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特表2024-523385多糖のフィブロインとの架橋および得られた材料の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】多糖のフィブロインとの架橋および得られた材料の使用
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/08 20060101AFI20240621BHJP
   A61L 27/20 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C08B37/08 Z
A61L27/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577802
(86)(22)【出願日】2022-06-22
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2022066989
(87)【国際公開番号】W WO2022268871
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】21181097.3
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512042433
【氏名又は名称】メルツ ファーマ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディト ゲゼルシャフト アウフ アクティーン
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ブキチェヴィッチ,ラドヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ドラベ,コリン
(72)【発明者】
【氏名】プリット,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ノイバウワー,ジェンス
【テーマコード(参考)】
4C081
4C090
【Fターム(参考)】
4C081AB36
4C081AB37
4C081AB38
4C081CC04
4C081CD06
4C081CD07
4C081CD08
4C081DA12
4C090AA02
4C090AA09
4C090BA66
4C090BA67
4C090BA68
4C090BB53
4C090BB62
4C090BD36
4C090BD37
4C090CA35
4C090DA22
(57)【要約】
発明は、1つ以上のフィブロイン部分を1つ以上の多糖部分とコンジュゲートさせるアミド結合を形成させることを含む、架橋材料を調製するための方法を提案する。発明はさらにそのような方法から得ることができる架橋材料、および、得られた架橋材料を含む注射可能組成物に関する。架橋材料はヒドロゲルおよび/またはスーパーボリュマイザーとすることができ、化粧および薬学的用途において使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋材料を調製するための方法であって、
(i)下記成分を互いに接触させること:
(A)一級アミノ残基またはその塩を含む1つ以上のフィブロイン部分、
(B)カルボン酸残基またはその塩を含む1つ以上の多糖部分、
(C)カルボン酸残基のアミノ残基との反応を達成し、よって、アミド結合を形成させる1つ以上の活性化剤、および
(D)1つ以上の溶媒;ならびに
(ii)前記カルボン酸残基の少なくともいくらかを前記一級アミノ残基の少なくともいくらかと反応させ、アミド結合を形成させ、前記1つ以上のフィブロイン部分を共有結合により、前記1つ以上の多糖部分とコンジュゲートさせること;ならびに
(iii)任意で、ステップ(ii)から得られた前記架橋材料を精製すること
を含む方法。
【請求項2】
前記1つ以上のフィブロイン部分は少なくとも5kDa、5~1000kDaの範囲、5~400kDaの範囲、10~400kDaの範囲、または100~150kDaの範囲の重量平均分子量を有し、好ましくは、前記1つ以上のフィブロイン部分は、絹フィブロイン部分、より好ましくは天然昆虫またはクモ絹フィブロイ部分に対して少なくとも80%配列相同性を有する絹フィブロイン部分である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の多糖部分はヒアルロン酸、ヘパロサン、コンドロイチン硫酸、およびカルボキシメチルセルロースを含み、または、これから構成される、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上の多糖部分は1つ以上のヒアルロン酸部分を含み、または、これから構成される、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の多糖部分は少なくとも50kDa、特に50~4000kDaの範囲の重量平均分子量を有する、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上のフィブロイン部分(A)と前記1つ以上の多糖部分(B)の間の質量比A:Bは5:1~1:20の範囲、好ましくは1:1~1:10の範囲、特に1:1~1:5の範囲である、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上の活性化剤は下記からなる群より選択される、請求項1~6のいずれかに記載の方法:
(C1)特に4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウム、その塩、および/または2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、1つ以上のトリアジンに基づく活性化剤;
(C2)特にN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド、およびそれらの2つ以上の組み合わせからなる群より選択される、1つ以上のカルボジイミド活性化剤;ならびに
(C3)それらの組み合わせ。
【請求項8】
前記活性化剤は、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムまたはその塩、特に4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリドである、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、さらに、
(a)濾過、洗浄および/または透析、特にクロスフロー濾過、ダイアフィルトレーションおよび/または全量濾過により前記架橋材料を精製するステップ(iii)を含み;
(b)ステップ(i)および(ii)は単一バッチで実施され;および/または
(c)ステップ(i)および(ii)および任意的なステップ(iii)は5~90℃、特に18~30℃の範囲の温度で実施される
ことを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、
(i)下記成分を互いに接触させること:
(A)一級アミノ残基またはその塩を含む、少なくとも5kDaの重量平均分子量を有する1つ以上の絹フィブロイン部分、
(B)カルボン酸残基またはその塩を含む、少なくとも50kDaの重量平均分子量を有する1つ以上のヒアルロン酸部分、
(C)効果を促進し、よってアミド結合を形成する1つ以上のトリアジンに基づく活性化剤であって、特に、前記活性化剤は、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムまたはその塩である、活性化剤;および
(D)1つ以上の溶媒;ならびに
(ii)前記カルボン酸残基の少なくともいくらかを前記一級アミノ残基の少なくともいくらかと反応させ、アミド結合を形成させ、前記1つ以上の絹フィブロイン部分を共有結合により、前記1つ以上のヒアルロン酸部分とコンジュゲートさせること;ならびに
(iii)任意で、ステップ(ii)から得られた前記架橋材料を精製すること
を含む、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の方法から得ることができる架橋材料。
【請求項12】
(A)少なくとも5kDaの重量平均分子量を有する1つ以上のフィブロイン部分、および
(B)少なくとも50kDaの重量平均分子量を有する1つ以上のヒアルロン酸部分
を含む、またはこれから構成される架橋材料であって、
前記1つ以上のフィブロイン部分は、前記1つ以上のヒアルロン酸部分とアミド結合を介して相互連結リンカー構造なしで、共有結合によりコンジュゲートされる、架橋材料。
【請求項13】
前記架橋材料は、さらに、それが下記を含まないことを特徴とする、請求項11または12のいずれかに記載の架橋材料:
(a)イミド基;
(b)イミン基;
(c)エポキシ基;および
(d)生体異物リンカー部分。
【請求項14】
請求項10~12のいずれかに記載の架橋材料および液体または粘性担体および任意でさらなる成分を含む注射可能組成物であって、
好ましくは、前記架橋材料はであるヒドロゲルおよび/またはスーパーボリュマイザーである、注射可能組成物。
【請求項15】
好ましくは下記を含む、顔および体再形成および若返りを含む化粧用途のための請求項14に記載の注射可能組成物の使用:しわの充填、フェイスラインの改善、乳房再建または豊胸、皮膚の若返り、臀部増大、頬骨の再造形、軟部組織増大、顔のしわの充填、眉間のしわ改善、鼻唇溝の改善、マリオネットラインの改善、頬交連の改善、唇周囲のしわの改善、カラスの足跡の改善、眉、頬骨および頬脂肪体の真皮下支持の改善、ティアトラフの改善、鼻の外観の改善、唇の増大、頬の増大、口周り領域の増大、眼窩下領域の増大、顔の非対称性の解消、下顎の輪郭の改善、顎先の増大、またはそれらの2つ以上の組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上のフィブロイン部分を1つ以上の多糖部分とコンジュゲートさせるアミド結合を形成させることを含む、架橋材料を調製するための方法に関する。発明はさらに、そのような方法から得ることができる架橋材料、および、得られた架橋材料を含む注射可能組成物に関する。架橋材料はヒドロゲルおよび/またはスーパーボリュマイザー(super-volumizer)とすることができ、化粧および薬学的用途において使用することができる。
【背景技術】
【0002】
顔および体再形成はますます関心を集めている。例えば、顔および/または体のしわの充填、皮膚の若返り、乳房再建または豊胸、または他の種類の軟部組織増大は通常、関心を集めている。外科的介入の必要性を回避するために、皮下または皮膚のより深い層内に注射することができる多くの軟部組織フィラーが開発され、または、開発中である。
【0003】
軟部組織フィラーは典型的には、ヒドロゲルなどのゲルである。そのような軟部組織フィラー、特に皮膚充填剤を使用する施術者は、典型的には、そのようなフィラーが、関心のある条件下で投与された時に毒性または免疫有害作用を引き起こさず、良好な生体適合性を示し、負担なく注射可能であり、天然材料に基づくことを望む。同時に、フィラーは注射された時などに、空間的に規定される領域内に留まり、生物系内で十分な安定性を有しなければならない。
【0004】
当技術分野において軟部組織充填のために使用される材料はヒアルロン酸(HA)である。ヒアルロン酸はそれ自体、WO2017/162676号において記載される可能性のあるフィラーとして記載されている。架橋ヒアルロン酸ヒドロゲルもまたWO2020/127407号に記載される。ヒアルロン酸は良好な生物学的許容性を有する。しかしながら、1つの重要な欠点は、ヒアルロン酸に基づくそのような材料の生分解は比較的急速であり、フィラー材料は長期的解決策に好適でないことである。それは、投与された被験体において制限された寿命を有し、しばしば、数ヶ月の所望の最低範囲より少ない。ヒアルロン酸が体内で迅速に分解される場合、粘度が望ましくなく迅速に減少し、充填効果が十分長く続かない。
【0005】
さらに、ヒアルロン酸に基づくフィラーの保存性および有効期間がしばしば制限される。未修飾ヒアルロン酸を含む保存された製品はしばしば部分的に分解する傾向がある。次いで、粘度が減少し、そのように保存された、よって、部分的に分解した生成物(その後に投与される)は、投与された被験体においてさらに短い寿命を有する。
【0006】
よって、改善された生物学的安定性を有するさらなる充填材料を提供することが必要である。フィブロイン断片およびヒアルロン酸などの他の材料成分を含む医薬組成物もまた、WO2020/247887号において記載される。そのようなブレンドは要望通りの特性を有さない。例えば、安定性がかなり制限される。得られた材料は多くの化粧用途および治療的使用に対して望まれる程度までの安定性を示さない。よって、さらに、合成架橋剤により絹フィブロインをヒアルロン酸と架橋させることにより、材料特性を改善する試みがなされた。
【0007】
充填との関連で使用される別の分子実体は絹フィブロインである。これは良好な生体適合性を有する注射可能な材料である。それはかなり良好な安定性を有するが、不十分な充填特性を有する。しかしながら、純粋フィブロインは最適ゲル化特性を有さないことが見出された。よって、絹フィブロインを弾性タンパク質、例えばエラスチンと混合することにより皮膚充填剤の特性を改善することが考えられた(US8,288,347号を参照されたい)。
【0008】
絹フィブロインを非結合ヒアルロン酸と単純に混合することにより材料特性を改善する試みがなされた。US8,288,347号は、架橋ヒアルロン酸をフィブロイン含有混合物と混合することに言及する。ここで、ヒアルロン酸およびフィブロインは非結合である。
【0009】
ポリマー鎖を連結させるリンカーによりヒアルロン酸を絹フィブロインとコンジュゲートさせることが考えられた。US2014/0315828号はマルチエポキシドまたはマルチアミン架橋剤により未修飾ヒアルロン酸およびフィブロインを架橋するためのプロセスを記載する。US2014/0315828号は、小さなサイズの粒子を含むゲルの調製に焦点を合わせる。例えば、US2014/0315828号はマルチアミンリンカーヘキサメチレンジアミン(HMDA)、特に、エポキシドに基づくリンカーブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)を教示する。また、US-A2018/0055971号は、コンジュゲーションのための、マルチアミンリンカー、例えばリジンメチルエステルHMDAならびにエポキシドリンカー、例えばBDDEの使用を教示する。WO2020/132331号は絹フィブロイン、ヒアルロン酸、およびポリエチレングリコール(PEG)を含む組織フィラーを教示し、この場合、架橋はリンカー部分を介して得られる。
【0010】
リンカーは、例えば、下記からなる群より選択することができることが教示される:ポリエポキシリンカー、ジエポキシリンカー、ポリエポキシ-PEG、ジエポキシ-PEG、ポリグリシジル-PEG、ジグリシジル-PEG、ポリアクリレートPEG、ジアクリレートPEG、1,4-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)ブタン、1,4-ビスグリシジルオキシブタン、ジビニルスルホン(DVS)、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)、UV光、グルタルアルデヒド、l,2-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)エチレン(EGDGE)、1,2,7,8-ジエポキシオクタン(DEO)、ビスカルボジイミド(BCDI)、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル(PETGE)、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート(BS)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、1-(2,3-エポキシプロピル)-2,3-エポキシシクロヘキサン、カルボジイミド、およびそれらの任意の組み合わせ。WO2015/149941号はヒアルロン酸をヘパロサン(heparosane)とBDDEリンカーを介して連結することを教示する。KR-A2020/0036664号はヒアルロン酸およびフィブロインをメタクリル基および光開始剤、例えばアリールホスフィン酸リチウムを使用して光誘起架橋することを教示する。
【0011】
得られた寸法的に安定なヒドロゲルはそのようなリンカー構造を含むが、しかしながら、望ましくない相互連結リンカー部分を含み、それらはしばしば、非天然起源である。
【0012】
しばしば、リンカー部分はそれ自体化学的に反応性であり、例えばエポキシドに基づくリンカーブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)である。そのような未反応または半反応二価リンカーの残留物は有害になり、材料の有用性を制限する可能性がある。そのような反応性リンカーの最大投与可能な含量があり、よって、安全性の理由から、それを使用することにより調製されたフィラー材料に対してもそうである。
【0013】
例えば、1つまたは両方のエポキシ基が存在し、細胞と反応する可能性がある。これは有害となり得る。投与可能な最大量は制限される。その必要のある被験体に投与され、前記被験体内で分解されると、生体異物および非分解性または分解が不十分な代謝産物が生成される可能性がある。これは一般に望ましくなく、特に化粧および薬学的用途では望ましくない。よって、そのような生体異物リンカー部分を回避することが望ましい。
【0014】
Pilusoら(European Polymer Journal, 2018, 100:77-85)は、官能化ゼラチンヒドロゲル形成のための逐次アルキン-アジド付加環化を記載する。Pilusoらは、ゼラチンは様々な部分、好ましくは小分子で官能化することができることを教示する。ヒドロゲルが形成され得る。Pilusoらは、プロピオール酸はカルボジイミド活性化剤によりコンジュゲートすることができ、その後、ゲルが二価リンカーを介して形成され得ることを教示する。よって、反応性リンカーが回避できる。しかしながら、このプロセスはかなり複雑で、いくつかの骨の折れるステップおよび毒物を必要とする。
【0015】
CN-A 111440340号は、絹フィブロイン-ヒアルロン酸ナトリウム架橋ネットワークを得るためのかなり複雑な多段階プロセスを記載する。絹フィブロインは、それをチロシナーゼおよび過酸化水素と接触させることにより部分的に消化される。ヒアルロナートは、エタンスルホン酸の誘導体、N-ヒドロキシスクシンイミドおよびカルボジイミド活性化剤と反応させられる。第3のステップで、2つのすでに反応させられた溶液が互いに合わせられる。そのようなステップは比較的骨が折れる。さらに、望ましくない反応性材料成分、例えばN-ヒドロキシスクシンイミドが使用され、残留物が、得られたヒドロゲル中に残る場合、有害効果を有する可能性がある。
【0016】
WO2019/175036号は、組織再生のための多孔性生体材料を提供する。本出願は、フィブロイン部分をホルミルヒアルロン酸と反応させることを教示する。よって、フィブロイン部分とヒアルロン酸の間の直接結合が、リンカー部分が間に導入されずに得られる。この方法の欠点は、かなり反応性のホルミルヒアルロン酸が使用されること、自然で見出されるのが希なイミン基が形成されることである。フリーズドライおよび乾燥ステップを使用する反応を含む反応が教示される。
【0017】
以上を考慮すると、低い手順努力のみを必要とし、ヒドロゲルに導入される生体異物リンカー部分を回避し、毒性試薬の残留物を最小に抑える、生物ベースの材料を調製するための効率的な方法に対して依然として満たされていない要求が存在する。アミド結合を得、ホルミル基の中間形成の必要性を回避することがさらに望ましい。顔および体再形成のための注射可能なヒドロゲル(例えば、スーパーボリュマイザーとして使用可能)を提供する方法が特に望ましい。
【0018】
驚いたことに、有益な特性を有する生物ベースの材料は、一級アミノ残基を含むフィブロイン部分の、カルボン酸残基またはその塩を含む多糖部分との、活性化を形成し、よってアミド結合を形成させる活性化剤を用いる反応を含む方法から得ることができことが見出されている。
【発明の概要】
【0019】
本発明の第1の態様は、架橋材料を調製するための方法に関し、前記方法は下記を含む:
(i)下記成分を互いに接触させること:
(A)一級アミノ残基またはその塩を含む1つ以上のフィブロイン部分、
(B)カルボン酸残基またはその塩を含む1つ以上の多糖部分、
(C)カルボン酸残基のアミノ残基との反応を達成し、よって、アミド結合を形成させる1つ以上の活性化剤、および
(D)1つ以上の溶媒;ならびに
(ii)カルボン酸残基の少なくともいくらかを一級アミノ残基の少なくともいくらかと反応させ、アミド結合を形成させ、1つ以上のフィブロイン部分を共有結合により、1つ以上の多糖部分とコンジュゲートさせること;ならびに
(iii)任意で、ステップ(ii)から得られた架橋材料を精製すること。
【0020】
そのような架橋材料は予想外に有益な特性を有することが見出されている。本発明の方法から得ることができる架橋材料は長続きする安定性を有することが見出されている。粘度は数週にわたって、高温でインキュベートした場合でも広く維持される。同様に、また、酵素分解性は、望ましく減少される。驚いたことに、従来のラットにおいて一般的に使用される生体異物リンカー構造は回避できたことが見出された。本発明の架橋材料は、アミノ酸部分および多糖部分から本質的に構成することができ、それらもまた、自然で見出すことができる。水性環境では、得られた架橋材料はヒドロゲルを形成し得る。
【0021】
また、細胞外マトリクスを模倣するために使用することができ、よって、細胞増殖および/または細胞遊走を誘導することができる。フィラー(例えば、皮膚充填剤(filer))として上手く使用することができ、それには細胞が集合することができる。本発明の架橋材料は良好なずり減粘特性を有し得る。好ましくは、それはチキソトロピー特性を有する。よって、応力がかかると好ましくは粘性が低くなる。したがって、それは非常に上手く注射することができ、一方、依然として、その標的領域では、かなり粘性である(例えば、皮下領域に投与された場合)。比較的低い押出力が必要とされる。高粘度および低押出力のゲルが得られ得る。それは任意で、スーパーボリュマイザーとして機能し得る。
【0022】
本発明のプロセスは、過度の負担なく、比較的少ない努力で実施することができる。潤滑相が見出されない。
【0023】
特許請求される方法は、先行技術において記載される手順と比べて特に有益であり、というのも、溶媒に加えてたった3つの遊離体(原料)が必要とされるにすぎないからであり、すなわち、1つ以上のフィブロイン部分、1つ以上の多糖部分、および1つ以上の活性化剤である。さらなる成分、例えばリンカーは必要とされない。
【0024】
生体異物リンカー構造、例えば、例としてBDDEの省略により、より高い量の材料が被験体に投与される、例えば、真皮下注射されることが可能になる可能性がある。さらに、投与後被験体の体内で長寿命を有することができる。
【0025】
本発明の得られ得る架橋材料は反応基の回避のために、長い有効期間および保存性を有し得る。それはまた熱的に比較的安定である。
【0026】
本発明との関連で使用されるように、「フィブロイン部分」という用語は、当技術分野で知られているフィブロインの任意の部分として最も広い意味で理解され得る。
【0027】
好ましい実施形態では、1つ以上のフィブロイン部分は少なくとも1kDa、少なくとも5kDa、少なくとも少なくとも10kDa、少なくとも100kDa、または少なくとも200kDaまたはそれ以上の重量平均分子量を有する。好ましくは、1つ以上のフィブロイン部分は、少なくとも5kDa(5000ダルトン、5キロダルトン)、より好ましくは少なくとも少なくとも10kDa(10000ダルトン)、さらにいっそう好ましくは少なくとも100kDa、特に少なくとも200kDaまたはそれ以上の総分子量(Mw)のそれぞれのポリマー部分またはポリマー部分の複合物である。1つの実施形態では、1つ以上のフィブロイン部分は10~400kDaの重量平均分子量を有する。
【0028】
好ましい実施形態では、1つ以上のフィブロイン部分は、2000kDa以下、1000kDa以下、750kDa以下、500kDa以下、250kDa以下、200kDa以下、または150kDa以下の重量平均を有する。
【0029】
好ましい実施形態では、1つ以上のフィブロイン部分は少なくとも5kDa、5~1000kDaの範囲、5~400kDaの範囲、10~400kDaの範囲、または100~150kDaの範囲の重量平均分子量を有する。好ましい実施形態では、1つ以上のフィブロイン部分は10~400kDaの範囲の重量平均分子量を有する。別の好ましい実施形態では、1つ以上のフィブロイン部分は100~150kDaの範囲の重量平均分子量を有する。
【0030】
特に好ましい実施形態では、1つ以上のフィブロイン部分の少なくとも1つ、特に1つ以上のフィブロイン部分の全ては50~400kDaの重量平均分子量を有し得る。例えば、1つ以上のフィブロイン部分は10~100kDa、50~150kDa、100~150kDa、75~200kDa、100~250kDa、または200~400kDaの重量平均分子量を有し得る。
【0031】
好ましい実施形態では、フィブロイン部分は少なくとも2つの異なる重量平均分子量を有し、各々が、一級アミノ残基またはその塩を含む。言い換えれば、フィブロイン部分はまた、異なる重量平均分子量のフィブロイン部分の混合物であってもよい。好ましい実施形態では、フィブロイン部分は少なくとも2つの異なる分子量を有し、少なくとも1つのフィブロイン部分は、好ましくは少なくとも2つのフィブロイン部分はどちらも、特に全てのフィブロイン部分は各々、5~1000kDaの範囲、5~400kDaの範囲、10~400kDaの範囲、100~150kDaの範囲、10~100kDaの範囲、50~150kDaの範囲、100~150kDaの範囲、75~200kDaの範囲、100~250kDaの範囲、または200~400kDaの範囲の分子量を有する。好ましい実施形態では、フィブロイン部分は少なくとも2つの異なる分子量を有し、少なくとも1つのフィブロイン部分は、好ましくは少なくとも2つのフィブロイン部分はどちらも、特に全てのフィブロイン部分は各々、50~400kDaの範囲の分子量を有する。
【0032】
本発明を通して使用されるように、分子量(Mw)は好ましくは、特徴付けられた種の重量平均分子量である。各フィブロイン部分は、1つ以上の全長フィブロインポリペプチドおよび/または1つ以上のフィブロインポリペプチドまたはそれらの2つ以上の複合物の1つ以上の骨格(アミド/タンパク質骨格)を有し得る。
【0033】
好ましくは、フィブロイン部分は、全長フィブロインポリペプチドの少なくとも1つの骨格を含み、特に(本質的に)1つ以上の全長フィブロインポリペプチドの1つ以上の骨格から構成される。言い換えれば、フィブロイン部分は好ましくは、天然起源のフィブロインから誘導される。
【0034】
本明細書では、アミド結合は最も広い意味で理解可能である。典型的には、アミド結合は構造-NH-CO-またはその互変異性構造を有する。フィブロイン部分と多糖部分の間で形成されたアミド結合はいずれかのキラリティーを有し得る。1つの実施形態では、それはラセミ混合物である。
【0035】
好ましい実施形態では、1つ以上のフィブロイン部分は絹フィブロイン部分、より好ましくは天然昆虫またはクモ絹フィブロイン部分に対して少なくとも80%配列相同性を有する絹フィブロイン部分である。好ましい実施形態では、フィブロインは絹フィブロインである。別の好ましい実施形態では、フィブロインは、1つ以上の天然起源の絹フィブロインポリペプチドに対して、少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにいっそう好ましくは少なくとも95%、さらにいっそう好ましくは少なくとも98%配列相同性、特に同一性を有する、ポリペプチドまたは2つ以上のポリペプチドの複合物である。絹フィブロインはまた、その切断型を含み得る。絹フィブロインはカイコ(ボンビックス・モリ(Bombyx mori))フィブロインおよび昆虫またはクモ絹フィブロインであってもよい。
【0036】
「部分」という用語は発明との関連で、任意の分子構造として最も広い意味で理解され得る。
【0037】
部分は個々の構造を含む、またはこれから構成される化合物のいずれかであってもよく、または、より大きな化学実体、例えば、例として、本発明の架橋材料の一部を形成してもよい。例えば、フィブロイン部分はフィブロインまたはフィブロインを含む化学実体であってもよい。フィブロイン部分は任意で、互いにコンジュゲートされた1を超えるフィブロイン骨格を含み得る。任意で、1つ以上のフィブロイン骨格は、1つ以上の他の構造、例えば、特に、1つ以上の多糖部分に結合し得る。「フィブロイン部分」という用語はまた、塩およびその修飾形態を含み得ることが理解されるであろう。
【0038】
本発明によれば、1つ以上のフィブロイン部分の少なくとも一部は一級アミノ残基またはその塩を含む。アミノ基は、例えば、1つ以上のフィブロイン部分のリジル残基の一部を形成することができる。好ましくは、1つ以上のフィブロイン部分の少なくとも一部は1つ以上のリジル残基を含み、これらは、任意で多糖部分に結合され得る。
【0039】
本発明との関連で使用されるように、「フィブロイン」という用語は、当技術分野で知られている任意のフィブロインとして、最も広い意味で理解され得る。フィブロインは商業的供給者(例えば、Advanced BioMatrix, USA(例えば製品番号5154-20ML);CareSilk, イタリア(例えば製品番号CSK10-1051))から入手することができ、または、自然源から、または、遺伝子操作(生物発酵、生物工学手段ともいう)またはむしろ合成工学により調製することができる。例えば、それは、ボンビックス・モリまたは、あるいは、ヤママユガ亜科、クリキュラ(Cricula)、サミ(Sami)、ゴノメタ(Gonometa)およびネフィラ(Nephila)(例えば、アメリカジョロウグモ(Nephila clavipes))種からなる群より選択される種のフィブロイン、または、前記の1つまたはその切断型に対して少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにいっそう好ましくは少なくとも95%、さらにいっそう好ましくは少なくとも98%配列相同性、特に同一性を有する相同体であってもよい。異なるフィブロインの混合物もまた使用され得ることが理解されるであろう。
【0040】
好ましい実施形態では、フィブロインは((本質的に)完全な)カイコ(ボンビックス・モリ)フィブロインである。特に好ましい実施形態では、フィブロインはボンビックス・モリから入手可能な、またはこれから得られるカイコフィブロインである。カイコフィブロインは、カイコ繭から得られ得る。カイコから絹を得るプロセスは当技術分野でよく知られている。例えば、カイコ繭は約30min(分)間、水溶液中で沸騰され得る。任意で、水溶液は、約0.02M NaCOを含み得る。繭は水または水性緩衝液ですすぐことができ、セリシンタンパク質が抽出され、抽出されたフィブロインは水性緩衝液に溶解され得る。このために使用され得る塩は、例として、臭化リチウム、チオシアン酸リチウム、硝酸カルシウムおよびそれらの混合物を含み得る。任意で、抽出されたフィブロインは約9-12M臭化リチウム溶液に溶解され得る。
【0041】
塩は任意の手段、例えば、透析により除去され得る。好ましい実施形態では、例えば、セリシンなどのカイコ繭の他の成分は(本質的に)除去されている。よって、好ましくは、カイコ繭に最初に含まれたセリシンの少なくとも50wt%、より好ましくは少なくとも75wt%、さらにいっそう好ましくは少なくとも80wt%、特に少なくとも90wt%は除去されている。絹フィブロインはI型、II型またはIII型絹フィブロインまたはそれらの2つ以上の混合物であってもよい。好ましくは、フィブロインはI型絹フィブロインであり、またはこれを含む。フィブロインは当技術分野において記載される、例えばUS2014/315828号において記載される特性を有し得る。
【0042】
あるいは、1つ以上のフィブロインポリペプチド(カイコフィブロインポリペプチドおよび完全カイコフィブロインを含む)はまた、遺伝子操作により得ることができる。遺伝子操作されたフィブロインは、例えば、細菌、昆虫細胞、クモ細胞、酵母、哺乳類細胞、トランスジェニック動物、またはトランスジェニック植物から得ることができる。
【0043】
1つ以上のフィブロイン部分は任意の条件で保存され得る。例えば、1つ以上のフィブロイン部分は、フリーザーまたは液体ガス内で、例えば-15℃~-200℃の温度範囲で保存され得る。例えば、1つ以上のフィブロイン部分はおよそ-80℃で、または、液体窒素内(すなわち、およそ-196℃)で保存され得る。1つ以上のフィブロイン部分は、乾燥状態で粉末としてまたは水溶液として(例えば、10~100mg/mlの範囲(例えば、およそ50mg/ml)の濃度で)保存され得る。前に凍結された固体フィブロインまたはフィブロイン溶液を解凍する場合、好ましくは、1つ以上のフィブロイン部分が任意で空気から保護され得る。
【0044】
本発明との関連で使用されるように、「多糖部分」という用語は、カルボン酸残基またはその塩を含む、当技術分野で知られている多糖の任意の部分として最も広い意味で理解され得る。本発明との関連で使用されるように、「多糖」という用語は、当技術分野における任意の多糖として最も広い意味で理解され得る。本発明によれば、少なくとも1つの多糖部分は、少なくとも1つのカルボン酸残基またはその塩を含む。好ましくは、1つ以上の多糖部分は、ヒドロキシ基をさらに含む。多糖は修飾され得る天然起源の多糖であってもよく、または、合成多糖であってもよい。この状況では、多糖は分枝または非分枝であってもよい。「多糖部分」という用語はまた、その塩および修飾形態を含み得ることが理解されるであろう。好ましい実施形態では、多糖は酸化されていない。
【0045】
好ましくは、少なくとも1つの多糖部分は少なくとも1kDa(1000Da)、より好ましくは少なくとも5kDa、さらにいっそう好ましくは少なくとも10kDa、さらにいっそう好ましくは少なくとも50kDa、さらにいっそう好ましくは少なくとも100kDa、さらにいっそう好ましくは少なくとも200kDa、さらにいっそう好ましくは少なくとも300kDaまたはそれ以上の重量平均分子量(Mw)のポリマー部分である。好ましくは、1つ以上の多糖部分は10~10000kDaの範囲の重量平均分子量(Mw)を有する。好ましい実施形態では、1つ以上の多糖部分は少なくとも50kDa、特に50~4000kDaの範囲の重量平均分子量を有する。より好ましくは、1つ以上の多糖部分は100~10000kDaの範囲の重量平均Mwを有する。1つの実施形態では、少なくとも1つの多糖部分は、1.0~3.3m3/kg(20℃、1013hPa、水)の固有粘度を有するポリマー部分である。
【0046】
特に好ましい実施形態では、1つ以上の多糖部分の少なくとも1つ、特に1つ以上の多糖部分の全ては1500~3500kDa(1.5および3.5MDa)の重量平均分子量を有し得る。より好ましくは、それは100~5000kDa、200~2000kDa、250~1500kDa、300~1000kDa、400~900kDaまたは500~900kDaの範囲の重量平均分子量を有し得る。
【0047】
好ましい実施形態では、1つ以上の多糖部分は1つ以上の型の糖酸部分またはその塩を含む。
【0048】
好ましい実施形態では、1つ以上の多糖部分は1つ以上の型の糖酸部分またはその塩を含み、1つ以上の型の糖酸部分は下記からなる群より選択される:
(B1)特にグルクロン酸部分、ガラクツロン酸部分、イズロン酸部分、およびそれらの2つ以上の組み合わせからなる群より選択される、1つ以上のウロン酸部分;
(B2)特にグリセリン酸部分、キシロン酸部分、グルコン酸部分、アスコルビン酸部分、およびそれらの2つ以上の組み合わせからなる群より選択される、1つ以上のアルドン酸部分;
(B3)特にノイラミン酸部分、ケトデオキシオクツロソン酸部分、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、1つ以上のウロソン酸部分;および/または
(B4)特に酒石酸部分、メソ-ガラクタル酸部分、グルカル酸部分、およびそれらの2つ以上の組み合わせからなる群より選択される、1つ以上のアルダル酸部分。
【0049】
好ましい実施形態では、1つ以上の多糖部分はウロン酸部分を含む。好ましい実施形態では、1つ以上の多糖部分はグルクロン酸部分を含む。好ましい実施形態では、1つ以上の多糖部分はD-グルクロン酸部分を含む。
【0050】
好ましい実施形態では、1つ以上の多糖部分はD-糖部分を含み、または、これから構成される。他の実施形態では、1つ以上の多糖部分はL-糖部分を含み、または、これから構成される。他の実施形態では、1つ以上の多糖部分はD-糖部分およびL-糖部分の組み合わせを含み、または、これから構成される。例えば、そのような組み合わせでは、糖部分のラセミ混合物が含まれる可能性があり、または特定の糖部分がD-糖部分であり、他がL-糖部分である。
【0051】
好ましい実施形態では、1つ以上の多糖部分は1つ以上のグリコサミノグリカン部分を含み、または、これから構成される。好ましい実施形態では、1つ以上の多糖部分はヒアルロン酸(HA)部分、ヘパロサン部分、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、およびそれらの2つ以上の混合物からなる群より選択される。好ましい実施形態では、1つ以上の多糖部分はヒアルロン酸、ヘパロサン、コンドロイチン硫酸、およびカルボキシメチルセルロースを含み、または、これから構成される。カルボン酸基を含むそのような多糖もまた市販されている(例えば、HTL Biotechnology, Javene, フランスから)。
【0052】
好ましい実施形態では、1つ以上の多糖部分は1つ以上のヒアルロン酸部分を含み、または、これから構成される。
【0053】
好ましい実施形態では、本発明の架橋材料はゲルである。好ましい実施形態では、本発明の架橋材料は多糖/フィブロインゲルである。好ましい実施形態では、本発明の架橋材料はヒアルロン酸/フィブロインゲル(HA/フィブロインゲル)である。
【0054】
ヒアルロン酸(HA、ヒアルロナート、またはヒアルロナンともいう)は当技術分野における任意のヒアルロン酸として最も広い意味で理解され得る。それはヒアルロン酸部分(ヒアルロン酸単位ともいう)を含む、好ましくは、少なくとも50mol%のヒアルロン酸部分、より好ましくは少なくとも75mol%、さらにいっそう好ましくは少なくとも80mol%、さらにいっそう好ましくは少なくとも90mol%(多糖中の糖部分の全含量に対して)のヒアルロン酸部分を含む多糖(polysaacharide)部分であり得る。ヒアルロン酸は任意で、ヒアルロン酸以外の1つ以上の糖部分を含み得る。ヒアルロン酸は任意で部分的に修飾され得る。それは、例えば、部分酸化され得、アルデヒド基を有することができ、および/または架橋され得る。そのような修飾は、例えばWO2020/127407号において記載される。
【0055】
好ましい実施形態では、ヒアルロン酸は天然では、V-アセチル-D-グルコサミンおよびD-グルクロン酸の連結された繰り返し単位からなるグリコサミノグリカンである([α-1,4-D-グルクロン酸-β-1,3-N-アセチル-D-グルコサミン])。したがって、ヒアルロン酸の繰り返し単位は例として下記であってもよい:
【化1】
ヒアルロン酸はWO2017/162676号に記載されるように使用され得る。また、架橋され、任意で修飾されたヒアルロン酸、例えばWO2020/127407号に記載されるものは、本発明との関連でヒアルロン酸として使用され得る。
【0056】
ヒアルロン酸の重量平均分子量(Mw)は本発明との関連で、好ましくは少なくとも1kDa(1000Da)、より好ましくは少なくとも5kDa、さらにいっそう好ましくは少なくとも10kDa、さらにいっそう好ましくは少なくとも50kDa、さらにいっそう好ましくは少なくとも100kDa、さらにいっそう好ましくは少なくとも200kDa、さらにいっそう好ましくは少なくとも300kDaまたはそれ以上である。ヒアルロン酸の重量平均分子量(Mw)は本発明との関連で、好ましくは10~10000kDa、より好ましくは100~10000kDa、または100~5000kDaの範囲である。より好ましい実施形態では、ヒアルロン酸は、50~4000kDaの範囲の重量平均分子量(Mw)を有する。より好ましくは、ヒアルロン酸は100~3500kDa、200~2000kDa、250~1500kDa、300~1000kDa、400~900kDaまたは500~900kDaの範囲の重量平均Mwを有する。
【0057】
特に好ましい実施形態では、1つ以上の多糖部分の少なくとも1つは1つ以上のヒアルロン酸部分であり、1つ以上のヒアルロン酸部分の少なくとも1つ、特に1つ以上のヒアルロン酸の全ては1500~3500kDaの重量平均分子量を有し得る。
【0058】
ヘパロサンは任意のヘパロサンとして最も広い意味で理解され得る。好ましい実施形態では、それは、WO2015/149941に記載されるものなどであってもよい。ヘパロサン(HEP)は多糖のグリコサミノグリカン(GAG)ファミリーに属するバイオポリマーである。
【0059】
ヒトでは、それはヘパリンおよびヘパリン硫酸の生合成における中間生成物である。ヘパロサンの構造はヒアルロン酸(HA)に非常に類似し、というのも、それは、ヒアルロン酸として同じ単糖成分糖を有し、HAとは、HAにおけるグルクロン酸(GlcUA)とN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)の間のβ-(1,3)グリコシド結合が、HEPにおけるβ-(1,4)グリコシド結合に置き換えられる、および、HAにおけるN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)とグルクロン酸(GlcUA)の間のβ-(1,4)グリコシド結合が、HEPにおけるα-(1,4)グリコシド結合に置き換えられるという点においてのみ異なるからである:
GlcUA-β-(1-4)-[GlcNAc-α-(1-4)-GlcUA-β-(1-4)]-GlcNAc HEP
【0060】
典型的には、ヘパロサンは優れた生体適合性を有する。ヘパロサンは多数の負電荷およびヒドロキシル基を有し、よって、著しく親水性であり、これは組織適合性を増加させる。さらに、ヘパロサンポリマーは、修飾後であっても、依然として、天然ヘパラン硫酸およびヘパリンポリマーにおいて起こるストレッチを含むという事実のために、ヘパロサンは典型的には非免疫原性である(例えば、抗体を誘導しない)。その上、ヘパロサンとヒアルロン酸の間の構造的類似性のために、同じ化学修飾(ヒアルロン酸について知られているアルデヒドへの酸化を含む)が官能基上で実行され得る。本発明との関連で使用されるヘパロサンポリマーの分子量(Mw)は任意の分子量を有し得る。
【0061】
好ましい実施形態では、多糖部分(成分b)、特にヒアルロン酸部分は少なくとも2つの異なる分子量を有し、各々が一級アミノ残基またはその塩を含む。言い換えれば、多糖部分はまた、異なる分子量の多糖部分の混合物であってもよい。好ましい実施形態では、多糖部分は少なくとも2つの異なる分子量を有し、少なくとも1つの多糖部分、好ましくは少なくとも2つの多糖部分、特に全ての多糖部分は各々、10~10000kDaの範囲、100~10000kDaの範囲、または100~5000kDaの範囲、100~3500kDaの範囲、200~2000kDaの範囲、250~1500kDaの範囲、300~1000kDaの範囲、400~900kDaの範囲、または500~900kDaの範囲の分子量を有する。
【0062】
好ましい実施形態では、多糖部分は少なくとも2つの異なる分子量を有し、少なくとも1つの多糖部分、好ましくは少なくとも2つの多糖部分、特に全ての多糖部分は各々、1500~3500kDaの範囲の分子量を有する。
【0063】
好ましい実施形態では、多糖部分は少なくとも2つの異なる分子量を有する少なくとも2つのヒアルロン酸部分を含み、または、これから構成され、少なくとも1つのヒアルロン酸部分は、好ましくは少なくとも2つのヒアルロン酸部分はどちらも、特に全てのヒアルロン酸部分は各々、10~10000kDaの範囲、100~10000kDaの範囲、または100~5000kDaの範囲、100~3500kDaの範囲、200~2000kDaの範囲、250~1500kDaの範囲、300~1000kDaの範囲、400~900kDaの範囲、または500~900kDaの範囲の分子量を有する。好ましい実施形態では、多糖部分は少なくとも2つの異なる分子量を有する少なくとも2つのヒアルロン酸部分を含み、または、これから構成され、少なくとも1つのヒアルロン酸部分は、好ましくは少なくとも2つのヒアルロン酸部分はどちらも、特に全てのヒアルロン酸部分は各々、1500~3500kDaの範囲の分子量を有する。
【0064】
1つ以上のフィブロイン部分(成分A)の総質量と1つ以上の多糖部分(成分B)の総質量の間の(質量)比は任意の比とすることができる。特に高い水/緩衝液吸収度が望まれる場合、多糖部分は質量過剰で使用され得る。特に高い安定性が望まれる場合、フィブロイン部分はより大きな質量過剰で使用され得る。好ましくは、1:100~100:1.1の範囲の(質量)比A:B。
【0065】
好ましい実施形態では、1つ以上のフィブロイン部分(A)と1つ以上の多糖部分(B)の間の質量比A:Bは、5:1~1:20の範囲、好ましくは1:1~1:10の範囲、特に1:1~1:5の範囲である。
【0066】
例えば、1つ以上のフィブロイン部分(A)と1つ以上の多糖部分(B)の間の質量比A:Bは1:9~2:1、1:8~1.5:1、1:7~1:1、1:6~1:1、1:5~1:1、1:4~1:1、1:3~1:1、1:2~1:1、または1:1.5~1:1の範囲であってもよい。
【0067】
好ましい実施形態では、フィブロイン部分は少なくとも2つの異なる分子量を有し、各々が一級アミノ残基またはその塩を含み、多糖部分、特にヒアルロン酸部分は少なくとも2つの異なる分子量を有し、各々が一級アミノ残基またはその塩を含む。
【0068】
好ましい実施形態では:
(a)フィブロイン部分は少なくとも2つの異なる分子量を有し、少なくとも1つのフィブロイン部分は、好ましくは少なくとも2つのフィブロイン部分はどちらも、特に全てのフィブロイン部分は各々、5~1000kDaの範囲、5~400kDaの範囲、10~400kDaの範囲、100~150kDaの範囲、10~100kDaの範囲、50~150kDaの範囲、100~150kDaの範囲、75~200kDaの範囲、100~250kDaの範囲、または200~400kDaの範囲の分子量を有し;ならびに
(b)ヒアルロン酸部分は少なくとも2つの異なる分子量を有し、少なくとも1つのヒアルロン酸部分は、好ましくは少なくとも2つのヒアルロン酸部分はどちらも、特に全てのヒアルロン酸部分は各々、10~10000kDaの範囲、100~10000kDaの範囲、または100~5000kDaの範囲、100~3500kDaの範囲、200~2000kDaの範囲、250~1500kDaの範囲、300~1000kDaの範囲、400~900kDaの範囲、または500~900kDaの範囲の分子量を有する。
【0069】
好ましい実施形態では:
(a)フィブロイン部分は少なくとも2つの異なる分子量を有し、少なくとも1つのフィブロイン部分は、好ましくは少なくとも2つのフィブロイン部分はどちらも、特に全てのフィブロイン部分は各々、5~1000kDaの範囲、50~400kDaの範囲の分子量を有し;ならびに
(b)ヒアルロン酸部分は少なくとも2つの異なる分子量を有し、少なくとも1つのヒアルロン酸部分は、好ましくは少なくとも2つのヒアルロン酸部分はどちらも、特に全てのヒアルロン酸部分は各々、1500~3500kDaの範囲の分子量を有する。
【0070】
本発明との関連で使用されるように、活性化剤はカルボン酸残基のアミノ残基との反応を達成し、よってアミド結合を形成する任意の化合物であってもよい。活性化剤は、1つ以上の多糖部分のカルボン酸残基の、1つ以上のフィブロイン部分のアミノ残基との反応を達成し、よってアミド結合を形成する化合物であることが主に意味されることが理解されるであろう。
【0071】
好ましい実施形態では、1つ以上の活性化剤は下記からなる群より選択される:
(C1)特に4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウム(DMTMM)、その塩、および/または2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン(CDMT)およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、1つ以上のトリアジンに基づく活性化剤;
(C2)特にN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、およびそれらの2つ以上の組み合わせからなる群より選択される、1つ以上のカルボジイミド活性化剤;ならびに
(C3)それらの組み合わせ。
【0072】
本発明によれば、活性化剤は典型的には、架橋材料中に共有結合により含まれない。よって、それは、典型的には任意で、本発明の架橋材料から任意の手段、例えば、例として洗浄、濾過、などにより除去できる。
【0073】
好ましい実施形態では、トリアジンに基づく活性化剤は、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウム(DMTMM)またはその塩であり、好ましくは、それは4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムであり、DMTMMの塩は好ましくは、対イオンが、美容的におよび/または薬学的に許容されるアニオン、例えば、例として、塩化物、酢酸、重炭酸(炭酸水素)、または2つ以上のアニオンの混合物である塩である。
【0074】
好ましい実施形態では、トリアジンに基づく活性化剤は、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリドである。
【0075】
好ましい実施形態では、カルボジイミド活性化剤は、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、または1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)である。
【0076】
好ましい実施形態では、活性化剤は、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウム(DMTMM)またはその塩である。好ましくは、それは4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウム塩、特に4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(CAS No.3945-69-5)である。
【0077】
DMTMMは、比較的低い、本質的に無視できる毒性を有すると考えられ、一般に使用される量で、発癌性でなく、変異原性でなく、催奇性/生殖毒性でない。よって、それは軟部組織フィラー、例えば皮膚または結合組織フィラーを調製するために特にうまく使用可能である。
【0078】
DMTMMを活性化剤として使用する場合、4-メチルモルホリン(NMM)および/または4,6-ジメトキシ-1,3-5-トリアジン-2-オール(DMT)は分解生成物(複数可)として形成され得る。
【0079】
好ましい実施形態では、方法は、さらに、濾過、洗浄および/または透析、特にクロスフロー濾過、ダイアフィルトレーションおよび/または全量濾過により架橋材料を精製するステップ(iii)を含むことを特徴とする。
【0080】
濾過はクロスフロー濾過、全量濾過、または両方の組み合わせであってもよいことが理解されるであろう。濾過は任意の手段により実施され得る。濾過との関連で、フィルタは、架橋材料を精製する、すなわち、好ましくは架橋材料を保留し、反応物、および、任意で未反応多糖および/またはフィブロインを通過させるのに好適な任意の細孔サイズを有することができる。任意で、細孔サイズは5nm~2μmの範囲であってもよく、より特定的には30nm~600nmの細孔サイズ、より特定的には80nm~300nmの細孔サイズ、特定的には5nm~60nmの細孔サイズであってもよい。フィルタは任意の材料、例えば、例としてセラミック、金属、ポリマー材料、またはそれらの組み合わせから作られてよい。
【0081】
任意で、濾過は、例えば、WO2020/030629号に記載されるものなどの動的濾過であってもよい。したがって、ステップ(iii)は任意で、架橋材料の動的濾過を含むことができ、任意で、下記ステップを含む:
a)下記ステップを含む、架橋材料を半透性フィルタディスク(複数可)が備えられた動的濾過装置に移し、ゲルを透析濾過するステップ:
i)20 1/分~500 1/分の範囲内の回転速度および0.5~6バールの範囲内の過剰圧力を適用することにより、架橋材料をあらかじめ決められた濃度まで濃縮する;または、架橋材料を直接、動的濾過装置のプロセスチャンバ中にポンピングするステップ;
ii)20 1/分~500 1/分の範囲内の回転速度および0.5~6バールの範囲内の過剰圧力を適用することにより、ダイアフィルトレーションを実施し、望まれない分子を低減させるステップ;
b)任意で非架橋材料および水を含む混合物を架橋材料に添加するステップ。
【0082】
1つの実施形態では、動的濾過装置には、1~10の半透性フィルタディスク(複数可)が備えられる。DCFでは、任意の回転速度および圧力、例えば、例として、20 1/分~500 1/分の範囲内の回転速度および0.5~3バールの範囲内の圧力が使用され得る。DCFでは、任意の濃度、例えば、例として10~70mg/gが使用され得る。
【0083】
任意で、1つ以上のさらなる成分(例えば、1つ以上の局所麻酔薬(例えば、以下に提示されるように、例えば、例として、リドカイン)、1つ以上の細胞増殖因子、1つ以上の染料、およびそれらの2つ以上の組み合わせ)が、架橋材料を濾過、洗浄および/または透析により精製するステップ(iii)を実施する前、中、後に添加され得る。
【0084】
ステップ(iii)は、このために、好適な任意の時刻に対して実施され得る。任意で、ステップ(ii)は、1分~1週以上、2分~5日、3分~4日、5分~72時間、5分~24時間、10分~12時間、30分~6時間、1時間~5時間、または2~4時間の間実施され得る。
【0085】
ステップ(iii)は、このために好適な任意の温度で、例えば、例として、0℃~100℃、4℃~95℃、10℃~70℃、15℃~30℃、18~25℃、20℃~70℃、20℃~40℃、または60℃~70℃で実施され得る。
【0086】
本発明の一実施形態では、クロスフロー濾過(クロス-フロー濾過ともいう)は動的クロスフロー濾過(DCF)である。よって、一実施形態では、方法はさらに、DCFにより架橋材料を精製するステップ(iii)を含むことを特徴とし得る。これは以下で例示される。任意で、DCFはWO2020/030629号に記載されるようなものであってもよい。
【0087】
好ましい実施形態では、方法は、さらに、ステップ(i)および(ii)は単一バッチで実施されることを特徴とする。
【0088】
好ましい実施形態では、方法は、さらに、ステップ(i)は5~90℃、特に18~30℃の範囲の温度で、さらに特に周囲条件(例えば、しばしば18~25℃)で実施されることを特徴とする。好ましい実施形態では、方法は、さらに、ステップ(ii)は5~90℃、特に18~30℃の範囲の温度で、さらに特に周囲条件(例えば、しばしば18~25℃)で実施されることを特徴とする。好ましい実施形態では、方法は、さらに、ステップ(iii)は、存在する限り、5~90℃、特に18~30℃の範囲の温度で、さらに特に周囲条件(例えば、しばしば18~25℃)で実施されることを特徴とする。
【0089】
好ましい実施形態では、方法は、さらに、ステップ(i)および(ii)および任意的なステップ(iii)は5~90℃、特に18~30℃の範囲の温度で実施されることを特徴とする。好ましい実施形態では、これらのステップは周囲条件(例えば、しばしば18~25℃)で実施される。例えば、ステップ(i)および/または(ii)および/またはステップ(iii)はおよそ18℃、およそ19℃、およそ20℃、およそ21℃、およそ22℃、およそ23℃、およそ24℃、およそ25℃、およそ26℃、およそ27℃、およそ28℃、およそ29℃、またはおよそ30℃の温度で実施され得る。
【0090】
ステップ(i)および(ii)および任意的なステップ(iii)は任意の圧力で実施され得る。例えば、圧力は周囲圧力であり得る(例えば、しばしばおよそ970~1100hPa外圧)。
【0091】
成分を互いに接触させるステップ(i)は任意の手段により実施され得る。好ましい実施形態では、方法は、さらに、ステップ(i)は、成分、すなわち、1つ以上のフィブロイン部分(成分Aとして)、1つ以上の多糖部分(成分Bとして)、1つ以上の活性化剤(成分Cとして)、および1つ以上の溶媒(成分Dとして)、および任意的な1つ以上のさらなる成分の混合を含むことを特徴とする。そのような混合は任意の手段により、例えば、例として、撹拌および/または振盪により実施され得る。
【0092】
好ましい実施形態では、1つ以上の多糖部分(成分Bとして)および1つ以上の活性化剤(成分Cとして)は1つ以上の溶媒(成分Dとして)に、第1のステップにおいて1つ以上のフィブロイン部分(成分Aとして)なしで溶解され、インキュベートされる。これは、多糖部分のカルボン酸基を活性化させることができる。インキュベーションは、そのような目的のために十分な任意の時間の間実施され得る。好ましい実施形態では、第1のサブステップで、1つ以上の多糖部分は1つ以上の溶媒に溶解され、その後のサブステップで、1つ以上の活性化剤が添加され、一緒に活性化ステップを表す。
【0093】
例として、そのような活性化ステップは5分~24時間、10分~12時間、30分~6時間、45分~5時間、45分~4時間、または1~3時間の間実施され得る。例として、そのような活性化ステップは任意の温度で、例えば、例として、0℃~100℃で、4℃~95℃で、10℃~70℃で、15℃~30℃で、18~25℃で、20℃~70℃で、20℃~40℃で、または60℃~70℃で、特に周囲温度(例えば、しばしば18~25℃)で実施され得る。例えば、インキュベーションは1分~24時間、特に30分~2時間または1~3時間、10~25℃、特に18~22℃の温度であってもよい。そのようなインキュベーション後、1つ以上のフィブロイン部分(成分Aとして)が添加され得る。これはさらにインキュベートすることができ、本発明の方法のステップ(ii)が実施される。ステップ(ii)は、任意の好適な溶媒、例えば水または水性緩衝液を使用して実施され得る。任意で、溶液は反応ステップ中、撹拌され得る。
【0094】
したがって、好ましい実施形態では、方法のステップ(i)は下記サブステップを含む:
(ia)下記成分を互いに接触させるステップであって:
(B)カルボン酸残基またはその塩を含む1つ以上の多糖部分、
(C)カルボン酸残基のアミノ残基との反応を達成し、よって、アミド結合を形成させる1つ以上の活性化剤、および
(D)1つ以上の溶媒、
好ましくは、1つ以上の多糖部分(B)が1つ以上の溶媒(D)に最初に溶解され、その後、1つ以上の活性化剤(C)が添加される、ステップ;
(ib)カルボン酸残基の少なくともいくらかを1つ以上の活性化剤と反応させ、よって、1つ以上の活性化多糖部分(多糖-活性化剤コンジュゲートともいう)を形成させるステップ;ならびに
(ic)サブステップ(ib)の活性化多糖部分に下記を添加するステップ:
(A)一級アミノ残基またはその塩を含む1つ以上のフィブロイン部分。
【0095】
別の好ましい実施形態では、成分A、B、CおよびDならびに任意で1つ以上のさらなる成分が全て一度に混合される。
【0096】
ステップ(ii)は、任意の好適な反応時間の間実施され得る。例えば、反応時間は1分~7日、好ましくは5分~2日、より好ましくは10分~24時間の範囲であってもよい。例えば、反応時間は15分~24時間、または30分~12時間、または45分~6時間、または1時間~4時間の範囲であってもよい。
【0097】
好ましい実施形態では、方法は、下記を含む:
(i)下記成分を互いに接触させること:
(A)一級アミノ残基またはその塩を含む、少なくとも5kDaの重量平均分子量を有する1つ以上の絹フィブロイン部分、
(B)カルボン酸残基またはその塩を含む、少なくとも50kDaの重量平均分子量を有する1つ以上のヒアルロン酸部分、
(C)カルボン酸残基のアミノ残基との反応を達成し、よって、アミド結合を形成させる、1つ以上のトリアジンに基づく活性化剤(特に、活性化剤は、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムまたはその塩である);および
(D)1つ以上の溶媒;ならびに
(ii)カルボン酸残基の少なくともいくらかを一級アミノ残基の少なくともいくらかと反応させ、アミド結合を形成させ、1つ以上の絹フィブロイン部分を共有結合により、1つ以上のヒアルロン酸部分とコンジュゲートさせること;ならびに
(iii)任意で、ステップ(ii)から得られた架橋材料を精製すること。
【0098】
本発明の方法のために成分Dとして使用可能な任意の溶媒が使用され得る。好ましい実施形態では、極性溶媒が使用される。好ましい実施形態では、プロトン性溶媒が使用される。好ましい実施形態では、プロトン性極性溶媒が使用される。
【0099】
好ましい実施形態では、成分Dとして使用可能な溶媒は、溶媒の総質量に対して、50wt%を超える、少なくとも60wt%、少なくとも70wt%、少なくとも80wt%、少なくとも90wt%、少なくとも95wt%、または実に100wt%の、下記からなる群より選択される1つ以上の成分を含む:
水;
1つ以上のアルコール、好ましくは1つ以上のC-C-アルコール、より好ましくは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール(1-ブタノール)、sec-ブタノール(2-ブタノール)イソブタノール、(2-メチルプロパン-1-オール)、tert-ブタノール(2-メチルプロパノール)、ペンタン-1-オール、2-メチルブタン-1-オール、3-メチルブタン-1-オール、2,2-ジメチルプロパン-1-オール、ペンタン-2-オール、3-メチルブタン-2-オール、ペンタン-3-オール、および/または2-メチルブタン-2-オール、およびその2つ以上の組み合わせからなる群より選択される1つ以上のC-C-アルコール、特にメタノールおよび/またはエタノール;
1つ以上の一級アミン、特に特に1つ以上のC-C-アミン;
1つ以上の炭酸、好ましくは、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸からなる群より選択される1つ以上のC-C-炭酸、特にギ酸および/または酢酸;
1つ以上の一級または二級アミド、好ましくは1つ以上のC-C-アミド、特にホルムアミド;
1つ以上のスルホキシド、好ましくは1つ以上のC-C-アミド、特にジメチルスルホキシド(DMSO);
およびその2つ以上の組み合わせ。
【0100】
好ましい実施形態では、水性溶媒、すなわち、溶媒の総質量に対して、重量で、50wt%を超える、少なくとも60wt%、少なくとも70wt%、少なくとも80wt%、少なくとも90wt%、少なくとも95wt%、または実に100wt%の含水量を含む溶媒が使用される。本発明の1つの実施形態では、水性緩衝液は、水に加えて、下記からなる群より選択される1つ以上の成分を含む:1つ以上のアルコール(特に1つ以上のC-C-アルコール、例えば、例として、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール(1-ブタノール)、sec-ブタノール(2-ブタノール)イソブタノール、(2-メチル-プロパン-1-オール)、tert-ブタノール(2-メチルプロパノール)、ペンタン-1-オール、2-メチルブタン-1-オール、3-メチルブタン-1-オール、2,2-ジメチルプロパン-1-オール、ペンタン-2-オール、3-メチルブタン-2-オール、ペンタン-3-オール、および/または2-メチルブタン-2-オール)、1つ以上の一級アミン(特に1つ以上のC-C-アミン)、1つ以上の炭酸(特に1つ以上のC-C-炭酸、例えば、例として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸)、1つ以上の一級または二級アミド(特に1つ以上のC-C-アミド、例えば、例として、ホルムアミド)、1つ以上のスルホキシド(特に1つ以上のC-C-アミド、例えば、例として、ジメチルスルホキシド(DMSO))、1つ以上の無機または有機カチオン(特に、1000Da未満の分子量の1つ以上の無機または有機カチオン、特にアルカリカチオンまたはアルカリ土類カチオン、他の金属カチオン、プロトン、アンモニウムカチオン、など)、1つ以上の無機または有機アニオン(特に、1000Da未満の分子量の1つ以上の無機または有機アニオン、特に塩素、硫酸、など)、1つ以上のケイ酸塩、およびその2つ以上の組み合わせ。
【0101】
好ましい実施形態では、水または水性緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、Tris緩衝液、ホウ酸塩緩衝液、酢酸-緩衝バッファー、など)が溶媒として使用される。好ましい実施形態では、水アルコール溶媒、例えば、例として、水とエタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、および/またはペンタノールの混合物が使用される。好ましい実施形態では、水が溶媒Dとして使用される。
【0102】
水は本明細書では、最も広い意味で理解され得る。好ましくは、水は脱イオン水、蒸留水、または水道水、特に脱イオン水または蒸留水である。
【0103】
以上で示されるように、好ましい実施形態では、方法のステップ(i)は下記サブステップを含む:
(ia)下記成分を互いに接触させるステップであって:
(B)カルボン酸残基またはその塩を含む、少なくとも50kDaの重量平均分子量を有する1つ以上のヒアルロン酸部分
(C)カルボン酸残基のアミノ残基との反応を達成し、よって、アミド結合を形成させる、1つ以上のトリアジンに基づく活性化剤(特に、活性化剤は、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムまたはその塩である);
(D)1つ以上の溶媒、
好ましくは、1つ以上のヒアルロン酸部分(B)が1つ以上の溶媒(D)に最初に溶解され、その後、1つ以上のトリアジンに基づく活性化剤(C)が添加される、ステップ;
(ib)カルボン酸残基の少なくともいくらかを1つ以上のトリアジンに基づく活性化剤と反応させ、よって、1つ以上の活性化ヒアルロン酸部分(ヒアルロン酸-活性化剤コンジュゲートともいう)を形成させるステップ;ならびに
(ic)サブステップ(ib)の活性化ヒアルロン酸部分に下記を添加するステップ:
(A)一級アミノ残基またはその塩を含む、少なくとも5kDaの重量平均分子量を有する1つ以上の絹フィブロイン部分。
【0104】
本発明の一実施形態では、発明の方法は下記(好ましくは逐次)ステップから構成される:
多糖(好ましくはヒアルロン酸、特にヒアルロン酸ナトリウム塩)の水または緩衝液での溶解;
活性化剤(好ましくはDMTMM)の多糖溶液への添加;
活性化(好ましくは数時間の間、例えば18~22℃の温度で);
活性化多糖へのフィブロイン溶液の添加;
撹拌および架橋材料の形成(好ましくは数時間の間、例えば、18~22℃の温度で);
架橋材料の精製(例えば18~22℃の温度での、例えば、濾過および/または透析による、例えば、DMTMMおよびその分解生成物の除去);
任意で、麻酔薬(例えば、リドカイン)の添加;ならびに
任意で、滅菌。
【0105】
本発明のさらなる態様は、本発明の方法から得ることができる架橋材料に関する。
【0106】
本発明の方法との関連で提示された定義および好ましい実施形態は、変更すべきところは変更して、本発明の架橋材料に提供されることが理解されるであろう。
【0107】
本発明の一実施形態では、架橋材料は、活性化剤としてDMTMMを使用することにより調製された。本発明の一実施形態では、架橋材料は、特に最終精製前では、DMTMM、4-メチルモルホリン(NMM)、および/または4,6-ジメトキシ-1,3-5-トリアジン-2-オール(DMT)を含む。本発明の一実施形態では、架橋材料は、特に最終精製前では、NMMおよび/またはDMTを含む。本発明の一実施形態では、架橋材料は、特に最終精製前では、架橋材料(ゲル)の総重量に対して、最大0.1重量%までの、好ましくは0.01~1000ppm、0.1~100ppm、または1~10ppmのNMMおよび/またはDMTを含む。
【0108】
本発明のさらなる態様は、下記を含む、またはこれから構成される架橋材料に関し:
(A)少なくとも5kDaの重量平均分子量を有する1つ以上のフィブロイン部分、および
(B)少なくとも50kDaの重量平均分子量を有する1つ以上のヒアルロン酸部分、
1つ以上のフィブロイン部分は、アミド結合を介して相互連結リンカー構造なしで、1つ以上のヒアルロン酸部分と共有結合によりコンジュゲートされる。
【0109】
本明細書では、「相互連結リンカー構造なしで」という用語は、フィブロイン部分または多糖部分(例えば、ヒアルロン酸部分)に由来しない(これらに存在しない、ともいう)さらなる化学部分が、アミド結合を介して、1つ以上のフィブロイン部分を共有結合により1つ以上のヒアルロン酸部分とコンジュゲートさせる化学構造に導入されないという点で最も広い意味で理解され得る。言い換えれば、アミド結合は好ましくは、フィブロイン(例えば、リシニル側鎖)に由来する窒素原子の包含および多糖部分(例えば、ヒアルロン酸部分)に由来する炭素原子の包含から形成される。
【0110】
好ましい実施形態では、架橋材料は、さらに、それはイミド基を含まないことを特徴とする。好ましい実施形態では、架橋材料は、さらに、それはイミン基を含まないことを特徴とする。好ましい実施形態では、架橋材料は、さらに、それはエポキシ基を含まないことを特徴とする。好ましい実施形態では、架橋材料は、さらに、それは生体異物リンカー部分基を含まないことを特徴とする。
【0111】
好ましい実施形態では、架橋材料は、さらに、それは、1つ以上のフィブロイン部分を1つ以上の多糖部分と相互連結させる、下記を含まないことを特徴とする:
(a)イミド基;
(b)イミン基;
(c)エポキシ基;および/または
(d)生体異物リンカー部分。
【0112】
好ましい実施形態では、架橋材料は、さらに、それは下記を含まないことを特徴とする:
(a)イミド基;
(b)イミン基;
(c)エポキシ基;および
(d)生体異物リンカー部分。
【0113】
本発明のさらなる態様は、本発明の架橋材料および液体または粘性担体および任意でさらなる成分を含む注射可能組成物に関し、好ましくは、架橋材料はヒドロゲルおよび/またはスーパーボリュマイザーである。
【0114】
本発明の方法および架橋材料との関連で提示された定義および好ましい実施形態は、変更すべきところは変更して、本発明の注射可能組成物に適用されることが理解されるであろう。
【0115】
好ましい実施形態では、本発明の架橋材料および/または注射可能組成物は軟部組織フィラー、特に皮膚充填剤または結合組織フィラーとして使用可能である。
【0116】
注射可能組成物に含まれる本発明による液体または粘性担体は任意の注射可能な担体であってもよい。典型的には、液体または粘性担体は薬学的におよび/または美容的に許容される担体、よって、本発明の意味で哺乳類に投与されると、哺乳類、特にヒトに対して無毒性である担体である。液体または粘性担体は好ましくは、1つ以上の溶媒、例えば、例として、水、水性緩衝液(例えば、生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノール、植物油、パラフィン油またはそれらの組み合わせを含み、または、これから構成され得る。より好ましくは、液体または粘性担体は、非発熱性等張緩衝液、より特定的には生理的食塩水または緩衝生理的食塩水を含み、またはこれから構成される。
【0117】
任意で存在するさらなる成分は任意の成分であってもよい。例えば、そのようなさらなる成分は1つ以上の局所麻酔薬、1つ以上の細胞増殖因子、1つ以上の染料、およびそれらの2つ以上の組み合わせからなる群より選択され得る。
【0118】
そのようなさらなる成分は任意の時間に、例えば架橋材料を精製する前、中、または後に添加され得る。例えば、1つ以上のさらなる成分は精製ステップ(iii)の実施中に添加され得る。本発明の別の実施形態では、1つ以上のさらなる成分は、調製された、任意で精製された架橋材料に添加され得る。
【0119】
局所麻酔薬は個体への注射をより快適なものにすることができる。細胞増殖因子は本発明の投与された架橋材料への細胞侵入を改善することができる。染料は注射薬の局在化を改善することができ(例えば、フルオレセインまたはローダミンのような薬学的に許容される蛍光染料)、または、そうでなければ白っぽい架橋材料の不可視性を改善することができる(例えば、それは肌色にすることによる)。任意の他の薬学的に活性な化合物もまた、添加され得る。ひいては、本発明の架橋材料はまた、投与のための遅延形態として機能することができる。
【0120】
本明細書での使用に好適な局所麻酔薬としては、下記が挙げられるが、それらに限定されない:アムブカイン(ambucaine)、アモラノン、アミロカイン、ベノキシネート、ベンゾカイン、ベトキシカイン(betoxycaine)、ビフェナミン、ブピバカイン、ブタカイン、ブタムベン、ブタニリカイン、ブテタミン、ブトキシカイン(butoxycaine)、カルチカイン、クロロプロカイン、コカエチレン、コカイン、シクロメチカイン、ジブカイン、ジメチソキン(dimethysoquin)、ジメトカイン、ジペロドン、ジシクロニン(dycyclonine)、エクゴニジン、エクゴニン、塩化エチル、エチドカイン、β-ユーカイン、ユウプロシン、フェナルコミン(fenalcomine)、フォルモカイン(formocaine)、ヘキシルカイン、ヒドロキシテトラカイン、p-アミノ安息香酸イソブチル、ロイシノカイン(leucinocaine)メシレート、レボキサドロール、リドカイン、メピバカイン、メプリルカイン、メタブトキシカイン、塩化メチル、ミルテカイン(myrtecaine)、ネパイン、オクタカイン、オルトカイン、オキセサゼイン、パレトキシカイン(parethoxycaine)、フェナカイン、フェノール、ピペロカイン、ピリドカイン(piridocaine)、ポリドカノール、プラモキシン、プリロカイン、プロカイン、プロパノカイン(propanocaine)、プロパラカイン、プロピポカイン、プロポキシカイン、シュードコカイン(psuedococaine)、ピロカイン、ロピバカイン、サリチルアルコール、テトラカイン、トリカイン、トリメカイン、ゾラミン、およびそれらの塩。言及した麻酔薬の2つ以上の組み合わせ、例えば、リドカインとプリロカインのような他の「カイン」-麻酔薬(複数可)の組み合わせもまた、本明細書で使用され得る。
【0121】
本発明の架橋材料および注射可能組成物の使用目的によって、異なるパッケージングで提供することができる。それはこのために好適な任意の条件で、例えば、例として、周囲温度で(例えば、18~30℃、好ましくは18~25℃)で、冷蔵庫で(例えば、0~15℃、好ましくは3~10℃で)、フリーザーで(例えば、-30~0℃、好ましくは-25~-10℃で)、ディープフリーザーで(例えば、-100~-300℃、好ましくは-90~-55℃)、液体窒素上で、ドライアイス上で、またはさらに1つ以上の液体希ガス上で保存され得る。例えば、それはバイアル内、シリンジ内で提供され得る。それは注射により被験体に投与され得る(例えば、シリンジまたは点滴により)。それは乾燥状態で、水素として、他の非水溶媒を含むゲルとして、および/または懸濁液、エマルジョン、コロイドもしくは溶液として保存され得る。
【0122】
投与は、任意の手段により実施され得る。好ましい実施形態では、投与は針を介する投与である。好ましい実施形態では、投与は、シリンジを介する投与、特にシリンジを介する皮内または真皮下投与である。投与は手動投与、機械ポンプを使用した投与、または自動化投与であってもよい。例えば、Syringe Oneシステムが投与に使用され得る。
【0123】
本発明の架橋材料ならびに本発明の注射可能組成物が目的に応じて使用され得る。任意で、本発明の架橋材料ならびに本発明の注射可能組成物が、化粧用途および/または治療的使用のために使用され得る。注射可能組成物はフィラー、特に軟部組織フィラー、例えば、例として、軟部-組織フィラー、特に皮膚充填剤または結合組織フィラーであってもよい。
【0124】
本明細書では、「フィラー」という用語は、空洞を充填するため、または、軟部組織フィラーとして機能するように使用することができる任意の作用物質として最も広い意味で理解され得、好ましくは軟部組織フィラーである。軟部組織フィラーは、軟部組織欠損の領域に体積を付加するように設計された材料として最も広い意味で理解され得る。フィラーは、任意の場所に、任意の型の注射により投与することができ、化粧/麻酔用途において、ならびに、治療目的のために使用するのに好適であり得る。フィラーは一般に、皮下で体積を付加し、置き換え、または増大させる任意の組成物であってもよく、例えば、滑らかになった皮膚しわ、増大した唇、改善された皮膚外観、または傷跡の治療につながる。それは一般に、真皮領域において、例えば、表皮下または皮下組織上で使用され、そのようなものとして、皮下に、皮下組織にまたは皮内に、またはいくつかの組み合わせで注射され得る。
【0125】
本発明の意味内の注射可能組成物は通常条件下、標準圧下で、シリンジにより投与され(これから分注され)得る。その上、本発明のフィラー組成物は好ましくは(本質的に)無菌である。好ましくは、注射可能組成物は、哺乳類、特にヒトへの注射に好適である。
【0126】
本発明はまた、本発明による注射可能組成物の、フィラー、例えば軟部組織フィラー、特に皮膚充填剤または結合組織フィラーとしての使用に関する。それはスーパーボリュマイザーとして使用され得る。この状況では、それは、ヒドロゲルとして使用され得る。
【0127】
本発明はまた、化粧用途のための本発明による注射可能組成物の使用に関する。より好ましくは、本発明はまた、顔および体再形成および若返りを含む化粧用途のための、本発明による注射可能組成物の使用に関する。
【0128】
したがって、本発明のさらなる態様は、好ましくは下記を含む、顔および体再形成および若返りを含む化粧用途のための本発明の注射可能組成物の使用に関する:しわの充填、フェイスラインの改善、乳房再建または豊胸、皮膚の若返り、臀部増大、頬骨の再造形、軟部組織増大、顔のしわの充填、眉間のしわ改善、鼻唇溝の改善、マリオネットラインの改善、頬交連の改善、唇周囲のしわの改善、カラスの足跡の改善、眉、頬骨および頬脂肪体の真皮下支持の改善、ティアトラフの改善、鼻の外観の改善、唇の増大、頬の増大、口周り領域の増大、眼窩下領域の増大、顔の非対称性の解消、下顎の輪郭の改善、顎先の増大、またはそれらの2つ以上の組み合わせ。
【0129】
本発明の方法、架橋材料および注射可能組成物との関連で提示された定義および好ましい実施形態は、変更すべきところは変更して、本発明の使用に適用されることが理解されるであろう。
【0130】
好ましい実施形態では、本発明は、顔のシワを低減させるための本発明の注射可能組成物の使用に関する。
【0131】
一実施形態では、本発明の使用は化粧用途、好ましくは非治療的使用であってもよい。本発明の使用は、化粧品、化粧専門家またはヘルスケア専門家により実施され得る。
【0132】
好ましい実施形態では、本発明の注射可能組成物の使用は肌質の改善、小じわの処置、深いしわの処置または体積回復のため、または、豊胸または殿部増大のためのスーパーボリューマイジングフィラーとしてである。
【0133】
この使用は治療および/または化粧用途であってもよい。よって、言い換えれば、本発明は、好ましくは下記を含む、顔および体再形成および若返りのための方法において使用するための本発明による注射可能組成物に関する:しわの充填、フェイスラインの改善、乳房再建または豊胸、皮膚の若返り、臀部増大、頬骨の再造形、軟部組織増大、顔のしわの充填、眉間のしわ改善、鼻唇溝の改善、マリオネットラインの改善、頬交連の改善、唇周囲のしわの改善、カラスの足跡の改善、眉、頬骨および頬脂肪体の真皮下支持の改善、ティアトラフの改善、鼻の外観の改善、唇の増大、頬の増大、口周り領域の増大、眼窩下領域の増大、顔の非対称性の解消、下顎の輪郭の改善、顎先の増大、またはそれらの2つ以上の組み合わせ。
【0134】
本発明はまた、顔および体再形成および若返りの方法に関し(好ましくは、上記特定用途を含む)、前記方法は、本発明による注射可能組成物を投与することを含む。
【0135】
言い換えれば、本発明はまた、好ましくは下記を含む、顔および体再形成および若返りのための方法に関し:しわの充填、フェイスラインの改善、乳房再建または豊胸、皮膚の若返り、臀部増大、頬骨の再造形、軟部組織増大、顔のしわの充填、眉間のしわ改善、鼻唇溝の改善、マリオネットラインの改善、頬交連の改善、唇周囲のしわの改善、カラスの足跡の改善、眉、頬骨および頬脂肪体の真皮下支持の改善、ティアトラフの改善、鼻の外観の改善、唇の増大、頬の増大、口周り領域の増大、眼窩下領域の増大、顔の非対称性の解消、下顎の輪郭の改善、顎先の増大、またはそれらの2つ以上の組み合わせ、十分な量の、本発明による注射可能組成物がその必要のある被験体に投与される。
【0136】
本明細書では、被験体(個体ともいう)は任意の動物、典型的には哺乳類、好ましくは家畜哺乳類またはヒトであってもよい。特定的には好ましくは、個体はヒトである。処置されるヒトはまた、彼/彼女の健康状態に関係なく、患者と指定することができる。
【0137】
再形成は美容目的のために実施され得、または、例えば、例として、事故または外科的介入により引き起こされた組織損失後に実施され得る。例えば、事故により顔の一部が損傷され得る。他方、頬骨は頬骨領域を皮下充填することにより増強され得る。乳房またはその一部は外科的に除去され得る。他方、乳房再建または豊胸はまた、美的理由を有する可能性がある。
【0138】
好ましくは、本発明の注射可能組成物は、個体に注射により、例えば皮下または皮内注射により有効量で投与され得る。好ましい実施形態では、この使用との関連で、注射可能組成物はフィラーである。より好ましい実施形態では、この使用との関連で、注射可能組成物はフィラー、特にスーパーボリュマイザーであり、使用は、対象となる組織における、特に皮下または皮内での本発明の架橋材料を含む組成物の投与を含む。例えば、注射可能組成物は、連続穿刺技術を用いて、皮内または皮下注射され得る。有効量は有益または所望の化粧(美的)または治療結果を達成するのに十分な(注射可能な)軟部組織フィラー組成物の量を示す。
【0139】
特に好ましい実施形態では、この使用との関連で、注射可能組成物はスーパーボリュマイザー、特に軟部組織フィラーであってもよいフィラーであり、使用は、本発明の架橋材料を含む組成物の皮下または皮内投与を含む。これらの使用について、本発明による架橋材料は特に有益であり、というのも架橋材料は水性環境、例えば体液において、かなり安定であり、その構造および特性のために細胞の侵入が可能であるからである。
【0140】
本発明のさらなる態様は、その必要のある個体の組織を再生するための方法において使用するための本発明による架橋材料または注射可能組成物に関する。
【0141】
言い換えれば、本発明はまた、その必要のある個体の組織を再生するための方法に関し、前記方法は、本発明による架橋材料または注射可能組成物のその必要のある個体への投与を含む。その必要のある個体の組織の再生は、治療および/または美容目的のために実施され得る。
【0142】
上記架橋材料、方法および注射可能組成物との関連で提示された定義および好ましい実施形態は変更すべきところは変更して、個体の組織を再生する使用に適用されることが理解されるであろう。
【0143】
再生される組織は任意の組織であってもよい。1つの好ましい実施形態では、組織は軟部組織である。より好ましい実施形態では、組織は、皮膚組織(真皮の組織および皮下組織を含む)および結合組織からなる群より選択される軟部組織である。ひいては、方法は、以上で記載される使用を含む再形成および若返りのために使用され得る。本発明の別の好ましい実施形態では、組織は関節(結合部)組織である。任意で、この使用のために、架橋材料は、それぞれの組織の増殖を刺激する1つ以上の細胞増殖因子を含み得る。
【0144】
別の好ましい実施形態では、組織は骨組織である。ひいては、本発明の架橋材料は、骨組織が増殖することが意図される場所で、例えば、例として、骨折の間隙において、または、骨の伸長のために投与され得る。任意で、この使用のために、架橋材料は、骨細胞増殖を刺激する1つ以上の細胞増殖因子を含み得る。
【0145】
特定用途によって、当業者は本発明による微粒子架橋材料を使用する、かまたは、本発明による架橋材料のブロックを使用する。
【0146】
上記治療および化粧用途のために、本発明による架橋材料は特に有益であり、というのも架橋材料は水性環境、例えば体液において、かなり安定であり、その架橋構造および表面特性のために細胞の侵入が可能であるからである。
【0147】
以上で示されるように、本発明の架橋材料は、1つ以上のフィブロイン部分を1つ以上の多糖部分とコンジュゲートさせた時に得られる発明材料により得られる。このコンジュゲートはそのようなものとして、また、予想外に有益な特性を有する。
【0148】
本明細書では、「およそ」および「約」という用語は、個々の数値の+/-10%までの逸脱を含む範囲と理解することができる。特定の値はまた、明確に開示されることが理解されるであろう。
【0149】
範囲は、全四捨五入限界を包含する、普通に四捨五入された値として提供される数値を包含することがさらに理解されるであろう。例えば、「1mg」の範囲は0.50~1.49mgの範囲を包含する。
【0150】
しかしながら、本発明の数値はまた、1つ以上の桁のより詳細な値をより詳細に開示する。したがって、例えば、「1mg」はまた、「1.0mg」の特定の開示を含み得る。
【0151】
実施例および特許請求の範囲は、本発明の実施形態を示す。
【0152】
実施例
材料および方法
原料
ヒアルロン酸、異なる固有粘度(HTL Biotechnology, Javene,フランス);
カイコ由来のフィブロインの5%水溶液(CareSilk s.r.l.s., Lecce,イタリア);
4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMTMM)(Sigma Aldrich, Darmstadt,ドイツ);
水(脱塩水のための内部システム);
リドカイン塩酸塩(Albemarle Corp., Charlotte,USA)
他に特定されない限り、合成および測定は全て、周囲条件、すなわち、周囲温度(例えば18~25℃、特におよそ20℃)および周囲/大気圧で実施する。
【0153】
押出力(EF)
押出力(EF)を、機器-TA.XT Plusテクスチャーアナライザー(Stable Micro Systems Ltd., Surrey, UK)を使用して測定した。30G TSK針が備えられたシリンジ(TSK Laboratory Europe, Oisterwijk,オランダ)を機器内に配置し、次いで、機器が、シリンジプランジャーを0.21mm/s(およそ1.26cm/分)の一定速度で、30mmの距離にわたってプレスした。シリンジの内容物を針を通して押し出すのに必要とされる力を記録し、平均値を計算し、これを押出力として報告した。
【0154】
レオロジー
レオロジーを、機器-コーンプレート(CP50-1、50mm直径)配置を有するAnton Paar MCR 302(Anton Paar GmbH, Graz,オーストリア)を使用して測定した。測定を振動モードにおいて、25℃で0.1%の一定変形で、0.1Hzから10Hzの周波数掃引を用い、実施した。1Hzでの貯蔵弾性率(G’)および損失係数(tanδ)を測定結果として報告した。
【0155】
実施例1-架橋材料の調製および材料の特性への潤滑相の量の影響
2.8m/kgの固有粘度を有するヒアルロン酸(HA)(4.6g、4.0gの乾燥ポリマーに対応)を200gの水に溶解した(ポリマー濃度は20mg/gとなった)。DMTMM(3.3g、2.8gの乾燥材料に対応-HAの量に対して1eq.)を添加し、混合物を1時間攪拌した。その後、100mLのフィブロイン溶液(濃度は20mg/gであり、HA/フィブロイン重量比は2/1であった)を添加し:混合物を2時間撹拌し、次いで、撹拌を停止した。次の日に、架橋材料(ここでは、HA/フィブロインゲルと例示される)を、動的クロスフロー濾過(DCF Andritz、メンブランd=152mm(Andritz AG, Graz,オーストリア))および5mMリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液を室温で用いて精製した。精製架橋材料(ここでは、HA/フィブロインゲルと例示される)を次いで、異なる量の潤滑相(潤滑相は30mg/gの濃度を有した)と混合した。最後に、架橋材料(ここでは、HA/フィブロインゲルと例示される)を1mLシリンジ(Syringe One)中に充填し、127℃で8分間滅菌した。結果が下記表1に示される。
【表1】
【0156】
潤滑相はゲルに添加することができ、押出力が低減されるが、しかしながら、本発明による架橋材料(ここでは、HA/フィブロインゲルと例示される)の場合、潤滑相は驚いたことに、押出力の減少を引き起こさない。よって、他の材料が潤滑相なしで調製され得るであろう。
【0157】
潤滑相を有さない架橋材料(ここでは、HA/フィブロインゲルと例示される)は、市販の架橋ヒアルロナン製品Belotero Volume Lidocaine(Anteis S.A., Plan-les-Ouates,スイス)に匹敵する、または、それよりもさらに高いG’を有し得ることが見出された。本明細書で例示されるHA/フィブロインゲルの1つは滅菌後およそ278PaのG’を有し(Fib01A)、相当ヒアルロナン製品Belotero Volume Lidocaineはおよそ270PaのG’を有した。しかし、30G TSK針を通る押出力(EF)は、著しく低いことが見出された。研究したHA/フィブロインゲルはおよそ12Nの押出力(EF)を有したが、架橋ヒアルロナン(Belotero Volume Lidocaine)はおよそ22Nの押出力(EF)を有した。これにより、HA/フィブロインゲルは市販の架橋ヒアルロナン製品Belotero Volume Lidocaineのような同様の引き上げ効果を提供することができ(同様のG’のため)、一方、施術者に対してさらに良好な注射性能を提供することが支持され得る。
【0158】
さらに、この実験セットにおいて、架橋材料(ここでは、HA/フィブロインゲルと例示される)のG’は滅菌後10-25%だけ減少し、これは、対照実験(純粋非架橋ヒアルロナン)の場合の78%のG’の減少よりも著しく低い。結果はまた、上記表1に示される。
【0159】
実施例2-架橋材料の調製および材料特性へのHA/フィブロイン比の影響
2.8m/kgの固有粘度を有するヒアルロン酸(HA)(3.5g、3.0gの乾燥ポリマーに対応)を150gの水に溶解した(ポリマー濃度は20mg/gとなった)。DMTMM(2.5g、2.1gの乾燥材料に対応-HAの量に関して1eq.)を添加し、混合物物を1時間攪拌した。その後、150mLのフィブロイン溶液(濃度は20mg/gであり、HA/フィブロイン重量比は1/1であった)を添加した。混合物を2時間撹拌し、次いで、撹拌を停止した。次の日に、架橋材料(ここでは、HA/フィブロインゲルと例示される)を、動的クロスフロー濾過(DCF Andritz、メンブランd=152mm(Andritz AG, Graz,オーストリア)および5mMリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液を室温で用いて精製した。潤滑相を添加しなかった。最後に、架橋材料(ここでは、HA/フィブロインゲルと例示される)を1mLシリンジ(Syringe One)中に充填し、127℃で8分間滅菌した。結果が下記表2に示される。
【表2】
【0160】
架橋材料中のフィブロインの量の増加は、より高いG’を有する架橋材料(ここでは、HA/フィブロインゲルと例示される)につながることが見出された。
【0161】
特に、この架橋材料はより低い押出力を有する(より高いG’を有するとしても)。これに対する説明は、フィブロインのチキソトロピー(ずり減粘)挙動とすることができるであろう。比較的高く、調整可能なG’および比較的低く、調整可能な押出力を有する架橋材料を得ることができる。
【0162】
実施例3-架橋材料の調製および材料特性に対するヒアルロン酸(HA)の固有粘度(IV)の影響
1.5m/kgの固有粘度を有するヒアルロン酸(HA)(3.5g、3.0gの乾燥ポリマーに対応)を150gの水に溶解した(ポリマー濃度は20mg/gとなった)。DMTMM(2.5g、2.1gの乾燥材料に対応-HAの量に関して1eq.)を添加し、混合物物を1時間攪拌した。その後、150mLのフィブロイン溶液(濃度は20mg/gであり、HA/フィブロイン重量比は1/1であった)を添加した。混合物を2時間撹拌し、次いで、撹拌を停止した。次の日に、架橋材料(ここでは、HA/フィブロインゲルと例示される)を、動的クロスフロー濾過(DCF ANDRITZ、メンブランd=152mm(Andritz AG, Graz,オーストリア)および5mMリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液を室温で用いて精製した。潤滑相を添加しなかった。最後に、架橋材料(ここでは、HA/フィブロインゲルと例示される)を1mLシリンジ(Syringe One)中に充填し、127℃で8分間滅菌した。結果が下記表3に示される。
【表3】
【0163】
実施例4-HA/フィブロインゲルの酵素分解
架橋材料(本明細書でHA/フィブロインゲルと例示される)がまた、可逆フィラーとして使用できるかどうかを調べるために、材料を、ヒツジ精巣由来の酵素ヒアルロニダーゼで処理した。すなわち、およそ0.50gのゲルを示差計量(differential weighting)により秤量し、Anton Paar MCR 302レオメータ(Anton Paar GmbH, Graz,オーストリア)のCP50-1(コーンプレート)システムのプレート上に置いた。50Uヒアルロニダーゼを含む150μL WFIの均質水溶液をプレート上のヒドロゲルの上面に添加した。ヒアルロニダーゼヒドロゲル混合物を手作業で、例えば、ピペットチップによりおよそ10秒間ホモジナイズした。その後、測定を37℃で振動モードにて、0.1%の変形および1Hzの周波数で実施した。測定期間は60分とし、1点/分で記録した。
【0164】
非架橋HAで調製したゲルが最も速く分解した。その後、架橋HAから構成されるゲルであり(Belotero Volume, Anteis S.A., Plan-les-Ouates,スイス)、フィブロインを含むゲルが最も遅く分解した。これは、典型的なHA架橋ゲルと比べてフィブロインを含むゲルの寿命が延長されたことを示すことができるであろう。結果が下記表4に示される。
【表4】
【0165】
実施例5-加速安定性研究
安定性を試験するために、バッチFib05(以上を参照のこと)をリドカインと混合し(新規バッチを調製:Fib05L)、40℃の人工気候室に入れた(加速条件)。キャラクタリゼーションを、異なる時点(第4、8および12週)でゲルのレオロジー特性および押出力(30G TSK針を使用)を測定することにより実施した。全ての測定を三連で実施した。結果が下記表5に示される。
【表5】
【0166】
架橋材料(本明細書でHA/フィブロインゲルと例示される)は、経時的に比較的安定であることが見出された。40℃、75%相対湿度で12週後であっても、特性の著しい低下または劣化は見られなかった。
【0167】
要約すると、本発明の架橋材料は非常にうまく、かつ、効率的に、任意で単一バッチで、負担なく調製することができることが見出された。材料は良好な特性を有し、注射可能であり、ずり減粘/チキソトロピー特性を有するように見える。材料は比較的高い粘度、比較的高い生物学的/酵素安定性を有する。これらの特性により、本発明の架橋材料は、特に軟部組織フィラー、例えば皮膚または結合組織フィラーとして使用可能となる。材料は上手く貯蔵可能であり、比較的高い有効期間を有する。
【国際調査報告】