(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】アルカリ金属アルコキシド生成用の三室電解槽
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20210101AFI20240621BHJP
C25B 1/14 20060101ALI20240621BHJP
C25B 13/07 20210101ALI20240621BHJP
C25B 9/21 20210101ALI20240621BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C25B9/00 Z
C25B1/14
C25B13/07
C25B9/21
C25B15/08 302
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577605
(86)(22)【出願日】2022-06-22
(85)【翻訳文提出日】2024-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2022066937
(87)【国際公開番号】W WO2023274794
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ハインリック レーンズバーグ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ホルン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーン クラウス エリック ウルフ
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AB25
4K021BA01
4K021BC01
4K021CA15
4K021DB06
4K021DB40
4K021DC15
(57)【要約】
本発明は、第一態様において、3つの室を有し、中間室が、陽イオン透過性の固体電解質、例えばNaSICONによって陰極室から仕切られ、拡散バリア、例えば陽イオンまたは陰イオン選択性膜によって陽極室から仕切られている電解槽に関する。
本発明は、中間室が機械的攪拌装置を備えることを特徴とする。
本発明による電解槽は、電解中に電解槽の中間室に濃度勾配が形成され、局所的にpH値が低下し、固体電解質の損傷につながるという課題を解決する。機械的撹拌装置を使用すると、電解中に中間室内の電解質溶液を撹拌することができる。これにより、中間室内の電解質溶液が混合され、pH勾配の形成が妨げられる。
第二態様において、本発明は、本発明による電解槽内でアルカリ金属アルコキシド溶液を生成する方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの陽極室K
A<101>と、少なくとも1つの陰極室K
K<102>と、少なくとも1つの介装中間室K
M<103>と、を備える電解槽E<100>であり、
前記K
A<101>は、陽極電極E
A<104>と、出口A
KA<106>と、を備え、
前記K
K<102>は、陰極電極E
K<105>と、入口Z
KK<107>と、出口A
KK<109>と、を備え、
前記K
M<103>は、入口Z
KM<108>を備え、拡散バリアD<110> によってK
A<101>から仕切られ、アルカリ金属陽イオン伝導性固体電解質F
K<111>によってK
K<102>から仕切られ、
前記K
M<103>とK
A<101>は、K
M<103>からK
A<101>へ液体を送ることができる接続V
AM<112>によって互いに接続されており、
前記中間室K
M<103>は、機械的撹拌装置<120>を備える、電解槽E<100>。
【請求項2】
前記アルカリ金属イオン伝導性固体電解質F
K<111>は、
式 M
I
1+2w+x-y+zM
II
wM
III
xZr
IV
2-w-x-yM
V
y(SiO
4)
z(PO
4)
3-z
(式中、M
Iは、Na
+およびLi
+から選択され、
M
IIは、二価の金属陽イオンであり、
M
IIIは、三価の金属陽イオンであり、
M
Vは、5価の金属陽イオンであり、
ローマ字の指数I、II、III、IV、Vは、各金属陽イオンが存在する酸化数を示し、
w、x、y、zは実数で、0≦x<2、0≦y<2、0≦w<2、0≦z<3であり、
w、x、y、zは、1+2w+x-y+z≧0かつ2-w-x-y≧0となるように選択される。)
の構造を有する、請求項1記載の電解槽E<100>。
【請求項3】
前記機械的攪拌装置<120>は、前記アルカリ金属陽イオン伝導性固体電解質F
K<111>と平行に配置されたプロペラを備える、請求項1または請求項2記載の電解槽E<100>。
【請求項4】
前記接続V
AM<112>は、前記電解槽E<100>内に形成されている、請求項1~請求項3のいずれか一項記載の電解槽E<100>。
【請求項5】
前記機械的攪拌装置<120>は、前記中間室K
M内の容積の1%~99%の割合ζを占めており、
ζ=[(V
O-V
M)/V
O]*100
(式中、V
Oは、前記中間室K
M<103>が前記機械的攪拌装置<120>を備えない場合に、前記中間室K
M<103>に収容可能な最大液体容積であり、
V
Mは、前記中間室K
M<103>が前記機械的攪拌装置<120>を備える場合に、前記中間室K
M<103>に収容可能な最大液体容積である。)
である、請求項1~請求項4のいずれか一項記載の電解槽E<100>。
【請求項6】
前記機械的攪拌装置<120>は、明細書記載のスレッド試験に従って、前記入口Z
KM<108>と前記接続V
AM<112>間の前記中間室K
M内における直接経路を遮断する、
請求項1~請求項5のいずれか一項記載の電解槽E<100>。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか一項記載の電解槽E<100>内で、アルカリ金属アルコキシドXORのアルコールROH溶液L
1<115>を生成する方法であり、
同時進行する以下:
(a)前記アルコールROHを含む溶液L
2<113>を前記K
K<102>に通す工程、
(b)陽イオンとしてXを含む塩Sの中性またはアルカリ性水溶液L
3<114>を前記K
M<103>に通し、次いで前記V
AM<112>を経由させ、前記K
A<101>に通すと同時に、前記機械的撹拌装置 <120>が前記K
M内で前記溶液L
3<114>を攪拌する工程、
(c)前記E
A<104>と前記E
K<105>間に電圧を印加する工程
を含み、
これにより、前記出口A
KK<109>に、前記L
2<113>よりも前記XORの濃度が高い前記溶液L
1<115>を供給し、
前記出口A
KA<106>に、前記L
3<114>よりも前記Sの濃度が低い、前記Sの水溶液L
4<116>を供給し、
前記Xは、アルカリ金属陽イオンであり、前記Rは、炭素数1~4のアルキル基である、方法。
【請求項8】
前記Xは、Li
+、Na
+、K
+からなる群から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記Sは、前記Xのハロゲン化物、硫酸塩、亜硫酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩または炭酸塩である、請求項7または請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記Rは、メチルおよびエチルからなる群から選択される、請求項7~請求項9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記L
2<113>は、前記アルコールROHおよび前記アルカリ金属アルコキシドXORを含む、請求項7~請求項10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記L
2<113>中の前記アルコールROHに対する前記XORの質量比は、1:100~1:5の範囲内である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記L
1<115>中の前記XOR濃度は、前記L
2<113>中の前記XOR濃度より1.01~2.2倍高い、請求項11または請求項12記載の方法。
【請求項14】
20~70℃の温度および0.5~1.5バールの圧力で行われる、請求項7~請求項13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
前記機械的攪拌装置<120>の攪拌速度は、前記工程(b)の実施時に変動する、請求項7~請求項14のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一態様において、3つの室を有し、中間室が、陽イオン透過性の固体電解質、例えばNaSICONによって陰極室から仕切られ、拡散バリアによって陽極室から仕切られている電解槽に関する。
本発明は、中間室が機械的攪拌装置を備えることを特徴とする。
本発明による電解槽は、電解中に電解槽の中間室に濃度勾配が形成され、局所的にpH値が低下し、固体電解質の損傷につながるという課題を解決する。機械的撹拌装置を使用すると、電解中に中間室内の電解質溶液を撹拌することができる。これにより、中間室内の電解質溶液が混合され、pH勾配の形成が妨げられる。
第二態様において、本発明は、本発明による電解槽内でアルカリ金属アルコキシド溶液を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1.発明の背景
アルカリ金属アルコキシド溶液の電気化学的製造は、重要な工業プロセスであり、例えばドイツ特許出願公開第10360758号明細書、米国特許出願公開第2006/0226022号明細書および国際公開第2005/059205号パンフレットに記載されている。これらのプロセスの原理は、陽極室にアルカリ金属塩の溶液、例えば塩化ナトリウムまたはNaOHが存在し、陰極室に問題のアルコールまたは問題のアルカリ金属アルコキシドを低濃度で含むアルコール溶液、例えばナトリウムメトキシドまたはナトリウムエトキシドが存在する電解槽に反映されている。陰極室と陽極室は、使用されるアルカリ金属イオンを伝導するセラミック、例えばNaSICON、またはカリウムもしくはリチウムの類似物によって仕切られている。電流を流すと、アルカリ金属の塩化物塩を使用した場合、陽極で塩素が形成され、陰極で水素とアルコキシドイオンが形成される。アルカリ金属イオンが、それに対して選択的なセラミックを介して、中間室から陰極室に移動することにより、電荷のバランスが保たれる。中間室と陽極室間の電荷のバランスは、陽イオン交換膜が使用される場合は陽イオンの移動によって、または陰イオン交換膜が使用される場合は陰イオンの移動によって、または非特異的拡散バリアが使用される場合は両イオン型の移動によって保たれる。これにより、陰極室内のアルカリ金属アルコキシド濃度が上昇し、陽極液中のナトリウムイオン濃度が低下する。
【0003】
NaSICON固体電解質は、他の化合物の電気化学的製造にも使用される。
【0004】
国際公開第2014/008410号パンフレットには、チタン元素または希土類を製造するための電解プロセスが記載されている。このプロセスの原理は、塩化チタンをTiO2および対応する酸から生成し、これをナトリウムアルコキシドと反応させてチタンアルコキシドおよびNaClを得て、最終的にチタン元素およびナトリウムアルコキシドに電気分解することである。
【0005】
国際公開第2007/082092号パンフレットおよび国際公開第2009/059315号パンフレットには、NaSICONを用いて電解的に生成されたアルコキシドの助けを借りて、まずトリグリセリドを対応するアルカリ金属トリグリセリドに転化し、第2段階において電解的に生成されたプロトンと反応させ、グリセロールおよびそれぞれのアルカリ金属水酸化物を得る、バイオディーゼルの製造方法が記載されている。
【0006】
したがって、従来技術には、イオン透過性層、例えばNaSICON固体電解質を備えた電解槽内で実施するプロセスが記載されている。しかし、これらの固体電解質には通常、水性酸に対する長期安定性に欠けるという欠点がある。これは、陽極室での電解中、酸化プロセス(例えば、不均化または酸素生成によりハロゲンを生成する場合)の結果としてpHが低下するという点で課題がある。これらの酸性条件は、このプロセスを工業規模で使用できないほどNaSICON固体電解質を攻撃する。この課題に対処するために、従来技術にさまざまなアプローチが記載されている。
【0007】
例えば、従来技術において三室槽が提案されている。これらは、例えば米国特許第6221225号明細書など、電気透析の分野で知られている。
【0008】
例えば、国際公開第2012/048032号パンフレットおよび米国特許出願公開第2010/0044242号明細書には、そのような三室槽内での次亜塩素酸ナトリウムおよび類似の塩素化合物を調製するための電気化学的プロセスが記載されている。槽の陰極室と中間室は、陽イオン透過性の固体電解質、例えばNaSICONによって仕切られている。これを酸性陽極液から保護するために、中間室には、例えば陰極室からの溶液が供給される。米国特許出願公開第2010/0044242号明細書には、
図6において、次亜塩素酸ナトリウムを得るために、室の外側で中間室からの溶液を陽極室からの溶液と混合する可能性についても記載されている。
【0009】
このような槽は、アルカリ金属アルコキシドを生成または精製するために従来技術においても提案されている。
【0010】
例えば、米国特許第5389211号明細書には、陽イオン選択性固体電解質または非イオン性隔壁によって室が互いに区切られた三室槽を使用する、アルコキシド溶液の精製方法が記載されている。中間室は、陰極室からの精製アルコキシドまたは水酸化物溶液が、陽極室からの汚染溶液と混ざるのを防ぐために、緩衝室として使用される。
【0011】
ドイツ特許出願公開第4233191号明細書には、多室槽および複数槽の積層体内での塩およびアルコキシドからのアルコキシドの電解的回収が記載されている。
【0012】
国際公開第2008/076327号パンフレットには、アルカリ金属アルコキシドの製造方法が記載されている。これは、三室槽を使用し、その中間室にはアルカリ金属アルコキシドが充填されている(例えば、国際公開第2008/076327号パンフレットの段落[0008]および段落[0067]を参照)。これにより、中間室と陰極室を隔てる固体電解質が、電解の過程でより酸性になる、陽極室に存在する溶液から保護される。同様の構成が国際公開第2009/073062号パンフレットに記載されている。しかしながら、この構成には、アルカリ金属アルコキシド溶液が所望の生成物であるのに、これが消費され、緩衝液として継続的に汚染されるという欠点がある。国際公開第2008/076327号パンフレット記載のプロセスのさらなる欠点は、陰極室におけるアルコキシドの生成が、2つの膜または固体電解質を通るアルカリ金属イオンの拡散速度に左右されることである。これは、ひいてはアルコキシド生成の鈍化につながる。
【0013】
さらなる問題は、三室槽の幾何学的形状に起因している。このような室の中間室は、拡散バリアによって陽極室から仕切られ、イオン伝導性セラミックによって陰極室から仕切られている。これにより、電解中、pH勾配の進行とデッドボリュームが不可避的に生じる。これにより、イオン伝導性セラミックが損傷し、その結果、電解に必要な電圧が増加し、および/またはセラミックの破損につながる可能性がある。
【0014】
この影響は電解槽全体で生じるが、中間室はイオン伝導性セラミックによって境界されているため、pHの低下は中間室において特に重大である。ガスは通常、陽極と陰極で生成され、これらの室内では少なくともある程度の混合が生じる。対照的に、中間室ではそのような混合は起こらず、その中でpH勾配が進行する。この望ましくない影響は、送り出された塩水が一般に比較的ゆっくりと電解槽を通るという事実によって増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第10360758号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0226022号明細書
【特許文献3】国際公開第2005/059205号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2014/008410号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2007/082092号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2009/059315号パンフレット
【特許文献7】米国特許第6221225号明細書
【特許文献8】国際公開第2012/048032号パンフレット
【特許文献9】米国特許出願公開第2010/0044242号明細書
【特許文献10】米国特許第5389211号明細書
【特許文献11】ドイツ特許出願公開第4233191号明細書
【特許文献12】国際公開第2008/076327号パンフレット
【特許文献13】国際公開第2009/073062号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の目的は、アルカリ金属アルコキシドの電解的調製の改良法、およびそのような方法に特に適した電解室を提供することであった。これらは、前述の欠点を持たず、特に、pH勾配が形成される前の固体電解質の保護の向上と、従来技術と比較した使用反応物質の節約とを保証するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
2.発明の簡単な説明
驚くべきことだが、今回発見されたのは、本発明が取り組む課題を解決する電解槽およびプロセスである。
【0018】
本発明の第一態様では、電解槽E<100>は、少なくとも1つの陽極室KA<101>と、少なくとも1つの陰極室KK<102>と、少なくとも1つの介装中間室KM<103>と、を備え、
KA<101>は、陽極電極EA<104>と、出口AKA<106>と、を備え、
KK<102>は、陰極電極EK<105>と、入口ZKK<107>と、出口AKK<109>と、を備え、
KM<103>は、入口ZKM<108>を備え、拡散バリアD<110> によってKA<101>から仕切られ、アルカリ金属陽イオン伝導性固体電解質FK<111>によってKK<102>から仕切られ、
KM<103>とKA<101>は、KM<103>からKA<101>へ液体を送ることができる接続VAM<112>によって互いに接続されており、
中間室KM<103>は、機械的攪拌装置<120>を備えている。
【0019】
第二態様では、本発明は、
本発明の第一態様による電解槽E<100>内で、アルカリ金属アルコキシドXORのアルコールROH溶液L1<115>を生成する方法であり、
同時進行する以下:
(a)アルコールROHを含む溶液L2<113>をKK<102>に通す工程、
(b)陽イオンとしてXを含む塩Sの中性またはアルカリ性水溶液L3<114>をKM<103>に通し、次いでVAM<112>を経由させ、KA<101>に通すと同時に、機械的攪拌装置<120>がKM<103>内で溶液L3<114>を攪拌する工程、
(c)EA<104>とEK<105>間に電圧を印加する工程
を含み、
これにより、出口AKK<109>に、L2<113>よりもXORの濃度が高い溶液L1<115>を供給し、
出口AKA<106>に、L3<114>よりもSの濃度が低い、Sの水溶液L4<116>を供給し、
Xは、アルカリ金属陽イオンであり、Rは、炭素数1~4のアルキル基である方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明による電解槽<100>および本発明による方法の好ましい実施形態を示す。
【
図2】
図2は、本発明による電解槽のさらなる実施形態と、
図1に示されるものに対応する本発明による方法とを示す。
【0021】
図1は、本発明による電解槽<100>および本発明による方法の好ましい実施形態を示す。三室槽E<100>は、陰極室K
K<102>と、陽極室K
A<101>と、介装中間室K
M<103>と、を備える。
【0022】
陰極室KK<102>は、陰極電極EK<105>と、入口ZKK<107>と、出口AKK<109>と、を備える。
陽極室KA<101>は、陽極電極EA<104>と、出口AKA<106>と、を備え、接続VAM<112>を介して中間室KM<103>に接続されている。
中間室KM<103>は、入口ZKM<108>を備える。
三室は、三室槽E<100>の外壁<117>によって境界されている。陰極室KK<102>も、ナトリウムイオンを選択的に透過するNaSICON固体電解質FK<111>によって中間室KM<103>から仕切られている。中間室KM<103>はさらに、拡散バリアD<110>によって陽極室KA<101>から仕切られている。NaSICON固体電解質FK<111>および拡散バリアD<110>は、三室槽E<100>の深さおよび高さ方向の全体にわたって延びている。拡散バリアD<110>はガラス製である。
【0023】
図1による実施形態では、接続V
AM<112>は、電解槽E<100>の外側に、特にチューブまたはホースにより形成され、その材料は、ゴム、金属およびプラスチックから選択され得る。接続V
AM<112>を介して、三室槽E<100>の外壁W
A<117>の外側において、液体を中間室K
M<103>から陽極室K
A<101>に送ることが可能である。接続V
AM<112>は、中間室K
M<103>の底部において電解槽E<100>の外壁W
A<117>を貫通する出口A
KM<118>と、陽極室K
A<101>の底部において電解槽E<100>の外壁W
A<117>を貫通する入口Z
KA<119>と、を繋いでいる。
【0024】
pH10.5の塩化ナトリウム水溶液L3<114>が、入口ZKM<108>を経由して、重力方向に中間室KM<103>に導入される。中間室KM<103>からの出口AKM<118>と陽極室KA<101>への入口ZKA<119>との間に形成された接続VAM<112>は、中間室KM<103>を陽極室KA<101>へ接続する。塩化ナトリウム溶液L3<114>は、この接続VAM<112>を通って中間室KM<103>から陽極室KA<101>に送られる。
ナトリウムメトキシドのメタノール溶液L2<113>は、入口ZKK<107>を経由して陰極室KK<102>に送られる。
【0025】
同時に、陰極電極EK<105>と陽極電極EA<104>との間に電圧が印加される。これにより、電解質L2<113>中のメタノールが還元され、陰極室KK<102>にメトキシドとH2が発生する(CH3OH+e-→CH3O-+1/2H2)。同時に、ナトリウムイオンが、中間室KM<103>からNaSICON固体電解質FK<111>を通って陰極室KK<102>に拡散する。全体として、これにより、陰極室KK<102>内のナトリウムメトキシド濃度が上昇し、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液L1<115>が得られ、そのナトリウムメトキシド濃度はL2<113>と比較して上昇している。
【0026】
陽極室KA<101>では、塩素イオンの酸化が起こり、塩素分子が生成される(Cl-→1/2Cl2+e-)。出口AKA<106>では、水溶液L4<116>が得られ、このNaCl含量はL3<114>と比較して低減されている。水中の塩素ガス(Cl2)は、Cl2+H2O→HOCl+HClの反応により、次亜塩素酸および塩酸を生成し、さらに水分子との酸性反応を起こす。酸性は、NaSICON固体電解質<111>を損傷するが、本発明による構成によって陽極室KA<101>に限定され、したがって、電解槽E<100>内ではNaSICON固体電解質FK<111>から遠ざけられる。これにより、その寿命が大幅に延びる。
【0027】
中間室KM<103>には、電動モーター<122>によって作動するプロペラ撹拌機<121>の形の機械撹拌装置<120>もある。そのプロペラ撹拌機は、伝送路<124>を介して電気モーターに接続されている。プロペラ撹拌機<121>は、中間室KM<103>内に自由に吊り下げられているが、外壁WA<117>の内側に固定されていてもよい。伝送路<124>は、中間室KM<103>の外壁の切欠き<125>を通って電解槽E<100>内に達している。入口ZKM<108>から供給された水溶液L3<114>が、プロペラ撹拌機<121>の作動により混合され、渦流および乱流が生じる。溶液中のこの乱流L3<114>が、電解の進行時に中間室KM<103>内にpH勾配が形成されるのを防ぎ、そして、NaSICON固体電解質<111>に直接隣接する溶液のpH低下が進行するのを防ぐ。これにより、NaSICON固体電解質<111>の耐用年数がさらに長くなる。
【0028】
図2は、本発明による電解槽のさらなる実施形態と、
図1に示されるものに対応する本発明による方法とを示す。違いは、機械的攪拌装置<120>が、
図1記載のプロペラ撹拌機<121>ではなく、中間室K
M<103>の外側に配置された磁気撹拌系<123-2>で操作可能な磁気撹拌バー<123-1>を備えている点である。
図1に示す実施形態と同様に、入口Z
KM<108>から供給された水溶液L
3<114>は、この機械的撹拌装置<120>によって渦流される。溶液L
3<114>中のこの乱流は、電解の進行時に中間室K
M<103>内に形成されたpH勾配を破壊する。
【0029】
4.発明の詳細な説明
4.1 電解槽E
本発明の第一態様は、電解槽E<100>に関する。本発明の第一態様における電解槽E<100>は、少なくとも1つの陽極室KA<101>と、少なくとも1つの陰極室KK<102>と、少なくとも1つの介装中間室KM<103>と、を備える。これには、2つ以上の陽極室KA<101>および/または陰極室KK<102>および/または中間室KM<103>を有する電解槽E<100>も含まれる。これらの室がモジュールの形態で互いに繋がれているこのような電解槽は、例えばドイツ特許出願公開第258143号明細書および米国特許出願公開第2006/0226022号明細書に記載されている。
【0030】
陽極室KA<101>は、陽極電極EA<104>を備える。この種の有用な陽極電極EA<104>は、本発明の第二態様における本発明による方法の条件下で安定である、当業者によく知られているすべての電極である。これらは、特に、国際公開第2014/008410号パンフレットの段落[024]またはドイツ特許出願公開第10360758号明細書の段落[031]に記載されている。この電極EA<104>は、単層から構成されてもよく、またはそれぞれが穿孔または拡張処理されていてもよい互いに平行な複数の平面層から構成されてもよい。陽極電極EA<104>は、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、ニッケル、コバルト、タングステン酸ニッケル、チタン酸ニッケル、チタンまたはKovar(登録商標)(個々の成分が好ましくは以下の通りである鉄/ニッケル/コバルト合金:鉄54質量%、ニッケル29質量%、コバルト17質量%)などの担体上に担持された貴金属(特に白金など)からなる群から選択される材料を含む。さらに可能な陽極材料は、特にステンレス鋼、鉛、グラファイト、炭化タングステン、二ホウ化チタンである。好ましくは、陽極電極EA<104>は、酸化ルテニウム/酸化イリジウムで被覆されたチタン陽極(RuO2+IrO2/Ti)を含む。
【0031】
陰極室KK<102>は、陰極電極EK<105>を備える。この種の有用な陰極電極EK<105>は、条件下で安定である当業者によく知られたすべての電極である。これらは、特に、国際公開第2014/008410号パンフレットの段落[025]またはドイツ特許出願公開第10360758号明細書の段落[030]に記載されている。この電極EK<105>は、メッシュウール、三次元マトリックス構造および「ボール」からなる群から選択され得る。 陰極電極EK<105>は、特に、鋼、ニッケル、銅、白金、白金メッキ金属、パラジウム、炭素担持パラジウム、チタンからなる群から選択される材料を含む。好ましくは、EK<105>はニッケルを含む。
【0032】
少なくとも1つの中間室KM<103>が、陽極室KA<101>と陰極室KK<102>との間に存在する。
【0033】
電解槽E<100>は通常、外壁WA<117>を有する。外壁WA<117>は、鋼、好ましくはゴム引き鋼、プラスチック、特にTelene(登録商標)(熱硬化性ポリジシクロペンタジエン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PVC-C(後塩素化ポリ塩化ビニル)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)からなる群から選択される材料から作製される。WA<117>は、入口および出口用に特に穿孔処理されていてよい。WA<117>内には、少なくとも1つの陽極室KA<101>と、少なくとも1つの陰極室KK<102>と、少なくとも1つの介装中間室KM<103>とがある。
【0034】
KM<103>は、拡散バリアD<110>によってKA<101>から、アルカリ金属陽イオン伝導性固体電解質FK<111>によってKK<102>から仕切られている。
【0035】
拡散バリアD<110>については、本発明の第二態様における本発明による方法の条件下で安定なすべての材料を使用することができ、陽極室KA<101>内に存在する液体から中間室KM<103>へのプロトンの移動を防止または遅延させることができる。
【0036】
使用される拡散バリアD<110>は、特に、非イオン特異性隔壁または特定のイオンに対して透過性の膜である。拡散バリアD<110>は、好ましくは非イオン特異性隔壁である。
【0037】
非イオン特異性隔壁の材料は、特に、織物(特に繊維織物または金属織物である)、ガラス(特に焼結ガラスまたはガラスフリットである)、セラミック(特にセラミックフリット)、膜ダイアフラムからなる群から選択され、より好ましくはガラスである。
【0038】
拡散バリアD<110>が「特定のイオンに対して透過性の膜」である場合、本発明によれば、それぞれの膜は、他のイオンに優先して特定のイオンが拡散するのを促進することを意味する。より具体的には、これが意味するのは、特定の電荷タイプのイオンが、その反対電荷のイオンに優先して拡散するのを促進する膜である。よりいっそう好ましくは、特定のイオンに対して透過性の膜はまた、ある電荷タイプを有する特定のイオンが、同じ電荷タイプを有する他のイオンに優先して拡散するのを促進する。
【0039】
拡散バリアD<110>が「特定のイオンに対して透過性の膜」である場合、拡散バリアD<110>は、特に、陰イオン伝導性膜または陽イオン伝導性膜である。
【0040】
本発明によれば、陰イオン伝導性膜は、陰イオンを選択的に伝導する膜であり、好ましくは特定の陰イオンを選択的に伝導する膜である。つまり、それらは、陽イオン、特にプロトンの拡散よりも陰イオンの拡散を促進する。よりいっそう好ましくは、それらは、特定の陰イオンの拡散を、他の陰イオンの拡散に優先して、さらに促進する。
【0041】
本発明によれば、陽イオン伝導性膜は、陽イオンを選択的に伝導する膜であり、好ましくは特定の陽イオンを選択的に伝導する膜である。つまり、それらは、陰イオンの拡散よりも陽イオンの拡散を促進する。よりいっそう好ましくは、それらは、特定の陽イオンの拡散を、他の陽イオンの拡散に優先して、さらに促進する。より好ましくは、プロトンに優先して、プロトンではない陽イオンの拡散、より好ましくはナトリウム陽イオンの拡散を促進する。
【0042】
「特定のイオンXの拡散を、他のイオンYの拡散に優先して促進する」とは、より具体的には、当該膜における所定温度でのイオンタイプXの拡散係数(単位:m2/秒)が、当該膜におけるイオンタイプYの拡散係数よりも10倍、好ましくは100倍、好ましくは1,000倍高いことを意味する。
【0043】
拡散バリアD<110>が「特定のイオンに対して透過性の膜」である場合、陽極室KA<101>から中間室KM<103>へのプロトンの拡散を特に効率的に防ぐために、拡散バリアD<110>は、陰イオン伝導性膜であることが好ましい。
【0044】
使用される陰イオン伝導性膜は、特に、塩Sに包含される陰イオンに対して選択的な膜である。そのような膜は当業者に知られており、当業者によって使用されることができる。
【0045】
塩Sは、好ましくは、Xのハロゲン化物、硫酸塩、亜硫酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩または炭酸塩であり、さらに好ましくはハロゲン化物である。
【0046】
ハロゲン化物は、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物である。最も好ましいハロゲン化物は、塩化物である。
【0047】
使用される陰イオン伝導性膜は、好ましくは、ハロゲン化物、好ましくは塩化物に対して選択的な膜である。
【0048】
陰イオン伝導性膜は、例えば、M.A. Hickner、A.M. Herring、E.B. Coughlin、高分子化学ジャーナル第B部:高分子物理学2013、51、1727~1735頁、C.G. Arges、V. Ramani、P.N. Pintauro、電気化学会インターフェース2010、19、31~35頁、国際公開第2007/048712号パンフレット、およびVolkmar M. Schmidt、教科書「電気化学工学:基礎、反応技術、プロセス最適化」初版(2003年10月8日)の181頁に記載されている。
【0049】
よりいっそう好ましくは、使用される陰イオン伝導性膜は、ポリエチレン、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルケトン、ポリスチレン、ポリプロピレン、およびポリパーフルオロエチレンなどのフッ素化膜、好ましくはポリスチレンから特に選択される有機ポリマーである。これらは、-NH3
+、-NRH2
+、-NR3
+、=NR+、-PR3
+から選択される共有結合した官能基を有する。 式中、Rは、好ましくは1~20個の炭素原子を有するアルキル基、または他の陽イオン性基である。それらは、-NH3
+、-NRH2
+および-NR3
+から選択され、より好ましくは-NH3
+および-NR3
+から選択され、よりいっそう好ましくは-NR3
+である共有結合した官能基を有することが好ましい。
【0050】
拡散バリアD<110>が陽イオン伝導性膜である場合、それは、特に、塩Sに包含される陽イオンに対して選択的な膜である。よりいっそう好ましくは、拡散バリアD<110>は、アルカリ金属陽イオン伝導性膜であり、よりいっそう好ましくはカリウムおよび/またはナトリウムイオン伝導性膜であり、最も好ましくはナトリウムイオン伝導性膜である。
【0051】
陽イオン伝導性膜は、例えば、Volkmar M. Schmidt、教科書「電気化学工学:基礎、反応技術、プロセス最適化」初版(2003年10月8日)の181頁に記載されている。
【0052】
よりいっそう好ましくは、使用される陽イオン伝導性膜は、ポリエチレン、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルケトン、ポリスチレン、ポリプロピレン、およびポリパーフルオロエチレンなどのフッ素化膜、好ましくはポリスチレンおよびポリパーフルオロエチレンから特に選択される有機ポリマーである。これらは、-SO3
-、-COO-、-PO3
2-および-PO2H-、好ましくは-SO3
-から選択される共有結合した官能基を有する(ドイツ特許出願公開第102010062804号明細書、米国特許第4,831,146号明細書に記載)。
【0053】
これは、例えば、スルホン化ポリパーフルオロエチレン(Nafion(登録商標)、CAS番号:31175-20-9)であり得る。これらは、例えば、国際公開第2008/076327号パンフレットの段落[058]、米国特許出願公開第2010/0044242号明細書の段落[0042]、または米国特許出願公開第2016/0204459号明細書から当業者に知られており、Nafion(登録商標)、Aciplex(登録商標)F、Flemion(登録商標)、Neosepta(登録商標)、Ultrex(登録商標)、PC-SK(登録商標)の商品名で市販されている。Neosepta(登録商標)膜は、例えば、S.A.Mareev、D.Yu.Butylskii、N.D.Pismenskaya、C.Larchet、L.Dammak、V.V.Nikonenko、膜科学ジャーナル2018、563、768~776頁に記載されている。
【0054】
陽イオン伝導性膜が拡散バリアD<110>として使用される場合、これは、例えばスルホン酸基で官能化されたポリマー、特に下記の式PNAFIONのものであり得る。式中、nおよびmは、独立して、1から106までの整数、好ましくは10から105までの整数、より好ましくは102から104までの整数である。
【0055】
【0056】
有用なアルカリ金属陽イオン伝導性固体電解質FK<111>は、陽イオン、特にアルカリ金属陽イオン、よりいっそう好ましくはナトリウム陽イオンを、中間室KM<103>から陰極室KK<102>へ輸送できるすべての固体電解質である。このような固体電解質は当業者に知られており、例えば、ドイツ特許出願公開第102015013155号明細書、国際公開第2012/048032号明細書の段落[0035]、[0039]、[0040]、米国特許出願公開第2010/0044242号明細書の段落[0040]、[0041]、ドイツ特許出願公開第10360758号明細書の段落[014]~[025]に記載されている。これらは、NaSICON、LiSICON、KSICONの名前で市販されている。ナトリウムイオン伝導性固体電解質FK<111>が好ましく、NaSICON構造を有することがさらに好ましい。本発明に従って使用可能なNaSICON構造は、例えば、N.Anantharamulu、K.Koteswara Rao、G.Rambabu、B.Vijaya Kumar、Velchuri Radha、M.Vithal、J Mater Sci2011、46、2821~2837頁にも記載されている。
【0057】
NaSICONは、好ましくは、下記式の構造を有する。
MI
1+2w+x-y+zMII
wMIII
xZrIV
2-w-x-yMV
y(SiO4)z(PO4)3-z
【0058】
式中、MIは、Na+、Li+から選択され、好ましくはNa+である。
MIIは、二価の金属陽イオンであり、好ましくはMg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Co2+、Ni2+から選択され、より好ましくはCo2+、Ni2+から選択される。
MIIIは、三価の金属陽イオンであり、好ましくはAl3+、Ga3+、Sc3+、La3+、Y3+、Gd3+、Sm3+、Lu3+、Fe3+、Cr3+から選択され、より好ましくはSc3+、La3+、Y3+、Gd3+、Sm3+から選択され、特に好ましくはSc3+、Y3+、La3+から選択される。
MVは、5価の金属陽イオンであり、好ましくはV5+、Nb5+、Ta5+から選択される。
【0059】
ローマ数字のI、II、III、IV、Vは、それぞれの金属陽イオンの酸化数を示している。
【0060】
w、x、y、zは実数であり、0≦x<2、0≦y<2、0≦w<2、0≦z<3であり、w、x、y、zは1+2w+x-y+z≧0かつ2-w-x-y≧0となるように選択される。
【0061】
本発明によれば、よりいっそう好ましくは、NaSICONは、式Na(1+v)Zr2SivP(3-v)O12の構造を有する。式中、vは、0≦v≦3の実数である。最も好ましくは、v=2.4である。
【0062】
陰極室KK<102>はまた、液体、例えば溶液L2<113>の陰極室KK<102>への添加と、そこに存在する液体、例えば溶液L1<115>の除去と、を可能にする入口ZKK<107>および出口AKK<109>を備える。入口ZKK<107>と出口AKK<109>は、溶液が陰極室KK<102>を流れる際、陰極電極EK<105>と接触するように、陰極室KK<102>に取り付けられている。これは、アルカリ金属アルコキシドXORのアルコールROH溶液L2<113>をKK<102>に通す際、本発明の第二態様で本発明による方法を実施して、出口AKK<109>で溶液L1<115>を得るために必要な条件である。
【0063】
陽極室KA<101>はまた、陽極室KA<101>内に存在する液体、例えば水溶液L4<106>の除去を可能にする出口AKA<106>を備える。さらに、中間室KM<103>は、入口ZKM<108>を備える。さらに、KA<101>とKM<103>は、液体をKM<103>からKA<101>へ送ることができる接続VAM<112>により互いに接続されている。その結果、溶液L3<114>は、入口ZKM<108>を経由してKM<103>に導入され、これは、KM<103>を通過し、次いでVAM<112>を経由して陽極室KA<101>に送られ、最後に陽極室KA<101>を通過する。VAM<112>と出口AKA<106>は、溶液L3<114>が陽極室KA<101>を流れる際、陽極電極EA<104>と接触するように、陽極室KA<101>に取り付けられている。これは、溶液L3<114>が最初にKM<103、次にVAM<112>、次にKA<101>を通る際、第二態様で本発明による方法を実施して、出口AKA<106>で水溶液L4<116>を得るために必要な条件である。
【0064】
入口ZKK<107>、ZKM<108>、ZKA<119>および出口AKK<109>、AKA<106>、AKM<118>は、当業者に知られている方法によって電解槽E<100>に取り付けられ得る。
【0065】
接続VAM<112>は、電解槽E<100>内および/または電解槽E<100>の外側、好ましくは電解槽E<100>内に形成され得る。
【0066】
接続VAM<112>が電解槽E<100>内に形成される場合、接続VAM<112>は、拡散バリアD<110>内の少なくとも1つの穿孔により形成されることが好ましい。
【0067】
接続VAM<112>が電解槽E<100>の外側に形成される場合、電解槽E<100>の外側に延びるKM<103>およびKA<101>の接続により、形成されることが好ましい。
特にその中で、外壁WA<117>を貫通する出口AKM<118>は、中間室KM<103>内、好ましくは中間室KM<103>の底部に形成され、入口ZKM<108>は、中間室KM<103>の上端に位置していることがより好ましい。外壁WA<117>を貫通する入口ZKA<119>は、陽極室KA<101>内、好ましくは陽極室KA<101>の底部に形成される。これらは、導管、例えばパイプまたはホース、好ましくはゴムおよびプラスチックから選択される材料を含むものにより接続される。そして、出口AKA<106>は、陽極室KA<101>の上端に位置していることがより好ましい。
【0068】
「中間室KM<103>の底部にある出口AKM<118>」とは、溶液L3<114>が重力方向に中間室KM<103>から出るように、出口AKM<118>が電解槽E<100>に取り付けられていることを意味する。
【0069】
「陽極室KA<101>の底部にある入口ZKA<119>」とは、溶液L3<114>が重力に逆らって陽極室KA<101>に入るように、入口ZKA<119>が電解槽E<100>に取り付けられていることを意味する。
【0070】
「中間室KM<103>の上端にある入口ZKM<108>」とは、溶液L3<114>が重力方向に中間室KM<103>に入るように、入口ZKM<108>が電解槽E<100>に取り付けられていることを意味する。
【0071】
「陽極室KA<101>の上端にある出口AKA<106>」とは、溶液L4<116>が重力に逆らって陽極室KA<101>から出るように、出口AKA<106>が電解槽E<100>に取り付けられていることを意味する。
【0072】
この実施形態は、出口AKM<118>が外壁WA<117>により中間室KM<103>の底部に形成され、入口ZKA<119>が外壁WA<117>により陽極室KA<101>の底部に形成される場合に特に有利であり、したがって好ましい。この構成により、特に簡単な方法で、陽極室KA内で生成されたガスを、L4<116>とともに、それらをさらに分離するために、陽極室KA<101>から除去することが可能となる。
【0073】
特に、接続V
AM<112>が電解槽E<100>の外側に形成される場合、
図1により具体的に示すように、Z
KM<108>とA
KM<118>は、中間室K
M<103>の外壁W
A<117>の両端に配置される。(つまり、電解槽E<100>の下端にZ
KM<108>、電解槽E<100>の上端にA
KM<118>、またはその逆。)そして、Z
KA<119>とA
KA<106>は、陽極室K
A<101>の外壁W
A<117>の両端に配置される。(つまり、電解槽E<100>の下端にZ
KA<119>、電解槽E<100>の上端にA
KA<106>、またはその逆。)この配置により、L
3<114>は、2つの室K
M<103>およびK
A<101>を必ず通過する。Z
KA<119>とZ
KM<108>を電解槽E<100>の同じ側に形成することが可能であり、その場合、A
KM<118>とA
KA<106>も自動的に電解槽E<100>の同じ側に形成される。あるいは、
図1に示すように、Z
KA<119>とZ
KM<108>を電解槽E<100>の両側に形成することも可能であり、その場合、A
KM<118>とA
KA<106>も自動的に電解槽E<100>の両側に形成される。
【0074】
接続V
AM<112>が電解槽E<100>内に形成される場合、これは特に、電解槽E<100>の上端または底部、好ましくは
図2に示すような上端である、電解槽E<100>の一方の側(「A側」)に実装され得る。そして、A側には、入口Z
KM<108>と出口A
KA<106>とがあり、拡散バリアD<110>がこの側(「A側」)から電解槽E<100>に向かって延びているが、電解セルE<100>のA側と反対の側(「B側」)には完全には届いていない。つまり、B側は、電解槽E<100>の底部または上端である。同時に、拡散バリアD<110>は、三室槽E<100>の高さの50%以上、好ましくは三室槽E<100>の高さの60%~99%、より好ましくは三室槽E<100>の高さの70%~95%、よりいっそう好ましくは三室槽E<100>の高さの80%~90%、さらに好ましくは三室槽E<100>の高さの85%に及んでいる。拡散バリアD<110>は、三室漕E<100>のB側に接していないので、拡散バリアD<110>と三室槽E<100>のB側の外壁W
A<117>との間には隙間が生じる。この場合、その隙間が接続V
AM<112>である。この形状により、L
3<114>は、2つの室K
M<103>およびK
A<101>を必ず通過する。
【0075】
これらの実施形態により、塩水溶液L3<114>が、陽極電極EA<104>と接触する前に、酸感受性固体電解質を通過して流れ、その結果、酸が形成されることが最も確実になる。
【0076】
本発明によれば、「電解槽E<100>の底部」とは、電解槽Eにおいて溶液(例えば、
図1のA
KM<118>の場合にはL
3<114>)が重力と同じ方向に電解槽Eから流れ出る側、または電解槽Eにおいて溶液(例えば、
図1および
図2のZ
KK<107>の場合にはL
2<113>、および
図1のA
KA<119>の場合にはL
3<114>)が重量に逆らって電解槽Eに供給される側である。
【0077】
本発明によれば、「電解槽Eの上端」とは、電解槽Eにおいて溶液(例えば、
図1および
図2中、A
KA<106>の場合にはL
4<116>、およびA
KK<109>の場合にはL
1<115>)が重量に逆らって電解槽Eから流れ出る側、または電解槽Eにおいて溶液(例えば、
図1および
図2のZ
KM<108>の場合にはL
3<114>)が重力と同じ方向に電解槽Eに供給される側である。
【0078】
本発明によれば、中間室KMは、機械的撹拌装置<120>を備える。本発明によれば、機械的撹拌装置<120>は固体の材料である。この種の適切な機械的撹拌装置は、電解条件に対して十分に不活性である、当業者に公知のすべての撹拌装置である。
機械的撹拌装置<120>は、特に、ゴム、プラスチック、特にポリスチレン、ポリプロピレン、PVC、PVC-Cから選択されるもの、ガラス、磁器、金属から選択される少なくとも1つの材料を含む。金属は、特に、金属、またはチタン、鉄、モリブデン、クロム、ニッケル、白金、金、銀から選択される2つ以上の金属の合金、好ましくはチタン、鉄、モリブデン、クロム、ニッケル、白金、金、銀から選択される少なくとも2つの金属を含む合金、よりいっそう好ましくは、鉄の他に、チタン、モリブデン、クロム、ニッケル、白金、金、銀から選択される少なくとも1つのさらなる金属を含む鋼合金、最も好ましくはステンレス鋼である。
【0079】
よりいっそう好ましくは、機械的撹拌装置<120>は、磁気撹拌系で作動できるように磁性材料を含む。
【0080】
機械的撹拌装置<120>は、特に、プロペラ撹拌機、ピッチブレード撹拌機、ディスク撹拌機、タンブリングディスク撹拌機、中空ブレード撹拌機、インペラ撹拌機、クロスビーム撹拌機、アンカー撹拌機、パドル撹拌機、ゲート撹拌機、ヘリカル撹拌機、歯付きディスク撹拌機、小容量攪拌機から選択され、好ましくはプロペラ撹拌機である。
【0081】
機械的撹拌装置<120>は、典型的には、モーターによって駆動され、モーターは、好ましくは電解槽E<100>の外側の電気モーターである。例えば、これは、伝送路<124>を介してプロペラ撹拌機<121>に接続されたモーター<122>であり得る。
図1に示すように、伝送路<124>は、中間室K
M<103>の外壁にある切欠き<125>を通り、電解槽E<100>内に延びている。
【0082】
あるいは、
図2に示すような、中間室K
M<103>の外側に配置された磁気攪拌系<123-2>によって操作される磁気攪拌バー<123-1>のように、プロペラ攪拌機は磁性であってもよい。
【0083】
磁気撹拌装置<120>は、
図1に示すように、中間室K
M<103>内に緩く吊り下げられていてよい。
【0084】
あるいは、機械的撹拌装置<120>はまた、例えば固体電解質FK<111>、拡散バリアD<110>、または中間室KM<103>の内部を境界する外壁<117>に固定され得る。固定は、当業者に公知の方法、例えばねじ接続、クランプ、接着剤による接着(ポリマー接着剤、PVC接着剤)により行うことができる。
【0085】
本発明の第一態様による電解槽E<100>の好ましい実施形態では、機械的撹拌装置<120>は、アルカリ金属陽イオン伝導性固体電解質FK<111>と平行に配置されたプロペラを備える。
【0086】
本発明の第一態様による電解槽E<100>の好ましい実施形態では、機械的撹拌装置<120>は、中間室KM内の容積の1%~99%、より好ましくは2%~50%、よりいっそう好ましくは3%~40%、よりいっそう好ましくは4%~30%、よりいっそう好ましくは5%~20%、最も好ましくは6%~10%の割合ζを占めている。
【0087】
割合ζ(単位:%)は、ζ=[(VO-VM)/VO]*100により計算される。
【0088】
VOは、中間室KM<103>が機械的撹拌装置<120>を備えない場合に中間室KM<103>に収容できる液体、例えば電解質L3<114>の最大体積である。
VMは、中間室KM<103>が機械的撹拌装置<120>を備える場合に中間室KM<103>に収容できる液体、例えば電解質L3<114>の最大体積である。
【0089】
驚くべきことだが、中間室KM<103>内の機械的攪拌装置<120>により、本発明による方法の中で中間室KM<103>を通る電解質L3<114>に乱流および渦流が引き起こされることが分かっている。これにより、電解中のpH勾配形成が遅くなるかまたは完全に防止され、それにより酸感受性固体電解質FK<111>が保護され、それ故に電解の実行時間を長くしたり、電解槽の寿命を延ばしたりすることができる。
【0090】
機械的攪拌装置<120>は、中間室KM<103>と陽極室KA<101>とを通る電解質L3<114>の流れを充分可能にするかまたは完全に遮断しないように、中間室KM<103>に取り付けられることは明らかであろう。
本発明による電解槽の好ましい実施形態では、機械的攪拌装置<120>は、入口ZKM<108>と接続VAM<112>とが中間室KMにおいて直接的に繋がるのを遮断する。
【0091】
中間室KMにおいて入口ZKM<108>および接続VAM<112>間の直接的ルートが遮断されているか否かは、次の「スレッド試験」により確認される。
1.入口ZKM<108>から中間室KMに通じる開口部に糸を通し、接続VAM<112>から中間室KMに通じる開口部からその糸を出す。糸は、その端が中間室KMの外側まで伸びるほど十分に長い。
2.糸が切れることなくピンと張った状態になるように、糸の両端に反対方向の力をかける。
3.糸を中間室に入れ、工程1.および工程2.に従ってピンと張った時に、作動中の機械的攪拌装置に接触する糸が少なくとも1本ある場合、中間室KMにおいて入口ZKM<108>および接続VAM<112>間の直接的ルートを遮断するという要件は満たされている。
4.糸を中間室に入れ、工程1.および工程2.に従ってピンと張った時に、作動中の機械的攪拌装置に接触する糸がない場合、中間室KMにおいて入口ZKM<108>および接続VAM<112>間の直接的ルートを遮断するという要件は満たされていない。
【0092】
糸は、特に、ミシン糸(例えば、Gutermann社製)、釣り糸、紐から作製されている。
最も好ましくは、例えばHemingway社またはNexos社から販売されているような、直径0.2mmの釣り糸がスレッド試験に使用される。
【0093】
4.2 本発明による方法
本発明の第二態様による方法は、本発明の第一態様による電解槽E<100>において、アルカリ金属アルコキシドXORのアルコールROH溶液L1<115>を生成する方法である。
【0094】
本発明の第二態様による方法は、同時に進行する工程(a)、(b)および(c)を含んでいる。
【0095】
工程(a)において、アルコールROHを含む溶液L2<113>、好ましくはアルカリ金属アルコキシドXORとアルコールROHを含む溶液L2<113>は、KK<102>を通って送られる。Xは、アルカリ金属陽イオンであり、Rは炭素数1~4のアルキル基である。
【0096】
Xは、好ましくはLi+、K+、Na+からなる群から選択され、より好ましくはK+、Na+からなる群から選択される。最も好ましくは、X=Na+である。
【0097】
Rは、好ましくはn-プロピル、イソ-プロピル、エチルおよびメチルからなる群から選択され、より好ましくはエチルおよびメチルからなる群から選択される。Rは、最も好ましくはメチルである。
【0098】
溶液L2<113>は、水を含まないことが好ましい。本発明によれば、「水を含まない」とは、溶液L2<113>中のアルコールROHの重量に対する、溶液L2<113>中の水の重量(質量比)が、1:10以下、より好ましくは1:20以下、よりいっそう好ましくは1:100以下、さらに好ましくは0.5:100以下であることを意味する。
【0099】
溶液L2<113>がXORを含む場合、溶液L2<113>全体に対する、溶液L2<113>中のXORの質量割合は、特に、0重量%~30重量%を超え、好ましくは5重量%~20重量%、より好ましくは10重量%~20重量%、より好ましくは10重量%~15重量%、最も好ましくは13重量%~14重量%、非常に最も好ましくは13重量%である。
【0100】
溶液L2<113>がXORを含む場合、溶液L2<113>中のアルコールROHに対するXORの質量比は、特に、1:100~1:5の範囲、より好ましくは1:25~3:20の範囲、よりいっそう好ましくは1:12~1:8の範囲、さらに好ましくは1:10である。
【0101】
工程(b)において、陽イオンとしてXを含む塩Sの中性またはアルカリ性水溶液L3<114>は、KM<103>を通り、次いでVAM<112>を経由して、KA<101>を通ると同時に、機械的攪拌装置<120>は、KM<103>内で溶液L3<114>を攪拌する。
【0102】
塩Sは、好ましくはXのハロゲン化物、硫酸塩、亜硫酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩または炭酸塩であり、より好ましくはハロゲン化物である。
【0103】
ハロゲン化物は、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物である。最も好ましいハロゲン化物は、塩化物である。
【0104】
水溶液L3<114>のpHは、7.0以上、好ましくは7~12の範囲、より好ましくは8~11の範囲、よりいっそう好ましくは10~11、最も好ましくは10.5である。
【0105】
溶液L3<113>中の塩Sの質量割合は、溶液L3<113>全体に対し、好ましくは0重量%~20重量%を超える範囲、好ましくは1重量%~20重量%、より好ましくは5重量%~20重量%、よりいっそう好ましくは10重量%~20重量%、最も好ましくは20重量%である。
【0106】
次いで、工程(c)において、EA<104>とEK<105>との間に電圧が印加される。
【0107】
これにより、充電源から陽極へ電流が移動し、イオンを介して陰極へ電荷が移動し、そして最終的に電流が充電源に戻ってくる。充電源は当業者には知られており、典型的には、交流を直流に変換し、かつ変圧器を介して特定の電圧を生成することができる整流器である。
【0108】
これにより、次のような結果が生じる。
L1<115>中のXOR濃度がL2<113>中のXOR濃度よりも高い状態で、溶液L1<115>が出口AKK<109>で得られる。
L4<116>中のS濃度がL3<114>中のS濃度よりも低い状態で、Sの水溶液L4<116>が出口AKA<106>で得られる。
【0109】
特に、本発明の第二態様による方法では、電流密度(=中間室KM<103>内に存在する陽極液と接触する固体電解質の面積に対する、電解槽に供給される電流の比)が10~8000A/m2の範囲、より好ましくは100~2000A/m2の範囲、よりいっそう好ましくは300~800A/m2、さらに好ましくは494A/m2である電流が流れるように電圧を印加する。これは、当業者であれば標準的な方法で測定することができる。中間室KM<103>内に存在する陽極液と接触する固体電解質の面積は、特に、0.00001~10m2、好ましくは0.0001~2.5m2、より好ましくは0.0002~0.15m2、よりいっそう好ましくは2.83cm2である。
【0110】
本発明の第二態様による方法の工程(c)は、2つの室KM<103>およびKA<101>が少なくとも部分的にL3<114>で満たされ、KK<102>が少なくとも部分的にL2<113>で満たされているときに実施されることは明らかであろう。
【0111】
工程(c)においてEA<104>およびEK<105>間で電荷の移動が発生するという事実は、回路が保護される程度までL2<113>またはL3<114>が電極EA<104>およびEK<105>を覆うように、KK<102>、KM<103>、およびKA<101>が同時にL2<113>またはL3<114>で満たされていることを意味する。
【0112】
これは特に、L3<114>の液体ストリームがKM<103>、VAM<112>およびKA<101>を絶え間なく通り、L2<113>の液体ストリームがKK<102>を通り、L3<114>の液体ストリームが電極EA<104>を覆い、L2<113>の液体ストリームが電極EK<105>を少なくとも部分的に、好ましくは完全に覆う場合に当てはまる。
【0113】
中間室KM<103>内で機械的攪拌装置<120>により攪拌された電解質L3<114>のストリームのおかげで、この室内には典型的なpH勾配が形成されない。この効果は、機械的攪拌装置<120>が、中間室KMにおいて入口ZKM<108>と接続VAM<112>とが直接的に繋がるのを遮断する場合にさらに高まる。これは、機械的攪拌装置<120>が、中間室KM<103>を通る電解液L3<114>の流路内にあり、絶え間ない流れを中断するためである。
【0114】
この所望の効果は、本発明の第二態様による方法において、工程(b)の実施時に機械的攪拌装置<120>の攪拌速度を変化させることにより増大させることができ、これにより、pH勾配の形成を妨げるさらなる乱流を発生させることができる。
【0115】
さらに好ましい実施形態では、本発明の第二態様による方法は、連続的に実施される。すなわち、工程(c)のとおり電圧を印加しながら、工程(a)および工程(b)が連続的に実施される。
【0116】
工程(c)の実施後、L1<115>中のXOR濃度がL2<113>中のXOR濃度よりも高い状態で、溶液L1<115>が出口AKK<109>で得られる。L2<113>が既にXORを含んでいる場合、L1<115>中のXOR濃度は、L2<113>中のXOR濃度よりも、好ましくは1.01~2.2倍、より好ましくは1.04~1.8倍、よりいっそう好ましくは1.077~1.4倍、さらに好ましくは1.077~1.08倍、最も好ましくは1.077倍高く、L1<115>およびL2<113>中のXORの質量割合は、より好ましくは10重量%~20重量%、よりいっそう好ましくは13重量%~14重量%の範囲である。
【0117】
L4<116>中のS濃度がL3<114>中のS濃度よりも低い状態で、Sの水溶液L4<116>が出口AKA<106>で得られる。
【0118】
水溶液L3<114>中の陽イオンXの濃度は、好ましくは3.5~5モル/Lの範囲であり、より好ましくは4モル/Lである。水溶液L4<116>中の陽イオンXの濃度は、いずれの場合も、使用される水溶液L3<114>の濃度より0.5モル/L低いことがより好ましい。
【0119】
特に、本発明の第二態様による方法は、20℃~70℃、好ましくは35℃~65℃、より好ましくは35℃~60℃、よりいっそう好ましくは35℃~50℃の温度、かつ0.5バール~1.5バール、好ましくは0.9バール~1.1バール、より好ましくは1.0バールの圧力で実施される。
【0120】
本発明による方法を実施する過程で、水素が典型的には陰極室KK<102>内で生成され、これは出口AKK<109>を経由して、溶液L1<115>とともに槽から除去され得る。次いで、本発明の特定の実施形態では、水素と溶液L1<115>との混合物を、当業者に公知の方法により分離することができる。使用されるアルカリ金属化合物がハロゲン化物、特に塩化物である場合、塩素または他のハロゲンガスが陽極室KA<101>で生成される可能性があり、これは出口AKK<106>を経由して、溶液L4<116>とともに槽から除去され得る。さらに、酸素および/または二酸化炭素が生成される可能性もあり、これらも同様に除去され得る。次いで、本発明の特定の実施形態では、塩素、酸素および/またはCO2と溶液L4<116>との混合物を、当業者に公知の方法により分離することができる。次いで、塩素、酸素および/またはCO2ガスを溶液L4<116>から分離した後、当業者に公知の方法によりこれらを分離することも同様に可能である。
【0121】
これらの結果は、従来技術に照らして、驚くべきものであり、予期せぬものであった。本発明による方法は、従来技術のように、緩衝液として陰極部からのアルコキシド溶液を犠牲にする必要がなく、酸に不安定な固体電解質を腐食から守る。したがって、本発明による方法は、生成物溶液を中間室に使用して、全体の転化率が低減させる、国際公開第2008/076327号パンフレット記載の方法よりも効率的である。さらに、酸に不安定な固体電解質は、機械的攪拌装置<120>によってpH勾配の形成が防止されるため、安定化される。
【実施例】
【0122】
比較例1
20重量%のNaClの水溶液を陽極室に供給し、10重量%のメタノール性SM溶液を陰極室に供給する陰極プロセスにより、ナトリウムメトキシド(SM)を生成した。この電解槽は、中間室に機械的攪拌装置が無い点、すなわち、
図1に示すプロペラ撹拌機<121>が無い(したがって、モーター<122>および伝送路<124>も無し)点を除き、
図1に示すものに対応する3つの室から構成されていた。中間室および陽極室間の接続は、電解槽の底部に取り付けられたホースにより設置した。陽極室と中間室は、2.83cm
2の陰イオン交換膜AMX(トクヤマ社、ポリマー上のアンモニウム基)によって仕切った。陰極室と中間室は、面積2.83cm
2のNaSICON型セラミックによって仕切った。このセラミックは、式Na
3.4Zr
2.0Si
2.4P
0.6O
12の化学組成を有していた。
陽極液を、中間室を経由して陽極室へ移動させた。陽極液の流量は1L/時間、陰極液の流量は90mL/時間であり、0.14Aの電流を印加した。温度は35℃であった。電解を5Vの定電圧で500時間行った。長期間にわたり、中間室でpH勾配が発生することが観察された。これは、電解の過程でイオンが電極へ移動したことと、陽極でのさらなる反応において生成されたプロトンが拡散したこととに起因する。このpHの局所的上昇は、固体電解質を攻撃し、特に、稼働期間が非常に長い場合に固体電解質の腐食や破損を引き起こす可能性があるため、望ましくない。
【0123】
比較例2
1つの陽極室と1つの陰極室のみを備え、陽極室がNaSICON型セラミックによって陰極室から仕切られた二室槽を使用して、比較例1を再現した。したがって、この電解槽は中間室を備えていなかった。これは、比較例1と比較してセラミックがさらに速く腐食する点に現れており、これは電圧曲線の急速な上昇をもたらす。開始電圧値が5V未満である場合、100時間以内に20V超まで上昇する。
【0124】
実施例1
NASICON固体電解質と平行に配置されたプロペラ攪拌機を備える機械的攪拌装置を使用して、比較例1を再現した。この配置により、中間室を通る電解液の均一な流れが妨げられ、電解液に乱流が生じる。これにより、電解中にpH勾配が形成されにくくなる。
【0125】
実施例2
磁気攪拌系<123-2>によって操作される十字型磁気攪拌バー<123-1>を備える中間室KM<103>を使用して、比較例1を再現した。この配置も中間室を通る電解液の均一な流れを妨げ、乱流を引き起こす。これにより、電解中にpH勾配が形成されにくくなる。
【0126】
結果
本発明による方法において本発明による三室槽を使用すると、固体電解質の腐食が防止される。同時に、中間室のためにアルカリ金属アルコキシド生成物を犠牲にする必要がなく、電圧が一定に保たれる。2つの比較例1および比較例2の比較から明らかなこれらの利点は、本発明の驚くべき効果を強調している。
【0127】
さらに、中間室において電解液に渦流および乱流が生じると、進行する電解によって蓄積されたpH勾配が緩和または破壊され、電解室の延命につながる。この勾配は、特に稼働期間が非常に長い場合に、電解をより困難にし、腐食を引き起こし、最終的には固体電解質の破壊を引き起こす可能性がある。本発明の実施例1および実施例2による実施では、このpH勾配が破壊され、それにより、二室槽よりも三室槽によってもたらされる上述の利点に加えて、固体電解質の安定性がさらに高まる。
【国際調査報告】