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特表2024-523213紙および板紙用のバリアコーティング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】紙および板紙用のバリアコーティング
(51)【国際特許分類】
   C09D 101/00 20060101AFI20240621BHJP
   C09D 101/08 20060101ALI20240621BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240621BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240621BHJP
   C09D 179/02 20060101ALI20240621BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240621BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20240621BHJP
   B32B 9/02 20060101ALI20240621BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20240621BHJP
   B32B 23/10 20060101ALN20240621BHJP
【FI】
C09D101/00
C09D101/08
C09D7/61
C09D7/63
C09D179/02
B05D7/24 302C
B05D7/24 303B
B05D7/24 303E
B05D5/00 Z
B32B9/02
B32B5/02 Z
B32B23/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575645
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 IB2022055278
(87)【国際公開番号】W WO2022259134
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】2150729-8
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ニフレット, オーサ
(72)【発明者】
【氏名】ボンネルプ, クリス
(72)【発明者】
【氏名】ヌース, イザベル
(72)【発明者】
【氏名】カールソン, アンデシュ
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4D075CA42
4D075DA04
4D075DB18
4D075DB20
4D075EA06
4D075EA12
4D075EA13
4D075EB07
4D075EB56
4D075EC04
4D075EC13
4D075EC22
4D075EC60
4F100AA08A
4F100AA08H
4F100AC03A
4F100AC03H
4F100AH02A
4F100AH02H
4F100AJ03A
4F100AJ06A
4F100AJ07A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA04A
4F100CA23A
4F100DE01A
4F100DE01H
4F100DG03A
4F100DG03H
4F100DG10B
4F100EH46A
4F100GB15
4F100GB23
4F100JD02A
4F100JD03A
4F100JM01A
4F100YY00A
4J038BA021
4J038BA022
4J038DJ012
4J038KA08
4J038MA08
4J038MA14
4J038NA04
4J038NA08
4J038PA18
4J038PC10
(57)【要約】
本発明は、水性バリアコーティング組成物であって、水性バリアコーティング組成物の全固体含有量に基づいてに基づいて20~80重量%の、少なくとも150の第1の重合度(DP1)を有する溶解した第1の多糖類;および水性バリアコーティング組成物の全固体含有量に基づいて20~80重量%の、100以下の第2の重合度(DP2)を有する溶解した第2の多糖類を含み;DP1:DP2の比が少なくとも10:1であり;水性バリアコーティング組成物が、10~90重量%の範囲の全固体含有量を有する、水性バリアコーティング組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性バリアコーティング組成物であって、
水性バリアコーティング組成物の全固体含有量に基づいて20~80重量%の、少なくとも150の第1の重合度(DP1)を有する溶解した第1の多糖類;および
水性バリアコーティング組成物の全固体含有量に基づいて20~80重量%の、100以下の第2の重合度(DP2)を有する溶解した第2の多糖類
を含み;
DP1:DP2の比が少なくとも10:1であり;
水性バリアコーティング組成物が、10~90重量%の範囲の全固体含有量を有する、
水性バリアコーティング組成物。
【請求項2】
DP1:DP2の比が少なくとも20:1、好ましくは少なくとも30:1である、請求項1に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項3】
水性バリアコーティング組成物が、水性バリアコーティング組成物の全固体含有量に基づいて30~80重量%、好ましくは40~80重量%、より好ましくは50~80重量%の第1の多糖類を含む、請求項1または2に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項4】
DP1が150~4000の範囲、好ましくは150~2000の範囲、より好ましくは150~1000の範囲内にある、請求項1から3のいずれか一項に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項5】
第1の多糖類が、水溶性ヘミセルロース、水溶性セルロース、水溶性デンプン、アルギネート、キトサン、プルラン、デキストラン、およびアガロースからなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項6】
第1の多糖類が、水溶性ヘミセルロース、水溶性セルロース、水溶性デンプン、およびアルギネートからなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項7】
第1の多糖類が、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、およびメチルエチルヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項8】
第1の多糖類がカルボキシメチルセルロース(CMC)である、請求項1から7のいずれか一項に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項9】
水性バリアコーティング組成物が、水性バリアコーティング組成物の全固体含有量に基づいて20~60重量%、好ましくは20~40重量%、より好ましくは20~30重量%の第2の多糖類を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項10】
DP2が2~50の範囲、好ましくは2~25の範囲、より好ましくは2~12の範囲内にある、請求項1から9のいずれか一項に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項11】
第2の多糖類が、水溶性ヘミセルロース、水溶性セルロース、水溶性デンプン、アルギネート、キトサン、プルラン、デキストラン、およびアガロースからなる群から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項12】
第2の多糖類が、水溶性ヘミセルロース、水溶性セルロース、水溶性デンプン、およびアルギネートからなる群から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項13】
第2の多糖類がキシランである、請求項1から12のいずれか一項に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項14】
水性バリアコーティング組成物の全固体含有量に基づいて1~30重量%の充填剤をさらに含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項15】
充填剤が、粘土、タルカム、CaCO、および繊維、またはそれらの組合せからなる群から選択される、請求項14に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項16】
水性バリアコーティング組成物の全固体含有量に基づいて1~30重量%の可塑剤をさらに含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項17】
可塑剤が、グリセロール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項16に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項18】
水性バリアコーティング組成物の全固体含有量に基づいて0.1~10重量%のポリカチオン性ポリマーをさらに含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項19】
ポリカチオン性ポリマーがポリエチレンイミン(PEI)である、請求項18に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項20】
水性バリアコーティング組成物が、10~80重量%の範囲、好ましくは20~70重量%の範囲、より好ましくは20~50重量%の範囲の全固体含有量を有する、請求項1から19のいずれか一項に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項21】
バリアフィルムまたはコーティングであって、
バリアフィルムまたはコーティングの全固体含有量に基づいて20~80重量%の、少なくとも150の第1の重合度(DP1)を有する第1の多糖類;および
バリアフィルムまたはコーティングの全固体含有量に基づいて20~80重量%の、100以下の第2の重合度(DP2)を有する第2の多糖類
を含み;
DP1:DP2の比が少なくとも10:1である、
バリアフィルムまたはコーティング。
【請求項22】
フィルムまたはコーティングの坪量が、5~15g/mの範囲、好ましくは5~10g/mの範囲内にある、請求項21に記載のバリアフィルムまたはコーティング。
【請求項23】
フィルムまたはコーティングの厚さが、1~15μmの範囲、好ましくは5~10μmの範囲内にある、請求項21または22に記載のバリアフィルムまたはコーティング。
【請求項24】
バリアフィルムまたはコーティングが、請求項1に記載の水性バリアコーティング組成物から調製される、請求項21から23のいずれか一項に記載のバリアフィルムまたはコーティング。
【請求項25】
バリアフィルムまたはコーティングが、相対湿度50%かつ23℃でASTM D-3985規格に従って測定された、50cc/m/24h/atm未満、好ましくは30cc/m/24h/atm未満、より好ましくは10cc/m/24h/atm未満の酸素透過率(OTR)を有する、請求項21から24のいずれか一項に記載のバリアフィルムまたはコーティング。
【請求項26】
バリアフィルムまたはコーティングが、TAPPI T559規格に従って測定されたときに、少なくとも8、好ましくは少なくとも10のKIT値を有する、請求項21から25のいずれか一項に記載のバリアフィルムまたはコーティング。
【請求項27】
請求項1から20のいずれか一項に記載の水性バリアコーティング組成物でコーティングされた基材を含む、コーティングされた基材。
【請求項28】
コーティングされた基材が、繊維系基材、好ましくは紙または板紙、好ましくは鉱物コート紙または板紙である、請求項27に記載のコーティングされた基材。
【請求項29】
前記コーティングされた基材が20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、最も好ましくは1%未満の排除率(PTS RH 021/97試験法に従って決定されるとき)によって特徴付けられる再パルプ化性を有する、請求項27または28に記載のコーティングされた基材。
【請求項30】
バリアフィルムまたはコーティングを製造するための方法であって、
a)請求項1から20のいずれか一項に記載の水性バリアコーティング組成物を調製することと;
b)水性バリアコーティング組成物のウェットフィルムまたはコーティングを形成することと;
c)ウェットフィルムまたはコーティングを乾燥させて、バリアフィルムまたはコーティングを得ることと
を含む、方法。
【請求項31】
乾燥バリアフィルムまたはコーティングの坪量が、5~15g/mの範囲、好ましくは5~10g/mの範囲内にある、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
乾燥バリアフィルムまたはコーティングの厚さが、5~15μmの範囲、好ましくは5~10μmの範囲内にある、請求項30または31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、繊維系基材、例えば紙または板紙のコーティング用のコーティング組成物であって、それらのバリア特性、特に酸素およびグリースバリア特性を改善するためのコーティング組成物に関する。本開示は、そのようなコーティング組成物でコーティングされた繊維系基材にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
包装産業において、繊細な製品を保護するために、ガス、芳香、および/または水分の効果的なバリアが必要とされる。特に、酸素に敏感な製品には、その貯蔵寿命を延ばすために酸素バリアが必要とされる。酸素に敏感な製品としては、多くの食品だけでなく、医薬品および電子工業製品も含まれる。酸素バリア特性を有する公知の包装材料は、1枚もしくは数枚のポリマーフィルムで構成されるか、または通常は多層コーティング構造体の一部として1層もしくは数層の酸素バリアポリマーでコーティングされた繊維系基材、例えば紙もしくは板で構成されることがある。
【0003】
食品用包装に重要な別の特性は、グリースおよび油に対する耐性である。
【0004】
バリアは通常、基材にバリア特性を与える組成物で繊維系基材をコーティングすることによって作製される。必要なバリア特性に応じて様々なコーティングを塗布することができる。繊維系基材にバリアを形成する場合に最も一般的に使用される材料は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、またはエチレン酢酸ビニル(EVA)である。EVOHは通常、酸素バリアを作製するために使用され、PEまたはPETは通常、液体および/または蒸気バリアを作製するために使用される。ポリマーは通常、繊維系基材に積層または押出しコーティングされる。しかしながら、製品にバリア特性を与えるポリマー層は通常、比較的厚い必要があり、したがってこのようなバリアを作製するにはかなりのコストがかかる。
【0005】
紙または板紙を通る酸素透過率(OTR)の低減に取り組む最も一般的な方法は、複数のポリマー層を使用することである。この方法において、1層が低いOTRを提供することができ、他層が撥水性および/または低い水蒸気透過率を提供することができる。
【0006】
一般的に使用される別のバリア材料はアルミニウムである。アルミニウム層は典型的に、紙または板紙製品の酸素および光バリアを改善するために使用される。アルミニウム層は薄く、典型的におよそ7~9μmである。アルミニウムは優れたバリア特性を提供するが、製品の二酸化炭素負荷を著しく増加させる。
【0007】
ポリマー層とアルミニウム層の両方の問題は、生分解性と、包装材料を効率的にリサイクルする可能性とを低下させることでもある。
【0008】
二酸化炭素負荷を低下させ、製品の生分解性およびリサイクル性を改善するため、紙または板紙製品における合成ポリマーおよびアルミニウム層の使用を避けることに、製造者、加工者、およびエンドユーザーからの要求がある。
【0009】
したがって、改善されたバリア特性を有する繊維系基材、例えば紙または板紙を提供するための改善された方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本開示の目的は、先行技術のバリアフィルムおよびコーティングの問題の少なくとも一部を軽減する、繊維系基材用のバリアフィルムまたはコーティングを提供することである。
【0011】
本開示のさらなる目的は、酸素および/またはグリースに対する良好な耐性を提供する、繊維系基材用のバリアフィルムまたはコーティングを提供することである。
【0012】
本開示のさらなる目的は、従来のコーティング法を用いて繊維系基材に効率的に塗布することができる、バリアフィルムまたはコーティングを提供することである。
【0013】
本明細書において例示される第1の態様によれば、水性バリアコーティング組成物であって、
水性バリアコーティング組成物の全固体含有量に基づいて20~80重量%の、150以上の第1の重合度(DP1)を有する溶解した第1の多糖類;および
水性バリアコーティング組成物の全固体含有量に基づいて20~80重量%の、100以下の第2の重合度(DP2)を有する溶解した第2の多糖類
を含み;
DP1:DP2の比が少なくとも10:1であり;
水性バリアコーティング組成物が、10~90重量%の範囲の全固体含有量を有する、
水性バリアコーティング組成物が提供される。
【0014】
本発明は、100以下の重合度(DP)を有する短い水溶性多糖類、例えばキシランなどのアニオン性ヘミセルロースが、150以上の重合度(DP)を有する長い水溶性多糖類、例えばカルボキシメチルセルロースと組み合わされた場合に、良好なバリアフィルムを形成することができるという意外な知見に基づく。
【0015】
本発明者らは、優れた酸素およびグリースバリア特性を有するバリアフィルムおよびコーティングを提供することに加えて、比較的多量の比較的短い水溶性多糖類とより長い水溶性多糖類を組み合わせることにより、適度に低い粘度をなお維持しながら、高い全固体含有量、例えば10、20、またはさらには30重量%以上の全固体含有量を有する水性バリアコーティング組成物を調製することが可能になることを見出した。これにより、従来のコーティング法を用いて水性バリアコーティング組成物を基材に効率的に塗布することが可能となる。
【0016】
多糖類の組合せを含む本発明の水性バリアコーティング組成物は、空気、酸素、および水蒸気に対する良好なバリア特性を提供しながら、同時に、使用済みバリアフィルムの再パルプ化およびリサイクルに及ぼす悪影響が小さいことが見出された。バリアフィルムは、抄紙機で良好な走行性で高速で紙または板紙系基材に塗布することができる。
【0017】
水性バリアコーティング組成物は、水性媒体に溶解した第1の多糖類および第2の多糖類を含む。水性媒体は水もしくは水溶液としてもよく、または水性媒体は、水もしくは水溶液と有機溶媒との混合物を含んでもよい。好ましい実施形態において、水性媒体は水をベースとし、すなわち水性媒体は50重量%を超える水で構成される。より好ましい実施形態において、水性媒体は水である。
【0018】
第1の多糖類および第2の多糖類は、水性バリアコーティング組成物中に溶解している。本明細書において使用する場合、「溶解した」という用語は、多糖類分子が水性媒体中で均質に混合していることを示す。したがって、第1の多糖類および第2の多糖類は、好ましくは両方とも水溶性である。本明細書において使用する場合、「水溶性」という用語は、多糖類が、大気圧で100℃を超えない温度で、少なくとも水性バリアコーティング組成物を調製するのに必要な濃度まで水性媒体中に溶解することができることを示す。
【0019】
多糖類の溶液は、比較的低い全固体含有量であっても、高い粘度を有することがある。本発明のコーティング組成物の利点は、適度に低い粘度をなお維持しながら、高い全固体含有量、例えば30重量%またはさらにはそれより高い全固体含有量を可能にすることである。本明細書において使用する場合、「全固体含有量」または「固体含有量」という用語は、水溶液または懸濁液中の溶解した固体と、加えて懸濁した固体および沈降性固体の全画分を指す。水性バリアコーティング組成物は、比較的高い固体含有量を有する。水性バリアコーティング組成物は、10~90重量%の範囲の全固体含有量を有する。一部の実施形態において、水性バリアコーティング組成物は、10~80重量%の範囲、好ましくは20~70重量%、より好ましくは20~50重量%の範囲の全固体含有量を有する。
【0020】
低粘度と組み合わせた高固体含有量により、コーティング組成物の輸送コストが低くなり、単一のコーティング工程で高坪量のコーティングを調製することが可能となる。高固体含有量により、フィルムまたはコーティングを乾燥させる際に除去する水の量も少なくなり、これによりコーティングプロセスの乾燥のエネルギー必要量も低減しうる。好ましくは、コーティング組成物の全固体含有量は少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも20重量%または少なくとも30重量%である。コーティング組成物の全固体含有量は、典型的に90重量%以下、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。
【0021】
水性バリアコーティング組成物の全固体含有量は、好ましくはその主成分として第1の多糖類を含む。水性バリアコーティング組成物の全固体含有量は、好ましくは、水性バリアコーティング組成物の全固体含有量に基づいて30~80重量%、好ましくは40~80重量%、より好ましくは50~80重量%の第1の多糖類を含む。
【0022】
多糖類は、単糖の繰り返し単位のポリマー鎖を含む。単糖単位は、同じ種類(ホモ多糖類)または異なるもの(ヘテロ多糖類)とすることができる。多糖類中の単糖単位の数は、重合度(DP)と呼ばれる。第1の多糖類は、150以上の第1の重合度(DP1)を有し、第2の多糖類は、100以下の第2の重合度(DP2)を有し、DP1:DP2の比は少なくとも10:1である。すなわち、DP1が200であるならば、DP2は20以下でなければならない。一部の実施形態において、DP1:DP2の比は少なくとも20:1、好ましくは少なくとも30:1である。
【0023】
一部の実施形態において、第1の多糖類は、150~4000の範囲、好ましくは150~2000の範囲、より好ましくは150~1000の範囲の第1の重合度(DP1)を有する。
【0024】
一部の実施形態において、第1の多糖類はアニオン性であり、多糖類が少なくとも1つのアニオン性官能基を含むことを意味する。アニオン性官能基は、典型的にカルボキシレート/カルボン酸官能基であるが、他のアニオン性官能基も可能である。アニオン性官能基は、多糖類中に天然に存在するもの、例えばグルクロン酸もしくはガラクツロン酸中のカルボキシレート/カルボン酸官能基としてもよく、または多糖類の化学修飾、例えば酸化もしくはグラフト化によって導入してもよい。
【0025】
一部の実施形態において、第1の多糖類は、水溶性ヘミセルロース、水溶性セルロース、水溶性デンプン、アルギネート、キトサン、プルラン、デキストラン、およびアガロースからなる群から選択される。
【0026】
ヘミセルロース、セルロース、およびデンプンは典型的に、その天然の状態で水への溶解度が低い。本明細書において使用する場合、「水溶性ヘミセルロース」、「水溶性セルロース」、および「水溶性デンプン」という用語は、天然多糖類を物理的、化学的、または物理化学的に修飾してそれらの水への溶解度を増加させたヘミセルロース、セルロース、およびデンプン誘導体を指す。
【0027】
一部の実施形態において、第1の多糖類は、水溶性ヘミセルロース、水溶性セルロース、水溶性デンプン、およびアルギネートからなる群から選択される。
【0028】
一部の実施形態において、第1の多糖類は、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、およびメチルエチルヒドロキシエチルセルロース(MEHEC)からなる群から選択される。
【0029】
一部の実施形態において、第1の多糖類はカルボキシメチルセルロース(CMC)である。
【0030】
水性バリアコーティング組成物は、比較的多量の、100以下の第2の重合度(DP2)を有する第2の多糖類をさらに含む。これは、例えば約7,000~15,000個のグルコース分子からなるセルロースと比較して、短鎖長である。水性バリアコーティング組成物は、水性バリアコーティング組成物の全固体含有量に基づいて20~80重量%の第2の多糖類を含む。
【0031】
一部の実施形態において、水性バリアコーティング組成物は、水性バリアコーティング組成物の全固体含有量に基づいて20~60重量%、好ましくは20~40重量%、より好ましくは20~30重量%の第2の多糖類を含む。
【0032】
一部の実施形態において、第2の多糖類は、2~50の範囲、好ましくは2~25の範囲、より好ましくは2~12の範囲の第1の重合度(DP1)を有する。
【0033】
一部の実施形態において、第2の多糖類は、2~12個の単糖単位で構成された短い糖鎖である。一部の実施形態において、第2の多糖類は、2~8の範囲、好ましくは2~5の範囲のDPを有する。本明細書で使用される場合、第2の多糖類の分子量は、典型的に250~2000g/molの範囲、例えば250~1500g/molの範囲または250~1000g/molの範囲内としてもよい。
【0034】
第2の多糖類は、天然の多糖類とすることができ、または合成的に、例えばより長い多糖類の化学的もしくは合成的加水分解によって調製することができる。
【0035】
一部の実施形態において、第2の多糖類はアニオン性であり、多糖類が少なくとも1つのアニオン性官能基を含むことを意味する。アニオン性官能基は、典型的にカルボキシレート/カルボン酸官能基であるが、他のアニオン性官能基も可能である。アニオン性官能基は、多糖類中に天然に存在するもの、例えばグルクロン酸もしくはガラクツロン酸中のカルボキシレート/カルボン酸官能基としてもよく、または多糖類の化学修飾、例えば酸化もしくはグラフト化によって導入してもよい。
【0036】
一部の実施形態において、第2の多糖類は、水溶性ヘミセルロース、水溶性セルロース、水溶性デンプン、アルギネート、キトサン、プルラン、デキストラン、およびアガロースからなる群から選択される。
【0037】
一部の実施形態において、第2の多糖類は、水溶性ヘミセルロース、水溶性セルロース、水溶性デンプン、およびアルギネートからなる群から選択される。
【0038】
ヘミセルロースは、低分子量から高分子量にわたる置換/分岐多糖類である。これらは、異なる部分に配列され、異なる置換基を有する異なる糖単位からなる。
【0039】
ヘミセルロースは、キシラン、キシログルカン、グルコマンナン、および混合結合ベータ-グルカンの主なグループに分けることができる。ヘミセルロースの一部は、糖鎖中のグルクロン酸および/またはガラクツロン酸単位の存在に起因して、負電荷を天然に有する。水性バリアコーティング組成物に使用するためのヘミセルロースは、好ましくはこのようなアニオン性ヘミセルロースである。ヘミセルロースは、希酸または塩基ならびに種々のヘミセルラーゼ酵素によって容易に加水分解される。
【0040】
一部の実施形態において、第2の多糖類はキシランである。キシランは、バイオマス、例えば木材、穀類、草、およびハーブ中に存在し、植物界で2番目に豊富なバイオポリマーと考えられている。種々の供給源のバイオマス中のキシランを他の成分から分離するために、水およびアルカリ水溶液を用いた抽出を使用することができる。
【0041】
一部の実施形態において、第2の多糖類は、2~12個の単糖単位で構成されたキシランである。一部の実施形態において、キシランは、2~8の範囲、好ましくは2~5の範囲のDPを有する。
【0042】
水性バリアコーティング組成物の配合は、コーティングおよびコーティングされた基材の意図される用途に応じて大きく変化しうる。一部の実施形態において、水性バリアコーティング組成物の全固体含有量は、第1の多糖類および第2の多糖類のみからなる。他の実施形態において、コーティング組成物は、製品の最終的な性能またはコーティングの加工を改善するため、異なる量の広範囲の構成成分をさらに含んでもよい。
【0043】
水性バリアコーティング組成物は、水性媒体中に溶解または分散した追加の成分をさらに含んでもよい。水性媒体中に溶解または分散した追加の成分の全量は、水性バリアコーティング組成物の全固体含有量に基づいて50重量%未満、好ましくは40重量%未満、より好ましくは30重量%未満である。
【0044】
一部の実施形態において、得られるフィルムまたはコーティングのバリア特性および機械特性を改善するため、充填剤を水性バリアコーティング組成物に添加する。一部の実施形態において、水性バリアコーティング組成物は、水性バリアコーティング組成物の全固体含有量に基づいて1~30重量%の充填剤を含む。一部の実施形態において、水性バリアコーティング組成物中の充填剤の量は、臨界顔料容積濃度(CPVC)未満である。
【0045】
一部の実施形態において、充填剤は、粘土(例えば、カオリンもしくは焼成カオリン)、タルカム、CaCO(例えば、PCCもしくはGCC)、TiO、Al、SiO、ベントナイト、繊維、またはそれらの混合物からなる群から選択される。繊維は、好ましくは、親水性表面を有し、水の密度に近い密度、すなわち好ましくは0.85~1.15g/cmの範囲または0.90~1.10g/cmの範囲の密度を有する任意の繊維としてもよい。一部の実施形態において、充填剤は、粘土、タルカム、CaCO、および繊維、またはそれらの組合せからなる群から選択される。
【0046】
一部の実施形態において、得られるフィルムまたはコーティングの弾性を増加させ、その脆性を低くするため、可塑剤を水性バリアコーティング組成物に添加する。これにより、形成するフィルムまたはコーティングは、そのバリア特性を失うことなく、より良好に曲げに耐えることが可能になる。一部の実施形態において、水性バリアコーティング組成物は、水性バリアコーティング組成物の全固体含有量に基づいて1~30重量%の可塑剤を含む。
【0047】
一部の実施形態において、可塑剤は、複数のヒドロキシル基を含有する有機化合物、例えばジオール、トリオール、または他のポリオールである。一部の実施形態において、可塑剤は、グリセロール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0048】
水性バリアコーティング組成物は、架橋剤または不溶化剤として作用するポリカチオン性ポリマーも含んでもよい。架橋剤または不溶化剤として作用するポリカチオン性ポリマーは、第1および/または第2の多糖類がアニオン性の場合に特に有用である。
【0049】
一部の実施形態において、水性バリアコーティング組成物は、水性バリアコーティング組成物の全固体含有量に基づいて0.1~10重量%のポリカチオン性ポリマーを含む。
【0050】
ポリカチオン性ポリマーは、複数のカチオン性官能基を有する合成または天然ポリマーである。本発明で使用するためのポリカチオン性ポリマーの例は、ポリ(N-メチルビニルアミン)、ポリアリルアミン、ポリアリルジメチルアミン、ポリジアリルメチルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(pDADMAC)、ポリジアリルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート(pDADMAT)、ポリジアリルジメチルアンモニウムニトレート(pDADMAN)、ポリジアリルジメチルアンモニウムペルクロレート(pDADMAP)、ポリビニルピリジニウムクロリド、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリビニルイミダゾール、ポリ(4-アミノメチルスチレン)、ポリ(4-アミノスチレン)、ポリビニル(アクリルアミド-co-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)、ポリビニル(アクリルアミド-co-ジメチアミノエチルメタクリレート(dimethyaminoethylmethacrylate))、ポリエチレンイミン、ポリリジン、DAB-AmおよびPAMAMデンドリマー、ポリアミノアミド、ポリヘキサメチレンビグアンジド(polyhexamethylenebiguandide)、ポリジメチルアミン-エピクロロヒドリン、アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-トリメトキシシリルプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、キトサン、カチオン性デンプン、カチオン性ゼラチン、塩化メチルによるポリエチレンイミンのアルキル化生成物、エピクロロヒドリンを用いたポリアミノアミドのアルキル化生成物、カチオン性モノマーを含むカチオン性ポリアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロリド(AETAC)、ジメチルアミノエチルメタクリレートメチルクロリド(METAC)、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(APTAC)、メタクリルアモドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(methacryl amodopropyl trimethyl ammonium chloride)(MAPTAC)、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、イオネン、シラン、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。ポリカチオン性ポリマーはまた、ポリカチオン性ポリペプチドまたはタンパク質としてもよい。
【0051】
一部の実施形態において、カチオン性ポリマーは、ポリアミノアミド、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(pDADMAC)、キトサン、カチオン性デンプン、およびカチオン性ゼラチンからなる群から選択される。
【0052】
好ましい実施形態において、ポリカチオン性ポリマーはポリエチレンイミン(PEI)である。
【0053】
一部の実施形態において、ポリカチオン性ポリマーは、2 000~1 000 000g/molの範囲、好ましくは10 000~100 000g/molの範囲の重量平均分子量を有する。
【0054】
コーティング組成物は、好ましくは、従来の紙のコーティング装置および技術、例えばブレードコーター、バーコーター、およびカーテンコーターを使用して紙または板紙に塗布するのに好適な配合物で提供される。したがって、コーティング組成物は、好適なコーティング特性を付与するための種々の添加剤を含んでもよい。このようなコーティング添加剤としては、分散剤(例えば、界面活性剤)、潤滑剤(例えば、ステアレート)、レオロジー調整剤、不溶化剤、湿潤剤、バリア化学物質、およびpH調節剤(例えば、NaOH)が含まれうるが、これらに限定されない。
【0055】
水性バリアコーティング組成物は、基材に塗布し、乾燥させて、バリアフィルムまたはコーティングを形成することができる。したがって、本明細書において例示される第2の態様によれば、バリアフィルムまたはコーティングであって、
バリアフィルムまたはコーティングの全固体含有量に基づいて20~80重量%の、少なくとも150の第1の重合度(DP1)を有する第1の多糖類;および
バリアフィルムまたはコーティングの全固体含有量に基づいて20~80重量%の、100以下の第2の重合度(DP2)を有する第2の多糖類
を含み;
DP1:DP2の比が少なくとも10:1である、
バリアフィルムまたはコーティングが提供される。
【0056】
バリアフィルムまたはコーティングは、好ましくは乾燥しているか、または実質的に乾燥している。バリアフィルムまたはコーティングは、好ましくは、90重量%を超える、好ましくは95重量%を超える全固体含有量を有する。
【0057】
第2の態様によるバリアフィルムまたはコーティングの組成は、第1の態様による水性バリアコーティング組成物の全固体含有量の組成に一致することになることが理解される。例えば、水性バリアコーティング組成物中の第1の多糖類の20~80重量%の乾燥含有量は、乾燥バリアフィルムまたはコーティング中の第1の多糖類の20~80重量%の含有量に結果としてなる。
【0058】
本発明によるフィルムまたはコーティングは、30g/m以下の坪量を一般に有してもよい。典型的に、許容できるバリア特性を得るには少なくとも1g/mの坪量が必要とされる。一部の実施形態において、フィルムまたはコーティングの坪量は、5~15g/mの範囲、好ましくは5~10g/mの範囲内にある。
【0059】
本発明によるフィルムまたはコーティングは、100μm以下の厚さを一般に有してもよい。特に、フィルムまたはコーティングは50μm以下の厚さを有してもよく、より特定すると、フィルムまたはコーティングは15μm以下または10μm以下の厚さを有してもよい。一部の実施形態において、フィルムまたはコーティングの厚さは、1~15μmの範囲、好ましくは5~10μmの範囲内にある。
【0060】
一部の実施形態において、バリアフィルムまたはコーティングは、第1の態様に関して本明細書に記載された水性バリアコーティング組成物から調製する。
【0061】
本発明のバリアフィルムまたはコーティングは、良好な酸素およびグリースバリア特性を有する。
【0062】
一部の実施形態において、バリアフィルムまたはコーティングは、相対湿度50%かつ23℃でASTM D-3985規格に従って測定された、50cc/m/24h/atm未満、好ましくは30cc/m/24h/atm未満、より好ましくは10cc/m/24h/atm未満の酸素透過率(OTR)を有する。
【0063】
一部の実施形態において、バリアフィルムまたはコーティングは、TAPPI T559規格に従って測定されたときに、少なくとも8、好ましくは少なくとも10のKIT値を有する。
【0064】
第1の態様による水性バリアコーティング組成物および第2の態様によるバリアフィルムまたはコーティングは、好ましくはバイオベースである。本明細書において使用する場合、バイオベースという用語は、バイオマス、例えば植物、樹木、または動物に全体的または部分的に由来する製品または材料を指す。バイオマスは、物理的、化学的、または生物学的処理を経ていてもよい。好ましくは、第1の態様による水性バリアコーティング組成物または第2の態様によるバリアフィルムもしくはコーティングの全固体含有量のうちの少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%がバイオベースである。
【0065】
本明細書において例示される第3の態様によれば、第1の態様による水性バリアコーティング組成物でコーティングされた基材を含む、コーティングされた基材が提供される。
【0066】
第1の態様による水性バリアコーティング組成物は、繊維系基材のコーティングで特に興味深い。したがって、一部の実施形態において、コーティングされた基材は繊維系基材である。繊維系基材は、好ましくは紙または板紙である。
【0067】
紙は一般に、例えば、書くこと、描くこと、もしくは印刷に使用されるか、または包装材料として使用される、木材のパルプまたはセルロース繊維を含む他の繊維物質からシートまたはロールに製造された材料を指す。紙は、漂白されていても漂白されていなくてもよく、コーティングされていてもコーティングされていなくてもよく、最終用途での要件に応じて様々な厚さで作製されうる。
【0068】
板紙は一般に、例えば平坦な基材、トレー、箱、および/または他の種類の包装として使用される、セルロース繊維を含む丈夫で厚い紙または厚紙を指す。板紙は、漂白されていても漂白されていなくてもよく、コーティングされていてもコーティングされていなくてもよく、最終用途での要件に応じて様々な厚さで作製されうる。
【0069】
水性バリアコーティング組成物は、製紙機械で(オンマシンコーティング)、または別個の機械で(オフマシンコーティング)添加することができる。コーティング組成物の塗布には、様々な紙コーティング装置および技術、例えばブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、カーテンコーター、およびキャストコーターを使用してもよい。コーティング組成物は、紙または板紙の片面または両面に塗布することができる。
【0070】
水性バリアコーティングを塗布する紙または板紙の表面は、好ましくは、例えば鉱物コーティングを分散体コーティングすることにより、表面の多孔性を低下させるように前処理してもよい。このようにして、水性バリアコーティングの量を減らすことができる。したがって、一部の実施形態において、コーティングされた基材は、分散体コーティングした、好ましくは鉱物コーティングした、紙または板紙である。
【0071】
コーティングされた基材は、好ましくは再パルプ化するのに好適である。一部の実施形態において、コーティングされた基材は、20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、最も好ましくは1%未満の排除率(PTS RH 021/97試験法に従って決定されるとき)によって特徴付けられる再パルプ化性を有する。
【0072】
したがって、本明細書において例示される第4の態様によれば、バリアフィルムまたはコーティングを製造するための方法であって、
a)第1の態様に関して本明細書に記載された水性バリアコーティング組成物を調製することと;
b)水性バリアコーティング組成物のウェットフィルムまたはコーティングを形成することと;
c)ウェットフィルムまたはコーティングを乾燥させて、バリアフィルムまたはコーティングを得ることと
を含む、方法が提供される。
【0073】
水性バリアコーティング組成物は、10~90重量%の範囲の全固体含有量を有する。一部の実施形態において、水性バリアコーティング組成物は、10~80重量%の範囲、好ましくは20~70重量%の範囲、より好ましくは20~50重量%の範囲の全固体含有量を有する。
【0074】
乾燥させる工程c)において、ウェットフィルムまたはコーティングの全固体含有量は、水のエバポレーションによって増加する。得られるバリアフィルムまたはコーティングは、好ましくは90重量%を超える全固体含有量を有する。
【0075】
一部の実施形態において、乾燥バリアフィルムまたはコーティングの坪量は、5~15g/mの範囲、好ましくは5~10g/mの範囲内にある。
【0076】
一部の実施形態において、乾燥バリアフィルムまたはコーティングの厚さは、1~15μmの範囲、好ましくは5~10μmの範囲内にある。
【0077】
本明細書において使用する場合、コーティングという用語は一般に、基材、例えば繊維系基材、例えば紙または板紙の表面を組成物で被覆して、基材に所望の仕上げもしくはテクスチャーを付与するか、または印刷性もしくは他の特性、例えば光学もしくはバリア特性を改善する、仕上げ作業を指す。本明細書において使用する場合、バリアコーティングという用語は一般に、改善されたバリア特性を基材に付与するように設計されたコーティングを指す。
【0078】
本明細書において使用する場合、フィルムという用語は一般に、薄い連続したシートに形成された材料を指す。本明細書において使用する場合、バリアフィルムという用語は一般に、良好なバリア特性を提供するように設計されたフィルムを指す。
【0079】
一般に、製品、ポリマー、材料、層、およびプロセスは、種々の成分または工程「を含む」という用語で説明しているが、製品、ポリマー、材料、層、およびプロセスは、種々の成分および工程「から本質的になる」または「からなる」こともできる。
【0080】
本発明を種々の例示的な実施形態に関して説明したが、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更を行うことができ、その要素を均等物で代用することができることが当業者に理解されよう。加えて、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるように多くの変更を行うことができる。したがって、本発明は、本発明を行うために企図された最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲に入る全ての実施形態を含むことになることが意図される。
【実施例
【0081】
材料
- 乾燥キシラン粉末、DP2~7、純度95%、水分含有量2%(Coreychem)
- ソルビトール粉末、純度95%、水分含有量2%(Cargill)
- CMC粉末、DP200、純度95%、水分含有量12%(Nouryon)
【0082】
実施例1-キシラン/CMC/ソルビトール/水混合物の調製
70℃の水7kgを含有する撹拌した容器にキシラン粉末13,4kgをゆっくり添加することにより、65%キシラン溶液を調製した。70℃の22%CMC水溶液および50%ソルビトール水溶液を同じ方法で調製した。
【0083】
実施例2-コーティング顔料の調製
実施例1で調製した溶液を混合して、26.7wt%の全固体含有量を有し、組成物の全固体含有量に基づいて55.5%のCMC、26%のキシラン、および18.5%のソルビトールを含有する水性コーティング組成物を得た。混合物は、40℃で粘度が670センチポアズであった。
【0084】
実施例3-板紙のコーティング
200m/分の速度のロッド、IR、およびエアドライヤーを用いたオフラインコーティングで、短い滞留時間の塗布を用いて、板紙基材(Natura Life 260g/m、コーティングなし)の表面上にコーティング顔料を塗布した。試料には1層(試料ID1)または2層(試料ID2)のいずれかをコーティングし、それぞれコート重量が6g/mおよび12g/mとなった。試料を23℃かつ相対湿度(RH)50%で数日間コンディショニングした後、分析した。
【0085】
分析
試料は、ピンホールの発生、耐グリース性(KIT)、および酸素透過性(酸素透過率、OTR)について、以下のように試験した。
- 酸素移動率(oxygen transfer rate)(OTR)は、ASTM D3985に従って、温度23℃かつ相対湿度(RH)50%で測定した。
- ピンホールの数は、EN13676:2001に従って測定する。測定は、包装材料を着色溶液(例えば、エタノール中の染料E131ブルー)で処理すること、および表面を顕微鏡で検査することを含む。
- KIT値は耐グリース性の尺度であり、TAPPI T559に従って測定する。
【0086】
分析の結果を表1に示す。
【国際調査報告】