(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】サブミクロン粒子
(51)【国際特許分類】
A61K 9/50 20060101AFI20240621BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240621BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240621BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240621BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240621BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240621BHJP
A61K 47/16 20060101ALI20240621BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240621BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240621BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240621BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240621BHJP
【FI】
A61K9/50
A61P37/04
A61K39/00 H
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/38
A61K47/16
A61K31/7088
A61K48/00
A61K9/127
A61K47/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577253
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 GB2022051493
(87)【国際公開番号】W WO2022263808
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519340400
【氏名又は名称】インペリアル・カレッジ・イノベーションズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IMPERIAL COLLEGE INNOVATIONS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ロンジュン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シュハン
(72)【発明者】
【氏名】シャトック,ロビン
(72)【発明者】
【氏名】ブラックニー,アンナ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,イファン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA61
4C076AA95
4C076CC06
4C076DD38
4C076DD67
4C076EE24
4C076EE30
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4C076GG01
4C084AA13
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4C085AA03
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4C086AA01
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA24
4C086MA38
4C086NA13
4C086ZB09
(57)【要約】
本発明は、ペイロード分子と、両親媒性コポリマーを含む外層によって取り囲まれた脂質構造とを含むサブミクロン粒子に関する。本発明は、サブミクロン粒子を製造する方法に及ぶ。本発明はまた、サブミクロン粒子を含む医薬組成物およびワクチン、ならびにそれらの医学的使用も包含する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペイロード分子と、両親媒性コポリマーを含む外層によって取り囲まれた脂質構造とを含む、サブミクロン粒子。
【請求項2】
1μm未満の最大寸法を有する、請求項1に記載のサブミクロン粒子。
【請求項3】
前記ペイロード分子が、生体分子および/または活性医薬成分(API)である、請求項1または請求項2に記載のサブミクロン粒子。
【請求項4】
前記生体分子が核酸であり、前記核酸がDNA、RNA、またはDNA/RNAハイブリッド配列である、請求項3に記載のサブミクロン粒子。
【請求項5】
前記RNAが、自己増幅RNA(saRNA)またはメッセンジャーRNA(mRNA)である、請求項4に記載のサブミクロン粒子。
【請求項6】
複数の脂質構造を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のサブミクロン粒子。
【請求項7】
前記脂質構造が、脂質ナノ粒子またはリポソームであり、好ましくは脂質ナノ粒子である、請求項1~6のいずれか一項に記載のサブミクロン粒子。
【請求項8】
脂質構造が、カチオン性脂質またはイオン化可能脂質を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のサブミクロン粒子。
【請求項9】
1:50~1,000:1、1:10~500:1、1:5~250:1、1:2~100:1、1:1~50:1、2:1~40:1、5:1~30:1、8:1~28:1、10:1~26:1、12:1~24:1、14:1~22:1、または16:1~20:1のN/Pモル比を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のサブミクロン粒子。
【請求項10】
前記両親媒性コポリマー対前記ペイロード分子の重量比が、5:1~1000:1、10:1~500:1、20:1~250:1、30:1~200:1、40:1~150:1、50:1~125:1、55:1~100:1、または60:1~85:1である、請求項1~9のいずれか一項に記載のサブミクロン粒子。
【請求項11】
前記両親媒性コポリマーが、少なくとも1つの親水性部分および少なくとも1つの疎水性部分を含み、前記親水性部分が、前記両親媒性コポリマーの5~60重量%を構成し、前記疎水性部分が、前記両親媒性コポリマーの40~95%を構成する、請求項1~10のいずれか一項に記載のサブミクロン粒子。
【請求項12】
前記両親媒性コポリマーが、1,000~100,000Daの分子量を有し得る、請求項1~11のいずれか一項に記載のサブミクロン粒子。
【請求項13】
前記両親媒性コポリマー対前記カチオン性脂質またはイオン化可能脂質の重量比が、1:10~50:1、1:8~20:1、1:6~15:1、1:4~10:1、1:2~8:1、1:1.5~6:1、1:1~5.5:1、1.5:1~5:1、1.75:1~4.5:1、2:1~4:1、2.2:1~3.5:1、2.4:1~3:1、または2.5:1~2.7:1である、請求項1~12のいずれか一項に記載のサブミクロン粒子。
【請求項14】
少なくとも1つの安定化分子をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のサブミクロン粒子。
【請求項15】
少なくとも1つの安定化分子が、前記両親媒性コポリマーを含む前記外層によって取り囲まれてもよい、請求項14に記載のサブミクロン粒子。
【請求項16】
前記少なくとも1つの安定化分子対前記ペイロード分子の重量比が、1:1~100,000:1、2:1~50,000:1、4:1~10,000:1、6:1~5,000:1、8:1~1,000:1、10:1~500:1、20:1~400:1、30:1~350:1、または40:1~300:1である、請求項14または請求項15に記載のサブミクロン粒子。
【請求項17】
少なくとも1つの安定化分子が、前記両親媒性コポリマーを含む前記外層の外側に配置されてもよく、好ましくは、前記両親媒性コポリマーを含む前記外層の外側に配置された前記少なくとも1つの安定化分子が、1~100,000mg/ml、5~50,000mg/ml、10~10,000mg/ml、25~5,000mg/ml、50~1,000mg/ml、100~750mg/ml、150~500nm/ml、200~300nm/ml、220~280nm/ml、または240~260mg/mlの濃度で配置される、請求項14~16のいずれか一項に記載のサブミクロン粒子。
【請求項18】
前記安定化分子または各安定化分子が、炭水化物および/またはポリオールであり、好ましくは、前記炭水化物が、単糖、二糖、三糖、多糖、デンプン、セルロースまたはポリオールであり、好ましくは、トレハロースまたはその薬学的に許容される複合体、塩、溶媒和物、互変異性型、立体異性体もしくは多形体である、請求項14~17のいずれか一項に記載のサブミクロン粒子。
【請求項19】
サブミクロン粒子を製造する方法であって、ペイロード分子と、カチオン性脂質またはイオン化可能脂質と、両親媒性コポリマーとを接触させて、前記サブミクロン粒子を製造することを含む、方法。
【請求項20】
・前記カチオン性脂質またはイオン化可能脂質および前記両親媒性コポリマーならびに有機溶媒を含む第1の溶液を提供すること、
・前記ペイロード分子および水を含む第2の溶液を提供すること、
・前記第1および第2の溶液を組み合わせて反応混合物を生成し、それによって、前記ペイロード分子と、前記カチオン性脂質またはイオン化可能脂質と、前記両親媒性コポリマーとを接触させること
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ペイロード分子と、前記カチオン性脂質またはイオン化可能脂質と、前記両親媒性コポリマーとを同時に接触させることが、前記ペイロード分子と、前記カチオン性脂質またはイオン化可能脂質と、前記両親媒性コポリマーと、少なくとも1つの安定化分子とを接触させることを含む、請求項19または請求項20に記載の方法。
【請求項22】
得られたサブミクロン粒子と、少なくとも1つの安定化分子とを接触させることを含む、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項19~22のいずれか一項に記載の方法によって得られるまたは得ることができる、サブミクロン粒子。
【請求項24】
請求項1~18または23のいずれか一項に記載のサブミクロン粒子と、薬学的に許容されるビヒクルとを含む、医薬組成物。
【請求項25】
請求項1~18または23のいずれか一項に記載のサブミクロン粒子を薬学的に許容されるビヒクルと接触させることを含む、請求項24に記載の医薬組成物を調製する方法。
【請求項26】
医薬品として使用するための、請求項1~18もしくは23のいずれか一項に記載のサブミクロン粒子、または請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項27】
請求項1~18もしくは23のいずれか一項に記載のサブミクロン粒子または請求項24に記載の医薬組成物を含む、ワクチン組成物。
【請求項28】
対象の免疫応答を刺激するのに使用するための、請求項1~18もしくは23のいずれか一項に記載のサブミクロン粒子、請求項24に記載の医薬組成物、または請求項27に記載のワクチン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サブミクロン粒子に関し、特に、核酸または小分子薬物などのペイロード分子を含むサブミクロン粒子自体に関する。本発明は、サブミクロン粒子を製造する方法、サブミクロン粒子を含む医薬組成物およびワクチン、ならびにその医学的使用に及ぶ。
【背景技術】
【0002】
ワクチンは、感染性疾患を予防するための最も費用対効果の高い方法の1つである。世界保健機関は、ワクチン接種により年間200万~300万人の死亡を防ぐことができると報告した。従来のワクチンは、弱毒化ウイルス、またはウイルスの精製されたシグネチャータンパク質を含む。しかし、さらに近年では、迅速な開発および低コスト製造のために、RNAワクチンが有望な候補である。RNAワクチンは、Pfizer/BioNTechおよびModernaの既に承認されたメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン、ならびに臨床試験中のImperial Collegeの自己増幅RNA(saRNA)ワクチンを含む、COVID-19に対する臨床試験の競争では、世界的な最有力候補の1つである。RNAワクチンはまた、インフルエンザ1、狂犬病ウイルス2、HIV-13、ジカウイルス4およびエボラウイルス5などの感染性疾患を含む様々な他のワクチン適応症、ならびに癌ワクチン6~9では、前臨床的に使用されてきた。mRNAに基づくワクチンは、目的の抗原を典型的にコードし、5’および3’非翻訳領域(UTR)を含有するのに対して、saRNAに基づくワクチンは、抗原をコードするだけでなく、細胞内RNA増幅と豊富なタンパク質発現とを可能にするウイルス複製機構もコードする10。saRNAは、抗原コードRNAの細胞内複製に起因して、極めて少ない用量(mRNAの10~100分の1)から大量の抗原産生を可能にする11。saRNAワクチンの用量節約型の品質は、規模拡大、および多数のワクチン用量の製造を容易にし得る。
【0003】
mRNAおよびsaRNAは、新しいクラスのワクチンおよび治療薬として大いに有望であるが、それらの臨床移行および商品化は、2つの大きな課題のために依然として制限されている。1つの課題が、細胞内送達の問題に関する困難性であり、これは、RNAが、(1)細胞膜への反発を誘導する、その大きな分子量および負電荷のために不十分なエンドサイトーシス、(2)エンドソーム捕捉によって引き起こされる触媒的加水分解/酵素分解による制限された細胞内タンパク質発現、ならびに(3)抗原提示細胞(APC)の不十分な抗原負荷および成熟を有するためである。
【0004】
他の主な問題は、RNAが極めて脆弱であり、曝露環境で容易に分解する可能性があるため、RNAワクチンを極めて困難な低温流通体系で保存および輸送する必要があることである。「低温流通体系」のいかなる破綻も、RNAワクチンの有効性を顕著に低下させる可能性がある。例えば、世界で最初に承認されたCOVID-19ワクチンである、Pfizer/BioNTechのmRNAワクチンは、-70℃での保存を必要とする大きな障害を抱えている。2~8℃の冷蔵温度では、mRNAワクチンが安定なのはわずか5日間であり得る(Pfizer.com、2020/11/20)。同様に、COVID-19に対する既に承認されているModernaのmRNAは、-20℃で保存する必要がある。これは、RNAワクチンがワクチン接種のために必要な展開の速度および規模に達することを極めて困難にする。
【0005】
凍結乾燥は、水性条件を回避することによってRNA安定性を高め得る。しかし、凍結乾燥中に形成された氷晶は、核酸(配列)、および製剤の他の成分に対して物理的ストレスを示し、これにより、核酸の損傷(例えば、鎖の破損、スーパーコイル化の喪失など)、およびRNA添加製剤の不可逆的な凝集または沈殿がもたらされ得る。これらはいずれも、RNA製剤の効力の不可逆的な低下をもたらし、RNAワクチンおよび治療薬の迅速な開発を制限する。
【0006】
したがって、2~8℃および非低温流通体系(特に後者)で安定な核酸ワクチンおよび治療薬(saRNA、mRNAまたはDNAである)の開発は、供給、流通および展開にとって重要であるが、非常に困難である。これらすべての課題を考慮すると、冷蔵温度だけでなく周囲温度でも、効率的な核酸送達および向上した安定性のための低コストおよび安全性プロファイルを有する新規なプラットフォームを開発することは、今までになく緊急である。
【0007】
過去数十年の間に、生物工学およびナノテクノロジーの進歩により、いくつかの送達技術が生み出された。広く試験されているRNA送達系としてのリポソームは、RNAを静電的に捕捉するために正に帯電させる必要があり、特定の膜電荷密度閾値が、効率的なエンドソーム脱出を確実にするための要件として特定されている12~14。ただし、リポソーム内のペイロードは容易に漏出し、負に帯電した細胞膜と相互作用すると脂質膜が破壊され得る。さらに、リポソームの表面電荷は、インビボで注射すると、それらの凝集挙動、および血清タンパク質の吸着に影響を及ぼす。これにより、RNAの迅速なクリアランスが引き起こされ、インビボでのトランスフェクション効率が低下する。ポリマーソームとして知られるポリマー小胞を生成するための両親媒性ジブロックコポリマーの使用は、カプセル化のための構造を作製するための別の戦略である。ポリマーソームはまた、リポソームよりも高い機械的強度および靭性を有することから、研究者によってオリゴヌクレオチド送達について試験されている15、16。しかし、カチオン性ポリマーの合成は、複雑な生物学的要件のために非常に難しい手順を必要とする。さらに、オリゴヌクレオチドよりもはるかに大きい分子量およびRNAの不安定性のために、mRNAまたはsaRNAの効率的な送達はさらに困難である。一部の報告された製剤は、効率的なmRNAまたはsaRNA送達効果を示したが17、18、それらを生成してすぐに使用したかまたは後の使用のために-80℃に維持したことから、熱安定性は依然として困難である。
【0008】
本発明は、先行技術に関連する問題を克服しようとする本発明者らの研究から生じる。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、ペイロード分子と、両親媒性コポリマーを含む外層によって取り囲まれた脂質構造とを含むサブミクロン粒子が提供される。
【0010】
有利には、本発明者らは、サブミクロン粒子が効率的な核酸送達(saRNA、mRNAまたはDNAを含む)および非低温流通体系保存に使用され得ることを観察して驚いた。この送達系は、良好な生体適合性、製造の容易さ、小型サイズ、制御された表面電荷、高いRNA添加効率、エンドソーム溶解能力、低コスト、および優れた安定性を含む、意図された設計要件のすべてではないにしても多くに同時に対処する。さらに、サブミクロン粒子は、FDAによって承認された両親媒性ポリマー(例えば、PEG-PCL)と、カチオン性脂質またはイオン化可能脂質とを使用して生成され得る。両材料は低コストであり、容易に入手可能である。
【0011】
両親媒性コポリマーは、コロイド安定性シェルとして機能するカプセルを形成する。脂質構造は自己組織化して凝集体になり得、凝集体はカプセルのコアに包まれる。RNA(例えば、mRNAまたはsaRNA)などの核酸は、カチオン性脂質またはイオン化可能脂質との静電相互作用によって、このナノ容器に効率的にカプセル化され得る。サブミクロン粒子は、RNAに対する二重保護、すなわち、(1)RNAの効率的な凝縮、ならびに(2)脂質二重層よりも機械的安定性が高く、透過性が低い外側小胞膜を提供する。現時点で報告されている脂質ナノ粒子と比較して、ポリマーから構成された親水性シェルの機械的強度は脂質二重層から構成されたものよりもはるかに高いことから、サブミクロン粒子のコロイド安定性を顕著に向上させ、保存および適用中のRNAのさらに良好な保護を可能にすることができる。
【0012】
さらに、有利には、サブミクロン粒子は、数分間の混合、撹拌および溶媒蒸発に基づくワンポット法によって調製され得る。サブミクロン粒子の物理化学的特性および生物学的特性(例えば、粒径、表面電荷、トランスフェクション効率および安定性)は、混合比を変化させるだけで容易に調節され得る。
【0013】
用語「サブミクロン」は、本発明の粒子が1μm未満の最大寸法(largest maximum dimension)を有することを意味すると理解することができる。さらに好ましくは、粒子の最大寸法は、900nm未満、800nm未満、700nm未満または600nm未満、最も好ましくは500nm未満、400nm未満、300nm未満または200nm未満である。サブミクロン粒子は、10~900nm、20~800nm、30~700nm、または40~600nm、さらに好ましくは50~500nm、または60~400nm、最も好ましくは80~300nm、または100~200nmの最大寸法を有し得る。サブミクロン粒子の最大寸法は、Zetasizer μV機器を使用して決定されるZ-平均サイズに対応し得る。
【0014】
ペイロード分子は、脂質構造によってカプセル化され得る。
【0015】
ペイロード分子は、生体分子および/または活性医薬成分(API)であり得る。APIは、疎水性APIまたは親水性APIであり得る。APIは、巨大分子または小分子であり得る。小分子は、900ダルトン未満の分子量を有する分子であると考えることができることが理解され得る。いくつかの実施形態では、小分子は、800ダルトン未満、700ダルトン未満、600ダルトン未満、500ダルトン未満または400ダルトン未満の分子量を有し得る。同様に、巨大分子は、少なくとも900ダルトンの分子量を有する分子であると考えられ得る。
【0016】
好ましい実施形態では、ペイロード分子は生体分子である。例えば、生体分子は、アミノ酸、ペプチド、アフィマー(affimer)、タンパク質、糖タンパク質、リポ多糖、抗体もしくはその断片、もしくは核酸であり得るか、またはそれらを含み得る。
【0017】
核酸は、DNA、RNA、またはDNA/RNAハイブリッド配列であり得る。好ましくは、核酸は、DNAまたはRNAである。
【0018】
最も好ましくは、核酸はRNAである。RNAは、一本鎖または二本鎖であり得る。RNAは、メッセンジャーRNA(mRNA)、自己増幅RNA(saRNA)、アンチセンスRNA(asRNA)、RNAアプタマー、干渉RNA、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)および小型RNAからなる群から選択され得る。
【0019】
好ましくは、RNAは、自己増幅RNA(saRNA)またはメッセンジャーRNA(mRNA)である。当業者であれば、自己増幅RNAがmRNAの基本エレメント(キャップ、5’UTR、3’UTR、および可変長のポリ(A)テール)を含有し得るが、大幅に長くてもよい(例えば、9~12kb)ことを理解するであろう。
【0020】
核酸配列、好ましくはRNAは、少なくとも10塩基長、少なくとも20塩基長、少なくとも50塩基長、少なくとも100塩基長、少なくとも200塩基長、少なくとも300塩基長、少なくとも400塩基長、少なくとも500塩基長、少なくとも600塩基長少なくとも700塩基長、少なくとも800塩基長または少なくとも900塩基長であり得る。好ましい一実施形態では、RNAは、saRNAまたはmRNAである。
【0021】
核酸配列、好ましくはRNA、最も好ましくはsaRNAまたはmRNAは、少なくとも1000塩基長、少なくとも2000塩基長、少なくとも3000塩基長、少なくとも4000塩基長、少なくとも5000塩基長、少なくとも6000塩基長、少なくとも7000塩基長、少なくとも8000塩基長、少なくとも9000塩基長少なくとも10000塩基長、少なくとも11000塩基長または少なくとも12000塩基長であり得る。
【0022】
一実施形態では、核酸配列は少なくとも6000塩基長である。一実施形態では、RNAは少なくとも6000塩基長である。好ましい実施形態では、saRNAは少なくとも6000塩基長である。
【0023】
代替的な実施形態では、核酸配列は少なくとも900塩基長である。一実施形態では、RNAは少なくとも900塩基長である。好ましい実施形態では、mRNAは少なくとも900塩基長である。
【0024】
核酸配列、好ましくはRNA、最も好ましくはsaRNAは、5000~20000塩基長、5000~15000塩基長、5000~14000塩基長、5000~13000塩基長、5000~12000塩基長、5000~11000塩基長、5000~10000塩基長、6000~20000塩基長、6000~15000塩基長、6000~14000塩基長、6000~13000塩基長、6000~12000塩基長、6000~11000塩基長、6000~10000塩基長、7000~20000塩基長、7000~15000塩基長、7000~14000塩基長、7000~13000塩基長、7000~12000塩基長、7000~11000塩基長、7000~10000塩基長、8000~20000塩基長、8000~15000塩基長、8000~14000塩基長、8000~13000塩基長、8000~12000塩基長、8000~11000塩基長、8000~10000塩基長、9000~20000塩基長、9000~15000塩基長、9000~14000塩基長、9000~13000塩基長、9000~12000塩基長、9000~11000塩基長、または9000~10000塩基長であり得る。
【0025】
あるいは、核酸配列、好ましくはRNA、最も好ましくはmRNAは、50~10000塩基長、100~9000塩基長、200~8000塩基長、300~7000塩基長、400~6000塩基長、500~6000塩基長、600~5000塩基長、700~4000塩基長、800~3000塩基長、または900~2000塩基長であり得る。
【0026】
一実施形態では、核酸配列は、6000~15000塩基長である。核酸配列は、8000~12000塩基長であり得る。RNAは、6000~15000塩基長であり得る。RNAは、8000~12000塩基長であり得る。好ましくは、saRNAは、6000~15000塩基長である。好ましくは、saRNAは、8000~12000塩基長である。
【0027】
代替的な実施形態では、核酸配列は、400~14000、500~10000、600~7500、700~5000、800~4000、または900~2000塩基長である。RNAは、400~14000、500~10000、600~7500、700~5000、800~4000、または900~2000塩基長であり得る。好ましくは、mRNAは、400~14000、500~10000、600~7500、700~5000、800~4000、または900~2000塩基長である。
【0028】
当業者であれば、核酸が二本鎖、例えば、二本鎖RNAである場合、「塩基長」は塩基対の長さを指すことを理解するであろう。
【0029】
核酸は、ウイルスの少なくとも一部をコードし得る。ウイルスは、SARS-CoV-2ウイルスまたはインフルエンザウイルスであり得る。核酸は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、さらに好ましくは融合前安定化SARS-CoV-2スパイクタンパク質をコードし得る。あるいは、核酸は、インフルエンザウイルスのH1赤血球凝集素としてコードし得る。いくつかの実施形態では、核酸はRNAである。いくつかの実施形態では、核酸は、saRNAまたはmRNAである。
【0030】
サブミクロン粒子は、複数の脂質構造を好ましくは含む。例えば、サブミクロン粒子は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9または少なくとも10個の脂質構造を含み得る。複数の脂質構造は、両親媒性コポリマーを含む外層によって取り囲まれてもよい。
【0031】
脂質構造または各脂質構造は、脂質ナノ粒子またはリポソームであり得る。好ましくは、脂質構造または各脂質構造は、脂質ナノ粒子である。
【0032】
脂質構造または各脂質構造は、カチオン性脂質またはイオン化可能脂質を含み得る。いくつかの実施形態では、脂質構造または各脂質構造は、複数の脂質を含み得る。複数の脂質のうちの少なくとも1つは、カチオン性脂質またはイオン化可能脂質を含み得る。カチオン性脂質またはイオン化可能脂質は、多価カチオン性脂質であり得る。カチオン性脂質またはイオン化可能脂質は、pH感受性脂質であり得る。カチオン性脂質またはイオン化可能脂質は、正に帯電した窒素原子またはイオン化可能窒素原子を含み得る。カチオン性脂質またはイオン化可能脂質は、酸性溶液中で正電荷を示し得る。溶液は、20℃で7未満、さらに好ましくは20℃で6.5未満のpHを有する場合、酸性であると理解され得る。溶液は、20℃で3.5~7、または20℃で4~7、さらに好ましくは20℃で4.5~6.5のpHを有する場合、酸性であると理解され得る。カチオン性脂質またはイオン化可能脂質は、ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、エチルホスファチジルコリン(エチルPC)、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール(DC-コレステロール)、N4-コレステリル-スペルミン(GL67)、1,2-ジオレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DODMA)、DLin-MC3-DMA、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、またはヘプタデカン-9-イル8-((2-ヒドロキシエチル)(6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル)アミノ)オクタノエート(SM-102)であり得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、脂質構造は、DOTAPなどのカチオン性脂質またはイオン化可能脂質を含み得る。脂質構造は、少なくとも1重量%、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%または少なくとも99重量%のカチオン性脂質またはイオン化可能脂質を含み得る。いくつかの実施形態では、脂質構造は、カチオン性脂質またはイオン化可能脂質からなり得る。あるいは、脂質構造は、1~99重量%のカチオン性脂質もしくはイオン化可能脂質、10~90重量%のカチオン性脂質もしくはイオン化可能脂質、20~85重量%のカチオン性脂質もしくはイオン化可能脂質、30~80重量%のカチオン性脂質もしくはイオン化可能脂質、40~75重量%のカチオン性脂質もしくはイオン化可能脂質、50~70重量%のカチオン性脂質もしくはイオン化可能脂質、または55~65重量%のカチオン性脂質もしくはイオン化可能脂質を含み得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、脂質構造は、ステロール、例えば、コレステロールを含み得る。脂質構造は、少なくとも1重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%または少なくとも40重量%のステロールを含み得る。脂質構造は、99重量%未満のステロール、90重量%未満のステロール、80重量%未満のステロール、70重量%未満のステロール、60重量%未満のステロール、50重量%未満のステロール、または45重量%未満のステロールを含み得る。脂質構造は、1~99重量%のステロール、10~90重量%のステロール、15~80重量%のステロール、20~70重量%のステロール、25~60重量%のステロール、30~50重量%のコレステロール、または35~45重量%のステロールを含み得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、脂質構造は、DOTAPなどのカチオン性脂質またはイオン化可能脂質と、コレステロールなどのステロールとの組合せを含み得る。カチオン性脂質またはイオン化可能脂質対ステロールの重量比は、1:99~99:1、10:90~90:10、20:80~85:15、30:70~80:20、40:60~75:22、50:50~70:30、または55:45~65:35であり得る。カチオン性脂質またはイオン化可能脂質対ステロールの重量比は、約60:40であり得る。
【0036】
サブミクロン粒子は、少なくとも1:50、少なくとも1:20、少なくとも1:10、少なくとも1:5、少なくとも1:2、少なくとも1:1、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1または少なくとも5:1、さらに好ましくは少なくとも6:1、少なくとも8:1または少なくとも10:1、最も好ましくは少なくとも11:1、少なくとも13:1、少なくとも15:1、少なくとも16:1、少なくとも17:1または少なくとも18:1のN/Pモル比を有し得る。サブミクロン粒子は、1000:1未満、500:1未満、250:1未満、100:1未満、50:1未満、40:1未満、30:1未満、28:1未満、26:1未満、24:1未満、22:1未満、21:1未満または20:1未満のN/Pモル比を有し得る。サブミクロン粒子は、1:50~1,000:1、1:10~500:1、1:5~250:1、1:2~100:1、1:1~50:1、2:1~40:1、5:1~30:1、8:1~28:1、10:1~26:1、12:1~24:1、14:1~22:1、16:1~20:1、または17:1~19:1のN/Pモル比を有し得る。好ましい実施形態では、サブミクロン粒子は、11:1~18:1のN/P比を有する。N/Pモル比は、脂質構造内のカチオン性アミンとペイロード分子内のアニオン性ホスフェートとの比であると理解され得る。
【0037】
両親媒性コポリマーは、好ましくは両親媒性ブロックコポリマーである。
【0038】
両親媒性コポリマーは、少なくとも1つの親水性部分と少なくとも1つの疎水性部分とを含み得ることが理解され得る。いくつかの実施形態では、両親媒性コポリマーは、1つの親水性部分と1つの疎水性部分とを含むか、またはそれらからなる。親水性部分または各親水性部分は、ポリエーテル、アミノ酸に基づくポリマーもしくはポリペプチド、ポリ(2-メチルオキサゾリン)(PMOXA)、および/もしくはその誘導体を含み得るか、またはそれらであり得る。疎水性部分または各疎水性部分は、ポリエステル、酸不安定性ポリカーボネート、ポリ(エチルエチレン)(PEE)、ポリ(ブタジエン)(PBD)、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(スチレン)(PSt)および/もしくその誘導体を含み得るか、またはそれらであり得る。
【0039】
好ましくは、両親媒性コポリマーは生分解性である。したがって、疎水性部分または各疎水性部分は、ポリエステル、酸不安定性ポリカーボネートおよび/もしくその誘導体を含み得るか、またはそれらであり得る。
【0040】
酸不安定性ポリカーボネートは、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリ(2,4,6-トリメトキシベンジリデンペンタエリスリトールカーボネート)(PTMBPEC)またはその誘導体であり得る。アミノ酸に基づくポリマーまたはポリペプチドは、ポリ(L-グルタミン酸)(PGA)、ポリ-L-リジン(PLL)またはその誘導体であり得る。
【0041】
任意の好適なポリエーテルを使用してもよい。いくつかの実施形態では、ポリエーテルまたは各ポリエーテルは、ポリエチレングリコール(PEG)、オリゴ(エチレングリコール)(オリゴEG)またはその誘導体であり得る。例えば、PEGの誘導体には、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート(mPEGA)、およびポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(mPEGMA)が含まれ得る。あるいは、ポリエーテルは、本出願人の先の特許出願GB2009720.0に開示されているポリエーテルであってよい。例えば、親水性部分は、以下を含み得るか、または以下からなり得る:
【0042】
【0043】
nは整数であることが理解され得る。
【0044】
同様に、任意の好適なポリエステルを使用してもよい。いくつかの実施形態では、ポリエステルまたは各ポリエステルは、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(ε-デカラクトン)(PDL)またはその誘導体からなる一覧から選択され得る。あるいは、ポリエステルは、本出願人の先の特許出願GB2009720.0に開示されているポリエステルであってよい。例えば、疎水性部分は、以下を含み得るか、または以下からなり得る:
【0045】
【0046】
mおよびnは整数であることが理解され得る。
【0047】
親水性部分は、両親媒性コポリマーの60重量%未満、50重量%未満、45重量%未満、40重量%未満、35重量%未満または32重量%未満を構成し得る。親水性部分は、両親媒性コポリマーの5~60重量%、さらに好ましくは両親媒性コポリマーの10~50重量%、または20~45重量%、最も好ましくは両親媒性コポリマーの25~40重量%、28~35重量%、または30~32重量%を構成し得る。
【0048】
疎水性部分は、両親媒性コポリマーの少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも55重量%、少なくとも60重量%、少なくとも65重量%または少なくとも68重量%を構成し得る。疎水性部分は、両親媒性コポリマーの40~95重量%、さらに好ましくは両親媒性コポリマーの50~90重量%、または55~80重量%、最も好ましくは両親媒性コポリマーの60~75重量%、65~72重量%、または68~70重量%を構成し得る。
【0049】
両親媒性コポリマーは、少なくとも1,000Da、少なくとも2,000Da、少なくとも3,000Da、少なくとも4,000Daまたは少なくとも5,000Daの分子量を有し得る。好ましくは、両親媒性コポリマーは、少なくとも6,000Daまたは少なくとも7,000Daの分子量を有する。いくつかの実施形態では、両親媒性コポリマーは、少なくとも8,000Da、少なくとも10,000Da、少なくとも12,000Da、少なくとも14,000Da、少なくとも15,000Daまたは少なくとも16,000Daの分子量を有する。
【0050】
両親媒性コポリマーは、100,000Da未満、80,000Da未満、70,000Da未満、60,000Da未満または50,000Da未満の分子量を有し得る。好ましくは、両親媒性コポリマーは、40,000Da未満または30,000Da未満の分子量を有する。最も好ましくは、両親媒性コポリマーは、25,000Da未満、20,000Da未満、18,000Da未満、17,000Da未満または16,000Da未満の分子量を有し得る。
【0051】
両親媒性コポリマーは、1,000~100,000Da、2,000~80,000、3,000~70,000、4,000~60,000、5,000~50,000、さらに好ましくは6,000~40,000、7,000~50,000、8,000~25,000、10,000~20,000、12,000~18,000、14,000~16,000Da、15,000~17,500Da、または16,000~17,000Daの分子量を有し得る。
【0052】
疎水性部分は、少なくとも1,000Da、少なくとも2,000Da、少なくとも3,000Da、少なくとも4,000Daまたは少なくとも5,000Daの分子量を有し得る。好ましくは、疎水性部分は、少なくとも6,000Daまたは少なくとも7,000Daの分子量を有する。いくつかの実施形態では、疎水性部分は、少なくとも8,000Da、少なくとも10,000Daまたは少なくとも11,000Daの分子量を有する。
【0053】
疎水性部分は、1,000~70,000、2,000~60,000、3000~50,000、さらに好ましくは4,000~40,000、5,000~50,000、6,000~25,000、7,000~20,000、8,000~18,000、9,000~15,000Da、10,000~13,000Da、または11,000~12,000Daの分子量を有し得る。
【0054】
上で定義された両親媒性コポリマーの分子量は、数平均分子量(Mn)であると理解され得る。
【0055】
両親媒性コポリマーの分子量、疎水性部分の分子量、および/または親水性部分の分子量は、NMRまたはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して決定され得る。NMRおよびGPCの使用方法は、実施例に記載される通りであり得る。いくつかの実施形態では、分子量は、NMR、好ましくは1H NMRを使用して決定される。
【0056】
両親媒性コポリマー対ペイロード分子の重量比は、少なくとも5:1、少なくとも10:1、少なくとも20:1、少なくとも30:1または少なくとも40:1、さらに好ましくは少なくとも50:1または少なくとも55:1、最も好ましくは少なくとも60:1であり得る。両親媒性コポリマー対ペイロード分子の重量比は、1000:1未満、500:1未満、250:1未満、200:1未満または150:1未満、さらに好ましくは125:1未満、100:1未満、最も好ましくは85:1未満であり得る。両親媒性コポリマー対ペイロード分子の重量比は、5:1~1000:1、10:1~500:1、20:1~250:1、30:1~200:1、または40:1~150:1、さらに好ましくは50:1~125:1、または55:1~100:1、最も好ましくは60:1~85:1であり得る。
【0057】
両親媒性コポリマー対カチオン性脂質またはイオン化可能脂質の重量比は、少なくとも1:10、少なくとも1:8、少なくとも1:6、少なくとも1:4、少なくとも1:2または少なくとも1:1.5、さらに好ましくは少なくとも1:1、少なくとも1.5:1、少なくとも1.75:1、少なくとも2:1、少なくとも2.2:1または少なくとも2.4:1、最も好ましくは少なくとも2.5:1であり得る。両親媒性コポリマー対カチオン性脂質またはイオン化可能脂質の重量比は、50:1未満、20:1未満、15:1未満、10:1未満、8:1未満または6:1未満、さらに好ましくは5.5:1未満、5:1未満、4.5:1未満、4:1未満、3.5:1未満または3:1未満、最も好ましくは2.7:1未満であり得る。両親媒性コポリマー対カチオン性脂質またはイオン化可能脂質の重量比は、1:10~50:1、1:8~20:1、1:6~15:1、1:4~10:1、1:2~8:1、または1:1.5~6:1、さらに好ましくは1:1~5.5:1、1.5:1~5:1、1.75:1~4.5:1、2:1~4:1、2.2:1~3.5:1、または2.4:1~3:1、最も好ましくは2.5:1~2.7:1であり得る。
【0058】
両親媒性コポリマーを含む外層は、好ましくは少なくとも0.5nm、少なくとも1nmまたは少なくとも1.5nm、さらに好ましくは少なくとも2nmまたは少なくとも2.5nm、最も好ましくは少なくとも3nmの厚さを含む。両親媒性コポリマーを含む外層は、好ましくは25nm未満、20nm未満または15nm未満、さらに好ましくは10nm未満または7.5nm未満、最も好ましくは5nm未満の厚さを含む。両親媒性コポリマーを含む外層は、好ましくは0.5~25nm、1~20nm、または1.5~15nm、さらに好ましくは2~10nm、または2.5~7.5nm、最も好ましくは3~5nmの厚さを含む。
【0059】
サブミクロン粒子は、少なくとも1つの安定化分子をさらに含み得る。少なくとも1つの安定化分子は、両親媒性コポリマーを含む外層によって取り囲まれてもよい。代替的または追加的に、少なくとも1つの安定化分子は、両親媒性コポリマーを含む外層の外側に配置されてもよい。
【0060】
安定化分子対ペイロード分子の重量比は、少なくとも1:1、少なくとも2:1、少なくとも4:1、少なくとも6:1、少なくとも8:1、少なくとも10:1、少なくとも20:1、少なくとも30:1、少なくとも40:1、少なくとも50:1、少なくとも60:1、少なくとも70:1、少なくとも80:1、少なくとも90:1または少なくとも95:1であり得る。いくつかの実施形態では、安定化分子対ペイロード分子の重量比は、少なくとも100:1、少なくとも250:1、少なくとも500:1、少なくとも1,000:1、少なくとも2,000:1、少なくとも3,000:1、少なくとも4,000:1または少なくとも5,000:1であり得る。安定化分子対ペイロード分子の重量比は、100,000:1未満、50,000:1未満、10,000:1未満、9,000:1未満、8,000:1未満、7,000:1未満または6,500:1未満であり得る。いくつかの実施形態では、安定化分子対ペイロード分子の重量比は、5,000:1未満、1,000:1未満、500:1未満、400:1未満、350:1未満、300:1未満、250:1未満、200:1未満、175:1未満、150:1未満、125:1未満または110:1未満であり得る。安定化分子対ペイロード分子の重量比は、1:1~100,000:1、2:1~50,000:1、4:1~10,000:1、6:1~9,000:1、8:1~8,000:1、10:1~7,000:1、または20:1~6,500:1であり得る。いくつかの実施形態では、安定化分子対ペイロード分子の重量比は、6:1~5,000:1、8:1~1,000:1、10:1~500:1、20:1~400:1、30:1~350:1、40:1~300:1、50:1~250:1、60:1~200:1、70:1~175:1、80:1~150:1、90:1~125:1、または95:1~110:1であり得る。代替的な実施形態では、安定化分子対ペイロード分子の重量比は、90:1~100,000:1、100:1~50,000:1、500:1~25,000:1、1,000:1~10,000:1、2,000:1~9,000:1、3,000:1~8,000:1、4,000:1~7,000:1、または5,000:1~6,500:1であり得る。これらの重量比は、安定化分子対ペイロード分子の総重量に関連し得、すなわち、それらは、外層によって取り囲まれる任意の安定化分子と外層の外側に配置される任意の安定化分子との重量を含み得る。
【0061】
少なくとも1つの安定化分子が両親媒性コポリマーを含む外層によって取り囲まれる実施形態では、脂質構造にカプセル化されてもよい。代替的または追加的に、両親媒性コポリマーを含む外層によって取り囲まれた少なくとも1つの安定化分子は、脂質構造の外側に配置されてもよい。サブミクロン粒子が複数の脂質構造を含む実施形態では、少なくとも1つの安定化分子は、複数の脂質構造の間に配置されてもよい。
【0062】
外層によって取り囲まれた安定化分子対ペイロード分子の重量比は、少なくとも1:1、少なくとも2:1、少なくとも4:1、少なくとも6:1、少なくとも8:1、少なくとも10:1、少なくとも20:1、少なくとも30:1、少なくとも40:1、少なくとも50:1、少なくとも60:1、少なくとも70:1、少なくとも80:1、少なくとも90:1または少なくとも95:1であり得る。外層によって取り囲まれた安定化分子対ペイロード分子の重量比は、100,000:1未満、50,000:1未満、10,000:1未満、5,000:1未満、1,000:1未満、500:1未満、400:1未満、350:1未満、300:1未満、250:1未満、200:1未満、175:1未満、150:1未満、125:1未満または110:1未満であり得る。外層によって取り囲まれた安定化分子対ペイロード分子の重量比は、1:1~100,000:1、2:1~50,000:1、4:1~10,000:1、6:1~5,000:1、8:1~1,000:1、10:1~500:1、20:1~400:1、30:1~350:1、40:1~300:1、50:1~250:1、60:1~200:1、70:1~175:1、80:1~150:1、90:1~125:1、または95:1~110:1であり得る。
【0063】
代替的または追加的に、少なくとも1つの安定化分子は、両親媒性コポリマーを含む外層の外側に配置されてもよい。両親媒性コポリマーを含む外層の外側に配置された少なくとも1つの安定化分子は、少なくとも1mg/ml、少なくとも5mg/ml、少なくとも10mg/mlまたは少なくとも50mg/ml、さらに好ましくは少なくとも100mg/ml、少なくとも150mg/ml、少なくとも200mg/mlまたは少なくとも220mg/ml、最も好ましくは少なくとも240mg/mlの濃度で配置され得る。両親媒性コポリマーを含む外層の外側に配置された少なくとも1つの安定化分子は、100,000mg/ml未満、50,000mg/ml未満、10,000mg/ml未満、5,000mg/ml未満または1,000mg/ml未満、さらに好ましくは750mg/ml未満、500mg/ml未満、300mg/ml未満または280mg/ml未満、最も好ましくは260mg/ml未満の濃度で配置され得る。両親媒性コポリマーを含む外層の外側に配置された少なくとも1つの安定化分子は、1~100,000mg/ml、5~50,000mg/ml、10~10,000mg/ml、25~5,000mg/ml、または50~1,000mg/ml、さらに好ましくは100~750mg/ml、150~500nm/ml、200~300nm/ml、または220~280nm/ml、最も好ましくは240~260mg/mlの濃度で配置され得る。
【0064】
好ましい実施形態では、サブミクロン粒子は、両親媒性コポリマーを含む外層によって取り囲まれた少なくとも1つの安定化分子を含み、少なくとも1つの安定化分子は、両親媒性コポリマーを含む外層の外側に配置される。
【0065】
安定化分子または各安定化分子は、炭水化物および/またはポリオールであり得る。
【0066】
炭水化物は、糖と呼ばれ得る。炭水化物は、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノースおよびキシロースまたはその薬学的に許容される複合体、塩、溶媒和物、互変異性型、立体異性体もしくは多形体からなる群から選択され得る単糖であり得る。あるいは、炭水化物は、トレハロース、スクロース、ラクトース、マルトース、イソマルトース、ラクチトール、ラクツロース、マンノビオースおよびイソマルトまたはその薬学的に許容される複合体、塩、溶媒和物、互変異性型、立体異性体もしくは多形体からなる群から選択され得る二糖であり得る。さらなる代替例では、炭水化物は、ニゲロトリオース(nigerotriose)、マルトトリオース、メレチトース、マルトトリウロース(maltotriulose)、ラフィノースおよびケストースまたはその薬学的に許容される複合体、塩、溶媒和物、互変異性型、立体異性体もしくは多形体からなる群から選択され得る三糖であり得る。さらなる代替例では、炭水化物は、デキストラン、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、ガラクトゲン、イヌリン、カロース、セルロース、キトサンおよびキチンまたはその薬学的に許容される複合体、塩、溶媒和物、互変異性型、立体異性体もしくは多形体からなる群から選択され得る多糖であり得る。
【0067】
炭水化物は、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、アルファ-D-グルコピラノシル-1-6-ソルビトール、アルファ-D-グルコピラノシル-1-6-マンニトール、マルトオリゴ糖、水素化マルトオリゴ糖、デンプンおよびセルロースまたはその薬学的に許容される複合体、塩、溶媒和物、互変異性型、立体異性体もしくは多形体からなる群から選択され得るポリオールであり得る。
【0068】
代替的または追加的に、ポリオールは、複数のヒドロキシル基を含むオリゴマー、複数のヒドロキシル基を含むポリマー、またはその薬学的に許容される複合体、塩、溶媒和物、互変異性型、立体異性体もしくは多形体であり得る。
【0069】
少なくとも1つの安定化分子は、少なくとも2つの異なる安定化分子を含み得る。各安定化分子は炭水化物であり得る。一実施形態では、第1の安定化分子は二糖(例えば、トレハロース)であり得、第2の安定化分子は多糖(例えば、デキストラン)であり得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、炭水化物は、二糖、最も好ましくはトレハロース、またはその薬学的に許容される複合体、塩、溶媒和物、互変異性型、立体異性体もしくは多形体である。トレハロースは、合成トレハロースまたは天然トレハロースであり得る。
【0071】
サブミクロン粒子は、少なくとも1つの標的化リガンドまたは標的化部分を含み得る。少なくとも1つの標的化リガンドまたは標的化部分は、サブミクロン粒子の外面に配置され得る。したがって、少なくとも1つの標的化リガンドまたは標的化部分は、両親媒性コポリマーを含む外層の外面に配置され得る。
【0072】
少なくとも1つの標的化リガンドまたは標的化部分は、ペプチド、タンパク質、アプタマー、炭水化物、オリゴ糖、葉酸もしくはフォレート、および抗体もしくはその抗原結合断片、ビタミンもしくはその誘導体のうちの少なくとも1つであり得るか、またはそれらを含み得る。ペプチドは、Gタンパク質共役受容体(GCR)、Arg-Gly-Asp(RGD)、またはその誘導体であり得る。タンパク質は、レクチン、トランスフェリンまたはその誘導体であり得る。アプタマーは、HIV糖タンパク質に対するRNAアプタマーまたはその誘導体であり得る。炭水化物は、上で定義された通りであり得る。特に、炭水化物は、マンノース、グルコース、ガラクトースまたはその誘導体であり得る。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得る。抗体は、抗Her2抗体、抗EGFR抗体またはその誘導体であり得る。ビタミンはビタミンDであり得る。
【0073】
サブミクロン粒子は、溶液中で保存され得る。溶液は水溶液であってよい。サブミクロン粒子は、ペイロード分子の濃度が少なくとも0.001μg/ml、少なくとも0.01μg/ml、少なくとも0.05μg/ml、少なくとも0.1μg/ml、少なくとも0.5μg/ml、少なくとも1μg/ml、少なくとも5μg/ml、少なくとも10μg/ml、少なくとも15μg/mlまたは少なくとも20μg/mlであるような濃度で存在し得る。サブミクロン粒子は、ペイロード分子の濃度が500mg/ml未満、100mg/ml未満、10mg/ml未満、5mg/ml未満、1mg/ml未満、500μg/ml未満、200μg/ml未満、100μg/ml未満、50μg/ml未満または30μg/ml未満であるような濃度で存在し得る。サブミクロン粒子は、ペイロード分子の濃度が0.001μg/ml~500mg/ml、0.01μg/ml~100mg/ml、0.05μg/ml~50mg/ml、0.1μg/ml~10mg/ml、0.5μg/ml~5mg/ml、1μg/ml~1mg/ml、5~500μg/ml、10~200μg/ml、15~100μg/ml、20~50μg/ml、または20~30μg/mlであるような濃度で存在し得る。
【0074】
あるいは、サブミクロン粒子は凍結乾燥され得る。
【0075】
好ましくは、第1の態様のサブミクロン粒子は、熱的に安定化される。
【0076】
「熱安定化」または「熱的に安定化される」という表現は、サブミクロン粒子が、一定の温度で一定期間にわたって保存された場合に、その生物学的活性を実質的に保持する(例えば、それを投与された対象において免疫応答および/またはタンパク質発現を誘発する)ことを意味し得ることが理解されるであろう。本発明者らは、いかなる仮説にも束縛されることを望まないが、熱安定化効果は、製剤中の脂質構造を安定化することによって、例えば、その凝集を防止もしくは低減することによって、ペイロード分子(好ましくはRNA)自体を安定化することによって、および/または改善されたコロイド安定性を有するようにサブミクロン粒子を安定化させることによって実現され得ると考えている。ペイロード分子(好ましくはRNA)の機能活性が保持されているかどうか、またはその程度は、例えば、RNA構築物によってコードされる目的の抗原に対して産生された免疫特異的抗体(例えば、IgG)の存在を検出すること、および/または目的のタンパク質の発現を検出することによって決定され得る。
【0077】
好ましくは、サブミクロン粒子は、-100℃以上、-80℃以上、-60℃以上、-40℃以上または-20℃以上、さらに好ましくは-15℃以上、最も好ましくは-10℃以上の温度で保存した後に熱的に安定化される。好ましくは、サブミクロン粒子は、-5℃以上、さらに好ましくは0℃以上、最も好ましくは1℃以上の温度で保存した後に熱的に安定化される。最も好ましくは、サブミクロン粒子は、2℃以上、さらに好ましくは3℃以上、最も好ましくは4℃以上の温度で保存した後に熱的に安定化される。さらになお好ましくは、サブミクロン粒子は、5℃以上、さらに好ましくは6℃以上、最も好ましくは7℃以上の温度で保存した後に熱的に安定化される。
【0078】
サブミクロン粒子は、100℃未満、80℃未満、60℃未満、50℃未満、40℃未満、35℃未満または30℃未満の温度で保存した後に熱的に安定化され得る。サブミクロン粒子は、25℃未満、20℃未満または15℃未満の温度で保存した後に熱的に安定化され得る。サブミクロン粒子は、10℃未満、8℃未満または7℃未満の温度で保存した後に熱的に安定化され得る。
【0079】
サブミクロン粒子は、-100℃~100℃、-80℃~90℃、-60℃~80℃、-40℃~70℃、-20℃~60℃、-20℃~50℃、-20℃~40℃、-20℃~35℃、-20℃~30℃、-15℃~25℃、または-10℃~20℃の温度で保存した的に熱的に安定化され得る。サブミクロン粒子は、-5℃~15℃、0℃~10℃、1℃~9℃、または2℃~8℃の温度で保存した的に熱的に安定化され得る。
【0080】
第2の態様によれば、サブミクロン粒子を製造する方法であって、ペイロード分子と、カチオン性脂質またはイオン化可能脂質と、両親媒性コポリマーとを接触させて、サブミクロン粒子を製造することを含む方法が提供される。
【0081】
有利には、方法は、第1の態様のサブミクロン粒子を提供するためのワンポット法を提供する。
【0082】
好ましくは、ペイロード分子と、カチオン性脂質またはイオン化可能脂質と、両親媒性コポリマーとは、同時に接触させられる。ペイロード分子と、カチオン性脂質またはイオン化可能脂質と、両親媒性コポリマーとは、それらがいずれも同じ反応混合物中に存在する場合、同時に接触させられると理解され得る。
【0083】
ペイロード分子、カチオン性脂質またはイオン化可能脂質、および両親媒性コポリマーは、第1の態様に関して定義された通りであり得る。さらに、ペイロード分子、カチオン性脂質またはイオン化可能脂質、および両親媒性コポリマーは、第1の態様に関して定義された比で提供され得る。
【0084】
両親媒性コポリマーは、当技術分野で公知の任意の方法を使用して合成され得る。例えば、両親媒性コポリマーは、本出願人の先の特許出願、GB2009720.0に定義された方法を使用して合成され得る。ただし、代替方法が使用されてもよいことが理解されるであろう。
【0085】
方法は、カチオン性脂質またはイオン化可能脂質と両親媒性コポリマーとを含む第1の溶液を提供することを含み得る。第1の溶液は、有機溶媒を含み得る。有機溶媒は、エーテル、アルコールまたはニトリルであってよい。エーテルは、環状エーテルであってよい。有機溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、エタノール、メタノールおよびアセトニトリルであってよい。
【0086】
方法は、ペイロード分子を含む第2の溶液を提供することを含み得る。第2の溶液は、水、好ましくはリボヌクレアーゼ(RNase)不含水を含み得る。
【0087】
ペイロード分子と、カチオン性脂質またはイオン化可能脂質と、両親媒性コポリマーとを接触させることは、第1および第2の溶液を組み合わせて(combining)反応混合物を生成し、それによって、ペイロード分子と、カチオン性脂質またはイオン化可能脂質と、両親媒性コポリマーとを接触させることを含み得る。
【0088】
方法は、反応混合物を撹拌することを含み得る。
【0089】
方法は、ペイロード分子と、カチオン性脂質またはイオン化可能脂質と、両親媒性コポリマーとを少なくとも15秒間、少なくとも30秒間、少なくとも45秒間または少なくとも1分間接触させることを含み得る。方法は、ペイロード分子と、カチオン性脂質またはイオン化可能脂質と、両親媒性コポリマーとを15秒~30分間、30秒~10分間、45秒~5分間、または1~2分間接触させることを含み得る。
【0090】
方法は、ペイロード分子と、カチオン性脂質またはイオン化可能脂質と、両親媒性コポリマーとを0℃~75℃、5℃~50℃、10℃~30℃15℃~25℃、または19℃~21℃の温度で接触させることを含み得る。
【0091】
方法は、有機溶媒を除去することを続いて含み得る。有機溶媒は、回転蒸発によって除去され得る。
【0092】
ペイロード分子と、カチオン性脂質またはイオン化可能脂質と、両親媒性コポリマーとを接触させることは、ペイロード分子と、カチオン性脂質またはイオン化可能脂質と、両親媒性コポリマーと、安定化分子とを接触させることを含み得る。ペイロード分子と、カチオン性脂質またはイオン化可能脂質と、両親媒性コポリマーと、安定化分子とは、同時に接触させられてもよい。
【0093】
有利には、得られたサブミクロン粒子では、安定化分子は、両親媒性コポリマーを含む外層によって取り囲まれる。
【0094】
安定化分子は、第1の態様に関して定義された通りであり得る。
【0095】
方法が第2の溶液を提供することを含む実施形態では、第2の溶液は、安定化分子をさらに含み得る。
【0096】
第2の溶液中および/または反応混合物中の安定化分子対ペイロード分子の重量比は、少なくとも1:1、少なくとも2:1、少なくとも4:1、少なくとも6:1、少なくとも8:1、少なくとも10:1、少なくとも20:1、少なくとも30:1、少なくとも40:1、少なくとも50:1、少なくとも60:1、少なくとも70:1、少なくとも80:1、少なくとも90:1または少なくとも95:1であり得る。第2の溶液中および/または反応混合物中の安定化分子対ペイロード分子の重量比は、100,000:1未満、50,000:1未満、10,000:1未満、5,000:1未満、1,000:1未満、500:1未満、400:1未満、350:1未満、300:1未満、250:1未満、200:1未満、175:1未満、150:1未満、125:1未満または110:1未満であり得る。第2の溶液中および/または反応混合物中の安定化分子対ペイロード分子の重量比は、1:1~100,000:1、2:1~50,000:1、4:1~10,000:1、6:1~5,000:1、8:1~1,000:1、10:1~500:1、20:1~400:1、30:1~350:1、40:1~300:1、50:1~250:1、60:1~200:1、70:1~175:1、80:1~150:1、90:1~125:1、または95:1~110:1であり得る。
【0097】
代替的または追加的に、方法は、得られたサブミクロン粒子と安定化分子とを接触させることを含み得る。安定化分子は、第1の態様に関して定義された通りであり得る。したがって、少なくとも1つの安定化分子は、両親媒性コポリマーを含む外層の外側に配置されてもよい。
【0098】
方法は、有機溶媒を除去した後に、得られたサブミクロン粒子と安定化分子とを接触させることを含み得る。
【0099】
方法は、得られたサブミクロン粒子と安定化分子とをある濃度で接触させて、第1の態様に関して定義された、安定化分子の濃度を得ることを含み得る。
【0100】
方法は、溶液中でサブミクロン粒子を保存することを含み得る。溶液は、第1の態様に関して定義された通りであり得る。
【0101】
あるいは、方法は、サブミクロン粒子を乾燥させることを含み得る。好ましくは、サブミクロン粒子を乾燥させることは、サブミクロン粒子を凍結乾燥させることを含む。
【0102】
第3の態様によれば、第2の態様の方法によって得られるまたは得ることができるサブミクロン粒子が提供される。
【0103】
第4の態様では、第1または第3の態様のサブミクロン粒子と、薬学的に許容されるビヒクルとを含む医薬組成物が提供される。
【0104】
第5の態様では、第4の態様による医薬組成物を調製する方法であって、第1または第3の態様のサブミクロン粒子を薬学的に許容されるビヒクルと接触させることを含む方法が提供される。
【0105】
第6の態様では、医薬品として使用するための、第1もしくは第3の態様のサブミクロン粒子、または第4の態様の医薬組成物が提供される。
【0106】
第7の態様では、治療方法であって、それを必要とする対象に、第1もしくは第3の態様のサブミクロン粒子または第4の態様の医薬組成物の治療量を投与することまたは投与したことがあることを含む方法が提供される。
【0107】
第8の態様では、第1もしくは第3の態様のサブミクロン粒子または第4の態様の医薬組成物を含むワクチン組成物が提供される。
【0108】
ワクチンは、好適なアジュバントを含み得る。
【0109】
ワクチンは、COVID-19用のワクチンであり得る。ワクチンは、インフルエンザウイルス用のワクチンであり得る。
【0110】
第9の態様では、対象の免疫応答を刺激するのに使用するための、第1もしくは第3の態様のサブミクロン粒子、第4の態様の医薬組成物、または第8の態様のワクチンが提供される。
【0111】
免疫応答は、原虫、細菌、ウイルス、真菌または癌に対して刺激され得る。ウイルスはCOVID-19であり得る。ウイルスはインフルエンザウイルスであり得る。
【0112】
本発明の第10の態様では、対象にワクチン接種する方法であって、それを必要とする対象に、第1もしくは第3の態様のサブミクロン粒子、第4の態様の医薬組成物または第8の態様のワクチンの治療量を投与することまたは投与したことがあることを含む方法が提供される。
【0113】
本発明のサブミクロン粒子、医薬組成物またはワクチンは、特に、組成物が使用される様式に応じて、いくつかの異なる形態を有する組成物に組み合わせられ得る。したがって、例えば、組成物は、粉末、錠剤、カプセル、液体、軟膏、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、エアロゾル、スプレー、ミセル溶液、経皮パッチ、リポソーム懸濁液の形態、または治療を必要とする人もしくは動物に投与され得る任意の他の好適な形態であり得る。本発明による医薬品のビヒクルは、それが与えられる対象によって十分に許容されるものでなければならないことが理解されるであろう。
【0114】
本発明のサブミクロン粒子、医薬組成物またはワクチンは、徐放装置または遅延放出装置内に組み込まれてもよい。そのような装置は、例えば、皮膚の上または下に挿入されてもよく、医薬品は、数週間または数ヶ月にわたって放出されてもよい。装置は、治療部位に少なくとも隣接して配置されてもよい。
【0115】
ただし、好ましい実施形態では、本発明による医薬品は、血流、筋肉、皮膚に、または治療を必要とする部位に直接注射することによって対象に投与され得る。注射は、静脈内(ボーラスまたは注入)、皮下(ボーラスまたは注入)、皮内(ボーラスまたは注入)、筋肉内(ボーラスまたは注入)、髄腔内(ボーラスまたは注入)、硬膜外(ボーラスまたは注入)または腹腔内(ボーラスまたは注入)であり得る。
【0116】
必要とされるサブミクロン粒子、医薬組成物またはワクチンの量は、その生物学的活性およびバイオアベイラビリティによって決定され、これは、投与様式、サブミクロン粒子、医薬組成物またはワクチンの物理化学的特性、および単剤療法として使用されているか、または併用療法で使用されているかに依存することが理解されるであろう。
【0117】
投与頻度はまた、治療される対象内での活性剤の半減期による影響を受ける。投与される最適な投与量は、当業者によって決定され得、使用中のサブミクロン粒子、医薬組成物またはワクチン、医薬組成物の強度、投与様式、および治療の種類によって変動する。対象の年齢、体重、性別、食事および投与時間を含む、治療される特定の対象に依存する追加の要因によって、投与量を調節することが必要になる。
【0118】
必要な用量は、限定するものではないが、投与される活性剤、治療されるおよび/またはワクチン接種される疾患、治療される対象などを含む多くの要因に依存し得る。
【0119】
一般に、使用される活性剤に応じて、0.001μg/kg体重~10mg/kg体重、または0.01μg/kg体重~1mg/kg体重の、本発明のサブミクロン粒子、医薬組成物またはワクチンの用量が使用され得る。用量は、送達されるペイロード分子の量に関連すると理解され得る。
【0120】
用量は、単回投与(例えば、単回注射)として与えられ得る。あるいは、サブミクロン粒子、医薬組成物またはワクチンは、複数の投与を必要とし得る。一例として、サブミクロン粒子、医薬組成物またはワクチンは、0.07μg~700mg(すなわち、70kgの体重を仮定する)の2つ以上の用量として投与され得る。あるいは、徐放装置を使用して、反復用量を投与する必要なく、本発明によるサブミクロン粒子、医薬組成物またはワクチンの最適用量を患者に提供してもよい。投与経路は、静脈内注射経路、皮内注射経路皮下注射経路、筋肉内注射経路、髄腔内注射経路、硬膜外注射経路または腹腔内注射経路を組み込み得る。
【0121】
公知の手順、例えば、製薬業界によって従来使用されている手順(例えば、インビボ実験、臨床試験など)を使用して、本発明によるサブミクロン粒子、医薬組成物またはワクチン特定の製剤、および正確な治療レジメン(例えば、薬剤の用量、および投与頻度)を形成してもよい。
【0122】
「対象」は、脊椎動物、哺乳動物または家畜であり得る。したがって、本発明による組成物および医薬品は、任意の哺乳動物、例えば、家畜(例えば、ウマ)、ペットを治療するために使用されてもよいか、または他の獣医学的用途で使用されてもよい。ただし、最も好ましくは、対象はヒトである。
【0123】
サブミクロン粒子、医薬組成物またはワクチンの「治療有効量」は、対象に投与された場合、治療効果をもたらすために必要な上記の量である任意の量である。
【0124】
例えば、本発明のサブミクロン粒子、医薬組成物およびワクチンの治療有効量は、約0.001mg~約800mgのペイロード分子、好ましくは約0.01mg~約500mgのペイロード分子を含み得る。
【0125】
本明細書で言及される「薬学的に許容されるビヒクル」は、医薬組成物の製剤化に有用であることが当業者に知られている任意の公知の化合物または公知の化合物の組合せである。
【0126】
一実施形態では、薬学的に許容されるビヒクルは固体であり得、組成物は粉末、カプセルまたは錠剤の形態であり得る。固体の薬学的に許容されるビヒクルは、香味剤、潤滑剤、可溶化剤、懸濁化剤、染料、充填剤、流動促進剤、圧縮助剤、不活性結合剤、甘味料、保存剤、染料、コーティングまたは錠剤崩壊剤としても作用し得る1つ以上の物質を含み得る。ビヒクルはまた、カプセル化材料であってもよい。粉末では、ビヒクルは、本発明による微粉化された活性剤と混合された微粉化された固体である。錠剤では、活性剤(例えば、本発明のサブミクロン粒子)は、必要な圧縮特性を有するビヒクルと好適な割合で混合され、所望の形状およびサイズに圧縮され得る。医薬ビヒクルはゲルであり得、組成物はクリームなどの形態であり得る。
【0127】
あるいは、医薬ビヒクルは液体であってよく、医薬組成物は溶液の形態である。液体ビヒクルは、溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エリキシルおよび加圧組成物の調製に使用される。本発明によるサブミクロン粒子は、薬学的に許容される液体ビヒクル、例えば、水、有機溶媒、両方の混合物、または薬学的に許容される油もしくは脂肪に溶解または懸濁され得る。液体ビヒクルは、他の好適な医薬添加剤、例えば、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、保存剤、甘味料、香味剤、懸濁化剤、増粘剤、着色剤、粘度調整剤、安定剤または浸透圧調整剤を含有することができる。経口投与および非経口投与のための液体ビヒクルの好適な例には、水(上記のような添加剤、例えば、セルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を部分的に含有する)、アルコール(一価アルコールおよび多価アルコール、例えば、グリコールを含む)およびその誘導体、ならびに油(例えば、分画されたヤシ油および落花生油)が挙げられる。非経口投与の場合、ビヒクルは、油性エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルであってもよい。非経口投与のための滅菌液体形態の組成物では、滅菌液体ビヒクルが有用である。加圧組成物用の液体ビヒクルは、ハロゲン化炭化水素または他の薬学的に許容される噴射剤であり得る。
【0128】
滅菌溶液または懸濁液である液体医薬組成物は、例えば、筋肉内注射、髄腔内注射、硬膜外注射、腹腔内注射、静脈内注射および皮下注射によって利用され得る。本発明のサブミクロン粒子は、任意の適切な滅菌注射用媒体として調製され得る。
【0129】
サブミクロン粒子は、吸入によって投与され得る。例えば、サブミクロン粒子は、エアロゾルの形態で提供されてもよい。
【0130】
本発明のサブミクロン粒子および/または医薬組成物は、他の溶質または懸濁化剤(例えば、溶液を等張性にするのに十分な生理食塩水またはグルコース)、胆汁酸塩、アカシア、ゼラチン、ソルビタンモノオレート、ポリソルベート80(ソルビトール、およびエチレンオキシドと共重合されたその無水物のオレイン酸エステル)などを含有する滅菌溶液または懸濁液の形態で経口投与され得る。本発明のサブミクロン粒子、および/または本発明による医薬組成物は、液体または固体の組成物の形態で経口投与することもできる。経口投与に適した組成物には、固体形態、例えば、丸剤、カプセル、顆粒、錠剤および粉末、ならびに液体形態、例えば、溶液、シロップ、エリキシルおよび懸濁液が含まれる。非経口投与に有用な形態には、滅菌溶液、エマルジョンおよび懸濁液が含まれる。
【0131】
本明細書に記載のすべての特徴(添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)、および/またはそのように開示された任意の方法もしくはプロセスの工程のすべては、そのような特徴および/または工程の少なくともいくつかが相互に排他的である組合せを除いて、任意の組合せで上記の態様のいずれかと組み合わされ得る。
【0132】
本発明をさらによく理解するために、および本発明の実施形態がどのように実施され得るかを示すために、ここで、例として、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【
図1】(A)ポリマー内包脂質ナノ粒子(PE-LNP)の調製手順、および(B)メッセンジャーRNA(mRNA)または自己増幅RNA(saRNA、括弧内に示されているその自己増幅工程)を含むRNAのPE-LNP媒介細胞内送達の概略図である。指定されない限り、PEG
5k-PCL
10kおよびDOTAPを使用してPE-LNPを調製した。
【
図2】(A)PEG
5k-PCL
10kポリマーの
1H-NMRスペクトル;(B)PEG
5k-PCL
10k、DOTAPおよびsaRNAから構成されたPE-LNP 18-80の動的光散乱(DLS)サイズ分布;ならびに(C)様々なPE-LNPのDLSサイズ、ゼータ電位および多分散性(PDI)を示す。
【
図3】異なるN/Pモル比(PEG
5k-PCL
10k/saRNA重量比=65)を有するPE-LNPの、RiboGreen Assayによって決定されたカプセル化効率を示す。
【
図4】PE-LNP 5’-65’、PE-LNP 11’-65’、PE-LNP 18’-65’およびPE-LNP 18’-80’のSEMおよびCryo-TEM顕微鏡写真を示す。アポストロフィ記号は、PE-LNPにペイロードが存在しないことを示唆している。
【
図5】PE-LNP 11’-65’。PE-LNP 11’-80’、PE-LNP 18’-65’およびPE-LNP 18’-80’の熱勾配時の(A)DLSサイズおよび(B)PDIの変化を示す。アポストロフィ記号は、PE-LNPにペイロードが存在しないことを示唆している。
【
図6】(A)は、純粋な脂質膜と比較して、NBD(ドナー色素)とRhod(アクセプター色素)との間の同様の距離、したがって、同様の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)効率を示す均一なポリマー-脂質ハイブリッド膜の概略図である。(B~D)は、PE-LNP(PE-LNP 5’-65’、PE-LNP 11’-65’およびPE-LNP 18’-65’)およびDOTAPリポソームの蛍光スペクトルおよびFRET効率を示す。アポストロフィ記号は、PE-LNPにペイロードが存在しないことを示唆している。各試料群におけるDOTAPの後の小さい数、すなわち、143、358および572は、それぞれ、対応するPE-LNPに存在するDOTAPの等モル濃度を示す。各試料群におけるDOTAPの後の大きい数、すなわち、186、401および615は、それぞれ、対応するPE-LNPに存在するDOTAPおよびPEG
5k-PCL
10kの総モル濃度を示す。PE-LNPまたはDOTAPリポソーム内のNBD-PE(N-(7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール-4-イル)-1,2-ジヘキサデカノイル-snグリセロ-3-ホスホエタノールアミン、トリエチルアンモニウム塩)およびRhod-PE(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(リサミンローダミンBスルホニル)、アンモニウム塩)の濃度を4.0mMに固定し、それらの蛍光強度を460nmの励起波長で測定した。FRET効率の顕著な差は、均一なポリマー-脂質ハイブリッド膜が存在しなかったことを示唆する。
【
図7】(A)は、DOTAPがPE-LNPのコアに存在し、軽微なFRETをもたらす場合の脂質混合の非存在の概略図である。(B、C)は、0、1および2時間の間隔でのPE-LNP 11’-65’およびDOTAPリポソームの蛍光スペクトルおよびFRET効率を示す。アポストロフィ記号は、PE-LNPにペイロードが存在しないことを示唆している。DOTAPの後の数、すなわち、358は、PE-LNP 11’-65’に存在するDOTAPの等モル濃度を示す。PE-LNP 11’-65’またはDOTAPリポソーム内のNBD-PEおよびRhod-PEの濃度を4.0mMに固定し、それらの蛍光強度を460nmの励起波長で測定した。PE-LNP 11’-65’(NBD-PE)とPE-LNP 11’-65’(Rhod-PE)とを2時間混合した後の軽微なFRETは、PE-LNPのコア内のDOTAP脂質の存在を示唆している。
【
図8】(A、B)ホタルルシフェラーゼ(fLuc)アッセイによって決定された相対発光単位(RLU)として表される、ウシ胎児血清(FBS)の非存在下での異なるN/Pモル比を有するsaRNA添加PE-LNPのHEK293細胞トランスフェクション効率、およびFBSの非存在下(C、D)またはFBSの存在下(E、F)での異なるPEG-PCL/saRNA(w/w)比を有するsaRNA添加PE-LNPのHEK293細胞トランスフェクション効率のグラフを示す。saRNA用量は1μg mL
-1に固定した。
【
図9】(A)FBSの非存在下または(B)FBSの存在下での、および4℃で5日間保存した後の(C)RNase不含水または(D)RNase不含PBS中のsaRNA添加PE-LNP 18-80(ナノ粒子コア内のsaRNA)およびsaRNA結合PE-LNP 18-80 M2(ナノ粒子表面上のsaRNA)のHEK293細胞トランスフェクション効率を比較する。saRNA用量は1μg mL
-1に固定した。単一(*)、二重(**)、三重(***)および四重のアスタリスク記号(****)は、それぞれp<0.05、p<0.01、p<0.001およびp<0.0001を示し、NSは、2群間に有意差がないことを表す。
【
図10】(A)65および(B)80のポリマー/saRNA重量比(N/Pモル比=11または18)を有するsaRNA添加PE-LNPのHeLa細胞トランスフェクション効率を示す。0.1、0.5、1、3、5および7μg mL
-1のsaRNA用量をホタルルシフェラーゼ(fLuc)アッセイで試験した。
【
図11】(A)RPMI-1640培地中の緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を添加した様々なPE-LNPによってトランスフェクトしたJurkat細胞を示す蛍光顕微鏡画像;(B、C)OPTIMEM培地中で4時間PE-LNPを処理した後、Cell Viability Analyzerを使用して測定した、陰性対照(培地のみによって処理した細胞)と比較したGFP発現Jurkat細胞の割合、および平均蛍光強度(MFI)および(D)細胞生存率のフローサイトメトリー分析を示す。mRNA用量は2μg mL
-1に固定した。単一(*)および四重のアスタリスク記号(****)は、それぞれp<0.05およびp<0.0001を示し、NSは、2群間に有意差がないことを表す。
【
図12】(A)4または37℃での4時間にわたるHEK293細胞内のPE-LNP 18-80(1μg mL
-1のsaRNAと50μg mL
-1のFITCとを共添加(coloaded))の細胞内分布を示す共焦点顕微鏡画像を示す。黄色の線は、ImageJを使用して(B)に示す強度プロファイルを生成するために使用した断面を示す。(C)エンドサイトーシス阻害剤MβCDの存在下でのHEK293細胞内のsaRNAおよびFITC共添加PE-LNP 18-80の細胞内分布を示す共焦点顕微鏡画像。(D)様々なエンドサイトーシス阻害剤の存在下でのsaRNAおよびFITC共添加PE-LNP 18-80のエンドサイトーシスのフローサイトメトリー分析。二重のアスタリスク記号(**)はp<0.01を示す。
【
図13】(A)1μg mL
-1のsaRNAを添加した様々なPE-LNPと37℃で1時間インキュベートした後の溶血;および(B)alamarBlueアッセイを使用して測定した、24時間にわたってsaRNA添加PE-LNPによって処理したHEK293細胞の陰性対照(培地のみによって処理した細胞)と比較した生存率のグラフを示す。二重のアスタリスク記号(**)はp<0.01を示す。
【
図14】PE-LNPの内部または表面上に配合した5μgのfLuc saRNAを両後肢四頭筋に筋肉内(IM)注射した後7日目のBalb/C雌マウスにおける(A)fLuc生物発光の可視化および(B)fLuc発現の定量;(C)様々なPE-LNPの内部に配合した、Cal/09ウイルスのH1赤血球凝集素をコードする1μgのsaRNA(HA saRNA)によって後肢四頭筋1つにおいてIM免疫し、4週間後に同一の製剤によってブーストしたBalb/C雌マウスにおける免疫原性実験の概略図;(D)IM注射によるHA saRNA添加jetPEIおよび様々なPE-LNPのプライムおよびブーストによるマウスの免疫後のHA抗原特異的IgG抗体力価;ならびに(E)IM注射したBalb/C雌マウスに対するCal/09インフルエンザウイルスによる鼻腔内(IN)負荷後の体重の変化を示す。単一のアスタリスク記号(*)はp<0.05を示す。
【
図15】IM注射によるSARS-CoV-2 saRNA添加PE-LNP 11-65およびPE-LNP 18-65のプライムによるマウスの免疫後のSARS-CoV-2(COVID-19)特異的IgG抗体力価を示す。
【
図16】PEG
5k-PCL
8.5kおよびPEG
5k-PCL
10kからそれぞれ構成されたsaRNA添加PE-LNP 11-65のグラフを示す:(A)新鮮試料のDLSサイズ、(B)PDIおよび(C)ゼータ電位、ならびに(D)4℃の水溶液中で21日間保存した後の試料のHEK293細胞トランスフェクション効率。saRNA用量は1μg mL
-1に固定した。
【
図17】4℃の水溶液中の、PE-LNP 11-65、PE-LNP 18-65およびPE-LNP 18-80にそれぞれ配合した40μg mL
-1のsaRNAの安定な保存を示す。このグラフは、4℃の水溶液中で3ヶ月間保存した後のHEK293細胞トランスフェクション効率を示す。saRNA用量は1μg mL
-1に固定した。
【
図18】水溶液中、室温で21日間保存した後のPE-LNP 11-65に配合した40μg mL
-1のsaRNAのHEK293細胞トランスフェクション効率を示す。saRNA用量は1μg mL
-1に固定した。NSは、2群間に有意差がないことを表す。
【
図19】室温の水溶液中の、PE-LNP 11-65、18-65および18-80にそれぞれ配合した40μg mL
-1のsaRNAの安定な保存を示す。水溶液中、室温で28日間保存した後に、(A)トランスフェクション効率、(B)DLSサイズ、(C)PDIおよび(D)ゼータ電位の変化を記録した。トランスフェクション効率では、saRNA用量は1μg mL
-1に固定した。
【
図20】saRNAおよびトレハロース共添加PE-LNPの構造および調製プロセスの概略図を示す。
【
図21】トレハロースを含有する水溶液中のPE-LNP 11-65に配合した40μg mL
-1のsaRNAの4℃での安定な保存を示す:(i)saRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP 11-65(共カプセル化のためにトレハロース/saRNA重量比=100、続いて、総トレハロースを250mg mL
-1まで補充するために追加のトレハロースと混合);(ii)250mg mL
-1の外部トレハロースと混合したsaRNA添加PE-LNP 11-65。このグラフは、このグラフは、4℃の水溶液中で383日間保存した後のHEK293細胞トランスフェクション効率を示す。saRNA用量は1μg mL
-1に固定した。
【
図22】水溶液中、室温でのPE-LNP 11-65、PE-LNP 18-65およびPE-LNP 18-80それぞれにおける、トレハロースを共添加した40μg mL
-1のsaRNAの安定な保存を示す(共カプセル化のためにトレハロース/saRNA重量比=100、続いて、総トレハロースを250mg mL
-1まで補充するために追加のトレハロースと混合)。水溶液中、室温で28日間保存した後に、(A)トランスフェクション効率、(B)DLSサイズ、(C)PDIおよび(D)ゼータ電位の変化を記録した。トランスフェクション効率では、saRNA用量は1μg mL
-1に固定した。
【
図23】200mg mL
-1の外部トレハロースの存在下でPE-LNPに配合したsaRNAの濃度を変化させることによる凍結乾燥条件の効果を示す。このグラフは、RNase不含水による即時の再水和後の凍結乾燥PE-LNP 11-65のHEK293細胞トランスフェクション効率を示す。1μg mL
-1の同等のsaRNA用量で新たに調製したPE-LNP 11-65(トレハロース不含)を陰性対照として使用した。単一(*)および三重のアスタリスク記号(***)は、それぞれp<0.05およびp<0.001を示す。
【
図24】40μg mL
-1のsaRNAを添加したPE-LNP 11-65の外部のトレハロースの濃度を変化させることによる凍結乾燥条件の効果を示す。このグラフは、RNase不含水による即時の再水和後の凍結乾燥PE-LNP 11-65のHEK293細胞トランスフェクション効率を示す。1μg mL
-1の同等のsaRNA用量で新たに調製したPE-LNP 11-65(トレハロース不含)を陰性対照として使用した。単一(*)および二重のアスタリスク記号(**)は、それぞれp<0.05およびp<0.01を示す。
【
図25】250mg mL
-1の外部トレハロースの存在下でPE-LNP 11-65に配合した40μg mL
-1のsaRNAの凍結乾燥後の4℃での安定な保存を示す。このグラフは、4℃で28日間保存し、RNase不含水によって再水和した後の凍結乾燥PE-LNP 11-65のHEK293細胞トランスフェクション効率を示す。1μg mL
-1の同等のsaRNA用量で新たに調製したPE-LNP 11-65(トレハロース不含)を陰性対照として使用した。NSは、2群間に有意差がないことを表す。
【
図26】トレハロース/saRNA重量比を変化させることによる凍結乾燥条件の効果を示す。saRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP 11-65を調製するために、様々なトレハロース/saRNA重量比で、RNase不含脱イオン水中の40μg mL
-1のsaRNA溶液にトレハロースを予備溶解した。次いで、得られたナノ粒子の外部に追加のトレハロースを加え、総トレハロース(ナノ粒子の内部および外部の両方)を250mg mL
-1まで補充した。このグラフは、RNase不含水による即時の再水和後の凍結乾燥saRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP 11-65のHEK293細胞トランスフェクション効率を示す。1μg mL
-1の同等のsaRNA用量で新たに調製したPE-LNP 11-65(トレハロース不含)を陰性対照として使用した。三重(***)および四重のアスタリスク記号(****)は、それぞれp p<0.001およびp<0.0001を示す。
【
図27】トレハロースの存在下でPE-LNP 11-65に配合した40μg mL
-1のsaRNAの凍結乾燥後の4℃での安定な保存を示す。このグラフは、凍結乾燥、4℃で380日間の保存、およびその後の再水和後の2つの異なるPE-LNP 11-65試料のHEK293細胞トランスフェクション効率を示す:(i)saRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP 11-65(共カプセル化のためにトレハロース/saRNA重量比=100、続いて、総トレハロースを250mg mL
-1まで補充するために追加のトレハロースと混合);(ii)250mg mL
-1の外部トレハロースと混合したsaRNA添加PE-LNP 11-65。saRNA用量は1μg mL
-1に固定した。
【
図28】トレハロース含有PE-LNP 11-65に配合した40μg mL
-1のsaRNAの凍結乾燥後の40℃での安定な保存を示す。このグラフは、3つの異なるPE-LNP 11-65試料のHEK293細胞トランスフェクション効率を示す:(i)凍結乾燥、40℃で0、1、3、5または7日間の保存、および外部トレハロースを除去しない再水和後のsaRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP 11-65(共カプセル化のためにトレハロース/saRNA重量比=100、続いて、総トレハロースを250mg mL
-1まで補充するために追加のトレハロースと混合);(ii)凍結乾燥、40℃で0、1、3、5または7日間の保存、および外部トレハロースを除去しない再水和後に、250mg mL
-1の外部トレハロースと混合したsaRNA添加PE-LNP 11-65;(iii)陰性対照として新たに調製したsaRNA添加PE-LNP 11-65(トレハロース不含)。saRNA用量は1μg mL
-1に固定した。単一(*)、二重(**)、三重(***)および四重のアスタリスク記号(****)は、それぞれp<0.05、p<0.01、p<0.001およびp<0.0001を示す。
【
図29】内部トレハロースおよび外部トレハロースの存在下でPE-LNP 11-65に配合した40μg mL
-1のsaRNAの凍結乾燥後の40℃での安定な保存を示す。このグラフは、凍結乾燥、40℃で14日間の保存、および外部トレハロースを除去しない再水和後のsaRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP 11-65(共カプセル化のためにトレハロース/saRNA重量比=100、続いて、総トレハロースを250mg mL
-1まで補充するために追加のトレハロースと混合)のHEK293細胞トランスフェクション効率を示す。1μg mL
-1の同等のsaRNA用量で新たに調製したsaRNA添加PE-LNP 11-65(トレハロース不含)を陰性対照として使用した。NSは、2群間に有意差がないことを表す。
【
図30】トレハロース含有PE-LNP 11-65に配合した40μg mL
-1のsaRNAの凍結乾燥後の40℃での安定な保存を示す。このグラフは、3つの異なるPE-LNP 11-65試料のHEK293細胞トランスフェクション効率を示す:(i)凍結乾燥、40℃で0、1、3、5または7日間の保存、再水和、次いで、限外濾過遠心分離による外部トレハロースの除去後のsaRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP 11-65(共カプセル化のためにトレハロース/saRNA重量比=100、続いて、総トレハロースを250mg mL
-1まで補充するために追加のトレハロースと混合);(ii)凍結乾燥、40℃で0、1、3、5または7日間の保存、再水和後、次いで、限外濾過遠心分離による外部トレハロースの除去後に、250mg mL
-1の外部トレハロースと混合したsaRNA添加PE-LNP 11-65;(iii)陰性対照として新たに調製したsaRNA添加PE-LNP 11-65(トレハロース不含)。saRNA用量は1μg mL
-1に固定した。単一(*)および二重のアスタリスク記号(**)は、それぞれp<0.05およびp<0.01を示す。
【
図31】(A)新たに調製したsaRNAおよびカルセイン共添加PE-LNP 11-65、またはsaRNA、トレハロースおよびカルセイン共添加PE-LNP 11-65による処理の2時間後の4時間でのHEK293細胞の共焦点顕微鏡画像、ならびに(B)ImageJによって分析した共焦点顕微鏡画像におけるカルセインのMFIを示す。四重のアスタリスク記号は、p<0.0001を示す。
【
図32】(A)フローサイトメトリーによって測定した、新たに調製したmRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP 11-65(共カプセル化のためにトレハロース/mRNA重量比=100、続いて、10mg mL
-1で総トレハロースに補充するために追加のトレハロースと混合)およびsaRNA添加トレハロース不含PE-LNP 11-65によってそれぞれ処理したGFP発現HEK293細胞の割合およびMFIのグラフを示す。単一(*)および二重のアスタリスク記号(**)は、それぞれp<0.05およびp<0.01を示す。
【
図33】(A)コレステロールを配合したsaRNA添加PE-LNP 11-65のトランスフェクション効率、(B)コレステロールを配合したPE-LNP 11’-65’のゼータ電位、(C)PDIおよび(D)DLSサイズを示す。
【0134】
実施例1-様々な分子量を有するPEG-PCLコポリマーの合成
触媒としてオクタン酸第一スズ(Sn(Oct)2)を使用した、mPEG-OHによって開始されたε-カプロラクトン(ε-CL)の開環重合によって、様々な分子量を有するPEG-PCLコポリマーを合成した。要約すると、200mgのmPEG5K-OH、470mgのε-CL(または200mgのmPEG2K-OH、530mgのε-CL)および50mgのSn(Oct)2を5mLの無水トルエンに溶解し、反応系を乾燥窒素雰囲気下で48時間かけて110℃に加熱した22。反応後、混合物を脱気し、室温に冷却した。次いで、得られた生成物を過剰の冷ジエチルエーテルを使用して沈殿させた。ポリマーを濾過し、室温で一定重量になるまで真空乾燥させた。
【0135】
PEG-PCLコポリマーの特性評価
Jeol 400MHz NMR分光計を用いて1H-NMRスペクトル(CDCl3において)を記録して、PCLブロックの化学組成および重合度を特性評価した。Agilent 1260 Infinity IIを使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して、ポリマーの分子量および分子量分布を決定した。
【0136】
結果および考察
図1は、ポリマー内包脂質ナノ粒子(PE-LNP)の調製手順、ならびにmRNAおよびsaRNAを含むRNAのPE-LNP媒介細胞内送達の概略図である。PEG-PCLは生分解性および生体適合性ポリマーであり、PEGおよびPCLはともに、ヒトに対する適用についてFDAによって承認されている。文献に報告されているように、両親媒性ポリマーの分子量は、自己組織化構造では重要な役割を果たす。両親媒性コポリマーは、親水性ブロックがその分子量の25~40%を占める場合、強固な小胞構造に自己組織化することができた
23~25。両親媒性コポリマーの組成および分子量を変化させることができ、これにより、様々な表面特性、膜厚および安定性を有する小胞の形成が可能になる。2,000および5,000DaのM
nを有するPEGは、薬物送達系では最も広く使用されている親水性ブロックの1つであるため、本発明に記載される実施例では、市販のPEG(M
n=2,000および5,000Da)を開始剤として選択した。触媒としてオクタン酸第一スズ(Sn(Oct)
2)を使用した、ε-CLの開環重合によって、2つの異なる分子量を有するPEG-PCLコポリマーを合成することに成功した。生成物の
1H-NMRスペクトルを
図2Aに示す。
1H-NMRスペクトルの4.06ppmのカプロラクトン単位(-COCH
2CH
2CH
2CH
2CH
2O-)のメチレンピークと3.60ppmのエチレングリコール単位(-CH
2CH
2O-)のエチレンピークとの積分から計算したPEG-PCLコポリマーの数平均分子量(M
n)は、それぞれ7,873、14,473および16,580Daであり、これらは理論分子量とよく一致していた(表1)。これは、所望の分子量を有するPEG
2k-PCL
5kコポリマー、PEG
2k-PCL
8.5kコポリマーおよびPEG
5k-PCL
10kコポリマーの合成に成功したことを示す。表1はまた、PEG
2k-PCL
5kコポリマー、PEG
2k-PCL
8.5kコポリマーおよびPEG
5k-PCL
10kコポリマーの分子量、ならびにGPCによって決定されたそれらの比較的低い多分散性(D=M
w/M
n)を示す。
【0137】
表1:PEG
2k
-PCL
5k
、PEG
5k
-PCL
8.5k
およびPEG
5k
-PCL
10k
の理論分子量(M
n,th
)ならびに
1
H-NMR(M
n,NMR
)およびGPC(M
n,GPC
、M
w,GPC
、多分散性D=M
w,GPC
/M
n,GPC
)によって測定された分子量
【0138】
【0139】
実施例2-saRNA添加PE-LNPの調製
単純なワンポット法によってPE-LNPを調製した。典型的には、650μgのPEG5k-PCL10kと250μgのDOTAPとを0.5mLのTHFに共溶解し、10μgのsaRNAを1mLのRNase不含水に溶解した。有機溶液と水溶液とを素早く混合し、混合物を室温で1~2分間撹拌し続けた。次いで、回転蒸発によってTHFを除去した後、saRNA添加PE-LNP 11-65(N/P=11、ポリマー/saRNA(w/w)=65)を得た。様々なN/Pモル比またはポリマー/saRNA重量比を有する様々なPE-LNPを同様に調製した。チップおよびガラス器具はいずれも、RNase不含条件を保証するために使用前に処理するべきである。
【0140】
PE-LNPの特性評価
それぞれZetasizer μV機器(Malvern,UK)およびZETA PALSを使用して、25℃で、様々なPE-LNPのサイズ分布(Z平均)およびゼータ電位(Smulochowskiモデルに基づく)を決定した。DynaPro Plate Reader III(Wyatt,UK)を使用して、ハイスループット動的光散乱(HT-DLS)によって、25℃から85℃への温度上昇時にサイズおよび多分散性指数(PDI)を測定することによって、PE-LNPの熱安定性を評価した。
【0141】
SEMを使用して、PE-LNPの形態を可視化した。1滴のPE-LNP懸濁液をグラファイト表面に置いた。乾燥後、Ion Sputterを使用して、試料を金によってコーティングした。その後、20kVの加速電圧でJSM-6400走査型電子顕微鏡(JEOL Ltd,Tokyo,Japan)を使用して試料を観察した。
【0142】
半自動Vitrobotシステム(Vitrobot Mark II,FEI)を使用して、レース状カーボンによってコーティングされた銅グリッド(Structure Probe Incorporation,PA)上に、Cryo-TEM用のPE-LNP試料(200kVでTecnai F20 G2)を調製した。要約すると、4μLの1mg mL-1のPE-LNP溶液を炭素グリッドの上に流延した。次いで、グリッドを、湿度100%および20℃のVitrobotチャンバに移した。1秒間のブロッティング後の液体エタンへのグリッドの迅速な浸漬により、試料を効果的にガラス化した。結晶氷の形成を防ぐために、Cryo-TEM機器に首尾よく移すまで、Gatan 626クライオホルダを使用して試料を-170℃下で保持した。画像は、約4,000nmの焦点ずれで得られた。
【0143】
RiboGreen Assay(Quant-iT(商標)RiboGreen(商標)RNA Assay Kit、Thermo Fisher)によって、PE-LNPのsaRNAカプセル化効率を決定した。製造業者の指示に従って、0.5%Triton X-100を用いておよび用いずに、TE緩衝剤および水性RiboGreen作業溶液を調製した。蛍光強度対saRNA濃度の検量線を確立した。不含(非添加)saRNA濃度(Cunloaded)を以下のように決定した:試料をTriton X-100不含TE緩衝剤を用いて適切な濃度に希釈し、Triton X-100不含RiboGreen作業溶液と混合し、暗所で15分間インキュベートした。次いで、各ウェルが200μLの最終混合物を含有する黒色96ウェルプレートに、試料をピペットで移した。次いで、分光蛍光光度計(GloMax(登録商標)Discover Microplate Reader、Promega,USA)によって、それぞれ480および520nmの励起波長および発光波長で、3回繰り返して蛍光強度測定を行った。ナノ粒子を溶解するためのTE緩衝剤と0.5%Triton X-100を含有するRiboGreen作業溶液とを用いた同様の手順に従って、総saRNA濃度(Ctotal)を測定した。以下の式に従って、系のカプセル化効率を計算することができた:
【0144】
【0145】
結果および考察
様々なN/Pモル比またはポリマー/saRNA(w/w)重量比を有する様々なsaRNA添加PE-LNPを得た。N/P=5およびポリマー/saRNA(w/w)=65を有するPE-LNPをPE-LNP 5-65と命名する。同じ規則に従って他のPE-LNPを割り当てる。様々な組成を有するPE-LNPのサイズ分布、PDIおよびゼータ電位を
図2Cに要約した。
【0146】
saRNA(約9,500nt)は、保護をもたらし、saRNAの細胞内送達を促進することができる担体にカプセル化される必要がある。
図2Bは、saRNA添加PE-LNPが単分散であったことを示す。
図2Cに列挙されるように、PEG
5k-PCL
10kから組織化されたPE-LNPは、直径113.1±0.3~134.2±0.6nmの平均流体力学的サイズと、0.21±0.03~0.35±0.02の低いPDIとを示した。PEG
2k-PCL
5kから構成されたPE-LNPの方が、大きなサイズ(133.9±0.5~149.6±0.4nm)および高いPDI(0.49±0.09~0.59±0.10)を示した。これは、PEG
5k-PCL
10kから自己組織化したPE-LNPの方が安定な構造を示し、これは親水性PEG鎖長が長く、ポリマーカプセル層が厚いことに起因し得ることを示している。
【0147】
N/Pモル比は、saRNA添加能力およびエンドソーム脱出効率を制御する重要な要素である。N/P比を5から18に増加させると、PEG5k-PCL10kから構成されたPE-LNP(ポリマー/saRNA重量比=65)のゼータ電位は、カチオン性脂質の量の増加に起因して、+29.0±0.9mVから+44.5±0.8mVに顕著に増加した。ただし、PE-LNPのポリマー/saRNA重量比が65から80に増加すると、PEG5k-PCL10kから構成されたPE-LNP(N/P=18)のゼータ電位は+44.5±0.8mVから+40.2±0.9mVに低下したが、これはポリマーカプセル層の遮蔽効果の増強に起因している可能性がある。PEG2k-PCL5kから構成されたPE-LNPは、同じ傾向を示した。
【0148】
PEG
5k-PCL
10kおよびDOTAPを使用して、特に指定されない限り例示的な研究でさらに調査するためにRNA添加PE-LNP m-nを調製した。ここで、数mおよびnは、それぞれN/Pモル比およびポリマー/RNA重量比を示す。
図3は、様々なN/Pモル比を有するPE-LNP(ポリマー/saRNA重量比=65)のカプセル化効率の変化を示す。N/Pモル比が5から11に増加すると、カプセル化効率に20%の有意な増加が観察された。PE-LNP 11-65のカプセル化効率は93.6±3.3%であり、ナノ製剤の非常に高いRNA添加能力が示された。
【0149】
ペイロードを有しないPE-LNP m-nの対応物をPE-LNP m’-n’と命名する。Cryo-TEMによって、RNA添加を有しないPE-LNPの構造を調査した。
図4のCryo-TEM顕微鏡写真は、PE-LNPが透明な外層を示したことを示す。両親媒性PEG-PCLポリマーは、自己組織化して、親水性コアを含有するポリマーソーム構造になり得る。外層の方が暗いのは、コントラストが高い疎水性PCLポリマーに起因するはずである。コアには、凝集したDOTAP脂質ナノ粒子であると考えられる多数の黒い点があった。DOTAPは両親媒性であり、極性部分は水を好み、親水性とも呼ばれ、疎水性部分としての非極性部分は水から離れようとする。内側PEG-PCL小胞構造が親水性であることから、DOTAP尾部の「疎水性効果」
26(脂質炭化水素尾部と水性環境との間の接触を最小限に抑えるように作用する)は、ファンデルワールス相互作用および頭部基水素結合を含む他のものとともに、DOTAPの自己組織化挙動を決定する。そのため、電子透過能が低いために暗いコントラストを示した黒い点は、DOTAPに存在する不飽和疎水性炭化水素尾部からなる可能性が高い。
【0150】
したがって、DOTAPは、「スポンジ状」凝集体に自己組織化し、これがポリマーソームの水性コアにカプセル化され、炭化水素尾部の疎水性相互作用によって内部空間をサブ区画に分割した。リポソームおよびポリマーソームと比較して、PE-LNPの内部構造は、核酸添加に有利な顕著に高い表面積を提供する。さらに、PEG-PCLシェルは、RNAの分解を防止するだけでなく、脂質二重層よりも高い機械的強度に起因して、PE-LNP系の安定性も高めることができる。
【0151】
本発明者らは、PE-LNP 11’-65’ 11’-80’、18’-65’および18’-80’の熱安定性を評価した。
図5に示すように、PE-LNPのDLSサイズおよびPDIは、25℃~85℃の範囲内の温度変化に応答せず、温度変化時の良好な構造安定性およびコロイド安定性が実証された。
【0152】
実施例3-蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)分析によるPE-LNP構造の調査
蛍光光度計(FluoroMax-4、Horiba Scientific)を使用して、PE-LNP構造をさらに調査するために、FRET実験を行った。N-(7-ニトロ-2-1,3-ベンゾオキサジアゾール-4-イル)-1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(NBD-PE)/N-(リサミンローダミンBスルホニル)-1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(Rhod-PE)のドナー/アクセプター対について、励起波長を460nmに設定し、480~630nmの発光スペクトルを収集した。
【0153】
ドナーNBD-PE(4mM)およびアクセプターRhod-PE(4mM)とともにPE-LNPを組み込んだ。要約すると、様々なPE-LNP、例えば、saRNAを添加しないPE-LNP 5’-65’、PE-LNP 11’-65’およびPE-LNP 18’-65’について、NBD-PEおよびRhod-PEを所望の比でTHF(予備溶解したPEG-PCLおよびDOTAPを含有する)0.5mLに共溶解し、続いて、H2O 1mLと迅速に混合した。混合物を室温で1~2分間撹拌し、次いで、回転蒸発によってTHFを除去した(上記の実施例2のPE-LNP調製セクションを参照)。比較のために、ポリマーを有しない対照群(すなわち、DOTAPリポソーム)を調製した。対照リポソーム内のDOTAPのモル濃度は、対応するPE-LNP内のDOTAPのモル濃度(またはPEG-PCLおよびDOTAPの両方の総モル濃度)と同じであった。例えば、PE-LNP 5’-65’内のDOTAPおよびPEG5k-PCL10kのモル濃度は、それぞれ143mMおよび43mMであった。したがって、対応する対照リポソームをそれぞれDOTAP-143およびDOTAP-186と表記した。さらに、それぞれのドナー標識(NBD-PEのみ)PE-LNPも調製して、以下の式に従ってFRET効率E1を計算した:
【0154】
【0155】
式中、IDおよびIDAは、それぞれ、ドナーNBD-PEのみによって標識されたPE-LNPならびにドナーNBD-PEおよびアクセプターNBD-PEの両方によって共標識されたPE-LNPの530nmでのドナー蛍光強度である。
【0156】
別の実験では、PE-LNP 11’-65’をNBD-PE(4mM)およびRhod-PE(4mM)によって別個に標識した。次いで、PE-LNP 11’-65’(NBD-PEのみ)を、PE-LNP 11’-65’(Rhod-PEのみ)と等体積で、それぞれ100rpmで5分間、1時間および2時間振盪しながら混合した。対照DOTAPリポソームも、それぞれNBD-PE(4mM)およびRhod-PE(4mM)によって別個に標識し、対照リポソーム内のDOTAPのモル濃度は、対応するPE-LNP内のDOTAPのモル濃度と同等であった。標識を有しないブランクPE-LNPおよびDOTAPリポソームを比較のために調製した。特定の時点でのFRET効率E2を以下の式に従って計算した:
【0157】
【0158】
式中、IDは、ブランク試料と混合した後にNBD-PEによって標識されたPE-LNPの530nmでのドナー蛍光強度であり、IDMは、Rhod-PEによって標識されたPE-LNPと混合した後にNBD-PEによって標識されたPE-LNPのドナー蛍光強度である。
【0159】
結果および考察
脂質ナノ粒子がナノ構造のコアに形成されることをさらに検証するために、NBD-PEおよびRhod-PE対を使用するFRET分析を適用して、PEG-PCLおよびDOTAPの空間的配置を調査した。ドナーフルオロフォアNBD(4.0mM)とアクセプターフルオロフォアRhod(4.0mM)との間のエネルギー移動の効率は、膜層上のそれらの距離に依存する。両親媒性ポリマーを脂質と混合することによって形成される最も一般的な構造は、混合膜組成物を有するハイブリッド小胞構造である
27~29。
図6Bに示すように、ドナーNBDを460nmで励起すると、PE-LNP 5’-65’ではアクセプターRhodの発光強度が増強された蛍光スペクトルがもたらされ、93.7±0.2%のFRET効率が示された。PEG-PCLおよびDOTAPが均一なハイブリッド膜に自己組織化したと仮定すると、対照DOTAP-186リポソーム(PE-LNP 5’-65’に存在するポリマーおよび脂質分子の組合せと同じモル濃度でDOTAPから組織化した)のFRET効率は、ドナーNBDとアクセプターRhodとの間の距離が類似しているため、PE-LNP 5’-65’のFRET効率と同様のレベルであるはずである(
図6A)。実際、PE-LNP 5’-65’のFRET効率は、DOTAP-186リポソームのFRET効率よりも顕著に高かった(85.9±0.3%)。同様に、PEG-PCLおよびDOTAPが均一なハイブリッド膜に自己組織化したと仮定すると、対照DOTAP-143リポソーム(PE-LNP 5’-65’に存在するDOTAPと同じモル濃度でDOTAPから組織化した)のFRET効率は、ドナーNBDとアクセプターRhodとの間の距離が短くなっているため、PE-LNP 5’-65’のFRET効率よりも高いはずである。ただし、比較的少ない分子から自己組織化したDOTAP-143リポソームは、PE-LNP 5’-65’と同様のレベルのFRET効率(92.9±0.3%)を示した。PE-LNP 11’-65’およびPE-LNP 18’-65’についても同様の傾向が観察された(
図6C~
図6D)。FRET効率の顕著な差は、PE-LNPに均一なポリマー-脂質ハイブリッド膜が存在しなかったことを示唆する。
【0160】
次いで、PE-LNPのコア内の脂質ナノ粒子の形成を検証するために、さらなる研究を行った。ドナーNBD-PE(4.0mM)または受容体Rhod-PE(4.0mM)によって、PE-LNP 11’-65’を別個に標識した。次いで、100rpmで最大2時間振盪しながら、PE-LNP 11’-65’(NBD)を等体積のPE-LNP 11’-65’(Rhod)と混合した。対照DOTAP-358リポソーム(ここで、数(すなわち、358)は、PE-LNP 11’-65’に存在する等モル濃度のDOTAPを示す)も、比較のために別個にドナーNBD-PE(4.0mM)または受容体受容体Rhod-PE(4.0mM)によって標識した。同じ条件下でのインキュベーションのためにDOTAP-358リポソーム(NBD)をDOTAP-358リポソーム(Rhod)と混合した後、17.1%へのFRET効率の即時の増加が観察され、続いて、1時間後に22.0%まで徐々に増加した(
図7B~
図7D)。これは、DOTAPリポソーム間の脂質混合によるものであり、これにより、ドナーNBDとアクセプターRhodとの間の距離の減少がもたらされた。ただし、PE-LNP 11’-65’(NBD)とPE-LNP 11’-65’(Rhod)とを1時間混合した後、明らかなFRET効率は観察されず、その後、2時間の長期インキュベーション後に3.4%までわずかに増加するにとどまった。軽微なFRET効率は、PE-LNPのコア内の脂質ナノ粒子の形成を示唆している(
図7A)。
【0161】
実施例4-saRNA含有PE-LNPによるインビトロHEK293細胞トランスフェクション
saRNA添加PE-LNP(ナノ粒子コア内のsaRNA)のトランスフェクション効率
ホタルルシフェラーゼ(fLuc)アッセイのために、HEK293細胞を5×104/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種し、トランスフェクション前に60~80%コンフルエンスに達するように、10%(v/v)FBSおよび1%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシンを補充したDMEM培地中で48時間培養した。使用済み培地を除去した後、100μLの新鮮な無血清DMEM培地または完全DMEM培地を各ウェルに加え、次いで、これを様々なN/Pモル比およびポリマー/saRNA(w/w)重量比(1μg mL-1のsaRNAと同等)で10μLのfLuc saRNA添加PE-LNPを含む5つの複製物に加えた。4時間のインキュベーション後、トランスフェクション培地を新鮮な完全DMEM培地と交換した。50μLのfLuc基質によって24時間処理した後のトランスフェクト細胞から得られた、培地50μL中の相対発光単位(RLU)として表されるfLuc活性を、GloMax(登録商標)Microplate Reader(Promega)を使用してアッセイした。
【0162】
saRNA結合PE-LNP(ナノ粒子表面上のsaRNA)のトランスフェクション効率
比較のために、方法2(M2)によってfLuc saRNA結合PE-LNPを調製した。要約すると、650μgのPEG5k-PCL10kおよび400μgのDOTAPを0.5mLのTHFに共溶解した。得られた有機溶液を1mLのRnase不含水に素早く加え、室温で1~2分間撹拌した。次いで、THFを回転蒸発によって除去して、ブランクPE-LNPを得た。その後、ブランクPE-LNP溶液に10μgのfLuc saRNAを加えた。30秒間ボルテックスした後、fLuc saRNA結合PE-LNPを得た。実施例4の上記の方法を使用して、FBSの非存在下または存在下でのfLuc saRNA結合PE-LNPのトランスフェクション効率を決定した。PEI/fLuc saRNA複合体およびfLuc saRNA添加DOTAP脂質ナノ構造を対照として調製した。
【0163】
4℃での保存後のsaRNA添加PE-LNPおよびsaRNA結合PE-LNPのトランスフェクション効率
100μLのRnase不含PBS(10×)緩衝液(またはRnase不含水)を900μLのfLuc saRNA添加PE-LNP溶液またはfLuc saRNA結合PE-LNP溶液に加え、得られた試料を4℃で保存した。次いで、新たに調製したかまたは4℃で5日間保存したこれらの試料によってHEK293細胞をトランスフェクトし、実施例4の上記の方法に従ってトランスフェクション効率を測定した。
【0164】
結果および考察
HEK293細胞を対象に、様々なPE-LNPのトランスフェクション効率に対するPEG-PCL分子量、N/Pモル比およびポリマー/saRNA(w/w)重量比の効果を評価した。
図8Aおよび
図8Bは、65の固定ポリマー/saRNA(w/w)重量比を有するがN/Pモル比が異なるPE-LNPのトランスフェクション効率を示す。PEG
2k-PCL
5kから構成されたPE-LNPでは、N/Pモル比が5から16に増加した場合、トランスフェクション効率はほぼ4桁向上し、次いで、N/Pモル比がさらに増加するにつれて低下した。比較として、PEG
5k-PCL
10kから構成されたPE-LNPは、トランスフェクション効率の同様の傾向を示したが、5という低いN/Pモル比でトランスフェクション効率が高くなり、18のN/Pモル比でピークトランスフェクション効率が高くなった。
【0165】
図8Cおよび
図8Dは、固定N/Pモル比を有するがポリマー/saRNA重量比が様々なPE-LNPのトランスフェクション効率を示す。PEG
2k-PCL
5kから構成されたPE-LNPでは、ポリマー/saRNA重量比が40から65に増加した場合、トランスフェクション効率が二桁増加した。ポリマー/saRNA重量比を90までさらに増加させると、トランスフェクション効率の変化はわずかになった(
図8C)。ただし、PEG
5k-PCL
10kから構成されたPE-LNPに関して、トランスフェクション効率は、試験したポリマー/saRNA重量比範囲(40~90)内で同様のレベルであった(
図8D)。これは、分子量が高いPEG
5k-PCL
10kから得られた厚いポリマーシェル層の形成の増強に起因し得る。得られた厚いポリマーシェル層は、saRNAの改善された保護を提供することができ、これは、FBSの非存在下(
図8D)および存在下(
図8F)、65~90のポリマー/saRNA重量比でのPE-LNP試料間のトランスフェクション効率のわずかな変化によって確認された。対照的に、PEG
2k-PCL
5kから構成されたPE-LNPは、FBSの存在下で大幅に低下したトランスフェクション効率を示した(
図8E)。高いインビトロトランスフェクション効率を有する多くの他のカチオン性核酸送達系は、血清タンパク質の吸着に起因して低いインビボ有効性を示したため、厚いポリマーシェル層を有するPE-LNPの向上した安定性に起因する高い血清適合性が好ましい。したがって、さらなる研究では、PEG
5k-PCL
10kから構成されたPE-LNPを選択した。
【0166】
RNA分子は、非常に不安定であり、容易に加水分解/分解され得る。コアに添加され、PE-LNPの表面に結合したRNAの安定性を比較するために、2つの異なるRNA添加法を使用した。
図9Aに示すように、saRNA添加PE-LNP 18-80およびsaRNA結合PE-LNP 18-80は、FBSの非存在下で同等のトランスフェクション効率を示し、これは、PEI/saRNA複合体よりも1桁高く、saRNA添加DOTAP脂質ナノ構造よりも4~5桁高かった。saRNA添加PE-LNP 18-80はFBS適合性であったが、FBSの存在は、saRNA結合PE-LNP 18-80のトランスフェクション効率を1桁低下させたことに注目することは興味深い(
図9B)。比較として、PEI/saRNA複合体のトランスフェクション効率は、FBSとのインキュベーション時に3桁低下した。すなわち、saRNA添加PE-LNP 18-80は、FBSの存在下でPEI/saRNA複合体よりも4桁高いトランスフェクション効率を示した。
【0167】
本発明者らは、コアに添加され、4℃のRNase不含水またはPBS中で保存した後のPE-LNPの表面に結合したRNAの安定性をさらに評価した。
図9Cおよび
図9Dに示すように、液体製剤中で5日間保存した後、saRNA添加PE-LNP 18-80はトランスフェクション効率の低下を示さなかったが、saRNA結合PE-LNP 18-80のトランスフェクションシグナルは、依然として比較的高い(>10
6)が、新たに調製した試料と比較して半桁低かった。
【0168】
これらの結果は、PE-LNP系が好ましい血清安定性を示し、ナノ粒子コアへの生物学的ペイロード、特に容易に加水分解/分解されるRNA分子の高いカプセル化が最適な保護を提供し得ることを示唆している。これは、PE-LNPの親水性PEGコロナがタンパク質吸収を減少させることができ、疎水性PCL層がRNAを過酷な外部環境から保護することができるためである。
【0169】
実施例5-saRNA添加PE-LNPによるインターフェロンコンピテント(interferon-competent)HeLa細胞におけるインビトロトランスフェクション
saRNA添加PE-LNPのトランスフェクション効率
実施例2に上述したのと同じ方法によって、PE-LNP 11-65の内部に、fLucによってコードされるsaRNAを配合した。saRNA用量をそれぞれ0.1、0.5、1、3、5および7μg mL-1に変化させることによって滴定を行った実施例4の上記の方法に従って、HeLa細胞を播種およびトランスフェクトした。
【0170】
結果および考察
RNA系の臨床応用は、非効率的なタンパク質発現に加えて、それらの高い自然免疫原性によって制限される。タンパク質発現と自然免疫応答との間の良好なバランスを達成することが重要である。Toll様受容体(TLR)3、7、8および9は、小胞体、エンドソームおよびリソソームに存在する、核酸の細胞内センサーである。外来核酸が検出されると、細胞内TLRは様々なシグナル伝達経路を活性化し、サイトカインの産生を誘発し、これにより、タンパク質発現の制限、または患者への有害作用さえももたらし得る。HeLa細胞はTLR3を発現するため、HeLa細胞へのトランスフェクション効率を評価して、細胞内TLRによる認識を防止するPE-LNPの能力を調査した。
【0171】
図10Aおよび
図10Bは、インターフェロンコンピテントHeLa細胞に対するPE-LNPの細胞トランスフェクション力価を示す。試験した4つの製剤、PE-LNP 11-65、PE-LNP 18-65、PE-LNP 11-80およびPE-LNP 18-80は、トランスフェクション効率の同様の傾向を共有し、最大10
7のRLUでの最大トランスフェクション効率に達する3μg mL
-1の最適用量までsaRNA用量とともに増加した。4つのPE-LNP製剤はいずれも、PE-LNP構造によるTLR認識の効果的な防止を示す有望なレベルのトランスフェクション効率を示した。これは、親水性ブロックが水和層を提供し、TLRによる認識、およびカチオン性脂質コアと細胞との間の直接相互作用を防止し、インターフェロンコンピテント細胞への効果的なトランスフェクションをもたらすポリマーシェルに起因する。
【0172】
saRNAの用量が低下すると(ポリマー/saRNA重量比=65の場合、0.1~5μg mL-1;ポリマー/saRNA重量比=80の場合、0.5μg mL-1~3μg mL-1)、N/Pモル比が11から18に増加した場合、トランスフェクション効率が約1桁増加した。これは、エンドソーム区画内でペイロードのさらに効率的な放出をもたらす高いN/Pモル比に起因し得る。したがって、これにより、エンドソームに局在するTLRの活性化の可能性が低下し得る。
【0173】
これらの結果はまた、PE-LNPが、ヒト胎児由来腎臓細胞(実施例4)、癌細胞(実施例5)およびTリンパ球細胞(実施例6)を含む様々な細胞型に核酸ペイロードを効果的に送達することができることを示す。
【0174】
実施例6-懸濁Jurkat細胞へのmRNAのPE-LNP媒介細胞内送達
PE-LNPが様々なペイロードを様々な細胞株に送達する能力をさらに実証するために、本発明者らは、様々なPE-LNPを使用し、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を懸濁Jurkat細胞に細胞内送達した。saRNA添加PE-LNPについて実施例2に上述したのと同じ方法によって、GFP mRNA添加PE-LNPを調製した。要約すると、Jurkat細胞を穏やかにピペッティングして再懸濁し、次いで、Vi-CELL XR Cell Viability Analyzer(Beckman Coulter,USA)によって計数した。細胞を2回洗浄し、次いで、予熱した(37℃)非補充無血清RPMI-1640培地中に2×106細胞mL-1の密度で再懸濁した。1mLの細胞懸濁液を12ウェルプレートの各ウェルに播種した。次いで、GFP mRNA添加PE-LNPを1ウェル当たり2μgのmRNAで滴下し、その後直ちに穏やかにピペッティングして、培養物を完全に混合した。37℃で4時間インキュベートした後、細胞を2回洗浄し、37℃で一晩さらにインキュベートするために1mLの完全RPMI-1640培地に再懸濁した。Vi-CELL XR Cell Viability Analyzerによる細胞計数を介した生存性試験に、試料ウェルの一部を使用した。残りの試料ウェルをPBSによって2回洗浄し、細胞をLIVE/DEAD(商標)Fixable Aqua Dead Cell Stain(Thermo Fisher,USA)を含有する100μLのPBSに再懸濁し、30分間インキュベートした。PBSによって洗浄した後、各試料を蛍光顕微鏡(EVOS Floid Imaging System,Thermo Fisher)によって観察し、フローサイトメトリー(Canto,BD,USA)によって定量的に分析して、生存Jurkat細胞のGFP発現を調査した。
【0175】
結果および考察
図11は、mRNA添加PE-LNP 5-65によって処理したJurkat細胞では、GFP発現が軽微であることを示す。ポリマー/mRNA重量比を65に固定すると、GFP発現Jurkat細胞の割合は、N/Pモル比が5から11に増加するにつれて80%超まで大幅に増加し、続いて、N/Pモル比が18にさらに増加するにつれて約10%さらに増強した(
図11B)。mRNA添加PE-LNPによって処理したJurkat細胞における平均蛍光強度(MFI)は、5から11へのN/Pモル比の変化に対して同様の依存性を示した。ただし、N/Pモル比を18までさらに増加させても、有意な増強は観察されなかった(
図11C)。
図11Dは、Jurkat細胞がPE-LNPによって十分に耐容されたことを示し、PE-LNP 5-65およびPE-LNP 11-65は、処理の4時間後に80%を超える高い細胞生存率を示した。N/Pモル比を18に増加させると細胞傷害性のわずかな増加が観察されたが、PE-LNP 18-65は、70.4±1.8%で比較的高い細胞生存率を依然として示した。結果は、本発明者らのPE-LNPがmRNAを懸濁細胞株に首尾よく送達することもできることを実証している。
【0176】
実施例7-saRNAおよびFITC共添加PE-LNPの細胞取込みおよびエンドソーム脱出の機構
500μgのFITCと、800μgのPEG5k-PCL10kと、400μgのDOTAPとを0.5mLのTHFに共溶解し、10μgのsaRNAを1mLのRnase不含水に溶解した。有機溶液と水溶液とを素早く混合し、混合物を室温で1~2分間撹拌し続けた。THFを回転蒸発によって除去し、遊離FITCを限外濾過遠心チューブ(MWCO=3000)内、3000rpmで15分間の遠心分離によって除去して、saRNAおよびFITC共添加PE-LNPを得た。
【0177】
レーザー走査型共焦点顕微鏡によって、ナノスケール系の細胞取込み機構を調査した。2mL量のHEK293細胞(1皿当たり2×105細胞)を35mmガラス底培養皿に播種し、24時間培養した。4℃で1時間のプレインキュベーション後、saRNAおよびFITC共添加PE-LNP(1皿当たり2μgの最終saRNA濃度)を加え、細胞を4℃で4時間さらにインキュベートした。対照として、HEK293細胞をsaRNAおよびFITC共添加PE-LNPによって37℃で4時間処理した。4℃または37℃で処理した後、細胞をPBSによって洗浄し、4%パラホルムアルデヒド溶液によって10分間固定し、核およびリソソームをそれぞれHoechst 33342(5μg mL-1)およびLysoTracker-Red(50nM)によって5分間染色した。次いで、Leica SP8倒立共焦点顕微鏡を使用して細胞を画像化し、FITCおよびLysoTracker-Redの蛍光共局在をImage Jによって分析した。
【0178】
saRNAおよびFITC共添加PE-LNPの細胞取込みおよび細胞内輸送の機構をさらに調査するために、HEK293細胞を6ウェルプレートに5×105/ウェルの密度で24時間かけて播種した。最初に、細胞を以下の阻害剤、すなわち、クロルプロマジン塩酸塩(10μg mL-1)、メチル-β-シクロデキストリン(MβCD、5mM)、フィリピン(5μg mL-1)、アミロライド(1mM)、ゲニステイン(40μg mL-1)およびナイスタチン(40μg mL-1)とそれぞれ1時間プレインキュベートした。次いで、saRNAおよびFITC共添加PE-LNP(2μgのsaRNAを含有する)を各ウェルに加え、阻害剤とさらに1時間共インキュベートした。最後に、細胞を予冷PBS溶液によって3回洗浄し、フローサイトメトリー(Fortessa I)によって分析した。
【0179】
saRNAおよびFITC共添加PE-LNPの取込みおよび細胞内輸送も共焦点顕微鏡によって試験した。2mL量のHEK293細胞(1皿当たり2×105細胞)を35mmガラス底培養皿に播種し、24時間培養した。MβCD(5mM)と1時間プレインキュベーションした後、saRNAおよびFITC共添加PE-LNP(2μgのsaRNAを含有する)を培養皿に加え、MβCDと4時間共インキュベートした。次いで、細胞をPBSによって洗浄し、4%パラホルムアルデヒド溶液によって10分間固定し、核およびリソソームをそれぞれHoechst 33342(5μg mL-1)およびLysoTracker-Red(50nM)によって5分間染色した。最後に、Leica SP8倒立共焦点顕微鏡を使用して細胞を画像化した。
【0180】
結果および考察
形質膜陥入された生体分子が分解のためにリソソームに輸送される前にそれらをエンドソーム脱出によって細胞質に放出することができるナノ担体を設計することが重要である
30(
図1B)。この研究では、エンドサイトーシス経路および細胞内輸送を調査するために、FITCをPE-LNP 18-80内のsaRNAと共添加した。37℃で4時間処理した後、共焦点顕微鏡によってFITCの強力な拡散緑色蛍光を可視化した(
図12A)。ImageJ分析から、saRNAおよびFITC共添加PE-LNP(緑色)とエンドソーム/リソソーム(赤色)との間の蛍光共局在化のシグナルは軽微あることが示唆され、細胞質へのペイロードのPE-LNP媒介エンドソーム脱出の成功が示された(
図12B)。比較として、FITCの細胞内緑色蛍光強度は、4℃で4時間のインキュベーション後にかなり低いレベルに大幅に低下し、PE-LNPの細胞取込みがエネルギー依存性エンドサイトーシス経路を介したことが示唆された(
図12Aおよび
図12B)。さらに、様々なエンドサイトーシス阻害剤を使用して、PE-LNPの特異的なエンドサイトーシス機構をさらに調査した。
図12Cおよび
図12Dは、細胞内緑色蛍光強度が阻害剤MβCDによる処理後に有意に低下したことを示しており、脂質-ラフト媒介エンドサイトーシスがPE-LNPの主要な細胞取込み経路であることを示唆している。
【0181】
実施例8-溶血および細胞生存性試験
溶血法を使用して、saRNA添加PE-LNPの生体適合性を調査した。要約すると、脱線維化ヒツジ赤血球(RBC)を1500×gで10分間にわたり4℃で遠心分離し、PBSによって3回洗浄した。細胞ペレットをPBSを含む5%(v/v)赤血球懸濁液に再懸濁した。遠心管内の0.9mLのRBC懸濁液に、1μgのsaRNAを含有する、様々なPE-LNPの100μLのアリコートを加えた。脱イオン水によるRBC懸濁液の処理を陽性対照として使用した。37℃で1時間インキュベートした後、RBC懸濁液を遠心分離し、100μLの上清を96ウェルプレートに移し、分光蛍光光度計(GloMax(登録商標)Discover Microplate Reader、Promega,USA)を使用して540nmで吸光度(A)を測定した。以下の式に従って、相対溶血を計算した:
【0182】
【0183】
alamarBlueアッセイを使用して、HEK293細胞に対するsaRNA添加PE-LNPの細胞傷害性を測定した。HEK293細胞を5×104細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種した。24時間のインキュベーション後、1μg mL-1のsaRNAを添加した様々なPE-LNPによって、細胞を4時間処理した。次いで、10μLのalamarBlue HS試薬(5mg mL-1)を各ウェルに加えた。製造業者の指示に従って、4時間さらにインキュベートした後、分光蛍光光度計(GloMax(登録商標)Discover Microplate Reader、Promega,USA)を使用して570nmでの各ウェルの吸光度を測定した。吸光度読取り値から細胞傷害効果を決定した。
【0184】
結果および考察
溶血活性および非特異的細胞傷害性は、負に変化した細胞膜との強力な相互作用に起因してカチオン性担体に関連する典型的な問題である。様々なPE-LNPの溶血率が、処理の1時間後にいずれも10%未満であり(
図13A)、高い生体適合性を示唆したことに注目することは興味深い。
図13Bは、HEK293細胞がsaRNA添加PE-LNPによって十分に耐容されたことを示す。1μg mL
-1の固定saRNA用量で、PE-LNP 5-65およびPE-LNP 11-65は、24時間の処理後にそれぞれ92.3±1.8%および86.7±1.4%の非常に高い細胞生存率を示した。N/Pモル比を18に増加させると細胞傷害性の増加が観察されたが、PE-LNP 18-65およびPE-LNP 18-80は、それぞれ73.0±4.9%および73.6±7.8%で比較的高い細胞生存率を依然として示した。これらの結果は、PE-LNPが低い細胞傷害性および良好な生体適合性を有し、これは、PE-LNPのコア内で生物学的ペイロードを取り囲む親水性PEGコロナおよび疎水性PCL層によって提供される保護に起因し得ることを実証している。
【0185】
実施例9-インビボ生物発光イメージングおよび免疫原性
インビボ生物発光イメージング
6~8週齢の雌BALB/cマウス(Charles River,UK)をn=5の群に入れ、完全に気候順応した部屋に収容し、食物および水を自由に摂取させた。内部倫理委員会、ならびに英国政府によって承認されたプロジェクトおよび個人ライセンスに従って、UK Home Office Animals Scientific Procedures Act of 1986に従って全動物を取り扱った。実験開始の少なくとも7日前に、動物に適応時間を与えた。DOTAP脂質ナノ構造(陰性対照)、PE-LNP 5-65、PE-LNP 11-65、PE-LNP 18-65およびPE-LNP 18-80の内部にそれぞれ配合した、またはPE-LNP 18-80 M2(方法2により調製)の表面に配合した5μgのfLuc saRNAをマウスの両後肢四頭筋に筋肉内(IM)注射した。7日後、マウスに100μLのXenoLight RediJect D-Luciferin Substrate(Perkin Elmer,UK)を腹腔内注射し、10分間静置した。次いで、イソフルランを使用してマウスを麻酔し、Molecular Imaging Software Version 5.0(Carestream Health,USA)を装備したIn Vivo Imaging System FX Pro(Kodak Co.,Rochester,NY,USA)を用いて10分間にわたって画像化した。各注射部位からのシグナルを、Molecular Imaging Softwareを使用して、等しい検出面積を使用して定量し、RLUとして表した。
【0186】
HA saRNA添加PE-LNPのインビボ免疫原性
6~8週齢の雌BALB/cマウス(Charles River,UK)をn=5の群に入れた。1×PBS中50μLの総注射容量まで、PE-LNP 11-65、PE-LNP 18-65およびPE-LNP 18-80の内部にそれぞれ配合した、Cal/09ウイルスのH1赤血球凝集素をコードする1μgのsaRNA(HA saRNA)によって後肢四頭筋1つにおいてマウスをIM免疫し、4週間後に同一の製剤によってブーストした。jetPEI/HA saRNA複合体を対照として使用した。試験開始から4および6週間後に尾部出血を介して血液を採取した。血液を採取し、10,000×RPMで5分間遠心分離した。血清を採取し、-80℃で保存した。
【0187】
SARS-CoV-2 saRNA添加PE-LNPのインビボ免疫原性
6~8週齢の雌BALB/cマウス(Charles River,UK)をn=5の群に入れた。1×PBS中50μLの総注射容量まで、それぞれPE-LNP 11-65およびPE-LNP 18-65の内部に配合した、融合前安定化SARS-CoV-2スパイクタンパク質をコードする1μgのsaRNAによって、後肢四頭筋1つにおいてマウスをIM免疫した。試験開始から4週間の時点で尾部出血を介して血液を採取した。血液を採取し、10,000×RPMで5分間遠心分離した。血清を採取し、-80℃で保存した。
【0188】
HA特異的ELISA
免疫グロブリンELISAプロトコルを使用して、HA抗体力価を定量的に評価した。要約すると、1%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA)/0.05%(v/v)Tween-20のPBS溶液によって、0.5μg mL-1のHAコーティングELISAプレートをブロックした。洗浄後、希釈血清試料をプレートに加え、2時間インキュベートし、洗浄し、1:4000希釈の抗マウスIgG-HRP(Southern Biotech,UK)を使用した。ELISAプレートウェルを抗マウスカッパ(1:1000)およびラムダ(1:1000)軽鎖(Serotec,UK)によってコーティングし、PBS/1%(w/v)BSA/0.05%(v/v)Tween-20によってブロッキングし、洗浄し、精製IgG(Southern Biotech,UK)を1000ng mL-1で開始して加え、5倍希釈系列によって滴定することによって、標準を調製した。TMB(3,3’;5,5’-テトラメチルベンジジン)を使用して試料および標準を展開し、Stop Solution(Insight Biotechnologies,UK)によって5分後に反応を停止させた。SoftMax Pro GxP v5ソフトウェアを用いて、分光光度計(VersaMax,Molecular Devices)を用いて吸光度を読み取った。
【0189】
SARS-CoV-2特異的ELISA
HA特異的ELISAと同様の手順に従って、免疫グロブリンELISAプロトコルを使用して、SARS-CoV-2抗体力価を定量的に評価した。
【0190】
インフルエンザ負荷
ブースト注射の3週間後、マウスに、100μLのPBSに懸濁した4.2×105プラーク形成単位(pfu)のインフルエンザ(Cal/09)を負荷した。イソフルランを使用してマウスを麻酔し、鼻腔内(IN)負荷し、毎日体重を測定して体重減少を決定した。負荷プロトコルの人道的エンドポイントに従って、マウスが3日間を超えて20%の体重減少、または1日の25%の体重減少を持続した場合、マウスを安楽死させた。
【0191】
結果および考察
インビボでのsaRNA発現効率を試験するために、ルシフェラーゼsaRNAを様々なPE-LNPに配合し、ただ1つの用量(5μg/脚)で筋肉内注射によってマウスに投与した。7日後、マウスを画像化し、相対蛍光強度を定量した。saRNA/DOTAP脂質ナノ構造によって処置したマウスのシグナルはほとんど検出することができず、これは、saRNAカプセル化能が限られており、saRNA/DOTAP脂質ナノ構造の安定性が低いことに起因する可能性がある。ただし、全PE-LNP群がタンパク質発現を示した。PE-LNP 5-65と比較して、3つの製剤PE-LNP 11-65、PE-LNP 18-65およびPE-LNP 18-80は、有意に高いルシフェラーゼ発現を示した(p<0.05)(
図14Aおよび
図14B)。PE-LNP 18-80 M2(方法2によって調製され、ナノ粒子表面にsaRNAを有する)におけるルシフェラーゼ発現は、PE-LNP 18-80(方法1によって調製され、ナノ粒子コア内にsaRNAを有する)のルシフェラーゼ発現よりも有意に低かったが(p<0.05)、同様のインビトロトランスフェクション効率を示した(
図9A)。PE-LNPのコア内のsaRNAの配合が、ナノ粒子表面上の配合よりも好ましいことがさらに確認される。PE-LNP 18-65のインビトロトランスフェクション効率はPE-LNP 11-65のインビトロトランスフェクション効率よりも1桁高かったが(
図8B)、これらの2群のインビボルシフェラーゼ発現は同様のシグナルを示した。これは、N/Pモル比が低いPE-LNP 11-65の優れた細胞生存率のためであり得る。
【0192】
さらに、本発明者らは、IM注射後にPE-LNPの内部に配合した、HAをコードするsaRNAの免疫原性および保護能力を評価した。RNAをインビボで効果的に送達することが以前に示されている1つの市販の直鎖PEI、jetPEI
31を陽性対照として使用した。マウスに、jetPEI、PE-LNP 11-65、PE-LNP 18-65およびPE-LNP 18-80を配合した1μgのsaRNAのプライミングおよびブーストを投与した。初回プライムの4週間後にブーストを投与した。ブーストの2週間後にマウスにCal/09インフルエンザウイルスをIN負荷し、連日体重を測定して疾患の病態をモニタリングした(
図14C)。群間の体重減少を区別するために、4.2×10
5pfuという比較的高い用量を使用した。ナイーブ群の全マウスは、6日後に体重の>25%を失い、負荷プロトコルの人道的エンドポイントに従って安楽死させなければならなかったが、心強いことに、jetPEI群およびPE-LNP群の全マウスが完全に保護された(
図14E)。3つすべてのPE-LNP群のマウスは、観察の全期間中に10%未満の体重を失い、特に最小量の体重減少(約8%)を示すPE-LNP 11-65群では、副作用が少なく、保護が良好であることが示された。HA IgG抗体力価(
図14D)は、負荷結果を直接反映した。これらの3つのPE-LNP群、PE-LNP 11-65、PE-LNP 18-65およびPE-LNP 18-80はいずれも、高い抗体力価を誘導し、有意差はなく(6週間後に約1×10
5ng mL
-1)、これはjetPEIと同等であった。これは、
図14Bに示すインビボタンパク質発現結果と一致していた。これにより、これらのPE-LNP群がいずれも、堅牢な免疫応答を刺激するのに必要なタンパク質発現の閾値に達したことが示される。この点で、PE-LNPは、有効性を保証しながら製剤組成物にさらに柔軟性を提供し、RNAワクチンおよび治療薬を含む生体分子を送達するのに有利であるはずである。
【0193】
本発明者らはまた、IM注射後にPE-LNPの内部に配合した、nCoVをコードするsaRNAの免疫原性を評価した。マウスに、それぞれPE-LNP 11-65およびPE-LNP 18-65に配合した1μgのsaRNAのプライムを投与した。
図15に示すように、PE-LNP 11-65およびPE-LNP 18-65の両方は、プライム後に高い抗体力価を誘導し、有意差はなかった(4週間後に約1×10
4ng mL
-1)。これにより、PE-LNP系が、COVID-19の世界的なパンデミックおよび上記のインフルエンザウイルスを含む様々な疾患に対処するためにRNAワクチンを効果的に送達することができることが実証された。
【0194】
実施例10-4℃の水溶液中で添加されたsaRNAを安定に保存するためのPE-LNP組成物の最適化
4℃の水溶液中で保存するためのPE-LNP 11-65のポリマー組成の最適化
実施例1に上述したのと同じ方法に従って、PEG5k-PCL8.5kおよびPEG5k-PCL10k(表1)を合成し、特性評価した。実施例2に上述したのと同じ方法を使用して、様々な分子量の両親媒性ポリマーを含むPE-LNP 11-65の内部にsaRNAを配合した。ナノ製剤を4℃の水溶液中で保存した。次いで、実施例4の上記の方法に従って、0、7および21日目の1μg mL-1のsaRNA用量でのそれらのインビトロHEK293細胞トランスフェクション効率を測定した。
【0195】
4℃の水溶液中で保存した後の様々なsaRNA添加PE-LNPのトランスフェクション効率
実施例2に上述したのと同じ方法を使用して、PE-LNP 11-65、PE-LNP 18-65およびPE-LNP 18-80の内部にsaRNAを配合した。ナノ製剤を4℃の水溶液中で保存した。次いで、実施例4の上記の方法に従って、0および1および3ヶ月目の1μg mL-1のsaRNA用量でのそれらのインビトロHEK293細胞トランスフェクション効率を測定した。
【0196】
結果および考察
図16に示すように、PEG
5k-PCL
8.5kおよびPEG
5k-PCL
10k(異なる疎水性PCL鎖長を含有する)からそれぞれ構成された新鮮なPE-LNP 11-65試料は、同様のDLSサイズ、PDI、ゼータ電位およびトランスフェクション効率を示した。ただし、
図16Dは、比較的長いPCL鎖を有するPEG
5k-PCL
10kから構成されたPE-LNP 11-65の方が、4℃での21日間の保存中に堅牢な機能的安定性を示したことを示す。比較として、比較的短いPCL鎖を有するPEG
5k-PCL
8.5kから構成されたPE-LNP 11-65の機能的安定性は、4℃での7および21日間の保存後のトランスフェクション効率の有意な低下によって示されるように、保存中に著しく損なわれた。保存中のトランスフェクション効率の差は、両親媒性ポリマーの疎水性ブロックの鎖長が、保存中にRNA安定性を維持するのに重要な役割を果たすことを示唆している。
【0197】
PEG
5k-PCL
10kポリマーが優れた選択肢であることが示されたことから、安定化分子が存在しないsaRNA添加PE-LNPの液体製剤の4℃での保存のさらなる調査を行った。
図17は、4℃の水溶液中での3ヶ月間の保存中のPE-LNP 11-65、PE-LNP 18-65およびPE-LNP 18-80のトランスフェクション効率を示す。saRNA添加PE-LNP 18-65およびPE-LNP 18-80の機能的安定性は、保存の最初の1ヶ月以内に明らかな変化を示さなかったが、PE-LNP 11-65のトランスフェクション効率の低下が観察された。この結果は、18という高いN/P比が、PE-LNPコア内のさらに小型の脂質ナノ構造の形成におそらく起因して、水溶液中での保存中に核酸ペイロードに対してさらに高いレベルの保護を提供し得ることを示唆している。
【0198】
実施例11-室温の水溶液中のsaRNA添加PE-LNPの安定な保存
室温の水溶液中で保存した後のsaRNA添加PE-LNP 11-65のトランスフェクション効率
実施例2に上述したのと同じ方法を使用して、PE-LNP 11-65の内部にsaRNAを配合した。ナノ製剤を室温の水溶液中に保存した。次いで、実施例4の上記の方法に従って、室温で21日間保存した後の1μg mL-1のsaRNA用量でのそのインビトロHEK293細胞トランスフェクション効率を測定し、新たに調製したsaRNA添加PE-LNP 11-65と比較した。
【0199】
室温の水溶液中で保存した後の様々なsaRNA添加PE-LNPのトランスフェクション効率
実施例2に上述したのと同じ方法を使用して、それぞれPE-LNP 11-65、PE-LNP 18-65およびPE-LNP 18-80の内部にsaRNAを配合した。ナノ製剤を室温の水溶液中に保存した。次いで、実施例4の上記の方法に従って、0、14、21および28日目の1μg mL-1のsaRNA用量でのそれらのインビトロHEK293細胞トランスフェクション効率を測定した。
【0200】
結果および考察
図18および
図19に示すように、1μg mL
-1の同等のsaRNA用量を有する新たに調製したPE-LNP製剤と比較して、室温の水溶液中で21日間保存した後のPE-LNP 11-65、PE-LNP 18-65およびPE-LNP 18-80の内部に配合したsaRNAのトランスフェクション効率の低下は観察されなかった。28日後、高いトランスフェクション効率が維持されたが、新鮮試料と比較してわずかな低下が観察された。
図19B~
図19Dに示すように、PE-LNP 11-65、PE-LNP 18-65およびPE-LNP 18-80はまた、室温での保存中に流体力学的サイズ、PDIおよびゼータ電位を良好に保持した。これにより、両親媒性PEG
5k-PCL
10kコポリマーの自己組織化によって形成されたポリマーシェル層が、ナノ粒子の安定性を改善し、生物学的ペイロード、特に容易に加水分解/分解されるRNA分子を液体製剤中で厳しい外部環境から最適に保護することができることがさらに確認される。
【0201】
実施例12-4℃の水溶液中のトレハロースの存在下でのsaRNA添加PE-LNPの安定な保存
4℃の水溶液中で保存した後のトレハロース含有saRNA添加PE-LNP 11-65のトランスフェクション効率
実施例2に上述したのと同様の方法を使用して、saRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP 11-65の調製に、100のトレハロース/saRNA(w/w)重量比でsaRNA(40μg mL-1)およびトレハロースの水溶液を使用した。次いで、総トレハロース(内部および外部の両方)を250mg mL-1まで補充するために、追加のトレハロースを、得られたsaRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP 11-65と混合した。
【0202】
比較として、実施例2に上述したのと同じ方法を使用して、PE-LNP 11-65の内部にsaRNAの水溶液(40μg mL-1)を配合した。次いで、得られたナノ製剤を250mg mL-1の濃度で外部トレハロースと混合した。
【0203】
これらのナノ製剤を4℃で383日間水溶液中で保存し、次いで、1μg mL-1のsaRNA用量でのそれらのインビトロHEK293細胞トランスフェクション効率を測定し、新たに調製したsaRNA添加トレハロース不含PE-LNP 11-65と比較した。
【0204】
結果および考察
RNA分子は極めて脆弱であり、曝露環境では容易に分解する可能性があるため、RNAワクチンおよび治療薬を極めて困難な低温流通体系で保存および輸送する必要がある。世界で最初に承認されたCOVID-19ワクチンである、Pfizer/BioNTechのmRNAワクチンは、-70℃での保存を必要とする大きな障害を抱えている。他のRNAワクチンも同様の熱安定性の問題を有し、例えば、ModernaのmRNAワクチンは、保存のために-20℃に保持する必要がある。これは、RNAワクチンが集団免疫を確実にするために必要な展開の速度および規模に達することを極めて困難にする。
【0205】
RNAワクチンを配合したPE-LNPは、上記の実施例9では、効率的なインビボタンパク質発現および優れた免疫原性を示した(
図14および
図15)。上記の実施例10は、安定化分子を有しないsaRNA添加PE-LNP製剤が、4℃の水溶液中で3ヶ月間保存した後に高いトランスフェクション効率を維持することができることを実証した(
図17)。上記の実施例11で実証されているように、室温で21日間水溶液中で保存した後、saRNA添加PE-LNP製剤は、同等のsaRNA用量で新たに調製した対応物と比較して、トランスフェクション効率の低下を示さなかった(
図18および
図19)。これは、ナノ粒子コア内のRNAペイロードの最適な保護を提供する独自のPE-LNPナノ構造によるものであった。
【0206】
水溶液中のRNAナノ製剤の貯蔵期限をさらに延ばすために、実施例10の方法に従って、トレハロースなどの外部および/または内部安定化分子を含めた(
図20)。
図21に示すように、saRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP 11-65、ならびに混合外部トレハロースを含むsaRNA添加PE-LNP 11-65は、同等のトランスフェクション効率を示し、4℃の水溶液中で1年超(383日間)にわたって保存した後、新たに調製したsaRNA添加トレハロース不含PE-LNP 11-65と比較して有意差はなかった。
【0207】
実施例13-室温の水溶液中のsaRNAおよびトレハロース共添加PE-LNPの安定な保存
室温の水溶液中で保存した後のsaRNAおよびトレハロース共添加PE-LNPのトランスフェクション効率
実施例12に上述したのと同じ方法を使用して、saRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP 11-65、PE-LNP 16-65およびPE-LNP 18-80の調製に、100のトレハロース/saRNA(w/w)重量比でsaRNA(40μg mL-1)およびトレハロースの水溶液を使用し、続いて、250mg mL-1で総トレハロースに補充するために追加のトレハロースと混合した。
【0208】
これらのナノ製剤を室温で水溶液中で保存し、次いで、0、14、21および28日目に1μg mL-1のsaRNA用量でのそれらのインビトロHEK293細胞トランスフェクション効率を測定し、新たに調製したsaRNA添加トレハロース不含PE-LNP 11-65、PE-LNP 16-65およびPE-LNP 18-80とそれぞれ比較した。
【0209】
結果および考察
次いで、本発明者らは、室温で保存するための水溶液中の安定化分子としてのトレハロースの効果を調査することに進む(
図20)。新鮮なsaRNA添加トレハロース不含PE-LNPを陰性対照とした場合、saRNAおよびトレハロース共添加PE-LNPは、20℃で4週間保存した後に同等のトランスフェクション効率を示した(
図22A)。陰性対照と比較して、saRNAおよびトレハロース共添加PE-LNPはまた、20℃で4週間の保存中にDLSサイズ(
図22B)、PDI(
図22C)およびゼータ電位(
図22D)を良好に保持した。これらは、長期保存の可能性を示唆している。
【0210】
実施例14-トレハロースの存在下での凍結乾燥条件の最適化、および4℃での凍結乾燥saRNA添加PE-LNPの安定な保存
外部トレハロースの存在下でのsaRNA添加PE-LNPの凍結乾燥条件の最適化
実施例2に上述した方法を使用して、PE-LNP 11-65の内部に様々な濃度のsaRNA(例えば、20、40、60および100μg mL-1)を配合した。次いで、得られたナノ粒子を200mg mL-1の固定濃度で外部トレハロースと混合した。製剤を-80℃の冷凍庫内で凍結させ、48時間凍結乾燥させ、次いで、RNase不含水によって直ちに再水和した。凍結乾燥中のsaRNA濃度を最適化するために、1μg mL-1のsaRNA用量での再水和PE-LNPのDLS粒径分布およびインビトロHEK293細胞トランスフェクション効率を評価した。その後、最適化saRNA濃度を添加したが様々な外部トレハロース濃度(例えば、150、200、250、300および400mg mL-1)と混合したPE-LNP 11-65を凍結乾燥させ、DLSおよびインビトロトランスフェクションによるさらなる分析のためにRNase不含水によって直ちに再水和した。したがって、PE-LNP 11-65製剤の凍結乾燥のための添加したsaRNAおよび混合トレハロースの最適濃度を同定した。
【0211】
トレハロースの存在下での凍結乾燥saRNA添加PE-LNP saRNAの4℃での保存
250mg mL-1の外部トレハロースを含有するsaRNA添加PE-LNP 11-65、ならびにsaRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP 11-65(共カプセル化のためにトレハロース/saRNA重量比=100、続いて、総トレハロースを250mg mL-1まで補充するために追加のトレハロースと混合)を凍結乾燥させ、次いで。4℃で保存した。その後、1μg mL-1のsaRNA用量でのインビトロHEK293細胞トランスフェクション効率の測定のために、凍結乾燥PE-LNP製剤をRNase不含水によって再水和した。
【0212】
saRNAおよびトレハロース共添加PE-LNPの凍結乾燥条件の最適化
実施例2に上述した方法を使用して、saRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP 11-65の調製に、様々なトレハロース/saRNA(w/w)重量比(例えば、25、50、100、200、400および6250)でRNase不含水中のsaRNA(40μg mL-1に固定)およびトレハロースの水溶液を使用した。次いで、総トレハロース(内部および外部の両方)を250mg mL-1まで補充するために、追加のトレハロースを、得られたsaRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP 11-65と混合し、これを実施例14の上記の実験から最適化した。トレハロース/saRNA(w/w)比が6250であり、saRNA濃度が40μg mL-1であるsaRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP 11-65の特定の場合、補充のために追加のトレハロースを加える必要はなかった。凍結乾燥、およびRNase不含水による即時の再水和の後、saRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP 11-65のコロイド安定性をDLSによって試験し、1μg mL-1のsaRNA用量でのそれらのインビトロトランスフェクション効率を分析した。
【0213】
結果および考察
本発明者らが極めて困難な低温流通体系を必要とせずにRNAワクチンおよび治療薬の安定な保存のために利用した別の戦略は、トレハロースなどの外部および/または内部安定化分子の存在下でのRNA添加PE-LNPの凍結乾燥である(
図20)。凍結乾燥プロセスは、RNA送達ナノ製剤のコロイド安定性を潜在的に大幅に低下させ、効力の不可逆的な低下をもたらす可能性がある。トレハロースのガラス化は剛性の非晶質ガラス状糖マトリックス内にナノ粒子を固定化することができ、そのようにすることによってナノ粒子の凝集または破裂を劇的に減少させるため、凍結乾燥中にナノ粒子の外側でトレハロースを単に混合することによってナノ粒子のコロイド安定性を改善することができることが他の研究者によって報告されている
21。さらに、PE-LNPは内部親水性ドメインを含有する独自の構造を有することから、トレハロースは、PE-LNPの内部にRNAと共添加され、RNAと直接相互作用を行うこともできる。トレハロースのヒドロキシル基は、RNA分子と水素結合を形成し、それによって、凍結乾燥中のRNAの水和を最小限に抑えることができる。したがって、RNAの熱安定性を顕著に向上させることができた。
【0214】
最初に、200mg mL
-1の固定濃度の外部トレハロースとナノ粒子内部に添加された様々な濃度(20~100μg mL
-1)のsaRNAとを含有するPE-LNP 11-65を凍結乾燥させ、RNase不含水によって直ちに再水和した。次いで、再水和PE-LNP 11-65のトランスフェクション効率を評価した。興味深いことに、
図23は、1μg mL
-1の同等のsaRNA用量で新たに調製したトレハロース不含PE-LNP 11-65と比較して、全凍結乾燥PE-LNP 11-65製剤のトランスフェクション効率が1~1.5桁向上したことを示す、HEK293細胞トランスフェクションに対する外部トレハロースの相乗効果を示している。
図23に従って、200mg mL
-1の外部トレハロースの存在下でのsaRNA添加PE-LNP 11-65の凍結乾燥のための最適なsaRNA濃度として、40μg mL
-1を選択した。
【0215】
さらに、固定内部saRNA濃度(40μg mL
-1)と様々な濃度の外部トレハロースとを含有するPE-LNP 11-65を凍結乾燥させ、RNase不含水によって直ちに再水和した。
図24に従って、40μg mL
-1の内部saRNAを添加したPE-LNP 11-65の凍結乾燥のための最適な外部トレハロース濃度として、250mg mL
-1を選択した。
図24に示すように、この条件下での凍結乾燥製剤は、即時の再水和時に、1μg mL
-1の同等のsaRNA用量で新たに調製したトレハロース不含PE-LNP 11-65よりも1桁高い最も高いトランスフェクション効率を示した。
【0216】
図25は、40μg mL
-1の内部saRNAと250mg mL
-1の外部トレハロースとを含有するPE-LNP 11-65製剤の凍結乾燥後の4℃での安定なRNA保存を示す。4℃で28日間保存し、次いで、RNase不含水によって再水和した後、1μg mL
-1の同等のsaRNA用量で新たに調製したトレハロース不含PE-LNP 11-65と比較して、凍結乾燥製剤のトランスフェクション効率の低下は観察されなかった。これは、コア-シェルPE-LNPナノ構造によって提供される固有の保護と外部トレハロースとの複合効果が、4℃での保存中にRNA安定性を良好に保持したことを示唆している。
【0217】
保存中のRNA安定性をさらに改善するために、本発明者らは、ナノ粒子の親水性コアにsaRNA(40μg mL-1の固定濃度)とトレハロース(様々なトレハロース/saRNA重量比)とを共添加したPE-LNP 11-65を調製した。
【0218】
次いで、総トレハロース(内部および外部の両方)を250mg mL
-1まで補充するために、追加のトレハロースを、得られたsaRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP 11-65と混合し、続いて、製剤を凍結乾燥した。トレハロース/saRNA(w/w)重量比が400を超えると、凍結乾燥、およびRNase不含水による再水和後のナノ粒子のサイズが300nmよりも大きくなることが分かった。100のトレハロース/saRNA重量比が最も良好であり、新たに調製したトレハロース不含PE-LNP 11-65(
図2Cに示すサイズ=131.3±0.5nmおよびPDI=0.265)と同等の167.7±3.6nmの小さい均一なDLSサイズと0.313±0.017のPDIを有する良好な単分散性とを有する再水和PE-LNP 11-65の形成をもたらした。これは、内部トレハロースおよび外部トレハロースの両方の存在が、凍結乾燥および再水和プロセス中にPE-LNP 11-65のコロイド安定性を良好に保持したことを示唆している。さらに、saRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP 11-65は、85.2±4.8%で高いsaRNAカプセル化効率を示し、これは、トレハロース不含saRNA添加PE-LNP 11-65のsaRNAカプセル化効率(93.6±3.2%)と同等であった。
【0219】
総トレハロース濃度は250mg mL
-1に固定したが、PE-LNP 11-65製剤の凍結乾燥のためにトレハロース/saRNA(w/w)重量比を50~100まで増加させること(すなわち、内部トレハロースの割合を増加させること)が好ましかった。
図26に示すように、この条件下で凍結乾燥されたsaRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP 11-65製剤は、RNase不含水による即時の再水和時に、トランスフェクション効率の劇的な改善を示し、これは、1μg mL
-1の同等のsaRNA用量で新たに調製したトレハロース不含PE-LNP 11-65よりも1.5桁高かった。100を超えるトレハロース/saRNA(w/w)重量比のさらなる増加は、トランスフェクション効率の顕著な低下をもたらしたが、新たに調製したトレハロース不含PE-LNP 11-65よりもなお1桁高かった。これは、外部トレハロースの存在と組み合わせたナノ粒子内部のsaRNAとトレハロースとの共存が、相乗効果を発揮し、RNA安定性および有効性を大幅に改善し得ることを示唆している。
【0220】
図27は、内部トレハロースを有するおよび有しない凍結乾燥PE-LNP 11-65の安定性を比較している。4℃で1年超(380日間)にわたって保存し、次いで、RNase不含水によって再水和した後、saRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP 11-65は、トレハロース不含新鮮試料のトランスフェクション効率よりも有意に高いトランスフェクション効率(p<0.05)を示した。トレハロースが、製剤の安定化に加えて、トランスフェクションの改善に対する相乗効果をもたらしたことから、これを説明することができる。内部トレハロースを有しない製剤は、4℃で1年超にわたって保存した後、トランスフェクション効率の2倍超の損失を示した。これは、内部トレハロースおよび外部トレハロースの両方の存在下で最適化されたPE-LNPが、長期保存中に凍結乾燥製剤の機能的安定性を効果的に維持することができることを実証している。
【0221】
凍結乾燥製剤のさらなる熱負荷試験のために、saRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP 11-65(共カプセル化のために40μg mL-1のsaRNA、およびトレハロース/saRNA重量比=100、続いて、総トレハロースを250mg mL-1まで補充するために追加のトレハロースと混合)の最適化された凍結乾燥条件を選択した。
【0222】
実施例15-40℃での安定な保存のための凍結乾燥saRNAおよびトレハロース共添加PE-LNPの熱負荷試験
最適化されたsaRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP 11-65製剤を凍結乾燥させ、次いで、40℃で保存するために保持した(熱帯条件)。外部トレハロースと混合したsaRNA添加PE-LNP 11-65を対照として凍結乾燥した。一定期間後の保存後、凍結乾燥PE-LNP 11-65製剤をRNase不含水によって再水和し、それらのインビトロトランスフェクション効率を測定した。
【0223】
結果および考察
非低温流通体系保存のためのRNAおよびトレハロース共添加PE-LNPの可能性を評価するために、最適化されたsaRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP 11-65を凍結乾燥させ、40℃でそれぞれ1、3、5、7または14日間保存するために保持した。
図28は、凍結乾燥させ、次いで、RNase不含水によって直ちに再水和した後(0日目)、saRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP 11-65、ならびに外部トレハロースと混合したsaRNA添加PE-LNP 11-65のトランスフェクション効率が、新たに調製したトレハロース不含PE-LNP 11-65よりも約1.5桁高いことを示し、トレハロースの相乗効果がさらに確認された。
図31および
図32に示すように、40℃の高温で14日間保存するために保持した後であっても、新たに調製したトレハロース不含saRNA添加PE-LNP11-65と比較して、saRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP 11-65、または外部トレハロースと混合したsaRNA添加PE-LNP 11-65のトランスフェクション効率の低下は観察されず、室温およびさらには熱帯条件下でRNAの優れた熱安定性および有効性が示された。
【0224】
次いで、本発明者らは、凍結乾燥し、40℃で7日間保存し、それぞれsaRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP 11-65、ならびに外部トレハロースと混合したsaRNA添加PE-LNP 11-65を再水和した後に、限外濾過遠心分離を利用して遊離(非添加)外部トレハロースを除去した。
図30は、外部トレハロースの除去後、特に40℃での保存7日目に、内部トレハロースを有しない再水和PE-LNP 11-65のトランスフェクション効率が、限外濾過遠心分離を用いないそれらの対応物と比較して大幅に低下したことを示す。比較として、外部トレハロースの除去後、ナノ粒子の親水性コアにsaRNAおよびトレハロースを共添加した再水和PE-LNP 11-65のトランスフェクション効率が、40℃で7日間保存した後に、新たに調製したトレハロース不含saRNA添加PE-LNP 11-65と同等であったことに注目することは興味深い。これらの結果から、PE-LNPに共添加したRNAの熱安定性および有効性の向上に対する内部トレハロースの重要な役割がさらに確認される。
【0225】
実施例16-様々なRNA分子のPE-LNP媒介細胞内送達に対するトレハロースの効果
実施例12に上述した方法を使用して、トレハロースと50μg mL-1のカルセインとを100のトレハロース/saRNA(w/w)重量比で40μg mL-1のsaRNAのRNase不含脱イオン水溶液に予備溶解し、saRNA、トレハロースおよびカルセイン共添加PE-LNP 11-65を調製し、これに追加のトレハロースを混合し、250mg mL-1で総トレハロース(内部および外部の両方)に補充した。saRNAおよびカルセイン共添加PE-LNP 11-65(トレハロース不含)を対照として調製した。レーザー走査型共焦点顕微鏡によって、2つのカルセイン含有PE-LNP 11-65製剤の取込みおよび細胞内輸送を調査した。2mL量のHEK293細胞(1皿当たり2×105細胞)を35mmガラス底培養皿に播種し、24時間培養した。saRNA、トレハロースおよびカルセイン共添加PE-LNP 11-65、またはsaRNAおよびカルセイン共添加PE-LNP 11-65を培養皿に加えた(1皿当たり2μgのsaRNA)。2時間処理した後、細胞を洗浄し、さらに4時間インキュベートするために完全培地を補充した。Leica SP8倒立共焦点顕微鏡を使用して細胞を画像化し、共焦点顕微鏡画像内のカルセインの平均蛍光強度をImageJによって分析した。
【0226】
実施例12に上述した方法を使用して、GFP発現mRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP 11-65(共カプセル化のためにトレハロース/mRNA重量比=100、続いて、10mg mL-1で総トレハロースに補充するために追加のトレハロースと混合)も調製した。トレハロース不含mRNA添加PE-LNP 11-65を対照として調製した。HEK293細胞を6ウェルプレートに5×105/ウェルで播種し、48時間培養し、インビトロトランスフェクションをフローサイトメトリー(Canto,BD,USA)によって定量的に分析した。
【0227】
結果および考察
図23~
図30に示すように、外部/内部トレハロースの存在に起因するsaRNA添加PE-LNPのトランスフェクション効率の大幅な向上により、本発明者らは、加えたトレハロースの相乗効果をさらに調査するように促された。細胞取込みおよび細胞内輸送の指標として、膜不透過性色素であるカルセインを2つのPE-LNP 11-65製剤の内部に共添加した。共焦点顕微鏡画像(
図31A)に示すように、新たに調製したsaRNA、トレハロースおよびカルセイン共添加PE-LNP 11-65によって処理したHEK293細胞は、新たに調製したsaRNAおよびカルセイン共添加PE-LNP 11-65によって処理したものと比較して、細胞全体にわたってかなり強力な緑色の拡散染色を示した。平均蛍光強度(MFI)をImageJによって分析した。
図31Bは、saRNA、トレハロースおよびカルセイン共添加PE-LNP 11-65によって処理した細胞が、saRNAおよびカルセイン共添加PE-LNP 11-65によって処理した細胞と比較して、有意に高いMFIを有したことを示す。これにより、トレハロースの存在が細胞取込みおよびその後のエンドソーム脱出を増強し得ることが確認された。
【0228】
PE-LNP 11-65によるHEK293細胞へのGFPコードmRNAの細胞内送達に対するトレハロースの効果も調査した。
図32に示すように、新たに調製したmRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP 11-65による処理後、新たに調製したトレハロース不含mRNA添加PE-LNP 11-65と比較して、GFP発現HEK293細胞の割合は、51.9±4.9%から74.2±2.2%に増加し、MFIは1.7倍増加した。これにより、PE-LNPに基づく製剤による様々な核酸の細胞内送達に対するトレハロースの相乗効果がさらに確認される。
【0229】
実施例17 PE-LNPの脂質組成物の変形例
コレステロールをDOTAPおよびPEG-PCLとともにTHFに共溶解した、実施例2に上述したのと同様の方法に従って、コレステロールの存在下でPE-LNP 11-65の内部にsaRNAを配合した。コレステロールおよびDOTAPに対するコレステロールの重量百分率として、コレステロール含有量(重量%)を定義した。Litesizer(Anton Paar,UK)を使用して、ナノ製剤のサイズ、PDIおよびゼータ電位を評価した。次いで、実施例4の上記の方法に従って、1μg mL-1のsaRNA用量でのそれらのインビトロHEK293細胞トランスフェクション効率を測定した。
【0230】
結果および考察
PE-LNP系の調製方法は、限定するものではないが、荷電性基を有するカチオン性/イオン化可能脂質、およびコレステロールなどのステロールを含む様々な脂質およびそれらの組合せをナノ粒子コアに組み込むように容易に適合可能である。本発明者らは、脂質組成物に対するナノ系の汎用性をさらに実証するために、PE-LNP系に配合するコレステロールを選択した。
【0231】
図33は、PE-LNP 11’-65’の物理化学的特性評価、およびコレステロールを配合したsaRNA添加PE-LNP 11-65のトランスフェクション効率を示す。コレステロールの存在下でのPE-LNP 11’-65’は、生体分子送達に適したサイズ、PDIおよびゼータ電位を示した。次いで、本発明者らは、トランスフェクション効率に対するコレステロール含有量の影響の調査に進んだ。コレステロール含有量を20重量%から40重量%に増加させると、トランスフェクション効率の1を超える有意な増加が観察された。これは、PE-LNP系が様々な脂質分子およびそれらの組合せと適合性であることを実証している。ナノ製剤のトランスフェクション効率は、脂質組成物を調整することによって様々な用途に合わせて調整することができる。
【0232】
結論
本発明者らは、インビトロおよびインビボの両方で、RNAを含む生体分子の効率的な細胞内送達を達成し、低温流通体系を必要とせずにワクチンおよび治療薬の安定な保存を可能にするポリマー内包脂質ナノ粒子(PE-LNP)を開発した。このナノ製剤プラットフォームは、好ましい安全性プロファイル、小型サイズ、制御された電荷、高い添加効率、効率的なエンドソーム溶解活性、優れたコロイド安定性およびペイロード(RNA)安定性、ならびに単純で、費用対効果が高く、容易に規模を拡大できる調製方法を含む、理想的な担体の特徴を有する。
【0233】
PE-LNPは、生体適合性であることが証明されており、FDAによって承認されている2つの主要な構造成分、すなわち、PEG-PCLなどの両親媒性ポリマーと、DOTAPなどのカチオン性脂質またはイオン化可能脂質とから構成される。PE-LNPは、容易かつ迅速な混合および有機溶媒蒸発による単純なワンポット法を使用して調製することができる。Cryo-TEMおよびFRET分析では、PE-LNPの内部構造が脂質ナノ構造からなり、効率的なペイロードカプセル化に有利であることが示された。内部脂質ナノ構造を取り囲む自己組織化PEG-PCL外層は、コロイド安定性および血清適合性を保証し、極めて不安定なRNAなどのペイロードの機能を十分に保護することができる。PE-LNPは、優れた安定性と、FBSの存在下で市販のPEIよりも4桁高くなり得る高いインビトロトランスフェクション効率とを示した。
【0234】
それぞれPE-LNP 11-65、PE-LNP 18-65およびPE-LNP 18-80をIM注射によってトランスフェクトしたマウスは、強力なルシフェラーゼ発現を示した。さらに、ナノ製剤はいずれも高いHA IgG抗体力価を誘導したため、それぞれPE-LNP 11-65、PE-LNP 18-65およびPE-LNP 18-80の内部に配合したHA saRNAによる免疫後のCal/09インフルエンザ負荷では、全マウスが効果的に保護された。HA saRNA添加PE-LNPによって免疫したマウスの平均体重減少は10%未満であり、特にPE-LNP 11-65による体重減少の誘導は最小量であった(約8%)。
【0235】
本発明者らは、周囲温度で生物学的ペイロード、特に容易に加水分解/分解されるRNA分子を安定に保存するための2つの戦略を実証した。コア-シェルナノ粒子構造によって提供される最適な保護は、室温で水溶液中のRNA添加PE-LNPを安定に保存することを可能にした。安定なRNA保存のための別の戦略は、トレハロースなどの外部および/または内部安定化分子の存在下でのRNA添加PE-LNPの凍結乾燥である。saRNAおよびトレハロース共添加PE-LNP、ならびに外部トレハロースと混合したsaRNA添加PE-LNPは、凍結乾燥、40℃もの高い周囲温度(熱帯条件)での保存、および再水和後にsaRNAの所望の熱安定性を示し、前者の方が良好な性能を示した。これらは、PE-LNPナノ製剤が、低温流通体系を必要とせずに周囲温度でワクチンおよび治療薬の安定な保存を可能にすることができることを実証している。これにより、ワクチンおよび治療製剤の世界的な配給を改善するための実行可能な解決策が提供される。
【0236】
さらに、本発明者らによって開発されたPE-LNPは、様々な細胞型への効率的な細胞内送達、ならびに様々なワクチンおよび治療薬(限定するものではないが、saRNAおよびmRNAを含む生体分子に基づく)の非低温流通体系保存のために普及させることが可能であることが実証された。
【0237】
材料
mPEG-OH(Mn=5,000および2,000)、ε-カプロラクトン(ε-CL)、トルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、4%パラホルムアルデヒド溶液、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、Hoechst、LysoTracker(赤)、Triton X-100、ウシ血清アルブミン(BSA)およびTween-20は、Sigma-Aldrichから購入した。1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP、塩化物塩)は、Avanti Polar Lipidsから購入した。トリプシン-EDTA(0.25%、w/v)、ウシ胎児血清(FBS)および1%ペニシリン/ストレプトマイシンは、Gibco(CA,USA)から購入した。ONE-Glo(商標)Luciferase Assay Systemは、InvivoGenから入手した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)およびDMEM培地は、Hyclone Laboratories(UT,USA)から入手した。RNase不含水、RNase不含PBS(10×)およびTPCK-トリプシンは、Thermo Fisher Scientific(UK)から購入した。Trehalose Assay KitはAbbexaから購入した。XenoLight RediJect D-Luciferin SubstrateはPerkin Elmerから購入した。ホタルルシフェラーゼsaRNA、およびCal/09ウイルスのH1赤血球凝集素をコードするsaRNAはいずれも、St Mary Hospital and Department of Infectious Disease,Imperial College LondonのRobin Shattock教授のグループの厚意によって寄贈された。
【0238】
細胞培養
HEK293(ヒト胎児由来腎臓細胞)細胞およびHeLa(ヒト子宮頸癌細胞株)細胞は、ATCC(American Type Culture Collection,Wesel,Germany)から入手し、10%(v/v)FBS(Gibco)および1%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)を補充した高グルコースDMEM培地(Gibco)中で培養した。JurkatヒトTリンパ球細胞(Clone E6-1、ATCC(登録商標)TIB-152(商標))は、10%(v/v)FBS、100U mL-1ペニシリン、100μg mL-1ストレプトアビジンおよび2mM L-グルタミン(R10培地)を補充したRPMI-1640培地またはOPTIMEM培地のいずれかで培養した。細胞は、37℃で5%CO2の加湿インキュベーター内でインキュベートした。
【0239】
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