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特表2024-523125吸着剤粒子を組み込むための積層造形技術及びインク配合
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  • 特表-吸着剤粒子を組み込むための積層造形技術及びインク配合 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】吸着剤粒子を組み込むための積層造形技術及びインク配合
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/314 20170101AFI20240621BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20240621BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20240621BHJP
   B01J 20/24 20060101ALI20240621BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240621BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240621BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240621BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20240621BHJP
【FI】
B29C64/314
B01J20/26 A
B01J20/20 B
B01J20/24 A
B41J2/01 501
C08L101/00
B33Y80/00
B29C64/106
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572028
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 US2022030276
(87)【国際公開番号】W WO2022246214
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】63/191,640
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/191,715
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/195,310
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523025539
【氏名又は名称】エクソンモービル テクノロジー アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(71)【出願人】
【識別番号】504466834
【氏名又は名称】ジョージア テック リサーチ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】ウェストン,サイモン シー.
(72)【発明者】
【氏名】ライブリー,ライアン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】アブニー,カーター ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】チャン,フォンイー
(72)【発明者】
【氏名】コロス,ウィリアム ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】クアン,ブンエイ
(72)【発明者】
【氏名】デウィット,スティーブン ジェー.エー.
(72)【発明者】
【氏名】リールフ,マシュー ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】ホームズ,ハンナ イー.
(72)【発明者】
【氏名】リュー,ヤン
【テーマコード(参考)】
2C056
4F213
4G066
4J002
【Fターム(参考)】
2C056FC01
4F213AA01
4F213AA34
4F213AB16
4F213AB19
4F213AB26
4F213AR14
4F213AR15
4F213AR20
4F213WA25
4F213WA92
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL15
4F213WL25
4F213WL96
4G066AA05B
4G066AB24B
4G066AC11B
4G066BA36
4G066CA35
4G066DA01
4G066FA37
4J002AA001
4J002AB021
4J002AB031
4J002BK001
4J002CN011
4J002CN031
4J002GD02
4J002GH00
4J002HA03
(57)【要約】
溶媒ベースの積層造形(SBAM)技術を用いて、接触器構造体、及び/又は、吸着若しくは吸収接触器における使用のための構造体を形成するためのインク組成物が提供される。SBAMを用いて接触器を形成する方法も提供される。インク組成物は、接触器による吸着を強化するために相当量の吸着剤粒子を含むことが可能である。金属有機骨格(MOF)構造及びゼオタイプ骨格構造は、SBAMにより接触器構造体を形成するためのインク組成物に組み込むことが可能な吸着剤粒子の種類の例である。インクは、積層造形法によって生成されるポリマー構造材料の構造成分として機能し得るポリマー成分をさらに含むことが可能である。このような構造材料は、吸着剤粒子が組み込まれたポリマー材料に相当し得る。幾つかの態様では、ポリマー構造材料及び/又は吸着剤粒子は、プロセス流体流からのCOの吸着に対して選択性を有していてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒ベースの積層造形用のインク組成物であって、
インク組成物の重量に対して2.0wt%以上の吸着剤材料と、
35wt%以下のポリマーと、
前記ポリマー用の溶媒と、
構造体形成成分と、を備え、
前記溶媒と非溶媒との総合重量に対する、前記ポリマーの重量の比率が0.7以下である、インク組成物。
【請求項2】
i)前記インク組成物は前記吸着剤材料を10wt%以上含む、
ii)前記ポリマーの重量に対する前記吸着剤の重量の比率は、1.0以上である、
iii)前記インク組成物は、前記ポリマーを15wt%以下含む、
iv)前記溶媒と前記構造体形成成分との総合重量に対する、前記ポリマーの重量の比率は、0.20以下である、
v)i)~iv)の2つ以上の組み合わせが提供される、又は、
vi)i)~iv)の3つ以上の組み合わせが提供される、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
前記構造体形成成分は非溶媒を含み、前記非溶媒の重量に対する前記ポリマーの重量の比率は、0.80以下である、又は、
前記構造体形成成分が細孔形成成分を含む、又は
これらの組み合わせが提供される、先行する請求項のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項4】
前記インク組成物は、実質的に水を含まない、先行する請求項のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項5】
前記インク組成物は、前記ポリマー、前記溶媒、及び前記構造体形成成分を含む溶液における、前記吸着剤材料の粒子の懸濁を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項6】
前記ポリマーに対する前記吸着剤材料の重量の比率が2.0以上である、又は、
前記インク組成物が前記吸着剤材料を20wt%以上含む、又は、
これらの組み合わせが提供される、先行する請求項のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項7】
前記吸着剤材料は、金属有機骨格材料、ゼオタイプ骨格材料、活性炭、共有結合有機骨格、多孔質の芳香族骨格、多孔質の有機ポリマー、又はこれらの組み合わせを含み、前記吸着剤材料は、任意選択により、CO吸着について選択性を有する吸着剤を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項8】
前記吸着剤材料は、MOF-274、HKUST-1、EMM-67、EMM-44、又はこれらの組み合わせを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項9】
前記ポリマーは、固有微細孔性のポリマー、酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン、又は、これらの組み合わせを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項10】
3D印刷されたポリマー構造を形成する方法であって、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のインク組成物を印刷するステップと、前記溶媒の一部を蒸発させて連続したポリマー構造を形成するステップと、を含む、方法。
【請求項11】
前記連続したポリマー構造の表面積は、50m/g以上であり、又は、
前記連続したポリマー構造は、窒素物理吸着によって決定される細孔容積が0.50cm/g以上であり、又は、
これらの組み合わせが提供される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記連続したポリマー構造の表面積は、前記吸着剤材料の表面積及び前記ポリマーの表面積の加重平均よりも10%以上小さい、請求項10又は請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の方法に従って、インク組成物の3D印刷によって形成される連続したポリマー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2021年6月1日付で出願された米国仮出願第63/195,310号、2021年5月21日付で出願された米国仮出願第63/191,640号、及び、2021年5月21日付で出願された米国仮出願第63/191,715号の特許協力条約(PCT)に基づく出願であり、PCT第8条に基づきその優先権を主張するものである。当該米国特許出願の全体を、それが以下に完全に示されているものとして、参照により本明細書に援用する。
【0002】
(技術分野)
吸着剤粒子を包含するポリマー材料に対応する構造材料に基づいて吸着接触器構造体を形成するための、インク配合及び対応する積層造形技術が提供される。
【背景技術】
【0003】
様々な種類のCO源(産業規模及び小規模の源の両方)からのCO排出量を軽減することは、現在関心を集める分野である。CO排出量を軽減するための戦略の1つの種類は、吸着剤又は吸収剤を使用して、COを潜在的な排出ガス流から除去し、その後このCOを、大気中へのCOの放出を低減、最小化、又は排除するために処理可能な流れの一部として脱着することである。
【0004】
COを吸着又は吸収することができる様々な材料が知られているが、このような吸着剤/吸収剤を効果的な接触器構造体において実施することには、課題が残っている。接触器構造体を設計する際に困難な幾つかの点は、従来の材料を使って実施可能な接触器の設計の種類が限定されていることに関する。従来の接触器の設計では、典型的には、吸着剤/吸収剤を充填層(ベッド)又はモノリスの一部として組み込んでいた。充填層の構造は、大量の吸着剤/吸収剤を容積中に組み込むためには有効であり得る。充填層中の粒子は、収着剤粒子、収着剤粒子と結合剤若しくは希釈剤との組み合わせ、又は、収着剤が支持材の上に堆積した支持材料から成る粒子に相当し得る。しかしながら、充填層は、典型的には、充填層を流れる流体の量と比較して大きな圧力低下を引き起こし、CO回収といった用途のために充填層吸着材を大容積に拡大させることは、困難になる。金属又はセラミックモノリスが、充填層に対する一選択肢を提供可能であり、圧力低下に関する困難を低減する流路を提供可能である。しかしながら、金属又はセラミックモノリスに導入可能な吸着剤部位の密度は、流路の表面に限定されていることが多い。加えて、モノリス内の温度を管理することは、別の一連の課題を提示し得る。特に、モノリス構造体を冷却することは、典型的には、熱伝達流体をモノリスの内部に導入することを必要とする。製造後のセラミック又は金属モノリスには複合体構造を機械加工することが難しいため、熱伝達流体とプロセス流体流とが混合するというリスクを低下又は最小化しつつ、目標量の熱伝達流体をモノリス構造体の内部に提供することは困難であり得る。
【0005】
接触器構造体の少なくとも一部を、充填層吸着剤に伴って生じる流体流制限を低減又は最小化しつつ、接触器構造体内の収着部位の密度が従来のモノリスよりも改善されるように形成するためのシステム及び方法が求められている。むしろ、結果として得られる接触器構造体は、例えば、工業規模の燃焼排ガス流からCOを除去するために必要となり得るような大量の流体流を処理するために好適であり得る。
【0006】
米国特許出願公開第2021/0040343号には、溶媒ベースの積層造形のための、ポリマー、溶媒、及び非溶媒を含む三成分インク組成物を使用するための方法が記載されている。3次元印刷では、インク層を堆積した後、ポリマー構造を、インクから溶媒の一部を蒸発させた後の相反転により形成する。
【0007】
「高圧CO分離用の、Torlon(登録商標)、ポリアミドイミドポリマーから成る欠陥の無い非対称の中空繊維膜」(Kosuri, M. R., Koros, W. I, Journal of membrane Science, 2008, 320, 65)という名称の論文には、三成分相図のバイノーダル線を曇点法によって決定することが記載されている。
【発明の概要】
【0008】
様々な態様において、溶媒ベースの積層造形用のインク組成物が提供される。インク組成物は、インク組成物の重量に対して2.0wt%以上の吸着剤材料を含む。インク組成物は、35wt%以下のポリマーをさらに含む。インク組成物は、ポリマー用の溶媒をさらに含む。インク組成物は、ポリマー用の構造体形成成分をさらに含み、溶媒と非溶媒との総合重量に対する、ポリマーの重量の比率は0.7以下である。
【0009】
幾つかの態様において、インク組成物は、以下の特徴の1つまたはそれ以上を含むことが可能である。すなわち、吸着剤材料が10wt%以上であること、ポリマーの重量に対する吸着剤の重量の比率が1.0以上であること、ポリマーが15wt%以下であること、及び/又は、溶媒と構造体形成成分との総合重量に対する、ポリマーの重量の比率が0.20以下であること。
【0010】
幾つかの態様において、このようなインク組成物を用いて、3D印刷されたポリマー構造を形成することが可能であり、すなわち、このようなインク組成物を印刷し、その後、溶媒の一部を蒸発させて連続したポリマー構造を形成することが可能である。幾つかの態様では、このような3D印刷によって形成される連続したポリマー構造が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、MOF吸着剤と、MOF吸着剤を組み込む3D印刷によって形成される繊維とについて得られる窒素物理吸着等温線を示す図である。
【0012】
図2図2は、図1の窒素物理吸着等温線を拡大したスケールで示す図である。
【0013】
図3図3は、接触器構造体内の流路から、流路を規定する多孔質の構造材料中への拡散の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここに記載の詳細な説明及び特許請求の範囲における全ての数値は、示される当該数値について「約」又は「およそ」の値によって変更され、当業者であれば予測するであろう実験誤差及び変動を考慮したものである。
[概要]
【0015】
様々な態様において、溶媒ベースの積層造形(SBAM)技術を用いて、接触器構造体、及び/又は、吸着又は吸収接触器における使用のための構造体を形成するために、インク組成物が提供される。SBAMを用いて接触器を形成するための方法も提供される。インク組成物は、接触器による(COといった)成分の吸着を強化するために相当量の吸着剤粒子を含むことが可能である。金属有機骨格(構造体)(MOF)構造体及びゼオタイプ骨格構造は、SBAMによって接触器構造体を形成するためのインク組成物に組み込み可能な種類の吸着剤粒子の例である。このインクは、積層造形法によって生成されるポリマー構造材料の構造成分として機能し得るポリマー成分を含むことが可能である。このような構造材料は、吸着剤粒子が組み込まれたポリマー材料に相当し得る。幾つかの態様では、ポリマー構造材料及び/又は吸着剤粒子は、プロセス流体流からCOを吸着するための選択性を有していることが可能である。幾つかの態様では、ポリマー構造材料及び/又は吸着剤粒子は、ライトガスを含有する気相流から気相成分を吸着するための選択性を有していてもよい。
【0016】
溶媒ベースの積層造形(SBAM)は、3次元(3D)印刷によって構造体を形成するための方法である。SBAMでは、構造体は、少なくとも溶媒、ポリマー成分、及び添加成分を含むインクを使って目標の形状を印刷することによって形成される。ここでインクは、溶媒が蒸発する際に、構造材料を形成可能である。インク組成物における溶媒、ポリマー、及び添加成分の量は、相図に基づいて選択可能であり、そのため、目標量の溶媒が蒸発すると、連続したポリマー相が形成される。この添加成分を、ここでは「構造体形成成分」と呼ぶ。幾つかの態様では、添加成分(つまり、構造体形成成分)は、インク組成物中の非溶媒であり得る。幾つかの態様では、細孔形成成分(代替的に、細孔形成剤と呼ばれる)を、非溶媒に追加して及び/又は非溶媒の代わりに、構造体形成成分として使用可能であることが分かった。なお、温度によって誘発される相分離は、SBAMプロセスの一つの種類である。
【0017】
相当量の吸着剤粒子を潜在的インク組成物に添加することによって、インク組成物のレオロジーにかなりの変化が生じることが分かった。これは、一つには、吸着剤粒子がインク中に分散されるためである。結果として、インク組成物は、溶媒中のポリマーや添加成分の溶液ではなく、懸濁液に相当する。様々な態様では、相当量の粒子を含むインク組成物が提供される。これは、SBAMを行って接触器及び/又は接触器構造体の一部を形成することに適したレオロジーを有している。様々な態様では、インク組成物は、溶媒、ポリマー成分、吸着剤粒子、及び、構造体形成成分の混合物に相当し得る。構造体形成成分は、非溶媒、細孔形成成分、又は、これらの混合物に相当し得る。
【0018】
MOFやゼオタイプ骨格構造を有する材料といった幾つかの種類の吸着剤材料は、比較的大きい表面積を有していることが可能であり、これは、このような吸着用途用の材料の有効性に寄与する。SBAM法によって、吸着剤材料をポリマー構造に組み込む際に結果として形成されるポリマー構造は、構造体を形成するために使用されるポリマー構造材料中のポリマー材料及び吸着剤材料の特性に基づき予測される表面積よりも、少ない表面積を有していることが分かった。表面積及び細孔容積は予測されるものよりも少ないが、意外にも、吸着剤材料の吸着容量は実質的に維持され得ることが分かった。
【0019】
SBAM法を用いて吸着剤を組み込むポリマー構造材料を形成することは、吸着剤を接触器構造体の中に組み込むための従来の方法に対して、様々な利点を提供可能である。SBAMを使うことにより、他の方法ではセラミック又は金属モノリスにおいて実現することが困難な内部形状を有する構造体の製造が可能となる。例えば、固形のモノリスに直線流路を追加することは可能であるが、ヘッダ構造、又は、角度のある複数の屈曲を有する流路といった形状を導入することは、かなり困難であり得る。後で取り外す型の周りにセラミック又は金属を形成することを含む製造技術も用いてもよいが、これは、吸着接触器において一般的に望まれる小型の形状寸法を作成するために使用されると、重大な信頼性の問題を引き起こし得る。加えて、3重周期極小曲面材料といった幾つかの構造体は、射出成形技術では形成できない。対照的に、多くの種類の形状は、SBAMを用いてポリマー構造材料から構造体を一層ずつ形成することによって直接形成可能である。
【0020】
接触器の形状に関して大きな設計の融通性を許容することに加えて、SBAMを使って接触器及び/又は接触器用の構造体を形成することによって、吸着に寄与する接触器の体積が増大し得る。特に、様々な態様では、吸着剤(MOF、ゼオライト、又は、他のゼオタイプの材料等)をSBAM製造工程に使用されるインク配合に組み込むことが可能である。これは、吸着剤が、接触器を形成するために使用される構造材料の容積中に分散され得ることを意味している。ポリマー骨格用に選択されたポリマー、インク組成物、及び/又は、ポリマー構造を形成するための条件に基づき、十分な細孔容積及び/又は複雑な流路を有するポリマー構造体を形成可能であり、これによって、接触器構造体内の流体が、接触器構造体の一部において流路を超えて吸着剤材料にアクセスすることが可能になる。図3は、この一例を示している。図3では、流路310は、接触器構造体内の流路に対応する。流路310は、流路310を包囲する構造材料330によって規定される。図3に示される例では、矢印315は、流路310における流れの方向を示している。矢印320は、流路における流体の構造材料330内への拡散を示している。この矢印320によって示される拡散は、構造材料への拡散、及び、構造材料から流路310に戻る拡散の両方に相当する。多孔質のポリマー構造を形成することによって、多孔質のポリマー構造の流路を通るプロセス流体が、ポリマー構造の細孔の中に拡散可能であり、これによって、ポリマー構造の容積のかなりの割合が吸着/脱着サイクルに参加することが可能になる。これによって、吸着が、接触器の増大した割合の容積において生じることが可能になる。接触器の増大した割合の容積とは、潜在的に、熱伝達流体の輸送を管理するためだけでない接触器のほぼ全ての容積に相当し得る。これは、モノリスの吸着剤容量が流路の表面の吸着部位に相当する従来のモノリスの状況とは対照的である。従来のモノリスは、典型的には、このようなモノリスに吸着剤がウォッシュコーティングといった方法で添加されるので、ある程度の多孔率を有し得るが、プロセス流体がアクセスできる吸着部位を提供するモノリスの容積を増大する能力は、限られている。
【0021】
充填層吸着剤と比較して、接触器構造体を吸着部位が構造材料の容積中に分散された状態で形成可能であることは、(少なくとも部分的に)SBAMを用いて製造された接触器が、充填層と同様に、アクセス可能な吸着部位の容積が増えるという利点を有することを可能にする。しかしながら、専用の流路も設けられているので、充填層に関連する流体流の問題点、例えば、大きな圧力低下や望まない流れの「流路」は、低減又は最小化され得る。
【0022】
様々な態様では、吸着剤をポリマー構造材料に組み込んで、ここに記載されるようなインク組成物を用いて吸着剤接触器を形成することも、他の種類の積層造形法を用いて形成される構造物に対して、利点を提供可能である。様々な態様では、インク組成物は、ポリマー材料の溶液及び/又は懸濁液に相当するので、セラミック組成物を形成するために必要な硬化ステップは必要ない。結果として得られるポリマー構造は、インクの一部を蒸発させることによって製造中に形成可能であり、直接、ポリマー層が形成される。この点が、構造体を形成するために引き続き現像ステップが必要な製造方法とは、対照的である。
[インク組成物]
【0023】
様々な態様では、吸着剤粒子を含むポリマー接触器構造を形成するためのインク組成物は、少なくとも1つの溶媒、少なくとも1つの構造体形成成分(非溶媒及び/又は細孔形成成分に対応する)、溶媒中に溶解したポリマー材料、及び、溶液に分散及び/又は懸濁した吸着剤材料の粒子を含み得る。
【0024】
様々な態様では、相当量の吸着剤材料を含むポリマーインク組成物は、3D印刷を用いて、ポリマー構造材料に基づいた構造体を形成するために使うことが可能である。ポリマー構造は、ポリマーを溶媒と少なくとも1つの構造体形成成分とを組み合わせた溶液として堆積させた後、溶媒蒸発によって相反転を始動させ、ポリマー構造を形成させることによって形成される。結果として得られるポリマー構造は、構造体を形成するために使用されるポリマー構造材料中のポリマー材料と吸着剤材料との比率に基づき予測される表面積よりも低い表面積を有していることが分かった。表面積及び細孔容積は予測されるものよりも低いが、吸着剤材料の吸着容量は、実質的に維持され得る。
【0025】
三成分相図に基づき、さらなる吸着剤粒子を含まないインク組成物を用いて3D印刷を行う場合、インク組成物は、インク組成物が均質相に相当するように選択可能であるが、溶媒蒸発が目標量となるとインク組成物がバイノーダル線を交差することができ、これによって相反転が生じる。幾つかの態様では、3D印刷の間、インクは、溶媒を含む雰囲気下で堆積し得るので、溶媒蒸発は、インク組成物が所望の表面に「印刷された」後まで、低減又は最小化される。例えば、インクを堆積させるための印字ヘッドは、印刷が行われる際にさらなる溶媒を分散させるための1つ又は複数のさらなるノズルを含んでいてもよく、そのため、相反転はインクが当該表面上に堆積するまでは生じない。一層のインク組成物が堆積又は印刷された後、溶媒の蒸発が可能となる。任意選択により、インクが堆積した表面を加熱することにより、溶媒の蒸発を促進させてもよい。溶媒濃度が低減されるので、溶媒系は、最終的に不安定になり、溶媒中に溶解されたポリマーが析出して連続的なポリマー骨格を形成する。この構造形成成分及び任意の残留溶媒が、分離相を形成し、分離相によって、さらなる細孔容積をポリマー構造に形成することが促進され得る。その後、この構造形成成分及び残留溶媒を、製造プロセス中に、場合によってはさらなる乾燥工程を行うことによって除去可能である。
【0026】
MOF粒子が添加されていない3成分インク組成物を用いて溶媒ベースの積層造形(SBAM)を行う場合、インク用の組成物は、ポリマー、溶媒、及び、非溶媒についての三成分相図に基づき選択可能である。特に、3次元(3D)印刷に適したインク組成物については、ポリマー、溶媒、及び、非溶媒の相図は、均質(溶液)領域を、ポリマーが溶媒及び非溶媒から分離相を形成する非均質領域から分離するバイノーダル線を含むことになる。三成分相図におけるこのバイノーダル線は、「曇点」法を用いることといった、任意の好適な方法で判定可能である。例えば、別個のポリマー相及び溶媒/非溶媒相への分離の開始による「曇った」状態を有する1つの組成物(又は複数の組成物)を決定するために、一定の濃度のポリマーにおいて、溶媒の非溶媒に対する比率が断続的に低くなる一連の組成物を形成することが可能である。このプロセスを一連のポリマー濃度、溶媒/非溶媒の比率、又はこれらの組み合わせにおいて繰り返し、バイノーダル線を決定することが可能である。バイノーダル線を決定するための他の方法がKosuriらによって提供されている(Kosuri, M. R., Koros, W. I, Journal of Membrane Science, 2008, 320, 65)。
【0027】
従来のインク組成物を使用する代わりに、3D印刷は、ポリマー、溶媒、及び構造体形成成分(非溶媒又はポリマー)を含むことに加えて相当量の吸着剤を含むインク組成物を用いることによって、実行可能であることが分かった。様々な態様では、ポリマーに対する吸着剤粒子の重量比が0.7以上、又は1.0以上(つまり、ポリマーに対する吸着剤の重量比が1対1)、又は1.5以上、又は2.0以上、又は3.0以上、例えば最大6.0又は場合によってはそれ以上であるインク組成物が提供される。加えて又は代わりに、インク組成物は、インク組成物の重量に対して、10wt%以上、又は15wt%以上、又は20wt%以上、例えば最大50wt%又は場合によってはそれ以上の吸着剤を含有することが可能である。さらに加えて又は代わりに、インク組成物におけるポリマーと吸着剤との総合重量は、インク組成物の重量に対して、25wt%以上、又は30wt%以上、又は40wt%以上、例えば最大60wt%以上又は場合によってはそれ以上に相当し得る。さらに加えて又は代わりに、インク組成物は、インク組成物の重量に対して7.0wt%~15wt%、又は10wt%~15wt%、又は12wt%~15wt%のポリマーを含むことが可能である。なお、インク組成物は、相反転が生じ得る程度に十分な量のポリマーを含むことが可能である。
【0028】
より一般的に言えば、インク組成物は、インク組成物の重量に対して2.0wt%以上、又は5.0wt%以上、又は10wt%以上、又は15wt%以上、又は20wt%以上、例えば最大50wt%又は場合によってはそれ以上の吸着剤を含むことが可能である。より一般的に言えば、インク組成物は、インク組成物の重量に対して7.0wt%~35wt%、又は10wt%~35wt%、又は12wt%~35wt%、又は7.0wt%~15wt%、又は10wt%~15wt%、又は12wt%~15wt%のポリマーを含むことが可能である。
【0029】
インク組成物に非溶媒が含まれる幾つかの態様では、インク組成物において、非溶媒に対するポリマーの比率は、比較的低いことが可能である。従来では、通常、3成分インク組成物のポリマー含有量が、非溶媒含有量と同程度であることが望ましい。例えば、従来の(懸濁した吸着剤粒子を含まない)インク組成物は、非溶媒に対するポリマーの重量比率が、0.5(つまり1:2)以上、又は0.7以上、又は1.0以上、又は1.5以上、例えば最大20又は場合によってはそれ以上であってもよい。対照的に、幾つかの態様では、ここに記載されるインク組成物は、非溶媒に対するポリマーの重量比が、0.50未満、又は0.40以下、又は0.35以下、又は0.30以下、例えば最小で0.10又は場合によってはそれ以下であり得る。他の態様では、非溶媒に対するポリマーの重量比は、0.8以下、又は0.5以下、又は0.40以下、又は0.35以下、又は0.30以下、例えば最小で0.10又は場合によってはそれ以下であり得る。
【0030】
加えて又は代わりに、非溶媒が使用される幾つかの態様では、インク組成物は、溶媒及び非溶媒の総合重量に対するポリマーの重量比が、比較的低くてもよい。従来では、懸濁した吸着剤粒子を含まないインク組成物にとって、溶媒と非溶媒の組み合わせに対するポリマーの重量比は、0.25以上、又は0.3以上、例えば最大で1.0又は場合によってはそれ以上であり得る。対照的に、幾つかの態様では、ここに記載されるインク組成物は、溶媒と非溶媒の組み合わせに対するポリマーの重量比が、0.20以下、又は0.17以下、又は0.14以下、例えば最小で0.08又は場合によってはそれ以下であり得る。他の態様では、溶媒と非溶媒の総合重量に対するポリマーの重量比は、0.70以下、又は0.50以下、又は0.40以下、又は0.30以下、又は0.20以下、又は0.17以下、又は0.14以下、例えば最小で0.08又は場合によってはそれ以下であり得る。
【0031】
幾つかの代替的態様では、より広範な吸着剤材料を、インク組成物に組み込んでもよい。例えば、幾つかの態様では、インク組成物は、ポリマーに対する吸着剤の重量比が0.3~6.0、又は0.5~6.0、又は1.0~6.0、又は1.5~6.0、又は2.0~6.0、又は3.0~6.0であり得る。ポリマーに対する吸着剤材料の比率がより低い場合、吸着剤材料を組み込む利点が低減されるが、このようなインク組成物と従来の3成分のインク組成物との間の差異も低減される。このような態様では、インク組成物は、インク組成物の重量に対して3.0wt%以上、5.0wt%以上、又は10wt%以上、又は15wt%以上、又は20wt%以上、例えば最大で50wt%又は場合によってはそれ以上の吸着剤を含むことが可能である。
【0032】
様々な吸着剤材料を、3D印刷によって構造体を形成するためのインク組成物の中に組み込むことが可能である。幾つかの例は、金属有機骨格(MOF)材料に相当し得る。材料の他の例は、ゼオタイプ骨格材料(シリコン及びアルミニウムとは異なる骨格原子を有する材料を含む)に相当し得る。さらに他の例は、限定される訳ではないが、活性炭、多孔性芳香族骨格材料、共有結合性有機骨格材料、多孔性有機ポリマー、及び、ケージ材料を含み得る。より一般的に言えば、粒子として形成可能な任意の種類の吸着剤を、吸着剤粒子が溶媒において、また、インク組成物から構造体を作成する間において安定している限り、ここに記載されるようなインク組成物において使用可能である。吸着剤粒子は、0.1μm~50μmの平均粒径を有していることが可能である。ここで、吸着剤粒子の粒径は、当該粒子を含むことが可能な最小境界球面の直径として定義される。
【0033】
金属有機骨格(MOF)は、共有結合を用いてリガンドを有機結合することによって連結された金属イオン/酸化物二次形成ユニットから成る、比較的新規のクラスの多孔質材料である。MOFは、低密度、高い内部表面積、並びに、均一寸法の細孔及び流路によって特徴付けられる。MOFは、典型的には結晶物質である。幾つかの種類のMOF材料は、ゼオライトイミダゾール骨格(「ZIF」と呼ばれることもある)、非従来型のMOF(「UMOF」と呼ばれることもある)、及び、SIFSIX MOFを含むことが可能である。
【0034】
様々なMOFが、CO吸着性能を有するものとして特徴付けられてきた。例えば、Mg-MOF-74は、Mg2+イオン及び2,5-ジヒドロキシテレフタル酸に基づく金属有機骨格材料に相当する。別の例として、MOF-274は、4,4′-ジオキシドビフェニル-3,3′-ジカルボン酸塩に組み合わされたMg2+金属イオンに基づく金属有機骨格材料に相当する。別の例として、EMM-67は、4,4′-ジオキシドビフェニル-3,3′-ジカルボン酸塩に組み合わされた、Mg2+及びMn2+金属イオンに基づく金属有機骨格材料に相当する。MOF-274及びEMM-67は、ジアミン、N,N′-ジメチルエチレンジアミン、又は2-アミノメチルピペリジンといった官能性を添加してEMM-44といった構造を生成することによって、さらに強化される。さらに別の例として、MIL-101(Cr)は、3個のクロムの三方晶ノードと、MTN(IZAコード)トポロジのベンゼン-ジカルボン酸塩連結によってブリッジされた少なくとも13個の酸素原子とから成る金属有機骨格である。さらに別の例は、EMM-42である。EMM-42は、MIL-101(Cr)と同じ二次形成ユニットを有する金属有機骨格であり、つまり3個のクロム原子の三方晶ノードであって、隣接するクロムノードを結合するベンゼン-ジカルボン酸塩リガンドの幾つか又は全てが、フェニレンビスホスホン酸に結合するリガンドによって置換された、3個のクロム原子の三方晶ノードを有する金属有機骨格である。さらに別の例は、MOF-99とも呼ばれるHKUST-1である。HKUST-1骨格は、ベンゼン-1,3,5-トリカルボン酸リンカー分子によって接続された二量体の金属ユニットから形成されている。パドルウィールユニットとは、金属中心の配位環境を説明するために一般的に使用されている構造モチーフであり、HKUST-1構造の二次形成ユニット(SBU)とも呼ばれる。パドルウィールは、2つの金属中心をブリッジする4つのベンゼン-1,3,5-トリカルボン酸リンカー分子から構成される。
【0035】
この考察では、ゼオタイプとは、酸素原子をブリッジすることによって接続された四面体原子によって形成された多孔質の骨格構造を有する結晶物質を指すものと定義される。公知のゼオタイプ構造体の例が、国際ゼオライト学会の構造委員会を代表して発行された「Atlas of Zeolite Frameworks」(第6回改訂版、Ch. Baerlocher, L.B. McCusker, D.H. Olson, eds., Elsevier, New York (2007))と、対応するウェブサイトhttp://www.iza-structure.org/databases/とに記載されている。ゼオライトとは、ゼオタイプ骨格型のアルミノケイ酸塩を含むゼオタイプの一種を指すが、ゼオタイプとは、より一般的に言えば、シリコン及びアルミニウムとは異なるヘテロ原子の酸化物も含み得るゼオタイプ骨格を有する結晶構造も指す。このようなヘテロ原子は、通常、ゼオタイプ骨格に含めることに適していると知られる任意のヘテロ原子、例えば、ガリウム、ホウ素、ゲルマニウム、リン、亜鉛、及び/又は、ゼオタイプ骨格のシリコン及び/又はアルミニウムと置換可能な他の遷移金属等、を含むことが可能である。なお、この定義の下、ゼオタイプは、シリコアルミノホスフェート(SAPO)材料、シリコホスフェート(SiPO)材料、又はアルミノホスフェート(AlPO)材料といった材料を含むことが可能である。
【0036】
3D印刷の間にポリマー構造を形成するために、インク組成物はポリマーも含んでいてよい。インク組成物に組み込まれることが可能なポリマーの幾つかの例は、固有微細孔性のポリマーである。固有微細孔性のポリマー(PIM)は、重要な気体分離にとって関心を集める新しい材料である。ポリマー骨格に一体化されたスピロ中心が、高効率な充填を妨げ、ポリマーに微細孔を生じさせる。この微細孔は、接触器構造を形成するために有利であり得る。なぜなら、微細孔によって、接触器構造中の流路を通って流れるプロセスガスが、接触器容積の別の部分にアクセスできるようになるからである。
【0037】
他の種類の多孔質のポリマーを用いて、インク組成物を形成してもよい。幾つかの態様では、インク組成物中のポリマーは、限定される訳ではないが、酢酸セルロース(Cellulose Acetate)、ポリイミン(例えば、Matrimid5218)、ポリアミド-イミド(Torlon(登録商標)等)、ポリエーテルスルホン(PES)、PIM-1の誘導体(アミドキシム化されたPIM-1等)、及び、微細孔性に作用する固有の立体フラストレーションを有する他のポリマーを含むことが可能である。
【0038】
幾つかの態様では、溶媒は、テトラヒドロフラン、アセトン、及び/又は、N-メチルピロリドンであり得る。より一般的に言えば、溶媒は、インク組成物中でのポリマーに対する溶解度が高い溶媒であり得る。揮発性溶媒化合物におけるポリマーの溶解度のレベルを判定するための多くの方法が存在する。例えば、幾つかの態様では、ポリマー及び揮発性溶媒化合物についてヒルデブランド溶解パラメータが測定され得る。幾つかの実施形態では、ポリマー及び揮発性溶媒化合物のヒルデブランド溶解パラメータは、3.6MPal/2以下の差異を有していることが可能である。当業者であれば、このような実施形態が、ポリマーを溶融して実質的に均一な溶液を生成可能な揮発性溶媒化合物を提供することになることは理解されよう。態様によっては、潜在的な溶媒は、限定される訳ではないが、アセトアルデヒド、酢酸、アセトン、アセトニトリル、ブタンジオール、ブトキシエタノール、ジエチレントリアミン、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチル・スルホキシド(DMSO)、ジオキサン、エタノール、エチルアミン、エチレン・グリコール、ギ酸、フルフリルアルコール、グリセロール、メタノール、メチルジエタノールアミン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、プロパノール、プロパンジオール、プロパン酸、プロピレン・グリコール、ピリジン、テトラヒドロフラン(THF)、トリエチレン・グリコール、過酸化水素、硝酸、硫酸、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、又は、これらの組み合わせを含むことが可能である。
【0039】
インク組成物に構造形成成分として非溶媒が含まれている態様では、非溶媒は、インク組成物におけるポリマーに対する溶解度が低い又は最低である化合物であり得る。非溶媒化合物におけるポリマーの溶解度のレベルを判定するための多くの方法が存在する。幾つかの態様では、非溶媒は、最初に、ポリマー及び非溶媒化合物についてハンセン溶解パラメータを測定することによって選択され得る。例えば、ポリマー及び非溶媒は、ポリマー及び非溶媒化合物のハンセン溶解パラメータから算出される相対エネルギー差が、1以上となり得るように選択可能である。当業者であれば、このような実施形態が、ポリマーを溶融不可能な非溶媒化合物を提供することになることは理解されよう。
【0040】
幾つかの態様では、非溶媒は、トルエン、ジメチルアセトアミド、又は、これらの組み合わせに相当し得る。幾つかの態様では、非溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)であり得る。幾つかの態様では、非溶媒は、水であること、及び/又は、水を含むことが可能である。他の態様では、非溶媒は、実質的に、水を含んでいなくてもよく(0.1wt%未満であってもよく)、これによって、インク組成物において感水性MOFを使用することが可能になる。HKUST-1は、感水性MOFの一例である。幾つかの態様では、非溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、又はn-プロパノールといったアルコールであり得る。幾つかの態様では、非溶媒とは、非溶媒の混合物に相当し得る。幾つかの態様では、非溶媒と細孔形成成分との混合物を、インク組成物に添加してもよい。なお、インク組成物を堆積させた後に存在することになる条件下で、溶媒の蒸発速度は、非溶媒の蒸発速度よりも早くなり得る。なぜなら、そうでなければ、ポリマー構造を形成するための相反転は起こり得ないからである。
【0041】
加えて又は代わりに、細孔形成成分が、構造形成成分として含まれていてもよい。LiNOは、インク組成物において使用可能な細孔形成成分の一例である。ポリビニル・ピロリドン(PVP)は、細孔形成成分の別の一例である。細孔形成成分は、比較的少ない量、例えば、インク組成物の0.1wt%~20wt%、又は0.1wt%~10wt%、又は0.1wt%~5.0wt%、又は1.0wt%~20wt%、又は1.0wt%~10wt%に相当する量で添加可能である。
【0042】
表1は、溶媒ベースの積層造形用のインク組成物を形成するために使用可能な、ポリマー、溶媒、及び、非溶媒又は細孔形成成分(つまり、構造体形成成分)の組み合わせの例を示している。表1の最終カラムは、溶媒ベースの積層造形(SBAM)用のインク組成物を形成するために挙げられたポリマーと組み合わせて使用すると問題を生じさせ得る、特定の溶媒を示している。なお、LiNOは、表1の「非溶媒」カラムに含まれているが、実際には、細孔形成成分に相当する。
【表1】
【0043】
インク組成物を用いて構造体を形成するためのプリンタの一例は、直接インク書き込みによるプリンタであり得る。例えば、幾つかの態様では、プリンタは、インク保持容器、インク保持容器に取り付けられるように構成されたインクノズル、蒸気ノズル、及び、基板用可動ステージを含み得る。幾つかの態様では、可動ステージは、基板に取り外し可能に取り付けられるように構成されていてもよい。インクノズルと可動ステージとの間の距離は、制御ボリューム外殻によって実質的に包囲された空隙を含み得る。例えば、制御ボリューム外殻は、蒸気ノズルを収容するための開口部を有する円筒殻を含み得る。制御ボリューム外殻は、インクノズル及び空隙を実質的に包囲するために、任意の中空形状を有していることが可能である。中空形状には、限定される訳ではないが、円筒形、円錐形、四角形、円錐台形、楕円形、又は、これらの任意の組み合わせが含まれる。幾つかの代替態様では、層を形成する間に、さらなる溶媒が、蒸気として制御ボリューム外殻の中に分散され、インク組成物の層が堆積した直後の蒸発量を管理することを支援することが可能である。
【0044】
幾つかの態様では、3D構造を形成するためにインク組成物が堆積したベッド又は表面は、加熱されたベッド又は表面であり得る。加熱されたベッド又は表面を使用することによって、溶媒の蒸発を支援し、相反転を生じさせてポリマー構造を形成することが可能である。幾つかの態様では、3D印刷構造を形成するためにインク組成物が堆積したベッド又は表面は、40℃~80℃の温度に加熱され得る。
[3D印刷によって生成されるポリマー構造の特性]
【0045】
ここに記載されるようなインク組成物の3D印刷によって生成されたポリマー構造は、窒素吸着等温線に基づき、意外にも小さい表面積を有し得る。3D印刷によって生成されたポリマー構造は、連続したポリマー構造中で支持され、分散され、及び/又は、他の方法で組み込まれた吸着剤の粒子に相当する。従来では、このような吸着剤とポリマーとの混合体の表面積は、これら2つの成分の加重平均に実質的に対応することが予測される。しかしながら、結果として得られるポリマー構造の表面積は、従来予測される値よりも、(予測値に対して)少なくとも5.0%、又は少なくとも8.0%、又は少なくとも10%だけ低くなり得、例えば最小で、予測値よりも30%だけ小さい、又は場合によってはそれ以下のポリマー構造の表面積を有し得ることが分かった。
【0046】
加えて又は代わりに、ここに記載されるようなインク組成物の3D印刷によって生成されたポリマー構造は、低減された細孔容積を有し得る。従来では、このような吸着剤とポリマーとの混合体の細孔容積は、これら2つの成分の加重平均に相当することが予測される。しかしながら、結果として得られるポリマー構造の細孔容積は、従来の予測値よりも、(予測値に対して)少なくとも5.0%、又は少なくとも8.0%、又は少なくとも10%だけ小さくなり得、例えば最小で、予測値よりも30%だけ小さい、又は場合によってはそれ以下のポリマー構造の細孔容積を有し得ることが分かった。
【0047】
この考察では、SBAMによって形成されたポリマー構造材料の表面積及び細孔容積は、それぞれ、N吸着等温線をASTM D3663(BET表面積)及びASTM D4641(N細孔容積)に基づいて測定することによって判定できる。特定されている場合、細孔容積を、ASTM D4284(細孔容積用のHgポロシメトリ)に基づいて判定してもよい。
【0048】
幾つかの態様では、ポリマー構造材料(包含された吸着剤を含む)の表面積は、50m/g以上、又は100m/g以上、又は200m/g以上、又は500m/g以上、例えば最大3000m/g、又は場合によってはそれ以上であり得る。なお、このような表面積及び/又は細孔容積は、ポリマー及びMOFの両方からの表面積及び細孔容積の寄与分を含む。幾つかの態様では、ポリマー構造は、(窒素物理収着によって決定される)細孔容積が0.5cm/g~1.3cm/gであり、及び/又は、(水銀ポロシメトリによって決定される)細孔容積が1.0cm/g~3.0cm/gであり得る。
[ジアミン添加された吸着剤の3D印刷された構造体への組み込み]
【0049】
MOF-274又はEMM-67といった特定のMOFは、ジアミンが添加されると、有利なタイプVのCO等温線を示すことになる。これによって、温度スイングがわずかしか発生しない理想に近い作用性能が実現されるので、ほとんどの吸着剤が示すタイプIの等温線に対して利点を提供し得る。
【0050】
いくつかの状況では、ジアミン添加されたMOFを特定の溶媒に浸すことにより、ジアミンを、アミンが添加されたMOFから除去することが可能となる。3D印刷プロセスの性質により、インク組成物に組み込まれたMOFを、多数の溶媒に曝すことが可能であり、これによって、MOFに添加された何らかのアミンの少なくとも一部、及び、場合によってはほぼ全てを除去することが可能となる。3D印刷中にポリマー構造材料中に組み込まれたMOF吸着剤からのジアミンの除去は、様々な方法で低減、最小化、及び/又は、緩和することが可能である。幾つかの態様では、インク組成物用の溶媒及び非溶媒は、添加されたジアミンの除去を低減又は最小化するように選択可能である。添加されたジアミンのこのような剥離を低減又は最小化することが可能なインク組成物の例は、ヘキサン、シクロヘキサン、及び/又は、トルエンを含む溶媒/非溶媒の対を含むことが可能である。加えて又は代わりに、ポリマー構造材料から構造体を形成した後、気相プロセスを用いて、ポリマー構造材料に組み込まれたMOF吸着剤にさらなるジアミンを添加することが可能である。
【0051】
幾つかの態様では、ジアミン添加されたMOF(EMM-44等)の添加されたジアミンは、インク組成物中の成分の選択に基づいて3D印刷によって形成されたポリマー構造材料内に実質的に維持され得る。特に、ジアミン添加されたMOFと、印刷プロセス中に添加ジアミンの損失を低減又は最小化可能な、a)溶媒/非溶媒の組み合わせ、又はb)ポリマー、溶媒、溶媒の組み合わせと、を含むインク組成物を形成可能である。より一般的に言えば、溶媒及び非溶媒は、非極性非プロトン溶媒(ヘキサン、トルエン、及び/又は、シクロヘキサン等)、又は、ルイス酸金属部位(テトラヒドロフラン及び/又はジメチル・スルホキシド等)に寄与することが可能なルイスの塩基孤立電子対を有さない極性非プロトン溶媒から、選択可能である。添加されたジアミンの除去を引き起こす傾向が高い溶媒は、N-メチルピロリドン及びジメチルホルムアミドといった窒素含有極性非プロトン溶媒を含むことが可能である。水、メタノール、及び/又は、エタノールといった極性プロトン性溶媒も、添加されたジアミンの除去を引き起こす傾向が強い場合がある。
【0052】
加えて又は代わりに、幾つかの態様では、印刷の後に気相プロセスを用いてジアミンを、ジアミンの添加に利用可能な部位を有するMOFに添加することによって、3D印刷された構造体におけるジアミン添加されたMOFの量を増やすことが可能である。MOFを吸着剤として包含するポリマー構造材料を用いて構造体を形成した後、システム全体をジアミン含有溶液に接触させることによって、ジアミンを添加可能である。溶液の例は、トルエン等の溶媒中の15vol%~25vol%の2-アミノメチルピペリジンである。このように添加可能なジアミンの他の例は、限定される訳ではないが、N,N'-ジメチルエチレンジアミン、スペルミン、及び、トリエチレンテトラミンを含む。ジアミン添加に使用される溶媒は、非極性炭化水素及び/又は芳香族溶媒(例えば、トルエン、ヘキサン)であり得るが、驚くべきことに、メタノールも使用できる。メタノールは、3D印刷用のインク組成物の一部である場合、ジアミンをMOFから剥離させる傾向があると言われるにもかかわらず、使用できる。メタノールを使ってアミンを添加することは、3D印刷プロセスによって形成された構造体に残留した溶媒を除去するように作用し得る。
[実施例1-インク組成物及び3D印刷された繊維(PIM-1)]
【0053】
CO吸着に対して選択性を有する異なる2種類のMOF材料を使って、一連のインク組成物を作成した。HKUST-1に対応するMOFを使って、第1のシリーズの組成物を作成した。HKUST-1を含有する良好に分散された印刷インク組成物を調製するために、最初に、MOFを溶媒混合物中に分散させ、1時間超音波処理を行った。溶媒としてテトラヒドロフラン(THF、ACS grade、Alfa Aesar社)を選択し、非溶媒としてジメチルアセトアミド(DMAc、ACS grade、Alfa Aesar社)を選択した。超音波処理は、粒子凝集を効果的に阻止することができた。そして、MOF懸濁液を、3Dプリンタインクカートリッジの中に移した。その後、乾燥したPIM-1細粉を、MOF懸濁液に添加した。この混合物を含むカートリッジを封止して、80℃の回転炉に12時間設置し、ポリマーを溶かして、均一分散を生成した。冷却後、このインクを即座に、溶液ベースの積層造形に使用した。
【0054】
これらの懸濁液型のインク組成物を試験するために、SBAMによって、インク組成物を単繊維に3D印刷した。HKUST-1を含有するインク組成物を、溶媒(THF)を含む雰囲気下で印刷し、単繊維の印刷中に基板にインクが堆積するまで蒸発を最小化した。その後、溶媒の蒸発を可能とし、結果として、溶媒/非溶媒が混合した部分を有する湿ったポリマー構造を形成した。3D印刷の後、この湿った複合物を100℃で12時間真空乾燥させて、一部の残留した溶媒及び非溶媒を除去した。
【0055】
表2は、様々な繊維を印刷するために使用したインク組成物を示している。比較のために、幾つかの対照用繊維も印刷した。表2では、一行目は、PIM-1だけの対照用繊維に対応し、2行目は、純(neat)HKUST-1粒子の値に対応する。3行目は、THF及びDMAC中のPIM-1の溶液において懸濁したHKUST-1ナノ粒子を用いたインク組成物に対応する。この最終行のHKUST-1のPIM-1に対する重量比は、4:1であった。
【表2】
【0056】
乾燥した繊維を形成した後、結果として得られた乾燥したサンプルの表面積及び孔隙率を、77K窒素物理吸着によって特徴付けた。図1には、表2に示される値に加えて、物理吸着等温曲線が示されている。表2に示されるように、水銀ポロシメトリを用いて、さらなる細孔容積値も得た。
【0057】
HKUST-1/PIM-1サンプルの表面積及び細孔容積は、予測値よりも低かった。表2に示されるように、HKUST-1だけの表面積は、1650m/gであった。結果として得られたポリマー構造において、HKUST-1のポリマーに対する比率が4:1であることに基づき、表面積は、およそ1465m/gであることが予測できたことになる。対照的に、測定された表面積は、1208m/gであった。これは、結果として得られるポリマー構造におけるHKUST-1のPIM-1に対する比率に基づき予測される表面積よりも、18%低い。同様に、測定された細孔容積も、予測されるものよりも、およそ20%低かった。
【0058】
図1及び図2は、様々なサンプルの表面積及び細孔容積を得るための特徴付けの間に収集した窒素物理吸着等温線を示している。図1及び図2は、HKUST-1サンプルについてのN吸着の等温線を示している。図1及び図2に示されるように、80wt%のHKUST-1と20wt%のPIM-1との複合ポリマー材料のグラム当たりの吸着は、HKUST-1材料のグラム当たりの吸着の約80%であった。ポリマー材料が80wt%のMOFを含有しているとすると、これは、吸着剤材料の吸着容量が、実質的に維持されていることを示している。複合ポリマー材料中の吸着剤の表面積及び細孔容積が低減されているにもかかわらず、吸着剤材料の吸着容量は維持されている。従来では、複合ポリマー材料のグラム当たりの吸着は、複合材料中の吸着剤の量に基づき、20%低減されるだろうと予測できたことになる。従来では、以下の要因のうちの1つまたはそれ以上により、さらに15%~20%の吸着の低減が予測されていたことになる。要因は、a)複合材料中の表面積及び/又は細孔容積が低減されること、b)細孔の相互接続性が潜在的に低いこと(3D印刷された材料が良好に形成される場合には軽減されるが)、c)ポリマーを吸着剤の細孔に挿入すること、アクセス可能な細孔容積を充填すること、及び/又は、d)細孔開口をコーティング、閉塞、又はそれ以外の方法で遮断して、そうでなければ閉塞されていない吸着剤の細孔構造へのアクセスを否定すること、である。対照的に、複合材料中の吸着剤の量による低減だけは、明確に観察された。なお、ポリマー材料も、幾つかの基準吸着容量を有しているが、複合ポリマー材料中のポリマーの重量割合が低いため、この寄与分は小さいと予測される。
[実施例2-インク組成物及び3D印刷された繊維(PES)]
【0059】
およそ20.6wt%のポリエーテルスルホン(PES)、2.3wt%のポリビニルピロリドン(PVP)、68.5%のジメチルアセトアミド(DMAc)、及び8.6%の水(H2O)からなる溶液を作成することによって、第2のシリーズのインク組成物を作成した。溶液中のEMM-67とPESとの総量が、溶液の重量の25wt%~75wt%となるように一連の溶液を作成した。以下は、最終構造において、目標重量が10gのポリマー、溶媒、非溶媒、及び細孔形成剤と、50wt%のEMM-67とを有するインク組成物を調製することの一例である。6.85gのDMAcと0.86gのH2Oとの混合物に、2.06gのEMM-67を添加した。この混合物を、超音波処理槽において12時間超音波処理し、EMM-67粒子を分散させた。そして、この混合物に、2.06gのPES及び0.23gのPVPを添加し、ポリマー溶解が起こる加熱ローラー(約50℃)上のガラスバイアルに配置した。この混合物(インク組成物に相当する)が均質になった時点で(1~3日後)、インク組成物を、ステンレス鋼のカートリッジに配置し、改変版Creality3Dプリンタにおいて印刷した。
【0060】
ポリエーテルスルホンをポリマーとして、かつ、EMM-44として知られるジアミン添加されたMOFをインク組成物の一部として使用して、第3のシリーズ及び第4のシリーズの組成物を生成した。なお、第2及び第3のシリーズのインク組成物の両方については、インク配合及びそれに続く印刷プロセスの性質により、添加されたジアミンの少なくとも一部がEMM-44から剥離されるので、結果として得られる構造材料に組み込まれたMOFの少なくとも一部は、EMM-44ではなく、EMM-67に対応する。
【0061】
第3のシリーズの組成物について、最初に、およそ15wt%のポリエーテルスルホン(PES)、65.6wt%のジメチルアセトアミド(DMAc)、及び19.4wt%の硝酸リチウム(LiNO)から成る溶液を形成することによって、インク組成物を形成した。そして、溶液中のEMM-44とPESとの総量が、溶液の重量の25wt%~75wt%となる溶液が形成されるようにEMM-44を添加することによって、一連の溶液を形成した。
【0062】
以下は、均質インク組成物を形成する手順の一例である。この例では、インク組成物の目標最終重量は、100gのポリマー、溶媒、及び構造体形成成分(LiNOの形、細孔形成成分)を含むインク組成物を形成するためのものであったが、他の任意の好適な量のインク組成物を形成してもよい。インク組成物中のEMM-44の重量は、100gのポリマー、溶媒、及び、構造体形成成分に加わる重量に相当する。この例では、目標は、およそ25wt%のEMM-44を含有するインク組成物を作成することであった。
【0063】
(およそ100gのポリマー、溶媒、及び、構造体形成成分を有する)インク組成物を形成するために、20wt%の溶媒、非溶媒、及びポリマーに対応する初期混合物を調製した。この例では、この初期混合物は、3gのPES、14.7gのDMAc、及び、4.7gのLiNOに相当する。初期混合物を、溶液が均質になるまで(1~4日)、加熱ローラー(およそ50℃)上のガラス瓶の中に配置した。その後、残りの80wt%のLiNO及びDMAcを混合することによって、分散溶液を調製した。これは、56.2gのDMAc及び18.8gのLiNOに相当する。このステップにおいて、さらなる量のDMAcを添加して、EMM-44の細孔内に入ることになる溶媒とした。LiNOがDMAcに溶解するまで、剪断混合及び超音波処理を交互に行った。そして、EMM-44を添加し、EMM-44粒子が分散するまで、再び、剪断混合及び超音波処理を交互に行った。そして、初期混合物を溶液に添加して、ポリマーの残留部分との混合物を形成し、加熱して(およそ60℃)剪断混合を6時間行って、ポリマーの溶解を開始した。そして、混合物を、残りのポリマーの溶解が起こる加熱ローラー(約50℃)上のガラス瓶の中に設置した。混合物(インク組成物に相当する)が均質になった時点で(1~3日後)、インク組成物を、ステンレス鋼のカートリッジに配置し、加熱して(約60℃)ドープのガス抜きを行い、その後、改変版Creality3Dプリンタにおいて印刷を行なった。なお、インク組成物は、溶媒雰囲気無しに印刷した。
【0064】
同様の手順により、PES及びEMM-44の総合重量が様々である(インク組成物の重量に対して、総合重量がおよそ25wt%~75wt%である)インク組成物を調製した。そしてこのインク組成物を用いて、3D印刷により構造体を形成した。これらの構造体のうちの少なくとも幾つかについて3D印刷を行う方法は、3D印刷された構造体を加熱したベッドに形成して溶媒の蒸発を促進させることを含む。3D印刷によって構造体を形成した後、印刷後工程を用いて、結果として得られた構造体から少なくとも一部のLiNOを除去した。この例では、結果として得られた構造体を水に3日間浸すことにより、印刷後工程であるLiNOの除去を行った。1日につき1回、水を代えた。3日目が過ぎると、構造体をメタノールに1時間浸した。メタノールは、20分毎に交換した。
【0065】
第4のシリーズのインク組成物も、PES及びEMM-44を用いて形成した。しかしながら、異なる溶媒及び異なる造体形成成分を用いた。一つにはこれらの差異により、結果として得られた3D印刷された構造体は、比較的小さい表面積を有していた。したがって、この第3のシリーズのインク組成物に基づくインクから3D印刷された構造体を形成することには成功したが、結果として得られた3D印刷された構造体は、プロセス流体からの成分の吸着に関する用途での使用に適した性能はほとんど有していなかった。これは、BET表面積が30m/g未満、又は10m/g未満、例えば最小で0.1m/g、又は場合によってはそれ以下であることに相当する。
【0066】
第4のシリーズのインク組成物については、インク組成物は、EMM-44を吸着剤として、PESをポリマーとして、n-メチルピロリドン(NMP)を溶媒として、メタノール(MeOH)を非溶媒として含んでいた。インク組成物を調製することの一例は、6gのEMM-44をNMP(120g)とMeOH(30g)との混合物に添加し、続いて、EMM-44粒子を確実に分散させるために超音波処理をおよそ4時間行うことであった。そして、結果として得られたEMM-44/NMP/MeOH溶液において、60gのPESを溶解し、ローラー上に一晩放置した。さらに25gのPESを3日間にわたって徐々に添加した。結果として得られたインク組成物を、改変版Creality3Dプリンタへの取付用のステンレス筒の中に移した。インク組成物を溶媒雰囲気無しに印刷した。なお、インク組成物中のメタノールの存在により、EMM-44の添加されたジアミンは、除去されている可能性があるので、インク組成物中の少なくとも一部のMOF粒子は、Mg-MOF-274に変更されていたかもしれない。
[さらなる実施形態]
【0067】
実施形態1
溶媒ベースの積層造形用のインク組成物であって、
インク組成物の重量に対して2.0wt%以上の吸着剤材料と、
35wt%以下のポリマーと、
前記ポリマー用の溶媒と、
構造体形成成分と、を備え、
前記溶媒と非溶媒との総合重量に対する、前記ポリマーの重量の比率が0.7以下である、インク組成物。
【0068】
実施形態2
i)前記インク組成物は前記吸着剤材料を10wt%以上含む、
ii)前記ポリマーの重量に対する前記吸着剤の重量の比率は、1.0以上である、
iii)前記インク組成物は、前記ポリマーを15wt%以下含む、
iv)前記溶媒と前記構造体形成成分との総合重量に対する、前記ポリマーの重量の比率は、0.20以下である、
v)i)~iv)の2つ以上の組み合わせが提供される、又は、
vi)i)~iv)の3つ以上の組み合わせが提供される、実施形態1に記載のインク組成物。
【0069】
実施形態3
前記構造体形成成分は非溶媒を含み、前記非溶媒の重量に対する前記ポリマーの重量の比率は、0.80以下である、又は、
前記構造体形成成分が細孔形成成分を含む、又は
これらの組み合わせが提供される、先行する実施形態のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0070】
実施形態4
前記インク組成物は、実質的に水を含まない、先行する実施形態のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0071】
実施形態5
前記インク組成物は、前記ポリマー、前記溶媒、及び前記構造体形成成分を含む溶液における、前記吸着剤材料の粒子の懸濁を含む、先行する実施形態のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0072】
実施形態6
前記ポリマーに対する前記吸着剤材料の重量の比率が2.0以上である、又は、
前記インク組成物が前記吸着剤材料を20wt%以上含む、又は、
これらの組み合わせが提供される、先行する実施形態のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0073】
実施形態7
前記吸着剤材料は、金属有機骨格材料、ゼオタイプ骨格材料、活性炭、共有結合有機骨格、多孔質の芳香族骨格、多孔質の有機ポリマー、又はこれらの組み合わせを含み、前記吸着剤材料は、任意選択により、CO吸着について選択性を有する吸着剤を含む、先行する実施形態のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0074】
実施形態8
前記吸着剤材料は、MOF-274、HKUST-1、EMM-67、EMM-44、又はこれらの組み合わせを含む、先行する実施形態のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0075】
実施形態9
前記ポリマーは、固有微細孔性のポリマー、酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン、又は、これらの組み合わせを含む、先行する実施形態のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0076】
実施形態10
3D印刷されたポリマー構造を形成する方法であって、実施形態1~9のいずれか1項に記載のインク組成物を印刷するステップと、前記溶媒の一部を蒸発させて連続したポリマー構造を形成するステップと、を含む、方法。
【0077】
実施形態11
前記連続したポリマー構造の表面積は、50m/g以上であり、又は、
前記連続したポリマー構造は、窒素物理吸着によって決定される細孔容積が0.50cm/g以上であり、又は、
これらの組み合わせが提供される、実施形態10に記載の方法。
【0078】
実施形態12
前記連続したポリマー構造の表面積は、前記吸着剤材料の表面積及び前記ポリマーの表面積の加重平均よりも10%以上小さい、実施形態10又は11に記載の方法。
【0079】
実施形態13
実施形態10~12のいずれか1項に記載の方法に従って、インク組成物の3D印刷によって形成される連続したポリマー構造。
【0080】
本発明を特定の実施形態を参照しつつ説明及び図解してきたが、当業者であれば、本発明は、必ずしもここに図示されていない変形例にも有用であることは理解されよう。このため、本発明の真の範囲を判定するためには、添付の特許請求の範囲だけを参照されたい。
図1
図2
図3
【国際調査報告】