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特表2024-523224細胞内伝達機能を有するバイオプロタックタンパク質及びこれを含む医薬組成物
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  • 特表-細胞内伝達機能を有するバイオプロタックタンパク質及びこれを含む医薬組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】細胞内伝達機能を有するバイオプロタックタンパク質及びこれを含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20240621BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240621BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20240621BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 15/08 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 27/10 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240621BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20240621BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240621BHJP
   A61K 38/02 20060101ALN20240621BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K16/28
C07K16/30
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/88 Z
C07K14/47
A61P35/00
A61P29/00
A61P37/06
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P11/06
A61P25/00
A61P15/08
A61P1/02
A61P3/10
A61P9/00
A61P9/12
A61P1/04
A61P25/18
A61P25/22
A61P25/24
A61P3/04
A61P27/10
A61P43/00 105
A61P21/04
A61P7/04
A61P3/00
A61P7/06
A61P31/18
A61P31/14
A61P1/16
A61P35/02
A61P25/16
A61P25/28
A61P31/12
A61K47/68
A61K39/395 L
A61K9/72
A61K9/127
A61K9/14
A61K47/65
A61P43/00 111
C12N15/12
A61K38/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575771
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 KR2022008231
(87)【国際公開番号】W WO2022260482
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】10-2021-0075839
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523044378
【氏名又は名称】ナイベック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NIBEC CO., LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】509329800
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】パク ユンジョン
(72)【発明者】
【氏名】チョン ジョンピョン
(72)【発明者】
【氏名】イ ジュヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユン,グクジン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA30
4C076AA93
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB25
4C076BB27
4C076BB29
4C076CC01
4C076CC03
4C076CC04
4C076CC09
4C076CC10
4C076CC11
4C076CC14
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC21
4C076CC26
4C076CC27
4C076CC35
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA02
4C084BA03
4C084BA41
4C084BA42
4C084BA44
4C084CA53
4C084DC50
4C084MA13
4C084MA24
4C084MA43
4C084MA52
4C084MA57
4C084MA59
4C084MA60
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZA021
4C084ZA051
4C084ZA121
4C084ZA151
4C084ZA181
4C084ZA331
4C084ZA361
4C084ZA421
4C084ZA531
4C084ZA551
4C084ZA591
4C084ZA661
4C084ZA671
4C084ZA701
4C084ZA751
4C084ZA811
4C084ZA941
4C084ZA961
4C084ZB111
4C084ZB211
4C084ZB261
4C084ZB271
4C084ZB331
4C084ZC191
4C084ZC351
4C084ZC551
4C085AA21
4C085CC31
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045EA20
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、細胞内伝達機能を有するタンパク質加水分解標的化キメラタンパク質(proteolysis targeting chimera, PROTAC)及びこれを含む医薬組成物に関し、本発明によるプロタックタンパク質は、従来の方法によって製造されたプロタック(PROTAC)に比べて、高い溶解度を有し、細胞に適用時に内在した疾患タンパク質を効率的に分解し、がんまたは炎症性疾患の治療に効果的である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1または化学式2の構造を有するプロタック(PROTAC)タンパク質:
【化1】
【化2】
前記化学式1または化学式2において、
(i)PEPは抗体または抗体の断片、または細胞膜透過ペプチド(cell penetrating peptide)であり、
(ii)L1及びL2はリンカーであり、L1及びL2はそれぞれ同一であるか相異する場合があり、L1はTBまたはL2に結合され、
(iii)TBは標的タンパク質に結合するバインダーまたは結合体であり、
(iv)URはユビキチンリガーゼとの結合リガンドであり、
(v)n及びmはそれぞれ独立して1~10の整数である。
【請求項2】
前記標的タンパク質は、突然変異したRASスーパーファミリー、キナーゼ、転写因子及びホスファターゼからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のプロタックタンパク質。
【請求項3】
前記RASスーパーファミリーは、KRAS、HRAS及びNRASからなる群から選択されることを特徴とする、請求項2に記載のプロタックタンパク質。
【請求項4】
前記TBは、突然変異したRASスーパーファミリー阻害因子、キナーゼ阻害因子、ホスファターゼ阻害因子、ヒートショックタンパク質90阻害因子、MDM2阻害因子、HDAC阻害因子、ヒトリシンメチルトランスフェラーゼ阻害因子、血管新生阻害因子、免疫抑制化合物、ヒトBETブロモドメイン含有タンパク質を標的とする化合物、アリール炭化水素受容体を標的とする化合物、EGF(epithelial growth factor)受容体キナーゼを標的とする化合物、FKBPを標的とする化合物、アンドロゲン受容体を標的とする化合物、エストロゲン受容体を標的とする化合物、甲状腺ホルモン受容体を標的とする化合物、HIVプロテアーゼを標的とする化合物、HIVインテグラーゼを標的とする化合物、HCVプロテアーゼを標的とする化合物、アシル-タンパク質チオエステラーゼ-1を標的とする化合物及びアシル-タンパク質チオエステラーゼ-2を標的とする化合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のプロタックタンパク質。
【請求項5】
前記TBは、配列番号7~配列番号14のうちいずれか一つのアミノ酸を含むペプチドであることを特徴とする、請求項1に記載のプロタックタンパク質。
【請求項6】
前記URは、XIAP、VHLタンパク質、IAPs、セレブロン(cereblon)及びMDM2からなる群から選択されるE3リガーゼに結合するリガンドであることを特徴とする、請求項1に記載のプロタックタンパク質。
【請求項7】
前記抗体は、EGFR、DLL3、EDAR、CLL1、BMPR1B、E16、STEAP1、0772P、MPF、NaPi2b、Sema 5b、PSCA hlg、ETBR、MSG783、STEAP2、TrpM4、CRIPTO、CD21、CD79b、FcRH2、B7-H4、HER2、NCA、MDP、IL20Rct、ブレビカン、EphB2R、ASLG659、PSCA、GEDA、BAFF-R、CD22、CD79a、CXCRS、HLA-DOB、P2X5、CD72、LY64、FcRH1、IRTA2、TENB2、PMEL17、TMEFF1、GDNF-Ra1、Ly6E、TMEM46、Ly6G6D、LGR5、RET、LY6K、GPR19、GPR54、ASPHD1、チロシナーゼ、TMEM118、GPR172A、MUC16及びCD33からなる群から選択されるポリペプチドのうち一つ以上に結合する抗体またはその断片であることを特徴とする、請求項1に記載のプロタックタンパク質。
【請求項8】
前記抗体は、モノクローナル抗体またはその変異体であることを特徴とする、請求項7に記載のプロタックタンパク質。
【請求項9】
前記モノクローナル抗体は、トラスツズマブ、セツキシマブ、リツキシマブ、ブレンツキシマブ、ゲムツズマブ、イノツズマブ、サシツズマブ、アレムツズマブ及びニモツズマブからなる群から選択されることを特徴とする、請求項8に記載のプロタックタンパク質。
【請求項10】
請求項1に記載のプロタックタンパク質をコードする核酸。
【請求項11】
請求項1~請求項9のうちいずれか一項に記載のプロタックタンパク質または請求項10に記載の核酸を含む医薬組成物。
【請求項12】
がんまたは炎症性疾患の治療または予防用であることを特徴とする、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
がん、喘息、自己免疫疾患、関節リウマチ、多発性硬化症、繊毛疾患、口蓋裂、糖尿病、心臓疾患、高血圧、炎症性腸疾患、精神遅滞、気分障害、肥満、屈折異常、不妊症、アンジェルマン症候群、カナバン病、慢性消化障害症、シャルコーマリートゥース病、嚢胞性線維症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、血色素症、血友病、クラインフェルター症候群、神経線維腫症、フェニルケトン尿症、常染色体優性多嚢胞性新種(PKD1またはPKD2)、プラダー-ウィリー症候群、鎌状赤血球貧血症、テイサックス病、ターナー症候群、HIV感染疾患及びHCV感染疾患からなる群から選択される疾患の治療または予防用であることを特徴とする、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記がんは、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、肝細胞がん、腎細胞がん、膀胱がん、腸がん、乳がん、子宮頸がん、子宮がん、結腸がん、食道がん、頭部がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、胃がん、白血病、良性及び悪性リンパ腫、良性及び悪性黒色腫、骨髄増殖性疾患、ユーイング肉腫、血管肉腫、カポジ肉腫、脂肪肉腫、筋肉腫、神経上皮肉腫、滑膜肉腫、神経肉腫、星細胞腫、乏突起膠細胞腫、脳室上衣腫、膠芽腫、神経芽細胞腫、神経節細胞腫、神経節膠腫、髄芽腫、松果体細胞腫、髄膜腫、脳膜肉腫、神経線維腫症及び神経鞘腫を含む肉腫、精巣がん、甲状腺がん、がん肉腫、ホギンス病、ウィルムス腫瘍及びテラトカルシノーマからなる群から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記炎症性疾患は、関節炎、自己免疫疾患、パーキンソン病、認知症、肝炎及びウイルス感染症からなる群から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項16】
経口、非経口、吸入用スプレー、局所、直腸、鼻腔または移植貯蔵所を通じて投与されることを特徴とする、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項17】
経口または非経口方法で投与する時、ナノ粒子またはリポソームを担体として投与されることを特徴とする、請求項16に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞内伝達機能を有するタンパク質加水分解標的化キメラ(proteolysis targeting chimera, PROTAC)タンパク質及びこれを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質加水分解標的化キメラ(proteolysis targeting chimera, PROTAC)は、疾患の原因となるタンパク質に結合、タンパク質を分解するプロテアソームを誘導し、最終的に選択的なタンパク質加水分解を誘導する二重結合分子である。PROTAC(プロタック)は、二つのタンパク質結合分子で構成され、一つはE3ユビキチンリガーゼに結合するためのものであり、もう一つは標的タンパク質に結合するためのものである。二つのタンパク質に結合することにより、プロタックは標的タンパク質をE3リガーゼに近接させ、プロテアソームによる後続の分解のために標的タンパク質のタギング、すなわち、ユビキチン化を誘発する。
【0003】
ユビキチン化は、ユビキチン-活性化酵素(E1)、ユビキチン-結合酵素(E2)、及びユビキチンリガーゼ(E3)によって行われる活性化、コンジュゲーション及び結合(ligation)の3段階を含む。このような順次的なカスケードの結果として、ユビキチンが標的タンパク質に共有結合する。ユビキチン化されたタンパク質は最終的にプロテアソームによって分解される。
【0004】
プロタック技術は2001年に初めて開始された(Sakamoto et al., Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. 98: 8554, 2001)。それ以降、この技術は様々な薬物設計:pVHL、MDM2、β-TrCP1、セレブロン(cereblon)及びc-IAP1で使用されてきた。プロタック薬物は、ほとんどが低分子化合物からなり開発されてきた。サリドマイド系列から誘導される様々な種類の低分子化合物は、構造的に標的タンパク質とE3リガーゼを同時に接合することができる利点がある。これらの公知のプロタック薬物は非常に有用であるが、低分子化合物の低い溶解度、細胞内透過低下による、内在するタンパク質分解効率の低下及び安全性に対する懸念を解決するための改善が必要であり、このような問題を改善したプロタック薬物に対する必要性が求められている。
【0005】
そこで、本発明者らは、低分子化合物を使用する代わりに、標的タンパク質分解効率が高く、細胞内伝達機能を有するプロタックタンパク質を開発しようと鋭意努力した結果、がん、炎症性疾患、感染で重要な標的であるE3リガーゼを標的タンパク質に移すことができる基質認識単位としてVon Hippel-Lindau(VHL)タンパク質序列に、グリシン5個からなるリンカーで連結された標的タンパク質結合配列を製造し、このキメラタンパク質の末端にリンカーを用いて抗体または細胞膜透過ペプチドを結合させ、細胞内転送を通じて実際に内在した疾患の標的タンパク質が分解されることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本背景技術部分に記載された前記情報は、あくまでも本発明の背景に対する理解を向上させるためのものであり、そこで本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者にとって既に知られている先行技術を形成する情報を含まない場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、標的タンパク質分解効率が高く、細胞内伝達機能を有するプロタック(PROTAC)タンパク質を提供することである。
本発明の他の目的は、前記プロタックタンパク質をコードする核酸を提供することである。
本発明のまた他の目的は、前記プロタックタンパク質またはこれをコードする核酸を有効成分として含む医薬組成物を提供することである。
本発明のまた他の目的は、前記プロタックタンパク質またはこれをコードする核酸を投与する段階を含む疾患の予防または治療方法を提供することである。
本発明のまた他の目的は、疾患の予防または治療のための前記プロタックタンパク質またはこれをコードする核酸の用途を提供することである。
本発明のまた他の目的は、疾患の予防または治療用薬剤製造のための前記プロタックタンパク質またはこれをコードする核酸の使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、下記化学式1または化学式2の構造を有するプロタック(PROTAC)タンパク質を提供する:
【化1】
【化2】
前記化学式1または化学式2において、
(i)PEPは抗体または抗体の断片、または細胞膜透過ペプチドであり、
(ii)L1及びL2はリンカーであり、L1及びL2はそれぞれ同一であるか相異する場合があり、L1はTBまたはL2に結合され、
(iii)TBは標的タンパク質に結合するバインダーまたは結合体であり、
(iv)URはユビキチンリガーゼとの結合リガンドであり、
(v)n及びmはそれぞれ独立して1~10の整数である。
本発明はまた、前記プロタックタンパク質をコードする核酸を提供する。
本発明はまた、前記プロタックタンパク質またはこれをコードする核酸を有効成分として含む医薬組成物を提供する。
本発明はまた、前記プロタックタンパク質またはこれをコードする核酸を投与する段階を含む疾患の予防または治療方法を提供する。
本発明はまた、疾患の予防または治療のための前記プロタックタンパク質またはこれをコードする核酸の用途を提供する。
本発明はまた、疾患の予防または治療用薬剤製造のための前記プロタックタンパク質またはこれをコードする核酸の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】細胞透過能を有するプロタックタンパク質の発現ベクターの模式図である。
図2】細胞内に導入されたプラスミドで発現したプロタックタンパク質のウエスタンブロット結果である。
図3】細胞内に導入されたプラスミドで発現したプロタックタンパク質によるがん細胞の生存率結果である。
図4】細胞内に導入されたプラスミドで発現したプロタックタンパク質によるactive KRASの発現抑制を確認したウエスタンブロット結果である。
図5】プロタックタンパク質をコードするmRNAを細胞内に導入し、細胞内でプロタックタンパク質の発現とactive KRASの発現抑制を確認したウエスタンブロット結果である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
他に定義されない限り、本明細書で使用された全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野における熟練した専門家により通常理解されるものと同じ意味を有する。一般的に、本明細書で使用された命名法及び以下に記述する実験方法は、当該技術分野において周知であり、通常使用されるものである。
【0011】
本発明は、ユビキチン経路タンパク質及び標的タンパク質がユビキチン経路タンパク質及び標的タンパク質と結合するキメラ構造物に近接した場合、ユビキチン経路タンパク質が任意の標的タンパク質をユビキチン化するという発見に基づくものである。
【0012】
本発明の主な理由は、従来の方法によって製造されたPROTAC技術が実際の溶解度が低かったり、細胞に適用時に内在する疾患タンパク質を実際に効率的に分解することができないという制限点を克服するためである。
本発明は、一観点から、下記化学式1または化学式2の構造を有するプロタック(PROTAC)タンパク質に関する:
【化1】
【化2】
前記化学式1または化学式2において、
(i)PEPは抗体または抗体の断片、または細胞膜透過ペプチド(cell penetrating peptide)であり、
(ii)L1及びL2はリンカーであり、L1及びL2はそれぞれ同一であるか相異する場合があり、L1はTBまたはL2に結合され、
(iii)TBは標的タンパク質に結合するバインダーまたは結合体であり、
(iv)URはユビキチンリガーゼとの結合リガンドであり、
(v)n及びmはそれぞれ独立して1~10の整数である。
【0013】
本明細書において、用語「プロタック(PROTAC)」は、タンパク質加水分解標的化キメラ(proteolysis targeting chimera)の略で、二つの活性ドメインとリンカーで構成された二重機能性小分子を意味し、不要な特定のタンパク質を除去することができる。本明細書において、「プロタックタンパク質」は、「バイオプロタックタンパク質」、「キメラタンパク質」と同じ意味で使用される。
【0014】
本発明によるプロタックタンパク質は、選択された標的タンパク質のユビキチン化を誘導することができ、標的タンパク質結合部分とユビキチンリガーゼ結合部位を含むようにリンカーを通じて連結するように設計される。
【0015】
本発明において、前記プロタックタンパク質は、一方の末端にユビキチンリガーゼに結合するリガンドと他方の末端には標的タンパク質に結合する部分を含み、標的タンパク質に結合するタンパク質の末端またはユビキチンリガーゼ結合リガンドと標的タンパク質結合部分を連結するリンカーに細胞透過性ドメインを含む。これにより、細胞内導入時に標的タンパク質と近接して位置しタンパク質の分解を誘導することができるようになり、n及びmの数に応じて細胞内に高濃度で存在し、効果的な標的タンパク質の分解を誘導する。
本発明において、前記プロタックタンパク質は、配列番号1~6のアミノ酸配列で表されることを特徴とすることができるが、これに限定されない。
【0016】
配列番号1:
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTFSMNWVRQAPGKGLEWVSYISRTSKTIYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGRFFDYWGQGTLVTVSSGGSEGKSSGSGSESKSTGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGEAPKLLIYSASVLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSVMIPMTFGQGTKVEIKGSGGGGSMPRRAENWDEAEVGAEEAGVEEYGPEEDGGEESGAEESGPEESGPEELGAEEEMEAGRPRPVLRSVNSREPSQVIFCNRSPRVVLPVWLNFDGEPQPYPTLPPGTGRRIHSYRGHLWLFRDAGTHDGLLVNQTELFVPSLNVDGQPIFANITLPVYTLKERCLQVVRSLVKPENYRRLDIVRSLYEDLEDHPNVQKDLERLTQERIAHQRMGDENLYFQGGSGGSGGSHHHHHHHH
【0017】
配列番号2:
MAWVWTLLFLMAAAQSIQAVSRRRRRRGGRRRRGGGGSEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTFSMNWVRQAPGKGLEWVSYISRTSKTIYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGRFFDYWGQGTLVTVSSGGSEGKSSGSGSESKSTGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGEAPKLLIYSASVLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSVMIPMTFGQGTKVEIKGSGGGGSMPRRAENWDEAEVGAEEAGVEEYGPEEDGGEESGAEESGPEESGPEELGAEEEMEAGRPRPVLRSVNSREPSQVIFCNRSPRVVLPVWLNFDGEPQPYPTLPPGTGRRIHSYRGHLWLFRDAGTHDGLLVNQTELFVPSLNVDGQPIFANITLPVYTLKERCLQVVRSLVKPENYRRLDIVRSLYEDLEDHPNVQKDLERLTQERIAHQRMGDENLYFQGGSGGSGGSHHHHHHHH
【0018】
配列番号3:
MAWVWTLLFLMAAAQSIQAEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTFSMNWVRQAPGKGLEWVSYISRTSKTIYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGRFFDYWGQGTLVTVSSGGSEGKSSGSGSESKSTGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGEAPKLLIYSASVLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSVMIPMTFGQGTKVEIKGSGGGGSMPRRAENWDEAEVGAEEAGVEEYGPEEDGGEESGAEESGPEESGPEELGAEEEMEAGRPRPVLRSVNSREPSQVIFCNRSPRVVLPVWLNFDGEPQPYPTLPPGTGRRIHSYRGHLWLFRDAGTHDGLLVNQTELFVPSLNVDGQPIFANITLPVYTLKERCLQVVRSLVKPENYRRLDIVRSLYEDLEDHPNVQKDLERLTQERIAHQRMGDGGGGSVSRRRRRRGGRRRRENLYFQGGSGGSGGSHHHHHHHH
【0019】
配列番号4:
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTFSMNWVRQAPGKGLEWVSYISRTSKTIYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGRFFDYWGQGTLVTVSSGGSEGKSSGSGSESKSTGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGEAPKLLIYSASVLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSVMIPMTFGQGTKVEIKGSGGGGSMENRWQVMIVWQVDRMRIRTWKSLVKHHMYVSGKARGWFYRHHYESPHPRISSEVHIPLGDARLVITTYWGLHTGERDWHLGQGVSIEWRKKRYSTQVDPELADQLIHLYYFDCFSDSAIRKALLGHIVSPRCEYQAGHNKVGSLQYLALAALITPKKIKPPLPSVTKLTEDRWNKPQKTKGHRGSHTMNGHENLYFQGGSGGSGGSHHHHHHHH
【0020】
配列番号5:
MAWVWTLLFLMAAAQSIQAVSRRRRRRGGRRRRGGGGSEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTFSMNWVRQAPGKGLEWVSYISRTSKTIYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGRFFDYWGQGTLVTVSSGGSEGKSSGSGSESKSTGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGEAPKLLIYSASVLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSVMIPMTFGQGTKVEIKGSGGGGSMENRWQVMIVWQVDRMRIRTWKSLVKHHMYVSGKARGWFYRHHYESPHPRISSEVHIPLGDARLVITTYWGLHTGERDWHLGQGVSIEWRKKRYSTQVDPELADQLIHLYYFDCFSDSAIRKALLGHIVSPRCEYQAGHNKVGSLQYLALAALITPKKIKPPLPSVTKLTEDRWNKPQKTKGHRGSHTMNGHENLYFQGGSGGSGGSHHHHHHHH
【0021】
配列番号6:
MAWVWTLLFLMAAAQSIQAEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTFSMNWVRQAPGKGLEWVSYISRTSKTIYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGRFFDYWGQGTLVTVSSGGSEGKSSGSGSESKSTGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGEAPKLLIYSASVLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSVMIPMTFGQGTKVEIKGSGGGGSMENRWQVMIVWQVDRMRIRTWKSLVKHHMYVSGKARGWFYRHHYESPHPRISSEVHIPLGDARLVITTYWGLHTGERDWHLGQGVSIEWRKKRYSTQVDPELADQLIHLYYFDCFSDSAIRKALLGHIVSPRCEYQAGHNKVGSLQYLALAALITPKKIKPPLPSVTKLTEDRWNKPQKTKGHRGSHTMNGHGGGGSVSRRRRRRGGRRRRENLYFQGGSGGSGGSHHHHHHHH
【0022】
本発明でTBと命名された標的タンパク質に結合するバインダーまたは結合体は、ライブラリから選択することができる。TBは、リンカーを通じてユビキチン経路タンパク質結合部分、例えば、VHLタンパク質とカップリングするように設計される。前記ユビキチン経路タンパク質は、E3ユビキチンリガーゼを認識する。
【0023】
本発明において、前記プロタックタンパク質の標的タンパク質は、突然変異したRASスーパーファミリー、キナーゼ、転写因子及びホスファターゼ等を含むが、これらに限定されない。
本発明において、前記RASスーパーファミリーは、KRAS、HRAS及びNRASからなる群から選択されることを特徴とすることができる。
【0024】
本発明において、前記TBは、突然変異したRASスーパーファミリー阻害因子、キナーゼ阻害因子、ホスファターゼ阻害因子、ヒートショックタンパク質90(HSP90)阻害因子、MDM2(Mouse double minute 2 homolog)阻害因子、HDAC(Histone deacetylases)阻害因子、ヒトリシンメチルトランスフェラーゼ阻害因子、血管新生阻害因子、免疫抑制化合物、ヒトBET(Bromodomain and extraterminal domain)ブロモドメイン-含有タンパク質を標的とする化合物、アリール炭化水素受容体(AHR)を標的とする化合物、EGF(epithelial growth factor)受容体キナーゼを標的とする化合物、FKBP(FK506 binding protein)を標的とする化合物、アンドロゲン受容体(AR)を標的とする化合物、エストロゲン受容体(ER)を標的とする化合物、甲状腺ホルモン受容体を標的とする化合物、HIVプロテアーゼを標的とする化合物、HIVインテグラーゼを標的とする化合物、HCVプロテアーゼを標的とする化合物、アシル-タンパク質チオエステラーゼ-1(Acyl-protein thioesterase 1; APT1)を標的とする化合物及びアシル-タンパク質チオエステラーゼ-2(Acyl-protein thioesterase 2; APT2)を標的とする化合物からなる群から選択されることを特徴とすることができるが、これらに限定されない。
【0025】
本発明において、前記TBは、配列番号7~配列番号14のうちいずれか一つのアミノ酸を含むペプチドであることを特徴とすることができるが、これらに限定されない。
【0026】
配列番号7:LTPHKHHKHLHA
配列番号8:WPGKHHNHYLRS
配列番号9:HDGYWWHSMTMW
配列番号10:LIHPMTVKHVHL
配列番号11:GSHWHFPKHQQQ
配列番号12:GSHWHFPKHQQH
配列番号13:WPGKHHHHYLRR
配列番号14:
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTFSMNWVRQAPGKGLEWVSYISRTSKTIYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGRFFDYWGQGTLVTVSSGGSEGKSSGSGSESKSTGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGEAPKLLIYSASVLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSVMIPMTFGQGTKVEIK
【0027】
本発明において、前記URは、ユビキチンリガーゼとの結合リガンドとして、XIAP(X-linked inhibitor of apoptosis protein)、VHL(Von Hippel-Lindau)タンパク質、IAPs(inhibitor of apoptosis proteins)、セレブロン(cereblon)及びMDM2(Mouse double minute 2 homolog)からなる群から選択されるE3リガーゼ(ligase)に結合するリガンドであることを特徴とすることができるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明において、前記PEPは、抗体または抗体の断片、または細胞膜透過ペプチド(cell penetrating peptide)であることを特徴とすることができる。
【0029】
本発明において、前記細胞膜透過ペプチドは、標的疾患細胞に対する特異的な透過性を有するペプチドであり、使用可能な細胞膜透過ペプチド配列の例を下記表1に示したが、これに限定されない。
【表1】
【0030】
本発明において、前記抗体は、EGFR、DLL3、EDAR、CLL1、BMPR1B、E16、STEAP1、0772P、MPF、NaPi2b、Sema 5b、PSCA hlg、ETBR、MSG783、STEAP2、TrpM4、CRIPTO、CD21、CD79b、FcRH2、B7-H4、HER2、NCA、MDP、IL20Rct、ブレビカン、EphB2R、ASLG659、PSCA、GEDA、BAFF-R、CD22、CD79a、CXCRS、HLA-DOB、P2X5、CD72、LY64、FcRH1、IRTA2、TENB2、PMEL17、TMEFF1、GDNF-Ra1、Ly6E、TMEM46、Ly6G6D、LGR5、RET、LY6K、GPR19、GPR54、ASPHD1、チロシナーゼ、TMEM118、GPR172A、MUC16及びCD33からなる群から選択されるポリペプチドのうち一つ以上に結合することを特徴とすることができるが、これらに限定されない。
【0031】
本発明において、前記抗体は、モノクローナル抗体またはその変異体であることを特徴とすることができ、前記モノクローナル抗体は、トラスツズマブ、セツキシマブ、リツキシマブ、ブレンツキシマブ、ゲムツズマブ、イノツズマブ、サシツズマブ、アレムツズマブ及びニモツズマブからなる群から選択されるものを使用することができるが、これらに限定されない。
本発明は、別の観点から、前記プロタックタンパク質をコードする核酸に関する。
【0032】
本発明において、前記核酸は、DNA、mRNA、プラスミドDNA等であり得、前記プロタックタンパク質をコードする遺伝子、例えば、プラスミドDNA及びこれによって導出されるmRNAは、細胞透過機能性ナノ担体によって細胞内に伝達され、同じ標的タンパク質分解効能を出すことができるようにする。
【0033】
本発明において、前記核酸は、従来オリゴヌクレオチドを細胞内に効果的に伝達することが知られている脂質ナノ粒子(LNP)、リポソーム(liposome)等の様々な伝達体を共に使用することができるが、これらに限定されない。
本発明は、また別の観点から、前記プロタックタンパク質または前記プロタックタンパク質をコードする核酸を含む医薬組成物に関する。
本発明は、標的タンパク質の分解と一貫したものであり、本発明によるプロタックタンパク質に関連する広範囲な医薬組成物を提示する。
【0034】
本発明において、前記医薬組成物は、がんまたは炎症性疾患の治療または予防用であり得、がん、喘息、自己免疫疾患、関節リウマチ、多発性硬化症、繊毛疾患、口蓋裂、糖尿病、心臓疾患、高血圧、炎症性腸疾患、精神遅滞、気分障害、肥満、屈折異常、不妊症、アンジェルマン症候群、カナバン病、慢性消化障害症、シャルコーマリートゥース病、嚢胞性線維症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、血色素症、血友病、クラインフェルター症候群、神経線維腫症、フェニルケトン尿症、常染色体優性多嚢胞性新種(PKD1またはPKD2)、プラダー-ウィリー症候群、鎌状赤血球貧血症、テイサックス病、ターナー症候群、HIV感染疾患及びHCV感染疾患からなる群から選択される疾患の治療または予防用であってもよい。
【0035】
本発明において、前記がんは、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、肝細胞がん、腎細胞がん、膀胱がん、腸がん、乳がん、子宮頸がん、子宮がん、結腸がん、食道がん、頭部がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、胃がん、白血病、良性及び悪性リンパ腫、特にブキットリンパ腫及び非-ホジキンリンパ腫、良性及び悪性黒色腫、骨髄増殖性疾患、ユーイング肉腫、血管肉腫、カポジ肉腫、脂肪肉腫、筋肉腫、神経上皮肉腫、滑膜肉腫、神経肉腫、星細胞腫、希少突起膠細胞腫、脳室上衣腫、膠芽腫、神経芽細胞腫、神経節細胞腫、神経節膠腫、髄芽腫、松果体細胞腫、髄膜腫、脳膜肉腫、神経線維腫症及び神経鞘腫を含む肉腫、精巣がん、甲状腺がん、がん肉腫、ホギンス病、ウィルムス腫瘍及びテラトカルシノーマからなる群から選択されることを特徴とすることができる。
【0036】
本発明において、前記炎症性疾患は、関節炎、自己免疫疾患、パーキンソン病、認知症、肝炎及びウイルス感染症からなる群から選択されることを特徴とすることができる。
【0037】
本発明の医薬組成物は、経口、非経口、吸入用スプレー、局所、直腸、鼻腔または移植貯蔵所を通じて投与されることを特徴とすることができ、経口または非経口方法で投与時、ナノ粒子またはリポソームを担体として投与することができる。
【0038】
本発明の一実施態様として、前記プロタックタンパク質の1回の投与量は1ng/kg~100mg/kg、好ましくは5ng/kg~50mg/kgであり、1日1回または週1~3回投与することを特徴とすることができるが、投与量と投与間隔はこれらに限定されない。
【0039】
本発明は、また別の観点から、前記プロタックタンパク質または前記プロタックタンパク質をコードする核酸を投与する段階を含む疾患の予防または治療方法に関する。
本発明は、また別の観点から、疾患の予防または治療のための前記プロタックタンパク質または前記プロタックタンパク質をコードする核酸の用途に関する。
【0040】
本発明は、また別の観点から、疾患の予防または治療用薬剤製造のための前記プロタックタンパク質または前記プロタックタンパク質をコードする核酸の使用に関する。
本発明において、前記疾患は、がんまたは炎症性疾患であることを特徴とすることができるが、これに限定されない。
【0041】
本発明において、前記方法、用途及び使用は、本発明によるプロタックタンパク質またはこれをコードする核酸を含み、前記プロタックタンパク質またはこれをコードする核酸を含む医薬組成物に関し、前述のプロタックタンパク質またはこれをコードする核酸及び医薬組成物と重複する内容はその記載を省略する。
【0042】
以下、実施例を通じて、本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、ひとえに本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるものと解釈されないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【実施例
【0043】
実施例1:動物細胞(mammalian cell)で細胞透過能を有するプロタックタンパク質の発現
本発明者らは、標的タンパク質を分解するプロタックタンパク質の発現ベクターを次のように設計した。ヒトKRASの12番目のGlycineがCysteineに突然変異が起こり活性化された状態のタンパク質(KRASG12C)を標的とするモノクローナル抗体とE3リガーゼと結合するVHLタンパク質及びribosomeにbindingして転写を助けるkozak序列を含むcDNAをpcDNA3.4ベクターに挿入、クローニングし、DNAシークエンシングで確認した。この作製されたプラスミドDNA配列にsignal peptideとlinker、PEP配列を追加して作製した。N末端にsignal peptideが位置し、続いて突然変異ヒトKRAS G12Cを標的とするモノクローナル抗体とVHL及びこれと様々な長さのlinkerで連結されているPEPが様々な順序で位置するようにクローニングした。このように作製したプラスミド(図1)はCHO-S細胞株にtransfectionさせ、この後enhancerを添加して7日間培養した。
【0044】
発現されたプロタックタンパク質は、ウエスタンブロット法でanti-His tag抗体(abcam, ab18184)、anti-VHL抗体(Invitrogen, MA5-13940)を用いて測定し、ウエスタンブロット結果を図2に示した。理論上のタンパク質サイズは56kDaであり、プロタックタンパク質が培養3日から現れ始めた。His Tagは培養5日以降からは現れないことから、タンパク質から切り離されたものと考えられる。
【0045】
実施例2:プロタックタンパク質によるがん細胞増殖抑制効果の確認
プロタックをコードするプラスミドをがん細胞にtransfectionさせ、プラスミドによって発現されるプロタックタンパク質による抗がん効果を調べるために、MTT assayを進行した。ヒトKRASG12Cの表現型を有する非小細胞肺がんの細胞である5X103個のH358(ATCC, CRL-5807)にLipofectamine 3000(invitrogen, L3000001)を使用して、プラスミドを様々な量で transfectionし、72時間後にMTT assayを実施して細胞生存能を評価した(図3)。処理したプラスミドの濃度が増加するほどH358細胞の生存能が減少した。従って、細胞内に導入されたプラスミドによってプロタックタンパク質が発現して作用したことを確認することができる。
【0046】
実施例3:プロタックタンパク質によるKRASシグナル伝達抑制効果の確認
標的タンパク質が細胞内で発現したプロタックタンパク質によって分解されることを確認するために、実施例1で作製したプラスミドDNAをLipofectamine 3000(invitrogen, L3000001)を使用して、ヒトKRASG12Cの表現型を有する非小細胞肺がんの細胞であるH358(ATCC, CRL-5807)にtransfectionした。Transfection後、16、24、48時間ごとに細胞をlysisしてcell lysateを得た。
【0047】
Active KRASを分離するために、Active GTPase Kit(Cell signaling, 11860S)を使用してGST-Raf1-RBD 80μgを入れ、500μgのタンパク質をスピンカップに分注した。4℃で1時間反応し、6000xg、15秒遠心分離後、新しいチューブにカラムを移し、1x溶解バッファー400μLを加えた。6000xg、15秒遠心分離後、新しいチューブにカラムを移し、2x SDS buffer(5X SDS Sample loading dye 200μl, Water 300μl 混合)50μL分注後、2分反応した。6000xg、2分遠心分離後、100℃で7分加熱した。11% SDS-PAGEでタンパク質(タンパク質 loading volume 20μl/lane)を電気泳動で分離し、nitrocellulose membraneにtransferした。KRASのサブシグナルであるERK1/2を測定するために、タンパク質は30μgずつ11% SDS-PAGEで電気泳動し、nitrocellulose membraneにtransferした。T-TBSに溶かした5%skim milkで1時間ブロッキングし、1次抗体をT-TBSに1:1000で希釈し、4℃でinvertingしながらovernight反応させた。T-TBSで10分間3回ずつ洗浄し、2次抗体をT-TBSに1:3000で希釈し、常温でinvertingしながら1時間反応させた。T-TBSで10分間3回ずつ洗浄した後、ECL substrate(Thermo, 34580)で化学発光し、Amersham Imager 680(GE)で確認した。使用した抗体の情報は、下記表2の通りである。
【0048】
【表2】
【0049】
Immunoblottingを用いてプロタックタンパク質はanti-His tag antibodyで確認し、細胞内の全てのKRAS(pan KRAS)または活性化されたKRAS(active KRAS)を確認した(図4)。プロタックタンパク質が発現するにつれ、活性化されたKRASの発現量は減少したが、pan KRASは変化しなかった。従って、プロタックタンパク質が活性化されたKRASのみを選択的に分解し、正常なpan KRASは分解しないことを確認することができる。
実施例4:プロタックタンパク質をコードするmRNAの細胞内導入
【0050】
プロタックタンパク質を細胞内で発現させるための方法として、プラスミドの代わりにmRNAの形態で作製した。5′ Cappingと3′ poly A tailを入れ、mRNAの安定性を高めた。Lipofectamine MessngerMAX(invitrogen, LMRNA003)を使用してtransfectionした。Transfection 24時間後に細胞を lysisしてcell lysateを得た。実施例3に記述された方法と同様に活性化されたKRAS(active KRAS)を選別した。Immunoblottingを用いて細胞内に導入されたmRNAによって発現したプロタックタンパク質は、anti-His tag antibody(abcam)で確認した。プロタックタンパク質が発現するにつれ、活性化されたKRASの発現量が減少することを確認した(図5)。mRNAの形態で導入されたプロタックタンパク質が発現され、標的タンパク質である活性化されたKRASが分解された。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によるプロタックタンパク質は、従来の方法によって製造されたプロタック(PROTAC)に比べて、高い溶解度を有し、細胞に適用時に内在した疾患タンパク質を効率的に分解し、がんまたは炎症性疾患の治療に効果的である。
【0052】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に記述したが、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な技術は単に好ましい実施態様に過ぎず、これによって本発明の範囲が制限されない点は明らかであろう。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とそれらの等価物によって定義されるといえる。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
2024523224000001.app
【国際調査報告】