(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】ポリエステル供給原料の解重合による精製かつ脱色されたジエステルモノマーの調製方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/24 20060101AFI20240621BHJP
【FI】
C08J11/24 ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577538
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2024-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2022065429
(87)【国際公開番号】W WO2022263237
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(71)【出願人】
【識別番号】508194892
【氏名又は名称】株式会社JEPLAN
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】シシェ ダヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ブランケ ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ラインクーゲル ル コック ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】ファヴル フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】アルーン ヤシン
(72)【発明者】
【氏名】ティノン オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】メッキ-ベラーダ アドリアン
(72)【発明者】
【氏名】アズィン ゴンジン パイヴァ マヤラ
(72)【発明者】
【氏名】ボナン シャルル
(72)【発明者】
【氏名】チャラ シプリアン
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA22
4F401AB07
4F401BA06
4F401CA22
4F401CA67
4F401CA68
4F401CA75
4F401CB01
4F401DA01
4F401DA12
4F401EA46
4F401EA59
4F401EA60
4F401EA80
4F401FA01Z
4F401FA02Z
4F401FA06Z
4F401FA07Z
(57)【要約】
本発明は、PETを含有しているポリエステル供給原料を解重合するための方法にであって、以下の工程を含む方法関する:a)ポリエステル供給原料をコンディション調整する工程;コンディション調整された供給原料流れを生じさせる;b)コンディション調整済み供給原料流れを、ジオールの存在中、150~300℃の温度で解重合する工程;供給原料中のジオールとジエステルとの重量比が0.3~8.0になるようにする;反応流出物を生成する;c)反応流出物からジオールを分離する工程;少なくとも1つの液体モノマー流出物を生じさせる;d)液体モノマー流出物を重質不純物流出物と予備精製済みモノマー流出物とに分離する工程;およびe)予備精製済みモノマー流出物を精製する工程;50~200℃の温度で行われる吸着サブ工程e1)と、少なくとも1つの脱色精製済みジエステルモノマー流出物を生じさせる結晶化サブ工程e2)とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタラートを含んでいるポリエステル供給原料の解重合のための方法であって、以下の工程を含む、方法:
a) コンディション調整工程;前記ポリエステル供給原料を少なくとも給送する;コンディション調整された供給原料流れを生じさせる;
b) グリコリシスによる解重合の工程;コンディション調整済み供給原料流れを少なくとも給送し、150~300℃の温度にて0.1~10時間の滞留時間で、ジオールの存在中で操作し、工程b)中に存在するジオールの全量と、コンディション調整済み供給原料流れ中に含有されるジエステルの量との間の重量比を、0.3~8.0とする;反応流出物を生じさせる;
c) ジオールの分離の工程;工程b)から得られた反応流出物を少なくとも給送し、60~250℃の温度および工程b)の圧力よりも低い圧力で操作する;ジオール流出物と液体モノマー流出物とを少なくとも生じさせる;
ジオールの分離の前記工程を、1つの気体-液体分離セクションまたは一連の2~5個の連続気体-液体分離セクションにおいてインプリメントし、気体-液体分離セクションのそれぞれは、ガス流出物と液体流出物とを生じさせ、先行するセクションからの液体流出物は、後続のセクションに給送し、最後の気体-液体分離セクションから得られた液体流出物は、液体モノマー流出物を構成し、1種または複数種のガス流出物を回収して前記1種または複数種のジオール流出物を構成するようにする;
d) 工程c)から得られた液体モノマー流出物の重質不純物流出物と予備精製済みモノマー流出物への分離の工程;操作する際の温度は、250℃未満であり、圧力は、0.001MPa未満であり、液体滞留時間は、10分未満である;および
e) 予備精製済みモノマー流出物の精製の工程;吸着サブ工程e1)および結晶化サブ工程e2)を含む;少なくとも1種の脱色精製済みジエステルモノマー流出物を生じさせる;吸着サブ工程e1)を、50~200℃の温度および0.1~1.0MPaの圧力で操作し、溶媒と混合するための少なくとも1個のセクションと、少なくとも1種の吸着剤の存在中での吸着のための少なくとも1個のセクションとをインプリメントし、
結晶化サブ工程e2)は、固体生成セクションをインプリメントし、0~100℃の温度および0.00001~1.00MPaの圧力で操作し、その後に、固体-液体分離セクションに続ける。
【請求項2】
予備精製済みモノマー流出物の精製の工程e)は、吸着サブ工程e1)と、その次の結晶化サブ工程e2)とを含み、少なくとも1種の脱色精製済みジエステルモノマー流出物と、使用済み溶媒流出物とを生じさせ、
吸着サブ工程e1)を、50~200℃の温度および0.1~1.0MPaの圧力で操作し、工程d)から得られた予備精製済みモノマー流出物を溶媒と混合するための少なくとも1個のセクションと、少なくとも1種の吸着剤の存在中での吸着のための少なくとも1個のセクションとをインプリメントし、吸着-前処理済みモノマー流出物を得、
結晶化サブ工程e2)は、固体生成セクションをインプリメントし、吸着-前処理済みモノマー流出物を少なくとも給送し、0~100℃の温度および0.00001~1.00MPaの圧力で操作し、固体-液体分離セクションが続き、脱色精製済みジエステルモノマー流出物と使用済み溶媒流出物とを生じさせる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
サブ工程e1)の混合セクションに導入される溶媒の量の調節を、工程d)から得られた予備精製済みモノマー流出物またはサブ工程e2)の終結の際に生じた固体が、前記混合セクションの混合物の全重量の20重量%~90重量%、優先的には30重量%~80重量%、好ましくは50重量%~75重量%、よりなおさら好ましくは40重量%~60重量%を示すように行う、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
サブ工程e1)の混合セクションに給送する溶媒を、水、アルコール、ジオール、例えばエチレングリコールおよびそれらの混合物、好ましくはジオール、例えばエチレングリコール、水、およびそれらの混合物から選ぶ、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
サブ工程e1)を操作する際の温度は、70~170℃、好ましくは80~150℃である、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
サブ工程e1)を操作する際の圧力は、0.1~0.8MPa、好ましくは0.1~0.5MPaである、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
サブ工程e1)の吸着セクションの少なくとも1種の吸着剤は、活性炭である、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
固体生成セクションを操作する際の温度は、5~80℃、好ましくは10~70℃である、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
固体生成セクションを操作する際の圧力は、0.0001~0.50MPa、好ましくは0.001~0.20MPaである、請求項1~8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
固体生成セクションに、サブ工程e1)の混合セクションに導入された溶媒と同一またはそれとは異なる結晶化溶媒を給送し、固体生成セクションに導入される結晶化溶媒の量の調節を、サブ工程e1)に給送する予備精製済みモノマー流出物が、前記固体生成セクションにおける混合物の全重量の1重量%~75重量%、優先的には5重量%~45重量%、好ましくは15重量%~35重量%を示すように行う、請求項1~9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
ポリエステル供給原料は、最低50重量%、好ましくは最低70重量%、好適には最低90重量%のポリエチレンテレフタラートを含み、特に不透明PET、着色PET、多層PET、またはそれらの混合物を含む、請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
ポリエステル供給原料は、0.1重量%~10重量%の顔料、好ましくは0.1重量%~5重量%の顔料と、好ましくは0.005重量%~1重量%の染料、特に0.01重量%~0.2重量%の染料とを含む、請求項1~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
工程a)をインプリメントする際の温度は、200~300℃、好ましくは250~290℃であり、その際の圧力は、好ましくは0.1MPa~20MPa、好適には0.15MPa~10MPaである、請求項1~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
工程a)に、ジオール流れを給送し、ポリエステル供給原料に関連するジオール流れの重量比は、0.03~6.00、好ましくは0.05~5.00、優先的には0.10~4.00、好適には0.50~3.00である、請求項1~13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
工程b)に存在するジオールの全量とコンディション調整済み供給原料流れ中に含有されるジエステルの量との間の重量比は、1.0~7.0、好ましくは1.5~6.0である、請求項1~14のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色および/または不透明および/または多層のポリエチレンテレフタラート(polyethylene terephthalate:PET)を特に含んでいるポリエステル供給原料のグリコリシスによる解重合によりジエステルモノマー流出物を、その重合ユニットへのリサイクルを目的として調製するための方法に関する。より詳細には、本発明は、ポリエステル供給原料、好ましくは着色および/または不透明PETを少なくとも含んでいるポリエステル供給原料のグリコリシスによる解重合のための方法であって、ジエステルモノマーの吸着工程と、その次の結晶化の工程を含んでいるジエステル流出物の精製の工程を有し、精製かつ脱色されたジエステルモノマー流出物を得る、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタラート(PET)のケミカルリサイクルは、廃棄物の形態で回収されたポリエステルを、重合方法用の供給原料として再び用いられることが可能となるだろうモノマーに分解することを目的とした数多くの研究の対象となっている。
【0003】
数多くのポリエステルが、材料を収集・選別するためのネットワークから得られる。特に、ポリエステル、特にPETは、ポリエステルから構成される、ボトル、コンテナトレイ、フィルム、樹脂および/または繊維(例えばテキスタイル繊維、タイヤ繊維)の収集を起源とする場合がある。収集および選別のチャネルから得られるポリエステルは、リサイクル対象のポリエステルと呼ばれる。
【0004】
リサイクル対象のPETは、以下の4つの主要なカテゴリーに分類され得る:
- クリアPET:無色透明なPET(一般に最低60重量%)と、淡青色で透明なPETとから主として構成され、顔料を含有せず、かつ機械的リサイクル法において用いられ得る;
- 暗色または着色(緑色、赤色など)のPET:一般に0.1重量%までの染料または顔料を含有することができるが、透明または半透明のままである;
- 不透明PET:相当量の顔料を、典型的には0.25重量%と5.0重量%との間で変動する含有量で含有し、ポリマーを不透明化する。不透明PETは、例えば、食品コンテナ、例えば、牛乳ボトルの製造、化粧品、植物防疫薬または染料のボトルの組成物において用いられることが増えている;
- 多層PET:PET以外のポリマーの層若しくはリサイクルPETの層と、層の間のバージンPET(すなわち、リサイクルに供されていないPET)、または例えばアルミニウムのフィルムとを含む。多層PETは、熱成形後に梱包材、例えばコンテナトレイの製造に用いられる。
【0005】
収集チャネルは、リサイクルチャネルに供給するものであり、この収集チャネルの構造は、国ごとに異なっている。それらは、流れの性質および量、並びに選別技術に応じて、廃棄物からアップグレードされるプラスチックの量を最大化するよう変化している。これらの流れをリサイクルするためのチャネルは、一般に、フレークの形態にコンディション調整する第1の工程からなり、この工程の間に、未処理の梱包材のベールは洗浄され、精製され、選別され、粉砕され、その後に、再度精製され、選別されて、一般に1質量%未満の「巨視的」不純物(ガラス、金属、他のプラスチック、木材、紙、ボール紙、無機要素)、優先的には0.2質量%未満、さらにより優先的には0.05質量%未満の「巨視的」不純物を含有しているフレークの流れを生じさせる。
【0006】
クリアPETフレークは、その後、押出-ろ過工程を経て、押出物を生じさせてよく、これらは、その後、バージンPETとの混合物として再使用されて、新たな製品(ボトル、繊維、フィルム)を生じさせることができる。真空下での固相重合(solid state polymerization;SSPの略称によって知られる)の工程が食品用途のために必要である。このタイプのリサイクルは、機械的リサイクルとして知られている。
【0007】
暗色(または着色)PETフレークも、機械的にリサイクルされ得る。しかしながら、着色流れから形成された押出物の着色により、用途は制限される:暗色PETは、一般的に、パッケージングのストラップまたは繊維を製造するために用いられる。出口は、それ故に、クリアPETのものと比較してより制限される。
【0008】
リサイクル対象PET中の、顔料を高含有率で含有している不透明PETの存在は、リサイクル業者に問題を提示する。不透明PETは、リサイクルされるPETの機械的特性に悪影響を及ぼすからである。不透明PETは、今のところ、着色PETと共に収集され、着色PET流れ中に見出される。不透明PETについての用途の開発の点から見て、リサイクル対象の着色PETの流れ中の不透明PETの含有率は、今のところ、5~20重量%であり、増大している傾向にあるところである。数年の期間内に、着色PET流れ中の不透明PETの含有率:20~30重量%超に達することが可能であるだろう。しかしながら、着色PET流れ中の不透明PET10~15%超で、リサイクルされるPETの機械的特性が悪影響を受けることが示され(参照:Impact du developpement du PET opaque blanc sur le recyclage des emballages en PET [白色不透明PETの増加がPETのパッケージングのリサイクルに及ぼす影響], preliminary report of COTREP of 5/12/13)、着色PETについてのチャネルの主要な出口である、繊維の形態でのリサイクルが防止される。
【0009】
染料は、天然のまたは合成の物質であり、ポリエステル材料中に特に可溶であり、それらが導入される材料を着色するために用いられる。 一般的に用いられる染料は、異なる性質を有し、しばしば、OおよびNのタイプのヘテロ原子、および共役不飽和、例えば、キノン、メチンまたはアゾの基、または分子、例えば、ピラゾロンおよびキノフタロンを含有する。顔料は、微細分割された物質であり、ポリエステル材料中に特に不溶であり、それらが導入される材料を着色し、かつ/または不透明にするために用いられる。ポリエステル、特に、PETを着色し、かつ/または不透明にするために用いられる主要な顔料は、金属酸化物、例えば、TiO2、CoAl2O4またはFe2O3、ケイ酸塩、ポリスルフィドおよびカーボンブラックである。顔料は、一般的には0.1~10μm、主として0.4~0.8μmのサイズを有する粒子である。これらの顔料の完全な除去は、不透明PETをリサイクルすることを想定するために必要であるが、ろ過によるこれらの顔料の完全な除去が技術的に困難であるのは、それらが極めて高い閉塞容量を有するからである。
【0010】
着色および不透明のPETのリサイクルには、それ故に、極めて大きな問題がある。
【0011】
特許文献1には、着色PET、特に緑着色PETボトルの回収に由来するものグリコリシスによる解重合のための方法が記載されている。この方法によって処理される供給原料は、着色PETフレークの形態をとり、反応器において180~280℃の温度で数時間にわたってエチレングリコールと接触させられる。解重合工程の終結の際に得られたグリコリシスの生成物は、170℃超の温度での活性炭上の通過と、次の、残留染料、特に黄色染料の溶媒による抽出によって精製され、この溶媒は、アルコール、例えば、メタノールまたはグリコール、例えば、エチレングリコールであってよい。BHETは、抽出溶媒中で結晶化し、次いで、ろ過によって分離される。
【0012】
特許文献2において、消費後(post-consumer)PETは、異なるPET、例えば、クリアPETおよび着色PET、例えば、青色PET、緑色PETおよび/またはこはく色PETの混合物をフレークの形態で含み、このものは、エチレングリコールおよびアミン触媒の存在中、反応器において、150~250℃で、バッチ様式でグリコリシスにより解重合される。得られたジエステルモノマーは、直接的なろ過、次いで、活性炭上の吸着、最後に、イオン交換樹脂上の通過によって、特に、80~90℃の温度で精製され、その後に、結晶化され、ろ過により回収される。特許文献2には、200℃での短経路蒸留によって得られたジエステルモノマーの精製のための別の方法が開示されている。
【0013】
特許文献3には、メタノールまたはエチレングリコールに溶解した粗BHETの溶液の精製が同様に記載され、これは、前記溶液と、活性炭、アニオン交換樹脂およびカチオン交換樹脂との間の少なくとも一連の接触を、40~120℃、特に、60℃、65℃または80℃に等しい温度で含む。具体的には、この特許には、前記の条件下での活性炭のみとの接触では、溶液を完全に脱色するためには特に十分ではないのは、残留する色、特に、黄色が存続する一方で、活性炭およびアニオンおよびカチオンの交換樹脂上を連続的に通過した後には黄色の着色がもはや見られないからであることが示されている。
【0014】
特許文献4において、ポリエステル、特に着色ポリエステル、例えば、緑色PETの解重合のための方法は、ジオール、特にエチレングリコールの存在中での反応器における180~240℃の温度での解重合の工程と、場合による、薄膜式エバポレータにおける蒸発の工程と、高温の溶媒中への溶解の工程と、サイズが50μm超である不溶性不純物を分離除去するためのろ過の工程とを含む。着色PET中の顔料の低い割合により、ろ過による分離が可能となる。しかしながら、この技術が、不透明PET中に存在する顔料の量で操作することができないのは、これらの顔料がフィルタをすぐに詰まらせるからである。
【0015】
特許文献5には、フレークの形態にあるPETからの精製BHETの製造が記載されている。解重合工程は、エチレングリコールおよび触媒の存在中、撹拌型反応器において、残留水を取り除く180℃、次いで、195~200℃で、水によって洗浄することによって予め前処理された固体の形態にあるPETフレークのグリコリシスからなる。解重合工程の次に、冷却による予備精製、ろ過、吸着およびイオン交換樹脂上の処理の工程が行われ、この工程は、重要であるとして提示され、グリコールの蒸発およびBHETの精製の前に行われる。特許文献5によると、予備精製により、後続の精製工程においてBHETの再重合を防止することが可能になる。しかしながら、供給原料が大量の非常に小さい固体粒子、例えば、顔料および/またはPET以外のポリマー化合物、例えば、ポリオレフィンまたはポリアミンを含んでいる場合に、ろ過およびイオン交換樹脂の工程を経ることは極めて大きな問題となる場合があり、これは、処理される供給原料が不透明PETおよび/または多層予備成形PETを、特にかなりの割合(10重量%超の不透明PETおよび/または多層予備成形PET)で含む場合に当てはまる。
【0016】
並行して、特許文献6には、エチレングリコールの存在中でのグリコリシスの工程を含んでいるポリエステルの解重合のための方法およびカチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂上でのBHETの溶液の精製のための方法が開示されている。
【0017】
最後に、特許文献7には、不透明PET、特に0.1重量%~10重量%の顔料を含んでいるポリエステル供給原料のエチレングリコールの存在中でのグリコリシスによる解重合のための方法が記載されている。精製済みビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)流出物が、吸着による分離および精製の特定の工程の後に得られる。しかしながら、特許文献7に記載された解重合方法によって得られたBHET流出物には欠陥がある可能性がある:得られたBHET流出物は、吸着剤のカラムを通過しているにもかかわらず、特に急速に着色を受ける。
【0018】
本発明の目的は、PET、好ましくは着色および/または不透明PETを含んでいるポリエステル供給原料のグリコリシスによる解重合のためのこれらの方法、特に特許文献7の特許出願に記載される方法を改善して、重質の固形不純物、例えば、オリゴマーおよび顔料の分離の後に得られるジエステル流出物の精製、より詳細には脱色を改善することにある。本発明の目的は、具体的には、PET、好ましくは着色および/または不透明PETを含んでいるポリエステル供給原料の解重合によって、高純度で脱色された見た目を有するジエステル流出物、特にBHET流出物を得ることにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0074136号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2015/0105532号明細書
【特許文献3】米国特許第6642350号明細書
【特許文献4】欧州特許第0865464号明細書
【特許文献5】特許第3715812号
【特許文献6】欧州特許出願公開第1120394号明細書
【特許文献7】仏国特許出願公開第3053691号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
(発明の概要)
本発明の目的は、したがって、ポリエチレンテレフタラートを含んでいるポリエステル供給原料の解重合のための方法であって、以下の工程を含む、方法にある:
a) コンディション調整工程;前記ポリエステル供給原料を少なくとも給送する;コンディション調整された供給原料流れを生じさせる;
b) グリコリシスによる解重合の工程;コンディション調整済み供給原料流れを少なくとも給送し、150~300℃の温度にて0.1~10時間の滞留時間で、ジオールの存在中で操作し、工程b)中に存在するジオールの全量と、コンディション調整済み供給原料流れ中に含有されるジエステルの量との間の重量比を、0.3~8.0とする;反応流出物を生じさせる;
c) ジオールの分離の工程;工程b)から得られた反応流出物を少なくとも給送し、60~250℃の温度および工程b)の圧力よりも低い圧力で操作する;ジオール流出物と液体モノマー流出物とを少なくとも生じさせる;
ジオールの分離の前記工程は、1個の気体-液体分離セクションまたは一連の2~5個の連続気体-液体分離セクションにおいて実施され、気体-液体分離セクションのそれぞれは、ガス流出物と液体流出物とを生じさせ、先行するセクションからの液体流出物は、後続のセクションに給送し、最後の気体-液体分離セクションから得られた液体流出物は、液体モノマー流出物を構成し、1種または複数種のガス流出物を回収して前記1種または複数種のジオール流出物を構成する;
d) 工程c)から得られた液体モノマー流出物の重質不純物流出物と予備精製済みモノマー流出物への分離の工程;操作する際の温度は、250℃未満であり、圧力は、0.001MPa未満であり、液体滞留時間は、10分未満である;
e) 予備精製済みモノマー流出物の精製の工程;吸着サブ工程e1)および結晶化サブ工程e2)を含む;少なくとも1種の脱色精製済みジエステルモノマー流出物を生じさせる;吸着サブ工程e1)を、50~200℃の温度および0.1~1.0MPaの圧力で操作し、溶媒と混合するための少なくとも1個のセクションと、少なくとも1種の吸着剤の存在中での吸着のための少なくとも1個のセクションとを実施し、
結晶化サブ工程e2)は、固体生成セクションを実施し、0~100℃の温度および0.00001~1.00MPaの圧力で操作し、その後に、固体-液体分離セクションに続ける。
【0021】
好ましくは、本発明による方法の予備精製済みモノマー流出物の精製の工程e)は、吸着サブ工程e1)と、その次の結晶化サブ工程e2)とを含み、少なくとも1種の脱色精製済みジエステルモノマー流出物と、使用済み溶媒流出物とを生じさせ、ここで、
吸着サブ工程e1)を、50~200℃の温度および0.1~1.0MPaの圧力で操作し、工程d)から得られた予備精製済みモノマー流出物を溶媒と混合するための少なくとも1個のセクションと、少なくとも1種の吸着剤の存在中での吸着のための少なくとも1個のセクションとを実施し、吸着前処理済みモノマー流出物を得、
結晶化サブ工程e2)は、固体生成セクションをインプリメントし、吸着-前処理済みモノマー流出物を少なくとも給送し、0~100℃の温度および0.00001~1.00MPaの圧力で操作し、固体-液体分離セクションが続き、脱色精製済みジエステルモノマー流出物と使用済み溶媒流出物とを生じさせる。
【0022】
本発明の1つの利点は、ポリエチレンテレフタラート(PET)、特に着色および/または不透明PETを少なくとも含んでいるポリエステル供給原料から、ジエステルモノマー流出物、特に、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)流出物を得ることにあり、これは、精製されかつ脱色されたものであり、より詳細には、白着色された、精製済み固体ジエステルモノマー流出物であり、CIE 1976 L*a*b*基準系で表されるカラーパラメータを示し、これは、色度測定法(ASTM D6290 2019法に準拠)によって決定され、好ましくは、以下を有する:
- 明度(または輝度)パラメータL*:100に近い、より詳細には90.00超、好ましくは92.00超(100.00が最大である);
- パラメータa*(緑-赤軸に相当する);0に近い、より詳細には-1.50~+1.50、好ましくは-1.00~+1.00;および、
- パラメータb*(青-黄軸に相当する);0に近い、より詳細には-2.50~+2.50、より詳細には-1.00~+1.50。
【0023】
有利には、本発明による方法により、ジエステルモノマー流出物、特にビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)流出物を得ることが可能とり、このものは、精製されかつ脱色されており、UV-可視分光法により特徴付けられる場合に可視波長の範囲内、すなわち、400~800nmで有意な吸収帯(すなわち、バックグラウンドノイズと区別することができる)を一切示さない。
【0024】
本発明の利点は、したがって、顔料および染料を含むことが増えている任意のタイプのポリエステル廃棄物、例えば、着色、不透明、さらには多層のPETを処理することができることにある。本発明による方法は、不透明PETを処理するのに特に適しており、本発明による方法により、顔料および染料を除去し、ジエステルモノマー、特にビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)モノマーを、化学反応および特定の精製工程によって回復することが可能となる。得られたジエステルモノマーは、再重合して、バージンポリエステル、特にバージンPETと違いを示さないポリマーを与えてよく、それ故に、バージンPETの用途の全てに至ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(図面のリスト)
図1は、本発明の特定の実施形態を表している。着色および/または不透明のPETを含んでいるポリエステル供給原料(1)は、コンディション調整工程a)においてコンディション調整される。工程a)は、ジオール流れ(11)も給送される。コンディション調整済み供給原料流れ(2)は、グリコリシスによる解重合の工程b)に導入され、この工程は、同様に別のジオール流れ(12)を給送される。
【0026】
解重合後に得られた反応流出物(3)は、ジオールの分離の工程c)に送られ、液体モノマー流出物(4)とジオール流出物(10)とが生じる。液体モノマー流出物(4)は、BHETの分離の工程d)に送られる。工程c)の終結の際に回収されたジオール流出物(10)に、本処理方法に対して外部のフレッシュなジオールの供給物(14)が加えられた後に、工程a)に給送するジオール流れ(11)と、工程b)に給送する別のジオール流れ(12)と、工程e)に給送する第3のジオール流れ(13)とに分割する。
【0027】
工程d)は、特に、予備精製済みモノマー流出物(5)と重質不純物流出物(8)とを生じさせるための短経路エバポレータをインプリメントする。重質不純物流出物(8)は、反応工程(工程b))に少なくとも部分的にリサイクルされてよい。予備精製済みモノマー流出物(5)は、精製工程e)に送られる。
【0028】
精製工程e)において、前記予備精製済みモノマー流出物(5)は、吸着セクションe1)に給送し、これは、ジオール流れ(13)も給送され、吸着-前処理済みモノマー流出物(6)を生じさせる。次いで、吸着-前処理済みモノマー流出物(6)は、結晶化セクションe2)に給送し、そこでジエステルモノマーの結晶化、次いで、形成された結晶の分離がインプリメントされ、脱色精製済みジエステルモノマー流出物(7)と使用済みジオール溶媒流れ(9)とを生じさせる。場合によっては、結晶化セクションは、結晶化溶媒(15)、例えばジオールまたは水の流れを給送されてもよい。使用済みジオール溶媒流れ(9)は、場合によっては、全体的にまたは部分的に回収され、工程e1)、a)および/またはb)、および/または任意選択に工程e2)にリサイクルされてもよく、回収された使用済みジオール溶媒流れ(9)がリサイクル前に任意選択に精製することが可能である。
【0029】
図2は、本発明の特定の実施形態を表している。着色および/または不透明のPETを含んでいるポリエステル供給原料(1)は、コンディション調整工程a)においてコンディション調整される。工程a)は、ジオール流れ(11)も給送される。コンディション調整済み供給原料流れ(2)は、グリコリシスによる解重合の工程b)に導入され、これは、同様に別のジオール流れ(12)を給送される。
【0030】
解重合の後に得られた反応流出物(3)は、ジオールの分離の工程c)に送られ、これにより液体モノマー流出物(4)とジオール流出物(10)とが生じる。液体モノマー流出物(4)は、BHETの分離の工程d)に送られる。工程c)の終結の際に回収されたジオール流出物(10)に、本処理方法に対して外部のフレッシュなジオールの供給物(14)が加えられた後に、工程a)に給送するジオール流れ(11)と、工程b)に給送する別のジオール流れ(12)とに分割する。
【0031】
工程d)は、特に、予備精製済みモノマー流出物(5)と重質不純物流出物(8)とを生じさせるための短経路エバポレータをインプリメントする。重質不純物流出物(8)は、反応工程b)に少なくとも部分的にリサイクルされてよい。予備精製済みモノマー流出物(5)は、精製工程e)に送られる。
【0032】
精製工程e)は、以下を含む:
- 吸着セクションe1);前記予備精製済みモノマー流出物(5)および本処理方法に対して外部の溶媒流れ(13)、特に水の流れを給送される;吸着-前処理済みモノマー流出物(6)を生じさせる;および
- 結晶化セクションe2);吸着-前処理済みモノマー流出物(6)と、任意選択に結晶化溶媒、例えば水の流れとを給送され、ジエステルモノマーの結晶化と、その次の形成された結晶の分離をインプリメントする;脱色精製済みジエステルモノマー流出物(7)と使用済み溶媒流れ(9)、特に水流れとを生じさせる。場合によっては、結晶化セクションは、結晶化溶媒(15)、例えばジオールまたは水の流れを給送されてもよい。使用済み溶媒流れ(9)は、場合によっては、全体的にまたは部分的に回収され、セクションe1)、および/または任意選択にセクションe2)にリサイクルされてよく、回収された使用済み溶媒流れをリサイクル前に任意選択に精製することが可能である。
【0033】
図3は、実施例1(灰色)および実施例2(黒色)に記載された方法によって得られた固体について決定されたUV-可視スペクトルを示す。
【0034】
(実施形態の説明)
本発明によると、ポリエチレンテレフタラートまたはポリ(エチレンテレフタラート)は、簡単にPETとも呼ばれるものであり、ジエステル(特に、テレフタル酸ジエステル)を含み、下記式のものである基本繰り返し単位を有している。
【0035】
【0036】
慣習的に、PETは、テレフタル酸(PTA)またはテレフタル酸ジメチル(dimethyl terephthalate:DMT)のエチレングリコールとの重縮合によって得られる。
【0037】
本文の続きにおいて、表現「前記ポリエステル供給原料中のジエステルのモル当たり」は、前記ポリエステル供給原料中、特に、ポリエステル供給原料中に含まれるPET中の-[O-CO-O-(C6H4)-CO-O-CH2-CH2]-ユニットのモル数に対応し、これは、とりわけ、前記ポリエステル供給原料中に含まれるPET中の、PTAとエチレングリコールの反応から得られたジエステルユニットである。
【0038】
本発明によると、用語「モノマー」または「ジエステルモノマー」は、有利には、ポリエステル供給原料中のポリエステル、特にポリエステル供給原料中のポリエチレンテレフタラートPET中のポリエステルの繰り返し単位を指し、ジカルボン酸、好ましくは芳香族ジカルボン酸、優先的にはテレフタル酸と、ジオール、好ましくは2~12個の炭素原子、優先的には2~4個の炭素原子を含んでいるジオール(好適なジオールは、エチレングリコールである)とのジエステルを定義する。より詳細には、「モノマー」または「ジエステルモノマー」は、本発明の方法によって標的とされる生成物に対応する。それ故に、本発明の1つの実施形態によると、「モノマー」または「ジエステルモノマー」(本発明の方法によって標的とされる生成物)は、HOCnH2n-CO2-(Aro)-CO2-CnH2nOHのタイプの化学式を有し、式中、n=2~12、好ましくはn=2~4であり、-(Aro)-=-(C6H4)-は、芳香族環を表す。好ましくは、用語「モノマー」または「ジエステルモノマー」は、化学式HOC2H4-CO2-(C6H4)-CO2-C2H4OHの、エチレングリコールの存在中でのPETの解重合の標的生成物であるビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を指し、式中、-(C6H4)-は、芳香族環を表す。
【0039】
用語「オリゴマー」は、典型的には、小サイズのポリマーであって、一般的には、2~20個の基本繰り返し単位からなるものを指す。本発明によると、用語「エステルオリゴマー」または「BHETオリゴマー」は、テレフタラートエステルオリゴマーであって、2~20個、好ましくは2~5個の、式-[O-CO-(C6H4)-CO-O-C2H4]-の基本繰り返し単位を含んでいるものを指し、式中、-(C6H4)-は、芳香環である。
【0040】
本発明によると、用語「ジオール」および「グリコール」は、区別なく用いられ、2個の水酸基-OHを含んでおり、かつ、好ましくは、2~12個の炭素原子、優先的には2~4個の炭素原子を含んでいる化合物に対応する。好適なジオールは、エチレングリコールであり、これは、モノエチレングリコールまたはMEGとも称される。
【0041】
したがって、本発明の方法の工程において用いられるジオールまたはジオール流出物流れは、好ましくは、エチレングリコール(またはMEG)を、前記ジオールまたはジオール流出物流れの全重量の有利には40重量%超、優先的には50重量%超、好ましくは60重量%以上の量で含む。
【0042】
用語「染料」は、ポリエステル材料に可溶であり、かつそれを着色するために用いられる物質を規定する。染料は、天然または合成の起源のものであり得る。
【0043】
本発明によると、用語「顔料」、より特定的には、不透明にするおよび/または着色する顔料は、微細分割された物質であり、ポリエステル材料中に特に不溶であるものを規定する。顔料は、固体粒子の形態にあり、一般的には0.1~10μm、優勢には0.4~0.8μmのサイズを有している。それらは、しばしば、無機の性質のものである。一般的に用いられる、特に、不透明にするために用いられる顔料は、金属酸化物、例えば、TiO2、CoAl2O4またはFe2O3、ケイ酸塩、ポリスルフィドおよびカーボンブラックである。
【0044】
本発明によると、表現「AとBとの間の、またはA~Bの(of between A and B)」および「AとBとの間、またはA~B(between A and B)」は、等価であり、間隔の両限界値(A、B)は値の記載された範囲に含まれることを意味する。もしそのようになっていなかったならば、および両限界値が記載された範囲に含まれなかったならば、そのような説明が本発明によって与えられることになる。
【0045】
本発明の目的のために、所与の工程についてのパラメータの種々の範囲、例えば、圧力範囲および温度範囲は、単独でまたは組み合わせで用いられてよい。例えば、本発明の意義の範囲内で、好適な圧力値の範囲は、より好適な温度値の範囲と組み合わされ得る。
【0046】
以下の本文において、本発明の特定の実施形態が記載されてよい。それらは、別々にまたは技術的に実現可能である場合には組合せに制限なく互いに組み合わせてインプリメントされてよい。
【0047】
用語「上流」および「下流」は、本処理方法における流れの一般的な流動に応じて理解されるべきである。
【0048】
本発明によると、圧力は、絶対圧であり、MPaまたはMPa(絶対圧力)(またはMPa(絶対))で与えられる。
【0049】
(供給原料)
本発明による方法は、ポリエステル供給原料を給送され、当該ポリエステル供給原料は、ポリエチレンテレフタラート(PET)を含み、好ましくは、不透明PET、着色PET、多層PETまたはそれらの混合物を少なくとも含んでおり、好適には、不透明PETおよび/または着色PETを少なくとも有し、場合によっては、多層PETを有する。
【0050】
前記ポリエステル供給原料は、有利には、廃棄物、特に、プラスチック廃棄物、収集・選別チャネルから得られたリサイクル対象ポリエステル供給原料である。前記ポリエステル供給原料は、例えば、ボトル、コンテナトレイ、フィルム、樹脂および/または繊維であって、ポリエチレンテレフタラートからなるものの収集を起源としてよい。
【0051】
ポリエステル供給原料は、有利には、最低50重量%、好ましくは最低70重量%、好適には最低90重量%のポリエチレンテレフタラート(PET)を含み、最大は、100重量%のPETである。
【0052】
前記ポリエステル供給原料は、好ましくは、不透明、暗色または着色および多層のPET、およびその混合物から選択される少なくとも1種のPETを含む。大いに特定的には、前記ポリエステル供給原料は、最低10重量%の不透明PET、大いに好ましくは最低15重量%の不透明PETを含み、前記不透明PETは、有利には、リサイクル対象の不透明PET、すなわち、収集・分別のチャネルから得られたPETである。ポリエステル供給原料は、100重量%の不透明PETを含む場合がある。より詳細には、それは、最高70重量%の不透明PETを含む場合がある。
【0053】
前記ポリエステル供給原料は、有利には、0.1重量%~10重量%の顔料、有利には0.1重量%~5重量%の顔料を含む。それは、好ましくは、0.005重量%~1重量%の染料、特に0.01重量%~0.20重量%の染料も含む。
【0054】
収集・選別のチャネルにおいて、ポリエステル廃棄物は、洗浄され、すり砕かれた後に、本発明による方法のポリエステル供給原料を構成する。
【0055】
ポリエステル供給原料は、全体的または部分的に、フレークの形態にあってよく、それの最長の長さは、10cm未満、優先的には5~25mmであり、または微粒子化された固体の形態にあってよく、すなわち、粒子の形態にあってよく、当該粒子は、好ましくは10マイクロメートル(μm)~1mmのサイズを有している。供給原料は、「巨視的」不純物、好ましくは5重量%未満、優先的には3重量%未満の「巨視的」不純物を含んでもよく、例えば、ガラス、金属、ポリエステル以外のプラスチック(例えば、PP、PEHD等)、木材、紙、ボール紙または無機要素である。前記ポリエステル供給原料は、全体的または部分的に、繊維、例えば、テキスタイル繊維の形態にあってもよく、これは、場合によっては、綿またはポリアミド繊維を取り除くように前処理されたものであり、または、ポリエステル以外の任意のテキスタイル繊維、または、例えば、タイヤ繊維等の、場合によっては、前処理されて、ポリアミド繊維またはラバーまたはポリブタジエン残渣をとりわけ取り除くようにしたものである。前記ポリエステル供給原料は、ポリエステルの重合および/または変換の方法からの製造不合格品から得られたポリエステルを含んでもよい。ポリエステル供給原料は、PET製造方法において重合触媒および安定化剤として用いられる元素、例えば、アンチモン、チタンまたはスズを含む場合もある。
【0056】
(コンディション調整工程a))
本発明による前記方法は、コンディション調整工程a)を含み、前記ポリエステル供給原料を少なくとも給送され、コンディション調整済み供給原料流れを生じさせる。
【0057】
前記工程a)により、一方で、解重合工程b)の操作条件に前記ポリエステル供給原料を加熱・加圧することが特に可能になる。
【0058】
コンディション調整工程a)において、ポリエステル供給原料は、その融点に近いかまたはさらにはその融点を僅かに上回る温度に徐々に加熱されて、少なくとも部分的に液体になる。有利には、ポリエステル供給原料の最低70重量%、大いに有利にはポリエステル供給原料の最低80重量%、好ましくは最低90重量%、優先的には最低95重量%は、工程a)の終結の際に液体の形態にある。工程a)がインプリメントされる際の温度は、有利には200~300℃、好ましくは250~290℃である。この温度は、ポリエステルの熱分解を最小限に抑えるのに可能な限り低く保たれるが、ポリエステル供給原料を少なくとも部分的に溶融させるために十分でなければならない。
【0059】
コンディション調整工程a)は、有利には、不活性雰囲気中で操作されて、系への酸素の導入、およびポリエステル供給原料の酸化を制限するようにしてよい。
【0060】
有利には、工程a)がインプリメントされる際の圧力は、好ましくは大気圧(すなわち、0.1MPa)と20MPaとの間、好ましくは0.15MPa~10MPaである。
【0061】
有利には、工程a)は、ジオール流れ、好ましくはエチレングリコール流れを給送されてもよく、ポリエステル供給原料に関連するジオール流れの重量比、すなわち、工程a)に給送するジオール流れの重量による流量と工程a)に給送するポリエステル供給原料の重量による流量との間の比は、0.03~6.00、好ましくは0.05~5.00、優先的には0.10~4.00、好適には0.50~3.00である。大いに有利には、工程a)に給送するジオール流れは、工程c)から得られた(好ましくは精製された)ジオール流出物の少なくとも一部に相当し、場合によっては、本発明による方法に対して外部のフレッシュなジオールの供給物との混合物としてのものである。ポリエステル供給原料をジオール流れと接触させる効果は、解重合工程b)への導入の前に、ポリエステル供給原料の解重合反応を開始させることにある。それにより、ポリエステル供給原料の粘度を低下させることも可能となり、それにより供給原料-ジオール混合物の均質化、およびその結果として解重合反応が促進される。
【0062】
本発明の好適な実施形態によると、工程a)は、押出機をインプリメントし、場合によっては、少なくとも1基の静的または動的ミキサが続けられる。
【0063】
好ましくは、前記押出機中の滞留時間は、前記押出機の容積をポリエステル供給原料の容積流量で除算したものとして定義されて、有利には5分以下、好ましくは2分以下、かつ、好適には1秒超、優先的には10秒以上である。有利には、押出機により、ポリエステル供給原料を200~300℃、優先的には250~290℃の温度、および好ましくは大気圧(すなわち、0.1MPa)と20MPaとの間、好ましくは0.15MPa~10MPaの圧力、つまり前記ポリエステル供給原料が有利には少なくとも部分的に溶融される条件にすることが可能となる。
【0064】
押出機は、有利には、真空抽出システムに接続されて、供給原料中に存在する不純物、例えば、溶存ガス、軽質有機化合物および/または水分を除去するようにする。ろ過システムが、有利には、押出機の出口のところ、有利には工程b)の上流にインプリメントされて、サイズが40μm超、かつ、好ましくサイズが2cm未満である固体粒子、例えば、砂粒子を除去するようにしてもよい。ポリエステル供給原料の押出機への給送は、当業者に知られている任意の方法によって、例えば給送ホッパを介して有利には行われ、有利には、不活性にされて、システムへの酸素の導入を制限するようにしてよい。
【0065】
ポリエステル供給原料は、有利には、コンディション調整工程a)において、工程d)から得られた重質不純物流出物の少なくとも一部と混合されてもよい。
【0066】
コンディション調整セクションから得られたコンディション調整済み供給原料流れは、有利には、解重合工程b)に送られる。
【0067】
(解重合工程b))
本発明による方法は、グリコリシスによる解重合の工程b)を含み、有利には、供給原料のポリエチレンテレフタラート(PET)のジオールの存在中での解重合である。
【0068】
工程b)中に存在するジオールは、有利には、解重合剤としてだけでなく溶媒としても機能し、それ故に、反応媒体の粘度を低下させ、反応、したがって解重合を促進することが可能となる。工程b)中に存在するジオールは、工程a)若しくは工程b)に、あるいは工程a)および工程b)に導入される。ジオールは、有利にはモノエチレングリコールである。
【0069】
解重合工程b)は、コンディション調整工程a)から得られたコンディション調整済み供給原料流れを少なくとも給送され、場合によっては、本発明による方法に対して内部または外部のジオール流出物から特に得られたジオールの供給物を給送され、工程a)および/または工程b)において導入されたジオールの重量による量と、コンディション調整済み供給原料流れ中に含有される(すなわち、ポリエステル供給原料中、特にポリエステル供給原料中のPET中に含有される;ジエステルの重量による量は、それ故に、より正確には、ポリエステル、特にポリエステル供給原料中のPETの重量に対応する)ジエステルの重量による量の合計に対応する、工程b)中に存在するジオールの重量による全量との間の重量比が0.3~8.0、好ましくは1.0~7.0、好適には1.5~6.0になるようにされる。言い換えると、解重合工程b)は、コンディション調整工程a)から得られたコンディション調整済み供給原料流れと、任意選択にジオールの供給物とを給送され、工程a)および/または工程b)において導入されたジオールの全モル量の、コンディション調整済み供給物流れ中に含有される(すなわち、ポリエステル供給原料中に含有される)ジエステルの全モル量に関連するモル比がそれぞれに1.0~24.0、好ましくは3.0~21.0、好適には4.5~18.0になるようになされる。
【0070】
好ましくは、解重合工程b)は、工程a)から得られたコンディション調整済み供給原料流れと、本発明による方法に対して内部または外部のジオール流出物から有利に得られたジオールの供給物、好ましくはエチレングリコールの供給物とを給送され、工程b)および任意選択に工程a)において導入されたジオールの全量の、コンディション調整済み供給原料流れ中に含有される(すなわち、ポリエステル供給原料中に含有される:それ故に、より正確には、ポリエステル、特にポリエステル供給原料中のPETの重量)ジエステルの全量に関連する重量比が0.3~8.0、好ましくは1.0~7.0、好適には1.5~6.0になるようになされる(すなわち、ジオールのジエステルに関連するモル比は、それぞれに1.0~24.0、好ましくはおよそ3.0~21.0、好適には4.5~18.0である)。
【0071】
有利には、解重合工程b)は、有利には、1個または複数個の反応セクション、好ましくは少なくとも2個の反応セクション、好適には2~4個の反応セクションをインプリメントし、好ましくは、直列で機能する。各反応セクションは、反応器、より詳細には、解重合またはエステル交換の反応を実行することを可能とする当業者に知られている任意のタイプの反応器、好ましくは、機械撹拌システムおよび/または再循環ループおよび/または流動化により撹拌される反応器を含んでよい。各反応セクションにおいて、反応器は、場合によっては、不純物を取り出すことを可能にする円錐基部を含んでよい。好適には、前記解重合工程b)は、少なくとも2個の反応セクション、好ましくは2~4個の反応セクションをインプリメントし、これらは直列で機能し、1個または複数個の反応セクションは、第2の反応セクションから出発して、相互に同一または異なる温度で操作され、この温度は、好ましくは、第1の反応セクションの温度以下、好ましくは、第1の反応セクションの温度に相対して、より低く、優先的には、10~50℃だけより低く、さらには、20~40℃だけより低い。
【0072】
解重合工程b)は、150~300℃、好ましくは180~290℃、好適には210~270℃の温度で、特に液相において操作される。有利には、工程b)は、各反応セクション中の滞留時間0.1~10時間、好ましくは0.25~8時間、0.5~6時間によりインプリメントされる。反応セクション中の滞留時間は、前記反応セクションの液体容積対前記反応セクションを出て行く流れの容積流量の比として定義される。
【0073】
工程b)の1個または複数個の反応セクションの操作圧力は、反応系を液相に保つように決定される。この圧力は、有利には、最低0.1MPa、優先的には最低0.4MPa、かつ、好ましくは5MPa未満である。用語「反応系」は、前記工程b)において存在する成分および相の全部を意味する。
【0074】
グリコリシス反応は、触媒の存在中または不存在中で行われてよい。
【0075】
触媒の存在中でグリコリシス反応が行われる場合、この触媒は、均一系または不均一系であり得、当業者に知られているエステル化触媒、例えば、アンチモン、スズまたはチタンの錯体、酸化物および塩、元素周期律表の第(I)族および第(IV)族からの金属のアルコキシド、有機過酸化物または酸性/塩基性の金属酸化物から選ばれる。
【0076】
好適な不均一系触媒は、有利には、触媒の全質量に相対して、最低50質量%、優先的には最低70質量%、有利には最低80質量%、大いに有利には最低90質量%、なおさらより有利には最低95質量%の固溶体を含む。この固溶体は、好ましくは、式ZxAl2O(3+x)の少なくとも1種のスピネルからなるものであり、式中、xは、0(限界値を除く)と1との間であり、Zは、Co、Fe、Mg、Mn、TiおよびZnから選ばれ、50質量%以下のアルミナおよび元素Zの酸化物を含んでいる。前記好適な不均一系触媒は、有利には、10質量%以下のドーパントを含有している。このドーパントは、ケイ素、リンおよびホウ素から選ばれ、これらは単独でまたは混合物として利用される。例えば、限定なしで、前記固溶体は、スピネルZnAl2O4およびスピネルCoAl2O4の混合物からなってよく、あるいはほかに、スピネルZnAl2O4、スピネルMgAl2O4およびスピネルFeAl2O4の混合物からなってよく、あるいはほかに、スピネルZnAl2O4のみからなってよい。
【0077】
本発明の特定の実施形態によると、触媒、好ましくは、アミン、好ましくは、第三級のモノおよびジアミン、例えばテトラメチルエチレンジアミン(tetramethylethylenediamine:TMEDA)、ペンタメチルジエチレントリアミン(pentamethyldiethylenetriamine:PMDETA)、トリメチルトリアザシクロノナン(trimethyltriazacyclononane:TACN)、トリエチルアミン(triethylamine:TEA)、4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン(4-(N,N-dimethylamino)pyridine:DMAP)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(1,4-diazabicyclo[2.2.2]octane:DABCO)、N-メチルイミダゾール(N-methylimidazole:NMI)等、並びにアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、例えば、Mg(OH)2およびNaOH等から選ばれる触媒が、解重合工程b)においてコンディション調整済み供給原料流れに添加されてよい。
【0078】
前記解重合工程は、好ましくは、ポリエステル供給原料に外部触媒を添加することなく行われる。
【0079】
前記解重合工程は、有利には、粉体の形態にあるかまたは成形された形態にある固体吸着剤の存在中で行われてよく、その機能は、着色不純物の少なくとも一部を捕捉することにあり、それにより、精製工程の負担を緩和する。前記固体吸着剤は、有利には、活性炭である。
【0080】
工程b)は、工程d)から得られた重質不純物流出物の少なくとも一部を給送されてもよい。
【0081】
グリコリシス反応により、ポリエステル供給原料のポリエステル、特に、ポリエステル供給原料のPET、場合によっては、そのオリゴマーをジエステルモノマーおよびオリゴマーに転化すること、有利には、PETを、少なくともモノマーであるビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)およびBHETのオリゴマーに転化することが可能となる。解重合工程b)におけるポリエステル供給原料、より特定的にはポリエステル供給原料のPETの転化率は、50%超、好ましくは70%超、好適には85%超である。有利には、モルBHET収率は、50%超、好ましくは70%超、好適には85%超である。モルBHET収率は、工程b)の出口のところのBHETのモル流量対前記工程a)に給送するポリエステル供給原料中に存在するジエステルのモル数に相当する。
【0082】
内部再循環ループが、有利には、工程b)においてインプリメントされてよく、反応セクションからの反応系の一部を抜き出し、この一部をろ過し、前記ろ過された部分を工程b)の前記反応セクションに再注入する。この内部ループにより、反応液中に存在する場合がある「巨視的」固体不純物を取り除くことが可能となる。
【0083】
有利には、解重合工程b)により、反応流出物を得ることが可能となり、有利には本質的に液体の形態にあり、これは、ジオールの分離の工程c)に送られる。
【0084】
(ジオールの分離の工程c))
本発明による方法は、工程b)から得られた反応流出物からのジオールの分離の工程c)を含む。工程c)は、それ故に、有利には、工程b)から得られた反応流出物を少なくとも給送され、60~250℃の温度にて工程b)の圧力よりも低い圧力で操作されて、ジオール流出物と液体モノマー流出物とを少なくとも生じさせる。工程c)の主な機能は、未反応のジオールおよび/または解重合工程の間に生じたジオールの全部または一部を回収することにある。
【0085】
有利には、工程c)は、工程b)の圧力よりも低い圧力で操作され、工程b)からの反応流出物の一部を蒸発させて1種または複数種のガス流出物を得る。工程c)の終結の際に得られた前記1種または複数種のガス流出物は、40重量%超のジオール、好ましくは50重量%超のジオール、好適には60重量%超のジオールからなり、好適なジオールは、エチレングリコール(MEG)であり、1種または複数種のジオール流出物を構成する。
【0086】
有利には、工程c)は、1個の気体-液体分離セクションまたは一連の気体-液体分離セクション、有利には2~5個の連続する分離セクション、例えば3個の気体-液体分離セクションをインプリメントする。気体-液体分離セクションのそれぞれで、液体流出物とガス流出物とが生じる。先行するセクションからの液体流出物は、後続のセクションに給送する。最後の気体-液体分離セクションから得られた液体流出物は、液体モノマー流出物を構成する。1種または複数種のガス流出物は、回収されて、前記1種または複数種のジオール流出物を構成する。
【0087】
有利には、生じた少なくとも1種のガス流出物の少なくとも一部は、凝縮されて、少なくとも1種の液体ジオール流出物を特に与えてよい。1種または複数種のジオール流出物は、他の化合物、例えば、染料、軽質アルコール、水またはジエチレングリコールを含有する場合がある。工程c)から得られた、気体の状態で保たれたまたは液体の形態に凝縮された1種または複数種のジオール流出物の全部または一部は、それぞれ独立してまたは混合物としてジオールの精製の工程に送られて、少なくとも1種の精製済みジオール流出物を生じさせて、その後に、それをリサイクルさせる。場合によっては、工程c)から得られた1種または複数種のジオール流出物の全部または一部は、好ましくは凝縮後、精製後または直接的に、有利には、場合によっては本発明による方法に対して外部のジオールを補充物との混合物として、工程a)および/または工程b)にリサイクルされてよく、および/または工程e)に送られてよい。
【0088】
本発明の好適な実施形態によると、工程c)から得られた、1種または複数種のジオール流出物、有利にはガス状態で保たれたおよび/または凝縮後の1種または複数種のジオール流出物は、精製工程に送られて、精製済みジオール流出物を少なくとも生じさせ、その後に、全体または一部において、工程a)および/またはb)に、および/または工程e)にリサイクルする。この実施形態において、1種または複数種のジオール流出物の精製の前記工程は、非網羅的に、染料を除去するための固体(例えば、活性炭)上の吸着、および/または不純物、例えば、ジエチレングリコール、水および他のアルコールを分離するための1回または複数回の蒸留を含んでよい。
【0089】
有利には、気体-液体分離セクションのうち少なくとも1つは、流下膜式エバポレータまたは薄膜式エバポレータまたは短経路蒸留においてインプリメントされてよい。工程c)は、短経路蒸留を行う少なくとも1個の分離セクションをインプリメントしてもよい。
【0090】
工程c)の操作は、液体流出物の温度が、この値より下であると標的ジエステルモノマーが沈殿するという下方値より上かつジオール/モノマーのモル比に応じてこの値より上であるとジエステルモノマーが有意な再重合を経るという高値より下に維持されるように行われる。工程c)における操作温度は、60~250℃、好ましくは90~220℃、好適には100~210℃である。一連の気体-液体分離、有利には一連の2~5回の連続的な分離をインプリメントすることが特に有利であるのは、それにより各分離において液体流出物の温度を上述の制約に対応して調節することが可能となるからである。
【0091】
工程c)における、好ましくは各分離セクションにおける圧力の調節は、有利には、再重合を最小限に抑え、かつエネルギーの点で最適な統合を可能にしつつも、各分離セクションにおいて規定される温度でジオールの蒸発が可能となるように行われる。それは、一般に0.00001~0.2MPa、好ましくは0.00004~0.15MPa、好適には0.00004~0.1Mpaである。
【0092】
1個または複数個の気体-液体分離セクションは、有利には、当業者に知られている任意の方法によって撹拌される。
【0093】
(モノマーの分離の工程d))
本発明による方法は、工程c)から得られた液体モノマー流出物の重質不純物流出物と予備精製済みモノマー流出物への分離の工程d)を含む。
【0094】
前記工程d)が有利に操作される際の温度は、250℃未満、好適には230℃未満、大いに好ましくは200℃未満、かつ、好ましくは110℃超であり、圧力は、0.001MPa未満、好ましくは0.0005MPa未満、好適には0.00005MPa未満、かつ、好ましくは0.000001MPa超であり、液体滞留時間は、10分未満、好ましくは5分未満、好適には1分未満、かつ、好ましくは0.1秒超である。
【0095】
この分離工程d)の目的は、気化するジエステルモノマー、特にBHETを、解重合工程中に完全には転化されておらず液体のままであり、したがって重質不純物、例えば、顔料も捕捉するオリゴマーから、並びに未転化のポリエステルポリマーから、ポリエステル供給原料中に存在する可能性のある他のポリマーから、および重合触媒から、再重合によるモノマーの損失を最小限に抑えながら分離することにある。一部のオリゴマーは、場合によっては、モノマー、特に小さいサイズを有するモノマーと同伴される可能性がある(すなわち、低モル質量のもの、例えばダイマー)。重質不純物、例えば顔料等、未転化のポリエステルポリマー、ポリエステル供給原料中に存在する可能性のある他のポリマー、および重合触媒は、有利には、重質不純物流出物中でオリゴマーとともに位置する。
【0096】
ポリエステル供給原料中に重合触媒が存在する可能性があるため、分離は、非常に短い液体滞留時間および250℃以下の温度で行われなければならず、この工程の間のモノマー、より特定的にはBHETの再重合の任意のリスクを制限する。単純な常圧蒸留による分離は、したがって、考えられない。
【0097】
有利には、分離工程d)は、流下膜式または薄膜式の蒸発システム、または流下膜式または薄膜式の短経路蒸留システム、好ましくは流下膜式または薄膜式の短経路蒸留システムをインプリメントする。
【0098】
非常に低い操作圧力、有利には、0.001MPa未満、好ましくは0.0005MPa未満、好適には0.00005MPa未満、かつ、好ましくは0.000001MPa超である圧力が必要である。モノマーが気化することを可能にしながら、温度250℃未満、好ましくは230℃未満で工程d)を操作することを可能にするためである。重合阻害剤は、有利には、前記工程d)に給送する前に液体モノマー流出物と混合されてよい。
【0099】
溶剤を有利には液体モノマー流出物と混合した後に前記工程d)に給送し、短経路の蒸留または蒸発のシステムの底部のところでの重質不純物、例えば顔料の除去を促進するようにしてもよい。この溶剤は、工程d)の操作条件下で、標的ジエステルモノマー、特にBHETよりもはるかに高い沸点を有さなければならない。それは、例えば、ポリエチレングリコール、またはPETオリゴマーであってよい。
【0100】
特に、重質不純物流出物は、顔料、オリゴマーおよび場合によっては分離除去されていないBHETを含む。重質不純物流出物は、有利には、全部または一部において、コンディション調整工程a)および/または工程b)にリサイクルされる。前記重質不純物流出物の部分は、有利には、単独でまたはジオール流出物との混合物として、工程a)および/または工程b)に直接的にリサイクルされてよい。重質不純物流出物は、有利には、そのリサイクルの前に少なくとも1回の精製工程、好ましくはろ過工程を経て、顔料および/または他の固体不純物の量を減らすようにしてよい。高い顔料含有率を有する前記分離済み重質不純物流出物の部分は、有利には、本処理方法からパージされて、焼却システムに送られてよい。前記重質不純物流出物の部分は、好ましくは、固体不純物を事前に分離せずに、工程a)および/または工程b)にリサイクルされる。
【0101】
工程d)の分離セクションから得られた前記予備精製済みモノマー流出物(予備精製済みジエステルモノマー流出物とも呼ばれる)は、有利には精製工程e)に送られる。
【0102】
場合によっては、工程d)の分離セクションから得られた前記予備精製済みモノマー流出物は、工程e)の前に、気体/液体分離セクションに送られてよく、当業者に知られている任意の設備において、100~250℃、好ましくは110~200℃、好適には120~180℃の温度、0.00001~0.1MPa、好ましくは0.00001~0.01MPa、好適には0.00001~0.001MPaの圧力で操作される。本発明の好適な実施形態において、分離工程d)は、流下膜式または薄膜式の短経路蒸留による蒸発のシステムにおいてインプリメントされ、前記任意選択の気体-液体分離セクションは、蒸発システムに統合される。前記任意選択の気体-液体分離セクションにより、ガス状のジオール流出物と液体の予備精製済みモノマー流出物とを分離することが可能となり、予備精製済みモノマー流出物中に残留するジオールの量をさらに減らし、さらには残留ジオールを除去することが可能となり、これは、前記ガス状のジオール流出物において、工程d)において予備精製済みモノマー流出物と同伴される可能性のあるジオールの50重量%超、好ましくは70重量%超、好適には90重量%超を回収することによるものである。前記ガス状のジオール流出物中に同伴されるモノマーの量は、予備精製済みモノマー流出物中に存在するモノマーの重量による量に相対して、好ましくは1重量%未満、好適には0.1重量%未満、より好ましくは0.01重量%未満である。前記ガス状のジオール流出物は、次いで、有利には凝縮され、任意選択に精製工程において単独でまたは工程c)から得られた1種または複数種のジオール流出物との混合物として前処理され、工程a)および/または工程b)にリサイクルされ、および/または混合物として工程e)にリサイクルされる。本方法がこの任意選択の気体-液体分離セクションを含む場合に、工程e)に送られるものは、前記任意選択の気体-液体セクションの終わりに得られた液体予備精製済みモノマー流出物である。
【0103】
(精製工程e))
本発明による方法は、工程d)から得られた予備精製済みモノマー流出物の精製の工程を含み、少なくとも1種の脱色精製済みジエステルモノマー流出物および使用済み溶媒流出物を生じさせる。
【0104】
前記精製工程e)により、有利には、予備精製済みモノマー流出物からの残留染料、特に、沸点がカットポイント未満である、すなわち、特にモノマーの分離の工程d)において行われる温度および圧力の条件下にある染料を除去することが可能となる。その理由は、それらが着色する予備精製済みモノマー流出物と同伴されたこれらの残留染料が前記精製工程e)において効果的に除去され得るためである。精製工程e)により、工程d)から得られた予備精製済みモノマー流出物中に依然として存在する可能性のある有機または無機の、特に無色の残留不純物、例えば残留塩、ジオールダイマー、特にエチレングリコールダイマーから誘導される化合物、すなわち、ジエチレングリコールから誘導される化合物、例えば、ジエチレングリコールエステル(例えば、テレフタル酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル2-ヒドロキシエチル)および蒸留によって除去されなかったジエステルモノマーの他のコモノマー(例えば、BHETの位置異性体)を有利に除去することも可能となる。
【0105】
精製工程e)は、吸着サブ工程e1)および結晶化サブ工程e2)を含み、サブ工程e1)およびe2)は、以下に説明される。好ましくは、精製工程e)は、吸着サブ工程e1)と、その次の結晶化サブ工程e2)とを含む。
【0106】
(吸着サブ工程e1))
有利には、吸着サブ工程e1)は、工程d)から得られた予備精製済みモノマー流出物、または任意選択に液体予備精製済みモノマー流出物を溶媒と混合するための少なくとも1個のセクションと、少なくとも1個の吸着セクションとをインプリメントする。吸着サブ工程e1)により、吸着-前処理済みモノマー流出物を得ることが可能となり、これは、有利には、少なくとも部分的に脱色されている。
【0107】
サブ工程e1)の混合セクションにより、モノマー-溶媒混合物を得ることが可能となる。それは、工程d)から得られた予備精製済み液体モノマー流出物、または任意選択に液体予備精製済みモノマー流出物と、溶媒、好ましくは水、アルコール、ジオール、およびそれらの混合物から、好ましくは水、ジオール、例えばエチレングリコール、およびそれらの混合物から選ばれる溶媒とを給送される。好ましくは、サブ工程e1)の混合セクションに給送する溶媒は、水および/またはジオール、より詳細にはグリコリシスによる解重合に用いられたものと同じジオール、すなわち、工程a)および/またはb)に給送するものと同じジオール、例えばエチレングリコールを含み、好ましくはそれらからなる。
【0108】
有利には、サブ工程e1)の混合セクションに給送する溶媒は、工程c)から得られたジオール流出物の一部、サブ工程e2)の固体-液体分離セクションの出口のところで得られた使用済み溶媒流出物から得られた、任意選択に精製された溶媒流出物の全部若しくは一部、本発明による方法に対して外部の溶媒、好ましくはジオールおよび/または水の供給物、またはそれらの混合物を含み、好ましくはそれらからなる。本発明の特定の実施形態によると、この溶媒は、サブ工程e2)の固体-液体分離セクションの出口のところで得られた使用済み溶媒流出物から得られた、精製されていてもまたは精製されていなくてもよい溶媒流出物の全部または一部を含み、好ましくはそれらからなり、任意選択に本発明による方法に対して外部の溶媒の供給物によって補充される。
【0109】
好ましくは、サブ工程e1)の混合セクションに導入される溶媒の量の調節は、予備精製済みモノマー流出物、または任意選択に液体予備精製済みモノマー流出物が、前記混合セクションのモノマー-溶媒混合物の全重量の20重量%~90重量%、優先的には30重量%~80重量%、好ましくは40重量%~75重量%、よりなおさら好ましくは40重量%~60重量%を示すように行われる。
【0110】
有利には、サブ工程e1)の混合セクションが操作される際の温度は、50~200℃、好ましくは70~170℃、好適には80~150℃であり、その際の圧力は、0.1~1.0MPa、好ましくは0.1~0.8MPa、好適には0.1~0.5MPaである。溶媒は、前記混合セクションの前に、好ましくは、混合セクションが操作される際の温度、特に、50~200℃、好ましくは70~170℃、好適には80~150℃の温度に加熱されてよい。
【0111】
サブ工程e1)の混合セクションは、場合によっては、静的または動的ミキサ、特に静的ミキサをインプリメントしてよい。
【0112】
有利には、サブ工程e1)の混合セクションの終わりに得られたモノマー-溶媒混合物は、少なくとも1個の吸着セクション、好ましくは1~10個、好適には1~4個の吸着セクションに給送する。サブ工程e1)の各吸着セクションは、少なくとも1種の吸着剤の存在中、有利には50~200℃、好ましくは70~170℃、優先的には80~150℃、好適には80~120℃の温度、大いに有利には0.1~1.0MPa、特に0.1~0.8MPa、より詳細には0.1~0.5MPaの圧力で操作される。
【0113】
各吸着セクションは、有利には少なくとも1基の吸着器(例えば反応器またはカラム)、好ましくは最大4基の吸着器を含む。大いに有利には、吸着工程の各吸着器における滞留時間は、20分~40時間、好ましくは1時間~30時間、好ましくは1時間~20時間である。滞留時間は、ここでは、吸着器の内部容積と、混合セクションから得られたモノマー-溶媒混合物の容積流量との間の比として定義される。1個または複数個の吸着セクションが2基以上の吸着器、すなわち2~4基の吸着器を含む場合、吸着器は、各セクションにおいて互いに直列にまたは並列に配置される。
【0114】
各吸着セクションは、少なくとも1種の吸着剤、かつ、好ましくは最大5種の異なる吸着剤の存在中で操作される。非常に特定的な実施形態によると、各吸着セクションは、1種または2種の異なる吸着剤をインプリメントする。本発明によると、吸着剤が異なると言われるのは、それらの性質および/またはそれらの組成および/またはそれらの異なる粒子サイズおよび/またはそれらの組織特性、例えば細孔容積などが異なる場合である。好ましくは、異なる吸着剤は、異なる性質のものである。その理由は、2種以上の異なる吸着剤、特に異なる性質の吸着剤を組み合わせて、それ自体非常に異なる性質のものであり得る残留染料の除去を最適化することが有利であってよいからである。実際に、本方法のポリエステル供給原料は、ポリエステル廃棄物、例えば、PET梱包材またはプラスチックボトル廃棄物から得られるため、それは、非常に多数の着色および/または不透明PETを含む場合があり、したがって非常に多数の異なる染料化合物を含む場合がある。工程d)から得られた流出物の着色は、コンディション調整工程a)、解重合工程b)、ジオールの分離工程c)およびモノマーの分離工程d)の間に供給原料を構成する化合物の分解または変換を起源とする場合もある。
【0115】
吸着セクションが2~5種の異なる吸着剤を含む場合、前記異なる吸着剤は、混合物状にあるか、または前記吸着セクション内に直列に配置され、好ましくは、直列に配置され、より優先的には、吸着剤のそれぞれは、直列にまたは並列に、好ましくは、直列に配置された異なる吸着器(例えば、反応器またはカラム)内にある。
【0116】
有利には、1種または複数種の吸着剤は、特に固体の形態にある。好ましくは、1種または複数種の吸着剤は、活性炭、アルミナおよび粘土から選ばれる。活性炭は、例えば、石油コーク、瀝青炭若しくは任意の他の化石起源から得られるか、またはバイオマス、例えば、木材、ココナッツ若しくは任意の他のバイオマス源から得られる。異なる出発材料は、混合されて、前記吸着セクションにおいて吸着剤として用いられてよい活性炭を得るようにしてもよい。粘土は、層状複水酸化物または天然または変換粘土、例えば、脱色土として当業者に知られているようなものであってよい。好ましくは、少なくとも1種の吸着剤は、活性炭である。したがって、吸着セクションが単一のタイプの吸着剤を含む場合、前記吸着剤は活性炭であり、吸着セクションが2種以上の異なる吸着剤を含む場合、一方の吸着剤は活性炭であり、1種または複数種の他方は、別の活性炭、アルミナおよび/または粘土、好ましくは活性炭および/または粘土、より詳細には粘土である。
【0117】
好ましくは、各吸着剤の細孔容積(Vp)は、水銀ポロシメトリによって決定されて、0.25mL/g以上、優先的には0.40mL/g以上、好適には0.50mL/g以上、かつ、好ましくは5mL/g以下である。
【0118】
好ましくは、サブ工程e1)の各吸着セクションは、以下のようにインプリメントされる:
- フロースルー固定床方式、すなわち、1種または複数種の吸着剤の固定床を含んでいる少なくとも1基の吸着器、特に、1種または複数種の吸着剤の少なくとも1基のカラムにおける方式;操作は、上昇流または下降流の方式で、好ましくは、上昇流方式で可能である、または
- 撹拌方式、有利には、少なくとも1基の連続撹拌型反応器における方式;連続撹拌槽反応器(continuous stirred tank reactor:CSTR)としても知られている。
【0119】
吸着セクションが少なくとも1基のCSTR型の撹拌型反応器において撹拌方式でインプリメントされる場合、1基または複数基の反応器の後に、処理された液体中に懸濁状で存在する前記1種または複数種の吸着剤を回収するためのろ過システムが続く。好ましくは、吸着セクションは、フロースルー固定床方式でインプリメントされる。
【0120】
好ましくは、各吸着セクションが少なくとも2種の異なる吸着剤を含む場合、吸着剤は、以下であってよい:
- 1個または複数個の吸着セクションの各カラム中に混合物でまたは連続した固定床において全て存在する;または
- 1個または複数個の吸着セクションの吸着サブセクションにおいてそれぞれ用いられ、サブセクションは、相互に直列に置かれ、各吸着サブセクションは、1~4基、好ましくは2~4基の固定床吸着剤カラムを含み、好ましくはそれらからなる。
【0121】
大いに有利には、各吸着セクションまたはサブセクションのそれぞれは、2~4基の固定床のカラム、特に少なくとも2基の固定床カラム、好ましくは同一の1種または複数種の吸着剤の2~4基の固定床カラムを含む。吸着セクションまたは吸着サブセクションが、同一の1種または複数種の吸着剤の2基のカラムを含む場合、吸着セクションは、「スイング」操作方式に従って操作してよく、当該方式において、カラムの一方がオンラインである一方で、他方のカラムは、インリザーブである。オンラインのカラム内の吸着剤が使い果たされ時に、このカラムは隔離される一方で、インリザーブのカラムは、オンラインに置かれる。次いで、隔離されたカラムの使用済み吸着剤は、次いで、現場内(in situ)再生されるか、かつ/またはフレッシュな吸着剤と交換されて、他方のカラムが隔離されたところで再度オンラインに置き戻されてよい。吸着剤カラムを操作するための別の方式は、少なくとも2基のカラムを直列で操作しているようにさせることである:先頭のカラム(すなわち、直列の第1のカラム)の吸着剤が使い古された時に、この第1のカラムが隔離され、使用済み吸着剤は、現場内再生されるかまたはフレッシュな吸着剤と置き換えられ、前記カラムは、次いで、一連のカラムの最後の位置においてオンラインに置き戻されるなどがなされる。この操作は、「リード-ラッグ」と呼ばれる。大いに好ましくは、各吸着セクションは、「リード-ラッグ」方式で操作する、同一の吸着剤の少なくとも2基のカラム、好ましくは同一の吸着剤の2~4基のカラム、優先的には同一の吸着剤の2基のカラムをインプリメントする。
【0122】
同一の吸着剤の少なくとも2基のカラムの組み合わせにより、吸着剤のおそらくは迅速な飽和および/または目詰まりを特に改善することが可能となる。具体的には、少なくとも2基の吸着剤のカラムの存在により、吸着剤の交換および/または再生が有利には吸着ユニット(e1)、さらには処理方法を停止することなく容易になるため、目詰まりのリスクを低下させ、吸着剤の飽和によるユニットの停止を防ぎ、コストを管理し、吸着剤の消費を制限することが可能となり、その一方で、精製済みジエステルモノマーの連続的な製造が保証される。少なくとも2基の吸着剤のカラムのこの組み合わせにより、特に「リード-ラッグ」方式で操作する際に、有利には、各吸着ユニットにおいて、前記吸着剤の吸着容量を最大化することも可能となる。
【0123】
本発明の非常に特定的な実施形態において、各吸着セクションは、2種の異なる吸着剤を含み、各吸着セクションは、大いに優先的には、活性炭の少なくとも2基、好ましくは2~4基の固定床カラムを含んでいる第1のサブセクションと、別の吸着剤、好ましくは、別の活性炭または粘土から選ばれる吸着剤の少なくとも2基、好ましくは2~4基の固定床カラムを含んでいる第2のサブセクションとを含み、第1のサブセクションは、スイング方式またはリード-ラッグ方式で操作し、第2のサブセクションは、特にスイング方式またはリード-ラッグ方式で操作し、固定床活性炭カラムの第1のサブセクションの上流または下流に配置される。
【0124】
好ましくは、各吸着剤は、細粒、押出物または粉末の形態にある。好ましくは、各吸着剤は、以下の形態にある:
- 1個または複数個の吸着セクションがフロースルー固定床方式でインプリメントされる場合、細粒または押出物の形態、および、
- 1個または複数個の吸着セクションがCSTRタイプの撹拌型反応器においてインプリメントされる場合、粉末の形態。
【0125】
前記少なくとも1種の吸着剤のサイズは、特にそれが細粒または押出物の形態にある場合、前記少なくとも1種の吸着剤の最小寸法(細粒若しくは多葉押出物の基準で外接する円の直径、または円柱タイプの押出物の円柱の基準で外接する円柱の直径に相当する;この寸法は「直径」とも呼ばれる)が、好ましくは0.1~5mm、優先的には0.3~2mmになるようにされる。例えば、Cabot Noritによって販売されている直径0.8mmの活性炭押出物、またはChemvironによって販売されている0.4~1.7mmのサイズ範囲内の細粒がサブ工程e1)の吸着セクションにおける吸着剤として適切であってよい。
【0126】
吸着サブ工程e1)は、有利には、前記1種または複数種の吸着剤の再生の段階を含んでもよい。
【0127】
吸着-前処理済みモノマー流出物が各吸着セクションの終わりに得られ、有利には結晶化サブセクションe2)に給送する。サブ工程e1)が2個以上の吸着セクション、すなわち2~10個、好ましくは2~4個の吸着セクションをインプリメントする場合、吸着セクションの出口のところで生じたモノマー流出物は、有利には、再び合わされて、吸着-前処理済みモノマー流出物を構成するようにしてよく、次いで、これは、結晶化サブ工程e2)に給送する。
【0128】
(結晶化サブ工程e2))
有利には、結晶化サブ工程e2)は、少なくとも1個の固体生成セクションおよび少なくとも1個の固体-液体分離セクションをインプリメントする。結晶化サブ工程e2)により、脱色精製済みジエステルモノマー流出物および使用済み溶媒流出物を得ることが可能となる。
【0129】
有利には、結晶化サブ工程e2)は、1回または複数回の結晶化または沈殿の操作および1回または複数回の固体-液体分離操作をインプリメントする。本発明の特定の実施形態によると、結晶化サブ工程e2)は、以下に記載される固体生成セクションと、これに続く、以下でさらに詳述される固体-液体分離セクションとをインプリメントする。本発明の別の特定の実施形態によると、結晶化サブ工程e2)は、以下に記載される2個以上の固体生成セクション、好ましくは2~5個の固体生成セクションをインプリメントし、固体生成セクションのそれぞれは、以下でさらに詳述される固体-液体分離セクションに続けられる。
【0130】
サブ工程e2)の固体生成セクションは、工程d)から得られた予備精製済みモノマー流出物またはサブ工程e1)から得られた吸着-前処理済みモノマー流出物、好ましくはサブ工程e1)から得られた吸着-前処理済みモノマー流出物を給送される。場合によっては、固体生成セクションは、サブ工程e1)の混合セクションに導入された溶媒と同一またはそれとは異なる結晶化溶媒を給送されてもよい。結晶化溶媒は、有利には、水、モノアルコール、ジオール、エーテル、アルデヒド、エステル、炭化水素および同じ化学族または異なる化学族に属するこれらの化合物の少なくとも2種の混合物から選ばれる。好ましくは、前記結晶化溶媒は、水、1~12個の炭素原子を有するモノアルコール、例えば、メタノールまたはエタノール、1~12個の炭素原子を有するジオール、芳香族炭化水素、例えばモノ芳香族化合物またはモノ芳香族化合物の混合物、および前記化合物の少なくとも2種の混合物から選ばれる。大いに有利には、前記結晶化溶媒は、水、1~12個の炭素原子を有するモノアルコール、例えば、メタノール若しくはエタノール、1~12個の炭素原子を有するジオール、例えば、エチレングリコール、モノ芳香族化合物、例えばキシレン、またはそれらの混合物である。好ましくは、結晶化溶媒は、水、1~12個の炭素原子を有するジオール、好ましくはエチレングリコール、またはそれらの混合物である。
【0131】
本発明の好適な実施形態によると、結晶化溶媒は、サブ工程e2)の固体-液体分離セクションの終了の際に得られた使用済み溶媒流出物から得られた溶媒流出物の全部または一部を含み、好ましくはそれらからなり、これは、精製されていてもまたは精製されていなくてもよく、場合によっては、本発明による方法に対して外部の溶媒の供給物によって補充される。
【0132】
好ましくは、サブ工程e2)において結晶化溶媒が導入される場合、固体生成セクションに導入される結晶化溶媒の量の調節は、サブ工程e1)に給送する予備精製済みモノマー流出物が、前記固体生成セクションにおける混合物(すなわち、予備精製済みモノマー流出物、サブ工程e1)に導入された溶媒およびサブ工程e2)に導入された結晶化溶媒とを含んでいる混合物)の全重量の1重量%~75重量%、優先的には5重量%~45重量%、好ましくは15重量%~35重量%を示すように行われる。
【0133】
固体生成セクションに導入される前に、結晶化溶媒の全部または一部は、好ましくは、吸着セクションが操作される際の温度に加熱されるか、または冷却されてよく、特に、好ましくは0~120℃、好ましくは5~100℃、好適には10~90℃の温度にされてよい。
【0134】
有利には、サブ工程e2)の固体生成セクションが操作される際の温度(すなわち、前記固体生成セクションから得られた流出物の温度)は、0~100℃、好ましくは5~80℃、好適には10~70℃である。より正確には、固体生成セクションにおいて、吸着-前処理済みモノマー流出物は、場合によっては、結晶化溶媒との混合物で、吸着セクションが操作される際の温度、すなわち50~200℃、好ましくは70℃~170℃、優先的には80~150℃、好適には80~120℃の温度から、0~100℃、好ましくは5~80℃、好適には10~70℃の温度まで冷却される。
【0135】
冷却は、当業者に知られている任意の方法に従ってインプリメントされてよい。例えば、特にバッチ方式において、温度の冷却の実現は、温度の低下のレギュレーションなく(すなわち、課された温度傾斜なく;それ故に、初期および最終の温度のみがコントロールされる)または少なくとも1回の低下温度勾配に従って、特に、5~30℃/時、より詳細には8~15℃/時の低下温度勾配に従って、あるいはほかに、連続して一緒に繋がった両方の方式に従って、すなわち、冷却の1つの部分についてコントロールなくかつ冷却の別の部分について低下温度勾配に従ってなされてよい。別の例によると、冷却は、簡単に、吸着工程b)からの冷却されることになる流れ、すなわち、吸着工程e1)から得られた吸着-前処理済みモノマー流出物または吸着-前処理済みモノマー流出物を含んでいる混合物および結晶化溶媒の、冷却されるべき流れの流量に有利には適合した容積を有しており、0~100℃、好ましくは5~80℃、好適には10~70℃の温度に保持された貯蔵器への導入に起因してよい。
【0136】
固体生成セクションが有利に操作される際の圧力は、0.00001~1.00MPa、好ましくは0.0001~0.50MPa、好適には0.001~0.20MPaである。本発明の特定の実施形態によると、固体生成セクションは、真空下で、好ましくは0.0001~0.10MPa、優先的には0.001~0.01MPaの圧力で操作される。別の特定の実施形態によると、固体生成セクションは、有利には、ジャケット付き反応器内において、0.01~1.00MPa、好ましくは0.05~0.20MPaの圧力、好適には大気圧、すなわち0.10MPaで操作される。
【0137】
有利には、固体生成セクションの目的は、少なくとも一部において、ジエステルモノマー、好ましくはBHET、特に、サブ工程e1)から得られた吸着-前処理済みモノマー流出物中に存在するものを固体にすること、すなわち、結晶化または沈殿させることにある。それ故に、固体生成セクションは、沈殿または結晶化の段階を含み、好ましくはそれらからなり、当業者に知られている任意の沈殿または結晶化の技術によってインプリメントされる。固体生成セクションは、好ましくは、結晶化のためのセクションであり、例えば冷却または濃縮によるセクションであり、これは、例えば、雑誌Techniques de l’Ingenieur, "Cristallisation industrielle - Aspects pratiques" [Industrial Crystallization - Practical Aspects], ref. J2788 V1において定義されているような、当業者に知られている任意の設備においてインプリメントされ、これに液体-固体分離が続く。
【0138】
本発明の好適な実施形態によると、水が、結晶化溶媒として、サブ工程e1)から得られた吸着-前処理済みモノマー流出物と混合され、固体生成セクションは、前記固体生成セクションから得られた流出物の温度が5~50℃、好ましくは10~40℃になるような条件下に操作される。
【0139】
本発明の別の好適な実施形態によると、導入されてサブ工程e1)から得られた吸着-前処理済みモノマー流出物と混合される結晶化溶媒は、エチレングリコールであり、固体生成セクションは、前記固体生成セクションから得られた流出物の温度が5~50℃、好ましくは10~40℃になるような条件下に操作される。
【0140】
有利には、固体生成のための、好ましくは結晶化による前記セクションは、1回または複数回の結晶化操作を含み、直列または並列で操作し、これは、バッチ式または連続式に、好ましくは連続式に行われる。
【0141】
固体生成セクションにより、ジエステルモノマーの固相と液相とを含んでいる不均質な流出物を得ることが可能となる。不均質な流出物は、有利には、固体-液体分離セクションに送られる。
【0142】
固体-液体分離セクションにおいて、ジエステルモノマー、好ましくは、BHETは、有利には固体の形態、特に結晶の形態にあり、このものは、サブ工程e1)の混合セクションに導入される溶媒の全部または一部と、固体生成セクションに任意選択に導入される結晶化溶媒とを含んでいる液相から分離される。固体-液体分離セクションは、有利には、当業者に知られている固体-液体分離の任意の手段、特に、少なくとも1個のろ過、デカンテーションおよび/または遠心分離のシステムをインプリメントする。こうして分離された固体ジエステルモノマーは、脱色精製済みジエステルモノマー流出物を構成し、液相は、使用済み溶媒流出物を構成する。
【0143】
本発明の特定の実施形態によると、固体形態で、好ましくはろ過または遠心分離によって回収された、脱色精製済みジエステルモノマー流出物は、さらに有利には、以下の操作の全部または一部を経てよく、予め規定された時系列順序なしに1回以上行われる:混合セクションまたは任意選択に固体生成セクションに給送する溶媒と同一またはそれとは異なる溶媒によるリンス;追加のろ過または遠心分離;当業者に知られている任意の方法、例えば、蒸発乾燥による残留溶媒の除去;成形、例えば粉末または細粒への成形;および固体の貯蔵。
【0144】
本発明の別の実施形態によると、脱色精製済みジエステルモノマー流出物は、固体-液体分離セクションにおいて、好ましくはろ過または遠心分離によって回収され、次いで、直接的に(すなわち、固体の貯蔵の段階なしで)、当業者に知られている重合工程に送られ、場合によっては、重合反応の前に、固体の精製済みジエステルモノマー流出物の水またはジオール流出物、例えばエチレングリコール流出物によるリンスの操作、好ましくは水によるリンスの操作を行い、続いて溶融の目的のためにリンス済み固体を加熱する。
【0145】
本発明の別の特定の実施形態によると、精製工程e)は、上記のように、結晶化サブ工程e2)と、その次の、吸着サブ工程e1)とを含んでよく、特に、以下の通りである:
- サブ工程e2)は、工程d)から得られた予備精製済みモノマー流出物と、任意選択に結晶化溶媒とを給送される;
- サブ工程e2)により固体が生じ、これは、サブ工程e1)に給送される;
- サブ工程e2)の終結の際に生じた固体は、サブ工程e1)の混合セクションの溶媒中に溶解させられて、溶液を得る;
- サブ工程e1)の混合セクションの出口のところで得られた溶液は、サブ工程e1)の1個または複数個の吸着セクションに給送する;
- 脱色精製済みジエステルモノマー流出物が液体の形態で得られ、脱色精製済みジエステルモノマーは、当業者に知られている方法のいずれか1つに従って沈殿および/または再結晶化可能であり、脱色精製済みジエステルモノマー流出物を固体の形態で得る。
【0146】
有利には、本発明による方法の終結の際に得られた、脱色精製済みジエステルモノマー流出物は、好ましくは、最低90重量%、優先的には最低95重量%、好適には最低98重量%のジエステルモノマー(すなわち、本発明による方法によって標的とされる生成物)、好ましくはBHETを含む。本発明による方法の終結の際に得られた、脱色精製済みジエステルモノマー流出物は、大いに有利には、5重量%未満、好ましくは1重量%未満、優先的には0.5重量%未満の、ジカルボン酸の少なくとも1種のジオールのダイマーまたはトリマーとのエステルのタイプの不純物、例えば、ジエチレングリコールから誘導されるエステル化合物(例えば、テレフタル酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル2-ヒドロキシエチル)を含む。
【0147】
大いに有利には、本発明による方法の終結の際に得られた、脱色精製済みジエステルモノマー流出物は、白色固体である。精製工程e)は、モノマー溶液の吸着による処理の段階と、その後の前記モノマーの結晶化の段階とを含み。精製工程e)により、工程d)から得られた予備精製済みジエステルモノマー流出物を十分に脱色することがこのように可能となる。具体的には、工程d)から得られた予備精製済みモノマー流出物中に存在する可能性のある染料は、固体生成操作の間に、吸着セクションにおいて吸着剤によって捕捉されたままであるか、または溶媒若しくは溶媒の混合物(サブ工程e1)において導入され、場合によってはサブ工程e2)において導入された溶媒)中に溶解されたままであり、それ故に、使用済み溶媒流出物中に濃縮される。
【0148】
本発明の方法の精製工程e)の終結の際に得られた、脱色精製済みジエステルモノマー流出物は、そのため有利には、見た目に白色固体である。
【0149】
工程e)の終結の際に得られた、脱色精製済みジエステルモノマー流出物物は、UV-可視分光法によって特徴付けられて、可視範囲、特に400~800nmにおける吸収帯の存在を確認するようにしてよい。この特徴付け方法によると、脱色精製済みジエステルモノマー流出物は、好ましくは、UV-可視分光法によって、特に、400~800nmにおいて、有利には、液体媒体中、すなわち、有利には、適切な溶媒中の溶解の後に、好ましくは、0.1質量%~10質量%で、周囲温度(典型的には15~30℃、特に20~25℃)にて、従来の研究室用卓上UV-可視分光法を用いて特徴付けられる。エタノールが適切な溶媒として用いられてよく、脱色精製済みジエステルモノマー流出物のサンプルの溶解を可能にする。1cmまたは1インチの光路長を有する従来のキュベットが用いられてよい。好ましくは、脱色精製済みジエステルモノマー流出物のUV-可視スペクトルは、エタノール中5質量%で調製された脱色精製済みジエステルモノマー流出物の溶液と1インチの光路長を有するキュベットとを用いて決定される。この方法によると、本発明による方法によって得られた脱色精製済みジエステルモノマー流出物が有利に示すスペクトルは、可視波長の範囲内、すなわち、400~800nmの範囲内に有意な吸収帯を一切表示しない(すなわち、バックグラウンドノイズと区別することができない)。
【0150】
工程e)の終結の際に得られた、脱色精製済みジエステルモノマー流出物は、ASTM D6290 2019に記載されるような色度測定法に従って特徴付けられてもよい。選ばれた光源は、光源D65であり、測定は、反射において、鏡面反射除外モード、10゜の標準観測者で行われる。測定は、CIE L*a*b*基準系で表される。色度測定法によると、本発明による方法によって得られた、脱色精製済みジエステルモノマー流出物は、有利には、以下を有するCIE L*a*b*基準系を示す:
- 明度(または輝度)パラメータL*;100に近い、より特定的には90.00超、好ましくは92.00超(100.00が最大である);
- パラメータa*(緑-赤軸に相当する);0に近い、より特定的には-1.50~+1.50、好ましくは-1.00~+1.00;および、
- パラメータb*(青-黄軸に相当する);0に近い、より特定的には-2.50~+2.50、より特定的には-1.00~+1.50。
【0151】
使用済み溶媒流出物は、サブ工程e1)の混合セクションに導入された溶媒および固体生成セクションに任意選択に導入された結晶化溶媒の全部または一部を含む。それは、有利には、染料および/または他の残留不純物を含む場合もある。好ましくは、使用済み溶媒流出物は、20重量%未満、優先的には15重量%未満、好適には10重量%未満、好適には5重量%未満のジエステルモノマー(すなわち、本発明による方法によって標的とされる生成物)、好ましくはBHETモノマーを含む。
【0152】
使用済み溶媒流出物は、次いで、サブ工程e1)の混合セクションまたは精製済み溶媒が解重合反応のために用いられたものと同一の性質のジオールである場合には本方法の工程a)および/またはb)のセクション、および/または場合によっては、結晶化溶媒としてセクションe2)のセクションにリサイクルされてよい。使用済み溶媒流出物は、少なくとも一部において、処理されて、特に、染料および/または不純物を、例えば吸着によって分離し、それ故に、精製済み溶媒を回収するようにしてもよく、これは、次いで、サブ工程e1)の混合セクションまたは精製済み溶媒が解重合反応のために用いられたものと同一の性質のジオールである場合には本方法の工程a)および/またはb)のセクション、および/または場合によっては、結晶化溶媒としてサブ工程e2)のセクションにリサイクルされてよい。使用済み溶媒流出物は、結晶化溶媒がサブ工程e2)において導入されかつ結晶化溶媒がサブ工程e1)の混合セクションに導入された溶媒と異なる場合に、染料および/または不純物の分離に加えて、溶媒の分離のための操作を、例えば、蒸留またはデカンテーションによって経て、2つの別個の溶媒を得るようにしてもよく、一方は、サブ工程e1)の混合セクションにリサイクルされることができ、他方は、サブ工程e2)の固体生成セクションにリサイクルされることができる。
【0153】
本発明による方法の終結の際に得られた脱色精製済みジエステルモノマー流出物は、それ故に、対応するバージン樹脂と区別することができないポリエステルポリマー、好ましくはPETまたはPETベースのコポリエステルを生じさせるするという目的のために、当業者に知られている重合工程に直接的にまたは間接的に給送してよい。前記重合工程は、脱色精製済みジエステルモノマー流出物に加えて、標的とされる(コ)ポリマーに応じてエチレングリコール、テレフタル酸若しくはテレフタル酸ジメチル、または任意の他のモノマーを給送されてもよい。
【0154】
以下の図面および実施例は、本発明を例証するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0155】
(実施例)
以下の実施例において、コンディション調整の工程a)、解重合の工程b)、ジオールの分離の工程c)およびモノマーの分離の工程d)は、同一であり、以下に記載される。唯一のバリエーションは、実施例1(本発明に合致する)および実施例2(本発明に合致しない)の方法の間の精製工程e)にある。
【0156】
20重量%の不透明PETを特に含んでいるポリエステル供給原料を収集および選別のチャネルから処理のために取得する。
【0157】
前記ポリエステル供給原料は、不透明PETを20重量%で含んでおり、不透明PETは、それ自体で、TiO2顔料を6.2重量%含有している。前記ポリエステル供給原料のフレーク4kg/時を250℃の温度にし、次いで、エチレングリコール(MEG)11.5kg/時と共に第1の撹拌型反応器に注入し、第1の撹拌型反応器を250℃に維持し、次いで、第2および第3の撹拌型反応器に注入し、220℃に維持する。反応器を、0.4MPaの圧力に維持する。反応器内の液体容積対反応器に入る液体容積流量の合計の比として定義される滞留時間を、第1の反応器中20分に、第2および第3の反応器中2.1時間に設定する。第3の反応器の出口のところで、反応流出物は、非常に優勢にはエチレングリコール(MEG)から構成された(すなわち、95重量%以上のMEGを含む)ジオール67.7重量%と、非常に優勢にはビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)から構成された(すなわち、95重量%以上のBHETを含む)ジエステルモノマー25.8重量%と、TiO20.32重量%と、とりわけBHETのダイマーおよび/またはオリゴマーを含む重質化合物6.1重量%とからなる。
【0158】
反応流出物中に存在するジオールの分離を、180℃から120℃の範囲にわたる温度および0.04MPaから0.004MPaへの圧力の一連の2個のフラッシュ容器と、その次の175℃および0.0005MPaで操作される薄膜式エバポレータとにおける蒸発によって行う。この蒸発工程の終わりに、10.46kg/時のMEGリッチ流れと、5.02kg/時のBHETリッチ液体流れを回収する。ジオール流出物に相当するMEGリッチ流れを蒸留による精製の工程に送って、精製済みMEG流れを生じさせ、これを少なくとも一方では解重合反応器にリサイクルしてよい。液体モノマー流出物に相当するBHETリッチ液体流れは、79.6重量%のBHETジエステルモノマーと、0.6重量%のMEGと、1.0重量%のTiO2と、18.8重量%の重質化合物とからなり、重質化合物は、BHETのダイマーを含む。
【0159】
BHETリッチ液体流れを、次いで、短経路蒸留とも呼ばれる短経路エバポレータに注入し、これを、20Paの圧力で操作する。215℃の高温の油によりBHETの蒸発が可能となり、これを引き続き短経路エバポレータ内で130℃にて凝縮させて、予備精製済みBHETの液体流れ(予備精製済みモノマー流出物に相当する)を得る。短経路エバポレータ中の滞留時間は、1分である。予備精製済みBHETの液体流れは、3.8kg/時の流量を示し、これを短経路エバポレータから留出物として回収する。それは、99重量%のBHETジエステルモノマーからなり、痕跡量のTiO2さえも一切含まない。1.19kg/時の流量を有する重質残留物を短経路エバポレータから残留物として回収し、これは、16.7重量%のBHETジエステルモノマーと、79.2重量%のBHETオリゴマーと、4.1重量%のTiO2とからなる。重質残留物の一部をパージしてよい一方で、他の部分を反応工程にリサイクルしてよい。
【0160】
(実施例1-本発明に合致)
(吸着サブ工程e1))
99重量%のBHETジエステルを含有している予備精製済みBHETの液体流れを0.15MPaに加圧し、3.8kg/時の重量による流量で混合セクションに給送し、混合セクションに水の流れも給送する。水の給送流量の調節を、予備精製済みBHETの前記液体流れが混合物(予備精製済みBHETの液体流れ+水)の50重量%を示すように行う。前記混合セクションを90℃で0.15MPaの圧力にて操作する。
【0161】
得られた混合物を、次いで、吸着セクションに給送する。吸着セクションは、2基のカラムからなり、それぞれ、吸着剤を充填している(すなわち、吸着剤の固定床を有している)。吸着セクションを90℃で0.15MPaの圧力にて操作する。一方のカラムをオンストリーム(つまり、操作中)にし、他方のカラムをインリザーブに留める。2基のカラムを充填するために用いられる吸着剤は、直径が0.8mmである円柱形押出物からなる活性炭(Cabot Norit社製の参照番号ROY 0.8)である。
【0162】
滞留時間を一方のカラム中40分に固定する。空のカラムの線速度は、2.4cm/分である。
【0163】
(結晶化サブ工程e2))
吸着サブ工程e1)の終結の際に得られた液体流れのバッチ780gを、撹拌槽内で水と、60℃の温度に達するまで混合し、サブ工程e1)において導入された予備精製済みBHETの液体流れの重量による量が最終混合物の20重量%を表し、かつ、サブ工程e1)およびサブ工程e2)において導入された水の量が、最終混合物の80重量%を示すようにする。混合物を撹拌下に保ちつつ1時間かけて50℃に冷却し、次いで、12℃/時の勾配に従って20℃に徐々に冷却する。
【0164】
冷却の過程で固体粒子が形成され、主として水を含んでいる液体中固体の懸濁液を与える。20℃で得られた懸濁液を、次いで、ろ過して、固体ケークおよび着色液体ろ液を回収する。固体ケークを1.5Lの水によりリンスする。リンス済み固体ケークを回収し、次いで、真空下に40℃で終夜乾燥させて、99重量%のBHETジエステルを含有している白色の固体320gを与える(液体クロマトグラフィーによる組成の決定)。
【0165】
回収された固体は白色である。UV-可視分光法による測定を、得られた白色の固体をエタノール中に5重量%で溶解させたサンプルにより調製されたBHET溶液上で実行する。UV-可視分光法による測定をHach DR3900研究室用卓上UV-可視分光計を用いて1インチの光路長を有するキュベット内で実行する。得られたUV-可視スペクトルは、400~800nmの波長範囲において有意な吸収帯を一切表示しない(
図3を参照)。
【0166】
色度測定も、得られた固体BHET上でASTM D6290 2019の方法に従って実行する。固体BHET生成物のサンプル5gを乳鉢中での粉砕により粉々にする。粉砕したBHET5gを、34mmの直径を有する光学品質ガラスから作られたキュベット中に置く。測定を、Konica Minolta CM-2300d測色計およびSpectraMagic NXソフトウェアを用いて、以下の条件下に、反射において実行する:光源D65、鏡面反射を除く、10゜の標準観測者。測定を、CIE L*a*b*基準系において表す。サンプル上で実行された10回の測定で得られた値を平均することによって結果を得る。結果を表1に示す。
【0167】
(実施例2-本発明に合致しない)
短経路蒸留の出口のところで得られた予備精製済みBHETの液体流れのバッチ780gを、撹拌槽内で水と混合し、予備精製済みBHET液体流れ20重量%および水80重量%の最終含有率、および最終温度60℃を達成する。混合物を撹拌下に保ちつつ1時間かけて50℃に冷却し、次いで、12℃/時下方の勾配に従って20℃に徐々に冷却する。
【0168】
冷却の過程で固体粒子が形成され、非常に優勢には水から構成されている液体中の固体の懸濁液を与える。懸濁液を、次いで、ろ過して、固体ケークおよび着色液状ろ液を回収する。固体ケークを1.5Lの水によりリンスする。リンス済み固体ケークを回収し、次いで、真空下に40℃で終夜乾燥させて、99重量%のBHETジエステルを含有している白色の固体320gを与える。
【0169】
UV-可視分光法による測定を、得られた白色BHET固体をエタノール中に5重量%で溶解させたサンプルにより調製されたBHET溶液上で実行する。UV-可視分光法による測定をHach DR3900研究室用卓上UV-可視分光計を用いて1インチの光路長を有するキュベット内で実行する。得られたUV-可視スペクトルは、400~800nmの波長範囲において有意な吸収帯を表示する(
図3を参照)。
【0170】
色度測定も、得られた固体BHET上でASTM D6290 2019の方法に従って実行する。固体BHET生成物のサンプル5gを乳鉢中で粉砕した後に粉々にする。BHETの5gを、34mmの直径を有する光学品質ガラスから作られたキュベット中に置く。測定を、Konica Minolta CM-2300d測色計およびSpectraMagic NXソフトウェアを用いて、以下の条件下に、反射において実行する:光源D65、鏡面反射を除く、10゜の標準観測者。測定を、CIE L*a*b*基準系において表す。サンプル上で実行された10回の測定で得られた値を平均することによって結果を得る。結果を表1に提示する。
【0171】
【0172】
実施例1および2に記載された方法から得られたBHET上で実行された(UV-可視分光分析法および色度測定法による)測定の結果は、以下のことを示す:
- 実施例1の方法から得られたBHETについて可視範囲(400-800nm)に吸収帯が存在しないのに対し、実施例2の方法から得られたBHETは、400~800nmの波長範囲において有意な吸収帯を表示する(
図3を参照);
- 実施例1に記載された方法による生成物の取得を反映しているL
*a
*b
*色度測定値は、実施例2に記載された方法によって得られたもの「より白い」か、または、最も小さいL
*a
*b
*色度測定値は、標的にされるL
*a
*b
*値に一致しており、理由は以下の通りである;
- 実施例1の方法により得られた固体BHETのL
*値は、93.02であり、これは、92.00より大きく、実施例2の方法により得られた固体BHETの値(L
*=90.02)よりも大きい、
- 実施例1(合致)の方法により得られた固体BHETのa
*およびb
*の値は、それぞれに0.03および1.00であり、これらは、実施例2の方法から得られた固体BHETについて得られた値(a
*=1.21およびb
*=2.22)よりも絶対値で0に近い。
【0173】
それ故に、吸着工程と、その次の結晶化工程とによるBHETの精製の工程を含む、本発明に合致している実施例1に記載される方法により、精製工程として結晶化工程のみを含む実施例2(非合致)に記載された方法の終結の際に得られたBHETよりも良好な品質(より良好に脱色されるため)の脱色精製済みBHETを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【
図3】実施例1(灰色)および実施例2(黒色)に記載された方法によって得られた固体について決定されたUV-可視スペクトルを示す。
【国際調査報告】