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特表2024-523303フォトルミネッセンスレーザ送達ファイバのためのシステム及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】フォトルミネッセンスレーザ送達ファイバのためのシステム及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/24 20060101AFI20240621BHJP
   A61B 1/307 20060101ALI20240621BHJP
   A61B 1/018 20060101ALI20240621BHJP
   G02B 6/04 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
A61B18/24
A61B1/307
A61B1/018 515
G02B6/04 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577238
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(85)【翻訳文提出日】2024-01-30
(86)【国際出願番号】 US2022030926
(87)【国際公開番号】W WO2022265835
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】63/210,387
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591018693
【氏名又は名称】シー・アール・バード・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】C R BARD INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】1 Becton Drive Franklin Lakes NEW JERSEY 07417 UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】100107249
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 恭久
(72)【発明者】
【氏名】フランクリン、ジェフ イー.
【テーマコード(参考)】
2H250
4C026
4C161
【Fターム(参考)】
2H250CA02
2H250CA08
2H250CA62
2H250CD18
2H250CZ08
4C026AA02
4C026AA04
4C026AA06
4C026BB07
4C026FF16
4C026FF37
4C026HH02
4C026HH03
4C161AA15
4C161GG15
(57)【要約】
外側ジャケットと、第1のコア及び第2のコアを含む複数のコアとを含む光ファイバケーブルが開示される。複数のチャネルが、第2のコアから外側ジャケットに向かって外向きに延びることができる。外側ジャケットは、第2のコアに沿って伝搬する光からエネルギーを吸収してフォトルミネッセンスを引き起こすように構成されたフォトルミネッセンス材料でドープされた材料を含むことができる。光ファイバケーブルは、第1のコア及び第2のコア並びに複数のチャネルを取り囲むクラッドを含むことができる。第1のコアは、実質的に1940ナノメートルの波長を有する第1のレーザビームを伝搬することができ、第2のコア及び複数のチャネルは、360~830ナノメートルの範囲内の波長を有する第2のレーザビームを伝搬することができる。光ファイバケーブルに光学的に結合された第1の医療器具を含む医療を提供するためのシステムがまた開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバケーブルであって、
外側ジャケットと、
第1のコア及び第2のコアを含む複数のコアと、を備え、複数のチャネルが、前記第2のコアから前記外側ジャケットに向かって外向きに延び、前記外側ジャケットが、前記第2のコアに沿って伝搬する光からエネルギーを吸収してフォトルミネッセンスを引き起こすように構成されたフォトルミネッセンス材料でドープされた材料から構成される、光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記第1のコアを取り囲む第1のクラッド層と、
前記第2のコア及び前記複数のチャネルを取り囲む第2のクラッド層と、をさらに備える、請求項1に記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記第1のコアは、第1のレーザビームの伝搬のために構成される、請求項1に記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記第1のレーザビームは、実質的に1940ナノメートルの波長を有する、請求項3に記載の光ファイバケーブル。
【請求項5】
前記第2のコア及び前記複数のチャネルは、第2のレーザビームの伝搬のために構成される、請求項1に記載の光ファイバケーブル。
【請求項6】
前記第2のレーザビームは、360~830ナノメートルの範囲内の波長を有する、請求項5に記載の光ファイバケーブル。
【請求項7】
前記第2のレーザビームの波長は、実質的に532ナノメートルである、請求項6に記載の光ファイバケーブル。
【請求項8】
前記第2のレーザビームの波長は、実質的に360ナノメートルである、請求項6に記載の光ファイバケーブル。
【請求項9】
前記第2のレーザビームは、0.01~0.001ワットの範囲内の出力レベルで動作する、請求項5~8のいずれか一項に記載の光ファイバケーブル。
【請求項10】
少なくとも前記第1のコアを取り囲むクラッドと前記外側ジャケットとの間に配置された緩衝層をさらに備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の光ファイバケーブル。
【請求項11】
医療を提供するためのシステムであって、
第1のレーザ光源及び第2レーザ光源を含む複数のレーザ光源を含む第1の制御モジュールを備える第1の医療器具と、
前記第1の医療器具と光学的に結合するように構成された光ファイバケーブルと、を備え、前記光ファイバケーブルは、
外側ジャケットと、
第1のコア及び第2のコアを含む複数のコアと、を備え、複数のチャネルが、前記第2のコアから前記外側ジャケットに向かって外向きに延び、前記外側ジャケットが、前記第2のコアに沿って伝搬する光からエネルギーを吸収してフォトルミネッセンスを引き起こすように構成されたフォトルミネッセンス材料でドープされた材料から構成される、システム。
【請求項12】
前記光ファイバケーブルは、
前記第1のコアを取り囲む第1のクラッド層と、
前記第2のコア及び前記複数のチャネルを取り囲む第2のクラッド層と、をさらに備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1のコアは、前記第1の光源からの第1のレーザビームを受けて伝搬するように構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1のレーザビームは、実質的に1940ナノメートルの波長を有する、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記第2のコア及び前記複数のチャネルは、前記第2の光源からの第2のレーザビームを受けて伝搬する、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
前記第2のレーザビームは、360~830ナノメートルの範囲内の波長を有する、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記第2のレーザビームの波長は、実質的に532ナノメートルである、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記第2のレーザビームの波長は、実質的に360ナノメートルである、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記第2のレーザビームは、0.01~0.001ワットの範囲内の出力レベルで動作する、請求項15~18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記光ファイバケーブルは、
少なくとも前記第1のコアを取り囲むクラッドと前記外側ジャケットとの間に配置された緩衝層をさらに備える、請求項11~19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記第1の制御モジュールと動作可能に結合された第1のオペレータインターフェースをさらに備え、前記第1のオペレータインターフェースは、
前記第1の医療器具の複数の動作パラメータを規定し、
医療の提供に合わせて、前記第1の医療器具を選択的に起動及び停止させる、ように構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項22】
第2の医療器具をさらに備え、前記第2の医療器具は、
第2の制御モジュールと、
前記第2の制御モジュールと結合された第2の患者インターフェース部材であって、前記患者インターフェース部材は、患者の体に係合するように構成された遠位端を備える、第2の患者インターフェース部材と、
前記患者インターフェース部材の近位端で前記患者インターフェース部材に取り付けられたハンドルと、を備え、
前記ハンドルは、オペレータの手によって把持されるように構成され、
前記ハンドルの操作は、前記遠位端の動作を引き起こし、
前記ハンドルは、第2のオペレータインターフェースを備え、前記第2のオペレータインターフェースは、前記第2の医療器具の複数の動作パラメータのサブセットを規定するように構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項23】
使用時に、前記光ファイバケーブルは患者インターフェース部材と結合される、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記第2の医療器具は、内視鏡である、請求項22又は23に記載のシステム。
【請求項25】
前記第2の医療器具は、尿管鏡である、請求項22~24のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項26】
前記第1のオペレータインターフェースは、前記複数の動作パラメータを規定するように構成されたグラフィカルユーザインターフェースを含む、請求項21~25のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項27】
前記第1のオペレータインターフェースは、前記第1の医療器具の選択的な起動及び停止のために構成されたフットペダルインターフェースを含む、請求項21~26のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フォトルミネッセンスレーザ送達ファイバのためのシステム及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
適切な無菌操作は、臨床及び外科的環境における感染予防の最も基本的かつ本質的な原理の1つである。滅菌野の形成及び維持は、無菌操作の本質的な要素である。滅菌野は、患者の手術部位の周囲と、治療中に必要とされる滅菌の器具及び他のアイテムを保持するスタンド上とに滅菌の外科用ドレープを配置することによって形成される領域である。医療従事者は、滅菌野に入るために、適切な滅菌の手術着を着用する。滅菌された物体及び人員のみが、滅菌野内に入ることが許可され得る。滅菌野が処置部位の周囲に形成されたとき、床上のアイテム等、ドレープで覆われたクライアントの高さより下にあるアイテムは、滅菌野の外側にあり、滅菌状態ではない。滅菌のアイテムのみが潜在的な感染因子を含まず、滅菌の物体が、滅菌野の外側の機器、表面、又は人等の非滅菌の物体と接触すると、その物体はもはや滅菌状態でなくなる。例えば、医療従事者が手袋をはめた手で滅菌野の外側の機器に触れた場合、その手はもはや滅菌状態ではなくなり、したがって、もはや滅菌野内に入ることは許可されない。
【0003】
レーザエネルギーは、泌尿器科、神経科、耳鼻咽喉科、眼科、消化器科、循環器科、及び婦人科を含む、多種多様な医療処置において使用される。様々な処置、及び同じ処置の異なる部分であっても、異なるレベル及び強度のレーザエネルギーを必要とすることが多く、レーザエネルギーは、患者の組織又は他の肉体物質を焼灼、切除、破壊、又は別様に治療するために送達される。一般的に、ユーザは、ボタン、ダイヤル、又はタッチスクリーンを有するグラフィカルユーザインターフェースを通して、手動ベースの制御モジュール上で設定を入力又は調整することによって、レーザエネルギーの設定を制御及び/又は修正し得る。しかしながら、外科的環境では、ユーザは、通常、少なくとも1つの医療デバイスを手で持っており、制御モジュールが手の届く範囲内にない場合があるため、処置中に必要な時間及び/又は医療専門家の数が増加し得る。さらに、処置も実行している間に滅菌野の外側の構成要素(例えば、制御モジュール)に触れることで、滅菌性及び清潔さに問題が生じる。ユーザエラーの可能性も高まり、処置をさらに複雑化させて長引かせ、患者をより大きなリスクにさらすことになる。
【0004】
レーザエネルギーは、多くの場合、1つ以上のレーザ構成要素を収容し得る制御モジュールにおいて生成され、レーザエネルギーは、制御モジュールから遠位点まで伝搬し、この遠位点は、1つ以上の光ファイバに沿った患者の血管系内に位置し得る。例えば、送達ファイバは、制御モジュールに光学的に結合し、生成されたレーザエネルギーを受け取り、レーザエネルギーが、患者の血管系内、例えば、カテーテルの作業チャネル(管腔)内に挿入可能であり得る送達ファイバに沿って伝搬することを可能にする。手術台に対する制御モジュールの配置は変化する可能性があるため、送達ファイバの長さは数メートル(例えば、2、3、5メートルなど)になることがある。したがって、送達ファイバルーチン(routine)の一部は、地面に接触しており、手術室内にいる看護師、医師、又は他の医療スタッフの歩行経路内に横たわる可能性がある。送達ファイバは非常に小さい場合があるので(例えば、サイズが毛髪と同様であるか、又はそれよりも小さい)、特に手術室の照明が暗くなっているときには、見ることが難しい場合がある。これにより、送達ファイバは、その長さに沿ったレーザエネルギーの伝搬を可能にし得る一方でつまずく危険物となり得るため、医療専門家の歩行経路内で送達ファイバが地面に接触すると、危険な環境が生じる。
【0005】
本明細書に開示されるシステム、デバイス、及び方法は、少なくとも、改良された送達ファイバを提供することによって、上記された不都合な点及びリスクのうちのいくつかを克服することに役立ち得る。
【発明の概要】
【0006】
簡単に要約すると、本明細書に開示されるのは、光ファイバケーブルであって、この光ファイバケーブルは、外側ジャケットと、第1のコア及び第2のコアを含む複数のコアとを備え、複数のチャネルが、第2のコアから外側ジャケットに向かって外向きに延び、外側ジャケットが、第2のコアに沿って伝搬する光からエネルギーを吸収してフォトルミネッセンスを引き起こすように構成されたフォトルミネッセンス材料でドープされた材料から構成される。光ファイバケーブルは、第1のコアを取り囲む第1のクラッド層と、第2のコア及び複数のチャネルを取り囲む第2のクラッド層とをさらに備える。第1のコアは、第1のレーザビームの伝搬のために構成され、第1のレーザビームは、実質的に1940ナノメートルの波長を有し得る。第2のコア及び複数のチャネルは、第2のレーザビームの伝搬のために構成され、第2のレーザビームは、360~830ナノメートルの範囲内の波長を有し、いくつかの実施形態では、実質的に532ナノメートル、他の実施形態では、実質的に360ナノメートルの波長を含む。さらに、第2のレーザビームは、0.01~0.001ワットの範囲内の出力レベルで動作してもよい。光ファイバケーブルはまた、少なくとも第1のコアを取り囲むクラッドと外側ジャケットとの間に配置された緩衝層を含む。
【0007】
また、本明細書に開示されるのは、医療を提供するためのシステムであって、このシステムは、第1のレーザ光源及び第2レーザ光源を含む複数のレーザ光源を含む第1の制御モジュールを含む第1の医療器具と、第1の医療器具及び光ファイバケーブルと光学的に結合するように構成された光ファイバケーブルとを備える。
【0008】
本システムは、第1の制御モジュールと動作可能に結合された第1のオペレータインターフェースを含んでもよく、この第1のオペレータインターフェースは、第1の医療器具の複数の動作パラメータを規定し、医療の提供に合わせて、第1の医療器具を選択的に起動及び停止させるように構成される。本システムは、第2の制御モジュールと、第2の制御モジュールと結合された第2の患者インターフェース部材であって、患者インターフェース部材は患者の体に係合するように構成された遠位端を備える、第2の患者インターフェースと、患者インターフェース部材の近位端で患者インターフェース部材に取り付けられたハンドルとを備える第2の医療器具を含んでもよく、ハンドルは、オペレータの手によって把持されるように構成され、ハンドルの操作は、遠位端の動作を引き起こし、ハンドルは、第2のオペレータインターフェースを含み、第2のオペレータインターフェースは、第2の医療器具の複数の動作パラメータのサブセットを規定するように構成される。
【0009】
使用時に、光ファイバケーブルは患者インターフェース部材と結合される。第2の医療器具は、内視鏡又は尿管鏡であってもよい。加えて、第1のオペレータインターフェースは、複数の動作パラメータを規定するように構成されたグラフィカルユーザインターフェース、及び/又は第1の医療器具の選択的な起動及び停止のために構成されたフットペダルインターフェースを含んでもよい。
【0010】
本明細書で提供される概念のこれらの特徴及び他の特徴は、当業者には、このような概念の特定の実施形態をより詳細に開示する、添付図面及び以下の説明を見ることで明らかとなるであろう。
【0011】
本開示の実施形態は、添付図面の図において限定としてではなく例として示されており、類似の参照符号は同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】いくつかの実施形態による、医療環境内にある医療システムの現行の実施形態を示す。
図2】いくつかの実施形態による、医療環境内にある改良された医療システムの実施形態を示す。
図3A】いくつかの実施形態による、内部に配置されたファイバ送達ラインを有する図2の医療システムの尿管鏡システムの部分の第1の実施形態を示す。
図3B】いくつかの実施形態による、図3Aに見られるような尿管鏡システムのシャフトの遠位端の詳細図である。
図4A】いくつかの実施形態による、動作中の図1のファイバ送達ラインの遠位端の一実施形態の図を示す。
図4B】いくつかの実施形態による、動作中の図1のファイバ送達ラインの遠位端の一実施形態の図を示す。
図5A】いくつかの実施形態による、図2の線5A-5Aに沿った送達ファイバの一実施形態の第1の断面図である。
図5B】いくつかの実施形態による、図5Aの線5B-5Bに沿った送達ファイバの一実施形態の第2の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
いくつかの特定の実施形態をより詳細に開示する前に、本明細書に開示される特定の実施形態は、本明細書に提供される概念の範囲を限定するものではないことを理解されたい。本明細書に開示される特定の実施形態は、特定の実施形態から容易に分離することができる特徴であって、任意選択的に、本明細書に開示される他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴と組み合わせる又は置換することができる特徴を有し得ることも理解されたい。
【0014】
本明細書で使用される用語に関して、用語は、いくつかの特定の実施形態を説明するためのものであり、用語は、本明細書に提供される概念の範囲を限定するものではないことも理解されたい。序数(例えば、第1、第2、第3等)は、全般的に、特徴又は工程のグループ内の異なる特徴若しくは工程を区別又は識別するために使用され、連続的又は数値的な限定を提供するものではない。例えば、「第1の」、「第2の」、及び「第3の」特徴又は工程は、その順序で必ずしも現れる必要はなく、そのような特徴又は工程を含む特定の実施形態は、3つの特徴又は工程に必ずしも限定される必要はない。例えば「左」、「右」、「上」、「下」、「前」、「後」等のラベルは、便宜的に使用されるものであり、例えば、任意の特定の固定された位置、向き、又は方向を示唆することを意図するものではない。その代わりに、そのようなラベルは、例えば、相対的な位置、向き、又は方向を反映するように使用される。単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈で別段の明確な指示のない限り、複数形の参照を含む。
【0015】
方向を示す用語「近位」及び「遠位」は、本明細書では、医療デバイス上の反対の位置を指すために使用される。デバイスの近位端は、デバイスがエンドユーザによって使用されているときにエンドユーザに最も近いデバイスの端部として定義される。遠位端は、デバイスの長手方向に沿って近位端と反対側の端部、又はエンドユーザから最も遠い端部である。
【0016】
本明細書で開示される任意の方法は、記載された方法を実行するための1つ以上のステップ又はアクションを含む。方法ステップ及び/又はアクションは、互いに交換可能であり得る。換言すれば、ステップ又はアクションの特定の順序が実施形態の適切な動作のために必要とされない限り、特定のステップ及び/又はアクションの順序及び/又は使用が修正されてもよい。さらに、本明細書に記載される方法のサブルーチン又は一部のみが、本開示の範囲内の別個の方法であってもよい。別の言い方をすれば、いくつかの方法は、より詳細な方法に記載されたステップの一部分のみを含んでもよい。
【0017】
図1は、医療環境内に示す、医療システム100の現行の実施形態を示す。滅菌野60内で患者50に侵襲的治療を行っているオペレータ30(例えば、医師)が示されている。システム100は、2つの別個の医療器具(又は、各々が複数の構成要素を含み得るので、2つの別個の器具システム)、すなわち、第1の医療器具システム110及び第2の医療器具システム150を含む。治療は、2つの医療器具の同時動作が治療の結果を向上させるようなものである。図示の現行の実施形態では、第1の医療器具110は、泌尿器科手術用レーザ器具(以下、レーザシステム110と呼ぶ)であり、第2の医療器具システム150は、尿管鏡システム(以下、尿管鏡システム150と呼ぶ)である。
【0018】
レーザシステム110は、可撓性レーザシャフト114(送達ファイバケーブル、又は送達ファイバ)と動作可能に結合されたレーザ制御モジュール111を含む。制御モジュール111は、それを介してオペレータ30又はアシスタントがレーザシステム110の複数の動作パラメータを規定することができるグラフィカルユーザインターフェース(Graphical User Interface、GUI)112を含む。さらに、制御モジュール111は、以下に記載するロジック130並びに1つ以上の光源113(例えば、固体レーザ、Ho:YAGレーザ、ファイバレーザなどのレーザ)(「レーザ113」)を含む。
【0019】
送達ファイバ114は、レーザ光がレーザ113からそれに沿って伝搬する1つ以上のコア(例えば、ガラス又はプラスチック)と、各コアを取り囲むクラッドであって、コアのガラス又はプラスチックよりも低い屈折率を有する材料からなる1つ以上の層から形成されるクラッドと、任意選択の強化層(例えば、KEVLAR(登録商標)などの耐熱性合成材料から形成される)と、外側ジャケット(例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルジフルオライド、低煙ゼロハロゲンなどのうちの1つ以上から構成される)とを含む。送達ファイバ114は、コアに沿って伝搬するレーザ光が周囲の層(例えば、クラッド、強化層、外側ジャケット)によってコア内に閉じ込められる従来の送達ファイバケーブルであってもよい。器具150の動作中、レーザ113は、以下で説明するペダルインターフェース122のペダル123、124の作動に従って、起動されてレーザビームを「オン」にし、停止されてレーザビームを「オフ」にする。
【0020】
レーザシステム110は、左フットペダル123と、右フットペダル124と、状態ボタン125と、を含むフットペダルインターフェース122インターフェースを含む。フットペダルインターフェース122は、フットペダル接続ワイヤ116を介して制御モジュール111と結合される。図1に示すように、レーザ制御モジュール111及びフットペダルインターフェース122は、滅菌野60の外側に配置される。送達ファイバ114は、滅菌野60の境界を横切って延びている。さらに、送達ファイバ114の一部分は、オペレータ30の足の近くの地面に配置される。特定の実施形態では、送達ファイバ114は、コイル状であってもよく、オペレータ30及び/又は同様に手術空間内にいる他の医療従事者にとってつまずく危険物となり得る。例えば、看護師は、患者50の手当てをするために、システム110及び150が配置されているテーブルと手術台との間で手術台の近くに立つ必要がある場合がある。結果として、図示されるような送達ファイバ114は、そのサイズ(例えば、直径が小さい)のために看護師が送達ファイバ114を見るのが難しい可能性があるため、看護師にとってつまずく危険物となり得る。
【0021】
制御モジュール111は、以下の表1に示す状態図に関連して説明するようなロジック130を含む。レーザシステム110は一般的に、作動状態及び待機状態に置かれ得る。状態ボタン125を押すと、レーザシステム110が作動状態と待機状態との間で切り替えられる。レーザシステム110が待機状態に置かれているとき、左及び右フットペダル123、124は無効にされる。レーザシステム110が作動状態に置かれているとき、左フットペダルを押すと、左ペダルのパラメータ設定セットに従ってレーザ113が発射され、右フットペダルを押すと、右ペダルのパラメータ設定セットに従ってレーザ113が発射される。
【0022】
【表1】
【0023】
図1をさらに参照すると、尿管鏡システム150は、患者50の尿路内に挿入するように構成された細長い可撓性シャフト170と動作可能に結合された尿管鏡制御モジュール151を含む。シャフト170は、シャフト170の遠位端にカメラ(図示せず)を含む。動作中、カメラによって取得された画像は、尿管鏡制御モジュール151と結合されたディスプレイ105上に描画される。シャフト170に沿って作業チャネル173が延び、シャフト170の近位端において、アクセスポート177が作業チャネル173へのアクセスを提供する。
【0024】
シャフト170の近位端において、ハンドル175がシャフト170に結合される。ハンドル175は、使用中にシャフト170を操作するように構成される。ハンドル175は、アクチュエータ176の操作がシャフト170の遠位部分を関節運動させるように、シャフト170の関節運動遠位部分(図示せず)と動作可能に結合された操向アクチュエータ176を含む。ワイヤ155が、ハンドル175を尿管鏡制御モジュール151と結合させる。図1に示すように、尿管鏡制御モジュール151及びディスプレイ105は、滅菌野60の外側に配置される。ハンドル175及びシャフト170は、滅菌野内に配置され、ワイヤ155は、滅菌野60の境界を横切って延びる。図1に示すように、手31を含むオペレータ30の上半身が滅菌野60内に配置され、足を含むオペレータ30の下半身が滅菌野60の外側に配置される。
【0025】
治療中、尿管鏡システム150の可撓性シャフト170は、治療位置まで患者50の尿路内に挿入される。可撓性送達ファイバ114は、アクセスポート177を介してシャフト170の作業チャネル173内に挿入される。尿管鏡制御モジュール151は、シャフト170の遠位端にあるカメラを介して取得されたとおりの画像をディスプレイ105上に描画する。画像は、治療位置における組織及び他の物体(例えば、腎臓結石)を示す。オペレータ30は、尿管鏡システム150によって取得され表示される画像を見ながら、レーザシステム110の操作を介して治療を行う。
【0026】
治療処置は、典型的には、取得された画像によって確認されたとおりの所望の位置に、送達ファイバ114の作業遠位端を位置決めすることを含み得る。送達ファイバ114の操作は、典型的には、尿管鏡システム150のシャフト170の操作を介して行われる。より具体的には、オペレータ30は、ハンドル175を把持して操作し、シャフト170の遠位端を位置決めすることによって、作業チャネル173内に配置された送達ファイバ114の遠位端を位置決めする。オペレータ30は、シャフト170の挿入深さを調整することができ、シャフト170の回転位置を調整することもできる。オペレータ30はまた、操向アクチュエータ176を操作して、シャフト170の遠位部分を関節運動させ得る。シャフト170の遠位部分の関節運動は、レーザシステム110の遠位端を切除又は手術するための所望の対象物に効果的に向けることができる。
【0027】
レーザシステム110の遠位端の所望の位置及び向きを確立した後、オペレータ30は、治療に従って、左フットペダル123又は右フットペダル124を押してレーザ113を発射し得る。場合によっては、治療の開始後に、レーザシステム110の1つ以上の動作パラメータを調整することが望ましいこともあり得る。このような場合、オペレータ30又はアシスタントがGUI112に触れることが必要となり得る。標準的な無菌操作は、オペレータの上半身(すなわち、滅菌野60内の部分)が、治療の間中、滅菌野60内に留まることを必要とする。よって、典型的な実践は、パラメータ調整を行うようにアシスタントに指示することを含み、その後、オペレータ30は、GUI112を見ることによってパラメータ調整を確認することができる。
【0028】
図2は、いくつかの実施形態による、医療環境内にある改良された医療システムの実施形態を示す。図2の多くの態様及び構成要素は、図1の図示から変わっていない。しかしながら、医療システム200は、レーザシステム210及び尿管鏡システム150を含む。レーザシステム210は、少なくとも送達ファイバ114に比べて改善された送達ファイバ214に関して、図1のシステム110と異なる。
【0029】
レーザシステム210は、可撓性レーザシャフト214(送達ファイバケーブル、又は送達ファイバ)と動作可能に結合されたレーザ制御モジュール111を含む。送達ファイバ214は、少なくとも、レーザ光がレーザ113からそれに沿って伝搬する1つ以上のコア(例えば、ガラス又はプラスチック)と、各コアを取り囲むクラッドであって、コアのガラス又はプラスチックよりも低い屈折率を有する材料からなる1つ以上の層から形成されるクラッドと、任意選択の強化層(例えば、KEVLAR(登録商標)などの耐熱性合成材料から形成される)と、外側ジャケットとを含む。加えて、送達ファイバ214は、コアから外側ジャケットの内面まで外向きに延びている複数のチャネル(外向きに延びているチャネル、又はチャネル)を含み、外向きに延びているチャネルは、レーザ光がコアから外側ジャケットの内面に向かって遠位方向に伝搬することを可能にする。
【0030】
外側ジャケットは、ポリマー、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルジフルオライド、低煙ゼロハロゲンなどのうちの1つ以上から構成されてもよく、対応するものに沿って伝搬するレーザビームからの光子(光の粒子)を吸収して蓄積するように構成されたフォトルミネッセンス材料でドープされてもよい。蓄積されたエネルギーは可視光として放出され、「光る(glowing)」印象を作り出す。結果として、送達ファイバ214は、オペレータ30及び手術室内の任意の他の医療従事者に可視となる、光る印象を作り出すため、送達ファイバ214は、送達ファイバ114を上回る技術的改良を提供する。これにより、人が送達ファイバ214につまずいたりこれを踏みつけたりする可能性が低減されることになる。
【0031】
いくつかの実施形態では、図5A図5Bに示され、以下で説明されるように、送達ファイバ214は、2つのコア、すなわち、第1のレーザビーム(例えば、作業ビーム)を伝搬するように構成された第1のコアと、第2のレーザビーム(例えば、照準ビーム)を伝搬するように構成された第2のコアとを含んでもよい。いくつかの実施形態では、照準ビームは、360ナノメートル(nm)~830nmの範囲内の波長を有し、人間の目に「可視」であってもよい。いくつかの特定の実施形態では、照準ビームは、約532nmの波長を有する「緑色」として可視であってもよい。他の実施形態では、照準ビームは、約650nmの波長を有する「赤色」として可視であってもよい。いくつかの実施形態では、作業ビームは、電磁エネルギーの中赤外線帯域における水の吸収ピークに一致する1940nmの波長を有し、人間の目には不可視であってもよい。
【0032】
図3Aは、いくつかの実施形態による、内部にファイバ送達ラインが配置された図2の医療システムの尿管鏡システムの部分の第1の実施形態を示す。特に、図3Aは、配備され、部分的にシャフト170内に配置された送達ファイバ214を示し、送達ファイバ214は、作業チャネル308(図3B)に進入して、そこを通って前進してもよい。加えて、図3Aは、可視光を照射する送達ファイバ214の外側ジャケットを示す。
【0033】
図3Bは、いくつかの実施形態による、図3Aに見られるような尿管鏡システムのシャフトの遠位部分300の詳細図である。シャフト170の遠位部分は、複数のチャネル302、304、306、308を含んでもよい。様々な実施形態において、チャネル302、304、306は、シャフト170のメーカー及びモデルに基づいて様々に異なる機能を呈してもよい。例えば、シャフト170のいくつかの実施形態では、チャネル302内に光学カメラを配備し、チャネル304、306の各々の内部に光源を配備してもよく、チャネル308は、アクセスポート170と流体連通した作業チャネルとして構成される。他の実施形態では、シャフト170は、例えば、吸引又は灌注のために利用され得る複数の作業チャネルを含んでもよい。
【0034】
図3Bはまた、送達ファイバ214の遠位先端310から遠位方向に伝搬するレーザビーム312A~312Bを示す。図示された実施形態では、送達ファイバ214は、2つのコアを含み、第1のコアは、第1のレーザビーム312A(例えば、作業ビーム)を伝搬するように構成され、第2のコアは、第2のレーザビーム312B(例えば、照準ビーム)を伝搬するように構成される。
【0035】
図4A図4Bは、いくつかの実施形態による、動作中の図1のファイバ送達ラインの遠位端の一実施形態の図を示す。図4A図4Bの実施形態に見られるように、第1のコアが、作業ビーム312Aを伝搬するように構成されてもよく、一方で、第2のコアが、照準ビーム312Bを伝搬するように構成されてもよい。
【0036】
図5Aは、いくつかの実施形態による、図2の線5A-5Aに沿った送達ファイバの一実施形態の第1の断面図である。送達ファイバ214の断面図は、複数のコア、すなわち、作業ビーム312Aを伝搬するように構成された第1のコア508と、照準ビーム312Bを伝搬するように構成された第2のコアとを含む一実施形態を示す。図5Aは、第1のコア508が、クラッド510によって完全に取り囲まれ、クラッド510が、コーティング又は緩衝層504によってさらに取り囲まれていることを示す。加えて、第2のコア500は、クラッド502によって部分的に取り囲まれているように図示されており、クラッド502もまた、コーティング又は緩衝層504によって取り囲まれている。外側ジャケット512が、コーティング又は緩衝層504を取り囲んでいる。
【0037】
加えて、図5Aは、コア500から外向きに延びている複数のチャネル506~506(ただし、様々な実施形態において、代替的個数のチャネルが利用され得る)を示しており、各チャネルもまたクラッド502によって取り囲まれている。結果として、少量の照準ビーム312Bが、コア500から外側ジャケット512の内面に向かって外向きに伝搬し、外側ジャケット512の内面が、照準ビーム312Bのエネルギー(例えば、光子)の一部を吸収して、外側ジャケット512に可視光(例えば、「グロー(glow)」)を放出させる。図5Bは、いくつかの実施形態による、図5Aの線5B-5Bに沿った図2のファイバ送達の実施形態の第2の断面図である。図5Bは、チャネル506~506(チャネル506は、この断面図では見えない)に沿って伝搬する照準ビーム312Bを示す。
【0038】
とりわけ、少なくともいくつかの実施形態では、外側ジャケット512から放出される可視光514は、フォトルミネッセンスを引き起こす照準ビーム312Bと外側ジャケット512との相互作用に基づいている。したがって、図5A図5Bに示す実施形態では、照準ビームは、人間の目に可視(例えば、360ナノメートル(nm)~830nmの範囲内の波長を有する)であってもよく、いくつかの特定の実施形態では、照準ビームは、約532nmの波長を有する「緑色」として、又は約650nmの波長を有する「赤色」として可視であってもよい。このような実施形態では、作業ビーム312Aは、人間の目には不可視(例えば、約1940nmの波長を有する、又はより広く1940nmの例えば+/-50nmの閾値範囲内の波長を有する)であってもよい。いくつかの実施形態では、照準ビームは、非常に低レベルの電力(例えば、0.01~0.001ワット(W)の範囲内、又は実質的に0.001W)で動作してもよい。
【0039】
このような実施形態は、作業ビームが非常に強力であるため、クラッド、任意選択のコーティング又は緩衝層、及び外側ジャケットを通して可視となる(例えば、180Wで動作する、532nmの波長を有する作業ビーム)、人間の目に可視である波長を有する高出力作業ビームを単に提供することとは異なる。
【0040】
いくつかの特定の実施形態が本明細書で開示されており、それら特定の実施形態が、ある程度詳細に開示されているが、それら特定の実施形態が、本明細書で提供される概念の範囲を限定することは意図されていない。更なる適合及び/又は修正が、当業者には明らかとなる可能性があり、より広範な態様においては、これらの適合及び/又は修正も同様に包含される。したがって、本明細書で提供される概念の範囲から逸脱することなく、本明細書で開示される特定の実施形態からの展開を実施することができる。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
【国際調査報告】