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特表2024-523126NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体を用いた免疫関連障害、腎障害、肝障害、溶血性障害、及び酸化的ストレス関連障害の処置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体を用いた免疫関連障害、腎障害、肝障害、溶血性障害、及び酸化的ストレス関連障害の処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7008 20060101AFI20240621BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20240621BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240621BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
A61K31/7008
A61P1/16
A61P13/12
A61P7/04
A61P17/02
A61P39/06
A61P29/00
A61P37/06
A61P37/00
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K47/69
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/36
A61K9/10
A61K9/08
A61K9/12
A61P31/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572081
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(85)【翻訳文提出日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 US2022033794
(87)【国際公開番号】W WO2022266322
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】202141027391
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】63/236,974
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523437743
【氏名又は名称】ミトパワー エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】MITOPOWER LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 征史
(72)【発明者】
【氏名】サブラマニアン, ジー. マニ
(72)【発明者】
【氏名】プラネシュ, グアサム ツムクル
(72)【発明者】
【氏名】ガナパティ, ガンガダーラ
(72)【発明者】
【氏名】ザカリア, ニキル サジ
(72)【発明者】
【氏名】クマール, ケー. エス. アジャイ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA22
4C076AA24
4C076BB01
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC14
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC19
4C076CC32
4C076DD51
4C076DD67
4C076EE30
4C076EE31
4C076EE38
4C076GG06
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA13
4C084MA21
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB351
4C084ZB352
4C084ZC751
4C084ZC752
4C084ZC801
4C084ZC802
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA34
4C086EA02
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA21
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA53
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZB07
4C086ZB09
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZB35
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、免疫関連障害(たとえば、全身性炎症性応答症候群及び敗血症)、腎障害(たとえば、急性腎傷害及び肝腎症候群[HRS])、肝障害(たとえば、急性肝不全及びHRS)、溶血性障害(たとえば、溶血及び溶血性貧血)、及び酸化的ストレス、損傷、又は傷害に関連する障害及び病態(たとえば、メトヘモグロビン血症及び貧血)を処置するための、ジヒドロニコチンアミドリボシド(NRH)、ジヒドロニコチン酸リボシド(NARH)、若しくはそれらの還元誘導体のin vivo及びex vivo使用に関する。NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体は、in vivo又はex vivoで、単独で又は1つ以上の追加治療剤、たとえば、抗炎症剤又は/及び抗酸化剤との組合せで、使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫関連障害、腎障害、肝障害、溶血性障害、又は酸化的ストレス、損傷、若しくは傷害に関連する障害若しくは病態を処置する方法であって、処置を必要とする被験者にジヒドロニコチンアミドリボシド(NRH)、ジヒドロニコチン酸リボシド(NARH)、若しくはそれらの還元誘導体、又はそれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、水和物、包接体、多形体、若しくは立体異性体を治療有効量で投与すること、或いは処置を必要とする被験者からの細胞又は生体液に、それをex vivoで接触させること、を含む、方法。
【請求項2】
NRH、NARH、若しくはそれらの還元誘導体にex vivoで接触される前記被験者からの前記細胞又は生体液が、酸化的ストレス、損傷、若しくは傷害により特徴付けられるか、又は酸化的ストレス、損傷、若しくは傷害のリスクがあり、或いは/及び前記被験者が、免疫関連障害、腎障害、肝障害、溶血性障害、又は酸化的ストレス、損傷、若しくは傷害に関連する障害若しくは病態に罹患している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記免疫関連障害が、免疫系若しくは免疫機能の過剰活性化に関連する障害、炎症性障害、自己免疫性障害、又はアレルギー性障害、或いはそれらのいずれかの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記免疫関連障害が全身性炎症性応答症候群(SIRS)又は敗血症である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記腎障害が、腎炎、糸球体腎炎、腎炎症候群、ネフローゼ、糸球体ネフローゼ、ネフローゼ症候群、腎線維症、急性腎傷害(腎前性、内因性腎性、若しくは腎後性原因を有するAKI)、慢性腎疾患(CKD)、末期腎不全(ESKD)、又は肝腎症候群(1型若しくは2型HRS)、或いはそれらのいずれかの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記腎障害がAKI又はHRSである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記肝障害が、肝炎(アルコール性若しくは非アルコール性)、アルコール性肝疾患(ALD)、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、アルコール性脂肪肝炎(ASH)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、肝線維症、肝硬変(アルコール性若しくは非アルコール性)、肝毒性(たとえば、薬剤誘発肝傷害[DILI])、急性若しくは慢性肝傷害、急性肝不全(ALF)、慢性肝不全急性増悪(ACLF)、慢性肝不全(CLF)、急性肝疾患、慢性肝疾患(CLD)、又はHRS(1型若しくは2型)、或いはそれらのいずれかの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記肝障害が、アルコール性肝炎、肝硬変、DILI、急性肝傷害、ALF、ACLF、又はHRSである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記溶血性障害が、溶血又は溶血性貧血(遺伝性/内因性原因又は後天性/外因性原因)である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記酸化的ストレス、損傷、若しくは傷害に関連する障害若しくは病態が、内因性プロセス(たとえば、活性化された好中球若しくはマクロファージなどの免疫細胞による、又はオキシダーゼ[たとえば、NADPHオキシダーゼ若しくはキサンチンオキシダーゼ]、オキシゲナーゼ[たとえば、モノオキシゲナーゼ若しくはジオキシゲナーゼ]、若しくは一酸化窒素シンターゼなどの酵素による、活性酸素種及び窒素種の発生)、感染(たとえば、B型、C型、若しくはD型肝炎ウイルス、HIV、エプスタイン・バーウイルス、インフルエンザA型、呼吸器合胞体ウイルスなどのウイルスの、又はヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)若しくはバクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis)などの細菌の)、薬剤/医薬(前掲)、代謝物(たとえば、クロロアセトアルデヒド[イホスファミドの毒性代謝物]、若しくはアトルバスタチンの代謝物)、食物(たとえば、ソラマメ)、毒素又は毒(たとえば、アルコール、四塩化炭素、1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン[MPTP]、若しくは鉄)、又は放射線(たとえば、UV、若しくはX線などの電離線)により誘発される細胞、組織、若しくは器官中の酸化的ストレス又はそれらに対する酸化的損傷若しくは傷害;赤血球細胞(RBC)、白血球細胞(WBC、リンパ球など[たとえば、T細胞、B細胞、又はナチュラルキラー細胞])、腎細胞(たとえば、腎管状上皮細胞)、肝細胞、肺細胞(たとえば、肺上皮細胞及び肺胞細胞)、精細胞、及び卵母細胞中の酸化的ストレス又はそれらに対する酸化的損傷若しくは傷害;血液障害;ミネラルの欠損代謝が関与する障害{たとえば、ウィルソン病のような銅オーバーロード障害、若しくはヘモクロマトーシス(たとえば、遺伝性ヘモクロマトーシス若しくは続発性ヘモクロマトーシス[たとえば、輸注性鉄オーバーロード、又はALD、NAFLD、ASH、NASH、アルコール性若しくは非アルコール性肝硬変などの肝障害に続発する鉄オーバーロード])のような鉄オーバーロード障害、無セルロプラスミン血症、パントテン酸キナーゼ関連神経変性(ハラーフォルデン・シュパッツ症候群)、又はフリードライヒ運動失調症};高レベルのメタロタンパク質(たとえば、ヘモグロビン、ミオグロビン、シトクロム[たとえば、シトクロムa、b、c、若しくはd]、鉄-硫黄クラスターを有するタンパク質、フェリチン、若しくはCu-Znスーパーオキシドジスムターゼ)を有する組織若しくは器官(たとえば、肝臓若しくは腎臓)に対する酸化的損傷若しくは傷害;薬剤/医薬(たとえば、イホスファミドなどの化学療法剤)により誘発される脳症;気道障害(たとえば、喘息、慢性閉塞性肺疾患[COPD]、急性若しくは慢性肺傷害、又は急性呼吸窮迫症候群[ARDS]);眼障害{たとえば、白内障、黄斑症(たとえば、加齢性黄斑変性[AMD])、及び網膜症(たとえば、非増殖性網膜症又は網膜変性)};男性又は女性不妊症;免疫関連障害;腎障害;肝障害;溶血性障害;又はそれらのいずれかの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記酸化的ストレス、損傷、若しくは傷害に関連する血液障害が、メトヘモグロビン血症(後天性若しくは遺伝性)又は貧血(たとえば、溶血、メトヘモグロビン/ヘモグロビン比の増加、若しくはメトヘモグロビン血症に起因する)である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
NRH、NARH、若しくはそれらの還元誘導体が、たとえば、血液透析又は血液濾過を受けている被験者において、RBC中の酸化的ストレス又はRBCに対する酸化的損傷若しくは傷害、溶血若しくはメトヘモグロビン形成、又はそれらのいずれかの組合せ若しくはすべてを防止又は減少させるために使用される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記酸化的ストレス、損傷、若しくは傷害に関連する障害若しくは病態が、メトヘモグロビン血症、イホスファミド誘発脳症、敗血症、敗血症性ショック、若しくはアナフィラキシーであり、NRH、NARH、若しくはそれらの還元誘導体が、メチレンブルーなしで又はメチレンブルーの安全性若しくは/及び効能を増強するためにメチレンブルーとの組合せで使用される、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
NRH、NARH、若しくはそれらの還元誘導体が、非経口的に(たとえば、注射若しくは注入により)、たとえば、静脈内に、皮下に、若しくは筋肉内に投与される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
NRH、NARH、若しくはそれらの還元誘導体が、経口的に投与される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
被験者からの細胞又は生体液にex vivoで前記接触させることが、前記被験者からの血液、血漿、血清、リンパ液、脳脊髄液、滑液、精液、又は卵胞液に、NRH、NARH、若しくはそれらの還元誘導体をex vivoで接触させることを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記被験者が、免疫関連障害(たとえば、SIRS若しくは敗血症)、溶血性障害(たとえば、溶血)、又は血液障害(たとえば、貧血)に罹患しており、前記被験者からの血液が、NRH、NARH、若しくはそれらの還元誘導体でex vivo処置される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記被験者への投与後の血液中の又は前記ex vivo媒体(たとえば、血液)中のNRH、NARH、若しくはそれらの還元誘導体の濃度(たとえば、定常状態濃度)が、約1~1000μM、1~500μM、若しくは500~1000μM、又は約1~250μM、250~500μM、500~750μM、若しくは750~1000μMである、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記被験者への投与後の血液中の又は前記ex vivo媒体(たとえば、血液)中のNRH、NARH、若しくはそれらの還元誘導体の濃度(たとえば、定常状態濃度)が、約1~200μM、1~150μM、1~100μM、若しくは100~200μM、又は約1~50μM、50~100μM、100~150μM、若しくは150~200μMである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記被験者への投与後の血液中の又は前記ex vivo媒体(たとえば、血液)中のNRH、NARH、若しくはそれらの還元誘導体の濃度(たとえば、定常状態濃度)が、投与又は処置当たり少なくとも約1hr、2hr、3hr、6hr、8hr、又は12hr持続する、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
NRH、NARH、若しくはそれらの還元誘導体が、ボーラスとして1日1回、2回、3回、若しくは4回、又は連続注入により前記被験者に静脈内又は皮下投与される、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記被験者に投与されるNRH、NARH、若しくはそれらの還元誘導体の治療有効量が、1日当たり約0.1~60mg/kg、0.5~50mg/kg、若しくは1~40mg/kg、1.5~30mg/kg、又は1日当たり約1~4000mg、50~3500mg、100~3000mg、若しくは100~2000mgであり、たとえば、ボーラスとして単一用量若しくは複数用量で又は連続注入により投与可能であ、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記被験者に投与されるNRH、NARH、若しくはそれらの還元誘導体の治療有効量が、1日当たり約1~1000mg、1~500mg、若しくは500~1000mg、又は1日当たりのは約1~50mg、50~100mg、100~200mg、200~300mg、300~400mg、400~500mg、500~750mg、若しくは750~1000mgであり、たとえば、ボーラスとして単一用量若しくは複数用量で又は連続注入により投与可能である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
NRH及びNARHの前記還元誘導体が、式I:
【化1】
(式中、
は、水素、
【化2】
又は-C(=O)R(式中、
は、水素、カウンターイオン、線状若しくは分岐状C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、フェニル、1-ナフチル、又は2-ナフチルであり、前記フェニルは、F、Cl、-CN、-NO、線状若しくは分岐状C~Cアルキル、-CF、-O-(線状若しくは分岐状C~Cアルキル)、又は-OCFで任意に置換されていてもよく、
及びRは、存在ごとに独立して、水素、線状若しくは分岐状C~Cアルキル、-CH-フェニル、-CH-3-インドール、又は-CH-4/5-イミダゾールであり、ここで前記アルキルは、-OH、-OR、-SH、-SR、-NH、-NHR、-N(R、-NHC(=O)R、-NHC(=NH)NH、-C(=O)NH、-COH、又は-C(=O)ORで任意に置換されていてもよく、前記フェニルは、-OH又は-OR(式中、Rは、存在ごとに独立して、線状若しくは分岐状C~Cアルキルである)で任意に置換されていてもよく、
は、存在ごとに独立して、水素又は線状若しくは分岐状C~Cアルキルであり、
及びRは、存在ごとに独立して、水素、カウンターイオン、線状若しくは分岐状C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、-CH-(C~Cシクロアルキル)、フェニル、又は-CH-フェニルであり、ここで前記フェニルは、F、Cl、-CN、-NO、線状若しくは分岐状C~Cアルキル、-CF、-O-(線状若しくは分岐状C~Cアルキル)、又は-OCFで任意に置換されていてもよく、
は、水素、線状若しくは分岐状C~Cアルキル、-CH-フェニル、-CH-3-インドール、又は-CH-4/5-イミダゾールであり、ここで前記アルキルは、-OH、-OR、-SH、-SR、-NH、-NHR、-N(R、-NHC(=O)R、-NHC(=NH)NH、-C(=O)NH、-COH、又は-C(=O)ORで任意に置換されていてもよく、前記フェニルは、-OH又は-OR(式中、Rは、存在ごとに独立して、線状若しくは分岐状C~Cアルキルである)で任意に置換されていてもよく、
は、水素、カウンターイオン、線状若しくは分岐状C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、フェニル、-CH-フェニル、又は
【化3】
であり、前記フェニルは、F、Cl、-CN、-NO、線状若しくは分岐状C~Cアルキル、-CF、-O-(線状若しくは分岐状C~Cアルキル)、又は-OCFで任意に置換されていてもよく、
Xは、-OH、-OR、又は-OC(=O)R(式中、Rは、線状若しくは分岐状C~Cアルキルであり、nは、1、2、3、4、5、又は6である)で任意に置換されていてもよいcis若しくはtrans-HC=CH-又は-(CH-であり、
は、線状若しくは分岐状C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、或いはF、Cl、-CN、-NO、線状若しくは分岐状C~Cアルキル、-CF、-O-(線状若しくは分岐状C~Cアルキル)、又は-OCFで任意に置換されていてもよいフェニルである)
であり、
は、存在ごとに独立して、水素、
【化4】
又は-C(=O)R
(式中、R、R、X、及びRは、以上に定義された通りである)
であり、
は、-NH、-NHR、-N(R、-OH、-OR、又は
【化5】
(式中、
は、存在ごとに独立して、線状若しくは分岐状C~Cアルキル又はアリルであり、ここでアルキルは、-OH又は-O-(線状若しくは分岐状C~Cアルキル)で任意に置換されていてもよく、又は両方のRの存在とも、それらが接続されている窒素原子は、3~6員ヘテロ環式環を形成し、及び
は、カウンターイオン、線状若しくは分岐状C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、フェニル、又は-CH-フェニルであり、ここで、前記フェニルは、F、Cl、-CN、-NO、線状若しくは分岐状C~Cアルキル、-CF、-O-(線状若しくは分岐状C~Cアルキル)、又は-OCFで任意に置換されてもよい)
であり、
が水素でないとき、Rの存在は、両方が水素であることはなく、及びRは、-NHでも-OHでもそれらの塩でもない)
を有するか、又はそれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、水和物、包接体、多形体、若しくは立体異性体である、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
及び両方のRの存在が、R
【化6】
でない限り、すべてが水素であるとは限らない、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
が-NH又は-OH又はそれらの塩であるとき、Rが、水素でも-C(=O)-(線状若しくは分岐状C~Cアルキル)でもなく、Rの存在が、両方が水素又は-C(=O)-(線状若しくは分岐状C~Cアルキル)であることはない、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
NRH又はNARHの還元誘導体が、以下:
【化7】
ではなく、それらの塩でも立体異性体でもない、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
NRH及びNARHの前記還元誘導体が、以下:
【化8-1】
【化8-2】
【化8-3】
【化8-4】
【化8-5】
【化8-6】
【化8-7】
【化8-8】
並びにそれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、水和物、包接体、多形体、及び立体異性体から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
NRH又はNARHの前記還元誘導体が、以下:
【化9】
並びにそれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、水和物、包接体、多形体、及び立体異性体から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
NRH、NARH、NRH-トリアセテート(NRHTA)、NARH-トリアセテート(NARHTA)、又はそれらの薬学的に許容可能な塩が、前記被験者に投与されるか、又は前記被験者からの細胞又は生体液にex vivoで接触される、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
NRH、NARH、若しくはそれらの還元誘導体が、ベータ-D-リボシドコンフィギュレーションを有する、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
NRH、NARH、若しくはそれらの還元誘導体が、立体異性的に純粋である(たとえば、前記化合物の少なくとも約90%、95%、97%、98%、又は99%が、指示立体異性体である)、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
NRH、NARH、若しくはそれらの還元誘導体が、D-リボシドコンフィギュレーション及びベータ-/アルファ-アノマーのおおよそ1:1の比を有する、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
1つ以上の追加治療剤を前記被験者を投与すること又は前記被験者からの細胞若しくは生体液にex vivoで接触させることをさらに含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記1つ以上の追加治療剤が、抗酸化剤若しくは/及び抗炎症剤であるか又はそれらを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記抗酸化剤が、ビタミン若しくはそのアナログ(たとえば、ビタミンE若しくはそのアナログ、たとえば、α-トコフェロール若しくはトロロックス)、グルタチオン(GSH)若しくはその誘導体又はグルタチオンレベルを増加させる抗酸化剤(たとえば、任意にグリシンとの組合せでN-アセチル-L-システイン[NAC])、又はミトコンドリア標的抗酸化剤(たとえば、SkQ1、MitoE、MitoQ、又はMito-TEMPO)、又はそれらのいずれかの組合せ若しくはすべてであるか、或いはそれらを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記抗炎症剤が、NSAID、グルココルチコイド、免疫抑制剤、又は炎症促進性サイトカイン若しくはそれに対するレセプター若しくはその産生のインヒビター、又はそれらのいずれかの組合せ若しくはすべてであるか、或いはそれらを含む、請求項35又は35に記載の方法。
【請求項38】
前記被験者が、免疫関連障害に罹患しており、抗炎症剤及び任意に追記抗酸化剤が、前記被験者に投与されるか又は前記被験者からの細胞又は生体液にex vivoで接触される、請求項35~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤又は担体と、ジヒドロニコチンアミドリボシド(NRH)、ジヒドロニコチン酸リボシド(NARH)、若しくはそれらの還元誘導体、又はそれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、水和物、包接体、多形体、若しくは立体異性体と、を含む医薬組成物であって、前記組成物は凍結乾燥(フリーズドライ)形態である、医薬組成物。
【請求項40】
前記1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤又は担体が、アミノ酸(たとえば、グリシン若しくはアラニン)又は/及び安定化剤(スクロース、マルトース、トレハロース、若しくはラクトース、又はそれらのいずれかの組合せ)並びに任意にバルキング剤(たとえば、マンニトール、デキストロース、ラクトース、スクロース、デキストラン、トレハロース、マイクロ結晶性セルロース、ヒドロキシエチルデンプン、若しくはグリシン、又はそれらのいずれかの組合せ)を含む、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項41】
NRH、NARH、若しくはそれらの還元誘導体が、凍結乾燥前に約7.4~10.5、8~10.5、又は9~10.5のpHを有する水性緩衝液(たとえば、NaHPO/NaCl)中に混合、溶解、又は懸濁される、請求項39又は40に記載の医薬組成物。
【請求項42】
NRH、NARH、若しくはそれらの還元誘導体を含む水性混合物、溶液、又は懸濁液が、凍結乾燥前に約0.2ミクロン以下の細孔サイズを有する膜を介する濾過により滅菌される、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項43】
ガラス又はプラスチック(たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロライド、又はポリエーテルエーテルケトン)で作製された密閉された着色バイアル又はアンプル中に貯蔵される、請求項39~42のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項44】
前記バイアル又はアンプルが、真空下又は不活性ガス(たとえば、窒素若しくはアルゴン)下にある、請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項45】
前記バイアル又はアンプルは、低減温度(たとえば、約0~10℃若しくは2~8℃)で並びに乾燥剤(たとえば、シリカゲル)を用いて又は/及び低減湿度(たとえば、湿度約40%以下)で貯蔵される、請求項43又は44に記載の医薬組成物。
【請求項46】
非経口(たとえば、静脈内、皮下、又は筋肉内)投与(たとえば、注射又は注入)の前に、約7.4~10.5、8~10.5、又は9~10.5のpHを有する水性混合物、溶液、又は懸濁液として再構成される、請求項39~45のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項47】
NRH若しくはNARHの還元誘導体の水への溶解性が低い場合、凍結乾燥組成物は、好適な有機溶媒(たとえば、DMSO)に混合、溶解、又は懸濁され、次いで、組成物の再構成のために水性溶液で希釈される、請求項46に記載の医薬組成物。
【請求項48】
前記再構成された水性混合物、溶液、又は懸濁液が、NRH、NARH、若しくはそれらの還元誘導体、NaHPO、及びNaClを含み、等張であり、約8~10.5又は9~10.5のpHを有する、請求項46又は47に記載の医薬組成物。
【請求項49】
前記再構成された水性混合物、溶液、又は懸濁液が、約1~500mg/mL、1~300mg/mL、1~200mg/mL、1~100mg/mL、100~200mg/mL、若しくは200~300mg/mL、又は約1~25mg/mL、25~50mg/mL、若しくは50~100mg/mLの濃度で、NRH、NARH、若しくはそれらの還元誘導体を含む、請求項46~48のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項50】
免疫関連障害、腎障害、肝障害、溶血性障害、又は酸化的ストレス、損傷、若しくは傷害に関連する障害若しくは病態を処置するための、1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤又は担体と、ジヒドロニコチンアミドリボシド(NRH)、ジヒドロニコチン酸リボシド(NARH)、若しくはそれらの還元誘導体、又はそれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、水和物、包接体、多形体、若しくは立体異性体と、を有効な量で含む医薬組成物。
【請求項51】
前記免疫関連障害がSIRS若しくは敗血症であり、前記腎障害がAKI若しくはHRSであり、前記肝障害がアルコール性肝炎、ALF、ACLF、肝硬変、若しくはHRSであり、前記溶血性障害が溶血若しくは溶血性貧血であり、前記酸化的ストレス、損傷、若しくは傷害に関連する障害若しくは病態がメトヘモグロビン血症若しくは貧血である、請求項50に記載の医薬組成物。
【請求項52】
請求項39~49のいずれか一項に記載の医薬組成物である、請求項50又は51に記載の医薬組成物。
【請求項53】
請求項1~38のいずれか一項に記載の方法に適用可能なように配合された、請求項50~52のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項54】
免疫関連障害、腎障害、肝障害、溶血性障害、又は酸化的ストレス、損傷、若しくは傷害に関連する障害若しくは病態の処置での使用のための、ジヒドロニコチンアミドリボシド(NRH)、ジヒドロニコチン酸リボシド(NARH)、若しくはそれらの還元誘導体、又は、それらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、水和物、包接体、多形体、若しくは立体異性体。
【請求項55】
ジヒドロニコチンアミドリボシド(NRH)、ジヒドロニコチン酸リボシド(NARH)若しくはそれらの還元誘導体、又はそれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、水和物、包接体、多形体、若しくは立体異性体を含む組成物であって、免疫関連障害、腎障害、肝障害、溶血性障害、又は酸化的ストレス、損傷、若しくは傷害に関連する障害若しくは病態の処置のために用いられる、組成物。
【請求項56】
ジヒドロニコチンアミドリボシド(NRH)、ジヒドロニコチン酸リボシド(NARH)若しくはそれらの還元誘導体、又はそれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、水和物、包接体、多形体、若しくは立体異性体の使用であって、免疫関連障害、腎障害、肝障害、溶血性障害、又は酸化的ストレス、損傷、若しくは傷害に関連する障害若しくは病態の処置のための医薬剤の調製に用いられる、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条第(b)項の規定により2021年6月18日出願のインド仮出願第202141027391号及び米国特許法第119条第(e)項の規定により2021年8月25日出願の米国仮特許出願第63/236,974号(両方ともその全体が参照により組み込まれる)に基づく優先権を主張する。
【0002】
本開示は、免疫関連障害、腎障害、肝障害、溶血性障害、並びに酸化的ストレス、損傷、又は傷害に関連する障害及び病態を処置するためのジヒドロニコチンアミドリボシド(NRH)、ジヒドロニコチン酸リボシド(NARH)、及びそれらの還元誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
全身性炎症性応答症候群(SIRS)は、非感染性又は感染性傷害への過剰免疫応答の結果として全身に影響を及ぼす炎症性状態である。敗血症は、患者がSIRSの基準を満たすとともに感染が疑われる又は明らかである際の関連の深い障害である。SIRS及び敗血症の合併症としては、1つ以上の器官のショック及び機能不全及び不全が挙げられる。SIRS、敗血症、又はそれらの合併症は、集中治療室(ICU)での重篤患者の死亡の主たる原因の1つで、すべてのかかる死亡の50%までを占め、死亡のリスクは、SIRS又は敗血症で30%程度、重症SIRS又は敗血症で50%程度、及びショック/敗血症性ショックで80%程度である。
【0004】
全身性炎症の増加は、器官機能不全、腎不全、及び代償不全肝硬変患者の死亡の共通の原因である。肝腎症候群(HRS)は、SIRSを頻繁に伴う慢性肝疾患(CLD)の急性合併症でありうるとともに、門脈高血圧を伴う肝機能不全並びに結果的に腎動脈の反応性血管収縮及び急性腎傷害(AKI)をもたらす腹水(腹部の体液貯留)により特徴付けられうる。CLD関連腹水などの腹水を有する入院患者の約10%は、HRSを有する。1型HRSは、短期間で50%超の死亡率を有するが、患者が肝移植を待つ間、処置は、病態を安定化させうる。2型HRS患者は、肝移植を受けなければ、約6ヵ月間のメジアン生存を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、免疫関連障害、腎障害、肝障害、溶血性障害、並びに酸化的ストレス、損傷、又は傷害に関連する障害及び病態を処置するための、ジヒドロニコチンアミドリボシド(NRH)、ジヒドロニコチン酸リボシド(NARH)、及びそれらの還元誘導体のin vivo及びex vivo使用に関する。いくつかの実施形態では、免疫関連障害は、SIRS及び敗血症であり、腎障害は、AKI及びHRSであり、肝障害は、アルコール性肝炎、急性肝不全(ALF)、慢性肝不全急性増悪(ACLF)、肝硬変、及びHRSであり、溶血性障害は、溶血及び溶血性貧血であり、及び酸化的ストレス、損傷、又は傷害に関連する障害及び病態は、メトヘモグロビン血症及び貧血である。いくつかの実施形態では、NRH及びNARHの還元誘導体は、式I:
【化1】
(式中、R、R、及びRは、本明細書の他の箇所に定義される)
を有する。
【0006】
NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体は、in vivo又はex vivoで、単独で又は1つ以上の追加治療剤、たとえば、抗炎症剤又は/及び抗酸化剤との組合せで、使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、NRH、NARH、並びに誘導体化されたD-リボシドの5’-ヒドロキシル基と任意に2’-及び3’-ヒドロキシル基とを有する式Iのそれらの還元誘導体を合成するための例示的プロセスを示す。
図2図2は、誘導体化されたD-リボシドの2’-及び3’-ヒドロキシル基を有する式IのNRH及びNARHの還元誘導体を合成するための例示的プロセスを示す。
図3図3は、誘導体化されたD-リボシドの2’-、3’-、及び5’-ヒドロキシル基を有する式IのNRH及びNARHの還元誘導体を合成するための例示的プロセスを示す。
図4図4は、ex vivoポリクローナル免疫活性化モデルにおいて、抗CD3及び抗CD28抗体で刺激されたCD8T細胞が未刺激(US)CD8T細胞よりも有意又は顕著に多くのIFN-γ、TNF-α、及びIL-2を産生したこと、並びにNRH(MP-04)が活性化CD8T細胞でIFN-γ、TNF-α、及びIL-2の産生を有意に低減したこと(マン・ホイットニーのU検定でp<0.05)を示す。
図5図5は、抗CD3及び抗CD28抗体で刺激された健常ヒトドナーからの末梢血単核細胞(PBMC)が未刺激PBMCよりも顕著に高い細胞外酸性化速度(ECAR、解糖の尺度)を有していたこと、及びNRH(MP-04)が活性化PBMCでECARを有意に低減したことを示す。
図6図6及び7は、24hrにわたりNRH(MP-04)及びNRH-トリアセテート(MP-40)と共にインキュベートすることにより、それぞれ、未刺激の又は抗CD3及び抗CD28抗体で刺激されたCD4及びCD8T細胞でミトコンドリアル膜脱分極が有意に誘発されたことを示す。
図7図6及び7は、24hrにわたりNRH(MP-04)及びNRH-トリアセテート(MP-40)と共にインキュベートすることにより、それぞれ、未刺激の又は抗CD3及び抗CD28抗体で刺激されたCD4及びCD8T細胞でミトコンドリアル膜脱分極が有意に誘発されたことを示す。
図8図8及び9は、24hrにわたりNRH(MP-04)及びNRHTA(MP-40)と共にインキュベートすることにより、それぞれ、脱分極ミトコンドリアを有する並びに未刺激の又は抗CD3及び抗CD28抗体で刺激されたCD4及びCD8T細胞のアポトーシスをはじめとする細胞死が低減したことを示す。
図9図8及び9は、24hrにわたりNRH(MP-04)及びNRHTA(MP-40)と共にインキュベートすることにより、それぞれ、脱分極ミトコンドリアを有する並びに未刺激の又は抗CD3及び抗CD28抗体で刺激されたCD4及びCD8T細胞のアポトーシスをはじめとする細胞死が低減したことを示す。
図10図10は、NRH(MP-04)及びNRH-トリアセテート(MP-40)は両方とも、いずれの試験濃度でもin vitroアッセイでH誘発溶血を低減したが、NR(MP-02)及びNR-トリアセテート(MP-39)はどちらも、低減しなかったことを示す。
図11図11は、10mM Hがヘモグロビンの酸化的変化の原因になって576nm、540nm、434nm、348nm、及び270nmで吸光度ピークの大きさを低減したことを示す。
図12A-C】図12A-Cは、NRHと共にプレインキュベートすることにより576nm、540nm、434nm、348nm、及び270nmで吸光度ピークの大きさが増加したことから、それぞれ、1、10、及び100μMのNRH(MP-04)と共にRBCをプレインキュベートすることによりヘモグロビンが1mM H誘発酸化的変化から保護されたがNR(MP-02)では保護されなかったことを示す。
図13図13は、1mM HへのRBCの暴露がA576/A630比(ヘモグロビン/メトヘモグロビン比の尺度)を有意に低減したこと、及び1μM又は100μM NRH(MP-04)による1mM Hに暴露されたRBCの処置がA576/A630比を回復したことを示す。
図14A図14AおよびBは、100及び1000μMのNRH(MP-04)と共にそれぞれ30min及び6hrインキュベートすることによりHに暴露されたHEK293細胞でNADH/NAD比が増加したが、NR(MP-02)ではすべての試験濃度で比に有意な影響を及ぼさなかったことを示す。
図14B図14AおよびBは、100及び1000μMのNRH(MP-04)と共にそれぞれ30min及び6hrインキュベートすることによりHに暴露されたHEK293細胞でNADH/NAD比が増加したが、NR(MP-02)ではすべての試験濃度で比に有意な影響を及ぼさなかったことを示す。
図15図15は、NRH(MP-04)及びNRH-トリアセテート(MP-40)が両方ともin vitroアッセイでNR(MP-02)よりもヒト血清中でかなり安定であったことを示す(=NR対NRH及びNRH-トリアセテートでp<0.05、#=NRH-トリアセテート対NRHでp<0.05)。
図16A-C】図16A-Cは、ウィスターハンラットへの500mg/kg用量のNRH(MP-04)の単回腹腔内注射により、媒質が腹腔内注射されたウィスターハンラットの対応する濃度と比較して、4hr後の全血、腎臓、及び肝臓のそれぞれでNRH濃度の増加をもたらしたことを示す。「面積比NRH/IS」は、内部標準(トルブタミド)のピーク面積に対するNRHのピーク面積の比である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
総論
本開示の各種実施形態が本明細書に記載されているが、かかる実施形態が単なる例として提供されているにすぎないことは当業者には自明であろう。本明細書に記載の実施形態に対する数多くの修正形態及び変更形態並びにそれらの変形形態及び置換形態は、本開示から逸脱することなく当業者に明らかになるであろう。本明細書に記載の実施形態の各種代替形態は、本開示を実用する際に採用可能であるものと理解される。また、本開示のどの実施形態も、その実施形態に合致する本明細書に記載の他の実施形態のいずれか1つ以上と任意に組合せ可能であるものと理解される。
【0009】
要素がリストフォーマットで(たとえば、マーカッシュグループで)提示される場合、要素の各可能なサブグループもまた開示されるとともに、いずれか1つ以上の要素をリスト又はグループから除去可能であるものと理解される。
【0010】
さらに、数値範囲の開示は、その範囲の幅にかかわらずその範囲内のすべての可能なサブ範囲及びすべての可能な個別の数値(整数又は小数にかかわらず)の具体的開示であるものと理解される。
【0011】
また、明らかに相反する指示がない限り、2つ以上の行為又はステップを含む本明細書に記載の又は特許請求されたいずれの方法でも、方法の行為又はステップの順序は、必ずしも方法の行為又はステップの記載順序に限定されるとは限らないが、本開示は順序がそのように限定される実施形態を包含するものと理解される。
【0012】
さらに、一般的には、本明細書の実施形態又は請求項が1つ以上の特徴を含むものとして言及されている場合、本開示はまた、かかる特徴からなる又は本質的になる実施形態を包含するものと理解される。
【0013】
また、具体的除外が本明細書に記載されているか否かにかかわらず、本開示のいずれかの実施形態、たとえば、先行技術の範囲内に見いだされるいずれかの実施形態又は化合物は、請求項から明示的に除外可能であるものと理解される。
【0014】
さらに、本開示は、本明細書に開示されるすべての化合物の塩、溶媒和物、水和物、包接体、及び多形体を包含するものと理解される。本開示のある特定の事例での化合物又は化合物群に関する「塩(salts)」、「溶媒和物(solvates)」、「水和物(hydrates)」、「包接体(clathrates)」、又は「多形体(polymorphs)」の具体的記載は、とくに明記されていない限り又はとくに文脈上明確に示されてない限り、化合物又は化合物群がこれらの形態のいずれかの記載なしに挙げられている本開示の他の事例でのこれらの形態のいずれかの意図的省略として解釈されるべきではない。
【0015】
本明細書に引用されたすべての特許文献及びすべての非特許文献は、あたかも各特許文献又は非特許文献が具体的及び個別的に示されてその全体が参照により本明細書に組み込まれたのと同程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0016】
定義
とくに定義がない限り又はとくに本明細書でのその使用により明確に示されてない限り、本明細書で用いられる科学技術用語はすべて、本願が属する技術分野の当業者が通常理解しているものと同一の意味を有する。
【0017】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられる場合、不定冠詞「a」及び「an」並びに定冠詞「the」は、とくに明記されていない限り又はとくに文脈上明確に示されてない限り、単数の参照対象のほか複数の参照対象を含みうる。
【0018】
本明細書で用いられる「exemplary(例示的)」という用語は、「例、事例、又は例示の働きをすること」を意味する。「例示的」として本明細書で特徴付けられるいずれの実施形態又は特徴も、他の実施形態又は特徴よりも好ましい又は有利なものとして解釈されるべきではない。
【0019】
いくつかの実施形態では、「about(約)」又は「approximately(おおよそ)」という用語は、所与の値の±10%又は5%の範囲内を意味する。「about(約)」又は「approximately(おおよそ)」という用語が一連の2つ以上の数値中又は一連の2つ以上の数値範囲内の第1の数値に先行する場合は常に、「about(約)」又は「approximately(おおよそ)」という用語は、その一連の数値中又はその一連の数値範囲内の数値の各々に適用される。
【0020】
「at least(少なくとも)」又は「greater than(超)」という用語が、一連の2つ以上の数値中の第1の数値に先行する場合は常に、「at least(少なくとも)」又は「greater than(超)」という用語は、その一連の数値中の数値の各々に適用される。
【0021】
「no more than(以下)」又は「less than(未満)」という用語が一連の2つ以上の数値中の第1の数値に先行する場合は常に、「no more than(以下)」又は「less than(未満)」という用語は、その一連の数値中の数値の各々に適用される。
【0022】
「モジュレーター(modulator)」、たとえば、レセプター又は酵素のモジュレーターは、そのレセプター又は酵素のアクチベーター又はインヒビターでありうるとともに、そのレセプター又は酵素の活性又は/及びレベルを増加又は低減可能である。
【0023】
「非経口(parenteral)」という用語は、注射、注入、又は吸入によるなど、消化管を介する以外の投与経路を意味する。非経口投与としては、限定されるものではないが、角質下、皮内、皮下、血管内、静脈内、動脈内、筋肉内、心内、腹腔内、腔内、関節内、嚢内、嚢下、眼窩内、経気管、胸骨内、髄腔内、髄内に、脊髄内、クモ膜下、及び局所投与が挙げられる。局所投与としては、限定されるものではないが、真皮/皮膚上、経真皮、粘膜、経粘膜、鼻内(たとえば、鼻腔スプレー又は点鼻剤による)、眼(たとえば、点眼剤による)、肺(たとえば、経口吸入又は鼻腔吸入による)、頬、舌下、直腸(たとえば、坐剤による)、及び膣(たとえば、坐剤による)が挙げられる。
【0024】
「薬学的に許容可能な」という用語は、過剰な刺激、アレルギー応答、免疫原性、及び毒性を伴うことなく被験者の細胞、組織、及び器官に接触して使用するのに好適な、合理的な利益/リスク比に見合った、及びその意図される使用に有効な、物質(たとえば、活性成分又は賦形剤)を意味する。医薬組成物の「薬学的に許容可能な」賦形剤又は担体はまた、組成物の他の成分にも適合可能である。
【0025】
「治療有効量」という用語は、被験者に投与したときに又はex vivoで使用したときに、化合物を摂取している又は化合物によるex vivo処置を受けている被験者の少なくともなんらかの割合で、処置される医学的病態を防止する、その発生リスクを低減する、その発症を遅延する、その進行を緩徐化する、又はその退縮の原因になるのに、或いは医学的病態又はその病態の1つ以上の症状若しくは合併症をある程度和らげるのに、十分な化合物の量を意味する。「治療有効量」という用語はまた、研究者、獣医、医師、又は臨床医により探求される細胞、組織、器官、系、動物、又はヒトの生物学的又は医学的応答を誘発するのに十分な化合物の量を意味する。
【0026】
「treat(を処置する)」、「treating(を処置すること)」、及び「treatment(処置)」という用語は、医学的病態又は病態に関連する1つ以上の症状若しくは合併症を和らげる、回復する、その重症度若しくは頻度を低減する、その進行を緩徐化若しくは阻害する、逆転する、又は抑止すること、及び病態の1つ以上の原因を和らげる、回復する、又は根絶することを含む。医学的病態の「treatment(処置)」への言及は、病態の防止を含む。「prevent(を防止する)」、「preventing(を防止すること)」、及び「prevention(防止)」という用語は、医学的病態又は病態に関連する1つ以上の症状若しくは合併症を妨げる、その発生リスクを低減する、及びその発症を遅延することを含む。
【0027】
「医学的病態」(又は略して「病態」)という用語は、疾患及び障害を含む。「疾患」及び「障害」という用語は、本明細書では互換的に用いられる。
【0028】
「被験者」という用語は、限定されるものではないが、哺乳動物、たとえば、霊長動物(たとえば、ヒト、チンパンジー、又はサル)、齧歯動物(たとえば、ラット、マウス、モルモット、アレチネズミ、又はハムスター)、ウサギ目動物(たとえば、ウサギ)、ウシ科動物(たとえば、ウシ)、イノシシ科動物(たとえば、ブタ)、ヤギ類(たとえば、ヒツジ)、ウマ科動物(たとえば、ウマ)、イヌ科動物(たとえば、イヌ)、又はネコ科動物(たとえば、ネコ)を含めて、動物を意味する。「被験者」及び「患者」という用語は、たとえば、ヒト被験者などの哺乳動物被験者への言及の際に、本明細書では互換的に用いられる。
【0029】
本開示は、本明細書に記載の化合物の塩、溶媒和物、水和物、包接体、及び多形体を包含する。化合物の「溶媒和物」は、化合物に非共有結合で結合された化学量論量又は非化学量論量の溶媒分子(たとえば、水、アセトン、又はアルコール[たとえば、エタノール])を含む。化合物の「水和物」は、化合物に非共有結合で結合された化学量論量又は非化学量論量の水分子を含む。化合物の「包接体」は、化合物の結晶構造に包囲された物質(たとえば、溶媒)の分子を含有する。化合物の「多形体」は、化合物の結晶形である。
【0030】
「アルキル」という用語は、1つ以上の置換基で任意に置換可能な線状(直鎖状)又は分岐状飽和1価炭化水素基を意味する。「低級アルキル」という用語は、線状C~C又は分岐状C~Cアルキル基を意味する。低級アルキル基としては、限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル(n-プロピル及びイソプロピルを含む)、ブチル(n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチルなどのすべての異性形を含む)、ペンチル(n-ペンチルやイソペンチルなどのすべての異性形を含む)、及びヘキシル(n-ヘキシルなどのすべての異性形を含む)が挙げられる。
【0031】
「アルケニル」という用語は、1つ以上のC=C二重結合を有するアルキル基を意味する。アルケニル基は、任意に1つ以上の置換基で置換可能である。
【0032】
「アシル」という用語は、-C(=O)-アルキル基又は-C(=O)-アルケニル基を意味する。
【0033】
「シクロアルキル」という用語は、1つ以上の置換基で任意に置換可能な環式、飽和、ブリッジ又は非ブリッジ1価炭化水素基を意味する。C~Cシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが挙げられる。
【0034】
「ヘテロシクリル」又は「ヘテロ環式」という用語は、単環式非芳香族基又は少なくとも1つの非芳香環を含有する多環式基を意味し、ただし、少なくとも1つの非芳香環は、O、N、及びSから独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含有する。1個以上のヘテロ原子を含有する非芳香環は、1つ以上の飽和環、部分不飽和環、又は芳香環に装着又は融合されうる。ヘテロシクリル基又はヘテロ環式基は、1つ以上の置換基で任意に置換可能である。3~6員窒素含有ヘテロ環式環としては、限定されるものではないが、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、及びモルホリニルが挙げられる。
【0035】
開示の詳細な説明
NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体の治療的使用
本開示は、免疫関連障害、腎障害、肝障害、溶血性障害、並びに酸化的ストレス、損傷、又は傷害に関連する障害及び病態を処置するための、ジヒドロニコチンアミドリボシド(NRH)、ジヒドロニコチン酸リボシド(NARH)、及びそれらの還元誘導体(たとえば、式I[後掲]のもの)のin vivo及びex vivo使用を提供する。NARHは、カルボン酸形又はカルボキシレート形でありうる。いくつかの実施形態は、処置を必要とする被験者にNRH、NARH、若しくはそれらの還元誘導体、又はそれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、水和物、包接体、多形体、若しくは立体異性体を治療有効量で投与すること、或いは処置を必要とする被験者からの細胞又は生体液にそうしたものをex vivoで接触させること、を含む、免疫関連障害、腎障害、肝障害、溶血性障害、又は酸化的ストレス、損傷、若しくは傷害に関連する障害若しくは病態を処置する方法に関する。NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体にex vivoで接触される被験者からの細胞又は生体液は、酸化的ストレス、損傷、若しくは傷害により特徴付けられるか、又はそのリスクがあり、或いは/及び被験者は、免疫関連障害、腎障害、肝障害、溶血性障害、又は酸化的ストレス、損傷、若しくは傷害に関連する障害若しくは病態に罹患している。
【0036】
いくつかの実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)は、免疫関連障害を処置するためにin vivo又はex vivoで使用される。免疫関連障害としては、限定されるものではないが、免疫系又は免疫機能の過剰活性化に関連する障害、炎症性障害、自己免疫性障害、及びアレルギー性障害が挙げられる。ある特定の障害は、かかる障害の複数のカテゴリーに含まれうる。たとえば、全身性炎症性応答症候群(SIRS)及び敗血症並びに多くの自己免疫性障害及びアレルギー性障害は、免疫系又は免疫機能の過剰活性化に関連する障害及び炎症性障害とみなしうる。
【0037】
NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体は、解糖を抑制することにより異常免疫細胞活性化及び異常炎症性免疫応答(たとえば、サイトカインストームの結果として)を抑制可能である。解糖の抑制は、活性化又は過剰活性化免疫細胞(たとえば、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー細胞、及びマクロファージ)、活性化線維芽細胞(線維症に関与する)、並びに腫瘍及び癌細胞を含めて、エネルギー代謝が主として解糖である細胞の休止をもたらす。同化性ペントースリン酸経路(PPP)はヌクレオチド合成の前駆体リボース5-リン酸を発生し、PPPは解糖により産生される最初の中間体グルコース-6-リン酸の脱水素化から始まるので、解糖の抑制はまた、PPP、ひいては免疫細胞、線維芽細胞、及び腫瘍/癌細胞の活性化、成長、及び増殖を抑制する。免疫系は、たとえば、宿主因子(たとえば、自己免疫性障害の際)又は外来因子(たとえば、病原体)に応答して、過剰活性になりうる。ある特定の実施形態では、免疫系又は免疫機能の過剰活性化に関連する障害は、コロナウイルス(たとえば、COVID-19に関与するSARS-CoV-2)によるものなど、病原性(たとえば、細菌性又はウイルス性)感染が原因になる。
【0038】
免疫系又は免疫機能の過剰活性化に関連する障害としては、限定されるものではないが、サイトカインストームが原因になる又はから生じる障害が挙げられる。SIRS(非感染性又は感染性原因を有しうる)は、典型的には、及び敗血症(感染から生じる)は、多くの場合は、サイトカインストームに関連する。サイトカインストームでは、傷害への適応性又は/及び先天性免疫系の過剰活性応答は、炎症促進性サイトカインの過剰及び無制御放出を引き起こすので、重篤な炎症、組織及び器官の重篤な損傷及び傷害、並びに被験者の死をもたらうる。サイトカインストームは、非感染性傷害(たとえば、移植片対宿主病及びセラリズマブなどの医薬)により、並びに細菌(たとえば、A群ストレプトコッカス属(Streptococcus))及びウイルス(たとえば、サイトメガロウイルス及びエプスタイン・バーウイルス)、とりわけ、呼吸器ウイルス(たとえば、インフルエンザB型、H1N1インフルエンザ、H5N1インフルエンザ、パラインフルエンザ、SARS-CoV-1、及びSARS-CoV-2)による感染を含めて、感染性傷害により誘発されうる。呼吸器ウイルスは、肺上皮細胞及び肺胞マクロファージに侵入してウイルス性核酸を生成可能であり、これにより感染細胞を刺激してサイトカイン及びケモカインを放出し、マクロファージ、樹状細胞、及び他の免疫性細胞を活性化する。COVID-19による死亡の約70%は、SARS-CoV-2感染から生じるサイトカインストームが原因になる急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に起因する。
【0039】
いくつかの実施形態では、免疫関連障害はSIRS又は敗血症である。SIRSは、非感染性又は感染性傷害への身体の応答から生じる全身性炎症により特徴付けられる重篤な病態である。全身性炎症は、典型的には、傷害への適応性又は/及び先天性免疫系の応答悪化が炎症促進性サイトカインの過剰及び無制御放出を引き起こすサイトカインストームから生じる。SIRSの非感染性原因としては、限定されるものではないが、外傷、熱傷、手術、虚血、肺塞栓症、心タンポナーデ、心不全、神経原性ショック、低血量、副腎不全、甲状腺中毒症(甲状腺機能亢進を含む)、出血、大動脈瘤、アナフィラキシー、急性炎症、膵炎、肺炎(たとえば、化学性肺炎)、アルコール性肝炎、悪性病変、医薬(たとえば、セラリズマブ)、薬剤過量用量、及び物質(たとえば、アルコール)乱用が挙げられる。SIRSの感染性原因としては、限定されるものではないが、細菌、寄生生物(たとえば、プラスモディウム属(Plasmodium)、たとえば、重症マラリアのほとんどの症例に関与するP.ファルシパルム(P.falciparum)、さらにはアメーバ/アメボイド、たとえば、肉芽腫性アメーバ性脳炎及び脳膿瘍に関与するアカントアメーバ属(Acanthameba)、並びにアメーバ症[アメーバ性赤痢]及びアメーバ性膿瘍[たとえば、肝臓での]に関与するエントアメーバ属(Entamoeba)[たとえば、E.ヒストリティカ(E.histolytica)])、並びにウイルス(たとえば、Covid-19に関与するSARS-CoV-2)による感染が挙げられる。
【0040】
アルコール性肝炎の多くの患者は、同定可能な感染をなんら伴うことなくSIRSの症状(たとえば、白血球増加及び発熱)を呈し、SIRSは、無菌性炎症、すなわち、病原体の不在下での炎症性応答に続発しうる。アルコール性肝炎の患者の肝臓は、短期死亡率に相関するIL-8などの炎症促進性サイトカインの顕著な過剰発現により特徴付けられることから、傷害肝臓により産生される炎症性メディエーターがアルコール性肝炎の患者においてSIRSの発生に関与することが示唆される。
【0041】
SIRSは、患者がSIRSの基準を満たし及び感染が疑われる又は明らかである敗血症に密接に関連する。敗血症は、細菌(たとえば、グラム陽性細菌、たとえば、ブドウ球菌及びストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、並びにグラム陰性細菌、たとえば、クレブシエラ属(Klebsiella)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、及びシュードモナス・エルギノサ(Pseudomonas aeruginosa))、真菌(たとえば、病原性酵母、たとえば、カンジダ属(Candida)、並びにカビ、たとえば、アスペルギルス属(Aspergillus)、フザリウム属(Fusarium)、及びムコール属(Mucor))、寄生生物(たとえば、プラスモディウム属(Plasmodium)、シストストーマ属(Schistostoma)、及びエキノコッカス属(Echinococcus))、及びウイルス(たとえば、SARS-CoV-2)をはじめとする多くの微生物が原因になる。微生物性抗原が検出されると、全身性免疫系は活性化されている。免疫性細胞は、病原体関連分子パターンさらには損傷組織からの損傷関連分子パターンを認識し、特異的感染部位だけでなく身体全体にわたり、白血球のリクルートメントが関与する無制御免疫応答、炎症促進性サイトカインの過剰及び無制御放出、並びに感染因子の除去後に持続可能な過剰活性免疫応答が原因になる健常組織に対する損傷をトリガーする。過剰炎症により特徴付けられる敗血症の早期相に続いて、さまざまな免疫性細胞のアポトーシスが部分的に起因して免疫系の機能低減相が現れうるとともに、最終的には多器官不全に至りうる。
【0042】
全身性過剰炎症に加えて、SIRS及び敗血症は、酸化的ストレスの増加及び代謝性ストレスの増加により特徴付けられる。たとえば、V.Mishra,Clin.Lab.,53:199-209(2007)及びJ.Macdonald et al.,Brit.J.Anaesthesia,90:221-232(2003)を参照されたい。
【0043】
SIRS及び敗血症は、多くの場合、重篤な合併症、たとえば、1つ以上の器官又は器官系の機能不全又は不全を誘発し、その場合、SIRS又は敗血症は、「重篤」又は/及びショック若しくは敗血症性ショックとみなされる。SIRS及び敗血症の合併症としては、限定されるものではないが、呼吸機能不全及び不全(たとえば、急性呼吸窮迫症候群[ARDS])、肝機能不全及び不全(たとえば、急性肝不全[ALF]、慢性肝不全急性増悪[ACLF]、慢性肝不全[CLF]、慢性肝疾患[CLD]肝硬変、及び肝腎症候群[HRS])、腎機能不全及び不全(たとえば、急性腎傷害[AKI]、慢性腎疾患[CKD]、末期腎不全[ESKD]、及びHRS)、心血管機能不全及び不全(たとえば、収縮期又は/及び拡張期心不全、低血圧、ショック/敗血症性ショック、血管内溶血、並びに播種性血管内凝固)、脳症、多器官機能不全症候群(MODS)、並びに多器官不全(MOF)が挙げられる。
【0044】
全身性炎症は、肝硬変で門脈高血圧の合併症の発生に重要な役割を果たす。SIRS及び敗血症は、高頻度で腎血流の再分布をもたらし、虚血及び後続管性傷害を招く。HRS-AKIは、炎症促進性サイトカイン又は/及びケモカインの過剰放出に起因して急性状況(たとえば、ALF又はACLF)で発生しうるとともに、これは、腎損傷(たとえば、急性尿細管壊死などの腎尿細管損傷)及び循環性機能不全(たとえば、全身性血管拡張の悪化)の原因になりうる。
【0045】
SIRSの高関連性ex vivoポリクローナル免疫活性化モデルでは、驚くべきことに、NRH及びその還元誘導体NRH-トリアセテート(NRHTA)は両方とも治療効果を発揮したが、酸化形ニコチンアミドリボシド(NR)は発揮しなかった(実施例2~4)。NR(データは示されていない)とは異なり、NRHは、抗CD3及び抗CD28抗体で刺激された末梢血単核細胞(PBMC、単球並びにT細胞、B細胞、及びナチュラルキラー細胞をはじめとするリンパ球を含む)で解糖(免疫細胞活性化の代謝性ホールマーク)を低減し、NRH及びNRHTA(データは示されていない)は、抗CD3及び抗CD28抗体で刺激されたCD8T細胞(及びCD4T細胞[データは示されていない])による炎症促進性サイトカイン(たとえば、腫瘍壊死因子-アルファ[TNF-α]、インターロイキン-2[IL-2]、及びインターフェロン-ガンマ[IFN-γ])の産生を低減し、NRH及びNRHTAは、未刺激及び刺激CD4及びCD8T細胞でミトコンドリアル膜脱分極を誘発し、及びNRH及びNRHTAは、脱分極ミトコンドリアを有する未刺激及び刺激CD4及びCD8T細胞のアポトーシスをはじめとする細胞死を低減した。免疫性細胞での解糖の抑制はまた、同化性ペントースリン酸経路ひいては免疫性細胞活性化及び増殖並びに過剰活性免疫応答も抑制した。ミトコンドリアで発生した過剰活性酸素種(ROS)は、カスパーゼ媒介内因性(ミトコンドリアル)経路を介してアポトーシスを誘発しうるとともに、ミトコンドリアル膜脱分極は、ROSのミトコンドリアル産生を低減しうる。ミトコンドリアル膜脱分極を誘発する以外に、NRH及びNRHTAは、NADH(還元剤)/NAD(酸化剤)比を増加させることにより酸化的ストレスを減少可能であり、それにより細胞性レドックス(還元-酸化)バランスを改善可能である。そのほか、酸化剤(たとえば、ROS)及び酸化分子(たとえば、酸化脂質)は高炎症性でありうるので、酸化的ストレスを減少させると炎症は減少する。そのうえ、酸化的ストレスを減少させると、SIRS又は敗血症を発生しうる又はもたらしうる赤血球細胞に対する酸化的損傷が減少し溶血が防止される。溶血は、全身性炎症及び血管運動機能障害ひいては損なわれた血行動態及びショックをもたらしうる。したがって、NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体は、免疫性細胞の活性化、炎症促進性サイトカインの産生、酸化的ストレス、アポトーシスをはじめとする細胞死、及び溶血を阻害することを含めて、複数の作用機序を介して、SIRS、敗血症、及びそれらの合併症に対して治療効果を発揮しうる。
【0046】
いくつかの実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体は、細菌(たとえば、グラム陰性若しくはグラム陽性細菌、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、又は腸内細菌)、真菌、又はウイルスの感染が原因になる又はから生じるSIRS若しくは敗血症又はそれらの合併症を処置するためにin vivo又はex vivoで使用される。ある特定の実施形態では、感染は、SARS-CoV-2感染などのウイルス性感染である。小児におけるSARS-CoV-2感染は、小児多系統炎症性症候群(MIS-C)又は小児炎症性多系統症候群(PIMS)と呼ばれる関連の深い障害の原因になりうる。
【0047】
既存のSIRS若しくは敗血症又はそれらの合併症の被験者を処置することに加えて、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体は、SIRS若しくは敗血症又はそれらの合併症を防止するために、その発生リスクを低減するために、又はそれへの進行を緩徐化するために、in vivo又はex vivoで使用可能である。たとえば、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体は、サイトカインストームの発生、肺細胞(たとえば、肺胞細胞)に対する免疫媒介炎症性損傷、及びSIRS若しくは敗血症又はそれらの合併症へのCOVID-19などの呼吸器ウイルス性感染性障害(たとえば、ARDS)の進行を防止するために、in vivo又はex vivoで使用可能である。他の一例として、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体は、細菌性又はウイルス性感染などの感染が原因になるか否かにかかわらず、SIRS若しくは敗血症又はそれらの合併症への急性炎症性障害(たとえば、肺炎、腹膜炎、髄膜炎、又は蜂巣炎)の進行を防止するために、in vivo又はex vivoで使用可能である。
【0048】
炎症性障害としては、限定されるものではないが、SIRS、敗血症、神経炎症(たとえば、神経炎[たとえば、眼神経炎及び末梢神経炎]、脳脊髄炎[たとえば、自己免疫性脳脊髄炎]、アルツハイマー病、及び多発性硬化症)、髄膜炎、筋障害(たとえば、筋炎)、胃腸障害{たとえば、胃炎、結腸炎(たとえば、粘液性大腸炎、潰瘍性結腸炎[UC]、及び壊死性全腸炎)、炎症性腸疾患(UC及びクローン病をはじめとするIBD)、過敏性腸症候群、及びセリアック病}、腹膜炎、膵炎(急性及び慢性)、腎障害(たとえば、腎炎、糸球体腎炎、AKI、及びCKD)、肝障害(たとえば、肝炎、非アルコール性及びアルコール性脂肪肝炎、肝硬変、並びにCLD)、MODS(たとえば、敗血症又は外傷に続発するもの)、代謝障害(たとえば、糖尿病[たとえば、1型及び2型糖尿病並びに若年発症糖尿病]及びメタボリック症候群)、心障害(たとえば、心筋炎、非虚血性心筋症、心筋梗塞、及び鬱血性心不全)、血管障害(たとえば、血管炎、アテローム硬化症、脳卒中、末梢動脈疾患、及びショック)、再灌流傷害(たとえば、心筋虚血、脳虚血、心肺バイパス、腎虚血、又は腎透析に起因するもの)、気道障害(たとえば、鼻炎[たとえば、アレルギー性鼻炎]、食道炎、喘息、急性及び慢性肺傷害、ARDS、気管支炎[たとえば、慢性気管支炎]、肺臓炎、肺炎、及び慢性閉塞性肺疾患[COPD])、リウマチ障害{たとえば、関節炎(たとえば、骨関節炎[変形性関節疾患]、関節リウマチ、若年性関節炎、乾癬性関節炎、痛風、体軸性脊椎関節炎、及び強直性脊椎炎)、及び瀰漫性結合組織障害(たとえば、全身性紅斑性狼瘡[SLE]、シェーグレン症候群、並びに限局及び全身性強皮症)}、皮膚障害(たとえば、皮膚炎/湿疹、類天疱瘡、乾癬、蕁麻疹、急性炎症性成分による皮膚症、蜂巣炎、及び日焼け)、眼障害(たとえば、結膜炎、視神経炎、網膜炎、ブドウ膜炎、及び加齢性黄斑変性[AMD])、高血圧、子宮内膜症、月経困難症(月経痙攣)、移植片対宿主病、及び移植拒絶が挙げられる。
【0049】
自己免疫性障害としては、限定されるものではないが、神経系障害(たとえば、多発性硬化症及びギランバレー症候群[GBS])、神経筋障害(たとえば、GBS及び重症筋無力症)、胃腸障害(たとえば、潰瘍性結腸炎及びセリアック病)、肝障害(たとえば、自己免疫性肝炎)、代謝障害(たとえば、1型糖尿病、グレーブス病[甲状腺機能亢進の原因になる]、及び橋本甲状腺炎[甲状腺機能低下の原因になる])、リウマチ障害(たとえば、関節炎[たとえば、関節リウマチ及び若年性関節炎]及び瀰漫性結合組織障害[たとえば、SLE、シェーグレン症候群、並びに限局及び全身性強皮症])、皮膚障害(たとえば、天疱瘡、類天疱瘡、及び乾癬)、及び貧血(たとえば、再生不良性貧血及び自己免疫性溶血性貧血)が挙げられる。
【0050】
アレルギー性障害としては、限定されるものではないが、アナフィラキシー、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性アトピー性皮膚炎/湿疹、アレルギー性接触皮膚炎(たとえば、ポイズンアイビー、イースタンポイズンオーク、ウェスタンポイズンオーク、又はポイズンスマックとの接触後のウルシオール誘発接触性皮膚炎)、並びに食品(たとえば、牛乳、大豆、卵、コムギ、ラッカセイ、木の実、魚介類/甲殻類)、医薬(たとえば、ペニシリン)、ラテックス、昆虫咬傷(たとえば、カ及びマダニによるもの)、及び昆虫刺傷(たとえば、アリ、ミツバチ、スズメバチ、及びカリバチによるもの)が原因になるアレルギーが挙げられる。
【0051】
さらなる実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)は、線維性障害を処置するためにin vivo又はex vivoで使用される。線維芽細胞での解糖の抑制は、線維芽細胞の活性化及び増殖を抑制する。そのうえ、炎症は線維症のメジャーな刺激であるので、炎症の阻害により線維症が阻害される。線維性障害としては、限定されるものではないが、心筋症(たとえば、虚血性及び非虚血性心筋症、糖尿病性心筋症、及び尿毒症性心筋症)、心線維症、心筋線維化、コラーゲン血管疾患(たとえば、動脈硬化度及び血管線維症)、アテローム硬化症、慢性心不全、糖尿病性腎症、腎線維症(たとえば、腎尿細管間質性線維症)、CKD、肝線維化、肝硬変、NASH、ASH、CLD、肝不全(たとえば、CLF)、肺線維症(たとえば、特発性肺線維症[IPF]、結合組織疾患関連肺線維症及び放射線誘発肺線維症)、嚢胞性線維症、強皮症(たとえば、限局強皮症及び全身性強皮症/全身性硬化)、及び子宮内膜症が挙げられる。
【0052】
他の実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)は、腎障害を処置するためにin vivo又はex vivoで使用される。腎障害としては、限定されるものではないが、腎炎、糸球体腎炎、腎炎症候群、ネフローゼ、糸球体ネフローゼ、ネフローゼ症候群、腎線維症(たとえば、腎尿細管間質性線維症)、AKI(腎前性、内因性腎性、又は腎後性原因を有するもの)、CKD、ESKD、及びHRS(1型及び2型)が挙げられる。AKIは、急性腎不全(ARF)と呼ばれることもある。CKDは、慢性腎不全(CRF)を含む。いくつかの実施形態では、腎障害は、AKI又はHRSである。
【0053】
急性腎傷害(AKI)は、血清中クレアチニンレベルの増加又は/及び尿排出量の低減(乏尿症)により示される7日以内に発生する腎機能の迅速低下である。AKIの原因は、腎前性(糸球体濾過量[GFR]を低減する腎臓への血流の低減に起因する)、内因性腎性(腎臓自体に対する損傷に起因する)、又は腎後性(尿流量のブロッケージに起因する)でありうる。AKIの腎前性原因としては、たとえば、敗血症、低血圧、低血量(たとえば、脱水)、過剰失血、心原性ショック、心不全(心腎症候群をもたらす)、肝硬変との関連でのHRS、腎臓に供給する血管の局所変化(たとえば、腎動脈狭窄症及び腎静脈血栓症)、並びにある特定の医薬、たとえば、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、抗生物質(たとえば、アミノグリコシド及びペニシリン)、NSAID(たとえば、ジクロフェナク、イブプロフェン、インドメタシン、及びナプロキセン)、及びパラセタモール(アセトアミノフェン)が挙げられる。AKIの内因性腎性原因としては、たとえば、ループス腎炎、糸球体腎炎、急性間質性腎炎、急性尿細管壊死、挫滅傷害、横紋筋融解症、腫瘍崩壊症候群、画像化に使用される造影色素(たとえば、ヨード造影剤)、並びにある特定の医薬、たとえば、抗生物質(たとえば、ゲンタマイシン)、化学療法剤、及びカルシニューリン阻害薬(たとえば、タクロリムス)が挙げられる。AKIの腎後性原因としては、たとえば、腎結石、膀胱結石、神経原性膀胱、良性前立腺過形成(前立腺肥大)、尿道狭窄、導尿カテーテル閉塞、膀胱癌、前立腺癌、又は尿管癌、及びある特定の医薬、たとえば、抗コリン作動剤が挙げられる。AKIは、CKDの発症リスクを9倍に増加させるとともに、合併症、たとえば、代謝性アシドーシス、尿毒症、高カリウム血症(血液中の高カリウムレベルは、異常心拍リズムの原因になりうる)、体液バランスの変化、肺浮腫、他の器官系への影響、及び死をもたらしうる。AKI患者の約5~10%は、決して腎機能を十分に取り戻すことがなくしかもESKDを発生するので、生涯にわたる血液透析又は腎移植を必要とする。AKI及びCKDは、酸化的ストレス、炎症、及びアポトーシスに関連する。たとえば、A.Tomsa et al.,PeerJ,7:e8046,DOI 10.7717/peerj.8046(2019)を参照されたい。
【0054】
肝腎症候群(HRS)は、肝及び腎機能の迅速劣化が関与する。HRSは、通常、細菌性感染、上部胃腸管の出血、急性アルコール性肝炎、利尿医薬の過剰使用などの傷害に起因して肝機能が迅速に劣化するときに発生する。肝機能の劣化又は肝疾患は、内臓循環(腸に供給する)の際の血管の拡張及び腎臓の血管の収縮の原因になる血管活性因子の放出をもたらし、これにより腎臓への血流ひいてはGFRを低減し、腎形態又は組織診の有意な異常の不在下で腎機能不全/不全の原因になる。HRSは、肝硬変(とりわけ、アルコール性肝炎を伴うアルコール性肝硬変)の被験者において最も多く発生し、それほど多くはないがアルコール性肝炎又は劇症肝不全の被験者において肝硬変の不在下で発生する。特発性細菌性腹膜炎(腹水液の感染)は、肝硬変の被験者においてHRSの最も一般的な促進因子である。急性HRSは、AKI-HRSといわれることもあり、慢性HRSは、CKD-HRSといわれることもある。SIRSは、高頻度でAKI-HRSの顕著な特徴である。HRSの2つの形態は、1型及び2型である。HRSのこれらの型は両方とも、血清中のクレアチニンレベルの上昇又は/及び尿中のクレアチニンクリアランスの低減より示されるように、腎機能の劣化が関与する。1型HRSは、急速に進行する腎機能低下により特徴付けられ、典型的には誘発性イベントに関連する。これとは対照的に、2型HRSは、腎機能不全の発症及び進行の際、より緩徐であり、典型的には誘発性イベントには関連しない。ほとんどの2型HRS患者は、門脈高血圧及び利尿剤抵抗性腹水(腹部の体液貯留)を有し、腎臓は、腎機能の低下を発症する前、利尿医薬を用いても十分なナトリウムを排泄して体液をクリアランスすることができない。HRSは、通常、肝移植なしでは致命的であるが、医薬(たとえば、昇圧剤又は/及び変力剤)や介入(たとえば、血液透析又は/及び肝透析)などの処置により、患者は肝移植を待ちつつ、1型HRSの悪化を防ぐことができるが、2型HRSでは防ぐことができない。2型HRS患者は、肝移植を受けなければ、約6ヵ月間のメジアン生存を有する。HRSは、酸化的ストレス、炎症、及びアポトーシスに関連する。たとえば、V.Nickovic et al.,Renal Failure,40:340-349(2018)を参照されたい。
【0055】
そのほかの実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)は、肝障害を処置するためにin vivo又はex vivoで使用される。肝障害としては、限定されるものではないが、肝炎(アルコール性及び非アルコール性)、アルコール性肝疾患(ALD)、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、アルコール性脂肪肝炎(ASH)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、肝線維症、肝硬変(アルコール性及び非アルコール性、たとえば、NAFLD又は慢性肝炎B型若しくはC型に起因するもの)、肝毒性(たとえば、薬剤誘発肝傷害[DILI])、急性及び慢性肝傷害、ALF、ACLF、CLF、急性肝疾患、CLD、並びにHRS(1型及び2型)が挙げられる。いくつかの実施形態では、肝障害は、アルコール性肝炎、肝硬変、DILI、急性肝傷害、ALF、ACLF、又はHRSである。CLDは、たとえば、ウイルス(たとえば、肝炎B型、肝炎C型、サイトメガロウイルス、又はエプスタイン・バーウイルス)、寄生生物(たとえば、住血吸虫症)、肝毒性剤(たとえば、アルコール)若しくは薬剤(たとえば、メトトレキサート)、又は代謝障害(たとえば、NAFLD、NASH、ヘモクロマトーシス、又はウィルソン病)の原因になりうる。ALDは、脂肪肝、アルコール性肝炎、及び肝線維症や肝硬変を伴う慢性肝炎を含めて、アルコール過剰摂取の肝徴候を包含する。ALDは、酸化的ストレス、炎症、及びアポトーシスに関連する。たとえば、H.Tan et al.,World J.Hepatol.,12:332-349(2020)を参照されたい。
【0056】
先進国で最も一般的な肝障害であるNAFLDは、過剰アルコール摂取以外の原因、たとえば、栄養素のオーバーロード、高カロリー摂取、及び代謝機能不全(たとえば、高脂血症及びグルコース制御障害)に起因して、脂肪、特定的には遊離脂肪酸及びトリグリセリドが肝細胞に貯留するときに発生する脂肪肝(肝脂肪症)により特徴付けられる。肝臓は、肝機能を擾乱することなく脂肪肝のままである可能性があるが、脂肪肝は、進行して、炎症、肝細胞バルーニング、及び肝臓の線維症を有する又は有していない細胞傷害が脂肪症に伴う病態であるNASHになる可能性がある。線維症は、NASHからの死亡率の最も強いの予測因子である。NASHは、NAFLDの最も極端な形態である。NASHは進行性疾患であり、患者の約20%は肝硬変を発生し、約10%は肝硬変や肝癌(たとえば、肝細胞癌腫)などの肝疾患で死亡する。NAFLD並びにそれによる肝及び肝外機能不全は、酸化的ストレス、炎症、及びアポトーシスに関連する。たとえば、A.Gonzalez et al.,Oxid.Med.Cell.Longevity,2020:1617805(2020)を参照されたい。
【0057】
一般的肝毒性は、化学物質誘発肝損傷であり、薬剤誘発肝傷害(DILI)を含む。DILIは、急性及び慢性肝疾患の原因になりうるとともに、ALF症例の約50%に関与する。ALFは、大量細胞死(多くの場合、肝細胞の約70~90%が死亡する)をもたらす壊滅的ミトコンドリアル不全及び活性酸素種(ROS)発生により特徴付けられる。肝毒性(DILIを含む)の原因になりうる化学物質(医薬を含む)としては、アルコール、アセトアミノフェン(パラセタモール)、NSAID(たとえば、ジクロフェナク及びインドメタシン)、グルココルチコイド、ヒドラジン含有薬剤(たとえば、イソニアジド及びイプロニアジド)、抗生物質(たとえば、アモキシシリン、アモキシシリン/クラブラン酸、及び抗結核薬剤、たとえば、イソニアジド、ピラジナミド、及びリファンピシン)、抗レトロウイルス剤(たとえば、ジドブジン[アジドチミジン])、天然産物(たとえば、アマニタキノコ及び緑茶抽出物)、代替治療薬(ハーブサプリメント及び漢方薬を含む)、及び産業毒素(たとえば、ヒ素、四塩化炭素、及び塩化ビニル)が挙げられる。アセトアミノフェンに続く抗結核薬剤は、ALFの最も一般的な原因である。化学物質(医薬を含む)が原因になる肝傷害パターンは、帯状壊死、肝炎、胆汁鬱滞、脂肪症、肉芽腫、血管病変、及び新生物を含む。NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体は、活動性疾患(たとえば、結核又は炎症性障害)又は診断されているが(たとえば、陽性結核検査)まだ活動性でない疾患(たとえば、結核又は炎症性障害)に対する医薬(たとえば、抗結核薬剤、NSAID、又はグルココルチコイド)を摂取するようにスケジュールされている患者において肝毒性(DILIを含む)を防止するために使用可能である。NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体は、ミトコンドリア機能を増強し、酸化的ストレス、炎症、及び細胞死を低減する。
【0058】
他の実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)は、溶血性障害を処置するためにin vivo又はex vivoで使用される。溶血性障害としては、限定されるものではないが、溶血及び溶血性貧血(遺伝性/内因性原因及び後天性/外因性原因)が挙げられる。貧血は、血中の赤血球細胞(RBC)又はヘモグロビンの合計量の低下又は酸素を担持する血液の能力の低下である。そのため、溶血(RBCの破裂)は、典型的には、貧血すなわち溶血性貧血をもたらす。したがって、より一般的には、溶血性貧血の下記の内因性及び外因性原因もまた、溶血性障害に当てはまる。(遺伝性)溶血性貧血の内因性原因としては、限定されるものではないが、RBC膜産生又は形態の欠損(たとえば、遺伝性球状赤血球症、遺伝性楕円赤血球症、及び遺伝性熱変形赤血球症の際)、RBC代謝の欠損(たとえば、シトクロム-b5レダクターゼ欠損、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ[G6PD]欠損、ピルビン酸キナーゼ欠損、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ[6PGD]欠損、及びガンマ-グルタミルシステインシンテターゼ欠損の際)、及びヘモグロビン産生の欠損(たとえば、シトクロム-b5レダクターゼ欠損、サラセミア、鎌状細胞疾患、鎌状赤血球貧血、及び先天性赤血球異形成貧血の際)が挙げられる。(後天性)溶血性貧血の外因性原因としては、限定されるものではないが、免疫系によるRBCの攻撃(自己免疫性溶血性貧血とSLEたとえば、関節リウマチ、ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病、寒冷凝集素疾患、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)感染、及び発作性夜間ヘモグロビン尿症[PNH]の際)、感染(たとえば、マラリア、バベシア属(Babesia)、クロストリジウム綱(Clostridia)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、リケッチア属(Rickettsia)、インフルエンザ、及びHIV)、毒及び毒素(たとえば、鉛、アルシン、スチビン、溶血素などの毒素、及びE.コリ(E.coli)やスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)などの細菌により産生される志賀毒素、並びにヘビ及びカリバチやクモなどの昆虫の咬傷/刺傷を介して送達される毒素)、薬剤/医薬(たとえば、アドリアマイシン)、放射線(たとえば、癌の放射線療法)、外傷(たとえば、血管内デバイス、人工心臓弁、体外膜型酸素供給などの医学的介入が原因になるRBCの熱傷及び外傷)、微小血管症(たとえば、溶血性尿毒症症候群、HELLP[溶血性貧血、肝酵素亢進、乳酸アシドーシス、及び低血小板]症候群、さらには血栓性微小血管症、たとえば、播種性血管内凝固、血栓性血小板減少性紫斑病、並びにSIRS及び敗血症の際のもの)、他の血管障害(たとえば、動静脈奇形、大動脈狭窄、強皮症、及び血管炎)、全身性障害(たとえば、SIRS、敗血症、及び悪性高血圧)、コレステロールエステル化障害(たとえば、有棘細胞溶血性貧血及びCLDの際)、及び脾臓活性増加の原因(たとえば、脾腫大及び門脈高血圧)が挙げられる。酸化的ストレス、損傷、又は傷害、たとえば、RBC中の又はRBCに対するものは、多くの場合、溶血性貧血(又はより一般的には溶血性障害)の上述した内因性及び外因性原因の溶血性病理状態を誘発する、に寄与する、又は増悪する。
【0059】
溶血では、RBCは、破裂してその内容物を周囲体液(たとえば、血漿)中に放出する。溶血は、血管で(血管内溶血)又は体内の他の箇所で(血管外溶血)、たとえば、脾臓で発生しうる。溶血は、全身性炎症、血管運動機能障害、血栓性素因、及び急性若しくは慢性腎傷害をはじめとする重篤な帰趨を有しうる。溶血から生じる循環状態のヘモグロビンなどの潜在的毒性細胞外ヘモタンパク質及びヘム、鉄、グロビンなどその分解物の貯留は、高血圧の原因になりうるとともに、酸化的ストレス、炎症、及び細胞傷害性/細胞死機序を介して、血管組織及び血漿を濾過する腎臓を傷害する可能性がある。NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体の抗酸化性、抗炎症性、及び抗アポトティック性は、細胞フリーヘモグロビン及びその分解物の病理学的影響を防止又は軽減する。したがって、NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体による溶血の防止又は低減は、たとえば、溶血性障害、SIRS/敗血症、たとえば、ショック/敗血症性ショックの血行動態の悪化、血栓塞栓性障害(たとえば、静脈血栓塞栓症、たとえば、手足の深部静脈血栓症[パジェット・シュレッター病]、門脈血栓症、肝静脈血栓症、腎静脈血栓症、脳静脈洞血栓症、及び肺塞栓症)、並びにAKI及びCKDを防止又は回復可能である。
【0060】
驚くべきことに、NRH又はその還元誘導体は、赤血球細胞(RBC)/赤血球に対する酸化的損傷に関するアッセイで抗酸化及び抗溶血作用を発揮したが、NRもその酸化誘導体も発揮しなかった。NRH及びNRHTAは両方とも、in vitroでH誘発溶血を低減したが、NRもその酸化誘導体NR-トリアセテート(NRTA)も低減しなかった(実施例5)。酸化的ストレスは、RBCを損傷し最終的にそのライシス(溶血)をもたらし、ひいては骨髄でのRBC産生を低減し循環状態のRBCの死を引き起こす。たとえば、E.Fibach and E.Rachmilewitz,Curr.Mol.Med.,8:609-619(2008)、及びP.Maurya et al.,World J.Methodol.,5:216-222(2015)を参照されたい。RBC中のNRH及びNRHTAは、たとえば、NADH(還元剤)/NAD(酸化剤)比を増加させることにより酸化的ストレスを減少可能であり、それにより細胞性レドックス(還元-酸化)バランスを改善し、RBCに対する酸化的損傷を減少させ、溶血を防止又は減少させることができる。RBC中のNRH及びNRHTAの抗酸化及び抗溶血作用は、成熟RBCがミトコンドリアを欠如するのでミトコンドリア非依存である。
【0061】
さらなる実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)は、酸化的ストレス、損傷、又は傷害に関連する障害又は病態を処置するためにin vivo又はex vivoで使用される。酸化的ストレス、損傷、又は傷害に関連する障害及び病態としては、限定されるものではないが、酸化的ストレス、損傷、又は傷害が、その病理学的影響に寄与する障害若しくは病態の原因又は/及び障害若しくは病態の結果であるかにかかわらず、内因性プロセス(たとえば、活性化された好中球やマクロファージなどの免疫細胞による、並びにオキシダーゼ[たとえば、NADPHオキシダーゼ及びキサンチンオキシダーゼ]、オキシゲナーゼ[たとえば、モノオキシゲナーゼ及びジオキシゲナーゼ]、及び一酸化窒素シンターゼなどの酵素による、活性酸素種及び窒素種の発生)、感染(たとえば、B型、C型、及びD型肝炎ウイルス、HIV、エプスタイン・バーウイルス、インフルエンザA型ウイルス、呼吸器合胞体ウイルスなどのウイルスの、並びにヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)やバクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis)などの細菌の)、薬剤/医薬(後掲)、植物アルカロイド(たとえば、ベルベリン及びサンギナリン)、代謝物(たとえば、クロロアセトアルデヒド[イホスファミドの毒性代謝物]及びアトルバスタチンの代謝物)、食品(たとえば、ソラマメ)、毒素及び毒(たとえば、アルコール、四塩化炭素、1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン[MPTP]、及び鉄)、又は放射線(たとえば、UV及びX線などの電離線)により誘発される細胞、組織、若しくは器官中の酸化的ストレス又はそれらに対する酸化的損傷若しくは傷害;赤血球細胞(RBC)、白血球細胞(WBC、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞などのリンパ球を含む)、腎細胞(たとえば、腎管状上皮細胞)、肝細胞、肺細胞(たとえば、肺上皮細胞及び肺胞細胞)、精細胞、及び卵母細胞中の酸化的ストレス又はそれらに対する酸化的損傷若しくは傷害;血液障害;ミネラルの欠損代謝が関与する障害{たとえば、ウィルソン病のような銅オーバーロード障害、及びヘモクロマトーシス(たとえば、遺伝性ヘモクロマトーシス及び続発性ヘモクロマトーシス[たとえば、輸注性鉄オーバーロード、及びALD、NAFLD、ASH、NASH、アルコール性又は非アルコール性肝硬変などの肝障害に続発する鉄オーバーロード])のような鉄オーバーロード障害、無セルロプラスミン血症、パントテン酸キナーゼ関連神経変性(ハラーフォルデン・シュパッツ症候群)、及びフリードライヒ運動失調症};高レベルのメタロタンパク質(たとえば、ヘモグロビン、ミオグロビン、シトクロム[たとえば、シトクロムa、b、c、及びd]、鉄-硫黄クラスターを有するタンパク質、フェリチン、及びCu-Znスーパーオキシドジスムターゼ)を有する組織及び器官(たとえば、肝臓及び腎臓)に対する酸化的損傷又は傷害;薬剤/医薬(たとえば、イホスファミドなどの化学療法剤)により誘発される脳症;気道障害(たとえば、喘息、COPD、急性及び慢性肺傷害、並びにARDS);眼障害(たとえば、白内障、黄斑症[たとえば、AMD]、及び網膜症[たとえば、非増殖性網膜症及び網膜変性]);男性及び女性不妊症;免疫関連障害;腎障害;肝障害;並びに溶血性障害が挙げられる。
【0062】
細胞中の酸化的ストレスを防止又は減少させることにより、NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体はまた、タンパク質、脂質、DNA、オルガネラ、他の細胞内区画などのそれらの成分の望まれない酸化又は/及びそれらの成分に対する酸化的損傷を防止又は減少可能である。たとえば、NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体は、メタロタンパク質の酸化、たとえば、ヘモグロビンからメトヘモグロビンへの酸化を防止又は減少させるためにin vivo又はex vivoで使用可能である。ヘモグロビンは、正常ヘモグロビンの主形態ヘモグロビンA(HbA)又は疾患状態(たとえば、鎌状細胞疾患及びサラセミア)に存在するヘモグロビン変異体(たとえば、HbH、HbS、又はHb-Barts)でありうる。メトヘモグロビンのヘム基の鉄は、正常ヘモグロビンのFe2+(第1鉄)状態ではなくFe+(第2鉄)状態であり、そのため酸素を結合して組織及び器官に酸素を輸送することができない。
【0063】
酸化的ストレス、損傷、又は傷害を誘発しうる薬剤/医薬としては、限定されるものではないが、鉄製剤、メチレンブルー、L-ドーパ、NSAID(たとえば、ジクロフェナク及びインドメタシン)、カルシニューリン阻害薬(たとえば、シクロスポリン及びタクロリムス)、解熱剤(たとえば、パラセタモール[アセトアミノフェン])、抗精神病薬(たとえば、クロルプロマジン、クロザピン、及びフェノチアジン誘導体)、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(たとえば、タモキシフェン)、抗癌剤(たとえば、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、カンプトテシン、カルモフール、シスプラチン、ドキソルビシン、ゲムシタビン、メルカプトプリン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ニムスチン、パクリタキセル、ビンブラスチン、及びビノレルビン)、抗生物質(たとえば、ゲンタマイシン)、及び抗レトロウイルス剤(たとえば、ジドブジン[アジドチミジン])が挙げられる。
【0064】
酸化的ストレス、損傷、又は傷害に関連する血液障害としては、限定されるものではないが、メトヘモグロビン血症(後天性及び遺伝性)、貧血(たとえば、先天性赤血球異形成貧血、溶血性貧血、鎌状赤血球貧血、G6PD欠損関連貧血、及びPNH)、サラセミア(アルファ-、ベータ-、及びデルタ-サラセミアを含む)、及びRBCの異常形態又は形状(たとえば、遺伝性楕円赤血球症/卵形赤血球症、遺伝性球状赤血球症、及び鎌状細胞疾患)が挙げられる。ある特定の実施形態では、血液障害は、メトヘモグロビン血症(後天性又は遺伝性)及び貧血(たとえば、溶血、メトヘモグロビン/ヘモグロビン比の増加、又はメトヘモグロビン血症に起因する)である。
【0065】
メトヘモグロビン血症は、血中のメトヘモグロビンレベルの上昇である。それは、発作や心不整脈などの重篤な合併症を有しうる。それは後天性又は遺伝性でありうる。メトヘモグロビン血症は、たとえば、透析、薬剤/医薬(たとえば、抗生物質[たとえば、ダプソン、スルホンアミド、及びトリメトプリム]、局所麻酔剤[たとえば、アルチカイン、ベンゾカイン、リドカイン、及びプリロカイン]、メチレンブルー、メトクロプラミド、及びラスブリカーゼ)、化学化合物(たとえば、アニリン色素、臭素酸塩、塩素酸塩、硝酸塩、及び亜硝酸塩)、及び食品(たとえば、ソラマメ)により誘発されうる。メトヘモグロビン血症の遺伝的原因としては、限定されるものではないが、異常ヘモグロビン変異体(たとえば、ヘモグロビンH及びヘモグロビンM)、メトヘモグロビンをヘモグロビンに還元するシトクロム-b5レダクターゼ(メトヘモグロビンレダクターゼ)の欠損、及びシトクロム-b5レダクターゼに対するNADH又はNADPH共因子の産生に関与するピルビン酸キナーゼ又はG6PDの欠損が挙げられる。メトヘモグロビン血症は、炎症性応答を誘発しうるとともに、SIRS又は敗血症で酸素化を悪化させうる。たとえば、Anna et al.,Am.J.Physiol.Lung Cell.Mol.Physiol.,294:L161-L174(2008)、及びJay et al.,Am.J.Hematol.,82:134-144(2007)を参照されたい。
【0066】
貧血は、血中のRBC又はヘモグロビンの合計量の低下又は酸素を担持する血液の能力の低下である。貧血は、たとえば、失血(たとえば、外傷又は胃腸出血によって引き起こされる)、RBC産生の低下(たとえば、異常赤血球産生症、鉄欠乏症、ビタミンB[葉酸]欠乏症、ビタミンB12[コバラミン]欠乏症、サラセミア、たとえば骨髄異形成症候群等のある特定の骨髄新生物、たとえばジドブジン等の骨髄抑制性薬剤、あるいは、たとえばHIV感染等のある特定の感染、によって引き起こされる)、RBC分解の増加(たとえば、異常赤血球産生症、溶血[溶血性貧血]、鎌状赤血球貧血、遺伝性熱変形赤血球症、G6PD欠損、ピルビン酸キナーゼ欠損、PNH、たとえばマラリア等のある特定の感染性障害、又は例えばSLE及び関節リウマチ等のある特定の自己免疫性障害、によって引き起こされる)、ヘモグロビン産生の減少(たとえば、サラセミア又はシトクロム-b5レダクターゼ欠損によって引き起こされる)、メトヘモグロビン/ヘモグロビン比の増加、又はメトヘモグロビン血症に起因しうる。
【0067】
いくつかの実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)は、RBC中の酸化的ストレス又はRBCに対する酸化的損傷若しくは傷害、溶血、又はメトヘモグロビン形成、或いはそれらのいずれかの組合せ又はすべてを防止又は減少させるためにin vivo又はex vivoで使用される。ある特定の実施形態では、被験者は、免疫関連障害、たとえば、SIRS若しくは敗血症又はそれらの合併症、溶血性障害、或いは血液障害、たとえば、貧血に罹患している。他の実施形態では、被験者は、血液透析又は血液濾過を受けており、かつ、いずれかの基礎障害、たとえば、SIRS、敗血症、AKI、CKD、ESKD、肝不全、HRS、又はMODSを有する。
【0068】
さらなる実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)は、メチレンブルーの安全性又は/及び効能を増強するために、メチレンブルーが適応又は禁忌でありうる障害又は病態、たとえば、メトヘモグロビン血症、イホスファミド誘発脳症、敗血症、敗血症性ショック、又はアナフィラキシーを処置するために、メチレンブルーの代替物として又はメチレンブルーに対するアジュバントとしてin vivo又はex vivoで使用される。メチレンブルーの過剰用量は、酸化的ストレス及びメトヘモグロビン血症自体を誘発しうる。同様に、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)は、薬剤又は放射線療法の安全性又は/及び効能を増強するために、細胞、組織、又は器官中の酸化的ストレス又はそれらに対する酸化的損傷若しくは傷害を誘発する他の薬剤又は放射線療法(又は薬剤の代謝物)に対するアジュバントとしてin vivo又はex vivoで使用可能である。たとえば、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体は、鉄増強療法を受けている患者において酸化的ストレスを誘発する鉄製剤(たとえば、静脈内製剤)の安全性又は/及び効能を増強するためにin vivo又はex vivoで使用可能である。また同様に、他の薬剤又は療法に対するアジュバントとしてのNRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)は、細胞、組織、又は器官中の酸化的ストレス又はそれらに対する酸化的損傷若しくは傷害を防止又は減少させるためにin vivo又はex vivoで使用可能である。
【0069】
他の実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)は、酸化ストレス関連眼障害を処置するために使用される。ある特定の実施形態では、眼障害は白内障である。水晶体中のNRH、NARH、又はそれらの還元誘導体の抗酸化作用、たとえば、水晶体中の細胞性レドックスバランスの増強は、水晶体に対する酸化的損傷を防止又は低減し、それにより白内障の形成を防止若しくは遅延したり、又は白内障の進行を緩徐化若しくは重症度を低下させたりすることが可能である。ある特定の実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体は、点眼剤により眼に投与される。
【0070】
NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)はまた、in vitro又は他のex vivo用途も有しうる。いくつかの実施形態では、被験者からの生物学的サンプル(たとえば、細胞又は生体液)は、NRH、NARH、又は還元誘導体にin vitroで接触される。たとえば、血液及び血液製剤(たとえば、パックRBC)は、貯蔵時にそれらの中の酸化的ストレス、それらに対する酸化的損傷又は傷害、及びそれらの溶血を防止又は減少させることによりそれらの品質及びシェルフライフを増加させるために、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体でin vitroで処置可能である。かかる処置血液及び血液製剤は、たとえば、SIRS若しくは敗血症又はそれらの合併症、たとえば、ショック/敗血症性ショックの、溶血性障害の、又は貧血などの血液障害の被験者に対する自家血又は他家血輸血に使用可能である。他の一例として、精細胞又は精液は、なんらかの理由で男性不妊症を処置するために、たとえば、精細胞の健康、機能、運動性、若しくは数、又はそれらのいずれかの組合せ若しくはすべてを増強するために、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体でin vitroで処置可能である。そのほかの例として、卵母細胞又は卵胞液は、なんらかの理由で女性不妊症を処置するために、たとえば、卵母細胞の健康、機能、若しくは数、又はそれらのいずれかの組合せ若しくはすべてを増強するために、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体でin vitroで処置可能である。
【0071】
本明細書に開示される障害又は病態をin vivo又はex vivoで処置するためのNRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)の用量又は治療有効量及び投与頻度及び処置期間は、障害又は病態の性質及び重症度、化合物の効力、投与経路、被験者の年齢、体重、全般的健康、性別、及び食事、並びに処置に対する被験者の応答をはじめとする各種因子に依存しうるとともに、処置医により決定可能である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される障害又は病態を処置するためのNRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)の用量又は治療有効量は、1日当たり約0.1~60mg/kg、0.5~50mg/kg、1~40mg/kg、若しくは1.5~30mg/kg、又は1日当たり約1~4000mg、50~3500mg、100~3000mg、若しくは100~2000mg、又は処置医により適切とみなされる通りであり、これらは、たとえば、ボーラスとして単一用量で(たとえば、Nmgで1日1回)若しくは複数用量で(たとえば、N/2mgで1日2回)又は連続注入により投与可能である。さらなる実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体の用量又は治療有効量は、1日当たり約1mg~1g、1~2g、2~3g、又は3~4gである。そのほかのさらなる実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体の用量又は治療有効量は、1日当たり約1~500mg若しくは500~1000mg、又は1日当たり約1~50mg、50~100mg、100~200mg、200~300mg、300~400mg、400~500mg、500~750mg、若しくは750~1000mgである。そのほかの実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体の用量又は治療有効量は、1日当たり約50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、又は1000mgである。ある特定の実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体の用量又は治療有効量は、1日当たり約100~500mg、100~200mg、200~300mg、300~400mg、若しくは400~500mg、又は1日当たり約100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、若しくは500mgである。
【0072】
NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)の用量又は治療有効量は、いずれかの好適な頻度で患者に投与可能又はex vivoで提供可能であるとともに、処置医により決定可能である。いくつかの実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体は、1日1回、2回、若しくはそれ以上(たとえば、3回若しくは4回)、2日に1回、3日に1回、週3回、週2回、又は週1回患者に投与されるか又はex vivoで提供される。ある特定の実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体の用量又は治療有効量は、1日1回又は2回患者に投与される。例示的例として、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体の用量又は治療有効量が1日当たり約500mgである場合、500mgの化合物を1日1回投与可能であり、又は250mgの化合物を1日2回投与可能である。
【0073】
SIRS、敗血症、虚血-再灌流傷害、又は急性障害の処置の際のように、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)の治療レベルのより迅速な確立が望まれる場合、処置医により適切とみなされる通り、負荷用量を投与してから続いて、(i)1つ以上の追加負荷用量、次いで1つ以上の治療有効維持用量、又は(ii)追加負荷用量なしの1つ以上の治療有効維持用量という投与スケジュールの下で化合物を投与可能である。かかる場合には、薬剤の負荷用量は、後続維持用量よりも多く(たとえば、約1.5、2、3、4、又は5倍)、薬剤の治療レベルをより迅速に確立するように設計される。1つ以上の治療有効維持用量は、本明細書に記載のいずれかの用量又は治療有効量でありうる。ある特定の実施形態では、負荷用量は維持用量の約3倍である。いくつかの実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体の負荷用量は1日目に投与され、維持用量は2日目に及びその後は治療の持続時間にわたり投与される。他の実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体の第1の負荷用量は1日目に投与され、第2の負荷用量は2日目に投与され、維持用量は3日目に及びその後は治療の持続期間にわたり投与される。ある特定の実施形態では、第1の負荷用量は維持用量の約3倍であり、及び第2の負荷用量は維持用量の約2倍である。
【0074】
NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)によるin vivo又はex vivo処置期間は、たとえば、障害又は病態の性質及び重症度並びに処置に対する被験者の応答に基づきうるとともに、処置医により決定可能である。ある特定の実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体の用量又は治療有効量は、急性障害又は病態を処置するために、約1、2、3、4、5、若しくは6日間、又は約1、2、3、4、5、若しくは6週間の期間にわたり患者に投与されるか又はex vivoで提供される。急性障害及び病態としては、限定されるものではないが、SIRS及び敗血症、組織及び器官(たとえば、脳、脊髄、腎臓、及び肝臓)に対する損傷及び傷害、虚血障害(たとえば、心筋虚血/梗塞及び脳虚血/梗塞)、並びに虚血-再灌流傷害(たとえば、心IRI、脳IRI及び腎IRI)が挙げられる。他の実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体の用量又は治療有効量は、慢性障害又は病態を処置するために、少なくとも約6週間、8週間(2ヵ月間)、3ヵ月間、6ヵ月間、1年間、2年間、3年間、4年間、5年間、10年間、又はそれ以上の期間にわたり患者に投与されるか又はex vivoで提供される。急性及び慢性間の線引きは、たとえば、特定障害又は病態に基づいて変動しうるものと理解される。たとえば、特定障害は、それが最大6週間続く場合、その分野の専門家により急性とみなされうるとともに、一方、別の障害は、それが最大8週間続く場合、その分野の専門家により急性とみなされうる。さらに、個別患者における特定障害又は病態の期間は変動することが多く、急性又は慢性でありうるものと理解される。
【0075】
NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)はまた、障害若しくは病態の臨床徴候が消失するまで又はその障害若しくは病態に対する臨床目標が達成されるまで、臨機応変に(必要に応じて)in vivo又はex vivoで使用可能である。障害若しくは病態の臨床徴候が再び現れた場合又は臨床目標が維持されない場合、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体のin vivo又はex vivo使用を再開可能である。代替の臨機応変なin vivo又はex vivo処置の下で、さらにまた処置医の自由裁量で、NRH、NARH、若しくはそれらの還元誘導体の用量又は/及びのその投与頻度は、臨床目標又は結果が改善されたら低減可能であり、その後で続いて患者の臨床ステータスが悪化したら(たとえば、以前の有効用量又は/及び投与頻度に)増加可能である。
【0076】
in vivo使用では、NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)は、いずれかの好適な経路を介して患者に投与可能である。NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体の投与の潜在的ルートとしては、限定されるものではないが、経口、非経口(皮内、皮下、血管内、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、腔内、髄内、髄腔内、及び局所を含む)、及び外用(真皮/皮膚上、経真皮、粘膜、経粘膜、鼻内[たとえば、鼻腔スプレー又は点鼻剤による]、肺[たとえば、経口吸入又は鼻腔吸入による]、眼[たとえば、点眼剤による]、頬、舌下、直腸[たとえば、坐剤による]、及び膣[たとえば、坐剤による]を含む)が挙げられる。いくつかの実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体は、腸溶コーティングを任意に有する錠剤又はカプセル剤(たとえば、Opadry(登録商標)Enteric[94シリーズ])として経口投与される。他の実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体は、非経口的に、たとえば、静脈内、皮下、又は筋肉内に(たとえば、注射又は注入により)投与される。
【0077】
投与経路は、たとえば、処置される特定障害又は病態に依存しうる。例として、眼障害(たとえば、白内障)の処置では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体は、たとえば、点眼剤により投与可能である。他の一例として、皮膚障害又は病態の処置では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体を含有する局所組成物は、皮膚の罹患領域に適用可能である。そのほかの例として、気道障害の処置では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体は、経口吸入により投与可能である。
【0078】
いくつかの実施形態では、被験者からの細胞又は生体液にex vivoで接触させることは、被験者からの血液、血漿、血清、リンパ液、脳脊髄液、滑液、精液、又は卵胞液に、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)をex vivoで接触させることを含む。ある特定の実施形態では、被験者は、免疫関連障害(たとえば、SIRS又は敗血症)、溶血性障害(たとえば、溶血)、又は血液障害(たとえば、貧血)に罹患しており、被験者からの血液は、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体でex vivoで処置される。
【0079】
いくつかの実施形態では、患者への投与後の血中の又はex vivo媒体(たとえば、血液)中のNRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)の濃度(たとえば、定常状態濃度)は、約1~1000μM、1~500μM、若しくは500~1000μM、又は約1~250μM、250~500μM、500~750μM、若しくは750~1000μMである。ある特定の実施形態では、患者への投与後の血中の又はex vivo媒体(たとえば、血液)中のNRH、NARH、又はそれらの還元誘導体の濃度(たとえば、定常状態濃度)は、約1~200μM、1~150μM、1~100μM、若しくは100~200μM、又は約1~50μM、50~100μM、100~150μM、若しくは150~200μMである。いくつかの実施形態では、患者への投与後の血中の又はex vivo媒体(たとえば、血液)中のNRH、NARH、又はそれらの還元誘導体の濃度(たとえば、定常状態濃度)は、投与又は処置1回当たり少なくとも約1hr、2hr、3hr、6hr、8hr、又は12hr持続する。いくつかの実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体は、ボーラスとして1日1、2、3、若しくは4回又は連続注入によりに患者に静脈内又は皮下投与される。
【0080】
in vivo使用では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)は、患者に便利ないずれかの時点で、たとえば、朝又は/及び夜(たとえば、就寝時)に投与可能である。そのうえ、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)は、実質的に食物と共に(たとえば、食前若しくは食後約1時間若しくは30分以内)又は実質的に食物なしで(たとえば、食事の少なくとも約1若しくは2時間前若しくは後)摂取可能である。
【0081】
本開示は、処置を必要とする被験者にジヒドロニコチンアミドリボシド(NRH)、ジヒドロニコチン酸リボシド(NARH)、若しくはそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)、又はそれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、水和物、包接体、多形体、若しくは立体異性体、又はそれらを含む医薬組成物を治療有効量で投与すること、或いは処置を必要とする被験者からの細胞又は生体液にそうしたものをex vivoで接触させること、を含む、本明細書に記載の障害又は病態を処置する方法を提供する。本開示はさらに、本明細書に記載の障害又は病態の処置での使用のための、NRH、NARH、若しくはそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)、又はそれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、水和物、包接体、多形体、若しくは立体異性体、又はそれらを含む組成物を提供する。そのほか、本開示は、本明細書に記載の障害又は病態の処置のための医薬剤の製造又は調製における、NRH、NARH、若しくはそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)、又はそれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、水和物、包接体、多形体、若しくは立体異性体の使用を提供する。いくつかの実施形態では、障害又は病態は、免疫関連障害(たとえば、SIRS若しくは敗血症)、腎障害(たとえば、AKI若しくはHRS)、肝障害(たとえば、アルコール性肝炎、ALF、ACLF、肝硬変、若しくはHRS)、溶血性障害(たとえば、溶血若しくは溶血性貧血)、又は酸化的ストレス、損傷、若しくは傷害に関連する障害若しくは病態(たとえば、メトヘモグロビン血症若しくは貧血)である。NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体は、単独で又は1つ以上の追加治療剤(たとえば、抗炎症剤若しくは/及び抗酸化剤)との組合せでin vivo又はex vivoで使用可能である。
【0082】
いくつかの実施形態では、NRH、NARH、NRH-トリアセテート(NRHTA)、NARH-トリアセテート(NARHTA)、又はそれらの薬学的に許容可能な塩は、本明細書に記載の障害又は病態(たとえば、免疫関連障害、腎障害、肝障害、溶血性障害、又は酸化的ストレス、損傷、若しくは傷害に関連する障害若しくは病態)を処置するためにin vivo又はex vivoで或いはin vitro用途で使用される。
【0083】
NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体の治療的使用に関する記載及びすべての実施形態はまた、NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体の代謝物の治療的使用、並びにNRH又はNARHからのNADHの生合成の中間体、たとえば、NMNH及びNAMNHの治療的使用にも当てはまる。ニコチンアミド/ニコチン酸リボシドキナーゼ(NRK)は、NRHをジヒドロニコチンアミドモノヌクレオチド(NMNH)にリン酸化し、次いで、これはニコチンアミド/ニコチン酸モノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼ(NMNAT)によりジヒドロニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)に変換される。同様に、NRKは、NARHをジヒドロニコチン酸モノヌクレオチド(NAMNH)にリン酸化し、これはNMNATによりジヒドロニコチン酸アデニンジヌクレオチド(NAADH)に変換され、ひいてはNADシンテターゼ1(NADSYN1)によりNADHに変換される。
【0084】
他の治療剤との組合せ療法
NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式I[後掲]のもの)は、本明細書に開示されるいずれかの障害又は病態を処置するために、単独で又は1つ以上の追加治療剤との組合せでin vivo又はex vivoで使用可能である。in vivo又はex vivo使用では、追加治療剤は、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体の投与又は提供の前に、それと並行して、又はそれに続いて投与又は提供可能である。in vivo又はex vivo使用では、追加治療剤及びNRH、NARH、又はそれらの還元誘導体は、同一の医薬組成物で又は別々の組成物で投与又は提供可能である。
【0085】
いくつかの実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)は、本明細書に開示されるいずれかの障害又は病態を処置するために、抗炎症剤との組合せでin vivo又はex vivoで使用される。いくつかの実施形態では、障害又は病態は免疫関連障害である。ある特定の実施形態では、免疫関連障害は、SIRS若しくは敗血症又はそれらの合併症である。いくつかの実施形態では、抗炎症剤は、NSAID、グルココルチコイド、免疫抑制剤、又は炎症促進性サイトカイン(たとえば、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-6、若しくはIL-23、又はそれらのいずれかの組合せ)若しくはそれに対するレセプター若しくはその産生のインヒビター、又はそれらのいずれかの組合せ又はすべてであるか、或いはそれらを含む。
【0086】
抗炎症剤としては、限定されるものではないが、以下のものが挙げられる。
非ステロイド系抗炎症薬剤(NSAID)としては、以下に列挙されたものが挙げられる。
免疫モジュレーター、たとえば、イミド(たとえば、サリドマイド、レナリドマイド、ポマリドマイド、及びアプレミラスト)及びキサンチン誘導体(たとえば、リソフィリン、ペントキシフィリン、及びプロペントフィリン)など、
免疫抑制剤、たとえば、インターフェロン-ベータ(IFN-β)、シクロホスファミド、グルココルチコイド(後掲)、抗代謝物(たとえば、ヒドロキシウレア[ヒドロキシカルバミド]、抗葉酸剤[たとえば、メトトレキサート]、及びプリンアナログ[たとえば、アザチオプリン、メルカプトプリン、及びチオグアニン])、ピリミジン合成インヒビター(たとえば、レフルノミド及びテリフルノミド)、カルシニューリン阻害薬(たとえば、シクロスポリン[シクロスポリンA]、ピメクロリムス、及びタクロリムス)、イノシン-5’-一リン酸デヒドロゲナーゼ(IMPDH)インヒビター(たとえば、マイコフェノール酸及びその誘導体[たとえば、マイコフェノレートナトリウム及びマイコフェノレートモフェチル])、ラパマイシン機序的/哺乳動物標的(mTOR)インヒビター(たとえば、ラパマイシン[シロリムス]、デフォロリムス[リダフォロリムス]、エベロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス[バイオリムスA9]、ゾタロリムス、及びRTP-801)、スフィンゴシン-1-リン酸レセプター(たとえば、S1PR1)のモジュレーター(たとえば、フィンゴリモド)、及びセリンC-パルミトイルトランスフェラーゼインヒビター(たとえば、ミリオシン)など、抗炎症性サイトカイン及びその産生を増加させる化合物、たとえば、IL-10及びそのアナログ及び誘導体(たとえば、PEG-イロデカキン)並びにIL-10産生を増加させる化合物{たとえば、S-アデノシル-L-メチオニン、メラトニン、メトホルミン、ロテノン、クルクミノイド(たとえば、クルクミン)、トリテルペノイド(たとえば、オレアノール酸アナログ[後掲、たとえば、TP-225])、プロスタサイクリン及びそのアナログ(後掲)、並びにアポA-Iミメティック(たとえば、4F)}など、炎症促進性サイトカイン又はそれに対するレセプターのインヒビター、たとえば、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)のインヒビター(たとえば、それを標的とする抗体又はそのフラグメント)(たとえば、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、ゴリムマブ、インフリキシマブ、エタネルセプト、ブプロピオン、クルクミン、カテキン、及びART-621)、又はそれに対するレセプター(TNFR1)のインヒビター、胸腺間質性リンホポイエチンのインヒビター(たとえば、抗TSLP抗体及びそのフラグメント[たとえば、テゼペルマブ及びM702]並びにTSLPRの細胞外ドメインを含むイムノコンジュゲート)又はそれに対するレセプター(TSLPR)のインヒビター、炎症促進性インターフェロン(たとえば、インターフェロンα[IFN-α])又はそれに対するレセプターのインヒビター(たとえば、それらを標的とする抗体又はそのフラグメント)、炎症促進性インターロイキン又はそれに対するレセプターのインヒビター(たとえば、それらを標的とする抗体又はそのフラグメント){たとえば、IL-1(たとえば、IL-1α及びIL-1β[たとえば、カナキヌマブ及びリロナセプト])又はIL-1R(たとえば、アナキンラ及びイスナキンラ[EBI-005])、IL-2又はIL-2R(たとえば、バシリキシマブ及びダクリズマブ)、IL-4又はIL-4R(たとえば、デュピルマブ)、IL-5(たとえば、メポリズマブ及びレスリズマブ)又はIL-5R、IL-6(たとえば、クラザキスマブ、エルシリモマブ、オロキズマブ、シルツキシマブ、及びシルクマブ)又はIL-6R(たとえば、サリルマブ及びトシリズマブ)、IL-8又はIL-8R、IL-12(たとえば、ブリアキヌマブ及びウステキヌマブ)又はIL-12R、IL-13又はIL-13R、IL-15又はIL-15R、IL-17(たとえば、イキセキズマブ及びセクキヌマブ)又はIL-17R(たとえば、ブロダルマブ)、IL-18(たとえば、GSK1070806)又はIL-18R、IL-20(たとえば、抗体7E)又はIL-20R、IL-22(たとえば、フェザキヌマブ)又はIL-22R、IL-23(たとえば、ブリアキヌマブ、グセルクマブ、リサンキズマブ、チルドラキズマブ[SCH-900222]、ウステキヌマブ、及びBI-655066)又はIL-23R、IL-31(たとえば、米国特許第9,822,177号明細書に開示される抗IL-31抗体)又はIL-31R(たとえば、抗IL-31レセプターA抗体、たとえば、ネモリズマブ)、IL-33又はIL-33R、及びIL-36又はIL-36R}、及び単球化学誘引タンパク質1(MCP-1)のインヒビター{たとえば、ビンダリット、抗MCP1抗体(たとえば、5D3-F7及び10F7)、MCP1結合性ペプチド(たとえば、HSWRHFHTLGGG)、及びMCP1結合性RNAアプタマー(たとえば、ADR22及びmNOX-E36[シュピーゲルマー])}又はそれに対するレセプターのインヒビター(たとえば、CCR2アンタゴニスト、たとえば、スピロピペリジン[たとえば、RS-29634、RS-102895、及びRS-504393])など、炎症促進性サイトカイン又はそれに対するレセプターの産生のインヒビター、たとえば、TNF-αの産生のインヒビター{たとえば、N-アセチル-L-システイン、S-アデノシル-L-メチオニン、L-カルニチン、ヒドロキシクロロキン、メラトニン、パルテノリド、ピルフェニドン、スルファサラジン、メサラジン(5-アミノサリチル酸)、タウリン、フラボノイド(たとえば、エピガロカテキン-3-ガレート[EGCG]、ナリンゲニン、及びケルセチン)、オメガ-3脂肪酸及びそのエステル[後掲]、グルココルチコイド、イムノモジュラトリーイミド及びキサンチン誘導体、PDE4阻害薬[後掲]、セリンプロテアーゼインヒビター(たとえば、ガベキセート及びナファモスタット)、プロスタサイクリン及びそのアナログ、SOCS1ミメティック(後掲)、粘液腫ウイルスM013タンパク質、エルシニア属(Yersinia)YopMタンパク質、アポA-Iミメティック(たとえば、4F)、及びアポEミメティック(たとえば、AEM-28及びhEp)}、IFN-α(たとえば、アレファセプト)、IL-1(たとえば、IL-1α及びIL-1β)(たとえば、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、ナファモスタット、ピルフェニドン、スルファサラジン、メサラジン、プロスタサイクリン及びそのアナログ、グルココルチコイド、TNF-αインヒビター、PAR1アンタゴニスト[たとえば、ボラパキサル]、M013タンパク質、YopMタンパク質及びアポA-Iミメティック[たとえば、4F])、IL-1β(たとえば、メラトニン、メトホルミン、ロテノン、フラボノイド[たとえば、EGCG及びナリンゲニン]、アネキシンA1ミメティック、及びカスパーゼ-1インヒビター[たとえば、ベルナカサン、プラルナカサン、及びパルテノリド])、IL-2(たとえば、グルココルチコイド、カルシニューリンインヒビター、及びPDE4阻害薬)、IL-4(たとえば、グルココルチコイド及びセリンプロテアーゼインヒビター[たとえば、ガベキセート及びナファモスタット])、IL-5(たとえば、グルココルチコイド)、IL-6(たとえば、ナファモスタット、パルテノリド、プロスタサイクリン及びそのアナログ、トラニラスト、L-カルニチン、タウリン、フラボノイド[たとえば、EGCG、ナリンゲニン、及びケルセチン]、オメガ-3脂肪酸及びそのエステル、グルココルチコイド、イムノモジュラトリーイミド、TNF-αインヒビター、M013タンパク質及びアポEミメティック[たとえば、AEM-28及びhEp])、IL-8(たとえば、アレファセプト及びグルココルチコイド)、IL-12(たとえば、アピリモド、PDE4阻害薬、及びYopMタンパク質)、IL-15(たとえば、YopMタンパク質)、IL-17(たとえば、ソトラスタウリン、タンパク質キナーゼCインヒビター)、IL-18(たとえば、M013タンパク質、YopMタンパク質、及びカスパーゼ-1インヒビター)、IL-23(たとえば、アピリモド、アレファセプト、及びPDE4阻害薬)、及びMCP-1(たとえば、EGCG、メラトニン及びトラニラスト)など、炎症促進性転写因子又はその活性化若しくは発現のインヒビター、たとえば、NF-κB又はその活性化若しくは発現のインヒビター{たとえば、アリスキレン、メラトニン、ミノサイクリン及びパルテノリド(両方ともNF-κB核移行を阻害する)、ナファモスタット、ニクロサミド、(-)-DHMEQ、IT-603、IT-901、PBS-1086、フラボノイド(たとえば、EGCG及びケルセチン)、ヒドロキシケイ皮酸及びそのエステル(たとえば、エチルカフェーエート)、リポキシン(たとえば、15-epi-LXA4及びLXB4)、オメガ-3脂肪酸及びそのエステル、スチルベノイド(たとえば、レスベラトロール)、スタチン(たとえば、ロスバスタチン)、トリテルペノイド(たとえば、オレアノール酸アナログ、たとえば、TP-225)、TNF-αインヒビター、アポEミメティック(たとえば、AEM-28)、M013タンパク質、ペネトラチン、及びサーチュイン1(SIRT1、これはNF-κBを阻害する)のアクチベーター(たとえば、フラボン[たとえば、ルテオリン]、フェニルエタノイド[たとえば、チロソール、これはSIRT1発現を誘発する]、スチルベノイド[たとえば、レスベラトロール、これはSIRT1活性及び発現を増加させる]、及びラミンA)}、及びSTAT(シグナルトランスデューサー及び転写アクチベーター)タンパク質又はその活性化若しくは発現のインヒビター{たとえば、ヤヌスキナーゼ1(JAK1)インヒビター(たとえば、イタシチニブ、ウパダシチニブ、GLPG0634、及びGSK2586184)、JAK2インヒビター(たとえば、レスタウルチニブ、パクリチニブ、CYT387、TG101348、SOCS1ミメティック、及びSOCS3ミメティック)、JAK3インヒビター(たとえば、ASP-015K、R348、及びVX-509)、デュアルJAK1/JAK2インヒビター(たとえば、バリシチニブ及びルキソリチニブ)、デュアルJAK1/JAK3インヒビター(たとえば、トファシチニブ)、サイトカインシグナリング(SOCS)ミメティックペプチドのサプレッサー(たとえば、SOCS1ミメティック[たとえば、SOCS1-KIR、NewSOCS1-KIR、PS-5、及びTkip]及びSOCS3ミメティック)、ニクロサミド、ヒドロキシケイ皮酸及びそのエステル(たとえば、ロスマリン酸)、及びリポキシン(たとえば、15-epi-LXA4及びLXB4)}など、炎症促進性プロスタグランジン(たとえば、プロスタグランジンE[PGE])又はそれに対するレセプター(たとえば、EP)又はその産生のインヒビター、たとえば、シクロオキシゲナーゼインヒビター(たとえば、NSAID[非選択的COX-1/COX-2インヒビター、たとえば、アスピリン、及び選択的COX-2インヒビター、たとえば、コキシブ]、グルココルチコイド[これはCOX活性及び発現を阻害する]、オメガ-3脂肪酸及びそのエステル、クルクミノイド[たとえば、クルクミン]、スチルベノイド[たとえば、レスベラトロール、これはCOX-1及び-2活性及び発現を阻害する]、並びにビタミンE及びそのアナログ[たとえば、α-トコフェロール及びトロロックス])、シクロペンテノンプロスタグランジン(たとえば、プロスタグランジンJ[PGJ]、Δ1β-PGJ、及び15-デオキシ-Δ12,14-PGJ)、ヒドロキシケイ皮酸及びそのエステル(たとえば、エチルカフェーエート、これはCOX-2発現を抑制する)、及びトリテルペノイド(たとえば、オレアノール酸アナログ、たとえば、TP-225、これはCOX-2発現を抑制する)など、ロイコトリエン又はそれに対するレセプター又はその産生のインヒビター、たと
えば、システイニルロイコトリエンレセプター1(cysLTR1)アンタゴニスト(たとえば、シナルカスト、ゲミルカスト[デュアルcysLTR1/cysLTR2アンタゴニスト]、イラルカスト、モンテルカスト、プランルカスト、トメルカスト、ベルルカスト、ザフィルルカスト、CP-195494、CP-199330、ICI-198615、MK-571、及びリポキシン[たとえば、LXA4及び15-epi-LXA4])、cysLTR2アンタゴニスト(たとえば、HAMI-3379)、5-リポキシゲナーゼ(5-LOX)インヒビター(たとえば、バイカレイン、カフェー酸、クルクミン、ヒペルフォリン、γ-リノレン酸[GLA]、メクロフェナム酸、メクロフェナム酸ナトリウム、ミノサイクリン、チペルカスト[MN-001]、ジロイトン、MK-886、並びにオメガ-3脂肪酸及びそのエステル)、及びイムノモジュラトリーキサンチン誘導体など、ホスホリパーゼA2(たとえば、分泌及びサイトゾルPLA2)のインヒビター、たとえば、グルココルチコイド、アラキドニルトリフルオロメチルケトン、ブロモエノールラクトン、クロロキン、シチジン5-ジホスホアミン、ダラプラジブ、キナクリン、ビタミンE、RO-061606、ZPL-521、リポコルチン(アネキシン、たとえば、アネキシンA1)及びアネキシンミメティックペプチド(たとえば、アネキシンA1ミメティック、たとえば、Ac2-26及びCGEN-855A)など、C反応性タンパク質(CRP)活性又はレベルのサプレッサー、たとえば、スタチン(たとえば、ロスバスタチン)、チアゾリジンジオン(たとえば、バラグリタゾン、シグリタゾン、ダルグリタゾン、エングリタゾン、ロベグリタゾン、ネトグリタゾン、ピオグリタゾン、ジュウテリウム化(R)-ピオグリタゾン[たとえば、DRX-065]、リボグリタゾン、ロシグリタゾン、及びトログリタゾン)、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)インヒビター(たとえば、アログリプチン、アナグリプチン、ズトグリプチン、エボグリプチン、ゲミグリプチン、ゴソグリプチン、リナグリプチン、オマリグリプチン、サキサグリプチン、セプタグリプチン、シタグリプチン、デスフルオロシタグリプチン、テネリグリプチン、トレラグリプチン、及びビルダグリプチン)、スチルベノイド(たとえば、レスベラトロール)、EGCG、及びCRP-i2など、肥満細胞安定剤、たとえば、クロモグリク酸(クロモリン)、ケトチフェン、メチルキサンチン、ネドクロミル、ニコチンアミド、オロパタジン、オマリズマブ、ペミロラスト、ケルセチン、硫酸亜鉛、及びβ-アドレナリンレセプターアゴニスト(たとえば、アルブテロール[サルブタモール]、フォルモテロール、ピルブテロール、サルメテロール、及びテルブタリン)など、ホスホジエステラーゼ阻害剤、たとえば、PDE4阻害剤(たとえば、アプレミラスト、シロミラスト、イブジラスト、ピクラミラスト、ロフルミラスト、クリサボロール、ジアゼパム、ルテオリン、メセンブレノン、ロリプラム、AN2728、及びE6005)及びデュアルPDE3/4阻害剤(たとえば、チペルカスト)など、特殊消散促進性メディエーター(SPM)、たとえば、ポリ不飽和脂肪酸(PUFA)の代謝物、たとえば、リポキシン(たとえば、LXA4、15-epi-LXA4、LXB4、及び15-epi-LXB4)、レゾルビン(たとえば、5Z,8Z,11Z,14Z,17Z-エイコサペンタエン酸[EPA]に由来するレゾルビン、4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z-ドコサヘキサエン酸[DHA]に由来するレゾルビン、及び7Z,10Z,13Z,16Z,19Z-ドコサヘキサエン酸[n-3DPA]に由来するレゾルビン)、プロテクチン/ニューロプロテクチン(たとえば、DHA由来プロテクチン/ニューロプロテクチン及びn-3DPA由来プロテクチン/ニューロプロテクチン)、マレシン(たとえば、DHA由来マレシン及びn-3DPA由来マレシン)、n-3DPA代謝物、n-6DPA(4Z,7Z,10Z,13Z,16Z-ドコサペンタエン酸)代謝物、オキソ-DHAの代謝物、オキソ-DPA代謝物、ドコサヘキサエノイルエタノールアミド代謝物、シクロペンテノンプロスタグランジン(たとえば、Δ12-PGJ及び15-デオキシ-Δ12,14-PGJ)、及びシクロペンテノンイソプロスタン(たとえば、5,6-エポキシイソプロスタンA及び5,6-エポキシイソプロスタンE)など。
【0087】
他の種類の抗炎症剤、たとえば、ピルフェニドン、ニンテダニブ、ビタミンA、オメガ-3脂肪酸及びそのエステル(たとえば、ドコサヘキサエン酸[DHA]、ドコサペンタエン酸[DPA]、エイコサペンタエン酸[EPA]、α-リノレン酸[ALA]、魚油[これは、たとえば、DHA及びEPAを含有する]、及びそれらのエステル[たとえば、グリセリル及びエチルエステル])、プロスタサイクリン及びそのアナログ(たとえば、アタプロスト、ベラプロスト[たとえば、エスベラプロスト]、5,6,7-トリノル-4,8-inter-m-フェニレン-9-フルオロ-PGI、カルバサイクリン、イソカルバサイクリン、クリンプロスト[イソカルバサイクリンメチルエステル]、シプロステン、エプタロプロスト、シカプロスト[エプタロプロストの代謝物]、イロプロスト、ピミルプロスト、SM-10906[デスメチルピミルプロスト]、ナキサプロステン、タプロステン、トレプロスチニル、CS-570、OP-2507、及びTY-11223)、アポA-Iミメティック(たとえば、4F)、アポEミメティック(たとえば、AEM-28及びAEM-28-14)、及び抗酸化剤(たとえば、硫黄含有抗酸化剤)など、並びにそれらのアナログ、誘導体、断片、及び塩。
【0088】
非ステロイド系抗炎症薬剤(NSAID)としては、限定されるものではないが、次のものが挙げられる。酢酸誘導体、たとえば、アセクロフェナク、ブロムフェナク、ジクロフェナク、エトドラク、インドメタシン、ケトロラク、ナブメトン、スリンダク、スリンダクスルフィド、スリンダクスルホン、及びトルメチン、アントラニル酸誘導体(フェナメート)、たとえば、フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、及びトルフェナム酸、エノール酸誘導体(オキシカム)、たとえば、ドロキシカム、イソキシカム、ロルノキシカム、メロキシカム、ピロキシカム、及びテノキシカム、プロピオン酸誘導体、たとえば、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、デキシブプロフェン、ケトプロフェン、デキスケトプロフェン、キソプロフェン、ナプロキセン、及びオキサプロジン、サリチレート、たとえば、ジフルニサル、サリチル酸、アセチルサリチル酸(アスピリン)、コリンマグネシウムトリサリチレート、サルサレート、及びメサラジン、COX-2-選択的インヒビター、たとえば、アプリコキシブ、セレコキシブ、エトリコキシブ、フィロコキシブ、フルオロコキシブ(たとえば、フルオロコキシブA~C)、ルミラコキシブ、マバコキシブ、パレコキシブ、ロフェコキシブ、チルマコキシブ(JTE-522)、バルデコキシブ、4-O-メチルホノキオール、ニフルム酸、DuP-697、CG100649、GW406381、NS-398、SC-236、SC-58125、ベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン-4-オンスルホンアミドチオ誘導体、及びトリブラス・テレストリス(Tribulus terrestris)に由来するCOX-2インヒビター、他の種類のNSAID、たとえば、モノテルペノイド(たとえば、ユーカリプトール及びフェノール[たとえば、カルバクロール])、アニリノピリジンカルボン酸(たとえば、クロニキシン)、スルホンアニリド(たとえば、ニメスリド)、リポキシゲナーゼ(たとえば、5-LOX)及びシクロオキシゲナーゼ(たとえば、COX-2){たとえば、ケブラグ酸、ジュアルインヒビター、リコフェロン、2-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-4-(N-メチルインドール-3-イル)チオフェン、及びジ-tert-ブチルフェノール系化合物(たとえば、DTPBHZ、DTPINH、DTPNHZ、及びDTPSAL)}、並びにそれらのアナログ、誘導体、及び塩。
【0089】
グルココルチコイドクラスのコルチコステロイドは、抗炎症性及び免疫抑制性を有する。グルココルチコイドとしては、限定されるものではないが、次のものが挙げられる。ヒドロコルチゾンタイプ(たとえば、コルチゾン及びその誘導体[たとえば、コルチゾンアセテート]、ヒドロコルチゾン及びその誘導体[たとえば、ヒドロコルチゾンアセテート、ヒドロコルチゾン-17-アセポネート、ヒドロコルチゾン-17-ブテプレート、ヒドロコルチゾン-17-ブチレート、及びヒドロコルチゾン-17-バレレート]、プレドニソロン、メチルプレドニゾロン及びその誘導体[たとえば、メチルプレドニゾロンアセポネート]、プレドニゾン、並びにチキソコルトール及びその誘導体[たとえば、チキソコルトールピバレート])、ベタメタゾンタイプ(たとえば、ベタメタゾン及びその誘導体[たとえば、ベタメタゾンジプロピオネート、ベタメタゾンナトリウムホスフェート、及びベタメタゾンバレレート]、デキサメタゾン及びその誘導体[たとえば、デキサメタゾンナトリウムホスフェート]及びフルオロコルトロン及びその誘導体[たとえば、フルオコルトロンカプロエート及びフルオコルトロンピバレート])、ハロゲン化ステロイド(たとえば、アルクロメタゾン及びその誘導体[たとえば、アルクロメタゾンジプロピオネート]、ベクロメタゾン及びその誘導体[たとえば、ベクロメタゾンジプロピオネート]、クロベタゾール及びその誘導体[たとえば、クロベタゾール-17-プロピオネート]、クロベタゾン及びその誘導体[たとえば、クロベタゾン-17-ブチレート]、デスオキシメタゾン及びその誘導体[たとえば、デスオキシメタゾンアセテート]、ジフロラゾン及びその誘導体[たとえば、ジフロラゾンジアセテート]、ジフルコルトロン及びその誘導体[たとえば、ジフルコルトロンバレレート]、フルプレドニデン及びその誘導体[たとえば、フルプレドニデンアセテート]、フルチカゾン及びその誘導体[たとえば、フルチカゾンプロピオネート]、ハロベタゾール[ウロベタゾール]及びその誘導体[たとえば、ハロベタゾールプロピオネート]、ハロメタゾン及びその誘導体[たとえば、ハロメタゾンアセテート]、並びにモメタゾン及びその誘導体[たとえば、モメタゾンフロエート])、アセトニド及び関連物質(たとえば、アムシノニド、ブデソニド、シクレソニド、デソニド、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、フルランドレノリド[フルランドレノロン又はフルドロキシコルチド]、ハルシノニド、トリアムシノロンアセトニド、及びトリアムシノロンアルコール)、カーボネート(たとえば、プレドニカルベート)並びにそれらのアナログ、誘導体、及び塩。ある特定の実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体は、SARS-CoV-2感染に関連する障害又は病態、たとえば、COVID-19、SIRS若しくは敗血症又はそれらの合併症を処置するためにデキサメタゾンとの組合せでin vivo又はex vivoで使用される。
【0090】
さらなる実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)は、本明細書に開示されるいずれかの障害又は病態を処置するために抗酸化剤との組合せでin vivo又はex vivoで使用される。いくつかの実施形態では、障害又は病態は、酸化的ストレス、損傷、又は傷害に関連する。ある特定の実施形態では、抗酸化剤は、ビタミン又はそのアナログ(たとえば、ビタミンE若しくはそのアナログ、たとえば、α-トコフェロール若しくはトロロックス)、硫黄含有抗酸化剤(たとえば、グルタチオン、N-アセチル-L-システイン若しくはブシラミン)、ROS若しくはラジカルスカベンジャー(たとえば、メラトニン若しくはグルタチオン)、ミトコンドリアル抗酸化剤/「ビタミン」(たとえば、ユビキノン-10[CoQ10]若しくはユビキノール-10)若しくはそのアナログ、又はミトコンドリア標的抗酸化剤(たとえば、SkQ1、SkQR1、SkQT、SkQT1、若しくはSkQTK1)、又はそれらのいずれかの組合せであるか、或いはそれらを含む。他の実施形態では、抗酸化剤は、ビタミン若しくはそのアナログ(たとえば、ビタミンE若しくはそのアナログ、たとえば、α-トコフェロール若しくはトロロックス)、グルタチオン若しくはその誘導体又はグルタチオンレベルを増加させる抗酸化剤(たとえば、任意にグリシンとの組合せでN-アセチル-L-システイン)、又はミトコンドリア標的抗酸化剤(たとえば、SkQ1、MitoE、MitoQ、又はMito-TEMPO)、又はそれらのいずれかの組合せ若しくはすべてであるか、或いはそれらを含む。
【0091】
抗酸化剤としては、限定されるものではないが、次のものが挙げられる。ビタミン及びそのアナログ、たとえば、ビタミンA、ビタミンB(たとえば、ナイアシン[ニコチン酸]及びニコチンアミド)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンE(トコフェロール[たとえば、α-トコフェロール]及びトコトリエノールを含む)、及びビタミンEアナログ(たとえば、トロロックス[水溶性])など、カロテノイド、たとえば、カロテン(たとえば、β-カロテン)、キサントフィル(たとえば、ルテイン、ゼアキサンチン、及びmeso-ゼアキサンチン)、及びサフラン中のカロテノイド(たとえば、クロシン及びクロセチン)など、硫黄含有抗酸化剤、たとえば、グルタチオン(GSH)、N-アセチル-L-システイン(NAC)、ブシラミン、S-ニトロソ-N-アセチル-L-システイン(SNAC)、S-アリル-L-システイン(SAC)、S-アデノシル-L-メチオニン(SAM)、α-リポ酸、及びタウリンなど、ROS及びラジカルのスカベンジャー、たとえば、カルノシン、N-アセチルカルノシン、クルクミノイド(たとえば、クルクミン、デメトキシクルクミン、及びテトラヒドロクルクミン)、システアミン、エブセレン、グルタチオン、ヒドロキシケイ皮酸及びその誘導体(たとえば、エステル及びアミド)(たとえば、カフェー酸、ロスマリン酸、及びトラニラスト)、メラトニン及びその代謝物、ニトロン(たとえば、ジスフェントンナトリウム[NXY-059])、ニトロキシド(たとえば、XJB-5~131)、ポリフェノール(たとえば、フラボノイド[たとえば、アピゲニン、ゲニステイン、ルテオリン、ナリンゲニン、及びケルセチン]、スーパーオキシドジスムターゼミメティック(後掲)、チリラザド、ビタミンC、ビタミンE及びそのアナログ(たとえば、α-トコフェロール及びトロロックス)、及びキサンチン誘導体(たとえば、ペントキシフィリン)など、ミトコンドリアル抗酸化剤/「ビタミン」、たとえば、ユビキノン(補酵素Q、たとえば、CoQ10)、ユビキノール(ユビキノンの還元形及びより生物学的利用能のある形、たとえば、ユビキノール-10)、ユビキノン/ユビキノールアナログ(たとえば、イデベノン及びミトキノン)、及び誘導体など、ミトコンドリア標的抗酸化剤、たとえば、DMQ、DMMQ、MitoE、MitoQ、Mito-TEMPO、MitoVitE、及びSkQクラスの化合物(たとえば、SkQ1、SkQ2、SkQ3、SkQB、SkQR1、SkQT、SkQT1、SkQT1(m)、SkQT1(p)、SkQTK1、SkQTR1、SkQBerb、及びSkQPalm)など、ROSを産生する酵素のインヒビター、たとえば、NADPHオキシダーゼ(NOX)インヒビター(たとえば、アポシニン、デクルシン及びデクルシノールアンゲレート[両方ともNOX-1、-2、及び-4活性及び発現を阻害する]、ジフェニレンヨードニウム、及びGKT-831[旧名GKT-137831、デュアルNOX1/4インヒビター])、NADH:ユビキノンオキシドレダクターゼ(複合体I)インヒビター(たとえば、メトホルミン及びロテノン)、キサンチンオキシダーゼ阻害剤(たとえば、アロプリノール、オキシプリノール、チソプリン、フェブキソスタット、トピロキソスタット、myo-イノシトール、フィチン酸、及びフラボノイド[たとえば、ケンペロール、ミリセチン、及びケルセチン])、及びミエロペルオキシダーゼインヒビター(たとえば、アジド、4-アミノ安息香酸ヒドラジド、及びPF-06667272、及びアポEミメティック、たとえば、AEM-28及びAEM-28-14)など、抗酸化酵素の活性又は産生をミミック又は増加させる物質、たとえば、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD){たとえば、SODミメティック、たとえば、マンガン(III)-及び亜鉛(III)-ポルフィリン錯体(たとえば、MnTBAP、MnTMPyP、及びZnTBAP)、マンガン(II)ペンタアザマクロ環式錯体(たとえば、M40401及びM40403)、マンガン(III)-サレン錯体(たとえば、米国特許第7,122,537号明細書に開示されるもの)及びOT-551(テンポールヒドロキシルアミンのシクロプロピルエステルプロドラッグ)、並びにレスベラトロール及びアポA-Iミメティック、たとえば、4F(両方とも発現を増加させる)}、カタラーゼ(たとえば、カタラーゼミメティック、たとえば、マンガン(III)-サレン錯体[たとえば、米国特許第7,122,537号明細書に開示されるもの]、及び亜鉛[発現を増加させる])、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)(たとえば、アポモルフィン及び亜鉛[両方とも活性を増加させる]、並びにβ-カテニン、エトポシド、及びレスベラトロール[3つすべて発現を増加させる])、グルタチオンレダクターゼ(たとえば、4-tert-ブチルカテコール及びレドックス共因子、たとえば、フラビンアデニンジヌクレオチド[FAD]及びNADPH[3つすべて活性を増強する])、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)(たとえば、フェニルアルキルイソチオシアネート-システインコンジュゲート{たとえば、S-[N-ベンジル(チオカルバモイル)]-L-システイン}、フェノバルビタール、ローズマリー抽出物、及びカルノソール[すべて活性を増強する])、チオレドキシン(Trx)(たとえば、ゲラニルゲラニルアセトン、プロスタグランジンE1、及びスルフォラファン[すべて発現を増加させる])、NADPH-キノンオキシドレダクターゼ1(NQO1){たとえば、フラボン[たとえば、β-ナフトフラボン(5,6-ベンゾフラボン)]及びトリテルペノイド[たとえば、オレアノール酸アナログ、たとえば、TP-151(CDDO)、TP-155(CDDOメチルエステル)、TP-190、TP-218、TP-222、TP-223(CDDOカルボキサミド)、TP-224(CDDOモノメチルアミド)、TP-225、TP-226(CDDOジメチルアミド)、TP-230、TP-235(CDDOイミダゾリド)、TP-241、CDDOモノエチルアミド、CDDOモノ(トリフルオロエチル)アミド、及び(+)-TBE-B]、これらはNrf2を活性化することによりすべて発現を増加させる}、ヘムオキシゲナーゼ1(HO-1){たとえば、クルクミノイド(たとえば、クルクミン)、トリテルペノイド(たとえば、オレアノール酸アナログ、たとえば、TP-225)、及びアポA-Iミメティック(たとえば、4F)、これらはすべて発現を増加させる}、及びパラオキソナーゼ1(PON-1)(たとえば、アポEミメティック[たとえば、AEM-28及びAEM-28-14]及びアポA-Iミメティック[たとえば、4F]、これらのタイプは両方とも活性を増加させる)など、抗酸化酵素の発現をアップレギュレートする転写因子のアクチベーター、たとえば、核因子(エリスロイド由来2)様2(NFE2L2又はNrf2)のアクチベーター{たとえば、バルドキソロンメチル、OT-551、フマレート(たとえば、ジメチル及びモノメチルフマレート)、ジチオレチオン(たとえば、オルチプラズ)、フラボン(たとえば、β-ナフトフラボン)、イソフラボン(たとえば、ゲニステイン)、スルフォラファン、トリコスタチンA(グルタチオン合成もアップレギュレートする)、トリテルペノイド(たとえば、オレアノール酸アナログ[たとえば、TP-225])、及びメラトニン(Nrf2発現を増加させる)}など、他の種類の抗酸化剤、たとえば、アントシアニン、ベンゼンジオールアビエタンジテルペン(たとえば、カルノシン酸)、シクロペンテノンプロスタグランジン(たとえば、15d-PGJ、これはグルタチオン合成もアップレギュレートする)、フラボノイド{たとえば、ギンクゴ・ビロバ(Ginkgo biloba)中のフラボノイド(たとえば、ミリセチン及びケルセチン[GSH、SOD、カタラーゼ、GPx、及びGSTのレベルを増加させる])、プレニルフラボノイド(たとえば、イソキサントフモール)、フラボン(たとえば、アピゲニン)、イソフラボン(たとえば、ゲニステイン)、フラバノン(たとえば、ナリンゲニン)、及びフラバノール(たとえば、カテキン及びエピガロカテキン-3-ガレート)}、オメガ-3脂肪酸及びそのエステル(前掲)、フェニルエタノイド(たとえば、チロソール及びヒドロキシチロソール)、レチノイド(たとえば、all-transレチノール[ビタミンA])、スチルベノイド(たとえば、レスベラトロール)、尿酸、アポA-Iミメティック(たとえば、4F)、アポEミメティック(たとえば、AEM-28及びAEM-28-14)、及びミネラル(たとえば、セレン及び亜鉛[たとえば、亜鉛モノシステイン])など、並びにそれらのアナログ、誘導体、及び塩。
【0092】
そのほかの実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)は、線維性障害を処置するために抗線維化剤との組合せでin vivo又はex vivoで使用される。いくつかの実施形態では、抗線維化剤は、抗炎症剤(たとえば、TNF-α若しくはそのレセプター若しくはその産生のインヒビター)又は/及び抗酸化剤(たとえば、ビタミンE若しくはそのアナログ、たとえば、α-トコフェロール若しくはトロロックス、硫黄含有抗酸化剤、たとえば、グルタチオン若しくはタウリン、又はROS若しくはラジカルスカベンジャー、たとえば、メラトニン、又はそれらのいずれかの組合せ若しくはすべて)であるか、或いはそれらを含む。ある特定の実施形態では、抗線維化剤は、ピルフェニドン(これはまた、本明細書に記載のその各種抗線維化性及び抗炎症性の中でもとくに、線維芽細胞増殖を低減する)又は/及びニンテダニブ(これは、線維芽細胞増殖、遊走、及びトランスフォーメーションに関与する線維芽細胞成長因子レセプター[FGFR]、血小板由来成長因子レセプター[PDGFR]、及び血管内皮成長因子レセプター[VEGFR]のシグナリングをブロックする)であるか、或いはそれらを含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、抗線維化剤は、高血糖、糖尿病、又はインスリン抵抗性が線維症の発生に寄与する線維性障害の処置のために抗高血糖活性又は/及びインスリン感作活性を有する作用剤であるか、或いはそれらを含む。かかる障害の例としては、腎線維症により特徴付けられる糖尿病性腎症並びに両方とも肝線維症により特徴付けられるNASH及び肝硬変が挙げられる。抗高血糖剤又は/及びインスリン感作剤の使用により、たとえば、腎炎症及び腎線維症又は肝炎症及び肝線維症を抑える又は防止することが可能である。ある特定の実施形態では、抗線維化剤は、PPAR-γアゴニスト(たとえば、チアゾリジンジオン[前掲]、たとえば、ピオグリタゾン又はロシグリタゾン)であるか、或いはそれらを含む。PPARγ活性化性チアゾリジンジオンは、抗高血糖性及びインスリン感作性の両方を有する。
【0094】
抗線維化剤としては、限定されるものではないが、次のものが挙げられる。コラーゲン貯留のインヒビター、たとえば、タンパク質キナーゼC(PKC)インヒビター(たとえば、BIM-1、BIM-2、BIM-3、BIM-8、ケレリトリン、シクレタニン、ゴシポール、ミヤベノールC、ミリシトリン、ルボキシスタウリン、及びベルバコシド、これらはコラーゲン産生を抑制する)、5-リポキシゲナーゼ阻害剤(たとえば、チペルカスト、これはコラーゲンI、LOXL2、及びTIMP-1産生を低減する)、コルヒチン及びその代謝物コルヒチン(両方ともコラーゲン合成及び沈着を阻害する)、ジリノレオイルホスファチジルコリン(トランスフォーミング成長因子-beta1[TGF-β1]により誘発されるコラーゲン産生を抑制する)、ルテオリン(細胞外マトリックス[ECM]を分解するマトリックスメタロプロテイナーゼ9[MMP-9]及びメタロチオネインの発現を増加させることにより部分的に線維症を低減する)、マロチレート(プロコラーゲンIα2[Col1a2]発現を低減する)、メラトニン(プロコラーゲンI及びIIIの発現を阻害する)、S-ニトロソ-N-アセチル-L-システイン(MMP-13を活性化しメタロプロテイナーゼ2[TIMP-2]の組織インヒビターを抑制することによりコラーゲンI量を部分的に低減する)、オキシマトリン{プロコラーゲンIα1(Col1a1)(及びα-平滑筋アクチン[α-SMA])発現を低減する}、ピオグリタゾン(コラーゲンI[及びα-SMA]産生を低減する)、ピルフェニドン(プロコラーゲンI及びIIの産生を低減し、TGF-β刺激コラーゲン産生を抑制する)、ケルセチン(Col1a1及びプロコラーゲンIIIα1[Col3a1]発現を低減する)、レスベラトロール(コラーゲンI[及びα-SMA]産生を低減する)、RGDミメティック及びアナログ(後掲、コラゲナーゼの分泌を増加させることにより部分的にコラーゲンI貯留を低減する)、サフィロニル(コラーゲンI[及びα-SMA]産生を低減する)、スタチン(たとえば、アトルバスタチン、ロバスタチン、及びシンバスタチン[3つのすべてコラーゲン産生を低減する])、トラニラスト(プロコラーゲン発現及び線維芽細胞増殖を阻害する)、バルプロ酸(コラーゲン沈着を低減する)、コラーゲン架橋のインヒビター{たとえば、D-ペニシラミン及びリシルオキシダーゼ様2(LOXL2、これはコラーゲン架橋を促進する)インヒビター(たとえば、β-アミノプロピオニトリル及び抗LOXL2抗体[たとえば、シムツズマブ及びAB-0023])}、プロコラーゲン-プロリンジオキシゲナーゼ(又はプロリル4-ヒドロキシラーゼ、これはより安定なヒドロキシル化コラーゲンを形成する)インヒビター(たとえば、マロチレート、HOE-077、S-0885、及びS-4682)、及びプロコラーゲングルコシルトランスフェラーゼ(又はガラクトシルヒドロキシリシングルコシルトランスフェラーゼ、これはコラーゲンフィプリル形成に重要である)インヒビター(たとえば、マロチレート)など、線維化促進性成長因子(たとえば、トランスフォーミング成長因子-ベータ[TGF-β1を含む]、結合組織成長因子[CTGF]、及び血小板由来成長因子[PDGF-B、PDGF-C、及びPDGF-Dを含む])又はその産生、活性化、若しくはシグナリングのインヒビター、たとえば、TGF-βインヒビター{たとえば、抗TGF-β抗体(たとえば、フレソリムマブ[GC1008]及びCAT-192)及び可溶性TGF-βレセプター(たとえば、sTGFβR1、sTGFβR2、及びsTGFβR3)}、TGFβRアンタゴニスト{たとえば、TGFβR1(ALK5)アンタゴニスト(たとえば、ガルニセルチブ[LY-2157299]、EW-7197、GW-788388、LY-2109761、SB-431542、SB-525334、SKI-2162、SM-16、及び阻害性Smad[たとえば、Smad6及びSmad7])}、抗CTGF抗体(たとえば、FG-3019)、PDGFインヒビター(たとえば、スクアラミン、PP1、抗PDGFアプタマー[たとえば、E10030]、抗PDGF抗体[たとえば、PDGF-B、PDGF-C、及びPDGF-Dを標的とするもの]、及び可溶性PDGFレセプター[たとえば、sPDGFRα及びsPDGFRβ])、PDGFR(たとえば、PDGFRα又は/及びPDGFRβ)アンタゴニスト(たとえば、抗PDGFR抗体[たとえば、REGN2176-3])、骨形態形成性タンパク質-7(BMP-7)(TGF-β1シグナリング及びSmad3活性化を直接アンタゴナイズし、間葉-上皮転換を促進する)、デコリン(TGF-β1活性及びコラーゲン線維形成を阻害する)、N-アセチル-L-システイン(生物学的活性TGF-βダイマーの単量体化によりTGF-β発現及び活性化を阻害する)、S-ニトロソ-N-アセチル-L-システイン(TGF-β1を抑制する)、L-カルニチン(PDGF-B発現を低減する)、エピガロカテキン-3-ガレート(Smad2及びSmad3[及びAkt]の活性化を抑制する)、ガレクチン-7(リン酸化Smad2及びSmad3に結合して阻害する)、Leu-Ser-Lys-Leu(TGF-β1活性化を阻害する)、α-リポ酸(Smadγ及びAP-1の阻害を介してTGF-βシグナリングを阻害する)、ルテオリン(TGF-β及びPDGFシグナリングを阻害する)、メラトニン(TGF-β及びCTGF発現及びSmad3活性化を阻害する)、ナリンゲニン(Smad3発現及び活性化を抑制する)、ナイアシン(TGF-β発現を低減する)、ピルフェニドン(TGF-β産生を低減する)、ケルセチン(TGF-β1、CTGF、PDGF-B、及びSmad3の発現を低減する)、レスベラトロール(TGF-β発現を抑制する)、シンバスタチン(TGF-β1[及びα-SMA]発現を低減する)、タウリン(TGF-β1[及びα-SMA]発現を低減する)、トラニラスト(TGF-β1発現を阻害する)、ビタミンE及びそのアナログ(たとえば、α-トコフェロール及びトロロックス、両方ともTGF-β発現を抑制する)、及びαVβインテグリン(これはTGF-β1を活性化する)インヒビター(たとえば、抗-αβ抗体、たとえば、STX-100)など、レセプターチロシンキナーゼ(TK)インヒビター、たとえば、表皮成長因子レセプター(EGFR)TKインヒビター(たとえば、アファチニブ、ブリガチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イコチニブ、ラパチニブ、オシメルチニブ、及びイソフラボン[たとえば、ゲニステイン])、PDGFR TKインヒビター(たとえば、クレノラニブ、イマチニブ、及びAG-1295)、デュアルFGFR/VEGFR TKインヒビター(たとえば、ブリバニブ及びアラニン酸ブリバニブ)、デュアルPDGFR/VEGFR TKインヒビター(たとえば、アキシチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、バタラニブ、及びX-82)、及びトリプルFGFR/PDGFR/VEGFR TKインヒビター(たとえば、ニンテダニブ及びパゾパニブ)、抗EGFR抗体、たとえば、セツキシマブ、マツズマブ、ニモツズマブ、パニツムマブ、及びザルツムマブなど、抗炎症剤、たとえば、以上に列挙されたもの、たとえば、抗炎症性サイトカイン(たとえば、IL-10)、炎症促進性サイトカイン又はそのレセプター又はその産生のインヒビター(たとえば、TNF-α[たとえば、抗TNF-α抗体、たとえば、インフリキシマブ、又は免疫モジュレーター、たとえば、ペントキシフィリン]、IL-1β、IL-2、IL-6及びMCP-1)、コルヒチン、クルクミノイド(たとえば、クルクミン)、マロチレート、ニンテダニブ、ピルフェニドン、及びトラニラストなど、抗酸化剤、たとえば、以上に列挙されたもの、たとえば、ビタミン及びそのアナログ(たとえば、ビタミンE及びそのアナログ、たとえば、α-トコフェロール及びトロロックス)、硫黄含有抗酸化剤(たとえば、グルタチオン、NAC、SNAC、SAC[α-SMA発現も抑制する]、SAM、及びタウリン)、ROS及びラジカルスカベンジャー(たとえば、メラトニン及びグルタチオン)、Nrf2アクチベーター{たとえば、フマレート(たとえば、ジメチル及びモノメチルフマレート)、トリコスタチンA、及びトリテルペノイド(たとえば、オレアノール酸アナログ[前掲、たとえば、TP-225])}、及びオメガ-3脂肪酸及びそのエステル(たとえば、Lovaza魚油)など、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系(RAAS)のアンタゴニスト、たとえば、レニン阻害剤(たとえば、アリスキレン[肝脂肪症、酸化的ストレス、炎症、及び線維症を低減する])、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬(たとえば、カプトプリル[線維芽細胞増殖を阻害し、線維化性肺応答を低減する]及びペリンドプリル[肝線維症を阻害する])、及びアンギオテンシンIIレセプター1型(AT)アンタゴニスト(たとえば、カンデサルタン[肝線維症を阻害する]、イルベサルタン、及びロサルタン)(アンギオテンシンIIによるATの活性化によりホスホリパーゼC[PLC]を活性化してサイトゾルCa2+濃度の増加ひいてはPKC刺激をもたらすとともに、チロシンキナーゼを活性化しECM形成を促進する)など、終末糖化産物(AGE、これはとくに動脈硬化度を増加させ、メサンギアルマトリックス拡大を刺激する)の貯留又は作用のインヒビター、たとえば、AGE形成のインヒビター(たとえば、アミノグアニジン、アスピリン、ベンフォチアミン、カルノシン、α-リポ酸、メトホルミン、ペントキシフィリン、ピマジェディン、ピオグリタゾン、ピリドキサミン、タウリン、及びビタミンC)、AGE架橋のクリーバー(たとえば、アミノグアニジン、Nフェナシルチアゾリウムブロミド、ロスマリン酸、アラゲブリウム[ALT- 711]、ALT-462、ALT-486、及びALT-946)、及びAGE作用のインヒビター(クルクミン及びレスベラトロール、たとえば、天然フェノール)など、他の種類の抗線維化剤、たとえば、RGDミメティック及びアナログ(ECMグリコタンパク質への線維芽細胞及び免疫性細胞の接着を阻害する)(たとえば、NS-11、SF-6,5、及びGRGDS)、ガレクチン-3(これは肝線維症に対してクリティカルである)インヒビター(たとえば、GM-CT-01及びGR-MD-02)、マリノブファゲニンインヒビター(たとえば、レシブフォゲニン、スピロノラクトン、及びカンレノン)、トリコスタチンA(TGFβ1誘発上皮-間葉転換を阻害する)、及びPPAR-γアゴニスト(たとえば、チアゾリジンジオン[前掲]、サログリタザル、及びIVA-337)など、並びにそれらのアナログ、誘導体、断片、及び塩。
【0095】
いくつかの実施形態では、SIRSの処置のための追加治療剤は、セレン、グルタミン、若しくはオメガ-3脂肪酸(たとえば、エイコサペンタエン酸)、又はそれらのいずれかの組合せ若しくはすべてであるか、或いはそれらを含む。他の実施形態では、微生物が原因になる敗血症又はSIRSの処置のための追加治療剤は、抗微生物剤(たとえば、抗生物質、抗真菌剤、又は抗ウイルス剤)であるか、或いはそれらを含む。さらなる実施形態では、低血圧により特徴付けられるSIRS又は敗血症誘発ショック/敗血症性ショック、腎前性原因のAKI、又は1型HRSの処置のための追加治療剤は、静脈内輸液の投与にもかかわらず低血圧が持続する場合、血圧上昇薬剤(昇圧剤、たとえば、ノルエピネフリン、エピネフリン、ドブタミン、又はバソプレシン若しくはそのアナログ、たとえば、オルニプレシン又はテルリプレシン)であるか、或いはそれらを含む。そのほかのさらなる実施形態では、低血圧により特徴付けられる腎前性原因のAKI又は1型HRSの処置のための追加治療剤は、心筋収縮の強度を増加させる薬剤(変力剤、たとえば、ドブタミン)であるか、或いはそれらを含む。そのほかの実施形態では、低血圧により特徴付けられる1型HRSの処置のために追加治療剤は、内臓血管収縮の原因になる又は内臓血管拡張を阻害する薬剤(たとえば、バソプレシンアナログ、たとえば、オルニプレシン若しくはテルリプレシン、又はソマトスタチンアナログ、たとえば、オクトレオチド)、昇圧剤若しくは全身性血管収縮剤(たとえば、αアドレナリン作動性アゴニスト、たとえば、ミドドリン若しくはノルアドレナリン)、又は血漿増量剤(たとえばアルブミン)、又はそれらのいずれかの組合せ若しくはすべてであるか、或いはそれらを含む。他の実施形態では、アセトアミノフェン過剰用量又はアセトアミノフェン誘発肝傷害又は肝不全(たとえば、ALF)の処置のための追加治療剤は、N-アセチル-L-システインであるか、或いはそれを含む。
【0096】
さらなる実施形態では、肝硬変又はその合併症の処置のための追加治療剤は、バソプレシンレセプター1A(V1AR)又は/及びバソプレシンレセプター1B(V1BR、これはバソプレシンレセプター3としても知られる)のアゴニストであるか、或いはそれらを含む。ある特定の実施形態では、アゴニストは、部分的又は選択的V1ARアゴニストである。V1AR又は/及びV1BRのアゴニストとしては、限定されるものではないが、FE204038(部分的V1ARアゴニスト)、FE204205(部分的V1ARアゴニスト)、及びバソプレシンアナログ{たとえば、オルニプレシン(V1ARアゴニスト)、テルリプレシン(トリプルV1AR/V1BR/VRアゴニスト)、及びD-[Leu,Lys]バソプレシン(選択的V1BRアゴニスト)}が挙げられる。肝硬変の合併症としては、限定されるものではないが、心血管機能不全及び不全、門脈高血圧、ハイパーダイナミック循環、食道静脈瘤、静脈瘤、出血(たとえば、食道及び胃静脈瘤出血など)、脾腫大、肝機能不全及び不全、腹水、黄疸、性腺機能低下症、肝性脳症、腎機能不全及び不全、AKI、HRS、呼吸機能不全及び不全、並びに悪液質が挙げられる。肝硬変又はその合併症は、別の医学的病態、たとえば、感染(たとえば、肝炎B型又はC型ウイルスなどのウイルスによる感染)、SIRS、又は敗血症に関連しうる。部分的及び選択的V1ARアゴニストを含めて、肝硬変患者におけるV1AR又は/及びV1BRのアゴニストの有益な効果としては、限定されるものではないが、肝内抵抗、門脈圧、及び腹水の低減、末梢性又は全身性血管抵抗の増加、並びに腸間膜又は内臓血管収縮の誘発が挙げられる。いくつかの実施形態では、V1AR又は/及びV1BRのアゴニストとの組合せでのNRH、NARH、又はそれらの還元誘導体の使用は、アゴニストの安全性(たとえば、腸虚血、SIRS、敗血症、呼吸機能不全及び不全などの潜在的副作用を防止又は低減する)又は/及び効能(たとえば、肝機能又は/及び腎機能を改善する)を改善する。
【0097】
他の実施形態では、肝硬変又はその合併症の処置のための追加治療剤は、V1AR又は/及びV1BRのアゴニストの代わりに又はそれに加えて使用可能なバソプレシンレセプター2(VR)のアンタゴニストであるか、或いはそれらを含む。VRアンタゴニストとしては、限定されるものではないが、選択的VRアンタゴニスト(たとえば、リキシバプタン、モザバプタン、サタバプタン、トルバプタンン、及びRWJ-351647)及びデュアルV1AR/VRアンタゴニスト(たとえば、コニバプタン)が挙げられる。ある特定の実施形態では、VRアンタゴニストで処置される肝硬変の合併症は、低ナトリウム血症(たとえば、多血性低ナトリウム血症)、水保有、腹水、門脈高血圧、若しくは静脈瘤出血、又はそれらのいずれかの組合せであるか、或いはそれらを含む。
【0098】
in vivo使用では、任意の追加治療剤は、限定されるものではないが、経口、非経口(筋肉内、皮内、皮下、血管内、静脈内、動脈内、腹腔内、腔内、髄内、髄腔内、及び局所を含む)、及び外用(真皮/皮膚上、経真皮、粘膜、経粘膜、鼻内[たとえば、鼻腔スプレー又は点鼻剤による]、肺[たとえば、経口吸入又は鼻腔吸入による]、眼[たとえば、点眼剤による]、頬、舌下、直腸[たとえば、坐剤による]、及び膣[たとえば、坐剤による]を含む)を含めて、いずれかの好適なモードで独立して投与可能である。ある特定の実施形態では、追加治療剤は経口投与される。他の実施形態では、追加治療剤は非経口投与される(たとえば、静脈内、皮下、又は筋肉内)。
【0099】
in vivo又はex vivo使用では、任意の追加治療剤は、いずれかの好適な頻度で、たとえば、限定されるものではないが、毎日(1日1回、2回、若しくはそれ以上)、2若しくは3日に1回、週3回、週2回、又は週1回、或いは臨機応変に(必要に応じて)、独立して投与又は提供可能であり、これは処置医により決定可能である。投与頻度は、たとえば、選ばれる投与モードに依存しうる。in vivo又はex vivo使用では、任意の追加治療剤による処置期間は、処置医により決定可能であり、たとえば、独立して、少なくとも約1日間、2日間、3日間、1週間、2週間、3週間、4週間(1ヵ月)、6週間、2ヵ月間、3ヵ月間、6ヵ月間、1年間、2年間、3年間、4年間、5年間、又はそれ以上でありうる。
【0100】
in vivo又はex vivo使用では、任意の追加治療剤の用量又は治療有効量、その投与/提供の頻度及び経路、並びにそれによる処置期間は、その治療剤に対する推奨に部分的に基づきうるとともに、処置医により決定可能である。
【0101】
in vivo又はex vivo使用のいくつかの実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体及び追加治療剤は、別々の医薬組成物で投与される。in vivo又はex vivo使用の他の実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体及び追加治療剤は、同一医薬組成物で、たとえば、固定用量組合せ製剤で投与される。いくつかの実施形態では、固定用量組合せ製剤は、NRH、NARH、若しくはそれらの還元誘導体又は/及び追加治療剤は、制御放出、緩徐放出、又は持続放出用として製剤化される。ある特定の実施形態では、固定用量組合せ製剤は、経口投与用として、たとえば、錠剤、カプセル剤、又は丸剤の形態で製剤化される。他の実施形態では、固定用量組合せ製剤は、非経口投与用として、たとえば、静脈内、皮下、又は筋肉内用として製剤化される。
【0102】
NRH及びNARHの還元誘導体
NRH及びNARHの還元誘導体は、NRH及びNARHのプロドラッグとして機能可能である。いくつかの実施形態では、NRH及びNARHの還元誘導体は、式I:
【化2】
(式中、
は、水素、
【化3】
又は-C(=O)R(式中、
は、水素、カウンターイオン、線状若しくは分岐状C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、フェニル、1-ナフチル、又は2-ナフチルであり、このフェニルは、F、Cl、-CN、-NO、線状若しくは分岐状C~Cアルキル、-CF、-O-(線状若しくは分岐状C~Cアルキル)、又は-OCFで任意に置換されていてもよく、
及びRは、存在ごとに独立して、水素、線状若しくは分岐状C~Cアルキル、-CH-フェニル、-CH-3-インドール、又は-CH-4/5-イミダゾールであり、ここでアルキルは、-OH、-OR、-SH、-SR、-NH、-NHR、-N(R、-NHC(=O)R、-NHC(=NH)NH、-C(=O)NH、-COH、又は-C(=O)ORで任意に置換されていてもよく、ここで、フェニルは、-OH又は-OR(式中、Rは、存在ごとに独立して、線状若しくは分岐状C~Cアルキルである)で任意に置換されていてもよく、
は、存在ごとに独立して、水素又は線状若しくは分岐状C~Cアルキルであり、
及びRは、存在ごとに独立して、水素、カウンターイオン、線状若しくは分岐状C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、-CH-(C~Cシクロアルキル)、フェニル、又は-CH-フェニルであり、ここで、フェニルは、F、Cl、-CN、-NO、線状若しくは分岐状C~Cアルキル、-CF、-O-(線状若しくは分岐状C~Cアルキル)、又は-OCFで任意に置換されていてもよく、
は、水素、線状若しくは分岐状C~Cアルキル、-CH-フェニル、-CH-3-インドール、又は-CH-4/5-イミダゾールであり、ここでアルキルは、-OH、-OR、-SH、-SR、-NH、-NHR、-N(R、-NHC(=O)R、-NHC(=NH)NH、-C(=O)NH、-COH、又は-C(=O)ORで任意に置換されていてもよく、ここで、フェニルは、-OH又は-OR(式中、Rは、存在ごとに独立して、線状若しくは分岐状C~Cアルキルである)で任意に置換されていてもよく、
は、水素、カウンターイオン、線状若しくは分岐状C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、フェニル、-CH-フェニル、又は
【化4】
であり、ここで、フェニルは、F、Cl、-CN、-NO、線状若しくは分岐状C~Cアルキル、-CF、-O-(線状若しくは分岐状C~Cアルキル)、又は-OCFで任意に置換されていてもよく、
Xは、-OH、-OR、又は-OC(=O)R(式中、Rは、線状若しくは分岐状C~Cアルキルであり、nは、1、2、3、4、5、又は6である)で任意に置換されていてもよいcis若しくはtrans-HC=CH-又は-(CH-であり、
は、線状若しくは分岐状C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、或いはF、Cl、-CN、-NO、線状若しくは分岐状C~Cアルキル、-CF、-O-(線状若しくは分岐状C~Cアルキル)、又は-OCFで任意に置換されていてもよいフェニルである)
であり、
は、存在ごとに独立して、水素、
【化5】
又は-C(=O)R
(式中、R、R、X、及びRは、以上に定義された通りである)
であり、
は、-NH、-NHR、-N(R、-OH、-OR、又は
【化6】
(式中、
は、存在ごとに独立して、線状若しくは分岐状C~Cアルキル又はアリルであり、ここでアルキルは、-OH又は-O-(線状若しくは分岐状C~Cアルキル)で任意に置換されていてもよく、又は両方のRの存在とも、それらが接続されている窒素原子は、3~6員ヘテロ環式環を形成し、及び
は、カウンターイオン、線状若しくは分岐状C~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、フェニル、又は-CH-フェニルであり、ここで、フェニルは、F、Cl、-CN、-NO、線状若しくは分岐状C~Cアルキル、-CF、-O-(線状若しくは分岐状C~Cアルキル)、又は-OCFで任意に置換されてもよい)
であり、
が水素でないとき、Rの存在は、両方が水素であることはなく、及びRは、-NHでも-OHでもそれらの塩でもない)
を有するか、又はそれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、水和物、包接体、多形体、若しくは立体異性体である。
【0103】
ある特定の実施形態では、R及び両方のRの存在は、R
【化7】
でない限り、すべてが水素であるとは限らない。
【0104】
他の実施形態では、Rが-NH又は-OH又はそれらの塩であるとき、Rは、水素でも-C(=O)-(線状若しくは分岐状C~Cアルキル)でもなく、Rの存在は、両方が水素又は-C(=O)-(線状若しくは分岐状C~Cアルキル)であることはない。
【0105】
さらに他の実施形態では、Rの存在が両方ともアセチルであるとき、
は、水素ではなく、又は
は、-NHでも-OHでもそれらの塩でもなく、又は
は、水素ではなく、Rは、-NHでも-OHでもそれらの塩でもない。
【0106】
さらなる実施形態では、R
【化8】
であるとき、
の存在は、両方が水素であることはなく、又は
は、-NHでも-OHでもそれらの塩でもなく、又は
の存在は、両方が水素であることはなく、Rは、-NHでも-OHでもそれらの塩でもない。
【0107】
そのほかのさらなる実施形態では、R
【化9】
であるとき、
の存在は、両方が水素であることはなく、又は
は、-NHでも-OHでもそれらの塩でもなく、又は
の存在は、両方が水素であることはなく、Rは、-NHでも-OHでもそれらの塩でもない。
【0108】
他の実施形態では、R
【化10】
であるとき、
の存在は、両方が水素であることはなく、又は
は、-NHでも-OHでもそれらの塩でもなく、又は
の存在は、両方が水素であることはなく、Rは、-NHでも-OHでもそれらの塩でもない。
【0109】
ある特定の実施形態では、NRH又はNARHの還元誘導体は、以下:
【化11】
ではなく、それらの塩でも立体異性体でもない。
【0110】
いくつかの実施形態では、Rは、
【化12】
である。ある特定の実施形態では、Rは、
【化13】
であり、及びRは、線状若しくは分岐状C~Cアルキルである。ある特定の実施形態では、Rは、メチル、エチル、又はイソプロピルである。
【0111】
さらなる実施形態では、Rは、
【化14】
である。ある特定の実施形態では、Rは、
【化15】
であり、及びRの存在は両方とも、線状若しくは分岐状C~Cアルキルである。ある特定の実施形態では、Rの存在は両方とも、メチル、エチル、又はイソプロピルである。
【0112】
他の実施形態では、Rは、
【化16】
である。ある特定の実施形態では、Rは、
【化17】
であり、及びRは、水素又は線状若しくは分岐状C~Cアルキルである。ある特定の実施形態では、Rは、水素、メチル、エチル、又はイソプロピルである。アミノ酸基は、腸上皮のペプチドトランスポーター1などのペプチドトランスポーターを介して膜バリアを通るNRH/NARH誘導体の透過を促進可能である。
【0113】
そのほかの実施形態では、R又は/及びRは、どちらかの存在で又は両方の存在とも、
【化18】
である。いくつかの実施形態では、Xは、trans-HC=CH-、-CHCH-、又は-CH(OH)CH-であり、及びRは、水素、カウンターイオン、線状若しくは分岐状C~Cアルキル(たとえば、メチル、エチル、若しくはイソプロピル)、又は
【化19】
(L-カルニチン基)である。-CH(OH)CH-部分は、S立体化学又はS/R立体化学の混合物(たとえば、おおよそ1:1の比)を有しうる。ある特定の実施形態では、R又は/及びRは、どちらかの存在で又は両方の存在とも、以下:
【化20】
及びそれらの塩から選択される。カルニチン基は、ミトコンドリア中へのNRH/NARHの輸送を促進可能である。
【0114】
いくつかの実施形態では、Rは、存在ごとに独立して又は両方の存在とも、水素、-C(=O)-(線状若しくは分岐状C~Cアルキル)、
【化21】
である。ある特定の実施形態では、Rは、存在ごとに独立して又は両方の存在とも、水素、アセチル、又はプロパノイルである。
【0115】
のホスホルアミデート部分のアミノ酸基又はRのホスホロジアミデート/ビスホスホルアミデート部分の2つのアミノ酸基を含めて、式Iの化合物が、Rに又は/及びRのどちらかの存在で若しくは両方の存在とも、アミノ酸基を含む場合、アミノ酸基は、独立して、天然アミノ酸又は非天然アミノ酸でありうる。いくつかの実施形態では、アミノ酸基は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン、セリン、トレオニン、システイン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、若しくはヒスチジン、又はそれらの誘導体である。他の実施形態では、アミノ酸基は、非天然又は非タンパク質原性アミノ酸、たとえば、オルニチン、シトルリン、又はホモアルギニンである。ある特定の実施形態では、アミノ酸基は、グリシン、アラニン、又はバリンである。アミノ酸基は、L異性体若しくはD異性体でありうるか、又はD/L(たとえば、ラセミック)混合物でありうる。ある特定の実施形態では、アミノ酸基はL異性体である。
【0116】
いくつかの実施形態では、Rは、-NH、-OH若しくはその塩、又は
【化22】
である。ある特定の実施形態では、Rは、
【化23】
L-カルニチン部分である。カルニチン部分は、双性イオンとして又は第4級アンモニウムイオンがカウンターイオンを有する塩形で存在可能である。
【0117】
式Iの化合物のいくつかの実施形態では、
は、
【化24】
であり、及びRの存在は両方とも、アセチル又はプロパノイルであり、又は
は、
【化25】
であり、及びRは、-NH若しくは-OH又はそれらの塩であり、又は
は、
【化26】
であり、Rの存在は両方とも、アセチル又はプロパノイルであり、及びRは、-NH若しくは-OH又はそれらの塩である。
【0118】
ある特定の実施形態では、Rは、
【化27】
であり、及びRは、線状若しくは分岐状C~Cアルキルである。ある特定の実施形態では、Rは、メチル、エチル、又はイソプロピルである。
【0119】
式Iの化合物のさらなる実施形態では、
は、
【化28】
(式中、Rは、線状若しくは分岐状C~Cアルキルである)
であり、
は、両方の存在とも、-C(=O)-(線状若しくは分岐状C~Cアルキル)であり、及び
は、-NH若しくは-OH又はそれらの塩である。
【0120】
ある特定の実施形態では、R部分のRは、メチル、エチル、又はイソプロピルであり、及びRの存在は両方とも、アセチル又はプロパノイルである。
【0121】
式Iの化合物の他の実施形態では、
は、
【化29】
であり、
は、存在ごとに独立して又は両方の存在とも、水素、アセチル、又はプロパノイルであり、及び
は、-NH若しくは-OH又はそれらの塩である。
【0122】
いくつかの実施形態では、
及びRは、存在ごとに独立して、水素又は線状若しくは分岐状C~Cアルキルであり、又はR及びRの各ペアは、水素及び線状若しくは分岐状C~Cアルキルであり、
は、両方の存在とも、水素であり、及び
は、両方の存在とも、線状若しくは分岐状C~Cアルキルである。
【0123】
ある特定の実施形態では、Rは、
【化30】
である。
【0124】
式Iの化合物のさらなる実施形態では、
は、
【化31】
(式中、Rの存在は両方とも、線状若しくは分岐状C~Cアルキルである)
であり、
は、存在ごとに独立して又は両方の存在とも、水素又は-C(=O)-(線状若しくは分岐状C~Cアルキル)であり、及び
は、-NH若しくは-OH又はそれらの塩である。
【0125】
ある特定の実施形態では、R部分のRの存在は両方とも、メチル、エチル、又はイソプロピルであり、及びRは、存在ごとに独立して又は両方の存在とも、水素、アセチル、又はプロパノイルである。
【0126】
式Iの化合物のそのほかの実施形態では、
は、
【化32】
(式中、Rは、水素又は線状若しくは分岐状C~Cアルキルである)
であり、
は、存在ごとに独立して又は両方の存在とも、水素又は-C(=O)-(線状若しくは分岐状C~Cアルキル)であり、及び
は、-NH若しくは-OH又はそれらの塩である。
【0127】
ある特定の実施形態では、R部分のRは、水素、メチル、エチル、又はイソプロピルであり、及びRは、存在ごとに独立して又は両方の存在とも、水素、アセチル、又はプロパノイルである。
【0128】
式Iの化合物の他の実施形態では、
は、
【化33】
(式中、
Xは、-OH、-OR、又は-OC(=O)R(式中、Rは、線状若しくは分岐状C~Cアルキルであり、及びnは、1、2、3、4、5、又は6である)で任意に置換されていてもよいcis若しくはtrans-HC=CH-又は-(CH-であり、及び
は、水素、カウンターイオン、線状若しくは分岐状C~Cアルキル、又は
【化34】
である)
であり、
は、存在ごとに独立して又は両方の存在とも、水素又は-C(=O)-(線状若しくは分岐状C~Cアルキル)であり、及び
は、-NH若しくは-OH又はそれらの塩である。
【0129】
ある特定の実施形態では、
部分に関して、Xは、trans-HC=CH-、-CHCH-、又は-CH(OH)CH-であり、及びRは、水素、カウンターイオン、メチル、エチル、イソプロピル、又は
【化35】
であり、
は、存在ごとに独立して又は両方の存在とも、水素、アセチル、又はプロパノイルであり、
及びRは、-NHである。
【0130】
式Iの化合物のさらなる実施形態では、
は、水素又は-C(=O)R(式中、Rは、線状若しくは分岐状C~Cアルキルである)であり、
は、存在ごとに独立して又は両方の存在とも、水素又は-C(=O)R(式中、Rは、線状若しくは分岐状C~Cアルキルである)であり、及び
は、-NH、-OH、若しくはそれらの塩、又は
【化36】
である。
【0131】
ある特定の実施形態では、Rは、水素、アセチル、又はプロパノイルであり、及びRは、存在ごとに独立して又は両方の存在とも、水素、アセチル、又はプロパノイルである。
【0132】
いくつかの実施形態では、式IのNRH及びNARHの還元誘導体は、以下:
【化37-1】
【化37-2】
【化37-3】
【化37-4】
【化37-5】
【化37-6】
【化37-7】
【化37-8】
【化37-9】
並びにそれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、水和物、包接体、多形体、及び立体異性体から選択される。
【0133】
他の実施形態では、式IのNARHの還元誘導体は、以下:
【化38】
並びにそれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、水和物、包接体、多形体、及び立体異性体から選択される。
【0134】
式Iの修正形態として、式IのNRH及びNARHの還元誘導体は、Rに、Rのどちらかの存在で又は両方の存在とも、若しくはRに、又はそれらのいずれかの組合せで、疎水性/親油性基を含みうる。1つ以上の疎水性基は、細胞膜を含めて膜バリアを介するNRH/NARH誘導体の透過を促進可能である。ある特定の実施形態では、疎水性基は、6~20、8~20、10~18、又は12~16個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態では、疎水性基は、6~20、8~20、10~18、又は12~16個の炭素原子を含有する線状若しくは分岐状の飽和(たとえば、アシル又はアルキル)基、たとえば、6、8、10、12、14、16、18、若しくは20個の炭素原子を含有する線状飽和(たとえば、アシル又はアルキル)基である。他の実施形態では、疎水性基は、8~20個(たとえば、8、10、12、14、16、18、若しくは20個)の炭素原子を含有する、及び各々独立してcis若しくはtransでありうる1、2、3、若しくは4つのC=C二重結合を有する、線状不飽和(たとえば、アシル又はアルケニル)基である。式Iの化合物のいくつかの実施形態では、
は、線状若しくは分岐状C~C20アルキル又はアルケニルであることができ、
又はRは、ホスホルアミデート部分に対して線状若しくは分岐状C~C20アルキル又はアルケニルであることができ、
又はRは、どちらかの存在で又は両方の存在とも、ホスホロジアミデート/ビスホスホルアミデート部分に対して線状若しくは分岐状C~C20アルキル又はアルケニルであることができ、
は、線状若しくは分岐状C~C20アルキル又はアルケニルであることができ、
は、どちらかの存在で又は両方の存在とも、線状若しくは分岐状C~C20アルキル又はアルケニルであることができ、
は、いずれかの存在で、線状若しくは分岐状C~C20アルキル又はアルケニルであることができ、
は、いずれかの存在で、線状若しくは分岐状C~C20アルキル又はアルケニルであることができ、
は、いずれかの存在で、線状若しくは分岐状C~C20アルキル又はアルケニルであることができ、
は、線状若しくは分岐状C~C20アルキル又はアルケニルであることができ、
は、いずれかの存在で、線状若しくは分岐状C~C20アルキル又はアルケニルであることができ、又は
Xに対する-(CH-のnは、いずれかの存在で、1~20の整数であることができ、及びXに対する-(CH-は、1つ以上のC=C二重結合を有することができ、或いは
以上のいずれかの組合せである。
【0135】
本開示はまた、NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体(式Iのものを含む)のアイソトポローグを包含する。NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体の同位体的富化形としては、限定されるものではないが、対応する原子の1つ以上又はすべての位置に、H(ジュウテリウム)、13C、15N、17O、若しくは18O、又はそれらのいずれかの組合せの含有率が富化されたものが挙げられる。
【0136】
化合物の異性体
本開示は、描画構造又は命名法により指示される具体的立体異性体だけでなく、本明細書に記載の化合物の、実質的に純粋形の両方のエナンチオマー及びすべての可能なジアステレオマー、並びにいずれかの比の両方のエナンチオマーの混合物(エナンチオマーのラセミック混合物を含む)、並びにいずれかの比の2つ以上のジアステレオマーの混合物を含めて、すべての可能な立体異性体を包含する。好ましい実施形態では、本開示は、ジヒドロニコチンアミドD-リボシド(NRH)、ジヒドロニコチン酸D-リボシド(NARH)、及びそれらの還元誘導体(式Iのものを含む)のベータ-アノマーを含めて、描画構造又は命名法により指示される具体的立体異性体に関する。本開示のある特定の事例の化合物に関して「又はその立体異性体」という語句などの具体的記載は、とくに明記されていない限り又はとくに文脈上明確に示されてない限り、化合物が「又はその立体異性体」という語句などの記載なしに挙げられた本開示の他の事例の化合物の他の可能な立体異性体のいずれの意図的省略としても解釈されるべきではない。
【0137】
いくつかの実施形態では、NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体(式Iのものを含む)は、立体異性的に純粋である。いくつかの実施形態では、NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体の少なくとも約90%、95%、97%、98%、又は99%は、ベータ-D-リボシドコンフィギュレーションを含めて、描画構造又は命名法により指示される立体化学を有する。類似実施形態では、NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体は、ベータ-D-リボシドコンフィギュレーション及び少なくとも約80%、90%、又は95%のエナンチオメリック過剰率を有する。
【0138】
他の実施形態では、NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体(式Iのものを含む)は、エナンチオマーの混合物又は2つ以上のジアステレオマーの混合物である。ある特定の実施形態では、NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体は、ラセミック混合物である。他の実施形態では、NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体は、D-リボシドコンフィギュレーション及びベータ-/アルファ-アノマーの混合物を有する。ある特定の実施形態では、NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体は、D-リボシドコンフィギュレーション及びベータ-/アルファ-アノマーのおおよそ1:1の比を有する。
【0139】
化合物の塩形
NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体(式Iのものを含む)は、たとえば、グリコシディック窒素原子がプロトン化された場合、塩として存在しうる。本開示は、NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体のすべての薬学的に許容可能な塩を包含する。NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体(式Iのものを含む)の塩の対アニオンの例としては、限定されるものではないが、グリコシディック窒素原子がプロトン化された場合を含めて及びカルニチン部分の塩形
【化39】
を含めて(カルニチン部分が双性イオン形
【化40】
でない場合)、分子内塩、フルオリド、クロリド、ブロミド、ヨージド、ニトレート、スルフェート、スルフィット、ホスフェート、ビカーボネート、カーボネート、チオシアネート、ホルメート、アセテート、トリフルオロアセテート、グリコレート、ラクテート、グルコネート、アスコルベート、ベンゾエート、オキサレート、マロネート、スクシネート、シトレート、メタンスルホネート(メシレート)、エタンスルホネート、プロパンスルホネート、ベンゼンスルホネート(ベジレート)、p-トルエンスルホネート(トシレート)、及びトリフルオロメタンスルホネート(トリフレート)が挙げられる。ある特定の実施形態では、NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体の塩の対アニオンは、たとえば、グリコシディック窒素原子がプロトン化された場合又は/及びカルニチン部分が双性イオン形でなく塩形である場合、クロリド、ホルメート、アセテート、トリフルオロアセテート、又はトリフレートである。
【0140】
NARHは酸性基を有し、またNRH及びNARHの還元誘導体(式Iのものを含む)は、カルボン酸基又は/及びリン酸基などの酸性基を有しうる。かかる化合物は、酸性基で塩を形成しうる。対カチオンは、たとえば、Li、Na、K、Ca+2、Mg+2、アンモニウム、プロトン化有機アミン(たとえば、ジエタノールアミン)、又は第4級アンモニウム化合物(たとえば、コリン)でありうる。
【0141】
医薬組成物
本開示は、NRH、NARH、若しくはそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)、又はそれらの薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、水和物、包接体、多形体、若しくは立体異性体と、1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤又は担体と、を含む医薬組成物を提供する。組成物は、追加治療剤を任意に含有しうる。医薬組成物は、一般に、治療有効量の活性成分(たとえば、免疫関連障害、たとえば、SIRS若しくは敗血症、腎障害、たとえば、AKI若しくはHRS、肝障害、たとえば、ALF若しくはHRS、溶血性障害、たとえば、溶血若しくは溶血性貧血、又は酸化的ストレス、損傷、若しくは傷害に関連する障害若しくは病態、たとえば、メトヘモグロビン血症若しくは貧血を処置するために)を含有するが、その適切な画分を含有可能である。本明細書に記載のNRH、NARH、又はそれらの還元誘導体を含む医薬組成物及び製剤は、本明細書に記載の障害及び病態だけでなく、いずれかの障害及び病態を処置するために使用可能である。医薬組成物の内容物の目的では、「活性成分」、「活性剤」、「治療剤」、又は「薬剤」という用語は、プロドラッグを包含する。
【0142】
医薬組成物は、実質的に純粋形でNRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)を含有する。いくつかの実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体の純度は、少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%である。そのほか、医薬組成物は、汚染物又は不純物が実質的にフリーである。いくつかの実施形態では、医薬組成物中の残留溶媒以外の汚染物又は不純物のレベルは、意図される活性及び不活性な成分の組合せ重量を基準にして、約5%、4%、3%、2%、又は1%以下である。
【0143】
医薬組成物/製剤は、無菌形態で調製可能である。たとえば、注射もしく注入による非経口(たとえば、静脈内、皮下、若しくは筋肉内)投与用の医薬組成物/製剤は、一般に無菌である。無菌医薬組成物/製剤は、当業者に公知の医薬グレード滅菌規格、たとえば、米国薬局方チャプター797、1072、及び1211並びに21連邦規則集211に開示される又はそれらにより必要とされるものに従って配合又は製造される。
【0144】
薬学的に許容可能な賦形剤及び担体は、薬学的に許容可能な物質、材料、及び媒質を含む。賦形剤タイプの非限定的例としては、液状及び固形充填剤、希釈剤、結合剤、滑沢剤、流動化剤、界面活性剤、分散剤、崩壊剤、乳化剤、湿潤剤、懸濁化剤、増粘剤、溶媒、等張化剤、緩衝剤、pH調整剤、吸収遅延剤、安定化剤、抗酸化剤、保存剤、抗微生物剤、抗細菌剤、抗真菌剤、キレート化剤、佐剤、甘味剤、風味剤、着色剤、カプセル化材料、及びコーティング材料が挙げられる。医薬製剤でのかかる賦形剤の使用は、当技術分野で公知である。たとえば、従来の媒質及び担体としては、限定されるものではないが、油(たとえば、植物油、たとえば、オリーブ油及びゴマ油)、水性溶媒{たとえば、生理食塩水、緩衝生理食塩水(たとえば、リン酸緩衝生理食塩水[PBS])、及び等張溶液(たとえば、リンゲル液)}、及び有機溶媒(たとえば、ジメチルスルホキサイド[DMSO]及びアルコール[たとえば、エタノール、グリセロール、及びプロピレングリコール])が挙げられる。いずれかの従来の賦形剤又は担体が活性成分と不適合でない限り、本開示は、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)を含有する製剤での従来の賦形剤及び担体の使用を包含する。たとえば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Ed.,Lippincott Williams & Wilkins(Philadelphia,Pennsylvania)(2005)、Handbook of Pharmaceutical Excipients,5th Ed.,Rowe et al.,Eds.,The Pharmaceutical Press and the American Pharmaceutical Association(2005)、Handbook of Pharmaceutical Additives,3rd Ed.,Ash and Ash,Eds.,Gower Publishing Co.(2007)、及びPharmaceutical Pre-formulation and Formulation,Gibson,Ed.,CRC Press(Boca Raton,Florida)(2004)を参照されたい。
【0145】
適切な製剤は、選ばれる投与経路などの各種因子に依存しうる。NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)を含有する医薬組成物の投与の潜在的ルートとしては、限定されるものではないが、経口、非経口(皮内、皮下、筋肉内、血管内、静脈内、動脈内、腹腔内、腔内、髄内、髄腔内、及び局所を含む)、及び外用(真皮/皮膚上、経真皮、粘膜、経粘膜、鼻内[たとえば、鼻腔スプレー又は点鼻剤による]、眼[たとえば、点眼剤による]、肺[たとえば、経口吸入又は鼻腔吸入による]、頬、舌下、直腸[たとえば、坐剤による]、及び膣[たとえば、坐剤による]を含む)が挙げられる。外用製剤は、局所的又は全身的治療効果を生じるように設計可能である。
【0146】
例として、経口投与に好適なNRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)の製剤は、たとえば、ボーラス剤、カプセル剤(プッシュフィットカプセル剤及びソフトカプセル剤を含む)、錠剤、丸剤、カシェ剤、若しくはトローチ剤として、粉末剤若しくは顆粒剤として、半固形剤、舐剤、ペースト剤、若しくはゲル化剤として、水性液若しくは/及び非水性液中の溶液剤若しくは懸濁液剤として、又は水中油液状エマルジョン剤若しくは油中水液状エマルジョン剤として提示可能である。
【0147】
プッシュフィットカプセル剤又はツーピース硬質ゼラチンカプセルは、たとえば、充填剤又はイナート固形希釈剤(たとえば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、カオリン、又はラクトース)、結合剤(たとえば、デンプン)、流動化剤又は滑沢剤(たとえば、タルク又はステアリン酸マグネシウム)、及び崩壊剤(たとえば、クロスポビドン)、並びに任意に安定化剤又は/及び保存剤と混ぜて、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体を含有可能である。ソフトカプセル剤又は単一ピースゼラチンカプセル剤では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体は、好適な液体(たとえば、液状ポリエチレングリコール又は油性媒体、たとえば、脂肪油、ピーナッツ油、オリーブ油、又は流動パラフィン)中に溶解又は懸濁可能であり、また液体充填カプセル剤は、1つ以上の他の液状賦形剤又は/及び半固形賦形剤、たとえば、安定化剤又は/及び両親媒剤(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、又はソルビトールの脂肪酸エステル)を含有可能である。
【0148】
錠剤は、たとえば、充填剤又は不活性希釈剤(たとえば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ラクトース、マンニトール、又はマイクロ結晶性セルロース[MCC])、結合剤(たとえば、デンプン、ゼラチン、アカシア、アルギン酸若しくはその塩、又はMCC)、滑沢剤(たとえば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、タルク、又は二酸化ケイ素)、及び崩壊剤(たとえば、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、又はコロイダルシリカ)、並びに任意に界面活性剤(たとえば、ラウリル硫酸ナトリウム)と混ぜて、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体を含有可能である。錠剤は、コーティングなしでありうるか、又はたとえば、活性成分を胃の酸性環境からの保護する腸溶コーティング(たとえば、Opadry(登録商標)Enteric[94シリーズ])で、若しくは/及び胃腸(GI)管中の活性成分の崩壊及び吸収を遅らせてより長い期間にわたり持続作用を提供する材料で、被覆可能である。
【0149】
経口投与用組成物はまた、水性液若しくは/及び非水性液中の溶液剤若しくは懸濁液剤として、又は水中油液状エマルジョン剤若しくは油中水液状エマルジョン剤として、製剤化可能である。NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体の分散性粉末又は顆粒は、溶液剤、懸濁液剤、又はエマルジョン剤を形成するために、水性液、有機溶媒、又は/及び油並びにいずれかの好適な賦形剤(たとえば、分散剤、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、又は/及び保存剤のいずれかの組合せ)のいずれかの好適な組合せと混合可能である。
【0150】
NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)はまた、たとえば、GI吸収及び初回通過代謝を回避するために、注射又は注入による非経口投与用としても製剤化可能である。例示的非経口経路は静脈内である。静脈内投与のそのほかの利点としては、体循環中への治療剤の直接投与により、迅速な全身的効果並びに所望により連続的又は/及び大量に投与する作用剤の能力を達成することが挙げられる。注射又は注入用製剤は、たとえば、溶液剤、油性若しくは水性媒質中の懸濁液剤又はエマルジョン剤の形態でありうるとともに、懸濁化剤、分散剤、又は/及び安定化剤などの賦形剤を含有可能である。たとえば、水性(たとえば、生理食塩水)又は非水性(たとえば、油性)無菌注射溶液は、抗酸化剤、緩衝剤、静細菌剤、被験者の血液と製剤が等張になるようにする溶質などの賦形剤と共に、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)を含有可能である。水性又は非水性無菌懸濁液剤は、より高濃度の溶液剤又は懸濁液剤の調製を可能にするために、懸濁化剤及び増粘剤並びに任意に安定化剤及びNRH、NARH、又はそれらの還元誘導体の溶解性を増加させる作用剤などの賦形剤と共に、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体を含有可能である。他の一例として、注射又は注入用無菌水性溶液剤(たとえば、静脈内又は皮下用)は、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体、塩化ナトリウム、緩衝剤(たとえば、クエン酸ナトリウム)、保存剤(たとえば、メタ-クレゾール)、並びに任意にpHを調整するための塩基(たとえば、NaOH)又は/及び酸(たとえば、HCl)を含有可能である。
【0151】
いくつかの実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)と、1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤又は担体と、を含む医薬組成物は、凍結乾燥(フリーズドライ)形態である。いくつかの実施形態では、1つ以上の賦形剤又は担体は、アミノ酸(たとえば、グリシン若しくはアラニン)又は/及び安定化剤(スクロース、マルトース、トレハロース、若しくはラクトース、又はそれらのいずれかの組合せ)並びに任意にバルキング剤(たとえば、マンニトール、デキストロース、ラクトース、スクロース、デキストラン、トレハロース、マイクロ結晶性セルロース、ヒドロキシエチルデンプン、若しくはグリシン、又はそれらのいずれかの組合せ)を含む。さらなる実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体は、凍結乾燥前に約7.4~10.5、8~10.5、又は9~10.5のpHを有する水性緩衝液(たとえば、NaHPO/NaCl)中に混合、溶解、又は懸濁される。そのほかのさらなる実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体を含む水性混合物、溶液、又は懸濁液は、凍結乾燥前に約0.2ミクロン以下の細孔サイズを有する膜を介する濾過により滅菌される。いくつかの実施形態では、凍結乾燥組成物は、ガラス又はプラスチック(たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロライド、又はポリエーテルエーテルケトン)で作製された密閉された着色バイアル又はアンプル中に貯蔵される。さらなる実施形態では、バイアル又はアンプルは、真空下又は不活性ガス(たとえば、窒素若しくはアルゴン)下にある。そのほかのさらなる実施形態では、バイアル又はアンプルは、低減温度(たとえば、約0~10℃若しくは2~8℃)で並びに乾燥剤(たとえば、シリカゲル)を用いて又は/及び低減湿度(たとえば、湿度約40%以下)で貯蔵される。
【0152】
いくつかの実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体を含む凍結乾燥組成物は、非経口(たとえば、静脈内、皮下、又は筋肉内)投与(たとえば、注射又は注入)の前に、約7.4~10.5、8~10.5、又は9~10.5のpHを有する水性混合物、溶液、又は懸濁液として再構成される。さらなる実施形態では、NRH又はNARHの還元誘導体の水への溶解性が低い場合、凍結乾燥組成物は、好適な有機溶媒(たとえば、DMSO)に混合、溶解、又は懸濁され、次いで、組成物の再構成のために水性溶液で希釈される。ある特定の実施形態では、再構成された水性混合物、溶液、又は懸濁液は、NaHPO及びNaClを含み、等張であり、約8~10.5又は9~10.5のpHを有する。そのほかの実施形態では、再構成された水性混合物、溶液、又は懸濁液は、約1~500mg/mL、1~300mg/mL、1~200mg/mL、1~100mg/mL、100~200mg/mL、若しくは200~300mg/mL、又は約1~25mg/mL、25~50mg/mL、若しくは50~100mg/mLの濃度で、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体を含む。
【0153】
いくつかの実施形態では、非経口(たとえば、静脈内)投与用組成物は、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)と、デンドリマー[たとえば、ポリ(アミドアミン)(PAMAM)又は/及びポリ(エチレングリコール)(PEG)デンドリマー]と、の複合体を含み、これは、たとえば、水性溶液剤又はコロイダルリポソーム製剤でありうる。例示的例として、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体は、カプセル化(たとえば、デンドリマーは、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体をカプセル化したナノ粒子又はミセルを形成する)、静電的若しくはイオン性相互作用又は他の非共有結合性会合又は酵素切断性リンカー(たとえば、Gly-Phe-Leu-Gly)などを用いた共有結合性コンジュゲーションにより、デンドリマー(たとえば、PAMAM又は/及びPEGデンドリマー)と組合せ可能である。デンドリマーは、デンドリマー-NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体の複合体が特異的器官、組織、細胞型、又はオルガネラ、たとえば、肝臓又はミトコンドリアを標的とするように(たとえば、デンドリマーコアの表面に装着された)1つ以上(たとえば、10以上)の部分を任意に有しうる。たとえば、デンドリマーは、たとえば、肝障害又は代謝障害の処置のために肝細胞上のアシアロ糖タンパク質レセプターに結合することにより、デンドリマー含有組成物が肝臓を標的としうる1つ以上のN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)部分を任意に有しうる。かかるデンドリマー含有組成物はまた、経口投与用として又は他の非経口投与(たとえば、皮下、筋肉内、髄腔内、又は局所)モード用として製剤化されうる。
【0154】
局所投与では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)は、たとえば、バッカル剤又は舌下錠剤又は丸剤として製剤化可能である。バッカル剤又は舌下錠剤又は丸剤の利点としては、GI吸収及び初回通過代謝の回避並びに体循環中への迅速吸収が挙げられる。バッカル剤又は舌下錠剤又は丸剤は、体循環中へのより迅速な取込みのために、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体のより速い放出を提供するように設計可能である。バッカル剤又は舌下錠剤又は丸剤は、限定されるものではないが、充填剤及び希釈剤(たとえば、マンニトール及びソルビトール)、結合剤(たとえば、炭酸ナトリウム)、湿潤剤(たとえば、炭酸ナトリウム)、崩壊剤(たとえば、クロスポビドン及びクロスカルメロースナトリウム)、滑沢剤(たとえば、二酸化ケイ素[コロイダル二酸化ケイ素を含む]及びナトリウムステアリルフマレート)、安定化剤(たとえば、重炭酸ナトリウム)、風味剤(たとえば、スペアミント風味)、甘味剤(たとえば、スクラロース)、及び着色剤(たとえば、黄色酸化鉄)のいずれかの組合せを含めて、好適な賦形剤を含有可能である。
【0155】
局所投与では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)はまた、鼻内投与用として製剤化可能である。鼻粘膜は、大表面積、多孔性内皮、高血管性上皮下層、及び高吸収速度を提供し、ひいては高生物学的利用能を可能にする。そのうえ、鼻内投与は、初回通過代謝を回避し、中枢神経系(CNS)に活性成分の有意な濃度を導入が可能である。鼻内製剤は、溶解性増強剤(たとえば、プロピレングリコール)、保湿剤(たとえば、マンニトール又はソルビトール)、緩衝剤及び水、並びに任意に保存剤(たとえば、ベンザルコニウムクロリド)、粘膜接着剤(たとえば、ヒドロキシエチルセルロース)、又は/及び透過増強剤などの賦形剤と共に、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体を含みうる。鼻内溶液剤又は懸濁液製剤は、いずれかの好適な手段、たとえば、限定されるものではないが、ドロッパー、ピペット、又はたとえば計量アトマイジングスプレーポンプを用いたスプレーにより、鼻腔に投与可能である。
【0156】
NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)の局所投与のそのほかのモードは、経口吸入及び鼻腔吸入によるものを含めて、肺である。肺は、体循環への入口の働きをする。肺への薬剤送達の利点として、たとえば、1)初回通過肝代謝の回避、2)速い薬剤作用、3)吸収のための肺胞領域の大表面積、肺の高透過率(薄い空気-血液バリア)、及び気道の大量血管系、4)大肺胞表面積に起因してGI管と比較して低減された細胞外酵素レベル、並びに5)他の経口経路と比較してより低い用量での等価治療効果の達成ひいては全身性副作用の低減が挙げられる。経口吸入はまた、CNS中での薬剤のより迅速な作用を可能にし得る。鼻腔吸入よりも優れた経口吸入の利点としては、肺中への薬剤のより深い透過/沈着が挙げられる。経口吸入又は鼻腔吸入は、たとえば、当技術分野で公知のように定量噴霧式吸入器、乾燥粉剤吸入器、又はネブライザーを利用して達成可能である。ある特定の実施形態では、経口吸入用無菌水性溶液は、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体、塩化ナトリウム、緩衝剤(たとえば、クエン酸ナトリウム)、任意に保存剤(たとえば、メタ-クレゾール)、並びに任意にpHを調整するための塩基(たとえば、NaOH)又は/及び酸(たとえば、HCl)を含有する。
【0157】
皮膚又は粘膜への適用のための局所製剤は、全身分布のために、下側組織又は/及び血液中への薬剤の経真皮又は経粘膜投与に有用でありうる。局所投与の利点としては、GI吸収及び初回通過代謝の回避、短い半減期及び低い経口生物学的利用率を有する薬剤の送達、薬剤のより制御された持続放出、薬剤のより一様な血漿中投与又は送達プロファイル、薬剤のそれほど頻繁でない投与、より少ない副作用、最小限又は皆無の侵襲性、自己管理の容易性、及び患者のコンプライアンス向上が挙げられうる。
【0158】
一般的には、局所投与に好適な組成物としては、限定されるものではないが、液状又は半液状調製物、たとえば、スプレー剤、ゲル剤、リニメント剤、及びローション剤、水中油又は油中水エマルジョン剤、たとえば、クリーム剤、フォーム剤、軟膏剤、及びペースト剤、並びに溶液剤又は懸濁液剤(たとえば、点眼剤、点鼻剤、及び点耳剤)が挙げられる。いくつかの実施形態では、局所組成物は、担体中に溶解、分散、又は懸濁された薬剤を含む。担体は、たとえば、溶液、懸濁液、エマルジョン、軟膏、又はゲル基材の形態でありうるとともに、たとえば、ワセリン、ラノリン、ワックス(たとえば、ミツバチワックス)、鉱油、長鎖状アルコール、ポリエチレングリコール、若しくはポリプロピレングリコール、又は希釈剤(たとえば、水又は/及びアルコール[たとえば、エタノール又はプロピレングリコール])、或いはそれらのいずれかの組合せを含有可能である。アルコールなどの溶媒は、薬剤を可溶性にするために使用可能である。局所組成物は、さまざまな賦形剤のいずれか、たとえば、ゲル化剤、乳化剤、増粘剤、緩衝剤、安定化剤、抗酸化剤、保存剤、化学透過増強剤(CPE)、若しくは刺激軽減剤、又はそれらのいずれかの組合せを含有可能である。局所組成物は、たとえば、経真皮又は経粘膜送達デバイス、たとえば、経真皮パッチ、マイクロニードルパッチ、若しくはイオン泳動デバイスを含みうるか、又は局所製剤は、それらを利用して投与可能である。局所組成物は、濃度勾配(CPEを併用して若しくは併用せずに)又は活性機序(たとえば、イオン泳動若しくはマイクロニードル)を介して経真皮的又は経粘膜的に薬剤を送達可能である。
【0159】
経真皮又は経粘膜投与のいくつかの実施形態では、局所組成物は、下側組織又は/及び体循環中への皮膚又は粘膜を横切る薬剤の透過を増加させる化学透過増強剤(CPE)を含む。CPEの例としては、限定されるものではないが、次のものが挙げられる。アルコール及び脂肪アルコール(たとえば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ペンタノール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、メントール、ベンジルアルコール、モノジエチレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、及びグリセロール)、エーテル(たとえば、ユーカリプトール)、脂肪酸(たとえば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、リノール酸、及びリノレン酸)、エステル、脂肪アルコールエステル、及び脂肪酸エステル(たとえば、エチルアセテート、メチルラウレート、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、メチルオレエート、エチルオレエート、プロピレングリコールモノ-オレエート、グリセロールモノ-オレエート、トリアセチン、及びペンタデカラクトン)、ヒドロキシル含有エステル、脂肪アルコールエステル、及び脂肪酸エステル(たとえば、ラウリルラクテート、グリセリル/グリセロールモノラウレート、グリセロールモノオレエート[モノオレイン]、ソルビタンオレエート、オクチルサリチレート、及び糖の脂肪酸エステル[たとえば、スクロース脂肪酸エステル、たとえば、スクロースラウレート])、アミド、脂肪アミンアミド、及び脂肪酸アミド(たとえば、ウレア、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、ジエチルトルアミド、N-ラウロイルサルコシン、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン[ラウロカプラム又はAzone(登録商標)]、アゾン関連化合物、及びピロリドン化合物[たとえば、2-ピロリドン及びN-メチル-2-ピロリドン])、並びにイオン性及び非イオン性界面活性剤(たとえば、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ナトリウムラウレート、ナトリウムラウレススルフェート[ナトリウムラウリルエーテルスルフェート]、ナトリウムコレート、ナトリウムラウロイルサルコシネート、N-ラウロイルサルコシン、ソルビタンモノラウレート、Brij(登録商標)界面活性剤、Pluronic(登録商標)界面活性剤、Tween(登録商標)界面活性剤、サポニン、アルキルグリコシド、並びに脂肪エーテル及び脂肪エステル糖)。米国特許出願公開第2007/0269379号明細書は、CPEの広範なリストを提供する。
【0160】
いくつかの実施形態では、CPEは界面活性剤を含む。ある特定の実施形態では、CPEは、2つ以上の界面活性剤、たとえば、非イオン性界面活性剤(たとえば、ソルビタンモノラウレート又はN-ラウロイルサルコシン)及びイオン性界面活性剤(たとえば、陰イオン性界面活性剤、たとえば、ナトリウムラウロイルサルコシネート)を含む。他の実施形態では、CPEは、界面活性剤(たとえば、陰イオン性界面活性剤、たとえば、ナトリウムラウレススルフェート)及び芳香族化合物(たとえば、1-フェニルピペラジン)を含む。CPEのかかる組合せは、低い皮膚刺激潜在能力を有して皮膚を介する薬剤透過を大きく増強可能である。
【0161】
経粘膜投与のある特定の実施形態では、CPEは、アルキルグリコシド(たとえば、1-O又はS-C~C20アルキルグリコシド、たとえば、対応するグルコシド、ガラクトシド、マンノシド、ラクトシド、マルトシド[たとえば、ドデシル、トリデシル、若しくはテトラデシルマルトシド]、メリビオシド、若しくはスクロシド[たとえば、ドデシルスクロース])、又は脂肪エーテル若しくは脂肪エステル糖(たとえば、C~C20アルキルエーテル若しくはエステル糖、たとえば、対応するグルコシド、ガラクトシド、マンノシド、ラクトシド、マルトシド、メリビオシド、スクロシド[たとえば、スクロースモノ-、ジ-、及びトリ-ドデカノエート及びそれらの混合物、たとえば、J-1205及びJ-1216]、若しくはトレハロシド)であるか、或いはそれらを含む。
【0162】
いくつかの実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)は、経真皮パッチを介して投与される。ある特定の実施形態では、経真皮パッチは、不透過性バッキング層/膜、液体又はゲルベース薬剤リザーバー、薬剤放出を制御する半透膜、及び皮膚接触性接着剤層を含むリザーバータイプパッチである。半透膜は、たとえば、好適なポリメリック材料、たとえば、セルロースニトレート若しくはアセテート、ポリイソブテン、ポリプロピレン、ポリビニルアセテート、又はポリカーボネートで構成可能である。他の実施形態では、経真皮パッチは、不透過性バッキング層/膜及びポリメリック又は粘性接着剤中に薬剤が組み込まれた皮膚接触性接着剤層を含む薬剤入り接着剤パッチである。薬剤ロード皮膚接触性接着剤層の接着剤は、たとえば、感圧接着剤(PSA)、たとえば、アクリル系ポリマー(たとえば、ポリアクリレート)、ポリアルキレン(たとえば、ポリイソブチレン)、又はシリコーン系ポリマー(たとえば、シリコーン-2675若しくはシリコーン-2920)で構成されたPSAでありうる。パッチ剤を含む経真皮薬剤送達システムは、約1週間、2週間、3週間、1ヵ月間、又はそれ以上の期間にわたり薬剤の制御放出及び遷延放出を提供するように設計可能である。
【0163】
いくつかの実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)は、持続放出組成物から送達される。本明細書で用いられる場合、「持続放出組成物」という用語は、持続放出、遷延放出、長期放出、遅延放出性、及び緩徐放出組成物、システム、及びデバイスを包含する。持続放出組成物はまた、制御放出になるように設計することも可能である。持続放出組成物の利点としては、限定されるものではないが、薬剤のより一様な血中レベル(たとえば、広いピーク-トラフ揺動の回避)、長期間にわたる治療有効量の薬剤の送達、投与頻度の低減、及び副作用の低減(たとえば、薬剤過量用量の回避)が挙げられる。ある特定の実施形態では、持続放出組成物は、少なくとも約12時間、1日間、2日間、3日間、1週間、2週間、3週間、1ヵ月間、2ヵ月間、3ヵ月間、又はそれ以上の期間にわたり、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体を送達する。いくつかの実施形態では、持続放出組成物は、薬剤カプセル化システム、たとえば、脂質、生分解性ポリマー、又は/及びヒドロゲルで作製されたナノ粒子、マイクロ粒子、又はカプセルである。ある特定の実施形態では、持続放出組成物はヒドロゲルを含む。ヒドロゲルを構成可能な非限定的ポリマー例としては、ポリビニルアルコール、アクリレートポリマー(たとえば、ナトリウムポリアクリレート)、及び相対的に多数の親水性基(たとえば、ヒドロキシル基又は/及びカルボキシレート基)を有する他のホモポリマー及びコポリマーが挙げられる。他の実施形態では、持続放出薬剤カプセル化システムは、膜被包リザーバーを含み、リザーバーは薬剤を含有し、膜は薬剤に対して透過性である。かかる薬剤送達システムは、たとえば、経真皮パッチの形態でありうる。
【0164】
ある特定の実施形態では、持続放出組成物は、経口製剤、たとえば、錠剤又はカプセル剤である。たとえば、薬剤は、不溶性多孔性マトリックス中に埋込み可能であるが、その結果、溶解性薬剤は、GI管を介して吸収可能になる前にマトリックスに道を設けなければならない。代替的に、薬剤は、膨潤により薬剤が送出されるゲルを形成するマトリックス中に埋込み可能である。持続放出はまた、単一層又はマルチ層浸透圧制御放出経口送達システム(OROS)を介して達成可能である。OROSは、半透過性外膜及びその中にレーザードリル加工された1つ以上の小さな孔を備えた錠剤である。錠剤が身体を通り抜けるにつれて、水は浸透作用により半透膜を介して吸収され、得られる浸透圧は、薬剤を錠剤中の孔に通して、それを吸収可能なGI管中に押し出す。
【0165】
さらなる実施形態では、持続放出組成物は、たとえば、注射若しくは吸入により又はインプラント(たとえば、デポ)として送達可能なポリメリックナノ粒子又はマイクロ粒子として製剤化される。いくつかの実施形態では、ポリメリックインプラント又はポリメリックナノ粒子又はマイクロ粒子は、生分解性ポリマーで構成される。ある特定の実施形態では、生分解性ポリマーは、乳酸又は/及びグリコール酸[たとえば、L-乳酸系コポリマー、たとえば、ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)又はポリ(L-乳酸-co-D,L-2-ヒドロキシオクタン酸)]を含む。例として、ポリ乳酸又は/及びポリグリコール酸で構成されるバイオ分解性ポリメリックナノ/マイクロスフェアは、持続放出肺薬剤送達システムの働きをすることが可能である。ポリメリックインプラント又はポリメリックナノ粒子又はマイクロ粒子の生分解性ポリマーは、処置期間が終了すると予想される時点でポリマーが実質的に完全に分解するように及びポリマーの分解副産物がポリマーのようにバイオ適合性であるように選択可能である。
【0166】
いくつかの実施形態では、持続放出組成物は、デンドリマー(たとえば、PAMAM又は/及びPEGデンドリマー)で複合体化された又はそれにコンジュゲートされたNRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)をカプセル化した水溶性ポリマー[たとえば、ポリ(DL-ラクチド)]を含む。他の実施形態では、持続放出組成物は、デンドリマー(たとえば、PAMAM又は/及びPEGデンドリマー)で構成された及びNRH、NARH、又はそれらの還元誘導体をカプセル化したナノ粒子である。デンドリマー(たとえば、デンドリマーで構成されたナノ粒子の表面)は、特異的器官、組織、細胞型、又はオルガネラを標的とする1つ以上の部分、たとえば、肝障害又は代謝障害の処置のために肝臓を標的とする1つ以上のN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)部分を任意に有しうるか又は担持しうる。デンドリマーは、良好な細胞膜透過性を有しうる。
【0167】
他の実施形態では、持続放出組成物は、1つ以上の脂質で構成された及びNRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)をカプセル化したナノ粒子又はマイクロ粒子(たとえば、固形脂質ナノ粒子[SLN])形態である。ナノ粒子又はマイクロ粒子を構成する1つ以上の脂質(たとえば、SLNの脂質コア)は、たとえば、生理学的脂質(それによりバイオ毒性を回避する)でありうるとともに、たとえば、トリグリセリド(たとえば、トリステアリン及びミグリオール(Miglyol)(登録商標)812)、ジグリセリド(たとえば、グリセロールベヘネート)、モノグリセリド(たとえば、グリセロールモノステアレート)、脂肪酸(たとえば、ステアリン酸)、ステロイド(たとえば、コレステロール)、及びワックス(たとえば、セチルパルミテート)から選択可能である。SLNの脂質コアは、1つ以上の界面活性剤又は乳化剤により安定化可能である。脂質ナノ粒子又はマイクロ粒子は、親油性又は親水性薬剤を組込み可能である。たとえば、ステアリン酸で構成された脂質コアは、SLN中に親水性薬剤を組込み可能である。脂質の相対的に緩徐又は緩徐な分解は、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体の制御、緩徐、又は持続放出を提供可能である。さらに、脂質ナノ粒子又はマイクロ粒子は、胃腸吸収を改善することにより薬剤の経口生物学的利用率を増加可能であり、細胞膜透過性を改善することにより経口又は非経口投与後の細胞(標的細胞を含む)内への薬剤の透過を増加可能であり、及び身体の化学環境及び分解酵素から薬剤を保護することにより薬剤の安定性及び半減期を増加可能である。脂質ナノ粒子又はマイクロ粒子は、脂質粒子の水への溶解性を増加させるために、親水性ポリマー(たとえば、PEG)などのポリマーにコンジュゲート可能である。そのうえ、脂質ナノ粒子又はマイクロ粒子は、1つ以上のターゲッティング部分、たとえば、肝障害又は代謝障害の処置のために肝臓を標的とするための1つ以上のGalNAc部分にコンジュゲート可能である。
【0168】
NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)の遅延放出又は持続放出では、組成物はまた、たとえば、被験者の筋肉内、皮内、又は皮下に植込み可能な又は注射可能なデポとして製剤化することも可能である。デポ製剤は、より長期間にわたり、たとえば、少なくとも約1週間、2週間、3週間、1ヵ月間、6週間、2ヵ月間、3ヵ月間、又はそれ以上の期間にわたり、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体を送達するように設計可能である。たとえば、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体は、ポリメリック材料(たとえば、ポリエチレングリコール[PEG]、ポリ乳酸[PLA]、若しくはポリグリコール酸[PGA]、又はそれらのコポリマー[たとえば、PLGA])を用いて、疎水性材料(たとえば、油中エマルジョンとして)又は/及びイオン交換樹脂を用いて、より親油性の誘導体として(たとえば、C~C20脂肪酸[たとえば、デカン酸]などの脂肪酸のエステル又は塩として)、或いは微溶性誘導体(たとえば、微溶性塩)として、製剤化可能である。デポはまた、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体をカプセル化したリポソーム、ミセル、コレストサム、ナノ/マイクロ粒子、又はナノ-/マイクロスフェアから形成可能である。例示的例として、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体は、PLGAで構成された及び月1回のデポとして製剤化された持続放出ナノ/マイクロ粒子中に組込み又は埋込み可能である。
【0169】
いくつかの実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)を含有する医薬組成物は、制御放出組成物である。制御放出組成物は、制御時間依存的に薬剤を送達可能であり、たとえば、投与後遅延を設けて又は/及び長期間にわたり薬剤を送達するように設計可能である。制御放出組成物はまた、特定環境で(たとえば、GI管中で)薬剤の溶解の特定プロファイルを達成するように及び薬剤の薬動学(たとえば、生物学的利用能)を改善するように、設計可能である。ある特定の実施形態では、制御放出組成物は、1日1回、2若しくは3日に1回、週2回、又は週1回投与される。ある特定の実施形態では、制御放出組成物は、経口投与のために腸溶被覆される。
【0170】
いくつかの実施形態では、経口投与用カプセル剤は、複数のペレットを含有し、各ペレットは、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)を含有するペレットコアと、ペレットコアの周囲の制御放出コーティングと、を含む。NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体は、たとえば、固形若しくは半固形ペレットコア中に又はペレットコアを被覆する薬剤層中に分散される。ある特定の実施形態では、制御放出コーティングは、ポリマー、たとえば、エチルセルロース又は/及びヒドロキシプロピルセルロース、任意にポビドン又は/及びヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び任意に可塑剤(たとえば、ジブチルセバケート)を含む。
【0171】
そのほか、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)を含む医薬組成物は、制御、緩徐、又は持続放出用として設計されるか否かにかかわらず、たとえば、薬剤をカプセル化したリポソーム、ミセル、コレストサム、ナノ/マイクロ粒子、又はナノ/、マイクロスフェアとして、製剤化可能である。ナノ/マイクロ粒子又はナノ/マイクロスフェアは、たとえば、脂質、生分解性ポリマー、又は/及び非分解性ポリマー、又はヒドロゲルで製剤化可能である。たとえば、リポソームは、肺障害又は全身性障害の処置のために、肺胞表面に薬剤を送達する持続放出肺薬剤送達システムとして使用可能である。かかるリポソーム、ミセル、コレストサム、ナノ/マイクロ粒子、及びナノ/マイクロスフェアは、経口又は非経口(たとえば、静脈内、皮下、筋肉内、髄腔内、若しくは局所)投与のために、製剤化可能である。
【0172】
いくつかの実施形態では、リポソーム又はミセルは、1つ以上のリン脂質で構成される。リン脂質としては、限定されるものではないが、ホスファチジン酸(たとえば、DEPA、DLPA、DMPA、DOPA、DPPA、及びDSPA)、ホスファチジルコリン(たとえば、DDPC、DEPC、DLPC、DLOPC、DMPC、DOPC、DPPC、DSPC、MPPC、MSPC、PLPC、PMPC、POPC、PSPC、SMPC、SOPC、及びSPPC)、ホスファチジルエタノールアミン(たとえば、DEPE、DLPE、DMPE、DOPE、DPPE、DSPE、及びPOPE)、ホスファチジルグリセロール(たとえば、DEPG、DLPG、DMPG、DOPG、DPPG、DSPG、及びPOPG)、ホスファチジルセリン(たとえば、DLPS、DMPS、DOPS、DPPS、及びDSPS)、並びにそれらの塩(たとえば、ナトリウム及びアンモニウム塩)が挙げられる。ある特定の実施形態では、リポソーム又はミセルは、1つ以上のホスファチジルコリンで構成される。リポソームは、親水性コアを有するので、リポソームは、より親水性の薬剤の送達にとくに適しており、これに対して、ミセルは、疎水性コアを有するので、ミセルは、より疎水性の薬剤の送達にとくに適している。リポソーム及びミセルは、生体膜を透過可能である。膜融合性脂質(たとえば、DPPG)で構成されたリポソーム及びミセルは、細胞の形質膜に融合可能であり、それにより細胞内に薬剤を送達可能である。リポソーム及びミセルは、リポソーム及びミセルの細胞外分解速度に部分的に基づいて、薬剤の制御、緩徐、又は持続放出を提供可能である。
【0173】
他の実施形態では、ミセルは、バイオ分解性天然又は/及び合成ポリマー、たとえば、ラクトソームで構成される。ある特定の実施形態では、ミセルは、ブロックコポリマー、たとえば、2つ又は3つのポリ(サルコシン)ブロック及びポリ(乳酸)ブロックを含有するもので構成されたラクトソームであり、ただし、乳酸は、L-乳酸、D-乳酸、又はD,L-乳酸でありうる。さらなる実施形態では、ミセルは、両親媒性ブロックコポリマー、たとえば、親水性ブロックと疎水性ブロックとを含有する両親媒性ジ-、トリ-、又はテトラブロックコポリマーで構成される。そのほかの実施形態では、ミセルは、1つ以上の界面活性剤で構成される。
【0174】
コレストサムは、薬剤をカプセル化した1つ以上の天然に存在する(そのため、非毒性の)脂質又は/及び脂質エステルで構成された脂質粒子(たとえば、ナノ粒子又はマイクロ粒子)である。それらは典型的には中性である。経口投与コレストサムは、胃中での分解に対して抵抗性であり、腸を介して血流中に吸収され(又はカイロミクロンに組み込まれた場合はリンパ系中に)、細胞により取り込まれ(たとえば、エンドサイトーシス又は透過を介して)、リソソーマルトラッピングを逃れ、及び細胞内で分解して薬剤を放出する。コレストサムは、コレストサムの細胞外分解速度に部分的に基づいて薬剤の制御、緩徐、又は持続放出を提供可能である。
【0175】
いくつかの実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)は、バイオ分解性合成又は天然のポリマー、たとえば、PLA、PGA、PLGA、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、又は多糖(たとえば、キトサン)で構成されたナノ/マイクロ粒子又はナノ/マイクロスフェア中にカプセル化され、ただし、乳酸は、L-乳酸、D-乳酸、又はD,L-乳酸でありうる。他の実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)は、実質的に非分解性のポリマー、たとえば、PEGで構成されたナノ/マイクロ粒子又はナノ/マイクロスフェア中にカプセル化される。さらなる実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)は、生分解性ポリマー(たとえば、PLA、PGA、PLGA、又はPCL)と実質的に非分解性のポリマー(たとえば、PEG)との混合物又はブレンドで構成されたナノ/マイクロ粒子又はナノ/マイクロスフェア中にカプセル化される。そのほかのさらなる実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)は、生分解性ポリマー(たとえば、PLA、PGA、PLGA、又はPCL)と実質的に非分解性のポリマー(たとえば、PEG)とを含有するコポリマー又はブロックコポリマーで構成されたナノ/マイクロ粒子又はナノ/マイクロスフェア中にカプセル化される。そのほかのさらなる実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)は、デンドリマー、たとえば、PAMAM又は/及びPEGデンドリマーで構成されたナノ/マイクロ粒子又はナノ/マイクロスフェア中にカプセル化される。かかる組成物は、ポリマー若しくはデンドリマーの分解速度又は/及びポリマー若しくはデンドリマーを介する(たとえば、ポリマー若しくはデンドリマーにより形成された孔を介する)薬剤の拡散速度に部分的に基づいて、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体の制御、緩徐、又は持続放出を提供可能である。
【0176】
いくつかの実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)をカプセル化したリポソーム、ミセル、コレストサム、ナノ/マイクロ粒子、又はナノ/マイクロスフェアは、バイオ分解性又は非分解性ポリマーでコンジュゲート又は被覆される。ある特定の実施形態では、表面コンジュゲーティング/コーティングポリマーは、親水性ポリマー、たとえば、PEGである。いくつかの実施形態では、表面コンジュゲーティング/コーティングポリマー(たとえば、PEG)は、約0.5~1kDa、1~2kDa、2~5kDa、又はそれ以上の分子量を有する。ポリマーによるかかる組成物の表面のコンジュゲーション又はコーティングは、組成物のアグリゲーション及び免疫原性の最小化、身体の分解性環境からの組成物のシールディング、オプソニン化、及び食作用、それらによる半減期の増加を含めて、各種利益を有しうる。
【0177】
さらなる実施形態では、NRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)をカプセル化したリポソーム、ミセル、コレストサム、ナノ/マイクロ粒子、又はナノ/マイクロスフェアは、1つ以上のターゲッティング部分にコンジュゲートされる。ある特定の実施形態では、ターゲッティング部分は、たとえば、肝障害又は代謝障害の処置のために組成物が肝臓を標的とするようにするGalNAc部分である。
【0178】
医薬組成物は、当技術分野で公知のいずれかの好適な方式で、たとえば、従来の混合、溶解、懸濁、顆粒化、糖衣化、研和、乳化、カプセル化、閉込め、若しくは圧縮プロセス、又はそれらのいずれかの組合せを利用して製造可能である。
【0179】
医薬組成物は、すべての活性及び不活性成分が好適なシステムで組み合わされて投与される組成物を形成するために成分を混合する必要のない単一用量のユニット製剤で提示可能である。ユニット製剤は、一般に、治療有効用量の薬剤を含有するが、複数のユニット製剤を摂取して治療有効用量を達成するように適切なその画分を含有可能である。ユニット製剤の代表的な例としては、経口摂取用の錠剤、カプセル剤、又は丸剤、非経口(たとえば、静脈内、皮下、又は筋肉内)注射用の単回使用ペン又は用量カウンター付きペンの予充填シリンジ中の溶液剤、インヘラーにプレロード又はマニュアルロードされたカプセル剤、カートリッジ剤、又はブリスター剤、及びリザーバータイプ経真皮パッチ剤又は薬剤入り接着パッチ剤が挙げられる。
【0180】
代替的に、医薬組成物は、薬剤、賦形剤、及び担体[たとえば、溶媒]が2つ以上の個別容器(たとえば、アンプル、バイアル、チューブ、ボトル、又はシリンジ)中に提供されて投与される組成物を形成するために組み合わせる必要のあるキットとして提示可能である。キットは、組成物(たとえば、非経口的に注射又は注入される溶液剤)を貯蔵、調製、及び投与するための説明書を含有可能である。
【0181】
キットはすべて、活性及び不活性成分をユニット製剤中に又は活性成分及び不活性成分を2つ以上の個別容器中に含有可能であり、医薬組成物を投与又は使用して医学的病態を処置するための説明書を含有可能である。キットは、組成物を送達するためのデバイス、たとえば、ニードル及びシリンジ、注射ペン、インヘラー、又は経真皮パッチをさらに含有可能である。
【0182】
いくつかの実施形態では、キットは、凍結乾燥(フリーズドライ)又は粉末形態でNRH、NARH、又はそれらの還元誘導体(たとえば、式Iのもの)と1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤又は担体とを含む医薬組成物を含有する。いくつかの実施形態では、キットは、以下:
凍結乾燥又は粉末組成物を再構成するための水性溶液、
再構成組成物の非経口(たとえば、静脈内、皮下、又は筋肉内)投与(たとえば、注射又は注入)用の装置(たとえば、ニードル及びシリンジ、注入バッグ、又は注入ポンプ)、及び
再構成組成物を調製及び投与するための説明書、
をさらに含有する。
【0183】
ある特定の実施形態では、再構成水性組成物は、約7.4~10.5、8~10.5、又は9~10.5のpHを有する。さらなる実施形態では、凍結乾燥又は粉末組成物が水への溶解性の低いNRH又はNARHの還元誘導体を含む場合、キットは、組成物の再構成のために、好適な有機溶媒(たとえば、DMSO)と、有機溶媒中にNRH又はNARHの還元誘導体を混合、溶解、又は懸濁し、次いで、有機混合物、溶液、又は懸濁液を水性溶液で希釈するための説明書と、をさらに含有する。そのほかの実施形態では、キットは、凍結乾燥又は粉末組成物を、たとえば、低減温度(たとえば、約0~10℃若しくは2~8℃)で並びに乾燥剤(たとえば、シリカゲル)を用いて又は/及び低減湿度(たとえば、湿度約40%以下)で貯蔵するための説明書をさらに含有する。いくつかの実施形態では、凍結乾燥又は粉末組成物は、ガラス又はプラスチックで作製された密閉された着色バイアル又はアンプル中、真空下又は不活性ガス(たとえば、窒素又はアルゴン)下で貯蔵される。そのほかの実施形態では、キットは、本明細書に記載のいずれかの障害又は病態、たとえば、免疫関連障害(たとえば、SIRS若しくは敗血症)、腎障害(たとえば、AKI若しくはHRS)、肝障害(たとえば、アルコール性肝炎、ALF、ACLF、肝硬変、若しくはHRS)、溶血性障害(たとえば、溶血若しくは溶血性貧血)、又は酸化的ストレス、損傷、若しくは傷害に関連する障害若しくは病態(たとえば、メトヘモグロビン血症若しくは貧血)を処置するための再構成組成物を投与又は使用するための説明書をさらに含有する。
【0184】
NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体を含む医薬組成物及びキットに関する記載及びすべての実施形態はまた、NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体の代謝物を含む医薬組成物及びキット並びにNRH又はNARHからのNADHの生合成の中間体、たとえば、NMNH及びNAMNHを含む医薬組成物及びキットにも当てはまる。
【0185】
NRH、NARH、及びそれらの還元誘導体の合成
略号:
Boc=tert-ブチルオキシカルボニル
DCC=N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド
DCM=ジクロロメタン
DMAP=4-ジメチルアミノピリジン
DMF=N,N-ジメチルホルムアミド
DMP=2,2-ジメトキシプロパン
HMDS=ヘキサメチルジシラジド
HOBt=ヒドロキシベンゾトリアゾール
HPLC=高性能/圧力液体クロマトグラフィー
LCMS、LC-MS、又はLC/MS=液体クロマトグラフィー-質量分析
MeOH=メタノール
-OAc=アセテート
p-TSA=パラ-トルエンスルホン酸
pyr=ピリジン
RT=周囲温度/室温
tBuMgCl=tert-ブチルマグネシウムクロリド
TBAF=テトラブチルアンモニウムフルオライド
TBSCl=tert-ブチルジメチルシリルクロリド
TEA=トリエチルアミン
TFA=トリフルオロ酢酸
THF=テトラヒドロフラン
TLC=薄層クロマトグラフィー
TMSCl=トリメチルシリルクロリド
TMSOTf=トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート
【0186】
図1は、誘導体化されたD-リボシドの5’-ヒドロキシル基及び任意に2’-及び3’-ヒドロキシル基を有するNRH、NARH、及び式Iのそれらの還元誘導体を合成するための例示的プロセスを示す。Vorbrueggenのプロトコルを用いた市販のペルアセチル化β-D-リボフラノース1によるニコチンアミド[Rはまた-NHR又は-N(Rでもありうる]、ニコチン酸、又はニコチネートエステルのグリコシル化、続いてマイルドな塩基性条件下でのアセテート基の開裂により、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチン酸リボシド(NAR)、又はニコチネートエステルリボシド2を提供する。亜二チオン酸ナトリウム(ヒドロ亜硫酸ナトリウム)によるニコチニル環の還元により、ジヒドロニコチンアミドリボシド(NRH)、ジヒドロニコチン酸リボシド(NARH)、又はジヒドロニコチネートエステルリボシド3を供給する。アセトニドとしてD-リボシドの2’-及び3’-ヒドロキシル基を保護し、化合物4を与える。活性化ホスホルアミデート若しくはホスホロジアミデート、N-Bocアミノ酸、コハク酸若しくはマレイン酸無水物、又は酸クロリド若しくは無水物への化合物4のカップリング、続いて酸性条件下でのアセトニドの脱保護により、それぞれ、D-リボシドの5’-ヒドロキシル基で誘導体化された化合物5、6、7、又は8を生成する。代替的に、ホスホロジアミデート5は、0℃での化合物4とホスホリルクロリド(POCl)との第1の反応、続いて-78℃での少なくとも2当量のアミノ酸エステル及び塩基(たとえば、TEA)の添加及び得られた混合物の周囲温度での撹拌により調製可能である。化合物7のマレイン酸基は、たとえば、光分解条件下で触媒量の鉱酸(たとえば、HCl)、チオウレア、又は臭素を用いて、フマル酸に異性化可能である。代替的に、化合物4は、塩基(たとえば、TEA)の存在下で市販のメチル(2E)-4-クロロ-4-オキソブト-2-エノエート(フマル酸クロリド、メチルエステル)と反応可能である。D-リボシドの2’-及び3’-ヒドロキシル基は、N-Bocアミノ酸、コハク酸若しくはマレイン酸無水物、又は酸クロリド若しくは無水物への、化合物5、N-Boc化合物6、エステルとして保護されたコハク酸若しくはマレイン酸/フマル酸基を有する化合物7、又は化合物8のカップリングにより、任意に誘導体化可能である。
【0187】
図2は、誘導体化されたD-リボシドの2’-及び3’-ヒドロキシル基を有する式IのNRH及びNARHの還元誘導体を合成するための例示的プロセスを示す。1当量のTBSClによるNRH、NARH、又はジヒドロニコチネートエステルリボシド3の最小立体障害5’-ヒドロキシル基の選択的保護により、化合物20を与える。N-Bocアミノ酸、コハク酸若しくはマレイン酸無水物、又は酸クロリド若しくは無水物への化合物20のカップリング、続いてシリルエーテルの脱保護により、それぞれ、D-リボシドの2’-及び3’-ヒドロキシル基で誘導体化された化合物21(N-Boc基の脱保護後)、22、又は23を生成する。化合物22のマレイン酸基は、フマル酸に異性化可能であるか、又は化合物20は、以上に記載のように塩基の存在下でフマル酸クロリド、メチルエステルと反応可能である。
【0188】
図3は、誘導体化されたD-リボシドの2’-、3’-、及び5’-ヒドロキシル基を有する式IのNRH及びNARHの還元誘導体を合成するための例示的プロセスを示す。N-Bocアミノ酸、コハク酸若しくはマレイン酸無水物、酸クロリド若しくは無水物へのNRH、NARH、又はジヒドロニコチネートエステルリボシド3のカップリングにより、それぞれ、D-リボシドの2’-、3’-、及び5’-ヒドロキシル基で誘導体化された化合物30(N-Boc基の脱保護後)、31、又は32を生成する。化合物31のマレイン酸基は、フマル酸に異性化可能であるか、又は化合物3は、以上に記載のように塩基の存在下でフマル酸クロリド、メチルエステルと反応可能である。
【実施例
【0189】
下記実施例は、本開示を例示することのみを意図するにすぎない。代替的に、他のプロセス、アッセイ、試験、プロトコル、手順、方法、試薬、及び条件を、適宜、使用しうる。
【0190】
実施例1.NRH及びNRH-トリアセテートの合成
3-カルボキサミド-N-(2,3,5-トリ-O-アセチル-β-D-リボフラノシル)ピリジニウムトリフレート(NR-トリアセテート)の合成:
HMDS(200mL)中のニコチンアミド(15g、0.122mol)の溶液にTMSCl(245mL、0.245mol、THF中1M)を室温で添加し、得られた懸濁液を120℃で3hr還流した。その間、反応混合物は透明になった。反応後、混合物を室温に冷却し、真空中40℃で溶媒除去し、灰白色固体としてN,N-ビス(トリメチルシリル)ニコチンアミド(32g)を生成した。1,2-ジクロロエタン(460mL)中に1,2,3,5-テトラ-O-アセチル-β-D-リボフラノース(30g、0.0942mol)を含有する溶液にN下で室温で固体を添加した。得られた溶液にTMSOTf(100mL、0.471mol)を滴下し、反応を45℃で2hr撹拌した。真空中40℃未満での溶媒除去により、濃厚シロップとしてNR-トリアセテートトリフレートを与え、これを室温でアセトン中20%エタノールでスラリー化することにより精製し、濾過し、濾過された材料を吸引乾燥させ、所望の生成物(110g)を与えた。
【0191】
N-(2,3,5-トリ-O-アセチル-β-D-リボフラノシル)ジヒドロニコチンアミド(NRH-トリアセテート)の合成:
下室温の精製水(800mL、Nでプレパージした)中の亜二チオン酸ナトリウム(45.5g)と重炭酸ナトリウム(54.8g)との混合物に、25~30minの時間にわたりN下で室温で漏斗を介して水(261mL、Nで脱ガスした)中のNR-トリアセテートトリフレート(69.3g)の溶液を添加した。反応混合物を室温で16hrにわたり機械撹拌機で一晩撹拌した。HPLCにより決定される反応完了後、DCM(655mL)を添加し、得られた混合物を15min撹拌した。ボトム有機層の分離後、DCM(1310mL)を水性層に添加し、得られた混合物を15min撹拌した。水性層からボトム有機層を分離した後、2つのプールされた有機層に水(520mL)を添加し、得られた混合物を15min撹拌した。水性層からボトム有機層を分離し、硫酸ナトリウムで脱水した。濾過及び真空中での濾液濃縮後、濃縮物にn-ヘプタン(400mL)を添加した。溶媒除去及び真空中35~40℃での乾燥によりNRH-トリアセテート(34.6g及びLC-MSによる純度98%)を供給し、これをN下で貯蔵した。
【0192】
N-(β-D-リボフラノシル)ジヒドロニコチンアミド(NRH)の合成:
炭酸ナトリウム(28g)をN下0℃で無水メタノール(MeOH、2.61L)中のNRH-トリアセテートの混合物(34.6g)に添加し、反応混合物を0℃で2~3hr撹拌した。反応完了後、反応混合物を濾過し、濾過された材料をMeOH(265mL)で洗浄した。濾液を40℃未満で真空濃縮した。濃縮物を1:1 MeOH:DCM(2.61L)で希釈し、得られた混合物を20~30min撹拌し、次いでセライト床に通して濾過した。セライト床を1:1 MeOH:DCM(660mL)で洗浄した。濾液を濾過し、40℃未満で真空濃縮し、高真空下40℃未満で1hr乾燥し、NRH(17.1g及びLC-MSによる純度97%)を提供し、これをN下-20℃で貯蔵した。
【0193】
実施例2.NRHはex vivoポリクローナル免疫活性化モデルで炎症性サイトカインの産生を低減した
健常ヒト成人ドナーからヘパリン加静脈血を採取した。Ficoll-Hypaque密度勾配遠心分離により末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。PBMC(1.0×10)を200μL媒体で丸底96ウェルプレートに播種し、未刺激で又は抗CD3抗体(1μg/mL、クローン-HIT3a、Biolegend)+抗CD28抗体(1μg/mL、クローン-CD28.2、Biolegend)で刺激してT細胞活性化を誘発し、そして細胞培養媒体中でインキュベートした。250μM NRHの不在下又は存在下でPBMCを未刺激で又は抗CD3及び抗CD28抗体で刺激してT細胞活性化を誘発した。18時間のインキュベーション後、フローサイトメトリーによりIFN-α、TNF-α、及びIL-2の細胞内レベルに関してリンパ球を解析した。処置の1hr後、ゴルジストップで細胞を処置することにより細胞内サイトカイン産生を停止させた。
【0194】
図4は、抗CD3及び抗CD28抗体で刺激されたCD8T細胞が未刺激(US)CD8T細胞よりも有意又は顕著に多くのIFN-γ、TNF-α、及びIL-2を産生したこと、並びにNRH(MP-04)が活性化CD8T細胞でIFN-γ、TNF-α、及びIL-2の産生を有意に低減したこと(マン・ホイットニーのU検定でp<0.05)を示す。
【0195】
実施例3.NRHは活性化PBMCで基底細胞外酸性化速度(ECAR、解糖の尺度)を低減した
健常ヒト成人ドナーから得られたPBMC(1.5×10)を250μM NRHの不在下又は存在下で未刺激で又は抗CD3及び抗CD28抗体(各々1μg/mL)で4hr刺激してT細胞活性化を誘発した。次いで、細胞を洗浄し、3×10細胞/ウェル(5レプリケート)の密度でポリ-D-リシン被覆SeahorseXFマイクロプレート上にプレートした。プレートを短時間遠心し、非COインキュベーター中37℃で30minインキュベートし、プレートの底に細胞を沈降させた。SeahorseXF細胞ミトコンドリアストレス試験キット及びSeahorseXfe96アナライザー(Agilent Technologies,Santa Clara,California)を用いて、基本条件下で又は1.0μMオリゴマイシン(ATPシンターゼのインヒビター)、1.5μMカルボニルシアニド-p-トリフルオロメトキシフェニルヒドラゾン(FCCP、ミトコンドリアルアンカプラー)、0.5μMロテノン(複合体Iでの電子輸送のインヒビター)、及びアンチマイシンA(シトクロムcレダクダーゼでの電子輸送のインヒビター)に応答して、細胞外酸性化速度(ECAR、解糖の尺度)及び酸素消費速度(OCR、酸化的リン酸化の尺度)を決定した。PBMCは、単球並びにT細胞、B細胞、及びナチュラルキラー細胞をはじめとするリンパ球を含む。
【0196】
図5は、抗CD3及び抗CD28抗体で刺激されたヒトドナーからのPBMCが未刺激PBMCよりも顕著に高い細胞外酸性化速度(ECAR、解糖の尺度)を有していたこと、及びNRH(MP-04)が活性化PBMCでECARを有意に低減したことを示す。
【0197】
実施例4.NRH及びNRHTAはT細胞でミトコンドリアル脱分極を誘発しT細胞で細胞死を低減した
健常ヒト成人ドナーから得られたPBMC(試験群当たり10細胞)を250μMのNRH又はNRH-トリアセテート(NRHTA)の不在下又は存在下で未刺激で又は抗CD3及び抗CD28抗体で刺激してT細胞活性化を誘発した。処置の5、15、及び24hr後、測定を行った。
【0198】
指示されたインキュベーション時間後、抗CD3、抗CD4、及び抗CD8抗体(Biolegend)、JC-1(1μM、Thermo Fisher)及びアネキシンV(Thermo Fisher)でPBMCを染色してからフローサイトメトリーにより解析した。アネキシンVは、アポトーシス及び壊死をはじめとするさまざまな形態の細胞死に対するマーカーである細胞表面ホスファチジルセリンに結合する。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に染色細胞を再懸濁させ、解析用FlowJoソフトウェア(v10)を用いてCytek Auroraフローサイトメーターで取得した。分析のために、解析用フローサイトメーターで約200,000~300,000細胞を取得した。スペクトル補償のための標準的手順を実施し、細胞集団を得た。前方及び側方散乱により同定されたリンパ球をゲートし、CD3/CD4及びCD3/CD8T細胞集団を得た。それらのT細胞集団をゲートし、それぞれJC-1アグリゲート及びモノマー並びにアネキシンVに対する赤色及び緑色シグナルを同定した。JC-1モノマーにより緑色に染色する細胞のパーセンテージを用いて脱分極ミトコンドリアを有する細胞のパーセンテージを決定した。アネキシンVで染色する細胞のパーセンテージを用いてアポトーシス及び壊死をはじめとするさまざまな形態の細胞死を受けた細胞のパーセンテージを決定した。
【0199】
図6及び7は、24hrにわたりNRH(MP-04)及びNRHTA(MP-40)と共にインキュベートすることにより、それぞれ、未刺激の又は抗CD3及び抗CD28抗体で刺激されたCD4及びCD8T細胞でミトコンドリアル膜脱分極が有意に誘発されたことを示す。
【0200】
図8及び9は、24hrにわたりNRH(MP-04)及びNRHTA(MP-40)と共にインキュベートすることにより、それぞれ、脱分極ミトコンドリアを有する並びに未刺激の又は抗CD3及び抗CD28抗体で刺激されたCD4及びCD8T細胞のアポトーシスをはじめとする細胞死が低減したことを示す。
【0201】
実施例5.NRH及びNRH-トリアセテートはin vitroでH誘発溶血を低減した
個別試験化合物を0.9%通常生理食塩水中に溶解し、0.3Mストック溶液を調製した。0.3Mストック溶液を生理食塩水中の洗浄赤血球細胞(RBC)の20%懸濁液に添加し、化合物の2000μM、200μM、及び20μMの最終濃度を得た。試験前にRBC懸濁液を試験化合物と共に37℃で1hrインキュベートした。通常生理食塩水による希釈により2.5%H溶液を新たに調製し、使用前に2~8℃に冷やした。試験化合物を含有する各RBC懸濁液をチューブA及びBにスプリットした。氷浴中にチューブを維持しつつ、250μLの冷H溶液を各チューブ中の250μLのRBC懸濁液に添加した。チューブを37℃で4hrインキュベートし、次いで、4.5mLの生理食塩水又は脱イオン水をそれぞれチューブA又はチューブBに添加した。チューブを10minインキュベートした後、チューブ中の混合物を1800gで遠心分離し、次いで、上清で540nmの吸光度を測定した。溶血のパーセンテージは、以下のように計算された。
%溶血=生理食塩水中の吸光度540nm(チューブA)/脱イオン水中の吸光度540nm(チューブB)
【0202】
図10は、NRH(MP-04)及びNRH-トリアセテート(MP-40)は両方とも、いずれの試験濃度でもin vitroアッセイでH誘発溶血を低減したが、NR(MP-02)及びNR-トリアセテート(MP-39)はどちらも、低減しなかったことを示す。
【0203】
実施例6.NRHはin vitroでH誘発酸化的変化からヘモグロビンを保護した
アジ化ナトリウムの4Mストック溶液を調製した。4Mストックアジ化物溶液の1mLを9mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)で希釈し0.4Mストック溶液を得て、これをPBSでさらに希釈してアジ化ナトリウムの0.01Mワーキング溶液を得た。健常ヒトドナーから8mLの全血を緩衝クエン酸デキストロースチューブ中に採取した。PBSを500μLの全血に添加した。サンプルを遠心分離し、次いで、各チューブから上清を廃棄して赤血球細胞(RBC)ペレットを得た。
【0204】
0.01Mアジ化ナトリウムワーキング溶液の10μLを20μLのRBC懸濁液に添加した。PBSで希釈された20μLの過酸化水素(H)をRBC懸濁液に添加し、0.01mM~100mMの範囲内のHの最終濃度を得た。サンプルを37℃で1.5hrインキュベートした。950μLの脱イオン水をサンプルに添加し、次いで、これを10minインキュベートしてRBCをライシスし、1,500gで遠心分離してヘモグロビンを得た。Systronics(登録商標)デュアルビームUV分光測光器を用いて及び脱イオン水をブランクとして、200nm~1100nmのライシスサンプルのスペクトルスキャンを2nm刻みで得た。37℃でPBSと共に1~1.5hrインキュベートしたサンプルをコントロールとして使用し、RBCヘモグロビンに及ぼすHの酸化作用を確定した。576nmの吸光度は、サンプル中のヘモグロビン濃度の尺度であり、ヘモグロビンからメトヘモグロビンへの酸化は、576nmの吸光度の低下及び630nmの吸光度の増加をもたらす。Fantao et al.,Anal.Biochem.,521:11-19,(2017)。
【0205】
NRH(29.6mM)及びNR(18.3mM)のストック溶液を0.9%通常生理食塩水中に調製した。ストックNRH又はNR溶液及びPBSの適正量を500μLの全血に添加し、1μM~1000μMの範囲内のNRH又はNRの最終濃度を得た。NRH又はNRを含む全血サンプルを穏やかに混合し、37℃で1~1.5hrインキュベートした。サンプルを遠心分離して上清を廃棄し、次いで、サンプルごとにRBCペレットを得た。
【0206】
図11は、10mM Hがヘモグロビンの酸化的変化の原因になって576nm、540nm、434nm、348nm、及び270nmで吸光度ピークの大きさを低減したことを示す。図12A~Cは、NRHと共にプレインキュベートすることにより576nm、540nm、434nm、348nm、及び270nmで吸光度ピークの大きさが増加したことから、それぞれ、1、10、及び100μMのNRH(MP04)と共にRBCをプレインキュベートすることによりヘモグロビンが1mM H誘発酸化的変化から保護されたがNR(MP02)では保護されなかったことを示す。
【0207】
576nm及び540nmの吸光度はヘモグロビンに特有であり、及び630nmの吸光度はメトヘモグロビンに特有であるので、630nmの吸光度に対する576nmの吸光度の比(A576/A630)は、ヘモグロビン/メトヘモグロビン比の尺度である。図13は、1mM HへのRBCの暴露がA576/A630比を有意に低減したこと、及び1μM又は100μM NRH(MP-04)による1mM Hに暴露されたRBCの処置がA576/A630比を回復したことを示す。NRHによるHに暴露されたRBCの処置は、A576/A630比を有意に増加又は回復したが、NRによる処置は、A576/A630比に有意な影響を及ぼさなかった(データは示されていない)。
【0208】
実施例7.NRHはin vitroのH暴露HEK293細胞でNADH/NAD比を増加させた
HEK293細胞をトリプシン処理し、60,000細胞/ウェルの密度でプレートした。次いで、細胞をH(600μM、ダルベッコ改変イーグル培地[DMEM]で調製した)で30min処置した。次いで、NRH又はNRを含有する血清媒体(10%ウシ胎仔血清[FBS]が補充されたDMEM)で媒体を交換し、6%CO下37℃で30min又は6hrインキュベートした。次の濃度:0.01、0.1、1.0、10、100、及び1000μMのNRH又はNRと共に細胞をインキュベートした。NAD/NADH-Glo Promega Bioluminescentアッセイを用いて、30min及び6hrでのNAD及びNADHレベルを推定した。結果は、未処置細胞で得られた値と比べた変化倍率として表された。
【0209】
図14A及びBは、100及び1000μMのNRH(MP-04)と共にそれぞれ30min及び6hrインキュベートすることによりHに暴露されたHEK293細胞でNADH/NAD比が増加したが、NR(MP-02)ではすべての試験濃度で比に有意な影響を及ぼさなかったことを示す。
【0210】
実施例8.NRH及びNRH-トリアセテートはヒト血清中でNRよりもかなり安定である
同一血液型の健常ヒトドナーから3つの血液サンプルを血清セパレーターバキュテナーゲルチューブ中に採取した。サンプルを1,800gで遠心分離して血清を分離した。得られた血清サンプルを別のチューブ中に一緒にプールした。
【0211】
最初に、NR、NRH、及びNRH-トリアセテート(NRHTA)をDMSO中に溶解し、次いで、通常生理食塩水で希釈して各化合物の1mMストック溶液を得た。100μLのストック溶液を900μLのプール血清に添加し、ヒト血清中で試験化合物の安定性をアセスした。ブランク用溶液を調製するために及び参照測定として、1,800μLのプール血清を含む200μLの生理食塩水を使用した。プール血清及び通常生理食塩水中にストック溶液を希釈し、試験化合物の100μM溶液を調製した。
【0212】
先行実験では、190nm~1100nmのスペクトルスキャンを実施し、NR、NRH、及びNRHTAの吸収極大を決定したところ、これらは、それぞれ、溶液中で265nm、340nm、及び331nmに最大吸光度を有していた。
【0213】
時間の関数として化合物の最大吸光度波長での吸光度変化により測される化合物濃度の変化により、ヒト血清中の試験化合物の安定性を決定した。100μMの試験化合物をヒト血清中37℃でインキュベートした。吸光度測定は、0min(T0)、5min、30min、120min、240min、360min、及び1440min(24hr)で行われた。T0と比較した吸光度の相対的変化をプロットし、統計解析に使用した。トリプリケートで解析を実施した。
【0214】
図15は、NRH(MP04)及びNRH-トリアセテート(MP40)が両方ともin vitroアッセイでNR(MP02)よりもヒト血清中でかなり安定であったことを示す(*=NR対NRH及びNRH-トリアセテートでp<0.05、#=NRH-トリアセテート対NRHでp<0.05)。NRH及びNRH-トリアセテートのほとんどは両方とも、ヒト血清中で6hr後、インタクト状態を維持したが、一方、NRのほとんどは、265nmの吸光度の急激な低下により測定されるように、ヒト血清への添加の5分以内でインタクト状態を維持しなかった。驚くべきことに、NRH-トリアセテートの約50%は、ヒト血清中で24hr後、インタクト状態を維持した。
【0215】
実施例9.ラットにおいて腹腔内注射されたNRHは腎臓及び肝臓に分布した
新たに秤量されたNRH(100mg)を500μLの無菌IP水に溶解させた。NRH溶液を500mg/kgの単一用量で健常雄ウィスターハンラット(200g)に腹腔内注射した。コントロールとして500μLの無菌IP水を別の健常雄ウィスターハンラット(200g)に腹腔内注射した。
【0216】
4hr後、麻酔下で頸椎脱臼により動物を安楽死させた。2mLシリンジを用いて心穿刺により全血をKEDTAバキュテナーチューブに採取した。続いてダイセクションにより肝臓及び腎臓を採取した。組織をペトリ皿に配置し、氷冷生理食塩水で濯ぎ、次いで秤量した。処置動物の肝臓の72mg及び未処置動物の肝臓の74.3mgをホモジナイズし、処置動物の腎臓の71.6mg及び未処置動物の腎臓の70.7mgをホモジナイズした。3mLの氷冷メタノール(メタノール中約20mg/mLの組織)中で組織のホモジナイゼーションを別々に行った。ホモジネートを液体窒素中でスナップフリーズし、解析のために-80℃で維持した。解析のために血液サンプルを2~8℃で維持した。
【0217】
内部標準として500ng/mLのトルブタミドを50μL含有するチューブにKEDTAチューブからの250μLの全血を添加した。この混合物に600μLの氷冷HPLCグレードメタノールをニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)及びNRHの抽出のために添加した。得られた混合物を十分に混合し、12500rpmで10min遠心分離した。NAD及びNRHに関してLCMS/MSにより上清を測定した。肝臓及び腎臓組織に対して、250μLの組織ホモジネートを同様に処理した。
【0218】
図16A~Cは、ウィスターハンラットへの500mg/kg用量のNRH(MP-04)の単回腹腔内注射により、媒質が腹腔内注射されたウィスターハンラットの対応する濃度と比較して、4hr後の全血、腎臓、及び肝臓のそれぞれでNRH濃度の増加をもたらしたことを示す。図16A~Cでは、「面積比NRH/IS」は、内部標準(トルブタミド)のピーク面積に対するNRHのピーク面積の比であり、NRHの濃度に正比例する。
【0219】
実施例10.敗血症のマウスモデルでのNRHのアセスメント
16匹の野生型C57BL/6を各8匹の動物からなる2群にランダム化した。群1の動物は、5mg/kgのリポ多糖(LPS)の腹腔内投与を受けて敗血症を誘発し、群2の動物は投与を受けていない。群ごとに、4匹の動物は各々、LPS投与の1時間前に腹腔内投与で25mg/kgのNRHで処置され、4匹の動物は、コントロールの投与を受けた。血液サンプリングは、投与時及び最後の投与の6時間後に行われる。6時間で動物を安楽死させ、肺、肝臓、腎臓、筋肉の組織、及び全血を採取する。
【0220】
NAD、NRH、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)、アラニントランスアミナーゼ(ALT)、クレアチニン、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、ラクテート、血球数(CBC)、WBCフェノタイピング、サイトカイン(TNF-α、IFN-α、及びIL-2)を血液サンプルで測定する。組織サンプルで組織病理学評価及びNAD定量を行う。確立されたLCMS/MS法を用いてNADを測定する。市販のオートアナライザーベースアッセイを用いて、LDH、クレアチニン、AST、ALT、LDHを測定する。酵素連結イムノソルベントアッセイ(ELISA)を用いてサイトカインを測定する。フローサイトメトリーを用いてWBCフェノタイピングを行う。
【0221】
14匹の野生型C57BL/6マウスを第2の試験に使用する。動物を各々7匹の動物からなる2群に分割し、LPS(5mg/kg、腹腔内)又はLPS(5mg/kg、腹腔内)及び250mg/kgのNRHの投与を受ける。第2の群のNRHは、LPS投与の30分前に腹腔内に与えられる。1週間の期間にわたり死亡までの期間及び回復までの期間を観測し、NRHの効能を確立する。7日後又は死亡時、肝臓、腎臓、肺、筋肉などの組織のサンプルを採取し、肉眼的形態及び組織病理学の変化を評価する。
【0222】
実施例11.急性腎傷害のマウスモデルでのNRHのアセスメント
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)又は50mg/kg及び若しくは250mg/kgの用量のIV NRHの試験化合物を含む媒質のどちらかと併用して、媒質(生理食塩水)又はシスプラチン(20mg/kg)のどちらかを同時に8週齢のC57BL/6マウスに注射する。5匹の動物/群を試験に使用する。実験開始の72時間後、マウスは、媒質又はNRHのどちらかの投与を受ける。24時間ごとに繰返し投与を施す。最後の注射の4h後、動物を屠殺する。BUN及びクレアチニン測定のために血液サンプルを採取し、組織学、組織測定(NAD、NADH及びNRH)、及び円柱のアセスメントのために腎組織を採取する。血清クレアチニン及び尿円柱の変化に基づいて効能をアセスする。ベースライン時及び動物屠殺時に全血NAD、NADH、及びNRHレベルをアセスする。修正ヤッフェ(Jaffe)技術を用いてクレアチニンを評価する。酵素法(ウレアーゼ)を用いてBUNを測定する。確立されたLCMS/MS方法を用いて、NAD、NADH、及びNRH測定を行う。
【0223】
実施例12.メトヘモグロビン血症のラットモデルでのNRHのアセスメント
静脈内アミルニトレートによりスプラーグドーリーラットにおいてメトヘモグロビン血症を誘発する。1つの群はコントロールの働きをして、3匹の動物/群(合計15匹)が存在する。標準モデル(Klimmek et al.,Arch Toxicol.,1988)に従った1mg/mLのアミルニトレートの投与の30分前にNRHを投与する。投与前(アミルニトレートの投与の5分前)、10分、30分、1時間、及び2時間で、標準的分光測光アッセイを用いて、全血中のメトヘモグロビン値を測定することにより、0、5、50、125、及び250mg/kgのMP-04の保護効果を評価する。
【0224】
実施例13.スプラーグドーリーラットにおけるNRHの薬動学
この試験の主目的は、雄スプラーグドーリーラットにおいて緩徐ボーラス静脈内(IV)投与後のNRHの血漿及び組織(肝臓及び腎臓)薬動学(PK)を調べることである。この試験は、外科的カテーテル配置の時点でおおよそ300~325グラムの体重の3匹の雄ラット(合計12匹)からなる4つの群を含む。媒質コントロール群(群1)及び50、125、又は250mg/kgでそれぞれ投与された低~高の3つの用量群(群2、3、及び4)が存在する。
【0225】
1日目、1つの頸静脈カテーテルを介して1~2分間にわたりNRH IV緩徐ボーラス用量(1回目の用量)をすべてのラットに投与する。投与に使用されるカテーテルが血液採取に使用されるカテーテルとは別のものであることを保証するために、投与前にカテーテルにマークを付ける。全用量が投与されることを保証するために、0.3mL無菌生理食塩水でカテーテルをフラッシュする。投与前、動物は空腹ではない。投与前並びに投与の0.5、1、2、4、8、12、及び24時間後、血液を採取する(200μL、KEDTA、第2の頸静脈カテーテルを介して)。血液サンプルをスナップフリーズし、解析まで-80℃に維持する。1日目の投与前及び24時間後、体重を記録する。おおよそ24時間で2日目に動物の体重を測定した後、投与用のマークが付された頸静脈カテーテルを介してNRH IV緩徐ボーラス用量の第2の用量を1~2分間にわたりすべてのラットに投与する。全用量が投与されることを保証するために、0.3mL無菌生理食塩水でカテーテルをフラッシュする。この短期試験で異常が見られた場合には常に、臨床所見を記録する。投与後の最初の4時間の間、動物を絶えず観察する。そのほかのケージ側の全般的健康/病的状態/死亡観察を動物ケアにより少なくとも1日1回行う。第2の用量の4時間後、すべてのラットを安楽死させる。各動物から肝臓及び腎臓を採取し、ただちに重量測定し、液体窒素でスナップフリーズし、解析まで-80℃で貯蔵する。
【0226】
NRH、NAD、及びニコチンアミドアデニンジヌクレオチド水素(NADH)の全血及び組織レベルをLCMS/MSにより評価する。Phoenix WinNonlin Softwareを用いて、C、AUC0-t、AUC0-inf、T1/2、Kel、MRTlast、Vss、Clに関連する投与用量のNRHの薬動学的測定を評価する。
【0227】
実施例14.ビーグル犬におけるNRHの複数漸増用量後の薬動学及び薬力学
この試験の目的は、最大耐容用量(MTD)を決定するためにビーグル犬への静脈内注射用量漸増後のNRHの全身毒性をアセスすること(第I相)、及び続いて繰返し用量試験でイヌに投与したときのNRHのトキシコキネティックプロファイルをはじめとする毒性学的プロファイルをアセスすること(第II相)である。
【0228】
1つの群がコントロールの働きをしてビーグル犬の4つの群が存在する。各群は、1匹の雄及び1匹の雌ビーグル犬を有している。動物は、5~7日間気候順化される。最高用量又は最大耐容用量に達するまで、用量間で2日間のウォッシュアウトを設けて4つの漸増用量を動物に投与する。25mg/kgの開始用量を使用する。最大耐容用量を確立した後、10日間の繰返し投与相を行い、漸増用量試験の結果に基づいて用量を決定する。毒性及び速度論的プロファイルに対して、2つの用量レベルを間隔を設けて試験する。
【0229】
各投与の24時間後、臨床パラメーター、体重、体温、食物消費、ECG、検尿、臨床化学、血液検査、及び凝固パラメーターを含む観測を実施する。投与前、血液サンプルを採取する。血液サンプルは、第I相では、各用量投与から採取し、第II相では、1及び10日目、投与前(0h)並びに投与後0.083、0.25、0.5、0.75、1、2、4、8、及び24時間(h)とする。試験の終了時、肝臓及び腎臓サンプルを得る。組織及び血液サンプルはすべて、薬動学的測定(Phoenix WinNonlin Softwareソフトウェアを用いてC、AUC0-t、AUC0-inf、T1/2、Kel、MRTlast、Vss、Clに沿ったNRH濃度を評価する)及び薬力学的測定(LCMS/MSを用いたNAD及びNADH測定)に使用される。
【0230】
実施例15.ヒトにおけるNRHの単一漸増用量(SAD)及び複数漸増用量(MAD)試験
標準的SAD及びMAD設計を用いて、NRHの安全性、耐容性、及び薬力学(PD)を評価する。簡潔に述べると、SAD試験では、40名の健常志願者は、NRHの単一漸増用量(1、3、10、又は30mg/kg)又はプラセボ(通常生理食塩水)の静脈内投与を30minにわたり受けるように8:2に逐次ランダム化される。健常志願者の試験基準としては、18~65歳、身体マス指数(BMI)<35、有意な併存症なし、並びに正常血液検査及び化学値が挙げられる。
【0231】
SAD試験でNRHの安全性が確立された後、標準的MAD試験を行って健常コホートで最大耐容用量を決定する。簡潔に述べると、MAD試験では、40名の健常志願者は、NRHの1日用量(1、3、10又は30mg/kg)又はプラセボ(通常生理食塩水)の静脈内投与を30minにわたり7日間受けるように8:2に逐次ランダム化される。SAD試験からの被験者は、7日間ウォッシュアウト期間の後、MAD試験に参加適格となる。
【0232】
血漿中及び全血中のNRH及びその代謝物(たとえば、NR、ニコチンアミド[Nam]、及びN-メチルニコチンアミド[MeNam])の薬動学(PK)が解析される。PD解析としては、T細胞を含めて、全血及び末梢血単核細胞(PBMC)でのNAD及びNADHレベルの測定並びにNAD/NADH比が挙げられる。そのほか、肝障害患者(Child-Turcotte-PughスコアA[CTP-A]及びChild-Turcotte-PughスコアB[CTP-B]患者)においてNRHの生物学的活性を決定するために、炎症促進性サイトカイン及びT細胞活性化の他のマーカーが測定される。測定は、単回用量及び複数回用量コホートにおいて、ベースラインで並びに投与後1hr、2hr、4hr、8hr、及び24hrで実施される。
【0233】
実施例16.肝硬変患者におけるNRHの第1b相試験
健常志願者間のMAD試験で静脈内投与されるNRHの安全性及び耐容性が確立された後、肝硬変(Child-PughスコアA[CP-A]及びChild-PughスコアB[CP-B]患者、N=各8)及びアルコール性肝疾患(ALD)の患者間で第1b相試験が行われる。患者には、10mg/kgのNRHが7日間にわたり毎日静脈注射される。
【0234】
NRH及びその代謝物の薬動学は、血漿中及び全血中のそれらのレベルを含めて、MSを用いて解析される。T細胞を含むPBMC中のNRH及びその代謝物のレベル並びに炎症促進性サイトカイン及びT細胞活性化の他のマーカーは、肝障害患者(CP-A及びCP-B患者)においてNRHの生物学的活性を決定するために測定される。測定は、単回用量及び複数回用量コホートにおいて、ベースラインで並びに投与後1hr、2hr、4hr、8hr、及び24hrで実施される。薬理学アセスメントは、記述統計を用いて調べられる。統計解析は、SASバージョン9.4(SAS Institute,Cary,North Carolina)を用いて実施される。欠測値は、置換えも推定もされない。記述統計は、デモグラフィックス及び他の臨床変数を特徴付けるために使用される。カテゴリー変数は、カイ二乗検定又はフィッシャー正確検定を用いて比較される(予想される細胞カウントが<5であるとき)。メジアンは、四分位範囲で報告され、ウィルコクソン順位和検定を用いて比較される。処置コホート全体にわたるNRH及びその代謝物の血漿中濃度並びにNAD及びその代謝物の全血中濃度は、log変換された値又はランク値の分散分析により比較される。
【0235】
実施例17.Covid-19のSIRS患者におけるNRHの第1b相試験
健常志願者間のMAD試験で静脈内投与されるNRHの安全性及び耐容性が確立された後、過去24時間でcovid-19 RT-PCRの確定診断を有し、疾患重症度が中度にカテゴリー化されるコンピュータートモグラフィー(CT)スコアを有する臨床的に安定な患者間で第1b相試験が行われる。200名の患者がこの試験のためにリクルートされる。
【0236】
患者は、2群にランダム化され、1つの群は、標準ケア(SOC)を受け、第2の群は、7日間までIV NRH(10mg/kg)を伴う標準ケアを受ける。一次目的として、診断日から14日間後、副作用及び安全性プロファイル及びPK-PDの測定が推定される。この試験では、二次結果尺度として、症状消散までの期間、症状重症度スコア、酸素化又は換気の要件、入院、及び死亡が推定されよう。
【0237】
本開示の各種実施形態を記載してきたが、かかる実施形態は、単に例示及び実例として提供されているにすぎない。数多くのその変形形態及びその修正形態が、当業者に明らかになるであろう。それらは本開示に包含される。本開示を実用する際、本開示の実施形態の各種代替形態を採用可能であり、これらは本開示に包含されるものと理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A-C】
図13
図14A
図14B
図15
図16A-C】
【国際調査報告】