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特表2024-523107非対称デルタマルチパルス変圧整流器ユニット、及び関連システム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】非対称デルタマルチパルス変圧整流器ユニット、及び関連システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/06 20060101AFI20240621BHJP
   H01F 30/12 20060101ALI20240621BHJP
   H01F 27/38 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
H02M7/06 U
H01F30/12 C
H01F30/12 N
H01F27/38
H02M7/06 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568267
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 US2022028159
(87)【国際公開番号】W WO2022236114
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/185,520
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501220547
【氏名又は名称】エルデック エアロスペース コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンソン, ランディ
(72)【発明者】
【氏名】シットン,トラビス
(72)【発明者】
【氏名】ロシュ, パトリック
【テーマコード(参考)】
5E058
5H006
【Fターム(参考)】
5E058DA05
5H006AA02
5H006CA07
5H006CB01
5H006CC08
5H006HA02
5H006HA05
5H006HA08
(57)【要約】
本明細書では非対称マルチパルス変圧器整流ユニット(TRU)、及び関連するシステム及び方法を説明する。いくつかの実施形態では、変圧器は、マルチパルス(例えば、18パルス又は24パルス)非対称出力を提供するために、変圧器の回路図に従って配置された補正巻線を有する電気的に絶縁された3相デルタ2次側に結合された3相デルタ又はワイ1次側を含む。このような構造によって、受動的な多相PFCと高調波キャンセルが与えられ、マルチパルス整流が可能となる。TRUレベルでは、3相入力電力が変圧器に供給され、絶縁された9相又は12相出力を生成する。絶縁された多相変圧器の出力を、ブリッジ整流器に供給し、ACからDCに変換することができる。DC出力電圧は、AC入力電圧と変圧器の巻数比によって決定される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧整流器ユニット(TRU)であって、
非対称変圧器及びブリッジ整流器を備え、
前記非対称変圧器は、第1コイル、第2コイル、及び第3コイル、並びにガルバニック絶縁を備え、
前記各コイルは、それぞれ1次巻線及び2次巻線を備え、かつ、前記各コイルの対応する入力相で励磁されるように構成されており、
前記ガルバニック絶縁は、前記1次巻線を前記2次巻線から電気的に絶縁し、
前記各2次巻線は、それぞれ非対称の2次巻線であり、
第1の2次巻線は、第1の2次デルタ巻線と、第1の1次巻線に結合された第1の複数の2次補正巻線とを備え、
第2の2次巻線は、第2の2次デルタ巻線と、第2の1次巻線に結合された第2の複数の2次補正巻線とを備え、
第3の2次巻線は、第3の2次デルタ巻線と、第3の1次巻線に結合された第3の複数の2次補正巻線とを備え、
前記ブリッジ整流器は、それぞれ個々の補正巻線に結合された複数の整流器を備え、
個々の2次補正巻線の出力相は、個々の出力相電圧が反対側の2次デルタコーナ相に対して制御されるように非対称であり、
前記出力相電圧は2次中性点に対して不平衡である、TRU。
【請求項2】
請求項1に記載のTRUであって、
前記変圧器は、3相入力電力及び絶縁された9相出力を有する18パルス変圧器である、TRU。
【請求項3】
請求項2に記載のTRUであって、
各前記複数の2次補正巻線は、2つの2次補正巻線を備える、TRU。
【請求項4】
請求項3に記載のTRUであって、
各複数の補正巻線のタップ点は、前記2次デルタ巻線の対応する前記各コイルを3つのセグメントに分離する、TRU。
【請求項5】
請求項2に記載のTRUであって、
個々の相電圧は、前記ブリッジ整流器において、ある相から次の隣接する相までのオフセットが約20°である、TRU。
【請求項6】
請求項1に記載のTRUであって、
前記変圧器は、3相入力電力及び絶縁された12相出力を有する24パルス変圧器である、TRU。
【請求項7】
請求項6に記載のTRUであって、
各複数の2次補正巻線は、3つの2次補正巻線を備える、TRU。
【請求項8】
請求項7に記載のTRUであって、
各複数の補正巻線のタップ点は、前記2次デルタ巻線の対応する前記各コイルを4つのセグメントに分離する、TRU。
【請求項9】
請求項6に記載のTRUであって、
個々の相電圧は、前記ブリッジ整流器において、ある相から次の隣接する相までのオフセットが約15°である、TRU。
【請求項10】
請求項1に記載のTRUであって、
前記ブリッジ整流器は、主整流器と2次整流器とを備え、
前記主整流器は、前記2次デルタ巻線のAC電圧を整流するように構成され、
前記2次整流器は、前記補正巻線のAC電圧を整流するように構成された、TRU。
【請求項11】
請求項10に記載のTRUであって、
前記主整流器は、DC電力の約66%を供給し、前記2次整流器はDC電力の約34%を供給する、TRU。
【請求項12】
第1コイル、第2コイル、第3コイル、及びガルバニック絶縁を有する非対称変圧器を設計するための方法であって、
前記各コイルは、1次巻線及び2次巻線を備え、
各2次巻線が2次デルタ巻線及び複数の2次補正巻線を備える非対称2次巻線であり、
前記ガルバニック絶縁は前記1次巻線を前記2次巻線から電気的に絶縁するように構成されており、
前記方法は、
前記各コイルの前記1次巻線の巻数を選択するステップ、
前記各コイルの前記2次デルタ巻線のそれぞれの巻数を選択するステップ、
前記2次補正巻線のタップ点を選択するステップ、
変圧器ベクトル図を構築するステップ、
各タップ位置から個々の2次補正巻線を表す線を引くステップ、
各2次補正巻線の巻数比を決定するステップ、並びに
前記巻数比の倍数として前記各2次補正巻線の巻数及び完全な前記2次デルタ巻線の巻数を決定するステップを備え、
前記2次補正巻線のタップ点を選択するステップは、前記第1コイルの第1の2次デルタ巻線、前記第2コイルの第2の2次デルタ巻線、及び前記第3コイルの第3の2次デルタ巻線に沿って、前記2次補正巻線のタップ点を選択し、
前記タップ点は、前記第1の2次デルタ巻線、前記第2の2次デルタ巻線、及び前記第3の2次デルタ巻線をそれぞれセグメントに分割し、
前記変圧器ベクトル図を構築するステップは、2次コーナ相間の巻数に比例する脚の長さを有する正三角形を用いて変圧器ベクトル図を構築し、
前記三角形の各辺は、前記第1、前記第2及び前記第3の2次デルタ巻線のうちの1つを表し、
各タップ位置から個々の2次補正巻線を表す線を引くステップは、前記第1、第2及び第3の2次デルタ巻線に沿って、各タップ位置から個々の2次補正巻線を表す線を引き、
各線は、前記2次補正巻線が巻かれている前記コイルの相に等しい相と、前記2次補正巻線の巻数に比例する長さと、を有する第1の複数のベクトルのベクトルとして表され、
前記第1の複数のベクトルの各ベクトルは、前記三角形の辺の1つと平行であり、
前記各2次補正巻線の巻数比を決定するステップは、前記第1の複数のベクトルの対応するベクトルの前記長さによって、各2次補正巻線の巻数比を決定する、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記変圧器の出力相を決定するステップをさらに備え、
前記変圧器の出力相を決定するステップは、
各補正巻線ベクトルの端から前記正三角形の対向する頂点まで、第2の複数のベクトルのベクトルを描くステップ、及び
各補正巻線の出力相を、前記第2の複数のベクトルの対応するベクトルの長さによって決定するステップによって、前記出力相を決定する、方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法であって、
各補正巻線の出力相は、前記三角形の対向する頂点によって表される相に対する、対応する出力相の振幅に比例する、方法。
【請求項15】
請求項12記載の方法であって、
前記変圧器は3相入力電力及び絶縁された9相出力を有する18パルス変圧器である、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、
各複数の2次補正巻線は2つの2次補正巻線を備え、
各複数の補正巻線のタップ点は、前記2次デルタ巻線の対応する各コイルを3つのセグメントに分離し、
個々の相電圧がブリッジ整流器においてある相から次の隣接する相までのオフセットが約20°である、方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法であって、
前記2次デルタ巻線の個々のコイルに沿った前記3つのセグメントの巻数比は、N1=0.26、N2=0.35、N3=0.39であり、
個々の補正巻線の巻数比は、N4=0.14、N5=0.14であり、
前記巻数比は、セグメント又は補正巻線の巻数を前記デルタ巻線の前記コイルの全巻数で割ったものと定義される、方法。
【請求項18】
請求項12記載の方法にであって、
前記変圧器は、3相入力電力及び絶縁された12相出力を有する24パルス変圧器である、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、
各複数の2次補正巻線は、3つの2次補正巻線を備え、
前記各複数の補正巻線のタップ点は、前記2次デルタ巻線の各対応するコイルを4つのセグメントに分離し、
個々の相電圧は、ブリッジ整流器においてある相から次の隣接する相までのオフセットが約15°である、方法。
【請求項20】
請求項16に記載の方法であって、
前記2次デルタ巻線の個々のコイルに沿った前記3つのセグメントの巻数比は、N1=0.17、N2=0.24、N3=0.42、N4=0.17であり、
個々の補正巻線の巻数比はN5=0.13、N6=0.13、N7=0.18であり、
前記巻数比はセグメント又は補正巻線の巻数を前記デルタ巻線の前記コイルの全巻数で割ったものとして定義される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
【0002】
本出願は、2021年5月7日に出願された米国仮出願第63/185520号の優先権を主張するものであり、該仮出願を参照することによりこの全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
商業航空機は、油圧、空圧系統の代わりに電気コンテンツの増加を特徴とする、航空装備品の電気化(More Electric Aircraft、MEA)へと進化を続けている。パワーエレクトロニクスと高密度電気モータの分野における最近の進歩に加え、オペレーティングコスト削減への継続的な圧力により、この傾向が続くことは確実である。さらに、航空機の推進は、ハイブリッド電気、ターボ電気、さらには全電気パワートレインへと移行している。いくつかのシナリオ下で、電気推進への移行により、電気系統の電力需要が40倍以上に増加すると予想されている。
【0004】
現代の航空機では、航空機の低電圧(通常28V)及び高電圧(通常270V、540V、又はそれ以上)のDCバスからの電力需要が増加し続けている。AC発電機からのDCバスによる電力需要の割合が増加すると、ACバス電圧ひずみや発電機の高調波トルクのような望ましくない影響を緩和するために、AC/DCコンバータの電力品質を高める必要がある。
【0005】
航空機の28Vバスは従来、変圧整流器ユニット(TRU)から供給されていた。これらのTRUは、航空機の発電機によって供給される3相AC電圧を公称28VDCに変換する。TRUの主な機能ブロックは、変圧器とブリッジ整流器である。変圧器は、ブリッジ整流前に、多相力率補正(PFC)、ガルバニック絶縁、及び電圧降圧を行う。ブリッジ整流器は、変圧器のAC相出力を整流し、出力電圧をDCに変換する。
【0006】
従来の28VのTRUシステムの中には、1つの1次側(ワイ又はデルタ)と2つの2次側(ワイとデルタ)に依存して、DC電圧に変換される6つのAC出力相(12パルス整流が可能)を確立するものがある。2次側の最小巻数が少ないため(デルタ巻線あたり7回巻、ワイ巻線あたり4回巻)、これは大電流出力(200-300A)を提供するのに効果的である。しかし、このアプローチでは、出力電圧リップルを低減し、デルタ2次側とワイ2次側の間の自然な電圧不均衡を対処するために、相間変圧器を使用する必要があり(この結果、重量が増加し、効率が低下する)、12パルスの電力品質しか達成できない。
【0007】
他の従来のTRU設計では、12パルスより優れた電力品質を提供するために、相補的なジグザグ2次巻線を持つ複数の変圧器を使用している。このアプローチでは高出力電流と優れた電力品質を達成できるが、複雑な巻線を持つ複数の変圧器を使用するため、製造コストが大幅に増加し、重量が増加し、全体的な電力密度が低下する。
【0008】
従来の方法の中には、デルタ1次側と六角形2次側に依存し、複雑な相間変圧器ではなく、より単純なディスクリート出力インダクタを使用して24パルスの電力品質を提供するものがある。このアプローチは、低電流(200A未満)のTRUでは高性能で重量競争力のあるソリューションを提供するが、2次側の最小巻数が多いことで(最良の高調波性能を得るには66回巻、最低限の巻数は48巻)、変圧器の漏れインダクタンスと抵抗損失が大きくなる。この結果、低効率、高重量、及び高電流(200A超)アプリケーションでの出力電圧レギュレーションが悪くなる。
【0009】
いくつかの従来のアプリケーションでは、航空機の高電圧バス(例えば、270Vや540V)は単巻変圧整流器ユニット(Auto-Transformer Rectifier Unit、ATRU)によって供給される。ATRUは受動的な多相PFCとAC-DC変換を与えるが、ATRUは多相PFC用の変圧器ではなく単巻変圧器を使用するため、ガルバニック絶縁を有しない。電気的に絶縁された2次側がないため、単巻変圧器は1次側の補正巻線を使用して、多相PFCに必要な追加の相を生成する。これらの単巻変圧器は、同格の変圧器よりも本質的に軽量で効率的である。なぜなら、単巻変圧器は、電力のかなりの部分が巻線によって電気的に伝導され、コアを通して磁気的に結合されないからである。しかし、発電機の中性点が機体から絶縁されていない限り、ATRUの出力リターンを機体に直接つなげることはできない。発電機の中性点は通常機体を基準としているため、ATRU出力電圧は機体に対して分割された電圧とみなされる。これは、モータ駆動デバイス、レーダー、除氷装置を含む高電圧のポイントオブユース負荷(point-of-use loads)では一般的に許容されるが、このアプローチでは、コモンモード電圧が高く、入力電圧から独立して出力電圧を参照できないため、広範なDC配電には課題が生じる。単巻変圧器はガルバニック絶縁を有することができないため、多くの航空機アプリケーションでは高電圧TRU(HVTRU)が必要になる。電力レベルが高いため、実用的なシステムでは18パルス又は24パルスの電力品質が要求される可能性が高い。さらに、上述した従来のATRUアプローチは、コモンモード電圧が高い、リターンが機体につながれていない負荷にしか対応していない、入力電圧から独立して出力電圧を参照できない、といった1つ又は複数の欠点に悩まされている。
【0010】
要約すると、上述した従来の28V TRUアプローチは、以下の1つ又は複数の欠点に悩まされている。低電力品質(例えば、12パルス)、相間変圧器の使用が必要、複数の変圧器を必要とする複雑な組立工程、高重量、及び/又は2次側の最小巻数が多い。一方、現代のATRUは、相間変圧器の使用を必要とすることなく、低重量、高効率、優れた電力品質(18~24パルス)を利用できるが、3相AC入力とDC出力との間にガルバニック絶縁を与えることはできない。従って、相間変圧器を使用せず、かつ、ガルバニック絶縁を有し、12パルスより優れた電力品質を提供可能なAC-DC変換システムが依然として必要とされている。さらに、大電流28Vアプリケーションでは、変圧器の抵抗電圧降下と無効電圧降下を最小限に抑えるため、2次側の巻数を少なく(40未満)する必要がある。
【発明の概要】
【0011】
本概要は、以下の「発明を実施するための形態」でさらに記載される概念の選択を簡略化して紹介するために提供される。本概要は、クレームされた主題の主要な特徴を特定することを意図したものではなく、また、クレームされた主題の範囲を決定する際の補助として使用することを意図したものでもない。
【0012】
本発明技術により、出力電圧は入力電圧に比例し、出力は入力から電気的に絶縁された状態で、3相AC電圧からDC電圧への変換が可能となる。例えば、本技術は、航空宇宙用電源システムで一般的に使用されている115ボルトAC又は230ボルトACの入力から、公称28ボルトDC、270ボルトDC、又は540ボルトDCの出力を与える。出力電圧は、入力電圧と変圧器の1次-2次巻数比に比例する。
【0013】
本発明技術のいくつかの実施形態では、非対称デルタ2次変圧器トポロジーは、HVTRUと大電流28VのTRUの両方において、低重量とコスト削減と併せて高性能を提供するのに比類なく適している。非対称的なアプローチは、対称的な18Pソリューションと比較して重量を大幅に削減する。これは、対称的なデルタ設計よりも補正巻線をより少ない巻数で作ることができ、流す電流を少なくすることができるためである。
【0014】
いくつかの実施形態では、本発明のTRU技術は、高電圧出力又は公称28V出力で、効率的で軽量な18パルス又は24パルス動作を可能にする。変圧器の構造は、変圧器の回路図に従って配置された補正巻線を有する電気的に絶縁された3相デルタ2次側に結合された標準的な3相デルタ又はワイ1次側で構成され、18パルス動作用の9相非対称出力又は24パルス動作用の12相非対称出力を与える。したがって、受動的な多相電力相補正(PFC)及び高調波キャンセルを実現し、18パルス又は24パルス整流を可能にする。個々の2次補正巻線の出力相は、個々の出力相電圧が対向する2次デルタコーナ相に対して制御されるように非対称であり、2次出力相電圧は2次中性点に対して不平衡である。本明細書では、2次デルタ巻線と2次補正巻線を総称して2次巻線と呼ぶ。
【0015】
絶縁された(例えば、電気的に絶縁された)9相又は12相変圧器の出力は、18パルス又は24パルスのブリッジ整流器に供給され、当該整流器はACからDCに変換する。DC出力電圧は、AC入力電圧と変圧器の巻数比によって決定される。例えば、18パルスTRUの場合、全入力電流高調波ひずみは、ほとんどのアプリケーションで5~7%になると予想される。これは12パルスTRUの典型的な11~14%に比べて大幅に改善されている。24パルスTRUの場合、ほとんどのアプリケーションで全入力電流高調波ひずみは3~5%になると予想される。
【0016】
28VのTRUアプリケーションにおいて、本発明技術は、24Pデルタヘックスソリューションと比較してコスト削減を実現し、デルタヘックスが実用的に可能な出力電流よりも大幅に高い出力電流をサポートする。本発明技術は、11次と13次の高調波をキャンセルすることにより、28VのTRUの電力品質を大幅に改善し、これは、一般に12パルスTRUの仕様偏差を必要とする。
【0017】
HVTRUアプリケーションでは、非対称18パルス(18P)又は24パルス(24P)デルタアプローチは、12パルス(12P)ソリューションに比べて電力品質が大幅に向上し、対称18パルス又は24パルスソリューションに比べて重量が大幅に削減される。従って、本発明の非対称18P及び24Pデルタ変圧器は、低コストで最小限の重量ペナルティで優れた電力品質を提供する。
【0018】
高電圧DCアプリケーションにおいて、本発明のTRU技術は、デルタ又はワイ1次側に結合された18パルス/24パルス変圧器巻線トポロジーを利用し、優れた電力品質で電気的に絶縁された270VDC又は540VDCの公称出力を与える。本発明技術は、2.4kW/kgを超える電力密度と96%を超える効率をもたらす可能性がある。ガルバニック絶縁を追加したにもかかわらず、これらの数値は従来のTRU技術(1kW/kg未満、90%以上の効率)よりも従来のATRU技術(~3kW/kg、97%以上の効率)にはるかに近い。TRUのAC入力とDC出力間はガルバニック絶縁であることにより、TRUの出力リターンを機体につなげることができ、ユニポーラ出力を必要とするアプリケーションに使用することができる。さらに、本発明のHVDCTRU技術は、航空宇宙アプリケーションにつきものである堅牢性と信頼性を維持している。本発明技術は、優れた性能と低重量を提供しながらも、システムを簡素化し、リスクを低減する。
【0019】
一実施形態では、変圧器整流器ユニット(TRU)は、第1コイル、第2コイル、及び第3コイルを有する非対称変圧器を含む。各コイルは1次巻線と2次巻線を含み、各2次巻線は非対称2次巻線であり、各コイルは対応する入力相で励磁されるように構成されている。TRUはまた、1次巻線を2次巻線から電気的に絶縁するガルバニック絶縁を含み、第1の2次巻線は、第1の2次デルタ巻線と、第1の1次巻線に結合された第1の複数の2次補正巻線とを含み、第2の2次巻線は、第2の2次デルタ巻線と、第2の1次巻線に結合された第2の複数の2次補正巻線とを含み、第3の2次巻線は、第3の2次デルタ巻線と、第3の1次巻線に結合された第3の複数の2次補正巻線とを含む。TRUはまた、個々の補正巻線にそれぞれ結合された複数の整流器を有するブリッジ整流器を含む。個々の2次補正巻線の出力相は、個々の出力相電圧が対向する2次デルタコーナ相に対して制御されるように非対称であり、出力相電圧は2次中性点に対して不平衡である。
【0020】
一態様では、変圧器は3相入力電力と絶縁された9相出力を有する18パルス変圧器である。
【0021】
一態様では、各複数の2次補正巻線は2つの2次補正巻線を含む。
【0022】
一態様では、各複数の補正巻線のタップ点は、2次デルタ巻線の対応する各コイルを3つのセグメントに分離する。
【0023】
一態様では、個々の相電圧はブリッジ整流器において、ある相から次の隣接する相までのオフセットが約20°である。
【0024】
別の態様では、変圧器は3相入力電力と絶縁された12相出力を有する24パルス変圧器である。各複数の2次補正巻線は、3つの2次補正巻線を備える。各複数の補正巻線のタップ点は、2次デルタ巻線の対応する各コイルを4つのセグメントに分離する。個々の相電圧は、ブリッジ整流器において、ある相から次の隣接する相までのオフセットが約15°である。
【0025】
一態様では、ブリッジ整流器は、2次デルタ巻線のAC電圧を整流するように構成された主整流器と、補正巻線のAC電圧を整流するように構成された2次整流器と、を含む。
【0026】
一態様では、主整流器はDC電力の約66%を供給し、2次整流器はDC電力の約34%を供給する。
【0027】
一実施形態では、非対称変圧器を設計する方法を示す。非対称変圧器は、第1コイル、第2コイル、第3コイル、及びガルバニック絶縁を有する。各コイルは1次巻線と2次巻線を含む。各2次巻線は、2次デルタ巻線と複数の2次補正巻線を有する非対称2次巻線である。ガルバニック絶縁は、1次巻線を2次巻線から電気的に絶縁するように構成されている。本方法は、コイルの1次巻線の巻数を選択するステップ、コイルの2次デルタ巻線のそれぞれの巻数を選択するステップ、第1コイルの第1の2次デルタ巻線、第2コイルの第2の2次デルタ巻線、及び第3コイルの第3の2次デルタ巻線に沿って2次補正巻線のタップ点を選択するステップ、を含む。タップ点は、第1の2次デルタ巻線、第2の2次デルタ巻線、及び第3の2次デルタ巻線のそれぞれをセグメントに分割する。本方法はまた、2次コーナ相間の巻数に比例する脚の長さを有する正三角形を使用して変圧器ベクトル図を構築するステップを含む。三角形の各辺は、第1、第2及び第3の2次デルタ巻線の1つを表す。また、本方法は、第1、第2及び第3の2次デルタ巻線に沿って、各タップ位置から個々の2次補正巻線を表す線を引くステップも含む。各線は、2次補正巻線が巻かれているコイルの相に等しい相と、2次補正巻線の巻数に比例する長さとを有する第1の複数のベクトルのベクトルとして表される。第1の複数のベクトルの各ベクトルは、三角形の辺の1つに平行に走る。本方法はまた、第1の複数のベクトルの対応するベクトルの長さによって各2次補正巻線の巻数比を決定するステップ、巻数比の倍数として各2次補正巻線の巻数及び完全な2次デルタ巻線の巻数を決定するステップを含む。
【0028】
一態様において、本方法はまた、各補正巻線ベクトルの端から正三角形の対向する頂点まで第2の複数のベクトルのベクトルを描くステップと、第2の複数のベクトルの対応するベクトルの長さによって各補正巻線の出力相を決定するステップと、によって変圧器の出力相を決定するステップを含む。
【0029】
一態様では、各補正巻線の出力相は、三角形の対向する頂点によって表される相に対する対応する出力相の振幅に比例する。
【0030】
一態様では、変圧器は3相入力電力及び絶縁された9相出力を持つ18パルス変圧器である。各複数の2次補正巻線は、2つの2次補正巻線を含む。各複数の補正巻線のタップ点は、2次デルタ巻線の各対応するコイルを3つのセグメントに分離する。個々の相電圧は、ブリッジ整流器において、ある相から次の隣接する相までのオフセットが約20°である。
【0031】
一態様では、変圧器は3相入力電力と絶縁された12相出力を有する24パルス変圧器である。
【0032】
一態様では、各複数の2次補正巻線は3つの2次補正巻線を含み、各複数の補正巻線のタップ点は2次デルタ巻線の対応する各コイルを4つのセグメントに分離し、個々の相電圧はブリッジ整流器においてある相から次の隣接する相までのオフセットが約15°である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明技術の上述の態様及び付随する利点は、添付の図面と併せ、以下の発明を実施するための形態を参照することにより、よりよく理解できるようになり、また、より容易に理解されるであろう。
【0034】
図1A及び図1Bは、本発明技術の一実施形態に係る18パルス非対称TRUを示す。
【0035】
図2A及び図2Bは、本発明技術の一実施形態に係る24パルス非対称TRUを示す。
【0036】
図3は、本発明技術の一実施形態に係るデルタ巻非対称変圧器を示す。
【0037】
図4Aは、本発明技術の一実施形態に係るマルチパルス非対称変圧器の1次デルタ巻線を示す。
【0038】
図4B及び図4Cは、本発明技術の一実施形態に係る18パルス非対称変圧器の2次デルタ巻線及び2次補正巻線を示す。
【0039】
図4Dは、本発明技術の一実施形態に係る24パルス非対称変圧器の2次デルタ巻線及び2次補正巻線を示す。
【0040】
図5~8は、本発明技術の一実施形態に係る18パルス非対称変圧器の2次デルタ巻線及び2次補正巻線を示す。
【0041】
図9~16は、本発明技術の一実施形態に係る24パルス非対称変圧器の2次デルタ巻線及び2次補正巻線を示す。
【0042】
図17は、本発明技術の実施形態に係るマルチパルス非対称変圧器を設計する方法のフローチャートである。
【0043】
図18は、図4Bに描かれたトポロジーの理想的な変圧器を利用した18パルス非対称TRUの3相入力電流波形をシミュレートしたグラフである。
【0044】
図19は、図4Bに描かれたトポロジーの理想的な変圧器を利用した18パルス非対称TRUの整流器ブリッジ電流をシミュレートしたグラフである。
【0045】
図20は、図4Bに描かれたトポロジーの理想的な変圧器を利用した18パルス非対称TRUのA相入力電圧及び電流をシミュレートしたグラフである。
【0046】
図21は、本発明技術の一実施形態に係る実際の3相入力電流波形のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
例示的実施形態を図示して説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、例示的実施形態に様々な変更が可能であることを理解されたい。
【0048】
図1Aは、本発明技術の一実施形態に係る18パルス非対称デルタTRU1000を示す。入力側では、3相AC電力100(典型的には115ボルト又は230ボルト)が変圧器300に供給される。1次デルタ巻線A、B、Cの3つの入力相は、1次デルタ302に供給され、2次デルタ304の出力相1、4、7に変換される。いくつかの実施形態では、3相1次デルタ302はガルバニック絶縁306を介して3相非対称2次デルタ304に結合される。ガルバニック絶縁306によって、故障伝播が制限され、発電機の中性点電圧又はインピーダンスに関係なく、TRUDC出力リターンを機体に直接つなげることが可能になる。
【0049】
2次デルタ巻線タップ1、4、7から来る電力は、2次巻線から来る電力の大部分(例えば、場合によっては約66%)をDC電圧(例えば、540V)に整流するコーナ整流器(主整流器とも呼ぶ)200に供給される。巻線タップ1、4、7に接続された2次デルタ巻線は、主整流回路200の出力に6つのパルスを供給する。残りの電力は、巻線タップ2、3、5、6、8、9に接続された2次補正巻線から、残りの電力(例えば、場合によっては約34%)を整流する補正整流器400(2次整流器とも呼ばれる)に供給され、力率補正と3相入力電流の高調波キャンセルが可能になる。結果として、変圧器300のサイズ、重量、及び損失の大幅な削減を達成できる。66%対34%という電力配分は例示的な実施形態にすぎず、他の実施形態では、主整流器200と2次整流器400によって異なる割合の電力が扱われてもよい。2次デルタ巻線及び2次補正巻線は、本明細書では2次巻線と総称する。
【0050】
整流回路200と400は、入力AC電圧をDC電圧に整流するダイオードの配置を含む。本発明技術の変圧器により、非対称デルタTRU1000は、高力率と低高調波含有率の18パルス入力電流波形を維持しながら、高品質のDC(例えば、540ボルトDC)を出力する。
【0051】
図1Bはまた、本発明技術の一実施形態に係るTRUを示す。3相入力A、B、Cは入力フィルタ150を通って変圧器300に供給される。図示の実施形態では、9つの出力相(2次デルタ巻線タップ1、4、7からの3つの出力相、及び2次補正巻線タップ2、3、5、6、8、9からの6つの出力相、総称して「出力相310」)は整流回路200、400に結合され、整流回路200、400は、入ってくる9相を18パルスに整流する。個々の2次補正巻線の出力相は、個々の出力相電圧が対向する2次デルタコーナ相に対して制御されるように非対称であり、2次出力相電圧は2次中性点に対して不平衡である。結果として生じるDC電圧は、負荷に供給される前に、出力電磁干渉(EMI)フィルタ410を通して供給されてもよい。図示のTRUは、230ボルトのAC入力を540ボルトのDC出力に変換することができる。他の実施形態では、異なるAC入力電圧とDC出力電圧を生成することができる。
【0052】
図2A及び図2Bは、本発明技術の一実施形態に係る24パルス非対称デルタTRU1000を示す。ここでも、入力側では、3相AC電力100(典型的には115ボルト又は230ボルト)が変圧器300に供給される。1次デルタ巻線A、B、Cの3つの入力相は、1次デルタ302に供給され、2次デルタ304の出力相1、5、9に変換される。2次デルタ巻線タップ1、5、9から来る電力は、TRUによって処理される電力の大部分(例えば、約66%)をDC電圧(例えば、540V)に整流するコーナ整流器200に供給される。従って、2次デルタ巻線タップ1、5、9は、主整流回路200の出力に6つのパルスを供給する。2次補正巻線タップ2、3、4、6、7、8、10、11、12は、残りのDC電力(例えば、約34%)を整流する2次整流器400にさらに18個のパルスを供給し、3相入力電流の高調波キャンセルと力率補正を可能にする。
【0053】
3相1次デルタ302は、ガルバニック絶縁306を介して3相非対称2次デルタ304に結合される。上で説明したように、ガルバニック絶縁306によって、故障伝播が制限され、発電機の中性点電圧又はインピーダンスに関係なく、TRUDC出力リターンを機体に直接つなげることが可能になる。
【0054】
図2Bも本発明技術の一実施形態に係るTRU1000を示す。ここでも、3相入力A、B、Cは、入力フィルタ150を通って変圧器300に供給される。図示の実施形態では、12個の出力相(2次デルタ巻線タップ1、5、9からの3つの出力相、及び2次補正巻線タップ2、3、4、6、7、8、10、11、12からの9つの出力相)は、12個の相を24個のパルスに整流する共通の整流回路に結合される。図示のTRUは、230ボルトのAC入力を540ボルトのDC出力に変換することができる。他の実施形態では、異なるAC入力電圧とDC出力電圧が使用されてもよい。
【0055】
図1A~2Bでは1次巻線がデルタ1次巻線で示されている。しかし、異なる実施形態では、ワイ1次巻線が1次巻線として使用されてもよい。さらに、本明細書では、18パルス及び24パルスの非対称変圧器を有する実施形態に焦点を当てて議論する。しかしながら、本発明技術は、いくつかのトレードオフを伴うものの、パルス数が3の倍数である他のマルチパルス非対称変圧器にも適用可能とできる。例えば、2次補正巻線の数を増やす必要があるようなパルス数の増加は、一般にTRUのサイズと重量を増加させる。
【0056】
図3は、本発明技術の一実施形態に係るデルタ巻変圧器1000を示す。1次デルタ相の入力は、TRU1000の前端部にA、B、Cと記されている。いくつかの実施形態では、3相入力の1次デルタ巻線及び2次デルタ巻線は、3つのコイル110、120及び130として巻かれる。図示の実施形態では、コイル110、120及び130は、同じ強磁性コア140を共有している。
【0057】
2次巻線の出力(例えば、2次デルタ巻線タップ1、4、7からの3つの出力相と、2次補正巻線タップ2、3、5、6、8、9からの6つの出力相)は、整流回路200、400に結合され、入力される9相を18パルスに整流する。当業者であれば、24パルスTRUの類似の2次巻線1~12が、図2A及び図2Bに示す類似の整流回路200、400に接続されることを理解するであろう。DC出力であるDC+とDC-はTRU1000の前端部に記されている。
【0058】
図4Aは、本発明技術の一実施形態に係るマルチパルス非対称変圧器の1次デルタ巻線302を示す。1次デルタ巻線302は、相A、B、Cを含む。図示した1次デルタ巻線302は、それぞれ50回巻であるが、他の実施形態では、異なる巻数も可能である。
【0059】
図4B及び図4Cは、本発明技術の異なる実施形態に係る18パルス非対称変圧器のデルタ巻線及び2次補正巻線を有する2次側304を示す。図示された2次巻線(デルタ巻線及び補正巻線)は、変圧器の3つの主相及び6つの補正相(補助相とも呼ばれる)を含む9つの出力相のための9つの出力タップ(T1~T9)を含む。トポロジーの向きは例示的なものであり、異なる実施形態では異なるトポロジーを適用してもよい。2次デルタ巻線と2次補正巻線には、1次デルタ相A、B、Cに対する相対応を示すために、A、B、Cが記されている。
【0060】
図示された実施形態の各巻線の巻数は、巻線に隣接して表示されている。図4Bでは、2次デルタ巻線に対応するT1コイル(B相)に沿った直列巻線は、直列に13回巻、26回巻、13回巻である。タップT3とT5に接続される2次補正巻線は、それぞれ7回巻である。同様に、2次デルタ巻線のT4コイル(A相)に沿った直列巻線も、直列に13、26、13回巻である。タップT6とT8を備える、対応する2次補正巻線はそれぞれ7回巻である。C相2次巻線も同様の巻数と分布を有する。
【0061】
図4Cでは、2次デルタ巻線に対応するT1コイル(A相)に沿った直列巻線は、2回巻、4回巻、2回巻である。2次デルタ巻線の巻数が比較的少ない図示の実施形態は、28Vの比較的低いDC出力に有用である可能性がある。例えば、B相のタップT6及びT8に接続される2次補正巻線は、それぞれ1回巻である。B相とC相の2次巻線(デルタ巻線と補正巻線)は、同様の巻数と分布を有する。
【0062】
図4Dは、本発明技術の一実施形態に係る24パルス非対称変圧器の2次デルタ巻線及び2次補正巻線を示す。図示された2次巻線(デルタ巻線及び補正巻線)は、変圧器の3つの主相及び9つの補正相(補助相とも呼ぶ)を含む12個の出力相のための12個の出力タップ(T1~T12)を含む。トポロジーの向きは例示的なものであり、異なる実施形態では異なるトポロジーを適用してもよい。2次デルタ巻線と2次補正巻線には、1次デルタ相A、B、及びCに対する相対応を示すために、A、B、Cが記されている。
【0063】
例えば、2次デルタ巻線に対応するT5コイル(C相)に沿った直列巻線は、直列に9回巻、12回巻、21回巻、9回巻である。タップT3、T2、T12に接続される2次補正巻線は、それぞれ8回巻、6回巻、6回巻である。同様に、2次デルタ巻線のT1コイル(A相)に沿った直列巻線も、直列に9回巻、12回巻、21回巻、9回巻である。タップT8、T10、T11に接続される対応する2次補正巻線は、それぞれ6回巻、6回巻、8回巻である。B相2次デルタ巻線と2次補正巻線は、同様の巻数と分布を有する。
【0064】
いくつかの実施形態において、本発明の変圧器は、以下のパラメータによって特徴付けられ得る。
・入力電圧:115Vac、3相、360-800Hz、MIL-STD-704F
・出力電圧:公称270Vdc(非調整)
・出力電力:45KW
・効率:負荷50%超で96%超、通常のAC入力範囲
・力率:負荷25%超で0.95超
・電圧リップル:6Vpp未満
・全高調波歪み(THDi):7未満(18パルス)
・高電流過負荷能力:1分間で150%、5秒間で200%
・信頼性:200khrs超(MTBF、外部強制エアフローを与えた場合)
【0065】
図5図8は、本発明技術の一実施形態に係る18パルス非対称変圧器の2次デルタ巻線及び補正巻線を示す。例えば、図7は、図4Aに示す1次デルタ巻線と、図4Bに示す2次デルタ巻線及び2次補正巻線とに基づいて、図1A及び図1Bの18パルス変圧器用のデルタ巻変圧器トポロジー図を示している。2次デルタの各辺は3つの直列巻線を有する。例えば、C相を見ると、2次デルタ巻線には、タップT4とT7の間に介在する直列巻線N1、N2、N3が含まれる。同様の巻線が、A相ではT4とT1の間に、B相ではT1とT7の間に介在しているが、図面を簡略化し、混乱を減らすため、図にラベル付けしていない。
【0066】
C相の2次補正巻線には、N4とN5とラベル付けされている。2次デルタ巻線A、B及びこれらに対応する2次補正巻線も、図面の混乱を減らすために「Nx」をラベル付けしていない。しかし、読者は、例えば、2次補正巻線N4とN5が、2次デルタ巻線C(これらの2次補正巻線が「補正」する相)に平行になるように描かれていることを認識するであろう。同様に、2次デルタ巻線AとBのそれぞれに対応する2次補正巻線も、それぞれのAとBの2次デルタ巻線に平行になるように描かれている。図5~12においてもこの慣例に従っている。
【0067】
非対称変圧器の相間電圧を決定するためのサンプルの方法を、図5~8を参照して以下に説明する。サンプルの方法は、各2次補正巻線(例えば、タップT5、T6)の端から正三角形の反対側の頂点(例えば、相巻線AとBが交差する頂点、すなわち頂点T1)にベクトルを描くステップを含む。これらのベクトルは、変圧器の出力相を表す。各ベクトルの長さは、三角形の反対側の頂点によって表される相に対する、対応する出力相の振幅に比例する(対称変圧器のように中性点に対する振幅ではない)。この相間電圧は、表2に示すように、伝導対としてブリッジ整流器に提示される。いくつかの実施形態では、トリプレン高調波緩和は、N1-N3の巻数比によって形成された2次デルタ巻線によって保証される。2次デルタ巻線は、トリプレン高調波緩和に適した巻線構成を与える。
【0068】
上述したように、変圧器の出力相の所望の相シフトは、入力相を横断し、T2、T3、T5、T6、T8、T9で出力を提供する直列巻線の間の選択位置で引き出された2次補正巻線から得られる。2次補正巻線が巻かれるコイルと2次補正巻線の巻線極性によって、2次補正巻線が出力相に与える相シフトの方向が決定される。各補正巻線の巻数比と直列巻線間のタップ点により、出力相の最終的な相角と振幅が決定される。これらの出力相の振幅と相は、線によって図式化されている。
【0069】
18パルス動作では、隣接する相間の間隔は公称20°が望ましい。上で説明したように、実用的な出力相の振幅は、変圧器の構造、寄生(漏れインダクタンスなど)、及び使用ケース(ソースと負荷のインピーダンスなど)に依存する。
【0070】
図5に示す実施形態では、以下の表1に2次側の巻数比を示す。所与の2次巻線の巻数比は、各2次コーナ相間の総巻数に対する巻線の巻数の比として定義することができる。これは、最も単純な形では、1次デルタ巻数と2次デルタ巻数の比である、変圧器の1次/2次巻数比と混同してはならない。いくつかの実施形態では、最適な巻数比は変圧器の構造、種々の寄生、及び使用ケースによって変化する場合があるため、図示した巻数比は近似値とできる。この結果、実際に実装される巻数は、選択された変圧器コアによって変化し得る。
【0071】
図5における巻数比。
【表1】
【0072】
図6~8に示す実施形態について、巻数比をそれぞれ以下の表2~4に示す。
【0073】
図6における巻数比。
【表2】
【0074】
図7における巻数比。
【表3】
【0075】
図8における巻数比。
【表4】
【0076】
異なる実施形態では、他の巻数比も可能である。表1~4に示した例は、非限定的な例として理解されるべきである。
【0077】
図9~16は、本発明技術の一実施形態に係る24パルス非対称変圧器の2次デルタ巻線及び2次補正巻線を示す。サンプルの24パルス非対称変圧器を上述の図2A及び図2Bに示す。サンプルの1次デルタ巻線を図4Aに、サンプルの2次デルタ巻線及び2次補正巻線を図4Dに示す。
【0078】
図9は、24パルス変圧器のデルタ巻変圧器トポロジー図である。2次デルタの各辺は4つの直列巻線を有する。例えば、C相を見ると、2次デルタ巻線は直列巻線N1、N2、N3、N4を含む。同様の直列巻線がA相とB相にも示されているが、図では混乱を減らすためにラベル付けしていない。変圧器の出力相の所望の相シフトは、入力相を横断する直列巻線間の選択位置で引き出された2次補正巻線から得られ、上記の18パルス変圧器と関連して説明した方法と同様である。2次補正巻線が巻かれるコイルと2次補正巻線の巻線極性によって、2次補正巻線が出力相に与える相シフトの方向が決定される。各2次巻線の巻数比と直列巻線間のタップ点により、出力相の最終的な相角と振幅が決定される。これら出力相の振幅と相は、図9~16の線によって図式化されている。24パルス動作では、隣接する相間の間隔は公称15°が望ましい。
【0079】
図9~16に示される実施形態について、2次側の巻数比をそれぞれ以下の表5~12に示す。
【0080】
図9における巻数比。
【表5】
【0081】
図10における巻数比。
【表6】
【0082】
図11における巻数比。
【表7】
【0083】
図12における巻数比。
【表8】
【0084】
図13における巻数比。
【表9】
【0085】
図14における巻数比。
【表10】
【0086】
図15における巻数比。
【表11】
【0087】
図16における巻数比。
【表12】
【0088】
図17は、本発明技術の実施形態に係るマルチパルス非対称変圧器の設計方法のフローチャートである。特に、図示された方法は、非対称24パルス動作のための適切な出力相の振幅及び間隔のための巻数比を選択する設計プロセスの概要を示す。異なる実施形態において、図示された方法は、追加のステップを含むか、又はフローチャートに示されていない他のステップを含んでもよい。
【0089】
この方法は、ブロック510で開始する。ブロック515及び520では、1次側及び2次側の相間巻数が選択される。これらの巻数の選択は、選択されたコア、動作周波数、動作電圧、及び入力から出力への電圧スケーリングに対して許容可能な磁束密度を維持するように行われる。
【0090】
ブロック525では、コーナ相間の巻数に比例する脚の長さを持つ正三角形を用いて、2次巻線用の変圧器ベクトル図が構築される。三角形の各辺は完全なデルタ巻線を表し、三角形の各頂点の対の間に3セグメント(18パルスの非対称変圧器の場合)又は4セグメント(24パルスの非対称変圧器の場合)を構成する(例えば、図5及び図9を参照)。各セグメントは直列巻線を表し、該当する直列巻線の巻数に比例した長さを有する。各脚の頂点間のセグメントが交わる点は、2次補正巻線のタップの位置を表す。
【0091】
ブロック530では、三角形の頂点間の各タップ位置から2次補正巻線を表す線が引かれる。各線は、2次補正巻線が巻かれているコイルの相に等しい相と、2次補正巻線の巻数に比例する長さと、を有するベクトルである。各ベクトルは三角形の辺の1つに平行に走る。各巻線の巻数比は、2次補正巻線の巻数を全デルタ巻線の巻数で割ったものに等しい。これは、変圧器のベクトル図では、正三角形の全脚の長さに対する補正巻線のベクトルの長さとして示されている。
【0092】
ブロック535では、各補正巻線ベクトルの端から正三角形の反対側の頂点までベクトルが描かれる。これらのベクトルは変圧器の出力相を表す。各ベクトルの長さは、三角形の反対側の頂点によって表される相に対する、対応する出力相の振幅に比例する。各出力タップから中性点へベクトルを描くことができ、これは、中性点に対する出力相電圧を正確に示すが、この非対称設計の性質上、相‐中性点の電圧は不均一になる。相‐中性点電圧ではなく相間電圧を制御することが、非対称設計と対称設計のアプローチの違いである。
【0093】
ブロック540では、デルタセグメント長が、タップ位置を調整するために全デルタ長を一定に維持しながら最適化される。いくつかの実施形態では、補正巻線ベクトル長は、出力相ベクトル長が正三角形の各辺の長さにほぼ等しくなり、各三角形の頂点から生じるすべてのベクトルが、18パルス変圧器については約20°の相間隔、24パルス変圧器については15°の相間隔が維持されるまで調整される。この方法を用いて作製された完全な変圧器ベクトル図の例が図5~12に示されている。
【0094】
ブロック545では、変圧器ベクトル図における各直列巻線のラインセグメント及び補正巻線ベクトルの最終的な長さに基づいて、直列巻線及び補正巻線の巻数が設定される。本方法はブロック545で終了することができる。
【0095】
図18~20は、図4A及び4Bに示したトポロジーの理想的な変圧器を利用した18パルス非対称TRUにおける電流波形をシミュレートしたグラフである。漏れインダクタンスや巻線抵抗などの非理想性が無視されているため、シミュレートされた非対称TRUを「理想的な」変圧器と呼ぶ。当業者であれば、24パルス非対称TRUについても同様のグラフを作成できることを理解するであろう。図21は、本発明技術の一実施形態に係る実際の3相入力電流波形のグラフである。これらの各グラフにおいて、横軸は経過時間を示す。縦軸は電流(アンペア)を示す。
【0096】
特に、図18は、図4A及び図4Bに描かれているトポロジーの理想的な変圧器を利用した18パルス非対称TRUの3相入力電流波形をシミュレートしたグラフである。漏れインダクタンスや巻線抵抗のない理想的な変圧器は、正弦波電圧入力で、18個の「ステップ」又は「パルス」を持つ正弦波に近似したステップ電流波形を示す。これはブリッジ整流器の伝導対が20°ごとに切り替わる結果である。漏れインダクタンスと巻線抵抗の付加は、最終結果がほぼ正弦波となるように波形を平滑化する役割を果たす(以降に示す図21)。
【0097】
図19は1つの完全な電気サイクル中の18パルス非対称ATRUの整流器ブリッジ電流をシミュレーショトしたグラフである。ブリッジ整流器の伝導対の間隔20°は、各伝導対が約139マイクロ秒、すなわち2.5msの周期を有する所与の400Hzサイクルの電気角約20度分、伝導することがわかる。さらに、図18から、ブリッジ整流器への各2次デルタ巻線接続が4パルス連続して電流を伝導するのに対し、各2次補正巻線は所与の半サイクルで1パルスしか電流を伝導しないことがわかる。これは、TRUによって処理される電力の大部分が2次デルタ巻線から供給され、2次補正巻線から供給される電力は少数であることを示している。
【0098】
図20は、図4A及び図4Bに描かれたトポロジーの理想的な変圧器を利用した18パルス非対称TRUのA相入力電圧及び電流をシミュレートしたグラフである。
【0099】
図21は、巻線抵抗や漏れインダクタンスを含む予想されるTRUの非理想性を有する3相入力電流波形をシミュレートしたグラフである。図示の実施形態では、実際の電流波形は、図18に示した理想的な入力電流波形よりも滑らかである(高調波歪みが小さいことを示す)。これは、少量の漏れインダクタンスの存在が、入力電流波形を滑らかにする役割を果たすためである。一般的に、漏れインダクタンスは可能な限り小さく保つべきであるが。図19図20を見ればわかるように、2次補正巻線は、振幅が大きく持続時間の短いパルス電流を流す。漏れインダクタンスが大きすぎると、これらのパルス電流はこの最大限の振幅に達することができず、有効パルス数が減少し、18パルスATRUの性能が12パルスソリューションに近づき始めるなど、18パルス動作が劣化する可能性がある。
【0100】
上記の分析及びシミュレーションに基づき、18パルス及び24パルスの非対称デルタTRUは、HVTRUと28VTRUの両方のアプリケーションにおいて明確な利点を与えることが確認できる。本発明技術は、同等の質量と効率を持つ従来の12パルスデルタワイ型ソリューションと比較して電力品質を大幅に改善する。そして、24パルスデルタヘックス型ソリューションよりも、コイルあたりの巻線数が3本少なく、適切な相間隔のためのディスクリート出力インダクタを必要としないため、サイズと重量をわずかに小さくし、かつ、コストを大幅に低くする。デルタデルタワイソリューション、18P非対称デルタ、24Pデルタヘックスの労力比(labor ratio)は、およそ1:1.45:1.76と推定される。
【0101】
上述した技術の多くの実施形態は、プログラマブルコンピュータ又はコントローラによって実行されるルーチンを含む、コンピュータ実行可能命令又はコントローラ実行可能命令の形態をとることができる。関連技術分野の当業者であれば、本技術を、上記に示し説明した以外のコンピュータ/コントローラシステムで実施できることを理解するであろう。本技術は、上述したコンピュータ実行可能命令の1つ又は複数を実行するように特別にプログラム、構成、又は構築された特殊用途のコンピュータ、コントローラ、又はデータプロセッサで具体化されることができる。従って、本明細書で通常使用する「コンピュータ」及び「コントローラ」という用語は、任意のデータプロセッサを指し、インターネット家電及びハンドヘルドデバイス(パームトップコンピュータ、ウェアラブルコンピュータ、セルラー電話又は携帯電話、マルチプロセッサシステム、プロセッサベース家電又はプログラマブル家電、ネットワークコンピュータ、ミニコンピュータなどを含む)を含むことができる。
【0102】
以上から、本技術の特定の実施形態を、例示の目的で本明細書に記載してきたが、本開示から逸脱することなく様々な変更がなされ得ることが理解されよう。さらに、特定の実施形態に関連する様々な利点及び特徴を、これらの実施形態の文脈で上述したが、他の実施形態もこのような利点及び/又は特徴を示すことができ、すべての実施形態が、本技術の範囲内に入るように、必ずしもこのような利点及び/又は特徴を示す必要はない。方法が記載されている場合、方法は、より多くの、より少ない、又は他のステップを含んでもよい。さらに、ステップは、任意の適当な順序で実行することができる。従って、本開示は、本明細書において明示的に示されないか、記載されない他の実施形態を包含することができる。本開示の文脈において、用語「約」は、記載値の±5%を意味する。
【0103】
本開示の目的のために、例えば「A、B、及びCの少なくとも1つ」という形式の2つ以上の要素のリストは、(A)、(B)、(C)、(A及びB)、(A及びC)、(B及びC)、又は(A、B、及びC)を意味し、任意の他の量の要素がリスト化されている場合、さらにすべての同様の順列を含むことを意図している。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
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【国際調査報告】