(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】ヒートシール可能な再パルプ化セルロース系多層包装材料、製造方法及び包装容器
(51)【国際特許分類】
D21H 27/10 20060101AFI20240621BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240621BHJP
D21H 11/20 20060101ALI20240621BHJP
D21H 19/34 20060101ALI20240621BHJP
D21H 27/30 20060101ALI20240621BHJP
D21H 19/84 20060101ALI20240621BHJP
B32B 21/06 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
D21H27/10
B65D65/40 D
D21H11/20
D21H19/34
D21H27/30 A
D21H19/84
B32B21/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565494
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 EP2022065730
(87)【国際公開番号】W WO2022258768
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391053799
【氏名又は名称】テトラ ラバル ホールディングス アンド ファイナンス エス エイ
【住所又は居所原語表記】70 Avenue General Guisan,CH-1009 Pully,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100151105
【氏名又は名称】井戸川 義信
(72)【発明者】
【氏名】ワムスラー、ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ホルバート、アンドルー
(72)【発明者】
【氏名】ジョナソン、カタリナ
(72)【発明者】
【氏名】エストルンド、マグヌス
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4L055
【Fターム(参考)】
3E086AD01
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(57)【要約】
本発明は、紙、板紙又は他のセルロース系材料のバルク層を含む、ヒートシール可能な実質的に植物由来の再パルプ可能な多層包装材料、及びその製造方法に関する。本発明はさらに、液体カートン食品包装用の多層包装材料、及びこのヒートシール可能な実質的に植物由来の再パルプ可能な多層包装材料を含む一般及び液体カートン包装容器の両方に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙、板紙又はその他のセルロース系材料のバルク層(11;21a;21b)と、
形成された包装容器の外側に向けられることを意図した、第1の最外層の保護及び水分散性の層又はコーティング(12;22a;22b)と、
前記包装容器の内側に向けられ、及び内側を形成することを意図した、第2のヒートシール可能な最内層(13;23a;23b)と、
を備え、
前記第2のヒートシール可能な最内層は、セルロース繊維、任意の添加剤、及び任意の可塑剤を含むセルロース繊維組成物から作られ、前記セルロース繊維は、ジアルコールセルロースを含むように部分的に変性されており、前記最内層中の変性セルロース繊維の量は、乾燥重量当たりで計算して80wt%~100wt%であり、前記セルロース繊維中の酸化可能なC2-C3結合の総数に基づく、部分的に変性されたセルロースのジアルコールセルロースへの転化率が少なくとも10%であり、前記第2のヒートシール可能な最内層を含む完全な多層包装材料を実質的に植物由来とし、セルロース繊維の同一のリサイクル画分に再パルプ化可能である、
ヒートシール可能な実質的に植物由来の再パルプ化可能な多層包装材料(10;20a;20b)。
【請求項2】
前記第1の最外層の保護層又はコーティング(12;22a;22b)は、セルロース繊維、任意の添加剤及び任意の可塑剤を含む、セルロース繊維組成物から作られ、前記セルロース繊維は、ジアルコールセルロースを含むように部分的に変性されており、前記第1の最外層中の変性セルロース繊維の量は、乾燥重量当たりで計算して80wt%~100wt%であり、前記セルロース材料中の酸化可能なC2-C3結合の総数に基づく、部分的に変性されたセルロースのジアルコールセルロースへの転化率が少なくとも10%であり、前記第1の最外層の保護層及び水分散性層を、ヒートシール可能で植物由来の再パルプ化可能なものにする、
請求項1に記載のヒートシール可能な実質的に植物由来の再パルプ化可能な多層包装材料(10;20a;20b)。
【請求項3】
前記バルク層(21a;21b)と前記第2のヒートシール可能な最内層(23a;23b)との間に配置されたガスバリア材料(24a;24b)を含む層又は多層部分を有する、
請求項1又2に記載のヒートシール可能な実質的に植物由来の再パルプ化可能な多層包装材料(20a;20b)。
【請求項4】
前記ガスバリア材料を含む層又は多層部分が、紙ベース又は他の水分散性セルロースベース材料の追加の基材層(26a)を含み、前記追加の基材層が、少なくとも1つのガスバリア材料(27a,28a)で、2~5000nm、例えば2~4000nmの総ガスバリアコーティング厚さまでコーティングされている、
請求項3に記載のヒートシール可能な実質的に植物由来の再パルプ化可能な多層包装材料(20a)。
【請求項5】
前記ガスバリア材料(24a;24b)を含む層又は多層部分が、セルロースからジアルコールセルロースへの変換度合いによってジアルコールセルロースを含むミクロフィブリル化セルロース又は変性セルロース繊維を含む層又はシート(26a;24b)を含み、セルロース繊維中の酸化可能なC2-C3結合の総数に基づく、セルロースからジアルコールセルロースへの転化率が少なくとも20%であるジアルコールセルロースを含む、
請求項3又は4に記載のヒートシール可能な実質的に植物由来の再パルプ化可能な多層包装材料(20a;20b)。
【請求項6】
前記紙ベース又は他の水分散性セルロースベース材料の追加の基材層(26a)上にコーティングされたガスバリア材料(27a,28a)が、金属化コーティング、酸化アルミニウム(AlOx)コーティング、酸化ケイ素(SiOx)コーティング、非晶質ダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティング、例えばアルミニウム金属化コーティングからなる群から選択される、蒸着コーティング(28a)を含む、
請求項4記載のヒートシール可能な実質的に植物由来の再パルプ化可能な多層包装材料(20a)。
【請求項7】
前記紙ベース又は他の水分散性セルロースベース材料の追加の基材層(26a)が、乾燥コーティング厚さが100~5000nm(0.1~5μm)、例えば、100~4000nm(0.1~4μm)、例えば、300~3.500nm(0.3~3.5μm)、例えば、500~3000nm(0.5~3μm)、例えば、500~2.500nm(0.5~2.5μm)であり、ビニルアルコールポリマー及びコポリマーからなる群から選択され、特に、ポリビニルアルコール、PVOH、及びエチレンビニルアルコール、EVOH、デンプン及びデンプン誘導体、ヘミセルロース及びヘミセルロース誘導体、ナノフィブリルセルロース/ミクロフィブリルセルロース、NFC/MFC、ナノ結晶セルロース、NCC、及びそれらの2種以上のブレンドからなる群から選択されるポリマーを含むガスバリア材料(27a)を有する、
請求項4に記載のヒートシール可能な実質的に植物由来の再パルプ化可能な多層包装材料(20a)。
【請求項8】
前記紙又は他の水分散性セルロース系材料の追加の基材層(26a)が、ガスバリア材料の水性分散液又は溶液のコーティング及びその後の乾燥によって形成されたガスバリア材料の第1のコーティング(27a)でコーティングされ、
さらに、金属、金属酸化物、無機酸化物及び非晶質ダイヤモンドライクカーボンから選択されるガスバリア材料の蒸着コーティング(28a)が、前記第1のコーティング上に適用される、
請求項4、6~7のいずれか一項に記載のヒートシール可能な実質的に植物由来の再パルプ化可能な多層包装材料(20a)。
【請求項9】
前記蒸着コーティング(28a)が、10~80nm、例えば10~50nm、例えば10~45nmの厚さに塗布される、
請求項6又は8に記載のヒートシール可能な実質的に植物由来の再パルプ化可能な多層包装材料(20a)。
【請求項10】
前記ガスバリア材料(24a;24b)を含む層又は多層部分が、前記バルク層(21a;21b)に、アクリルポリマー及びコポリマー、デンプン、デンプン誘導体、セルロース誘導体、酢酸ビニル又はビニルアルコールのポリマー及びコポリマー、ならびにスチレン-アクリルラテックス又はスチレン-ブタジエンラテックスのコポリマーからなる群から選択されるバインダーを含む、乾燥重量で0.5~5g/m
2の中間結合組成物(25a;25b)によって積層される、
請求項3~9のいずれか一項に記載のヒートシール可能な実質的に植物由来の再パルプ化可能な多層包装材料(20a;20b)。
【請求項11】
前記第2のヒートシール可能な最内層(13;23a;23b)、及び任意選択で、前記第2のヒートシール可能な最内層と同じセルロース繊維組成物から作られた前記第1の最外層の保護及び水分散性の層又はコーティング(12;22a;22b)が、0.5~20wt%の可塑剤を含む、
請求項1~10のいずれか一項に記載のヒートシール可能な実質的に植物由来の再パルプ化可能な多層包装材料(20a;20b)。
【請求項12】
前記可塑剤が、グリセロール等のポリオール、及びデンプン、デンプン誘導体又はセルロース誘導体などの多糖類からなる群から選択される化合物である、
請求項11に記載のヒートシール可能な実質的に植物由来の再パルプ化可能な多層包装材料(20a;20b)。
【請求項13】
前記第2のヒートシール可能な最内層(13;23a;23b)の塗布量が、10~100g/m
2、例えば15~80g/m
2、例えば20~70g/m
2、例えば20~60g/m
2、例えば20~50g/m
2、例えば20~40g/m
2である、
請求項1~12のいずれか一項に記載のヒートシール可能な実質的に植物由来の再パルプ化可能な多層包装材料(10;20a;20b)。
【請求項14】
前記第2のヒートシール可能な最内層(23a)が、前記蒸着コーティング(28a)上、例えば、金属化コーティング上に塗布される、
請求項6、8~13のいずれか一項に記載のヒートシール可能な実質的に植物由来の再パルプ化可能な多層包装材料(20a)。
【請求項15】
セルロース中の酸化可能なC2-C3結合の総数に基づく、部分的に修飾されたセルロースの第2のヒートシール可能な最内層におけるジアルコールセルロースへの転化率が、少なくとも30%、又は少なくとも32%、又は少なくとも40%、又は少なくとも45%以上50%未満、例えば30%~45%である、
請求項1~14のいずれか一項に記載のヒートシール可能な実質的に植物由来の再パルプ化可能な多層包装材料(10;20a;20b)。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載のヒートシール可能な実質的に植物由来の再パルプ化可能な多層包装材料(10;20a;20b)を含むヒートシール包装容器(50a;50b;50c;50d)。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか一項に記載のヒートシール可能な実質的に植物由来の再パルプ化可能な多層包装材料(10;20a;20b)の製造方法(30a;30b)であって、
基材ウェブ(31a;31b)を提供及び転送し、前記基材ウェブは、実質的に植物由来の再パルプ化可能なプレラミネート基材構造又は単一の基材層のウェブである、第1の工程と、
セルロース繊維、任意の添加剤及び任意の可塑剤を含むセルロース繊維組成物(32)を提供し、前記セルロース繊維は、ジアルコールセルロースを含むように部分的に変性されており、前記変性セルロース繊維の量は、乾物重量当たりで計算して80wt%~100wt%であり、セルロース中の酸化可能なC2-C3結合の総数に基づく、部分的に変性されたセルロースのジアルコールセルロースへの転化率が、少なくとも10%である、第2の工程と、
ヒートシール可能な実質的に植物由来の再パルプ化可能な多層包装材料(34a;36)における第2のヒートシール可能な最内層を形成し、包装容器の内部に向けられ及び形成するため、前記セルロース繊維組成物(32a;33)を前記基材ウェブ上に適用する第3の工程と、
を含む、製造方法(30a;30b)。
【請求項18】
前記セルロース繊維組成物を前記基材ウェブ(31b)上に適用する(30b)第3の工程が、押出コーティング(32b,33)によって実施される、
請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記セルロース繊維組成物を前記基材ウェブ(31a)上に塗布する(30a)第3の工程が、水性分散コーティング(32a)及びその後の乾燥(33a)によって実施される、
請求項17に記載の製造方法。
【請求項20】
前記基材ウェブが、前記バルク層(21a;21b)と、前記ガスバリア材料(24a;24b)を含む層又は多層部分とを含むプレラミネート多層構造であり、前記ガスバリア材料が、金属化コーティング等の蒸着コーティング(28a)の表面層を有する、
請求項17~19のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙、板紙又は他のセルロース系材料のバルク層からなる、ヒートシール可能な、実質的に植物由来で再パルプ可能な多層包装材料、及びその製造方法に関する。本発明はさらに、酸素に敏感な、特に液体又は半液体の食品包装を意図した多層カートン包装材料、及びこの多層包装材料を含むカートンをベースとする包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体食品用の一回使い切りタイプの包装容器は、板紙やカートンをベースとした包装用ラミネートから製造されることが多い。食品の包装を目的としたこのような多層包装材料は、高品質のセルロース繊維の割合が高いという利点を持つことが多く、カートンリサイクル業者にとって、再パルプして新たな製紙工程に戻すことが望ましい。
【0003】
このような包装材料から作られた包装容器が、ある程度の気密性、すなわち、充填された製品からの液体や水分の漏れに対する気密性、及び/又は外部環境から包装内部への汚れや液体などの物質の侵入に対する気密性を必要とする場合、包装材料は、通常、多層包装材料の最も外側のヒートシール可能な層を溶融融着することによって、折り畳み成形され、それ自体にヒートシールされる。このような最も外側のヒートシール可能な層は、熱可塑性ポリマーから作られたプラスチックで作られており、同様の適合性を有する熱可塑性ポリマーの第2の表面に向かって押されたときに溶融融合又は溶着を可能にするように、加熱時に部分的に再溶融する。このような熱可塑性ポリマーの一般的な例は、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルである。
【0004】
しかし、熱可塑性ポリマーは、価値の低い廃棄物画分ルロース繊維のリサイクル業者にはあまり評価されていない。熱可塑性ポリマーは繊維から分離する必要があり、その用途はポリマーの種類と純度に大きく依存する。
【0005】
包装容器の種類によって、このような熱可塑性ポリマーの種類は異なるため、同じリサイクルの流れでこのようなプラスチックカートンラミネートをリサイクルすることは難しい。なぜなら、プラスチックのリサイクル端数は様々なポリマーの混合物となり、ポリマーの混合物は品質や物理的性質が時々刻々と変化するため、新しい製品のリサイクル材料としてはやや信頼性に欠けるからである。多くの場合、このような分離されリサイクルされたプラスチックは、単に焼却されるか、あるいはゴミ袋や植木鉢のような低品質の最終製品に使用される。
【0006】
近年、使い捨てプラスチックや包装に使用されるプラスチックは、化石資源に由来することが多く、そのため気候変動の一因となるプラスチックを大幅に削減し、材料の循環経済に導入する必要があることがさらに明らかになった。材料は複数回リサイクルされ、廃棄物ではなく貴重な資源とみなされる場合がある。
【0007】
プラスチック材料は、複数の層を一緒に積層して効果的なラミネート材料にするために、すなわち、様々な層を貼り合わせるために、また、ラミネート材料から包装容器を形成する工程において、ラミネート材料自体をヒートシールするために必要であり、これが課題となっている。
【0008】
さらに、リサイクルを簡素化するために、酸素ガスバリア性など様々なバリア性を有する複数の異なるポリマー層を有する多層包装材料のように、ラミネートポリマー材料の複雑さを軽減することが強く望まれている。
【0009】
リサイクル性のために、一般に、多層包装材料中のポリマーの割合を減らし、さらにその複雑さを減らすという目標がある。好ましくは、ラミネート包装材料に使用されるポリマーは、一緒にリサイクル可能な同じ種類のものであるべきであり、さらに、可能な限り少量で使用されるべきである。現在、多くの国でポリエチレンやポリオレフィンのリサイクルのための、あるいはポリエチレンテレフタレートのリサイクルのための、既存のポリマー廃棄物の流れがあるが、様々なバリア材料やブレンド材料に使用されるポリマーには、それぞれ独自のリサイクルの流れがないものがあり、材料の選別や再生がどのように行われるか不明である。現在、二酸化炭素排出量削減のために植物由来のポリマー材料(すなわち、化石原料に由来しないポリマー)も検討されているため、複雑さはさらに増している。
【0010】
完全を期するため、ポリオレフィンやポリエチレンテレフタレートのような一般的な熱可塑性ポリマーは、サトウキビやその他のバイオマス等の植物由来の原料から製造することもできる。しかし、このような「グリーン」な、すなわち植物由来の、すなわち再生可能又は非化石起源のポリマーの特性や性質は、化石由来のものと同じであるため、プラスチックの破片にリサイクルする、すなわちセルロース繊維などの他の植物由来の材料とは別に保管する必要がある。
【0011】
さらに、堆肥化可能な材料や生分解性材料もより広範囲に研究されており、従来の熱可塑性ポリマーとはまったく異なる性質を持つ可能性がある。しかし、セルロース繊維と同じ部分でリサイクルできない、又は水分散性がないという意味では、それらは依然として「プラスチック」である。リサイクル不可能な場合もあり得る。
【0012】
植物由来ポリマーの一種に再生セルロース系ポリマーがある。セルロースを化学的に変性・溶解して作られるこのような再生ポリマーは、レーヨン、ビスコース、いわゆるセロファンなどの繊維や包装用プラスチックなどのフィルムや繊維に有用な新しい形態のポリマーとして再生される。しかし、得られた新しいポリマーは、より「プラスチック」に近く、再パルプ化された、すなわち再分散された本来のセルロース材料と一緒に、又は同じリサイクル画分内でリサイクルすることはできない。したがって、紙とポリマーの材料を同じ材料の原料から調達するだけでは、ほとんど利益はない。さらに、このようなポリマーの化学修飾は、少なくとも過去においては、一般的に環境にやさしいものではなかった。
【0013】
再生セルロースもまた、それ自体のリサイクル画分に分離して回収される必要があり、
そのような異なる再生ポリマーは異なる変性に基づいており、同じものに対して異なる挙動や反応をする可能性があるため、それ自体が均質な材料ではない可能性がある。
【0014】
このような変性され再生されたセルロースのより最近のタイプは、国際出願WO2018/146386A1及びWO2016/193542及びそれらの予備研究に記載されている。
【0015】
ある種の熱可塑性挙動を示す別のタイプの変性セルロース、すなわちジアルコールセルロースに部分的に変性された繊維状セルロースが、国際出願WO2018/135994A1に記載されている。
【0016】
カートン包装用ラミネートをベースとした、一般的に使用されているタイプの包装容器の一例は、「Tetra Brik Aseptic(登録商標)」という商標を付して販売されており、主に、長期間の常温保存用に販売される牛乳、フルーツジュース等の液体食品の無菌包装に採用されている。この公知の包装容器の包装材料は、通常、紙、板紙、その他のセルロースベースの材料のバルク又はコア層と、熱可塑性プラスチックの液密でヒートシール可能な外側層を含むラミネートである。包装容器をガス気密、特に、酸素気密にするために、例えば、牛乳やフルーツジュースの無菌包装やパッケージングの目的で、これらの包装容器のラミネートは通常、少なくとも1つの追加層、最も一般的には、アルミニウム箔を含む。
【0017】
ラミネートの内側、すなわち、ラミネートから製造される容器の充填された食品内容物に面することを意図する側には、アルミニウム箔上に塗布された最内層があり、この最内層は、接着性ポリマー及び/又はポリオレフィン等のヒートシール可能な熱可塑性ポリマーを含む1層又は複数の部分層を含んでもよい。また、バルク層の外側には、通常、ヒートシール可能な熱可塑性ポリマー層がある。
【0018】
包装容器は、一般に、包装材料のウェブ又は予め組み立てられたブランクからパッケージを形成、充填及びシールするタイプの最新の高速包装機によって製造される。包装容器は、ウェブの長手方向の両縁を、内側と外側のヒートシール可能な熱可塑性ポリマー層を一緒に溶着することによってオーバーラップ接合部で互いに結合させ、ラミネートされた包装材料のウェブをチューブに再形成することによって製造される。チューブは目的の液体食品で充填され、その後、チューブ内の内容物のレベルより低い位置で互いに所定の距離をおいてチューブを繰り返し横方向にシールすることによって、個々のパッケージに分割される。パッケージは、横方向シールに沿って切り込みを入れることでチューブから分離され、包装材料に予め用意された折り目線に沿って折り目を形成することで、所望の幾何学的形状、通常は立方体形状に形成される。
【0019】
この連続的なチューブ形成、充填及びシールする包装方法の概念の主な利点は、チューブ形成の直前にウェブを連続的に滅菌できることであり、したがって、無菌包装方法、すなわち、充填される液体内容物及び包装材料自体がバクテリアから低減され、充填された包装容器が、充填された製品における微生物の増殖の危険なしに周囲温度であっても長期間保存できるような清潔な条件下で製造される方法の可能性を提供することである。Tetra Brik(登録商標)タイプの包装方法のもう一つの重要な利点は、前述したとおり、コスト効率に大きな影響を与える連続高速包装が可能である点である。
【0020】
敏感な液体食品、例えば、牛乳やジュースの包装容器も、本発明のラミネート包装材料のシート状ブランク又は予め組み立てられたブランクから製造できる。平らに折り畳まれた包装用ラミネートのチューブ状ブランクから、まずブランクを組み立てて開いたチューブ状容器カプセルを形成し、その一方の開口端を一体型エンドパネルの折り畳みとヒートシールによって閉鎖することによって、パッケージが製造される。こうして閉鎖された容器カプセルは、他方の開口端から食品、例えば、ジュース等が充填され、その後、対応する一体型エンドパネルをさらに折り曲げてヒートシールすることによって閉鎖される。シート状及びチューブ状のブランクから製造される包装容器の例として、従来のいわゆるゲーブルトップパッケージがある。また、このタイプのパッケージには、プラスチック製の成形されたトップ及び/又はスクリューキャップを備えたものもある。
【0021】
かなり厚いアルミ箔(例えば5~10μm)の酸素ガスバリア層を備える従来のカートンベースの多層包装材料は、液体食品の無菌包装及び常温包装用の標準的な高級包装材料として長年使われてきた。
【0022】
液体食品カートン包装用の非アルミニウム箔素材を開発し、アルミニウム金属の生産から派生する材料の一部を減らすことで、「二酸化炭素排出量」の総量を削減しようとする取り組みが長年にわたって行われてきた。
【0023】
一部の開発では、バリア機能を持つ予め製造されたフィルムやシートがアルミニウム箔の代わりに使用されている。別の開発では、ラミネート素材に複数の別々のバリア層を組み合わせることも試みられている。
【0024】
同様の多層包装材料は、粉ミルクやその他の乾燥食品等の、乾燥しているが酸素に敏感な食品を対象としていてもよく、長期保存(長い保存可能期間)と、確保するための最良の衛生的性能と、外部環境からパッケージへのガス、微生物、物質の浸入による劣化に対する耐性を実現するために、依然としてヒートシール可能なチューブ充填又はブランク充填の原理によって機能している。このようなパッケージは、液体又は半液体食品用のレンガ型又は直方体型のパッケージとは異なり、バルク層ではなく薄い紙をベースとし、直方体型ではなくパウチ型であってもよい。
【0025】
上述したパッケージは、高速で大量に(例えば1時間に数千個)連続生産されるため、世界中で消耗品パッケージと使い捨てプラスチックの大部分を形成している。それぞれのパッケージがかなりの量のプラスチックを含んでいることを考えると、この含有量を減らすか、あるいはなくすことによって、気候や環境に大きな利益があることが理解される。
【0026】
したがって、先行技術の包装材料に鑑みて、リサイクル可能性及び環境持続可能性に関して、改良されたヒートシール可能なカートンベースの多層包装材料の必要性及び機会が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
したがって、本発明の目的は、よりリサイクル可能で、より持続可能な、カートンベースのヒートシール可能な多層包装材料を提供することである。
【0028】
また、本発明の一般的な目的は、実質的に植物由来であり、すなわち再生可能な(非化石)起源であり、実質的にセルロース繊維の同一のリサイクル画分において再パルプ化可能である、改良されたヒートシール可能なカートンベースの多層包装材料を提供することである。
【0029】
本発明の具体的な目的は、酸素に敏感な製品のためのヒートシール可能なカートンベースの多層包装材料、例えば、アルミニウム箔を含まない(すなわち、いわゆる「非箔」)が、長期間の無菌包装に適した良好なガス及びその他のバリア特性を有し、実質的に植物由来であり、セルロース繊維の同一のリサイクル画分において実質的に再パルプ化可能なラミネート包装材料を提供することである。
【0030】
さらに具体的な目的は、液体又は半液体食品用のヒートシール可能なカートンベースの多層包装材料を提供することである。
【0031】
これらの目的は、本発明によれば、添付の特許請求の範囲に定義されるように、改良され、ヒートシール可能であり、実質的に植物由来であり、再パルプ化可能なカートンベースの多層包装材料、ヒートシールされた包装容器、及び包装材料の製造方法によって達成可能である。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明の第1の態様によれば、ヒートシール可能で実質的に植物由来の再パルプ可能な多層包装材料が提供され、多層包装材料は、紙、板紙又は他のセルロースベースの材料のバルク層と、形成された包装容器の外側に向けられることを意図した、第1の最外層の保護及び水分散性層又はコーティングと、包装容器の内側に向けられ、及び内側を形成することを意図した、第2のヒートシール可能な最内層と、を含み、第2のヒートシール可能な最内層が、セルロース繊維、任意の添加剤及び任意の可塑剤を含むセルロース繊維組成物から作られ、セルロース繊維は、ジアルコールセルロースを含むように部分的に変性されており、最内層中における変性セルロース繊維の量が、乾燥重量当たりで計算して80wt%~100wt%であり、セルロース繊維中の酸化可能なC2-C3結合の総数に基づく、部分的に変性されたセルロースのジアルコールセルロースへの転化率は、少なくとも10%であり、第2のヒートシール可能な最内層を含む完全な多層包装材料を実質的に植物由来とし、セルロース繊維の同一のリサイクル画分に再パルプ化可能である。
【0033】
つまり、多層包装材料の材料は植物由来であり、水性媒体中に実質的に再分散性であるため、板紙バルク層の繊維画分と一緒にリサイクルできることを意味する。材料のわずかな少量、例えば10重量%未満、例えば7重量%未満の材料だけが、繊維と共にリサイクル可能ではなく、不合格品又は廃棄物画分として回収される。したがって、多層包装材料の植物由来で再パルプ化可能な含有量は、少なくとも90重量%、例えば少なくとも93重量%を占めることになる。第1の最外層の保護及び水分散性層又はコーティングは、セルロース繊維、任意の添加剤及び任意の可塑剤を含むセルロース繊維組成物を含んでもよく、セルロース繊維は、ジアルコールセルロースを含むように少なくとも部分的に変性されており、第1の最外層の変性セルロース繊維の量は、乾燥重量当たりで計算して、80重量%~100重量%であり、セルロース材料中の酸化可能なC2-C3結合の総数に基づく、少なくとも部分的に変性されたセルロースのジアルコールセルロースへの転換率(degree of conversion)が少なくとも10%であり、第1の最外層の保護及び水分散性層を、ヒートシール可能で、植物由来で、再パルプ化可能なものにする。
【0034】
上記のセルロース繊維組成物を使用することにより、通常は化石資源に由来する従来の熱可塑性ポリマーを第2の最内層に使用することを削減し、さらには回避することが可能になるという結論に達した。したがって、セルロース繊維組成物は、植物由来であること、その製造及び化学修飾に関して環境的に問題がないこと、再パルプ化可能であること、すなわち水に再分散可能であることによって貢献することができる。これが可能になるのは、セルロースが元の繊維状のままであり、その性質と特性によって天然のセルロースと類似しているためである。ジアルコールセルロースへの化学修飾により、セルロースが依然として繊維状組成物であるにもかかわらず、熱可塑性の挙動を示すことを可能にする。セルロースは従来の熱可塑性ポリマーと混合する必要がなく、第2のヒートシール可能な最内層として使用することができ、十分な強度のヒートシールを提供することができる。
【0035】
ヒートシール可能な、実質的に植物由来で再パルプ化可能な多層包装材料は、バルク層と第2のヒートシール可能な最内層との間に配置されたガスバリア材料を含む層又は多層部分を有してもよい。
【0036】
多層包装材料内の異なる層又は多層部分は、隣接する水性接着剤組成物との湿式分散ラミネーションによって得られる、乾燥重量0.5~5g/m2の水分散性の薄型接着剤を含む薄型ラミネーション層によって互いにラミネートされてもよい。
【0037】
バリア層又はやコーティングの成分、及び必要なラミネート層の成分を選択し最適化することで、多層包装材料中の熱可塑性ポリマーの量をさらに最小限にまで減らすことが可能になり、その結果、実質的に植物由来の再パルプ可能な包装材料が得られる。
【0038】
本発明の第2の態様によれば、ヒートシール可能な実質的に植物由来の再パルプ化可能な多層包装材料からなるヒートシール包装容器が提供される。包装容器は、液体、半固体又は湿った食品の包装を意図することができる。一実施形態によれば、包装容器は、少なくとも部分的に本発明の積層包装材料から製造され、さらなる実施形態によれば、その全体が本発明の積層包装材料からなる。
【0039】
本発明の第3の態様によれば、上記第1の態様にしたがって定義された、ヒートシール可能な、実質的に植物由来の、再パルプ化可能な多層包装材料を製造する方法が提供され、この方法は、
基材ウェブを提供及び転送し、基材ウェブは、実質的に植物由来の再パルプ化可能なプレラミネート基材構造又は単一の基材層のウェブである、第1の工程と、
セルロース繊維、任意の添加剤及び任意の可塑剤を含むセルロース繊維組成物を提供し、セルロース繊維は、ジアルコールセルロースを含むように部分的に変性されており、変性セルロース繊維の量は、乾物重量当たりで計算して80wt%~100wt%であり、セルロース中の酸化可能なC2-C3結合の総数に基づく、部分的に変性されたセルロースのジアルコールセルロースへの転化率が、少なくとも10%である、第2の工程と、
ヒートシール可能な実質的に植物由来で再パルプ化可能な多層包装材料における第2のヒートシール可能な最内層を形成し、包装容器の内部に向けられ及び形成するため、セルロース繊維組成物を基材ウェブ上に適用する第3の工程と、
を含む。
【0040】
セルロース繊維組成物を基材ウェブ上に適用する第3の工程は、押出コーティングによって、又は代替的に、セルロース繊維組成物から作製された予め製造されたフィルム又はシートを、中間結合層によって基材ウェブ上に積層することによって実施してもよい。
【0041】
基材ウェブは、バルク層と、ガスバリア材料を含む層又は多層部分とを含むプレラミネート多層構造であってもよい。
【0042】
乾燥セルロース繊維組成物の厚さ及び量があまり高くない場合、例えば2.5g/m2より低い場合、例えば20g/m2より低い場合、代替的に水性分散コーティング及びその後の乾燥によって適用されてもよい。
【0043】
一実施形態によれば、本方法は、第2のヒートシール可能な最内層と類似又は同じセルロース繊維組成物を、基材ウェブの反対側に適用し、第1の最外層の保護又は水分散性層又はコーティングを形成する第4の工程を含み、セルロース繊維、任意の添加剤及び任意の可塑剤を含むセルロース繊維組成物から作られ、セルロース繊維が部分的にジアルコールセルロースを含むように変性されており、第1の最外層の変性セルロース繊維の量が、乾燥重量当たりで計算して80wt%~100wt%であり、セルロース材料中の酸化可能なC2-C3結合の総数に基づく、部分的に修飾されたセルロースのジアルコールセルロースへの転化率が少なくとも10%であり、第1の最外層の保護及び水分散性層を、ヒートシール可能で、植物由来で、再パルプ化可能なものにする。
【0044】
第3の態様の方法により、本発明の第1の態様の改良されたヒートシール可能なカートンベースの多層包装材料を製造することができる。
【0045】
(詳細な説明)
本発明に関連して使用される「長期保存」という用語は、包装容器が包装された食品の品質、すなわち栄養価、衛生的安全性及び味について、周囲温度条件で少なくとも1ヶ月又は2ヶ月、例えば、少なくとも3ヶ月、又はそれ以上保存できることを意味する。
【0046】
「パッケージの完全性」という用語は、一般にパッケージの気密性、すなわち包装容器の漏れや破損に対する耐性を意味する。この用語は、充填された食品を劣化させ、パッケージの予想される保存期間を短くする可能性のある細菌、汚れ等の微生物の侵入に対するパッケージの耐性を包含する。
【0047】
ラミネート包装材料のパッケージの完全性に対する一つの主な貢献は、ラミネート材料の隣接する層間の良好な内部接着によってもたらされる。また、各層のピンホール、破断などの欠陥に対する材料の耐性に寄与し、さらに、包装容器の形成時に材料がシールされるシール接合部の強度にも寄与している。このように、ラミネート包装材自体の完全性に関しては、各ラミネート層とその隣接層との接着性、及び各材料層の品質に主眼がおかれている。パッケージのシールに関して、完全性は主にシール接合部の品質に焦点を当てており、これは充填機における十分に機能する強固なシール作業によって確保され、さらにこれはラミネート包装材料の適切に適合したヒートシール特性によって確保される。
【0048】
「液体又は半液体食品」という用語は、一般に、任意に食品の断片を含むことができる流動性のある内容物を有する食品を指す。乳製品及び牛乳、大豆、米、穀物及び種子飲料、ジュース、ネクター、清涼飲料、エナジードリンク、スポーツ飲料、コーヒー又は茶飲料、ココナッツウォーター、ワイン、スープ、ハラペーニョ、トマト、ソース(パスタソース等)、豆及びオリーブオイル等が、想定される食品のいくつかの非限定的な例である。
【0049】
包装材料及び包装容器に関連する「無菌」という用語は、微生物が除去され、不活性化され、又は死滅している状態を指す。微生物の例としては、細菌や胞子が挙げられる。一般に、製品が包装容器に無菌的に充填される場合、無菌プロセスが使用される。包装容器の保存期間中、無菌状態を維持するためには、パッケージの完全性特性が非常に重要である。充填された食品の長期保存のために、さらに、本来の味や栄養価、例えば、ビタミンC含有量を保つために、酸素ガス等のガスや蒸気に対するバリア性を有することが重要である。
【0050】
「バルク層」という用語は、通常、多層ラミネートにおける最も厚い層又は最も多くの材料を含む層、すなわち、ラミネート及びラミネートから折り畳まれた包装容器の機械的特性及び寸法安定性に最も寄与する層、例えば、板紙又はカートン等を意味する。また、曲げ剛性や寸法安定性等の十分な機械的特性を達成するため、バルク層の両側で、より高いヤング率を有する安定化対向層とさらに相互作用する、サンドイッチ構造においてより大きな厚さ距離を提供する層を意味する場合もある。
【0051】
「ヒートシール」という用語は、2つの材料表面を溶融融着又は溶着することによる熱融着を意味し、接合される材料が材料表面間の界面を横切ってある程度相互混合又は相互固定するようにする。これは、軟化又は部分的に溶融した熱可塑性ポリマーを互いに押し付け合うことで、ポリマー鎖の可動性の増加により、接合界面全体で鎖の絡み合いが可能になる。冷却すると、ポリマー材料が冷却して再び固化する際に、絡み合ったポリマー鎖がその状態で固定される。同様のことが、本発明にしたがって使用される部分変性セルロースの場合にも起こるようであり、2つの溶着材料表面の間に強力な結合が形成される。
【0052】
「天然セルロース」という用語の意味は、変性されていないセルロースである。
【0053】
「セルロース繊維」という用語は、天然で本来の形態のセルロース繊維の意味を有し、すなわち、再生セルロース(化学的に変化し、化学反応溶液から再生されたものであり、繊維状に再生されていてもよい)は含まない。また、ナノスケール、すなわち分子サイズレベルのセルロース、いわゆるフィブリル、結晶又はフィブリル凝集体に解繊されたセルロースも含まない。
【0054】
セルロース繊維は、パルプ化方法によって長さやアスペクト比が異なる場合があり、異なるパルプは一般に異なる特性を有する。これらの特性は、異なるニーズに異なる前提条件を提供するために、本発明の範囲内でさらに変化させてもよい。
【0055】
本発明による材料及び製品を調製する際に使用される適切なセルロース繊維の例は、少なくとも1μm、例えば、少なくとも5μm、又は少なくとも8μm、又は少なくとも12μm等の平均直径を有し得るが、これらに限定されない。繊維の平均長さは、少なくとも0.3mm、例えば0.3~4mmであってよい。
【0056】
このように、セルロース繊維とフィブリル又はナノフィブリルには大きな違いがある。フィブリルの直径は数ナノメートルであるのに対し、繊維の直径はマイクロメートルの範囲にあり、つまり繊維は1000倍も大きくなる。したがって、フィブリルが示す多くの特性は、繊維では見られない。
【0057】
セルロースは、パルプ化から得られるセルロースなど、任意の適切なセルロースであってもよい。一実施形態では、セルロースはクラフトプロセス(Kraft process)から得られる。別の実施形態では、セルロースはクラフトプロセスによる漂白パルプから得られる。パルプ化プロセスから得られるセルロースには、通常、ヘミセルロースも含まれる。しかしながら、ヘミセルロースもまた、本明細書に記載されるような又は同様の修飾を受ける。
【0058】
セルロースは植物の細胞壁に見られる多糖類であり、セルロース及びセルロース誘導体は、紙、板紙、織物、インプラント、火薬など、様々な異なる製品に含まれている。本発明のセルロースは、木材などのリグノセルロース由来のものであってもよい。
【0059】
「再パルプ化可能」とは、従来のパルパーによって、又は数パーセントのセルロース繊維の従来の紙パルプ濃度において水性媒体中で激しく攪拌することによって、水分散液中でセルロースパルプに再分散可能であることを意味する。
【0060】
「実質的に植物由来で再パルプ化可能」という用語は、多層包装材料の実質的に全ての材料が植物由来であり、また水性媒体中で再分散可能であることを意味し、通常、カートンベースの多層包装材料から得られる主なリサイクル材料である板紙バルク層の繊維画分と一緒にリサイクルすることができる。「実質的にすべての材料」とは、わずかな量だけが繊維と一緒にリサイクルできず、不合格品又は廃棄物画分として回収されることを意味する。例えば、ナノメートル厚さの金属化層、又は1平方メートルあたり数グラムのデンプン又はPVOH等のプレコーティング又は接着剤等である。わずかな量とは、多層材料中の全材料の10wt%未満、例えば7wt%未満、例えば5wt%未満、例えば3wt%未満である。したがって、多層包装材料の「実質的にすべての材料」、すなわち「実質的に植物由来で再パルプ可能な」含有量は、少なくとも90wt%、例えば少なくとも93wt%、例えば少なくとも95wt%、例えば少なくとも97wt%である。
【0061】
バルク層は、「液体板紙」規格の板紙又は紙、すなわち、他のカートンの品質と比較して比較的高い曲げ剛性を有し、液体の包装に適切なサイズと食品の包装に適切な食品安全品質を有する板紙又は紙であってもよい。ドライ商品の包装の場合、曲げ剛性の要件は低く、他の板紙やカートンも使用できる。しかし、最も要求の厳しいカートンバルク層包装、すなわち液体包装については、最終的な多層包装材料の曲げ剛性が要求される。これは、比較的弱いバルク層又は中心層と、薄いがヤング率の高い両側の対面層とを組み合わせることによって代替的に行うことができ、中心層が相互作用する対面層間に距離を与える(したがって、「サンドイッチ効果」又は「Iビーム効果」が生じる)ことによって、ラミネート材料は依然として十分な総曲げ剛性を達成する。対面層は、バルク層の外側(すなわち包装容器の外側に向けられた)には紙印刷基材、バルク層の内側にはバリアコーティング用の薄い紙基材など、より薄い紙であってもよい。
【0062】
したがって、曲げ剛性が低いか全くない紙又はセルロースシートのバルク層も、剛性サンドイッチ効果が得られるようにさらなる層に積層する場合に使用することができる。例えば、ライナーボードやフルーティングボード(ただし、平らな材料として使用される)、あるいは、密度は非常に低いが、それでも十分な剥離強度(すなわち、スコットボンド)及びZ方向圧縮抵抗を有し、バルク紙又はシートの平面に垂直な圧縮力に抵抗する発泡成形セルロースシートが考えられる。
【0063】
本発明で使用する従来の紙又は板紙バルク層は、約100μmから約600μmの厚さ、及び約100~500g/m2、好ましくは約200~300g/m2の表面重量を有してもよく、適切な包装品質の従来の紙又は板紙であってもよい。
【0064】
液体食品を低コストで無菌的に長期包装するためには、より薄い紙バルク層を有する、より薄い包装用ラミネートが使用されてもよい。このような包装用ラミネートから作られた包装容器は、折り畳み式ではなく、ピロー状のフレキシブルパウチに似ている。ドライフード用のパッケージもこのタイプの場合があり得る。このようなパウチ包装に適した紙は、通常、表面重量が約50~約140g/m2、好ましくは約70~約120g/m2、より好ましくは約70~約110g/m2である。本発明におけるバリアコーティングされた基材は、それ自体がラミネート材料にある程度の安定性をもたらす可能性があるため、「バルク」層に相当する紙層はさらに薄くてもよく、バリアセルロースベースの基材とサンドイッチ相互作用して、十分な剛性及び安定性などの所望の機械的特性を有するラミネート包装材料を依然として製造することができる。
【0065】
ガスバリア材料を含む層又は多層部分は、紙又は他の水分散性セルロース系材料の追加の基材層を含んでもよく、この追加の基材層は、少なくとも1つのガスバリア材料で、2~5000nm、例えば、2~4000nmの総ガスバリアコーティング厚さまでコーティングされる。
【0066】
ガスバリア材料は、薄い紙基材上に薄いバリア層を水性分散コーティング又は蒸着コーティングすることによって作られたバリアコーティング基材であってもよい。このようなコーティングのための様々な水性分散コーティングプロセスや蒸着コーティングプロセス及びそのようなコーティングの材料レシピがあり、実際のガスバリア材料の量及び層の厚さをナノメートルスケールまで、又は数マイクロメートルまで減らすことができ、それでも比較的良好なバリア特性を提供できる。したがって、基材層、すなわち「バリア担持層」が薄紙又は他の薄いセルロース系材料である場合、薄紙は、上述したように、バルク層とのサンドイッチ相互作用における対向層としても作用し得る。さらに、バリア材料を含む多層部分の主要部分を構成してもよく、紙基材であることによって、全体として実質的に植物由来で再パルプ可能な材料に寄与し、リサイクルにおいてバルク層と同じ繊維画分にリサイクル可能であってもよい。再生可能な資源(紙又はセルロースベースの材料)を高度にベースとした、このような非箔バリア材料の開発は、より持続可能な包装材料に向けた重要な一歩である。バリアコーティングは非常に薄い(10~80ナノメートルなど)、又は水分散性でありながら薄い(1~4マイクロメートルなど)のいずれかである。これらは、リサイクル画分のごく一部を形成し、及び/又は水に分散もしくは溶解するため、繊維リサイクルプロセスにおける繊維再パルプ化液の廃水から物質を回収することができる。例えば、60nmのようなナノメートル厚さの金属化層からのアルミニウムの割合は、標準的な6μm(6000nm)の厚さのアルミニウム箔に必要とされるアルミニウムのわずか1%程度に減少する。
【0067】
本発明のバリアコーティングに適した基材は、特定のタイプの紙に限定されるものではなく、任意のタイプの天然セルロース、繊維状又はフィブリル状セルロースをベースとする他のセルロースベースの基材も含まれる。しかしながら、プラスチック又は合成ポリマーからの基材は、多層包装材料にプラスチック成分を加えることになるので、同様に有利とはみなされない。このような熱可塑性ポリマーフィルムは、いわゆる再生セルロース(すなわち、溶解して再沈殿したセルロース)から作られてもよく、PETやBOPETのようなポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンのような従来の基材フィルムポリマーであってもよい。しかし、約5μmまでの厚さなど、非常に薄い基材フィルムを製造する技術もあるため、このような代替手段を完全に排除することはできない。このようなフィルムは、植物由来の非化石資源から製造することができるが、バルク層と同じリサイクル率のセルロース繊維に再パルプ化することはできない。
【0068】
コーティング面(「上面」又は「印刷面」)において、200ml/min Bendtsen又はそれ以下、例えば約150ml/min又はそれ以下の表面平滑度を有する紙又はセルロースベースの基材は、酸素バリアの観点から、本発明によるガスバリア材料の層部分に対して良好なバリアコーティング構造を提供し得ることが、これまでに分かっている。
【0069】
低乾燥含有ポリマー分散液又は溶液組成物のコーティングに適したプロセスは、広義には、グラビアロールコーティング、エアスプレー、エアレススプレー、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、及びブラシコーティング法のような、任意の適切な湿式コーティング法である。
【0070】
紙又は他の水分散性セルロース系材料の追加の基材層は、100~5000nm(0.1~5μm)、例えば100~4000nm(0.1~4μm)、例えば300~3500nm(0.3~3.5μm)、例えば300~2500nm(0.3~2.5μm)の乾燥コーティング厚さにガスバリア材料でコーティングされてもよく、ガスバリア材料は、ビニルアルコールポリマー及びコポリマー、例えばポリビニルアルコール、PVOH、及びエチレンビニルアルコール、EVOH、デンプン及びデンプン誘導体、ヘミセルロース及びヘミセルロース誘導体、ナノフィブリルセルロース/ミクロフィブリルセルロース、NFC/MFC、ナノ結晶セルロース、NCC、及びそれらの2種以上のブレンドからなる群から選択されるポリマーを含む。
【0071】
一実施形態において、バリアプレコーティング組成物は、ビニルアルコールモノマー、すなわちポリビニルアルコール(PVOH)及びエチレンビニルアルコール(EVOH)をベースとする、分散コーティングに適した2つの最も一般的なタイプのポリマー及びコポリマーのうちの1つをベースとする。
【0072】
良好なフィルム形成特性、ガスバリア特性、コスト効率、食品適合性、臭気バリア特性を提供するため、好ましくは、ガスバリアポリマーは、PVOHである。
【0073】
PVOHベースのガスバリア組成物は、PVOHのケン化度が少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%である場合に最も優れた性能を発揮するが、ケン化度がより低いPVOHでも酸素バリア性を発揮する。一方、EVOHは、コポリマーがエチレンモノマー単位を含むため、バリア材料にある程度の耐湿性を与えることで有利になる。その量はEVOHのグレードの選択によるが、PVOHと比較して、材料固有の酸素バリア性が犠牲になる。従来のEVOHポリマーは、通常、押出成形用であり、3.5g/m2以下の薄い液膜コーティングバリアフィルムを製造するために、水性媒体中に分散又は溶解することは不可能である。EVOHは、水分散性であるために、かなり多量のビニルアルコールモノマー単位を含み、PVOHの液状フィルムコーティンググレードにできるだけ近い特性であるべきであると考えられている。したがって、押出コーティングされたEVOH層は、押出コーティング用のEVOHグレードよりも本質的にPVOHとの類似性が低く、押出コーティング又は押出しラミネーションによって単層として4g/m2未満のコスト効率のよい量で塗布することができないため、液体フィルムコーティングされたEVOHの代替とはならない。
【0074】
ガスバリア材料は、ベントナイト等の剥離されたナノクレイ粒子等、乾燥コーティング重量に基づいて約1~約20重量%の無機層状化合物をさらに含んでもよい。したがって、ガスバリア材料層は、乾燥コーティング重量を基準として約99~約80重量%のポリマーを含んでもよい。分散安定剤などの添加剤も、ガスバリア性組成物中に、好ましくは乾燥コーティングを基準として約1重量%以下の量で含まれ得る。組成物の全乾燥含量は、好ましくは5~15重量%、より好ましくは7~12重量%である。
【0075】
PVOHコーティングの水蒸気及び酸素バリア特性を向上させるために、ガスバリア材料におけるさらなる可能性のある添加剤は、官能性カルボン酸基を有するポリマー又は化合物であってもよい。好適には、官能性カルボン酸基を有するそのようなポリマーは、エチレンアクリル酸コポリマー(EAA)及びエチレンメタクリル酸コポリマー(EMAA)又はそれらの混合物の中から選択される。一実施形態において、このようなバリア層混合物は、本質的にPVOH、EAA及び無機層状化合物から構成されてもよい。EAAコポリマーは、乾燥コーティング重量を基準として、約1~20重量%の量でバリア層に含まれてもよい。
【0076】
乾燥温度を上げると、PVOHとEAAがエステル化反応し、PVOHが疎水性のEAAポリマー鎖によって架橋され、PVOHの構造に組み込まれることで、酸素バリア性及び水バリア性がさらに向上すると考えられる。架橋は、多価化合物、例えば金属酸化物のような金属化合物の存在によって誘導することもできる。しかし、このような混合物は、添加剤のコストのためより高価であり、リサイクル性の観点からは好ましくない。一般に、架橋は水の再分散性の効果を打ち消す可能性があり、その観点からバランスをとる必要がある。
【0077】
別の実施形態では、ガスバリア材料は、ナノ結晶セルロース(CNC)、又はナノ結晶セルロースを含む組成物、例えばCNC及びポリビニルアルコール(PVOH)のブレンドを含む組成物をベースとする。このようなガスバリア材料の使用は、非常に少量で使用できる別の形態のセルロースであるため、大きな利点があり、また、植物由来であり、バルク層と同じセルロース繊維のリサイクル画分に再パルプ化可能である。
【0078】
デンプン及びデンプン誘導体もまた、本質的にガスバリア性を提供することが知られており、ガスバリア性を有するヘミセルロース誘導体の例としては、キシランが挙げられる。
【0079】
紙又は他の水分散性セルロース系材料の追加基材層上にコーティングされたガスバリア材料は、代替的に、金属化コーティング、酸化アルミニウム(AlOx)コーティング、酸化ケイ素(SiOx)コーティング、及びアルミニウム金属化コーティングなどの非晶質ダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングからなる群から選択される蒸着コーティングであってもよい。
【0080】
蒸着コーティングプロセスによるバリアコーティング工程に適するためには、基材は、効率及び生産経済性の理由から、また繊維質で多孔質のセルロース系基材に空気が巻き込まれることによるコーティングの膨れを避けるために、60g/m2以下、例えば50g/m2以下、好ましくは45g/m2以下、より好ましくは40g/m2以下と、薄くする必要がある。一方、セルロース系基材が30g/m2より薄い、又は低い坪量の場合、湿った分散液でコーティングし、その後乾燥させると、機械的に弱すぎる、及び/又は寸法安定性が低くなり、収縮やカールの問題が生じることがある。したがって、30~50g/m2、最も好ましくは3.5~45g/m2の坪量を有する紙を使用することがより好ましい。
【0081】
最小限のバリア材料で最適なバリア特性を得るためには、ナノメートルの厚さにのみコーティングされる蒸着コーティングの場合、最初に紙又はセルロースベースの基材上にガスバリア性ポリマーの薄い第1コーティングが必要であることが分かっている。このようなガスバリア材料の第1コーティングとしては、ビニルアルコールポリマー及びコポリマーから選択されるポリマーがよく、これらのポリマーは、固有のガスバリア特性を有し、食品安全性が高く、リサイクル可能であり、工業用コーティング及びラミネーションプロセスにおいて環境的に持続可能である。このようなポリマーは、水分散性及び/又は水に溶解可能であり、水性「分散コーティング」プロセス又はいわゆる「液体フィルムコーティング」プロセスによって適用されてもよい。
【0082】
したがって、紙又は他の水分散性セルロース系材料の追加の基材層は、ガスバリア材料の水性分散液又は溶液のコーティング及びその後の乾燥によって形成されるガスバリア材料の第1コーティングでコーティングされてもよく、さらに、金属、金属酸化物、無機酸化物、及び非晶質ダイヤモンドライクカーボンから選択されるガスバリア材料の蒸着コーティングが、第1のコーティング上に適用されてもよい。
【0083】
一実施形態において、ガスバリア材料の第1のコーティングは、ビニルアルコールポリマー及びコポリマー、例えば、ポリビニルアルコール、PVOH、及びエチレンビニルアルコール、EVOHからなる群から選択されるポリマーを含んでもよく、ガスバリア材料のさらなる蒸着コーティングは、金属、金属酸化物、無機酸化物、及び炭素コーティングから選択される材料である。
【0084】
さらなる実施形態では、蒸着コーティングは、アルミニウム金属化コーティング及び酸化アルミニウム(AlOx)からなる群から選択されるガスバリア材料であり、好ましくはアルミニウム金属化コーティングである。
【0085】
さらなる実施形態において、ガスバリア材料の第1のコーティングは、ナノ結晶セルロース(CNC)を含む組成物、例えば、CNCとポリビニルアルコール(PVOH)とのブレンドを含む組成物に基づく第1のコーティングであり、さらなる蒸着コーティングは、金属、金属酸化物、無機酸化物、及び炭素コーティングから選択されるガスバリア材料を含む。
【0086】
ガスバリア材料の第1のコーティングは、乾燥重量で0.1~4g/m2、より好ましくは0.5~3.5g/m2、例えば0.5~3g/m2の総量で適用されてもよい。0.1g/m2未満では、ガスバリア性が全く達成されず、4g/m2を超えると、コーティングが脆くなり、亀裂が入りやすくなる可能性があり、3.5g/m2を超えると、一般にバリア性ポリマーのコストが高く、液体を蒸発させるためのエネルギーコストが高いため、コーティングは包装用ラミネートに十分なコスト効率をもたらさない。PVOHは、0.5g/m2以上で認識できるレベルの酸素バリア性を達成し、0.5~3g/m2の間でバリア性とコストの良好なバランスが達成される。
【0087】
一実施形態では、ガスバリア材料の第1のコーティングは、2つの部分層として、中間乾燥を伴う2つの連続した工程で適用されてもよい。2つの部分層として適用される場合、各層は、好適には、0.1~2g/m2、好ましくは0.5~1,5g/m2で適用され、より少ない量の液体ガスバリア組成物から、より高品質の総層を得ることができる。一実施形態では、2つの部分層は、それぞれ0.1~1g/m2で適用される、
【0088】
さらなる実施形態において、バリアプレコーティングは、乾燥重量で0.5~2.5g/m2、好ましくは0.5~2g/m2で分散又は溶液コーティングによって適用される。
【0089】
ガスバリア材料の第1のコーティングの表面に最終的にコーティングされる蒸着バリアコーティングは、物理的蒸着法(PVD)又は化学的蒸着法(CVD)、例えばプラズマエンハンスト化学的蒸着法(PECVD)によって施される。
【0090】
このような薄い蒸着コーティング層は、ナノメートル厚さ、すなわち、最も好適にはナノメートル単位で数えられる厚さを有し、例えば、5~500nm(50~5000Å)、例えば5~200nm、より好適には5~100nm、例えば5~50nmである。
【0091】
一般に、5nm未満ではバリア性が低すぎて有用でない場合があり、200nmを超えると、例えば100nmを超えると、例えば50nmを超えると、蒸着コーティングの種類にもよるが、バリアコーティングの柔軟性が低くなり、柔軟な基材に塗布した場合にクラックが発生しやすくなり、コストも高くなる。
【0092】
一実施形態では、バリア蒸着コーティングは、10~80nm、例えば10~50nm、例えば10~45nmの厚さに塗布される。
【0093】
実質的にアルミニウム金属からなる蒸着層は、5~50nm、より好ましくは5~40nmの厚さを有してもよく、これは、従来の包装用のアルミニウム箔の厚さ、すなわち6,3μmに存在するアルミニウム金属材料の1%未満に相当する。蒸着金属コーティングは、必要とする金属材料が著しく少ない一方で、せいぜい低レベルの酸素バリア特性しか提供せず、十分なバリア特性を有する最終ラミネート材料を提供するためには、さらなるガスバリア材料と組み合わせる必要がある。その一方で、水蒸気バリア性を持たず、むしろ湿気に敏感なガスバリア層を補完することもある。
【0094】
蒸着コーティングの他の例としては、酸化アルミニウム(AlOx、Al2O3)や酸化ケイ素(SiOx)コーティングがある。一般的に、PVDコーティングはより脆く、ラミネートによる包装材料への組み込みには適さないが、例外として金属化層はPVDで作られているにもかかわらず、ラミネート材料に適した機械的特性を持つ。
【0095】
通常、アルミニウムの金属化層は、使用されるメタライズコーティングプロセスの性質により、本質的に酸化アルミニウムからなる薄い表面部分を有する。
【0096】
一実施形態では、アルミニウム金属化層は、光学濃度(OD)が1.8から2.5、好ましくは1.9から2.2になるように適用されている。光学密度が1.8より低いと、金属化フィルムのバリア性が低すぎる場合がある。一方、2.5を超えると、金属化層が脆くなる可能性があり、また、長時間にわたって基材フィルムを金属化する際に熱負荷が高くなるため、メタライズプロセス中の耐熱性が低くなる。その結果、コーティングの品質や密着性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0097】
他のコーティングは、プラズマエンハンスト化学気相成長法(PECVD)により行ってもよく、多かれ少なかれ酸化的な環境下で基材上に化合物の蒸気を蒸着させる。例えば、酸化ケイ素コーティング(SiOx)もPECVDプロセスによって適用され、特定のコーティング条件とガスレシピの下で非常に優れたバリア特性を得ることができる。
【0098】
DLCは、ダイヤモンドの典型的な特性の一部を示す非晶質炭素材料(非晶質ダイヤモンドライクカーボン)の一種を定義する。好ましくは、アセチレン又はメタンなどの炭化水素ガスが、PECVD真空プロセスによって適用される非晶質水素化炭素バリア層のコーティング、すなわちDLCを生成するためのプラズマ内のプロセスガスとして使用される。真空下でPECVDにより塗布されたDLCコーティングは、ラミネート包装材料中の隣接するポリマー層又は接着剤層に対して良好な接着性を提供する。特に、ポリオレフィン、特にポリエチレン及びポリエチレンをベースとする共重合体では、隣接するポリマー層との良好な接着性が得られる。
【0099】
一実施形態において、ガスバリア材料を含む層又は多層部分は、ミクロフィブリル化セルロースを含む層又はシートを含んでもよい。このようなミクロフィブリル化セルロース材料のコーティング、紙、及びシートは、ガスバリア特性を提供することが知られている。本発明の文脈におけるそれらの特性は、材料の再パルプ化可能性に対してバランスされるべきである。
【0100】
さらなる実施形態において、ガスバリア材料をなる層又は多層部分は、セルロース繊維中の酸化可能なC2-C3結合の総数に基づく、セルロースからジアルコールセルロースへの転化率が少なくとも20%であるジアルコールセルロースを含む、変性セルロース繊維からなる層又はシートを含んでもよい。このような材料のガスバリア性は、ジアルコールセルロースへの転化率が高いほど、すなわち20%より高く、例えば30~50%で、より明らかになる。
【0101】
ガスバリア材料を含む層又は多層部分は、接着性ポリマーバインダーを含む接着剤組成物の水性分散液を、ラミネートされるウェブ表面の一方に湿式塗布し、2つの紙ウェブがラミネーション・ローラー・ニップを通って前進しながら一緒に押圧されることによってバルク層に接着され、湿式ラミネーションによってラミネート構造を提供することができる。水性接着剤組成物の水分は、2つの紙層の少なくとも一方の繊維状セルロースネットワークに吸収され、その後のラミネートプロセスで、時間と共に部分的に蒸発する可能性がある。したがって、強制乾燥工程は必要ない。したがって、ヒートシール可能な多層包装材料は、水性接着剤組成物によるウェットラミネーションによって得られる、乾燥重量0.5~5g/m2の水分散性の薄い接着剤層からなるラミネーション層をさらに含んでもよい。
【0102】
ガスバリア材料からなる層又は多層部分は、アクリルポリマー及びコポリマー、デンプン、デンプン誘導体、セルロース誘導体、酢酸ビニル又はビニルアルコールのポリマー及びコポリマー、ならびにスチレン-アクリルラテックス又はスチレン-ブタジエンラテックスのコポリマーからなる群から選択されるバインダーを含む中間結合組成物0.5~5g/m2によってバルク層に積層され得る。
【0103】
環境に配慮した持続可能性を最大限に実現するためには、植物又は非化石由来の接着着バインダーが望ましい。
【0104】
セルロース繊維中の酸化可能なC2-C3結合の総数に基づいて、セルロースからジアルコールセルロースへの転化率が少なくとも20%であることによってジアルコールセルロースを含有する変性セルロース繊維のガスバリア材料を含む多層部分の場合、この材料は、代替的に、紙又は板紙のバルク層上に直接コーティングされてもよい。このような直接コーティング操作は、水性分散コーティング及びその後の乾燥によって、又はセルロース繊維組成物の押出コーティングによって実施されてもよい。
【0105】
第2のヒートシール可能な最内層は、セルロース繊維、任意の添加剤及び任意の可塑剤を含むセルロース繊維組成物から作られ、セルロース繊維は、ジアルコールセルロースを含むように部分的に変性されており、最内層中の変性セルロース繊維の量は、乾燥重量当たりで計算して、80wt%~100wt%であり、セルロース繊維中の酸化可能なC2-C3結合の総数に基づく、部分的に変性されたセルロースのジアルコールセルロースへの転化率は、少なくとも10%である。80~100wt%のセルロース繊維の割合は、すべてのセルロース製品及び紙と同様に、いくらかの水分も含んでおり、これは通常の環境条件下ですべての紙製品に固有の自然な水分含水率を構成する。したがって、セルロース製品の自然含水率は、保管される気候条件によって6~12%の間で変化する。
【0106】
加えて、第2のヒートシール可能な最内層は、層の乾燥含量に基づいて0.5~20wt%の量の可塑剤をさらに含んでもよい。
【0107】
任意選択で、第1の最外層の保護及び水分散性層又はコーティングは、第2のヒートシール可能な最内層と同じセルロース繊維組成物から作られてもよく、層の乾燥含量に基づいて0.5~20wt%の量の可塑剤をさらに含んでもよい。
【0108】
代替的な実施形態では、第1の最外層の保護及び水分散性層又はコーティングは、水性ラテックスコーティング、ワックスコーティング又はワニスなどの、単に多層包装材料の外側表面を保護するための薄いコーティングであってもよく、その量は1~10g/m2である。
【0109】
可塑剤は、グリセロールなどのポリオール、及びデンプン、デンプン誘導体又はセルロース誘導体などの多糖類などの非合成ポリマーからなる群から選択される化合物であってもよい。一実施形態において、可塑剤は、グリセロール、ポリエチレングリコール(PEG)、及びポリビニルアルコール(PVOH)からなる群から選択される化合物であってもよい。
【0110】
一実施形態において、可塑剤は、したがって、グリセロールなどのポリオール、及びデンプン、デンプン誘導体又はセルロース誘導体などの多糖類からなる群から選択される化合物であってもよい。
【0111】
さらなる実施形態において、可塑剤は、グリセロール、ポリエチレングリコール(PEG)、及びポリビニルアルコール(PVOH)からなる群から選択される化合物であってもよい。
【0112】
セルロース分子のグルコースモノマー単位の酸化可能なC2-C3結合の変性は、まずセルロース繊維を構成するセルロースナノフィブリルの表面で起こる。変性が進むにつれて、繊維中の変性ナノフィブリルはコア・シェル構造を獲得し、それによって、ジアルコールシェルから、熱可塑性ポリマーの特性に類似した機械的及び物理的特性を得ると考えられており、これは押出成形及び射出成形のプロセスにおいて有利であることが判明している。ジアルコール変性セルロースの製造に関する変性反応及び技術は、公開された国際特許出願WO2018/135994A1にさらに記載されている。より流動性のあるレオロジー挙動を達成するためにセルロースが変化することのいくつかの効果は、セルロース繊維中で利用可能なC2-C3結合の10%のジアルコールセルロースへの転化率で既に見られ得る。転化率30~50%では、35~45%のように最良のレオロジー特性が観察される。転化率が50%を超えると、セルロースは液状に変化し始めるが、これは本発明にとって望ましくない。転化率が100%に向かって増加すると、変性ジアルコールセルロースは多かれ少なかれ液状になり、組成物中に繊維が残っているとしてもごくわずかである。
【0113】
WO2018/135994の記載に反して、変性セルロース繊維は、組成物をより熱可塑性にする目的で熱可塑性ポリマーとブレンドされるべきではない。「繊維の変性は、第2のポリマーと混合したときに繊維の分散性を増加させ、繊維の引き抜き又は剥離の数を減少させる」、すなわち、マトリックスが繊維に適切に接着しないことを防止することが、当該先行技術に示唆されている。しかし、このような従来の熱可塑性ポリマーとの混合は、植物ベースで再パルプ化可能な、すなわち水分散性の材料を提供するという目的を失うことになる。本発明によれば、変性ジアルコールセルロースを従来の熱可塑性ポリマーとブレンドする必要はなく、また望ましいことでもない。デンプン、デンプン誘導体及びセルロース誘導体のような天然ポリマーのいくらかの添加量は、組成物が依然として水分散性である限り、可塑化の目的で行うことが可能であろう。しかしながら、WO2018/135994に記載されているように、セルロースは、水の水分を吸着させることによってより流動性と加工性が高くなる可能性があるため、さらなる可塑剤及び添加剤を添加することなく加工することもできる。溶融状の流動挙動を利用した加工を可能にするために、セルロース繊維は5~40wt%の水分を収着している。「収着」という用語は「吸着」と「吸収」の両方を包含し、「収着する」という用語は「吸着する」と「吸収する」の両方を包含する。
【0114】
可塑剤に加えて、潜在的な任意の添加剤として、架橋剤、相溶化剤、充填剤、顔料、消泡剤等が挙げられる。
【0115】
一実施形態では、セルロース繊維組成物は、実質的に変性セルロース繊維と収着水のみを含む。
【0116】
本発明による、第2のヒートシール可能な最内層に使用されるセルロース繊維組成物は、押出コーティングプロセスによって適用することが可能である。
【0117】
さらに、セルロース繊維組成物は、酸素や水蒸気などの気体に対するバリア性を本質的に備えており、最終的な層やシートに「溶融」加工しても、その特性が劣化することはない。
【0118】
セルロースのジアルコールセルロースへの変性又は転化率を決定する場合、第1工程は、セルロースを酸化してジアルデヒドセルロースにした後、ジアルデヒドへの転化率を決定することである。これは、塩酸ヒドロキシルアミンと反応させ、水酸化ナトリウムで滴定することにより、酸化セルロース中のカルボニル含有量を測定することにより行われる。転化率は、純粋なセルロースを出発物質と想定した場合の最大転化量に対するパーセンテージで示される。第2工程では、反応の指示や説明がない限り、アルデヒドは全てアルコールに転化されると想定する(このことは、第2のカルボニル含有量の測定によっても裏付けられる)。
【0119】
したがって、実際には、セルロースを酸化してジアルデヒドセルロースにした後のカルボニル含量を測定すれば、通常、セルロースのジアルコールセルロースへの変性又は転化率を決定するのに十分である。
【0120】
したがって、カルボニル含量は、ZhaO et al(Determination of degree of substitution of formyl groups in polyaldehyde dextran by the hydroxylamine hydrochloride method. Pharm. Res. 8:400-402(1991))に基づくプロトコルによって決定される。繊維を水に懸濁し、pH4に調整した後、ゲル状になるまで脱水した。次に、これらの繊維約0.25g(乾燥基準)を、pH4の0.25M塩酸ヒドロキシルアミン溶液2.5mlとともに少なくとも2時間撹拌した後、あらかじめ秤量したろ紙を用いたろ過によって繊維を溶液から分離した。繊維の正確な質量は、ろ紙のオーブン乾燥により測定した。
【0121】
紙を用い、0.10M水酸化ナトリウムでpHに戻す滴定により、カルボニル量を求めた。各酸化時間で2~3回の独立した酸化を行い、塩酸ヒドロキシルアミンとの反応はそれぞれ3回ずつ行った。
【0122】
ジアルコールセルロースへの還元前のセルロースのジアルデヒドセルロースへの転化率は、天然セルロース材料中の酸化可能なC2-C3結合の総数を基準として、好ましくは13%以上、例えば18%以上又は20%以上である。
【0123】
第2のヒートシール可能な最内層中の変性セルロース繊維の量は、90wt%以上、例えば95wt%以上、例えば100wt%であってもよい。
【0124】
セルロース中の酸化可能なC2-C3結合の総数に基づく、部分的に修飾されたセルロースの第2のヒートシール可能な最内層におけるジアルコールセルロースへの転化率は少なくとも30%、又は少なくとも32%、又は少なくとも40%、又は少なくとも45%及び50%未満、例えば30%~45%であってよい。
【0125】
湿気又は水分の収着は、十分な量の湿気又は水分が材料に収着されるまで、十分な期間湿気を含む環境中に材料を放置することによって行ってもよい。湿気を含む環境とは、蒸気を入れた容器であってもよい。材料に水を加えるか、材料を十分な時間水に浸すことによって、材料は水分を収着してもよい。セルロースは、収着時の温度が上昇すると収着する水分や水分が少なくなるため、温度を上げすぎないようにする。一実施形態では、収着は室温など30℃以下で行われる。吸着中の相対湿度(RH)は、50~99%又は70~95%など、30~100%であってもよい。材料は、少なくとも5分間、又は少なくとも15分間、又は少なくとも30分間、又は少なくとも1時間、又は少なくとも2時間、湿気を含む環境中に放置され得る。材料を水に浸してもよいし、水中に沈めてもよい。吸着時間は、材料の量と水分又は水の添加方法に部分的に依存する。吸着工程後の材料の含水率は、10~30wt%など、5~40wt%であってもよい。
【0126】
材料に水分を吸着させることで、より低い温度とより少ない力で済むため、熱可塑性プラスチックのような「溶融」挙動で、より容易に加工できる可能性がある。さらに加工温度を下げることができるため、吸着により、加工中の変色が抑制されると考えられる。水分を吸着させない材料は、セルロース含有料の高い材料の溶融加工を容易にするために、好ましくは高度な変性を有するべきである。この材料は、吸湿させるだけでなく、変性度が高くてもよい。
【0127】
次に、溶融スクリュー押出機や二軸スクリュー押出機などの任意の適切な技術を使用して、材料の特性に応じて、60~200℃で材料を混練又は「溶融」加工してもよい。混練又は「溶融」加工の間、材料を流動させるために温度を十分に高くすることができる。混練又は加工は、「溶融」プロセスと表現されることがあり、この場合、温度は材料を「溶融」又は溶融様状態を付与するのに十分高いか、又は流動させるのに十分柔らかくする。水分を吸着させた材料を混練する場合は、60~100℃や70~90℃など、より低い温度を使用することができる。乾燥した材料、すなわち水分や水を吸着させていない材料の場合は、130~150℃など、120~160℃の温度を使用してもよい。材料の混練は5~10分間で行ってもよい。より低い温度は、変色のリスクを低減するため、より好ましい場合がある。
【0128】
ある実施形態では、製品はまず材料を配合することによって調製される。次に、配合された材料は、例えば、切断又は粉砕によって、適切な大きさの粒子又は顆粒に変換される。次に、顆粒は、押出コーティング又はフィルム押出操作、すなわち押出スクリューを使用して押出され、ダイのノズルを通して押圧され、基材又は冷却ローラー上に塗布及び冷却される流動フィルムを形成するために使用される。
【0129】
あるいは、変性セルロースを水分散液中に保持し、基材上に分散コーティングし、その後乾燥して水分を蒸発させて除去する。
【0130】
第2のヒートシール可能な最内層の塗布量は、10~80g/m2、例えば15~80g/m2、例えば20~70g/m2、例えば20~60g/m2、例えば20~50g/m2、例えば20~40g/m2であってもよい。15g/m2未満では、強力なヒートシールが確実に得られず、100g/m2を超える場合、例えば80g/m2を超える場合では、シール強度のさらなる向上は見られない。乾燥ジアルコールセルロース繊維材料組成物の20~60g/m2では、十分なヒートシール強度に頼ることが可能であり、保存期間、すなわち包装容器の保存期間を通じて十分なシール強度が維持される。
【0131】
一実施形態によれば、第2のヒートシール可能な最内層は、蒸着コーティングのコーティング表面上、例えば、金属化コーティング上に適用されてもよい。第2のヒートシール可能な最内層と金属化層を有する基材表面との間では、紙又はセルロース層の基材表面と比較して、ヒートシール性が大幅に改善されていることが観察された。塗布されたセルロースは、平滑な塗布面に均一で平滑な層を形成し、その結果、より優れたヒートシール可能層を形成している。
【0132】
(好ましい実施形態の例及び説明)
以下に、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【
図1】本発明によるヒートシール可能な実質的に植物由来の再パルプ化可能な多層包装材料の第1の実施形態の概略断面図を示す。
【
図2a】酸素に敏感な商品を包装するための、ヒートシール可能な実質的に植物由来の再パルプ化可能な多層包装材料の第2の実施形態の概略断面図を示す。
【
図2b】酸素に敏感な商品を包装するための、ヒートシール可能な実質的に植物由来の再パルプ化可能な多層包装材料のさらなる実施形態を示す図である。
【
図3a】ガスバリア材料又は変性セルロース材料などの材料の水性組成物を分散コーティングして、基材上に材料の層又はコーティングを生成する方法を概略的に示す。
【
図3b】ヒートシール可能な変性セルロース繊維組成物の層をウェブ基材上に押出コーティングする方法を概略的に示す。
【
図4a】固体金属蒸発ピースを使用して基材フィルムに物理蒸着(PVD)コーティングを行うためのプラントの概略図を示す。
【
図4b】マグネトロンプラズマを用いて基材フィルム上にプラズマエンハンスト化学蒸着(PECVD)コーティングを行うプラントの概略図を示す。
【
図5a】本発明によるラミネート包装材料から製造された包装容器の代表例を示す。
【
図5b】本発明によるラミネート包装材料から製造された包装容器の代表例を示す。
【
図5c】本発明によるラミネート包装材料から製造された包装容器の代表例を示す。
【
図5d】本発明によるラミネート包装材料から製造された包装容器の代表例を示す。
【
図6】包装用ラミネートから連続的なロールフィード、成形、充填、シールプロセスにおいて、包装用ラミネートから包装容器が製造される原理を示す。
【0134】
(例)
(比較例1)
国際特許出願第WO2018/146386A1号に記載されているタイプの変性セルロース材料、すなわち、フィンランドVTT社によって製造された、長鎖脂肪酸によるエステル化によってモル質量が制御され、その後に化学的に変性されたセルロースを、板紙基材上に押出コーティングした。変性セルロース材料は、炭素原子数8のアルキル基を有するカルボン酸とのエステル化によって得られた。モル質量制御により、セルロースポリマー分子が短くなり、次のエステル化反応に対する反応性が高くなる。
【0135】
このセルロース材料を、Haake社製パイロット押出機により、約150℃で0.5m/s(30m/分)の速度、約30g/m2の厚さ、80mNの曲げ力、200g/m2の坪量を有する紙基材上に押出コーティングした。均一で滑らかなコーティングが得られた。このタイプのセルロース材料の接着性は、基材表面のコロナ表面処理によって改善された。
【0136】
押出コーティングされた層のヒートシール性は、それぞれのサンプルの2つの表面を互いに押し付けて加熱し、その後に冷却することによって試験された。超音波ヒートシール法と同様に、材料を一点に加熱することによって、均一で強力なヒートシールが得られた。
【0137】
(実施例1a)
セルロース繊維中のC2-C3結合のジアルコールセルロースへの転化率が40%である、ジアルコールセルロースに変性されたセルロース繊維100wt%を含む本発明によるセルロース繊維組成物を、6wt%のよく分散したセルロース繊維の水性分散液の形態で、異なる基材表面に分散コーティングした。
【0138】
コーティング操作は、幅200μmのダイスロットを通して繊維分散液を供給し、その後105℃で乾燥させ、塗布量が乾燥状態で約20g/m2となるよう、いわゆるブレードコーティングによって行われた。
【0139】
3つの異なる基材は以下の通りである。
1)80mNの曲げ力と200g/m2の坪量を有する液体板紙タイプの従来の板紙の内側(すなわち、裏面であり粗くて印刷不可能な面)
2)アルミニウム箔にラミネートされた同じ液体板紙のプレラミネートウェブの箔側、
3)金属化された紙基材(約45g/mの薄紙)にラミネートされた同じ液状板紙から作られたプレラミネートウェブの金属化側の表面
4)薄剥離タイプ(薄紙基材)の高密度スーパーカレンダー紙層の平滑な紙表面(ゲルリー多孔度146秒(146s Guerly porosity))
【0140】
コーティングは均一な層に形成され、ヒートシール性を試験した。その結果、基材No.2)のコーティングされたプレラミネート箔ボードと、基材No.3)のコーティングされた金属化表面から作られたシール接着のヒートシール強度は、コーティングされた基材No.1)及び4)、すなわち紙及びと板紙基材から作られたシール接着のヒートシール強度よりもはるかに高かった。
【0141】
物性(ヒートシール性など)は(表1)に示すように評価した。
O=低い、又は特性が観察されない
T=一部/中程度の特性が観測された
X=良好/高い特性が観測された
【0142】
【0143】
(結論)
コーティングされた板紙ウェブNo.E.1a-1)では、超音波ヒートシールの結果に一貫性がないことが観察された。その原因は、コーティングの厚みが不均一さによって、コーティングされた板紙表面の接触が不均一であったためと考えられる。
【0144】
コーティングされたウェブNoE.1a-2)及び3)、すなわちアルミニウム表面側にコーティングされたウェブについては、誘導ヒートシール法及び超音波ヒートシール法のいずれにおいても、良好で強力なヒートシールが得られた。変性セルロース材料のコーティングは、コーティングされた基材金属表面全体にわたって、より均一な厚さを有していた。
【0145】
(実施例1b)
実施例1aで使用したのと同じセルロース材料を水分含有量が約10%になるまで乾燥させた。この材料を、比較例1の比較セルロース材料と同じ方法で、約150℃、約30g/m2の押出コーティング坪量、曲げ力80mN、200g/m2の坪量を有する紙基材上に押し出した。
【0146】
押出コーティングされたサンプルのヒートシール性も同様に、一定のヒートシール方法により、良好で強力であることが確認された。
【0147】
一般に、実施例1a、1b及び比較例1のコーティング材料のヒートシールされたパウチからは、使用されたヒートシール方法及び塗布方法に関係なく、シールが堅く、充填された液状製品が漏れないことが確認された。
【0148】
(実施例2)
比較例1及び実施例1a-1)、1a-4)及び1bで提供されるセルロース材料でコーティングされた基材ウェブを、等量の水(200ml)、及びコーティングされた紙を用いて、室温で、約5wt%の稠度になるように、同様に高速高せん断混合(キッチンブレンダー「Nordic Home」)により水分散性特性を試験した。比較のため、80mN、200g/m2のコーティングされていない対応する板紙も、同じ方法で「再パルプ化」した。
【0149】
比較例1の押出コーティングされた板紙は分散が不可能で、混合5分後にプラスチックフレークや破片がまだ残っている繊維混合物が生成されたが、実施例1a-1)、1a-4)、1bの他のサンプル及び参照板紙サンプルは、5分未満と標準サイクル内で良好な分散状態への容易かつ迅速な水への再分散性を示し、サンプル間に観察された差はなかった。
【0150】
特許請求の範囲に記載されているバリア材料と、PVOH、デンプン、ラテックス等のウェットラミネート接着剤は、水分散性であることが他の研究から知られており、同様の水性再パルプ化実験でも機能する。
【0151】
さらに、添付の図面に関連して:
図1には、ヒートシール可能な、実質的に植物由来の再パルプ化可能な多層包装材料10の一実施形態が断面で示されており、この多層包装材料10は、80mNの曲げ力と約200g/m
2の坪量を有する板紙11と、第1の最外層の保護層又はコーティング12と、第2のヒートシール可能な最内層13とを有している。第1の最外層と第2の最内層は共に、この実施形態では、部分的にジアルコールセルロースに変性されたセルロース繊維からなり、セルロース繊維中の酸化可能なC2-C3結合の数に基づくジアルコールセルロースへの転化率は約40%である。第2のヒートシール可能な最内層の層厚は約30g/m
2、第1の最外層の層厚は約20g/m
2である。
【0152】
この単純な多層包装材料は、一般的な包装に適した包装材料であり、漏れ、液体、汚れ、機械的乱用に対する保護を提供し、変性セルロース繊維が本質的にある程度の酸素バリアを提供するため、ある程度の酸素バリア特性も提供する可能性がある。最外層12と最内層13は、水性分散コーティングとその後の乾燥によって適用されてもよい。あるいは、変性セルロースのより乾燥した繊維組成物を押出コーティングすることによって適用されてもよい。
【0153】
図2aは、酸素に敏感な商品を包装するための、ヒートシール可能な実質的に植物由来の再パルプ化可能な多層包装材料の第2の実施形態を断面で示しており、この積層材料は、260mNの曲げ力と約280g/m
2の坪量を有する板紙のバルク層21aを備えている。多層包装材料はさらに、第1の最外層の保護及び水分散性層22aと、第2のヒートシール可能な最内層23aとを備える。第1の最外層及び第2の最内層の両方は、この実施形態では、部分的にジアルコールセルロースに変性されたセルロース繊維からなり、セルロース繊維中の酸化可能なC2-C3結合の数に基づくジアルコールセルロースへの転化率は約40%である。これらの層22a及び23aはいずれもヒートシール可能な保護層であり、同時に水への再分散が可能である。第2の最内層のヒートシール可能な層の層厚は約30g/m
2、第1の最外層の層厚は約20g/m
2である。
【0154】
バルク層21aは、ガスバリア材料の層部分24aにラミネートされ、この層は、例えば疎水性の高い、又は類似のグリースプルーフ紙などではない、再パルプ可能な紙配合物から作られた紙基材層26aを含み、乾燥含量約3g/m2のポリビニルアルコールを含む第1のガスバリアコーティング27aでプレコーティングされ、その後約60nmのアルミニウム金属の蒸着コーティング28aでさらにコーティングされている。2つの紙層21a及び26aは、乾燥含量で約4g/m2の量でポリビニルアルコールを含む接着剤組成物の水性分散液による湿式ラミネーションによって一緒にラミネートされ、すなわち、2つの紙表面の一方、ここでは紙基材26aの紙表面が接着剤組成物でコーティングされ、その後、2つのウェブがローラー・ニップで一緒にプレスされ、ガスバリア材料24aのバルク層及び多層部分のプレラミネートが提供される。
【0155】
こうして、変性セルロースの第2のヒートシール可能な最内層は、金属化表面コーティング28aの内側に適用され、一方、第1の保護及び水分散性の最外層22aは、バルク層21aの外側に適用される。
【0156】
得られた多層包装材料は、リサイクル工程で容易に再パルプ化でき、単一かつ同じ画分の再生セルロース繊維になる。
【0157】
図2bは、酸素に敏感な商品を包装するための、ヒートシール可能な実質的に植物由来の再パルプ化可能な多層包装材料のさらなる実施形態を示しており、
図2aに記載された多層包装材料と非常に類似しているが、バリア層の層部分24bが異なっている。したがって、層部分24bは、所望のガスバリア特性を提供するのに十分な厚さの、最内層及び最外層で使用されるジアルコールセルロースに部分的に変性された同様の又は同一のセルロース繊維組成物のバリア層を含んでもよい。層24bは、変性セルロース繊維の水性組成物を板紙21b上に分散コーティングし、その後に乾燥させることによって、又は変性セルロース繊維組成物の乾燥した予め製造されたフィルム又はシート24bをバルク層にウェットラミネート25bによって適用されてもよい。一実施形態によれば、層、フィルム又はシート24bは、多層包装材料にさらなる水蒸気バリア性を付与するために、金属化アルミニウム層などの蒸着コーティング(図示せず)でさらにコーティングされてもよい。
【0158】
バルク層21bは、バリア層、フィルム又はシート24bに、デンプン系接着剤の水性分散液を互いに接着されるべき表面の一方に塗布し、その後ローラー・ニップで押し付けることによって得られる、接着性ポリマーの薄層の中間結合層25bを用いた湿式ラミネーションによって積層される。このラミネーション・工程は、水の蒸発を促進するために必要なエネルギーを消費する乾燥操作を必要とせずに、工業的速度で効率的な低温又は常温ラミネーション・工程で行われる。中間結合層25bの乾燥塗布量は、わずか3~5g/m2である。
【0159】
図3aでは、ヒートシール可能な最内層13;23a;23b、又は水性ガスバリア組成物を含むガスバリアコーティング27a、又は2つのウェブを一緒に湿式ラミネートするための水性接着剤組成物25a;25bを塗布するため等の、水性分散液をコーティングするための工程30aが示されている。紙基材ウェブ31a(例えば、
図1の板紙11又は
図2aの紙基材26a)は、分散コーティングステーション32aに送られ、そこで、水性分散組成物(図示せず)が、基材の上面にローラーによって塗布される。基材の2つの面の表面が異なる場合、通常、より平滑で、バリアコーティングを受けるのに適した片面が存在する(多くの場合、その面は上面又は印刷面と呼ばれる)。通常、水性組成物は、80~99重量%の水性含量を有し、湿潤コーティングされた基材上には、熱により乾燥され、蒸発除去される必要のある多くの水が存在し、均質であり、バリア特性及び表面特性、すなわち均一性及び濡れ性に関して均一な品質を有する連続コーティングを形成する。乾燥は熱風乾燥機33aによって行われ、乾燥したコーティングを形成し、水分を蒸発させて基材表面から除去する。基材の温度は、乾燥機を通過する際、60~80℃で一定に保たれる。乾燥は、熱風対流のみで行ってもよく、赤外線IRランプからの照射熱で部分的に補助してもよい。
【0160】
得られたコーティングされた基材ウェブ34aは冷却され、中間保管のためにリールに巻かれ、後にコーティング基材上にさらにラミネート又は蒸着コーティングされる。
【0161】
分散組成物が接着剤組成物である場合、ラミネートする前、すなわち互いに接着される2つのウェブを一緒に押し付ける前に、乾燥工程は必要ない。得られるラミネートの水分量が高すぎると考えられる場合は、ラミネート後、ローラーへの巻き取り又はさらなるラミネート操作の前に、より小さな調整、乾燥工程があってもよい。
【0162】
図3bは、バルク層21a;21bが
図2aのバリアコート紙基材24a、又は
図2bのバリアシート又はコーティング24bに最初にラミネートされた後の、第2のヒートシール可能な最内層、及び任意に第1の最外保護層の押出ラミネーション工程、ならびに
図1、
図2a及び
図2bの包装ラミネート10、20a又は20bの製造工程をそれぞれ示す。(最内層及び最外層は、他の実施形態において、
図3aに記載されているように、水性分散コーティングによって適用されてもよい。)
【0163】
図2a及び
図2bに関連して説明したように、バルク層板紙21a;21bは、湿式、冷式、水性分散式、接着剤ラミネーション、又はあまり好ましくないが、押出ラミネーションによって、バリアコート紙基材24a;24bにラミネートされてもよい。
【0164】
板紙11;21a;21b、又は得られた紙プレラミネートウェブ31bは、中間保管リールから、又は紙プレラミネートをラミネートするためのラミネートステーションから直接、搬送される。バルク層21a;21bの非ラミネート面、すなわち印刷面は、冷却されたローラー・ニップ33で、ラミネート材料の最外保護層22a;22bを形成する変性セルロース繊維組成物の流動カーテン32に接合され、変性セルロース繊維組成物は押出機のフィードブロック及びダイ32bから押し出される。
【0165】
続いて、パッケージの外側に対応するその外側に、最外層12;22a;22bがコーティングされた紙プレラミネートウェブは、第2の押出機フィードブロック及びダイ34b、ならびにラミネーションニップ35を通過し、そこで変性セルロース繊維の組成物の流動カーテン34がプレラミネートの他方の側、すなわち紙基材11;28a;24bの内側又はバリアコーティングされた側に接合及びコーティングされる。このように、ヒートシール可能な最内層13;23a;23bは、紙プレラミネートウェブの内側に共押出コーティングされ、最終的に図示しない保管リールに巻き取られる完成したラミネート包装材料36を形成する。
【0166】
ラミネーション・ローラー・ニップ33及び35におけるこれら2つの共押出工程は、代替的に、逆の順序で連続する2つの工程として実施してもよい。
【0167】
別の実施形態によれば、最外層の一方又は両方は、代わりに、プレラミネーションステーションで適用されてもよく、そこでは、共押出コーティング層が最初にバルク板紙層の外側に、又はバリアコーティング紙基材の金属化コーティング上に適用され、その後、2つのプレラミネーション紙ウェブが互いに接合されてもよい。あるいは、最外層はさらに薄く、2つのプレラミネート紙ウェブを互いに貼り合わせる前か後に、代わりに水性分散コーティングによって適用される。
【0168】
さらなる実施形態(図示せず)によれば、ヒートシール可能な最内層13;23a;23bは、予め製造されたシート又はフィルムの形態で適用することができ、このシート又はフィルムは、バリアコート紙基材24a又はバリアシート24bのコート面にラミネートされる。このラミネートは、
図3aに適用され説明されたように、隣接する水性接着剤組成物による湿式ラミネーションによって行われる。
【0169】
図4aは、本発明のウェブ基材上に、例えばアルミニウム金属コーティングを物理蒸着(PVD)するためのプラント40aの一例の斜視図である。基材ウェブ41は、そのプレコートされた側で、蒸発したアルミニウムの連続蒸着42に供され、アルミニウムの金属化層を形成するか、又は酸素とアルミニウム蒸気との混合により、酸化アルミニウムの蒸着コーティングを形成する。コーティングは、本発明のバリアコート紙43が形成されるように、5~100nm、好ましくは10~50nmの厚さで設けられる。アルミニウム蒸気は、アルミニウムの固体片の蒸発源42へのイオン衝撃によって形成される。酸化アルミニウムのコーティングの場合、酸素ガスも入口ポートからプラズマチャンバに注入してもよい。
【0170】
図4bは、本発明のウェブ基材上への例えば水素化非晶質ダイヤモンドライクカーボンコーティングのプラズマエンハンスト化学気相蒸着コーティング(PECVD)用プラントの一例の斜視図である。ウェブ基材44aは、その一方の表面において、マグネトロン電極46と、電極としても機能する冷却されたウェブ搬送ドラム47との間の空間に形成されたプラズマ反応ゾーン45内において、プラズマの連続的なPECVDに供され、フィルムは、回転ドラムによって、ドラムの周面に沿ってプラズマ反応ゾーンを通って前進させられる。非晶質DLCコーティング層の蒸着コーティングのためのプラズマは、例えば、アセチレンやメタン等の有機炭化水素ガスからなるガス前駆体組成物をプラズマ反応チャンバに注入して生成してもよい。他のガスバリアコーティングも、有機ケイ素化合物の前駆体ガスから出発する酸化ケイ素コーティング(SiOx)のように、同じ主要なPECVD法によって適用してもよい。PECVDプラズマチャンバ、出口ポート48a及び48bでチャンバ内を連続的に排気することにより真空状態に保たれる。
【0171】
図5aは、本発明による包装用ラミネートから製造される包装容器50aの実施形態を示す。この包装容器は、飲料、ソース、スープ等に特に適している。通常、このような包装容器は、約100~1000mlの容積を有する。どのような形状であってもよいが、好ましくはレンガ状であり、それぞれ縦方向シール51a及び横方向シール52aを有し、任意選択で開封装置53を有する。図示されていないが、別の実施形態では、包装容器はくさび形であってもよい。このような「くさび形」を得るために、パッケージの底部のみが折り畳まれ、底部の横方向ヒートシールがパッケージの底部に対して折り畳まれシールされた三角形のコーナーフラップの下に隠れるように形成される。上部の横方向シールは展開されたままである。このようにして、部分的に折り畳まれただけの包装容器は、扱いやすく、食品店の棚や平らな面に置くのに十分な寸法安定性がある。
【0172】
図5bは、本発明による代替包装用ラミネートから製造された包装容器50bの代替例を示す。この代替包装用ラミネートは、より薄い紙バルク層を有することにより薄くなっており、したがって、平行六面体又はくさび形の包装容器を形成するのに十分な寸法安定性を有しておらず、横方向シール52b後に折り目が形成されていない。包装容器はピロー状の袋状容器のままとなり、この形態で流通・販売される。
【0173】
図5cは、ゲーブルトップパッケージ50cを示しており、このパッケージは、板紙のバルク層と本発明のバリアコーティング紙基材を含むラミネート包装材料から、プレカットされたシート又はブランクから折り畳み成形されたものである。また、同様のブランク材からフラットトップ・パッケージを形成してもよい。
【0174】
図5dは、本発明のラミネート包装材料のプレカットブランクから形成されたスリーブ54と、射出成形プラスチックとスクリューコルクなどの開口装置との組み合わせで形成されたトップ55の組み合わせであるボトル状パッケージ50dを示す。この種のパッケージは、例えば、Tetra Top(登録商標)やTetra Evero(登録商標)の商品名で販売されている。これらの特殊なパッケージは、開口装置を取り付けた成型トップ55を閉じた状態でラミネート包装材料の筒状スリーブ54に取り付け、こうして形成されたボトルトップ・カプセルを殺菌し、食品を充填し、最後にパッケージの底部を折り曲げて密封することによって形成される。
【0175】
すなわち、包装材料のウェブは、ウェブの長手方向端部62a、62bを重ね合わせ、それらを互いにヒートシールすることによってチューブ61に形成され、これによりオーバーラップ接合部63が形成される。チューブは、充填される液体食品で連続的に充填され、チューブ内の充填された内容物のレベルより低い位置で、あらかじめ決められた間隔でチューブの二重の横シール65が繰り返されることにより、充填された個々の包装に分割される。パッケージ66は、二重の横シール(上部シールと下部シール)の間で切断することにより分離され、最終的に、材料に予め準備された折り目線に沿って折り目を形成することにより、所望の幾何学的形状に成形される。
【0176】
最後に付言しておくと、本発明は、上記に示され、説明された実施形態によって限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内で種々の変更が可能である。
【国際調査報告】