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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】液体吸引または分注方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B01L 3/02 20060101AFI20240621BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
B01L3/02 D
G01N35/10 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577102
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 GB2022051471
(87)【国際公開番号】W WO2022258994
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】2108405.8
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523464886
【氏名又は名称】エスピーティー ラブテック リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SPT LABTECH LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【弁理士】
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ティエリー グレッドヒル
(72)【発明者】
【氏名】ルーベン ロドバー パードウ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート スティーブン ルイス
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ゲイリー コクレーン
【テーマコード(参考)】
2G058
4G057
【Fターム(参考)】
2G058ED33
2G058ED35
4G057AB18
(57)【要約】
ピペットチップとプランジャーとを備える、液体を分注する液体処理システムが提供される。ピペットチップは、近位端と遠位端とそれらの間を延びる縦軸と、遠位端における開口部と、開口部から少なくとも部分的に近位端へと延びる流体キャビティと、遠位端に設けられた端部とを有する。端部は、縦軸に対して最大で10度の角度で延びる内壁を有する。プランジャーは、ピペットチップの内部に位置付けられ、ピペットチップの近位端と遠位端との間を延びるように構成され、開口部へと、かつ開口部から離れて移動可能である。システムは、液体を分注するための少なくとも2つの異なる操作方法を実施するように構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペットチップであって、
近位端と遠位端とそれらの間を延びる縦軸と、
前記遠位端における開口部と、
前記開口部から少なくとも部分的に前記近位端へと延びる流体キャビティと、
前記縦軸に対して最大で10度の角度で延びる内壁を有する、前記遠位端に設けられた端部と
を有するピペットチップと、
前記ピペットチップの内部に位置付けられ、前記ピペットチップの前記近位端と前記遠位端との間を延びるように構成され、前記開口部へと、かつ前記開口部から離れて移動可能なプランジャーと
を備え、
液体を分注するための少なくとも2つの異なる操作方法を実施するように構成されている、液体を分注する液体処理システム。
【請求項2】
前記少なくとも2つの操作方法は、以下の少なくとも2つを含む、請求項1に記載のシステム:
プレ試料エアギャップもポスト試料エアギャップも作らない、接触分注方法;
プレ試料エアギャップもポスト試料エアギャップも作らない、非接触分注方法;
プレ試料エアギャップは作らないが、ポスト試料エアギャップは作る、非接触分注方法;
プレ試料エアギャップを作る、接触分注方法;
プレ試料エアギャップを作る、非接触分注方法;
プレ試料エアギャップおよびポスト試料エアギャップを作る、非接触分注方法;および
プレ試料エアギャップおよびポスト試料エアギャップを作る、接触分注方法。
【請求項3】
前記少なくとも2つの操作方法は、少なくとも1つのプレ試料エアギャップ方法、および少なくとも1つのプレ試料エアギャップがない方法を含む、請求項1または請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記2つの操作方法は、少なくとも1つの非接触分注方法および少なくとも1つの接触分注方法を含む、請求項1~3の何れか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記2つの操作方法は、少なくとも1つのポスト試料エアギャップ方法、および少なくとも1つのノーポスト試料エアギャップ方法を含む、請求項1~4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記システムは、前記ピペットチップに対して前記プランジャーを動かし、前記少なくとも2つの操作方法を実施するように構成されたアクチュエータを備える、請求項1~5の何れか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記システムは、プロセッサと、前記プロセッサにより実行されたとき、前記プロセッサに、アクチュエータに信号を送信させ、前記吸引および/または分注方法の工程の何れかを実施する指示を含むコンピュータ読取可能な媒体とを備えるコントローラを備える、請求項1~6の何れか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記縦軸に対して最大で10度の角度で延びる前記ピペットチップの端部の内壁は、それ自体、前記遠位端から少なくとも5mm延びる、および/または
前記端部は、前記縦軸に対して最大で10度の角度で、好ましくは少なくとも5mm延びる外壁を有する、請求項1~7の何れか一項に記載のシステム。
【請求項9】
ピペットチップであって、
近位端と遠位端とそれらの間を延びる縦軸と、
前記遠位端における開口部と、
前記開口部から少なくとも部分的に前記近位端へと延びる流体キャビティと、
前記縦軸に対して最大で10度の角度で延びる内壁を有する、前記遠位端に設けられた端部と
を有するピペットチップと、
前記ピペットチップの内部に位置付けられ、前記端部内で前記ピペットチップの前記近位端と前記遠位端との間を延びるように構成され、前記開口部へと、かつ前記開口部から離れて移動可能なプランジャーと、
前記プランジャーと前記ピペットチップとの間に液密シールを形成するように構成された封止部と
を備える、液体を吸引および/または分注する液体処理装置を提供することと、
前記ピペットチップ内で前記プランジャーを収縮させ、空気を吸引し、プレ試料エアギャップを形成することと、
試料液体内に前記ピペットチップを挿入することと、
前記ピペットチップ内で前記プランジャーを収縮させ、試料液体を吸引することと、
前記試料液体から前記ピペットチップを引き抜くことと
を含む、試料液体を分注する方法。
【請求項10】
前記ピペットチップ内で前記プランジャーを収縮させ、空気を吸引し、ポスト試料エアギャップを形成することを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ピペットチップ内で前記プランジャーを動かし、前記試料液体が試料レセプタクルと接触することなく前記ピペットチップから離れるように、吸引された前記試料液体を分注することを更に含む、請求項9または請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ピペットチップ内で前記プランジャーを動かし、前記試料液体が前記ピペットチップから離れることなく試料レセプタクルおよび/または試料レセプタクル内の試料流体などの液体と接触するように、吸引された前記試料液体を分注することを更に含む、請求項9または請求項10に記載の方法。
【請求項13】
予備工程として前記ピペットチップを上下に動かすことを更に含む、請求項9~12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
ピペットチップであって、
近位端と遠位端とそれらの間を延びる縦軸と、
前記遠位端における開口部と、
前記開口部から少なくとも部分的に前記近位端へと延びる流体キャビティと、
前記縦軸に対して最大で10度の角度で延びる内壁を有する、前記遠位端に設けられた端部と
を有するピペットチップと、
前記ピペットチップの内部に位置付けられ、前記端部内で前記ピペットチップの前記近位端と前記遠位端との間を延びるように構成され、前記開口部へと、かつ前記開口部から離れて移動可能なプランジャーと、
前記プランジャーと前記ピペットチップとの間に液密シールを形成するように構成された封止部と
を備え、
前記ピペットチップ内で前記プランジャーを収縮させ、空気を吸引し、プレ試料エアギャップを形成する工程と、
試料液体内に前記ピペットチップを挿入する工程と、
前記ピペットチップ内で前記プランジャーを収縮させ、試料液体を吸引する工程と、
前記試料液体から前記ピペットチップを引き抜く工程と
を実施するように構成された、液体を吸引および/または分注する液体処理装置。
【請求項15】
コンピュータプロセッサにより実行されたとき、前記プロセッサに以下の工程を実施させる指示を含むコンピュータプログラム:
信号を出力し、ピペットチップ内でプランジャーを収縮させ、空気を吸引し、プレ試料エアギャップを形成する工程;
信号を出力し、試料液体内に前記ピペットチップを挿入させる工程;
信号を出力し、前記ピペットチップ内で前記プランジャーを収縮させ、試料液体を吸引する工程;および
信号を出力し、前記試料液体から前記ピペットチップを引き抜かせる工程。
【請求項16】
プロセッサにより実行されたとき、前記プロセッサに出力信号を生成させ、請求項9~13の何れか一項に記載の工程を実施する指示を含む、請求項15に記載のコンピュータ読取可能な媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体分注方法、特に、プランジャーを有するピペットチップを使用して液体を分注する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体試料を吸引または分注するピペットを使用することが知られている。
【0003】
ピペットチップ内に設けられたプランジャーを有するピペットを使用することも知られている。「容積式」ピペットとして知られる典型的なピペットにおいて、この内部のプランジャーは、吸引される試料液体と接触する。プランジャーは、オリフィスから離して収縮されて試料液体を吸い込み、オリフィスへと動かされて試料液体を分注する。
【0004】
本発明者は、特に少量の分注に関する、既知のピペットのいくつかの問題を特定した。
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1の態様は、
ピペットチップであって、
近位端と遠位端とそれらの間を延びる縦軸と、
遠位端における開口部と、
開口部から少なくとも部分的に近位端へと延びる流体キャビティと、
縦軸に対して最大で10度の角度で延びる内壁を有する、遠位端に設けられた端部と
を有するピペットチップと、
ピペットチップの内部に位置付けられ、端部内でピペットチップの近位端と遠位端との間を延びるように構成され、開口部へと、かつ開口部から離れて移動可能なプランジャーと
を備える、液体を吸引および/または分注する液体処理装置を提供することと、
ピペットチップ内でプランジャーを収縮させ、空気を吸引し、プレ試料エアギャップを形成することと、
試料液体内にピペットチップを挿入することと、
ピペットチップ内でプランジャーを収縮させ、試料液体を吸引することと、
試料液体からピペットチップを引き抜くことと
を含む、試料液体を吸引および/または分注する方法を提供する。
【0006】
液体処理装置は、プランジャーとピペットチップとの間に液密シールを形成するように構成された封止部を備えてよい。
【0007】
本発明の第1の態様で特定されたピペットチップの幾何学的形状、具体的には、縦軸に対して最大で10度、好ましくは5度の角度で延びる内壁は、背景技術の項で言及された既知のピペットの浅い角度のピペットチップよりもずっと急な角度をもたらす。この急な角度のピペットチップは、既知のピペットチップの幾何学的形状よりも、いくつかの重要な利点を有する。
【0008】
本発明者らは、「プレ試料エアギャップ」と呼ばれるものにより、改良された液体吸引方法でピペットチップを使用できるようになることを特定した。このような方法において、プランジャーは、初めは収縮されて空気などの気体を吸い込み、引き続き収縮されて試料液体を吸い込む。プレ試料エアギャップ方法を使用する利点は、チップの毛細管充填が避けられ、デッドボリューム(分注後にピペット内に残る試料液体)が低減することである。高角度のチップは、吸い込まれた液体試料を、ピペットチップの内壁の一面に張り付くのではなく、分注に際して完全に放出されうる単一のスラグ(slug)のままにすることができる。これにより、非常に少ない量(<200nl)を処理することが可能になる。
【0009】
プレ試料エアギャップとの使用のために構成されているチップは、追加的な利点を有する。従来の容積式ピペットは、それらを正確にプライミングするため、最小量の液体を吸引する必要がある。正確にプライミングされないと、分注性能が損なわれうる。上述したプレ試料エアギャップは、プライミングボリュームを不要にし、低ソース量(<500nl)および低分注量(<200nl)を処理できる。
【0010】
本方法は、ピペットチップ内でプランジャーを収縮させ、空気を吸引し、ポスト試料エアギャップを形成することを更に含んでよい。具体的には、これは、試料が吸引された後もプランジャーを引き続け、空気または別の気体を吸い込むことを更に伴ってよい。このことは、以下の利点を有する。非接触分注を行うとき、すなわち、試料液体が、ピペットチップから離れた後、試料容器または試料容器内の液体に達する前に、1つまたは複数の液滴を形成する分注を行うとき、液体試料は、十分に速い速度で進み、ピペットチップから離れなければならない。既知のピペットチップにおいては、プランジャーストロークが比較的短いため、少量でこの速度に達するのは難しい。本発明者らにより開発されたポスト試料エアギャップは、液体試料が吸引された後にわずかなエアギャップ(または他の気体)を導入すること、すなわち、ポスト試料エアギャップを使用することにより、プランジャーストロークを増加させる方法を提供する。第1の態様の高角度のチップにより、制御された方法でこのエアギャップを導入することができる。本発明者らは、既知のピペットチップにおいては、このメカニズムがプランジャーを有するピペットチップで実行できないことを特定した。これは、第1の態様のピペットよりずっと浅いピペットチップ角度を有する既知のピペットチップの幾何学的形状は、液体が、表面張力によりピペットチップおよび/またはプランジャーの内壁面の一面に付着するようにするものであるからである。このことは、ポスト試料エアギャップ方法における分注性能の低さにつながる。第1の態様のピペットチップの急な角度は、より均一な液体の付着をもたらすことで、この問題を軽減する。
【0011】
本方法は、ピペットチップ内でプランジャーを動かし、試料液体が試料レセプタクルと接触することなくピペットチップから離れるように、吸引された試料液体を分注することを更に含んでよい。これには、試料液体が、ピペットチップから離れた後、試料容器または試料容器内の液体に達する前に、1つまたは複数の液滴を形成するような分離を伴ってよい。上述のように、これは、「非接触」分注方法と呼ばれてもよい。これには、プランジャーを更に動かし、プレ試料エアギャップを放出することを伴ってもよい。
【0012】
本方法は、ピペットチップ内でプランジャーを動かし、試料液体が、ピペットチップから離れることなく、試料レセプタクルおよび/または試料レセプタクル内の試料流体などの液体と接触するように、吸引された試料液体を分注することを更に含んでよい。これは、接触分注方法と呼ばれてもよい。これには、プランジャーを更に動かし、プレ試料エアギャップを放出することを伴ってもよい。
【0013】
プランジャーを動かし、流体、すなわち、試料液体またはエアギャップを分注することは、下向きの方向でありうる拡張方向にプランジャーを動かすことを伴ってよい。
【0014】
レセプタクルは、ウェルもしくは一連のウェル、アッセイプレートもしくはマイクロプレートなどのプレート、トレー、管もしくは一連の管、任意の適切な容器、または試料容器内の液体であってよい。
【0015】
本方法は、予備工程として、ピペットチップを上下に動かすことを更に含んでよい。このことは、本方法の任意の他の吸引および/もしくは分注工程、または準備工程の前に実施されてよい。
【0016】
本発明の第2の態様は、コンピュータ読取可能な媒体において実行されうるコンピュータプログラムであって、コンピュータプロセッサにより実行されたとき、プロセッサに以下の工程を実施させる指示を含むコンピュータプログラムを提供する:
信号を出力し、ピペットチップ内でプランジャーを収縮させ、空気を吸引し、プレ試料エアギャップを形成する工程;
信号を出力し、試料液体内にピペットチップを挿入させる工程;
信号を出力し、ピペットチップ内でプランジャーを収縮させ、試料液体を吸引する工程;および
信号を出力し、試料液体からピペットチップを引き抜かせる工程。
【0017】
コンピュータプログラムは、プロセッサにより実行されたとき、プロセッサに、本明細書に記載の方法、およびその実施形態または変形例の何れか実行する信号を出力させる指示を含んでもよい。プロセッサは、説明した方法を実行するための本明細書に記載の特徴の何れかを有する液体処理システム内に備えられてよい、または液体処理システムに操作可能に接続されてよい。
【0018】
本発明の第3の態様は、
ピペットチップであって、
近位端と遠位端とそれらの間を延びる縦軸と、
遠位端における開口部と、
開口部から少なくとも部分的に近位端へと延びる流体キャビティと、
縦軸に対して最大で10度の角度で延びる内壁を有する、遠位端に設けられた端部と
を有するピペットチップと、
ピペットチップの内部に位置付けられ、ピペットチップの近位端と遠位端との間を延びるように構成され、開口部へと、かつ開口部から離れて移動可能なプランジャーと
を備え、
液体を吸引または分注するための少なくとも2つの異なる操作方法を実施するように構成されている、液体を吸引および/または分注する液体処理システムを提供する。
【0019】
好ましくは非一時的な、コンピュータ読取可能な媒体に含まれる指示は、システムに、液体を吸引または分注するための少なくとも2つの異なる操作方法を実施させるように構成されてよい。
【0020】
操作方法の各々は、以下の1つであってよい:
プレ試料エアギャップもポスト試料エアギャップも作らない、接触分注方法;
プレ試料エアギャップもポスト試料エアギャップも作らない、非接触分注方法;
プレ試料エアギャップは作らないが、ポスト試料エアギャップは作る、非接触分注方法;
プレ試料エアギャップを作る、接触分注方法;
プレ試料エアギャップを作る、非接触分注方法;および
プレ試料エアギャップおよびポスト試料エアギャップを作る、非接触分注方法。
【0021】
システムが特定の方法を実施するように構成されているとき、対応する操作のモードを有していると見なされてよい。システムは、それゆえ、以下を有するように構成されてよい:
プレ試料エアギャップもポスト試料エアギャップもない、接触分注モード;
プレ試料エアギャップもポスト試料エアギャップもない、非接触分注モード;
プレ試料エアギャップはないが、ポスト試料エアギャップはある、非接触分注モード;
プレ試料エアギャップがある、接触分注モード;
プレ試料エアギャップがある、非接触分注モード
プレ試料エアギャップおよびポスト試料エアギャップがある、非接触分注モード;および
プレ試料エアギャップおよびポスト試料エアギャップがある、接触分注モード。
【0022】
システムは、液体を吸引または分注するための少なくとも2つの異なる操作モードで動作するように構成されてよい。
【0023】
少なくとも2つの操作方法またはモードは、少なくとも1つのプレ試料エアギャップ方法またはモード、および少なくとも1つの、プレ試料エアギャップがない方法またはモードを含んでよい。
【0024】
2つの操作方法またはモードは、少なくとも1つの非接触分注方法またはモードおよび少なくとも1つの接触分注方法またはモードを含んでよい。
【0025】
2つの操作方法またはモードは、少なくとも1つのポスト試料エアギャップ方法またはモード、および少なくとも1つのノーポスト試料エアギャップ方法またはモードを含んでよい。
【0026】
システムは、ピペットチップに対してプランジャーを動かし、少なくとも2つの操作方法またはモードを実施するように構成されたアクチュエータを備えてよい。
【0027】
システムは、プロセッサにより実行されたとき、プロセッサに以下の工程を実施させる指示を含むコンピュータ読取可能な媒体を備えてよい:
信号を出力し、ピペットチップ内でプランジャーを収縮させ、空気を吸引し、プレ試料エアギャップを形成することと、
信号を出力し、試料液体内にピペットチップを挿入させることと、
信号を出力し、ピペットチップ内でプランジャーを収縮させ、試料液体を吸引することと、
信号を出力し、試料液体からピペットチップを引き抜かせること。
【0028】
コンピュータ読取可能な媒体は、プロセッサにより実行されたとき、プロセッサに、アクチュエータに信号を送らせ、本明細書に記載の吸引および/または分注方法工程の何れかを引き起こす指示を含んでよい。
【0029】
縦軸に対して最大で10度の角度で延びる、ピペットチップ端部の内壁は、それ自体、遠位端から少なくとも5mm延びてよい。
【0030】
端部は、縦軸に対して最大で10度の角度で、好ましくは少なくとも5mm延びる外壁を有してよい。
【0031】
本発明の第4の態様は、
ピペットチップであって、
近位端と遠位端とそれらの間を延びる縦軸と、
遠位端における開口部と、
開口部から少なくとも部分的に近位端へと延びる流体キャビティと、
縦軸に対して最大で10度の角度で延びる内壁を有する、遠位端に設けられた端部と
を有するピペットチップと、
ピペットチップの内部に位置付けられ、端部内でピペットチップの近位端と遠位端との間を延びるように構成され、開口部へと、かつ開口部から離れて移動可能なプランジャーと、
プランジャーとピペットチップとの間に液密シールを形成するように構成された封止部と
を備え、
ピペットチップ内でプランジャーを収縮させ、空気を吸引し、プレ試料エアギャップを形成する工程と、
試料液体内にピペットチップを挿入する工程と、
ピペットチップ内でプランジャーを収縮させ、試料液体を吸引する工程と、
試料液体からピペットチップを引き抜く工程と
を実施するように構成された、液体を吸引および/または分注する液体処理装置を提供する。
【0032】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】ピペットチップの断面およびプランジャーの側面図である。
図2】分解した状態のピペットチップおよびプランジャーの斜視図である。
図3】組み立てた状態のピペットチップの端部およびプランジャーの端部の拡大図である。
図4】(a)は、プレ試料エアギャップはないが、ポスト試料エアギャップがある、非接触分注方法を示す図である。(b)は、プレ試料エアギャップはないが、ポスト試料エアギャップがある、非接触分注方法を示す図である。(c)は、プレ試料エアギャップはないが、ポスト試料エアギャップがある、非接触分注方法を示す図である。(d)は、プレ試料エアギャップはないが、ポスト試料エアギャップがある、非接触分注方法を示す図である。(e)は、プレ試料エアギャップはないが、ポスト試料エアギャップがある、非接触分注方法を示す図である。
図5】(a)は、プレ試料エアギャップを作る、接触分注方法を示す図である。(b)は、プレ試料エアギャップを作る、接触分注方法を示す図である。(c)は、プレ試料エアギャップを作る、接触分注方法を示す図である。(d)は、プレ試料エアギャップを作る、接触分注方法を示す図である。(e)は、プレ試料エアギャップを作る、接触分注方法を示す図である。
図6】(a)は、プレ試料エアギャップを作る、非接触分注方法を示す図である。(b)は、プレ試料エアギャップを作る、非接触分注方法を示す図である。(c)は、プレ試料エアギャップを作る、非接触分注方法を示す図である。(d)は、プレ試料エアギャップを作る、非接触分注方法を示す図である。(e)は、プレ試料エアギャップを作る、非接触分注方法を示す図である。
図7】(a)は、プレ試料およびポスト試料エアギャップを作る、非接触分注方法を示す図である。(b)は、プレ試料およびポスト試料エアギャップを作る、非接触分注方法を示す図である。(c)は、プレ試料およびポスト試料エアギャップを作る、非接触分注方法を示す図である。(d)は、プレ試料およびポスト試料エアギャップを作る、非接触分注方法を示す図である。(e)は、プレ試料およびポスト試料エアギャップを作る、非接触分注方法を示す図である。
図8】液体分注装置の模式図である。
図9】ピペットチップの一部の図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、液体を吸引および/または分注するピペット10を示す。ピペット10は、ピペットチップ100とプランジャー200とを備える。
【0035】
ピペットチップ100は、試料流体または試料液体を受け入れる、および/または含むレセプタクルであってよい。ピペットチップ100は、試料液体の容器に、または試料液体に挿入されるように構成されてよい。
【0036】
ピペットチップ100は、近位端101と遠位端102と有し、近位端101および遠位端102は、それらの間を延びる縦軸1を画定する。
【0037】
ピペットチップ100は、図2に示すように、その遠位端102に開口部108を有する。開口部108は、遠位端102で、具体的には、ピペットチップ100の最も外側の遠位点で、ピペットチップ100の内壁面111により画定されてよい。開口部108は、実質的に円形または円を画定してよい。開口部108は、最大で1mm、好ましくは最大で0.5mm、さらに好ましくは最大で0.4mmの直径を有してよい。任意に、開口部108は、最大で0.35mm、0.3mm、0.25mm、0.1mmの直径を有してよい。任意に、開口部108は、少なくとも0.4mmの直径を有してよい。
【0038】
ピペットチップ100の内壁111は、ピペットチップ100の支持部105および/または本体部106を通って延びてよい。内壁面111は、支持部105および/または本体部106内で、実質的に管状であってよい、および/または平行な側面を有してよい。ピペットチップ100は、開口部108から少なくとも部分的に近位端101へと延びる流体キャビティ109を有する。流体キャビティ109は、エアギャップまたは試料液体などの流体を受け入れる、および/または保持するように構成されてよい。流体キャビティ109は、実質的に細長くてよい。流体キャビティは、ピペットチップ100の内壁面111により画定されてよい。流体キャビティ109は、ピペットチップ100の端部110内に大部分または完全に設けられてよい。
【0039】
ピペットチップ100は、縦軸1に対して最大で10度、またはπ/18ラジアン、または約0.17~0.18ラジアンの角度αで、任意に少なくとも5mm延びる内壁面111を有する、遠位端102に設けられた端部110を備える。好ましくは、内壁面111は、縦軸1に対して最大で5度、またはπ/36ラジアン、または約0.08~0.09ラジアンの角度αで、少なくとも5mm延びる。内壁面111は、縦軸1に対して最大で4度、好ましくは縦軸1に対して最大で3度、さらに好ましくは縦軸1に対して最大で2度の角度αで延びてよい。角度αは、図3を参照されたい。角度αは、少なくとも0度、すなわち、縦軸1と平行であってよい。縦軸1に対して少なくとも2度または少なくとも1度の角度で延びるピペットチップ端部110は、製造が容易で、単純で、かつ/または安価なため、0度の角度と比較して有利でありうる。角度αは、当業者に既知の任意の適切な角度測定技術を使用して測定されてよい。
【0040】
縦軸1は、ピペットチップ101および/またはプランジャー200が周囲に設けられる中心軸であってよい。縦軸1は、ピペットチップ100および/またはプランジャー200が周囲に均一にまたは対称的に設けられる中心軸を画定してよい。ピペットチップ100および/またはプランジャー200は、吸引および/または分注の方向が縦軸1に沿うように構成されてよい。
【0041】
端部110の内壁面111は、最大でも角度αに等しい角度で少なくとも5mm、好ましくは7mm、好ましくは最大でも角度αに等しい角度で少なくとも10mm、さらに好ましくは最大でも角度αに等しい角度で少なくとも12mm延びてよい。ピペットチップ100の端部110の内壁111は、円錐台形状または円筒形状などの真っすぐな側面形状を画定してよい。
【0042】
端部110は、図3に最もよく見られるように、縦軸1に対して最大で10度、好ましくは最大で5度の角度βで、任意に少なくとも5mm延びる外壁面112を有してよい。ピペットチップの端部の外壁面112は、円錐台形状または円筒形状などの真っすぐな側面形状を画定してよい。端部110は、最大で4mm、好ましくは最大で3mm、さらに好ましくは最大で2mm、さらに好ましくは最大で1mm、さらに好ましくは最大で0.7mm、さらに好ましくは最大で0.65mmの最大外径を有してよい。任意に、端部110は、少なくとも0.5mm、任意に少なくとも0.6mm、任意に少なくとも0.65mmの最大外径を有してよい。
【0043】
ピペットチップ100は、実質的に細長くてよく、その近位端101と遠位端102との間を延びる。ピペットチップ100は、実質的にまたは完全に中空であってよい。ピペットチップ100は、高分子材料を含んでよい、または高分子材料から成ってよい。ピペットチップ100は、均質な材料を含んでよい、または均質な材料から成ってよい。ピペットチップ100は、半透明もしくは透明な材料を含んでよい、または半透明もしくは透明な材料から成ってよい。
【0044】
ピペットチップ100は、各々が異なる機能、際立った特徴、および/または異なる形状もしくは寸法を有する、一連の部分を備えてよい。ピペットチップ100は、例えば、図1に示すような、チップコネクタ部103、中心部104、支持部105、本体部106、および橋架部107の1つまたは複数を備えてよい。近位端101から遠位端102まで、各部は、チップコネクタ部103、中心部104、支持部105、本体部106、橋架部107、および端部110の順番で配置されてよい。流体キャビティ109は、ピペットチップ100の部分の1つ、複数、または全てを通って延びてよい。プランジャー200は、ピペットチップ100の部分の1つ、複数、または全てを通って延びてよい。
【0045】
チップコネクタ部103は、液体処理システムに連結されるように構成されてよい。チップコネクタ部103は、スナップフィット連結として構成されてよい。
【0046】
中心部104は、ピペットチップ100内でプランジャー200を中心に置くように構成されてよい。中心部104は、内面を有し、その内面で先細または円すい形状を画定してよい。
【0047】
支持部105は、ピペットチップ100の柔軟性を低減する、および/または構造的完全性を改善するように構成された、1つまたは複数のリブを備えてよい。1つまたは複数のリブは、例えば、図2に最もよく見られるように、近位端101と遠位端102との間を、ピペットチップの外面において延びてよい。代替的に、および/または1つまたは複数のリブに加えて、支持部105は、例えば、図9に示すような、リング1055を備えてよい。リング1055は、使用中、反力をもたらすように構成されてよい。リング1055は、保管中および/または使用中、ピペットチップ100を位置付ける、または中心に置くように構成されてよい。リング1055は、製造中、成形型からのピペットチップ100の抜き出しを少なくとも部分的に促進するように構成されてよい。
【0048】
本体部106は、実質的に円柱状であってよい、および/または細長くてよい。本体部106は、実質的に均一な内径および/または外径を有してよい。本体部106は、ピペットチップ100の長さの少なくとも半分に沿って延びてよい。本体部106は、端部110の任意の直径より大きい内径および/または外径を有してよい。
【0049】
橋架部107は、本体部106を端部110に橋渡しするように構成されてよい。橋架部107は、本体部106と端部110との間のステップを画定してよい。橋架部107は、実質的に先細、円すい、および/またはドーム状であってよい。
【0050】
プランジャー200は、ピペットチップ100の内部に位置付けられている。プランジャー200は、ピペットチップ100に対して動き、ピペットチップ100内に流体を吸い込む、かつ/またはピペットチップ100から流体を放出するように構成されてよい。具体的には、拡張位から収縮位に動くとき、プランジャー200は、ピペットチップ100内にエアギャップまたは試料液体などの流体を吸い込んでよい。収縮位から拡張位に動くとき、プランジャー200は、ピペットチップ100からエアギャップまたは試料液体などの流体を放出してよい。
【0051】
プランジャー200および/またはピペットチップ100は、拡張位において、プランジャー200がピペットチップ100内に完全に含まれるように、構成されてよい。プランジャー200は、ピペットチップ100の近位端101と遠位端102との間を端部110内へと少なくとも部分的に延びるように構成されている。プランジャー200は、ピペットチップ100の近位端101と遠位端102との間を端部110内へと実質的にまたは完全に延びるように構成されてよい。プランジャー200は、開口部109へと、かつ開口部109から離れて移動可能であり、流体を吸引する、またはピペットチップ100から流体を分注する。プランジャー200は、ピペットチップ端部110の内壁面111と並ぶように構成された端部外壁面212を有してよい。プランジャー200は、高分子材料を含んでよい、または高分子材料から成ってよい。プランジャー200は、均質な材料を含んでよい、または均質な材料から成ってよい。
【0052】
プランジャー200は、各々が異なる機能、際立った特徴、および/または異なる形状もしくは寸法を有する一連の部分を備えてよい。プランジャー200は、例えば、図1に示すような、プランジャーコネクタ部203、中心部204、本体部206、および封止部207の1つまたは複数を備えてよい。近位端201から遠位端202に、各部は、プランジャーコネクタ部203、中心部204、本体部206、封止部207、および端部210の順番で配置されてよい。
【0053】
プランジャー200のプランジャーコネクタ部203は、ピペットチップ100のチップコネクタ部103に受け入れられるように構成されてよい。プランジャーコネクタ部203は、液体処理システムに連結されるように構成されてよい。プランジャーコネクタ部203は、スナップフィット連結として構成されてよい。
【0054】
中心部204は、ピペットチップ100の中心部104に受け入れられ、ピペットチップ100内でプランジャー200を中心に置くように構成されてよい。中心部204は、実質的に円すいまたはドーム状であってよい。
【0055】
プランジャー200の本体部206は、ピペットチップ100の本体部106に受け入れられるように構成されてよい。本体部206は、実質的に円柱状であってよい、および/または細長くてよい。本体部206は、実質的に均一な直径を有してよい。本体部206は、プランジャーの長さの少なくとも半分、任意にプランジャー200の長さの少なくとも3分の2に沿って延びてよい。本体部206は、端部210の直径より大きい直径を有してよい。
【0056】
プランジャー200の封止部207は、ピペットチップ100の橋架部107に受け入れられるように構成されてよい。封止部207は、ピペットチップ100の内壁に対してシールを形成するに構成されてよい。封止部207は、ピペットチップ内に液密シールを形成し、プランジャー200がピペットチップ100内に設置されたとき、流体が封止部207の近位側から封止部207の遠位側に流れないようにしてよい。封止部207は、少なくとも部分的に柔軟性があってよい。封止部207は、本体部206を端部210に橋渡しするように構成されてよい。封止部207は、本体部206と端部210との間のステップを画定してよい。封止部207は、実質的に先細、円すい、および/またはドーム状であってよい。
【0057】
プランジャー200の端部210は、ピペットチップ100の端部110に受け入れられるように構成されてよい。端部210は、封止部207および/または本体部206より小さい直径を有してよい。
【0058】
端部210は、ピペットチップ100の端部110を実質的にまたは完全に占有してよい。これにより、プランジャー端部210が拡張位にあるとき、ピペットチップ端部110内にエアギャップが生じないようにする。端部210は、プランジャー端部210が拡張位にあるとき、ピペットチップ端部110の内壁面111と接触してよい。
【0059】
端部210は、実質的に細長くてよい、および/または円すいであってよい。端部210は、実質的に真っすぐな壁を有してよい。端部210は、ピペットチップ端部110の内壁面111の形状を補完する、内壁面111の形状と一致する、かつ/または内壁面111の形状に対応する形状を有する外壁212を有してよい。端部210は、内壁面111の長さの少なくとも一部、実質的に内壁面111の全て、または全長にわたって、ピペットチップ端部110の内壁面111と並ぶ、および/または内壁面111と平行な外壁212を有してよい。
【0060】
プランジャー200の端部210は、その遠位端202に実質的に平らな面を有してよい。プランジャー200の端部210は、プランジャー200が拡張位にあるとき、ピペットチップ端部110の開口部108を密閉してよい。具体的には、プランジャー200の遠位端202は、ピペットチップ端部110の開口部108を密閉してよい。端部210は、プランジャー200が拡張位にあるとき、プランジャー遠位端202がピペットチップ遠位端102に設けられるように構成されてよい。プランジャー200は、拡張位にあるとき、プランジャー遠位端202がピペットチップ遠位端102を超えて延びないように構成されてよい。
【0061】
本明細書に記載の変形例の何れかを有するピペット10は、液体処理システム(図示せず)に備えられてよく、液体処理システムは、ピペットチップ100に対してプランジャー200を動かすように構成されたアクチュエータも備える。
【0062】
ピペットチップ100および/またはプランジャー200は、ピペット操作システムまたは装置から取り外し可能かつ/またはピペット操作システムまたは装置に取り付け可能であってよい。ピペットチップ100は、その近位端101で取り外し可能かつ/または取り付け可能であってよい。プランジャー200は、その近位端201で取り外し可能かつ/または取り付け可能であってよい。ピペットチップ100および/またはプランジャーは、それぞれの近位端101、201に設けられるコネクタ手段またはコネクタ部103、203を備え、ピペットチップ100またはプランジャー200がピペット操作システムまたは装置への取り付け、またはピペット操作システムまたは装置からの取り外しに適する、またはその取り付けまたは取り外しのために構成されるようにしてよい。ピペットチップ100および/またはプランジャー200は、吸引中、試料液体が近位端101を超えて延びずに、液体処理システムまたは装置に入らないように構成されてよい。このように、試料液体は、取り外し可能なピペットチップ100内に含まれ、液体処理システムまたは装置の汚染を防いでよい。これにより、取り外し可能かつ任意に使い捨てのピペットチップ100および/またはプランジャー200の使用を通して、装置またはシステムは複数の異なる試料流体を有する使用に適したものとなる。
【0063】
図1図3の装置は、図4図7の吸引および/または分注の方法で使用されてよい。当業者であれば図1図3の記載から理解するであろうが、提供された装置は、流体を吸引および/もしくは分注する、ならびに/または吸引と分注との間に流体を保持するように構成されている。装置は、手動操作により制御されうる、または部分的にもしくは完全に自動化されうる方法の1つまたは複数の工程を実施するために提供される。本方法で提供された装置は、本明細書に記載の1つ、複数、または全ての特徴を有してよい。具体的には、液体処理装置は、例えば、図1図3との関連で説明されたような、これまでに説明した1つまたは複数の特徴を含んでよい。
【0064】
装置は、近位端101と遠位端102とを有するピペットチップ100を備え、近位端101および遠位端102は、それらの間の縦軸11を画定する。ピペットチップ100は、また、遠位端102における開口部108と、開口部108から少なくとも部分的に近位端101へと延びる流体キャビティ109とを有する。開口部108は、ピペットチップ100に、かつピペットチップ100から流体を許可し、装置の流体キャビティ109は、試料液体などの流体(すなわち、液体または気体)、および/またはエアギャップを保持するように構成されている。
【0065】
ピペットチップ100は、縦軸11に対して最大で10度の角度で延びる内壁111を有する、遠位端102に設けられた端部110も有する。このことは、プレ試料エアギャップまたはポスト試料エアギャップを伴う方法で使用されたとき、特に有利になりうる。
【0066】
装置は、ピペットチップ100の内部に位置付けられ、端部内でピペットチップ100の近位端101と遠位端102との間を延びるように構成され、開口部108へと、かつ開口部108から離れて移動可能なプランジャー200を備えてもよい。プランジャーは、ピペットチップ100内で圧力変化を生じさせることにより、流体キャビティ内に流体を吸い込む、かつ/または流体キャビティから流体を放出するように構成されている。
【0067】
本方法は、ピペットチップ100内の圧力を低下させることにより、上述のように、ピペットチップ100内でプランジャー200を収縮させ、空気を吸引し、プレ試料エアギャップを形成することを含み、大気または他の気体がピペットチップ100内を通り、この圧力を均一にするようにする。開口部108とプランジャー200との間で、ピペットチップ内に設けられたこの空気または気体は、ピペットチップ100内への吸引の順で試料に先行するため、プレ試料エアギャップと呼ばれる。
【0068】
プレ試料エアギャップ300がピペットチップ100内に維持されたまま、ピペットチップ100は、続いて、試料液体351内に挿入される。この位置では、プレ試料エアギャップ300は、ピペットチップ100内に留まり、試料液体351は、完全にピペットチップの外側に留まりうる。試料液体351は、ピペットチップ100の周囲に追いやられやすい一方、プレ試料エアギャップ300からのピペットチップ100内の圧力により、ピペットチップ100内に入ることは阻止される。ピペットチップ100を試料液体351内に挿入する工程は、ウェルもしくは一連のウェル、アッセイプレートもしくはマイクロプレートなどのプレート、トレー、任意の適切な容器、または試料容器内の液体などの固定されたレセプタクルに対してピペットチップ100を下方に動かすこと、および/または固定されたピペットチップ100に対して試料液体容器を上方に動かすこと、および/または試料液体容器とピペットチップ100との双方を互いに向けて動かすことを伴ってよい。
【0069】
試料液体351内に留まったまま、プランジャー200は、ピペットチップ100内で収縮され、試料液体301を吸引する。この際、ピペットチップ100は、少なくとも部分的に試料液体301で満たされ、試料液体301は、ピペットチップ100内でプレ試料エアギャップ300の下に配置され、保持される。このような構成において、プランジャー200の直下に配置されるのは、プレ試料エアギャップ300であり、その下に、試料液体301が液体のスラグ(slug)として保持され、プレ試料エアギャップ300と開口部108との間に配置される。ピペットチップ100内でプランジャー200を収縮させ、空気を吸引し、プレ試料エアギャップ300を形成する工程は、ピペットチップ100に対してプランジャー200を最大で20mmだけ、任意に最大で10mmだけ、任意に最大で5mmだけ、任意に最大で1mmだけ収縮させることを伴ってよい。プレ試料エアギャップ300は、約30μl、任意に最大で20μl、任意に最大で10μl、任意に最大で5μl、任意に最大で3μlの量を有してよい。機能的なことをいうと、プレ試料エアギャップの目的は、吸引試料が内部でピペットチップに毛管作用で運ばれてプランジャーに到達しないように、十分な空間を作ることである。実際には、この距離、またはプレ試料エアギャップの量は、吸引される流体によって異なる。試料液体301がプランジャーに運ばれることを阻止するのに十分な任意のギャップは、有益でありうる。流体の試料301は、好ましくはピペットチップの先細部分の下方に維持され、取り出しのシーケンス中、その完全性が維持される。
【0070】
ピペットチップ100は、続いて、プレ試料エアギャップ300と試料液体301とがピペットチップ100内に保持されたまま、試料液体351から引き抜かれる。これには、固定されたレセプタクルに対してピペットチップ100を上方に動かすこと、および/または固定されたピペットチップ100に対してレセプタクルを下方に動かすこと、および/またはレセプタクルとピペットチップ100との双方を互いから離して動かすことを伴ってよい。
【0071】
本方法は、装置を提供する前、間、または後に、ウェルもしくは一連のウェル、アッセイプレート、トレー、マイクロプレート、または任意の適切な容器などのレセプタクル内に提供されうる試料液体351を提供することを含んでもよい。レセプタクルは、ピペットチップ100または一連のピペットチップが下げられ、レセプタクルに入りうる、または近接しうるような場所において、装置の下に提供されてよい、または装置内に挿入されてよい。装置は、マイクロプレート受け取りエリアまたはデッキと、マイクロプレート受け取りエリアの上に位置付けられたピペット操作ヘッドとを有する本体を備えてよい。マイクロプレート受け取りエリアは、ラボ用マイクロプレートを受け取るように配置された実質的に水平な上面を有してよい。受け取りエリアは、マイクロプレート受け取りエリアの高さを要求に応じて変更できる、高さ調節可能な支持構造物上に位置しうる。受け取りエリアは、ラボ用マイクロプレートを定位置で保持するように構成されてよい。例えば、受け取りエリアの上面は、マイクロプレートを受け取り、受け取りエリアに対するマイクロプレートの横方向の移動を防ぐように配置された1つまたは複数のくぼみを備えてよい。装置のピペット操作ヘッドは、多数のピペットを保持するように構成されてよく、デッキと関連して移動可能であり、ピペット操作ヘッドに取り付けられたピペットをデッキに支持されたマイクロプレートに近接させ、液体がマイクロプレートのウェルから吸引される、またはウェルに分注されるようにしてよい。
【0072】
当業者であれば理解するであろうが、各工程は、次々に、任意にリストアップされた順番で実施されてよい。その一方で、1つまたは複数の工程は、少なくとも部分的に同時に実施されてよい。例えば、ピペットチップ100内でプランジャー200を収縮させ、試料液体351を吸引する工程は、試料液体351内にピペットチップ100を挿入すること、および/または試料液体351からピペットチップ100を引き抜くことと同時に実施されてよい。
【0073】
図4図7は、試料液体301を吸引および/または分注する方法を示す。本方法は、ピペットチップ100と、ピペットチップ100の内部に位置付けられたプランジャー200とを備える、液体を吸引および/または分注する液体処理装置を提供することを含む。
【0074】
図4図7は、工程の特に有利な組み合わせを示す。当業者であれば理解するであろうが、試料液体351を吸引および/または分注する方法を実施するとき、当業者が利用可能な組み合わせはこれだけではない。具体的には、当業者は、さまざまな方法工程の前、後、または間の追加的な工程とともに、各方法の1つまたは複数の工程を実施してよい。
【0075】
図4の方法は、以下の工程を含む:
4a)試料液体351内にピペットチップ100を挿入する工程と、
4b)ピペットチップ100内でプランジャー200を収縮させ、試料液体351を吸引する工程と、
4c)試料液体からピペットチップ100を引き抜く工程と、
4d)ピペットチップ内でプランジャー200を収縮させ、空気を吸引し、ポスト試料エアギャップ302を形成する工程と、
4e)ピペットチップ100内でプランジャー200を動かし、試料液体301が試料レセプタクルまたはそこに保持された液体306と接触することなくピペットチップ100から離れるように、吸引された試料液体301を分注する工程。
【0076】
工程4bのポスト試料エアギャップなどのポスト試料エアギャップ302は、開口部108から離してプランジャー200を引き抜くことにより生じるピペットチップ100内の圧力低下により生じる。これにより、ピペットチップ100内で更に開口部108から離れて試料液体301が吸い込まれ、大気または他の気体が開口部108を通ってピペットチップ100内に吸い込まれ、この圧力を均一にする。開口部108と試料液体301との間で、ピペットチップ100内に設けられたこの空気または気体は、ピペットチップ100内への吸引の順で試料の後に続くため、ポスト試料エアギャップ302と呼ばれる。プランジャーを工程4eの前に動かして、ポスト試料エアギャップを分注してよい。
【0077】
ピペットチップ100内でプランジャー200を収縮させ、空気を吸引し、ポスト試料エアギャップ302を形成することは、試料液体301が、開口部108から出るとピペットチップ100からきれいに離れるのに十分なエネルギーを有するように、試料液体301が分注中に加速されうるように、ピペットチップ100に対してプランジャー200を収縮させることを伴ってよい。これには、ゼロより大きい、かつ0.5mmまで、任意に0.3mmまで、任意に0.03mmまでの量だけピペットチップ100に対してプランジャー200を収縮させることを伴ってよい。ポスト試料エアギャップ302は、最大で約1μl、および/または少なくとも約0.1μlの量を有してよい。ポスト試料エアギャップは、試料液体301が、吸引および分注手順の間、ピペットチップ100の先細の端部110を超えて動かず、先細の端部に留まれるのに十分なほど小さくなければならない。
【0078】
当業者であれば理解するであろうが、工程4eなどの非接触分注工程においては、試料液体301がピペットチップから離れたとき、液滴が生じる可能性があり、それは特定の形状または構成に制限されない。工程4eにおいて、液体試料は、レセプタクルに到達する前にピペットチップ100に接触しない状態に至らなければならない。これには、試料液体301が完全に空気で取り囲まれていることを伴ってよく、それゆえ、少なくとも部分的に球状でありうる、表面張力を最小化する形状を形成しうる。
【0079】
図5の方法は、以下の工程を含む:
5a)ピペットチップ100内でプランジャー200を収縮させ、空気を吸引し、プレ試料エアギャップ300を形成する工程と、
5b)試料液体351内にピペットチップ100を挿入する工程と、
5c)ピペットチップ100内でプランジャー200を収縮させ、試料液体301を吸引する工程と、
5d)試料液体351からピペットチップ100を引き抜く工程と、
5e)ピペットチップ100内でプランジャー200を動かし、試料液体301がピペットチップから離れることなく、試料レセプタクル306と接触するように、吸引された試料液体301を分注する工程。
【0080】
5eの工程などの接触分注方法においては、液体試料301は、例えば、図5(e)に示すように、ピペットチップ100とレセプタクル306とに同時に接触する。そのような状況においては、レセプタクル306からの表面張力は、試料液体301がピペットチップ100から離れる前に、試料液体301の形状をゆがめうる。
【0081】
図6の方法は、以下の工程を含む:
6a)ピペットチップ100内でプランジャー200を収縮させ、空気を吸引し、プレ試料エアギャップ300を形成する工程と、
6b)試料液体351内にピペットチップ100を挿入する工程と、
6c)ピペットチップ100内でプランジャー200を収縮させ、試料液体301を吸引する工程と、
6d)試料液体351からピペットチップ100を引き抜く工程と、
6e)ピペットチップ100内でプランジャー200を動かし、試料液体301が試料レセプタクル306と接触することなくピペットチップ100から離れるように、吸引された試料液体301を分注する工程。これにより、試料液体は、ピペットチップから離れた後、試料容器に到達する前に、1つまたは複数の液滴305を形成しうる。
【0082】
図7の方法は、以下の工程を含む:
7a)ピペットチップ100内でプランジャー200を収縮させ、空気を吸引し、プレ試料エアギャップ300を形成する工程と、
7b)試料液体351内にピペットチップ100を挿入する工程と、
7c)ピペットチップ100内でプランジャー200を収縮させ、試料液体301を吸引する工程と、
7d)試料液体301からピペットチップ100を引き抜く工程と、
7e)ピペットチップ100内でプランジャー200を収縮させ、空気を吸引し、ポスト試料エアギャップ302を形成する工程と、
7f)ピペットチップ100内でプランジャー200を動かし、試料液体301が試料レセプタクル306と接触することなくピペットチップ100から離れるように、吸引された試料液体301を分注する工程。工程7fの前に、プランジャーを動かして、ポスト試料エアギャップを分注してよい。
【0083】
ピペットチップ100内でプランジャー200を収縮させ、空気を吸引し、プレ試料エアギャップ300を形成することを含む方法は、プレ試料エアギャップ方法またはプレ試料エアギャップ操作モードと呼ばれてよい。図5図6、および図7は、この工程を示す。図4の方法などの、本工程を伴わない方法は、ノープレ試料エアギャップ方法またはノープレ試料エアギャップ操作モードと呼ばれてよい。
【0084】
図4および図7の方法などの、ピペットチップ100内でプランジャー200を収縮させ、空気を吸引し、ポスト試料エアギャップ302を形成することを含む方法は、ポスト試料エアギャップ方法またはポスト試料エアギャップ操作モードと呼ばれてよい。図5および図6の方法などの、本工程を伴わない方法は、ノーポスト試料エアギャップ方法またはノーポスト試料エアギャップ操作モードと呼ばれてよい。
【0085】
図5の方法などの、ピペットチップ100内でプランジャー200を動かし、試料液体301がピペットチップ100から離れることなく、試料レセプタクル306と接触するように、吸引された試料液体301を分注することを含む方法は、接触分注方法または接触操作モードと呼ばれてよい。
【0086】
図4図6、および図7の方法などの、ピペットチップ100内でプランジャー200を動かし、試料液体301が試料レセプタクル306と接触することなくピペットチップ100から離れるように、吸引された試料液体301を分注することを含む方法は、非接触分注方法または非接触操作モードと呼ばれてよい。
【0087】
図8の実施形態は、ピペットチップ100およびプランジャー200が複数のプレート1121、1122、1123、1124を介して装置に取り付けられている特定の実施形態を示す。当業者であれば、本開示の装置および方法は、代替的に他の取り付け部品および機構を伴ってもよいことを理解するであろう。装置は、第1のプレート1121、第2のプレート1122、第3のプレート1123、および/または第4のプレート1124を備えてよい。プランジャー200は、プランジャープレートと呼ばれうる第1および第2のプレート1121、1122に取り付けられてよい。ピペットチップ100は、ピペットプレートと呼ばれうる第3および第4のプレート1123、1124に取り付けられてよい。ピペットチップ100は、ピペットチップ締め付け機構1120により、装置、具体的には第3および第4のプレート1123、1124に取り付けられてよく、これにはピペットチップコネクタ部103におけるクランプを伴いうる。プランジャー200は、プランジャー締め付け機構1140により、装置、具体的には第1および第2のプレート1121、1122に取り付けられてよく、これにはプランジャーチップコネクタ部203におけるクランプを伴いうる。1つまたは複数のプレートは、複数の締め付け機構1120、1140を備え、複数のピペットチップ100およびプランジャー200を締め付けてよい。
【0088】
プランジャー締め付け機構1140に関しては、各々が複数のプランジャーマウント1143の1つと関連している多数のプランジャー締め付け部材1147が提供されてよい。多数のプランジャー締め付け部材1147は、第1のプレート1121から軸方向に延び、プランジャーマウントスリーブ1143内に画定された穴へと延びる複数の締め付けロッド1147の形態で提供されてよい。各締め付けロッド1147は、その下端に、より狭いネック領域1149Aから延びる拡大ヘッド1148を有してよい。拡大ヘッド1148は、プランジャーマウントスリーブ1143の内径未満の外径を有する。このようにして、プランジャー締め付け機構が係合するとき、拡大ヘッド1148の外面とプランジャーマウントスリーブ1143の内面との間に、小さな隙間がもたらされる。ネック1149Aは、拡大ヘッド1148の外径未満の外径を有する。好ましくは、各締め付けロッド1147は、主軸1149Bも有しており、主軸1149Bの外径は、主軸1149Bがその中に位置しているプランジャーマウントスリーブ1143の領域の内径と実質的に同一である。第1のプレート1121が第2のプレート1122に対して軸方向に上下に動くため、主軸1149Bは、プランジャーマウント1143の内面に沿ってスライドする。このことは、プランジャーマウント1143とプランジャー締め付け部材1147との間の正確な横方向の並びを可能するのに役立ちうる。
【0089】
ピペットチップ締め付け機構1120に関して、チップコネクタ部103は、例えば、スナップフィット連結で液体処理システムに連結されるように構成されている。チップコネクタ部103は、複数の可撓セグメントにより画定されうる分割管状壁を備えてよい。可撓セグメントは、半径方向に外側の方向に弾性的に偏向し、可撓セグメントが偏向せず、かつチップコネクタ部が静止状態にある第1の外径から、可撓セグメントが半径方向外側に偏向され、かつチップコネクタ部が拡張状態にある第2の外径まで、ピペットチップ100の近位端101の外径を増加させるように構成されてよい。描写された実施形態において、チップコネクタ部103は、複数の可撓セグメントを分ける管状壁に複数の軸方向に延びる切れ目またはスロットを備える。複数のスロットは、2つ、3つ、または4つのスロットであってよく、複数の可撓セグメントは、2つ、3つ、または4つのセグメントであってよい。チップコネクタ部103は、任意の適切な数の軸方向に延びる切れ目を備え、任意の数の可撓セグメントを画定してよい。可撓セグメントおよびスロットの構成により、チップコネクタ部に大きな力をかける必要なく、チップコネクタ部を拡張させることができる。チップコネクタ部103は、その内面に1つまたは複数の半径方向に延びる機構1126を更に備えてよく、それにより、ピペットチップがピペット操作ヘッドに連結されうる。チップコネクタ部103の内面の半径方向に延びる機構は、半径方向内側に延びる突起、および/または半径方向外側に延びるくぼみもしくは溝を備えてよい。半径方向に延びる機構は、周方向に延びてよい。描写された実施形態において、チップコネクタ部103の内面の半径方向に延びる機構は、チップコネクタ部103の内面から突き出る部分環状リブ1126を備える。好ましくは、チップコネクタ部がそこまで拡大する第2の外径は、少なくとも半径方向に延びる機構1126の半径範囲だけ、第1の外径より大きい。
【0090】
ピペットチップ100は、チップマウントスリーブ123と、図8に示すような第4のプレート1124などのプレートとの間で締め付けられてよい。チップマウントスリーブ123は、第3のプレート1123などのプレートに設けられてよい。
【0091】
図8を参照して、1つまたは複数の方法工程は、液体分注装置に備えられうる1つまたは複数のアクチュエータ1161、1162、1163により実施されてよい。1つまたは複数のアクチュエータは、1つまたは複数のコントローラ1171により制御されてよい。
【0092】
コントローラ1171は、プロセッサ、メモリ、1つまたは複数の入力ポート、1つまたは複数の出力ポート、およびユーザ入力デバイスの1つまたは複数を備えてよい。
【0093】
ユーザ入力デバイスは、マウスもしくはキーボード、ハンドヘルドデバイス、またはタッチスクリーンを備えてよく、グラフィカルユーザインターフェースを有してよい。出力を表示するように構成されうるグラフィカルユーザインターフェースなどのディスプレイが提供されてよい。ディスプレイは、情報を入力するように構成されてよく、操作の方法もしくはモードを選択するオプション、および/またはモードを起動するオプションを提示してよい。ディスプレイは、どのモードで装置が動作するかなどの情報、および/または選択される任意の変数または複数の変数を表示してよい。ディスプレイは、どの情報が入力されたかなどの情報を提示するように構成されてよい。
【0094】
コントローラ1171は、1つまたは複数の入力ポートを介して、入力、具体的にはデータを受け取るように構成されてよい。このデータは、どの方法またはモードで操作するか、試料液体の量、試料の数、試料の場所、吸引または分注時間、吸引または分注速度、プレ試料および/またはポスト試料エアギャップ量などの任意の操作パラメータを示してよい。
【0095】
コントローラ1171、具体的にはコントローラのプロセッサは、1つまたは複数の入力に基づいて、1つまたは複数のアクチュエータ1161、1162、1163、1164に送信する信号または複数の信号を判定してよい。この判定は、メモリに保管されうる一連の指示を伴ってよい。コントローラ1171は、1つまたは複数のアクチュエータ1161、1162、1163、1164に、および/または継電器などの変換もしくは切り替え手段に信号を出力してよい。
【0096】
メモリは、情報およびさまざまなプログラムが準備された、ハードディスクドライブ(HDD)、フラッシュドライブ、ソリッドステートドライブ、または任意の他の形態の汎用データストレージなどのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を備えてよい。このようなプログラムは、例えば、1つまたは複数の予めプログラムされた、装置の操作のモードまたは方法を含んでよい。
【0097】
装置は、1つまたは複数の入力または出力ポートを介したコントローラ1171と、1つまたは複数のアクチュエータ1161、1162、1163、1164との間に通信経路を提供しうる1つまたは複数の通信手段を備えてよい。通信手段は、コントローラ1171を1つまたは複数のアクチュエータ1161、1162、1163、1164に物理的に接続しうるワイヤまたはケーブルを備えてよい。例えば、図8に示すような、コントローラ1171から各アクチュエータへのワイヤまたはケーブルがあってよい。代替的に、または加えて、通信手段は、トランスミッタおよびレシーバなどの無線接続を備えてよい。
【0098】
第1のアクチュエータ1161が提供されてよい。第1のアクチュエータは、プランジャー200に対してピペットチップ100を動かすように構成されてよい。これにより、ピペットは流体を吸引および/または分注することが可能になる。第1のアクチュエータ1161は、第3および/または第4のプレート1123、1124に対して第1および/または第2のプレート1121、1122を動かすように構成されてよい。図8に示すように、第1のアクチュエータ1161は、第3のプレート1123に対して第2のプレート1122を動かしてよい。第1のアクチュエータ1161は、コントローラ1171から信号を受け取り、特定の時間に、および/または特定の速度で、および/または特定の量で、および/または特定の方向に、ピペットチップ100および/または第3のプレート1123に対してプランジャー200および/または第2のプレート1121、1122を動かすように構成されてよい。
【0099】
第2のアクチュエータ1162が提供されてよい。第2のアクチュエータ1162は、固定された筺体1101に対してピペットチップ100および/またはプランジャー200を動かすように構成されてよい。図8に示すように、第2のアクチュエータ1162は、筺体1101に対して第3のプレート1123を動かしてよい。これにより、ピペットチップ100および/またはプランジャー200を試料レセプタクルに対して動かすことができる。第2のアクチュエータ1162は、コントローラ1171から信号を受け取り、特定の時間に、および/または特定の速度で、および/または特定の量で、および/または特定の方向に、試料容器に対してピペットチップ100および/またはプランジャー200および/または第3のプレート1123を動かすように構成されてよい。
【0100】
装置は、マイクロプレート受け取りエリアまたはデッキなどのレセプタクル受け取りエリアと、マイクロプレート受け取りエリアの上に位置付けられたピペット操作ヘッドとを有する本体を備えてよい。マイクロプレート受け取りエリアは、ラボ用マイクロプレートを受け取るように配置された実質的に水平な上面を有してよい。受け取りエリアは、マイクロプレート受け取りエリアの高さを要求に応じて変更できる、高さ調節可能な支持構造物上に位置しうる。受け取りエリアは、ラボ用マイクロプレートを定位置で保持するように構成されてよい。例えば、受け取りエリアの上面は、マイクロプレートを受け取り、受け取りエリアに対するマイクロプレートの横方向の移動を防ぐように配置された1つまたは複数のくぼみを備えてよい。装置のピペット操作ヘッドは、多数のピペットを保持するように構成されてよく、デッキと関連して移動可能であり、ピペット操作ヘッドに取り付けられたピペットをデッキに支持されたマイクロプレートに近接させ、液体がマイクロプレートのウェルから吸引される、またはウェルに分注されるようにしてよい。
【0101】
第2のアクチュエータ1162は、マイクロプレート受け取りエリアに対して第2および第3のプレート1122および1123を動かすように構成されてよい。固定された筺体1101は、マイクロプレート受け取りエリアに取り付けられてよい。
【0102】
第3のアクチュエータ1163が提供されてよい。第3のアクチュエータ1163は、コントローラ1171から信号を受け取ると、プランジャーをシステムに取り付ける、および/またはシステムから切り離すように構成されてよい。第3のアクチュエータは、第1のプレート1121および第2のプレート1122に連結され、第2のプレート1122に対して第1のプレート1121を動かしてよい。第3のアクチュエータ1163は、第2のプレート1122に対する第1のプレート1121の直線移動をもたらすように構成されうる回転アクチュエータであってよい。
【0103】
第4のアクチュエータ1164が提供されてよい。第4のアクチュエータ1164は、コントローラ1171から信号を受け取ると、ピペットチップ100をシステムに取り付ける、および/またはシステムから切り離すように構成されてよい。第4のアクチュエータは、第3のプレート1123および第4のプレート1124に連結されてよい。第4のアクチュエータ1163は、回転アクチュエータであってよい。
【0104】
吸引操作を行うため、プランジャー200およびピペットチップ100、または一連のプランジャーおよびピペットチップを、液体試料レセプタクルに対して所望の位置に動かしてよい。プランジャー200、または各ピペット10のプランジャー200は、続いて、その各々のピペットチップ100内で持ち上げられてよいが、これは、第1のアクチュエータ1161を使用して行われうる。第1のアクチュエータ1161は、ダイレクトドライブアクチュエータであり、矢印1161’の方向にプレート1121および1123を互いに対して動かしてよい。これにより、プランジャー締め付け機構1140全体、およびプランジャープレート1121、1122が、図8に示すように、ピペットチップ締め付け機構1120およびピペットチッププレート1123、1124から離れて動き、ピペットチップ100内に流体が吸い込まれうる。続いて、ダイレクトドライブアクチュエータ1161を使用してプランジャー締め付け機構1140を反対方向に動かすことにより、流体は、要望どおり分注されうる。
【0105】
ダイレクトドライブアクチュエータ1161は、ピペットチップ締め付け機構1120のプレートまたは複数のプレートへと、またはプレートまたは複数のプレートから離してプランジャー締め付け機構1140を軸方向に動かし、使用中、液体を吸引または分注するように操作可能であってよい。ヘッドシャーシが提供されてよく、ダイレクトドライブアクチュエータ1161は、ヘッドシャーシと関連して固定されてよい。
【0106】
ダイレクトドライブアクチュエータ1161は、ヘッドシャーシとプランジャー締め付け機構1140との間に延びてよい。ダイレクトドライブアクチュエータ1161は、ヘッドシャーシの頂面に取り付けられ、ヘッドシャーシとプランジャーとの間に延びるアクチュエータモータを備えてよい。アクチュエータモータ1161の出力軸は、ボールねじアクチュエータナットに連結されたねじロッドに固定されてよい。ナットは、ボールねじマウントに固定され、ボールねじマウントは、次に、プランジャー締め付け機構1140の上端においてプランジャークランプモータマウントプレートに固定されてよい。ダイレクトドライブアクチュエータ1161は、したがって、ヘッドシャーシとプランジャー締め付け機構1140との間に延びてよい。アクチュエータモータ1161が操作されたとき、プランジャー締め付け機構1140全体が、ピペットチップ締め付け機構1120へと、またはピペットチップ締め付け機構1120から離れての何れかに軸方向に動き、アクチュエータモータ1161の回転の方向に応じて、ピペットチップ100に対してプランジャーを一方の軸方向または他方の軸方向に動かしてよい。このように、プランジャー締め付け機構1140により締め付けられたプランジャーと、内部にプランジャーが延びるピペットチップとの間の相対移動の速度は、既知のデバイスよりもずっと大幅に変更されうる。これにより、装置を接触分注モードだけでなく非接触分注モードでも使用できる。非接触分注を行うとき、液体試料は、十分に速い速度で進み、チップから離れなければならない。非接触分注に十分な速度は、ダイレクトドライブアクチュエータ1161により達成されうるが、ベルトドライブでは達成できない。具体的には、ボールねじを介したダイレクトドライブは、ベルト駆動システムより重負荷の加速度および減速度が高い。このことは、分注ショットに対して進む距離が短い(例えば、<1mm)ときに特に有利であり、それゆえ、高い加速度および減速度により、システムは標的速度に達することができる。加えて、ボールねじは、より高い位置精度および再現性をもたらし、分注性能に有益な効果を与える。
【0107】
装置は、コントローラ1171、具体的には、メモリおよびプロセッサが、第1のアクチュエータ1161および第2のアクチュエータ1162に吸引/分注工程を実施させるように構成されてよい。
【0108】
例えば、コントローラ1171は、
ピペットチップ100内でプランジャー200を収縮させ、空気を吸引し、プレ試料エアギャップ300を形成する信号を送信することと、
試料液体351にピペットチップ100を挿入させる信号を出力することと、
ピペットチップ100内でプランジャー200を収縮させ、試料液体351を吸引する信号を出力することと、
試料液体351からピペットチップ100を引き抜かせる信号を出力することと
を、プロセッサにより実行されたとき、プロセッサに実行させる指示を含むコンピュータ読取可能な媒体を備えてよい。コンピュータ読取可能な媒体は、プロセッサにより実行されたとき、本明細書に記載の方法工程の何れかをプロセッサに実施させる指示を含んでよい。
【0109】
試料液体351にピペットチップ100を挿入させる信号は、第2のアクチュエータ1162に送信されてよい。ピペットチップ100内でプランジャー200を収縮させ、試料液体351を吸引する信号は、第1のアクチュエータ1161に送信されてよい。試料液体351からピペットチップ100を引き抜かせる信号は、第2のアクチュエータ1162に送信されてよい。
【0110】
コントローラ1171は、プロセッサにより実行されたとき、プロセッサに、装置からピペットチップ100および/またはプランジャー200を切り離させる信号を送信させる指示を含むコンピュータ読取可能な媒体を備えてよい。この信号は、第3のアクチュエータ1163および/または第4のアクチュエータ1164に送信されてよい。
【0111】
1つ、複数、または全てのアクチュエータ1161、1162、1163、1164は、同じ方向に動きを生じさせるように構成されてよい。設置されたとき、1つ、複数、または全てのアクチュエータ1161、1162、1163、1164は、垂直方向でありうる軸方向にシステムを動かすように構成されてよい。
【0112】
吸引および/または分注方法の何れかまたは各々は、予備工程としてピペットチップ100を上下に動かすことを更に含んでよい。これは、第1のアクチュエータ1161が行ってよい。
【0113】
本明細書に記載の教示から当業者であれば理解するであろうが、液体分注装置は、ユーザが、1つまたは複数の変数を入力すること、および同一の装置を使用して1つまたは複数の操作モードまたは方法を実施することができるように構成されてよい。これにより、多用途で、特にさまざまな吸引および分注方法に適した装置が提供される。
【0114】
当業者であれば、説明し、図4図7に示した工程の組み合わせは、例示のためのみであり、可能性のある唯一の工程の組み合わせの描写ではないことを理解するであろう。
【0115】
本明細書においてリストアップされた方法工程の何れも、提供された順番または別の適切な順番で実施されうる。本明細書において任意の実施形態に対してリストアップされた方法工程の何れも、実施可能であり、また本明細書に記載の任意の他の適切な方法工程とともに実施されてよい。
【0116】
1つまたは複数の好適な実施形態を参照して、本発明について上述したが、添付の特許請求の範囲で定義された本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな変更または修正が成されうることが理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図4(d)】
図4(e)】
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図5(d)】
図5(e)】
図6(a)】
図6(b)】
図6(c)】
図6(d)】
図6(e)】
図7
図8
図9
【国際調査報告】