(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】高温断熱性複合材及びその物品
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240621BHJP
C08L 27/18 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L27/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576096
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(85)【翻訳文提出日】2024-01-23
(86)【国際出願番号】 US2022071603
(87)【国際公開番号】W WO2022261579
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】スコット フィラリー
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ヘンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー クノップフ
(72)【発明者】
【氏名】エドワード ルービン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BD151
4J002BN002
4J002CP033
4J002DA017
4J002DA036
4J002DE096
4J002DE116
4J002DE136
4J002DE146
4J002DJ007
4J002DJ016
4J002DK007
4J002DL007
4J002FA047
4J002FD206
4J002GQ00
(57)【要約】
高温断熱性複合材、及び高温断熱性複合材から形成された物品について本明細書において説明する。高温断熱性複合材は形状追従性があり、発塵が少なく、大気条件で25wM/mKの熱伝導率を提供するだけでなく、高温断熱性複合材内のフィブリル化ポリマーマトリックスが部分的又は完全に揮発するのに十分な温度にさらされたときに、熱伝播バリアとしても機能する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
50wt%以下のフィブリル化ポリマーマトリックス、
40wt%を超えるエアロゲル粒子、及び、
合計が10wt%を超える、1つ以上の不透明剤、1つ以上の強化繊維、1つ以上の膨張性マイクロスフェア及びそれらの任意の組み合わせから選ばれる追加の粒子成分、
を含む、高温断熱性複合材であって、
質量パーセントは最終的な高温断熱性複合材の総質量に基づいており、
前記エアロゲル粒子及び前記追加の粒子成分は、フィブリル化ポリマーマトリックス内に耐久的に絡み合わされている、高温断熱性複合材。
【請求項2】
5mm以下の厚さ又はチューブ壁厚を有するチューブ、テープ又はシートの形態である、請求項1記載の断熱性複合材。
【請求項3】
前記フィブリル化ポリマーマトリックスは、ポリオレフィン、超高分子量ポリエチレン、フルオロポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、延伸ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1又は請求項2記載の断熱性複合材。
【請求項4】
前記ポリマーは、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、膨張超高分子量ポリエチレン(ePE)又はそれらの組み合わせである、請求項1~3のいずれか1項記載の断熱性複合材。
【請求項5】
前記追加の粒子成分の合計は10%未満の1つ以上の不透明剤を含む、請求項1~4のいずれか1項記載の断熱性複合材。
【請求項6】
前記追加の成分は、少なくとも2wt%の1つ以上の強化繊維を含む、請求項1~5のいずれか1項記載の断熱性複合材。
【請求項7】
前記追加の粒子成分は、最大で30wt%の膨張性マイクロスフェアを含む、請求項1~6のいずれか1項記載の断熱性複合材。
【請求項8】
前記不透明剤は、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、酸化鉄、炭化ケイ素、ケイ化モリブデン、酸化マンガン、アルキル基が1~7個の炭素原子を含むポリジアルキルシロキサン又はそれらの任意の組み合わせから選ばれる、請求項1~7のいずれか1項記載の断熱性複合材。
【請求項9】
前記1つ以上の強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、アルミノホウケイ酸繊維又はそれらの組み合わせを含む、請求項1~8のいずれか1項記載の断熱性複合材。
【請求項10】
50wt%未満のフィブリル化ポリマーマトリックス、
80wt%未満のエアロゲル粒子、
10wt%を超える少なくとも1つの不透明剤、
最大で25wt%の強化繊維、及び、
20wt%未満の膨張性マイクロスフェア、
を含む、高温断熱性複合材であって、
質量パーセントは、最終状態の高温断熱性複合材物品の総質量に基づいており、
前記エアロゲル粒子及び前記追加の粒子成分は、フィブリル化ポリマーマトリックス内に耐久的に絡み合わされている、高温断熱性複合材。
【請求項11】
5mm以下の厚さ又はチューブ壁厚を有するチューブ、テープ又はシートの形態である、請求項10記載の断熱性複合材。
【請求項12】
前記フィブリル化ポリマーマトリックスは、ポリオレフィン、超高分子量ポリエチレン、フルオロポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、延伸ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項10又は請求項11記載の断熱性複合材。
【請求項13】
前記ポリマーは、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、膨張超高分子量ポリエチレン(ePE)又はそれらの組み合わせである、請求項10~12のいずれか1項記載の断熱性複合材。
【請求項14】
前記追加の成分は、少なくとも2wt%の1つ以上の強化繊維を含む、請求項10~13のいずれか1項記載の断熱性複合材。
【請求項15】
前記追加の粒子成分は、最大で30wt%の膨張性マイクロスフェアを含む、請求項10~14のいずれか1項記載の断熱性複合材。
【請求項16】
前記不透明剤は、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、酸化鉄、炭化ケイ素、ケイ化モリブデン、酸化マンガン、アルキル基が1~4個の炭素原子を含むポリジアルキルシロキサン又はそれらの任意の組み合わせから選ばれる、請求項10~15のいずれか1項記載の断熱性複合材。
【請求項17】
前記1つ以上の強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、アルミノホウケイ酸繊維又はそれらの組み合わせを含む、請求項10~16のいずれか1項記載の断熱性複合材。
【請求項18】
請求項1記載の高温断熱性複合材を含む物品。
【請求項19】
請求項10記載の高温断熱性複合材を含む物品。
【請求項20】
リチウムイオン電池内の熱伝播を防止するための、請求項1~9のいずれか1項記載の高温断熱性複合材の使用。
【請求項21】
リチウムイオン電池内の熱伝播を防止するための、請求項10~17のいずれか1項記載の高温断熱性複合材の使用。
【請求項22】
第一の温度を備えた高温事象を生成することができる第一の構成要素、
前記第一の温度への暴露から保護される第二の構成要素、及び、
第一の要素と第二の要素との間に位置する高温断熱性複合材であって、前記第一の構成要素に向かう第一の側及び前記第二の構成要素に向かう反対側を有する高温断熱性複合材、
を含む、物品であって、
前記高温断熱性複合材は、
約40wt%以上のエアロゲル粒子、
約60wt%以下のフィブリル化ポリマーマトリックス、及び、
1wt%~45wt%の、1つ以上の不透明剤、1つ以上の強化繊維、1つ以上の膨張性マイクロスフェア及びそれらの任意の組み合わせから選ばれる1つ以上の追加の粒子成分、
を含み、質量パーセントは、最終状態の高温断熱性複合材の総質量パーセントに基づいており、
前記エアロゲル粒子及び前記追加の粒子成分は、前記フィブリル化ポリマーマトリックス内に耐久的に絡み合わされている、物品。
【請求項23】
第一の側及び第二の側を有する高温断熱性複合材の厚さ約1mmのシートを提供すること、
前記高温断熱性複合材のシートの前記第一の側を、質量約905g、接触表面積約106.4cm
2(14cmx7.6cm)、約42.3kPaの圧力で約800℃の温度を有する加熱されたステンレスブロックに30分間圧縮接触させること、及び、
圧縮接触工程において30分間、前記第二の側で温度を測定すること、
を含む、熱伝播試験アッセイであって、
適切な熱伝播バリアは、215℃未満の最大測定温度によって規定される、熱伝播試験アッセイ。
【請求項24】
第一の層及び第二の層を含む、多層高温断熱性複合材であって、
前記第一の層及び第二の層は、それぞれ、
合計wt%が100wt%に等しくなるようにして、
約40wt%以上のエアロゲル粒子、
約60wt%以下のフィブリル化ポリマーマトリックス、及び、
1wt%~45wt%の、1つ以上の不透明剤、1つ以上の強化繊維、1つ以上の膨張性マイクロスフェア及びそれらの任意の組み合わせから選ばれる1つ以上の追加の粒子成分、
を含み、
前記1つ以上の追加の粒子成分は、前記第一の層の第一の厚さにわたって、化学組成、粒子サイズ及び粒子サイズ分布のうちの1つ以上が変化し、そして、
前記1つ以上の追加の粒子成分は、前記第二の層の第二の厚さにわたって、化学組成、粒子サイズ及び粒子サイズ分布のうちの1つ以上が変化する、多層高温断熱性複合材。
【請求項25】
第三の層を含み、前記第三の層は、第三の層の厚さにわたって、化学組成、粒子サイズ及び粒子サイズ分布のうちの1つ以上が変化する1つ以上の追加の粒子成分を含む、請求項24記載の複合材。
【請求項26】
前記1つ以上の追加の成分は不透明剤であり、前記第一の層はその中に第一の粒子サイズ分布を有する不透明剤を含み、前記第二の層はその中に第二の粒子サイズ分布を有する不透明剤を含み、前記第三の層はその中に第三の粒子サイズ分布を有する不透明剤を含む、請求項25記載の複合材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本開示は、概して、高温断熱材料及びその物品に関し、より具体的には、高温にさらされたときに断熱特性及び熱バリア特性を維持することができる高温断熱性複合材及びその物品に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
高温断熱材料は、しばしば、電子デバイス内にある敏感な構成要素を保護したり、又は、ユーザに不快な熱を発する熱源からユーザを保護したりするために、電子デバイスに組み込まれる。電池セルパックなどの特定の用途は、リチウムイオン電池の熱暴走事象などの非常に高い温度に耐えることができる高温断熱性複合材としても機能することができる高温断熱材料を使用することで利益が得られることがある。しかしながら、多くの従来の断熱材料は、取り扱いが難しく、意図した用途に適した所望の形状又は厚さに成形することが困難であり、及び/又は過剰な発塵に悩まされる可能性がある。
【0003】
様々な保護物品には、薄く、強く、形状に追従し、圧縮可能で、断熱特性(例えば、意図した用途に十分な熱伝導性)を備えた断熱材料が必要である。しかしながら、幾つかの断熱材料は、デバイス内の構成要素が誤動作し、有害事象(例えば、熱暴走事象)を引き起こすのに十分な量のエネルギーを放出するときなど、高温事象が発生する可能性がある用途又はデバイスで使用される。結果として生じる温度上昇により、デバイスの内部又は外部の他の構成要素が損傷する可能性がある。幾つかの実施形態において、高温事象は、第二の構成要素を損傷するのに十分であり、第二の構成要素への損傷は、第二の高温事象(例えば、高エネルギー電池(例えば、リチウムイオン電池)内の隣接するセル)を引き起こす可能性がある。
【0004】
リスティック・レーマン(Ristic-Lehmann)らの米国特許第7,118,801号明細書は、衣服、容器、パイプ、電子デバイスなどの断熱用途に有用な形状追従性断熱材料を教示している。リスティック・レーマンの形状追従性材料は、少なくとも40wt%のエアロゲル粒子と60wt%以下のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子を、大気条件(298.15K及び1013kPa)で熱伝導率が25ミリワット/メートルケルビン(mW/mK))以下であるパテ又は粉末の形で含む。形状追従性材料は、最大10wt%の、不透明剤、ダイ、繊維、ポリマーなどの追加の成分(複合材の総質量に基づく合計量)を含むことができる。しかしながら、リスティック・レーマンらは、高温用途で使用するための熱伝播バリアとしても機能する断熱性複合材を教示していない。
【0005】
ダーシー(D’Arcy)らの米国特許公開第2017/0203552A1号明細書は、少なくとも20wt%のポリマーマトリックス(複合材料の総質量に基づく)、少なくとも30wt%のエアロゲル粒子及び0.5~15wt%の膨張マイクロスフェアを含む断熱材を記載している。断熱材の熱伝導率は、大気条件で40mW/mK未満である。ダーシーらは、高温用途で使用するための熱伝播バリアとしても機能することができる断熱性複合材を教示していない。
【0006】
したがって、高温用途での使用に適しており、薄く、形状追従性があり、断熱性があり、高温にさらされたときに高温断熱性複合材として機能することができる高温断熱性複合材の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0007】
要旨
1つの態様(「態様1」)において、高温断熱性複合材は、50wt%以下のフィブリル化ポリマーマトリックス、40wt%を超えるエアロゲル粒子及び合計で10wt%を超える、1つ以上の不透明剤、1つ以上の強化繊維、1つ以上の膨張性マイクロスフェア及びそれらの任意の組み合わせから選ばれる追加の粒子成分を含む。質量パーセントは、最終的な高温断熱性複合材の総質量に基づく。エアロゲル粒子及び追加の粒子成分は、フィブリル化ポリマーマトリックス内に耐久的に絡み合わされている。
【0008】
態様1に加えて、別の態様(「態様2」)によれば、前記高温断熱性複合材は、5mm以下の厚さ又はチューブ壁厚さを有するチューブ、テープ又はシートの形態である。
【0009】
態様1又は態様2に加えて、別の態様(「態様3」)によれば、前記フィブリル化ポリマーマトリックスは、ポリオレフィン、超高分子量ポリエチレン、フルオロポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、延伸ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリエステル、 ポリアミド又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0010】
態様1~3のいずれか1つに加えて、別の態様(「態様4」)によれば、前記ポリマーは、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、膨張(エキスパンデッド、膨張、延伸または発泡)超高分子量ポリエチレン(ePE)又はそれらの組み合わせである。
【0011】
態様1~4のいずれか1つに加えて、別の態様(「態様5」)によれば、追加の粒子成分の合計は10%未満の1つ以上の不透明剤を含む。
【0012】
態様1~5のいずれか1つに加えて、別の態様(「態様6」)によれば、前記追加の成分は少なくとも2wt%の1つ以上の強化繊維を含む。
【0013】
態様1~6のいずれか1つに加えて、別の態様(「態様7」)によれば、前記追加の粒子成分は、最大30wt%の膨張性マイクロスフェアを含む。
【0014】
態様1~7のいずれか1つに加えて、別の態様(「態様8」)によれば、前記不透明剤は、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、酸化鉄、炭化ケイ素、ケイ化モリブデン、酸化マンガン、アルキル基が1~7個の炭素原子を含むポリジアルキルシロキサン又はそれらの任意の組み合わせから選ばれる。
【0015】
態様1~8のいずれか1つに加えて、別の態様(「態様9」)によれば、前記1つ以上の強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、アルミノホウケイ酸繊維又はそれらの組み合わせを含む。
【0016】
別の態様(「態様10」)において、高温断熱性複合材は、50wt%未満のフィブリル化ポリマーマトリックス、80wt%未満のエアロゲル粒子、10wt%を超える少なくとも1つの不透明剤、25wt%以下の強化繊維及び20wt%未満の膨張性マイクロスフェアを含み、質量パーセントは最終状態の高温断熱性複合材物品の総質量に基づいており、前記エアロゲル粒子及び追加の粒子成分は前記フィブリル化ポリマーマトリックス内で耐久的に絡み合わされている。
【0017】
態様10に加えて、別の態様(「態様11」)によれば、前記高温断熱性複合材は、5mm以下の厚さ又はチューブ壁厚を有するチューブ、テープ又はシートの形態である。
【0018】
態様10又は態様11に加えて、別の態様(「態様12」)によれば、前記フィブリル化ポリマーマトリックスは、ポリオレフィン、超高分子量ポリエチレン、フルオロポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、延伸ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0019】
態様10~12のいずれか1つに加えて、別の態様(「態様13」)によれば、前記ポリマーは、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、膨張超高分子量ポリエチレン(ePE)又はそれらの組み合わせである。
【0020】
態様10~13のいずれか1つに加えて、別の態様(「態様14」)によれば、前記追加の成分は少なくとも2wt%の1つ以上の強化繊維を含む。
【0021】
態様10~14のいずれか1つに加えて、別の態様(「態様15」)によれば、前記追加の粒子成分は、最大30wt%の膨張性マイクロスフェアを含む。
【0022】
態様10~15のいずれか1つに加えて、別の態様(「態様16」)によれば、前記不透明剤は、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、酸化鉄、炭化ケイ素、ケイ化モリブデン、酸化マンガン、アルキル基が1~4個の炭素原子を含むポリジアルキルシロキサン又はそれらの任意の組み合わせから選ばれる。
【0023】
態様10~16のいずれか1つに加えて、別の態様(「態様17」)によれば、前記1つ以上の強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、アルミノホウケイ酸繊維又はそれらの組み合わせを含む。
【0024】
別の態様(「態様18」)において、物品は、請求項1記載の高温断熱性複合材を含む。
【0025】
別の態様(「態様19」)において、物品は、請求項10記載の高温断熱性複合材を含む。
【0026】
別の態様(「態様20」)において、請求項1~9のいずれかの高温断熱性複合材は、リチウムイオン電池内の熱伝播を防止するために使用される。
【0027】
別の態様(「態様21」)において、請求項10~16のいずれかの高温断熱性複合材は、リチウムイオン電池内の熱伝播を防止するために使用される。
【0028】
1つの態様(「態様22」)において、物品は、第一の温度を有する高温事象を発生させることができる第一の構成要素と、前記第一の温度への暴露から保護される第二の構成要素と、前記第一の要素と前記第二の要素との間に配置された高温断熱性複合材とを含む。高温断熱性複合材は、前記第一の構成要素に向けられた第一の側と、前記第二の構成要素に向けられた反対側とを有する。高温断熱性複合材は、約40wt%以上のエアロゲル粒子、約60wt%以下のフィブリル化ポリマーマトリックス、及び1wt%~45wt%の、1つ以上の不透明剤、1つ以上の強化繊維、1つ以上の膨張性マイクロスフェア及びそれらの任意の組み合わせから選ばれた1つ以上の追加の粒子成分を含む。質量パーセントは、最終状態の高温断熱性複合材の総質量パーセントに基づいており、前記エアロゲル粒子及び前記追加の粒子成分は前記フィブリル化ポリマーマトリックス内に耐久的に絡み合わされている。
【0029】
1つの態様(「態様23」)において、熱伝播アッセイは、第一の側及び第二の側を有する高温断熱性複合材の厚さ約1mmのシートを提供すること、前記高温断熱性複合材のシートの第一の側を、約905gの質量を有する加熱されたステンレスブロックと、約106.4cm2(14cmx7.6cm)の接触表面積、約800℃の温度、約42.3kPaの圧力で30分間圧縮接触させること、及び、圧縮接触工程において30分間、前記第二の側の温度を測定することを含み、ここで、適切な熱伝播バリアは、215℃未満の最大測定温度によって規定される。
【0030】
1つの態様(「態様24」)において、多層高温断熱性複合材は、第一の層と第二の層とを含む。前記第一の層及び第二の層はそれぞれ、約40wt%以上のエアロゲル粒子、約60wt%以下のフィブリル化ポリマーマトリックス、及び1wt%~45wt%の、1つ以上の不透明剤、1つ以上の強化繊維、1つ以上の膨張性マイクロスフェア及びそれらの任意の組み合わせから選ばれる1つ以上の追加の粒子成分を含む。1つ以上の追加の粒子成分は、前記第一の層の第一の厚さにわたって、化学組成、粒子サイズ及び粒子サイズ分布のうちの1つ以上が異なり、1つ以上の追加の粒子成分は、前記第二の層の第二の厚さにわたって、化学組成、粒子サイズ及び/又は粒子サイズ分布のうちの1つ以上が異なる。
【0031】
態様24に加えて、別の態様(「態様25」)によれば、第三の層を含み、前記第三の層は、前記第三の層の厚さにわたって、化学組成、粒子サイズ及び/又は粒子サイズ分布のうちの1つ以上が異なる1つ以上の追加の粒子成分を含む。
【0032】
態様25に加えて、別の態様(「態様26」)によれば、前記1つ以上の追加の成分は不透明剤であり、前記第一の層はその中に第一の粒子サイズ分布を有する不透明剤を含み、前記第二の層はその中に第二の粒子サイズ分布を有する不透明剤を含み、前記第三の層は、第三の粒子サイズ分布を有する不透明剤を含む。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図面の簡単な説明
添付の図面は、本開示のさらなる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれてその一部を構成し、実施形態を示し、記載とともに本開示の原理を説明するのに役立つ。
【0034】
【
図1A】
図1Aは、幾つかの実施形態による、厚さにわたって粒子成分が変化している高温断熱性複合材の概略断面図である。
【0035】
【
図1B】
図1Bは、幾つかの実施形態による、異なる層内に異なる粒子サイズ分布を有する多層高温断熱性複合材の概略断面図である。
【0036】
【
図2】
図2は、幾つかの実施形態による、熱伝播保護バリア試験においてサンプルの性能を評価するために使用される試験システムの概略図である。
【0037】
【
図3】
図3は、幾つかの実施形態による、熱伝播保護バリア試験でサンプルを試験するときの接触圧縮ゾーンの側面概略図である。
【0038】
【
図4】
図4は、幾つかの実施形態による、熱伝播保護バリア試験に記載されているとおりの、蓄熱体温度vs蓄熱体との45分間(接触後)の複合断熱材サンプルの反対側で測定される平均温度との関係の代表的なプロットのグラフである。
【0039】
【
図5】
図5は、幾つかの実施形態による、例2のサンプル1~4の厚さ正規化圧縮たわみvs圧縮応力データを示すグラフである。
【0040】
【
図6】
図6は、幾つかの実施形態による、例2のサンプル1~3の断熱厚さvs圧縮応力データを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
詳細な説明
当業者は、本開示の様々な態様が、意図された機能を発揮するように構成された任意の数の方法及び装置によって実現できることを容易に理解するであろう。また、本明細書で参照される添付の図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではなく、本開示の様々な態様を説明するために誇張されていることがあり、その点において、図面は限定的なものとして解釈されるべきではないことにも留意されたい。
【0042】
本明細書で使用するときに、「超高分子量」とは、3,000,000~10,000,000g/モルの範囲の数平均分子量を有するポリマーを指す。
【0043】
本明細書で使用するときに、「質量パーセント」又は「wt%」という用語は、最終的な高温断熱性複合材(すなわち、潤滑剤が除去された後)の総質量パーセントに基づくその成分の質量パーセントを示すことが意図されている。「wt%」は、成分の質量を高温断熱材成分の総質量(潤滑剤除去後)で割った値に100を乗じたものとして定義できる。
【0044】
本明細書で使用するときに、「高温」という用語は、本明細書に記載の高温断熱性複合材内のフィブリル化ポリマーマトリックスを部分的又は完全に分解(例えば、解重合、鎖切断及び/又は揮発)させるのに十分な温度を指す。1つの態様において、「高温」は、高温断熱性複合材内のフィブリル化ポリマーを部分的又は完全に揮発させるのに十分な温度である。
【0045】
本明細書で使用するときに、「高温事象」という用語は、高温断熱性複合材内のフィブリル化ポリマーマトリックスを部分的又は完全に揮発させるのに十分な温度に達する状況を表すことを意図している。
【0046】
高温断熱性複合材は、(1)高温事象にさらされる前の大気条件(298.15K及び101.3kPa)で25ミリワット/メートルケルビン(mW/mK)以下の熱伝導率を提供し、そして(2)高温断熱性複合材内のフィブリル化ポリマーバインダを部分的又は完全に揮発させるのに十分な温度である高温事象にさらされたときに、熱伝播保護バリアとして機能する。「フィブリル化ポリマーマトリックス」及び「フィブリル化ポリマーバインダ」という語句は、本明細書で互換的に使用されうることを理解されたい。
【0047】
高温断熱性複合材は、少なくとも1つの感熱性構成要素を有する用途及び/又は物品での使用に適しており、高温断熱性複合材内のフィブリル化ポリマーマトリックスを部分的又は完全に揮発(例えば、分解)させる温度をもたらすのに十分なエネルギーを(一般に、その構成要素の故障時に)放出できるが、それでもなお、1つ以上の隣接する感熱性構成要素を損傷から保護するのに十分な断熱効果を提供する。このことは、隣接する感熱性構成要素に損傷を与える可能性のある温度を有する第一の高温熱事象(典型的に、構成要素の故障に関連する)が発生し、その結果、第二の高温熱事象が発生するなど(例えば、高エネルギー電池における暴走高温熱事象の伝播)が可能である用途/物品において特に重要である。高温断熱性複合材は、保護するように高温断熱性複合材の第一の側から高温断熱性複合材の第二の反対側への熱エネルギーの伝播を遅延又は防止し、その結果、高温断熱性複合材の第二の反対側にある1つ以上の感熱性構成要素は、高温熱事象から十分に保護され、その結果、隣接する感熱性構成要素は熱暴走事象に入らず、又は熱暴走伝播速度は低減される。
【0048】
特定の高エネルギー電池などの特定の用途において、高温熱事象が発生する可能性がある。上で論じたように、高温熱事象は、隣接する感熱性構成要素を損傷するのに十分である可能性があり、隣接する感熱性構成要素が高温事象にさらされると、隣接する感熱性構成要素に二次的な高温事象が引き起こされる可能性がある状況が含まれる(例えば、故障したリチウムイオン電池の暴走事象)。したがって、隣接する感熱性構成要素を高い(損傷を与える)温度にさらさないように保護する断熱バリアが必要である。本明細書に記載のアッセイで実証されているように、高温断熱性複合材の薄いシート(厚さ約1mm)の片側(「チャレンジ側」)を、約800℃に加熱されたステンレス鋼塊(すなわち、フィブリル化ポリマーを揮発させるため十分な温度)に圧縮接触させた。薄いシートの反対側 (「保護側」)の最高温度は有意に低くなった。1つの実施形態において、熱伝播バリアとして機能することができる高温断熱性複合材は、以下に説明する熱伝播保護バリア試験に従ってチャレンジ側が約800℃の温度にさらされたときに、保護側の最高温度を215℃以下に制限できるものである。
【0049】
高温断熱性複合材内のフィブリル化ポリマーバインダを部分的又は完全に揮発させるのに必要な温度は、フィブリル化ポリマーの選択によって変化する。したがって、高温断熱性複合材は、フィブリル化ポリマーマトリックスを少なくとも部分的に揮発させる温度(すなわち、チャレンジ側で)にさらされたときの観測最大温度(すなわち、保護/断熱側で)に少なくとも約70%、少なくとも約73%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は少なくとも95%(100%が最大値であり、又は合計が100%に等しい)の減少を提供することができるものである。さらなる実施形態において、チャレンジ側温度は、フィブリル化ポリマーマトリックスを完全に揮発させるのに十分な熱エネルギーを備える。
【0050】
別の実施形態において、高温事象は、少なくとも約250℃、少なくとも約300℃、少なくとも約350℃、少なくとも約400℃、少なくとも約450℃、少なくとも約500℃、少なくとも約550℃、少なくとも約600℃、少なくとも約650℃、少なくとも約700℃、少なくとも約750℃、少なくとも約800℃、又は少なくとも約850℃の温度で、高温断熱性複合材料中のフィブリル化ポリマーマトリックスを部分的又は完全に揮発させる温度を備え、ここで、高温断熱性複合材料の反対側の最高温度は、約225℃以下、約220℃以下、約215℃以下、約210℃以下、約205℃以下、約200℃以下、約195℃以下、約190℃以下、約185℃以下、約180℃以下、約175℃、約170℃以下、約165℃以下、約160℃以下、約155℃以下、約150℃以下、又は約145℃以下である。少なくとも1つの実施形態において、高温熱事象は、高温断熱性複合材のチャレンジ側で少なくとも800℃であり、高温断熱性複合材の反対側(保護/断熱側)の最高温度は215℃以下である。
【0051】
高温断熱性複合材
本開示の高温高温断熱性複合材は、フィブリル化ポリマーマトリックス、高温断熱エアロゲル粒子、1つ以上の不透明剤、及び、場合により、強化繊維及び/又は膨張性マイクロスフェア及び/又は追加の粒子成分を含む。1つの実施形態において、高温高温断熱性複合材は、10wt%を超える不透明剤、及び/又は強化繊維、及び/又は膨張性マイクロスフェアを含む。上で述べたように、質量パーセント(wt%)という用語は、高温断熱性複合材の総質量のパーセントである。別の実施形態において、高温断熱性複合材は、10wt%を超える不透明剤を含む。
【0052】
エアロゲル粒子、1つ以上の不透明剤、強化繊維及び/又は膨張性マイクロスフェア及び/又は追加の粒子成分は、フィブリル化ポリマーマトリックス内に耐久的に絡み合わされ、高温断熱性複合材の熱伝導率は、大気条件(298.15K及び101.3kPa)で25ミリワット/メートルケルビン(mW/mK)、23mW/mK、21mW/mK、19mW/mK、又は17mW/mK以下である。本明細書で使用されるときに、「耐久的に絡み合わされる」という語句は、高温断熱性複合材の粒子成分(例えば、エアロゲル、膨張性マイクロスフェア、強化繊維、不透明剤及び追加の粒子成分)がポリマー膜のフィブリル化微細構造内に非共有結合的に固定化されているものとして記述することが意図される。フィブリル化膜内の粒子成分を固定又は別の方法で結合するための別個のバインダは存在しない。さらに、幾つかの実施形態において、粒子成分が高温断熱性複合材のフィブリル化ポリマー膜の厚さ全体にわたって位置していることを理解されたい。
【0053】
高温断熱性複合材は、少なくともフィブリル化ポリマーマトリックスの強度により、薄く、可撓性で、圧縮可能で、追従性の形状に成形されることができ、それにより、目的の用途に適した成形材料を製造する能力が容易になる。
【0054】
エアロゲル粒子
「エアロゲル」、「エアロゲル(複数)」及び「エアロゲル粒子」という用語は、本明細書で互換的に使用される。エアロゲルは、対流及び伝導熱伝達を有意に低減する断熱材である。シリカエアロゲル粒子は、特に優れた伝導性断熱材である。エアロゲル粒子は固体で硬い乾燥した材料であり、粉末の形で市販されている。市販のエアロゲル材料の非限定的な例は、Smithらの米国特許第6,172,120号明細書に記載されているような比較的低コストのプロセスによって形成されるシリカエアロゲルである。さらに、エアロゲル粒子のサイズは、ジェットミル又は他の既知のサイズ縮小技術によって、所望の寸法又はグレードまで縮小することができる。高温断熱性複合材での使用に適したエアロゲル粒子は、約1μm~約1mm、約1μm~約500μm、約1μm~約250μm、約1μm~約200μm、約1μm~約150μm、約1μm~約100μm、約1μm~約75μm、約1μm~約50μm、約1μm~約25μm、約1μm~約10μm又は約1μm~約5μmのサイズを有することができる。さらに適切なエアロゲル粒子は、約0.1μm~約1μm、約0.2μm~約1μm、約0.3μm~約1μm、約0.4μm~約1μm、約0.5μm~約1μm、約0.6μm~約1μm、約0.7μm~約1μm、約0.8μm~約1μm又は約0.9μm~約1μmのサイズを有する。200nm以下、150nm以下、100nm以下、又は50nm以下などのより小さな粒子サイズを有するエアロゲルもまた、又はその代わりに、高温断熱性複合材で利用することができる。
【0055】
高温断熱性複合材内に存在するエアロゲル粒子の量は、35wt%を超える、40wt%を超える、50wt%を超える、60wt%を超える、70wt%を超える、又は80wt%を超えることができる。幾つかの実施形態において、高温断熱性複合材中に存在するエアロゲル粒子の量は、約10wt%~約80wt%、約15wt%~約80wt%、約20wt%~約80wt%、約25wt%~約80wt%、約30wt%~約80wt%、約35wt%~約70wt%、約40wt%~約80%、約40wt%~約 70wt%、約40wt%~約65wt%、約40wt%~約60wt%、約45wt%~約60wt%、又は約45wt%~約55wt%の範囲である。他の実施形態において、エアロゲル粒子は、高温断熱性複合材中に約45wt%~約75wt%、約50wt%~70wt%又は約45wt%~約60wt%の量で存在しうる。
【0056】
エアロゲル粒子のかさ密度は、約100kg/m3未満、約75kg/m3未満、約50kg/m3未満、約25kg/m3未満、又は約10kg/m3未満であることができる。 少なくとも1つの実施形態において、エアロゲル粒子は、約30kg/m3~約50kg/m3のかさ密度を有する。
【0057】
高温断熱性複合材での使用に適したエアロゲルとしては、無機エアロゲル、有機エアロゲル及びそれらの混合物が挙げられる。適切な無機エアロゲルの非限定的な例としては、ケイ素の無機酸化物(二酸化ケイ素)、アルミニウムの無機酸化物、チタンの無機酸化物、ジルコニウムの無機酸化物、ハフニウムの無機酸化物、イットリウムの無機酸化物、バナジウムの無機酸化物及びそれらの組み合わせから形成されたものが挙げられる。少なくとも1つの実施形態において、高温断熱性複合材は、シリカエアロゲルなどの無機エアロゲルを含む。高温断熱性複合材に適した高温断熱性粒子の別の例は、ヒュームドシリカである。
【0058】
高温断熱性複合材に使用されるエアロゲルは、親水性又は疎水性であることができる。幾つかの実施形態において、エアロゲルは疎水性から部分的に疎水性であり、約15mW/mK未満の熱伝導率を有する。ミリングなどの粒子サイズ縮小技術は、疎水性エアロゲルの外部表面基の一部に影響を与える可能性があり、疎水性エアロゲル粒子は、その結果、部分的な表面親水性をもたらす可能性がある(例えば、疎水性特性はエアロゲル粒子内に保持される)ことを理解されたい。部分的に疎水性のエアロゲルは、他の化合物との結合が強化される可能性があり、そのような結合が所望される用途に利用できる。
【0059】
不透明剤
1つの実施形態において、高温断熱性複合材は少なくとも1つの不透明剤を含む。不透明剤は放射熱伝達を低減し、熱性能を向上させる。高温断熱性複合材に使用するのに適した不透明剤の非限定的な例としては、限定するわけではないが、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化鉄、炭化ケイ素、ケイ化モリブデン、酸化マンガン、1~4個の炭素原子を含むアルキル基を有するポリジアルキルシロキサン又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。1つの実施形態において、不透明剤は、微細分散された粉末の形態で使用されうる。少なくとも1つの実施形態において、高温断熱性複合材中に存在する不透明剤の量は、約60wt%以下である。幾つかの実施形態において、不透明剤は約10wt%を超える量で存在する。さらなる実施形態において、高温断熱性複合材中に存在する不透明剤の量は、約0.1wt%~約60wt%、約0.5wt%~約60wt%、約1wt%~約60wt%、約5wt%~約60wt%、約5wt%~約55wt%、約10wt%~約60wt%、約10wt%~約55wt%、約10wt%~約50wt%、約10wt%~約40wt%、約10wt%~約30wt%、約15wt%~約30wt%、約20wt%~約30wt% 、約15wt%~約50wt%、約15wt%~約45wt%、約15wt%~約40wt%、約15wt%~約35wt%、約20wt%~約40wt%、約25wt%~約35wt%、又は約15wt%~約25wt%であることができる。幾つかの実施形態において、不透明剤は、高温断熱性複合材中に別個の成分として含まれないことがある。幾つかの例において、不透明剤は、追加の粒子の総量中の成分として、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、又は1%未満の量で存在することができる。
【0060】
強化繊維
幾つかの実施形態において、高温断熱性複合材は少なくとも1つの強化繊維も含む。1つの実施形態において、強化繊維は、約0.1mm~約25mm、約0.1~約19mm、約0.1mm~約15mm、約0.1mm~約13mm、 約0.1mm~約10mm、約0.1mm~約7mm、又は約0.1mm~約5mmのサイズを有するチョップド繊維であることができる。様々な強化繊維を使用することができ、限定するわけではないが、炭素繊維、ガラス繊維、アルミノホウケイ酸繊維又はそれらの組み合わせなどの繊維を挙げることができる。少なくとも1つの実施形態において、強化繊維はチョップドガラス繊維である。高温断熱性複合材中に存在する強化繊維の量は、約25wt%以下である。幾つかの実施形態において、強化繊維は、約1wt%~約25wt%、約2wt%~約20wt%、約3wt%~約20wt%、約5wt%~約15wt%、約8wt%~約15wt%、約9wt%~約15wt%又は約10wt%~約15wt%の量で存在する。幾つかの実施形態において、強化繊維は、約1wt%~約10wt%、約2wt%~約10wt%、約3wt%~約10wt%、約4wt%~約10wt%、約5wt%~約10wt%、約6wt%~約10wt%、約7wt%~約10wt%又は約8wt%~約10wt%の量で存在する。
【0061】
膨張性マイクロスフェア
高温断熱性複合材は、1つ以上の膨張性マイクロスフェア(例えば、オランダのNouryon Chemicals B.V.から市販されているExpancel(登録商標))をさらに含むことができる。1つの実施形態において、高温断熱性複合材は、EXPANCEL(登録商標)などの膨張性ポリマーマイクロスフェアを約20wt%以下で含む。膨張性マイクロスフェアは、一般に、膨張性ガスを封入する膨張性熱可塑性マイクロスフェアとして説明されうる。幾つかの実施形態において、高温断熱性複合材は、約1wt%~約20wt%、約1wt%~約15wt%又は約1wt%~約10wt%の量の膨張性マイクロスフェアを含む。幾つかの実施形態において、膨張性マイクロスフェアは、高温断熱性複合材中に約1wt%~約15wt%、約1wt%~約14wt%、約1wt%~約13wt%、約1wt%~約12wt%、約1wt%~約11wt%、約1wt%~約10wt%、約1wt%~約9wt%、約1wt%~約8wt%、約1wt%~約7wt%、約1wt%~約6wt%、約1wt%~約5wt%又は約1wt%~約3wt%の量で存在する。幾つかの実施形態において、膨張性マイクロスフェアは、高温断熱性複合材中に約0.1wt%~約10wt%、約0.1wt%~約9wt%、約0.1wt%~約8wt%、約0.1wt%~約7wt%、約0.1wt%~約6wt%、約0.1wt%~約5wt%、約0.1wt%~約5wt%、約0.1wt%~約4wt%、約0.1wt%~約3wt%、約0.1wt%~約2wt%、約0.1wt%~約1wt%、約0.5wt%~約5wt%、約0.5wt%~約4wt%、約0.5wt%~約3wt%、約0.5wt%~約2wt%、又は約0.5wt%~約1wt%の量で存在する。
【0062】
膨張性マイクロスフェアの使用は、得られる高温断熱性複合材、及び高温断熱性複合材を含む物品の密度を低下させることができる。1つの実施形態において、高温断熱性複合材は、約0.01g/cm3~約0.40g/cm3、約0.01g/cm3~約0.30g/cm3、約0.01g/cm3~約0.25g/cm3又は約0.05g/cm3~約0.25g/cm3の範囲の密度を有することができる。さらに、高温断熱性複合材は圧縮可能であり、これは、高温断熱性複合材に圧力を加えることによって全体の厚さを減少させることができることを意味する。膨張性マイクロスフェアを含む高温断熱性複合材の実施形態は、圧縮応力がより高い値に上昇しても圧縮剛性を維持しながら、低圧縮応力値から中程度の圧縮応力値でより大きな圧縮性を示す。高温断熱性複合材料の圧縮率は、膨張性マイクロスフェアの量を変えることで調整できる。さらに、圧縮性高温断熱性複合材は、固定された特定の寸法の容器又は体積(例えば、電池セル)内に配置されたときに、個々の寸法のばらつきによって生じるギャップ又は空間に適応するのを支援することができる。高温断熱性複合材は、温度変動及び充放電サイクルによってセルの寸法が変化しても、個々のセルに望ましい圧縮応力又はトルクを維持することもできる。
【0063】
追加の成分
高温断熱性複合材は、限定するわけではないが、難燃剤材料、追加のポリマー、不透明剤(上述のとおり)、膨張性材料、酸素掃去剤、染料、可塑剤及び増粘剤などの、1つ以上の追加成分をさらに含むことができる。
【0064】
図1Aを参照すると、エアロゲル粒子、不透明剤、強化繊維、膨張性マイクロスフェア及び/又は追加の成分(以下「粒子成分[230]」としてグループ化する)は、高温断熱性複合材のフィブリル化ポリマーマトリックスの微細構造内に耐久的に絡み合わされており、高温断熱性複合材の熱伝導率は大気条件(298.15K及び101.3kPa)で25ミリワット/メートルケルビン(mW/mK)以下、23mW/mK以下、21mW/mK以下、19mW/mK以下又は17mW/mK以下である。本明細書で使用されるときに、「耐久的に絡み合わされる」という語句は、高温断熱性複合材の粒子成分(例えば、エアロゲル、膨張性マイクロスフェア、強化繊維、膨張性マイクロスフェア及び/又は不透明剤及び/又は追加の粒子成分)を、フィブリル化ポリマー膜の微細構造内に非共有結合的に固定化されているものとして記載することが意図される。フィブリル化膜内に粒子成分を固定するために別個のバインダが存在しない。さらに、粒子成分はフィブリル化ポリマー膜の厚さにわたって配置されていることを理解されたい。粒子成分[230]は、高温断熱性複合材[200]のフィブリル化ポリマー膜の微細構造全体にわたってかなり均等に配置されている。高温断熱性複合材[200]は、チャレンジ側[210]、保護側[220]、高さ(H)及び長さ(L)を有する。
【0065】
高温断熱性複合材は、
図1Aに一般的に示されるような複合材(例えば、一層)から形成され、あるいは、場合により、
図1Bに一般的に示されているような多層スタック高温断熱性複合材(例えば、複数の個別の層)から形成されることができる。多層スタック高温断熱性複合材において、各層は、その中に、異なる化学組成、異なる粒子サイズ、異なる粒子サイズ分布又は異なる粒子分布を有する粒子を有することができる。1つの実施形態において、組成、サイズ及び/又は形状などの異なる特性を有する不透明剤は、Huら(Radiative Characteristics of Opacifier Loaded Silica Aerogel Composites, 2013)に記載されているように、高温断熱性複合材の厚さ全体にわたって様々な層の中に分布されうる。
【0066】
図1Bに示される多層スタック高温断熱性複合材において、図示を容易にするために、多層スタック高温断熱性複合材中に存在する粒子成分のうち、不透明剤のみが示されている。
図1Bは、複数の層を有する多層スタック高温断熱性複合材の1つの実施形態の概略断面図である。示されるように、多層スタック高温断熱性複合材[240]は、高さ(H)及び長さ(L)を有する。多層スタック高温断熱性複合材[240]は、チャレンジ側[250]及び保護側[260]を含む。
【0067】
図1Bに示される実施形態において、高さ(H)は、層A[270]、層B[280]、層C[290]という3つの層に分割される。幾つかの実施形態において、層A[270]、層B[280]及び層C[290]は、同じタイプの不透明剤を含有することができるが、サイズ分布が異なる。他の実施形態において、層A[270]、層B[280]及び層C[290]は、異なるサイズ分布を有する異なるタイプの不透明剤を含むことができる。
図1Bに示されるように、層A[270]は第一のサイズ分布を有する第一の不透明剤[300]を有し、層B[280]は第二のサイズ分布を有する第一の不透明剤[300]を有し、層C[290]は第一のサイズ分布を有する第二の不透明剤[310]を有する。第一の不透明剤[300]は炭化ケイ素であり、第二の不透明剤[310]はカーボンブラックであることができるが、これは本質的に例示であり、本開示の範囲を制限することを意図するものではない。幾つかの実施形態において、粒子成分自体が各層で異なっていてもよいし、特定の層のみで異なっていてもよい。他の実施形態において、粒子成分は各層で同じであるが、各層は異なるサイズ分布を有する。したがって、多層スタック高温断熱性複合材の各層は、各層内(又は特定の層内のみ)に異なる化学組成、異なる粒子サイズ及び/又は異なる粒子サイズ分布を有する1つ以上の粒子成分を含むことができる。
【0068】
多層スタック高温断熱性複合材を形成する際に、各層は以下に説明するように個別に形成され、次いで、多層スタック高温断熱性複合材において層の所望の配向を得るようにして、互いに積層され又はスタックされる。これらの層は、ラミネート化、接着又はその他の結合などの任意の従来の方法で互いに結合されて、多層高温断熱性複合材を形成することができる。
【0069】
フィブリル化ポリマーマトリックス
フィブリル化可能ポリマーを使用して高温断熱性複合材を作成すると、エアロゲル粒子及び他の粒子フィラー成分が耐久的に結合し(例えば、非共有結合で、粉塵がほとんど又はまったくない)、フィブリル化ポリマーマトリックス内に分布している薄くかつ可撓性形態要素(例えば、フィルム、シート及びチューブ)を形成することができる。エアロゲル粒子及び他の粒子フィラー成分をフィブリル化ポリマーマトリックスに導入するための吸収工程が存在しないことを理解されたい。したがって、高温断熱性複合材内のエアロゲル粒子及び粒子成分は、フィブリル化ポリマーマトリックス内に耐久的に絡み合わされている。薄くかつ可撓性の形態要素は、コンデンサ、加熱要素、高エネルギー電池など、高温事象が発生する可能性がある多くの用途にとって重要である。高温断熱性複合材内のフィブリル化ポリマーマトリックスが完全に揮発した際にも、残りの成分は保護効果を提供する別個のマトリックスを提供する。これは、少なくとも粒子フィラー成分がフィブリル化ポリマーマトリックスに比べて熱的に安定しているためである。少なくとも1つの実施形態において、高温断熱性複合材は、約5mm以下、約4mm以下、約3mm以下、約2mm以下、又は約1mm以下の厚さを有する。幾つかの実施形態において、高温断熱性複合材は、約1mm~約5mm、約1mm~約4mm、約1mm~約3mm、約1mm~約2mm、約0.01mm~約5mm、約0.01mm~約4mm、約0.1mm~約3mm、約0.1mm~約2.5mm、約0.1mm~約2mm、約0.1mm~約1.5mm、又は約0.1mm~約1mmの厚さを有する。さらに他の実施形態において、高温断熱性複合材の厚さは1mm以下である。
【0070】
本明細書で使用されるときに、「フィブリル化性」及び「フィブリル化可能」という用語は、十分なせん断力にさらされたときに、ノード及びフィブリルの微細構造又は実質的にフィブリルのみを含む微細構造を形成するポリマーの能力を指す。幾つかの実施形態において、フィブリル化ポリマーは、例えば、湿式混合、分散又は凝集などによって混合されうる。せん断及び/又は混合が起こる時間及び温度は、粒子サイズ、使用される材料、及び混合される粒子の量によって異なり、当業者によって容易に決定される。
【0071】
本発明の高温断熱性複合材を得るために、様々なフィブリル化可能なポリマーを使用することができる。高温断熱性複合材のバインダとしてフィブリル化可能なポリマーを使用すると、粒子成分を耐久的に絡み合わせて凝集した形状にしながら、強度(及び薄い材料を形成する能力)、形状追従性及び圧縮性の両方が提供される。エアロゲル、膨張性マイクロスフェア、不透明剤及び強化繊維ならびに追加の成分は、本明細書において「粒子成分」と考えられることに留意されたい。フィブリル化可能なポリマー粒子と高温断熱性複合材中の他の粒子成分(例えば、エアロゲル、不透明剤、強化繊維、膨張性マイクロスフェアなど)をブレンド/成形プロセス中に十分なせん断力でブレンドすると、フィブリル化ポリマーマトリックス(フィブリルによって相互接続されたノード、又は実質的にフィブリルのみの微細構造)中に粒子材料が耐久的に絡み合わされているフィブリル化ポリマーマトリックスが得られる。
【0072】
フィブリル化ポリマーマトリックスの分解温度はポリマーの性質によって異なる。1つの態様において、フィブリル化ポリマーマトリックスは、ポリオレフィン、フルオロポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ乳酸又はそれらの任意の組み合わせのフィブリル化可能なポリマー粒子から調製される。フィブリル化可能なポリマーの非限定的な例としては、限定するわけではないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(Goreの米国特許第3,315,020号明細書、Goreの米国特許第3,953,566号明細書、Bailleの米国特許第7,083,225号明細書)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)(Sbrigliaの米国特許第10,577,468号明細書)、ポリ乳酸(PLLA;Sbrigliaの米国特許第9,732,184号明細書)、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレン又はトリフルオロエチレンとのコポリマー(例えば、VDF-コ-(TFE又はTrFE)ポリマー、Sbriglia の米国特許第10,266,670号明細書)、ポリ(エチレンテトラフルオロエチレン)(ETFE、Sbrigliaの米国特許第9,932,429号明細書)、ポリパラキシキシレン(PPX、Sbrigliaの米国特許公開第2016/0032069号明細書)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE、Goreの米国特許第 3,315,020号明細書、Goreの米国特許第3,953,566号明細書及びBailleの米国特許第7,083,225号明細書)が挙げられる。1つの実施形態において、フィブリル化ポリマーは、非溶融加工可能なPTFE微粉末粒子から作製されたフィブリル化PTFEである(すなわち、溶融押出にはメルトフロー粘度が高すぎ、フィブリル化ポリマーマトリックスを形成するには高せん断ブレンド及び/又はペースト加工が必要である)(例えば、Expanded PTFE Applications Handbook- Technology, Manufacturing and Applications, Ebnesajjad, Sina, (1997),Elsevier, Cambridge, MAを参照されたい)が挙げられる。
【0073】
本明細書で使用されるときに、「PTFE」という用語は、ホモポリマーPTFE及び変性PTFE樹脂(例えば、最大5wt%、最大4wt%、最大3wt%、最大2wt%、又は最大1wt%の1つ以上のエチレン系コモノマーを有し、前記エチレン系コモノマーとしては、限定するわけではないが、ペルフルオロアルキルエチレン(例えば、ペルフルオロブチルエチレン、Bailleの米国特許第7,083,225号明細書)、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(C1~C8アルキル、例えば、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、ペルフルオロオクチルビニルエーテルなど)を含む。PTFEには、例えば、Brancaの米国特許第5,708,044号明細書、Baillieの米国特許第6,541,589号明細書、Sabolらの米国特許第7,531,611号明細書、Fordの米国特許第8,637,144号明細書、及び、Xu らの米国特許第9,139,669号明細書に記載されているもののような、延伸変性PTFE及びPTFEの延伸コポリマーも含まれることが意図される。
【0074】
適切なフィブリル化フルオロポリマーとしては、テトラフルオロエチレン(TFE)とフッ化ビニリデン(VDF)、二フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)、トリフルオロエチレン(TrFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、フルオロジオキソール又はフルオロジオキサラン(例えば、Fordの米国特許第9,040,646号明細書)及びエチレン(例えば、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE、米国特許第9,932,429号明細書、上記)などのコモノマーとのフィブリル化可能なコポリマー及びターポリマーも挙げることができる。上記で特定されたポリマーはすべて、少なくとも800℃の高温事象にさらされたときに、少なくとも部分的に又は完全に揮発(分解)するであろう。
【0075】
幾つかの実施形態において、フィブリル化ポリマーマトリックスは、ノード及びフィブリル微細構造、又は実質的にフィブリルのみを含む微細構造を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)マトリックス又は延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)マトリックスである。PTFE粒子のフィブリルは、他のPTFEフィブリル及び/又はノードと相互結合して、粒子成分内及び粒子成分の周囲にネットを形成し、粒子成分をポリマーマトリックス内に効果的に固定化する。
【0076】
高温断熱性複合材中に存在するフィブリル化ポリマーの量は、約60wt%以下、約50wt%以下、約40wt%以下、約30wt%以下、約20wt%以下又は約10wt%以下である。フィブリル化ポリマーは、高温断熱性複合材中に約1wt%~約60wt%、約1wt%~約50wt%、約1wt%~約40wt%、約1wt%~約30wt%、約1wt%~約25wt%、約1wt%~約20%、約1wt%~約15wt%、約1wt%~約15wt%又は約1wt%~約10wt%の量で存在することができる。他の実施形態において、フィブリル化ポリマーの量は、約5wt%~約30wt%、約10wt%~約25wt%、約1wt%~約20wt%、約1wt%~約15wt%、約1wt%~約10wt%又は約1wt%~約5wt%の範囲である。
【0077】
幾つかの実施形態において、多孔質フィブリル化ポリマーマトリックスは、Zhongらの米国公開第2010/0119699号明細書、Ristic-Lehmannらの米国特許第7,118,801号明細書、Sassaらの米国特許第5,849,235号明細書、Rudolfらの米国特許第6,218,000号明細書又はMortimer, Jr.の米国特許第4,985,296号明細書に一般に教示されているような方法で、フィブリル化可能なポリマー粒子を他の粒子成分と乾式混合することによって形成されうる。
【0078】
1つの実施形態において、凝集物は、Ristic-Lehmannらの米国特許第7,118,801号明細書に記載されている一般的な方法論を使用して調製されうる。凝集物を調製する一般的な方法としては、粒子状成分粒子(エアロゲル粒子、不透明剤、強化繊維及び/又は追加の粒子成分)の水性分散液をフィブリル化可能なポリマー粒子分散液と混合し、次いで撹拌又は凝集剤の添加により混合物を凝集させることが挙げられる。他の粒子成分の存在下でのポリマー粒子の共凝集の結果として、フィブリル化可能なポリマー粒子と他の粒子状成分粒子(すなわち、断熱材)との緊密なブレンドが生成される。この断熱材は排水され、約433Kの対流式オーブンで乾燥される。使用する湿潤剤のタイプに応じて、乾燥した断熱材は緩く結合した粉末の形になることができ、又は、柔らかいケーキの形になることができ、それは、その後に冷却され、粉砕されて粉末の形の断熱材を得ることができる。次いで、粉末状の断熱材を、フィブリル化及び凝集性マトリックスをテープ、シート、パテなどの望ましい形状要素の形成を誘発するための後続の機械的処理工程のために、適切な炭化水素潤滑剤(例えば、イソパラフィン系潤滑剤(例えば、テキサス州ヒューストンのエクソンモービル社から入手可能なISOPAR K(登録商標)))とブレンドすることができる。機械的処理工程は、フィブリル化ポリマーマトリックスを有する高温断熱性複合材を形成するための、高せん断混合、プレス、カレンダ加工及びそれらの組み合わせのうちの1つ以上の工程を含むことができる。炭化水素潤滑剤を除去するために、少なくとも1つの乾燥工程を含む。
【0079】
高温断熱性複合材は、比較的薄い形態要素(例えば、シート)に成形されうる。高温断熱性複合材の薄い形態要素は、望ましくない高温熱事象が発生する可能性がある電子デバイス及び/又は電池での使用に魅力がある。1つの実施形態において、高温断熱性複合材は、約5mm未満、約4mm以下、約3mm以下、約2mm以下又は約1mm以下の平均厚さ(又はチューブの場合にはチューブ壁の厚さ)を有する成形パテ、チューブ、テープ又はシートへと成形される。
【0080】
高温断熱性複合材を含む物品
1つの実施形態において、断熱性物品は、高温事象(すなわち、第一の温度)を生成することができる第一の構成要素、前記高温事象によって引き起こされる第一の温度への暴露から保護される第二の構成要素、及び高温断熱性複合材を含む。高温断熱性構成要素は、前記第一の構成要素と前記第二の構成要素との間に配置される。高温断熱性構成要素は、チューブ、シート又はフィルムの形態であることができる。高温断熱性構成要素の第一の側は第一の構成要素に向けて配向されることができ、高温断熱性構成要素の第二の側は第二の構成要素に向けて配向されることができる。幾つかの実施形態において、高温断熱性複合材は、大気条件(298.15K及び101.3kPa)で、25ミリワット/メートルケルビン(Mw/mK)以下の熱伝導率を有する。
【0081】
断熱性物品はまた、高温断熱性複合材の1つ以上の側に支持層の形態で1つ以上の支持材料を含むことができる。1つの実施形態において、支持層は、ポリマー層、織布層、編布層、不織布層又はそれらの任意の組み合わせである。ポリマー層は、非孔質層、多孔質層、ミクロ孔質層及びそれらの任意の組み合わせであることができる。非限定的な追加の支持層としては、フルオロポリマー膜(例えば、ポリテトラフルオロエチレン膜)、膨張フルオロポリマー膜(例えば、延伸ポリテトラフルオロエチレン膜)、ポリオレフィン膜(例えば、ポリエチレン膜)、金属膜、電気絶縁体、接着層又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。支持層は、1つ以上の支持層を高温断熱性複合材にラミネート化、接着又は他の方法で結合することによって断熱性物品に含めることができる。例えば、高温断熱性複合材は、第一の側及び第二の側を有するシート又はフィルムの形態であることができ、その厚さは幅方向及び/又は長さ方向よりも小さい。1つ以上の支持層を、高温断熱性複合材の第一の側、第二の側、又は第一の側及び第二の側の両方に接着することができる。
【0082】
1つ以上の支持層は、接着剤、溶接、カレンダ加工、コーティング又はそれらの任意の組み合わせを使用して、高温断熱性複合材に接着することができる。幾つかの実施形態において、断熱物品は複数の層を含むことができる。例えば、高温断熱性複合材は、片面又は両面に接着された延伸PTFEの層を有することができ、その結果、二層又は三層構造を有する高温断熱性複合材が得られる。1つ以上のテキスタイル層、例えば、織布、編布、不織布又はそれらの任意の組み合わせを、高温断熱性複合材に接着することができる。当該技術分野でよく知られているように、接着剤は、連続的又は不連続的な方法で、高温断熱性複合材、テキスタイル又はその両方に適用されうる。
【0083】
テキスタイル層は、織布、編布、不織布又はそれらの任意の組み合わせであることができる。幾つかの実施形態において、織布、編布又は不織布テキスタイルは、耐燃性織布、耐燃性編布又は耐燃性不織布テキスタイルであることができる。適切なテキスタイル層は当該技術分野で周知であり、適切なテキスタイル層としては、例えば、弾性及び非弾性テキスタイル、例えば、LYCRA(登録商標)、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、綿、ウール、シルク、リネン、レーヨン、亜麻、ジュート、耐燃性テキスタイル、例えば、NOMEX(登録商標)アラミド(デラウェア州ウィルミントンのDu Pontから入手可能)、アラミド、難燃性綿、ポリベンズイミダゾール、ポリp-フェニレン-2,6-ベゾビスオキサゾール、難燃性レーヨン、モダクリル、モダクリルブレンド、ポリアミン、カーボン、ガラス繊維又はそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0084】
リチウムイオン電池
幾つかの実施形態において、高温断熱性複合材は、複数セルリチウムイオン電池などの高エネルギー電池の断熱及び保護バリア層として使用される。1つの態様において、断熱及び保護バリアは、電池内の1つ以上のセル又は電池自体を少なくとも部分的又は完全に封入又は分離するために使用される。別の実施形態において、電池セルは、高温断熱性複合材によって完全に封入される。高温断熱性複合材は、熱エネルギーの伝播、又は熱エネルギーが高温断熱性構成要素の反対側に伝播するときに発生する可能性のある伝播の有害な影響を防ぐためのモジュール又はパック断熱材にも使用できる。
【0085】
高温断熱性複合材を利用できる他の実施形態としては、限定するわけではないが、航空機及びドローンの電動化に使用されるリチウムセル、住宅用エネルギー貯蔵(例えば、太陽光又は風力エネルギー貯蔵)に使用されるリチウムセル、建物及び重要インフラのエネルギーバックアップシステムに使用されるリチウムセル、コンピュータの電源バックアップシステム又は無停電電源システム(UPS)に使用されるセル、電気海洋乗物、ドローン及び無人航空機(UAV)に使用されるセル、個人用乗物(例えば、スクータ)に使用されるセル、及び緊急医療バックアップシステムに使用されるセルが挙げられる。
【0086】
本出願の開示は、一般的に及び特定の実施形態に関しての両方で上記に説明された。添付の特許請求の範囲に規定されているように、本開示の主旨又は範囲から逸脱することなく、本開示の様々な変更及び変形を行うことができることは、当業者に明らかであろう。
【0087】
試験方法
特定の方法及び装置を以下に説明するが、当業者によって適切と判断される任意の方法又は装置を代替的に利用できることを理解されたい。
【0088】
密度測定
複合断熱材の密度は、密度=質量/体積の式によって計算された。直径1.5インチのパンチの質量は、Sartorius Entris 224-1S分析天秤によって決定された。サンプルの厚さは、既知の厚さの2枚のスライドガラスの間にサンプルを配置し、0.2Nのプローブ力でミツトヨライトマチックVI-50接触ゲージを用いて測定された。3つのサンプルを試験し、記録し、次いで、平均して密度の平均値を求めた。
【0089】
引張強度
膜の引張強度は、平面グリップ及び0.445kNロードセルを備えたINSTRON(登録商標)5565引張試験機を使用して測定した。ゲージ長は6.35cm、クロスヘッド速度は50.8cm/分(ひずみ速度=13.3%/秒)であった。同等の結果を保証するために、実験室の温度を68°F(20℃)~72°F(22.2℃)の間に維持した。サンプルがグリップ界面で破損したならば、データを破棄した。
【0090】
長手方向(長さ方向)の引張強度測定には、サンプルの大きい方の寸法を機械方向、つまり「ダウンウェブ」方向に配向させた。横断方向の引張強度の測定には、サンプルの大きい方の寸法を、「クロスウェブ」方向としても知られる、機械方向に対して垂直の方向に配向させた。次に、ミツトヨ 547-400 絶対スナップゲージを使用してサンプルの厚さを測定した。次に、サンプルを引張試験機で個別に試験した。各サンプルの3つの異なるセクションを測定した。3つの最大荷重(つまり、ピーク力)測定値の平均を使用した。
【0091】
長手方向及び横断方向の引張強さは、次の式を使用して計算した。
【数1】
【0092】
3つのクロスウェブ測定の平均は、長手方向及び横断方向の引張強度として記録された。
【0093】
厚さ
サンプルの厚さは、熱伝導率測定器(Laser Comp Model Fox 314 Laser Comp Saugus, MA)の統合厚さ測定を使用して測定した。1回の測定の結果を記録した。
【0094】
室温熱伝導率
サンプルを圧縮せずに熱伝導率も測定した。サンプルは、Laser Comp Model Fox 314 熱伝導率分析装置(マサチューセッツ州、ソーガスのLaser Comp)で測定した。1回の測定結果を記録した。2つの8インチx8インチ(20.3cmx20.3cm)のサンプルをスタックし、ホットプレート及びコールドプレートをそれぞれ35℃及び15℃にして、20度のデルタTで測定した。
【0095】
圧縮永久歪み試験
圧縮応力-ひずみ特性及び圧縮永久歪み挙動は、サンプルの厚さ1mm及び直径3.08cm(すなわち、1kNロードセル、直径5.08cmの上部圧縮プラテン、直径12.7cmの下部自動位置合わせ型球面着座圧縮プレート、上部圧縮プラテンに固定され、下部圧縮プレートと接触するLVDTたわみセンサ、直径3.08cmの高温断熱性複合材を使用するInstron 5565試験フレーム)であることを除き、ASTM D395-18 を使用して決定した。圧縮永久歪み挙動は50%の圧縮変位で決定し、30分間保持し、次の式を使用して計算した。
【数2】
上式中、t0は元の厚さを指し、ti は最終的な厚さを指す。サンプルの厚さは、Mitutoyo Litematic VI-50接触ゲージを使用して測定した。サンプルをスライドガラスの間に挟み、次いで、0.2Nの力でプローブヘッドに接触させた。0.2Nの接触後に、プローブヘッドを30秒間平衡化させた。
【0096】
圧縮応力-歪み挙動については、次に、測定された厚さの50%の変位が達成されるまで、0.5mm/分の変位速度で圧縮を開始した。元の厚さの50%に達したら、プレートの変位を30分から24時間の間固定し、続いて、変位プレートを解放した。
図4は、圧縮工学応力vs厚さ正規化圧縮たわみのグラフ図である。
【数3】
上式中、例2のサンプル1~4について、xiは圧縮変位を指し、t0は元の厚さを指す。これは、一定の圧縮応力で広範囲の圧縮たわみが可能であるように、高温断熱性複合材の圧縮挙動を調整できる能力を示している。
【0097】
熱伝播保護バリアアッセイ
以下のアッセイを使用して、高温断熱性複合材内のフィブリル化ポリマーを部分的又は完全に揮発(例えば、分解)させるのに十分な温度を有する加熱された塊に暴露したときの、高温断熱性複合材の断熱バリア性能を測定した。高温断熱性複合材の薄いシート(約1mm)を、高さ5.5インチ(約14.0cm)、幅3.5インチ(約7.6cm)、厚さは0.375インチ(約0.95cm)の寸法を有する約800℃のステンレス鋼ブロック(「蓄熱体」)に圧縮接触させた。この複合材は、密度7999.4kg/m3、体積熱容量617.6J/kgK、及び計算上の顕エネルギー435kJを示した。加熱された塊と接触して配置された試験材料の側を、本明細書では「チャレンジ側」と呼ぶ。試験材料の反対側(本明細書では「保護側」とも呼ばれる)で接触後に観察された最高温度を、10分から60分間の範囲の時間にわたって記録した。観察される最高温度を215℃以下に制限できる高温断熱性複合材の薄いシート(厚さ約1mm)は、高温断熱性複合材としての使用に適していると考えた。
【0098】
試験材料の薄い矩形のシート(厚さ約1mm)の片面(「チャレンジ側」)を、約800℃の目標温度に加熱した矩形のステンレス鋼ブロック(本明細書では「蓄熱体」と呼ぶ)に圧縮下で接触させて配置した。対称的な熱放散を確保するために、2つの同一のサンプルを矩形の蓄熱体の両側に配置した。タイプK熱電対を使用して、蓄熱体の温度と各試験サンプルの反対側の温度を測定した。各試験サンプルの反対側の平均温度を、蓄熱体との接触後に、一定時間(10~60分間)にわたって継続的に記録し、接触期間中に観察された最大平均温度を記録した。
【0099】
図2及び
図3を参照すると(
図3は、試験アッセイ中の接触圧縮ゾーン[113]内の要素の側面図である)、5.5インチx3.5インチx0.375インチ(それぞれ約14.0cmx7.6cmx0.95cm)の矩形304ステンレス鋼ブロック(「蓄熱体」) [103]を受け入れるための開口部[102]を備えて構成された高温炉[101]を含む試験システム[100]が示されている。蓄熱体の総質量は905グラムであった。蓄熱体は炉[101]内で約800℃の温度まで加熱された。蓄熱体の体積、材料特性、体積熱容量、熱伝導率は、リチウムイオン電池セルの故障によって放出されるエネルギーを表す特定の顕エネルギー出力が得られるように選択された。タイプK熱電対 [104](熱的に安定で伝導性のセラミックエポキシを使用して蓄熱体[103]に結合)を使用して、蓄熱体の温度を測定した。空気制御式移送システム[105]を使用して、約800℃の蓄熱体[103]を炉[101]から迅速に取り出し、接触圧縮ゾーン [113]内に配置した。
【0100】
試験サンプル[109]を、厚さ1mmの4インチ×6インチ(それぞれ約10.16cm×15.25cm)のアルミニウム支持シート[108]の表面に接着した。アルミニウムシート[108]は、圧縮プレート[107]上で支持された試験サンプルを保持するのを支援する小さな90°フランジを含んでいた。タイプK熱電対[110]を、薄いアルミニウム支持シート[108]の試験サンプル[109]とは反対側の面にある深さ0.5mmの溝に配置し、熱的に安定した伝導性セラミックエポキシで埋め込み、これにより、圧縮平面性を維持しながら、試験サンプルの反対側(つまり、蓄熱体と直接接触していない側)の温度を測定できるようにした。
【0101】
2つの平らな圧縮プレート[107]を有する接触圧縮ゾーン[113]を使用して、各試験サンプル[109]の片面に対して蓄熱体[103]を圧縮接触させた。プレート[107]は、MACOR(登録商標)機械加工可能なガラスセラミックフロントプレート(ニューヨーク州コーニング、Corning Inc.)に取り付けられた機械加工されたステンレス鋼バッカープレートからなった。支持された試験サンプル[109]を含む薄いアルミニウムシート[108]を圧縮プレート[107]上に配置した。圧縮プレート[107]を、支持された試験サンプルを蓄熱体[103]に接触させるために使用される空気圧制御式圧縮システム[112]に取り付けた。
【0102】
試験を開始するために、約800℃の蓄熱体を炉[101]から急速に移し、2つの支持された試験サンプルの間に置いた。圧縮システム[112]を使用して、圧縮プレートを(支持された試験サンプルとともに)一緒に急速に移動させ[111]、試験サンプルを蓄熱体に対して圧縮接触(圧力約42,300Pa)させた。
図3は、試験開始時(時刻0)の接触圧縮ゾーン[113]内の要素の配向を示す側面図である。タイプK熱電対[110]は、各試験サンプルの反対側の温度を経時的に記録した。蓄熱体からの温度と薄いアルミニウム支持シート[109]の温度を、規定の時間(10分から60分)にわたって記録した。規定された接触期間中に観察された最大平均温度を記録した。
図4は、蓄熱体の温度と、接触後45分間にわたって複合断熱材サンプルの反対側で測定された温度との代表的なプロットを示すグラフである。
【実施例】
【0103】
例
例1
高温断熱性複合材
フィブリル化可能なホモポリマーポリテトラフルオロエチレン(PTFE)微粉末粒子(44wt%)、40wt%のエアロゲル粒子(Cabot ENOVA(商標)シリカエアロゲル、マサチューセッツ州ボストン、Cabot Corporation)、8wt%の炭化ケイ素粒子(不透明剤)(F1200シリコンカーバイド、マサチューセッツ州ノースグラフトンのWashington Mills North Grafton, Inc.)及び 8wt%のチョップドガラス繊維(#30 E-Glass、カット長1/4インチ(6.4mm)、繊維直径13ミクロン(オハイオ州ブルックビルのFibre Glast Developments Corp.)をミネラルスピリット潤滑剤とブレンドした。その後、Ristic-Lehmannらの米国特許第7,868,083号明細書に一般的に教示されているように、ブレンドを押し出し、乾燥させて、シートの形の高温断熱性複合材を形成した。高温シートは厚さ約1mmで、フィブリル化可能なPTFE粒子、エアロゲル粒子、及びフィブリル化PTFEマトリックス内に耐久的に絡み合わされて固定化された炭化ケイ素粒子を含んでいた(サンプル14、表1)。
【0104】
追加の高温断熱性複合材サンプルは、サンプル内のエアロゲル粒子、PTFE微粉末粒子、チョップドガラス繊維及び不透明剤の1つ以上の量を変更することを除いて、同じプロセスを使用して調製された(表1)。すべての高温断熱性複合材サンプルを、上記の熱伝播保護バリアアッセイを使用して試験した。各サンプルで観察された最高温度を測定し、4~6回の測定値を平均して記録した。厚さ、密度及び高温断熱性複合材としてのそれぞれの性能(すなわち、観察された平均最高温度)を含む、様々な試験サンプルの組成内訳を表1に提供する。すべての質量パーセントは、最終的な高温断熱性複合材の総質量に対して報告されたことを理解されたい。
【表1】
【0105】
例2
例1に記載のプロセスを使用して高温断熱性複合材を調製したが、膨張性ポリマーマイクロスフェア(EXPANCEL(登録商標)951 DU 120、オランダのNouryon Chemicals B.V.)を、乾燥した高温断熱性複合材の総質量に基づいて1wt%~10wt%の範囲で添加した。乾燥して潤滑剤を除去した後に、得られた高温断熱性複合材を190℃の温度に少なくとも30分間さらして、膨張性ポリマーマイクロスフェアの体積を増加させ、その結果、高温断熱性複合材がx、y、z次元で増加した。膨張性ポリマーマイクロスフェアを含む高温断熱性複合材サンプルを、上記の熱伝播保護バリアアッセイを使用して性能試験した。
【0106】
膨張性マイクロスフェアを含む高温断熱性複合材サンプルの圧縮特性を決定した。応力-ひずみ挙動は、サンプルの厚さが1mm、直径が3.08cmであることを除き、ASTM D395-18を使用して評価した(つまり、Instron 5565試験で以下のを使用:フレーム1kNロードセル、直径5.08cmの上部圧縮プラテン、直径12.7cmの底部自動調整式球面着座圧縮プレート、上部圧縮プラテンに固定され、底部圧縮プレートと接触するLVDTたわみセンサ、直径3.08cmの高温断熱性複合材)。次いで、各高温断熱性複合材サンプルの圧縮歪みを、各高温断熱性複合材サンプルに加えられた力の関数として計算した。さらに、高温断熱性複合材の圧縮永久歪みを、上で詳細に説明した修正ASTM D395-18に従って測定した。
図5は、例2のサンプル1~4の厚さ正規化圧縮たわみvs圧縮応力データを示すグラフである。これらのサンプルは、一定の圧縮応力で広範囲の圧縮たわみ挙動が実現可能になるように、高温断熱性複合材の圧縮挙動を調整する能力を実証している。
図6は、例2のサンプル1~3の断熱材の厚さvs圧縮応力データを示すグラフである。これらのサンプルは、圧縮応力が増加するときに機械的に剛性化された厚さを維持しながら、様々な膨張性マイクロスフェアの量を含む低圧縮応力断熱材の厚さを調整できることを実証している。これは、リチウムイオン電池の充電サイクル及び寿命のシナリオに関連する高圧縮応力下での既知の断熱厚さを示しながら、低圧縮応力下での電池セルの個々の寸法のばらつきから生じるギャップ及び空間に適応するのを支援する能力を実証している。
【0107】
様々な試験サンプルの組成の内訳、圧縮データ及び熱性能を表2に提供する。
【表2】
【0108】
本出願の発明は、一般的に及び特定の実施形態に関しての両方で上記に記載されてきた。本開示の範囲から逸脱することなく、実施形態に様々な変更及び変形を加えることができることが当業者に明らかであろう。したがって、実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその均等の範囲内にある限り、本発明の変更及び変形を包含することが意図されている。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0108
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0108】
本出願の発明は、一般的に及び特定の実施形態に関しての両方で上記に記載されてきた。本開示の範囲から逸脱することなく、実施形態に様々な変更及び変形を加えることができることが当業者に明らかであろう。したがって、実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその均等の範囲内にある限り、本発明の変更及び変形を包含することが意図されている。
(態様)
(態様1)
50wt%以下のフィブリル化ポリマーマトリックス、
40wt%を超えるエアロゲル粒子、及び、
合計が10wt%を超える、1つ以上の不透明剤、1つ以上の強化繊維、1つ以上の膨張性マイクロスフェア及びそれらの任意の組み合わせから選ばれる追加の粒子成分、
を含む、高温断熱性複合材であって、
質量パーセントは最終的な高温断熱性複合材の総質量に基づいており、
前記エアロゲル粒子及び前記追加の粒子成分は、フィブリル化ポリマーマトリックス内に耐久的に絡み合わされている、高温断熱性複合材。
(態様2)
5mm以下の厚さ又はチューブ壁厚を有するチューブ、テープ又はシートの形態である、態様1記載の断熱性複合材。
(態様3)
前記フィブリル化ポリマーマトリックスは、ポリオレフィン、超高分子量ポリエチレン、フルオロポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、延伸ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド又はそれらの任意の組み合わせを含む、態様1又は態様2記載の断熱性複合材。
(態様4)
前記ポリマーは、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、膨張超高分子量ポリエチレン(ePE)又はそれらの組み合わせである、態様1~3のいずれか1項記載の断熱性複合材。
(態様5)
前記追加の粒子成分の合計は10%未満の1つ以上の不透明剤を含む、態様1~4のいずれか1項記載の断熱性複合材。
(態様6)
前記追加の成分は、少なくとも2wt%の1つ以上の強化繊維を含む、態様1~5のいずれか1項記載の断熱性複合材。
(態様7)
前記追加の粒子成分は、最大で30wt%の膨張性マイクロスフェアを含む、態様1~6のいずれか1項記載の断熱性複合材。
(態様8)
前記不透明剤は、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、酸化鉄、炭化ケイ素、ケイ化モリブデン、酸化マンガン、アルキル基が1~7個の炭素原子を含むポリジアルキルシロキサン又はそれらの任意の組み合わせから選ばれる、態様1~7のいずれか1項記載の断熱性複合材。
(態様9)
前記1つ以上の強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、アルミノホウケイ酸繊維又はそれらの組み合わせを含む、態様1~8のいずれか1項記載の断熱性複合材。
(態様10)
50wt%未満のフィブリル化ポリマーマトリックス、
80wt%未満のエアロゲル粒子、
10wt%を超える少なくとも1つの不透明剤、
最大で25wt%の強化繊維、及び、
20wt%未満の膨張性マイクロスフェア、
を含む、高温断熱性複合材であって、
質量パーセントは、最終状態の高温断熱性複合材物品の総質量に基づいており、
前記エアロゲル粒子及び前記追加の粒子成分は、フィブリル化ポリマーマトリックス内に耐久的に絡み合わされている、高温断熱性複合材。
(態様11)
5mm以下の厚さ又はチューブ壁厚を有するチューブ、テープ又はシートの形態である、態様10記載の断熱性複合材。
(態様12)
前記フィブリル化ポリマーマトリックスは、ポリオレフィン、超高分子量ポリエチレン、フルオロポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、延伸ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド又はそれらの任意の組み合わせを含む、態様10又は態様11記載の断熱性複合材。
(態様13)
前記ポリマーは、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、膨張超高分子量ポリエチレン(ePE)又はそれらの組み合わせである、態様10~12のいずれか1項記載の断熱性複合材。
(態様14)
前記追加の成分は、少なくとも2wt%の1つ以上の強化繊維を含む、態様10~13のいずれか1項記載の断熱性複合材。
(態様15)
前記追加の粒子成分は、最大で30wt%の膨張性マイクロスフェアを含む、態様10~14のいずれか1項記載の断熱性複合材。
(態様16)
前記不透明剤は、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、酸化鉄、炭化ケイ素、ケイ化モリブデン、酸化マンガン、アルキル基が1~4個の炭素原子を含むポリジアルキルシロキサン又はそれらの任意の組み合わせから選ばれる、態様10~15のいずれか1項記載の断熱性複合材。
(態様17)
前記1つ以上の強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、アルミノホウケイ酸繊維又はそれらの組み合わせを含む、態様10~16のいずれか1項記載の断熱性複合材。
(態様18)
態様1記載の高温断熱性複合材を含む物品。
(態様19)
態様10記載の高温断熱性複合材を含む物品。
(態様20)
リチウムイオン電池内の熱伝播を防止するための、態様1~9のいずれか1項記載の高温断熱性複合材の使用。
(態様21)
リチウムイオン電池内の熱伝播を防止するための、態様10~17のいずれか1項記載の高温断熱性複合材の使用。
(態様22)
第一の温度を備えた高温事象を生成することができる第一の構成要素、
前記第一の温度への暴露から保護される第二の構成要素、及び、
第一の要素と第二の要素との間に位置する高温断熱性複合材であって、前記第一の構成要素に向かう第一の側及び前記第二の構成要素に向かう反対側を有する高温断熱性複合材、
を含む、物品であって、
前記高温断熱性複合材は、
約40wt%以上のエアロゲル粒子、
約60wt%以下のフィブリル化ポリマーマトリックス、及び、
1wt%~45wt%の、1つ以上の不透明剤、1つ以上の強化繊維、1つ以上の膨張性マイクロスフェア及びそれらの任意の組み合わせから選ばれる1つ以上の追加の粒子成分、
を含み、質量パーセントは、最終状態の高温断熱性複合材の総質量パーセントに基づいており、
前記エアロゲル粒子及び前記追加の粒子成分は、前記フィブリル化ポリマーマトリックス内に耐久的に絡み合わされている、物品。
(態様23)
第一の側及び第二の側を有する高温断熱性複合材の厚さ約1mmのシートを提供すること、
前記高温断熱性複合材のシートの前記第一の側を、質量約905g、接触表面積約106.4cm
2
(14cmx7.6cm)、約42.3kPaの圧力で約800℃の温度を有する加熱されたステンレスブロックに30分間圧縮接触させること、及び、
圧縮接触工程において30分間、前記第二の側で温度を測定すること、
を含む、熱伝播試験アッセイであって、
適切な熱伝播バリアは、215℃未満の最大測定温度によって規定される、熱伝播試験アッセイ。
(態様24)
第一の層及び第二の層を含む、多層高温断熱性複合材であって、
前記第一の層及び第二の層は、それぞれ、
合計wt%が100wt%に等しくなるようにして、
約40wt%以上のエアロゲル粒子、
約60wt%以下のフィブリル化ポリマーマトリックス、及び、
1wt%~45wt%の、1つ以上の不透明剤、1つ以上の強化繊維、1つ以上の膨張性マイクロスフェア及びそれらの任意の組み合わせから選ばれる1つ以上の追加の粒子成分、
を含み、
前記1つ以上の追加の粒子成分は、前記第一の層の第一の厚さにわたって、化学組成、粒子サイズ及び粒子サイズ分布のうちの1つ以上が変化し、そして、
前記1つ以上の追加の粒子成分は、前記第二の層の第二の厚さにわたって、化学組成、粒子サイズ及び粒子サイズ分布のうちの1つ以上が変化する、多層高温断熱性複合材。
(態様25)
第三の層を含み、前記第三の層は、第三の層の厚さにわたって、化学組成、粒子サイズ及び粒子サイズ分布のうちの1つ以上が変化する1つ以上の追加の粒子成分を含む、態様24記載の複合材。
(態様26)
前記1つ以上の追加の成分は不透明剤であり、前記第一の層はその中に第一の粒子サイズ分布を有する不透明剤を含み、前記第二の層はその中に第二の粒子サイズ分布を有する不透明剤を含み、前記第三の層はその中に第三の粒子サイズ分布を有する不透明剤を含む、態様25記載の複合材。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
50wt%以下のフィブリル化ポリマーマトリックス、
40wt%を超えるエアロゲル粒子、及び、
合計が10wt%を超える、1つ以上の不透明剤、1つ以上の強化繊維、1つ以上の膨張性マイクロスフェア及びそれらの任意の組み合わせから選ばれる追加の粒子成分、
を含む、高温断熱性複合材であって、
質量パーセントは最終的な高温断熱性複合材の総質量に基づいており、
前記エアロゲル粒子及び前記追加の粒子成分は、フィブリル化ポリマーマトリックス内に耐久的に絡み合わされている、高温断熱性複合材。
【請求項2】
5mm以下の厚さ又はチューブ壁厚を有するチューブ、テープ又はシートの形態である、請求項1記載の断熱性複合材。
【請求項3】
前記フィブリル化ポリマーマトリックスは、ポリオレフィン、超高分子量ポリエチレン、フルオロポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、延伸ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1又は請求項2記載の断熱性複合材。
【請求項4】
前記ポリマーは、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、膨張超高分子量ポリエチレン(ePE)又はそれらの組み合わせである、請求項1~
2のいずれか1項記載の断熱性複合材。
【請求項5】
前記追加の粒子成分の合計は10%未満の1つ以上の不透明剤を含む、請求項1~
2のいずれか1項記載の断熱性複合材。
【請求項6】
前記追加の成分は、少なくとも2wt%の1つ以上の強化繊維を含む、請求項1~
2のいずれか1項記載の断熱性複合材。
【請求項7】
前記追加の粒子成分は、最大で30wt%の膨張性マイクロスフェアを含む、請求項1~
2のいずれか1項記載の断熱性複合材。
【請求項8】
前記不透明剤は、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、酸化鉄、炭化ケイ素、ケイ化モリブデン、酸化マンガン、アルキル基が1~7個の炭素原子を含むポリジアルキルシロキサン又はそれらの任意の組み合わせから選ばれる、請求項1~
2のいずれか1項記載の断熱性複合材。
【請求項9】
前記1つ以上の強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、アルミノホウケイ酸繊維又はそれらの組み合わせを含む、請求項1~
2のいずれか1項記載の断熱性複合材。
【請求項10】
50wt%未満のフィブリル化ポリマーマトリックス、
80wt%未満のエアロゲル粒子、
10wt%を超える少なくとも1つの不透明剤、
最大で25wt%の強化繊維、及び、
20wt%未満の膨張性マイクロスフェア、
を含む、高温断熱性複合材であって、
質量パーセントは、最終状態の高温断熱性複合材物品の総質量に基づいており、
前記エアロゲル粒子及
び追加の粒子成分は、フィブリル化ポリマーマトリックス内に耐久的に絡み合わされている、高温断熱性複合材。
【請求項11】
5mm以下の厚さ又はチューブ壁厚を有するチューブ、テープ又はシートの形態である、請求項10記載の断熱性複合材。
【請求項12】
前記フィブリル化ポリマーマトリックスは、ポリオレフィン、超高分子量ポリエチレン、フルオロポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、延伸ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項10又は請求項11記載の断熱性複合材。
【請求項13】
前記ポリマーは、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、膨張超高分子量ポリエチレン(ePE)又はそれらの組み合わせである、請求項10~
11のいずれか1項記載の断熱性複合材。
【請求項14】
前記追加の成分は、少なくとも2wt%の1つ以上の強化繊維を含む、請求項10~
11のいずれか1項記載の断熱性複合材。
【請求項15】
前記追加の粒子成分は、最大で30wt%の膨張性マイクロスフェアを含む、請求項10~
11のいずれか1項記載の断熱性複合材。
【請求項16】
前記不透明剤は、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、酸化鉄、炭化ケイ素、ケイ化モリブデン、酸化マンガン、アルキル基が1~4個の炭素原子を含むポリジアルキルシロキサン又はそれらの任意の組み合わせから選ばれる、請求項10~
11のいずれか1項記載の断熱性複合材。
【請求項17】
前
記強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、アルミノホウケイ酸繊維又はそれらの組み合わせを含む、請求項10~
11のいずれか1項記載の断熱性複合材。
【請求項18】
請求項1記載の高温断熱性複合材を含む物品。
【請求項19】
請求項10記載の高温断熱性複合材を含む物品。
【請求項20】
リチウムイオン電池内の熱伝播を防止するための、請求項1~
2のいずれか1項記載の高温断熱性複合材の使用。
【請求項21】
リチウムイオン電池内の熱伝播を防止するための、請求項10~
11のいずれか1項記載の高温断熱性複合材の使用。
【国際調査報告】