IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスピーティー ラブテック リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】ピペットチップ
(51)【国際特許分類】
   B01L 3/02 20060101AFI20240621BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
B01L3/02 D
G01N1/00 101K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577111
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 GB2022051470
(87)【国際公開番号】W WO2022258993
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】2108404.1
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523464886
【氏名又は名称】エスピーティー ラブテック リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SPT LABTECH LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【弁理士】
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ティエリー グレッドヒル
(72)【発明者】
【氏名】ルーベン ロドバー パードウ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート スティーブン ルイス
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ゲイリー コクレーン
【テーマコード(参考)】
2G052
4G057
【Fターム(参考)】
2G052CA20
2G052CA23
2G052CA28
2G052CA30
2G052CA31
4G057AB18
(57)【要約】
ピペットチップとプランジャーとを備え、液体を吸引および/または分注するピペットが提供される。ピペットチップは、間の縦軸を画定している近位端と遠位端と、遠位端における開口部と、開口部から少なくとも部分的に近位端へと延びる流体キャビティとを有する。プランジャーは、ピペットチップの内部に位置付けられ、少なくとも部分的にピペットチップの近位端と遠位端との間を端部へと延び、開口部へと、かつ開口部から離れて移動可能であり、流体を吸引する、またはピペットチップから流体を分注する。ピペットチップは、縦軸に対して2度~5度の角度で、少なくとも5mm延びる内壁面を有する、遠位端に設けられた端部を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペットチップであって、
近位端と遠位端とそれらの間を延びる縦軸と、
前記遠位端における開口部と、
前記開口部から少なくとも部分的に前記近位端へと延びる流体キャビティと
を有し、
前記遠位端に設けられた端部を備え、前記端部が前記縦軸に対して2度~5度の角度で、少なくとも5mm延びる内壁面を有する、ピペットチップと、
前記ピペットチップの内部に位置付けられたプランジャーであって、前記ピペットチップの前記近位端と前記遠位端との間を前記端部へと少なくとも部分的に延び、前記開口部へと、かつ前記開口部から離れて移動可能であり、流体を吸引する、または前記ピペットチップから流体を分注するように構成されたプランジャーと
を備える、液体を吸引および/または分注するピペット。
【請求項2】
前記端部は、前記縦軸に対して最大で5度の角度で、少なくとも5mm延びる外壁面を有する、請求項1に記載のピペット。
【請求項3】
前記開口部は、最大で1mm、好ましくは最大で0.5mm、さらに好ましくは最大で0.4mm、任意に少なくとも0.4mmの直径を有する、請求項1または請求項2に記載のピペット。
【請求項4】
前記端部は、最大で4mm、好ましくは最大で3mm、さらに好ましくは最大で2mm、さらに好ましくは最大で1mm、さらに好ましくは最大で0.7mm、さらに好ましくは最大で0.65mm、任意に少なくとも0.5mm、任意に少なくとも0.6mm、任意に少なくとも0.65mmの最大外径を有する、請求項1~3の何れか一項に記載のピペット。
【請求項5】
前記ピペットチップの前記端部の前記内壁面は、円錐台形状または円筒形状などの真っすぐな側面形状を画定する、請求項1~4の何れか一項に記載のピペット。
【請求項6】
前記ピペットチップの前記端部の前記外壁面は、円錐台形状または円筒形状などの真っすぐな側面形状を画定する、請求項1~5の何れか一項に記載のピペット。
【請求項7】
前記プランジャーは、前記ピペットチップの端部の前記内壁面と並ぶように構成された端部外壁面を有する、請求項1~6の何れか一項に記載のピペット。
【請求項8】
前記プランジャーは、拡張位にあるとき前記開口部を密閉するように構成されている、請求項1~7の何れか一項に記載のピペット。
【請求項9】
前記プランジャーは、拡張位にあるとき前記ピペットチップの前記端部を実質的にまたは完全に占有するプランジャー端部を有する、請求項1~8の何れか一項に記載のピペット。
【請求項10】
前記プランジャーは、拡張位にあるとき前記ピペットチップの前記端部を実質的にまたは完全に占有しないプランジャー端部を有する、請求項1~8の何れか一項に記載のピペット。
【請求項11】
前記内壁面は、前記縦軸に対して最大で4度、好ましくは前記縦軸に対して最大で3度、さらに好ましくは前記縦軸に対して2度の角度で延びる、請求項1~10の何れか一項に記載のピペット。
【請求項12】
前記端部の前記内壁面は、少なくとも7mm、好ましくは少なくとも8mm、好ましくは少なくとも10mm、さらに好ましくは少なくとも12mm延びる、請求項1~11の何れか一項に記載のピペット。
【請求項13】
請求項1~12の何れか一項に記載のピペットと、
前記ピペットチップに対して前記プランジャーを動かすように構成されたアクチュエータと
を備える液体処理システム。
【請求項14】
請求項1~12の何れか一項に記載の複数のピペットと、
前記複数のピペットの複数のピペットチップおよび/またはプランジャーを動かし、流体を吸引および/または分注するように構成されたアクチュエータと
を備える液体処理システム。
【請求項15】
前記アクチュエータは、前記複数のピペットの複数のピペットチップおよび/またはプランジャーを同時に動かし、流体を吸引および/または分注するように構成されている、請求項14に記載の液体処理システム。
【請求項16】
前記複数のピペットチップは、少なくとも10、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも200、より好ましくは少なくとも300、より好ましくは384個のピペットチップである、請求項14または15に記載の液体処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペットチップとプランジャーとを有するピペットに関し、ピペットチップは、特に、有利な形状を有する。
【背景技術】
【0002】
液体試料を吸引または分注するピペットを使用することが知られている。
【0003】
ピペットチップ内に設けられたプランジャーを有するピペットを使用することも知られている。「容積式」ピペットとして知られる典型的なピペットは、このプランジャーを使用し、吸引される試料液体と接触する。プランジャーは、収縮されて試料液体を吸い込み、拡張されて試料液体を分注する。このようなピペットは、自動機械において使用され、ピペット操作の動きの精度および再現性を改善させることができる。
【0004】
本発明者は、特に少量の分注に関する、既知のピペットのいくつかの問題を特定した。
【0005】
改良されたピペットが必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様は、
ピペットチップであって、
近位端と遠位端とそれらの間を延びる縦軸と、
遠位端における開口部と、
開口部から少なくとも部分的に近位端へと延びる流体キャビティと
を有し、
遠位端に設けられた端部を備え、端部が縦軸に対して最大で5度の角度で、少なくとも5mm延びる内壁面を有する、ピペットチップと、
ピペットチップの内部に位置付けられたプランジャーであって、ピペットチップの近位端と遠位端との間を端部へと少なくとも部分的に延び、開口部へと、かつ開口部から離れて移動可能であり、流体を吸引する、および/またはピペットチップから流体を分注するように構成されたプランジャーと
を備える、液体を吸引および/または分注するピペットを提供する。
【0007】
内壁面は、縦軸に対して2度~5度の角度で、少なくとも5mm延びてよい。
【0008】
本発明の第1の態様で特定されたピペットチップの幾何学的形状、具体的には、縦軸に対して最大で5度の角度で、少なくとも5mm延びる内壁面は、背景技術の項で言及された既知のピペットの広角ピペットチップよりもずっと急な角度をもたらす。この狭角ピペットチップは、既知のピペットチップの幾何学的形状よりも、いくつかの重要な利点を有する。
【0009】
第一に、「ポスト試料エアギャップ」と呼ばれるものにより、既知のピペットチップと比較して、ピペットチップを適合された方法で使用できるようになる。非接触分注を行うとき、すなわち、試料液体が、ピペットチップから離れた後、試料容器または試料容器内の試料に達する前に、1つまたは複数の液滴を形成する分注を行うとき、液体試料は、十分に速い速度で進み、チップから離れなければならない。既知のピペットチップにおいては、プランジャーストロークが比較的短いため、少量でこの速度に達するのは難しい。本発明者らは、プランジャーストロークを増加させる方法は、液体試料が吸引された後にわずかなエアギャップ(または他の気体)を導入すること、すなわち、試料が吸引された後もプランジャーを引き続け、空気を吸い込むことであると特定した。第1の態様の狭角チップにより、制御された方法でこのエアギャップを導入することができる。本発明者らは、既知のピペットチップにおいては、このメカニズムがプランジャーを有するピペットチップで実行できないことを特定した。これは、第1の態様のピペットよりずっと広いピペットチップ角度を有する、既知のピペットチップの幾何学的形状は、液体が、表面張力によりピペットチップおよび/またはプランジャーの内壁面の一面に付着するようにするものであるからである。このことは、ポスト試料エアギャップ方法における分注性能の低さにつながる。第1の態様のピペットチップの狭角は、より均一な液体の付着をもたらすことで、この問題を軽減する。
【0010】
第二に、本発明者らは、「プレ試料エアギャップ」と呼ばれるものにより、ピペットチップを既知のピペットチップよりも更に適合した方法で使用できることを特定した。このようなメカニズムにおいて、プランジャーは、初めは収縮されて空気などの気体を吸い込み、引き続き収縮されて試料液体を吸い込みうる。プレ試料エアギャップメカニズムを使用する利点は、吸引される液体を全て分注できる、すなわち、ピペットチップ内にデッドボリュームがないことである。デッドボリュームは、完全にフィットすることを可能にしない製造公差によりもたらされる、プランジャーとピペットチップとの間のギャップである。プレ試料エアギャップがないと、一部の液体試料は、プランジャーとチップとの間のこのギャップに残ることになる。
【0011】
狭角チップは、吸い込まれた液体試料を、ピペットチップの内壁面の一面に張り付くののではなく、分注に際して完全に放出されうる単一のスラグ(slug)のままにすることもできる。これにより、非常に少ない量(<200nl)を処理することが可能になる。
【0012】
プレ試料エアギャップとの使用のため構成されているチップは、追加的な利点を有する。従来の容積式ピペットは、それらを正確にプライミングするため、最小量の液体を吸引する必要がある。正確にプライミングされないと、分注性能が損なわれうる。上述したプレ試料エアギャップは、プライミングボリュームを不要にし、低ソース量(<500nl)および低分注量(<200nl)を処理できる。
【0013】
第三に、ピペットチップの幾何学的形状は、良好なリーチと容量との組み合わせをもたらす。ピペットチップの幾何学的形状は、ピペットがPCRマイクロプレート内のウェルなどのV字型ウェルの底に達し、できるだけ多くの液体を抽出することを可能にする一方、ウェルを空にする、またはウェルを満たすのに必要な吸引/分注の回数を最小化するのに十分な大きさの容量を有する。この高容量は、分注を行うのに必要な充填の回数を最小化するのに役立ち、時間および関連コストを節約する。設計の容量は、100μlに達しうる。
【0014】
上記の利点から推定されうる、この限定的なリストの内、記載される第1の態様の更なる利点は、チップの幾何学的形状により、例えば、約0.1または0.2μl~約100μlの、大きな動的範囲を有するピペットがもたらされることである。チップの幾何学的形状により可能になるプレ試料エアギャップおよびポスト試料エアギャップメカニズム、およびチップの幾何学的形状により可能になる全体容量により、さまざまな試料および/またはソース量の吸引および/または分注に適した、特に有利なピペットチップがもたらされる。
【0015】
ピペットは、特に、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(「qPCR」)法で使用するのに適していてよい。本発明の更なる任意的な有利な特徴が、以下の節で示される。
【0016】
端部は、縦軸に対して最大で5度の角度で、少なくとも5mm延びる外壁面を有してよい。外壁面は、縦軸に対して最大で4度、好ましくは縦軸に対して最大で3.5度、好ましくは縦軸に対して最大で3.3度の角度で延びてよい。
【0017】
開口部は、最大で1mm、好ましくは最大で0.5mm、さらに好ましくは最大で0.4mm、任意に少なくとも0.4mmの直径を有してよい。
【0018】
端部は、最大で4mm、好ましくは最大で3mm、さらに好ましくは最大で2mm、さらに好ましくは最大で1mm、さらに好ましくは最大で0.7mm、さらに好ましくは最大で0.65mmの最大外径を有してよい。任意に、端部110は、少なくとも0.5mm、任意に少なくとも0.6mm、任意に少なくとも0.65mmの最大外径を有してよい。
【0019】
ピペットチップの端部の内壁面は、円錐台形状または円筒形状などの真っすぐな側面形状を画定してよい。
【0020】
ピペットチップの端部の外壁面は、円錐台形状または円筒形状などの真っすぐな側面形状を画定してよい。
【0021】
プランジャーは、ピペットチップ端部の内壁面と並ぶように構成された端部外壁面を有してよい。
【0022】
プランジャーは、拡張位にあるとき開口部を密閉するように構成されてよい。
【0023】
プランジャーは、拡張位にあるときピペットチップの端部を実質的にまたは完全に占有する端部を有してよい。プランジャーは、拡張位にあるときピペットチップの端部を実質的にまたは完全に占有しないプランジャー端部を有してよい。
【0024】
内壁面は、縦軸に対して最大で4度、好ましくは縦軸に対して最大で3度、さらに好ましくは縦軸に対して最大で2度、好ましくは縦軸に対して最大で1.9度、好ましくは縦軸に対して最大で1.87度の角度で延びてよい。
【0025】
端部の内壁面は、少なくとも7mm、好ましくは少なくとも10mm、さらに好ましくは少なくとも12mm延びてよい。
【0026】
本明細書に記載の変形例の何れかを有するピペットは、液体処理システムに備えられてよく、液体処理システムは、ピペットチップに対してプランジャーを動かすように構成されたアクチュエータも備える。
【0027】
本明細書に記載の変形例の何れかを有する複数のピペットと、
複数のピペットの複数のピペットチップおよび/またはプランジャーを動かし、流体を吸引および/または分注するように構成されたアクチュエータと
を備える液体処理システムが提供されてよい。
【0028】
アクチュエータは、複数のピペットの複数のピペットチップおよび/またはプランジャーを同時に動かし、流体を吸引および/または分注するように構成されてよい。
【0029】
複数のピペットは、互いに対して平面配置、2D配置で配置されてよい。複数のピペットは、格子状などの正則行列、任意に対称行列で配置されてよい。複数のピペットは、正方形または長方形の形状で配置されてよい。
【0030】
複数のピペットは、少なくとも10、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも200、より好ましくは少なくとも300、より好ましくは384個のピペットチップであってよい。複数のピペットは、格子状の16×24の行列などの正則行列、任意に対称行列で配置されてよい。
【0031】
本発明の第2の態様によれば、
本明細書に記載の変形例の何れかを有するピペットを提供することと、
ピペットチップに対してプランジャーを収縮させ、ピペットチップ内に開口部を通して気体を吸引することと、続いて
プランジャーを収縮させ、ピペットチップ内に開口部を通して試料液体を吸引することと
を含む、液体を吸引する方法が提供される。
【0032】
本方法は、
ピペットチップに対してプランジャーを拡張させ、ピペットチップから開口部を通して試料液体を分注することと、続いて
プランジャーを拡張させ、ピペットチップから開口部を通して気体を分注することと
を更に含んでよい。
【0033】
本方法は、
本明細書に記載の変形例の何れかを有するピペットを提供することと、
プランジャーを収縮させ、ピペットチップ内に開口部を通して液体を吸引することと、続いて
ピペットチップに対してプランジャーを収縮させ、ペットチップ内に開口部を通して気体を吸引することと
を更に含んでよい。
【0034】
本方法は、
プランジャーを拡張させ、ピペットチップから開口部を通して気体を分注することと、続いて
ピペットチップに対してプランジャーを拡張させ、ピペットチップから開口部を通して試料液体を分注することと
を更に含んでよい。
【0035】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】ピペットチップの断面およびプランジャーの側面図である。
図2】分解した状態のピペットチップおよびプランジャーの斜視図である。
図3】組み立てた状態のピペットチップの端部およびプランジャーの端部の拡大図である。
図4】広角ピペットチップにおいて液体を吸引する模式図である。
図5】(a)は、狭角ピペットチップにおいて液体を吸引する模式図である。(b)は、狭角ピペットチップにおいて液体を吸引する模式図である。
図6】広角ピペットチップにおいて液体を吸引する模式図である。
図7】(a)は、狭角ピペットチップにおいて液体を吸引する模式図である。(b)は、狭角ピペットチップにおいて液体を吸引する模式図である。
図8】狭角ピペットチップを伴う磁気ビーズクリーンアッププロセスの模式図である。
図9】液体分注装置の模式図である。
図10】ピペットチップの一部の図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、液体を吸引および/または分注するピペット10を示す。ピペット10は、ピペットチップ100とプランジャー200とを備える。
【0038】
ピペットチップ100は、試料流体または試料液体を受け入れる、および/または含むレセプタクルであってよい。ピペットチップ100は、試料液体の容器に、または試料液体に挿入されるように構成されてよい。
【0039】
ピペットチップ100は、近位端101と遠位端102と有し、近位端101および遠位端102は、それらの間に縦軸1を画定する。
【0040】
ピペットチップ100は、図2に示すように、その遠位端102に開口部108を有する。開口部108は、遠位端102で、具体的には、ピペットチップ100の最も外側の遠位点で、ピペットチップ100の内壁面111により画定されてよい。開口部108は、実質的に円形または円を画定してよい。開口部108は、最大で1mm、好ましくは最大で0.5mm、さらに好ましくは最大で0.4mmの直径を有してよい。任意に、開口部108は、最大で0.35mm、0.3mm、0.25mm、0.1mmの直径を有してよい。任意に、開口部108は、少なくとも0.4mmの直径を有してよい。
【0041】
ピペットチップ100の内壁111は、ピペットチップ100の支持部105および/または本体部106を通って延びてよい。内壁面111は、支持部105および/または本体部106内で、実質的に管状であってよい、および/または平行な側面を有してよい。ピペットチップ100は、開口部108から少なくとも部分的に近位端101へと延びる流体キャビティ109を有する。流体キャビティ109は、エアギャップまたは試料液体などの流体を受け入れる、および/または保持するように構成されてよい。流体キャビティ109は、実質的に細長くてよい。流体キャビティ109は、ピペットチップ100の内壁面111により画定されてよい。流体キャビティ109は、ピペットチップ100の端部110内に大部分または完全に設けられてよい。
【0042】
ピペットチップ100は、縦軸1に対して最大で5度、またはπ/36ラジアン、または約0.08~0.09ラジアンの角度αで、少なくとも5mm延びる内壁面111を有する、遠位端102に設けられた端部110を備える。内壁面111は、縦軸1に対して最大で4度、好ましくは縦軸1に対して最大で3度、さらに好ましくは縦軸1に対して最大で2度の角度αで延びてよい。角度αは、図3を参照されたい。角度αは、少なくとも0度、すなわち、縦軸1と平行であってよい。縦軸1に対して少なくとも2度または少なくとも1度の角度で延びるピペットチップ端部110は、製造が容易で、単純で、かつ/または安価なため、0度の角度と比較して有利でありうる。角度αは、当業者に既知の任意の適切な角度測定技術を使用して測定されてよい。
【0043】
縦軸1は、ピペットチップ101および/またはプランジャー200が周囲に設けられる中心軸であってよい。縦軸1は、ピペットチップ100および/またはプランジャー200が周囲に均一にまたは対称的に設けられる中心軸を画定してよい。ピペットチップ100および/またはプランジャー200は、吸引および/または分注の方向が縦軸1に沿うように構成されてよい。
【0044】
端部110の内壁面111は、最大でも角度αに等しい角度で少なくとも7mm、好ましくは最大でも角度αに等しい角度で少なくとも10mm、さらに好ましくは最大でも角度αに等しい角度で少なくとも12mm延びてよい。ピペットチップ100の端部110の内壁111は、円錐台形状または円筒形状などの真っすぐな側面形状を画定してよい。
【0045】
端部110は、図3に最もよく見られるように、縦軸1に対して最大で5度の角度βで、少なくとも5mm延びる外壁面112を有してよい。ピペットチップの端部の外壁面112は、円錐台形状または円筒形状などの真っすぐな側面形状を画定してよい。端部110は、最大で4mm、好ましくは最大で3mm、さらに好ましくは最大で2mm、さらに好ましくは最大で1mm、さらに好ましくは最大で0.7mm、さらに好ましくは最大で0.65mmの最大外径を有してよい。任意に、端部110は、例えば、図10に示すような、少なくとも0.5mm、任意に少なくとも0.6mm、任意に少なくとも0.65mmの最大外径を有してよい(1055)。リング1055は、使用中に反力をもたらすように構成されてよい。リング1055は、保管中および/または使用中、ピペットチップ100を位置付ける、または中心に置くように構成されてよい。リング1055は、製造中、成形型からのピペットチップ100の抜き出しを少なくとも部分的に促進するように構成されてよい。
【0046】
本体部106は、実質的に円柱状であってよい、および/または細長くてよい。本体部106は、実質的に均一な内径および/または外径を有してよい。本体部106は、ピペットチップ100の長さの少なくとも半分に沿って延びてよい。本体部106は、端部110の任意の直径より大きい内径および/または外径を有してよい。
【0047】
橋架部107は、本体部106を端部110に橋渡しするように構成されてよい。橋架部107は、本体部106と端部110との間のステップを画定してよい。橋架部107は、実質的に先細、円すい、および/またはドーム状であってよい。
【0048】
プランジャー200は、ピペットチップ100の内部に位置付けられている。プランジャー200は、ピペットチップ100に対して動き、ピペットチップ100内に流体を吸い込む、かつ/またはピペットチップ100から流体を放出するように構成されてよい。具体的には、拡張位から収縮位に動くとき、プランジャー200は、ピペットチップ100内にエアギャップまたは試料液体などの流体を吸い込んでよい。収縮位から拡張位に動くとき、プランジャー200は、ピペットチップ100からエアギャップまたは試料液体などの流体を放出してよい。
【0049】
プランジャー200および/またはピペットチップ100は、拡張位において、プランジャー200がピペットチップ100内に完全に含まれるように、構成されてよい。プランジャー200は、ピペットチップ100の近位端101と遠位端102との間を端部110内へと少なくとも部分的に延びるように構成されている。プランジャー200は、ピペットチップ100の近位端101と遠位端102との間を端部110内へと実質的にまたは完全に延びるように構成されてよい。プランジャー200は、開口部109へと、かつ開口部109から離れて移動可能であり、流体を吸引する、またはピペットチップ100から流体を分注する。プランジャー200は、ピペットチップ端部110の内壁面111と並ぶように構成された端部外壁面212を有してよい。プランジャー200は、高分子材料を含んでよい、または高分子材料から成ってよい。プランジャー200は、均質な材料を含んでよい、または均質な材料から成ってよい。
【0050】
プランジャー200は、各々が異なる機能、際立った特徴および/または異なる形状もしくは寸法を有する一連の部分を備えてよい。プランジャー200は、例えば、図1に示すような、プランジャーコネクタ部203、中心部204、本体部206、および封止部207の1つまたは複数を備えてよい。近位端201から遠位端202に、各部は、プランジャーコネクタ部203、中心部204、本体部206、封止部207、および端部210の順番で配置されてよい。
【0051】
プランジャー200のプランジャーコネクタ部203は、ピペットチップ100のチップコネクタ部103に受け入れられるように構成されてよい。プランジャーコネクタ部203は、液体処理システムに連結されるように構成されてよい。プランジャーコネクタ部203は、スナップフィット連結として構成されてよい。
【0052】
中心部204は、ピペットチップ100の中心部104に受け入れられ、ピペットチップ100内でプランジャー200を中心に置くように構成されてよい。中心部204は、実質的に円すいまたはドーム状であってよい。
【0053】
プランジャー200の本体部206は、ピペットチップ100の本体部106に受け入れられるように構成されてよい。本体部206は、実質的に円柱状であってよい、および/または細長くてよい。本体部206は、実質的に均一な直径を有してよい。本体部206は、プランジャーの長さの少なくとも半分、任意にプランジャー200の長さの少なくとも3分の2に沿って延びてよい。本体部206は、端部210の直径より大きい直径を有してよい。
【0054】
プランジャー200の封止部207は、ピペットチップ100の橋架部107に受け入れられるように構成されてよい。封止部207は、ピペットチップ100の内壁に対してシールを形成するに構成されてよい。封止部207は、ピペットチップ内に液密シールを形成し、プランジャー200がピペットチップ100内に設置されたとき、流体が封止部207の近位側から封止部207の遠位側に流れないようにしてよい。封止部207は、少なくとも部分的に柔軟性があってよい。封止部207は、本体部206を端部210に橋渡しするように構成されてよい。封止部207は、本体部206と端部210との間のステップを画定してよい。封止部207は、実質的に先細、円すい、および/またはドーム状であってよい。
【0055】
プランジャー200の端部210は、ピペットチップ100の端部110に受け入れられるように構成されてよい。端部210は、封止部207および/または本体部206より小さい直径を有してよい。
【0056】
端部210は、ピペットチップ100の端部110を実質的にまたは完全に占有してよい。これにより、プランジャー端部210が拡張位にあるとき、ピペットチップ端部110内にエアギャップが生じないようにする。端部210は、プランジャー端部210が拡張位にあるとき、ピペットチップ端部110の内壁面111と接触してよい。
【0057】
端部210は、実質的に細長くてよい、および/または円すいであってよい。端部210は、実質的に真っすぐな壁を有してよい。端部210は、ピペットチップ端部110の内壁面111の形状を補完する、内壁面111の形状と一致する、かつ/または内壁面111の形状に対応する形状を有する外壁212を有してよい。端部210は、内壁面111の長さの少なくとも一部、実質的に内壁面111の全て、または全長にわたって、ピペットチップ端部110の内壁面111と並ぶ、および/または内壁面111と平行な外壁212を有してよい。
【0058】
プランジャー200の端部210は、その遠位端202に実質的に平らな面を有してよい。プランジャー200の端部210は、プランジャー200が拡張位にあるとき、ピペットチップ端部110の開口部108を密閉してよい。具体的には、プランジャー200の遠位端202は、ピペットチップ端部110の開口部108を密閉してよい。端部210は、プランジャー200が拡張位にあるとき、プランジャー遠位端202がピペットチップ遠位端102に設けられるように構成されてよい。プランジャー200は、拡張位にあるとき、プランジャー遠位端202がピペットチップ遠位端102を超えて延びないように構成されてよい。
【0059】
本明細書に記載の変形例の何れかを有するピペット10は、液体処理システム(図示せず)に備えられてよく、液体処理システムは、ピペットチップ100に対してプランジャー200を動かすように構成されたアクチュエータも備える。
【0060】
ピペットチップ100および/またはプランジャー200は、ピペット操作システムまたは装置から取り外し可能かつ/またはピペット操作システムまたは装置に取り付け可能であってよい。ピペットチップ100は、その近位端101で取り外し可能かつ/または取り付け可能であってよい。プランジャー200は、その近位端201で取り外し可能かつ/または取り付け可能であってよい。ピペットチップ100および/またはプランジャーは、それぞれの近位端101、201に設けられるコネクタ手段またはコネクタ部103、203を備え、ピペットチップ100またはプランジャー200がピペット操作システムまたは装置への取り付け、またはピペット操作システムまたは装置からの取り外しに適する、またはその取り付けまたは取り外しのために構成されるようにしてよい。ピペットチップ100および/またはプランジャー200は、吸引中、試料液体が近位端101を超えて延びずに、液体処理システムまたは装置に入らないように構成されてよい。このように、試料液体は、取り外し可能なピペットチップ100内に含まれ、液体処理システムまたは装置の汚染を防いでよい。これにより、取り外し可能かつ任意に使い捨てのピペットチップ100および/またはプランジャー200の使用を通して、装置またはシステムは複数の異なる試料流体を有する使用に適したものとなる。本発明の第1の態様のいくつかの利点を図4図8に示す。
【0061】
図4に、既知の広角ピペットチップを示す。図は、このタイプのピペットチップ、特にこのような広角エンドテーパを有するピペットチップにおいて、試料の後にチップ内に空気を吸引しようとするとき、試料301がどのようにピペットチップの一面に付着し、他の面から離れうるのかを示している。これは、プランジャーが分注するように作動されたとき、試料への分注圧力の不均等な分布につながり、結果として分注性能が低下しうる。
【0062】
本開示に係るピペットチップ100を図5に示す。図に示すように、ピペットチップの端部110が狭角であることが、図4に示すピペットチップ内での試料の非対称な付着を回避するのに役立ち、それにより、関連する悪影響が軽減される、または取り除かれる。図5に、プレ試料エアギャップ方法による吸引ステップにおけるピペットチップ100を示す。このような方法において、プランジャー200は、初めに、図5(a)に示すように、収縮されて空気300などの気体を吸い込み、図5(b)に示すように、引き続き収縮されて、試料液体301を吸い込みうる。プレエアギャップメカニズムまたはプレエアギャップ方法を使用する利点は、デッドボリューム(分注後にピペットに残る試料液体)が低減されることである。狭角ピペットチップ100は、吸い込まれた液体試料を、分注に際して完全に放出されうる単一のスラグ(slug)301のままにすることができる。これにより、非常に少ない量(<200nl)を処理することが可能になる。本方法における工程は、以下の節で説明される。本工程は、図9との関連で説明されるような作動機構を使用して実施されうる。
【0063】
液体を吸引する方法は、以下の:
ピペット10を提供することと、
ピペットチップ100に対してプランジャー200を収縮させ、ピペットチップ100内に開口部108を通して気体300を吸引することと、続いて
プランジャー200を収縮させ、ピペットチップ100内に開口部108を通して試料液体301を吸引することと
を含む。これは、プレ試料エアギャップ方法と呼ばれてもよい。
【0064】
本方法は、
ピペットチップ100に対してプランジャー200を拡張させ、ピペットチップ100から開口部108を通して試料液体301を分注することと、続いて
プランジャー200を拡張させ、ピペットチップ100から開口部108を通して気体300を分注することと
を更に含んでよい。
【0065】
本方法は、
ピペット10を提供することと、
プランジャー200を収縮させ、ピペットチップ100内に開口部108を通して液体301を吸引することと、続いて
ピペットチップ100に対してプランジャー200を収縮させ、ピペットチップ100内に開口部108を通して気体302を吸引することと
を更に含んでよい。これは、ポスト試料エアギャップ方法と呼ばれてもよい。
【0066】
本方法は、
プランジャー200を拡張させ、ピペットチップ100から開口部108を通して気体302を分注することと、続いて
ピペットチップ100に対してプランジャー200を拡張させ、ピペットチップ100から開口部108を通して試料液体301を分注することと
を更に含んでよい。
【0067】
図6に、既知の広角ピペットチップを示す。このピペットチップにおいて、試料の前および後の両方でピペットチップ内に空気を吸引しようとするとき、試料301がピペットチップの一面に付着し、他の面から離れうることがわかる。非接触分注を行うとき、液体試料は、十分に速い速度で進み、チップから離れなければならない。既知のピペットチップにおいては、プランジャーストロークが比較的短いため、少量でこの速度に達するのは難しい。本発明者らは、プランジャーストロークを増加させる方法は、液体試料が吸引された後にわずかなエアギャップ(または他の気体)を導入すること、すなわち、試料が吸引された後もプランジャーを引き続け、空気を吸い込むことであると特定した。本発明者らは、図6のピペットチップなどの既知のピペットチップにおいては、このメカニズムがプランジャーを有するピペットチップで実行できないことを特定した。これは、第1の態様のピペットよりずっと広いピペットチップ角度を有する既知のピペットチップの幾何学的形状は、液体が、表面張力によりピペットチップおよび/またはプランジャーの内壁面の一面に付着するようにするものであるからである。このことは、ポストエアギャップメカニズムにおける分注性能の低さにつながる。
【0068】
本開示に係るピペットチップ100を図7に示す。図7に、プレ試料エアギャップ300、試料301、およびポスト試料エアギャップ302による吸引ステップにおけるピペットチップ100を示す。ピペットチップ100の狭角チップにより、制御された方法でこのポスト試料エアギャップ302を導入することができる。図7に示すピペットチップ100の狭角は、より均一な液体の付着をもたらす。
【0069】
本開示のピペットチップ100の更なる利点は、良好なリーチおよび容量の組み合わせをもたらすことである。これは、例えば、図8に示すような、磁気ビーズクリーンアップを伴う方法において特に有利である。磁気ビーズクリーンアップ中、磁気ビーズ303は、外部磁石によりマイクロプレートウェル400の側面に引き寄せられる。続いて、液体301がウェル400から抽出される一方、磁気ビーズ303はウェル400内に残らなければならない。狭角ピペットチップ100の幾何学的形状は、磁気ビーズとの接触を回避するのに特に適している。
【0070】
ピペット10は、ピペット操作ヘッドおよび/またはダイレクトドライブアクチュエータを備えうる液体分注装置の一部として提供されてよい。
【0071】
ピペットチップ100および/またはプランジャー200は、ピペットチップ締め付け機構1120により装置に取り付けられるように構成されてよい。複数のピペットチップ締め付け機構1120が設けられるプレートが提供されてよい。ピペットチップ100は、ピペットチップ締め付け機構1120により装置に取り付けられてよく、これにはピペットチップコネクタ部103におけるクランプを伴いうる。プランジャー200は、プランジャー締め付け機構1140により装置に取り付けられてよく、これにはプランジャーチップコネクタ部203におけるクランプを伴いうる。複数のプランジャー締め付け機構1140が設けられるプレートが提供されてよい。
【0072】
図9の実施形態は、ピペットチップ100およびプランジャー200が複数のプレート1121、1122、1123、1124を介して装置に取り付けられている実施形態を示す。当業者であれば、本開示の装置および方法は、代替的に他の取り付け部品および機構を伴ってもよいことを理解するであろう。装置は、第1のプレート1121、第2のプレート1122、第3のプレート1123、および/または第4のプレート1124を備えてよい。プランジャー200は、プランジャープレートと呼ばれうる第1および第2のプレート1121、1122に取り付けられてよい。ピペットチップ100は、ピペットプレートと呼ばれうる第3および第4のプレート1123、1124に取り付けられてよい。ピペットチップ100は、ピペットチップ締め付け機構1120により、装置、具体的には第3および第4のプレート1123、1124に取り付けられてよく、これにはピペットチップコネクタ部103におけるクランプを伴いうる。プランジャー200は、プランジャー締め付け機構1140により、装置、具体的には第1および第2のプレート1121、1122に取り付けられてよく、これにはプランジャーチップコネクタ部203におけるクランプを伴いうる。1つまたは複数のプレートは、複数の締め付け機構1120、1140を備え、複数のピペットチップ100およびプランジャー200を締め付けてよい。
【0073】
プランジャー締め付け機構1140に関しては、各々が複数のプランジャーマウント1143の1つと関連している多数のプランジャー締め付け部材1147が提供されてよい。多数のプランジャー締め付け部材1147は、第1のプレート1121から軸方向に延び、プランジャーマウントスリーブ1143内に画定された穴へと延びる複数の締め付けロッド1147の形態で提供されてよい。各締め付けロッド1147は、その下端に、より狭いネック領域1149Aから延びる拡大ヘッド1148を有してよい。拡大ヘッド1148は、プランジャーマウントスリーブ1143の内径未満の外径を有する。このようにして、プランジャー締め付け機構が係合するとき、拡大ヘッド1148の外面とプランジャーマウントスリーブ1143の内面との間に、小さな隙間がもたらされる。ネック1149Aは、拡大ヘッド1148の外径未満の外径を有する。好ましくは、各締め付けロッド1147は、主軸1149Bも有しており、主軸1149Bの外径は、主軸1149Bがその中に位置しているプランジャーマウントスリーブ1143の領域の内径と実質的に同一である。第1のプレート1121が第2のプレート1122に対して軸方向に上下に動くため、主軸1149Bは、プランジャーマウント1143の内面に沿ってスライドする。このことは、プランジャーマウント1143とプランジャー締め付け部材1147との間の正確な横方向の並びを可能するのに役立ちうる。
【0074】
ピペットチップ締め付け機構1120に関して、チップコネクタ部103は、例えば、スナップフィット連結で液体処理システムに連結されるように構成されている。チップコネクタ部103は、複数の可撓セグメントにより画定されうる分割管状壁を備えてよい。可撓セグメントは、半径方向に外側の方向に弾性的に偏向し、可撓セグメントが偏向せず、かつチップコネクタ部が静止状態にある第1の外径から、可撓セグメントが半径方向外側に偏向され、かつチップコネクタ部が拡張状態にある第2の外径まで、ピペットチップ100の近位端101の外径を増加させるように構成されてよい。描写された実施形態において、チップコネクタ部103は、複数の可撓セグメントを分ける管状壁に複数の軸方向に延びる切れ目またはスロットを備える。複数のスロットは、2つ、3つ、または4つのスロットであってよく、複数の可撓セグメントは、2つ、3つ、または4つのセグメントであってよい。チップコネクタ部103は、任意の適切な数の軸方向に延びる切れ目を備え、任意の数の可撓セグメントを画定してよい。可撓セグメントおよびスロットの構成により、チップコネクタ部に大きな力をかける必要なく、チップコネクタ部を拡張させることができる。チップコネクタ部103は、その内面に1つまたは複数の半径方向に延びる機構1126を更に備えてよく、それにより、ピペットチップがピペット操作ヘッドに連結されうる。チップコネクタ部103の内面の半径方向に延びる機構は、半径方向内側に延びる突起、および/または半径方向外側に延びるくぼみもしくは溝を備えてよい。半径方向に延びる機構は、周方向に延びてよい。描写された実施形態において、チップコネクタ部103の内面の半径方向に延びる機構は、チップコネクタ部103の内面から突き出る部分環状リブ1126を備える。好ましくは、チップコネクタ部がそこまで拡大する第2の外径は、少なくとも半径方向に延びる機構1126の半径範囲だけ、第1の外径より大きい。
【0075】
ピペットチップ100は、チップマウントスリーブ123と、図9に示すような第4のプレート1124などのプレートとの間で締め付けられてよい。チップマウントスリーブ123は、第3のプレート1123などのプレートに設けられてよい。
【0076】
図9を参照して、1つまたは複数の方法工程は、液体分注装置に備えられうる1つまたは複数のアクチュエータ1161、1162、1163により実施されてよい。1つまたは複数のアクチュエータは、1つまたは複数のコントローラ1171により制御されてよい。
【0077】
コントローラ1171は、プロセッサ、メモリ、1つもしくは複数の入力ポート、1つもしくは複数の出力ポートの1つまたは複数を備えてよく、かつユーザ入力デバイスを備えてよい、またはユーザ入力デバイスに接続されてよい。
【0078】
ユーザ入力デバイスは、マウスもしくはキーボード、ハンドヘルドデバイス、またはタッチスクリーンを備えてよく、グラフィカルユーザインターフェースを有してよい。出力を表示するように構成されうるグラフィカルユーザインターフェースなどのディスプレイが提供されてよい。ディスプレイは、情報を入力するように構成されてよく、操作の方法もしくはモードを選択するオプション、および/またはモードを起動するオプションを提示してよい。ディスプレイは、どのモードで装置が動作するかなどの情報、および/または選択される任意の変数または複数の変数を表示してよい。ディスプレイは、どの情報が入力されたかなどの情報を提示するように構成されてよい。
【0079】
コントローラ1171は、1つまたは複数の入力ポートを介して、入力、具体的にはデータを受け取るように構成されてよい。このデータは、どの方法またはモードで操作するか、試料液体の量、試料の数、試料の場所、吸引または分注時間、吸引または分注速度、プレ試料および/またはポスト試料エアギャップ量などの任意の操作パラメータを示してよい。
【0080】
コントローラ1171、具体的にはコントローラのプロセッサは、1つまたは複数の入力に基づいて、1つまたは複数のアクチュエータ1161、1162、1163、1164に送信する信号または複数の信号を判定してよい。この判定は、メモリに保管されうる一連の指示を伴ってよい。コントローラ1171は、1つまたは複数のアクチュエータ1161、1162、1163、1164に、および/または継電器などの変換もしくは切り替え手段に信号を出力してよい。
【0081】
メモリは、情報およびさまざまなプログラムが準備された、ハードディスクドライブ(HDD)、フラッシュドライブ、ソリッドステートドライブ、または任意の他の形態の汎用データストレージなどのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を備えてよい。このようなプログラムは、例えば、1つまたは複数の予めプログラムされた、装置の操作のモードまたは方法を含んでよい。
【0082】
装置は、1つまたは複数の入力または出力ポートを介したコントローラ1171と、1つまたは複数のアクチュエータ1161、1162、1163、1164との間に通信経路を提供しうる1つまたは複数の通信手段を備えてよい。通信手段は、コントローラ1171を1つまたは複数のアクチュエータ1161、1162、1163、1164に物理的に接続しうるワイヤまたはケーブルを備えてよい。例えば、図9に示すような、コントローラ1171から各アクチュエータへのワイヤまたはケーブルがあってよい。代替的に、または加えて、通信手段は、トランスミッタおよびレシーバなどの無線接続を備えてよい。
【0083】
第1のアクチュエータ1161が提供されてよい。第1のアクチュエータは、プランジャー200に対してピペットチップ100を動かすように構成されてよい。これにより、ピペットは流体を吸引および/または分注することができる。第1のアクチュエータ1161は、第3および/または第4のプレート1123、1124に対して第1および/または第2のプレート1121、1122を動かすように構成されてよい。図9に示すように、第1のアクチュエータ1161は、第3のプレート1123に対して第2のプレート1122を動かしてよい。第1のアクチュエータ1161は、コントローラ1171から信号を受け取り、特定の時間に、および/または特定の速度で、および/または特定の量で、および/または特定の方向に、ピペットチップ100および/または第3のプレート1123に対してプランジャー200および/または第2のプレート1122を動かすように構成されてよい。
【0084】
第2のアクチュエータ1162が提供されてよい。第2のアクチュエータ1162は、固定された筺体1101に対してピペットチップ100および/またはプランジャー200を動かすように構成されてよい。図9に示すように、第2のアクチュエータ1162は、筺体1101に対して第3のプレート1123を動かしてよい。これにより、ピペットチップ100および/またはプランジャー200を試料レセプタクルに対して動かすことができる。第2のアクチュエータ1162は、コントローラ1171から信号を受け取り、特定の時間に、および/または特定の速度で、および/または特定の量で、および/または特定の方向に、試料容器に対してピペットチップ100および/またはプランジャー200および/または第3のプレート1123を動かすように構成されてよい。
【0085】
装置は、マイクロプレート受け取りエリアまたはデッキなどのレセプタクル受け取りエリアと、マイクロプレート受け取りエリアの上に位置付けられたピペット操作ヘッドとを有する本体を備えてよい。マイクロプレート受け取りエリアは、ラボ用マイクロプレートを受け取るように配置された実質的に水平な上面を有してよい。受け取りエリアは、マイクロプレート受け取りエリアの高さを要求に応じて変更できる、高さ調節可能な支持構造物上に位置しうる。受け取りエリアは、ラボ用マイクロプレートを定位置で保持するように構成されてよい。例えば、受け取りエリアの上面は、マイクロプレートを受け取り、受け取りエリアに対するマイクロプレートの横方向の移動を防ぐように配置された1つまたは複数のくぼみを備えてよい。装置のピペット操作ヘッドは、多数のピペットを保持するように構成されてよく、デッキと関連して移動可能であり、ピペット操作ヘッドに取り付けられたピペットをデッキに支持されたマイクロプレートに近接させ、液体がマイクロプレートのウェルから吸引される、またはウェルに分注されるようにしてよい。
【0086】
第2のアクチュエータ1162は、マイクロプレート受け取りエリアに対して第2および第3のプレート1122および1123を動かすように構成されてよい。固定された筺体1101は、マイクロプレート受け取りエリアに取り付けられてよい。
【0087】
第3のアクチュエータ1163が提供されてよい。第3のアクチュエータ1163は、コントローラ1171から信号を受け取ると、プランジャーをシステムに取り付ける、および/またはシステムから切り離すように構成されてよい。第3のアクチュエータは、第1のプレート1121および第2のプレート1122に連結され、第2のプレート1122に対して第1のプレート1121を動かしてよい。第3のアクチュエータ1163は、第2のプレート1122に対する第1のプレート1121の直線移動をもたらすように構成されうる回転アクチュエータであってよい。
【0088】
第4のアクチュエータ1164が提供されてよい。第4のアクチュエータ1164は、コントローラ1171から信号を受け取ると、ピペットチップ100をシステムに取り付ける、および/またはシステムから切り離すように構成されてよい。第4のアクチュエータは、第3のプレート1123および第4のプレート1124に連結されてよい。第4のアクチュエータ1164は、回転アクチュエータであってよい。
【0089】
吸引操作を行うため、プランジャー200およびピペットチップ100、または一連のプランジャーおよびピペットチップを、液体試料レセプタクルに対して所望の位置に動かしてよい。プランジャー200、または各ピペット10のプランジャー200は、続いて、その各々のピペットチップ100内で持ち上げられてよいが、これは、第1のアクチュエータ1161を使用して行われうる。第1のアクチュエータ1161は、ダイレクトドライブアクチュエータであり、矢印1161’の方向にプレート1121および1123を互いに対して動かしてよい。これにより、プランジャー締め付け機構1140全体、およびプランジャープレート1121、1122が、図9に示すように、ピペットチップ締め付け機構1120およびピペットチッププレート1123、1124から離れて動き、ピペットチップ100内に流体が吸い込まれうる。続いて、ダイレクトドライブアクチュエータ1161を使用してプランジャー締め付け機構1140を反対方向に動かすことにより、流体は、要望どおり分注されうる。
【0090】
ダイレクトドライブアクチュエータ1161は、ピペットチップ締め付け機構1120のプレートまたは複数のプレートへと、またはプレートまたは複数のプレートから離してプランジャー締め付け機構1140を軸方向に動かし、使用中、液体を吸引または分注するように操作可能であってよい。ヘッドシャーシが提供されてよく、ダイレクトドライブアクチュエータ1161は、ヘッドシャーシと関連して固定されてよい。ダイレクトドライブアクチュエータ1161は、ヘッドシャーシとプランジャー締め付け機構1140との間に延びてよい。
【0091】
ダイレクトドライブアクチュエータ1161は、ヘッドシャーシの頂面に取り付けられ、ヘッドシャーシとプランジャーとの間に延びるアクチュエータモータを備えてよい。アクチュエータモータ1161の出力軸は、ボールねじアクチュエータナットに連結されたねじロッドに固定されてよい。ナットは、ボールねじマウントに固定され、ボールねじマウントは、次に、プランジャー締め付け機構1140の上端においてプランジャークランプモータマウントプレートに固定されてよい。ダイレクトドライブアクチュエータ1161は、したがって、ヘッドシャーシとプランジャー締め付け機構1140との間に延びてよい。アクチュエータモータ1161が操作されたとき、プランジャー締め付け機構1140全体が、ピペットチップ締め付け機構1120へと、またはピペットチップ締め付け機構1120から離れての何れかに軸方向に動き、アクチュエータモータ1161の回転の方向に応じて、ピペットチップ100に対してプランジャーを一方の軸方向または他方の軸方向に動かしてよい。このように、プランジャー締め付け機構1140により締め付けられたプランジャーと、内部にプランジャーが延びるピペットチップとの間の相対移動の速度は、既知のデバイスよりもずっと大幅に変更されうる。これにより、装置を接触分注モードだけでなく非接触分注モードでも使用できる。非接触分注を行うとき、液体試料は、十分に速い速度で進み、チップから離れなければならない。非接触分注に十分な速度は、ダイレクトドライブアクチュエータ1161により達成されうるが、場合によっては、ベルトドライブでは達成できない。具体的には、ボールねじを介したダイレクトドライブは、ベルト駆動システムより重負荷の加速度および減速度が高い。このことは、分注ショットに対して進む距離が短い(例えば、<1mm)ときに特に有利であり、それゆえ、高い加速度および減速度により、システムは標的速度に達することができる。加えて、ボールねじは、より高い位置精度および再現性をもたらし、分注性能に有益な効果を与える。
【0092】
装置は、コントローラ1171、具体的には、メモリおよびプロセッサが、第1のアクチュエータ1161および第2のアクチュエータ1162に吸引/分注工程を実施させるように構成されてよい。
【0093】
例えば、コントローラ1171は、
ピペットチップ100内でプランジャー200を収縮させ、空気を吸引し、プレ試料エアギャップ300を形成する信号を送信することと、
試料液体にピペットチップ100を挿入させる信号を出力することと、
ピペットチップ100内でプランジャー200を収縮させ、試料液体を吸引する信号を出力することと、
試料液体からピペットチップ100を引き抜かせる信号を出力することと
を、プロセッサにより実行されたとき、プロセッサに実行させる指示を含むコンピュータ読取可能な媒体を備えてよい。コンピュータ読取可能な媒体は、プロセッサにより実行されたとき、本明細書に記載の方法工程の何れかをプロセッサに実施させる指示を含んでよい。
【0094】
試料液体にピペットチップ100を挿入させる信号は、第2のアクチュエータ1162に送信されてよい。ピペットチップ100内でプランジャー200を収縮させ、試料液体を吸引する信号は、第1のアクチュエータ1161に送信されてよい。試料液体からピペットチップ100を引き抜かせる信号は、第2のアクチュエータ1162に送信されてよい。
【0095】
コントローラ1171は、プロセッサにより実行されたとき、プロセッサに、装置からピペットチップ100および/またはプランジャー200を切り離させる信号を送信させる指示を含むコンピュータ読取可能な媒体を備えてよい。この信号は、第3のアクチュエータ1163および/または第4のアクチュエータ1164に送信されてよい。
【0096】
1つ、複数、または全てのアクチュエータ1161、1162、1163、1164は、同じ方向に動きを生じさせるように構成されてよい。設置されたとき、1つ、複数、または全てのアクチュエータ1161、1162、1163、1164は、垂直方向でありうる軸方向にシステムを動かすように構成されてよい。
【0097】
1つまたは複数の好適な実施形態を参照して、本発明について上述したが、添付の特許請求の範囲で定義された本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな変更または修正が成されうることが理解されるであろう。
【0098】
例えば、プランジャーおよびピペットチップの構成が説明され、示されたが、プランジャーおよびピペットチップの各々は、さまざまな部分を有する。これらは組み合わせて説明されたが、当業者であれば、本開示の利点は、任意の適切な組み合わせもしくは並べ替え、またはピペットチップもしくはプランジャーの部分により達成されうることを理解するであろう。
【0099】
「エアギャップ」という用語が本明細書において使用されたが、当業者であれば、このような方法において使用されうるさまざまな適切な気体があること、および「エアギャップ」は空気のみに制限されるべきではないことを理解するであろう。エアギャップは、大気気体、または制御された組成の気体を含んでよい。
【0100】
「プランジャー」という用語が本明細書において使用されたが、当業者であれば、「ピストン」という用語もプランジャーを表しうることを理解するであろう。
【0101】
「直径」という用語は、寸法パラメータとして使用されている。当業者であれば、本発明は、厳密な円柱形状または円形形状を必要としなくても実現されうることを理解するであろう。そのため、直径という用語は、横寸法として解釈されてもよい。円柱形状または円形形状(および「直径」という用語が特に適切な部品)を伴う実施形態は、有利でありうる。
【0102】
「または」という単語が登場する場合、これは、「および/または」を意味すると解釈され、言及された項目は、必ずしも相互排他的ではなく、任意の適切な組み合わせで使用されてよい。
図1
図2
図3
図4
図5(a)】
図5(b)】
図6
図7(a)】
図7(b)】
図8
図9
図10
【国際調査報告】