(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】向上した電気的な耐トラッキング性を有する熱可塑性ポリマー組成物およびそれから作製されたポリマー物品
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240621BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20240621BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20240621BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20240621BHJP
C08L 51/04 20060101ALI20240621BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20240621BHJP
C08K 5/51 20060101ALI20240621BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K7/02
C08L67/00
C08L83/04
C08L51/04
C08K5/29
C08K5/51
C08K5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575539
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 US2022032441
(87)【国際公開番号】W WO2022261052
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512225379
【氏名又は名称】セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】ジア,カマー
(72)【発明者】
【氏名】マルクグラフ,キルステン
(72)【発明者】
【氏名】ツィーラー,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ニコライ,パトリック
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002BN162
4J002CF071
4J002CP032
4J002EC079
4J002EH048
4J002ER009
4J002EU197
4J002EW136
4J002FD136
4J002FD137
4J002FD138
4J002FD139
4J002GQ00
4J002GQ01
(57)【要約】
ハロゲン非含有の耐炎性および耐加水分解性ポリマー組成物を開示する。本開示のポリマー組成物は改善された電気的な耐トラッキング性も有するように配合される。ポリマー組成物はポリブチレンテレフタレートのような熱可塑性ポリマーを含む。熱可塑性ポリマーは、任意に亜リン酸塩及び/又は窒素含有相乗剤と組み合わされるホスフィン酸塩を含んでもよい難燃剤と組み合わされる。電気的な耐トラッキング性を改善するために1種以上の電気抵抗剤がポリマー組成物に添加される。電気抵抗剤は例えばフレキシブルなポリマーであってもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって:
ポリマー組成物中に約35重量%より多い量で存在する、熱可塑性ポリマー;
ポリマー組成物中に含有される難燃剤組成物であって、非ハロゲン難燃剤を含む、難燃剤組成物;
該熱可塑性ポリマーから形成されたポリマーマトリックス中に分散されている強化用繊維;
シリコーン、ポリエステルエラストマー、メタクリレートブタジエンスチレン、またはそれらの混合物を含む電気抵抗剤であって、ポリマー組成物中に約10重量%未満の量で存在する、電気抵抗剤
を含み、
少なくとも475Vの比較トラッキング指数を示す、上記ポリマー組成物。
【請求項2】
少なくとも525V、例えば少なくとも550V、例えば少なくとも575V、例えば少なくとも600Vの比較トラッキング指数を示す、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記電気抵抗剤が、超高分子量シリコーンを含み、前記ポリマー組成物中に、約0.3重量%~約5重量%の量で存在する、請求項1または2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記超高分子量シリコーンが、ポリジメチルシロキサンを含む、請求項3に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記ポリマー組成物が、ポリエステルエラストマーを含む第2の電気抵抗剤を含む、請求項3または4に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記ポリエステルエラストマーが、コポリエステルエラストマーを含み、前記超高分子量シリコーンが、前記ポリマー組成物中に、前記ポリエステルエラストマーに対して、約3:1~約1:3の重量比で、例えば約2:1~約1:1.5の重量比で存在する、請求項5に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記電気抵抗剤が、ポリエステルエラストマーを含む、請求項1または2に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記ポリエステルエラストマーが、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエーテルセグメントのブロックコポリマーを含む熱可塑性コポリエステルエラストマーを含む、請求項7に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記ポリエステルエラストマーが、熱可塑性エステルエーテルエラストマーを含む熱可塑性コポリエステルエラストマーを含む、請求項7に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
第2の電気抵抗剤をさらに含み、該第2の電気抵抗剤は、メタクリレートブタジエンスチレンを含む、請求項7に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記熱可塑性ポリマーが、カルボキシ末端基を有するポリエステルポリマーを約20mmol/kg未満の量で含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
前記ポリエステルポリマーが、ポリブチレンテレフタレートポリマーを含む、請求項11に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
ポリカルボジイミドをさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
前記ポリカルボジイミドが、10,000g/molまたはそれより大きい重量平均分子量を有する、請求項13に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
前記強化用繊維が、ガラス繊維を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項16】
前記強化用繊維が、約1mm~約5mmの平均繊維長さを有し、約8マイクロメートル~約12マイクロメートルの平均繊維直径を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項17】
前記難燃剤組成物が、ホスフィン酸金属塩を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項18】
前記難燃剤組成物が、亜リン酸金属塩をさらに含み、該亜リン酸金属塩は、亜リン酸アルミニウムを含み、前記ホスフィン酸金属塩が、ホスフィン酸アルミニウムジエチルを含む、請求項17に記載の耐炎性ポリマー組成物。
【請求項19】
前記難燃剤組成物が、窒素含有相乗剤をさらに含み、該窒素含有相乗剤は、シアヌル酸メラミンを含む、請求項17または18に記載の耐炎性ポリマー組成物。
【請求項20】
前記難燃剤組成物が、亜リン酸金属塩を含有しない、請求項17に記載の耐炎性ポリマー組成物。
【請求項21】
前記難燃剤組成物が、窒素含有相乗剤を含有しない、請求項17または20に記載の耐炎性ポリマー組成物。
【請求項22】
前記ポリマー組成物が、有機金属相溶化剤をさらに含有する、請求項1~21のいずれか一項に記載の耐炎性ポリマー組成物。
【請求項23】
前記有機金属相溶化剤が、チタネートを含む、請求項22に記載の耐炎性ポリマー組成物。
【請求項24】
前記有機金属相溶化剤が、チタン(IV)2-プロパノラート、トリス(ジオクチル)ホスファト-Oを含む、請求項22に記載の耐炎性ポリマー組成物。
【請求項25】
前記有機金属相溶化剤が、前記ポリマー組成物中に、約0.05重量%~約2.5重量%の量で存在する、請求項19~21のいずれか一項に記載の耐炎性ポリマー組成物。
【請求項26】
カルボン酸のエステルをさらに含有する、請求項1~25のいずれか一項に記載の耐炎性ポリマー組成物。
【請求項27】
前記カルボン酸のエステルが、モンタン酸と多官能性アルコールとの反応生成物を含む、請求項26に記載の耐炎性ポリマー組成物。
【請求項28】
250℃の温度および2.16kgの負荷で試験した際、少なくとも4cm
3/10分のメルトフローレートを有する、請求項1~27のいずれか一項に記載の耐炎性ポリマー組成物。
【請求項29】
アンダーライターズ・ラボラトリーズ試験94に従って垂直燃焼試験により試験した際、前記ポリマー組成物が、1.6mmの厚さの試験でV-0のを等級を有する、請求項1~28のいずれか一項に記載の耐炎性ポリマー組成物。
【請求項30】
前記ガラス繊維が、前記ポリマー組成物中に、約10重量%~約40重量%の量で、例えば約20重量%~約30重量%の量で存在する、請求項15に記載のポリマー組成物。
【請求項31】
前記ポリマー組成物が121℃で加水分解試験に供された際、前記ポリマー組成物の引張係数の低減が、168時間後に約50%以下である、請求項1~30のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項32】
前記ポリマー組成物が121℃で加水分解試験に供された際、前記ポリマー組成物の破断点ひずみの低減が、168時間後に約45%以下である、請求項1~31のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項33】
少なくとも2つの対向する壁を含み、その間に接触要素を受け入れるための通路が画定されている電気コネクターであって、該壁は、請求項1~32のいずれか一項に記載のポリマー組成物から形成されている、上記電気コネクター。
【請求項34】
前記接触要素が、オス型のレセプタクルまたはメス型のレセプタクルを含む、請求項33に記載のコネクター。
【請求項35】
ポリマー組成物であって:
ポリマー組成物中に約35重量%より多い量で存在する、熱可塑性ポリマー;
ポリマー組成物中に含有される難燃剤組成物であって、非ハロゲン難燃剤を含む、難燃剤組成物;
該熱可塑性ポリマーから形成されたポリマーマトリックス中に分散されている強化用繊維
を含み、
該ポリマー組成物は、少なくとも475Vの比較トラッキング指数を示し、約15kV/mmより大きい絶縁耐力を示し、20℃~120℃の温度範囲にわたり、約1×10
14オームより大きい表面抵抗率を示し、20℃~60℃の温度範囲にわたり、1×10
14オーム-cmより大きい体積抵抗率を示し、前記ポリマー組成物が121℃で加水分解試験に供された際、前記ポリマー組成物の破断点応力の低下が、168時間後に約30%以下であり、前記ポリマー組成物の破断点ひずみの低減が、168時間後に約40%以下である、上記ポリマー組成物。
【請求項36】
シリコーン、ポリエステルエラストマー、メタクリレートブタジエンスチレン、またはそれらの混合物を含む電気抵抗剤をさらに含み、該電気抵抗剤は、ポリマー組成物中に約10重量%未満の量で存在する、請求項35に記載のポリマー組成物。
【請求項37】
前記ポリマー組成物が、約25kV/mmより大きい絶縁耐力を示し、20℃~120℃の温度範囲にわたり、約1×10
15オームより大きい表面抵抗率を示し、20℃~60℃の温度範囲にわたり、1×10
15オーム-cmより大きい体積抵抗率を示す、請求項35に記載のポリマー組成物。
【請求項38】
少なくとも1種の抗酸化剤、オリゴマーのカルボジイミド、およびチタネートをさらに含む、請求項36に記載のポリマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001]本出願は、出願日が2021年6月7日の米国仮特許出願第63/197,695号、および出願日が2022年5月13日の米国仮特許出願第63/341,605号に基づいており、その優先権を主張し、これらの両方が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
[0002]エンジニアリング熱可塑性物質は、成形部品や製品を生産するために、数多くの多様な用途でしばしば使用される。例えば、ポリエステルおよびポリアミドポリマーは、あらゆる様々なタイプの成形製品、例えば射出成形製品、吹込成形された製品などを生産するのに使用される。例えばポリエステルポリマーは、化学物質耐性にするために、優れた強度特性を付与するために、また、ポリエステルエラストマーを含有する組成物を配合する際に柔軟にするために配合することができる。特に有利なのは、ポリエステルポリマーは、その熱可塑性の性質のために溶融加工できることである。加えて、ポリエステルポリマーは、再利用したり、再加工したりすることができる。
【0003】
[0003]熱可塑性ポリマーから成形部品や製品を生産することにおいて当業者が直面する1つの問題は、物品を耐炎性にする能力である。ほぼ無限の様々な難燃剤が市場に出て商業的に販売されているが、特定の熱可塑性ポリマー組成物にとって適切な難燃剤を選択することは難しく、予測不可能である。さらに、多くの入手可能な難燃剤は、臭素化合物などのハロゲン化合物を含有しており、これは、生産中に刺激が強い化学ガスを生じさせる可能性がある。
【0004】
[0004]ポリエステルポリマーから成形部品や製品を生産することにおいて当業者が直面する別の問題は、物品を加水分解耐性にする能力である。多くのポリエステルポリマーは、例えば、水または高湿度の環境との繰り返しの接触、特に高い温度でのそのような接触に供されると、分解することが知られている。
【0005】
[0005]耐炎性および耐加水分解性が求められる分野の1つは、例えば、コネクター、特定には高電圧コネクターを設計および生産するために熱可塑性ポリマーを使用する場合である。高電圧コネクターは、自動車の電気駆動システムを構成するコンポーネントなどの高電圧コンポーネントと、取り外し可能な電気的接続がなされるように設計されている。例えば、高電圧コネクターは、ハイブリッド車、電気自動車、および燃料電池車の進化によって、特に需要が高い。
【0006】
[0006]電気自動車の現代の電気駆動システムは、例えば、数多くの高電圧コンポーネントまたはアセンブリを含んでおり、この場合、高電圧デバイスは、300Vより高い電圧で作動する。この例としては、特定には、パワー制御エレメント、例えばインバーター、電流コンバーターおよび/または電力コンバーター、制御ユニット、および/または電子制御器ユニットが挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0007]高電圧コネクターは、電気ショックからの保護を提供しながら高電圧環境で作動するように設計される。これらのコネクターはまた、高温および高い湿度環境でも作動する必要がある。したがって、コネクターのハウジングは、難燃剤および耐加水分解性である必要がある。
【0008】
[0008]しかしながら、多くの用途において、耐炎性または耐加水分解性を増加させるために措置を講じると、ポリマーの電気的絶縁特性が落ちる可能性がある。実際に、ポリマー組成物の他の特性に影響を及ぼすことなく熱可塑性ポリマーの電気抵抗を増加させることが強く求められている。本発明の開示は、難燃特性、耐加水分解性、および電気的な耐トラッキング性の改善された組合せを有する熱可塑性ポリマー組成物に向けられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
要約
[0009]一般的に、本発明の開示は、熱可塑性ポリマー、例えばポリエステルポリマーを、難燃剤組成物および少なくとも1種の電気抵抗剤と共に含有するポリマー組成物に向けられる。難燃剤組成物の成分は、改善された耐火性を有するポリマー組成物を生産するために慎重に選択される。例えば、ポリマー組成物は、アンダーライターズ・ラボラトリーズ(Underwriters Laboratories)試験94に従って試験される場合、厚さ1.6mmまたは0.8mmでのV-0等級を示すことができる。加えて、ポリマー組成物は、121℃で加水分解試験に供された場合、耐加水分解性引張-機械特性および衝撃特性を示すことができる。例えば、ポリマー組成物は、組成物の引張特性、例えば引張係数(tensile modulus)が168時間にわたり約50%より大きく減少しないように配合することができる。
【0010】
[00010]一実施態様において、例えば、本発明の開示は、熱可塑性ポリマー、例えばポリエステルポリマーを含有する耐炎性ポリマー組成物に向けられる。ポリエステルポリマーは、ポリマー組成物中に、一般的に約35重量%より多くの量で、例えば約40重量%より多くの量で、例えば約45重量%より多くの量で存在していてもよい。ポリエステル系熱可塑性ポリマーは、ポリブチレンテレフタレートポリマーであってもよい。一実施態様において、耐加水分解性ポリエステルポリマー、例えば耐加水分解性ポリブチレンテレフタレートポリマーを使用してもよい。ポリエステルポリマー(例えばポリブチレンテレフタレートポリマー)は、限定的な量のカルボキシ末端基を含有していてもよい。ポリエステルポリマーは、カルボキシ末端基を約20mmol/kg未満の量で含有していてもよい。
【0011】
[00011]本発明の開示によれば、熱可塑性ポリマーは、ホスフィン酸金属塩、任意に亜リン酸金属塩、任意に窒素含有相乗剤(nitrogen-containing synergist)を含む非ハロゲン難燃剤組成物と組み合わされる。亜リン酸金属塩は、例えば、以下の式:Al2(HPO3)3を有する亜リン酸アルミニウムを含んでいてもよい。一方でホスフィン酸金属塩は、ホスフィン酸ジアルキル、例えばホスフィン酸アルミニウムジエチルであってもよい。窒素含有相乗剤は、メラミン、例えばシアヌル酸メラミンを含んでもよい。一形態において、ホスフィン酸金属塩は、ポリマー組成物中に、約5~約30重量%の量で、例えば約7~約25重量%の量で、例えば約7~約19重量%の量で存在する。亜リン酸金属塩は、ポリマー組成物中に、一般的に約0.01~約4重量%の量で、例えば約0.1~約2重量%の量で、例えば約0.2~約1.1重量%の量で存在していてもよい。一方で、窒素を含有する相乗剤は、ポリマー組成物中に、一般的に約0.01~約12重量%の量で、例えば約2~約9重量%の量で、例えば約3~約8.5重量%の量で存在していてもよい。
【0012】
[00012]本発明の開示によれば、ポリマー組成物はまた、1種またはそれより多くの電気抵抗剤も含有する。例えば、少なくとも1種の電気抵抗剤は、シリコーン、ポリエステルエラストマー、メタクリレートブタジエンスチレンポリマー、またはそれらの混合物を含んでもよい。1種またはそれより多くの電気抵抗剤は、ポリマー組成物中に、一般的に約10重量%未満の量で、例えば約0.3%~約5重量%の量で存在していてもよい。一実施態様において、電気抵抗剤は、超高分子量シリコーンであってもよい。超高分子量シリコーンは、ポリジメチルシロキサンであってもよい。一形態において、超高分子量シリコーンは、ポリマー組成物中に、ポリエステルエラストマー、例えばコポリエステルエラストマーを含む第2の電気抵抗剤と組み合わされて存在していてもよい。シリコーンおよびコポリエステルエラストマーは、約3:1~約1:3の重量比で、例えば約2:1~約1:1.5の重量比でポリマー組成物に添加されてもよい。
【0013】
[00013]代替の実施態様において、電気抵抗剤は、ポリエステルエラストマーであってもよい。ポリエステルエラストマーは、例えば、熱可塑性コポリエステルエラストマーであってもよい。例えば、一実施態様において、熱可塑性コポリエステルエラストマーは、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエーテルセグメントのブロックコポリマーであってもよい。代替として、コポリエステルエラストマーは、熱可塑性エステルエーテルエラストマーであってもよい。一実施態様において、ポリマー組成物は、ポリエステルエラストマーを第2の電気抵抗剤と組み合わされて含有していてもよい。第2の電気抵抗剤は、メタクリレートブタジエンスチレンポリマーであってもよい。メタクリレートブタジエンスチレンポリマーは、コアおよびシェル構造を有していてもよい。
【0014】
[00014]1種またはそれより多くの電気抵抗剤をポリマー組成物に添加することは、組成物から作製された組成物および物品の電気的な耐トラッキング性を劇的に改善することができる。例えば、組成物から作製されたポリマー組成物および物品は、少なくとも475V、例えば少なくとも500V、例えば少なくとも525V、例えば少なくとも550V、例えば少なくとも575V、例えば少なくとも600Vの比較トラッキング指数を有していてもよい。比較トラッキング指数は、一般的に、約950V未満である。
【0015】
[00015]ポリマー組成物はまた、強化用繊維、例えばガラス繊維を含有していてもよい。強化用繊維は、一般的に、約1mm~約5mmの平均繊維長さを有していてもよく、約8マイクロメートル~約12マイクロメートルの平均繊維直径を有していてもよい。
【0016】
[00016]ポリマー組成物はまた、有機金属相溶化剤(organometallic compatibilizer)を含有していてもよい。有機金属相溶化剤は、例えば、チタネートであってもよい。使用することができるチタネートの一例は、チタン(IV)2-プロパノラート、トリス(ジオクチル)ホスファト-Oである。有機金属相溶化剤は、ポリマー組成物中に、一般的に約0.05~約2.5重量%の量で存在していてもよい。耐炎性ポリマー組成物はまた、カルボン酸のエステルを含有していてもよい。例えば、このようなエステルは、モンタン酸を多官能性アルコールと反応させることによって形成されてもよい。多官能性アルコールは、エチレングリコールまたはグリセリンであり得る。カルボン酸のエステルは、ポリマー組成物中に、一般的に約0.05~約8重量%の量で存在していてもよい。
【0017】
[00017]一実施態様において、ポリマー組成物はまた、カルボジイミドを含有していてもよく、特定にはポリカルボジイミドを含有していてもよい。ポリカルボジイミドは、例えば、10,000g/molまたはそれより大きい重量平均分子量を有していてもよい。
【0018】
[00018]本発明の開示のポリマー組成物は、250℃および2.16kgの負荷で試験される場合、少なくとも3cm3/10分、例えば約4cm3/10分より大きいメルトフローレートを有していてもよい。
【0019】
[00019]一実施態様において、本発明の開示は、少なくとも2つの対向する壁を含み、その間に接触要素を受け入れるための通路が画定されている、電気コネクター、例えば高電圧コネクターに向けられる。接触要素は、例えば、オス型の導電性エレメントまたはメス型の導電性エレメントであってもよい。本発明の開示によれば、少なくとも2つの対向する壁は、上述したポリマー組成物から形成される。
[00020]以下で、本発明の開示の他の特徴および形態をより詳細に論じる。
【0020】
定義
[00021]本明細書で使用される場合、ポリマーの耐炎性特性は、アンダーライターズ・ラボラトリーズ試験94に従って垂直燃焼試験により測定される。試験プラークは、耐炎性を測定するために様々な厚さで作製することができる。V-0等級は、最良の等級を示す。
【0021】
[00022]「加水分解試験」は、本明細書で使用される場合、例えば96時間または168時間のような特定の長さの時間にわたり、試験プラークを121℃で圧力鍋に置くことによって実行される。圧力鍋は、加圧下で、飽和蒸気の形態の湿った熱を使用する。圧力鍋の稼働範囲は、15~21psi(ギア式蒸気圧力計使用)である。圧力蒸気計の針が上記の稼働範囲(15~21psi)内であることが示されたとき、曝露期間が始まる。試験中、温度は、121℃から127℃で変動し得る。決められた時間の後、試験プラークの物理的特性を測定し、最初の特性と比較する。
【0022】
[00023]ポリマーまたはポリマー組成物のメルトフローレートは、好適な温度および負荷、例えば250℃および2.16kgの負荷、または5kgの負荷におけるISO試験1133に従って測定される。
【0023】
[00024]ポリマーの密度は、ISO試験1183に従ってg/cm3の単位で測定される。
[00025]平均粒度(d50)は、例えば好適な堀場製作所(Horiba)の光散乱デバイスのような光散乱を使用して測定される。
【0024】
[00026]ポリマーの平均分子量は、Margoliesの方程式を使用して決定される。
[00027]引張係数、降伏点引張応力、降伏点張力ひずみ、50%破断点引張応力、破断点引張応力、および引張破壊呼びひずみ(tensile nominal strain at break)は全て、ISO試験527-2/1Bに従って測定される。
【0025】
[00028]23℃におけるシャルピー衝撃強さは、ISO試験179/1eUに従って測定される。
[00029]IEC試験60250に従って、比誘電率(relative permittivity)または誘電率(dielectric constant)は、1MHzで測定され、誘電正接は、1MHzで測定される。
【0026】
[00030]比較トラッキング指数は、国際電気標準会議規格(International Electrotechnical Commission Standard)IEC-60112/3に従って測定される。
[00031]絶縁耐力(dielectric strength)は、IEC60243に従って決定される。絶縁耐力に関する厚さは1.5mmであった。
【0027】
[00032]表面/体積抵抗率は、一般的に、IEC62631-3-1:2016またはASTMD257-14に従って決定される。この手順に従って、2つの電極間に標準試料(例えば、1立方メートル)を置く。電圧を60秒間適用し、抵抗を測定する。表面抵抗率は、電位勾配(単位はV/m)と電極の単位長さ当たりの電流(単位はA/m)の商であり、一般的に、絶縁材料の表面に沿った漏れ電流に対する抵抗を表す。より説明的な単位である平方当たりのオームも一般的にみられるが、電極の4つの端部が正方形を定義するため、商における長さは相殺され、表面抵抗率はオームで報告される。体積抵抗率もまた、電流密度に対する材料における電流に平行な電位勾配の比率としても測定される。
【0028】
[00033]明細書の残り部分で、添付の図面を参照しながら、本発明の開示の詳細で実現可能な開示をより特定に明示する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】[00034]
図1は、トップカバーが除去された状態を例示する電気自動車のための電池パックの斜視図である;この電池パックは、1つまたはそれより多くの実施態様において、自動車の他のコンポーネントへの接続のために、高電圧ハーネス接続構造を採用している。
【
図2】[00035]
図2は、本発明の開示による高電圧コネクターの一実施態様の斜視図である。
【
図3】[00036]
図3は、本発明の開示による高電圧コネクターの代替の実施態様である。
【
図4】[00037]
図4は、
図1の電池パックを取り入れた電気車の実施態様である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[00038]本明細書および図面における参照記号の繰り返しの使用は、本発明の同じまたは類似した特徴または要素を表すことが意図されている。
【0031】
詳細な説明
[00039]本発明の議論は、単なる例示的な実施態様の説明であり、本開示のより広い形態を限定するものとしては意図されていないことが当業者によって理解されるであろう。
【0032】
[00040]一般的に、本開示は、優れた電気的な耐トラッキング性(electrical tracking resistance properties)を有するハロゲン非含有の耐炎性ポリマー組成物に向けられる。本発明の開示により作製されるポリマー組成物は、アンダーライターズ・ラボラトリーズ試験に従って試験される場合、優れた難燃性評価、優れた電気抵抗特性を実証し、耐加水分解性であるだけでなく、ポリマー加工特性などの優れた機械特性も有する。
【0033】
[00041]本開示のポリマー組成物は、特定には、高電圧用途によく適している。本開示のポリマー組成物は、例えば、燃焼性および電気特性に関する高い安全性標準を満たすことに加えて、高い温度で優れた耐加水分解性を提供することができる高電圧の自動車用コネクターを構築することにおける使用によく適している。本開示によれば、ポリマー組成物は、電気自動車の安全でより速い充電を確実にするために劇的に改善された電気的な耐トラッキング性を有するように配合される。例えば、本開示により配合されるポリマー組成物は、少なくとも475V、例えば少なくとも500V、例えば少なくとも525V、例えば少なくとも550V、例えば少なくとも575V、例えば少なくとも600Vの比較トラッキング指数を有していてもよい。
【0034】
[00042]本組成物はまた、IEC60243に従って測定される場合、約5kV/mm以上、一部の実施態様において約15kV/mm以上、一部の実施態様において約20kV/mm以上、一部の実施態様において約25kV/mm以上、一部の実施態様において約30kV/mm以上、一部の実施態様において約35kV/mm以上、一部の実施態様において約40kV/mm以上、一部の実施態様において約45kV/mm以上で、約100kV/mm未満、一部の実施態様において約80kV/mm未満、一部の実施態様において約50kV/mm未満の絶縁耐力を示していてもよい。
【0035】
[00043]ポリマー組成物はまた、成形された相互接続デバイスにおける使用のために優れた絶縁特性を有する基板を提供するのに役立つ、比較的高い程度の電気抵抗を示していてもよい。表面抵抗率は、例えば、約1×1014オームまたはそれより高くてもよく、一部の実施態様において約1×1015オームまたはそれより高くてもよく、一部の実施態様において約1×1016オームまたはそれより高くてもよく、これは例えば、IEC62631-3-1:2016に従って約20℃の温度に従って測定される。一形態において、上記の表面抵抗率の特徴は、20℃~120℃の温度範囲にわたり維持され得る。
【0036】
[00044]体積抵抗率(volume resistivity)は、同様に、約1×1011オーム-cm以上、一部の実施態様において約1×1012オーム-cm以上、一部の実施態様において約1×1013オーム-cm以上、一部の実施態様において約1×1014オーム-cm以上、一部の実施態様において約1×1015オーム-cm以上、一部の実施態様において約1×1016オーム-cm以上であってもよく、これは例えば、IEC62631-3-1:2016に従って約20℃の温度で測定される。一形態において、上記の体積抵抗率の特徴は、20℃~120℃の温度範囲にわたり維持され得る。
【0037】
[00045]一般的に、本開示のポリマー組成物は、好適な熱可塑性ポリマー、例えばポリブチレンテレフタレートポリマーを、ホスフィン酸金属塩単独を含有し得る難燃剤組成物と組み合わせて、または任意に亜リン酸金属塩および/または窒素含有相乗剤と組み合わせて含有する。難燃剤組成物に加えて、ポリマー組成物はまた、強化用繊維も含有していてもよい。本発明の開示によれば、ポリマー組成物はまた、少なくとも1種の電気抵抗剤も含有する。電気抵抗剤は、他の特性のいずれかを弱めることなく電気的な耐トラッキング性を改善するためにポリマー組成物に添加される。電気抵抗剤は、例えば、フレキシブルなポリマー、例えば弾性ポリマーであってもよい。一実施態様において、少なくとも2つの電気抵抗剤は、1つまたはそれより多くの特性を改善するためにポリマー組成物に添加される。
【0038】
[00046]本開示のポリマー組成物は、電気的なコンポーネント、例えば高電圧電気コネクターを製造するのに特によく適している。本開示により作製される電気コネクターは、本開示の範囲内の様々な構成を有していてもよい。一例として、電気コネクターは、対向する壁の間の複数の通路またはスペースを画定することができる。通路は、電気的接続を容易にするために、接触要素(contact elements)を収容することができる。接触要素は、例えば、対向するコネクターと接続するためのオス型の接触要素またはメス型の接触要素の形態であってもよい。
【0039】
[00047]
図1および
図4を参照すると、例えば、電気自動車100に取り付けられた電池パック10の一実施態様が例示される。電池パック10は、電池パックケース12を含む。例示された実施態様において、電池パックケース12の一部分のみが示される。内部コンポーネントを示すために、電池パックケース12の上部は除去されている。
【0040】
[00048]電池パック10は、電池モジュール14、温度調整された空気ユニット16、高電圧カットオフスイッチであるサービスディスコネクトスイッチ18、ジャンクションボックス20、およびリチウムイオン電池制御器22を含んでいてもよい。
【0041】
[00049]電池パックケース12は、あらゆる好適な配置で乗り物内の所定の場所に搭載させることができる。電池パック10を乗り物内の他のコンポーネントに接続するために、電池パックケース12は、冷却剤パイプコネクター末端24、充電/放電コネクター末端26、ヘビー電気コネクター末端(heavy-electric connector terminal)28、およびウィーク電気コネクター末端(weak electric connector terminal)30を支持する。
【0042】
[00050]電池モジュール14は、複数の電池サブモジュールを含んでいてもよい。各電池サブモジュールは、複数の電池セルが互いにスタックされたアセンブリ構造である。
[00051]1つまたはそれより多くの高電圧電気ハーネスは、電池パック10を、乗り物内に含有される電気モーターに接続する。例えば、
図4で示されるように、電池パック10は、配線ハーネス102および配線ハーネス104を介して、電気モーター106に接続される。電池パック10へのコネクターに加えて、乗り物の電気モーターは、エンジンコネクターへのコンバーター、ヒーターコネクターへのインバーター、圧縮機コネクターへのインバーター、コンバーターコネクターへの充電器などを含んでいてもよい。これらのコンポーネントの全ては、コネクター、特定には高電圧コネクターを必要とする。
【0043】
[00052]
図2を参照すると、本発明の開示により作製され得る高電圧コネクター50の一実施態様が示される。電気コネクター50は、対向する壁54で取り囲まれた挿入通路52を含む。壁54は、複数の接触要素56を収容する。接触要素56は、対向するコネクターへの電気的接続をなすためのものである。
図2で例示される実施態様において、接触要素56は、対向する受け側に挿入されることになるオス型の接触である。
【0044】
[00053]
図3を参照すると、本開示により作製される別のコネクター60が示される。コネクター60は、
図2で示されるように、コネクター50を受け入れ、取り付けるためのものである。コネクター60は、複数の対向する壁64で取り囲まれた挿入通路62を含む。コネクター60は、複数の接触要素66を含む。接触要素66は、
図2で示されるように、コネクター50からオス型の接触要素56を受け入れるためのメス型のコネクターである。
【0045】
[00054]本開示によれば、コネクター50の対向する壁54およびコネクター60の対向する壁64は、本開示のポリマー組成物から作製することができる。ポリマー組成物は、優れた耐炎性特性を有し、耐加水分解性でもある。例えば、アンダーライターズ・ラボラトリーズ試験94に従って垂直燃焼試験に従って試験される場合、ポリマー組成物は、1.6mmの厚さで試験されたとき、V-0等級を有していてもよい。特定の実施態様において、ポリマー組成物はまた、0.8mmの厚さで試験されたとき、V-1またはV-0の等級を有することもできる。ポリマー組成物は、121℃で加水分解試験に供された場合、耐加水分解性の引張-機械特性および衝撃特性を表することができる。例えば、ポリマー組成物は、組成物の引張特性、例えば引張係数が168時間にわたり約50%より大きく減少しないように配合することができる。
【0046】
[00055]ポリマー組成物はまた、優れた機械特性も有する。例えば、ポリマー組成物の引張係数は、約8,400MPaより大きくてもよく、例えば約9,000MPaより大きくてもよく、例えば約9,500MPaより大きくてもよく、例えば約10,000MPaより大きくてもよく、例えば約10,500MPaより大きくてもよく、例えば約11,000MPaより大きくてもよい。引張係数は、一般的に、約18,000MPa未満である。ポリマー組成物は、約110MPaより大きく、例えば約112MPaより大きく、例えば約114MPaより大きく、一般的に、約130MPa未満の破断点引張応力を有していてもよい。ポリマー組成物はまた、約6kJ/m2より大きく、例えば約6.5kJ/m2より大きく、例えば約7kJ/m2より大きく、例えば約7.5kJ/m2より大きく、一般的に、約14kJ/m2未満のノッチありシャルピー衝撃強さを有していてもよい。ポリマー組成物は、一般的に約50kJ/m2より大きいノッチなしシャルピー衝撃強さを有していてもよい。
【0047】
[00056]上述したように、ポリマー組成物は、一般的に、熱可塑性ポリマー、特にポリエステルポリマーを含有する。本明細書における使用に好適なポリエステルは、2~約10個の炭素原子を含有する脂肪族もしくは脂環式ジオールまたはそれらの混合物と、芳香族ジカルボン酸とから誘導され、すなわち、ポリアルキレンテレフタレートである。
【0048】
[00057]脂環式ジオールと芳香族ジカルボン酸とから誘導されるポリエステルは、例えば1,4-シクロヘキサンジメタノールのシスまたはトランス異性体(またはそれらの混合物)のいずれかを芳香族ジカルボン酸と共に縮合することによって調製される。
【0049】
[00058]芳香族ジカルボン酸の例としては、イソフタル酸またはテレフタル酸、1,2-ジ(p-カルボキシフェニル)エタン、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテルなど、およびこれらの混合物が挙げられる。これらの酸の全ては、少なくとも1つの芳香族核を含有する。縮合環はまた、例えば1,4-または1,5-または2,6-ナフタレン-ジカルボン酸に存在し得る。一実施態様において、ジカルボン酸は、テレフタル酸またはテレフタル酸とイソフタル酸との混合物である。
【0050】
[00059]ポリマー組成物に使用することができるポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、それらの混合物およびそれらのコポリマーが挙げられる。
【0051】
[00060]一形態において、ポリエステルポリマー、例えばポリブチレンテレフタレートポリマーは、相対的に最小量のカルボキシ末端基を含有する。例えば、ポリエステルポリマーは、カルボキシ末端基を、約20mmol/kg未満の量で、例えば約18mmol/kg未満の量で、例えば約15mmol/kg未満の量で、また、一般的に約1mmol/kgより多くの量で含有していてもよい。カルボキシ末端基の量は、様々な技術を使用して、ポリエステルポリマーにおいて最小化することができる。例えば、一実施態様において、ポリエステルポリマーは、カルボキシ末端基の量を減少させるために、アルコール、例えばベンジルアルコールと接触させてもよい。
【0052】
[00061]ポリエステルポリマーまたはポリブチレンテレフタレートポリマーは、250℃および2.16kgの負荷で試験される場合、一般的に、約10cm3/10分より大きい、例えば約30cm3/10分より大きい、例えば約35cm3/10分より大きい、一般的に、約100cm3/10分未満、例えば約80cm3/10分未満、例えば約60cm3/10分未満、例えば約50cm3/10分未満のメルトフローレートを有していてもよい。
【0053】
[00062]ポリブチレンテレフタレートポリマーなどの熱可塑性ポリマーは、ポリマー組成物中に、連続相を形成するのに十分な量で存在する。例えば、熱可塑性ポリマーは、ポリマー組成物中に、少なくとも約35重量%の量で存在していてもよく、例えば少なくとも約40重量%の量で、例えば少なくとも45重量%の量で、例えば少なくとも約50重量%の量で、例えば少なくとも約55重量%の量で存在していてもよい。熱可塑性ポリマーは、一般的に、約80重量%未満の量で存在する。
【0054】
[00063]本開示によれば、上述したような少なくとも1種の熱可塑性ポリマーは、本開示により、非ハロゲン難燃剤組成物と組み合わされる。難燃剤組成物は、任意に亜リン酸金属塩および/または窒素含有相乗剤と組み合わされて、ホスフィン酸金属塩を含有していてもよい。
【0055】
[00064]ホスフィン酸金属塩は、例えば、ホスフィン酸および/またはジホスフィン酸ジアルキルであってもよい。ホスフィン酸金属塩は、以下の化学構造のうち1つを有していてもよい:
【0056】
【0057】
式中、R1、R2は、同一であるかまたは異なっており、それぞれ直鎖または分岐鎖C1~C6-アルキルであり;R3は、直鎖または分岐鎖C1~C10-アルキレン、C6~C10-アリーレン、C7~C20-アルキルアリーレンまたはC7~C20-アリールアルキレンであり;Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、Kおよび/またはプロトン化された窒素塩基であり;mは、1~4であり;nは、1~4であり;xは、1~4である。
【0058】
[00065]一実施態様において、ホスフィン酸金属塩は、ジアルキルホスフィン酸の金属塩、例えばホスフィン酸アルミニウムジエチルである。ホスフィン酸金属塩は、ポリマー組成物中に、一般的に約5重量%より多くの量で、例えば約7重量%より多くの量で、例えば約9重量%より多くの量で、例えば約11重量%より多くの量で、また、一般的に、約30重量%未満の量で、例えば約25重量%未満の量で、例えば約20重量%未満の量で、例えば約17重量%未満の量で、例えば約14重量%未満の量で存在していてもよい。一実施態様において、ホスフィン酸金属塩は、ポリマー組成物中に、約7~約19重量%の量で存在する。代替の実施態様において、ホスフィン酸金属塩は、ポリマー組成物中に、約15重量%より多くの量で、例えば約16重量%より多くの量で、例えば約17重量%より多くの量で、例えば約18重量%より多くの量で、例えば約19重量%より多くの量で、例えば約20重量%より多くの量で、例えば約17重量%~約26重量%の量で存在する。
【0059】
[00066]亜リン酸金属塩は、任意にポリマー組成物中に存在しており、上記で確認された金属(M)のいずれかから作られたあらゆる好適な亜リン酸金属塩であってもよい。一形態において、亜リン酸金属塩は、亜リン酸アルミニウムである。亜リン酸アルミニウムは、次の化学構造:Al2(HPO3)3を有していてもよい。また亜リン酸アルミニウムの他の形態もポリマー組成物中に存在していてもよい。このような他の形態としては、塩基性亜リン酸アルミニウム(basic aluminum phosphite)、亜リン酸アルミニウム・四水和物などが挙げられる。さらに別の実施態様において、亜リン酸アルミニウムは、式:Al(H2PO3)3を有していてもよい。
【0060】
[00067]亜リン酸金属塩は、特にポリマー組成物がポリブチレンテレフタレートを含有する場合、ポリマー組成物の耐炎性特性を改善することにおいて、ホスフィン酸金属塩と相乗的に働くと考えられる。ホスフィン酸金属塩と亜リン酸金属塩との重量比は、一般的に、約10:8~約30:1であってもよく、例えば約10:1~約20:1、例えば約14:1~約18:1であってもよい。一形態において、亜リン酸金属塩は、ポリマー組成物中に、約0.01重量%より多くの量で、例えば約0.1重量%より多くの量で、例えば約0.2重量%より多くの量で、例えば約0.3重量%より多くの量で、また、一般的に、約4重量%未満の量で、例えば約2.5重量%未満の量で、例えば約2重量%未満の量で、例えば約1.1重量%未満の量で存在していてもよい。一実施態様において、ポリマー組成物は、亜リン酸金属塩を含まず、ホスフィン酸金属塩のみを含有する。
【0061】
[00068]窒素含有相乗剤は、任意にホスフィン酸金属塩と組み合わされて存在していてもよく、このような相乗剤は、メラミンを含んでいてもよい。例えば、窒素含有相乗剤は、シアヌル酸メラミンを含んでいてもよい。使用可能な他のメラミン化合物としては、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸ジメラミン、ポリリン酸メレム、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メロンなどが挙げられる。使用することができる他の窒素含有相乗剤としては、ベンゾグアナミン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、アラントイン、グリコールウリル、グアニジン、またはそれらの混合物が挙げられる。一般的に、ポリマー組成物中に存在する窒素含有相乗剤の量は、ごく少量である必要がある。例えば、窒素含有相乗剤は、ポリマー組成物中に、約12重量%未満の量で、例えば約11重量%未満の量で、例えば約10重量%未満の量で、例えば約9重量%未満の量で、例えば約8.5重量%未満の量で、また、一般的に、約0.1重量%より多くの量で、例えば約2重量%より多くの量で、例えば約3重量%より多くの量で、例えば約4重量%より多くの量で存在していてもよい。一実施態様において、ポリマー組成物は、窒素含有相乗剤を含まず、ホスフィン酸金属塩のみを含有する。
【0062】
[00069]ポリマー組成物はまた、熱可塑性ポリマーマトリックス中に分散された強化用繊維を含有していてもよい。有利に利用され得る強化用繊維は、ガラス繊維のような鉱物繊維、またはポリマー繊維、特特にアラミド繊維のような有機高弾性繊維である。
【0063】
[00070]これらの繊維は、改変された形態であってもよいし、または改変されていない形態であってもよく、例えば、プラスチックへの接着を改善するために、サイジングがなされていてもよいし、または化学的に処理されてもよい。ガラス繊維が特に好ましい。
【0064】
[00071]強化用繊維、例えばガラス繊維を、サイジング組成物でコーティングして、繊維を保護し、繊維とマトリックス材料との接着を改善することができる。サイジング組成物は、通常、シラン、フィルム形成剤、潤滑剤、湿潤剤、接着剤を含み、任意に、静電防止剤および可塑剤、乳化剤を含み、任意にさらなる添加剤を含む。
【0065】
[00072]シランの具体的な例は、アミノシラン、例えば3-トリメトキシシリルプロピルアミン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシ-シラン、N-(3-トリメトキシシラニルプロピル)エタン-1,2-ジアミン、3-(2-アミノエチル-アミノ)プロピルトリメトキシシラン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2-エタン-ジアミンである。
【0066】
[00073]フィルム形成剤は、例えばポリビニルアセテート、ポリエステルおよびポリウレタンである。
[00074]強化用繊維に適用されるサイジング組成物は、シランサイジング剤を含有していてもよく、それに加えて、耐加水分解剤も含有していてもよい。耐加水分解剤は、例えば、グリシジルエステル型のエポキシ樹脂であってもよい。例えば、グリシジルエステル型のエポキシ樹脂は、モノグリシジルエステルまたはジグリシジルエステルであってもよい。使用可能なグリシジルエステル型のエポキシ樹脂の例としては、アクリル酸グリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、メチルテトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0067】
[00075]一形態において、サイジング組成物は、シラン、グリシジルエステル型のエポキシ樹脂、第2のエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、潤滑剤、および静電防止剤を含有する。第2の型のエポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であってもよい。耐加水分解剤は、サイジング組成物中に、シランサイジング剤に対して、約5:1~約1:1、例えば約4:1~約2:1の重量比で存在していてもよい。
【0068】
[00076]強化用繊維は、例えば押出機またはニーダーでポリマーマトリックスに混和することができる。
[00077]繊維直径は、使用される特定の繊維に応じて、さらに、繊維が細断された形態または連続的な形態のどちらかに応じて様々であってもよい。繊維は、例えば、約5μm~約100μmの直径を有していてもよく、例えば約5μm~約50μm、例えば約5μm~約12μmの直径を有していてもよい。繊維の長さは、特定の用途に応じて様々であってもよい。繊維は、例えば、約0.5mmより大きい平均長さを有していてもよく、例えば約1mmより大きい、例えば約1.5mmより大きい、例えば約2.5mmより大きい平均長さを有していてもよい。繊維の長さは、一般的に、約8mm未満であってもよく、例えば約7mm未満、例えば約5.5mm未満、例えば約4mm未満であってもよい。
【0069】
[00078]一般的に、強化用繊維は、ポリマー組成物中に、組成物の引張強度を増加させるのに十分な量で存在する。強化用繊維は、例えば、ポリマー組成物中に、約2重量%より多くの量で存在していてもよく、例えば約5重量%より多くの量で、例えば約10重量%より多くの量で、例えば約15重量%より多くの量で、例えば約20重量%より多くの量で存在していてもよい。強化用繊維は、一般的に、約55重量%未満の量で存在し、例えば約50重量%未満の量で、例えば約45重量%未満の量で、例えば約40重量%未満の量で、例えば約35重量%未満の量で、例えば約30重量%未満の量で存在する。
【0070】
[00079]本発明の開示によれば、ポリマー組成物は、少なくとも1種の電気抵抗剤を含有する。1種またはそれより多くの電気抵抗剤は、電気的な耐トラッキング性または少なくとも1つの他の特性を改善するためにポリマー組成物に添加される。電気抵抗剤は、エラストマー特性を有するポリマーであってもよい。本開示に従って使用可能な電気抵抗剤としては、シリコーンポリマー、ポリエステルエラストマー、メタクリレートブタジエンスチレンポリマー、およびそれらの混合物が挙げられる。一実施態様において、シリコーンポリマーは、ポリエステルエラストマーと組み合わされてポリマー組成物に添加される。代替の実施態様において、ポリエステルエラストマーは、コアおよびシェル構成において、メタクリレートブタジエンスチレンポリマーと組み合わされてポリマー組成物に添加されてもよい。
【0071】
[00080]電気抵抗剤がシリコーンポリマーである場合、一実施態様において、シリコーンポリマーは、超高分子量シリコーン(ultra-high molecular weight silicone)であってもよい。一般的に、UHMW-Siは、100,000g/molより大きく、例えば約200,000g/molより大きく、例えば約300,000g/molより大きく、例えば約500,000g/molより大きく、また、約3,000,000g/mol未満、例えば約2,000,000g/mol未満、例えば約1,000,000g/mol未満、例えば約500,000g/mol未満、例えば約300,000g/mol未満の平均分子量を有していてもよい。一般的に、UHMW-Siの、DIN51562に従って測定された40℃における動粘度は、100,000mm2/秒より大きく、例えば約200,000mm2/秒より大きく、例えば約1,000,000mm2/秒より大きく、例えば約5,000,000mm2/秒より大きく、例えば約10,000,000mm2/秒より大きく、例えば約15,000,000mm2/秒より大きく、また、約50,000,000mm2/秒未満、例えば約25,000,000mm2/秒未満、例えば約10,000,000mm2/秒未満、例えば約1,000,000mm2/秒未満、例えば約500,000mm2/秒未満、例えば約200,000mm2/秒未満であってもよい。
【0072】
[00081]UHMW-シリコーンは、ポリシロキサンまたはポリオルガノシロキサンなどのシロキサンを含んでいてもよい。一実施態様において、UHMW-Siは、上記の分子量および/または動粘度の要件を満たす、ジメチルシロキサンのようなジアルキルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサンのようなアルキルアリールシロキサン、ポリシルセスキオキサン、もしくはジフェニルシロキサンのようなジアリールシロキサン、またはポリジメチルシロキサンもしくはポリメチルフェニルシロキサンのようなそれらのホモポリマー、またはそれらのコポリマーを含んでいてもよい。ポリシロキサンまたはポリオルガノシロキサンはまた、分子の末端または主鎖において、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基もしくは置換されたアミノ基、エーテル基、またはメタ(アクリロイル)基などの置換基で修飾されていてもよい。UHMW-Si化合物は、単独で、または組み合わせて使用することができる。上記のUHMW-Si化合物はいずれも、上記の分子量および/または動粘度の要件で使用することができる。
【0073】
[00082]上述したように、一実施態様において、ポリマー組成物は、シリコーンポリマーを、第2の電気抵抗剤と組み合わせて含有していてもよい。第2の電気抵抗剤は、ポリエステルエラストマーであってもよい。一形態において、シリコーンポリマーおよびポリエステルエラストマーは、他の成分と合わせる前に一緒に混和して、マスターバッチを形成してもよい。ポリエステルエラストマーは、例えば、コポリエステルポリマーであってもよい。例えば、コポリエステルポリマーは、セグメント化された熱可塑性コポリエステル、例えばマルチブロックコポリマーであってもよい。
【0074】
[00083] 一緒に添加される場合、シリコーンポリマーおよびポリエステルエラストマーは、ポリマー組成物中に、約3:1~約1:3の重量比で存在していてもよい。重量比は、例えば、約2:1~約1:1.5であってもよい。シリコーンポリマーは、ポリマー組成物中に、一般的に、約0.3重量%~約5重量%の量で存在していてもよい。例えば、シリコーンポリマーは、ポリマー組成物中に、約1.3重量%より多い量で、例えば約1.5重量%より多い量で、例えば約1.7重量%より多い量で、例えば約2重量%より多い量で、例えば約2.2重量%より多い量で、例えば約2.4重量%より多い量で、また、一般的に約4.5重量%未満の量で存在していてもよい。
【0075】
[00084]代替の実施態様において、ポリエステルエラストマーは、シリコーンポリマーも添加することなく、電気抵抗剤としてポリマー組成物に添加される。
[00085]熱可塑性ポリエステルエラストマーは、例えば、熱可塑性エステルエーテルエラストマーを含む熱可塑性コポリエステルエラストマーであってもよい。一形態において、熱可塑性ポリエステルエラストマーは、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエーテルセグメントのブロックコポリマーを含む熱可塑性コポリエステルエラストマーであってもよい。
【0076】
[00086]一実施態様において、ポリマー組成物は、セグメント化された熱可塑性コポリエステルを含有していてもよい。熱可塑性ポリエステルエラストマーは、例えば、マルチブロックコポリマーを含んでいてもよい。有用なセグメント化された熱可塑性コポリエステルエラストマーは、エステル結合によりヘッドからテールにかけて結合した、多数の繰り返しの長鎖エステル単位と短鎖エステル単位を含む。長鎖単位は、以下の式:
【0077】
【0078】
によって表すことができ、短鎖単位は、以下の式:
【0079】
【0080】
によって表すことができ、式中、Gは、約600~6,000の範囲の数平均分子量および約55℃未満の融点を有する長鎖ポリマー性グリコールからの末端ヒドロキシ基の除去後に残存する2価ラジカルであり、Rは、約300未満の分子量を有するジカルボン酸からのカルボキシ基の除去後に残存する炭化水素ラジカルであり、Dは、約250未満の分子量を有する低分子量ジオールからのヒドロキシ基の除去後に残存する2価ラジカルである。
【0081】
[00087]コポリエーテルエステル中の短鎖エステル単位は、コポリエーテルエステルの重量の約15~95%を提供し、コポリエーテルエステル中の短鎖エステル単位の約50~100%は同一である。
【0082】
[00088]用語「長鎖エステル単位」は、長鎖グリコールとジカルボン酸の反応生成物を指す。長鎖グリコールは、末端(または可能な限り末端の近くの)ヒドロキシ基、約600を超える分子量、例えば約600~6000の分子量、約55℃未満の融点を有し、炭素の酸素に対する比率が約2.0またはそれより大きいポリマー性グリコールである。長鎖グリコールは、一般的に、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールまたはポリ(アルキレンオキシド)ジカルボン酸のグリコールエステルである。場合によって、化合物とグリコールまたは化合物とジカルボン酸の重合に干渉しないあらゆる置換基が存在していてもよい。反応してコポリエステルを形成する長鎖グリコールのヒドロキシ官能基は、可能な限り末端の基であってもよい。末端ヒドロキシ基は、鎖と異なるエンドキャッピンググリコール単位上に配置されていてもよく、すなわち、ポリ(プロピレンオキシドグリコール)上のエチレンオキシド末端基であってもよい。
【0083】
[00089]用語「短鎖エステル単位」は、約550未満の分子量を有する低分子量化合物またはポリマー鎖単位を指す。これらは、低分子量ジオール(約250未満)をジカルボン酸と反応させることによって作製される。
【0084】
[00090]ジカルボン酸は、ジカルボン酸の縮合重合体の等価体を含む場合があり、すなわち、それらのエステルまたはエステルを形成する誘導体、例えば酸塩化物および無水物、またはグリコールとの重合反応において実質的にジカルボン酸のようにふるまう他の誘導体を含む場合がある。
【0085】
[00091]エラストマーの場合のジカルボン酸単量体は、約300未満の分子量を有する。これは、芳香族、脂肪族または脂環式であってもよい。ジカルボン酸は、重合反応に干渉しないあらゆる置換基またはそれらの組合せを含有していてもよい。代表的なジカルボン酸としては、テレフタル酸およびイソフタル酸、ビ安息香酸、ベンゼン核を有する置換されたジカルボキシ化合物、例えば、ビス(p-カルボキシフェニル)メタン、p-オキシ-(p-カルボキシフェニル)安息香酸、エチレン-ビス(p-オキシ安息香酸)、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、フェナントラレン(phenanthralene)ジカルボン酸、アントラレン(anthralene)ジカルボン酸、4,4’-スルホニル二安息香酸など、ならびにC1~C10アルキルおよびその他の環置換誘導体、例えばハロ、アルコキシまたはアリール誘導体が挙げられる。芳香族ジカルボン酸も存在するのであれば、p(β-ヒドロキシエトキシ)安息香酸などのヒドロキシ酸も使用することができる。
【0086】
[00092]代表的な脂肪酸および脂環式酸は、セバシン酸、1,3-または1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、炭酸、シュウ酸、イタコン酸、アゼライン酸、ジエチルマロン酸、フマル酸、シトラコン酸、アリルマロン酸(allylmalonate acid)、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート酸、ピメリン酸、スベリン酸、2,5-ジエチルアジピン酸、2-エチルスベリン酸、2,2,3,3-テトラメチルコハク酸、シクロペンタンジカルボン酸、デカヒドロ-1,5-(または2,6-)ナフチレンジカルボン酸、4,4’-ビシクロヘキシルジカルボン酸、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルカルボン酸)、3,4-フランジカルボキシレート、および1,1-シクロブタンジカルボキシレートである。
【0087】
[00093]ジカルボン酸は、約300未満の分子量を有していてもよい。一実施態様において、フェニレンジカルボン酸、例えばテレフタル酸およびイソフタル酸が使用される。
[00094]反応してコポリエステルの短鎖エステル単位を形成する低分子量(約250未満の)ジオールとしては、なかでも特に、非環式、脂環式、および芳香族のジヒドロキシ化合物が挙げられる。2~15個の炭素原子を有するジオールとしては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、2,2-ジメチルトリメチレン、ヘキサメチレンおよびデカメチレングリコール、ジヒドロキシシクロヘキサン、シクロヘキサンジメタノール、レソルシノール、ヒドロキノン、1,5-ジヒドロキシナフタレンなどが挙げられる。またその例としては、2~8個の炭素原子を含有する脂肪族ジオールも挙げられる。使用可能なビスフェノールとしては、なかでも特に、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)メタン、およびビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。また等価なエステルを形成するジオールの誘導体も有用である(例えば、エチレンオキシドまたはエチレンカーボネートが、エチレングリコールの代わりに使用することができる)。低分子量ジオールとしてはまた、このような等価なエステルを形成する誘導体も挙げられる。
【0088】
[00095]ポリマーの調製に使用可能な長鎖グリコールとしては、ポリ(アルキレンオキシド)グリコール、例えばポリエチレングリコール、ポリ(1,2-および1,3-プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ペンタメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘプタメチレンオキシド)グリコール、ポリ(オクタメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ノナメチレンオキシド)グリコール、およびポリ(1,2-ブチレンオキシド)グリコール;エチレンオキシドと1,2-プロピレンオキシドとのランダムおよびブロックコポリマー、ならびにホルムアルデヒドをグリコールと反応させることによって調製されたポリホルマール、例えばペンタメチレングリコール、またはグリコールの混合物、例えばテトラメチレンとペンタメチレングリコールとの混合物が挙げられる。
【0089】
[00096]加えて、ポリ(アルキレンオキシド)のジカルボキシメチル酸、例えばポリテトラメチレンオキシド由来のものであるHOOCCH2(OCH2CH2CH2CH2)xOCH2COOH IVを、長鎖グリコールのin situ形成に使用することができる。またポリチオエーテルグリコールおよびポリエステルグリコールも、有用な生成物を提供する。ポリエステルグリコールを使用する際、溶融重合中の交換の傾向を制御することに一般的に注意しなければならないが、一定の立体障害性ポリエステル、例えば、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロピレンアジペート)、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロピレン/2-メチル-2-エチル-1,3-プロピレン2,5-ジメチルテレフタレート)、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロピレン/2,2-ジエチル-1,3-プロピレン、1,4シクロヘキサンジカルボキシレート)およびポリ(1,2-シクロヘキシレンジメチレン/2,2-ジメチル-1,3-プロピレン1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート)は、通常の反応条件下で利用することができ、また、短い滞留時間を用いる場合には他のより高い反応性のポリエステルグリコールを使用してもよい。ポリブタジエンまたはポリイソプレングリコールのいずれか、これらのコポリマーおよびこれらの材料の飽和水素化生成物も、満足な長鎖ポリマー性グリコールである。加えて、ポリイソブチレンジエンコポリマーの酸化によって形成されたジカルボン酸のグリコールエステルは、有用な原材料である。
【0090】
[00097]上記の長鎖ジカルボン酸(IV)は、酸として重合反応混合物に追加されてもよいよいが、これは、存在する低分子量ジオールと反応し、これらは常に過量であり、対応するポリ(アルキレンオキシド)エステルグリコールを形成し、次いで重合して、ポリマー鎖中でG単位を形成し、これらの特定のG単位は、1つの低分子量ジオール(Dに相当する)のみが用いられる場合、構造
【0091】
【0092】
を有する。1つより多くのジオールが使用される場合、ポリマー鎖単位の各末端に異なるジオールのキャップが存在していてもよい。このようなジカルボン酸はまた、存在する場合、長鎖グリコールと反応してもよく、そのようなケースにおいて、Dが長鎖グリコールのポリマー性残基で置き換えられていることを除いて上記のVと同じ式を有する材料が得られる。しかしながら、低分子量ジオールは著しくモル過量で存在するため、この反応が起こる程度は極めて小さい。
【0093】
[00098]単一の低分子量ジオールの代わりに、このようなジオールの混合物を使用してもよい。本発明の組成物に採用され得る熱可塑性コポリエステルエラストマーの調製において、単一の長鎖グリコールまたは等価体の代わりに、このような化合物の混合物を利用してもよく、単一の低分子量ジカルボン酸またはその等価体の代わりに、2種またはそれより多くの混合物を使用してもよい。したがって、上記の式II中の文字「G」は、単一の長鎖グリコールの残基または数々の異なるグリコールの残基を表すことができ、式IIIにおける文字Dは、1個または複数個の低分子量ジオールの残基を表すことができ、式IIおよびIIIにおける文字Rは、1個または複数個のジカルボン酸の残基を表すことができる。シクロヘキサンジカルボン酸のシス-トランス異性体のゆな幾何異性体の混合物を含有する脂肪酸が使用される場合、その異なる異性体は、コポリエステルにおいて同一のジオールと共に異なる短鎖エステル単位を形成する異なる化合物としてみなされる。コポリエステルエラストマーは、従来のエステル交換反応によって作製されてもよい。
【0094】
[00099]長鎖または短鎖オキシアルキレングリコールのいずれかの、交互のランダムな長さの配列を有するコポリエーテルエステルは、結晶化が可能な高融点ブロックと、相対的に低いガラス転移温度を有する実質的に非晶質のブロックとの繰り返しを含有していてもよい。一実施態様において、ハードセグメントは、テトラメチレンテレフタレート単位で構成されていてもよく、ソフトセグメントは、脂肪族ポリエーテルおよびポリエステルグリコール由来であってもよい。特に有利なことに、上記の材料は、硬質セグメントの部分的な結晶化によって形成された微結晶のネットワークの存在のために、表面温度における変形に耐性を有する。ハードセグメントのソフトセグメントに対する比率が、材料の特徴を決定する。したがって、熱可塑性ポリエステルエラストマーの別の利点は、ソフトエラストマーおよびハードエラストプラスチックを、ハードおよびソフトセグメントの比率を変化させることによって生産できることである。
【0095】
[000100]1つの特定の実施態様において、ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、以下の式:-[4GT]x[BT]yを有し、式中、4Gは、ブチレングリコール、例えば1,4-ブタンジオールであり、Bは、ポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)であり、Tは、テレフタレートであり、xは、約0.60~約0.99であり、yは、約0.01~約0.40である。
【0096】
[000101]一形態において、熱可塑性ポリエステルエラストマーは、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエーテルセグメントのブロックコポリマーであってもよく、以下の構造を有していてもよい:
【0097】
【0098】
式中、aおよびbは整数であり、2~10,000の範囲で変化してもよい。上述したブロックコポリマーにおけるハードおよびソフトセグメント間の比率は、エラストマーの特性を変更するために変更してもよい。一形態において、上記で示したポリエステルエラストマーの密度は、約1.05g/cm3~約1.15g/cm3であってもよく、例えば約1.08g/cm3~約1.1g/cm3であってもよい。
【0099】
[000102]代替の実施態様において、電気抵抗剤は、非芳香族ポリマーを含んでいてもよく、非芳香族ポリマーは、ポリマー主鎖にいかなる芳香族基も含まないポリマーを指す。このようなポリマーとしては、アクリレートポリマーおよび/またはオレフィンを含有するグラフトコポリマーが挙げられる。例えば、オレフィンポリマーは、グラフトのベースとして役立つ可能性があり、少なくとも1つのビニルポリマーまたは1つのエーテルポリマーにグラフトされてもよい。さらに別の実施態様において、グラフトコポリマーは、ポリジエンをベースとしたエラストマーのコアと、(メタ)アクリレートおよび/または(メタ)アクリロニトリルで構成されるハードまたはソフトグラフトエンベロープとを有していてもよい。
【0100】
[000103]上述した電気抵抗剤の例としては、エチレン-アクリル酸コポリマー、エチレン-無水マレイン酸コポリマー、エチレン-アルキル(メタ)アクリル酸-無水マレイン酸ターポリマー、エチレン-アルキル(メタ)アクリル酸-グリシジル(メタ)アクリル酸ターポリマー、エチレン-アクリル酸エステル-メタクリル酸ターポリマー、エチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸ターポリマー、エチレン-メタクリル酸-メタクリル酸アルカリ金属塩(アイオノマー)ターポリマーなどが挙げられる。一実施態様において、例えば、電気抵抗剤としては、エチレン、アクリル酸メチル、およびメタクリル酸グリシジルのランダムターポリマーを挙げることができる。ターポリマーは、約5%~約20%、例えば約6%~約10%のメタクリル酸グリシジル含量を有していてもよい。ターポリマーは、約20%~約30%、例えば約24%のアクリル酸メチル含量を有していてもよい。
【0101】
[000104]電気抵抗剤は、エポキシ官能化を含有する、例えば末端エポキシ基、オキシラン骨格単位、および/またはペンダントエポキシ基を含有する、直鎖または分岐鎖のホモポリマーまたはコポリマー(例えば、ランダム、グラフト、ブロックなど)であってもよい。例えば、電気抵抗調節剤は、エポキシ官能化を含む少なくとも1つの単量体成分を含むコポリマーであってもよい。電気抵抗剤の単量体単位は、変更し得る。例えば、電気抵抗剤は、エポキシ官能性を有するメタクリル酸単量体単位を含んでいてもよい。本明細書で使用される場合、メタクリル酸という用語は、一般的に、アクリル酸およびメタクリル酸単量体の両方を指し、加えて、その塩およびエステル、例えば、アクリレートおよびメタクリレート単量体を指す。エポキシ官能化を有するメタクリル酸単量体としては、電気抵抗剤に取り込まれている場合、これらに限定されないが、1,2-エポキシ基を含有するもの、例えばアクリル酸グリシジルおよびメタクリル酸グリシジルが挙げられる。他の好適なエポキシ官能化を有する単量体としては、アリルグリシジルエーテル、グリシジルエタクリレート、およびイタコン酸グリシジル(glycidyl itoconate)が挙げられる。
【0102】
[000105]他の単量体の例としては、例えば、エステル単量体、オレフィン単量体、アミド単量体などを挙げることができる。一実施態様において、電気抵抗剤は、少なくとも1つの直鎖または分岐鎖α-オレフィン単量体を含んでいてもよく、例えば2~20個の炭素原子、または2~8個の炭素原子を有するものを含んでいてもよい。具体的な例としては、エチレン;プロピレン;1-ブテン;3-メチル-1-ブテン;3,3-ジメチル-1-ブテン;1-ペンテン;1つまたはそれより多くのメチル、エチル、またはプロピル置換基を有する1-ペンテン;1つまたはそれより多くのメチル、エチル、またはプロピル置換基を有する1-ヘキセン;1つまたはそれより多くのメチル、エチル、またはプロピル置換基を有する1-ヘプテン;1つまたはそれより多くのメチル、エチル、またはプロピル置換基を有する1-オクテン;1つまたはそれより多くのメチル、エチル、またはプロピル置換基を有する1-ノネン;エチル、メチル、またはジメチルで置換された1-デセン;1-ドデセン;およびスチレンが挙げられる。
【0103】
[000106]一実施態様において、電気抵抗剤は、エポキシ官能化を含むターポリマーであってもよい。例えば、電気抵抗剤は、エポキシ官能化を含むメタクリル酸成分、α-オレフィン成分、およびエポキシ官能化を含まないメタクリル酸成分を含んでいてもよい。例えば、電気抵抗剤は、ポリ(エチレン-co-アクリル酸メチル-co-メタクリル酸グリシジル)であってもよく、これは、以下の構造を有する:
【0104】
【0105】
式中、a、b、およびcは、1またはそれより大きい。
[000107]別の実施態様において、電気抵抗剤は、以下の構造を有するエチレン、アクリル酸エチル、および無水マレイン酸のランダムコポリマーであってもよい:
【0106】
【0107】
式中、x、yおよびzは、1またはそれより大きい。
[000108]コポリマー電気抵抗剤の様々な単量体成分の相対的比率は、特に限定されない。例えば、一実施態様において、エポキシ官能化を有するメタクリル酸単量体成分は、約1wt.%~約25wt.%、または約2wt.%~約20wt%のコポリマー電気抵抗剤を形成することができる。α-オレフィン単量体は、コポリマー電気抵抗剤の、約55wt.%~約95wt.%、または約60wt.%~約90wt.%を構成していてもよい。他のモノマー成分(例えば、非エポキシ官能化メタクリル酸単量体)は、採用される場合、コポリマー電気抵抗剤の、約5wt.%~約35wt.%、または約8wt.%~約30wt.%を構成していてもよい。
【0108】
[000109]上記の電気抵抗剤の分子量は、広く変更が可能である。例えば、電気抵抗剤は、約7,500~約250,000グラム/モルの数平均分子量を有していてもよく、一部の実施態様において、約15,000~約150,000グラム/モルの数平均分子量を有していてもよく、一部の実施態様において、約20,000~100,000グラム/モルの数平均分子量を有していてもよく、多分散指数は、典型的には、2.5~7の範囲である。
【0109】
[000110]1つまたはそれより多くのポリエステルエラストマーおよび/またはメタクリレートブタジエンスチレンポリマーは、ポリマー組成物中に(他のいかなる電気抵抗剤も含まずに)、一般的に、約0.3~約7重量%の量で存在していてもよく、その間の0.1%ずつの全ての増加量を含む。例えば、1つまたはそれより多くのポリエステルエラストマーは、ポリマー組成物中に、一般的に、約1重量%より多い量で存在していてもよく、例えば約1.5重量%より多い量で、例えば約2重量%より多い量で、例えば約2.5重量%より多い量で、例えば約3重量%より多い量で、また、一般的に、約10重量%未満の量で、例えば約8重量%未満の量で、例えば約6重量%未満の量で存在していてもよい。
【0110】
[000111]一実施態様において、ポリエステルエラストマーは、ポリマー組成物中に、メチルメタクリレートブタジエンスチレンポリマーと組み合わされて、約3:1~約1:3、例えば約2:1~約1:2の重量比で存在していてもよい。ポリエステルエラストマーおよびメチルメタクリレートブタジエンスチレンコポリマーはそれぞれ、ポリマー組成物中に、一般的に、約0.3重量%~約6重量%の量で、例えば約0.5重量%~約2.5重量%の量で存在していてもよい。
【0111】
[000112]ポリマー組成物はまた、有機金属相溶化剤も含有していてもよい。有機金属相溶化剤は、意外なことに耐加水分解性を増加させ、ポリマー加工中のポリマー組成物の流動特性を改善することが見出されている。加えて、有機金属相溶化剤は、様々な他の利益および利点を提供することができる。例えば、有機金属相溶化剤は、防食性を提供することができ、ポリマー組成物の耐酸性を増加させることができ、ポリマー組成物の長期老化特性を改善することができる。加えて、有機金属相溶化剤は、特定の用途において膨張性の難燃剤として役立つ可能性がある。
【0112】
[000113]有機金属相溶化剤は、モノアルコキシチタネートを含んでいてもよい。使用可能な他の有機金属化合物としては、ジルコン酸塩およびアルミン酸塩が挙げられる。ポリマー組成物に取り込むことができるチタネートの具体的な例としては、チタン(IV)2-プロパノラート、トリスイソオクタデカノエート-O;チタン(IV)ビス2-メチル-2-プロペノエート-O、イソオクタデカノエート-O 2-プロパノラート;チタン(IV)2-プロパノラート、トリス(ドデシル)ベンゼンスルファナト-O;チタン(IV)2-プロパノラート、トリス(ジオクチル)ホスファト-O;チタン(IV)、トリス(2-メチル)-2-プロペノエート-O、メトキシジグリコリレート;チタン(IV)2-プロパノラート、トリス(ジオクチル)ピロホスファト-O;チタン(IV)、トリス(2-プロペノエート-O)、メトキシジグリコリレート-O;チタン(IV)2-プロパノラート、トリス(3,6-ジアザ)ヘキサノレート、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0113】
[000114]有機金属相溶化剤は、ポリマー組成物中に存在する場合、一般的に約0.05重量%より多い量で含まれていてもよく、例えば約0.1重量%より多く、例えば約0.2重量%より多く、例えば約0.28重量%より多く、また、一般的に、約2.8重量%未満、例えば約2.5重量%未満、例えば約2.2重量%未満、例えば約1.8重量%未満、例えば約1.6重量%未満、例えば約0.7重量%未満の量で含まれていてもよい。
【0114】
[000115]一実施態様において、本開示のポリマー組成物は、カルボジイミド化合物を含有していてもよい。カルボジイミド化合物は、分子中にカルボジイミド基(-N=C=N-)を有していてもよい。カルボジイミド化合物は、特にエポキシベースの化合物に対して、耐加水分解性を提供することができる。加えて、カルボジイミド化合物は、難燃添加剤と共によく機能する。適用できるカルボジイミド化合物としては、脂肪族主鎖を有する脂肪族カルボジイミド化合物、脂環式主鎖を有する脂環式カルボジイミド化合物、および芳香族主鎖を有する芳香族カルボジイミド化合物が挙げられる。芳香族カルボジイミド化合物は、加水分解に対してより大きい耐性を提供することができる。
【0115】
[000116]脂肪族カルボジイミド化合物の例としては、ジイソプロピルカルボジイミド、ジオクチルデシルカルボジイミドなどが挙げられる。脂環式カルボジイミド化合物の例としては、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどが挙げられる。
【0116】
[000117]芳香族カルボジイミド化合物の例としては、モノまたはジカルボジイミド化合物、例えば、ジフェニルカルボジイミド、ジ-2,6-ジメチルフェニルカルボジイミド、N-トリル-N’-フェニルカルボジイミド、ジ-p-ニトロフェニルカルボジイミド、ジ-p-アミノフェニルカルボジイミド、ジ-p-ヒドロキシフェニルカルボジイミド、ジ-p-クロロフェニルカルボジイミド、ジ-p-メトキシフェニルカルボジイミド、ジ-3,4-ジクロロフェニルカルボジイミド、ジ-2,5-ジクロロフェニルカルボジイミド、ジ-o-クロロフェニルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジ-o-トリルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジシクロヘキシルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジ-p-クロロフェニルカルボジイミド、またはエチレン-ビス-ジフェニルカルボジイミド;およびポリカルボジイミド化合物、例えば、ポリ(4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,5’-ジメチル-4,4’-ビフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(3,5’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(1,3-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1-メチル-3,5-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5-トリエチルフェニレンカルボジイミド)、またはポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)が挙げられる。これらの化合物は、それらのうち2種またはそれより多くを組み合わせて使用することができる。これらのなかでも、使用することができる特に好ましいものは、ジ-2,6-ジメチルフェニルカルボジイミド、ポリ(4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(フェニレンカルボジイミド)、およびポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)である。
【0117】
[000118]一形態において、カルボジイミド化合物は、ポリカルボジイミドである。例えば、ポリカルボジイミドは、約10,000g/molまたはそれより大きい重量平均分子量を有していてもよく、一般的に、約100,000g/mol未満の重量平均分子量を有していてもよい。ポリカルボジイミドの例としては、ランクセス(Lanxess)によるスタバクゾール(Stabaxol)KE9193およびスタバクゾールP100、ならびにシェーファー・アディティブ・システムズ(Schaeffe Additive Systems)によるルビオ(Lubio)AS3-SPが挙げられる。
【0118】
[000119]カルボジイミド化合物は、ポリマー組成物中に、約0.3重量%より多い量で、例えば約0.8重量%より多い量で、また、一般的に、約4重量%未満の量で、例えば約3重量%未満の量で、例えば約1.8重量%未満の量で存在していてもよい。
【0119】
[000120]本発明の熱可塑性ポリマー組成物はまた、潤滑剤を含んでいてもよく、潤滑剤は、ポリマー組成物の約0.01wt.%~約2wt.%を構成し、一部の実施態様において約0.1wt.%~約1wt.%、一部の実施態様において約0.2wt.%~約0.5wt.%を構成する。潤滑剤は、22~38個の炭素原子の鎖長、一部の実施態様において24~36個の炭素原子の鎖長を有する脂肪酸由来の脂肪酸塩から形成されてもよい。このような脂肪酸の例としては、長鎖脂肪族脂肪酸、例えば、モンタン酸(オクタコサン酸)、アラキジン酸(アラキン酸、イコサニック酸(icosanic acid)、イコサン酸、n-イコサン酸)、テトラコサン酸(リグノセリン酸)、ベヘン酸(ドコサン酸)、ヘキサコサン酸(セロチン酸(cerotinic acid))、メリシン酸(トリアコンタン酸)、エルカ酸、セトレイン酸、ブラシジン酸、セラコレイン酸、ネルボン酸などを挙げることができる。例えば、モンタン酸は、28個の原子の脂肪族炭素鎖を有し、アラキジン酸は、20個の原子の脂肪族炭素鎖を有する。脂肪酸によって提供される長い炭素鎖のために、潤滑剤は、高い熱安定性と低い揮発性を有する。これは、望ましい物品の形成中に潤滑剤が機能的な状態を保つことを可能にして、内部および外部の摩擦を低減させ、それによって機械的/化学的作用によって引き起こされる材料の劣化を低減させる。
【0120】
[000121]脂肪酸塩は、脂肪酸ワックスを鹸化することで過量のカルボン酸を中和して金属塩を形成することによって形成されてもよい。鹸化は、金属水酸化物を用いて、例えばアルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム)またはアルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化カルシウム)を用いて行うことができる。得られる脂肪酸性塩としては、典型的には、アルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウムなど)、またはアルカリ土類金属(例えば、カルシウム、マグネシウムなど)が挙げられる。このような脂肪酸塩は、一般的に、約20mg KOH/gまたはそれ未満の酸性度(ASTM D1386)を有し、一部の実施態様において、約18mg KOH/gまたはそれ未満、一部の実施態様において、約1~約15mg KOH/gの酸性度を有する。本発明で使用するのに特に好適な脂肪酸塩は、粗製モンタンワックスから誘導される、このような粗製モンタンワックスは、C28~C32の範囲の鎖長を有する、直鎖、非分岐鎖モノカルボン酸を含有する。このようなモンタン酸塩は、クラリアント社(Clariant GmbH)からリコモント(Licomont)(登録商標)CaV102(長鎖、直鎖モンタン酸のカルシウム塩)、およびリコモント(登録商標)NaV101(長鎖、直鎖モンタン酸のナトリウム塩)という名称で商業的に入手可能である。
【0121】
[000122]必要に応じて、脂肪酸エステルは、潤滑剤として使用され得る。脂肪酸エステルは、粗製天然ワックスの酸化漂白とそれに続くアルコールでの脂肪酸のエステル化により得てもよい。アルコールは、典型的には、1~4個のヒドロキシ基および2~20個の炭素原子を有する。アルコールが多官能性である場合(例えば、2~4個のヒドロキシ基)、2~8の炭素原子数が特に望ましい。特に好適な多官能性アルコールとしては、二価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールおよび1,4-シクロヘキサンジオール)、三価アルコール(例えば、グリセロールおよびトリメチロールプロパン)、四価アルコール(例えば、ペンタエリスリトールおよびエリスリトール)などを挙げることができる。また芳香族アルコールも好適な場合があり、その例としては、例えば、o-、m-、およびp-トリルカルビノール、クロロベンジルアルコール、ブロモベンジルアルコール、2,4-ジメチルベンジルアルコール、3,5-ジメチルベンジルアルコール、2,3,5-クモベンジルアルコール、3,4,5-トリメチルベンジルアルコール、p-クミルアルコール、1,2-フタリルアルコール、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、プソイドクメニルグリコール、メシチレングリコールおよびメシチレングリセロールが挙げられる。本発明で使用するための特に好適な脂肪酸エステルは、モンタン酸ワックスから誘導される。リコワックス(Licowax)(登録商標)OP(クラリアント)は、例えば、部分的にブチレングリコールでエステル化されたモンタン酸、および部分的に水酸化カルシウムで鹸化されたモンタン酸を含有する。したがって、リコワックス(登録商標)OPは、モンタン酸エステルおよびモンタン酸カルシウムの混合物を含有する。採用され得る他のモンタン酸エステルとしては、リコワックス(登録商標)E、リコワックス(登録商標)OP、およびリコルブ(Licolub)(登録商標)WE 4(全てクラリアントから)が挙げられ、これらは、例えば、未加工のモンタンワックスの酸化性の精製から二次生成物として得られたモンタン酸エステルである。リコワックス(登録商標)Eおよびリコルブ(登録商標)WE4は、エチレングリコールまたはグリセリンでエステル化されたモンタン酸を含有する。
【0122】
[000123]他の公知のワックスも潤滑剤で採用されていてもよい。例えば、脂肪酸と、2~18個、特に2~8個の炭素原子を有するモノアミンまたはジアミン(例えば、エチレンジアミン)との反応によって形成されるアミドワックスが採用される可能性がある。例えば、エチレンビスアミドワックスは、エチレンジアミンと脂肪酸とのアミド化反応(amidization reaction)によって形成され、これが採用される可能性がある。脂肪酸は、C12~C30の範囲であってもよく、例えば、エチレンビスステアラミドワックスを形成することができるステアリン酸(C18脂肪酸)からであってもよい。エチレンビスステアラミドワックスは、ロンザ社(Lonza, Inc.)からアクラワックス(Acrawax)(登録商標)Cという名称で商業的に入手可能であり、これは142℃の個別の溶融温度を有する。他のエチレンビスアミドとしては、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、オレオステアリン酸(oleostearic acid)、ミリスチン酸およびウンデカリン酸(undecalinic acid)から形成されたビスアミドが挙げられる。さらに他の好適なアミドワックスは、N-(2-ヒドロキシエチル)12-ヒドロキシステアルアミド、およびN,N’-(エチレンビス)12-ヒドロキシステアルアミドであり、これらは、ラザフォード・ケミカルズLLC(Rutherford Chemicals LLC)の一部門であるキャスケム(CasChem)からそれぞれパリシン(Paricin)(登録商標)220およびパリシン(登録商標)285という名称で商業的に入手可能である。
【0123】
[000124]ポリマー組成物はまた、少なくとも1種の安定剤を含有していてもよい。安定剤は、抗酸化剤、光安定剤、例えば紫外光安定剤、熱安定剤などを含んでいてもよい。
[000125]立体障害性フェノール系抗酸化剤が、組成物中に採用されてもよい。このようなフェノール系抗酸化剤の例としては、例えば、カルシウムビス(エチル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート)(イルガノックス(Irganox)(登録商標)1425);テレフタル酸1,4-ジチオ-,S,S-ビス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)エステル(シアノックス(Cyanox)(登録商標)1729);トリエチレングリコールビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルヒドロシンナメート);ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート(イルガノックス(登録商標)259);1,2-ビス(3,5,ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジド(イルガノックス(登録商標)1024);4,4’-ジ-tert-オクチルジフェナミン(ナウガルブ(Naugalube)(登録商標)438R);ホスホン酸(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-,ジオクタデシルエステル(イルガノックス(登録商標)1093);1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’ヒドロキシベンジル)ベンゼン(イルガノックス(登録商標)1330);2,4-ビス(オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン(イルガノックス(登録商標)565);イソオクチル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(イルガノックス(登録商標)1135);オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(イルガノックス(登録商標)1076);3,7-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-10H-フェノチアジン(イルガノックス(登録商標)LO3);2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)モノアクリレート(イルガノックス(登録商標)3052);2-tert-ブチル-6-[1-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)エチル]-4-メチルフェニルアクリレート(スミライザー(Sumilizer)(登録商標)TM4039);2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート(スミライザー(登録商標)GS);1,3-ジヒドロ-2H-ベンゾイミダゾール(スミライザー(登録商標)MB);2-メチル-4,6-ビス[(オクチルチオ)メチル]フェノール(イルガノックス(登録商標)1520);N,N’-トリメチレンビス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド(イルガノックス(登録商標)1019);4-n-オクタデシルオキシ-2,6-ジフェニルフェノール(イルガノックス(登録商標)1063);2,2’-エチリデンビス[4,6-ジ-tert-ブチルフェノール](イルガノックス(登録商標)129);N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナムアミド)(イルガノックス(登録商標)1098);ジエチル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル(hydroxybenxyl))ホスホネート(イルガノックス(登録商標)1222);4,4’-ジ-tert-オクチルジフェニルアミン(イルガノックス(登録商標)5057);N-フェニル-1-ナフタレンアミン(napthalenamine)(イルガノックス(登録商標)L05);トリス[2-tert-ブチル-4-(3-ter-ブチル-4-ヒドロキシ-6-メチルフェニルチオ)-5-メチルフェニル]ホスフィット(ホスタノックス(Hostanox)(登録商標)OSP1);亜鉛ジノニルジチオカルバメート(ホスタノックス(登録商標)VP-ZNCS1);3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(スミライザー(登録商標)AG80);ペンタエリスリチルテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](イルガノックス(登録商標)1010);エチレン-ビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)-プロピオネート(イルガノックス(登録商標)245);3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(ローイノックスBHT(Lowinox BHT)、ケムチュラ(Chemtura))などが挙げられる。
【0124】
[000126]本発明の組成物における使用のための好適な立体障害性フェノール系抗酸化剤の一部の例は、以下の一般式を有するトリアジン抗酸化剤である:
【0125】
【0126】
式中、Rは、それぞれ独立してフェノール基であり、フェノール基は、C1~C5アルキルまたはエステル置換基を介してトリアジン環に結合していてもよい。好ましくは、各Rは、以下の式(I)~(III)の1つである:
【0127】
【0128】
[000127]このようなトリアジンベースの抗酸化剤の商業的に入手可能な例は、アメリカン・シアナミド(American Cyanamid)からシアノックス(登録商標)1790(式中、各R基は、式IIIによって表される)という名称で、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)からイルガノックス(登録商標)3114(式中、各R基は、式Iによって表される)、およびイルガノックス(登録商標)3125(式中、各R基は、式IIによって表される)という名称で得ることができる。
【0129】
[000128]立体障害性フェノール系抗酸化剤は、安定化されたポリマー組成物全体の、約0.01wt.%~約3wt.%を構成していてもよく、一部の実施態様において、約0.05wt.%~約1wt.%、一部の実施態様において、約0.05wt.%~約0.3wt.%を構成していてもよい。一実施態様において、例えば、抗酸化剤は、ペンタエリスリチルテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを含む。
【0130】
[000129]ヒンダードアミン光安定剤(「HALS」)は、ポリエステル組成物の劣化を阻害することでその耐久性を延長するために組成物中に採用してもよい。好適なHALS化合物は、置換されたピペリジン、例えばアルキルで置換されたピペリジル、ピペリジニル、ピペラジノン、アルコキシピペリジニル化合物などから得てもよい。例えば、ヒンダードアミンは、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジニルから得てもよい。ヒンダードアミンは、その由来となる化合物に関係なく、典型的には、約1,000またはそれより高い数平均分子量を有するオリゴマーまたはポリマー性の化合物であり、一部の実施態様において約1000~約20,000、一部の実施態様におい、約1500~約15,000、一部の実施態様において約2000~約5000の数平均分子量を有するオリゴマーまたはポリマー性の化合物である。このような化合物は、典型的には、ポリマー反復単位1個当たり、少なくとも1個の2,2,6,6-テトラアルキルピペリジニル基(例えば、1~4個)を含有する。
【0131】
[000130]理論によって限定されることは意図しないが、高分子量ヒンダードアミンは、比較的熱安定性であり、したがって押出し条件に晒された後でさえも光劣化を阻害することができると考えられる。1つの特に好適な高分子量ヒンダードアミンは、以下の一般的な構造を有する:
【0132】
【0133】
式中、pは4~30であり、一部の実施態様において4~20、一部の実施態様において4~10である。このオリゴマー化合物は、クラリアントからホスタビン(Hostavin)(登録商標)N30という名称で商業的に入手可能であり、1200の数平均分子量を有する。
【0134】
[000131]別の好適な高分子量ヒンダードアミンは、以下の構造を有する:
【0135】
【0136】
式中、nは、1~4であり、R30は、独立して水素またはCH3である。このようなオリゴマー化合物は、アデカ・パルマロールSAS(Adeka Palmarole SAS)(アデカ(Adeka)社とパルマロール(Palmarole)グループとの合弁事業)から、ADK STAB(登録商標)LA-63(R30は、CH3である)およびADK STAB(登録商標)LA-68(R30は、水素である)という名称で商業的に入手可能である。
【0137】
[000132]好適な高分子量ヒンダードアミンの他の例としては、例えば、N-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールとコハク酸とのオリゴマー(チバ・スペシャルティ・ケミカルズからのチヌビン(Tinuvin)(登録商標)622、MW=4000);シアヌル酸とN,N-ジ(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-ヘキサメチレンジアミンとのオリゴマー;ポリ((6-モルホリン-S-トリアジン-2,4-ジイル)(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-イミノヘキサメチレン-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-イミノ)(サイテック(Cytec)からのシアソルブ(Cyasorb)(登録商標)UV3346、MW=1600);ポリメチルプロピル-3-オキシ-[4(2,2,6,6-テトラメチル)-ピペリジニルシロキサン(グレートレイクスケミカル(Great Lakes Chemical)からのウバシル(Uvasil)(登録商標)299、MW=1100~2500);α-メチルスチレン-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)マレイミドと、N-ステアリルマレイミドとのコポリマー;1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸を有する2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジエタノールテトラメチル-ポリマーなどが挙げられる。
【0138】
[000133]高分子量ヒンダードアミンに加えて、低分子量ヒンダードアミンも組成物中に採用されてもよい。このようなヒンダードアミンは、一般的にモノマーの性質を有し、約1000またはそれ未満の分子量を有し、一部の実施態様において約155~約800、一部の実施態様において約300~約800の分子量を有する。
【0139】
[000134]このような低分子量ヒンダードアミンの具体的な例としては、例えば、セバシン酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズからのチヌビン(登録商標)770、MW=481);ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)-(3,5-ジtert.ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ブチル-プロパンジオエート;セバシン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル);8-アセチル-3-ドデシル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ-(4,5)-デカン-2,4-ジオン、ブタン二酸-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)エステル;テトラキス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート;7-オキサ-3,20-ジアザジスピロ(5.1.11.2)ヘネイコサン-20-プロパン酸、2,2,4,4-テトラメチル-21-オキソ、ドデシルエステル;N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-N’-アミノ-オキサミド;o-t-アミル-o-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)モノペルオキシカーボネート;β-アラニン、N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)、ドデシルエステル;エタンジアミド、N-(1-アセチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル)-N’-ドデシル;3-ドデシル-1-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-ピロリジン-2,5-ジオン;3-ドデシル-1-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)-ピロリジン-2,5-ジオン;3-ドデシル-1-(1-アセチル,2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-ピロリジン-2,5-ジオン(クラリアントからのサンドバル(Sanduvar)(登録商標)3058、MW=448.7);4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン;1-[2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニルオキシ)エチル]-4-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン;2-メチル-2-(2”,2”,6”,6”-テトラメチル-4”-ピペリジニルアミノ)-N-(2’,2’,6’,6’-テトラ-メチル-4’-ピペリジニル)プロピオニルアミド;1,2-ビス(3,3,5,5-テトラメチル-2-オキソ-ピペラジニル)エタン;4-オレオイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン;およびそれらの組合せを挙げることができる。他の好適な低分子量ヒンダードアミンは、Malikらの米国特許第5,679,733号に記載されている。
【0140】
[000135]ヒンダードアミンは、望ましい特性を達成するためのあらゆる量で、単独で、または組み合わせて採用することができるが、ヒンダードアミンは、典型的には、ポリマー組成物の約0.01wt.%~約4wt.%を構成する。
【0141】
[000136]UV吸収剤、例えばベンゾトリアゾールまたはベンゾフェノンは、紫外光エネルギーを吸収するために、組成物中に採用されてもよい。好適なベンゾトリアゾールとしては、例えば、2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、例えば2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール;2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(サイテックからのシアソルブ(登録商標)UV5411);2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾ-トリアゾール;2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール;2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール;2,2’-メチレンビス(4-tert-オクチル-6-ベンゾ-トリアゾリルフェノール);2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル;2-[2-ヒドロキシ-3-(2-アクリロイルオキシエチル)-5-メチルフェニル]-ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-5-tert-ブチルフェニル]ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-5-tert-オクチルフェニル]ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-5-tert-ブチルフェニル]-5-クロロベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-3-tert-アミル-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-(3-メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]-5-クロロベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-4-(2-メタクリロイルオキシメチル)フェニル]ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)フェニル]ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]ベンゾトリアゾール;およびそれらの組合せを挙げることができる。
【0142】
[000137]同様に、例示的なベンゾフェノン光安定剤としては、2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシベンゾフェノン;2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン;2-(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)エチルアクリレート(サイテックからのシアソルブ(登録商標)UV209);2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシ)ベンゾフェノン(サイテックからのシアソルブ(登録商標)531);2,2’-ジヒドロキシ-4-(オクチルオキシ)ベンゾフェノン(サイテックからのシアソルブ(登録商標)UV314);ヘキサデシル-3,5-ビス-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(サイテックからのシアソルブ(登録商標)UV2908);2,2’-チオビス(4-tert-オクチルフェノラート)-n-ブチルアミンニッケル(II)(サイテックからのシアソルブ(登録商標)UV1084);3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシケイ皮酸、(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)エステル(サイテックからのシアソルブ(登録商標)712);4,4’-ジメトキシ-2,2’-ジヒドロキシベンゾフェノン(サイテックからのシアソルブ(登録商標)UV12);およびそれらの組合せを挙げることができる。
【0143】
[000138]UV吸収剤は、採用される場合、ポリマー組成物全体の約0.01wt.%~約4wt.%を構成していてもよい。
[000139]一実施態様において、ポリマー組成物は、紫外線耐性および色安定性を生じさせる安定剤のブレンドを含有していてもよい。安定剤の組合せは、明るい蛍光性の色を有する生成物の生産を可能にする。加えて、経時的な著しい退色を経験せずに、明るい色付きの生成物を生産することができる。一実施態様において、例えば、ポリマー組成物は、ベンゾトリアゾール光安定剤と、ヒンダードアミン光安定剤、例えばオリゴマーのヒンダードアミンとの組合せを含有していてもよい。
【0144】
[000140]過酸化物およびヒドロ過酸化物を安定な非ラジカル生成物に分解するための二次的な抗酸化剤として役立つ有機リン化合物が、組成物中に採用されてもよい。3価の有機リン化合物(例えば、亜リン酸エステルまたはホスホナイト)は、本発明のシステムを安定化することにおいて特に有用である。モノ亜リン酸化合物(すなわち、分子1個当たり1個のみのリン原子)は、本発明の特定の実施態様において採用することができる。好ましいモノ亜リン酸化合物は、モノ亜リン酸アリールであり、アリールオキシド基の少なくとも1つにおいてC1~C10アルキル置換基を含有する。これらの置換基は、直鎖(例えばノニル置換基)または分岐鎖(例えばイソプロピルまたは第三級ブチル置換基)であり得る。好適なモノ亜リン酸(またはモノホスホナイト)アリールの非限定的な例としては、亜リン酸トリフェニル;亜リン酸ジフェニルアルキル;亜リン酸フェニルジアルキル;亜リン酸トリス(ノニルフェニル)(ウェストン(Weston)(商標)399、GEスペシャルティケミカルズ(GE Specialty Chemicals)より入手可能);亜リン酸トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)(イルガホス(登録商標)168、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社より入手可能);亜リン酸ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチル(イルガホス(Irgafos)(登録商標)38、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社より入手可能);および2,2’,2”-ニトリロ[トリエチルトリス(3,3’5,5’-テトラ-tert-ブチル-1,1’-ビフェニル-2,2’-ジイル)ホスフェート(イルガホス(登録商標)12、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社より入手可能)を挙げることができる。アリールジホスファイトまたはジホスホナイト(すなわち、亜リン酸分子1個当たり少なくとも2個のリン原子を含有する)もまた、システムを安定化するのに用いることができ、その例としては、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(チバより入手可能なイルガホス126);ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト;ビスイソデシルオキシペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4’-ビフェニレン-ジホスホナイト(サンドスタブ(Sandostab)(商標)P-EPQ、クラリアントより入手可能)およびビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(ドーバーホス(Doverphos)(登録商標)S-9228)を挙げることができる。
【0145】
[000141]有機リン化合物は、ポリマー組成物の、約0.01wt.%~約2wt.%を構成していてもよく、一部の実施態様において、約0.05wt.%~約1wt.%、一部の実施態様において、約0.1wt.%~約0.5wt.%を構成していてもよい。
【0146】
[000142]上述のものに加えて、第二級アミンも組成物中に採用することができる。第二級アミンは、芳香族の性質を有しているものでもよく、例えば、N-フェニルナフチルアミン(例えば、ユニロイヤル・ケミカル(Uniroyal Chemical)からのナウガード(Naugard)(登録商標)PAN);ジフェニルアミン、例えば4,4’-ビス(ジメチルベンジル)-ジフェニルアミン(例えば、ユニロイヤル・ケミカルからのナウガード(登録商標)445);p-フェニレンジアミン(例えば、グッドイヤー(Goodyear)からのウイングステイ(Wingstay)(登録商標)300);キノロンなどであってもよい。特に好適な第二級アミンは、オリゴマーまたはポリマー性のアミンであり、例えばホモポリマー化または共重合されたポリアミドである。このようなポリアミドの例としては、ナイロン3(ポリ-β-アラニン)、ナイロン6、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6/6、ナイロン6/9、ナイロン6/10、ナイロン6/11、ナイロン6/12、ポリエステルアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルアミドなどを挙げることができる。1つの特定の実施態様において、アミンは、120℃~220℃の範囲内の融点を有するポリアミドターポリマーである。好適なターポリマーは、ナイロン6、ナイロン6/6、ナイロン6/9、ナイロン6/10およびナイロン6/12からなる群から選択されるナイロンをベースとしていてもよく、ナイロン6-66-69;ナイロン6-66-610およびナイロン6-66-612を含んでいてもよい。このようなナイロンターポリマーの一例はナイロン6-66-610のターポリマーでり、デュポン・ドゥ・ヌムール(Du Pont de Nemours)からエルバミド(Elvamide)(登録商標)8063Rという名称で商業的に入手可能である。第二級アミンは、ポリマー組成物全体の約0.01wt.%~約2wt.%を構成していてもよい。
【0147】
[000143]上記の成分に加えて、ポリマー組成物は、様々な他の成分を含んでいてもよい。使用可能な着色剤としては、あらゆる望ましい無機顔料、例えば二酸化チタン、ウルトラマリンブルー、コバルトブルー、ならびに他の有機顔料および色素、例えばフタロシアニン、アントラキノンなどが挙げられる。他の着色剤としては、様々な他のポリマー可溶性色素が挙げられる。着色剤は、一般的に、組成物中に、約2重量パーセントまでの量で存在していてもよい。
【0148】
[000144]優れた抵抗値の達成を助けるために、組成物は、一般的に、従来の高度な導電率を有する材料を含まない場合がある。例えば、ポリマー組成物は、約20℃のような温度で測定される場合、一般的に、約1オーム-cm未満、一部の実施態様において約0.1オーム-cm未満、一部の実施態様において約1×10-8~約1×10-2オーム-cmの固有体積抵抗率(intrinsic volume resistivity)を有する導電性フィラーを含まなくてもよい。このような導電性フィラーの例としては、例えば、導電性炭素材料、例えば、グラファイト、導電性カーボンブラック、炭素繊維、グラフェン、カーボンナノチューブなど;金属(例えば、金属粒子、金属フレーク、金属繊維);イオン液体などを挙げることができる。通常、このような導電性材料の存在を最小化することが望ましいが、それにもかかわらずこれらは、ポリマー組成物のうち、比較的わずかなパーセンテージで、特定の実施態様において例えば約5wt.%またはそれ未満の量で、一部の実施態様において約2wt.%またはそれ未満の量で、一部の実施態様において約1wt.%またはそれ未満の量で、一部の実施態様において約0.5wt.%またはそれ未満の量で、一部の実施態様において約0.001wt.%~約0.2wt.%で存在する可能性がある。
【0149】
[000145]本開示の組成物は、当業界において公知のあらゆる技術を使用して、ポリマー物品に混和および成形されてもよい。例えば、それぞれの組成物を徹底的に混合して、実質的に均一なブレンドを形成することができる。ブレンドは、高い温度で、例えばポリマー組成物中に利用されているポリマーの融点より高いが劣化温度より低い温度で溶融混練することができる。代替として、それぞれの組成物を融解させ、従来のシングルまたはツインスクリュー押出機で一緒に混合してもよい。好ましくは、溶融混合は、150~300℃の範囲の温度で行われ、例えば200~280℃、例えば220~270℃または240~260℃の範囲の温度で行われる。しかしながら、このような加工は、あらゆるポリマー劣化を最小化するために、それぞれ個々の組成物に望ましい温度で実行すべきである。
【0150】
[000146]押出しの後、組成物をペレット形成してもよい。ペレットは、当業界において公知の技術によって、例えば射出成形、熱成形、吹込成形、回転成形などによってポリマー物品に成形することができる。本開示に従って、ポリマー物品は、優れた摩擦学的な挙動および機械特性を示す。結果として、ポリマー物品は、低い摩耗および優れた滑り特性が求められる数々の用途に使用することができる。
【0151】
[000147]本発明の開示によるポリマー組成物は、物理的特性に加えて優れた耐炎性特性を有していてもよい。例えば、垂直燃焼試験によりアンダーライターズ・ラボラトリーズ試験94に従って試験される場合、本開示に従って作製された試験プラークは、1.5mmの厚さで試験される場合でも、またはさらには0.8mmの厚さで試験される場合でも、V-0のUL-94等級を有し得る。
【0152】
[000148]特定の利点のなかでも、優れた流動特性を有する耐炎性ポリマー組成物を本開示に従って配合することができる。例えば、ISO試験1133に従って250℃の温度および2.16kgの負荷で試験される場合、ポリマー組成物全体は、約3cm3/10分より大きいメルトフローレートを有していてもよく、例えば約4cm3/10分より大きい、例えば約5cm3/10分より大きい、例えば約6cm3/10分より大きい、例えば約7cm3/10分より大きい、例えば約8cm3/10分より大きい、例えば約9cm3/10分より大きい、例えば約10cm3/10分より大きいメルトフローレートを有していてもよい。メルトフローレートは、一般的に、約50cm3/10分未満である。
【0153】
[000149]本開示は、以下の実施例を参照しながらよりよく理解することができる。
【実施例】
【0154】
実施例1
[000150]本開示に従って様々なポリマー組成物を配合し、様々な特性に関して試験した。以下の結果を得た。
【0155】
【0156】
[000151]使用されたチタネートカップリング剤は、チタン(IV)2-プロパノラート、トリス(ジオクチル)ホスファト-Oであった。
[000152]上記の配合物を試験サンプルに成形し、加水分解試験に供した。加水分解試験中、サンプルを、121℃で96時間、圧力鍋に入れた。次いでサンプルの最初の機械特性を、様々な時間間隔で加水分解試験に供したサンプルと比較した。以下の結果を得た:
【0157】
【0158】
実施例2
[000153]本発明の開示に従って様々なポリマー組成物を配合し、様々な特性に関して試験した。以下の結果を得た
【0159】
【0160】
【0161】
[000154]使用されたチタネートカップリング剤は、チタン(IV)2-プロパノラート、トリス(ジオクチル)ホスファト-Oであった。
[000155]上記の配合物を試験サンプルに成形し、加水分解試験に供した。加水分解試験中、サンプルを、121℃で96時間、圧力鍋に入れた。次いでサンプルの最初の機械特性を、様々な時間間隔で加水分解試験に供したサンプルと比較した。以下の結果を得た:
【0162】
【0163】
[000156]上記のサンプルは、配合物中に亜リン酸塩および/または窒素含有相乗剤を含まずとも優れた結果を得ることができることを実証する。
実施例3
[000157]本発明の開示に従ってポリマー組成物を配合し、様々な特性に関して試験した。以下の結果を得た。
【0164】
【0165】
【0166】
[000158]上記の配合物を試験サンプルに成形し、加水分解試験に供した。加水分解試験中、サンプルを、121℃で圧力鍋に入れた。次いでサンプルを96および168時間後に評価した。次いでサンプルの最初の機械特性を、様々な時間間隔での加水分解試験に供したサンプルと比較した。以下の結果を得た:
【0167】
【0168】
[000159]上記の組成物は、20℃~140℃の温度範囲にわたり25kV/mmより大きい絶縁耐力を有し、20℃~120℃の温度範囲にわたり1×1015オームより大きい表面抵抗率を示し、20℃~60℃の温度範囲にわたり1×1015オーム-cmより大きい体積抵抗率を示した。
【0169】
[000160]本発明へのこれらのおよび他の改変およびバリエーションは、添付の特許請求の範囲により詳細に記載される本発明の本質および範囲から逸脱することなく、当業者によって行うことができる。加えて、様々な実施態様の形態は、全体的または部分的のいずれでも交換できることが理解されるべきである。さらに、当業者は、前述の説明は単なる一例であり、このような添付の特許請求の範囲にさらに記載される発明を限定することは意図されないことを理解しているであろう。
【符号の説明】
【0170】
10 電池パック
12 電池パックケース
14 電池モジュール
16 空気ユニット
18 サービスディスコネクトスイッチ
20 ジャンクションボックス
22 リチウムイオン電池制御器
24 冷却剤パイプコネクター末端
26 充電/放電コネクター末端
28 ヘビー電気コネクター末端
30 ウィーク電気コネクター末端
50 高電圧コネクター、電気コネクター
52 挿入通路
54、64 壁
56 接触要素
60 コネクター
62 挿入通路
66 接触要素
100 電気自動車
102 配線ハーネス
104 配線ハーネス
106 電気モーター
【国際調査報告】