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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】多層可撓性包装材料
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/10 20060101AFI20240621BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20240621BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
B32B27/10
B32B29/00
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574734
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 EP2022065891
(87)【国際公開番号】W WO2022258830
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】21178997.9
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】ニーダーライター, ゲルハルト
(72)【発明者】
【氏名】ガラフ, ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】グレロン, マリー‐アメリ, フランソワーズ スザンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ニール, コリン, ガードナー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィシュタール, アレクセイ
(72)【発明者】
【氏名】バッタチャリア, アビジット
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA21
3E086AA23
3E086AB01
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB21
3E086BB90
3E086CA01
4F100AA19C
4F100AA20C
4F100AB01C
4F100AC03B
4F100AK21B
4F100AK41B
4F100AK41D
4F100AL01B
4F100BA04
4F100DG10A
4F100GB23
4F100HB31A
4F100JD02C
4F100JL12D
4F100YY00
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00D
(57)【要約】
本発明は、全般的には多層可撓性包装材料の分野に関する。特に、本発明は、乾燥食品、好ましくは菓子を包装するための多層可撓性包装材料に関する。本発明の包装材料は、海洋分解性であり、リサイクル可能であり、許容可能なバリア特性を有する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側表面から内側表面に、
紙層と、
少なくとも1つのポリマーと、任意選択でクレイバリア材料と、を含むポリマー層と、
金属化材料、酸化アルミニウム若しくは酸化ケイ素、又はこれらの混合物を含むバリア層と、
シーラント層と、
を含む、多層可撓性包装材料であって、
前記ポリマー層が、ブテンジオール-ビニルアルコールコポリマー(BVOH)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートコポリマー、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ乳酸(PLA)、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含む、多層可撓性包装材料。
【請求項2】
前記紙層の外側表面にインクが適用されている、請求項1に記載の多層可撓性包装材料。
【請求項3】
前記ポリマー層が、ポリブチレンサクシネート(PBS)又はポリブチレンサクシネートコポリマーと、ポリヒドロキシアルカノエートとの混合物を含む、請求項1及び2に記載の多層可撓性包装材料。
【請求項4】
前記ポリマー層が、ブテンジオール-ビニルアルコールコポリマー(BVOH)とクレイとを含む、請求項1及び2に記載の多層可撓性包装材料。
【請求項5】
前記紙層が、40~130g/m2の坪量を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の多層可撓性包装材料。
【請求項6】
前記ポリマー層が、1~20g/m2の範囲の坪量を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の多層可撓性包装材料。
【請求項7】
前記シーラント層が、1~30g/m2の範囲の坪量を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の多層可撓性包装材料。
【請求項8】
前記包装の総坪量が、42.5~150g/m2の範囲である、請求項1~7のいずれか一項に記載の多層可撓性包装材料。
【請求項9】
前記バリア層が、20~500nmの範囲の厚さを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の多層可撓性包装材料。
【請求項10】
前記包装材料が、30~150μmの範囲の全厚を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の多層可撓性包装材料。
【請求項11】
前記紙層が、60~100g/m2の坪量を有し、
前記ポリマー層が、3~10g/m2の範囲の坪量を有し、
前記バリア層が、金属化材料を含み、かつ
前記シーラント層が、5~15g/m2の範囲の坪量を有する、
請求項1~10のいずれか一項に記載の多層可撓性包装材料。
【請求項12】
前記材料がアルミニウム金属化層を備え、前記ポリマー層がBVOHとナノクレイとの混合物を含み、BVOH層も備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の多層可撓性包装材料。
【請求項13】
乾燥食品を包装するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の多層可撓性包装材料の使用。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の多層可撓性包装材料に包装された、乾燥食品製品。
【請求項15】
前記乾燥食品製品が、菓子製品、好ましくはチョコレート及び/又はウエハースを含む製品である、請求項13に記載の使用又は請求項14に記載の包装された乾燥食品製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には多層可撓性包装材料の分野に関する。特に、本発明は、多層可撓性包装材料に関する。本発明は更に、乾燥食品を包装するための、本発明による多層可撓性包装材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック包装は、経済活動及び人々の日常生活においてしばしば使用されている。プラスチック包装は、可撓性及び軽量性など、複数の利点を有する。このような軽量化は、例えば、輸送時の燃料の節約及びCO2削減に寄与する。プラスチック包装のバリア特性は、保存期限の延長にプラスの効果があることから、食品廃棄物を減らすのに役立つ。バリア特性はまた、食品の安全性を確保するのに役立つ。
【0003】
しかしながら、欧州委員会によって最近公表された、循環型経済におけるプラスチックに関する欧州戦略によれば、欧州では毎年約2580万トンのプラスチック廃棄物が発生しており、かかる廃棄物のうちリサイクルのために回収されるのは30%未満であり、毎年150000~500000トンものプラスチック廃棄物が海洋に侵入している。
【0004】
プラスチック廃棄物の削減を確保するために、産業及び商業において多大な努力がなされている。いくつかのスーパーマーケットでは、例えば、ビニール袋を紙系の袋に置き換えている。しかしながら、食品包装においてプラスチックを紙に置き換えることは容易な課題ではない。包装材料の変更は、消費者の安全を損なわない必要がある。包装は、食品を保護する役割を果たす必要があるだけでなく、製造プロセス中に機械によって取り扱われるのに十分に丈夫なものである必要もあり、かつ食品製品が効果的に提示され得るようなものである必要もある。
【0005】
したがって、改善されたバリア特性を有する紙系材料が必要とされている。特に、リサイクル中の紙系材料のより容易な分別及び分離を可能にするために、プラスチック層を含まずバリア特性が改善された紙系材料が必要とされている。
【0006】
国際公開第2000/076862号は、これに関して、紙基材と、当該紙基材に適用された、0.7~9ナノメートルの範囲の厚さを有しクレイ粒子を含む、少なくとも1つのポリマー/ナノクレイ複合層と、を備える、包装用途のための積層構造を記載している。
【0007】
しかしながら、当該技術分野には紙系包装材料のバリア特性を更に改善する必要性がある。
【0008】
特に、食品製品用の包装では、包装された食品の安全性及び品質を維持するために、良好なバリア特性が不可欠である。典型的には、そのようなバリア特性としては、ガス透過性、例えば、O2、CO2、及びN2の透過性;蒸気透過性、例えば水蒸気透過性;液体透過性、例えば水又は油の透過性;アロマ透過性;並びに光透過性が挙げられる。
【0009】
更に、このリサイクルの背景に対して、包装が消費者によって適切に処分されない、すなわち、ポイ捨てされるという問題がある。このような材料は、自然環境に、特に問題を生じさせるものとしては海洋環境に、行き着く可能性がある。更に従来の菓子包装は小さく、偶発的にポイ捨てされる可能性が高く、使用されるプラスチック材料は分解に数年かかる可能性がある。
【0010】
したがって、本発明は、バリア特性、リサイクル性、及び海洋分解性の問題のバランスをとろうとするものである。
【0011】
本明細書における先行技術文献のいかなる参照も、かかる先行技術が周知であること、又は当分野で共通の全般的な認識の一部を形成していることを認めるものとみなされるべきではない。
【0012】
[発明の概要]
本発明の目的は、現在の技術水準を改善することであり、特に、改善されたバリア特性を提供し、リサイクルすることができ、また海洋条件下で分解可能である多層可撓性包装材料を提供すること、乾燥食品製品を包装するためのそのような多層可撓性包装材料の使用を提供すること、又は少なくとも、当技術分野において既存の包装解決策に対する有用な代替策を提供することである。
【0013】
本発明者らは、紙系包装材料に、
少なくとも1つのポリマーと、任意選択でクレイバリア材料と、を含むポリマー層と、
金属化材料、酸化アルミニウム若しくは酸化ケイ素、又はこれらの混合物を含むバリア層と、
シーラント層と、
を適用することによって上記の問題を解決し、
上記ポリマー層は、ブテンジオール-ビニルアルコールコポリマー(BVOH)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートコポリマー、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ乳酸(PLA)、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含む。
【0014】
本発明は、乾燥食品材料の包装に関する要件を満たす、水蒸気透過率(WVTR)試験及び酸素透過率(OTR)試験の結果を提供することに加え、海洋分解性と、リサイクルの機会とを提供する。重要なことに、この目的を達成するために、ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)の層は必要ではなかった。
【0015】
したがって、本発明の目的は、独立請求項の主題によって達成された。従属請求項は、本発明の概念を更に展開させるものである。
【0016】
したがって、本発明は、多層可撓性包装材料であって、紙層と、アルミニウム層と、ナノクレイバリアコーティング層と、多層可撓性包装材料の内側表面を占めるナノクレイバリアコーティング層の表面に適用されたシーリング層と、を含む、多層可撓性包装材料を提供する。
【0017】
本発明は更に、乾燥食品、好ましくは菓子、好ましくはチョコレート製品及び/又はビスケット若しくはウエハース製品を包装するための、本発明による多層可撓性包装材料の使用を提供する。
【0018】
本明細書で使用される場合、「含む/備える(comprises)」、「含んでいる/備えている(comprising)」という単語、及び類似の単語は、排他的又は網羅的な意味で解釈されるべきではない。換言すれば、これらは「含むが、これらに限定されない」ことを意味することを意図している。
【0019】
本発明者らは、本発明による多層可撓性包装材料を使用することによって、WVTR及びOTRに関して許容可能な結果が達成され得ることを示した。更に、図に示されるように、本発明は海洋分解性に関して有利な特性を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】参照材料セルロース、2020-31、2020-32及び2020-33(左から右)の外観を示す。
図2】8週間のインキュベーション後の参照物品セルロース濾紙の外観を示す。
図3】8週間のインキュベーション後の試験物品2020-31の外観を示す。
図4】8週間のインキュベーション後の試験物品2020-32の外観を示す。
図5】8週間のインキュベーション後の試験物品2020-33の外観を示す。
図6】実施例1~4の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、外側表面から内側表面に、
紙層と、
少なくとも1つのポリマーと、任意選択でクレイバリア材料と、を含むポリマー層と、
金属化材料、酸化アルミニウム若しくは酸化ケイ素、又はこれらの混合物を含むバリア層と、
シーラント層と、
を含む、多層可撓性包装材料であって、
上記ポリマー層が、ブテンジオール-ビニルアルコールコポリマー(BVOH)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートコポリマー、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ乳酸(PLA)、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含む、多層可撓性包装材料に関する。
【0022】
非常に好ましい実施形態では、上記多層可撓性バリア材料は、ポリオレフィン層(ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリプロピレン(PP)層など)を含まない。好ましい実施形態では、「含まない」という用語は、0重量%を意味する。
【0023】
本発明の目的上、包装材料は、破損させることなく曲げることができる材料である場合、可撓性であると見なすものとする。更に、例えば、そのような可撓性材料は、破損させずに手で曲げることができる材料であってもよい。典型的には、本発明による可撓性の多層包装材料は、140g/m2以下の坪量を有してもよい。
【0024】
本発明の包装材料は紙系ある。当業者は、例えば、包装される製品、意図される保存期限、及び紙材料が一次、二次又は三次包装として使用されるかどうかに基づいて、適切な紙層を選択することができる。
【0025】
本発明は、金属化材料、酸化アルミニウム若しくは酸化ケイ素、又はこれらの混合物を含むバリア層を含む。
【0026】
金属化層は、物理蒸着によって多層可撓性包装材料に適用されてもよい。例えば、金属化層は、真空蒸着プロセスによって適用されてもよい。真空蒸着プロセスの例は、Thin Solid Films、第666巻、2018年11月30日、6~14頁に記載されている。真空蒸着は、固相である金属が気相に移動したあと固相に戻り、徐々に膜厚を築く蒸発プロセスである。真空蒸着によって製造されたコーティングは、良好な耐摩耗性、衝撃強度及び温度強度、並びに複雑な表面上に堆積する能力という利点を有する。好ましい実施形態では、金属化はアルミニウムを堆積させる。
【0027】
本発明において、二酸化ケイ素膜の堆積方法は限定されない。二酸化ケイ素膜は、ゾル-ゲル、液相堆積、スパッタリング、化学蒸着(CVD)、熱酸化、プラズマ励起化学蒸着(PECVD)、大気圧プラズマ堆積、及び物理蒸着(PVD)などの様々な方法によって製造することができる。PVDは、最も確立された真空蒸着技術の1つである。PVDとしては、真空蒸着、イオンプレーティング、及びスパッタリング堆積が挙げられる。これらの技術は、膜厚の制御向上を可能にし、堆積された膜が良好な接着性能を有することを確保する。
【0028】
本発明において、酸化アルミニウム膜の堆積方法は限定されない。一実施形態では、酸化アルミニウム層は、真空蒸着によって堆積されてもよい。
【0029】
当業者は、例えば、意図される保存期限、包装された製品及び包装材料の全厚に応じて、バリア層の厚さを適切に調整することができる。本発明による多層可撓性包装材料において、バリア層は、例えば、20~500nm、30~400nm、又は50~200nmの範囲の厚さを有してもよい。
【0030】
バリア層の光学密度の範囲は、好ましくは1.4~3.8の範囲であってもよく、これは30~200ナノメートルの厚さに対応する。
【0031】
ナノクレイバリアコーティング層は、当業者に公知である。例えば、ナノクレイバリアコーティング層は、PVOH-ポリアクリル酸-ナノクレイバリアコーティング層であってもよい。このようなPVOH-ポリアクリル酸-ナノクレイバリアの例は、専門供給業者から市販されている。また、当業者は、そのようなPVOH-ポリアクリル酸-ナノクレイバリアを配合することができる。Sustainable barrier Coatings in Paper and Board to 2023,a state of art report,Smithers information Ltd.2018,pages 134-142は、現在の技術水準を要約している。典型的には、そのようなPVOH-ポリアクリル酸-ナノクレイバリアは、例えば、蛇行経路の形成を可能にするのに十分な斥力が得られるようにナノクレイの表面を官能化することによって製造することができる。ナノクレイは、例えばモンモリロナイト(MMT)ナノクレイなどのアルミノケイ酸塩からなる群から選択されてもよい。
【0032】
いくつかの用途では、ナノクレイバリアコーティング層がポリウレタンを含む組成物を有すると、好ましい場合がある。ポリウレタンを使用して、PVOH-ポリアクリルマトリックスを部分的又は完全に置き換えてもよい。ポリウレタンは、例えば、非常に良好な耐薬品性、耐溶剤性及び耐久性を付与するという利点を有する。したがって、ナノクレイバリアコーティング層組成物は、例えば、1~10重量%のポリウレタン、2~6重量%のポリウレタン、又は3~5重量%のポリウレタンを含んでもよい。
【0033】
いくつかの用途では、ナノクレイがポリビニリデンジクロリドポリマーマトリックス中に分散されていると、好ましい場合がある。この場合、PVDCマトリックスにおける固有の疎水性及び立体障害効果は、WVTRバリア特性を更に改善する。
【0034】
好ましい実施形態では、ナノクレイは、ブテンジオール-ビニルアルコールコポリマー(BVOH)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートコポリマー、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ乳酸(PLA)、及びこれらの混合物のマトリックス中に分散される。
【0035】
上記実施形態では、ナノクレイ材料は、ポリマー層の0.5~10.0重量%、1.0~8.0重量%、又は1.25~5.0重量%の量でポリマー層中に存在する。
【0036】
一実施形態では、ポリマー層の残りは、ブテンジオール-ビニルアルコールコポリマー(BVOH)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートコポリマー、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ乳酸(PLA)、及びこれらの混合物である。
【0037】
好ましい実施形態では、ポリマー層は、ブテンジオール-ビニルアルコールコポリマー(BVOH)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートコポリマー、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ乳酸(PLA)、及びこれらの混合物のマトリックス中に分散されたナノクレイを含む部分と、ブテンジオール-ビニルアルコールコポリマー(BVOH)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートコポリマー、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ乳酸(PLA)、及びこれらの混合物を含む第2部分と、を含む。
【0038】
好ましい実施形態では、ナノクレイ含有部分と第2部分との重量比は、0.1:1.0~1.0:0.1、好ましくは0.25:1.0~1.0:0.25、より好ましくは0.5:1.0~1.0:0.5である。例えば、1.0:1.0である。
【0039】
非常に好ましい実施形態では、ポリマー層は、ブテンジオール-ビニルアルコールコポリマー(BVOH)のマトリックス中に分散されたナノクレイ混合物による第1部分と、BVOHによる第2部分と、を含む。
【0040】
好ましい実施形態では、ポリマー層はBVOHとナノクレイ混合物とを含み、BVOHの第2部分は1つの層である。
【0041】
好ましい実施形態では、第1部分の第2部分に対する比は、0.25:1.0~1.0:0.25である。好ましい実施形態では、ポリマー層は、1~20g/m2の範囲の坪量(すなわち、両方の部分の総坪量)を有する。
【0042】
本発明において、ポリマー層中にBVOHを利用する実施形態が、バリア特性の観点から最も好ましいことが見出された。
【0043】
シーラントの性質は特に限定されないが、好ましい実施形態では、シーラントは、ポリエステル(例えば、PHA、PBS、PBSAなど)、セロファン、ポリビニルアルコール並びにこれらの誘導体(例えば、BVOH、PVOHなど)及び混合物から選択される材料を含む。
【0044】
好ましい実施形態では、シーラント層は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートコポリマー、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1つの材料を含む。
【0045】
本発明において、「ポリブチレンサクシネートコポリマー」という用語が使用される場合、これは、包装に使用される当該技術分野において既知のコポリマー、最も好ましくはポリ(ブチレンサクシネート-コアジペート)(PBSA)を包含する。
【0046】
好ましい実施形態では、紙層は、40~130g/m2、好ましくは50~100g/m2、より好ましくは60~100g/m2又は55~90g/m2の坪量を有する。
【0047】
好ましい実施形態では、ポリマー層は、1~20g/m2、好ましくは2~15g/m2、より好ましくは3~10g/m2の範囲の坪量を有する。
【0048】
好ましい実施形態では、シーラント層は、1~30g/m2、好ましくは2~25g/m2、より好ましくは5~15g/m2の範囲の坪量を有する。
【0049】
好ましい実施形態では、包装の総坪量は、42.5~150g/m2、好ましくは50~125g/m2、より好ましくは60~100g/m2の範囲である。
【0050】
好ましい実施形態では、紙層は60~100g/m2の坪量を有し、
ポリマー層は、3~10g/m2の範囲の坪量を有し、
バリア層は、金属化材料を含み、
シーラント層は、5~15g/m2の範囲の坪量を有する。
【0051】
本発明の多層可撓性包装材料は、食品製品用包装材料であってもよい。この包装材料は、例えば、一次包装材料、二次包装材料又は三次包装材料であってもよい。多層可撓性包装材料が食品製品用包装材料である場合、食品製品用一次包装材料は、実際の食品製品と直接接触する食品製品用包装材料であってもよい。食品製品用二次包装材料は、一次包装に収容された1つ以上の食品製品を保護(secure)するのに役立つ食品製品用包装材料であってもよい。二次包装材料は、典型的には、複数の食品製品が単一容器で消費者に提供される場合に使用される。食品製品用三次包装材料は、輸送中に一次包装並びに/又は一次包装及び二次包装に収容された1つ以上の食品製品を保護するのに役立つ食品製品用包装材料であってもよい。
【0052】
好ましい実施形態では、包装は、食品製品、好ましくは菓子食品製品、好ましくはチョコレート製品及び/又はビスケット若しくはウエハース製品のための一次包装である。
【0053】
本発明のいくつかの用途では、紙層が非多孔質であると、好ましい場合がある。紙層が多孔質表面を有する場合、多孔質紙表面を覆う追加の表面層を追加して、空気不透過性にしてもよい。そのような追加の表面層は、デンプン、顔料-デンプン又は顔料-ラテックス配合物を含むか、又はそれらからなることができる。紙材料の細孔容積の全体積に対する比は、紙材料の多孔率と呼ばれる。本発明の目的のために、紙層は、ガーレー透気度が20mL/分(Tappi T547)未満である場合、40%未満、例えば30%未満又は20%未満の多孔率を有する場合、非多孔質であると見なすものとする。したがって、本発明の一実施形態では、紙層は非多孔質紙層である。
【0054】
紙層が低い表面粗さを有することが好ましい場合がある。例えば、紙層は、100mL/分未満のBendsten粗さを有してもよい。Bendsten粗さは、参照により本明細書に組み込まれるISO 8791-2:2013に従って決定することができる。
【0055】
包装材料のバリア特性は、当業者に周知である。例えば、包装材料が食品製品用包装材料である場合、このような良好なバリア特性は、包装された食品の安全性及び品質を維持するために不可欠である。典型的には、そのようなバリア特性としては、ガス透過性、例えば、O2、CO2、及びN2の透過性;蒸気透過性、例えば水蒸気透過性;液体透過性、例えば水又は油の透過性;アロマ透過性;及び光透過性が挙げられる。
【0056】
アルミニウム層及び/又はナノクレイバリアを紙層に適用する前に、コーティングの紙層との結合を向上させるためにプライマーを使用してもよい。プライマーは、典型的には、コーティングがプライマーに強力に接着することを可能にする化学的性質を有し、一方で、プライマーは次に紙層に強く接着する。
【0057】
本発明の目的のためのプライマーは、アクリル酸コポリマー、ポリエステル、ポリヒドロキシアルカノエート、天然及び化学加工デンプン、キシラン及び化学変性キシラン、ポリビニリデンジクロリド、ポリビニルアルコール、エチル-ビニルアルコール、酢酸ビニル、エチル-酢酸ビニル、硝酸セルロース、ポリオレフィン、シラン、ポリウレタン、又はこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0058】
本発明の目的のために使用される1つ以上のプライマーは、ナノクレイを含み得る。少なくとも1つのプライマーにナノクレイを添加することは、得られる多層可撓性包装材料のバリア特性が改善されるという利点を有する。したがって、本発明による多層可撓性包装材料において、例えば、紙層の内側表面に適用されたプライマーは、ナノクレイを含んでもよい。これにより、バリア特性が増進する。
【0059】
適切なプライマーは当業者に公知であり、適宜選択され得る。紙層とアルミニウム層との間に適用されるプライマーは、例えばポリウレタンであってもよい。あるいは、ポリウレタンタイ層を使用してもよい。紙層とナノクレイバリアコーティング層との間に適用されるプライマーも、ポリウレタンであってもよい。
【0060】
アルミニウム層が摩耗に対して十分に保護されることを確保するために、例えば、アルミニウム層は保護層で保護されてもよい。適切な保護層は当業者に周知であり、アクリル酸コポリマー、ポリエステル、ポリヒドロキシアルカノエート、天然及び化学加工デンプン、キシラン及び化学変性キシラン、ポリビニリデンジクロリド、ポリビニルアルコール、エチル-ビニルアルコール、酢酸ビニル、エチル-酢酸ビニル、硝酸セルロース、ポリオレフィン、シラン、ポリウレタン、又はこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。そのような保護層を使用することは、アルミニウム層が安定化され、好ましくない影響に対して十分に保護され、その完全性、ひいては本発明の多層可撓性包装材料のバリア特性に対するそのプラスの影響を維持するという利点を有する。
【0061】
本発明による多層可撓性包装材料は、シーリング層を含む。
【0062】
例えば紙材料のバリア特性を改善するために、紙包装材料などの紙材料を、シーリング層で、例えばポリマー分散体でコーティングすることは、当該技術分野において周知である。例は、例えば、Kimpimaki T.,Savolainen A.V.(1997)Barrier dispersion coating of paper and board.In:Brander J.,Thorn I.(eds)Surface Application of Paper Chemicals.Springer,Dordrecht.coated,paper materialsに記載されている。
【0063】
消費者への情報提示及びデザインを目的として、インク層が紙層の上に適用されてもよい。ここでも、紙層とインク層との間にプライマーが適用されていると好ましい場合がある。適切なプライマーは当業者に公知であり、例えばポリウレタンプライマーであってもよい。
【0064】
本発明による多層可撓性包装材料の外側表面に高品質の仕上げを施すために、インク層の表面にオーバープリントワニス(OPV)を適用することができる。OPVは当業者に周知であり、例えば、本発明の包装材料の意図された目的に従って選択され得る。例えば、OPVは、水又は溶媒系ポリマー配合物に代表される従来のオフセット凸版印刷ワニス、アクリルワニス、UVワニス、及びグラビアワニスからなる群から選択することができる。
【0065】
したがって、本発明の多層可撓性包装材料は、紙層に適用されたプライマーと、紙層上のプライマーに適用されたインク層と、インク層に適用されたオーバープリントワニス層とを更に備えることができる。
【0066】
上述したように、本発明者らは、驚くべきことに、アルミニウム層とPVOH-ポリアクリル酸-ナノクレイバリアコーティング層との両方が、包装された製品に面する包装材料の内側に位置する場合に、同等の満足のいくバリア特性が達成されることを見出した。これにより、インク層のみが、任意選択でプライマー及び/又はOVPと共に、包装材料の外側表面上にあることが可能になる。その結果、アルミニウム層及びPVOH-ポリアクリル酸-ナノクレイバリアコーティング層は、例えば、輸送中、取り扱い中、及び消費者との接触中の任意の外部影響から十分に保護され、その結果、その完全性が十分に保護され、本発明の多層可撓性包装材料のバリア特性は、維持がより容易になる。
【0067】
本発明による多層可撓性包装材料は、包装材料に適した任意の厚さを有することができる。当業者であれば、適切な厚さを決定することができる。しかしながら、典型的には、特に包装材料が食品製品の包装における使用を意図されている場合、包装材料は、食品製品の安全性及び保存期限を確保しながら、可能な限り薄くするべきである。例えば、本発明による多層可撓性包装材料は、約30~150μm、40~120μm、又は50~100μmの範囲の全厚を有し得る。
【0068】
当業者は、本発明による多層可撓性包装材料の個々の構成要素の坪量又は厚さを適切に選択することができる。
【0069】
本発明の好ましい実施形態では、本発明による多層可撓性包装材料はリサイクル可能であり得る。例えば、紙及びボール紙ストリームでリサイクル可能であり得る。リサイクル中、アルミニウム層は包装の残部から分離される。本発明の主題が、PE層又はPP層などのポリオレフィン層を省くことを達成するという事実により、リサイクル中の本発明の包装材料の分別性が改善される。典型的には、アルミニウムはハイドラパルパー内でのリサイクル中に包装材料の残部から分離される。したがって、本発明による多層可撓性包装材料は、紙及び/又はカートンとしてリサイクル可能であり得る。
【0070】
本発明の主題の1つの利点は、好ましくはPE層又はPP層などのポリオレフィン層を省いたにもかかわらず、優れたバリア特性が達成されることである。
【0071】
本発明による多層可撓性包装材料は、0.1~50g/m2d(38℃、90%RH)の範囲のWVTRバリアを有し得る。
【0072】
これらの優れたバリア特性により、本発明による多層可撓性包装材料を使用して食品製品を包装することができる。本発明の目的に関し、「食品」という用語は、国際食品規格(Codex Alimentarius)に従って、加工、半加工、又は未加工に関わらず、ヒトの消費を意図する任意の物質を意味するものとし、飲料、チューインガム、及び「食品」の製造、調製、又は処理で使用されている任意の物質を含むが、化粧品又はタバコ又は薬物としてのみ使用される物質を含まない。
【0073】
注目すべきことに、優れたバリア特性により、本発明による多層可撓性包装材料を使用して乾燥食品製品を包装することができる。乾燥食品製品としては、粉末及び顆粒、例えば、乳又は水で再構成される粉末及び顆粒が挙げられる。乾燥食品製品は、例えば5%以下の含水量を有してもよい。
【0074】
したがって、本発明による多層可撓性包装材料を使用して乾燥食品を包装することができる。本発明の主題は、乾燥食品を包装するための、本発明による多層可撓性包装材料の使用にも及ぶ。
【0075】
当業者は、本明細書に開示される本発明の全ての特徴を自由に組み合わせることができることを理解するであろう。特に、本発明の製品に関して記載された特徴を、本発明の方法に関して記載された特徴と組み合わせることができ、逆もまた同様である。更に、本発明の異なる実施形態について記載された特徴を組み合わせてもよい。
【0076】
本発明を実施例によって説明してきたが、特許請求の範囲で定義された本発明の範囲から逸脱することなく、変更及び改変を加えることができることが理解されるべきである。
【0077】
更に、既知の均等物が特定の特徴に対して存在する場合、かかる均等物は、本明細書で具体的に言及されているかのように組み込まれる。本発明の更なる利点及び特徴は、図及び非限定的な実施例から明らかである。
【実施例
【0078】
実施例1~実施例4
金属化(真空蒸着-アルミニウム)、ポリマー層には分散コーティング、及びシーラント層には押出コーティングを使用して、以下の組成物を調製した。
【0079】
【表1】
【0080】
実施例5
本発明の以下の組成物を海洋分解性試験のために調製した。
2020-31:OPV/インク/紙/PHA/金属化/PVOH
2020-32:OPV/インク/紙/BVOH/金属化/PVOH
2020-33:OPV/インク/紙/PHA/AlOx/PVOH
【0081】
崩壊試験を二連で実施する。開始時に、1つの反応器につき2枚の2cm×2cm材料片を入れた。4週間毎に、反応器の内容物を2.0mmの篩にかけ、参照材料及び試験材料の崩壊を目視により観測した。
【0082】
図1は、開始時の参照材料及び試験物品の外観を示す。図2図5は、30℃±2℃で8週間インキュベートした後の参照物品及び試験物品の複製で回収された小片の外観を示す。
【0083】
8週間のインキュベーション後、参照物品のセルロース濾紙の崩壊は、縁部でのいくらかの分解を除いてあまり進行していない(図2)。
【0084】
試験物品2020-31の崩壊は大きく進展し、2.0mmの篩上にわずかな部分のみが残り、最上層のごく一部のみがまだ見えた(図3)。
【0085】
試験物品2020-32は分解し続け、断片の大部分は既に2.0mmの篩を通過した(図4)。
【0086】
試験物品2020-33における4週間後の陥凹は継続しており、全体的な断片化が見られた(図5)。
【0087】
実施例6
実施例1及び実施例3について、23℃におけるg/m/日85%RHでのWVTRを、裏面にバリア(酸素、水蒸気、油脂、鉱油、及びアロマ)コーティングを有する81gsmの市販の片面コーティング光沢紙と比較した。
【0088】
【表2】
【0089】
実施例7
1フィンガーの標準的なKitKat(登録商標)(チョコレートで包んだウエハース製品)を、自動包装ライン上で、実施例3の紙を使用して、30bar/分及び80bar/分の速度で包装した。バーは全く問題なく包装され、品質の欠陥は観察されなかった。包装を、100度~110度、200Nで0.5秒間封止した。
【0090】
Abiss Leakシステムを使用したEXOS試験を、6つの試料バーに対して実施した。標準は16mL/分未満である。試料は、平均3.6mL/分で、3.2~4.2mL/分の範囲を提供した。
【0091】
紙の内側に食品安全潤滑剤を適用する油脂試験では、油脂試験後の油脂浸透/バリア破壊は観察されなかった。
【0092】
実施例8
実施例1の紙に対して実施例7を繰り返した。30bar/分及び80bar/分で実施したところ、品質欠陥は観察されなかった。2回の試験で2.0及び3.1のEXOS値が得られ、油脂試験後に油脂浸透/バリア破壊は観察されなかった。
【0093】
実施例9
KitKat(登録商標)4フィンガー製品を包装した実施例1~実施例4について、25℃/50%RHで6時間、及び40℃/50%RHで6時間の2つのサイクル時間により追加の耐油脂性試験を実施した。全ての実施例で少なくとも6ヶ月の保存期限を示す結果が得られ、実施例1、実施例3及び実施例4では、油脂汚れの面積は0.3%以下の面積であった。実施例3は、2つの別々の試験において0.0%の面積をもたらした。
【0094】
実施例10~実施例13
金属化(真空蒸着-アルミニウム)、ポリマー層には分散コーティング、及びシーラント層には押出コーティングを使用して、以下の組成物を調製した。
【0095】
【表3】
【0096】
材料を10nmの金層でコーティングし、顕微鏡を用いて100倍及び1000倍の倍率で評価した。
【0097】
材料の孔を評価したところ、コーティング後にピンホールがないことが確認された。
【0098】
実施例10及び実施例12は、目に見える微粒子の量がより少なく(lower level)、より均質なコーティングを有することが分かった。これは、BVOHコーティングが本発明の範囲内で最も効果的なバリア特性を提供するという知見を裏付ける。
【0099】
繊維収率を用い、ProPakma GmbHによってリサイクル性を評価したところ、許容可能なリサイクル性レベルを有することが確認された。
【0100】
90%RH、38℃及び65%RH、22℃における相対WVTRを評価したところ、実施例10及び実施例12が実施例11及び実施例14よりも優れていることが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】