(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】セメント産業において吸水を減少させ圧縮強度を向上させるための添加剤としてのシリコーン組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
C08L 83/04 20060101AFI20240621BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240621BHJP
C08K 5/544 20060101ALI20240621BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20240621BHJP
C08G 77/18 20060101ALI20240621BHJP
C04B 24/12 20060101ALI20240621BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20240621BHJP
C04B 24/42 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K3/36
C08K5/544
C08K5/17
C08G77/18
C04B24/12 A
C04B24/26 E
C04B24/42 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576162
(86)(22)【出願日】2022-06-13
(85)【翻訳文提出日】2024-02-13
(86)【国際出願番号】 IB2022055431
(87)【国際公開番号】W WO2022259228
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】202131026247
(32)【優先日】2021-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521151957
【氏名又は名称】ワッカー・メトロアーク・ケミカルズ・プライベイト・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】WACKER METROARK CHEMICALS PVT. LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ポール アミット クマール
(72)【発明者】
【氏名】タラフダール アビジット
【テーマコード(参考)】
4G112
4J002
4J246
【Fターム(参考)】
4G112MD01
4J002CP031
4J002CP032
4J002CP093
4J002DJ018
4J002EN037
4J002EN077
4J002EN107
4J002EX006
4J002EX076
4J002FD319
4J002GL00
4J002HA07
4J246AA03
4J246BA12X
4J246BB022
4J246BB02X
4J246CA14X
4J246CA24X
4J246CA26X
4J246FA071
4J246FA131
4J246FA471
4J246FB041
4J246FE27
4J246GA04
4J246HA56
(57)【要約】
圧縮強度を向上させ、吸水を減少させる添加剤組成物は、式(Ia)の単位を含むシリコーン樹脂を含む、アルキルシラン、またはその加水分解物、またはそれらの混合物を、添加剤組成物及び消泡剤組成物と共に含み、その組成物は、セメントプラントにおいて粉砕プロセスの前、または間に使用され、粉砕の間のエネルギ消費量を減少させるだけでなく、建設された構造物の向上した圧縮強度と共に疎水性を与えるために、疎水性添加剤材料のそれ以上の添加を排除する。建設された構造物の向上した圧縮強度を伴うそのような疎水性は、組成物が粉砕プロセスの後に使用される場合にでさえ、実現される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮強度を向上させ、吸水を減少させる添加剤組成物であって、
式(Ia)の単位を含むシリコーン樹脂を含む、アルキルシラン、またはその加水分解物、またはそれらの混合物を含み、
(R
1O)
aR
2
bR
3
cSiO
(4-a-b-c)/2 (Ia)
式中、
R
1は、同一または異なり、水素原子、1~4個の炭素原子を有する1価アルキル基であり、
R
2は、同一または異なり、1~3個の炭素原子を有する1価アルキル基であり、
R
3は、同一または異なり、少なくとも4個の炭素原子を有する1価アルキルであり、
aは、0以上3以下であり、
bは、0以上3以下であり、
cは、0以上3以下であり、
a+b+c≦3という条件で、
式(Ia)の全ての単位の50パーセントより多くにおいて、bは、cよりも小さく、それぞれの単位または平均的な単位の何れかで、a、b、cは同一または異なり、整数または分数である、
添加剤組成物。
【請求項2】
式(Ib)の前記アルキルシラン、またはその加水分解物、またはそれらの混合物であり、
(X)
4-nSiR’
n (Ib)
式中、nは1~3の任意の数であり、
Xは、同一または異なり、ハロゲン化物、-ORであり、
Rは、同一または異なり、C
1~C
20基であり、
R’は、同一または異なり、C
1~C
20基である、
請求項1に記載の添加剤組成物。
【請求項3】
シリコーン消泡剤組成物、及び非シリコーン消泡剤組成物、及びそれらの混合物を含むグループから選択される消泡剤組成物をさらに含む、請求項1に記載の添加剤組成物。
【請求項4】
(a)アミノシラン、(b)アミノシロキサン、または(c)ハイパーブランチポリカルボキシレートポリマー、もしくはNR’’
2-、もしくはR’’
2N-R’’’-NR’’-、もしくはR’’N=NR’’基、式中、R’’、R’’’は、C
1~C
20基を有する置換されてもよい芳香族もしくは脂肪族炭化水素基である、を有する分子、から選択される有機添加剤、またはそれらの混合物、から選択される添加剤をさらに含む、請求項1に記載の添加剤組成物。
【請求項5】
前記R
1、前記R
2は、メチルまたはエチルであり、前記R
3は、オクチルまたはイソ-オクチル基である、請求項1に記載の添加剤組成物。
【請求項6】
前記式(I)のアルキルシラン、またはその加水分解物、または混合組成物は、乳化されるか、または溶媒中にある、請求項1に記載の添加剤組成物。
【請求項7】
前記シリコーン消泡剤組成物は、シリコーンポリマー、シリカ、界面活性剤、及び水を含む、請求項3に記載の添加剤組成物。
【請求項8】
前記有機添加剤は、ジアミン、またはアルカノールアミン、またはそれらの混合物を含む、請求項4に記載の添加剤組成物。
【請求項9】
圧縮強度を向上させ、吸水を減少させる自己分散型混合添加剤組成物であって、
式(Ia)の単位を含むシリコーン樹脂を含む、アルキルシラン、またはその加水分解物、またはそれらの混合物を含み、
(R
1O)
aR
2
bR
3
cSiO
(4-a-b-c)/2 (Ia)
式中、
R
1は、同一または異なり、水素原子、1~4個の炭素原子を有する1価アルキル基であり、
R
2は、同一または異なり、1~3個の炭素原子を有する1価アルキル基であり、
R
3は、同一または異なり、4~20個の炭素原子を有する1価アルキルであり、
aは、0以上3以下であり、
bは、0以上3以下であり、
cは、0以上3以下であり、
a+b+c≦3という条件で、
式(Ia)の全ての単位の50パーセントより多くにおいて、bは、cよりも小さく、それぞれの単位または平均的な単位の何れかで、a、b、cは同一または異なり、整数または分数である、
自己分散型混合添加剤組成物。
【請求項10】
シリコーン消泡剤組成物、及び非シリコーン消泡剤組成物、及びそれらの混合物を含むグループから選択される消泡剤組成物をさらに含む、請求項9に記載の、圧縮強度を向上させ、吸水を減少させる自己分散型混合添加剤組成物。
【請求項11】
(a)アミノシラン、(b)アミノシロキサン、または(c)ハイパーブランチポリカルボキシレートポリマー、もしくはNR’’
2-、もしくはR’’
2N-R’’’-NR’’-、もしくはR’’N=NR’’基、式中、R’’、R’’’は、C
1~C
20基を有する置換されてもよい芳香族もしくは脂肪族炭化水素基である、を有する分子、から選択される有機添加剤、またはそれらの混合物、から選択される添加剤をさらに含む、請求項9に記載の、圧縮強度を向上させ、吸水を減少させる自己分散型混合添加剤組成物。
【請求項12】
前記式(Ia)のアルキルシラン、またはその加水分解物、または混合組成物は、乳化されるか、または溶媒中にある、請求項9に記載の、圧縮強度を向上させ、吸水を減少させる自己分散型混合添加剤組成物。
【請求項13】
圧縮強度を向上させ、吸水を減少させるセメント組成物であって、
a)式(Ia)の単位を含むシリコーン樹脂を含む、アルキルシラン、またはその加水分解物、またはそれらの混合物を含む、0.01~5重量%の、圧縮強度を向上させ、吸水を減少させる添加剤組成物と、
(R
1O)
aR
2
bR
3
cSiO
(4-a-b-c)/2 (Ia)
式中、
R
1は、同一または異なり、水素原子、1~4個の炭素原子を有する1価アルキル基であり、
R
2は、同一または異なり、1~3個の炭素原子を有する1価アルキル基であり、
R
3は、同一または異なり、4~20個の炭素原子を有する1価アルキルであり、
aは、0以上3以下であり、
bは、0以上3以下であり、
cは、0以上3以下であり、
a+b+c≦3という条件で、
式(Ia)の全ての単位の50パーセントより多くにおいて、bは、cよりも小さく、それぞれの単位または平均的な単位の何れかで、a、b、cは同一または異なり、整数または分数である、
b)15%~35%のポゾラン材料と、
c)60%~80%のクリンカと、
を含む、セメント組成物。
【請求項14】
有機添加剤は、ジアミン、またはアルカノールアミン、またはそれらの混合物を含む、請求項13に記載のセメント組成物。
【請求項15】
セメントモルタルまたはコンクリート組成物であって、
I)a)式(Ia)の単位を含むシリコーン樹脂を含む、アルキルシラン、またはその加水分解物、またはそれら混合物を含む、0.01~100%の、圧縮強度を向上させ、吸水を減少させる添加剤組成物と、
(R
1O)
aR
2
bR
3
cSiO
(4-a-b-c)/2 (Ia)
式中、
R
1は、同一または異なり、水素原子、1~4個の炭素原子を有する1価アルキル基であり、
R
2は、同一または異なり、1~3個の炭素原子を有する1価アルキル基であり、
R
3は、同一または異なり、4~20個の炭素原子を有する1価アルキルであり、
aは、0以上3以下であり、
bは、0以上3以下であり、
cは、0以上3以下であり、
a+b+c≦3という条件で、
式(Ia)の全ての単位の50パーセントより多くにおいて、bは、cよりも小さく、それぞれの単位または平均的な単位の何れかで、a、b、cは同一または異なり、整数または分数である、
b)(a)アミノシラン、(b)アミノシロキサン、または(c)ハイパーブランチポリカルボキシレートポリマー、もしくはNR’’
2-、もしくはR’’
2N-R’’’-NR’’-、もしくはR’’N=NR’’基、式中、R’’、R’’’は、C
1~C
20基を有する置換されてもよい芳香族もしくは脂肪族炭化水素基である、を有する分子、から選択される有機添加剤、またはそれらの混合物、から選択される0~69.99%の添加剤と、
c)シリコーン消泡剤組成物、及び非シリコーン消泡剤組成物、及びそれらの混合物から選択される0~30%の消泡剤組成物と、
を含む、0.01~5重量%のセメント添加剤組成物を含むセメント組成物と、
II)シリカ組成物と、
を含み、
前記コンクリートまたは前記モルタル組成物は、前記コンクリートまたは前記モルタルにおいて、DIN EN 12390-3またはDIN EN 196-1のそれぞれに従って測定される圧縮強度を10~30%の範囲で向上させ、ASTM C1585による吸水を10~40%の範囲で減少させる、セメントモルタルまたはコンクリート組成物。
【請求項16】
上記請求項の何れかに記載の圧縮強度を向上させ、吸水を減少させる添加剤組成物であって、当該組成物は、ポルトランドセメント組成物のための添加剤組成物である、添加剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、圧力強度の向上をもたらし、吸水を減少させる、シリコーン樹脂を含む、アルキルシラン、またはその加水分解物、またはそれらの混合物を含む添加剤組成物に関する。上記添加剤は、セメント組成物に、その圧縮強度及び疎水性を向上させるために添加され得る。
【0002】
[発明の背景]
世界中で毎年生産される全セメントは、およそ40億メートルトンである(リンクhttps://pubs.usgs.gov/periodicals/mcs2020/mcs2020-cement.pdfにおける米国地質調査所による世界の生産量及び生産能力表)。世界中にほぼ3300のセメントを生産する施設またはプラントがある。インドだけで、毎年約5億4500万トン生産する560より多くのセメントプラントがあり、インドは、中国に続く世界第2位の生産国である。インドにおいて、セメントセクタは、7つのサブセクタ-ポルトランドポゾランセメント(PPC)、ポルトランドコンポジットセメント(PCC)、普通ポルトランドセメント(OPC)、ポルトランドスラグセメント(PPC)、湿式プラント、ホワイトプラント(White Plants)、粉砕プラント及びクリンカリゼーション(clinkerisation)プラントに関連する製品及びプロセスに基づいて分類されている。建設業界において、全ての建設資材について対処する必要がある主要な問題は、全ての建設資材は水分が原因で寿命の短縮につながることから、建造物を水分から適切に保護することである。建設資材を水分から遠ざけるために選択される様々なアプローチがある。所望の建造物の建設が完了した後で、水分がその外表面に直接接触することを防止するために、その建造物にコーティングすること、例えば、塗装、またはウェザーコート(weather coat)などである。水分を防止するための他のアプローチは、材料を、建設の基本要素、例えば、所望の構造物の形成後に表面で撥水作用を形成する、セメント、小型骨材及び/または大型骨材、と予め混合することによる。他のアプローチは、その材料のいかなる他の特性も損なうことなく水分からの最大の所望の保護を得るために、個別の添加剤が使用されなくてもよいように、建築用資材の原料の固有の性質を変更することである。セメントに疎水性添加剤材料を用いる、または添加することの主要な問題のうちの1つは、そのような添加剤が混合されたセメントによって調製されるモルタル、プラスタまたはコンクリートの圧縮強度が大幅に低下することである。それゆえに、モルタル、プラスタまたはコンクリートにおいて所望の圧縮強度を維持して疎水性をもたらす、所望のセメント添加剤組成物を得る必要がある。
【0003】
セメント産業において、製造ユニットが直面する別の重要な問題は、エネルギ消費量である。インドにおいて、85の指定された消費者の報告された総エネルギ消費量は、約15.01MTOE(エネルギ効率局による石油換算100万トン、https://beeindia.gov.in/node/166)である。セメント生産のための総電気エネルギ消費量は、約100kWh/セメント1トン、であり、およそ3分の2が粒子サイズの縮小のために使用される。セメントプラントにて使用される総電気エネルギの約65%は、石炭、原料、及びクリンカの粉砕のために利用される。セメント産業において、無機材料である水硬性セメントは、周囲条件下で水と反応し、硬化された耐水性の製品を形成する能力を有し、これは非常に重要であり、広く使用されるセメントである。このような水硬性セメントの製造は、焼結されたクリンカを製造するために、粘土質材料と石灰質材料との混合物を焼成するプロセスを必要とする。ポルトランドセメントは、最も幅広く使用される水硬性セメントであり、これは、石灰質材料及び粘土質材料を焼結してクリンカを形成し、その後所望の凝結特性を得るために石膏(3~3.5%)と共に粉砕することによって製造される。少量の他の材料もまた、クリンカ材料の粉砕の間に添加される。そのような材料の最も一般的な添加のうちの1つは、粉砕作業の効率を向上させ、それにより、設備投資を減少させるかまたは処理量を向上させる、そのような粉砕プロセスに必要とされる電力を削減する粉砕助剤である。
【0004】
多数の粉砕助剤組成物が従来技術において周知であり、それらは個別の添加剤として再びセメントに加えられ、このことは、さらなるコストを発生させ、それゆえに競争力は低下するであろう。
【0005】
例えば、グリコール、アルカノールアミン、芳香族アセテートなどの材料は、必要とされるエネルギの量を削減し、それにより、クリンカの粉砕効率を向上させるために示されている。しかし、粉砕のための助剤として添加され、その後形成されるコンクリート、プラスタ、またはモルタルの圧縮強度などの所望の機械的特性を維持するだけでなく、構成される材料に撥水特性をも与える、そのような組成物は存在しない。
【0006】
hydrophobic silica as a grinding aidという発明名称のUS3333776Aにおける、段落1の48~53行目に、疎水性有機ケイ素と共に処理することによって疎水性となったシリカ粉末が、シリカ無し、または未処理の親水性シリカの存在下での粉砕よりも、粉砕プロセスにおいて顕著な改善(より高速で微細な粉砕)を引き起こすことが記載されている。組成物は、疎水性に言及しているが、しかしこれは、セメントまたは最終的な構造物の疎水性に所望の効果はもたらさない。
【0007】
Silicon containing grinding aides for clinkerという発明名称のWO2000039047A1がある。この参考文献において、粉砕助剤は、粉砕の間に消費されるエネルギを削減するために、及び/またはセメント製品の疎水性を向上させるためにセメントクリンカに添加される。粉砕助剤は、環状シロキサン、官能化されたポリジオルガノシロキサン、またはそれらの混合物とされ得る。単量体のアルコキシシランに加えて、アルコキシシランの部分加水分解及び縮合によるオリゴマー製品もまた、この発明の組成物において使用され得ることもまた記載されている。組成物は、シリコーン組成物に言及しているが、セメントまたは最終的な構造物について、疎水性及び圧縮強度の所望の組み合わせはもたらさない。
【0008】
Silicon containing grinding aides for slagという発明名称のWO2000039046A1には、スラグ及びスラグ/クリンカ原料混合物のための粉砕助剤が開示される。粉砕助剤は、流体を含む任意のシリコーンまたはそれらの混合物である。単量体のアルコキシシランに加えて、アルコキシシランの部分加水分解及び縮合によるオリゴマー生成物もまたこの発明の組成物において使用され得ることが記載されている。組成物は、シリコーン組成物に言及しているが、セメントまたは最終的な構造物について、疎水性及び圧縮強度の所望の組み合わせはもたらさない。
【0009】
process for the producion of finely divided materialsという発明名称のGB1112018Aにおいて、微粒子化された材料を製造することは、(a)微粒子の、可鍛性の無い、脆性の固形物10重量部、(b)少なくとも20平方メートル毎グラムの表面積を有するシリカ粉末0.1~2重量部であって、その表面は、オルガノ-及びハロオルガノ-シラザン(organo- and haloorgano-silazanes)、オルガノ-及びハロオルガノ-シロキサン(organo- and haloorgano-siloxanes)、及びヒドロキシ-活性オルガノ-及びハロオルガノ-シラン(hydroxyl-reactive organo- and haloorgano-silanes)から選択される有機ケイ素化合物との処理によって疎水性にされる、及び(c)(a)の溶媒でない揮発性、不活性液体5~20重量部、からなる組成物をボールミルで粉砕すること、を含み、(a)、(b)及び(c)の混合物は、粉砕プロセスを通して、自由に流動するスラリーである。組成物は、シリコーン組成物に言及しているが、セメントまたは最終的な構造物について、疎水性はもたらさない。
【0010】
process of making cements with silicon containing grounding aidという発明名称のUS6635109において、要約で、粉砕助剤は、それが(iii)において粉砕される前にセメントクリンカに添加される。粉砕助剤は、未焼成の直接プロセスの残留ゲルであり、これは、アルキルハロシランの製造における副生成物として生成されるアルキルハロジシランの加水分解生成物である。組成物は、シリコーン組成物に言及しているが、セメントまたは最終的な構造物について、所望の疎水性はもたらさない。さらに、ハロゲン基の存在によって、コンクリート中に存在する鉄棒との腐食反応が増加する。
【0011】
US7160384B2においては粉砕ミルへの導入方法が開示され、セメントクリンカは、セメント粉末、テトラヒドロキシエチルエチレンジアミン(tetrahydroxylethylethylene diamine)などのジアミン、及びトリエタノールアミンまたはトリイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミンをもたらすために粉砕される。ジアミンとアルカノールアミンとの組み合わせは、ジアミンまたはアルカノールアミンが個別に添加されるのと比べ、優れた粉砕効率をもたらす。この組成物は、組成物の最終的な疎水性、及び圧縮強度特性について言及しない。
【0012】
CN108840597Aにおいて、本参照の組成物は、変性トリエタノールアミン粉砕助剤の一種、つまり、第1変性トリエタノールアミン、第2変性トリエタノールアミン、モラセス、シリコーンエマルジョン、ピロリン酸ナトリウム、水、に関する。本発明の変性トリエタノールアミン粉砕助剤の一種は、粉砕助剤が固体粒子表面に吸収され、粒子表面の構造上の特性を変化させ、粒子の凝集を阻止し、材料の流動性を向上させ、新生クラックル(newborn crackle)の閉鎖を効果的に阻止することができ、材料クラックルの拡張を加速させ、粒子と粒子との間の凝集及び密着性を迅速に解消するかまたは弱めることができ、12%以上ミル効率を上昇させ、3日の強度の増加≧5MPa、28日の強度の増加≧6MPa、予め設定した期間≧200分、最終設定時間≦300分である。
【0013】
これは異なる組成物であり、所望の疎水性、強度及び粉砕エネルギの削減をもたらさない。ここで、トリエタノールアミンは30部存在し、(シロキサンエマルジョンでの)シロキサンは、4部の25%、つまり1部であり、それゆえに、トリエタノールアミンとシロキサンとの比は90:3であり、これは、圧縮強度及び吸水の両方の所望の結果のために有効でない。
【0014】
US9028609B2において、添加剤組成物は、少なくとも1つの遅延剤だけでなく、グリコール、1~4個の炭素原子を有するモノカルボン酸、及び櫛形ポリマーから選択される粉砕助剤を含み、これらはセメントクリンカを粉砕するプロセスの間に使用されることができ、処理された状態の粉砕セメントのわずかな褐変を引き起こす。
【0015】
US8470925B2において、ここで、シリコーン樹脂の水性エマルジョンは、固体被膜として使用され、また耐水性/撥水性を与えるために上面を覆うように使用されて、天候保護性を向上させる。このような組成物は異なるものであり、1.7mol%のR基はオクチル基、残りはメチル、を有し、またそれゆえにバルク組成物で使用されるとき耐水性/撥水性の特性を付与し得ない可能性があり、また十分な圧縮強度特性を付与し得ない可能性がある。
【0016】
このように、疎水性及び粉砕助剤を論じる参考文献はあるが、建設製品のバルク疎水性及びより良好な圧縮強度の所望のレンダリング(rendering)と共に、セメントプラントにおけるエネルギ消費量を削減する、添加剤組成物としての安定組成物の必要性が残る。
【0017】
セメントのような基本の建設資材には、最少量の添加剤を添加することが好ましく、その結果、強度及び耐久性などの他の重要な特性を損なうことがない。セメントの製造の間に添加される添加剤の最少量を制御することによって、セメント価格を最適化することが重要である。セメント市場は、価格競争が激しい。それゆえに、本発明は、所望の強度及び耐久性を有し、さらに競争力もある、セメントの製造の間に最少量が添加されるセメントの処理のための添加剤を提供することを模索する。
【0018】
[発明の目的]
本発明の目的の1つは、建設資材、限定されるものではないが特にセメント、への混和剤の使用または添加剤材料の添加を最小限にすることである。
【0019】
本発明の他の目的は、建設資材プラント、限定されるものではないが特にセメントプラントにおける粉砕プロセス、における処理エネルギの削減である。
本発明の別の目的は、いかなる添加剤もさらに添加することなく、圧縮強度を損なうことなしに、建設された構造物の最終的な疎水性を実現することである。
【0020】
[発明の概要]
一態様において、本発明は、
式(Ia)の単位を含むシリコーン樹脂を含む、アルキルシラン、またはその加水分解物、またはそれらの混合物、
を含む、圧縮強度を向上させ、吸水を減少させる添加剤組成物を提供し、
(R1O)aR2
bR3
cSiO(4-a-b-c)/2 (Ia)
式中、R1は、同一または異なり、水素原子、1~4個の炭素原子を有する1価アルキル基であり、
R2は、同一または異なり、1~3個の炭素原子を有する1価アルキル基であり、
R3は、同一または異なり、少なくとも4個の炭素原子を有する1価アルキルであり、
aは、0以上3以下であり、
bは、0以上3以下であり、
cは、0以上3以下であり、
a+b+c≦3という条件で、
式(Ia)の全ての単位の50パーセントより多くにおいて、bは、cよりも小さく、それぞれの単位または平均的な単位の何れかで、a、b、cは同一または異なり、整数または分数である。
【0021】
別の態様において、本発明は、
式(Ia)の単位を含むシリコーン樹脂(または、オリゴマー)を含む、アルキルシラン、またはその加水分解物、またはそれらの混合物、
を含む、圧縮強度を向上させ、吸水を減少させる自己分散型混合添加剤組成物を提供し、
(R1O)aR2
bR3
cSiO(4-a-b-c)/2 (Ia)
式中、
R1は、同一または異なり、水素原子、1~4個の炭素原子を有する1価アルキル基であり、
R2は、同一または異なり、1~3個の炭素原子を有する1価アルキル基であり、
R3は、同一または異なり、4個より多くの炭素原子、特に4~20個の炭素原子を有する1価アルキルであり、
aは、0以上3以下であり、
bは、0以上3以下であり、
cは、0以上3以下であり、
a+b+c≦3という条件で、
式(Ia)の全ての単位の50パーセントより多くにおいて、bは、cよりも小さく、それぞれの単位または平均的な単位の何れかで、a、b、cは同一または異なり、整数または分数である。
【0022】
さらなる態様において、本発明は、
a)式(Ia)の単位を含むシリコーン樹脂(または、オリゴマー)を含む、アルキルシラン、またはその加水分解物、またはそれらの混合物を含む、0.01~5重量%の、圧縮強度を向上させ、吸水を減少させる添加剤組成物と、
(R1O)aR2
bR3
cSiO(4-a-b-c)/2 (Ia)
式中、
R1は、同一または異なり、水素原子、1~4個の炭素原子を有する1価アルキル基であり、
R2は、同一または異なり、1~3個の炭素原子を有する1価アルキル基であり、
R3は、同一または異なり、4~20個の炭素原子を有する1価アルキルであり、
aは、0以上3以下であり、
bは、0以上3以下であり、
cは、0以上3以下であり、
a+b+c≦3という条件で、
式(Ia)の全ての単位の50パーセントより多くにおいて、bは、cよりも小さく、それぞれの単位または平均的な単位の何れかで、a、b、cは同一または異なり、整数または分数である、
b)15%~35%のポゾラン材料と、
c)60%~80%のクリンカと、
を含む、圧縮強度を向上させ、吸水を減少させるセメント組成物を提供する。
【0023】
米国コンクリート学会によって規定されるように、ポゾランは、それ自体はセメント質の値(cementitious value)をほとんど、または全く有しないが、微粒子化された形で、また水分の存在下で、常温で水酸化カルシウムと化学的に反応し、セメント質の特性を有する化合物を形成する、シリカ質の、またはシリカアルミナ(siliceous and aluminous)質の材料である。
【0024】
それゆえに、それは、セメント系材料として分類される。天然ポゾラン(ACI232.1R)と、人工ポゾラン(フライアッシュACI232.2R、及びシリカフュームACI234R)との両方が存在する。様々な種類のポゾランの限定されない説明と、それらのための規格が、ASTM C618及びASTM C1240に与えられる。
【0025】
クリンカは、(1)セメントを製造するために粉砕されるキルンの部分的溶融物、(2)他のガラス化または焼成材料、として規定される。一方、コンクリートは、混合剤、繊維または他のセメント系材料を含む、または含まない、水硬性セメント、骨材、及び水の混合物である。
【0026】
さらなる態様において、本発明は、セメントモルタルまたはコンクリート組成物であって、
I)a)式(Ia)の単位を含むシリコーン樹脂を含む、アルキルシラン、またはその加水分解物、またはそれらの混合物を含む、0.01~100%の、圧縮強度を向上させ、吸水を減少させる添加剤組成物と、
(R1O)aR2
bR3
cSiO(4-a-b-c)/2 (Ia)
式中、
R1は、同一または異なり、水素原子、1~4個の炭素原子を有する1価アルキル基であり、
R2は、同一または異なり、1~3個の炭素原子を有する1価アルキル基であり、
R3は、同一または異なり、4~20個の炭素原子を有する1価アルキルであり、
aは、0以上3以下であり、
bは、0以上3以下であり、
cは、0以上3以下であり、
a+b+c≦3という条件で、
式(Ia)の全ての単位の50パーセントより多くにおいて、bは、cよりも小さく、それぞれの単位または平均的な単位の何れかで、a、b、cは同一または異なり、整数または分数である、
b)(a)アミノシラン、(b)アミノシロキサン、または(c)ハイパーブランチポリカルボキシレートポリマー、もしくはNR’’2-、もしくはR’’2N-R’’’-NR’’-、もしくはR’’N=NR’’基、式中、R’’、R’’’は、C1~C20基を有する置換されてもよい芳香族もしくは脂肪族炭化水素基である、を有する分子、から選択される有機添加剤、またはそれらの混合物、から選択される0~69.99%の添加剤と、
c)シリコーン消泡剤組成物、及び非シリコーン消泡剤組成物、及びそれらの混合物から選択される0~30%の消泡剤組成物と、
を含む、0.01~5重量%のセメント添加剤組成物、を含むセメント組成物と、
II)シリカ組成物と、
を含み、
コンクリートまたはモルタル組成物は、コンクリートまたはモルタルにおいて、DIN EN 12390-3またはDIN EN 196-1のそれぞれに従って測定される圧縮強度を10~30%の範囲で向上させ、ASTM C1585による吸水を10~40%の範囲で減少させる、セメントモルタルまたはコンクリート組成物を提供する。
【0027】
本発明は、驚くべきことに、式(Ib)のアルキルアルコキシシラン、またはその加水分解物、またはそれらの混合物を、有機/有機シリコーン添加剤、及び/または消泡剤組成物と共に含む、圧縮強度を向上させ、吸水を減少させるセメント添加剤組成物を見出し、組成物は、セメントプラントにおいて粉砕プロセスの前、間に使用され、粉砕の間のエネルギ消費量を削減するだけでなく、建設された構造物の向上した圧縮強度と共に疎水性を与えるために、疎水性添加剤材料のそれ以上の添加を排除する。このような添加剤組成物は、粉砕プロセスの後に添加されるとしても、吸水を減少させ、圧縮強度を向上させるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[詳細な説明]
圧縮強度を向上させ、吸水を減少させる添加剤組成物は、
式(Ia)の単位を含むシリコーン樹脂(またはオリゴマー)を含む、アルキルシラン、またはその加水分解物、またはそれらの混合物を含み、
(R1O)aR2
bR3
cSiO(4-a-b-c)/2 (Ia)
式中、
R1は、同一または異なり、水素原子、1~4個の炭素原子を有する1価アルキル基であり、
R2は、同一または異なり、1~3個の炭素原子を有する1価アルキル基であり、
R3は、同一または異なり、4~20個の炭素原子を有する1価アルキルであり、
aは、0以上3以下であり、
bは、0以上3以下であり、
cは、0以上3以下であり、
a+b+c≦3という条件で、
式(Ia)の全ての単位の50パーセントより多くにおいて、bは、cよりも小さく、それぞれの単位または平均的な単位の何れかで、a、b、cは同一または異なり、整数または分数である。
【0029】
ここで、式(Ib)のアルキルシラン、またはその加水分解物、またはそれらの混合物であり、
(X)4-nSiR’n (Ib)
式中、nは1~3の任意の数、Xは、同一または異なり、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、アルコキシド(-OR)であり、Rは、同一または異なり、C1~C20基であり、R’は、同一または異なり、C1~C20基である。
【0030】
実施形態のうちの1つにおいて、添加剤組成物は、シリコーン消泡剤組成物、及び非シリコーン消泡剤組成物、及びそれらのその混合物から選択される消泡剤組成物をさらに含んでもよい。
【0031】
別の実施形態において、添加剤組成物は、(a)アミノシラン、(b)アミノシロキサン、または(c)ハイパーブランチポリカルボキシレートポリマー、もしくはNR’’2-、もしくはR’’2N-R’’’-NR’’-、もしくはR’’N=NR’’基、式中、R’’、R’’’は、C1~C20基を有する置換されてもよい芳香族もしくは脂肪族炭化水素基である、を有する分子から選択される有機添加剤、またはそれらの混合物、から選択される添加剤をさらに含んでもよい。
【0032】
実施形態のうちの1つにおいて、アルキルシランの加水分解物または混合物と、添加剤と、消泡剤組成物との比は、(100~20):(80~0):(20~0)である。
【0033】
一実施形態において、添加剤組成物は、式(Ib)のアルキルシラン、またはその加水分解物、または式(1a)の混合組成物であり、乳化されるか、または溶媒中にある。好適な溶媒は、アセトン、アセトニトリル、アルコール、ホルムアルデヒド、エーテル、酢酸エチル、芳香族系溶剤(トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化有機溶剤(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素など)、炭化水素(ヘキサン、ガソリン、灯油、揮発油)を含んでもよい。それはまた、例えば、それが、ベンゼン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、n-ブチルベンゼン、t-ブチルベンゼン、及びイソプロピルベンゼンなどの芳香族系溶剤を含む有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル及びプロピオン酸メチルなどの低級エステル系溶剤(lower ester solvent)、及びアセトン、メチルエチルケトン及びジエチルケトンなどのケトン系溶剤を含んでもよい。溶媒は、別のものと組み合わせて用いられてもよい。溶媒は、シラン及びその加水分解物の含有量が、スラリー中で5~95重量パーセントの範囲であろう量で好ましくは使用されてもよい。グリコールエーテルは、限定されるものではないが、ジ(オキシプロピレン)グリコール-t-ブチルエーテル(DPTB)、ジ(オキシプロピレン)グリコール-n-ブチルエーテル(DPNB)、またはそれらの混合物を含む。溶媒は、ジ(オキシプロピレン)グリコール(DPG)、ジ(オキシエチレン)グリコール(DIEG)、またはそれらの混合物などの低分子グリコールを追加的に含んでもよい。それはまた、ベンゼン、テレピン、パイン油、ロジン、または例えば石油エーテルまたはガソリンなどの脂肪族溶剤などの炭化水素溶剤であってもよい。
【0034】
実施形態のうちの1つにおいて、圧縮強度を向上させ、吸水を減少させる自己分散型混合添加剤組成物は、
式(Ia)の単位を含むシリコーン樹脂(またはオリゴマー)を含む、アルキルシランの加水分解物、またはその混合物を含み、
(R1O)aR2
bR3
cSiO(4-a-b-c)/2 (Ia)
式中、
R1は、同一または異なり、水素原子、1~4個の炭素原子を有する1価アルキル基であり、
R2は、同一または異なり、1~3個の炭素原子を有する1価アルキル基であり、
R3は、同一または異なり、4~20個の炭素原子を有する1価アルキルであり、
aは、0以上3以下であり、
bは、0以上3以下であり、
cは、0以上3以下であり、
a+b+c≦3という条件で、
式(I)の全ての単位の50パーセントより多くにおいて、bは、cよりも小さく、それぞれの単位または平均的な単位の何れかで、a、b、cは同一または異なり、整数または分数である。
【0035】
別の実施形態において、自己分散型混合添加剤組成物は、シリコーン消泡剤組成物及び非シリコーン消泡剤組成物、及びそれらの混合物から選択される消泡剤組成物をさらに含む。
【0036】
一実施形態において、自己分散型混合添加剤組成物は、(a)アミノシラン、(b)アミノシロキサン、または(c)ハイパーブランチポリカルボキシレートポリマー、もしくはNR’’2-、もしくはR’’2N-R’’’-NR’’-、もしくはR’’N=NR’’基、式中、R’’、R’’’は、C1~C20基を有する置換されてもよい芳香族もしくは脂肪族炭化水素基である、を有する分子から選択される有機添加剤、またはそれらの混合物、から選択される添加剤をさらに含む。
【0037】
実施形態のうちの1つにおいて、圧縮強度を向上させ、吸水を減少させるセメント組成物は、
a)式(Ia)の単位を含むシリコーン樹脂を含む、アルキルシランの加水分解物、またはその混合物を含む、0.01~5重量%の、圧縮強度を向上させ、吸水を減少させる添加剤組成物と、
(R1O)aR2
bR3
cSiO(4-a-b-c)/2 (Ia)
式中、
R1は、同一または異なり、水素原子、1~4個の炭素原子を有する1価アルキル基であり、
R2は、同一または異なり、1~3個の炭素原子を有する1価アルキル基であり、
R3は、同一または異なり、4~20個の炭素原子を有する1価アルキルであり、
aは、0以上3以下であり、
bは、0以上3以下であり、
cは、0以上3以下であり、
a+b+c≦3という条件で、
式(I)の全ての単位の50パーセントより多くにおいて、bは、cよりも小さく、それぞれの単位または平均的な単位の何れかで、a、b、cは同一または異なり、整数または分数である、
b)15%~35%のポゾラン材料と、
c)60%~80%のクリンカと、
を含む。
【0038】
別の実施形態において、セメント組成物は、有機添加剤が、ジアミン、またはアルカノールアミン、またはそれらの混合物を含む。
セメントモルタルまたはコンクリート組成物は、
I)a)式(Ia)の単位を含むシリコーン樹脂を含む、アルキルシランの加水分解物、またはその混合物、を含む、0.01~100%の圧縮強度を向上させ、吸水を減少させる添加剤組成物と、
(R1O)aR2
bR3
cSiO(4-a-b-c)/2 (Ia)
式中、
R1は、同一または異なり、水素原子、1~4個の炭素原子を有する1価アルキル基であり、
R2は、同一または異なり、1~3個の炭素原子を有する1価アルキル基であり、
R3は、同一または異なり、4~20個の炭素原子を有する1価アルキルであり、
aは、0以上3以下であり、
bは、0以上3以下であり、
cは、0以上3以下であり、
a+b+c≦3という条件で、
式(I)の全ての単位の50パーセントより多くにおいて、bは、cよりも小さく、それぞれの単位または平均的な単位の何れかで、a、b、cは同一または異なり、整数または分数である、
b)(a)アミノシラン、(b)アミノシロキサン、または(c)ハイパーブランチポリカルボキシレートポリマー、もしくはNR’’2-、もしくはR’’2N-R’’’-NR’’-、もしくはR’’N=NR’’基、式中、R’’、R’’’は、C1~C20基を有する置換されてもよい芳香族もしくは脂肪族炭化水素基である、を有する分子から選択されるものを含む有機添加剤、またはそれらの混合物、から選択される0~69.99%の添加剤と、
c)シリコーン消泡剤組成物、及び非シリコーン消泡剤組成物、及びそれらの混合物から選択される0~30%の消泡剤組成物と、
を含む、0.01~5重量%のセメント添加剤組成物を含むセメント組成物と、
II)シリカ組成物と、
を含み、
コンクリートまたはモルタル組成物は、コンクリートまたはモルタルにおいて、DIN EN 196-1に従って測定される圧縮強度を10~30%の範囲で向上させ、ASTM C1585による吸水を10~40%の範囲で減少させる。
【0039】
別の実施形態において、セメント添加剤組成物は、組成物が、0パーセント~50パーセントより少ない、式(II)のシラン組成物をさらに含み、
(R4O)4-n-mSiR5
nR6
m (II)
式中、nは、0~3の任意の数であり、mは、1~3の任意の数であり、R5は同一または異なり、1~4個の炭素原子を有する1価アルキル基であり、R6は、同一または異なり、1~20個の炭素原子を有する1価アルキルである。
【0040】
一実施形態における添加剤組成物において、シリコーン樹脂は、シリコーン樹脂(シリコーン樹脂中の50%より多くのRSiO3/2基に、40パーセント以上のオクチル基、好ましくは50パーセント以上のオクチル基を有する)と、シラン組成物との混合物の10パーセント~100パーセントであり、好ましくは、シリコーン樹脂(40パーセント以上のオクチル基、好ましくは50パーセント以上のオクチル基を有する)とシラン組成物との混合物の20パーセント~100パーセントである。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、シランまたはその加水分解物(シリコーン樹脂)は、多孔質製品、好ましくはドライセメントに疎水性をもたらし、一方、非イオン性乳化剤は、シランまたはその加水分解物(シリコーン樹脂)を極性溶媒に分散させることに寄与し、セメントまたはプラスタのバルクにおける均一なセメント粒子へのシランまたは加水分解物のコーティングの塗布に役立つ。バルクの疎水化は、その表面だけでなく、コンポーネントの全体積が疎水性を得る点で有利であり、たとえ疎水性の表面が削り取られたとしても、コンクリートまたはその後形成される最終的な構造物において、疎水性が圧縮強度と共に維持される。それゆえに、シリコーン樹脂を含む、アルキルシラン、またはその加水分解物、またはそれらの混合物の両成分、及び任意で消泡剤組成物、さらに任意で、乳化剤を伴う、または乳化剤無しの添加剤組成物は、圧縮強度を維持しながら所望の疎水性をもたらすために相乗的に作用する。この組成物の非常に驚くべき現象は、これが、粉砕の前または粉砕の間に添加されるとき、電力または電気消費量を削減し、粉砕プロセスの時間を短縮するのにも役立つことである。
【0042】
一実施形態において、式(Ib)のアルキルアルコキシシラン、またはその加水分解物、または混合組成物を含むセメント添加剤組成物は、乳化されるか、または溶媒中に、もしくは混合物として存在する。
【0043】
一実施形態において、セメント添加剤組成物は、シリコーンポリマー、充填剤、界面活性剤、及び水を含むシリコーン消泡剤組成物を含む。
本発明の分散液は、20~1000m2/gのBET表面積、好ましくは10pmより小さい粒径、及び好ましくは100pmより小さい凝集径を好ましくは有する、二酸化ケイ素(ケイ酸)、二酸化チタンまたは酸化アルミニウムを充填剤として含んでもよい。選択的な充填剤は、最も好ましくは、特に50~800m2/gのBET表面積を有するケイ酸である。これらのケイ酸は発熱性または沈降ケイ酸であってもよい。特に、例えば、市販の、完全にまたは部分的に疎水化したケイ酸などの前処理されたケイ酸が、充填剤として使用され得る。
【0044】
一実施形態において、セメント添加剤組成物は、ジアミン、またはアルカノールアミン、またはハイパーブランチポリカルボキシレートポリマー、またはそれらの混合物を含む有機添加剤を含む。
【0045】
一実施形態において、圧縮強度を向上させ、吸水を減少させるセメント添加剤組成物は、
a)式(I)のアルキルアルコキシシラン、またはその加水分解物、またはそれらの混合物を含む自己分散型混合添加剤と、
(RO)4-nSiR’n (I)
式中、nは、1~3の任意の数であり、
Rは、同一または異なり、C1~C20基であり、
R’は、同一または異なり、C1~C20基であり、
式(I)のアルキルアルコキシシランの加水分解物は、オリゴマーオリゴメリック、またはそれらの混合物である、
b)(a)アミノシラン、(b)アミノシロキサン、または(c)ハイパーブランチポリカルボキシレートポリマー、もしくはNR’’2-、もしくはR’’2N-R’’’-NR’’-、もしくはR’’N=NR’’基、式中、R’’、R’’’は、C1~C20基を有する置換されてもよい芳香族もしくは脂肪族炭化水素基である、を有する分子から選択されるものを含む有機添加剤、またはそれらの混合物、から選択される添加剤と、
c)自己分散型混合物と、有機添加剤と、シリコーン消泡剤組成物との比が、(100~20):(80~0):(20~0)である、シリコーン消泡剤組成物と、
を含む。
【0046】
一実施形態において、自己分散型混合添加剤組成物を含むセメント添加剤組成物は、エマルジョンを形成するために、プロトン性溶媒がさらに添加される。US2018282234は、式(RO)4-nSiR’nのアルキルアルコキシシラン、またはその加水分解物、またはそれらの混合物、式中、Rは、同一または異なりC1~C20、R’は、同一または異なるC1~C20、を含む自己分散型混合添加剤組成物を含む組成物を説明し、これは参照することにより本明細書に援用される。
【0047】
一実施形態において、セメント組成物は、好ましくは0.01重量%~2重量%のセメント添加剤組成物を含む。
一実施形態において、セメント組成物は、ジアミン、またはアルカノールアミン、またはハイパーブランチポリカルボキシレートポリマー、またはそれらの混合物を含む有機添加剤組成物を含む。
【0048】
本発明の別の態様によれば、式(I)のアルキルアルコキシシランは、トリアルキルモノアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、テトラアルコキシシランから選択されるアルキルアルコキシシランである。別の実施形態において、式(I)のアルキルシランは、アルキルトリアルコキシシランである。
【0049】
本発明の別の態様によれば、アミノシロキサン(またはシリコーン)は、式
XR2Si(OSiAR)n(OSiR2)mOSiR2X (I)
で表され、式中、Aは、式-R1-[NR2-R3-]XNR2
2のアミノ基、またはアミノ基Aのプロトン化アミノ形態であり、Xは、RまたはAまたはヒドロキシル基またはアルコキシ基であり、Rは、1~18個の炭素原子を有する1価の炭化水素基であり、R1は、C1~C6アルキレン基、好ましくは式-CH2CH2CH2-、または-CH2CH(CH3)CH2-の基であり、R2は、水素原子、またはC1~C4アルキル基、好ましくは水素原子であり、R3は、C1~C6アルキレン基、好ましくは式-CH2CH2-の基であり、m+nは、50~約500、好ましくは、約50~300の範囲の数であり、xは0または1である。アミン官能基(functionality)のモルパーセントは、約0.3~約8%の範囲である。本発明の組成物のシリコーン成分に有用なアミノシリコーンの例は、トリアルキルシリルで末端封鎖されるアミノシリコーンまたはアモジメチコン、アモジメチコノール(amodimethiconol)を含む。別の実施形態において、トリアルキルシリルで末端封鎖されるアミノシリコーンは、ヒドロキシポリシロキサンまたはヒドロキシポリシロキサンの数重量部を有してもよい。最も好ましいアミノシリコーンは、25℃において700~1300mPa・sの粘度(Brookfield LVT、スピンドルno2、rpm6使用)及び15~20mgKOH/gのアミン価を有する活性アミノ流体(reactive amino fluid)である。
【0050】
実施形態のうちの1つにおいて、アミン価は、ポテンショメータ[製造:Veego、モデル:VPT-MG]を使用する酸塩基滴定によって測定される。0.6gのサンプルが500mlのビーカーに取り入れられ、トルエン-ブタノールの1:1混合物が添加されて、サンプルが完全に混合するように撹拌され、サンプル溶液は、0.1(N)HCl溶液で滴定される。アミン価は、式(56.11×V×N)/W mgKOH/サンプルのg、式中、V=mlで要求されるHClの体積、N=HClの規定度、つまり0.1N、W=グラムで取り入れられるサンプルの重量、に従って計算される。
【0051】
流体、その混合物、及びその流体によって調製されるエマルジョンの粘度はまた、25℃において、アントンパールレオメータ、モデルMCR101、シングルギャップシリンダ型:CC27スピンドル及び剪断速度1s-1、CP25-6スピンドル及び剪断速度1s-1、によって測定されてもよい。
【0052】
本発明の別の態様によれば、
(A)式(Ia)の単位を含むシリコーン樹脂を含む、アルキルシラン、またはその加水分解物、またはそれらの混合物であって、
(R1O)aR2
bR3
cSiO(4-a-b-c)/2 (Ia)
式中、
R1は、同一または異なり、水素原子、1~4個の炭素原子を有する1価アルキル基であり、
R2は、同一または異なり、1~3個の炭素原子を有する1価アルキル基であり、
R3は、同一または異なり、4~20個の炭素原子を有する1価アルキルであり、
aは、0以上3以下であり、
bは、0以上3以下であり、
cは、0以上3以下であり、
a+b+c≦3という条件で、
式(Ia)のSiO3/2の全ての単位の50パーセントより多くにおいて、bはcよりも小さく、それぞれの単位または平均的な単位の何れかで、a、b、cは同一または異なり、整数または分数であり、
任意に、8~20のHLB値の1つ以上の非イオン性乳化剤と、それらの混合物とを混合し、その後ジアミン及びアルカノールアミンからの有機化合物のグループを混合する、アルキルシラン、またはその加水分解物、またはそれらの混合物と、
(B)任意に、(a)アミノシラン、(b)アミノシロキサン、または(c)ハイパーブランチポリカルボキシレートポリマー、もしくはNR’’2-、もしくはR’’ 2N-R’’’-NR’’-、もしくはR’’N=NR’’基、式中、R’’、R’’’は、C1~C20基を有する置換されてもよい芳香族もしくは脂肪族炭化水素基である、を有する分子、から選択されるものを含む有機添加剤、またはそれらの混合物、から選択される添加剤と、
を含むエマルジョンを混合すること、
を含む、混合添加剤組成物を調製するプロセスが提供される。
【0053】
そのとき、シリコーン消泡剤組成物を添加してもよく、ここで、自己分散型混合物と、有機添加剤と、シリコーン消泡剤組成物との比は、圧縮強度を向上させ、吸水を減少させるセメント組成物を得るようにされる。
【0054】
実施形態のうちの1つにおいて、シリコーン消泡剤(または、デフォーマ)組成物は、
(A)式
R7
a(R8O)bR9
cSiO(4-a-b-c)/2 (III)
の単位を含む少なくとも1つの有機ケイ素化合物を含み、
式中、R7は、メチル基を表し、R8のそれぞれは、同一または異なり、水素原子、または1価の、置換されてもよい炭化水素基を示し、R9は、フェニル基または、炭素環原子を介してケイ素原子に結合する1価の、置換されてもよい炭化水素基を表し、aは、0、1、2または3であり、bは、0、1、2または3であり、cは、0、1、2または3である。消泡剤組成物は、シリカ、界面活性剤、及び水をさらに含んでもよい。
【0055】
1つの特定の実施形態において、消泡剤中のシリコーンポリマーの構造は以下、R7(SiOR8R9)R10のとおりであり、式中、R7及びR10は同一の基または混合物である。R7及びR10は、H、OH、またはアルキル基であり、アルキル鎖は、1~12であり得る。R8及びR9は、同一の基または混合物である。R7及びR10は、アルキル基、またはアリール基、またはそれらの混合物である。アルキル鎖は、1~12であり得、6~20の炭素数を有するアリール基であり得る。シリカは、沈降型、またはフューム、またはそれらの混合物であり得、400m2/gmよりも小さい表面積であり得る。消泡剤は、Wacker Silfoam、Wacker NE、Wacker Finish、Wacker Powersoft、Wacker SEなどの商標名で、Wackerから入手可能である。
【0056】
別の実施形態において、非シリコーン消泡剤が、鉱油、植物油由来の消泡剤、シリカなどから選択される。
本発明の別の態様によれば、自己分散型混合添加剤組成物及びプロトン性溶媒を含むエマルジョンが提供される。
【0057】
別の実施形態においては、限定されるものではないが、特に最終生成物に対するバルク疎水性を均一で長時間持続する状態とするように、同時に多孔質製品による圧縮強度を維持するように、添加剤が、任意の多孔質製品、好ましくはドライセメントに添加される。
【0058】
溶媒は、プロトン性、特に極性プロトン性溶媒を含有する。極性プロトン性溶媒の適切な例は、水、プロパノール、エタノール及び形成酸(forming acid)を含む。
実施形態のうちの1つにおいて、自己分散型混合添加剤組成物は、好ましくは水を含まない。
【0059】
実施形態のうちの1つにおいて、アルキルシランは、アルキルアルコキシシランであり、好ましくは、同一または異なるアルキルトリアルコキシシラン、またはその加水分解物、またはそれらの混合物は、その組成物の1~99重量パーセント、好ましくはその組成物の50~90重量パーセントである。アルキルアルコキシシランは、アルコキシシランを形成するためにシリコンメタルをアルコールで反応させることによって、またはシリコーン樹脂を含む所望のシラン、またはその加水分解物を得るために、クロロシランを反応させ、直接加水分解することによって調製されてもよい。
【0060】
アルキルシランは、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、またはそれらの混合物から選択される。
【0061】
炭化水素R、R’、R1の例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、1-n-ブチル、2-n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、及びtert-ペンチル基などのアルキル基、n-ヘキシル基などのヘキシル基、n-ヘプチル基などのヘプチル基、n-オクチル基などのオクチル基、及び2,2,4-トリメチルペンチル基などのイソオクチル基;n-ノニル基などのノニル基、n-デシル基などのデシル基、n-ドデシル基などのドデシル基、及びn-オクタデシル基などのオクタデシル基;ビニル及びアリル基などのアルケニル基;シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル、ナフチル、アントリル、及びフェナントリル基などのアリール基;o-、m-、及びp-トリル基、キシリル基、及びエチルフェニル基などのアルカリル(alkaryl)基、;及びベンジル基、及びフェニルエチル基、またはカプリリル(caprylyl)基などのアラルキル基である。R2は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピルなどのアルキル基である。R3は、1-n-ブチル、2-n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、及びtert-ペンチル基などのアルキル基、n-ヘキシル基などのヘキシル基、n-ヘプチル基などのヘプチル基、n-オクチル基などのオクチル基、及び2,2,4-トリメチルペンチル基などのイソオクチル基;n-ノニル基などのノニル基、n-デシル基などのデシル基、n-ドデシル基などのドデシル基、及びn-オクタデシル基などのオクタデシル基;ビニル及びアリル基などのアルケニル基;シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル、ナフチル、アントリル、及びフェナントリル基などのアリール基、o-、m-、及びp-トリル基、キシリル基、及びエチルフェニル基などのアルカリル基;及びベンジル基、及びフェニルエチル基、またはカプリリル基などのアラルキル基である。最も好ましいR、R1、R2は、メチル基であり、R’、R3は、好ましくはC-C由来であり、限定されるものではないが、好ましくはn-プロピル、n-オクチル、イソオクチル基である。
【0062】
実施形態のうちの1つにおいて、非イオン性乳化剤またはその混合物は、組成物の99~1重量パーセントであり、好ましくは、組成物の50~10重量パーセントである。
本発明の別の実施形態において、非イオン性乳化剤は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシアルキレンソルビタンエステルから選択される。8~20のHLB値を有するいくつかの有用な乳化剤は、ポリエチレングリコールオクチルエーテル;ポリエチレングリコールラウリルエーテル;ポリエチレングリコールトリデシルエーテル;ポリエチレングリコールセチルエーテル;ポリエチレングリコール混合アルキルエーテル;ポリエチレングリコールセチルオレイルエーテル、ポリエチレングリコールステアリルエーテル;ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル;ポリエチレングリコールドデシルフェニルエーテル;ポリエチレングリコールセチルフェニルエーテル;ポリエチレングリコールステアリルフェニルエーテル;ポリエチレングリコールソルビタンモノステアレート、及びポリエチレングリコールソルビタンモノオレエートである。
【0063】
自己分散型混合添加剤組成物は、非プロトン性溶媒、好ましくは水性溶媒中で分散する。水性溶媒は、好ましくは水である。
本発明による組成物は、水中油型エマルジョンである。エマルジョンにおいて、一方の液体(分散相)が他方(連続相)に分散する。本発明の水中油型エマルジョンによれば、自己分散型混合添加剤組成物(分散相)は、連続水相に分散する。エマルジョンは、マイクロエマルジョンまたはマクロエマルジョンであってもよい。特定の実施形態のうちの1つにおいて、エマルジョンの活性含有量(active content)は、10~90パーセントの間、好ましくは30~80パーセントの間である。
【0064】
HLB値は、通常、室温(25℃)における値を参照する。温度が変化するにつれて、界面活性剤/乳化剤のHLB値もまた変化するであろう。非イオン性界面活性剤/乳化剤のHLB値の計算は、Griffin,W.C.,“Calculation of HLB Values of non-ionic Surfactants”、Journal of COSMETIC SCIENCE、Vol.5、No.4,1954年1月、249-256(1954)によって紹介された乳化剤分類のHLBシステムの条件によって提供される、方程式:HLB=(E+P)/5、E=オキシエチレン含有量の重量パーセンテージ、P=多価アルコール(グリセロール、ソルビトールなど)含有量の重量パーセンテージ、によって計算される。
【0065】
イオン性界面活性剤/乳化剤について、個別の界面活性剤/乳化剤分子のHLB値は、Davies JT(1957),“A quantitative kinetic theory of emulsion type,I.Pysical chemistry of the emulsifying agent”,Gas/Liquid and Liquid/Liquid Interface (Proceedings of the International Congress of Surface Activity):426-38に記載されたようなDavies式を適用して計算され得る。
【0066】
10~16の間のHLB値を有する乳化剤混合物は、エマルジョンプロセスをより単純にするのに適している。HLBが知られている2つの乳化剤A及びBが、使用するために混合されるとき、HLBMixは、混合物のために必要とされるHLBであると言われる。これは、方程式(WAHLBA+WBHLBB)/(WA+WB)=HLBMix、式中、WA=使用される第1乳化剤(A)の量(重量)、及びWB=第2乳化剤(B)の量(重量)、HLBA,HLBB=乳化剤A及びBに割り当てられたHLB値、HLBMix=混合物のHLB、によって示される。
【0067】
8~20の間のHLB値を有する非イオン性乳化剤、好ましくは、一実施形態における10~16のHLB値を有する少なくとも1つの乳化剤または乳化剤の混合物は、プロセスをより単純にするために、本発明において非常に重要である。別の実施形態において、乳化剤は、最も好ましくは、非イオン性乳化剤の混合物である。別の実施形態において、カチオン性、またはアニオン性乳化剤が、乳化剤として選択されてもよい。
【0068】
本発明の別の実施形態において、有機添加剤は、ジェネリック構造NR’’3、R’’2N-R’’’-NR’’2、R’’N=NR’’、式中、R’’は、C1~C20基を有する1価の置換されてもよい炭化水素基、R’’’は、C1~C20基を有する置換されてもよい芳香族または脂肪族基である、を有する。有機添加剤は、限定されるものではないが、一般式R1R2N(CH2)2NR3R4のエチレンジアミン、または一般式R1N=NR2及び
【0069】
【0070】
のジアミン誘導体、式中、R1、R2、R3及びR4=-H、-CH3、-C2H5、-C3H7、-C4H9、-C2H4OH、-CH(CH2OH)C2H5、フェニル、及びX,Y及びZは、-H、-NR1R2、及び
【0071】
【0072】
式中、R’、R’’、 及びR’’’は、-H、-Me、-Etまたは-Pr、-NR1R2である、または一般式NHmR5OH(3-m)のアルカノールアミン、式中、R5は、1~6の炭素鎖を有するアルキレン基であり、m=0~2である、またはそれらの混合物から選択される。
【0073】
本発明の別の実施形態において、有機添加剤は、限定されるものではないが、テトラヒドロキシエチルエチレンジアミン(THEED)、ジエチレングリコール(DIEG)、1,1-ジメチルエチレンジアミン、1,2-ジメチルエチレンジアミン、エタンブトール、テトラキス(ジメチルアミノ)エチレン(TMEDA)、ジメチル-4-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ブチル-1,4-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノビフェニル、1,8-ジアミノナフタレン、o-フェニレンジアミン(OPD)、m-フェニレンジアミン(MPD)、p-フェニレンジアミン(PPD)、2,5-ジアミノトルエン、o-キシリレンジアミン(OXD)、m-キシリレンジアミン(MXD)、p-キシリレンジアミン(PXD)、1,2-ジアミノプロパン、ジフェニルエチレンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノプロパン、プトレシン、カダベリン、などのエチレンジアミン、または誘導体、及びトリエタノールアミン(TEA)、ジイソプロパノールアミン(DIPA)、ジエタノールイソプロパノールアミン(DEIPA)、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、トリエタノールアミンアセテート(TEAA)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-プロパノールアミン、などのアルカノールアミンから選択される。
【0074】
他の実施形態のうちの1つにおいて、アミン有機添加剤は、ジアミンとアルカノールアミンとの混合物である。好適な組成物のうちの1つにおいて、ジアミン:アルカノールアミンの比は、99.5:0.5~0.5:99.5、より好ましくは95:5~5:95である。セメントへの重量での投与量は、好適な範囲を0.01%~0.1%S/sとして、0.001%S/s~0.5%S/sの範囲とされ得る。
【0075】
本発明の別の実施形態において、有機添加剤は、限定されるものではないが、アニオン主鎖、及びポリアルキレングリコールが通常含まれるいくつかの非イオンペンダント鎖、を有するハイパーブランチポリカルボキシレート、または直鎖ポリアルキレンアミンから構築されるハイパーブランチカルボキシレート、及び末端でカルボキシメチル化されるハイパーブランチポリグリセロール骨格から選択される。平均分子量は、常に2000gm/モルより大きい。
【0076】
式(I)のアルキルアルコキシシラン、またはその加水分解物、またはそれらの混合物と、アミノポリシロキサンとの配合。式(I)のアルキルアルコキシシラン、またはその加水分解物、またはそれらの混合物と、アミノポリシロキサンとの比は、99:1~1:99、好ましくは、80:20~20:80、最も好ましくは、60:40~40:60。アミノポリシロキサンは、ジメチルシクロシロキサン、ポリジメチルシロキサン、またはクラッキングを介した流体(ポリマーLGS)で誘導化され得る。ジエチレントリアミン、2-アミノエチル)-3-アミノプロピル、2-アミノエチル-3-アミノプロピルメチル、3-アミノプロピルなどで変性される。
【0077】
試験組成物の投与:PORTLANDセメント(ポルトランドセメント、クラスC)は、ベースセメントとして使用される。これは、最終組成物の疎水性及び強度を試験するために、3つの異なるシナリオ、
(a)粉砕前に、エネルギ必要量及び添加剤の配分を測定する
(b)粉砕プロセスが終了した後で、最終的な疎水性及び強度の比較試験のために粉砕助剤組成物を混合する
(c)スラグが粉砕されたセメントと混合された後で、最終的な疎水性及び強度の比較試験のために粉砕助剤組成物を混合する
で混合することにより、本発明のまたは本発明でない組成物で処理される。
【0078】
粉砕試験は、ボールミルで行われてもよく、必要とされるエネルギは、外部のエネルギ測定装置によって測定される。エネルギ消費量は、ミルの電力消費量及び一定の動作時間によって特定され得る。ボールミルによって使用された電力は、ボールミルの電気キャビネットに接続された電流計及び電圧計によって測定される電流と電圧とを乗ずることによって計算される。最終的な粉砕されたセメントの特性は、粉砕後の微粉度の測定(DIN EN 196-6)、及び固体の表面積試験(DIN ISO 9277)に従って測定されてもよい。
【0079】
次の実施例は、本発明の詳細な説明に役立ち、限定するものとして理解されるべきではない。
【実施例】
【0080】
[調製]
(a)加水分解n-オクチルトリエトキシシランの調製:
n-オクチルトリエトキシシラン:3300g
濃硫酸:7.2g
水:108g
が反応器に取り入れられて85℃の温度で還流され、最終的に全ての揮発性物質が留出され(収率:92%)、その後、加水分解n-オクチルトリエトキシシラン(オリゴマーシランとも呼ばれる)を得るためにトリエタノールアミンによって中和される。加水分解n-オクチルトリエトキシシランは、1より多くの単位を有する。
(b)シリコーン樹脂組成物の調製(本発明の組成物):
70%n-オクチルトリエトキシシラン(及び30%n-メチルトリエトキシシランン):3300g
濃硫酸:7.2g
水:108g
(c)シリコーン樹脂組成物の調製(本発明でない組成物):
30%n-オクチルトリエトキシシラン(及び70%n―メチルトリエトキシシランン):3300g
濃硫酸:7.2g
水:108g
上記の(a)、(b)及び(c)の組成物は、反応器に取り入れられて85℃の温度で還流され、最終的に全ての揮発性物質が留出され(収率:92%)、その後、シリコーン樹脂(または、加水分解アルコキシシラン)を得るためにトリエタノールアミンによって中和される。シリコーン樹脂は、25℃において12~17mPasの粘度を有する1より多くのシロキシ単位を有する。シリコーン樹脂は、メチル-オクチル-メトキシ樹脂として規定されてもよく、ここで、全てのSi原子は、上述のメチル-オクチル比で正確に1つのオクチルまたはメチル基と結合し、全てのSi原子は、0~3のメトキシ基と結合する。合成の連続法が、continuous process for preparing SiOC-containing compoundという発明名称のWacker Chemie特許US7339069に記載されており、参考文献としてさらに援用される。いくつかの用途もまた、Wackerの公開された出願US20210130550のthe use of alkyl silicone resin as addiive for hydrophilizing fiberにおいてさらに記載されており、これも参考文献としてさらに援用される。
【0081】
d)シリコーン樹脂の混合組成物(本発明及び本発明でないものの両方)は、実験のための混合組成物を形成するために、シラン組成物と混合される。
e)本発明の(及び、また比較の)水中油型エマルジョンは、シリコーン樹脂を添加することによって形成され、組成物(分散相)は、連続水相中に分散する。他の実施形態の1つにおいて、組成物は、反応して交差結合し、硬化してそれ以上の活性が無くなるので、そのような組成物はすぐに使用されなければならないが、触媒が、樹脂を反応させるためにエマルジョンに取り入れられてもよい。
A)性能試験
比較性能試験は、粉砕助剤組成物としても作用する、本発明の、圧縮強度を向上させ、吸水を減少させるセメント添加剤組成物によって調製されるモルタル、ブランクポルトランドセメント、リファレンスサンプル(添加剤無し)について実施された。
モルタル試験:
組成:砂1200g、セメント400g、水240gでの供試体の調製。対照混合物及び試験混合物の材料、供試体のための型は、少なくとも使用する24時間前に調整されるものとする。調整は、(20±2)℃において(65±5)%の相対湿度に維持されるエンクロージャ内に置かれることによってなされるものとする。
【0082】
モルタルの混合は、EN480-1に記載されるとおりとする。モルタル供試体(40×40×160)mmは、型に油が塗られてはならないことを除き、EN196-1に記載されるように調製されるものとする。
【0083】
等しいw/c比で試験するとき、混合剤の含水量は、モルタルの必要とされる含水量を計算する場合に考慮されるものとする。
試験混合物が、対照またはリファレンス混合物と同一の稠度を有する場合に、これは、EN413-2に従ってワーカビリティメータを使用することによって測定されるものとする。試験を実施するために、以下の装置、ドイツ(Zwick Rolle)のトニミックスミクスチャ(Tonimix mixture)が考えられる。
【0084】
[疎水性の試験]
[セメント組成物の疎水性]
調製は、最終セメント混合物において、シリコーン組成物の類似%の投与を有する比較データのためになされる。ドライセメントブロックが調製され、製造されたセメントは、ペトリ皿(90×15mm)内に圧縮され、滑らかなガラス棒を用いて上面と同じ高さにされる。その後、使い捨てのスポイト(Tarson 940050 LDPE パスツールピペット)を用いて5適の水滴がセメント表面に置かれ、ストップウォッチが開始される。水滴が消失するまでの時間が記録され、これは、撥水性または疎水性の指標であり、水滴が消失するまでの時間を表1に記録するために、ビーディング時間(beading time)試験が実施される。
【0085】
[モルタル組成物の水の吸収率の測定]
モルタルは、EN480-1に記載されるとおりとする。モルタル供試体(40×40×160)mmは、EN196-1に記載されるように調製されるものとする。疎水性を試験するために、24時間、または96時間、ASTM C1585に規定されるように吸水を評価する。
【0086】
[圧縮強度(CS)の試験]
CSは、DIN EN 12390-3(コンクリート用)、またはDIN EN 196-1(モルタル用)規格に従って測定され、必要に応じて、EN196-1に記載されるように調製されたモルタル供試体に関して先行技術文献と比較するために、1日、14日、及び28日後のそれぞれが、MPaで表2に記録される。試験は、モルタル組成物に関して実施されたが、モルタルに限定されるものではなく、コンクリート、またはプラスタ及びその最終組成物にも適用可能である。
【0087】
【0088】
【0089】
[実験からの見解]
表1に本発明の実験が見られ、ここで、実験No.8、9は、本発明の圧縮強度を向上させ、吸水を減少させるセメント添加剤組成物を、PPCセメントに投入または混合することによって、圧縮強度が、実験no.2の本発明でない普通疎水性オクチルシランセメント組成物に対して、実験9について14%[(42.06-36.8)/36.8=14%]まで上昇し、実験2及び9は両方とも疎水性について同等であり、その疎水性は、本発明でない実験No.1のリファレンス、つまり、添加剤無しのリファレンスに対して大幅に向上することを示す。
【0090】
さらに、リファレンス+消泡剤**エマルジョンを含む本発明でない実験10は、それぞれ37.85と44.45のCS値を有するが、疎水性値は、実験1(リファレンスセメント)とほぼ同様の0minであり、それにより、消泡剤は、疎水性、さらに強度の向上にも効果を有しないことを示す。
【0091】
実験5、6、7、11、12でさえも、アルキルシラン、または加水分解アルキルシランを含む有機添加剤の添加、及び溶媒中の、またはエマルジョン形態のアルキルシランまたは加水分解アルキルシランを含む消泡剤の添加は、圧縮強度の向上及び高い疎水性値について最適な向上をもたらさない。
【0092】
驚くべきことに、実験8、9、19、20、32、33、38及び39でそれぞれ明示されるように、有機添加剤及び消泡剤と共にアルキルシラン、または加水分解アルキルシランを含む本発明の組成物がセメントに添加される場合に、圧縮強度及び疎水性値において相乗的な向上が確認された。同様に、実験4、29において、有機添加剤の添加は、モルタルにおける圧縮強度及び疎水性に最適な向上をもたらさないが、驚くべきことに、アルキルシランまたは加水分解アルキルシラン、及び有機添加剤、及びシリコーン消泡剤を含む本発明の組成物を、セメント粉砕において添加した場合に、相乗的な向上が、実験8、9、19、20、32、33、35、40~43において、圧縮強度及び疎水性に確認された。
【0093】
それゆえに、本発明の組成物は、粉砕前または粉砕の間に粉砕助剤として作用し、またセメント、プラスタ及びモルタル組成物の疎水性を大幅に向上させ、それゆえに、組成物の圧縮強度を維持する。
【国際調査報告】