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特表2024-523294均一に改質されたケイ素系複合材料及びその調製方法と応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】均一に改質されたケイ素系複合材料及びその調製方法と応用
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/12 20060101AFI20240621BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20240621BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240621BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C01B33/12 A
H01M4/58
H01M4/36 C
H01M4/36 B
H01M4/38 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577186
(86)(22)【出願日】2021-08-10
(85)【翻訳文提出日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 CN2021111677
(87)【国際公開番号】W WO2022262096
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】202110668605.8
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520464393
【氏名又は名称】▲リー▼陽天目先導電池材料科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】TIANMULAKE EXCELLENT ANODE MATERIALS CO, LTD.
【住所又は居所原語表記】3/F,Office Building 15,No.87 ShangShang Road,Kunlun Street Liyang,Jiangsu 213330 China
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】羅 飛
【テーマコード(参考)】
4G072
5H050
【Fターム(参考)】
4G072AA38
4G072BB05
4G072DD03
4G072DD04
4G072DD05
4G072DD06
4G072DD07
4G072GG02
4G072HH01
4G072HH14
4G072JJ09
4G072JJ47
4G072MM26
4G072RR13
4G072TT01
4G072TT05
4G072UU30
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA12
5H050BA16
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB11
5H050DA09
5H050EA08
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
【課題】均一に改質されたケイ素系複合材料及びその調製方法と応用を提供することを課題とする。
【解決手段】ケイ素系複合材料の一般式はSiCであり、0<x<20、0<y<10、0<z<10となり、ここで、AはB、Al、Mg、Ca、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Sn、Liのうちの1種以上であり、Cは原子レベルでケイ素系複合材料の粒子内部に均一に分散するように分布し、かつ20nm以上の炭素の凝集がなく、炭素原子の一部又は全部とケイ素原子が結合して非晶質のSi-C結合を形成し、ケイ素系複合材料の集束イオンビームー透過電子顕微鏡FIB-TEMの測定において、粒子断面のEDS(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)マッピングは、粒子内部のケイ素元素、炭素元素、元素A、酸素元素が均一に分布していることを示し、前記ケイ素系複合材料の微細構造は、多相分散構造であり、前記ケイ素系複合材料の粒子の平均粒径D50は、1nm~100μmであり、比表面積は0.5m/g~40m/gであり、前記炭素原子の質量はケイ素系複合材料の質量の0.1%~40%を占め、前記元素Aの質量は複合粒子の質量の3%~40%を占める。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
均一に改質されたケイ素系複合材料であって、
前記ケイ素系複合材料の一般式はSiCであり、0<x<20、0<y<10、0<z<10となり、
ここで、AはB、Al、Mg、Ca、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Sn、Liのうちの1種以上であり、Cは原子レベルでケイ素系複合材料の粒子内部に均一に分散するように分布し、かつ20nm以上の炭素の凝集がなく、炭素原子の一部又は全部とケイ素原子が結合して非晶質のSi-C結合を形成し、ケイ素系複合材料の集束イオンビームー透過電子顕微鏡FIB-TEMの測定において、粒子断面のEDS(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)マッピングは、粒子内部のケイ素元素、炭素元素、元素A、酸素元素が均一に分布していることを示し、
前記ケイ素系複合材料の微細構造は、多相分散構造であり、
前記ケイ素系複合材料の粒子の平均粒径D50は、1nm~100μmであり、比表面積は0.5m/g~40m/gであり、前記炭素原子の質量はケイ素系複合材料の質量の0.1%~40%を占め、前記元素Aの質量は複合粒子の質量の3%~40%を占める、
ことを特徴とするケイ素系複合材料。
【請求項2】
前記ケイ素系複合材料の外側には、炭素被覆層をさらに有し、前記炭素被覆層の質量は、前記ケイ素系複合材料の質量の0~20%を占めることを特徴とする請求項1に記載のケイ素系複合材料。
【請求項3】
前記炭素原子の質量は、前記ケイ素系複合材料の質量の0.5%~10%を占め、前記炭素被覆層の質量は、前記ケイ素系複合材料の質量の0~10%を占めることを特徴とする請求項2に記載のケイ素系複合材料。
【請求項4】
上記請求項1~3のいずれか一項に記載の均一に改質されたケイ素系複合材料の調製方法であって、一段階気相成長法又は二段階気相成長法を含むことを特徴とする調製方法。
【請求項5】
前記一段階気相成長法は、具体的に、
ケイ素粉末、二酸化ケイ素粉末、単体A粉末及び/又はAの酸化物粉末を必要な量で均一に混合して真空炉に入れることと、
真空炉を減圧した後、1200℃~1700℃に加熱して、ケイ素元素、酸素元素、元素Aを含む混合蒸気を得ることと、
保護雰囲気下で、炭素含有ガス源を真空炉に吹き込み、前記混合蒸気と気相反応を1~24時間行うことと、
前記気相反応により得られた材料を室温まで冷却し、材料を取り出して粉砕し、ふるい分けを行うことにより、炭素が原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系複合材料SiCを得ることと、
を含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の調製方法。
【請求項6】
前記二段階気相成長法は、具体的に、
ケイ素粉末、二酸化ケイ素粉末を必要な量で均一に混合して真空炉に入れることと、
真空炉を減圧した後、1200℃~1700℃に加熱して、ケイ素元素、酸素元素を含む混合蒸気を得ることと、
保護雰囲気下で、炭素含有ガス源を真空炉に吹き込み、前記混合蒸気と気相反応を1~24時間行うことと、
前記気相反応により得られた材料を室温まで冷却し、材料を取り出して粉砕し、ふるい分けを行うことにより、炭素が原子レベルで均一に分散するように分布した複合材料SiCを得ることと、
SiCと単体A粉末及び/又はAの酸化物粉末を均一に混合し、高温炉に入れ、600℃~1500℃で2~24時間熱処理することで、炭素が原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系複合材料SiCを得ることと、
を含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の調製方法。
【請求項7】
前記炭素含有ガス源は、メタン、プロパン、ブタン、アセチレン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、または一酸化炭素のうちの1種以上を含むことを特徴とする請求項5又は6に記載の調製方法。
【請求項8】
前記材料を室温まで冷却し、材料を取り出して粉砕し、ふるい分けを行なった後、ふるい分けが行われた材料に炭素被覆を施すことをさらに含み、ここで、前記炭素被覆は、気相被覆、液相被覆、固相被覆のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項5又は6に記載の調製方法。
【請求項9】
上記請求項1~3のいずれか一項に記載の均一に改質されたケイ素系複合材料を含む負極シート。
【請求項10】
上記請求項9に記載の負極シートを含むリチウム電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(相互参照)
本出願は、2021年06月16日に中国特許庁に提出された出願番号が202110668605.8であり、発明の名称が「均一に改質されたケイ素系複合材料及びその調製方法と応用」である中国特許出願の優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、材料の技術分野に関し、特に、均一に改質されたケイ素系複合材料及びその調製方法と応用に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池の応用の急速な発展及び高エネルギー密度に対するニーズの増加に伴い、高い比容量を有する電極材料の開発がリチウムイオン電池分野における現在の研究重点となっている。負極材料は、リチウムイオン電池の四大主材の1つであり、その容量の大きさはリチウムイオン電池のエネルギー密度の大きさに大きく影響している。ケイ素とリチウムは低い電位で合金を形成し、反応してLi3.75Siを生成し、このときの比容量は3975mAh/gに達すことができる。しかし、ケイ素は、リチウムの挿入・脱離プロセスにおいて体積が300%まで大きく変化し、当該材料の応用を著しく制限する。
【0004】
ケイ素の大きな体積変化に比べると、リチウムの挿入状態での酸化ケイ素(SiO)の体膨脹は150%程度であり、その比容量(~1700mAh/g)はケイ素材料よりも低いが、現在市販されているグラファイト(372mAh/g)よりもはるかに高いため、負極材料の研究のホットスポットの1つとなっている。しかし、酸化ケイ素の初回クーロン効率は低く(~78%)、体積変化が150%であるため、依然として材料の微粉化という問題に直面している。
【0005】
炭素被覆は、一般的な改質方法であり、電解液とSiOとの直接接触を回避し、固体電解質界面(SEI)被膜の形成を減らし、材料の可逆容量を向上させることができ、表面炭素の力学的作用がリチウムの挿入・脱離プロセスにおけるSiO粒子の体積変化を緩衝することで、当該材料のサイクル特性を向上させることができるだけではなく、材料表面の電子伝導性を向上させることもでき、この結果、材料のレート特性を向上させる。しかし、炭素被覆は、表面の導電性のみを変えることができ、急速充電性能を実現するために、粒子内部の導電性を改善する必要もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施例は、均一に改質されたケイ素系複合材料及びその調製方法と応用を提供する。炭素と元素Aのバルク相ドーピング分布により、材料の導電性及びリチウムイオン電池のサイクル安定性が改善される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様において、本発明の実施例は、均一に改質されたケイ素系複合材料であって、ケイ素系複合材料の一般式はSiCであり、0<x<20、0<y<10、0<z<10となり、
ここで、AはB、Al、Mg、Ca、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Sn、Liのうちの1種以上であり、Cは原子レベルでケイ素系複合材料の粒子内部に均一に分散するように分布し、かつ20nm以上の炭素の凝集がなく、炭素原子の一部又は全部とケイ素原子が結合して非晶質のSi-C結合を形成し、ケイ素系複合材料の集束イオンビームー透過電子顕微鏡FIB-TEMの測定において、粒子断面のEDS(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)マッピングは、粒子内部のケイ素元素、炭素元素、元素A、酸素元素が均一に分布していることを示し、
前記ケイ素系複合材料の微細構造は、多相分散構造であり、
前記ケイ素系複合材料の粒子の平均粒径D50は、1nm~100μmであり、比表面積は0.5m/g~40m/gであり、前記炭素原子の質量はケイ素系複合材料の質量の0.1%~40%を占め、前記元素Aの質量は複合粒子の質量の3%~40%を占める。
【0008】
好ましくは、ケイ素系複合材料の外側には、炭素被覆層をさらに有し、前記炭素被覆層の質量は、前記ケイ素系複合材料の質量の0~20%を占める。
【0009】
さらに好ましくは、前記炭素原子の質量は、前記ケイ素系複合材料の質量の0.5%~10%を占め、前記炭素被覆層の質量は前記ケイ素系複合材料の質量の0~10%を占める。
【0010】
第2の態様において、本発明の実施例は、上記第1の態様に記載の均一に改質されたケイ素系複合材料の調製方法であって、調製方法は、一段階気相成長法又は二段階気相成長法を含む。
【0011】
好ましくは、前記一段階気相成長法は、具体的に、
ケイ素粉末、二酸化ケイ素粉末、単体A粉末及び/又はAの酸化物粉末を必要な量で均一に混合して真空炉に入れることと、
真空炉を減圧した後、1200℃~1700℃に加熱して、ケイ素元素、酸素元素、元素Aを含む混合蒸気を得ることと、
保護雰囲気下で、炭素含有ガス源を真空炉に吹き込み、前記混合蒸気と気相反応を1~24時間行うことと、
前記気相反応により得られた材料を室温まで冷却し、材料を取り出して粉砕し、ふるい分けを行うことにより、炭素が原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系複合材料SiCを得ることと、
を含む。
【0012】
好ましくは、前記二段階気相成長法は、具体的に、
ケイ素粉末、二酸化ケイ素粉末を必要な量で均一に混合して真空炉に入れることと、
真空炉を減圧した後、1200℃~1700℃に加熱して、ケイ素元素、酸素元素を含む混合蒸気を得ることと、
保護雰囲気下で、炭素含有ガス源を真空炉に吹き込み、前記混合蒸気と気相反応を1~24時間行うことと、
前記気相反応により得られた材料を室温まで冷却し、材料を取り出して粉砕し、ふるい分けを行うことにより、炭素が原子レベルで均一に分散するように分布した複合材料SiCを得ることと、
SiCと単体A粉末及び/又はAの酸化物粉末を均一に混合し、高温炉に入れ、600℃~1500℃で2~24時間熱処理することで、炭素が原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系複合材料SiCを得ることと、
を含む。
【0013】
さらに好ましくは、炭素含有ガス源は、メタン、プロパン、ブタン、アセチレン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、または一酸化炭素のうちの1種以上を含む。
【0014】
好ましくは、前記材料を室温まで冷却し、材料を取り出して粉砕し、ふるい分けを行なった後、前記調製方法は、ふるい分けが行われた材料に炭素被覆を施し、分級した後、前記負極材料を得ることをさらに含む。
【0015】
さらに好ましくは、前記材料を室温まで冷却し、材料を取り出して粉砕し、ふるい分けを行なった後、前記調製方法は、ふるい分けが行われた材料に炭素被覆を施すことをさらに含み、ここで、前記炭素被覆は、気相被覆、液相被覆、固相被覆のうちの少なくとも1種を含む。
【0016】
第3の態様において、本発明の実施例は、上記第1の態様に記載の均一に改質されたケイ素系複合材料を含む負極シートに関する。
【0017】
第4の態様において、本発明の実施例は、上記第3の態様に記載の負極シートを含むリチウム電池に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明による均一に改質されたケイ素系複合材料SiCは、元素Cと元素Aのバルク相ドーピング分布により、ケイ素系材料のバルク相の導電性を改善させ、ケイ素系材料の体膨脹に対してバルク相が均一に分布した緩衝空間を提供し、材料の急速充電性能、初回クーロン効率及びサイクル安定性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
以下、図面及び実施例を参照して本発明の実施例における技術案をより詳細に説明する。
【0020】
図1】本発明の実施例に係るケイ素系複合材料の調製方法のフローチャートである。
図2】本発明の実施例に係るケイ素系複合材料の調製方法のフローチャートである。
図3】本発明の実施例1による内部に炭素原子が原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系複合材料のFIB-TEMのEDSマッピングである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面及び具体的な実施例を参照しながら本発明をさらに説明するが、これらの実施例は本発明をより詳細に説明するためのものにすぎず、いかなる形で本発明を制限するためのものではないと理解すべきであり、すなわち、本発明の保護範囲を制限することを意図していない。
【0022】
本発明による均一に改質されたケイ素系複合材料の一般式はSiCであり、ここで、0<x<20、0<y<10、0<z<10となり、
AはB、Al、Mg、Ca、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Sn、Liのうちの1種以上であり、Cは原子レベルでケイ素系複合材料の粒子内部に均一に分散するように分布し、かつ20nm以上の炭素の凝集がなく、炭素原子の一部又は全部とケイ素原子が結合して非晶質のSi-C結合を形成し、ケイ素系複合材料の集束イオンビームー透過電子顕微鏡FIB-TEMの測定において、粒子断面のEDSマッピングは、粒子内部のケイ素元素、炭素元素、元素A、酸素元素が均一に分布していることを示し、
ケイ素系複合材料の微細構造は、多相分散構造であり、
ケイ素系複合材料の粒子の平均粒径D50は、1nm~100μmであり、比表面積は0.5m/g~40m/gであり、前記炭素原子の質量はケイ素系複合材料の質量の0.1%~40%を占め、好ましくは、0.5%~10%を占め、元素Aの質量は複合粒子の質量の3%~40%を占める。
【0023】
上記材料の外側には、炭素被覆層を被覆してもよく、炭素被覆層の質量は、ケイ素系複合材料の質量の0~20%を占め、好ましくは、炭素被覆層の質量はケイ素系複合材料の質量の0~10%を占める。
【0024】
本発明の上記均一に改質されたケイ素系複合材料は、一段階気相成長法又は二段階気相成長法により得られることができる。
【0025】
一段階気相成長法は、図1に示すように、以下のステップを含む。
【0026】
ステップ110では、ケイ素粉末、二酸化ケイ素粉末、単体A粉末及び/又はAの酸化物粉末を必要な量で均一に混合して真空炉に入れる。
ステップ120では、真空炉を減圧した後、1200℃~1700℃に加熱して、ケイ素元素、酸素元素、元素Aを含む混合蒸気を得る。
ここで、真空炉を300Pa以下まで減圧する。
【0027】
ステップ130では、保護雰囲気下で、炭素含有ガス源を真空炉に吹き込み、前記混合蒸気と気相反応を1~24時間行う。
ここで、保護雰囲気は、N又はAr雰囲気であってもよい。炭素含有ガス源は、メタン、プロパン、ブタン、アセチレン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、または一酸化炭素のうちの1種以上を含む。
【0028】
ステップ140では、気相反応により得られた材料を室温まで冷却し、材料を取り出して粉砕し、ふるい分けを行うことにより、炭素が原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系複合材料SiCを得る。
【0029】
二段階気相成長法は、図2に示すように、以下のステップを含む。
【0030】
ステップ210では、ケイ素粉末、二酸化ケイ素粉末を必要な量で均一に混合して真空炉に入れる。
ステップ220では、真空炉を減圧した後、1200℃~1700℃に加熱して、ケイ素元素、酸素元素を含む混合蒸気を得る。
ここで、真空炉を300Pa以下まで減圧する。
【0031】
ステップ230では、保護雰囲気下で、炭素含有ガス源を真空炉に吹き込み、前記混合蒸気と気相反応を1~24時間行う。
ここで、保護雰囲気は、N又はAr雰囲気であってもよい。炭素含有ガス源は、メタン、プロパン、ブタン、アセチレン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、または一酸化炭素のうちの1種以上を含む。
【0032】
ステップ240では、気相反応により得られた材料を室温まで冷却し、材料を取り出して粉砕し、ふるい分けを行うことにより、炭素が原子レベルで均一に分散するように分布した複合材料SiCを得る。
ステップ250では、SiCと単体A粉末及び/又はAの酸化物粉末を均一に混合し、高温炉に入れ、600℃~1500℃で2~24時間熱処理することで、炭素が原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系複合材料SiCを得る。
【0033】
以上の2つの方法に加えて、さらに、外側に炭素被覆層をさらに有するケイ素系複合材料を調製する場合、粉砕後の材料に炭素被覆を施し、分級することにより、ケイ素系複合材料を得ることができる。炭素被覆の具体的な方法は、気相被覆、液相包覆、固相包覆のうちの少なくとも1種を含み得る。上記の方法は、電池材料の調製過程でよく用いられる被覆方法であり、ここでは説明を省略する。
【0034】
本発明による粒子内部に原子レベルで均一に分散するように分布した炭素を有するケイ素系複合材料は、元素Cと元素Aのバルク相ドーピング分布により、ケイ素系材料のバルク相の導電性を改善させ、ケイ素系材料の体膨脹に対してバルク相が均一に分布した緩衝空間を提供し、材料の急速充電性能、初回クーロン効率及びサイクル安定性を向上させる。
【0035】
本発明によるケイ素系複合材料は、リチウム電池に適用する負極シートを作製するために用いられることができる。
【0036】
本発明による技術案をより良く理解するために、以下では、複数の具体的な実施例を挙げて本発明の上記実施例による方法でケイ素系複合材料を調製する具体的プロセス、及びリチウム二次電池に適用する方法及び特性をそれぞれ説明する。
【0037】
(実施例1)
高温反応炉にケイ素粉末1kg、二酸化ケイ素1kg及び酸化銅0.3kgの混合粉末を入れ、50Paまで真空引きし、加熱して1500℃に昇温することで、蒸気にする。アルゴンガスの流れでメタン1.6Lを徐々に吹き込んで3時間反応させ、室温まで冷却した。材料を取り出して粉砕した後、内部に炭素と銅元素が原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系複合材料を得た。炭素・硫黄分析装置で測定した結果、この中の炭素含有量は、1.5%である。
【0038】
得られたケイ素系複合材料に対してFIB-TEM測定を実施し、EDS分析により粒子内部の元素分布を観察する。図3は、FIB-TEMのEDSマッピングである。図3のEDSマッピングから、Si、C、Cu、Oの4種の元素が粒子内に均一に分布していることが分かる。
【0039】
その後、ケイ素系複合材料に炭素被覆を施し、材料2kgを回転炉に入れ、アルゴン雰囲気下で1000℃に昇温し、アルゴン及びプロピレンを体積比1:1で吹き込んで気相被覆を実施し、2時間温度を保って、有機ガス源を閉じ、温度を下げ、材料を取り出し、分級した後、炭素被覆層を含むケイ素系複合材料を得て、この中の炭素の合計含有量は4.5%である。
【0040】
上記の炭素被覆層を含むケイ素系複合材料を負極材料とし、導電性添加剤である導電性カーボンブラック(SP)と接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を95%:2%:3%の比率で秤量し、室温にてビーター内でスラリーを調製する。調製したスラリーを銅箔上に均一に塗布する。50℃で送風乾燥器において2時間乾燥させた後、8×8mmの極片に切断し、真空乾燥器において100℃で真空引きして10時間乾燥させた。電池組立のために、乾燥後の極片をすぐにグローブボックス内に移して用意しておく。
【0041】
模擬電池の組立は、高純度Ar雰囲気を含むグローブボックス内で行われ、リチウム金属を対電極とし、1mol/LのLiPFを含有するエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート(EC/DMCの体積比が1:1)の溶液を電解液とし、電池に組み立てた。充放電器を用いて定電流充放電モード試験を実施し、放電終止電圧は0.005Vであり、充電終止電圧は1.5Vであり、1サイクル目の充放電試験はC/10電流密度にて行われ、2サイクル目の放電試験はC/10電流密度にて行われた。初回クーロン効率、0.1C可逆容量、0.1Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【0042】
(実施例2)
真空炉にケイ素粉末1kgと二酸化ケイ素1kgの混合粉末を入れ、50Paまで真空引きし、加熱して1500℃に昇温することで、蒸気にする。この後、アルゴンガスの流れでメタン1.6Lを徐々に吹き込んで3時間反応させ、室温まで冷却した。材料を取り出して粉砕した後、内部に炭素が原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系複合材料を得た。炭素・硫黄分析装置で測定した結果、この中の炭素含有量は、1.8%である。
【0043】
得られた内部に炭素が原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系材料粉末と酸化銅をモル比1:0.4で均一に混合した後、1000℃で4時間熱処理して、内部に炭素と銅元素を含むケイ素系複合材料を得た。
【0044】
その後、ケイ素系複合材料に炭素被覆を施し、ケイ素系複合材料2kgを回転炉に入れ、アルゴン雰囲気下で1000℃に昇温し、アルゴン及びプロピレンを体積比1:1で吹き込んで気相被覆を実施し、2時間温度を保って、有機ガス源を閉じる。温度を下げ、材料を取り出し、分級した後、炭素被覆層を含むケイ素系複合材料を得て、この中の炭素の合計含有量は4.6%である。
【0045】
負極シートの製造過程、電池組立及び電池試験は、実施例1と同様である。初回クーロン効率、0.1C可逆容量、0.1Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【0046】
(実施例3)
真空炉にケイ素粉末3kg、二酸化ケイ素3kg及び酸化ホウ素1kgの混合粉末を入れ、100Paまで真空引きし、加熱して1350℃に昇温することで、蒸気にし、アルゴンガスの流れでプロパン23.4Lを徐々に吹き込んで8時間反応させ、室温まで冷却した。材料を取り出して粉砕した後、内部に炭素とホウ素が原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系複合材料を得た。炭素・硫黄分析装置で測定した結果、この中の炭素含有量は、2.0%である。
【0047】
その後、ケイ素系複合材料に炭素被覆を施し、材料2kgを回転炉に入れ、アルゴン雰囲気下で900℃に昇温し、アルゴン及びアルゴンと等量のプロピレンとメタンの混合ガスを体積比1:1で吹き込んで気相被覆を実施し、ここで、プロピレンとメタンの体積比は2:3である。3時間温度を保って、有機ガス源を閉じ、温度を下げ、材料を取り出し、分級した後、炭素被覆層を含むケイ素系複合材料を得て、この中の炭素の合計含有量は4.7%である。
【0048】
負極シートの製造過程、電池組立及び電池試験は、実施例1と同様である。初回クーロン効率、0.1C可逆容量、0.1Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【0049】
(実施例4)
真空炉にケイ素粉末2kgと二酸化ケイ素2kgの混合粉末を入れ、150Paまで真空引きし、加熱して1400℃に昇温することで、蒸気にする。アルゴンガスの流れでメプロピレン1Lを徐々に吹き込んで5時間反応させ、室温まで冷却した。材料を取り出して粉砕した後、内部に炭素が原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系複合材料を得た。炭素・硫黄分析装置で測定した結果、この中の炭素含有量は、2.0%である。
【0050】
得られた内部に炭素が原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系複合材料と金属アルミニウムをモル比2:1で均一に混合した後、1200℃で4時間熱処理して、内部に炭素とアルミニウムを含むケイ素系複合材料を得た。
【0051】
負極シートの製造過程、電池組立及び電池試験は、実施例1と同様である。初回クーロン効率、0.1C可逆容量、0.1Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【0052】
(実施例5)
真空炉にケイ素3kg、二酸化ケイ素3kg及び金属マグネシウム1kgの混合粉末を入れ、150Paまで真空引きし、加熱して1400℃に昇温することで、蒸気にし、アルゴンガスの流れでアセチレン11.7Lとメタン5Lの混合ガスを徐々に吹き込んで4時間反応させ、室温まで冷却した。材料を取り出して粉砕した後、内部に炭素とマグネシウム元素が原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系複合材料を得た。炭素・硫黄分析装置で測定した結果、この中の炭素含有量は、1.8%である。
【0053】
その後、ケイ素系複合材料に炭素被覆を施し、材料2kgを回転炉に入れ、アルゴン雰囲気下で1100℃に昇温し、アルゴン及びアルゴンと等量のプロピレンとメタンの混合ガスを体積比1:1で吹き込んで気相被覆を実施し、ここで、プロピレンとメタンの体積比は2:3である。3時間温度を保って、有機ガス源を閉じ、温度を下げ、材料を取り出し、分級した後、炭素被覆層を含むケイ素系複合材料を得て、この中の炭素の合計含有量は6.5%である。
【0054】
負極シートの製造過程、電池組立及び電池試験は、実施例1と同様である。初回クーロン効率、0.1C可逆容量、0.1Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【0055】
(実施例6)
真空炉にケイ素粉末5kgと二酸化ケイ素5kgの混合粉末を入れ、150Paまで真空引きし、加熱して1400℃に昇温することで、蒸気にする。アルゴンガスの流れでアセチレン1Lを徐々に吹き込んで5時間反応させ、室温まで冷却した。材料を取り出して粉砕した後、内部に炭素が原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系複合材料を得た。炭素・硫黄分析装置で測定した結果、この中の炭素の含有量は、0.8%である。
【0056】
得られた内部に炭素が原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系材料粉末と酸化カルシウムをモル比3:1で均一に混合した後、1200℃で4時間熱処理して、内部に炭素とカルシウムを含むケイ素系複合材料を得た。
【0057】
その後、ケイ素系複合材料に炭素被覆を施し、材料1.5kgを回転炉に入れ、アルゴン雰囲気下で850℃に昇温し、アルゴン及びアルゴンと等量のプロパンを体積比1:1で吹き込んで気相被覆を実施し、1.5時間温度を保って、有機ガス源を閉じ、温度を下げ、材料を取り出し、分級した後、炭素被覆層を含むケイ素系複合材料を得て、この中の炭素の合計含有量は5.5%である。
【0058】
負極シートの製造過程、電池組立及び電池試験は、実施例1と同様である。初回クーロン効率、0.1C可逆容量、0.1Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【0059】
(実施例7)
真空炉にケイ素2kg、二酸化ケイ素3kg及び金属鉄0.5kgの混合粉末を入れ、100Paまで真空引きし、加熱して1600℃に昇温することで、蒸気にし、アルゴンガスの流れでブタン1Lを徐々に吹き込んで3時間反応させ、室温まで冷却した。材料を取り出して粉砕した後、内部に炭素と鉄元素が原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系複合材料を得た。炭素・硫黄分析装置で測定した結果、この中の炭素含有量は、2%である。
【0060】
その後、ケイ素系複合材料に炭素被覆を施し、材料2kgを回転炉に入れ、アルゴン雰囲気下で700℃に昇温し、アルゴン及びアセチレンを体積比1:2で吹き込んで気相被覆を実施する。2時間温度を保って、有機ガス源を閉じ、温度を下げ、材料を取り出し、分級した後、炭素被覆層を含むケイ素系複合材料を得て、この中の炭素の合計含有量は4.5%である。
【0061】
負極シートの製造過程、電池組立及び電池試験は、実施例1と同様である。初回クーロン効率、0.1C可逆容量、0.1Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【0062】
(実施例8)
真空炉にケイ素粉末3kgと二酸化ケイ素5kgの混合粉末を入れ、150Paまで真空引きし、加熱して1400℃に昇温することで、蒸気にする。アルゴンガスの流れでブタジエン1.5Lを徐々に吹き込んで6時間反応させ、室温まで冷却した。材料を取り出して粉砕した後、内部に炭素が原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系材料粉末を得た。炭素・硫黄分析装置で測定した結果、この中の炭素含有量は、1.3%である。
【0063】
得られた内部に炭素が原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系材料粉末と金属コバルトをモル比5:1で均一に混合した後、1200℃で4時間熱処理して、内部に炭素とコバルトを含むケイ素系複合材料を得た。
【0064】
その後、ケイ素系複合材料に炭素被覆を施し、材料1.5kgを回転炉に入れ、アルゴン雰囲気下で850℃に昇温し、アルゴン及びアルゴンと等量のアセチレンとプロパンの混合ガスを体積比1:1で吹き込んで気相被覆を実施する。ここで、アセチレンとプロパンの体積比は3:1であり、3時間温度を保って、有機ガス源を閉じ、温度を下げ、材料を取り出し、分級した後、炭素被覆層を含むケイ素系複合材料を得て、この中の炭素の合計含有量は5.5%である。
【0065】
負極シートの製造過程、電池組立及び電池試験は、実施例1と同様である。初回クーロン効率、0.1C可逆容量、0.1Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【0066】
(実施例9)
真空炉にケイ素5kg、二酸化ケイ素4kg及び金属ニッケル1kgの混合粉末を入れ、100Paまで真空引きし、加熱して1700℃に昇温することで、蒸気にし、アルゴンガスの流れで一酸化炭素ガス1.4Lを徐々に吹き込んで12時間反応させ、室温まで冷却した。材料を取り出して粉砕した後、内部に炭素と鉄元素が原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系複合材料を得た。炭素・硫黄分析装置で測定した結果、この中の炭素含有量は、0.6%である。
【0067】
その後、ケイ素系複合材料に炭素被覆を施し、材料2kgを回転炉に入れ、アルゴン雰囲気下で600℃に昇温し、アルゴン及びアセチレンを体積比1:3で吹き込んで気相被覆を実施する。2時間温度を保って、有機ガス源を閉じ、温度を下げ、材料を取り出し、分級した後、炭素被覆層を含むケイ素系複合材料を得て、この中の炭素の合計含有量は3.5%である。
【0068】
負極シートの製造過程、電池組立及び電池試験は、実施例1と同様である。初回クーロン効率、0.1C可逆容量、0.1Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【0069】
(実施例10)
真空炉にケイ素粉末5kgと二酸化ケイ素5kgの混合粉末を入れ、150Paまで真空引きし、加熱して1400℃に昇温することで、蒸気にする。アルゴンガスの流れで一酸化炭素2.0Lとアセチレン1.2Lの混合ガスを徐々に吹き込んで10時間反応させ、室温まで冷却した。材料を取り出して粉砕した後、内部に炭素が原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系材料粉末を得た。炭素・硫黄分析装置で測定した結果、この中の炭素含有量は、3%である。
【0070】
得られた内部に炭素が原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系材料粉末と金属亜鉛をモル比2:1で均一に混合した後、1200℃で4時間熱処理して、内部に炭素と亜鉛を含むケイ素系負極材料を得た。
【0071】
その後、ケイ素系負極材料に炭素被覆を施し、材料2kgと石油ピッチとを質量比10:1で混合し、高温炉に入れ、窒素雰囲気下で、900℃で2時間熱処理し、温度を下げ、材料を取り出して分級した後、炭素被覆層を含むケイ素系複合材料を得て、この中の炭素の合計含有量は4.2%である。
【0072】
上記の炭素被覆層を含むケイ素系複合材料を負極材料とし、導電性添加剤である導電性カーボンブラック(SP)と接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を95%:2%:3%の比率で秤量する。室温にてビーター内でスラリーを調製する。調製したスラリーを銅箔上に均一に塗布する。50℃で送風乾燥器において2時間乾燥させた後、8×8mmの極片に切断し、真空乾燥器において100℃で真空引きして、10時間乾燥させた。電池組立のために、乾燥後の極片をすぐにグローブボックス内に移して用意しておく。
【0073】
模擬電池の組立は、高純度Ar雰囲気を含むグローブボックス内で行われ、上記電極を負極とし、三元系正極材NCM811を対電極とし、ガーネット型LiLaZr12(LLZO)を固体電解質とし、グローブボックス内でボタン形全固体電池に組み立てられ、それを充電して電気化学性能を評価した。充放電器を用いて定電流充放電モード試験を実施し、放電終止電圧は0.005Vであり、充電終止電圧は1.5Vであり、1サイクル目の充放電試験はC/10電流密度にて行われ、2サイクル目の放電試験はC/10電流密度にて行われた。初回クーロン効率、0.1C可逆容量、0.1Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【0074】
(実施例11)
真空炉にケイ素4kg、二酸化ケイ素4kg及び酸化銅2kgの混合粉末を入れ、100Paまで真空引きし、加熱して1700℃に昇温することで、蒸気にし、アルゴンガスの流れでメタン0.9L、プロピレン1.2L、プロパン1.7Lの混合ガスを徐々に吹き込んで6時間反応させ、室温まで冷却した。材料を取り出して粉砕した後、内部に炭素と銅元素が原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系複合材料を得た。炭素・硫黄分析装置で測定した結果、この中の炭素含有量は、3.6%である。
【0075】
その後、ケイ素系複合材料に炭素被覆を施し、粉砕された試料3kgとフェノール樹脂を20:1の比率でアルコール溶媒に溶かし、6時間撹拌して均一なスラリーを形成する。その後、スラリーを直接に乾燥させ、高温炉に入れ、窒素雰囲気下で、900℃で混合物を2時間焼結し、冷却した後、分級及びふるい分けを行うことにより、炭素被覆層を含むケイ素系複合材料を得て、この中の炭素の合計含有量は6.5%である。
【0076】
上記の炭素被覆層を含むケイ素系複合材料を負極材料とし、導電性添加剤である導電性カーボンブラック(SP)と接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を95%:2%:3%の比率で秤量する。室温にてビーター内でスラリーを調製する。調製したスラリーを銅箔上に均一に塗布する。50℃で送風乾燥器において2時間乾燥させた後、8×8mmの極片に切断し、真空乾燥器において100℃で真空引きして10時間乾燥させた。電池組立のために、乾燥後の極片をすぐにグローブボックス内に移して用意しておく。
【0077】
模擬電池の組立は、高純度Ar雰囲気を含むグローブボックス内で行われ、上記電極を負極とし、三元系正極材NCM811を対電極とし、ポリオレフィン系ポリマーゲル電解質膜を半固体電解質とし、グローブボックス内でボタン形半固体電池に組み立てられ、それを充電して電気化学性能を評価した。充放電器を用いて定電流充放電モード試験を実施し、放電終止電圧は0.005Vであり、充電終止電圧は1.5Vであり、1サイクル目の充放電試験はC/10電流密度にて行われ、2サイクル目の放電試験はC/10電流密度にて行われた。初回クーロン効率、0.1C可逆容量、0.1Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【0078】
(実施例12)
真空炉にケイ素粉末3kgと二酸化ケイ素5kgの混合粉末を入れ、150Paまで真空引きし、加熱して1500℃に昇温することで、蒸気にする。アルゴンガスの流れでメタン1.7Lとプロピレン1.5Lの混合ガスを徐々に吹き込んで3時間反応させ、室温まで冷却した。材料を取り出して粉砕した後、内部に炭素が原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系材料粉末を得た。炭素・硫黄分析装置で測定した結果、この中の炭素含有量は、1.5%である。
【0079】
得られた内部に炭素が原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系材料粉末と金属ゲルマニウムをモル比5:1で均一に混合した後、1200℃で4時間熱処理して、内部に炭素とゲルマニウムを含むケイ素系複合材料を得た。
【0080】
負極シートの製造過程、電池組立及び電池試験は、実施例1と同様である。初回クーロン効率、0.1C可逆容量、0.1Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【0081】
(実施例13)
真空炉にケイ素4kg、二酸化ケイ素4kg及び酸化スズ2kgの混合粉末を入れ、100Paまで真空引きし、加熱して1700℃に昇温することで、蒸気にし、アルゴンガスの流れでアセチレン5Lとエチレン5Lの混合ガスを徐々に吹き込み、6時間反応させた後、室温まで冷却した。材料を取り出して粉砕した後、内部に炭素とスズが原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系複合材料を得た。炭素・硫黄分析装置で測定した結果、この中炭素含有量は、3%である。
【0082】
負極シートの製造過程、電池組立及び電池試験は、実施例1と同様である。初回クーロン効率、0.1C可逆容量、0.1Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【0083】
(実施例14)
真空炉にケイ素粉末5kgと二酸化ケイ素5kgの混合粉末を入れ、150Paまで真空引きし、加熱して1500℃に昇温することで、蒸気にする。アルゴンガスの流れでブタジエンガス2Lを徐々に吹き込んで4時間反応させ、室温まで冷却した。材料を取り出して粉砕した後、内部に炭素が原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系材料粉末を得た。炭素・硫黄分析装置で測定した結果、この中の炭素含有量は、0.5%である。
【0084】
得られた内部に炭素が原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系材料粉末と酸化リチウムをモル比5:1で均一に混合した後、1000℃で2時間熱処理して、内部に炭素とリチウム元素を含むケイ素系複合材料を得た。
【0085】
負極シートの製造過程、電池組立及び電池試験は、実施例1と同様である。初回クーロン効率、0.1C可逆容量、0.1Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【0086】
(比較例1)
真空炉にケイ素粉末1kg及び二酸化ケイ素1kgの混合粉末を入れ、50Paまで真空引きし、加熱して1500℃に昇温することで、蒸気にする。材料を取り出して粉砕した後、一酸化ケイ素負極材料を得た。その後、一酸化ケイ素負極材料に炭素被覆を施す。材料2kgを回転炉に入れ、アルゴン雰囲気下で1000℃に昇温し、アルゴン及びプロピレンを体積比1:1で吹き込んで気相被覆を実施し、2時間温度を保って、有機ガス源を閉じる。温度を下げ、材料を取り出し、分級した後、炭素被覆層を含むケイ素系負極材料を得て、この中の炭素含有量は3%である。
【0087】
負極シートの製造過程、電池組立及び電池試験は、実施例1と同様である。初回クーロン効率、0.1C可逆容量、0.1Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【0088】
(比較例2)
真空炉にケイ素粉末1kg、二酸化ケイ素1kg及び酸化銅0.3kgの混合粉末を入れ、50Paまで真空引きし、加熱して1500℃に昇温することで、蒸気にし、3時間反応させた後、室温まで冷却した。材料を取り出して粉砕した後、内部に銅元素が原子レベルで均一に分散するように分布した一酸化ケイ素負極材料を得た。その後、一酸化ケイ素負極材料に炭素被覆を施す。材料2kgを回転炉に入れ、アルゴン雰囲気下で1000℃に昇温し、アルゴン及びプロピレンを体積比1:1で吹き込んで気相被覆を実施し、2時間温度を保って、有機ガス源を閉じる。温度を下げ、材料を取り出し、分級した後、炭素被覆層を含む一酸化ケイ素負極材料を得て、この中の炭素の合計含有量は3%である。
【0089】
負極シートの製造過程、電池組立及び電池試験は、実施例1と同様である。初回クーロン効率、0.1C可逆容量、0.1Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【0090】
(比較例3)
真空炉にケイ素粉末1kg及び二酸化ケイ素1kgの混合粉末を入れ、50Paまで真空引きし、加熱して1500℃に昇温することで、蒸気にする。アルゴンガスの流れでメタン1.6Lを徐々に吹き込んで3時間反応させ、室温まで冷却した。材料を取り出して粉砕した後、内部に炭素が原子レベルで均一に分散するように分布した一酸化ケイ素負極材料を得た。炭素・硫黄分析装置で測定した結果、この中の炭素含有量は、1.7%である。その後、一酸化ケイ素負極材料に炭素被覆を施す。材料2kgを回転炉に入れ、アルゴン雰囲気下で1000℃に昇温し、アルゴン及びプロピレンを体積比1:1で吹き込んで気相被覆を実施し、2時間温度を保って、有機ガス源を閉じる。温度を下げ、材料を取り出し、分級した後、炭素被覆層を含む一酸化ケイ素負極材料を得て、この中の炭素の合計含有量は4.7%である。
【0091】
負極シートの製造過程、電池組立及び電池試験は、実施例1と同様である。初回クーロン効率、0.1C可逆容量、0.1Cレートにおけるサイクル特性の試験結果を表1に示す。
【0092】
実施例1~14及び比較例1~3における負極材料の初回クーロン効率、0.1C可逆容量、0.1Cレートにおけるサイクル特性の試験結果は、次の通りである。
【0093】
【表1】
【0094】
表における比較例1~3のデータから分かるように、比較例2では、一酸化ケイ素に銅元素をドープし、比較例1に比べて初回クーロン効率は明らかに向上しているが、サイクル特性が劣っている。比較例3では、一酸化ケイ素に炭素をドープし、比較例1に比べてサイクル容量維持率は明らかに向上しているが、初回クーロン効率が若干劣った。実施例1~14では、材料に対して炭素、元素Aのバルク相ドーピングを行ったことにより、粒子内部の導電性を増加させ、材料の膨張に対して緩衝空間を提供し、同時に材料の初回クーロン効率及びサイクル寿命を向上させた。
【0095】
上述の具体的な実施形態では、本発明の目的、技術案及び有益な効果をさらに詳細に説明し、以上は本発明の具体的な実施形態にすぎず、本発明の保護範囲を制限するためのものではなく、本発明の精神及び原則内でなされたいかなる修正、均等な置換、改良などは、本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【0096】
(付記)
(付記1)
均一に改質されたケイ素系複合材料であって、
前記ケイ素系複合材料の一般式はSiCであり、0<x<20、0<y<10、0<z<10となり、
ここで、AはB、Al、Mg、Ca、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Sn、Liのうちの1種以上であり、Cは原子レベルでケイ素系複合材料の粒子内部に均一に分散するように分布し、かつ20nm以上の炭素の凝集がなく、炭素原子の一部又は全部とケイ素原子が結合して非晶質のSi-C結合を形成し、ケイ素系複合材料の集束イオンビームー透過電子顕微鏡FIB-TEMの測定において、粒子断面のEDS(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)マッピングは、粒子内部のケイ素元素、炭素元素、元素A、酸素元素が均一に分布していることを示し、
前記ケイ素系複合材料の微細構造は、多相分散構造であり、
前記ケイ素系複合材料の粒子の平均粒径D50は、1nm~100μmであり、比表面積は0.5m/g~40m/gであり、前記炭素原子の質量はケイ素系複合材料の質量の0.1%~40%を占め、前記元素Aの質量は複合粒子の質量の3%~40%を占める、
ことを特徴とするケイ素系複合材料。
【0097】
(付記2)
前記ケイ素系複合材料の外側には、炭素被覆層をさらに有し、前記炭素被覆層の質量は、前記ケイ素系複合材料の質量の0~20%を占めることを特徴とする付記1に記載のケイ素系複合材料。
【0098】
(付記3)
前記炭素原子の質量は、前記ケイ素系複合材料の質量の0.5%~10%を占め、前記炭素被覆層の質量は、前記ケイ素系複合材料の質量の0~10%を占めることを特徴とする付記2に記載のケイ素系複合材料。
【0099】
(付記4)
上記付記1~3のいずれか一つに記載の均一に改質されたケイ素系複合材料の調製方法であって、一段階気相成長法又は二段階気相成長法を含むことを特徴とする調製方法。
【0100】
(付記5)
前記一段階気相成長法は、具体的に、
ケイ素粉末、二酸化ケイ素粉末、単体A粉末及び/又はAの酸化物粉末を必要な量で均一に混合して真空炉に入れることと、
真空炉を減圧した後、1200℃~1700℃に加熱して、ケイ素元素、酸素元素、元素Aを含む混合蒸気を得ることと、
保護雰囲気下で、炭素含有ガス源を真空炉に吹き込み、前記混合蒸気と気相反応を1~24時間行うことと、
前記気相反応により得られた材料を室温まで冷却し、材料を取り出して粉砕し、ふるい分けを行うことにより、炭素が原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系複合材料SiCを得ることと、
を含む、
ことを特徴とする付記4に記載の調製方法。
【0101】
(付記6)
前記二段階気相成長法は、具体的に、
ケイ素粉末、二酸化ケイ素粉末を必要な量で均一に混合して真空炉に入れることと、
真空炉を減圧した後、1200℃~1700℃に加熱して、ケイ素元素、酸素元素を含む混合蒸気を得ることと、
保護雰囲気下で、炭素含有ガス源を真空炉に吹き込み、前記混合蒸気と気相反応を1~24時間行うことと、
前記気相反応により得られた材料を室温まで冷却し、材料を取り出して粉砕し、ふるい分けを行うことにより、炭素が原子レベルで均一に分散するように分布した複合材料SiCを得ることと、
SiCと単体A粉末及び/又はAの酸化物粉末を均一に混合し、高温炉に入れ、600℃~1500℃で2~24時間熱処理することで、炭素が原子レベルで均一に分散するように分布したケイ素系複合材料SiCを得ることと、
を含む、
ことを特徴とする付記4に記載の調製方法。
【0102】
(付記7)
前記炭素含有ガス源は、メタン、プロパン、ブタン、アセチレン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、または一酸化炭素のうちの1種以上を含むことを特徴とする付記5又は6に記載の調製方法。
【0103】
(付記8)
前記材料を室温まで冷却し、材料を取り出して粉砕し、ふるい分けを行なった後、ふるい分けが行われた材料に炭素被覆を施すことをさらに含み、ここで、前記炭素被覆は、気相被覆、液相被覆、固相被覆のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする付記5又は6に記載の調製方法。
【0104】
(付記9)
上記付記1~3のいずれか一つに記載の均一に改質されたケイ素系複合材料を含む負極シート。
【0105】
(付記10)
上記付記9に記載の負極シートを含むリチウム電池。
図1
図2
図3
【国際調査報告】