(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】電解液、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電気装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20240621BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20240621BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240621BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20240621BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M10/052
H01M10/0568
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569720
(86)(22)【出願日】2022-05-11
(85)【翻訳文提出日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 CN2022092189
(87)【国際公開番号】W WO2023216130
(87)【国際公開日】2023-11-16
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】彭 ▲暢▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 培培
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 立美
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 得▲貴▼
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL18
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
(57)【要約】
本願は、溶剤、添加剤及びリチウム塩を含むリチウムイオン二次電池用電解液に関し、前記溶剤はカルボン酸エステルを含み、前記添加剤は明細書に記載の式Iのフルオロスルホン酸ラクトンを含み、ただし、前記電解液では、前記カルボン酸エステルの含有量Wと前記式Iのフルオロスルホン酸ラクトンの含有量aは430.1>1000*a/W>0.163を満たし、好ましくは202.02>1000*a/w≧1.635を満たし、より好ましくは100.059≧1000*a/w≧4.915を満たし、aとWの両方とも重量%で、前記電解液の重量に基づいて計算するものであることを特徴とする。本発明の電解液を含む二次電池は、優れた急速充電性能とサイクル寿命を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤、添加剤及びリチウム塩を含むリチウムイオン二次電池用電解液であって、前記溶剤はカルボン酸エステルを含み、前記添加剤は式Iのフルオロスルホン酸ラクトンを含み、
【化1】
ただし、R
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立してHまたはFであり、R
1、R
2及びR
3の中の少なくとも1つはFで且つ少なくとも1つはHであり、
前記電解液では、前記カルボン酸エステルの含有量Wと式Iのフルオロスルホン酸ラクトンの含有量aは430.1>1000*a/W>0.163を満たし、好ましくは202.02>1000*a/w≧1.635を満たし、より好ましくは100.059≧1000*a/w≧4.915を満たし、
aとWの両方とも重量%で、前記電解液の重量に基づいて計算するものであることを特徴とするリチウムイオン二次電池用電解液。
【請求項2】
前記カルボン酸エステルの含有量Wは30-70重量%であり、式Iのフルオロスルホン酸ラクトンの含有量aは0.01-10重量%であり、それぞれ前記電解液の重量に基づいて計算するものであることを特徴とする請求項1に記載の電解液。
【請求項3】
前記カルボン酸エステルは、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピルの中の少なくとも1つから選ばれ、前記式Iのフルオロスルホン酸ラクトンは、
【化2】
であることを特徴とする請求項1または2に記載の電解液。
【請求項4】
前記電解液では、
前記溶剤は70-90重量%であり、
前記添加剤は0.01-20重量%であり、
前記リチウム塩は10-22重量%であり、
上記成分の重量%の和は100%であり、且つ前記電解液の重量に基づいて計算するものであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項5】
前記電解液では、溶剤中の前記カルボン酸エステルの重量比は30%-80%であり、前記溶剤の重量に基づいて計算するものであり、添加剤中の前記フルオロスルホン酸ラクトンの重量比は20-100重量%であり、前記添加剤の重量に基づいて計算するものであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項6】
前記添加剤はO=C=N-R-N=C=O添加剤をさらに含み、ただし、Rは置換もしくは非置換のC1-C6アルキレン基またはアルキレンオキシ基、置換もしくは非置換のC2-C6アルケニレン基またはアルケニレンオキシ基、置換もしくは非置換のC6-C12アリーレン基の中の1種であり、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)の中の少なくとも1つであり、さらに好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはトリレンジイソシアネートであることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項7】
前記溶剤は環状炭酸エステル溶剤をさらに含み、前記環状炭酸エステルは、好ましくは、炭酸エチレン、プロピレンカーボネート、及びフルオロエチレンカーボネートの中の1つまたは複数であり、環状炭酸エステルの含有量は電解液の8.5%-35%であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項8】
前記リチウム塩は、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、六フッ化ヒ酸リチウム、ビスフルオロスルホニルイミドリチウム、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドリチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム、ビス(シュウ酸)ホウ酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロビス(シュウ酸)リン酸リチウム及びテトラフルオロシュウ酸リン酸リチウムの中の1つまたは複数から選ばれ、好ましくは六フッ化リン酸リチウムまたはビスフルオロスルホニルイミドリチウムの中の1種または2種であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の電解液を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【請求項10】
請求項9に記載の二次電池を含むことを特徴とする電池モジュール。
【請求項11】
請求項10に記載の電池モジュールを含むことを特徴とする電池パック。
【請求項12】
請求項9に記載の二次電池、請求項10に記載の電池モジュールまたは請求項11に記載の電池パックの中から選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする電気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はリチウム電池の技術分野に関し、特に電解液、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、その動作電位が高く、寿命が長く、環境にやさしいという特徴から最も人気のあるエネルギー貯蔵システムになり、現在、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、スマートグリッドなどの分野で広く応用されている。航続能力に対する人々のより高い需要に伴い、電動自動車に対する人々の走行距離の不安問題を解消する必要があり、より高いエネルギー密度を有するリチウムイオン電池の開発が強く求められている。
【0003】
リン酸鉄リチウム(LFP)電池は高いサイクル寿命と安全性能を持つが、そのエネルギー密度が低いため、致命的な欠点になっている。LFP電池のエネルギー密度を向上させるために、正極材料の塗布重量を増加することが研究者たちの主な戦略となっているが、塗布重量を増加した後、電極シートの厚さが大幅に増加し、対応するリチウムイオン輸送経路は大幅に増加し、その結果、従来の炭酸エステル溶剤系の電解液は、厚く塗布されたLFP電池の現在の急速充電需要を満たすことが困難である。カルボン酸エステル溶剤系の粘度が低く、対応する電解液の電気伝導率が高いが、カルボン酸エステルと負極との適合性が悪いため、LFP系の電池セルのサイクルと保存寿命が極めて悪い。従って、従来の電解液系はまだ改善する余裕がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願は上記課題に鑑みて行われ、カルボン酸エステルと特定の構造のフルオロスルホン酸ラクトンを含み、対応するリチウムイオン電池が優れた急速充電性能と長いサイクル寿命を有するリチウムイオン二次電池用電解液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本願の第1の態様は、溶剤、添加剤及びリチウム塩を含むリチウムイオン二次電池用電解液を提供し、前記溶剤はカルボン酸エステルを含み、前記添加剤は式Iのフルオロスルホン酸ラクトンを含み、
【化1】
ただし、R
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立してHまたはFであり、R
1、R
2及びR
3の中の少なくとも1つはFで、且つ少なくとも1つはHであり、
前記電解液では、前記カルボン酸エステルの含有量Wと前記式Iのフルオロスルホン酸ラクトンの含有量aは、430.1>1000*a/W>0.163を満たし、好ましくは202.02>1000*a/w≧1.635を満たし、より好ましくは100.059≧1000*a/w≧4.915を満たし、
aとWは重量%で、前記電解液の重量に基づいて計算するものであることを特徴とする。
【0006】
これにより、特定の割合のカルボン酸エステルと式Iのフルオロスルホン酸ラクトンを含む電解液により、カルボン酸エステル溶剤と負極の適合性を調整することができるとともに、電解液中のカルボン酸エステルの還元をさらに阻止し、これにより、対応するリチウムイオン電池は優れた急速充電性能と長いサイクル寿命を有する。
【0007】
任意の実施形態において、前記カルボン酸エステルの含有量Wは30-70重量%であり、式Iのフルオロスルホン酸ラクトンの含有量aは0.01-10重量%であり、それぞれ前記電解液の重量に基づいて計算するものである。これにより、前記電解液は、上記含有量のカルボン酸エステルと式Iのフルオロスルホン酸ラクトンを含むことにより、対応するリチウムイオン電池は優れた急速充電性能と長いサイクル寿命を有する。
【0008】
任意の実施形態において、前記カルボン酸エステルは、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピルの中の少なくとも1つから選ばれ、前記式Iのフルオロスルホン酸ラクトンは、
【化2】
である。
【0009】
これにより、前記電解液は、上記種類の式Iのフルオロスルホン酸ラクトンを含むことにより、対応するリチウムイオン電池は優れた急速充電性能と長いサイクル寿命を有する。
【0010】
任意の実施形態において、前記電解液では、
前記溶剤は70-90重量%であり、
前記添加剤は0.01-20重量%であり、
前記リチウム塩は10-22重量%であり、
上記成分の重量%の和は100%であり、且つ前記電解液の重量に基づいて計算するものである。
【0011】
これにより、前記電解液は、上記含有量の溶剤、添加剤及びリチウム塩を含むことにより、対応するリチウムイオン電池は優れた急速充電性能と長いサイクル寿命を有する。
【0012】
任意の実施形態において、前記電解液では、溶剤中の前記カルボン酸エステルの重量比は30%-80%であり、前記溶剤の重量に基づいて計算するものであり、添加剤中の前記フルオロスルホン酸ラクトンの重量比は20-100重量%であり、前記添加剤の重量に基づいて計算するものである。これにより、前記電解液は、上記含有量のカルボン酸エステルと式Iのフルオロスルホン酸ラクトンを含むことにより、対応するリチウムイオン電池は優れた急速充電性能と長いサイクル寿命を有する。
【0013】
任意の実施形態において、前記添加剤はO=C=N-R-N=C=O添加剤をさらに含み、ただし、Rは置換もしくは非置換のC1-C6アルキレン基またはアルキレンオキシ基、置換もしくは非置換のC2-C6アルケニレン基またはアルケニレンオキシ基、置換もしくは非置換のC6-C12アリーレン基の中の1つであり、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)の中の少なくとも1つであり、さらに好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはトリレンジイソシアネートである。これにより、前記電解液は、上記種類のイソシアネートを含むことにより、対応するリチウムイオン電池は優れた急速充電性能と長いサイクル寿命を有する。
【0014】
任意の実施形態において、前記溶剤は環状炭酸エステル溶剤をさらに含み、前記環状炭酸エステルは、炭酸エチレン、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートの中の1つまたは複数であることが好ましく、環状炭酸エステルの含有量は電解液の8.5%-35%である。これにより、前記電解液は、上記種類の溶剤を含むことにより、さらに、対応するリチウムイオン電池は優れた急速充電性能と長いサイクル寿命を有する。
【0015】
任意の実施形態において、前記リチウム塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6)、ビスフルオロスルホニルイミドリチウム(LiFSI)、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドリチウム(LiTFSI)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiTFS)、ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム(LiDFOB)、ビス(シュウ酸)ホウ酸リチウム(LiBOB)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO2F2)、ジフルオロビス(シュウ酸)リン酸リチウム(LiDFOP)及びテトラフルオロシュウ酸リン酸リチウム(LiTFOP)の中の1つまたは複数から選ばれ、六フッ化リン酸リチウムまたはビスフルオロスルホニルイミドリチウムの中の1種または2種であることが好ましい。これにより、前記電解液は、上記種類のリチウム塩を含むことにより、さらに、対応するリチウムイオン電池は優れた急速充電性能と長いサイクル寿命を有する。
【0016】
本願の第2の態様は、本願の第1の態様に記載の電解液を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池をさらに提供する。
【0017】
これにより、前記二次電池は優れた急速充電性能と長いサイクル寿命を有する。
【0018】
本願の第3の態様は、本願の第2の態様に記載の二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0019】
本願の第4の態様は、本願の第3の態様に記載の電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0020】
本願の第5の態様は、本願の第2の態様に記載の二次電池、本願の第3の態様に記載の電池モジュールまたは本願の第4の態様に記載の電池パックの中から選ばれる少なくとも1つを含む電気装置を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本願は、特定の割合のカルボン酸エステルと式Iのフルオロスルホン酸ラクトンを含む電解液により、カルボン酸エステル溶剤と負極の適合性を調整することができるとともに、電解液中のカルボン酸エステルの還元をさらに阻止し、これにより、対応するリチウムイオン電池は優れた急速充電性能と長いサイクル寿命を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本願の一実施形態による二次電池を示す模式図である。
【
図2】
図1に示す本願の一実施形態による二次電池を示す分解図である。
【
図3】本願の一実施形態による電池モジュールを示す模式図である。
【
図4】本願の一実施形態による電池パックを示す模式図である。
【
図5】
図4に示す本願の一実施形態による電池パックを示す分解図である。
【
図6】本願の一実施形態による二次電池を電源として使用する電気装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を適切に参照して本願の電解液、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電気装置を具体的に開示した実施形態を詳しく説明する。しかし、不必要な詳細な説明を省略する場合がある。例えば、既によく知られている事項の詳細な説明、実際の同じ構造の重複した説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に長くなることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、図面及び以下の説明は、当業者が本願を十分に理解するために提供され、請求項の範囲に記載の主題を限定するものではない。
【0024】
本願で開示された「範囲」は下限と上限の形態で限定され、所定の範囲は1つの下限と1つの上限を選択して限定され、選択された下限と上限によって特別な範囲の境界が限定される。このように限定される範囲は、境界値を含むものであっても、境界値を含まないものであってもよく、且つ任意に組み合わせることができ、即ち、任意の下限は任意の上限と組み合わせて1つの範囲を形成することができる。例えば、特定のパラメータに対して60-120と80-110の範囲がリストされている場合、60-110と80-120の範囲も予想されると理解される。なお、最小範囲値1と2、最大範囲値3、4及び5がリストされていると、以下の範囲、1-3、1-4、1-5、2-3、2-4及び2-5はすべて予想できる。本願では、他の説明がない限り、数値の範囲「a-b」は、aからbまでの任意の実数の組み合わせの省略表現を示し、aとbの両方が実数である。例えば数値範囲「0-5」は、本明細書でリストされている「0-5」の間のすべての実数を示し、「0-5」は、ただこれらの数値の組み合わせの省略表現である。また、あるパラメータが≧2の整数を示すと、該パラメータは、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などの整数であることを開示したことに相当する。
【0025】
特別な説明がない限り、本願の全ての実施形態及び好ましい実施形態は互いに組み合わせて新しい技術的解決手段を形成することができる。
【0026】
特別な説明がない限り、本願の全ての技術的特徴及び好ましい技術的特徴は互いに組み合わせて新しい技術的解決手段を形成することができる。
【0027】
特別な説明がない限り、本願の全てのステップは順番に行っても、ランダムに行ってもよく、順番に行うことが好ましい。例えば、前記方法がステップ(a)と(b)を含むのは、前記方法が順番に行われるステップ(a)と(b)を含んでもよく、順番に行われるステップ(b)と(a)を含んでもよいことを示す。例えば、以上で言及された前記方法は、ステップ(c)を含んでもよいのは、ステップ(c)を任意の順番で前記方法に加えることができることを示し、例えば、前記方法はステップ(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)及び(b)を含んでもよい。
【0028】
特別な説明がない限り、本願で言及された「備える」と「含む」は、非限定的なものであっても、限定的なものであってもよいことを示す。例えば、前記「備える」と「含む」は、リストされていない他の成分をさらに備えるまたは含むことができ、リストされた成分のみを備えるまたは含むことができる。
【0029】
特別な説明がない限り、本願において、「または」という用語は包括的である。例えば、「AまたはB」という単語は、「A、B、またはAとBの両方」を示す。より具体的に、以下の、Aが真(または存在する)で且つBが偽(または存在しない)である条件、Aが偽(または存在しない)であるが、Bが真(または存在する)である条件、またはAとBの両方とも真(または存在する)である条件のいずれかがいずれも「AまたはB」という条件を満たす。
【0030】
リン酸鉄リチウム(LFP)電池は高いサイクル寿命と安全性能を持つが、そのエネルギー密度が低いため、致命的な欠点になっている。LFP電池のエネルギー密度を向上させるために、正極材料の塗布重量を増加することが研究者たちの主な戦略となっているが、塗布重量を増加した後、電極シートの厚さが大幅に増加し、対応するリチウムイオン輸送経路は大幅に増加し、その結果、従来の炭酸エステル溶剤系の電解液は、厚く塗布されたLFP電池の現在の急速充電需要を満たすことが困難である。カルボン酸エステル溶剤系の粘度が低く、対応する電解液の電気伝導率が高いが、カルボン酸エステルと負極との適合性が悪いため、LFP系の電池セルのサイクルと保存寿命が極めて悪い。本願の第1の態様は、リチウムイオン二次電池用電解液を提供し、カルボン酸エステルと特定の構造のフルオロスルホン酸ラクトンを含み、カルボン酸エステル溶剤と負極の適合性を調整することができるとともに、電解液中のカルボン酸エステルの還元をさらに阻止し、対応するリチウムイオン電池は優れた急速充電性能と長いサイクル寿命を有する。
【0031】
リチウムイオン二次電池用電解液
本願の一実施形態では、本願の第1の態様は、溶剤、添加剤及びリチウム塩を含むリチウムイオン二次電池用電解液を提供し、前記溶剤はカルボン酸エステルを含み、前記添加剤は式Iのフルオロスルホン酸ラクトンを含み、
【化3】
ただし、R
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立してHまたはFであり、R
1、R
2及びR
3の中の少なくとも1つはFで且つ少なくとも1つはHであり、
前記電解液では、前記カルボン酸エステルの含有量Wと前記式Iのフルオロスルホン酸ラクトンの含有量aは、430.1>1000*a/W>0.163を満たし、好ましくは202.02>1000*a/w≧1.635を満たし、より好ましくは100.059≧1000*a/w≧4.915を満たし、
aとWの両方とも重量%で、前記電解液の重量に基づいて計算するものであることを特徴とする。
【0032】
これにより、本願は、特定の割合のカルボン酸エステルと式Iのフルオロスルホン酸ラクトンを含む電解液により、リチウム塩アニオンをリチウムイオンの溶媒和シースに導入することができ、還元安定性がより高いアニオン誘導のイオン-溶剤錯体の溶媒和構造(AI-ISC)を形成することで、カルボン酸エステル溶剤と負極の適合性を調整することができる。なお、フルオロスルホン酸ラクトンは電子雲密度が低いため、負極での電子還元が容易であり、アルキルスルホン酸リチウムまたはアルキル硫酸リチウムなどの緻密な固体電解質界面(SEI)膜に富んだ成分を形成し、電解液中のカルボン酸エステルの還元をさらに阻止し、これにより、対応するリチウムイオン電池は優れた急速充電性能と長いサイクル寿命を有する。
【0033】
いくつかの実施形態において、前記カルボン酸エステルの含有量Wは30-70重量%であり、式Iのフルオロスルホン酸ラクトンの含有量aは0.01-10重量%であり、好ましくは0.5-5重量%であり、より好ましくは0.5-3重量%であり、それぞれ前記電解液の重量に基づいて計算するものである。これにより、前記電解液は、上記含有量のカルボン酸エステルと式Iのフルオロスルホン酸ラクトンを含むことにより、対応するリチウムイオン電池は優れた急速充電性能と長いサイクル寿命を有する。
【0034】
いくつかの実施形態において、前記カルボン酸エステルは、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)の中の少なくとも1つから選ばれ、前記式Iのフルオロスルホン酸ラクトンは、
【化4】
である。
【0035】
これにより、前記電解液は、上記種類の式Iのフルオロスルホン酸ラクトンを含むことにより、対応するリチウムイオン電池は優れた急速充電性能と長いサイクル寿命を有する。
【0036】
いくつかの実施形態において、前記電解液では、
前記溶剤は70-90重量%であり、好ましくは、80-88重量%であり、
前記添加剤は0.01-20重量%であり、好ましくは、0.3-15重量%であり、
前記リチウム塩は10-22重量%であり、好ましくは、10-15重量%であり、
上記成分の重量%の和は100%であり、且つ前記電解液の重量に基づいて計算するものである。
【0037】
これにより、前記電解液は、上記含有量の溶剤、添加剤及びリチウム塩を含むことにより、対応するリチウムイオン電池は優れた急速充電性能と長いサイクル寿命を有する。
【0038】
いくつかの実施形態において、前記電解液では、溶剤中の前記カルボン酸エステルの重量比は30%-80%であり、前記溶剤の重量に基づいて計算するものであり、添加剤中の前記フルオロスルホン酸ラクトンの重量比は20-100重量%であり、前記添加剤の重量に基づいて計算するものである。これにより、前記電解液は、上記含有量のカルボン酸エステルと式Iのフルオロスルホン酸ラクトンを含むことにより、対応するリチウムイオン電池は優れた急速充電性能と長いサイクル寿命を有する。
【0039】
いくつかの実施形態において、前記添加剤はO=C=N-R-N=C=O添加剤をさらに含み、ただし、Rは置換もしくは非置換のC1-C6アルキレン基またはアルキレンオキシ基、置換もしくは非置換のC2-C6アルケニレン基またはアルケニレンオキシ基、置換もしくは非置換のC6-C12アリーレン基の中の1種であり、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)の中の少なくとも1種であり、さらに好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはトリレンジイソシアネート(TDI)であり、前記トリレンジイソシアネート(TDI)は2,4-トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイソシアネートを含み、好ましくは、2,4-トリレンジイソシアネートを含む。これにより、前記電解液は、上記種類のイソシアネートを含むことにより、さらに対応するリチウムイオン電池は優れた急速充電性能と長いサイクル寿命を有する。
【0040】
いくつかの実施形態において、前記溶剤は環状炭酸エステル溶剤をさらに含み、前記環状炭酸エステルは、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチレンプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)の中の少なくとも1つから選ばれ、好ましくは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートの中の1つまたは複数であり、環状炭酸エステル含有量は電解液の8.5%-35%である。これにより、前記電解液は、上記種類の溶剤を含むことにより、さらに対応するリチウムイオン電池は優れた急速充電性能と長いサイクル寿命を有する。
【0041】
いくつかの実施形態において、溶剤は酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルスルホン(EMS)及びジエチルスルホン(ESE)の中の1つまたは複数をさらに含んでもよい。
【0042】
いくつかの実施形態において、前記リチウム塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6)、ビスフルオロスルホニルイミドリチウム(LiFSI)、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドリチウム(LiTFSI)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiTFS)、ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム(LiDFOB)、ビス (シュウ酸)ホウ酸リチウム(LiBOB)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO2F2)、ジフルオロビス(シュウ酸)リン酸リチウム(LiDFOP)及びテトラフルオロシュウ酸リン酸リチウム(LiTFOP)の中の1つまたは複数から選ばれ、好ましくはLiPF6またはLiFSIの中の1種または2種である。これにより、前記電解液は、上記種類のリチウム塩を含むことにより、さらに対応するリチウムイオン電池は優れた急速充電性能と長いサイクル寿命を有する。
【0043】
いくつかの実施形態において、前記添加剤は、負極膜形成添加剤、正極膜形成添加剤を含んでもよいし、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温または低温性能を改善する添加剤など、電池のある性能を改善できる添加剤を含んでもよい。前記負極膜形成添加剤はビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、硫酸ビニルの中の1つまたは複数である。
【0044】
いくつかの実施形態において、前記電解液の25℃での粘度は3.5mPa.s未満であることが好ましく、GB-T10247-2008に従って測定され、25℃での電気伝導率は12mScmを超える。
【0045】
本願の第2の態様は、本願の第1の態様に記載の電解液を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池をさらに提供する。
【0046】
これにより、前記二次電池は優れた急速充電性能と長いサイクル寿命を有する。
【0047】
また、以下、図面を適切に参照して本願の二次電池、電池モジュール、電池パック及び電気装置を説明する。
【0048】
本願の一実施形態では、二次電池を提供する。
【0049】
通常の場合、二次電池は正極シート、負極シート、電解質及びセパレータを含む。電池の充放電過程で、活性イオンは正極シートと負極シートとの間で往復的に吸着、脱出する。電解質は正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。セパレータは正極シートと負極シートとの間に設けられ、主に正と負極の短絡を防止する役割を果たし、同時に、イオンを通過することができる。
【0050】
[正極シート]
正極シートは正極集電体及び正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられる正極膜層を含み、前記正極膜層は本願の第1の態様による正極活性材料を含む。
【0051】
例として、正極集電体は、自体の厚さ方向に対向する2つの表面を有し、正極膜層は正極集電体の対向する2つの表面のいずれか一方または両方に設けられる。
【0052】
いくつかの実施形態において、前記正極集電体には金属箔シートまたは複合集電体が採用することができる。例えば、金属箔シートとして、アルミニウム箔を用いることができる。複合集電体は、高分子材料基材層と高分子材料基材層の少なくとも1つの表面に形成される金属層を含んでもよい。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)に形成することによって形成されることができる。
【0053】
いくつかの実施形態において、正極活性材料には本分野において周知の電池用正極活性材料が採用することができる。例として、正極活性材料は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、リチウム遷移金属酸化物及びそのそれぞれの変性化合物の材料の中の少なくとも1つを含むことができる。本願はこれらの材料に制限されず、他の電池正極活性材料として使用できる従来の材料を使用してもよい。これらの正極活性材料は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。リチウム遷移金属酸化物の例として、リチウムコバルト酸化物(例えばLiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMnO2、LiMn2O4)、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NCM333と略称することもできる)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(NCM523と略称することもできる)、LiNi0.5Co0.25Mn0.25O2(NCM211と略称することもできる)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2(NCM622と略称することもできる)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(NCM811と略称することもできる)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えばLiNi0.85Co0.15Al0.05O2)及びその変性化合物などの中の少なくとも1つを含むが、これらに制限されない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例として、リン酸鉄リチウム(例えばLiFePO4(LFPと略称することもできる))、リン酸鉄リチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガンリチウム(例えばLiMnPO4)、リン酸マンガンリチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素の複合材料の中の少なくとも1つを含むが、これらに制限されない。
【0054】
いくつかの実施形態において、正極膜層は、結着剤をさらに含むことが好ましい。例として、前記結着剤はポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及び含フッ素アクリレート樹脂の中の少なくとも1つを含むことができる。
【0055】
いくつかの実施形態において、正極膜層はさらに導電剤を含むことが好ましい。例として、前記導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、コーチンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーの中の少なくとも1つを含むことができる。
【0056】
いくつかの実施形態において、以下のように正極シートを製造することができ、正極シートを製造するための上記の成分、例えば正極活性材料、導電剤、結着剤及び任意の他の成分を溶剤(例えばN-メチルピロリドン)に分散して、正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体にコーティングし、乾燥、冷間プレスなどの工程を経てから、正極シートを取得することができる。
【0057】
[負極シート]
負極シートは、負極集電体及び負極集電体の少なくとも1つの表面に設けられる負極膜層を含み、前記負極膜層は負極活性材料を含む。
【0058】
例として、負極集電体は、自体の厚さ方向に対向する2つの表面を有し、負極膜層は負極集電体の対向する2つの表面のいずれか一方または両方に設けられる。
【0059】
いくつかの実施形態において、前記負極集電体には金属箔シートまたは複合集電体が採用することができる。例えば、金属箔シートとして、銅箔を用いることができる。複合集電体は高分子材料基材層と高分子材料基材層の少なくとも1つの表面に形成される金属層を含むことができる。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)に形成することによって形成されることができる。
【0060】
いくつかの実施形態において、負極活性材料として本分野で周知の電池に用いる負極活性材料を使用することができる。例として、負極活性材料は、人造黒鉛、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコン系材料、スズ系材料及びチタン酸リチウムなどの材料の中の少なくとも1つを含むことができる。前記シリコン系材料は、シリコン単体、シリコン酸化物、シリコン-カーボン複合物、シリコン-窒素複合物及びシリコン合金の中の少なくとも1つから選ばれることができる。前記スズ系材料は錫単体、錫酸化合物及び錫合金の中の少なくとも1つから選ばれることができる。しかし、本願はこれらの材料に制限されず、電池の負極活性材料として使用できる他の従来の材料を使用してもよい。これらの負極活性材料は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0061】
いくつかの実施形態において、前記負極活性材料の体積平均粒径Dv50は6μm-14μmであり、好ましくは、8μm-12μmであり、前記負極活性材料のタップ密度は0.9g/cm3-1.15g/cm3であり、好ましくは、0.9g/cm3-1.05g/cm3である。
【0062】
いくつかの実施形態において、負極膜層はさらに結着剤を含むことが好ましい。前記結着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)の中の少なくとも1つから選ばれることができる。
【0063】
いくつかの実施形態において、負極膜層はさらに導電剤を含むことが好ましい。導電剤は超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、コーチンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーの中の少なくとも1つから選ばれることができる。
【0064】
いくつかの実施形態において、負極膜層はさらに、例えば増粘剤(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などの他の補助剤を含むことが好ましい。
【0065】
いくつかの実施形態において、以下のように負極シートを製造することができ、負極シートを製造するための上記の成分、例えば負極活性材料、導電剤、結着剤及び任意の他の成分を溶剤(例えば脱イオン水)に分散して、負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体にコーティングし、乾燥、冷間プレスなどの工程を経てから、負極シートを取得することができる。
【0066】
[電解液]
電解液は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。
【0067】
いくつかの実施形態において、前記電解液は本願の第1の態様に記載の電解液である。
【0068】
[セパレータ]
いくつかの実施形態において、二次電池にさらにセパレータが含まれる。本願はセパレータの種類に対して特別に制限されず、任意の公知の良好な化学的安定性と機械的安定性を有する多孔質構造セパレータを選択することができる。
【0069】
いくつかの実施形態において、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンの中の少なくとも1つから選ばれることができる。セパレータは特に制限されず、単層の薄膜であってもよく、多層の複合薄膜であってもよい。セパレータが多層の複合薄膜である場合、各層の材料は、特に制限されず、同様でも、異なってもよい。
【0070】
いくつかの実施形態において、正極シート、負極シート及びセパレータは巻回プロセスまたはラミネートプロセスによって電極アセンブリを製造することができる。
【0071】
いくつかの実施形態において、二次電池は外装を含んでもよい。該外装は上記電極アセンブリ及び電解質を封入するために使用できる。
【0072】
いくつかの実施形態において、二次電池の外装は、例えば硬質プラスチックシェル、アルミニウムシェル、スチールシェルなどのハードシェルであってもよい。二次電池の外装は、パウチソフトバッグなどのソフトバッグであってもよい。ソフトバッグの材質は、プラスチックであってもよく、プラスチックとして、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート及びポリブチレンサクシネートなどが挙げられる。
【0073】
本願は、二次電池の形状に対して特に制限されず、円柱形、角形またはその他の任意の形状であってもよい。例えば、
図5は角形構造の二次電池5の一例である。
【0074】
いくつかの実施形態において、
図2を参照し、外装は、ハウジング51とカバープレート53を含むことができる。ハウジング51は底板と底板に接続される側板を含むことができ、底板と側板が収納室を形成するように囲むことができる。ハウジング51は収納室に連通される開口を有し、カバープレート53は、前記収納室を閉鎖するように前記開口にカバーされることができる。正極シート、負極シート及びセパレータは巻回プロセスまたはラミネートプロセスによって電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は前記収納室内に封止される。電解液が電極アセンブリ52内に浸潤する。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は1つまたは複数であってもよく、当業者は具体的な実際の必要に応じて選択することができる。
【0075】
いくつかの実施形態において、二次電池は電池モジュールとして組み立てることができ、電池モジュールに含まれる二次電池の数は1つまたは複数であってもよく、具体的な数について、当業者は電池モジュールの応用と容量に応じて選択できる。
【0076】
図3は電池モジュール4の一例である。
図3を参照し、電池モジュール4では、複数の二次電池5は電池モジュール4の長さ方向に沿って順次に配列して設置される。無論、他の任意の方式で配布されてもよい。さらに該複数の二次電池5をファスナーで固定することができる。
【0077】
好ましくは、電池モジュール4は、収納スペースを有する外部ケースをさらに含んでもよく、複数の二次電池5は該収納スペースに収納される。
【0078】
いくつかの実施形態において、上記電池モジュールはさらに、電池パックとして組み立てることもでき、電池パックに含まれる電池モジュールの数は1つまたは複数であってもよく、具体的な数について、当業者は電池パックの応用と容量に応じて選択できる。
【0079】
図4及び
図5は電池パック1の一例である。
図4及び
図5を参照し、電池パック1には、電池箱と電池箱内に設けられる複数の電池モジュール4が含まれてもよい。電池箱は上箱体2と下箱体3を含み、上箱体2は下箱体3に覆われることができ、電池モジュール4を収納するための閉鎖空間を形成する。複数の電池モジュール4は任意の方式で電池箱内に配布されることができる。
【0080】
また、本願は電気装置をさらに提供し、前記電気装置は本願によって提供された二次電池、電池モジュール、または電池パックの中の少なくとも1つを含む。前記二次電池、電池モジュール、または電池パックは前記電気装置の電源として使用でき、前記電気装置のエネルギー貯蔵ユニットとしても使用できる。前記電気装置としては、モバイル機器(例えば携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどを含むが、これらに制限されない。
【0081】
前記電気装置として、その使用必要に応じて二次電池、電池モジュールまたは電池パックを選択できる。
【0082】
図6は電気装置の一例である。該電気装置は純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、またはプラグインハイブリッド電気自動車などである。該電気装置の二次電池の高出力と高エネルギー密度の需要を満たすために、電池パックまたは電池モジュールを用いることができる。
【0083】
装置の他の例として、携帯電話、タブレット、ノートパソコンなどであってもよい。該装置は、通常、薄型化が要求され、二次電池を電源として用いることができる。
【0084】
実施例
【0085】
本願が解決する技術的問題、技術的解決手段及び有益な効果をより明らかにするために、以下、実施例と図面を組み合わせて本願をさらに詳細に説明する。無論、述べられた実施例は、本願の一部の実施例に過ぎず、全部の実施例ではない。以下、少なくとも1つの例示的な実施例の叙述は、実際には説明するためのものだけであり、本願及びその応用に対していずれの制限を構成しない。本願の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働なしに得られた全ての他の実施例はいずれも本願の請求範囲に属する。
【0086】
実施例に具体的な技術または条件が示されない場合、当該分野の文献に記載されている技術または条件に従って、または製品の明細書に従って実行する必要がある。用いられる試薬または機器にメーカーが示されない場合、市販によって購入できる従来の製品である。
【0087】
実施例1
1)正極シートの製造
正極活性材料であるリン酸鉄リチウム、導電剤であるアセチレンブラック、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を、96.5:1.5:2の重量比で、溶剤であるN-メチルピロリドン(NMP)に溶解し、十分に均一に撹拌して混合してから、正極スラリーを取得し、その後、正極スラリーを正極集電体に均一にコーティングし、乾燥、冷間プレス、切り分けを経て、正極シートを取得する。正極集電体の片側における正極活性材料の担持量は0.0263g/cm2である。
【0088】
2)負極シートの製造
活性物質である人造黒鉛、導電剤であるアセチレンブラック、結着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を、95:2:2:1の重量比で、溶剤である脱イオン水に溶解して、溶剤である脱イオン水に均一に混合してから負極スラリーを製造し、そして、負極スラリーを負極集電体銅箔に均一にコーティングし、乾燥してから、負極膜片を取得し、冷間プレス、切り分けを経て、負極シートを取得する。負極集電体の片側における負極活性材料の担持量は0.0121g/cm2である。
【0089】
3)セパレータ
ポリプロピレン膜をセパレータとして使用する。
【0090】
4)電解液の製造
アルゴンガス雰囲気のグローブボックスで(H2O<0.1ppm、O2<0.1ppm)、表中の電解液成分に従って、均一に撹拌してから対応する電解液を取得する。
【0091】
5)電池の製造
正極シート、セパレータ、負極シートを順次に積み上げ、セパレータを正、負極シートの間に位置させ隔離の役割を果たし、次に、巻き取って電極アセンブリを取得し、電極アセンブリを電池ハウジング内に入れ、乾燥した後に電解液を注入し、化成、放置などのプロセスによってリチウムイオン電池を製造する。
【0092】
実施例2-17の二次電池と比較例1-2の二次電池は実施例1の二次電池の製造方法と同様であるが、電解液中の添加剤、溶剤、リチウム塩の構成とパラメータを調整しており、詳細を表1に示す。
【0093】
【0094】
二、電池性能のテスト
【0095】
1、リチウムイオン電池の45℃サイクル性能テスト
45℃で、リチウムイオン電池を1Cで3.65Vまで定電流充電し、次に、3.65Vで電流が0.05C未満になるまで定電圧充電し、次に、リチウムイオン電池を1Cで2.5Vまで定電流放電し、初回放電容量C0を得て、1回目のサイクルとする。このように、充電と放電を繰り返し、リチウムイオン電池の放電容量がC0の80%に減衰するサイクル回数を計算する。
【0096】
2、電池の急速充電能力テスト
25℃で、実施例と比較例で製造された3電極二次電池を0.33C(即ち理論容量の電流値を1h以内に完全に放電する)で充電カットオフ電圧が3.65Vになるまで定電流充電し、その後、電流が0.05Cになるまで定電圧充電し、5min放置し、0.33Cで放電カットオフ電圧が2.5Vになるまで定電流放電し、その実際容量をC0として記録する。
【0097】
次に、電池を0.5C0、1C0、1.5C0、2C0、2.5C0、3C0、3.5C0、4C0、4.5C0の順に全電池の充電カットオフ電圧が3.65Vまたは負極カットオフ電位が0V(いずれか早い方)になるまで定電流充電し、充電が完了するたびに1C0で全電池の放電カットオフ電圧が2.5Vになるまで放電し、異なる充電レートで10%SOC、20%SOC、30%SOC、……、80%SOCまで充電したときに対応する負極電位を記録し、異なるSOC状態でのレート-負極電位曲線をプロットし、リニアフィッティングした後に異なるSOC状態での負極電位が0Vである際に対応する充電レートを得て、該充電レートは該SOC状態での充電ウィンドウであり、20%SOC、30%SOC、……、80%SOCでの充電ウィンドウをそれぞれC20%SOC、C30%SOC、C40%SOC、C50%SOC、C60%SOC、C70%SOC、C80%SOCとし、式(60/C20%SOC+60/C30%SOC+60/C40%SOC+60/C50%SOC+60/C60%SOC+60/C70%SOC+60/C80%SOC)×10%によって計算して、該電池を10%SOCから80%SOCまで充電する充電時間T(min)を得る。該時間が短いほど、電池の急速充電能力が良くなる。
【0098】
三、各実施例、比較例のテスト結果
【0099】
上記方法に従って各実施例と比較例の電池をそれぞれ製造して、各項の性能パラメータを測定し、結果を下記表2に示す。
【0100】
【0101】
表1及び表2から分かるように、本発明の電解液により、対応する電池は優れた急速充電性能と長いサイクル寿命を有し、例えば1100回のサイクル寿命を確保した上で、0-80%SOC急速充電時間は約15minに低下した。
【0102】
なお、本願は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は例に過ぎず、本願の技術的解決手段範囲内で技術的思想と実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏する実施形態はいずれも本願の技術範囲内に含まれる。なお、本願の主旨から逸脱しない範囲内で、実施形態に当業者が想到できる様々な変形、実施形態の一部の構成要素を組み合わせて構築する他の形態も本願の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
1 電池パック
2 上箱体
3 下箱体
4 電池モジュール
5 二次電池
51 ハウジング
52 電極アセンブリ
53 トップカバーアセンブリ
【国際調査報告】