(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】去勢抵抗性前立腺がんの治療薬の調製におけるスタキオースの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/702 20060101AFI20240621BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240621BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20240621BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240621BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240621BHJP
A61K 31/4166 20060101ALI20240621BHJP
A61K 31/085 20060101ALI20240621BHJP
A61P 5/28 20060101ALI20240621BHJP
A61K 31/58 20060101ALI20240621BHJP
A61K 31/501 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
A61K31/702
A61K45/00
A61P13/08
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K31/4166
A61K31/085
A61P5/28
A61K31/58
A61K31/501
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571898
(86)(22)【出願日】2021-07-26
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 CN2021108363
(87)【国際公開番号】W WO2023272831
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】202110744184.2
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514262886
【氏名又は名称】江南大学
【氏名又は名称原語表記】JIANGNAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 1800 Lihu Avenue, Bin Hu District, Wuxi, Jiangsu, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】王栄
(72)【発明者】
【氏名】陳永泉
(72)【発明者】
【氏名】許▲ろ▼
(72)【発明者】
【氏名】王小英
(72)【発明者】
【氏名】朱升龍
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA23
4C084MA24
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA38
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4C206ZB26
4C206ZC42
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は去勢抵抗性前立腺がんの治療薬の調製におけるスタキオースの使用を開示し、生物医学の技術分野に属する。本発明は、スタキオースとアンドロゲン受容体拮抗薬を組み合わせてCRPCの治療薬を調製するための新たな戦略を初めて提案し、多角的且つ多段階の検証研究を行うものである。本発明のスタキオースとアンドロゲン受容体を組み合わせた医薬組成物は去勢抵抗性前立腺がんの治療に使用でき、去勢抵抗性前立腺がんに対するエンザルタミドの阻害効果を顕著に向上させることができ、天然化合物を末期がんに適用し、臨床治療上に重要な意義がある。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
去勢抵抗性前立腺がんの治療薬の調製におけるスタキオースの使用。
【請求項2】
前記使用は、スタキオースを単独で、又はアンドロゲン受容体拮抗薬と組み合わせて去勢抵抗性前立腺がんの治療薬を調製することを含むことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記組成物はスタキオースとアンドロゲン受容体拮抗薬を含むことを特徴とする去勢抵抗性前立腺がんを治療するための医薬組成物。
【請求項4】
アンドロゲン受容体拮抗薬とスタキオースとの質量比は(1~8):1であることを特徴とする請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
アンドロゲン受容体拮抗薬は、エンザルタミド、EPI、アビラテロン、オラパリブのいずれか1種以上を含むことを特徴とする請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物は医薬賦形剤をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記医薬賦形剤は、溶剤、噴射剤、可溶化剤、助溶剤、乳化剤、着色剤、接着剤、崩壊剤、充填剤、潤滑剤、湿潤剤、浸透圧調整剤、安 定剤、流動助剤、矯味剤、防腐剤、懸濁助剤、コーティング材、香味剤、接着防止剤、統合剤、浸透促進剤、pH値調整剤、緩衝剤、可 塑剤、界面活性剤、発泡剤、消泡剤、増粘剤、包接剤、保湿剤、吸収剤、希釈剤、凝集剤及び解膠剤、濾過助剤及び放出阻害剤を含むことを特徴とする請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物は医薬担体をさらに含んでもよいことを特徴とする請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬担体はマイクロカプセル、マイクロスフェア、ナノ粒子及びリポソームを含むことを特徴とする請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物の剤型は、注射液、注射用凍結乾燥粉末剤、徐放性注射剤、リポソーム注射剤、懸濁剤、植込剤、塞栓剤、カプセル剤、錠剤、丸剤及び経口液剤を含むことを特徴とする請求項3~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物医学の技術分野に属し、具体的には、去勢抵抗性前立腺がんの治療薬の調製におけるスタキオースの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アンドロゲン除去療法が進行前立腺がんの標準治療方法であるが、患者は平均1~3年の治療後に最終的に去勢抵抗性前立腺がん(Castration-resistant prostate cancer、CRPC)を発症する。CRPCとは、最初の連続的なアンドロゲン除去療法(ADT)の後に疾患が依然として進行する前立腺がんを指す。2004年に、ドセタキセルが転移性去勢抵抗前立腺がん(metastatic castration-resistant prostate cancer、 mCRPC)患者の全生存期間を延長できることが証明されて以来、アビラテロン酢酸エステル、エンザルタミド、カバジタキセル等のmCRPC疾患段階に対する薬剤が出現し、これらの患者の治療状況を変えたが、CRPCを完全に回復させることは困難である。従って効果的な他の治療標的又は併用治療戦略を見つけることはCRPCの治療における別の研究のホットスポットとなる。
【0003】
近年来、細胞可塑性は標的診断回避モデルとして出現しており、多くのがん薬剤耐性の共通性である。新たな薬剤耐性経路をブロックすると持続細胞(persister cell)を効果的に阻害することができ、例えば、GPX4脂質過酸化経路は、多くのpersister cell状態で高度に発現する効果的な標的である。これまでのところ、CRPC腫瘍にpersister cellがあるか否か、及び新たな効果的な標的を見つけることができるか否かは分かっていない。従って、この研究は、EPI-001及びEnzalutamideによって生成された前立腺がんLNCaP-persister cellから出発して、CRPCを治療するための効果的な併用薬剤を見つけることに焦点を当てている。
【0004】
EPI-001(EPI)は、臨床開発が待たれている、CRPCの治療に用いられる可能性があるAR及びAR-スプライス変異体(AR-Vs)の阻害剤である。CRPCに対するEPIの標的は主にN-末端ドメイン(NTD)である。エンザルタミド(Enzalutamide、Enza)は最初の承認された第2世代ARアンタゴニストであり、従来の抗アンドロゲンに比べてARに対する親和性が5~8倍高い。2012年に、米国FDAはこれに基づきCRPC患者向けたEnzaを承認した。しかし、EPIであれEnzaであれ、CRPCの治療に対する薬剤耐性は通常18カ月前後に出現する。従って薬剤耐性を克服し、CRPCを遅らせるための他の方法は緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする技術的課題は、上記従来の薬剤に存在する薬剤耐性を克服し、EnzaとStacを併用することによりCRPCの治療効果を顕著に向上させ、優れた相乗効果を発揮する効果的なCRPC治療薬を提供することである。
【0006】
スタキオース(Stachyose、Stac)は、ショ糖のグルコース基側に、1,6-グルコシド結合で2つのα-ガラクトースを結合した糖類であり、分子式はC24H42O21である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の目的は去勢抵抗性前立腺がんの治療薬の調製におけるStacの使用を提供することである。
【0008】
本発明の一実施形態では、前記使用は、Stacとアンドロゲン受容体拮抗薬を組み合わせて去勢抵抗性前立腺がんの治療薬を調製することを含む。
【0009】
本発明の第2の目的は、Stacとアンドロゲン受容体拮抗薬を含む、去勢抵抗性前立腺がんを治療するための医薬組成物を提供することである。
【0010】
本発明の一実施形態では、アンドロゲン受容体拮抗薬とStacの質量比は(1~8):1である。好ましくは、EnzaとStacの質量比は1~3:1である。
【0011】
本発明の一実施形態では、アンドロゲン受容体拮抗薬は、エンザルタミド(Enza)、EPI-001(EPI)、アビラテロン、オラパリブのいずれか1種以上を含む。
【0012】
本発明の一実施形態では、前記医薬組成物は医薬賦形剤をさらに含む。
【0013】
本発明の一実施形態では、前記医薬賦形剤は、溶剤、噴射剤、可溶化剤、助溶剤、乳化剤、着色剤、接着剤、崩壊剤、充填剤、潤滑剤、湿 潤剤、浸透圧調整剤、安定剤、流動助剤、矯味剤、防腐剤、懸濁助剤、コーティング材、香味剤、接着防止剤、統合剤、浸透促進剤、pH値調整剤、緩衝剤、可塑剤、界面活性剤、発泡剤、消泡剤、増粘剤、包接剤、保湿剤、吸収剤、希釈剤、凝集剤及び解膠剤、濾過助剤及び放出阻害剤を含む。
【0014】
本発明の一実施形態では、前記製剤の剤型は、注射液、注射用凍結乾燥粉末剤、徐放性注射剤、リポソーム注射剤、懸濁剤、植込剤、塞栓剤、カプセル剤、錠剤、丸剤及び経口液剤を含む。
【0015】
本発明の一実施形態では、前記医薬組成物は医薬担体をさらに含んでもよい。
【0016】
本発明の一実施形態では、前記医薬担体はマイクロカプセル、マイクロスフェア、ナノ粒子及びリポソームを含む。
【0017】
本発明の一実施形態では、大量の研究と探索を行ったところ、本発明は、CRPC治療薬、すなわちEnzaとStacの併用を見出した。研究結果から分かるように、EPI、Enzaに対して耐性のある前立腺がんLNCaP-drug-tolerant persisters(L-DTP)細胞株を作成することにより、LNCaP細胞はEPI、Enzaに対して回復可能な薬剤耐性を獲得し、EnzaとStacを併用すると細胞成長を顕著に阻害でき、薬剤併用効果がCCK8細胞増殖解析により検証され、その相乗作用がCI値により判定される。同時に、C-MYC過剰発現前立腺がんマウスモデルを構築し、動物でのCRPCの治療に対するEnzaとStacの単独使用と併用の効果の差を比較し、薬剤の併用による相乗作用はCRPCに対する単独のEnza又はStac薬剤の阻害効果を大幅に向上させ、両者の相乗作用はin vivo及びin vitroで検証されている。
【0018】
本発明の一実施形態では、本発明は、L-DTP回復可能な薬剤耐性細胞株を作成し、CCK8方法及びCalcusynソフトウェアでCI値を計算した結果、この細胞株では、Enza又はStacの単独使用に比べて、EnzaとStacのin vitro併用がCRPCに対して相乗効果を有することが示された。C-MYC過剰発現前立腺がんマウスモデルを確立することにより、Enzaを長期間投与し薬剤耐性が発生するモデルで、動物におけるEnzaとStacの併用群は、単剤群に比べて、in vivoでより顕著な抗CRPCモデル効果を有することは判明した。
【発明の効果】
【0019】
本発明は以下の有益な効果を有する。
【0020】
本発明は、Stacを利用してCRPC治療薬を調製し、及びEnzaとStac薬剤併用に基づきCRPCを治療するための新たな戦略を初めて提案し、前立腺がんの臨床治療におけるEnzaとStacの使用を促進するものであり、重要な意義がある。薬剤研究は、化合物分子から臨床使用まで平均8~10年かかり、且つ大量の人的及び物的支援が必要となり、時間コスト及び経済的コストが非常に大きい。本発明の解決手段は、天然化合物オリゴ糖の再利用を実現し、創薬から臨床転換までの時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1はDTP (drug-tolerant persisters)とDTEP(drug-tolerant expanded persisters)細胞の形成過程を示す。
【
図2】
図2はDTP及びDTEP細胞におけるAR関連タンパク質の発現変化の特徴を示す。
【
図3】
図3はDTPとDTEP細胞のサイクル効果を示す。
【
図4】
図4はL-DTP細胞における、EPI、EnzaのそれぞれとStacとの併用によるin vitro薬効図を示し、
図4AはL-DTP-EPI、L-DTP-Enza細胞における薬剤併用細胞の相対生存率の棒グラフであり、
図4BはEPI、EnzaのそれぞれとStacとの併用による、L-DTP-EPI、L-DTP-Enza細胞のそれぞれにおけるCI値の棒グラフである。
【
図5】
図5はC-MYC過剰発現前立腺がんマウスモデルにおける、Enzaを連続的に投与し薬剤耐性が発生した後のEnza、Stac及びその併用による前立腺の重量の変化の効果図であり、
図5Aは薬物投与の進行に伴う各群のマウスの前立腺の重量の変化図であり、
図5Bは各群のマウスの前立腺を摘出し写真を撮影した比較写真であり、
図5Cは薬物投与の進行に伴う各群のマウスの体重の変化図である。
【
図6】
図6はC-MYC過剰発現前立腺がんマウスモデルにおける、Enzaを連続的に投与し薬剤耐性が発生した後のEnza、Stac及びその併用による効果図であり、
図6Aは各群のマウスの前立腺組織切片のHE染色写真であり、
図6Bは各群のマウスの前立腺組織切片のPRDX5、AR免疫組織化学写真であり、
図6Cは免疫組織化学による陽性細胞の定量化の棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、明細書の図面及び具体的な実施例を組み合わせて本発明をさらに説明したが、実施例はいかなる形式で本発明を限定するものではない。特に説明しない限り、本発明に用いられる試薬、方法及び装置は本技術分野の従来の試薬、方法及び装置である。
【0023】
特に説明しない限り、以下の実施例で用いられる試薬及び材料は全て市販されている。
【0024】
実施例1 EPI、Enzaを使用して前立腺がんLNCaP細胞でDTP/DTEPを生成するプロセス及びこのモデルの特徴
EPI、Enzaに耐性がある前立腺がんL-DTP細胞株L-DTP-EPI、L-DTP-EnzaはAR及びその標的のタンパク質発現を阻害することができ、細胞成長阻害は、G0/G1期の周期停止として現れる。
【0025】
1、実験方法:
1×106個のLNCaP細胞を10cm細胞培養皿に播種し、翌日接着後、EPI、Enzaをそれぞれ添加して9日間処置し、この期間、薬剤を含む新鮮な培地を3日ごとに交換し、後続試験のために、9日後に一部の細胞(すなわちDTP細胞)を回収し、残りの細胞を薬剤で処置し続け、この期間、薬剤を含む新鮮な培地を3日ごとに交換し、後続試験のために、33日後(すなわちDTEP細胞)回収した。DTP及びDTEP細胞を生成した後、細胞を消化して計数し、1×106細胞量における細胞の割合を算出した。回収したNC、DTP、DTEP細胞は後続のWestern Blot試験に用いられ、この3群の細胞に対して、細胞分解、タンパク質の抽出と定量、SDS-PAGEゲル電気泳動、膜転写、ブロッキング、一次抗体のインキュベーション、二次抗体のインキュベーション、造影を行った後にAR-FL及びその関連する標的タンパク質、AR-Vs及びその関連する標的タンパク質の発現変化、及び細胞周期関連タンパク質の発現の変化を観察した。フローサイトメトリー:PI染色サイクルキットで死細胞を染色し、フローサイトメトリーで細胞周期の変化を測定する。
【0026】
2、結果は
図1、2、3に示された。
図1はDTP及びDTEP細胞のGiemsa染色写真であり、
図2はNC、DTP、DTEP細胞におけるAR & its targets、AR-Vs & its targetsのタンパク質発現の変化を示し、
図3はNC、DTP、DTEP細胞における細胞周期関連タンパク質の発現の変化を示す。
【0027】
その結果は、EPI、Enzaによって生成されたLNCaP-DTP細胞の数が初期播種細胞量の103.11%を占め、LNCaP-DTEP細胞が110.92%を占めることを示している。これらの薬剤耐性細胞はいずれもEPI、Enzaに対して薬剤耐性があり、DTPで細胞が紡錘形になり、成長が阻害され、DTEPで細胞クローンの数が多くなり、細胞成長阻害に抵抗して、細胞が再増殖した。アンドロゲン受容体(AR)及びその標的のタンパク質発現に対するこのような細胞モデルの影響については、DTP状態でARタンパク質の発現が阻害され、DTEPでAR発現がある程度で回復し、ARの標的TMPRSS2、PSAの発現はARと一貫した傾向を維持した。アンドロゲン受容体スプライス変異体(AR-Vs)及びその標的タンパク質発現に対するに影響について、DTP及びDTEP状態で、AR-Vs及びその標的UBE2C、CDC20タンパク質の発現はいずれも連続的な阻害として現れる。このような阻害は細胞周期の停止によって引き起こされ、具体的には、P21(G1期marker)がDTPで上昇し、DTEPはある程度で回復し、Cyclin E1(G1-S期marker)、 CDC6(G1-S期marker) がDTPで下降し、DTEPはある程度で回復し、CDC2(G1-S及びG2-M期marker)がDTPで下降し、DTEPは顕著に回復しなかった。フローサイトメトリー(FACS)分析から、DTPでG0/G1期が停止し、DTEPで回復することが分かった。
【0028】
実施例2 EPI、EnzaのそれぞれとStac薬剤の併用のin vitro効果
さらにCCK8を用いて、薬剤耐性L-DTP細胞にそれぞれ単独使用したり、併用したりすることによる、薬剤耐性L-DTP(EPI)及びL-DTP(Enza)細胞におけるStac薬剤のin vitro抗腫瘍効果を説明した。
【0029】
1、実験方法
薬剤耐性細胞L-DTP(L-DTP(EPI)及びL-DTP(Enza)を含む)を96ウェルプレートに播種し、接着させた後に、高濃度から低濃度まで一連のStac薬剤を調製することにより、最適なStac薬剤濃度を見つけ、続いて、この濃度で、単独使用(L-DTP(EPI)-Stac)、併用[L-DTP(EPI)-combination(EPI+Stac)]、[L-DTP(Enza)-combination(Enza+Stac)]のそれぞれによる、薬剤耐性細胞L-DTPにおける生存率を測定した。最終的に、Calcusynソフトウェアを利用して、L-DTP細胞でCI値を計算した。
【0030】
2、結果は
図4に示された。
図4において、
図4AはL-DTP(EPI)、L-DTP(Enza)薬剤耐性細胞における薬剤併用細胞の相対生存率の棒グラフであり、
図4BはEPI、EnzaのそれぞれとStacとの併用による、L-DTP(EPI)、L-DTP(Enz)薬剤耐性細胞のそれぞれにおけるCI値の棒グラフである。
【0031】
その結果は以下を示している。EPIを9日間連続的に投与し薬剤耐性が発生したL-DTP(EPI)細胞において、EPIを継続投与しても有意な阻害効果が見つけられておらず、Stacを単独で投与すると有意な阻害効果が見つけられており、阻害率が67.48%に達することができ、次に、併用する(EPI+Stac)と51.15%の阻害率に達することができる。同様に、Enzaを9日間連続的に投与し薬剤耐性が発生したL-DTP(Enza)細胞において、Enzaを継続投与しても有意な阻害効果が見つけられておらず、Stacを単独で投与すると有意な阻害率があり、阻害率が62.47%に達することができ、次に、併用する(Enza+Stac)と51.97%の阻害率に達することができる。CI値を計算したところ、StacはL-DTP-EPI細胞において0.49の高い相乗作用に達することができ、L-DTP(Enza)細胞において0.54の高い相乗作用に達することができる。
【0032】
実施例3 C-MYC過剰発現前立腺がんマウスモデルにおける、Enzaを連続的に投与し薬剤耐性が発生した後のEnzaとStacの併用による効果
さらに、前立腺がんマウスモデルにおいて、化学的去勢(すなわち、Enzaを連続的に投与した)後に再発したマウスに対するEnzaとStacの併用の効果を説明した。
【0033】
1、実験方法
C-MYC(Hi-Myc)を過剰発現する自然発生前立腺がんマウスモデルを構築し、4ヵ月で、マウスはmPIN/Cancer transitionに発症し、このとき、NC対照群(溶媒の胃内投与)、Enza投与群にランダムに分け、その後、3日ごとに1回胃内投与し、Enzaが10mg/Kgであり、合計30日間投与し、その後、数匹のマウスの首を切断し、前立腺がんの写真を撮影して、重量を測定し、Enzaが症状を有意に軽減でき、NC対照群に対して前立腺の重量が半分に減少したことが分かり、その後、上記方法で残りのマウスに30日間継続投与し、Enza群に再発があることが分かり、その後(すなわち、ラットが生後6ヶ月の時)、NC対照群(常に溶媒の胃内投与)、Enza単剤群、Stac単剤群、及びEnzaとStac併用群にランダムに分け、対応する投与処置を行い、全て、3日ごとに1回胃内投与し、毎回Enzaが10mg/Kgであり、Stacが80mg/Kgであり、合計30日間投与した。その後、マウスの首を切断し、その前立腺がんに対して写真撮影、重量測定、及び免疫組織化学等の実験を行った。
【0034】
2、結果は
図5及び
図6に示された。
図5において、
図5Aは薬物投与の進行に伴う各群のマウスの前立腺の重量の変化図であり、
図5Bは各群のマウスの前立腺を摘出し写真を撮影した比較写真であり、
図5Cは薬物投与の進行に伴う各群のマウスの体重の変化図である。
図6において、
図6Aは各群のマウスの前立腺組織切片のHE染色写真であり、
図6B、Cは各群のマウスの前立腺組織切片のAR、PRDX5免疫組織化学写真及び陽性細胞の定量化の棒グラフである。
【0035】
Enzaを30日間連続的に投与したマウスの前立腺の重量の平均値は43.9mgであり、このときNC対照群の平均値は88.7mgであり、90日間継続投与したところ、Enza群のマウスの前立腺の重量の平均値は77.1mgになり、このときNC対照群の平均値は98.2mgであり、薬剤耐性再発が発生し、CRPCが引き起こされたのを示し、このとき、すぐに群別に投与し薬剤併用の効果を説明した。
【0036】
群別併用及び単独使用の結果は表1に示された。
【0037】
図5及び表1を組み合わせて分かるように、Enzaの単独使用及びStacの単独使用に比べてEnzaとStacの併用は非常に顕著な効果があり、前立腺の重量は約37.068mgに減少することができ、それと同時に、薬剤耐性後のEnzaの単独使用に比べてStacの単独使用の治療効果はより高く、Stacの単独使用が薬剤耐性のあるCRPCに対して阻害効果を有することを示している。
【0038】
組織切片のHE染色結果(
図6)から、併用治療後に、CRPCの前立腺腫瘍は有意な変形及び線維化が見られることが分かる。免疫組織化学から、EnzaとStacの併用は、Enzaの単独使用及びStacの単独使用に比べて、AR及びPRDX5の発現が顕著に減少したことが分かる。併用の効果が顕著であることを証明する。
【0039】
群別併用及び単独使用の結果は表2に示された。
【0040】
【手続補正書】
【提出日】2024-02-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正書】
【提出日】2024-03-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】