(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】広域溶解活性を有する抗菌ペプチドP104、リシンLysP53及びその応用
(51)【国際特許分類】
C07K 14/00 20060101AFI20240621BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240621BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240621BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240621BHJP
C07K 1/22 20060101ALI20240621BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240621BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240621BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240621BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C07K14/00 ZNA
C12N15/11 Z
C12N15/63 Z
C12N1/21
C07K1/22
C12P21/02 A
A61K38/16
A61K48/00
A61P31/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577668
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 CN2022100968
(87)【国際公開番号】W WO2023279983
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】202110760643.6
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520266513
【氏名又は名称】中国科学院武漢病毒研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100183564
【氏名又は名称】西村 伸也
(72)【発明者】
【氏名】危宏平
(72)【発明者】
【氏名】楊航
(72)【発明者】
【氏名】李唱唱
(72)【発明者】
【氏名】余軍平
(72)【発明者】
【氏名】蒋夢薇
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG30
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA02
4B065AA26X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BD14
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA19
4C084BA20
4C084BA23
4C084CA53
4C084NA14
4C084ZB351
4C084ZB352
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045DA83
4H045EA29
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
広域溶解活性を有する抗菌ペプチドP104、リシンLysP53及びその応用を提供する。前記抗菌ペプチドP104のアミノ酸配列はSEQ ID NO.1に示す通りであり、前記抗菌ペプチドP104の遺伝子配列はSEQ ID NO.3に示す通りである。前記リシンLysP53のアミノ酸配列はSEQ ID NO.2に示す通りであり、前記リシンLysP53の遺伝子配列はSEQ ID NO.4に示す通りである。前記抗菌ペプチドP104及び前記リシンLysP53は、インビトロで、アシネトバクター・バウマニ、緑膿菌、肺炎桿菌及び大腸菌に対し良好な溶解効果を有し、グラム陰性菌を広域的に溶解可能である。且つ、前記リシンLysP53は大腸菌内で可溶性発現が可能であって、酵素の活性が高い。よって、前記抗菌ペプチドP104及び前記リシンLysP53は、抗感染系薬の研究開発において優れた応用可能性を有している。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
広域溶解活性を有する抗菌ペプチドP104において、
前記抗菌ペプチドP104のアミノ酸配列はSEQ ID NO.1に示す通りであることを特徴とする抗菌ペプチドP104。
【請求項2】
前記抗菌ペプチドP104の遺伝子配列はSEQ ID NO.3に示す通りであることを特徴とする請求項1に記載の広域溶解活性を有する抗菌ペプチドP104。
【請求項3】
広域溶解活性を有するリシンLysP53において、
前記リシンLysP53は請求項1に記載の抗菌ペプチドP104を含み、前記リシンLysP53のアミノ酸配列はSEQ ID NO.2に示す通りであることを特徴とするリシンLysP53。
【請求項4】
前記リシンLysP53の遺伝子配列はSEQ ID NO.4に示す通りであることを特徴とする請求項3に記載の広域溶解活性を有するリシンLysP53。
【請求項5】
前記リシンLysP53のヌクレオチド配列を増幅するプライマーの配列はSEQ ID NO.5及びSEQ ID NO.6に示す通りであることを特徴とする請求項3又は4に記載の広域溶解活性を有するリシンLysP53。
【請求項6】
請求項4に記載のリシンLysP53の遺伝子を含む組換え発現ベクターにおいて、
前記組換え発現ベクターは原核生物発現ベクターpET28a-LysP53であることを特徴とする組換え発現ベクター。
【請求項7】
請求項6に記載の組換え発現ベクターを含む宿主細胞において、
前記宿主細胞は大腸菌BL21(DE3)であることを特徴とする宿主細胞。
【請求項8】
前記リシンLysP53の調製方法は、
S1:バクテリオファージP53のゲノムからリシンLysP53の遺伝子を増幅し、
S2:前記リシンLysP53の遺伝子を発現させる組換え発現ベクターpET28a-LysP53を構築し、
S3:前記組換え発現ベクターpET28a-LysP53を大腸菌BL21(DE3)のコンピテントセルに形質転換し、前記リシンLysP53の遺伝子を発現する操作菌をスクリーニングし、
S4:IPTGを用いて発現を誘導し、組換え遺伝子の発現産物を取得し、
S5:組換え遺伝子の発現産物をニッケルカラムで精製・分離することで、前記リシンLysP53を取得する、
とのステップを含むことを特徴とする請求項3又は4に記載の広域溶解活性を有するリシンLysP53。
【請求項9】
グラム陰性菌の溶解における請求項1に記載の広域溶解活性を有する抗菌ペプチドP104及び/又は請求項3に記載の広域溶解活性を有するリシンLysP53の応用。
【請求項10】
前記グラム陰性菌は、アシネトバクター・バウマニ、緑膿菌、肺炎桿菌及び大腸菌のうちのいくつかを含むことを特徴とする請求項9に記載の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ医薬品の分野に属し、具体的には、広域溶解活性を有する抗菌ペプチドP104、リシンLysP53及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
かつて、抗生物質は、細菌感染性疾患を治療するための最も有力な武器と考えられていたが、抗生物質の濫用が日々深刻化するにつれて、細菌の薬剤耐性の問題も深刻さを増している。ところが、薬剤耐性菌の発生速度に比べて、新抗生物質の研究開発速度は遥かに遅れを取っている。また、代替可能な新抗生物質は数が極めて少なく、費用も高騰することから、臨床では多くの薬剤耐性菌感染者が手の施しようもなく死亡している。こうした抗生物質に対する厳しい薬剤耐性の作用下において、抗生物質に代わって新型の抗菌剤となり得るバクテリオファージが国内外の学者の注目を集めている。
【0003】
バクテリオファージとは、微生物(細菌、真菌、放線菌又はスピロヘータ)を宿主とするウイルスの一種である。バクテリオファージは、細胞構造を有さず、ヌクレオカプシドタンパク質とその内部の遺伝物質のみで構成されており、複製及び増殖を宿主に依存せねばならない。バクテリオファージは、細菌のナチュラルキラーとして自然界に広く存在しており、地球上で最も豊富且つ多様な生物体とされている。また、バクテリオファージの数は細菌のおよそ10倍である。ほぼ1世紀余りにわたり、バクテリオファージ療法の安全性と有効性は多くの動物実験において実証されてきた。溶菌性ファージは、宿主細菌の細胞に感染すると直ちに自身の初期遺伝子の発現を開始し、これら初期遺伝子の発現産物によって宿主のDNAを分解する。そして、これにより宿主の遺伝子発現を停止させ、宿主のDNA複製装置を奪って自身の核酸を大量に合成する。十分なバクテリオファージが発生したあとは、これらの核酸が鋳型となって大量のバクテリオファージの構造タンパク質が産生される。これらの構造タンパク質は、バクテリオファージのゲノムを加工及び封入して次世代のバクテリオファージ粒子を産生する。バクテリオファージの調節タンパク質が一定のレベルまで蓄積されると、バクテリオファージのパーフォリンが大量に発現する。そして、パーフォリンが宿主細胞内に孔を形成することで、バクテリオファージのリシンが内膜を貫通して細胞壁に接近し、細胞壁を溶解する。これにより、細菌を溶解するとの目的が達成される。
【0004】
完成されたバクテリオファージ粒子が抗菌剤となり得るほか、バクテリオファージがコードするペプチドグリカン加水分解酵素(リシン(lysin))もまた開発の潜在力に極めて優れた新型の抗菌分子の一つとなる。リシンとは、2本鎖DNAバクテリオファージが宿主への感染後期にコードする加水分解酵素の一種であり、細菌細胞壁のペプチドグリカンを加水分解することで、細菌を溶解して子孫バクテリオファージを放出可能とする。グラム陽性菌に対するリシンには比較系及び成熟した研究が存在し、動物感染モデルにおいて多くの天然型リシン及びキメラ型リシンの安全性及び有効性が実証されている。中でも、薬剤耐性黄色ブドウ球菌感染に対する複数のリシンはすでに臨床試験段階に進んでいる。リシンは、高効率性、特異性、低薬剤耐性及び従来の抗生物質とのシナジー効果等の優位性から、将来性に極めて優れた新たな抗菌薬となっている。
【0005】
現在のところ、バクテリオファージのリシンは、例えば、黄色ブドウ球菌、リステリア菌及び腸球菌等のグラム陽性菌の溶解に主に応用されており、グラム陰性菌に対して溶解活性を有するバクテリオファージのリシンについては研究が少ない。よって、グラム陰性菌に対し高効率の溶解活性を有する新たなバクテリオファージのリシンを開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来技術の瑕疵を解消するために、広域溶解活性を有する抗菌ペプチドP104、リシンLysP53及びその応用を提供することである。前記抗菌ペプチドP104及び前記リシンLysP53は、インビトロで、アシネトバクター・バウマニ、緑膿菌、肺炎桿菌及び大腸菌に対し良好な溶解効果を有し、グラム陰性菌を広域的に溶解可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的の一つは、広域溶解活性を有する抗菌ペプチドP104を提供することである。
【0008】
広域溶解活性を有する抗菌ペプチドP104において、前記抗菌ペプチドP104のアミノ酸配列はSEQ ID NO.1に示す通りである。
【0009】
更に、前記抗菌ペプチドP104の遺伝子配列はSEQ ID NO.3に示す通りである。
【0010】
本発明のもう一つの目的は、広域溶解活性を有するリシンLysP53を提供することである。
【0011】
広域溶解活性を有するリシンLysP53において、前記リシンLysP53は上記抗菌ペプチドP104を含む。前記リシンLysP53のアミノ酸配列はSEQ ID NO.2に示す通りである。
【0012】
更に、前記リシンLysP53の遺伝子配列はSEQ ID NO.4に示す通りである。
【0013】
更に、前記リシンLysP53のヌクレオチド配列を増幅するプライマーの配列はSEQ ID NO.5及びSEQ ID NO.6に示す通りである。
【0014】
本発明は、更に、前記リシンLysP53の遺伝子を含む組換え発現ベクターを提供する。
【0015】
前記リシンLysP53の遺伝子を含む組換え発現ベクターにおいて、前記組換え発現ベクターは原核生物発現ベクターpET28a-LysP53である。
【0016】
本発明は、更に、前記組換え発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0017】
前記組換え発現ベクターを含む宿主細胞において、前記宿主細胞は大腸菌BL21(DE3)である。
【0018】
更に、前記リシンLysP53の調製方法は以下のステップを含む。
【0019】
S1:バクテリオファージP53のゲノムからリシンLysP53の遺伝子を増幅する。
【0020】
S2:前記リシンLysP53の遺伝子を発現させる組換え発現ベクターpET28a-LysP53を構築する。
【0021】
S3:前記組換え発現ベクターpET28a-LysP53を大腸菌BL21(DE3)のコンピテントセルに形質転換し、前記リシンLysP53の遺伝子を発現する操作菌をスクリーニングする。
【0022】
S4:IPTGを用いて発現を誘導し、組換え遺伝子の発現産物を取得する。
【0023】
S5:組換え遺伝子の発現産物をニッケルカラムで精製・分離することで、前記リシンLysP53を取得する。
【0024】
最後に、本発明は、グラム陰性菌の溶解における広域溶解活性を有する抗菌ペプチドP104及び/又は広域溶解活性を有するリシンLysP53の応用を提供する。
【0025】
更に、前記グラム陰性菌は、アシネトバクター・バウマニ、緑膿菌、肺炎桿菌及び大腸菌のうちのいくつかを含む。
【発明の効果】
【0026】
従来技術と比較して、本発明は以下の利点を有する。
【0027】
本発明は、広域溶解活性を有する抗菌ペプチドP104と、広域溶解活性を有するリシンLysP53を提供する。前記抗菌ペプチドP104及び前記リシンLysP53は、インビトロで、アシネトバクター・バウマニ、緑膿菌、肺炎桿菌及び大腸菌に対し良好な溶解効果を有し、グラム陰性菌を広域的に溶解可能である。且つ、前記リシンLysP53は大腸菌内で可溶性発現が可能であって、酵素の活性が高い。よって、前記抗菌ペプチドP104及び前記リシンLysP53は、抗感染系薬の研究開発において優れた応用可能性を有している。
【0028】
本発明の実施例の技術方案について更に明瞭に説明するために、以下に、実施例の記載において使用を要する図面につき簡単に述べる。なお、言うまでもなく、以下で記載する図面は本発明の一部の実施例にすぎず、当業者であれば、創造的労働を要さないことを前提にこれらの図面から更にその他の図面を得ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1における抗菌ペプチドP104をクロマトグラフィーにかけた際の純度の図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例2におけるリシンLysP53を精製したあとのSDS-PAGEゲルの図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例3におけるリシンLysP53でA.baumannii WHG40137を溶解した際の経時変化の結果の図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施例4におけるリシンLysP53で異なる成長期のA.baumannii WHG40137を溶解した際の活性結果の図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施例5におけるリシンLysP53により異なるpHでA.baumannii WHG40137を溶解した際の活性結果の図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施例6におけるリシンLysP53によりインビトロで異なるグラム陰性菌の菌株を溶解した際の広域性の結果の図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施例7におけるリシンLysP53により異なるEDTA濃度でA.baumannii WHG40137を死滅させた際の活性結果の図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施例8におけるリシンLysP53によりマウスの皮膚表面でA.baumannii WHG40137を死滅させた際の活性結果の図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施例8における抗菌ペプチドP104及びリシンLysP53によりインビトロで異なるグラム陰性菌の菌株を溶解した際の広域性の結果の図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、本発明の実施例における図面を組み合わせて、本発明の実施例の技術方案につき明瞭簡潔に述べる。なお、言うまでもなく、記載する実施例は本発明の一部の実施例にすぎず、全ての実施例ではない。当業者が本発明の実施例に基づいて創造的労働を要さないことを前提に取得するその他全ての実施例は、いずれも本発明の保護の範囲に属する。
【0031】
特に説明がない場合、本発明で使用した試薬、グラム陰性菌株及び機器はいずれも市販のものから取得可能である。
【0032】
特に説明がない場合、本発明で使用した実験方法はいずれも一般的な実験方法である。また、使用したプライマー、シーケンシング操作はいずれも上海生工生物技術有限公司で完成され、抗菌ペプチドP104は上海強耀生物科技公司で合成された。
【0033】
本発明における抗菌ペプチドP104の遺伝子配列及びリシンLysP53の遺伝子配列は、バクテリオファージP53のゲノムから取得した。当該ゲノム配列は、登録番号MW590698としてNCBI(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/)のウェブサイトにアップロードされている。
【0034】
実施例1 抗菌ペプチドP104の合成
【0035】
発明者は、大量の実験及び分析を通じて、バクテリオファージP53のゲノムから抗菌ペプチドP104を探し出した。前記抗菌ペプチドP104のアミノ酸配列はSEQ ID NO.1に示す通りであり、前記抗菌ペプチドP104の遺伝子配列はSEQ ID NO.3に示す通りであった。前記抗菌ペプチドP104は上海強耀生物科技公司により合成された。合成された抗菌ペプチドP104は、純度が98.58%、分子量が3885.57であった。前記抗菌ペプチドP104の純度は高速液体クロマトグラフィーで測定した。抗菌ペプチドP104をクロマトグラフィーにかけた際の純度の図については
図1を参照する。また、その分析結果については下記の表1の通りとなった。
【0036】
【0037】
前記高速液体クロマトグラフィーの液相条件は次の通りであった。
【0038】
クロマトグラフィーカラム:Kromasil 100-5-C18(4.6mm×150mm、5μm)。
【0039】
移動相:移動相Aを0.1%TFAアセトニトリル溶液、移動相Bを0.1%TFA水溶液としてグラジエント溶離を行った。グラジエント溶離については表2を参照する。また、流速を1.0mL/min、カラム温度を25℃、注入量を10μL、検出波長を220nmとした。
【0040】
【0041】
実施例2 リシンLysP53の発現及び精製
【0042】
発明者は、大量の実験及び分析を通じて、バクテリオファージP53のゲノムからリシンLysP53を探し出した。前記リシンLysP53のアミノ酸配列はSEQ ID NO.2に示す通りであり、前記リシンLysP53の遺伝子配列はSEQ ID NO.4に示す通りであった。
【0043】
2.1 組換え発現ベクターの構築
【0044】
リシンLysP53の遺伝子配列に基づき、従来技術において一般的なプライマー設計ソフトを用いて以下のようなプライマー配列を設計した。
【0045】
53P37-F:ctttaagaaggagatataccatggATGACGATGACAACAAAACGTA(SEQ ID NO.5に示す通り。NcoI酵素切断部位を有する)。
【0046】
53P37-R:tggtggtggtggtggtgctcgagCCCCGCCAATTCAAAGTGTGGGCT(SEQ ID NO.6に示す通り。XhoI酵素切断部位を有する)。
【0047】
標的遺伝子断片は、バイオ企業により合成してもよいし、バクテリオファージP53のゲノムを鋳型として標的遺伝子の増幅を行ってもよいが、本発明ではバクテリオファージP53のゲノムを鋳型として標的遺伝子の増幅を行った。前記増幅系は50μLの反応系であり、具体的には、5μLの10×buffer(Mg2+の濃度が20mmol/L)、4μLのdNTPs(2.5mmol/L)、2μLの53P37-F(10μmol/L)、2μLの53P37-R(10μmol/L)、0.5μLの鋳型DNA、0.2μLのTaq DNAポリメラーゼ(5U/μL)、36.3μLのddH20を成分として含んでいた。
【0048】
PCR反応の条件:98℃で予備変形5min、98℃で変性10s、55℃でアニーリング15s、72℃で伸張50sを30サイクル実施し、72℃で5min伸張させた。反応終了後は、PCR増幅産物について、アガロースゲル電気泳動検出、精製、配列検証を行ったあと、NcoI制限酵素及びXhoI制限酵素を用いて酵素切断を行った。そして、同じNcoI制限酵素及びXhoI制限酵素で酵素切断を行ったベクターpET28aと結合することで、組換え発現ベクターpET28a-LysP53を取得した。その後、組換え発現ベクターpET28a-LysP53を大腸菌BL21(DE3)に導入し、陽性クローンを選択して配列検証を行った。
【0049】
2.2 リシンLysP53の発現及び精製
【0050】
50μg/mLのカナマイシンを含有する500mLのLB培地において、配列が正しく且つpET28a-LysP53を含む大腸菌BL21(DE3)をOD600が0.5~0.6となるまで培養したあと、0.5mMイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(サーモサイエンティフィック社)を用いて16h誘導した。その後、4℃、8000rpmとの条件で10min遠心分離にかけて細胞を収集してから、20mMイミダゾールで1回洗浄し、20mMイミダゾールに再懸濁させた。細胞は細胞破砕機により氷上で破砕し、4℃、8000rpmとの条件で20min遠心分離にかけた。そして、0.22μmのメンブレンフィルタを用いて上清液を濾過したあと、ニッケルカラムを通過させてアフィニティークロマトグラフィーを行うことで、250mMイミダゾールで溶離された断片を収集した。これを4℃の条件下で20mM Tris緩衝液(pH6.8)内に置き、一晩透析することで、前記リシンLysP53を取得した。前記リシンLysP53を精製したあとのSDS-PAGEゲルの図については
図2を参照する。
【0051】
図2から明らかなように、前記リシンLysP53の大きさは約24kDaであった。
【0052】
実施例3 A.baumannii WHG40137に対するリシンLysP53の溶解活性における時間の影響
【0053】
アシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137を対数期(OD600nm=0.4~0.6)まで培養し、低温で遠心分離にかけて沈殿物を収集したあと、Tris-HCl緩衝液で1回洗浄した。そして、洗浄後の沈殿物を上記緩衝液に溶解させて、A.baumannii WHG40137の菌液を取得した。次に、実施例2で調製したリシンLysP53を取り、リシンLysP53の終濃度が100μg/mlとなるように上記菌液と混合した。また、等量の緩衝液と上記菌液との混合液を陰性対照とした。これらを37℃の条件下で培養し、異なるタイミングでそれぞれサンプリングしてから、セルカウントプレートによるカウントを行った。以上により得られた結果について
図3を参照する。
【0054】
図3の結果から明らかなように、培養から15min後に、実験群のアシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137は大幅に減少し、培養から1h後には、アシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137の濃度は10cfu/mlまで低下した。結果より、リシンLysP53はアシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137に対し良好な溶解活性を有することが示された。
【0055】
実施例4 異なる成長期のA.baumannii WHG40137に対するリシンLysP53の溶解活性の結果
【0056】
アシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137を対数期(OD600nm=0.4~0.6)及び定常期(OD600nm=1.2~1.4)まで培養し、低温で遠心分離にかけて沈殿物を収集したあと、Tris-HCl緩衝液で1回洗浄した。そして、洗浄後の沈殿物を上記緩衝液に溶解させて、A.baumannii WHG40137の菌液を取得した。次に、実施例2で調製したリシンLysP53を取り、リシンLysP53の終濃度が100μg/mlとなるように上記菌液と混合した。また、等量の緩衝液と上記菌液との混合液を陰性対照とした。これらを37℃で1h培養したあと、セルカウントプレートによるカウントを行った。以上により得られた結果について
図4を参照する。
【0057】
図4の結果から明らかなように、対数期のアシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137に対するリシンLysP53の溶解活性はより高かった。
【0058】
実施例5 A.baumannii WHG40137に対するリシンLysP53の溶解活性におけるpHの違いの影響
【0059】
アシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137を対数期(OD600nm=0.4~0.6)まで培養し、低温で遠心分離にかけて沈殿物を収集したあと、Tris-HCl緩衝液で1回洗浄した。そして、洗浄後の沈殿物をpHの異なる上記緩衝液(pH5~8)に再懸濁させて、A.baumannii WHG40137の菌液を取得した。次に、実施例2で調製したリシンLysP53を取り、リシンLysP53の終濃度が100μg/mlとなるように上記菌液と混合した。また、等量の緩衝液と上記菌液との混合液を陰性対照とした。これらを37℃で1h培養したあと、セルカウントプレートによるカウントを行った。以上により得られた結果について
図5を参照する。
【0060】
図5の結果から明らかなように、pHが5.0~6.5の場合に、アシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137に対するリシンLysP53の溶解活性はより高くなり、菌液濃度は10cfu/mlまで低下した。また、溶液のpHが上昇するにつれて(7.0~8.0)、アシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137に対するリシンLysP53の溶解活性は低下した。結果より、リシンLysP53は、酸性条件においてアシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137に対する溶解活性がより高くなることが示された。
【0061】
実施例6 リシンLysP53によりインビトロで異なるグラム陰性菌の菌株を溶解した際の広域性の結果
【0062】
複数種類のアシネトバクター・バウマニ、緑膿菌、肺炎桿菌及び大腸菌の菌株を定常期(OD600nm=1.2~1.4)となるまで培養し、低温で遠心分離にかけて沈殿物を収集したあと、Tris-HCl緩衝液で1回洗浄した。そして、洗浄後の沈殿物を上記緩衝液に溶解させて、A.baumannii WHG40137の菌液を取得した。次に、実施例2で調製したリシンLysP53を取り、リシンLysP53の終濃度が100μg/mlとなるように上記菌液と混合した。また、等量の緩衝液と上記菌液との混合液を陰性対照とした。これらを37℃で1h培養したあと、セルカウントプレートによるカウントを行った。以上により得られた結果について
図6を参照する。
【0063】
図6の結果から明らかなように、リシンLysP53は、複数種類のアシネトバクター・バウマニ、緑膿菌、肺炎桿菌及び大腸菌に対しいずれも良好な溶解効果を有していた。結果より、リシンLysP53はグラム陰性菌の溶解について広域性を有することが示された。
【0064】
実施例7 A.baumannii WHG40137に対するリシンLysP53の溶解活性におけるEDTA濃度の違いの影響
【0065】
アシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137を定常期(OD600nm=1.2~1.4)まで培養し、低温で遠心分離にかけて沈殿物を収集したあと、Tris-HCl緩衝液で1回洗浄した。そして、洗浄後の沈殿物を上記緩衝液に溶解させて、A.baumannii WHG40137の菌液を取得した。次に、実施例2で調製したリシンLysP53を取り、リシンLysP53の終濃度が100μg/mlとなるように上記菌液と混合してから、EDTAを終濃度がそれぞれ0μM、62.5μM、125μM、250μM、500μMとなるまで添加した。また、等量の緩衝液と上記菌液との混合液を陰性対照とした。これらを37℃の条件下で培養し、異なるタイミングでそれぞれサンプリングしてから、セルカウントプレートによるカウントを行った。以上により得られた結果について
図7を参照する。
【0066】
図7の結果から明らかなように、EDTAの濃度が高くなるにつれて、アシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137に対するリシンLysP53の溶解活性はより高くなった。結果より、EDTAはリシンLysP53によるアシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137の溶解に対し顕著な促進作用を有することが示された。
【0067】
実施例8 リシンLysP53によりマウスの皮膚表面でA.baumannii WHG40137を溶解した際の活性結果
【0068】
6~8週齢のメスのBALB/cマウスに40mg/kgのペントバルビタールを腹腔注射して麻酔をかけたあと、電気カミソリで背部の2cm2を剃毛した。そして、露出した皮膚を65℃の水中に12s曝露することで部分的に熱傷を負わせることができた。次に、濃度108CFU/mlのアシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137を10μL採取して熱傷部位に接種し、24h定着させてから、マウスをランダムに3群に分けた。第1群のマウスは12匹であり、各マウスの熱傷部位に14μgのリシンLysP53を付与した。第2群のマウスは12匹であり、各マウスの熱傷部位に4μgのミノサイクリンを付与した。第3群のマウスは9匹であり、各マウスの熱傷部位に等量の緩衝液を付与した。治療から4時間後に、マウスを頸椎脱臼させて殺処分し、皮膚を採取した。感染した皮膚を切り取り、0.1%トリトンX-100を含有する1mlのPBSTを用いて2分間浸潤させてから、組織細胞破砕機(NewZongKe社、武漢)を用いて組織のホモジネートを行った。そして、これを希釈し、4μg/mlのゲンタマイシン及び2μg/mlのメロペネムを含有するLBプレートに塗布して、一晩培養したあとカウントした。以上により得られた結果について
図8を参照する。
【0069】
図8の結果から明らかなように、アシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137に対するリシンLysP53の溶解活性はミノサイクリンよりも高く、両者の間には有意な差があった。
【0070】
実施例9 抗菌ペプチドP104及びリシンLysP53によりインビトロで異なるグラム陰性菌の菌株を溶解した際の広域性の結果
【0071】
複数種類のアシネトバクター・バウマニ、緑膿菌、肺炎桿菌及び大腸菌の菌株を定常期(OD600nm=1.2~1.4)となるまで培養し、低温で遠心分離にかけて沈殿物を収集したあと、Tris-HCl緩衝液で1回洗浄した。そして、洗浄後の沈殿物を上記緩衝液に溶解させて、A.baumannii WHG40137の菌液を取得した。次に、実施例2で調製したリシンLysP53及び実施例1で調製した抗菌ペプチドP104を取り、リシンLysP53及び抗菌ペプチドP104の終濃度がそれぞれ100μg/mlとなるように上記菌液とそれぞれ混合した。また、等量の緩衝液と上記菌液との混合液を陰性対照とした。これらを37℃で1h培養したあと、セルカウントプレートによるカウントを行った。以上により得られた結果について
図9を参照する。
【0072】
図9の結果から明らかなように、リシンLysP53及び抗菌ペプチドP104はアシネトバクター・バウマニに対する溶解活性がより強く、緑膿菌、肺炎桿菌及び大腸菌のいずれに対しても一定の溶解効果を有していた。結果より、リシンLysP53及び抗菌ペプチドP104はグラム陰性菌の溶解について広域性を有することが示された。
【0073】
以上の実施例は本発明の具体的実施形態にすぎず、本発明の技術方案を説明するためのものであって、制限するものではない。本発明の保護の範囲はこれに限らず、上記の実施例を参照して本発明につき詳細に説明したものの、当業者は以下の点を理解すべきである。即ち、当業者は、本発明が開示する技術範囲において、上記の実施例に記載した技術方案を修正可能である。或いは、容易に変形を想到したり、一部の技術的特徴について同等の置き換えを行ったりすることが可能である。しかし、これらの修正、変形又は置き換えは、対応する技術方案の本質を本発明の実施例の技術方案における精神及び範囲から逸脱させることはなく、いずれも本発明の保護の範囲内に網羅されるべきである。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-02-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ医薬品の分野に属し、具体的には、広域溶解活性を有する抗菌ペプチドP104、リシンLysP53及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
かつて、抗生物質は、細菌感染性疾患を治療するための最も有力な武器と考えられていたが、抗生物質の濫用が日々深刻化するにつれて、細菌の薬剤耐性の問題も深刻さを増している。ところが、薬剤耐性菌の発生速度に比べて、新抗生物質の研究開発速度は遥かに遅れを取っている。また、代替可能な新抗生物質は数が極めて少なく、費用も高騰することから、臨床では多くの薬剤耐性菌感染者が手の施しようもなく死亡している。こうした抗生物質に対する厳しい薬剤耐性の作用下において、抗生物質に代わって新型の抗菌剤となり得るバクテリオファージが国内外の学者の注目を集めている。
【0003】
バクテリオファージとは、微生物(細菌、真菌、放線菌又はスピロヘータ)を宿主とするウイルスの一種である。バクテリオファージは、細胞構造を有さず、ヌクレオカプシドタンパク質とその内部の遺伝物質のみで構成されており、複製及び増殖を宿主に依存せねばならない。バクテリオファージは、細菌のナチュラルキラーとして自然界に広く存在しており、地球上で最も豊富且つ多様な生物体とされている。また、バクテリオファージの数は細菌のおよそ10倍である。ほぼ1世紀余りにわたり、バクテリオファージ療法の安全性と有効性は多くの動物実験において実証されてきた。溶菌性ファージは、宿主細菌の細胞に感染すると直ちに自身の初期遺伝子の発現を開始し、これら初期遺伝子の発現産物によって宿主のDNAを分解する。そして、これにより宿主の遺伝子発現を停止させ、宿主のDNA複製装置を奪って自身の核酸を大量に合成する。十分なバクテリオファージが発生したあとは、これらの核酸が鋳型となって大量のバクテリオファージの構造タンパク質が産生される。これらの構造タンパク質は、バクテリオファージのゲノムを加工及び封入して次世代のバクテリオファージ粒子を産生する。バクテリオファージの調節タンパク質が一定のレベルまで蓄積されると、バクテリオファージのパーフォリンが大量に発現する。そして、パーフォリンが宿主細胞内に孔を形成することで、バクテリオファージのリシンが内膜を貫通して細胞壁に接近し、細胞壁を溶解する。これにより、細菌を溶解するとの目的が達成される。
【0004】
完成されたバクテリオファージ粒子が抗菌剤となり得るほか、バクテリオファージがコードするペプチドグリカン加水分解酵素(リシン(lysin))もまた開発の潜在力に極めて優れた新型の抗菌分子の一つとなる。リシンとは、2本鎖DNAバクテリオファージが宿主への感染後期にコードする加水分解酵素の一種であり、細菌細胞壁のペプチドグリカンを加水分解することで、細菌を溶解して子孫バクテリオファージを放出可能とする。グラム陽性菌に対するリシンには比較系及び成熟した研究が存在し、動物感染モデルにおいて多くの天然型リシン及びキメラ型リシンの安全性及び有効性が実証されている。中でも、薬剤耐性黄色ブドウ球菌感染に対する複数のリシンはすでに臨床試験段階に進んでいる。リシンは、高効率性、特異性、低薬剤耐性及び従来の抗生物質とのシナジー効果等の優位性から、将来性に極めて優れた新たな抗菌薬となっている。
【0005】
現在のところ、バクテリオファージのリシンは、例えば、黄色ブドウ球菌、リステリア菌及び腸球菌等のグラム陽性菌の溶解に主に応用されており、グラム陰性菌に対して溶解活性を有するバクテリオファージのリシンについては研究が少ない。よって、グラム陰性菌に対し高効率の溶解活性を有する新たなバクテリオファージのリシンを開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来技術の瑕疵を解消するために、広域溶解活性を有する抗菌ペプチドP104、リシンLysP53及びその応用を提供することである。前記抗菌ペプチドP104及び前記リシンLysP53は、インビトロで、アシネトバクター・バウマニ、緑膿菌、肺炎桿菌及び大腸菌に対し良好な溶解効果を有し、グラム陰性菌を広域的に溶解可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的の一つは、広域溶解活性を有する抗菌ペプチドP104を提供することである。
【0008】
広域溶解活性を有する抗菌ペプチドP104において、前記抗菌ペプチドP104のアミノ酸配列はSEQ ID NO.1に示す通りである。
【0009】
更に、前記抗菌ペプチドP104の遺伝子配列はSEQ ID NO.3に示す通りである。
【0010】
本発明のもう一つの目的は、広域溶解活性を有するリシンLysP53を提供することである。
【0011】
広域溶解活性を有するリシンLysP53において、前記リシンLysP53は上記抗菌ペプチドP104を含む。前記リシンLysP53のアミノ酸配列はSEQ ID NO.2に示す通りである。
【0012】
更に、前記リシンLysP53の遺伝子配列はSEQ ID NO.4に示す通りである。
【0013】
更に、前記リシンLysP53のヌクレオチド配列を増幅するプライマーの配列はSEQ ID NO.5及びSEQ ID NO.6に示す通りである。
【0014】
本発明は、更に、前記リシンLysP53の遺伝子を含む組換え発現ベクターを提供する。
【0015】
前記リシンLysP53の遺伝子を含む組換え発現ベクターにおいて、前記組換え発現ベクターは原核生物発現ベクターpET28a-LysP53である。
【0016】
本発明は、更に、前記組換え発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0017】
前記組換え発現ベクターを含む宿主細胞において、前記宿主細胞は大腸菌BL21(DE3)である。
【0018】
更に、前記リシンLysP53の調製方法は以下のステップを含む。
【0019】
S1:バクテリオファージP53のゲノムからリシンLysP53の遺伝子を増幅する。
【0020】
S2:前記リシンLysP53の遺伝子を発現させる組換え発現ベクターpET28a-LysP53を構築する。
【0021】
S3:前記組換え発現ベクターpET28a-LysP53を大腸菌BL21(DE3)のコンピテントセルに形質転換し、前記リシンLysP53の遺伝子を発現する操作菌をスクリーニングする。
【0022】
S4:IPTGを用いて発現を誘導し、組換え遺伝子の発現産物を取得する。
【0023】
S5:組換え遺伝子の発現産物をニッケルカラムで精製・分離することで、前記リシンLysP53を取得する。
【0024】
最後に、本発明は、グラム陰性菌の溶解における広域溶解活性を有する抗菌ペプチドP104及び/又は広域溶解活性を有するリシンLysP53の応用を提供する。
【0025】
更に、前記グラム陰性菌は、アシネトバクター・バウマニ、緑膿菌、肺炎桿菌及び大腸菌のうちのいくつかを含む。
【発明の効果】
【0026】
従来技術と比較して、本発明は以下の利点を有する。
【0027】
本発明は、広域溶解活性を有する抗菌ペプチドP104と、広域溶解活性を有するリシンLysP53を提供する。前記抗菌ペプチドP104及び前記リシンLysP53は、インビトロで、アシネトバクター・バウマニ、緑膿菌、肺炎桿菌及び大腸菌に対し良好な溶解効果を有し、グラム陰性菌を広域的に溶解可能である。且つ、前記リシンLysP53は大腸菌内で可溶性発現が可能であって、酵素の活性が高い。よって、前記抗菌ペプチドP104及び前記リシンLysP53は、抗感染系薬の研究開発において優れた応用可能性を有している。
【0028】
本発明の実施例の技術方案について更に明瞭に説明するために、以下に、実施例の記載において使用を要する図面につき簡単に述べる。なお、言うまでもなく、以下で記載する図面は本発明の一部の実施例にすぎず、当業者であれば、創造的労働を要さないことを前提にこれらの図面から更にその他の図面を得ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1における抗菌ペプチドP104をクロマトグラフィーにかけた際の純度の図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例2におけるリシンLysP53を精製したあとのSDS-PAGEゲルの図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例3におけるリシンLysP53でA.baumannii WHG40137を溶解した際の経時変化の結果の図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施例4におけるリシンLysP53で異なる成長期のA.baumannii WHG40137を溶解した際の活性結果の図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施例5におけるリシンLysP53により異なるpHでA.baumannii WHG40137を溶解した際の活性結果の図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施例6におけるリシンLysP53によりインビトロで異なるグラム陰性菌の菌株を溶解した際の広域性の結果の図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施例7におけるリシンLysP53により異なるEDTA濃度でA.baumannii WHG40137を死滅させた際の活性結果の図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施例8におけるリシンLysP53によりマウスの皮膚表面でA.baumannii WHG40137を死滅させた際の活性結果の図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施例8における抗菌ペプチドP104及びリシンLysP53によりインビトロで異なるグラム陰性菌の菌株を溶解した際の広域性の結果の図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、本発明の実施例における図面を組み合わせて、本発明の実施例の技術方案につき明瞭簡潔に述べる。なお、言うまでもなく、記載する実施例は本発明の一部の実施例にすぎず、全ての実施例ではない。当業者が本発明の実施例に基づいて創造的労働を要さないことを前提に取得するその他全ての実施例は、いずれも本発明の保護の範囲に属する。
【0031】
特に説明がない場合、本発明で使用した試薬、グラム陰性菌株及び機器はいずれも市販のものから取得可能である。
【0032】
特に説明がない場合、本発明で使用した実験方法はいずれも一般的な実験方法である。また、使用したプライマー、シーケンシング操作はいずれも上海生工生物技術有限公司で完成され、抗菌ペプチドP104は上海強耀生物科技公司で合成された。
【0033】
本発明における抗菌ペプチドP104の遺伝子配列及びリシンLysP53の遺伝子配列は、バクテリオファージP53のゲノムから取得した。当該ゲノム配列は、登録番号MW590698としてNCBI(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/)のウェブサイトにアップロードされている。
【0034】
実施例1 抗菌ペプチドP104の合成
【0035】
発明者は、大量の実験及び分析を通じて、バクテリオファージP53のゲノムから抗菌ペプチドP104を探し出した。前記抗菌ペプチドP104のアミノ酸配列はSEQ ID NO.1に示す通りであり、前記抗菌ペプチドP104の遺伝子配列はSEQ ID NO.3に示す通りであった。前記抗菌ペプチドP104は上海強耀生物科技公司により合成された。合成された抗菌ペプチドP104は、純度が98.58%、分子量が3885.57であった。前記抗菌ペプチドP104の純度は高速液体クロマトグラフィーで測定した。抗菌ペプチドP104をクロマトグラフィーにかけた際の純度の図については
図1を参照する。また、その分析結果については下記の表1の通りとなった。
【0036】
【0037】
前記高速液体クロマトグラフィーの液相条件は次の通りであった。
【0038】
クロマトグラフィーカラム:Kromasil 100-5-C18(4.6mm×150mm、5μm)。
【0039】
移動相:移動相Aを0.1%TFAアセトニトリル溶液、移動相Bを0.1%TFA水溶液としてグラジエント溶離を行った。グラジエント溶離については表2を参照する。また、流速を1.0mL/min、カラム温度を25℃、注入量を10μL、検出波長を220nmとした。
【0040】
【0041】
実施例2 リシンLysP53の発現及び精製
【0042】
発明者は、大量の実験及び分析を通じて、バクテリオファージP53のゲノムからリシンLysP53を探し出した。前記リシンLysP53のアミノ酸配列はSEQ ID NO.2に示す通りであり、前記リシンLysP53の遺伝子配列はSEQ ID NO.4に示す通りであった。
【0043】
2.1 組換え発現ベクターの構築
【0044】
リシンLysP53の遺伝子配列に基づき、従来技術において一般的なプライマー設計ソフトを用いて以下のようなプライマー配列を設計した。
【0045】
53P37-F:ctttaagaaggagatataccatggATGACGATGACAACAAAACGTA(SEQ ID NO.5に示す通り。NcoI酵素切断部位を有する)。
【0046】
53P37-R:tggtggtggtggtggtgctcgagCCCCGCCAATTCAAAGTGTGGGCT(SEQ ID NO.6に示す通り。XhoI酵素切断部位を有する)。
【0047】
標的遺伝子断片は、バイオ企業により合成してもよいし、バクテリオファージP53のゲノムを鋳型として標的遺伝子の増幅を行ってもよいが、本発明ではバクテリオファージP53のゲノムを鋳型として標的遺伝子の増幅を行った。前記増幅系は50μLの反応系であり、具体的には、5μLの10×buffer(Mg2+の濃度が20mmol/L)、4μLのdNTPs(2.5mmol/L)、2μLの53P37-F(10μmol/L)、2μLの53P37-R(10μmol/L)、0.5μLの鋳型DNA、0.2μLのTaq DNAポリメラーゼ(5U/μL)、36.3μLのddH20を成分として含んでいた。
【0048】
PCR反応の条件:98℃で予備変形5min、98℃で変性10s、55℃でアニーリング15s、72℃で伸張50sを30サイクル実施し、72℃で5min伸張させた。反応終了後は、PCR増幅産物について、アガロースゲル電気泳動検出、精製、配列検証を行ったあと、NcoI制限酵素及びXhoI制限酵素を用いて酵素切断を行った。そして、同じNcoI制限酵素及びXhoI制限酵素で酵素切断を行ったベクターpET28aと結合することで、組換え発現ベクターpET28a-LysP53を取得した。その後、組換え発現ベクターpET28a-LysP53を大腸菌BL21(DE3)に導入し、陽性クローンを選択して配列検証を行った。
【0049】
2.2 リシンLysP53の発現及び精製
【0050】
50μg/mLのカナマイシンを含有する500mLのLB培地において、配列が正しく且つpET28a-LysP53を含む大腸菌BL21(DE3)をOD600が0.5~0.6となるまで培養したあと、0.5mMイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(サーモサイエンティフィック社)を用いて16h誘導した。その後、4℃、8000rpmとの条件で10min遠心分離にかけて細胞を収集してから、20mMイミダゾールで1回洗浄し、20mMイミダゾールに再懸濁させた。細胞は細胞破砕機により氷上で破砕し、4℃、8000rpmとの条件で20min遠心分離にかけた。そして、0.22μmのメンブレンフィルタを用いて上清液を濾過したあと、ニッケルカラムを通過させてアフィニティークロマトグラフィーを行うことで、250mMイミダゾールで溶離された断片を収集した。これを4℃の条件下で20mM Tris緩衝液(pH6.8)内に置き、一晩透析することで、前記リシンLysP53を取得した。前記リシンLysP53を精製したあとのSDS-PAGEゲルの図については
図2を参照する。
【0051】
図2から明らかなように、前記リシンLysP53の大きさは約24kDaであった。
【0052】
実施例3 A.baumannii WHG40137に対するリシンLysP53の溶解活性における時間の影響
【0053】
アシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137を対数期(OD600nm=0.4~0.6)まで培養し、低温で遠心分離にかけて沈殿物を収集したあと、Tris-HCl緩衝液で1回洗浄した。そして、洗浄後の沈殿物を上記緩衝液に溶解させて、A.baumannii WHG40137の菌液を取得した。次に、実施例2で調製したリシンLysP53を取り、リシンLysP53の終濃度が100μg/mlとなるように上記菌液と混合した。また、等量の緩衝液と上記菌液との混合液を陰性対照とした。これらを37℃の条件下で培養し、異なるタイミングでそれぞれサンプリングしてから、セルカウントプレートによるカウントを行った。以上により得られた結果について
図3を参照する。
【0054】
図3の結果から明らかなように、培養から15min後に、実験群のアシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137は大幅に減少し、培養から1h後には、アシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137の濃度は10cfu/mlまで低下した。結果より、リシンLysP53はアシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137に対し良好な溶解活性を有することが示された。
【0055】
実施例4 異なる成長期のA.baumannii WHG40137に対するリシンLysP53の溶解活性の結果
【0056】
アシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137を対数期(OD600nm=0.4~0.6)及び定常期(OD600nm=1.2~1.4)まで培養し、低温で遠心分離にかけて沈殿物を収集したあと、Tris-HCl緩衝液で1回洗浄した。そして、洗浄後の沈殿物を上記緩衝液に溶解させて、A.baumannii WHG40137の菌液を取得した。次に、実施例2で調製したリシンLysP53を取り、リシンLysP53の終濃度が100μg/mlとなるように上記菌液と混合した。また、等量の緩衝液と上記菌液との混合液を陰性対照とした。これらを37℃で1h培養したあと、セルカウントプレートによるカウントを行った。以上により得られた結果について
図4を参照する。
【0057】
図4の結果から明らかなように、対数期のアシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137に対するリシンLysP53の溶解活性はより高かった。
【0058】
実施例5 A.baumannii WHG40137に対するリシンLysP53の溶解活性におけるpHの違いの影響
【0059】
アシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137を対数期(OD600nm=0.4~0.6)まで培養し、低温で遠心分離にかけて沈殿物を収集したあと、Tris-HCl緩衝液で1回洗浄した。そして、洗浄後の沈殿物をpHの異なる上記緩衝液(pH5~8)に再懸濁させて、A.baumannii WHG40137の菌液を取得した。次に、実施例2で調製したリシンLysP53を取り、リシンLysP53の終濃度が100μg/mlとなるように上記菌液と混合した。また、等量の緩衝液と上記菌液との混合液を陰性対照とした。これらを37℃で1h培養したあと、セルカウントプレートによるカウントを行った。以上により得られた結果について
図5を参照する。
【0060】
図5の結果から明らかなように、pHが5.0~6.5の場合に、アシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137に対するリシンLysP53の溶解活性はより高くなり、菌液濃度は10cfu/mlまで低下した。また、溶液のpHが上昇するにつれて(7.0~8.0)、アシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137に対するリシンLysP53の溶解活性は低下した。結果より、リシンLysP53は、酸性条件においてアシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137に対する溶解活性がより高くなることが示された。
【0061】
実施例6 リシンLysP53によりインビトロで異なるグラム陰性菌の菌株を溶解した際の広域性の結果
【0062】
複数種類のアシネトバクター・バウマニ、緑膿菌、肺炎桿菌及び大腸菌の菌株を定常期(OD600nm=1.2~1.4)となるまで培養し、低温で遠心分離にかけて沈殿物を収集したあと、Tris-HCl緩衝液で1回洗浄した。そして、洗浄後の沈殿物を上記緩衝液に溶解させて、A.baumannii WHG40137の菌液を取得した。次に、実施例2で調製したリシンLysP53を取り、リシンLysP53の終濃度が100μg/mlとなるように上記菌液と混合した。また、等量の緩衝液と上記菌液との混合液を陰性対照とした。これらを37℃で1h培養したあと、セルカウントプレートによるカウントを行った。以上により得られた結果について
図6を参照する。
【0063】
図6の結果から明らかなように、リシンLysP53は、複数種類のアシネトバクター・バウマニ、緑膿菌、肺炎桿菌及び大腸菌に対しいずれも良好な溶解効果を有していた。結果より、リシンLysP53はグラム陰性菌の溶解について広域性を有することが示された。
【0064】
実施例7 A.baumannii WHG40137に対するリシンLysP53の溶解活性におけるEDTA濃度の違いの影響
【0065】
アシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137を定常期(OD600nm=1.2~1.4)まで培養し、低温で遠心分離にかけて沈殿物を収集したあと、Tris-HCl緩衝液で1回洗浄した。そして、洗浄後の沈殿物を上記緩衝液に溶解させて、A.baumannii WHG40137の菌液を取得した。次に、実施例2で調製したリシンLysP53を取り、リシンLysP53の終濃度が100μg/mlとなるように上記菌液と混合してから、EDTAを終濃度がそれぞれ0μM、62.5μM、125μM、250μM、500μMとなるまで添加した。また、等量の緩衝液と上記菌液との混合液を陰性対照とした。これらを37℃の条件下で培養し、異なるタイミングでそれぞれサンプリングしてから、セルカウントプレートによるカウントを行った。以上により得られた結果について
図7を参照する。
【0066】
図7の結果から明らかなように、EDTAの濃度が高くなるにつれて、アシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137に対するリシンLysP53の溶解活性はより高くなった。結果より、EDTAはリシンLysP53によるアシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137の溶解に対し顕著な促進作用を有することが示された。
【0067】
実施例8 リシンLysP53によりマウスの皮膚表面でA.baumannii WHG40137を溶解した際の活性結果
【0068】
6~8週齢のメスのBALB/cマウスに40mg/kgのペントバルビタールを腹腔注射して麻酔をかけたあと、電気カミソリで背部の2cm2を剃毛した。そして、露出した皮膚を65℃の水中に12s曝露することで部分的に熱傷を負わせることができた。次に、濃度108CFU/mlのアシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137を10μL採取して熱傷部位に接種し、24h定着させてから、マウスをランダムに3群に分けた。第1群のマウスは12匹であり、各マウスの熱傷部位に14μgのリシンLysP53を付与した。第2群のマウスは12匹であり、各マウスの熱傷部位に4μgのミノサイクリンを付与した。第3群のマウスは9匹であり、各マウスの熱傷部位に等量の緩衝液を付与した。治療から4時間後に、マウスを頸椎脱臼させて殺処分し、皮膚を採取した。感染した皮膚を切り取り、0.1%トリトンX-100を含有する1mlのPBSTを用いて2分間浸潤させてから、組織細胞破砕機(NewZongKe社、武漢)を用いて組織のホモジネートを行った。そして、これを希釈し、4μg/mlのゲンタマイシン及び2μg/mlのメロペネムを含有するLBプレートに塗布して、一晩培養したあとカウントした。以上により得られた結果について
図8を参照する。
【0069】
図8の結果から明らかなように、アシネトバクター・バウマニ A.baumannii WHG40137に対するリシンLysP53の溶解活性はミノサイクリンよりも高く、両者の間には有意な差があった。
【0070】
実施例9 抗菌ペプチドP104及びリシンLysP53によりインビトロで異なるグラム陰性菌の菌株を溶解した際の広域性の結果
【0071】
複数種類のアシネトバクター・バウマニ、緑膿菌、肺炎桿菌及び大腸菌の菌株を定常期(OD600nm=1.2~1.4)となるまで培養し、低温で遠心分離にかけて沈殿物を収集したあと、Tris-HCl緩衝液で1回洗浄した。そして、洗浄後の沈殿物を上記緩衝液に溶解させて、A.baumannii WHG40137の菌液を取得した。次に、実施例2で調製したリシンLysP53及び実施例1で調製した抗菌ペプチドP104を取り、リシンLysP53及び抗菌ペプチドP104の終濃度がそれぞれ100μg/mlとなるように上記菌液とそれぞれ混合した。また、等量の緩衝液と上記菌液との混合液を陰性対照とした。これらを37℃で1h培養したあと、セルカウントプレートによるカウントを行った。以上により得られた結果について
図9を参照する。
【0072】
図9の結果から明らかなように、リシンLysP53及び抗菌ペプチドP104はアシネトバクター・バウマニに対する溶解活性がより強く、緑膿菌、肺炎桿菌及び大腸菌のいずれに対しても一定の溶解効果を有していた。結果より、リシンLysP53及び抗菌ペプチドP104はグラム陰性菌の溶解について広域性を有することが示された。
【0073】
以上の実施例は本発明の具体的実施形態にすぎず、本発明の技術方案を説明するためのものであって、制限するものではない。本発明の保護の範囲はこれに限らず、上記の実施例を参照して本発明につき詳細に説明したものの、当業者は以下の点を理解すべきである。即ち、当業者は、本発明が開示する技術範囲において、上記の実施例に記載した技術方案を修正可能である。或いは、容易に変形を想到したり、一部の技術的特徴について同等の置き換えを行ったりすることが可能である。しかし、これらの修正、変形又は置き換えは、対応する技術方案の本質を本発明の実施例の技術方案における精神及び範囲から逸脱させることはなく、いずれも本発明の保護の範囲内に網羅されるべきである。
【国際調査報告】