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特表2024-523272直流アーク炉用の炉底電極複合底吹きマルチメディアシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】直流アーク炉用の炉底電極複合底吹きマルチメディアシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   F27D 3/16 20060101AFI20240621BHJP
   C21C 7/00 20060101ALI20240621BHJP
   F27B 14/14 20060101ALI20240621BHJP
   F27D 11/08 20060101ALI20240621BHJP
   F27B 14/16 20060101ALI20240621BHJP
   F27B 3/18 20060101ALI20240621BHJP
   F27B 3/22 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
F27D3/16
C21C7/00 F
F27B14/14
F27D11/08 A
F27B14/16
F27B3/18
F27B3/22
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576379
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 CN2022107899
(87)【国際公開番号】W WO2023024797
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】202110983845.7
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515228678
【氏名又は名称】シーアイエスディーアイ エンジニアリング カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ニンチゥァン
(72)【発明者】
【氏名】ウー シュエタオ
(72)【発明者】
【氏名】シー チューチィァン
【テーマコード(参考)】
4K013
4K045
4K046
4K055
4K063
【Fターム(参考)】
4K013CA11
4K013CB04
4K013CD02
4K013EA03
4K013EA12
4K013EA30
4K045AA04
4K045AA07
4K045BA02
4K045RB02
4K045RB29
4K045RC06
4K046AA03
4K046BA01
4K046CC05
4K046CD04
4K046CD13
4K055AA03
4K055MA02
4K055MA03
4K063AA03
4K063AA04
4K063AA12
4K063BA02
4K063CA01
4K063FA64
(57)【要約】
本発明は、製鋼技術分野であって、直流アーク炉用の炉底電極複合底吹きマルチメディア・システムおよび方法に関し、炉底に位置され、一部が中空構造を有する底吹き電極であり、一部の底吹き電極はI類炉底電極、II類炉底電極、III類炉底電極のうち一種または多種である複数の炉底電極と、溶融バスに浸炭し、スクラップの溶解を促進させるために、溶融バスに炭素材を吹込るためのI類炉底電極と、金属液に溶融スラグ粒を形成し、脱リン反応過程のガス・スラグ・金属の三相反応境界面積を増加させるために、溶融バスにスラグフォーミング粉剤を吹込みるためのII類炉底電極と、溶融バスの物質遷移を促進させるために、溶融バスにガスを吹込るためのIII類炉底電極とを含み、製錬プロセスにおいて底吹き電極の給電強度を結合し、オンラインで吹き込みパラメータを調整することを実現するための底吹き電極と連結する制御ユニットをさらに含む。本発明は、原料・副原料の消費量を削減し、生産効率を向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉底に位置され、一部が中空構造を有する底吹き電極であり、一部の底吹き電極はI類炉底電極、II類炉底電極、III類炉底電極のうち一種または多種である複数の炉底電極と、
溶融バスに浸炭し、スクラップの溶解を促進させるために、溶融バスに炭素材を吹込るためのI類炉底電極と、
金属液に溶融スラグ粒を形成し、脱リン反応過程のガス・スラグ・金属の三相反応境界面積を増加させるために、溶融バスにスラグフォーミング粉剤を吹込るためのII類炉底電極と、
溶融バスの物質遷移を促進させるために、溶融バスにガスを吹込るためのIII類炉底電極と、
製錬プロセスにおいて底吹き電極の給電強度を結合し、オンラインで吹き込みパラメータを調整することを実現するための底吹き電極と連結する制御ユニットをさらに含む、直流アーク炉用の炉底電極複合底吹きマルチメディアシステム。
【請求項2】
前記II類炉底電極と前記I類炉底電極は、I類炉底電極が生じた局部冷態効果を中和するように隣接に配置し、
前記III類炉底電極は、溶融バス底部の流動を促進し、スラグと溶鋼間の熱交換を強化するように分散配置される、
ことを特徴とする請求項1記載の直流アーク炉用の炉底電極複合底吹きマルチメディアシステム。
【請求項3】
前記I類炉底電極のキャリアガスの媒体は、空気、窒素またはCOであり、
炭素材は、炭素粉、コークス炭、黒鉛粉または他の炭素増加粉剤である、
ことを特徴とする請求項1記載の直流アーク炉用の炉底電極複合底吹きマルチメディアシステム。
【請求項4】
前記II類炉底電極のキャリアガスの媒体は、O、O-N混合ガス、またはO-CO混合ガスであり、
スラグフォーミング粉剤は、石灰粉または石灰石粉である、
ことを特徴とする請求項1記載の直流アーク炉用の炉底電極複合底吹きマルチメディアシステム。
【請求項5】
前記III類炉底電極の純粋ガス底吹き媒体は、N、Ar、CO、Oのうち1種または多種の混合ガスである、
ことを特徴とする請求項1記載の直流アーク炉用の炉底電極複合底吹きマルチメディアシステム。
【請求項6】
前記I類炉底電極とII類炉底電極の穴内径寸法は4~25mmで、III類炉底電極の穴内径寸法は0.1~10mmである、
ことを特徴とする請求項1記載の直流アーク炉用の炉底電極複合底吹きマルチメディアシステム。
【請求項7】
前記底吹き電極の底吹き接続口と外部媒体投入接続口とは絶縁処理されている、
ことを特徴とする請求項1記載の直流アーク炉用の炉底電極複合底吹きマルチメディアシステム。
【請求項8】
前記底吹き電極全体がアーク炉の底部に取り付けられ、さらに炉底ラミング材によって埋まれる、
ことを特徴とする請求項1記載の直流アーク炉用の炉底電極複合底吹きマルチメディアシステム。
【請求項9】
炉底に位置された一部の炉底電極が中空構造を有する底吹き電極に設計され、
底吹き電極によって炉内溶融バスに物質遷移を促進できるガス、炭素材、スラグフォーミング粉剤のうち一種または多種の媒体を吹込るとともに、底吹き電極の給電強度と結合して吹込みパラメータをダイナミック的に制御することで、底吹きと炉底電極の協同運行を実現する、
ことを特徴とする直流アーク炉用の炉底電極複合底吹きマルチメディア方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鋼技術分野に関し、特に、直流アーク炉用の炉底電極複合底吹きマルチメディア・システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アーク炉製鋼の主な方法の一つである直流アーク炉の製鋼は、炉底をアーク電流の正極とし、電極間の電流によって溶融バスの撹拌を強化し、溶融バスの動力学条件はある程度改善されたが、扁平炉型構造の影響のため、溶融バスの撹拌力が弱く、動力学条件が悪く、製錬周期が長くなり、溶鋼中のリン、窒素、酸素の制御難などの難題は、直流アーク炉のグリーンで効率の高い製錬への発展を制約してきた。
【0003】
難題は主に以下の幾つかの面で示される。
1)製錬用スクラップなどの原料の組織が複雑で、窒素含有量が比較的高く、溶解後のリン含有量の変動が大きい。
2)溶融バスの炭素含有量が低く、溶融バスにおける炭素と酸素の反応が不十分で、溶鋼の流動速度が遅く、脱リン、脱窒素の動力学条件が悪い。
3)製錬過程において、通常、石灰は塊状で溶融バスに投入され、スラグ溶け・スラグ化の速度が遅く、炉壁に炭素粉を吹込むによるスラグの流動性は向上されたが、炭素粉の利用率が低く、原料・副原料の消費量が高く、溶鋼の品質を効果的に改善することが困難である。
4)現代のアーク炉製鋼は、一般的に高出力の電源を使用することでスクラップ溶解を促進し、製錬周期を短縮させ、高温アークは空気中のNを電解するため、溶鋼は窒素を吸収しやすくなる。
5)酸素供給を強化するとともに、製錬効率が向上されるだけでなく、終点過酸化や、金属歩留まりの低下、出鋼後の合金消費量の増加という問題も引き起こされている。
6)炉底電極の給電を用いることで、炉底の局部温度が高すぎて、炉底電極の給電強度および寿命が制限される。
【0004】
そのため、どのように直流アーク炉の製錬反応動力学条件を改善し、スラグと溶鋼の境界の反応速度を加速し、同時に原料・副原料の消費量を削減し、生産効率を向上させるかは、直流アーク炉製鋼がグリーンで効率的な生産へと発展する過程において解決しなければならない技術ネックである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに鑑みて、本発明の目的は、生産効率を向上させるため、直流アーク炉用の炉底電極複合底吹きマルチメディアシステムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、以下の技術案を提供する。
【0007】
炉底に位置され、一部が中空構造を有する底吹き電極であり、一部の底吹き電極はI類炉底電極、II類炉底電極、III類炉底電極のうち一種または多種である複数の炉底電極と、溶融バスに浸炭し、スクラップの溶解を促進させるために、溶融バスに炭素材を吹付込むためのI類炉底電極と、金属液に溶融スラグ粒を形成し、脱リン反応過程のガス・スラグ・金属の三相反応境界面積を増加させるために、溶融バスにスラグフォーミング粉剤を吹込むためのII類炉底電極と、溶融バスの物質遷移を促進させるために、溶融バスにガスを吹込むためのIII類炉底電極とを含み、製錬プロセスにおいて底吹き電極の給電強度を結合し、オンラインで吹き込みパラメータを調整することを実現するための底吹き電極と連結する制御ユニットをさらに含む、直流アーク炉用の炉底電極複合底吹きマルチメディア・システムである。
【0008】
好ましくは、前記II類炉底電極とI類炉底電極とは、I類炉底電極が生じた局部冷態効果を中和するように隣接に配置し、III類炉底電極は、溶融バス底部の流動を促進し、スラグ溶鋼間の熱交換を強化するように分散配置される。
【0009】
好ましくは、前記I類炉底電極のキャリアガス1の媒体は、空気、窒素またはCOであり、流量は0~1000Nm/hで、炭素材は、炭素粉、コークス炭、黒鉛粉または他の炭素増加粉剤であり、1本のI類炉底電極粉剤流量が0~50kg/minで、粉剤粒度は≦1mmである。
【0010】
好ましくは、前記II類炉底電極のキャリアガス2の媒体は、O、O-N混合ガスまたはO-CO混合ガスであり、キャリアガス流量は0~1000Nm/hで、酸素の体積流量比例は0~100%で、スラグフォーミング粉剤は、石灰粉または石灰石粉であり、1本のII類炉底電極粉剤流量は0~50kg/minで、粉剤粒度は≦1mmである。
【0011】
好ましくは、前記III類炉底電極の純ガス底吹き媒体は、N、Ar、CO、Oのうち1種または多種の混合ガスであり、底吹き強度は0~0.05Nm/(min・t)である。
【0012】
好ましくは、前記I類炉底電極とII類炉底電極の穴内径寸法は4~25mmで、III類炉底電極の穴内径寸法は0.1~10mmである。
【0013】
好ましくは、前記底吹き電極の底吹き接続口と外部媒体投入接続口とは絶縁処理されている。
【0014】
好ましくは、前記底吹き電極全体がアーク炉の底部に取り付けられ、さらに炉底ラミング材によって埋まれる。
【0015】
炉底に位置された一部の炉底電極が中空構造を有する底吹き電極に設計され、底吹き電極によって炉内溶融バスに物質遷移を促進できるガス、炭素材、スラグフォーミング粉剤のうち一種または多種の媒体を吹込むとともに、底吹き電極の給電強度と結合して吹こみパラメータをダイナミック的に制御することで、底吹きと炉底電極の協同運行を実現する、直流アーク炉用の炉底電極複合底吹きマルチメディア方法。
【発明の効果】
【0016】
(1)本出願が提供する直流アーク炉用の炉底電極複合底吹きマルチメディア・システムは、炉底電極の中空設計によって、製錬過程において底吹き電極の中実部分で溶融バスに給電し、中空部分で溶融バスにダイナミック的に多種の媒体を投入し、底吹きと炉底電極の高効率協同運行を実現する。
【0017】
(2)本出願が提供する直流アーク炉の新規な製錬方法は、底吹き電極によって溶融バスに炭素材とスラグフォーミング粉剤を吹き、溶融バスの高効率の炭素増加、スクラップ溶解の促進および不純物の高効率除去を実現でき、原料・副原料の消費量が削減されると同時に、製錬終点のリンは≦0.005%で、終点Nは≦50ppmであることを実現する。
【0018】
(3)本出願が提供する直流アーク炉用の炉底電極複合底吹きマルチメディア・システムは、溶鋼成分と温度の均一性を有効に改善でき、製錬過程におけるエネルギー損失を減少し、製錬リズムを加速し、製錬周期を3min以上短縮することを実現し、トン鋼あたりの電気原単位を10kWh以上低下させる。
【0019】
(4)本発明は、アーク炉製鋼過程において溶融バスに炭素材およびスラグフォーミング粉剤を吹こむことによって、製錬終点の過酸化問題を有効に制御でき、金属歩留まりを1~3%向上させ、同時に出鋼合金化過程の歩留まりは底吹き機能のない電気炉より4~5%向上させる。
【0020】
本発明の他の利点、目的および特徴は、ある程度は後の明細書に記載され、また、ある程度的、以下の考察に基づく研究は同業者にとって明らかなことであり、または本発明の実施から教示され得る。本発明の目的及び他の利点は、以下の明細書によって達成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の目的、技術的解決策及び利点をより明確にするために、本発明は、添付の図面に関連して以下に好ましく詳細に説明される。
図1】本発明に係る直流アーク炉の複合底吹きマルチメディア底吹きシステムの模式図である。
図2】本発明の実施例1におけるマルチメディア底吹き電極の分布断面図である。
図3】本発明の実施例1におけるI類炉底電極プロセスの模式図。
図4】本発明の実施例1におけるII類炉底電極プロセスの模式図。
図5】本発明の実施例1におけるIII類炉底電極プロセスの模式図。
図6】本発明の実施例2におけるマルチメディア底吹き電極の分布断面図である。 添付図表記として、III類炉底電極底吹き制御システム1、I類炉底電極底吹き制御システム2、II類炉底電極底吹き制御システム3、III類炉底電極システム分配器4、I類炉底電極システム分配器5、II類炉底電極システム分配器6、絶縁ジョイント7、底吹き電極8、底吹き電極冷風吸気口9、底吹き導電銅製バスバー10である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施法について特定の実施例によって説明され、本発明の他の利点および効果は、本明細書に開示された内容から同業者に容易に理解されるであろう。本発明はまた、別の特定の実施例によって実施または適用することができ、本明細書の詳細は、本発明の精神から逸脱することがなければ、異なる観点および適用に基づいて様々な修正または変更を行うことができる。なお、以下の実施例に示した図は、本発明の基本的な考え方を概略的に示したもののみで、以下の実施例及び実施例の特徴は、矛盾することなく互いに組み合わせることができる。
【0023】
そのうち、図面は例示のためのものであり、実体図ではなく概略図であって、本発明を限定するものと解釈することはできない。本発明の実施例をよりよく説明するために、図面上のいくつかの構成要素は、省略、拡大または縮小されており、実際の製品の寸法を表していない。同業者にとっては、図面上のいくつかの公知の構成およびその説明は省略されてもよいことが理解されよう。
【0024】
本発明の実施例の図面における同一または類似の符号は、同一または類似の構成要素に対応し、本発明の説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」等の用語によって示される方位または位置関係は、図面に示される方位または位置関係に基づくものであり、単に本発明の説明を容易にし、説明を簡略化するためのものであって、示される装置または要素が特定の方位を有し、特定の方位で構成され、動作しなければならないことを示す、または示唆するものではない。したがって、図面に示される位置関係を示す用語は、例示のためにのみ使用され、本発明を限定するものとして理解されるべきではなく、同業者にとって、上記用語の特定の意味は、状況に応じて理解されるであろう。
【0025】
図1図6を参照すると、直流アーク炉用の炉底電極複合底吹きマルチメディアシステムは、炉底に位置された複数の炉底電極を含み、一部の炉底電極は中空構造を有する底吹き電極8であって、底吹き電極8は針状を呈し、炉内溶融バスに延在し、一部の底吹き電極8はI類炉底電極、II類炉底電極、III類炉底電極のうち一種または多種であり、I類炉底電極は、溶融バスに炭素材を吹込み、溶融バスに浸炭して、スクラップ溶解を促進するために用いられ、II類炉底電極は、溶融バスにスラグフォーミング粉剤を吹込み、金属液に溶融スラグ粒を形成し、脱リン反応過程のガス・スラグ・金属の三相反応境界面積を増加するために用いられ、III類炉底電極は、溶融バスにガスを吹込み、溶融バスの物質遷移を促進するために用いられる。また、底吹き電極8と連結する制御ユニットを含み、製錬過程において底吹き電極8の給電強度と結合し、オンラインで吹き込みパラメータを調整することを実現する。
【0026】
I類炉底電極が溶融バスの浸炭により溶鋼の冷却速度が速すぎて炉底電極の中心が詰まりやすくなり、II類炉底電極が溶鋼の酸化により局部の溶鋼温度が高すぎて炉底が焼損を加速する問題を防止するため、本発明は、炉底電極を若干の区域に分け、それぞれの区域内の炉底電極とI類炉底電極とII類炉底電極とIII類炉底電極とは相互に配合し、炉底電極は溶融バスにエネルギーを供給し、そのうち、III類炉底電極は、溶鋼間の伝熱と物質遷移を加速し、スラグ鋼間の熱交換を強化させ、およびI類炉底電極とII類炉底電極区域とがもたらす熱効果を平衡するために分散配置される。II類炉底電極とI類炉底電極とは、II類炉底電極にI類炉底電極の反応区域がもたらす溶鋼の冷却効果を緩和させ、炉底溶鋼の温度を快速に均一に中和させ、各底吹き電極8の同期焼損の目的に達するために隣接して配置される。製錬工程の要求に応じて、それぞれの区域内の各タイプの底吹き電極8の数量比例を調整することができ、分布率の範囲は0~100%である。
【0027】
本発明は、溶融バスの高い効率の浸炭、急速なスラグ溶け・スラグ化、不純物除去および強力撹拌を実現し、生産効率を向上させ、原料・副原料の消費量が削減される。
【0028】
好ましくは、I類炉底電極のキャリアガス1の媒体は、空気、窒素またはCOであり、流量は0~1000Nm/hで、炭素材は、炭素粉、コークス炭、黒鉛粉または他の炭素増加粉剤であり、1本のI類炉底電極粉剤の流量は0~50kg/minで、粉剤粒度は≦1mmである。
【0029】
好ましくは、II類炉底電極のキャリアガス2の媒体は、O、O-N混合ガスまたはO-CO混合ガスであり、キャリアガス流量は0~1000Nm/hで、酸素の体積流量比率は0~100%で、スラグフォーミング粉剤は、石灰粉または石灰石粉であり、1本のII類炉底電極粉剤の流量は0~50kg/minで、粉剤粒度は≦1mm以下である。
【0030】
好ましくは、III類炉底電極の純ガス底吹き媒体は、N、Ar、CO、Oのうち一種または多種の混合ガスであり、底吹き強度は0~0.05Nm/(min・t)である。
【0031】
好ましくは、I類炉底電極とII類炉底電極の穴内径寸法は4~25mmで、III類炉底電極の穴内径寸法は0.1~10mmである。
【0032】
好ましくは、I類炉底電極とII類炉底電極の穴内径寸法は12mmまたは14mmで、III類炉底電極の穴内径寸法は4mmまたは5mmである。
【0033】
好ましくは、底吹き電極8の底吹き接続口と外部媒体投入接続口は絶縁処理し、媒体投入過程中に底吹き電極と導電しシステムを故障させてさらに安全事故を発生することを防止する。
【0034】
好ましくは、底吹き電極8全体がアーク炉の底部に取り付けられ、さらに炉底ラミング材によって埋まれる。
【0035】
好ましくは、制御ユニットは、底吹き電極8と連結するシステム分配器と、システム分配器と連結する制御システムとを含み、システム分配器は、それぞれI類炉底電極およびII類炉底電極と連結するI類炉底電極システム分配器5と、II類炉底電極システム分配器6とを含み、制御システムは、それぞれI類炉底電極システム分配器5およびII類炉底電極システム分配器6と連結するI類炉底電極底吹き制御システム2と、II類炉底電極底吹き制御システム3とを含む。
【0036】
本発明は、直流アーク炉用の炉底電極複合底吹きマルチメディア方法をさらに提供し、炉底に位置された一部の炉底電極が中空構造を有する底吹き電極に設計され、底吹き電極によって炉内溶融バスに溶融バスの物質遷移を促進できるガス、炭素材、スラグフォーミング粉剤うちの一種または多種の媒体を吹込るとともに、底吹き電極の給電強度と結合して吹込みパラメータをダイナミック的に制御することで、底吹きと炉底電極の協同運行を実現する。
【0037】
本発明は、一部の炉底電極を、中空構造を有する底吹き電極8に設計することによって、通電と底吹きマルチメディアの複合製錬機能を実現した。底吹き電極8の中実部分は溶融バスに給電し、中空部分はそれぞれ溶融バスにダイナミック的にガス、キャリアガスー炭素材とキャリアガスースラグフォーミング粉剤を吹き込み、製錬過程において炉底電極と結合して給電し、各底吹き電極8間のマルチメディア底吹きは相互に配合し、底吹きマルチメディアは炉底電極を冷却するとともに、溶融バスの高い効率の浸炭、急速なスラグ溶け・スラグ化、不純物除去と強力撹拌を完成し、同時に急速に溶融バスの成分と温度を均一にし、製錬周期を3min以上短縮することを実現し、金属歩留まりが1~3%向上させ、製錬終点リンは≦0.005%で、終点N≦50ppmで、出鋼合金化過程の合金歩留まりは、底吹き機能のない電気炉より4~5%向上する。
【0038】
(実施例1)
本発明は、100t直流アーク炉に適用され、図1に示すように、複合底吹きマルチメディア電極システムの模式図であり、III類炉底電極の底吹き制御システム1は、III類炉底電極システム分配器4と接続し、III類炉底電極システム分配器4は、底吹きガスを中空構造の底吹き電極8に均一に搬送し、製錬過程における底吹きガスの搬送を完成した。I類炉底電極の底吹き制御システム2とII類炉底電極の底吹き制御システム3は、それぞれI類炉底電極システム分配器5およびII類炉底電極システム分配器6と連結し、各分配器は対応する底吹き電極8と連結し、粉剤は分配器によって各底吹き電極8に均一に搬送され、製錬過程における炭素増加と脱リンを完成した。分配器と底吹き電極8との間の搬送パイプに絶縁ジョイント7が設けられ、噴射システムの安全が保証される。すべての炉底電極は炉底電極導電銅製バスバー10と連結し、電極底板に底吹き電極冷風吸気口9が設けられている。
【0039】
炉底電極は、空冷針状型底吹き電極8であって、炉底電極が電極底板において環状配置方式を用いられ、炉底電極の直径は50mmでかつステンレス鋼材質であり、図2に示すように、炉底電極区域を図に示す実線によって二つの反応区域に分け、区域1は、3本のI類炉底電極、2本のII類炉底電極および2本のIII類炉底電極で、区域2は、2本のI類炉底電極、2本のII類炉底電極および2本のIII類炉底電極で、II類炉底電極とI類炉底電極の隣接配置によって、I類炉底電極が生じた局部冷態効果を中和し、同時に炉底電極の同期浸食が保証され、III類炉底電極は単独に配置され、溶融バス底部の流動を加速し、スラグと溶鋼間の熱交換を強化し、III類炉底電極穴内径は4mm、I類とII類炉底電極穴内径は12mmである。
【0040】
炭素材とスラグフォーミング粉剤は、それぞれ炭素粉と石灰粉を用い、粉剤粒径は200μmで、1本の底吹き電極8の粉吹き込み速度は0~20kg/minである。I類炉底電極のキャリアガス1は空気であり、II類炉底電極のキャリアガス2はOであり、1本の炉底電極8のガス流量は50~500Nm/hである。底吹き撹拌ガスはArであり、1本のIII種炉底電極ガス流量は50~400NL/minである。
【0041】
1本のI類底、II類およびIII類炉底電極のプロセス図は、それぞれ図3図4図5に示すよう、具体的なステップは以下の通りである。
【0042】
(1)0~5min、アーク炉に原料投入段階では、I類炉底電極とII類炉底電極は、それぞれ溶融バスに空気と酸素を吹込み、流量は50Nm/hで、III類炉底電極は溶融バスにエアを吹込み、流量は50NL/minで、底吹き電極8の目詰まりが防止された。
【0043】
(2)6~12min、溶融バスの炭素増加段階で、I類炉底電極は、溶融バスに空気-炭素粉を吹込み、粉吹き込み速度が5kg/minで、空気流量が150Nm/hである。II類炉底電極は、溶融バスに酸素-石灰粉を吹込み、吹込み速度は2kg/min、酸素流量は100Nm/hである。III類炉底電極は溶融バスにArを吹込み、流量は100NL/minである。
【0044】
(3)13~20min、スクラップの溶解に伴い、溶融バスの高度が上昇し、スクラップの溶解を促進するため、I類炉底電極は、溶融バスに空気-炭素粉を吹込み、粉吹き込み速度は15kg/minで、空気流量は200Nm/hで、溶融バス浸炭速度が増加された。同時にII類炉底電極は、溶融バスに酸素-石灰粉を吹込み、粉吹き込み速度は4kg/minで、酸素流量は150Nm/hで、溶鋼脱リンを行った。III類炉底電極は、溶融バスにArを吹込み、流量は100NL/minで、溶融バスの流動が加速された。
【0045】
(4)21~25min、アーク炉は溶融段階では、II類炉底電極は、溶融バスに酸素-石灰粉を吹込み、粉吹き込み速度は20kg/min、酸素流量は300Nm/h、溶鋼は快速深度脱リンを行った。I類炉底電極は、溶融バスに空気-炭素粉を吹込み、粉吹き込み速度は4kg/minで、空気流量は100Nm/hで、炭素酸素反応によって溶融バスの物質遷移を加速した。III類炉底電極は、溶融バスにArを吹込み、流量は200NL/minである。
【0046】
(5)26~31min、アーク炉溶融バスが昇温段階にあり、I類炉底電極は、溶融バスに空気-炭素粉を吹込み、粉吹き込み速度は10kg/min、空気流量は150Nm/hである。II類炉底電極は、溶融バスに酸素-石灰粉を吹込み、粉吹き込み速度は10kg/min、酸素流量は300Nm/h、III類炉底電極は、溶融バスにO-CO混合ガスを吹込み、CO体積比は20%、流量は300NL/min、溶融バスの反応が強化された。
【0047】
(6)32~35min、I類炉底電極は、溶融バスに空気-炭素粉を吹込み、粉吹き込み速度は8kg/minで、空気流量は100Nm/hである。II類炉底電極は、溶融バスに酸素-石灰粉を吹込み、粉吹き込み速度は5kg/min、キャリアガス流量は100Nm/h、III類炉底電極は、溶融バスにO-COを吹込み、流量は200NL/min、CO体積比は30%である。
【0048】
(7)36~38min、アーク炉は出鋼し、I類炉底電極とII類炉底電極は、それぞれ溶融バスに空気とOを吹込み、流量は50Nm/hで、III類炉底電極は、溶融バスにArを吹込み、流量は50NL/minで、底吹き電極8の目詰まりが防止された。
【0049】
本発明の方法によって、アーク炉製錬周期が5min短縮され、トン鋼あたりの電気原単位が10kWh低下し、溶鋼中のリン含有量が0.005%以下、窒素含有量が50ppm以下に制御され、金属歩留まりが2%向上し、出鋼合金化過程の合金歩留まりが平均3%向上し、溶鋼清浄度が明らかに改善され、製錬リズムが著しく向上した。
【0050】
(実施例2)
本発明は、150t連続チャージング直流アーク炉に適用され、炉底電極は、空冷針状式底吹き電極8であって、炉底電極は電極底板において条形配置方式を用い、炉底電極直径は50mmでステンレス鋼材質であり、図6に示すように、炉底電極区域を図に示す破線によって4つの反応区域に分け、それぞれの区域内に2本のI類炉底電極、2本のII類炉底電極および1本のIII類炉底電極で、他はすべて中実の炉底電極である。II類炉底電極とI類炉底電極との隣接配置によって、I類炉底電極が生じた局部冷態効果を中和するとともに、炉底電極の同期浸食が保証され、III類炉底電極は単独に配置され、溶融バス底部の流動を加速し、クラップ間の熱交換が強化された。III類炉底電極穴内径は5mm、I類とII類炉底電極穴内径は14mmである。
【0051】
炭素材およびスラグ粉剤は、それぞれ黒鉛粉と石灰粉であり、粉剤粒径が100μmで、1本の底吹き電極8の粉吹き込み速度が0~20kg/minである。キャリアガス1は空気で、キャリアガス2は酸素で、1本の底吹き電極8のガス流量は50~500Nm/hである。底吹き撹拌ガスはArであり、1本のIII種炉底電極ガス流量は50~400NL/minである。各段階の手順は次のとおりである。
【0052】
(1)0~8min、アーク炉への原料投入段階では、I類炉底電極は、溶融バスに空気-黒鉛粉を吹込み、粉吹き込み速度は10kg/minで、空気流量は150Nm/hで、溶融バスに炭素を増やした。II類炉底電極は、溶融バスに酸素-石灰粉を吹込み、粉吹き速度は2kg/min、酸素流量は100Nm/h、III類炉底電極は、溶融バスにArを吹込み、流量は100NL/min、底吹き電極8の目詰まりが防止された。
【0053】
(2)9~22min、スクラップの溶解に伴い、溶融バスの高度が上昇し、スクラップの溶解を促進するため、I類炉底電極は、溶融バスに空気-黒鉛粉を吹込み、粉吹き込み速度は20kg/minで、空気流量は200Nm/hで、溶融バス浸炭速度を増加する。同時にII類炉底電極は、溶融バスに酸素-石灰粉を吹込み、粉吹き込み速度は6kg/minで、酸素流量は150Nm/hで、溶鋼脱リンを行った。III類炉底電極は、溶融バスにArを吹込み、流量は150NL/minで、溶融バスの流動が加速された。
【0054】
(3)23~26min、アーク炉は溶融段階にあり、II類炉底電極は溶融バスに酸素-石灰粉を吹込み、粉吹き込み速度は25kg/minで、酸素流量は300Nm/hで、溶鋼は快速深度な脱リンを行った。I類炉底電極は、溶融バスに空気-黒鉛粉を吹込み、粉吹き込み速度は6kg/minで、空気流量は120Nm/hで、炭素酸素反応によって溶融バスの物質遷移を加速した。III類炉底電極は、溶融バスにArを吹込み、流量は250NL/minである。
【0055】
(4)27~30min、アーク炉溶融バスは昇温段階にあり、I類炉底電極は、溶融バスに空気-黒鉛粉を吹込み、粉吹き込み速度は10kg/min、空気流量は150Nm/hである。II類炉底電極は、溶融バスに酸素-石灰粉を吹込み、粉吹き込み速度は10kg/min、酸素流量は300Nm/hである。III類炉底電極は、溶融バスにO-CO混合ガスを吹込み、CO体積比は30%、流量は400NL/minであり、溶融バスの反応が強化された。
【0056】
(5)31~33min、I類炉底電極は、溶融バスに空気-炭素粉を吹込み、粉吹き込み速度は8kg/minで、空気流量は100Nm/hである。II類炉底電極は、溶融バスに酸素-石灰粉を吹込み、粉吹き込み速度は5kg/minで、キャリアガス流量は100Nm/hである。III類炉底電極は、溶融バスにO-COを吹込み、流量は250NL/minで、CO体積比は30%であり、溶鋼の局部過酸化が防止された。
【0057】
(6)34~37min、アーク炉は出鋼し、I類炉底電極とII類炉底電極とは、それぞれ溶融バスに空気とOを吹込み、流量は50Nm/hで、III類炉底電極は、溶融バスにArを吹込み、流量は50NL/minで、底吹き電極8の目詰まりが防止された。
【0058】
本発明の方法によって、アーク炉製錬周期が7min短縮され、トン鋼あたりの電気原単位が15kWh低下し、溶鋼中のリン含有量が0.004%より小さく、窒素含有量が50ppm以下に制御され、金属歩留まりが1%向上し、出鋼合金化過程の合金歩留まりが平均4%向上し、溶鋼の清浄度が明らかに改善され、製錬リズムが著しく向上した。
【0059】
本発明は、10~1000t直流アーク炉製錬過程に適用し、炉底電極底盤に設置された複数の底吹き電極8によって、通電と底吹きマルチメディアの複合製錬機能を実現した。製錬過程において炉底電極を結合して給電し、同時に底吹き電極8によってそれぞれ溶融バスにダイナミック的にガス、キャリアガス1-炭素材とキャリアガス2-スラグフォーミング粉剤を吹込み、マルチメディアは炉底電極区域の溶融バスの過熱問題を改善するとともに、溶融バスの高い効率の浸炭、急速なスラグ溶け・スラグ化、不純物除去および強力撹拌を実現し、同時に急速に溶融バス成分と温度を均一にし、製錬周期を3min以上短縮することを実現した。炭素粉歩留まりが向上し、金属歩留まりが1~3%向上し、出鋼合金化過程の合金歩留まりが底吹き機能のない電気炉より4~5%向上し、製錬終点リンは≦0.005%で、終点Nは≦50ppmである。
【0060】
最後に、上記の実施例は、本発明の技術的思想を説明するためのものであって限定するものではなく、好ましい実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、同業者であれば、本発明の技術的思想の趣旨及び技術的範囲から逸脱することなく、本発明の技術的思想を修正又は同等に変更することができ、それらは本発明の特許請求の範囲に含まれることを理解するであろう。
【符号の説明】
【0061】
1 III類炉底電極底吹き制御システム
2 I類炉底電極底吹き制御システム
3 II類炉底電極底吹き制御システム
4 III類炉底電極システム分配器
5 I類炉底電極システム分配器
6 II類炉底電極システム分配器
7 絶縁ジョイント
8 底吹き電極
9 底吹き電極冷風吸気口
10 炉底電極導電銅製バスバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】