(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】放射性同位体熱電発電機のための燃料製造プロセス
(51)【国際特許分類】
G21H 1/10 20060101AFI20240621BHJP
【FI】
G21H1/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572614
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 US2022033875
(87)【国際公開番号】W WO2022266381
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522237726
【氏名又は名称】ゼノ パワー システムズ, インク.
【氏名又は名称原語表記】ZENO POWER SYSTEMS, INC.
【住所又は居所原語表記】709 G St NW, Suite 300 Washington DC 20001 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】マシューズ, ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】ホワイティング, クリストファー エリン
(72)【発明者】
【氏名】バークレイ, チャドウィック ダグラス
(57)【要約】
放射性同位体熱電発電装置(RTG)用の熱源を製造する方法を提供する。当該方法は、ストロンチウム化合物の粉末化および篩分けを行うことにより、および/または、ストロンチウム化合物を水溶液に溶解させることにより、ストロンチウム化合物の粒径を小さくする工程と、ストロンチウム化合物とグラファイトとを混合してストロンチウム-グラファイト混合物を得る工程と、ストロンチウム-グラファイト混合物にプレスを行う工程と、プレスされたストロンチウム-グラファイト混合物をX線シールドに封入して熱源を得る工程と、を備えるとしてよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性同位体熱電発電装置(RTG)用の熱源を製造する方法であって、
ストロンチウム化合物の粉末化および篩分けを行うことにより、および/または、ストロンチウム化合物を水溶液に溶解させることにより、前記ストロンチウム化合物の粒径を小さくする工程と、
前記ストロンチウム化合物とグラファイトとを混合してストロンチウム-グラファイト混合物を得る工程と、
前記ストロンチウム-グラファイト混合物にプレスを行う工程と、
プレスされた前記ストロンチウム-グラファイト混合物をX線シールドに封入して前記熱源を得る工程と、
を備える方法。
【請求項2】
前記ストロンチウム化合物はストロンチウム90化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱源に対して1つまたは複数の試験を実施する工程をさらに備え、
前記1つまたは複数の試験は、
前記熱源からの1つまたは複数の距離において前記熱源の放射線量率を測定すること、または、
前記熱源の熱出力を測定すること、
のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つまたは複数の距離は、前記熱源の表面、前記熱源の表面から1メートル、または、前記熱源の表面から10メートルのうちの少なくとも1つを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ストロンチウム化合物の粉末化および篩分けを行うことは、
ボールミルを用いて前記ストロンチウム化合物を粉末化して不均一な粉末を得ることと、
篩分けシステムを用いて前記不均一な粉末に篩分けを行って均一な粉末を得ることとを含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記均一な粉末の粒子は、大きさが直径約50μmである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ストロンチウム化合物の粉末化および篩分けを行うことは、
前記ストロンチウム化合物が粉砕されると同時に篩分けが行われるように、篩に加えて粉砕媒体を使用して前記ストロンチウム化合物を粉末化することを含む、
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ストロンチウム化合物を酸または溶媒に溶解させる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
篩分けが行われた前記ストロンチウムとグラファイトとを所定の比率で混合する、実施形態1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記所定の比率は、前記ストロンチウム化合物に対するグラファイトの比率が2.3:1である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
実施される前記プレスは、ホットプレス、熱間等方圧加圧(HIP)、冷間等方圧加圧(CIP)および続いて行うHIP、CIPおよび続いて行うホットプレス、コールドプレス、または、コールドプレスおよび焼結のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
30ksiの圧力および1200℃の温度でHIPを実施する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
プロセスロスを処分する工程をさらに備える、請求項1から12のうちいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国仮出願第63/211,498号(出願日:2021年6月16日、発明の名称:「FUEL FABRICATION PROCESS FOR RADIOISOTOPE THERMOELECTRIC GENERATORS」)に基づき優先権および利益を主張するものであり、当該仮出願の内容は全て参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
放射性同位体発電システム(RPS)は、濃縮された放射性物質の崩壊熱を利用して発電する装置である。放射性同位体ヒーターユニット(RHU)は、この熱をそのまま利用する。放射性同位体熱電発電機(RTG)は、放射性崩壊により発生する熱を電気に変換する。RTGは、数ヶ月から数十年にわたって燃料補給の必要がなく、コンパクトで常時稼動、メンテナンス不要の電力源として望ましい。RPSが有用であるかどうかは、燃料となる放射性同位体を入手できるか否か、そして、放射性同位体の特性によって決まる。概して、プルトニウム238(238Pu)は、RPS装置の放射性同位体として使用するのに好ましい特性を持つ。しかし、プルトニウム238の供給量は非常に限られており、大半の用途でプルトニウム238の使用は考えにくい。これ以外にRPS装置に使用可能な放射性同位体としては、ベータ線を放出する放射性同位体(例えば、ストロンチウム90(90Sr))があり、これまでRPSに使用されてきたが、放射線シールド設備を厳重にする必要があるため最適とは言えない。RTGは、コストが割高なものの能力が特殊なため妥当なものとされている分野、例えば、軍事目的、宇宙探査機などで1960年代から使用が確立されている。これまでのRTGは、メンテナンスまたは人的介入の必要性が最小限またはゼロの環境で(例えば、宇宙探査機)で使用されていた。これらのRTGは一般的に、発電量が数百ワット以下、稼働期間は比較的短く、および/または、特定用途向けに設計がカスタマイズされていた。これまでのRTGは、燃料形式および構成を、使用する放射性同位体およびRTGの用途に基づいて決定していた。過去のRTGの設計の多くでは、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)の大径ディスクを含む燃料カプセルを、大量の高密度金属(例えば鉛(Pb))またはコンクリートで囲んでいた。
【0003】
ストロンチウム90は崩壊してベータ線を放出してイットリウム90(90Y)になる。そして、イットリウム90自体もベータ線を発生させる。90Srの崩壊連鎖によって生成される2種類の主要なベータ粒子のエネルギーは、541keVおよび2270keVである。ストロンチウム-90の初期半減期は28.79年で、イットリウム-90の崩壊にかかる時間はわずか64時間である。イットリウム90は崩壊して、安定核のジルコニウム90(90Z)になる。ベータ粒子(例えば、電子または陽電子)は、通り抜ける物質との相互作用によって減速されると、制動放射線(X線)を発生させることがある。制動放射線は、電子などの荷電粒子を減速させることにより、電磁波(例えば、光子)を発生させるものである。エネルギー保存則を満たすためには、光子のエネルギーは、減速前の荷電粒子の運動エネルギーから減速後の荷電粒子のエネルギーを引いたものに等しくなる(例えば、Eγ=E(i)e--E(f)e-)。相互作用(例えば、入射)が発生する物質の原子番号(Z)が高くなるほど、減速が大きくなり、X線の平均エネルギーが増加する。つまり、これらの粒子を遮蔽するには、X線発生量が少なくなるので、Zがより低い材料が望ましい。ベータ粒子と同様、結果的に生じる制動放射線(X線)のエネルギー範囲は、理論上は、ベータ粒子の最大エネルギーに等しい最大エネルギーが最高値となる(ベータ粒子が材料中で完全に停止していると仮定した場合)。X線のエネルギーおよび強度は十分に高く、人体、そして、近隣の機器を含む周辺環境を保護するために、かなりの放射線シールド層が必要になることもある。
【0004】
90Srを利用したRTGの過去の設計は、与えられた課題に対して十分な性能を発揮した。しかし、これらのRTGはシールド設備が厳重になるため、実用化には限界があった。さらに、これまでの製造プロセスでは、ストロンチウム系材料(または他の同位体)だけをホットプレスすることに重点を置いていた。さらに、過去の製造技術では、燃料を分離して大きな塊に精製した後に燃料を得ていた。非対称の塊を粉末化し、その粉末をホットプレスすることで、燃料ペレットを製造していた。粉末は均一であることが望ましいが必須ではなく、粉末から燃料ペレットを作り、残った不均一な粉末を利用することで、製造工程を最適化することができる。さらに、以前の製造工程は、最終製品である燃料材料の製造にグラファイトを使用することに目を向けていなかった。こうした問題および/またはその他の問題が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以下は、本技術のいくつかの態様を非網羅的に列挙したものである。これらおよびその他の態様は、以降の開示に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一部の態様は、放射性同位体熱電発電機(RTG)用の熱源を作製する方法であって、ストロンチウム化合物の粉末化および篩分けを行うことにより、および/または、ストロンチウム化合物を水溶液に溶解させることにより、ストロンチウム化合物の粒径を小さくする工程と、ストロンチウム化合物とグラファイトとを混合して、ストロンチウム-グラファイト混合物を得る工程と、ストロンチウム-グラファイト混合物にプレスを行う工程と、プレスされたストロンチウム-グラファイト混合物をX線シールドに封入して、熱源を得る工程と、を含む方法を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本技術の上述の態様およびその他の態様は、本願を、以下の図を参照して読めば、よりよく理解されるであろう。これらの図において、同一番号は類似または同一の要素を示す。
【0008】
【
図1】放射性同位体熱電発電機(RTG)のための過去の燃料構造物形態、および、様々な実施形態によるRTGのための最適化された燃料構造物形態の一例を示す図である。
【0009】
【
図2】様々な実施形態による、RTGのための二相シールドの一例を示す図である。
【0010】
【
図3】様々な実施形態による、RTGのための分散燃料構造物の一例を示す図である。
【0011】
【
図4】様々な実施形態による、RTGのための同心燃料構造物の一例を示す図である。
【0012】
【
図5A】様々な実施形態による、RTGのための同心燃料構造物の他の例を示す図である。
【0013】
【
図5B】様々な実施形態による、RTGのための同心燃料構造物の他の例を示す側面図である。
【
図5C】様々な実施形態による、RTGのための同心燃料構造物の他の例を示す上面図である。
【0014】
【
図6A】様々な実施形態による、RTGのための分散燃料構造物の他の例を示す図である。
【0015】
【
図6B】様々な実施形態による、RTGのための分散型燃料構造物の他の例を示す側面図である。
【
図6C】様々な実施形態による、RTGのための分散型燃料構造物の他の例を示す上面図である。
【0016】
【
図7】様々な実施形態による、RTGのための燃料設計の一例を示す断面図である。
【0017】
【
図8】様々な実施形態による、RTGのための燃料設計の他の例を示す断面図である。
【0018】
【
図9】様々な実施形態に係る、RTG用燃料設計におけるシールド構造と放射線原料との界面の拡大領域の一例を示す図である。
【0019】
【
図10】様々な実施形態に係る、RTGに利用される放射性原料を製造するプロセスの一例を示す。
【0020】
本発明の技術は、様々な変更や代替の形態が可能であるが、その具体的な実施形態が図面に例として示されており、本明細書で詳細に説明される。図面は実際の縮尺通りでない場合もある。ただし、図面およびそれに基づく詳細な説明は、開示された特定の形態に本技術を限定することを意図したものではなく、逆に、添付の請求項によって定義される本技術の趣旨および範囲内に入るすべての修正、均等物、および代替物を網羅することを意図したものであることを理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書に記載した問題を軽減するために、本発明者らは解決策を考案すると共に、場合によっては同様に重要なこととして、放射性同位体熱電発電機(RTG)およびRTG用の放射性原料の製造技術の分野の当業者が見落としていた(あるいは予見していない)問題を認識する必要があった。実際、本発明者らは、それらの問題を認識することが困難であることを強調したい。さらに、対処する問題が複数あるため、いくつかの実施形態はいずれかの問題に特化しており、すべての実施形態が本明細書に記載されている従来のシステムの問題のすべてに対処しているわけでも、本明細書に記載されているすべての利点を提供しているわけでもないことを理解すべきである。つまり、これらの問題および/または他の問題の1つ以上の順列を解決する改良が以下に記載されている。
【0022】
放射性同位体熱電発電機(RTG)を製造するために、高エネルギーベータ線放出源を含む電源を使用するとしてよい。RTGは熱を電気に変換し、その電気はRTGから出力され、様々な装置に電力を供給することができる。このような装置には、例えば、バッテリー、衛星、無人施設、ソーラーパネル、通信装置、照明、モーターなどが含まれる。熱は、一の放射性原料または複数の異なる放射性原料の組み合わせが崩壊することによって生成されるとしてよい。崩壊プロセスは、例えば、放射性元素が1つ以上の粒子を出力しながら、崩壊して別の元素に変化することを含み得る。本明細書において、放射性元素とは、原子核に含まれる陽子の数と中性子の数とが釣り合っていない不安定な原子核を含む元素を指す。放射性崩壊の一種にベータ崩壊があり、最初は不安定な原子が、電子または陽電子を出力しながら崩壊して(安定核または不安定核である)別の元素に変化する。放射性元素の半減期(τ)は、不安定な原子が初期値の半分まで崩壊する時間を示している。放射性同位体毎に半減期が異なる。半減期は科学界で一般によく知られている。
【0023】
一部の実施形態では、放射性元素としてストロンチウム90を含むRTGを形成するとしてよい。ストロンチウム90は、38個の陽子と52個の中性子を含む(例えば、38+52=90)。ストロンチウム90は、ストロンチウム(Sr)の同位元素であり不安定で、半減期は28.9年である。ストロンチウム90はベータ崩壊によりイットリウム90に変化し、546keVの電子を放出する。イットリウム90は、39個の陽子と51個の中性子を含む(例えば、39+51=90)。イットリウム90は、イットリウム(Y)の同位元素であり不安定で、半減期は64.1時間である。イットリウム90はベータ崩壊によりジルコニウム90に変化し、2,280.1keV(2.2801MeV)の電子を放出する。前述の説明は一般的にストロンチウム90を含む放射性原料に関するものであるが、一部の実施形態では、高エネルギーベータ線(例えば、2MeVを超えるベータ線)を生成する他の放射性元素を含むRTGを形成するとしてもよい。例えば、ストロンチウム89、プルトニウム238、ポロニウム210、キュリウム244、またはアメリシウム241は、ストロンチウム90の代わりに使用できる別の放射性同位体である。
【0024】
RTGは、使用する材料が放射性物質であるため、安全のために何らかのシールド構造が必要である。一般的に、シールド構造設計の目的は、どのような用途であろうと、放射線のエネルギーを小さくするために当該放射線との間で相互作用を発生させる材料を介在させることで、放射線の漏出を減少させることである。高エネルギーベータ崩壊の問題の一つは、シールド構造を形成する物質との間に最初に発生する相互作用によって高エネルギーのX線が発生することであり、このX線はかなり厳重なシールド構造を必要とし得る。過去のシールド構造の設計では、ベータ線が燃料(例えば、放射性物質)自体から放出される前に制動放射線が発生していた。しかし、燃料自体の内部で発生する制動放射線を低減/除去する燃料構成は、特に大規模エネルギー源では、これまで製作されていない。制動放射線が燃料自体の内部で発生する過去の燃料構造は、燃料を少量のストロンチウム90に制限することによってのみ可能であった。その場合であっても、周囲にかさばるシールド構造を設けていた。例えば、現在のストロンチウム90を使った放射性電源の設計では、少なくとも1968年以来、事実上すべての制動放射性X線が燃料内部で発生することが知られていたにもかかわらず、燃料構造に半径の大きいものを採用している。このように、大規模ベータ放射線源について制動放射線の発生を抑制するシールド構造は、X線の発生がすでに燃料中で起こっていたため、研究されてこなかった。そのため、高エネルギーベータ線源とそれに伴う制動放射性X線の発生を遮蔽するためには、大量の重金属またはコンクリートを使用する必要があった。このため、当該ベータ放出RTGの用途(例えば、使用事例)大きく制限されてしまう。
【0025】
シールド構造には大量の金属またはコンクリートを使用する必要があるため、運搬可能で、地上または宇宙空間で使用可能なよう、高エネルギーベータ線源のシールド構造を軽量化することは現実的ではなかった。このため、ベータ線源RTGの使用は、許容放射線レベルが高いのでシールド構造を簡略化することが可能であるか、または、シールドの質量、体積、コストが大きくても構わない用途に限られている。シールド構造は、人里離れた場所以外で運搬可能な状態での使用を想定している場合、大量の金属またはコンクリートによって可能となる安全機構を内在させる必要があると同時に、運搬が可能になる程度に軽量であることも必要である。今日ではさまざまな要因が重なり、ストロンチウム90を採用したRTGの使用を見直す必要性が生じている。具体的には、代わりとなる放射性同位体が不足しているが、核燃料が再処理されればストロンチウム90が豊富に供給されること、人間が立ち入ることのできない場所に配備されるエネルギー効率が非常に高い装置に無人且つ高い信頼性を保ちつつ長期的に少量の電力を供給する必要があることである。RTGの普及を推進する主な原動力の一つは、X線シールドのコストおよび重量を抑制することにある。
【0026】
さらに、上述したようなRTG用の燃料材料を製造するには、燃料材料の密度、サイズ、均一性が適切なものになるよう、独自の製造工程を開発する必要がある。特に、燃料材料にグラファイトを含有させるためには、最適なプレスパラメータを特定する必要がある。これは、プレスプロセスを主導するのが、従来の製造プロセスでは燃料だったが、そうではなくグラファイトだからである。さらに、粉末材料をプレスする際のパラメータは、放射線からの保護および電力出力レベルを適切なものとするべく、燃料構造および制動放射線の発生を主に考慮して最適化される。
【0027】
燃料源を製造するための技術ではこれまで、グラファイトを含める必要がなかった。このため、製造プロセスでは、グラファイトを含めることで製造ステップやパラメータがどのように変化するか、あるいは変化する可能性があるかについては重点をおいてこなかった。例えば、元素が追加されて燃料の体積が増加すれば、重金属製のシールド構造の体積も結果として増加するであろう。一方、グラファイトを含有させることは、制動放射を最小限に抑えるという重要な機能を果たす。加えて、過去の燃料製造プロセスでは、本明細書で説明する燃料源で必要とされる粉末状放射性物質の均一性は、要件として挙げられていなかった。例えば、本明細書に説明する燃料源のホットプレスでは、それ自体がシールドである金型を使用するとしてよい。さらに、本明細書で説明する製造工程ではホットセルを使用するが、その理由は、加工中、最終形態になるまでの間に、燃料がグラファイトではない金属に曝されたり、その近くに置かれたりする可能性があるため、非常に高い制動放射線が発生した結果、加工中に高い放射線被曝を受ける可能性があるからである。
【0028】
図1は、放射性同位体熱電発電機(RTG)のための過去の燃料構造物の形態100、および、様々な実施形態による、RTGのための最適化された燃料構造物の形態150の一例を示す。いくつかの実施形態では、RTGの最適化された燃料構造物のための形態150は、過去の燃料構造物のための形態100と比較して制動放射線の発生が減少し得るように形成され得る。例えば、最適化された燃料構造物の形態150は、最高エネルギーベータ線を燃料源から放出させることを可能にすることで制動放射X線の発生を減少させ得る。最適化された燃料構造物の燃料源は、例えば、ストロンチウム90などの高エネルギーベータ線放出体であってよい。
【0029】
図1に見られるように、過去の燃料構造物の形態100は、半径が燃料源のベータ線の平均自由行程110よりも大きいとしてよい。この例では、放射性材料のベータ崩壊によって生成された電子120は、燃料源105(例えば、過去の燃料構造物の燃料源)内で制動放射線(例えば、X線)に変換される。しかしながら、一部の実施形態では、最適化された燃料構造物の形態150は、半径がベータ線の平均自由行程よりも小さいので、ベータ線は、最初に制動放射X線に変換されることなく燃料源155(例えば、最適化された燃料構造物の燃料源)から放出され得る。ベータ線は、燃料源(例えば、最適化された燃料構造物の燃料源)から放出された後、シールド構造の一部などの物質内で減速されてもよく、これにより制動放射線の発生が抑制され得る。この物質は、原子番号(すなわちZ)に基づいて、または、化合物材料の場合は有効原子番号に基づいて選択することができる。この物質は低密度物質であってもよい。
【0030】
図2は、様々な実施形態による、RTGのための二相シールド220の一例を示す。いくつかの実施形態において、RTG200は、本明細書において燃料源202の同義語として使用される燃料202、燃料容器204、および本明細書において二相シールド220、シールド220、および/またはシステム220の同義語として使用される二相シールドシステム220を含み得る。二相シールドシステム220は、第1シールド206および第2シールド208を含んでもよい。いくつかの実施形態では、第1シールド206は、本明細書において一次シールド206の同義語として使用されることがあり、第2シールド208は、本明細書において二次シールド208の同義語として使用されることがある。さらに、一部の実施形態では、RTG200は燃料容器204を含まない場合がある。
【0031】
一部の実施形態では、二相シールド220は、制動放射線の発生を抑制し、RTG200の外部での放射線を最小限に抑え、またRTG200が構造的に安定するように設計されてもよい。いくつかの実施形態では、第1シールド206は、有効原子番号が低い材料で形成されてもよい。第1シールド206は、燃料202および燃料容器204から漏出する制動放射線の少なくとも一部を減衰させるように構成されてもよい(例えば、
図1の形態150に見られるように)。いくつかの実施形態では、第2シールド208は、有効原子番号が高い材料で形成されてもよい。第2シールド208は、第1シールド206から漏出する制動放射線および/または第1シールド206内で発生する制動放射線を吸収するように構成されてもよい。第2シールド208はまた、二相シールド220を構造的に安定したものとすると共に堅牢なものとすることにより、RTG200も安定させ堅牢なものとするように構成されてもよい。一部の実施形態では、熱効率を最大限に高めるため非常に高い温度で動作するように構成されてもよい。例えば、RTG200は約700℃以上で動作するように構成されてもよい。RTG200が動作する温度範囲は、約50℃から燃料の分解温度(例えば、SrF
2の場合は約1400℃、SrTiO
3の場合は1800℃)までに及ぶとしてよい。一部の実施形態では、熱設計および熱の取り扱いを簡略化するべく、RTG200は低温で動作するように構成されてもよい。しかし、形態150では、用途に最適な温度を提供できるよう幅広い動作温度を確保することが可能である。一部の実施形態では、第1シールド206は、燃料202および燃料容器204から、または、燃料202から漏出した制動放射線を最大限減衰させる役割を果たすとしてよい。さらに、第1シールド206は、発生する制動放射線が最小量となるように設計されてもよい。一部の実施形態では、第1シールド206は、熱源とヒートシンクとの間で熱を伝達するための熱伝達媒体として機能するように構成されなければならない。第1シールド206は、1つ以上の材料で形成されてもよい。例えば、第1シールド206は、グラファイト、水素化リチウム、水素系オイルまたは樹脂、溶融塩などで形成されてもよい。第1シールド206を形成するために使用される1つ以上の材料は、密度が低く、原子番号が低く、熱伝導率が高く、および/または材料分解温度が高い材料を含んでよく、追加的または代替的に、使用する放射線源(例えば、ストロンチウム90)を含む材料(例えば、チタン酸ストロンチウム)と適合する材料であってよい。
【0032】
一部の実施形態では、グラファイトは、熱伝導率が良好で有効原子番号が6と低いので、第1シールド206に使用する材料として選択され得る。さらに、グラファイトは他の材料と化学的に高い適合性を示し、これまでのRTG設計において材料適合バッファとして使用されてきた。グラファイトの融点は、チタン酸ストロンチウムの融点(例えば、2,080℃)より高く(例えば、3,600℃)、熱的に安定である。グラファイトはまた、毒性がなく、比較的安価であり、多くの既存の原子力用途に使用されている。
【0033】
一部の実施形態では、密度が低く、熱伝導率が許容可能なレベルで、および有効原子番号が低いので、リチウム水素化物または水素系オイルが第1シールド206に使用される材料として選択され得る。例えば、水素化リチウムは有効原子番号が1.5で、水素系オイルは、一般的にこれより高く、使用される特定のオイル次第である。どちらの物質も燃料構造物の他の材料と適合するが、水素化リチウムは毒性および化学反応性があるため、製造コストが上昇し、封じ込めが破られた場合のリスクも高まる可能性がある。水素系オイルは比較的安価であるが、水素化リチウムは安価ではない。場合によっては、水素化リチウムおよび水素系オイルのどちらも、分解または沸点に至る前の最高温度によって、燃料構造物の動作温度が制限され得る。例えば、水素化リチウムおよび水素系オイルが原因で、RTG200の動作温度が700℃を下回る可能性がある。
【0034】
一部の実施形態では、FLiBe(Li2BeF4)などの溶融塩オプションが、第1シールド206に使用される材料として選択され得る。溶融塩オプションの有効原子番号は3.3であり、これは過去のストロンチウム90の場合に比べて、制動放射強度が約87%減少することを表す。溶融塩オプションの密度は、約1.9g/cm3である。溶融塩オプションは、熱伝導率が許容可能な水準にあり、製造コストが比較的安価である。溶融塩は、例えば中央太陽光発電所のような特定用途での高温熱媒体として使用することができ、原子炉での使用も計画されている。
【0035】
一部の実施形態では、窒化ホウ素(BN)または炭化ホウ素(B4C)等の耐火化合物が、第1シールド206に使用される材料として選択され得る。耐火化合物の有効原子番号はグラファイトと同様であり、つまり、制動放射線強度の低減効果は、グラファイトを使用した場合と同様の水準になる。耐火化合物オプションの密度は、約2.1~2.5g/cm3である。耐火化合物オプションは、熱伝導率が許容可能な水準にあり、製造コストが比較的安価である。耐火化合物は、熱的安定性および化学的安定性が高く、衝撃による損傷に耐える程度に硬度が高い。
【0036】
一部の実施形態では、第2シールド208の厚みおよび材料は、第1シールド206から漏出した残余ベータ線を、取り扱いおよび使用が可能になる値まで十分に低減するように選択される。第2シールド208は、燃料202、燃料容器204、および/または一次シールド206で発生したが燃料容器204または第1シールド206で減衰しなかった大半の制動放射線を遮断または吸収するように構成されてもよい。第2シールド208は、1つまたは複数の材料で形成されるとしてよく、第1シールド206を形成する1つまたは複数の材料と異なるとしてもよい。例えば、第2シールド208を形成するために使用される1つ以上の材料は、密度が高く、有効原子番号が高く、熱伝導率が高く、材料分解温度が高くて、なおかつRTG200を構成する他の材料と適合する材料を含んでもよい。一例として、第2シールド208は、タングステン、鉛、劣化ウラン、それらの組み合わせ、または他の材料で形成されてもよい。一部の実施形態では、タングステン、鉛、および/または劣化ウランの組み合わせは、熱伝達を制御するために使用されてもよい。
【0037】
一部の実施形態では、燃料202内の放射性物質(例えば、ストロンチウム90)の放射性崩壊(例えば、ベータ崩壊)の結果として生成された電子210は、燃料202から漏出し、燃料容器204内で減衰され得る。例えば、燃料202の半径は、電子210の平均自由行程よりも小さくてもよい。このため、電子210が制動放射線に変換されることなく燃料202から放出され得る。一部の実施形態では、燃料202内の放射性物質(例えば、ストロンチウム90)の放射性崩壊(例えば、ベータ崩壊)の結果として生成された電子212は、燃料202から放出され、燃料容器204を通過し、第1シールド206内で減衰されるとしてよい。一部の実施形態では、燃料202内の放射性物質(例えば、ストロンチウム90)の放射性崩壊(例えば、ベータ崩壊)の結果として発生した電子214は、燃料202から放出されず、制動放射線(例えば、X線)216に変換され得る。制動放射線216は、燃料202から放出され、燃料容器204および第1シールド206を通過して、第2シールド208によって減衰されるとしてよい。一部の実施形態では、燃料202内の放射性物質(例えば、ストロンチウム90)の放射性崩壊(例えば、ベータ崩壊)の結果として発生する電子218は、燃料202から放出され、燃料容器204および第1シールド206を通過し、第2シールド208によって減衰されるとしてよい。これに代えて、燃料202内の放射性物質(例えば、ストロンチウム90)の放射性崩壊(例えば、ベータ崩壊)の結果として発生した電子は、燃料202から放出され、燃料容器204、第1シールド206、または第2シールド208において制動放射線に変換され得る。燃料容器204、第1シールド206、または第2シールド208のうちどこで制動放射線が発生したかに関係なく、制動放射線は、第2シールド208に到達する前に、または第2シールド208によって、減衰されるので、RTG200から漏出しない。
【0038】
多くの核燃料構造物は、欠くべからず安全要素として、複数段階の封じ込め構造に封じ込められるとしてよい。しかし、これまでの燃料カプセル用のデザインの中には、封じ込めが1段階のものもあった。一部の実施形態は、燃料設計の安全性を高めるための段階的封じ込め構造を含む。つまり、シールドに穴が開いたり、封じ込めが何らかの他の方法で失われた場合に、放射線被曝および燃料封じ込め対策の喪失を抑制する。さらに、段階的封じ込め構造は、発生するあらゆる制動放射線に対する減衰構造を軽量化し得る。一部の実施形態において、段階的シールドは、自己遮蔽を利用する形態上の組み合わせ、燃料を別々の区画に区分けすること、シールドが衝撃を受けた場合に燃料の拡散が制限されるように燃料を収容すること、および通常外の状況下で放射線曝露を低減する形態的設計を含んでもよい。
【0039】
一部の実施形態では、ストロンチウム90のような高エネルギーベータ線放出体のための燃料構造物が本明細書に記載されている。一例として、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)中の電子の飛程(例えば、平均自由行程)は、約2mmであってよい。このため、チタン酸ストロンチウム源の内部で発生した電子は、チタン酸ストロンチウム原料から約2mmの箇所で停止し得る。
【0040】
図3は、様々な実施形態による、RTGのための分散燃料構造物300の一例を示す。一部の実施形態では、燃料構造物300は、高エネルギーベータ線放出体で形成された球状構造体310が分散しているとしてよい。球状構造体は、(i)実質的に同じ大きさを有し、(ii)実質的に球状であり得る。例えば、各球体の体積Vは、4/3πr
3に等しくてもよく、ここで、「r」は、所与の球状構造体の半径に対応する。各球状構造体の体積は、所定の公差レベル内であり得る。例えば、各球状構造体は、球状構造体の体積の平均値のN標準偏差σ以内にある体積Vを有していてもよい。例えば、Nは1、2等の任意の数であってよい。体積がV+Nσよりも大きい球状構造体、または、V-Nσよりも小さい球状構造体は、燃料構造300では使用しないとしてよい。さらに、各球状構造体は、その体積全体にわたって実質的に一定である半径rを有してもよい。
【0041】
一部の実施形態では、各球状構造体は、半径が2mm以下であってよく、これはストロンチウム90のベータ崩壊によって生成される電子の飛程に対応する。一部の実施形態では、各球状構造体は、チタン酸ストロンチウムで形成されて、グラファイト320で被覆されていてもよい。一部の実施形態では、球状構造体は、一次シールド(例えば、第1シールド206)中に分散していると同時に、焼結またはホットプレスにより二次シールド(例えば、第2シールド208)中に封入されていてもよい。他の実施形態では、分散させる構造体は、多面体または不規則形などの他の形状であってもよいが、特徴となるサイズ、表面積、または体積が本明細書に一例として記載する球状構造に対応する。
【0042】
図4は、様々な実施形態による、RTGのための同心燃料構造物400の一例を示す。一部の実施形態では、同心燃料構造物400は、高エネルギーベータ線放出体の平均自由行程より小さい厚みの高エネルギーベータ線放出体410の同心シリンダを含んでもよい。例えば、同心燃料構造物400は、2mmの厚みを有するチタン酸ストロンチウムから成る同心のシリンダを複数含むとしてよい。一部の実施形態では、同心燃料構造物400はさらに、グラファイト等の第1のシールド材料420から成る同心のシリンダを複数含むとしてよい。例えば、同心燃料構造物400は、第1の半径のチタン酸ストロンチウムから成る第1シリンダを含むとしてよく、これが所定の厚みを有するグラファイトから成るシリンダ内に封入され、チタン酸ストロンチウムから成る別のシリンダ内に封入され、グラファイトから成る別のシリンダ内に封入され、以下同様であり得る。一部の実施形態では、第1の半径は、2mm未満(例えば、チタン酸ストロンチウムから放出される電子の平均自由行程)であってもよい。一部の実施形態では、グラファイトから成るシリンダの厚みは7mm以下であってよい。一部の実施形態では、ストロンチウム90の粒子間の平均距離は約0.005cmであってよい。放射性原料から成るシリンダの数および第1のシールド材料から成るシリンダの数は、さまざまな値を取りえるとしてよく、所与の燃料デザインが生成すべき電力出力によって決まるとしてよい。例えば、シリンダ数は、6以上(例えば、チタン酸ストロンチウムから成るシリンダが3つ、グラファイトから成るシリンダが3つ)、10以上(例えば、チタン酸ストロンチウムから成るシリンダが5つ、グラファイトから成るシリンダが5つ)などであってもよい。一部の実施形態では、同心の複数のシリンダは、高エネルギーベータ放射線放出体(例えば、チタン酸ストロンチウム)および第1のシールド材料(例えば、グラファイト)から成るが、タングステンなどの第2のシールド材料430内に封入されているとしてもよい。厚みは、RTGに起因する放射線被曝量が、放射線被曝量のしきい値未満(例えば、1メートル離れた場所で10mren/時未満)となるように選択されるとしてよい。
【0043】
図5Aは、様々な実施形態による、RTGのための同心燃料構造物500の他の例を示す。
図5Bおよび
図5Cはそれぞれ、様々な実施形態による、RTGのための同心燃料構造物の他の例を示す側面図、および、様々な実施形態による、RTGのための同心燃料構造物の他の例を示す上面図である。一部の実施形態では、同心燃料構造物500は、
図4の同心燃料構造物400と類似してよく、前述の説明が適用されてもよい。同心燃料構造物500は、ストロンチウム90などの高エネルギーベータ線放出体から成る第1同心シリンダ502を複数含んでいるとしてもよい。例えば、第1同心シリンダ502は、チタン酸ストロンチウムから成るとしてもよい。第1同心シリンダ502の間には、第2同心シリンダ504を複数介在させてもよい。第2同心シリンダ504は、いくつかの実施形態において、第1シールド、すなわち一次シールドを形成してよい。例えば、第2同心シリンダ504は、
図2の第1シールド206と類似してよい。一部の実施形態では、第2同心シリンダ504は、密度が低く、原子番号が低く、熱伝導率が高く、材料分解温度が高い材料であって、使用する放射線源(例えば、ストロンチウム90)に適合する1つ以上の材料で形成されてもよい。例えば、第2同心シリンダ504は、グラファイトで形成されてもよい。
【0044】
いくつかの実施形態において、第1同心シリンダ502のうちの中心シリンダは、第2同心シリンダ504の第1のインスタンスによって囲まれてもよい。第2同心シリンダ504の第1のインスタンスは、第1同心シリンダ502の第1のインスタンスに挟まれてもよい。この第1同心シリンダ502および第2同心シリンダ504の交互のパターンは、RTGの電力要件に応じて何回か繰り返されてもよい。しかしながら、燃料構造物500の外側シリンダは、第2同心シリンダ504で形成されることになる。いくつかの実施形態では、同心シリンダ502および504の各々の厚みは、実質的に類似してよい。例えば、同心のシリンダ502および504は両方とも、厚みが1mm以下、1.5mm以下、2mm以下、2.5mm以下、3mm以下などであってよい。別の例として、同心のシリンダ502および504は両方とも、厚みが同じで1mmから10mmの範囲内であってよい。一部の実施形態では、同心のシリンダ502それぞれの厚みは、互いに略同じであってよく、同心のシリンダ504それぞれの厚みは、互いに略同じであるが、同心のシリンダ502の厚みとは異なっているとしてもよい。例えば、同心のシリンダ502および504はそれぞれ、厚みが1mm以下、1.5mm以下、2mm以下、2.5mm以下、3mm以下のいずれかであってよい。別の例として、同心のシリンダ502および504はそれぞれ、厚みが1から10mmの範囲内であってよい。一部の実施形態では、同心のシリンダ502それぞれおよびシリンダ504それぞれの半径は、シリンダの数が多いほど、大きいとしてよい(例えば、内側のシリンダは外側のシリンダよりも半径が小さいとしてよい)。例えば、1つ目の同心シリンダ502は第1の半径を有してもよく、1つ目の同心シリンダ502は、第1の半径よりも大きい第2の半径を有する1つ目の同心シリンダ504によって囲まれてもよい。1つ目の同心シリンダ504は、第2の半径よりも大きい第3の半径を有する2つ目の同心シリンダ502によって囲まれてもよい。以下同様である。半径は、例えば2mmから徐々に大きくなるとしてよい。第2の半径は、2~4mm、2.5~4.5mm、2~6mm等の範囲内から選択された値としてよく、第3の半径は、4~6mm、4.5~6.5mm、4~7mm等の範囲内から選択された値としてよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、第3シリンダ506が、同心シリンダ502および504を取り囲んでいてもよい。第3シリンダ506は、
図2の第2シールド208と実質的に類似していてもよく、前述の説明が適用されてもよい。一部の実施形態では、第3シリンダ506を構成する1以上の材料は、密度が高く、有効原子番号が高く、熱伝導率が高く、材料分解温度が高く、RTGを構成する他の材料と適合性のあるもので形成されてもよい。例えば、第3シリンダ506は、タングステンから成るとしてよい。一部の実施形態では、第3シリンダ506の厚みは、RTGの設計要件(例えば、電力要件、第1シールドの構成要素の数、材料組成など)に応じて決まるとしてよい。一部の実施形態では、第3シリンダ506は、空気の層508が周りを取り囲んでいるとしてもよいし、または自然環境にさらされていてもよい。
【0046】
図6Aは、様々な実施形態による、RTG600のための分散燃料構造物の他の例を示す図である。
図6Bおよび
図6Cはそれぞれ、様々な実施形態による、RTG600のための分散型燃料構造物の他の例を示す側面図、および、上面図である。RTG600は、高エネルギーベータ放射線放出体から成る分散型球状構造602を備えるとしてよい。複数の球状構造体は、(i)実質的に同じ大きさを有し、(ii)実質的に球状であり得る。例えば、球状構造体は、
図3を参照しつつ上述した球状構造体と同じか、または、同様であってよい。一部の実施形態では、各球状構造体は、半径が2mm以下であってよく、これはストロンチウム90のベータ崩壊によって生成される電子の飛程に対応する。一部の実施形態では、各球状構造体は、チタン酸ストロンチウムから成り、グラファイトで被覆されていてもよい。一部の実施形態では、球状構造体は、第1シールド604内で分散させてもよい。例えば、第1シールド604の1つ以上の材料は、密度が低く、原子番号が低く、熱伝導率が高く、および/または材料分解温度が高いものであってよく、これに加えて、または、これに代えて、使用する放射線源(例えば、ストロンチウム90)を含む材料(例えば、チタン酸ストロンチウム)と適合する材料であってよい。一例として、第1シールド604は、グラファイトから成るとしてよい。一部の実施形態では、第1シールド604は、球状構造体602を含む部分と、第2シールド606および608との間に緩衝層を含んでもよい。この緩衝層を設けるのは、球状構造物602が第2シールド606および608に接触して高強度の制動放射線が発生するのを防ぐことが目的である。
【0047】
第2シールド606および608はそれぞれ、密度が高く、有効原子番号が高く、熱伝導率が高く、材料分解温度が高い1つ以上の材料であって、RTG200を形成する他の材料と適合する材料である1つ以上の材料から形成されてもよい。一例として、第2シールド606および608は、タングステンから成るとしてよい。一部の実施形態において、第2シールド606の厚みは第1の厚みであってよく、第2シールド608の厚みは第2の厚みであってよい。例えば、第2シールド606の厚みは5mmであってよく、第2シールド608の厚みは10mmであってよい。第2シールド606および608の各々の厚みは、所定範囲の厚みから選択された厚みを有してもよい。この厚みは、RTGからの放射線被曝量が放射線被曝量のしきい値未満となるように選択される。例えば、第2シールドの厚みは、1mの距離で放射線被曝量が10mrem/時未満となるように選択されてもよい。一部の実施形態では、第2シールド606は、厚みが実質的に一定であってよい。例えば、第2シールド606は、実質的に一定の厚み(例えば、2-10cmの範囲内の値が選択される)を有するRTG600の側壁であってもよい。一部の実施形態では、第2シールド608は厚みが変化するとしてよく、RTG600の周縁に近い部分の厚みは、RTG600の中心軸に沿った厚さよりも小さい(例えば、2-10cmの範囲内の値が選択される)。
【0048】
図7は、様々な実施形態による、
図6Aから
図6Cに示したRTGのための分散燃料構造物の斜視図である。
図7から分かるように、上記の
図6Aから
図6Cで詳細に説明したRTG600が示されている。
図7では、RTG600の斜視図が描かれている。
【0049】
図8は、様々な実施形態による、RTG用燃料構造物の他の例を示す断面図である。
図8から分かるように、RTGは、ヒートパイプ810、サーモエレクトリック820、断熱材830、燃料(例えば、チタン酸ストロンチウム)およびグラファイトマトリックス840、X線シールド構造850、および熱分解グラファイト放射フィン860を含む。一部の実施形態に応じて、
図8の燃料構造物は、宇宙用途向けに設計されたRTGに熱源を組み込む方法の一例を示している。
【0050】
図9は、さまざまな実施形態にかかる、RTG用燃料構造物におけるシールド構造と放射性材料との間の界面のうち拡大領域の一例を示す図である。
図9から分かるように、チタン酸ストロンチウム粒子がグラファイト内に封入されており、当該粒子およびグラファイトの混合体が燃料内に分散している。燃料の端縁には、一部の実施形態において、グラファイトベータシールドが設けられているとしてもよい。グラファイトベータシールドは、グラファイト/粒子混合体とタングステンシールド層との間に挟持されているとしてもよい。グラファイトベータシールドは、チタン酸ストロンチウム粒子が高原子番号のタングステンシールドに直接当たることで高強度の制動放射線が発生する可能性があるが、これを防ぐことができる。
【0051】
次に、
図9を参照して上述した放射性原料のような放射性原料を製造するための製造プロセスについて説明する。一部の実施形態では、燃料製造プロセスはストロンチウム90原料に関するものであるが、これに代えて別の放射性同位体を使用することもできる。
【0052】
直径50マイクロメートルの粉末のフッ化ストロンチウム-グラファイト混合物の圧力感度研究によると、フッ化ストロンチウム-グラファイト混合物を加圧して最高密度を実現するために適切な圧力は、1平方インチ当たりおよそ30キロポンド(ksi)であることが分かっている。この圧力で加圧すると、フッ化ストロンチウム-グラファイト混合物の密度は理論上の最大密度の約88~89%となった。一部の実施形態では、混合比は約2.3:1(例えば、グラファイト対フッ化ストロンチウム)である。質量比で、フッ化ストロンチウムの密度は約4.2g/cc、グラファイトの密度は2.1g/ccである。フッ化ストロンチウム-グラファイト混合物の密度は約2.6g/ccである。圧力感度試験を行うため、フッ化ストロンチウム-グラファイト混合物の試料を冷間等方圧プレス(CIP)した。
【0053】
本明細書に記載されているように、放射性原料としてフッ化ストロンチウムを使用することは、チタン酸ストロンチウム等の放射性原料を代わりに使用することが可能で、本開示は、フッ化ストロンチウムのみに限定することを意図していないことに留意すべきである。他の実施形態では、本明細書で開示するチタン酸系原料に代えてフッ化物を利用することが可能である。
【0054】
フッ化ストロンチウム-グラファイト混合物は、プレスして最大密度を実現する上で適切な温度を特定するため、温度感度についても調査した。フッ化ストロンチウム-グラファイト混合物は、粉末状で熱間等方圧プレス(HIP)した。この結果得られたものの密度は、HIPを行うために使用した缶から試料を取り出したために寸法が非対称となり、適切な温度についての分析は行われなかった。目視検査では、最適な材料を得るために適切な温度は、約1200℃と判断された。
【0055】
HIPは、電気加熱式RTGの試作品用の模擬燃料ペレットのプレスにも使用されている。まず、フッ化ストロンチウム-グラファイト混合物にCIPを行い、得られる形状を改善した。次に、当該混合物にCIPを行うことで得られたものにHIPを実行し、密度をさらに高くした。しかし、この技術では十分な大きさの試料が得られないと判断され、さらに試作品を作って試験を行うこととなった。
【0056】
フッ化ストロンチウム-グラファイト混合物に対してCIPおよびHIPを行うと、適切な密度が得られるものと判断されたが、得られる形状は適切な均一性を有していない。さらに、サンプルは後処理が必要で、その結果大量の粉塵が発生するが、これは望ましくない。HIPの代わりにペレットをホットプレスするか、または、シールドを金型としてX線シールドに直接ホットプレスするのがより適していると判断された。
【0057】
先に検出された寸法の不一致は、冷間焼結として知られるプロセスに起因する可能性がある。(理論上の密度が約64%の)粉末材料を所定の圧力の環境下に置くと、当該材料が圧縮され、当該材料の空隙率が減少し、密度は理論上の密度の約90%に制限された値となる。粉末材料を焼結することで、当該材料が変化する。空隙がなくなり、理論上の密度の99%以上に到達する可能性がある。しかし、グラファイトの焼結温度は、SrTiO3およびSrF2の融点よりも高い。例えば、フッ化ストロンチウムの融点は約1477℃であり、チタン酸ストロンチウムの融点は約2080℃である。冷間焼結は、材料の焼結温度を高圧で下げることで、当該材料が低温で高密度化し得ることを示唆している。これが、最初のプレス工程で材料の密度が予想以上の高い値に到達した場合の寸法の不一致の原因となり得る。
【0058】
図10は、様々な実施形態による、RTGのための放射性原料を製造するためのプロセス1000の一例を示す。一部の実施形態では、プロセス1000は、ホットセルまたは遮蔽グローブボックスを使用して実施するとしてよい。作業員の被ばく線量を抑えるために、ホットセルまたは遮蔽グローブボックスのいずれかに若干の変更を加えることができる。前述の説明では放射性原料として使用される放射性同位体としてストロンチウム90に言及したが、別の放射性原料を使用することも可能で、本開示で説明した複数の放射性同位体の候補に限定されないことに留意すべきである。
【0059】
一部の実施形態によると、プロセス1000はステップ1002から開始されるとしてよい。ステップ1002において、ストロンチウム化合物(例えば、ストロンチウム90)を準備するとしてよい。一部の実施形態において、ストロンチウム化合物は不純物を除去することで得られるとしてよい。例えば、ストロンチウム90の場合、除去される不純物には崩壊生成物のジルコニウム90が含まれるとしてよい。原料から不純物を除去することで、RTG用燃料の比出力が最大化され得る。一部の実施形態において、ストロンチウム化合物(例えば、90Sr)は、チタン酸ストロンチウム(例えば、SrTiO3)またはフッ化ストロンチウム(例えば、SrF2)に変換されるとしてよい。ストロンチウムへと変換させるプロセスで廃棄物または汚染物質が残る場合は、適切に処分するとしてよい。
【0060】
ステップ1004では、ストロンチウム化合物(例えば、90SrTiO3または90SrF2)の粒径を小さくするとしてよい。一部の実施形態では、ストロンチウム化合物は粉末化して篩分けを行うとしてよい。一部の実施形態において、ストロンチウム化合物はボールミルを利用して粉末化するとしてよい。粉末化により得られた不均一な粉末を、篩分けシステムへと移送して均一な粉末を得るとしてよい。一部の実施形態では、ストロンチウム化合物(例えば、90SrTiO3または90SrF2)は、篩に加えて粉砕媒体を使用して粉末化し、粉砕および篩分けを同時に行ってもよい。粉末は、同時に粒径の均一化のために篩分けを行うとしてもよい。使用する粉末の粒子の半径は、大きさが15~30ミクロン、30~70ミクロン、20~60ミクロン、40~80ミクロン、またはその他の範囲としてよい。例えば、使用する粉末の粒子の半径は、大きさが50マイクロメートルであってもよい。別の例を挙げると、粉末の粒子の半径は、大きさが100ミクロン未満であってもよい。当業者であれば、前述した寸法は近似値であり、粒子毎にわずかに大小があるものと理解するであろう。
【0061】
粒径を低減するための別の(または追加で採用する)方法として、ストロンチウム化合物を水溶液に溶解させることもできる。一部の実施形態では、ストロンチウム化合物は、粉末が汚染されないように、酸、溶媒等の液体媒体(例えば、アセトン、トリクロロエチレン、酢酸、硝酸、メタノール、イソプロパノール、脱イオン水、水道水、塩水、または水酸化アンモニウム)に溶解させるとしてよい。使用する粉末の粒子の半径は、大きさが15~30ミクロン、30~70ミクロン、20~60ミクロン、40~80ミクロン、またはその他の範囲としてよい。例えば、使用する粉末の粒子の半径は、大きさが50マイクロメートルであってもよい。別の例を挙げると、粉末の粒子の半径は、大きさが100ミクロン未満であってもよい。他の実施形態によると、チタン酸ストロンチウムを水溶液または溶媒に入れて混ぜて、粒径を小さくするとしてもよい。例えば、90SrTiO3を水酸化アンモニウム(NH4OH)中に入れ、10-30分かけて超音波処理を行いサイズを小さくするとしてもよい。
【0062】
ステップ1006では、粉末化したグラファイト(および、一部の実施形態では、多孔性炭素)をストロンチウム化合物(例えば、ステップ1004で上述した方法のいずれか/両方によって作製)と混合して、90SrTiO3粒子をストロンチウム-グラファイト混合物(ストロンチウム化合物が水溶液に溶解している場合、スラリーであってもよい)中に懸濁させてもよい。そして、ストロンチウム-グラファイト混合物を(例えば、60~90℃の温度まで、任意で約80℃まで)加熱し、(例えば、300~600RPM、任意で約450RPMで)回転させて、水酸化アンモニウムを除去し、プレスする前に混合物を乾燥粉末に戻すとしてよい。一部の実施形態では、ストロンチウム-グラファイト混合物は、ストロンチウムと同一または同等の粒径のグラファイト粉末と混合させるとしてよい。この混合は、V字型ミキサーのような粉末混合装置を用いて所定の比率で行うとしてよい。一部の実施形態では、グラファイト対ストロンチウムの比率は2.3:1(例えば、グラファイト:SrF2)であってもよいが、RTGに望まれる出力、使用されるストロンチウムの化学的な形態等の要因に応じて、それ以外の比率(例えば、1.9:1、2:1など)でもよい。この比率は、放射性原料の化学的な形態およびとRTGの所望の出力によって異なるとしてよい。
【0063】
ステップ1008では、ストロンチウム-グラファイト混合物をプレスするとしてよい。一部の実施形態では、ストロンチウム-グラファイト混合物をホットプレス法を用いてプレスして「燃料ペレット」を製造し、続いてX線シールド内に入れる。このプレス工程には、様々な種類のプレスが含まれるとしてよい。HIP、CIPおよび続いて行うHIP、CIPおよび続いて行うホットプレス、コールドプレス、コールドプレスおよび焼結、またはその他の形態のプレスを含むが、これらに限定されない(他のリストが限定的であることを意味するものではない)。ストロンチウム-グラファイト混合物/スラリーが熱負荷ダイに移送される実施形態では、プレス前の加熱の一例として、100℃で30分間、150℃で15分間、200℃で15分間、250℃で60分間を挙げることができる。一部の実施形態では、ストロンチウム-グラファイト混合物をプレスするためにHIPを採用する場合、圧力は約30ksiで温度は1200℃とするとしてよい。ただし、圧力および温度は異なる値としてもよい。例えば、圧力は20~40ksi、10~50ksi、25~35ksi、約43ksi、またはその他の圧力値から選択することができる。別の例として、温度は200~300℃、1000~1400℃、1100~1300℃、1150~1250℃、またはその他の温度から選択することができる。一部の実施形態では、プレス温度は250℃であってもよい。当業者であれば、その他の温度範囲および圧力範囲を採用し得るものと理解するであろう。例えば、温度および圧力の範囲は、放射性原料(例えば、チタン酸ストロンチウム)の化学形態および使用されるその他の材料(例えば、グラファイト)によって異なる場合がある。一例として、グラファイトと有効原子番号が同様である窒化ホウ素または炭化ホウ素は、特徴となる温度および圧力が異なるとしてよい。さらに、ペレットプレス時に分解後のペレット密度を高めるために添加剤またはバインダ(例えば、砂糖、ステアリン酸、ポリカプロラクトン、またはプロピレンカーボネート)を混合物に添加してもよい。
【0064】
ステップ1010では、プレスした混合物を封入するとしてよい。一部の実施形態では、プレスした混合物をX線シールドに封入し、漏れのないように固定するとしてよい。
【0065】
ステップ1012では、封入された混合物に対して1つ以上の試験を実施することができる。一部の実施形態では、試験は、熱源から距離を変えて放射線量率を測定することを含むとしてよい。例えば、封入された混合物の表面、1メートル離れた箇所、10メートル離れた箇所等での放射線量率を測定するとしてよい。一部の実施形態では、測定された放射線量率を、測定された放射線量率がしきい値よりも大きいか否かを判定するために、対応する距離の放射線量率のしきい値と比較するとしてよい。例えば、安全性の要件を満たすためには、放射線量率は、熱源表面では200mrem/時未満、表面から1mの距離では10mrem/時未満でなければならない。「表面」とは、本明細書で言及する場合、燃料源のうち接触の可能性がある部分を指す。その場合、新しい熱源が必要で、試験対象となったものは使わないとしてもよい。一部の実施形態では、熱源の熱出力を測定するとしてもよい。熱出力をしきい値と比較して、熱出力の測定値がしきい値より大きいか否かを判定するとしてよい。その場合、新しい熱源が必要で、試験対象となったものは使わないとしてもよい。一部の実施形態では、熱源が密閉されているかどうかを確認するために、リークテストが実施されることがある。
【0066】
ステップ1014では、既知の安全プロトコルにしたがって、プロセスロスを廃棄するとしてよい。例えば、プロセスロスは、通常手順にしたがいLLWとして処分することができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載された燃料構造物は、宇宙環境用のヒーターユニット、寒冷環境用のヒーターユニット、エネルギー変換用の熱電源、医療用放射性同位体貯蔵シールド、使用済み核燃料輸送シールド、医療用放射性同位体輸送シールド、使用済み核燃料シールド、緊急放射線格納、宇宙環境用の生物放射線防護、および緊急放射線環境用の生物放射線防護を含む多様な用途に使用され得るが、それらに限定されない。
【0068】
読者は、本願がいくつかの個別に有用な技術を説明していることを理解すべきである。出願人はこれらの技術を複数の独立した特許出願に分けるのではなく、1つの文書にまとめているが、これはそれらの技術の主題が関連しているために、出願プロセスの経済性につながるからである。しかし、このような技術の別個の利点や態様を混同してはならない。場合によっては、実施形態は本明細書で指摘した欠陥のすべてに対処しているが、技術は独立して有用であり、いくつかの実施形態はそのような問題の部分集合のみに対処しているか、または本開示を閲覧している当業者には明らかであろう他の言及されていない利点を提供していることを理解すべきである。コストの制約のため、本明細書に開示されているいくつかの技術は、現在は所有権を請求されていない可能性があり、継続出願などの後の出願で、または現在の請求項を補正することで所有権を請求される可能性もある。同様に、紙面の都合上、本文書の「要約」や「発明の概要」のセクションは、そのような技術のすべて、またはそのような技術のすべての態様を包括的に記載しているものとみなすべきではない。
【0069】
詳細な説明および図面は、開示された特定の形態に本技術を限定することを意図したものではなく、逆に、添付の請求項によって定義される本技術の趣旨および範囲内に入るすべての修正、均等物、および代替物を網羅することを意図したものであることを理解すべきである。本技術の様々な態様のさらなる修正および代替の実施形態は、この説明を読めば当業者には明らかであろう。したがって、この説明および図面は、例示としてのみ解釈され、本技術を実施する一般的な方法を当業者に教えることを目的としている。ここに図示および説明されている本技術の形態は、実施形態の例として見なすべきものであることを理解されたい。各種要素および材料を、本明細書に図示および説明されているものに代えて使用してもよく、部品およびプロセスは逆にしてもよいし、省略してもよく、本技術の特定の特徴は独立して利用してもよいが、これらはすべて、本技術に関するこの説明の恩恵を受けた後に当業者に明らかになるであろう。以下の特許請求の範囲に記載された本技術の趣旨と範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された要素に変更を加えることができる。本明細書で使用されている見出しは、整理を目的としたものであり、説明の範囲を限定するために使用することを意図していない。
【0070】
本願を通して使用されているように、「may」という言葉は、必須の意味(すなわち、必ずしなければならないという意味)ではなく、許容的な意味(すなわち、する可能性があるという意味)で使用されている。「含む(include)」、「含む(including)」、「含む(includes)」などの言葉は、含むがそれに限定されないことを意味する。本願では、単数形の「a」、「an」、「the」は、内容が明示的に別の意味を示していない限り、複数のものを含む。したがって、例えば、「構成要素(an element)」または「構成要素(a element)」への言及は、「一または複数の(one or more)」のような1つまたは複数の構成要素に対する他の用語およびフレーズの使用にかかわらず、2つ以上の構成要素の組み合わせを含む。「または」という用語は、別の意味が明記されていない限り非排他的であり、すなわち、「および」と「または」の両方を包含する。「Xに応じてY」、「Xが発生するとY」、「XならばY」、「Xの場合Y」などの条件関係を表す用語は、前件が必要因果条件である場合、前件が十分因果条件である場合、または、前件が帰結の寄与因果条件である場合等の因果関係を意味する。例えば、「条件Yが得られたときにXの状態が生じる」は、「YのみによってXが生じる」、「YおよびZによってXが生じる」のどちらも意味する。このような条件関係は、前件が発生することで即座に伴う後件に限定されるものではなく、後件によっては遅れて発生することもある。また、条件文では、前件が後件の発生の可能性に関係し、例えば、前件は後件の可能性に関係している。複数の属性または機能が複数のオブジェクト(例えば、ステップA、B、C、Dを実行する1つ以上のプロセッサ)にマッピングされる記述は、別途指示がない限り、それらの属性または機能のすべてがそれらのオブジェクトのすべてにマッピングされることと、それらの属性または機能のサブセットがそれらの属性または機能のサブセットにマッピングされることの両方を包含する(例えば、すべてのプロセッサがそれぞれステップA~Dを実行する場合と、プロセッサ1がステップAを実行し、プロセッサ2がステップBとステップCの一部を実行し、プロセッサ3がステップCの一部とステップDを実行する場合の両方)。さらに、ある値または行為が別の条件または値に「基づく」という記述は、別段の指示がない限り、その条件または値が唯一の要因である場合と、その条件または値が複数の要因の中の1つの要因である場合の両方を包含する。あるコレクションの「各」インスタンスが何らかの特性を持つという記述は、別段の指示がない限り、より大きなコレクションの他の特性において同一または類似のメンバーがその特性を持たない場合を除外するように読まれるべきではない。すなわち、「各」は必ずしもすべてを意味するわけではない。例えば、「Xを実行した後、Yを実行する」のように明示的に指定されていない限り、記載されている工程の順序に関する制限を請求項に読み取るべきではない。これに対して、「アイテムにXを実行し、XされたアイテムにYを実行する」のように順序の制限を暗示していると不適切に主張される可能性がある記述は、順序を指定するのではなく、請求項を読みやすくする目的で使用される。また、「A、B、およびCのうち少なくともZ個」などの記述(「A、B、またはCのうち少なくともZ個」など)は、列挙された各カテゴリー(A、B、およびC)のうち少なくともZ個を指すものであり、各カテゴリーに少なくともZ個の単位を必要とするものではない。記載内容から明らかなように、本明細書では、「処理」、「コンピューティング」、「計算」、「決定」などの用語を利用した議論は、特に明記しない限り、特別目的のコンピュータまたは同様の特別目的の電子処理/計算装置などの特定の装置の動作またはプロセスに言及していると理解される。「平行」、「垂直/直交」、「正方形」、「円筒形」などの幾何学的構造物に言及して記述された特徴は、その幾何学的構造物の特性を実質的に具現化するアイテムを包含すると解釈されるべきであり、例えば、「平行」な表面に言及すると、実質的に平行な表面が包含されることになる。これらの幾何学的構造物のプラトン的観念からの逸脱の許容範囲は、明細書中の範囲を参照して決定されるべきであり、そのような範囲が記載されていない場合には、使用分野における業界の規範を参照すべきであり、そのような範囲が定義されていない場合には、指定された特徴の製造分野における業界の規範を参照すべきであり、そのような範囲が定義されていない場合には、幾何学的構造物を実質的に具現化する特徴は、その幾何学的構造物の定義属性の15%以内の特徴を含むと解釈されるべきである。特許請求の範囲で使用されている「第1」、「第2」、「第3」、「所定の」などの用語は、区別するため、あるいは識別するために使用されており、連続的または数値的な限定を示すものではない。
【0071】
本発明の技術は、以下に列挙する実施形態を参照することにより、よりよく理解されるであろう。
<実施形態1>
放射性同位体熱電発電装置(RTG)用の熱源を製造する方法であって、ストロンチウム化合物の粉末化および篩分けを行うことにより、および/または、ストロンチウム化合物を水溶液に溶解させることにより、ストロンチウム化合物の粒径を小さくする工程と、ストロンチウム化合物とグラファイトとを混合してストロンチウム-グラファイト混合物を得る工程と、ストロンチウム-グラファイト混合物にプレスを行う工程と、プレスされたストロンチウム-グラファイト混合物をX線シールドに封入して熱源を得る工程と、を備える方法。
<実施形態2>
ストロンチウム化合物はストロンチウム90化合物を含む、実施形態1に記載の方法。
<実施形態3>
熱源に対して1つまたは複数の試験を実施する工程をさらに備え、1つまたは複数の試験は、熱源からの1つまたは複数の距離で熱源の放射線量率を測定すること、または、熱源の熱出力を測定することのうちの少なくとも1つを含む、実施形態1から2のいずれか1つに記載の方法。
<実施形態4>
1つまたは複数の距離は、熱源の表面、熱源の表面から1メートル、または、熱源の表面から10メートルのうちの少なくとも1つを含む、実施形態3に記載の方法。
<実施形態5>
ストロンチウム化合物を得る前に、ストロンチウム化合物から不純物を除去する、実施形態1から4のいずれか1つに記載の方法。
<実施形態6>
除去した不純物はジルコニウム90を含む、実施形態5に記載の方法。
<実施形態7>
ストロンチウム化合物の粉末化および篩分けを行うことは、ボールミルを用いてストロンチウム化合物を粉末化して不均一な粉末を得ることと、篩分けシステムを用いて不均一な粉末に篩分けを行って均一な粉末を得ることとを含む、実施形態1から6のいずれか1つに記載の方法。
<実施形態8>
均一な粉末の粒子の半径は、大きさが直径約50μmである、実施形態7に記載の方法。
<実施形態9>
ストロンチウム化合物の粉末化および篩分けを行うことは、ストロンチウム化合物が粉砕されると同時に篩分けが行われるように、篩に加えて粉砕媒体を使用してストロンチウム化合物を粉末化することを含む、実施形態1から8のいずれか1つに記載の方法。
<実施形態10>
ストロンチウム化合物を酸または溶媒に溶解させる、実施形態1から9のいずれか1つに記載の方法。
<実施形態11>
篩分けが行われたストロンチウムとグラファイトとを所定の比率で混合する、実施形態1から10のいずれか1つに記載の方法。
<実施形態12>
所定の比率は、変換によって得られたストロンチウム化合物に対するグラファイトの比率が2.3:1である、実施形態11に記載の方法。
<実施形態13>
実施されるプレスは、ホットプレス、熱間等方圧加圧(HIP)、冷間等方圧加圧(CIP)および続いて行うHIP、CIPおよび続いて行うホットプレス、コールドプレス、またはコールドプレスおよび焼結のうちの少なくとも1つを含む、実施形態1から12のいずれか1つに記載の方法。
<実施形態14>
30ksiの圧力および1200℃の温度でHIPを実施する、実施形態13に記載の方法。
<実施形態15>
プロセスロスを処分する工程をさらに備える、実施形態1から14のいずれか1つに記載の方法。
<実施形態16>
実施形態1から15のいずれか1つに記載の方法を用いて製造された熱源を備える、放射性同位体熱電発電機(RTG)。
【国際調査報告】