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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】神経細胞を生産するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0793 20100101AFI20240621BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 5/079 20100101ALI20240621BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240621BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240621BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20240621BHJP
【FI】
C12N5/0793
C12N5/10
C12N5/079
C12N15/12
C12N15/09 100
C12N15/31
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577652
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 US2022033830
(87)【国際公開番号】W WO2022266346
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】63/211,693
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516056971
【氏名又は名称】キュー-ステート バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Q-State Biosciences, Inc.
【住所又は居所原語表記】179 Sidney Street, Cambridge, Massachusetts 02139 United States
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ, ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ジョシ, バイバブ
(72)【発明者】
【氏名】デンプシー, グラハム ティー.
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA46
(57)【要約】
本発明は、分化した神経細胞およびハイスループットアッセイに十分な工業的規模で多能性幹細胞(PSC)から分化した神経細胞を作製するための方法を提供する。本発明の方法は、数十億個のPSCおよび/またはPSCから分化した神経細胞を凍結保存し、複数の工程で拡大増殖させることを可能にする。したがって、PSCから神経細胞を生産するための既存の方法とは異なり、本発明は、アッセイにおいて使用するために新しい細胞株が必要とされるときには常に、新しい細胞株を作製するために最初からプロセスを開始する必要性をなくす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経細胞を生産するための方法であって、
多能性幹細胞を得る工程と;
前記細胞中に、神経細胞分化促進性転写因子をコードする誘導性遺伝要素を導入する工程と;
前記細胞中での前記遺伝要素の発現を誘導し、それにより、前記細胞の神経細胞への分化を引き起こす工程と;
前記神経細胞を凍結保存する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記転写因子がニューロゲニン-2である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記凍結保存された細胞を解凍することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
生物学的アッセイにおいて前記細胞を使用することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
解凍後に、前記神経細胞をグリア細胞と共培養する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記解凍された神経細胞を30~60日間培養して、成熟神経細胞を生産することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記解凍された神経細胞が、マルチウェルプレートのラミニン被覆されたウェルに播種および培養される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞が、ラミニンを補充された培地中で培養される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記培養中に、前記培地が1または複数の回数交換され、交換培地は、前記交換培地が置き換える前記培地と比較して低下した濃度のラミニンを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記解凍された神経細胞が、オルガノイド、3D細胞培養物、および成熟を誘導するために動物の脳内に前記神経細胞を注入することの1つまたは複数を使用して成熟される、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
ヌクレアーゼおよびガイドRNAをコードするプラスミドで前記多能性幹細胞を形質移入することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ガイドRNAおよびエンドヌクレアーゼが、少なくとも1つのノックインまたはノックアウト変異を引き起こすために使用される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記変異が、前記分化した神経細胞に、神経障害に関連する表現型を呈示させる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記変異がKCNQ2機能喪失変異である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記多能性幹細胞が、対象から得られた細胞に由来する人工多能性幹細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記分化した神経細胞が細胞活動の1または複数の光学レポーターおよび/または細胞活動の光学アクチュエータを発現するように、前記分化した神経細胞中に1または複数の追加の遺伝的構築物を導入することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記導入する工程より前に、前記多能性幹細胞を拡大増殖させる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記導入する工程より前に、前記得られた多能性幹細胞を凍結保存および解凍することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記誘導工程より前に、前記多能性幹細胞を拡大増殖させる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記誘導工程より前に、前記得られた多能性幹細胞を凍結保存および解凍することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
ニューロンのパターン形成の収量を増加させるために発生経路の小分子モジュレータ(例えば、二重SMAD阻害剤)との組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般に、生物学的アッセイにおいて使用するための神経細胞を生産することに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
健康なニューロンおよび疾患型ニューロンを研究することができるように、多能性幹細胞(PSC)のニューロンへの変換には、大きな科学的および医学的関心が存在する。いくつかのアプローチでは、統合失調症またはアルツハイマー病などのよく理解されていない疾患を有する患者由来の線維芽細胞を人工多能性幹細胞(iPSC)に変換し、次いでこれらの疾患の病因を研究するために人工多能性幹細胞(iPSC)をニューロンに分化させる。幹細胞および体細胞をニューロンに分化させるために利用可能な方法は満足のいくものではない。
【0003】
多くの既存の技術は、低い収率を示し、シナプスを形成する能力が限られたニューロンを作り出し、インビトロアッセイにわたって使用された場合、一貫性のない結果をもたらした。
【0004】
PSCの分化によってニューロンを生成することには、数ヶ月を要し得る。さらに、PSCから神経細胞を作製するための多くの既存の技術は、ハイスループットアッセイに十分な工業的規模でPSCまたは分化した神経細胞の培養を保存し、拡大させ、または延長する能力を含まない。したがって、神経細胞が必要とされるたびに、PSCを継続的に調製し、培養し、分化させなければならない。PSCから十分に成熟した神経細胞を調製するためのプロセス全体は数ヶ月を要し得るので、現在の技術は神経学的研究においてボトルネックを引き起こす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要旨
本発明は、分化した神経細胞およびハイスループットアッセイに十分な工業的規模で多能性幹細胞(PSC)から分化した神経細胞を作製するための方法を提供する。本発明の方法は、数十億個のPSCおよび/またはPSCから分化した神経細胞を凍結保存し、複数の工程で拡大増殖させることを可能にする。したがって、PSCから神経細胞を生産するための既存の方法とは異なり、本発明は、アッセイにおいて使用するために新しい細胞株が必要とされるときには常に、新しい細胞株を作製するために最初からプロセスを開始する必要性をなくす。PSCを神経細胞に分化させるための既存の方法は、典型的には完了するのに3ヶ月以上かかるので、本発明は神経学的研究におけるこのボトルネックを劇的に緩和する。実際、本発明は、分化した神経細胞を生産するフルタイム当量(FTE)コストを50%またはそれを超えて低減させ、試薬コストを少なくとも4倍低減させ、スループットを工業的規模のレベルまで高め得る。
【0006】
さらに、本発明の方法は、分化した神経細胞の培養を30~60日延長させる能力を提供する。これは、神経細胞の耐用寿命を延ばし、アッセイにおいて使用するための神経細胞の利用可能性を増大させる。さらに、培養を延長することは、十分な数の細胞が完全に成熟するための十分な時間を有することも保証する。例えば、内因性興奮性アッセイに使用される神経細胞は、成熟するのに約30日を要し得、シナプスアッセイのための神経細胞は、45日間以上を要し得る。
【0007】
さらに、本明細書でより詳細に説明されるように、本発明者らは、様々な神経状態を示すものを含む様々な神経細胞型を生産するために、本発明の方法が使用され得ることを発見した。これらの細胞は、アッセイにわたって一貫した反復可能な結果をもたらし、これらの細胞をモデルとして使用するのに特に適したものとする。さらに、凍結保存にもかかわらず、PSC由来の神経細胞は堅牢であり、解凍された後に80%を超える生存率で播種されることが示された。
【0008】
ある局面において、これらの分化した神経細胞は細胞性疾患モデルである。例えば、本発明は、PSCが、転写因子の強制的発現によって機能性ニューロンに分化され、その後、機能性ニューロンに神経活動の光遺伝学的レポーターまたはアクチュエータも発現させる方法を提供する。ある種の方法では、例えば遺伝子構築物を形質移入することによって、ニューロゲニン-2(Ngn2)またはNeuroD1などの転写因子をコードする遺伝子をPSC中に導入する。転写因子の発現は、細胞をニューロンに分化させる。さらにまたは別個に、細胞活動の1または複数の光学レポーターおよび/または光学アクチュエータ-を含む光遺伝学的構築物が、分化したニューロン中に導入される。得られた光遺伝学的ニューロンは良好な収率で作製され、容易にシナプスを形成して、様々な状態について健康なおよび疾患型のニューロンを研究するためのモデル系を提供することができる。
【0009】
ある局面において、細胞は疾患関連遺伝子型を有し、細胞の機能および表現型は光遺伝学的技術を使用して研究され得る。分化したニューロンは、ニューロン疾患に罹患している患者からの体細胞に由来し得る。あるいは、疾患関連遺伝子型は、例えばCRISPR/Cas9システムを使用するゲノム編集を通じてニューロンに導入される。
【0010】
ある局面において、本発明は、PSCから神経細胞を生産するための方法を提供する。例示的な方法は、多能性幹細胞を得ること、および神経細胞分化促進性転写因子(pro-neuronal transcription factor)をコードする誘導可能な遺伝要素を細胞内に導入することを含む。次いで、遺伝要素が誘導され、PSCを神経細胞に分化させる転写因子の発現を引き起こす。次いで、分化した神経細胞は凍結保存される。
【0011】
好ましくは、転写因子はニューロゲニン-2(Ngn2)である。
【0012】
本開示の方法では、凍結保存された神経細胞は解凍され、様々な神経アッセイにおいて使用され得る。例示的な方法では、解凍された神経細胞は培養される。解凍された細胞は、グリア細胞と共培養され得る。
【0013】
例示的な方法では、解凍された神経細胞は、成熟ニューロンを生産するために少なくとも30~60日間培養され、これはニューロンを生成するための既存の技術と比較して長期の培養に相当する。
【0014】
解凍された神経細胞は、マルチウェルプレートのラミニン被覆ウェルに播種され、培養され得る。ある局面において、細胞は、ラミニンが補充された培地中で培養される。この培地は、培養中に多数回交換され得、すべての交換は、低下したラミニン濃度を有する培地を使用する。本発明者らは、ラミニンを補充した培地で培養することが、プレートのウェルへの細胞の望まれない付着を低下させることを発見した。
【0015】
ある局面において、解凍された神経細胞は、オルガノイド、3D細胞培養物、および成熟を誘導するために動物の脳内に神経細胞を注入することの1つまたは複数を使用して成熟される。
【0016】
本発明の例示的な方法は、ヌクレアーゼおよびガイドRNAをコードするプラスミドで多能性幹細胞を形質移入することを含む。ガイドRNAおよびエンドヌクレアーゼは、例えば、得られた神経細胞に少なくとも1つのノックインまたはノックアウト変異を引き起こすために使用される。ある局面において、変異は、分化した神経細胞に、神経障害に関連する表現型を呈示させる。ある局面において、変異は、KCNQ2機能喪失変異である。
【0017】
ある方法において、多能性幹細胞は、対象から得られた細胞に由来する人工多能性幹細胞である。
【0018】
本発明は、分化した神経細胞が細胞活動の1または複数の光学レポーターおよび/または細胞活動の光学アクチュエータを発現するように、分化した神経細胞中に1または複数の追加の遺伝的構築物を導入することを含む方法も提供する。
【0019】
ある局面において、本発明の例示的な方法は、導入する工程および/または誘導する工程より前に多能性幹細胞を拡大増殖させることをさらに含む。ニューロン生成誘導性構築物で遺伝的に改変されたPSCを拡大増殖させるこの中間工程は、遺伝的発現構築物を既に含有するが未だ誘導されていない数百万個のPSCの生産を可能にし、それによってニューロンの誘導のための出発材料を数千倍増加させ、ニューロン生産の収量を数十億個のニューロンに到達させる。
【0020】
ある特定の方法において、ニューロン生成誘導性構築物による多能性幹細胞の変換効率は、神経細胞分化促進性転写因子(例えば、NGN2)の誘導を、TGF-βおよびBMP4シグナル伝達経路などの重要な発達経路の小分子阻害剤媒介性調節(二重SMAD阻害)と組み合わせることによって増強される。
【0021】
例示的な方法は、さらにまたは別個に、導入する工程および/または誘導する工程より前に多能性幹細胞を凍結保存および解凍することを含み得る。
図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、PSC由来の神経細胞を生産するための例示的な方法を図解する。
【0023】
図2図2は、本発明の方法の工程を実行するための自動ロボットプラットフォームを示す。
【0024】
図3図3は、誘導性構築物の概略図を提供する。
【0025】
図4図4は、PSC由来のニューロンの品質を特徴付けるための光学生理学の使用を記載する。
【0026】
図5図5は、約70億個のニューロンの単一の凍結保存されたロット由来の試薬を使用したハイスループット表現型スクリーニングにおけるPSC由来のニューロンの有用性の一例を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
本発明は、分化した神経細胞およびハイスループットアッセイに十分な工業的規模で多能性幹細胞(PSC)から分化した神経細胞を作製するための方法を提供する。本発明の方法は、数十億個のPSCおよび/またはPSCから分化した神経細胞を凍結保存し、複数の工程で拡大増殖させることを可能にする。
【0028】
ある局面において、分化した神経細胞は細胞性疾患モデルとして使用される。疾患モデルを作製するための本発明の例示的な方法は、単一の転写因子の強制的発現によってPSCを機能性ニューロンに変換すること、ならびにニューロンに神経活動の光遺伝学的レポーターおよび/またはアクチュエータを発現させることを含む。形質移入により多能性幹細胞中に導入されたニューロゲニン-2(Ngn2)などの転写因子が発現され、細胞をニューロンに分化させる。
【0029】
図1は、本発明のいくつかの局面を示す、PSCから神経細胞を生成するための例示的なワークフローを提供する。示されているように、PSC、この事例では、人工PSCに、誘導性遺伝的構築物が導入されている。示されているように、誘導性構築物は、Ngn2などの転写因子を含み得る。構築物の誘導は、PSCに転写因子を発現させ、これによりPSCを神経細胞に分化させる。図1では、神経細胞はNgn2ニューロンと表記されている。
【0030】
同じく図1に示されるように、本発明は、分化した神経細胞を凍結保存し、その後解凍する方法を初めて提供する。したがって、分化したニューロンは、工業的な量で保存され、解凍され、および特定のアッセイの要求に従って(例えば、光遺伝学的構築物を導入することによって)改変され得る。したがって、このように細胞を保存することにより、PSCを調製し、拡大増殖させ、誘導性構築物を導入および誘導し、PSCをニューロンに分化させる必要がなくなる。むしろ、本発明の神経細胞は、解凍され、操作され、オンデマンドで使用されることが可能である。
【0031】
解凍された後、神経細胞は、例えば、培養され、光学レポーターおよびアクチュエータで形質導入され、疾患モデルとしてバイオアッセイにおいて使用される。
【0032】
図1は、PSCが、誘導性構築物の導入前および/または導入後に拡大増殖および凍結保存され得ることも明らかにする。その結果、工業的な量の分化した神経細胞を迅速に分化させるために、分化の準備が整ったPSCが大量に調製および保存され得る。図1に示されるものなどのある局面においては、これにより、試料から人工PSCを調製し、拡大増殖させる必要がなくなる。
【0033】
さらに、PSCおよび/または分化した神経細胞を保存することによって、本発明は、複数のアッセイおよび回数にわたって同じ細胞株の使用を可能にする。これは、神経細胞をバイオアッセイで使用する場合に一貫性および再現性を確保するのに役立つ。
【0034】
ある局面において、PSC由来の神経細胞を作製するための方法は、例えばロボットプラットフォームを使用して1または複数の工程を実施するための生産自動化を組み入れる。
【0035】
図2は、PSC由来の神経細胞を凍結保存するための方法の概要を提供する。例示的な方法では、複数のピペットチャネルを有するニューロン生産(解離)モジュールを含むロボットプラットフォームを使用して、未成熟なPSC由来神経細胞の単一細胞懸濁液を作製する。示されるように、これらの神経細胞は予め凍結保存されていてもよい。モジュールは、細胞を解離させて懸濁液を作製する。遠心分離後、ロボットプラットフォームは第2の細胞懸濁液を調製する。次いで、プラットフォームは、懸濁液を、例えば、マルチウェルプレートにおける凍結保存および/または播種に適した所望の密度に希釈する。
【0036】
同じく図2に示されるように、神経播種および維持モジュールは、ニューロン付着のためのマルチウェルプレートを調製する。これは、例えば、ラミニン被覆を提供することを含み得る。次いで、モジュールは、プレートのウェルに細胞懸濁液を配置する。その後、モジュールは、1または複数の細胞培地交換を行う。培地にはラミニンを補充してもよく、ラミニンの濃度は各培地交換中に低下する。
【0037】
本開示の方法は、PSCを、例えば、運動ニューロン、阻害性ニューロン、感覚ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、中型有棘ニューロン、ニューロンと共培養されたヒトグリア、ミクログリア細胞および心筋細胞を含む多数の異なる神経細胞型に分化させるために使用され得る。
【0038】
ある局面において、細胞は、多能性幹細胞として、または対象からの体細胞(例えば、線維芽細胞または血液)として取得され得、体細胞は、その後、神経細胞への分化のために人工多能性幹細胞(iPSC)に変換することができる。
【0039】
例えば、本発明のある方法は、症状を有すると疑われる人から細胞を取得することを含む。遺伝性障害、精神的もしくは精神医学的症状、神経変性疾患または神経発達障害などの任意の適切な症状が評価され得る。さらに、本発明の方法および本明細書に記載されている分析パイプラインは、電気生理学的表現型が開発されている任意の症状に適用され得る。
【0040】
例示的な神経変性疾患には、アルツハイマー病の他、前頭側頭葉変性症、ハンチントン病、多発性硬化症、球脊髄性筋萎縮症および筋萎縮性側索硬化症が含まれる。例示的な精神および精神医学的症状には、統合失調症が含まれる。本発明の方法によって定義されるパイプラインによる分析に適した、神経発達障害を含む例示的な遺伝性障害には、コケイン症候群、ダウン症候群、ドラベ症候群、家族性自律神経失調症、脆弱X症候群、レット症候群、フリードライヒ運動失調症、ゴーシェ病、遺伝性痙性対麻痺、マシャド・ジョゼフ病(脊髄小脳失調症3型とも呼ばれる)、フェラン・マクダーミド症候群(PMDS)、ポリグルタミン(ポリQ)コードCAGリピート、巨大軸索ニューロパチー、シャルコー・マリー・トゥース病、脊髄小脳失調症を含む様々な失調症、脊髄性筋萎縮症、チモシー症候群、ならびにSTXBP1、SCN8AおよびKCNQ2を含む異なる遺伝子中の変異によって引き起こされる発達性およびてんかん性脳症の様々な遺伝型が含まれる。様々な症状についての電気生理学的表現型が開発され、文献に報告されている。
【0041】
1つの例示的な例において、線維芽細胞は、疾患を有することが知られているか、または疾患を有することが疑われる患者から採取され得る。任意の適切な細胞が取得され得、試料を取得する任意の適切な方法が使用され得る。ある局面において、皮膚線維芽細胞を得るために皮膚生検が行われる。患者の皮膚は洗浄され、局所麻酔薬の注射を与えられ得る。皮膚が完全に麻酔されたら、無菌3mmパンチを使用する。臨床医は、パンチが表皮を貫通するまで圧力を加え、「穿孔」動作を使用し得る。パンチは、3mmの円筒形の皮膚を抜き取る。臨床医は、鉗子を使用して、抜き取られた皮膚の真皮を持ち上げ、メスを使用してコアを切り取り得る。生検試料は、必要に応じたPBSによる洗浄およびPBSの蒸発の後、無菌BME線維芽細胞培地に移され得る。患者の生検部位は、(例えば、粘着性の包帯を用いて)手当てされる。細胞を取得するための適切な方法および装置は、米国特許第8,603,809号;米国特許第8,403,160号;米国特許第5,591,444号;米国特許出願公開第2012/0264623号;および米国特許出願公開第2012/0214236号に論述されており、これらの各々の内容は参照により組み入れられる。Freshney,Ed.,1986,Animal Cell Culture:A Practical Approach,IRL Press,Oxford England;およびFreshney,Ed.,1987,Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Techniques,Alan R.Liss&Co.,New Yorkで論述されているものなどの、生検標本を取得および増殖するのに適した任意の組織培養技術が使用され得、いずれも参照により組み入れられる。
【0042】
コケイン症候群は、ERCC6およびERCC8遺伝子中の変異によって引き起こされ、成長障害、神経系の発達障害、光感受性および早期老化によって特徴付けられる遺伝性障害である。コケイン症候群は、Andradeら、2012,Evidence for premature aging due to oxidative stress in iPSCs from Cockayne syndrome,Hum Mol Genet 21:3825-3834で論述されており、その内容は参照により組み入れられる。
【0043】
ダウン症候群は、21番染色体の第3のコピーの全部または一部の存在によって引き起こされ、成長遅滞、特徴的な顔貌および知的障害を伴う遺伝性障害である。ダウン症候群は、Shiら、2012 A human stem cell model of early Alzheimer’s disease pathology in Down syndrome,Sci Transl Med 4(124):124ra129で論述されており、その内容は参照により組み入れられる。
【0044】
乳児重症ミオクロニーてんかん(SMEI)としても知られているドラベ症候群は、乳児期に始まり、SCN1A遺伝子またはSCN9A、SCN2B、PCDH19もしくはGABRG2などのある種の他の遺伝子中の変異をしばしば伴う難治性てんかんの一形態である。ドラベ症候群は、Higurashiら、2013,A human Dravet syndrome model from patient induced pluripotent stem cells,Mol Brain 6:19で論述されており、その内容は参照により組み入れられる。
【0045】
家族性自律神経失調症は、IKBKAP遺伝子中の変異によって引き起こされる自律神経系の遺伝性障害であり、自律神経系および感覚神経系の感覚ニューロン、交感神経ニューロンおよびいくつかの副交感神経ニューロンの発達および生存に影響を及ぼし、疼痛に対する無感覚、涙液の産生不能、成長不良および不安定血圧を含む様々な症候をもたらす。家族性自律神経失調症は、Leeら、2009,Modelling pathogenesis and treatment of familial dysautonomia using patient-specific iPSC,Nature 461:402-406で論述されており、その内容は参照により組み入れられる。
【0046】
脆弱X症候群は、FMR1遺伝子中の変異によって引き起こされ、学習障害および認知障害を含む様々な発育上の問題を引き起こす遺伝性症状である。脆弱X症候群は、Liuら、2012,Signaling defects in iPSC-derived fragile X premutation neurons,Hum Mol Genet 21:3795-3805で論述されており、その内容は参照により組み入れられる。
【0047】
フリードライヒ運動失調症は、9番染色体上の遺伝子座の変異に起因する常染色体潜性運動失調症である。フリードライヒ運動失調症の運動失調症は、脊髄内の神経組織、特に(小脳との接続を介して)腕および脚の筋肉運動を指示するために不可欠な感覚ニューロンの変性から生じる。脊髄はより細くなり、神経細胞はそれらのミエリン鞘の一部を失う。フリードライヒ運動失調症は、Kuら、2010,Friedreich’s ataxia induced pluripotent stem cells model intergenerational GAA.TTC triplet repeat instability,Cell Stem Cell 7(5):631-7;Duら、2012,Role of mismatch repair enzymes in GAA.TTC triplet-repeat expansion in Friedreich ataxia induced pluripotent stem cells,J Biol Chem 287(35):29861-29872;およびHickら、2013,Neurons and cardiomyocytes derived from induced pluripotent stem cells as a model for mitochondrial defects in Friedreich’s ataxia,Dis Model Mech 6(3):608-21で論述されており、これらのそれぞれの内容は参照により組み入れられる。
【0048】
ゴーシェ病は、1番染色体上に位置する遺伝子中の潜性変異によって引き起こされる遺伝性疾患であり、体内に脂質が蓄積する。ゴーシェ病は、Mazzulliら、2011,Gaucher disease glucocerebrosidase and α-synuclein form a bidirectional pathogenic loop in synucleinopathies,Cell 146(1):37-52で論述されており、その内容は参照により組み入れられる。
【0049】
遺伝性痙性対麻痺(HSP)は、家族性痙性対麻痺、フランス植民地病またはシュトリュンペル・ロレイン病とも呼ばれ、下肢の硬直および収縮(痙縮)をもたらす軸索の変性および機能障害によって特徴付けられる一群の遺伝性疾患を指す。遺伝性痙性対麻痺は、Dentonら、2014,Loss of spastin function results in disease-specific axonal defects in human pluripotent stem cell-based models of hereditary spastic paraplegia,Stem Cells 32(2):414-23で論述されており、その内容は参照により組み入れられる。
【0050】
脊髄小脳失調症3型(SCA3)は、マシャド・ジョゼフ病としても知られており、後脳の緩やかな変性を特徴とする常染色体顕性遺伝性運動失調症である神経変性疾患である。マシャド・ジョゼフ病(脊髄小脳失調症3型とも呼ばれる)は、Kochら、2011,Excitation-induced ataxin-3 aggregation in neurons from patients with Machado-Joseph disease,Nature 480(7378):543-546で論述されており、その内容は参照により組み入れられる。
【0051】
フェラン・マクダーミド症候群(PMDS)は、神経タンパク質であるShank3中の変異またはShank3の欠失に起因する進行性の神経発達障害であり、発育遅延、発話障害および自閉症によって特徴付けられる。フェラン・マクダーミド症候群(PMDS)は、Shcheglovitovら、2013,SHANK3 and IGF1 restore synaptic deficits in neurons from 22q13 deletion syndrome patients,Nature 503(7475):267-71で論述されており、その内容は参照により組み入れられる。
【0052】
トリプレットリピート病は、ポリグルタミン(ポリQ)をコードするCAGリピートを特徴とする。トリプレットリピート病は、トリプレットリピート伸長によって引き起こされる一連の遺伝性障害を指し、この障害には、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、ハンチントン病、球脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳失調症1型、脊髄小脳失調症2型、脊髄小脳失調症3型またはマシャド・ジョゼフ病、脊髄小脳失調症6型、脊髄小脳失調症7型および脊髄小脳失調症17型、ならびに様々な他の運動失調症が含まれる。トリプレットリピート病は、HD iPSC Consortium,2012,Induced pluripotent stem cells from patients with Huntington’s disease show CAG-repeat-expansion-associated phenotypes.Cell Stem Cell 11(2):264-278で論述されており、その内容は参照により組み入れられる。
【0053】
巨大軸索ニューロパチーは、ニューロンの形状およびサイズを規定する構造的フレームワークを形成する神経線維の組織崩壊を引き起こす神経学的障害である。巨大軸索ニューロパチーは、タンパク質ギガキソニンをコードするGAN遺伝子中の変異に起因する。Mahammadら、2013,Giant axonal neuropathy-associated gigaxonin mutations impair intermediate filament protein degredation,J Clin Invest 123(5):1964-75を参照されたい。
【0054】
遺伝性運動感覚性ニューロパチー(HMSN)および腓骨筋萎縮症(PMA)としても知られるシャルコー・マリー・トゥース病は、筋肉および感覚の進行性喪失を特徴とする末梢神経系のいくつかの遺伝性障害を指す。例えば、Harel and Lupski,2014,Charcot Marie Tooth disease and pathways to molecular based therapies,Clin Genet DOI:10.1111/cge.12393を参照されたい。
【0055】
脊髄性筋萎縮症(SMA)は、運動ニューロンタンパク質の生存(SMN)をコードするSMN1遺伝子中の変異によって引き起こされる遺伝性疾患であり、そのニューロンの存在量の減少は、脊髄における神経細胞の死および系全体の萎縮をもたらす。脊髄性筋萎縮症は、Ebertら、2009,Induced pluripotent stem cells from a spinal muscular atrophy patient,Nature 457(7227):277-80;Sareenら、2012,Inhibition of apoptosis blocks human motor neuron cell death in a stem cell model of spinal muscular atrophy.PLoS One 7(6):e39113;およびCortiら、2012,Genetic correction of human induced pluripotent stem cells from patients with spinal muscular atrophy,Sci Transl Med 4(165):165ra162で論述されており、これらのそれぞれの内容は参照により組み入れられる。
【0056】
チモシー症候群は、CACNA1Cと呼ばれるCa(v)1.2カルシウムチャネル遺伝子中の変異から生じる遺伝性障害であり、異常に延長した心臓の「再分極」時間(QT間隔の延長)ならびに心臓のQT延長、心不整脈、構造的心臓欠陥、合指症および自閉症スペクトラム障害を含む他の神経学的および発育上の欠陥を含む一連の問題を特徴とする。チモシー症候群は、Kreyら、2013,Timothy syndrome is associated with activity-dependent dendritic retraction in rodent and human neurons,Nat Neurosci 16(2):201-9で論述されており、その内容は参照により組み入れられる。
【0057】
統合失調症および自閉症などの精神および精神医学的障害は、幹細胞モデルを介して研究するのに適した細胞および分子の欠陥を含み得、本明細書の方法を使用して単離することができるある種の遺伝的構成要素によって引き起こされ得るか、またはこれに関連し得る。統合失調症は、Brennandら、2011,Modelling schizophrenia using human induced pluripotent stem cells,Nature 473(7346):221-225;およびChiangら、2011,Integration-free induced pluripotent stem cells derived from schizophrenia patients with DISC1 mutation,Molecular Psych 16:358-360で論述されており、これらのそれぞれの内容は参照により組み入れられる。
【0058】
アルツハイマー病は、(ある種の遺伝子中の変異がこの障害に関連付けられているが)原因が不確定な神経変性疾患であり、認知症の最も一般的な形態の1つである。アルツハイマー病は、Israelら、2012,Probing sporadic and familial Alzheimer’s disease using induced pluripotent stem cells,Nature 482(7384):216-20;Muratoreら、2014,The familial Alzheimer’s disease APPV717I mutation alters APP processing and tau expression in iPSC-derived neurons,Human Molecular Genetics,in press;Kondoら、2013,Modeling Alzheimer’s disease with iPSC reveals stress phenotypes associated with intracellular Abeta and differential drug responsiveness,Cell Stem Cell 12(4):487-496;およびShiら、2012,A human stem cell model of early Alzheimer’s disease pathology in Down syndrome,Sci Transl Med 4(124):124ra129で論述されており、これらのそれぞれの内容は参照により組み入れられる。
【0059】
前頭側頭葉変性症(FTLD)は、脳の前頭葉および側頭葉における萎縮を伴う前頭側頭型認知症(これは、行動障害型前頭側頭型認知症(bvFTLD);意味性認知症(SD);および進行性非流暢性失語(PNFA)を含むように細分化される)を含む、臨床的、病理学的および遺伝学的に不均一な一群の障害の名称である。前頭側頭葉変性症は、Almeidaら、2013,Modeling key pathological features of frontotemporal dementia with C9ORF72 repeat expansion in iPSC-derived human neurons,Acta Neuropathol 126(3):385-399;Almeidaら、2012,Induced pluripotent stem cell models of progranulin-deficient frontotemporal dementia uncover specific reversible neuronal defects,Cell Rep 2(4):789-798;およびFongら、2013,Genetic correction of tauopathy phenotypes in neurons derived from human induced pluripotent stem cells,Stem Cell Reports 1(3):1-9で論述されており、これらのそれぞれの内容は参照により組み入れられる。
【0060】
ハンチントン病は、脳内の神経細胞の進行性変性を引き起こす遺伝性疾患であり、第4染色体の短腕上に位置するハンチンチン(HTT)と呼ばれる遺伝子の個々の2つのコピーのうちのいずれかにおける常染色体顕性変異によって引き起こされる。ハンチントン病は、HD iPSC Consortium,2012,Induced pluripotent stem cells from patients with Huntington’s disease show CAG-repeat-expansion-associated phenotypes.Cell Stem Cell 11(2):264-278;Anら、2012,Genetic correction of Huntington’s disease phenotypes in induced pluripotent stem cells,Cell Stem Cell 11(2):253-263;およびCamnasioら、2012,The first reported generation of several induced pluripotent stem cell lines from homozygous and heterozygous Huntington’s disease patients demonstrates mutation related enhanced lysosomal activity,Neurobiol Dis 46(1):41-51で論述されており、これらのそれぞれの内容は参照により組み入れられる。
【0061】
多発性硬化症は、脳および脊髄の神経細胞の絶縁被覆が損傷を受ける神経変性疾患である。多発性硬化症は、Songら、2012,Neural differentiation of patient specific iPS cells as a novel approach to study the pathophysiology of multiple sclerosis,Stem Cell Res 8(2):259-73で論じられており、その内容は参照により組み入れられる。
【0062】
球脊髄性(spinobulbar)筋萎縮症、球脊髄性(bulbo-spinal)萎縮症、X連鎖球脊髄性ニューロパチー(XBSN)、X連鎖脊髄性筋萎縮症1型(SMAX1)およびケネディ病(KD)としても知られる球脊髄性(spinal and bulbar)筋萎縮症(SBMA)は、アンドロゲン受容体(AR)遺伝子の変異を伴い、脳幹および脊髄中の運動ニューロンの変性による筋痙攣および進行性脱力をもたらす神経変性疾患である。球脊髄性筋萎縮症は、Niheiら、2013,Enhanced aggregation of androgen receptor in induced pluripotent stem cell-derived neurons from spinal and bulbar muscular atrophy,J Biol Chem 288(12):8043-52で論じられており、その内容は参照により組み入れられる。
【0063】
レット症候群は、一般的にメチルCpG結合タンパク質2またはMECP2遺伝子中の変異によって引き起こされる神経発達障害であり、正常な初期の成長および発育後の発育の遅延、手の意図的な使用の喪失、特徴的な手の動き、脳および頭部の成長の遅延、歩行に伴う問題、発作ならびに知的障害を特徴とする。レット症候群は、Marchettoら、2010,A model for neural development and treatment of Rett syndrome using human induced pluripotent stem cells,Cell,143(4):527-39およびAnanievら、2011,Isogenic pairs of wild type and mutant induced pluripotent stem cell(iPSC)lines from Rett syndrome patients as in vitro disease model,PLoS One 6(9):e25255で論述されており、これらのそれぞれの内容は参照により組み入れられる。
【0064】
しばしば「ルー・ゲーリック病」と呼ばれる筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロンの進行性変性および死、ならびにその結果生じる筋制御の喪失または麻痺を伴う神経変性疾患である。筋萎縮性側索硬化症は、Kiskinisら、2014,Pathways disrupted in human ALS motor neurons identified through genetic correction of mutant SOD1,Cell Stem Cell(epub);Waingerら、2014,Intrinsic membrane hyperexcitability of amyotrophic lateral sclerosis patient-derived motor neurons,Cell Reports 7(1):1-11;Donnellyら、2013,RNA toxicity from the ALS/FTD C9orf72 expansion is mitigated by antisense intervention,Neuron 80(2):415-28;Alami,2014,Microtubule-dependent transport of TDP-43 mRNA granules in neurons is impaired by ALS-causing mutations,Neuron 81(3):536-543;Donnellyら、2013,RNA toxicity from the ALS/FTD C9ORF72 expansion is mitigated by antisense intervention,Neuron 80(2):415-428;Bilican et al,2012,Mutant induced pluripotent stem cell lines recapitulate aspects of TDP-43 proteinopathies and reveal cell-specific vulnerability,PNAS 109(15):5803-5808;Egawaら、2012,Drug screening for ALS using patient-specific induced pluripotent stem cells,Sci Transl Med 4(145):145ra104;およびYangら、2013,A small molecule screen in stem-cell-derived motor neurons identifies a kinase inhibitor as a candidate therapeutic for ALS,Cell Stem Cell 12(6):713-726で論述されており、これらのそれぞれの内容は参照により組み入れられる。
【0065】
本発明の例示的な方法において、細胞は患者から得られ、PSCに変換され、PSCは特定の神経サブタイプに分化する。例示的な方法は、体細胞を得ること、および規定の転写因子の使用などの公知の方法を使用して細胞を人工多能性幹細胞(iPSC)に再プログラミングすることを含む。iPSCは、3つの胚性胚葉のすべての派生体に分化する発生能を維持しながら、培養で無限に増殖する能力を特徴とする。ある局面において、線維芽細胞は、Takahashi and Yamanaka,2006,Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors Cell 126:663-676およびTakahashiら、2007,Induction of pluripotent stem cells from adult human fibroblasts by defined factors,Cell 131:861-872で論じられている方法などの方法によってiPSCに変換される。
【0066】
成体線維芽細胞からの多能性幹細胞の誘導は、胚性幹(ES)細胞培養条件下で4つの因子、Oct3/4、Sox2、c-MycおよびKlf4を導入することを含む方法によって行うことができる。ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)を得る。ヒトOct3/4、Sox2、Klf4およびc-Mycを含有するレトロウイルスをHDFに導入する。形質導入の6日後、トリプシン処理によって細胞を採取し、マイトマイシンCで処理されたSNLフィーダー細胞上に播種する。例えば、McMahon and Bradley,1990,Cell 62:1073-1085を参照されたい。約1日後、培地(10%FBSを含有するDMEM)を、4ng/mLの塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)が補充された霊長類ES細胞培養培地と交換する。Takahashi,et al.,2007,Cell 131:861を参照されたい。その後、hES細胞様コロニーを採取し、酵素消化なしで機械的に分解して小さな塊にする。各細胞は、大きな核および少ない細胞質を特徴とするヒトES細胞の形態と同様の形態を示すはずである。HDFの形質導入後の細胞はヒトiPS細胞である。iPS細胞株がドナーと遺伝的に一致することを確認するために、DNAフィンガープリンティング、配列決定または他のこのようなアッセイが行われ得る。
【0067】
次いで、これらのiPS細胞を特定のニューロンサブタイプに分化させることができる。iPS細胞などの多能性細胞は、定義により、異なる胚性胚葉に特徴的な細胞型に分化することができる。両方の胚性幹細胞ヒトiPS細胞の特性は、懸濁培養で播種された場合に、胚様体(EB)を形成する能力である。iPS細胞から形成されたEBは、2つの小分子:ソニックヘッジホッグ(SHH)シグナル伝達経路のアゴニストおよびレチノイン酸(RA)で処理される。より詳細には、Dimosら、2008,Induced pluripotent stem cells generated from patients with ALS can be differentiated into motor neurons,Science 321(5893):1218-21;Amorosoら、2013,Accelerated high-yield generation of limb-innervating motor neurons from human stem cells,J Neurosci 33(2):574-86;およびBoultingら、2011,A functionally characterized test set of human induced pluripotent stem cells,Nat Biotech 29(3):279-286に記載されている方法を参照されたい。
【0068】
分化したEBをラミニン被覆表面に接着させると、ニューロン様突起成長が観察され、これは特定のニューロンサブタイプへの分化をもたらす。さらなる関連する考察は、Davis-Dusenberyら、2014,How to make spinal motor neurons,Development 141(3):491-501;Sandoe and Eggan,2013,Opportunities and challenges of pluripotent stem cell neurodegenerative disease models,Nat Neuroscience 16(7):780-9;およびHanら、2011,Constructing and deconstructing stem cell models of neurological disease,Neuron 70(4):626-44に見出され得る。
【0069】
本発明の方法では、iPSCはニューロンに変換される。変換には、幹細胞に単一の転写因子を発現させることが含まれる。ニューロゲニン-2(Ngn2)などの単一の転写因子を過剰発現させることによって、ESおよびiPS細胞が神経細胞に迅速に変換される。Zhangら、2013,Rapid single-step induction of functional neurons from human pluripotent stem cells,Neuron 78(5):785-798を参照されたい。転写因子は、レンチウイルス感染によって導入され得る(以下でより詳細に論じられる)。Zhang2013に報告されているように、ピューロマイシン耐性遺伝子は、選択のためにNgn2と共発現され得る。ESまたはiPS細胞を-2日目に播種し、-1日目にレンチウイルスに感染させ、0日目にNgn2発現を誘導する。1日目に24時間のピューロマイシン選択期間を開始し、2日目にマウスグリア(主にアストロサイト)を添加してシナプス形成を増強する。強制的なNgn2発現は、Zhang2013に報告されているように、ESおよびiPS細胞を1週間未満でニューロン様細胞に変換し、2週間未満で明らかに成熟したニューロン形態を生成する。
【0070】
凍結保存の前または後に、運動ニューロンなどの分化細胞を解離させ、ポリ-d-リジンおよびラミニンで被覆されたガラスのカバーガラス上に播種し得る。運動ニューロンには、N2、B27、GDNF、BDNFおよびCTNFが補充された神経基礎培地などの適切な培地が供給され得る。細胞は、すべて10ng/mlのGDNF、BDNFおよびCNTFがさらに補充されたN2培地(ラミニン[1μg/mL;Invitrogen]、FGF-2[10ng/ml;R&D Systems Minneapolis,MN]およびN2サプリメント[1%;Invitrogen]が補充されたDMEM/F12[1:1])などの適切な培地中で維持され得る。適切な培地は、Sonら、2011,Conversion of mouse and human fibroblasts into functional spinal motor neurons,Cell Stem Cell 9:205-218;Vierbuchenら、2010,Direct conversion of fibroblasts to functional neurons by defined factors,Nature 4 63:1035-1041;Kuoら、2003,Differentiation of monkey embryonic stem cells into neural lineages,Biology of Reproduction 68:1727-1735;およびWernigら、2002,Tau EGFP embryonic stem cells:an efficient tool for neuronal lineage selection and transplantation.J Neuroscience Res 69:918-24に記載されており、それぞれは参照により組み入れられる。
【0071】
本発明の方法は、細胞に光学レポーターを発現させること、光学レポーターによって生成されたシグネチャを観察すること、および観察されたシグネチャを対照シグネチャと比較することを含み得る。対照シグネチャは、無疾患細胞であり得、同じく特定の神経サブタイプのものであり、試験細胞と遺伝的および表現型的に類似している対照細胞を得ることによって得ることができる。ある態様において、例えば、患者がある遺伝子座に既知の変異または対立遺伝子を有する場合、遺伝子編集を行って、既知の変異を除けば試験細胞株と同質遺伝子的である対照細胞株を生成する。例えば、患者がSNCA遺伝子の重複を有することが知られている場合、遺伝子編集技術は、野生型SNCA遺伝子を細胞株に導入して、野生型遺伝子型および表現型を有する対照細胞株を作製することができる。さらに、ゲノム編集は、関心対象の変異をニューロンに導入して変異の表現型効果を評価するためにおよび疾患への潜在的な関連を調査するために使用され得る。遺伝子またはゲノム編集技術は、ジンクフィンガードメイン法、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)またはクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)ヌクレアーゼを介して進行し得る。
【0072】
ゲノム編集技術(例えば、ジンクフィンガードメインの使用)は、関心対象の変異型を除けば同質遺伝子的である試験細胞および対照細胞を作製するために使用され得る。ある局面において、ゲノム編集技術がiPS細胞に適用される。例えば、ジンクフィンガードメインを使用して第2の矯正された系統が生成され得、2つのその他は同質遺伝子的な系統をもたらす。その後、上記の方法に従って胚様体を使用して、病的iPS細胞および矯正されたiPS細胞を運動ニューロンに分化させ得る。
【0073】
ゲノム編集は、当技術分野で公知の任意の適切な方法によって実施され得る。例えば、TALEN技術を使用して、関心対象の標的遺伝子をコードする染色体配列が編集され得る。TALENは、TALエフェクターDNA結合ドメインをDNA切断ドメインに融合することによって生成される人工の制限酵素である。ある局面において、ゲノム編集は、CRISPR技術を使用して行われる。TALENおよびCRISPR法は、標的部位に1対1の関係を提供する、すなわち、TALEドメイン中のタンデムリピートの1つの単位は、標的部位中の1つのヌクレオチドを認識し、CRISPR/Cas系のcrRNAまたはgRNAは、DNA標的中の相補的配列にハイブリダイズする。方法は、1つのgRNAとともにTALENの対またはCas9タンパク質を使用して標的中に二本鎖切断を生成することを含むことができる。次いで、切断は、非相同末端結合または相同組換え(HR)によって修復される。
【0074】
TALENは、本質的に任意の配列を標的とすることができるDNA結合ドメインに融合された非特異的DNA切断ヌクレアーゼを使用する。TALEN技術では、標的部位が同定され、発現ベクターが作製される。Liuら、2012,Efficient and specific modifications of the Drosophila genome by means of an easy TALEN strategy,J.Genet.Genomics 39:209-215を参照されたい。(例えば、Notlによって)直鎖化された発現ベクターおよびmRNA合成のための鋳型として使用された。Life Technologies(Carlsbad,CA)のmMESSAGE mMACHINE SP6転写キットなどの市販のキットを使用してもよい。Joung&Sander,2013,TALENs:a widely applicable technology for targeted genome editing,Nat Rev Mol Cell Bio 14:49-55を参照されたい。
【0075】
CRISPR方法は、ガイド(gRNA)としての低分子RNAと複合体を形成して、任意のゲノム位置においてプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の上流で配列特異的にDNAを切断するヌクレアーゼであるCRISPR関連(Cas9)を用いる。CRISPRは、crRNAおよびtracrRNAとして知られる別個のガイドRNAを使用し得る。これらの2つの別個のRNAは、単一のRNAに組み合わされて、短いガイドRNAの設計を介した部位特異的哺乳動物ゲノム切断を可能にしている。Cas9およびガイドRNA(gRNA)は、公知の方法により合成され得る。Cas9/ガイドRNA(gRNA)は、非特異的DNA切断タンパク質Cas9およびRNAオリゴを使用して、標的にハイブリダイズし、Cas9/gRNA複合体を動員する。Changら、2013,Genome editing with RNA-guided Cas9 nuclease in zebrafish embryos,Cell Res 23:465-472;Hwangら、2013,Efficient genome editing in zebrafish using a CRISPR-Cas system,Nat.Biotechnol 31:227-229;Xiaoら、2013,Chromosomal deletions and inversions mediated by TALENS and CRISPR/Cas in zebrafish,Nucl Acids Res 1-11を参照されたい。
【0076】
ある局面において、ゲノム編集は、例えば、Weinsteinの米国特許出願公開第2011/0023144号に記載されているように、ジンクフィンガーヌクレアーゼによって媒介されるプロセスを使用して行われる。
【0077】
典型的には、ジンクフィンガーヌクレアーゼは、DNA結合ドメイン(すなわち、ジンクフィンガー)および切断ドメイン(すなわち、ヌクレアーゼ)を含み、この遺伝子は、mRNA(例えば、5’キャップ化、ポリアデニル化、またはその両方)として導入され得る。ジンクフィンガー結合ドメインは、選択された任意の核酸配列を認識して、これに結合するように改変操作され得る。例えば、Beerli&Barbas,2002,Engineering polydactyl zinc-finger transcription factors,Nat.Biotechnol,20:135-141;Paboら、2001,Design and selection of novel Cys2His2 zinc finger proteins,Ann.Rev.Biochem 70:313-340;Isalanら、2001,A rapid generally applicable method to engineer zinc fingers illustrated by targeting the HIV-1 promoter,Nat.Biotechnol 19:656-660;およびSantiagoら、2008,Targeted gene knockout in mammalian cells by using engineered zinc-finger nucleases,PNAS 105:5809-5814を参照されたい。改変操作されたジンクフィンガー結合ドメインは、天然に存在するジンクフィンガータンパク質と比較して新しい結合特異性を有し得る。改変操作する方法としては、合理的な設計および様々な種類の選択が挙げられるが、これらに限定されない。ジンクフィンガー結合ドメインは、ジンクフィンガー認識領域(すなわち、ジンクフィンガー)を介して標的DNA配列を認識するように設計され得る。例えば、参照により組み入れられる米国特許第6,607,882号;同第6,534,261号および同第6,453,242号を参照されたい。ジンクフィンガー認識領域を選択する例示的な方法は、ファージディスプレイおよびツーハイブリッド系を含み得、米国特許第5,789,538号;米国特許第5,925,523号;米国特許第6,007,988号;米国特許第6,013,453号;米国特許第6,410,248号;米国特許第6,140,466号;米国特許第6,200,759号;および米国特許第6,242,568号に開示されており、これらのそれぞれは参照により組み入れられる。
【0078】
融合タンパク質(およびこれをコードするポリヌクレオチド)の設計および構築のためのジンクフィンガー結合ドメインおよび方法は、当業者に公知であり、米国特許出願公開第2005/0064474号および米国特許出願公開第2006/0188987号に詳しく記載されており、それぞれ参照により組み入れられる。ジンクフィンガー認識領域、マルチフィンガー型ジンクフィンガータンパク質またはこれらの組み合わせは、例えば、5またはそれを超えるアミノ酸の長さのリンカーを含む適切なリンカー配列を使用して一緒に連結され得る。参照により組み入れられる米国特許第6,479,626号;同第6,903,185号;および同第7,153,949号を参照されたい。
【0079】
ある局面において、ゲノム編集のための方法は、切断の部位において染色体配列と実質的に同一であり、少なくとも1つの特異的ヌクレオチド変化をさらに含む配列を有する交換ポリヌクレオチド(典型的にはDNA)を細胞中に導入することを含む。細胞が神経変性疾患を有すると疑われる対象から得られた場合、対照細胞株を作製するために、TALEN、CRISPRまたはジンクフィンガーなどの方法が使用され得る。例えば、方法は、同質遺伝子であるが、疾患との関連が疑われる遺伝子中の変異を除いて同質遺伝子的である細胞株を作製するために使用され得る。任意のこのような技術が使用され得るが、以下は、ジンクフィンガーヌクレアーゼを介したゲノム編集を示す。
【0080】
染色体配列を改変するためのゲノム編集を使用して、(関心対象の変異を除いて)同質遺伝子的な対照系統を作製することができる。ある局面において、対照細胞は、健康な個体から、すなわち対象から採取された細胞に対してゲノム編集を使用せずに取得される。対照系統は、試験データと比較するための対照シグネチャを生成するために、本明細書に記載されている分析方法において使用することができる。ある局面において、対照シグネチャは、以前に生成および保存された後にファイルに保存され、保存された対照シグネチャが使用される(例えば、コンピュータシステム内の非一時的メモリに保存されたグラフまたは一連の測定値などのデジタルファイル)。例えば、既知の表現型または遺伝子型の対象の大きな集団をアッセイし、後の下流の比較のための対照シグネチャとして集計結果を保存することによって、対照シグネチャを生成することができる。
【0081】
PSC由来ニューロンおよび任意の必要に応じた対照系統に、神経活動または電気的活動の光学レポーターを発現させ得る。神経活動の例としては、ニューロンにおける活動電位または神経伝達物質を放出する小胞の融合が挙げられる。例示的な電気的活動には、ニューロン、アストロサイトまたは他の電気的に活性な細胞における活動電位が含まれる。神経活動または電気的活動のさらなる例としては、イオンポンピングもしくは放出または変化する、膜を横切るイオン勾配が挙げられる。細胞に神経活動の光学レポーターを発現させることは、小胞融合の蛍光レポーターを用いて行うことができる。神経または電気的活動の光学レポーターを発現させることは、光遺伝学的レポーターによる形質転換を含むことができる。例えば、細胞は、光遺伝学的レポーターを含むベクターで形質転換され得、また、形質転換によって光遺伝学的アクチュエータを細胞に発現させ得る。ある局面において、分化したニューロンは(例えば、約15日間)培養され、次いで、神経活動の、遺伝的にコードされた光学レポーターおよび必要に応じて光学電圧アクチュエータを有するレンチウイルスに感染させる。
【0082】
神経活動の任意の適切な光学レポーターが使用され得る。例示的なレポーターには、膜貫通電圧差の蛍光レポーター、シナプス小胞融合のpHluorinベースのレポーターおよび遺伝的にコードされたカルシウム指示薬が含まれる。好ましい態様において、遺伝的にコードされた電圧指示薬が使用される。本発明の方法とともに使用され得るまたは本発明の方法との使用のために改変され得る遺伝的にコードされた電圧指示薬としては、FlaSh(Siegel,1997,A genetically encoded optical probe of membrane voltage.Neuron 19:735-741);SPARC(Ataka,2002,A genetically targetable fluorescent probe of channel gating with rapid kinetics,Biophys J 82:509-516);およびVSFP1(Sakaiら、2001,Design and characterization of DNA encoded,voltage-sensitive fluorescent protein,Euro J Neuroscience 13:2314-2318)が挙げられる。電位作動型ホスファターゼのパドルドメインをベースとした遺伝的にコードされた電圧指示薬は、CiVSP(Murataら、2005,Phosphoinositide phosphatase activity coupled to an intrinsic voltage sensor,Nature 435:1239-1243)である。別の指示薬は、ハイブリッドhVOS指示薬(Chandaら、2005,A hybrid approach to measuring electrical activity in genetically specified neurons,Nat Neuroscience 8:1619-1626)であり、これは、膜を標的としたGFPとの、膜葉を通った「ダークFRET」(蛍光共鳴エネルギー移動)へのジピクリルアミン(DPA)の電圧依存性移動を伝達する。
【0083】
本発明との使用に適し得る光学レポーターには、公知の微生物ロドプシンのタンパク質のファミリーからのものが含まれる。微生物ロドプシンをベースとするレポーターは、高い感度および速度を提供し得る。適切な指示薬としては、ハロルバム・ソドメンス(Halorubum sodomense)由来の微生物ロドプシンタンパク質アーキロドプシン3(Arch)の内因性蛍光を使用するものが挙げられる。Archは、高い信号雑音比(SNR)および低い光毒性で活動電位を分解する。Archの変異型D95Nは、いくつかの指示薬に伴う過分極電流を示さないことが示されている。QuasAr1およびQuasAr2と呼ばれるArchの他の変異型は、改善された輝度、電圧に対する感度、応答速度およびニューロンの細胞膜への輸送を示すことが示されている。Archおよび上述の変異型は真核生物の膜を標的とし、培養された哺乳動物ニューロンにおいて単一の活動電位および閾値を下回る脱分極を画像化することができる。Kraljら、2012,Optical recording of action potentials in mammalian neurons using a microbial rhodopsin,Nat Methods 9:90-95を参照されたい。したがって、ArchおよびArch(D95N)などのArchの変異型は、本発明の態様にしたがって、神経活動の優れた光学レポーターを提供し得る。
【0084】
ある局面において、QuasAr1またはQuasAr2などのArchの改善された変異型が使用される。QuasAr1は、変異:P60S、T80S、D95H、D106HおよびF161Vを有するArchを含む。QuasAr2は、変異:P60S、T80S、D95Q、D106HおよびF161Vを有するArchを含む。Archの位置Asp95およびAsp106(これらは、バクテリオロドプシンの位置Asp85およびAsp96と構造的に整列され、光サイクル中のプロトン移動において重要な役割を果たすことが報告されている)は、プロトン輸送鎖中のシッフ塩基に隣接し、電圧感度および速度を決定する上で重要である可能性が高いので、修飾の対象である。他の変異は、タンパク質の輝度を改善する。Arch遺伝子から出発して、当技術分野で公知の方法に従って小胞体(ER)エクスポートモチーフおよび輸送配列(TS)を付加することが有益であり得る。
【0085】
QuasAr1およびQuasAr2はそれぞれ、Archの特定の変異型を指す。上述のように、アーキロドプシン3(Arch)は、高速かつ高感度の電圧指示薬として機能する。改善されたバージョンのArchには、Hochbaumら、2014に記載されているQuasArs(「quality superior to Arch」)が含まれる。QuasAr1は、変異P60S、T80S、D95H、D106HおよびF161Vによって、野生型Archと異なる。QuasAr2は、変異H95Qによって、QuasAr1と異なった。QuasAr1およびQuasAr2は、活動電位(AP)を報告する。
【0086】
Archおよび上述の変異型は真核生物の膜を標的とし、培養された哺乳動物ニューロンにおいて単一の活動電位および閾値を下回る脱分極を画像化することができる。いずれも参照によって組み入れられる、Kraljら、2012,Optical recording of action potentials in mammalian neurons using a microbial rhodopsin,Nat Methods 9:90-95およびHochbaumら、All-optical electrophysiology in mammalian neurons using engineered microbial rhodopsin,Nature Methods,11,825-833(2014)を参照されたい。したがって、ArchおよびArchの変異型は、本発明の態様にしたがって、電気的活動の優れた光学レポーターを提供し得る。
【0087】
本発明は、ヒト幹細胞由来ニューロンを含む哺乳動物細胞中で機能するアーキロドプシンをベースとする光学レポーターをPSCまたはPSC由来の神経細胞に導入することを含む。これらのタンパク質は、サブミリ秒の時間分解能およびサブミクロンの空間分解能で電気的動態を示し、膜電位の光学測定を使用した細胞および組織における電気的動態の非接触、ハイスループットおよびハイコンテンツ研究において使用され得る。これらのレポーターは、特にヒト細胞を含む哺乳動物などの真核生物において広く有用である。
【0088】
本発明は、アーキロドプシン3(Arch3)およびそのホモログをベースとする光学レポーターを導入することを含む。Arch3は、H.sodomense由来のアーキロドプシンであり、高性能な黄色/緑色光神経サイレンシングのための遺伝的にコードされた試薬として知られている。GenBankにおける遺伝子配列:GU045593.1(合成構築物Arch3遺伝子、完全なcds、2009年9月28日提出)。これらのタンパク質は、真核細胞中の細胞膜に局在し、電圧依存性蛍光を示す。
【0089】
これらの光学レポーターは高い感度を示す。哺乳動物細胞においては、アーキロドプシンをベースとするレポーターは、-150mV~+150mVの間で蛍光の約3倍の増加を示す。応答は、この範囲の大部分で線形である。膜電圧は、1秒間隔で、<1mVの精度で測定することができる。本発明のレポーターは高い速度を示す。QuasAr1は、0.05msでそのステップ応答の90%を示す。心臓APの立ち上がりは約1ms続き、そのため、Archに由来する指示薬の速度は、電気的活動を画像化するための基準を満たす。本発明のレポーターは、高い光安定性を示し、光退色の前に生成される蛍光光子の数においてGFPに匹敵する。レポーターは、遠赤色スペクトルも示し得る。遺伝的にコードされた電圧指示薬(GEVI)と呼ばれることもある、Arch由来の電圧指示タンパク質レポーターは、590~640nmの波長のレーザーで励起され得、発光は近赤外であり、710nmにピークを有する。発光は、すべての他の既存の蛍光タンパク質よりも赤色側に存在する。これらの波長は、低い細胞自己蛍光と一致する。スペクトルが高い信号雑音比での画像化および他の蛍光プローブと組み合わせたマルチスペクトル画像化を容易にするので、この特徴により、これらのタンパク質は活動電位の光学的測定において特に有用となる。
【0090】
他の光遺伝学的レポーターが、本発明の方法およびシステムとともに使用され得る。適切な光遺伝学的レポーターには、参照により組み入れられるFlytzanisら、2014,Archaerohodopsin variants with enhanced voltage-sensitive fluorescence in mammalian and Caenorhabditis elegans neurons、Nat Comm 5:4894で報告された、Archer1およびArcher2と呼ばれる2つのArch変異型が含まれる。Archer1およびArcher2は、Arch WTと比較して、655nmの光に応答して増強された放射輝度を示し、3~5倍の増加した蛍光および55~99倍の低下した光電流を有する。Archer1(D95EおよびT99C)およびArcher2(D95E、T99CおよびA225M)は、電圧感知のために使用され得る。これらの変異体は、最も最近報告されたArch変異型よりも9倍低い光強度(655nmで880mW mm-2)で画像化された場合に、高いベースライン蛍光(Arch WTの3~5倍)、長い照射時間にわたって安定な広いダイナミックレンジの感度(それぞれ、Archer1およびArcher2について、100mV当たり85%DF/Fおよび60%DF/F)および速い動態を示す。Archer1の特徴により、単一のニューロン全体にわたるおよびニューロンの集団全体にわたる膜電圧の急速な変化をインビトロで監視するためにArcher1を使用することが可能となる。Archer1は、蛍光励起のために使用される波長(655nm)で最小のポンピングを有するが、より低波長(560nm)で強いプロトンポンピング電流を維持する。Archer1は、赤色光による電圧感知および緑色光による阻害能力の両方を有する二機能性ツールを提供する。Archer1は、感覚刺激に応答した小さな電圧変化を検出することができる。
【0091】
適切な光遺伝学的レポーターには、増強された局在化のための輸送シグナルを有するArch由来の電圧センサの他、参照により組み入れられる、Gongら、Enhanced Archaerhodopsin fluorescent protein voltage indicators、PLoSOne 8(6):e66959で報告されたArch-EENおよびArch-EEQと呼ばれるArch変異体が含まれる。このようなレポーターには、二重変異D95N-D106E(Arch-EEN)およびD95Q-D106E(Arch-EEQ)を有するArchの変異型が含まれ得る。
【0092】
適切な光遺伝学的レポーターは、ロドプシンファミリーの電圧感知ドメインの迅速な動態および電圧依存性を遺伝的に改変操作されたタンパク質フルオロフォアの輝度と組み合わせるために蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を使用するセンサを含む。このようなFRET-オプシンセンサは、優れたスパイク検出忠実度、速い動態および高い輝度を提供する。FRET-オプシンセンサは、参照により組み入れられる、Gongら、Imaging neural spiking in brain tissue using FRET-opsin protein voltage sensors、Nat Comm 5:3674に記載されている。適切なFRET-オプシンとしては、Macロドプシン分子へのFRETドナーとして作用するための明るいフルオロフォアの、電圧感知ドメインとFRETアクセプターを兼ねるサーバへの融合物が挙げられ得る。他のセンサとしては、ニワトリ電圧感受性ホスファターゼ内への循環置換されたGFPの挿入によって形成された電圧センサである、活動電位の加速されたセンサ(ASAP1)が挙げられる。参照により組み入れられるSt-Pierre,2014,High-fidelity optical reporting of neuronal electrical activity with an ultrafast fluorescent voltage sensor,Nat Neurosci 17(6):884。他の適切なレポーターとしては、Bongwooriと呼ばれ、参照により組み入れられるPiaoら、2015,Combinatorial mutagenesis of the voltage-sensing domain enables the optical resolution of action potentials firing at 60Hz by a genetically encoded fluorescent sensor of membrane potential,J Neurosci 35(1):372-385に記載されているArcLight由来のプローブが挙げられ得る。
【0093】
ある局面において、PSC由来のニューロンは、光電圧アクチュエータで形質転換される。これは、例えば、光遺伝学的レポーターを含むベクターによる形質転換と同時に起こり得る。QuasArレポーターの遠赤色励起スペクトルは、全光型の電気生理学を達成するために、QuasArレポーターを青色光で活性化されるチャネルロドプシンと対にし得ることを示唆している。空間的に正確な光励起のために、チャネルロドプシンは、細胞のサブセクションのみが励起されたときにAPを誘導するのに十分な電流密度を有するべきである。好ましくは、レポーターを画像化するために使用される光は、アクチュエータを活性化すべきではなく、アクチュエータを活性化するために使用される光は、レポーターの蛍光シグナルを乱すべきではない。したがって、好ましい態様において、光学アクチュエータおよび光学レポーターは、クロストークを避け、同時使用を可能にするためにスペクトル的にオルソゴナルである。スペクトル的にオルソゴナルな系は、Carlson and Campbell,2013,Circular permutated red fluorescent proteins and calcium ion indicators based on mCherry,Protein Eng Des Sel 26(12):763-772に論述されている。
【0094】
好ましくは、遺伝的にコードされた光遺伝学的アクチュエータが使用される。1つのアクチュエータは、Nagel,G.ら、2005,Light activation of channelrhodopsin-2 in excitable cells of Caenorhabditis elegans triggers rapid behavioral responses,Curr.Biol.15,2279-2284に記載されている光遺伝学的アクチュエータであるチャネルロドプシン2 H134Rである。
【0095】
植物ゲノムのスクリーニングにより、英国のEssexの小さな池から初めて単離された淡水緑藻類に由来する光遺伝学的アクチュエータ、シェルフェリア・デュビア(Scherffelia dubia)ChR(sdChR)が同定された。Klapoetkeら、2014,Independent optical excitation of distinct neural populations,Nat Meth Advance Online Publication 1-14を参照されたい。Melkonian&Preisig,1986,A light and electron microscopic study of Scherffelia dubia,a new member of the scaly green flagellates(Prasinophyceae).Nord.J.Bot.6:235-256も参照されたい、いずれも参照により組み入れられる。sdChRは、優れた感度および青色作用スペクトルを提供し得る。
【0096】
CheRiffと呼ばれるsdChRの改良版が、光学アクチュエータとして使用され得る。マウスコドン最適化をして、(その青色励起ピーク(474nm)およびChR2に比して大きなその光電流についてのチャネルロドプシンのスクリーニングから選択された)シェルフェリア・デュビアチャネルロドプシン(sdChR)の遺伝子を合成し、輸送を改善するためにKir2.1からの輸送配列を付加し、変異E154Aを導入する。CheRiffは、(10.5±2.8pAへの)赤色照射からの著しく減少したクロストークを示し、本明細書に記載されている光遺伝学的レポーターとともに細胞内で使用することを可能にする。CheRiffは、培養されたラット海馬ニューロン中での良好な発現および膜輸送を示す。飽和照射下(488nm、500mW/cm)での最大光電流は2.0±0.1nA(n=10細胞)であり、ChR2 H134RまたはChIEFのピーク光電流より約2倍大きい(Linら、2009,Characterization of engineered channelrhodopsin variants with improved properties and kinetics,Biophys J 96:1803-1814)。CheRiffを発現するニューロンでは、わずか22±10mW/cmの全細胞照射が1nAの光電流を誘導する。標準的なチャネルロドプシン照射条件(488nm、500mW/cm)下でのChR2 H134RおよびChIEFと比較した。23℃で、CheRiffは、4.5±0.3msでピーク光電流に達する(n=10細胞)。5msの照射パルス後、チャネル閉鎖時定数は、CheRiffとChIEFの間で同程度であり(それぞれ、16±0.8ms、n=9細胞および15±2ms、n=6細胞、p=0.94)、ChR2 H134Rより速かった(25±4ms、n=6細胞、p<0.05)。連続照射下では、CheRiffは、400msの時定数で部分的に感度が低下し、1.3±0.08nAの定常状態電流に達する(n=10細胞)。CheRiffを発現するニューロンの照射は、高い信頼性および高い反復速度でAPの列を誘導する。
【0097】
培養されたニューロンにおけるQuasArsとCheRiffの間での光学的クロストークについて試験すると、APの高頻度の列を誘導するのに十分な照射(488nm、140mW/cm)は、QuasArsの蛍光を1%未満乱した。高強度赤色光(640nm、900W/cm)での照射は、14.3±3.1pAの、CheRiffを通る内向きの光電流を誘導し、これはニューロンを3.1±0.2mV脱分極させた(n=5細胞)。ChIEFおよびChR2 H134Rは、同様の赤色光光電流および脱分極を生じた。ほとんどの用途では、このレベルの光学クロストークは許容され得る。
【0098】
ある局面においては、CheRiffよりもさらに青色側に、400~440nmの青紫光波長で最大となる活性化を有するアクチュエータを使用することが好ましい。青紫色で活性化されるチャネルロドプシンは、光刺激条件下でCa2+および電圧を同時に監視するために、黄色で励起されるCa2+指示薬(例えば、jRCaMP1a、jRGECO1aおよびR-CaMP2)および赤色で励起される電圧指示薬、例えばQuasAr2と同時に組み合わせることができる。
【0099】
好ましい青紫色で励起されるチャネルロドプシンアクチュエータは、テトラセルミス・ストリアータ(Tetraselmis striata)由来のTsChRである(Klapoetkeら、2014,Independent optical excitation of distinct neural populations,Nat.Meth.11,338-346(2014)を参照されたい)。このチャネルロドプシンアクチュエータは、435nmにピークを有する青方偏移した作用スペクトルを有する。別の好ましい青紫色チャネルロドプシンアクチュエータは、プラチモナス・サブコーディフォルミス(Platymonas subcordiformis)由来のPsChRである(Govorunova,Elenaら、2013,Characterization of a highly efficient blue-shifted channelrhodopsin from the marine alga Platymonas subcordiformis,J Biol Chem 288(41):29911-29922を参照されたい)。PsChrは、437nmにピークを有する青方偏移した作用スペクトルを有する。PsChRおよびTsChRは、赤方偏移したCa2+指示薬と有利に対にされ、光学的クロストークなしに、これらの赤方偏移したCa2+指示薬と同じ細胞または同じ視野において使用することができる。
【0100】
光遺伝学的レポーターおよびアクチュエータは、発現ベクターの使用を通じて送達されるOptopatch構築物として本明細書に記載される構築物に入れて送達され得る。Optopatchは、従来はパッチクランプと結びつけられていたが、例えば、光学レポーターまたはアクチュエータによって提供されるように、光入力、読み取りまたはその両方を介して機能を発揮するシステムを指すと解釈され得る。Optopatch構築物は、CheRiff-eGFPおよびQuasAr1-またはQuasAr2-mOrange2を共発現するためのバイシストロン性ベクターを含み得る。QuasArおよびCheRiff構築物は別々に送達されてもよく、または均一な比率のアクチュエータ対レポーター発現レベルを得るためにバイシストロン性発現ベクターを使用してもよい。
【0101】
ある局面において、PSC由来のニューロンは、光電圧アクチュエータおよび電圧レポーターで形質転換され、それらの活性は、PSC由来のニューロン試薬の機能的品質を決定するために記録され、使用され得る。図4は、ニューロン調製物の機能的性質決定およびQCを可能にする光型電気生理学構築物でPSC由来のニューロン試薬が遺伝的に改変された場合の例示的な結果を提供する。図4は、全光型電気生理学(Optopatch)を使用して、同じ遺伝的背景のPSC細胞株(11a)の6つの異なるクローンからのニューロン調製物を特徴付けると、何千もの個々のニューロンが複数の活動電位を発火することを示し、成熟した機能的特性を示唆している。
【0102】
図4は、6つの異なるニューロン調製物の平均機能的挙動が驚くほど類似していることも示し、本発明に記載されている方法で生産されたニューロン試薬の高い品質を実証する。
【0103】
図示されているように、図4は、11a iPS細胞クローンにおける転写因子NGN2の過剰発現によって得られたヒトiPS細胞由来のニューロンの光学的生理学性質決定を提供する。簡潔に述べると、ニューロンを30日間培養し、活動の(青色光による)刺激を可能にするために全光型電気生理学構築物で遺伝的に改変した。図はラスタープロットを示し、各列は測定された単一のニューロンを表し、各ドットは約15秒の実験の過程でのそのニューロンについての単一の活動電位を表す。合計で約10,000個のニューロンについて、同じiPS細胞遺伝的背景(11a)の6つの異なるクローンから得られたニューロン培養物から1,500個を超えるニューロンを記録した。6つの異なるニューロン調製物の平均機能的挙動(発火率)は驚くほど類似しており、本発明に記載されている方法を用いて産生されたニューロン試薬の高い品質を実証している。
【0104】
遺伝的にコードされたレポーター、アクチュエータまたはその両方は、当技術分野で公知の方法を使用して任意の適切な発現ベクターによって送達され得る。発現ベクターは、宿主細胞における関心対象の遺伝子の発現のために必要とされる必要な調節領域を含有する特殊化されたベクターである。いくつかの態様において、関心対象の遺伝子は、ベクター中の別の配列に機能的に連結されている。ある局面においては、ウイルスベクターは複製欠損であることが好ましく、これは、例えば、複製をコードするすべてのウイルス核酸を除去することによって達成することができる。複製欠損ウイルスベクターは依然としてその感染特性を保持し、複製するベクターと同じように細胞に入るが、いったん細胞に入ると、複製欠損ウイルスベクターは複製または増殖しない。「機能的に連結された」という用語は、コード配列の発現のために必要な調節配列が、コード配列の発現をもたらすように、コード配列に対して適切な位置でDNA分子中において配置されていることを意味する。この同じ定義は、発現ベクター中でのコード配列および転写制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサーおよび終結エレメント)の配置に適用されることがある。
【0105】
多くのウイルスベクターまたはウイルス随伴ベクターが当技術分野で公知である。このようなベクターは、細胞内への核酸構築物のキャリアとして使用することができる。構築物は、細胞内への感染または形質導入のために、レトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターを含む、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)または単純ヘルペスウイルス(HSV)などのような非複製欠損ウイルスゲノム中に組み込まれ、パッケージングされ得る。ベクターは、細胞のゲノム中に組み込まれていてもよいし、または組み込まれていなくてもよい。構築物は、所望であれば、形質移入のためのウイルス配列を含み得る。あるいは、構築物は、エプスタイン・バーウイルス(EPVまたはEBV)ベクターなどの、エピソーム複製能を有するベクター中に組み入れられ得る。発現制御配列がそのポリヌクレオチド配列の転写および翻訳を制御および調節する場合に、本明細書に記載されているベクターの挿入された物質は発現制御配列に機能的に連結され得る。いくつかの例では、挿入された物質の転写は、組換え遺伝子の発現を制御するプロモーター配列(または他の転写調節配列)の制御下にある。
【0106】
ある局面においては、誘導性プロモーターを含有する組換え細胞が使用され、適切な環境条件または機能している病原体への曝露によって細胞または生物に制御因子または刺激を外部から適用することによって、制御因子または刺激に曝露される。誘導性プロモーターは、制御因子または刺激の存在下でのみ転写を開始する。誘導性プロモーターの例としては、テトラサイクリン応答エレメントおよびβ-インターフェロン遺伝子、熱ショック遺伝子、メタロチオネイン遺伝子またはステロイドホルモン応答性遺伝子から得ることができる任意のものに由来するプロモーターが挙げられる。本発明の方法を実施する際に使用され得る誘導性プロモーターとしては、プロゲステロン、エクジソンおよびグルココルチコイドなどのホルモンおよびホルモン類似体によって制御されるもの、ならびにテトラサイクリン、熱ショック、重金属イオン、インターフェロンおよびラクトースオペロン活性化化合物によって制御されるプロモーターが挙げられる。Gingrich and Roder,1998,Inducible gene expression in the nervous system of transgenic mice,Annu Rev Neurosci 21:377-405を参照されたい。組織特異的発現は遺伝子発現の分野で十分に特徴付けられており、組織特異的および誘導性プロモーターは当技術分野において周知である。これらのプロモーターは、外来遺伝子が標的細胞に導入された後に、外来遺伝子の発現を制御するために使用される。ある局面において、細胞型特異的プロモーターまたは組織特異的プロモーターが使用される。細胞型特異的プロモーターには、主に1つの細胞型において選択された核酸の発現を制御するが、他の細胞においても発現を引き起こす漏出性の細胞型特異的プロモーターが含まれ得る。神経細胞において特異的に外因性遺伝子を発現させるために、ニューロン特異的エノラーゼプロモーターを使用することができる。Forss-Petterら、1990,Transgenic mice expressing beta-galactosidase in mature neurons under neuron specific enolase promoter control,Neuron 5:187-197を参照されたい。ドーパミン作動性ニューロンにおける外因性遺伝子の発現のために、チロシンヒドロキシラーゼプロモーターを使用することができる。
【0107】
ある局面において、発現ベクターはレンチウイルスベクターである。レンチウイルスベクターは、真核生物プロモーターを含み得る。プロモーターは、真核細胞においてプロモーターとして機能する、合成プロモーターを含む任意の誘導性プロモーターであり得る。例えば、真核生物プロモーターは、当技術分野で周知のように、CamKIIαプロモーター、ヒトシナプシンプロモーター、エクジソン誘導性プロモーター、E1a誘導性プロモーター、テトラサイクリン誘導性プロモーターなどであり得るが、これらに限定されない。さらに、本明細書で使用されるレンチウイルスベクターは、プロモーターおよび選択可能な形質に対するコード配列を含むことができる選択可能なマーカーをさらに含むことができる。選択可能なマーカーをコードするヌクレオチド配列は当技術分野で周知であり、抗生物質または代謝拮抗物質に対する耐性を付与する遺伝子産物をコードするもの、または栄養要求性の要求を供給するものが含まれる。このような配列の例としては、とりわけ、チミジンキナーゼ活性、またはメトトレキサート、アンピシリン、カナマイシンに対する耐性をコードするものが挙げられるが、これらに限定されない。レンチウイルスベクターの使用は、Wardillら、2013,A neuron-based screening platform for optimizing genetically encoded calcium indicators,PLoS One 8(10):e77728;Dottoriら、Neural development in human embryonic stem cells-applications of lentiviral vectors,J Cell Biochem 112(8):1955-62;およびDiesterら、2011,An optogenetic toolbox designed for primates,Nat Neurosci 14(3):387-97で論述されている。培養されたラット海馬ニューロンにおいてCaMKIIαプロモーター下で発現されると、Optopatch構築物は、CheRiffおよびQuasAr2の両方の高発現および良好な膜輸送を示す。
【0108】
いくつかの態様において、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。AAVは、分裂細胞および非分裂細胞の両方に感染することができ、そのゲノムを宿主細胞のゲノム中に組み入れ得る。1つの適切なウイルスベクターは、CNSにおける遺伝子送達のために広く使用されている組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を使用する。
【0109】
ある局面において、本発明の方法は、Cre依存性発現系を使用する。Cre依存性発現には、Lox配列と呼ばれる短い標的配列の対を組み換える酵素Creリコンビナーゼを使用する部位特異的リコンビナーゼ技術であるCre-Lox組換えが含まれる。この系は、余分な補助タンパク質または配列を一切挿入せずに実施することができる。Cre酵素およびLoxP配列と呼ばれる元のLox部位は、バクテリオファージP1に由来する。バクテリオファージP1は、Cre-lox組換えを使用して、そのゲノムDNAを環状化し、複製する。この組換え戦略は、ゲノム操作のためにCre-Lox技術において用いられ、Cre-Lox技術はCreリコンビナーゼおよびLoxP部位のみを必要とする。Sauer&Henderson,1988,Site-specific DNA recombination in mammalian cells by the Cre recombinase of bacteriophage P1,PNAS 85:5166-70およびSternberg&Hamilton,1981,Bacteriophage P1 site-specific recombination.I.Recombination between LoxP sites,J Mol Biol 150:467-86。方法は、信頼できる光刺激を可能にするのに十分な発現レベルでチャネルロドプシン-2(ChR2)などのツールを特定のニューロンに標的化するために、Creリコンビナーゼ依存性ウイルスベクターを使用し得る。したがって、mCherryなどの蛍光タンパク質がタグとして付加されたChR2(例えば、ChR2mCherry)などの光遺伝学的ツールまたは本明細書で論じられている任意の他のツールが、細胞を性質決定する上で使用するために、1つの細胞または複数の細胞に送達される。
【0110】
送達ベクターはCreおよびLoxを含み得る。ベクターは、Cre媒介性組換えの非存在下での導入遺伝子の発現を防止するために、Lox-ストップ-Lox(LSL)カセットを必要に応じてさらに含み得る。Creリコンビナーゼの存在下で、LoxP部位は組み換えを行い、除去可能な転写終結Stop要素は除去される。ストップ要素の除去は、発現のタイミングおよび位置の調節を可能にするAdenoCreの使用を通じて達成され得る。LSLカセットの使用は、Jacksonら、2001,Analysis of lung tumor initiation and progression using conditional expression of oncogenic K-ras,Genes&Dev 15:3243-3248で論述されている。
【0111】
ある局面において、本発明の構築物は、安定した導入遺伝子の反転を達成するために、「フリップ切除」スイッチまたはFLEXスイッチ(FLip EXicision)を使用する。FLEXスイッチは、Schnutgenら、2003,A directional strategy for monitoring Cre-mediated recombination at cellular level in the mouse,Nat Biotechnol 21:562-565で論述されている。FLEXスイッチは、まずコード配列の反転を経た後に2つの部位を切除し、反対向きに配向されてさらなる組換えを行えないそれぞれのオルソゴナルな組み換え部位の1つをもたらす2対のヘテロタイプな逆平行のLoxP型組換え部位を使用する。FLEXスイッチは、高い効率および不可逆性を与える。したがって、いくつかの態様において、方法は、rAAV-FLEX-rev-ChR2mCherryを含むウイルスベクターを使用する。これに加えてまたはこれに代えて、ベクターは、FLEXおよび本明細書で論じられている任意の他の光遺伝学的ツール(例えば、rAAV-FLEX-QuasAr、rAAV-FLEX-CheRiff)を含み得る。実例としてrAAV-FLEX-rev-ChR2mCherryを使用すると、ChR2mCherryコード配列のCre媒介性反転は、Creが配列を反転させてChR2mCherryの転写を作動させるまで、コード配列を転写に関して誤った向き(すなわち、rev-ChR2mCherry)にする。FLEXスイッチベクターは、Atasoyら、2009,A FLEX switch targets channelrhodopsin-2 to multiple cell types for imaging and long-range circuit mapping,J Neurosci 28(28):7025-7030で論述されている。
【0112】
ニューロンを標識および刺激するために、(必要に応じて、FLEXスイッチおよび/またはLox-ストップ-Loxカセットとともに)光学レポーター、光学アクチュエータまたはその両方とともにCre-Lox系などのウイルスベクターを使用することによって、100μW未満の集束レーザー光または光ファイバからの光への短時間の曝露(1ms)のみによる効率的な光刺激が可能となる。このようなさらなる考察は、Yizharら、2011,Optogenetics in neural systems,Neuron 71(1):9-34;Cardinら、2010,Targeted optogenetic stimulation and recording of neurons in vivo using cell-type-specific expression of Channelrhodopsin-2,Nat Protoc 5(2):247-54;Rothermelら、2013,Transgene expression in target-defined neuron populations mediated by retrograde infection with adeno-associated viral vectors,J Neurosci 33(38):195-206;およびSaundersら、2012,Novel recombinant adeno-associated viruses for Cre activated and inactivated transgene expression in neurons,Front Neural Circuits 6:47に見出され得る。
【0113】
ある局面において、アクチュエータ、レポーターまたは他の遺伝物質は、化学的に修飾されたmRNAを使用して送達され得る。ある種のヌクレオチド修飾が、mRNAとtoll様受容体、レチノイド誘導性遺伝子またはその両方の間での相互作用を妨害することが見出され、利用され得る。所望の産物をコードするmRNAへの曝露は、細胞中での所望のレベルの産物の発現をもたらし得る。例えば、Kormannら、2011,Expression of therapeutic proteins after delivery of chemically modified mRNA in mice,Nat Biotech 29(2):154-7;Zangiら、2013,Modified mRNA directs the fate of heart progenitor cells and induces vascular regeneration after myocardial infarction,Nat Biotech 31:898-907を参照されたい。
【0114】
必要に応じてアクチュエータとともに、遺伝的にコードされた光学レポーターでの形質転換後に、ニューロンを培養または成熟させることが有益であり得る。ニューロンは、感染後に8~10日間成熟させる。ある局面において、30~60日の長期培養が使用される。本明細書に記載されている顕微鏡法および分析方法を使用して、細胞およびその活動電位が観察され得る。さらなる考察については、参照によりその全体があらゆる目的のために組み入れられる米国特許出願公開第2013/0224756号を参照されたい。
【0115】
ある局面においては、プレートのウェル内で生細胞を観察し、画像化することを可能にする構成で、試料に近TIR光を照射するマルチウェルプレート顕微鏡を使用して、PSC由来の神経細胞をアッセイすることができる。この顕微鏡は、対物レンズを介してではなく側面から試料を照射し、これにより、より強い照射ならびに対応するより低い開口数およびより大きな視野が可能になる。蛍光の波長とは異なる波長の照射光を使用することにより、TIR顕微鏡は、光学フィルタを用いて照射波長を画像からほぼ完全に除去することを可能にし、関心対象の領域が明るく、背景が暗い画像をもたらす。顕微鏡は、蛍光を観察して、活動電位の特徴/パラメータがそこから抽出される細胞の活動電位の指標尺度を提供することができる。
【0116】
QuasAr2およびQuasAr3などの膜活動電位の蛍光レポーターは、蛍光を発するために強い励起光を必要とする。低い量子効率および迅速な動態は、電位を測定するために強い光を要求する。したがって、照射サブシステムは、高いワット数または高い強度で光を発するように構成される。量子効率およびピーク励起波長などのフルオロフォアの特徴は、それらの環境に応答して変化する。強い照射は、それを検出することを可能にする。強い光によって引き起こされる自己蛍光は、複数の方法で顕微鏡によって最小化される。近TIR照射の使用は、各ウェルの底部のみを照射光に曝露し、それによって培養培地または装置の他の構成要素の励起を減少させる。さらに、顕微鏡は、画像化光とは異なる照射光を提供するように構成される。画像化サブシステム内の光学フィルタは、照射光を取り除き、画像から望まれない蛍光を除去する。細胞を培養するための環状オレフィンコポリマー(COC)皿は、ガラスと比較して低下したバックグラウンド自己蛍光を可能にする。プリズムは、屈折率が一致する低自己蛍光オイルを介してマルチウェルプレートに結合される。プリズムも低自己蛍光性石英ガラスから構成される。
【0117】
顕微鏡は、細胞の動的特性を光学的に特徴付けるように構成される。顕微鏡は、以下を同時に達成することによって全光型の性質決定の可能性を最大限に実現する。(1)ネットワーク内の細胞間の相互作用の測定を可能にするためのまたはハイスループットのために多くの細胞を同時に測定するための広い視野(FOV);(2)ウェル中の個々の細胞の形態を検出し、シグナル処理における選択性を促進するための高い空間分解能;(3)個々の活動電位を区別するための高い時間分解能;および(4)正確なデータ分析を容易にするための高い信号雑音比。顕微鏡は、数十または数百の細胞を捕捉するのに十分な視野を提供することができる。顕微鏡および関連するコンピュータシステムは、少なくとも1キロヘルツのオーダーの画像取得速度を提供し、これは1ミリ秒のオーダーの非常に短い露光時間に対応し、それによってニューロンなどの電気的に活性な細胞において生じる急速な変化を記録することを可能にする。したがって、本顕微鏡は、従来技術の顕微鏡よりも実質的により短い期間で、列挙された光学系を使用して蛍光画像を取得することができる。
【0118】
顕微鏡は、細胞の動的特性を光学的に特徴付けることを容易にするために、これらの要求の厳しい要件のすべてを達成する。顕微鏡は、低開口数(NA)対物レンズを用いて、十分な分解能および集光能力を有する大きなFOVを提供する。顕微鏡は、sCMOSカメラなどの高速検出器を用いて、2倍~6倍の範囲の倍率で画像化することができる。高速の画像化速度を達成するために、顕微鏡は、典型的には、約635nm~最大約2,000W/cmの波長で例えば50W/cmを超えるフルエンスを有する極めて強い照射を使用する。
【0119】
高い出力レベルにもかかわらず、顕微鏡は、それにもかかわらず、試料、細胞増殖培地、屈折率マッチング流体および試料容器中の非特異的バックグラウンド蛍光を励起することを回避する。近TIR照射は、試料および試料媒体の望まれない領域の自己蛍光を制限する。画像化サブシステム内の光学フィルタは、望まれない光が画像センサに到達するのを防止する。さらに、顕微鏡は、照射光を対物ユニットに通すのではなく、試料を側方から照射することによって、対物レンズ内のガラス素子の望まれない自己蛍光を防止する。顕微鏡の対物レンズは、物理的に大きく、少なくとも50mmの前面開口部および少なくとも100mmの長さを有し、多数のガラス素子を含有し得る。
【0120】
顕微鏡を使用した画像化のためにPSC由来のニューロンのプレートを調製することは、例えば、0.1%ゼラチン中の10μg/mLフィブロネクチン(Sigma-Aldrich)で被覆されたMatTekディッシュ(MatTek corp.;10mmのガラス直径、#1.5)を4℃で一晩使用することを含み得る。まず、トリプシン処理されたCaViarおよびCheRiff発現細胞を5:1のCaViar:CheRiffの比で混合し、次いでペレット化する。合わせた細胞を2.1mLの維持培地に再懸濁し、100μLの播種培地に2.5×104細胞/cm2の密度で播種し、ガラス表面全体を覆う。細胞を5%CO2中37℃で一晩維持してガラスに接着させる。維持培地(1.0mL)を各ディッシュに添加し、750μLの培地をディッシュから除去し、750μLの新鮮な維持培地と交換することによって、48時間ごとに細胞に給餌する。培地にはラミニンを補充することができ、培地を交換するごとに減少した濃度を与える。
【0121】
電圧およびカルシウムを同時に画像化するために、CheRiff発現細胞をCaViar発現細胞から分離するようにMatTekディッシュ(10mmのガラス直径)を調製することができる。これにより、2つの機能間での光学的クロストークなしに、ともに青色光を用いて、カルシウム画像化とCheRiff刺激を同時に行うことが可能になる。ある局面においては、0.1%ゼラチン中の10μg/mLのフィブロネクチンの溶液で、直径8mmのポリジメチルシロキサン(PDMS)ディスクの片側を室温で10分間処理する。次いで、被覆されたディスクを乾燥させ、次いで、片側にわずかにずらしてMatTekディッシュのガラス表面に押し付ける。次いで、ガラスの残りの露出された領域を、0.1%ゼラチン中の10μg/mLのフィブロネクチンで被覆する。製造者のプロトコルに従って、CheRiffを発現する細胞をトリプシン処理し、ディッシュあたり50μLの維持培地に再懸濁する。播種のために、次いで、50μLのCheRiff細胞をガラス表面の露出された部分に添加し、5%CO2中、37℃で40分間静置して細胞を接着させる。次いで、PDMSディスクを取り出し、ガラス表面を150μLの維持培地で洗浄し、残りの体積を吸引する。次いで、トリプシン処理されたCaViar細胞を、ディッシュあたり100μLの維持培地に再懸濁し、100μL中に2.0×104細胞/cm2の密度で播種し、ガラス表面全体を覆う。細胞を5%CO2中、37℃で一晩維持してガラスに接着させる。1.00mLの維持培地を各ディッシュに添加し、750μLの培地をディッシュから除去し、750μLの新鮮な維持培地を添加することによって、48時間ごとに細胞に給餌する。
【0122】
ある局面において、本発明のニューロンおよび方法は、疾患をインビトロで研究するための疾患モデルを作製するために使用され得る。ニューロンは、ニューロン疾患に罹患している個体から採取されたiPSCに由来し得るか、またはニューロン疾患に関連する遺伝子型を組み入れることによるゲノム編集に由来し得る。ある例においては、ニューロン疾患に関連すると疑われる試験変異がゲノム編集によってニューロンに組み入れられ得、疾患との関連性について試験変異を評価するために、得られた修飾されたニューロンを疾患の徴候について観察し得る。
【0123】
ある局面においては、疾患表現型を対照状態(変異のない健康なPSCニューロンの表現型)に復帰させることができる小分子化合物をスクリーニングするために、疾患モデルを表し、光学レポーターを発現するように遺伝的に改変されたPSC由来の神経細胞をマルチウェルプレート蛍光顕微鏡において使用することができる。図5は、約70億個のニューロンの単一の凍結保存されたロット由来の試薬を使用したハイスループット表現型スクリーニングにおけるPSC由来のニューロンの有用性の一例を提供する。
【0124】
簡潔に述べれば、図5は、ヒトiPS細胞由来のニューロンにおける表現型スクリーニングを示す。この図は、単一遺伝子型のてんかんの機能喪失(ノックアウトまたはKO)モデルにおける12日間の表現型スクリーニングからの代表的なデータを示す。対照野生型(「WT」)および疾患「KO」ヒトiPS細胞由来の皮質興奮性ニューロンを作製し、本発明に記載されている方法を使用して大きな規模(合計約70億ニューロン)で凍結した。ニューロン試薬のわずかな一部を高い生存率で解凍し、96ウェルプレート上に播種し、30日間培養した。電気生理学的活性の測定を可能にするために、光学レポーターを発現する遺伝子構築物でニューロンを改変した。WTニューロンとKOニューロン間での機能的比較により、多くのパラメータの線形結合である疾患スコアによって定量化される多次元表現型が確立された。本発明者らは、表現型を元に戻す分子について30,000化合物のスクリーニングを実施した。最初の約9,000ウェルからの結果が示されており、0.5の疾患スコア閾値で約1.5%のヒット率を有する。結果は、一貫した表現型および安定したアッセイ(平均Z’=0.4)を明らかにする。各破線は、1つの96ウェルプレートに対応する。
【0125】
ある局面において、例えば、モデル化された疾患が非単一遺伝子性の、複雑な病因および/または遅発性である場合には、本発明のニューロンは、加齢をシミュレートするために、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月またはそれより長くなど、長期間培養され得る。Sanchez-Danesらを参照されたい。本発明の細胞は、膜電位の光学レポーター、細胞内カルシウムレベルのレポーター、光開口型イオンチャネルまたはこれらの組み合わせで形質転換され得る。疾患のニューロン効果を調べるために、疾患進行中に活動電位および細胞内カルシウムレベルの変化を誘導し、観察することによって、細胞を経時的に監視し得る。疾患モデルの対象細胞はまた、様々な治療の有効性を評価するために、様々な治療の適用前および適用後に監視され得る。
【0126】
本発明の細胞および方法は、観察される1つの細胞または複数の細胞に適用されるツール/試験化合物または他の介入ツールの使用を含み得る。試験化合物の適用は、細胞の電気生理学に対するそれらの化合物の効果を明らかにすることができる。ツール化合物の使用は、例えばある種のイオンチャネルを遮断することによって、診断においてまたは疾患機構を決定するためにより高い特異性を達成することができる。化合物の影響を定量化することにより、細胞内のそのチャネルのレベルを定量化することができる。
【0127】
ツールまたは試験化合物を用いて、細胞に神経活動または電気的活動の光学レポーターを発現させることができ、細胞はまた、薬物などの化合物に曝露され得る。細胞のシグネチャは、化合物を試験する前、試験している間または試験した後に観察することができる。異なる細胞および細胞型の任意の組み合わせを、異なる試験化合物対照を含む化合物の1つまたは任意の組み合わせに曝露させることができる。化合物および細胞型の任意の組み合わせを交差試験するために、マルチウェルプレート、スライド上の複数位置スポッティングまたは他の多区画実験ツールを使用することができる。
【0128】
ある局面において、ツール化合物が細胞に添加され、可能性のある疾患または疾患の原因もしくは機構を区別するために、細胞に対するツール化合物の効果が観察される。例えば、互いにシナプス結合している2またはそれを超える細胞が観察される場合、上流の細胞の外因性刺激は、下流の細胞において活動電位として現れるはずである。神経伝達物質の再取り込みを阻害することが知られている化合物は、ある神経サブタイプのみに作用し、したがって特定の疾患パターンを示すことが明らかになり得る。
【0129】
ある局面において、PSC由来の神経細胞は、シナプス伝達を検出し、測定し、または評価するためにアッセイされる。直接的な刺激が加えられた細胞以外の細胞について、シグネチャが観察され得る。実際、本明細書で論じられている信号処理アルゴリズムを使用して、複数の細胞間でのシナプス伝達が検出され得、これにより神経接続のパターンが明らかになる。上流ニューロンを刺激した際に下流ニューロンの発火を首尾よく検出するアッセイを確立することにより、観察されるべき対象細胞が上流ニューロンの刺激に際して発火しない場合に、シナプス伝達の不全によって特徴付けられる疾患または症状を明らかにすることができる。
【0130】
試験化合物は、患者への適用前に処置の適合性を決定するための候補処置として評価することができる。例えば、発火パターンを野生型に復帰させ、疾患発症を予防もしくは遅延し、または疾患症候を軽減する薬物を見出すために、アルツハイマー病薬を試験することができる。
【0131】
ある局面において、PSC由来の神経細胞は、化合物を試験することによって患者に対する可能な治療を同定するためのシステムおよび方法において使用することができ、このシステムおよび方法は個別化医療として使用され得る。本明細書中に記載されているアッセイの性質のために、候補治療化合物の効果を患者ごとに評価することが可能であり得、したがって、真の個別化医療のためのツールを提供する。例えば、本明細書に記載されているアッセイは、ある疾患に罹患している患者が、本明細書に記載されているアッセイの下で疾患型生理学的表現型を示すニューロンまたは神経サブタイプを有することを明らかにし得る。1つまたはいくつかの異なる化合物が、それらのニューロンまたは神経サブタイプに適用され得る。それらの異なる化合物の1つ(または化合物の組み合わせ)に曝露された細胞は、疾患型から正常への生理学的表現型の変化を示し得る。したがって、疾患型から正常への表現型の変化に影響を及ぼす化合物または化合物の組み合わせは、その患者に対する候補処置化合物として同定される。
【0132】
ある局面において、試験化合物は、A2A受容体アンタゴニスト、レボドパ、アマンタジン、ドーパミンアゴニスト、選択的MAO-B阻害剤、抗コリン作動薬またはカテコールO-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害剤を含み得る。
【実施例
【0133】
実施例1
製造業者のプロトコルに従って、mTeSR1(商標)培地(STEMCELL Technologies(商標))およびMatrigel(商標)(Corning)コーティングを使用して、対照iPS細胞株を培養して維持する。転写プログラミングアプローチを使用してiPS細胞株をNgn2興奮性ニューロンに分化させ、それによりiPS細胞株は、最初に、リバーステトラサイクリントランス活性化因子(rtTA)を発現する構築物ならびに神経細胞分化促進性転写因子NGN2およびピューロマイシン耐性酵素の発現を駆動するテトラサイクリン応答性(TetOp)構築物のレンチウイルス送達を介して改変される。
【0134】
図3は、ニューロン転換のためにヒトiPS細胞を遺伝的に改変するために使用される例示的な誘導性発現構築物の概略図を提供する。2つの構築物が使用される。一方の構築物は、構成的プロモーター(例えば、ユビキチンプロモーター:UB)からリバーステトラサイクリントランス活性化因子(rtTA)を発現する。他方の構築物は、テトラサイクリン応答性制御要素(TetOp)によって駆動される、抗生物質耐性遺伝子(例えば、ピューロマイシン)に翻訳的に融合された転写因子(T.F.)、例えばニューロゲニン-2(Ngn2)を発現する。両構築物は、レンチウイルス形質導入を介してヒトiPS細胞に導入する。遺伝的に改変されたiPS細胞は、大規模生産のために出発材料を増やすために拡大増殖させることができる。ドキシサイクリン(Dox)の存在下で、rtTAタンパク質はTetOpを結合し、活性化して、転写因子および抗生物質耐性遺伝子の高レベル発現を駆動する。3~5日間のドキシサイクリンおよび抗生物質処置の後、未成熟ニューロンの均質な調製物を得ることができる。
【0135】
NGN2の誘導前に3~5継代にわたって、遺伝的に改変されたiPS細胞株をmTeSR1(商標)培地中で拡大増殖させる。ニューロン生産のために、製造者の推奨に従ってAccutase(商標)でiPS細胞を解離させ、10μM Rock Inhibitor(Sigma)および2μg/mLドキシサイクリン(Sigma)を補充したmTeSR1(商標)培地を使用して300,000細胞/cmの密度で播種してNGN2過剰発現を開始させる。その後、1×GlutaMAX、1×非必須アミノ酸、1×N2(Gibco)、1×B-27、2μg/mLドキシサイクリン(Sigma)および2μg/mLピューロマイシンを補充した1:1 DMEM/F12:Neurobasal Medium(ThermoFisher Scientific)中で3日間、分化している細胞を維持する。このプロセスは、Accutase(商標)で解離されたニューロンの純粋な集団をもたらす。
【0136】
ニューロンを凍結保存し、続いて解凍し、長期培養のためにポリ-d-リジン/ラミニンで予め被覆されたシングルウェル(MatTek(商標))または8ウェル(Ibidi)皿上に80,000細胞/cmで播種する。1×GlutaMAX、1×非必須アミノ酸、1×N2(Gibco)、1×B-27、10ng/mL BDNF(R&D)および10ng/mL GDNF(R&D)を補充したNeurobasal A Medium中で、ニューロン培養物をDIV18まで維持する。播種の3日後、ニューロン培養物に40,000細胞/cmの初代マウスグリア細胞を補充する。
【0137】
Optopatch成分のCheRiffおよびQuasArをコードするレンチウイルス粒子を作製する。Optopatch成分の発現を成熟興奮性ニューロンに標的化するために、DIV10に、CAMK2Aプロモーターによって駆動されるCheRiff-mOrange2およびQuasAr3 Citrine構築物でニューロン培養物を形質導入する。QuasAr3-Citrineは、複数のKir2.1輸送配列および171位のリジン(推定ユビキチン化部位)からアルギニンへの置換を組み入れたQuasAr2の変異型であり、改善された発現および輸送をもたらす。処理の16~24時間後(DIV11)に2×培地交換によってウイルスを洗浄しながら、ニューロン培養物の形質導入を行う。Optopatch画像化を使用してニューロンが記録されたDIV25まで、ニューロン培養物を維持する。
【0138】
Optopatch測定の1週間前に、ニューロン培養物を、1×N2-A、1×SM1(STEMCELL Technologies)、10ng/mL BDNF(R&D)および10ng/mL GDNF(R&D)を補充したBrainPhys(商標)Neuronal培地(STEMCELL Technologies)に切り替えた。
【0139】
したがって、本発明は、PSCを神経細胞に分化させ、凍結保存し、培養し、光遺伝学的タンパク質を形質導入し、光遺伝学的アッセイを使用してアッセイする方法を提供する。
実施例2
【0140】
Optopatchプラットフォームを用いてヒトiPS細胞由来興奮性ニューロンの内因性興奮性活性を特徴付けるために、実施例1からの2つのiPS細胞株「11a」および「20b」を使用した。これらの2つのiPS細胞株は、2人の神経学的に健康な男性対象に由来した。実施例1に記載されているようにドキシサイクリン応答性レンチウイルス構築物を使用して神経細胞分化促進性転写因子NEUROGENIN2(NGN2)を過剰発現させる転写プログラミングアプローチを使用して、11aおよび20b iPS細胞を興奮性ニューロンに変換する。このプロセスは、皮質興奮性ニューロンに似たニューロンへのiPS細胞の迅速な変換を誘導する。
【0141】
得られたニューロンを凍結保存し、続いて解凍する。
【0142】
解凍した細胞を初代齧歯類グリアと共培養して、ニューロンの電気生理学的成熟を促進する。Optopatch測定を可能にするために、ニューロン興奮性プロモーターCAMK2Aによって駆動されるOptopatch成分を発現するレンチウイルス構築物を細胞に形質導入し、2週間後に細胞からのシグナルを記録する。Optopatch測定の時点で、NGN2興奮性ニューロンは均質で電気生理学的に活性であり、細胞、ディッシュ、分化のラウンドおよび細胞株にわたって高度に定型化された再現性のあるデータをもたらす。
【0143】
両遺伝的背景からのiPS細胞の、興奮性ニューロンへの効果的な変換を確認するために、電気生理学的測定の時(DIV25-DIV30)にニューロン調製物を使用する。
【0144】
ニューロン生産効率を決定するために、ヒト特異的核抗原(hNuclei)および成熟汎ニューロン細胞骨格タンパク質微小管結合タンパク質2(MAP2)に対する抗体を使用して培養物を免疫染色する。培養物中のヒト分化細胞のパーセンテージを推定し、hNuclei+細胞に対するMAP2+細胞のパーセンテージを計算することによってニューロンと相関させる。hNuclei免疫試薬で染色されない大きな核は、支持性の単層として使用されるマウスグリア細胞の核に対応する。ヒト分化細胞の94%超がMAP2タンパク質を発現し、これは近位神経突起への予想された局在化を示し、ニューロン生産の成功を示す。
【0145】
抑制性神経伝達物質GABAに対する抗体を使用して、Optopatch測定の時点での培養物中のGABA作動性ニューロンの割合を決定する。Ngn2によって媒介されるプログラミングアプローチを使用した場合に興奮性ニューロンの濃縮を報告する以前の研究と一致して、Ngn2ニューロン/マウスグリア共培養物中のヒト分化したニューロン(MAP2+細胞)の<4%未満がGABA抗体に対して強い免疫反応性を示す。
【0146】
潜在的な薬理学的標的をコードする遺伝子のサブセットに対して、相対的転写物存在量のqPCRに基づく評価を行う。これらの標的には、ナトリウムおよびカリウムチャネルならびに過分極活性化型および環状ヌクレオチド開口型(HCN)チャネルが含まれる。平均Cq値のヒートマップは、Cq>34であるKCNJ11、KCNA1およびCHRM1を除いて、選択された薬理学的標的をコードする遺伝子のほとんどが低いレベル(Cq>28)で検出されることを示唆する。
【0147】
電気生理学の全光型測定であるOptopatchは、青色光刺激に際して活動電位を誘発する電圧アクチュエータCheRiffおよび膜電位の変化の結果として近赤外蛍光発光を生成する電圧レポーターQuasArの発現に依存する。これらの2つの成分の各々は、レポーター発現レベルおよび膜輸送を監視するために使用される蛍光タンパク質に融合される。Optopatch性質決定時に、ニューロン調製物中での、CheRiffに融合された蛍光レポーターmOrange2およびQuasArに融合したCitrineの堅牢かつニューロン特異的な発現が観察される。
【0148】
Optopatch測定は、本明細書に記載されているように、特注の超広視野蛍光顕微鏡で行われる。このプラットフォームを使用して、それぞれAMPA、NMDAおよびGABA電流を遮断するためのシナプス遮断薬NBQX、D-AP5およびガバジンの存在下で、DIV25における11aおよび20b NGN2ニューロン培養物について内因性興奮性特性を記録する。増加する強度の3つの500msの青色光段階(1、15および75mW/cm)とそれに続く直線的に増加する強度の2つの2秒間の傾斜(0.5~10mW/cmおよび0.5~110mW/cm)の仕様変更した青色光刺激プロトコルを使用して、個々のニューロンから一定範囲の活動を誘発する。約50~100個のニューロンが同時に刺激され、単一の視野で記録される。
【0149】
高い信号雑音比(SNR)の蛍光-時間トレースが生成され、活動電位を高い忠実度で検出することができる。個々の活動電位が数百のニューロンのそれぞれについて検出され、Optopatchで記録され、各列は単一のニューロンを表し、各ドットは検出されたスパイクを表すスパイクラスタープロットにプロットされる。個々のニューロンは刺激プロトコル全体を通してスパイク挙動の多様性を示すが、集団の平均発火率は両細胞株で著しく類似している。
【0150】
これらのデータは、凍結保存され、その後解凍される電気生理学的に活性な細胞を生成する上での、2つの細胞株間でのニューロン生産の全体的な一貫性を実証する。
【0151】
スパイク幅を増加させ、スパイク活性を低下させることが報告されている、十分に特徴付けられた化合物であるキニジンを使用してNGN2ニューロンにおける薬理学的調節を検出することについての興奮性アッセイの感度を試験する。予想される効果と一致して、NGN2ニューロンへのキニジンの急性添加は、スパイク波形および発火率の両方に劇的な変化をもたらす。これらの変化は、10μMおよび30μMキニジンで個々のトレースにおいて観察することができる。異なる濃度のキニジンで処理されたニューロン培養物の平均発火率をビヒクルで処理された培養物の平均発火率と比較すると、青色光刺激の増加に伴って、スパイク率の劇的な低下が示される。
【0152】
Optopatch興奮性アッセイを使用して、キニジンおよびレチガビンに対する応答の両方のさらなる定量化を決定する。キニジンは、2つの細孔形成チャネルならびに電圧開口型Naチャネルを含む、いくつかの電位、NaおよびCa++開口型カリウムチャネル(KNa1.1、KCa5.1、K2P16.1、K1.5、K1.7、K10.1、K10.2)を遮断することが報告されている。KNa1.1をコードするKCNT1遺伝子は、出発iPS細胞株と比較してNGN2ニューロンにおいて検出可能な発現レベルを示す。キニジンの複雑な薬理学的活性は、スパイクの濃度依存的な広がりを引き起こす。
【0153】
いずれも試験した最大濃度(30μM)において、スパイク幅(活動電位の基部から測定)が増加し、スパイク上昇時間(活動電位の開始からピークまで測定)が増加し、過分極後(AhP)深度の最大までの時間が増加し、AhP深度の大きさ(活動電位前のベースライン蛍光から測定)が減少する。より高い刺激強度(15および75mW/cm)では、スパイク速度の濃度依存性低下も観察される。
【0154】
レチガビンは、低マイクロモル濃度およびナノモル濃度範囲(例えば、K7.3 EC506.31×10-7M;K7.2 2.5×10-6M)に有効濃度を有するK7.2/3/4/5カリウムチャネルの活性化剤である。NGN2ニューロンのレチガビンでの処理は、反復性のスパイクおよびバースト発生に対するブレーキとして作用する増強されたM電流を介して、後過分極後の深まりをもたらす。M電流のこの調節的役割と一致して、15および75mW/cmの刺激強度でのスパイク頻度の濃度依存的低下が観察される。レチガビンの最高濃度(30μM)およびピーク強度(75mW/cm)では、スパイク頻度が低下する。
【0155】
NGN2ニューロンにおけるKCNQ2およびKCNQ3転写物の検出可能な発現レベルは、レチガビンの強い薬理学的効果と一致する。全体として、qPCRおよびOptopatch興奮性アッセイの結果は、NGN2ニューロンにおいて発現されるイオンチャネル標的を介したキニジンおよびレチガビンの両方からの薬理学的調節の検出と一致している。
参照による組み入れ
【0156】
特許、特許出願、特許公報、学術誌、書籍、論文、ウェブコンテンツなどの他の文書の参照および引用が、本開示を通じて為されている。このようなすべての文書は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
均等物
【0157】
本明細書で示され、記述されるものに加えて、本発明の種々の改変および多くのそのさらなる態様が、本明細書で引用される科学的文献および特許文献への参照を含む本文書の全内容から当業者に明らかになるであろう。本明細書の主題には、その種々の態様およびその均等物において、本発明の実施に適合され得る重要な情報、例示およびガイダンスが含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】