(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】メタロシリケート触媒溶媒
(51)【国際特許分類】
C07C 41/06 20060101AFI20240621BHJP
C07C 43/13 20060101ALI20240621BHJP
B01J 29/70 20060101ALI20240621BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240621BHJP
【FI】
C07C41/06
C07C43/13 B
C07C43/13 A
B01J29/70 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577129
(86)(22)【出願日】2022-06-20
(85)【翻訳文提出日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 US2022034131
(87)【国際公開番号】W WO2023278187
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】ウェン-ション リー
(72)【発明者】
【氏名】スン-ユイ クー
(72)【発明者】
【氏名】ワン ロー
(72)【発明者】
【氏名】ポール ディー.ハッチンス
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ピーターソン
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169CB33
4G169DA08
4G169EA01Y
4G169EA02Y
4G169EB18Y
4G169EC03Y
4G169EC04Y
4G169ZA01A
4G169ZA19B
4G169ZC04
4H006AA02
4H006AC43
4H006BA68
4H006BA71
4H006BB14
4H006BB15
4H006BC31
4H006BC32
4H006BC37
4H006GN21
4H006GP01
4H006GP10
4H039CA61
(57)【要約】
方法は、オレフィン、アルコール、メタロシリケート触媒、及び溶媒を接触させる工程を含み、この溶媒が、構造(I)を含み、式中、R
1が、水素又はアルキル基からなる群から選択され、R
2が、アルキル基又はアルコキシ基からなる群から選択される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
オレフィン、アルコール、メタロシリケート触媒、及び溶媒を接触させる工程を含み、前記溶媒が、構造(I)を含み、
【化1】
式中、R
1が、水素又はアルキル基からなる群から選択され、R
2が、アルキル基又はアルコキシ基からなる群から選択される、方法。
【請求項2】
前記アルコールが、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルを生成する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記オレフィンが、C
12~C
14アルファ-オレフィンを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記メタロシリケート触媒が、10~300のシリカ対アルミナ比を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
アルコール対オレフィンのモル比が、0.5以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶媒が、前記オレフィン、アルコール、及び溶媒の合計重量の0.1重量%~85重量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
R
2が、アルコキシ基である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
R
2が、アルキル基である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒が、グアイアコール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、1,4-ジメトキシベンゼン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、メタロシリケート触媒、より具体的には、メタロシリケート触媒と併用される溶媒に関する。
【背景技術】
【0002】
序論
二級アルコールエトキシレート界面活性剤の生成は、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル(「モノアルキルエーテル」)の触媒エトキシル化によって実行することができる。モノアルキルエーテルは、メタロシリケート触媒を使用して、オレフィン及び(ポリ)アルキレングリコールから形成される。メタロシリケート触媒は、80%超のモノアルキルエーテルに対する選択性を提供し、これは、(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル(「ジアルキルエーテル」)が、二級アルコールエトキシレート界面活性剤の特性に有害であることから有利である。メタロシリケート触媒は、モノアルキルエーテルに対して85%もの高い選択性を提供するが、メタロシリケート触媒は、急速に汚染されるので、その結果触媒寿命がより短くなる。
【0003】
オレフィンと(ポリ)アルキレングリコールとを反応させてモノアルキルエーテルを形成することは、更に他の困難も提示する。例えば、オレフィン及び(ポリ)アルキレングリコールは、一般に互いに非混和性である。2つの成分が非混和性であると、反応が45%を超えるオレフィン転化率に達するまでの時間が長くなるが、これは、溶解度が限られていることから2つの反応物のうちの一方を触媒活性部位で容易には利用することができないためである。モノアルキルエーテルの形成に関連して溶媒の使用が開示されているが、溶媒は反応に全く又はほとんど影響を及ぼさないと考えられていた。例えば、米国特許第5,741,948号(「’948特許」)には、「オレフィンと(ポリ)アルキレングリコールとの間の反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行われ得る」こと、及び溶媒は、「ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロベンゼン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、デカン、パラフィン等」であり得ることが説明されている。’948特許において提供される任意選択の性質及び多種多様な溶媒から明らかであるように、溶媒の存在又は種類がモノアルキルエーテルの反応に影響を及ぼすとは考えられていなかった。
【0004】
したがって、メタロシリケート触媒とともに使用したときに全オレフィン転化率を上昇させ、45%を超えるオレフィン転化率に達するまでの時間を短縮し、85%を超えるモノアルキルエーテル選択性を維持する溶媒を見出すことは、驚くべきかつ予想外である。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、メタロシリケート触媒とともに使用したときに全オレフィン転化率を上昇させ、45%を超えるオレフィン転化率に達するまでの時間を短縮し、85%を超えるモノアルキルエーテル選択性を維持する溶媒を提供する。
【0006】
本発明は、構造(I)を有する芳香族溶媒を用いることによって、上記の利点を実現できることを見出した結果である。
【0007】
【化1】
(式中、R
1が、水素又はアルキル基からなる群から選択され、R
2が、アルキル基又はアルコキシ基からなる群から選択される)。溶媒がオレフィン及び(ポリ)アルキレングリコールの可溶化に役立つことは予想できるが、構造(I)の芳香族溶媒が全オレフィン転化率を上昇させ、85%を超えるモノアルキルエーテル選択性を維持し、オレフィン転化率が45%を超えるのにかかる時間を短縮する(すなわち、反応を加速させる)ことができるのは驚くべきかつ予想外である。このような結果は、少なくとも2つの理由から驚くべきことである。第一に、’948号特許によって実証されているように、この反応では溶媒が既に使用されているが、全ての溶媒が、’948号特許の溶媒の種類又は包含に対する一般的なアンビバレンスによって実証されているような有利な結果をもたらすわけではない。第二に、全オレフィン転化率及びモノアルキルエーテル選択性は典型的には互いに逆に変動するが、構造(I)を有する溶媒の使用はこれらの測定基準の両方について結果を増加させるので、この結果は驚くべきものである。
【0008】
本発明は、界面活性剤前駆体の生成において有用である。
【0009】
本開示の第1の特徴によれば、方法は、オレフィン、アルコール、メタロシリケート触媒、及び溶媒を接触させる工程を含み、この溶媒が、構造(I)を含み、式中、R1が、水素又はアルキル基からなる群から選択され、R2が、アルキル基又はアルコキシ基からなる群から選択される。
【0010】
本開示の第2の特徴によれば、アルコールは、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0011】
本開示の第3の特徴によれば、方法は、アルキレングリコールモノアルキルエーテルを生成する工程を含む。
【0012】
本開示の第4の特徴によれば、オレフィンは、C12~C14アルファ-オレフィンを含む。
【0013】
本開示の第5の特徴によれば、メタロシリケート触媒は、10~300のシリカ対アルミナ比を有する。
【0014】
本開示の第6の特徴によれば、アルコール対オレフィンのモル比は0.5以上である。
【0015】
本開示の第7の特徴によれば、溶媒は、オレフィン、アルコール、及び溶媒の合計重量の0.1重量%~85重量%である。
【0016】
本開示の第8の特徴によれば、R2はアルコキシ基である。
【0017】
本開示の第9の特徴によれば、R2はアルキル基である。
【0018】
本開示の第10の特徴によれば、溶媒は、グアイアコール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、1,4-ジメトキシベンゼン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、2つ以上の項目の列挙で使用される場合、列挙された項目のうちのいずれか1つをそれ自体で用いることができるか、又は列挙された項目のうちの2つ以上の任意の組み合わせを用いることができることを意味する。例えば、組成物が成分A、B、及び/又はCを含有するものとして説明されている場合、組成物は、Aを単独で、Bを単独で、Cを単独で、A及びBを組み合わせて、A及びCを組み合わせて、B及びCを組み合わせて、又はA、B、及びCを組み合わせて、含有することができる。
【0020】
別途記載のない限り、全ての範囲は、終点を含む。
【0021】
試験方法は、試験方法番号でハイフン付きの2桁の数字で日付が示されていない限り、この文書の優先日における最新の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。試験方法組織は、以下の略語のうちの1つによって参照され、ASTMは、ASTM International(旧称、American Society for Testing and Materials)を指し、ENは、European Normを指し、DINは、Deutsches Institut fur Normungを指し、ISOは、International Organization for Standardsを指す。
【0022】
国際ゼオライト協会の構造委員会(the Structure Commission of the International Zeolite Association)によって描写された結晶構造を説明するIUPACコードは、特に指定しない限り、本文書の優先日時点の最新の表記を意味する。
【0023】
本明細書で使用される場合、重量パーセント(「重量%」)という用語は、成分が、示された組成物の総重量の重量パーセントであることを示す。
【0024】
本明細書で使用される場合、「CAS番号」は、Chemical Abstracts Serviceによって割り当てられたケミカルサービス登録番号である。
【0025】
方法
本発明の方法は、アルコールとオレフィンとのメタロシリケート触媒反応における溶媒の使用に関する。この方法は、(a)オレフィン、アルコール、メタロシリケート触媒、及び溶媒を接触させる工程と、(b)アルキレングリコールモノアルキルエーテルを生成する工程とを含み得る。
【0026】
オレフィン
本方法で使用されるオレフィンは、線状、分枝状、非環状、環状、又はそれらの混合物であり得る。オレフィンは、5個の炭素~30個の炭素(すなわち、C5~C30)を有し得る。オレフィンは、5個以上の炭素、又は6個以上の炭素、又は7個以上の炭素、又は8個以上の炭素、又は9個以上の炭素、又は10個以上の炭素、又は11個以上の炭素、又は12個以上の炭素、又は13個以上の炭素、又は14個以上の炭素、又は15個以上の炭素、又は16個以上の炭素、又は17個以上の炭素、又は18個以上の炭素、又は19個以上の炭素、又は20個以上の炭素、又は21個以上の炭素、又は22個以上の炭素、又は23個以上の炭素、又は24個以上の炭素、又は25個以上の炭素、又は26個以上の炭素、又は27個以上の炭素、又は28個以上の炭素、又は29個以上の炭素、一方で同時に、30個以下の炭素、又は29個以下の炭素、又は28個以下の炭素、又は27個以下の炭素、又は26個以下の炭素、又は25個以下の炭素、又は24個以下の炭素、又は23個以下の炭素、又は22個以下の炭素、又は21個以下の炭素、又は20個以下の炭素、又は19個以下の炭素、又は18個以下の炭素、又は17個以下の炭素、又は16個以下の炭素、又は15個以下の炭素、又は14個以下の炭素、又は13個以下の炭素、又は12個以下の炭素、又は11個以下の炭素、又は10個以下の炭素、又は9個以下の炭素、又は8個以下の炭素、又は7個以下の炭素、又は6個以下の炭素を有し得る。
【0027】
オレフィンは、アルファ(α)オレフィン、内部二置換オレフィン、又は環状構造(例えば、C3~C12シクロアルケン)等のアルケンを含み得る。αオレフィンは、オレフィンのα位に不飽和結合を含む。好適なαオレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-イコセン、1-ドコセン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。内部二置換オレフィンは、オレフィンの末端位置にない不飽和結合を含む。内部オレフィンは、2-ブテン、2-ペンテン、2-ヘキセン、3-ヘキセン、2-ヘプテン、3-ヘプテン、2-オクテン、3-オクテン、4-オクテン、2-ノネン、3-ノネン、4-ノネン、2-デセン、3-デセン、4-デセン、5-デセン及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。他の例示的なオレフィンは、ブタジエン及びスチレンを含み得る。
【0028】
好適な市販のオレフィンの例としては、Shell(The Hague,Netherlands)製のNEODENE(商標)6-XHP、NEODENE(商標)8、NEODENE(商標)10、NEODENE(商標)12、NEODENE(商標)14、NEODENE(商標)16、NEODENE(商標)1214、NEODENE(商標)1416、NEODENE(商標)16148が挙げられる。
【0029】
アルコール
本方法において利用されるアルコールは、単一のヒドロキシル基を含み得るか、2つのヒドロキシル基(すなわち、グリコール)を含み得るか、又は3つのヒドロキシル基を含み得る。アルコールは、1個以上の炭素、又は2個以上の炭素、又は3個以上の炭素、又は4個以上の炭素、又は5個以上の炭素、又は6個以上の炭素、又は7個以上の炭素、又は8個以上の炭素、又は9個以上の炭素を含み得るが、同時に10個以下の炭素、又は9個以下の炭素、又は8個以下の炭素、又は7個以下の炭素、又は6個以下の炭素、又は5個以下の炭素、又は4個以下の炭素、又は3個以下の炭素、又は2個以下の炭素を含み得る。アルコールは、メタノール、エタノール、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、モノプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンメタンジオール、グリセロール、及び/又はこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。様々な例によれば、アルコールは、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、及びトリエチレングリコールなどの(ポリ)アルキレングリコールである。
【0030】
本方法におけるアルコール対オレフィンのモル比は、20:1以下、又は15:1以下、又は10:1以下、又は9:1以下、又は8:1以下、又は7:1以下、又は6:1以下、又は5:1以下、又は4:1以下、又は3:1以下、又は2:1以下、又は0.2:1以下、一方で同時に、0.1:1以上、又は1:1以上、又は1:2以上、又は1:3以上、又は1:4以上、又は1:5以上、又は1:6以上、又は1:7以上、又は1:8以上、又は1:9以上、又は1:10以上、又は1:15以上、又は1:20以上からであり得る。具体例では、アルコール対オレフィンのモル比は、2.0~15又は2.0~8であってよい。モル比は、存在するアルコールのモル数を存在するオレフィンのモル数で除することによって計算される。
【0031】
溶媒
化学反応を促進するために、1つ以上の溶媒をオレフィン、アルコール、及びメタロシリケート触媒と接触させる。溶媒は、構造(I)を有し、
【0032】
【化2】
式中、R
1が、水素又はアルキル基からなる群から選択され、R
2が、アルキル基又はアルコキシ基からなる群から選択される。
【0033】
本明細書で使用される場合、「アルキル」及び「アルキル基」という用語は、飽和線状、環状、又は分岐状の炭化水素基を指す。アルキル及びアルキル基は、置換アルキルも含む。「置換アルキル」は、アルキルの任意の炭素に結合した1つ以上の水素原子が、ハロゲン、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシ、アミノ、ホスフィド、アルコキシ、アミノ、チオ、ニトロ、及びこれらの組み合わせなどの別の基で置換されているアルキルを指す。様々な例によれば、アルキルは、式(CH2)mCH3(式中、mが、0~10である)を有する直鎖又は分岐鎖アルキルであってよい。
【0034】
本明細書で使用される場合、「アルコキシ」及び「アルコキシ基」という用語は、酸素原子に結合したアルキル基を含む官能基を意味すると定義される。アルキル基は、上述のアルキル基のいずれであってもよい。
【0035】
溶媒は、グアイアコール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、1,4-ジメトキシベンゼン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。方法は、1つ以上の溶媒を用いてもよい。溶媒は、カテコールを含み得る。溶媒は、オレフィン、アルコール、及び溶媒の合計重量の0.1重量%~85重量%であってよい。溶媒は、オレフィン、アルコール、及び溶媒の合計重量の0.1重量%以上、又は0.5重量%以上、又は1重量%以上、又は5重量%以上、又は10重量%以上、又は15重量%以上、又は20重量%以上、又は25重量%以上、又は30重量%以上、又は35重量%以上、又は40重量%以上、又は45重量%以上、又は50重量%以上、又は55重量%以上、又は60重量%以上、又は65重量%以上、又は70重量%以上、又は75重量%以上、又は80重量%以上であり、同時に、85重量%以下、又は80重量%以下、又は75重量%以下、又は70重量%以下、65重量%以下、又は60重量%以下、55重量%以下、又は50重量%以下、45重量%以下、又は40重量%以下、35重量%以下、又は30重量%以下、25重量%以下、又は20重量%以下、15重量%以下、又は10重量%以下、5重量%以下、又は1重量%以下、又は0.5重量%以下であってもよい。
【0036】
メタロシリケート触媒
本明細書で使用される場合、「メタロシリケート触媒」という用語は、シリコン原子の代わりに結晶格子内で1つ以上の金属元素が置換された結晶格子を有するアルミノシリケート(一般にゼオライトと称される)化合物である。メタロシリケート触媒の結晶格子は、内部に空洞及びチャネルを形成し、カチオン、水、及び/又は小分子が存在し得る。代替金属元素は、B、Al、Ga、In、Ge、Sn、P、As、Sb、Sc、Y、La、Ti、Zr、V、Cr、Mn、Pb、Pd、Pt、Au、Fe、Co、Ni、Cu、Znからなる群から選択される、1つ以上の金属を含み得る。メタロシリケート触媒は、Hfを実質的に含まなくてもよい。様々な例によれば、メタロシリケートは、中性子活性化分析を使用して測定される際、5:1~1,500:1のシリカ対アルミナ比を有し得る。シリカ対アルミナ比は、5:1~1,500:1、又は10:1~500:1、又は10:1~400:1、又は10:1~300:1、又は10:1~200:1であり得る。このようなシリカ対アルミナ比は、非極性有機分子を吸着する適切な疎水性選択性を有するメタロシリケート触媒を提供するのに有利であり得る。
【0037】
メタロシリケート触媒は、結晶格子の外側に1つ以上のイオン交換可能なカチオンを有し得る。イオン交換可能なカチオンは、H+、Li+、Na+、Rb+、Cs+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Sc3+、Y3+、La3+、R4N+、R4P+(Rは、H又はアルキルである)を含み得る。
【0038】
メタロシリケート触媒は、様々な結晶構造をとり得る。メタロシリケート触媒構造の具体例としては、国際ゼオライト協会の構造委員会による用語体系に従うIUPACコードを使用して記載される場合、MFI(例えば、ZSM-5)、MEL(例えば、ZSM-11)、BEA(例えば、β型ゼオライト)、FAU(例えば、Y型ゼオライト)、MOR(例えば、モルデナイト)、MTW(例えば、ZSM-12)、及びLTL(例えば、Linde L)が挙げられる。
【0039】
メタロシリケート触媒の結晶フレームワークは、角部共有四面体[TO4](T=Si又はAl)一次基本単位で構成される分子サイズのチャネル及びケージのネットワークによって表される。負電荷は、フレームワークの四価シリコンを三価金属(例えば、アルミニウム)原子による同形置換を介して、フレームワーク上に導入することができる。次いで、全体的な電荷の中性は、結果として生じる負の格子電荷を補償するカチオン種の導入によって達成される。このような電荷補償がプロトンによって提供されたとき、ブレンステッド酸部位が形成され、結果として生じるゼオライトのH型を強力な固体ブレンステッド酸にする。
【0040】
メタロシリケート触媒は、本方法において様々な形態で使用され得る。例えば、メタロシリケート触媒は、粉末(例えば、100マイクロメートル未満の最長線寸法を有する粒子)、粒状(例えば、100マイクロメートル以上の最長線寸法を有する粒子)、又は粉末及び/若しくは粒状メタロシリケート触媒の成形物品(例えば、ペレット又は押出品)であり得る。
【0041】
メタロシリケート触媒は、100m2/g以上、又は200m2/g以上、又は300m2/g以上、又は400m2/g以上、又は500m2/g以上、600m2/g以上、又は700m2/g以上、又は800m2/g以上、又は900m2/g以上、一方で同時に、1000m2/g以下、又は900m2/g以下、又は800m2/g以下、又は700m2/g以下、又は600m2/g以下、又は500m2/g以下、又は400m2/g以下、又は300m2/g以下、又は200m2/g以下の表面積を有し得る。表面積は、ASTM D4365-19に従って測定する。
【0042】
メタロシリケート触媒は、水熱合成法によって合成することができる。例えば、メタロシリケート触媒は、シリカ源(例えば、シリカゾル、シリカゲル、及びアルコキシシラン)、金属源(例えば、金属硫酸塩、金属酸化物、金属ハロゲン化物等)、並びにテトラエチルアンモニウム塩又はテトラプロピルアンモニウム等の四級アンモニウム塩を含む組成物を、結晶固体が形成されるまで約100℃~約175℃の温度に加熱することから合成することができる。次いで、得られた結晶固体を濾別し、水で洗浄し、乾燥させ、次いで350℃~600℃の温度でか焼する。
【0043】
好適な市販のメタロシリケート触媒の例としては、Conshohocken,PAのZEOLYST INTERNATIONAL(商標)製のCP814E、CP814C、CP811C-300、CBV 712、CBV 720、CBV 760、CBV 2314、CBV 10Aが挙げられる。
【0044】
モノアルキルエーテルの生成
アルキレングリコールモノアルキルエーテルの生成における、オレフィン、アルコール、メタロシリケート触媒、及び溶媒の接触。オレフィンとアルコールとの化学反応は、反応器内のメタロシリケート触媒によって触媒されて、モノアルキルエーテルを生成する。様々なモノアルキルエーテルが、どのオレフィンが利用されるかを変化させることによって、及び/又はどのアルコールが利用されるかを変化させることによって、異なる用途のために生成され得る。モノアルキルエーテルは、例えば、溶媒、界面活性剤、化学中間体などの多くの用途のために利用される。
【0045】
オレフィンとアルコールとの反応は、50℃~300℃又は100℃~200℃で起こり得る。具体例では、反応は、150℃で実行され得る。オレフィンとアルコールとの反応は、バッチ反応器、連続反応器、又は流動床反応器内で実行され得る。化学反応の動作では、メタロシリケート触媒のブレンステッド酸部位は、付加型反応を通じてオレフィンのアルコールへのエーテル化を触媒する。オレフィンとアルコールとの反応は、モノアルキルエーテルを生成する。
【0046】
オレフィンのグリコールへの付加反応は、モノアルキルエーテルだけでなく、ジアルキルエーテルもまた形成し得る。メタロシリケート触媒は、アルキレンモノアルキルエーテルを生成するが、ジアルキルエーテルは生成しない選択性を呈し得る。モノアルキルエーテルの選択性は、70%以上、又は75%以上、又は80%以上、又は85%以上、又は90%以上、又は95%以上、又は99%以上、一方で同時に、100%以下、又は95%以下、又は90%以下、又は85%以下、又は80%以下、又は75%以下であり得る。ジアルキルエーテルの選択性は、0%以上、又は2%以上、又は4%以上、又は6%以上、又は8%以上、又は10%以上、又は12%以上、又は14%以上、又は16%以上、又は18%以上、一方で同時に、20%以下、又は18%以下、又は16%以下、又は14%以下、又は12%以下、又は10%以下、又は8%以下、又は6%以下、又は4%以下、又は2%以下であり得る。
【0047】
モノアルキルエーテルの収率は、オレフィン転化率の量にモノアルキルエーテルの選択性を乗算することによって計算される。アルキレングリコールモノアルキルエーテルの収率は、10%以上、又は15%以上、又は20%以上、又は25%以上、又は30%以上、又は35%以上、一方で同時に、40%以下、又は35%以下、又は30%以下、又は25%以下、又は20%以下、又は15%以下であり得る。モノアルキルエーテルの収率は、触媒活性及び選択性の尺度であり、メタロシリケート触媒の生成速度の良好な尺度である。
【0048】
オレフィンとアルコールとの反応中に触媒は汚染され、その結果、数時間以内に触媒は失活する(すなわち、>90%のエーテル化活性を失う)。
【実施例】
【0049】
触媒は、BEA構造によって画定され、25:1のシリカ対アルミナの比、及び680m2/gの表面積を有するメタロシリケート触媒であり、Conshohocken,PAのZEOLYST INTERNATIONAL(商標)製のCP814Eとして市販されている。
【0050】
オレフィンは、The Hague(Netherlands)のSHELL(商標)グループ製のNEODENE(商標)12として市販されている1-ドデセンである。
【0051】
モノエチレングリコール(MEG)は、107-21-1のCAS番号を有する液体無水エチレングリコールであり、SIGMA ALDRICH(商標)(St.Louis,Missouri)から市販されている。
【0052】
ジグリムは、111-96-6のCAS番号を有するビス(2-メトキシエチル)エーテルであり、SIGMA ALDRICH(商標)(St.Louis,Missouri)から市販されている。
【0053】
グアイアコールは、90-05-1のCAS番号を有する2-メトキシフェノールであり、SIGMA ALDRICH(商標)(St.Louis,Missouri)から市販されている。
【0054】
クレゾールは、M-クレゾールとP-クレゾールとの重量比8/3の混合物である。M-クレゾールは、108-39-4のCAS番号を有する1-ヒドロキシ-3-メチルベンゼンであり、SIGMA ALDRICH(商標)(St.Louis,Missouri)から市販されている。P-クレゾールは、106-44-5のCAS番号を有する4-メチルフェノールであり、SIGMA ALDRICH(商標)(St.Louis,Missouri)から市販されている。
【0055】
DMBは、150-78-7のCAS番号を有する1,4-ジメトキシベンゼンであり、SIGMA ALDRICH(商標)(St.Louis,Missouri)から市販されている。
【0056】
試験方法
ガスクロマトグラフィー試料
この実施例の100μLを、1Lの酢酸エチル中に1mLのヘキサデカンを添加して調製された10mLのガスクロマトグラフィー溶液と混合することによって、ガスクロマトグラフィー試料を調製する。Agilent 7890Bガスクロマトグラフィー機器を使用して、試料を分析する。モノアルキルエーテル、ジアルキルエーテル、及び2-ドデカノールを含む、1-ドデセン由来種の総量、1-ドデセン及び全ての非1-ドデセン、他のC12異性体を含む、ドデセンの総量を判定する。表1は、関連するガスクロマトグラフィー機器のパラメータを提供する。
【0057】
【0058】
タイム・オン・ストリーム(Time-On-Stream、「TOS」)
60℃を上回る温度で、触媒がモノエチレングリコール、ドデセン、触媒、溶媒、及び生成物と接触した合計時間を測定することにより、触媒のTOSを計算する。
【0059】
オレフィン転化率
ドデセン由来種の総量を、ドデセン由来種の総量及びドデセンの量の合計で除算することにより、オレフィン転化率を計算する。商に100を乗算する。
【0060】
モノアルキルエーテル選択性
モノアルキルエーテルの総量をドデセン由来種の総量で除算することにより、モノアルキルエーテルの選択性を計算する。商に100を乗算する。
【0061】
モノエーテル収率
オレフィン転化率値にモノアルキルエーテル選択性値を乗じ、100で除することにより、モノアルキルエーテルの収率を計算する。
【0062】
試料の調製
Parr反応器又はバイアル反応器のいずれかでエーテル化反応を行った。反応器の種類にかかわらず、使用した反応物は、1-ドデセン、エチレングリコール、所望の溶媒、及び触媒であった。Parr反応器は、加熱ジャケット及びコントローラを備えた300mLの反応器であった。Parr反応器は、撹拌のためにピッチブレードインペラを使用した。バイアル反応器実験では、40mLのバイアルに、V&P Scientific(商標)撹拌子とともに反応物を添加した。次いで、バイアル反応器を所望の温度に加熱することに加えて撹拌子によって混転方式で撹拌する装置にバイアル反応器を入れた。Parr反応器及びバイアル反応器の両方を135℃で試験した。
【0063】
【0064】
結果
以下は、本発明の実施例及び比較例を指定の時間反応させた後の結果である。表3は、CE1~4及びIE1~6の各々の各々について、タイム・オン・ストリームのオレフィン転化率(「転化率」)、モノエーテル選択性(「選択性」)、及びモノエーテル収率(「収率」)のを提供する。
【0065】
【0066】
ここで表3を参照すると、理解され得るように、構造(I)を有する溶媒の使用により、全オレフィン転化率の上昇、85%を超えるモノアルキルエーテル選択性の維持、及び45%を超えるオレフィン転化率に達するまでのTOSの短縮(すなわち、反応速度の増加)が可能になる。CE1及びCE2は、溶媒を使用しない場合、反応が45%を超えるオレフィン転化率に達するのに24時間以上かかることを示す。更に、CE1及びCE2は、溶媒なしでは、反応の選択性が時間とともに減少する(すなわち、75%未満に)ことを示し、これはより多くの望ましくない反応生成物が生成されていることを意味する。CE3及びCE4は、ジグリム(すなわち、構造(I)を有さない溶媒)は、反応を加速させてより速く全オレフィン転化率に到達させ、選択性を維持することができるが、全オレフィン転化率は許容できないほど低い(すなわち、<35%)ことを実証する。比較例とは対照的に、IE1~IE6は全て、全オレフィン転化率を上昇させ、85%を超えるモノアルキルエーテル選択性を維持し、ピーク全オレフィン転化率に達するまでのTOSを短縮する能力を示す。例えば、IE1~IE6の各々は、48%~60%の全オレフィン転化率を達成することができるが、CE1~CE4の最大オレフィン転化率は48%である。更に、溶媒なしでのモノエーテル選択性は、64%(CE2)の低さまで経時的に減少するが、IE1~IE4は、反応の寿命全体にわたって87%もの高い選択性を維持することができる。最後に、IE1~IE6は、10時間未満で45%を超えるオレフィン転化率を提供することができるが、CE1、CE2、及びCE4は全て、多くの場合45%以下であるピークオレフィン転化率に達するまでに10時間を超えるTOSを必要とする。
【国際調査報告】