(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】ポリエステル供給原料の段階的予備混合を含むポリエステル供給原料の解重合方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/24 20060101AFI20240621BHJP
【FI】
C08J11/24 ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577536
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2024-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2022065426
(87)【国際公開番号】W WO2022263235
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(71)【出願人】
【識別番号】508194892
【氏名又は名称】株式会社JEPLAN
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】アルーン ヤシン
(72)【発明者】
【氏名】チャラ シプリアン
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA22
4F401BA06
4F401CA22
4F401CA58
4F401CA67
4F401CA68
4F401CA75
4F401CB01
4F401CB18
4F401DA08
4F401DA12
4F401EA59
4F401EA60
4F401FA01Z
4F401FA06Z
4F401FA07Z
(57)【要約】
本発明は、ポリエステルフィラーを解重合するための方法であって、以下を含む方法に関する:a)フィラーを少なくとも部分的に溶融させるための手段および少なくとも1基のミキサをインプリメントすることによってフィラーをコンディション調整する工程;ミキサにフィラーとジオール流れを供給し、ジオール流対充填剤の重量比は0.01~6.00であり、各ミキサにおけるジオールの体積希釈レベルは3%~70%である;b)ポリエステルフィラーを150~300℃で解重合し、工程b)におけるジオール対ジエステルの重量比を0.3~8.0とする;c)場合による、60~250℃の温度および工程b)よりも低い圧力でジオールを分離する工程。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル供給原料の解重合のための方法であって、以下の工程を含む、方法:
a) コンディション調整工程;ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段と、ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段の下流に配置された少なくとも1基の静的または動的ミキサとを用いる;コンディション調整された供給原料流れを生じさせる、
コンディション調整工程a)を操作する際の温度は、200~300℃であり、ポリエステル供給原料とアルコール化合物を含んでいるアルコール流れとを少なくとも給送し、ポリエステル供給原料に関連するアルコール流れの重量比は、0.03~6.00であり、
ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段に、ポリエステル供給原料を少なくとも給送し、
各静的または動的ミキサに、アルコール流れの少なくとも一部と、ポリエステル流れとを給送し、アルコール化合物による容積希釈度は、3%~70%であり、アルコール化合物による容積希釈度は、考慮下の静的または動的ミキサに給送するアルコール流れの部分の容積流量と、アルコール流れの部分の容積流量および考慮下の静的または動的ミキサに給送するポリエステル流れの容積流量の合計との間の比であり、静的または動的ミキサに給送するポリエステル供給原料は、ポリエステル供給原料と、工程a)において考慮下の静的または動的ミキサの上流で導入されたアルコール流れの部分の全てとを含む、
b) 解重合の工程;工程a)から得られたコンディション調整済み供給原料流れを少なくとも給送し、操作する際の温度は、150℃~300℃であり、滞留時間は、0.1~10時間であり、工程b)に存在するアルコール化合物の全量と、コンディション調整済み供給原料流れ中に含有されるジエステルの量との間の重量比は、0.3~8.0である。
【請求項2】
工程a)において、ポリエステル供給原料に関連するアルコール流れの重量比は、0.05~5.00、優先的には0.10~4.00、好適には0.50~3.00である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルコール化合物は、モノアルコール、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、およびそれらの混合物から、優先的にはメタノールから選ばれるモノアルコール、またはジオール、例えば、エチレングリコールである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
コンディション調整工程a)では、1~5基の静的または動的ミキサ、好ましくは2~5基の静的または動的ミキサ、好適には2~4基の静的または動的ミキサが用いられ、前記静的または動的ミキサは相互に直列である、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
工程a)において用いられる各静的または動的ミキサにおいて、アルコール化合物による容積希釈度は、以下の通りである、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法:
- 考慮下の静的または動的ミキサに給送するポリエステル流れとアルコール流れの部分との間の粘度の比が3500以上、好ましくは3000以上である場合、3%~50%、好ましくは10%~35%、大いに好ましくは15%~30%、
- 考慮下の静的または動的ミキサに給送するポリエステル流れとアルコール流れの部分との間の粘度の比が3500未満、好ましくは3000未満である場合、10%~70%、好ましくは20%~65%、大いに好ましくは30%~65%、またはさらには35%~65%。
【請求項6】
コンディション調整工程a)を操作する際の温度は、250~290℃である、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段、好ましくは、押出機に、工程a)に給送するアルコール流れの部分も給送し、好ましくは前記手段に給送するアルコール流れの前記部分と前記手段に給送するポリエステル供給原料との間の重量比:0.001~0.100、好ましくは0.003~0.050、大いに好ましくは0.005~0.030とする、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段、好ましくは、押出機を操作する際の温度は、200~300℃、優先的には250~290℃である、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
各静的または動的ミキサを、200~300℃、優先的には250~290℃の温度、好ましくは0.5秒~20分、好ましくは1秒~5分、好適には3秒~1分の滞留時間で操作し、滞留時間を、静的または動的ミキサ内の液体の容積の、考慮下の静的または動的ミキサに給送するポリエステル流れおよびアルコール流れの部分の容積流量の合計に関する比として定義する、請求項1~8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
コンディション調整工程a)では、押出機と、その次の、直列に配置された2、3、または4基の静的または動的ミキサとが用いられ、押出機に、ポリエステル供給原料とアルコール流れの部分とを給送し、押出機に給送するアルコール流れの前記部分と、押出機に給送するポリエステル供給原料との間の重量比を0.001~0.100、好ましくは0.003~0.050、大いに好ましくは0.005~0.030になるようにし、アルコール流れの他の部分を、2、3または4個のアルコール化合物の部分流れに分割し、アルコール化合物の部分流れの数は、用いられる静的または動的ミキサの数に等しく、静的または動的ミキサのそれぞれに、ポリエステル流れとアルコール化合物の部分流れの1つとを給送し、各静的または動的ミキサにおいて、アルコール化合物による容積希釈度は、以下の通りである、請求項1~9のいずれか1つに記載の方法:
- 考慮下の静的または動的ミキサに給送するポリエステル流れとアルコール化合物の部分流れとの間の粘度の比が3500以上、好ましくは3000以上である場合、3%~50%、好ましくは10%~35%、大いに好ましくは15%~30%であり、または、
- 考慮下の静的または動的ミキサに給送するポリエステル流れとアルコール化合物の部分流れとの間の粘度の比が3500未満、好ましくは3000未満である場合、10%~70%、好ましくは20%~65%、大いに好ましくは30%~65%、若しくはさらには35%~65%。
【請求項11】
工程b)に存在するアルコール化合物の全量とコンディション調整済み供給原料流れ中に含有されるジエステルの量との間の重量比は、1.0~7.0、好ましくは1.5~6.0である、請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
解重合工程b)を操作する際の温度は、180~290℃、好ましくは210~270℃である、請求項1~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
アルコール流出物およびジエステルモノマー流出物を生じさせるための分離工程c)を含み、
工程c)に、工程b)から得られた反応流出物を少なくとも給送し、
工程c)を操作する際の温度は、60~250℃であり、その際の圧力は、工程b)の圧力よりも低く、
工程c)は、1~5個の連続する気体-液体分離セクション、好ましくは2~5個の連続する気体-液体分離セクションを用い、各気体-液体分離セクションは、液相および気相を生じさせ、先行する気体-液体分離セクションからの液相は、後続の気体-液体分離セクションに給送し、最後の気体-液体分離セクションから得られた液相は、ジエステルモノマー流出物を構成し、気相の全部を回収してアルコール流出物を少なくとも部分的に構成する、請求項1~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
工程a)に給送するアルコール流れは、工程c)から得られたアルコール流出物の少なくとも一部である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ポリエステル供給原料は、ポリエチレンテレフタラート、有利には最低50重量%、好ましくは最低70重量%、好適には最低90重量%のポリエチレンテレフタラートを含む、請求項1~14のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル、好ましくはポリエチレンテレフタラート(polyethylene terephthalate:PET)を含んでいるポリエステルを解重合して、ジエステルモノマー流れ、より詳細にはビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(bis(2-hydroxyethyl) terephthalate:BHET)の流れを得る方法に関する。より詳細には、本発明は、ポリエステル供給原料、好ましくはPETを含んでいるポリエステル供給原料を解重合する方法であって、ポリエステル供給原料を、前記供給原料とアルコール流れとの段階的予備混合によってコンディション調整して、コンディション調整された、有利には均質な混合物の形態にあり、50mPa・s以下の粘度を示す供給原料を得た後に、これを解重合反応ユニットに送る特定の工程を含む、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタラート(PET)のケミカルリサイクルは、廃棄物の形態で回収されたポリエステルを、重合方法用の供給原料として再び用いられることが可能となるだろうモノマーに分解することを目的とした数多くの研究の対象となっている。
【0003】
数多くのポリエステルが収集・選別ネットワークから得られる。特に、ポリエステル、特にPETは、ポリエステルから構成される、ボトル、コンテナトレイ、フィルム、樹脂および/または繊維(例えばテキスタイル繊維、タイヤ繊維)の収集を起源とする場合がある。収集および選別のチャネルから得られるポリエステルは、リサイクル対象のポリエステルまたはPETと呼ばれる。
【0004】
リサイクル対象のPETは、4つの主要なカテゴリーに分類され得る:
- クリアPET:主として無色透明なPET(一般に最低60重量%)と、淡青色で透明なPETとからなり、顔料を含まず、かつ機械的リサイクル法において用いられてよい;
- 暗色または着色(緑色、赤色など)PET:一般に0.1重量%までの染料または顔料を含有することができるが、透明または半透明のままである;
- 不透明PET:相当量の顔料を、典型的には0.25重量%と5.0重量%との間で変動する含有量で含有し、ポリマーを不透明化する。不透明PETは、例えば、食品容器、例えば、牛乳ボトルの製造、化粧品、植物防疫薬または染料のボトルの組成物において用いられることが増えている;
- 多層PET:PET以外のポリマーの層若しくはリサイクルPETの層と、層の間のバージンPET(すなわち、リサイクルに供されていないPET)または例えばアルミニウムのフィルムとを含む。多層PETは、熱成形後に梱包材、例えばコンテナトレイの製造に用いられる。
【0005】
収集チャネルは、リサイクルチャネルに供給するものであり、この収集チャネルの構造は、国ごとに異なっている。それらは、流れの性質および量、並びに選別技術に応じて、廃棄物からアップグレードされるプラスチックの量を最大化するよう変化している。これらの流れをリサイクルするためのチャネルは、一般に、フレークの形態にコンディション調整する第1の工程からなり、この工程の間に、未処理の梱包材のベールは洗浄され、精製され、選別され、粉砕され、その後に、再度精製され、選別されて、一般に1質量%未満の「巨視的」不純物(ガラス、金属、他のプラスチック、木材、紙、ボール紙、無機要素)、優先的には0.2質量%未満、さらにより優先的には0.05質量%未満の「巨視的」不純物を含有しているフレークの流れを生じさせる。
【0006】
クリアPETフレークは、その後、押出-ろ過工程を経て、押出物を生じさせてよく、これらは、その後、バージンPETとの混合物として再使用されて、新たな製品(ボトル、繊維、フィルム)を生じさせることができる。真空下での固相重合(solid state polymerization;SSPの略称によって知られる)の工程が食品用途のために必要である。このタイプのリサイクルは、機械的リサイクルとして知られている。
【0007】
暗色(または着色)PETフレークも、機械的にリサイクルされ得る。しかしながら、着色流れから形成された押出物の着色により、用途は制限される:暗色PETは、一般的に、パッケージングストラップまたは繊維を製造するために用いられる。出口は、それ故に、クリアPETのものと比較してより制限される。
【0008】
リサイクル対象PET中の、顔料を高含有率で含有している不透明PETの存在は、リサイクル業者に問題を提示する。不透明PETは、リサイクルされるPETの機械的特性に悪影響を及ぼすからである。不透明PETは、今のところ、着色PETと共に収集され、着色PET流れ中に見出される。不透明PETについての用途の開発の点から見て、リサイクル対象の着色PETの流れ中の不透明PETの含有率は、今のところ、5~20重量%であり、さらに増大している傾向にあるところである。数年の期間内に、着色PET流れ中の不透明PETの含有率:20~30重量%超に達することが可能であるだろう。しかしながら、着色PET流れ中の不透明PET10~15%超で、リサイクルされるPETの機械的特性が悪影響を受けることが示され(参照:Impact du developpement du PET opaque blanc sur le recyclage des emballages en PET [白色不透明PETの増加がPETのパッケージングのリサイクルに及ぼす影響], preliminary report of COTREP of 5/12/13)、着色PETについてのチャネルの主要な出口である、繊維の形態でのリサイクルが防止される。
【0009】
染料は、天然のまたは合成の物質であり、ポリエステル材料中に特に可溶であり、それらが導入される材料を着色するために用いられる。 一般的に用いられる染料は、異なる性質を有し、しばしば、OおよびNのタイプのヘテロ原子および共役不飽和、例えば、キノン、メチンまたはアゾの基、または分子、例えば、ピラゾロンおよびキノフタロンを含有する。
【0010】
顔料は、微細分割された物質であり、ポリエステル材料中に特に不溶であり、それらが導入される材料を着色し、かつ/または不透明にするために用いられる。ポリエステル、特に、PETを着色し、かつ/または不透明にするために用いられる主要な顔料は、金属酸化物、例えば、TiO2、CoAl2O4またはFe2O3、ケイ酸塩、ポリスルフィドおよびカーボンブラックである。顔料は、一般的には0.1~10μm、主として0.4~0.8μmのサイズを有する粒子である。これらの顔料の完全な除去は、不透明PETをリサイクルすることを想定するために必要であるが、ろ過によるこれらの顔料の完全な除去が技術的に困難であるのは、それらが極めて高い閉塞容量を有するからである。
【0011】
着色および不透明のPETのリサイクルには、それ故に、極めて大きな問題がある。
【0012】
特許文献1には、着色PET、特に緑着色PETボトルの回収に由来するものグリコリシスによる解重合のための方法が記載されている。この方法によって処理される供給原料は、PETフレークの形態をとり、反応器において180~280℃の温度で数時間にわたってエチレングリコールと接触させられる。グリコリシス工程の終結の際に得られたBHETは、活性炭上で精製され、所定の染料、例えば、青色染料を分離除外し、続いて、残留染料、例えば黄色染料の抽出を、アルコールまたは水により行う。BHETは、抽出溶媒中で結晶化し、次いで、分離されて、重合方法において用いられるようにする。
【0013】
特許文献2において、消費後(post-consumer)PETは、異なるPET、例えば、クリアPETおよび着色PET、例えば、青色PET、緑色PETおよび/またはこはく色PETの混合物をフレークの形態で含み、このものは、エチレングリコールおよびアミン触媒の存在中、反応器において、150~250℃で、バッチ様式でグリコリシスにより解重合される。そこで得られたジエステルモノマーは、ろ過、イオン交換および/または活性炭上の通過によって精製された後に、結晶化され、ろ過によって回収される。
【0014】
特許文献3には、フレークの形態にあるPETからの精製したBHETの製造が記載されている。解重合工程は、水により洗浄することによって予め前処理された固体の形態にあるPETフレークを、エチレングリコールおよび触媒の存在中、撹拌型反応器において、残留水を除去する180℃、次いで、195~200℃でグリコリシスすることからなる。解重合の次に、冷却による反応流出物の予備精製、ろ過、吸着およびイオン交換樹脂上の処理の工程が行われ、この工程は、非常に重要であるとして提示され、グリコールの蒸発およびBHETの精製の前に行われる。予備精製により、その後の精製工程におけるBHETの再重合を防止することが可能となる。
【0015】
最後に、特許文献4には、不透明PET、特に0.1重量%~10重量%の顔料を含んでいるポリエステル供給原料を、エチレングリコールの存在中でグリコリシスにより解重合するための方法が記載されている。精製済みBHET流出物が、分離・精製の特定の工程の後に得られる。前記特許出願では、解重合反応を開始させる供給原料のコンディション調整の第1の工程において反応性押出の可能性が想定されている。
【0016】
本発明の目的は、ポリエステル供給原料のアルコリシスまたはグリコリシスによる解重合のこれらの方法、特に、特許文献4の方法を改善することにある。より詳細には、本発明の目的は、解重合工程の上流で、ポリエステル供給原料をコンディション調整し、これを、解重合剤としての少なくとも1つのアルコール流れと混合する段階を改善して、十分に低い粘度、特に50mPa・s以下の粘度を示す均質な流れを得るようにし、このために、特に反応の効率、必要な撹拌力、および操作コストの点で最適な反応工程(すなわち、解重合工程)を可能にすることにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0074136号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2015/0105532号明細書
【特許文献3】特許第3715812号
【特許文献4】仏国特許出願公開第3053691号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
(発明の概要)
本発明の目的は、それ故に、ポリエステル供給原料の解重合のための方法であって、以下の工程を含む、方法にある:
a) コンディション調整工程;ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段と、ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段の下流に配置された少なくとも1基の静的または動的なミキサとを用いる;コンディション調整された供給原料流れを生じさせる、
コンディション調整工程a)が操作される際の温度は、200~300℃であり、ポリエステル供給原料とアルコール化合物を含んでいるアルコール流れとを少なくとも給送され、ポリエステル供給原料に相対するアルコール流れの重量比は、0.03~6.00であり、
ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段は、ポリエステル供給原料を少なくとも給送され、
各静的または動的ミキサは、アルコール流れの少なくとも一部と、ポリエステル流れとを給送され、アルコール化合物による容積希釈度は、3%~70%であり、アルコール化合物による容積希釈度は、考慮下の静的または動的ミキサに給送するアルコール流れの部分の容積流量と、考慮下の静的または動的ミキサに給送するアルコール流れの部分の容積流量およびポリエステル流れの容積流量の合計との間の比であり、静的または動的ミキサに給送するポリエステル供給原料は、ポリエステル供給原料と、工程a)において考慮下の静的または動的ミキサの上流で導入されたアルコール流れの部分の全てとを含む、
b) 解重合の工程;工程a)から得られたコンディション調整済み供給原料流れを少なくとも給送され、操作される際の温度は、150~300℃であり、滞留時間は、0.1~10時間であり、工程b)に存在するアルコール化合物の全量と、コンディション調整済み供給原料流れ中に含有されるジエステルの量との間の重量比は、0.3~8.0である。
【0019】
本発明の1つの利点は、ポリエステル供給原料をコンディション調整する工程を改善して、ポリエステル供給原料の少なくとも1種の解重合剤、特にアルコール流れとの混合物の均質化を向上させ、コンディション調整セクションの出口のところで、粘度が有利には50mPa・s以下、好ましくは30mPa・s以下、大いに優先的には15mPa・s以下である均質なポリエステル-解重合剤混合物を得るこという利点にある。このような混合物は、そのため、反応セクションにおいて十分に低い有効粘度をもたらし、反応セクション、特にコンディション調整ユニットに直接的に接続された反応器において妥当な(すなわち限定された)撹拌力を用いることを可能にするという利点を有し、これにより、解重合方法の操作性が促進され、その実施に必要なコストが制限される。本発明による方法により、このように、供給原料の少なくとも1つのアルコール流れとの分散および均質化が促進され、それにより、反応セクションにおけるこの分散および均質化に必要とされる撹拌力を低減させながら、解重合反応の効率を向上させることが可能となる。
【0020】
本発明により、用いられる混合設備、特に反応セクションのストリッピングシステムによって課されるが、コンディション調整セクションにおいて用いられる設備、例えば、混合されるるべき流体の間の過度の粘度差を避けることが推奨される静的または動的ミキサによっても課される技術的制約を遵守しながら、ポリエステル供給原料を、ポリエステル、特にPETの解重合に必要とされる解重合剤、特にモノアルコールまたはジオールの少なくとも一部と効果的に予備混合することがこのように可能となる。典型的には、静的ミキサは、最大1000(すなわち、1000以下)までに及ぶ前記流体の間の粘度比を有する流体を混合するために用いられる。しかしながら、本発明により、溶融状態での粘度が、典型的には300~800Pa・sである、PETを含んでいるポリエステル供給原料を、混合が行われる際の温度の範囲内で1~0.1mPa・sで変動する粘度を有している、アルコール流れ、特に、メタノールの流れまたはエチレングリコールの流れと効果的に混合することが可能となり、すなわち、これらの2種の流体の間の粘度の比は、約1×105~1×106の範囲内にあり、これは、非常に高く、静的または動的ミキサの技術的制約との適合可能性が通常ほとんどない。
【0021】
最後に、本発明の1つの利点は、顔料、染料および他のポリマー、例えば、淡青、不透明および多層のPETを含むことが増えている任意のタイプのポリエステル廃棄物を処理することができることにある。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(図面のリスト)
図1は、本発明による方法の1つの特定の実施形態を表しており、エチレングリコールの存在中でのグリコリシスによる解重合を実施し、以下を含んでいる:
工程(a):ポリエステル供給原料(1)、好ましくはPETを含んでいるポリエステル供給原料(1)をコンディション調整する:ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させて少なくとも部分的に溶融したポリエステル供給原料(1
*)を得るための手段(A)と、4基の直列の静的ミキサ(M1)、(M2)、(M3)、(M4)とを用い、各ミキサは、それぞれに、エチレングルコール流れ(11)の部分(2)、(4)、(6)および(8)を給送され、各ミキサは、それぞれのポリエステル流れ(3)、(5)、(7)および(9)を生じさせ、少なくとも部分的に溶融した、ポリエステル供給原料(1)を含んでおり、すでに導入されたエチレングリコール流れの1つまたは複数の部分と混合される;
解重合工程(b):コンディション調整工程a)から得られたコンディション調整済み供給原料(9)と、ジオール流出物(12)とを給送される;および
工程(c):ジオール流れ(10)と、ジエステルモノマー流れ(13)と、BHET流れ出物とを分離することを可能にし、ジオール流れ(10)は、精製され、外部ジオール流れ(14)と混合され得て、その後に、コンディション調整(a)および解重合(b)の工程にリサイクルされる。
【0023】
図2は、本発明による方法の別の特定の実施形態を表し、エチレングリコールの存在中でのグリコリシスによる解重合を実施し、以下の工程を含んでいる:
ポリエステル供給原料(1)、好ましくはPETを含んでいるポリエステル供給原料(1)のコンディション調整の工程(a);押出機(A)とそれに続く2基の直列の静的ミキサ(M1)、(M2)とを用いる;押出機(A)は、ポリエステル供給原料(1)と、エチレングリコール流れ(11)の部分(2)とを給送され、混合物(3)を生じさせ、静的ミキサ(M1)、(M2)は、それぞれ、エチレングリコール流れ(11)の部分(4)および(6)を給送され、それぞれ、それぞれのポリエステル流れ(5)および(7)を生じさせ、これらは、少なくとも部分的に溶融したポリエステル供給原料(1)を含んでおり、すでに導入されているエチレングリコール流れの1つまたは複数の部分と混合される;
解重合工程(b);コンディション調整工程a)から得られたコンディション調整済み供給原料(7)と、ジオール流出物(12)とを給送される;および
工程(c);ジオール流れ(10)と、ジエステルモノマー流れ(13)と、BHET流れ出物とを分離することを可能にする;ジオール流れ(10)は、精製され、外部のジオール流れ(14)と混合されることができ、その後に、コンディション調整(a)および解重合(b)の工程にリサイクルされる。
【0024】
(実施形態の説明)
本発明によると、ポリエステルテレフタラートまたはポリ(エチレンテレフタラート)は、簡単にPETとも呼ばれるものであり、下記式の基本繰り返し単位を有している。
【0025】
【0026】
慣習的に、PETは、テレフタル酸(PTA)またはテレフタル酸ジメチル(DMT)のエチレングリコールとの重縮合によって得られる。
【0027】
以降の本明細書において、表現「前記ポリエステル供給原料中のジエステルのモル当たり」は、ポリエステル供給原料中の-[O-CO-O-(C6H4)-CO-O-CH2-CH2]-ユニットのモル数に対応し、これは、特に、PTAとエチレングリコールの反応から得られたジエステルユニットである。
【0028】
本発明によると、用語「モノマー」または「ジエステルモノマー」あるいはほかに「ジエステル」は、有利には、ポリエステルポリマーの繰り返し単位を指す。
【0029】
本発明の好適な実施形態によると、「モノマー」または「ジエステルモノマー」あるいはほかに用語「ジエステル」は、ジカルボン酸、好ましくはジカルボン酸、優先的にはテレフタル酸と、ジオール、好ましくは2~12個の炭素原子、優先的には2~4個の炭素原子を含んでいるジオール(好適なジオールは、エチレングリコールである)とのジエステルとして定義される。この実施形態によると、用語「モノマー」または「ジエステルモノマー」は、好ましくは、化学式HOC2H4-CO2-(C6H4)-CO2-C2H4OHのビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を指し、式中、-(C6H4)-は、芳香環を示し、これは、特に、PTAとエチレングリコールとの反応から得られるジエステルユニットである。
【0030】
本発明の別の実施形態によると、用語「モノマー」または「ジエステルモノマー」は、ジカルボン酸のジエステル、好ましくはジカルボン酸、優先的にはテレフタル酸と、モノアルコール、好ましくは1~10個の炭素原子、優先的には1~3個の炭素原子を含んでいるモノアルコール、好適にはメタノール、エタノール、プロパノール、またはそれらの混合物とのジエステルを定義してよい。この実施形態によると、用語「モノマー」または「ジエステルモノマー」は、大いに好ましくは、化学式CH3-CO2-(C6H4)-CO2-CH3(式中、-(C6H4)-は、芳香族環を表す)のテレフタル酸ジメチル(dimethyl terephthalate:DMT)を指す。
【0031】
用語「オリゴマー」は、典型的には、小サイズのポリマーであって、一般的には、2~20個の基本繰り返し単位、例えば、2~5個の基本繰り返し単位からなるものを指す。好ましくは、用語「エステルオリゴマー」または「BHETオリゴマー」は、テレフタラートエステルオリゴマーであって、2~20個、好ましくは2~5個の、式-[O-CO-(C6H4)-CO-O-C2H4]-の基本繰り返し単位を含んでいるものを指し、-(C6H4)-は、芳香環である。
【0032】
本発明によると、用語「モノアルコール」は、単一の水酸基-OHを含み、かつ好ましくは1~10個の炭素原子、優先的には1~3個の炭素原子を含んでいる化合物を指す。好ましくは、モノアルコールは、メタノール、エタノール、プロパノールおよびそれらの混合物から選ばれ、好適なモノアルコールは、メタノールである。
【0033】
本発明によると、用語「ジオール」および「グリコール」は、区別なく用いられ、2個の水酸基-OHを含んでおり、かつ、好ましくは、2~12個の炭素原子、優先的には2~4個の炭素原子を含んでいる化合物に対応する。好適なジオールは、エチレングリコールであり、これは、モノエチレングリコールまたはMEGとも称される。
【0034】
本発明によると、用語「アルコール化合物」は、上記定義のモノアルコールまたはジオールを指す。アルコール化合物は、有利には、ポリエステル供給原料のアルコリシスまたはグリコリシスによる解重合に必要とされる解重合剤である。大いに好適な実施形態によると、アルコール化合物は、2~12個の炭素原子、優先的には2~4個の炭素原子を含んでいるジオールであり、大いに優先的にはエチレングリコールである。本発明の別の実施形態によると、アルコール化合物は、好ましくは1~10個の炭素原子、優先的には1~3個の炭素原子を含み、好適にはメタノール、エタノール、プロパノールおよびそれらの混合物から選ばれるモノアルコールであり、好適なモノアルコールはメタノールである。
【0035】
本発明の方法の工程において用いられるアルコール流れは、アルコール化合物、有利には、前記定義のアルコール化合物を含み、好ましくはそれからなる。アルコール流れは、優先的には、最低95重量%のアルコール化合物、特に最低95重量%のモノアルコールまたはジオールを含む。大いに好ましくは、アルコール流れは、最低95重量%のエチレングリコールを含む。
【0036】
大いに好ましくは、アルコール化合物は、エチレングリコールであり、アルコール流れは、それ故に、ジオール流れ、より厳密にはエチレングリコール流れであり、標的ジエステルモノマーは、BHETである。
【0037】
用語「染料」は、ポリエステル材料に可溶であり、かつそれを着色するために用いられる物質を規定する。染料は、天然または合成の起源のものであり得る。
【0038】
本発明によると、用語「顔料」、より特定的には、不透明にするおよび/または着色する顔料は、微細分割された物質であって、ポリエステル材料中に特に不溶であるものを規定する。顔料は、固体粒子の形態にあり、一般的には0.1~10μm、優勢には0.4~0.8μmのサイズを有している。それらは、しばしば、無機の性質のものである。一般的に用いられる、とりわけ、不透明にするために用いられる顔料は、金属酸化物、例えば、TiO2、CoAl2O4またはFe2O3、ケイ酸塩、ポリスルフィドおよびカーボンブラックである。
【0039】
用語「上流」および「下流」は、本処理方法における流れの一般的な流れに応じて理解されるべきである。
【0040】
用語「静的または動的ミキサ」および「ミキサ」は、区別なく用いられ、静的ミキサまたは動的ミキサとして当業者に周知である混合設備に相当する。
【0041】
本発明によると、粘度は、動粘度であるとして定義され、特に、250℃の温度および100s-1の剪断速度で、粘度計、好ましくは、プレート-プレート型粘度計、例えばTA Instruments社製のDHR3タイプのものを用いて測定される。
【0042】
本発明によると、表現「AとBとの間の、またはA~Bの(of between A and B)」および「AとBとの間、またはA~B(between A and B)」は、等価であり、間隔の両限界値(A、B)は値の記載された範囲に含まれることを意味する。もしそのようになっていなかったならば、および両限界値が記載された範囲に含まれなかったならば、そのような説明が本発明によって与えられることになる。
【0043】
本発明の目的のために、所与の工程についてのパラメータの種々の範囲、例えば、圧力範囲および温度範囲は、単独でまたは組み合わせで用いられてよい。例えば、本発明の意義の範囲内で、好適な圧力値の範囲は、より好適な温度値の範囲と組み合わされ得る。
【0044】
以下の本文において、本発明の特定の実施形態が記載されてよい。それらは、別々にまたは技術的に実現可能である場合には組合せに制限なく互いに組み合わせて実施されてよい。
【0045】
(供給原料)
本発明による方法は、ポリエステル供給原料を給送され、当該ポリエステル供給原料は、少なくとも1種のポリエステル、すなわち、ポリマーを含み、その主鎖の繰り返し単位は、エステル基を含有している。ポリエステル供給原料は、好ましくは、ポリエチレンテレフタラート(PET)、例えば、クリアPETおよび/または着色PETおよび/または不透明PETを含んでいる。
【0046】
前記ポリエステル供給原料は、有利には、廃棄物、特に、プラスチック廃棄物の収集・選別チャネルから得られたリサイクル対象ポリエステル供給原料である。前記ポリエステル供給原料は、例えば、ボトル、コンテナトレイ、フィルム、樹脂および/または繊維であって、ポリエチレンテレフタラートからなるものの収集を起源としてよい。
【0047】
好ましくは、ポリエステル供給原料は、最低50重量%、好ましくは最低70重量%、好適には最低90重量%のポリエチレンテレフタラート(PET)を含み、最大は、100重量%のPETである。
【0048】
好ましくは、前記ポリエステル供給原料は、クリア、着色、不透明、暗色および多層のPET、およびその混合物から選ばれる少なくとも1種のPETを含む。大いに特定的には、前記ポリエステル供給原料は、最低10重量%の不透明PET、大いに好ましくは最低15重量%の不透明PETを含み、前記不透明PETは、有利には、リサイクル対象の不透明PET、すなわち、収集・分別の区分から得られたPETである。ポリエステル供給原料は、100重量%の不透明PET、大いに好ましくは70重量%未満の不透明なPETを含む場合がある。
【0049】
前記ポリエステル供給原料は、顔料および/または染料を含む場合がある。例えば、ポリエステル供給原料は、0.1重量%~10重量%の顔料、特に0.1重量%~5重量%の顔料を含む場合がある。それは、特に0.005重量%~1重量%の染料、好ましくは0.01重量%~0.2重量%の染料を含む場合がある。
【0050】
収集・分別のチャネルにおいて、ポリエステル廃棄物は、洗浄され、すり砕かれた後に、本発明による方法のポリエステル供給原料を構成する。
【0051】
ポリエステル供給原料は、全体的または部分的に、フレークの形態にあってよく、それの最長の長さは、10cm未満、優先的には5~25mmであり、または微粒子化された固体の形態にあってよく、すなわち、粒子の形態にあってよく、当該粒子は、好ましくは10マイクロメートル(μm)~1mmのサイズを有している。供給原料は、「巨視的」不純物、好ましくは5重量%未満、優先的には3重量%未満の「巨視的」不純物を含む場合があり、例えば、ガラス、金属、ポリエステル以外のプラスチック(例えば、PP、PEHD等)、木材、紙、ボール紙または無機要素である。前記ポリエステル供給原料は、全体的または部分的に、繊維、例えば、テキスタイル繊維の形態にある場合があり、これは、場合によっては、綿またはポリアミド繊維を取り除くように特に前処理されたものであり、または、ポリエステル以外の任意のテキスタイル繊維、または、さらに他の繊維、例えば、タイヤ繊維であり、これは、場合によっては、前処理されて、ポリアミド繊維またはラバーまたはポリブタジエン残渣をとりわけ取り除くようにする。前記ポリエステル供給原料は、ポリエステルの重合および/または変換の方法からの製造不合格品から得られたポリエステルを含む場合もある。ポリエステル供給原料は、PET製造方法において重合触媒および安定化剤として用いられる元素、例えば、アンチモン、チタンまたはスズを含む場合もある。
【0052】
(コンディション調整工程a))
本発明による方法は、コンディション調整工程a)を含み、これはポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段と、ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段の下流に配置された少なくとも1基の静的または動的ミキサとを少なくとも用いる。コンディション調整工程a)により、コンディション調整済み供給原料流れを得ることが可能となる。
【0053】
ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段と、1基または複数基の静的または動的ミキサとを含み、好ましくはそれらからなるアセンブリは、コンディション調整セクションと呼ばれるセクションを構成する。
【0054】
工程a)の前記コンディション調整セクションにより、一方で、解重合工程b)の操作条件に前記ポリエステル供給原料を加熱・加圧すること、および他方で、ポリエステル供給原料を解重合に必要とされるアルコール化合物の少なくとも一部と接触させて予備混合することがこのように可能となる。
【0055】
有利には、コンディション調整工程a)は、ポリエステル供給原料とアルコール流れとを給送され、ポリエステル供給原料に関連するアルコール流れの重量比、すなわち、工程a)に給送するアルコール流れの重量による流量と、工程a)に給送するポリエステル供給原料の重量による流量と間の比が0.03~6.00、好ましくは0.05~5.00、優先的には0.10~4.00、好適には0.50~3.00になるようにされる。大いに有利には、アルコール流れは、任意選択の工程c)から得られるアルコール流出物の少なくとも一部に相当する。工程a)がインプリメントされる際の温度、特に、ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段内および1基または複数基の静的または動的ミキサ内の温度は、有利には200~300℃、優先的には250~290℃である。この温度は、ポリエステルの熱分解を最小限に抑えるために可及的に低く保たれるが、ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるのに十分でなければならない。好ましくは、コンディション調整セクションは、不活性雰囲気下に操作され、系への酸素の導入、ひいてはポリエステル供給原料の酸化を制限する。
【0056】
有利には、ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段により、ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に混合しおよび溶融させることが可能となり、より詳細には、ポリエステル供給原料のPETを少なくとも部分的に溶融させることが可能となる。好ましくは、ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段は、押出機、特に、二軸スクリュー押出機または一軸スクリュー押出機である。前記手段は、有利には、200~300℃、優先的には250~290℃の温度で行われる。
【0057】
ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段は、有利には、ポリエステル供給原料、例えばフレークの形態にあるポリエステル供給原料を少なくとも給送され、これにより、粘性の液体流れ、典型的には0.5~600Pa・s、または実際にはより詳細には1.0~500Pa・sの粘度を有するものを得ることが可能となる。粘度は、特に、動粘度であり、250℃の温度および100s-1の剪断速度で、粘度計、好ましくは、プレート-プレート型粘度計、例えばTA Instruments社製のDHR3タイプのものを用いて測定される。ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段、例えば、押出機において、ポリエステル供給原料は、有利には、200~300℃、優先的には250~290℃の温度、特にそれが含有するポリエステル、例えばPETの融点に近いかまたはさらにはその融点を僅かに上回る温度まで徐々に加熱されて、前記手段の出口のところで少なくとも部分的に液体になる(すなわち、少なくとも部分的に溶融する)。大いに有利には、ポリエステル供給原料の最低70重量%、好ましくはポリエステル供給原料の最低80重量%、優先的には最低90重量%、好適には最低95重量%は、工程a)の前記手段、例えば押出機を出て行くときに液体の形態にある。
【0058】
より詳細には、ポリエステル供給原料は、ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段に給送し、前記手段は、好ましくは、押出機である。ポリエステル供給原料の給送は、有利には、当業者に知られている任意の手法によって、例えば、給送ホッパを介して行われ、本処理方法への酸素の導入を制限するように不活性化されてもよい。有利には、前記供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段、好ましくは押出機により、ポリエステル供給原料を、200~300℃、優先的には250~290℃の温度、好ましくは大気圧(すなわち、0.1MPa)と20MPaとの間、好ましくは0.15MPa~10MPaの圧力にすることが可能となり、このような条件下に、前記ポリエステル供給原料は、有利には、少なくとも部分的に溶融し、特に、このような条件下に、ポリエステル供給原料中に含まれる場合があるPETは、少なくとも部分的に溶融し、好ましくは完全に溶融する。
【0059】
本発明の好適な実施形態によると、ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段、好ましくは押出機は、工程a)に給送するアルコール流れの一部を給送されてもよく、これは、ポリエステル供給原料の少なくとも部分的な液化を助けてよく、ひいては前記手段の出口のところでの流れの粘度の低下に寄与してよく、そのため、少なくとも部分的に溶融したポリエステル供給原料およびアルコール化合物の全体的な均質化に、特にコンディション調整工程a)およびさらに解重合工程b)において寄与する。この実施形態(すなわち、コンディション調整工程a)に給送するアルコール流れの一部を溶融手段に導入すること)の別の利点は、この実施により、工程a)の終了時の[ポリエステル供給原料+アルコール化合物]混合物(コンディション調整済み供給原料流れに相当する)の粘度:50mPa・s以下、好ましくは30mPa・s以下、大いに優先的には15mPa・s以下を達成するのに必要とされる静的または動的ミキサの数を減らすことが可能になる可能性があるという事実にある。工程a)に給送するアルコール流れの一部がポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段に導入される場合、前記手段に給送するアルコール化合物の量の調節は、好ましくは、前記手段に給送するアルコール流れの前記一部と、前記手段に給送するポリエステル供給原料との間の重量比が、0.001~0.100、好ましくは0.003~0.050、大いに好ましくは0.005~0.030になるように行われる。
【0060】
好ましくは、ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段中の滞留時間は、有利には5分以下、好ましくは2分以下、かつ、好適には1秒以上、優先的には10秒以上である。前記滞留時間は、前記手段において利用可能な容積をポリエステル供給原料の容積流量で除算したものとして定義される。
【0061】
ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段は、有利には、真空抽出システムに接続されて、供給原料中に存在する不純物、例えば、溶存ガス、軽質有機化合物および/または水分を除去するようにしてよい。
【0062】
ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段、好ましくは、押出機は、有利には、出口のところに、ろ過システムを含んでもよく、サイズが20μm超、かつ好ましくは2cm未満である固体粒子、例えば、砂、木材、または金属の粒子を除去することがこのように可能となる。
【0063】
特定の実施形態によると、ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段、好ましくは、押出機は、出口のところで、第1のろ過システム、特にフィルタに直接的に接続され、第1のろ過システムは、サイズが、典型的には1000μm以上、好ましくは500μm以上、好ましくは400μm以上、優先的には300μm以上である固体粒子を除去するように設計されたものであり、第1のろ過システムに続けて、圧力を維持しおよび/または高めることを可能にするメルトポンプまたはギアポンプがあり、それに続いて、第2のろ過システムがあり、第2のろ過システムは、サイズが、典型的には60μm以上、好ましくは20μm以上である固体粒子を除去するように設計されたものである。それ故に、この特定の実施形態において、コンディション調整セクションは、以下を含む:
- ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段、好ましくは、押出機:少なくとも部分的に溶融したポリエステル供給原料を、好ましくは、典型的には0.1MPa~15.0MPa、好適には0.15MPa~1.5MPaの圧力で得ることを可能にする、次に、
- 第1のろ過システム、特にフィルタ:前記手段から得られた少なくとも部分的に溶融した供給原料から、サイズが、典型的には1000μm以上、好ましくは500μm以上、好ましくは400μm以上、優先的には300μm以上である固体粒子を除去するように設計されたものである、次に、
- メルトポンプまたはギアポンプ;これにより、特に、コンディション調整セクション内の圧力を、ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段の出口の圧力以上、好ましくは0.1MPa~15.0MPa、優先的には1MPa~15.0MPa、好適には1MPa~7.0MPaの圧力で維持しおよび/またはそれらの圧力に高めることが可能となる、次に、
- 第2のろ過システム、特にフィルタ;サイズが、典型的には60μm以上、好ましくは20μm以上である固体粒子を除去するように設計されている、次に、
- 有利には以下に記載される少なくとも1基の静的または動的ミキサ。
【0064】
別の特定の実施形態によると、金属の分離のためのシステムが、ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段の上流に設置されて、ポリエステル供給原料中の任意の金属不純物を除去するようにしてよい。
【0065】
有利には、コンディション調整工程a)では、ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段、好ましくは、押出機と、少なくとも1基、好ましくは1~5基、好適には2~5基、大いに好ましくは2~4基の静的または動的ミキサ、優先的には静的ミキサとが用いられる。1基または複数基の静的または動的ミキサは、有利には、ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段の下流に配置される。コンディション調整セクションが2基以上の静的または動的ミキサを含む場合、静的または動的ミキサは、有利には相互に直列である。好ましくは、コンディション調整工程a)では、押出機と、2~5基、好ましくは2~4基の静的または動的ミキサとが用いられ、押出機は、好ましくは、200~300℃、優先的には250~290℃の温度で操作され、静的または動的ミキサは、直列で操作し、好ましくは200~300℃、優先的には250~290℃の温度で実施される。
【0066】
有利には、各静的または動的ミキサは、工程a)に給送するアルコール流れの少なくとも一部とポリエステル流れとを、各ミキサにおいて、アルコール化合物による容積希釈度が3%~70%となるように給送される。静的または動的ミキサにおけるアルコール化合物による容積希釈度は、本発明によると、考慮下の静的または動的ミキサに直接的に給送するアルコール流れの部分の容積流量と、アルコール流れの部分の容積流量および考慮下の静的または動的ミキサに給送するポリエステル流れの容積流量の合計との間の比に相当する。各静的または動的ミキサについて、ポリエステル流れは、有利には少なくとも部分的に溶融したポリエステル供給原料と、工程a)において考慮下の静的または動的ミキサの上流で導入されたアルコール流れの部分の全てとを含む、好ましくはこれらからなる流れに相当する。言い換えると、静的または動的ミキサに給送するポリエステル流れは、(有利には少なくとも部分的に溶融した)ポリエステル供給原料を含んでおり、好ましくは、それらからなる材料の流れに相当し、考慮下の静的または動的ミキサの上流に配置された1基または複数基の静的または動的ミキサに、場合によっては、ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段に導入されたアルコール流れの部分の全部を補充される。例えば、考慮下の静的または動的ミキサがコンディション調整セクションの第1の静的または動的ミキサであり、かつポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段がアルコール化合物を給送されない場合、ポリエステル流れは、(有利には少なくとも部分的に溶融した)ポリエステル供給原料に相当する。
【0067】
好ましくは、各静的または動的ミキサにおけるアルコール化合物による容積希釈度は、以下の通りである:
- 考慮下の静的または動的ミキサに給送するポリエステル流れとアルコール流れの部分との間の粘度の比が3500以上、好ましくは3000以上である場合、3%~50%、好ましくは10%~35%、大いに好ましくは15%~30%、
- 考慮下の静的または動的ミキサに給送するポリエステル流れとアルコール流れの部分との間の粘度の比が3500未満、好ましくは3000未満である場合、10%~70%、好ましくは20%~65%、大いに好ましくは30%~65%、またはさらには35%~65%。
【0068】
好ましくは、コンディション調整工程a)に給送するアルコール流れは、アルコール化合物のn個の部分流れ(すなわち、アルコール流れのn個の部分)に分割され、nは、mまたはm+1に等しい整数であり、mは、コンディション調整工程a)において用いられる静的または動的ミキサの数に等しい整数であり、各静的または動的ミキサは、アルコール化合物の部分流れの1つ(すなわち、コンディション調整工程a)に給送するアルコール流れの部分の1つ)を給送され、
各静的または動的ミキサにおいて、アルコール化合物による容積希釈度が3%~70%になるように、好ましくは、以下のようになされる:
- 考慮下の静的または動的ミキサに給送するポリエステル流れとアルコール流れの部分との間の粘度の比が3500以上、好ましくは3000以上である場合、3%~50%、好ましくは10%~35%、大いに好ましくは15%~30%であり;または、
- 考慮下の静的または動的ミキサに給送するポリエステル流れとアルコール流れの部分との間の粘度の比が3500未満、好ましくは3000未満である場合、10%~70%、好ましくは20%~65%、大いに好ましくは30%~65%、若しくはさらには35%~65%であるように給送する。
【0069】
場合によっては、アルコール化合物の部分流れ(すなわち、アルコール流れの部分)は、溶融手段に供給してもよい。
【0070】
有利には、各静的または動的ミキサは、200~300℃、優先的には250~290℃の温度で、好ましくは0.5秒~20分、好ましくは1秒~5分、好適には3秒~1分の滞留時間で操作され、滞留時間は、ここでは、静的または動的ミキサ内の液体の容積の、考慮下の静的または動的ミキサに給送するポリエステル流れの容積流量およびアルコール流れの部分の容積流量の合計に関する比として定義される。
【0071】
コンディション調整工程a)に給送するアルコール流れは、有利には、工程a)に導入される前、特にポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるための手段および/または1基または複数基の静的または動的ミキサに導入される前に、好ましくは200~300℃、優先的には250~290℃の温度に加熱されてよく、ポリエステル供給原料を所定の温度にするのを助ける。
【0072】
本発明の好適な実施形態によると、コンディション調整工程a)では、押出機と、場合による押出機出口のところにあるろ過システムと、次に、相互に直列に操作する2、3または4基の静的または動的ミキサとが用いられる。この好適な実施形態において、押出機は、ポリエステル供給原料と、好ましくはアルコール流れの部分とを、押出機に給送するアルコール流れの前記部分と、押出機に給送するポリエステル供給原料との間の重量比が0.001~0.100、好ましくは0.003~0.050、好適には0.005~0.030になるように給送される。アルコール流れの他の部分は、それぞれに、アルコール化合物の2、3または4個の部分流れに分割され、アルコール化合物の部分流れの数は、用いられる静的または動的ミキサの数に等しく、静的または動的ミキサのそれぞれは、ポリエステル流れと、アルコール化合物の部分流れの1つとを給送され、各静的または動的ミキサにおいて、アルコール化合物による容積希釈度は、3%~70%であり、かつ、以下の通りである:
i) 考慮下の静的または動的ミキサに給送するポリエステル流れとアルコール化合物の部分流れとの間の粘度の比が3500以上、好ましくは3000以上である場合、好適には3%~50%、好ましくは10%~35%、大いに好ましくは15%~30%:または、
ii) 考慮下の静的または動的ミキサに給送するポリエステル流れとアルコール化合物の部分流れとの間の粘度の比が3500未満、好ましくは3000未満である場合、好適には10%~70%、好ましくは20%~65%、大いに好ましくは30%~65%、若しくはさらには35%~65%。
【0073】
好ましくは、押出機中の滞留時間は、押出機において利用可能な容積を供給原料の容積流量で除算したものとして定義されて、0.5秒~1時間、好ましくは0.5秒~5分、好ましくは1秒~2分、または10秒~2分である。
【0074】
コンディション調整工程a)の終結の際に、コンディション調整済み供給原料流れが有利に得られる。大いに有利には、コンディション調整済み供給原料流れは、液体の形態にあり、好ましくは50mPa・s以下、好ましくは30mPa・s以下、大いに優先的には15mPa・s以下の粘度を示す。
【0075】
(解重合工程b))
本発明による方法は、解重合工程b)を含む。より詳細には、ポリエステル供給原料、特にそれが含むPETの解重合は、アルコール化合物がジオールである場合にはグリコリシスによって、またはアルコール化合物がモノアルコールである場合にはアルコリシスによって実施される。
【0076】
解重合工程b)は、コンディション調整工程a)から得られたコンディション調整済み供給原料流れを少なくとも給送され、場合によっては、アルコール化合物の供給物を給送され、工程a)および場合による工程b)に導入されるアルコール化合物の重量による量の合計に相当する、工程b)中に存在するアルコール化合物の全量と、コンディション調整済み供給原料流れ中に含有されるジエステルの重量による量(すなわち、ポリエステル供給原料中に含有されるジエステルの重量による量、特定の実施形態よれば、ポリエステル供給原料中に含有されるPETの重量による量)との間の重量比が0.3~8.0、好ましくは1.0~7.0、好適には1.5~6.0になるようにされる。言い換えると、解重合工程b)は、コンディション調整工程a)から得られたコンディション調整済み供給原料流れと、場合によるアルコール化合物の供給物とを給送され、工程a)および場合による工程b)に導入されるアルコール化合物の全モル量の、コンディション調整済み供給原料流れ中に含有される(すなわち、ポリエステル供給原料中に含有される)ジエステルの全モル量に対するモル比がそれぞれに0.9~24.0、好ましくは3.0~21.0、好適には4.5~18.0になるようにされる。
【0077】
好ましくは、解重合工程b)は、工程a)から得られたコンディション調整済み供給原料流れと、アルコール化合物の供給物、大いに好ましくはメタノールまたはエチレングリコールの供給物とを給送され、工程a)および工程b)に導入されるアルコール化合物の重量による全量の、コンディション調整済み供給原料流れ中に含有されるジエステルの重量による全量(すなわち、ポリエステル供給原料中に含有されるジエステルの重量による全量、特定の実施形態よると、ポリエステル供給原料中に含有されるPETの量)に関連する重量比が0.3~8.0、好ましくは1.0~7.0、好適には1.5~6.0(すなわち、アルコール化合物のジエステルに関連するモル比は、それぞれに、0.9~24.0、好ましくはおよそ3.0~21.0、好適には4.5~18.0である)になるようにされる。
【0078】
有利には、前記解重合工程b)では、有利には、1個または複数個の反応セクション、好ましくは少なくとも2個の反応セクション、好適には2~4個の反応セクションが用いられ、好ましくは、直列で操作する。各反応セクションは、反応器、より詳細には、解重合またはエステル交換反応を実行することを可能とする当業者に知られている任意のタイプの反応器、好ましくは、機械撹拌システムおよび/または再循環ループおよび/または流動化により撹拌される反応器を含んでよい。各反応セクションにおいて、反応器は、場合によっては、不純物を取り出すことを可能にする円錐底部を含んでよい。好適には、解重合工程b)は、少なくとも2個の反応セクション、好ましくは2~4個の反応セクションで実行され、これらは直列で操作し、1個または複数個の反応セクションは、第2の反応セクションから出発して、相互に同一または異なる温度で操作され、この温度は、好ましくは、第1の反応セクションの温度以下、好ましくは、第1の反応セクションの温度に相対して、より低く、優先的には、10~50℃だけより低く、さらには、20~40℃だけより低い。
【0079】
解重合工程b)は、150~300℃、好ましくは180~290℃、好適には210~270℃の温度で、特に液相において操作される。有利には、工程b)は、各反応セクション中の滞留時間:0.1~10時間、好ましくは0.25~8時間、0.5~6時間で実施される。反応セクション中の滞留時間は、前記反応セクションの液体容積対前記反応セクションを出て行く流れの容積流量の比として定義される。
【0080】
工程b)の1個または複数個の反応セクションの操作圧力は、反応系を液相に保つように決定される。この圧力は、有利には、最低0.1MPa、優先的には最低0.4MPa、かつ、好ましくは10MPa未満、優先的には5MPa未満である。用語「反応系」は、前記工程b)に存在する成分および相の全部を意味する。
【0081】
解重合反応は、触媒の存在中または不存在中で行われてよい。
【0082】
触媒の存在中で解重合反応が行われる場合、このものは、均一系または不均一系であり得、当業者に知られているエステル化触媒、例えば、アンチモン、スズまたはチタンの錯体、酸化物および塩、元素周期律表の第(I)族および第(IV)族からの金属のアルコキシド、有機過酸化物、酸性/塩基性の金属酸化物、マンガン、亜鉛、チタン、リチウム、マグネシウム、カルシウムまたはコバルトをベースとする化合物から選ばれる。
【0083】
好適な不均一系触媒は、有利には、触媒の全質量に相対して、最低50質量%、優先的には最低70質量%、有利には最低80質量%、大いに有利には最低90質量%、なおさらより有利には最低95質量%の固溶体を含む。この固溶体は、式ZxAl2O(3+x)の少なくとも1種のスピネルからなるものであり、式中、xは、0(限界値を除く)と1との間であり、Zは、Co、Fe、Mg、Mn、TiおよびZnから選ばれ、50質量%以下のアルミナおよび元素Zの酸化物を含んでいる。前記好適な不均一系触媒は、有利には、10質量%以下のドーパントを含有している。このドーパントは、ケイ素、リンおよびホウ素から選ばれ、これらは単独でまたは混合物として利用される。例えば、限定なしで、前記固溶体は、スピネルZnAl2O4およびスピネルCoAl2O4の混合物からなってよく、あるいはほかに、スピネルZnAl2O4、スピネルMgAl2O4およびスピネルFeAl2O4の混合物からなってよく、あるいはほかに、スピネルZnAl2O4のみからなってよい。
【0084】
本発明の特定の実施形態によると、均一系触媒、好ましくは、アミン、好ましくは、第三級のモノアミンおよびジアミン、例えばテトラメチルエチレンジアミン(tetramethylethylenediamine:TMEDA)、ペンタメチルジエチレントリアミン(pentamethyldiethylenetriamine:PMDETA)、トリメチルトリアザシクロノナン(trimethyltriazacyclononane:TACN)、トリエチルアミン(triethylamine:TEA)、4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン(4-(N,N-dimethylamino)pyridine:DMAP)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(1,4-diazabicyclo[2.2.2]octane:DABCO)、N-メチルイミダゾール(N-methylimidazole:NMI)等、並びにアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、例えば、Mg(OH)2およびNaOH等から選ばれる均一系触媒が、解重合工程b)において添加されてよい。
【0085】
前記解重合工程は、好ましくは、ポリエステル供給原料に外部触媒を添加することなく行われる。
【0086】
前記解重合工程は、有利には、粉体の形態にあるかまたは成形された形態にある固体吸着剤の存在中で行われてよく、着色不純物の少なくとも一部を捕捉し、それにより、任意の可能な精製工程の負担を緩和する。前記固体吸着剤は、有利には、活性炭である。
【0087】
解重合反応により、ポリエステル供給原料をモノマーおよび/またはオリゴマーに転化することが可能となる。好ましくは、解重合工程により、ポリエステル供給原料のポリエステル、好ましくは、ポリエステル供給原料のPET、および場合によってはそのオリゴマーを、少なくとも1種のジエステルモノマー、好ましくはビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)またはテレフタル酸ジメチル(DMT)、および場合によってはオリゴマーに転化することが可能となる。ポリエステル供給原料のポリエステル、好ましくはPETの転化率は、解重合工程b)の終結の際に、50%超、好ましくは70%超、好適には85%超である。好ましくは、ジエステルモノマー、大いに好ましくはBHETのモル収率は、50%超、好ましくは70%超、好適には85%超である。ジエステルモノマーのモル収率は、工程a)に給送するポリエステル供給原料中のジエステルのモル数に関連する、工程b)の出口のところの(すなわち、反応流出物中の)ジエステルモノマーのモル流量に相当する。
【0088】
並行して、解重合反応により、典型的には、ジオール、特にエチレングリコールも生じる。
【0089】
内部再循環ループが、有利には、工程b)において実行されてよく、反応系の一部の抜き出し、この一部のろ過および前記ろ過された部分の前記工程b)への再注入を実行する。この内部ループにより、反応液中に存在する場合がある「巨視的」固体不純物を取り除くことが可能となる。
【0090】
有利には、解重合工程b)により、反応流出物を、有利には、本質的に液体の形態にある反応流出物を得ることが可能となり、これは、標的ジエステルモノマー、大いに好ましくはBHETを含む。反応流出物は、精製工程に送られて、ジエステルモノマー、大いに好ましくはBHETを、反応流出物中に存在する他の化合物、例えば、未反応のアルコール化合物、解重合中に生じたジオール、好ましくは生じたエチレングリコール、不純物、例えば、顔料および/または染料、あるいはほかに生じる場合がある副生成物、例えば、ジオールのダイマーまたはトリマーおよびそれらの誘導体(例えばジオールダイマーのエステル)から分離するようにしてよく、精製されたジエステルモノマー流出物を得る。特に、反応流出物は、任意選択の分離工程c)に送られて、アルコール流出物、好ましくは本質的にアルコール化合物から構成されるアルコール流出物を回収するようにしてよい。
【0091】
(任意選択の分離工程c))
本発明による方法は、分離工程c)を含んでよく、工程b)から得られた反応流出物を少なくとも給送され、アルコール流出物およびジエステルモノマー流出物を少なくとも生じさせる。
【0092】
任意選択の工程c)の主要な役割は、未反応のアルコール化合物の全部または一部を回収することにあり、これは、次いで、有利には、工程a)および/または工程b)にリサイクルされる。任意選択の工程c)により、解重合中に生じたジオールの全部または一部を回収することが可能となる場合もある。
【0093】
任意選択の工程c)は、有利には、1つのまたは一連の複数の気体-液体分離セクション、有利には2~5個の連続する気体-液体分離セクションにおいて実施される。気体-液体分離セクションのそれぞれは、液相および気相を生じさせる。先行する気体-液体分離セクションからの液相は、後続の気体-液体分離セクションに給送する。気相の全ては、回収されて、アルコール流出物を構成する。最後の気体-液体分離セクションから得られた液相は、ジエステルモノマー流出物を構成する。
【0094】
有利には、気体-液体分離セクションのうち少なくとも1つは、流下膜式エバポレータまたは薄膜式エバポレータまたは短経路蒸留において実施されてよい。任意選択の工程c)は、少なくとも1つの短経路蒸留分離セクションを実施してもよい。
【0095】
有利には、工程c)の操作は、液相の温度が、この値より下であるとジエステルモノマー、好ましくはBHETモノマーが沈殿するという下方温度値より上かつこの値より上であるとジエステルモノマーが有意な再重合を経るという上方温度値より下に維持されるように行われる。工程c)における温度は、有利には60~250℃、好ましくは90~220℃、好適には100~210℃である。連続する2~5個の連続気体-液体分離としての操作が特に有利であるのは、それにより、各分離内で上述の制約に従って液相の温度を調節することが可能となるからである。
【0096】
任意選択の工程c)における圧力は、好ましくは、工程b)における圧力より下であり、工程b)から得られた反応流出物の一部を蒸発させる。任意選択の工程c)における圧力は、そのため、有利には、各分離セクションにおいて所与の温度でジオールの蒸発を可能にしながら、モノマーの再重合を最小にしかつエネルギーに関して最適な統合を可能にするように調節される。それは、好ましくは0.00001~0.2MPa、優先的には0.00004~0.15MPa、好適には0.00004~0.1Mpaである。
【0097】
1個または複数個の気体-液体分離セクションは、有利には、当業者に知られている任意の方法によって撹拌される。
【0098】
任意選択の工程c)の終結の際に得られたアルコール流出物は、未反応のアルコール化合物を含む。それは、解重合中に生じたジオール、好ましくはエチレングリコール、および場合によっては他の化合物、例えば、染料、軽質アルコール、水、またはジエチレングリコールを含有してもよい。アルコール流出物の少なくとも一部は、有利には、好ましくは精製の後に、好適には、液体の形態(すなわち、凝縮後)で、工程a)および/または工程b)に、場合によっては、本発明による方法に対して外部のアルコール化合物の補充物との混合物としてリサイクルされてよい。
【0099】
前記アルコール流出物の全部または一部は、精製工程において処理された後に、好ましくは液体の形態で、工程a)および/またはb)にリサイクルされてよい。この精製工程は、非網羅的に、染料を除去する固体(例えば、活性炭)上への吸着と、1回または複数回の蒸留による不純物、例えば、ジエチレングリコール、水および他のアルコールの分離除去とを含んでよい。
【0100】
任意選択の工程c)の終結の際に得られたジエステルモノマー流出物は、1回または複数回の精製工程に移送されて、脱色精製済みジエステルモノマー流出物、大いに好ましくは脱色精製済みBHET流出物を得るようにしてよく、これは、次いで、重合され得る。
【0101】
特定の実施形態によると、本発明による解重合方法は、特許出願FR 3053691に記載されている方法に統合されてよい。この実施形態において、本発明による方法は、ジオールの分離の任意選択の工程c)を含み、特許出願FR 3053691に記載されている方法のコンディション調整する工程a)、解重合工程b)、およびジオールの分離の工程c)を置き換える。このように、この実施形態において、全体の方法は、コンディション調整の工程a)および解重合工程b)および上記の任意選択の工程c)を有する本発明による解重合方法を含み、これらに続いて、モノマーの分離の工程d)および精製、特に脱色による精製の工程e)を含み、例えば、出願FR 3053691に記載されたようなものである。
【0102】
本発明による方法により、任意のタイプのポリエステル廃棄物、例えば不透明PETを含んでいるものから出発して、ジエステルモノマーを含んでいる流出物を得ることが、方法の操作性および操作コストの両方の点で最適化された方式で、このように可能となる。次いで、得られた前記ジエステルモノマーは、好ましくは精製の後に、エチレングリコール、テレフタル酸および/またはテレフタル酸ジメチルの存在中または不存在中で重合されて、視覚的にはバージンPETと区別することができないPETを生じさせてよい。
【0103】
以下の図面および実施例は、本発明を例証するが、本発明の範囲を制限するものではない。
【0104】
(実施例)
以下の実施例において、コンディション調整工程a)のみを厳密に説明する。
【0105】
(実施例1:本発明に合致する)
この実施例において、解重合方法は、
図1に概略的に図示される実施形態に対応し、ここでは、コンディション調整セクションは、以下を含んでいる:
- 押出機A;給送ホッパを含み、これを通じて、押出機に、収集および選別のチャネルから得られたPET供給原料(1)を、50kg/時の流量で給送する;続いて、
- 直列の4基の静的ミキサM1、M2、M3、M4。
【0106】
PET供給原料は、フレークの形態にあり、95.72重量%のPET;1.24重量%の顔料;0.04重量%の染料;および3.00重量%の紙、木材、金属、砂などの不純物を含む。
【0107】
各ミキサM1、M2、M3、M4に、それぞれのPET流れ(1)、(3)、(5)および(7)と、ジオール(エチレングリコールまたはMEG)の分離の工程c)から得られたエチレングリコール流れ(11)のそれぞれの部分(2)、(4)、(6)、(8)とを給送する。
【0108】
コンディション調整セクションを、250℃の温度および1.0MPa(10bar)の圧力で実施する。
【0109】
表1は、各ミキサに導入されるエチレングリコール(MEG)の量と、温度および圧力の操作条件下での各静的ミキサの入口/出口でのPET流れの粘度の変化との両方を示している。表1は、各静的ミキサに入るPET流れとMEG流れとの間の粘度の比も示している。各ミキサにおけるMEGによる容積希釈度は、以下に相当する:
- ミキサM1について、流れ(3)について与えられるMEGによる希釈度、
- ミキサM2について、流れ(5)について与えられるMEGによる希釈度、
- ミキサM3について、流れ(7)について与えられるMEGによる希釈度、
- ミキサM4について、流れ(9)について与えられるMEGによる希釈度。
【0110】
【0111】
コンディション調整工程a)は、押出と、その次の4基の静的ミキサを実施し、MEGをPET供給原料に関連して重量比2(PET供給原料1部に対してMEG2部)まで徐々に導入し、このコンディション調整工程a)の終結の際に、コンディション調整済み供給原料流れの粘度は、1.5mPa・s(すなわち、15mPa・s未満)であり、これは、関係する流れの粘度に関して静的ミキサによって課される技術的制約を遵守しながら達成される。このような粘度は、次いで、ミキサM4に続く反応セクションにおける混合物の均質化を促進する。
【0112】
(実施例2:本発明に合致する)
この実施例において、本解重合方法は、
図2に概略的に図示される実施形態に対応し、ここでは、コンディション調整セクションは、以下を含む:
- 押出機A:給送ホッパを含んでおり、これを通じて、押出機に、収集および選別のチャネルから得られたPET供給原料(1)を、50kg/hの流量で給送する;次に、
- 直列の2基の静的ミキサM1およびM2。
【0113】
PET供給原料は実施例1のものと同一である:それは、フレークの形態にあり、以下を含む:95.72重量%のPET;1.24重量%の顔料;0.04重量%の染料;および3.00重量%の紙、木材、金属、砂などの不純物。
【0114】
押出機に、ジオール(エチレングリコールまたはMEG)の分離の工程c)から得られたエチレングリコール流れ(11)の部分(2)を給送する。
【0115】
各ミキサM1およびM2に、それぞれのPET流れ(3)および(5)と、ジオール(エチレングリコールまたはMEG)の分離の工程c)から得られたエチレングリコール流れ(11)のそれぞれの部分(4)および(6)とを給送する。
【0116】
コンディション調整セクションを、250℃の温度および1.0MPa(10bar)の圧力で実施する。
【0117】
表2は、各ミキサに導入されるエチレングリコール(MEG)の量と、温度および圧力の操作条件下での各静的ミキサの入口/出口でのPET流れの粘度の変化との両方を示している。表2は、押出機および各静的ミキサに入るPET流れとMEG流れとの間の粘度の比も示している。各ミキサおよび押出機におけるMEGによる容積希釈度は、以下に相当する:
- 押出機Aについて、流れ(3)について与えられるMEGによる希釈度;
- ミキサM1について、流れ(5)について与えられるMEGによる希釈度;
- ミキサM2について、流れ(7)について与えられるMEGによる希釈度。
【0118】
【0119】
コンディション調整工程a)は、反応性押出に続いて2基の静的ミキサを実施し、MEGをPET供給原料に関連して重量比2(PET供給原料1部についてMEG2部)まで徐々に導入し、このコンディション調整工程a)の終結の際に、コンディション調整済み供給原料流れの粘度は、10mPa・s未満(8.8mPa・s)であり、これは、関係する流れの粘度に関して静的ミキサによって課される技術的制約を遵守しながら達成される。このような粘度は、ミキサM2に続く反応セクションにおける混合物の均質化を促進する。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【
図1】本発明による方法の1つの特定の実施形態を表している。
【
図2】本発明による方法の別の特定の実施形態を表している。
【国際調査報告】