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特表2024-523142熱的性能を向上させた極細繊維断熱製品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】熱的性能を向上させた極細繊維断熱製品
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/4218 20120101AFI20240621BHJP
   D04H 1/587 20120101ALI20240621BHJP
   F16L 59/02 20060101ALI20240621BHJP
   C03C 25/24 20180101ALI20240621BHJP
   E04B 1/78 20060101ALN20240621BHJP
【FI】
D04H1/4218
D04H1/587
F16L59/02
C03C25/24
E04B1/78 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572973
(86)(22)【出願日】2022-06-03
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 US2022032061
(87)【国際公開番号】W WO2022256592
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】63/196,890
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507220187
【氏名又は名称】オウェンス コーニング インテレクチュアル キャピタル リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】グラント ラリー
(72)【発明者】
【氏名】ガー ダン
(72)【発明者】
【氏名】ブーン テノ
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ チュン-イン
(72)【発明者】
【氏名】チェン リャン
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー ガート
【テーマコード(参考)】
2E001
3H036
4G060
4L047
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001HA33
3H036AA09
3H036AB13
3H036AB24
4G060BA05
4G060BB02
4G060CB08
4L047AA05
4L047AB02
4L047AB07
4L047BA12
4L047BA15
4L047CB06
(57)【要約】
複数のガラス繊維及びガラス繊維を少なくとも部分的に被覆した架橋ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物を有する断熱製品が開示される。ガラス繊維の平均繊維直径は、8HT(2.03μm)から15HT(3.81μm)までの範囲内にある。0.3pcf~1.6pcfの密度(x)では、断熱製品は、式(III):y=0.116x2-0.3002x+0.4219を満たす熱伝導率以下の熱伝導率(y)を達成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱製品であって、
複数のガラス繊維と、
前記ガラス繊維を少なくとも部分的に被覆した架橋ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物と、を有し、
前記ガラス繊維は、8HT(2.03μm)から15HT(3.81μm)までの範囲内にある平均繊維直径を有し、
前記断熱製品は、8重量%以下のバインダ含有量(LOI)を有し、
0.2pcf~1.6pcfの密度(x)では、前記断熱製品は、BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)として表されていて、式(III)、すなわち、
式(III):y=0.116x2-0.3002x+0.4219
を満たす値(y)以下の熱伝導率(k値)(y)を達成する、断熱製品。
【請求項2】
前記熱伝導率(y)は、0.3BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)未満である、請求項1記載の断熱製品。
【請求項3】
0.2pcf~1.35pcfの密度(x)では、前記断熱製品は、BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)として表されていて、式(II)、すなわち、
式(II):y=0.1013x2-0.2438x+0.3763
を満たす値(y)の5%以内の熱伝導率(k値)(y)を達成する、請求項1記載の断熱製品。
【請求項4】
前記断熱製品は、0.7pcf~1.0pcfの密度(x)を有する、請求項1~3のうちいずれか一に記載の断熱製品。
【請求項5】
前記断熱製品は、長さ、幅、及び厚さを有し、前記長さは、前記幅及び前記厚さの各々よりも大きく、少なくとも30重量%の前記ガラス繊維は、前記断熱製品の前記長さ及び前記幅に平行な平面から±15°以内に配向されている、請求項1~4のうちいずれか一に記載の断熱製品。
【請求項6】
前記断熱製品中の少なくとも15重量%の前記ガラス繊維は、前記断熱製品中の少なくとも1つの他のガラス繊維と実質的に平行な配向状態で少なくとも部分的に束ねられている、請求項1~5のうちいずれか一に記載の断熱製品。
【請求項7】
少なくとも40重量%の前記ガラス繊維は、前記断熱製品の前記長さに平行な平面から±15°以内に配向されている、請求項1~6のうちいずれか一に記載の断熱製品。
【請求項8】
前記ガラス繊維の前記平均繊維直径は、12HT(3.05μm)から14.5HT(3.68μm)までの範囲内にある、請求項1~7のうちいずれか一に記載の断熱製品。
【請求項9】
架橋に先立って、前記ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物は、少なくとも1つのモノマーポリオール及びポリカルボン酸を、前記バインダ組成物の全重量を基準として少なくとも45重量%の総量で含む、請求項1~8のうちいずれか一に記載の断熱製品。
【請求項10】
架橋に先立って、前記ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物は、2から5までの範囲内にあるpHを有する、請求項1~9のうちいずれか一に記載の断熱製品。
【請求項11】
低密度住居用断熱バットであって、
複数のガラス繊維と、
前記ガラス繊維を少なくとも部分的に被覆した架橋ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物と、を有し、
前記ガラス繊維は、8HT(2.03μm)から15HT(3.81μm)までの範囲内にある平均繊維直径を有し、
前記断熱バット中の少なくとも15重量%の前記ガラス繊維は、前記断熱バット中の少なくとも1つの他のガラス繊維と実質的に平行な配向状態で少なくとも部分的に束ねられており、
0.2pcf~1.6pcfの密度(x)では、断熱バットは、BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)として表されていて、式(II)、すなわち、
式(II):y=0.1013x2-0.2438x+0.3763
を満たす値(y)の5%以内の熱伝導率(k値)(y)を達成する、低密度住居用断熱バット。
【請求項12】
0.2pcf~1.6pcfの密度(x)では、前記断熱バット製品は、BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)として表されていて、式(III)、すなわち、
式(III):y=0.116x2-0.3002x+0.4219
を満たす値(y)以下の熱伝導率(k値)(y)を達成する、請求項11記載の低密度住居用断熱バット。
【請求項13】
前記熱伝導率(y)は、0.35BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)以下である、請求項11又は12に記載の低密度住居用断熱バット。
【請求項14】
前記断熱バットは、0.7pcf~1.35pcfの密度(x)を有する、請求項11~13のうちいずれか一に記載の低密度住居用断熱バット。
【請求項15】
前記断熱バットは、長さ、幅、及び厚さを有し、前記長さは、前記幅及び前記厚さの各々よりも大きく、少なくとも30重量%の前記ガラス繊維は、前記長さに平行な平面から±15°以内に配向されている、請求項11~14のうちいずれか一に記載の低密度住居用断熱バット。
【請求項16】
前記ガラス繊維は、35重量%以下の前記バインダ組成物がガセットの形態で存在するよう配向されている、請求項11~15のうちいずれか一に記載の低密度住居用断熱バット。
【請求項17】
断熱製品であって、
架橋ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物で少なくとも部分的に被覆された複数のガラス繊維を有し、
前記ガラス繊維は、15HT(3.81μm)未満の平均繊維直径を有し、
前記断熱製品は、長さ、幅、及び厚さを有し、前記長さは、前記幅及び前記厚さの各々よりも大きく、
前記断熱製品中の少なくとも30重量%の前記ガラス繊維は、前記断熱製品の前記長さ及び前記幅により定められた共通平面から±15°以内に配向され、
前記繊維断熱製品は、R‐20からR‐24までのR値及び0.35BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)未満の熱伝導率(k値)で、非圧縮状態において、一貫したR値及びk値で、15HT(3.81μm)を超える平均繊維直径を備えたガラス繊維を含む他の点においては同等の断熱製品よりも少なくとも7%低い密度(x)を有する、断熱製品。
【請求項18】
0.5pcf~1.35pcfの密度(x)では、前記断熱製品は、BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)として表されていて、式(III)、すなわち、
式(III):y=0.116x2-0.3002x+0.4219
を満たす値(y)以下の熱伝導率(k値)(y)を達成する、請求項17記載の断熱製品。
【請求項19】
前記断熱製品は、長さ、幅、及び厚さを有し、前記長さは、前記幅及び前記厚さの各々よりも大きく、少なくとも30重量%の前記ガラス繊維は、前記断熱製品の前記長さ及び前記幅に平行な平面から±15°以内に配向されている、請求項17又は18に記載の断熱製品。
【請求項20】
前記密度(x)は、0.7pcf~1.0pcfである、請求項17~19のうちいずれか一に記載の断熱製品。
【請求項21】
断熱製品を形成する方法であって、前記方法は、
溶融ガラスを複数のガラス繊維の状態に繊維化するステップと、
前記ガラス繊維を水性ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物で被覆するステップと、
前記ガラス繊維を移動コンベア上にランダムに堆積させて未硬化ガラス繊維ブランケットを形成するステップと、
前記未硬化ガラス繊維ブランケットを硬化オーブンに通して前記バインダ組成物を架橋して前記繊維断熱製品を形成するステップと、を含み、
前記ガラス繊維は、8HT(2.03μm)から15HT(3.81μm)までの範囲にある平均繊維直径を有し、
前記断熱製品は、8重量%以下のバインダ含有量(LOI)を有し、
0.2pcf~1.6pcfの密度(x)では、前記断熱製品は、BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)として表されていて、式(III)、すなわち、
式(III):y=0.116x2-0.3002x+0.4219
を満たす値(y)以下の熱伝導率(k値)(y)を達成する、方法。
【請求項22】
前記熱伝導率(y)は、0.35BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)以下である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
0.5pcf~1.35pcfの密度(x)では、前記断熱製品は、BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)として表されていて、式(II)、すなわち、
式(II):y=0.1013x2-0.2438x+0.3763
を満たす値(y)以下の熱伝導率(k値)(y)の5%以内を達成する、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記断熱製品は、0.7pcf~1.0pcfの密度(x)を有する、請求項21~23のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項25】
前記断熱製品は、長さ、幅、及び厚さを有し、前記長さは、前記幅及び前記厚さの各々よりも大きく、少なくとも30重量%の前記ガラス繊維は、前記断熱製品の前記長さ及び前記幅に平行な平面から±15°以内に配向されている、請求項21~24のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項26】
前記断熱製品中の少なくとも15重量%の前記ガラス繊維は、前記断熱製品中の少なくとも1つの他のガラス繊維と実質的に平行な配向状態で少なくとも部分的に束ねられている、請求項21~25のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項27】
前記ガラス繊維は、12HT(3.05μm)から14.5HT(3.68μm)までの範囲内にある平均繊維直径を有する、請求項21~26のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項28】
架橋に先立って、前記ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物は、少なくとも1つのモノマーポリオール及びポリカルボン酸を、前記バインダ組成物の全重量を基準として少なくとも45重量%の総量で含む、請求項21~27のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項29】
架橋に先立って、前記ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物は、2から5までの範囲にあるpHを有する、請求項21~28のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項30】
断熱製品であって、
複数のガラス繊維と、
前記ガラス繊維を少なくとも部分的に被覆した架橋ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物と、を有し、
前記架橋ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物は、少なくとも1つのモノマーポリオールを含む水性バインダ組成物から形成され、
前記ガラス繊維は、15HT未満の平均繊維直径を有し、
前記断熱製品は、8重量%以下のバインダ含有量(LOI)を有し、
前記断熱製品は、19から24までの範囲にあるR値、5.0インチ(12.7cm)~7.0インチ(17.8cm)の厚さ、及び0.20~0.35BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)のk値を有し、
前記断熱製品は、非圧縮状態において、ポリマーポリオールを含むバインダ組成物を有する他の点では同等の断熱製品よりも少なくとも30%低い密度を有する、断熱製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、一般に、ガラス繊維断熱製品、特に、性能特性を向上させたガラス繊維断熱製品に関する。
【0002】
〔関連出願の引照〕
本願は、2021年6月4日に出願された米国特許仮出願第63/196,890号の優先権及び何らかの権益を主張する出願であり、この米国特許仮出願を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
「繊維断熱製品」という用語は、種々の組成物、種々の製造物品、及び種々の製造プロセスを含む。鉱物繊維、例えばガラス繊維は、断熱製品及び不織マットの状態で常用されている。繊維断熱は、典型的には、ポリマー、ガラス、又は他の鉱物の溶融組成物を繊維化し、そして繊維化装置、例えば回転スピナから繊維を紡糸することによって製造される。断熱製品を成形するため、回転スピナにより作られた繊維をスピナからブロワによってコンベヤに向かって下方に引く。繊維が下方に動いているときに、バインダ材料を繊維に吹き付け、そして繊維をコンベヤ上に高ロフトの連続ブランケットの状態に集める。繊維‐バインダマトリックスは、包装後の復元のためのレジリエンスを断熱製品に与えるとともにスチフネス及び取り扱い適性をもたらし、その結果、断熱製品を取り扱ってこれを必要に応じて建物の断熱空洞内に施すことができるようになっている。バインダ組成物はまた、フィラメント間摩滅からの保護を繊維にもたらすとともに、個々の繊維相互間の適合性を促進する。
【0004】
次に、バインダを塗布した繊維を含むブランケットを硬化オーブン中に通し、そしてバインダを硬化させてブランケットを所望の厚さに定める。バインダ組成物が硬化した後、繊維断熱材を所定の長さに切断して個々の断熱製品を成形し、そして断熱製品を顧客の所在地に出荷するために包装するのが良い。製造される1つの典型的な断熱製品は、断熱バット又はブランケットであり、これは、住居又は他の建物内の空洞又は空気層(例えば、壁、床、天井)断熱材としての使用に適した、また、建物内の屋根裏又は他の部分を断熱するために使用される場合がある。かかる断熱バット又はブランケットは、典型的には、比較的可撓性があり又は丸めることができる一体形構造体である。別のありふれた断熱製品は、エアブローン又はバラ詰め断熱材であり、これは、住居及び商業用ビル並びに何らかの到達困難な場所内の側壁及び屋根裏用断熱材として用いるのに適している。かかるバラ詰め断熱材は、バインダが塗布され又は塗布されない場合がある多くの比較的小さな別々の小片、タフトなどとして形成されることが多い。バラ詰め断熱材はまた、断熱ブランケットから切断され、圧縮され、そして袋の中に包装される小さなキューブで形成される場合がある。
【0005】
断熱材料の断熱性能は、主として、材料の厚さをその熱伝導率(k)で除算して得られる比で定まり、熱伝導率は、温度を断熱材の一方の側から他方の側まで1度上げ又は下げるようにするために、1インチ(2.54cm)厚さの断熱材の1平方フィート(0.0929m2)分を通って伝えられる熱の量(単位は、1時間当たりのBTU)を計測したものである。厚さが大きければ大きいほど、そしてk値が小さければ小さいほど、材料の断熱性能がそれだけ一層良好である。
【0006】
建築用製品の繊維断熱材では、壁や天井空洞内において効果的な断熱材であるために低い熱伝導率が必要である。また、全体的製品重量を減少させることが望ましく、なお、一般的に、製品重量を減少させると、熱性能にマイナスの影響が及ぶ。特に、繊維断熱製品を形成するために用いられる繊維の直径を減少させることによって製品重量を減少させるための試みがなされたが、かかる繊維断熱製品は、従来、約4ミクロンの平均繊維直径を有する(1ミクロンは、10万分の3.94インチ、すなわち、3.94HT)以上に等しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、繊維直径のかかる減少は、特定の面積重量及び製品厚さでは製品の断熱値(R値)にマイナスの影響を及ぼすことが従来から判明している。かくして、断熱製品の平均繊維直径を4ミクロン未満に減少させることは、従来、実用的ではなく、と言うのは、かかる製品は、経済的でありながら性能要件を満たすことができなかったからである。したがって、必要な性能要件、例えば熱的性能を効果的に満たし、しかもさらに全体的材料効率を向上させることができる4ミクロンよりも細い繊維で作られた断熱製品が要望されているが、これまで満たされていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の技術的思想の種々の観点は、複数のガラス繊維と、ガラス繊維を少なくとも部分的に被覆した架橋ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物とを有する断熱製品に関し、断熱製品は、長さ、幅、及び厚さを有し、長さは、幅及び厚さの各々よりも大きい。ガラス繊維は、8HT(2.03μm)から15HT(3.81μm)までの範囲内にある平均繊維直径を有し、かかる範囲は、12HT(3.05μm)から14.5HT(3.68μm)までの範囲を含む。
【0009】
本明細書において開示する例示の実施形態のうちの任意のものに関し、0.2pcf~1.6pcfの密度(x)では、断熱製品は、BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)として表されていて、式(III)、すなわち、
式(III):y=0.116x2-0.3002x+0.4219
を満たす熱伝導率以下の熱伝導率(k値)(y)を達成することができる。
【0010】
幾つかの例示の実施形態では、断熱製品の熱伝導率(k値)(y)は、0.3BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)未満である。本明細書において開示する例示の実施形態のうちの任意のものに関し、0.3pcf~1.35pcfの密度(x)では、断熱製品は、BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)として表されていて、式(II)、すなわち、
式(II):y=0.1013x2-0.2438x+0.3763
を満たす値(y)の5%以内の熱伝導率(k値)(y)を達成する。
【0011】
本明細書において開示する例示の実施形態のうちの任意のものに関し、断熱製品は、0.5pcfから1.3pcfまでの範囲内にある密度(x)を有するのがよく、かかる範囲は、0.7pcfから1.0pcfまでの範囲を含む。
【0012】
本明細書において開示する例示の実施形態のうちの任意のものに関し、断熱製品は、長さ、幅、及び厚さを有するのがよく、長さは、幅及び厚さの各々よりも大きく、少なくとも30重量%のガラス繊維は、断熱製品の長さに平行な平面から±15°以内に配向されている。
【0013】
幾つかの例示の実施形態では、断熱製品中の少なくとも15重量%のガラス繊維は、断熱製品中の少なくとも1つの他のガラス繊維と実質的に平行な配向状態で少なくとも部分的に束ねられている。
【0014】
本明細書において開示する例示の実施形態のうちの任意のものに関し、架橋に先立って、ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物は、少なくとも1つのモノマーポリオール及びポリカルボン酸をバインダ組成物の全重量を基準として少なくとも45重量%の総量で含む。加うるに、非架橋バインダ組成物は、2から5までの範囲にあるpHを有するのがよい。
【0015】
別の例示の実施形態は、8HT(2.03μm)から15HT(3.81μm)までの範囲内にある平均繊維直径を備えた複数のガラス繊維と、ガラス繊維を少なくとも部分的に被覆した架橋ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物とを有する低密度住居用断熱バットに関し、断熱バット中の少なくとも15重量%のガラス繊維は、断熱バット中の少なくとも1つの他のガラス繊維と実質的に平行な配向状態で少なくとも部分的に束ねられている。断熱バットは、0.2pcf~1.6pcfの密度(x)では、BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)として表されていて、式(II)、すなわち、
式(II):y=0.1013x2-0.2438x+0.3763
を満たす値(y)の5%以内の熱伝導率(k値)(y)を達成する。
【0016】
さらに、例示の実施形態のうちの任意のものに関し、断熱バットは、0.2pcf~1.6pcfの密度(x)では、BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)として表されていて、式(III)、すなわち、
式(III):y=0.116x2-0.3002x+0.4219
を満たす値(y)以下の熱伝導率(k値)(y)を達成するのがよい。
【0017】
これらの例示の実施形態又は他の例示の実施形態では、断熱バットは、0.5BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)以下、又は幾つかの実施形態では、0.3BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)以下の熱伝導率(y)を有する。
【0018】
例示の実施形態のうちの任意のものに関し、断熱バットは、長さ、幅、及び厚さを有し、長さは、幅及び厚さの各々よりも大きく、少なくとも30重量%のガラス繊維は、断熱バットの長さに平行な平面から±15°以内に配向されている。ガラス繊維は、35重量%以下のバインダ組成物がガセットの形態で存在するよう配向されている。
【0019】
さらに別の例示の実施形態は、15HT(3.81μm)以下の平均繊維直径を備えた複数のガラス繊維と、架橋ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物とを有する断熱製品に関する。断熱製品は、長さ、幅、及び厚さを有し、長さは、幅及び厚さの各々よりも大きい。断熱製品中の少なくとも30重量%のガラス繊維は、断熱製品の長さ及び幅により定められた共通平面から±15°以内に配向されている。繊維断熱製品は、R‐20からR‐24までのR値及び0.35BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)未満の熱伝導率(k値)で、非圧縮状態において、一貫したR値及びk値で、15HT(3.81μm)を超える平均繊維直径を備えたガラス繊維を含む他の点においては同等の断熱製品よりも少なくとも7%低い密度(x)を有する。
【0020】
これらの例示の実施形態又は他の例示の実施形態では、断熱製品は、0.5pcf~1.35pcfの密度(x)を有し、断熱製品は、式(III)、すなわち、
式(III):y=0.116x2-0.3002x+0.4219
を満たす熱伝導率以下の値(y)を達成する。
【0021】
さらに別の例示の実施形態は、断熱製品を形成する方法に関する。本方法は、溶融ガラスを複数のガラス繊維の状態に繊維化するステップと、ガラス繊維を水性ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物で被覆するステップと、ガラス繊維を移動コンベア上にランダムに堆積させて未硬化ガラス繊維ブランケットを形成するステップと、未硬化ガラス繊維ブランケットを硬化オーブンに通してバインダ組成物を架橋して繊維断熱製品を形成するステップとを含む。断熱製品は、長さ、幅、及び厚さを有し、長さは、幅及び厚さの各々よりも大きい。
【0022】
ガラス繊維は、8HT(2.03μm)から15HT(3.81μm)までの範囲にある平均繊維直径を有し、断熱製品は、8重量%以下のバインダ含有量(LOI)を有する。幾つかの例示の実施形態では、断熱製品は、0.2pcf~1.6pcfの密度(x)を有し、断熱製品は、BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)として表されていて、式(III)、すなわち、
式(III):y=0.116x2-0.3002x+0.4219
を満たす値(y)以下の熱伝導率(k値)(y)を達成する。
【0023】
本発明のさらに別の例示の実施形態は、15HT(3.81μm)以下の平均繊維直径を備えた複数のガラス繊維と、ガラス繊維を少なくとも部分的に被覆した架橋ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物とを有する断熱製品に関する。架橋ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物は、少なくとも1つモノマーポリオールを含む水性バインダ組成物から形成されるのがよく、断熱製品は、8重量%以下のバインダ含有量(LOI)を有するのがよい。断熱製品は、19から24までの範囲にあるR値、5.0インチ(12.7cm)~7.0インチ(17.8cm)の厚さ、及び0.20~0.35BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)のk値を有する。加うるに、断熱製品は、非圧縮状態において、ポリマーポリオールを含むバインダ組成物を有する他の点では同等の断熱製品よりも少なくとも30%低い密度を有する。
【0024】
本発明の諸特徴及び諸利点は、以下の説明を添付の図面と共に読むと、本発明と関連した当業者には明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】繊維断熱製品の例示の実施形態の斜視図である。
図2図1の繊維断熱製品を製造する製造ラインの例示の実施形態の立面図である。
図3】平均繊維直径が14.5HTのガラス繊維で形成された例示の繊維断熱製品の一断面を示す走査型電子顕微鏡(「SEM」)の像の図である。
図4】平均繊維直径が14.5HTのガラス繊維で形成された例示の繊維断熱製品の一断面を示すSEMの像の図である。
図5】平均繊維直径が16.7HTであり、断熱値がR-21のガラス繊維で形成された従来型繊維断熱製品の一断面を示すSEM像の図である。
図6】平均繊維直径が14.5HTのガラス繊維で形成された例示の繊維断熱製品の機械方向に沿って断面で取られた製品長さL1(0°)に平行な平面から±15°以内における繊維配向分布のグラフ図である。
図7】平均繊維直径が14.5HTのガラス繊維で形成された例示の繊維断熱製品の機械方向に沿って断面で取られた製品長さL1(0°)に平行な平面から±30°以内における繊維配向分布のグラフ図である。
図8】平均繊維直径が14.5HTのガラス繊維で形成された例示の繊維断熱製品の機械方向に沿って断面で取られた製品長さL1(0°)に平行な平面から±50°以内における繊維配向分布のグラフ図である。
図9(a)】平均繊維直径が約14HTのガラス繊維で形成された例示の極細繊維断熱製品の24mm×16mm断面の繊維配向状態を示すSEMの像の図である。
図9(b)】図9(a)の繊維断熱製品の機械方向に沿って断面で取られた(製品長さL1(0°)に平行な平面に基づいて、単位゜で測定される)繊維配向分布曲線のグラフ図である。
図10(a)】平均繊維直径が約14HTのガラス繊維で形成された例示の極細繊維断熱製品の24mm×16mm断面の繊維配向状態を示すSEMの像の図である。
図10(b)】図10(a)の繊維断熱製品の機械方向に沿って断面で取られた(製品長さL1(0°)に平行な平面に基づいて、単位゜で測定される)繊維配向分布曲線のグラフ図である。
図11(a)-11(c)】図11(a)~図11(c)は、平均繊維直径が14.5HTのガラス繊維で形成された例示の繊維断熱製品中に存在する互いに平行な繊維束を示すSEMの像の図である。
図12(a)-12(c)】図12(a)~図12(c)は、平均繊維直径が14.5HTのガラス繊維で形成された例示の繊維断熱製品中に存在する互いに平行な繊維束を示すSEMの像の図である。
図13(a)-13(b)】図13(a)及び図13(b)は、平均繊維直径が14.5HTのガラス繊維で形成された例示の繊維断熱製品中に存在するバインダガセットを示すSEMの像の図である。
図14】製品密度当たりの実際の熱伝導率(k値)曲線と比較した製品密度当たりの予測熱伝導率(k値)曲線のグラフ図である。
図15】製品密度当たりの実際の材料効率曲線と比較した製品密度当たりの予測材料効率曲線のグラフ図である。
図16】製品密度当たりの調節後の材料効率曲線と比較した製品密度当たりの予測材料効率曲線のグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
別段の規定がなければ、本明細書で用いられる全ての技術的及び科学的用語は、本発明に関する当業者によって一般に理解されているのと同一の意味を有する。本明細書の説明で用いられる用語は、例示の実施形態を説明するためだけのものであり、例示の実施形態を限定することを意味していない。したがって、一般的な発明の技術的思想は、本明細書において説明した特定の実施形態に限定されるものではない。本明細書において説明する方法及び材料と類似した又はこれらと均等な他の方法及び材料を本発明の実施又は試験において使用することができるが、好ましい方法及び好ましい材料を本明細書において説明する。
【0027】
原文明細書及び原文特許請求の範囲で用いられる単数形“a”、“an”、及び“the”は、文脈上明示の指定がなければ、複数形をも含むものである。
【0028】
別段の指定がなければ、大きさの範囲を表すあらゆる数値、例えば成分の量、特性、例えば分子量、特性、例えば分子量、反応条件、並びに物理的属性及び測定された属性、本明細書及び特許請求の範囲に用いられているその他の数値は、あらゆる場合において「約」という用語で修飾されたものとして理解されるべきである。したがって、逆の指定がなければ、本明細書及び特許請求の範囲に記載された数値に関する特性は、本明細書の実施形態で得られるべき所望の特性に応じてばらつきがあってよい近似値である。少なくとも、各数値パラメータは、有効桁及び通常の丸め方に照らして解されるべきである。
【0029】
別段の指定がなければ、任意の要素、任意の特性、任意の特徴、又は諸要素、諸特性、及び諸特徴の組み合わせを、本明細書において開示する任意の実施形態において用いることができ、これは、要素、特性、特徴、又は諸要素、諸特性、及び諸特徴の組み合わせが実施形態において明示的に開示されているかどうかとは無関係である。容易に理解されるように、本明細書において説明する任意特定の観点と関連して説明する特徴を、本明細書において説明する他の特徴に利用可能であり、ただし、かかる特徴が当該観点と適合性があることを条件とする。特に、方法と関連して本明細書において説明する特徴を繊維製品に利用することができ又はその逆の関係が成り立ち、方法と関連して本明細書において説明する特徴を水性バインダ組成物に利用することができ、またその逆の関係が成り立ち、繊維製品と関連して本明細書において説明する特徴は、水性バインダ組成物に利用でき、またその逆の関係が成り立つ。
【0030】
例示の実施形態について記載している数値の範囲及びパラメータが近似値であるにも関わらず、特定の実施例において記載された数値は、可能な限り正確に報告されている。しかしながら、任意の数値は、本来的に、これらのそれぞれの試験測定値に見受けられる標準偏差に起因して必然的に生じるある特定の誤差を含む。本明細書及び特許請求の範囲全体を通じて与えられているあらゆる数値の範囲は、かかる広い数値の範囲におさまるあらゆる狭い数値の範囲を含み、このことは、あたかもかかる狭い数値の範囲が全て、本明細書において明示的に記載されているかのようなものである。
【0031】
本明細書で用いられる用語「バインダ組成物」、「水性バインダ組成物」、「バインダ調合物」、「バインダ」、及び「バインダ系」は、互換的に使用でき、そしてこれらは同義語である。加うるに、本明細書で用いられる用語「ホルムアルデヒドフリー」又は「ホルムアルデヒド無添加」は、互換的に使用でき、これらは同義語である。
【0032】
全ての値域は、当該範囲の外側の境界内の考えられる全ての部分的範囲を含むものと理解される。かくして、例えば、0.2pcfから2.0pcfまでの密度範囲は、例えば、0.5pcf~1.2pcf、0.7pcf~1.0pcfなどを開示している。
【0033】
「実質的にフリー」という表現は、組成物が記載した成分の1.0重量%未満を含むことを意味しており、かかる量は、0.8重量%以下、0.6重量%以下、0.4重量%以下、0.2重量%以下、0.1重量%以下、0.5重量%以下、0.01重量%以下を含む。
【0034】
本明細書で用いられる単位「ポンド」又は“lb”は、ポンド‐質量を意味している(なお、1ポンドは、453.6gである)。
【0035】
本開示は、好ましい繊維配向及び製品構造を達成するよう、微小直径ガラス繊維(すなわち、15HT以下の平均繊維直径を有する繊維)で形成されたガラス繊維断熱製品に関する。ガラス繊維断熱製品は、驚くべきこととして、熱的性能の向上及び全体的な材料効率の向上を実証している。
【0036】
本発明の繊維断熱製品は、複数の繊維、例えば有機繊維又は無機繊維から成る。ある特定の例示の実施形態では、複数の繊維は、無機繊維であり、無機繊維としては、ガラス繊維、ガラスウール繊維、鉱物ウール繊維、スラグウール繊維、ストーンウール繊維、セラミック繊維、金属繊維、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。
【0037】
オプションとして、繊維は、天然繊維及び/又は合成繊維、例えば炭素、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド、アラミド、及び/又はポリアラミド繊維を含むのがよい。本明細書で用いられる「天然繊維」という用語は、植物の任意の部分から抽出された植物繊維を意味し、かかる植物繊維としては、茎、種、葉、根、又は師部が挙げられるが、これらには限定されない。断熱製品として用いられるのに適した天然繊維の例としては、木材繊維、セルロース繊維、わら、木材チップ、木材ストランド、綿、ジュート、バンブー、カラムシ、バガス、ヘンプ、コイア、リネン、ケナフ、サイザル、亜麻、ヘネケン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。繊維断熱製品は、全体が1種類の繊維で作られても良く、あるいは、種々の繊維の組み合わせで形成されても良い。例えば、繊維断熱製品は、断熱に関する所望の用途に応じて、種々のガラス繊維の組み合わせ又は種々の無機繊維及び/又は天然繊維の種々の組み合わせで形成されても良い。本明細書に開示される実施形態のうちの任意のものに関し、断熱製品は、実質的に又は全体的にガラス繊維で作られるのがよい。
【0038】
繊維断熱製品は、従来型のガラス繊維断熱製品、特に住居用断熱製品で用いられるガラス繊維よりも直径が小さいガラス繊維を利用しており、従来型断熱製品は、典型的には4μm(15.7HT)を超える繊維直径を有する。具体的に言えば、本明細書に開示され又は示唆される例示の繊維断熱製品は、バインダ組成物の塗布に先立って、3.81μm(15HT)以下の平均繊維直径を備えたガラス繊維を有するのがよく、かかる平均繊維直径は、3.76μm(14.8HT)以下、3.68μm(14.5HT)以下、3.61μm(14.2HT)以下、3.56μm(14HT)以下、3.43μm(13.5HT)以下、3.30μm(13HT)以下、3.18μm(12.5HT)以下、3.05μm(12HT)以下の平均繊維直径を含む。例示の実施形態のうちの任意のものに関し、繊維断熱製品は、3.05μm(12.0HT)から3.81μm(15.0HT)までの範囲、3.30μm(13.0HT)から3.76μm(14.8HT)までの範囲、又は3.43μm(13.5HT)から3.61μm(14.2HT)までの範囲にある平均繊維直径を有するガラス繊維を含むのが良い。他の例示の実施形態では、断熱製品は、2.03μm(8.0HT)から3.05μm(12.0HT)までの範囲、2.29μm(9.0HT)から2.79μm(11.0HT)までの範囲、又は2.03μm(8.0HT)から2.54μm(10.0HT)までの範囲にある平均繊維直径を有するガラス繊維を含むのが良い。
【0039】
ガラス繊維の直径を測定するために用いられる例示の手順では、繊維直径を直接測定するための走査型電子顕微鏡(SEM)が利用される。一般に、繊維断熱製品の試験片を加熱していかなる有機物質(例えば、バインダ組成物)もかかる試験片から除去し、次に、試験片からのガラス繊維の長さを減少させてこれをSEMによってその写真を撮る。次に、繊維の直径をSEMと関連した画像処理ソフトウェアによって保存された画像から測定する。
【0040】
具体的に言えば、繊維断熱製品の試験片を最短30分間をかけて800°F(426.7℃、なお、℃=(°F-32)×(5/9))まで加熱する。試験片を必要ならばこれよりも長く加熱してどのような有機物質であってもこれらの除去を確実にするのがよい。次に、試験片を室温まで冷却し、そしてガラス繊維の長さを減少させ、その目的は、SEMプランシェット上に装着することにある。ガラス繊維の長さを任意適当な方法で減少させることができ、例えば、鋏によって切断し、レーザブレードによって切断し、又は乳鉢と乳棒で挽くことができる。次に、ガラス繊維をSEMプランシェットの表面にくっつけて繊維がオーバラップすることがなく又は遠すぎるほど間隔を置いて配置されないようにする。
【0041】
試験片をイメージング用にいったん調製すると、通常の操作手順を用いてSEM内に取り付け、そして測定対象の繊維の直径サイズに適当な倍率でSEMによって写真にする。十分な数の画像を収集して記憶し、それにより十分な量の繊維が測定のために利用できるようにする。例えば、10~13個の画像を必要とする場合があり、この場合、250~300本の繊維が測定される。次に、SEM画像分析ソフトウェアプログラム、例えばスカンジウムSISイメージングソフトウェアを用いて繊維直径を測定する。次に、試験片の平均繊維直径を測定した繊維の本数から算定する。繊維断熱製品の試験片は、ひとまとめに融着されるガラス繊維を含むのが良い(すなわち、2本以上の繊維がこれらの長さに沿って接合される)。本開示において試験片の平均繊維直径を計算する目的のため、融着繊維を単一の繊維として取り扱う。
【0042】
ガラス繊維の平均繊維直径を測定するために用いられる別の手順では、試験片中のランダムに分布した繊維の平均又は「有効」繊維直径を間接的に求めるために空気流れ抵抗を測定する装置が利用される。具体的に言えば、別の手順の一実施例では、繊維断熱製品の試験片を30分間かけて800~1000°F(426.7~537.8℃)まで加熱する。試験片を必要ならばこれよりも長く加熱し、それによりどのような有機材料であってもこれらを除去するようにする。次に、試験片を室温まで冷却し、そして重量が約7.50グラムの試験片を装置のチャンバ内に装入する。一定の空気流をチャンバ中に導入し、そして空気流がいったん安定化すると、差圧又は圧力降下を上記の装置によって測定する。空気流量及び差圧に基づき、この装置は、試験片の平均繊維直径をコンピュータ計算することができる。
【0043】
本発明の繊維断熱製品は、断熱製品の製造の際に無機繊維を結合するのに用いられる「ホルムアルデヒドフリー」又は「ホルムアルデヒド無添加」水性バインダ組成物から成る。「バインダ組成物」は、無機繊維を三次元構造の状態に互いにくっつけるために用いられる有機作用剤又は化学薬品、多くの場合、ポリマー樹脂を意味している。バインダ組成物は、任意の形態であって良く、例えば溶液、乳濁液、又は分散液である。かくして、「バインダ分散液」又は「バインダ乳濁液」は、媒体又はビークルに入っているバインダ化学物質の混合物を意味している。本明細書で用いられる「バインダ組成物」、「水性バインダ組成物」、「バインダ調合物」、「バインダ」及び「バインダ系」は、互換的に使用でき、これらは同義語である。加うるに、本明細書で用いられる「ホルムアルデヒドフリー」又は「ホルムアルデヒド無添加」という用語は、互換的に使用でき、これら用語は、硬化時又は違ったやり方での乾燥時に約1ppm未満のホルムアルデヒドを含むバインダ組成物を意味している。1ppmは、ホルムアルデヒド放出に関して測定されている製品の重量に基づいている。
【0044】
多種多様なバインダ組成物を本発明のガラス繊維に使用することができる。例えば、バインダ組成物は、2つの広義の相互に排他的なクラス、すなわち、熱可塑性と熱硬化性に分類される。熱可塑性バインダ組成物と熱硬化性バインダ組成物の両方を本発明に使用することができる。熱可塑性材料を繰り返し加熱して軟化又は溶融状態にすることができ、かかる熱可塑性材料は、冷却時にその先の状態に戻る。換言すると、加熱により熱可塑性材料の物理的状態の可逆的変化を生じさせることができる(例えば、固体から液体に)が、熱可塑性材料は、非可逆的な化学反応を何ら生じることはない。繊維断熱製品100に用いるのに適した例示の熱可塑性ポリマーとしては、ポリビニル(例えばポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール及び同類のもの)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン又はポリフェニレンスルフィド(PPS)、ナイロン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル及びメタクリル酸エステル樹脂、及びポリアクリレートのある特定のコポリマーが挙げられるが、これらには限定されない。
【0045】
これとは対照的に、熱硬化性ポリマーという用語は、当初液体として存在するが、加熱時に、反応を起こして固体の高度に架橋された母材を形成するある範囲の系を意味している。かくして、熱硬化性化合物は、加熱時に非可逆的に架橋する反応体系、多くの場合、反応体のペアを含む。冷却時、熱硬化性化合物は、これらの先の液体状態に戻ることはなく、非可逆的架橋状態のままである。
【0046】
熱硬化性化合物として有用な反応体は、一般に、数個の反応性官能基、例えばアミン基、アミド基、カルボキシル基又はヒドロキシル基のうちの1つ以上を含む。本明細書で用いられる「熱硬化化合物」(及び「熱硬化性化合物」、「熱硬化性バインダ」又は「熱硬化バインダ」のようなその派生語)は、かかる反応体のうちの少なくとも1つを意味し、2つ以上が熱硬化性化合物に特徴的な架橋系を形成するのに必要な場合のあることは言うまでもない。熱硬化性化合物の主反応体に加えて、触媒、加工助剤、及び他の添加物が存在する場合がある。
【0047】
熱硬化性バインダの一カテゴリは、種々のフェノール‐アルデヒド、尿素‐アルデヒド、メラミン‐アルデヒド、及び他の縮合重合材料を含む。フェノール系/ホルムアルデヒドバインダ組成物が既知の熱硬化性バインダ系であり、フェノール系/ホルムアルデヒドバインダ組成物は、これら組成物が安価であり、しかも未硬化状態での低粘度液体から硬化時には硬質熱硬化性ポリマーに移行することができるので、歴史的に好まれてきた。
【0048】
ホルムアルデヒドフリー熱硬化性バインダ系は、ポリカルボキシポリマー及びポリオールを主成分とするバインダ系を含むのがよい。一例がチェン等(Chen et al.)に付与された米国特許第6,884,849号明細書及び同第6,699,945号明細書に記載されたポリアクリル酸/ポリオール/多酸バインダ系であり、これら米国特許の各々を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。もう1つの実施例は、チャン(Zhang)等名義で出願された米国特許出願公開第2019/0106564号明細書に記載されたポリカルボン酸ポリマー/長鎖ポリオール/短鎖ポリオールバインダ系であり、この米国特許出願公開を参照により引用し、その開示内容全体を本明細書の一部とする。もう1つの実施例は、米国特許仮出願第63/086,267号明細書に記載されたポリカルボン酸ポリマー/モノマーポリオールバインダ系であり、この米国特許仮出願を参照により引用し、その開示内容全体を本明細書の一部とする。さらにもう1つの実施例は、米国特許仮出願第63/073,013号明細書に記載されたポリカルボン酸/ポリオール/窒素を主成分とする保護剤バインダ系であり、この米国特許仮出願を参照により引用し、その開示内容全体を本明細書の一部とする。
【0049】
ホルムアルデヒドフリーの熱硬化性バインダ組成物の第2のカテゴリが「バイオ」又は「天然」バインダと呼ばれている。「バイオバインダ」及び「天然バインダ」は、多くの反応性機能を有する栄養化合物、例えば炭水化物、タンパク質、又は脂肪で作られたバインダ組成物を意味するものとして本明細書においては区別なく用いられる。これらバインダは、栄養素化合物で作られているので、環境に優しい。バイオバインダ組成物は、2010年10月8日に出願されたホーキンス等(Hawkins et al.)名義の米国特許出願公開第2011/0086567号明細書に詳細に記載されており、この米国特許出願公開を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0050】
幾つかの例示の実施形態では、バインダは、オーエンス‐コーニン(Owens Corning )社のEco-Touch(商標)バインダ又はEcoPure(商標)バインダ、オーエンス‐コーニン社のSustaina(商標)バインダ、又はクナーフ(Knauf)社のECOSE (登録商標)バインダを含む。
【0051】
熱硬化性化合物として有用な別な反応体は、D形グルコース一水和物、無水クエン酸、水及びアンモニア水の混合に由来するトリアンモニウムシトレート‐D形グルコース系である。加うるに、炭水化物反応体及びポリアミン反応体は、有用な熱硬化性化合物であり、かかる熱硬化性化合物は、米国特許第8,114,210号明細書、同第9,505,883号明細書及び同第9,926,464号明細書に詳細に記載されており、これら米国特許を参照により引用し、これらの記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0052】
驚くべきこととして、平均繊維直径が15HT未満のガラス繊維を用いて製造された繊維断熱製品は、ポリオール及び、一次架橋剤、例えばポリカルボン酸又はその塩から成るホルムアルデヒドフリーバインダ組成物を用いて製造されたときに特性が向上していることが判明した。特に注目に値する改良は、バインダ組成物中に含まれるポリオールがモノマーポリオールである場合に見いだされた。
【0053】
一次架橋剤は、ポリオールを架橋するのに適した任意の化合物であって良い。適当な架橋剤の非限定的な例としては、1つ以上のカルボキシル基(‐COOH)を有するポリカルボン酸を主成分とする材料、例えば、ポリカルボン酸モノマー及びポリカルボン酸ポリマーを含み、かかる材料としては、これら酸の塩及び無水物、及びこれらの混合物が挙げられる。例示の実施形態のうちの任意のものに関し、ポリカルボン酸は、重合ポリカルボン酸、例えばアクリル酸のホモポリマー又はコポリマーであるのがよい。重合ポリカルボン酸は、ポリアクリル酸(その塩又は無水物)、及びポリアクリル酸を主成分とする樹脂、例えば、QR-1629S及びAcumer 9932(これらは両方とも、ダウ・ケミカル・カンパニーから市販されている)、CHポリマー社から市販されているポリアクリル酸組成物、及びアテックス(Coatex)社から市販されているポリアクリル酸組成物を含むのがよい。Acumer 9932は、約4000の分子量及びポリアクリル酸/次亜リン酸ナトリウム樹脂の総重量を基準として6~7重量%の次亜リン酸ナトリウム含有量を有するポリアクリル酸/次亜リン酸ナトリウム樹脂である。QR-1629Sは、ポリアクリル酸/グリセリン樹脂組成物である。Aquaset-529 は、グリセロールと架橋されたポリアクリル酸を含む組成物である。
【0054】
ポリカルボン酸は、重合ポリカルボン酸、例えば、ポリアクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリマレイン酸、及び同様な重合ポリカルボン酸、かかる酸の無水物、塩、又は混合物、並びにアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、及び同様なカルボン酸、かかる酸の無水物、塩、及び混合物を含むのがよい。
【0055】
例示の実施形態のうちの任意のものに関し、ポリカルボン酸は、ポリカルボン酸モノマー、例えば、クエン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、酒石酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、トリメシン酸、トリカルバリル酸、及びその他を含むのがよく、かかるポリカルボン酸モノマーは、これらの塩、無水物、及びこれらの混合物を含む。
【0056】
架橋剤は、幾つかの場合において、中和剤であらかじめ中和されるのが良い。かかる中和剤としては、有機及び/又は無機塩基、例えば水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、及びジエチルアミン、及び任意種類の第一級、第二級、又は第三級アミン(アルカノールアミン)が挙げられる。種々の例示の実施形態では、中和剤は、水酸化ナトリウム及びトリエタノールアミンのうちの少なくとも一方を含むのが良い。
【0057】
架橋剤は、バインダ組成物中にバインダ組成物の全固形分に基づいて少なくとも30.0重量%の状態で存在し、かかる量としては、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、少なくとも50重量%、少なくとも52.0重量%、少なくとも54.0重量%、少なくとも56.0重量%、少なくとも58.0重量%、及び少なくとも60.0重量%が挙げられるが、これらには限定されない。本明細書において開示する実施形態のうちの任意のものに関し、架橋剤は、水性バインダ組成物中に水性バインダ組成物の全固形分に基づいて30重量%~85重量%の量で存在し、かかる量としては、50.0重量%~70.0重量%、50重量%超~65重量%、及び52.0重量%~62.0重量%、54.0重量%超~60.0重量%、及び55.0重量%~59.0重量%が挙げられるが、これらには限定されない。
【0058】
オプションとして、上述のポリカルボン酸架橋剤に加えて、これに代えて、バインダ組成物は、アミンを主成分とする反応体、例えば、アンモニウム塩(例えば、ポリカルボン酸のアンモニウム塩)、アミン、硫酸二アンモニウム、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、その他を含むのがよい。かかるアミンを主成分とする反応体は、メラノイジン(高分子量、フラン環及び窒素含有ポリマー)を生じさせるよう還元糖とのメイラード反応に加わることができる。かくして、幾つかの例示の実施形態において、バインダ組成物は、アミンを主成分とする反応体及び1種類以上の還元糖との反応によって生じるメラノイジンを含むのがよい。
【0059】
水性バインダ組成物は、少なくとも1つのポリオールをさらに含むのが良い。例示の実施形態のうちの任意のものに関し、ポリオールは、モノマーポリオールを含むのがよい。モノマーポリオールは、2,000ダルトン未満(1,000ダルトン未満、750ダルトン未満、500ダルトン未満を含む)の分子量、及び少なくとも2つのヒドロキシル(‐OH)基を有する水溶性化合物を含むのが良い。例示のモノマーポリオールとしては、グルコース、スクロース、エチレングリコール、糖アルコール、ペンタエリスリトール、第一アルコール、2,2‐ビス(メチロール)プロピオン酸、トリ(メチロール)プロパン(TMP)、1,2,4‐ブタントリオール、トリメチロールプロパン、フラクトース、高フラクトースコーンシロップ(HFCS)、及び少なくとも3つのヒドロキシル基を含む短鎖アルカノールアミン、例えばトリエタノールアミンが挙げられる。本明細書において開示する実施形態のうちの任意のものに関し、ポリオールは、少なくとも3つのヒドロキシル基、少なくとも4つのヒドロキシル基、又は少なくとも5つのヒドロキシル基を含むのが良い。
【0060】
糖アルコールは、糖のアルド又はケト基を対応のヒドロキシル基に還元した(例えば、水素化によって)ときに得られる化合物を意味していると理解されたい。開始糖は、単糖類、オリゴ糖類、及び多糖類、並びにこれら生成物の混合物、例えばシロップ、糖液及びスターチ加水分解物の中から選択されることになる。開始糖はまた、糖の脱水型であっても良い。糖アルコールは、開始糖に酷似しているが、糖ではなく、特に還元糖ではない。かくして、例えば、糖アルコールは、還元能力を持っておらず、還元剤に特有のメイラード反応に参加することができない。幾つかの例示の実施形態では、糖アルコールとしては、グリセロール、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、イジトール、イソマルチトール、ラクチトール、セロビトール、パラチニトール、マルトトリトール、これらのシロップ及びこれらの混合物が挙げられる。種々の例示の実施形態では、糖アルコールは、グリセロール、ソルビトール、キシリトール、及びこれらの混合物から選択される。幾つかの例示の実施形態では、モノマーポリオールは、糖アルコールの二量体又はオリゴマー縮合生成物である。種々の例示の実施形態では、糖アルコールの縮合生成物は、イソソルビドである。幾つかの例示の実施形態では、糖アルコールは、ジオール又はグリコールである。
【0061】
幾つかの例示の実施形態では、モノマーポリオールは、水性バインダ組成物中に全固形分の重量で最高約70%までの量で存在するのが良く、かかる量は、全固形分の重量で最高約60%まで、約55%まで、約50%まで、約40%まで、約35%まで、約33%まで、約30%まで、約27%まで、約25%まで、及び20%までを含むが、これらには限定されない。幾つかの例示の実施形態に関し、モノマーポリオールは、水性バインダ組成物中に全固形分の重量で2.0%~65.0%の量で存在するのが良く、かかる量は、全固形分の重量で5.0%~40.0%の量、8.0%~37.0%の量、10.0%~34.0%の量、12.0%~32.0%の量、15.0%~30.0%の量、及び20.0%~28.0%の量を含むが、これらには限定されない。
【0062】
種々の例示の実施形態では、架橋剤及びモノマーポリオールは、カルボキシル基、無水物基、又はこれらの塩のモル当量の数とヒドロキシル基のモル当量の数の比が約0.3/1~約1/0.3、例えば約0.5/1~約1/0.5、約0.6/1~約1/0.6、約0.8/1~約1/0.8、又は約0.9/1~約1/0.9であるような量で存在する。
【0063】
本明細書において開示する実施形態のうちの任意のものに関し、バインダ組成物は、3つ未満のヒドロキシル基を含むポリオールのないもしくは実質的にないもの、あるいは4つ未満のヒドロキシル基を含むポリオールのない又は実質的にないものであって良い。本明細書において開示する実施形態のうちの任意のものに関し、バインダ組成物は、2,000ダルトン以上の数平均分子量、例えば3,000ダルトン~4,000ダルトンの分子量を有するポリオールを含まず又は実質的に含まない。したがって、本明細書において開示する実施形態のうちの任意のものに関し、バインダ組成物は、ジオール、例えばグリコール、トリオール、例えばグリセロール及びトリエタノールアミン、及び/又は部分的に又は完全に加水分解されるのが良い高分子ポリヒドロキシ化合物、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート又はこれらの混合物を含まず又は実質的に含まない。
【0064】
本明細書において開示する実施形態の任意のものに関し、水性バインダ組成物は、高分子ポリカルボン酸を主成分とする架橋剤及びカルボン酸基とヒドロキシル基OH基の比が0.60/1~1/0.6である少なくとも4つのヒドロキシル基を備えたモノマーポリオールを含み又はこれらから成るのが良い。
【0065】
しかしながら、幾つかの例示の実施形態では、ポリオールは、少なくとも2つのヒドロキシル基及び少なくとも2,000ダルトンの数平均分子量を有する重合ポリオールを含むのがよい。重合ポリオールは、バインダ組成物中にポリオールのみの状態として含まれてもよく、あるいは、重合ポリオールは、上述のモノマーポリオールに加えて、二次ポリオールとして含まれてもよい。
【0066】
幾つかの例示の実施形態では、二次ポリオールは、重合ポリヒドロキシ化合物、例えば、ポリビニルアルコール、部分的に又は完全に加水分解されるのがよいポリビニルアセテート、又はこれらの混合物のうちの1つ以上を含む。例示として、部分的に加水分解されたポリビニルアセテートがポリオール成分として機能する場合、80%~89%加水分解されたポリビニルアセテート、例えば、Poval(登録商標)385(クラレ・アメリカ・インコーポレーテッド(Kuraray America, Inc.))及び(セキスイ・スペシャルティー・ケミカルズ・アメリカ・LLC(Sekisui Specialty Chemicals America, LLC))を利用するのがよく、これらは、それぞれ、約85%(Poval (登録商標)385)及び約88%(Selvol(商標)502)である。もう1つの選択肢は、デュポン(DuPont)社から入手でき、約22,000~約26,000ダルトンの分子量及び約5.0~6.0センチポアズの粘度を有するELVANOL 51-05 、又は他の部分的に加水分解されたポリビニルアセテートである。
【0067】
二次ポリオールは、水性バインダ組成物中に全固形分の重量で最高約30%までの量で存在するのが良く、かかる量は、全固形分の重量で最高約28%まで、約25%まで、約20%まで、約18%まで、約15%まで、及び約13%までを含むが、これらには限定されない。例示の実施形態の任意のものに関し、二次ポリオールは、水性バインダ組成物中に全固形分の重量で2.5%~30%の量で存在するのが良く、かかる量は、全固形分の重量で5%~25%、8%~20%、9%~18%、及び10%~16%を含むが、これらには限定されない。
【0068】
二次ポリオールを含むバインダ組成物のかかる実施形態では、架橋剤、モノマーポリオール、及び二次ポリオールは、カルボン酸基、無水物基、又はこれらの塩のモル当量数とヒドロキシル基のモル当量数の比は、約1/0.05~約1/5、例えば約1/0.08~約1/2.0、約1/0.1~約1/1.5、及び約1/0.3~約1/0.66である。この比の範囲内において、二次ポリオールとモノマーポリオールの比は、バインダ組成物の性能、例えば硬化後におけるバインダの引っ張り強さ及び水溶性に影響を及ぼす。例えば、二次ポリオールとモノマーポリオールの比が約0.1/0.9~約0.9/0.1、例えば約0.3/0.7~約0.7/0.3の間、又は約0.4/0.6~約0.6/0.4である場合、これにより、望ましい機械的性質と物理的色彩特性のバランスが得られる。種々の例示の実施形態において、二次ポリオールとモノマーポリオールの比は、約0.5/0.5である。
【0069】
本明細書において開示する水性バインダ組成物のうちの任意のものに関し、ポリカルボン酸の酸機能性の全て又は一部分は、保護剤の使用により一時的に遮断されるのが良く、保護剤は、酸機能性が鉱物ウール繊維と錯化するのを一時的に阻止し、この保護剤は、その後、硬化プロセス中、バインダ組成物を少なくとも150℃の温度に加熱し、酸機能性をなくしてポリオール成分と架橋し、そしてエステル化プロセスを完了させることによって除去される。例示の実施形態のうちの任意のものに関し、カルボン酸官能基の10%~100%を保護剤で一時的に遮断することができ、10%~100%とは、約25%~約99%、約30%~約90%、約40%~85%が挙げられ、しかもこれらの数値相互間の全ての部分範囲及び範囲の組み合わせが挙げられる。例示の実施形態のうちの任意のものに関し、酸官能基の最低40%を保護剤で一時的に遮断することができる。
【0070】
保護剤は、架橋剤のカルボン酸基に可逆的に結合することができる。例示の実施形態のうちの任意のものに関し、保護剤は、単一の酸官能基と少なくとも1つの可逆的イオン結合を形成することができる分子を含む任意の化合物を含む。本明細書において開示する例示の実施形態のうちの任意のものに関し、保護剤は、窒素を主成分とする保護剤、例えばアンモニアを主成分とする保護剤、アミンを主成分とする保護剤、又はこれらの混合物を含むのが良い。例示のアンモニアを主成分とする保護剤としては、水酸化アンモニウムが挙げられる。例示のアミンを主成分とする保護剤としては、アルキルアミン及びジアミン、例えばエチレンイミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、アルカノールアミン、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン‐N,N′‐ジコハク酸(EDDS)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など又はこれらの混合物が挙げられる。加うるに、アルカノールアミンは、保護剤と硬化バインダ中にエステルを形成するための架橋反応中の参加剤との両方として使用できる。かくして、アルカノールアミンは、保護剤とエステル化を介してポリカルボン酸と架橋するためのポリオールの二重の機能を有する。
【0071】
保護剤は、従来型pH調整剤とは異なる機能を示す。本明細書で定義される保護剤は、高分子ポリカルボン酸成分中の酸官能基を一時的にしかも可逆的に遮断するだけである。これとは対照的に、従来型pH調整剤、例えば水酸化ナトリウムは、酸官能基を永続的に終端させ、それにより、遮断された酸官能基に起因する酸とカルボキシル基との架橋が阻止される。かくして、伝統的なpH調節剤、例えば水酸化ナトリウムを含有することにより、酸官能基を一時的に遮断する所望の作用効果が得られず、他方、エステル化を介して架橋を可能にするため硬化中、これら官能基を後で遊離させる。したがって、本明細書において開示する例示の実施形態のうちの任意のものに関し、バインダ組成物は、従来型pH調節剤、例えば水酸化ナトリウム及び水酸化カルシウムを含まず又は実質的に含まないのが良い。高温用途向けのかかる従来型のpH調整剤は、カルボン酸基と永続的に結合し、そして架橋エステル化を可能にするようカルボン酸基機能性をなくすことを自由にすることはない。
【0072】
本明細書において開示するバインダ組成物のうちの任意のものは、バインダの粘度及び粘着性を減少させることによってバインダ組成物の加工性を向上させる1つ以上の加工助剤を含む添加剤ブレンドをさらに含むのが良く、その結果、引張強度及び疎水性の増大により一様な断熱製品が得られる。バインダ組成物の粘度及び/又は粘着性を減少させることができる添加剤には種々のものがあるが、従来型添加剤は、性状が親水性であり、したがって、かかる添加剤を含有することによりバインダ組成物の全体的吸水率が増大する。添加剤ブレンドは、1つ以上の加工助剤を含むのが良い。加工助剤の例としては、界面活性剤、グリセロール、1,2,4‐ブタントリオール、1,4‐ブタンジオール、1,2‐プロパンジオール、1,3‐プロパンジオール、ポリ(エチレングリコール)(例えば、Carbowax(商標))、モノオレエートポリエチレングリコール(MOPEG)、シリコーン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)の分散液、鉱物、パラフィン、又は植物油の乳濁液及び/又は分散液、ワックス、例えばアミドワックス(例えば、エチレンビス‐ステアアミド(EBS))及びカルバナワックス(例えば、ML‐155)、疎水化シリカ、リン酸アンモニウム、又はこれらの組み合わせが挙げられる。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤が挙げられ、かかる非イオン性界面活性剤としては、アルコール官能基を備えた非イオン性界面活性剤が挙げられる。例示の界面活性剤としては、Surfynol(登録商標)、アルキルポリグルコシド(例えば、Glucopon(登録商標))、及びアルコールエトキシレート(例えば、Lutensol(登録商標))が挙げられる。
【0073】
添加剤ブレンドは、単一の加工助剤、少なくとも2種類の加工助剤の混合物、少なくとも3種類の加工助剤の混合物、又は少なくとも4種類の加工助剤の混合物を含むのが良い。本明細書において開示する実施形態のうちの任意のものに関し、添加剤ブレンドは、グリセロールとポリジメチルシロキ酸の混合物を含むのが良い。
【0074】
添加剤ブレンドは、バインダ組成物中に、バインダ組成物中の全固形分の含有量に基づいて、1.0重量%~20重量%、1.25重量%~17.0重量%、1.5重量%~15.0重量%、約3.0重量%~12.0重量%、又は5.0重量%~10.0重量%の量で存在するのが良い。例示の実施形態のうちの任意のもののうち、バインダ組成物は、バインダ組成物中の全固形分に基づいて、少なくとも7.0重量%の添加剤ブレンドを含むのが良く、かかる量としては、少なくとも8.0重量%及び少なくとも9重量%が挙げられる。したがって、例示の実施形態のうちの任意のものに関し、水性バインダ組成物は、バインダ組成物中の全固形分に基づいて、7.0%重量%~15重量%の添加剤ブレンドを含むのが良く、かかる量としては、8.0重量%~13.5重量%、9.0重量%~12.5重量%が挙げられる。
【0075】
添加剤ブレンドがグリセロールを含む実施形態では、グリセロールは、バインダ組成物中の全固形分に基づいて、少なくとも5.0重量%、少なくとも6.0重量%、少なくとも7.0重量%、又は少なくとも7.5重量%の量で存在するのが良い。例示の実施形態のうちの任意のものに関し、バインダ組成物は、バインダ組成物中の全固形分に基づいて、5.0%重量%~15重量%のグリセロールを含むのが良く、かかる量としては、6.5重量%~13.0重量%、7.0重量%~12.0重量%、又は7.5重量%~11.0重量%が挙げられる。
【0076】
添加剤ブレンドがポリジメチルシロキサンを含む実施形態では、ポリジメチルシロキサンは、バインダ組成物中の全固形分に基づいて、少なくとも0.2重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.8重量%、又は少なくとも1.0重量%、少なくとも1.5重量%、又は少なくとも2.0重量%の量で存在するのが良い。例示の実施形態のうちの任意のものに関し、バインダ組成物は、バインダ組成物中の全固形分に基づいて、0.5%重量%~5.0重量%のポリジメチルシロキサンを含むのが良く、かかる量としては、1.0重量%~4.0重量%、1.2重量%~3.5重量%、1.5重量%~3.0重量%、及び1.6重量%~2.3重量%が挙げられる。
【0077】
本明細書において開示する実施形態のうちの任意のものに関し、添加剤ブレンドは、グリセロールとポリジメチルシロキサンの混合物を含むのが良く、バインダ組成物の全固形分に基づいて、グリセロールは、バインダ組成物の重量で5.0~15%を占め、ポリジメチルシロキサンは、バインダ組成物の重量で0.5~5.0%を占める。本明細書において開示する実施形態のうちの任意のものに関し、添加剤ブレンドは、グリセロールとポリジメチルシロキサンの混合物を含むのが良く、バインダ組成物の全固形分に基づいて、グリセロールは、バインダ組成物の重量で7.0~12%を占め、ポリジメチルシロキサンは、バインダ組成物の重量で1.2~3.5%を占める。
【0078】
本明細書において開示する実施形態のうちの任意のものに関し、添加剤ブレンドは、濃度を増大させたシラン結合剤を含むのが良い。従来型バインダ組成物は、一般に、バインダの組成物の全固形物の含有量に基づいて、0.5重量%未満のシラン及びより一般的には約0.2重量%以下のシランを含む。したがって、本明細書において開示する実施形態のうちの任意のものに関し、シラン結合剤は、バインダ組成物中に、バインダ組成物中の全固形分の重量で0.5%~5.0%の量で存在するのが良く、0.5重量%~5.0重量%は、約0.7重量%~2.5重量%、0.85重量%~2.0重量%、又は0.95重量%~1.5重量%を含む。本明細書において開示する実施形態のうちの任意のものに関し、シラン結合剤は、バインダ組成物中に、最高1.0重量%までの量で存在するのが良い。
【0079】
シラン濃度は、さらに、繊維断熱製品中の繊維に被着されたシランの量によって特徴づけられる場合がある。代表的には、ガラス繊維断熱製品は、ガラス繊維に被着された0.001重量%~0.03重量%のシラン結合剤を含む。しかしながら、繊維に被着された状態で含まれるシラン結合剤の量を増大させることによって、ガラス繊維に被着されるシランの量は、少なくとも0.10重量%まで増大する。
【0080】
変形例として、バインダ組成物は、もし存在すれば従来の量のシラン結合剤を含んでも良い。かかる実施形態では、シラン結合剤は、バインダ組成物中に、バインダ組成物中の全固形分の重量で0重量%~0.5重量%未満の量で存在するのが良く、0重量%~0.5重量%未満は、0.05重量%~0.4重量%、0.1重量%~0.35重量%、又は0.15重量%~0.3重量%を含む。
【0081】
バインダ組成物中に使用できるシラン結合剤の非限定的な例は、官能基、例えばアルキル基、アリル基、アミノ基、エポキシ基、ビニル基、メタアクリルロキシ基、ウレイド基、イソシアナト基、及びメルカプロ基によって特徴づけられる場合がある。例示の実施形態では、シラン結合剤としては、1つ以上の官能基、例えばアミン基(第一級、第二級、第三級、及び第四級)、アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ウレイド基、又はイソシアナト基を有する1つ以上の窒素元素を含むシランを含む。適当なシラン結合剤の特定の非限定的な例としては、アミノシラン(例えば、トリエトキシアミノプロピルシラン、3‐アミノプロピル‐トリエトキシシラン及び3‐アミノプロピル‐トリヒドロキシシラン)、エポキシトリアルコキシシラン(例えば、3‐グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン及び3‐グリシドオキシプロピルトリエトキシシラン)、メチルアクリルトリアルコキシシラン(例えば、3‐メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン及び3‐メトアクリロオキシプロピルトリエトキシシラン)、ヒドロカーボントリアルコキシシラン、アミノトリヒドロキシシラン、エポキシトリヒドロキシシラン、メタクリルトリヒドロキシシラン、及び/又はハイドロカーボントリヒドロキシシランが挙げられるが、これらには限定されない。1つ以上の例示の実施形態では、シランは、アミノシラン、例えばγ‐アミノプロピルトリエトキシシランである。
【0082】
本明細書において開示する水性バインダ組成物のうちの任意のものは、硬化促進剤とも呼ばれているエステル化触媒をさらに含むのが良い。触媒としては、無機塩、ルイス酸(すなわち、塩化アルミニウム又は三フッ化ホウ素)、ブレンステッド酸(すなわち、硫酸、p‐トルエンスルホン酸及びホウ酸)有機金属錯体(すなわち、カルボン酸リチウム、カルボン酸ナトリウム)及び/又はルイス塩基(すなわち、ポリエチレンイミン、ジエチルアミン、又はトリエチルアミン)が含まれ得る。さらに、触媒には、リン含有有機酸のアルカリ金属塩、特にリン酸、次亜リン酸、又はポリリン酸のアルカリ金属塩が含まれ得る。そのようなリン触媒の例としては、これらに限定されないが、次亜リン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ピロリン酸二ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、トリポリリン酸カリウム、トリメタリン酸ナトリウム、テトラメタリン酸ナトリウム、及びそれらの混合物が挙げられる。さらに、触媒又は硬化促進剤は、フルオロボレート化合物、例えばフルオロホウ酸、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸カリウム、テトラフルオロホウ酸カルシウム、テトラフルオロホウ酸マグネシウム、テトラフルオロホウ酸亜鉛、テトラフルオロホウ酸アンモニウム及びそれらの混合物であってもよい。さらに、触媒は、リン化合物とフルオロボレート化合物の混合物であってもよい。他のナトリウム塩、例えば硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウムもまた、又は代替的に、触媒として使用することができる。
【0083】
触媒は、水性バインダ組成物中にバインダ組成物の全固形分の重量で約0%~約10%の量で存在するのが良く、かかる量としては、約1重量%~約5重量%、約2重量%~約4.5重量%、約2.8重量%~約4.0重量%、又は約3.0重量%~約3.8重量%が挙げられるが、これらには限定されない。
【0084】
オプションとして、水性バインダ組成物は、少なくとも1つの結合剤を含むのが良い。少なくとも1つの例示の実施形態では、結合剤は、シラン結合剤である。結合剤は、バインダ組成物中にバインダ組成物の全固形分の重量で約0.01%~約5%、約0.01重量%~約2.5重量%、約0.05重量%~約1.5重量%、又は約0.1重量%~約1.0の量で存在するのが良い。
【0085】
バインダ組成物中に使用できるシラン結合剤の非限定的な例は、官能基、例えばアルキル基、アリル基、アミノ基、エポキシ基、ビニル基、メタアクリルロキシ基、ウレイド基、イソシアナト基、及びメルカプロ基によって特徴づけられる場合がある。例示の実施形態では、シラン結合剤としては、1つ以上の官能基、例えばアミン基(第一級、第二級、第三級、及び第四級)、アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ウレイド基、又はイソシアナト基を有する1つ以上の窒素元素を含むシランを含む。適当なシラン結合剤の特定の非限定的な例としては、アミノシラン(例えば、トリエトキシアミノプロピルシラン、3‐アミノプロピル‐トリエトキシシラン及び3‐アミノプロピル‐トリヒドロキシシラン)、エポキシトリアルコキシシラン(例えば、3‐グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン及び3‐グリシドオキシプロピルトリエトキシシラン)、メチルアクリルトリアルコキシシラン(例えば、3‐メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン及び3‐メトアクリロオキシプロピルトリエトキシシラン)、ヒドロカーボントリアルコキシシラン、アミノトリヒドロキシシラン、エポキシトリヒドロキシシラン、メタクリルトリヒドロキシシラン、及び/又はハイドロカーボントリヒドロキシシランが挙げられるが、これらには限定されない。1つ以上の例示の実施形態では、シランは、アミノシラン、例えばγ‐アミノプロピルトリエトキシシランである。
【0086】
水性バインダ組成物は、加工助剤をさらに含むのが良い。加工助剤は、加工助剤が繊維成形及び配向の処理を容易にするよう機能する限り、本発明を特に限定するわけではない。加工助剤を用いると、バインダ塗布分布一様性を向上させ、バインダ粘度を減少させ、成形後のランプ高さを増大させ、垂直重量分布一様性を向上させるとともに/あるいは成形及びオーブン硬化プロセスの両方においてバインダの脱水を促進することができる。加工助剤は、バインダ組成物中に、バインダ組成物中の全固形分に基づいて、0~約10.重量%、約0.1重量%~約5.0重量%、約0.3重量%~約2.0重量%、また約0.5重量%~1.0重量%の量で存在するのが良い。幾つかの例示の実施形態では、水性バインダ組成物には、いかなる加工助剤も実質的に又は完全にない。
【0087】
加工助剤の例としては、脱泡剤、例えば鉱物、パラフィン、又は植物油の乳濁液及び/又は分散液、ポリジメチルシロキサン(PDMS)流体及びポリジメチルシロキサン又は他の物質で疎水化されたシリカの分散液が挙げられる。別の加工助剤は、アミドワックス、例えばエチレンビス‐ステアラミド(EBS)又は疎水化シリカで作られた粒子を含むのが良い。バインダ組成物中に利用できる別の加工助剤は、界面活性剤である。バインダ原子化、湿潤及び界面接着を助けるために1種類以上の界面活性剤がバインダ組成物中に含まれるのが良い。
【0088】
界面活性剤は、特に限定されず、種々の界面活性剤を含み、これら界面活性剤としては、例えば、イオン性界面活性剤(例えば、スルフェート、スルホネート、ホスフェート及びカルボキシレート)、スルフェート(例えば、アルキルスルフェート、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)、アルキルエーテルスルフェート、ラウレス硫酸ナトリウム及びミレス硫酸ナトリウム)、両性界面活性剤(例えば、アルキルベタイン、例えばラウリル‐ベタイン)、スルホネート(例えば、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ペルフルオロオクタンスルホネート、ペルフルオロブタンスルホネート及びアルキルベンゼンスルホネート)、ホスフェート(例えば、アルキルアリールエーテルホスフェート及びアルキルエーテルホスフェート)、カルボキシレート(例えば、アルキルカルボキシレート、脂肪酸塩(石けん)、ステアリン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、カルボキシレートフッ素系界面活性剤、ペルフルオロナノエート及びペルフルオロオクタノエート)、カチオン(例えば、アルキルアミン塩、例えばラウリルアミン酢酸塩)、pH依存性界面活性剤(第一級、第二級又は第三級アミン)、永続的に荷電した第四級アンモニウムカチオン(例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリド及びベンゼトニウムクロリド)並びに双性イオン性界面活性剤、第四級アンモニウム塩(例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド及びアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド)並びにポリオキシエチレンアルキルアミンが上げられるが、これらには限定されない。
【0089】
バインダ組成物とともに使用することができる好適な非イオン性界面活性剤としては、ポリエーテル(例えば、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの縮合物、これには直鎖及び分岐鎖アルキル及びアルカリールポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールエーテル及びチオエーテルが含まれる)、約7~約18個の炭素原子を含むアルキル基を有し、約4~約240個のエチレンオキシ単位を有するアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール(例えば、ヘプチルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール及びノニルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール)、ソルビタン、ソルビド、マンニタン及びマンニドを含むヘキシトールのポリオキシアルキレン誘導体、部分長鎖脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノラウエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート及びソルビタントリオレエートのポリオキシアルキレン誘導体)、エチレンオキシドと疎水性塩基の縮合物であって、塩基がプロピレンオキシドとプロピレングリコールを縮合することによって形成される縮合物、硫黄含有縮合物(例えば、エチレンオキシドと高級アルキルメルカプタン、例えばノニル、ドデシル、もしくはテトラデシルメルカプタンを、又はアルキルチオフェノールを縮合することによって調製される縮合物、ここでアルキル基は約6~約15個の炭素原子を含む)、長鎖カルボン酸(例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びオレイン酸、例えばトール油脂肪酸)のエチレンオキシド誘導体、長鎖アルコール(例えば、オクチル、デシル、ラウリル又はセチルアルコール)のエチレンオキシド誘導体、並びにエチレンオキシド/プロピレンオキシドのコポリマーが挙げられる。
【0090】
少なくとも1つの例示の実施形態では、界面活性剤は、2,5,8,11‐テトラメチル‐6‐ドデシン‐5,8‐ジオールであるDynol 607、エトキシ化2,4,7,9‐テトラメチル‐5‐デシン‐4,7‐ジオール界面活性剤であるSURFONYL(登録商標)420 、SURFONYL(登録商標)440 及びSURFONYL(登録商標)465 (エボニック・コーポレイション(Evonik Corporation(ペンシルベニア州アレンタウン所在)から市販されている)、Stanfax(ラウリル硫酸ナトリウム)、Surfynol 465(エトキシ化2,4,7,9‐テトラメチル5デシン‐4,7‐ジオール)、Triton(商標)GR-PG70(1,4‐ビス(2‐エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム)、及びTriton(商標)CF-10 (ポリ(オキシ‐1,2‐エタンジイル)、アルファ‐(フェニルメチル)‐オメガ‐(1,1,3,3‐テトラメチルブチル)フェノキシ)のうちの1つ以上を含む。
【0091】
オプションとして、水性バインダ組成物は、絶縁材料のその後の製作及び取付けに悪影響を及ぼす可能性がある無機及び/又は有機粒子の存在を低減し又はなくすための粉塵抑制剤を含むのが良い。粉塵抑制剤は、任意の従来の鉱物油、鉱物油エマルション、天然又は合成油、バイオベース油、又は潤滑油、例えば、シリコーン及びシリコーンエマルション、ポリエチレングリコール(これらに限定されない)、並びにオーブン内の油の蒸発を最小限に抑えるように引火点が高い任意の石油系又は非石油系油であって良い。
【0092】
水性バインダ組成物は、最高約15質量%の粉塵抑制剤を含むのが良く、かかる量としては、最高約14重量%、又は最高約13重量%が挙げられる。本明細書に開示する実施形態のうちの任意のものに関し、水性バインダ組成物は、1.0重量%~15重量%の粉塵抑制剤を含むのが良く、かかる量としては、例えば約3.0重量%~約13.0重量%、又は約5.0重量%~約12.8重量%が挙げられる。
【0093】
水性バインダ組成物は、オプションとして、pHを所望のレベルに調整するのに十分な量で、pH調整剤として有機及び/又は無機酸並びに塩基を含んでも良い。pHは、バインダ組成物の材料の適合性を促進するためにあるいは種々のタイプの繊維と一緒になって機能するために、意図した用途に応じて調整可能である。幾つかの例示の実施形態では、pH調整剤は、バインダ組成物のpHを酸性pHに合わせるよう調整される。適当な酸性pH調整剤の例としては、無機酸、例えば硫酸、リン酸及びホウ酸(これらには限定されない)、さらに有機酸、例えばp‐トルエンスルホン酸、モノ又はポリカルボン酸、例えばクエン酸、酢酸及びこれらの無水物、アジピン酸、シュウ酸、及びこれらの対応する塩(これらには限定されない)が挙げられる。また、酸前駆体であっても良い無機塩が用いられる。酸は、pHを調整し、幾つかの場合、上述したように、架橋剤として働く。有機及び/又は無機塩基が、バインダ組成物のpHを上昇させるために含まれる場合がある。塩基は、揮発性塩基であっても不揮発性塩基であっても良い。例示の揮発性塩基としては、例えば、アンモニア及びアルキル置換アミン、例えばメチルアミン、エチルアミン又は1‐アミノプロパン、ジメチルアミン及びエチルメチルアミンが挙げられる。例示の不揮発性塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、及びt‐ブチルアンモニウムヒドロキシドが挙げられる。
【0094】
例示の実施形態のうちの任意のものに関し、未硬化状態では、バインダ組成物は、pHが酸性であるのがよく、例えば、pHが約2.0から約5.0までの範囲(これら数値間の全ての値及び範囲を含む)にある。本明細書において開示する実施形態のうちの任意のものに関し、バインダ組成物のpHは、未硬化状態で約2.2~4.0であり、かかる範囲としては、約2.5~3.8、及び約2.6~3.5が挙げられる。硬化後、バインダ組成物のpHは、少なくとも5.0のpHに上昇する場合があり、かかるレベルとしては、約6.5~8.8、又は約6.8~8.2が挙げられる。
【0095】
変形例として、バインダ組成物は、未硬化状態では、よりアルカリ性のpH、例えば、約5~約10のpH、約6~約9のpH、又は約7~約8のpHに調節されるのがよい。
【0096】
バインダは、活性固形物を溶解又は分散させて補強繊維へ塗布するために水をさらに含む。水は、水性バインダ組成物を、補強繊維に塗布するために、さらに繊維での所望の固形分を達するのに適する粘度に希釈するのに十分な量で添加されるのが良い。本発明のバインダ組成物は、伝統的なフェノール系‐尿素ホルムアルデヒド又は炭水化物系バインダ組成物よりも低い固形分を含むのが良いことが見いだされた。特に、バインダ組成物は、5重量%~35重量%のバインダ固形分を含むのが良く、かかる量としては、バインダ固形分の重量で10重量%~30重量%、12重量%~20重量%、及び15重量%~19重量%が挙げられる。固形分のこのレベルから、本発明のバインダ組成物が従来のバインダ組成物よりも多く水を含むことができるということが分かる。
【0097】
以下の表1は、上述の物質を含む例示のバインダ組成物を記載している。表1に列挙された例示の組成物は、上述したオプションとしての添加剤又は物質を含むことができる。
【0098】
例示の繊維断熱製品100が図1に示されている。繊維断熱製品100は、種々の仕方で構成できる。図1の例示の実施形態では、繊維断熱製品100は、全体としてボックス状のガラス繊維断熱バットであるが、断熱製品は、任意適当な形状又はサイズのものであって良く、例えば、圧延品又はブランケットであっても良い。断熱バット又はブランケットとして、繊維断熱製品100は、建物の断熱空洞内に配置されるのが良い。例えば、繊維断熱製品100は、建物の壁、屋根、又は床フレーム内の2つの互いに平行で間隔を置いて配置された骨組部材相互間の空間又は空洞内に配置されるのが良い。
【0099】
繊維断熱製品100は、不織ガラス繊維及びガラス繊維を互いにくっつけるためのバインダ組成物を有する断熱層102を有する。オプションとして、繊維断熱製品100は、断熱層102に取り付けられ又は違ったやり方でくっつけられた面材又は化粧材(表面仕上材)104をさらに有するのが良い。繊維断熱製品100は、第1の側面106、第1の側面106と反対側でこれから間隔を置いて配置された第2の側面108、第1の側面106と第2の側面108との間に延びる第3の側面110、及び第3の側面110と反対側にこれから間隔を置いて位置するともに第1の側面106と第2の側面108との間に延びる第4の側面112を有する。繊維断熱製品100は、側面106,108,110,112を互いに連結する第1のフェース114及び第1のフェース114と反対側にこれと平行に又は全体として平行に位置しかつ側面106,108,110,112を互いに連結する第2のフェース116をさらに有する。繊維断熱製品100は、非圧縮状態においては、長さL1、幅W1、及び厚さT1を有する。幾つかの実施形態では、長さL1は、幅W1よりも大きく、幅W1は、厚さT1よりも大きい。
【0100】
面材104は、繊維断熱製品100の第1のフェース114、第2のフェース116、又は両方のフェースの全体又は一部分を覆うよう断熱層102上に配置されるのが良い。面材104は、多種多様な形態を取ることができる。面材104は、単一の材料片又は多数の互いに異なる材料片もしくは材料シートであるのがよく、かかる面材は、単一の材料層又は数個の材料層を含むのがよい。図1の例示の実施形態では、面材104は、繊維断熱製品100の第1のフェース114の全てを覆う単一の材料片である。
【0101】
面材104は、多種多様な材料から構成できる。繊維断熱製品に用いられるのに適した材料であればどれでも使用することができる。例えば、面材104は、不織ガラス繊維及びポリマー媒体、高分子媒体から成っていても良く、織りガラス繊維及び高分子媒体から成っていても良く、外装材料、例えば高分子材料で作られた外装フィルムから成っていても良く、スクリムから成っていても良く、布から成っていても良く、織物から成っていても良く、ガラス繊維強化クラフト紙(FRK)から成っていても良く、ホイル‐スクリム‐クラフト紙ラミネートから成っていても良く、再生紙から成っていても良く、カレンダードペーパから成っていても良い。
【0102】
建物の断熱空洞内に配置される相当な量の断熱材は、断熱製品、例えば本明細書において説明する断熱製品から圧延された断熱ブランケットの形態をしている。表面仕上げされた断熱製品は、面材104が断熱空洞の縁上に、代表的には断熱空洞の内側上に平らに配置された状態で取り付けられる。一般に、面材が防湿層である断熱製品が暖かい内部空間を低温の外部空間から分離する壁空洞、床空洞、又は天井空洞を断熱するために一般的に用いられている。防湿層は、断熱製品を通る水蒸気の動きを遅らせ又は阻止するために断熱製品の一方の側上に配置される。
【0103】
図2は、繊維断熱製品100を製造するための装置118の例示の実施形態を示している。繊維断熱製品100の製造は、図2に示されているように、溶融ガラスを繊維化し、溶融ガラス繊維をバインダで被覆し、繊維ガラスパックを多孔質移動コンベヤ(「成形チェーン」とも呼ばれている)上に形成し、そしてバインダを硬化させて断熱ブランケットを形成することによって、連続法で実施されるのが良い。ガラスをタンク(図示せず)内で溶融させて繊維成形装置、例えば1つ以上の繊維化スピナ119に供給するのが良い。スピナ119は、例示の実施形態では繊維成形装置として示されているが、理解されるように、他形式の繊維成形ユニットを用いて繊維断熱製品100を形成しても良い。スピナ119を高速で回転させる。遠心力により溶融ガラスが繊維化スピナ119の周方向側壁に設けられている小さなオリフィスを通過してガラス繊維を形成する。ランダムな長さのガラス繊維130を繊維化スピナ119から減衰させ、そして成形チャンバ125内に位置決めされているブロワ120によって全体として下方に(すなわち、全体としてスピナ119の平面に垂直に)吹き飛ばすのが良い。
【0104】
ブロワ120は、ガラス繊維130の向きを下方に変える。ガラス繊維130を成形チャンバ125内で下方に通過状態にあるとともに引き抜き作業に起因して依然として高温状態のままで、環状スプレーリング135によって水性バインダ組成物とともに吹き飛ばし、その結果、ガラス繊維130全体を通じてバインダ組成物の比較的均一な分布状態が得られるようにする。また、バインダ組成物の塗布に先立って、例えば吹き付けによって成形チャンバ125内のガラス繊維130に水を塗布してガラス繊維130を少なくとも部分的に冷却するのが良い。
【0105】
未硬化の水性バインダ組成物がくっつけられた状態のガラス繊維130を集めて成形チャンバ125内に設けられている無端成形コンベヤ145上に繊維パック140の状態に成形するのが良く、この場合、その助けとして、成形コンベヤ145の下から繊維パック140を通って真空(図示せず)を引く。成形作業中、ガラス繊維130及び繊維パック140を通る空気の流れからの残留熱は、一般に、水の大部分をバインダから揮発させるのに十分であり、その後、ガラス繊維130が成形チャンバ125を出、それによりガラス繊維130上のバインダ組成物の残りの成分が粘性又は半粘性ハイソリッド液体として残る。
【0106】
次に、成形チャンバ125内の繊維パック140を通る空気の流れに起因して圧縮状態にある樹脂被覆繊維パック140を成形チャンバ125から出口ローラ150の下を通って移送ゾーン155に移送し、ここで、繊維パック140は、ガラス繊維130のレジリエンスに起因して垂直に膨れる。次に、例えば繊維パック140を硬化オーブン160中に運ぶことによって膨れている繊維パック140を加熱し、この硬化オーブン内において、加熱された空気を繊維パック140中に吹き込んでバインダ組成物中に残存する水があればこれを蒸発させてバインダ組成物を硬化させ、そしてガラス繊維130をひとまとめにしっかりと結合する。硬化オーブン160は、小穴のある上側オーブンコンベヤ165及び小穴のある下側オーブンコンベヤ170を有し、これらコンベヤ165,170相互間に繊維パック140を引き込む。加熱された空気をファン175によって下側オーブンコンベヤ170、繊維パック140、及び上側オーブンコンベヤ165中に押し込む。加熱空気は、排気装置180を通って硬化オーブン160を出る。
【0107】
また、硬化オーブン160内において、繊維パック140を上側及び下側の小穴のあるオーブンコンベヤ165,170によって圧縮して繊維断熱繊維100の断熱層102を形成するのが良い。上側及び下側オーブンコンベヤ165,170を用いると繊維パック140を圧縮して断熱層102にその所定の厚さT1を与えることができる。理解されるべきこととして、図2はコンベヤ165,170を実質的に平行な向きの状態で示しているが、これらコンベヤは、別法として、互いに対して角度をなして(図示せず)位置決めしても良い。
【0108】
硬化済みのバインダ組成物は、強度及びレジリエンスを断熱層102に与える。理解されるべきこととして、バインダ組成物の乾燥及び硬化は、一ステップか2つの別々のステップかのいずれかで実施することができる。2段(2ステップ)プロセスは、一般的に、Bステージングと呼ばれている。硬化オーブン160を100℃~325℃又は250℃~300℃の温度で作動させるのが良い。繊維パック140は、バインダ組成物を架橋し(硬化させ)て断熱層102を形成するのに十分な期間にわたって硬化オーブン160内に位置したままであるのが良い。
【0109】
断熱層102がいったん硬化オーブン160を出ると、面材193を断熱層102上に配置して面材層104を形成するのが良い。面材193を結合剤(図示せず)又は他の何らかの手段(例えば、ステッチング、機械的絡み合い)によって断熱層102の第1のフェース114、第2のフェース116、又は両方のフェースにくっつけて繊維断熱製品100を形成するのが良い。適当な結合剤としては、面材193にコーティングでき又は違ったやり方で被着できる接着剤、ポリマー樹脂、アスファルト及び瀝青質材料が挙げられる。その後、繊維断熱製品100を保存及び/又は出荷のために巻くのが良く又は切断装置(図示せず)によって所定長さに切断するのが良い。理解されるべきこととして、幾つかの例示の実施形態では、硬化オーブン160から出てくる断熱層102を巻き取りロールに巻き付け、あるいは、所望の長さの区分に切断して面材193で表面仕上げしないようにする。
【0110】
驚くべきこととして、3.81ミクロン又は15HT未満の直径を備えた極細ガラス繊維を利用して予想よりも小さい製品重量及び厚さで利用して望ましい熱的特性及び材料効率を備えた繊維断熱製品を製造することができるということが判明した。平均直径が15HT未満の繊維で形成された断熱製品を以下、「極細繊維」断熱製品又は「本発明の」繊維断熱製品として互換的に記載する場合がある。
【0111】
理論によって束縛されることを望むものではないが、極細で直径が15HT未満の繊維と、低粘度ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物と、ある特定の加工パラメータの独特の組み合わせにより、成形チェーンに全体として平行な平面に沿って(本明細書ではL1方向又は機械方向という)ある特定の角度範囲内においてより多くの繊維(又は繊維セグメント)の配向が容易になる。したがって、これらの組み合わせから作られた本発明の繊維断熱製品は、15HTを超える平均繊維直径を有する繊維で形成されたその他の点においては同等な断熱製品で見受けられるL1方向に沿ってより整列した繊維配向状態を有する。かくして、本発明の繊維断熱製品が壁空洞、天井、床、又は類似の建物構造中に取り付けられると、配向状態の繊維は、熱の流れ方向により垂直な平面内において整列し、それにより、熱を材料の厚さを通って伝導させる製品の能力が低下する。
【0112】
図3は、全体としてL1方向の平面に平行な平面に沿う繊維(又は繊維部分)の上述の配向を示すSEM像の図である。SEM像は、R値が22であり、14.5HTの平均繊維直径を備えたガラス繊維、及びモノマーポリオール及びポリカルボン酸架橋剤を含むホルムアルデヒドフリーバインダ組成物から成る極細繊維断熱製品200から得られたものである。図3のSEM像は、2.5mm×1.5mmの製品サンプルを示しており、局所化された繊維ベクトル(特定の平面内の繊維部分)を有する。
【0113】
図4及び図5は、繊維断熱材製品サンプルをさらに示すSEM像であり、図4の製品サンプルは、14.5HTの平均繊維直径及び22のR値を備えたガラス繊維からなり(以下、サンプルAという)、図5の製品サンプルは、16.7HTの平均繊維直径及び21のR値を備えたガラス繊維からなる(以下、サンプルBという)。サンプルA及びサンプルBのSEM像は、サーモ・サイエンティフィック・プリズマ(Thermo Scientific Prisma)SEMを用いて得られたものであり、これらの像は、サーモ・サイエンティフィック(Thermo Scientific)MAPSソフトウェアを用いてステッチングされたものである。サンプルは、機械方向断面で切断され、カーボングルー及びカーボンペーストを用いてSEMスタブに取り付けられ、そしてAuでスパッタリング被覆されたものである。イメージJ(Image J )ソフトウェアからのオリエンテーションJ(Orientation J)プラグインを用いて繊維配向の測定及び定量化した。ガウス窓のシグマを、1ピクセルに設定し、そしてガウス勾配を構造テンソルについて選択した。
【0114】
機械方向におけるサンプルA及びサンプルBの各々に関する表面積(5.24mm×3.14mm)を画像化して配向分布についてこれを分析した。配向分布を分析するため、局所化ガラス繊維(又は繊維ベクトル又はこれらの部分)を測定した。配向頻度(標準化)と配向(度)をプロットして各サンプルについて提供した。図6図8は、サンプルA中の繊維(又は繊維ベクトルもしくはこれらの部分)の重量%を製品長さL1に水平な共通平面(0゜)から±50°、±30°、及び±15°以内に示している。
【0115】
驚くべきこととして、ガラス繊維(又は繊維ベクトルもしくはこれらの部分)の増大した割合を同一のR値を有するが、平均直径が15HTを超えるガラス繊維を含む断熱製品と比較して、共通平面に沿って配向させた。特に、例示の実施形態のうちの任意のものに関し、極細繊維断熱製品中の少なくとも30重量%の繊維(又は繊維ベクトルもしくはこれらの部分)を共通平面から±15°以内に配向させることができる。図6は、平均繊維直径が14.5HTのガラス繊維で形成された本発明の繊維断熱製品の共通平面から±15°以内における例示の繊維配向分布の概要を示すグラフ図である。かかる実施形態では、極細繊維断熱製品は、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、及び少なくとも44重量%の繊維(又は繊維ベクトルもしくはこれらの部分)が共通平面から±15°以内に配向しているこのような繊維を含むのがよく又はこれら繊維から成るのがよい。例示の実施形態のうちの任意のものに関し、共通平面は、断熱製品の長さ及び幅に平行な平面であるのがよい。
【0116】
さらに、例示の実施形態のうちの任意のものに関し、繊維断熱製品中の少なくとも50重量%又は少なくとも55重量%のガラス繊維(又は繊維ベクトルもしくはこれらの部分)を共通平面から±30°以内に配向させるのがよいことが判明した。図7は、平均繊維直径が14.5HTのガラス繊維で形成された本発明の繊維断熱製品の共通平面から±30°以内における例示の繊維配向分布の概要を示すグラフ図である。かかる実施形態では、繊維断熱製品は、少なくとも57重量%、少なくとも60重量%、少なくとも65重量%、及び少なくとも69重量%の繊維(又は繊維ベクトルもしくはこれらの部分)が共通平面から±30°以内に配向しているこのような繊維を含むのがよく又はこれら繊維から成るのがよい。例示の実施形態のうちの任意のものに関し、共通平面は、断熱製品の長さ及び幅に平行な平面であるのがよい。
【0117】
さらに別の例示の実施形態では、極細繊維断熱製品中の少なくとも75重量%の繊維((又は繊維ベクトルもしくはその部分)を共通平面から±50°以内に配向させる。図8は、平均繊維直径が14.5HTのガラス繊維で形成された本発明の繊維断熱製品の共通平面から±50°以内における例示の繊維配向分布の概要を示すグラフ図である。かかる実施形態では、繊維断熱製品は、少なくとも78重量%、少なくとも80重量%、少なくとも82重量%、及び少なくとも85重量%の繊維(又は繊維ベクトルもしくはこれらの部分)が共通平面から±50°の範囲内に配向しているこのような繊維を含むのがよく又はこれら繊維から成るのがよい。例示の実施形態のうちの任意のものに関し、共通平面は、断熱製品の長さ及び幅に平行な平面であるのがよい。
【0118】
図9(a)は、本発明に従って形成された例示の極細繊維断熱製品(本明細書では以下、サンプルCという)の拡大サンプルサイズ領域(24mm×16mm)の繊維配向状態を示すSEM像の図である。サンプルCは、22のR値を有し、このサンプルは、約14HTの平均繊維直径を有するガラス繊維と、約25~30重量%のソルビトール及び約65~70重量%のポリアクリル酸架橋剤を含み、粘度が60%~65%固形分で約2,000~3,000cpsのホルムアルデヒドフリーバインダ組成物とを含む。サンプルCの水性バインダ組成物は、74.5%の固形分含有量で12,000cps未満の粘度及び、70%以下の固形分で6,000cps未満の粘度を有する。
【0119】
図9(a)中のSEM像中のバインダ組成物を用いて局所化繊維ベクトル配向(特定の断面で見た繊維部分)を測定した。
【0120】
図10(a)は、これと比較してであるが、これまた本発明の技術的思想の範囲内において、22のR値を有する極細繊維断熱製品の繊維配向を示すSEM像の図であり、この極細繊維断熱繊維は、約14HTの平均繊維直径を有するガラス繊維と、約35~45重量%のソルビトール及び約35~45重量%のポリアクリル酸架橋剤を含み、粘度が60%~65%固形分で2,000cps未満のホルムアルデヒドフリーバインダ組成物とを含む(かかる極細繊維断熱繊維を以下、サンプルDという)。サンプルDの水性バインダ組成物は、74.5%の固形分含有量で12,000cps未満の粘度及び、70%以下の固形分で6,000cps未満の粘度を有する。
【0121】
サンプルC及びサンプルDのSEM像をサーモ・サイエンティフィック・プリズマ(Thermo Scientific Prisma)SEMを用いて得られたものであり、これらの像は、サーモ・サイエンティフィック(Thermo Scientific)MAPSソフトウェアを用いてステッチングされたものである。サンプルは、機械方向断面で切断され、カーボングルー及びカーボンペーストを用いてSEMスタブに取り付けられ、そしてAuでスパッタリング被覆されたものである。イメージJ(Image J )ソフトウェアからのオリエンテーションJ(Orientation J )プラグインを用いて繊維配向の測定及び定量化した。ガウス窓のシグマを、1ピクセルに設定し、そしてガウス勾配を構造テンソルについて選択した。
【0122】
機械方向におけるサンプルC及びサンプルDの各々に関する表面積(24mm×16mm)を画像化して配向分布についてこれを分析した。サンプルA及びサンプルBの場合と同様、配向分布を分析するため、サンプルC及びサンプルDからの局所化ガラス繊維(又は繊維ベクトル又はこれらの部分)を測定して分析した。配向頻度(標準化)と配向(度)をプロットして各サンプルについて提供した。図9(b)及び図10(b)は、それぞれサンプルC及びサンプルD中の繊維(又は繊維ベクトルもしくはこれらの部分)の重量%を製品長さL1に水平な共通平面(0゜)から±50°、±30°、及び±15°以内に示している。
【0123】
驚くべきこととして、サンプルDを形成するために用いられるバインダ粘度を減少させると、共通平面に沿って配向したガラス繊維(又は繊維ベクトルもしくはこれらの部分)の割合が増大するということが判明した。特に、図9(b)に示すとともに以下の表2において示すように、サンプルC中の32.94重量%の繊維(又は繊維ベクトルもしくはこれらの部分)を共通平面から±15°の範囲内で配向し、57.07重量%を共通平面から±30°の範囲内で配向し、78.87重量%を共通平面から±50°の範囲内で配向した。さらに図10(b)に示すとともに以下の表2に示すように、サンプルD中の45.14重量%の繊維(又は繊維ベクトルもしくはこれらの部分)を共通平面から±15°の範囲内で配向し、66.23重量%を共通平面から±30°の範囲内で配向し、84.03重量%を共通平面から±50°の範囲内に配向した。上述したように、共通平面は、断熱製品の長さ及び幅に平行な平面であるのがよい。

【0124】
加うるに、繊維断熱製品中の繊維(又は繊維ベクトルもしくはこれらの部分)の少なくとも一部分が成形チェーン又は「L1方向」に全体として平行な平面に沿って配向しているが、繊維断熱製品は、L1方向に全体として垂直な平面に沿って配向した繊維(又は繊維ベクトルもしくはこれらの部分)の一部分をさらに含むのがよい。かかる「二重配向」繊維断熱材製品は、優れた熱的性能を実証する一方で、回復の向上及び/又は耐圧縮力性の向上を示している。二重配向繊維断熱製品は、L1方向に全体として垂直な平面に沿って配向した少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも18重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも28重量%、及び少なくとも30重量%の繊維(又は繊維ベクトルもしくはこれらの部分)を有するのがよい。
【0125】
幾つかの例示の実施形態では、繊維断熱製品は、増量した互いに平行な繊維の束202を有し、この繊維束は、実質的に平行な方向に配向するとともに繊維の長さに沿って1つ以上の箇所で互いに束ねられた少なくとも2本の繊維を含む。図11(a)~図11(c)の拡大SEM像は、繊維断熱製品中に存在する互いに平行な繊維束を示している。図12(a)~図12(c)は、図3に示す繊維断熱製品の拡大SEM像をさらに提供し、さらに、広くいきわたった平行繊維束を示している。平行繊維束202は、単一繊維204との又は他の平行繊維束202との接合部を形成することができる。
【0126】
例示の実施形態のうちの任意のものに関し、繊維断熱製品200中の少なくとも15重量%の繊維は、平行繊維束中に少なくとも部分的に含まれるのがよい。他の例示の実施形態では、繊維断熱製品中の少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも28重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、及び少なくとも50重量%の繊維が、平行繊維束中に少なくとも部分的に含まれる。
【0127】
さらに、本明細書において開示した例示の実施形態のうちの任意のものに関し、繊維断熱製品は、少なくとも2本の繊維相互間に延びるバインダガセットの減少した存在量を有するのがよい。本明細書において定義する、バインダ「ガセット」は、山型ブラケットと同様に通常三角形又は菱形の形で少なくとも2本の繊維相互間に延びる硬化済バインダ組成物の一部分を意味している。バインダガセットは、顕微鏡(例えば、光学顕微鏡法又は走査型電子顕微鏡)によって測定される。光学顕微鏡の場合、ガラス繊維を「隠す」ための屈折率溶液の使用によりバインダ‐繊維接合部及びガセットの識別が容易になる。例示のバインダガセットを示すSEM像が図13(a)及び図13(b)に提供されている。
【0128】
バインダガセットは、非平行繊維相互間に生じ、このことは、繊維が別々の平面内に配向していることを意味している。理論によって縛られるものではないが、バインダガセットを最小限にするとともに繊維の長さに沿うバインダ組成物の存在量を増大させることは、一様な配向の向上と平行繊維束の存在量の増大の両方において有益であると考えられる。
【0129】
繊維配向における一様性の増大に起因して、幾つかの例示の実施形態では、繊維断熱製品中に存在する40重量%以下のバインダ組成物がバインダガセット内に入っている。例示の実施形態のうちの任意のものに関し、35重量%以下のバインダ組成物がバインダガセット内に入っており、かかる量としては、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、及び5重量%以下が挙げられる。
【0130】
さらに、繊維配向における一様性の増大に起因して、75重量%以下のバインダが、バインダノード内に入れられており、バインダノードは、2本以上の交差繊維相互間の交差部のところに配分されたバインダ組成物の部分である。幾つかの例示の実施形態では、バインダノード内に入っているバインダの量は、60重量%以下に制限され、かかる量としては、50重量%以下、45重量%以下、及び40重量%以下が挙げられる。
【0131】
上述したように、種々の製品及び製品パラメータが、極細繊維断熱製品中の繊維の配向に影響を及ぼすと考えられる。理論には縛られるものではないが、L1方向に全体として平行な平面内に配向した繊維(又は繊維ベクトルもしくはこれらの部分)の存在量の増大は、少なくとも部分的には、小径のガラス繊維(すなわち、3.81ミクロン(又は15HT)以下の平均繊維直径)と低粘度ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物の相乗的な組み合わせに起因して生じていると考えられる。特に、25℃の温度では、バインダ組成物は、65重量%~70重量%の固形分濃度では90,000cP以下の粘度を有し、かかる粘度としては、25℃かつ65重量%~70重量%の固形分濃度において、50,000cP以下、25,000cP以下、15,000cP以下、10,000cP以下、及び4,000cP以下の粘度が挙げられる。
【0132】
繊維配向への衝撃に加えて、バインダ組成物の低粘度により、繊維パックが形成チャンバから硬化オーブン中に動いているときに「ランプ」上の繊維パックの水分の減少が可能である。重要なこととして、ランプ水分は、繊維パックが硬化オーブンに入っているときに十分に低く、その目的は、製品がパックの厚さ全体を通じて完全にかつ首尾一貫して硬化するようにすることにある。幾つかの例示の実施形態では、バインダ組成物の粘度は、7%以下のランプ水分レベルを保証するよう調節され、かかるレベルとしては、5%以下、3%以下、及び2%以下が挙げられる。
【0133】
繊維断熱製品は、10重量%以下の繊維断熱製品、8.0重量%以下の繊維断熱製品、6.0重量%以下の繊維断熱製品、又は3.0重量%以下の繊維断熱パックのバインダ含有量(LOI:強熱減量)を有する。例示の実施形態のうちの任意のものに関し、断熱製品は、1.0重量%~10.0重量%の繊維断熱製品のバインダ含有量(LOI)を有し、かかる量としては、2.0重量%~8.0重量%、2.5重量%~6.0重量%、又は3.0重量%~5.0重量%が挙げられる。比較的少量のバインダは、最終の断熱製品の可撓性に寄与する。例示の実施形態のうちの任意のものに関し、繊維断熱製品は、4.5%未満のLOIを有し、かかる量としては、4.2%未満、4.0%未満、3.8%未満、及び3.5%未満が挙げられる。
【0134】
理論に縛られるものではないが、L1(又は機械)方向平面に全体としてより平行な平面内において微小直径繊維(すなわち、平均繊維直径が15HT以下又は3.81ミクロン以下の繊維)の配向の結果として、驚くほど向上した熱的性能及び全体的材料効率を有する繊維断熱製品が成形された。ガラス繊維断熱製品の熱的性能は、ガラス繊維断熱製品のR値に基づいており、R値は、熱流に対する製品の抵抗の尺度である。R値は、次の方程式(1)、すなわち、
方程式(1): R=T1/k (1)
によって定められ、上式において、“T1”は、インチで表された断熱製品の厚さ、“k”は、BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)で表された断熱製品の熱伝導率、“R”は、(時・平方フィート・゜F)で表された断熱製品のR値である。
【0135】
本明細書において用いられる断熱製品の厚さ(T1)は、ASTM C167-18に準拠して算定でき、k値と面積重量(単位は、ポンド/平方フィート)の両方は、ASTM c518-17又はASTM C177-19に準拠して算定できる。
【0136】
断熱製品のR値、熱伝導率、及び材料効率は、断熱製品の熱的性能の指標を提供するパラメータである。
【0137】
材料効率(“ME”)を次の方程式(2)、すなわち、
方程式(2):ME=R値/W
によって求めることができ、上式において、“ME”は、R・平方フィート/ポンドで表され、上式において、“R”は、断熱製品のR値、“W”は、ポンド/平方フィートで表された断熱製品の面積重量である。MEは、断熱製品が熱の流れに対してどれほど効率的に耐性があるかを測定し、これは、ガラス繊維断熱バットの性能を定量化するために使用できるメトリックである。R・平方フィートの大きな値を達成するため、断熱材提供業者は、一般に、断熱材料の量(単位は、ポンド‐質量(lb))を増大させる。かくして、材料1ポンド当たりの高いR・平方フィートを提供する断熱材が望ましく、これは、MEによって測定される(すなわち、製品の断熱効果÷断熱効果を提供するために用いられる材料の量)。
【0138】
熱伝導率
本発明の極細繊維断熱製品は、所与の密度に対して予想よりも熱伝導率の著しく大きな減少を実証した。例えば、サンゴバン(Saint Gobain)社の1995年の刊行物(C.ラングレー(Langlais, C.),G.ギルベール(Guilbert, G.),D.バンナー(Banner, D.),及びS.クラルスフェルト(Klarsfeld, S. ),「インフルエンス・オブ・ザ・ケミカル・コンポジション・オブ・グラス・オン・ヒート・トランスファー・スルー・グラス・ファイバー・インシュレーションズ・イン・リレーション・トゥ・ゼア・モフォロジー・アンド・テンプリチャー(Influence of the Chemical Composition of Glass on Heat Transfer through Glass Fiber Insulations in Relation to Their Morphology and Temperature.)」,J. Thermal Insulation and Building Envs.,1995年,第18号,p.350~376)(以下、「SG刊行物」という)は、繊維断熱材の熱的性能を予測するための理論的なアプローチを詳述している。SG刊行物は、温度及び密度とは他に、繊維の平均直径が熱伝導率を減少させるための手段であると判明したことを指示しており、そして、このSG刊行物は、熱伝導率に対する繊維直径の影響を示すデータを提供している。本出願人は、SG刊行物とは別個独立に、SG刊行物に示されている曲線とほぼ同一の曲線を予測する独自のモデリング技術を開発した。かくして、SG刊行物に提供されているデータ(以下、「予想結果」)は、種々の密度及び種々の繊維直径におけるガラス繊維断熱材の予想熱的性能を表しているとみなされる。
【0139】
しかしながら、0.2pcfから1.6pcfまでの密度範囲にわたり3.6ミクロンの平均繊維直径を有する本発明のガラス繊維断熱製品の熱伝導率の値は、予想結果に基づいて、予想熱伝導率値よりも予期していないほどに低い。図14は、予想結果(3ミクロンの平均繊維直径を有するガラス繊維断熱製品に基づき)と、本発明の3.6ミクロンガラス繊維断熱製品の測定熱伝導率の値との差を示している。図示のように、予想結果によって定められた熱伝導率の値は、次の式(I)、すなわち、
式(I) y=0.116x2-0.3002x+0.4319
に対応しており、上式において、yは、BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)で表された熱伝導率(k値)、xは、ポンド/立方フィート(“pcf”)で表された製品密度である。式(I)は、R2=0.9804を有し、このことは、この式において高い正確度を指示している。これとは対照的に、本発明の3.6ミクロン断熱製品に関する測定熱伝導率の値は、式(II)、すなわち、
式(II) y=0.1013x2-0.2438x+0.3763
を生じさせ、上式において、yは、BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)で表された熱伝導率(k値)、xは、ポンド/立方フィート又はpcfで表された製品密度である。式(II)は、R2=0.9803を有し、このことは、この式において高い正確度を指示している。
【0140】
したがって、所与の密度では、本発明の3.6ミクロン断熱製品は、さらに細い繊維平均繊維直径(3.0ミクロンに対して3.6ミクロン)を有する断熱製品に基づいて、予想よりも著しく小さい熱伝導率を実証した。例えば、0.8pcfの密度では、式(I)は、0.2660BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)の熱伝導率予想結果を出力し、本発明の3.6ミクロンガラス繊維断熱製品は、0.2461BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)の低い測定熱伝導率(k値)を実証した。0.0199のk値の減少分は、統計学的に有意な減少である。
【0141】
幾つかの実施形態では、本発明の繊維断熱製品は、0.2pcfから1.35pcfまでの密度範囲にわたって予想結果と比較して、少なくとも0.01BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)のk値の減少を実証し、かかる減少としては、少なくとも0.015BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)、少なくとも0.03BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)、少なくとも0.05BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)、少なくとも0.075BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)、少なくとも0.1BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)、少なくとも0.15BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)、少なくとも0.2BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)、及び少なくとも0.23BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)のk値の減少が挙げられる。
【0142】
本明細書において提供する例示の実施形態のうちの任意のものに関し、繊維断熱製品は、BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)で表されていて、次式(III)すなわち、
式(III): y=0.116x2-0.3002x+0.4219
を満たす熱伝導率以下の熱伝導率(k値(y))を有するのがよく、上式において、xは、0.2pcfから1.6pcfまでの範囲内の製品密度である。式(III)は、式(I)に基づいているが、予想結果に対して十分な分離を保証するよう0.01だけ減少している。これらの例示の実施形態又は他の例示の実施形態では、繊維断熱製品は、BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)で表されていて、次の式(IV)、すなわち、
式(IV) y=0.1013x2-0.2438x+0.3763
を満たす値(y)の10%以内又は少なくとも5%以内の熱伝導率(k値(y))を有するのがよく、上式において、xは、0.2pcfから1.6pcfまでの範囲内の製品密度である。
【0143】
特定の利点を低密度(すなわち、1.6pcf未満)の断熱製品において例示することができるが、繊維断熱製品の密度は、種々の実施形態において様々であってよい。本明細書で用いる繊維断熱製品の密度は、バインダ組成物を硬化させ、硬化させた後の製品の密度であり、硬化後の製品は、自由状態(すなわち、圧縮されておらず又は引き伸ばされていない状態)にある。種々の実施形態では、繊維断熱製品の密度は、0.2pcfから2.7pcfまでの範囲にある。表3は、2.03μm(8.0HT)から3.81μm(15HT)までの範囲にある極細繊維を有する繊維断熱製品の種々の例示の実施形態に関し、元の密度(単位pcf)を列挙している。表3では、繊維直径は、バインダ組成物の塗布に先立って、上述の空気流抵抗法で測定された平均繊維直径を指している。厚さ及び元の密度は、バインダ組成物を硬化させた後における製品の厚さ及び密度を指し、硬化後の製品は、自由状態(すなわち、圧縮されていない又は引き伸ばされていない状態)にある。
【0144】
表3のデータは、平均繊維直径が15HT以下であり、元の密度が0.371pcfから1.214pcfまでの範囲にあり、バインダ組成物が6重量%以下の状態で製造されたR値が11から49までの繊維断熱製品を示している。
【0145】
材料効率
上述したように、材料効率は、断熱材料の1ポンド当たりの製品の断熱価(R・平方フィート)の測定値であり、これは、R・平方フィート/ポンドとして表される。材料効率を最大にすることによって、断熱製品は、可能な限り重量の低い状態で高い断熱性能を提供することができる。換言すると、本発明の断熱製品は、その材料効率が高いので、低い重量/密度で同じ断熱性能を達成することができる。製品重量を減少させると、ガラス繊維及びバインダ材料の必要量が減少し、かくして、全体的コスト(例えば、製造費、貯蔵費、輸送費、及び/又は処分費)が減少する。加うるに、低密度の製品は、製品1袋の面積が同じであれば、高密度の製品よりも軽くて取り扱いが容易である。
【0146】
予期せぬこととして、本発明の繊維断熱製品は、予想結果に基づき、予想される材料効率と比較して、材料効率の驚くべき増加を実証することが判明した。高い材料効率では、本発明の繊維断熱製品は、予測面積重量よりも低い面積重量で、所望の断熱性能(R値)を提供することができる。
【0147】
図15は、3ミクロンの平均繊維直径及び5.5インチの厚さを備えたガラス繊維断熱製品に基づき、予想結果の出力と、5.5インチの厚さの本発明の3.6ミクロン断熱製品の実際の材料効率との材料効率に関する差を示している。図15に示すように、予想結果により定められる繊維断熱製品の予測材料効率は、以下の式(V)、すなわち、
式(V) y=35.7480145x2-112.2450311x+123.2764898
に対応しており、上式において、yは、R・平方フィート/ポンドで表された材料効率であり、xは、約0.5pcfから約1.5pcfまでの密度範囲にわたる製品密度である。式(V)は、R2=0.9980374を有し、このことは、モデルにおいて高い正確度を指示している。これとは対照的に、本発明の3.6ミクロン断熱製品の実際の材料効率は、式(VI)、すなわち、
式(VI) y=40.1916068x2-120.5813540x+131.7360668
に対応しており、上式において、yは、R・平方フィート/ポンドで表された材料効率であり、xは、約0.7pcfから約1.35pcfまでの密度範囲にわたる製品密度である。式(VI)はR2=0.9980374を有し、このことは、この式において高い正確度を指示している。
【0148】
所与の密度では、本発明の3.6ミクロン断熱製品は、さらに細い繊維の平均繊維直径(3.6ミクロンに対して3.0ミクロン)を有する断熱製品に基づき、予測よりも高い材料効率を実証している。例えば、0.8pcfの密度では、式(V)は、56.36R・平方フィート/ポンドの材料効率を予測するが、本発明の3.6ミクロンガラス繊維断熱製品は、4ユニットを超える増加分である60.99R・平方フィート/ポンドの実際の材料効率を実証している。同様に、0.6pcfの密度では、式(V)は、68.80R・平方フィート/ポンドの材料効率を予測するが、本発明の3.6ミクロンガラス繊維断熱製品は、5ユニットを超える増加分である73.86R・平方フィート/ポンドの実際の材料効率を実証している。
【0149】
かくして、本発明の繊維断熱製品は、0.2pcfから1.6pcfまでの密度範囲にわたり予想された材料効率と比較して、少なくとも4.0ユニット、幾つかの場合では少なくとも5.0ユニット、少なくとも5.5ユニット、少なくとも5.8ユニット、及び少なくとも6.0ユニットの増大した材料効率を実証している。
【0150】
本明細書において提供される例示の実施形態のうちの任意のものに関し、繊維断熱製品は、19~24のR値、0.3ポンド/平方フィート~0.5ポンド/平方フィートの面積重量、及び0.7pcf~1.35pcfの密度では、式ME=R値/面積重量(W)に従って、少なくとも50、例えば少なくとも55、少なくとも58、少なくとも60、少なくとも63、少なくとも65、少なくとも68、少なくとも70、少なくとも75、及び少なくとも80の材料効率を有することができる。
【0151】
個々の断熱製品は、製品それ自体内にある特定のばらつきを含む場合があるので、理解されるべきこととして、上記において提供される熱的性能の値は、この自然なばらつきを考慮しない平均予測値を超えて提供される。かくして、自然な製品のばらつきを計算に入れるため、上述の式(VI)は、ばらつき値によって調節されるのがよく、ばらつき値は、95%信頼レベルで2.1076693として計算されている。かくして、このばらつき値を考慮にいれると、本発明の断熱製品の調節後の材料効率は、式(VII)、すなわち、
式(VII) y=40.1916068x2-120.5813540x+129.628397
に対応しており、上式において、yは、R・平方フィート/ポンドで表された調節後の材料効率であり、xは、約0.5pcfから約1.5pcfまでの密度範囲にわたる製品密度である。
【0152】
図16は、3ミクロンの平均繊維直径及び5.5インチの厚さを備えたガラス繊維断熱製品に基づき予想結果の出力と、5.5インチの厚さにおいてかつバリエーション変数を含む本発明の3.6ミクロン断熱製品の調節後の材料効率との材料効率差をグラフ図で示している。
【0153】
図16に示すように、本発明の3.6ミクロン断熱製品の調節後の材料効率は、さらに細い繊維平均繊維直径(3.0ミクロンに対して3.6ミクロン)を有する断熱製品に基づき、予想結果よりも高い材料効率を実証している。例えば、0.8pcfの密度では、式(V)(予想結果)は、56.36R・平方フィート/ポンドの材料効率を予測するが、本発明の3.6ミクロンガラス繊維断熱製品は、2ユニットを超える増加分である58.89R・平方フィート/ポンドの調節後の材料効率を実証している。同様に、0.6pcfの密度では、式(V)は、68.80R・平方フィート/ポンドの材料効率を予測するが、本発明の3.6ミクロンガラス繊維断熱製品は、3ユニットを超える増加分である71.75R・平方フィート/ポンドの調節後の材料効率を実証している。
【0154】
特定の利点を種々の面積重量を有する製品に関して例示することができるが、特定の利点は、所望の熱的性質を維持しながら比較的低い面積重量で得られるのがよい。本願で用いられる繊維断熱製品の面積重量は、バインダ組成物を硬化させた後における断熱製品の平方フィート当たりの重量(ポンド/平方フィート)である。種々の実施形態では、繊維断熱製品の面積重量は、0.1ポンド/平方フィートから2.0ポンド/平方フィートまでの範囲内にあり、この範囲は、0.2ポンド/平方フィート~1.8ポンド/平方フィート、0.25ポンド/平方フィート~1.5ポンド/平方フィート、0.3ポンド/平方フィート~1.2ポンド/平方フィート、0.35ポンド/平方フィート~1.0ポンド/平方フィート、及び0.38ポンド/平方フィート~0.6ポンド/平方フィートを含む。例示の実施形態のうちの任意のものに関し、繊維断熱製品の面積重量は、0.55ポンド/平方フィート未満であるのがよく、かかる面積重量は、0.5ポンド/平方フィート未満、0.48ポンド/平方フィート未満、0.45ポンド/平方フィート未満、及び0.42ポンド/平方フィート未満を含む。
【0155】
加うるに、上述したように、向上した熱的効率及び材料効率の利点は、任意の断熱製品厚さで得ることができ、特定の利点は、比較的低い製品厚さで得られる。一般に、断熱製品のR値を向上させるには、断熱製品の厚さ(T1)を増大させるのがよく、それにより製品の密度を減少させることができる(製品に対する他の変更が行われないと仮定して)。しかしながら、製品厚さを増大させることは、束縛された状態の製品(すなわち、固定された厚さの壁空洞中に取り付けられた製品)については可能ではない。したがって、製品を壁空洞の厚さよりも厚くすることによってはR値の利点が得られず、というのは、断熱製品は、壁開口部の厚さまでしか膨張することができないからである。例示の実施形態のうちの任意のものに関し、繊維断熱製品の厚さT1は、約20インチ以下であるのがよく、かかる厚さは、18インチ以下、15インチ以下、12インチ以下、10インチ以下、8インチ以下、7インチ以下、6インチ以下の厚さが挙げられる。例えば、幾つかの厚さが束縛された製品では、繊維断熱製品は、7インチ未満である厚さを有するのがよく、かかる厚さとしては、6.5インチ未満、6インチ未満、5.5インチ未満、5インチ未満、4.5インチ未満、及び4インチ未満が挙げられる。これらの実施形態又は他の実施形態では、繊維断熱製品は、例えば、0.5インチ~8インチの厚さを有するのがよく、かかる厚さとしては、0.75インチ~7.5インチ、0.9インチ~7.0インチ、1.0インチ~6.8インチ、1.5インチ~6.3インチ、及び2.0インチ~6.0インチの厚さが挙げられる。
【0156】
表4は、2つの例示の繊維断熱製品(実施例1及び実施例2)についての構造的特性及び熱的特性を示しており、実施例1及び実施例2は、それぞれ14.5HT及び14.4HTの平均繊維直径を有する繊維で形成されている。実施例1及び実施例2の製品の各々は、モノマーポリオール及び重合ポリカルボン酸架橋剤を含むホルムアルデヒドフリーバインダ組成物で形成されたものである。実施例1及び実施例2は、5.5インチの厚さ及びR‐22の断熱値を有していた。以下の表4に示すように、0.25BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)のk値では、実施例1及び実施例2は、それぞれ0.746ポンド/立方フィート及び0.759ポンド/立方フィートの低い密度を実証しており、LOI値は、4%未満であった。これとは対照的に、比較実施例1は、15.9HTガラス繊維及び重合ポリオール及びポリカルボン酸モノマー架橋剤を含むバインダ組成物で形成されたものである。比較実施例1の製品は、5.5インチの厚さ及び0.25BTU‐インチ/時・平方フィート・゜Fのk値では、0.830ポンド/立方フィートの密度を実証し、これは、実施例1及び実施例2の密度よりも少なくとも7%、特に少なくとも9%高い。
【0157】
さらに驚くこととして、比較実施例2は、14.3HTガラス繊維(それにより、本明細書で定められる「極細繊維」とみなされる)及び重合ポリオール及びポリカルボン酸モノマー架橋剤を含むバインダ組成物で形成されたものである。比較実施例2の製品は、5.5インチの厚さ及び0.23BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)のk値では、実施例1及び実施例2の密度よりも少なくとも39%高い1.25ポンド/立方フィートの密度を実証した。
【0158】
さらに、同一の厚さ及びほぼ同一のR値では、実施例1及び実施例2は、比較実施例1及び比較実施例2の製品と比較して、5ユニット以上材料効率を増大させた。これらの差の原因は、少なくとも、実施例1及び実施例2のk値と同等のk値を達成するよう比較実施例1及び比較実施例2において必要とされる面積重量の増大にあるということができる。したがって、理解できるように、本発明の繊維断熱製品は、減少した面積重量で向上した熱的性能を提供することができ、それにより製品の効率を全体として向上させることができる。
【0159】
本発明のガラス繊維断熱材料は、本明細書において開示した特性及び本明細書において開示した特性に関する範囲の任意のコンビネーション又はサブコンビネーションを有することができる。本発明をその実施形態の説明によって例示したが、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲をかかる細部に限定し、又は何らかの仕方で制限することは出願人の意図ではない。追加の利点及び追加の改造が当業者には容易に明らかであろう。繊維断熱製品を可撓性バット又はブランケットとして本明細書において説明したが、他の形態及び他の幾何学的形状を用いることができる。さらに、繊維断熱製品を種々の仕方で使用することができ、かかる繊維断熱製品は、特定の用途には限定されない。したがって、本発明は、その広い観点において図示するとともに説明した特定の細部、代表的な装置、及び図示の実施例には限定されない。したがって、一般的な本発明の技術的思想の精神及び範囲から逸脱することなく、かかる細部からの逸脱又は設計変更を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9(a)】
図9(b)】
図10(a)】
図10(b)】
図11(a)】
図11(b)】
図11(c)】
図12(a)】
図12(b)】
図12(c)】
図13(a)】
図13(b)】
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2023-12-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱製品であって、
複数のガラス繊維と、
前記ガラス繊維を少なくとも部分的に被覆した架橋ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物と、を有し、
前記ガラス繊維は、8HT(2.03μm)から15HT(3.81μm)までの範囲内にある平均繊維直径を有し、
前記断熱製品は、8重量%以下のバインダ含有量(LOI)を有し、
0.2pcf~1.6pcfの密度(x)では、前記断熱製品は、BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)として表されていて、式(III)、すなわち、
式(III):y=0.116x2-0.3002x+0.4219
を満たす値(y)以下の熱伝導率(k値)(y)を達成する、断熱製品。
【請求項2】
前記熱伝導率(y)は、0.3BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)未満である、請求項1記載の断熱製品。
【請求項3】
0.2pcf~1.35pcfの密度(x)では、前記断熱製品は、BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)として表されていて、式(II)、すなわち、
式(II):y=0.1013x2-0.2438x+0.3763
を満たす値(y)の5%以内の熱伝導率(k値)(y)を達成する、請求項1記載の断熱製品。
【請求項4】
前記断熱製品は、0.7pcf~1.0pcfの密度(x)を有する、請求項1~3のうちいずれか一に記載の断熱製品。
【請求項5】
前記断熱製品は、長さ、幅、及び厚さを有し、前記長さは、前記幅及び前記厚さの各々よりも大きく、少なくとも30重量%の前記ガラス繊維は、前記断熱製品の前記長さ及び前記幅に平行な平面から±15°以内に配向されている、請求項1~のうちいずれか一に記載の断熱製品。
【請求項6】
前記断熱製品中の少なくとも15重量%の前記ガラス繊維は、前記断熱製品中の少なくとも1つの他のガラス繊維と実質的に平行な配向状態で少なくとも部分的に束ねられている、請求項1~のうちいずれか一に記載の断熱製品。
【請求項7】
少なくとも40重量%の前記ガラス繊維は、前記断熱製品の前記長さに平行な平面から±15°以内に配向されている、請求項1~のうちいずれか一に記載の断熱製品。
【請求項8】
前記ガラス繊維の前記平均繊維直径は、12HT(3.05μm)から14.5HT(3.68μm)までの範囲内にある、請求項1~のうちいずれか一に記載の断熱製品。
【請求項9】
架橋に先立って、前記ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物は、少なくとも1つのモノマーポリオール及びポリカルボン酸を、前記バインダ組成物の全重量を基準として少なくとも45重量%の総量で含む、請求項1~のうちいずれか一に記載の断熱製品。
【請求項10】
架橋に先立って、前記ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物は、2から5までの範囲内にあるpHを有する、請求項1~のうちいずれか一に記載の断熱製品。
【請求項11】
低密度住居用断熱バットであって、
複数のガラス繊維と、
前記ガラス繊維を少なくとも部分的に被覆した架橋ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物と、を有し、
前記ガラス繊維は、8HT(2.03μm)から15HT(3.81μm)までの範囲内にある平均繊維直径を有し、
前記断熱バット中の少なくとも15重量%の前記ガラス繊維は、前記断熱バット中の少なくとも1つの他のガラス繊維と実質的に平行な配向状態で少なくとも部分的に束ねられており、
0.2pcf~1.6pcfの密度(x)では、断熱バットは、BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)として表されていて、式(II)、すなわち、
式(II):y=0.1013x2-0.2438x+0.3763
を満たす値(y)の5%以内の熱伝導率(k値)(y)を達成する、低密度住居用断熱バット。
【請求項12】
0.2pcf~1.6pcfの密度(x)では、前記断熱バット製品は、BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)として表されていて、式(III)、すなわち、
式(III):y=0.116x2-0.3002x+0.4219
を満たす値(y)以下の熱伝導率(k値)(y)を達成する、請求項11記載の低密度住居用断熱バット。
【請求項13】
前記熱伝導率(y)は、0.35BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)以下である、請求項11又は12に記載の低密度住居用断熱バット。
【請求項14】
前記断熱バットは、0.7pcf~1.35pcfの密度(x)を有する、請求項11又は12に記載の低密度住居用断熱バット。
【請求項15】
前記断熱バットは、長さ、幅、及び厚さを有し、前記長さは、前記幅及び前記厚さの各々よりも大きく、少なくとも30重量%の前記ガラス繊維は、前記長さに平行な平面から±15°以内に配向されている、請求項11又は12に記載の低密度住居用断熱バット。
【請求項16】
前記ガラス繊維は、35重量%以下の前記バインダ組成物がガセットの形態で存在するよう配向されている、請求項11又は12に記載の低密度住居用断熱バット。
【請求項17】
断熱製品であって、
架橋ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物で少なくとも部分的に被覆された複数のガラス繊維を有し、
前記ガラス繊維は、15HT(3.81μm)未満の平均繊維直径を有し、
前記断熱製品は、長さ、幅、及び厚さを有し、前記長さは、前記幅及び前記厚さの各々よりも大きく、
前記断熱製品中の少なくとも30重量%の前記ガラス繊維は、前記断熱製品の前記長さ及び前記幅により定められた共通平面から±15°以内に配向され、
前記繊維断熱製品は、R‐20からR‐24までのR値及び0.35BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)未満の熱伝導率(k値)で、非圧縮状態において、一貫したR値及びk値で、15HT(3.81μm)を超える平均繊維直径を備えたガラス繊維を含む他の点においては同等の断熱製品よりも少なくとも7%低い密度(x)を有する、断熱製品。
【請求項18】
0.5pcf~1.35pcfの密度(x)では、前記断熱製品は、BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)として表されていて、式(III)、すなわち、
式(III):y=0.116x2-0.3002x+0.4219
を満たす値(y)以下の熱伝導率(k値)(y)を達成する、請求項17記載の断熱製品。
【請求項19】
前記断熱製品は、長さ、幅、及び厚さを有し、前記長さは、前記幅及び前記厚さの各々よりも大きく、少なくとも30重量%の前記ガラス繊維は、前記断熱製品の前記長さ及び前記幅に平行な平面から±15°以内に配向されている、請求項17又は18に記載の断熱製品。
【請求項20】
前記密度(x)は、0.7pcf~1.0pcfである、請求項17又は18に記載の断熱製品。
【請求項21】
断熱製品を形成する方法であって、前記方法は、
溶融ガラスを複数のガラス繊維の状態に繊維化するステップと、
前記ガラス繊維を水性ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物で被覆するステップと、
前記ガラス繊維を移動コンベア上にランダムに堆積させて未硬化ガラス繊維ブランケットを形成するステップと、
前記未硬化ガラス繊維ブランケットを硬化オーブンに通して前記バインダ組成物を架橋して前記繊維断熱製品を形成するステップと、を含み、
前記ガラス繊維は、8HT(2.03μm)から15HT(3.81μm)までの範囲にある平均繊維直径を有し、
前記断熱製品は、8重量%以下のバインダ含有量(LOI)を有し、
0.2pcf~1.6pcfの密度(x)では、前記断熱製品は、BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)として表されていて、式(III)、すなわち、
式(III):y=0.116x2-0.3002x+0.4219
を満たす値(y)以下の熱伝導率(k値)(y)を達成する、方法。
【請求項22】
前記熱伝導率(y)は、0.35BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)以下である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
0.5pcf~1.35pcfの密度(x)では、前記断熱製品は、BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)として表されていて、式(II)、すなわち、
式(II):y=0.1013x2-0.2438x+0.3763
を満たす値(y)以下の熱伝導率(k値)(y)の5%以内を達成する、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記断熱製品は、0.7pcf~1.0pcfの密度(x)を有する、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項25】
前記断熱製品は、長さ、幅、及び厚さを有し、前記長さは、前記幅及び前記厚さの各々よりも大きく、少なくとも30重量%の前記ガラス繊維は、前記断熱製品の前記長さ及び前記幅に平行な平面から±15°以内に配向されている、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項26】
前記断熱製品中の少なくとも15重量%の前記ガラス繊維は、前記断熱製品中の少なくとも1つの他のガラス繊維と実質的に平行な配向状態で少なくとも部分的に束ねられている、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項27】
前記ガラス繊維は、12HT(3.05μm)から14.5HT(3.68μm)までの範囲内にある平均繊維直径を有する、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項28】
架橋に先立って、前記ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物は、少なくとも1つのモノマーポリオール及びポリカルボン酸を、前記バインダ組成物の全重量を基準として少なくとも45重量%の総量で含む、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項29】
架橋に先立って、前記ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物は、2から5までの範囲にあるpHを有する、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項30】
断熱製品であって、
複数のガラス繊維と、
前記ガラス繊維を少なくとも部分的に被覆した架橋ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物と、を有し、
前記架橋ホルムアルデヒドフリーバインダ組成物は、少なくとも1つのモノマーポリオールを含む水性バインダ組成物から形成され、
前記ガラス繊維は、15HT未満の平均繊維直径を有し、
前記断熱製品は、8重量%以下のバインダ含有量(LOI)を有し、
前記断熱製品は、19から24までの範囲にあるR値、5.0インチ(12.7cm)~7.0インチ(17.8cm)の厚さ、及び0.20~0.35BTU‐インチ/(時・平方フィート・゜F)のk値を有し、
前記断熱製品は、非圧縮状態において、ポリマーポリオールを含むバインダ組成物を有する他の点では同等の断熱製品よりも少なくとも30%低い密度を有する、断熱製品。
【国際調査報告】