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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】可変層間ギャップを有する蓋
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20240621BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C12M3/00
C12M1/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577328
(86)(22)【出願日】2022-06-13
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 US2022033211
(87)【国際公開番号】W WO2022265970
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】63/210,638
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521079695
【氏名又は名称】ルシッド サイエンティフィック, インク.
【氏名又は名称原語表記】LUCID SCIENTIFIC, INC.
【住所又は居所原語表記】311 Ferst Drive, Atlanta, GA 30332-0390 (US).
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(74)【代理人】
【識別番号】100201514
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 悦
(72)【発明者】
【氏名】インマン, サミュエル, ウォーカー
(72)【発明者】
【氏名】クアン, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】コーブ, タナー
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA07
4B029BB11
4B029BB12
4B029DA01
4B029DG01
4B029DG06
4B029FA13
4B029GA03
(57)【要約】
蓋が、ギャップによって隔てられた天井層と床層とを備える。天井層は、床層の制御表面への力の印加を可能にするように構成されている。この力の印加がギャップを調節する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギャップによって隔てられた天井層及び床層を含む蓋を備える装置であって、前記天井層は、第1の力であって、前記第1の力を前記床層に伝達する制御表面を押圧する第1の力の印加を可能にするように構成されており、前記天井層は、前記天井層が前記床層とは独立に動くように、前記天井層の動きを抑制する第2の力によって保持されるように更に構成されており、前記第1の力及び前記第2の力の変化が前記ギャップの調節を開始させる、装置。
【請求項2】
前記天井層に取り付けられたプローブを更に備え、前記ギャップの調節は、前記プローブが前記蓋の下方に突出する長さを制御する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記天井層に取り付けられたプローブを更に備え、前記ギャップの調節は、前記プローブが前記床層の底面から突出する長さを制御する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記床層に穴を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記天井層は、前記制御表面の上方に配置された開口部を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記天井層は、デバイスを前記天井層に固定的に取り付けるための結合機構を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記天井層に埋設された磁石を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記天井層は、位置合わせ機構であって、対応する位置合わせ機構を、前記天井層に取り付けられるデバイスに嵌合させるための位置合わせ機構を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記ギャップを広げるように配向された力を発揮する機構を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記ギャップを広げるように配向された力であって、前記蓋が動作可能に構成されている場合に、前記天井層にかかる重量に応答して前記ギャップが前記ギャップの最小限度まで潰れるのを防止するには不十分な力を発揮する機構を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
対向する方向から前記ギャップ内に突出する第1の突起及び第2の突起であって、前記床層は開口部を含み、前記第1の突起は前記開口部を包囲する管を形成し、前記第1の突起及び第2の突起の一方は他方の内側に嵌合する、第1の突起及び第2の突起を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記制御表面は、前記床層から前記ギャップ内に、かつ前記天井層に向かって延びるポストの表面に位置する、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記制御表面は、前記床層から前記ギャップ内に、かつ前記天井層に向かって延びるポストに形成された凹部内に位置する、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記天井層は、前記ギャップを貫通して延びて前記蓋から突出するプローブのアレイを含み、前記プローブの先端が、前記蓋によって画定される蓋面に平行なプローブ面を画定し、前記ギャップの調節が、前記蓋面に対する前記プローブ面の垂直方向の移動を引き起こす、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記天井層に取り付けられ、前記ギャップに基づく可変距離だけ前記床層の下方に突出した垂直方向に延びる部材を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記垂直方向に延びる部材は光導波路を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記垂直方向に延びる部材はプローブを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記垂直方向に延びる部材は、酸素分圧に応答して光を発するプローブ材料を含むプローブを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記垂直方向に延びる部材は、前記蓋の下方のウェルに送達される液体によって湿潤される液体ガイドを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記床層は、特定のウェルプレートに嵌合する位置合わせ機構を伴って構成されており、前記天井層には前記特定のウェルプレートに嵌合する機構は設けられていない、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
前記床層は、異なるウェルプレートに嵌合するための位置合わせ機構をそれぞれが伴って構成されている複数の床層のうちの1つであり、前記天井層は、前記床層のそれぞれと一緒に動作するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項22】
ギャップによって隔てられた天井層と床層とを含む蓋を備える装置であって、前記天井層が前記床層とは独立に動くように、前記天井層の動きを抑制する第1の力を受けるための手段と、前記蓋の内側の制御表面に第2の力を加えることを可能にするための手段とを更に備え、前記第1の力及び前記第2の力の変化が前記ギャップの長さの調節を開始させる、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容全体が参照により本出願中に組み込まれている、2021年6月15日出願の米国特許出願第63/210,638号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
細胞の酸素消費速度の測定は、有用な情報を提供し得る。対象の細胞は、ウェル又はレセプタクル内に保持された液体中で培養されることが多い。多くの場合、複数のウェルがプレート上にアレイ状に配置されている。これらのマルチウェルプレートには数多くのフォーマットがある。
【0003】
ウェルへの汚染物質の混入を妨げるために、ウェルを蓋で被覆することが知られている。蓋は、レセプタクルのウェルを被覆するように構成された表面を有する。そのような蓋は、ウェルを汚染物質から隔離することに加えて、湿度を維持し、蒸発を抑制する。
【0004】
酸素消費測定を実施するための一方法では、細胞が培養されている液体の中に光学プローブを挿入する。プローブを液体中で垂直に動かすことで、ウェル内の酸素勾配を測定することが可能となる。この酸素勾配は、酸素消費速度を推定するための基礎となる。
【0005】
酸素消費速度を測定するためのシステムが、蓋に埋設された酸素プローブの組を含み得る。各プローブは、蓋の表面から実質的に垂直に延びている。プローブは、対象の分子への感応性を有する材料で下端を被覆されている。この材料は、対象の分子の有無によって光学特性が変化する。プローブは更に、プローブの長さにわたって光学経路を形成し、プローブの上端で光学界面を提供する。したがって、レセプタクルに対する蓋の動きは、液体中のプローブの動きに対応する。代表的測定値を得るためには、ウェルに対するプローブの正確な動きが重要である。
【0006】
細胞は、酸素を消費するのに伴って、近傍の酸素供給源を枯渇させる。細胞呼吸の停止を回避するためには、消費された酸素に代わる酸素を周囲環境から輸送することが重要である。ウェルの周囲の空気を介した酸素輸送は容易であるが、ウェルの液体中での酸素輸送はこれほど容易ではない。蓋とウェルとの間にギャップが介在することで、細胞による酸素消費を制限せずにウェル上方の空気中で酸素を輸送することが可能となる。
【0007】
また、細胞を含むウェルの無菌状態を維持し、周囲環境から汚染物質が混入しないようにすることも重要である。ウェルの真上の空気を周囲空気と連通させる空気経路は、多くの場合、これら二つの空間の間に直線経路を存在させないように、蛇行した形状とされる。この蛇行した経路を形成するために、多くの場合、蓋の周縁を取り巻くスカートが採用される。
【0008】
このように構成された蓋は、ウェルを被覆する一方で、ウェルと装置の外部環境との間の空気経路は維持する。これは、ウェルを環境と連通させる直線経路を形成することなく行われる。このことにより、汚染を妨げる一方で、分子が消費されるのに伴って分子を補充するリザーバとしての役割を環境が果たすことが可能となる。細胞呼吸の場合、当該分子は酸素分子である。
【0009】
1つ又は複数のウェルに対してプローブを正確に配置して動かすと共に、周囲空気からの酸素輸送を可能にし、相対湿度レベルを維持し、汚染物質の混入の可能性を最小限に抑える蓋は、細胞が酸素を消費する速度を測定するためのシステムの重要な構成要素である。
【0010】
細胞の培養の際には、通常、ウェルのアレイが形成されたウェルプレートを使用する。各ウェルの下部は、細胞培養物を含有する液体を保持する。液体はまた、呼吸中の細胞によって使用される酸素も含有している。細胞呼吸が行われるのに伴って、酸素濃度の垂直勾配がこの液体中で形成される。いかなる時点においても、この酸素濃度の勾配は、細胞呼吸の速度に対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
酸素代謝を測定するための装置は通常、それぞれがウェル内へと延びる複数の光学プローブの対応するアレイを有する。この酸素濃度の勾配は、細胞代謝に関する情報を提供する。そのような装置の1つが、その内容が参照により本出願中に組み込まれている、Inman他による米国特許公報第2020/0116600号に記載されている。
【特許文献1】米国特許公開第2020/0116600号公報
【0012】
そのような測定のための装置は、垂直に揺動する蓋を含むことができる。動く蓋の非自明な副次的影響として、ウェル上方の空気体積が変化する。上昇工程中に蓋によって画定される平面に沿って内側に引き込まれた空気は、空気を周囲環境からシステム内に導入する。これにより、汚染物質がウェルに到達する機会が増える。ウェル上方の空気の交換により、ウェル内の液体からの蒸発速度も増加する。したがって、ウェル上方の空気の流れを、従来の蓋を使用して発生し得るものと比較して最小限に抑える蓋を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0013】
一態様では、本発明は、ギャップによって隔てられた天井層と床層とを有する蓋を備える。天井層は、第1の力であって、第1の力を床層に伝達する制御表面を押圧する第1の力を加えることを可能にするように構成されている。加えて、天井層は、天井層の動きを抑制する第2の力によって保持されるように構成されている。結果として、天井層は床層とは独立に動く。第1の力及び第2の力の変化が、床層と天井層との間のギャップの調節を開始させる。
【0014】
複数の実施形態では、天井層に取り付けられたデバイスの重量を制御表面が支持する。好適な一デバイスはハンドヘルドデバイスである。
【0015】
更なる実施形態には、制御表面が連続的ではなく、代わりに、協働してデバイスを支持する2つ以上の不連続な表面の集合体である実施形態が含まれる。更に、制御表面を押圧する動作は、制御表面のあらゆる点に力を加えることである必要はない。
【0016】
いくつかの実施形態では、天井層は制御表面の上方に配置された開口部を含む。
【0017】
別の実施形態は、天井層に取り付けられたプローブであって、プローブが床層の底面から突出する長さ、又はプローブが蓋の下方に突出する長さがギャップの調節によって制御されるプローブを含む。
【0018】
更なる実施形態は、床層に穴を含む。
【0019】
更に別の実施形態は、ギャップの変化に対抗する力を発揮するように付勢される機構を含む。好適な機構は、柔軟な要素、ばね、湾曲部、永久磁石又は電磁石の組を特に含む。これらの実施形態には、柔軟な要素がギャップを広げる力を発揮するように付勢される実施形態、柔軟な要素がギャップの変化に対抗する力を発揮するように付勢される実施形態、及び、天井層に結合されたデバイスの重量に応答してギャップが完全に潰れるように、柔軟な要素、柔軟な要素の組又は磁石の組が構成されている実施形態も含まれる。
【0020】
更なる実施形態には、このギャップを広げるように配向された力を発揮する機構を含む実施形態、ギャップを縮小するように配向された力を機構が発揮する実施形態、及びギャップをその平衡位置に戻す力を機構が発揮する実施形態も含まれる。
【0021】
これらの実施形態には、上述の蓋が動作可能に構成されている場合に、上述の天井層にかかる重量に応答してギャップがその最小限度まで潰れるのを防止するには上述の力が不十分である実施形態も含まれる。これらの実施形態のいくつかでは、ギャップの最小限度はゼロであり、別の実施形態では、ギャップの最小限度はゼロよりも大きい。
【0022】
更に別の実施形態では、天井層は、天井層に取り付けられるデバイスの対応する位置合わせ機構に嵌合する位置合わせ機構を含む。
【0023】
更に別の実施形態には、天井層が、デバイスを天井層に確実に取り付けるための結合構造を含む実施形態が含まれる。好適な結合構造の例は、天井層に埋設された磁石、デバイスに嵌合するタブ、デバイスがその中へと滑り込む溝、又は面ファスナのフックもしくはループのいずれかを含む。
【0024】
いくつかの実施形態は更に、天井層に取り付けられたプローブを含む。そのような実施形態では、床層は開口部を含み、プローブが蓋の床層の開口部を貫通して延びる長さがギャップの調節によって制御される。
【0025】
また、これらの実施形態には、対向する方向からギャップ内に突出する第1の突起及び第2の突起を含む実施形態も含まれる。そのような実施形態では、第1の突起は床層の開口部を包囲する。第1の突起及び第2の突起は、汚染物質が開口部を通過することを制限する入れ子構造を形成する。
【0026】
更に別の実施形態が、対向する方向からギャップ内に突出する第1の突起及び第2の突起を含む。そのような実施形態では、床層は開口部を含み、第1の突起は、開口部を包囲する管を形成する。そのような実施形態では、蓋が動作している時に、上述の第1の突起及び第2の突起の一方が他方の内側に嵌合することによって、入れ子構造を形成する。
【0027】
複数の実施形態が、床層からギャップ内に、かつ天井層に向かって延びるポストの表面に制御表面が位置する実施形態及び、床層からギャップ内に、かつ天井層に向かって延びるポストに形成された凹部内に制御表面が位置する実施形態を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、床層は、ウェル又はウェルを含むレセプタクル上にあってもよい底面を有する。この底面は、蓋面を画定する。天井層は、ギャップを貫通し、蓋面を超えて延びるプローブのアレイを含む。これらのプローブの先端は、蓋面に平行なプローブ面を画定する。これらの実施形態では、ギャップを調節することによって、蓋面に対するプローブ面の垂直方向の移動が引き起こされる。
【0029】
いくつかの実施形態は、天井層に取り付けられ、ギャップに基づく可変距離だけ蓋面の下に突出した垂直に延びる部材を更に備える。これらの実施形態には、垂直に延びる部材がプローブである実施形態、垂直に延びる部材がパイプである実施形態、垂直に延びる部材が光パイプ又は光導波路である実施形態、垂直に延びる部材が電気刺激を提供する実施形態、垂直に延びる部材が電気プローブである実施形態、及び垂直に延びる部材が投薬のための液体の流れをウェル内へと案内する液体ガイドである実施形態が含まれる。これらの実施形態には、垂直に延びる部材が、酸素分圧に応答して光を発するプローブ材料を含むプローブである実施形態が含まれる。
【0030】
更に別の実施形態では、床層は、特定のウェルプレートに嵌合する位置合わせ機構を伴って構成されており、天井層にはこの特定のウェルプレートに嵌合する位置合わせ機構は設けられていない。
【0031】
別の実施形態では、床層は、異なる複数のウェルプレートに嵌合する位置合わせ機構をそれぞれが伴って構成されている複数の床層のうちの1つである。そのような実施形態では、天井層はこれらの床層のそれぞれと一緒に動作するように構成されている。
【0032】
別の一態様では、本発明は、垂直に揺動可能な蓋を備える。本発明は、ギャップを共に画定する天井層及び床層を有することによって、蓋の垂直な揺動を達成する。床層はウェルプレート上に静止しているが、天井層は、床層に対して垂直に動くことによってギャップを変化させる。天井層から延びるプローブがウェルに入ることを、床層の孔が可能にする。天井層の動きによって生じる空気交換は、床層の孔を通過せずに、水平方向に外向きに案内される。この結果、床層は、天井層が動いている間のウェルと環境との間の空気交換を制限する。
【0033】
更に別の一態様では、本発明は、酸素を代謝する試料をそれぞれが保持し得るウェルのアレイの各ウェル内の酸素濃度を測定する際に使用されるように構成された装置を備える。試料の一例は、酸素を代謝する細胞を含む細胞培養物である。そのような装置は、ウェルを被覆する多層蓋を含む。蓋のこれらの層内にはギャップが形成され、プローブは、ギャップを貫通してウェルに向かって延びる。
【0034】
装置は、デバイスを更に含んでもよい。そのようなデバイスは、ギャップの長さを制御するための回路を含む。これらの実施形態には、ギャップの長さを制御するアクチュエータをデバイスが含む実施形態が含まれる。また、これらの実施形態には、測定値を処理するための回路をデバイスが含む実施形態が含まれる。
【0035】
いくつかの実施形態では、蓋は、第1の層及び第2の層を含む。これらの実施形態では、ギャップは第1の層と第2の層との間にある。第2の層は、固定された第1の層に対して動いて、ギャップの長さを変化させる。これらの実施形態には、第1の層が床層であり、第2の層が天井層である実施形態が含まれる。また、これらの実施形態には、プローブが天井層に取り付けられている実施形態が含まれる。
【0036】
これらの実施形態には、プローブが、ギャップを貫通してウェルに向かって延びる光学プローブである実施形態が含まれる。また、これらの実施形態には、プローブが、ギャップを貫通してウェルに向かって延びる電気プローブである実施形態が含まれる。そのような実施形態では、ギャップの長さを変化させることで、プローブがウェル内で動く。いくつかの実施形態では、ギャップの長さを増加させることで、ウェル底部からのプローブの高さが増加する。
【0037】
これらの実施形態には、垂直に延びる部材がウェル内に刺激をもたらす実施形態が含まれる。そのような実施形態では、ギャップの長さを変化させることで、刺激がプローブ内で動く。このようにして、刺激を試料のより近く又はより遠くに動かして、試料に対する刺激の強度を増加又は減少させることができる。
【0038】
これらの実施形態には、蓋に取り外し可能に取り付けられたデバイスを含む実施形態が含まれる。デバイスは、測定プロセスを制御するための回路を含む。デバイスはまた、ウェル内に含まれる液体中に浸漬されたプローブから光学信号を取得するように構成された複数の光電子センサを含んでもよい。
【0039】
これらの実施形態には、蓋の天井層がデバイスに固定的に取り付けられている実施形態が含まれる。そのような取り付けの結果、デバイスの光電子センサは、天井層に埋設されたプローブとの位置合わせを維持する。これらの実施形態のいくつかでは、デバイスは、蓋又はプローブに対する動きに対抗するように締結されるか、取り付けられるか、又は配置される。これらの実施形態には、このようにして固定的に達成された取り付けが永久的なものではない実施形態が含まれる。そのような固定的であるが永久的ではない取り付けが達成される好適な一方法は、デバイスの取り付けのための1つ以上の磁石の使用である。
【0040】
デバイスは、アクチュエータを更に含むことができる。アクチュエータは、モータに結合された調節ねじを含んでもよい。モータは、調節ねじを回転させ、調節ねじは、床層との相互作用の結果として、ギャップの長さを変化させる。複数の実施形態に、2つ以上のそのような調節ねじを有する実施形態が含まれる。
【0041】
更に別の実施形態は、ばねを含む。これらの実施形態には、ばねがギャップの長さを変化させるように付勢される実施形態及び、デバイスが存在しない時にはギャップが広がるように付勢される実施形態が含まれる。ばねの特性は、ばねが支持するデバイスの重量によってギャップが完全に潰れるように設定されてもよい。
【0042】
更に別の実施形態では、蓋の床層は、それぞれが複数のプローブのうちの1つに対応する複数の穴を含む。各穴は、プローブが床層を貫通してそのそれぞれのウェル内に入ることを可能にする。
【0043】
これらの実施形態には、ギャップの変化を制限する動き防止器を含む実施形態が含まれる。これらの実施形態には、第1の動き防止器及び第2の動き防止器を含む実施形態が含まれる。第1の動き防止器は、層間ギャップの最小長さを制限し、第2の動き防止器は、ギャップの最大長さを制限する。いくつかの実施形態では、動き防止器は、ポストの形態である。
【0044】
いくつかの実施形態では、床層は更に、床層と一体に形成されたポストを含む。ポストは、天井層の制御開口部内へと延びている。ポストは、調節ねじを伸長させるとデバイスが持ち上がるように、調節ねじの台となり得る。いくつかの実施形態では、調節ねじは、天井層も持ち上げて、これらの層の間のギャップを広げる。各ポストは、プローブがウェル内へと貫入する長さに基づく垂直方向長さを有する。いくつかの実施形態では、開口部は、ポストが開口部から外れることを防止する阻止部を含む。
【0045】
これらの実施形態には、床層がポスト表面を含み、デバイスのアクチュエータが、天井層の開口部を通って下方にポストに向かって延びるねじを含む実施形態が含まれる。ねじの回転が、天井層の垂直方向の移動を制御する。
【0046】
別の実施形態では、蓋は床層と天井層とを含み、床層の構造は、ウェルを含むウェルプレートの構造に依存し、天井層の構造はウェルプレートに依存しない。
【0047】
いくつかの実施形態では、床層は、動き防止機構と、調節ねじとインターフェースする機構とを含む。床層のそのような機構は、ウェルプレートが様々に異なっても、ウェルプレートのウェル内のプローブの位置は、同じデバイス及び天井層構成については比較的一定となるように、様々な種類のウェルプレートに対応させて設定することができる。
【0048】
更に別の実施形態では、蓋は、少なくとも一方がサブトラクティブ製造プロセス、アディティブ製造プロセス、及び射出成形プロセスからなる群から選択されるプロセスによって作製されている第1の層及び第2の層を含む。
【0049】
これらの実施形態には、蓋が、ウェルのアレイを被覆する床層と、天井層であって、床層の上方に可変距離を隔てて配設されていることによって、これらの間にギャップを形成する天井層とを含む実施形態が含まれる。そのような実施形態では、アクチュエータは、天井層を動かすことによって、ギャップの長さを変化させるように構成されている。これらの実施形態には、ギャップの長さが最小値と最大値との間で変化する実施形態が含まれる。
【0050】
上述の実施形態には、プローブがその中を貫通して対応するウェルに入ることを可能にする穴を床層が含む実施形態が含まれる。
【0051】
また、上述の実施形態には、天井層が、天井層と一体に形成された柔軟な要素を含む実施形態が含まれる。そのような実施形態では、柔軟な要素は、天井層と床層とを離間させる力を発揮するように付勢される。あるいは、柔軟な要素は、床層に含まれてもよい。いくつかの実施形態では、柔軟な要素はばねである。
【0052】
いくつかの実施形態では、周囲環境と床層の穴との間の直線経路を突起が防止する。突起を有する実施形態は、突起が床層、天井層、又は床層と天井層との双方に組み込まれている実施形態が含まれる。また、1つ以上の突起を有する実施形態には、突起が床層の穴の周囲の面積を画定する実施形態が含まれる。この面積とギャップの変化との積は、ギャップの変化に基づいて交換される空気の体積を左右する。突起は、この面積を最小限に抑えて穴の面積と一致させるように設計され得る。これらの実施形態には、穴を包囲する突起によって画定される面積が64平方ミリメートル未満である実施形態、32平方ミリメートル未満である実施形態、及び16平方ミリメートル未満である実施形態が含まれる。複数の実施形態には、各突起が床層の1つのみの穴の周囲の面積を画定する実施形態及び、床層の各穴が自身の突起によって包囲されている実施形態が含まれる。
【0053】
別の実施形態では、2つの層は一緒になるように付勢される。これらの実施形態には、床層と一体に形成されたポストを床層が更に含む実施形態が含まれる。ポストは、天井層の開口部を通って延び、近位部と遠位部とを有する。遠位部の断面積は、近位部の断面積よりも大きい。近位部の軸方向長さが、層間ギャップの最大長さを決定する。そのような実施形態は、これらの層が離間することの可能な代替的な実施形態とは区別される。
【0054】
更に別の実施形態では、天井層は開口部を有する。床層は、開口部を介してアクセス可能なポスト表面を含む。ポスト表面の高さにプローブの長さと層間ギャップとを加えたものが、プローブ材料が床層を貫通して延びる量を決定する。
【0055】
いくつかの実施形態は、床層の底面から延び、ウェルのうちの1つ以上と整列する嵌合機構を含む。
【0056】
また、これらの実施形態には、蓋の垂直部分の内側表面上の隆起を使用して、蓋内のプローブとレセプタクルのウェルとの位置合わせを達成する実施形態が含まれる。これらの表面は、ウェルプレートのテーパ状の外壁とインターフェースする。これらの実施形態には、隆起が湾曲部として構成された実施形態が含まれる。そのような実施形態は、テーパ状の壁の形状のばらつきに適合する柔軟性を提供する。
【0057】
別の一態様では、本発明は、ギャップによって隔てられた天井層と床層とを含む蓋を備える装置を提供する。蓋は、天井層が床層とは独立に動くように、天井層の動きを抑制する第1の力を受けるための手段と、蓋の内側の制御表面に第2の力を加えることを可能にするための手段とを含む。第1の力及び第2の力の変化が、ギャップの長さの調節を開始させる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1図1は、蓋の等角図である。
図2図2は、図1の蓋の分解等角図である。
図3図3は、図1の蓋によって被覆されるウェルプレートの等角図である。
図4図4は、蓋の上にデバイスが載っている、ウェルプレート上方の蓋の分解側面図である。
図5図5は、ウェルプレート上方の蓋のいくつかの位置での断面図である。
図6図6は、ウェルプレート上方の蓋のいくつかの位置での断面図である。
図7図7は、ウェルプレート上方の蓋のいくつかの位置での断面図である。
図8図8は、図1の蓋の床層の上面の等角図である。
図9図9は、図1の蓋の床層の底面の等角図である。
図10図10は、図1の蓋の天井層の上面の等角図である。
図11図11は、図1の蓋の天井層の底面の等角図である。
図12図12は、蓋の床層の異なる適合を示す断面図である。
図13図13は、図4のデバイスと結合され、図4のウェルプレート上に載っている蓋の部分断面図の2つの位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1及び図2は、床層18から層間ギャップ20だけ離間した天井層16を有する蓋10を示す。天井層16は、横断面と、横断面に直角な垂直方向とを画定する。図示のように、蓋は、少なくとも天井層16及び床層18を含む。しかし、いくつかの実施形態では、1つ以上の更なる層が、天井と床層18との間、床層18の下方、又は天井層16の上方に存在する。
【0060】
天井層16及び床層18を形成するために、様々な方法を利用可能である。これらは、射出成形、アディティブ製造プロセスの使用、及びサブトラクティブ製造プロセスの使用を含む。いくつかの実施形態では、床層18及び天井層16は、異なる製造プロセスを使用して製造される。
【0061】
天井層16に固定されたプローブ22が、床層18に向かって下方に延びる。プローブ22は、床層18の対応する穴24との位置合わせの結果、床層18を自由に貫通する。図2に示すように、プローブ22は、それぞれが床層18の対応する穴24を貫通する複数のプローブのうちの1つである。
【0062】
各プローブ22は、対象の化学物質に対して感応性のプローブ材料が取り付けられた遠位端を有する。この結果、プローブ22は、プローブの遠位先端を取り巻く環境内での対象の化学物質に関する情報を提供することが可能である。
【0063】
使用時には、蓋10は、図3に示すように、ウェルプレート15を被覆する。ウェルプレート15は、ウェル14のアレイ12を含む。これらのウェル14には、その酸素消費量が対象である試料を保持するウェルが含まれる。そのような用途のために、プローブ材料23は、酸素分圧に応答して光を発する。これらの実施形態では、プローブ22は、この光を捕捉してプローブの遠位先端から離れる方向に案内する光ファイバ又は光パイプ又は光導波路を含む。
【0064】
図4に示すように、蓋10はデバイス44を支持し、プローブ22は、捕捉された光をデバイス44へと案内する。デバイス44は、蓋10とは別個であり、測定プロセス及び動きプロセスの一方又は双方を制御する電子回路を含む。
【0065】
蓋10は、その天井層16の上にデバイス44を支持している。蓋10は、デバイス44との位置合わせを維持するその能力を向上させるために、デバイス44から延びる対応する位置合わせ機構46に嵌合する位置合わせ凹部60を含む。この位置合わせ凹部60は、蓋10が支持しているデバイス44の蓋10の天井層16に対する位置合わせを補助する。
【0066】
蓋10の特に有用な特徴は、蓋10の外側から層間ギャップ20を調節することを可能にするその能力である。これは、天井層16に、開口部であって、この開口部を介して、床層18に結合された制御表面26に力を加えることが可能である開口部を設けることにより、制御表面26に加えられた力が床層18へと伝達されるようにすることによって達成される。床層がこの力を支持する能力は、層間ギャップ20の長さを蓋10自体の外側から変化させる方法を提供する。
【0067】
いくつかの実施形態では、力を受ける制御表面26は、床層18自体の上にある。別の実施形態では、力を受ける制御表面26は、床層18から立ち上がる制御ポスト25などの構造の上又は中にあることにより、制御表面26への力の印加が、力をこの構造へと伝達し、構造は次いで、力を床層18へと伝達する。
【0068】
蓋10は、その床層18に結合された表面との相互作用が、介在する天井層16を介しても可能であることにより、プローブ22を上昇させること及びウェル14の無菌性を損なうことなくウェル14内へと下降させることを可能にする。
【0069】
デバイス44は、天井層16に結合する。この結果、デバイス44は、天井層16の動きを抑制する。デバイス44が床層18に対して動くと、天井層16も動く。
【0070】
一方、天井層16は、デバイス44が天井層16上にあっても、床層18がデバイス44を支持することを可能とするように構成されている。具体的には、制御表面26がデバイス44の重量を支持する。
【0071】
デバイス44が天井層16の動きを抑制すると共に自身を床層18上に支持するこの構成の結果、デバイス44が層間ギャップ20を調節することが可能である。例えば、ギャップ20を広げるために、デバイス44は、床層18を押圧することによって、自身を床層18から離れるように天井層16と共に上昇させる。逆に、ギャップ20を縮めるために、デバイス44は、自身を下降させることによって天井層16も同時に下降させる。
【0072】
プローブ22を上昇及び下降させるために、蓋10は、デバイス44に取り付けられたファインピッチの調節ねじ48を受け入れる。デバイス44のアクチュエータ49が、調節ねじ48を駆動して、ファインピッチの調節ねじ48が下向きに延びる距離を制御する。その間に、アクチュエータ49は、層間ギャップ20も制御する。好適な一実施形態では、アクチュエータ49は、調節ねじ48を第1の方向又は第2の方向のいずれかに回転させるステッパモータを含む。
【0073】
調節ねじ48は、第1の方向に回転すると伸長して、制御表面26がデバイスの重量を支持するように制御表面26に嵌合する。床層18の制御表面26がデバイス44の重量を支持するので、調節ねじ48の長さの変化が、デバイス44と床層18との間の間隔の変化を引き起こす。これらの変化の間、天井層16はデバイス44と接触したままであるので、層間ギャップ20は蓋10の外側から調節可能である。プローブ22が天井層16に固定されているので、蓋10はプローブ材料23の垂直方向の動きも制御する。
【0074】
図2及び図3は、天井層16に形成された制御開口部30を示している。図4に示す調節ねじ48は、この制御開口部30を通過する。その結果、蓋の制御開口部30は、制御表面26が、デバイス44と床層18との間に存在する天井層16からの干渉を受けることなくデバイス44と相互作用することを可能にする。
【0075】
制御開口部30は、床層18から上向きに延びる制御ポスト25の上方に直接に開いている。制御ポスト25の上面は、調節ねじ48が当接する制御表面26として機能する。アクチュエータ49が調節ねじ48を一方向に回転させると、調節ねじ48は外向きに伸長し、この制御表面26を突き放す。これは同時に、天井層16を上昇させ、層間ギャップ20を広げ、デバイス44を上昇させる。アクチュエータ49が調節ねじ48を逆方向に回転させると、調節ねじ48は後退し、天井層16を下降させ、層間ギャップ20を縮め、デバイス44を下降させる。
【0076】
すなわち、制御表面26、調節ねじ48、及びアクチュエータ49は全て、人間の場合であれば「押し上げ」と称されることを実行するように協働する。調節ねじ48は、第1の方向に回転させると、伸長して、垂直方向に成分を有する法線ベクトルを有する制御表面26に嵌合する。制御表面26は、天井層16が上昇するのに伴って、デバイス44を支持するために上向きの力を発揮し、結果として蓋の層間ギャップ20を増加させる。デバイス44が天井層16上に静止しているので、天井層16の高さ及び層間ギャップ20の長さはデバイス44によって抑制される。プローブ20が天井層16に結合しているので、天井層16を上昇及び下降させるとプローブ20も上昇及び下降する。
【0077】
図4では、制御表面26は、3つのそのような制御ポスト25にわたって広がる3つの表面の集合によって画定されている。これら3つの表面は、制御面75を画定する。同様に、プローブ22の遠位先端におけるプローブ材料23は、プローブ面76を画定する。調節ねじ48を回転させると、制御面75の位置に対するプローブ面76の位置が変化する。
【0078】
図5は、天井層16が床層18から取り外され、デバイス44が天井層16から離れている、ウェルプレート15上の蓋10の分解図である。
【0079】
図6は、組み立て後の図5の蓋10を示す。図6では、プローブ20が中に挿入されているウェル14の底部の上方にプローブ20の遠位先端が位置するように、ギャップ20の長さがプローブ面76と制御面75との間の距離を決定している。
【0080】
図7は、図4に示す調節ねじ48を回転させた後の図6の蓋10を示す。このことは、プローブ面76と制御面75との間の距離を更に増加させる。その結果、プローブ20の遠位先端は、それらのそれぞれのウェル14の底部のより近くへと動く。
【0081】
ここで図6及び図7を参照すると、蓋10がウェルプレート15上に静止している時には、蓋の床層18のウェルプレートインターフェース73がウェルプレート15とインターフェースしている。いくつかの実施形態では、ウェルプレートインターフェース73は、床層18の底面74を一緒に画定する複数の部分又は複数の機構を含む。蓋10がウェルプレート15上に静止している時には、ギャップ20の変化がウェル14内のプローブ材料23の位置を変化させても、床層18の底面74の位置はウェル14に対して一定のままである。
【0082】
天井層16を上昇又は下降させることによって、プローブの垂直方向の動きが制御される。具体的には、天井層16を下降させると、プローブ22がその対応する穴24を貫通して延びる長さがより長くなる。天井層16を上昇させると、プローブ22がその対応する穴24を貫通して延びる長さがより短くなる。
【0083】
ギャップの長さは、プローブ面76と床層の底面74との間の距離も制御する。ギャップ20を増加させると、プローブ面76は床層の底面74に向かって動き、ギャップ20を減少させると、プローブ面76は床層の底面74から離れるように動く。その結果、床層の底面74がウェルプレート15上に静止している時には、プローブ材料23とウェル14の底部との間の距離は、ギャップの長さに依存する。
【0084】
天井層16を上昇させると、プローブ22はその対応するウェル14の底部から離れるように引き上げられる。このプロセスの間、床層18はウェルプレート15上に固定されたままであるので、ギャップの長さの変化がウェル14内のプローブ22の垂直方向の位置の変化に直接関係する。プローブ22が上下に動いても、蓋の床層18はウェル14を被覆したままである。蓋の床層18がウェル14を被覆し続けるので、ウェル14は無菌状態を保つ。
【0085】
図6に更に示すように、床層18は、ギャップ20の長さを制限する第1の動き防止器79を含む。第1の動き防止器79は、蓋10が図6に図示するよりも更に上昇することを防止する。このことで、天井16と蓋10の床層18との分離が防止される。
【0086】
図7は、図6の蓋10を示しているが、図7に示す天井層16は、天井層16と床層18との間のギャップ20を最小限とする程度まで下降している。このため、この位置は、本明細書では「潰れ位置」と称される。ギャップ20の最小長さは、床層18の床面70と天井層16の天井面72との間の第2の動き防止器71によって制限される。
【0087】
図5に示すように、制御表面26は、その法線ベクトルが横方向に延びる位置合わせ表面33を有する制御ポスト25の上面を含む。天井層16の制御開口部30は、制御開口部壁77を有する。蓋10が組み立てられると、垂直方向の位置合わせ表面33は制御開口部壁77に嵌合して、図6に示す位置合わせインターフェース78を形成する。このことにより、天井層16を上昇及び下降させている間の天井層16の水平方向の配向が促進される。
【0088】
いくつかの実施形態は、位置合わせインターフェース78の複数のインスタンスを提供する。ニ自由度に対して制約を課すためには、位置合わせインターフェース78の2つのインスタンスを有することが特に有用である。位置合わせインターフェース78のこれらのインスタンスは、協働して床層18及び天井層16の互いに対する水平方向の移動及び回転を抑制し、天井層が垂直方向にのみ動く能力を促進する。
【0089】
制御ポスト25は、その長さに沿って比較的一定を保つと共に制御開口部30の断面と一致する断面を有する。この結果、制御ポスト25は制御開口部30を貫通して自由に滑動する。
【0090】
図5に示すように、床層18から延びる制限ポスト28が、第1の法線ベクトルを画定する表面を有する制限ポストレッジ36を形成する。一方で、図5に示す制限開口部32が、第2の法線ベクトルを画定する制限開口部レッジ42を形成する階段状の断面形状を有する。このように画定された第1の法線ベクトル及び第2の法線ベクトルは双方共に、非ゼロの垂直成分を有する。
【0091】
蓋10が組み立てられると、制限ポスト28の表面は、制限開口部レッジ42の対応する表面よりも上方に位置する。この結果、制限開口部レッジ42と制限ポストレッジ36とは互いに嵌合して、第1の動き防止器79を形成する。第1の動き防止器79は、上蓋の垂直方向の動きの最大長さを制限することによって、最大ギャップ20を決定する。
【0092】
図8は、ギャップ20の内側から見た床層18を示し、図9は、蓋10が覆っているアレイ12の内側から見た、ウェルプレートインターフェース73を含む床層18を示す。
【0093】
図10及び図11は、デバイス44に取り付けられることが意図される天井層16を示す。デバイス44が床層18から離れるように上昇する間、天井層16がデバイス44に取り付けられたままであることが重要である。デバイス44を天井層16に確実に取り付けるための様々な結合構造が利用可能である。これらには、天井層16に埋設された磁石52が含まれる。デバイス44と天井層16との水平方向の位置合わせを促進するために、デバイス44の位置合わせ機構46が天井層16の位置合わせ機構60と結合してもよい。
【0094】
図8は、プローブ穴24を包囲すると共にギャップ20内に延びる第1の突起31も示す。図2は、同じ第1の突起31を天井層16との関係で示している。
【0095】
第1の突起31は、蓋10の外部の環境と、第1の突起31が包囲するプローブ穴24との間に蛇行した経路を形成する。図11に示すように、第2の突起35が、プローブ穴24に入るプローブ20を包囲している。したがって、第1の突起31及び第2の突起35は、汚染物質がこのプローブ穴24に到達することをより困難にすると共に、層間ギャップ20が調節されている間のウェル14内の空気の動きを抑制する入れ子構造を形成する。この結果、第1の突起31及び第2の突起35は、「滅菌機構」を画定するものとして考えることができる。
【0096】
図9に示すように、床層18は、床層18から下向きにウェル14内へと延びる第3の突起81を含む。第3の突起81は、床層18とウェルプレート15との間の水平方向の位置合わせを促進する。
【0097】
図5に示すように、天井層16と一体に形成されたばね50が、床層18のばね座53とインターフェースして、ギャップ20の長さを付勢する。このことで、床層18に対する天井層16のデフォルト位置が提供される。複数の実施形態には、ばね50が、天井層16の大部分と同じ材料から形成され、天井層16の製造プロセスの一部として天井層16と一緒に形成された柔軟な要素又は湾曲部である実施形態が含まれる。好適な一実施形態では、ばね50はギャップ20を広げるように付勢される。したがって、ばね50は、調節ねじ48が調節されている間のデバイス44と天井層16との密着を促進する。
【0098】
ギャップ20の長さを制御するために、ばねのばね定数は、好適には、ばね50が天井層16の移動範囲を超えてデバイス44の重量を支持しないように調節される。理想的には、ばね50のばね定数は、デバイス44の重量によってギャップ20が完全に潰れるように設定される。
【0099】
好適な一実施形態では、デバイス44は、重さ約250グラムのハンドヘルドデバイスである。一実施形態では、ギャップをその最小限度まで潰すのに、重さ1キログラムであれば十分である。好適な一実施形態では、ギャップをその最小限度まで潰すのに、重さ250グラムであれば十分である。
【0100】
一般に、異なる製造業者によって製造されたウェルプレート15は、ウェルの深さが異なる。図12は、制御面75と底面74との間の距離H1、H2が異なるウェルプレート15に合わせて調節されている、床層18の異なる適合を示す。調節は、ウェル設計が異なっても、ウェル14内のプローブ材料23の配置が同程度に保たれるようになされている。この結果、様々な製造業者によって製造されたウェルプレート15とインターフェースするために、床層18の様々なモデルを使用することができる。しかし、床層18が天井層16に対して提供するインターフェースの機構が一定であってもよい。このことで、天井層16を、その下のウェルプレート15のフォーマットに依存しないままとすることができる。
【0101】
異なるウェルプレート15は、異なるウェル設計に加えて、蓋10の適切な位置合わせ及び位置付けに関する構造上の差異も有する。ある特定のウェルプレート15に固有であるのは床層18のみなので、床層18のみを適合させることで、床層18をこれらの製造業者独自の詳細に合わせることができる。この結果、別の非自明な利点が得られる。蓋10は、ウェル上方の空気流を抑制することに加えて、
製造業者独自の詳細を全て床層18に限定する一方で、あらゆる床層18に適合し、したがって好適な床層18が存在するあらゆるウェルプレート15に適合する標準化された天井層16を保持することによって、製造の簡便性を促進する。
【0102】
天井層16は本来、床層18よりも複雑であることから、ウェルに依存しない天井層16を有することが有利である。図11に示す天井層16の等角図から明らかであるように、天井層16をデバイス44に保持する磁石52が存在する。天井層16は、プローブ22の一部分を形成する堅固に取り付けられたファイバを保持する固定具56も含む。図10に示すように、天井層16は、デバイス44とインターフェースする回路58及び、位置合わせピンを受け入れるためのポケット60も含む。ウェル独自の詳細を全て床層18に隔離することによって、様々に異なるウェルプレート15に適合する汎用の天井層16を製造することが可能となる。
【0103】
図13は、調節ねじ48に結合されたアクチュエータ49を有するデバイス44を示している。調節ねじ48は、デバイス44の重量に対抗して作用することで、ギャップ20の長さ、ひいてはウェル14内のプローブ22の位置を円滑に変化させる。これにより、プローブ22は、ウェル14内の酸素勾配を測定するために、制御された方法で垂直方向に動くことができる。
【0104】
床層18は、手順全体を通してウェル14を被覆している。図9に示すように、床層18の周縁を取り巻く壁39が、環境とウェル14との間の直線経路を防止することによってウェルプレート15のウェル14への汚染物質の混入を制限する蛇行した経路の作成に寄与している。
【0105】
図8及び図11に示す第1の突起31及び第2の突起35は、それぞれ協働して、プローブ穴24上方の空間と、蓋の移動範囲全体にわたるウェルの内側の空間との間の直線経路を更に防止する滅菌機構を形成する。
【0106】
デバイス44のアクチュエータが天井層16を動かすのに伴って、空気がギャップ20内に引き込まれるか、又はギャップ20から引き出される。しかし、第1の突起31及び第2の突起35によって形成された滅菌機構のために、この空気の動きによるウェル14内の空気の乱れは起こりにくい。これにより、蒸発及び汚染の可能性が最小限に抑えられる。
【0107】
いくつかの実施形態では、天井層16の動きを、ウェル14内に何らかの液体添加剤を送達するための機構として使用することが可能である。具体的には、ギャップ20内に注入された添加液は、床層18上に溜まりを形成する傾向にある。ギャップ20が縮小するのに伴って、プローブ22はそのような溜まりを通過し、添加液の一部を捕捉する。次いで、プローブ22が、添加液の薄い層で被覆された状態でウェル14内に入る。添加液は次いで、プローブ22からウェル14内へと滴り落ちる。いくつかの実施形態では、更なる流路が、液体添加剤をプローブ22の動きに依存する必要なくウェル14内に送達するための経路を提供する。
【0108】
床層18と天井層16との間のギャップ20を操作する能力は、プローブ22の高さの制御以外の目的にも有用である。いくつかの実施形態では、一連の構成にわたる遷移によって、1種類以上の液体の放出を調整することが可能である。
【0109】
いくつかの実施形態では、装置に液体を適時に放出させるようにプログラムするために、作動又は作動停止な1つ以上のラッチが設けられている。これらの実施形態のいくつかでは、第1の構成が、ラッチを作動又は作動停止させる。ラッチが作動された場合は、第1の構成に続く第2の構成が液体を放出する。そうでない場合は、第2の構成は液体を放出しない。
【0110】
プログラムを利用した液体放出を可能にする複数の実施形態には、ギャップ20の長さがラッチの状態を制御する実施形態が含まれる。一例として、いくつかの実施形態では、ギャップ20は、何らかのしきい値を超えて広がることによってラッチを作動させる。このしきい値は、正常な動作の範囲外に設定され得る。これに続く蓋10の動きによって、液体の全量を分配してもよい。
【0111】
プログラムを利用した液体放出を、様々に異なる時点で液体を放出するように協働する複数のラッチによって実行してもよい。別の実施形態では、1つのラッチが複数の液体試料の放出を制御するように構成されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】