(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】糸状腐食耐性コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 157/10 20060101AFI20240621BHJP
C09D 5/03 20060101ALI20240621BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240621BHJP
B32B 27/26 20060101ALI20240621BHJP
B60B 3/00 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C09D157/10
C09D5/03
C09D5/00 D
B32B27/26
B60B3/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574402
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(85)【翻訳文提出日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 US2022072607
(87)【国際公開番号】W WO2022256783
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399074983
【氏名又は名称】ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PPG Industries Ohio,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラリマー、トロイ、ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ドナルドソン、スーザン、ファンディ
(72)【発明者】
【氏名】クルイス、 パヴェル、マチェイ
(72)【発明者】
【氏名】フェルプス、アリシア、マリー
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AB01B
4F100AB03B
4F100AB09B
4F100AB10B
4F100AK01A
4F100AK25A
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4J038NA03
4J038PA02
4J038PA07
4J038PB07
4J038PC02
(57)【要約】
本発明は、エポキシ官能基を含む付加ポリマーと、カルボン酸官能性架橋剤と、ブロックイソシアネート官能性架橋剤と、を含む、粉末コーティング組成物に関する。付加ポリマーは、少なくとも1つのエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーを含む成分から得られる。成分は、付加ポリマーを形成する成分に基づいて、10重量%超かつ22重量%未満の範囲内のある量の少なくとも1つのエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末コーティング組成物であって、
(a)エポキシ官能基を含む付加ポリマーであって、前記付加ポリマーが、
(i)少なくとも1つのエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーを含む成分から得られ、前記成分が、前記付加ポリマーを形成する前記成分に基づいて、10重量%超かつ22重量%未満の範囲内のある量の(i)前記少なくとも1つのエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーを含む、付加ポリマーと、
(b)カルボン酸官能性架橋剤と、
(c)ブロックイソシアネート官能性架橋剤と、を含む、粉末コーティング組成物。
【請求項2】
(i)前記少なくとも1つのエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーが、エポキシ官能性(メタ)アクリレートモノマーを含む、請求項1に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項3】
前記エポキシ官能性(メタ)アクリレートモノマーが、モノ-エポキシ官能性(メタ)アクリレートモノマーを含む、請求項2に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項4】
前記付加ポリマーを形成する前記成分が、(ii)少なくとも1つの非官能性エチレン性不飽和モノマーをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項5】
(ii)前記少なくとも1つの非官能性エチレン性不飽和モノマーが、少なくとも2つの異なる非官能性エチレン性不飽和モノマーを含む、請求項4に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項6】
(ii)前記非官能性エチレン性不飽和モノマーが、脂肪族非官能性エチレン性不飽和モノマーおよび芳香族非官能性エチレン性不飽和モノマーを含む、請求項5に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項7】
前記成分が、前記付加ポリマーを形成する前記成分に基づいて、少なくとも50重量%の(ii)前記非官能性エチレン性不飽和モノマーを含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項8】
(a)と(b)との反応生成物が、ヒドロキシル官能基を含み、(c)前記ブロックイソシアネート官能性架橋剤が、前記ヒドロキシル官能基と反応性である、請求項1~7のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項9】
前記成分が、前記付加ポリマーを形成する前記成分に基づいて、15重量%~20重量%の範囲内の量で(i)前記少なくとも1つのエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項10】
前記粉末コーティング組成物が、顔料を実質的に含まない、請求項1~9のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項11】
前記付加ポリマーが、少なくとも30℃のガラス転移温度を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項12】
前記粉末コーティング組成物が、前記粉末コーティング組成物の総固体重量に基づいて、少なくとも70重量%の(a)前記付加ポリマーを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物から形成されたコーティングで少なくとも部分的にコーティングされた、基材。
【請求項14】
前記基材が、金属を含む、請求項13に記載の基材。
【請求項15】
前記金属が、アルミニウム、鋼、マグネシウム、またはそれらの合金を含む、請求項14に記載の基材。
【請求項16】
前記基材が、車両用の金属ホイールを含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の基材。
【請求項17】
前記基材が、前記コーティングの少なくとも一部分の下地となる前処理層を含む、請求項13~16のいずれか一項に記載の基材。
【請求項18】
前記コーティングが、前記基材の少なくとも一部分を覆ってモノコートを形成する、請求項13~16のいずれか一項に記載の基材。
【請求項19】
金属ホイールを作製する方法であって、
前記金属ホイールの少なくとも一部分を覆って、請求項1~12のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物を塗布することを含む、方法。
【請求項20】
前記粉末コーティング組成物が、前記金属ホイールの前記少なくとも一部分を覆ってモノコートを形成するように塗布される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
糸状腐食を低減するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末コーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
車両で使用されるものを含む金属基材などの基材は、多くの場合、耐食性を提供するためにコーティングが提供される。例えば、基材は、耐食性特性を提供するために耐食性コーティングでコーティングされている。当該基材を、耐食性特性を有するコーティングで覆って塗布して、経時的な腐食から基材を保護することができる。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、粉末コーティング組成物であって、(a)エポキシ官能基を含む付加ポリマーであって、付加ポリマーが、(i)少なくとも1つのエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーを含む成分から得られ、成分が、付加ポリマーを形成する成分に基づいて、10重量%超かつ22重量%未満の範囲内のある量の(i)少なくとも1つのエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーを含む、付加ポリマーと、(b)カルボン酸官能性架橋剤と、(c)ブロックイソシアネート官能性架橋剤と、を含む、粉末コーティング組成物を対象とする。
【発明を実施するための形態】
【0004】
以下の詳細な記載の目的のために、本発明が、明示的に相反することを示す場合を除き、様々な代替的な変形およびステップ順序を仮定し得ることが理解されるべきである。さらに、任意の実施例以外で、または別段の指示がない限り、例えば、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量を表すすべての数は、「約」という用語によっていかなる場合も修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、相反する指示がない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本発明によって得られる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。少なくとも、かつ、均等論の適用を特許請求の範囲に限定しようとするものではなく、各数値パラメータは、報告された有効数字に照らし合わせ、かつ通常の四捨五入技法を適用することによって少なくとも解釈されるべきである。
【0005】
本発明の広い範囲を記載する数値範囲およびパラメータは、近似値であるにもかかわらず、特定の例に記載の数値は、可能な限り正確に報告されている。しかしながら、任意の数値は、それらのそれぞれの試験測定値に見出される標準変動から必然的に生じるある特定の誤差を本質的に含む。
【0006】
また、本明細書に記載の任意の数値範囲は、その中に包含されるすべての部分範囲を含むことを意図していることが理解されるべきである。例えば、「1~10」の範囲は、記載の最小値1と記載の最大値10との間の(およびそれらを含む)すべての部分範囲を含む、すなわち、1に等しいまたは1を超える最小値と10に等しいまたは10未満の最大値とを有することが意図される。
【0007】
本出願では、別段の明記がない限り、単数形の使用は、複数形を含み、複数形は、単数形を包含する。加えて、本出願では、「および/または」がある特定の場合において明示的に使用され得るが、別段の明記がない限り、「または」の使用は、「および/または」を意味する。さらに、本出願では、「1つの(a)」または「1つの(an)」の使用は、別段の明記がない限り、「少なくとも1つの」を意味する。例えば、「1つの」架橋リンカー、「1つの」付加ポリマーなどは、これらの項目のうちのいずれかのうちの1つまたは1つより多くを指す。また、本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、プレポリマー、オリゴマー、およびホモポリマーとコポリマーとの両方を指すことを意味する。用語「樹脂」は、「ポリマー」と交換可能に使用される。
【0008】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という移行句(および他の同等の用語、例えば、「含有する(containing)」および「含む(including)」)は、「非限定的」であり、不特定の事柄を包含するように限定されていない。「含む」という観点から記載されているが、「から本質的になる」および「からなる」という用語もまた、本発明の範囲内である。
【0009】
本発明は、粉末コーティング組成物であって、(a)エポキシ官能基を含む付加ポリマーであって、付加ポリマーが、(i)少なくとも1つのエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーを含む成分から得られ、成分が、付加ポリマーを形成する成分に基づいて、10重量%超かつ22重量%未満の範囲内のある量の(i)少なくとも1つのエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーを含む、付加ポリマーと、(b)カルボン酸官能性架橋剤と、(c)ブロックイソシアネート官能性架橋剤と、を含む、粉末コーティング組成物を対象とする。
【0010】
粉末コーティング組成物は、付加ポリマーを含み、付加ポリマーは、他の副生成物の共生成を伴わずにモノマーの連結から形成され得る。付加ポリマーを形成するために使用される成分は、周囲温度(20℃~25℃)で固体であり得る。粉末コーティング組成物の付加ポリマーは、(例えば、エマルション重合によって)エチレン性不飽和モノマーから誘導され得る。本明細書で使用される場合、「エチレン性不飽和」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する基を指す。エチレン性不飽和基の非限定的な例としては、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリレート」という用語は、メタクリレートおよびアクリレートの両方を指す。また、「(メタ)アクリルアミド」などの用語は、アクリルアミドおよびメタクリルアミドの両方を指す。
【0011】
付加ポリマーは、少なくとも1つのエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーを含む成分から得られる。付加ポリマーは、追加のエチレン性不飽和モノマーなどの追加の成分から得てもよい。追加のエチレン性不飽和モノマーは、エポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーとは異なってもよい。
【0012】
エポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーの非限定的な例としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、3,4-エポキシ-1-ブテン、(R)-(+)-1,2-エポキシ-9-デセンを挙げることができる。例えば、1つの非限定的なエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーとしては、SigmaAldrich(St.Louis,MO)から市販のEpoxy Embedding Mediumキットを挙げることができる。エポキシ官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、モノ-エポキシ官能性(メタ)アクリレートモノマーを挙げることができる。
【0013】
付加ポリマーを形成するために使用される成分は、付加ポリマーを形成する成分に基づいて、10重量%超かつ22重量%未満の量でエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーを含む。付加ポリマーを形成するために使用される成分は、付加ポリマーを形成する成分に基づいて、15重量%~20重量%の量でエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーを含み得る。
【0014】
エポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーは、エポキシ官能性エチレン性不飽和モノマー中に少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも3つのエポキシ官能基を含み得る。エポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーは、エポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーがモノ-エポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーであるように、正確に1つのエポキシ官能基を含み得る。エポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーは、エポキシ官能性エチレン性不飽和モノマー中に1~3つのエポキシ官能基を含み得る。
【0015】
付加ポリマーは、付加ポリマーの繰り返し単位当たり少なくとも1つ、少なくとも2つ、または少なくとも3つのエポキシ官能基を含み得る。付加ポリマーは、付加ポリマーの繰り返し単位当たり正確に1つのエポキシ官能基を含み得る。付加ポリマーは、付加ポリマーの繰り返し単位当たり1~3つのエポキシ官能基を含み得る。
【0016】
追加のエチレン性不飽和モノマーは、モノ-エチレン性不飽和モノマー、マルチ-エチレン性不飽和モノマー、またはそれらの組み合わせを含み得る。モノ-エチレン性不飽和モノマーは、1つのみのエチレン性不飽和基を含むモノマーを指し、マルチ-エチレン性不飽和モノマーは、2つまたは2つより多くのエチレン性不飽和基を含むモノマーを指す。
【0017】
エポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーとは異なるエチレン性不飽和モノマーの非限定的な例としては、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、エチレン性不飽和モノマーを含有する酸基、ビニル芳香族モノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの非限定的な例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、およびそれらの組み合わせが挙げられる。他の非限定的な例としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの2当量の(メタ)アクリル酸の縮合から形成されるジ(メタ)アクリレートアルキルジエステルが挙げられる。ブタンジオールおよびヘキサンジオールなどのC2-C24ジオールから形成されたジ(メタ)アクリレートアルキルジエステルも使用され得る。
【0019】
(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルの非限定的な例としては、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0020】
エチレン性不飽和モノマーを含有する酸基の非限定的な例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、アスパラギン酸、リンゴ酸、メルカプトスクシン酸、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0021】
ビニル芳香族モノマーの非限定的な例としては、スチレン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどのジビニル芳香族モノマー、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0022】
(メタ)アクリルアミドモノマーの非限定的な例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N’-メチレンビスアクリルアミドなどのジ-(メタ)アクリルアミド官能性モノマー、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0023】
追加のエチレン性不飽和モノマーは、エポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーとは異なる官能性エチレン性不飽和モノマーを含み得る。本明細書で使用される場合、「官能性エチレン性不飽和モノマー」という用語は、エチレン性不飽和炭素-炭素二重結合に加えて、コーティング組成物の別の成分の官能基と反応性である基を含む、エチレン性不飽和モノマーを指す。官能性エチレン性不飽和モノマーは、アミン基、ヒドロキシル基、チオール基、カルバメート基、アミド基、尿素基、カルボキシル基、アルデヒド基、エステル基、エーテル基、カルボニル基、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない、多様な反応性官能基のうちの少なくとも1つを有し得る。官能性エチレン性不飽和モノマーの非限定的な例としては、アクリル酸またはメタクリル酸のエステル、およびヒドロキシエチルメタクリレートなどのヒドロキシル官能性モノマーが挙げられる。1つの非限定的な例では、官能性エチレン性不飽和モノマーは、コーティング組成物の別の成分の官能基と反応性であるが、付加ポリマーを得るために使用される少なくとも1つのエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーのエポキシ官能基と反応性ではない、追加の基を含み得る。
【0024】
追加のエチレン性不飽和モノマーは、非官能性エチレン性不飽和モノマーを含み得る。本明細書で使用される場合、「非官能性エチレン性不飽和モノマー」という用語は、エチレン性不飽和炭素-炭素二重結合に加えて、コーティング組成物の別の成分の官能基と反応性である基を含まない、エチレン性不飽和モノマーを指す。非官能性エチレン性不飽和モノマーは、脂肪族非官能性エチレン性不飽和モノマーおよび/または芳香族非官能性エチレン性不飽和モノマーを含み得る。非官能性エチレン性不飽和モノマーの非限定的な例としては、スチレン、メチルメタクリレート、およびn-ブチルメタクリレートが挙げられる。
【0025】
追加のエチレン性不飽和モノマーは、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、またはそれより多くの異なるエチレン性不飽和モノマーを含み得る。追加の1つのエチレン性不飽和モノマーまたは複数のエチレン性不飽和モノマーは、官能性エチレン性不飽和モノマーのみ、または非官能性エチレン性不飽和モノマーのみ、または官能性および非官能性エチレン性不飽和モノマーの両方の組み合わせを含み得る。追加のエチレン性不飽和モノマーは、複数の異なる非官能性エチレン性不飽和モノマーを含み得る。非官能性エチレン性不飽和モノマーは、脂肪族非官能性エチレン性不飽和モノマーおよび芳香族非官能性エチレン性不飽和モノマーを含み得る。
【0026】
付加ポリマーを形成するために使用される成分は、付加ポリマーを形成する成分に基づいて、少なくとも50重量%、または少なくとも55重量%、または少なくとも60重量%、または少なくとも65重量%の量で追加のエチレン性不飽和モノマーを含み得る。付加ポリマーを形成するために使用される成分は、付加ポリマーを形成する成分に基づいて、最大85重量%、または最大80重量%、または最大75重量%、または最大70重量%の量で追加のエチレン性不飽和モノマーを含み得る。付加ポリマーを形成するために使用される成分は、付加ポリマーを形成する成分に基づいて、55重量%~80重量%、または60重量%~75重量%、または65重量%~70重量%などの、50重量%~85重量%の範囲で追加のエチレン性不飽和モノマーを含み得る。
【0027】
1つの非限定的な実施形態では、付加ポリマーを形成するために使用される成分は、付加ポリマーを形成する成分に基づいて、10重量%~22重量%の範囲でエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマー、付加ポリマーを形成する成分に基づいて50重量%~85重量%の範囲の量で追加のエチレン性不飽和モノマーを含み得、付加ポリマーを形成するために使用される成分の重量バランスの残りは、追加の材料および添加剤である。
【0028】
付加ポリマーは、少なくとも1,000g/molまたは少なくとも2,000g/molの数平均分子量を有し得る。付加ポリマーは、最大8,000g/molまたは最大5,000g/molの数平均分子量を有し得る。付加ポリマーは、2,000g/mol~5,000g/molなどの1,000g/mol~8,000g/molの範囲の数平均分子量を有し得る。
【0029】
付加ポリマーは、少なくとも2,000g/mol、または少なくとも4,000g/mol、または少なくとも5,000g/molの重量平均分子量を有し得る。付加ポリマーは、最大20,000g/mol、または最大16,000g/mol、または最大15,000g/mol、または最大12,000g/molの重量平均分子量を有し得る。付加ポリマーは、4,000g/mol~20,000g/molなど、5,000g/mol~20,000g/molなど、2,000g/mol~16,000g/molなど、5,000g/mol~15,000g/molなど、4,000g/mol~12,000g/molなどの2,000g/mol~20,000g/molの範囲の重量平均分子量を有し得る。例えば、付加ポリマーは、7,000g/mol~8,000g/molの範囲の重量平均分子量を有し得る。
【0030】
分子量(数および重量平均の両方)は、本明細書で使用される場合、ASTM D6579-11に従ってポリスチレン標準物質を使用するゲル透過クロマトグラフィーによって決定される(Waters2414示差屈折計(RI検出器)を備えたWaters2695分離モジュールを使用して実施され、テトラヒドロフラン(THF)を1mL/分の流量で溶出剤として使用し、室温での分離のために2つのPLgel Mixed-C(300×7.5mm)カラムを使用し、ポリマー試料の重量および数平均分子量は、800~900,000Daの線状ポリスチレン標準物質と比較するゲル透過クロマトグラフィーによって測定され得る)。
【0031】
付加ポリマーは、少なくとも25℃、または少なくとも30℃、または少なくとも40℃、または少なくとも50℃のTgを有し得る。付加ポリマーは、最大175℃、または最大150℃、または最大100℃、または最大90℃、または最大80℃、または最大70℃のTgを有し得る。付加ポリマーは、25℃~175℃の範囲、または25℃~150℃の範囲、または25℃~100℃の範囲、または25℃~90℃の範囲、または30℃~90℃の範囲、または40℃~90℃の範囲、または40℃~80℃の範囲、または50℃~80℃の範囲、または50℃~70℃の範囲のTgを有し得る。本明細書で使用される場合、「Tg」という用語は、別段の指示がない限り、ASTM D3418-12に従う示差走査熱量測定によって測定されるガラス転移温度を指す。
【0032】
付加ポリマーは、熱硬化性ポリマーを含み得る。したがって、本明細書では、「熱硬化性」ポリマーは、硬化または架橋時に不可逆的に硬化される樹脂を指し、ポリマー成分のポリマー鎖が、共有結合によって一緒に接合される。硬化または架橋すると、熱硬化性ポリマーは、熱の印加時には融解せず、溶媒に不溶性である。さらに、本明細書で使用される場合、「熱可塑性」ポリマーは、共有結合によって接合されておらず、それによって、加熱時に液体の流れを受ける場合があり、溶媒に可溶性であるポリマー成分を含む、ポリマーを指す。
【0033】
粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総固体重量に基づいて、少なくとも50重量%、または少なくとも60重量%、または少なくとも70重量%、または少なくとも80重量%、または少なくとも85重量%の量で付加ポリマーを含み得る。粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総固体重量に基づいて、最大96重量%、または最大95重量%、または最大94重量%、または最大90重量%の量で付加ポリマーを含み得る。粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総固体重量に基づいて、50重量%~96重量%の範囲、または60重量%~96重量%の範囲、または70重量%~96重量%の範囲、または70重量%~94重量%の範囲、または80重量%~96重量%の範囲、または80重量%~95重量%の範囲、または80重量%~90重量%の範囲、または85重量%~96重量%の範囲、または85重量%~95重量%の範囲、または85重量%~90重量%の範囲の量で付加ポリマーを含み得る。
【0034】
粉末コーティング組成物は、カルボン酸官能性架橋剤を含む。本明細書で使用される場合、「架橋剤」は、他の官能基と反応性であり、共有結合を通して2つまたは2つより多くのモノマーまたはポリマー分子を連結することが可能である2つまたは2つより多くの官能基を含む、化学種を指す。カルボン酸官能性架橋剤は、付加ポリマーのエポキシド基などのエポキシド基と反応性であり得る。カルボン酸官能性架橋剤は、周囲温度(20℃~25℃)で固体であり得る。
【0035】
カルボン酸官能性架橋剤は、様々なタイプのポリ酸を含み得る。本明細書で使用される場合、「ポリ酸」は、少なくとも2つのカルボン酸官能基を含む化合物を指す。カルボン酸官能性架橋剤は、2つまたは2つより多くのカルボン酸官能基を有するC3-C30アルキル、アルケニル、またはアルキニル化合物を含み得る。カルボン酸官能性架橋剤は、式:
HO2C-[(CH2)n]-CO2H
によって記載され得、式中、nが、1~18の範囲内の整数である。カルボン酸官能性架橋剤の例としては、ドデカン二酸およびその誘導体、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、コハク酸、ピメリン酸、セバシン酸、マレイン酸、クエン酸、イタコン酸、アコニット酸、オクタデカン二酸などのポリカルボキシ化合物が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸のさらなる例としては、1,2-、1,3-、および1,4-シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
【0036】
カルボン酸官能性架橋剤は、カルボン酸基含有ポリマーを含み得る。カルボン酸基含有ポリマーの例としては、アクリルポリマー、ポリエステルポリマー、およびポリウレタンポリマーが挙げられ、アクリルポリマー、ポリエステルポリマー、および/またはポリウレタンポリマーが、2つまたは2つより多くのカルボン酸基を含有する。
【0037】
カルボン酸官能性架橋剤は、ポリ酸の組み合わせを含み得る。ポリ酸の組み合わせは、カルボン酸官能性架橋剤での使用に好適である、先に開示のポリ酸のうちのいずれかを含み得る。例えば、カルボン酸官能性架橋剤は、少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つ、または少なくとも5つのポリ酸の組み合わせを含み得る。
【0038】
粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総固体重量に基づいて、少なくとも3重量%、または少なくとも5重量%、または少なくとも7重量%、または少なくとも7.5重量%の量でカルボン酸官能性架橋剤を含み得る。粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総固体重量に基づいて、最大20重量%、または最大18重量%、または最大15重量%、または最大12重量%の量でカルボン酸官能性架橋剤を含み得る。粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総固体重量に基づいて、3重量%~20重量%の範囲、または5重量%~18重量%の範囲、または5重量%~15重量%の範囲、または5重量%~12重量%の範囲、または7重量%~15重量%の範囲、または7.5重量%~12重量%の範囲の量でカルボン酸官能性架橋剤を含み得る。
【0039】
付加ポリマーおよびカルボン酸官能性架橋剤は、反応して、少なくとも1つのヒドロキシル基を含む反応生成物を形成し得る。架橋剤の少なくとも1つの酸基は、付加ポリマーの少なくとも1つのエポキシ基と反応し得る。
【0040】
粉末コーティング組成物は、ブロックイソシアネート官能性架橋剤を含む。(非ブロック化されると)ブロックイソシアネート官能性架橋剤は、付加ポリマーとカルボン酸官能性架橋剤との反応生成物のヒドロキシル基などのヒドロキシル基と反応し得る。ブロックイソシアネート官能性架橋剤は、周囲温度(20℃~25℃)で固体であり得る。
【0041】
ブロックイソシアネート官能性架橋剤は、ポリイソシアネートを含み得る。本明細書で使用される場合、「ポリイソシアネート」という用語は、2つまたは2つより多くのイソシアネート官能基を含有する化合物を指す。使用され得るポリイソシアネートとしては、脂肪族および芳香族ジイソシアネート、ならびにより高い官能性のポリイソシアネートが挙げられる。好適なポリイソシアネートの非限定的な例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート(H12MDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(m-TMXDI)、p-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(p-TMXDI)、エチレンジイソシアネート、1,2-ジイソシアナトプロパン、1,3-ジイソシアナトプロパン、1,6-ジイソシアナトヘキサン(ヘキサメチレンジイソシアネートまたはHDI)、1,4-ブチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、1,4-メチレンビス-(シクロヘキシルイソシアネート)、トルエンジイソシアネート(TDI)、m-キシリレンジイソシアネート(MXDI)およびp-キシリレンジイソシアネート、4-クロロ-1,3-フェニレンジイソシアネート、1,5-テトラヒドロ-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、ならびに1,2,4-ベンゼントリシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ならびにそれらの混合物および組み合わせが挙げられる。
【0042】
いくつかの例では、2つまたは2つより多くのイソシアネート官能性架橋剤は、二量体および/または三量体として一緒に連結して、IPDIの三量体などのポリイソシアネートを形成し得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、「ブロックイソシアネート」という用語は、内部でブロックされているおよび/または外部ブロッキング剤と反応しており、熱などの外部刺激への曝露時など、内部ブロッキング剤および/または外部ブロッキング剤が除去されるまで、イソシアネート官能基が反応することを防止するイソシアネート官能基を有する化合物を指す。外部ブロッキング剤の非限定的な例としては、フェノール、ピリジノール、チオフェノール、メチルエチルケトキシム、アミド、カプロラクタム(例えば、ε-カプロラクタム)、イミダゾール、およびピラゾールが挙げられる。ブロックイソシアネートとしては、ウレトジオン内部ブロックイソシアネート付加物などのウレトジオンイソシアネートを挙げることができる。
【0044】
ブロックイソシアネート官能性架橋剤は、ε-カプロラクタム-ブロックイソホロンジイソシアネートを含み得る。ε-カプロラクタム-ブロックイソホロンジイソシアネートとしては、主に、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネートのシスおよびトランス異性体の混合物、そのブロック二官能性二量体、そのブロック三官能性三量体、または単量体、二量体、および/もしくは三量体形態の混合物などのブロック二官能性モノマーイソホロンジイソシアネートを挙げることができる。ブロックイソシアネート官能性架橋剤は、ε-カプロラクタム-ブロック二官能性単量体イソホロンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートのε-カプロラクタム-ブロック三官能性三量体を含む混合物を含み得る。
【0045】
ブロックイソシアネート官能性架橋剤は、イソホロンジイソシアネートの1,3-ジアゼチジン-2,4-ジオン二量体と、構造:
【化1】
を有するジオールとの付加物を含み得、式中、nが、1に等しいまたは1を超え、R
1が、2価の1-メチレン-1,3,3-トリメチル-5-シクロヘキシルラジカル、例えば、構造:
【化2】
を有するラジカルであり、R
2が、ジオールの二価の脂肪族、脂環式、アラ脂肪族(araliphatic)、または芳香族残基であり、Xが、1,3-ジアゼチジン-2,4-ジオンジイルラジカル、例えば、以下の構造を有するラジカルである。
【化3】
付加物の形成におけるNCO対OH基の比率は、1:0.5~1:0.9であり得る。ジアゼチジンジオン対ジオールのモル比率は、2:1~10:9であり得る。付加物中の遊離イソシアネート基の含有量は、付加物の総重量に基づいて、8重量%を超えてはならない。付加物は、500~4000の重量および/または数平均分子量を有し得る。付加物は、40℃~130℃の融点および/またはTgを有し得る。本明細書で使用される場合、融点および/またはTgは、別段の記載がない限り、ASTM D3418-12に従う示差走査熱量測定を使用して測定される。
【0046】
イソホロンジイソシアネートの1,3-ジアゼチジン-2,4-ジオン二量体とジオールとの付加物は、1:0.6~1:0.8などの1:0.5~1:0.9のイソシアント:ヒドロキシル比率を与える反応物の比率で、イソホロンジイソシアネートのジアゼチジン二量体(いくつかの例では、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート三量体を含まない)をジオールと反応させることによって調製され得る。付加物は、1450~2800の重量または数平均分子量、および85℃~120℃の融点を有し得る。ジオール反応物としては、1,4-ブタンジオールを挙げることができる。
【0047】
粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総固体重量に基づいて、少なくとも0.1重量%、または少なくとも0.5重量%、または少なくとも1重量%、または少なくとも3重量%、または少なくとも5重量%の量でイソシアネート官能性架橋剤を含み得る。粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総固体重量に基づいて、最大20重量%、または最大15重量%、または最大12重量%、または最大10重量%の量でイソシアネート官能性架橋剤を含み得る。粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総固体重量に基づいて、0.1重量%~20重量%の範囲、または0.5重量%~20重量%の範囲、または1重量%~20重量%の範囲、または2重量%~20重量%の範囲、または3重量%~20重量%の範囲、または3重量%~15重量%の範囲、または3重量%~12重量%の範囲、または3重量%~10重量%の範囲、または5重量%~10重量%の範囲の量でイソシアネート官能性架橋剤を含み得る。
【0048】
ブロックイソシアネート官能性架橋剤は、粉末コーティング組成物が、少なくとも100℃、または少なくとも120℃、または少なくとも150℃、または少なくとも180℃の温度まで加熱されると、非ブロック化され得、イソシアネート基が、エポキシ官能基を含む付加ポリマーとカルボン酸官能性架橋剤との反応生成物のヒドロキシル基と反応することを可能にする。イソシアネート官能性架橋剤によって提供される追加の架橋は、生じるコーティングに改善された酸エッチング耐性を提供し得る。
【0049】
粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総固体重量に基づいて、50重量%~96重量%の範囲で付加ポリマー(a)と、3重量%~20重量%の範囲でカルボン酸官能性架橋剤(b)と、0.1重量%~20重量%の範囲でブロックイソシアネート官能性架橋剤(c)と、を含み得る。粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総固体重量に基づいて、70重量%~94重量%の範囲で付加ポリマー(a)と、5重量%~18重量%の範囲でカルボン酸官能性架橋剤(b)と、1重量%~20重量%の範囲でブロックイソシアネート官能性架橋剤(c)と、を含み得る。粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総固体重量に基づいて、75重量%~90重量%の範囲で付加ポリマー(a)と、5重量%~15重量%の範囲でカルボン酸官能性架橋剤(b)と、3重量%~15重量%の範囲でブロックイソシアネート官能性架橋剤(c)と、を含み得る。粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総固体重量に基づいて、80重量%~85重量%の範囲で付加ポリマー(a)と、5重量%~12重量%の範囲でカルボン酸官能性架橋剤(b)と、3重量%~10重量%の範囲でブロックイソシアネート官能性架橋剤(c)と、を含み得る。例えば、粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総固体重量に基づいて、82重量%の量で付加ポリマー(a)と、11重量%の量でカルボン酸官能性架橋剤(b)と、7重量%の量でブロックイソシアネート官能性架橋剤(c)と、を含み得る。
【0050】
粉末コーティング組成物は、追加の材料を含み得る。粉末コーティング組成物に含まれ得る材料の非限定的な例としては、可塑剤、酸化防止剤、流動剤、表面制御剤(例えば、クレーター防止添加剤)、チキソトロープ剤、スリップ助剤、触媒、ベンゾインなどのガス抑制剤、反応阻害剤(例えば、腐食阻害剤)、テクスチャライザー、UV吸収剤、熱酸化防止安定剤、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン光安定剤(HALS))、および他の慣習的な補助剤が挙げられる。
【0051】
粉末コーティング組成物は、顔料を含み得る。あるいは、粉末コーティング組成物は、顔料を実質的に含まないか、本質的に含まないか、または完全に含まなくてもよい。「顔料を実質的に含まない」という語句は、コーティング組成物が、粉末コーティング組成物の総固体重量に基づいて、1000重量百万分率(ppm)未満の顔料を含有することを意味し、「顔料を本質的に含まない」は、コーティング組成物が、粉末コーティング組成物の総固体重量に基づいて、100ppm未満の顔料を含有することを意味し、「顔料を完全に含まない」は、コーティング組成物が、粉末コーティング組成物の総固体重量に基づいて、20重量十億分率(ppb)未満の顔料を含有することを意味する。
【0052】
例示的な顔料および/または顔料組成物としては、カルバゾールジオキサジン粗顔料、アゾ、モノアゾ、ジアゾ、ナフトールAS、塩型(フレーク)、ベンゾイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン、および多環式フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ペリノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、アントラキノン、インダンスロン、アントラピリミジン、フラバントロン、ピラントロン、アンタントロン、ジオキサジン、トリアリールカルボニウム、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロールレッド(「DPPBOレッド」)、二酸化チタン、カーボンブラック、およびそれらの混合物または組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
本発明はまた、本明細書に記載の粉末コーティング組成物から形成されたコーティングで少なくとも部分的にコーティングされた基材に関する。例えば、粉末コーティング組成物は、自動車基材を含む車両基材、工業用基材、航空宇宙基材、海洋基材、包装基材、電子機器、建築基材などに塗布され得る。
【0054】
本開示では、「車両」という用語は、最も広い意味で使用され、あらゆるタイプの航空機、宇宙機、船舶、および地上車両が挙げられる。例えば、車両としては、例えば、飛行機(例えば、自家用飛行機、ならびに小型、中型、または大型商用旅客機、貨物および軍用飛行機)、ヘリコプター(例えば、自家用、商用、および軍用ヘリコプター)、航空宇宙車両(例えば、ロケットおよび他の宇宙機)などの航空機などの航空宇宙基材を挙げることができるが、これらに限定されない。また、車両としては、例えば、動物用トレーラー(例えば、馬用トレーラー)、車、トラック、バス、バン、耐久性装備、ゴルフカート、オートバイ、自転車、列車、鉄道車などの地上車両を挙げることができる。また、車両としては、例えば、船、ボート、およびホバークラフトなどの船舶を挙げることができる。
【0055】
コーティング組成物は、ツール、耐久性装備、オフィス家具などの家具(例えば、オフィスチェア、デスク、ファイリングキャビネットなど)、冷蔵庫、オーブン、およびレンジ、食器洗い機、電子レンジ、洗濯機、乾燥機、小型家電(例えば、コーヒーメーカー、スロークッカー、圧力鍋、ブレンダーなど)などの家電、金属性金具、窓枠に使用される押出成形アルミニウムなどの押出成形金属、他の屋内および屋外用金属性建材などを含み得る、工業用基材を覆って塗布され得る。
【0056】
コーティング組成物が覆って塗布され得る好適な建築基材としては、コンクリート、スタッコ、石積み要素、セメント板、MDF(中密度ファイバーボード)およびパーティクルボード、石膏ボード、木材、石、金属、プラスチック(例えば、ビニル外壁およびリサイクルプラスチック)、壁紙、布、石膏、ガラス繊維、セラミックなどを含む金属性または非金属性基材が挙げられるが、これらに限定されず、これらは、水性または溶媒性プライマーによって事前プライミングされ得る。建築基材は、建物または住宅の内壁(または他の内面)であってもよい。建築基材は、屋外条件に曝露される屋外基材であってもよい。建築基材は、滑らかであってもテクスチャ加工されていてもよい。
【0057】
特定の非限定的な基材としては、車、トラック、船、大型船、陸上設備および沖合設備、貯蔵タンク、風車、原子力発電所などの発電産業基材、電線、電池および電池部品、バスバー、金属ワイヤ、銅導体またはアルミニウム導体、木製フローリングおよび家具、アパレル、ハウジングおよび回路基板、ガラスおよび透明シート、ゴルフボールを含むスポーツ用品、スタジアム、建物、橋などが挙げられる。
【0058】
粉末コーティング組成物は、自動車の金属ホイールなどの車両の部品として含まれる金属ホイールなどの金属ホイールを含む基材の少なくとも一部分を覆って塗布され得る。金属ホイールは、アルミニウム、鋼、マグネシウム、またはそれらの合金を含み得る。粉末コーティング組成物は、金属ホイールの少なくとも一部分を覆って塗布され得る。粉末コーティング組成物は、金属ホイールを覆うモノコートとして、または金属ホイールに塗布される多層コーティング系におけるコーティング層として塗布され得る。
【0059】
基材は、例えば、金属性または非金属性基材を含み得る。金属性基材としては、スズ、鋼(なかでも、電気亜鉛めっき鋼、冷間圧延鋼、熱浸亜鉛めっき鋼を含む)、アルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛-アルミニウム合金、亜鉛-アルミニウム合金でコーティングされた鋼、およびアルミニウムめっき鋼が挙げられるが、これらに限定されない。金属性基材は、アルミニウム、鋼、マグネシウム、またはそれらの合金を含み得る。非金属性基材としては、ポリマー、プラスチック、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、セルロース、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、EVOH、ポリ乳酸、他の「環境に優しい」ポリマーの基材、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリカーボネート、ポリカーボネートアクリロブタジエンスチレン(PC/ABS)、ポリアミド、木材、ベニア、木材複合材、パーティクルボード、中密度ファイバーボード、セメント、石、ガラス、紙、段ボール、布、合成および天然の両方の皮革などが挙げられる。
【0060】
コーティング組成物は、モノコートを形成するために基材に塗布され得る。本明細書で使用される場合、「モノコート」は、追加のコーティング層を含まない単層コーティング系を指す。したがって、コーティング組成物を基材に直接塗布し、硬化させて単層コーティング、すなわちモノコートを形成することができる。単一コーティング層は、以下に定義されるように、前処理層を覆って塗布され得、前処理層は、コーティング層ではない。硬化性コーティング組成物を基材に塗布してモノコートを形成する場合、コーティング組成物は、他の所望の特性を提供するために追加の成分を含み得る。例えば、硬化性コーティング組成物はまた、腐食阻害剤として作用する無機成分を含み得る。本明細書で使用される場合、「腐食阻害剤」は、金属または金属合金基材の表面の腐食の速度または重度を低減する材料、物質、化合物、または複合物などの成分を指す。腐食阻害剤として作用する無機成分としては、アルカリ金属成分、アルカリ土類金属成分、遷移金属成分、またはそれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0061】
「アルカリ金属」という用語は、(国際純正応用化学連合(IUPAC))の化学元素周期表の1族元素を指し、例えば、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、リチウム(Li)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、およびナトリウム(Na)が挙げられる。「アルカリ土類金属」という用語は、化学元素周期表の2族(IUPAC)元素を指し、例えば、バリウム(Ba)、ベリリウム(Be)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、およびストロンチウム(Sr)が挙げられる。「遷移金属」という用語は、(IUPAC)の化学元素周期表の3~12族元素を指し、例えば、様々な他のなかでも、チタン(Ti)、クロム(Cr)、および亜鉛(Zn)が挙げられる。
【0062】
腐食阻害剤として作用する無機成分の特定の非限定的な例としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、リン酸亜鉛、ケイ酸亜鉛、亜鉛粉塵、および/またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0063】
本発明の組成物は、単独で、または2つもしくは2つより多くのコーティング層を有するコーティング系(多層コーティング系)などの、1つまたは1つより多くの他の組成物との組み合わせで使用され得る。例えば、本発明の組成物は、顔料を含んでも含まなくてもよく、プライマー層、ベースコート、および/またはトップコートとして使用され得る。
【0064】
コーティング組成物は、プライマー層を形成するために使用され得る。本明細書に記載の「プライマー層」は、保護または装飾コーティング系の用途用に表面を準備するために基材上に堆積され得る、アンダーコーティングを指す。
【0065】
コーティング組成物は、トップコート層を形成するために使用され得る。本明細書に記載の「トップコート」は、保護および/または装飾層を提供するために、ベースコートなどの別のコーティング層を覆って堆積される、最上部コーティングを指す。トップコート層は、クリアコート層であり得る。クリアコート層は、実質的に透明または半透明であるコーティング層として理解されるであろう。したがって、クリアコート層は、クリアコートを不透明にさせないか、または下地基材を見せる能力に顕著な程度まで影響を与えないことを条件として、ある程度の色を有してもよい。クリアコート層は、例えば、顔料を添加されたベースコートと併用され得る。コーティング組成物は、基材に耐久性を提供するための、基材を覆うトップコート層として使用され得る。
【0066】
コーティング組成物は、ベースコート層を形成するために使用され得る。多層コーティング系は、第1のベースコート、および第1のベースコートを覆ってコーティングされる第2のベースコートを有し得る。本明細書に記載の「ベースコート」は、プライマー上および/または基材上に直接堆積されるコーティングを指し、必要に応じて、色に影響を与えるおよび/または他の視覚的影響を提供する成分(顔料など)を含む。複数のベースコート層でコーティングされた基材では、それらのベースコート層のうちの1つまたは1つより多くは、本明細書に記載のコーティング組成物から形成され得る。
【0067】
クリアコートと併用される顔料を添加されたベースコート、または顔料を添加されたモノコートなどの組成物は、顔料を含み得る。装飾および/または保護仕上げを付与するためのかかるコーティング層は、様々な産業で使用され得る。例えば、かかるコーティングまたはコーティング系は、車両のホイールなどの車両に塗布され得る。本発明に従ってコーティングされる車両の一部分は、コーティングが使用される理由に応じて変動し得ることが理解されるであろう。着色ベースコートまたはモノコートとして使用される場合、本コーティングは、車の屋根、ボンネット、ドア、トランクの蓋などの目に付く車両のそれらの一部分に塗布され得るが、特に組成物が、密封剤または接着剤として調合される場合、トランク内側、ドア内側などの他の領域にも塗布され得、例えば、組成物は、それらが車両に音および/または振動減衰を提供するような粘度を有するように調合され得る。本組成物はまた、ハンドル、ダッシュボード、ギアシフト、制御装置、ドアハンドルなどの、ドライバーおよび/または乗客と接触する、車両のそれらの部分にも塗布され得る。クリアコートは、車両の外装に塗布され得る。
【0068】
基材は、基材を覆って配置される前処理層、および前処理層の少なくとも一部分を覆って配置される本明細書に記載の粉末コーティング組成物から形成されたコーティングを含み得る。本明細書で使用される場合、「前処理層」は、以下のうちの少なくとも1つを達成する基材表面と反応し、基材表面を化学的に変化させる組成物から形成される層を指す:1)保護層の形成、2)コーティング接着を向上させるための、基材の形状または反応性の改善、または3)前処理を含まない基材と比較して改善されたコーティング接着を有する保護層の形成。前処理層は、表面を覆う不連続層を形成し得る。前処理層組成物の非限定的な例としては、リン酸鉄、リン酸マンガン、リン酸亜鉛、希土類金属、過マンガン酸塩もしくはマンガン、モリブデートもしくはモリブデン、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、ランタニド、アルコキシシラン、加水分解シラン、およびシランオリゴマーおよびポリマーなどのシラン、金属キレート、三価クロム(TCP)、シリケート、シリカ、ホスホン酸、クロメート処理被膜、ハイドロタルサイト、層状二重水酸化物、金属酸化物、IV族金属などの他の金属、またはそれらの任意の組み合わせを含む、組成物が挙げられる。有機前処理の非限定的な例としては、リン酸化エポキシ、シラン化エポキシ、およびアミノ官能性樹脂などの化学修飾樹脂を挙げることができる。また、前処理としては、例えば、硫酸、硝酸、フッ化水素酸、酒石酸を使用する陽極酸化処理、および/または他の陽極酸化処理方法を挙げることができる。前処理層組成物は、ゾル-ゲル、液体、または固体の形態であり得る。場合によっては、前処理は、オリゴマーまたはポリマー溶液または懸濁液を含有し得るか、またはそれを使用して密封され得る。さらに他の例では、前処理組成物は、反応性官能基を含む小さい有機分子、または腐食阻害剤として機能するものを含有し得る。
【0069】
本発明はまた、本明細書に記載の粉末コーティング組成物を基材に塗布する方法に関する。粉末コーティング組成物は、一度調製されると、基材の少なくとも一部分に塗布され、コーティングを形成するために硬化され得る。粉末コーティング組成物は、任意の好適な技法を使用して基材に塗布され得る。粉末コーティング組成物を前述の基材のうちのいずれかに塗布するための好適な方法としては、静電スプレー、浸漬などが挙げられる。粉末コーティング組成物は、1~5ミルなどの1~10ミルの硬化後の厚さを有するフィルムを提供するために、1回の通過または数回の通過で塗布され得る。塗布後、本組成物は、15~25分などの3分~30分の範囲の期間の間、140℃~190℃など、160℃~180℃などの120℃~220℃の温度まで加熱することによって硬化され得る。コーティングされた基材をオーブンに入れることによるなどの、当該技術分野で既知の任意の手段による加熱が、有効であり得る。コーティングされた基材を硬化させるために、IR照射が使用され得る。
【0070】
粉末コーティング組成物は、糸状腐食を低減するために使用され得る。本明細書で使用される場合、「糸状腐食」は、コーティングの表面上および/または表面下の糸のような繊維状の欠陥を特徴とする、薄膜およびコーティングに生じる腐食のタイプを指す。粉末コーティング組成物は、基材の少なくとも一部分を覆ってコーティングを形成し得、同じ条件(すなわち、同じ環境条件)下で粉末コーティング組成物から形成されたコーティングを含まない同一の基材と比較して、コーティングされた基材の糸状腐食の量を低減し得る。例えば、本発明のコーティングされた基材は、本発明の粉末コーティング組成物から形成されたコーティングを含まない同じコーティングされた基材と比較して、(SAE J2635“Filiform Corrosion Test Procedure for Painted Aluminum Wheels and Painted Aluminum Wheel Trim”に従って試験して)改善された糸状腐食耐性を提供し得ることが見出された。さらに、本発明のコーティング組成物は、粉末コーティングを塗布する前に液体組成物をスプレーする必要がなく、かかる腐食を回避することを可能にする。
【実施例】
【0071】
以下の実施例は、本発明の一般原理を実証するために提示される。本発明は、提示される特定の実施例に限定されるものとみなされるべきではない。
【0072】
実施例1
粉末アクリルポリマーの合成
粉末アクリルポリマーを、表1の成分から調製した。
【表1】
【0073】
熱電対、還流コンデンサ、窒素入口ポート、エアモーター撹拌器、および2つの追加のポートを装備した4つ口3L丸底フラスコにチャージ1を添加し、窒素ブランケット下で加熱して(およそ138℃(280°F))還流させた。およそ138℃(280°F)の温度に達したら、チャージ2およびチャージ4を同時に添加し、添加を180分間かけて行った。チャージ2およびチャージ4の添加が完了したら、それぞれチャージ3およびチャージ5で添加漏斗を洗浄し、バッチを138℃(280°F)の一定温度で30分間保持した。次いで、チャージ6を30分間かけて導入し、続いてチャージ7ですすぎ、次いで、バッチを138℃(280°F)の温度で30分間保持した。重合が完了したら、溶媒を真空蒸留によってバッチから除去し、その間、バッチを真空下で徐々に170℃(338°F)まで加熱し、蒸留物の収集が停止した後、さらに60分間一定温度で保持した。最終ポリマーは、2,569g/molの数平均分子量、7,142g/molの重量平均分子量、96.8%の総固体含有量、および1,470のエポキシ当量を有していた。本明細書で使用される場合、エポキシ当量は、過塩素酸および臭化四級アンモニウムを用いた電位差滴定によって決定して、1モルのエポキシド官能基を含有する試料のグラムでの質量である。
【0074】
表1の成分から実施例1で形成された粉末アクリルポリマーは、以下の表2の樹脂#1に対応する。また、チャージ2の成分の各々の量を、表2の各樹脂に含まれる重量パーセンテージを反映するように調整したことを除いて、実施例1に記載の方法および表1の成分を使用して、樹脂#2~#5を形成した。
【表2】
【0075】
実施例2~13
硬化性コーティング組成物の調製
12(12)個の硬化性コーティング組成物を、表3に記載の成分から調製した。
【表3】
【0076】
実施例2~13の各々について、表3に記載の成分の各々を容器内で秤量し、22500RPMのPRISM高速混合機内で30秒間混合して、乾燥した均質な混合物を形成した。次いで、強いスクリュー構成および500RPMの速度を有するWerner Pfleiderer 19mm二軸押出機で、混合物を融解混合した。第1の区域を50℃に設定し、第2、第3、第4の区域を120℃に設定した。設備で30%~45%のトルクが観察されるような供給速度であった。混合物を一組の冷却ロール上に滴下して、混合物を固体チップへと冷却および再固化させた。チップをMikro ACM-11 Air Classifying Millで粉砕して、10ミクロン~100ミクロンの平均粒径を得た。実施例2~13の各々で生じたコーティング組成物は、自由流動性である固体微粒子粉末コーティング組成物であった。
【0077】
実施例14
アルミニウム試験パネルの作製および粉末コーティングの塗布
実施例2~13の各々について、PPG Industries,Inc.(Pittsburgh,PA)から市販のアルカリ性スプレー洗浄剤ULTRAX 14AWSを使用して、ACT(Hillsdale、MI)からのA-412アルミニウムQ-Panelを洗浄した。次いで、PPG Industries,Inc.(Pittsburgh,PA)から市販のAMC66AW酸エッチング溶液中で各パネルを脱酸化させた。次いで、PPG Industries,Inc.(Pittsburgh,PA)から市販のXBOND4000ジルコニウム前処理を使用して、各パネルを前処理した。2ミル~5ミルのフィルムビルドで、実施例2~13をパネルに静電塗布した。コーティングしたパネルを、171℃または191℃(表4に指定)の温度で30分間ベークした。
【0078】
実施例15
糸状腐食耐性の評価
糸状腐食耐性および最終的な膜厚について、実施例2~13の組成物から作製したコーティングの各々を評価した。フィルムビルドは、Elcometerからの乾燥フィルムゲージで測定した。糸状腐食耐性は、SAE J2635に従って決定した。パネルに刻み目をつけ、銅加速酢酸塩スプレーキャビネット内に1日間配置して、糸状腐食の成長を開始した。次いで、パネルを湿度キャビネット内に28日間配置して、糸状繊維を成長させた。次いで、糸状腐食について、SAE J2635の方法を使用して各パネルを測定し、各々の糸状刻み目のクリープの大きさを以下の表4に提供した。
【表4】
【0079】
表4に示されるように、より低いGMA含有量を含むコーティングが、最も低い糸状腐食成長を呈することが観察される。例えば、22重量%未満のGMA含有量を含む、実施例6~13の組成物から生成されたコーティングはすべて、許容可能な糸状腐食耐性を呈する。しかしながら、実施例2~5の組成物から生成されたコーティングにおけるように、GMA含有量が22重量%超の量まで増加すると、当該コーティングは、糸状腐食耐性を呈する。したがって、許容可能な糸状腐食耐性は、付加ポリマーを形成するために使用される反応物の混合物中に、22重量%未満のエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーを組み込むことによって達成される。さらに、最良の糸状耐性を提供するGMA含有量は、10重量%超かつ22重量%未満の範囲であった。
【0080】
実施例16
物理的特性の評価
また、物理的特性および外観について、実施例2~13の組成物から形成した各コーティングを試験した。ISO 2409に従って、接着試験を実施した。NES M0007,29に従って、水浸試験を実施した(60℃で3日間の水浸、続いてクロスハッチ接着)。付録X1.2.2下のASTM D5402-15に従って、100MEKダブルラブ試験を行った。4271Z-SNA-A000に従ってガソリン耐性を実施したが、ここでは、ガソリンを室温で6.18~7時間の間パネルに塗布し、次いで外観または接着の変化について、パネルをチェックした。外観測定値は、光沢計およびBYK-MACカラーリーダーを使用して生成した。各実施例について生成されたデータを、以下の表5に提供する。
【表5】
【0081】
表5に示されるように、非常に低いGMA含有量の樹脂は、それらが使用されるコーティングにおいてより劣った特性を生成することが観察される。例えば、15重量%超のGMA含有量を含む、実施例2~9の組成物から生成されたコーティングは、MEKダブルラブ試験からわずかから中程度の傷のみを呈し、ガソリン耐性試験後に起伏がなく光沢のある外観を維持し、パネルへの許容可能な接着を呈する。対照的に、実施例10~13の組成物から生成されたコーティングはすべて、MEKダブルラブ試験後に重度の傷、ガソリン耐性試験後に起伏のある外観を呈し、パネルへの接着をほとんどまたは全く呈しない。したがって、最も堅牢な物理的特性は、付加ポリマーを形成するために使用される反応物の混合物中に、少なくとも15重量%のエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーを組み込むことによって達成される。
【0082】
粉末コーティング組成物の成分、具体的には、本明細書で論じられる付加ポリマーを形成するために使用される反応物の混合物中のエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーの量を慎重に選択することによって、コーティングが、低い糸状腐食を有する10重量%超かつ22重量%未満のエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーを含む反応物の混合物、および低い糸状腐食を有し、また、接着性に優れた、15重量%~20重量%のエポキシ官能性エチレン性不飽和モノマーを含む反応物の混合物から形成された付加ポリマーを含む粉末コーティングから形成され、ガソリン耐性では起伏がなく光沢のある外観であり、わずかから中程度の傷のみであったことを見出すことは、予想外であり、驚くべきことであった。
【0083】
本発明の特定の実施形態が、例示の目的で上に記載されてきたが、添付の特許請求の範囲に定義される本発明から逸脱することなく、本発明の詳細に無数の変形が行われ得ることは、当業者に明らかであろう。
【国際調査報告】