(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】高透明防曇ガラスのためのレーザナノ構造化
(51)【国際特許分類】
B23K 26/352 20140101AFI20240621BHJP
G02B 1/12 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
B23K26/352
G02B1/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575344
(86)(22)【出願日】2022-05-12
(85)【翻訳文提出日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 GR2022000027
(87)【国際公開番号】W WO2022258998
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522282656
【氏名又は名称】バイオミメティック プライベート カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】スコーラス,エバンジェロス
(72)【発明者】
【氏名】パパドプロス,アントニス
(72)【発明者】
【氏名】レモニス,アントレアス
(72)【発明者】
【氏名】ストラタキス,エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ミミディス,アレクサンドロス
【テーマコード(参考)】
2K009
4E168
【Fターム(参考)】
2K009AA00
2K009BB02
2K009BB04
2K009BB11
2K009DD05
2K009EE02
4E168AB01
4E168AD18
4E168CB03
4E168CB07
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA04
4E168DA40
4E168DA43
4E168DA45
4E168DA46
4E168DA47
4E168JA14
(57)【要約】
可視スペクトルに対して透明な固体表面(3)、コーティング、および可視スペクトルに対して透明な固体と超短レーザパルス(2)とを用いるデバイスにおいて、安定な超親水性を実現するためのレーザの使用のための方法が開示される。前記レーザは、透明固体材料(3)の表面を成形し、材料の透過性に悪影響を及ぼすことなく、材料の透過率を高めることもなく、表面上に所望のナノ構造パターンを生成するために用いられ、その結果、高湿度環境下における防曇特性が得られる。より具体的には、可視スペクトルに対して透明な固体(3)に安定した防曇効果をもたらすための方法およびデバイス、ならびにレーザナノ構造化された、可視スペクトルに対して透明な固体(3)を用いるデバイスが開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光スペクトルで透明な固体材料の光透過性に影響を及ぼすことなしに、親水性を向上させるための前記透明な固体材料の表面を成形する方法であって、
前記透明な固体材料をホルダ上に準備することと、
前記透明な固体材料の前記表面上に所望の目的ナノ構造防曇パターン(target nanostructure anti-fogging pattern)を特定することと、
前記透明な固体材料の前記表面上に所望の焦点レーザスポット領域(focused laser spot area)を特定することと、
レーザフルエンス値の範囲からレーザフルエンス値を選択することと、
レーザパルスの波長、繰り返し速度、およびパルス持続時間を、波長、繰り返し速度、およびパルス持続時間の各範囲から、それぞれ選択することと、
前記透明な固体材料の表面を、選択された波長、繰り返し速度、パルス持続時間を有する集束レーザ放射に曝露して、所望の目的ナノ構造パターンの少なくとも一部を生成することと、
前記透明な固体材料をレーザビームに対して相対的に並進させ、前記レーザビームを、前記透明な固体材料の前記表面に亘って照射することにより、所望のナノ構造パターンを生成することと、
を含むことを特徴とする成形方法。
【請求項2】
追加の材料層が、前記可視光スペクトルで透明な固体材料の上に存在する、請求項1に記載の成形方法。
【請求項3】
前記レーザビームを、静止した透明固体材料上に走査させることをさらに含む、請求項1に記載の成形方法。
【請求項4】
前記透明な固体材料が、少なくともガラス片又は結晶片を含む、請求項1に記載の成形方法。
【請求項5】
前記透明な固体材料が、少なくともプラスチック片又はポリマー片を含む、請求項1に記載の成形方法。
【請求項6】
前記透明な固体材料を成形することが、電子デバイス上のガラス片を成形することを含み、前記電子デバイスが、太陽電池(sc)、自動車ディスプレイ、スクリーン、発光ダイオード(led)、及び光検出測距(lidar)センサを含む、請求項5に記載の成形方法。
【請求項7】
前記波長が、100nm~6100nmの範囲から選択される、請求項1に記載の成形方法。
【請求項8】
前記パルス持続時間が、最大800nsまでから選択される、請求項1に記載の成形方法。
【請求項9】
前記レーザフルエンスが、12j/cm
2~0.2j/cm
2の範囲から選択される、請求項1に記載の成形方法。
【請求項10】
透明な固体材料の光透過性に影響を及ぼすことなしに、親水性を向上させるための前記透明な固体材料の表面を成形する製造構成であって、
照射モジュールと、
並進モジュールと、
コントローラと、を含み、
前記照射モジュールは、
パルスレーザ源と、
前記パルスレーザ源からのレーザビームを集束するための光学系とを含み、
前記並進モジュールは、前記透明な固体材料を、安定に保持する又は並進させるように構成されたホルダを含み、
前記コントローラは、
レーザフルエンス値の範囲からレーザフルエンス値を設定し、
レーザパルス波長、レーザパルス繰り返し速度、およびレーザパルス持続時間を、レーザパルス波長、繰り返し速度、および持続時間の各範囲から、それぞれ設定し、
前記パルスレーザ源からのレーザビームによるレーザビーム曝露中の、前記透明な固体材料と前記レーザビームとの間の相対的な並進運動を設定し、所望のナノ構造防曇パターンを生成することを特徴とする製造構成。
【請求項11】
前記光学系が、前記パルスレーザ源からの前記レーザビームを前記透明な固体材料に向ける少なくともミラーと、前記レーザビームを前記透明な固体材料上に集中させるための少なくとも集束光学要素とを含む、請求項10に記載の製造構成。
【請求項12】
前記パルスレーザ源は、ピコ秒またはフェムト秒レーザ源である、請求項10に記載の製造構成。
【請求項13】
前記並進モジュールが、前記照射モジュールを静止させた状態で、透明材料ホルダを移動させるように構成されている、及び/又は、前記可視光スペクトルで透明な固体材料のホルダを静止させた状態で、前記レーザビームを移動させるように構成されている、及び/又は、前記透明材料ホルダを静止させた状態で、前記照射モジュールを移動させるように構成されている、請求項10に記載の製造構成。
【請求項14】
請求項10から13のいずれかに記載の構成デバイスに、請求項1に記載の方法の工程を実行させるように制御する指示を含むことを特徴とするソフトウェア製品。
【請求項15】
請求項14のコンピュータプログラムを格納することを特徴とするコンピュータ可読媒体。
【請求項16】
キャリア信号で伝送される、請求項14に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項17】
請求項1に記載の方法または請求項10に記載の構成デバイスによって生成された透明な防眩材料を含むことを特徴とするデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
透明な固体上の超親水性/防曇コーティングは、湿気の多い環境下における視認性を改善するため、又は光電子および電気光学デバイス用の透明媒体の性能を向上させるために使用されている。この目的に適したコーティングは、周囲の湿度によって表面に形成される水滴の接触角を、水の薄層を形成するのに十分な程度まで低下させるものである。この水の薄層は、水滴に比べてその表面形状が均一であるため、広いスペクトル範囲の光に亘って不鮮明さを低減させる。
【背景技術】
【0002】
防曇コーティングは、一連の化学化合物を適用して透明材料の上に1層以上の薄層を形成することによって、目的の透明固体の表面をコーティングすることで形成することができる。その結果、コーティングされた表面は、表面を終端する(terminate)ために選択された親水性化学基によって濡れ性が向上する。親水性化学コーティングの使用は、製造または適用時に生じる化学廃棄物により、環境に悪影響を与える可能性がある。さらに、化学コーティングは経時安定性を欠いており、最終的にその性能の低下を引き起こし、過酷な環境条件下ではその機能を完全に喪失することさえある。最後に重要なこととして、親水性コーティングは、湿気のない条件下では、可視光に対して透明な基板の光学特性に悪影響を与えることがある。悪影響としては、限定されるものではないが、半透明および着色が挙げられる。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、可視スペクトルに対して透明な基板の透過性に影響を及ぼすことなしに、あるいは高めることさえなしに、可視スペクトルに対して透明な固体材料の上に超親水性表面を生成する簡便かつ能率的な方法を提供することである。レーザを用いて可視スペクトルに対して透明な固体を加工することにより、表面に周期的なナノ構造を生成することができ、その結果、表面粗さが高まり、防曇性を備えた親水性表面が得られる。提案される技術は、高出力で再現性の高い産業用レーザ源を使用して産業に容易に組み込むことができる単一工程のプロセスである。
【0004】
主には、超親水性および防曇性を達成するためにガラス状材料の表面を成形する方法が開示される。前記方法は、可視スペクトルに対して透明な固体材料をホルダ上に準備することを含む。前記方法は、透明固体に当たるレーザビームにより生じる過剰な熱を吸収できる、可視スペクトルに対して透明な固体表面上に追加の放熱層を用いてもよい。前記方法は、前記透明な固体材料の表面上に所望の目的ナノ構造防曇パターン(target nanostructure anti-fogging pattern)を特定することと、前記可視スペクトルに対して透明な固体材料の表面上に所望の焦点スポット分布(focus spot distribution)を特定することと、前記可視スペクトルに対して透明な固体材料の融点を特定することと、レーザフルエンス値の範囲からレーザフルエンス値を選択することと、レーザパルスの波長、パルス持続時間、および繰り返し速度を、波長、繰り返し速度、およびパルス持続時間の各範囲から、それぞれ選択することと、レーザ表面上の焦点スポット当たりに照射される連続レーザパルス数を選択することと、前記可視スペクトルに対して透明な固体材料の表面を、選択された波長、繰り返し速度、パルス持続時間、および連続レーザパルス数を有する集束レーザ放射に曝露して、前記透明材料の温度を前記融点付近まで上昇させて、前記表面の少なくとも一部を成形し、所望の目的ナノ構造パターンの少なくとも一部を生成することと、前記透明な固体材料をレーザビームに対して相対的に並進させ、前記ビームでその表面を走査させ、前記透明固体の表面全体に所望のナノ構造パターンを生成することと、を含む。
【0005】
前記透明な固体表面をレーザパルスで加工することにより、自己組織化されたナノ構造体が形成され得る。これらの構造体の形成により、初期の平面構造に比べて表面粗さが高まる一方、構造体のスケールが小さいため、可視スペクトルに対する透明性は維持される。例えば、ガラス表面は、その表面がヒドロキシルおよび金属酸化物などの親水基で終端されているため、元来親水性である。これらの化学種は、それらの固有の極性により、水と強く相互作用し、系全体の自由エネルギーが最小化されると、それらの表面に接触し得る水滴が広がり、液滴接触角が低下する。したがって、元来親水性である材料の表面粗さを高めることによって、よく知られたWenzelモデルにしたがい親水性が向上する。
【0006】
いくつかの例では、可視スペクトルに対して透明な固体材料の表面が、集束された偏光レーザ放射に曝露される。透明な固体に偏光レーザビームを照射すると、ガウス焦点スポット内であらゆる方向にナノ構造体が形成され、最終的にはナノスパイクを有する処理表面のテクスチャリングが得られる。ナノ構造体は擬似周期的であり、表面に沿ってランダムに分布し得る。かかる表面ナノテクスチャリングは表面積を大幅に増加させ、親水性を高め、したがって防曇特性をもたらす。いくつかの例では、透明性と反射防止性の向上を同時にもたらし得る[PCT/GR2018/000010]。
【0007】
いくつかの例では、透明固体材料の表面上で受容される所望の集束パルス数を特定することは、隣接する集束スポットの予め選択したパーセンテージ分のオーバーラップを特定することを含んでもよい。予め選択したオーバーラップパーセンテージは、99.9%以下であってよい。
【0008】
いくつかの例では、前記方法は、静止した透明な固体材料上にレーザビームを走査および/またはラスタリングすることをさらに含んでもよい。1パス当たり少ない数のパルス(例えば、3~5)を高速で照射する複数回の走査で走査することによって、材料が溶融し、再度固化して、構造体の形成を伴うことなく非常に小さな表面粗さをもたらす。走査工程はスポット径付近に設定してもよい。
【0009】
いくつかの例では、透明固体材料は少なくともガラス片を含んでもよい。ガラス片は、電子デバイス上に存在してもよい。電子デバイスとしては、太陽電池(SC)、自動車用ディスプレイ、電子スクリーン、発光ダイオード(LED)、および/または光検出測距(LiDAR)センサを含み得る。
【0010】
いくつかの例では、入射ビームの波長は、100nm~6100nmから選択することができる。これは、成形対象の材料、およびナノテクスチャパターンの所望の目的とするフィーチャに依存し得る。
【0011】
いくつかの例では、レーザフルエンスまたはピークフルエンスは、12J/cm2~0.2J/cm2の範囲で選択できる。レーザパルスの繰り返し速度は任意の値にすることができ、パルス持続時間は最大800psまで選択することができる。これらのパラメータの組合せは、形成対象のナノ構造体のフィーチャ、及び材料の融点に依存し得る。
【0012】
別の態様では、防曇特性を達成するために、可視スペクトルに対して透明な固体材料の表面を成形する製造構成(manufacturing configuration)が開示される。前記製造構成は、パルスレーザ源と、前記パルスレーザ源から照射されたビームを集束させるための光学系とを統合してもよい。前記製造構成は、透明固体材料を保持するように構成されたホルダをさらに備えてもよい。前記製造構成は、レーザフルエンス値の範囲からレーザフルエンス値を設定し、レーザパルス波長、レーザパルス繰り返し速度、およびレーザパルス持続時間を、レーザパルス波長、繰り返し速度、および持続時間の各範囲から、それぞれ設定し、表面上の集束レーザスポット当たりに照射される連続レーザパルス数を設定し、透明材料表面を走査して所望のナノ構造パターンを生成するために、透明固体材料と、パルスレーザ源からのレーザビームとの間の相対的な並進運動(translation sequence)を設定するコントローラを備えてもよい。
【0013】
いくつかの例では、前記光学系は、パルスレーザ源からのレーザビームを透明固体材料に向ける少なくともミラーと、レーザビームを透明固体材料上に集中させる集束光学要素とを備えてもよい。
【0014】
いくつかの例では、パルスレーザ源は、ピコ秒またはフェムト秒レーザ源であってもよい。
【0015】
いくつかの例では、照射モジュールを静止させた状態で、並進モジュールを用いて透明固体材料ホルダを移動させてもよい。他の例では、前記光学系は、透明固体材料ホルダを静止させた状態で、レーザビームを移動させるように構成されていてもよい。さらに他の例では、並進モジュールは、透明固体材料ホルダを静止させた状態で、照射モジュールを移動させるように構成されていてもよい。
【0016】
別の態様では、可視スペクトルに対して透明な防曇固体材料が開示される。また、レーザ処理に先立ち、固体材料の表面上に堆積させた任意の追加の材料層の使用が開示される。前記追加の層は、吸熱体として作用するので、照射中にレーザビームによって除去され、再度、固体表面のナノ構造化をもたらす。防曇透明固体材料は、本明細書に開示される例に係る成形方法を用いて成形されてよく、追加の吸熱層は、一般的な塗料、インク、染料、金属塗料などであってよい。
【0017】
さらに別の態様では、可視スペクトルに対して透明な防曇固体材料は、照射中に二次熱または光学加熱源をさらに使用して、本明細書に開示される例に係る成形方法を用いて成形されてもよい。
【0018】
さらに別の態様では、デバイスが開示される。前記デバイスは、本明細書に開示される例に係る防曇透明固体材料を含み得る。
【0019】
さらに別の態様では、防曇特性を達成し、同時に透明材料の表面からの反射を低減するために、可視スペクトルに対して透明な固体材料の表面を成形するためのシステムが開示される。前記システムは、可視スペクトルに対して透明な固体材料をホルダ上に準備する手段と、透明な固体表面上に吸熱層を堆積させる手段と、透明固体材料の表面上に所望の目的ナノ構造防曇パターンを特定する手段と、透明固体材料の表面上に所望の焦点スポット分布を特定する手段と、透明固体材料の融点を特定する手段と、レーザフルエンス値の範囲からレーザフルエンス値を設定する手段と、波長、繰り返し速度、およびパルス持続時間を、波長、繰り返し速度、およびパルス持続時間の各範囲から、それぞれ設定する手段と、レーザ表面上の焦点スポット当たりに照射される連続レーザパルス数を設定する手段と、透明な固体材料の表面を、選択された波長、繰り返し速度、パルス持続時間、および連続レーザパルス数を有する集束レーザ放射に曝露して、前記透明材料の温度を融点付近まで上昇させて、前記表面の少なくとも一部を成形し、所望の目的ナノ構造パターンの少なくとも一部を生成する手段と、透明固体材料を相対的に並進させ、所望のナノ構造パターンを生成する手段とを含んでよい。
【0020】
さらに別の態様では、照射構成(irradiation configuration)に透明固体材料の表面の成形を実行させる非一過性コンピュータプログラム製品が開示される。前記非一過性コンピュータプログラム製品は、前記透明固体材料をホルダ上に準備する指示と、前記透明固体材料の表面上に所望の目的ナノ構造パターンを特定する指示と、前記透明固体材料の表面上に所望の焦点スポット分布を特定する指示と、前記透明固体材料の融点を特定する指示と、レーザフルエンス値の範囲からレーザフルエンス値を選択する指示と、波長、繰り返し速度、およびパルス持続時間を、波長、繰り返し速度、およびパルス持続時間の各範囲から、それぞれ選択する指示と、レーザ表面上の焦点スポット当たりに照射される連続レーザパルス数を選択する指示と、前記透明固体材料の表面を、選択された波長、繰り返し速度、パルス持続時間、および連続レーザパルス数を有する集束レーザ放射に曝露して、前記透明材料の温度を融点付近まで上昇させて、前記表面の少なくとも一部を成形し、所望の目的ナノ構造パターンの少なくとも一部を生成する指示と、前記透明固体材料またはレーザビームを相対的に並進させ、所望のナノ構造パターンを生成する指示とを含んでよい。
【0021】
さらに別の態様では、コンピュータプログラム製品が開示される。前記コンピュータプログラム製品は、照射構成に、本明細書に開示された例に係る、可視スペクトルに対して透明な固体材料の表面を成形する方法を実行させるためのプログラム指示を含んでよい。
【0022】
前記コンピュータプログラム製品、記憶媒体(例えば、CD-ROM、DVD、USBスティック、コンピュータメモリ上、又はリードオンリーメモリ上)で具現化されてよく、又はキャリア信号(例えば、電気的又は光学的キャリア信号)で伝送されてもよい。
【0023】
コンピュータプログラムは、ソースコード、オブジェクトコード、コード中間ソース、および部分的にコンパイルされた形式などにおけるオブジェクトコードの形式、またはプロセスの実装における使用に適した任意の他の形式であってもよい。キャリアは、コンピュータプログラムを運ぶことができる任意の物またはデバイスであってもよい。
【0024】
例えば、前記キャリアは、ROM、例えばCD-ROM又は半導体ROMなどの記憶媒体、又は例えばハードディスクなどの磁気記録媒体を有してもよい。さらに、前記キャリアは、電気ケーブルもしくは光ケーブルを介して、または無線もしくは他の手段によって運ばれ得る、電気または光信号などの伝送可能なキャリアであってもよい。
【0025】
前記コンピュータプログラムが、ケーブル又は他のデバイス若しくは手段によって直接搬送され得る信号において具現化される場合、前記キャリアは、かかるケーブル又は他のデバイス若しくは手段によって構成されてもよい。
【0026】
あるいは、前記キャリアは、前記コンピュータプログラムが埋め込まれた集積回路であってもよく、前記集積回路は、対象の方法を実行するために、または対象の方法の実行における使用のために適合されている。
【0027】
本開示の非限定的な例を、添付図面を参照して以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、例として、ベアガラス(bare glass)上の方法1および追加の吸熱層を有する方法2による、レーザ照射後のナノ構造体形成の過程を概略的に示す。
【
図2】
図2は、霧状環境下でのガラスの親水性および防曇効果の概略図および実際の画像を示す。
【
図3】
図3は、2種の代表的なガラス種についての経時での接触角の測定値、ならびにベア(bare)表面上およびレーザナノ構造化表面上の透過率測定値を示す。例の詳細な説明
【0029】
図1は、方法1および2による、単回または複数回の走査後のナノ構造体形成(1)の過程を概略的に示す。方法1の場合、超高速レーザパルス(2)は、可視スペクトルに対して透明な固体(3)に照射される。照射条件は、材料の種類に応じて変化してもよく、プロセス全体は、単回または複数回のレーザ走査で達成され得る。方法2の場合、追加の層(4)が、照射に先立ち、ガラス表面上に粗く堆積されてよく、ガラス表面の均一なナノ構造化のための放熱層(4)として作用し得る。追加の層の性質は、金属または有機物(すなわち、金属塗料、ブラックマトリクス、インク、粉末)のいずれかであることができ、その厚みは、最終的にレーザパルスによりアブレーションされることを考慮すると、プロセス全体に無関係である。レーザで層を完全に除去すると、その下に存在するガラス表面は、形態学的にナノ構造化(5)する。追加の層の使用は任意であり、特定のタイプのガラスの場合にのみ使用してもよい。
【0030】
図2は、前述の方法1または2のいずれかを用いたレーザナノ構造化により生じる防曇効果の特徴的な例を示す実際の画像を示す。上の概略図は、ベアガラス(3)およびレーザナノ構造化ガラス(5)の表面と接触している水滴(6)の実際の図である。下の写真は、水霧噴霧条件下での、半分(右側)(5)がレーザ処理された溶融シリカガラスの表面状態を示す。なお、ガラスの種類によって濡れ性は若干異なる。しかし、レーザナノ構造化は常に同じ効果を有する。
【0031】
図3は、ベア溶融シリカ及びEagleガラス基板、並びに両方のガラスの場合のレーザナノ構造化表面に関し、左図は、濡れ応答をプロットした図である。蒸溜水を用いて100日間、接触角測定を行った。具体的には、2μlの水滴を用いた。測定と測定との間、試料を室温で保存した。各ガラスとも、100日間の測定で10度未満であるので、レーザナノ構造化後に水接触が著しく低減することが明らかである。明細書に記載したように、顕著な超親水性こそが、ナノ構造化表面が極度の高湿度環境下で防曇特性を達成する理由である。さらに、防曇特性を示す同一のガラス表面の透過率は、可視スペクトルの全てではないがその大部分において、定価せずに上昇する。正確な透過率の値は、右図に示されている。
【国際調査報告】