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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】ロック可能な差動ギア
(51)【国際特許分類】
   F16H 48/22 20060101AFI20240621BHJP
   F16H 48/08 20060101ALI20240621BHJP
   F16H 48/34 20120101ALI20240621BHJP
【FI】
F16H48/22
F16H48/08
F16H48/34
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577204
(86)(22)【出願日】2021-06-14
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 EP2021065912
(87)【国際公開番号】W WO2022262931
(87)【国際公開日】2022-12-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517175611
【氏名又は名称】ジーケーエヌ オートモーティブ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュルデック,エイドリアン
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FA34
3J027FA36
3J027FB01
3J027HB07
3J027HF45
3J027HG03
(57)【要約】
トルクを自動車両(3)の車軸(2)に伝達するための差動ギア(1)であって、差動バスケット(4)と、共通の回転軸(7)を有する2つの出力シャフト(5,6)と、第1の出力シャフト(5)を上記差動バスケット(4)に切り替え可能に接続するための、少なくとも1つの内部プレート(9)及び少なくとも1つの外部プレート(10)を有するマルチプレートクラッチ(8)とを備える差動ギア(1)。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクを自動車両(3)の車軸(2)に伝達するための差動ギア(1)であって、
差動バスケット(4)と、
共通の回転軸(7)を有する2つの出力シャフト(5,6)と、
第1の出力シャフト(5)を上記差動バスケット(4)に切り替え可能に接続するための、少なくとも1つの内部プレート(9)及び少なくとも1つの外部プレート(10)を有するマルチプレートクラッチ(8)と
を備え、
上記第1の出力シャフト(5)が、上記回転軸(7)に沿って延び、且つベベルギア(13)との形状接続(15)を上記第1の出力シャフト(5)の第1の外周面(11)及び上記ベベルギア(13)の内周面(12)を介して少なくとも周方向(14)について形成し、
上記ベベルギア(13)の第2の外周面(17)の部分(16)が内部プレートキャリア(18)として設計され、上記差動バスケット(4)が外部プレートキャリア(19)として設計され、
上記ベベルギア(13)が上記差動バスケット(4)の接触面(20)によって少なくとも径方向(21)について支持される差動ギア(1)。
【請求項2】
上記接触面(20)が、上記回転軸(7)に沿って上記ベベルギア(13)のベベル歯(22)と上記部分(16)との間に配置される請求項1に記載の差動ギア(1)。
【請求項3】
上記ベベルギア(13)が、支持要素(23)を介して上記接触面(20)によって支持され、
上記プレート(9,10)が、上記回転軸(7)に沿って延びる軸方向(24)について、上記支持要素(23)を介して上記差動バスケット(4)によって支持される請求項2に記載の差動ギア(1)。
【請求項4】
上記支持要素(23)が、圧入による回転固定方式で上記差動バスケット(4)に接して配置される請求項3に記載の差動ギア(1)。
【請求項5】
上記ベベルギア(13)が、支持要素(23)を介して上記接触面(20)によって支持され、
上記ベベルギア(13)が、上記第2の外周面(17)の円筒状に形成された支持面(25)を介して、上記径方向(21)について上記支持要素(23)によって支持される請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の差動ギア(1)。
【請求項6】
上記部分(16)が、上記回転軸(7)に沿って上記ベベル歯(22)と上記接触面(20)との間に配置される請求項1に記載の差動ギア(1)。
【請求項7】
上記接触面(20)が円筒状である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の差動ギア(1)。
【請求項8】
上記接触面(20)が、径方向(21)に上記ベベルギア(13)の最大の延長部(26)の外側に配置され、
上記最大の延長部(26)が上記径方向(21)について上記ベベルギア(13)の最長の延長部(26)である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の差動ギア(1)。
【請求項9】
上記第1の外周面(11)及び上記内周面(12)が、上記回転軸(7)に沿って相互に隣接配置された2つの重複領域部(28,29)を有する重複領域(27)を上記回転軸(7)に沿って形成し、
少なくとも1つのチャネル(30)が第1の重複領域部(28)において上記ベベルギア(13)に形成されており、
上記チャネル(30)が、上記内周面(12)から上記第2の外周面(17)の上記部分(16)まで延びる請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の差動ギア(1)。
【請求項10】
上記第1の出力シャフト(5)と上記ベベルギア(13)との上記形状接続(15)が、第2の重複領域部(29)においてのみ配置される請求項9に記載の差動ギア(1)。
【請求項11】
上記出力シャフト(5,6)のうち上記第1の出力シャフト(5)のみが、マルチプレートクラッチ(8)を介して上記差動バスケット(4)に接続され得る請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の差動ギア(1)。
【請求項12】
駆動ユニット(32)と、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の差動ギア(1)とを少なくとも備え、
上記差動ギア(1)が、上記駆動ユニットからのトルクを車軸(2)の2つのホイール(33)に伝達するために提供され、
上記駆動ユニット(32)の上記トルクが、上記差動バスケット(4)を介して上記差動ギア(1)に導入され得、且つ各出力シャフト(5,6)を介してそれぞれのホイール(33)に受け渡され得る自動車両(3)用の駆動機構(31)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクを自動車両の車軸に伝達するためのロック可能な差動ギアに関する。
【背景技術】
【0002】
差動ギアを介して、通常、トルクは駆動ユニットから入力シャフト(例えば、長手方向シャフト)を経由して2つの出力シャフトへと伝達される。差動ギア内で、導入されたトルクは差動バスケットから、差動バスケット内に回転可能に配置され、ギア歯を介して相互に接続されたギアホイールへと伝達される。ギアホイールは出力シャフトに接続される。少なくとも1つの出力シャフトは、クラッチを介して差動バスケットに接続され得る。一方で、差動ギアは、出力シャフトに接続されたホイールの速度の差異を補償するために使用され得る。他方で、クラッチは、場合によっては差動的にホイールにトルクを配分するために使用され得る。
【0003】
クラッチの非作動時、両方のホイールは、それらがカーブを走行する場合のように異なる速度で回転していても、差動ギアを介して同程度のトルクで駆動される。同じ速度で回転するとき、差動ギアの出力シャフトに接続されたホイールは、相対移動しないため、動力のロス及び消耗を生じさせない。一方のホールが完全に停止し、クラッチが非作動となると、他方のホイールは差動バスケットの2倍の速度で回転する。これは、例えば、発進時、つまり2つのホイールの一方が例えば泥、雪等の上で地面との静摩擦をなくす際に起こり得る。そして、このホイールは「スピン」し、両方のホイールはもはや前進駆動のトルクを伝達しない。高速でカーブを曲がる際であっても、内側のホイールはスピンする程度に負荷が軽減され得る。
【0004】
ロック可能な差動ギアはこれを防止できる。つまり、バランス効果が、2つの出力シャフトを堅固に接続すること(フルロック)によって防止され、あるいはクラッチを介して付与された摩擦によって低減される。後者の場合、動力の一部が駆動ホイールに移転され、残りが差動ギア又はクラッチにおいて熱に変換される。ロックの係合時に(フルロック)、ホイールは同じ速度で回転し、トルクはグリップに応じてホイール間に配分される。道路の上又は他の良好な地面の上でフルロックが使用される場合、カーブにおいてホイールの異なる経路長がタイヤの滑りによってのみ吸収され得るため、ドライブラインは歪められて損傷し得る。
【0005】
シフト可能なクラッチを備える差動ギアは、米国特許第5098360号明細書から既知である。
【0006】
マルチプレートクラッチ及びドッグクラッチを備える差動ギアは米国特許出願公開第2020/0292045号明細書から既知である。マルチプレートクラッチはランプ装置を有する作動装置によって作動され得る。出力シャフトに接続されたベベルギアは内部プレートキャリアとして設計される。ベベルギアは出力シャフトによって径方向に支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5098360号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2020/0292045号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
自動車両の構成要素を改善するニーズは常にある。特に、それら構成要素は、より軽量で小型になると同時に、可能な限り製造上安価となるべきである。加えて、小型の設計であっても構成要素の長い耐用年数が実現されるべきである。
【0009】
本発明の目的は、先行技術を参照して引用された問題を少なくとも部分的に解決することにある。特に、重量及びサイズがさらに低減された差動ギアを提示する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る特徴を有する差動ギアは、これらの問題の解決に寄与する。さらなる有利な発展形態は従属項の主題である。請求項に個別に列記された特徴は、技術的に有用な方式で相互に組み合わせ可能であり、明細書からの説明事項及び/又は図面からの詳細によって補完され得る。これにより発明のさらなる変形設計が示される。
【0011】
トルクを自動車両の車軸に伝達するための(ロック可能な)差動ギアが提示される。差動ギアは、少なくとも1つの差動バスケットと、共通の回転軸を有する2つの出力シャフトと、第1の出力シャフトを上記差動バスケットに切り替え可能に接続するための、少なくとも1つの内部プレート及び少なくとも1つの外部プレートを有するマルチプレートクラッチとを備える。上記第1の出力シャフトは、上記回転軸に沿って延び、且つベベルギアとの形状接続を上記第1の出力シャフトの第1の外周面及び上記ベベルギアの内周面を介して少なくとも周方向について形成する。上記ベベルギアの第2の外周面の部分は内部プレートキャリアとして設計され、上記差動バスケットは外部プレートキャリアとして設計される。上記ベベルギアは、上記差動バスケットの接触面によって少なくとも径方向について支持される。
【0012】
冒頭に記載された既知の差動ギアの説明が参照される。通常、上記ベベルギアは上記出力シャフトに接して配置され、上記出力シャフトを介して、その後上記出力シャフトの(ローラ)軸受を介して、例えば上記差動ギアのハウジング又は他の構成要素によって径方向について支持される。設計の観点でこの支持が実現し得ない場合、上記ベベルギア及び上記出力シャフトも、他の箇所で径方向について支持されなければならない。
【0013】
ここで提示される上記差動ギアは、特に上記差動バスケットによって上記ベベルギアが特徴的に支持されるので、優れている。この目的のため接触面が提供され、この接触面を介して、上記ベベルギアが少なくとも上記径方向について上記差動バスケットによって支持される。
【0014】
上記支持は、上記接触面又は上記接触面に接触する支持要素の特徴的な設計によって提供される。支持要素は、例えば、上記ベベルギアと上記差動バスケットとの間に配置され、上記径方向についての支持を可能にする。このように上記ベベルギアは、上記差動ケージの接触面又は上記支持要素に、対向面を介して接触する。上記支持要素は、対向面を介して上記差動ケージの接触面に接触する。上記支持要素はまた、上記ベベルギアについて(追加の)接触面を形成し得る。
【0015】
上記接触面(上記差動バスケット上に及び/又は上記支持要素上に配される接触面)を介した接触によって、特に回転可能な、つまり上記周方向に回転可能な上記差動バスケットト上記ベベルギアとの接続が(少なくとも大部分は)摩擦なく可能となる。このように上記差動ギアの作動中に、上記ベベルギアは上記差動バスケットとの間で可能な限り損傷なく回転し得る。
【0016】
上記差動バスケットと上記ベベルギアとの間の支持は、特に、上記回転可能な接続及び上記径方向についての上記支持を可能にする円筒状の面との接触によって提供される。特に、上記円筒状の面は上記回転軸に平行に延びる。特に、上記円筒状の面は、少なくとも上記ベベルギア及び上記差動バスケットに、場合によっては上記追加の支持要素に接して配される。
【0017】
上記差動バスケット及び/又は上記支持要素上の上記接触面は、上記差動ギアの作動中における上記径方向についての支持用に、特に少なくとも100N/mm、好ましくは150N/mm(耐疲労)の表面圧力用に設計される。
【0018】
上記差動バスケット上の及び/又は上記支持要素上の上記接触面、及び/又は各接触面に接触する上記ベベルギア若しくは上記支持要素上の上記対向面が、例えば摺動コートによって設計され得る。上記支持要素は、例えば、摺動リングとして設計され得る。このように上記接触面及び/又は上記各対向面は、例えば特殊な摺動特性を有するコートによって形成され得る。
【0019】
上記差動バスケット、ベベルギア、及び該当する場合、支持要素上の上記接触面及び上記対向面は、上記径方向について、特に上記差動バスケット及び上記ベベルギアの少なくとも1つの構成要素について、好ましくは両方の構成要素について回転可能な接続を形成する。いずれの場合も、上記ベベルギアは、上記差動バスケットに対して回転可能である。必要に応じて、上記支持要素は、上記ベベルギア及び/又は上記差動バスケットに対して回転し得る。
【0020】
特に、上記支持要素は、圧入による回転固定方式で上記差動バスケットに接して配置される。このため、上記差動バスケットに対する上記支持要素の相対回転は不可能となる。したがって、上記支持要素上の上記接触面と上記ベベルギア上の上記対向面との間で相対回転が生じる。
【0021】
上記支持要素は、代わりにローラ軸受といった多部品要素として設計される。
【0022】
特に、マルチプレートクラッチは、複数の出力プレート及び複数の内部プレートを有する。しかし、上記クラッチは、プレッシャプレート、クラッチディスク及びカウンタプレートを備える摩擦クラッチとしても設計され得る。これにより、上記プレッシャプレート及び上記カウンタプレートは、回転固定方式で例えば(内部プレートとして)上記ベベルギアに、又は(外部プレートとして)上記差動バスケットに接続される。上記プレッシャプレートは、上記軸方向に沿って変位可能に配置され、これにより、上記クラッチディスクは上記プレッシャプレートと上記カウンタプレートとの間に配置される。上記クラッチは、特定の実施形態に限定されない。しかし、好ましくは、上記入力シャフトから上記出力シャフトへの上記クラッチを介したトルクの部分的な伝達は行われるべきである。以下の記載は、特に上記マルチプレートクラッチだけでなく、他の(摩擦)クラッチにも同様に適用される。
【0023】
上記マルチプレートクラッチは、特に(既知の)作動装置によって作動され得る。上記作動装置は上記差動ギアに割り当てられ得る。上記作動装置を介して、上記プレートは上記回転軸に沿って変位し得、相互に調整可能な摩擦接続を形成する。
【0024】
例えば、欧州特許出願公開第0414086号明細書には、軸方向についてボールによって支持される2つの拡張ディスクを備える作動装置が記載されている。拡張ディスクの周方向における相互の回転は、上記ボールがランプ上に配置されるので、一方の拡張ディスクの上記軸方向における変位につながる。上記拡張ディスクは、ともに第1出力シャフトに接して配置され、作動力は、上記軸方向について上記第1出力シャフトに固定された一方のディスクによって一方側に吸収され、上記差動バスケットによって他方側に吸収される。
【0025】
特に、上記出力シャフトはそれぞれ上記差動バスケットに向かって延び、そこで少なくとも周方向についてベベルギアに形状接続される。上記出力シャフトは、上記差動バスケット及び上記出力シャフトが共通の回転軸を有するように相互に同軸上に配置される。
【0026】
上記ベベルギアは、上記差動バスケット内で上記出力シャフトに対して回転可能に配置される。上記差動バスケット内で、上記出力シャフト又はそれらのベベルギアはさらにギアホイールを介して相互に連結される。
【0027】
上記第1の出力シャフトは上記回転軸に沿って延び、上記第1の出力シャフトの第1の外周面及びベベルギアの内周面を介して、例えばスプライン接続によって少なくとも周方向について上記ベベルギアとの形状接続を形成する。上記ベベルギアの第2の外周面の部分は、内部プレートキャリアとして設計され、上記差動バスケットは外部プレートキャリアとして設計される。少なくとも1つの上記内部プレートは、上記周方向について上記内部プレートキャリアに形状接続される。少なくとも1つの外部プレートは、上記周方向について上記外部プレートキャリアに形状接続される。内部プレート及び外部プレートは、(上記回転軸に沿って延びる)上記軸方向に沿って交互に配置される。上記軸方向に沿ってプレートを変位させることによって、上記第1出力シャフトが上記差動バスケットに調整可能に連結され得るように、プレート間で摩擦接続が形成され得る。
【0028】
特に、上記接触面は、上記回転軸に沿って、上記ベベルギアのベベル歯と上記部分との間に配置される。
【0029】
特に、上記ベベルギアは、支持要素を介して上記接触面によって支持される。この場合、上記プレートは、上記回転軸に沿って延びる軸方向について、上記支持要素を介して上記差動バスケットによって支持される。特に、上記支持要素及び上記差動バスケットの上記接触面は、上記軸方向についての支持を提供し、上記周方向に沿ったこれらの面の間の相対回転で可能な限り摩擦及び損傷がないように設計される。代わりに、上記支持要素は、(ほぼ)上記ベベルギアに対してだけ回転するように設計もされ得る。特に、上記支持要素は、締まりばめ/圧入によってこのように上記差動バスケットに接して配置され、回転固定方式で上記差動バスケットに接続される。そして、上記ベベルギアは、上記支持要素に対して相対回転するように配置される。
【0030】
特に、上記ベベルギアは、上記支持要素を介して上記差動ケージの上記接触面によって支持される。この場合、上記ベベルギアは、上記ベベルギアの上記第2の外周面の円筒状に設計された支持面(上記対向面)とともに、上記径方向について上記支持要素によって(又は上記支持要素の上記接触面によって)支持される。
【0031】
特に、(内部プレートキャリアとして形成された)上記ベベルギアの上記部分は、上記回転軸に沿って上記ベベル歯と上記接触面との間に配置される。特に、上記作動装置は、上記支持要素を通じて上記プレートを作動する。この目的で、例えば、上記支持要素において上記軸方向に延びる開口が提供され得、これを通って上記作動装置の作動要素が延びる。
【0032】
特に、上記差動バスケット及び/又は上記支持要素の上記接触面は円筒状である。
【0033】
特に、上記差動ケージの上記接触面は、径方向に上記ベベルギアの最大の延長部の外側に配置され、上記最大の延長部は上記径方向について上記ベベルギアの最長の延長部である。これにより、上記差動ギアの組み立てのために、上記ベベルギアを上記軸方向に沿って上記差動バスケットに挿入することができる。
【0034】
特に、上記第1の外周面及び上記ベベルギアの上記内周面は、上記回転軸に沿って相互に隣接配置された2つの重複領域部を有する重複領域を上記回転軸に沿って形成し、少なくとも1つのチャネルが、上記内周面から上記第2の外周面の上記部分まで延びる第1の重複領域部において上記ベベルギアに形成される。特に、上記第1の重複領域部において、複数のチャネルが配置され、これらのチャネルは上記軸方向に沿って及び/又は上記周方向に沿って、相互にオフセット配置される。
【0035】
少なくとも1つのチャネルは、流体を上記クラッチに特に供給する役割を果たす。上記流体は、特に上記クラッチを冷却するために使用される。
【0036】
特に、上記第1出力シャフトと上記ベベルギアとのスプライン接続等の上記形状接続は、第2の重複領域部においてのみ配置される。
【0037】
特に、上記第1の重複領域部は、上記第2の重複領域部よりも大きい直径を有する。
【0038】
特に、上記第1の重複領域部は、上記第1の出力シャフトに沿って上記流体を上記少なくとも1つのチャネルに誘導するために使用される。この目的で、上記出力シャフトと上記ベベルギアの上記内周面との間に空き領域が必要となる。しかし、この空き領域は上記径方向について上記ベベルギアを支持するために要する領域を減少させる。特に、上記第1の重複領域部の上記領域におけるこの支持の減少を補償するため、上記差動バスケットの上記接触面によって支持が提供される。
【0039】
特に、上記出力シャフトのうち上記第1の出力シャフトのみが、クラッチを介して上記差動バスケットに接続可能となる。特に、接続される上記ベベルギアを有する上記第2の出力シャフトは、クラッチ無しの上記差動バスケットに、つまりクラッチ無しで配置される。このため、上記第2の出力シャフトは、上記差動バスケット自体にロック可能とはならない。
【0040】
特に、上記差動ギアは2つの出力シャフトを有する。これにより、1つの出力シャフトのみがトルク伝達方式でクラッチを介して上記差動バスケットに接続され得る。このように上記差動ギアは、1つのクラッチのみを有し、これにより上記2つの出力シャフトは上記差動ギアの上記ベベルギアを介して相互に連結される。上記差動バスケットは駆動シャフトを形成し、この駆動シャフトを介して、上記差動ギアが駆動ユニットに接続される。
【0041】
少なくとも駆動ユニットと、上述の差動ギアとを少なくとも備える、自動車両のための駆動機構がさらに提示される。上記差動ギアは、上記駆動ユニットからのトルクを車軸の2つのホイールに伝達するために提供され、上記駆動ユニットの上記トルクは、上記差動バスケットを介して上記差動ギアに導入され得、且つ各出力シャフトを介してそれぞれのホイールに伝達される。
【0042】
特に、上記差動ギアの上記差動バスケットは駆動シャフトとして設計され、この駆動シャフトを介して上記差動ギアが駆動ユニットに接続され得るか又は接続される。
【0043】
上記差動ギアに関する上記説明は、上記駆動機構にも同様に適用され、逆もまた同様である。
【0044】
また、少なくとも1つの上述の駆動機構及び複数のホイールを有する自動車両が提示され、上記差動ギアは好ましくは上記自動車両の後車軸に接して配置される。
【0045】
特に請求の範囲及びこれらを記載した明細書における不定冠詞(「a」、「an」)の使用は、そのまま解され、数字として解されない。したがって、それに則して導入された用語又は構成要素は、少なくとも1つは存在するが、特に複数存在し得るように理解される。
【0046】
注意事項として、ここで使用される数値(「第一」、「第二」等)は、主に(専ら)複数の類似する対象、寸法又は工程同士を区別するために機能する、つまり、特に、これら対象、変量又は工程の互いの依存関係及び/又は順序を必ずしも特定しない。依存関係及び/又は順序が必要な場合は、その旨がここで明示的に記載されるか、又は具体的に記述された実施形態を検討する際に当業者にとって明らかとなる。構成要素が複数(少なくとも1つ)存在する限りにおいて、これらの構成要素の1つの記載は、これらの構成要素のすべて又は多数にも同様に適用され得るが、このことは必須ではない。
【0047】
本発明及び技術環境は、添付した図面を参照して以下により詳細に説明される。本発明は示された設計の例示によって限定されないことに留意すべきである。特に、明示的に示されない限り、図面で説明された事項の部分的な側面を抽出し、本明細書からの他の事実及び知見と組み合わせることも可能である。特に、示された図面及び特に大小関係は、模式的にのみ示されることに留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】側面断面図で示された駆動機構及び作動ギアを有する自動車両である。
図2】分解斜視図による図1の差動ギアの部分である。
図3】平面図による駆動機構を有する自動車両である。
【0049】
図1では、駆動機構31及び差動ギア1を有する自動車両3を側面断面図で示す。図2では、図1の差動ギア1の部分を分解斜視図で示す。図1から3は、ともに以下で説明される。
【0050】
自動車両3は、駆動機構31及び複数のホイール33を有する。駆動機構31は、駆動ユニット32及び差動ギア1を備える。差動ギア1は、駆動ユニット32からのトルクを車軸2の2つのホイール33に伝達するために提供される。駆動ユニット32のトルクは、駆動シャフト34及び差動バスケット4を介して差動ギア1に導入され得、且つ各出力シャフト5,6を介してそれぞれのホイール33に受け渡され得る。差動ギア1は自動車両3の後車軸2に接して配置される。
【0051】
差動ギア1は2つの出力シャフト5,6を有する。これにより、第1の出力シャフト5のみが、トルク伝達のためにマルチプレートクラッチ8を介して差動バスケット4に接続され得る。このように差動ギア1は、1つのマルチプレートクラッチ8のみを有し、2つの出力シャフト5,6はベベルギア差動ギア1を介して相互に連結される。差動バスケット4は駆動シャフト34を形成し又は駆動シャフト34に接続され、この(さらなる)駆動シャフト34を介して、差動ギア1が駆動ユニット32に接続される。
【0052】
差動ギア1は、差動バスケット4と、共通の回転軸7を有する2つの出力シャフト5,6と、第1の出力シャフト5を差動バスケット4に切り替え可能に接続するための、複数の内部プレート9及び複数の外部プレート10を有するマルチプレートクラッチ8とを備える。第1の出力シャフト5は、回転軸7に沿って延び、且つベベルギア13との形状接続15を第1の出力シャフト5の第1の外周面11及びベベルギア13の内周面12を介して少なくとも周方向14について形成する。ベベルギア13の第2の外周面17の部分16は内部プレートキャリア18として設計され、差動バスケット4は外部プレートキャリア19として設計される。ベベルギア13は、差動バスケット4によって差動バスケット4の接触面20を介して少なくとも径方向21について支持される。
【0053】
接触面20に接触する支持要素23によって支持が提供される。支持要素23は、径方向21においてベベルギア13と差動バスケット4との間に配置される。ベベルギア13は、対向面を介して接触面20を支持要素23に接触させる。支持要素23は、対向面を介して接触面20を差動ケージ4に接触させる。支持要素23は、締まりばめ/圧入による回転固定方式で差動ケージ4に接続される。
【0054】
(差動ケージ4及び支持要素23に接している)接触面20を介した接触によって、周方向14に対して(少なくとも大部分は)摩擦を伴わずに回転可能な、差動ケージ4とベベルギア13との接続が可能となる。これは、ベベルギア13が、差動ギア1の作動中にほぼ損傷なく差動ケージ4に対して回転し得ることを意味する。
【0055】
円筒状の接触面20,25によって、差動ケージ4とベベルギア13との間の支持が提供され、接触面20,25はともに回転可能な接続及び径方向21についての支持を可能にする。円筒状の面20,25は回転軸7に平行に延びる。円筒状の面20,25は、ベベルギア13及び差動バスケット4に加え、追加の支持要素23に接して配される。
【0056】
マルチプレートクラッチ8は、(既知の)作動装置35によって作動され得る。作動装置35は、第1の出力シャフト5に接しつつ、マルチプレートクラッチ8に隣接する回転軸7に沿って配置され、その結果、マルチプレートクラッチ8は作動装置35とベベルギア13との間に配置される。作動装置35を介して、プレート9,10は回転軸7に沿って変位し得、相互に調整可能な摩擦接続を形成する。
【0057】
作動装置35は、ボールを介して軸方向24について支持される2つの拡張ディスクを備える。拡張ディスクの周方向14における相互の回転は、ボールがランプ上に配置されるので、一方の拡張ディスクの軸方向24における変位につながる。拡張ディスクは、ともに第1の出力シャフト5に接して配置され、作動力は、軸方向24について第1の出力シャフト5に固定された一方のディスクによって一方側に吸収され、差動バスケット4によって他方側に吸収される。
【0058】
出力シャフト5,6は、それぞれ差動バスケット4に向かって延び、そこでそれぞれ少なくとも周方向14についてベベルギア13に形状接続される。出力シャフト5,6は、差動バスケット4及び出力シャフト5,6が共通の回転軸7を有するように相互に同軸上に配置される。ベベルギア13は、出力シャフト5,6とともに差動バスケット4内に回転可能に配置される。差動バスケット4内で、出力シャフト5,6又はそれらのベベルギア13はさらなる歯車又はベベルギア13を介して相互に連結される。
【0059】
第1の出力シャフト5は回転軸7に沿って延び、第1の出力シャフト5の第1の外周面11及びベベルギア13の内周面12を介して、スプライン接続によって少なくとも周方向14についてベベルギア13との形状接続15を形成する。ベベルギア13の第2の外周面17の部分16は、内部プレートキャリア18として設計され、差動バスケット4は外部プレートキャリア19として設計される。内部プレート9は、周方向14について内部プレートキャリア18に形状接続される。外部プレート10は、周方向14について外部プレートキャリア19に形状接続される。内部プレート9及び外部プレート10は、(回転軸7に沿って延びる)軸方向24に沿って交互に配置される。軸方向24に沿ってプレート9,10を変位させることによって、第1の出力シャフト5が差動バスケット4に調整可能に連結され得るように、プレート9,10間で摩擦接続が形成され得る。
【0060】
差動バスケット4の接触面20、及び支持要素23の接触面20は、回転軸7に沿って、ベベルギア13のベベル歯22と部分16との間に配置される。
【0061】
ベベルギア13は、支持要素23を介して接触面20によって支持される。この場合、プレート9,10は、回転軸7に沿って延びる軸方向24について、支持要素23を介して差動ケージ4によって支持される。支持要素23は、締まりばめ/圧入によって回転固定方式で差動ケージ4に接続される。このため、出力プレート10と支持要素23との間で相対的な回転はない。ベベルギア13は、ベベルギア13の第2の外周面17の円筒状に設計された支持面25(対向面)とともに、径方向21について支持要素23によって(又は支持要素23の接触面20によって)支持される。
【0062】
差動ケージ4の接触面20は、径方向21にベベルギア13の最大の延長部26の外側に配置され、最大の延長部26は径方向21についてベベルギア13の最長の延長部26である。これにより、差動ギア1の組み立てのために、ベベルギア13を軸方向24に沿って差動バスケット4に挿入することができる。ベベルギア13のこの配置によって、支持部材23と差動ケージ4との間の圧入が形成される。
【0063】
出力シャフト5の第1の外周面11及びベベルギア13の内周面12は、回転軸7に沿って相互に隣接配置された2つの重複領域部28,29を有する重複領域27を回転軸27に沿って形成し、第1の重複領域部28において、複数のチャネル30がベベルギア13に形成され、チャネル30は、内周面12から第2の外周面17の部分16まで延びる。第1の重複領域部28において複数のチャネル30が配置され、それぞれが軸方向24に沿って且つ周方向14に沿って、オフセット配置される。
【0064】
チャネル30は、流体をマルチプレートクラッチ8に供給する役割を果たす。第1の出力シャフト5とベベルギア13との形状接続15は、この場合スプライン接続であり、第2の重複領域部29においてのみ配置される。第1の重複領域部28は、認識可能な程度に第2の重複領域部29よりも大きい直径36を有する。
【0065】
第1の重複領域部28は、第1の出力シャフト5に沿って流体をチャネル30に誘導するために使用される。これにより、第1の出力シャフト5とベベルギア13の内周面12との間に空き領域/隙間が必要となる。しかし、この空き領域は、径方向21についてベベルギア13を支持するために要する領域を減少させる。第1の重複領域部28の領域におけるこの支持の減少を補償するため、差動バスケット4の接触面20によって支持が提供される。
【符号の説明】
【0066】
1 差動ギア
2 車軸
3 自動車両
4 差動バスケット
5 第1の出力シャフト
6 第2の出力シャフト
7 回転軸
8 マルチプレートクラッチ
9 内部プレート
10 外部プレート
11 第1の外周面
12 内周面
13 ベベルギア
14 周方向
15 接続
16 部分
17 第2の外周面
18 内部プレートキャリア
19 外部プレートキャリア
20 接触面
21 径方向
22 ベベル歯
23 支持要素
24 軸方向
25 支持面
26 延長部
27 重複領域
28 第1の重複領域部
29 第2の重複領域部
30 チャネル
31 駆動アセンブリ
32 駆動ユニット
33 ホイール
34 駆動シャフト
35 作動装置
36 直径
図1
図2
図3
【国際調査報告】