(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】有機ハロゲン難燃剤含有ポリスチレン系材料をスチレン及び他の有価物並びに/又はエネルギーにリサイクルするための方法及び設備
(51)【国際特許分類】
C08J 11/10 20060101AFI20240621BHJP
【FI】
C08J11/10 ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576406
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 EP2022065733
(87)【国際公開番号】W WO2022258769
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523464831
【氏名又は名称】ペーエルペーエス イーペー べスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】マルティヌス アンドリヤ フォセベルト
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ ビルヘルムス ヨハンネス モルシンコフ
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA11
4F401AA13
4F401AB01
4F401AD09
4F401BA06
4F401CA06
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4F401CA29
4F401CA30
4F401CA67
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4F401CB10
4F401DA01
4F401DA12
4F401EA54
4F401EA67
4F401EA68
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4F401FA01Y
4F401FA01Z
4F401FA07Z
4F401FA08Z
(57)【要約】
【課題】ポリスチレン系材料をリサイクルする方法及びそのための設備を提供する。
【解決手段】有機ハロゲン難燃剤を含有するポリスチレン系材料をリサイクルする方法であって、(i)ポリスチレン系材料を、高沸点非極性有機反応溶媒中に溶解すること;(ii)反応溶媒中に含有される前記ポリスチレンを、難燃剤からハロゲンを放出させる温度にまで加熱すること;(iii)放出されたハロゲンを、塩基と接触させて、ハロゲン残留物を形成すること;(iv)ハロゲン残留物を除去すること;(v)反応溶媒中に含有されるポリスチレンを、ポリスチレンを脱重合する温度で熱分解すること;(vi)脱重合された混合物を、少なくともスチレン分画へと、蒸留すること;を含む、方法、並びにそのための設備。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ハロゲン難燃剤を含有するポリスチレン系材料をリサイクルする方法であって、下記の工程:
(i)前記ポリスチレン系材料を、高沸点非極性有機反応溶媒中に溶解すること;
(ii)前記反応溶媒中に含有される前記ポリスチレンを、前記難燃剤からハロゲンを放出させる温度に加熱すること、
(iii)放出されたハロゲンを塩基と接触させて、ハロゲン残留物を形成すること;
(iv)前記ハロゲン残留物を除去すること;
(v)前記反応溶媒中に含有されるポリスチレンを、ポリスチレンを脱重合する温度で熱分解すること;及び
(vi)脱重合された混合物を、少なくともスチレン分画へと蒸留すること;
を含む、方法。
【請求項2】
前記塩基を、前記反応溶媒に添加し、それにより、工程(ii)で放出されたハロゲンが、工程(iii)において前記塩基と接触し、それにより前記ハロゲン残留物が前記反応溶媒中に形成されるようにする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ハロゲン残留物が、ハロゲン塩及び/又は前記ハロゲンを含有するガスである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ハロゲン塩を前記反応溶媒中に形成させるために用いられる前記塩基が、ナトリウムジアミン、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、及びP(CH3NCH2CH2)3Nからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリスチレン系材料が、約10重量%以下の、異物ポリマー、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び/又はポリビニルクロリド、を含有しうる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(ii)において、ポリスチレンを含有する前記反応溶媒を、約150℃~約350℃、好ましくは約180℃~約300℃の範囲の温度に加熱する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
リサイクルされる前記ポリスチレンが、発泡ポリスチレンであり、前記方法が、発泡ポリスチレンを圧縮溶媒中で圧縮する工程を有し、その後で、好ましくは、前記圧縮溶媒を、少なくとも部分的に、前記反応溶媒で置換し、かつ好ましくは、前記圧縮溶媒が、芳香族圧縮溶媒であり、例えば、工程(vi)で取得できる高沸点蒸留分画であり、好ましくは、約280℃~約320℃又は約180℃~約250℃で約5~30mbar絶対圧で好ましくは10~30mbar絶対圧で沸騰するスチレンダイマー分画である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記圧縮溶媒が、前記芳香族圧縮溶媒及び脂肪族圧縮溶媒の混合物であり、好ましくは、工程(vi)の蒸留で取得できる分画であり、かつ好ましくは、前記芳香族圧縮溶媒と前記脂肪族圧縮溶媒との体積比が、約30:70、好ましくは約20:80、より好ましくは約10:90の範囲である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記高沸点非極性有機反応溶媒が、約250℃~約450℃の範囲の温度で、約15bar未満の、好ましくは約10bar未満の、蒸気圧を有し、かつ好ましくは、前記反応溶媒が、工程(vi)で取得できる高沸点蒸留分画であり、好ましくは、約380℃~約420℃で沸騰するスチレントリマー分画である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記置換された圧縮溶媒が、少なくとも部分的に、前記圧縮工程に再利用される、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(iv)において、前記ハロゲン残留物を、前記反応溶媒から、ろ過、遠心、サイクロン分離によって、約20μm未満、好ましくは約20μm未満、例えば、1μm未満、又は0.4μm未満の残留粒子サイズで、除去する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
塩基の、前記有機ハロゲン難燃剤に対するモル比が、約1~約3、例えば、約1.5~約2.6である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(v)の熱分解を、大気圧で、約400℃~約550℃、好ましくは約480℃~約520℃、より好ましくは約500℃~約520℃の温度で、又は、より高い圧力及び対応する温度で、好ましくは、約1bar~3barの圧力、で行い、好ましくは、前記熱分解工程(v)を、溶融ベッド反応器及び/又はチューブ反応器及び/又は流動ベッド反応器で行う、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリスチレン系材料中に存在する有機ハロゲン難燃剤の除去は、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
例えば請求項1~14に記載されているようにして、有機ハロゲン難燃剤を含有するポリスチレン系材料をリサイクルするための、設備であって、
・前記ポリスチレン系材料を、高沸点非極性有機反応溶媒中に又は高沸点脂肪族反応溶媒との混合物中に、溶解させるための、溶解ユニット(a);
・前記反応溶媒に含有される前記ポリスチレンを、前記難燃剤からハロゲンを放出させる温度に加熱するための、加熱ユニット(b);
・放出されたハロゲンを、塩基と接触させて、ハロゲン残留物を形成するための、接触ユニット(c);
・前記ハロゲン残留物を前記反応溶媒から除去するための、ハロゲン残留物除去ユニット(d);
・前記反応溶媒中の前記ポリスチレンを、ポリスチレンを脱重合する温度で熱分解するための、熱分解ユニット(e);及び
・脱重合された混合物を、少なくともスチレン分画へと蒸留するための、蒸留ユニット(f)、
を有する、設備。
【請求項16】
前記ハロゲン残留物が、ハロゲン塩及び/又は前記ハロゲンを含有するガスである、請求項15に記載の設備。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の設備であって、発泡ポリスチレンを圧縮溶媒中で圧縮するための圧縮ユニットを有し、かつ前記圧縮溶媒を前記反応溶媒で置換するための、設備。
【請求項18】
請求項15、16、又は17に記載の設備であって、前記蒸留ユニット(f)が、脱重合された混合物を、スチレントリマー分画へと蒸留し、このスチレントリマー分画は、再利用され、少なくとも部分的に、反応溶媒として用いられ、かつ/又は、前記蒸留ユニット(f)が、脱重合された混合物を、スチレンダイマー分画へと蒸留し、このスチレンダイマー分画は、再利用され、少なくとも部分的に、発泡ポリスチレンのための圧縮溶媒として用いられる、設備。
【請求項19】
前記熱分解ユニット(e)が、溶融ベッド反応器及び/又はチューブ反応器及び/又は流動ベッド反応器を有する、請求項15~18のいずれか一項に記載の設備。
【請求項20】
前記有機ハロゲン難燃剤が、有機臭素難燃剤、有機塩素難燃剤、又は有機フッ素難燃剤であり、例えば、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、テトラブロモビスフェノールA(2,3-ジブロモプロピル)エーテル(BDDP又はFR-720)、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン(FR-245)、テトラブロモビスフェノール-A-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)、1,1´-(イソプロピリデン)ビス[3,5-ジブロモ-4-(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピル)ベンゼン](TBBPA-DBMPE又はAP1300SF)、トリス(1-クロロ-2-プロピル)ホスフェート(TCPP)、テトラデカフルオロヘキサン(TDFH)であり、かつ前記有機フッ素化合物が、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC、例えばR-22、R-12及びR134a)を含みうる、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法又は請求項15~19のいずれか一項に記載の設備。
【請求項21】
前記ポリスチレン系材料が、ポリスチレン、発泡ポリスチレン(EPS)、押出ポリスチレン(XPS)、例えば包装の箔及び容器に用いられるもの、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)を含む、請求項1~14及び20のいずれか一項に記載の方法、又は請求項15~19のいずれか一項に記載の設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機ハロゲン難燃剤を含有するポリスチレン系材料をスチレン及び他の有価物並びに/又はエネルギーにリサイクルするための方法及び設備に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系材料は、ポリスチレン、発泡ポリスチレン(EPS)、押出ポリスチレン(XPS)、例えば、包装用の箔及び容器において用いられるものかつ/又は組み合わせて用いられるもの、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、及びアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)である。これらの材料は、リノベーション建設要素に由来してよく、これは、(発泡)ポリスチレンコア及びポリオレフィン箔を含み、又は、電気及び電子備品に由来してよく、これらは、今日、短い製品ライフサイクルを有する。
【0003】
これらのポリスチレン系材料は、難燃剤を含有し、これは、発火条件下で活性化され、例えば、火又は熱の下で活性化され、発火又は火の拡大を防止し又は遅くすることが意図されている。難燃剤を含有するポリスチレンをリサイクルする場合には、難燃剤が環境中に入らないような様式で、難燃剤を除去する必要がある。これは、特に、有機ハロゲン難燃剤に関してそうであり、その例は、有機臭素難燃剤(有機臭化難燃剤)、例えば、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、テトラブロモビスフェノール A(2,3-ジブロモプロピル)エーテル(BDDP又はFR-720)、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン(FR-245)、テトラブロモビスフェノール-A-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル、1,1´-(イソプロピリデン)ビス[3,5-ジブロモ-4-(2,3-ジブロモ-2-メチルプロポキシ)ベンゼン](TBBPA-DBMPE又はAP 1300 SF)、ポリスチレン及び臭化ポリブタジエンのブロックコポリマー(FR-122P)、有機塩素難燃剤(有機塩化難燃剤)、例えば、トリス(1-クロロ-2-プロピル)ホスフェート(TCPP)及びポリビニルクロリド(PVC)、及び有機フッ素難燃剤(有機フッ化難燃剤) テトラデカフルオロヘキサン(TDFH)である。発泡ポリスチレン系材料は、発泡剤として用いられるフレオンを含有する。これは、有機フッ化化合物であり、例えば、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC、例えば、R-22、R-12及びR134a)である。
【0004】
従来技術から、臭素化難燃剤を含有するスチレンポリマーから臭素を除去ずる方法がいくつか知られている。Grauseらは、Degradation and Stability(ポリマー劣化及び安定性)、112、86~93頁、2015、において、エチレングリコール中のNaOHの溶液を、デカブロモジフェニルエタン(DBPE)を高衝撃性ポリスチレンから除くために用いている。脱臭素比は、190℃で42%であった。この比は、約0.02重量%にまで、ボールミル反応器を用いた機械処理によって、減少した。Ukisuは、Chemosphere、179、179~184頁、2017において、HBCDの触媒性脱臭素化を、35℃で溶解NaOHを含有する2-プロパノール/メタノール溶液中で、シリカ担持パラジウム触媒を用いて調べた。反応産物の収率は、臭素非含有物に関して、92%であった。Evangelopoulosらは、Waste Management、94、165~171頁、2019において、テトラブロモビスフェノール(TBBPA)の、臭素化プラスチック、モデムWi-Fiプラスチック、及びプリント回路ボードからの、イソプロパノール又はトルエンによる溶媒抽出とそれに続く熱分解を用いた、除去を調べている。報告されているところでは、臭素化化合物の除去の程度は、比較的低かった。Wangらは、J.Hazardous Materials、205~206、156~163頁 、(2012)において、TBBPAを含有するABSの脱臭素化を調べている。超臨界条件(400℃、9~19MPa)の下で、水、メタノール、イソプロパノール、及びアセトンを用いた。水は、最も高い脱臭素化効率(97.6%)を示した。アルカリが、超臨界イソプロパノールに添加され、塩が、この超臨界アルコール中に溶解して形成され、周囲条件下で析出した。NaOH及びKOHの使用は、処理された物品中での約5重量%の臭素収率をもたらした。Dement´evらは、J.Anal.Appl.Pyrolysis、142、1~10頁、2019において、ポリスチレンの、高芳香族性炭化水素中での熱脱重合を調べた。500℃で、スチレン収率は、ポリマー変換93.8%において、84.4%であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、その目的が、ポリスチレン系材料をリサイクルすることであり、バージン又は添加スチレンモノマーとして用いることができる高純度のスチレン及び販売のために又は本法で再利用するために有用である他の物品を提供し、その一方で、最小の副産物を生じ、かつハロゲン化炭化水素、例えばPCB及びPBB、の形成を生じない。さらに、脱ハロゲン化処理は、穏やかな条件下(穏やかな温度及び大気圧)で、塩基性有機環境中で、触媒なしで、かつ慣用的な反応容器中で行われる。したがって、本発明は、方法及びこの方法を実行する装置を提供することを目的とし、ここでは、すべての反応が、液相中で、好ましくは又は主に本方法を実行する際に出る溶媒(これは、本発明に係る方法の結果もたらされる化合物である)を用いて行われる。用いられる材料及び適用される反応条件は、装置の圧縮部を、特には現場で、ATEX条件下で運用することが必要ではないようなものであり、なぜならば、爆発性雰囲気は発生しないからである。また、材料及び中間生成物(例えば圧縮ポリスチレン)の輸送に関して、それらは、ADR(Accord europeen relative au transport international des marchandises Dangereouses par Route)の最も低い分類に該当する。
【0006】
理解されるべき点として、本発明は、種々の異なるポリスチレン系材料、例えば、包装、例えば、ヨーグルトカップ若しくはボール、及び/又は建築材料をリサイクルできる。特に、膨張し、発泡し、押出しされた材料に関して、圧縮は、熱及び/又は化学的な圧縮ではない。したがって、本発明に係る方法は、機械的かつ/又は熱的かつ/又は化学的に圧縮された材料に関して用いることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的に従って、本発明は、有機ハロゲン難燃剤を含有するポリスチレン系材料をリサイクルする方法を提供し、この方法は、下記の工程を有する:
(i)ポリスチレン系材料を、高沸点非極性有機反応溶媒中に、溶解させること;
(ii)反応溶媒中に含まれたポリスチレンを、難燃剤からハロゲン化合物を放出させる温度にまで加熱すること;
(iii)放出されたハロゲン化合物を、塩基と接触させて、ハロゲン残留物を形成させること;
(iv)ハロゲン残留物を除去すること;
(v)反応溶媒中に含まれるポリスチレンを、ポリスチレンを脱重合する温度で熱分解すること;及び
(vi)脱重合混合物を、少なくともスチレン分画へと蒸留すること。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の基本的な方法及び設備の図解であり、難燃剤をポリスチレン系材料から除去するための除去工程又はユニット、熱分解工程又はユニット、及び、蒸留によってスチレンを提供するための蒸留工程又はユニットを有する。
【
図2】
図2は、本発明の方法及び設備の図解であり、
図1の方法及び設備に加えて、発泡ポリスチレンを圧縮するための圧縮工程又はユニット、及び、圧縮溶媒を反応溶媒で置換するための工程又はユニットを有し、これらの溶媒は、いずれも、好ましくは再利用される。
【
図3】
図3は、圧縮ユニットをより詳細に示すプロセスフロー図である。
【
図4】
図4は、代替的な圧縮ユニットのプロセスフロー図である。
【
図5】
図5は、本発明の方法を実行するための本発明の設備のさらなる詳細のプロセスフロー図である。
【
図6】
図6は、圧縮溶媒の少なくとも一部を反応溶媒によって置換するためのユニットのさらなる詳細である。
【
図7】
図7は、圧縮溶媒を精製するためのユニットのさらなる詳細である。
【
図8】
図8は、加熱又は脱ハロゲンユニットのさらなる詳細である。
【
図10】
図10は、溶媒温度を熱分解後に低減するための冷却ユニットのさらなる詳細である。
【
図11】
図11は、スチレン、並びに圧縮溶媒及び反応溶媒のための蒸留分画を提供するための蒸留ユニットのさらなる詳細である。
【
図12】
図12は、圧縮溶媒を精製するための除去ユニット(ストリッパーユニット)である。
【
図13】
図13は、本発明の方法及び設備で用いられる溶融ベッド反応器の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の方法は、有機ハロゲン難燃剤を含有するポリスチレン及び存在し得る異物プラスチックの、高沸点反応溶媒中における溶解を含み、この溶液から、難燃剤化合物中に存在するハロゲンが、ハロゲン化合物として放出される。ハロゲン化合物は、塩基によって捕捉され、ハロゲン残留物として除去される。反応溶媒中に存在する脱ハロゲン化されたポリスチレンは、その後に、熱分解されて、少なくともスチレンへと脱重合される。スチレンは、最小量の残りの有機ハロゲン難燃剤及び任意のハロゲン化合物を含有しており、バージンモノマー又は追加的なスチレンモノマーとして用いることに適している。高沸点反応溶媒の、すべての方法工程における使用は、特には現場での、圧縮の間における、非ATEX条件下での操作を可能にし、生成物及び中間生成物の、最も低いADR条件下での取り扱い及びルーティングを可能にする。本発明の1つの実施態様では、難燃剤から放出されるハロゲン化合物が、反応溶媒から回収されてよく、かつ塩基と接触されて溶媒から分離されてよく、それによって、ハロゲン残留物が形成され、例えば、ハロゲンの塩及び/又はハロゲン含有ガスが形成される。これらの環境下で、実際上は、そのようなハロゲン塩を形成できる任意の塩基を使用できる。好ましい実施態様では、塩基が、反応溶媒に添加され、それにより、工程(ii)で放出されたハロゲン化合物が、工程(iii)において塩基と接触され、それにより、ハロゲン残留物が、反応溶媒中に形成される。好ましくは、ハロゲン残留物は、ハロゲンの塩及び/又はハロゲン含有ガスである。例えば、ハロゲン含有ガスは、臭化水素であってよい。これが意味するのは、塩基が、反応溶媒中に、加熱工程の間に、ハロゲン化合物が難燃剤又はフレオンを含有する有機ハロゲンから放出される時に、存在することである。放出されたハロゲン化合物は、その際に捕捉され、ハロゲン残留物へと変換され、例えば、ハロゲン塩及び/又はハロゲン含有ガスへと変換され、これは、反応溶媒から固体として、かつ/又は反応溶媒からガスとして、容易に除去される。したがって、腐食性物質の形態のハロゲン化合物、例えばハロゲン酸の形態のものは、反応溶媒中に存在せず、又は反応溶媒中にごく短い間のみ存在し、したがって、装置設備のために腐食耐性材料を用いる必要はない。さらには、工程(ii)の加熱条件下及びその後の熱分解工程(v)の間に、ハロゲン化合物は存在せず、したがって、ハロゲン化合物と溶媒又は脱重合生成物との任意の副反応が回避される。
【0010】
特に好ましくは、非極性有機反応溶媒に添加される塩基は、その中に溶解され、それにより、ハロゲンとの反応が、液相中で最適に進行し、これは、ハロゲン残留物、例えばハロゲン塩及び/又はハロゲン含有ガス、の除去を、容易にする。さらには、これにより、任意の副流、例えば、塩基を含有する水及び極性(有機)溶媒が回避される。したがって、ハロゲン塩を反応溶媒中で形成するために用いられる塩基は、ジアミンナトリウム、カリウムtert-ブトキシド(KotBu)、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、及びP(CH3NCH2CH2)3Nを含む群から選択される。これらの選択された塩基は、反応溶媒中に可溶である。形成される少量の揮発物は、除去又は中和されてよい。
【0011】
例えば、上記の塩基は、反応溶媒に、液-液界面を用いて提供されてよい。この液-液界面の利点は、極性溶媒中への比較的高い可溶性を有するという点であり、かつポリスチレン系材料が非極性溶媒から利点を得るという点である。
【0012】
本質的に、種々の異なるポリスチレン系材料を用いてよく、例えば、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、発泡ポリスチレン(EPS)、押出ポリスチレン(XPS)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、及びアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)を用いてよい。これらの材料のうちのいくつかは、本方法の性能に悪影響をおよぼさない追加的なモノマー(又はポリマー)を含有する。これは、約10重量%までの異物ポリマー、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び/又はポリビニルクロリドを含有するポリスチレン系材料に当てはまる。用いられる例は、Piocelan ポリプロピレン複合ポリスチレン性発泡樹脂、及びポリエチレン複合ポリスチレン製発泡樹脂である。また、これらの異物ポリマーは、本方法を阻害せず、最終的には、残存生成物流中に存在することになる。
【0013】
工程(ii)における難燃剤の脱ハロゲン化は、一般には、ポリスチレンを含有する反応溶媒を、約150℃~約350℃の範囲の温度、好ましくは約180℃~約300℃の範囲の温度にまで加熱することによって行われる。これらの温度に対応する圧力は、約1バール(bar)~約20バール、好ましくは約1バール~約15バール、例えば1~12バール、の範囲の種々の値である。
【0014】
脱ハロゲン化反応は、上昇した温度で開始され、この温度が高いほど、反応の完了までの時間が短い。脱ハロゲン化のための反応時間は、一般に、2~120分であるが、ハロゲン化は、通常は、5~70分、例えば10~60分でほぼ完了する。
【0015】
本発明の方法は、特には、膨張、発泡、又は押出ポリスチレン、又は、ポリスチレンと、膨張、発泡、若しくは押出ポリスチレンとの混合物、並びにそれらの関連するポリスチレン系材料のリサイクルのために意図されている。しかしながら、発泡ポリスチレンの比較的低い密度に起因して、本発明の基本的な方法へのそれらの適用は、実際性が比較的低い。したがって、本発明は、一般的に好ましい態様において、方法における追加的な前工程を提供し、この前工程では、発泡ポリスチレンを圧縮し、その密度を実質的に増加させる。さらに、圧縮されたポリスチレンは、用いられる圧縮溶媒のタイプ及び量に応じて、半固体形態の剛性材料又は2相系へと変換される。しかしながら、それらは、容易に取り扱いでき、比較的粘着性が低く、又は粘着性を有しない。しかしながら、発泡ポリスチレンを適切に又は最適に圧縮させるために、反応溶媒とは特性が異なる溶媒又は溶媒混合体を用いる必要がある。このように、本発明は、前工程を提供し、これは、発泡ポリスチレンを圧縮溶媒中で圧縮する工程である。この圧縮溶媒によって、発泡ポリスチレンが、半固体材料又はポリスチレンの半固体(パン生地状の)相を含む2相系を、形成する。この圧縮形態剛性ポリスチレンは、液相から、任意の適切な技術によって分離される。
【0016】
この2相系又は圧縮ポリスチレンを、脱ハロゲン化のための加熱工程に供してよい。しかしながら、反応溶媒を添加すること、又は、圧縮溶媒を少なくとも部分的に反応溶媒で置換することが好ましい。そして、この置換の後で、圧縮ポリスチレンを、本発明の方法の工程(i)に進める。
【0017】
この時点で留意すべき点として、圧縮前工程は、本発明の方法の工程(i)又は工程(ii)に対して、時間的かつ/又は場所的に直前に行われる必要はない。本発明のすべての利点を保持しつつ、前工程を、時間的に比較的早くかつ/又はさらには異なる場所で行うことも、同様に可能である。特に、リサイクルされるポリスチレン材料の利用可能性及び/又は存在が方法の処理速度未満である場合には、そうである。そして、リサイクルされる発泡ポリスチレンを、有利には、1又は複数の遠隔地で圧縮し、中央処理地へと輸送し、中央処理地において、異なる場所、異なるタイプ、及び/又は異なる供給源由来の圧縮されたポリスチレンを、処理する。すべての輸送及び処理は、一般的かつ慣用的な条件で進められ、なぜならば、ATEX条件下での作業は必要ではなく、かつ二相系及び圧縮ポリスチレンは、最も低いADR分類に該当する物質だからである。
【0018】
本発明の重要な知見のうちの1つは、工程(v)における熱分解の後に得られる熱分解混合物が、工程(vi)での蒸留によって得ることができる芳香族及び/又は脂肪族分画を含み、かつポリスチレン系材料中に存在する発泡ポリスチレンを圧縮する特性及び/又は反応溶媒の特性を有するという点である。これらは、方法独自の溶媒及び蒸留分画である。
【0019】
圧縮に関して、蒸留分画は高い沸点を有するので、圧縮に関係する処理は、引火点よりも少なくとも10℃低い温度で行われ、それにより、処理がATEX条件下で行われないようになる。圧縮のために芳香族分画のみを用いる場合には、圧縮は、シロップの粘性を有するポリスチレン溶液の形成をもたらす。芳香族分画及び脂肪族の混合体を用いると、混合圧縮は、ペーストの粘性を有する2相系又はカマンベールチーズのような粘性を有する硬い製品の形態をもたらす。より多くの脂肪族分画を用いるほど、粘性はより硬くなり、ポリマー密度が増加する。したがって、本発明の方法は、少なくとも部分的に、圧縮溶媒として、脂肪族溶媒と、芳香族圧縮溶媒との混合物、例えば、工程(vi)で得ることができる高沸点蒸留分画、好ましくは、約5~30ミリバール(mbar)の絶対圧で、好ましくは10~30ミリバールの絶対圧力で、約280℃~約320℃で沸騰する、又は約150℃~約270℃で沸騰する、例えば約180℃~約250℃で沸騰する、スチレンダイマー分画との混合物を適用する。代替的には、ダイマー分画が、C16以下を有してよく、かつ約290℃~305℃の沸点を有する。換言すると、本発明の方法は、少なくとも一部の、脂肪族化合物と、芳香族化合物との間の混合物、例えば、工程(vi)で得ることができる高沸点蒸留分画、好ましくは、約5~30ミリバール(mbar)の絶対圧で、好ましくは10~30ミリバールの絶対圧力で、約280℃~約320℃で沸騰する、又は約150℃~約270℃で沸騰する、例えば約180℃~約250℃で沸騰する、スチレンダイマー分画との混合物を、利用する。代替的には、ダイマー分画は、C16以下を有してよく、かつ約290℃~305℃の沸点を有する。芳香族圧縮溶媒及び脂肪族圧縮溶媒は、好ましくは、工程(vi)の蒸留で得ることができる分画である。
【0020】
芳香族溶媒と脂肪族溶媒の体積比は、(膨張、発泡又は押出)ポリスチレン系材料の組成に依存して選択される。いくつかの難燃剤、例えばHBCDは、脂肪族溶媒中にごくわずかのみ溶解し、芳香族溶媒中に良好に溶解し、一方で、存在する任意のポリエチレン及び/又はポリプロピレンは、脂肪族溶媒中に比較的良好に溶解する。したがって、芳香族圧縮溶媒と脂肪族圧縮溶媒の体積比は、リサイクルされるポリスチレン材料のタイプに依存して、かつ圧縮された塊の粘性に関連して、選択される。例えば、20%超で、芳香族溶媒は、硬い形態の圧縮塊となる。したがって、体積比は、約30:70(ペースト粘性)、好ましくは約20:80、より好ましくは約10:90(硬い粘性)の範囲であってよい。
【0021】
本発明の別の重要な知見は、工程の熱分解の後で得られる熱分解混合物が、脱ハロゲン化ポリスチレンを溶解させる特性を有しかつ工程(ii)の脱ハロゲン化及び工程(v)の熱分解の両方を液体条件下で行うことができるような高い沸点を有する特性を有する分画を含むということである。この反応溶媒は、また、系独自の生成物であり、その分解は、スチレン及びスチレンオリゴマーを生じ、これらを用いることができる。したがって、本発明の方法は、約15バール(bar)未満、好ましくは約10バール未満の蒸気圧を、約250℃~約450℃の範囲の温度で有する高沸点非極性有機反応溶媒を、少なくとも部分的に、適用する。この反応溶媒は、好ましくは、工程(vi)で得ることができる高沸点蒸留分画であり、好ましくは、約380℃~約420℃の沸点を有するスチレントリマー分画である。代替的には、トリマー分画が、C24以下を含有してよく、かつ400℃の沸点を有する。
【0022】
圧縮溶媒及び反応溶媒の組成及び特性における差異に起因して、好ましくは、圧縮溶媒を、少なくとも部分的に、反応溶媒によって、脱ハロゲン化工程(ii)の前に置換し、好ましくは、圧縮溶媒を圧縮工程に再利用する。
【0023】
工程(ii)で放出ハロゲン化合物の塩基との反応を好ましくは反応溶媒中で行う際に、ハロゲンの放出が顕著であるときには、好ましくは、ハロゲン残留物の除去、好ましくはハロゲン塩及び/又はハロゲン含有ガスの除去を、反応溶媒において及び/又は反応溶媒から下流で、固液分離によって、例えば、ろ過処理、遠心、(液体)サイクロン分離、によって、20μm未満、好ましくは20μm未満、例えば、1μm未満、又は0.4μm未満、の残渣/塩粒子サイズで、行う。そのような残渣/塩除去は、追加的な利点を有し、すなわち、リサイクルされるスチレン系材料中に存在する任意の砂又は他の粒状物質が除去されるという追加的な利点を有し、これは、処理操作に利益をもたらし、摩擦に起因する接地ダメージに関するリスクを低減する。
【0024】
任意の有機ハロゲン難燃剤の実際的かつ十分な除去のために、好ましくは、塩基が過剰で存在し、好ましくは、わずかに過剰で存在し、それにより、塩基の、有機ハロゲン難燃剤に対するモル比が、約1.1~約3、例えば、約1.5~約2.6、又は1.1~1.5であるようにする。
【0025】
上記で言及されたように、熱分解工程(v)は、脱ハロゲン化工程(ii)よりも厳しい条件下で行われる。実際的には、工程(v)の熱分解を、大気圧で、約400℃~約550℃の温度で、好ましくは約480℃~約520℃の温度で、より好ましくは約500℃~約520℃の温度で、又は比較的高い圧力でかつ対応して比較的低い温度で、行う。好ましくは、圧力が、約1バール(bar)~3バールである。
【0026】
熱分解工程(v)を、溶融ベッド反応器及び/又はチューブ反応器及び/又は流動ベッド反応器で行ってよい。これは、慣用的かつ単純な設計でかつ適用可能な反応器であり、なぜならば、熱分解が、高沸点反応溶媒の利用に起因して液体条件下で行われるからである。この液体状態熱分解は、熱移動に関して最適であり、固体物質への熱分解、例えばすすへの熱分解、が実質的に回避される。
【0027】
本発明の方法を最適に進めることは、有益な結果をもたらし、すなわち、ポリスチレン系材料中に存在する有機ハロゲン難燃剤の除去が、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%であるという有益な結果をもたらす。したがって、スチレン生成物が、15ppm未満、好ましくは10ppm未満、例えば5ppm未満の量で難燃剤を含有する。
【0028】
本発明の他の態様は、本開示で定義されかつ議論されるような、有機ハロゲン難燃剤を含有するポリスチレン系材料をリサイクルするための、設備に関する。
【0029】
そのような設備は、下記を含む:
・ ポリスチレン系材料を高沸点非極性有機反応溶媒中に、又は高沸点脂肪族反応溶媒との混合物中に、溶解させるための、溶解ユニット(a);
・ 反応溶媒中に含有されたポリスチレンを、ハロゲン化合物を難燃剤から放出させるための温度にまで加熱するための、加熱ユニット(b);
・ 放出されたハロゲン化合物を塩基と接触させてハロゲン残留物を形成するための、接触ユニット(c);
・ ハロゲン残留物を反応溶媒から除去するための、ハロゲン残留物除去ユニット(d);
・ 反応溶媒中のポリスチレンを、ポリスチレンを脱重合するための温度で熱分解するための、熱分解ユニット(e);及び、
・ 脱重合された混合物を少なくともスチレン分画へと蒸留するための、蒸留ユニット(f)。
【0030】
上記で議論したように、この設備は、発泡ポリスチレンを圧縮するために適しており、発泡ポリスチレンを圧縮溶媒中で圧縮するための、かつ好ましくは圧縮溶媒を反応溶媒によって置換するための、圧縮ユニットを追加的に含む。
【0031】
また、有益なこととして、脱ハロゲン化及び熱分解のために用いられる反応溶媒が、少なくとも部分的に、本発明の方法を実行する際に生成される。そのために、設備は、再利用されかつ少なくとも部分的に反応溶媒として用いられるスチレントリマー分画へと脱重合混合物を蒸留する蒸留ユニット(f)を有する。同じ理由により、蒸留ユニット(f)は、再利用されかつ少なくとも部分的に発泡ポリスチレンのための圧縮溶媒として用いられるスチレンダイマー分画へと、脱重合混合物を蒸留する。
【0032】
好ましい実施態様では、ハロゲン残留物が、ハロゲン塩及び/又はハロゲン含有ガスである。
【0033】
上記で議論したように、熱分解は、高沸点溶媒の使用に起因して、液体条件下で行われる。これは、溶融ベッド反応器及び/又はチューブ反応器及び/又は流動ベッド反応器の利用を可能にする。これは、慣用的かつ単純な設計でありかつ適用可能な反応器(リアクター)であり、なぜならば、この液体状態の熱分解は、熱移動に関して最適であり、固体物質への熱分解、例えばすすへの熱分解が実質的に回避されるからである。したがって、熱分解ユニット(e)は、溶融ベッド反応器及び/又はチューブ反応器及び/又は流動ベッド反応器を有する。溶融ベッド反応器及び/又はチューブ反応器及び/又は流動ベッド反応器の使用の追加的な利点を、下記で議論する。
【0034】
本発明の方法及び設備は、多数の異なる難燃剤を含有する種々の異なるポリスチレン系材料をリサイクル(再利用)するために適している。ポリスチレン系材料の例は、ポリスチレン、発泡ポリスチレン(EPS)、押出ポリスチレン(XPS)、例えば、包装の箔及び容器において用いられるもの、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、及びアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)である。有機ハロゲン難燃剤の例は、有機臭素難燃剤であり、例えば、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、テトラブロモビスフェノール A(2,3-ジブロモプロピル)エーテル(BDDP又はFR-720)、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン(FR-245)、テトラブロモビスフェノール-A-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル、1,1´-(イソプロピリデン)ビス[3,5-ジブロモ-4-(2,3-ジブロモ-2-メチルプロポキシ)ベンゼン](TBBPA-DBMPE又はAP 1300 SF)、ポリスチレン及び臭化ポリブタジエンのブロックコポリマー(FR-122P)、有機塩素難燃剤、例えば、トリス(1-クロロ-2-プロピル)ホスフェート(TCPP)及びポリビニルクロリド(PVC)、及び有機フッ素難燃剤 テトラデカフルオロヘキサン(TDFH)である。発泡ポリスチレン系材料は、フッ化有機化合物を含有してよく、例えば、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC、例えば、R-22、R-12及びR134a)を含有してよい。
【0035】
<発明の詳細>
本発明の方法及び設備の言及された特徴及び他の特徴並びに利点が、下記の記載から明らかとなる。これらの記載は、情報の目的のみのために提供されるものとして考慮され、本発明をいかなる意味でも限定するものではない。これに関して、添付の図面を参照する。
【0036】
例1:発泡ポリスチレンの圧縮
25グラムの発泡ポリスチレンを50グラムの圧縮溶媒に添加する。
圧縮溶媒は、約20重量%の、約300℃の沸点を有する芳香族炭化水素、約80重量%の、310℃の沸点を有する脂肪族炭化水素を含む。圧縮は、約60~70℃で行われた。圧縮溶媒における溶解の後で、比較的硬い形態の安定的な生成物が形成される。この高充填ポリスチレン生成物は、約60%の固形分を有する。
【0037】
例2:ポリエチレン及び/又はポリプロピレンを含有する発泡ポリスチレン系材料の圧縮
24.75グラムの発泡ポリスチレン(95%)及び1.25グラムの発泡ポリエチレン(5%)を含む発泡ポリスチレン物品を、50グラム圧縮溶媒に添加する。この圧縮溶媒は、約20重量%の、約300℃の沸点を有する芳香族炭化水素、及び、80重量%の、約300℃の沸点を有する脂肪族炭化水素を含む。圧縮温度は、約85℃である。
【0038】
発泡ポリエチレンは、発泡ポリスチレンのように圧縮するが、ワックス状の均一な最終生成物が得られる。固形分は約66%である。発泡ポリスチレンは、発泡ポリエチレンを小濃度でのみ含有するので、発泡ポリエチレンは、発泡ポリスチレンと同様に処理できる。
【0039】
例3:ポリエチレン及び/又はポリプロピレンを含有する発泡ポリスチレン系材料の圧縮
4.3グラムの発泡ポリスチレン系材料であって、約60重量%ポリスチレン、35重量%発泡ポリプロピレン、及び5重量%発泡ポリエチレンを含有するものを、65mlの圧縮溶媒混合物に添加する。この圧縮溶媒混合物は、40体積%の、約290~305℃の範囲の沸点を有する芳香族炭化水素(Solvesso 150 ND)、及び、60体積%の、約187~216℃の沸点を有する脂肪族炭化水素(Valsol 60)を含む。得られる圧縮溶媒溶液の密度は、67gr/lであった。圧縮は、130℃の温度で行われた。
【0040】
発泡ポリエチレン及び発泡ポリプロピレンは、発泡ポリスチレンと同様にして変形する。しかしながら、ゼリー状の最終生成物が得られる。したがって、いくらかの異物ポリエチレン及び/又はポリプロピレンを有する発泡ポリスチレンは、圧縮できるが、比較的高い圧縮温度で圧縮されうる。
【0041】
最終生成物のゼリー状の粘性に起因して、1回通過-除去コンセプト(
図4による)を適用でき、ここでは、変形した発泡ポリスチレン、発泡ポリプロピレン、及びいくらかの発泡ポリエチレンで飽和された後の混合物を、さらなる処理までの間、ブリケットとして保存しうる。
【0042】
例4:ポリスチレンの脱ハロゲン化
1重量%の難燃剤を含有するポリスチレンを、芳香族反応溶媒としてのSolvesso 150 ND(沸点:183℃~194℃、ExxonMobil Chemical Series)に溶解させた。塩基を、この反応溶媒に、所定の有機ハロゲン対塩基のモル比で加えた。脱臭素化を、所定温度で行った。所定温度での約60分間にわたる変換を、1-(質量回収オイル*オイル中の[Br])/反応器に添加された質量Br)として算出した。
【0043】
【0044】
例5:トリマー分画によるポリスチレンの脱ハロゲン化
HBCD難燃剤を含むポリスチレンを、芳香族溶媒として用いられるスチレントリマー分画に溶解させた。NaNH2塩基を、反応溶媒に、所定の有機ハロゲン対塩基のモル比2.6で添加した。脱臭素化は、250℃で行った。60分後の反応温度での変換を、1-(質量回収オイル*オイル中の[Br])/反応器に添加された質量Br)として算出し、約99%であった。
【0045】
例6:トリマー分画による発泡ポリスチレンの脱ハロゲン化
0.71重量%HBCDを含有する発泡ポリスチレンを、圧縮溶媒としての、スチレンダイマーとスチレントリマーの混合物(Solvesso 150 NDに溶解されたポリスチレンビーズの350℃での熱分解、及び100℃100mbarでの分画蒸留によるスチレンモノマーの除去によって得られたもの)を用いて、脱ハロゲン化に供した。反応器への投入量は、10重量%EPSであり、これは、難燃剤の投入量0.1重量%に対応する。NaNH2を塩基として用い、塩基/Br-比は、2.6であった。反応温度は250℃であり、反応時間は60分であった。脱ハロゲン化変換は、EPS(HBCD)サンプルに関して98%であった。
【0046】
例7:圧縮ポリスチレンの熱分解
例5で得られた圧縮ポリスチレンを、特にはポリスチレンの脱重合によるスチレンの生産のために、熱分解に供した。ポリスチレン及びスチレントリマーの液体混合物(例6のダイマー/トリマー混合物の、250℃20mbar絶対圧での蒸留後に得られたもの)を熱分解反応器に供給し、500℃の温度で約5~10分間にわたって大気圧で熱分解に供した。得られた熱分解されたオイル状の液体を、冷却された反応溶媒で急冷することによって、約160℃の温度にまで冷却した。任意の固形物、例えば炭及びすす、の除去の後で、冷却された液体混合物を、揮散操作(ストリップ操作)に供して、スチレン生成物流を得た。このスチレン生成物流のうちスチレンは上部蒸留物として主要構成要素である。得られたものは、さらに、中間部蒸留分画及び底部分画である。
【0047】
スチレン生成物流を、4段階蒸留ユニットに供して、脂肪族溶媒として用いられ得る脂肪族分画、軽い芳香族分画、及び底部分画としての重い最終物を留去した。上部分画は、スチレンであり、約145℃で沸点に達し、少なくとも98%の純度を有し、7ppm未満の難燃剤を含有する。
【0048】
中間部蒸留分画を、さらに蒸留し、軽量ナフタ、及び、約280~320℃で沸騰する分画を提供し、これは、圧縮溶媒として用いられるダイマー分画である。底部蒸留分画は、約380℃~420℃で沸騰し、反応溶媒として用いられるトリマー分画である。
【0049】
本発明の方法及び設備の詳細
図1は、本発明の方法及び設備1の全体的なプロセスフロー図を示す。設備1は、溶解ユニット4を含み、これに、有機ハロゲン難燃剤を含有するポリスチレン系材料5が、添加された反応溶媒6中での溶解又は分散のために、添加される。反応溶媒6中のポリスチレンを含有する混合物7が、加熱ユニット8に添加される。加熱ユニット8において、反応溶媒6中に存在するポリスチレンが、十分な時間にわたって、ハロゲン化合物を難燃剤から放出させるための温度に、加熱される。加熱温度は、好ましくは、約180℃~約300℃であり、例えば250℃であり、約10~120分、好ましくは約45分~約90分、例えば60分にわたる。
【0050】
放出されたハロゲン化合物は、ハロゲン残留物へと変換され、例えばハロゲン塩及び/又はハロゲン含有ガスへと変換され、塩基21が添加される。ハロゲン残留物、例えばハロゲン塩を、ハイドロサイクロンを用いて又はろ過によって、除去する。ハロゲンを除かれており反応溶媒中に含有されているポリスチレン9を、熱分解ユニット10に添加し、この熱分解ユニット中で、ポリスチレン9が熱分解され、脱重合されて、スチレン13、有価生成物14、及び熱分解固形物、例えばすす15、となる。熱分解は、約400℃~約600℃、又は約425℃~約550℃、例えば450~約500℃で行われる。
【0051】
反応溶媒中の熱分解混合物11を、蒸留ユニット12に添加し、ここで、スチレン13及び有価生成物14が留去される。他の蒸留液体及びガスを、エネルギーを生成するために用いてもよい。熱分解固形物15は除去される。
【0052】
図2は、本発明の方法及び設備2の別の全体的なプロセスフロー図を示す。
図1の設備1と比較して、設備2は、圧縮ユニット17を追加的に有し、この中で、発泡ポリスチレン系材料22が、圧縮溶媒16で圧縮される。圧縮溶媒16中に含有される圧縮ポリスチレン18の混合物を、分離ユニット19に添加し、この中で、圧縮溶媒が、少なくとも部分的に、反応溶媒6で置換される。置換された圧縮溶媒19を、圧縮ユニット17に再利用する。分離ユニット19に添加される反応溶媒6は、新しい反応溶媒6であってよく、かつ/又は、蒸留ユニット12で有価生成物14として得られた再利用された(リサイクルされた)反応溶媒20であってよい。
【0053】
圧縮ポリスチレン及び圧縮溶媒の混合物は、2相系の形態であってよく、半固体ポリスチレン相及び液相を有してよく、又は、単一の半固体相を有してよく、これは、慣用的な手段、例えばポンプで輸送できる。圧縮された形態のタイプは、添加される圧縮溶媒の量及び発泡ポリスチレン系材料のタイプに依存し、かつ所望又は必要による。この材料がポリエチレン及び/又はポリプロピレンも含む場合には、別の有価蒸留生成物14が脂肪族溶媒を含み、脂肪族溶媒と圧縮溶媒の反応との混合物が、ポリスチレン系材料に含有される難燃剤の溶解を改善する。
【0054】
図3は、本発明に係る圧縮ユニット17をより詳細に示す。発泡ポリスチレン22を、保管ホッパー24に添加し、コンベヤスクリュー25で圧縮ミル26へと輸送する。ここで、発泡ポリスチレンが、噴霧器ユニット28によって供給される圧縮流体16で圧縮され、圧縮流体16は、回転圧縮アーム27で発泡ポリスチレンと衝突させられる。形成される圧縮ポリスチレン18は、ポンプ31及び冷却ユニット32を介して保管タンク33へと輸送される。タンク33は、半固体圧縮ポリスチレン18の相及び液体圧縮流体の相を有する2相系を含む。圧縮流体16の過剰分が、ポンプ34を介して、圧縮流体タンク37へと再利用されてよい。圧縮流体タンク37は、また、新しい(未使用の)圧縮流体の供給を、ポンプ36を介して、貯蔵部35から受ける。
【0055】
タンク33に回収される圧縮ポリスチレン18は、加熱ユニット17に直接に添加されてよく、又は、まず、遠隔場所から中央設備1~3にまで輸送されてよい。
【0056】
図4は、本発明の別の圧縮ユニット17(同じ符号は、
図3に記載されている圧縮ユニット17の同じ構成要素を示す)をより詳細に示す。
図3の圧縮ユニット17とは異なり、ここでは、圧縮ユニットが、1回通過-除去の原則の下で作動し、これにより、この圧縮ユニット17は、高い含有量のポリエチレン及び/又はポリプロピレンを例えば約5~約10重量%の量で含有する、膨張、発泡、又は押出ポリスチレンを圧縮するように、適合されている。これが意味するのは、圧縮されたポリスチレン18が、押出コンベヤによって、多孔性コンベヤベルト44の上に輸送されることであり、ポンプ41で供給され浸漬トレイ40に回収される冷却液体39で噴霧冷却される。圧縮ポリスチレンのブリケット43は、ビン42に回収される。ブリケット43とともに圧縮ユニット17から出ていく圧縮溶媒16は、タンク35及びヒーター29及びポンプ30で補完され、供給される。
【0057】
図5は、ポリスチレン系材料5を、スチレン13及びトリマー分画52、脂肪族溶媒50、軽量芳香族54、及び軽量ナフタ55へとリサイクルするための、本発明の別の設備3のプロセスフロー図の非制限的な例を示す。生成されるものとしては、また、発泡ポリスチレンを処理する際に圧縮溶媒として用いられるダイマー分画53がある。主要なユニット動作を議論し、またその詳細を
図6~13に記載する。
【0058】
設備3は、
図3及び4に関して記載したように、発泡ポリスチレン材料22の圧縮溶媒16中での圧縮のための圧縮ユニット17を含む。圧縮溶媒16の、発泡ポリスチレン22に対する体積比は、約1:1である。圧縮ポリスチレン18は、混合タンク56を有する溶解ユニット4に供給され、(随意に脂肪族溶媒50との混合物で)供給される反応溶媒20及び/又はトリマー分画52に、溶解される。
【0059】
溶解されたポリスチレン7は、濾過され、圧縮溶媒16を分離するための、溶媒回収部45を含む分離ユニット19に進入する。反応溶媒6中に含有されるポリスチレンは、難燃剤の脱ハロゲン化のために加熱ユニット8内へと輸送される。放出されるハロゲン化合物は、反応溶媒中に存在するかつ/又はタンク71からポンプ75を介して脂肪族/芳香族溶媒混合物との混合体の形態で添加される、塩基21と反応し、形成されるハロゲン残留物、例えばハロゲン塩が、濾過除去される。ハロゲンを除かれておりかつ反応溶媒6中に存在するポリスチレン9は、混合物83の形態であり、熱分解ユニット10において、温度約510℃で、熱分解に供される。熱分解混合物は、急冷ユニット46中で、冷却された反応溶媒で、すなわちトリマー分画52中で、冷却される。
【0060】
ろ過によるすす及び炭の除去の後で、濾過された熱分解混合物11を、蒸留ユニット12中で、蒸留部48及び48に供し、純粋なスチレン13、圧縮溶媒16として用いられるダイマー分画53、反応溶媒6として用いられるトリマー分画、圧縮溶媒16との混合で用いられる脂肪族溶媒50、及び、反応溶媒6との混合で用いられる軽量芳香族54を提供する。他の生成物流を、エネルギー生成のために、かつ/又は加熱のために、かつ/又は別の芳香族化合物への分解のための原料として用いてよい。
【0061】
図6は、分離ユニット19をより詳細に示す。約1部のポリスチレン、約1部の圧縮溶媒16及び約2部の反応溶媒6の液体混合物58が、ヒーター60で加熱され、混合物58をフラッシュ処理するための真空ポンプ62を備えるフラッシュドラム63に進入する。低沸点圧縮溶媒16が、フラッシュドラムを、その上部をわたって出て、溶媒回収部45へと運ばれる。約2部の比較的高沸点の反応溶媒6及び約1部の溶解したポリスチレンの液体混合物59が底に達し、加熱部8へと送られる。混合物の温度をリボイラー61で調節し、それによってポリスチレンを液体状態に維持する。
【0062】
図7は、圧縮溶媒回収部45をより詳細に示す。ポンプ64をわたって添加される圧縮溶媒16が、ストリッパー65によって除去処理され、凝縮気66中での冷却後にポンプ67で貯蔵タンク68へと供給される。除去された軽量分画72を凝縮気69中で冷却し、ポンプ70を介して貯蔵タンク71に供給する。ストリッパーは、真空ポンプ62に接続された真空ライン73の接続によって、大気圧未満で作動してよい。所望される場合には、圧縮溶媒を、添加された軽量芳香族化合物54と混合してよい。
【0063】
図8は、ポリスチレンの脱ハロゲン化のための加熱ユニット8をより詳細に示す。加熱ユニット8は、反応器74、例えばプラグフロー反応器74を有する。反応溶媒6(すなわち、ここでは、いくらかの圧縮溶媒16を含有してよいトリマー分画)中に溶解したポリスチレンの混合物59が、反応器74に進入し、ポンプ76及びヒーター77をわたって供給される塩基21と混合される。反応溶媒6は、いくらかの圧縮溶媒16を含んでよい。反応器74は、約250℃の脱ハロゲン化温度で、かつ約5~約15barの過圧、好ましくは約5~約12barの過圧で、作動される。滞在時間は、混合物59中の有機ハロゲン難燃剤のタイプ及び濃度に依存する。一般に、滞在時間は、約2分~60分である。難燃剤によって放出されるハロゲン化合物は、塩基21によって捕捉され、ハロゲン残留物、例えばハロゲン塩及び/又はハロゲンを含有するガスが、反応溶媒中に形成される。形成される任意のガス状の反応生成物、例えばアンモニアが、反応器74を、ガスブリード80を介して出てよい。ポリスチレン、ハロゲン残留物、例えば、ハロゲン塩及び/又はハロゲン含有ガス、反応溶媒、及び残留しうる反応物、例えば塩基21、及び他の反応生成物が、ろ過トレイン81で濾過され、これは、混合物79を、約100μm、約40μm又は20μm、及び1μm又は0.4μmで濾過する。濾過除去される固形物は、スラッジタンク82に回収され、精製されてよい。濾過された液体83は、熱分解ユニット10に進入する。
【0064】
図9は、熱分解ユニット10を、より詳細に示す。熱分解反応器84が、ヒーター85を備え、これは、液体混合物83を、約480℃~約520℃で、好ましくは500℃~約520℃で、約1bar~約3barの圧力で加熱するためのものであり、かつ/又は、少なくともスチレン及び他の脱重合された分画、例えばダイマー分画及びトリマー分画、並びに反応分画、例えば脂肪族分画50及び芳香族分画54、へと脱重合されたポリスチレンを含む熱分解混合物11への気化及び反応のためのものである。熱分解反応84の好ましい態様を、下記の
図13に示す。
【0065】
図10は、急冷部46をより詳細に示す。これは、急冷器86を有し、その中で、冷却の後で再循環される混合物11及び/又は反応溶媒が噴霧され、また、冷却器87及び噴霧ポンプ88を有する。これは、発明のアイデアに基づいており、すなわち、方法に由来するトリマー分画の形態で反応溶媒を用いることによって、冷却が、系外の溶媒の使用なく、達成される。冷却によって、混合物11の温度が、大幅に、二次的な反応が実質的に回避され又は停止される温度にまで低減される。急冷の後で、混合物が、任意の残留する又は新たに形成される固形物、例えばすす及び炭、を除去するためのフィルター89を通過する。
【0066】
図11は、蒸留ユニット12の粗ストリッパーユニット47をより詳細に示す。粗ストリッパーユニット90は、熱分解混合物11を、好ましくは減圧下で、上部分画91、中間部分画92、及び底部分画93へと蒸留する。動作は、上部分画91の生成が最大化されるようなものであり、なぜならば、これは主にスチレン13を含有するからである。上流の後で上部で得られる上部分画91を、凝縮器94中で冷却し、部分的に再利用し、かつ部分的に冷却器95中で冷却して、冷却された上部分画91を提供する。中間部分画92は、冷却器96中で冷却され、さらに、軽量最終物ストリッパーユニット48中で処理される。底部分画93を、リボイラー97中で加熱し、部分的に再利用し、部分的に冷却器98中で冷却する。この底部分画93を、トリマー分画52として溶解ユニット4へと再利用し、又は、貯蔵タンク99中に保管し、エネルギー生成のために用いてよい。
【0067】
図12は、軽量最終物ストリッパーユニット48をより詳細に示す。ここでは、中間部分画92が、ストリッパー100中で除去処理されて、凝縮器102及び冷却器101を介して軽量ナフタ55が上部留去され、それにより、底部において、リボイラー103及び冷却器104を介してダイマー分画53が留去され、これは、仕様を有しかつ/又は圧縮溶媒16として用いてよく、設備を安全に作動させることができる引火点を有する。
【0068】
図5に戻って、ここに示されているところでは、上部分画91が、蒸留カラム105中で蒸留されることであり、そのうち、上部蒸留分が、脂肪族溶媒50を提供する。底部蒸留分106は、蒸留カラム107で蒸留され、そのうち、底部分画108が、蒸留カラム105へと再利用される。上部蒸留分109は、蒸留カラム110で蒸留され、軽量芳香族化合物を、上部分画111として提供する。底部分画112は、スチレン蒸留カラム113に適用されて、高純度スチレン13を提供し、且つ、底部分画として重い最終物51を提供する。
【0069】
最後に、
図13及び
図13Aは、反応器84の実施態様を、溶融ベッド反応器114の形態で、より詳細に示す。反応器114は、反応器ハウジング119を有し、これは、ハウジング119を底部部分116と上部部分117に分割する熱交換機115を有する。底部部分116及び上部部分117は、複数の加熱パイプ118によって接続されており、加熱パイプは、熱交換機115の高さにわたって延在し、熱交換機の表面にわたって規則的に分割されている。反応器114の入口120は、加熱交換機115を同軸的に通って延在するダウンパイプ122に接続されている。好ましくは、ダウンパイプ122の表面積が、複数の加熱パイプ118の合計の表面積と実質的に等しい。ダウンパイプ122は、底部部分116へと開いている。上部部分117は、出口121に接続されている。ダウンパイプ122は、熱交換機を通る混合物83の流れを、必要とされる熱分解の程度に応じて制御するための、プロペラ手段123を備えてよい。熱交換機115は、加熱媒体126のための上部入口124及び底部出口125を備え、これは、加熱パイプ中の混合物と向流で接触する。このようにして、液体混合物11及び/又は83が、熱分解されつつ、入口120を介して、溶融ベッド反応器114を通って通過し、出口121を介して、熱分解混合物11として、反応器144を出る。
【0070】
最後に、述べるべき点として、本発明は、難燃剤以外の有機化合物からのハロゲンの除去にも及ぶ。本発明のコンセプトは、他の適切な有機分子、例えばPVC、例えば、熱分解混合物のポリマーのような他の有機分子の混合物中におけるようなものに関しても用いることができる。これは、強塩基を含有しており高温でハロゲン残留物を生じる非極性溶媒によるものであり、ハロゲン残留物は、例えばハロゲン塩及び/又はハロゲン含有ガスであり、これは、容易に分離しうる。
【国際調査報告】