(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】廃棄ポリマー加工品からのポリエステルおよびポリアミドの回収および利用のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C08J 11/10 20060101AFI20240621BHJP
C08G 63/78 20060101ALI20240621BHJP
C08G 63/12 20060101ALI20240621BHJP
C08G 63/127 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C08J11/10 ZAB
C08G63/78
C08G63/12
C08G63/127
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575996
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 IB2022055289
(87)【国際公開番号】W WO2022259142
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】102021000015005
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501193001
【氏名又は名称】ポリテクニコ ディ ミラノ
【氏名又は名称原語表記】POLITECNICO DI MILANO
【住所又は居所原語表記】Piazza Leonardo da Vinci,3220133 MILANO-Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】トリーニ,フラヴィオ
(72)【発明者】
【氏名】ストルティ,ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】モスカテッリ,ダビデ
(72)【発明者】
【氏名】モルビデッリ,マッシモ
【テーマコード(参考)】
4F401
4J029
【Fターム(参考)】
4F401AA22
4F401AA24
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4J029AA02
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4J029KA02
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4J029KG02
(57)【要約】
以下:a)ポリエステル/ポリアミドを解重合し、線状および/または環状オリゴマーおよび/またはモノマーを得るステップ、b)ステップa)からの生成物の回収および精製ステップ、c)重縮合および/または開環重合による、ステップb)からの生成物の重合ステップを含む、対応するポリマー廃棄物からポリエステルおよびポリアミドを回収するための方法。ステップa)において、解重合は、部分的であり、特に環状オリゴマーを含むオリゴマーの混合物をもたらし、前述のステップは、極性および/または無極性の非プロトン性溶媒中で、100~300℃の溶媒沸点付近の温度で、触媒の存在下で、反応溶媒およびそこに溶解した揮発性副生成物を同時に蒸留して行われる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応するポリマー廃棄物からポリエステルおよびポリアミドを調製するためのプロセスであって、以下:
a)ポリエステルまたはポリアミドを部分的に解重合し、それによりポリマーおよびオリゴマーの溶液を得るステップ、
b)ステップa)からの生成物の精製および固体混合物の形態でのその回収ステップ、
c)ステップb)からの前記固体混合物の重合ステップ
を含み、
・ステップa)において、解重合は、部分的にだけであり、環状オリゴマー、脂肪族オリゴマー、および出発ポリマーの混合物をもたらし、
・前記ステップa)は、非プロトン性極性溶媒中で、10~800g/lの前記ポリマー廃棄物の濃度から出発して、100~300℃の範囲の溶媒沸点で、触媒の存在下で、反応溶媒を同時に蒸留して行われる、
プロセス。
【請求項2】
前記ポリマー廃棄物は、ポリエステルおよびポリアミド材料であり、より好ましくは、ポリエチレンテレフタレートボトルの無色および着色フレーク、ポリアミドおよびポリエステル繊維、ポリエステルトレーおよび積層品、ポリエチレンフラノエート製品である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記溶媒は、ジアリールエーテル、モノ/ジ/トリ-C1~C3-アルコキ-シベンゼン、アリール-C1~C3-アルキレンオキシ-C1~C5-アルカン、ジ-(アリール-C1~C3-アルキレン)-エーテル、アリール-C1~C3-アルキレン-オキソ-ベンゼン、C4~C6シクロアルキル-ケトンから選択され、ここで、アリールは、フェニル、または1つ以上の線状もしくは分岐C1~C3アルキル残基で置換されたフェニルである、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記非プロトン性極性溶媒は、ジフェニルエーテル、1,3-ジメトキシベンゼン、ベンジルメチルエーテル、ベンジルブチルエーテル、ジベンジルエーテル、シクロヘキサノン、ベンゾフェノンから選択され、より好ましくはジフェニルエーテルである、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップa)は、溶媒としてジフェニルエーテルを使用することによって、好ましくは100~240℃の反応温度で、1~1000mbarの圧力で、好ましくは不活性ガス中、より好ましくは窒素中で、30分~5時間の時間にわたって行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記触媒は、有機金属および/または金属酸化物、より好ましくは環状スズオキサノエート(oxanoate)、ジブチルスズオキシド、酸化アンチモンから選択され、より好ましくは酸化アンチモンである、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
ステップa)の溶媒は、ジフェニルエーテルであり、ステップa)は、208~224℃の温度で、300~500mbarの圧力で、2~4時間の時間にわたって行われる、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
ステップb)は、好ましくは、溶媒沸点での、ステップa)からの反応混合物の濾過、遠心分離、加圧、またはデカンテーションによって、不溶性不純物を排除するステップb1.1)、またはb2.1)、またはb3.1)を含み、
・ステップb1.1)からの反応混合物は、以下のステップ:
b1.2)前記反応混合物が、濾過によって回収される未反応ポリマーが沈殿する温度への反応混合物の冷却を受けるステップであって、PETの場合、この温度は140~180℃、好ましくは140~160℃であるステップと、
b1.3)ポリマーの除去後、透過液が、濾過、遠心分離、加圧、またはデカンテーションによって回収される低および中分子量環状オリゴマーが沈殿する温度である室温への、さらなる冷却を受けるステップと、
場合により、
b1.4)ステップb1.3)からの濾過された溶液に炭化水素溶媒、好ましくはn-ヘキサンが加えられて、より低分子量のオリゴマーの沈殿を可能にするステップと
を含む処理を受け、
・ステップb2.1)からの反応混合物は、20~40℃、好ましくは25~30℃の温度の冷却ステップb2.2)を受け、その温度で、未反応ポリマーおよびオリゴマーの両方が沈殿し、それらは濾過によって溶媒から分離され、続いて、好ましくは90~120℃の温度で、純溶媒で洗浄されて、ポリマーの着色およびさらなる不純物を排除し、
・ステップb3.1)からの濾液は、ステップb3.2)で、20~40℃、好ましくは25~30℃の温度への冷却を受け、このようにして得られた沈殿物は、ステップb3.3)で、ケトン溶媒(好ましくはアセトン)で、20℃~溶媒沸点の温度で、向流で洗浄されて、色素および混入物の両方を除去する、
請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記廃棄物がポリエチレンテレフタレートフレークであり、ステップa)の溶媒がジフェニルエーテルである場合、ステップb1.2)の冷却温度は、140~160℃であり、生成物がステップb1.3)で洗浄される温度は、90~120℃である、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
ステップb3.1)からの濾液は、ステップb3.2)で、20~40℃、好ましくは25~30℃の温度への冷却を受け、このようにして得られた沈殿物は、ステップb3.3)で、ケトン溶媒(好ましくはアセトン)で、20℃~溶媒沸点の温度で、向流で洗浄されて、色素および混入物の両方を除去する、請求項8に記載のプロセス。
【請求項11】
以下の生成物:
(i)ステップb1.2)からの高分子量ポリマー、
(ii)ステップb1.3)からの低/中分子量オリゴマー、
(iii)ステップb1.4)からのより低分子量のオリゴマー、
(iv)精製方法b2-2)からのポリマー-オリゴマー混合物、
(v)精製プロセスb3-3)からのポリマー-オリゴマー混合物
の1つまたはそれらの混合物を使用することによって、塊状重合(ステップc))が、240~280℃の温度で、10~30分の時間にわたって行われる、請求項8~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
生成物(i)~(v)の1つ以上を、未使用PETとの混合物で使用することによって、塊状重合(ステップc))が、240~280℃の温度で、10~30分の時間にわたって行われる、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
重合は、押し出し機で、10~15分の時間にわたって、240~280℃で行われる、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
この種の重合で習慣的に使用される安定剤、色素、およびパフォーマーが、ステップc)で加えられる、請求項11~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
ステップa)~c)の少なくとも1つが連続的に行われる、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
ステップa)~c)の少なくとも2つが連続的に行われる、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
すべての3つのステップa)~c)が連続的に行われる、請求項15に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄ポリマー加工品からのポリエステルおよびポリアミドの回収および利用のためのプロセスに関する。本技術は、工業的に非常に重要な特定のポリマーであるポリエチレンテレフタレート(PET)に関して以下に提示される。
【背景技術】
【0002】
PETは、現在、重縮合(PC)によって、ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)から生成される。この反応は、
図1に示される3つのステップ:液体状態でのステップ、溶融状態でのステップ、および固体状態でのステップを必要とする。反応のこの進行は、長い反応時間および反応の副生成物(特にエチレングリコール、EG)の除去をもたらす、ポリマーの粘度の漸進的増加を反映する。高粘度では、そのような除去は、極めて遅くなり、その完了に数十時間のオーダーの時間を要する。文献に提唱された代替の方法は、開環重合(ROP、
図2に示される)である。このプロセスは、高希釈を必要とする環化解重合(CDP)による環状オリゴマー形成の初期段階を伴う。結果として生じる低粘度を利用して、副生成物の除去は、非常に容易になる。このようにして合成された環状オリゴマーは、次いで回収され、精製され、ROPによって約1時間で重合され、重合反応時間を大幅に短縮する。しかしながら、環状オリゴマーの生成は、高希釈(典型的には濃度10g/l)でのみ熱力学的に有利であるため、工業的観点から、このプロセスは経済的に魅力的ではない。そのような条件は、経済的に取り扱うのが困難な非常に大量の溶媒の必要性をもたらす。
【0003】
重縮合を合成方法として使用するプロセスは、業界で最も広く使用されている。ポリマー生成物は、ペレットの形態で販売され、次いで製造会社によって加工される。重合ステップ中に達成された重合度(したがって、対応する物理化学的特性)に応じて、いくつかの商業用途が可能である。品質が上がる順に、ペレットは、合成繊維、積層品、トレー、ボトル、および高性能工業材料の調製に使用されるようになる。
【0004】
これらのポリマー製品、特にPETボトルの寿命末期の運命に関して、これは、ポリマーが生成されたプロセスに関係なくプラスチック廃棄物になることに留意すべきである。この時点で、収集、(プラスチックの種類だけでなく色、用途、および起源による)分離、洗浄、ならびに細断して、いわゆるフレークを得るステップが存在する。これらのフレークの品質(したがって費用)は、先の分離の有効性に精密に依存し、したがって、これらの材料は、
図3に示されるように、異なる種類の処理を有することになる。より価値の低いフレークは、PLASMIXと呼ばれる異なるポリマーの完全なブレンドである。そのような混合物は、埋め立てられるか、または焼却されるか、または熱分解によって低分子化合物の混合物に分解され得る。あるいは、選別および分離プロセスによって、分別廃棄物収集から回収されるものを、異なる品質のプラスチック材料に分けることが可能である。品質が上がる順に、発明者らは、合成繊維、多層フィルムおよびトレー、不透明容器、着色ボトルおよび透明ボトルであることを見出した。後者は、現在強い関心を引いているが、これは、それらが、異なるリサイクルシステムの効果的な動作に必要な要件の大部分を満たすので、リサイクル業者による需要が最も高い材料となるためである。
【0005】
異なるフレークは、2つの広いカテゴリ:ケミカルリサイクルおよびメカニカルリサイクルに分類することができる後続のリサイクルプロセスの原料である。
【0006】
ケミカルリサイクルプロセスは、それを形成するモノマーへのその完全な変換までのPETの解重合を含む。場合によっては、解重合は、部分的にだけであるが、このようにして回収されるポリマーは、その分子量をボトルを作るのに必要な値に戻す十分な再重合を依然として必要とする。多くの場合、費用、品質、および純度の理由で回収されたモノマーは、市場およびプロセスの要求を満たすために未使用のモノマーと混合されなければならない。ケミカルリサイクルプロセスは、混合されたフレーク、また潜在的に繊維、積層品、およびフィルムを使用するといういくつかの利点を有する。それらは、製品の観点から多用途であり(異なるモノマーに戻る可能性、および異なる化合物にも戻る可能性)、混入物の除去を可能にする。一方、それらは、一般に、溶媒の大量使用、複雑な精製システム、および長いプロセス時間を必要とする工場を管理することができる唯一の存在である化学会社によって操作される。さらに、これらの技術の開発者は、未使用のモノマーおよびポリマーを生産および販売するものと同じである。したがって、これは、モノマー供給を様々な割合のリサイクルモノマーと統合するのを可能にするため、古典的な重縮合システムをすでに有するものにとって多用途かつ有利なリサイクルシステムである。同じ理由で、ケミカルリサイクルに基づく工場は、高い生産性、すなわち、大容量かつ非常に複雑な設備で稼働する。現在、これらのプロセスは、リサイクル工場のわずかな割合のみを構成し、プロトタイプ段階またはラボおよびパイロットスケールではなおさらである。この種のプロセスは、着色PETフレークをリサイクルする可能性、混入物の除去、および製品に関するその多用途性などのいくつかの利点を有するが、特に、その後適切にリサイクルおよび廃棄されなければならない複数の化学溶媒の使用に関連する重要な欠点も有する。
【0007】
メカニカルリサイクルに基づくプロセスについて、発明者らは、
図3になお示される2つのマクロ技術を区別することができ:それらの最も単純な適用では、それらは、フレークを直接押し出して、異なる用途を有し得るペレットの形態のPETを得る。しかしながら、メカニカルリサイクルは、ポリマーの熱分解を伴い、したがって、出発PETより低分子量のPETを得る。典型的には、ボトルフレークから出発するが、合成繊維などのより価値の低い製品に使用することができる材料が得られる。したがって、そのようなリサイクルシステムは、「オープン」、またはより明示的に「ボトルto繊維」と呼ばれる。この制限を克服するために、スーパークリーンと呼ばれる最新のメカニカルリサイクルプロセスは、最後の押し出しステップの直前または直後に再重合ステップ(固体状態重合)を含む。それにより、最終ポリマーは、ボトルの生産に十分な品質を有する状態に戻り、リサイクルシステムは、「クローズド」または「ボトルtoボトル」になる。この方法の強みは、費用効果、実装の容易さ(溶媒不要)、およびリサイクルニーズに適合できるプロセススケール(小スケールが可能)である。一方、(最も揮発性の高い汚染物質の部分的な除去を除いて)精製を行うことはできず、これは、品質および費用の高い単色フレークのみの使用を強い、プロセスの柔軟性を下げる。現在、リサイクルボトルの80%超は、メカニカルリサイクルプロセスを使用する。PETの他の形態は、メカニカルプロセスによって分解しすぎるため、したがってリサイクルされない。
【0008】
本発明の主題のリサイクルプロセスは、(i)ボトル用高品質ポリエステル(PET)だけでなく、ポリエステルおよびポリアミド繊維にも適用可能であり、(ii)上に記載された技術の欠点がないことに留意すべきである。
【0009】
Kamau S. D.ら:“Cyclo-depolymerization of poly(propylene terephthalate): some ring-opening polymerizations of the cyclic oligomers produced polymers for advanced technologies, Wiley & Sons, Bognor Regis, GB, vol. 14, no. 7, 1 July 2003 (2003-07-01), p. 492-501は、ポリエステルをリサイクルするための方法を開示し、そこでは、ポリエステルポリマーは、最初に環化解重合プロセスを受けて、開環重合の出発モノマーとして使用される環状オリゴマーの混合物を生成する。
【0010】
EP3778744 A1は、使用済みPETを部分的に解重合してPETオリゴマーを生成し、続いて、部分的に解重合したPETをPETオリゴマーと再重合することを含む、使用済みポリエチレンテレフタレート(PET)をリサイクルするためのプロセスを開示する。プロセスは、リサイクルPETオリゴマーを含むポリマーPET材料を生成する。プロセスを、未使用PET製造プロセスと組み合わせるかまたは統合して、リサイクルPETオリゴマーおよび未使用PETモノマーで構成されたポリマーPET材料を生成することもできる。
【0011】
Hodge Philip ED - Liou guey-Shengら:“Cyclodepolymerization as a method for the synthesis of macrocyclic oligomers”, Reactive and Functional Polymers, vol. 80, pp. 21-32は、縮合ポリマーの環化解重合による大環状オリゴマーの調製について記載している。この手法は、多くの大環状分子の一段階での合成を提供することができる。
【0012】
EP3606980 A1は、2~5つのフラン単位を有するポリエステル環状オリゴマーを含むポリエステル環状オリゴマー組成物の反応を伴う、環状オリゴマーの調製のためのプロセスを開示する。プロセスは、線状オリゴマー化段階でフランの二官能性誘導体とジオールとを反応させて線状オリゴマー組成物を生成し、続く段階で、線状オリゴマー組成物を蒸留支援環化(DA-C)ステップで反応させて、ポリエステル環状オリゴマー組成物を形成し、蒸発によってジオール副生成物を除去することを伴う。
【発明の概要】
【0013】
出願人は、ここに、溶媒の同時蒸留を伴う部分的環化解重合を企図する化学プロセスでありながら、副生成物および混入物の大部分を除去することができる高速プロセスである、プロセスを見出した。さらに、触媒の存在下、適切な希釈で操作することにより、ポリマーは、部分的にのみ分解し、分解生成物は、本質的に環状オリゴマーである。それにより、回収される材料は、ROPによって再重合される準備ができており、30分未満でボトルグレードに達する。
【0014】
従来の化学プロセスに関して、この手法は、完全な解重合が必要ないという、議論の余地のない利点を有する。さらに、伝統的なケミカルリサイクルプロセスと比較して、プロセスの複雑さおよび使用される溶媒の数を低減することによって、大規模工業会社だけでなく小規模および中規模の会社によっても達成可能である。
【0015】
したがって、本発明の目的は、以下のステップを含む、対応するポリマー廃棄物からポリエステルおよびポリアミドを回収するためのプロセスである:
a)ポリエステル/ポリアミドを完全および/または部分的に解重合し、線状および/または環状オリゴマーおよび/またはモノマーを得るステップ、
b)ステップa)からの生成物の回収および精製ステップ、
c)ステップb)からの生成物の重合ステップ。
このプロセスは、ステップa)が、極性および/または無極性非プロトン性溶媒中で、10~800g/lの、前述の溶媒中の前述のポリマー製品の濃度から出発して、100~300℃の溶媒沸点に近い温度で、触媒の存在下で、反応溶媒およびそこに溶解した揮発性副生成物を同時に蒸留して行われることを特徴とする。ステップa)をこのように行うことによってのみ、オリゴマーの混合物が環状オリゴマーから主になる、部分的解重合を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】重縮合によるPETの工業的重合の伝統的なパターンを示す。
【
図2】開環重合(ROP)によるPETの重合のパターンを示す。
【
図3】現在の、異なるポリマー部分の分離および処理チェーンを示す。具体的には、異なる処理に適した材料が特定される。
【
図4】異なる初期PET濃度での、従来の環化解重合(CDP)および本発明による蒸留支援環化解重合(DA-CDP)を使用して得られた変換結果および数平均分子量を時間の関数として示す。
【
図5】プロセスの第2のステップ(生成物の精製および回収)に関してより詳細な、以下の発明のプロセスのブロック図を示す。具体的には、 -プロセスb1)では、ポリマーおよびオリゴマー画分の選択的分離および精製のためのシステムが図示され、 -プロセスb2)では、一定および/または可変温度での、単一の溶媒または溶媒の混合物を用いる多段階洗浄を含む直接結晶化プロセスが図示され、 -プロセスb3)では、向流洗浄を含む直接結晶化プロセスが図示される。
【
図6】本発明の目的のプロセスの第3のステップを出る生成物に関して、
図6は以下を示す: ・反応時間の関数としてのPETへの変換率、 ・反応時間の関数としてのポリマーの数平均分子量、 ・2つの異なるスケールでの、PETへの変換率の関数としての数平均分子量。
【
図7】
図7は、本発明の連続プロセスの1つの好ましい実施形態を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、
図7で企図された連続プロセスが行われるシステムの好ましい実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
これらすべての結果は、異なる方法による回収および精製ステップ(ステップb)後に得られたポリマー/オリゴマー混合物からの、本発明のプロセスの第3のステップ(ステップc)を出る生成物を指す。そのような混合物は、未精製、高温、低温、および混合(低温+高温)と呼ばれ、それらの特徴が以下で説明される。
【0018】
本発明の目的では、含む(comprising)という定義は、そのような定義の後に明確に述べられていないさらなる構成要素またはステップの存在を除外しない。
【0019】
本発明の目的では、からなる(consisting of)およびにある(consisting in)という定義は、そのような定義の後に記載されたもの以外のさらなる構成要素またはステップの存在を除外しない。
【0020】
本発明の目的では、環化解重合は、異なる分子量のポリマー、特に高分子量のポリマーおよび低分子量の環状オリゴマーの混合物をもたらす解重合を意味する。
【0021】
本発明の目的では、部分的解重合は、解重合されたポリマーの割合が、出発ポリマーの総重量の0.1重量%~80重量%、好ましくは0.1重量%~40重量%である解重合反応を意味する。
【0022】
本発明の目的では、
a)重縮合は、低分子量副生成物を放出して任意の長さの2つの線状鎖が結合することを伴う重合反応を意味し、
b)ポリマー化学分解は、重縮合とは逆の解重合反応を意味し、ポリマー鎖切断を促進する1つ以上の分子の、鎖への挿入に支持される、2つのより短い鎖へのポリマーの切断を伴い、
c)ポリマー分解(decomposition)は、重縮合とは逆の解重合反応を意味し、ポリマー鎖の分解(degradation)(例えば、機械的、熱的、物理的応力、酸化、照射など)による2つのより短い鎖へのポリマーの切断を伴い、
d)開環重合またはROPは、代わりに、環状オリゴマーの開裂による重合反応であり、
e)バックバイティングは、ROPとは逆の環化解重合反応を指し、したがって、より短い線状鎖および環状オリゴマーの形成を伴うポリマーの切断を含み、
f)エンドバイティングは、環状オリゴマーおよび低分子量副生成物を形成するオリゴマー線状鎖の頭-尾閉環を伴う環化解重合反応であり、逆反応は、低分子量副生成物によって引き起こされる開環反応であり、それにより、出発環状オリゴマーと同じ繰り返し単位を有するオリゴマーが形成される。
【0023】
PETは、主に2つの品質:繊維グレードおよびボトルグレードで生産される。これらの基準は、主に、平均分子量、ならびにコモノマー、色素、および安定剤の量および種類などの生産レシピが異なる。
【0024】
本発明の目的では、繊維グレードPETは、15000~20000g/molの分子量、および0.55~0.67dl/gの固有粘度を有するポリエチレンテレフタレートと意図される。タイヤコードなどの工業用糸のための繊維PETは、より高い分子量(固有粘度0.95dl/g)を有する。
【0025】
本発明の目的では、ボトルグレードPETは、24000~36000g/molの分子量、および0.75~1dl/gの固有粘度を有するポリエチレンテレフタレートと意図される。
【0026】
本発明の目的では、高分子量ポリマーは、20000~40000g/molの数平均分子量を有するポリマーを意味する。
【0027】
低~中分子量オリゴマーは、1000~3500g/molの分子量を有するオリゴマーと定義される。
【0028】
極低分子量オリゴマーは、200~1000g/molの分子量を有するオリゴマーと定義される。
【0029】
本発明によるプロセスでは、ポリエステルポリマー製品は、1~100%のポリエステルの割合を有するすべての化合物と理解される。
【0030】
本発明によるプロセスでは、ポリアミドポリマー製品は、1~100%のポリアミドの割合を有するすべての化合物と理解される。
【0031】
本発明によるプロセスでは、ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ(ブチレンアジペート-テレフタレート)(PBAT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、不飽和ポリエステル(UPE)、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)などの化学カテゴリに属するすべてのポリマーを意味する。
【0032】
本発明による方法では、ポリアミドは、ポリアミド6(ナイロン6)、ポリアミド11(ナイロン11)、ポリアミド12(ナイロン12)、ポリアミド66(ナイロン66)、ポリアミド610(ナイロン610)、ポリアミド66/610(ナイロン66/610)、ポリアミド6/12(ナイロン6/12)、ポリアミド666(ナイロン666または6/66)、ポリアミド6/69(ナイロン6/69)、ナイロン1010、ナイロン1012、ポリアリールアミド、ポリアラミド(Kevlar(登録商標))、ポリフタルアミド、ポリアミドアミンなどの化学カテゴリに属するすべてのポリマーを意味する。
【0033】
本発明による方法では、ポリエチレンテレフタレートボトルのフレーク、すなわち、PETボトルの細断/粉砕物が、好ましくは、ポリマー廃棄物として採用される。
【0034】
出発物質として使用される他の廃棄物は、食品トレー、フィルムなどの、ポリエステルの包装用容器である。
【0035】
出発物質として使用される他の廃棄物は、自動車部品、チューブ、容器、包装、工業材料などの、ポリアミドプラスチック製品である。
【0036】
出発物質として使用される他の廃棄物は、靴、衣類、カバー、コードなどの細断ポリエステル繊維、およびナイロン6、ナイロン6,6、Kevlarなどのポリアミド繊維である。
【0037】
本発明の目的では、安定剤は、加工中のポリマーの分解を防止するのに通常使用される、ポリ置換フェノール、ホスファイトなどの抗酸化剤化合物である。
【0038】
本発明の目的では、パフォーマーは、ポリマーのレオロジー特性および機械的特性を変更することができる化合物である。
【0039】
本発明によるプロセスでは、ステップa)で、環化解重合が、溶媒を同時に蒸留することによって行われる。それにより、溶媒に加えて、PETの特定の場合ではエチレングリコールおよび水を含む、低沸点副生成物も除去される。
【0040】
非プロトン性極性溶媒は、好ましくは、ジアリールエーテル、モノ/ジ/トリ-C1~C3-アルコキ-シベンゼン、アリール-C1~C3-アルキレンオキシ-C1~C5-アルカン、ジ-(アリール-C1~C3-アルキレン)-エーテル、アリール-C1~C3-アルキレン-オキソ-ベンゼン、C4~C6シクロアルキル-ケトンから選択され、ここで、アリールは、フェニル、または1つ以上の線状もしくは分岐C1~C3アルキル残基で置換されたフェニルである。
【0041】
より好ましくは、溶媒は、ジフェニルエーテル、1,3-ジメトキシベンゼン、ベンジルメチルエーテル、ベンジルブチルエーテル、ジベンジルエーテル、シクロヘキサノン、ベンゾフェノン、より好ましくはジフェニルエーテルから選択される。
【0042】
無極性溶媒は、好ましくはC5~C8線状炭化水素であり、より好ましくはn-ヘキサンである。
【0043】
本発明によるプロセスのステップa)は、好ましくは100~1000mbar、より好ましくは200~500mbarの圧力で、より好ましくは不活性ガスの存在下で、さらにより好ましくは窒素下で、行われる。
【0044】
触媒は、環状オクタン酸スズ、ジブチルスズオキシド、2-エチルヘキサン酸スズから選択され、より好ましくは2-エチルヘキサン酸スズである。触媒の濃度は、好ましくは、ポリマー製品の0.001~0.5%重量/重量である。
【0045】
ステップa)の溶媒中のポリマーの濃度は、好ましくは10~800g/l、より好ましくは50g/l~400g/lである。
【0046】
特にポリマー廃棄物がPETボトルフレークまたはポリエステル繊維である場合、ステップa)は、溶媒としてジフェニルエーテルを使用することによって、好ましくは100~240℃の反応温度で、100~1000mbarの圧力で、好ましくは不活性ガス中、より好ましくは窒素中で、1~5時間の時間にわたって行われる。
【0047】
特に好ましい解決法によれば、出発ポリマー材料が着色ポリエチレンテレフタレートボトルフレークからなる場合、ステップa)の溶媒は、ジフェニルエーテルであり、ステップa)は、200~224℃の温度で、200~600mbarの圧力で、2~4時間の時間にわたって行われる。
【0048】
プロセスのステップa)は、解重合である。この処理は、化学分解およびバックバイティング(または環化解重合)反応による、ポリマーの分子量の減少を引き起こす。文献ですでに知られている(かつ実験的に検証されている)ように、溶媒の蒸発のない通常の環化解重合は、PET濃度が増加するにつれて、環状オリゴマーの生成の漸進的減少を伴う。この挙動は、
図4(左のグラフ)に示され、バックバイティング反応はPET濃度の増加で不利になるという事実の結果である。非常に高希釈では、そのような解重合は、事実上完全であり、ほとんど排他的に環状オリゴマーを形成する。
【0049】
同じ反応が、同時蒸留とともに行われる場合(
図4、右のグラフ)、複数の利点が得られる:
1)廃棄ポリマーに元々存在する揮発性混入物だけでなく、(機械的劣化、混入物の吸収、香味料など)その寿命中のポリマーの使用に関連する任意の揮発性不純物の排除。
2)蒸留によってエチレングリコールおよび水などの前述の反応の副生成物を排除して、環状オリゴマーへの変換を増加させることができる。これは、副生成物の排除がエンドバイティング反応を支持するため生じる。例えば、100g/lのポリマー濃度(黄色の線)で作用させると、環状オリゴマー含有量は、環化解重合単独の場合の約20%から、蒸留により支援された環化解重合DA-CDPの場合の約40%になる。
3)同じ時間では、副生成物の排除は、第2の利点をもたらし:反応副生成物を除去することによって、解重合されていないポリマーの分子量を、ボトルグレードに必要な値をさらに超えて増加させる重縮合反応が支持される。
【0050】
言い換えれば、環化解重合の古典的なプロセスは、高希釈によって支持される環状オリゴマーの形成を伴うポリマーの解重合を含む。同じ動作条件下では、蒸留の併用は、(i)環状オリゴマーの収率の増加、(ii)残留ポリマーの分子量の増加、および(iii)揮発性汚染物質の排除をもたらす。
【0051】
本発明のプロセスのステップb)は、ステップa)の生成物を精製するためのいくつかの解決法を含む。第1の可能性b1)は、ポリマーおよびオリゴマーの分離を可能にし、好ましくは4つの段階を連続して含むが、後者は任意選択である。第2の可能な経路b2)は、クロスフロー多段洗浄での直接精製システムを含む。第3の可能な選択肢b3)は、好ましくは連続洗浄および抽出プロセスによる向流多段洗浄での直接精製プロセスを含む。考えられる異なる選択肢をまとめた例示的な図は、
図5に示される。
【0052】
可能な精製システムb1)は、「高温-低温分離および精製システム」と呼ばれる。これは、収集された画分の選択的沈殿および洗浄で動作することによる、高、中、低、および極低分子量化合物の選択的分離を含む。
【0053】
第1の(ステップb1.1)は、好ましくは、溶媒沸点での、ステップa)からの反応混合物の濾過、遠心分離、またはデカンテーションによって、不溶性不純物を排除するステップを含む。これらの不溶性不純物は異なり、例えば、無機フィラー(製品の調製中にポリマーの加工を容易にするために加えられる添加剤)、金属(典型的には、ポリマーの合成中に加えられる触媒)、および反応溶媒中の他の不溶性プラスチック(フレークの不完全な分離による異なるポリマーの残留物)である。
【0054】
後続のステップb1.2)は、高分子量ポリマー画分(解重合されていない)が沈殿し、それが濾過によって回収される温度への、反応混合物の冷却プロセスを含み、PETの場合、この温度は、140~180℃、好ましくは140~160℃である。
【0055】
ポリマーの除去後、後続のステップb1.3)は、透過液がおよそ室温へのさらなる冷却を受けるシステムを含む。低および中分子量環状オリゴマーは、この温度で沈殿し、それらはなお濾過によって回収される。
【0056】
最後に、本発明の方法は、ステップb1.3)からの濾過された溶液に炭化水素溶媒、好ましくはn-ヘキサンが加えられて、より低分子量のオリゴマーの沈殿を可能にする、ステップb1.4)を含み得る。
【0057】
廃棄物がポリエチレンテレフタレートフレークであり、ステップa)の溶媒がジフェニルエーテルである場合、ステップb1.2)の冷却温度は、140~160℃であり、生成物がステップb1.2)で洗浄される温度は、90~120℃である。
【0058】
任意の色素は溶液中に残るため、沸点(高温)で回収される未反応ポリマーから本質的になる沈殿物、および室温(低温)で沈殿するオリゴマーの両方は、白色粉末に見える。わずかな色は、廃棄ポリマーの元の色素を含有する溶媒の残留物に関連する。沈殿が、室温へ直接冷却することによって行われる場合、PETおよび環状オリゴマーからなる固体粉末が得られるが、それは、すべての不揮発性不純物および色素を保持する。そのような生成物を、溶媒除去前に未精製と示す。
【0059】
可能な精製システムb2)は、「クロスフロー洗浄での直接分離および精製システム」と呼ばれる。このプロセスは、クロスフロー精製で動作することによって、ポリマー-オリゴマー混合物を直接得ることを可能にする。第1の(ステップb2.1)は、好ましくは、溶媒沸点での、ステップa)からの反応混合物の濾過、遠心分離、またはデカンテーションによって、不溶性不純物を排除するステップを含む。これらの不溶性不純物は異なり、例えば、無機フィラー(製品の調製中にポリマーの加工を容易にするために加えられる添加剤)、金属(典型的には、ポリマーの合成中に加えられる触媒)、および反応溶媒中の他の不溶性プラスチック(フレークの不完全な分離による異なるポリマーの残留物)である。
【0060】
次のステップb2.2)は、反応混合物をおよそ室温へ冷却し、低および中分子量環状オリゴマーとともに高分子量の(解重合されていない)ポリマー画分を沈殿させるプロセスを含む。結晶化後、ステップb2.2)からの固形物は、次いで、クロスフロー多段プロセスで洗浄および精製される。後者のステップでは、ステップa)からの混入物の豊富な溶媒が最初に除去され、得られる残留固体生成物が、純溶媒で洗浄される。連続洗浄が、ステップa)で使用されたものと同じ溶媒または/および異なる溶媒で行われ得る。複数の洗浄プロセスが、例えば洗浄プロセスに沿って上昇または低下する可変洗浄溶媒温度で行われ得る。典型的に使用される温度は、周囲温度~使用される洗浄溶媒の沸点の範囲をカバーする。このプロセスは、精製および洗浄プロセスにおけるより高い柔軟性を可能にする。
【0061】
可能な精製システムb3)は、「向流洗浄での直接分離および精製システム」と呼ばれる。このプロセスは、向流精製で動作することによって、ポリマー-オリゴマー混合物を直接得ることを可能にする。第1の(ステップb3.1)は、好ましくは、溶媒沸点での、ステップa)からの反応混合物の濾過、遠心分離、またはデカンテーションによって、不溶性不純物を排除するステップを含む。これらの不溶性不純物は異なり、例えば、無機フィラー(製品の調製中にポリマーの加工を容易にするために加えられる添加剤)、金属(典型的には、ポリマーの合成中に加えられる触媒)、および反応溶媒中の他の不溶性プラスチック(フレークの不完全な分離による異なるポリマーの残留物)である。
【0062】
次のステップb3.2)は、反応混合物をおよそ室温へ冷却し、低および中分子量環状オリゴマーとともに高分子量の(解重合されていない)ポリマー画分を沈殿させるプロセスを含む。結晶化後、ステップb3.2)からの固形物は、次いで、向流多段プロセスで洗浄および精製される。後者のステップでは、ステップa)からの混入物の豊富な溶媒が最初に除去され、得られる残留固体生成物が、純溶媒で洗浄される。洗浄が、ステップa)で使用されたものと同じ溶媒または/および異なる溶媒で行われ得る。混入物を洗浄および抽出するプロセスが、例えば洗浄プロセスに沿って上昇または低下する可変洗浄溶媒温度で、連続的に行われ得る。典型的に使用される温度は、周囲温度~使用される洗浄溶媒の沸点の範囲をカバーする。このプロセスは、精製および洗浄プロセスにおけるより高い柔軟性、ならびに使用される溶媒の量の大幅な低減を可能にする。
【0063】
重合反応またはプロセスのステップc)は、好ましくは、220~280℃の温度で、窒素流ありで、さらなる触媒を加えずに行われる。
【0064】
反応の進行への出発物質の影響を研究するために、4つの異なる出発物質:すでに記載された2つの高温および低温沈殿物、未精製沈殿物、ならびに未精製生成物のPETおよび環状オリゴマーの含有量を再現するような比率で高温および低温を混合することによって得られたもの(混合)を試験した。後者の材料は、したがって、未精製材料の等価物を表すが、残留溶媒、色素、および他の不純物を含まない。
【0065】
図6は、ここに記載された様々な材料からROPによって得られたポリマーへの変換の関数として測定された数平均分子量データを示す。すべての場合において、特定のボトルグレードを満たすことができるリサイクルポリマーを生成することが可能であった。変換の関数としての平均分子量データ(
図6、右下のグラフ)から予想されるように、高温材料は、重縮合によってほとんど排他的に再重合する一方で、低温材料はROPによって再重合する。混合(高温+低温)と呼ばれる混合物が試薬として使用される場合、両方の重合反応が存在する。未精製材料は、おそらく、その蒸発が第1のステップにおいて反応温度を制限する溶媒の存在による、短い初期誘導期(
図6、変換-時間グラフ)を有するが、その後に高速の速度論が続く。分子量の増加も非常に速いが、続いて純粋に急速に悪化し、これは確実に残留混入物の存在によるものである。
【0066】
これらの結果に基づいて、最も有望な材料は、PETと環状オリゴマーとの精製された混合物(混合)として沈殿することが決定された。次いで、そのような材料がまた、溶媒に可溶な色素および他の不純物または添加剤を溶液中に維持しながら、ポリマーおよびオリゴマーの良好な回収を確実にするような温度での、直接沈殿によって入手可能であることが検証された。この場合、廃棄物がPETフレークまたは繊維であるならば、好ましい温度は、25~30℃である。最後に、不純物を排除するために、好ましくは90~120℃の温度の熱溶媒で、沈殿物をすすぐことが好ましい。
【0067】
本発明によれば、再重合のステップc)は、ステップb)のその可能な変形における生成物のいずれかを使用して行われ得る:
・ステップb1.2)からの高分子量ポリマー、
・ステップb1.3)からの低/中分子量オリゴマー、
・ステップb1.4)からのより低分子量のオリゴマー、
・精製方法b2)からのポリマー-オリゴマー混合物、
・精製方法b3)からのポリマー-オリゴマー混合物。
【0068】
あるいは、本発明のプロセスのステップc)は、上記リストに詳述された生成物の混合物から出発して行われ得る。
【0069】
最後に、ステップc)で、色素、安定剤、および添加剤(パフォーマー)が、未使用ポリマーと同じ適用性を有する最終ポリマーを得ることを可能にするために、好ましくは加えられる。
【0070】
添加剤を含まない本発明による方法によって得られたポリエステルと、未使用ポリマーとの間の物理化学的等価性は、2つの材料の透過率値が等しいことによって確認される。
【0071】
出願人は、例えばPETボトルへの、ポリマーの通常使用に関連する食品混入物も、本発明の方法によって除去することができることをさらに見出した。これは、ポリマーの沈殿が行われた後に、続いて沈殿物をジフェニルエーテルなどの溶媒で洗浄するプロセスにおいて達成される。
【0072】
これを検証するために、チャレンジテスト、すなわち、既知量の汚染化合物(サロゲート)の導入、および人間の健康へのリスクを示さない残留濃度値までのその後の除去の追跡を要求する、規則(EC)no.282/2008に従った。
【0073】
試験のために、2つの場合:低濃度の混入物の場合および高濃度の混入物の場合を研究することが選ばれた。PET中の食品香味料の吸収をシミュレートするために、フレークを、リモネンおよびメタノールの2.5%溶液中に、50℃で12~72時間放置して染み込ませた。安定剤は、代わりに、一方の場合では0.15%、および他方の場合では0.5%、反応環境中に直接挿入された。留出物についての分析の結果は、反応の5時間後に、EGおよび水だけでなく少量の揮発性添加剤のメタノール(沸点209℃)がどのように排除されたかの検証を可能にし、その除去は、低混入物の場合81%と推定された。
【0074】
香味料および安定剤の特性ピークの重なりを考慮すると、除去効率は、以下の3つのパラメータ:PET/不純物比、PETの純度、および残留溶媒/PET比を規定することによって定量された(ジフェニルエーテルが、これらの試験の溶媒として使用された)。
【0075】
好ましくは90~120℃の温度の純溶媒で単純にすすぐことによって、濾過されたポリマー中に残る「汚れた」溶媒を、「きれいな」、すなわち不純物(ポリマーの香味料および安定剤)を含まない溶媒で置き換えることができる。それにより、2つの場合で84および97%の不純物の全体的な除去が推定された。さらに、2つのプロセスステップa)(DA-CDP)およびb)(濾過)におけるメタノールの合計除去は、95~99.5%の値に達する。
【0076】
最後に、残留溶媒によって構成される不純物が、重合またはステップc)中に排除される。実際、窒素流下の反応の10分後に、溶媒の99.99%が除去され、真空下でさらに20分後に、微量の残留溶媒は、特徴づけに使用されたNMR 300 Mhzの感度の閾値より低い値に達したことが見られた。したがって、最終溶媒濃度は、最先端の感度より低く、10ppmと推定されると述べることができる。
【0077】
特に、ステップb)で、副生成物の高温沈殿後に、直接低温濾過が行われ、続いて純溶媒での洗浄が行われる場合、重合のステップc)で、99.5%までの半揮発性化合物の除去、97%までの重化合物の除去、および99.9%超の溶媒の除去も得られる。
【0078】
本発明のさらなる目的は、ステップa)~c)の少なくとも1つが連続的に行われる、本発明のプロセスである。
【0079】
本発明のさらなる目的は、ステップa)~c)の少なくとも2つが連続的に行われる、本発明のプロセスである。
【0080】
本発明のさらなる主題は、すべてのステップa)~c)が連続的に行われる、本発明のプロセスである。
【0081】
本発明の連続プロセスの1つの好ましい実施形態が、
図7のブロック図に示される。
【0082】
分離プロセスを通過した後に、プラスチック廃棄物は、触媒と予混合された溶媒とともに、DACDPと呼ばれる第1の連続動作反応器に導入される。この反応器は、環化解重合反応が蒸留とともに生じる連続動作システムからなる。反応器の種類は、例えば、揮発性成分および溶媒の効果的な除去を確実にするように設計された、パドルミキサ反応器、リボンミキサ反応器などから選ばれる反応器のような、連続撹拌槽反応器(CSTR)型のものであり得る。
【0083】
20分~2時間の滞留時間後、未反応ポリマーとその溶媒可溶化オリゴマーからなる、反応器の底で得られる生成物は、膜濾過、浸透、プレスフィルタ、フィルタプレスなどの連続および/または半連続濾過システムに圧送されて、不揮発性混入物の豊富な溶媒から固体ストリーム(ポリマ+オリゴマー)を分離する。
【0084】
このようにして収集されたポリマーは、次いで、乾燥システム(例えば、ドラム)からなり得る再重合システムに送られ、続いて、押し出し機、または脱気および脱揮システムを含む押し出し機とともに動作する乾燥-再重合複合システム中で、直接再重合を受ける。
【0085】
すべての溶媒ストリームは、蒸留、精密濾過、吸着によって作用し得る溶媒再生システムへ運ばれる。それにより、再生溶媒は、記載されたプロセス内で、閉ループで再利用され得る。
【0086】
図8は、
図7で企図された連続プロセスが行われるシステムの好ましい実施形態のレイアウトを示す。
【0087】
この図からわかるように、貯蔵タンク(溶媒貯蔵)から来る溶媒は、一部は反応器に送られ、そこで、DACDP解重合設備に入る前に触媒と混合される。関連タンク(ポリマー貯蔵)からリサイクルされるポリマーも、ライン6を通して反応器に供給される。解重合された生成物は、未反応ポリマーとともにDACDP反応器の底から出て、続いて、冷却後に、固体溶媒分離器に送られる。回収された固体は、フィルタ(洗浄フィルタ)に通され、一部は貯蔵タンク(ライン2および15)から、および一部は溶媒固体分離器で分離された溶媒から来る溶媒で、洗浄される。洗浄を出た固体生成物は、ライン11を通して反応押し出し機に送られ、続いて、リサイクルポリマー貯蔵タンクに送られる。
【0088】
DACP(ライン13)中の蒸留された溶媒ストリーム、溶媒固体分離器(ライン14)を出る溶媒のもの、および洗浄(ライン16)から来るものは、溶媒再生器に送られ、そこから、再生溶媒は、頭部から出てライン18を通して貯蔵タンクに送られる一方で、すべての廃棄物および不純物は、ライン19を通して廃棄物タンクに運ばれる。
【0089】
不連続に行われる本発明のプロセスのいくつかの例を、本発明によるプロセスを限定するのではなく例示を目的として以下に示す。
【0090】
I)実施例に記載される反応および関連する分析に使用される材料:
Swiss Alpinaボトル、CocaCola(登録商標)ボトル、Sprite(登録商標)ボトル、Fant(登録商標)ボトル、Valser(登録商標)ボトル、Rivella Fresh(登録商標)ボトル、2-イソプロプル-5-メチルシクロヘキサノール(メントール、Merck、98%)、p-メンタ-1,8-ジエン(リモネン、Merck、98%)、Irganox(登録商標)B 561 FF(BASF)、Irgafos(登録商標)126(BASF)、ジブチルスズオキシド(Bu2SnO、Merck、98%)、無水エチレングリコール(EG、Sigma Aldrich、99.8%)、ジフェニルエーテル(DPhE、Aldrich、Reagent Plus(登録商標)、99%)、トリフルオロ酢酸(TFA、Fluorochem、99%)およびトリフルオロ酢酸カリウム(K-TFAc、Aldrich、98%)、ジクロロメタン(DCM、Fisher、99.99%)、ヘキサフルオロイソプロパノ-ル(HIP、Fluorochem、99.9%)。クロロホルム-d(CDCl3、Armar Chemicals、99.8%)およびトリフルオロ酢酸-d(TFA-d、Cambridge Isotope Laboratories、99.5%)を、3:1の比率で混合した。開始剤およびジブチルスズオキシドを、窒素雰囲気のグローブボックス中で貯蔵した。本発明のプロセスで得られたリサイクルPET(r-PET)をボトルグレードPETと比較するために、後者の試料を、PETボトルから取得した。
【0091】
分子量分析方法の正確度を推定するために、PETおよびPMMA標準物質を、PSS(Polymer Standards Service、ドイツ)から得た。
【0092】
II)分析
1H NMR(300 MHz)スペクトルを、Bruker Avance III分光計で記録した。NMRスペクトルを、残留溶媒のものと比較した。PET試料の変換値ならびに重量および数平均分子量MnおよびMwを、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定した。313nmで動作するAgilent 1100 VWD/UV検出器、DAWN HELEOS II多角度レーザー、続いてOptilab TrEX RI屈折率検出器(両方ともWyatt Technology Europe)に接続された、PFG M(PSS)リニアカラムを備えるAgilent 1100 GPC/SECユニットが、この目的のために使用された。試料を、0.03M K-TFAcをスパイクしたHFIPで、1mL/分で、室温で溶離した。変換を、WinGPC Unichrom PSSソフトウェアを用いて、全UV信号領域に対するPETの割合として測定した。絶対分子量を、Wyatt ASTRAソフトウェアを用いて測定した(dn/dc(PET)=0.249mL/g)。NMR測定を、純TFA-d、または体積比1:3のTFA-d/CDCl3に溶解した0.4mg/mLの濃度のPET試料を使用して行った。
【0093】
実施例1.蒸留により支援されたPETボトルの部分的(環化)解重合
マグネチックスターラを備えるか、または代わりに口の1つを通してメカニカルスターラを取り付けた四口フラスコを使用し、加熱マントルによって加熱した。第1の口を使用して、反応温度を測定した。第2の側方の口を使用して、反応中に、スパチュラを用いて反応試料を取得した。次いで、これらの試料を、120℃のオーブンで乾燥させた。中央の口に、頭部に凝縮器が付いた状態でビグリューカラムが装着され、そこにフラスコが接続されて蒸気を収集した。後者を、予めオーブンで乾燥させ、凝縮物収集速度、すなわち蒸留速度を測定するのに使用した。収集された留出物の組成を、NMRによって測定した。
【0094】
異なるPETフレーク濃度のジフェニルエーテル溶液(100mLのDPhE中に1、5、10、および20gのPET、それぞれ10、50、100、および200g/lに対応する)を調製した。PETフレークを、対応するボトルから予め得て、約1cmのサイズの正方形フレークに切断し、30分間、130℃のオーブンで、真空で乾燥させた。
【0095】
反応温度を溶媒の沸点に上昇させ、PETの完全な溶解後に、触媒を0.01~0.1%の濃度で加えた。反応を、沸点で、600rpmのマグネチックスターラによる撹拌下、6時間、300~500mbarの圧力で進行させた。この反応時間は、必要なものに対して過剰であり、より複雑な速度論分析が考慮された。
【0096】
反応中、圧力を、真空ポンプによって調節した。反応温度およびビグリューカラム内部の温度の両方を、2つのK型熱電対で測定した。
【0097】
反応の終わりに、反応生成物を、実施例3に報告された操作方法に従って回収した。
【0098】
反応混合物および留出物の両方における各成分のモル分率を、(それぞれCDCl3中およびCDCl3/TFA-d 3:1中で)1H-NMRによって測定した。
【0099】
実施例1-A.PETボトルフレークの従来の環化解重合
磁気加熱プレートに置かれた油浴によって加熱された250mLの三口フラスコを、反応器として使用した。第1の側方の口を、熱電対を用いて反応温度を測定するのに使用した。第2の側方の口を使用して、反応の過程で、スパチュラを用いて反応試料を取り出した。次いで、これらの試料を、120℃のオーブンで乾燥させた。流出路を、中央の口に装着して、蒸気を凝縮させた。
【0100】
異なるPETフレーク濃度のジフェニルエーテル溶液(100mLのDPhE中に1、5、10、および20gのPET、それぞれ10、50、100、および200g/lに対応する)を調製した。PETフレークを、対応するボトルから予め得て、約1cmのサイズの正方形フレークに切断し、30分間、130℃のオーブンで、真空で乾燥させた。反応中、温度を沸騰するまで上昇させ、PETの完全な溶解後に、触媒を0.01~0.1%の濃度で加えた。反応を、600rpmの撹拌下、6時間、沸点で維持した。次いで、反応を、冷却によってクエンチし、最終溶液を濾過した。反応混合物のものなどの留出物組成を、実施例1に記載されたように、(それぞれCDCl3中およびCDCl3/TFA-d 3:1中で)1H-NMRによって測定した。
【0101】
この実施例で得られた結果を報告し、
図5に報告された本発明の方法で得られたものと比較する。これらのグラフの分析から現れる利点は、先に論じられている(10~11ページ、25~33および1~12行目)。
【0102】
実施例2.蒸留により支援されたPETボトルの部分的(環化)解重合による混入物の除去
マグネチックスターラを備えた、250mLの電気的に加熱された三口フラスコを、反応器として使用した。第1の側方の口を使用して、反応温度を測定した。反応混合物の試料を、120℃のオーブンで予め乾燥させたスパチュラを用いて、反応中に第2の側方の口から取得した。ビグリューカラムを、中央の口に装着した。凝縮器を、前述のカラムの頂部に配置して、蒸気を凝縮させ、120℃のオーブンで予め乾燥させたフラスコに凝縮物を収集した。経時的に収集された量を秤量し、留出物の組成をNMRによって評価しながら、蒸留速度を測定した。
【0103】
ジフェニルエーテル溶液を、異なるPETフレーク濃度で調製した。PETフレークを、対応するボトルから予め得て、約1cmのサイズの正方形フレークに切断し、30分間、130℃のオーブンで、真空で乾燥させ、次いで、50℃で、撹拌下で、2.5%m/mメタノールおよび2.5%m/mリモネンの水溶液中に、24~72時間放置して染み込ませた。0.15~0.5%の濃度のIrganox(登録商標)B 561 FFおよびIrgafos(登録商標)126の添加を、フレークの添加と同時に、反応器中に直接行った。温度を沸騰するまで上昇させ、PETの完全な溶解後に、触媒を0.1~0.05%の濃度で加えた。反応混合物を、6時間、300~500mbarで、沸点で、マグネチックスターラを用いて600rpmで撹拌し続けた。圧力を、真空ポンプによって制御した。
【0104】
次いで、反応のスイッチを切った。反応生成物を、実施例3および4に記載された操作方法に従って回収した。ビグリューカラムおよび反応カラム内の温度を、2つのK型熱電対で測定した。留出物の組成および反応混合物の組成を、それぞれCDCl3中およびCDCl3/TFA-d 3:1中で、1H-NMRによって測定した。
【0105】
実施例3.選択的熱沈殿(ステップb1))のための分離方法
支援された環化解重合(DA-CDP)の後に、実施例1および1Aの反応混合物を、溶媒の沸点で濾過して、無機フィラー、金属、および反応溶媒に不溶な任意の他のポリマー残留物などの、不溶性生成物を排除する。次いで、溶液を、150~160℃に冷却する。これらの温度で、高分子量化合物が沈殿し、次いでそれを、ブフナーフィルタによる濾過によって分離する。次いで、濾過した溶液を、25~30℃の温度にさらに冷却する。この温度で、低/中分子量オリゴマーが沈殿し、それを、ブフナーフィルタによる濾過によって回収する。濾過した溶液を、n-ヘキサンで処理して、極低分子量オリゴマーを沈殿させ、それを最終的に濾過によって分離する。
【0106】
実施例4.直接低温沈殿(ステップb2)およびb3))のための分離方法
支援された環化解重合(DA-CDP)の後に、実施例1および1Aの反応混合物を、溶媒の沸点で濾過して、無機フィラー、金属、および反応溶媒に不溶な任意の他のポリマー残留物などの、不溶性生成物を排除する。
【0107】
次いで、溶液を、25~30℃に冷却する。この温度で、高分子量ポリマーおよび低/中分子量オリゴマーの両方が沈殿する。沈殿物を、ブフナーフィルタでの濾過によって分離する。フィルタ上に収集された被保持物を、DPhEで処理して、好ましくは20~120℃の温度で固体を洗浄し、複数回洗浄(上に記載されたステップb)の変形b2)のような)、または向流(上に記載されたステップb)の変形b3)のような)のシステムによって、残留混入物を排除する。
【0108】
混入物含有量の評価を、溶媒として体積比3:1のCDCl3/TFA-dを使用して、NMR分析によって行った。
【0109】
実施例5.生成物の重合および特徴づけ
実施例3および4に記載されたように得られた反応混合物500mgを、5mlのシュレンク管反応器に入れ、同じ混合物1500mgを、10mlのシュレンク管反応器に入れた。両方の反応器を、ヒーターブロックに置き、約30分間真空乾燥させた。反応器をヒーターブロックから取り除き、真空を窒素で置換する。
【0110】
所望の温度(240~280℃)をヒーターブロックで設定し、反応器をヒーターブロックに戻す。
【0111】
試料を、120℃のオーブンで予め乾燥させたスパチュラを用いて、反応中に取得する。所望の時間(10~60分)後に、反応を、シュレンク管を氷水に浸すことによってクエンチする。
【0112】
生成されたポリマー(以下、未使用ポリマーと区別するためにr-PETと呼ぶ)を、純HFIPに溶解し、続いて、THFの添加によって沈殿させる。次いで、生成物を、濾過または遠心分離によって収集する。
【0113】
別の方法論は、反応生成物を純HFIPに溶解し、続いて、排気フードの下で溶媒を夜間蒸発させることを含む。固体を、80℃で真空乾燥させて、白色生成物を得る。固体を、NMRで分析する(1H NMR(300 MHz、25℃、TFAd)(ppm)=7.45(s、2H、-CH-Ar-)、4.88(s、4H、-CH2-CH2-O-)。
【0114】
ガス透過率
rPETのガス透過率を、25℃、50%の相対湿度で、MOCON Ox-Tran装置を使用して、12~90μmの厚さ、5~50cm2の表面積、および10cm3/分のガス流量のポリマーフィルムを使用して評価した。装置の較正を、製造業者によって供給された標準PETで行った。
【0115】
透過率分析のためのフィルムの調製を、約150mg/mLのrPETのHFIP溶液を、通風ストーブ中で60℃に加熱されたガラス板上に注いで、溶媒を蒸発させることによって行った。このステップの後に、フィルムの透過率を測定し、透過率測定の前後両方で厚さ測定も行って、フィルム自体の完全性を検証した。
【0116】
結果は、本開示の16ページ、11~13行目に強調されるように、rPETが非リサイクルPETのものにかなり似た透過率を示すことを実証する。
【0117】
機械的試験
凍結粉砕
rPETを、130℃の真空オーブンで1日乾燥させた。乾燥ポリマーを、液体窒素下で、15Hzで5分を3サイクルにわたって、Freeze/Mill 6770装置で微粉砕した。
【0118】
圧縮成形
圧縮成形ステップを、市販のホットプレス(Rondol Technology Ltd、Stoke-on-trent、UK)を使用して達成した。上に記載されたような凍結粉砕rPET粉末を、正方形の型に入れ、それに、約3kNの力を、粉末を溶融させるのに十分な260℃の温度で前述のホットプレスを用いて、3分間加えた。次いで、冷却を、8℃で動作する水冷システムを備えたコールドプレス下に型をおくことによって得る。次いで、透過率試験に適した0.06~0.08±0.001mmの厚さのrPETフィルムを得る。
【0119】
応力下の挙動
幅1.25mmおよび長さ5mmのダンベル(またはドッグボーン)形の試料を、圧縮成形によって切断した(ISO 527-2、タイプ5B)。一軸応力/ひずみ線図を、0.5秒-1の応力測定から開始して作成した。ヤング率、降伏応力、および破壊強度などの機械的特性の計算値は、少なくとも5回の測定の平均である。すべての機械的試験を、室温(25℃)で行った。すべての図の応力は、公称応力と理解される。すべての試験を、目に見える繊維に対して平行および垂直の両方で行った。
【0120】
これらの試験は、本発明のプロセスによって得られたポリマーが脆く、したがって、ステップc)で、従来の安定剤およびパフォーマーを加えて、最初から調製された同じ種類のポリマーのものに匹敵する破断伸びなどの特性を有するポリマーを得るのを可能にすることが好ましいことを実証する。
【0121】
実施例6.多色ボトルからのPETの回収およびリサイクル
DA-CDPを行うための実験セットは、熱的加熱マントル、250mlフラスコ、ビグリューカラム、リービッヒ冷却器、留出物収集フラスコ、真空ポンプ、および撹拌システム(メカニカルまたはマグネチック)を含む。
【0122】
100mlのDPhEおよび10~40gの予め細断されたボトルを、前述の250mlフラスコに入れる。約218℃の溶媒蒸発温度を確保するために、圧力を約400mbarに設定する。加熱マントルを点け、沸点まで加熱する。この時点で、ポリマーのすべてが、容易に除去することができる粗い不溶性の異物を除いて、完全に溶解する。次いで、0.05%の触媒(酸化アンチモン)を加え、2~4時間の反応を想定して、約3g/時間の蒸留による蒸気除去を維持する。このステップ中、上に記載された反応の副生成物、ならびにその通常の寿命および使用中のポリマーの分解および吸収から生じる揮発性混入物も、溶媒とともに蒸留される。
【0123】
実施例7.ポリエステル繊維からのポリエステル回収およびリサイクル
DA-CDPを行うための実験セットは、熱的加熱マントル、250mlフラスコ、ビグリューカラム、リービッヒ冷却器、留出物収集フラスコ、真空ポンプ、および撹拌システム(メカニカルまたはマグネチック)を含む。10~40gの推定ポリエステル含有量を有する、100mlの予め細断された繊維のDPhE溶液を、前述の250mlフラスコに入れる。約218℃の溶媒蒸発温度を確保するために、圧力を約400mbarに設定する。加熱マントルを点け、沸点まで加熱する。この時点で、すべてのポリマーが、容易に除去することができる粗い不溶性の異物を除いて、完全に溶解する。綿繊維、エラステインなどが次いで除去されるのは、このステップにおいてであり、次いで、0.05%の触媒(例えば、酸化アンチモン)を加え、約3g/時間の蒸留流量を維持しながら、2~4時間の反応を想定する。このステップ中、上に記載された反応の副生成物、ならびにその通常の寿命および使用中のポリマーの分解および吸収から生じる揮発性混入物も、溶媒とともに蒸留される。
【0124】
実施例8.高温-低温濾過
混合物が、実施例6および7に示された時間反応した後、反応混合物を、沸点での濾過後にビーカーに移して、異物を除去する。次いで、溶液を約140℃に冷却し、その温度で、ポリマーの最も重い沈殿が生じ、次いで分離される。次いで、残りの溶液を、室温にさらに冷却し、その結果、様々なより低分子量のオリゴマーが沈殿する。次いで、50mlの純溶媒による、得られた固体化合物の洗浄が続く。次いで、高温および低温沈殿からの固体をプールして、再重合される準備ができた環状オリゴマー-ポリマーブレンドを得る。
【0125】
実施例9.低温直接濾過
混合物が、実施例6および7に示された時間反応した後、ポリマーを、高温濾過後にビーカーに移して、異物を除去する。次いで、溶液を、高分子量ポリマーおよびオリゴマーの両方が完全に沈殿するまで室温に冷却する。これに続いて、約100℃に予熱した100mlの純溶媒で、得られた固体化合物を洗浄して、色素の除去の有効性を最大化する。このようにして漂白された、溶媒に可溶な色素および重い混入物を含まない固体は、再重合される準備ができた環状オリゴマー-ポリマー混合物を構成する。
【0126】
実施例10.再重合
環状ポリマー-オリゴマー混合物を、メカニカルスターラによる撹拌下で、シュレンク管反応器またはフラスコに入れる。真空下で残留溶媒を除去するように動作させて、システムを、240~280℃の温度にし、その温度で、再重合反応が生じる。この方法ステップ中、重縮合および開環重合(ROP)反応の両方が、同時に生じる。10分で、ボトルグレードに達し、20~30分で、ポリマーの分子量の最大成長に達する。
【0127】
高い温度を考慮すると、この時間の後に、ポリマーの熱分解の通常の現象が始まる。そのような現象を軽減するためには、従来の市販の抗酸化剤を加えるので十分である。そのような添加は、反応が、短時間だが市場のニーズを満たす準備ができたポリマーを生成するのになお十分な時間で停止されるなら、必要ではない場合がある。
【0128】
高い反応速度を考慮すると、再重合は、環状ポリマー-オリゴマー混合物を、260℃の温度および10~15分の滞留時間で動作する市販の押し出し機に直接供給することによって、予想され得る。
【国際調査報告】