(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】歯科修復器具及び方法
(51)【国際特許分類】
A61C 13/00 20060101AFI20240621BHJP
A61C 13/08 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
A61C13/00 Z
A61C13/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573556
(86)(22)【出願日】2022-04-12
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 US2022024389
(87)【国際公開番号】W WO2023277987
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523448439
【氏名又は名称】ウィリアム、シー、ヴィアモット
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム、シー、ヴィアモット
(57)【要約】
歯科修復のための方法及び器具では、隣接する歯の結合を防止するために、歯科用複合材料が塗布され硬化される個々の歯の表面を個別の穴に分離する成形型が使用される。この方法及び型は、歯間のマトリックスセパレーターと、マトリックスセパレーターの端部を受けるマトリックスガイドポケットを有する成形型を利用し、個々の穴を画定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科修復に使用する成形型を作製する方法であって、
計画された歯科構造の物理モデルを準備する工程と、
前記計画された歯科構造の前記物理モデルの隣接する歯と歯の間の歯間腔にマトリックスセパレーターを配置する工程と、
前記計画された歯科構造の前記物理モデル及び設置されたマトリックスセパレーターの上に、透明な成形型を形成し、前記成形型の表面輪郭が前記対応するマトリックスセパレーターの頬側、舌側及び咬合側の端部を受けるための複数のマトリックスガイドポケットを画定する工程と、
一体的に形成されたマトリックスガイドポケットを備えた前記成形型を、前記計画された歯科構造の前記物理モデルから取り外す工程と、
を含むことを特徴とする歯科修復に使用する成形型の作製方法。
【請求項2】
前記マトリックスセパレーターが透明なプラスチック材料からなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、
個々のマトリックスセパレーターに、前記対応するマトリックスセパレーターの頬側、舌側及び咬合側の端部を受けるためのポケットを画定するマトリックスガイドを提供する工程と、
前記物理モデルの上に前記透明な成形型ガイドを形成する前に、前記対応するマトリックスセパレーター上に各マトリックスガイドを配置する工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記マトリックスセパレーターが透明なプラスチック材料からなることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記マトリックスガイドが透明なプラスチック材料からなることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記マトリックスガイドが、前記成形型本体との機械的インターロックを容易にするための突起が設けられた対向面を備えていることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
計画された修復に対応する輪郭を有する透明な成形型本体と、
前記計画された修復の隣接する歯と歯の間の歯間腔に取り付けられた対応するマトリックスセパレーターの頬側、舌側及び咬合側の端部を受けるための複数のマトリックスガイドポケットとを有する成形型と、
を含むことを特徴とする歯科修復に使用する成形型。
【請求項8】
前記マトリックスガイドポケットのそれぞれが、別個に作製され、前記成形型本体に一体的に取り付けられたマトリックスガイドによって画定されることを特徴とする請求項7に記載の成形型。
【請求項9】
前記マトリックスガイドポケットのそれぞれが、前記成形型本体の材料で一体的に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の成形型。
【請求項10】
前記マトリックスガイドが透明なプラスチック材料からなることを特徴とする請求項8に記載の成形型。
【請求項11】
前記マトリックスガイドが、前記成形型本体との機械的インターロックを容易にするための突起を備えた対向面を有することを特徴とする請求項7に記載の成形型。
【請求項12】
隣接する歯と歯の間の歯間腔に配置するように構成されたシート状の材料と、
隣接する歯と歯の間の歯肉表面を覆うために分岐している前記シート状の材料の歯肉側終端と
を備えることを特徴とする歯科構造の修復で使用するためのマトリックスセパレーター。
【請求項13】
前記シート状の材料が、約0.35mmから約0.65mmの厚さ、約5mmから約15mmの長さ、及び、約5mmから約10mmの幅を有することを特徴とする請求項12に記載のマトリックスセパレーター。
【請求項14】
修復が必要な現存する歯科構造を治療する方法であって、
計画された修復に対応する内面輪郭を有し、前記現存する歯科構造の隣接する歯と歯の間の歯間腔に配置された対応するマトリックスセパレーターの頬側、舌側及び咬合側の端部を受け入るための複数のマトリックスガイドポケットを有する透明な成形型を提供する工程と、
修復のために患者の前記現存する歯科構造を準備する工程と、
修復のために準備されていた前記現存する歯科構造の隣接する歯と歯の間の複数の歯間腔のそれぞれにマトリックスセパレーターを配置する工程と、
前記ガイドポケットの対応する一つで受けるマトリックスセパレーターそれぞれの頬側、舌側及び咬合側の端部を用いて、修復のために用意されていた前記現存する歯科構造の上及び前記マトリックスセパレーターの上に前記成形型を配置する工程と、
修復のための準備されていた前記現存する歯科構造の表面、前記成形型の前記内部表面輪郭、及び隣接する歯間腔にある前記マトリックスセパレーターで画定される少なくとも一つの型穴に流動性歯科材料を注入する工程と、
前記歯科用複合材料を硬化させる工程と、
修復された歯科構造から前記成形型及びマトリックスセパレーターを除去する工程と、
を含むことを特徴とする歯科構造の治療方法。
【発明の詳細な説明】
【関連技術の相互認証】
【0001】
本出願は、2021年6月28日に出願された米国特許出願第17/360,078号の優先権を主張しており、同出願の内容のすべてはここに参照として取り込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、修復が必要な歯科構造を有する患者を治療するための方法及び器具に関するものである。より詳細には、複数の歯構造の修復を単一の成形型の中で同時に行うための射出成形技術に関する。
【背景技術】
【0003】
歯科構造、特に、複数の隣接する歯、すなわち互いに極めて近接する上の歯又は下の歯が複数含まれる歯科構造を修復するために必要な時間、熟練した操作、及び労力を低減するための方法はいくつかある。
【0004】
本発明者であるWilliam C. Vuillemotに発行された米国特許第7,217,131号は、修復されない歯に選ばれた歯は離型材(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)で覆い、修復されるべき歯はその上に透明なポリマー組成物の型をはめ込み、型と歯との間の空洞に成形用流体ポリマー組成物を注入し、その流体ポリマー組成物を硬化させ、型を取り外すことによって歯を修復する方法を開示している。しかしながら、樹脂注入及び硬化を行っている時に隣接する歯が結合状態になることを防ぐためには、隣接する複数の歯は2回に分けて修復する必要がある。この修復には、1回目に他の歯を全てポリマー離型材(例えば、PTFEテープ)で覆い、その後で、1回目で覆われた歯について全プロセスを繰り返すことが含まれる。修復されない歯を離型材で被覆する必要がないように改良されたプロセスの提供と、樹脂注入中及び硬化中に隣接する歯が結合状態になることを防ぎながら別個に行う必要性をなくすことが望まれている。
【0005】
本発明者であるWilliam C. Vuillemotに対し同様に発行された米国特許第8,366,445号は、歯科構造をスキャンして修復すべき歯の現存する構造の三次元の第1のデジタルモデルを生成し、第1のデジタルモデルを修正し計画されている修復用の第2のデジタルモデルを生成し、第2のデジタルモデルから複数の部分からなる型の組み立てを作製して、歯科用の型を形成する方法を開示している。この改良された方法では、成形型の作製に必要な労力を軽減しながら、正確な寸法の極めて正確な型が作製される。しかし、前述の方法と同様に、隣接する歯が互いに結合した状態にならないように、最初は他の歯を全て分離し、その次では修復した歯を分離し、複数回に分けて歯を修復することが望ましい。別の方法として、この特許は、剥離材を使用せずに一回で行う場合、隣接する歯と歯の間で硬化した樹脂を除去に小さな歯科用ナイフ又は歯科用鋸を使用できることを教示している。剥離材や隣接する歯と歯の間で硬化した樹脂の除去を必要とせず、一回で済ませられる修復方法、隣接する歯の間から硬化した樹脂を除去する必要のない修復方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
開示されるのは、歯科修復に使用する成形型の作製プロセス、その結果得られる歯科修復用成形型、マトリックスセパレーター、及び成形型及びマトリックスセパレーターを使用する歯科修復のプロセスである。開示されたプロセス及び器具は、歯科用複合材料が塗布され硬化させる個々の歯表面を個別の空洞(空隙容積)に分け、硬化した歯科用複合材料が隣接する歯と歯の間の歯間腔に入り込むのを防止し、それにより、隣接する歯が修復中に結合するのを防止する。これにより、背景技術に記載した既知のプロセスで必要とされるような、隣接する歯と歯の間からの硬化樹脂を切断する必要性、及び複数回にわたる処置の必要性が排除される。
【0007】
本開示によって対処される問題は、隣接する歯と歯の間の歯間腔の内に配置された対応するマトリックスセパレーターの縁部をそれぞれ受けるマトリックスガイドポケットを有する成形型を提供することによって、少なくとも部分的に解決される。歯のいずれか一方の側のマトリックスセパレーター、歯科用複合材料が付加され硬化される歯の表面、及び成形型は、一緒になって、歯肉組織及び隣接する歯から隔離された空洞を画定し、それによって、隣接する歯が互いに結合状態になることを防止する。
【0008】
成形型を作製するために開示されたプロセスには、計画された歯科構造の物理モデルの準備、物理モデルの隣接する歯と歯の間の歯間腔へのマトリックスセパレーターの配置、物理モデル及び設置されたマトリックスセパレーターの上での透明な成形型の形成、及び一体的に形成されたガイドポケットを有する完成した成形型の物理モデルからの取り外しを含む。
【0009】
わずかに修正されたプロセスでは、マトリックスセパレーターの端部を受けるためのポケットを画定する別個に作製されたマトリックスガイドが、マトリックスセパレーター、隣接する歯と歯の間の歯間腔の上に配置され、型がモデル、セパレータ、及びマトリックスガイドの上に形成される。マトリックスガイドには、マトリックスガイドの外側表面が成形型に機械的に連結(インターロック)するために使用されるこぶやギザギザ、又は他の突起が設けられ、その結果、完成した成形型が、物理的に及び/又は粘着力で成形型に結合しているマトリックスガイドが付属したモデルから取り外すことができるようにすることが好ましい。
【0010】
結果として得られる成形型は、計画された修復に対応する輪郭を有する透明な成形型本体と、複数のマトリックスガイドポケットを備え、各ポケットは隣接する歯と歯の間の歯間腔に配置された対応するマトリックスセパレーターの端部を受けるように構成されている。一実施形態では、マトリックスガイドポケットは、別個に作製され成形型本体に一体となって付属するマトリックスガイドによって画定される。別の実施形態では、マトリックスガイドポケットは、成形型本体を構成する材料で一体的に形成される。
【0011】
開示された実施形態では、マトリックスセパレーターは、隣接する歯と歯の間の歯肉表面を覆うためにY字形に分岐した歯肉側終端を含む。
【0012】
開示された歯科修復プロセスは、記載のような成形型の提供、修復のために現存する歯科構造の準備、修復される隣接する歯と歯の間の歯間腔へのマトリックスセパレーターの配置、各マトリックスセパレーターの端部が成形型のガイドポケットの対応する一つが受けるように成形型を現存する歯科構造及びマトリックスセパレーターの上に配置すること、セパレータ、歯科構造、及び成形型表面によって画定される少なくとも1つの型穴への流動性歯科用複合材料の注入、複合材料の硬化、及び修復された歯科構造からの成形型とマトリックスセパレーターの取り外しを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】修復が必要な現存する歯科構造のモデルの正面図である。
【
図2】審美的及び/又は機能的に改善された歯科構造のモデルの正面図で、現存する歯科構造について計画された修復を表す。
【
図3】修復される患者の歯に対応するモデルの歯の間の歯間腔に、マトリックスセパレーターを配置した計画された修復のモデルの正面図である。
【
図4】モデルの隣接する歯の間の模擬歯肉組織に適合し覆うことができる、分岐端を有するマトリックスセパレーターを使用すること以外は、
図3と同様の正面図である。
【
図5A】成形型を作製するために使用される材料にマトリックスセパレーターが浸漬された
図3のモデルの正面図である。
【
図5B】マトリックスガイドがマトリックスセパレーター上に配置され、モデル、マトリックスセパレーター、及びマトリックスガイドが成形型の作製に使用される材料に浸漬された
図3のモデルの正面図である。
【
図6】
図5に示すマトリクスガイドの側面図である。
【
図7B】
図7Aの線7B-7Bに沿って見たマトリックスガイドの側面図である。
【
図8】マトリックスガイドポケットが成形型本体の作製に使用される材料で一体的に形成された歯科修復用の成形型の正面図である。
【詳細な説明】
【0014】
成形型、歯間マトリックスセパレーター、成形型の作製プロセス、及び開示された成形型と歯間マトリックスセパレーターを用いた修復が必要な現存する歯科構造の治療方法を開示する。記載されている方法と器具は、歯科修復手順を大幅に簡素化し、審美的かつ機能的に優れた結果を達成するために必要な労力を軽減し、処置の時間と患者の不快感を軽減することが期待される。
【0015】
歯科修復に使用する成形型を作製するプロセスでは、計画された歯科構造の物理モデルが準備される。物理モデルは、任意の既知技術又は他の適切な技術を使用して準備できる。よく知られている技術には、患者の現存する歯科構造のポジ型複製物すなわちモデル10(
図1)を歯科用硬質石膏又は他の適切な材料で形成する際の元となる歯科用印象(すなわち、歯と周囲の軟組織のネガ型インプリント)の採得がある。ポジ型複製物は、材料(例えば、歯科用ワックス)の追加で修正することもでき、手作業で彫って計画した歯科構造20(
図2)のモデルを改良することもできる。技術としては、まず、三次元(3D)デジタルスキャナを使用してデジタルの印象を作製し現存する歯科構造のデジタルモデルを生成し、次に現存する構造のデジタルモデルを(例えば、CAM/CADソフトウェアの助けを借りて)修正し計画している構造のデジタルモデルを生成することが望ましい。このような技術は、例えば、米国特許第8,366,445号に記載されている。計画している構造のデジタルモデルは、切削又は光造形技術を使用して物理モデルを作製することに使うことができる。
【0016】
計画された歯科構造の物理モデルが作製された後、本明細書で開示される成形型を作製するプロセスでの次のステップは、計画された歯科構造の物理モデルの隣接する歯と歯の間の歯間腔の一つ一つにマトリックスセパレーター22を配置することである。歯科用マトリックスは、修復材の外側の輪郭を作製するのに役立つなど、歯間の修復のために一般的に使用される、薄く、平らな、又は輪郭形成されたシート状の材料(例えば、ステンレス鋼、ポリエステル、マイラーなど)である。本明細書で使用される「マトリックスセパレーター」という表現は、計画された修復の一部である隣接する歯と歯の間の歯間腔に配置するのに適した薄い帯状の材料を指すために使用される。マトリックスセパレーターは、各マトリックスセパレーターの舌側端部、頬側端部及び咬合側端部が成形型のポケット又は溝に確実に係合できるようにサイズ設定されており、その結果、型穴は、修復のために用意された現存する歯の構造、成形型の内面、及び隣接する歯間腔にあるマトリックスセパレーターによって画定される。本明細書で開示される方法及び器具は、単一の歯を修復するために使用することができるが、複数の個別の型穴を画定し、それぞれが修復される歯に関連づけられている成形型及びマトリックスセパレーターを用いれば、複数の歯を同時に修復するために使うとはるかに有用である。マトリックスセパレーターは、その厚さが約0.3mmから約0.7mm、長さが歯間腔を画定する歯の咬合縁(又は切縁)から歯間腔と関連付けられる歯肉組織までの距離にほぼ一致することが望ましい。この長さは、約5mmから約15mmの範囲とすることができる。マトリックスセパレーターの幅も、約5mmから約10mmの範囲とすることができる。金属(例えば、ステンレス鋼、ニッケルなど)のマトリックスセパレーターを採用することは可能だが、修復で使用される歯科用複合組成物の急速な放射線(例えば、紫外線)硬化を促進するためには、透明なマイラー又はポリエステルマトリックスセパレータが好ましい。
【0017】
好ましいマトリックスセパレーター22(
図4)には、修復中に歯科用複合材料と歯間乳頭とが接触しないように歯間乳頭(歯の間の歯肉組織)に沿って枝を広げられる、分岐状又はY字形の終端(歯肉部)24が挙げられる。分岐終端を備えたマトリックスセパレーターは、2枚のプラスチックシートの終端を結合しないままにしながら、2枚のシートの長さの大部分にわたって溶融結合又は接着結合することで作製できる。結合していない自由端を加熱し、わずかにカールさせてから冷却することで、目的のY字型に固定することができる。
【0018】
マトリックスセパレーター22が、計画された歯科構造の物理モデルの隣接する歯と歯の間の歯間腔に配置された後(
図3又は
図4に示すように)、本プロセスでの次のステップは、マトリックスセパレーターの端部が成形型材料に埋め込まれるか、又は成形型材料に突出するように、透明な成形型60を計画された歯科構造の物理モデルの上及び設置されたマトリックスセパレーターの上に形成することである。これは、計画された歯科構造の物理モデル20を硬化性液体材料26(例えば、生体適合性光硬化性ポリマー組成物)が入っている、又は追加されるトレイ25の中に置くことによって可能であり、結果として、物理モデル20の模擬の歯及び模擬の歯肉組織並びに設置されたセパレータは、材料26によって取り囲まれる。成形型60を作製するための成形材料26として使用できる適切な生体適合性光重合性ポリマー組成物は周知であり、市販されている。材料26は、(紫外線照射などで)硬化して個体の成形型を形成できる液体として、トレイ25に加えられ、モデル20とセパレータ22を包み込む。使用可能な光硬化性組成物の例としては、ビニル樹脂組成物、シリコーン樹脂組成物が挙げられる。成形型材料が硬化して成形型60を形成した後は、トレイ25が成形型から分離され、成形型が計画された修復の物理モデル20及びマトリックスセパレーター22から分離され、この時マトリックスガイドのポケットを画定する溝を残した状態である。成形型からトレイを分離する好適な手法、モデル20から成形型60を分離するための適切な手法は周知であり、例えば、米国特許第7,217,131号に記載されている。得られた成形型は、計画された修復に対応した輪郭が形成された内側表面と、修復する患者の隣接する歯と歯の間の歯間腔内に配置された対応するマトリックスセパレーター22の頬側、舌側及び咬合(又は切縁)の端部を受けるための複数のマトリックスガイドのポケット(例えば、溝)とを有する。
【0019】
歯科修復で使用する成形型を作製するための代替プロセスでは、前述したように、計画された歯科構造の物理モデルが用意され、前述したように、計画された歯科構造の物理モデルの隣接する歯と歯の間の歯間腔にマトリックスセパレーターを配置する。その後、マトリックスガイド28が各マトリックスセパレーターに設けられる(
図5B)。各マトリックスガイドは、対応するマトリックスセパレーターの頬側、舌側及び咬合側(又は切縁側)の端部を受けるためのポケット30を画定する。マトリックスセパレーターは、通常U字形又はV字形の外形を有する2枚の重なり合う透明プラスチックシート34、36から構成することができ、これらのシートは、外縁38で(熱接着などにより)接合され、内縁40に沿っては接合されていない。これにより、マトリックスセパレーター22の端部を受けるためのポケットが形成される。マトリックスガイドの外面には、成形時にマトリックスガイドを成形型内に機械的に固定するノブ42、節又は他の突起もしくは機構を設けることができる。透明なマトリックスセパレーターを作製するために使用されるのと同じ材料(例えば、厚さ0.3mmから0.7mmのマイラー又はポリエステルのシート状の材料)を、マトリックスガイドの作製に使用することができる。結果として得られる成形型は、(溝ではなく)マトリックスガイドポケットが別個に作製され成形型本体に一体的に取り付けられる(例えば、接着及び/又は機械的連結)マトリックスガイド(成形型本体そのものによって定義される溝ではない)によって画定されることを除いて、前述の成形型と通常同様である。
【0020】
記載された実施形態のいずれにおいても、歯科用複合材料(すなわち、流動性樹脂系の硬化性組成物、通常二酸化ケイ素のような無機充填材を含む)を、成形型60、歯科構造及びマトリックスセパレーターによって画定される型穴50のそれぞれに導入するために注入ポート46が設けられ、歯科用複合材料が充填される際に型穴から空気を逃がすために通気口48が設けられる(
図8参照)。
【0021】
成形型60を作製するさらに別の方法には、固体ブロック状の材料(例えば、プラスチック)を切削加工して、(前述の)計画された構造のデジタルモデルのネガプロファイルを作製すること、又は計画された構造(つまり、計画された修復)のデジタルモデルに基づいて目的の成形型を光造形(3D印刷)の付加製造技術を使用し直接印刷することが挙げられる。
【0022】
修復が必要な現存する歯科構造を治療するプロセスは、まず、計画された修復に一致する内面輪郭を有し、現存する歯科構造の隣接する歯と歯の間の歯間腔に配置される対応するマトリックスセパレーターの頬側、舌側及び咬合側の端部を受けるための複数のマトリックスガイドポケットを有する、透明な成形型の提供である。成形型は、別途作製され成形型本体に一体的に取り付けられたマトリックスガイドがついている成形型、又は成形型本体の材料で一体的に形成したガイドポケットがついている成形型のいずれかを使用することができる。修復される現存する歯科構造の上に成形型を配置する前に、修復のために現存する歯科構造が準備される。これには、ドリリング(虫歯や古い詰め物の除去など)、ミリング(望ましくない歯間の咬合接触を引き起こす余分な材料の除去など)、及び歯科用複合材料と接着するためのエナメル質及び象牙質の歯表面の前処理が含まれる。歯科用複合材料で接着するための歯表面の前処理の通常の手順には、表面の軽いスカッフィングすなわち表面の軽い粗化(細かいダイヤモンドバーを用いるなど)、35%リン酸ゲルを用いての約20秒間のエッチング、水でのすすぎが含まれる。非粘性結合剤は、歯の表面に塗布し(紫外線照射などで)硬化させることで、修復のための複合樹脂を受けるのに適したハイブリッド層を作製することができる。歯修復のための前処理の後は、マトリックスセパレーターが現存する歯科構造の隣接する歯と歯の間の歯間腔のそれぞれに配置され、次に、各マトリックスセパレーターの頬側、舌側および咬合側の端部をマトリックスガイドポケットの対応する1つが受けるようにして、成形型が、修復の準備がなされた現存する歯科構造及びマトリックスセパレーターの上に配置される。これにより、マトリックスセパレーターによって互いに分けられた複数の型穴が形成され、それによって、隣接する歯の間から硬化した歯科用複合材料を切断する必要はなく、一つの成形型の取り付けで、複数の歯を同時に修復することができる。修復のために準備された歯とマトリックスセパレーターの上に成形型を取り付けた後、流動性の歯科用複合材料が、各穴に関連付けられた注入ポートを通して各型穴内がいっぱいになるまで注入される。その後、歯科用複合樹脂は硬化される(紫外線照射などを用いて。その照射は成形型の透明性、及び好ましくはマトリックスセパレーターの透明性によって促進される)。硬化後、成形型とマトリックスセパレーターは修復された歯科構造から取り外される。
【0023】
記載された実施形態は、好ましいもの及び/又は例示されたものであるが、限定するものではない。添付の特許請求の範囲内で様々な修正が考えられる。
【国際調査報告】