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特表2024-523267鉄鋼石から海綿鉄を生成するためのプロセス及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】鉄鋼石から海綿鉄を生成するためのプロセス及びシステム
(51)【国際特許分類】
   C21B 13/02 20060101AFI20240621BHJP
【FI】
C21B13/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576342
(86)(22)【出願日】2022-06-20
(85)【翻訳文提出日】2024-02-13
(86)【国際出願番号】 SE2022050606
(87)【国際公開番号】W WO2022271064
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】2150803-1
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522429011
【氏名又は名称】ハイブリット ディベロップメント アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】モフセニ-モーナー,ファルザード
(72)【発明者】
【氏名】マリン,ライモン ペレア
(72)【発明者】
【氏名】ファヤジ,ジャヴァード
【テーマコード(参考)】
4K012
【Fターム(参考)】
4K012DC03
4K012DC06
4K012DC08
4K012DC10
(57)【要約】
海綿鉄を生成するためのシステムであって、システムは、直接還元シャフト(201)と、還元ガス源(206)と、還元ガス容器(209)と、炉頂ガスの少なくとも一部分を案内するための1次回路(210)と、1次回路(210)を通って案内されるガスから取り出されたガスの少なくとも一部分を案内するための2次回路(211)であり、一方の端部で1次回路(210)に接続され、他方の端部で還元ガス容器(209)に接続された2次回路(211)と、還元ガス源(206)を還元ガス容器(209)に接続する第2のガスライン(212)と、還元ガス容器(209)を第1のガスライン(207)に接続する第3のガスライン(213)とを備える。制御ユニット(214)が、還元ガス源(206)から第1のガスライン(207)への還元ガスの流れを制御し、還元ガス容器(209)から第1のガスライン(207)への第3のガスライン(213)を通る還元ガスの流れを制御するように構成され、制御ユニット(214)は、還元ガス容器(209)から前記第1のガスライン(207)への還元ガスの流れを可能にしながら、それに対応して還元ガス源(206)から前記第1のガスライン(207)への還元ガスの流量を低減させるように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄鋼石から海綿鉄を生成するためのプロセスであって、
- 鉄鋼石を直接還元シャフト(201)内へ装填する工程と、
- 前記鉄鋼石を還元して海綿鉄を生成するために、第1のガスラインを介して、水素を多く含む還元ガスを還元ガス源(206)から前記直接還元シャフト(201)内へ導入する工程と、
- 前記直接還元シャフト(201)から炉頂ガスを取り出す工程であり、前記炉頂ガスが未反応の水素ガスを含む、取り出す工程と、
- 前記取り出された炉頂ガスの少なくとも一部分を1次回路(210)内に案内し、前記炉頂ガスの前記部分を前記直接還元シャフト(201)内へ再導入する工程と、
- 前記1次回路(210)内に案内された前記ガスの一部分を前記1次回路(210)から取り出し、2次回路(211)を通って前記ガス部分を還元ガス容器(209)へ案内する工程と、
- 還元ガスを前記還元ガス源(206)から前記還元ガス容器(209)へ案内して、前記2次回路(211)からの前記ガスとともに、前記還元ガス容器(209)内にガス混合物を形成する工程と、
- 前記ガス混合物を前記還元ガス容器(209)から前記第1のガスライン(207)へ案内し、それに対応して前記還元ガス源(206)から前記第1のガスライン(207)への還元ガスの流量を低減させる工程とを含む、プロセス。
【請求項2】
前記還元ガス容器(209)内のガス圧力が所定のレベルを上回ったことへの応答として、前記ガス混合物を前記還元ガス容器(209)から前記第1のガスライン(207)へ案内する工程を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記還元ガス源(206)が、変動するアクセス関連パラメータが関連付けられた電力によって駆動される電解槽を備え、前記プロセスが、前記アクセス関連パラメータの変動を継続的に登録する工程と、前記アクセス関連パラメータが所定の第1のレベルを下回ったことへの応答として、前記ガス混合物を前記還元ガス容器(209)から前記ガスラインへ案内する工程とを含む、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記アクセス関連パラメータが、電力貯蔵部内に貯蔵された電力のレベル、又は太陽光発電、風力発電、もしくは水力発電などの前記電力を生成するための手段のアクセスレベルのいずれかを含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記還元ガス源(206)が、公共の電気ネットワークを介して提供される電力によって駆動される電解槽を備え、前記プロセスが、前記公共のネットワークにかかる負荷が所定のレベルを上回ったことへの応答として、前記ガス混合物を前記還元ガス容器(209)から前記第1のガスライン(207)へ案内する工程を含む、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項6】
前記アクセス関連パラメータが所定の第2のレベルを上回ったことへの応答として、還元ガスが前記還元ガス源(206)から前記還元ガス容器(209)へ案内される、請求項3又は4に記載のプロセス。
【請求項7】
前記1次回路(210)から前記2次回路(211)への前記ガス部分の前記取出しが、前記1次回路(210)内の圧力が所定のレベルを上回ったことへの応答として実行される、請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記2次回路(211)を介して送達されるガス及び前記還元ガス源(206)から前記還元ガス容器(209)へ送達される還元ガスが、前記還元ガス容器(209)に入る前に圧縮器工程で圧縮される、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
海綿鉄を生成するためのシステムであって、
- 直接還元シャフト(201)であり、
鉄鋼石を前記シャフト(201)内へ導入するための第1の入口(202)、
海綿鉄を前記シャフト(201)から取り出すための第1の出口(203)、
還元ガスを前記シャフト(201)内へ導入するための第2の入口(204)、及び
炉頂ガスを前記シャフト(201)から取り出すための第2の出口(205)を備える直接還元シャフト(201)と、
- 第1のガスライン(207)を通って前記還元ガス入口(204)に接続された還元ガス源(206)と、
- 還元ガス容器(209)と、
- 前記炉頂ガスの少なくとも一部分を案内するための1次回路(210)であり、一方の端部で前記第2の出口(205)に接続され、他方の端部で前記第1のガスライン(207)に接続された1次回路(210)と、
- 前記1次回路(210)を通って案内されるガスから取り出されたガスの少なくとも一部分を案内するための2次回路(211)であり、一方の端部で前記1次回路(210)に接続され、他方の端部で前記還元ガス容器(209)に接続された2次回路(211)と、
- 前記還元ガス源(206)を前記還元ガス容器(209)に接続する第2のガスライン(212)と、
- 前記還元ガス容器(209)を前記第1のガスライン(207)に接続する第3のガスライン(213)と、
- 前記還元ガス源(206)から前記第1のガスライン(207)への還元ガスの流れを制御し、前記還元ガス容器(209)から前記第1のガスライン(207)への前記第3のガスライン(213)を通る還元ガスの流れを制御するように構成された制御ユニット(214)であり、前記還元ガス容器(209)から前記第1のガスライン(207)への還元ガスの流れを可能にしながら、それに対応して前記還元ガス源(206)から前記第1のガスライン(207)への還元ガスの流量を低減させるように構成された制御ユニット(214)とを備える、システム。
【請求項10】
前記システムが、前記還元ガス容器(209)内のガス圧力が所定のレベルを上回ったことへの応答として、前記還元ガス容器(209)から前記第1のガスライン(207)への還元ガスの流れを可能にするための手段(214、215、220、225)を備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記還元ガス源(206)が、変動するアクセス関連パラメータが関連付けられた電力によって駆動される電解槽を備え、前記システムが、前記アクセス関連パラメータの変動を継続的に登録するための手段を備え、前記制御ユニット(214)が、前記アクセス関連パラメータが所定の第1のレベルを下回ったことへの応答として、前記還元ガス容器(209)から前記第1のガスライン(207)への還元ガスの流れを可能にするように構成される、請求項9又は10に記載のシステム。
【請求項12】
前記アクセス関連パラメータが、電力貯蔵部内に貯蔵された電力のレベル、又は太陽光発電、風力発電、もしくは水力発電などの前記電力を生成するための手段のアクセスレベルのいずれかを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記還元ガス源(206)が、公共の電気ネットワークを介して提供される電力によって駆動される電解槽を備え、前記システムが、前記公共の電気ネットワークにかかる負荷を登録するための手段を備え、前記制御ユニット(214)が、前記公共のネットワークにかかる負荷が所定のレベルを上回ったことへの応答として、前記還元ガス容器(209)から前記ガスラインへのガス混合物の流れを可能にするように構成される、請求項9又は10に記載のシステム。
【請求項14】
前記制御ユニット(214)が、前記第1のガスライン(207)内の要求される還元ガス流が実現されるという条件で、前記還元ガス容器(209)から前記第1のガスライン(207)への還元ガス流を可能にしたことへの応答として、前記還元ガス源(206)の出力を低減させるように構成される、請求項9~13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記制御ユニット(214)が、前記アクセス関連パラメータが所定の第2のレベルを上回ったことへの応答として、前記還元ガス源(206)から前記還元ガス容器(209)への還元ガスの流れを可能にするように構成される、請求項12又は13に記載のシステム。
【請求項16】
前記システムが、前記1次回路(210)内の圧力が所定のレベルを上回ったことへの応答として、前記1次回路(210)から前記2次回路(211)への前記ガス部分の前記取出しを可能にするように構成された手段を備える、請求項9~14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
前記システムが、前記還元ガス容器(209)に入る前に、前記2次回路(211)を介して送達される前記ガス部分及び前記還元ガス源(206)から前記第2のガスライン(212)を通って送達される還元ガスを圧縮するための圧縮器配置(220)を備える、請求項8~16のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項18】
前記第1のガスライン(207)内の還元ガス流量を測定するための少なくとも1つの第1のセンサ(222)と、前記直接還元シャフト(201)内の温度を測定するための少なくとも1つの第2のセンサ(223)と、前記直接還元シャフト(201)内の圧力を示す圧力を測定するための少なくとも1つの第3のセンサ(218)とを備え、前記制御ユニット(214)が、前記第1のセンサ(228)、第2のセンサ(222)、及び第3のセンサ(223)から受け取った入力に基づいて、前記第1のガスライン(207)における前記直接還元シャフト(201)内への要求される還元ガス流量を判定するように構成される、請求項9~17のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項19】
前記直接還元シャフト(201)が、1時間当たりの海綿鉄の公称生成速度を有し、前記還元ガス容器(209)の貯蔵容量が、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも3時間、さらにより好ましくは少なくとも6時間にわたって、前記公称還元速度における還元を可能にするために必要とされる水素ガスの量に対応する、請求項9~18のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄鋼石から海綿鉄を生成するためのプロセスに関する。本開示はさらに、海綿鉄を生成するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
鋼鉄は、世界で最も重要な工学及び建設材料である。現代世界において、その製造及び/又は輸送のために鋼鉄を含まない又は鋼鉄に依存しない物体を見つけることは困難である。このように、鋼鉄は現代生活のほぼすべての面で複雑に関わっている。
【0003】
2018年、世界の粗鋼の総生産は、あらゆる他の金属をはるかに超えて18億1000万トンであり、2050年には28億トンに到達することが予想され、そのうち50%が未使用の鉄源に由来することが予想される。鋼鉄はまた、世界で最も再利用されている材料であり、1次エネルギー源として電気を使用して再溶融後に何度も繰り返し使用することができる金属であるため、再利用度合いが非常に高い。
【0004】
したがって、鋼鉄は現代社会の礎であり、将来果たすべき役割はさらに顕著である。
【0005】
鋼鉄は主に、3つの方法によって生成される。
i)高炉(BF)内で未使用の鉄鋼石を使用した一貫生成であり、鉱石中の酸化鉄を炭素によって還元して鉄を生成する。鉄は、製鉄所において、酸素転炉(BOF)内で酸素吹錬及び精練によってさらに処理して、鋼鉄を生成する。このプロセスは一般に、「酸素製鋼」とも呼ばれる。
ii)再利用される鋼鉄を使用した屑鉄に基づく生成であり、再利用される鋼鉄が1次エネルギー源として電気を使用して電気アーク炉(EAF)内で溶融される。このプロセスは一般に、「電気製鋼」とも呼ばれる。
iii)未使用の鉄鋼石に基づく直接還元生成であり、未使用の鉄鋼石を直接還元(DR)プロセスで炭素質還元ガスによって還元して、海綿鉄を生成する。その後、海綿鉄をEAF内で屑鉄とともに溶融して、鋼鉄を生成する。
【0006】
本明細書では、粗鉄という用語は、高炉から得られるか(すなわち銑鉄)、それとも直接還元シャフトから得られるか(すなわち海綿鉄)にかかわらず、鋼鉄へのさらなる処理のために生成されるすべての鉄を指すために使用される。
【0007】
上述したプロセスは、何十年もかけて改良されており、理論的に最小のエネルギー消費に近づきつつあるが、まだ解決されていない1つの根本的な問題がある。炭素質還元剤を使用した鉄鋼石の還元は、副生成物としてCOを生成する。2018年に生産された鋼鉄1トン当たり、平均1.83トンのCOが生成された。鋼鉄産業は、最も多くCOを放出する産業の1つであり、世界のCO放出量の約7%を占める。炭素質還元剤が使用される限り、鋼鉄生産プロセスにおいて過度のCOの生成を回避することはできない。
【0008】
HYBRITイニシアチブは、この問題に対処するために設立された。HYdrogen BReakthrough Ironmaking Technology、略してHYBRITは、SSAB、LKAB、及びVattenfall間の合弁事業であり、一部にはスウェーデンエネルギー庁から資金提供を受けており、CO放出を削減し、鋼鉄産業を脱炭素化することを目的とする。
【0009】
HYBRITの概念の中核をなすのは、直接還元に基づいて未使用の鉄鋼石から海綿鉄を生成することである。ただし、現在工業化されている直接還元プロセスとして天然ガスなどの炭素質還元ガスを使用する代わりに、HYBRITは水素ガスを還元剤として使用することを提案しており、これを水素直接還元(H-DR)と呼ぶ。水素ガスは、たとえばスウェーデンの電力生産の場合のように、主に化石燃料を使用しないかつ/又は再生可能である1次エネルギー源を使用した水の電気分解によって生成することができる。したがって、化石燃料を投入する必要なく、COの代わりに水を副生成物とする、鉄鋼石を還元する重要な工程を実現することができる。
【0010】
従来技術では、大部分が天然ガスからなる還元ガスを使用する。直接還元工場は通常、還元が行われるシャフトを備える。シャフトは、頂部に鉄鋼石のペレットが導入される入口を有し、底部に海綿鉄がシャフトから取り出される出口を有する。また、シャフトの下部には還元ガスをシャフト内へ導入するための少なくとも1つの入口が位置し、シャフトの上部には炉頂ガスを出すための少なくとも1つの出口が位置する。炉頂ガスの大部分は未反応の還元ガスからなり、場合によりそれぞれ鉄鋼石ペレット及び海綿鉄のための入口及び出口を封止するために使用される不活性ガスと混ざり合っている。炉頂ガスを処理する従来の方法は、これを燃焼させることによる。
【0011】
しかし、還元ガスとして主に又は単独で水素を使用するとき、天然ガスと比べて水素ガスの生成は相当量のエネルギーを必要とするため、燃焼はエネルギー効率の観点からあまり魅力的でない選択肢である。さらに、炉頂ガスが窒素ガス(通常は封止ガスとして使用される)を含む場合、燃焼によりNOxの放出が生じる可能性もあり、これは環境の観点から好ましくない。
【0012】
水素ガスの生成は、典型的には水電解槽によって行われ、相当な量の電力を必要とする。電力を生成するために使用される電源に応じて、電力の利用可能性は時間とともに変動する可能性がある。したがって、還元プロセスのエネルギー効率的かつコスト効率的な制御には、電力の利用可能性に関連したプロセスの最適化も含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、還元ガスとして主に又は排他的に水素ガスを使用する、鉄鋼石を海綿鉄に直接還元するためのプロセス及びシステムを提示することであり、直接還元シャフトにおいて、炉頂ガスの一部として直接還元シャフトから出る未反応の水素ガスを効率的に再利用することによって、圧力を制御するための手段が提供される。
【0014】
また、本発明の目的は、還元プロセスのエネルギー効率的かつコスト効率的な制御を可能にし、したがって電力の利用可能性に関連したプロセスの最適化も含む、プロセス及びシステムを提示することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、鉄鋼石から海綿鉄を生成するためのプロセスによって実現され、このプロセスは、
- 鉄鋼石を直接還元シャフト内へ装填する工程と、
- 鉄鋼石を還元して海綿鉄を生成するために、第1のガスラインを介して、水素を多く含む還元ガスを還元ガス源から直接還元シャフト内へ導入する工程と、
- 直接還元シャフトから炉頂ガスを取り出す工程であり、前記炉頂ガスが未反応の水素ガスを含む、取り出す工程と、
- 取り出された炉頂ガスの少なくとも一部分を1次回路内に案内し、炉頂ガスの前記部分を直接還元シャフト内へ再導入する工程と、
- 前記1次回路内に案内されたガスの一部分を前記1次回路から取り出し、2次回路を通って前記ガス部分を還元ガス容器へ案内する工程と、
- 還元ガスを還元ガス源から前記還元ガス容器へ案内して、2次回路からのガスとともに、前記還元ガス容器内にガス混合物を形成する工程と、
- ガス混合物を還元ガス容器から前記第1のガスラインへ案内し、それに対応して還元ガス源から前記第1のガスラインへの還元ガスの流量を低減させる工程とを含む。
【0016】
還元ガス容器は、大容量のものとすることができる。一実施形態によれば、還元ガス容器はライニング式岩盤貯槽を構成する。
【0017】
一実施形態によれば、ガス混合物を還元ガス容器から前記第1のガスラインへ案内する工程は、還元ガス容器内のガス圧力が所定のレベルを上回ったことへの応答として実行される。
【0018】
一実施形態によれば、還元ガス源は、変動するアクセス関連パラメータが関連付けられた電力によって駆動される電解槽を備え、このプロセスは、前記アクセス関連パラメータの変動を継続的に登録する工程と、アクセス関連パラメータが所定の第1のレベルを下回ったことへの応答として、ガス混合物を還元ガス容器から前記第1のガスラインへ案内する工程とを含む。
【0019】
一実施形態によれば、アクセス関連パラメータは、電力貯蔵部内に貯蔵された電力のレベル、又は太陽光発電、風力発電、もしくは水力発電などの電力を生成するための手段のアクセスレベルのいずれかを含む。電力へのアクセスが低減されるとき、たとえば太陽光発電の場合は夜間、還元ガスは、還元ガス源からではなく還元ガス容器から取得され、第1のガスラインを介してシャフト内へ送達される。
【0020】
一実施形態によれば、還元ガス源は、公共の電気ネットワークを介して提供される電力によって駆動される電解槽を備え、このプロセスは、公共のネットワークにかかる負荷が所定のレベルを上回ったことへの応答として、ガス混合物を還元ガス容器から前記ガスラインへ案内する工程を含む。
【0021】
一実施形態によれば、アクセス関連パラメータが所定の第2のレベルを上回ったことへの応答として、還元ガスが還元ガス源から還元ガス容器へ案内される。
【0022】
一実施形態によれば、1次回路から2次回路への前記ガス部分の前記取出しは、1次回路内の圧力が所定のレベルを上回ったことへの応答として実行される。
【0023】
一実施形態によれば、2次回路を介して送達されるガス及び還元ガス源から還元ガス容器へ送達される還元ガスは、還元ガス容器に入る前に、圧縮器工程で圧縮される。還元ガス容器内の圧力は、システムの残り部分内の圧力より大幅に高いレベルとすることができる。たとえば、直接還元シャフト内の圧力を10バール程度とすることができ、還元ガス容器内の圧力を100バール程度とすることができる。
【0024】
本発明の目的は、海綿鉄を生成するためのシステムによっても実現され、このシステムは、
- 直接還元シャフトであり、
- 鉄鋼石をシャフト内へ導入するための第1の入口、
- 海綿鉄をシャフトから取り出すための第1の出口、
- 還元ガスをシャフト内へ導入するための第2の入口、及び
- 炉頂ガスをシャフトから取り出すための第2の出口を備える直接還元シャフトと、
- ガスラインを通って還元ガス入口に接続された還元ガス源と、
- 還元ガス容器と、
- 炉頂ガスの少なくとも一部分を案内するための1次回路であり、一方の端部で第2の出口に接続され、他方の端部で前記第1のガスラインに接続された1次回路と、
- 1次回路を通って案内されるガスから取り出されたガスの少なくとも一部分を案内するための2次回路であり、一方の端部で1次回路に接続され、他方の端部で還元ガス容器に接続された2次回路と、
- 還元ガス源を還元ガス容器に接続する第2のガスラインと、
- 還元ガス容器を第1のガスラインに接続する第3のガスラインと、
- 還元ガス源から第1のガスラインへの還元ガスの流れを制御し、還元ガス容器から第1のガスラインへの第3のガスラインを通る還元ガスの流れを制御するように構成された制御ユニットであり、還元ガス容器から前記第1のガスラインへの還元ガスの流れを可能にしながら、それに対応して還元ガス源から前記第1のガスラインへの還元ガスの流量を低減させるように構成された制御ユニットとを備える。
【0025】
一実施形態によれば、システムは、還元ガス容器内のガス圧力が所定のレベルを上回ったことへの応答として、還元ガス容器から第1のガスラインへの還元ガスの流れを可能にするための手段を備える。一実施形態によれば、第3のガスライン内に減圧器が設けられる。一実施形態によれば、還元ガス容器内の前記所定の圧力は、第3のガスライン内にガス流を誘発するものであり、第1のガスライン内の圧力より実質的に高い。減圧器は、減圧器を通過するガスのより高いエネルギーを電力に変換するように構成され(たとえば、タービンを装備することによる)、この電力は、好ましくは還元ガス源内で水素ガスを生成するために使用される。
【0026】
一実施形態によれば、還元ガス源は、変動するアクセス関連パラメータが関連付けられた電力によって駆動される電解槽を備え、システムは、前記アクセス関連パラメータの変動を継続的に登録するための手段を備え、制御ユニットは、アクセス関連パラメータが所定の第1のレベルを下回ったことへの応答として、還元ガス容器から前記ガスラインへの還元ガスの流れを可能にするように構成される。
【0027】
一実施形態によれば、アクセス関連パラメータは、電力貯蔵部内に貯蔵された電力のレベル、又は太陽光発電、風力発電、もしくは水力発電などの電力を生成するための手段のアクセスレベルのいずれかを含む。
【0028】
一実施形態によれば、還元ガス源は、公共の電気ネットワークを介して提供される電力によって駆動される電解槽を備え、システムは、公共の電気ネットワークにかかる負荷を登録するための手段を備え、制御ユニットは、公共のネットワークにかかる負荷が所定のレベルを上回ったことへの応答として、還元ガス容器から前記ガスラインへのガス混合物の流れを可能にするように構成される。したがって、公共のネットワークにかかる負荷が高く、その結果として電力の価格が高いとき、特に還元ガス源が電解槽を備えるとき、還元シャフトへの還元ガスは、還元ガス源からではなく還元ガス容器からより多く取得される。
【0029】
一実施形態によれば、制御ユニットは、第1のガスライン内の要求される還元ガス流が実現されるという条件で、還元ガス容器から第1のガスラインへの還元ガス流を可能にしたことへの応答として、還元ガス源の出力を低減させるように構成される。
【0030】
一実施形態によれば、制御ユニットは、アクセス関連パラメータが所定の第2のレベルを上回ったことへの応答として、還元ガス源から還元ガス容器への還元ガスの流れを可能にするように構成される。電力へのアクセスにより、還元ガス源が、シャフトに必要とされるより速い速度で還元ガスを生成することが可能になるとき、制御ユニットは、還元ガス源によって生成される過度の還元ガスが還元ガス容器へ送達されるように、還元ガスの生成及び送達を制御する。圧縮器は、好ましくは、還元ガス容器内に高い圧力を生成するように、第2のガスライン内に配置される。
【0031】
一実施形態によれば、システムは、1次回路内の圧力が所定のレベルを上回ったことへの応答として、1次回路から2次回路への前記ガス部分の前記取出しを可能にするように構成された手段を備える。システムはまた、又は代替として、1次回路から2次回路への炉頂ガスの継続的な抜取りを提供するように構成された手段を備える。
【0032】
一実施形態によれば、システムは、還元ガス容器に入る前に、2次回路を介して送達される前記ガス部分及び還元ガス源から前記第2のガスラインを通って送達される還元ガスを圧縮するための圧縮器配置を備える。圧縮器配置は、第2のガスライン内に配置された前記圧縮器を備えることができる。
【0033】
一実施形態によれば、システムは、第1のガスライン内の還元ガス流量を測定するための少なくとも1つの第1のセンサと、直接還元シャフト内の温度を測定するための少なくとも1つの第2のセンサと、直接還元シャフト内の圧力を示す圧力を測定するための少なくとも1つの第3のセンサとを備え、制御ユニットは、前記第1、第2、及び第3のセンサから受け取った入力に基づいて、第1のガスラインにおける直接還元シャフト内への要求される還元ガス流量を判定するように構成される。
【0034】
一実施形態によれば、直接還元シャフトは、1時間当たりの海綿鉄の公称生成速度を有し、還元ガス容器の貯蔵容量は、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも3時間、さらにより好ましくは少なくとも6時間にわたって、前記公称還元速度における還元を可能にするために必要とされる水素ガスの量に対応する。
【0035】
本発明ならびにそのさらなる目的及び利点のより完全な理解のために、後述する詳細な説明が添付の図面とともに読まれるべきであり、様々な図において、同じ参照記号は類似の物品を指す。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】Hybritの概念による鉄鋼石に基づく製鋼価値連鎖を概略的に示す図である。
図2】本明細書に開示するプロセスを実行するのに好適なシステムの例示的な実施形態を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
定義
還元ガスとは、鉄鋼石を金属鉄に還元することが可能なガスである。従来の直接還元プロセスにおける還元成分は、典型的には水素及び一酸化炭素であるが、本明細書に開示するプロセスでは、還元成分は主に又は排他的に水素である。還元ガスは、直接還元シャフトの鉄鋼石入口より低い点から導入され、鉄鋼石の移動床とは反対に上方へ流れて、鉱石を還元する。
【0038】
炉頂ガスとは、鉱石入口の近くで直接還元シャフトの上端から取り出されるプロセスガスである。炉頂ガスは、典型的には、還元成分の酸化生成物(たとえば、H2O)を含む部分的に使用済みの還元ガスと、たとえば封止ガスとしてプロセスガスへ導入される不活性成分との混合物を含む。処置後、炉頂ガスは、再び還元ガスの成分として直接還元シャフトへ再循環することができる。
【0039】
浸炭プロセスガス中の不活性成分の蓄積を防止するために使用済みの浸炭ガスから取り出された抜取り流を、浸炭抜取り流と呼ぶ。
【0040】
還元ガス源からのガスを、補填ガスと呼ぶことができる。本出願の文脈で、補填ガスは、直接還元シャフト内への再導入前に、再利用される炉頂ガスに加えられる。したがって還元ガスは、典型的には、再利用される炉頂ガスとともに補填ガスを含む。
【0041】
封止ガスとは、直接還元(DR)シャフトの入口にある鉱石装填配置から直接還元シャフトに入るガスである。直接還元シャフトの出口端もまた、封止ガスを使用して封止することができ、したがって封止ガスは、直接還元シャフトの出口にある放出配置からDRシャフトに入ることができる。封止ガスは、典型的には、爆発性のガス混合物がシャフトの入口及び出口に形成されることを回避するための不活性ガスである。不活性ガスとは、空気又はプロセスガス、すなわちこのプロセスで広まる条件下で、燃焼反応における酸化剤又は燃料として作用しないガスを含む、潜在的に可燃性又は爆発性の混合物を形成しないガスである。封止ガスは、本質的に、窒素及び/又は二酸化炭素からなることができる。本明細書では二酸化炭素を不活性ガスと呼ぶが、二酸化炭素は、このシステム内で広まる条件下で、水性ガスシフト反応において水素と反応し、一酸化炭素及び蒸気を提供することができることに留意されたい。
【0042】
還元
直接還元シャフトは、当技術分野では一般に知られている任意の種類のものとすることができる。シャフトとは、固気向流式移動床反応器を意味し、それによって反応器の頂部にある入口から鉄鋼石の装入物が導入され、重力によって反応器の底部に配置された出口へ下降する。還元ガスは、反応器の入口より低い点から導入され、鉱石の移動床とは反対に上方へ流れて、鉱石を金属鉄に還元する。還元は、典型的には、約900℃~約1100℃の温度で実行される。必要とされる温度は、典型的には、たとえば電気予熱器などの予熱器を使用して、反応器内へ導入されるプロセスガスの事前加熱によって維持される。ガスのさらなる加熱は、予熱器を離れた後、反応器内への導入前に、これらのガスと酸素又は空気との発熱部分酸化によって得ることができる。還元は、DRシャフト内で約1バール~約10バール、好ましくは約3バール~約8バールの圧力で実行することができる。反応器は、海綿鉄を冷却して出口から放出することを可能にするように底部に配置された冷却及び放出コーンを有することができる。
【0043】
鉄鋼石装入物は、典型的には、主に鉄鋼石ペレットからなるが、塊鉄鋼石が導入されてもよい。鉄鋼石ペレットは、典型的には主にヘマタイトを含み、脈石、融剤、及び結合剤などのさらなる添加物又は不純物を含む。しかし、ペレットは、磁鉄鉱などの他の金属及び他の鉱石を含むこともできる。直接還元プロセスに指定される鉄鋼石ペレットは市販されており、そのようなペレットを本プロセスで使用することができる。別法として、ペレットは、本プロセスと同様に、水素を多く含む還元工程のために特別に適合させることもできる。
【0044】
還元ガスは水素を多く含む。還元ガスとは、新しい補填ガスと直接還元シャフト内へ導入された炉頂ガスの再利用される部分とを合わせたものを意味する。水素を多く含むとは、直接還元シャフトに入る還元ガスが、70体積%より大きい水素ガス、たとえば80体積%より大きい水素ガス、又は90体積%より大きい水素ガスからなることができることを意味する(体積%は1atm及び0℃の正常条件で判定される)。好ましくは、還元は個別の段階として実行される。すなわち、浸炭はまったく実行されず、又は浸炭が実行されるべきである場合、浸炭は還元とは別個に、すなわち別個の反応器内で、又は直接還元シャフトの別個の個別区間内で実行される。これにより、炭素質成分を除去する必要及びそのような除去に関連する費用が回避されるため、炉頂ガスの処置が大幅に簡略化される。そのような場合、補填ガスは、本質的に水素ガスからなることができ、又は水素ガスからなることができる。補填ガスが排他的に水素である場合でも、ある程度の量の炭素含有ガスが還元ガス中に存在することがあることに留意されたい。たとえば、直接還元シャフトの海綿鉄出口が浸炭反応器の入口に結合される場合、比較的少量の炭素含有ガスが意図せず浸炭反応器から直接還元シャフト内へ浸透する可能性がある。別の例として、鉄鋼石ペレット中に存在する炭酸塩が揮発し、DRシャフトの炉頂ガス中にCOとして現れることがあり、その結果、ある程度の量のCOがDRシャフトへ再循環される可能性がある。還元ガス回路には水素ガスが圧倒的に多く存在するため、COが存在しても、逆水性ガスシフト反応によってCOに変換することができる。
【0045】
いくつかの場合、単一の段階として、還元を実行するとともにある程度の浸炭を得ることが望ましいことがある。そのような場合、還元ガスは、最大約30体積%、たとえば最大約20体積%、又は最大約10体積%の炭素含有ガスを含むことができる(1atm及び0℃の正常条件で判定される)。以下、好適な炭素含有ガスは浸炭ガスとして開示される。
【0046】
水素ガスは、好ましくは、少なくとも部分的に水の電気分解によって得ることができる。水の電気分解が再生可能エネルギーを使用して実行される場合、これにより再生可能な資源からの還元ガスの提供が可能になる。電解水素は、導管によって電解槽からDRシャフトへ直接運搬することができ、又は生成時に水素を貯蔵し、必要に応じてDRシャフトへ運搬することもできる。
【0047】
直接還元シャフトを出るときの炉頂ガスは、典型的には、未反応の水素、水(水素の酸化生成物)、及び不活性ガスを含む。浸炭が還元とともに実行される場合、炉頂ガスはまた、メタン、一酸化炭素、及び二酸化炭素などのある程度の炭素質成分を含むことができる。直接還元シャフトを出るときの炉頂ガスは最初に、同伴された固形物を除去するための除塵、及び/又は炉頂ガスを冷却して還元ガスを加熱するための熱交換などの調整にかけることができる。熱交換中、炉頂ガスからの水を凝縮することができる。好ましくは、炉頂ガスはこの段階で、本質的に水素、不活性ガス、及び残留水からなる。しかし、炉頂ガス中に炭素質成分が存在する場合、たとえば改質及び/又はCOの吸収によって、そのような炭素質成分も炉頂ガスから除去することができる。
【0048】
海綿鉄
本明細書に記載するプロセスの海綿鉄生成物は、典型的には、直接還元鉄(DRI)と呼ばれる。DRIは、プロセスパラメータに応じて、高温(HDRI)又は低温(CDRI)で提供することができる。低温のDRIは、タイプ(B)DRIとしても知られていることがある。DRIは再酸化を受けることがあり、場合によって自然発火性を有する。しかし、DRIを不活性化する複数の手段が知られている。生成物の海外への輸送を容易にするために一般に使用される1つのそのような不活性化手段は、高温のDRIを加圧してブリケットにすることである。そのようなブリケットは、一般にホットブリケットアイアン(HBI)と呼ばれており、タイプ(A)のDRIとしても知られていることがある。
【0049】
本明細書のプロセスによって得られる海綿鉄生成物は、本質的に完全に金属化された海綿鉄、すなわち約90%より大きい、たとえば約94%より大きい、又は約96%より大きい還元度(DoR)を有する海綿鉄とすることができる。還元度は、酸化鉄から除去される酸素の量として定義され、酸化鉄中に存在する酸素の初期量の百分比として表される。約96%より大きいDoRを有する海綿鉄を得ることは、反応速度論的に商業上好まれないことが多いが、所望される場合、そのような海綿鉄を生成することもできる。
【0050】
浸炭が実行される場合、本明細書に記載するプロセスによって、約0~約7重量パーセントの任意の所望の炭素含有量を有する海綿鉄を生成することができる。しかし典型的には、さらなる処理のために、海綿鉄が約0.5~約5重量パーセント、好ましくは約1~約4重量パーセント、たとえば約3重量パーセントの炭素含有量を有することが望ましいが、これは、後のEAF処理工程で使用される海綿鉄と屑の比に依存することがある。
【0051】
実施形態
本発明について、次に特定の例示的な実施形態及び図面を参照してより詳細に説明する。しかし、本発明は、本明細書に論じかつ/又は図面に示す例示的な実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲の範囲内で変更されてもよい。さらに、これらの図面は、原寸に比例して描かれていると見なされるものではなく、特定の特徴をよりはっきりと示すために、いくつかの特徴が強調されていることがある。
【0052】
図1は、Hybritの概念による鉄鋼石に基づく製鋼価値連鎖を概略的に示す。鉄鋼石に基づく製鋼価値連鎖は、鉄鋼石鉱山101から始まる。採掘後、鉄鋼石103はペレット化工場105で濃縮及び処理されて、鉄鋼石ペレット107が生成される。これらのペレットは、このプロセスで使用されるあらゆる塊鉱石とともに、直接還元シャフト111において、主還元剤として水素ガス115を使用した還元によって海綿鉄109に変換され、主な副生成物として水117aを生じる。海綿鉄109は、任意選択により、直接還元シャフト111内で、又は別個の浸炭反応器(図示せず)内で、浸炭することができる。水素ガス115は、電解槽119において、電気121を使用した水117bの電気分解によって生成され、電気121は、好ましくは、主に化石燃料を使用しない又は再生可能である電源122から導出される。水素ガス115は、直接還元シャフト111への導入前に、水素貯蔵部120内に貯蔵することができる。海綿鉄109は、電気アーク炉123を使用して、任意選択によりある割合の屑鉄125又は他の鉄源とともに溶融されて、溶融物127を提供する。溶融物127は、さらに下流の2次冶金プロセス129にかけられて、鋼鉄131が生成される。鉱石から鋼鉄までの価値連鎖全体が化石燃料を使用しないものであり、炭素放出をほんの少し又はゼロにすることができることが意図される。
【0053】
図2は、本明細書に開示するプロセスを実行するのに好適なシステムの例示的な実施形態を概略的に示す。
【0054】
図2に提示するシステムは、直接還元(DR)シャフト201を備える。DRシャフトは、鉄鋼石をDRシャフト内へ導入するための第1の入口202と、海綿鉄をDRシャフトから取り出すための第1の出口203とを備える。DRシャフトは、還元ガスをシャフト内へ導入するための複数の第2の入口204と、炉頂ガスをDRシャフトから取り出すための少なくとも1つの第2の出口205とをさらに備える。第2の入口は多数であってよいが、話を簡単にするために、この図にはそのうちの1つのみが示されていることを理解されたい。
【0055】
システムは、第1のガスライン207を通って還元ガス入口204に接続された還元ガス源206をさらに備える。還元ガス源は、水素生成ユニットを備えることができる。提示する実施形態では、還元ガス源は、水電解槽ユニットを備える。還元ガス源206からの還元ガスは、1バール程度のかなり低い圧力を有し、DRシャフト内へ導入する前に圧縮する必要がある。したがって、システムは、第1のガスライン207内に設けられた第1の圧縮器208をさらに備え、第1の圧縮器208は、還元ガスの圧力を約8バールに増大させるように構成される。
【0056】
システムは、還元ガス容器209をさらに備える。提示する実施形態では、還元ガス容器209は、ライニング式岩盤貯槽を構成する。直接還元シャフト201は、1時間当たりの海綿鉄の公称生成速度を有し、還元ガス容器209の貯蔵容量は、少なくとも6時間にわたって前記公称還元速度における還元を可能にするために必要とされる水素ガスの量に対応する。
【0057】
システムは、炉頂ガスの少なくとも一部分を案内するための1次回路210をさらに備え、前記1次回路は、一方の端部で第2の出口205に接続され、他方の端部で前記第1のガスライン207に接続される。
【0058】
1次回路210を通って案内されるガスから取り出されたガスの少なくとも一部分を案内するための2次回路211が設けられる。2次回路211は、一方の端部で1次回路210に接続され、他方の端部で還元ガス容器209に接続される。2次回路211は、1次回路210内、それによってDRIシャフト内の圧力を制御するために使用される。
【0059】
システムは、還元ガス源206を還元ガス容器209に接続する第2のガスライン212と、還元ガス容器209を第1のガスライン207に接続する第3のガスライン213とをさらに備える。図2に示されている実施形態では、第2のガスライン212は、第1のガスライン207と第1のガスラインから前記第2のガスライン212へ延びる第4のガスライン216とを介して、還元ガス源206に接続される。第3のガスライン213は、前記第4のガスライン216を介して第1のガスライン207に接続される。第4のガスライン216は、前記第1の圧縮器208の下流で第1のガスライン207に接続される。第4のガスラインが除外され、第2のガスライン212及び第3のガスライン213が第1のガスラインに接続されるべき共通のガスを共有せず、第1のガスラインまで別個に延びる代替実施形態も実行可能である。
【0060】
制御ユニット214が、第1のガスライン207内に配置された動作可能な弁224の制御によって、還元ガス源206から第1のガスライン207を通る還元ガスの流れを制御するように構成される。制御ユニット214はまた、第3のガスライン213内に設けられた動作可能な弁220の制御によって、還元ガス容器209から第1のガスライン207への第3のガスライン213を通る還元ガスの流れを制御するように構成される。制御ユニット214は、還元ガス容器209から前記第1のガスライン207への還元ガスの流れを可能にし、それに対応して還元ガス源206から前記第1のガスライン207への還元ガスの流量を低減させるように構成される。制御ユニット214はまた、第4のガスライン212内に設けられた動作可能な弁225を制御することによって、第2のガスライン212への還元ガスの流れを制御するように構成される。第4のガスライン216内の動作可能な弁225はまた、還元ガス容器209から第1のガスライン207へのガス流を制御するために使用される。好ましくは、前記制御可能な弁の各々は比例弁であり、それによってそれぞれのガスライン内の流量及び圧力を制御することができる。
【0061】
システムは、還元ガス容器209内のガス圧力が所定のレベルを上回ったことへの応答として、還元ガス容器209から第1のガスライン207への還元ガスの流れを可能にするための手段を備える。前記手段は、第3のガスライン内に設けられた圧力センサ215と、第3のガスライン213内に設けられ、制御ユニット214によって制御される動作可能な制御弁220とを備える。図示しないが、第3のガスライン213内に減圧器を設けることもできる。一実施形態によれば、還元ガス容器209内の前記所定の圧力は、第3のガスライン213内にガス流を誘発し、第1のガスライン207内の圧力より実質的に高い。減圧器は、適用される場合、減圧器を通過するガスのより高いエネルギーを電力に変換するように構成されるはずであり(たとえば、タービンを装備することによる)、この電力は、好ましくは還元ガス源内で水素ガスを生成するために使用される。
【0062】
還元ガス源206は、電源217からの電力によって駆動される電解槽を備える。一実施形態によれば、電源217は、太陽光エネルギー発電所又は風力エネルギー発電所などの再生可能エネルギー源を構成する。そのような発電所によって生成される電力は時間とともに変動する可能性があるため、制御ユニット214は、生成される電力が所定の第1のレベルを下回ったことへの応答として、還元ガス容器209から前記第1のガスライン207への還元ガスの流れを可能にするように構成される。
【0063】
電源217はまた、公共の電気ネットワークを構成することができ、システムは、公共の電気ネットワークにかかる負荷を登録するための手段を備える。このとき制御ユニット214は、公共のネットワークにかかる負荷、それによって電力の価格が所定のレベルを上回ったことへの応答として、還元ガス容器209から第1のガスライン207へのガス混合物の流れを可能にするように構成することができる。したがって、公共のネットワークにかかる負荷が高く、その結果として電力の価格が高いとき、特に還元ガス源206が電解槽を備えるとき、還元シャフト201への還元ガスは、主に還元ガス源206からではなく還元ガス容器209から送達することができる。
【0064】
制御ユニット214は、第1のガスライン207におけるDRシャフト内への要求される還元ガス流が実現されるという条件で、還元ガス容器209から第1のガスライン207への還元ガス流を可能にしたことへの応答として、還元ガス源206の出力を低減させるように構成される。
【0065】
制御ユニット214は、電力へのアクセスが所定の第2のレベルを上回ったことへの応答として、還元ガス源206から還元ガス容器209への還元ガスの流れを可能にするように構成される。電力へのアクセスにより、還元ガス源206が、DRシャフトに必要とされるより速い速度で還元ガスを生成することが可能になるとき、制御ユニット214は、還元ガス源206によって生成される過度の還元ガスが還元ガス容器209へ送達されるように、還元ガスの生成及び送達を制御する。
【0066】
システムは、圧力センサ218、動作可能な弁219、及び制御ユニット214を備え、それによって制御ユニット214は、センサ218からの入力に基づいて、1次回路210内の圧力が所定のレベルを上回ったことへの応答として、ガス部分を1次回路210から2次回路211へ取り出すように、弁219を制御する。システムはまた、又は代替として、1次回路210から2次回路211への炉頂ガスの継続的な抜取りを提供するように構成された手段を備えることができる。
【0067】
システムは、還元ガス容器209に入る前に、2次回路211を介して送達される前記ガス部分及び還元ガス源206から前記第2のガスライン212を通って送達される還元ガスを圧縮するための圧縮器配置220、221をさらに備える。
【0068】
システムは、第1のガスライン207内の還元ガス流量を測定するための少なくとも1つの第1のセンサ222と、直接還元シャフト201内もしくは直接還元シャフト201の出口の温度又はDRシャフト201内もしくはその出口の温度を示す温度を測定するための少なくとも1つの第2のセンサ223と、DRシャフト内の圧力を示す圧力を測定するための少なくとも1つの第3のセンサ、ここでは1次回路内の圧力センサ218とを備える。制御ユニット214は、前記第1のセンサ222、第2のセンサ223、及び第3のセンサ218から受け取った入力に基づいて、第1のガスライン207におけるDRシャフト内への要求される還元ガス流量を判定するように構成される。
【0069】
1次回路210は、炉頂ガスを処置するためのデバイス226をさらに備え、前記デバイス226は、炉頂ガスのうち1次回路210を通って案内されるべき部分から不活性ガスを分離するためのデバイス(詳細には図示せず)を備える。処置デバイス226はまた、炉頂ガスのうち1次回路210を通って案内されるべき前記部分から水及び塵/粒子状物質を分離するためのデバイス(詳細には図示せず)を備える。処置デバイス226はまた、炉頂ガスとガスライン207を通って流れる還元ガスとの間の熱交換のための熱交換器(詳細には図示せず)を備える。第1のガスライン207内で還元ガスを加熱するため、すなわち還元ガス源206及び/又は還元ガス容器209ならびに1次回路210からくる還元ガスを加熱するための別個の加熱器227も設けられる。
図1
図2
【国際調査報告】