(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】ハロゲンフリー、耐炎性、相容化ポリアミドおよびポリフェニレンエーテルブレンド
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20240621BHJP
C08L 77/02 20060101ALI20240621BHJP
C08L 77/06 20060101ALI20240621BHJP
C08L 71/12 20060101ALI20240621BHJP
C08K 5/5317 20060101ALI20240621BHJP
C08K 5/092 20060101ALI20240621BHJP
C08K 5/11 20060101ALI20240621BHJP
C08K 5/1539 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C08L77/00
C08L77/02
C08L77/06
C08L71/12
C08K5/5317
C08K5/092
C08K5/11
C08K5/1539
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577303
(86)(22)【出願日】2022-06-17
(85)【翻訳文提出日】2024-01-25
(86)【国際出願番号】 US2022033921
(87)【国際公開番号】W WO2022266408
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516361347
【氏名又は名称】テクノール・エイペックス・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エルコヴィッチ、マーク
(72)【発明者】
【氏名】バーネス、リチャード
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CH07X
4J002CL00W
4J002CL01W
4J002CL03W
4J002EF067
4J002EL147
4J002EW136
4J002FD136
4J002FD207
4J002GN00
(57)【要約】
ポリアミドと、ポリフェニレンエーテルと、防炎剤との相容化ブレンドを含む組成物であって、前記組成物から製造されたプラークが火炎を生じることなくグローワイヤ着火温度試験(GWIT)に合格するように相乗的に相互作用する、組成物。有利に、前記防炎剤は非ハロゲン化され、前記組成物はまた他のハロゲン含有成分を含まない。さらに、意外なことだが、前記組成物は充填剤を含まずともなお、上記試験に合格することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲンフリー、耐炎性、相容化ポリアミドおよびポリフェニレンエーテルブレンド組成物であって、
前記組成物100重量部に対して約30~約80重量部の量で存在し、前記組成物中に連続相として存在する、ポリアミド(コ)ポリマーと、
前記組成物の総量100重量部に対して約15~約50重量部の量のポリフェニレンエーテルと、
i)前記ポリアミド(コ)ポリマー、ii)前記ポリフェニレンエーテル、およびiii)相容化剤から誘導されるブロックコポリマー相容化剤であり、前記iii)相容化剤は、前記i)ポリアミド(コ)ポリマーと反応することのできる第1の官能基、および前記ii)ポリフェニレンエーテルと反応することのできる第2の官能基を含む2つの異なる種類の官能基を有し、前記相容化剤は、前記組成物100重量部に対して約0.1~約5重量部の量で存在する、ブロックコポリマー相容化剤と、
組成物100重量部に対して約5~約35重量部の量で存在するホスフィネートである防炎剤と、
を含み、
前記組成物は、ハロゲン含有防炎剤を含まず、
前記組成物から調製されたプラークまたはプレートは、2.0mm厚で、700℃で火炎を発せず、GWIT IEC60695-2-13規格に準拠した試験に合格する、
ブレンド組成物。
【請求項2】
前記ポリアミド(コ)ポリマーが、ポリアミド6;ポリアミド6,6;ポリアミド4,6;ポリアミド11;ポリアミド12;ポリアミド6,10;ポリアミド6,12;ポリアミド6/6,6;ポリアミド6/6,12;ポリアミドMXD(m-キシリレンジアミン),6;ポリアミド6,T;ポリアミド9,T;ポリアミド6,I;ポリアミド6/6,T;ポリアミド6/6,I;ポリアミド6,6/6T;ポリアミド6,6/6,I;ポリアミド6/6,T/6,I;ポリアミド6,6/6,T/6,I;ポリアミド6/12/6,T;ポリアミド6,6/12/6,T;ポリアミド6/12/6,I;およびポリアミド6,6/12/6,Iのうちの1つまたは複数である、請求項1に記載のブレンド。
【請求項3】
前記防炎剤が、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジプロピルホスフィン酸アルミニウム、イソプロピルホスフィネート、ブチルホスフィン酸アルミニウム、メチルエチルホスフィン酸アルミニウム、およびフェニルホスフィン酸アルミニウムのうちの1つまたは複数である、請求項2に記載のブレンド。
【請求項4】
前記組成物が充填剤を含まない、請求項3に記載のブレンド。
【請求項5】
前記組成物から調製された前記プラークまたはプレートが、2.0mm厚さで750℃において火炎を発せずGWIT IEC60695-2-13規格準拠の試験に合格する、請求項1に記載のブレンド。
【請求項6】
前記組成物から調製された前記プラークまたはプレートが、2.0mm厚さで800℃において火炎を発せずGWIT IEC60695-2-13規格準拠の試験に合格する、請求項5に記載のブレンド。
【請求項7】
前記ポリアミド(コ)ポリマーが、前記組成物100重量部に対して、約30~約70重量部の量で存在し、前記ポリフェニレンエーテルが、前記組成物の総量100重量部に対して、約15~約50重量部の量で存在し、前記相容化剤が、前記組成物100重量部に対して、約0.2~約4重量部の量で存在し、前記防炎剤が、前記組成物100重量部に対して、約7.5~約30重量部の量で存在する、請求項1に記載のブレンド。
【請求項8】
前記ポリアミド(コ)ポリマーが、前記組成物100重量部に対して、約32~約65重量部の量で存在し、前記ポリフェニレンエーテルが、前記組成物の総量100重量部に対して、約20~約45重量部の量で存在し、前記相容化剤が、前記組成物100重量部に対して、約0.25~約3重量部の量で存在し、前記防炎剤が、前記組成物100重量部に対して、約10~約25重量部の量で存在する、請求項7に記載のブレンド。
【請求項9】
前記組成物が潤滑剤をさらに含む、請求項1に記載のブレンド。
【請求項10】
前記ポリフェニレンエーテルが、前記ブレンド中に不連続相として存在する、請求項1に記載のブレンド。
【請求項11】
前記ポリフェニレンエーテルが、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、および2,6-ジメチルフェノールと別のフェノールとのコポリマーのうちの1つまたは複数である、請求項10に記載のブレンド。
【請求項12】
前記相容化剤が、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クエン酸、および無水クエン酸のうちの1つまたは複数である、請求項1に記載のブレンド。
【請求項13】
前記第1の官能基が、炭-炭素二重結合および炭-炭素三重結合のうちの1つまたは複数であり、前記一部の官能基が、カルボキシル基、酸無水物、エポキシ基、アミド基、エステル基、および酸塩化物のうちの1つまたは複数である、請求項12に記載のブレンド。
【請求項14】
前記相容化剤が、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クエン酸、または無水クエン酸のうちの1つまたは複数である、請求項13に記載のブレンド。
【請求項15】
前記ポリアミドコポリマーが、50ミリ当量/kg以上の濃度のアミン基を有する、請求項1に記載のブレンド。
【請求項16】
前記ポリアミドコポリマーが、60ミリ当量/kg以上の濃度のアミン基を有する、請求項15に記載のブレンド。
【請求項17】
ポリアミドコポリマーが、50ミリ当量/kg以上の濃度のアミン基を有する、請求項14に記載のブレンド。
【請求項18】
請求項1に記載のブレンドを形成するための方法であって、
前記相容化剤を前記ポリフェニレンエーテルおよび前記ポリアミドコポリマーの一部と反応させて、前記ブロックコポリマー相容化剤を形成する工程を含む、方法。
【請求項19】
前記ポリアミドと混合する前に、前記ポリフェニレンエーテルの一部を相容化剤と反応させることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記ブレンドが押出加工され、相溶化剤と前記ポリフェニレンエーテルの一部が上流の供給位置で合わされ、相溶化剤と前記ポリフェニレンエーテルの前記一部が反応した後に、前記ポリアミドが下流で添加される、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド、ポリフェニレンエーテルおよび防炎剤の相容化されたブレンドを含む組成物であって、組成物から作られたプラークが火炎を生じることなくグローワイヤ着火温度試験(GWIT)に合格するように相乗的に相互作用する組成物に関する。有利に、防炎剤は非ハロゲン化され、組成物はまた、他のハロゲン含有成分を実質的に含まない。さらに、一部の実施形態では、前記組成物は充填剤を含まずともなお、意外にも、上記試験に合格することができる。
【背景技術】
【0002】
ポリマー含有量の大部分としてポリアミドおよびポリフェニレンエーテルを含む組成物は、電気部品およびコネクタならびに自動車部品(例えば、外装部品や、エンジンカバー等のエンジンに近い部品)等を最終用途とする多種多様な産業用の成形部品を製造するために使用されているが、これは、加工性、良好な難燃性能、良好な安定性および良好な機械的特性のうちの1つまたは複数を含む望ましい特性を示すためである。
【0003】
従来技術では、顧客の要求に適合するために、例えば、以下のような様々な取組みが講じられてきた。
【0004】
中国特許出願公開第109553967号明細書は、報告によれば、低析出ハロゲンフリー難燃性ポリフェニレンエーテルーポリアミド樹脂アロイおよびその調製方法に関するものであり、その原材料は、ポリフェニレンエーテルを10~50重量%、m-キシリレンジアミンおよび二酸から誘導されたポリアミドMXおよびポリアミド66を含む混合ポリアミド樹脂を15~65重量%、ハロゲンフリー難燃剤を5~25重量%、無水マレイン酸グラフト化ポリスチレン-ポリエチレン-ポリブテン-ポリスチレン直鎖トリブロックコポリマーまたは無水マレイン酸グラフト化ポリフェニレンエーテルである相容化剤を3~15重量%、ポリスチレン-ポリエチレン-ポリブテン-ポリスチレン直鎖トリブロックコポリマーの強化剤を3~15重量%、酸化防止剤を0.1~0.5重量%、核形成剤を0.2~0.6重量%、そして他の加工助剤を0.5~1重量%含む。調製した材料は、高温高湿環境下において高いグローワイヤ着火温度に適合することができ、プロセス中に800℃の温度で燃焼せず、過酷な条件下での難燃剤のマイグレーションや析出が少ないと報告されている。調製された低析出ハロゲンフリー難燃性ポリフェニレンエーテルーポリアミド樹脂アロイ材料は、良好な難燃性能、良好な機械的特性および良好な寸法安定性を兼ね備えていると報告されている。
【0005】
中国特許出願公開第110698852号明細書は、難燃性強化ポリアミド6/ポリフェニルエーテル組成物に関するものであり、以下の原料:低粘度ポリアミド6樹脂、高粘度ポリフェニルエーテル樹脂、低粘度ポリフェニルエーテル樹脂、スチレンおよびグリシジルメタクリレートコポリマー、トルエンジイソシアネート、水素化スチレンーイソプレンコポリマーグラフト化無水マレイン酸、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,3-ベンゼンジカルボキサミド、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール二リン酸、ペンタエリスリトール亜鉛、シランカップリング剤、層状ケイ酸塩、ホスフィン酸アルキル、ポリリン酸メラミンならびに無アルカリガラス繊維から調製されている。この複合材料は、難燃性強化ポリアミド6/ポリフェニルエーテル組成物から調製され、優れた機械特性、加工性、難燃性を有し、自動車、電子・電気部品等の製造に用いることができると報告されている。
【0006】
米国特許出願公開第2018/057685号明細書は、難燃性、成形加工性および熱エージング後の難燃性に優れていると報告されている樹脂組成物に関する。この組成物は、(A)ポリフェニレンエーテルと、(B)少なくとも1種の熱可塑性樹脂であって、(B-1)ポリスチレン系樹脂、(B-2)ポリアミド系樹脂、(B-3)ポリプロピレン系樹脂、および(B-4)ポリフェニレンサルファイド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂と、(C)難燃剤とを含む。成分(A)の含有量は、この難燃性樹脂組成物から灰分を差し引いた分を100質量%とした場合に、50質量%未満である。この難燃性樹脂組成物の難燃性レベルは、UL94垂直燃焼試験により測定してV-0等級である。この難燃性樹脂組成物から形成された成形品が示すクロロホルム不溶分の変化率は、この成形品を150℃で1,000時間大気環境下に放置するエージング処理の前後で15質量%以下である。
【0007】
米国特許出願公開第2009/027582号明細書は、(A)(ISO307(1997)規格に準拠して96%硫酸中で測定した)粘度数が50ml/g~250ml/gのポリアミドと、(B)ポリフェニレンエーテルと、(C)特定の化学式で表されるホスフィネートと、を含有する樹脂組成物に関する。この樹脂組成物は、難燃性、耐衝撃性および薄肉成形性に優れると報告され、成形プロセス中のガス発生を大幅に抑制し、射出成形時の金型へのデポジットの発生を実質的に抑制できると報告されている。その結果、外観に優れる成形品がこの樹脂組成物から提供できると報告されている。
【0008】
さらなる取組みとして、非ハロゲン化難燃剤メラミンシアヌレートを使用した非充填ポリアミドの難燃処理が挙示される。この技術は、UL94規格V0等級の難燃性要求に非常によく適合する。しかしながら、グローワイヤ試験にかけると、火炎が生じる。それでもなお、IEC60695-2-13試験に合格可能な成形プラークがそのような配合物から製造できるが、これは火炎が5秒未満に消えるためである。
【0009】
さらに、三酸化アンチモンと組み合わせた臭素化ポリスチレンなどのハロゲン化難燃化技術をガラス無充填ポリアミド配合物に用いた場合、火炎を生じないことが多い。この技術は通常、気相において優れている。つまり、部分燃焼の結果として気相に入る分解物質の着火を防止するように作用するため、火炎を発せず、GWIT試験に合格するのに役立つ。しかしながら、様々な顧客および規制要件によると、ハロゲン化配合物は使用すべきではない。
【0010】
上記を踏まえても、業界は今でも、改良された無充填組成物を必要としている。これは多くのコネクタには、適切に機能するために良好な延性が必要なフランジまたはラッチなどの部品が含まれているためである。このことは、一般に、達成するのが困難な課題である。例えば、ガラス繊維をポリマー系配合物に添加すると、有炎燃焼性(flammability)が低下するが、部品の脆性が高くなることが多いため、ラッチおよびフランジが非常に容易に破損することになる。当技術分野では、部品および/またはプラークに成形し、規格化されたグローワイヤ試験に準拠して試験したときに、火炎(flame)を生じない組成物が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
上述および他の従来技術の問題は、本発明の組成物によって解決される。本発明の組成物は、非ハロゲン化され、相容化されたポリアミドとポリフェニレンエーテルとのブレンドであり、このブレンドは、防炎剤を含み、2.0mmを含むそれ以下の厚さにおいて、様々な温度、例えば、最低でも700℃、750℃、775℃、および800℃以上の温度で火炎を生じることなく、GWIT IEC60695-2-13プラーク試験に合格し、後者は試験仕様によって要求されない、より厳しい制限の、追加規定である。明確にするために記すと、「火炎を生じることなく(without producing a flame)」、「耐炎性(flameproof)」、「火炎を発せず/火炎なし(no flame)」などの用語は、特定の試験方法準拠のグローワイヤを接触中に、試験された試験片が着火せず、人間の目に見えるいかなる火炎も発生しないことを要求する。
【0012】
様々な実施形態の組成物はまた、0.4mm~3.0mm厚のUL94規格VO要件および1.5mm~3.0mm厚のUL規格5VA要件に適合することができる。
【0013】
本発明の組成物およびそれから製造される部品がそのような厳格な難燃要件に適合することは、組成物がハロゲン含有難燃剤を含まず、かつ一部の実施形態では補強充填剤を含まないことを考慮すると、きわめて予想外である。本明細書に記載の用途のための小型部品は、好ましくは射出成形によって製造され、安定かつ長寿命であるべきフランジ、ソケット、ラッチ、保持機構および様々な外形などの設計機構に組み込まれる。非常に具体的に定義された範囲のポリアミド(コ)ポリマーを利用して、機械的強度および加工性を付与する。定義された範囲のポリフェニレンエーテルは、ポリアミド(コ)ポリマーによって付与される特性を損なわず、炭化層を形成するのに役立ち、分解または燃焼した化学的部分が火炎を引き起こす反応に寄与するのを本質的に防止する。さらに、相乗効果のある量の防炎剤により、組成物が向上し、本発明の修正試験によると、火炎を発しないことが保証される。
【0014】
したがって、一態様では、ハロゲンフリー、耐炎性、相容化ポリアミドおよびポリフェニレンエーテルブレンド組成物が開示され、この組成物は、組成物の100重量部に対して約30~約80重量部の量で存在するポリアミド(コ)ポリマーであって、前記組成物中に連続相として存在しているポリアミド(コ)ポリマーと、前記組成物の総量100重量部に対して約15~約50重量部の量のポリフェニレンエーテルと、i)前記ポリアミド(コ)ポリマー、ii)前記ポリフェニレンエーテル、およびiii)相容化剤から誘導されるブロックコポリマー相容化剤であって、前記iii)相容化剤は、前記i)ポリアミド(コ)ポリマーと反応することのできる第1の官能基および前記ii)ポリフェニレンエーテルと反応することのできる第2の官能基を含む2つの異なる種類の官能基を有し、前記相容化剤は、前記組成物100重量部に対して約0.1~約5重量部の量で存在する、ブロックコポリマー相容化剤と、組成物100重量部に対して約5~約35重量部の量で存在するホスフィネートである防炎剤と、を含み、前記組成物は、ハロゲン含有防炎剤を含まず、前記組成物から調製されたプラークまたはプレートは、2.0mm厚において700℃で火炎を発せず、GWIT IEC60695-2-13規格準拠の試験に合格する。
【0015】
さらなる態様では、前記ポリアミド(コ)ポリマーは、ポリアミド6;ポリアミド6,6;ポリアミド4,6;ポリアミド11;ポリアミド12;ポリアミド6,10;ポリアミド6,12;ポリアミド6/6,6;ポリアミド6/6,12;ポリアミドMXD(m-キシリレンジアミン),6;ポリアミド6,T;ポリアミド9,T;ポリアミド6,I;ポリアミド6/6,T;ポリアミド6/6,I;ポリアミド6,6/6T;ポリアミド6,6/6,I;ポリアミド6/6,T/6,I;ポリアミド6,6/6,T/6,I;ポリアミド6/12/6,T;ポリアミド6,6/12/6,T;ポリアミド6/12/6,I;およびポリアミド6,6/12/6,Iのうちの1種または複数種である。
【0016】
さらに別の態様では、前記防炎剤は、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジプロピルホスフィン酸アルミニウム、イソプロピルホスフィネート、ブチルホスフィン酸アルミニウム、メチルエチルホスフィン酸アルミニウム、およびフェニルホスフィン酸アルミニウムのうちの1種または複数種である。
【0017】
別の態様では、前記組成物は充填剤を含まない。
【0018】
さらなる態様では、前記組成物から調製されたプラークまたはプレートは、2.0mm厚において750℃で火炎を発せず、GWIT IEC60695-2-13規格準拠の試験に合格する。
【0019】
さらに別の態様では、前記組成物から調製されたプラークまたはプレートは、2.0mm厚において800℃で火炎を発せず、GWIT IEC60695-2-13規格準拠の試験に合格する。
【0020】
別の態様では、前記ポリアミド(コ)ポリマーは、前記組成物100重量部に対して約30~約70重量部の量で存在し、前記ポリフェニレンエーテルは、前記組成物の総量100重量部に対して約15~約50重量部の量で存在し、前記相容化剤は、組成物100重量部に対して約0.2~約4重量部の量で存在し、前記防炎剤は、組成物100重量部に対して約7.5~約30重量部の量で存在する。
【0021】
さらなる態様では、前記ポリアミド(コ)ポリマーは、前記組成物100重量部に対して約32~約65重量部の量で存在し、前記ポリフェニレンエーテルは、前記組成物の総量100重量部に対して約20~約45重量部の量で存在し、前記相容化剤は、組成物100重量部に対して約0.25~約3重量部の量で存在し、前記防炎剤は、組成物100重量部に対して約10~約25重量部の量で存在する。
【0022】
さらに別の態様では、前記組成物は潤滑剤をさらに含む。
【0023】
別の態様では、前記ポリフェニレンエーテルは、前記ブレンド中に不連続相として存在する。
【0024】
さらなる態様では、前記ポリフェニレンエーテルは、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、および2,6-ジメチルフェノールと別のフェノールとのコポリマーのうちの1種または複数種である。
【0025】
さらに別の態様では、前記相容化剤は、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クエン酸、および無水クエン酸のうちの1種または複数種である。
【0026】
別の態様では、前記第1の官能基は、炭-炭素二重結合および炭-炭素三重結合のうちの1つまたは複数であり、前記一部の官能基は、カルボキシル基、酸無水物、エポキシ基、アミド基、エステル基、および酸塩化物のうちの1つまたは複数である。
【0027】
さらに別の態様では、前記ポリアミドコポリマーは、50ミリ当量/kg以上の濃度のアミン基を有する。
【0028】
別の態様において、前記ポリアミドコポリマーは、60ミリ当量/kg以上の濃度のアミン基を有する。
【0029】
別の態様では、前記ブレンド組成物を形成するための方法であって、前記相容化剤を前記ポリフェニレンエーテルおよび前記ポリアミドコポリマーの一部と反応させ、それによって前記ブロックコポリマー相容化剤を形成する工程を含む方法が開示される。
【0030】
さらなる態様では、前記方法は、前記ポリアミドと混合する前に、前記ポリフェニレンエーテルの一部を相容化剤と反応させることを含む。
【0031】
さらに別の態様では、前記ブレンドが押出加工され、相溶化剤と前記ポリフェニレンエーテルの一部が上流の供給位置で合わされ、相溶化剤と前記ポリフェニレンエーテルの一部が反応した後に前記ポリアミドが下流で添加される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明は、本発明の詳細な説明を図面と合わせて読むことによって、よりよく理解され、他の特徴および利点が明らかになるであろう。
【0033】
【
図1】本発明の組成物によって製造することができる複数の異なるコネクタの白黒画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書では、本明細書に開示される全ての数字は、「約(about)」または「およそ(approximate)」などの単語がそれに関連して使用されているか否かにかかわらず、一つの実施形態において個別に設定値を指定する。さらに、「約(about)」または「およそ(approximate)」などの用語が値と共に使用される場合、数値範囲はまた、様々な他の独立した実施形態において、例えば1%、2%、もしくは5%、またはそれを超えて変化し得る。本明細書および特許請求の範囲に記載の全ての範囲は、範囲の端点を含むだけでなく、範囲の端点間の考えられる限りの全ての数を含む。
【0035】
本明細書で使用される「ポリマー」および「(コ)ポリマー」という用語は、同じタイプであるか異なるタイプであるかに関わらず、モノマーを重合することによって調製されるポリマー化合物を指す。本明細書で使用される場合、前記用語は、「ホモポリマー」、「コポリマー」、「ターポリマー」および「インターポリマー」という用語を包含する。本明細書で使用される「インターポリマー」という用語は、少なくとも2種類の異なるタイプのモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。
【0036】
本発明の組成物によって製造された組成物および/または部品(非限定的な例については図を参照)は、組成物がハロゲン含有難燃剤も他のいかなるハロゲン含有成分も含まず、かつ一部の実施形態では充填剤も含まないにも関わらず、火炎を生じることなく、GWIT IEC60695-2-13試験およびGWFI IEC60695-2-12試験に合格する。
【0037】
ポリアミド
【0038】
ポリアミド(コ)ポリマーは、本発明の組成物中に存在する。ポリアミドは通例、良好な耐薬品性、機械的強度および加工性などの特性を示し、ポリアミドは優れた射出成形性を有する。ただし、一部のポリアミドの有する耐熱性および寸法安定性は望ましい水準を下回っている。
【0039】
本発明のポリアミドは、ポリアミドが組成物の連続相を形成するのに十分な量で使用される。明確にするために記すと、ポリアミドは、連続相を形成するものの、組成物の総重量に対して50重量%を下回る量で存在することができる。微細構造の観点から、ポリアミドおよびポリフェニレンエーテルは、ポリアミドの海の中に、ポリフェニレンエーテルが不連続な島としてある海島構造を有していると考えられる。
【0040】
本発明における使用に適したポリアミド(コ)ポリマーは、一般に、ラクタムの開環重合、ジアミンとジカルボン酸との重縮合、ω-アミノカルボン酸の重縮合などによって得られる。ただし、本発明のポリアミドは、これらの方法により得られる樹脂に限定されることを意図したものではない。
【0041】
上述のジアミンの例としては、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミンおよび芳香族ジアミンの3つの主要なカテゴリーのジアミンが挙げられる。前記ジアミンの具体例としては、脂肪族ジアミン、例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、1,9-ノナンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、3-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、および5-メチル-1,9-ノナンジアミン;1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン;1,4-ビスアミノメチルシクロヘキサン;m-フェニレンジアミン;p-フェニレンジアミン;m-キシリレンジアミン;ならびにp-キシリレンジアミンが挙げられる。
【0042】
前記ジカルボン酸の例としては、ジカルボン酸の3つの主要なカテゴリー:脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸を挙げることができる。前記ジカルボン酸の具体例としては、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,1,3-ドデカン二酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、およびダイマー酸が挙げられる。
【0043】
前記ラクタムの具体例としては、ε-カプロラクタム、エナントラクタム、およびω-ラウロラクタムが挙げられる。
【0044】
前記アミノカルボン酸の具体例としては、ε-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、8-アミノオクタン酸、9-アミノナン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、および13-アミノトリデカン酸が挙げられる。
【0045】
本発明によれば、前記ラクタム、ジアミン、ジカルボン酸およびω-アミノカルボン酸は、単独で重縮合されていてもよく、またはそれらの2種以上の混合物を重縮合して得られるコポリアミドの形態で使用されてもよい。
【0046】
また、前記ラクタム、ジアミン、ジカルボン酸またはω-アミノカルボン酸を重合反応器内で低分子量オリゴマーの段階まで重合した後、押出機等を用いてオリゴマーを高分子量ポリマーに変換して得られる生成物も好適に用いることができる。
【0047】
本発明での使用に特に適したポリアミドの例としては、ポリアミド6;ポリアミド6,6;ポリアミド4,6;ポリアミド11;ポリアミド12;ポリアミド6,10;ポリアミド6,12;ポリアミド6/6,6;ポリアミド6/6,12;ポリアミドMXD(m-キシリレンジアミン),6;ポリアミド6,T;ポリアミド9,T;ポリアミド6,I;ポリアミド6/6,T;ポリアミド6/6,I;ポリアミド6,6/6T;ポリアミド6,6/6,I;ポリアミド6/6,T/6,I;ポリアミド6,6/6,T/6,I;ポリアミド6/12/6,T;ポリアミド6,6/12/6,T;ポリアミド6/12/6,I;およびポリアミド6,6/12/6,Iが挙げられる。押出機等を用いて、上記ポリアミドのうちの複数のポリアミドを共重合して得た各種のポリアミドを用いてもよい。
【0048】
これらの中でも、好ましいポリアミドは、脂肪族ポリアミド(例えば、ポリアミド6;ポリアミド6,6;ポリアミド4,6;ポリアミド11;ポリアミド12)、および半芳香族ポリアミド(例えば、ポリアミド9,T;ポリアミド6/6,T;ポリアミド6,6/6,T;ポリアミド6,6/6,I;ポリアミドMXD,6)、ならびにそれらの組合せである。ポリアミド6,6;ポリアミド6;ポリアミド66/6;およびそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種のポリアミドが最も好ましい。ポリアミド6I/6Tを、第2のポリアミドとして添加して、他の特性の向上、例えば、耐湿性の改善、表面の美観の向上、および難燃性(FR)の改善に役立てることもできる。Tの比率が20~40%のポリアミド66/6Tなどのコポリマーも好適である。
【0049】
ポリアミドの融点は、一般に約200℃~約280℃の範囲内にあるが、顧客の要求および本発明の組成物から製造される製品に応じてより高くもより低くもすることができる。溶融温度はポリアミド66については約262℃である。溶融温度はポリアミド6については約220℃である。ポリアミド66の融点は通常、240℃を超えるが、ポリアミド66に対するポリアミド6の比率に依存する。溶融温度はポリアミド66/6Tコポリマーについては一般に、262℃よりも高いので、より高い温度を必要とする所望の用途に有用である。
【0050】
好ましい実施形態におけるポリアミドは、ポリマー鎖の末端に利用可能なアミン基(-NH2)を有する。アミン基は、前記相容化剤の官能基、例えば無水物基と反応する。このために、前記ポリアミド(コ)ポリマー中に存在するアミン基の濃度は、一般に50ミリ当量/kg超、望ましくは60ミリ当量/kg超、好ましくは70ミリ当量/kg超である。
【0051】
適切なポリアミド(コ)ポリマーは、Ascend社、BASF社、バイエル社、デュポン社、インビスタ社、ニリット社、Polytechnyl社およびShakespeare社を含むがこれらに限定されない様々な製造業者から入手可能である。
【0052】
本発明の組成物におけるポリアミド(コ)ポリマーの使用量は、ポリフェニレンエーテルおよび防炎剤と相乗的に相互作用して、火炎を生じることなくGWIT試験に合格する量である。ポリアミド(コ)ポリマーの使用量は、前記組成物の総量100重量部に対して、通常約30~約80重量部の範囲内、望ましくは約30~約70重量部の範囲内、好ましくは約32~約65または約35~45重量部の範囲内にある。
【0053】
ポリフェニレンエーテル
【0054】
ポリフェニレンエーテルは、本発明の組成物の必須成分であり、下記式で表される繰り返し構造単位を有するポリマーまたはコポリマーである。
【0055】
【0056】
式中、Oは酸素原子を表し、各Rは独立して、水素、炭素数1~7の第1級または第2級アルキル基、フェニル基、炭素数1~7のアミノアルキル基、炭素数1~7のヒドロカルビルオキシ基を表す。ポリフェニレンエーテルの混合物を使用することができる。
【0057】
本発明によるポリフェニレンエーテルの具体例としては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)等が挙げられる。さらなる例としては、ポリフェニレンエーテルコポリマー、例えば、2,6-ジメチルフェノールと別のフェノールとのコポリマー(例えば、2,3,6-トリメチルフェノールのコポリマー、2-メチル-6-ブチルフェノールのコポリマー)が挙げられる。
【0058】
これらの中でも、特に好ましいポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)が挙げられる。
【0059】
前記ポリフェニレンエーテルは、前記組成物から製造された部品が炭化層を形成するのを助けるのに十分な量であって、かつ(小型コネクタの成形を非常に困難にする)成形中の組成物の流動性に影響を及ぼすレベルを下回る量で使用される。
【0060】
本発明の組成物中に存在するポリフェニレンエーテルの量は、前記組成物の総量100重量部に対して、通常約10~約55重量部、望ましくは約15~約50重量部、好ましくは約20~約45重量部である。
【0061】
相容化剤
【0062】
本発明の組成物には、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの相容性を高めるために相容化剤が含まれる。相容化剤は、前記ポリフェニレンエーテルと反応する第1の官能基を含み、そしてまた前記ポリアミド上の酸基などの官能基と反応することができる第2の官能基も含む。相容化剤は、組成物の脆性を低下させる。例えば、クエン酸、フマル酸、無水マレイン酸等の相容化剤は、ポリフェニレンエーテルと反応する。この官能基化により、前記ポリフェニレンエーテルポリマー鎖の末端に無水物基が効果的に配置される。この無水物基は、前記ポリアミドポリマー鎖の末端において既に利用可能なアミン基と反応する。本明細書中上述したように、本発明におけるポリアミド(コ)ポリマーは、反応を促進するのに役立つ望ましい濃度のアミン末端基を有する。
【0063】
好ましい実施形態では、前記官能基の一方は、炭-炭素二重結合または炭-炭素三重結合であり、他方のタイプは、カルボキシル基、酸無水物、エポキシ基、イミド基、アミド基、エステル基、または酸塩化物、およびそれらと同等の官能基である。
【0064】
前記相容化剤の例としては、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸ヒドラジド、不飽和ジカルボン酸、フマル酸、クエン酸、無水クエン酸、リンゴ酸、およびアガリン酸が挙げられるが、これらに限定されない。これらは単独で用いてもよく、これらの混合物として用いてもよい。
【0065】
好ましくは、前記相容化剤は、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クエン酸、または無水クエン酸である。特に、無水マレイン酸、クエン酸または無水クエン酸が最も好ましい。
【0066】
前記相容化剤または前記相容化剤の修飾化合物は、ポリフェニレンエーテルの一部およびポリアミドの一部との反応により、ポリフェニレンエーテル/ポリアミドブロックコポリマーを生成する。
【0067】
ポリフェニレンエーテル/ポリアミドブロックコポリマーは、ポリアミド/ポリフェニレンエーテル含有組成物中の2つの(コ)ポリマー間の界面に分布して、ポリマー組成物の形態を安定化する。特に、ポリフェニレンエーテルが粒子(分散相)を形成し、ポリアミドがマトリックス(連続相)を形成するポリアミド/ポリフェニレンエーテルポリマー組成物の形態においては、ポリフェニレンエーテル/ポリアミドブロックコポリマーが、粒子の粒径を制御する上で重要な役割を果たしていると考えられる。
【0068】
本発明の組成物において、相容化剤は、前記組成物の総量100重量部に対して、約0.1重量部~約5重量部、望ましくは約0.2~約4重量部、好ましくは約0.25~約3重量部の量で存在する。相容化剤の含有量が少なすぎる場合、組成物は、耐衝撃性があまり改善されない可能性があり、前記含有量が多すぎる場合、相溶化剤は耐衝撃性が改善せずに、他の物性を低下させる可能性がある。
【0069】
防炎剤
【0070】
本発明の組成物に利用される防炎剤は、ハロゲンフリーであり、かつリン含有化合物、好ましくはホスフィネートである。
【0071】
好適なホスフィネートは、以下の式(I)によって表される。これらのホスフィネートは、基本的にはモノマー化合物であるが、反応条件に応じて一部の環境下で1~3の縮合度を有する縮合生成物であるポリマーホスフィネートも含む。
【0072】
【0073】
式中、R1およびR2は、同一か、または異なり、それぞれが直鎖状または分岐状の炭素数1~6のアルキルおよび/またはアリール、またはフェニルを表し、Mは、プロトン化窒素塩基上にある、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、ビスマス、マンガン、ナトリウム、カリウムであり、mは1、2または3である。
【0074】
ホスフィネートの形成に用いられるホスフィン酸の具体例としては、ジメチルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、メチル-n-プロピルホスフィン酸、メタンジ(メチルホスフィン酸)、ベンゼン-1,4-(ジメチルホスフィン酸)、メチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸,およびこれらの混合物が挙げられる。
【0075】
金属成分は、カルシウム(イオン)、マグネシウム(イオン)、アルミニウム(イオン)、亜鉛(イオン)、ビスマス(イオン)、マンガン(イオン)、ナトリウム(イオン)、カリウム(イオン)、およびプロトン化窒素塩基のうちの少なくとも1種を用いることが好ましい。カルシウム(イオン)、マグネシウム(イオン)、アルミニウム(イオン)、および亜鉛(イオン)のうちの少なくとも1種がより好ましい。
【0076】
ホスフィネートの具体例としては、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル-n-プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸亜鉛、メタンジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)亜鉛、ベンゼン-1,4-(ジメチルホスフィン酸)カルシウム、ベンゼン-1,4-(ジメチルホスフィン酸)マグネシウム、ベンゼン-1,4-(ジメチルホスフィン酸)アルミニウム,ベンゼン-1,4-(ジメチルホスフィン酸)亜鉛、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸マグネシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、およびジフェニルホスフィン酸亜鉛が挙げられる。
【0077】
ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、およびジエチルホスフィン酸亜鉛が特に好ましい。中でも、ジエチルホスフィン酸アルミニウムが特に好ましい。
【0078】
防炎剤は、前記組成物の総量100重量部に対して、通常約5~約35重量部、望ましくは約7.5~約30重量部、好ましくは約10~約25重量部の量で存在する。
【0079】
加工助剤
【0080】
本発明の組成物はまた、各種加工助剤のそれぞれを、単独で、または他の成分と組み合わせて所望の特性を得るのに十分な量含むことができる。このような添加剤は、当業者に周知であり、ポリマー材料に関する様々な参考文献に記載されており、例えば、「Modern Plastics Handbook」および「Additives for Plastics Handbook」を参照されたい。本発明の組成物に含め得る様々な添加剤には、着色剤、顔料、可塑剤、潤滑剤、UV安定剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、殺生物剤、界面活性剤、およびそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0081】
添加剤は、組成物に所望の特性を付与するために様々な量で利用することができる。したがって、組成物内の個々の添加剤の範囲は変化し得る。
【0082】
充填剤の不使用・選ばれた実施形態
【0083】
本発明の重要な態様では、本発明者らは、記載されたポリアミドと、ポリフェニレンエーテルと、防炎剤との相容化されたブレンドを含む組成物が、充填剤を何ら含まずに、2.0mm厚において800℃以下の温度で、火炎を生じることなく、グローワイヤ着火温度(GWIT)IEC60695-2-13プラーク試験に合格できることを発見した。各試験について合格点を達成できることは、非常に驚くべきことである。これは、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとのブレンドに充填剤を使用して、そのような組成物を補強すること、および/または難燃性を付与することが多いからである。
【0084】
したがって、好ましい実施形態における本発明の組成物には、無機充填剤、有機充填剤およびバイオベースの充填剤等いかなる充填剤も添加しない。充填剤の例としては、ガラス(ガラス繊維やガラス粉末等)、粘土(これらに限定されないが、例えばベントナイト、ハロイサイト、モンモリロナイトおよびスメクタイト、カオリン等)、金属粉末、タルク、酸化チタン、ウラストナイト、酸化亜鉛、炭素繊維、セルロース、グラファイト、リグニンならびにカーボンナノチューブが挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
ハロゲンフリー
【0086】
本発明の組成物は、ハロゲン含有防炎剤およびハロゲン含有難燃剤を何ら含まず、好ましくはハロゲンを含む他の成分を含まない。したがって、「ハロゲンフリー」という用語および同様の用語は、組成物または構成要素(例えば、部品、成形品等と称される)が、ハロゲンを含有しないかまたは実質的に含有しない、すなわち、イオンクロマトグラフィーによって測定したハロゲン含有量が2,000mg/kg未満であることを意味する。ハロゲン含有量がこの量未満であれば、組成物およびそれから調製された部品の性能に影響がないと考えられる。
【0087】
組成の制限
【0088】
本発明の組成物の成分、すなわちポリアミド、ポリフェニレンエーテル、防炎剤および相容化剤によって付与される優れた特性を考慮すると、さらなる相容化剤または強化剤は不要であり、組成物に含まれてもいない。さらに、組成物は、例えば、ポリスチレン含有コポリマー、これに限定されないが、無水マレイン酸グラフト化ポリスチレン-ポリエチレン-ポリブチレン-ポリスチレン直鎖トリブロックコポリマー、無水マレイン酸グラフト化ポリフェニレンエーテルおよびポリスチレンーポリエチレンーポリスチレン直鎖トリブロックコポリマーを含まない。
【0089】
組成物の特性
【0090】
本発明の組成物は、様々な部品の製造業者からの需要が高い望ましい特性を数多く示す。それらは難燃性であり、本明細書に記載された特定の試験の試験合格点を超える、厳しい防炎要件にも適合する。組成物はまた、耐衝撃性があり、望ましい荷重たわみ温度、引張強さ、ならびに曲げ弾性率および曲げ強度を有する。
【0091】
利用される成分を考慮すると、組成物は射出成形によって容易に成形可能であり、優れた外観を有する成形製品が製造される。
【0092】
製品の安全性は、あらゆる産業、特に電気および電子用途において重要である。材料の耐火性および有炎燃焼性を測定するために、様々な方法が数多く開発されてきた。試験方法は、直接火炎および間接火炎の両方の使用を含む。UL94規格は直接火炎を利用し、指定された条件下で垂直または水平に取り付けられた試験片に直接火炎を接触させる。グローワイヤ試験は、電気および電子用途のための最も重要な間接試験のうちの一部であり、間接火炎試験法の例として挙げられる。
【0093】
直接火炎法および間接火炎法の両方を適用した試験結果は、有炎燃焼または着火に抵抗し、発火したときに自己消火する組成物の傾向と、垂れ落ちることによる延焼を食い止める能力とを示す。
【0094】
グローワイヤ試験は、過負荷接続または過熱している部品によって発生する可能性がある部品アセンブリ内の赤熱電線をシミュレートするために用いられる。グローワイヤ試験法は、一連のIEC60695-2規格に含まれている。一般に、グローワイヤ試験は、発熱体、すなわちグローワイヤに通電して所定の温度にすることによって行われる。次いで、発熱体を試料に挿入し、所要の力で所要の期間押し込む。結果を記録し、個々の基準に従って評価する。グローワイヤ試験は、所望の組成物から調製された最終製品およびプラークまたはプレートの両方で行われる。
【0095】
GWEPTとは、IEC60695-2-11規格に準拠して行われる最終製品に対するグローワイヤ試験の略称である。GWEPT試験は、所望の組成物から成形された実際の部品に対して行われる。本発明の組成物は、製品または物品に成形された場合に、IEC60695-2-11規格準拠のGWEPT試験に合格し、試験手順中に着火せず、その他火炎を発生することもない。
【0096】
また、本発明の組成物から製造した試験プラークまたはプレートは、GWIT試験、すなわちIEC60695-2-13規格に準拠したグローワイヤ着火温度試験に合格し、また、2.0mm厚で700℃、750℃および/または800℃の温度で火炎を発しない。
【0097】
さらに、本発明の組成物は、UL94規格に準拠して試験した場合、0.4mm~3.0mm厚でもVO要件に適合する。
【0098】
さらに、本発明の組成物を試験した場合、1.5mm~3.0mm厚においてUL5規格VA要件にも適合する。
【0099】
調製方法
【0100】
本発明の組成物は、標準的な加工装置、例えば、一軸スクリュー押出機および二軸スクリュー押出機等の押出機;ローラーミル;混練機;ブラベンダー;ならびにバンバリーミキサーを利用して調製することができる。
【0101】
処理温度は、組成物が成分の分解点より低い温度で溶融混合され得るように選択され、温度は通常、約275~約315℃の範囲内にある。
【0102】
一実施形態では、多段階プロセスまたは多段プロセスが利用され、第1段階は、ポリフェニレンエーテルの少なくとも一部を相容化剤と反応させることを含む。この段階では、所望の量のポリフェニレンエーテルおよび相容化剤を、好ましくは275~315℃の温度で合わせて混合する。押出機内で実施する場合、ポリフェニレンエーテルおよび相容化剤は、上流の供給位置で合わされる。ポリアミドは、好ましくはポリフェニレンエーテルと相容化剤が反応するのに十分な時間をかけた後に、下流で添加される。
【0103】
その他の所望の成分を押出加工物に所望の供給位置で添加し、組成物成分を溶融混合し、射出成形などを利用して最終製品に変換する前に適切な形態に加工する。射出成形機を利用して、材料特性評価のために試験片を成形した。典型的な溶融加工温度は290~320℃である。
【実施例】
【0104】
以下に示される実施例は、本発明の組成物の特徴を説明するために提供され、本発明の範囲を限定することは意図していない。
【0105】
実施例には、以下の原料を利用した。
【0106】
【0107】
試験には以下のプロトコルを使用した。
【0108】
【0109】
以下の組成物を上記の手順に従って調製し、以下の表に示すように試験した。
【0110】
【0111】
表1に示す実施例は、本発明の組成物の新規性および進歩性を示している。比較例1は、ポリアミドおよび防炎剤を含む組成物が、650℃で火炎を発せずGWIT試験に合格できることを示している。当業者であれば、防炎剤をより多く含む組成物はより高い温度で試験に合格すると予想するだろう。そのようにはならないことを、防炎剤をそれぞれ18.5%および22%含む比較例2および比較例3が証明している。
【0112】
本発明の実施例は、650℃を超える温度で火炎を発せずGWIT試験に合格するためには、ポリアミドおよび防炎剤と共に、ポリフェニレンエーテルと相容化剤との相乗効果のあるブレンドが必要であることを示している。本発明の配合物はそれぞれ、記載した試験に最低でも725℃の温度で合格している。実施例2Cおよび3Cはそれぞれ、825℃という素晴らしい温度をもって合格している。
【0113】
【0114】
実施例4、5および6はまた、本発明の組成物の進歩性を示しており、ポリフェニレンエーテル、相容化剤および防炎剤の様々なレベルにおいて異なるポリアミドおよび潤滑剤を利用する。
【0115】
疑義を避けるために明記すると、本発明の組成物、物品および方法は、本明細書に開示される成分の様々な範囲を含む、前記成分の全ての可能な組合せを包含する。「含む(comprising)」という用語は、他の要素の存在を排除しないことにさらに留意されたい。ただし、特定の成分を含む製品の説明は、これらの成分からなる製品をも開示していることも理解されたい。同様に、特定の工程を含むプロセスに関する説明もまた、これらの工程からなるプロセスをも開示していることも理解されたい。
【0116】
特許法に従って、最良の形態および好ましい実施形態を説明してきたが、本発明の範囲はこれに限定されず、むしろ添付の特許請求の範囲によって限定される。
【国際調査報告】