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特表2024-523338動作伝達腱の予備伸長のサイクルを備えたロボット手術システムの手術器具の調整方法、および関連するロボットシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】動作伝達腱の予備伸長のサイクルを備えたロボット手術システムの手術器具の調整方法、および関連するロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/35 20160101AFI20240621BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
A61B34/35
B25J13/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577519
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 IB2022055576
(87)【国際公開番号】W WO2022264078
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】102021000015896
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518132307
【氏名又は名称】メディカル・マイクロインストゥルメンツ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MEDICAL MICROINSTRUMENTS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】タンツィーニ,マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】シミ,マッシミリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】プリスコ,ジュゼッペ マリア
(72)【発明者】
【氏名】プロクター,マイケル ジョン
【テーマコード(参考)】
3C707
4C130
【Fターム(参考)】
3C707AS35
3C707BS09
3C707ES03
3C707ET02
3C707HS27
3C707HT04
4C130AA13
4C130AA17
4C130AA19
4C130AA24
4C130AB01
4C130AD30
(57)【要約】
手術器具20を使用するまえに実行される、ロボット手術システム1の手術器具20を調整する方法が説明される。その方法は、少なくとも1つの自由度(P、Y、G)を有する関節式エンドエフェクタ40と、ロボット手術システム1のそれぞれの少なくとも1つの電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16に動作可能に接続可能な少なくとも1つの腱31、32、33、34、35、36と、を含む手術器具20に適用される。少なくとも1つの腱31、32、33、34、35、36は、少なくとも1つの電動アクチュエータのうちのそれぞれの電動アクチュエータと、エンドエフェクタ40の少なくとも1つの自由度P、Y、Gのうちの少なくとも1つの自由度との両方に動作可能に接続されるように、手術器具20に取り付けられる。前述の少なくとも1つの腱に動作可能に連結された少なくとも1つの自由度P、Y、Gは、それに動作可能に連結された少なくとも1つの腱31、32、33、34、35、36によって、少なくとも1つのそれぞれの電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16の作用によって機械的に作動するように適合される。方法は、(i)エンドエフェクタ40の少なくとも1つの自由度P、Y、Gをロックするステップと、(ii)少なくとも1つの時間サイクルに従って、引張負荷を受けるべきそれぞれの少なくとも1つの腱に調整力(Fref)を加えることによって、少なくとも1つのロックされた自由度に動作可能に接続されたそれぞれの少なくとも1つの腱に引張応力を加えるステップと、を含む。前述の少なくとも1つの時間サイクルは、- 低い調整力Flowがそれぞれの腱に加えられ、その結果、それぞれの腱に低い引張負荷が加えられる、少なくとも1つの低負荷期間と、- 高い調整力Fhighが前述のそれぞれの腱に加えられ、その結果、それぞれの腱に高い引張負荷が加えられる、少なくとも1つの高負荷期間と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット手術システム(1)の手術器具(20)を調整する方法であって、
手術器具(20)は、
少なくとも1つの自由度(P、Y、G)を有する関節式エンドエフェクタ(40)と、
ロボット手術システム(1)のそれぞれの少なくとも1つの電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)に動作可能に接続可能な少なくとも1つの腱(31、32、33、34、35、36)と、
を含み、
少なくとも1つの腱は、少なくとも1つの電動アクチュエータのうちのそれぞれの電動アクチュエータと、エンドエフェクタ(40)の少なくとも1つの自由度(P、Y、G)のうちの少なくとも1つの自由度との両方に動作可能に接続されるように、手術器具(20)に取り付けられ、
少なくとも1つの腱に動作可能に連結された少なくとも1つの自由度(P、Y、G)は、それに動作可能に連結された少なくとも1つの腱(31、32、33、34、35、36)によって、少なくとも1つのそれぞれの電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)の作用によって機械的に作動するように適合され、
方法は、
(i)エンドエフェクタ(40)の少なくとも1つの自由度(P、Y、G)をロックするステップと、
(ii)少なくとも1つの時間サイクルに従って、引張負荷を受けるべきそれぞれの少なくとも1つの腱に調整力(Fref)を加えることによって、少なくとも1つのロックされた自由度に動作可能に接続されたそれぞれの少なくとも1つの腱に引張応力を加えるステップと、を含み、
少なくとも1つの時間サイクルは、
- 低い調整力(Flow)がそれぞれの腱に加えられ、その結果、それぞれの腱に低い引張負荷が加えられる、少なくとも1つの低負荷期間と、
- 高い調整力(Fhigh)がそれぞれの腱に加えられ、その結果、それぞれの腱に高い引張負荷が加えられる、少なくとも1つの高負荷期間と、を含む、
方法。
【請求項2】
少なくとも一対の拮抗腱(31、32;33、34;35、36)に引張応力を与えるステップと、
腱上の負荷状態を決定するように適合された保持力(Fhold)を腱に加えることによって、腱を引張応力状態に保持するステップと、をさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ロックするステップは、
ロックされるべき少なくとも1つの自由度(P、Y、G)をストローク終端にもたらすステップ、及び/又は
関節式エンドエフェクタ(40)に当接させて拘束要素(37)を装着するステップを含み、
拘束要素(37)は、関節式エンドエフェクタ(40)の少なくとも1つの自由度のうちの1つ以上を正確かつ所定の構成/姿勢でロックするように構成され、
ロック解除ステップは、
ロック解除されるべき少なくとも1つの自由度(P、Y、G)を非ストローク終端位置にもたらすステップ、及び/又は
関節式エンドエフェクタ(40)を拘束要素(37)に当接した状態から解放するステップを含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
手術器具(20)は、
少なくとも1つの腱を含む少なくとも一対の拮抗腱(31、32;33、34;35、36)を含み、
一対の拮抗腱は、それに関連する単一の自由度(P;Y;G)に作用し、したがって拮抗効果を決定し、
ロボット手術システム(1)は、
電動アクチュエータのうちの少なくとも一対の拮抗電動アクチュエータ(11、12;13、14;15、16)を含み、
拮抗電動アクチュエータの対の各要素は、拮抗腱(31、32;33、34;35、36)の対の、それぞれの腱に関連し、
- 一自由度をロックするステップは、ロックされる自由度に関連する一対の拮抗腱に接続された両方の拮抗伝達要素(21、22;23、24;25、26)を同時に作動させるステップを含み、
- ロックされた自由度のロック解除ステップは、ロック解除される自由度に関連する一対の拮抗腱に接続された拮抗電動アクチュエータの少なくとも一方、好ましくは両方、を非作動にするステップを含む、
請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
複数の時間サイクルが提供され、
少なくとも2つの隣接する時間サイクルにおいて、高い調整力(Fhigh)のそれぞれの値が増大する、
請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
複数の時間サイクルが提供され、
少なくとも2つの隣接する時間サイクルにおいて、高い調整力(Fhigh)のそれぞれの値が一定のままである、
請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
手術器具(20)が複数の腱を含み、
それぞれの応力パターンがそれぞれの腱に印加され、それぞれの応力パターンは、それぞれの基準力(Fref)、および印加サイクルのそれぞれの期間およびシーケンス、および/または高低調整力の印加期間によって特徴付けられ、
複数の腱のうち少なくとも1つの腱の応力パターンは、他の腱の応力パターンと異なり、
および/または
調整力(Fref)の印加はすべての腱に対して同時に行われず、
および/または
調整力(Fref)の値は、少なくとも1つの腱上で、または異なる腱上で、または異なる対の拮抗する腱上で異なり、
例えば、開閉の自由度(G)の作動に関与する腱(33、34、35、36)に付加される高い調整力(Fhigh)および/または低い調整力(Flow)の値は、他の腱(31、32)に対してより高く、
および/または、
例えば、高い調整力と低い調整力(Fhigh-Flow)の間の可動域は、開閉の自由度(G)の作動に関与する腱(33、34、35、36)においてより大きい、
請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
手術器具(20)が複数の腱を含み、
それぞれの応力パターンがそれぞれの腱に印加され、それぞれの応力パターンは、それぞれの基準力(Fref)、および印加サイクルのそれぞれの期間およびシーケンス、および/または高低調整力の印加期間によって特徴付けられ、
応力パターンはすべての腱について同じであり、
および/または、
調整力(Fref)の印加はすべての腱に対して同時に行われ、
および/または
調整力(Fref)の値は、すべての腱上で等しい、
請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
連続する低負荷期間と高負荷期間との間の交替を決定するように、複数のN個の時間サイクルが提供され、n番目のサイクルの低負荷期間中にそれぞれの低調整力(Flow_n)が印加され、n番目のサイクルの高負荷期間中にそれぞれの高調整力(Fhigh_n)が印加される、
請求項1~8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
異なる時間サイクルの低い調整力(Flow_n)は、同じ所定の値の低い調整力(Flow)に対応し、高い調整力(Fhigh_n)は、最大の高い調整力値(Fhigh_max)に達するまで、徐々に増加する高い調整力値(Fhigh)に対応する、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
n番目の時間サイクルの高い調整力値は以下の式に従って計算され、
ここで、nは現在のサイクル、Nはサイクルの総数、NcはFhighが一定のときのサイクル数、Fhigh_maxは設定可能な値である、
請求項10に記載の方法。
【数1】
【請求項12】
第1の持続時間(T1)は、第1の保持持続時間(T12)を有する第1の保持サブステップに加えて、第1のランプ持続時間(T11)を有する第1のランプサブステップを含み、第1の保持持続時間(T12)と第1のランプ持続時間(T11)との和が第1の持続時間(T1)に対応し、
第2の持続時間(T2)は、第2の保持持続時間(T22)を有する第2の保持サブステップに加えて、第2のランプ持続時間(T21)を有する第2のランプサブステップを含み、第2の保持持続時間(T22)と第2のランプ持続時間(T21)との合計が第2の持続時間(T2)に対応し、
第1の保持持続時間(T12)は、第1のランプ持続時間(T11)よりも長く、第2の保持持続時間(T22)は、第2のランプ持続時間(T21)よりも長く、
第1の持続時間(T1)は0.2秒から30.0秒の範囲内にあり、第2の持続時間(T2)は0.2秒から5.0秒の範囲内にある、
請求項9~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
好ましくは、第1の持続時間(T1)は1.0秒から3.0秒の範囲内であり、第2の持続時間(T2)は1.0秒から3.0秒の範囲内であり、
および/または
第1のランプ持続時間T11は0.2~10.0秒の範囲内であり、第2のランプ持続時間T21は0.2~2.0秒の範囲内であり、
および/または
第1の保持時間T12は0.2~20.0秒の範囲内であり、第2の保持時間T22は0.2~3.0秒の範囲内である、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
低調整力(Flow)は、正の値を有し、手術器具の表面上の腱の静的滑り摩擦、および手術器具の作動および伝達システムの内部摩擦より大きい力であり、いずれにしても腱への引張応力を決定する、
請求項1~13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
低調整力(Flow)は0.2N~3.0Nの範囲内の値を有し、高調整力(Fhigh)は8.0N~50.0Nの範囲内の値を有し、
好ましくは、低調整力(Flow)は1.0N~3.0Nの範囲内の値を有し、高調整力(Fhigh)は10.0N~20.0Nの範囲内の値を有する、
請求項1~14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
時間サイクル数Nは1~30の範囲内であり、
または、好ましくは、時間サイクル数Nは1~15の範囲内、または10未満であり、
または、より好ましくは、時間サイクルの数Nは3から8の範囲内である、
請求項1~15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
手術器具(20)、少なくとも1つの電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)、および制御ユニットを含むロボット手術システム(1)であって、
手術器具(20)は、
少なくとも1つの自由度(P、Y、G)を有する関節式エンドエフェクタ(40)と、
ロボット手術システム(1)の少なくとも1つの電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)のそれぞれの電動アクチュエータに動作可能に接続可能な少なくとも1つの腱(31、32、33、34、35、36)と、
を含み、
少なくとも1つの腱は、それぞれの電動アクチュエータと、エンドエフェクタ(40)の少なくとも1つの自由度(P、Y、G)のうちの少なくとも1つの自由度との両方に動作可能に接続されるように、手術器具(20)に取り付けられ、
少なくとも1つの腱に動作可能に連結された少なくとも1つの自由度(P、Y、G)は、それに動作可能に連結された少なくとも1つの腱(31、32、33、34、35、36)によって、少なくとも1つのそれぞれの電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)の作用によって機械的に作動するように適合され、
ロボット手術システムの制御ユニットは、
(i)エンドエフェクタ(40)の少なくとも1つの自由度(P、Y、G)をロックするステップと、
(ii)少なくとも1つの時間サイクルに従って、引張負荷を受けるべきそれぞれの少なくとも1つの腱に調整力(Fref)を加えることによって、少なくとも1つのロックされた自由度に動作可能に接続されたそれぞれの少なくとも1つの腱に引張応力を加えるステップと、
を制御するように構成され、
少なくとも1つの時間サイクルは、
- 低い調整力(Flow)がそれぞれの腱に加えられ、その結果、それぞれの腱に低い引張負荷が加えられる、少なくとも1つの低負荷期間と、
- 高い調整力(Fhigh)がそれぞれの腱に加えられ、その結果、それぞれの腱に高い引張負荷が加えられる、少なくとも1つの高負荷期間と、を含む、
ロボット手術システム(1)。
【請求項18】
手術器具(20)は、腱のうちの、それぞれの少なくとも1つの腱(31、32、33、34、35、36)に動作可能に接続され、それぞれの電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)に動作可能に接続された少なくとも1つの伝達要素(21、22、23、24、25、26)をさらに含み、
好ましくは、少なくとも1つの伝達要素は剛性要素であり、少なくとも1つの腱は引張負荷下で変形可能である、
請求項17に記載のロボット手術システム(1)。
【請求項19】
少なくとも1つの伝達要素と、それぞれの少なくとも1つの電動アクチュエータとの間に介在する無菌バリアをさらに含む、
請求項18に記載のロボット手術システム(1)。
【請求項20】
手術器具の少なくとも1つの腱(31、32、33、34、35、36)とそれぞれの少なくとも1つの電動アクチュエータ(11、12、13、14、15、16)との間の操作接続は、着脱可能な単側拘束連結によって決定される、
請求項17~19のいずれか1つに記載のロボット手術システム(1)。
【請求項21】
関節式エンドエフェクタ(40)に取り付けられた拘束要素(37)をさらに備え、
拘束要素(37)は、関節式エンドエフェクタ(40)の少なくとも1つの自由度のうちの1つ以上を正確かつ所定の構成/姿勢でロックするように構成される、
請求項17~20のいずれか1つに記載のロボット手術システム(1)。
【請求項22】
手術器具の少なくとも1つの腱(31、32、33、34、35、36)は、複数の巻かれた/編み合わせたポリマ繊維を含むか、またはポリマストランドである、
請求項17~21のいずれか1つに記載のロボット手術システム(1)。
【請求項23】
制御ユニットは、請求項1~16のいずれか1つの記載に従って、手術器具の調整方法を実行するようにロボットシステムを制御するように構成されている、
請求項17~22のいずれか1つに記載のロボット手術システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作伝達腱(movement transmission tendons)の予備伸長(pre-elongation)のサイクルを備えたロボット手術システムの手術器具の調整(conditioning)の方法に関する。
【0002】
したがって、本明細書は、より一般的には、遠隔手術用ロボットシステムの操作制御の技術分野に関する。
【背景技術】
【0003】
遠隔操作ロボット手術システムでは、スレーブ手術器具(slave surgical instrument)の自由度の1つ以上の作動は、一般に、外科医によって付与されたコマンドを受け取るように構成された1つ以上のマスター制御装置(master control device)に隷属させられる。このようなマスター・スレーブ制御アーキテクチャは、典型的には、ロボット手術用ロボット内に収容可能な制御装置を含む。
【0004】
ロボット手術システム用の既知の関節式(articulated)手術器具は、例えば、同じ出願人の名義の文書WO2017-064303およびWO2018-189729に示されているように、患者の解剖学的構造に対する手術および/または手術針の取り扱いを意図した手術器具の先端に遠位側で、手術器具の近位インタフェース(または「バックエンド」)に作動可能に接続された、アクチュエータからの運動を伝達するための作動腱(actuation tendons)またはケーブルを含む。かかる文献は、一対の拮抗腱(antagonistic tendons)が、手術器具と同じ自由度を実装するように構成される解決策を開示している。例えば、手術器具の回転関節(joint)(ピッチの自由度及びヨーの自由度)は、前述の一対の拮抗腱によって加えられる引張力を加えることによって制御される。
【0005】
さらに、WO2010-009221に示されているように、二対の腱のみが手術器具の3自由度を制御するように構成されているように、同じ腱対が同時に1自由度以上の自由度を作動させることができる手術器具も知られている。
【0006】
一般に、ロボット手術用の腱は、金属コード(またはストランド)の形で作られ、手術器具に沿って取り付けられたプーリーに巻かれている。各腱は、アクチュエータによって作動されたときに手術器具の自由度の迅速な作動応答を提供し、その結果、手術器具の自由度に対する良好な制御を提供するために、各腱が常に引張状態になるように、既に弾性的に予負荷をかけられた器具、すなわち、器具に組み付ける前に予め調整された器具に取り付けることができる。
【0007】
例えば、文献US2019-0191967は、拮抗する両方の腱を同時に同じ速度で引っ張り、引っ張りモータが最小限のさらなる動きで発生するトルクの著しい増加を経験し始めるまで、腱の緩み遷移の終わり(「弛みなし」)を決定するモータのトルクを特定することを含む予備伸長解決策を示している。
【0008】
一般論として、すべてのコードは負荷を受けると伸長する。編み合わせ(braided)タイプの新しいコードは、少なくとも部分的にはコードを形成する繊維のほつれにより、負荷を受けると塑性弾性(plastic-elastic)の高い伸びを示すのが一般的である。
【0009】
このため、手術器具に組み付ける前に、新しい腱に高い初期負荷をかけ、引き抜きや編み合わせの過程や素材自体に残留可塑性(residual plasticity)を除去するのが一般的である。
【0010】
一般的に、コードには通常3つの伸長要素がある:
(1)弾性伸長変形、これは引張負荷が停止したときに回復する;
(2)回復可能な変形、すなわち、ある一定の時間をかけて徐々に回復する比較的小さな変形で、絡み合いの性質の関数であることが多く、回復には、負荷を受けない場合には数時間から数日の期間を要する;
(3)回復不可能な永久伸び変形。
【0011】
上述したような永久伸び変形は、器具に組み付ける前に行うコード慣らし手順によって達成することができ、この慣らし手順は、負荷および負荷解除(loading and unloading)サイクルを含み、繊維自体の塑性的な伸び変形を伴うことができる。
【0012】
引張負荷下での粘性クリープ変形は、疲労を受けるとある種の絡み合ったコードに影響を及ぼす時間依存性の効果であり、一般に加えられる負荷の強さによって回復可能な場合と回復不可能な場合がある。
【0013】
一般に、ポリマ繊維の疲労挙動は金属繊維の疲労挙動とは異なり、ポリマ繊維は金属繊維のように亀裂伝播による破壊を受けないが、繰り返し負荷によって別の形態の破壊につながる可能性がある。
【0014】
同出願人名義のWO2017-064306は、ロボット手術用の極めて小型化された手術器具の解決策を示しており、この手術器具は、大きい曲率半径に適応すると同時に、手術器具の関節式先端部を形成する、一般に「リンク」と呼ばれる剛性要素の表面上を摺動するように適合された腱を使用している。このような腱の摺動を可能にするためには、腱とリンクの摺動摩擦係数をできる限り低く保つ必要があり、上述の文献では、(鋼鉄製の腱を使用するのではなく)ポリマ繊維で形成された腱を使用することを教示している。
【0015】
多くの観点から有利であり、実際、ポリマ繊維によって形成された前述の腱を使用することによって手術器具の極端な小型化が得られるという事実の結果として、この解決策に関しては、長さの同じ変化では、サイズが小さくなるにつれて、小型化された手術器具の制御不能の影響が強調されることになるから、手術器具の作動条件下で腱の伸長または短縮(収縮)の発生を回避することがさらに重要になる。
【0016】
金属製の腱は、回復可能な伸長性がある程度あり、手術器具に組み付ける前に行われる前述の予負荷工程は、通常、残留可塑性を完全に除去するのに十分である一方、組み付けたときに受ける予負荷は、使用時の即時反応性を維持する。
【0017】
例えば、US-2018-0228563は、コアと、コアの周囲に巻かれた複数の繊維とを有する腱の工場出荷時の弾性伸長(「ストレッチ」)を排除するための解決策を示している。この解決策には、腱繊維間および腱繊維とコアとの間に相対的な滑りを生じさせるように、各腱に負荷サイクルを与えることが含まれ、その結果、腱の製造中に形成される繊維とコアとの間の空隙が除去される。
【0018】
そうでなければ、ポリマ材料の腱は、上述の寄与により高い伸びを有し、さらに、組立前に予負荷工程を実施しても、腱が低い引張負荷を受けるとすぐに、回復可能な伸びの大部分を迅速に回復することを防ぐことはできない。一方では、高い組立予負荷を予測することが変形の回復を防ぐとすれば、他方では、使用していないときでもポリマ製腱のクリープ過程を悪化させ、腱をほとんど無期限に伸張させ、弱体化させることになり、したがって、実行可能な策とは言えない。
【0019】
例えば、高分子量ポリエチレン繊維(HMWPE、UHMWPE)で形成された編合コードは、通常、回復不可能な変形を起こすが、アラミド、ポリエステル、液晶ポリマ(LCP)、PBO(Zylon(登録商標))、ナイロンなどの編合コードは、この特徴の影響を受けにくい。
【0020】
例えば、同じ出願人名義のWO-2017-064301には、腱自体の引張破断負荷の少なくとも半分に等しい負荷で予備伸長サイクルを受けることができる手術器具のポリマ腱が示されている。
【0021】
手術器具の場合、上述した腱の伸長現象に起因する腱の長さのばらつき、および伸長の回復は、特に手術条件下では、手術器具自体の十分なレベルの精度と正確さを維持するための制御において、必然的に客観的な複雑さを課すことになるため、非常に望ましくない。
【0022】
したがって、使用中または経時中に、手術器具の1つまたは複数の自由度の作動腱の延長(lengthening)/伸長(elongation)を回避するか、または少なくとも最小にする必要性が感じられ、また、動作状態における腱の望ましくない延長/伸長から派生するロストモーションを回避するか、または少なくとも最小にする必要性が感じられ、これを、遠隔操作の間、手術器具、特にその遠位関節部の寸法を増加させることなく達成したい。
【0023】
一方、簡単ではあるが、手術器具の高い制御性を確保することができ、遠隔操作時のような操作状態において信頼性が高く、その一方で、手術器具の小型化、特にその遠位関節部の小型化を妨げない解決策を提供する必要性が感じられる。
【発明の概要】
【0024】
本発明の目的は、遠隔操作ロボット手術システムにおける手術器具の調整方法(conditioning method)を提供することであり、これにより、背景技術を参照して上記で述べた欠点を少なくとも部分的に克服し、考慮される技術分野で特に感じられる前述のニーズに応えることができる。このような目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。
【0025】
このような方法のさらなる実施形態は、請求項2~16によって定義される。
【0026】
本発明のさらなる目的は、前述の手術器具の調整方法を実行することができ、および/または前述の手術器具の調整方法によって制御されるように適合された、ロボット手術システムを提供することである。かかる目的は、請求項17に記載の方法によって達成される。
【0027】
このようなシステムのさらなる実施形態は、請求項18~23によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明による方法のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照しながら、非限定的な指示として与えられる好ましい例示的な実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【0029】
図1図1は、一実施形態に係る、遠隔操作手術のロボットシステムの不等角図である。
図2図2は、図1の遠隔操作手術のロボットシステムの一部の不等角図である。
図3図3は、一実施形態に係るロボットマニピュレータの遠位部分の不等角図である。
図4図4は、一実施形態に係る手術器具の不等角図であり、腱が破線で模式的に図示されている。
図5図5は、あり得る作動モードにおける手術器具の関節式のエンドエフェクタデバイス(エンドエフェクタとも呼ばれる)の自由度の作動を示す、平面図および明確にするための部分的断面図である。
図6図6は、あり得る作動モードにおける調整ステップを図5の例を取って示す図である。
図7図7は、あり得る作動モードにおける手術器具の関節式のエンドエフェクタデバイスの自由度の作動を図示する。
図8図8は、一作動モードにおける調整力を時間の関数として示すグラフである。
図8-2】図8-2は、一作動モードにおける伝導アクチュエータの位置を時間の関数として示すグラフである。
図9図9は、手術器具の一部およびロボットマニピュレータの一部の模式的断面図であり、あり得る作動モードにおける手術器具の自由度の作動を示す。
図10図10は、あり得る作動モードにおける調整方法のステップを示すフロー図である。
図11図11は、あり得る別の作動モードにおける調整方法のステップを示すフロー図である。
図12図12は、一実施形態に係る、手術器具の関節式エンドエフェクタを示す、(明確化のために)部分的に断面図とした不等角図である。
図13図13は、一作動モードにおける、調整力負荷の時間サイクルを時間の関数として示すグラフである。
図14図14は、一作動モードにおける、2つの異なる腱について調整力負荷の時間サイクルを時間の関数として示す2つのグラフを含む。
図15図15は、一作動モードにおける、3つの異なる対の拮抗腱について調整力負荷の時間サイクルを時間の関数として示す3つのグラフを含む。
図16図16は、一作動モードにおける、2つの異なる対の拮抗腱について調整力負荷の時間サイクルを時間の関数として示す(a)および(b)の2つのグラフを含む。
図17図17は、一作動モードにおける、2つの異なる対の拮抗腱について調整力負荷の時間サイクルを時間の関数として示す更なるグラフを含む。
図18図18は、あり得る作動モードにおける、腱への負荷力の経時トレンドを模式的に示すグラフである。
図19図19は、一作動モードにおける、あり得る方法ステップのいくつかを示すブロック図である。
図20図20は、一作動モードにおける、調整力負荷の時間サイクルを時間の関数として示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1~20を参照して、ロボット手術システム1の手術器具20を調整する方法を説明する。
【0031】
本方法は、器具を使用する前のいくつかの状況、例えば、器具の配送前の包装前、または遠隔操作のために使用される前に有利に実施することができる。好ましくは、本方法は、手術器具をロボット手術システムに取り付けた後、遠隔操作のために作動させる前に実行される。
【0032】
本方法は、少なくとも1つの自由度(P、Y、G)を有する関節式エンドエフェクタ40を含む手術器具20に適用され、ロボット手術システム1のそれぞれの少なくとも1つの電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16に動作可能に接続可能な少なくとも1つの腱31、32、33、34、35、36をさらに含む。
【0033】
少なくとも1つの腱31、32、33、34、35、36は、前述した少なくとも1つの伝達要素のうちのそれぞれの電動アクチュエータと、関節式エンドエフェクタ40の前述した少なくとも1つの自由度P、Y、Gのうちの少なくとも1つの自由度との両方に動作可能に接続されるように、手術器具20に取り付けられている。
【0034】
少なくとも1つの腱に動作可能に連結された前述の少なくとも1つの自由度P、Y、Gは、それに動作可能に連結された前述の少なくとも1つの腱31、32、33、34、35、36によって、少なくとも1つのそれぞれの電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16の作用によって機械的に作動するように適合されている。
【0035】
この方法は、以下のステップを含む:
(i)エンドエフェクタ40の前述の少なくとも1つの自由度P、Y、Gをロックするステップ;
(ii)少なくとも1つの時間サイクルに従って、引張負荷を受けるべきそれぞれの少なくとも1つの腱に調整力(Fref)を加えることによって、前述の少なくとも1つのロックされた自由度に動作可能に接続されたそれぞれの少なくとも1つの腱に引張応力を加えるステップ。
【0036】
前述の少なくとも1つの時間サイクルは、以下を含む:
- 低い調整力Flowが前述のそれぞれの腱に加えられ、その結果、それぞれの腱に低い引張負荷が加えられる、少なくとも1つの低負荷期間;
- 高い調整力Fhighが前述のそれぞれの腱に加えられ、その結果、それぞれの腱に高い引張負荷が加えられる、少なくとも1つの高負荷期間。
【0037】
この方法は、例えば手術器具を使用する前に行うことができる。
【0038】
好ましい実施形態によれば、本方法は、ロボット手術システム1のそれぞれの少なくとも1つの電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16に動作可能に接続される少なくとも1つの伝達要素21、22、23、24、25、26をさらに含む手術器具20に適用される。従って、手術器具20の伝達システムは、引張負荷で変形可能な前述の少なくとも1つの腱と、ロボットマニピュレータの前述の少なくとも1つのそれぞれの電動アクチュエータとインタフェース接続する前述の少なくとも1つの伝達要素を含む。
【0039】
この好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの腱31、32、33、34、35、36は、前述の少なくとも1つの伝達要素のうちのそれぞれの伝達要素、および関節式エンドエフェクタ40の前述の少なくとも1つの自由度P、Y、Gのうちの少なくとも1つの自由度の両方に動作可能に接続されるように、手術器具20に取り付けられる。
【0040】
少なくとも1つの伝達要素は、好ましくは剛性要素である。これにより、電動アクチュエータの動作は、例えば伝達要素が弾性要素および/または減衰要素であった場合に代わりに導入され得る減衰/歪みなしに、それぞれの腱に伝達される。
【0041】
少なくとも1つの腱に動作可能に接続された前述の少なくとも1つの自由度P、Y、Gは、それに動作可能に接続されたそれぞれの少なくとも1つの腱31、32、33、34、35、36による前述の少なくとも1つのそれぞれの伝達要素21、22、23、24、25、26の動きによって機械的に作動可能である。
【0042】
本実施形態において、本方法は以下のステップを備える:
(i)関節式エンドエフェクタ40の前述の少なくとも1つの自由度P、Y、Gをロックするステップ;
(ii)少なくとも1つのロックされた自由度に作動的に接続されたそれぞれの少なくとも1つの腱に、少なくとも1つの時間サイクルに従って、引張負荷を受けるべき前述のそれぞれの少なくとも1つの腱に接続されたそれぞれの伝達要素21、22、23、24、25、26に調整力Frefを加えることによって、引張応力を加えるステップ。
【0043】
前述の少なくとも1つの時間サイクルは、前述の各伝達要素に低調整力Flowが加えられ、その結果、前述の各腱にそれぞれ低引張負荷が生じる少なくとも1つの低負荷期間と、前述の各伝達要素に高調整力Fhighが加えられ、その結果、前述の各腱にそれぞれ高引張負荷が生じる少なくとも1つの高負荷期間とを含む。
【0044】
したがって、好ましくは、低調整力Flowは、ゼロより大きく、手術器具の表面上の腱の静的滑り摩擦、および手術器具の作動および伝達システムの内部摩擦より大きい力であり、わずかではあるが腱への引張応力を決定する。
【0045】
一実施形態によれば、低調整力Flowは、0.2~1Nの範囲内の値である。一実施形態では、低調整力Flowは、1~5Nの範囲内の値である。一実施形態では、低調整力Flowは、1~5Nの範囲内の値である。一実施形態では、低調整力Flowは、高調整力Fhighの5%~20%の範囲内の値とすることができる。一実施形態では、低調整力Flowは、その終端部(すなわち、手術器具の腱-リンク拘束点(constraint point))における腱の破断負荷(breaking load)の1%~10%の範囲内の値とすることができる。一実施形態では、低調整力Flowは腱破壊負荷の5%までの値とすることができる。
【0046】
一実施形態によれば、手術器具の少なくとも1つの腱とそれぞれの少なくとも1つの電動アクチュエータとの間の動作接続は、直接的または、例えば、少なくとも1つのそれぞれの伝達要素を介在させることによって間接的な接続とすることができる。
【0047】
一実施形態によれば、手術器具の少なくとも1つの腱とそれぞれの少なくとも1つの電動アクチュエータとの間の直接的または間接的な動作接続は、解除可能なリンクとすることができる。例えば、手術器具の少なくとも1つの腱とそれぞれの少なくとも1つの電動アクチュエータとの間の動作連結は、取り外し可能な単側拘束連結(monolateral constraint coupling)によって決定される。
【0048】
一実施形態によれば、本方法は、以下のさらなるステップを含む:
(iii)前述の少なくとも1つの自由度のロックを解除して、関節式エンドエフェクタ40がその全ての自由度で動くことができるようにするステップ;
(iv)手術器具20を使用して遠隔操作を行うステップ。
この場合、調整方法は、マスター-スレーブ遠隔操作を実行するステップを提供する制御方法の一部である調整手順として理解される。
【0049】
少なくとも1つの伝達要素21、22、23、24、25、26への前述の力の印加により、前述の少なくとも1つの自由度P、Y、Gがロックされた状態において、前述の少なくとも1つの腱31、32に引張作用を及ぼすことができ、前述のロックされた少なくとも1つの自由度をいかにしても動作または作動させることは回避される。これにより、少なくとも1つの腱31、32、33、34、35、36の延長/伸長状態は、次の遠隔操作ステップの観点から安定化される。
【0050】
遠隔操作ステップを開始する前に、関節式エンドエフェクタ40の前述の少なくとも1つの自由度は、作動可能になるようにロック解除される。例えば、「作動可能」とは、その自由度において2つの対向方向に移動可能であることを意味する。
【0051】
一実施形態(例えば図18および図19に示す)によれば、本方法は、遠隔操作を行うステップ(iv)の前に、少なくとも一対の拮抗腱31、32;33、34;35、36に引張応力を与えるステップと、腱上の負荷状態を決定するように適合された保持力Fholdを腱に加えることによって、前述の腱を引張応力状態に保持するステップと、を含む。これらの応力付与および保持ステップは、調整手順のあとで、遠隔操作のまえとなる保持手順を形成する。
【0052】
保持力Fholdは、好ましくは、前述の低負荷値Flowと前述の高負荷値Fhighとの間である。引張応力状態におけるこれらの腱応力付与および保持ステップは、ロック解除ステップの後に設けることができる。応力付与ステップの前に、負荷解除または弛緩(relaxation)サブステップを設けることができ、このサブステップは、拮抗腱に、保持力Fhold未満かつ高負荷Fhigh未満の低い力を加えることを含むことができる。
【0053】
遠隔操作を実行するステップは、遠隔操作に入るための要求、および/または遠隔操作を可能にするコマンドに依存することができる。言い換えれば、調整手順の後に保持ステップ(すなわち、メンテナンスステップ)が実行され、保持ステップの後に遠隔操作を実行するステップが実行される。
【0054】
応力付与ステップと保持ステップを実行することで、遠隔操作ステップに入る際に手術器具の腱を張った状態に保つことができ、腱の準備の整った反応を保証することができる。例えば、調整手順の最後に、調整手順を実行することで、遠隔操作を行うステップを考慮して腱の弛緩を避けることができ、調整手順中に到達した腱の機械的調整のレベルを維持することができる。
【0055】
保持ステップは、好ましくは、弛緩または負荷解除のサブステップ、すなわち、遠隔操作を行うステップに入る前に腱を押しつぶさないように比較的低い引張力を加えること(無力でもよい)で終了する。
【0056】
上述したように、調整手順は、好ましくは、弛緩または負荷解除のサブステップ、すなわち、腱に比較的低い(無力でもよい)引張力を加えることで終了する。
【0057】
好ましくは、遠隔操作を行うステップの間、手術器具は、例えば、そのマスター-スレーブ遠隔操作の全ての自由度において、マスター装置に追従し、一方、調整および保持手順の間、手術器具は、マスター装置に隷属しない(すなわち、追従しない)。
【0058】
本方法の一実施形態によれば、ロックステップは、ロックされるべき少なくとも1つの自由度(P、Y、G)をストローク終端(すなわち、ストロークの終端)にもたらすことを含み、ロック解除ステップは、ロック解除されるべき少なくとも1つの自由度P、Y、Gを非ストローク終端(すなわち、ストローク終端以外の場所)位置にもたらすことを含む。
【0059】
本方法の別の実施形態によれば、ロックステップは、関節式エンドエフェクタ40に当接させて拘束要素37を装着するステップを含み、拘束要素37は、関節式エンドエフェクタ40の前述の少なくとも1つの自由度のうちの1つ以上を正確かつ所定の構成/姿勢(pose)でロックするように構成されている。
【0060】
この場合、ロック解除ステップは、関節式エンドエフェクタ40を拘束要素37に当接した状態から解放するステップを含む。
【0061】
一実施形態によれば、この方法は、前述の少なくとも1つの腱を含む少なくとも一対の拮抗腱(31、32;33、34;35、36)と、好ましくは前述の伝達要素のうちの少なくとも一対の拮抗する伝達要素(21、22;23、24;25、26)とを含む手術器具20に適用される。
【0062】
少なくとも一対の拮抗腱は、それに関連する単一の自由度(P;Y;G)に作用し(すなわち、同じ回転関節またはエンドエフェクタの同じリンクに作用し)、したがって拮抗効果を決定する。
【0063】
前述の一対の拮抗伝達要素の各要素は、存在する場合、前述の一対の拮抗腱のそれぞれの腱に関連する。
【0064】
このような実施形態では、1つの自由度をロックするステップは、ロックされる自由度に関連付けられた一対の拮抗腱の両方の拮抗腱を同時に作動させて、それぞれのモータ/アクチュエータが拮抗腱のそれぞれの腱を同じ速度で引っ張るようにするステップを含み、ロックされた自由度をロック解除するステップは、ロック解除される自由度に関連付けられた一対の拮抗腱の少なくとも一方の拮抗腱を非作動にするステップを含む。
【0065】
ロック解除ステップは、ロック解除される自由度に関連する両方の拮抗腱を非作動にするステップを含む。
【0066】
好ましい実施形態によれば、1つの自由度をロックするステップは、ロックされる自由度に関連する一対の拮抗腱に接続された両方の拮抗伝達要素(21、22;23、24;25、26)を同時に作動させるステップを含み、ロックされた自由度のロック解除ステップは、ロック解除される自由度に関連する一対の拮抗腱に接続された拮抗伝達要素(21、22;23、24;25、26)の少なくとも一方を非作動にするステップを含む。
【0067】
一実施形態によれば、ロックされた自由度のロック解除ステップは、ロック解除される自由度に関連する一対の拮抗腱に接続された両方の拮抗伝達要素(21、22;23、24;25、26)を非作動とするステップを含む。
【0068】
一実施形態によれば、本方法は複数の時間サイクルを提供し、少なくとも2つの隣接する時間サイクルにおいて、高い調整力Fhighのそれぞれの値が増大する。
【0069】
一実施形態によれば、本方法は複数の時間サイクルを提供し、少なくとも2つの隣接する時間サイクルにおいて、高い調整力Fhighのそれぞれの値は一定のままである。
【0070】
本方法の一実施形態によれば、前述の少なくとも1つの腱31、32、33、34、35、36の各々は、引張負荷下で非弾性的に変形可能である。
【0071】
様々な可能な実施形態によれば、前述の少なくとも1つの腱は、複数の巻かれた/編み合わせたポリマ繊維を含み、すなわちポリマストランドである。
【0072】
次に、力印加の前述の時間サイクルを参照すると、手術器具20が複数の腱を含む場合、実施形態による方法は、それぞれの印加基準力Frefによって特徴付けられるそれぞれの応力パターン(または「ダイアグラム」)がそれぞれの腱に印加され、それぞれのサイクル数によって特徴付けられ、それぞれの持続時間および高低調整力の印加期間のシーケンスによって特徴付けられる。
【0073】
一実施形態によれば、複数の腱のうち少なくとも1つの腱の応力パターンは、他の腱の応力パターンと異なる。
【0074】
別の実施形態によれば、前述の調整力Frefの印加はすべての腱に対して同時に行われるわけではない。
【0075】
さらなる実施形態によれば、前述の調整力Frefの値は、少なくとも1つの腱上で、または異なる腱上で、または異なる対の拮抗腱上で異なる。これは、例えば、手術器具が異なる特徴を有する腱、例えば、他の腱よりも閉鎖が頑丈な腱を有し、これらの腱がより高い力で応力を受けることができる場合などに適用される。
【0076】
別の実施形態によれば、前述の応力パターンはすべての腱で同じである。
【0077】
本方法の一実施形態によれば、前述の調整力Frefの印加はすべての腱に対して同時に行われる。
【0078】
一実施形態によれば、調整力Frefの値はすべての腱で同じである。
【0079】
上述したことから明らかなように、本方法は、すべての腱に対して一様な方法で、あるいは各腱に対して、あるいは任意の腱のサブセットに対して、異なる個別の方法で、時間サイクル(数と持続時間の点から)と腱への力の印加の値とモーメントを管理するための多くの可能性を含んでいる。
【0080】
このような応力パターンと時間サイクルのいくつかの実施形態を図14-17に示す。
【0081】
可能な動作モードによれば、例えば図14に図式的に示すように、高い調整力Fhighは、全ての腱に同時に加えられるのではなく、例えば高い調整力Fhighは、最初に、時間Taにおいて、それぞれの伝達要素24によって一対の拮抗腱34に加えられ、次に、時間Tbにおいて、それぞれの伝達要素24によって同じ対の他方の拮抗腱35に加えられる。
【0082】
その結果、一対の拮抗腱には、同じ応力パターンをかけることができるが、異なる、および時間的にステップに依存した(temporally step-dependent)応力パターンをかけることもできる。
【0083】
また、拮抗している各対の腱に同時に高い調整力Fhighを加えることも可能であるが、特定の対ごとに異なるタイミングで行う。
【0084】
一実施形態によれば、応力パターンはすべて異なる時間に腱に適用され、例えば、腱に連続して適用されるが、このような場合、調整は一度に1つの腱のみに対して順に行われる。
【0085】
可能な動作モードによれば、例えば図15に図式的に示すように、高い調整力Fhighの値は、少なくとも1つの腱上で、または異なる腱上で、または異なる対の拮抗腱上で、開閉の自由度G(または「グリップ」G)の作動に関与する腱、例えば33、34、35、36は、腱31、32に対して高い調整力Fhighと低い調整力Flowの値で、および/または高い調整力と低い調整力Fhigh-Flowの間のより大きな可動域(excursion)で調整することができる。
【0086】
可能な動作モードによれば、異なる高い調整力Fhighおよび/または低い調整力Flowの値が、拮抗腱の対に適用される。
【0087】
高い調整力Fhighおよび/または低い調整力Flowの値は、機械的特性および/または幾何学的特性に基づいて、ならびに応力をかけるべき腱の材料に基づいて選択することができる。例えば、直径のより大きい腱は、より大きな調整力で応力をかけられることができる。
【0088】
可能な動作モードによれば、調整力の適用パターンは、1つの腱と別の腱の間、または一対の拮抗腱と別の対の間で変わり得る。
【0089】
例えば図16に示すように、可能な操作モードによれば、一対の拮抗腱(グラフa)は、別の対の拮抗腱(グラフb)に対して、より大きなサイクル数Nで応力をかけられることができる。
【0090】
可能な動作モードによれば、例えば図17に示すように、一対の拮抗腱(図では実線)は、別の対の拮抗腱(図では破線)がT22より小さい持続時間T’22を有する2つの負荷サイクルで応力を受けた持続時間T22の間、高い調整力Fhighで実質的に一定のままである力値で、比較的長い持続時間T22応力を受け得る。動作モードによれば、上昇時間T21と下降時間T12は、1つの腱と別の腱の間、または一対の腱と別の対の腱の間で変わり得る。
【0091】
既に上述したように、いくつかの好ましい実施形態において、前述の低い調整力Flowおよび高い調整力Fhighの値は、それぞれの腱の物理的特徴および/またはそれぞれの伝達要素および/またはエンドエフェクタ40との腱の取り付けモードに関連する器具の構造的特徴に依存する。
【0092】
このことは、例えば、腱がポリマであり、そのため時間の経過とともに変形(特に短縮)する傾向がある場合に当てはまり、そのため、腱に変形する時間を与えないように、使用直前に(本発明の方法で想定されるような)予備調整を行うことが適切かつ有利である。
【0093】
再び時間サイクルを参照すると、方法の一実施形態(例えば図13に示す)によれば、少なくとも1つの低負荷期間の各々は、第1の持続時間T1を有し、第1の保持持続時間T12を有する第1の保持サブステップを含み、その間に、低調整力Flowに対応する第1の力値が印加される。
【0094】
同様に、少なくとも1つの高負荷期間の各々は、第2の持続時間T2を有し、前述の高調整力Fhighに対応する第2の力値が印加される第2の保持持続時間T22を有する第2の保持サブステップを備える。
【0095】
この方法の一実施形態によれば、連続する低負荷期間と高負荷期間との間の交替を決定するように、複数のN個の時間サイクルが提供され、n番目のサイクルの低負荷期間中にそれぞれの低調整力Flow_nが印加され、n番目のサイクルの高負荷期間中にそれぞれの高調整力Fhigh_nが印加される。
【0096】
一実施形態によれば、異なる時間サイクルの前述の低い調整力Flow_nは、同じ所定の値の低い調整力Flowに対応し、前述の高い調整力Fhigh_nは、最大の高い調整力値Fhigh_maxに達するまで、徐々に増加する高い調整力値Fhighに対応する。
【0097】
実施形態によれば、n番目の時間サイクルの高い調整力値は以下の式に従って計算される。
【0098】
【数1】
【0099】
ここで、nは現在のサイクル、Nは力Fhighが増加しているサイクルの総数(Nは図10の変数 「Raise_Cycles」で表される)、NcはFhighが一定のときのサイクル数(Ncは図10の変数 「Hold_Cycles」で表される)、Fhigh_maxは設定可能な値である。
【0100】
このような場合、高い調整力値Fhighは、上式に従って、まず一定刻みで増加し、その後一定値となる。
【0101】
図10のフロー図は、n番目のサイクルにおいて、どのように加えられる力、ひいては応力パターンが計算されるかの例を詳細に示している。
【0102】
別の可能な動作モードによれば、例えば図11の図によって示されるように、高い調整力値Fhighは、次の式に従って、各サイクルについて常に一定の増分で増加する。
【0103】
【数2】
【0104】
ここで、nは現在のサイクル、Nは総サイクル数、Fhigh_maxは設定可能な値である。
【0105】
図11のフロー図は、n番目のサイクルにおいて、どのように、加えられる力、ひいては応力パターンが計算されるかの別の例を詳細に示している。
【0106】
他の実施形態によれば、高い調整力値Fhighの増分は、各サイクルで一定でなくてもよい。
【0107】
特定の実施形態によれば、すべての時間サイクルは互いに等しく、各時間サイクルの高い調整力Fhigh_nは前述の最大の高力値(Fhigh_max)に対応する。
【0108】
別の実施形態によれば、本方法は、前述の第1の持続時間T1が前述の第2の持続時間T2の少なくとも5倍である少なくとも1つの時間サイクルを含む。
【0109】
別の実施形態によれば、本方法は、前述の第1の持続時間T1が前述の第2の持続時間T2の少なくとも5倍である1つの時間サイクルのみを含む。
【0110】
本方法の一実施形態によれば、前述の第1の持続時間T1は、第1の保持持続時間T12を有する第1の保持サブステップに加えて、第1のランプ(ramp)持続時間T11を有する第1のランプサブステップを含み、第1の保持持続時間T12と第1のランプ持続時間T11との和が第1の持続時間T1に対応するようになっている。
【0111】
同様に、前述の第2の持続時間T2は、第2の保持持続時間T22を有する第2の保持サブステップに加えて、第2のランプ持続時間T21を有する第2のランプサブステップを含み、第2の保持持続時間T22と第2のランプ持続時間T21との合計が第2の持続時間T2に対応するようになっている。
【0112】
一実施形態によれば、前述の第1の保持持続時間T12は、第1のランプ持続時間T11よりも長く、前述の第2の保持持続時間T22は、第2のランプ持続時間T21よりも長い。言い換えれば、保持時間は上昇時間および下降時間よりも長い。
【0113】
本方法の一実施形態によれば、前述の第1の持続時間T1は0.2秒から30.0秒の範囲内にあり、前述の第2の持続時間T2は0.2秒から5.0秒の範囲内にある。
【0114】
一実施形態によれば、好ましくは、第1の持続時間T1は1.0秒から3.0秒の範囲内であり、第2の持続時間T2は1.0秒から3.0秒の範囲内である。
【0115】
一実施形態によれば、第1のランプ持続時間T11は0.2~10.0秒の範囲内であり、第2のランプ持続時間T21は0.2~2.0秒の範囲内である。
【0116】
一実施形態によれば、第1の保持時間T12は0.2~20.0秒の範囲内であり、第2の保持時間T22は0.2~3.0秒の範囲内である。
【0117】
本方法の一実施形態によれば、前述の低調整力Flowは0.2N~3.0Nの範囲内の値を有し、前述の高調整力Fhighは8.0N~50.0Nの範囲内の値を有する。
【0118】
一実施形態によれば、好ましくは、低調整力Flowは1.0N~3.0Nの範囲内の値を有し、高調整力Fhighは10.0N~20.0Nの範囲内の値を有する。
【0119】
本方法の一実施形態によれば、前述の時間サイクル数Nは1~30の範囲内である。
【0120】
一実施形態によれば、好ましくは、前述の時間サイクル数Nは1~15の範囲内、または10未満である。
【0121】
より好ましくは、特定の実施形態によれば、時間サイクルの数Nは3から8の範囲内である。
【0122】
一実施形態によれば、低い調整力Flowは異なるサイクルで変化し、好ましくは高い調整力Fhighの上昇とともに上昇する。
【0123】
例えば図20に示すように、本方法の一実施形態によれば、低調整力Flowと高調整力Fhighとの差ΔFは、高調整力Fhighが増大する負荷サイクル中および負荷解除サイクル中も一定のままである。言い換えれば、高い調整力Fhighと低い調整力Flowの両方が増加している。そのため、負荷サイクル中および負荷解除サイクル中に腱にかかる低い力Flowを増加させることで、腱が断裂するリスクを最小限に抑え、その結果、断裂の可能性を最小限に抑えることができる。さらに、それにより、連続するサイクルで増加している高い力レベルFhighに到達するのに必要なアクチュエータ制御の振幅(例えば、位置または力)は、低い調整力が一定のままである場合に比べて減少する。
【0124】
実施オプションにおいて、低調整力Flowは、高調整力Fhighが増大するのに比例して増大する。例えば、低調整力Flowは、高調整力Fhighよりも速く増大しない。あるいは、低い調整力Flowは、高い調整力Fhighよりも速く増大する。
【0125】
後続のサイクルで最小回復力が増大することで、腱が受ける低-高力の範囲が小さくなり、その結果、特に高速、すなわち高周波で実行した場合に破損を誘発する可能性のある力パルスの大きさが小さくなる。後続のサイクルで同じ力レベルに到達するために必要な位置指令(position command)の振幅は、プロセス実行時間と同様に減少することができる。
【0126】
本方法のさらなる実施形態を参照して、腱への調整力の適用を制御することに関する側面について以下に説明する。
【0127】
本方法の一実施形態によれば、前述の低調整力Flowの印加、すなわち低負荷期間は、伝達要素の第1のストローク/位置値p1に関連付けられ、前述の高調整力Fhighの印加、すなわち高負荷期間は、伝達要素の第2のストローク/位置値p2に関連付けられる。
【0128】
このような場合、本方法は、電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16、および、含まれる場合にはそれに関連する伝達要素21、22、23、24、25、26を、それぞれの応力パターンの状態に従って、電動アクチュエータおよび/または伝達要素が第1のストローク/位置値p1または第2のストローク/位置値p2に対応する位置にあるように、それぞれ制御するステップを含む。
【0129】
一実施形態によれば、前述の各応力パターンは、前述の第1および第2のストローク/位置値(p1、p2)に基づいて、フィードバックループ位置制御によって制御される。
【0130】
このような場合、電動アクチュエータは、ロボットシステムに含まれる制御手段9の制御下で動きを与えるために、それぞれの伝達要素に作動可能に接続されたモータを含む。
【0131】
調整力Fref及び/又は低い調整力Flow及び/又は高い調整力Fhighを加えるステップは、フィードバックループ制御によって力を加えるステップを含み、好ましくは、フィードバック信号は、電動アクチュエータ及び/又は伝達要素の検出された現在位置に関する情報を含み、及び/又はフィードバック信号は、電動アクチュエータ及び/又は伝達要素の予想された又は計算された現在位置に関する情報を含む。
【0132】
一実施形態によれば、前述の各応力パターンは、(この場合、フィードバックループ、または力または位置検出がない場合)予め定義されたステップ数に関連するオープンループを有する制御手段によって制御される。
【0133】
このように、上述の実施形態は、アクチュエータおよび/または伝達要素の位置制御に基づくフィードバック制御に基づいて動作する。
【0134】
本方法の別の実施形態によれば、前述の調整力の印加は、存在する場合、電動アクチュエータによって伝達要素、および/または腱に加えられる力自体の制御に基づくフィードバック制御に基づいて行われる。
【0135】
このような場合、ロボット手術システムは、存在する場合、少なくともいくつかの伝達要素21、22、23、24、25、26に動作可能に接続された力センサ17、18を含み、好ましくは、前述の力センサ17、18は、それぞれの電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16上に配置され、ロボットシステムは、前述の力センサ17、18に動作可能に接続された制御手段9をさらに含む。
【0136】
電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16は、制御手段の制御下で運動を付与するためのモータを含む。このような伝達要素が含まれる場合、電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16は、制御手段9の制御下で伝達要素21、22、23、24、25、26に動きを与えるために、それぞれの伝達要素に作動可能に接続されたモータを含む。
【0137】
調整力Frefおよび/または低調整力Flowおよび/または高調整力Fhighを加えるステップは、フィードバックループ制御によって力を加えるステップを含み、好ましくは、フィードバック信号は、それぞれの力センサ17、18によって実際に検出された加えられた力に関する情報を含む。
【0138】
一実施形態によれば、ロボット手術システムは、1つ以上の伝達要素21、22、23、24、25、26の上流、すなわちロボットマニピュレータの電動アクチュエータのセンサと手術器具のそれぞれの伝達要素との間に、無菌バリア(例えばプラスチックシート)19を備える。
【0139】
一実施形態によれば、前述の力センサ17、18は、電動アクチュエータのいくつか、好ましくは全てに配置されたそれぞれのロードセル17、18を含む。
【0140】
本方法の一実施例によれば、例えば電動アクチュエータの現在位置の情報および/または力センサ17、18によって検出された情報に基づく出力制御(「チェック」)が提供される。例えば、電動アクチュエータの1つの作動方向のストロークが安全閾値を超えた場合、システムは、例えば、前述の調整力の印加中にアクチュエータストローク終端に到達すること、および、それぞれの伝達要素が含まれる場合には、それを回避することを目的とした故障状態を認識することができる。
【0141】
一実施形態によれば、調整方法は、調整と遠隔操作の間に腱が弛緩するのを防ぐために、遠隔操作ステップの直前に行うのが好ましく、また、器具をロボットマニピュレータに取り付け、ロボットマニピュレータに係合させた後に行うのが好ましい。
【0142】
実施例によれば、調整方法は、手術器具を特徴付け(characterize)または診断するため、すなわち、ロボットが特定の器具から器具の状態および/または器具の履歴および/または予想される操作時間および/または器具の種類に関する情報を検出できるようにするために使用される。
【0143】
再び図1~20を参照して、手術器具20、少なくとも1つの電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16、および制御ユニットを含むロボット手術システム1を以下に説明する。
【0144】
前述の手術器具20は、少なくとも1つの自由度P、Y、Gを有する関節式エンドエフェクタ40を含み、さらに、それぞれの電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16と作動可能に接続可能な少なくとも1つの腱31、32、33、34、35、36を含む。
【0145】
少なくとも1つの腱は、それぞれの電動アクチュエータと、エンドエフェクタ40の前述の少なくとも1つの自由度P、Y、Gの少なくとも1つの自由度との両方に動作可能に接続されるように、手術器具20に取り付けられている。このような少なくとも1つの自由度P、Y、Gは、それに作動可能に接続された少なくとも1つの腱(31、32、33、34、35、36)によって、前述の少なくとも1つのそれぞれの電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16の動作によって機械的に作動するように適合されている。
【0146】
ロボット手術システムの制御ユニットは、以下の動作の実行を制御するように構成されている:
(i)エンドエフェクタ40の前述の少なくとも1つの自由度P、Y、Gをロックするステップ;
(ii)少なくとも1つのロックされた自由度に作動的に接続されたそれぞれの少なくとも1つの腱に、少なくとも1つの時間サイクルに従って、引張負荷をかけられるそれぞれの少なくとも1つの腱に調整力(Fref)を加えることによって、それぞれの少なくとも1つの腱に引張応力を加えるステップ。
【0147】
前述の少なくとも1つの時間サイクルは、それぞれの腱に低い調整力Flowが加えられ、それぞれの腱に低い引張負荷がもたらされる少なくとも1つの低負荷期間と、それぞれの腱に高い調整力Fhighが加えられ、それぞれの腱に高い引張負荷がもたらされる少なくとも1つの高負荷期間とを含む。
【0148】
一実施形態によれば、手術器具20は、それぞれの少なくとも1つの腱31、32、33、34、35、36に動作可能に接続され、それぞれの電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16に動作可能に接続された少なくとも1つの伝達要素21、22、23、24、25、26をさらに含む。
【0149】
一実施形態によれば、前述の少なくとも1つの伝達要素は剛性要素であり、前述の少なくとも1つの腱は引張負荷下で変形可能である。
【0150】
一実施形態によれば、ロボット手術システム1は、伝達要素とそれぞれの電動アクチュエータとの間に介在した無菌バリアをさらに備える。
【0151】
システムの一実施形態によれば、手術器具の少なくとも1つの腱31、32、33、34、35、36とそれぞれの少なくとも1つの電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16との間の操作接続は、着脱可能な単側拘束連結によって決定される。
【0152】
一実施形態によれば、ロボット手術システム1は、関節式エンドエフェクタ40に取り付けられ、関節式エンドエフェクタ40の前述の少なくとも1つの自由度のうちの1つ以上を正確かつ所定の構成/姿勢でロックするように構成された拘束要素37をさらに備える。
【0153】
システムの一実施形態によれば、前述の少なくとも1つの腱31、32、33、34、35、36は、複数の巻かれた/編み合わせたポリマ繊維を含むか、またはポリマストランドである。
【0154】
システム1の様々な可能な実施形態によれば、制御ユニットは、先に例示した方法の実施形態のいずれかに従って手術器具を調整する方法を実行するようにロボットシステムを制御するように構成されている。
【0155】
再び図1~20を参照すると、本発明の方法が適用される手術器具のさらなる図が以下に提供され、方法自体のさらなる理解に役立つとともに、非限定的な例として、方法のいくつかの実施形態に関するさらなる詳細が提供される。
【0156】
既に観察したように、本方法の一実施形態によれば、調整手順は、前述の少なくとも1つの腱31、32、33、34、35、36に関連する手術器具20の伝達要素21、22、23、24、25、26に低力値(Flow)と高力値(Fhigh)とを交互に加えることによって、手術器具20の少なくとも1つの腱31、32、33、34、35、36に低力値(Flow)と高力値(Fhigh)とを交互に加える。上述のように、電動アクチュエータは、腱に直接作用することも、伝達要素を介在させて間接的に作用することもできる。
【0157】
このような交互に低い(Flow)および高い(Fhigh)力値は、少なくとも1つの電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16によって、前述の少なくとも1つの伝達要素21、22、23、24、25、26に印加することができる。
【0158】
一実施形態によれば、少なくとも1つのアクチュエータ11、12、13、14、15、16はリニアアクチュエータである。
【0159】
一実施形態によれば、少なくとも1つの伝達要素21、22、23、24、25、26は、例えば図9に示すように、実質的に直線経路x-xに沿って移動するように適合されたピストンなどのリニア伝達要素である。
【0160】
別の実施形態によれば、少なくとも1つのアクチュエータは、ウインチなどの回転アクチュエータである。
【0161】
別の実施形態によれば、少なくとも1つの伝達要素は、カムおよび/またはプーリーなどの回転伝達要素である。
【0162】
したがって、腱31、32、33、34、35、36によって作動される自由度P、Y、G(P=ピッチ、Y=ヨー、G=グリップまたは開閉)、例えば手術器具20の回転関節が、以下の状態のうちの1つにあるときに、前述の交互の低い(Flow)力値および高い(Fhigh)力値を適用することができる:
(i)ストローク端にある、および/または、
(ii)拘束体37、例えば関節式エンドエフェクタ40に接しているキャップ37によって拘束されている。
【0163】
例えば図5および図6のシーケンスに図式的に示されているように、拘束体37(ここではシャフト27に沿って引き込み可能(retractable)に示されている)は、調整手順の実行を容易にするように、1つまたは複数の自由度(図示の例では、ピッチPの自由度がロックされている)をロックするために、関節式エンドエフェクタ40に取り付けることができる。
【0164】
実施例によれば、拘束体37は、関節式先端部40を所定の形状に一時的にロックするように配置されている。
【0165】
拘束体37は、手術器具20のシャフト27に沿って引き込み可能である。
【0166】
様々な可能な実施例によれば、拘束体37は、手術器具20のシャフト27に沿って引き込み可能でないプラグ37またはキャップ37とすることができ、例えば、関節式エンドエフェクタ40の自由端に対して遠位側に取り外すことができる。
【0167】
関節式エンドエフェクタ40は、好ましくは、複数の剛性要素(「リンク」41、42、43、44とも呼ばれる)を含む。
【0168】
このようなリンクの少なくともいくつか、例えば図12のリンク42、43、44は、一対の拮抗腱31、32;33、34;35、36に接続することができる。
【0169】
図12に描かれている実施形態に示されているように、一対の拮抗腱31、32をリンク42に機械的に連結して、そのようなリンク42をリンク41に対してピッチ軸Pを中心として動かすことができ、この場合、リンク41は手術器具20のシャフト27と一体的に示されている。別の一対の拮抗腱33、34をリンク43(ここでは自由端を有するように示されている)に機械的に連結して、前述のリンク43をリンク42に対してヨー軸Yを中心として動かすことができる。別の一対の拮抗腱35、36は、リンク44(ここでは自由端を有するように示されている)に機械的に連結されて、ヨー軸Yを中心としてリンク42に対して前述のリンク44を動かすことができる。ヨー軸Yを中心とするリンク43、44の適切な関節作動(joint activation)によって、開閉またはグリップGの自由度を決定することができる。
【0170】
当業者であれば、腱およびリンクの構成ならびに関節式エンドエフェクタ40の自由度は、本開示の範囲内にありながら、図12に示すものとは異なり得ることを理解するであろう。
【0171】
一実施形態によれば、3つの自由度(例えば、ピッチP、ヨーY、グリップGの前述の自由度)を作動させるように構成された、図に番号(31、32)、(33、34)、(35、36)の組で示された三対の拮抗腱がある。
【0172】
このような場合、手術器具20は、6つの伝達要素21、22、23、24、25、26(例えば図4に示すように6つのピストン)、すなわち、例えば三対の拮抗する電動アクチュエータ(11、12)(13、14)(15、16)と協働するように意図された三対の拮抗する伝達要素(21、22)、(23、24)、(25、26)を含んでもよい。図4に示す例では、それぞれの伝達要素(21、22)、(23、24)、(25、26)に接続された三対の拮抗腱(31、32)、(33、34)、(35、36)の腱の例示的な経路が破線で図式的に示されており、例えば図9に図式的に示すように、腱の経路は異なり、基準要素(reference elements)間に延びることができる。
【0173】
上記で既に示したように、少なくとも1つのアクチュエータと少なくとも1つの伝達要素との間に無菌バリア19を介在させることができ、例えば、プラスチックシートとして作られた無菌布や、布または不織布のような他の外科的に無菌の布材料が挙げられる。
【0174】
好ましい実施形態によれば、調整手順は、前述の一対の拮抗腱(31、32)、(33、34)、(35、36)にそれぞれ関連する一対の拮抗伝達要素に、および、好ましくは、前述の一対の拮抗腱(31、32)、(33、34)、(35、36)にそれぞれ関連する一対の拮抗伝達要素(21、22)、(23、24)、(25、26)に、低い(Flow)力値と高い(Fhigh)力値を交互に印加することにより、前述の一対の拮抗腱(31、32)、(33、34)、(35、36)に、低い(Flow)力値と高い(Fhigh)力値を交互に印加する。
【0175】
従って、前述の交互の低い(Flow)及び高い(Fhigh)力値は、手術器具20の腱31、32、33、34、35、36(例えば、ピッチ、ヨー、及び/又はグリップの回転関節)によって作動される自由度P、Y、Gが以下の条件のうちの1つであるときに適用され得る:
(i)ストローク終端であること、および/または、
(ii)手術器具20が、手術器具20のエンドエフェクタ40に接しているキャップ37のような拘束体37によって拘束されていること;
(iii)前述の一対の拮抗伝達要素(21、22)、(23、24)、(25、26)を同時に作動させること、すなわち、前述の一対の拮抗腱の両方の腱を同時に引張負荷下に置くこと。
【0176】
一実施形態によれば、調整手順は、6つの伝達要素21、22、23、24、25、26の各々および全てに、低いFlowおよび高いFhigh力値を周期的に交互に同時に加えることを含む。
【0177】
調整手順は、調整された腱がグリップの自由度Gを作動させるものである場合、グリップの点で最適な性能と同様に最高の精度を有するように調整された手術器具20でマスター-スレーブ遠隔操作を開始することを可能にすることに留意すべきである。これにより、操作状態にあるときにスレーブ手術器具20の関節先端40(またはエンドエフェクタ40)の現在位置を正確に制御できるようになる。
【0178】
電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16によって伝達要素21、22、23、24、25、26に加えられる力Frefは、それぞれの腱31、32、33、34、35、36に対する引張作用をもたらすが、それぞれの腱に対する引張作用は、引張作用の一部を消散させる塑性弾性伸張および/または弛緩挙動が生じ得るものの、力Frefと実質的に等しくなり得る。
【0179】
少なくとも1つの腱は、好ましくは非弾性的に変形可能であるが、弾性的に変形可能であることもできる。
【0180】
好ましい実施形態によれば、手術器具20の前述の少なくとも1つの腱、好ましくは全ての腱は、ポリマ材料で作られている。
【0181】
好ましくは、手術器具20の前述の少なくとも1つの腱、好ましくは全ての腱は、ポリマストランドを形成するように巻かれおよび/または編み合わせた複数のポリマ繊維を含む。
【0182】
一実施形態によれば、前述の少なくとも1つの腱は、複数の高分子量ポリエチレン繊維(HMWPE、UHMWPE)を含む。
【0183】
前述の少なくとも1本の腱は、複数のアラミド繊維、および/またはポリエステル、および/または液晶ポリマ(LCP)、および/またはPBO(Zylon(登録商標))、および/またはナイロン、および/または高分子量ポリエチレン、および/またはこれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0184】
一実施形態によれば、前述の少なくとも1つの腱は、金属ストランドのような金属材料で作られている。
【0185】
一実施形態によれば、前述の少なくとも1つの腱は、部分的に金属材料で、部分的にポリマ材料で作られている。例えば、前述の少なくとも1つの腱は、金属繊維とポリマ繊維の編み合わせによって形成することができる。
【0186】
一実施形態によれば、例えば少なくとも1つのロボットマニピュレータ10に動作可能に接続されたロボットシステム1の電子コントローラ9は、アクチュエータ11、12、13、14、15、16(例えば、モータピストン)の動きを監視するように構成されており、調整手順は、手術器具20のエンドエフェクタまたは関節先端部40の自由度が所定の構成であるとき、例えば、関節先端部のリンクが器具の正中線および/または各自由度の範囲の正中線r-rに沿って整列している構成にあるときに、アクチュエータをそれぞれの伝達要素に接触させることを含む。このような所定の状態は、関節式先端部40のリンクが伝達要素21、22、23、24、25、26のストロークx-xと整列しているときであり得る。
【0187】
調整手順は、少なくとも1つの腱によって作動される自由度が所定の既知の構成であることを必ずしも想定しておらず、構成は未知および/または任意のものでありうることに留意すべきである。
【0188】
一実施形態によれば、調整手順は、以下の条件を検証する:
- 条件A) 手術器具20がロボットプラットフォーム上に正しく係合している(例えば、ロボットマニピュレータ10の所定のポケット28に収容されており、このロボットマニピュレータは前述の電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16を含む);
- 条件B) プラグ37またはキャップ37または拘束体37が、腱31、32、33、34、35、36が張った状態、すなわち引張負荷がかかった状態であっても、手術器具20のエンドエフェクタまたは関節先端部40に当接して配置され、エンドエフェクタ40の関節をロックする;
- 条件C) 電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16が、例えば無菌バリア19を介して、腱および/またはそれぞれの伝達要素21、22、23、24、25、26と接触している。
【0189】
このような条件C)において表現されている接触は、接触力を検出することによって確認および/または検出することができる。
【0190】
既に上述した実施形態によれば、接触力は、電動アクチュエータ11、12、13、14、15、16のそれぞれに関連する1つ以上のロードセル17、18(または1つ以上の他の力センサ17、18)によって検出される。
【0191】
他の異なる可能な実装オプションによれば、条件C)は、例えば静電容量式などの近接センサによって、または、戻り起電力(return electromotive force)の測定によって、または、BEMFなどの他の形態の接触感知によって得ることができる。
【0192】
条件A)は、接触力を検出することで確認/検出できる。
【0193】
一実施形態によれば、スレーブロボットシステム2は、好ましくは少なくとも1つのロボットマニピュレータ10に属する力センサ17、18を備えたアクチュエータを含む。
【0194】
一実施形態によれば、ロボットシステムはマイクロ手術用遠隔操作用ロボットシステムであり、手術器具はマイクロ手術器具である。
【0195】
示されたように、先に示した本発明の目的は、上記に詳細に開示した特徴により、上述の方法によって完全に達成される。
【0196】
提案された解決策により、手術器具の自由度を作動させるための少なくとも1つの腱からの回復可能な伸びをなくすか、少なくとも最小にすることができ、腱が形成される材料とは無関係に、腱に加えられる作動作用の正確な伝達を得ることができる。
【0197】
提案された解決策により、手術器具の自由度を作動させるために、少なくとも1つの腱から、繊維の固有構造に起因して回復不可能な永久的な伸長(伸び)を排除するか、少なくとも最小限に抑えることが可能であり、腱が巻かれたおよび/または編み合わせたポリマ繊維によって形成されている場合であっても、腱に加えられる作動の作用の正確な伝達を得ることが可能である。
【0198】
提案された解決策により、遠隔操作のステップを開始する前、およびロボット手術の手術器具に腱を装着した後に、腱の挙動を安定させ、それにより腱の長さを安定させることができる。
【0199】
提案された解決策により、遠隔操作中のマスターとスレーブ間の運動学的対応の精度が向上する。
【0200】
提案された解決策により、使用状態における腱の望ましくない伸長/短縮による動きの損失は回避されるか、少なくとも最小限に抑えられる。
【0201】
提案された解決策により、手術器具の物理的特徴の十分な安定化が提供される。
【0202】
提案された解決策により、手術器具の自由度の制御が改善される。
【0203】
提案された解決策により、手術器具に装着する前に腱を予備調整する必要性が回避され、手術器具がロボットプラットフォームに接続された状態で遠隔操作ステップを実行する直前に腱の調整を実行することが可能になり、手術器具の自由度に対する制御の精度と正確性がさらに向上する。
【0204】
低負荷の印加と高負荷の印加を繰り返す調整サイクルを設けることで、一定の高負荷を印加するよりも腱の調整を早くすることができる。
【0205】
隣接する調整サイクル中に印加される高負荷Fhighが増大するという事実により、これにより、その残留可塑性を有する編み合わせが腱に過度の応力を与えて直ちに最大負荷に到達させることなく、その代わりに、段階的に最大応力に到達させることができ、その結果、異なる増大負荷レベルで落ち着く(settle)ことにより可塑性を除去することができ、構造的損傷または破損を回避することができる。上記は、マルチコンポーネント腱-手術器具-電動アクチュエータ製品の残留可塑性を考慮しても適用される。
【0206】
さらに、ステップを増やすことで、最大力で等しい数のサイクルに関して、同じか同等の塑性回復レベル(変形)に達することができるが、短時間の場合は、最初のサイクルではより小さなレベルFhighに達すればよいため、異なる。
【0207】
隣接する調整サイクル中に加えられる低負荷Flowが実質的に一定で、腱-伝達-アクチュエータシステムの静止摩擦よりも大きいままであるという事実により、これにより腱の塑性回復を回避することができる。特に、編み合わせポリマ製腱は、その編み合わせ構成と、通常、軽質または高精度の下で繊維を交差させる製造方法とにより、特に引張負荷がかかっていない場合には、さらなる可塑性と、純粋な構造的弾性を有しており、その性質は、材料や繊維そのものに由来するのではなく、かわりにそのような繊維がどのように構成され(コアとジャケット)、どのように角度がつけられ(「編み合わせ角度」と「ピック・パー・インチ-ppi」)、どのように切られ、あるいは結合され(ダブルまたはシングル)、どのように本数が多く(n本)、どのような大きさ(dtex)であるかに由来するものである。従って、繊維に負荷や引張負荷がかかっていないとき、あるいは特に繊維に最小限の力Flowさえかかっていないとき、そのような繊維は、製造方法および編み合わせの関数として、特徴的な時定数で回復し、その可塑性は、一緒に編み合わせた繊維の相対的な再配列に由来する。このような時定数はまた、非常に速くなり得るので、本発明では、このような可塑性の回復を回避するような力Flowを不安定なステップでも維持することが提案される。
【0208】
提案された解決策により、医療または外科の遠隔操作の準備として、手術器具のポリマ作動腱を調整するための手順を実行することが可能であり、この手順には、実質的に衝撃的であるか、またはいずれにしても持続時間が短い高負荷Fhighの周期的な印加が含まれ、次いで、高負荷Fhighの印加持続時間よりも長い比較的長い持続時間、保持負荷Fholdが作動腱に印加される保持手順が含まれる。
【0209】
偶発的なニーズを満たすために、当業者は、以下の特許請求の範囲から逸脱することなく、上述の方法の実施形態に変更および適合を加えることができ、または機能的に同等である他の要素と置き換えることができる。可能な実施形態に属するものとして上述した全ての特徴は、上述した他の実施形態から独立して実施することができる。
【符号の説明】
【0210】
1 遠隔操作手術用ロボットシステム
2 ロボットシステムのスレーブアセンブリ
3 マスターコンソール
9 コントローラ、すなわちコンソールユニット
10 ロボットシステムのマニピュレータ
11、12、13、14、15、16 電動アクチュエータ
17、18 力センサ、またはロードセル
19 無菌バリア
20 手術器具
21、22、23、24、25、26 手術器具伝達要素
27 シャフトまたはロッド
28 ポケット
29 手術器具バックエンド、または手術器具伝達インタフェース部
31、32、33、34、35、36 腱
37 拘束体、またはプラグ、またはキャップ
40 関節先端部、または手術器具の関節式エンドエフェクタ装置
41、42、43、44 関節式エンドエフェクタのリンク
x-x 直線方向
r-r 中心線
P、Y、G 関節先端部の自由度、(ピッチ、ヨー、グリップ)
Fref 負荷力
Flow 低力値、低調整力、低力
Fhigh 高力値、高調整力、高力
Fhold 保持力値
n サイクル数カウンタ
N 総サイクル数
t 変数「時間」
T 応力パターン総時間
Raise_cycles 増大サイクル
Hold_cycles 保持サイクル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図8-2】
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16(a)】
図16(b)】
図17
図18
図19
図20
【国際調査報告】