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特表2024-523182プロバイオティクス組成物中の菌種を同定するためのプライマーセット及びそれを用いた菌種を同定するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】プロバイオティクス組成物中の菌種を同定するためのプライマーセット及びそれを用いた菌種を同定するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20240621BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20240621BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20240621BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20240621BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12Q1/6806 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6869 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574612
(86)(22)【出願日】2023-05-08
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 KR2023006187
(87)【国際公開番号】W WO2023234577
(87)【国際公開日】2023-12-07
(31)【優先権主張番号】10-2022-0067077
(32)【優先日】2022-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523453145
【氏名又は名称】チョングンダン ヘルスケア コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CHONGKUNDANG HEALTHCARE CORP.
【住所又は居所原語表記】170, Indeoseupakeu-ro, Hapdeok-eup Dangjin-si Chungcheongnam-do 31816 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミョンス
(72)【発明者】
【氏名】カン、ウンヨン
(72)【発明者】
【氏名】イム、ジョンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ビョンヨン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ06
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS32
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、プロバイオティクス組成物中の菌種を同定するためのプライマーセット及びそれを用いた菌種を同定するための方法に関し、さらに詳しくは、プロバイオティクス種及び病原性バクテリア菌種の16S rRNAと23S rRNAとの間のITS(intergenic transcribed spacer)領域を標的とするプライマーセットを作製し、それを用いてプロバイオティクス組成物のメタゲノム分析を行うことにより、21種のプロバイオティクス種及び4種の病原性バクテリア菌種を高解像度且つ高精度で同定できることを確認したので、前記プライマーセットは、プロバイオティクス組成物中の菌種を同定するために有用に用いることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1~9で表されるプライマーを含む、プロバイオティクス組成物中の菌種を同定するためのプライマーセット。
【請求項2】
前記プライマーが、5'末端にアダプター(adaptor)配列をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のプロバイオティクス組成物中の菌種を同定するためのプライマーセット。
【請求項3】
前記プライマーが、配列番号10~18で表されることを特徴とする、請求項2に記載のプロバイオティクス組成物中の菌種を同定するためのプライマーセット。
【請求項4】
前記プライマーセットが、菌種のITS(internal transcribed spacer)領域を標的とすることを特徴とする、請求項1に記載のプロバイオティクス組成物中の菌種を同定するためのプライマーセット。
【請求項5】
前記菌種が、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus delbruecki ssp.Bulgaricus)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクチカゼイバチルス・カゼイ(Lacticaseibacillus casei)、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ(Lacticaseibacillus paracasei)、ラクチカゼイバチルス・ラムノーサス(Lacticaseibacillus rhamnosus)、リモシラクトバチルス・ファーメンタム(Limosilactobacillus fermentum)、リモシラクトバチルス・ルテリ(Limosilactobacillus reuteri)、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)、リジラクトバチルス・サリバリウス(Ligilactobacillus salivarius)、ラクトコッカス・ラクチス(Loctococcus lactis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・アニマリス・ラクチス(Bifidobacterium animalis ssp.lactis)、ラティラクトバチルス・クルバトゥス(Latilactobacillus curvatus)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、大腸菌(Escherichia coli)、サルモネラ(Salmonella scp.)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、及び緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)であることを特徴とする、請求項1に記載のプロバイオティクス組成物中の菌種を同定するためのプライマーセット。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のプライマーセットを含む、プロバイオティクス組成物中の菌種を同定するための組成物。
【請求項7】
1)プロバイオティクス組成物からDNAを分離するステップと、
2)前記ステップ1)で分離したDNAを鋳型として、請求項1~5のいずれかに記載のプライマーセットを用いてPCRを行い、標的配列を増幅するステップと、
3)前記ステップ2)の増幅産物を検出するステップと、を含む、プロバイオティクス組成物中の菌種を同定するための方法。
【請求項8】
前記ステップ2)の増幅産物を鋳型として、インデックスPCR(index PCR)を行うことをさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載のプロバイオティクス組成物中の菌種を同定するための方法。
【請求項9】
前記PCR増幅産物の検出が、シーケンシングによって行われる、請求項7に記載のプロバイオティクス組成物中の菌種を同定するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロバイオティクス組成物中の菌種を同定するためのプライマーセット及びそれを用いた菌種同定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロバイオティクスは、適切な量を摂取すると、宿主に健康上有益な影響を及ぼすことが知られている。免疫障害の緩和、炎症性腸疾患、2型糖尿病、動脈硬化症などの様々な方面で、人間の健康に対するプロバイオティクスの有益な影響についての科学的証拠は蓄積され続けている。
【0003】
しかしながら、プロバイオティクス関連製品に対する客観的な品質情報は不十分な状態であり、韓国で実際に製品に使用された菌株と申告された菌株との間に差異があることが判明した場合もあった。最初に許可された菌株以外の菌株を製品に用いると、その菌株の安全性や機能性を保証することができないため、製品内で使用されるプロバイオティクス菌株を正確に同定する必要があり、それに基づく安全性の確保が重要である。
【0004】
韓国では、プロバイオティクスは保健機能食品として分類され、「保健機能食品に関する法律」に基づいて管理されている。機能性を有する原料は、食品医薬品安全処長(以下、「食薬処長」)が告示(告示された原料)または別途認められた原料(個別認定された原料)に区分されるが、現在、韓国でプロバイオティクスとして使用できる告示型菌株は、全19種である。
【0005】
2002年に発表されたFAOとWHOのプロバイオティクス製品ガイドラインでは、プロバイオティクスの効能が菌株特異的であるため、菌株の正確な同定がその菌株の効能との関連性、正確な追跡と疫学研究に非常に重要であると記載されている。特に、神経学的効果、免疫調節効果、内分泌学的効果、特定の生理活性物質の産生などは、同じ属(genus)と種(species)の菌株間であっても、プロバイオティクスの効能に非常に大きな差を示すためである。よって、プロバイオティクス製品中の特定の菌株を確認する技術は、製品管理のみならず、該当菌株を含む製品の摂取後、人体内における該当菌株の追跡にも不可欠である。最近では、選抜された菌株の全ゲノム(whole genome)分析が容易になったことから、比較ゲノム技術を用いた菌株特異的プライマーの設計やそれを用いたPCR(polymerase chain reaction)によって特定菌株の定量的・定性的分析が可能となった。しかしながら、菌種ごとにプライマーが必要であり、複数の菌種を対象に行う場合、実験過程が煩雑になる。
【0006】
韓国の食品医薬品安全評価院では、2021年に保健機能食品の機能性原料であるプロバイオティクスの安全性評価ガイドを配布し、NGSベースのメタゲノム/メタショットガン技術により、プロバイオティクス製品中または複合株中の菌株の種類の特定し、組成分析による安全性評価方法を提示した。よって、NGS分析サービス機関が提供する16SメタゲノムNGS分析法により、製品内の微生物菌種の同定を行う。そのうち代表的なサービスであるMTP(Microbiome taxonomic profiling;微生物群集に対する分類学的プロファイリング)は、長さ約460bpの16S V3V4を標的にしている。しかしながら、長い配列を確保するためには、MiSeqやHiSeqなどの高価な機器を用いて250×2 paired read分析を行わなければならず、約2週間の分析期間と、製品あたり20万ウォン以上の費用が必要となる。もう1つの分析サービスであるPCC(Probiotics contents certificate;プロバイオティクス含有量証明書)には、WGSメタゲノム分析法による菌種同定を行うが、分析に十分なcoverageを得るためにはHiSeqなどの高価な機器が必要であり、約1ヶ月の分析期間と、製品あたり約100万ウォン以上の費用が必要となる。
【0007】
また、16Sメタゲノム分析法に基づくMTPでは、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)などの16S rRNA配列類似度が98%以上である、類似菌種を区別することが不可能であるため、属レベルの分析に制限される。WGSメタゲノム分析法であるPCCでは、種レベルの分析が可能であるが、検出限界値が約1%であるため、含有率の低い菌種に対する検出力に劣っている。
【0008】
そこで、本発明者らは、高価な分析装置を必要とせず、分析技術が煩わしくなく、分析時間の短縮やコスト削減などの経済性を確保できるプロバイオティクス製品の品質管理技術の開発に努めた結果、プロバイオティクス種(species)及び病原性バクテリア菌種の16S rRNAと23S rRNAとの間の長さ約200bpのITS(intergenic transcribed spacer)領域を標的とするプライマーセットを作製し、それを用いてプロバイオティクス組成物のメタゲノム分析を行うことにより、21種のプロバイオティクス種及び4種の病原性バクテリア菌種を高解像度且つ高精度で同定できることを確認した。よって、前記プライマー及びそれを用いた菌種を同定するための方法は、プロバイオティクス製品中の菌種同定に有用に利用することができ、それにより、プロバイオティクス製品の品質情報及び安全性に関する客観的且つ合理的な情報を提供できることを判明したことから、本出願に至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】大韓民国公開特許第10-2020-0029689号公報
【特許文献2】大韓民国公開特許第10-2020-0027900号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ソン・ヨンジェ、パク・ミョンス、韓国内外のプロバイオティクス製品の開発状況、Food Science and Industry(Vol.52 No.3)、229-240
【非特許文献2】イ・ジュフン、プロバイオティクス遺伝子特性及び安全性の確認方法の研究、韓国食品医薬品安全処(2010-11)、TRKO202100007735
【非特許文献3】Massimiliano et al.、Appl.Environ.Microbiol.、2004、70、6147-6156
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来のプロバイオティクス製品中のプロバイオティクス菌種を同定する方法は、分析期間が長く、コストが高く、種(species)レベルの分析が難しいという課題がある。
【0012】
そこで、本発明は、前記課題を解決し、プロバイオティクス製品中のプロバイオティクス及び病原性バクテリアなど、様々な菌種を同時に同定できるプライマーセット及びそれを用いたプロバイオティクス製品中の菌種を同定するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明は、配列番号1~9で表されるプライマーを含む、プロバイオティクス組成物中の菌種を同定するためのプライマーセットを提供する。
【0014】
また、本発明は、前記プライマーセットを含む、プロバイオティクス組成物中の菌種を同定するための組成物を提供する。
【0015】
さらに、本発明は、
1)プロバイオティクス組成物からDNAを分離するステップと、
2)前記ステップ1)で分離したDNAを鋳型として、前記プライマーセットを用いてPCRを行い、標的配列を増幅するステップと、
3)前記ステップ2)の増幅産物を検出するステップと、を含む、プロバイオティクス組成物中の菌種を同定するための方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、プロバイオティクス種及び病原性バクテリア菌種の16S rRNAと23S rRNAとの間の長さ約200bpのITS(intergenic transcribed spacer)領域を標的とするプライマーセットを作製し、それを用いてプロバイオティクス組成物のメタゲノム分析を行うことにより、21種のプロバイオティクス種及び4種の病原性バクテリア菌種を高解像度且つ高精度で同定できることを確認したので、前記プライマーセットは、プロバイオティクス組成物中の菌種を同定するために有用に用いることができる。
【0017】
特に、本発明によるプライマーセットは、長さ約200bpのITS領域を標的とすることにより、300×1 single readデータであっても十分であり、iSeq100を始めとする低価格NGS装置を用いても十分なデータを得ることができ、それにより、プロバイオティクス製品を約3日、製品あたり5.5万ウォン程度で分析することができ、従来技術に比べて経済性が高まる効果がある。
【0018】
また、前記プライマーセットは、共通ITS領域を標的とし、プロバイオティクス製品中に含まれる様々な菌種を種(speices)レベルで同時に同定できるため、菌種ごとのプライマーを作製しなければならないといった煩わしさがない効果がある。
【0019】
よって、本発明によるプライマーセット及びそれを用いたプロバイオティクス組成物中の菌種を同定するための方法を用いて、プロバイオティクス製品の品質情報及び安全性に関する客観的且つ合理的な情報を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0021】
本発明は、配列番号1~9で表されるプライマーを含む、プロバイオティクス組成物中の菌種を同定するためのプライマーセットを提供する。
【0022】
また、本発明は、前記プライマーセットを含む、プロバイオティクス組成物中の菌種を同定するための組成物を提供する。
【0023】
本発明において、「プロバイオティクス」なる用語は、健康上の利益をもたらす生きた微生物、例えば、バクテリア菌を指す。また、「プロバイオティクス組成物」は、プロバイオティクスを含む組成物を指し、「プロバイオティクス製品」と組み合わせて用いることができる。
【0024】
本発明において、「ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction;PCR)」なる用語は、ポリメラーゼを用いて核酸を連鎖的に合成し、開始核酸物質を幾何級数的に増幅する方法として一般的に用いられる。
【0025】
本発明において、「プライマー」なる用語は、複製しようとする核酸鎖に相補的な一本鎖オリゴヌクレオチド配列を指し、PCRにおいて複製・増幅されるプライマー伸長産物の合成のための開始点として機能し、順方向プライマー(Forward primer)と逆方向プライマー(Reverse primer)に分けられる。
【0026】
本発明において、前記プライマーセットは、順方向プライマーと逆方向プライマーとを含み、具体的には、配列番号1で表される順方向プライマーと、配列番号2~9で表される逆方向プライマーとを含む。
【0027】
また、プライマーの配列は、鋳型の一部の配列と完全に相補的な配列を有する必要はなく、鋳型と混成化してプライマー固有の作用をすることができる範囲内で十分な相補性を有していればよい。よって、本発明によるプライマーセットは、鋳型のヌクレオチド配列に完全に相補的な配列であってもよく、鋳型のヌクレオチド配列に完全に相補的な配列ではなく、本開示が目的とする標的遺伝子の増幅を妨げない範囲内で実質的に相補的な配列であってもよい。
【0028】
ここで、「実質的に相補的(substantially complementary)」とは、配列内で十分に相補的な2本の核酸鎖がアニーリングされ、安定な二重鎖を形成することを意味する。前記相補性は完全である必要はない。例えば、2つの核酸の間にいくつかの塩基対のミスマッチ(mismatch)があってもよい。しかしながら、ミスマッチの数が多すぎて最低限の厳密な混成化条件下でさえ混成化が起こらない場合、前記配列は実質的に相補的な配列ではない。本発明において2つの配列が「実質的に相補的」であると解釈される場合、前記配列は、厳密な混成化条件下などの選択された反応条件下で、互いに混成化できる程度に十分に相補的であることを意味する。特異性を達成するのに十分な核酸の相補性と混成化の厳格性との関係は、当技術分野で周知である。2本の実質的に相補的な鎖は、例えば、完全に相補的であるか、あるいは対になっている配列と対になっていない配列との間の相違を十分に許容する限り、1から複数のミスマッチを含んでもよい。よって、「実質的に相補的な」配列は、二本鎖領域において、100、95、90、80、75、70、60、50%以上、または前記数字の間の任意の%の塩基対相補性を有する配列を意味してもよい。
【0029】
さらに、プライマーは、5'末端にアダプター配列をさらに含んでもよく、具体的には、配列番号10~18で表されるプライマーであってもよい。より具体的には、配列番号1で表されるプライマーの5'末端にアダプター配列をさらに含む配列番号10で表されるプライマー、配列番号2で表されるプライマーの5'末端にアダプター配列をさらに含む配列番号11で表されるプライマー、配列番号3で表されるプライマーの5'末端にアダプター配列をさらに含む配列番号12で表されるプライマー、配列番号4で表されるプライマーの5'末端にアダプター配列をさらに含む配列番号13で表されるプライマー、配列番号5で表されるプライマーの5'末端にアダプター配列をさらに含む配列番号14で表されるプライマー、配列番号6で表されるプライマーの5'末端にアダプター配列をさらに含む配列番号15で表されるプライマー、配列番号7で表されるプライマーの5'末端にアダプター配列をさらに含む配列番号16で表されるプライマー、配列番号8で表されるプライマーの5'末端にアダプター配列をさらに含む配列番号17で表されるプライマー、及び配列番号8で表されるプライマーの5'末端にアダプター配列をさらに含む配列番号18で表されるプライマーであってもよい。
【0030】
本発明において、前記菌種は、プロバイオティクス種及び病原性バクテリア菌種であってもよい。具体的には、前記プロバイオティクス種は、韓国食品医薬品安全処で保健機能食品として認定且つ告示されたバクテリア菌種及び食品に使用できるバクテリア菌種であってもよい。
【0031】
より具体的には、前記食品医薬品安全処で保健機能食品として認定且つ告示されたバクテリア菌種は、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus delbruecki ssp.Bulgaricus)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクチカゼイバチルス・カゼイ(Lacticaseibacillus casei)、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ(Lacticaseibacillus paracasei)、ラクチカゼイバチルス・ラムノーサス(Lacticaseibacillus rhamnosus)、リモシラクトバチルス・ファーメンタム(Limosilactobacillus fermentum)、リモシラクトバチルス・ルテリ(Limosilactobacillus reuteri)、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)、リジラクトバチルス・サリバリウス(Ligilactobacillus salivarius)、ラクトコッカス・ラクチス(Loctococcus lactis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、及びビフィドバクテリウム・アニマリス・ラクチス(Bifidobacterium animalis ssp.lactis)であってもよい。
【0032】
また、前記食品に使用できるバクテリア菌種は、ラティラクトバチルス・クルバトゥス(Latilactobacillus curvatus)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)であってもよい。
【0033】
さらに、前記病原性バクテリア菌種は、大腸菌(Escherichia coli)、サルモネラ(Salmonella scp.)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、及び緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)であってもよい。
【0034】
本発明において、前記プライマーセットは、前記菌種のITS(internal transcribed spacer)領域を標的とし、具体的には、長さ約200bpのITS領域を標的とする。それにより、プロバイオティクス製品に含まれる前記菌種を同時に同定することができる。また、長さ約200bpのITS領域を標的とすることで、iSeq100などの低価格NGS装置を用いても分析が可能であるため、プロバイオティクス製品中の菌種同定コスト及び期間を削減することができる。
【0035】
本発明において、前記組成物は、PCRを行うための試薬を含んでもよい。
【0036】
前記PCRを行うための試薬は、当技術分野で周知であれば如何なるものが含まれもよい。例えば、耐熱性DNAポリメラーゼ、dNTPs及びバッファー(buffer)などを含んでもよい。前記dNTPは、dATP、dCTP、dGTP、dTTPを含み、耐熱性DNAポリメラーゼは、Taq DNAポリメラーゼなど、市販の耐熱性ポリメラーゼを用いてもよい。
【0037】
さらに、本発明は、
1)プロバイオティクス組成物からDNAを分離するステップと、
2)前記ステップ1)で分離したDNAを鋳型として、本発明に係るプライマーセットを用いてPCRを行い、標的配列を増幅するステップと、
3)前記ステップ2)の増幅産物を検出するステップと、を含む、プロバイオティクス組成物中の菌種を同定するための方法を提供する。
【0038】
本発明の方法において、前記プライマー、菌種等については上述したものと同様であるので、具体的な説明は前記内容を援用する。
【0039】
本発明の方法において、前記ステップ1)におけるDNA分離は、当技術分野で一般的に用いられている方法に従って行われてもよく、市販のDNA抽出キットを使用して行ってもよい。
【0040】
本発明の方法では、前記ステップ2)におけるPCRは、当技術分野で一般的に用いられる方法に従って行われてもよく、市販のPCRを実施するための試薬を使用して行われてもよい。
【0041】
また、前記ステップ2)の増幅産物を鋳型として、インデックスPCR(index PCR)を行うことをさらに含んでもよい。前記インデックスPCRを行うことで、増幅産物にインデックスを付けてもよい。
【0042】
本発明の方法において、前記ステップ3)における増幅産物の検出は、シーケンシング、例えば、次世代シーケンシング(Next Generation Sequencing;NGS)によって行ってもよい。特に、iSeq100などの小型NGS機器を活用してシーケンシングを行うことができるので、シーケンシングコストを下げ、スピードを向上させることができる。
【0043】
以下、実施例を挙げ、本発明についてより詳細に説明する。
【0044】
但し、下記実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0045】
プロバイオティクス製品中の菌種を同定するためのプライマーセット作製
プロバイオティクス製品に用いられるプロバイオティクス種で、19種の食薬処告示種及び2種の食品添加種と、4種の病原性バクテリア菌種を同定できるプライマーを作製した。
【0046】
具体的には、米国国立生物情報センター(NCBI)のGenBankデータベースから、下記表1のように、19種の食薬処告示種、2種の食品添加種、及び4種の病原性バクテリア菌種のcomplete genome情報を取得した。前記菌種に対するNCBI GeneBankデータベースにおけるAccession numberは、下記表2のとおりである。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
次に、16Sの後半約100bp内に位置する共通配列及び23Sの前半約100bp内に位置する共通配列を利用した(非特許文献3)In silico PCRによって、前記25種の菌株の16S及び23S rRNAの間に位置するITS(internal transcribed spacer)区間の配列を取得した。前記取得した配列を用いて、CLC Genomics Workbench(Qiagen)のCLC Microbial Genomics Moduleの手順に従い、メタゲノム分析用ITS菌種同定データベースを生成し、下記表3のプライマーセットを導出した。また、下記表4のように、各プライマー配列の前にillumina adaptor配列を設計し、標的配列を増幅すると同時に、NGSライブラリーの作製が可能なfusion形態で作製した。導出したプライマーセットは、マクロジェン社に依頼して作製した。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【実施例2】
【0052】
19種の食薬処告示種間配列類似度の確認及び同定のためのANI基準設定
<実施例1>で獲得した19種の食薬処告示種のITS区間配列間のANI(平均塩基一致率;Average Nucleotide Identity)を確認するために、ANIを求めるプログラムpyaniを活用した(19種の配列情報が格納されたフォルダ[19種fastq]によってANI結果フォルダ[ANI結果]を生成する命令:average_nucleotide_identity.py-i[19種fasta]-o[ANI結果]-m ANIb-g)。
【0053】
そのとき、プライマー領域の後に位置するITS配列の160bp領域に対して、種間の菌株(strain)別ANIのうち最大値を求めて、種同定のためのANI基準を設定した。具体的に、種間のANI最大値は、下記表5のとおりである。
【0054】
【表5】
【0055】
前記分析結果において、-は、いずれの種との計算結果でもANI値が0%であることを意味し、その他は、他種とのANI最大値のときのANI出力値と、それに該当する種名を記載した。
【0056】
その結果、表5に示すように、ラクチカゼイバチルス属(Lacticaseibacillus)属に該当するラクチカゼイバチルス・カゼイ(Lacticaseibacillus casei)、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ(Lacticaseibacillus paracasei)及びラクチカゼイバチルス・ラムノーサス(Lacticaseibacillus rhamnosus)のいくつかの菌株において、ITS区間配列のANIが99%以上であることを確認し、他の残りの種については、いずれも97%未満のANIであることを確認した。
【0057】
以上の結果に基づき、食薬処告示プロバイオティクス19種に対する同定によって、ラクチカゼイバチルス属と残りの17種で行ってもよいことを確認した。具体的には、種同定のためにCLC Genomics Workbench(Qiagen)のCLC Microbial Genomics Moduleの手順に従い、同定のための参照配列は、実施例1で得たITS区間配列を用いた。同定のためのANIは98%以上に設定し、ラクチカゼイバチルス・カゼイ、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイまたはラクチカゼイバチルス・ラムノーサスとして同定される配列のみをラクチカゼイバチルス属として同定し、残り17種のプロバイオティクス種については、それぞれの単一種として同定した。
【実施例3】
【0058】
19種の食薬処告示種とNCBI登録された全菌種の全ゲノム間の相同性検査
<実施例1>で得られた19種の食薬処告示種のITS区間配列と、<実施例2>の菌種間配列類似度の確認法により、19種の食薬処告示種とNCBI登録された全菌種の全長ゲノムの相同性を確認した。
【0059】
具体的には、米国国立生物情報センター(NCBI)のGenBankデータベースから、フィルタ条件「"Search all[filter]AND bacteria[filter]AND latest[filter]AND"complete genome"[filter]AND all[filter]NOT anomalous[filter]"」で検索し、合計24,487個の菌種の全ゲノムを取得した。次に、表3のプライマーセットを利用したin silico PCRにより、表3のプライマーセットから得られる全ての菌種の配列を取得した。その後、19種の食薬処告示種と他種とのITS配列比較により、相同性のある菌種を確認した。その結果を表6に示す。ここで、相同性があると判断する基準は、配列間ANI値が98%以上である場合とした。
【0060】
【表6】
【0061】
その結果、表6に示すように、NCBIに登録された全菌種のうち9種に対してのみ、19種の食薬処告示種との相同性を確認した。
【実施例4】
【0062】
混合菌株懸濁液からの菌種の同定
本発明の方法を用いて、混合菌株懸濁液から19種の食薬処告示種、2種の食品添加種及び4種の病原性バクテリア菌種を同定できるか否かを確認した。
【0063】
具体的には、下記表7のように、韓国国立農業科学院及び韓国微生物保存センターから19種の食薬処告示種の標準菌株の分譲を受け、HYとサビンサ社から2種の食品添加種原末の提供を受けて分離し、ATCCから4種の病原性バクテリア菌種の分譲を受けた。その後、<実施例1>のfusionプライマーセットを用い、混合菌株懸濁液から前記菌株の同定を行った。
【0064】
【表7】
【0065】
各菌株は分譲元で提示した方法に従って培養し、その後、分注平板法により生菌数を測定した。PBSで適当に希釈(10~10CFU/mL)した後、他の菌株と適当な割合で混合(0.01~10%)して試験体として使用した。
【0066】
次に、Omega pathogen kit(Omega,#51604)を用いてメーカーの手順に従ってDNAを抽出し、抽出したDNAをHiAccuBead(AccuGene,#ACNO1.50)を用いてメーカーの手順に従って精製した。
【0067】
抽出した検体DNAを<実施例1>のfusionプライマーセットを用いて、以下のようにAmplicon PCRを行った。抽出した検体DNAに10mM TrispH8.5を入れ、DNA濃度を12ng/μLに希釈し、<実施例1>で作製したfusionプライマーを用いて、下記表8のようにPCR反応液を調製した後、下記[表9]の条件でPCRを行った。次に、HiAccuBeadを用いてメーカーの手順に従ってPCR済みの検体の精製を行った。
【0068】
【表8】
【0069】
【表9】
【0070】
前記Amplicon PCRで取得した検体を用いて、以下のようにIndex PCRを行った。下記表10のように、Nextera XT Index Kit v2(Illumina,#20528300)を用いて、PCR反応液をメーカーの手順に従って調製し、下記表11の条件でPCRを行った。次に、HiAccuBeadを用いてメーカーの手順に従ってPCR済みの検体の精製を行った。
【0071】
【表10】
【0072】
【表11】
【0073】
以下のように、前記Index PCRで得られたDNAライブラリーのシーケンシング(sequencing)を行った。前記Index PCRで得られたDNAライブラリーの濃度を100nMに希釈した後、phiX Control v3(Illumina,RGT25975053)100nMと7:3の比で混合した。iSeq100機器のシステムガイドに従ってDNAライブラリをロードし、300 bp single readでシーケンシングを行うことで、fastqファイルを取得した。次に、得られたfastqファイルを用いて、CLC Genomics Workbench(Qiagen)のCLC Microbial Genomics Moduleの手順に従って、OTU(Operational Taxonomic Unit)分布分析を行い、表1の19種の食薬処告示種、2種の食品添加種及び4種の病原性バクテリア菌種を確認した。具体的には、下記表12のように、2繰り返し試験により生菌数による検出能を確認し、下記表13のように、検査体内に含まれる各種の割合による検出能を確認した。
【0074】
【表12】
【0075】
【表13】
【0076】
前記菌種同定法判定結果において、-は、検査体内に該当種を投入したが、種同定法によって菌検出ができなかったことを意味し、+は、菌検出に成功したことを意味する。
【0077】
その結果、表12及び表13に示すように、混合菌株懸濁液から19種の食薬処告示種、2種の食品添加種及び4種の病原性バクテリア菌種を全て同定するための検出限界は、生菌数10CFU/mL以上、検査体内包含率は0.1%であることを確認した。
【実施例5】
【0078】
副原料を含む混合菌株懸濁液からの菌種同定
<実施例1>のfusionプライマーセットと、<実施例3>の菌種を同定するための方法により、副原料を含む混合菌株懸濁液から菌種同定ができるか否かを確認した。
【0079】
具体的には、表7の19種の食薬処告示種、2種の食品添加種及び4種の病原性バクテリア菌種を分譲元で提示した方法に従って培養し、その後、分注平板法により生菌数を測定した。PBSで希釈して5×10CFU/mLで作製及び混合して、同一CFUで混合した25種の菌種混合液を作製した。作製した混合液に難消化性マルトデキストリン2gを加え、副原料を含む混合菌株懸濁液を作製した。その後、<実施例3>と同様の方法で25種の菌種を確認した。
【0080】
その結果、副原料の有無にかかわらず、試験体に混合した19種の食薬処告示種、2種の食品添加種及び4種の病原性バクテリア菌種のいずれも同定に成功し、当該方法は、副原料を含む試験体でも可能であることを確認した。
【実施例6】
【0081】
菌種を同定するためのプライマーセットを用いたプロバイオティクス製品中の菌種同定
<実施例1>のfusionプライマーセットと、<実施例3>の菌種を同定するための方法により、韓国及び海外で市販されているプロバイオティクス含有製品から19種の食薬処告示種、2種の食品添加種及び4種の病原性バクテリア菌種を同定できるか否かを確認した。5種のプロバイオティクス製品に対して、菌種を同定するための方法を2繰り返しで行った。その結果を表14に示す。
【0082】
【表14】
【0083】
前記菌種同定法判定結果において、-は、製品に成分表記がされておらず、菌種を同定したところ検出されなかったことを意味し、+は、製品に成分表記がされており、菌種を同定したところ検出されたことを意味する。
【0084】
その結果、表14に示すように、製品に表記されたプロバイオティクス成分と一致することが確認された。
【0085】
以上の結果により、本発明のプライマーセット及びそれを用いた菌種を同定するための方法では、製品に表記されたプロバイオティクス成分を全て同定することができ、故に、韓国及び海外で市販されているプロバイオティクス含有製品内の菌種同定を低コストで迅速に行えることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明に係るプロバイオティクス組成物中の菌種を同定するためのプライマーセットを用いて、21種のプロバイオティクス種及び4種の病原性バクテリア菌種を高解像度且つ高精度で同定できることを確認したので、前記プライマーセットは、プロバイオティクス組成物中の菌種を同定するために有用に用いることができる。
【配列表】
2024523182000001.xml
【国際調査報告】