面活性剤を任意選択で添加された、リン脂質、タンパク質、又はポリマーを含む第2の安定剤を含む、請求項1~8のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び9~12のいずれか一項に記載の微小気泡/微小液滴クラスター組成物。
【請求項14】
前記治療剤が、ビヒクルで製剤化されており、例えば、リポソーム、ミセル、コンジュゲート、ナノ粒子、コア架橋ポリマーミセル(CCPM)、若しくはマイクロスフェアの形態で含まれている、請求項1~8のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び9~13のいずれか一項に記載の微小気泡/微小液滴クラスター組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1つのITAが、免疫腫瘍学薬剤、モノクローナル抗体(mAb)、融合タンパク質、可溶性サイトカイン受容体、組み換えサイトカイン、小分子模倣薬、細胞療法、がんワクチン及び腫瘍溶解性ウイルスの群から選択される、請求項1~8又は14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び9~13のいずれか一項に記載の微小気泡/微小液滴クラスター組成物。
【請求項16】
前記免疫療法剤がモノクローナル抗体の群から選択される、請求項15に規定の使用のための、請求項1及び9~13のいずれか一項に記載の微小気泡/微小液滴クラスター組成物。
【請求項17】
少なくとも1つのITAを用いる前記処置が、1つ又は複数の化学療法剤を用いる処置と組み合わせられる、請求項1~8又は14~16のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び9~13のいずれか一項に記載の微小気泡/微小液滴クラスター組成物。
【請求項18】
前記1つ又は複数のITAが、CD1~CD371と命名される抗原のうちのいずれかを標的化する能力を有するITAから選択される、請求項1~8又は14~17のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び9~13のいずれか一項に記載の微小気泡/微小液滴クラスター組成物。
【請求項19】
前記ITAが、モノクローナル抗体抗PD1、抗PDL1及びCTLA4の群から選択され、且つ化学療法剤と組み合わせて用いられる、請求項1~8又は14~18のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び9~13のいずれか一項に記載の微小気泡/微小液滴クラスター組成物。
【請求項20】
前記1つ又は複数のITAが免疫チェックポイント阻害剤の群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び9~13のいずれか一項に記載の微小気泡/微小液滴クラスター組成物。
【請求項21】
前記ITA、又は前記ITAの製剤化された形態が、15,000ダルトンを超える分子量を有する、請求項1~20のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び9~13のいずれか一項に記載の微小気泡/微小液滴クラスター組成物。
【請求項22】
前記使用が、がん又は自己免疫疾患の処置のためである、請求項1及び9~13のいずれか一項に記載の微小気泡/微小液滴クラスター組成物。
【請求項23】
前記使用が、がんの、例えば、局所的な病理学的病変、固形がん、例えば、黒色腫、肉腫、前立腺がん、結腸がん、肛門がん、食道がん、胃がん、直腸がん、小腸がん、肝臓がん、膵臓がん、肺がん、腎がん、乳がん、脳がん、胆管がん、頭頸部がん若しくはリンパ腫の処置のため、又は自己免疫疾患、例えば、乾癬、狼瘡、関節リウマチ、クローン病、多発性硬化症若しくは円形脱毛症の処置のため、又は臓器移植後の拒絶を回避するためである、請求項1及び9~13のいずれか一項に記載の微小気泡/微小液滴クラスター組成物。
【請求項24】
前記クラスター組成物が、前記微小気泡/微小液滴クラスター組成物を調製する第1の成分の微小気泡と第2の成分の微小液滴とを組み合わせてから3時間の時間枠内に投与される、請求項1~23のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び9~13のいずれか一項に記載の微小気泡/微小液滴クラスター組成物。
【請求項25】
別個に、事前に、及び/若しくは同時に、及び/若しくは事後に投与された少なくとも1つの免疫療法剤(ITA)及び/又は炎症性サイトカインの溢出及び取込み並びに/或いは哺乳動物対象の標的病理への活性化免疫細胞の増強された浸潤の方法において使用するための微小気泡/微小液滴クラスター組成物であって、前記方法は、
(i)前記対象に少なくとも1つのITAを投与する工程、
(ii)前記対象に微小気泡/微小液滴クラスター組成物を投与する工程であって、前記少なくとも1つのITAが、前記クラスター組成物に対して、事前に、及び/又は同時に、及び/又は事後に投与される、工程、
(iii)工程(i)からの前記クラスター組成物の前記微小液滴の拡散性成分の位相シフトを、1~10MHzの第1の周波数及び0.1~0.4の第1のメカニカルインデックスでの前記対象内の関心領域の超音波照射によって活性化する工程、
(iv)0.4~0.6Hzの第2の周波数及び0.1~0.3の第2のメカニカルインデックスでの超音波で更に照射する工程
を含む、微小気泡/微小液滴クラスター組成物。
【請求項26】
前記方法工程及びクラスター組成物が、請求項1~24のいずれか一項に規定される通りである、請求項25に規定の使用のための、請求項25に記載の微小気泡/微小液滴クラスター組成物。
【請求項27】
哺乳動物対象へと少なくとも1つの免疫療法剤(ITA)を送達する方法であって、
(i)前記対象に少なくとも1つのITAを投与する工程、
(ii)前記対象に微小気泡/微小液滴クラスター組成物を投与する工程であって、前記少なくとも1つのITAが、クラスター組成物に対して事前に、及び/又は同時に、及び/又は事後に投与される、工程、
(iii)工程(i)からの前記クラスター組成物の前記微小液滴の拡散性成分の位相シフトを、1~10MHzの第1の周波数及び0.1~0.4の第1のメカニカルインデックスでの前記対象内の関心領域の超音波照射によって活性化する工程、
(iv)0.4~0.6Hzの第2の周波数及び0.1~0.3の第2のメカニカルインデックスでの超音波で更に照射する工程
を含む、方法。
【請求項28】
前記方法工程及びクラスター組成物が、請求項1~24のいずれか一項に規定される通りである、請求項27に記載の少なくとも1つのITAを送達するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、病理学的部位への免疫療法剤の超音波媒介標的送達、特にそのような治療剤を用いる薬物による処置に関する。したがって、本発明は、病理学的状態、例えば、がん及び自己免疫/炎症性疾患の処置のための免疫療法剤の投与のための送達及び調製に使用するためのクラスター組成物及び医薬組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
免疫療法は、免疫系を活性化又は抑制することによる疾患の処置である。免疫療法剤(ITA)の使用は、迅速に発達する新規クラスの薬剤であり、現行の薬剤の新たな用途が継続的に開発されている。免疫療法剤の異なるクラスとしては、以下のクラスが挙げられる:モノクローナル抗体(mAb)、融合タンパク質、可溶性サイトカイン受容体、組み換えサイトカイン、小分子模倣薬、細胞療法、がんワクチン及び腫瘍溶解性ウイルス。これらのうちで、mAbは、群を抜いて最も重要なクラスであり、がん及び自己免疫疾患を含む様々な病理学的状態の処置のための広範囲の承認薬を含む。
【0003】
モノクローナル抗体療法は、特定の細胞又はタンパク質に対して単一特異的に結合するmAbを用いる免疫療法の一形態である。目的は、この処置が患者の免疫系を刺激して、それらの細胞を攻撃すること、或いはmAbをT細胞調節に関与する分子に結合するために用いて、T細胞応答を遮断する阻害性経路を取り除くことができることである。これは、免疫チェックポイント療法として公知である。現在、特に腫瘍学及び自己免疫疾患の範囲内の広範囲の疾患の処置に対して、80種類超の異なるmAbがFDAにより承認されている。mAbの治療的使用は、迅速に成長するセグメントであり:2019年には、米国において最もよく売れた10種類の薬物のうちの7種類がmAbであり、ヒュミラ(Abbvie社、自己免疫疾患)、オプジーボ(BMS社、がん)及びキイトルーダ(Merck社、がん)により先導された。
【0004】
免疫腫瘍学(IO)は、疾患と闘う免疫系の天然の能力を改善する、がんを処置するための免疫系の人工的刺激である[Carter and Thurson、Immune-oncology agents for cancer therapy、The Pharmaceutical Journal、2020年5月7日]。免疫系の正常な抗体は、外部の病原体に結合するが、改変型免疫療法抗体は腫瘍抗原に結合し、免疫系が阻害又は殺傷するためにがん細胞をマーク及び特定する。IO剤は、通常の化学療法剤とは異なる様々な作用機序(MoA)を探索し、例えば、チェックポイント阻害剤は、腫瘍細胞を認識及び攻撃する身体自体の細胞傷害性T細胞を増強する。モノクローナル抗体は、現在の臨床実務におけるIO剤の最も重要なクラスを代表する。しかしながら、IOセグメントはまた、腫瘍溶解性ウイルス(例えば、タリモジン-ラヘルパレプベク)、サイトカイン(例えば、インターフェロン及びインターロイキン)及び広範囲のがんワクチンも含む。
【0005】
免疫療法はまた、自己免疫を抑制するために、且つアレルギーを処置するか又は移植臓器の拒絶を低減するためにも広く用いられる。例えば、腫瘍壊死因子α(TNF-α)の阻害剤は、疾患、例えば、関節リウマチ、炎症性腸疾患及び乾癬における炎症を低減するために慣用される。
【0006】
上首尾の薬物療法に対する前提条件は、薬物が血管コンパートメントの外側の間質組織に到達することである。病理に対する直接的作用(例えば、化学療法剤を用いる場合)に関して又は免疫細胞との相互作用に関してのいずれにも当てはまる。しかしながら、大多数の治療剤に関して、投与される薬物のうちのほんのわずかな部分のみが身体内で標的病理学的疾患領域(例えば、腫瘍)に到達し、ほとんどが健康組織により取り込まれ、その標的に到達する前に分解又は排出される。例えば、多数の化学療法レジメンに関して、投与される用量のうちの0.01%未満が標的がん性組織中に蓄積する[Kurdzielら:「Human Dosimetry and Preliminary Tumour Distribution of 18F-Fluoropaclitaxel in Healthy Volunteers and Newly Diagnosed Breast Cancer Patients Using PET/CT」、J Nucl Med.2011年9月;52(9):1339~1345頁]。全身性投与後、血管コンパートメントから間質腔への薬物の溢出が、3種類の基本的プロセスを介して起こり得る:受動拡散、対流輸送、及び血管上皮細胞を通したトランスサイトーシス。大多数の小分子薬物に関して、受動拡散が、溢出及び分布に対して群を抜いて最も重要な経路である。しかしながら、大多数のITAの生理化学的特性及び大きなサイズに起因して、受動拡散は溢出プロセスにおいて顕著な役割を果たさない。大きな分子構造又はナノサイズ構築物に依存することは大多数のITAに対して共通であり、例えば、mAbは約150,000ダルトンの分子量及び10~15nmの直径を有するが、腫瘍溶解性ウイルスは、典型的には直径50~150nmの大きな構築物である。これは、nm未満の寸法を示す1000ダルトン未満の大多数の化学療法剤の分子量とは対照的である。これらのサイズは、血管コンパートメントからの薬物の溢出を効果的に妨げ、したがって、処置の潜在的な有効性を顕著に低減させる[Ryman and Meibohm、CPT Pharmacometrics Syst Pharmacol.2017年9月;6(9):576~588頁]。したがって、血管壁は、ITAの有効な使用に対する顕著な障壁を示し、薬物溢出を増加させるための方法は、これらの薬剤の治療効果の著しい増加を導き得るであろう。
【0007】
更に、免疫腫瘍学の範囲内で、治療効果を出すのはITA自体ではなく、むしろ炎症性サイトカイン(例えば、IL-1、IL-12、IL-18、TNFα及びINFγ)及び活性化免疫細胞(例えば、活性化T細胞、例えば、CD3、CD4及びCD8陽性細胞)であり、この場合、ITAは受容体を遮断し、且つ免疫細胞が関係する病理学的細胞に対する必要な細胞傷害プロセスを開始することを可能にする。したがって、療法が機能するために、活性化免疫細胞は、活性化されて、免疫学的に「コールド」である代わりに腫瘍免疫学的に「ホット」にされた後に、病理に浸潤することができなければならない。ここで、血管障壁は、ここでもまた著しい妨害を示し、多くの場合、免疫細胞浸潤は限定され、それを増強する方法は、これらの薬剤の治療効果における顕著な増加を潜在的に導き得るであろう。
【0008】
例えば、化学療法剤と比較した毒性プロファイルにおける改善にもかかわらず、免疫療法は、不要な全身性効果及び用量制限毒性により依然として妨げられる。それらの作用機序のために、ITAは、固有であるが可変的な毒性スペクトルを伴う。最も重大な懸念は、生命を脅かす可能性がある制御されない迅速な炎症性サイトカインの産生をもたらす、免疫系の潜在的な超生理的刺激であるが、ITAはまた、一定範囲の皮膚科的、内分泌、肝臓及び胃腸毒性も示す場合がある。限られた溢出を克服するための用量の増加は、したがって、選択肢ではない。しかしながら、溢出有効性を同様に改善することができる場合、依然として治療有効性を維持し、且つ同時に、コスト及び全身性毒性を低減させる、薬物の比較的低い用量を探索することができるであろう。
【0009】
多数の免疫療法レジメンは、処置された患者集団のうちの小さな割合でのみ有効であり;一部は療法に対して良好に応答し、一部は全く応答しない場合がある。異なる遺伝子突然変異の存在及び個別の患者における様々な程度の特異的シグナル伝達経路の活性を含む、臨床的応答におけるこれらの差異に対するいくつかの考えられる理由がある。しかしながら、薬物溢出及び/又は活性化された細胞浸潤は患者ごとに異なること、並びに応答における変動性は部分的には所与の対象の間質組織中の薬物の不十分な濃度、又は病理への活性化された細胞の不十分な浸潤に起因することもまたあり得る。
【0010】
免疫療法に基づく療法に伴う著しいコストの意味合いがある。例えば、選択されたmAbを用いて非小細胞肺癌を処置する1年間の全世界的コストは、800億米ドルを超えると見積もられてきた。様々なITAに関する1年ごとの患者あたりの推定コストは、10万ポンドを超え、これは医療制度に対して顕著な圧力を加える。これらの比較的新しい標的療法を遂行するためのコストは劇的に上昇しており、多数の疾患がますます慢性状態として処置されているので、処置の継続期間もまた長くなっている。英国では、英国国立医療技術評価機構(NICE)が、新たな処置がNHSに対して費用効率が高いかどうかの決定を担う組織である。新たな療法のコストは、質調整生存年(quality-adjusted life year)(QALY)として知られる標準化された計測を用いてその臨床的有効性に関して評価される。NHSに対して費用効果が高いと見なされるためには、療法のコストは得られるQALYあたり20,000~30,000ポンド、又は終末期療法に関して50,000ポンド以下でなければならない。新規ITAは、これらの閾値をますます超過してきており、NICEによる拒絶及び患者に対するアクセスの低減をもたらしている。血管コンパートメントからの溢出を増加させ、且つ病理学的組織における薬物の分布を増強する方法の特定は、治療有効性を維持しながら、処置のコストの顕著な低減を確実にすること伴う、用量における低減に繋がり得るであろう。
【0011】
ナノ粒子、分子標的化、並びに超音波及び微小気泡媒介療法、すなわちソノポレーションを含む、局在化した病理、例えば、固形腫瘍の処置における標的化薬物送達に特異的に集中する治療オプションが、現在研究中である。過去20年間にわたって、超音波を用いる薬物送達への関心が高まっている。最近の総説に関して、Castleらを参照されたい[Castleら、Am J Physiol Heart Circ Physiol 2013年2月1日 304:H350~H357]。多数のアプローチは、組込み又は結合薬物の放出のための、及び/又は全身性に(共)投与された薬物の増強された取込みのための、医用イメージング用途のための超音波造影剤として用いられるものと同様の微小気泡の使用に基づく。ソノポレーションは、ガス微小気泡が血管系に注入され、且つ超音波(US)により刺激されて、血管障壁の透過性及び特異的位置(例えば、固形腫瘍内)での薬物の溢出を増加させる生体力学的効果を引き起こす方法論である。微小気泡は、血管内に注入され、且つin vivoでの既知の副作用を有さずに、典型的には最大1~2分間安定である、安定化された気泡(直径2~3μm)である。超音波の適用時に、これらの微小気泡は振動し、隣接する内皮/血管壁細胞と相互作用して、様々な生体力学的効果を介して開窓を形成する。これらの相互作用は、血管コンパートメントからの薬物の溢出、細胞内薬物取込みを増大させることができ、また治療剤が血管壁内だけでなく組織へとより深く浸透することを可能にする。この技術は有望であるが、ソノポレーションの真の可能性は、治療的増強ではなく、超音波イメージングのために設計及び最適化された市販の微小気泡(造影微小気泡)の使用に起因して制限される。結果として、実質的な研究が、超音波媒介標的増強療法に対して最適化された「次世代」微小気泡の開発に焦点を当てている。主な制限は、微小気泡のサイズである。小さい場合、血管コンパートメント内部で発揮することができる生体力学的効果のレベルが限定される。更に、内皮壁との物理的接触が制限され、誘導される生体力学的効果として、典型的には血管壁からの距離に伴って指数関数的に低下し、開窓を誘導する有効性が限定される。これらの制限の結果として、通常の造影微小気泡を用いるソノポレーションは、比較的高エネルギーのUS場(メカニカルインデックス、MI)の使用を必要とする。微小気泡媒介送達機構がin vivoで明らかに実証されてきたが、アプローチに対する安全性の問題を生じる、関連する生体効果がある。おそらく、微小気泡キャビテーション機構が含まれ、特に微小出血及び不可逆的な血管損傷が観察される。これらのプロセスは、血管閉鎖、すなわち血管の崩壊(一時的又は永続的)につながる可能性もあり、血流灌流、したがって、薬物の取込みを事実上停止する。
【0012】
国際公開第2015/047103号では、微小気泡/微小液滴(microdroplet)クラスター組成物を治療剤と共に投与し、標的病理に超音波照射することが、治療剤のみを単独で使用する場合と比較して、治療効果の増加をもたらし得るという超音波媒介標的送達の概念が提案されている。この概念は、音響クラスター療法(ACTソノポレーション又はACT)と呼ばれ、その後、様々な化学療法剤を用いて多様ながん性状態を処置する一連の前臨床原理証明及び概念実証研究で検討されている。例えば、van Wamelら[Acoustic Cluster Therapy enhances the therapeutic efficacy of paclitaxel and Abraxane(登録商標) for treatment of human prostate adenocarcinoma in mice、J Control Release、236(2016)15~21頁]は、標準治療である小分子化学療法レジメン薬剤と併用したACTの可能性を実証する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2015/047103号
【特許文献2】国際公開第A-9416379号
【特許文献3】国際公開第9953963号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Carter and Thurson、Immune-oncology agents for cancer therapy、The Pharmaceutical Journal、2020年5月7日
【非特許文献2】Kurdzielら:「Human Dosimetry and Preliminary Tumour Distribution of 18F-Fluoropaclitaxel in Healthy Volunteers and Newly Diagnosed Breast Cancer Patients Using PET/CT」、J Nucl Med.2011年9月;52(9):1339~1345頁]
【非特許文献3】Ryman and Meibohm、CPT Pharmacometrics Syst Pharmacol.2017年9月;6(9):576~588頁
【非特許文献4】Castleら、Am J Physiol Heart Circ Physiol 2013年2月1日 304:H350~H357
【非特許文献5】van Wamelら、Acoustic Cluster Therapy enhances the therapeutic efficacy of paclitaxel and Abraxane(登録商標) for treatment of human prostate adenocarcinoma in mice、J Control Release、236(2016)15~21頁
【非特許文献6】American Institute of Ultrasound in Medicine.、「Acoustic Output Measurement Standard for Diagnostic Ultrasound Equipment」、第1版、第2版、Laurel, MD: American Institute of Ultrasound in Medicine; 1998年、2003年
【非特許文献7】Ngら、Abstract A099: Acoustic Cluster Therapy enhances the efficacy of chemotherapeutic regimens in patient-derived xenograft mouse models for pancreatic ductal adenocarcinoma、AACR Conference on Molecular Targets and Cancer Therapeutics、Boston、2019年10月
【非特許文献8】Postema and Schmitz、「Ultrasonic bubbles in medicine: influence of the shell」、Ultrason Sonochem、2007年.14(4):438~44頁
【非特許文献9】Andersenら、「A Harmonic Dual-Frequency Transducer for Acoustic Cluster Therapy」、Ultrasound Med Biol、2019年9月;45(9):2381~2390頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記に基づいて、間質組織への取込みを増加させ、且つ/又は標的病理への活性化免疫細胞浸潤を増加させることができる、免疫療法剤を用いる処置のための新規且つ代替的な組成物及び方法に対する明らかな必要性がある。そのような組成物及び方法は、治療転帰を改善する可能性を有し、且つ全身性用量制限毒性を低減させ、且つ処置のコストを著しく低減させることも探索することができるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の簡単な概要
免疫療法剤(ITA)を用いる薬物による処置及び免疫療法の方法において使用するための、特にがん及び自己免疫疾患の処置のための組成物及び方法を提供することが、本発明の目的である。本発明は、病理学的部位へのITAの超音波媒介標的送達、及びそのような治療剤を用いる薬物による処置に関する。
【0017】
本発明者は、音響クラスター療法(ACT(登録商標))を、ITAの送達及び活性化免疫細胞浸潤の増強において用いることができることを発見した。国際公開第2015/047103号に提示されているACTは、微小気泡/微小液滴クラスター組成物が治療剤と共に投与され、標的病理の超音波照射が、治療剤のみを単独で使用する場合と比較して治療効果の増加をもたらし得る、という超音波媒介標的送達の概念である。国際公開第2015/047103号は、ACT手順の間に適用されるUS場の特徴の広範囲の説明を提供するが、本発明者は、本方法の超音波照射の周波数及び圧力を慎重に選択する特定の使用が、ACTの可能性を十分に利用して、血管障壁の増加した透過性、共投与される治療剤及び/若しくは炎症性サイトカインの増加した溢出並びに/又は活性化免疫細胞の浸潤、並びに有害作用の回避をもたらすことを、今や驚くべきことに見出した。
【0018】
実行及び計画された研究に基づいて、本出願人は、本方法の超音波照射の周波数及びメカニカルインデックスを慎重に選択するACT技術の特定の使用が、ITAを用いる処置において有用であること、及び特に、ITAを単独で用いる対象の治療と比較して、共投与されるITAの改善された治療効果をもたらすことを、今や驚くべきことに見出した。
【0019】
ITAの治療効果を増強する方法におけるこの使用のためのクラスター組成物、及び手順が、今や確認された。これは、微小気泡/微小液滴クラスターを含む投与される組成物からin vivoで大きな位相シフト気泡を生成するACT技術を用いる。局所的超音波照射と組み合わせて、このことは、別個に、事前に、及び/若しくは同時に、及び/若しくは事後に投与された治療剤並びに/又は炎症性サイトカインの増強された溢出及び取込み並びに標的病理への活性化免疫細胞の増強された浸潤を促進し、治療剤単独での使用に対する治療効果の顕著な増加をもたらす。
【0020】
更に、本発明者は、ACT技術を臨床的に関連する薬剤と組み合わせ、本発明の組成物及び方法を用いて、更に大きなITAを標的病理学的部位へと送達することができ、且つ血管コンパートメントから標的組織間質へのITAの溢出を改善することができることを確認した。
【0021】
したがって、本発明は、標的病理組織へのITAの送達を増強する方法において使用するための、微小気泡/微小液滴クラスター組成物を提供する。同様に、本発明は、対象への微小気泡/微小液滴クラスター組成物の投与を含む標的組織間質へのITAの送達を増強する方法を提供する。本開示は、クラスター中で第1の成分としての微小気泡が第2の成分としての微小液滴に物理的に結合している二成分微小気泡/微小液滴クラスター組成物を、別個に、事前に、及び/若しくは同時に、及び/若しくは事後に投与されたITAの増強された取込みを促進する方法において用いることができることを実証する。方法は、治療剤単独での使用に対する治療効果に対する可能性における顕著な増加を提供する。
【0022】
一態様では、本発明は、哺乳動物対象の病理学的状態を処置する方法において使用するための微小気泡/微小液滴クラスター組成物であって、方法は、
(i)対象に少なくとも1つの免疫療法剤(ITA)を投与する工程、
(ii)対象に微小気泡/微小液滴クラスター組成物を投与する工程であって、少なくとも1つのITAが、クラスター組成物とは別個に、事前に、及び/又は同時に、及び/又は事後に投与される、工程、
(iii)工程(i)からのクラスター組成物の微小液滴の拡散性成分の位相シフトを、1~10MHzの第1の周波数及び0.1~0.4の第1のメカニカルインデックスでの前記対象内の関心領域の超音波照射によって活性化する工程、
(iv)0.4~0.6MHzの第2の周波数及び0.1~0.3の第2のメカニカルインデックスでの超音波で更に照射する工程
を含む、微小気泡/微小液滴クラスター組成物を提供する。
【0023】
同様に、本発明は、少なくとも1つの免疫療法剤(ITA)を用いる哺乳動物対象の病理学的状態を処置する方法であって、
(i)対象に少なくとも1つの免疫療法剤(ITA)を投与する工程、
(ii)対象に微小気泡/微小液滴クラスター組成物を投与する工程であって、少なくとも1つのITAが、クラスター組成物とは別個に、事前に、及び/又は同時に、及び/又は事後に投与される、工程、
(iii)工程(i)からのクラスター組成物の微小液滴の拡散性成分の位相シフトを、1~10MHzの第1の周波数及び0.1~0.4の第1のメカニカルインデックスでの前記対象内の関心領域の超音波照射によって活性化する工程、
(iv)0.4~0.6MHzの第2の周波数及び0.1~0.3の第2のメカニカルインデックスでの超音波で更に照射する工程
を含む、方法を提供する。
【0024】
工程(iv)の更なる照射は、工程(i)で投与されたITAの溢出及び標的病理への活性化免疫細胞の浸潤を促進する。
図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、クラスターサイズ対in vivo生成物の有効性を視覚化したものであり、Y軸は、USイメージングからのグレースケール増強(すなわち、活性化後に堆積した気泡の量)についての計算された相関係数を示し、X軸は、μmでのクラスター直径を示す。
図2図2は、クラスター組成物の超音波活性化後の大きな気泡の集団の減衰スペクトルを示す。Y軸は、減衰をdB/cm単位で示す。X軸は、周波数をMHz単位で示す。
図3図3は、入射US場の様々な周波数及びメカニカルインデックス(MI)の低周波数増強照射場に対する活性化気泡の応答のモデリングからの結果を示す。静止時の気泡半径は20μmであり、入射場は、各パネルに記載されている周波数及びMIを含む8サイクルで構成された。各パネルに関して、Y軸はμmでの活性化気泡の半径を示す。X軸はμ秒での時間を示す。
図4図4は、500kHzと0、0.1、0.2、0.3及び0.4(下部パネル)のメカニカルインデックス(MI)での増強工程照射場を用いたACT処置の際の、蛍光色素(エバンスブルー)の腫瘍特異的取込みに関する結果を示す。Y軸は、mgエバンスブルー/mg腫瘍組織単位での腫瘍特異的取込みを示す。X軸は、メカニカルインデックスを示す。4つの上部パネルは、調べた様々なMIでの入射US場に対する活性化気泡の応答のモデリングの結果を示す。Y軸は、活性化気泡の半径をμm単位で示す。X軸は、時間をμ秒単位で示す。
図5図5は、マウスにおける前立腺がんの処置のためのnab-パクリタキセル(nab-PTX)±ACTの治療有効性に関する結果を示す。Y軸は、処置された全ての動物に対する全生存を%単位で示す。X軸は、試験開始後の時間を日数単位で示す。群:生理食塩水対照(灰色の点線)、nab-PTX単独(灰色の実線)、nab-PTX + 増強場500kHz(MI0.2)を用いたACT(黒色の実線)及びnab-PTX + 増強場900kHz(MI 0.2)を用いたACT(黒色の点線)。
図6図6は、マウスにおける乳がんの処置のためのnab-パクリタキセル±ACTの治療有効性の結果を示す。Y軸は、正規化された腫瘍直径(mm)を示す。X軸は、試験開始後の時間(日数)を示す。群:生理食塩水対照(黒、中抜き四角形)、nab-PTX単独(黒、中抜き円)、nab-PTX + 増強場MI0.1(500kHz)を用いたACT(灰色、中塗り円)及びnab-PTX + 増強場MI0.2(500kHz)を用いたACT(黒色、中塗り円)。
図7図7は、超音波活性化及び増強を含むACTソノポレーション手順の適用のための、実施例3の研究で使用した装置のA)設定の写真及びB)設定の略図を提供する。図7Bにおいて、数字は、以下を示す:1は二周波数超音波トランスデューサ(2.7MHz及び500kHz出力)であり、2は超音波導波路であり、3は水浴であり、4は超音波ゲルであり、5は超音波吸収パッドであり、6はクラスター組成物を含む注入シリンジであり、7はVeVoイメージング台であり、8はカテーテルであり、9は腫瘍である。
図8図8は、実施例3の研究からの結果を提供する:肝細胞癌の処置に関するACTと組み合わせたレオウイルスの治療効果。Y軸は腫瘍溶解性レオウイルス(中塗り三角形)、生理食塩水対照(中塗り四角形)及びACTと組み合わせた腫瘍溶解性レオウイルス(中塗り円)を用いるマウスにおける肝細胞癌(HCC)の処置に関する時間の関数としての腫瘍体積を示す。X軸は、処置の開始からの時間を示す。X軸の下の灰色三角形は、処置日を示す。
図9図9は、超音波活性化及び増強を含むACTソノポレーション手順の適用のための、実施例4の試験で使用した装置の設定の略図を示す。数字は、以下を示す:1- アンプ、2- シグナル発生器、3- 0.5と2.7MHzとの間のスイッチボックス、4- 二周波数トランスデューサ、5- 水を充填した円錐体、6- 水を充填したバッグ、7- 超音波ゲル、8- 伏せた姿勢のマウス、9- イヤーバー、10- 音響吸収パッド。
図10図10は、実施例4:血液脳関門を横断するナノ粒子のACT誘導送達の試験からの結果の箱ひげ図を示す。上部パネル:脳組織へのCCPMナノ粒子の取込みの近赤外線蛍光(NIRF)イメージングからの代表的な写真。ACT処置の1時間後及び24時間後の対照脳及びACT処置脳。左下パネル:Y軸は、NIRFによって測定された取込みを、ACT処置1時間後及び24時間後における対照群及びACT群の脳組織1グラムあたりの注射用量のパーセントとして示す。黒色の中塗り円は、個々の観察結果を表す。線及びアスタリスクは、t検定から得られた群間の統計的有意性(***p<0.001)を示す。右下パネル:Y軸は、共焦点顕微鏡によって測定された取込みを、ACT処置1時間後の対照群及びACT群についてのナノ粒子を含有する脳面積のパーセントとして示す。黒色の中塗り円は、個々の観察結果を表す。線及びアスタリスクは、マン=ホイットニーの順位和検定から得られた群間の統計的有意性(*p<0.05)を示す。
図11図11は、ニボルマブの30分注入、続いてイピリムマブの90分注入を含む併用レジメンによる処置中に行う可能性のあるACT処置のグラフを提供する。ACT手順は、灰色ACT(登録商標)ソノポレーションバーにより示される通り、投与中に3回適用される。パネルA:ACT手順は、a.:クラスター組成物の注射、b.:例えば60秒の通常の医用イメージング超音波照射を伴うクラスターの活性化、及びc.:例えば5分の、0.1~0.3のMIでの400~600kHzの超音波照射を伴う増強工程を含む。パネルB:y軸は、投与された治療剤の血漿濃度をピークのパーセントで示し、x軸は、時間を分単位で示す。この例では、両方の薬物を含めて関心領域全体の処置を示すために、3つのACT手順を約30分、80分、及び120分で行っている。
図12図12は、転移性扁平上皮非小細胞肺がんの処置のための、標準治療併用免疫療法+化学療法レジメン、つまり、ペムブロリズマブ、続いてパクリタキセル及びカルボプラチンを含む併用レジメンを用いた処置の間に実施される、可能性のあるACT処置のグラフを示す。パネルA:図11に詳細に示される通りのACT手順。パネルB:Y軸は、投与された治療剤の血漿濃度を、ピークのパーセント単位で示し、X軸は、時間を分単位で示す。この例では、薬物を全て含め、関心領域全体の処置を示すために、3回のACT手順を約160分、200分、及び240分で実行している。
図13図13は、IgG単独での処置と比較した、ACTがアイソタイプ抗体(IgG)と組み合わせられる場合の免疫遺伝子のみの発現としての腫瘍の免疫原性状態に対するACTの影響を示す、実施例6の研究からのボルケーノプロットを提供する。
図14図14は、IgG単独での処置と比較した、ACTがアイソタイプ抗体(IgG)と組み合わせられた場合に下方調節(A)又は上方調節(B)された経路により示される通りの実施例6の研究からのACTの遺伝学的作用を示す2つのグラフを提供する。x軸は-log10(p値)を示す。パネルA:IgG+ACTで下方調節された経路。パネルB:IgG+ACTで上方調節された経路。文字は以下を示す:GO:0001666-低酸素症に対する応答、WP4206-遺伝性平滑筋腫症及び腎細胞癌経路、GO:0001525-血管新生、GO:0051235-位置の維持、GO:0061061-筋肉構造発達、GO:0006936-筋肉収縮、GO:0097435-超分子線維構成、GO:0043462-ATPアーゼ活性の調節、GO:0030199-コラーゲン原線維構成、GO:0030239-筋原線維アセンブリ、GO:0044057-システムプロセスの調節。
図15図15は、全体染色された腫瘍切片の自動化分析からの予備的免疫組織化学的所見のプロットを提供し、実施例6を参照されたい。CD8 T細胞に関して陽性に染色される細胞の割合が、個別の動物(黒色点)に関する処置群、群平均(バー)及び標準偏差(エラーバー)により示される。x軸はA:ACT+PD1/CTL4、B:PD1/CTL4、C:ACT+ISO、D:ISO、E:生理食塩水を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の詳細な説明
定義:
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語、表記法、及び他の科学用語又は用語法は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味を有することが意図される。一部の場合、一般的に理解される意味を有する用語が、明確にするために及び/又は参照を容易にするために本明細書で定義されているが、そのような定義を本明細書に含めることは、当技術分野で一般的に理解されるものとの実質的な違いを表すとは必ずしも解釈されるべきでない。
【0027】
本明細書で使用される場合、音響クラスター療法(ACT)は、以下で更に定義されるが、少なくとも1つの治療剤と組み合わせた、クラスター組成物(以下の定義を参照)の投与と、その後の超音波の対象内の関心標的領域(例えば、腫瘍、間質組織又はリンパ節)への適用と、を含む。用語「ACT処置」又は「ACT手順」は、クラスターの投与及び照射、したがって方法の工程(ii)、(iii)及び(iv)を記述するために用いられる。
【0028】
本明細書で使用される場合、「対象」とは、処置又は治療のために選択された任意のヒト又は非ヒト動物個体を意味し、患者、特にがん又は自己免疫疾患を有する対象を包含し、これらに限定される場合もある。
【0029】
本明細書で使用される語句「治療有効量」は、任意の処置に適用可能な合理的な利益/リスク比で、対象において所望の治療効果を生み出すために有効な治療剤の量を意味する。
【0030】
「微小気泡」又は「通常の造影微小気泡」という用語は、本書において、0.2~10ミクロンの範囲の直径を有する微小気泡、典型的には2~3μmの平均直径を有する微小気泡を記述するために使用される。「通常の造影微小気泡」には、市販の製剤、例えば、Sonazoid(登録商標)(GE Healthcare社)、Optison(登録商標)(GE Healthcare社)、Sonovue(登録商標)(Bracco Spa.社)、Definity(登録商標)(Lantheus Medical Imagin社)、Micromarker(登録商標)(VisualSonics Inc.社)及びPolyson L(登録商標)(Miltenyi Biotec GmbH社)が含まれる。
【0031】
HEPS/PFB微小気泡という用語は、本書において、2mlの水を使用して、(実施例1に提供されるように)第1の成分を再構成することによって形成される微小気泡を記述するために使用される。
【0032】
用語「位相シフト気泡」、「大きな位相シフト気泡」、「大きな活性化気泡」及び「活性化気泡」は、本書において、超音波(US)がクラスター組成物の活性化を誘導した後に形成される大きな(>10μm)気泡を記述するために使用される。
【0033】
用語「微小液滴」は、本書において、0.2~10ミクロンの範囲の直径を有するエマルジョン微小液滴を記述するために使用される。
【0034】
「照射」又は「US照射」は、超音波への曝露又は超音波を用いた処置を記述するために使用される用語である。
【0035】
用語「通常の医用イメージング超音波」は、医用イメージングを意図したシェルフUSスキャナ及びプローブからの超音波、すなわち、1~10MHzの周波数と、1.9未満、好ましくは0.7未満、より好ましくは0.4未満のMIでの超音波を記述するために使用される。
【0036】
用語「堆積物トレーサー」は、本書において、活性化位相シフト気泡に関連して、組織における位相シフト気泡の局所的な堆積が、活性化気泡堆積時に組織の微小循環を流動する血液の量を反映することを、微小循環における大きな気泡の一時的な力学的捕捉が示している、という意味で使用される。したがって、捕捉された「堆積した」位相シフト気泡の数は、堆積時の組織灌流に直線的に依存する。
【0037】
「位相シフト(プロセス)」という用語は、本書において、物質の液体状態から気体状態への位相転移を記述するために使用される。具体的には、US照射に際してクラスター組成物の微小液滴の油成分の状態が液体から気体へ変化する転移(プロセス)である。
【0038】
本書において、用語「治療送達/治療剤」及び「薬物送達/薬物」はいずれも、薬物分子、ナノ粒子、及びナノ粒子送達系、並びに少なくとも1つの治療活性剤を含むリポソーム送達系の送達を含むと理解される。
【0039】
用語「第1の成分」(又は第1成分、又はC1)は、本書において、分散ガス(微小気泡)成分を記述するために使用される。用語「第2の成分」(又は第2成分、又はC2)は、本書において、拡散性成分を含む分散油相(微小液滴)成分を記述するために使用される。
【0040】
用語「クラスター組成物」は、本書において、第1の(微小気泡)成分及び第2の(微小液滴)成分の組合せ、例えば混合から生じる組成物を記述するために使用される。したがって、本明細書で更に記載する特徴を有するクラスター組成物は、対象に投与するための、及び、音響クラスター療法で使用するための用意ができている製剤化組成物を指す。
【0041】
用語「拡散性成分」は、本書において、第1の成分の微小気泡にin vivoで拡散することができ、そのサイズを一過性に増加させる第2の成分の油相の化学成分を記述するために使用される。
【0042】
本書で使用される用語「医薬組成物」は、その通常の意味を有し、特に哺乳動物への投与に適した形態にある。組成物は、好ましくは、2つの別個の組成物、つまりクラスター組成物(a)及び治療剤(b)を含み、それらはいずれも哺乳動物への、例えば、非経口注射、腹腔内注射又は筋肉内注射を介した、同じ又は異なる投与経路による投与に好適である。語句「哺乳動物への投与に好適な形態」は、滅菌され、発熱原を含まず、過度の毒性又は有害作用を生じる化合物が無く、生体適合性pH(約pH4.0~10.5)で製剤化されている組成物を意味する。そのような組成物は、生物学的流体(例えば、血液)との接触時に沈殿が生じず、生物学的に適合する賦形剤のみを含有し、好ましくは等張性であるように製剤化されている。
【0043】
用語「ソノメトリー(システム)」は、本書において、音響技術を使用して、活性化された位相シフト気泡を動的にサイズ決定及び計数するためのin vitro測定システムを指す。
【0044】
用語「反応性」は、本書において、第1の成分の微小気泡と第2の成分の微小液滴が、混合時に微小気泡/微小液滴クラスターを形成する能力を記述するために使用される。コールター計数は、C1及びC2における微小気泡及び微小液滴の濃度及びサイズ分布の定量化、並びにクラスター組成物(医薬品、DP)中の粒子の特性決定に適している。クラスター組成物の反応性(R)は、以下のように定義される;
R = (CC1 + CC2 - CDP)・100/(CC1 + CC2)
式中、CC1、CC2及びCDPは、それぞれC1、C2及びDPで観察される数濃度である。したがって、反応性は、DPのクラスター形態に含まれるC1及びC2の個々の微小気泡及び微小液滴の数の尺度である。反応性はまた、これらのクラスターの大きさ(すなわち、単一のクラスターを構成する個々の微小気泡及び微小液滴の数)とも相関する。C1、C2、DPのコールター解析から、反応性を簡単に計算することができる。
【0045】
本書における用語「微小気泡/微小液滴クラスター」又は「クラスター」は、単一の粒子の凝集した実体において、静電引力によって永続的に一緒に保持された微小気泡及び微小液滴の群を指す。本書における用語「クラスタリング」は、第1の成分の微小気泡と第2の成分の微小液滴がクラスターを形成するプロセスを指す。
【0046】
医用超音波では、音響パワーは通常、「メカニカルインデックス」(MI)によって記述される。このパラメータは、MHz(Fc)単位での超音波場の中心周波数の平方根で割られた超音波場でのピーク負圧(PNP)として定義される[American Institute of Ultrasound in Medicine.、「Acoustic Output Measurement Standard for Diagnostic Ultrasound Equipment」、第1版、第2版、Laurel, MD: American Institute of Ultrasound in Medicine; 1998年、2003年]。
【0047】
【数1】
【0048】
医用USイメージング中の定型的な要件は、1.9未満のMIを使用することである。微小気泡造影剤を使用したUSイメージング中は、有害な生物学的効果、例えば微小出血や不可逆的な血管損傷を避けるために、0.7未満のMIが推奨され、0.4未満のMIを使用することが「ベストプラクティス(best practise)」とされる。本書においてMIを参照するとき、MIは、in situ MI、つまり、標的とする関心領域に適用されるMIを反映することを理解されたい。
【0049】
用語「活性化」又は「活性化工程」は、本書におけるACT手順の文脈において、超音波(US)照射による微小気泡/微小液滴クラスターの位相シフトの誘導、すなわち、大きな活性化気泡の生成を指す。
【0050】
周波数という用語は、1秒あたりの(超音波)サイクルの数(Hz)として定義される。本明細書で使用される場合、この用語は、適用された音場の中心周波数を示す。
【0051】
用語「増強」又は「増強工程」は、本書におけるACT手順の文脈において、US照射による、大きな活性化気泡の体積振動及びそれに伴う生体力学的効果の誘導を指す。
用語「共振周波数」又は「微小気泡共振周波数」は、本書で使用される場合、無限マトリックスドメイン内の単一気泡の音響共振周波数を記述することを意味する(表面張力及び粘性減衰の影響は無視する)。共振周波数は、次のように与えられる:
【数2】
式中、aは気泡の半径であり、γは多向性係数であり、pAは周囲圧力であり、ρはマトリックスの密度である。
【0052】
用語「免疫療法剤」は、免疫応答を誘導、増強又は抑制することにより、疾患又は状態を処置することが意図される治療法に関する。この用語はまた、ある特定の疾患の文脈において、不適切な免疫応答がより適切なものへと調節される免疫応答の操作にも関する。
【0053】
用語「分子標的」は、特定の疾患の経過、例えば、病因論、進行、及び/又は薬物耐性と本質的に関連する、ヒト細胞中の分子又は分子の群として理解されるべきである。標的と称されるには、小分子、生物学的生成物、又は他の介入を標的に向かわせることにより、所望の治療効果がもたらされ、疾患の経過の変化を生じるという証拠がなければならない。本書において、分子標的は、国際免疫学会連合(IUIS)により正式に承認され、且つ世界保健機構(WHO)により認可された、ヒト白血球分化抗原(HLDA)ワークショップの現在進行中のシリーズの間に同意された通り、ヒト細胞分化分子(HCDM)審議会命名法に従って命名される。大部分は、分子標的は、本書において、HCDMにより公表される通りのそれらの分化抗原群(CD)番号により命名される。しかしながら、標的の性質を詳述する他の化学的に許容される用語もまた用いられ、例えば、CTLA-4は細胞傷害性リンパ球抗原4を示し、PD-1はプログラム細胞死タンパク質1を示す等である。
【0054】
本発明は、免疫療法剤(ITA)を用いる処置方法に使用するための、特にがん及び自己免疫疾患の処置のための、クラスター組成物を提供する。本発明は、ACT技術を使用して、微小気泡/微小液滴クラスターを含む投与医薬組成物からin vivoで大きな位相シフト気泡を生成し、これにより、別個に、事前に、及び/又は同時に、及び/又は事後に投与された治療剤の送達及び取込みが促進される。治療剤の治療効果は、微小血管系の生体力学的機構に起因して、以下で更に説明されているように、薬剤単独の投与と比較して大幅に増加する。本開示は、異なる周波数及びメカニカルインデックスでの2工程の超音波照射を含むACT技術の特定の使用が、別個に投与されるITAの増加した送達及びまた活性化免疫細胞浸潤の増強を可能にすることを実証する。活性化位相シフト気泡は、典型的な通常の造影微小気泡の体積の約1000倍(直径は10倍)である。
【0055】
本発明は、標的組織間質への少なくとも1つのITAの送達方法に使用するための、活性化免疫細胞浸潤の増強のためのクラスター組成物を提供し、方法は、投与されたクラスター組成物からin vivoでの大きな位相シフト気泡を生成するための、別個に投与されたITAの送達及び取込みを促進する位相シフト技術を含む。本発明の使用のための組成物及び方法は、別個に共投与された治療剤の治療効果を増強し、本発明の組成物を使用しない処置と比較して、改善された治療転帰を提供する。
【0056】
したがって、第1の態様では、本発明は、哺乳動物対象の病理学的状態を処置する方法において使用するための微小気泡/微小液滴クラスター組成物であって、方法は、
(i)対象に少なくとも1つの免疫療法剤(ITA)を投与する工程、
(ii)対象に微小気泡/微小液滴クラスター組成物を投与する工程であって、少なくとも1つのITAが、クラスター組成物とは別個に、事前に、及び/又は同時に、及び/又は事後に投与される、工程、
(iii)工程(i)からのクラスター組成物の微小液滴の拡散性成分の位相シフトを、1~10MHzの第1の周波数及び0.1~0.4の第1のメカニカルインデックスでの前記対象内の関心領域の超音波照射によって活性化する工程、
(iv)0.4~0.6MHzの第2の周波数及び0.1~0.3の第2のメカニカルインデックスでの超音波で更に照射する工程
を含む、微小気泡/微小液滴クラスター組成物を提供する。
【0057】
方法工程、特に工程(iv)は、工程(i)で投与されたITAの溢出及び標的病理への活性化免疫細胞の浸潤を促進する。
【0058】
一実施形態では、微小気泡/微小液滴クラスター組成物及び少なくとも1つのITAは、好ましくは別個の組成物としてこの2つを含む、医薬組成物と見なすことができる。したがって、本発明は、少なくとも1つのITAによって哺乳動物対象の病理学的状態を処置する方法において使用するための微小気泡/微小液滴クラスター組成物を含む医薬組成物であって、少なくとも1つのITAが、クラスター組成物とは別個に、事前に、及び/又は同時に、及び/又は事後に投与される、医薬組成物を提供する。
【0059】
必要とされる工程(i)~(iv)に加えて、方法は、任意選択で、超音波イメージングを使用してクラスターをイメージングして、前記対象内の処置のための関心領域を特定する工程(iib)を含むことができる。そのような工程は、工程(ii)の後であり且つ工程(iii)の前に行われるべきである。
【0060】
本発明で使用される音響クラスター療法(ACT(登録商標))技術は、超音波を適用することによって活性化される微小気泡/微小液滴クラスターを利用して、標的組織の血管系に局所的な開口部又は開窓を作ることによって、血管透過性の一時的な増加をもたらし、それによって薬物及び活性化免疫細胞が病理学的間質をよりよく透過することを可能にする、超音波媒介標的薬物送達プラットフォームである。したがって、本発明の組成物及び方法は、内皮バリア中に開窓を開け、活性化免疫細胞(例えば、T細胞)の溢出及び腫瘍内分布を改善し、且つ抗体の腫瘍内取込み及び分布を改善し、腫瘍抗原の放出を刺激することができる。van Wamel論文は、通常の小分子化学療法剤を用いる治療レジメンを増強するACTの可能性を実証した。しかしながら、この論文は、ACTを、より大きな薬物構築物、例えば、ITAと組み合わせる可能性を示すものではなく、この送達概念が特に有用であることが今や示された。更に、この論文は、自己免疫疾患の処置に対してACTを適用する可能性を記載するものではない。最後に、ACTは、標的組織への薬物分子の局所的送達を増強する概念として、現水準の技術において一貫して記載される。本発明者は、ACTが内皮バリアに開窓を開けるので、抗体の腫瘍内取込み及び分布並びに腫瘍抗原の放出の刺激を改善することに加えて、この技術はまた、活性化免疫細胞(例えば、T細胞)の溢出及び腫瘍内分布を改善するためにも適用することができることを見出した。基本的に、ACT概念は、ソノポレーションに対する通常の造影微小気泡の使用に関連する制限的な属性の大部分を解決する;
1)通常の造影微小気泡よりも約3桁大きい大型活性化気泡をin vivoで生成し、はるかに大きな生体力学的効果を奏する、
2)これらの気泡は内皮と緊密に接触し、したがって、はるかにより効果的である、及び
3)低MI US場を用いる安定なキャビテーション様式で機能的であり、慣性キャビテーションに関連する安全性の懸念及び血管損傷を回避する。
【0061】
本発明は、部分的には、いくつかの前臨床試験からの知見に基づく。実施例3では、本出願人は、肝細胞癌の処置に対する、腫瘍溶解性ウイルスの形態でのITAの治療効果を増強するACTの能力を調査した。表3において示され、図8において視覚化される結果から観察され得るように、レオウイルス単独での処置は、生理食塩水対照群と比較して、調査された用量での腫瘍増殖の顕著な阻害を示さなかった。しかしながら、同じ用量のウイルスをACT処置と組み合わせた場合、際立った著しい腫瘍阻害が観察され、ウイルス単独と比較して25日目での95%超の腫瘍体積の低減を有した。この研究は、局所的病理学的状態の処置に対する大きな構築物ITAの治療有効性を増強するACT概念の能力を実証する。
【0062】
実施例4では、本出願人は、血液脳関門(BBB)を横断する細胞傷害性ナノ粒子の送達におけるACTの能力を調査した。BBBは、循環血中の溶質が、ニューロンが存在する中枢神経系の細胞外液に非選択的に横断するのを防ぐ、高選択的な半透過性の内皮細胞の境界である。血液脳関門は、毛細血管壁の内皮細胞、毛細血管を覆う星細胞末端足、及び毛細血管基底膜に埋め込まれた周細胞によって形成される。このシステムは、受動拡散によるいくつかの選択された小分子の浸透、並びに神経機能に重要な様々な栄養素、イオン、有機アニオン、グルコース、水、及びアミノ酸の選択的かつ能動的な輸送を可能にする。血液脳関門は、脳脊髄液中への病原体の浸透、血液中の溶質及び大きな又は親水性分子の拡散を制限する一方で、小さい疎水性分子及び小さい極性分子の拡散を可能にする。血液脳関門はまた、シグナル伝達分子、抗体、及び免疫細胞等の末梢免疫因子のCNSへの浸透を制限し、したがって末梢免疫事象による損傷から脳を防護する。
【0063】
したがって、BBBは、体内で最も緊密な血管障壁を示す。損傷が無ければ、BBBは、約4~500ダルトンより大きな治療剤に対して完全に閉鎖されている。実施例4は、ナノ粒子のような大型構築物の脳組織への取込みを可能にするACTの能力を実証し、体内のいずれかの血管障壁を横断する大型ITA、例えばmAbの局所送達のためのACT概念の有用性を間接的に実証する。ナノ粒子を単独で投与する場合と比較して、ナノ粒子をACTと組み合わせた場合、脳組織への取込みにおける280~290%の増加が観察された。
【0064】
実施例2において、本出願人は、第2の照射工程(増強工程)中に適用されるUS場の属性と、適用される手順の機能に対するその影響を調査した。驚くべきことに、且つ好ましい周波数範囲が0.2~1MHzであると開示され、0.4未満のMIが提案される国際公開第2015/047103号の教示とは異なり、本出願人は、概念の機能性がこれらのパラメータに対して非常に感受性であることを見出した。これらの研究に基づいて、本出願人は、好ましい周波数範囲が0.4~0.6MHzであること、及び適用されるMIが0.1超であるが0.3未満に維持されるべきであることを見出した。増強工程である工程(iv)の間のより低い周波数及びより高いMIを用いて、本出願人は、驚くべきことに、誘導される活性化気泡振動が強すぎて、有効性の著しい損失及び血管損傷をもたらすことを見出した。一方、0.5MHz対0.9MHzを調査する比較例(図3を参照)から実証される通り、より高い周波数及びより低いMIでは、誘導される気泡振動が小さすぎるため、十分な生体力学的効果が欠如し、したがって、治療有効性が著しく低下する。
【0065】
本出願人は、ACT概念を用いる本発明の方法が、治療剤及び活性化免疫細胞の取込みを改善するために生物学的障壁を克服するための有効な方法であることを見出した。これは、このクラスの薬剤が示す薬物溢出の一般的に低い比率に起因して、免疫療法剤を用いる処置に対して特に有益であることが見出された。本発明の方法、及び特に増強工程(iv)は、工程(i)で投与されたITAの溢出及び標的病理への活性化免疫細胞の浸潤を促進する。
【0066】
したがって、投与された微小液滴-微小気泡クラスターは、異なる周波数での超音波照射を含む局所照射法によって引き起こされる。クラスターが超音波で照射(活性化)されると、振動する気泡は、付着した微小液滴の即時気化(位相シフト)を開始する。得られた拡大気泡は、in vivoで毛細血管サイズの血管内に形成されることが示され、低周波超音波によって更に刺激されて、溢出を促進し、照射された組織内の薬物及び/又は細胞透過を増加させる生体力学的効果を誘導する。処置方法は、1つの活性化工程及び1つの増強工程を含む2つの照射工程を含むべきであることが確認された。異なる超音波周波数がこれらの照射工程で使用される。活性化工程(方法の工程(iii))の間、クラスターの微小気泡は振動し、エネルギーを微小液滴に伝達して、液滴蒸発を誘導し、微小血管系に一過性に留まるように設計された大きなACT気泡を形成する。したがって、クラスターは、例えば臨床超音波イメージングシステムからの投与後に、イメージング制御下で、外部超音波エネルギーの適用によって、大きな気泡を生成するように活性化され、低い周波数での更なる照射により、生体力学的効果、溢出、及び薬物浸透の増加が誘導される。
【0067】
本発明の方法の工程が、以下で更に説明される:
投与工程i)及びii):本明細書において、「投与経路」の箇所で更に記載されているように、クラスター組成物は、前記哺乳動物対象に、非経口的に、好ましくは静脈内に投与され、治療剤は、クラスター組成物とは別個に、別個の組成物として、事前に、及び/又は同時に、及び/又は事後に投与される。
【0068】
任意選択のイメージング、工程iib): クラスターは、低MI(約0.1のクラスター活性化閾値未満)では活性化されないため、標準的な医用超音波造影剤イメージングを、例えばクラスターの活性化無しで腫瘍微小血管病理を特定するために、実行することが可能である。したがって、一実施形態では、本方法は、低MI造影剤イメージングモード(MI<0.1)を使用して、微小気泡成分、すなわち分散ガスを、クラスターの活性化無しにイメージングし、処置のための病理学的位置を特定するイメージング工程を含む。そのように、クラスターが低MI(活性化閾値未満)で活性化されないため、標準的な医用超音波造影剤イメージングが、活性化工程の前に、例えば、腫瘍微小血管病理を特定するために、実行され得る。
【0069】
活性化、工程iii): クラスターの微小気泡成分の音響共振周波数は、診断周波数範囲(1~10MHz)内にある。クラスター組成物が対象に投与されたとき、クラスターの活性化は、例えば、従来の医用超音波の腹部及び心臓適用で使用される標準的な診断超音波イメージングパルスを用いて、低~中範囲のメカニカルインデックス、すなわち、0.4未満であるが0.1超のMIで、関心領域の照射により容易になし得る。
【0070】
位相シフトの活性化は、1~10MHz、例えば、特に2~3MHzの第1の周波数での前記対象内の関心領域の超音波照射により行われる。より大きな(直径10μm以上)の活性化気泡を生成するために位相シフトするためのクラスターの活性化は、イメージングパルスを利用することにより、ミリメートル以内の空間分解能までの臨床イメージングシステムを用いて達成することができる。活性化時に、微小液滴中の油が気化し、得られた大型活性化気泡が微小血管系に一時的に堆積する。
【0071】
一実施形態では、活性化、すなわち、第1の周波数でのUS照射は、クラスター組成物の各投与の直後、例えば20秒以内に開始し、例えば60~120秒続く。一実施形態では、イメージングが行われる場合(工程iib)、これはクラスター組成物の注入前及びその間に行われ、次いで、造影剤の流入が見られた時点で、活性化時計が開始される。
【0072】
イメージングパルスを使用した医用超音波イメージング制御下での活性化は、超音波場にかけられている組織領域内のクラスターの空間的に標的化された活性化を可能にする。活性化後、生成された大きな位相シフト気泡は、そのサイズのために関心標的領域の微小血管系に一時的に捕捉される。得られた大きな位相シフト気泡は、気化されるエマルジョン微小液滴の体積の約1000倍である(直径2μmの油微小液滴から、直径20μmの気泡)。これらの大きな位相シフト気泡の散乱断面は、活性化前のクラスターに含まれるミクロンサイズの微小気泡の散乱断面よりも数桁大きい。その結果、大きな位相シフト気泡は、大量の後方散乱信号を生成し、診断イメージングシステムを用いた基本イメージングモードで容易にイメージングされる。また、大きな位相シフト気泡の共振周波数は、活性化前のクラスターに含まれる微小気泡の共振周波数よりも一桁低い(実施例2を参照)。
【0073】
増強、工程iv):この工程は、活性化工程中に用いられるよりも低い第2の周波数を使用し、ACT気泡の制御された体積振動を誘導し、それによって毛細血管壁に生体力学的な力を及ぼし、局所的に薬物送達を増強する。活性化及び堆積後の低周波超音波のこの更なる適用は、生物学的障壁を効果的に克服することによって、送達メカニズムの増強を促進し、空間的な標的組織への薬物送達の効率を高める。これらのメカニズムは、ソノポレーションのプロセス、すなわち、血管コンパートメント内の微小気泡の照射及びそれに伴う体積振動が血管障壁の透過性を増加させるプロセスを含み得る。言い換えれば、ACT手順は、内皮壁の透過性を増加させ、したがって、治療薬又は活性化免疫細胞の溢出、分布及び細胞取込みを増強する。他のメカニズム、例えば、治療効果を高めるための細胞シグナル伝達の生成、薬物透過を高める間質構造の力学的分解等も誘導され得る。
【0074】
本発明の使用のための組成物及び方法について、低周波超音波の適用による大きな活性化気泡のこの更なる照射が、治療剤又は細胞の取込みを更に高めることが理解されるであろう。そのように、大きな活性化気泡の共振周波数に近い低周波超音波の適用を使用して、力学的生体効果メカニズムを生じさせ、血管系の透過性及び/又はソノポレーション及び/又は間質中の分布及び/又はエンドサイトーシスを増強し、したがって、治療転帰を増強させ得ることが見出された。
【0075】
より大きな位相シフトの気泡の共振周波数に対応する音場の適用は、医療診断範囲のMIで比較的大きな放射振動を生じさせる。したがって、0.2~1MHz、最も好ましくは0.4~0.6MHzの範囲の低周波超音波を適用して、投与された薬物の取込みを増強し、したがって溢出を促進する生体効果メカニズムを生成することができる。驚くべきことに、実施例2で実証されるように、0.1~0.3、例えば0.2のMIを用いて、活性化気泡を照射して、例えば、実施例で使用されるように、0.4~0.6MHzの範囲内、例えば500Hzの超音波を適用することによって、増強された取込みを誘導する場合、より大きな治療上の利益が見出された。in vivoでの活性化後、活性化気泡の体積加重平均直径は約20μmであることが見出された。このサイズの遊離微小気泡の共振周波数は約0.33MHzである。しかしながら、そのような気泡の共振周波数は、微小血管に捕捉されたときにやや高いことが予想される。したがって、低周波数増強工程の最も好ましい周波数範囲は、0.4~0.6MHzである。活性化気泡の共振効果の利用は、他の技術で可能であるよりも低い音響強度及び低い周波数で、これらの生体効果の開始をよりよく制御することを可能にする。大きな位相シフト気泡がイメージング制御下で活性化され、組織微小血管系に堆積する(組織内の大きな活性化気泡の空間的標的化を可能にする)という事実は、その長時間の滞留時間と相まって、薬物送達機構のより効率的で制御された実施を可能にする。
【0076】
したがって、一実施形態では、この方法は、0.4~0.6MHzの範囲の第2の周波数で照射する増強工程(工程iv)を含む。この増強工程のためのMIは、好ましくは0.3未満で、0.1超、好ましくは0.15超である。増強工程中に適用されるMIが0.1未満である場合、生成される生体力学的効果が不十分であり、したがって、治療上の利益が大幅に低下することが予想される。増強工程中に適用されるMIが0.3超である場合、生成される生体力学的効果が強すぎ、望ましくない効果、例えば、血管損傷又は閉鎖を誘導し、治療上の利益が大幅に低下することが予想される。
【0077】
低周波数超音波による照射は、活性化工程の後に、典型的には、3~10分間、例えば約5分間続く。工程(iv)の直後に工程(iii)を開始することが好ましい。
【0078】
本発明の方法では、クラスター組成物の第2の成分の拡散性成分の位相シフトを、対象内の関心領域の超音波照射によって活性化する場合、クラスターの微小気泡が拡散性成分により拡大されて、関心領域での微小循環における一過性の捕捉に起因して関心領域に局在する拡大気泡を生じる。低周波数での更なる超音波照射(工程iv)は、投与される治療剤の溢出、及び標的病理への活性化免疫細胞の浸潤を促進する。したがって、方法は、増強された溢出並びに別個に、事前に、及び/又は同時に、及び/又は事後に投与された治療剤の取込み並びに/或いは標的病理への活性化免疫細胞の増強された浸潤を促進する。したがって、血管障壁の透過性の増加、共投与された治療剤及び/又は炎症性サイトカインの溢出の増加並びに/或いは活性化免疫細胞の浸潤が、本発明により提供される。
【0079】
したがって、本発明は更に、少なくとも1つの別個に、事前に、及び/又は同時に、及び/又は事後に投与されたITA及び/若しくは炎症性サイトカインの溢出及び取込み並びに/或いは哺乳動物対象の標的病理への活性化免疫細胞の増強された浸潤の方法に使用するための微小気泡/微小液滴クラスター組成物であって、方法は、
(i)対象に少なくとも1つの免疫療法剤(ITA)を投与する工程、
(ii)対象に微小気泡/微小液滴クラスター組成物を投与する工程であって、少なくとも1つのITAが、クラスター組成物とは別個に、事前に、及び/又は同時に、及び/又は事後に投与される、工程、
(iii)工程(i)からのクラスター組成物の微小液滴の拡散性成分の位相シフトを、1~10MHzの第1の周波数及び0.1~0.4の第1のメカニカルインデックスでの前記対象内の関心領域の超音波照射によって活性化する工程、
(iv)0.4~0.600MHzの第2の周波数及び0.1~0.3の第2のメカニカルインデックスでの超音波で更に照射する工程
を含む、微小気泡/微小液滴クラスター組成物を提供する。
【0080】
同様に、本発明は、上記の工程を含む、少なくとも1つの別個に、事前に、及び/又は同時に、及び/又は事後に投与されたITAの溢出及び取込み並びに/或いは哺乳動物対象の標的病理への活性化免疫細胞の増強された浸潤の方法を提供する。少なくとも1つのITAの溢出及び取込み、又は標的病理への活性化免疫細胞の浸潤を改善又は増強する上記の方法の工程及び実施形態は、処置を対象とする第1の態様に関して開示される通りである。
【0081】
これらの方法のいくつかの実施形態では、治療効果を出すのはITA自体ではなく、むしろ炎症性サイトカイン(例えば、IL-1、IL-12、IL-18、TNFα及びINFγ)及び/又は活性化免疫細胞(例えば、活性化T細胞、例えば、CD3、CD4及びCD8陽性細胞)であり、この場合、ITAは受容体を遮断し、且つ免疫細胞が関係する病理学的細胞に対する必要な細胞傷害プロセスを開始することを可能にする。
【0082】
クラスター組成物:
本発明の方法では、1つ以上の免疫療法剤の別個の投与に加えて、予め混合されたクラスター組成物が対象に投与される。投与されたクラスターは、超音波によって活性化することができる。クラスターの組成物は、微小気泡(第1の成分)及び微小液滴(第2の成分)の事前混合物であり、静電力によって一緒に保持された小さな微小気泡-微小液滴クラスターをもたらす。微小液滴は、典型的には、50℃未満の沸点、及び低い血液溶解性を有する油成分を含む。クラスター組成物、すなわち、第1の成分及び第2の成分の組合せは、ガス微小気泡及び油微小液滴のクラスターを含み、つまり、安定な微小気泡/微小液滴クラスターの形態の個々の微小気泡及び微小液滴の懸濁液又は分散液である。前記クラスターの定量的検出及び特性決定のための分析方法は、実施例1に記載されている。本書において、用語「クラスター」は、単一の粒子、凝集した実体において、静電引力によって永続的に一緒に保持された微小気泡及び微小液滴の群を指す。クラスター組成物中のクラスターの含有量及びサイズは、in vitroで第1の成分及び第2の成分を組み合わせた後、ある程度の時間(例えば、>3時間)にわたって本質的に安定であり、つまり、クラスターは、自発的に崩壊しないか、より大きな凝集体を形成しないか、又は自発的に活性化(位相シフト)せず、継続的な攪拌中であっても、希釈後のある程度の時間にわたって本質的に安定である。したがって、希釈及び/又は攪拌を必要とする様々な分析技術を用いて、クラスター組成物中のクラスターを検出し、特性決定することが可能である。更に、クラスター組成物の安定性は、必要な臨床手順(例えば、再構成、用量の取出し、及び投与)を行うことを可能にする。第1及び第2の成分、並びにクラスター組成物は、適正製造基準(GMP)に従って調製される。
【0083】
一実施形態では、クラスター組成物は、水性生体適合性媒体中のクラスターの懸濁液を含み、前記クラスターは、1~10μmの範囲の平均直径、及び0.9未満の円形度を有し、
(i)ガス微小気泡と、前記微小気泡を安定させるための第1の安定剤とを含む第1の成分と、
(ii)油相を含む微小液滴と、前記微小液滴を安定させるための第2の安定剤とを含む第2の成分であって、油が、そのサイズを少なくとも一時的に増加させるように前記ガス微小気泡に拡散することができる拡散性成分を含む、第2の成分とを含み、
前記第1の成分及び第2の成分の微小気泡及び微小液滴は、反対の表面電荷を有し、静電相互作用引力を介して前記クラスターを形成している。
【0084】
例えば、微小気泡成分、例えば凍結乾燥させた微小気泡成分をエマルジョンの形態の微小液滴成分と再構成することによって、第1の成分及び第2の成分を組み合わせた後(in vitro)、本発明による調製されたクラスター組成物は、その意図された使用に適した使用中の安定性を示し、投与のための適切な時間枠、例えば成分を組み合わせてから1時間超、又は好ましくは3時間超にかけて安定した特性を示す。クラスター組成物は、この時間枠内に対象に投与されるべきである。
【0085】
クラスター組成物中の各クラスターは、少なくとも1つの微小気泡及び1つの微小液滴、典型的には2~20個の個々の微小気泡/微小液滴を含み、クラスターは典型的には1~10μmの範囲の平均直径を有し、血管コンパートメント内を自由に流動することができる。それらは更に、円形度パラメータによって特徴付けられ、個々の微小気泡及び微小液滴から分離される。二次元形態(例えば、微小気泡、微小液滴、又は微小気泡/微小液滴クラスターの投影)の円形度は、その形態と同じ面積を有する円の周囲を、その形態の実際の周囲で割った比率である。したがって、完璧な円(すなわち、球形の微小気泡又は微小液滴の二次元投影)は、理論的な円形度の値が1であり、他の任意の幾何学的形状(例えば、クラスターの投影)は、円形度が1未満である。本発明の前記クラスターは、0.9未満の円形度を有する。円形度パラメータの定義は、国際公開第2015/047103号において更に示されている。
【0086】
本発明によれば、実施例に示すように、平均サイズが1~10μm、特に3~10μmの範囲であり、円形度が0.9未満で定義されるクラスターを含む組成物が特に有用であると考えられる。一実施形態では、平均クラスター直径は、3~10μm、好ましくは4~9μm、より好ましくは5~7μmの範囲である。このサイズ範囲のクラスターは、活性化前に血管系内で自由に流動し、US照射によって容易に活性化され、微小血管系、例えばがん性又は炎症組織等に一時的に堆積及び滞留するのに十分な大きさの活性化気泡を生成する。クラスター内の微小気泡は、診断周波数範囲(1~10MHz)の、すなわち活性化時の超音波エネルギーの、効率的なエネルギー伝達を可能にし、低MI(好ましくは0.4未満であるが0.1超)でのエマルジョン微小液滴の気化(位相シフト)、及び気化した液体の微小気泡への拡散、及び/又は蒸気気泡と微小気泡との間の融合を可能にする。次いで、活性化された気泡は、マトリックスガス(例えば、血液ガス)の内方拡散から更に拡大して、10μmを超えるが、40μm未満の体積加重中位径に達する。
【0087】
これらのクラスターの形成、つまり、第1の成分及び第2の成分からのクラスター組成物を投与前に調製することは、効率的な位相シフト事象の前提条件であり、それらの数及びサイズ特性は、組成物の有効性、つまり、in vivoでの大きな活性化(つまり、位相シフト)気泡の形成能力に強く関連し、in vivoでのその意図された機能性の前提条件であることが見出された。数及びサイズ特性は、様々な製剤パラメータ、例えば、限定するものではないが、第1の成分の微小気泡と第2の成分の微小液滴との間の引力の強さ(例えば、微小気泡と微小液滴との間の表面電荷の差):微小気泡と微小液滴のサイズ分布:微小気泡と微小液滴との間の比率:及び水性マトリックスの組成(例えば、pH、緩衝液濃度、イオン組成物及び強度)を通じて制御することができる。クラスター組成物が調製され、投与される場合、形成されるクラスターの平均円相当径は、好ましくは3μmより大きく、より好ましくは5~7μmの間であるが、10μm未満である。
【0088】
組み合わせた調製物(クラスター組成物)中のクラスターの濃度は、300万個/mL超、好ましくは1000万個/mL超、より好ましくは2000万個/mL超であるべきである。実施例1に示されるように、本発明による使用のためのクラスター組成物は、第1の成分及び第2の成分の混合の0~3時間後に測定して5.8~6.2μmの平均直径で40~4400万個/mLのクラスター濃度を有した。
【0089】
本出願人の国際公開第2015047103号の図11は、注入時の超音波シグナルのin vivo増強(グレースケール単位での増加として測定される)と5~10μmのクラスターの可変濃度によるクラスター組成物の活性化との間の相関を示す。観察されるGS増強のレベルは、生成されて標的組織中に保持される大きな活性化気泡の量の直接的尺度であり、溢出及び治療上の利益(すなわち、生成物の有効性)の増加に対する可能性の直接的尺度を表す。一実施形態では、投与のための組成物は、直径が5~10μmのクラスターを少なくとも300万個/mL含むべきである。本出願人の国際公開第2015047103号の図11によれば、最小値は、>150GS単位の増強、並びにある特定の最小レベルの生成物有効性及び治療上の利益を確実にする。別の実施形態では、サイズ範囲1~10μmのクラスターの濃度は、少なくとも約1000万個/mL、例えば少なくとも約2500万個/mlであるべきである。
【0090】
したがって、本発明による標的溢出組織への薬物送達及び免疫療法剤を用いる処置は、二成分微小気泡/微小液滴製剤システム(すなわち、クラスター組成物)の使用により達成され、第1の成分中の微小気泡は、静電引力を介して、投与前に第2の成分中のミクロンサイズのエマルジョン微小液滴に物理的に結合する。本発明による処置方法に使用するための組成物は、少なくとも1つのITAの改善された取込みを提供し、例えば、腫瘍体積の低減又は完全寛解を含む有益な処置をもたらす。したがって、本発明は更に、本発明の方法に使用するための、上記に開示される通りの第1の成分及び第2の成分を含む、水性生体適合性媒体中に分散された微小気泡/微小液滴クラスターの組成物の調製のための二成分製剤システムを提供する。
【0091】
直接的な作用機序、すなわち、生じた力学的及び/又は熱的生体効果は、治療剤の送達を増加させ、分布を増強するが、これらの生体力学的効果の性質は、クラスター組成物の化学的属性、すなわち、クラスターの化学組成及び特性の結果の直接的な結果であることを理解されたい。例えば、水性マトリックス中の気泡の寿命は、マトリックス中のガスの溶解度及び拡散係数に反比例し、ガスの密度に比例する。したがって、低い溶解度及び拡散性を有する重いガスから作られた気泡は、高い溶解度及び拡散性を有する軽いガスから作られた気泡よりも大きくなり、寿命が長い。一例として、5μmのペルフルオロブタンの気泡は、5μmの空気の気泡よりも、水中で500倍長く持続する。したがって、微小液滴成分の化学組成は、in vivoで活性化された気泡の寿命、したがって、誘導され得る生体力学的力のレベル、及びACT手順で達成され得る治療効果レベルを支配する。このことから、ペルフルオロ油は、第2の成分の微小液滴での使用に特に有用であり、なぜならそのようなものからのガスは、水溶性及び拡散性が非常に低く、密度が高いためである。
【0092】
本発明の組成物及び方法を、自由に流動する通常の造影微小気泡を使用する方法と比較すると、本発明の投与クラスターからin vivoで生成された大きな位相シフト微小気泡は、血管の一区域に捕捉され、活性化された気泡表面は、内皮と緊密に接触している。加えて、活性化気泡の体積は、典型的には、通常の微小気泡の1000倍である。両方の気泡タイプの共振に近い周波数(位相シフト微小気泡に関して約0.5MHz及び通常の造影剤の微小気泡に関して約3MHz)で照射された等しいメカニカルインデックス(MI)では、振動中の絶対体積変位(すなわち、奏する生体力学的な力)が、位相シフト気泡では、通常の造影微小気泡よりも3桁大きいことが示された。したがって、[Ngら、Abstract A099: Acoustic Cluster Therapy enhances the efficacy of chemotherapeutic regimens in patient-derived xenograft mouse models for pancreatic ductal adenocarcinoma、AACR Conference on Molecular Targets and Cancer Therapeutics、Boston、2019年10月]において実証される通り、位相シフト気泡の照射は、通常の造影微小気泡の照射中よりも著しく大きな効果サイズ及び浸透深度を有する、全く異なるレベルの生体力学的効果を生み出す。自由に流動する通常の造影微小気泡で観察される生体効果は、キャビテーション機構に依存している可能性が高く、微小出血や不可逆的な血管損傷等の安全性上の懸念が伴う。しかしながら、クラスターからのより大きな位相シフト気泡は、キャビテーション機構を回避しながら、より柔軟な方法(より低いMI、例えば<0.3)で振動することができるが、依然として、血管系から標的組織への薬物の取込みを高めるのに十分な力学的力を引き起こすことができる。大きな位相シフト気泡の捕捉は、堆積物トレーサーとしても機能する。これは更に、活性化されたクラスターの数の定量及び組織の灌流を可能にし、組織血管系の造影剤イメージングを可能にし、処置される組織の空間的範囲を特定する。
【0093】
投与されたクラスターの化学組成、及びクラスターの活性化中に起こるプロセスは、クラスターの効果にとって重要である。例えば、封入された油滴の化学的性質は、US照射に際して堆積する活性化気泡の量、並びにin vivoでのその寿命に影響を与える。油の物理化学的属性、例えば、蒸気圧、沸点、水溶性等は全て、堆積する活性化気泡の量と堆積が存続する時間と相関している。C4~C6ホモログのペルフルオロ炭化水素鎖では、水溶性及び蒸気圧が低下し、沸点が上昇するにつれて、活性化気泡の量及びその寿命が、鎖の長さと共に増加する。更に、活性化されたクラスターの大きな気泡が、血管系の細胞に力学的に作用し、潜在的に生化学的シグナルを生成し、治療剤の取込みの増加をもたらすことに留意されたい。
【0094】
クラスター組成物、並びにその第1の成分及び第2の成分は、制御された方法でクラスタリング及び位相シフトするように設計される。活性化気泡(in vivo)のサイズは、第1の成分及び第2の成分の異なる製剤化パラメータ並びに調製されるクラスターのサイズ特性を変更することにより、設計することができる(実施例1を参照)。
【0095】
標的組織において、超音波に、例えば、標準的な医用イメージング周波数及び強度で曝露すると、投与されたクラスター組成物の微小気泡は、音響エネルギーを、付着している油微小液滴に移し、油は、液体から気体への相転移(気化)を受けるように、蒸発の種として機能するか又は微小気泡と合流し得る。得られた気泡は、油の気化による最初の急速な膨張、続いて血液ガスの内方拡散によるより遅い膨張を受け、微小循環(メタ細動脈及び毛細血管ネットワーク)を約1分以上、好ましくは2~3分以上、最も好ましくは3~6分以上、一時的に遮断する。本発明の方法において、又は使用のための医薬組成物について、治療剤が、対象に更に投与され、例えば、クラスター組成物と共投与されるか、又は事前投与されるか、又は事後投与される。クラスターは、外部超音波エネルギーを適用することによって大きな気泡を生成するように活性化され、これらは、標的組織(例えば、腫瘍又は炎症部位)の微小血管系で捕捉される。捕捉後の低周波超音波の更なる適用は、標的組織への治療剤又は活性化免疫細胞の溢出を促進する。したがって、免疫療法剤の制限された溢出及び取込み並びに活性化免疫細胞の浸潤における既存技術の主な制限は、標的組織への治療剤又は活性化細胞のアクセシビリティが著しく増加することが見出されたように、本発明の技術によって克服することができる。大きな活性化気泡は、照射された組織の微小血管系に一時的に留まり、低パワー、低周波数の超音波を更に適用することによって、標的組織への薬物又は細胞取込みを促進する。活性化された位相シフト気泡は、典型的な微小気泡の約10倍の直径であり、以下をもたらす:
- 標的化された(すなわち、照射された)組織の微小血管系における活性化気泡の一過性の堆積/捕捉;
- 活性化気泡と内皮との間の密接な接触;
- 通常の造影微小気泡と比較して、慣性キャビテーション機構が回避され、桁違いに大きい、活性化後のUS処置中の生体力学的効果。
【0096】
上記の属性は、薬物及び免疫細胞溢出、分布及び取込みの著しい増強をもたらす。
【0097】
クラスター組成物の第1の成分:
第1の成分は、ガス微小気泡と、微小気泡を安定させるための第1の安定剤とを含む。したがって、第1の成分は、分散ガス及びガスを安定化するための材料を含む注射用水性媒体である。微小気泡は、市販されており、前臨床用途への使用が承認されている従来の超音波造影剤、例えば、Sonazoid(登録商標)、Optison(登録商標)、Definity(登録商標)又はSonovue(登録商標)、又は前臨床適用のために使用されている同様の薬剤、例えばMicromarker(登録商標)及びPolyson L(登録商標)と同様であり得る。任意の生体適合性ガスが、ガス分散体中に存在していてもよい。本明細書で使用される用語「ガス」は、通常の人体温度の37℃で、少なくとも部分的に、例えば、実質的に又は完全にガス状(蒸気を含む)形態の任意の物質(混合物を含む)を含む。したがって、ガスは、例えば、以下を含み得る:空気;窒素;酸素;二酸化炭素:水素:不活性ガス、例えば、ヘリウム、アルゴン、キセノン又はクリプトン;フッ化硫黄、例えば、六フッ化硫黄、十フッ化二硫黄又は五フッ化トリフルオロメチル硫黄;六フッ化セレン;任意にハロゲン化されたシラン、例えばメチルシラン又はジメチルシラン;低分子量炭化水素(例えば、最大7個の炭素原子を含むもの)、例えば、アルカン、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン若しくはペンタン、シクロアルカン、例えば、シクロプロパン、シクロブタン若しくはシクロペンタン、アルケン、例えば、エチレン、プロペン、プロパジエン若しくはブテン、又はアルキン、例えば、アセチレン若しくはプロピン;エーテル、例えば、ジメチルエーテル;ケトン;エステル;ハロゲン化低分子量炭化水素(例えば、最大7個の炭素原子を含むもの);又は前述のいずれかの混合物。好ましくは、ガスはハロゲン化ガスであり、より好ましくはペルフルオロ化ガスである。有利には、ハロゲン化ガス中のハロゲン原子の少なくともいくつかは、フッ素原子である。したがって、生体適合性ハロゲン化炭化水素ガスは、例えば、ブロモクロロジフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ブロモトリフルオロメタン、クロロトリフルオロメタン、クロロペンタフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、クロロトリフルオロエチレン、フルオロエチレン、エチルフルオリド、1,1-ジフルオロエタン、及びペルフルオロカーボンから選択され得る。代表的なペルフルオロカーボンとしては、ペルフルオロアルカン、例えば、ペルフルオロメタン、ペルフルオロエタン、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン(例えば、ペルフルオロ-n-ブタン、任意選択でペルフルオロ-イソ-ブタン等の他の異性体との混合物)、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン又はペルフルオロヘプタン;ペルフルオロアルケン;ペルフルオロアルキン;及びペルフルオロシクロアルカンが挙げられる。
【0098】
ペルフルオロ化ガス、例えば、六フッ化硫黄、並びにペルフルオロカーボン、例えば、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン、ペルフルオロペンタン及びペルフルオロヘキサンの使用が、そのようなガスを含む微小気泡の血流における認識された高い安定性を考慮すると、特に有利である。一実施形態では、第1の成分のガスは、フッ化硫黄及びハロゲン化低分子量炭化水素(例えば、最大7個の炭素原子を含むもの)の群から選択される。血流中に非常に安定した微小気泡を形成させる物理化学的特性を有する他のガスも同様に有用であり得る。最も好ましくは、分散ガスは、六フッ化硫黄、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン(すなわち、C3~6ペルフルオロカーボン)、窒素、空気又はその混合物を含む。更により好ましくは、分散ガスは、六フッ化硫黄、ペルフルオロプロパン、又はペルフルオロブタン、又はその混合物を含む。更により好ましくは、分散ガスはペルフルオロブタンである。
【0099】
分散ガスは、任意の都合のよい形態であってよく、例えば、ガス含有成分として、任意の適切なガス含有超音波造影剤製剤、例えば、Sonazoid(登録商標)、Optison(登録商標)、Sonovue(登録商標)若しくはDefinity(登録商標)、又は前臨床薬剤、例えばMicromarker(登録商標)若しくはPolySon L(登録商標)を使用してもよい。第1の成分はまた、微小気泡分散体を安定させるために、本書において「第1の安定剤」と呼ばれる材料も含む。そのような製剤の代表的な例としては、第1の安定剤、例えば耐合体性表面膜(例えば、ゼラチン)によって安定化された(例えば、少なくとも部分的に封入された)ガスの微小気泡、膜生成タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン等のアルブミン)、ポリマー材料(例えば、合成生分解性ポリマー、弾性界面合成ポリマー膜、微粒子生分解性ポリアルデヒド、ポリアミノ酸-多環式イミドの微粒子N-ジカルボン酸誘導体)、非重合及び非重合性壁形成材料、又は界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー界面活性剤、例えばPluronic、ポリマー界面活性剤、又はフィルム形成界面活性剤、例えばリン脂質)が挙げられる。好ましくは、分散ガスは、リン脂質、タンパク質又はポリマー安定化ガス微小気泡の形態である。したがって、一実施形態では、第1の安定剤は、リン脂質、タンパク質及びポリマーの群から選択される。特に有用な第1の安定剤は、正味の全体的な負電荷を有する分子、例えば天然に存在する(例えば、大豆又は卵黄由来)、半合成(例えば、部分的又は完全に水素化)及び合成のホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸及び/又はカルジオリピンを含むリン脂質を含む界面活性剤の群から選択される。或いは、安定化のために適用されるリン脂質は、全体的に中性電荷を保有し、負の界面活性剤、例えば脂肪酸が添加されてもよく、例えば、パルミチン酸添加ホスファチジルコリン、又は異なる電荷のリン脂質の混合物、例えば、ホスファチジルエタノールアミン及び/又はホスファチジルコリン及び/又はホスファチジン酸であってもよい。第1の安定剤について、すなわち第1の成分の微小気泡を安定化する安定剤について、様々な実施例が国際公開第2015/047103号の実施例5、及び表9及び表10で示されており、異なる賦形剤を有する様々な微小気泡製剤が試験されている。結果は、本発明で使用されるACT概念が、安定化膜の組成に関しても、多種多様な微小気泡製剤に適用可能であることを実証する。
【0100】
分散ガス成分の微小気泡のサイズは、妨害されずに肺系を通過することを容易にするために、微小気泡/微小液滴クラスター中であっても、好ましくは7μm未満、より好ましくは5μm未満、最も好ましくは3μm未満であるべきである。
【0101】
クラスター組成物の第2の成分:
第2の成分は、油相を含む微小液滴と、前記微小液滴を安定化するための第2の安定剤とを含み、油は拡散性成分を含む。この拡散性成分は、第1の成分のガス微小気泡中に、少なくとも一時的にそのサイズを増加させるように拡散することができる。第2の成分について、「拡散性成分」は、好適には、ガス/蒸気、揮発性液体、揮発性固体、又は例えば投与時に、ガス生成可能なその前駆体であり、主な要件は、成分が、分散ガス中へのガス又は蒸気分子の内方拡散を促進することができるようにin vivoで十分なガス又は蒸気圧(例えば、少なくとも50torr、好ましくは100torr超)を有するか、又は生成することができることである。「拡散性成分」は、好ましくは、適切な水性媒体中の微小液滴のエマルジョン(すなわち、安定化した懸濁液)として製剤化されるが、これは、そのような系では、拡散性成分の水相中の蒸気圧が、非常に希釈されたエマルジョンであっても、純粋な成分材料の水相中の蒸気圧と実質的に等しくなるためである。
【0102】
そのような微小液滴中の拡散性成分は、水相が適切な不凍材料を含有する場合、例えば-10℃と低い場合がある処理温度及び保管温度では、有利には液体であり、一方、体温では、気体であるか又は実質的な蒸気圧を示す。適切な化合物は、例えば、その内容が参照により本明細書に組み入れられる特許出願国際公開第A-9416379号又は同第2015/047103号中に与えられる乳化性低沸点液体の様々なリストから選択されてもよい。乳化性拡散性成分の具体例としては、脂肪族エーテル、例えばジエチルエーテル;多環式油又はアルコール、例えばメントール、樟脳又はユーカリプトール;複素環式化合物、例えばフラン又はジオキサン;飽和又は不飽和、及び直鎖状又は分枝状であり得る脂肪族炭化水素;脂環式炭化水素、例えば、シクロブタン、シクロブテン、メチルシクロプロパン又はシクロペンタン;並びに、ハロゲン化低分子量炭化水素、例えば最大7個の炭素原子を含有するハロゲン化低分子量炭化水素が挙げられる。代表的なハロゲン化炭化水素としては、ジクロロメタン、臭化メチル、1,2-ジクロロエチレン、1,1-ジクロロエタン、1-ブロモエチレン、1-クロロエチレン、臭化エチル、塩化エチル、1-クロロプロペン、3-クロロプロペン、1-クロロプロパン、2-クロロプロパン、及び塩化t-ブチルが挙げられる。有利には、ハロゲン原子の少なくとも一部がフッ素原子であり、例えば、ジクロロフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエタン、1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン、2-ブロモ-2-クロロ-1,1,1-トリフルオロエタン、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル、1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル、部分的にフッ素化されたアルカン(例えば、1H,1H,3H-ペンタフルオロプロパン等のペンタフルオロプロパン、ヘキサフルオロブタン、ノナフルオロブタン、例えば、2H-ノナフルオロ-t-ブタン、及びデカフルオロペンタン、例えば、2H,3H-デカフルオロペンタン、部分的にフッ素化されたアルケン(例えば、ヘプタフルオロペンテン、例えば、1H,1H,2H-ヘプタフルオロペンタ-1-エン、及びノナフルオロヘキセン、例えば、1H,1H,2H-ノナフルオロヘキサ-1-エン)、フッ素化エーテル(例えば、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルメチルエーテル又は2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル)であり、好ましくはペルフルオロカーボンである。ペルフルオロカーボンとしては、ペルフルオロアルカン、例えば、ペルフルオロブタン、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン(例えば、ペルフルオロ-2-メチルペンタン)、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロオクタン、ペルフルオロノナン及びペルフルオロデカン;ペルフルオロシクロアルカン、例えば、ペルフルオロシクロブタン、ペルフルオロジメチルシクロブタン、ペルフルオロシクロペンタン及びペルフルオロメチルシクロペンタン;ペルフルオロアルケン、例えばペルフルオロブテン(例えば、ペルフルオロブタ-2-エン又はペルフルオロブタ-1,3-ジエン)、ペルフルオロペンテン(例えば、ペルフルオロペンタ-1-エン)及びペルフルオロヘキセン(例えば、ペルフルオロ-2-メチルペンタ-2-エン又はペルフルオロ-4-メチルペンタ-2-エン);ペルフルオロシクロアルケン、例えばペルフルオロシクロペンテン又はペルフルオロシクロペンタジエン、並びにペルフルオロ化アルコール、例えばペルフルオロ-t-ブタノールが挙げられる。したがって、第2の成分の油(拡散性成分)は、脂肪族エーテル、複素環式化合物、脂肪族炭化水素、ハロゲン化低分子量炭化水素及びペルフルオロカーボンの群から選択され得る。一実施形態では、第2の成分の油相は、ペルフルオロカーボンを含む。
【0103】
本発明において特に有用なのは、1・10-4M未満、より好ましくは1・10-5M未満の水溶性を有する拡散性成分である。しかしながら、拡散性成分の混合物及び/又は共溶媒を使用する場合、混合物の実質的な画分は、より高い水溶性を有する化合物を含有し得ることに留意されたい。水溶性に基づいて、好適な油(拡散性成分)の例は、ペルフルオロジメチルシクロブタン、ペルフルオロメチルシロペンタン、2-(トリフルオロメチル)ペルフルオロペンタン及びペルフルオロヘキサンである。
【0104】
2つ以上の拡散性成分の混合物が、必要に応じて、本発明に従って用いられてもよいことが理解されよう。本明細書における「拡散性成分」への言及は、そのような混合物を含むと解釈されるべきである。
【0105】
第2の成分はまた、微小液滴分散体を安定させるために、本書で「第2の安定剤」と呼ばれる材料を含む。第2の安定剤は、ガス分散体を安定化するために使用される任意の材料、例えば、リン脂質、ポリマー又はタンパク質等の界面活性剤と同じでもよく、異なってもよい。任意のそのような材料の性質は、分散気相の成長速度等の要因に著しく影響を及ぼし得る。一般に、広範囲の界面活性剤が安定剤として有用であり得、有用な界面活性剤の代表的な例としては、脂肪酸(例えば、直鎖飽和又は不飽和脂肪酸、例えば、10~20個の炭素原子を含有するもの)及びその炭水化物及びトリグリセリドエステル、リン脂質(例えば、レシチン)、フッ素含有リン脂質、タンパク質(例えば、アルブミン、例えばヒト血清アルブミン等)、ポリエチレングリコール、及びポリマー、例えばブロックコポリマー界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、例えばPluronics、伸長ポリマー、例えばアシルオキシアシルポリエチレングリコール、例えば、ポリエチレングリコールメチルエーテル16-ヘキサデカノイルオキシ-ヘキサデカノエート、例えば、ポリエチレングリコール部分が2300、5000又は10000の分子量を有するもの、及びフッ素含有界面活性剤(例えば、Zonil及びFluoradの商品名で市販されているもの)が挙げられる。特に有用な界面活性剤としては、リン脂質、特に全体的に中性電荷を有する分子を含むリン脂質、例えば、ジステアロイル-sn-グリセロール-ホスホコリン(DSPC)が挙げられる。第2の成分について、様々な異なる安定剤が、微小液滴を安定させるために使用され得る。更に、適切な表面電荷を容易にするために、広範囲のイオン性、好ましくはカチオン性物質を使用し得る。
【0106】
第1の成分の微小気泡と第2の成分のエマルジョン微小液滴との間のクラスタリングを達成するための静電相互引力を容易にするために、これらは反対の表面電荷であるべきであることが理解されるであろう。したがって、第1の成分の微小気泡が負に荷電されている場合、第2の成分の微小液滴は正に荷電されるべきであり、その逆もまた同様である。好ましい実施形態では、第1の成分の微小気泡の表面電荷は負であり、第2の成分の微小液滴の表面電荷は正である。油の微小液滴について適切な表面電荷を容易にするために、カチオン性界面活性剤を安定化構造に添加してもよい。広範囲のカチオン性物質、例えば、塩基性窒素原子を有する少なくともある程度疎水性及び/又は実質的に水不溶性の化合物、例えば、第一級、第二級又は第三級アミン及びアルカロイドを使用してもよい。特に有用なカチオン性界面活性剤は、ステアリルアミンである。一実施形態では、第2の安定剤は、カチオン性界面活性剤を添加した中性リン脂質、例えばステアリルアミンを有するDSPC膜等である。
【0107】
一実施形態では、第1の安定剤及び第2の安定剤は、それぞれ独立して、リン脂質、タンパク質、ポリマー、ポリエチレングリコール、脂肪酸、正に荷電した界面活性剤、負に荷電した界面活性剤、又はその混合物を含む。特に、第1の安定剤は、負に荷電した界面活性剤を任意選択で添加された、リン脂質、タンパク質、又はポリマーを含み、第2の安定剤は、正に荷電した界面活性剤を任意選択で添加された、リン脂質、タンパク質、又はポリマーを含む。
【0108】
一実施形態では、第1の成分は、六フッ化硫黄、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン、窒素及び空気又はそれらの混合物の群から選択される分散ガスを含み、リン脂質、タンパク質及びポリマーの群から選択される第1の安定剤によって安定化されている。第2の成分は、例えば、リン脂質、ポリマー、及びタンパク質を含む、界面活性剤の群から選択される第2の安定剤で安定化された、ペルフルオロカーボン、例えば、ペルフルオロシクロアルカンの群から選択される拡散性成分を含む。より具体的には、安定剤のいずれかは、リン脂質から選択される。
【0109】
二成分製剤システムの第1の成分及び第2の成分は、微小気泡/微小液滴クラスターの組成物を調製するために、及び本発明の方法によって適切な時間枠内で使用するために、意図された使用の直前に組み合わされる。また、第1の成分及び第2の成分の混合は、成分の形態に応じて様々な方法、例えば、2つの流体成分を混合すること、乾燥粉末形態の1つの成分を流体形態の1つの成分で再構成すること、2つの乾燥形態の成分を混合した後、流体(例えば、注射用水又は緩衝液)と再構成することで達成できることが理解されるであろう。したがって、本発明の一実施形態では、本方法は、投与工程(工程ii)の前に、微小気泡/微小液滴クラスター組成物を調製する工程を含む。好ましい実施形態では、微小気泡/微小液滴クラスター組成物は、乾燥粉末形態の第1の成分(微小気泡)を、流体形態の第2の成分(微小液滴)で再構成することによって調製される。より具体的には、第1の成分を含む第1のバイアルは、滅菌された使い捨てシリンジ及び針を使用して、第2のバイアルから取り出された第2の成分で再構成される。注射器の内容物は、第1のバイアルのストッパーを通して添加され、得られたクラスター組成物は、例えば、手動混合によって均質化される。
【0110】
また他の成分が、混合時にクラスターを形成する微小気泡及び微小液滴の能力、例えば、限定されないが、微小気泡/微小液滴の表面電荷のレベル、2つの成分中の微小気泡/微小液滴の濃度、微小気泡/微小液滴のサイズ、液体マトリックス中のイオンの組成及び濃度、pH、賦形剤(例えば、緩衝成分又は張力成分)の組成及び濃度等に影響を及ぼし得ることが理解されるであろう(国際公開第2015/047103号、実施例1を参照されたい)。そのような成分及び組成物の特徴はまた、生成されたクラスターのサイズ及び安定性(in vitro及びin vivoの両方)に影響を及ぼす可能性があり、生物学的属性(例えば、有効性及び安全性プロファイル)に影響を及ぼす重要な要因であり得る。また、クラスター組成物中の全ての微小気泡/微小液滴がクラスター形態で存在し得るわけではなく、微小気泡及び/又は微小液滴の実質的な部分が、微小気泡/微小液滴クラスターの集団と一緒に、遊離(非クラスター)形態で存在し得ることも理解される。加えて、2つの成分が混合される方法は、これらの態様、例えば、限定されないが、均質化中に加えられるせん断応力(例えば、穏やかな手動均質化又は強力な機械的均質化)及び均質化のための時間範囲に影響を及ぼし得る。クラスター組成物は、クラスターの特性が実質的に変化しない時間枠内、例えば2つの成分の組合せから5時間以内、例えば3時間以内に対象に投与されるべきである。本出願人の使用安定性試験では、クラスターが少なくとも3時間、安定した特性を示すことが示されている。実施例1を参照されたい。
【0111】
静脈内注射に対して意図されるエマルジョン中の分散した拡散性成分の微小液滴サイズは、妨害されずに肺系を通過することを容易にするが、依然として、微小血管系での活性化気泡の保持に対して十分な体積を維持するために、好ましくは7μm未満、より好ましくは5μm未満、最も好ましくは4μm未満、且つ0.5μm超、より好ましくは1μm超、最も好ましくは2μm超であるべきである。
【0112】
in vivoでの分散気相の成長は、例えば、いずれかの封入性材料の拡張(これが十分な柔軟性を有する場合)及び/又は成長する気液界面への投与された材料からの過剰な界面活性剤の抽出を伴い得る。しかしながら、封入性材料の伸長及び/又は超音波との材料の相互作用が、実質的にその多孔性を増加させ得ることも可能である。封入性材料のそのような破壊が、これまでに、多くの場合に、それにより曝露されたガスの外向きの拡散及び溶解を通してエコー輝度の迅速な低下をもたらすことが見出されているが、本発明者は、本発明に従って組成物を用いる場合、曝露されたガスが実質的な安定性を示すことを見出した。理論計算に拘泥することを望むものではないが、本発明者は、例えば、遊離微小気泡の形態での曝露されたガスが、微小気泡ガスの外向きの拡散傾向に対抗するための内向きの圧力勾配を提供する、拡散性成分により生成される過飽和環境により、例えば、微小気泡の崩壊に対して安定化され得ると考える。封入性材料が実質的に無いことにより、曝露されたガス表面は、活性化気泡に、典型的な診断イメージング周波数で、高い後方散乱及び低いエネルギー吸収(例えば、高い後方散乱:減衰比により表される通り)により明らかである通りの例外的に好ましい音響特定を示させ得る:このエコー発生効果(echogenic effect)は、超音波照射を続ける間でさえも、著しい時間にわたって継続し得る。
【0113】
標的組織へのITA及び/又は活性化免疫細胞の送達のためのACT概念、すなわち、本発明の使用のための組成物及び方法は、成分(第1の成分及び第2の成分)の広範囲の組合せに対して、及びまた任意選択で化学療法剤と組み合わせた広範囲の免疫療法剤に対して当てはまる概念であることが想定される。したがって、ガス及び第1の安定剤をはじめとする第1の成分に関して列挙された成分のうちのいずれかを、拡散性成分及び第2の安定剤をはじめとする第2の成分に関して列挙された成分と組み合わせることができる。
【0114】
要約すると、一実施形態では、本発明の方法による使用のための、微小気泡/微小液滴クラスター組成物の調製のための二成分製剤システムは、
(i)ガス微小気泡と、前記微小気泡を安定させるための第1の安定剤とを含む第1の成分であって、ガス微小気泡のガスは、ハロゲン化ガスの群から選択され、好ましくはペルフルオロ化ガスであり、より好ましくはペルフルオロブタンであり;且つ第1の安定剤は、負に荷電した界面活性剤を任意選択で添加された、リン脂質、タンパク質及びポリマーの群から選択され、より好ましくはリン脂質であり、最も好ましくは水素化卵ホスファチジルセリンナトリウム(HEPS-Na)である、第1の成分と、
(ii)油相を含む微小液滴と、前記微小液滴を安定させるための第2の安定剤とを含む第2の成分であって、油が、そのサイズを少なくとも一時的に増加させるように前記ガス微小気泡に拡散することができる拡散性成分を含み、油は、脂肪族エーテル、複素環式化合物、脂肪族炭化水素、ハロゲン化低分子量炭化水素及びペルフルオロカーボンの群から選択され、好ましくはペルフルオロカーボンであり、最も好ましくはペルフルオロメチル-シクロペンタン(pFMCP)であり;第2の安定剤は、正に荷電した界面活性剤を任意選択で添加された、リン脂質、ポリマー及びタンパク質の群から選択され、より好ましくは正に荷電した界面活性剤を添加されたリン脂質であり、最も好ましくはステアリルアミン(SA)添加1,2-ジステアロイル-sn-グリセロール-3-ホスホコリン(DSPC)である、第2の成分と
を含み、前記第1の成分及び第2の成分の微小気泡及び微小液滴は、反対の表面電荷を有し、静電相互作用引力を介して前記クラスターを形成している。
【0115】
治療剤:
本発明の使用のための「薬物」又は「薬物群」とも呼ばれる治療剤又は治療剤群は、化学療法剤の群からの薬物と任意選択で組み合わせた、免疫療法剤(ITA)の群から選択される。これ又はこれらは、クラスター組成物とは別個の組成物として投与される。治療剤は、標準治療に従って、すなわち、それぞれの製品概要(SmPC)に従って投与される。
【0116】
ITAのクラスとしては、限定されないが、モノクローナル抗体(mAb)、融合タンパク質、可溶性サイトカイン受容体、組み換えサイトカイン、小分子模倣薬、細胞療法、がんワクチン及び腫瘍溶解性ウイルスが挙げられる。用語「免疫腫瘍学薬剤(IO)」は、集合的にITAの群を説明するための一般的用語として用いられる傾向があり、したがって、本発明で有用なITAのクラスはまた、以下で更に説明される通りの(IO)を含む。
【0117】
腫瘍学の範囲内で、ITAは、免疫系を増強してがん細胞を攻撃するために用いられ、自己免疫疾患の処置の範囲内では、それらの機能は、体内の健康細胞を攻撃する自己免疫応答を抑制することである。
【0118】
がん療法の範囲内で、免疫療法抗体は腫瘍抗原(分子標的)に結合し、免疫系が阻害又は殺傷するためにがん細胞をマーク及び特定する。様々なクラスのがん免疫療法剤は、様々な腫瘍抗原を標的とする。以下では、分子標的は、薬物名の後ろの括弧内に記載される。
【0119】
免疫腫瘍学は、迅速に発達している分野であり、以前には探索されなかった抗原を標的化する薬剤が、継続的に前臨床及び臨床開発に入っている。本発明の実施形態は、ヒト細胞分化分子(HCDM)審議会命名法に従って命名及び特定され(CD1~CD371)、且つ将来のヒト白血球分化抗原(HLDA)ワークショップの間に特定及び同意される通りの全て及びいずれかの抗原を標的とする新規IO剤の使用である。
【0120】
モノクローナル抗体(mAb):
免疫チェックポイント阻害剤(ICI)は、一部のタイプの免疫系細胞、例えば、T細胞、及び一部のがん細胞により作られるチェックポイントと呼ばれるタンパク質を遮断するモノクローナル抗体薬物である。これらのチェックポイントは、免疫応答が過剰になることを防ぐことを助け、時には、T細胞ががん細胞を殺傷することを防ぐことができる。これらのチェックポイントが遮断される場合、T細胞はよりよくがん細胞を殺傷することができる。T細胞又はがん細胞上で見出されるチェックポイントタンパク質の例としては、PD-1(抗体)/PD-L1/PD-L2(抗原)及びCTLA-4(抗体)/CD80/CD86(抗原)が挙げられる。ICIは、以下の疾患をはじめとする様々ながん性疾患を処置するために用いられる:黒色腫、肺がん、腎がん、肺がん、リンパ腫及び尿路上皮がん。ICI、例えば、抗PD-1/PD-L1薬剤は、腫瘍細胞上のPD-L1とT細胞上のPD-1との間の相互作用を妨げ、免疫系が抗腫瘍応答を開始することを可能にする。本発明の範囲内では、ICI、特に、抗PD1薬剤又は抗PD-L1/L2薬剤の送達は、好ましい実施形態を代表する。ICIの範囲内の好ましい薬剤としては、限定されないが、イピリムマブ(CTLA-4)、ニボルマブ(PD-1)、ペムブロリズマブ(PD-1)、アテゾリズマブ(PD-L1)、アベルマブ(PD-L1)、デュルバルマブ(PD-L1)及びセミプリマブ(PD-1)が挙げられる。一実施形態では、少なくとも1つのITAは、ニボルマブ(PD-1)、ペムブロリズマブ(PD-1)、アテゾリズマブ(PD-L1)、アベルマブ(PD-L1)、デュルバルマブ(PD-L1)及びセミプリマブ(PD-1)の群から選択される免疫チェックポイント阻害剤である。
【0121】
他の標的に向けたmAb:
本発明の好ましい実施形態を代表する様々な内部及び外部標的(抗原)に向けた様々な他のIO剤としては、限定されないが、アレムツズマブ(CD52)、リツキシマブ(CD20)、トシツモマブ(CD20)、オビノツズマブ(CD20)、オファツムマブ(CD20)、イブリツモマブ(CD20)、ジヌツキシマブ(GD2)、ブリナツムマブ(CD19/CD3)、ダラツムマブ(CD38)、イサツキシマブ(CD38)、エロツズマブ(SLAMF7)、セツキシマブ(EGFR)、パニツムマブ(EGFR)、ネシツムマブ(EGFR)、カツマキソマブ(Ep CAM)、トラスツズマブ(HER2)、ペルツズマブ(HER2)、オララツマブ(PDGF-Ra)、ベバシズマブ(VEGF)、ラムシルマブ(VEGF R2)、イミキモド(TLR7)、トシリズマブ(IL-R6)が挙げられる。
【0122】
薬物コンジュゲート化mAb:
IO剤の別のクラスは、薬物-抗体コンジュゲートにより代表される。これらは、本発明の好ましい実施形態を代表し、限定されないが、モキセツムマブ-パスドトクス-tdfk(CD22)、ブレンツキシマブ-ベドチン(CD30)、トラスツズマブ-エムタンシン(HER2)、イノツズマブ-オゾガマイシン(CD22)、ゲムツズマブ-オゾガマイシン(CD33)、タグラクソフスプ-erzs(CD123)、ポラツズマブ-ベドチン-piiq(CD79B)、エルホルツマブ-ベドチン-ejfv(ネクチン4)、トラツツズマブ-デルクストカン(HER2)、サシツズマブ-ゴビテカン-hziy(Trop 2)が挙げられる。
【0123】
サイトカイン療法:
サイトカインは、多くの場合、増殖し且つ免疫応答を低減させるためにサイトカインを利用する腫瘍内に存在する多数のタイプの細胞により産生されるタンパク質である。これらの免疫修飾作用は、免疫応答を誘発するための薬物として用いられることを可能にする。
【0124】
インターロイキン-2及びインターフェロン-αは、免疫系の挙動を調節及び協調させるタンパク質であるサイトカインであり、本発明の実施形態を代表する。これらは、抗腫瘍活性を増強する能力を有し、したがって、受動的がん処置として用いることができる。インターフェロン-αは、有毛細胞白血病、AIDS関連カポジ肉腫、濾胞性リンパ腫、慢性骨髄性白血病及び悪性黒色腫の処置において用いられる。インターロイキン-2は、悪性黒色腫及び腎細胞癌に対する承認された処置である。
【0125】
細胞療法:
CAR-T及び他の細胞免疫療法の根拠は、がん細胞をより効果的に標的化及び破壊するために、がん細胞を認識するように免疫細胞を調節することである。例えば、T細胞が患者から採取され、がん細胞を特異的に認識するキメラ抗原受容体(CAR)を付加するために遺伝子改変され、次いで、腫瘍を攻撃するために患者へと注入して戻される。本発明の好ましい実施形態を代表するこの分類内の薬剤としては、限定されないが、シプロイセル-T(Provenge)、チサゲンレクロイセル(Kymriah)及びアキシカブタジン-シロルーセル(Yescarta)が挙げられる。
【0126】
腫瘍溶解性ウイルス:
腫瘍溶解性ウイルスは、がん細胞において優先的に感染及び複製するウイルスである。感染がん細胞は腫瘍溶解により破壊されるので、新たな感染性ウイルス粒子又はビリオンを放出して、残余の腫瘍を破壊することを助ける。腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍細胞の直接的な破壊を引き起こすだけでなく、長期的免疫療法に対して宿主抗腫瘍免疫応答も刺激すると考えられる。腫瘍溶解性ウイルスはまた、がん細胞への導入遺伝子送達のためのベクターとして用いることができ、導入遺伝子産物の局在化した発現を可能にする。そのようなコード産物としては、抗体断片、二重特異的抗体、T細胞嵌合性リガンド、分泌型免疫モジュレーター又は他のIOが挙げられる。
【0127】
アデノウイルス、レオウイルス、麻疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ニューカッスル病ウイルス及びワクシニアウイルスをはじめとする多数のウイルスが、腫瘍溶解剤として臨床試験され、数種類が臨床開発中である。T-Vec(タリモジン-ラヘルパレプベク)が、現在では唯一のFDA承認された腫瘍溶解性ウイルスである(黒色腫の処置用)。しかしながら、限定されないが、Ad2/5 dl1520(Onyx-015)、GLV-1h68(GL-ONC1)及びCV706をはじめとする多数の他の腫瘍溶解性ウイルスが、第II~III相開発中である。腫瘍溶解性ウイルスの使用は、本発明の好ましい実施形態を代表する。
【0128】
がんワクチン:
治療用がんワクチンは、既存のがんを処置するワクチンである。細胞の表面上に見出される抗原は、身体が有害であると考える物質である。免疫系は抗原を攻撃し、大多数の場合に、これを除去する。このことは、免疫系に「記憶」を残し、これが将来それらの抗原と闘うことを助ける。がん処置ワクチンは、抗原を見出し且つ破壊する免疫系の能力を増強する。多くの場合に、がん細胞は、それらの表面上に健康細胞は有しないがん特異的抗原と呼ばれる特定の分子を有する。ワクチンがこれらの分子を人に与える場合、分子は抗原として機能する。分子は、その表面上にこれらの分子を有するがん細胞を見出し且つ破壊するように免疫系に指示する。
【0129】
2種類の治療用がんワクチンが、現在臨床実務において用いられている;早期膀胱がんの処置のためのカルメット-ゲラン杆菌(BCG)及び前立腺がんの処置のためのシプロイセル-T。更に、Oncophage(登録商標)は、膀胱がんの処置に対してロシアで承認されている。様々な他のワクチンが、現在臨床開発中である。がんワクチンの使用は、本発明の好ましい実施形態を代表する。
【0130】
新規出現IO:
抗CD47療法:多数の腫瘍細胞はCD47を過剰発現し、宿主免疫系の免疫監視を逃れる。CD47は、その受容体であるシグナル調節タンパク質アルファ(SIRPa)に結合し、腫瘍細胞の食作用を下方調節する。したがって、抗CD47療法は、腫瘍細胞のクリアランスを回復することを目的とする。加えて、増加する証拠は、抗CD47療法に応答する腫瘍抗原特異的T細胞応答の利用を支持する。抗CD47抗体、遺伝子改変型デコイ受容体、抗SIRPa抗体及び二重特異的薬剤をはじめとする、多数の療法剤が開発中である。抗CD47治療剤の使用は、本発明の好ましい実施形態を代表する。
【0131】
抗GD2抗体:細胞の表面上の炭水化物抗原は、免疫療法に対する標的として用いることができる。GD2は、神経芽腫、網膜芽腫、黒色腫、小細胞肺がん、脳腫瘍、骨肉腫、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、平滑筋肉腫及び他の軟組織肉腫をはじめとする多数のタイプのがん細胞の表面上に見出されるガングリオシドである。GD2は正常組織の表面上には通常発現されず、このことは、GD2を免疫療法に対する良好な標的にする。抗GD2薬剤の使用は、本発明の好ましい実施形態を代表する。
【0132】
抗TIM3:最近の研究は、TIM3がT細胞消耗において果たされる重要な役割を有し、且つ抗PD-1療法の転帰に相関することを強調した。TIM3の標的化は、がん免疫療法に対する有望なアプローチであり得る。抗TIM3薬剤の使用は、本発明の好ましい実施形態を代表する。
【0133】
抗LAG3:LAG3は、T細胞の機能に対して複数の生物学的作用を有するICIである。LAG3は、様々なタイプの腫瘍浸潤性リンパ球において高度に発現され、腫瘍の免疫回避メカニズムに参加する。この理由のために、LAG3は、腫瘍予後の指標として、及び標的腫瘍療法として、現在臨床的に探索されている。このLAG3薬剤の使用は、本発明の好ましい実施形態を代表する。
【0134】
非常に多くの場合、IOレジメンは、1つ以上の化学療法剤がIO剤と組み合わせて投与される併用療法を含む。本発明の好ましい実施形態は、そのような併用レジメンを適用することである。好ましい化学療法剤のリストが、以下に列挙される。
【0135】
アルキル化剤:
ナイトロジェンマスタード類:塩酸メクロレタミン
ニトロソウレア類:カルムスチン、ストレプトゾシン、ロムスチン
テトラジン類:ダカルバジン、テモゾロミド
アジリジン類:チオテパ、マイトマイシン、アジリジニルベンゾキノン
シスプラチン類:シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン
代謝拮抗薬
抗葉酸剤:メトトレキサート、ペメトレキセド
フルオロピリミジン類:フルオロウラシル、カペシタビン
デオキシヌクレオチド類似体:シタラビン、デシタビン、アザシチジン、ゲムシタビン、フルダラビン、ネララビン、ペントスタチン
チオプリン類:チオグアニン、メルカプトプリン
抗微小管剤:
ビンカアルカロイド類:ビノレルビン、ビニクリスチン、ビンデシン、ビンフルニン
タキサン類:パクリタキセル又はnab-パクリタキセル、カバジタキセル、ドセタキセル
ポドフィロトキシン;エトポシド、テニポシド
トポイソメラーゼ阻害剤
トポイソメラーゼI:イリノテカン又はリポソーム型イリノテカン、トポテカン
トポイソメラーゼII:ドキソルビシン又はリポソーム型ドキソルビシン、ミトキサントロン、テニポシド、ノビオシン、メルバロン、アクラルビシン
細胞傷害性抗生物質
アントラサイクリン類:ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン
【0136】
腫瘍学における本発明によるITAの使用に加えて、使用の他の主要領域は、限定されないが、以下の自己免疫疾患をはじめとする自己免疫疾患の処置のためである:乾癬、狼瘡、関節リウマチ、クローン病、多発性硬化症及び円形脱毛症。このクラスの薬剤はまた、臓器移植後の拒絶を回避するためにも頻繁に用いられる。本発明の方法に従って処置される病理学的状態は、好ましくは、がん又は自己免疫疾患である。
【0137】
自己免疫疾患の処置のための免疫療法は、迅速に発達している分野であり、以前には探索されなかった抗原を標的化する薬剤が、継続的に前臨床及び臨床開発に入っている。本発明の実施形態は、ヒト細胞分化分子(HCDM)審議会命名法に従って命名及び特定され(CD1~CD371)、且つ将来のヒト白血球分化抗原(HLDA)ワークショップの間に特定及び同意される通りの全て及びいずれかの抗原を標的とする新規ITAの使用である。したがって、一実施形態では、本発明の方法に使用するための少なくとも1つのITAは、CD1~CD371と命名された抗原のうちのいずれかを標的化する能力を有するITAから選択される。
【0138】
本発明の下での自己免疫疾患の処置のための好ましいITAとしては、限定されないが、以下のものが挙げられる;
小分子阻害剤、例えば、プレドニゾン、ブデソニド、プレドニゾロン、トファシチニブ、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス、エベロリムス、アザチオプリン、レフルノミド及びミコフェノール酸。
【0139】
モノクローナル抗体及び他の生物製剤、例えば、アバタセプト(CD80及びCD86)、アダリムマブ(TNFα)、アナキンラ(IL-1)、セルトリズマブ(TNFα)、エタネルセプト(TNFα)、ゴリムマブ(TNFα)、インフリキシマブ(TNF)、イキセキズマブ(IL17A)、ナタリズマブ(α-4インテグリン)、リツキシマブ(CD20)、セクキヌマブ(IL17A)、トシリズマブ(IL-6)、ウステキヌマブ(IL-12及びIL-23)、ベドリズマブ(インテグリンa4b7)、バシリキシマブ(CD25)及びダクリズマブ(CD25)。これらのモノクローナル抗体及び生物製剤は、本発明の好ましい実施形態を代表する。
【0140】
したがって、一実施形態では、免疫療法剤は、IO、モノクローナル抗体(mAb)、融合タンパク質、可溶性サイトカイン受容体、組み換えサイトカイン、小分子模倣薬、細胞療法、がんワクチン及び腫瘍溶解性ウイルスの群から選択される。
【0141】
別の実施形態では、1つ又は複数のITAは、1つ以上の化学療法剤が1つ又は複数のITAと組み合わせて与えられる併用療法での使用のためである。したがって、1つ又は複数の免疫療法剤を用いる処置は、例えば、がんの処置のために、1つ又は複数の化学療法剤を用いる処置と組み合わせられ、化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗薬、抗微小管剤、トポイソメラーゼ阻害剤、アントラサイクリン類及び細胞傷害性抗生物質の非限定的な群から選択される。
【0142】
別の実施形態では、免疫療法剤は、15,000ダルトン超、好ましくは30,000ダルトン超、より好ましくは50,000ダルトン超、最も好ましくは100,000ダルトン超の分子量を有する。いくつかの実施形態では、免疫療法剤は、最大1500ダルトンの分子量を有する。
【0143】
本発明の使用のための組成物、及び処置方法は、自己免疫疾患若しくはがんに対して、又は炎症部位(例えば、関節)で有用であり得る。一実施形態では、組成物及び使用/処置の方法は、がん、例えば、局所的な病理学的病変、例えば、固形がん、又は転移性がん、例えば、黒色腫、肉腫、前立腺がん、結腸がん、肛門がん、食道がん、胃がん、直腸がん、小腸がん、肝臓がん、膵臓がん、肺がん、腎がん、乳がん、脳がん、胆管がん、頭頸部がん、リンパ腫、尿路上皮がん、副腎皮質がん、メルケル細胞癌、副甲状腺がん、傍神経節腫、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、甲状腺がん、膀胱がん、陰茎がん、精巣がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵管がん、妊娠性絨毛腫瘍、卵巣がん、腹膜がん、膣がん及び外陰がんのうちのいずれかの処置のためである。
【0144】
一実施形態では、組成物及び使用/処置の方法は、自己免疫疾患、例えば、乾癬、狼瘡、関節リウマチ、クローン病、多発性硬化症及び円形脱毛症のうちのいずれかの処置のためである。
【0145】
一実施形態では、膵臓がん、例えば、膵管腺癌(PDAC)は、本発明の方法により処置される病理学的状態から放棄される。
【0146】
別の実施形態では、組成物及び使用/処置の方法は、臓器移植後の処置のためである。
【0147】
一実施形態では、以下のモノクローナル抗体のうちのいずれかは、本発明の使用及び方法から放棄される:ベバシズマブ、セツキシマブ、イピリムマブ、オファツムマブ、オクレリズマブ、パニツマブ、リツキシマブ。
【0148】
一実施形態では、治療剤は、ビヒクルで製剤化され、例えば、治療剤用のビヒクルとして用いられるリポソーム、コンジュゲート、ナノ粒子又はマイクロスフェアの形態に含まれている。したがって、治療剤は、ナノ薬物等のより大きな薬物構築物の一部分、例えば、リポソーム製剤若しくは粒子製剤中、又はモノクローナル抗体としての一部分であり得る。したがって、一実施形態では、治療剤は、閉鎖脂質スフェア中に製剤化され、例えば、リポソーム製剤中の治療剤を含むか、又はポリマーミセル中に製剤化される。
【0149】
実施例3及び4により実証される通り、ACT概念は、より大きな薬物分子又は構築物との組合せのために特に有用であり得る。
【0150】
更に、1つ以上の化学療法剤と1つ以上の免疫療法剤との間の併用レジメンが好ましい。更に、単一のリポソームを含む2種類の抗がん薬を含有するリポソーム、及びリポソームにコンジュゲート化された抗体を含む免疫リポソームのより新たな世代が、本発明により包含される。
【0151】
第2の好ましい実施形態では、治療剤は、免疫療法剤、例えば、限定されないが、アデノウイルス、レオウイルス、麻疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ニューカッスル病ウイルス、及びワクシニアウイルスをはじめとする腫瘍溶解性ウイルスの群から選択される。ウイルスは、がん細胞を「バースト」させて、がん細胞を殺傷し、且つがん抗原を放出させることができる。次いで、これらの抗原は、免疫応答を刺激することができ、これが近傍及び潜在的には体内のいずれかの他の場所でのいずれかの残余の腫瘍細胞を探し出して除去することができる。
【0152】
また別の実施形態では、少なくとも1つのITAをはじめとする数種類の治療剤が、併用レジメンとして投与される。好適な併用レジメンの例としては、限定されないが、以下の併用レジメンが挙げられる:
1)ペムブロリズマブ、続いてパクリタキセル及びカルボプラチンを含む併用レジメン、並びに
2)ニボルマブ、続いてイピリムマブを含む併用レジメン。
【0153】
したがって、方法の一実施形態では、ITAは、モノクローナル抗体抗PD1、抗PDL1又はCTLA4の群から選択され、化学療法剤と組み合わせて用いられ、例えば、シスプラチン+オキサリプラチン又はカペシタビンと組み合わせた化学療法剤ペムブロリズマブである。
【0154】
放棄条項:一実施形態では、化学療法剤はパクリタキセル、すなわち、遊離のアルブミン非結合形態としてではない。一実施形態では、治療剤は、ゲムシタビンとnab-パクリタキセルとの組合せではない。
【0155】
放棄条項:一実施形態では、処置される疾患は、膵臓がんではない。
【0156】
放棄条項:一実施形態では、免疫療法剤は、CTLA-4、CD-20、VEGF又はEGFを標的としない。
【0157】
投与経路:
クラスター組成物は、前記哺乳動物対象に非経口的に、好ましくは静脈内に投与される。投与経路はまた、動脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、腫瘍内投与、又は皮下投与から選択されてもよい。対象への投与のために、治療剤は、クラスター組成物とは別個に、別個の組成物として、事前に、及び/又は同時に、及び/又は事後に投与される。治療剤は、それぞれ承認された製品概要に従って投与される。典型的には、経路は、限定するものではないが、静脈内投与、腹腔内投与、腫瘍内投与及び筋肉内投与を含む群から選択される。したがって、2つの組成物、つまりクラスター組成物(a)と治療剤組成物(b)は、同じ投与経路を介して投与されてもよく、又は異なる投与経路を介して投与されてもよい。
【0158】
処置スケジュール:
本発明の使用のための組成物、処置方法、及び/又は薬物の送達のための方法は、例えば、多剤併用処置(multi-drug treatment)レジメンの一部として用いられ得ることが理解されるであろう。本発明の一実施形態では、これは2つ以上の治療剤の使用を含む。そのような化学療法剤併用レジメンは、少なくとも1つのITA、例えば、ペムブロリズマブに加えて、例えば、パクリタキセル及びシスプラチンを含むことができる。
【0159】
本出願人は、驚くべきことに、標的組織(例えば、腫瘍)中での灌流パターンが、短い時間スケールで変化し得ることを見出した。USイメージング研究は、活性化気泡の堆積パターンが、おそらくは灌流パターンの時間的変動に起因して、同じ対象及び関心標的領域内で注入ごとに著しく変化することを実証した。組織体積全体内での溢出を増強するために標的組織領域が複数回処置される場合に、この変化は治療上の利益へと向かう。更に、多くの場合に、治療レジメンは、レジメン中に異なる時点での数種類の治療剤の投与を含む。これもまた、全ての薬剤の増強された溢出を提供するために、ACT処置を数回行う利益へと向かう。
【0160】
したがって、一実施形態では、数回のACT処置を、例えば、図11及び図12に例示されるように、治療剤を投与する期間中に行うことができる。一実施形態では、処置方法は、1~5回、例えば2~4回のACT処置を含む。「ACT処置」又は「ACT手順」は、少なくともクラスター組成物の投与、通常の医用イメージングUS照射によるクラスターの活性化、及びその後の増強された取込みを誘導するための低周波数US照射を含み、すなわち、方法工程ii)、iii)及びiv)において記載される通りである。図11及び図12は、ニボルマブ及びイピリムマブ、並びにペムブロリズマブの組合せ、続いて、パクリタキセル及びカルボプラチンが用いられる処置スケジュールの例を提供する。本明細書に開示される通り、化学療法剤と組み合わせる可能性がある他のITAは、同様に、1つ又は複数のACT処置と共に用いることができる。
【0161】
図11は、ニボルマブの30分注入、続いてイピリムマブの90分注入を含む併用レジメンによる処置中に行われる、本発明による使用のための可能性のあるACT処置のグラフを提供する。ACT手順は、灰色ACT(登録商標)ソノポレーションバーにより示される通り、投与中に3回適用される。
【0162】
図11のパネルA:ACT手順は、
・ a.:クラスター組成物の注射、
・ b.:60秒の通常の医用イメージング超音波照射を伴うクラスターの活性化、及び
・ c.:0.1~0.3のMIでの5分の400~600kHz超音波照射を伴う増強工程
からなる。
【0163】
図11のパネルB:y軸は、投与された治療剤の血漿濃度をピークのパーセントで示し、x軸は、時間を分単位で示す。この例では、両方の薬物を含めて関心領域全体の処置を示すために、3つのACT手順を約30分、80分、及び120分で行っている。
【0164】
図12は、転移性扁平上皮非小細胞肺がんの処置のための、標準治療併用免疫療法+化学療法レジメン;ペムブロリズマブ、続いてパクリタキセル及びカルボプラチンを含む併用レジメンによる処置中に行う可能性のあるACT処置のグラフを提供する。
【0165】
図12のパネルA:図11に詳細に示される通りのACT手順。図12のパネルB:y軸は、投与された治療剤の血漿濃度をピークのパーセントで示し、x軸は、時間を分単位で示す。この例では、3つの薬物を全て含めて関心領域全体の処置を示すために、3つのACT手順を約160分、200分、及び240分で行っている。
【0166】
本発明者は、単一の治療剤が投与される場合でも、ACT手順を複数回繰り返すことが有益であることを見出した。本発明者は、ACTの活性化中にUSイメージングを使用して、腫瘍におけるACT気泡の堆積の注目し得る効果を観察した。注射から注射までの堆積パターンにおける強いばらつきが同じ動物において観察され、堆積ACT気泡の密度は、腫瘍の様々なセグメント間で異なり、このパターンは、注射間で変化した。完全には解明されていないが、これらの効果は、様々な腫瘍セグメントの灌流の時間的変動に起因すると仮定される。これらの観察に基づき、できるだけ多くの腫瘍体積に到達するために、実施例では、本発明者は、ACT手順を続けて3回適用した。これは、図11及び図12において視覚化されたレジメンについて上述したように臨床使用中に数回のACT手順を適用する利点も指摘する。
【0167】
したがって、一実施形態では、1種を超える治療剤、例えば、1~5種の治療剤が、特定の時間スパン、例えば最大3時間にわたって同時に又は順次投与され、一方で、少なくとも1回、例えば1~5回のACT処置(ACT手順)が、同じ期間中に実施される。
【0168】
一実施形態では、ACT手順は、以下の工程を含んで提供される:クラスター組成物の投与、例えば、静脈内投与、続いて、通常の医用イメージングUSによる関心組織領域の局所US照射(活性化)、その後、薬物及び活性化免疫細胞の増強された溢出を誘導するための低周波数US照射が続く。これらの工程は、2~5回連続して、例えば3回連続して実施される。したがって、工程(i)~(iv)は1~4回繰り返される。これらの工程は、少なくとも1つのITAをはじめとする1つ又は複数の治療剤の投与と併せて行われる。活性化、つまり最初のUS照射は、クラスター組成物の各投与の前又は直後、例えば20秒間以内に開始され、例えば30~120秒間、持続するべきである。低周波超音波による照射は、活性化工程に続き、典型的には、3~10分間、例えば約5分間、持続する。好ましくは、工程(iii)の直後に工程(iv)を開始する。二周波数トランスデューサは、処置において、活性化工程及び増強工程の両方のために有益に使用され得る。そのような使用により、工程(iii)の活性化照射から工程(iv)の増強照射への切り替えを遅滞なく行うことができる。活性化直後に増強場を適用することは、得られる治療上の利益にとって重要であり得る。この点で、活性化及び増強照射の両方を、広帯域又は二周波数USトランスデューサを使用して適用することが有益であろう。すなわち、示された好ましい範囲に必要とされる全ての周波数にわたって十分なUS圧力(すなわち、MI)を送達可能なトランスデューサ。例えば、1~10MHz及び0.1~1MHzの両方で、より好ましくは0.4~0.6MHzで、最大0.4のMIを送達することが可能なトランスデューサ。
【0169】
更に、例えば、同時に両方の場を発するか又は短い時間系列において両方の場を発することが可能なトランスデューサを使用して、同時又は断続的に活性化及び増強照射場を適用する(例えば、1秒間の活性化場、続いて1秒間の増強場、続いて、1秒間の活性化場等)ことが有益である場合がある。
【0170】
別の実施形態では、多剤併用レジメンは、抗PD1、抗PDL1又はCTLA4モノクローナル抗体及び化学療法剤、例えば、ペムブロリズマブ+シスプラチン+オキサリプラチン又はカペシタビンを含む。したがって、処置レジメン中に数種の治療剤を使用することができ、数回のACT手順を適用することができる。好ましい実施形態では、ACT手順は、活性治療分子が投与後の血液中で最大濃度又は最大濃度に近い濃度を示すときに実行される。したがって、ACT処置のタイミングは、治療剤の薬物動態に依存して変化し得る。
【0171】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、標的組織、特に、がん又は自己免疫疾患と診断された対象への治療剤の送達に使用するためである。使用のための組成物は、ACT技術を用いて、治療剤の有効な局所濃度に達するための治療剤の部位特異的送達を提供し、関心領域でのこれ及び活性化免疫細胞の改善された取込みを更に提供する。
【0172】
したがって、本発明はまた、対象への少なくとも1つのITAの局所送達の方法に使用するための微小気泡/微小液滴クラスター組成物であって、方法は、
(i)対象に少なくとも1つのITAを投与する工程、
(ii)対象にクラスター組成物を投与する工程であって、少なくとも1つの治療剤が、クラスター組成物に対して事前に、及び/又は同時に、及び/又は事後に投与される、工程、
(iii)工程(i)からのクラスター組成物の微小液滴の拡散性成分の位相シフトを、1~10MHzの第1の周波数及び0.1~0.4の第1のメカニカルインデックスでの前記対象内の関心領域の超音波照射によって活性化する工程、
(iv)0.4~0.6MHzの第2の周波数及び0.1~0.3の第2のメカニカルインデックスでの超音波で更に照射する工程
を含む、微小気泡/微小液滴クラスター組成物を提供する。
【0173】
同様に、本発明は、
(i)対象に少なくとも1つのITAを投与する工程、
(ii)対象に微小気泡/微小液滴クラスター組成物を投与する工程であって、少なくとも1つのITAが、クラスター組成物に対して事前に、及び/又は同時に、及び/又は事後に投与される、工程、
(iii)工程(i)からのクラスター組成物の微小液滴の拡散性成分の位相シフトを、1~10MHzの第1の周波数及び0.1~0.4の第1のメカニカルインデックスでの前記対象内の関心領域の超音波照射によって活性化する工程、
(iv)0.4~0.6Hzの第2の周波数及び0.1~0.3の第2のメカニカルインデックスでの超音波で更に照射する工程
を含む、哺乳動物対象へと少なくとも1つのITAを送達する方法を提供する。
【0174】
使用のためのこの組成物及び少なくとも1つのITAの送達のための方法に関してはまた、方法の工程は、任意選択で、超音波イメージングを使用してクラスターをイメージングして、前記対象内の処置のための関心領域を特定する工程(iib)を含むことができる。
【0175】
使用及び方法は、別個に、事前に、及び/又は同時に、及び/又は事後に投与されたITAの増強された溢出及び取込み並びに/或いは標的病理への活性化免疫細胞の増強された浸潤を促進する。方法では、治療剤は、クラスター組成物に対して事前に、及び/又は同時に、及び/又は事後に、且つ工程ii)~iv)の前又は工程ii)~iv)のうちのいずれかの後に投与される。
【0176】
いくつかの実施形態では、後に治療剤を投与するための対象の準備のために、治療剤を含まないクラスター組成物のみが対象に投与される。そのような実施形態では、クラスター組成物の投与は、投与が処置ではなく、処置の準備、例えばITAによる処置の準備であるものである。
【0177】
本発明の方法及び使用のための組成物は、本明細書に開示される通り、造影剤としてクラスターの微小気泡を用いることをはじめとする、診断イメージング、例えば、超音波イメージングを行うことを伴い得るが、典型的には、処置の転帰を診断及び/又は評価するために、他のタイプのイメージング研究とも組み合わせることができる。そのようなイメージングは、例えば、標的病理を特定するための最初の検査として、腹部コンピュータ断層撮影(CT)、又は腹部磁気共鳴イメージング(MRI)、腹部超音波検査(US)、及び超音波内視鏡(EUS)を含むことができる。
【0178】
本発明は、示される実施形態及び実施例に限定されない。本開示の様々な実施形態が本明細書に記載されているが、そのような実施形態が例としてのみ提供されることは当業者にとって明らかであろう。本明細書に記載の実施形態に対するいくつかの修正及び変更、並びに変形及び置換は、本開示から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。本明細書に記載される実施形態の様々な代替物を、本開示を実施する際に用いることができることを理解されたい。
【0179】
1つの態様について開示された全ての実施形態が、他の態様について等しく十分に適用されることを理解されたい。したがって、例えば、療法での使用のための組成物に関して開示される特徴は、局所送達の方法並びに活性化免疫細胞の取込み及び増強された浸潤を増加させる方法にも適用される。
【0180】
本開示の各実施形態は、任意選択で、本明細書に記載される他の実施形態のいずれか1つ又は複数と組み合わせることができることを理解されたい。
【0181】
本明細書に開示される各成分、化合物、又はパラメータが、単独で、又は本明細書に開示される他のそれぞれの若しくは全ての成分、化合物、若しくはパラメータのうちの1つ以上との組合せでの使用のために開示されていると解釈されるべきであることを理解されたい。更に、本明細書に開示される各成分、化合物、又はパラメータの各量/値又は量/値の範囲が、本明細書に開示される任意の他の成分、化合物、又はパラメータについて開示される各量/値又は量/値の範囲との組合せとしても開示されていると解釈されるべきであり、したがって、本明細書に開示される2つ以上の成分、化合物、又はパラメータについて開示される各量/値又は量/値の範囲の任意の組合せも、本説明の目的のために互いに組み合わせて開示されていることも理解されたい。本明細書に記載される任意の及び全ての特徴、並びにそのような特徴の組合せは、特徴が相互に矛盾しないことを条件に、本発明の範囲内に含まれる。
【0182】
本明細書に開示される各範囲の各下限は、同じ成分、化合物、又はパラメータについて、本明細書に開示される各範囲の各上限と組み合わせて開示されるとして解釈されるべきであることを理解されたい。したがって、2つの範囲の開示は、各範囲の各下限を各範囲の各上限と組み合わせることによって導出される4つの範囲の開示として解釈されるべきである。3つの範囲の開示は、各範囲の各下限を各範囲の各上限と組み合わせること等によって導出される9つの範囲の開示として解釈されるべきである。更に、本明細書又は実施例に開示される成分、化合物、又はパラメータの特定の量/値は、範囲の下限又は上限のいずれかの開示として解釈されるべきであり、したがって、本出願の他の場所に開示された同じ成分、化合物、又はパラメータの任意の他の下限又は上限、又は範囲又は特定の量/値と組み合わせて、その成分、化合物、又はパラメータの範囲を形成することができる。
【0183】
一態様の文脈において記載される態様及び特徴において、例えば、療法に使用するための組成物を対象とする態様に関して記載される実施形態及び特徴はまた、送達におけるか又は処置若しくは送達のための方法における使用を対象とする本発明の他の態様にも適用される。
【0184】
以下の実施例は、本発明の原理に従う本発明を例示するために提供されるが、いかようにも限定的であると解釈されるべきではない。
【実施例
【0185】
(実施例1)
クラスター調製、分析ツール、及び基本的特性
本出願人の出願である国際公開第2015/047103号、特にこの実施例1及び2が参照され、その内容は参照により本明細書において要約され、クラスターの使用等から生じるクラスター組成物の特性に関する分析方法の説明を提供する。
【0186】
以下では、第1の成分はC1と示され、第2の成分はC2と示され、且つクラスター組成物、すなわち、第1の成分及び第2の成分の組合せから生じる組成物はDP(医薬品)と示される。C1とC2を組み合わせた際に形成される、すなわちDP中に存在する微小気泡/微小液滴クラスターは、組成物の重要な品質属性、すなわち、薬物の送達のためのその機能性にとって重要である。したがって、形成されるクラスターを濃度及びサイズに関して特性決定及び制御するための分析方法論は、本発明を評価するため並びに医薬品質管理(QC)のために不可欠なツールである。この目的に適用できる3つの異なる分析ツール、つまり、コールター計数、フロー粒子画像分析(FPIA)、顕微鏡/画像分析を特定した。
【0187】
クラスター組成物中のクラスターの特性評価に適用されるこれらの技術に加えて、in vitroでのクラスターの活性化、すなわち超音波照射時の大きな活性化された気泡の生成を検討するための分析方法論が開発されている。この方法論「ソノメトリー」は、国際公開第2015/047103号のE1-6に詳細に記載されている。ソノメトリー分析からの一次レポートの応答は、減衰スペクトル、並びに活性化された気泡の数と体積及びそのサイズ分布であり、両方とも活性化後の時間に対するものである。活性化応答はまた、国際公開第2015/047103号のE1-5に詳述されるように、顕微鏡/画像分析によって探索されてもよい。
【0188】
成分及び組成物:
含まれる実施例で調査した組成物中の第1の成分(C1)は、水素化卵ホスファチジルセリンナトリウム(HEPS-Na)膜によって安定化され、凍結乾燥スクロースに埋め込まれたペルフルオロブタン(PFB)微小気泡から構成された。HEPS-Naは、微小気泡の負の表面電荷を確保する負に帯電した頭部基を保有する。C1の各バイアルは、約16μL又は2・109個の微小気泡を含み、平均直径は約2.0μmである。凍結乾燥製剤は、室温環境の保存で長い貯蔵寿命、特に3年を示す。
【0189】
この実施例で調査した組成物中の第2の成分(C2)は、正の表面電荷を提供するために添加された3%mol/molのステアリルアミン(SA)を伴う1,2-ジステアロイル-sn-グリセロール-3-ホスホコリン(DSPC)膜によって安定化されたペルフルオロメチル-シクロペンタン(pFMCP)微小液滴から構成された。C2における微小液滴を、5mMのTris緩衝液中に分散させた。この試験で調査したC2の標準製剤は、1mlあたり約4μL又は0.8・109個の微小液滴を含有し、平均直径は約1.8μmである。第2の成分は、冷蔵保存で長い貯蔵寿命、特に18カ月以上を示す。
【0190】
いくつかの場合では、クラスター特性に対する効果を解明するために、様々な製剤変数、例えば、SA含有量、微小液滴サイズ、微小液滴濃度、TRIS濃度、及びpHを、制御した様式で変化させた。そのような試料を使用した場合、これらの態様は本書で説明している。
【0191】
クラスター組成物(DP)は、C1のバイアルを2mLのC2で再構成し、続いて30秒間、手動で均質化することによって無菌的に調製した。2mlを、滅菌された使い捨てシリンジ及び針を使用して、C2のバイアルから取り出した。シリンジの内容物を、C1のバイアルのストッパーを通して添加し、得られたDPを均質化して、投与用組成物を調製した。調製されたクラスター組成物は、本明細書においてPS101とも呼ばれる。
【0192】
国際公開第2015/047103号に示されるように、第1の成分及び第2の成分、すなわち、微小気泡製剤及び微小液滴製剤は、変化させることができる。例えば、国際公開第2015/047103号の表9及び表10に示されるように、本発明による処置に有用であると予想される、好適な特性を有するクラスターを調製するために、第1の成分のガス及び安定化膜の両方を変化させることができる。
【0193】
分析中のクラスター組成物におけるクラスターの安定性:
DP内のクラスターは、微小気泡と微小液滴との間の静電引力によって形成され、一緒に保持される。この引力は有限であり、クラスターは、力学的応力や熱(ブラウン)運動等の様々な経路/影響によって、形成後に分解する可能性がある。精密かつ正確な特性決定のためには、分析中にクラスターが安定していることが重要である。この安定性は、上記の全ての方法論で調べた。安定性を評価するために、単一のDP試料で5分を超えるタイムスパンにわたる3~5回の分析を繰り返した。濃度及びサイズのいずれにおいても、これらの繰り返しにわたって有意な変化は観察されず、微小気泡、微小液滴及びクラスターが、記載された分析条件、すなわち、PBS又は水中で希釈後、連続的な均質化(攪拌)下において5分間以上安定であることを証明した。
【0194】
製剤の態様:
DP内のクラスター含有量及びサイズを制御し、最適な特性を標的とするために、いくつかの異なる製剤態様が探索されてもよい。クラスター含有量及びサイズ分布を操作するために使用することができるパラメータとしては、限定されないが、微小気泡と微小液滴との間の表面電荷の差、例えばSA%、C2の微小液滴のサイズ、pH、C2中のTRIS濃度、並びに微小気泡及び微小液滴の濃度が挙げられる。加えて、成分の化学分解、例えば、高温での長期保存中の化学分解は、DPの調製中に、クラスターを形成するC1及びC2の能力に影響を及ぼし得る。
【0195】
国際公開第2015/047103号において報告されているように、30種の異なる組成物のin vitro特性決定から、系の性質及び特徴を解明するいくつかの重要な相関関係を抽出することができる。本発明者は、形成されたクラスターのサイズが、系の反応性にも強く関連していることを見出した。比較的低レベルの反応性(例えば、<20%)では、小さいクラスター(すなわち、1~5μm)及び中サイズのクラスター(すなわち、5~10μm)のみが形成される。反応性の増加に伴い、より大きなクラスターが形成され始める。R>約20%で、10~20μmのクラスターが形成され始め、R>約50%で、20~40μmのクラスターが形成され始める。より大きなクラスターが形成されると、小サイズ及び中サイズのクラスターが犠牲になる。本発明者は、クラスター濃度1~5μm及び5~10μmについて、含有量vs.反応性の明確な最適条件を見出した。本発明者は、より大きなクラスター(すなわち、10umを超える、又は20umを超える)の形成が、組成物の有効性に対して有害であり、したがって、クラスタリングの潜在力はバランスを取る必要があることを見出した。
【0196】
本出願人の実験、及び国際公開第2015/047103号の表5及び表6に示される結果に基づくと、クラスター組成物の有効性(グレースケール単位(GS)での線形増強)は、クラスターの平均サイズ及びクラスターの濃度(100万個/ml)と相関する。グレースケール増強は、in vivoでのクラスター組成物の投与及び活性化後にUSイメージングによって観察される明るさ(コントラスト)の増加であり、イメージングされた組織における活性化気泡の量の尺度である。報告されている結果は、左心室でのクラスター組成物のi.v.投与及び活性化に際してのイヌ心筋からの超音波シグナルの線形増強(グレースケール単位)に対する様々なサイズクラスのクラスターの寄与の多変量主成分分析(PCA)からのものである。国際公開第2015/047103号の実施例2を参照されたい。PCAは、その表5及び表6に詳述される30個の試料のデータに対して行った。結果は、中小サイズのクラスター(<10μm)がクラスター組成物の有効性に有意に寄与するのに対し、より大きなクラスター(>10μm)は有意に寄与しないことを実証する。これらの結果及び結論は、本発明にも適用される。PCA分析の結果を以下のTable 1(表1)に示す。図1は、Table 1(表1)のデータに基づく、クラスターサイズ対生成物の有効性の視覚化を示し、平均直径が3~10μmの範囲であるクラスターが最適な有効性を有することを実証する。したがって、図1には、生成物の有効性vs.クラスター直径が示されている。Y軸は、左心室でのクラスター注射及び活性化後のイヌ心筋のUSイメージングからのグレースケール増強に対する相関係数を示し、堆積した活性化気泡の量を反映する。X軸は、クラスター直径をμm単位で示す。灰色の箱は、評価された異なるクラスターサイズ:1~5μm、5~10μm、10~20μm及び20~40μmのビンを表す。実線は、有効性vs.クラスター直径の連続関数を表す。エラーバーは標準誤差である。図1は、国際公開第2015/047103号の図12(左側)の代替的な視覚化である。観察され得るように、平均クラスター直径は、3~10μm、好ましくは4~9μm、より好ましくは5~7μmの範囲であるべきである。
【0197】
【表1】
【0198】
実施例1に従って調製したクラスター組成物のクラスター濃度及び平均直径を分析し、数時間にわたって、約4000~4400万個/mlのクラスター濃度を有し、約5.8~6.2μmのクラスター平均直径を有することを見出した。結果を以下のTable 2(表2)に示す。結果は、国際公開第2015/047103号の表6の結果と一致する。Table 2(表2)のデータは、調製されたクラスター組成物が許容され得る安定性を有し、クラスターの最適なサイズ及び濃度を達成し得ることを示す。
【0199】
【表2】
【0200】
本発明の概念を適用すること、つまり、投与前にC1及びC2からクラスター組成物を調製し、微小気泡/微小液滴クラスターを形成することによって、国際公開第99/53963号によって教示されている2つの成分の同時注射とは対照的に、10倍を超える有効性の増加を可能にする。第1の成分と第2の成分の組合せに際して微小気泡/微小液滴を形成し、この予め形成されたクラスターを投与することは、in vivoでのその意図された機能性の前提条件である。クラスター組成物は、クラスターの特性が実質的に変化しない時間枠内、例えば、2つの成分を組み合わせてから3時間以内に対象に投与されるべきである。
【0201】
(実施例2)
増強工程の周波数及びメカニカルインデックス
先に述べたように、大きなACT気泡の活性化後の更なるUS照射の適用、すなわち増強工程は、血管コンパートメントから標的組織間質への薬物の溢出の増加及び活性化免疫細胞の浸潤の増加をもたらす。
【0202】
しかしながら、周波数及びMIに関して、この増強場の属性は、処置の有効性に強く影響する可能性がある。ある特定の最小限レベルの生体力学的効果が、透過性の増加を誘導するためには必要であるが、強すぎる場合には、慣性キャビテーション機構が誘導され、血管損傷及び有効性低下が生じる可能性がある。
【0203】
気泡振動のレベルは、いくつかのパラメータ、最も重要にはUS周波数及び圧力に依存し、後者はメカニカルインデックス(MI)によって定義される。誘導される気泡振動の性質及びACT手順の有効性に対する周波数及びMIの影響を検討するために、5つの試験を実施した:
【0204】
・ 活性化気泡の集団の減衰スペクトルを測定した。
【0205】
・ 増強工程中に誘導された、静止直径20μmの典型的活性化気泡の放射振動を、修正Rayleigh-Plessetモデル[Postema and Schmitz、「Ultrasonic bubbles in medicine: influence of the shell」、Ultrason Sonochem、2007年.14(4):438~44頁]を使用して、一連の周波数とMIについてモデル化した。
【0206】
・ 薬物模倣発色団(エバンスブルー)の組織取込みを、0.5MHzの増強工程US周波数を有するMIの関数として調査した。この試験では、気泡振動を、修正Rayleigh-Plessetモデルを使用してモデル化した。
【0207】
・ マウスにおいて、nab-パクリタキセル±ACTを用いて前立腺がんを処置する治療有効性を、0.2の増強MIで0.5MHz及び0.9MHzの両方で調査した。
【0208】
・ マウスにおいて、nab-パクリタキセル±ACTを用いて乳がんを処置する治療有効性を、0.5MHzの増強周波数で0.1及び0.2のMIで調査した。
【0209】
材料及び方法:
調査したクラスター組成物は、実施例1に詳述した通りであった。
【0210】
活性化気泡の集団の減衰スペクトルを、国際公開第2015/047103号のE1-6に詳述されるように、ソノメトリーによって測定した。
【0211】
周波数及びMIの関数としての気泡振動のモデリングは、MATLAB 2020b(MathWorks社、Natick, MA, USA)における偏微分修正Rayley-Plesset方程式を解くことによって行った。具体的には、直径20μmの気泡を、無視可能なシェル剛性及びC4F10ガス特性を使用して血液中でモデル化した。線形超音波パルスを、3サイクルの開始及び終了ガウスランプを有する正弦波を使用して模倣した。
【0212】
US増強場のMI分散の効果を調べるために、マウスの皮下前立腺がんモデル(PC3)において、エバンスブルー(EB、蛍光色素)の腫瘍特異的取込みを調べた。0、0.1、0.2、0.3、及び0.4の増強照射MIを有する5つの群を調査した(1群あたりN=3匹)。EBの静脈内注射の直後に、単回用量のクラスター組成物(2mL/kg、(i.v.))を与え、続いて、腫瘍体積に集束させた45秒の活性化US(2.25MHz、MI0.4)及び5分間の増強US(0.5MH、可変MI)を与えた。処置の30分後、腫瘍を切除し、EBの量を620nmの分光光度法によって測定した。
【0213】
マウスにおけるヒト前立腺がんの処置について、nab-パクリタキセル(Abraxane(登録商標)、ABR)±2mLのクラスター分散液/kgを用いたACTの治療効果を、皮下前立腺がんモデル(PC3)において調査した。ABR(12mg/kg、i.v.)を毎週、4週間にわたって投与し、毎回直後に3回、連続してACT手順を行った。1群あたりN=9~12匹。加えて、生理食塩水対照群(N=4)にも行った。活性化USは、2.5MHz、MI=0.4で45秒の照射で構成し、増強USは、0.5又は0.9MHz、両方とも0.2のMIで5分の照射で構成した。エンドポイントは全生存期間であった。腫瘍が最大体積1000mm3に達したとき、動物を選別して処分した。
【0214】
マウスにおけるヒト乳がんの処置について、nab-パクリタキセル(Abraxane(登録商標)、ABR)±2mLのクラスター分散液/kgを用いたACTの治療効果を、皮下乳がんモデル(Ca-MDA-MB231)で調べた。ABR(12mg/kg、i.v.)を、4週間にわたって毎週投与し、毎回直後に3回、連続して、0.1又は0.2のMIでACT手順を行った。加えて、薬物単独の群も調べた。1群あたりN=9~12匹。活性化USは、8MHz、MI=0.33で45秒の照射で構成し、増強USは、0.5MHz、0.1又は0.2のMIで5分の照射で構成した。エンドポイントは、キャリパーで測定された腫瘍体積(毎日)であり、測定された腫瘍体積は処置1日目の腫瘍体積によって正規化した。腫瘍が最大体積1000mm3に達したときに、動物を選別して処分した。
【0215】
結果:
活性化気泡の減衰スペクトル
活性化ACT気泡の典型的な集団の減衰スペクトルを測定し、結果を図2において視覚化した。注目され得るように、共振周波数は約0.3MHzと決定された。本質的に、減衰スペクトルは、気泡集団と入射US場との間の連動を説明する。共振周波数で又は共振周波数の近くで、気泡は、減衰において最も効果があり、したがって、入射USエネルギーの体積振動及び生体力学的効果への変換において最も効果的である。したがって、スペクトルは、約0.15MHzから0.6MHzの範囲外の周波数に対して気泡の応答が非常に限定的であることを実証する。しかしながら、これは、気泡が実質的に無限のマトリックスに分散されている場合であり、気泡が微小血管に滞留されている場合ではない。この場合、血管壁との接触が、血管の直径及び弾性に応じて、気泡応答を抑制し、減衰スペクトルを上方にシフトさせる。そのような減衰効果の正確なモデリングを提供することは困難であるが、経験に基づくと、約0.5MHzへの共振周波数のシフトが合理的な推定値である。したがって、生体力学的効果の最適な生成を確実にするACT気泡間の最適な結合は、約0.4~0.6MHzの間で生じることが予想される。そして、これは、本発明の下での増強工程のための好ましい周波数範囲を表す。
【0216】
周波数とMIの関数としての気泡振動のモデリング
300、400、600、及び900kHzの0.1、0.20.3及び0.4のMIでの気泡振動のモデリングを図3に視覚化している。強い振動は、増加した生体力学的効果の誘導の証拠である。しかしながら、鋭い鋸歯状の応答は、非線形及び/又は慣性キャビテーション挙動の開始を示す。注目され得るように、900kHzでは、全てのMIについて、放射振動は小さい。上記の減衰スペクトルからの予測に従って、有意な治療上の利益を生み出すために必要な、必要な生体力学的効果を誘導するには限定されすぎている可能性が高い。一方、300kHzでは、低MIであっても、放射振動が非常に強くかつ非線形であり、ある程度の慣性キャビテーションを引き起こし、血管損傷を引き起こす可能性が高い。しかしながら、400kHz~600kHzの周波数については、放射振動は、治療効果を誘導するのに十分な生体力学的作用を誘導し、同時に、過度の非線形挙動及び血管損傷を回避するという要件を満たしていると思われる。
【0217】
MIの関数としてのエバンスブルーの組織取込み及び気泡振動
結果を、図4において視覚化している。注目され得るように、組織取込みは、US無し(MI=0)からMI=0.1に増加し、MI=0.2で更に増加するが、その後、MI=0.3で再び低下し、M=0.4で更に低下する。0.2のMIでは、腫瘍特異的取込みでの略60%の増加が、MI=0(超音波無し)と比較して観察される。同時に、埋め込まれた気泡振動パネルから、最大放射振動は、MI=0.1で約3μmから、MI=0.2で約6μm、MI=0.3で約10μm、及びMI=0.4で20μm超に増加する。重要なことに、その後、組織取込みの減少の開始(MI=0.2からMI=0.3)が、慣性キャビテーションが生じ始める著しい非線形挙動の開始と同時に起こる。
【0218】
前立腺がんの処置のためのnab-パクリタキセル±ACTの治療効果 - 増強工程中のUS周波数の効果
全生存期間vs.時間を示す結果を図5に視覚化している。注目され得るように、ACT(0.5MHz群)では、100%の動物が試験終了まで生存し、動物の80%が安定した完全な寛解(つまり、がんの無い)状態であった。ACT(0.9MHz)群もまた、薬物単独と比較して治療上の利益を示したが、その効果はACT(0.5MHz)より著しく劣る。0.9MHzでは、ほとんどの腫瘍が再増殖し始め、試験終了時に安定した完全な寛解状態にある動物はわずか25%であり、生存は57%であった。これらの結果は、最適な治療効果を誘導するために、特定の最小の放射振動が必要であることを示している。
【0219】
この試験のパイロット調査として、より高いMIが適用できるかどうかを評価するために、0.40のMIも、0.9MHzで試験した。しかしながら、このMIでは、表在性出血の明確な証拠が観察された。
【0220】
乳がんの処置のためのnab-パクリタキセル±ACTの治療効果 - 増強工程中のMIの効果
腫瘍増殖率vs.時間を示す結果を図6に視覚化している。注目され得るように、ACT(MI 0.1)群では、腫瘍増殖率のわずかだが有意ではない低下が観察され、31日目の腫瘍増殖阻害は、薬物単独と比較して、たったの8%である。しかしながら、ACT(MI 0.2)群では、腫瘍増殖率の強力かつ有意な低下が観察され、31日目の腫瘍増殖阻害は薬物単独と比較して52%である。繰り返しになるが、これらの結果は、治療上の利益を誘導するために、特定の最小の放射振動が必要であることを実証している。
【0221】
結論:
これらの例で生じた結果に基づいて、ACT概念の機能性は、増強工程中に適用される周波数及びMIの変動に非常に敏感であることが実証される。これらの試験に基づいて、好ましい周波数範囲は、0.1~0.3で適用されるMIと組み合わせた0.4~0.6MHzと結論づけられる。驚くべきことに、増強工程中により低い周波数及びより高いMIを適用すると、誘導される活性化気泡振動が強すぎて、有効性の著しい喪失及び血管損傷をもたらすことが実証された。一方、より高い周波数及びより低いMIでは、誘導される気泡振動が小さすぎるため、十分な生体力学的効果が欠如し、したがって、治療有効性の著しい喪失をもたらす。
【0222】
(実施例3)
肝細胞がん(HCC)に関する皮下マウスモデルにおける治療効果-レオウイルス±音響クラスター療法によるがん免疫療法
本実施例は、HCCの処置に関する腫瘍溶解性ウイルスと組み合わせたACTの効果を報告する。
【0223】
腫瘍溶解性ウイルスは、がん細胞に感染してこれを破壊するためにウイルスを用いるがん免疫療法の一形態である。ウイルスは、我々の細胞に感染又は侵入し、次いで、細胞の遺伝学的機構を用いて、それ自体のコピーを生成し、その後、周囲の未感染細胞へと広がる粒子である。近年、ウイルスは、既に形成された腫瘍を標的化及び攻撃するために用いられてきた。これらのウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスとして公知であり、がんの処置に対する有望なアプローチを代表する。多くの場合、がん細胞は、損傷された抗ウイルス防御を有し、このことはがん細胞を感染に対して感受性にする。感染後、これらの腫瘍溶解性ウイルスは、がん細胞を「バースト」させて、がん細胞を殺傷し、且つがん抗原を放出させることができる。次いで、これらの抗原は、免疫応答を刺激することができ、これが近傍及び潜在的には体内のいずれかの他の場所でのいずれかの残余の腫瘍細胞を探し出して除去することができる。
【0224】
レオウイルス科由来のウイルス(レオウイルス)は、明らかな証拠又は治療上の利益を伴って、がんの処置に関して大規模に研究されてきた(NCT01280058、NCT02620423、NCT03723915)。しかしながら、レオウイルスの有効性を低減し得る要因は、がん細胞による制限された取込みである。この点で、ACTをウイルス療法と組み合わせることが、ウイルス取込みを強く増加させ、したがって、治療有効性の増加をもたらし得ることが想定される。
【0225】
材料及び方法:
音響クラスター療法(ACT)及び本発明による使用のための組成物(ACTと呼ばれる)を、腫瘍溶解性レオウイルスと組み合わせて治療効果レベルに関して調査した。
【0226】
調査したクラスター組成物は、実施例1に詳述した通りであった。クラスター組成物を2mL/kgで静脈内投与し、続いて、45秒間のUS活性化場(2.7MHz、MI 0.3)を用いて腫瘍の局所超音波(US)照射を行い、続いて5分間のUS増強場(500kHz、MI 0.2)を用いて照射を行った。手順は、各処置日において、レオウイルスの投与直後に3回連続して行った。
【0227】
HCC腫瘍異種移植片を、balb/Cマウスでの皮下注射により移植した。1×107個のがん細胞を脇腹に注射し、研究への登録まで約21日間にわたって自由に増殖させた。マウス(1群あたりN=5)を、レオウイルス単独又はACTと組み合わせて処置した。加えて、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)対照群を調査した。ウイルスを、0日目、5日目、7日目、10日目、14日目及び16日目に6回投与した。1日あたり1×107プラーク形成単位(PFU)の用量を、ACT処置の直前に静脈内投与した。研究の継続期間にわたって(25日間)、体重及びキャリパー測定を介した腫瘍サイズ(体積)に関して、動物を週2回モニタリングした。
【0228】
結果:
平均腫瘍体積及び平均の標準誤差(SEM)の結果を以下のTable 3(表3)に記載し、図8において視覚化している。
【0229】
【表3】
【0230】
図8は、肝細胞がんの処置のための腫瘍溶解性レオウイルスと組み合わせたACTの治療有効性を提供する。Y軸は、腫瘍体積をmm3単位で示す。X軸は、試験開始からの時間を日数単位で示す。X軸の下の灰色三角形は、処置日を示す。処置群は、生理食塩水対照(逆三角形)、腫瘍溶解性レオウイルス生理食塩水(中塗り四角形)及びACTを伴う腫瘍溶解性レオウイルス(中塗り円)である。
【0231】
Table 3(表3)に示され、図8において視覚化される結果から観察され得るように、レオウイルス単独での処置は、PBS対照群と比較した場合に、調査された用量での腫瘍増殖の顕著な阻害を示さなかった。しかしながら、同じ用量のウイルスをACT処置と組み合わせた場合、際立った著しい腫瘍阻害が観察され、ウイルス単独と比較して25日目での95%超の腫瘍体積の低減を有した。25日目に、95%信頼区間で両側ANOVA検定を用いてp値をp=0.037と計算した(Dunnの多重比較補正を用いるノンパラメトリックKruskal-Wallis検定)。
【0232】
結論:
したがって、この研究は、本発明に従って免疫療法処置、例えば、レオウイルスをACTと組み合わせた場合の強力な相乗効果を確認する。同様の相乗効果が、他のタイプの免疫療法剤を用いる他の疾患(例えば、がん及び自己免疫疾患)の処置に関して予期されるであろう。
【0233】
(実施例4)
血液脳関門(BBB)を横断するナノ薬物の送達
本実施例は、BBBを横切って大きなナノ構築物を送達するACTの能力を、本発明によるUS場を適用して調べる。
【0234】
材料及び方法:
調査したACTクラスター組成物は、実施例1に詳述した通りであった。
調査したナノ粒子は、Cristal Therapeutics(Maastricht社、オランダ)のコア架橋ポリマーミセル(CCPM)であった。これらのCCPMは、直径70nmであり、イメージング目的のためにローダミンB Cy7で標識され、製剤は、44mg/mlのポリマー及び40nmol/mlのCy7を含んだ。
【0235】
健常マウス脳におけるCCPMの溢出を、近赤外線蛍光(NIRF)イメージングを使用して測定し、脳切片におけるCCPMの微小分布を共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)によってイメージングした。
【0236】
6~8週齢で購入した13匹の雌アルビノBL6マウス(Janvier labs社、フランス)を、特定の病原体を含まない条件下で、個別に換気されたケージに5匹ずつの群で収容した。ケージは、ハウジング、休息材料、及びかじり木が豊富にあり、12時間の昼夜サイクルで制御された環境(20~23℃、50~60%の湿度)に保たれた。動物は、食料と滅菌水に自由にアクセスできた。全ての実験手順は、ノルウェー食品安全機関(Norwegian Food Safety Authority)によって承認された。
【0237】
超音波の設定のイラストを図9に示す。特注の二周波数トランスデューサ(中心周波数0.5MHz及び2.7MHz)[Andersenら、「A Harmonic Dual-Frequency Transducer for Acoustic Cluster Therapy」、Ultrasound Med Biol、2019年9月;45(9):2381~2390頁]を、脱気した水を充填した特注円錐体の頂点に取り付けた。トランスデューサは、42mmの直径を有し、0.5MHz及び2.7MHzのビームプロファイルの-3dB幅は、トランスデューサ表面から220mmの距離で16及び6mmであった。シグナルを、シグナル生成器(33500B、Agilent Technologies社、USA)で生成し、50dBのRF増幅器(2100L、E&I社、USA)で増幅した。増幅器はスイッチボックスに接続されており、スイッチボックスは、活性化から増強へUS場を切り替えることができる。円錐体の底部を光学的及び音響的に透過性のプラスチック箔(Jula Norge AS社、ノルウェー)で覆い、バッグを形成した。動物を、音響吸収材(Aptflex F28、Precision Acoustics社、UK)の上に伏せた姿勢で配置し、音響吸収材、動物の頭部、及び音響的透過性ホイルの間を連結するために超音波ゲルを用いた。
【0238】
使用したACT手順は、活性化工程と増強工程とで構成した。マウス頭蓋骨を通じた減衰は、0.5MHz及び2.7MHzの周波数について、それぞれ約21±17%及び42±21%であると測定された。これらの数値は、in situ音圧/MIを計算するために使用した。以下の超音波パラメータを各工程に使用した。
・ 活性化:中心周波数2.7MHz、メカニカルインデックス(MI)に対応する平均in situ音圧0.18、8サイクルのパルス長、パルス繰り返し周波数1kHz、及び照射時間60秒、
・ 増強:中心周波数0.5MHz、MIに対応する平均in situ音圧0.15、4サイクルのパルス長、パルス繰り返し周波数1kHz、及び照射時間300秒。
【0239】
ACTの1ラウンドは、2mL/kgのクラスター組成物のボーラス静脈内注射と、その後の360秒の照射で構成した。各動物は、3ラウンドのACTを受け、結果として、合計75μlのACT製剤及び18分間の超音波を受けた。CCPMは、1回目のACT手順の直前に静脈内注射した。
【0240】
動物を、医用空気中2%イソフルラン(78%)及び酸素(20%)(Baxter社、USA)を使用して麻酔し、その後、その外側尾静脈にカニューレを挿入した。体毛を、毛髪トリマー及び脱毛クリーム(Veet社、カナダ)を用いて除去した。ACT手順中に、動物を、医用空気中1.5~2%のイソフルランを使用して麻酔した。呼吸速度は、感圧プローブ(SA instruments社、USA)を使用してモニタリングし、体温は外部加熱で維持した。各動物は、CCPMの注射の直後に3ラウンドのACTを受けた。対照動物は、ACTを受けた動物と同じ方法で処理したが、クラスター組成物の代わりに50μlの生理食塩水注射を3回、6分間隔で与えた。
【0241】
ACT処置終了後1及び24時間の2つの時点で調査を行った。これらの時点で、動物をペントバルビタール(200μl)の腹腔内注射によって安楽死させ、呼吸が停止するまで麻酔下で維持した。その後、動物を30mLのPBSで経心臓的に灌流し、その後、脳を切除し、NIRFイメージング装置でイメージングした。群は、対照/1時間がN=3、対照/24時間がN=3、ACT/1時間がN=5、及びACT/24時間がN=2であった。
【0242】
切除した脳をNIRFイメージング装置(Pearl Impulse Imager、LI-COR Biosciences Ltd.社、USA)に入れて、脳内のCCPM(登録商標)の蓄積を評価した。脳を785nmで刺激し、820nmで蛍光発光を検出した。画像をImageJ(ImageJ 1.51j、USA)で分析した。関心領域(ROI)を、脳を囲んで描き、脳の総蛍光強度を取得し、脳の湿質量に対して正規化した。標準曲線を使用して、総蛍光強度を、脳組織のグラムあたりの注射用量に対する割合(% ID/g)に変換した。結果を、時点及び処置群ごとにプロットした。
【0243】
共焦点顕微鏡法のために、切除された脳を、Optimum Cutting Temperature Tissue Tek(Sakura社、オランダ)を用いてコルク片の上に横方向に取り付けてから、試料を液体窒素にゆっくりと浸した。凍った脳のうち、上から最初の500μmを取り除いた後、5×10μmの厚い切片と5×25μmの厚い切片を横方向に切断した。これを、脳全体で800μmごとに繰り返した。
【0244】
結果:
透過性の増加がCCPMの溢出を促進するかどうかを検討するために、切除された脳をNIRFイメージング装置でイメージングした。ナノ粒子を注射した対照及び動物の代表的なNIRF画像を図10(上部パネル)に示す。注目され得るように、ACTを受けた脳には、対照脳に反して、明確な蓄積が観察され得る。
【0245】
NIRF画像の定量分析は、ACTと対照動物との間での蓄積の統計的に有意な増加(% ID/g)を、両方の時点で明らかにした(図10、左下パネル)。対照と比較して、ACTでは、メディアン% ID/gが、ACTから1時間後に0.9% ID/gから2.6% ID/gに増加し、24時間後に0.8% ID/gから2.2% ID/gに増加した。それぞれ、% ID/g単位で290及び280%の増加が観察された。
【0246】
ACT処置後の脳組織におけるCCPMの蓄積の増加を検証し、血管に対するCCPMの位置を検討するために、脳切片をCLSMによってイメージングした。ACT処置された脳のタイルスキャンは、対照動物の脳では観察されなかったいくつかの蛍光の「雲」を示した。ACTから24時間後、ACT処置した脳のタイルスキャンは、1時間処置群と同様の雲パターンを示した。対照及びACT処置動物の両方の閾値タイルスキャンから、CCPMを表すピクセルの数を抽出し、半球の輪郭を描くために使用されるROIのサイズによって正規化した。図10(右下パネル)から分かるように、ACT処置後1時間の切片において、対照脳に反して、明確で統計的に有意な4.7倍の増加が観察され得る。
【0247】
対照脳及びACT処置脳の両方における様々な位置の高倍率CLSM画像を取得して、血管に対するCCPMの位置を調べた。ACT処置脳では、CCPMは明らかに溢出していたが、対照脳では、CCPMは主に血管内か又は血管染色からわずかに変位して観察された。
【0248】
結論:
本発明の2段階の照射アプローチを適用すると、ACTは、調査した70nmのCCPM化合物のような大きなナノ粒子構築物のBBBの透過性を明らかに増加させた。ACTは、CCPMの脳実質への蓄積、溢出、及び浸透の改善をもたらした。したがって、体の任意の血管障壁を横断して、ITA等の大きな薬物分子又は構築物を送達させるためのACTの能力を実証する。
【0249】
(実施例5(予測的))
黒色腫に関する同系マウスモデルにおけるPD-1抗体を用いる音響クラスター療法(ACT)のパイロット研究
近年まで、遠隔転移性黒色腫は、全身性療法に対して不応性であると考えられていた。腫瘍と、免疫系及びT細胞の調節のメカニズムとの間の相互作用のよりよい理解は、免疫チェックポイント阻害剤の開発につながった。このクラスの免疫療法剤は患者の臨床転帰を改善してきたが、奏効率は依然として30~40%の範囲であり、したがって、この療法レジメンを改善する明らかな医薬的な必要性がある。
【0250】
血管系の透過性を増加させるためにACTアプローチを用いることにより、活性化T細胞浸潤を増加させ、且つ免疫療法剤の送達を増加させ、T細胞活性化を改善する可能性があり得る。したがって、このことは、黒色腫を有する患者における免疫療法の処置転帰に対する大きな影響をもたらし得る。
【0251】
本研究の目的は、黒色腫に関する同系マウスモデルにおけるPD-1抗体と組み合わせたACTの抗腫瘍活性を評価することである。適用されるクラスター組成物及びACT手順は、実施例1及び3に説明される通りであろう。
【0252】
材料及び方法:
B16-F1細胞が、免疫能力を有するC57BL/6J Black 6マウスへと皮下移植され、週1回の原発腫瘍キャリパー測定により、疾患進行がモニタリングされる。腫瘍体積が30~40mm3に達したら、マウス(1群あたりn=12)を6つの群へと無作為化する:対照(生理食塩水)、US+PS101、抗マウスPD-1(CD279)、アイソタイプ抗体対照、抗マウスPD-1+US+PS101及びアイソタイプ抗体対照+US+PS101。
【0253】
研究継続期間は、腫瘍体積が150mm3に達するまでである。各群中の4匹の動物が、遺伝子発現RNA配列解析のために7日目に処分される(3.bを参照)。抗マウスPD-1又はアイソタイプ抗体が、週2回、200μg/マウスでi.p.投与され、その後、研究の継続期間にわたってPS101が投与される。エンドポイントは、原発腫瘍体積、体重曲線及び全生存期間である。
【0254】
各群からの4匹の動物が7日目に処分され、全トランスクリプトームmRNA解析(NanoString解析)のために腫瘍が摘出される。この解析からの結果に基づいて、選択された免疫経路、例えば、F4/80、CD3、CD4、CD8及びFoxp3抗体に関する免疫組織化学(IHC)分析が、研究終了時に摘出された腫瘍に対して行われる。エンドポイントは、7日目でのmRNA解析及び研究終了時でのIHC分析である。
【0255】
結果(予測的):結果は、抗PD1処置単独と比較して、ACTとの組合せが、以下の治療有効性エンドポイントのうちの1つ又は複数を満たすように導くことを示すであろう:腫瘍増殖阻害の顕著な増加、全生存期間中央値の顕著な増加、免疫細胞の腫瘍浸潤の顕著な増加。
【0256】
したがって、この研究は、本発明に従って免疫療法剤、例えば、抗PD1モノクローナル抗体をACTと組み合わせた場合の強力な相乗効果を確認するであろう。
【0257】
(実施例6)
音響クラスター療法(ACT)と免疫腫瘍学(IO)との間の相乗効果の予備的調査
研究の目的は、皮下黒色腫モデル(B16-F1、ATCC)におけるACTと組み合わせた免疫チェックポイント阻害剤の有効性を試験することであった。パイロット調査は2つの目的を有した:
a)ACTは化学療法剤送達を増強するので、ACTが腫瘍へのチェックポイント阻害剤送達を増強するはずであるという構想に基づいて、ACTが皮下黒色腫モデルにおいて免疫チェックポイント阻害剤の有効性を増強するかどうかを試験すること、及び
b)ACTが腫瘍における免疫原性反応を刺激する(すなわち、免疫学的に「コールド」である腫瘍を免疫学的に「ホット」にする)といういずれかの予備的証拠を得ることができるかどうか。
【0258】
方法:
研究は2部で行った。最初に、抗PD-1、抗CTLA4、又は抗PD-1と抗CTLA4との組合せのいずれかの、提案されたモデル(免疫能力を有するC57BL/6J Black 6マウスでのB16-F1、ATCC)において最適なチェックポイント阻害剤を確立するために、阻害剤設定研究を行った。選択された阻害剤単独でのレジメンが中等度の効果のみしか示さなかった場合であるという前提に基づいて、ACTと組み合わせた場合に改善された有効性の実証を可能にする可能性が最も高いであろうレジメンを確立するために、データを解析した。簡潔性のために、研究のこの部分の結果は、以下では報告されない。結果は、ACTを追加して行われた研究の第2部においてチェックポイント阻害剤として抗PD-1と抗CTLA4との組合せを用いると決断させた。
【0259】
クラスター組成物は、実施例1に記載された通りであった。「US+PS101」とは、本明細書に開示される通りの、ACT処置での超音波及びクラスター組成物の使用を意味する。
【0260】
腫瘍体積、マウス体重及び生存期間を、以下の処置群についてモニタリングした(n=12):
i)対照(生理食塩水)、
ii)チェックポイント阻害剤、
iii)アイソタイプ抗体対照(例えば、InVivoMabラットIgG2a)、
iv)チェックポイント阻害剤(抗PD-1及び抗CTLA4)+US+PS101(ACT)、
v)アイソタイプ抗体対照(IgG2a)+US+PS101(ACT)。
【0261】
ACT(登録商標)がチェックポイント阻害剤単独と比較してチェックポイント阻害剤の有効性を増強するかどうかを決定するために、データを解析した。
【0262】
腫瘍の免疫原性状態におけるいずれかの刺激された変化に関して試験するために、トランスクリプトームmRNA(20,000種類の遺伝子に関するTempO-Seq(c))解析及び選択された免疫経路バイオマーカーの解析のための免疫組織化学(IHC)のために、各群中の4匹の動物を7日目に処分した。研究終了時に摘出された腫瘍を固定し、潜在的なレトロスペクティブRNA配列解析及びIHCのために保存した。
【0263】
それぞれのその後のカニューレ挿入で増大した黒色マウスでの尾静脈へのカニューレ挿入の困難性、処置の開始のためのサイズ適合を困難にする触診及びキャリパーによる測定が困難であった極めて柔らかい高度に細胞性の腫瘍、並びに腫瘍ごとに非常に異なった速い増殖速度をはじめとする様々な問題が、モデルに伴って経験された。このことは、著しい腫瘍間での変動性をもたらし、これは結果を解釈する能力を制限する。増殖速度及び、おそらくは処置開始腫瘍体積における著しい腫瘍間での変動は、増殖曲線の実質的な不均一性をもたらした。これにもかかわらず、全てのマウスに関する平均増殖倍率での差異は異なる処置群について統計学的に有意でなかったが、注意深い解釈に対する傾向が観察された。アイソタイプ抗体IgG2aのみを用いる処置は、チェックポイント阻害剤の組合せである抗PD-11及び抗CTLA-4のみを用いた処置と同様の生理食塩水対照と比較した治療効果を有するように見えた。ACTの追加は、アイソタイプ及びチェックポイント阻害剤の両方の平均治療効果を若干改善したようであった。これらの結果の更なる解析は、いずれかの有意差が生じるかどうかを確かめるための腫瘍倍加時間の計算を含む可能性があったが、個別の腫瘍増殖曲線の検査は、処置群間での差異が、平均値間での差異よりも、処置マウス間での増殖速度の広がりでの差異に更に起因し得ることを示唆する。改善された応答を示すマウスの外れ値の数の増加に向かう傾向、又はACTの追加による二峰性分布の生成の示唆さえも見られた。このモデルでは、これが本物の所見であるかどうかを確認するために、より多くのマウスを用いる研究が必要であろう。
【0264】
生存曲線に関する所見、すなわち、アイソタイプ抗体が効果を有するようであったこと、及び有意でない傾向はACTが生存期間を延長し得ることを示唆するものであることは、平均増殖倍率に関するものと類似であった。
【0265】
処分のために選択されたマウスのサブセットに関する増殖曲線並びに腫瘍遺伝学解析及びIHC分析は、アイソタイプが応答を生起し、且つACTが応答を改善するという傾向を伴って、同様のストーリーを示唆する。ここで、更なる解析、例えば、腫瘍倍加時間の計算が、群間でのいずれかの有意性が発生しているかどうかを決定するために、ここでまた有意義であり得ることが明らかである。
【0266】
選択された免疫経路バイオマーカー(遺伝子)の免疫組織化学(IHC)分析:
ヒートマップ並びに正規化遺伝子発現及びIHCの他のグラフを、処置群に関して作成した。マップ及びグラフは色付けを含むので、含めることが適さず、知見は以下にまとめる。
【0267】
- 一方の解析は、全動物間での平均発現と比較して、各処置群に関する免疫経路遺伝子の発現の強度を示すヒートマップを提供した。選択された遺伝子は、以下の遺伝子であった:BCRシグナル伝達、M1活性化、MHCクラスI抗原提示、T細胞チェックポイントシグナル伝達、IFNg遺伝子、CTLA4シグナル伝達、MHCクラスII抗原提示、PP1シグナル伝達、TLRシグナル伝達。ヒートマップは、チェックポイント阻害剤(抗PD-1及び抗CTLA4)及びACTによって処置された処置群iv)に関して、全てのバイオマーカーが活性化され、ヒートマップにおいて赤色として見えることを明らかに示した。他の処置群は、全ての遺伝子に関して黄色から青色の色調に見え、比較的少ない活性化又は活性化が無いことを示した。
【0268】
- 別の解析は、以下の細胞の特異的免疫タイプに関連する遺伝子の発現の強度を示すヒートマップを提供した:異なる処置群に関して、T細胞、CD8 T細胞、単球、線維芽細胞、NK細胞、Masaat細胞、リンパ管、B由来内皮細胞、血管。ヒートマップは、チェックポイント阻害剤(抗PD-1及び抗CTLA4)及びACTによって処置された処置群iv)に関して、特にT細胞、CD8 T細胞及び単球が活性化され、ヒートマップにおいて赤色として見えることを明らかに示した。
【0269】
ACT単独によって処置された処置群が無いので、腫瘍の免疫原性状態での変化を生じるACTの潜在能力を、アイソタイプ抗体単独による処置とアイソタイプ+ACTによる処置との間での差次的(log2変化倍率)遺伝子発現として評価した。図13は、IgG単独による処置と比較した、ACTをアイソタイプ抗体(IgG)と組み合わせる場合の免疫遺伝子のみの発現として腫瘍の免疫原性状態に対するACTの影響を示す「ボルケーノプロット」を提供する。中央値が示される。有意な差次的発現を示さなかった遺伝子は標識されず、(B)でのみ点としてプロットされるが、有意であった遺伝子は点としてプロットされ、標識される。相対的に少ない免疫遺伝子が統計学的有意性に達した差次的配列を示し、このことは、より多くの動物、より不均一性が低いモデル及びACT単独で処置された群を用いる研究に対する必要性を強調した。
【0270】
生化学的経路に関する差次的発現の更なる解析は、アイソタイプ抗体単独と比較して、アイソタイプと組み合わせたACTが、低酸素症に対する応答をはじめとするいくつかの経路を顕著に(-log10(P)>1.3)下方調節し、他の経路を上方調節する傾向があったことを示唆した。これらの知見の重要性を検討する前に、より大型の研究、及びACT単独群を用いる研究が推奨される。したがって、遺伝子発現が表現型特性に関連することを確認するために、今後の相関イメージング(例えば、in vivo光音響イメージング、又は定量的形態組織学を用いる)に対する可能性が存在する。
【0271】
図14は、IgG単独による処置と比較した、ACTがアイソタイプ抗体(IgG)と組み合わせられた場合に下方調節(A)又は上方調節(B)された経路により示される通りのACTの遺伝学的作用を提供し、x軸は-log10(p値)を示す。
【0272】
パネルA:IgG+ACTで下方調節された経路。
【0273】
パネルB:IgG+ACTで上方調節された経路。
【0274】
文字は以下を示す:
GO:0001666-低酸素症に対する応答、
WP4206-遺伝性平滑筋腫症及び腎細胞癌経路、
GO:0001525-血管新生、
GO:0051235-位置の維持、
GO:0061061-筋肉構造発達、
GO:0006936-筋肉収縮、
GO:0097435-超分子線維構成、
GO:0043462-ATPアーゼ活性の調節、
GO:0030199-コラーゲン原線維構成、
GO:0030239-筋原線維アセンブリ、
GO:0044057-システムプロセスの調節。
【0275】
図15は、全体染色された腫瘍切片の自動化分析からの免疫組織化学的所見を提供する。CD8 T細胞に関して陽性に染色される細胞の割合が、個別の動物(黒色点)に関する処置群、並びに群平均(バー)及び標準偏差(エラーバー)により示される。x軸は処置群を示し、A:ACT+PD1/CTL4、B:PD1/CTL4、C:ACT+ISO、D:ISO、E:生理食塩水である。
【0276】
免疫経路遺伝子の発現の平均正規化強度はACTにより増加したように見えるが、これは単一腫瘍での増加に起因し、大きな群内での遺伝学的差異をマウス間で見て取ることができ、これは他の遺伝子に関して再現される。そのような遺伝学的不均一性は、がんの特徴であり、患者由来の腫瘍サンプルで見られる。患者由来の腫瘍サンプルを分析する場合、以前の研究が、RECIST(腫瘍縮小)基準(参考文献)により定義される通りの極端な応答者及び非応答者における遺伝子発現の研究から有用な結論を引き出した。ここでの同様のアプローチ、又は個別の動物における増殖曲線から測定される応答を有する遺伝子の特異的群の発現の強度を比較することさえも、将来の研究において有益であり得るが、このパイロット研究中の遺伝子解析に対して用いられた4匹よりも多くの動物を必要とするであろう。取り扱いがより容易であり、且つ不均一性がより低い増殖曲線を生成する腫瘍モデルの使用はまた、平均値に関して群間での差異におけるより大きな有意性を可能にする可能性もある。
【0277】
同様のパターンが、組織炎症シグネチャー(TIS)遺伝子に関して、及び細胞の免疫タイプに関連するものに関して現れた。TISは、潜在的な処置を導くために開発されている。
【0278】
このパイロット研究では、IHC分析は、これまで、CD8 T細胞に関する染色に限定されてきたが、切片は、更なる染色(例えば、CD4等に関する)に対して利用可能なままである。CD8は、細胞傷害性(いわゆる「キラー」)T細胞をはじめとする、適応免疫を媒介するために重要なT細胞の部分集団を染色する。本発明者の知見は、動物の少ない数及び対応する有意性の欠如についての注意を行わなければならないが、チェックポイント阻害剤又はアイソタイプによる処置へのACTの追加が、CD8陽性T細胞の高いパーセンテージを有する腫瘍の数を増加させたように見えたことを注記することは興味深い。
【0279】
得られた個別の結果のうちの多数の有意性の欠如にもかかわらず、結果を考え併せると、ACTがチェックポイント阻害剤の治療有効性を改善し、且つ腫瘍に向上した免疫原性応答を生じさせ得るというパターンを表すように見える。
【0280】
(実施例7(予測的))
様々な微小気泡及び微小液滴組成物を用いるクラスター組成物の製造
本発明が第1の成分及び第2の成分(C1及びC2)の様々な化学組成に関して適用可能であることを示すために、数種類の製剤を製造するか又は商業的に調達し、得られるクラスター組成物のin vitro属性に関して探索することができる。
【0281】
C1の例:
市販の微小気泡USイメージング剤であるSonovue(登録商標)(Bracco Spa社、イタリア)及びMicromarker(登録商標)(VisualSonics社、USA)を調達し、C1成分として用いることができる。Sonovueは、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルグリセロールナトリウム、パルミチン酸及びPEG4000の膜を用いて安定化された六フッ化硫黄微小気泡であり、5mLの水性マトリックスを用いて再構成される凍結乾燥形態で提示される。Micromarkerは、リン脂質、ポリエチレングリコール及び脂肪酸を用いて安定化されたペルフルオロブタン/窒素微小気泡であり、0.7mLの水性マトリックスによる再構成のための凍結乾燥形態で提示される。
【0282】
C2の例:
拡散性成分を含む微小液滴(C2)成分;
a)ペルフルオロジメチルシクロブタン、b)2-(トリフルオロメチル)ペルフルオロペンタン及びc)ペルフルオロヘキサンは、以下の通りに製造することができる:
790mgのジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)及び8.1mgのステアリルアミン(SA)を250ml丸底フラスコに測り入れ、50mlのクロロホルムを加える。透明な溶液が得られるまで、熱い水道水下でサンプルを加熱する。350mmHg及び40℃で、ロータリーエバポレーターによる乾燥までの蒸発によってクロロホルムを除去し、デシケーター中、50mmHgで一晩、更に乾燥させる。その後、160mlの水を加え、フラスコを再びロータリーエバポレーター上に置き、25分間、最高回転速度及び80℃の水浴温度により脂質を再水和させる。得られる脂質分散体を好適なバイアルへと移し、使用まで冷蔵庫で保存する。
【0283】
1mlの冷却脂質分散体のアリコートを2mlのクロマトグラフィーバイアルに移すことにより、エマルジョンを調製する。6本のバイアルのそれぞれに、上記の通りに100μlのフッ化炭素油を加える。クロマトグラフィーバイアルを、CapMix(Espe社)上で75秒間振盪する。得られるエマルジョンを、遠心分離及び下澄液(infranatant)の除去、次いで当量の水性5mM TRIS緩衝液の添加により3回洗浄する。バイアルを氷上で直ちに冷却し、プールし、使用まで冷却を維持する。
【0284】
微小液滴の体積濃度及び直径を決定するためにコールター計数解析を行い、続いて、4μl微小液滴/mlの分散相濃度まで、5mM TRIS緩衝液を用いてエマルジョンを希釈する。
【0285】
クラスター組成物の調製は、5mL又は0.7mLの上記のC2成分のそれぞれをそれぞれ用いてSonovue又はMicromarkerを再構成することにより行う。
【0286】
結果(予測的)
成分C1及びC2の混合時、全6種類の組合せが、1mlあたり1000万個超のクラスターを含み、3~10μmの平均直径を有することが予期される。
【符号の説明】
【0287】
実施例3
1 二周波数超音波トランスデューサ(2.7MHz及び500kHz出力)
2 超音波導波路
3 水浴
4 超音波ゲル
5 超音波吸収パッド
6 クラスター組成物を含む注入シリンジ
7 VeVoイメージング台
8 カテーテル
9 腫瘍
実施例4
1 アンプ
2 シグナル発生器
3 周波数のスイッチボックス(0.5MHzと2.7MHzとの間)
4 二周波数トランスデューサ
5 水を充填した円錐体
6 水を充填したバッグ
7 超音波ゲル
8 伏せた姿勢のマウス
9 イヤーバー
10 音響吸収パッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
【手続補正書】
【提出日】2023-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物対象の病理学的状態を処置する方法における使用ための微小気泡-微小液滴クラスター組成物及び少なくとも1つの免疫療法剤(ITA)を含む医薬組成物であって、前記方法
(i)前記対象に前記少なくとも1つの免疫療法剤(ITA)を投与する工程、
(ii)前記対象に前記微小気泡-微小液滴クラスター組成物を投与する工程であって、
前記少なくとも1つのITAが、前記クラスター組成物とは別個に、事前に、及び/又は同時に、及び/又は事後に投与される、工程、
(iii)工程(ii)からの前記クラスター組成物の前記微小液滴の拡散性成分の位相シフトを、1~10MHzの第1の周波数及び0.1~0.4の第1のメカニカルインデックスでの前記対象内の関心領域の超音波照射によって活性化する工程、
(iv)0.4~0.6MHzの第2の周波数及び0.1~0.3の第2のメカニカルインデックスでの超音波で更に照射する工
含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記工程(ii)~(iv)が1~4回繰り返される、請求項1に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
工程(iii)の前記照射が、工程(ii)の直後に開始され、工程(iv)の前記照射が直後に続く、請求項1又は2に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
工程(iii)の前記照射が30~120秒間続き、続いて工程(iv)の前記照射が3~10分間続く、請求項1~3のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
多剤併用処置の一部として用いられる、請求項1~4のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つのITAを含む1~5種の治療剤が、一定の期間にわたって同時に又は順次投与され、工程(ii)~(iv)を含む少なくとも1回の、例えば1~5回のACT処置が、同じ期間中に行われる、請求項1~5のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記微小気泡-微小液滴クラスター組成物が、別個に、事前に、及び/若しくは同時に、及び/若しくは事後に投与されたITA及び/若しくは炎症性サイトカインの増強された溢出及び取込み並びに/又は標的病理への活性化免疫細胞の増強された浸潤を促進する、請求項1~6のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
広帯域又は二周波数のUSトランスデューサが、工程(iii)の活性化照射及び工程(iv)の更なる照射の両方で使用される、請求項1~7のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記クラスターが、3~10μmの範囲、好ましくは4~9μmの範囲の平均直径を有する、請求項1~8のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
サイズ範囲1~10μmのクラスターのクラスター濃度が、少なくとも2500万個/mlである、請求項1~8のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1又は9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記微小気泡-微小液滴クラスターの前記微小気泡のガスが、六フッ化硫黄又はC3~6ペルフルオロカーボン又はその混合物を含む、請求項1~8のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1、9又は10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記微小気泡-微小液滴クラスターの前記微小液滴の油相が、部分的又は完全にハロゲン化された炭化水素又はその混合物を含む、請求項1~8のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び9~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記微小気泡が、負に荷電した界面活性剤を任意選択で添加された、リン脂質、タンパク質、又はポリマーを含む第1の安定剤を含み、前記微小液滴が、正に荷電した界面活性剤を任意選択で添加された、リン脂質、タンパク質、又はポリマーを含む第2の安定剤を含む、請求項1~8のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び9~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記治療剤が、ビヒクルで製剤化されており、例えば、リポソーム、ミセル、コンジュゲート、ナノ粒子、コア架橋ポリマーミセル(CCPM)、若しくはマイクロスフェアの形態で含まれている、請求項1~8のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び9~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1つのITAが、免疫腫瘍学薬剤、モノクローナル抗体(mAb)、融合タンパク質、可溶性サイトカイン受容体、組み換えサイトカイン、小分子模倣薬、細胞療法、がんワクチン及び腫瘍溶解性ウイルスの群から選択される、請求項1~8又は14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び9~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記免疫療法剤がモノクローナル抗体の群から選択される、請求項15に規定の使用のための、請求項1及び9~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
少なくとも1つのITAを用いる前記処置が、1つ又は複数の化学療法剤を用いる処置と組み合わせられる、請求項1~8又は14~16のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び9~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記1つ又は複数のITAが、CD1~CD371と命名される抗原のうちのいずれかを標的化する能力を有するITAから選択される、請求項1~8又は14~17のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び9~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記ITAが、モノクローナル抗体抗PD1、抗PDL1及びCTLA4の群から選択され、化学療法剤と組み合わせて用いられる、請求項1~8又は14~18のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び9~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記1つ又は複数のITAが免疫チェックポイント阻害剤の群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び9~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記ITA、又は前記ITAの製剤化された形態が、15,000ダルトンを超える分子量を有する、請求項1~20のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び9~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記使用が、がん又は自己免疫疾患の処置のためのものである、請求項1~20のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び9~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記使用が、がんの、例えば局所的な病理学的病変、固形がん、例えば黒色腫、肉腫、前立腺がん、結腸がん、肛門がん、食道がん、胃がん、直腸がん、小腸がん、肝臓がん、膵臓がん、肺がん、腎がん、乳がん、脳がん、胆管がん、頭頸部がん若しくはリンパ腫の処置のため、又は自己免疫疾患、例えば乾、狼瘡、関節リウマチ、クローン病、多発性硬化症若しくは円形脱毛症の処置のため、又は臓器移植後の拒絶を回避するためのものである、請求項1~20のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び9~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記クラスター組成物が、前記微小気泡-微小液滴クラスター組成物を調製する第1の成分の微小気泡と第2の成分の微小液滴とを組み合わせることから3時間の時間枠内に投与される、請求項1~23のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1及び9~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
別個に、事前に、及び/若しくは同時に、及び/若しくは事後に投与された少なくとも1つの免疫療法剤(ITA)及び/又は炎症性サイトカインの溢出及び取込みの方法であって、
(i)前記対象に少なくとも1つのITAを投与する工程、
(ii)前記対象に微小気泡-微小液滴クラスター組成物を投与する工程であって、前記少なくとも1つのITAが、前記クラスター組成物に対して、事前に、及び/又は同時に、及び/又は事後に投与される、工程、
(iii)工程(i)からの前記クラスター組成物の前記微小液滴の拡散性成分の位相シフトを、1~10MHzの第1の周波数及び0.1~0.4の第1のメカニカルインデックスでの前記対象内の関心領域の超音波照射によって活性化する工程、
(iv)0.4~0.6MHzの第2の周波数及び0.1~0.3の第2のメカニカルインデックスでの超音波で更に照射する工程
を含む、方法
【請求項26】
前記方法工程及びクラスター組成物が、請求項1~24のいずれか一項に規定される通りである、請求項25に記載の方法
【請求項27】
哺乳動物対象へと少なくとも1つの免疫療法剤(ITA)を送達する方法であって、
(i)前記対象に少なくとも1つのITAを投与する工程、
(ii)前記対象に微小気泡-微小液滴クラスター組成物を投与する工程であって、前記少なくとも1つのITAが、前記クラスター組成物に対して事前に、及び/又は同時に、及び/又は事後に投与される、工程、
(iii)工程(i)からの前記クラスター組成物の前記微小液滴の拡散性成分の位相シフトを、1~10MHzの第1の周波数及び0.1~0.4の第1のメカニカルインデックスでの前記対象内の関心領域の超音波照射によって活性化する工程、
(iv)0.4~0.6MHzの第2の周波数及び0.1~0.3の第2のメカニカルインデックスでの超音波で更に照射する工程
を含む、方法。
【請求項28】
前記方法工程及びクラスター組成物が、請求項1~24のいずれか一項に規定される通りである、請求項27に記載の少なくとも1つのITAを送達するための方法。
【請求項29】
哺乳動物対象の標的病理への活性化免疫細胞浸潤を増強するための方法であって、
(i)前記対象に少なくとも1つの免疫療法剤(ITA)を投与する工程、
(ii)前記対象に微小気泡-微小液滴クラスター組成物を投与する工程であって、
前記少なくとも1つのITAが、前記クラスター組成物とは別個に、事前に、及び/又は同時に、及び/又は事後に投与される、工程、
(iii)工程(ii)からの前記クラスター組成物の前記微小液滴の拡散性成分の位相シフトを、1~10MHzの第1の周波数及び0.1~0.4の第1のメカニカルインデックスでの前記対象内の関心領域の超音波照射によって活性化する工程、
(iv)0.4~0.6MHzの第2の周波数及び0.1~0.3の第2のメカニカルインデックスでの超音波で更に照射する工程
を含む、方法。
【請求項30】
哺乳動物対象の病理学的状態の処置のための医薬組成物であって、
微小気泡-微小液滴クラスターであって、1~10MHzの第1の周波数及び0.1~0.4の第1のメカニカルインデックスでの超音波に曝露される場合、前記クラスターの前記微小液滴の拡散性成分の位相シフトが活性化され、0.4~0.6MHzの第2の周波数及び0.1~0.3の第2のメカニカルインデックスでの超音波に曝露される場合、生体力学的効果が誘導される、微小気泡-微小液滴クラスター、並びに
少なくとも1つの免疫療法剤
を含む、医薬組成物。
【国際調査報告】