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特表2024-523382バンコマイシン耐性腸球菌に対するバクテリオファージ
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  • 特表-バンコマイシン耐性腸球菌に対するバクテリオファージ 図1
  • 特表-バンコマイシン耐性腸球菌に対するバクテリオファージ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】バンコマイシン耐性腸球菌に対するバクテリオファージ
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/00 20060101AFI20240621BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240621BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20240621BHJP
   A61K 36/06 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 39/02 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240621BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20240621BHJP
   A23L 33/14 20160101ALI20240621BHJP
   C12Q 1/70 20060101ALI20240621BHJP
   C12Q 1/48 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C12N7/00 ZNA
A61K35/76
A61K35/747
A61K36/06 Z
A61P31/04
A61K39/02
A61K38/43
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/16
A61K9/14
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/12
A61K31/7088
A61P37/02
A61P1/00
A23L33/135
A23L33/14
C12Q1/70
C12Q1/48 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577763
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 IB2022055508
(87)【国際公開番号】W WO2022264035
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】63/210,555
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517191312
【氏名又は名称】フェリング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリスティン・ワナーバーガー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・スラクヴェリッツェ
【テーマコード(参考)】
4B018
4B063
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B018MD81
4B018MD85
4B018MD86
4B018MD87
4B018MD88
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ06
4B063QQ27
4B063QR79
4B063QX01
4B065AA98X
4B065BA22
4B065BD01
4B065CA41
4B065CA44
4B065CA45
4C076AA09
4C076AA16
4C076AA22
4C076AA24
4C076AA29
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA43
4C076AA54
4C076AA56
4C076BB01
4C076CC06
4C076CC32
4C076FF70
4C084AA02
4C084DC01
4C084MA13
4C084MA23
4C084MA28
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA41
4C084MA43
4C084MA52
4C084MA60
4C084NA14
4C084ZA66
4C084ZB07
4C084ZB35
4C085AA03
4C085BA08
4C085CC07
4C085CC08
4C085DD81
4C085EE01
4C085GG10
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA23
4C086MA28
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA60
4C086NA14
4C086ZA66
4C086ZB07
4C086ZB35
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC11
4C087BC12
4C087BC56
4C087BC58
4C087BC60
4C087BC61
4C087BC64
4C087BC65
4C087BC83
4C087MA13
4C087MA23
4C087MA28
4C087MA35
4C087MA37
4C087MA41
4C087MA43
4C087MA52
4C087MA60
4C087NA14
4C087ZA66
4C087ZB07
4C087ZB35
(57)【要約】
本願で説明されているのは、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)に感染して溶解させるバクテリオファージである。このバクテリオファージは、例えば、VRE等の腸球菌に感染した対象、又はVRE等の腸球菌による感染のリスクがある対象の予防的処置又は治療的処置、及び本願で説明されている他の用途に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の1種又は複数種の株に感染して溶解する単離バクテリオファージであって、前記バクテリオファージは、
(i)アクセッション番号PTA-126934でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML237-2(配列番号1)、又はそのバリアント株であり、前記バリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML237-2に対して少なくとも80%の、ゲノム全体にわたる平均ヌクレオチド同一性(gANI)を有する、バクテリオファージ株VREML237-2(配列番号1)又はそのバリアント株;
(ii)アクセッション番号PTA-126932でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML110-1(配列番号2)、又はそのバリアント株であり、前記バリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML110-1に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML110-1(配列番号2)又はそのバリアント株;
(iii)アクセッション番号PTA-126931でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML105(配列番号3)、又はそのバリアント株であり、前記バリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML105に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML105(配列番号3)又はそのバリアント株;
(iv)アクセッション番号PTA-126933でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML202-1(配列番号4)、又はそのバリアント株であり、前記バリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML202-1に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML202-1(配列番号4)又はそのバリアント株;
(v)アクセッション番号PTA-126930でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML85-2(配列番号5)、又はそのバリアント株であり、前記バリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML85-2に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML85-2(配列番号5)又はそのバリアント株;
(vi)アクセッション番号PTA-127012でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML110-2(配列番号6)、又はそのバリアント株であり、前記バリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML110-2に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML110-2(配列番号6)又はそのバリアント株;
(vii)アクセッション番号PTA-127016でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML237-1(配列番号7)、又はそのバリアント株であり、前記バリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML237-1に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML237-1(配列番号7)又はそのバリアント株;
(viii)アクセッション番号PTA-127011でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML85-1(配列番号8)、又はそのバリアント株であり、前記バリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML85-1に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML85-1(配列番号8)又はそのバリアント株;
(ix)アクセッション番号PTA-127013でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML137-2(配列番号9)、又はそのバリアント株であり、前記バリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML137-2に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML137-2(配列番号9)又はそのバリアント株;
(x)アクセッション番号PTA-127015でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML202-2(配列番号10)、又はそのバリアント株であり、前記バリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML202-2に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML202-2(配列番号10)又はそのバリアント株;
及び
(xi)アクセッション番号PTA-127014でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML139(配列番号11)、又はそのバリアント株であり、前記バリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML139に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML139(配列番号11)又はそのバリアント株
から選択される株のものである、単離バクテリオファージ。
【請求項2】
前記バクテリオファージは、前記寄託されたバクテリオファージ株に対して少なくとも90%のgANIを有する、前記寄託されたバクテリオファージ株の内の1つのバリアント株である、請求項1に記載の単離バクテリオファージ。
【請求項3】
前記バクテリオファージは、前記寄託されたバクテリオファージ株に対して少なくとも95%のgANIを有する、前記寄託されたバクテリオファージ株の内の1つのバリアント株である、請求項1に記載の単離バクテリオファージ。
【請求項4】
前記バクテリオファージは、前記寄託されたバクテリオファージ株のRLFP DNAプロファイルと実質的に同等のRLFP DNAプロファイルを有する、前記寄託されたバクテリオファージ株の内の1つのバリアント株である、請求項1に記載の単離バクテリオファージ。
【請求項5】
請求項1に記載の寄託されたバクテリオファージ株の単離子孫バクテリオファージであって、前記単離子孫バクテリオファージは、前記寄託されたバクテリオファージ株に対して80%以上のgANIを有する、単離子孫バクテリオファージ。
【請求項6】
請求項1に記載の寄託されたバクテリオファージ株の単離子孫バクテリオファージであって、前記単離子孫バクテリオファージは、前記寄託されたバクテリオファージ株に対して95%以上のgANIを有する、単離子孫バクテリオファージ。
【請求項7】
請求項1に記載の寄託されたバクテリオファージ株の単離子孫バクテリオファージであって、前記単離子孫バクテリオファージは、前記寄託されたバクテリオファージ株に対して98%以上又は99.9%以上のgANIを有する、単離子孫バクテリオファージ。
【請求項8】
(i)請求項1~7のいずれか一項に記載の1種又は複数種の株のバクテリオファージ;及び
(ii)薬学的に許容される担体
とを含む組成物。
【請求項9】
前記1種又は複数種のバクテリオファージ株は、
(i)アクセッション番号PTA-126934でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML237-2、又はそのバリアント株であって、前記バリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML237-2に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML237-2又はそのバリアント株;
(ii)アクセッション番号PTA-126932でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML110-1、又はそのバリアント株であって、前記バリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML110-1に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML110-1又はそのバリアント株;
(iii)アクセッション番号PTA-126931でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML105、又はそのバリアント株であって、前記バリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML105に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML105又はそのバリアント株;
(iv)アクセッション番号PTA-126933でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML202-1、又はそのバリアント株であって、前記バリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML202-1に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML202-1又はそのバリアント株;及び
(v)アクセッション番号PTA-126930でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML85-2、又はそのバリアント株であって、前記バリアントは、前記バクテリオファージ株VREML85-2に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML85-2又はそのバリアント株
を含むか、又はからなる、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記1種又は複数種のバクテリオファージ株は、(i)バクテリオファージ株VREML237-2;(ii)バクテリオファージ株VREML110-1;(iii)バクテリオファージ株VREML105;(iv)バクテリオファージ株VREML202-1;及び(v)バクテリオファージ株VREML85-2を含むか、又はからなる、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物は、任意選択的に腸溶性コーティングが施されている経口剤形で提供され、任意選択的に、錠剤、硬質ゲルカプセル、軟質ゲルカプセル、糖衣錠、粉末、顆粒、溶液、懸濁液、分散液、シロップ、及びマイクロゲルから選択される形態で提供される、請求項8~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物は、
直腸用剤形、任意選択的に、座薬、浣腸剤、直腸用フォーム、ローション、又はゲル;
膣用剤形、任意選択的に、座薬、クリーム膣用フォーム、ローション、又はゲル;
肺用剤形、任意選択的に、粉末、エアロゾル、ネブライザー、又は吸入器用組成物;
局所用剤形、任意選択的に、乳液、クリーム、ローション、ゲル、又はスプレー;及び
注射用剤形
から選択される剤形で提供される、請求項8~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物は、プロバイオティクスをさらに含む、請求項8~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記プロバイオティクスは、プロバイオティクス細菌を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記プロバイオティクス細菌は、L.アシドフィラム(L.acidophilus)、L.ラムノーサス(L.rhamnosus)、L.ガセリ(L.gasseri)、L.ロイテリ(L.reuteri)、L.ブルガリカス(L.bulgaricus)、L.プランタルム(L.plantarum)、L.ジョンソニイ(L.johnsonii)、L.パラカゼイ(L.paracasei)、L.カゼイ(L.casei)、L.サリバリウス(L.salivarius)、L.ラクティス(L.lactis)、B.ビフィダム(B.bifidum)、B.ロングム(B.longum)、B.ブレーベ(B.breve)、B.インファンティス(B.infantis)、B.ラクティス(B.lactis)、B.アドレスセンティス(B.adolescentis)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、バチルス・セレウス(Bacillus cerus)、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ又は複数である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記プロバイオティクスは、プロバイオティクス酵母を含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記プロバイオティクス酵母は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)、サッカロマイセス・セレビシエ変種ブラウディ(Saccharomyces cerevisiae var. boulardii)、イッサチェンキア・オクシデンタリス(Issatchenkia occidentalis)、ラチャンスア・サーモトレランス(Lachancea thermotolerans)、メチニコビア・ジジフィコラ(Metschnikowia ziziphicola)、トルラスポラ・デルブリュッキイ(Torulaspora delbrueckii)、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
必要な対象におけるVREのコロニー形成又は感染のリスクを低減させるか、若しくは予防するか、若しくは処置するか、又はヒト対象のマイクロバイオームを調節する方法であって、前記対象に、請求項1~7のいずれか一項に記載のバクテリオファージ、又は請求項8~17のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む方法。
【請求項19】
必要な対象におけるVREのコロニー形成又は感染のリスクの低減、若しくは予防、若しくは処置、又はヒト対象のマイクロバイオームの調節での使用のための、請求項1~7のいずれか一項に記載のバクテリオファージ、又は請求項8~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
必要な対象におけるVREのコロニー形成又は感染のリスクを低減させるか、若しくは予防するか、若しくは処置するか、又はヒト対象のマイクロバイオームを調節するための医薬品の調製における、請求項1~7のいずれか一項に記載のバクテリオファージ、又は請求項8~17のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項21】
前記対象は、VREによるコロニー形成若しくは感染のリスクを有するか、又はVREによりコロニー形成されているか若しくは感染しており、任意選択的に、前記対象は、免疫抑制対象又は免疫不全対象である、請求項18に記載の方法、請求項19に記載の使用のためのバクテリオファージ若しくは組成物、又は請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記対象は、VRE腸内コロニー形成に罹患しており、前記方法は、VRE腸内コロニー形成を低減させるか又は除去するのに有効である、請求項18~21のいずれか一項に記載の方法、使用のためのバクテリオファージ若しくは組成物、又は使用。
【請求項23】
前記処置は、前記対象にプロバイオティクスを投与することをさらに含み、任意選択的に、前記プロバイオティクスは、前記バクテリオファージと同じ組成物で提供される、請求項18~22のいずれか一項に記載の方法、使用のためのバクテリオファージ若しくは組成物、又は使用。
【請求項24】
前記バクテリオファージ、又は組成物、又は医薬品を、経口投与する、請求項18~23のいずれか一項に記載の方法、使用のためのバクテリオファージ若しくは組成物、又は使用。
【請求項25】
前記バクテリオファージ、組成物、又は医薬品を、直腸投与する、請求項18~23のいずれか一項に記載の方法、使用のためのバクテリオファージ若しくは組成物、又は使用。
【請求項26】
前記バクテリオファージ、組成物、又は医薬品を、局所投与する、請求項18~23のいずれか一項に記載の方法、使用のためのバクテリオファージ若しくは組成物、又は使用。
【請求項27】
前記バクテリオファージ、組成物、又は医薬品を、経膣投与する、請求項18~23のいずれか一項に記載の方法、使用のためのバクテリオファージ若しくは組成物、又は使用。
【請求項28】
請求項1~7のいずれか一項に記載のバクテリオファージにより産生された溶菌酵素を含む組成物。
【請求項29】
請求項1~7のいずれか一項に記載のバクテリオファージの誘導体生成物を含む組成物であって、前記誘導体生成物は、VREに対する活性を有するか、又はVREに対する活性を有する生成物をコードし、任意選択的に、前記誘導体生成物は、DNA、cDNA、mRNA及び合成ポリヌクレオチド配列、DNA/RNAハイブリッド、並びに抗シグマ因子遺伝子、並びにこれらに発現産物から選択される1つ又は複数である、組成物。
【請求項30】
請求項1~7のいずれか一項に記載のバクテリオファージ又はその溶菌酵素でVRE株を溶解させることにより得られるVRE細菌溶解物を含むワクチン。
【請求項31】
VRE感染に対して対象にワクチン接種する方法であって、前記対象に、請求項30に記載のワクチンを投与することを含む方法。
【請求項32】
VRE感染に対する対象のワクチン接種での使用のための、請求項1~7のいずれか一項に記載のバクテリオファージ又はその溶菌酵素でVRE株を溶解させることにより得られるVRE細菌溶解物。
【請求項33】
VRE感染に対して対象にワクチン接種するための医薬品の調製でのVRE細菌溶解物の使用であって、前記細菌溶解物は、請求項1~7のいずれか一項に記載のバクテリオファージ又はその溶菌酵素でVRE株を溶解させることにより得られる、使用。
【請求項34】
サンプル中のVREを検出する方法であって、請求項1~7のいずれか一項に記載のバクテリオファージ又はその溶菌酵素で前記サンプルを処理し、それにより、測定可能なVRE細菌産物の放出を特異的に誘発すること、及び前記放出されたVRE細菌産物を測定することを含む方法。
【請求項35】
前記放出されたVRE細菌産物は、アデノシン三リン酸(ATP)及びプロテインキナーゼ(AKT)の内の1つ又は複数である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記サンプルは、対象から得られた糞便サンプルである、請求項34又は35に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年6月15日出願の米国仮出願第63/210,555号に対する優先権を主張しており、この明細書の内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出されており且つ全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含む。前記ASCIIコピー(2021年6月11日に作成)は、名称が052209-0383_SL.txtであり、サイズが1,952,761バイトである。
【0003】
本明細書で説明されているのは、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)に感染して溶解させるバクテリオファージである。このバクテリオファージは、例えば、VRE等の腸球菌に感染した対象、又はVRE等の腸球菌による感染のリスクがある対象の予防的処置又は治療的処置、及び本願で説明されている他の用途に有用である。
【背景技術】
【0004】
バクテリオファージ
バクテリオファージは、細菌に感染して、その複製/溶解サイクルの一部としてこの細菌を溶解させるウイルスである。バクテリオファージ(又は略して「ファージ」)は、その名前が、「食べること」又は「細菌を食べるもの」を意味するギリシャ語「phago」に由来しており、20世紀前半に、Felix D’Herelleにより発見された。ファージは、標的の細菌宿主に特異的であり、ヒト又は他の真核細胞には感染しない。バクテリオファージは、病原性細菌を標的にするために、1919年以来、ヒトで治療的に使用されている。初期の熱意は、細菌により引き起こされる疾患の予防及び治療の両方としての使用につながった。米国では、1940年代に、Eli Lillyが、ブドウ球菌、連鎖球菌、及び他の呼吸器病原菌を標的とする調製物を含む、ヒトでの使用のための6種のファージ生成物を、商業的に製造した。抗生物質の出現により、ファージの治療的使用は、米国及び西欧では次第に好まれなくなり、研究もほとんど行なわれなくなった。しかしながら、バクテリオファージ療法は、東欧で利用され続けた。
【0005】
バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)
腸球菌は、土壌、食物、水、動物、鳥、及び昆虫で見出されるグラム陽性の通性嫌気性球菌である。ヒトでは、腸球菌は、ヒトの腸管及び尿生殖路中の一般的なコロニー形成細菌種である。腸球菌は、尿路感染症、腹腔内及び骨盤内創傷感染症、心内膜炎、及び菌血症等の様々な感染症を引き起こす。バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)には、いくつかの異なる腸球菌種の株が含まれ、臨床的に重要なVRE感染は、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)及びエンテロコッカス・フェーカリス(Enterococcus faecalis)により引き起こされることが知られている。腸球菌の分類は完了していないが、この属は19の種からなることが一般に認められている。
【0006】
重度の腸球菌感染症の抗生物質管理は、ほとんどの抗菌剤に対するこの生物の本質的な耐性に起因して、常に困難である。1970年代では、腸球菌感染症は、ペニシリン等の細胞壁活性剤、及びアミノグリコシドの組み合わせで処置されていた。しかしながら、1980年代には、プラスミドによりコードされたβ-ラクタマーゼと、ペニシリン結合タンパク質の変化との両方により媒介されて、高レベルのアミノグリコシド耐性及びペニシリンに対する耐性を有する腸球菌株が出現した。そのような生物は、そのバンコマイシンに耐性によりVREと呼ばれており;この生物はまた、ペニシリン-アミノグライシドの組み合わせにも耐性を示す。VREに対する感受性がある2種の薬物(キヌプリスチン/ダルホプリスチン及びリネゾリド(例えば、Plouffe,Clin.Infect Dis.31(Supp.4):S144-49(2000)を参照されたい)の発売にもかかわらず、この微生物は、依然として、免疫不全患者における罹患率及び死亡率の重要な原因となっている。VREにより引き起こされる感染症は、高齢者、免疫不全者、免疫抑制者、並びに/又はがんセンター及び臓器移植病棟の重症患者の間で特に深刻な問題として現れている。VREは、病院環境内で容易に伝染し、多くの病院内大流行が報告されている。ヒトは、主な保有宿主として機能するが、生物は、感染した/コロニー形成された患者の周囲環境(例えば、寝具、家具、並びに個人用品及び家庭用品)から容易に単離され得る。
【0007】
重症患者及び免疫不全患者へのVRE感染の影響に注目が集まっているが、VREによる腸内コロニー形成は、一般病院の患者の間でも比較的一般的になりつつある。VREによりコロニーが形成されると、患者は、生涯にわたりコロニー形成され続ける場合があり、コロニー形成された者は、その後、例えば癌化学療法又は免疫抑制療法(例えば、移植に付随する場合がある)に起因して免疫不全となり、VREによる重度の血液感染症及び創傷感染症を発症するリスクがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
VRE感染の処置
VRE細菌は、多くの抗菌剤に対して本質的に耐性を示し、VREに対して有効な新規の抗生物質を開発することは非常に困難であることが証明されている。FDAにより承認された2種の抗生物質(キヌプリスチン/ダルホプリスチン及びリネゾリド)によるVRE感染の処置は、中程度しか成功しておらず、キヌプリスチン/ダルホプリスチン及びリネゾリドに対する耐性を示すVRE株は、既に同定されている。そのため、例えば、VRE感染のリスクを低減するか若しくは予防するために、及び/又はVREに既に感染している患者を処置するために、VREに対して有効な薬剤が依然として緊急に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、VREに感染して溶解させるバクテリオファージを提供する。このバクテリオファージを、VRE感染のリスクの低減、予防、又は処置に使用するために、市販の(OTC)組成物又は医薬組成物等の組成物に配合し得、ワクチン/バクテリン組成物を生成するために使用し得、且つVREを検出するためのアッセイで使用し得る。
【0010】
そのため、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の1種又は複数種の株に感染して溶解させる単離バクテリオファージが提供され、このバクテリオファージは、(i)アクセッション番号PTA-126934でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML237-2、又はそのバリアント株であって、このバリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML237-2に対して少なくとも80%の、ゲノム全体にわたる平均ヌクレオチド同一性(gANI)を有する、バクテリオファージ株VREML237-2又はそのバリアント株;(ii)アクセッション番号PTA-126932でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML110-1、又はそのバリアント株であって、このバリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML110-1に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML110-1又はそのバリアント株;(iii)アクセッション番号PTA-126931でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML105、又はそのバリアント株であって、このバリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML105に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML105又はそのバリアント株;(iv)アクセッション番号PTA-126933でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML202-1、又はそのバリアント株であって、このバリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML202-1に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML202-1又はそのバリアント株;(v)アクセッション番号PTA-126930でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML85-2、又はそのバリアント株であって、このバリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML85-2に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML85-2又はそのバリアント株;(vi)アクセッション番号PTA-127012でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML110-2、又はそのバリアント株であって、このバリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML110-2に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML110-2又はそのバリアント株;(vii)アクセッション番号PTA-127016でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML237-1、又はそのバリアント株であって、このバリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML237-1に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML237-1又はそのバリアント株;(viii)アクセッション番号PTA-127011でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML85-1、又はそのバリアント株であって、このバリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML85-1に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML85-1又はそのバリアント株;(ix)アクセッション番号PTA-127013でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML137-2、又はそのバリアント株であって、このバリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML137-2に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML137-2又はそのバリアント株;(x)アクセッション番号PTA-127015でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML202-2、又はそのバリアント株であって、このバリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML202-2に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML202-2又はそのバリアント株;(xi)アクセッション番号PTA-127014でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML139、又はそのバリアント株であって、このバリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML139に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML139又はそのバリアント株から選択される株のものである。
【0011】
本単離バクテリオファージは、前記寄託されたバクテリオファージ株に対して少なくとも90%のgANIを有する、この寄託されたバクテリオファージ株の内の1つのバリアント株であり得る。本単離バクテリオファージは、前記寄託されたバクテリオファージ株に対して少なくとも95%のgANIを有する、この寄託されたバクテリオファージ株の内の1つのバリアント株であり得る。本単離バクテリオファージは、前記寄託されたバクテリオファージ株のRLFP DNAプロファイルと実質的に同等のRLFP DNAプロファイルを有する、この寄託されたバクテリオファージ株の内の1つのバリアント株であり得る。
【0012】
同様に提供されるのは、本明細書で開示されている寄託されたバクテリオファージ株の単離子孫バクテリオファージであって、この単離子孫バクテリオファージは、寄託されたバクテリオファージ株に対して80%以上のgANIを有する、単離子孫バクテリオファージである。本単離子孫バクテリオファージは、寄託されたバクテリオファージ株に対して95%以上のgANIを有し得る。本単離子孫バクテリオファージは、寄託されたバクテリオファージ株に対して98%以上又は99.9%以上のgANIを有し得る。
【0013】
同様に提供されるのは、本明細書で開示されているバクテリオファージ株の内の1つ又は複数のバクテリオファージと、薬学的に許容される塩とを含む組成物である。この組成物中の1種又は複数種のバクテリオファージ株は、(i)アクセッション番号PTA-126934でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML237-2、又はそのバリアント株であって、このバリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML237-2に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML237-2又はそのバリアント株;(ii)アクセッション番号PTA-126932でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML110-1、又はそのバリアント株であって、このバリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML110-1に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML110-1又はそのバリアント株;(iii)アクセッション番号PTA-126931でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML105、又はそのバリアント株であって、このバリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML105に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML105又はそのバリアント株;及び(iv)アクセッション番号PTA-126933でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML202-1、又はそのバリアント株であって、このバリアント株は、前記バクテリオファージ株VREML202-1に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML202-1又はそのバリアント株;(v)アクセッション番号PTA-126930でATCCに寄託されたバクテリオファージ株VREML85-2、又はそのバリアント株であって、前記バリアントは、前記バクテリオファージ株VREML85-2に対して少なくとも80%のgANIを有する、バクテリオファージ株VREML85-2又はそのバリアント株を含み得るか、又はからなり得る。この組成物中の1種又は複数種のバクテリオファージ株は、(i)バクテリオファージ株VREML237-2;(ii)バクテリオファージ株VREML110-1;(iii)バクテリオファージ株VREML105;(iv)バクテリオファージ株VREML202-1;及び(v)バクテリオファージ株VREML85-2を含み得るか、又はからなり得る。
【0014】
本組成物は、任意選択的に腸溶性コーティングが施されている経口剤形で提供され得、任意選択的に、錠剤、硬質ゲルカプセル、軟質ゲルカプセル、糖衣錠、粉末、顆粒、溶液、懸濁液、分散液、シロップ、及びマイクロゲルから選択される形態で提供され得る。この組成物は、直腸用剤形で提供され得、任意選択的に、座薬、浣腸剤、直腸用フォーム、ローション、又はゲルで提供され得る。この組成物は、膣用剤形で提供され得、任意選択的に、座薬、クリーム膣用フォーム、ローション、又はゲルで提供され得る。この組成物は、局所用剤形で提供され得、任意選択的に、乳液、クリーム、ローション、ゲル、又はスプレーで提供され得る。この組成物は、肺用剤形で提供され得、任意選択的に、粉末、エアロゾル、ネブライザー、又は吸入器用組成物で提供され得る。この組成物は、注射用剤形で提供され得る。
【0015】
任意の実施形態では、本組成物は、任意選択的に、プロバイオティクスをさらに含む。このプロバイオティクスは、プロバイオティクス細菌を含み得、例えば、L.アシドフィラム(L.acidophilus)、L.ラムノーサス(L.rhamnosus)、L.ガセリ(L.gasseri)、L.ロイテリ(L.reuteri)、L.ブルガリカス(L.bulgaricus)、L.プランタルム(L.plantarum)、L.ジョンソニイ(L.johnsonii)、L.パラカゼイ(L.paracasei)、L.カゼイ(L.casei)、L.サリバリウス(L.salivarius)、L.ラクティス(L.lactis)、B.ビフィダム(B.bifidum)、B.ロングム(B.longum)、B.ブレーベ(B.breve)、B.インファンティス(B.infantis)、B.ラクティス(B.lactis)、B.アドレスセンティス(B.adolescentis)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、バチルス・セレウス(Bacillus cerus)、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ又は複数を含み得る。このプロバイオティクスは、プロバイオティクス酵母を含み得、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)、サッカロマイセス・セレビシエ変種ブラウディ(Saccharomyces cerevisiae var.boulardii)、イッサチェンキア・オクシデンタリス(Issatchenkia occidentalis)、ラチャンスア・サーモトレランス(Lachancea thermotolerans)、メチニコビア・ジジフィコラ(Metschnikowia ziziphicola)、トルラスポラ・デルブリュッキイ(Torulaspora delbrueckii)、及びこれらの任意の組み合わせの内の1つ又は複数を含み得る。
【0016】
同様に提供されるのは、必要な対象におけるVREのコロニー形成又は感染のリスクを低減させるか、若しくは予防するか、若しくは処置するか、又はヒト対象のマイクロバイオームを調節する方法であって、この対象に、本明細書で開示されているバクテリオファージ又は組成物を投与することを含む方法である。
【0017】
同様に提供されるのは、必要な対象におけるVREのコロニー形成又は感染のリスクの低減、若しくは予防、若しくは処置、又はヒト対象のマイクロバイオームの調節での使用のための、本明細書で開示されているバクテリオファージ及び組成物である。
【0018】
同様に提供されるのは、必要な対象におけるVREのコロニー形成又は感染のリスクを低減させるか、若しくは予防するか、若しくは処置するか、又はヒト対象のマイクロバイオームを調節するための医薬品の調製における、本明細書で開示されているバクテリオファージ又は組成物の使用である。
【0019】
任意のそのような方法、使用のための組成物、又は使用では、対象は、VREによるコロニー形成若しくは感染のリスクを有し得るか、又はVREによりコロニー形成され得るか、若しくは感染し得、任意選択的に、対象は、免疫抑制対象又は免疫不全対象であり得る。任意のそのような方法、使用のための組成物、又は使用では、対象は、VRE腸内コロニー形成に罹患し得、本方法は、VRE腸内コロニー形成を低減させるか又は除去するのに有効であり得る。
【0020】
本明細書で開示されている方法、使用のためのバクテリオファージ若しくは組成物、又は使用のいくつかの実施形態では、処置は、対象にプロバイオティクスを投与することをさらに含み、任意選択的に、このプロバイオティクスは、バクテリオファージと同じ組成物で提供される。
【0021】
本明細書で開示されている方法、使用のためのバクテリオファージ若しくは組成物、又は使用のいくつかの実施形態では、バクテリオファージ、又は組成物、又は医薬品を、経口投与する。
【0022】
本明細書で開示されている方法、使用のためのバクテリオファージ若しくは組成物、又は使用のいくつかの実施形態では、バクテリオファージ、組成物、又は医薬品を、直腸投与する。
【0023】
本明細書で開示されている方法、使用のためのバクテリオファージ若しくは組成物、又は使用のいくつかの実施形態では、バクテリオファージ、組成物、又は医薬品を、局所投与する。
【0024】
本明細書で開示されている方法、使用のためのバクテリオファージ若しくは組成物、又は使用のいくつかの実施形態では、バクテリオファージ、組成物、又は医薬品を、経膣投与する。
【0025】
同様に提供されるのは、本明細書で開示されているバクテリオファージにより産生された溶菌酵素を含む組成物である。
【0026】
同様に提供されるのは、本明細書で開示されているバクテリオファージの誘導体生成物を含む組成物であって、この誘導体生成物は、VREに対する活性を有するか、又はVREに対する活性を有する生成物をコードし、任意選択的に、この誘導体生成物は、DNA、cDNA、mRNA及び合成ポリヌクレオチド配列、DNA/RNAハイブリッド、並びに抗シグマ因子遺伝子、並びにこれらに発現産物から選択される1つ又は複数である、組成物である。
【0027】
同様に提供されるのは、本明細書で開示されているバクテリオファージ又はその溶菌酵素でVRE株を溶解させることにより得られるVRE細菌溶解物を含むワクチン;VRE感染に対して対象にワクチン接種する方法であって、この対象に、そのようなワクチンを投与することを含む方法;VRE感染に対する対象のワクチン接種での使用のためのそのようなVRE細菌溶解物、及びVRE感染に対する対象のワクチン接種のための医薬品の調製でのそのようなVRE細菌溶解物の使用である。
【0028】
同様に提供されるのは、サンプル中のVREを検出する方法であって、本明細書で開示されているバクテリオファージ又はその溶菌酵素でサンプルを処理し、それにより、測定可能なVRE細菌産物の放出を特異的に誘発すること、及び放出されたVRE細菌産物を測定することを含み、任意選択的に、放出されたVRE細菌産物は、アデノシン三リン酸(ATP)及びプロテインキナーゼ(AKT)の内の1つ又は複数である、方法である。いくつかの実施形態では、サンプルは、対象から得られた糞便サンプルである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本明細書で説明されいてるバクテリオファージの参照DNA RFLPプロファイルを示す。
図2】インビトロヒト腸シミュレータモデルでの本明細書で説明されているバクテリオファージカクテルの有効性の評価結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
上述したように、本明細書で説明されているのは、VREを標的とする(即ち、感染して溶解させ、例えば、溶菌感染を生じる)バクテリオファージである。このバクテリオファージを、VRE感染のリスクの低減、予防、又は処置に使用するために、市販の(OTC)組成物又は医薬組成物等の組成物に配合し得、ワクチン/バクテリン組成物を生成するために使用し得、且つVREを検出するためのアッセイで使用し得る。バクテリオファージ及びそれを含む組成物は、VREによる腸内コロニー形成の予防又は低減等のVREによる感染の予防又は低減に有用であり、それにより、VERによる感染が予防されるか若しくはそのリスクが低減されるか、又はVREが処置される。理論に拘束されないが、本明細書で説明されているバクテリオファージ及び組成物を使用する療法は、VRE感染の特異的であり且つ標的を定めた予防又は低減により、安全であり且つ有効であり、それにより、VREに起因する侵襲性疾患が低減され、VRE感染の発生率、有病率、及び伝播が低減され、さらには、VREを特異的に標的化することにより健康な腸内マイクロバイオームが維持され、広域抗生物質療法に関連する副作用が回避されることが理解される。
【0031】
定義
本明細書中で使用される技術用語及び科学用語は、別途定義されない限り、本発明が関連する分野の当業者により一般に理解されている意味を有する。当業者に既知の任意の好適な材料及び/又は方法を、本明細書で提供されるガイダンスを考慮して、本発明の実行で利用し得るが、例示目的で、特定の材料及び方法が説明されている。下記の説明及び実施例で言及される材料、試薬、及び同類のものは、別途注記されない限り、商業的供給源から入手可能である。
【0032】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その」という単数形は、単数のみを示すという明確な定めのない限り、単数及び複数の両方を示す。
【0033】
本明細書で使用される場合、「約」は、数値と共に使用される場合には、言及されている数値、及びこの数値の±10%を意味する。例えば、「約10」は、「10」及び「9~11」の両方と理解すべきである。
【0034】
本明細書で使用される場合、「A/B」という形又は「A及び/又はB」という形の語句は、(A)、(B)、又は(A及びB)を意味しており、「A、B、及びCの内の少なくとも1」という形の語句は、(A)、(B)、(C)、(A及びB)、(A及びC)、(B及びC)、又は(A、B、及びC)を意味する。
【0035】
本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、説明されている組成物、方法、又はキットが、少なくとも言及されている要素を含み、且つ明示されていない他の要素を含み得ることを意味する。
【0036】
本明細書で使用される場合、治療的活性剤(例えば、ファージ)に関して使用される「有効な量」及び「治療上有効な量」という語句は、例えば、VRE感染(又はVREコロニー形成)のリスクを低減させるか、予防するか、又は低減するために、そのような処置が必要な対象に投与される薬剤の、特定の薬理学的効果を生じる量を意味する。治療上有効な量は、そのような投与量がたとえ当業者によって治療上有効な量であると見なされても、所与の対象におけるVRE感染(又はVREコロニー形成)を予防するか又は低減させるのに必ずしも有効とは限らないことが強調される。治療上有効な量は、具体的な活性剤、投与経路及び剤形、対象の年齢及び体重、並びに/又は対象の状態(例えば、VRE感染の種類及び重症度)に応じて変動し得る。
【0037】
「個体」、「対象」、及び「患者」という予後は、本明細書では互換的に使用され、ヒト対象(例えば、男性及び女性のヒト対象)等の任意の個々の哺乳動物対象を指す。
【0038】
「予防すること」は、本明細書で使用される場合、必要な対象において、VRE感染若しくはVREコロニー形成のリスクを低減すること、又はVRE感染若しくはVREコロニー形成を予防すること、又はVRE感染若しくはVREコロニー形成のレベルと低下させることを意味する。
【0039】
「処置すること」は、本明細書で使用される場合、必要な対象におけるVRE感染のレベルを低下させることを意味しており、例えば、VRE感染を検出不能なレベルまで低下させること、又はVREコロニー形成を除去することを意味する。
【0040】
VRE「コロニー形成」という用語は、本明細書では、必ずしも対象に疾患を引き起こさない、対象中でのVREの存在を指すために使用される。
【0041】
VRE「感染」という用語は、本明細書では、対象に疾患を引き起こしている、対象の組織へのVRE浸潤を指すために使用される。
【0042】
「バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)株」は、本明細書で使用される場合、バンコマイシンに対する最小阻止濃度が少なくとも16μg/mlであるVRE株(単離株)を指しており、このことを、下記の実施例で説明されているアッセイにより評価し得る。例えば、National Committee for Clinical Laboratory Procedures,“Methods for Dilution Antimicrobial Susceptibility Tests for Bacteria that Grow Aerobically.”(3rd ed.,1993)(Nat.Committee for Clin.Lab. Standards,Villanova Pa.);National Committee for Clinical Laboratory Standards,“Performance Standards for Antimicrobial Disk Susceptibility Tests.”(5th ed.,1993)(Nat.Committee for Clin.Lab.Standards,VillanovaPa.)を参照されたい。VREは、下記の種に属し得る:エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・フェーカリス(Enterococcus faecalis)、E.ガリナルム(E.gallinarum)、E.カセリフラブス(E.casseliflavus)、E.デュランス(E.durans)、E.アビウム(E.avium)、及びE.ラフィノシス(E.raffinosis)。本明細書で説明されているファージにより標的化されたVREは、典型的には、消化管、皮膚、及び生殖器の内の1つ又は複数で存在し得るが、身体の他の部分でも見出され得る。VREにより引き起こされ得る疾患及び状態の非限定的な例として、菌血症(例えば敗血症)、髄膜炎、肺炎、心内膜炎、尿路感染症、腹腔内感染症(例えば腹膜炎)、骨盤内感染症、皮膚及び軟部組織感染症(例えば創傷感染症)、並びに院内感染症が挙げられる。
【0043】
本明細書で使用される場合、本明細書で説明されているバクテリオファージ株の「バリアント」株は、参照バクテリオファージ株に対して、ゲノム全体にわたり少なくとも80%の平均ヌクレオチド同一性(「gANI」)を有している。gANIとは、所与のゲノム対間での類似度指数のことである。典型的には、学者らは、gANIが95%以上である生物を、「同一種」に属すると特定するだろう。例えば、Olm M.,“Are these microbes the’same’?”microBEnet(2;2017)(microbe.net/2017/02/15/are-these-microbes-the-same/で入手可能)、及びJain et al.(Jain et al.Nature Comm.9(1):5114(2018)を参照されたい。参照株に対して少なくとも90%のgANIを有するバリアント株は、前記参照バクテリオファージ株と同一の表現型特性を有すると推定されており、且つ見なされている。「バリアント」株は、参照株から独立して得られてもよいし、参照株の子孫であってもよいし、参照株の組換え誘導体(例えば、出発物質として参照株又はそのゲノム配列の内の1つ若しくは複数又は全てを使用して組換えにより作製されたもの)であってもよい。
【0044】
本明細書で使用される場合、バクテリオファージに関して使用される「単離されている」は、バクテリオファージが、これが天然に存在する元の環境から取り出されていることを意味する。「単離された」バクテリオファージは、これが天然に存在する環境から精製されていてもよいし、この環境とは別に培養されていてもよいし(cultivated)、この環境とは別に培養されていてもよい(cultured)。
【0045】
バクテリオファージ
本明細書で提供されるのは、下記(11種)のバクテリオファージ株、及びそのバリアント株であって、寄託株に対して少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%のgANIを有するバリアント株のそれぞれの単離バクテリオファージである。下記のそれぞれの株のゲノム配列は、参照により本明細書に組み込まれる配列表に記載されている:
アクセッション番号PTA-126934でATCCに寄託されたVREML237-2(配列番号1)
アクセッション番号PTA-126932でATCCに寄託されたVREML110-1(配列番号2)
アクセッション番号PTA-126931でATCCに寄託されたVREML105(配列番号3)
アクセッション番号PTA-126933でATCCに寄託されたVREML202-1(配列番号4)
アクセッション番号PTA-126930でATCCに寄託されたVREML85-2(配列番号5)
アクセッション番号PTA-127012でATCCに寄託されたVREML110-2(配列番号6)
アクセッション番号PTA-127016でATCCに寄託されたVREML237-1(配列番号7)
アクセッション番号PTA-127011でATCCに寄託されたVREML85-1(配列番号8)
アクセッション番号PTA-127013でATCCに寄託されたVREML137-2(配列番号9)
アクセッション番号PTA-127015でATCCに寄託されたVREML202-2(配列番号10)
アクセッション番号PTA-127014でATCCに寄託されたVREML139(配列番号11)。
【0046】
これらの単離された寄託株、及びそのバリアントであって、これらの寄託株に対して少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%のgANIを有するバリアントは、本明細書の考察では、「本明細書で説明されている」バクテリオファージ(又はファージ)と総称される。
【0047】
実施例で例示されているように、これらの株のそれぞれは、VREの1種又は複数種の株を特異的に標的化し(感染して溶解させ)、VREの1種又は複数種の株による感染のリスクの低減、感染の予防、及び/又は感染の処置に有用であり、例えば、VREの1種又は複数種の株によるコロニー形成の低減又は除去に有用であり、且つ本明細書で説明されている他の用途にも有用である。例えば、実施例で例示されているように、これらの株のそれぞれは、ヒト対象から単離された214種のVRE株の内の1つ又は複数、及び下記の5種の参照腸球菌単離株の内の1つ及び複数を特的に標的化して溶解させる:E401(ATCC 51299)、E403(ATCC 19433)、E618(ATCC 700221)、E400(ATCC 29212)、及びE402(ATCC 11823)。
【0048】
上述したように、本明細書で使用される場合、「バリアント」(又は「バリアント株」は、下記の実施例で例示されているように、寄託株のバクテリオファージを培養することにより得られる子孫を含む。制限断片長多型(RFLP)を使用して、バクテリオファージ株又はその子孫を同定し得る。Tenover et al.,J.Clin.Microbiol.33(9):2233-39(1995)で定義されているように、子孫株は、元のバクテリオファージ株のDNA RFLPプロファイルと実質的に同等のDNA RFLPプロファイルを有し得る。Tenoverで報告されているように、同様に増殖させた生物のゲノムを、制限酵素消化後に電気泳動により分析する場合には、RFLPプロファイルにある程度のばらつきが見られる場合がある。Tenoverは、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)を使用して染色体DNA RFLPプロファイルを解釈するシステムを説明している。具体的には、Tenoverは、互いに「区別できない」形態であるか又は「近縁」である生物を同定するための、遺伝学的関連性及び免疫学的関連性の様々なカテゴリーを説明している。本明細書で使用される場合、バクテリオファージ株は、RLFPプロファイルがTenover,上記参照の基準で「区別できない」か又は「近縁である」場合に、参照バクテリオファージ株と「実質的に同等」である。
【0049】
そのため、「子孫」株は、実施例で例示されているように、親寄託バクテリオファージ株のDNA RFLPプロファイルと実質的に同等のDNA RFLPプロファイルを有し得る。子孫は、親寄託バクテリオファージに対して80%以上のgANIを有し得る。子孫は、親寄託バクテリオファージに対して90%以上のgANIを有し得る。子孫は、親寄託バクテリオファージに対して95%以上のgANIを有し得る。子孫は、親寄託バクテリオファージに対して98%以上のgANIを有し得る。子孫は、親寄託バクテリオファージに対して99%以上のgANIを有し得る。
【0050】
上述したいように、参照バクテリオファージ株に対して少なくとも90%のgANIを有するバリアント株は、参照バクテリオファージ株と同じ表現型特性を有すると推定されており、且つ見なされている。そのため、本開示は、参照寄託株に対して少なくとも90%のgANIを有するこれらの寄託株のバリアント、及び寄託株と同じ表現型特性を有する他のバリアントを含む。
【0051】
本明細書で同様に提供されるのは、本明細書で説明されている単離バクテリオファージの誘導体生成物である。「誘導体生成物」は、本明細書で使用される場合、本明細書で説明されているバクテリオファージのサブユニット又は発現産物を構成する物質を指しており、例えば(限定されないが)、核酸、部分的な又は完全な遺伝子、溶菌酵素、及び他の遺伝子発現産物、及びバクテリオファージの他の構成成分、例えば、ポリリボヌクレオチド、及びポリデオキシリボヌクレオチド、例えば、改変又は非改変のバクテリオファージDNA、cDNA、mRNA、及び合成ポリヌクレオチド配列、並びにDNA/RNAハイブリッド、例えば、VREに対する活性を有する誘導体生成物、又はVREに対する活性を有する生成物をコードする誘導体生成物を指す。そのため、本明細書で説明されているバクテリオファージの1種又は複数種の誘導体生成物は、本明細書で説明されている組成物に含まれ得、且つ本明細書で説明されている方法で使用され得る。
【0052】
抗シグマ因子遺伝子及びその発現産物は、そのような誘導体生成物の例である。本明細書で説明されているファージの内の1つ又は複数は、宿主(標的)VREの細菌転写活性を阻害する抗シグマ因子遺伝子をコードし得る。例えば、Hughes,et al.Ann.Rev Microbiol 52:231-86(1998)を参照されたい。抗シグマ因子遺伝子は、そのようなファージに、標的(VRE)細菌細胞内の転写を阻害する能力の増強を付与し、それにより、このファージの標的細菌細胞を溶解させる能力を増強する。そのため、抗シグマ因子遺伝子及びその発現産物は、本明細書で説明されている組成物に含まれ得、且つ本明細書で説明されている予防的処置方法及び治療的処置方法で使用され得る(例えば、この組成物の効力及び/又はこの方法の有効性を増強するために使用され得る)誘導体生成物の例である。
【0053】
溶菌酵素は、本明細書で説明されているファージ誘導体生成物の別の例である。本明細書で説明されているバクテリオファージは、宿主(標的)VREの溶解に関与する1種又は複数種の溶菌酵素をコードする。ファージ溶菌酵素は、局所的なペプチドグリカン分解により細菌感染を促進するためにビリオンの一部としてバクテリオファージにより産生されるか、又は溶菌複製サイクルの終わりに大規模な細胞溶解を誘発するために可溶性タンパク質としてバクテリオファージにより産生される。例えば、Briers,Viruses 11(2):113(2019)を参照されたい。溶菌酵素は、標的細菌の迅速な溶解を引き起こし得、その結果、標的細菌レベルが顕著に低下するか、又は消失する。本明細書で説明されている組成物並びに予防的処置方法及び治療的処置方法の効力又は有効性の増強に加えて、溶菌酵素を、特定の細菌の迅速な同定のための検出アッセイで使用し得る。例えば、Nelson,et al.,“Using bacteriophage lytic enzymes as a diagnostic tool for rapid identification of specific bacteria.”In American Society for Microbiology General Meeting,Salt Lake City,Utah(2002)を参照されたい。本明細書で説明されている組成物及び方法での使用のための溶菌酵素を、本明細書で説明されているファージの培養物から単離してもよいし、組換え技術により調製してもよい。そのため、溶菌酵素は、本明細書で説明されている組成物に含まれ得、本明細書で説明されている予防的処置方法及び治療的処置方法並びに検出方法で使用され得、例えば、組成物の効力を増強するために及び/若しくは処置方法の有効性を増強するために使用され得、又は特定の標的VRE細菌を検出するために使用され得る。
【0054】
組成物
本明細書で同様に提供されるのは、本明細書で説明されている単離バクテリオファージ株の内の1つ又は複数を含む組成物である。本明細書で説明されている2種以上の単離バクテリオファージ株を含む組成物は、本明細書では、バクテリオファージ「カクテル」と称される。上述したように、本組成物は、OTC組成物又は医薬組成物であり得る。例えば、この組成物は、医薬組成物、健康補助食品、機能性食品組成物、栄養補助食品、又はプロバイオティクス組成物であり得る。
【0055】
バクテリオファージカクテルは、本明細書で説明されている単離バクテリオファージの内の2種以上の任意の組み合わせを含み得、例えば、下記(11種)の寄託株(又はそのバリアントであって、この寄託株に対して少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%のgANIを有するバリアント、例えば、表現型アッセイにより決定した場合に同一の表現型特性を有するか又は寄託バクテリオファージ株に対して少なくとも90%のgANIを有するバリアント)の内の任意の2種以上を含み得る:
アクセッション番号PTA-126934でATCCに寄託されたVREML237-2(配列番号1)
アクセッション番号PTA-126932でATCCに寄託されたVREML110-1(配列番号2)
アクセッション番号PTA-126931でATCCに寄託されたVREML105(配列番号3)
アクセッション番号PTA-126933でATCCに寄託されたVREML202-1(配列番号4)
アクセッション番号PTA-126930でATCCに寄託されたVREML85-2(配列番号5)
アクセッション番号PTA-127012でATCCに寄託されたVREML110-2(配列番号6)
アクセッション番号PTA-127016でATCCに寄託されたVREML237-1(配列番号7)
アクセッション番号PTA-127011でATCCに寄託されたVREML85-1(配列番号8)
アクセッション番号PTA-127013でATCCに寄託されたVREML137-2(配列番号9)
アクセッション番号PTA-127015でATCCに寄託されたVREML202-2(配列番号10)
アクセッション番号PTA-127014でATCCに寄託されたVREML139(配列番号11)。
【0056】
具体的な一例として、バクテリオファージカクテルは、下記(5種)の単離バクテリオファージ株(又はそのバリアントであって、この寄託株に対して少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%のgANIを有するバリアント、例えば、表現型アッセイにより決定した場合に同一の表現型特性を有するか又は寄託バクテリオファージ株に対して少なくとも90%のgANIを有するバリアント)の内の2種以上又は全ての株を含み得る:
VREML237-2(配列番号1)(アクセッション番号PTA-126934でATCCに寄託されている)
VREML110-1(配列番号2)(アクセッション番号PTA-126932でATCCに寄託されている)
VREML105(配列番号3)(アクセッション番号PTA-126931でATCCに寄託されている)
VREML202-1(配列番号4)(アクセッション番号PTA-126933でATCCに寄託されている)及び
VREML85-2(配列番号5)(アクセッション番号PTA-126930でATCCに寄託されている)。
【0057】
さらなる具体例として、バクテリオファージカクテルは、下記(5種)の単離バクテリオファージ株(又はそのバリアントであって、この寄託株に対して少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%のgANIを有するバリアント、例えば、表現型アッセイにより決定した場合に同一の表現型特性を有するか又は寄託バクテリオファージ株に対して少なくとも90%のgANIを有するバリアント)のそれぞれの株を含み得る:
VREML237-2(配列番号1)(アクセッション番号PTA-126934でATCCに寄託されている)
VREML110-1(配列番号2)(アクセッション番号PTA-126932でATCCに寄託されている)
VREML105(配列番号3)(アクセッション番号PTA-126931でATCCに寄託されている)
VREML202-1(配列番号4)(アクセッション番号PTA-126933でATCCに寄託されている)及び
VREML85-2(配列番号5)(アクセッション番号PTA-126930でATCCに寄託されている)。
【0058】
さらなる具体例として、バクテリオファージカクテルは、下記(5種)の単離バクテリオファージ株のそれぞれの株を含み得る:
VREML237-2(配列番号1)(アクセッション番号PTA-126934でATCCに寄託されている)
VREML110-1(配列番号2)(アクセッション番号PTA-126932でATCCに寄託されている)
VREML105(配列番号3)(アクセッション番号PTA-126931でATCCに寄託されている)
VREML202-1(配列番号4)(アクセッション番号PTA-126933でATCCに寄託されている)及び
VREML85-2(配列番号5)(アクセッション番号PTA-126930でATCCに寄託されている)。
【0059】
所与のバクテリオファージカクテルで使用される、本明細書で説明されている単離バクテリオファージ株の具体的な組み合わせを、VREの標的株に基づいて選択し得る。例えば、本明細書で説明されている単離バクテリオファージ株又は2種以上の単離バクテリオファージ株の組み合わせを、具体的な対象又は対象群を処置するためにカクテル中の株又は組み合わせを使用する前にVREの標的株に対してインビトロで試験して、有効性を確認し得る。好適なスクリーニング方法論は、当該技術分野で既知であり、本明細書の実施例で例示されている。そのような試験での使用のために、VREの標的株を、具体的な対象又は対象群から得られた臨床検体から得ることができるか、具体的な対象又は対称群の環境から得ることができるか、又は他の供給源から同定して得ることができる。好適な方法論は、当該技術分野で既知であり、本明細書の実施例で例示されている。
【0060】
同様に提供されるのは、本明細書で説明されている1種又は複数種のバクテリオファージ株の単離バクテリオファージ株バクテリオファージを含み、さらに1種又は複数種のプロバイオティクスも含む組成物である。本明細書で使用される場合、「プロバイオティクス」は、プロバイオティクス細菌及びプロバイオティクス酵母を含む。好適なプロバイオティクス細菌は、当該技術分野で既知であり、下記が挙げられる:ラクトバチルス属(Lactobacillus)種(例えば、L.アシドフィラム(L.acidophilus)、L.ラムノーサス(L.rhamnosus)、L.ガセリ(L.gasseri)、L.ロイテリ(L.reuteri)、L.ブルガリカス(L.bulgaricus)、L.プランタルム(L.plantarum)、L.ジョンソニイ(L.johnsonii)、L.パラカゼイ(L.paracasei)、L.カゼイ(L.casei)、L.サリバリウス(L.salivarius)、及びL.ラクティス(L.lactis))、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)種(例えば、B.ビフィダム(B.bifidum)、B.ロングム(B.longum)、B.ブレーベ(B.breve)、B.インファンティス(B.infantis)、B.ラクティス(B.lactis)、及びB.アドレスセンティス(B.adolescentis))、並びにストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、バチルス・セレウス(Bacillus cerus)、及びバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)。好適なプロバイオティクス酵母は、当該技術分野で既知であり、下記が挙げられる:サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)、サッカロマイセス・セレビシエ変種ブラウディ(Saccharomyces cerevisiae var. boulardii)、イッサチェンキア・オクシデンタリス(Issatchenkia occidentalis)、ラチャンスア・サーモトレランス(Lachancea thermotolerans)、メチニコビア・ジジフィコラ(Metschnikowia ziziphicola)、及びトルラスポラ・デルブリュッキイ(Torulaspora delbrueckii)。
【0061】
そのため、いくつかの実施形態では、本明細書で説明されている組成物は、本明細書で説明されている1種又は複数種の単離バクテリオファージ株バクテリオファージ株と、1種又は複数種のプロバイオティクスとを含む。具体的な実施形態では、本明細書で説明されている組成物は、本明細書で説明されている1種又は複数種の単離バクテリオファージ株バクテリオファージ株と、プロバイオティクス細菌の1種又は複数種の株とを含む。他の具体的な実施形態では、本明細書で説明されている組成物は、本明細書で説明されている1種又は複数種の単離バクテリオファージ株バクテリオファージ株と、プロバイオティクス酵母の1種又は複数種の株とを含む。さらに他の具体的な実施形態では、本明細書で説明されている組成物は、本明細書で説明されている1種又は複数種の単離バクテリオファージ株バクテリオファージ株と、プロバイオティクス細菌の1種又は複数種の株、及びプロバイオティクス酵母の1種又は複数種の株とを含む。理論に拘束されることを望むものではないが、本明細書で説明されているVREバクテリオファージの健康へのプラスの影響は、プロバイオティクスと組み合わされた場合にさらに増強され得ると考えられる。
【0062】
具体的な一例として、本明細書で説明されている組成物は、下記の単離バクテリオファージ株バクテリオファージ株(又は上記で説明されているそのバリアント)の内の2種以上又は全てと、1種又は複数種のプロバイオティクスとを含み得る:
VREML237-2(配列番号1)(アクセッション番号PTA-126934でATCCに寄託されている)
VREML110-1(配列番号2)(アクセッション番号PTA-126932でATCCに寄託されている)
VREML105(配列番号3)(アクセッション番号PTA-126931でATCCに寄託されている)
VREML202-1(配列番号4)(アクセッション番号PTA-126933でATCCに寄託されている)及び
VREML85-2(配列番号5)(アクセッション番号PTA-126930でATCCに寄託されている)。
【0063】
この1種又は複数種のプロバイオティクスは、ラクトバチルス属(Lactobacillus)種(例えば、L.アシドフィラム(L.acidophilus)、L.ラムノーサス(L.rhamnosus)、L.ガセリ(L.gasseri)、L.ロイテリ(L.reuteri)、L.ブルガリカス(L.bulgaricus)、L.プランタルム(L.plantarum)、L.ジョンソニイ(L.johnsonii)、L.パラカゼイ(L.paracasei)、L.カゼイ(L.casei)、L.サリバリウス(L.salivarius)、及びL.ラクティス(L.lactis))、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)種(例えば、B.ビフィダム(B.bifidum)、B.ロングム(B.longum)、B.ブレーベ(B.breve)、B.インファンティス(B.infantis)、B.ラクティス(B.lactis)、及びB.アドレスセンティス(B.adolescentis))、並びにストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、バチルス・セレウス(Bacillus cerus)、及びバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)から選択される1種若しくは複数種のプロバイオティクス細菌;サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)、サッカロマイセス・セレビシエ変種ブラウディ(Saccharomyces cerevisiae var.boulardii)、イッサチェンキア・オクシデンタリス(Issatchenkia occidentalis)、ラチャンスア・サーモトレランス(Lachancea thermotolerans)、メチニコビア・ジジフィコラ(Metschnikowia ziziphicola)、及びトルラスポラ・デルブリュッキイ(Torulaspora delbrueckii)から選択される1種若しくは複数種のプロバイオティクス酵母、又はこれらの任意の組み合わせであり得る。
【0064】
上述したように、任意の実施形態では、本明細書で説明されている単離バクテリオファージ及びプロバイオティクスを含む組成物は、OTC組成物又は医薬組成物であり得る。
【0065】
加えて、又は或いは、本明細書で説明されている組成物は、本明細書で説明されている1種又は複数種のファージ誘導体生成物を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書で説明されている組成物は、この組成物中に配合されたバクテリオファージの内の1種又は複数種により産生された1種又は複数種の酵素を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で説明されている組成物は、加えて、又は或いは、この組成物中に配合されたバクテリオファージの内の1種又は複数種の1種又は複数種の抗シグマ因子遺伝子又はその発現産物を含む。上述したように、任意の実施形態では、本明細書で説明されているバクテリオファージ及びファージ誘導体生成物(例えば溶菌酵素)を含む組成物は、OTC組成物又は医薬組成物であり得る。
【0066】
本明細書で説明されているOTC組成物又は医薬組成物は、単離バクテリオファージ(並びに、いくつかの実施形態では、プロバイオティクス及び/又はファージ誘導体生成物、例えば溶菌酵素)と、1種又は複数種の薬学的に許容される担体と、任意選択的な1種又は複数種の薬学的に許容される賦形剤とを含む。バクテリオファージに好適な担体及び賦形剤は、当該技術分野で既知である。典型的には、薬学的に許容される担体は、意図された投与経路による標的患者(動物又はヒト)への投与のための医薬組成物を製剤化するためのビヒクルとしての使用に適している、薬学的に許容される非毒性の担体、充填剤、又は希釈剤である。
【0067】
薬学的に許容される賦形剤(助剤又は副成分とも称される)は、意図された投与経路による標的患者(動物又はヒト)への投与のために医薬組成物で従来使用されているものを包含しており、下記が挙げられるが、これらに限定されない:マトリックス形成剤、増粘剤、結合剤、潤滑剤、pH調整剤、保護剤、粘度増強剤、ウィッキング剤(wicking agent)、崩壊剤、例えば、非発泡性崩壊剤及び発泡性崩壊剤、界面活性剤、酸化防止剤、湿潤剤、着色剤、香味剤、矯味剤、甘味料、保存剤等。薬学的に許容されることに加えて、助剤は、典型的には、バクテリオファージ及びプロバイオティクス(存在する場合)を含む本組成物の他の成分と適合するように選択される。
【0068】
本明細書で説明されているOTC組成物及び医薬組成物を、任意の好適な投与経路(VERのコロニー形成又は感染の部位に依存する場合がある)用に製剤化し得る。様々な投与経路用のファージ組成物が開示されている。例えば、Qadir et al.,Brazilian J.Pharm.Sci.(2018)54(1)を参照されたい。例えば、ファージを、経口、頬側、舌下、直腸、経鼻、局所、耳、膣、気管支、肺、又は非経口(例えば、皮下、筋肉内、静脈内、皮内、腹腔内、胸膜内、胞内、及び髄腔内)投与を含む投与経路用に製剤化し得るか、又はインプラント、若しくは尿路洗浄、若しくはカテーテルを介した投与用に製剤化させ得る。この組成物又は投与経路は、本明細書で説明されている1種又は複数種のバクテリオファージの標的化効果をもたらすように選択され得、且つコロニー形成又は感染の部位に依存し得る。
【0069】
本OTC組成物及び医薬組成物を、問題の剤形を製造するための任意の好適な方法により調製し得、そのような方法は、薬学分野で公知である。そのような方法は、典型的には、本明細書で説明されている1種又は複数種のバクテリオファージ(並びに任意選択的な1種若しくは複数種のプロバイオティクス及び/又はファージ誘導体生成物、例えば溶菌酵素)と、薬学的に許容される担体と、任意選択的な1種又は複数種の薬学的に許容される助剤とを会合させる工程を含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されている組成物を、経口投与用に製剤化して経口投与する。経口投与に好適なOTC組成物及び医薬組成物の剤形は、当該技術分野で既知であり、下記が挙げられる:個別の剤形、例えば、錠剤(咀嚼錠を含む)、乾燥ファージ含有組成物が入っている硬質ゲルカプセル、液体ファージ含有組成物が入っている軟質液体ゲルカプセル、及び糖衣錠、並びにバルク剤形、例えば、粉末、顆粒、溶液、懸濁液、分散液、シロップ、マイクロゲル、及び同類のもの。
【0071】
経口投与用に製剤化されたOTC組成物及び医薬組成物の剤形を、胃の酸性環境からファージを保護するように製剤化し得る。例えば、経口投与用に製剤化された組成物は、バクテリオファージ(並びに任意選択的なプロバイオティクス及び/又はファージ誘導体生成物、例えば溶菌酵素)を保護し、且つ胃の酸性環境を通過する間の生存性を維持するために、コーティング、例えば、腸溶性コーティング又は遅延放出コーティング(例えば、コーティングされた錠剤若しくはカプセル、又はコーティングされた顆粒の形態)が施され得るか、又は含み得るか、又はマイクロカプセル化(例えば、アルギン酸-キトサンミクロスフェア)され得る。好適なコーティング及びマイクロカプセル化材料は、当該技術分野で既知である。加えて、又は或いは、経口投与用に製剤化された組成物を、胃酸中和剤(例えば、炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素塩)等の胃酸を低減させる薬剤(例えば、胃酸低減剤)、又はプロトンポンプ阻害剤(例えば、オメプラゾール)と共に製剤化し得るか、又は共に投与し得る。
【0072】
加えて、又は或いは、そのような組成物は、小腸等の所望の放出部位で生存ファージ(並びに任意選択的なプロバイオティクス及び/又はファージ誘導体生成物、例えば溶菌酵素)を放出するために、遅延放出コーティングが施され得るか、又は遅延放出コーティングを含み得る。
【0073】
例えば、経口投与用に製剤化された、本明細書で説明されている組成物は、下記の成分の内の1つ又は複数を含み得る:水、例えば、脱イオン水、医薬品グレードの水、又はミネラル水;塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム;緩衝液(例えば、pH7.0~7.5のTris-HCl);甘味料、例えば、スクロース(例えば、5%スクロース溶液)トレハロース、マルトデキストリン、グリセロール、デキストラン、及びソルビトール、セルロース;増粘剤、例えば、タピオカ、デキストリン、ジェランガム、及びゼラチン;並びに他の賦形剤、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ(アクリル酸)(「PAA」)、ポリ(エチレングリコール)(「PEG」)、及びカゼイン、並びにこれらの任意の2種以上の組み合わせ。
【0074】
具体的で非限定的な一例として、本明細書で説明されている組成物を、任意選択的に、0.9%塩化ナトリウム溶液1mL中に約1×1010PFUのファージを得るように、0.9%塩化ナトリウム溶液に配合し得る。そのような組成物を、任意選択的に、摂取のために、投与の直前に、重炭酸水15~50mL等の重炭酸水と混合し得る。
【0075】
代替実施形態では、本明細書で説明されている組成物は、直腸投与用に製剤化される。直腸投与に好適なOTC組成物及び医薬組成物の剤形は、当該技術分野で既知であり、直腸投与用の坐剤、直腸用フォーム、ローション、ゲル、又は浣腸剤が挙げられ得る。
【0076】
代替実施形態では、本明細書に記載される組成物は、膣投与用に製剤化される。膣投与に好適なOTC組成物及び医薬組成物の剤形は、当該技術分野で既知であり、膣投与用の坐剤、クリーム、膣用フォーム、ローション、ゲル、膣洗浄剤、又はカテーテルが挙げられ得る。
【0077】
代替実施形態では、本明細書で説明されている組成物は、例えば、皮下、筋肉内、静脈内、皮内、腹腔内、胸膜内、胞内、及び髄腔内注射等の注入又は注射による、非経口投与用に製剤化される。非経口投与に好適な組成物は、当該技術分野で既知であり、注入又は注射用に製剤化された無菌の水性組成物及び非水性組成物が挙げられ得る。そのような組成物は、単位用量又は複数回用量の容器(例えば、プレ充填シリンジ、密封バイアル、密封アンプル、又は密封パウチ)で提供され得る。そのような組成物は、使用準備済であってもよいし、使用前に無菌液体担体(例えば水)で再構成される、凍結乾燥された(freeze-dried)(凍結乾燥された(lyophilized))又は噴霧乾燥された組成物であってもよい。
【0078】
代替実施形態では、本明細書で説明されている組成物は、局所送達用に製剤化される。局所投与に好適なOTC組成物及び医薬組成物の剤形は、当該技術分野で既知であり、溶液、乳液、クリーム、ローション、ゲル、及びスプレーが挙げられる。例えば、本明細書で説明されている組成物を、局所投与用のゲルとして製剤化し得る。
【0079】
代替実施形態では、本明細書で説明されている組成物は、例えば経口吸入又は経鼻吸入による肺又は気管支投与用に製剤化される。肺投与に好適な組成物の剤形は、当該技術分野で既知であり、定量加圧エアロゾル、ネブライザー、吸入器、又は同類のものにより生成されて投与され得る粉末組成物及び微粒子製剤(例えば、ダスト又はミスト)が挙げられる。
【0080】
処置
本明細書で説明されているバクテリオファージ及び組成物を、VREのコロニー形成若しくは感染のリスクを低減するための若しくは予防するための予防的処置方法及び治療的処置方法で使用し得るか、又はVREのコロニー形成若しくは感染を処置するための予防的処置方法及び治療的処置方法で使用し得るか、又は(例えば、VREによるコロニー形成を予防するか若しくは低減することによる)対象のマイクロバイオームを調節するための予防的処置方法及び治療的処置方法で使用し得るか、又はVRE腸内コロニー形成を低減するか若しくは除去するための予防的処置方法及び治療的処置方法で使用し得るか、又はVRE関連の疾患若しくは状態を処置するための予防的処置方法及び治療的処置方法で使用し得るか、又は同様の効果のための予防的処置方法及び治療的処置方法で使用し得る。
【0081】
そのような使用によれば、本明細書で説明されているバクテリオファージ及び組成物を、任意の有効な投与レジメンに従って投与し得、この投与レジメンは、達成すべき予防効果又は治療効果(例えば、感染の予防対コロニー形成の処置又は菌血症の処置)、使用される具体的なバクテリオファージ、投与経路及び剤形、並びに患者の特性(例えば、患者の年齢及び体重、患者の状態、並びにVRE感染の種類及び重症度の内の1つ又は複数)に基づいて変化し得る。例示的な投与量を、例示のみを目的として下記で説明する。
【0082】
ヒト患者用の典型的なバクテリオファージ用量は、10~1012プラーク形成単位(PFU)(例えば、10~1011、例えば10~1010)の1種又は複数種のバクテリオファージ含む可能性が高く、この用量を、1日1回又は複数回投与し得、例えば、1日当たり1、2、3、4、又は5回投与し得る。この用量を、単一の離散剤形(例えば、1つの錠剤若しくはカプセル)又は複数の離散剤形(例えば、2、3、4個、若しくはより多くの錠剤若しくはカプセル)で提供し得るか、又は好適な容量のバルク剤形(例えば、液体組成物1mL)で提供し得る。処置を、1日又は複数日にわたり継続し得、例えば、1日、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、又はより長く継続し得る。
【0083】
好適な用量レジメンの一例は、1~4週間にわたり1日に1~3回経口投与される、それぞれ10~1010PFUのバクテリオファージを含む1~3個のカプセル又は錠剤である。好適な用量レジメンの別の例は、1~4週間にわたり1日に1~3回経口投与される、10~1011PFUのバクテリオファージを含む液体組成物1mLである。
【0084】
上述したように、本明細書で説明されているバクテリオファージ組成物及び方法を、胃酸を低減させる薬剤と併用し得る。例えば、処置中の対象はまた、プロトンポンプ阻害剤(例えばオメプラゾール)でも処置され得、及び/又はバクテリオファージ組成物の用量を摂取する直前に、重炭酸塩(例えば重炭酸ナトリウム)等の胃酸中和剤も摂取し得る。
【0085】
本明細書で説明されているバクテリオファージ及び組成物を予防的に又は治療的に使用して、必要な任意の対象を処置し得、例えば、VREのコロニー形成若しくは感染のリスクがある任意の対象(入院中の対象を含む)、又はVREがコロニー形成しているか若しくは感染している任意の対象を処置し得る。
【0086】
本明細書で説明されているバクテリオファージ及び組成物を、侵襲的医療処置、化学療法、固形臓器移植、若しくは免疫抑制療法の内の1つ若しくは複数に直面しているか、これらで処置されているか、若しくはこれらから回復している対象、又は免疫抑制状態であるか若しくは免疫不全状態である他の対象で有利に使用し得る。そのような実施形態では、本明細書で説明されているバクテリオファージ及び組成物を、侵襲的医療処置、化学療法、固形臓器移植、又は免疫抑制療法の前、最中、及び後の内の1つ又は複数で投与し得る。例えば、本明細書で説明されているバクテリオファージ処置の過程を、他の処置期間(例えば、侵襲的医療処置、化学療法、固形臓器移植、又は免疫抑制療法)の1~4週間前に開始し得、他の処置期間の最中及び任意選択的には後も継続し得る。
【0087】
VRE検出方法
本明細書で説明されているバクテリオファージ(又はその溶菌酵素)をまた、インビトロアッセイでも使用して、対象から得られた生体サンプル中の標的細菌(例えばVRE)を検出し得、例えば、対象がVREに感染しているかどうかを診断し得、及び/又は感染(コロニー形成)のレベルを評価し得、例えば、本明細書で説明されている処置の必要性又は有効性を評価し得る。理論に拘束されないが、本明細書で説明されているバクテリオファージ(又はその溶菌酵素)は、存在し得る他の原核細胞又は真核細胞に影響を及ぼすことなく、標的細菌(例えばVRE)を特異的に溶解させ、そのため、標的VREに対して特異的な、標記細菌の測定可能な産物(例えば、アデノシ三リン酸(ATP)及び/又はプロテインキナーゼ(ALT))の放出が特異的に誘発されると考えられる。そのため、検出アッセイを、標的細菌のATP又はAKTの検出に基づいて行ない得る。
【0088】
そのようなアッセイの例示的な例は、下記の通りである。分析する臨床材料(例えば糞便検体)のサンプルを得て、適切な緩衝液に懸濁させる。この懸濁液に1種又は複数種のバクテリオファージ(又はその溶菌酵素)を添加し、その結果、このサンプル中に存在する任意の標的細菌細胞が溶解し、そのATPが放出される。(例えば)ATPを検出するために、ルシフェリン+ルシフェラーゼ調製物を添加し、例えばルミノメータを使用して発光を測定する。ルミノメータによる読み取り値と、溶解した標的細菌細胞の数(一般に、1つの細菌細胞当たりのATPの平均数は、0.5~1.0fgである)との間の較正曲線を作成することにより、定量アッセイを開発し得る。発光しないことは、分析したサンプル中に標的細菌細胞が存在しないことを示す。
【0089】
ワクチン及びバクテリン
同様に提供されるのは、本明細書で説明されているバクテリオファージ(又はその溶菌酵素)を使用して調製されたワクチン及びバクテリンである。例えば、本明細書で説明されているバクテリオファージ(上記で論じた寄託株のバリアントを含む)又はその溶菌酵素を使用して、標的細菌(例えば、標的VRE)の特定の株を溶解させ、この細菌の免疫学的エピトープを含む細菌溶解物を得ることができ、次いでこの細菌溶解物を使用して、標的VREに対するワクチン/バクテリンを調製し得る。最終ワクチン/バクテリン調製物を、当該技術分野で既知の方法により調製し得る。バクテリンを得るために使用される場合には、このファージを除去して、最終ワクチン/バクテリン調製物を得ることができる。或いは、このファージは、生存可能な活性状態で最終調製物中に保持され得る。そのような実施形態では、ワクチン/バクテリン製剤中に存在するファージは、標的細菌(例えば標的VRE)に対して活性を維持し得、この調製物の有効性の別の作用機序を提供し、例えば、ワクチン接種された対象中に存在する標的細菌(VRE)を溶解させ得る。例えば、最終ワクチン/バクテリン調製物を、10~1012PFU/mlの範囲のレベルでファージが存在するように調製し得る。例えば、最終ワクチン/バクテリン調製物を、10~1010PFU/mlの範囲のレベルでファージが存在するように調製し得る。
【0090】
具体的な実施形態では、ワクチン/バクテリン調製物を、標的細菌の蔓延している問題の株に対して調製して、感染からの標的患者集団の保護に最も関連する免疫学的エピトープを含むワクチン/バクテリン調製物が得られる。さらに具体的な実施形態では、バクテリオファージは、上記で論じたように、最終ワクチン/バクテリン調製物中に不変のまま保持される。
【0091】
バクテリオファージベースのワクチン及びバクテリンをまた、このバクテリオファージの関連遺伝子(例えば、溶菌活性に関連する遺伝子、例えば、容器酵素をコードするもの)を発現する組換えコンストラクト、又は単離されたか若しくは組換えにより製造された溶菌酵素を使用しても調製し得、これを、上記で概説したプロトコルにおいて、ファージ自体の代わりに使用し得る。この一般的な方法論の例は、Panthel et al.,Infect Immun.71(1):109-16(2003)で概説されている。
【0092】
これらの実施形態の内のいずれかによれば、同様に提供されるのは、VREに罹患しているか又はVREによる感染のリスクがある対象等の必要な対象を免疫化するための、上記で説明されているバクテリンを含むワクチンの使用である。本明細書で提供されるガイダンスに基づいて、当業者は、好適なワクチン接種プロトコルを開発し得る。
【0093】
キット
同様に提供されるのは、本明細書で説明されている様々な実施形態を実行するためのキットである。
【0094】
本明細書で説明されているバクテリオファージの予防用使用又は治療的使用のためのキットは、本明細書で説明されている組成物を、本明細書で説明されている組成物の予防的使用又は治療的使用のための指示書と共に含み得、任意選択的に梱包材料と共に含み得る。
【0095】
本明細書で説明されているワクチン/バクテリンの予防用使用又は治療的使用のためのキットは、本明細書で説明されているワクチン/バクテリンを、本明細書で説明されているワクチン/バクテリンの予防用使用又は治療的使用のための指示書と共に含み得、任意選択的に梱包材料と共に含み得る。
【0096】
VRE検出アッセイ用のキットは、本明細書で説明されている1種又は複数種のバクテリオファージ(又はその1種若しくは複数種の溶菌酵素)を、本明細書で説明されているVRE検出アッセイでのバクテリオファージ(又は酵素)の使用のための指示書と共に含み得、任意選択的に梱包材料と共に含み得る。
【実施例
【0097】
本発明を、本発明の範囲を限定することを決して意図しない下記の実施例でさらに説明する。
【0098】
実施例1:VRE単離株
VRE単離株の入手
メリーランド州、バルチモアのUniversity of Maryland VA Medical Centerの外科集中治療室及び中間集中治療室の患者から、VREを単離した。Maryland.5%ヒツジ血液が補充されたTrypticase Soy Agar(BBL,Cockeysville Md.)を使用して、尿、創傷、及び無菌体液から腸球菌を単離した。脱繊維ヒツジ血液(5%)、バンコマイシン(10μg/ml)、及びアンホテリシン(1μg/ml)が補充されたColistin Nalidixic Acid(CNA)寒天(Difco labs,Detroit,Mich.)上で、便検体からVREを単離した。Facklam,et al.,Enterococcus.In Manual of Clinical Microbiology(6th ed.1995)(Am.Soc.Microbiol.,Washington,D.C.),pp.308-312を参照されたい。
【0099】
VREの同定
エスクリン加水分解、及び45℃での6.5% NaCl中における増殖により、腸球菌を同定した。種レベルでの同定を、Facklam and Collins,J.Clin.Microbiol.,27:731-34(1989)に従って実施した。
【0100】
VREの抗菌剤感受性試験
アンピシリン、バンコマイシン、ストレプトマイシン、及びゲンタマイシンに対する抗菌剤感受性を、E試験定量的最小阻止濃度手順(E test quantitative minimum inhibitory concentration procedure)(AB Biodisk,Solna Sweden)を使用して決定した。E.フェシウム(E.faecium)の品質管理株(ATCC 29212、ATCC 51299)を使用して、試験したそれぞれの抗菌剤の効力を確認した。バンコマイシンを除いて、National Committee for Clinical Laboratory Standardsの感受性解釈を遵守した。National Committee for Clinical Laboratory Procedures,“Methods for Dilution Antimicrobial Susceptibility Tests for Bacteria that Grow Aerobically.”(3rd ed.,1993)(Nat.Committee for Clin.Lab.Standards,Villanova Pa.);National Committee for Clinical Laboratory Standards,“Performance Standards for Antimicrobial Disk Susceptibility Tests.”(5th ed.,1993)(Nat.Committee for Clin.Lab.Standards,Villanova Pa.)を参照されたい。VRE単離株を、バンコマイシンに対する最小阻止濃度が少なくとも16μg/mlであるものと定義した。
【0101】
一般に異なるVRE株の定義
別個のVRE単離株を、Smalによる染色体DNAの消化後に、外郭固定均一電場電気泳動(contour-clamped homogeneous electric field electrophoresis)によりキャラクタライズした。Verma,P.et al.,“Epidemiologic characterization of vancomycin resistant enterococci recovered from a University Hospital”In Abstracts of the 94th General Meeting of the American Society for Microbiology,Las Vegas Nev.(1994);Dean,et al.,“Vancomycin resistant enterococci(VRE)of the vanB genotype demonstrating glycoprotein(G)resistance inducible by vancomycin(V)or teicoplanin(T)”In Abstracts of the 94th General Meeting of the American Society for Microbiology,Las Vegas Nev.(1994)を参照されたい。最初の分析後に1~3つのバンドのみが異なるVRE株に関しては、Apal消化を使用する電気泳動試験も実施した。Donabedian,J.Clin.Microbiol.,30;2757-61(1992)を参照されたい。バンコマイシン耐性遺伝子型(vanA、vanB、又はvanC)を、公開されている遺伝子配列から選択された特異的プライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応解析により定義した。Goering,R.V.and the Molecular Epidemiological Study Group“Guidelines for evaluating pulsed field restriction fragment patterns in the epidemiological analysis of nosocomial infections.”Abstract of the Third International Meeting of Bacterial Epidemiological Markers;Cambridge England(1994)を参照されたい。
【0102】
これらの方法論を使用して、VA Medical Centerで単離された株から、214種の異なるVRE株を同定した。
【0103】
実施例2:バクテリオファージ
VREファージの単離
Chesapeake Bay(ファージの潜在的供給源)からの水500mlを、10倍濃縮LBブロス(Difco Laboratories)(10g/Lトリプトン、5g/L酵母抽出物、10g/L NaClを含む)100mlと混合した。この水-ブロス混合物に、VRE株の18~24時間LBブロス培養物1mlを接種し、24時間にわたり37℃でインキュベートして、添加したVRE株に感染し得る任意のバクテリオファージの存在を混合物に富化させた。インキュベーション後、この混合物を、15分にわたり5,000gで遠心分離して、後続のろ過を妨げる可能性がある物質を除去した。上清を、0.45μm Milliporeフィルタに通してろ過した。ろ液を、ストリークプレート法及びAppelman管濁度試験により評価して、一般には下記で概説する方法論を使用して、様々なVRE株に対する溶解活性を評価した。
【0104】
プラークアッセイ:
プラークアッセイを使用して、所与のVRE株が、所与のバクテリオファージ調製物による感染に対して感受性であるかどうかを評価し得る。プラークピッキング(plaque picking)を使用して、バクテリオファージの単一株の調製物を得ることができる。
【0105】
試験するVRE株の18~24時間栄養ブロス培養物(0.1ml)と、VREバクテリオファージ調製物の希釈液(0.1ml)とを混合し、次いで、45℃にて、栄養ブロス中の0.7%溶融寒天4.5mlに添加する。この混合物を、2%寒天で固めた栄養ブロス25mlが入ったペトリ皿に全て注ぎ、37℃で一晩インキュベートする。37℃での一晩のインキュベーション中に、VREは、寒天中で増殖し、バクテリオファージに感染した一部のVRE細胞が、コンフルエントな芝生を形成する。ファージは、複製して最初に感染した細胞を溶解させ、その後に、隣接する細菌に感染して溶解させる。この寒天は、プレート全体にファージが物理的に広がることを制限し、その結果、プレート上に、プラークと呼ばれる、目に見える小さい透明な領域が形成され、この領域では、バクテリオファージが、VRE増殖のコンフルエントな芝生内でVREW破壊している。
【0106】
バクテリオファージ調製物の所与の希釈液の所与の量から形成されるプラークの数は、バクテリオファージ調製物の力価を反映する。形態な明瞭な1つのプラークは、細菌芝生のその領域中におけるVRE中で複製した1つのファージ粒子を表す。そのため、パスツールピペット等のピペットで(「プラークピック」と称される)プラーク内の物質を取り出し、この物質を、このファージのさらなる増殖サイクルのための接種物として使用することにより、純粋なバクテリオファージ調製物を得ることができる。同一のプラークピックから増殖したファージの調製物で、さらなるプラークアッセイを行なうことにより、全てのプラークは、採取されたプラークと同一の単一外観(プラーク形態)を有することになり、このことは、純度のさらなる指標である。従って、プラークアッセイ技術を使用して、VREに対するバクテリオファージの効力を評価し得、バクテリオファージ調製物のバクテリオファージ純度も評価し得る。
【0107】
ストリークプレート法:
ストリークプレート法を使用して、1種又は複数種のVRE株に対して1種又は複数種のファージをスクリーニングし得る。
【0108】
試験する1種又は複数の腸球菌株の18時間LBブロス培養物を、37℃で増殖させ(約10CPU/mlとなる)、それぞれの培養物の白金耳量を、栄養寒天プレートに単一列で画線する。この結果、それぞれプレートでは、画線された多数の異なるVRE株が、単一直線で増殖する。
【0109】
試験するバクテリオファージろ液の1滴を、それぞれのVREストリークに適用し、プレートを、37℃で6時間にわたりインキュベートし、この時点で、様々なVRE株のストリークを、特定のファージによる特定のVRE株の溶解を示す細菌増殖がない透明な領域を形成するファージの能力に関して調査する。どのVREストリークで、増殖がない透明な領域を生じ、どのVREストリークでこの領域が生じないかを決定することにより、所与のファージろ液のVRE宿主範囲を確認し得る。
【0110】
Appelman管濁度試験
Appleman管濁度試験(Adams,Bacteriophages.(Interscience Publ.New York N.Y.)(1959)を参照されたい)を使用して、1種又は複数種のVRE株に対してファージ調製物をスクリーニングし得る。
【0111】
1種又は複数種のVRE株の18時間LBブロス培養物を調製し、VREブロス培養物4.5mlに、ファージろ液0.1ml又はその希釈液を添加し、4時間にわたり37℃でインキュベートする(単一のファージを含む単一ファージ調製物)か、4~18時間にわたり37℃でインキュベートする(少なくとも2種のファージを含む多価調製物)。ファージフリーVREブロス培養物を、コントロールとして使用した。通常は細菌増殖に起因して混濁しているブロス培養物を、培養物の濁りを清浄化することにより示される、VRE株を溶解させるファージ調製物の能力に関して調査する。どのVREブロス培養物がファージ調製物を清浄化し、どのブロス培養物が清浄化しないかにより、所与のファージ調製物の宿主範囲を確認し得る。
【0112】
これらの方法論を使用して、本明細書で説明されているバクテリオファージを単離して同定した。
【0113】
実施例3:ファージのキャラクタリゼーション
制限断片長多型(RFLP)プロファイル
本明細書で説明されているバクテリオファージのRFLPプロファイルを、図1に示す。製造業者の指示に従ってQiagen Plasmid Miniprep又はMidiprepキット(Valencia,CA)を使用して、バクテリオファージからDNAを単離した。このDNAを、260nmで吸光度を測定することにより定量した。DNA 約0.5~1μgを、適切な制限酵素で消化し(Hind III消化)、臭化エチジウムによる染色後に、1%アガロースゲルでRFLPプロファイルを決定した。
【0114】
VREファージのゲノム解析及び平均ヌクレオチド同一性
全ゲノム配列決定及び配列解析を使用して、本明細書で説明されているバクテリオファージ又はその子孫を同定し得る。平均ヌクレオチド同一性(ANI)が95%以上の子孫は、Olm(Olm M.,“Are these microbes the’same’?”microBEnet(2;2017)(microbe.net/2017/02/15/are-these-microbes-the-same/で入手可能)及びJain et al.(Jain et al.Nature Comm.9(1):5114(2018)で定義されている「同一種」のものであると見なされる。参照ファージに対してgANIが95%以上のファージは、参照バクテリオファージと「実質的に同等である」と見なされる。
【0115】
VREバクテリオファージを、読み取り長2×250bpでMiSeqにより配列決定した。読み取りを、illuminaアダプタ、長さ(≧50bp)、品質(q≧20)に関して整え、GenBankで利用可能な腸球菌の参照配列に対してマッピングした。マッピングされていない読み取りを集め、Unicyclerアセンブラを使用して組み立てた。株の描写を、ゲノム全体での平均ヌクレオチド同一性(gANI)を算出することにより評価した。例えば、Jain et al.,上記参照;Varghese et al.,Nucleic Acids Res.43(14):6761-71(2015)を参照されたい。
【0116】
実施例4:ファージ調製物の生成
本明細書で説明されているVREバクテリオファージを、本明細書で例示されているように増殖させ得る。
【0117】
このバクテリオファージが増殖し得る標的細菌(例えばVRE)又は他の近縁細菌種の株を、好適な増殖培地(例えばBHIブロス)を使用してバッチ培養し、予め決定した感染多重度(MOI)でバクテリオファージを接種する。インキュベーション及び細菌溶解の後、バクテリオファージを回収し、精製し、及び/又は濃縮して、本明細書で説明されいてる用途に好適なファージ子孫を得る。
【0118】
好適な精製手順及び濃縮手順として、ろ過、遠心分離(連続流遠心分離を含む)、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、及び他の既知のバクテリオファージ精製技術及び濃縮技術の内の1つ又は複数が挙げられる。例えば、Adams MH.Bacteriophages.443-519(Interscience Publishers,Ltd,London)(1959)を参照されたい。ファージ調製物の純度を、電子顕微鏡、SDS-PAGE、DNA制限消化、分析用超遠心分離の内の1つ又は複数により評価し得る。
【0119】
調製物のバクテリオファージ濃度を、ファージ力価測定プロトコルを使用して調整し得る。例えば、調製物のバクテリオファージ濃度を決定する。より濃縮されたファージ調製物が望ましい場合には、ろ過、遠心分離、又は他の手段の内の1つ又は複数により濃度を上昇させる。より濃度が低いファージ調製物が望ましい場合には、水又は他の薬学的に許容される希釈剤(例えば、薬学的に許容される緩衝液)で希釈することにより濃度を低下させる。典型的な医薬組成物又はOTC組成物は、ファージ力価が10~1012PFU/mLであり、例えば、ファージ力価が10~1011PFU/mLである。
【0120】
バクテリオファージ調製物を、2~8℃で保存し得る。或いは、ファージ調製物を、保存するために凍結乾燥させ得るか若しくは噴霧乾燥させ得るか、又は当該技術分野で既知のアプローチ(例えば、タンパク質、脂質、及び多糖の内の1つ又は複数)によりカプセル化して安定化させ得る。再構成時に、ファージ力価を、ファージ力価測定プロトコル、宿主細菌アッセイ、又は他の公知のバクテリオファージアッセイ技術を使用して検証し得る。例えば、Adams、上記参照を参照されたい。
【0121】
実施例5:ファージ活性
本明細書で説明されているバクテリオファージ株のバクテリオファージは、VRE株を効率的に溶解させ、このことから、VRE株に対する有効性が実証される。
【0122】
本明細書で説明されているVREファージを、単独で又は様々な組み合わせで使用して、特定のVRE株又は株のサブグループを標的とし得る。例えば、下記の5種の株の下記のファージを、1つのカクテルに組み合わせて、VA Medical Centerで単離された214種のVRE株の全てと、5種の参照腸球菌単離株とを効率的に標的とし得る:E401(ATCC 51299)、E403(ATCC 19433)、E618(ATCC 700221)、E400(ATCC 29212)、及びE402(ATCC 11823):
VREML237-2(配列番号1)(アクセッション番号PTA-126934でATCCに寄託されている)
VREML110-1(配列番号2)(アクセッション番号PTA-126932でATCCに寄託されている)
VREML105(配列番号3)(アクセッション番号PTA-126931でATCCに寄託されている)
VREML202-1(配列番号4)(アクセッション番号PTA-126933でATCCに寄託されている)
VREML85-2(配列番号5)(アクセッション番号PTA-126930でATCCに寄託されている)。
【0123】
下記の表に記載されているように、この5種ファージカクテルは、VA Medical Centerで単離された214種のVRE株、及び5種の参照株の94%を溶解させる。
【0124】
【表1】
【0125】
【表2】
【0126】
この分析に使用したPhageSelector(商標)ソフトウェアは、Cieplak,et al.,Gut Microbes 9(5):01-19(2018)で説明されている。
【0127】
実施例6:インビボマウスモデルでの有効性
説明されているバクテリオファージの有効性を、本明細書で説明されているインビボマウスモデルで実証した。
【0128】
動物モデルにおける持続的なVREコロニー形成の確立を、下記の通りに実行した。
【0129】
ICR非近交系マウス(6週齢)を、飲料水中の1mg/mlのゲンタマイシン、及びクリンダマイシン(2.4mg/日/マウス)の皮下注射により、3日にわたり脱コロニー化させて、正常な腸内マイクロバイオームを減少させた。VRE投与の24時間前に、抗生物質を中止して洗い流した。生理食塩水で希釈されたVRE(約2×10CFU)を、各マウスに1回強制経口投与した。VRE投与の1時間後に開始し、動物を、合計21回の用量にわたる7日間での8時間毎の強制経口により、約1×10PFU/用量(n=10)で、本明細書で説明されている5種ファージカクテル0.2mLにより処置したか、又はPBS(n=5)により処置した。新鮮な便ペレット(1個/マウス)を毎日採取して、糞便の細菌レベルを定量した。糞便ペレットを、予め秤量した無菌エッペンドルフチューブに入れ、秤量し、0.9%生理食塩水で連続希釈し、8μg/mLのニトロフラントイン(NIT8)(EA NIT8)及び32μg/mLのエリスロマイシンを含む腸球菌用の選択培地であるEnterococcosel(商標)寒天(EA)上に蒔き、コロニー形成単位(CFU)を、48時間にわたる37℃でのインキュベーション後にカウントし、log10 CFU/g糞便の算出に使用した。
【0130】
VREの消化管コロニー形成を低減させるファージ処置の有効性を、PBS処置コントロール群と比較して、ファージカクテル処置群でのマウスからの秤量した糞便サンプル中のVREを毎日定量することにより決定した。ファージカクテルの投与により、PBSコントロール群と比較して、VREの消化管コロニー形成の全体的な負荷が、ファージ投与後に約0.5log低減され、糞便中のVRE負荷の最大の低減は6日目に達成された。VREのコロニー形成は、試験した全ての時点にて、PBSコントロールと比べてファージカクテル処置群で低い傾向があった。
【0131】
実施例7:インビトロヒト腸シミュレータモデルでの有効性
説明されているバクテリオファージの有効性を、本明細書で説明されているインビトロヒト腸シミュレータモデルで実証した。具体的には、バクテリオファージVREML237-2、VREML110-1、VREML105、VREML202-1、及びVREML85-2の5種ファージカクテルは、下記で概説するように、SHIME(登録商標)モデル(ヒト腸内微生物生態系のシミュレータ又はSHIME(登録商標))においてVREに対して有効であることが示された。Moye et al,J.Food Prot.82(8):1336-1349(2019)を参照されたい。
【0132】
3例の対象からの健康なVRE陰性ヒトドナー便を、SHIME(登録商標)モデルで使用し、このモデルは、接種材料の調製、保持時間、pH、温度設定、及びリアクタ供給組成物を使用して、上行結腸、横行結腸、及び下行結腸をシミュレートする。SHIME(登録商標)設定を、3例のドナーの個人間変動の影響を試験するために、12個の近位結腸コンパートメントを含むように適合させた。3例のVRE陰性の健常な個体からの健康なドナーの便を使用するSHIME(登録商標)システムを、健康な状態、又は腸内菌共生バランス失調の状態(即ち、7日にわたる(-8~-2日目)33.9ppmのクリンダマイシンによる処置)で、2週間にわたり安定化させた。上行結腸反応器を、-1日目に開始して5日にわたり8時間間隔で1日に2回、PBS、又はファージカクテル(6×1010PFU)で処置した。PBS又はファージカクテルの3回目及び5回目の用量の4時間後に、この反応器に、0時間(0日目)及び24時間(1日目)で、VRE(1×10CFU)を負荷した。
【0133】
健康な状態、及び腸内菌共生バランス失調の状態(即ち、下記の抗生物質処置)の両方でのファージカクテルの有効性を、PBS処置を比較した。近位結腸での経時的(各PBS又はファージカクテル処置の1時間後、及び各VRE負荷時)なVRE負荷(CFU)の定量により、有効性を算出した。ファージカクテルは、コントロール(PBS又はクリンダマイシン)と比較してVRE負荷を50%超低いレベルまで低下させるのに有効であった。3例の健康な便の内の3例において、ファージカクテルは、プラセボコントロールと比較して、負荷後21時間以内に、E.フェシウム(E.faecium)クリアランスを促進してE.フェシウム(E.faecium)存在量を83~99%超低減させた。3例の腸内菌共生バランス失調便(クリンダマイシンで処置した健康なドナー便)の内の3例において、ファージカクテルは、抗生物質処置サンプルと比較して、負荷後21時間以内に、E.フェシウム(E.faecium)クリアランスを促進してE.フェシウム(E.faecium)存在量を51~99%超低減させた。全体的な内因性腸球菌存在量への影響は限定的であり、ファージカクテル中のファージによるE.フェシウム(E.faecium)VREの特異的な抗病原性標的化を示す。全てのサンプルにおいて、ファージ処置は、短鎖脂肪酸レベルには影響を及ぼさず、及び/又は腸内菌共生バランス失調(抗生物質処置)サンプルと比較して有益なバイトマーカーのレベルを改善した。加えて、ファージカクテルは、健康なドナーの内因性微生物組成を変化させず、3例のドナーの内の2例において、カクテルは、抗生物質処置後の一次基質分解物の微生物の回復を刺激した。
【0134】
実施例8:第1/2A相臨床試験
第1相:この二重盲検プラセボ対照無作為化第1相試験では、7日間にわたり1日当たり2又は3回経口投与した、本明細書で説明されているVREファージカクテル(即ち、VREML237-2、VREML110-1、VREML105、VREML202-1、及びVREML85-2の内の2つ以上又は全て等の、本明細書で説明されているVREバクテリオファージ株の内の2種以上のバクテリオファージを含む組成物)の単回用量の約10~20例の健康な成人での安全性を評価し、プラセボコントロール群と比較して最大3ヶ月間にわたり経過観察した。例えば、約1×1010PFUのファージを、食事の少なくとも1時間前に、1日2又は3回経口投与し得る。臨床安全性評価には、臨床症状及び徴候の観察、血液パラメータの分析、並びに糞便カルプロテクチン含有量の測定が含まれる。主な目的は、バクテリオファージカクテルの一連の経口投与による安全性を決定することである。探索的な目的には、最先端の次世代シークエンシング及びバイオインフォマティクス技術を使用して、ヒト糞便マイクロバイオームへのファージカクテルの影響を決定すること、並びにファージ排出を評価することが含まれる。
【0135】
第2a相:この二重盲検プラセボ対照無作為化第2a相試験では、2週間にわたり1日当たり2又は3回経口投与した、本明細書で説明されているVREファージカクテル(即ち、VREML237-2、VREML110-1、VREML105、VREML202-1、及びVREML85-2の内の2つ以上又は全て等の、本明細書で説明されているVREバクテリオファージ株の内の2種以上のバクテリオファージを含む組成物)の安全性及び有効性を評価し、約30~50例のVREコロニー形成された成人対象において、プラセボコントロール群と比較し、最大6ヶ月間にわたり外来経過観察した。例えば、約1×1010PFUのファージを、食事の少なくとも1時間前に、1日2又は3回経口投与し得る。臨床安全性評価は、上記の第1相に関して説明されている通りである。有効性を、VRE糞便排出の定量評価により決定する。主な目的は、プラセボに対してGI管でのVREのレベルへのファージ投与の影響により評価した場合での安全性及び有効性である。探索的な目的には、ファージ排出を評価すること、及びヒト腸内マイクロバイオームへのファージカクテルの影響を決定することが含まれる。
図1
図2
【配列表】
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【国際調査報告】