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特表2024-523101ペキシダルチニブを調製するためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】ペキシダルチニブを調製するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20240621BHJP
   C07F 5/02 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 31/444 20060101ALI20240621BHJP
   C07D 213/80 20060101ALI20240621BHJP
   C07D 213/74 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240621BHJP
   B01J 31/24 20060101ALI20240621BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20240621BHJP
   B01J 31/04 20060101ALI20240621BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240621BHJP
【FI】
C07D471/04 104Z
C07F5/02 A CSP
C07F5/02 F
A61K31/444
C07D213/80
C07D213/74
A61P35/00
B01J31/24 Z
B01J31/22 Z
B01J31/04 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565349
(86)(22)【出願日】2022-06-13
(85)【翻訳文提出日】2023-12-07
(86)【国際出願番号】 GB2022051484
(87)【国際公開番号】W WO2022263801
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】63/210,718
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】シュランク、ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】スラック、エリック
【テーマコード(参考)】
4C086
4G169
4H039
4H048
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA04
4C086CB05
4C086MA01
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4C086ZB26
4G169AA06
4G169BA21B
4G169BA27A
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4G169BA28A
4G169BA28B
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4G169BC66A
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4G169BC72B
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4G169BE03A
4G169BE03B
4G169BE04A
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4G169BE07B
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4G169BE14A
4G169BE14B
4G169BE16A
4G169BE16B
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4G169BE26B
4G169BE27A
4G169BE27B
4G169BE34B
4G169BE38A
4G169BE38B
4G169BE46A
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4G169CB02
4G169CB25
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4G169CB70
4H039CA42
4H039CD40
4H039CD90
4H048AA01
4H048AB84
4H048VA32
4H048VA75
4H048VB10
(57)【要約】
本発明は、式(VI)の化合物、又はその塩若しくは誘導体を調製するためのプロセスであって、式(V)の化合物と、式(IX)の化合物(式中、R、R、R及びZが、本明細書に記載される通りである)とを、第10族遷移金属触媒、塩基、及び水の存在下で反応させて、式(VI)の化合物を得ることを含む、プロセスに関する。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(VI)の化合物、又はその塩若しくは誘導体を調製するためのプロセスであって、
【化1】

式(V)の化合物
【化2】

(式中、Rが、置換又は非置換のC1~20直鎖又はC3~20分枝鎖アルキル基である)と、
式(IX)の化合物
【化3】

(式中、
Zが、-SOR’’又は-COであり、
R’’が、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基であり、
が、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基であり、
及びRが、独立して、H、又は1~20個の炭素原子を含む置換若しくは非置換の有機基であるか、又は、それらが結合している原子と一緒になって、R及びRが環を形成する)とを、
第10族遷移金属触媒、塩基、及び水の存在下で反応させて、前記式(VI)の化合物を得ることを含む、プロセス。
【請求項2】
前記第10族遷移金属触媒が、ニッケル触媒、パラジウム触媒、又は白金触媒、好ましくはパラジウム触媒である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記パラジウム触媒が、PdCl(dippf)である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記式(V)の化合物を前記式(IX)の化合物と反応させることが、アルコール又はアルコールの混合物、好ましくはtert-アミルアルコール及び/又はイソプロパノールを含む溶媒中で行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記式(V)の化合物が、前記式(IX)の化合物、前記第10族遷移金属触媒、前記塩基及び前記水の存在下で、式(IV)の化合物、又はその塩と
【化4】

式RO(CO)ORの炭酸ジアルキル(式中、各Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖又はC3~20分枝鎖アルキル基である)とを反応させることによって系中で調製される、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記式(V)の化合物が、式(IV)の化合物、又はその塩と
【化5】

式RO(CO)ORの炭酸ジアルキル(式中、各Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖又はC3~20分枝鎖アルキル基である)とを塩基存在下で反応させることによって調製される、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記式(IV)の化合物が、式(III)の化合物
【化6】

(式中、Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基である)を、
第8族遷移金属触媒及び塩基の存在下で、水素で還元することによって調製される、請求項5又は6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記第8族遷移金属触媒が、鉄触媒、ルテニウム触媒又はオスミウム触媒、好ましくはルテニウム触媒である、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ルテニウム触媒が、Ru-SNSである、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記式(III)の化合物が、式(I)の化合物
【化7】

(式中、Rが、上で定義した通りである)と、
式(II)の化合物とを、
【化8】

酸触媒の存在下で反応させることによって調製される、請求項7~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記式(IX)の化合物が、式(VIII)の化合物
【化9】

(式中、Zが、-SOR’’又は-COであり、
R’’が、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基であり、
が、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基である)と、
ホウ素化剤とを、第9族遷移金属触媒の存在下で反応させることによって調製される、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記第9族遷移金属触媒が、コバルト触媒、ロジウム触媒、又はイリジウム触媒、好ましくはイリジウム触媒である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記イリジウム触媒が、クロロ(1,5-シクロオクタジエン)(1,10-フェナントロリン)イリジウム(I)又はクロロ(1,5-シクロオクタジエン)(1,10-フェナントロリン)イリジウム(I)・THF付加物である、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記ホウ素化剤が、Bpin、HBpin、ビス(3-エチル-3-ペントキシ)ボラン、(ジヒドロキシボラニル)ホウ酸、HBcat及びビス(カテコラト)二ホウ素から選択され、好ましくはBpinである、請求項11~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記式(VIII)の化合物が、式(VII)の化合物と、
【化10】

式R’’SOのハロゲン化スルホニル(式中、Xが、ハロゲン化物であり、R’’が、上記で定義した通りである)又は式(RO(CO))Oの化合物(式中、Rが、上記で定義した通りである)とを反応させることによって調製される、請求項11~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
式(VI)の化合物、又はその塩若しくは誘導体を調製するためのプロセスであって、
【化11】

式(I)の化合物
【化12】

(式中、Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基である)と、
式(II)の化合物とを、
【化13】

酸触媒の存在下で反応させて、式(III)の化合物
【化14】

(式中、Rが、上で定義した通りである)を得ることと、
前記式(III)の化合物を、第8族遷移金属触媒及び第1の塩基の存在下で、水素で還元して、式(IV)の化合物を得ることと
【化15】

前記式(IV)の化合物、又はその塩と、式RO(CO)ORの炭酸ジアルキル(式中、各Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖又はC3~20分枝鎖アルキル基である)とを第2の塩基存在下で反応させ、式(V)の化合物
【化16】

(式中、Rが、上で定義した通りである)を得ることと、
式(VII)の化合物と、
【化17】

式R’’SOのハロゲン化スルホニル(式中、Xが、ハロゲン化物であり、R’’が、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基である)、又は式(RO(CO))Oの化合物(式中、Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基である)とを反応させ、式(VIII)の化合物
【化18】

(式中、Zが、-SOR’’又は-COであり、
R’’及びRが、上で定義した通りである)を得ることと、
前記式(VIII)の化合物と、ホウ素化剤とを、第9族遷移金属触媒の存在下で反応させ、式(IX)の化合物
【化19】

(式中、Zが、上で定義した通りであり、
及びRが、独立して、H、又は1~20個の炭素原子を含む置換若しくは非置換の有機基であるか、又は、それらが結合している原子と一緒になって、R及びRが環を形成する)を得ることと、
前記式(V)の化合物と、前記式(IX)の化合物とを、第10族遷移金属触媒、第3の塩基、及び水の存在下で反応させて、前記式(VI)の化合物を得ることと、を含む、プロセス。
【請求項17】
式(VI)の化合物、又はその塩若しくは誘導体を調製するためのプロセスであって、
【化20】

式(I)の化合物
【化21】

(式中、Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基である)と、
式(II)の化合物とを、
【化22】

酸触媒の存在下で反応させて、式(III)の化合物
【化23】

(式中、Rが、上で定義した通りである)を得ることと、
前記式(III)の化合物を、第8族遷移金属触媒及び第1の塩基の存在下で、水素で還元して、式(IV)の化合物を得ることと
【化24】

式(VII)の化合物と、
【化25】

式R’’SOのハロゲン化スルホニル(式中、Xが、ハロゲン化物であり、R’’が、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基である)、又は式(RO(CO))Oの化合物(式中、Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基である)とを反応させ、式(VIII)の化合物
【化26】

(式中、Zが、-SOR’’又は-COであり、
R’’及びRが、上で定義した通りである)を得ることと、
前記式(VIII)の化合物と、ホウ素化剤とを、第9族遷移金属触媒の存在下で反応させ、式(IX)の化合物
【化27】

(式中、Zが、上で定義した通りであり、
及びRが、独立して、H、又は1~20個の炭素原子を含む置換若しくは非置換の有機基であるか、又は、それらが結合している原子と一緒になって、R及びRが環を形成する)を得ることと、
式(V)の化合物
【化28】

(式中、Rが、置換又は非置換のC1~20直鎖又はC3~20分枝鎖アルキル基である)と、
前記式(IX)の化合物とを、第10族遷移金属触媒、第3の塩基、及び水の存在下で反応させて、前記式(VI)の化合物を得ることと、を含み、
前記式(V)の化合物が、前記式(IX)の化合物、前記第10族遷移金属触媒、前記第3の塩基及び水の存在下で、前記式(IV)の化合物、又はその塩と、式RO(CO)ORの炭酸ジアルキル(式中、各Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖又はC3~20分枝鎖アルキル基である)とを反応させることによって系中で調製される、プロセス。
【請求項18】
前記式(III)の化合物が、
【化29】

である、請求項7~10、16若しくは17、又は請求項7に従属するときの請求項11~15のいずれか一項のプロセス。
【請求項19】
前記式(V)の化合物が、
【化30】

である、請求項1~18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記式(IX)の化合物が、
【化31】

である、請求項1~19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記式(V)の化合物と前記式(IX)の化合物との反応が、ルイス酸の存在下で行われる、請求項1~20のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項22】
式(III)の化合物、又はその塩若しくは誘導体であって
【化32】

式中、Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基である、化合物、又はその塩若しくは誘導体。
【請求項23】
式(V)の化合物、又はその塩若しくは誘導体であって
【化33】

式中、Rが、置換又は非置換のC1~20直鎖又はC3~20分枝鎖アルキル基である、化合物、又はその塩若しくは誘導体。
【請求項24】
式(IX)の化合物、又はその塩若しくは誘導体であって、
【化34】

式中、Zが、-SOR’’又は-COであり、
R’’が、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基であり、
が、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基であり、
及びRが、独立して、H、又は1~20個の炭素原子を含む置換若しくは非置換の有機基であるか、又は、それらが結合している原子と一緒になって、R及びRが環を形成し、
但し、Zがトシルではない、化合物、又はその塩若しくは誘導体。
【請求項25】
請求項22~24のいずれか一項に記載の化合物を含む、医薬組成物。
【請求項26】
医薬として使用するための、請求項22~24のいずれか一項に記載の化合物、又は請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
がんの治療において使用するための、請求項22~24のいずれか一項に記載の化合物、又は請求項25に記載の組成物であって、好ましくは、前記がんが、腱滑膜巨細胞腫瘍(TGCT)である、化合物、又は組成物。
【請求項28】
がんの治療のための医薬の製造のための、請求項22~24のいずれか一項に記載の化合物、又は請求項25に記載の組成物であって、好ましくは、前記がんが、腱滑膜巨細胞腫瘍(TGCT)である、化合物、又は組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペキシダルチニブ、又はその塩若しくは誘導体を調製するための新規プロセス、及びその合成中に作製される中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
ペキシダルチニブ(以下に示す)は、腱滑膜巨細胞腫瘍(tenosynovial giant cell tumor、TGCT)を治療するために使用されるキナーゼ阻害剤薬物である。
【0003】
【化1】
【0004】
ペキシダルチニブへの合成経路は、例えば国際公開第2016/179412号、国際公開第2008/063888号、及び中国特許第110156775号に記載されている。国際公開第2016/179412号には、ペキシダルチニブの調製のための多段階プロセスが記載されている。このプロセスは、2-[(ジ-tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-5-ホルミルピリジン中間体の調製を伴い、その工程は収率が低く、かつ/又は毒性及び/又は高価な試薬の使用を必要とする。合成におけるその後の工程はまた、化学量論量を超える毒性及び腐食性試薬(例えば、トリフルオロ酢酸及びトリエチルシラン)の使用を伴う。加えて、トリエチルシランは、きわめて自然発火性である。同様の欠点が、国際公開第2008/063888号及び中国特許第110156775号に記載されているプロセスにおいて生じる。
【0005】
したがって、高価及び/又は有毒かつ腐食性の試薬の必要性を回避し、より穏やかな条件の使用を可能にする、ペキシダルチニブの調製のための新規プロセスを提供する必要性が存在する。これに沿って、この重要な医薬化合物へのより環境に優しい経路を達成することも望まれている。
【発明の概要】
【0006】
第1の態様から見ると、本発明は、式(VI)の化合物、又はその塩若しくは誘導体を調製するためのプロセスであって、
【0007】
【化2】

式(V)の化合物
【0008】
【化3】

(式中、Rが、置換又は非置換のC1~20直鎖又はC3~20分枝鎖アルキル基である)と、
式(IX)の化合物
【0009】
【化4】

(式中、
Zが、-SOR’’又は-COであり、
R’’が、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基であり、
が、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基であり、
及びRが、独立して、H、又は1~20個の炭素原子を含む置換若しくは非置換の有機基であるか、又は、それらが結合している原子と一緒になって、R及びRが環を形成する)とを、
第10族遷移金属触媒、塩基、及び水の存在下で反応させて、上述の式(VI)の化合物を得ることを含む、プロセスを提供する。
【0010】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(V)の化合物は、上述の式(IX)の化合物、上述の第10族遷移金属触媒、上述の塩基及び上述の水の存在下で、式(IV)の化合物、又はその塩と
【0011】
【化5】

式RO(CO)ORの炭酸ジアルキル(式中、各Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖又はC3~20分枝鎖アルキル基である)とを反応させることによって系中で調製される。
【0012】
本発明の代替的な好ましいプロセスにおいて、式(V)の化合物は、式(IV)の化合物、又はその塩と、
【0013】
【化6】

式RO(CO)ORの炭酸ジアルキル(式中、各Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖又はC3~20分枝鎖アルキル基である)とを、塩基存在下で反応させることによって調製される。
【0014】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(IV)の化合物は、式(III)の化合物
【0015】
【化7】

(式中、Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基である)を、
第8族遷移金属触媒及び塩基の存在下で、水素で還元することによって調製される。
【0016】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(III)の化合物は、式(I)の化合物
【0017】
【化8】

(式中、Rが、上で定義した通りである)と、
式(II)の化合物とを、
【0018】
【化9】

酸触媒の存在下で反応させることによって調製される。
【0019】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(IX)の化合物は、式(VIII)の化合物
【0020】
【化10】

(式中、Zが、-SOR’’又は-COであり、
R’’が、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基であり、
が、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基である)と、
ホウ素化剤とを、第9族遷移金属触媒の存在下で反応させることによって調製される。
【0021】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(VIII)の化合物は、式(VII)の化合物と、
【0022】
【化11】

式R’’SOのハロゲン化スルホニル(式中、Xが、ハロゲン化物であり、R’’が、上記で定義した通りである)又は式(RO(CO))Oの化合物(式中、Rが、上記で定義した通りである)とを反応させることによって調製される。
【0023】
したがって、更なる態様から見ると、本発明は、式(VI)の化合物、又はその塩若しくは誘導体を調製するためのプロセスであって、
【0024】
【化12】

式(I)の化合物
【0025】
【化13】

(式中、Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基である)と、
式(II)の化合物とを、
【0026】
【化14】

酸触媒の存在下で反応させて、式(III)の化合物
【0027】
【化15】

(式中、Rが、上で定義した通りである)を得ることと、
上述の式(III)の化合物を、第8族遷移金属触媒及び第1の塩基の存在下で、水素で還元して、式(IV)の化合物を得ることと
【0028】
【化16】

上述の式(IV)の化合物、又はその塩と、式RO(CO)ORの炭酸ジアルキル(式中、各Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖又はC3~20分枝鎖アルキル基である)とを第2の塩基存在下で反応させ、式(V)の化合物
【0029】
【化17】

(式中、Rが、上で定義した通りである)を得ることと、
式(VII)の化合物と、
【0030】
【化18】

式R’’SOのハロゲン化スルホニル(式中、Xが、ハロゲン化物であり、R’’が、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基である)、又は式(RO(CO))Oの化合物(式中、Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基である)とを反応させ、式(VIII)の化合物
【0031】
【化19】

(式中、Zが、-SOR’’又は-COであり、
R’’及びRが、上で定義した通りである)を得ることと、
上述の式(VIII)の化合物と、ホウ素化剤とを、第9族遷移金属触媒の存在下で反応させ、式(IX)の化合物
【0032】
【化20】

(式中、Zが、上で定義した通りであり、
及びRが、独立して、H、又は1~20個の炭素原子を含む置換若しくは非置換の有機基であるか、又は、それらが結合している原子と一緒になって、R及びRが環を形成する)を得ることと、
上述の式(V)の化合物と、上述の式(IX)の化合物とを、第10族遷移金属触媒、第3の塩基、及び水の存在下で反応させて、上述の式(VI)の化合物を得ることと、を含む、プロセスを提供する。
【0033】
更なる態様から見ると、本発明は、式(VI)の化合物、又はその塩若しくは誘導体を調製するためのプロセスであって、
【0034】
【化21】

式(I)の化合物
【0035】
【化22】

(式中、Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基である)と、
式(II)の化合物とを、
【0036】
【化23】

酸触媒の存在下で反応させて、式(III)の化合物
【0037】
【化24】

(式中、Rが、上で定義した通りである)を得ることと、
上述の式(III)の化合物を、第8族遷移金属触媒及び第1の塩基の存在下で、水素で還元して、式(IV)の化合物を得ることと
【0038】
【化25】

式(VII)の化合物と
【0039】
【化26】

式R’’SOのハロゲン化スルホニル(式中、Xが、ハロゲン化物であり、R’’が、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基である)、又は式(RO(CO))Oの化合物(式中、Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基である)とを反応させ、式(VIII)の化合物
【0040】
【化27】

(式中、Zが、-SOR’’又は-COであり、
R’’及びRが、上で定義した通りである)を得ることと、
上述の式(VIII)の化合物と、ホウ素化剤とを、第9族遷移金属触媒の存在下で反応させ、式(IX)の化合物
【0041】
【化28】

(式中、Zが、上で定義した通りであり、
及びRが、独立して、H、又は1~20個の炭素原子を含む置換若しくは非置換の有機基であるか、又は、それらが結合している原子と一緒になって、R及びRが環を形成する)を得ることと、
式(V)の化合物
【0042】
【化29】

(式中、Rが、置換又は非置換のC1~20直鎖又はC3~20分枝鎖アルキル基である)と、
上述の式(IX)の化合物とを、第10族遷移金属触媒、第3の塩基、及び水の存在下で反応させて、上述の式(VI)の化合物を得ることと、を含み、
上述の式(V)の化合物が、式(IX)の化合物、第10族遷移金属触媒、第3の塩基及び水の存在下で、上述の式(IV)の化合物、又はその塩と、式RO(CO)ORの炭酸ジアルキル(式中、各Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖又はC3~20分枝鎖アルキル基である)とを反応させることによって系中で調製される、プロセスを提供する。
【0043】
更なる態様から見ると、本発明は、式(III)の化合物、又はその塩若しくは誘導体であって
【0044】
【化30】

式中、Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基である、化合物、又はその塩若しくは誘導体を提供する。
【0045】
更なる態様から見ると、本発明は、式(V)の化合物、又はその塩若しくは誘導体であって
【0046】
【化31】

式中、Rが、置換又は非置換のC1~20直鎖又はC3~20分枝鎖アルキル基である、化合物、又はその塩若しくは誘導体を提供する。
【0047】
更なる態様から見ると、本発明は、式(IX)の化合物、又はその塩若しくは誘導体であって
【0048】
【化32】

Zが、-SOR’’又は-COであり、
R’’が、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基であり、
が、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基であり、
及びRが、独立して、H、又は1~20個の炭素原子を含む置換若しくは非置換の有機基であるか、又は、それらが結合している原子と一緒になって、R及びRが環を形成し、
但し、Zがトシルではない、化合物、又はその塩若しくは誘導体を提供する。
【0049】
更なる態様から見ると、本発明は、本明細書で先に記載した化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0050】
更なる態様から見ると、本発明はまた、医薬として使用するための本明細書で先に記載した化合物及び組成物を提供する。
【0051】
更なる態様から見ると、本発明はまた、がんの治療において使用するための、本明細書で先に記載した化合物及び組成物であって、好ましくは、がんが、腱滑膜巨細胞腫瘍(TGCT)である、化合物及び組成物を提供する。
【0052】
更なる態様から見ると、本発明はまた、がんの治療のための医薬の製造のための、本明細書で先に記載した化合物及び組成物の使用であって、好ましくは、がんが、腱滑膜巨細胞腫瘍(TGCT)である、使用を提供する。
【0053】
定義
部分又は置換基の結合点は、「-」によって表される。例えば、-OHは、酸素原子を介して結合される。
【0054】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、直鎖又は分枝鎖飽和炭化水素基を指す。特定の実施形態において、アルキル基は、1~20個の炭素原子、特定の実施形態において、1~15個の炭素原子、特定の実施形態において、1~8個の炭素原子を有し得る。アルキル基は、非置換であり得る。代替的に、アルキル基は、置換され得る。別途指定されない限り、アルキル基は、任意の好適な炭素原子において結合され得、置換される場合、任意の好適な原子において置換され得る。典型的なアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」という用語は、飽和炭素環式炭化水素基を指す。シクロアルキル基は、単一の環又は複数の縮合環を有し得る。特定の実施形態において、シクロアルキル基は、3~15個の炭素原子、特定の実施形態において、3~10個の炭素原子、特定の実施形態において、3~8個の炭素原子を有し得る。シクロアルキル基は、非置換であり得る。代替的に、シクロアルキル基は、置換され得る。別途指定されない限り、シクロアルキル基は、任意の好適な炭素原子において結合され得、置換される場合、任意の好適な原子において置換され得る。典型的なシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む直鎖又は分枝鎖の不飽和炭化水素基を指す。
【0057】
本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、芳香族炭素環式基を指す。アリール基は、単一の環又は複数の縮合環を有し得る。特定の実施形態において、アリール基は、6~20個の炭素原子、特定の実施形態において、6~15個の炭素原子、特定の実施形態において、6~12個の炭素原子を有し得る。アリール基は、非置換であり得る。代替的に、アリール基は、置換され得る。別途指定されない限り、アリール基は、任意の好適な炭素原子において結合され得、置換される場合、任意の好適な原子において置換され得る。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アントラセニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
本明細書で使用される場合、「アルコキシ」という用語は、式アルキル-O-又はシクロアルキル-O-(式中、アルキル及びシクロアルキルは、上記で定義されたとおりである)の任意選択的に置換された基を指す。
【0059】
本明細書で使用される場合、「アリールアルキル」という用語は、式アリール-アルキル-(式中、アリール及びアルキルは、上に定義したとおりである)の任意選択的に置換された基を指す。
【0060】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアルキル」という用語は、1つ以上の炭素原子が1つ以上のヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、リン及び/又は硫黄原子)で独立して置き換えられた直鎖又は分枝鎖飽和炭化水素基を指す。ヘテロアルキル基は、非置換であり得る。代替的に、ヘテロアルキル基は、置換され得る。別途指定されない限り、ヘテロアルキル基は、任意の好適な原子において結合され得、置換される場合、任意の好適な原子において置換され得る。ヘテロアルキル基の例としては、エーテル、チオエーテル、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクロアルキル」という用語は、1つ以上の炭素原子が1つ以上のヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、リン及び/又は硫黄原子)で独立して置き換えられた飽和環状炭化水素基を指す。ヘテロシクロアルキル基は、非置換であり得る。代替的に、ヘテロシクロアルキル基は、置換され得る。別途指定されない限り、ヘテロシクロアルキル基は、任意の好適な原子において結合され得、置換される場合、任意の好適な原子において置換され得る。ヘテロシクロアルキル基の例としては、エポキシド、モルホリニル、ピペラジニル(piperadinyl)、ピペラジニル(piperazinyl)、チラニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、チアゾリジニル、チオモルホリニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」という用語は、1つ以上の炭素原子が1つ以上のヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、リン及び/又は硫黄原子)で独立して置き換えられた芳香族炭素環式基を指す。ヘテロアリール基は、非置換であり得る。代替的に、ヘテロアリール基は、置換され得る。別途指定されない限り、ヘテロアリール基は、任意の好適な原子において結合され得、置換される場合、任意の好適な原子において置換され得る。ヘテロアリール基の例としては、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、チオフェニル、オキサジアゾリル、ピリジニル、ピリミジル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、キノリニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
本明細書で使用される場合、「置換」という用語は、1つ以上の水素原子が各々、同じ又は異なり得る置換基(例えば、1、2、3、4、5つ、又はそれより多く)で独立して置き換えられた基を指す。置換基の例としては、-ハロ、-C(ハロ)、-R、=O、=S、-O-R、-S-R、-NR、-CN、-NO、-C(O)-R、-COOR、-C(S)-R、-C(S)OR、-S(O)OH、-S(O)-R、-S(O)NR、-O-S(O)-R及び-CONR、例えば、ハロ、-C(ハロ)(例えば、-CF)、-R、-O-R、-NR、-PR、-CN、又は-NOが挙げられるが、これらに限定されない。R、R及びRは、H、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリールからなる群から独立して選択されるか、又は、R及びRは、それらが結合している原子と一緒になって、ヘテロシクロアルキル基を形成する。R、R及びRは、本明細書で定義されるように、非置換であり得るか、又は更に置換され得る。
【0064】
本明細書で使用される場合、「カップリング」という用語は、2つの分子又は分子の一部が一緒に接続する化学反応を指す(Oxford Dictionary of Chemistry,Sixth Edition,2008)。
【0065】
本明細書で使用される場合、「ハロ」、又は「hal」という用語は、-F、-Cl、-Br、及び-Iを指す。
【0066】
本明細書で使用される場合、「Ru-SNS」という用語は、ジクロロトリフェニルホスフィン[ビス(2-(エチルチオ)エチル)アミン]ルテニウム(II)を指す。
【0067】
本明細書で使用される場合、「dippf」という用語は、1,1’-ビス(ジイソプロピルホスフィノ)フェロセンを指す。
【0068】
本明細書で使用される場合、「Bpin」という用語は、(ピナコラト)ホウ素を指す。
【0069】
本明細書で使用される場合、「HBpin」という用語は、ピナコールボランを指す。
【0070】
本明細書で使用される場合、「Bpin」という用語は、ビス(ピナコラト)二ホウ素を指す。
【0071】
本明細書で使用される場合、「Bcat」という用語は、(カテコラト)ホウ素を指す。
【0072】
本明細書で使用される場合、「HBcat」という用語は、カテコールボランを指す。
【0073】
本明細書で使用される場合、「DABCO」という用語は、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを指す。
【0074】
本明細書で使用される場合、「DMAP」という用語は、4-ジメチルアミノピリジンを指す。
【0075】
本明細書で使用される場合、「DBU」という用語は、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンを指す。
【0076】
本明細書で使用される場合、「COD」という用語は、シクロオクタジエンを指す。
【0077】
本明細書で使用される場合、「室温」という用語は、15~35℃の範囲の温度を指す。
【0078】
本明細書で使用される場合、「第8族遷移金属」という用語は、周期表の第8族の遷移金属を指す。
【0079】
本明細書で使用される場合、「第9族遷移金属」という用語は、周期表の第9族の遷移金属を指す。
【0080】
本明細書で使用される場合、「第10族遷移金属」という用語は、周期表の第10族の遷移金属を指す。
【発明を実施するための形態】
【0081】
これより、本発明の好ましいかつ/又は任意選択的な特徴が、記載される。本発明のいずれの態様も、文脈による別途の要求がない限り、本発明のいずれの他の態様とも組み合わせることができる。本発明のいずれの態様の好ましい又は任意選択的な特徴のいずれも、文脈による別途の要求がない限り、本発明のいずれの態様とも、単一又は組み合わせで、組み合わせることができる。
【0082】
本発明は、ペキシダルチニブ、又はその塩若しくは誘導体を調製するためのプロセスを提供する。本プロセスは、低コストであり、かつ容易に入手可能な出発剤量の使用を伴い、既知のプロセスと比較して、全工程数が少ない。加えて、本発明のプロセスの工程は、毒性及び/若しくは腐食性試薬の使用を最小限に抑えるか、又はそれらを完全に回避する。
【0083】
本発明は、式(VI)の化合物、又はその塩若しくは誘導体を調製するためのプロセスであって、
【0084】
【化33】

式(V)の化合物
【0085】
【化34】

(式中、Rが、置換又は非置換のC1~20直鎖又はC3~20分枝鎖アルキル基である)と、
式(IX)の化合物
【0086】
【化35】

(式中、
Zが、-SOR’’又は-COであり、
R’’が、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基であり、
が、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基であり、
及びRが、独立して、H、又は1~20個の炭素原子を含む置換若しくは非置換の有機基であるか、又は、それらが結合している原子と一緒になって、R及びRが環を形成する)とを、
第10族遷移金属触媒、塩基、及び水の存在下で反応させて、式(VI)の化合物を得ることを含む、プロセスに関する。
【0087】
本発明のプロセスは、第10族遷移金属触媒を用いる。より好ましくは、第10族遷移金属触媒は、ニッケル触媒、パラジウム触媒又は白金触媒である。より好ましくは、第10族遷移金属触媒は、パラジウム触媒又は白金触媒である。最も好ましくは、第10族遷移金属触媒は、パラジウム触媒である。
【0088】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第10族遷移金属触媒は、式(A)の触媒
[M(X(L)](A)
であり、式中、
が、第10族遷移金属、好ましくはパラジウムであり、
が、アニオン性配位子であり、
Lが、単座リン配位子又は二座リン配位子であり、
mが、1又は2であり、
mが1である場合、Lは二座リン配位子であり、
mが2である場合、各Lは単座リン配位子である。
【0089】
式(A)の好ましい第10族遷移金属触媒において、Xは、ハロ基、例えば、-Cl、-Br、及び-I、又はトリフルオロアセテート(すなわち、FCCO )である。好ましくは、Xは、-Clである。
【0090】
式(A)の第10族遷移金属触媒において、Lは、単座リン配位子、又は二座リン配位子である。M原子と配位子-金属相互作用を形成することができる任意の適切なリン化合物を使用することができる。配位子において、各リン原子は、3個の炭素原子(第三級ホスフィン)、又はx個のヘテロ原子及び3-x個の炭素原子(x=1、2若しくは3)のいずれかに共有結合している。好ましくは、ヘテロ原子は、N及びOからなる群から選択される。
【0091】
リン配位子Lは、単座配位子、例えばPPh、又は二座配位子であってもよい。
【0092】
リン配位子Lは、キラル又はアキラルであってもよい。
【0093】
リン配位子Lは、置換又は非置換であり得る。
【0094】
本発明において使用することができるリン配位子Lとしては、以下の構造型が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
【化36】
【0096】
【化37】
【0097】
上の構造において、-PRは、アルキルが好ましくはC~C10アルキルである-P(alkyl)、アリールがフェニル及びナフチルを含み、置換若しくは非置換であり得る-P(aryl)、又は上に定義するようなアルキル及びアリールを有する-P(O-アルキル)及び-P(O-アリール)であってもよい。-PRはまた、置換又は非置換の-P(ヘテロアリール)であってもよく、ヘテロアリールは、フラニル(例えば、2-フラニル又は3-フラニル)を含む。-PRは、好ましくは、アリールがフェニル、トリル、キシリル若しくはアニシルを含む-P(アリール)、又は-P(O-アリール)のいずれかである。-PRが-P(O-アリール)である場合、最も好ましいO-アリール基は、キラル又は非キラル置換1,1’-ビフェノール及び1,1’-ビナフトールに基づくものである。あるいは、P原子上のR基は、環状構造の一部として連結していてもよい。
【0098】
置換基は、リン配位子中のアルキル又はアリール置換基上に存在してもよい。そのような置換基は、典型的には、メチル、エチル、プロピル、iso-プロピル、及びtert-ブチルなどの分枝鎖又は直鎖のC1~6アルキル基である。
【0099】
上に示したこれらのリン配位子は、一般に市販されており、それらの調製は公知である。
【0100】
好ましい二座リン配位子Lには、Binap配位子、PPhos配位子、PhanePhos配位子、Josiphos配位子及びBophoz配位子、好ましくはBinap配位子が挙げられる。
【0101】
好ましい二座リン配位子Lはまた、式RP(CHPRの配位子であり、式中、nが、1~10、好ましくは2~6(例えば、3又は4)から選択される整数であり、R、R、R、及びRが、独立して、非置換C1~20-アルキル、置換C1~20-アルキル、非置換C3~20-シクロアルキル、置換C3~20-シクロアルキル、非置換C1~20-アルコキシ、置換C1~20-アルコキシ、非置換C6~20-アリール、置換C6~20-アリール、非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換C1~20-ヘテロアルキル、非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、非置換C4~20-ヘテロアリール、及び置換C4~20-ヘテロアリールからなる群から選択され得る。R、R、R、及びRは、独立して、置換又は非置換の分枝鎖又は直鎖のアルキル基(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル若しくはステアリル)、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル若しくはアダマンチル)、又はアリール基(例えば、フェニル、ナフチル、又はアントラシル)であってもよい。一実施形態において、アルキル基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br若しくはI)又はアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ若しくはプロポキシなどの1つ以上の置換基で任意選択的に置換されていてもよい。アリール基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br若しくはI)、直鎖若しくは分枝鎖C~C10-アルキル(例えば、メチル)、C~C10アルコキシ、直鎖若しくは分枝鎖C~C10-(ジアルキル)アミノ、C3~10ヘテロシクロアルキル基(例えば、モルホリニル及びピペラジニル)、又はトリ(ハロ)メチル(例えば、FC-)などの1つ以上(例えば、1、2、3、4つ、又は5つ)の置換基で、任意選択的に置換されてもよい。ピリジルなどの置換又は非置換のヘテロアリール基も使用することができる。代替的な実施形態において、R及びR並びに/又はR及びRは、連結してリン原子と共に環構造、好ましくは4~7員環を形成してもよい。好ましくは、二座リン配位子は、dppm(1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン)、dppe(1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)、dppp(1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)、dppb(1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、及び1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)ヘキサンから選択され、より好ましくはdppp及びdppbである。
【0102】
好ましい二座リン配位子Lはまた、式(A1)の配位子であり
【0103】
【化38】

式中、R10、R11、R12、及びR13が、非置換C1~20-アルキル、置換C1~20-アルキル、非置換C3~20-シクロアルキル、置換C3~20-シクロアルキル、非置換C1~20-アルコキシ、置換C1~20-アルコキシ、非置換C6~20-アリール、置換C6~20-アリール、非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換C1~20-ヘテロアルキル、非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、非置換C4~20-ヘテロアリール及び置換C4~20-ヘテロアリールからなる群から独立して選択され得る。R10、R11、R12、及びR13は、独立して、置換又は非置換の分枝鎖又は直鎖のアルキル基(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル若しくはステアリル)、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル若しくはアダマンチル)、又はアリール基(例えば、フェニル、ナフチル、又はアントラシル)であってもよい。一実施形態において、アルキル基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br若しくはI)又はアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ若しくはプロポキシなどの1つ以上の置換基で任意選択的に置換されていてもよい。アリール基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br若しくはI)、直鎖若しくは分枝鎖C~C10-アルキル(例えば、メチル)、C~C10アルコキシ、直鎖若しくは分枝鎖C~C10-(ジアルキル)アミノ、C3~10ヘテロシクロアルキル基(例えば、モルホリニル及びピペラジニル)、又はトリ(ハロ)メチル(例えば、FC-)などの1つ以上(例えば、1、2、3、4つ、又は5つ)の置換基で、任意選択的に置換されてもよい。ピリジルなどの置換又は非置換のヘテロアリール基も使用することができる。好ましくは、二座配位子は、dppf(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノフェロセン)、dippf(1,1’-ビス(ジ-イソプロピルホスフィノ)フェロセン)、dCyPfc(1,1’-ビス(ジ-シクロヘキシルホスフィノ)フェロセン)及びdtbpf(1,1’-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)フェロセン)から選択され、より好ましくはdippf及びdCyPfcである。
【0104】
好ましい単座リン配位子Lは、式PR141516の第三級ホスフィン配位子である。R14、R15及びR16は、非置換C1~20-アルキル、置換C1~20-アルキル、非置換C3~20-シクロアルキル、置換C3~20-シクロアルキル、非置換C1~20-アルコキシ、置換C1~20-アルコキシ、非置換C6~20-アリール、置換C6~20-アリール、非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換C1~20-ヘテロアルキル、非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、非置換C4~20-ヘテロアリール及び置換C4~20-ヘテロアリールからなる群から独立して選択され得る。R14、R15及びR16は、独立して、置換又は非置換の分枝鎖又は直鎖のアルキル基(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル若しくはステアリル)、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル若しくはアダマンチル)、又はアリール基(例えば、フェニル、ナフチル、又はアントラシル)であってもよい。一実施形態において、アルキル基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br若しくはI)又はアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ若しくはプロポキシなどの1つ以上の置換基で任意選択的に置換されていてもよい。アリール基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br若しくはI)、直鎖若しくは分枝鎖C~C10-アルキル(例えば、メチル)、C~C10アルコキシ、直鎖若しくは分枝鎖C~C10-(ジアルキル)アミノ、C3~10ヘテロシクロアルキル基(例えば、モルホリニル及びピペラジニル)、又はトリ(ハロ)メチル(例えば、FC-)などの1つ以上(例えば、1、2、3、4つ、又は5つ)の置換基で、任意選択的に置換されてもよい。ピリジルなどの置換又は非置換のヘテロアリール基も使用することができる。代替的な実施形態において、R14、R15及びR16のうちのいずれか2つは、連結してリン原子と共に環構造、好ましくは4~7員環を形成してもよい。好ましくは、R14、R15及びR16は同じであり、フェニルであり、すなわち、PR141516は、トリフェニルホスフィンである。あるいは、R14、R15及びR16は同じであってもよく、トリルであり、すなわち、PR141516は、トリトリルホスフィン(例えば、オルト-、メタ-、又はパラ-トリトリルホスフィン)である。あるいは、R14、R15及びR16は同じであり、シクロヘキシルであり、すなわち、PR141516は、トリシクロヘキシルホスフィンである。あるいは、R14、R15及びR16は同じであり、tert-ブチルであり、すなわち、PR141516は、トリ(tert-ブチル)ホスフィンである。
【0105】
好ましいリン配位子Lは、PPh、トリトリルホスフィン、PCy(トリシクロヘキシルホスフィン)、PBu、dppm(1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン)、dppe(1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)、dppp(1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)、dppb(1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)ヘキサン、dppf(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)、dippf(1,1’-ビス(ジ-イソプロピルホスフィノ)フェロセン)、dCyPfc(1,1’-ビス(ジ-シクロヘキシルホスフィノ)フェロセン及びdtbpf(1,1’-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)フェロセン)からなる群から選択される。
【0106】
特に好ましいリン配位子Lは、dppp、dppb、dppf、dippf、dtbpf及びdCyPfc、より好ましくはdippf、dtbpf及びdCyPfc、更により好ましくはdippfからなる群から選択される。
【0107】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第10族遷移金属触媒は、PdX (dppp)、PdX (dppb)、PdX (dppf)、PdX (dippf)、PdX (dtbpf)及びPdX (dCyPfc)(Xは、上に定義した通りである)、より好ましくはPdX (dippf)、PdX (dtbpf)及びPdX (dCyPfc)、更により好ましくはPdX (dippf)から選択される。
【0108】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第10族遷移金属触媒は、PdCl(dppp)、PdCl(dppb)、PdCl(dppf)、PdCl(dippf)、PdCl(dtbpf)及びPdCl(dCyPfc)、より好ましくはPdCl(dippf)、PdCl(dtbpf)及びPdCl(dCyPfc)、更により好ましくはPdCl(dippf)から選択される。
【0109】
本発明の代替的な好ましいプロセスにおいて、第10族遷移金属触媒は、式(B)の触媒
【0110】
【化39】

であり、式中、
M’が、第10族遷移金属、好ましくはパラジウムであり、
が、アニオン性配位子であり、
Arが、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のヘテロアリール基、又は置換若しくは非置換のキサンテニル基であり、
17a及びR18bが、独立して、1~20個の炭素原子を有する有機基であるか、又はR17aとR18aとが連結して、Pと共に環構造を形成し、
及びYの各々が、水素であるか、又は、それらが結合している原子と一緒になって、Y及びYが芳香族環を形成し、
が、水素、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基であり、
x及びzが、0又は1であり、
x及びzが両方とも1である場合、Y及びYの各々が水素であり、
x及びzが両方とも0である場合、それらが結合している原子と一緒になって、Y及びYが芳香族環を形成する。
【0111】
式(B)の第10族遷移金属触媒において、Xは、アニオン性配位子である。Xは、配位アニオン性配位子であってもよいし、非配位アニオン性配位子であってもよい。
【0112】
式(B)の第10族遷移金属触媒において、Xは、好ましくは、ハロ基、例えば、-Cl、-Br、及び-I、又はメシラート(すなわち、MsO若しくはMeSO )である。より好ましくは、Xは、-Clである。
【0113】
式(B)の好ましい第10族遷移金属触媒において、Y及びYの各々は、水素である。この場合、x及びzは、両方とも1である。
【0114】
式(B)の代替的な好ましい第10族遷移金属触媒において、それらが結合している原子と一緒になって、Y及びYは、芳香族環を形成する。この場合、x及びzは、両方とも0である。好ましくは、芳香族環は、6員芳香族環である。より好ましくは、それらが結合している原子と一緒になって、Y及びYは、ベンゼン環を形成する。
【0115】
式(B)の第10族遷移金属触媒において、Yは、好ましくは、水素、置換若しくは非置換のC1~10直鎖若しくはC3~10分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~10アリール基である。より好ましくは、Yは、水素、置換若しくは非置換のC1~5直鎖若しくはC3~5分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~10アリール基である。最も好ましくは、Yは、水素、メチル又はフェニルである。
【0116】
式(B)の第10族遷移金属触媒において、R17a及びR18aは、同じであっても異なっていてもよい。一実施形態では、R17a及びR18aは同じである。別の実施形態では、R17a及びR18aは異なる。R17a及びR18aは、安定性及び原子価の規則によって課される制限まで選択される。R17a及びR18aは、置換及び非置換の直鎖C1~20-アルキル、置換及び非置換の分枝鎖C3~20-アルキル、置換及び非置換のC3~20-シクロアルキル、置換及び非置換のC6~20-アリール、並びに置換及び非置換のC4~20-ヘテロアリールからなる群から独立して選択されてもよく、ヘテロ原子は、硫黄、窒素及び酸素から独立して選択される。R17a及びR18aは、独立して、置換又は非置換の分枝鎖又は直鎖のアルキル基(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル(例えば、n-ペンチル若しくはネオペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル若しくはステアリル)、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル若しくはアダマンチル)、又はアリール基(例えば、フェニル、ナフチル、又はアントラシル)であってもよい。一実施形態では、アルキル基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br若しくはI)又はアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ若しくはプロポキシなどのそれぞれが同じであっても異なっていてもよい1つ以上(例えば、1、2、3、4つ、又は5つ)の置換基で、任意選択的に置換されてもよい。アリール基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br若しくはI)、直鎖若しくは分枝鎖のアルキル(例えば、C~C10)、アルコキシ(例えば、C~C10アルコキシ)、直鎖若しくは分枝鎖の(ジアルキル)アミノ(例えば、C~C10ジアルキル)アミノ)、ヘテロシクロアルキル(例えば、C3~10ヘテロシクロアルキル基、例えば、モルホリニル及びピペラジニル)、又はトリ(ハロ)メチル(例えば、FC-)などのそれぞれが同じであっても異なっていてもよい1つ以上(例えば、1、2、3、4つ、又は5つ)の置換基で、任意選択的に置換されてもよい。好適な置換アリール基としては、4-ジメチルアミノフェニル、4-メチルフェニル、3,5-ジメチルフェニル、4-メトキシフェニル、4-メトキシ-3,5-ジメチルフェニル及び3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニルが挙げられるが、これらに限定されない。ピリジルなどの置換又は非置換のヘテロアリール基も使用することができる。代替的な実施形態において、R17a及びR18aは、連結してPと共に環構造、好ましくは4~7員環を形成する。好ましくは、R17a及びR18aは同じであり、tert-ブチル、シクロヘキシル、アダマンチル、フェニル又は置換フェニル基、例えば3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニルである。
【0117】
式(B)の第10族遷移金属触媒において、Arは、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のヘテロアリール基、又は置換若しくは非置換のキサンテニル基である。好ましくは、Arは、置換若しくは非置換のフェニル基、置換若しくは非置換のビフェニル基、置換若しくは非置換のナフチル基、置換若しくは非置換のビナフチル基、置換若しくは非置換のピラゾリル基、置換若しくは非置換のビピラゾリル基、又は置換若しくは非置換のキサンテニル基である。より好ましくは、Arは、置換若しくは非置換のビフェニル基、置換若しくは非置換のビナフチル基、置換若しくは非置換のビピラゾリル基、又は置換若しくは非置換のキサンテニル基である。更により好ましくは、Arは、置換若しくは非置換のビフェニル基、置換若しくは非置換のビピラゾリル基、又は置換若しくは非置換のキサンテニル基である。
【0118】
式(B)の第10族遷移金属触媒において、ホスフィン配位子-P(R17a)(R18b)Arは、好ましくは、
【0119】
【化40】

からなる群から選択される。
【0120】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第10族遷移金属触媒は、
【0121】
【化41】

から選択される。
【0122】
本発明の代替的な好ましいプロセスにおいて、第10族遷移金属触媒は、式(Ca)の触媒
【0123】
【化42】

であり、式中、
が、第10族遷移金属、好ましくはパラジウムであり、
が、配位したアニオン性配位子であり、
Arが、置換若しくは非置換のアリール基又は置換若しくは非置換のヘテロアリール基であり、
17b及びR18bが、独立して、1~20個の炭素原子を有する有機基であるか、又はR17bとR18bとが連結して、Pと共に環構造を形成し、
19aが、1~20個の炭素原子を有する有機基であり、
pが、0、1、2、3、4又は5である。
【0124】
式(Ca)の第10族遷移金属触媒において、Xは、配位したアニオン性配位子であり、すなわち、アニオン性配位子は、配位圏内のPd原子に結合している。Xは、好ましくはハロ基、例えば-Cl、-Br、及び-I、又はトリフルオロアセテート(すなわち、FCCO )である。より好ましくは、Xは、-Clである。
【0125】
式(Ca)の第10族遷移金属触媒において、R17b及びR18bは、同じであっても異なっていてもよい。一実施形態では、R17b及びR18bは同じである。別の実施形態において、R17b及びR18bは異なる。R17b及びR18bは、安定性及び原子価の規則によって課される制限まで選択される。R17b及びR18bは、置換及び非置換の直鎖C1~20-アルキル、置換及び非置換の分枝鎖C3~20-アルキル、置換及び非置換のC3~20-シクロアルキル、置換及び非置換のC6~20-アリール、並びに置換及び非置換のC4~20-ヘテロアリールからなる群から独立して選択されてもよく、ヘテロ原子は、硫黄、窒素及び酸素から独立して選択される。R17b及びR18bは、独立して、置換又は非置換の分枝鎖又は直鎖のアルキル基(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル(例えば、n-ペンチル若しくはネオペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル若しくはステアリル)、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル若しくはアダマンチル)、又はアリール基(例えば、フェニル、ナフチル、又はアントラシル)であってもよい。一実施形態では、アルキル基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br若しくはI)又はアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ若しくはプロポキシなどのそれぞれが同じであっても異なっていてもよい1つ以上(例えば、1、2、3、4つ、又は5つ)の置換基で、任意選択的に置換されてもよい。アリール基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br若しくはI)、直鎖若しくは分枝鎖のアルキル(例えば、C~C10)、アルコキシ(例えば、C~C10アルコキシ)、直鎖若しくは分枝鎖の(ジアルキル)アミノ(例えば、C~C10ジアルキル)アミノ)、ヘテロシクロアルキル(例えば、C3~10ヘテロシクロアルキル基、例えば、モルホリニル及びピペラジニル)、又はトリ(ハロ)メチル(例えば、FC-)などのそれぞれが同じであっても異なっていてもよい1つ以上(例えば、1、2、3、4つ、又は5つ)の置換基で、任意選択的に置換されてもよい。好適な置換アリール基としては、4-ジメチルアミノフェニル、4-メチルフェニル、3,5-ジメチルフェニル、4-メトキシフェニル、4-メトキシ-3,5-ジメチルフェニル及び3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニルが挙げられるが、これらに限定されない。ピリジルなどの置換又は非置換のヘテロアリール基も使用することができる。代替的な実施形態において、R17b及びR18bは、連結してPと共に環構造、好ましくは4~7員環を形成する。好ましくは、R17b及びR18bは同じであり、tert-ブチル、シクロヘキシル、フェニル又は置換フェニル基、例えば3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニルである。あるいは、R17b及びR18bは、独立して、-Me、-Et、-Pr、-Pr、-Bu、-Bu、シクロヘキシル及びシクロヘプチルからなる群から選択される。
【0126】
式(Ca)の第10族遷移金属触媒において、Arは、置換若しくは非置換のアリール基、又は置換若しくは非置換のヘテロアリール基である。好ましくは、Arは、置換若しくは非置換のフェニル基、置換若しくは非置換のビフェニル基、置換若しくは非置換のナフチル基、置換若しくは非置換のビナフチル基、置換若しくは非置換のピラゾリル基、又は置換若しくは非置換のビピラゾリル基である。より好ましくは、Arは、置換若しくは非置換のビフェニル基、置換若しくは非置換のビナフチル基、又は置換若しくは非置換のビピラゾリル基である。更により好ましくは、Arは、置換若しくは非置換のビフェニル基、又は置換若しくは非置換のビピラゾリル基である。
【0127】
式(Ca)の第10族遷移金属触媒において、ホスフィン配位子-P(R17b)(R18b)Arは、好ましくは、
【0128】
【化43】

からなる群から選択される。
【0129】
式(Ca)の第10族遷移金属触媒中の金属原子は、任意選択的に置換されたアリル基に配位されている。R19aは、1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子、より好ましくは1~8個の炭素原子を有する有機基である。R19aは、安定性及び原子価の規則によって課される制限まで選択される。R19a基の数は、0~5の範囲であり、すなわちpは、0、1、2、3、4又は5である。pが2、3、4又は5である場合、各R19aは、同じであっても異なっていてもよい。特定の実施形態において、pが2、3、4、又は5である場合、各R19aは同じである。特定の実施形態において、pは0である(すなわち、アリル基は非置換である)。特定の実施形態において、pは1である。特定の実施形態において、pは2であり、各R19aは、同じであるか、又は異なる。
【0130】
式(Ca)の第10族遷移金属触媒において、R19aは、置換及び非置換の直鎖C1~20-アルキル、置換及び非置換の分枝鎖C3~20-アルキル、置換及び非置換のC3~20-シクロアルキル、置換及び非置換のC6~20-アリール、並びに置換及び非置換のC4~20-ヘテロアリールからなる群から選択されてもよく、ヘテロ原子は、硫黄、窒素及び酸素から独立して選択される。一実施形態において、R19aは、置換及び非置換の直鎖C1~20-アルキル、置換及び非置換の分枝鎖C3~20-アルキル、並びに置換及び非置換のC3~20-シクロアルキルからなる群から選択される。別の実施形態において、R19aは、置換及び非置換のC6~20-アリール、並びに置換及び非置換C4~20-ヘテロアリールからなる群から選択され、ヘテロ原子は、硫黄、窒素及び酸素から独立して選択される。R19aは、置換又は非置換の分枝鎖又は直鎖のアルキル基(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル若しくはステアリル)、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル若しくはアダマンチル)、又はアリール基(例えば、フェニル、ナフチル、又はアントラシル)であってもよい。一実施形態では、アルキル基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br若しくはI)又はアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ若しくはプロポキシなどのそれぞれが同じであっても異なっていてもよい1つ以上(例えば、1、2、3、4つ、又は5つ)の置換基で、任意選択的に置換されてもよい。アリール基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br若しくはI)、直鎖若しくは分枝鎖のアルキル(例えば、C~C10)、アルコキシ(例えば、C~C10アルコキシ)、直鎖若しくは分枝鎖の(ジアルキル)アミノ(例えば、C~C10ジアルキル)アミノ)、ヘテロシクロアルキル(例えば、C3~10ヘテロシクロアルキル基、例えば、モルホリニル及びピペラジニル)、又はトリ(ハロ)メチル(例えば、FC-)などのそれぞれが同じであっても異なっていてもよい1つ以上(例えば、1、2、3、4つ、又は5つ)の置換基で、任意選択的に置換されてもよい。適切な置換アリール基としては、2-、3-又は4-ジメチルアミノフェニル、2-、3-又は4-メチルフェニル、2,3-又は3,5-ジメチルフェニル、2-、3-又は4-メトキシフェニル及び4-メトキシ-3,5-ジメチルフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。ピリジルなどの置換又は非置換のヘテロアリール基も使用することができる。一実施形態において、各R19は、独立して、メチル、フェニル又は置換フェニル基である。
【0131】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第10族遷移金属触媒は、以下から選択される。
【0132】
【化44】
【0133】
【化45】
【0134】
本発明の代替的な好ましいプロセスにおいて、第10族遷移金属触媒は、式(Cb)の触媒
【0135】
【化46】

であり、式中、
【0136】
【化47】

が、カチオン性第10族遷移金属原子、好ましくはカチオン性パラジウム原子であり、
【0137】
【化48】

が、非配位アニオン性配位子であり、
Arが、置換若しくは非置換のアリール基又は置換若しくは非置換のヘテロアリール基であり、
17c及びR18cが、独立して、1~20個の炭素原子を有する有機基であるか、又はR17cとR18cとが連結して、Pと共に環構造を形成し、
19bが、1~20個の炭素原子を有する有機基であり、
tが、0、1、2、3、4又は5である。
【0138】
式(Ca)の第10族遷移金属触媒において、
【0139】
【化49】

は、非配位アニオン性配位子である。「非配位アニオン性配位子」とは、アニオン配位子が金属中心の外圏に強制的に配置されることを意味する。したがって、アニオン性配位子は金属中心から解離される。これは、アニオン配位子が配位圏内の金属に結合している中性錯体とは対照的である。アニオン性配位子は、一般に、カチオン性錯体のX線結晶構造を分析することによって、非配位性として同定することができる。一実施形態において、
【0140】
【化50】

は、トリフレート(すなわち、TfO又はCFSO )、テトラフルオロボレート(すなわちBF)、ヘキサフルオロアンチモネート(すなわちSbF)、ヘキサフルオロホスフェート(PF )、[B[3,5-(CF([Bar )、及びメシレート(MsO又はMeSO )からなる群から選択される。
【0141】
式(Cb)の第10族遷移金属触媒において、R17c及びR18cは、同じであっても異なっていてもよい。一実施形態では、R17c及びR18cは同じである。別の実施形態において、R17c及びR18cは異なる。R17c及びR18cは、安定性及び原子価の規則によって課される制限まで選択される。R17c及びR18cは、置換及び非置換の直鎖C1~20-アルキル、置換及び非置換の分枝鎖C3~20-アルキル、置換及び非置換のC3~20-シクロアルキル、置換及び非置換のC6~20-アリール、並びに置換及び非置換のC4~20-ヘテロアリールからなる群から独立して選択されてもよく、ヘテロ原子は、硫黄、窒素及び酸素から独立して選択される。R17c及びR18cは、独立して、置換又は非置換の分枝鎖又は直鎖のアルキル基(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル(例えば、n-ペンチル若しくはネオペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル若しくはステアリル)、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル若しくはアダマンチル)、又はアリール基(例えば、フェニル、ナフチル、又はアントラシル)であってもよい。一実施形態では、アルキル基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br若しくはI)又はアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ若しくはプロポキシなどのそれぞれが同じであっても異なっていてもよい1つ以上(例えば、1、2、3、4つ、又は5つ)の置換基で、任意選択的に置換されてもよい。アリール基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br若しくはI)、直鎖若しくは分枝鎖のアルキル(例えば、C~C10)、アルコキシ(例えば、C~C10アルコキシ)、直鎖若しくは分枝鎖の(ジアルキル)アミノ(例えば、C~C10ジアルキル)アミノ)、ヘテロシクロアルキル(例えば、C3~10ヘテロシクロアルキル基、例えば、モルホリニル及びピペラジニル)、又はトリ(ハロ)メチル(例えば、FC-)などのそれぞれが同じであっても異なっていてもよい1つ以上(例えば、1、2、3、4つ、又は5つ)の置換基で、任意選択的に置換されてもよい。好適な置換アリール基としては、4-ジメチルアミノフェニル、4-メチルフェニル、3,5-ジメチルフェニル、4-メトキシフェニル、4-メトキシ-3,5-ジメチルフェニル及び3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニルが挙げられるが、これらに限定されない。ピリジルなどの置換又は非置換のヘテロアリール基も使用することができる。代替的な実施形態において、R17c及びR18cは、連結してPと共に環構造、好ましくは4~7員環を形成する。好ましくは、R17c及びR18cは同じであり、tert-ブチル、シクロヘキシル、アダマンチル、フェニル又は置換フェニル基、例えば3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニルである。
【0142】
式(Cb)の第10族遷移金属触媒において、Arは、置換若しくは非置換のアリール基、又は置換若しくは非置換のヘテロアリール基である。好ましくは、Arは、置換若しくは非置換のフェニル基、置換若しくは非置換のビフェニル基、置換若しくは非置換のナフチル基、置換若しくは非置換のビナフチル基、置換若しくは非置換のピラゾリル基、又は置換若しくは非置換のビピラゾリル基である。より好ましくは、Arは、置換若しくは非置換のビフェニル基、置換若しくは非置換のビナフチル基、又は置換若しくは非置換のビピラゾリル基である。更により好ましくは、Arは、置換若しくは非置換のビフェニル基、又は置換若しくは非置換のビピラゾリル基である。
【0143】
式(Cb)の第10族遷移金属触媒において、ホスフィン配位子-P(R17c)(R18c)Arは、好ましくは、
【0144】
【化51】

からなる群から選択される。
【0145】
式(Cb)の第10族遷移金属触媒中の金属カチオンは、任意選択的に置換されたアリル基に配位されている。R19bは、1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子、より好ましくは1~8個の炭素原子を有する有機基である。R19bは、安定性及び原子価の規則によって課される制限まで選択される。R19b基の数は、0~5の範囲であり、すなわちtは、0、1、2、3、4又は5である。tが2、3、4又は5である場合、各R19bは、同じであっても異なっていてもよい。特定の実施形態において、tが2、3、4、又は5である場合、各R19bは同じである。特定の実施形態において、tは0であり、すなわち、アリル基は非置換である。特定の実施形態において、tは1である。特定の実施形態において、tは2であり、各R19bは、同じであるか、又は異なる。
【0146】
式(Ca)の第10族遷移金属触媒において、R19bは、置換及び非置換の直鎖アルキル、置換及び非置換の分枝鎖アルキル、置換及び非置換のシクロアルキル、置換及び非置換のアリール、並びに置換及び非置換のヘテロアリールからなる群から選択されてもよく、ヘテロ原子は、硫黄、窒素及び酸素から独立して選択される。一実施形態において、R19bは、置換及び非置換の直鎖アルキル、置換及び非置換の分枝鎖アルキル、並びに置換及び非置換のシクロアルキルからなる群から選択される。別の実施形態において、R19bは、置換及び非置換のアリール、並びに置換及び非置換ヘテロアリールからなる群から選択され、ヘテロ原子は、硫黄、窒素及び酸素から独立して選択される。R19bは、置換又は非置換の分枝鎖又は直鎖のアルキル基(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル若しくはステアリル)、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル若しくはアダマンチル)、又はアリール基(例えば、フェニル、ナフチル、又はアントラシル)であってもよい。一実施形態では、アルキル基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br若しくはI)又はアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ若しくはプロポキシなどのそれぞれが同じであっても異なっていてもよい1つ以上(例えば、1、2、3、4つ、又は5つ)の置換基で、任意選択的に置換されてもよい。アリール基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br若しくはI)、直鎖若しくは分枝鎖のアルキル(例えば、C~C10)、アルコキシ(例えば、C~C10アルコキシ)、直鎖若しくは分枝鎖の(ジアルキル)アミノ(例えば、C~C10ジアルキル)アミノ)、ヘテロシクロアルキル(例えば、C3~10ヘテロシクロアルキル基、例えば、モルホリニル及びピペラジニル)、又はトリ(ハロ)メチル(例えば、FC-)などのそれぞれが同じであっても異なっていてもよい1つ以上(例えば、1、2、3、4つ、又は5つ)の置換基で、任意選択的に置換されてもよい。適切な置換アリール基としては、2-、3-又は4-ジメチルアミノフェニル、2-、3-又は4-メチルフェニル、2,3-又は3,5-ジメチルフェニル、2-、3-又は4-メトキシフェニル及び4-メトキシ-3,5-ジメチルフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。ピリジルなどの置換又は非置換のヘテロアリール基も使用することができる。一実施形態において、各R19bは、独立して、メチル、フェニル又は置換フェニル基である。
【0147】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第10族遷移金属触媒は、
【0148】
【化52】
【0149】
【化53】

から選択される。
【0150】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第10族遷移金属触媒は、式(A)、(B)、(Ca)又は(Cb)の触媒、好ましくは式(A)の触媒である。本発明の特に好ましいプロセスにおいて、第10族遷移金属触媒は、PdCl(dippf)である。
【0151】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第10族遷移金属触媒は、化合物(V)の総量に基づいて0.1~3.0mol%、好ましくは化合物(V)の総量に基づいて0.5~2.9mol%、好ましくは化合物(V)の総量に基づいて1.5~2.8mol%、より好ましくは化合物(V)の総量に基づいて2.0~2.7mol%、より好ましくは化合物(V)の総量に基づいて2.25~2.6mol%、より好ましくは化合物(V)の総量に基づいて2.5~2.6mol%(例えば、化合物(V)の総量に基づいて2.5mol%)の量で存在する。
【0152】
理論に束縛されることを望まないが、これらの範囲内のより高い触媒充填量の使用は、カップリング反応中に形成される不純物(例えば、7-アザインドール部分の脱ホウ素化の結果としてのもの)の量を減少させ、したがって、反応混合物のより容易な精製を可能にすると考えられる。したがって、本発明の特に好ましいプロセスでは、第10族遷移金属触媒は、化合物(V)の総量に基づいて少なくとも2.0mol%、より好ましくは化合物(V)の総量に基づいて少なくとも2.25mol%、更により好ましくは化合物(V)の総量に基づいて少なくとも2.5mol%の量で存在する。
【0153】
塩基は、カップリング反応を進行させるのに十分に強いが、式(V)のカーボネート化合物がその存在下で分解するほど強くないことを確実にするように選択されなければならない。塩基の選択は、使用される特定の反応条件に依存し得る。当業者は、適切な塩基を選択することができる。
【0154】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(V)の化合物と式(IX)の化合物との間の反応において使用される塩基は、金属アルコキシド、金属炭酸塩、金属リン酸塩、金属水酸化物、及びアミン塩基から選択される。好ましくは、塩基は、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属水酸化物、及びアミン塩基から選択される。より好ましくは、塩基は、LiOBu、NaOBu、KOBu、NaCO、KCO、NaPO、KPO、NaOH、KOH、EtN、Et PrN、DMAP、DABCO、又はDBUから選択される。最も好ましくは、塩基は、KCO又はKOBuである。
【0155】
本発明のいくつかの好ましいプロセスにおいて、塩基は、アルコキシド塩基(例えば、金属アルコキシド)である。従って、本発明の好ましいプロセスにおいて、式(V)の化合物と式(IX)の化合物との間の反応において使用される塩基は、金属アルコキシド、好ましくはアルカリ金属アルコキシドである。より好ましくは、塩基は、LiOBu、NaOBu、及びKOBuから選択される。最も好ましくは、塩基は、KOBuである。
【0156】
本発明の代替的な好ましいプロセスにおいて、塩基は、アルコキシド塩基(例えば、金属アルコキシド)ではない。従って、本発明の好ましいプロセスにおいて、式(V)の化合物と式(IX)の化合物との間の反応において使用される塩基は、金属炭酸塩、金属リン酸塩、金属水酸化物、及びアミン塩基から選択される。好ましくは、塩基は、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属水酸化物、及びアミン塩基から選択される。より好ましくは、塩基は、NaCO、KCO、NaPO、KPO、NaOH、KOH、EtN、Et PrN、DMAP、DABCO、又はDBUから選択される。最も好ましくは、塩基は、KCOである。
【0157】
本発明の好ましいプロセスにおいて、塩基は、金属炭酸塩、好ましくはアルカリ金属炭酸塩である。本発明の特に好ましいプロセスにおいて、塩基は、NaCO及びKCOから選択される。最も好ましくは、塩基は、KCOである。
【0158】
本発明の好ましいプロセスにおいて、塩基は、金属リン酸塩、好ましくはアルカリ金属リン酸塩である。本発明の特に好ましいプロセスにおいて、塩基は、NaPO及びKPOから選択される。最も好ましくは、塩基は、KPOである。
【0159】
本発明の好ましいプロセスにおいて、塩基は、金属水酸化物、好ましくはアルカリ金属水酸化物である。本発明の特に好ましいプロセスにおいて、塩基は、NaOH及びKOHから選択される。最も好ましくは、塩基は、KOHである。
【0160】
本発明の好ましいプロセスにおいて、塩基は、アミン塩基である。好ましくは、アミン塩基は、R’-NH、R’NH、及びR’Nから選択される式を有する化合物であり、式中、R’は、独立して、アルキル、アリール若しくはヘテロアリール基であるか、又はアミン塩基は、環状アミン塩基である。本発明の特に好ましいプロセスにおいて、塩基は、EtN、Et PrN、DMAP、DABCO、又はDBUから選択される。最も好ましくは、塩基は、EtNである。
【0161】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(V)の化合物と式(IX)の化合物との間の反応において使用される塩基は、式(V)の化合物の総量に基づいて50~300mol%、より好ましくは式(V)の化合物の総量に基づいて100~250mol%、より好ましくは式(V)の化合物の総量に基づいて150~200mol%の量で存在する。
【0162】
本発明の好ましいプロセスにおいて、水は、式(V)の化合物の総量に基づいて2000~4000mol%、より好ましくは式(V)の化合物の総量に基づいて1500~3500mol%(例えば、式(V)の化合物の総量に基づいて3000mol%)の量で存在する。
【0163】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(V)中のRは、置換又は非置換のC1~10直鎖又はC3~10分枝鎖アルキル基、好ましくは置換又は非置換のC1~5直鎖又はC3~5分枝鎖アルキル基である。より好ましくは、式(V)中のRは、メチル、エチル、iso-プロピル又はtert-ブチルである。最も好ましくは、式(V)中のRは、メチルである。
【0164】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(IX)中のZは、-COである。好ましくは、Rは、置換若しくは非置換のC1~10直鎖若しくはC3~10分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~10アリール基である。特に好ましいC1~10-アルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、及びヘキシル、より好ましくはメチル、エチル、iso-プロピル、tert-ブチル、更により好ましくはtert-ブチルが挙げられる。好ましいC6~10-アリール基としては、フェニル、トリル、キシリル、及びメトキシフェニル、より好ましくはフェニルが挙げられる。
【0165】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(IX)中のZは、-SOR’’である。好ましくは、R’’は、置換若しくは非置換のC1~10直鎖若しくはC3~10分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~10アリール基である。特に好ましいC1~10-アルキル基としては、メチル、トリフルオロメチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、及びヘキシル、より好ましくはメチル、エチル、iso-プロピル、及びtert-ブチル、更により好ましくはメチル及びエチルが挙げられる。好ましいC6~10-アリール基としては、フェニル、トリル、キシリル、メトキシフェニル、ブロモフェニル、及びニトロフェニル、より好ましくはトリルが挙げられる。
【0166】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(IX)中のR及びRは、独立して、H又は置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基であるか、又は、それらが結合している原子と一緒になって、R及びRは、環を形成する。
【0167】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(IX)中のR及びRは、独立して、H又は置換若しくは非置換のC1~10直鎖若しくはC3~10分枝鎖アルキル基、より好ましくはH又は置換若しくは非置換のC1~5直鎖若しくはC3~5分枝鎖アルキル基、更により好ましくはHである。
【0168】
本発明の代替的な好ましいプロセスにおいて、それらが結合している原子と一緒になって、式(IX)中のR及びRは、環を形成する。より好ましくは、R及びRは、-Bpin又は-Bcatである環を形成する。更により好ましくは、R及びRは、-Bpinである環を形成する。
【0169】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(V)の化合物と式(IX)の化合物との反応は、5~100℃、より好ましくは10~90℃、更により好ましくは20~80℃、更により好ましくは50~70℃の範囲の温度で行われる。
【0170】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(V)の化合物と式(IX)の化合物との反応は、4~10時間、より好ましくは5~9時間、更により好ましくは6~8時間の期間にわたって行われる。
【0171】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(V)の化合物と式(IX)の化合物との反応は、溶媒中で行われる。溶媒は、アルコール、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン)、芳香族溶媒(例えば、トルエン)、アルキル溶媒(例えば、ヘプタン)、炭酸ジアルキル(例えば、炭酸ジメチル)、又はそれらの混合物であってもよい。好ましくは、溶媒は、アルコール又はアルコールの混合物である。より好ましくは、溶媒は、iso-プロパノール及び/又はtert-アミルアルコールである。あるいは、溶媒は、炭酸ジアルキル、好ましくは炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジ-iso-プロピル、又は炭酸ジ-tert-ブチル、最も好ましくは炭酸ジメチル又は炭酸ジ-tert-ブチルである。
【0172】
本発明の好ましいプロセスにおいて、溶媒はアルコールであり、上述の式(V)の化合物の総量に基づいて1000~5000mol%、好ましくは上述の式(V)の化合物の総量に基づいて1500~4500mol%、より好ましくは上述の式(V)の化合物の総量に基づいて2000~4000mol%の量で存在する。
【0173】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(V)の化合物と式(IX)の化合物との反応は、ルイス酸の存在下で行われる。好ましくは、ルイス酸は、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、炭酸リチウム又はリン酸リチウムなどの金属ハロゲン化物、金属炭酸塩又は金属リン酸塩から選択される。より好ましくは、ルイス酸は、金属ハロゲン化物である。更により好ましくは、ルイス酸は、アルカリ金属ハロゲン化物である。更により好ましくは、ルイス酸は、塩化リチウム、臭化リチウム及びヨウ化リチウムから選択される。最も好ましくは、ルイス酸は、臭化リチウム及びヨウ化リチウムから選択される。有利なことに、臭化リチウム及びヨウ化リチウムは、有機溶媒中で高い溶解度を有する。理論に束縛されることを望まないが、式(V)の化合物と式(IX)の化合物との反応がルイス酸の存在下で行われる場合、ルイス酸は、出発材料中のアミン基が第10族遷移金属触媒に配位してそれを被毒するのを防止するのに役立ち得ると考えられる。このことは、カップリング反応に必要とされる触媒充填量がより低いことを意味する。
【0174】
本発明の好ましいプロセスにおいて、ルイス酸は、式(V)の化合物の総量に基づいて少なくとも100mol%の量で存在する。例えば、ルイス酸は、式(V)の化合物の総量に基づいて、少なくとも110mol%、少なくとも120mol%、少なくとも130mol%、又は少なくとも150mol%で存在することが好ましい場合がある。存在し得るルイス酸の量には特に上限はない。典型的には、ルイス酸は、式(V)の化合物の総量に基づいて、最大で400mol%で存在する。例えば、ルイス酸は、式(V)の化合物の総量に基づいて、最大で350mol%、最大で300mol%、最大で250mol%、又は最大で200mol%で存在することが好ましい場合がある。好ましくは、ルイス酸は、式(V)の化合物の総量に基づいて100~400mol%、より好ましくは式(V)の化合物の総量に基づいて110~350mol%、より好ましくは120~300mol%、より好ましくは130~250mol%、更により好ましくは150~200mol%の範囲で存在する。
【0175】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(V)の化合物は、式(IX)の化合物、第10族遷移金属触媒、塩基及び水の存在下で、式(IV)の化合物、又はその塩と
【0176】
【化54】

式RO(CO)ORの炭酸ジアルキル(式中、各Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖又はC3~20分枝鎖アルキル基である)とを反応させることによって系中で調製される。
【0177】
式RO(CO)ORの炭酸ジアルキル中のR基は、同じであっても異なっていてもよい。好ましくは、式RO(CO)ORの炭酸ジアルキル中のR基は、同じである。
【0178】
本発明の好ましいプロセスにおいて、炭酸ジアルキルは、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジ-iso-プロピル、及び炭酸ジ-tert-ブチルから選択される。最も好ましくは、炭酸ジアルキルは、炭酸ジメチルである。
【0179】
本発明の好ましいプロセスにおいて、炭酸ジアルキルは、上述の式(IV)の化合物又はその塩の総量に基づいて1000~5000mol%、好ましくは上述の式(IV)の化合物又はその塩の総量に基づいて1500~4500mol%、より好ましくは上述の式(IV)の化合物又はその塩の総量に基づいて2000~4000mol%の量で存在する。
【0180】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(V)の化合物が系中で調製される、式(V)の化合物と式(IX)の化合物との間の反応において使用される塩基は、金属アルコキシド、金属炭酸塩、金属リン酸塩、金属水酸化物、及びアミン塩基から選択される。好ましくは、塩基は、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属水酸化物、及びアミン塩基から選択される。より好ましくは、塩基は、LiOBu、NaOBu、KOBu、NaCO、KCO、NaPO、KPO、NaOH、KOH、EtN、Et PrN、DMAP、DABCO、又はDBUから選択される。最も好ましくは、塩基は、KCO又はKOBuである。
【0181】
本発明の特に好ましいプロセスにおいて、式(V)の化合物が系中で調製される、式(V)の化合物と式(IX)の化合物との間の反応において使用される塩基は、金属アルコキシド、好ましくはアルカリ金属アルコキシドである。より好ましくは、塩基は、LiOBu、NaOBu、及びKOBuから選択される。最も好ましくは、塩基は、KOBuである。
【0182】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(V)の化合物が系中で調製される、式(V)の化合物と式(IX)の化合物との反応は、溶媒中で行われる。溶媒は、アルコール、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン)、芳香族溶媒(例えば、トルエン)、アルキル溶媒(例えば、ヘプタン)、又はそれらの混合物であってもよい。当業者によって明確に理解されるように、反応混合物中に存在する式RO(CO)ORの炭酸ジアルキルは、反応中に溶媒としても機能する。
【0183】
あるいは、式(V)の化合物は、別の工程で調製することができる。したがって、本発明の好ましいプロセスにおいて、式(V)の化合物は、式(IV)の化合物、又はその塩と
【0184】
【化55】

式RO(CO)ORの炭酸ジアルキル(式中、各Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖又はC3~20分枝鎖アルキル基である)とを、塩基存在下で反応させることによって調製される。
【0185】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(IV)の化合物又はその塩から式(V)の化合物を製造するための別の工程において使用される塩基は、金属アルコキシドである。金属アルコキシドは、好ましくは、金属メトキシド、金属エトキシド、金属iso-プロポキシド、又は金属tert-ブトキシドである。
【0186】
本発明の好ましいプロセスにおいて、塩基は、アルカリ金属アルコキシドである。アルカリ金属アルコキシドは、好ましくは、アルカリ金属メトキシド、アルカリ金属エトキシド、アルカリ金属iso-プロポキシド、又はアルカリ金属tert-ブトキシドである。アルカリ金属アルコキシドは、より好ましくは、アルカリ金属メトキシド又はアルカリ金属エトキシド、好ましくはアルカリ金属メトキシドである。
【0187】
好ましい金属アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、又はカリウムエトキシド、好ましくはナトリウムメトキシドが挙げられる。
【0188】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(IV)の化合物又はその塩から式(V)の化合物を製造するための別の工程において使用される塩基は、上述の式(IV)の化合物又はその塩の総量に基づいて1~10mol%、好ましくは上述の式(IV)の化合物又はその塩の総量に基づいて2~9mol%、より好ましくは上述の式(IV)の化合物又はその塩の総量に基づいて3~8mol%(例えば、上述の式(IV)の化合物又はその塩の総量に基づいて5mol%)の量で存在する。
【0189】
本発明の好ましいプロセスにおいて、炭酸ジアルキルは、上述の式(IV)の化合物又はその塩の総量に基づいて500~2000mol%、好ましくは上述の式(IV)の化合物又はその塩の総量に基づいて750~1000mol%の量で存在する。
【0190】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(V)の化合物が別の工程で調製される、式(V)の化合物と式(IX)の化合物との間の反応において使用される塩基は、金属炭酸塩、金属リン酸塩、金属水酸化物、及びアミン塩基から選択される。好ましくは、塩基は、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属水酸化物、及びアミン塩基から選択される。より好ましくは、塩基は、NaCO、KCO、NaPO、KPO、NaOH、KOH、EtN、Et PrN、DMAP、DABCO、又はDBUから選択される。最も好ましくは、塩基は、KCOである。
【0191】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(V)の化合物が別の工程で調製される、式(V)の化合物と式(IX)の化合物との反応は、溶媒中で行われる。溶媒は、アルコール、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン)、芳香族溶媒(例えば、トルエン)、アルキル溶媒(例えば、ヘプタン)、炭酸ジアルキル(例えば、炭酸ジメチル)、又はそれらの混合物であってもよい。
【0192】
好ましくは、溶媒は、アルコール又はアルコールの混合物である。より好ましくは、溶媒は、iso-プロパノール及び/又はtert-アミルアルコールである。
【0193】
あるいは、溶媒は、炭酸ジアルキル、好ましくは炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジ-iso-プロピル、又は炭酸ジ-tert-ブチル、最も好ましくは炭酸ジメチル又は炭酸ジ-tert-ブチルである。有利には、溶媒が炭酸ジアルキルを含む場合、これにより、炭酸エステルが反応条件下で対応するアルコールに分解する場合に炭酸エステルを再形成するのを補助することができ、したがって、反応収率を増加させる。
【0194】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(IV)の化合物又はその塩を、10~150℃、好ましくは30~140℃、より好ましくは50~130℃、より好ましくは65~120℃の範囲の温度で炭酸ジアルキルと反応させる。
【0195】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(IV)の化合物又はその塩を、1~6時間、好ましくは2~5時間、より好ましくは3~4時間の期間にわたって、炭酸ジアルキルと反応させる。
【0196】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(IV)の化合物又はその塩を、式RO(CO)ORの炭酸ジアルキル(式中、各Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖又はC3~20分枝鎖アルキル基である)と反応させる。式RO(CO)ORの炭酸ジアルキル中のR基は、同じであっても異なっていてもよい。好ましくは、式RO(CO)ORの炭酸ジアルキル中のR基は、同じである。
【0197】
本発明の好ましいプロセスにおいて、炭酸ジアルキルは、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジ-iso-プロピル、及び炭酸ジ-tert-ブチルから選択される。最も好ましくは、炭酸ジアルキルは、炭酸ジメチルである。
【0198】
当業者によって理解されるように、式(IV)の化合物又はその塩から式(V)の化合物を生成するための別のステップは、Dean-Stark装置を使用して行うことができる。このような実験設定において、トラップ内に集められた副生成物(例えば、試薬が炭酸ジメチルである場合のメタノール)を一定間隔で除去することができ、又はトラップをモレキュラーシーブで充填してトラップを排液する必要性を回避することができる。反応中、追加の試薬(例えば、炭酸ジメチル)を規則的な間隔で反応容器に添加することができる。
【0199】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(IV)の化合物は、式(III)の化合物
【0200】
【化56】

(式中、Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基である)を、
第8族遷移金属触媒及び塩基の存在下で、水素で還元することによって調製される。このような工程は、式(III)の化合物中に存在するエステル部分及びイミン部分の両方が単一工程で還元されることを可能にするので、プロセス全体の効率を増加させる。
【0201】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(III)の化合物は、少なくとも1つの溶媒の存在下で還元される。
【0202】
好ましくは、少なくとも1つの溶媒は、アルコール、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、THF、及びMe-THFから選択される。より好ましくは、少なくとも1つの溶媒は、メタノール、エタノール、iso-プロパノール、tert-ブタノール、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、THF及びMe-THFから選択される。最も好ましくは、少なくとも1つの溶媒は、エタノール、iso-プロパノール、tert-ブタノール、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、及びトルエンから選択される。最も好ましくは、少なくとも1つの溶媒は、エタノールである。有利なことに、単一のアルコール溶媒(例えば、エタノール)の使用は、還元反応中により少ない不純物の形成をもたらし、それによって、反応混合物の精製をより容易にし、プロセスをスケールアップにより適したものにすることが見出された。
【0203】
本発明の好ましいプロセスにおいて、少なくとも1つの溶媒は、化合物(III)の総量に基づいて1500~2500mol%(例えば、化合物(III)の総量に基づいて1500mol%)、好ましくは化合物(III)の総量に基づいて1600~2000mol%、より好ましくは化合物(III)の総量に基づいて1700~1800mol%の量で存在する単一のアルコール(例えば、エタノール)である。
【0204】
本発明の特に好ましいプロセスにおいて、式(III)の化合物は、第1の溶媒及び第2の溶媒の存在下で還元される。
【0205】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第1の溶媒は、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、THF及びMe-THFから選択される。より好ましくは、第1の溶媒は、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、又はp-キシレンである。最も好ましくは、第1の溶媒は、トルエンである。
【0206】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第2の溶媒は、アルコール、好ましくはエタノール、iso-プロパノール、又はtert-ブタノール、より好ましくはiso-プロパノール又はエタノールである。最も好ましくは、第2の溶媒は、エタノールである。
【0207】
本発明の特に好ましいプロセスにおいて、第1の溶媒は、トルエンであり、第2の溶媒は、アルコール、好ましくはiso-プロパノール又はエタノールである。最も好ましくは、第1の溶媒はトルエンであり、第2の溶媒はエタノールである。
【0208】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第1の溶媒(例えばトルエン)は、化合物(III)の総量に基づいて710~1200mol%、好ましくは化合物(III)の総量に基づいて800~1100mol%、より好ましくは化合物(III)の総量に基づいて900~1000mol%(例えば化合物(III)の総量に基づいて900mol%)の量で存在する。
【0209】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第2の溶媒はアルコール(例えばエタノール)であり、化合物(III)の総量に基づいて200~400mol%、好ましくは化合物(III)の総量に基づいて250~350mol%、より好ましくは化合物(III)の総量に基づいて275~325mol%(例えば化合物(III)の総量に基づいて300mol%)の量で存在する。
【0210】
本発明のプロセスは、第8族遷移金属触媒を用いる。好ましくは、第8族遷移金属触媒は、鉄触媒、ルテニウム触媒、又はオスミウム触媒である。より好ましくは、第8族遷移金属触媒は、ルテニウム触媒又はオスミウム触媒である。最も好ましくは、第8族遷移金属触媒は、ルテニウム触媒である。
【0211】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第8族遷移金属触媒は、式(D)を有する三座配位子を含み、
【0212】
【化57】

式中、
Xは、-SR、-OR、-CR、-NR、-PR、-P(=O)R、-OPR、及び-NHPRから選択され、
20及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC2~20-アルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-アルキニル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換のC1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC6~20-アリール、及び置換若しくは非置換のC4~20-ヘテロアリールから選択されるか、又はR20と、R22a及びR22bのうちの1つ、若しくはRと、R22a及びR22bのうちの1つは、それらが結合している原子と一緒になって、環を形成するか、
又はXが、ヘテロ原子であり、R20と一緒になった場合、Rが存在しない場合には、任意選択的に置換された複素環を形成し、
Yは、-SR、-OR、-CR、-NR、-PR、-P(=O)R、-OPR、及び-NHPRから選択され、
21及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC2~20-アルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-アルキニル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換のC1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC6~20-アリール、及び置換若しくは非置換のC4~20-ヘテロアリールから選択されるか、又はR21と、R23a及びR23bのうちの1つ、若しくはRと、R23a及びR23bのうちの1つは、それらが結合する原子と一緒になって、環を形成するか、
又はYは、ヘテロ原子であり、R21と一緒になった場合、Rが存在しない場合には、任意選択的に置換された複素環を形成し、
22a、R22b、R23a、及びR23bは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC2~20-アルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-アルキニル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換のC1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC6~20-アリール、及び置換若しくは非置換のC4~20-ヘテロアリールから選択されるか、又はR22aと、R23a及びR23bのうちの1つ、若しくはR22bと、R23a及びR23bのうちの1つは、それらが結合する原子と一緒になって、複素環を形成し、
24は、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC2~20-アルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-アルキニル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換のC1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC6~20-アリール、及び置換若しくは非置換のC4~20-ヘテロアリールから選択され、
各q及びsは、独立して、1又は2であり、
及びRは、存在する場合、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC2~20-アルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-アルキニル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換のC1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC6~20-アリール、及び置換若しくは非置換のC4~20-ヘテロアリールから選択されるか、又はX及び/若しくはYが、-NR、-PR、-OPR、又は-NHPRである場合、R及びRが、それらが結合しているヘテロ原子と一緒になって、複素環を形成する。
【0213】
式(I)の三座配位子において、Xは、好ましくは-SR、-CR、-NR、-PR、及び-NHPRから選択される。より好ましくは、Xは、-SR、-PR、及び-NHPRから選択される。更により好ましくは、Xは、-SR及び-PRから選択される。最も好ましくは、Xは、-SR(例えば、-SEt)である。
【0214】
式(D)の三座配位子において、R20及びRは、各々独立して、好ましくは、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、及び置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキルから選択される。より好ましくは、R20及びRは、各々独立して、水素及び置換若しくは非置換のC1~20-アルキルから選択される。更により好ましくは、R20及びRは、各々水素である。
【0215】
式(D)の代替的な好ましい三座配位子において、Xは、ヘテロ原子であり、R20と一緒になった場合、Rが存在しない場合には、任意選択的に置換された複素環を形成する。より好ましくは、Xは、ヘテロ原子であり、R20と一緒になった場合、Rが存在しない場合には、任意選択的に置換されたヘテロ芳香族環を形成する。より好ましくは、任意選択的に置換されたヘテロ芳香族環は、任意選択的に置換された窒素含有ヘテロ芳香族環である。更により好ましくは、任意選択的に置換された窒素含有ヘテロ芳香族環は、ピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、ピリミジル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、及びキノリニルから選択される。更により好ましくは、任意選択的に置換された窒素含有ヘテロ芳香族環は、ピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、及びピリミジルから選択される。最も好ましくは、任意選択的に置換された窒素含有ヘテロ芳香族環はピリジニルである。
【0216】
式(D)の三座配位子において、Yは、好ましくは-SR、-CR、-NR、-PR、及び-NHPRから選択される。より好ましくは、Yは、-SR、-PR、及び-NHPRから選択される。更により好ましくは、Yは、-SR及び-PRから選択される。最も好ましくは、Yは、-SR(例えば、-SEt)である。
【0217】
式(D)の三座配位子において、R21及びRは、各々独立して、好ましくは、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、及び置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキルから選択される。より好ましくは、R21及びRは、各々独立して、水素及び置換若しくは非置換のC1~20-アルキルから選択される。更により好ましくは、R21及びRは、各々水素である。
【0218】
式(D)の代替的な好ましい三座配位子において、Yは、ヘテロ原子であり、R21と一緒になった場合、Rが存在しない場合には、任意選択的に置換された複素環を形成する。より好ましくは、Yは、ヘテロ原子であり、R21と一緒になった場合、Rが存在しない場合には、任意選択的に置換されたヘテロ芳香族環を形成する。より好ましくは、任意選択的に置換されたヘテロ芳香族環は、任意選択的に置換された窒素含有ヘテロ芳香族環である。更により好ましくは、任意選択的に置換された窒素含有ヘテロ芳香族環は、ピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、ピリミジル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、及びキノリニルから選択される。更により好ましくは、任意選択的に置換された窒素含有ヘテロ芳香族環は、ピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、及びピリミジルから選択される。最も好ましくは、任意選択的に置換された窒素含有ヘテロ芳香族環はピリジニルである。
【0219】
式(D)の三座配位子において、R22a、R22b、R23a、及びR23bは、各々独立して、好ましくは、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、及び置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキルから選択される。より好ましくは、R22a、R22b、R23a、及びR23bは、各々独立して、水素及び置換若しくは非置換のC1~20-アルキルから選択される。更により好ましくは、R22a、R22b、R23a、及びR23bは、各々水素である。
【0220】
式(D)の代替的な好ましい三座配位子において、R22a及びR23aとR23bの1つ、又はR22b及びR23aとR23bの1つは、それらが結合している原子と共に複素環を形成する。好ましくは、複素環は、6員環複素環である。
【0221】
式(D)の三座配位子において、R24は、好ましくは、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、及び置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキルから選択される。より好ましくは、R24は、水素及び置換若しくは非置換のC1~20-アルキルから選択される。更により好ましくは、R24は水素である。
【0222】
式(D)の三座配位子において、各q及びsは、好ましくは1である。
【0223】
式(D)の三座配位子において、R及びRは、存在する場合、各々独立して、好ましくは、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換のC6~20-アリール、及び置換若しくは非置換のC4~20-ヘテロアリールから選択される。より好ましくは、R及びRは、存在する場合、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル(例えば、C1~10アルキル)及び置換若しくは非置換のC6~20-アリールから選択される。特に好ましいC1~20-アルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、及びヘキシル、より好ましくはメチル、エチル、iso-プロピル、tert-ブチル、更により好ましくはエチルが挙げられる。好ましいC6~20-アリール基としては、フェニル、トリル、キシリル、及びメトキシフェニル、より好ましくはフェニルが挙げられる。
【0224】
式(D)の代替的な好ましい三座配位子において、X及び/又はYが、-NR、-PR、-OPR、又は-NHPRである場合、R及びRは、それらが結合しているヘテロ原子と一緒になって、複素環を形成する。
【0225】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第8族遷移金属触媒は、式(D)を有する三座配位子を含み、
式中、
Xは、-SR、-CR、-NR、-PR、及び-NHPRから選択され、
20及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC2~20-アルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-アルキニル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換のC1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC6~20-アリール、及び置換若しくは非置換のC4~20-ヘテロアリールから選択されるか、
又はXは、ヘテロ原子であり、R20と一緒になった場合、Rが存在しない場合には、任意選択的に置換されたヘテロ芳香族環を形成し、ヘテロ芳香族環は窒素含有ヘテロ芳香族環であり、
Yは、-SR、-CR、-NR、-PR、及び-NHPRから選択され、
21及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC2~20-アルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-アルキニル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換のC1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC6~20-アリール、及び置換若しくは非置換のC4~20-ヘテロアリールから選択されるか、
又はYは、ヘテロ原子であり、R21と一緒になった場合、Rが存在しない場合には、任意選択的に置換されたヘテロ芳香族環を形成し、ヘテロ芳香族環は窒素含有ヘテロ芳香族環であり、
22a、R22b、R23a、R23b、及びR24は、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC2~20-アルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-アルキニル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換のC1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC6~20-アリール、及び置換若しくは非置換のC4~20-ヘテロアリールから選択され、
各q及びsは、独立して、1又は2であり、
及びRは、存在する場合、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC2~20-アルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-アルキニル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換のC1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC6~20-アリール、及び置換若しくは非置換のC4~20-ヘテロアリールから選択されるか、又は、X及び/若しくはYが-NR、-PR又は-NHPRである場合、R及びRは、それらが結合しているヘテロ原子と一緒になって、複素環を形成する。
【0226】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第8族遷移金属触媒は、式(D)を有する三座配位子を含み、
式中、
Xは、-SR、-PR、及び-NHPRから選択され、
20及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC2~20-アルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-アルキニル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換のC1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC6~20-アリール、及び置換若しくは非置換のC4~20-ヘテロアリールから選択されるか、
又はXは、ヘテロ原子であり、R20と一緒になった場合、Rが存在しない場合には、任意選択的に置換されたヘテロ芳香族環を形成し、ヘテロ芳香族環は、ピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、ピリミジル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、及びキノリニルから選択される窒素含有ヘテロ芳香族環であり、
Yは、-SR、-PR、及び-NHPRから選択され、
21及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC2~20-アルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-アルキニル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換のC1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC6~20-アリール、及び置換若しくは非置換のC4~20-ヘテロアリールから選択されるか、
又はYはヘテロ原子であり、R21と一緒になった場合、Rが存在しない場合には、ヘテロ芳香族環を形成し、任意選択的に置換されたヘテロ芳香族環は、ピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、ピリミジル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、及びキノリニルから選択される窒素含有ヘテロ芳香族環であり、
22a、R22b、R23a、R23b、及びR24は、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC2~20-アルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-アルキニル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換のC1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC6~20-アリール、及び置換若しくは非置換のC4~20-ヘテロアリールから選択され、
各q及びsは、独立して、1又は2であり、
及びRは、存在する場合、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC2~20-アルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-アルキニル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換のC1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC6~20-アリール、及び置換若しくは非置換のC4~20-ヘテロアリールから選択されるか、又は、X及び/若しくはYが-PR又は-NHPRである場合、R及びRは、それらが結合しているヘテロ原子と一緒になって、複素環を形成する。
【0227】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第8族遷移金属触媒は、式(D)を有する三座配位子を含み、
式中、
Xは、-SR及び-PRから選択され、
20及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC2~20-アルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-アルキニル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換のC1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC6~20-アリール、及び置換若しくは非置換のC4~20-ヘテロアリールから選択されるか、
又はXは、ヘテロ原子であり、R20と一緒になった場合、Rが存在しない場合には、任意選択的に置換されたヘテロ芳香族環を形成し、ヘテロ芳香族環は、ピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、及びピリミジルから選択される窒素含有ヘテロ芳香族環であり、
Yは、-SR及び-PRから選択され、
21及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC2~20-アルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-アルキニル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換のC1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC6~20-アリール、及び置換若しくは非置換のC4~20-ヘテロアリールから選択されるか、
又はYは、ヘテロ原子であり、R21と一緒になった場合、Rが存在しない場合には、任意選択的に置換されたヘテロ芳香族環を形成し、ヘテロ芳香族環は、ピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、及びピリミジルから選択される窒素含有ヘテロ芳香族環であり、
22a、R22b、R23a、R23b、及びR24は、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC2~20-アルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-アルキニル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換のC1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC6~20-アリール、及び置換若しくは非置換のC4~20-ヘテロアリールから選択され、
各q及びsは、独立して、1又は2であり、
及びRは、存在する場合、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC2~20-アルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-アルキニル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換のC1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC6~20-アリール、及び置換若しくは非置換のC4~20-ヘテロアリールから選択されるか、又は、X及び/若しくはYが-PRである場合、R及びRは、それらが結合しているヘテロ原子と一緒になって、複素環を形成する。
【0228】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第8族遷移金属触媒は、式(D)を有する三座配位子を含み、
Xは、-SRであり、
20及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC2~20-アルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-アルキニル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換のC1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC6~20-アリール、及び置換若しくは非置換のC4~20-ヘテロアリールから選択され、
Yは、-SRであり、
21及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC2~20-アルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-アルキニル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換のC1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC6~20-アリール、及び置換若しくは非置換のC4~20-ヘテロアリールから選択され、
22a、R22b、R23a、R23b及びR24は、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC2~20-アルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-アルキニル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換のC1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC6~20-アリール、及び置換若しくは非置換のC4~20-ヘテロアリールから選択され、
各q及びsは、独立して、1又は2であり、
は、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC2~20-アルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-アルキニル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換のC1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC6~20-アリール、及び置換若しくは非置換のC4~20-ヘテロアリールから選択される。
【0229】
好ましくは、第8族遷移金属触媒は、式(D)を有する三座配位子を含み、
Xは、-SRであり、
20及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、及び置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキルから選択され、
Yは、-SRであり、
21及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、及び置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキルから選択され、
22a、R22b、R23a、R23b及びR24は、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、及び置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキルから選択され、
各q及びsは、独立して、1又は2であり、
は、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、及び置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキルから選択される。
【0230】
より好ましくは、第8族遷移金属触媒は、式(D)を有する三座配位子を含み、
Xは、-SRであり、
20及びRは、各々独立して、水素及び置換若しくは非置換のC1~20-アルキルから選択され、
Yは、-SRであり、
21及びRは、各々独立して、水素及び置換若しくは非置換のC1~20-アルキルから選択され、
22a、R22b、R23a、R23b及びR24は、各々独立して、水素及び置換若しくは非置換のC1~20-アルキルから選択され、
各q及びsは、独立して、1又は2であり、
は、各々独立して、水素及び置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、及び置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキルから選択される。
【0231】
更により好ましくは、第8族遷移金属触媒は、式(D)を有する三座配位子を含み、
X及びYは、各々-SRであり、
20、R、R21、R、R22a、R22b、R23a、R23b及びR24は、各々水素であり、
q及びsは、各々1であり、
は、各々独立して、置換若しくは非置換のC1~20アルキル、好ましくはC1~10アルキルである。
【0232】
更により好ましくは、第8族遷移金属触媒は、式(D)を有する三座配位子を含み、
X及びYは、各々-SEtであり、
20、R、R21、R、R22a、R22b、R23a、R23b、及びR24は、各々水素であり、
q及びsは、各々1である。
【0233】
本発明の代替的な好ましいプロセスにおいて、第8族遷移金属触媒は、式(D)を有する三座配位子を含み、
Xは、ヘテロ原子であり、R20と一緒になった場合、Rが存在しない場合には、任意選択的に置換されたヘテロ芳香族環を形成し、
Yは、-PRであり、
21及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC2~20-アルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-アルキニル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換のC1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC6~20-アリール、及び置換若しくは非置換のC4~20-ヘテロアリールから選択され、
22a、R22b、R23a、R23b及びR24は、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC2~20-アルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-アルキニル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換のC1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC6~20-アリール、及び置換若しくは非置換のC4~20-ヘテロアリールから選択され、
各q及びsは、独立して、1又は2であり、
及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC2~20-アルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-アルキニル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換のC1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC6~20-アリール、及び置換若しくは非置換のC4~20-ヘテロアリールから選択されるか、又は、R及びRは、それらが結合しているヘテロ原子と一緒になって、複素環を形成する。
【0234】
好ましくは、第8族遷移金属触媒は、式(D)を有する三座配位子を含み、
Xは窒素原子であり、R20と一緒になった場合、Rが存在しない場合には、任意選択的に置換されたヘテロ芳香族環を形成し、ヘテロ芳香族環は窒素含有ヘテロ芳香族環であり、
Yは、-PRであり、
21及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、及び置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキルから選択され、
22a、R22b、R23a、R23b及びR24は、各々独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキルから選択され、
各q及びsは、独立して、1又は2であり、
及びRは、各々独立して、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル、置換若しくは非置換のC1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換のC3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換のC6~20-アリール、及び置換若しくは非置換のC4~20-ヘテロアリールから選択される。
【0235】
より好ましくは、第8族遷移金属触媒は、式(D)を有する三座配位子を含み、
Xは、窒素原子であり、R20と一緒になった場合、Rが存在しない場合には、任意選択的に置換されたヘテロ芳香族環を形成し、ヘテロ芳香族環は、ピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、ピリミジル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、及びキノリニルから選択される、窒素含有ヘテロ芳香族環であり、
Yは、-PRであり、
21、R、R22a、R22b、R23a、R23b及びR24は、各々水素であり、
各q及びsは1であり、
及びRは、各々独立して、置換若しくは非置換のC1~20-アルキル及び置換若しくは非置換のC6~20-アリールから選択される。
【0236】
更により好ましくは、第8族遷移金属触媒は、式(D)を有する三座配位子を含み、
Xは窒素原子であり、R20と一緒になった場合、Rが存在しない場合には、任意選択的に置換されたヘテロ芳香族環を形成し、ヘテロ芳香族環は、ピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、及びピリミジルから選択される窒素含有ヘテロ芳香族環であり、
Yは、-PRであり、
21、R、R22a、R22b、R23a、R23b、及びR24は、各々水素であり、
各q及びsは1であり、
及びRは、各々独立して、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、フェニル、トリル、キシリル、及びメトキシフェニルから選択される。
【0237】
更により好ましくは、第8族遷移金属触媒は、式(D)を有する三座配位子を含み、
Xは、窒素原子であり、R20と一緒になった場合、Rが存在しない場合には、任意選択的に置換されたピリジニル環を形成し、
Yは、-PRであり、
21、R、R22a、R22b、R23a、R23b、及びR24は、各々水素であり、
各q及びsは1であり、
及びRは、各々独立して、メチル、エチル、iso-プロピル、tert-ブチル、フェニル、トリル、キシリル、及びメトキシフェニルから選択される。
【0238】
更により好ましくは、第8族遷移金属触媒は、式(D)を有する三座配位子を含み、
Xは、窒素原子であり、R20と一緒になった場合、Rが存在しない場合には、任意選択的に置換されたピリジニル環を形成し、
Yは、-PRであり、
21、R、R22a、R22b、R23a、R23b、及びR24は、各々水素であり、
各q及びsは1であり、
及びRは、各々フェニルである。
【0239】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第8族遷移金属触媒は、式(E)又は式(F)の触媒であり、
[M(L)(L](E)
[M(L)(L]W(F)
式中、
は、第8族遷移金属、好ましくはルテニウムであり、
は、先に定義した式(D)の三座配位子であり、
は、同じ又は異なり得る配位子であり、
dは、1、2、又は3であり、
Wは、非配位アニオン性配位子である。
【0240】
本発明の好ましいプロセスにおいて、dは、3である。
【0241】
当業者によって理解されるように、各Lは、L配位子の組み合わせが原子価の規則によって許容されるという条件で、単座配位子又は多座配位子であり得る。本発明の好ましいプロセスにおいては、各Lは単座配位子である。好ましくは、各Lは、独立して、中性単座配位子又はアニオン性単座配位子である。本発明の好ましいプロセスにおいて、各Lは、独立して、-H、-CO、-CN、-P(R’’’)、-As(R’’’)、-CR’’’、-OR’’’、-O(C=O)R’’’、-NR’’’、ハロゲン(例えば、-Cl、-Br、-I)及び溶媒から選択され、各R’は、独立して、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のアリール、及び置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択される。好ましくは、各Lは、独立して、-H、-CO、-P(R’’’)、及びハロゲンから選択される。より好ましくは、各Lは、独立して、-CO、-PPh、及び-Clから選択される。Lが溶媒である場合、溶媒は、好ましくは、THF、Me-THF、MeCN、HO及びアルコール(例えば、メタノール、エタノール、iso-プロパノールなど)から選択される。
【0242】
式(F)の第8族遷移金属触媒において、Wは、非配位アニオン性配位子である。「非配位アニオン性配位子」とは、アニオン配位子が金属中心の外圏に強制的に配置されることを意味する。したがって、アニオン性配位子は金属中心から解離される。これは、アニオン配位子が配位圏内の金属に結合している中性錯体とは対照的である。アニオン性配位子は、一般に、カチオン性錯体のX線結晶構造を分析することによって、非配位性として同定することができる。好ましくは、Wは、トリフレート(すなわち、TfO又はCFSO )、テトラフルオロホウ酸塩(すなわちBF)、ヘキサフルオロアンチモネート(すなわちSbF)、ヘキサフルオロホスフェート(PF )、[B[3,5-(CF([BAr )、ハロゲン化物(例えばCl、Br、I)及びメシレート(MsO又はMeSO )からなる群から選択される。
【0243】
好ましくは、第8族遷移金属触媒は、式(E)の遷移金属触媒である。
【0244】
あるいは、第8族遷移金属触媒は、式(F)の遷移金属触媒である。
【0245】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第8族遷移金属触媒は、
【0246】
【化58】

である。
【0247】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第8族遷移金属触媒は、Ru-SNS又はRu-PNNである。本発明の特に好ましいプロセスにおいて、第8族遷移金属触媒は、Ru-SNSである。
【0248】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第8族遷移金属触媒は、
【0249】
【化59】

である。
【0250】
本発明の特に好ましいプロセスにおいて、第8族遷移金属触媒は、
【0251】
【化60】

である。
【0252】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第8族遷移金属触媒は、化合物(III)の総量に基づいて0.1~5.0mol%、好ましくは化合物(III)の総量に基づいて0.5~4.0mol%、より好ましくは化合物(III)の総量に基づいて1.0~3.0mol%(例えば、化合物(III)の総量に基づいて2.0mol%)の量で存在する。
【0253】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(III)の化合物から式(IV)の化合物を調製するための反応において使用される塩基は、金属アルコキシドである。金属アルコキシドは、好ましくは、金属メトキシド、金属エトキシド、金属iso-プロポキシド、又は金属tert-ブトキシドである。
【0254】
本発明の好ましいプロセスにおいて、塩基は、アルカリ金属アルコキシドである。アルカリ金属アルコキシドは、好ましくは、アルカリ金属メトキシド、アルカリ金属エトキシド、アルカリ金属iso-プロポキシド、又はアルカリ金属tert-ブトキシドである。アルカリ金属アルコキシドは、より好ましくは、アルカリ金属tert-ブトキシドである。
【0255】
好ましい金属アルコキシドとしては、ナトリウムtert-ブトキシド又はカリウムtert-ブトキシド、好ましくはカリウムtert-ブトキシドが挙げられる。
【0256】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(III)の化合物から式(IV)の化合物を調製するための反応において使用される塩基は、上述の式(III)の化合物の総量に基づいて10~100mol%、好ましくは上述の式(III)の化合物の総量に基づいて20~90mol%、より好ましくは上述の式(III)の化合物の総量に基づいて30~80mol%(例えば上述の式(III)の化合物の総量に基づいて50mol%)の量で存在する。
【0257】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(III)中のRは、置換若しくは非置換のC1~10直鎖若しくはC3~10分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~10アリール基である。特に好ましいC1~10-アルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、及びヘキシル、より好ましくはメチル、エチル、iso-プロピル、tert-ブチル、更により好ましくはエチルが挙げられる。好ましいC6~10-アリール基としては、フェニル、トリル、キシリル、及びメトキシフェニル、より好ましくはフェニルが挙げられる。
【0258】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(III)の化合物は、1~50bar、好ましくは10~40bar、より好ましくは20~30bar(例えば28bar)の範囲の水素圧下で還元される。当業者に理解されるように、還元反応の水素圧は、反応中にこれらの範囲内で変動し得る。
【0259】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(III)の化合物は、10~150℃、好ましくは30~140℃、より好ましくは50~130℃、より好ましくは65~120℃の範囲の温度で還元される。当業者に理解されるように、還元反応の温度は、反応中にこれらの範囲内で変動し得る。したがって、本発明の好ましいプロセスにおいて、式(III)の化合物は、50~70℃の範囲の温度(例えば65℃)で一定時間還元され、次いで110~140℃の範囲の温度(例えば120℃)で更なる時間還元される。
【0260】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(III)の化合物は、1.5~10時間、好ましくは5~9時間、より好ましくは6~8時間の期間、還元される。
【0261】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(III)の化合物は、式(I)の化合物
【0262】
【化61】

(式中、Rが、上で定義した通りである)と、
式(II)の化合物とを、
【0263】
【化62】

酸触媒の存在下で反応させることによって調製される。
【0264】
酸触媒は、無機酸触媒又は有機酸触媒であってもよい。
【0265】
本発明の好ましいプロセスにおいて、酸触媒は、無機酸触媒である。適切な無機酸触媒としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、及びホウ酸が挙げられる。
【0266】
本発明の好ましいプロセスにおいて、酸触媒は、有機酸触媒である。好ましくは、有機酸触媒は、有機スルホン酸又はカルボン酸である。好適な有機スルホン酸としては、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、及びp-アミノベンゼンスルホン酸が挙げられる。適切なカルボン酸としては、ギ酸、酢酸、及びトリフルオロ酢酸が挙げられる。
【0267】
本発明の好ましいプロセスにおいて、酸触媒は、トリフルオロ酢酸である。
【0268】
本発明の好ましいプロセスにおいて、酸触媒は、式(I)の化合物の総量に基づいて5~15mol%、好ましくは式(I)の化合物の総量に基づいて8~12mol%(例えば、式(I)の化合物の総量に基づいて10mol%)の量で存在する。
【0269】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(I)の化合物と式(II)の化合物との反応は、溶媒の存在下で行われる。本発明の好ましいプロセスにおいて、溶媒は、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレンから選択される。本発明の特に好ましいプロセスにおいて、溶媒は、トルエンである。
【0270】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(I)の化合物と式(II)の化合物との反応は、10~150℃、好ましくは30~140℃、より好ましくは50~130℃、より好ましくは65~120℃の範囲の温度で行われる。
【0271】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(I)の化合物と式(II)の化合物との反応は、4~10時間、好ましくは5~9時間、より好ましくは6~8時間の期間にわたって行われる。
【0272】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(IX)の化合物は、式(VIII)の化合物
【0273】
【化63】

(式中、
Zが、-SOR’’又は-COであり、
R’’が、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基であり、
が、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基である)と、
ホウ素化剤とを、第9族遷移金属触媒の存在下で反応させることによって調製される。
【0274】
アザインドール系化合物を含む従来のホウ素化反応は、典型的には3つの別々の工程で行われる。第1の工程は、5員環内の窒素原子の保護を伴い、第2の工程は、アザインドールのハロゲン化を含み、第3の工程は、このハロゲン化化合物を所望のホウ素化剤とカップリングすることを伴う。したがって、本発明のプロセスは、ホウ素化が単一工程で起こるので、より効率的である。
【0275】
本発明のプロセスは、第9族遷移金属触媒を用いる。好ましくは、第9族遷移金属触媒は、コバルト触媒、ロジウム触媒、又はイリジウム触媒である。より好ましくは、第9族遷移金属触媒は、ロジウム触媒又はイリジウム触媒である。最も好ましくは、第9族遷移金属触媒は、イリジウム触媒である。
【0276】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第9族遷移金属触媒は、式(G)を有する二座配位子を含み、
【0277】
【化64】

式中、
式中、R25、R26、R27、R28、R29及びR30の各々は、独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~20直鎖又はC3~20分枝鎖アルキル基又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基から選択され、
31及びR32の各々は、水素であるか、又は、それらが結合している原子と一緒になって、R31及びR32は、環を形成する。
【0278】
式(G)の好ましい二座配位子において、R25、R26、R27、R28、R29及びR30の各々は、好ましくは、独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~10直鎖又はC3~10分枝鎖アルキル基又は置換若しくは非置換のC6~10アリール基から選択される。好ましいC1~10-アルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、及びヘキシル、より好ましくはメチル、エチル、iso-プロピル、及びtert-ブチル、更により好ましくはメチル及びtert-ブチルが挙げられる。好ましいC6~10-アリール基としては、フェニル、トリル、キシリル、及びメトキシフェニル、より好ましくはフェニルが挙げられる。
【0279】
式(G)の好ましい二座配位子において、R31及びR32の各々は、水素である。
【0280】
式(G)の代替的な好ましい二座配位子において、それらが結合している原子と一緒になって、R31及びR32は、環を形成する。好ましくは、環は、6員環である。より好ましくは、環は、6員炭素環式環である。あるいは、環は、6員複素環式環である。
【0281】
式(G)の特に好ましい二座配位子としては、1,10-フェナントロリン、3,4,7,8-テトラメチル-1,10-フェナントロリン、4,7-ジメチル-1,10-フェナントロリン、5,6-ジメチル-1,10-フェナントロリン、2,9-ジメチル-1,10-フェナントロリン、2,2’-ビピリジン、4,4’-ジ-メチル-2,2’-ビピリジン及び4,4’-ジ-tert-ブチル-2,2’-ビピリジンが挙げられる。
【0282】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第9族遷移金属触媒は、式(H)の触媒であり、
[M(L)(X)(COD)](H)
式中、
は、第9族遷移金属、好ましくはイリジウムであり、
は、先に定義した式(G)の二座配位子であり、
は、アニオン性配位子であり、
CODは、シクロオクタジエンである。
【0283】
式(H)の好ましい第9族遷移金属触媒において、Xは、ハロ基、例えば、-Cl、-Br、及び-I、アルコキシ基、又はトリフルオロアセテート(すなわち、FCCO )である。好ましくは、Xは、-Clである。
【0284】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第9族遷移金属触媒は、クロロ(1,5-シクロオクタジエン)(1,10-フェナントロリン)イリジウム(I)、クロロ(1,5-シクロオクタジエン)(3,4,7,8-テトラメチル-1,10-フェナントロリン)イリジウム(I)、クロロ(1,5-シクロオクタジエン)(4,7-ジメチル-1,10-フェナントロリン)イリジウム(I)、クロロ(1,5-シクロオクタジエン)(5,6-ジメチル-1,10-フェナントロリン)イリジウム(I)、クロロ(1,5-シクロオクタジエン)(2,9-ジメチル-1,10-フェナントロリン)イリジウム(I)、クロロ(1,5-シクロオクタジエン)(2,2’-ビピリジン)イリジウム(I)、クロロ(1,5-シクロオクタジエン)(4,4’-ジ-メチル-2,2’-ビピリジン)イリジウム(I)、又はクロロ(1,5-シクロオクタジエン)(4,4’-ジ-tert-ブチル-2,2’-ビピリジン)イリジウム(I)である。本発明の特に好ましいプロセスにおいて、第9族遷移金属触媒は、クロロ(1,5-シクロオクタジエン)(1,10-フェナントロリン)イリジウム(I)である。
【0285】
当業者によって理解されるように、第9族遷移金属触媒は、系中で形成され得る。また、当業者によって理解されるように、活性触媒種は、系中で形成されてもよい。
【0286】
第9族遷移金属触媒は、THF、ジオキサン、ジエチルエーテル、又はシクロペンチルメチルエーテルなどの溶媒との付加物の形態であってもよい。好ましくは、第9族遷移金属触媒は、THFとの付加物の形態である。したがって、本発明の好ましいプロセスにおいて、第9族遷移金属触媒は、クロロ(1,5-シクロオクタジエン)(1,10-フェナントロリン)イリジウム(I)・THF付加物、クロロ(1,5-シクロオクタジエン)(3,4,7,8-テトラメチル-1,10-フェナントロリン)イリジウム(I)・THF付加物、クロロ(1,5-シクロオクタジエン)(4,7-ジメチル-1,10-フェナントロリン)イリジウム(I)・THF付加物、クロロ(1,5-シクロオクタジエン)(5,6-ジメチル-1,10-フェナントロリン)イリジウム(I)・THF付加物、クロロ(1,5-シクロオクタジエン)(2,9-ジメチル-1,10-フェナントロリン)イリジウム(I)・THF付加物、クロロ(1,5-シクロオクタジエン)(2,2’-ビピリジン)イリジウム(I)・THF付加物、クロロ(1,5-シクロオクタジエン)(4,4’-ジ-メチル-2,2’-ビピリジン)イリジウム(I)・THF付加物、又はクロロ(1,5-シクロオクタジエン)(4,4’-ジ-tert-ブチル-2,2’-ビピリジン)イリジウム(I)・THF付加物である。本発明の特に好ましいプロセスにおいて、第9族遷移金属触媒は、クロロ(1,5-シクロオクタジエン)(1,10-フェナントロリン)イリジウム(I)・THF付加物である。
【0287】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第9族遷移金属触媒は、化合物(VIII)の総量に基づいて0.01~1.0mol%、好ましくは化合物(VIII)の総量に基づいて0.05~0.8mol%、好ましくは化合物(VIII)の総量に基づいて0.1~0.5mol%、より好ましくは化合物(VIII)の総量に基づいて0.1~0.25mol%の量で存在する。本発明のプロセスにおいて、式(VIII)中のZは、-SOR’’又は-COである。このようなZ基は、典型的には式(IX)の化合物を固体にするので、式(IX)の化合物の単離及び精製を補助し、このことは、容易に濾過又は結晶化することができることを意味する。更に、式(VIII)の化合物におけるそのようなZ基の存在は、式(IX)の化合物を形成するホウ素化反応の収率を改善するのに役立つとも考えられる。理論に束縛されることを望まないが、これは、(i)Z基が触媒を導く能力、及び(ii)Z基の立体的かさ高さ(触媒と基質との間の立体的相互作用の結果として生成物における正確な位置選択性を確実にする)に起因すると考えられる。
【0288】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(VIII)中のZは、-COである。好ましくは、Rは、置換若しくは非置換のC1~10直鎖若しくはC3~10分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~10アリール基である。特に好ましいC1~10-アルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、及びヘキシル、より好ましくはメチル、エチル、iso-プロピル、tert-ブチル、更により好ましくはtert-ブチルが挙げられる。好ましいC6~10-アリール基としては、フェニル、トリル、キシリル、及びメトキシフェニル、より好ましくはフェニルが挙げられる。
【0289】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(VIII)中のZは、-SOR’’である。好ましくは、R’’は、置換若しくは非置換のC1~10直鎖若しくはC3~10分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~10アリール基である。特に好ましいC1~10-アルキル基としては、メチル、トリフルオロメチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、及びヘキシル、より好ましくはメチル、エチル、iso-プロピル、及びtert-ブチル、更により好ましくはメチル及びエチルが挙げられる。好ましいC6~10-アリール基としては、フェニル、トリル、キシリル、メトキシフェニル、ブロモフェニル、及びニトロフェニル、より好ましくはトリルが挙げられる。
【0290】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(VIII)の化合物は、5~100℃、好ましくは10~90℃、より好ましくは20~80℃、より好ましくは50~70℃の範囲の温度で反応する。
【0291】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(VIII)の化合物を0.5~2時間、好ましくは1~1.5時間の期間にわたって反応させる。
【0292】
本発明の好ましいプロセスにおいて、ホウ素化剤は、式(J)又は式(K)の化合物であり、
HB(OR)(OR)(J)
[B(OR)(OR)](K)
式(J)の化合物において、R及びRは、独立して、H、又は1~20個の炭素原子を含む置換若しくは非置換の有機基であるか、又は、それらが結合している原子と一緒になって、R及びRは、環を形成し、
式(K)の化合物において、各R及びRが、独立して、H、又は1~20個の炭素原子を含む置換若しくは非置換の有機基であるか、又は、それらが結合している原子と一緒になって、R及びRの各々の場合は、環を形成し得る。
【0293】
本発明の好ましいプロセスにおいて、ホウ素化剤は、式(J)の化合物であり、R及びRは、独立して、H又は置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基であるか、又は、それらが結合している原子と一緒になって、R及びRは、環を形成する。
【0294】
本発明の好ましいプロセスにおいて、ホウ素化剤は、式(J)の化合物であり、R及びRは、独立して、H又は置換若しくは非置換のC1~10直鎖若しくはC3~10分枝鎖アルキル基、より好ましくはH又は置換若しくは非置換のC1~5直鎖若しくはC3~5分枝鎖アルキル基である。例えば、ホウ素化剤は、ビス(3-エチル-3-ペントキシ)ボランであり得る。
【0295】
本発明の代替的な好ましいプロセスにおいて、ホウ素化剤は、式(J)の化合物であり、それらが結合している原子と一緒になって、R及びRは、環を形成する。例えば、ホウ素化剤は、HBpin又はHbCat、好ましくはHBpinであり得る。
【0296】
本発明の好ましいプロセスにおいて、ホウ素化剤は、式(K)の化合物であり、R及びRは、独立して、H又は置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基であるか、又は、それらが結合している原子と一緒になって、R及びRの各々の場合は、環を形成し得る。
【0297】
本発明の好ましいプロセスにおいて、ホウ素化剤は、式(K)の化合物であり、R及びRは、独立して、H又は置換若しくは非置換のC1~10直鎖若しくはC3~10分枝鎖アルキル基、より好ましくはH又は置換若しくは非置換のC1~5直鎖若しくはC3~5分枝鎖アルキル基、更により好ましくはHである。例えば、ホウ素化剤は、(ジヒドロキシボラニル)ホウ酸であり得る。
【0298】
本発明の代替的な好ましいプロセスにおいて、ホウ素化剤は、式(K)の化合物であり、それらが結合している原子と一緒になって、R及びRの各々の場合は、環を形成する。例えば、ホウ素化剤は、Bpin又はビス(カテコラト)二ホウ素、好ましくはBpinであり得る。
【0299】
本発明の好ましいプロセスにおいて、ホウ素化剤は、Bpin、HBpin、(ジヒドロキシボラニル)ホウ酸、HBcat、及びビス(カテコラト)二ホウ素から選択される。より好ましくは、ホウ素化剤は、HBpin及びBpinから選択される。最も好ましくは、ホウ素化剤は、Bpinである。
【0300】
本発明の好ましいプロセスにおいて、ホウ素化剤は、上述の式(VIII)の化合物の総量に基づいて70mol%以上、より好ましくは上述の式(VIII)の化合物の総量に基づいて80mol%以上、より好ましくは上述の式(VIII)の化合物の総量に基づいて90mol%以上、より好ましくは上述の式(VIII)の化合物の総量に基づいて100mol%以上の量で存在する。
【0301】
本発明の好ましいプロセスにおいて、ホウ素化剤は、上述の式(VIII)の化合物の総量に基づいて70~200mol%、より好ましくは上述の式(VIII)の化合物の総量に基づいて70~175mol%、より好ましくは上述の式(VIII)の化合物の総量に基づいて70~150mol%、より好ましくは上述の式(VIII)の化合物の総量に基づいて70~125mol%、より好ましくは上述の式(VIII)の化合物の総量に基づいて70~100mol%、より好ましくは上述の式(VIII)の化合物の総量に基づいて70~90mol%、更により好ましくは上述の式(VIII)の化合物の総量に基づいて70~80mol%の量で存在する。
【0302】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(VIII)の化合物は、式(VII)の化合物と、
【0303】
【化65】

式R’’SOのハロゲン化スルホニル(式中、Xが、ハロゲン化物であり、R’’が、上記で定義した通りである)又は式(RO(CO))Oの化合物(式中、Rが、上記で定義した通りである)とを反応させることによって調製される。
【0304】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(RO(CO))Oの化合物は、(MeO(CO))O、(EtO(CO))O、(PrO(CO))O、及び(BuO(CO))Oから選択される。最も好ましくは、式(RO(CO))Oの化合物は、(BuO(CO))Oである。
【0305】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式R’’SOのハロゲン化スルホニルは、ハロゲン化ベンゼンスルホニル、ハロゲン化ブロシル、ハロゲン化トシル、ハロゲン化ノシル、ハロゲン化メシル、ハロゲン化トリフリル、及びハロゲン化エタンスルホニルから選択される。本発明の特に好ましいプロセスにおいて、式R’’SOのハロゲン化スルホニルは、塩化ベンゼンスルホニル、塩化ブロシル、塩化トシル、塩化ノシル、塩化メシル、塩化トリフリル、及び塩化エタンスルホニルから選択される。最も好ましくは、式R’’SOのハロゲン化スルホニルは、塩化トシルである。
【0306】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式R’’SOのハロゲン化スルホニル又は式(RO(CO))Oの化合物は、上述の式(VII)の化合物の総量に基づいて110~150mol%、好ましくは上述の式(VII)の化合物の総量に基づいて110~120mol%の量で存在する。
【0307】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(VII)の化合物を、塩基の存在下で、式R’’SOのハロゲン化スルホニル又は式(RO(CO))Oの化合物と反応させる。好ましくは、塩基は、有機塩基である。より好ましくは、塩基は、有機アミンである。更により好ましくは、塩基は、N-N-ジメチルアニリン、トリエチルアミン、Et PrN、ピリジン、DMAP、DABCO及びDBUから選択される。最も好ましくは、塩基は、N-N-ジメチルアニリンである。
【0308】
本発明の好ましいプロセスにおいて、塩基は、上述の式(VII)の化合物の総量に基づいて1.0~4.0mol%、好ましくは上述の式(VII)の化合物の総量に基づいて2.0~3.0mol%の量で存在する。
【0309】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(VII)の化合物を室温で反応させる。
【0310】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(VII)の化合物を0.5~2時間、好ましくは1~1.5時間の期間にわたって反応させる。
【0311】
本発明はまた、式(VI)の化合物、又はその塩若しくは誘導体を調製するためのプロセスであって、
【0312】
【化66】

式(I)の化合物
【0313】
【化67】

(式中、Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基である)と、
式(II)の化合物とを、
【0314】
【化68】

酸触媒の存在下で反応させて、式(III)の化合物
【0315】
【化69】

(式中、Rが、上で定義した通りである)を得ることと、
上述の式(III)の化合物を、第8族遷移金属触媒及び第1の塩基の存在下で、水素で還元して、式(IV)の化合物を得ることと
【0316】
【化70】

上述の式(IV)の化合物、又はその塩と、式RO(CO)ORの炭酸ジアルキル(式中、各Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖又はC3~20分枝鎖アルキル基である)とを第2の塩基存在下で反応させ、式(V)の化合物
【0317】
【化71】

(式中、Rが、上で定義した通りである)を得ることと、
式(VII)の化合物と
【0318】
【化72】

式R’’SOのハロゲン化スルホニル(式中、Xが、ハロゲン化物であり、R’’が、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基である)、又は式(RO(CO))Oの化合物(式中、Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基である)とを反応させ、式(VIII)の化合物
【0319】
【化73】

(式中、Zが、-SOR’’又は-COであり、
R’’及びRが、上で定義した通りである)を得ることと、
上述の式(VIII)の化合物と、ホウ素化剤とを、第9族遷移金属触媒の存在下で反応させ、式(IX)の化合物
【0320】
【化74】

(式中、Zが、上で定義した通りであり、
及びRが、独立して、H、又は1~20個の炭素原子を含む置換若しくは非置換の有機基であるか、又は、それらが結合している原子と一緒になって、R及びRが環を形成する)を得ることと、
上述の式(V)の化合物と、上述の式(IX)の化合物とを、第10族遷移金属触媒、第3の塩基、及び水の存在下で反応させて、上述の式(VI)の化合物を得ることと、を含む、プロセスに関する。
【0321】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第1の塩基は、金属アルコキシドである。金属アルコキシドは、好ましくは、金属メトキシド、金属エトキシド、金属iso-プロポキシド、又は金属tert-ブトキシドである。
【0322】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第1の塩基は、アルカリ金属アルコキシドである。アルカリ金属アルコキシドは、好ましくは、アルカリ金属メトキシド、アルカリ金属エトキシド、アルカリ金属iso-プロポキシド、又はアルカリ金属tert-ブトキシドである。アルカリ金属アルコキシドは、より好ましくは、アルカリ金属tert-ブトキシドである。
【0323】
好ましい金属アルコキシドとしては、ナトリウムtert-ブトキシド又はカリウムtert-ブトキシド、好ましくはカリウムtert-ブトキシドが挙げられる。
【0324】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第1の塩基は、上述の式(III)の化合物の総量に基づいて10~100mol%、好ましくは上述の式(III)の化合物の総量に基づいて20~90mol%、より好ましくは上述の式(III)の化合物の総量に基づいて30~80mol%(例えば、上述の式(III)の化合物の総量に基づいて50mol%)の量で存在する。
【0325】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第2の塩基は、金属アルコキシドである。金属アルコキシドは、好ましくは、金属メトキシド、金属エトキシド、金属iso-プロポキシド、又は金属tert-ブトキシドである。
【0326】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第2の塩基は、アルカリ金属アルコキシドである。アルカリ金属アルコキシドは、好ましくは、アルカリ金属メトキシド、アルカリ金属エトキシド、アルカリ金属iso-プロポキシド、又はアルカリ金属tert-ブトキシドである。アルカリ金属アルコキシドは、より好ましくは、アルカリ金属メトキシド又はアルカリ金属エトキシド、好ましくはアルカリ金属メトキシドである。
【0327】
好ましい金属アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、又はカリウムエトキシド、好ましくはナトリウムメトキシドが挙げられる。
【0328】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第2の塩基は、上述の式(IV)の化合物又はその塩の総量に基づいて1~10mol%、好ましくは上述の式(IV)の化合物又はその塩の総量に基づいて2~9mol%、より好ましくは上述の式(IV)の化合物又はその塩の総量に基づいて3~8mol%(例えば、上述の式(IV)の化合物又はその塩の総量に基づいて5mol%)の量で存在する。
【0329】
第3の塩基は、カップリング反応を進行させるのに十分に強いが、式(V)のカーボネート化合物がその存在下で分解するほど強くないことを確実にするように選択されなければならない。当業者は、適切な塩基を選択することができる。
【0330】
したがって、本発明の好ましいプロセスにおいて、第3の塩基は、金属炭酸塩、金属リン酸塩、金属水酸化物、及びアミン塩基から選択される。好ましくは、第3の塩基は、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属水酸化物、及びアミン塩基から選択される。より好ましくは、第3の塩基は、NaCO、KCO、NaPO、KPO、NaOH、KOH、EtN、Et PrN、DMAP、DABCO、又はDBUから選択される。最も好ましくは、第3の塩基は、KCOである。
【0331】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第3の塩基は、アルコキシド塩基(例えば、金属アルコキシド)ではない。
【0332】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第3の塩基は、金属炭酸塩、好ましくはアルカリ金属炭酸塩である。本発明の特に好ましいプロセスにおいて、第3の塩基は、NaCO及びKCOから選択される。最も好ましくは、第3の塩基は、KCOである。
【0333】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第3の塩基は、金属リン酸塩、好ましくはアルカリ金属リン酸塩である。本発明の特に好ましいプロセスにおいて、第3の塩基は、NaPO及びKPOから選択される。最も好ましくは、第3の塩基は、KPOである。
【0334】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第3の塩基は、金属水酸化物、好ましくはアルカリ金属水酸化物である。本発明の特に好ましいプロセスにおいて、第3の塩基は、NaOH及びKOHから選択される。最も好ましくは、塩基は、KOHである。
【0335】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第3の塩基は、アミン塩基である。好ましくは、アミン塩基は、R’-NH、R’NH、及びR’Nから選択される式を有する化合物であり、式中、R’は、独立して、アルキル、アリール若しくはヘテロアリール基であるか、又はアミン塩基は、環状アミン塩基である。本発明の特に好ましいプロセスにおいて、第3の塩基は、EtN、Et PrN、DMAP、DABCO、又はDBUから選択される。最も好ましくは、第3の塩基は、EtNである。
【0336】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第3の塩基は、式(V)の化合物の総量に基づいて50~300mol%、より好ましくは式(V)の化合物の総量に基づいて100~250mol%、より好ましくは式(V)の化合物の総量に基づいて150~200mol%の量で存在する。
【0337】
本発明のこのプロセスの他の好ましい特徴は、上述の通りである。当業者によって理解されるように、式(V)の化合物をもたらすプロセスにおける工程は、式(IX)の化合物をもたらすプロセスにおける工程の前、後、又はそれと同時に実施され得る。
【0338】
本発明はまた、式(VI)の化合物、又はその塩若しくは誘導体を調製するためのプロセスであって、
【0339】
【化75】

式(I)の化合物
【0340】
【化76】

(式中、Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基である)と、
式(II)の化合物とを、
【0341】
【化77】

酸触媒の存在下で反応させて、式(III)の化合物
【0342】
【化78】

(式中、Rが、上で定義した通りである)を得ることと、
上述の式(III)の化合物を、第8族遷移金属触媒及び第1の塩基の存在下で、水素で還元して、式(IV)の化合物を得ることと
【0343】
【化79】

式(VII)の化合物と
【0344】
【化80】

式R’’SOのハロゲン化スルホニル(式中、Xが、ハロゲン化物であり、R’’が、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基である)、又は式(RO(CO))Oの化合物(式中、Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基である)とを反応させ、式(VIII)の化合物
【0345】
【化81】

(式中、Zが、-SOR’’又は-COであり、R’’及びRが、上で定義した通りである)を得ることと、
上述の式(VIII)の化合物と、ホウ素化剤とを、第9族遷移金属触媒の存在下で反応させ、式(IX)の化合物
【0346】
【化82】

(式中、Zが、上で定義した通りであり、
及びRが、独立して、H、又は1~20個の炭素原子を含む置換若しくは非置換の有機基であるか、又は、それらが結合している原子と一緒になって、R及びRが環を形成する)を得ることと、
式(V)の化合物
【0347】
【化83】

(式中、Rが、置換又は非置換のC1~20直鎖又はC3~20分枝鎖アルキル基である)と、
上述の式(IX)の化合物とを、第10族遷移金属触媒、第3の塩基、及び水の存在下で反応させて、上述の式(VI)の化合物を得ることと、を含み、
上述の式(V)の化合物が、式(IX)の化合物、第10族遷移金属触媒、第3の塩基及び水の存在下で、上述の式(IV)の化合物、又はその塩と、式RO(CO)ORの炭酸ジアルキル(式中、各Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖又はC3~20分枝鎖アルキル基である)とを反応させることによって系中で調製される、プロセスを提供する。
【0348】
当業者によって理解されるように、本発明のこの特定のプロセスは、式(V)の化合物が系中で調製されるので、第2の塩基を伴わない。
【0349】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第1の塩基は、金属アルコキシドである。金属アルコキシドは、好ましくは、金属メトキシド、金属エトキシド、金属iso-プロポキシド、又は金属tert-ブトキシドである。
【0350】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第1の塩基は、アルカリ金属アルコキシドである。アルカリ金属アルコキシドは、好ましくは、アルカリ金属メトキシド、アルカリ金属エトキシド、アルカリ金属iso-プロポキシド、又はアルカリ金属tert-ブトキシドである。アルカリ金属アルコキシドは、より好ましくは、アルカリ金属tert-ブトキシドである。
【0351】
好ましい金属アルコキシドとしては、ナトリウムtert-ブトキシド又はカリウムtert-ブトキシド、好ましくはカリウムtert-ブトキシドが挙げられる。
【0352】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第1の塩基は、上述の式(III)の化合物の総量に基づいて10~100mol%、好ましくは上述の式(III)の化合物の総量に基づいて20~90mol%、より好ましくは上述の式(III)の化合物の総量に基づいて30~80mol%(例えば、上述の式(III)の化合物の総量に基づいて50mol%)の量で存在する。
【0353】
第3の塩基は、カップリング反応を進行させるのに十分に強いが、式(V)のカーボネート化合物がその存在下で分解するほど強くないことを確実にするように選択されなければならない。当業者は、適切な塩基を選択することができる。
【0354】
したがって、本発明の好ましいプロセスにおいて、第3の塩基は、金属アルコキシド、金属炭酸塩、金属リン酸塩、金属水酸化物、及びアミン塩基から選択される。好ましくは、第3の塩基は、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属水酸化物、及びアミン塩基から選択される。より好ましくは、第3の塩基は、LiOBu、NaOBu、KOBu、NaCO、KCO、NaPO、KPO、NaOH、KOH、EtN、Et PrN、DMAP、DABCO、又はDBUから選択される。最も好ましくは、第3の塩基は、KCO又はKOBuである。
【0355】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第3の塩基は、金属炭酸塩、好ましくはアルカリ金属炭酸塩である。本発明の特に好ましいプロセスにおいて、第3の塩基は、NaCO及びKCOから選択される。最も好ましくは、第3の塩基は、KCOである。
【0356】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第3の塩基は、金属リン酸塩、好ましくはアルカリ金属リン酸塩である。本発明の特に好ましいプロセスにおいて、第3の塩基は、NaPO及びKPOから選択される。最も好ましくは、第3の塩基は、KPOである。
【0357】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第3の塩基は、金属水酸化物、好ましくはアルカリ金属水酸化物である。本発明の特に好ましいプロセスにおいて、第3の塩基は、NaOH及びKOHから選択される。最も好ましくは、塩基は、KOHである。
【0358】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第3の塩基は、アミン塩基である。好ましくは、アミン塩基は、R’-NH、R’NH、及びR’Nから選択される式を有する化合物であり、式中、R’は、独立して、アルキル、アリール若しくはヘテロアリール基であるか、又はアミン塩基は、環状アミン塩基である。本発明の特に好ましいプロセスにおいて、第3の塩基は、EtN、Et PrN、DMAP、DABCO、又はDBUから選択される。最も好ましくは、第3の塩基は、EtNである。
【0359】
本発明の特に好ましいプロセスにおいて、第3の塩基は、金属アルコキシド、好ましくはアルカリ金属アルコキシドである。より好ましくは、第3の塩基は、LiOBu、NaOBu、及びKOBuから選択される。最も好ましくは、第3の塩基は、KOBuである。
【0360】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第3の塩基は、式(V)の化合物の総量に基づいて50~300mol%、より好ましくは式(V)の化合物の総量に基づいて100~250mol%、より好ましくは式(V)の化合物の総量に基づいて150~200mol%の量で存在する。
【0361】
本発明のこのプロセスの他の好ましい特徴は、上述の通りである。当業者によって理解されるように、式(IV)の化合物をもたらす工程は、式(IX)の化合物をもたらすプロセスにおける工程の前、後、又はそれと同時に実施され得る。
【0362】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(III)の化合物は、
【0363】
【化84】

である。
【0364】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(V)の化合物は、
【0365】
【化85】

である。
【0366】
本発明の好ましいプロセスにおいて、式(IX)の化合物は、
【0367】
【化86】

である。
【0368】
本発明はまた、式(III)の化合物、又はその塩若しくは誘導体であって
【0369】
【化87】

式中、Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基である、化合物、又はその塩若しくは誘導体を提供する。
【0370】
本発明の好ましい化合物において、式(III)中のRは、置換若しくは非置換のC1~10直鎖若しくはC3~10分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~10アリール基である。特に好ましいC1~10-アルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、及びヘキシル、より好ましくはメチル、エチル、iso-プロピル、tert-ブチル、更により好ましくはエチルが挙げられる。好ましいC6~10-アリール基としては、フェニル、トリル、キシリル、及びメトキシフェニル、より好ましくはフェニルが挙げられる。
【0371】
本発明はまた、式(V)の化合物、又はその塩若しくは誘導体であって
【0372】
【化88】

式中、Rが、置換又は非置換のC1~20直鎖又はC3~20分枝鎖アルキル基である、化合物、又はその塩若しくは誘導体を提供する。
【0373】
本発明の好ましい化合物において、式(V)中のRは、置換又は非置換のC1~10直鎖又はC3~10分枝鎖アルキル基、好ましくは置換又は非置換のC1~5直鎖又はC3~5分枝鎖アルキル基である。より好ましくは、式(V)中のRは、メチル、エチル、iso-プロピル又はtert-ブチルである。最も好ましくは、式(V)中のRは、メチルである。
【0374】
本発明はまた、式(IX)の化合物、又はその塩若しくは誘導体であって
【0375】
【化89】

式中、Zが、-SOR’’又は-COであり、
R’’が、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基であり、
が、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基であり、
及びRが、独立して、H、又は1~20個の炭素原子を含む置換若しくは非置換の有機基であるか、又は、それらが結合している原子と一緒になって、R及びRが環を形成するが、
但し、Zがトシルではない、化合物、又はその塩若しくは誘導体を提供する。
【0376】
本発明の好ましい化合物において、式(IX)中のZは、-COであり、Rは、置換若しくは非置換のC1~10直鎖若しくはC3~10分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~10アリール基である。特に好ましいC1~10-アルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、及びヘキシル、より好ましくはメチル、エチル、iso-プロピル、tert-ブチル、更により好ましくはtert-ブチルが挙げられる。好ましいC6~10-アリール基としては、フェニル、トリル、キシリル、及びメトキシフェニル、より好ましくはフェニルが挙げられる。
【0377】
本発明の好ましい化合物において、式(IX)中のZは、-SOR’’であり、R’’は、置換若しくは非置換のC1~10直鎖若しくはC3~10分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~10アリール基である。特に好ましいC1~10-アルキル基としては、メチル、トリフルオロメチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、及びヘキシル、より好ましくはメチル、エチル、iso-プロピル、及びtert-ブチル、更により好ましくはメチル及びエチルが挙げられる。好ましいC6~10-アリール基としては、フェニル、キシリル、メトキシフェニル、ブロモフェニル、及びニトロフェニルが挙げられる。
【0378】
本発明の好ましい化合物において、式(IX)中のR及びRは、独立して、H又は置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基であるか、又は、それらが結合している原子と一緒になって、R及びRは、環を形成する。
【0379】
本発明の好ましい化合物において、式(IX)中のR4及びR5は、独立して、H又は置換若しくは非置換のC1~10直鎖若しくはC3~10分枝鎖アルキル基、より好ましくはH又は置換若しくは非置換のC1~5直鎖若しくはC3~5分枝鎖アルキル基、更により好ましくはHである。
【0380】
本発明の代替的な好ましい化合物において、それらが結合している原子と一緒になって、式(IX)中のR及びRは、環を形成する。より好ましくは、R及びRは、-Bpin又は-Bcatである環を形成する。更により好ましくは、R及びRは、-Bpinである環を形成する。
【0381】
本発明は、式(VI)の化合物、又はその塩若しくは誘導体を調製するためのプロセスに関する。本発明はまた、式(III)、(V)及び(IX)の化合物、又はその塩若しくは誘導体に関する。これらの化合物は、式(VI)の化合物の合成における中間体である。好ましい塩は、化合物の生物学的有効性及び特性を保持し、適切な非毒性の有機又は無機酸から形成されるものである。酸付加塩が好ましい。塩の代表的な例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸及び硝酸などの無機酸から誘導されるもの、並びにp-トルエンスルホン酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸から誘導されるものが挙げられる。化合物の塩への修飾は、化学者に周知の技術である。
【0382】
本発明はまた、本明細書で先に記載した化合物を含む薬学的組成物を提供する。本発明の薬学的組成物は、任意の従来の形態をとり得る。
【0383】
本発明の薬学的組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体を含み得る。
【0384】
本発明の薬学的組成物において、本発明の化合物は、単独で、又は別の活性成分と組み合わせて存在することができる。
【0385】
本発明はまた、医薬として使用するための本明細書で先に記載した化合物及び組成物を提供する。
【0386】
本発明はまた、がんの治療において使用するための、本明細書で先に記載した化合物及び組成物であって、好ましくは、がんが、腱滑膜巨細胞腫瘍(TGCT)である、化合物及び組成物を提供する。
【0387】
本発明はまた、がんの治療のための医薬の製造のための、本明細書で先に記載した化合物及び組成物の使用であって、好ましくは、がんが、腱滑膜巨細胞腫瘍(TGCT)である、使用を提供する。
【0388】
本発明はまた、式(VI)の化合物、又はその塩若しくは誘導体を調製するためのプロセスであって、
【0389】
【化90】

式(III)の化合物
【0390】
【化91】

(式中、Rが、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基である)を、
第8族遷移金属触媒及び塩基の存在下で、水素で還元して、式(IV)の化合物を得る工程を含む、プロセスを提供する
【0391】
【化92】
【0392】
式(III)の化合物を還元する工程の好ましい特徴は、上述の通りである。
【0393】
式(III)の化合物を調製するための好ましい工程は、上述の通りである。
【0394】
式(IV)の化合物又はその塩を式(VI)の化合物に変換するための好ましい工程は、上述の通りである。
【0395】
本発明はまた、式(VI)の化合物、又はその塩若しくは誘導体を調製するためのプロセスであって、
【0396】
【化93】

式(VIII)の化合物
【0397】
【化94】

(式中、Zが、-SOR’’又は-COであり、
R’’が、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基であり、
が、置換若しくは非置換のC1~20直鎖若しくはC3~20分枝鎖アルキル基、又は置換若しくは非置換のC6~20アリール基である)と、
ホウ素化剤とを、第9族遷移金属触媒の存在下で反応させ、式(IX)の化合物を得る工程を含む、プロセスを提供する
【0398】
【化95】
【0399】
式(VIII)の化合物と、ホウ素化剤とを、第9族遷移金属触媒の存在下で反応させる工程の好ましい特徴は、上述の通りである。
【0400】
式(VIII)の化合物を調製するための好ましい工程は、上述の通りである。
【0401】
式(IX)の化合物を式(VI)の化合物に変換するための好ましい工程は、上述の通りである。
【0402】
これから、以下の非限定的な実施例を用いて本発明を更に説明する。
【実施例
【0403】
材料
Ru-SNS、(dippf)PdCl及びクロロ(1,5-シクロオクタジエン)(1,10-フェナントロリン)イリジウム(I)・THF付加物は、Johnson Mattheyから市販されている。
【0404】
ビス(ピナコラト)二ホウ素、5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン、6-アミノニコチン酸メチル、及び6-(トリフルオロメチル)ニコチンアルデヒドは、例えばCombi-Blocksから市販されている。
【0405】
全ての溶媒は、例えば、Milipore-Sigmaから市販されている。
【0406】
ジ-tert-ブチルジカーボネート、4-ジメチルアミノピリジン、トリフルオロ酢酸、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムメトキシド及び炭酸カリウムは、例えば、Milipore-Sigmaから市販されている。
【0407】
炭酸ジメチルは、例えばTCI Americaから市販されている。
【0408】
測定方法
核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance、NMR)測定は、Bruker Avance II 400MHzを使用して行った。
【0409】
(実施例)
実施例1:メチル(E)-6-(((6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メチレン)アミノ)ニコチネート(化合物3)の調製
【0410】
【化96】

撹拌棒を備え、空気に開放した250mLのフラスコに、6-アミノニコチン酸メチル(化合物1)(20グラム、131mmol、1当量)及び6-(トリフルオロメチル)ニコチンアルデヒド(化合物2)(24.2グラム、138mmol、1.05当量)を投入した。このフラスコに、凝縮器に取り付けたディーンスタークトラップを取り付けた。次いで、フラスコを、凝縮器の上部で、セプタムによって密封した。次いで、反応器を3サイクルの排気及び窒素による充填によって脱気した。次いで、反応器に、131mLのトルエン(1M)をシリンジによって充填した。撹拌棒で撹拌を開始し、トリフルオロ酢酸(1.0mL、0.1当量)をシリンジから投入した。次いで、反応器を加熱し、アミノピリジン1の消失によって反応が完了するまで4時間還流させた。反応器を25℃まで冷却し、所望の生成物を結晶化させた。内容物を撹拌しながら、内容物を高減圧によってフィルターにカニューレ挿入した。次いで、反応器を20mLずつのトルエンで3回洗浄した。次いで、結晶を、高減圧を用いて空気下で乾燥させた。これにより、38.3g(123.9mmol、90.1%)のふわふわしたオフホワイト色固体(化合物3)を得た。
H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 9.32(s,1H),9.24(d,J=2.0Hz,1H),9.12(d,J=2.3Hz,1H),8.58-8.49(m,1H),8.40(dd,J=8.2,2.3Hz,1H),7.83(d,J=8.1Hz,1H),7.45(d,J=8.2Hz,1H),3.98(s,3H)。
13C NMR(101MHz,CDCl)δ 189.50,165.61,162.87,160.46,151.87,151.69,151.00,150.56,139.86,137.88,137.52,133.76,125.27,120.88,120.85,120.23,52.64。
【0411】
実施例2:(6-(((6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メチル)アミノ)ピリジン-3-イル)メタノール(化合物4)の調製
【0412】
【化97】

不活性雰囲気下のライナーに、化合物3(500mg、1当量)を投入し、続いてカリウムtert-ブトキシド(90mg、0.5当量)を投入した。次いで、触媒RuSNS(20mg、2mol%)をライナーに投入した。次いで、ライナーを水素発生器に装填した。次いで、水素発生器に窒素を充填し、続いて圧力を解放することによって、水素発生器に酸素をパージした。パージ手順を5回繰り返した。次いで、水素発生器に、トルエン(1.6mL)中のエタノール(0.28mL)を、シリンジによって添加ポートを介して運んだ。次いで、撹拌を開始し(900rpm)、反応器に水素(28bar)を投入した。次いで、水素を一定に供給しながら反応器を2時間かけて65℃まで加熱した後、8時間かけて120℃まで上昇させた。次いで、反応器を冷却し、圧力を解放した。圧力を解放したら、ライナーを取り出し、粗混合物をMeOH/CHClの溶液で希釈した。次いで、希釈した粗混合物をシリカゲルのパッドに通し、濾液を減圧下で蒸発させた。次いで、粗油状物をCHClで希釈し、シリカゲルカラムに充填した。次いで、粗物質をカラムクロマトグラフィー(2%~10%MeOH/CHCl)によって精製して、388mg(1.37mmol、85%)の明黄色固体(化合物4)を得た。
H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 8.69(d,J=2.2Hz,1H),8.03(d,J=2.3Hz,1H),7.84(dd,J=8.1,2.1Hz,1H),7.62(d,J=8.1Hz,1H),7.47(dd,J=8.5,2.3Hz,1H),6.40(d,J=8.5Hz,1H),5.04(d,J=6.4Hz,1H),4.66(d,J=6.0Hz,2H),4.53(s,2H),1.98(s,1H)。
13C NMR(101MHz,CDCl)δ 157.66,149.36,147.55,138.77,137.90,136.40,135.48,126.35,120.53,120.48,120.46,120.44,107.82,62.90,43.28。
19F NMR(376MHz,CDCl)δ -67.74。
【0413】
実施例3:((6-(((6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メチル)アミノ)ピリジン-3-イル)メチル)カルボン酸メチル(化合物5)の調製
【0414】
【化98】

空気に開放されたフラスコに、化合物4(0.566g、2mmol、1当量)を投入し、続いて炭酸ジメチル(10.1g、9.43mL)を投入した。Dean Starkトラップ及び凝集器をフラスコに取り付けた。反応器をセプタムで密封し、窒素を反応器に流した。次いで、反応器を90℃まで加温し、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液をシリンジによってフラスコに投入した(0.02mL、4.3M、0.05当量)。次いで、反応器を加温して還流させた。次いで、留出物をトラップ内に30分間集めた。Dean Starkトラップが留出物で満たされたら、それを廃棄し、トラップを炭酸ジメチル(15mL)で満たした。溶媒を30分間還流させた後、トラップ内の溶媒を除去した。このプロセスを3時間繰り返した後、H NMRによって同定されるように完全な転化に達した。次いで、反応器を冷却させ、有機層をブラインで3回洗浄し、有機層をNaSO上で乾燥させた。次いで、有機層を濾過し、溶媒を蒸発させた。冷却後、結晶が形成され、次いでこれを集めて化合物5を得た(0.720g、1.8mmol、90%)。
H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 8.68(s,1H),8.10(s,1H),7.83(d,J=8.0Hz,1H),7.60(d,J=8.2Hz,1H),7.46(d,J=8.5Hz,1H),6.38(d,J=8.5Hz,1H),5.32-5.18(m,1H),5.00(s,2H),4.65(d,J=6.0Hz,2H),3.75(s,3H)。
13C NMR(101MHz,CDCl)δ 158.18,155.83,149.35,149.31,138.93,138.69,136.40,120.79,120.44,120.41,107.66,67.58,54.95,43.11。
【0415】
実施例4:5-クロロ-1 H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(化合物8)の調製
【0416】
【化99】

空気に開放されたフラスコに、5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(化合物7)(21g、138mmol、1当量)及び4-N,N-ジメチルアニリン(0.337g、0.0028mmol、0.02当量)を投入した。フラスコをセプタムで密封し、次いで、3サイクルの排気及び窒素充填によって空気をパージした。反応器に、THFをシリンジによって投入した(120mL)。撹拌を開始し、次いで、THF(18mL)中のBocO(36.1g、165.8mmol、1.1当量)の溶液を反応器にゆっくり添加し、気体発生を減少させた。BocOの添加後、反応器を1時間撹拌し、粗材料をH NMRによって分析した。この時点で、出発材料7はもはや存在しなかった。次いで、気体が発生しなくなるまでHOを反応器に添加した。完了したら、HOを粗物質から分離し、溶媒の大部分を蒸留によって蒸発させた。溶媒の大部分が蒸留されたら、トルエンを加えた(100mL)。次いで、溶媒を蒸発させた。トルエンを添加し、蒸発させるこのプロセスを3回繰り返した。油状物を冷却したら、生成物が結晶化し、これを集めて化合物8を得た(33.4g、132mmol、96%)。
H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 8.43(d,J=2.3Hz,1H),7.84(d,J=2.3Hz,1H),7.67(d,J=4.0Hz,1H),6.45(d,J=4.1Hz,1H),1.66(s,10H)。
【0417】
実施例5:5-クロロ-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(化合物9)の調製
【0418】
【化100】

空気に開放されたフラスコに、クロロ(1,5-シクロオクタジエン)(1,10-フェナントロリン)イリジウム(I)・THF付加物(0.035g、.000006mmol、0.001当量)及び4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン、Bpin)(10.58g、41.67mmol、0.7当量)をフラスコに投入した。フラスコを密封し、排気及び窒素再充填によって脱気した。次いで、フラスコに、ヘプタン(59mL)、次いでiso-プロパノール(0.023mL)を投入した。撹拌を開始し、次いでフラスコを均一な暗赤色になるまで、1時間かけて70℃まで加温した。次いで、窒素をフラスコに流しながらフラスコを解放し、化合物8(15g、59.5mmol、1当量)を触媒溶液に注いだ。反応器を密封し、70℃で加熱しながら撹拌した。20分後、白色固体が現れ、溶液は均質からスラリーに変化した。反応器を70℃で更に40分間加熱し、次いで冷却した。反応器を冷却したら、スラリーを、フィルターに対してカニューレ挿入した。反応器をヘプタンで洗浄し、得られた混合物を、フィルターに対してカニューレ挿入した。次いで、固体をヘプタンで洗浄し、その上に空気を流すことによって乾燥させて、化合物9を得た(20.3g、53.5mmol、89%)。
H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 8.43(d,J=2.4Hz,1H),8.22(d,J=2.4Hz,1H),8.07(s,1H),1.66(s,10H),1.37(s,13H)。
13C NMR(101MHz,CDCl)δ 140.52,136.79,130.02,123.51,120.32,120.19,78.03,77.00,21.27,18.06。
【0419】
実施例6:メチル5-((5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)メチル)-N-((6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メチル)ピリジン-2-アミン(化合物6)の調製
【0420】
【化101】

フラスコに、(dippf)PdCl(13.1mg、0.022mmol、2.5mol%)、化合物5(0.15g、0.38mmol、1当量)、KCO(0.27g、0.76mmol、2当量)、及び化合物9(0.365g、0.42mmol、1.1当量)を計量した。次いで、フラスコをセプタムで密封し、次いで排気し、窒素を再充填した。パージプロセスを3回繰り返し、次いで、窒素を2時間スパージングすることによって脱気した湿潤イソプロパノール(1.1mL、0.35M)をフラスコに添加した。撹拌を開始し、次いで反応器を8時間かけて70℃まで加熱した。この後、反応混合物を冷却し、酢酸エチルで抽出した。次いで、抽出物を蒸発乾固させた。粗物質をH NMRによって分析し、所望の生成物への95%を超える転化がされていることが分かった。この物質をカラムクロマトグラフィー(0~10%MeOH/CHCl)により精製して、化合物6を得た(0.297g、0.712mmol、81%)。
H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 9.63(s,1H),8.72(d,J=2.1Hz,1H),8.21(d,J=2.3Hz,1H),8.10-7.99(m,1H),7.91-7.81(m,1H),7.73(dd,J=2.3,0.7Hz,1H),7.63(dd,J=8.1,0.8Hz,1H),7.28(dd,J=8.4,2.3Hz,1H),7.09(dd,J=2.4,1.2Hz,1H),6.35(dd,J=8.5,0.8Hz,1H),5.04(t,J=6.1Hz,1H),4.65(d,J=6.1Hz,2H),3.91(s,2H)。
19F NMR(376MHz,CDCl)δ -67.74。
【国際調査報告】