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特表2024-523209磁気永久電流スイッチを用いて超電導コイルを制御するためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】磁気永久電流スイッチを用いて超電導コイルを制御するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   H01F 6/04 20060101AFI20240621BHJP
   F25B 9/00 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
H01F6/04
F25B9/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575573
(86)(22)【出願日】2022-06-02
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2022065114
(87)【国際公開番号】W WO2022258493
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】21178965.6
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】フォースマン ピーター
(72)【発明者】
【氏名】メントゥール フィリップ アベル
(57)【要約】
本発明は、磁気永久電流スイッチ7を用いて超電導コイル6を制御するためのシステムに関する。磁気永久電流スイッチ7は、超電導コイル6を永久モードとランプモードとの間で切り替えるために使用される。システムは更に、熱をクライオクーラー3に分散させる熱交換器10と、磁気永久電流スイッチ7によって生成された熱エネルギーを熱交換器10に伝達するように冷却剤の流れを可能にするループチューブ13と、磁気永久電流スイッチ7と熱交換器10との間でループチューブ13と一体化されたバルブ14を含むサーマルスイッチ9とを含む。バルブ14は、インレット16及びアウトレット17を有するバルブ本体15であって、アウトレットでバルブ本体15はループチューブ13に接続されている、バルブ本体15と、バルブ本体15内に配置され、且つ永久ロッド磁石19を含む可動シャフト18と、永久磁石21を含むラッチ装置20と、ソレノイド22とを含み、シャフト18がバルブ本体15のインレット16又はアウトレット17を閉じることによりバルブ本体に冷却剤が流れない閉位置と、バルブ本体15のインレット16及びアウトレット17が開くことによりバルブ本体15に冷却剤が流れる開位置との間で、シャフト18は移動可能であり、ソレノイド22に第1の極性を有する電流パルスを印加することによりシャフト18が閉位置に移動し、且つソレノイド22に第1の極性とは反対の第2の極性を有する電流パルスを印加することによりシャフト18が開位置に移動するように、ソレノイド22はシャフト18に対して配置され、シャフト18を閉位置から開位置(又はその逆も同様)に切り替える電流パルスがソレノイド22に印加されていない限り、ラッチ装置20の永久磁石21からシャフト18の永久磁石19に作用する磁力が、シャフト18を閉位置又は開位置に留まらせるように、ラッチ装置20はシャフト18に対して配置されている。このようにして、超電導コイル7の冷却システムに負担をかけることなく、磁石永久電流スイッチ7の温度を短時間で所望どおりに上下させることができる冷却システムが提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導コイルを制御するためのシステムであって、前記システムは、
前記超電導コイルを永久モードとランプモードとの間で切り替えるための磁気永久電流スイッチと、
熱をクライオクーラーに分散させる熱交換器と、
前記磁気永久電流スイッチによって生成された熱エネルギーを前記熱交換器に伝達するために冷却剤の流れを可能にするループチューブと、
前記磁気永久電流スイッチと前記熱交換器との間で前記ループチューブと一体化されたバルブを含むサーマルスイッチであって、前記バルブは、
インレット及びアウトレットを有するバルブ本体であって、前記アウトレットで前記バルブ本体は前記ループチューブに接続されている、バルブ本体と、
前記バルブ本体内に配置され、且つ永久ロッド磁石を含む可動シャフトと、
永久磁石又は強磁性若しくは常磁性の保持要素を含むラッチ装置と、
ソレノイドとを含む、サーマルスイッチと、
を含み、
前記シャフトが前記バルブ本体の前記インレット又は前記アウトレットを閉じることにより前記バルブ本体に冷却剤が流れない閉位置と、前記バルブ本体の前記インレット及び前記アウトレットが開くことにより前記バルブ本体に冷却剤が流れる開位置との間で、前記シャフトは移動可能であり、
前記ソレノイドに第1の極性を有する電流パルスを印加することにより前記シャフトが前記閉位置に移動し、且つ前記ソレノイドに前記第1の極性とは反対の第2の極性を有する電流パルスを印加することにより前記シャフトが前記開位置に移動するように、前記ソレノイドは前記シャフトに対して配置され、
前記ラッチ装置は、前記シャフトを前記閉位置から前記開位置に、又はその逆も同様に切り替える電流パルスが前記ソレノイドに印加されていない限り、前記ラッチ装置の前記永久磁石又は前記強磁性若しくは常磁性の保持要素から前記シャフトの前記永久磁石に作用する磁力が、前記シャフトを前記閉位置によって形成される安定した停止位置又は前記開位置に留まらせるように、前記シャフトに対して配置されている、超電導コイルを制御するためのシステム。
【請求項2】
前記シャフトは、その2つの端領域のいずれかにシール要素を含み、前記シール要素は、前記インレット又は前記アウトレットに配置されたバルブシートに押し付けることで、前記閉位置において前記インレット又は前記アウトレットをシールする、請求項1に記載の超電導コイルを制御するためのシステム。
【請求項3】
前記シャフトは、前記バルブ本体に設けられたシャフトチャネルに沿って直線的に移動可能であるように、前記バルブ本体内に配置されている、請求項1又は2に記載の超電導コイルを制御するためのシステム。
【請求項4】
前記バルブ本体は、前記インレットから前記アウトレットまで前記シャフトチャネルと平行に延在するフローチャネルを含み、前記シャフトは、前記フローチャネルが前記開位置において開き、冷却剤が前記インレットから前記アウトレットまで前記バルブ本体を通って流れるように前記バルブ本体内に配置されている、請求項3に記載の超電導コイルを制御するためのシステム。
【請求項5】
第1の永久磁石が前記シャフトチャネルの一方の端領域に配置され、第2の永久磁石が前記シャフトチャネルのもう一方の端領域に配置され、前記第1の永久磁石の極性と、前記第1の永久磁石に向いている前記シャフトの前記永久ロッド磁石の端の極性とは互いに反対であり、前記第2の永久磁石の極性と、前記第2の永久磁石に向いている前記シャフトの前記永久ロッド磁石の端の極性とは互いに反対である、請求項3又は4に記載の超電導コイルを制御するためのシステム。
【請求項6】
超電導コイルを制御するためのシステムであって、前記システムは、
前記超電導コイルを永久モードとランプモードとの間で切り替えるための磁気永久電流スイッチと、
熱をクライオクーラーに分散させる熱交換器と、
前記磁気永久電流スイッチによって生成された熱エネルギーを前記熱交換器に伝達するために冷却剤の流れを可能にするループチューブと、
前記磁気永久電流スイッチと前記熱交換器との間で前記ループチューブと一体化されたバルブを含むサーマルスイッチであって、前記バルブは、
インレット及びアウトレットを有するバルブ本体であって、前記アウトレットで前記バルブ本体は前記ループチューブに接続されている、バルブ本体と、
前記バルブ本体内に配置され、且つ永久ロッド磁石を含む可動シャフトと、
ソレノイドと、を含む、サーマルスイッチと、
を含み、
前記シャフトが前記バルブ本体の前記インレット又は前記アウトレットを閉じることにより前記バルブ本体に冷却剤が流れない閉位置と、前記バルブ本体の前記インレット及び前記アウトレットが開くことにより前記バルブ本体に冷却剤が流れる開位置との間で、前記シャフトは移動可能であり、
前記ソレノイドに第1の極性を有する電流パルスを印加することにより前記シャフトが前記閉位置に移動し、且つ前記ソレノイドに前記第1の極性とは反対の第2の極性を有する電流パルスを印加することにより、前記シャフトが前記開位置に移動するように、前記ソレノイドは前記シャフトに対して配置され、前記シャフトは、前記シャフトの長手方向軸と垂直な回転軸に沿って回転可能であるように、前記バルブ本体内に配置されている、超電導コイルを制御するためのシステム。
【請求項7】
前記システムはラッチ装置を含み、前記シャフトを前記閉位置から前記開位置に、又はその逆も同様に切り替える電流パルスが前記ソレノイドに印加されていない限り、ラッチ装置の前記永久磁石又は前記強磁性若しくは常磁性の保持要素から前記シャフトの前記永久磁石に作用する磁力が、前記シャフトを前記閉位置によって形成される安定した停止位置又は前記開位置に留まらせるように、前記ラッチ装置が前記シャフトに対して配置されている、請求項6に記載の超電導コイルを制御するためのシステム。
【請求項8】
前記シャフトの回転範囲は、90°未満に制限され、前記ラッチ装置の前記永久磁石は、永久ロッド磁石であり、前記ラッチ装置の前記永久磁石は、その両端のうちの一方が前記回転範囲の中央領域に向けられるように配置され、前記一方の端の極性は、前記回転範囲において前記シャフトの永久ロッド磁石の極性と同じである、請求項7に記載の超電導コイルを制御するためのシステム。
【請求項9】
前記ラッチ装置の前記永久磁石は、前記シャフトが前記閉位置に移動すると、前記回転範囲に向けられている端が第1の方向に前記シャフトから遠ざかるように旋回し、前記シャフトが前記開位置に移動すると、前記回転範囲に向けられている端が、前記第1の方向とは反対の第2の方向に前記シャフトから遠ざかるように旋回するように旋回可能に配置されている、請求項7に記載の超電導コイルを制御するためのシステム。
【請求項10】
超電導コイルを制御するためのシステムを操作する方法であって、前記システムは、
磁気永久電流スイッチと、
熱をクライオクーラーに分散させる熱交換器と、
前記磁気永久電流スイッチを前記熱交換器に接続するループチューブと、
前記磁気永久電流スイッチと前記熱交換器との間で前記ループチューブと一体化されたバルブを含むサーマルスイッチであって、前記バルブは、
インレット及びアウトレットを有するバルブ本体であって、前記アウトレットで前記バルブ本体は前記ループチューブに接続されている、バルブ本体と、
前記バルブ本体内に配置され、且つ永久ロッド磁石を含む可動シャフトと、
永久磁石又は強磁性若しくは常磁性の保持要素を含むラッチ装置と、
ソレノイドとを含む、サーマルスイッチと、
を含み、
前記方法は、
前記超電導コイルを永久モードとランプモードとの間で切り替えるステップと、
熱を前記熱交換器からクライオクーラーに分散させるステップと、
前記磁気永久電流スイッチによって生成された熱エネルギーを前記熱交換器に伝達するために冷却剤の流れを可能にするステップと、
前記シャフトが前記バルブ本体の前記インレット又は前記アウトレットを閉じることにより前記バルブ本体に冷却剤が流れない閉位置と、前記バルブ本体の前記インレット及び前記アウトレットが開くことにより前記バルブ本体に冷却剤が流れる開位置との間で前記シャフトを移動するステップと、
前記シャフトが前記閉位置に移動するように前記ソレノイドに第1の極性を有する電流パルスを印加するか、又は前記シャフトが前記開位置に移動するように前記ソレノイドに前記第1の極性とは反対の第2の極性を有する電流パルスを印加するステップと、
前記シャフトを前記閉位置から前記開位置に、又はその逆も同様に切り替える電流パルスが前記ソレノイドに印加されていない限り、前記ラッチ装置の前記永久磁石から前記シャフトの前記永久磁石に作用する磁力が、前記シャフトを前記閉位置又は前記開位置に留まらせるステップと、
を含む、方法。
【請求項11】
命令が保存された非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記命令は、プロセッサ上で実行されると、請求項1に記載の超電導コイルを制御するためのシステムに、請求項10に記載の方法を行わせる、非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導コイルの分野に関し、特に超電導コイルを永続モードとランプモードとの間で切り替えるための磁気永久電流スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
超電導磁石は、磁気共鳴イメージング(MRI)や核磁気共鳴分光法(NMR)など、強磁場を必要とするシステムで使用されることがある。超電導を実現するために、磁石には超電導線から形成された1つ以上の導電性コイルが含まれている。超電導を維持するためには、動作中に絶対零度近くの極低温環境が必要である。超電導状態では、導電性コイルは超電導コイルと呼ばれ、電気抵抗を実質的に持たないため、より大きな電流を伝導して強磁場を発生させる。
【0003】
超電導状態での超電導磁石の動作は、永久電流モードと呼ばれることがある。つまり、永久電流モードとは、電気回路(例えば、超電導コイルを含む)が、電気抵抗がないために外部電源を必要とせずに実質的に無期限に電流を運ぶことができる状態のことである。永久電流モードで動作するために、超電導磁石は、超電導ループを有する閉じた超電導回路を提供する。この回路は、電源がコイルに電流を流すために遮断される。通常、回路を遮断するには、超電導ループの一部を温めて、超電導ループに電気抵抗を発生させることが含まれる。超電導状態と通常の(非超電導)抵抗との切り替えを担う超電導回路の構成要素は、磁石永久電流スイッチ(MPCS)と呼ばれる。超電導状態は永久状態とも呼ばれ、通常の状態はランプ状態、即ち、超電導コイルをランプアップ又はランプダウンするための状態と呼ばれる。
【0004】
電圧源がMPCSの両端に接続されているときは、電流の大部分はコイルに流れ、少量の電流のみがMPCSの抵抗性となった線に流れる。MPCSを開くことと、その両端に電圧をかけることの両方の動作によって、MPCSを発熱させる。超電導コイルを冷却する低温冷却システム(クライオスタットとも呼ばれる)は、通常、MPCSによって発生する追加の熱に対処できない(冷却システムがその熱を吸収又は除去する能力が限られている場合)。これは、磁石が通電又は通電解除されている間にMPCSを冷却システムから熱的に切り離す必要がある、いわゆる寒剤フリー、つまり密閉型システムの場合である。
【0005】
この点に関して、国際特許公開WO2020/193415A1は、熱交換器、ループチューブ、ボールバルブ、及び複数の電磁石を含む、バックグラウンド磁場で動作する永久電流スイッチの温度を制御するためのシステムについて説明している。熱交換器は熱をクライオクーラーに分散させる。ループチューブは、冷却剤の流れによって、永久電流スイッチによって生成された熱エネルギーを熱交換器に伝達することを可能にする。ボールバルブは、永久電流スイッチと熱交換器との間でループチューブと一体化されており、強磁性ボールが含まれている。電磁石は、ボールバルブに隣接してループチューブの外側に配置されている。ここで、複数の電磁石のうちの第1の電磁石に通電すると、強磁性ボールがループチューブを開く第1の位置に磁気的に動かされ、冷却剤が流れる。第2の電磁石に通電すると、強磁性ボールはループチューブを閉じる第2の位置に磁気的に動かされ、冷却剤の流れが遮断される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、超電導コイルの冷却システムに負担をかけることなく、磁石永久電流スイッチの温度を短時間で所望どおりに上下させることができる冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この目的は、独立請求項の主題によって対処される。本発明の好ましいな実施形態は、従属請求項に説明される。
【0008】
したがって、本発明によれば、超電導コイルを制御するためのシステムが提供される。このシステムは、
超電導コイルを永久モードとランプモードとの間で切り替えるための磁気永久電流スイッチと、
熱をクライオクーラーに分散させる熱交換器と、
磁気永久電流スイッチによって生成された熱エネルギーを熱交換器に伝達するために冷却剤の流れを可能にするループチューブと、
磁気永久電流スイッチと熱交換器との間でループチューブと一体化されたバルブを含むサーマルスイッチであって、バルブは、
インレット及びアウトレットを有するバルブ本体であって、アウトレットでバルブ本体はループチューブに接続されている、バルブ本体と、
バルブ本体内に配置され、且つ永久ロッド磁石を含む可動シャフトと、
永久磁石又は強磁性若しくは常磁性の保持要素を含むラッチ装置と、
ソレノイドと、を含む、サーマルスイッチとを含み、
シャフトがバルブ本体のインレット又はアウトレットを閉じることによりバルブ本体に冷却剤が流れない閉位置と、バルブ本体のインレット及びアウトレットが開くことによりバルブ本体を冷却剤が流れる開位置との間で、シャフトは移動可能であり、
ソレノイドに第1の極性を有する電流パルスを印加することによりシャフトが閉位置に移動し、且つソレノイドに第1の極性とは反対の第2の極性を有する電流パルスを印加することによりシャフトが開位置に移動するように、ソレノイドはシャフトに対して配置され、
シャフトを閉位置から開位置(又はその逆も同様)に切り替える電流パルスがソレノイドに印加されていない限り、ラッチ装置の永久磁石からシャフトの永久磁石に作用する磁力が、シャフトを閉位置又は開位置に留まらせるように、ラッチ装置はシャフトに対して配置されている。或いは、ラッチ装置には、強磁性又は常磁性の保持要素が設けられており、この保持要素は、保持要素の付近にあるシャフトの永久ロッド磁石によって磁気を帯びる。保持要素は、強磁性又は常磁性のインサートとして形成されてもよい。永久ロッド磁石と保持要素の誘発された磁化との間の磁力によって、ソレノイドが作動していないときは、可動シャフトはその現在の安定した位置(開位置又は閉位置)に保たれる。
【0009】
本発明は、超電導コイルをランプ(アップ/ダウン)し、超電導コイルを永久モードで動作させるための磁気永久電流スイッチを用いて超電導コイルを制御するためのシステムに関する。超電導コイルのランピング中の磁気影響電流スイッチからの熱を運び去るために、磁気永久電流スイッチと熱交換器との間に、冷却剤が流れるループチューブが設けられる。この冷却回路は、ソレノイド電磁石コイルを用いて動かされる永久磁気可動シャフトを有するバルブを用いて制御される。
【0010】
本発明の一態様によれば、シャフトは、永久磁石又は強磁性若しくは常磁性の保持要素を有するラッチ装置を用いて現在の位置に係止される。ラッチ装置は、電流パルスがソレノイドに印加されていない限り、閉位置によって形成される安定した停止位置又は開位置にシャフトを留まらせる。したがって、適切な極性の電流パルスがソレノイドに印加されると、ソレノイドの磁場が、永久磁気シャフトをその現在の位置に移動する。電流パルスの後で、ラッチ装置は、ソレノイドを作動し続ける必要なく、シャフトをその現在の位置に維持する。したがって、本発明は、ソレノイドの磁場によって、また、シャフトへの機械的な接触を必要とすることなく、シャフトを開位置と閉位置との間で移動する。シャフトは、ラッチ装置に電力を印加する必要なく、ラッチ装置によって現在の位置(即ち、シャフトが最後に移動した位置)に維持される。したがって、バルブの操作には、バルブをその開位置と閉位置との間で切り替えるときのみに電力を必要とし、シャフトを現在の安定した停止位置に保つためには電力は必要としない。
【0011】
永久磁石と連動したソレノイドの押す/引く能力によって、バルブは、1つのパルスソレノイドのみで操作することができる。これは、安定した停止位置(開位置又は閉位置)がラッチ装置の磁石によって提供される係止力によって維持されることにより、重力の影響をほぼ受けない。
【0012】
ソレノイドに関しては、ソレノイドに第1の極性を有する電流パルスを印加することによりシャフトが閉位置に移動し、且つソレノイドに第1の極性とは反対の第2の極性を有する電流パルスを印加することによりシャフトが開位置に移動するように、ソレノイドはシャフトに対して配置されていることが本発明では不可欠である。そのため、ソレノイドのデザイン、向き、及び位置は、超電導コイルを制御するためのシステムの異なるデザインでは違う場合がある。例えば、ソレノイドは、バルブ本体の隣に横方向に配置される場合もあれば、或いは、ソレノイドは、バルブ本体の周りに巻き付けられる場合もある。更に、他のデザイン及び配置が可能である。更に、既存のバックグラウンド磁場に対する干渉を考慮に入れる必要がある。このような既存のバックグラウンド磁場は、電源が入れられたときに、ソレノイドに力又はトルクをかける場合があり、これは、望ましくなく、例えば、ソレノイドの異なる向きによって相殺されるべきである。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によれば、シャフトは、その2つの端領域のいずれかにシール要素を含み、シール要素は、インレット又はアウトレットに配置されたバルブシートに押し付けることで、閉位置においてインレット又はアウトレットをシールする。
【0014】
一般に、シャフトは、様々な態様でバルブ本体内で移動可能であり得る。本発明の第1の好ましい実施形態によれば、シャフトは、シャフトの長手方向軸と垂直な回転軸に沿って回転可能であるように、バルブ本体内に配置されている。
【0015】
通例のごとく、長手方向軸は、シャフトの最長伸長軸と理解されるものとする。本発明のこの第1の好ましい実施形態では、シール要素は、好ましくは、内部ボア内のシールボールであり、内部ボアによって、シールボールはシャフト上に移動可能に配置される。この点につき、バルブ本体は、シャフトの回転中にシールボアボールを誘導するための溝を含むことが好ましい。一般に、シャフトのもう一方の端は自由端であるが、好ましくは、シャフトはもう一方の端領域にバランスボールを含む。バランスボールは内部ボアを有し、この内部ボアによって、バランスボールもシャフト状に移動可能に配置されている。更に、この点につき、バルブ本体には、好ましくは、シャフトの回転中にバランスボアボールを誘導するための溝が含まれている。このようにして、バルブの開状態から閉状態に、又は閉状態から開状態に確実に切り替えることを可能にする安定したデザインが実現される。
【0016】
一般に、シャフトが回転可能である本発明の第1の実施形態によれば、シャフトの回転範囲は、特定値に制限されない。しかし、本発明の好ましい実施形態によれば、シャフトの回転範囲は、90°未満に制限され、ラッチ装置の永久磁石は、永久ロッド磁石であり、ラッチ装置の永久磁石は、その両端のうちの一方が回転範囲の中央領域に向けられるように配置され、一方の端の極性は、回転範囲においてシャフトの永久ロッド磁石の極性と同じである。これにより、次の動作が提供される。シャフトは、同じ極性間の反発磁力により、開状態に関係する位置か、又は閉状態に関係する位置にされる。更に、開状態から閉状態への切り替え、又はその逆の切り替えは、引き合う又は反発する磁力をシャフトにもたらすために、ソレノイドに対応する極性を有する電流パルスを印加することによってのみ達成できる。この点につき、好ましい実施形態によれば、ラッチ装置の永久磁石は固定されており、ソレノイドに電流が印加されていない限り、開状態又は閉状態を維持する目的でのみ機能する。これに対して、別の実施形態によれば、ラッチ装置の永久磁石はバルブ本体旋回可能に固定されている。ここでは、ラッチ装置の永久磁石は、シャフトが閉位置に移動すると、回転範囲に向けられている端が閉位置から遠ざかるように旋回し、シャフトが開位置に移動すると、回転範囲に向けられている端が開位置から遠ざかるように旋回するように、バルブ本体内に旋回可能に配置される。この点につき、本発明の好ましい実施形態によれば、2つの切り替え接点が、バルブの閉状態を示すために、閉状態から遠ざかるように旋回することによって、ラッチ装置の永久ロッド磁石によって、これらの切り替え接点のうちの一方が作動し、バルブの開状態を示すために、開状態から遠ざかるように旋回することによって、ラッチ装置の永久ロッド磁石によってもう一方が作動するように設けられている。
【0017】
本発明の第2の好ましい実施形態によれば、シャフトは、回転可能ではなく、バルブ本体に設けられたシャフトチャネルに沿って直線的に移動可能であるように、バルブ本体内に配置されている。この点につき、別個のシール要素を使用する代わりに、シャフト自体が、インレット又はアウトレットに配置されたバルブシートに押し付けることで、閉位置においてインレット又はアウトレットをシールすることが好ましい。更に、本発明の第2の好ましい実施形態について、バルブ本体が、インレットからアウトレットまでシャフトチャネルと平行に延在するフローチャネルを含むことが更に好ましい。ここでは、シャフトは、フローチャネルが開位置において開き、冷却剤がインレットからアウトレットまでバルブ本体を通って流れるようにバルブ本体内に配置されている。また、本発明の第2の好ましい実施形態について、ラッチ装置を有することが好ましい。この点につき、第1の永久磁石がシャフトチャネルの一方の端領域に配置され、第2の永久磁石がシャフトチャネルのもう一方の端領域に配置される。第1の永久磁石の極性と、第1の永久磁石に向いているシャフトの永久ロッド磁石の端の極性とは互いに反対であり、第2の永久磁石の極性と、第2の永久磁石に向いているシャフトの永久ロッド磁石の端の極性とは互いに反対である。また、このラッチ装置により、電流パルスがソレノイドに提供されていない限り、バルブの開状態又は閉状態を確実に維持できる。
【0018】
本発明はまた、超電導コイルを制御するためのシステムを操作する方法に関する。システムは、
磁気永久電流スイッチと、
熱をクライオクーラーに分散させる熱交換器と、
磁気永久電流スイッチを熱交換器に接続するループチューブと、
磁気永久電流スイッチと熱交換器との間でループチューブと一体化されたバルブを含むサーマルスイッチであって、バルブは、
インレット及びアウトレットを有するバルブ本体であって、アウトレットでバルブ本体はループチューブに接続されている、バルブ本体と、
バルブ本体内に配置され、且つ永久ロッド磁石を含む可動シャフトと、
永久磁石を含むラッチ装置と、
ソレノイドとを含む、サーマルスイッチとを含む。方法は、
超電導コイルを永久モードとランプモードとの間で切り替えるステップと、
熱を熱交換器からクライオクーラーに分散させるステップと、
磁気永久電流スイッチによって生成された熱エネルギーを熱交換器に伝達するために冷却剤の流れを可能にするステップと、
シャフトがバルブ本体のインレット又はアウトレットを閉じることにより、バルブ本体に冷却剤が流れない閉位置と、バルブ本体のインレット及びアウトレットが開くことにより、バルブ本体を冷却剤が流れる開位置との間でシャフトを移動するステップと、
シャフトが閉位置に移動するように、ソレノイドに第1の極性を有する電流パルスを印加するか、又はシャフトが開位置に移動するように、ソレノイドに、第1の極性とは反対の第2の極性を有する電流パルスを印加するステップと、
シャフトを閉位置から開位置に、又はその逆も同様に切り替える電流パルスがソレノイドに印加されていない限り、ラッチ装置の永久磁石からシャフトの永久磁石に作用する磁力が、シャフトを閉位置又は開位置に留まらせるステップとを含む。
【0019】
更に、本発明はまた、命令が保存された非一時的コンピュータ可読媒体に関する。命令は、プロセッサ上で実行されると、上記の超電導コイルを制御するためのシステムに、上記の方法を行わせる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に説明される実施形態から明らかになり、また、当該実施形態を参照して説明される。ただし、このような実施形態は必ずしも本発明の全範囲を表すものではなく、したがって、本発明の範囲を解釈するためには、特許請求の範囲及び本明細書を参照するものとする。
【0021】
図1図1は、本発明の好ましい実施形態による超電導磁石システムの概略ブロック図を概略的に示す。
図2図2は、開位置にある、本発明の好ましい実施形態による超電導磁石システムのバルブを概略的に示す。
図3図3は、閉位置にある、図3の本発明の好ましい実施形態による超電導磁石システムのバルブを概略的に示す。
図4図4は、開位置にある、本発明の別の好ましい実施形態による超電導磁石システムのバルブを概略的に示す。
図5図5は、閉位置にある、図4の本発明の好ましい実施形態による超電導磁石システムのバルブを概略的に示す。
図6図6は、開位置にある、本発明の更に別の好ましい実施形態による超電導磁石システムのバルブを概略的に示す。
図7図7は、閉位置にある、図6の本発明の好ましい実施形態による超電導磁石システムのバルブを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の好ましい実施形態による超電導磁石システムの概略ブロック図を示している。この好ましい実施形態によれば、超電導磁石システム1は、磁石永久電流スイッチ(MPCS)7と並列に接続された超電導磁石の超電導コイル6と、説明のために電流源として示されている電源11とを含む。超電導コイル6は、超電導コイル6への熱入力を制限するために、超電導磁石システム1のクライオスタット2内にある。超電導コイル6は、クライオスタット2に取り付けられたクライオクーラー3で低温に維持される。クライオクーラー3は、超電導コイル6を包むサーマルシールド(図1には図示せず)の温度を約40ケルビンに維持する第1のステージ4と、超電導コイル6の温度を約4ケルビンに維持する第2のステージ5とを有する。クライオクーラー3の一部は、クライオスタット2の外側からアクセス可能である。対流冷却ループ8の熱交換器10が、クライオクーラー3の第2のステージ5に恒久的に接続されているか、熱接触している。電源11は、常時又は一時的にクライオスタット2の外側の電気接点に接続される。
【0023】
コントローラ12は、例えば、上述のように、メモリ及び/又はコンピュータ可読媒体上に保存された命令を実行する1つ以上のプロセッサを有するコンピュータシステム又はコンピュータデバイスによって実装される。図に示す実施形態では、コントローラ12は、電源11及びMPCS7の状態を制御して(点線で示されている)、例えば、オペレータが出す指示に応じて、磁石のランプアップ、磁石を永久電流モードにすること、及び磁石のランプダウンを可能にする。コントローラ12はまた、対流冷却ループ8内のサーマルスイッチ9の動作も制御して(点線で示されている)、対流冷却ループ8内のループチューブ13を通る冷却剤の流れを選択的に遮断したり有効にしたりすることで、MPCS7の温度を制御する。MPCS7は、第2の熱交換器34を介してループチューブ13に熱的に結合されている。コントローラ12には、上記のように、1つ以上のプロセッサ、及びコンピュータシステムの他のコンポーネントが含まれていることが理解される。メモリ及び/又はコンピュータ可読媒体に保存され、プロセッサによって実行される命令には、MPCS7の開閉、サーマルスイッチ9の開閉、及び電源装置11の電圧/電力出力の変更のための命令が含まれる。
【0024】
より具体的には、コントローラ12は、MPCS7を制御して、閉状態、即ち、超電導状態と、開状態、即ち、通常の状態、つまり、非超電導状態に選択的に入る。MPCS7は、超電導コイル6に使用される超電導線と同様に、銅マトリックス中に超電導フィラメントで作られた複合超電導線を含んでいる。他の超電導線と同様に、この複合超電導線は、高温では通常の導体として機能し、極低温では超電導体として機能する。MPCS7が閉(超電導)状態になると、主磁石電流を流すことができ、超電導磁石は永久電流モードに入ることができる。MPCS7は、例えば、クライオクーラー3を使用して冷却することで閉状態に切り替えることができる。MPCS7が開状態(非超電導状態又は通常の状態)のときは、主磁石電流を流すことができない。MPCS7は、例えば、MPCSヒータ(図示せず)を使用して加熱することで、閉状態に切り替えることができる。ただし、MPCS7は開状態で小さい(通常の)抵抗を持つ。これは、磁石が電源11に接続されるときに、MPCS7には少量の電流しか流れず、残りの電流は超電導コイル6に流れるほど十分に高い。したがって、MPCS7が開いているときは、磁石はランピング状態になり、その間、MPCS7は、MPCS7の両端間のランピング電圧が通常の抵抗率を流れる電流を生成するため、電力を消費する。MPCS7が閉じているときは、ランピング電圧はなく、電力消費もない。MPCS7は、後述する対流冷却ループ8を介して冷却によって開状態から閉状態に移行し、電源11は移行中に磁石の動作電流を維持する。MPCS7が(開状態と閉状態との間を移行するのではなく)完全に閉状態の場合、電源11は電流をランプダウンする。超電導コイル6の高い自己インダクタンスによって、コイル電流は変化しないため、電源11の電流がランプダウンするにつれてMPCS7を流れる電流がランプアップする。
【0025】
更に、コントローラ12は、対流冷却ループ8内のサーマルスイッチ9を制御して、オペレータによって求められた動作に応じて開閉する。例えば、ランピング活動後に磁石を永久電流モードにする必要があるときにMPCS7が開状態であるときに、サーマルスイッチ9を開いて、対流冷却ループ8を通る冷却剤の流れを可能にし、これにより、ループチューブ13を介してMPCS7を熱交換器10に熱的に接続して、MPCS7を閉じるための追加の冷却を提供する。MPCS7が閉状態にあるが、例えば、磁石をランプアップ又はランプダウンするために開く必要があるときに、サーマルスイッチ9を閉じて、(例えば、以下に説明するように、ループチューブ10を遮断することによって)対流冷却ループ8を通る冷却剤の流れを停止し、これにより、MPCS7を熱交換器10から熱的に切断し、クライオクーラー3の第2のステージ5に過負荷をかけることなくMPCSが温まって開くことを可能にする。磁石がランピング状態で、MPCS7が開状態であるときに、MPCS7によって生成された電力がクライオクーラー3(超電導コイル6を冷たい状態に保つ)の第2のステージ5に過負荷をかけないようにサーマルスイッチ9は閉状態にされる。磁石が永久電流状態に入ると、サーマルスイッチ9は開かれて、MPCS7が熱交換器10に熱的に接続された状態に保たれ、MPCS7が超電導状態に留まる。
【0026】
クライオクーラー3の第2のステージ5は、電力吸収能力は限られているが、磁石システムの超電導コイル6を約4ケルビンの所望の極低温温度にすることができる。したがって、開状態のMPCS7から来る熱は、さもなければ、クライオクーラー3に過負荷をかける。上述したように、電源11が開状態のMPCS7の両端に接続されているときは、電流の大部分は超電導コイル6に流れ、少量の電流のみがMPCS7の通常の抵抗線に流れる。超電導コイル6を流れる電流が目標値(目標電流)に達すると、コントローラ12は、閉状態に入るようにMPCS7を制御して、電源11をランプダウンした後に、超電導コイル6が実質的にゼロ抵抗の永久電流モードで動作することを可能にする。これは閉超電導回路と呼ばれる。目標電流とは、超電導磁石の中心に目標磁場を作るために線内を流れる必要のある電流のことである。
【0027】
一般的に、磁石MPCS7は、通常の抵抗を流れる電流により、開状態にあるときに、熱、即ち、熱エネルギーを生成し、閉状態から開状態に(又は逆も同様に)移行するように制御されたときにも熱を生成し続ける。超電導コイル6内の電流が目標電流に達すると、コントローラ12は電源11の電圧をオフにするが、超電導コイル6の高いインダクタンスにより、電源11に電流が流れ続ける。この状況では、MPCS7の電力消費はなくなり、MPCS7は冷却して開状態から閉状態に切り替える準備ができる。MPCS7の冷却は、部分的には、サーマルスイッチ9を制御して、対流冷却ループ8のループチューブ13内を冷却剤が流れて、MPCS7をクライオクーラー3の第2のステージ5に熱的に接続することを可能にすることによって行われる。
【0028】
ループチューブ13は、銅、アルミニウム、チタン、亜鉛、スズ、若しくは鉛などの非磁性金属、又は他の非磁性材料でできている。ループチューブ13は密閉されており、ループチューブ13に含まれる冷却剤は、例えば、MPCS7と熱交換器10との間で熱エネルギーの対流伝達を可能にするために、ヘリウムガス又はヘリウム液体であり得る。他の種類のガスや液体冷却剤が取り入れられる場合もある。
【0029】
サーマルスイッチ9は、冷却剤の流れを選択的に有効にしたり遮断したりするためにループチューブ13を開閉する。サーマルスイッチ9が開いているときは、発生した熱を放散するために、冷却剤はMPCS7と熱交換器10との間でループチューブ13を通って流れる。サーマルスイッチ9が閉じているときは、ループチューブ13を通る冷却剤の流れは遮断される。
【0030】
図2図7を参照して以下に更に説明する本発明の好ましい実施形態によれば、サーマルスイッチ9は、磁気永久電流スイッチ7と熱交換器10との間でループチューブ13と一体化されたバルブ14を含む。本発明の異なる好ましい実施形態のバルブ14の各々は、インレット16及びアウトレット17を有するバルブ本体15であって、アウトレット17でバルブ本体15はループチューブ13に接続されている、バルブ本体15と、バルブ本体15内に配置され、永久ロッド磁石19を含む可動シャフト18と、永久磁石21を含むラッチ装置20と、ソレノイド22とを含む。シャフト18は、シャフト18がバルブ本体15のインレット16又はアウトレット17を閉じることにより、バルブ本体に冷却剤が流れない閉位置と、バルブ本体15のインレット16及びアウトレット17が開くことにより、バルブ本体15に冷却剤が流れる開位置との間で移動可能である。更に、ソレノイド22は、ソレノイド22に第1の極性を有する電流パルスを印加することにより、シャフト18が閉位置に移動し、且つソレノイド22に、第1の極性とは反対の第2の極性を有する電流パルスを印加することにより、シャフト18が開位置に移動するように、シャフト18に対して配置されている。このような電流パルスは、図1に点線で示されている制御線によってサーマルスイッチに接続されているコントローラ12によって開始される。ラッチ装置20は、シャフト18を閉位置から開位置(又はその逆も同様)に切り替える電流パルスがソレノイド22に印加されていない限り、ラッチ装置20の永久磁石21からシャフト18の永久磁石19に作用する磁力が、シャフト18を閉位置又は開位置に留まらせるように、シャフト18に対して配置されている。このように、コントローラ12による開状態から閉状態(又はその逆も同様)へのアクティブな切り替えが行われない限り、ラッチ装置により、バルブ14の開状態又は閉状態が安定して維持される。
【0031】
図2から図5に示すように、シャフト18は、その2つの端領域のいずれかにシール要素24を含む。シール要素は、アウトレット17に配置されたバルブシート23に押し付けることで、閉位置においてインレット16又はアウトレット17をシールする。シール要素24は、内部ボアを有するシールボールであり、内部ボアによって、シールボールはシャフト18上に移動可能に配置される。図2図5に示す実施形態によれば、シャフト18は、シャフト18の長手方向軸と垂直な回転軸に沿って回転可能であるように、バルブ本体15内に配置されている。シャフト18の長手方向軸は、シャフトの最長伸長軸である。更に、バルブ本体15には、シャフト18の回転中にシール要素24を誘導するための溝25が含まれている。反対側では、シャフト18は内部ボアを有するバランスボール26を含む。内部ボアによって、バランスボールもシャフト18上に移動可能に配置されている。バランスボール26は別の溝33内を転がる。
【0032】
図2から図5に示す実施形態によれば、シャフト18の回転範囲は90°よりも少し小さい角度に制限されている。ラッチ装置20の永久磁石21は永久ロッド磁石で、その両端のうちの一方が回転範囲の中央領域に向けられるように配置されている。この端の極性は、この回転範囲においてシャフト18の永久ロッド磁石19の極性と同じである。このようにして、シャフト18は、同じ極性間の反発磁力により、開状態に関係する位置か、又は閉状態に関係する位置にされる。開状態から閉状態への切り替え、又はその逆の切り替えは、引き合う又は反発する磁力をシャフト18にもたらすために、ソレノイド22に対応する極性を有する電流パルスを印加することによってのみ達成できる。
【0033】
図2及び図3に示す実施形態によれば、ラッチ装置20の永久磁石21は固定されており、ソレノイド22に電流が印加されていない限り、開状態又は閉状態を維持する目的でのみ機能する。これに対して、図4及び図5に示す実施形態によれば、ラッチ装置20の永久磁石21はバルブ本体15に旋回可能に固定されている。この点に関して、ラッチ装置20の永久磁石21は、シャフト18が閉位置に移動すると、回転範囲に向けられている端が閉位置から遠ざかるように旋回し、シャフト18が開位置に移動すると、回転範囲に向けられている端が開位置から遠ざかるように旋回するように旋回可能に配置される。更に、2つの切り替え接点27、28が、バルブ14の閉状態を示すために、第1の方向に永久ロッド磁石21から遠ざかるように旋回することによって、ラッチ装置の永久ロッド磁石21によって、これらの切り替え接点27、28のうちの一方が作動し、バルブ14の開状態を示すために、第1の方向とは反対である第2の方向に永久ロッド磁石21から遠ざかるように旋回することによって、ラッチ装置20の永久ロッド磁石21によってもう一方が作動するように設けられている。一方又は他方の切り替え接点27、28に接触することにより、永久磁石21及びバルブ14の状態(即ち、閉状態又は開状態)を示す可能性を提供する対応する切り替え接点27、28を介して、電流が流れ始める。
【0034】
図6及び図7は、シャフト18が、バルブ本体15に設けられたシャフトチャネル29に沿って直線的に移動可能であるように、バルブ本体15内に配置されている本発明の別の実施形態を示している。図6では開状態で示し、図7では閉状態で示すこのバルブ14の一般的な動作原理は、図2から図5のバルブの動作原理と非常に類似している。ソレノイド22に電流パルスを印加することにより、シャフト18の永久ロッド磁石19は、電流パルスの極性に応じて、ソレノイド22に向かって移動するか、ソレノイド22から遠ざかるように移動する。このようにして、シャフトの永久ロッド磁石19の左端を、バルブ14を開閉するバルブシート23の中に移動したり、バルブシート23から遠ざかるように移動したりすることができる。ここでは、別個のシール要素を使用する代わりに、シャフト18の永久ロッド磁石19自体が、アウトレットに配置されたバルブシート23に押し付けることで、閉位置でアウトレット17をシールする。本発明の本実施形態によれば、バルブ本体15は、インレット16からアウトレット17までシャフトチャネル29と平行に延在するフローチャネル30を含む。シャフト18は、フローチャネル30が開位置において開き、冷却剤がインレット16からアウトレット17までバルブ本体15を通って流れるようにバルブ本体15内に配置されている。更に、本実施形態はまた、開状態から閉状態に(また逆も同様に)変更するための電流パルスがソレノイド22に印加されていない限り、バルブ14の開状態又は閉状態を維持するラッチ配列20も含む。本ラッチ装置22を実現するために、第1の永久磁石31がシャフトチャネル29の一方の端領域に配置され、第2の永久磁石32がシャフトチャネル29のもう一方の端領域に配置される。第1の永久磁石31の極性と、第1の永久磁石31に向いているシャフト18の永久ロッド磁石19の端の極性とは互いに反対であり、第2の永久磁石32の極性と、第2の永久磁石32に向いているシャフト18の永久ロッド磁石19の端の極性とは互いに反対である。このようにして、シャフト18の永久ロッド磁石19は、右側の第1の永久磁石31又は左側の第2の永久磁石32と、シャフトの永久ロッド磁石19の対応する端との間の磁力により、バルブ14の開状態又は閉状態に留まる。或いは、ラッチ装置には、シャフトチャネルのそれぞれの端領域に位置決めされた強磁性又は常磁性の保持要素のセットが含まれてもよい。
【0035】
本発明は、図面及び上記の説明に詳細に例示及び説明されているが、このような例示及び説明は、例示的又は模範的とみなされるべきであって、限定的とみなされるべきではない。本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態の他の変形は、図面、開示及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求項に係る発明を実施する際に当業者によって理解され、実行可能である。特許請求の範囲において、語「含む」は、他の要素又はステップを排除するものではなく、単数形の要素は複数を排除するものではない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを意味するものではない。特許請求の範囲における任意の参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。更に、明確さのために、図面内のすべての要素に参照符号が提供されているわけではない。
【符号の説明】
【0036】
超電導磁石システム 1
クリオスタット 2
クライオクーラー 3
クライオクーラーの第1のステージ 4
クライオクーラーの第2のステージ 5
超電導コイル 6
磁気永久電流スイッチ 7
冷却ループ 8
サーマルスイッチ 9
第1の熱交換器 10
電源 11
コントローラ 12
ループチューブ 13
バルブ 14
バルブ本体 15
インレット 16
アウトレット 17
シャフト 18
シャフトの永久ロッド磁石 19
ラッチ装置 20
ラッチ装置の永久磁石 21
ソレノイド 22
バルブシート 23
シール要素 24
溝 25
バランスボール 26
開状態用の接点 27
閉状態用の接点 28
シャフトチャネル 29
フローチャネル 30
第1の永久磁石 31
第2の永久磁石 32
溝 33
第2の熱交換器 34
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】