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特表2024-523386アジュバント性及び抗体持続性のメカニズム及び予測因子
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  • 特表-アジュバント性及び抗体持続性のメカニズム及び予測因子 図1
  • 特表-アジュバント性及び抗体持続性のメカニズム及び予測因子 図2
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  • 特表-アジュバント性及び抗体持続性のメカニズム及び予測因子 図11
  • 特表-アジュバント性及び抗体持続性のメカニズム及び予測因子 図12
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  • 特表-アジュバント性及び抗体持続性のメカニズム及び予測因子 図14
  • 特表-アジュバント性及び抗体持続性のメカニズム及び予測因子 図15
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】アジュバント性及び抗体持続性のメカニズム及び予測因子
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/50 20060101AFI20240621BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240621BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240621BHJP
   C12Q 1/6837 20180101ALI20240621BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20240621BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20240621BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
G01N33/50 P
A61K39/39
A61K35/76
A61K31/7105
A61P37/04
A61K39/12
A61P31/12
C12Q1/6837 Z
C12Q1/6869 Z
G01N33/48 M
G01N33/53 Y
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577808
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2024-02-15
(86)【国際出願番号】 US2022033428
(87)【国際公開番号】W WO2022266094
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】63/210,794
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515158308
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】プレンドラン,バリ
(72)【発明者】
【氏名】ヘーガン,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】コルテス,マリオ
(72)【発明者】
【氏名】ウー,シェンヤン
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
2G045AA40
2G045CA24
2G045CA26
2G045DA14
2G045FA37
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ53
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR57
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS28
4B063QS34
4B063QX02
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA51
4C085CC08
4C085DD01
4C085DD86
4C085EE06
4C085FF24
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086NA05
4C086ZB09
4C086ZB33
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA05
4C087NA05
4C087ZB09
4C087ZB33
(57)【要約】
本明細書では、ワクチンの開発、特性評価、及び検証のための方法が提供される。本明細書に開示される応答シグネチャを使用して、ワクチン用アジュバントを含む、ワクチンの最適化、選択、及びベンチマークのための方法が提供される。方法は、候補ワクチン又はワクチンアジュバントの応答持続性、例えば、抗体応答の寿命の予測、及びベンチマーク参照ワクチンとの類似性の評価を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
候補アジュバントが高性能参照アジュバントと実質的に類似のコア応答を提供するか否かを決定するための方法であって、
前記候補アジュバントを含むワクチンを哺乳動物に投与することと、
免疫細胞からのコア応答シグネチャを決定することと、
発現における1日目の変化によって、前記候補アジュバントが前記コア応答を誘導するか否かを予測することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記コア応答が、TGM2、ANKRD22、及びKREMEN1のうちの1つ以上における発現を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
臨床使用又は開発のための候補アジュバントを選択することを更に含み、前記候補アジュバントが、高性能参照アジュバントと実質的に類似している、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記哺乳動物が、マウス、非ヒト霊長類、又はヒトである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
候補ワクチンに対する免疫応答の持続性を予測するための方法であって、
前記候補ワクチンを哺乳動物に投与することと、
前記哺乳動物における免疫細胞を含む試料からのシグネチャ応答を決定することと、
前記シグネチャ応答から応答の持続性を予測することと
を含む、方法。
【請求項6】
前記候補ワクチンが、アジュバントを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記候補ワクチンが、mRNAワクチンである、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記候補ワクチンが、ウイルスベクターワクチンである、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項9】
前記候補ワクチンが、生又は不活性化ウイルスワクチンである、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項10】
前記免疫細胞を含む試料が、前記候補ワクチンの投与の7~10日後に得られ、前記シグネチャ応答を、ベースライン投与前値と比較する、請求項5~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記免疫細胞を含む試料が、血小板を含む末梢血単核細胞試料(PBMC)である、請求項5~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記免疫細胞を含む試料が、血小板リッチ血漿試料である、請求項5~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
シグネチャ応答を決定することが、血小板RNA含有量の一段階フローサイトメトリー分析を含み、血小板RNAの増加が、持続的応答を予測する、請求項5~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
シグネチャ応答を決定することが、
(a)前記試料中に存在する細胞を、前記試料中の他の細胞から血小板を区別する試薬で標識することと、
(b)前記試料中に存在する細胞をRNA選択的染色で標識することと、
(c)血小板にゲーティングされたフローサイトメトリーによって前記試料を分析し、RNA含有量を決定することと
を含む、請求項5~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記試料中の他の細胞から血小板を区別する前記試薬が、CD41に特異的な抗体及びCD61に特異的な抗体を含み、血小板が、CD41CD61である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記試料中の他の細胞から血小板を区別する前記試薬が、抗TER119、抗CD3、抗CD8、抗CD19、抗CD20、抗CD14、及び抗CD56抗体のうちの1つ以上を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
持続的な免疫応答が、ベースラインと比較して、RNA含有量の少なくとも約5倍の増加に関連する、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記シグネチャ応答が、GPR15、EPS8L1、SLC38A1、GXMM、MGLL、CTTN、XK、PF4、SELP、CDHR5、MYLK、CALD1、CXCL9、SDPR、SPTB、PROS1、PRKAR2B、PPBP、CXCL5、HEMGN、EGFから選択される1つ以上の遺伝子からの発現レベルデータを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項19】
前記シグネチャ応答が、二次免疫又は一次免疫の約1~7日後、又は約10日後に得られた試料から決定される、請求項5又は18に記載の方法。
【請求項20】
臨床使用又は開発のための候補アジュバントを選択することを更に含み、前記候補アジュバントが、持続的な抗体応答を示すシグネチャを誘発する、請求項5~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記哺乳動物が、マウス、非ヒト霊長類、又はヒトである、請求項5~20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
2020年12月現在、世界中で8,000万人以上の症例があり、170万人が死亡しているCOVID-19は、世界的なパンデミックが公衆衛生に及ぼす深刻な脅威を示している。新規病原体に対する保護免疫を誘導するワクチンを迅速に開発する能力は、そのようなパンデミックを制御及び予防する上で重要である。免疫応答の大きさ、幅、及び持続性を向上させるワクチン成分として、アジュバントは現代のワクチン開発のための強力なツールである。抗原保存を可能にすることによって、アジュバントは、また、パンデミックに対する応答中の重要な要因であるより迅速なワクチン産生を可能にする。
【0002】
70年以上にわたり、不溶性アルミニウム塩(ミョウバン)が唯一の認可されたアジュバントであったが、過去30年間で、認可されたワクチンで利用可能なアジュバントが大幅に増加した。これらには、水中油型エマルション系アジュバント(MF59、AS03)、TLR4アゴニスト3-O-デスアシル-4’-モノホスホリル脂質A(MPL)(AS01、AS04)、及びTLR9アゴニストCpGオリゴヌクレオチドであるCpG1018を含有するアジュバントが含まれる。AS03、MF59、及びCpG1018を含むこれらのアジュバントの多くは、COVID-19ワクチンに使用するために所有者によって利用可能にされており、少なくとも10人の開発者がアジュバントCOVID-19ワクチンを作製する計画を示している。アジュバント技術のこの大幅な成長にもかかわらず、多くの場合、これらのアジュバントがワクチン接種に対する免疫応答を高める分子メカニズムは不明のままである。
【0003】
AS03は、α-トコフェロール(ビタミンE)を含有するスクアレン系の水中油型エマルションであり、MF59と比較しても、複数のインフルエンザ株に対するCD4+T細胞及び抗体応答の幅及び大きさを増加させることが示されている。マウスにおける最近の研究は、AS03が、排出リンパ節における脂質代謝関連遺伝子の発現の変化、及びマクロファージにおける増加した小胞体(ER)ストレスを誘導し、これが、サイトカイン産生の増加及び抗体応答の改善を駆動することを実証した。
【0004】
追加的に、類似の水中油型エマルションベースのアジュバントMF59は、細胞外ATPの局所放出を誘導し、インフラマソーム非依存的方式でMyD88に機能的に依存することが示されており、これらの種類のアジュバントが、損傷関連分子パターン(DAMP)の放出及び自然免疫応答の誘導をもたらすある程度の細胞損傷又はストレスをもたらすことを示唆している。しかしながら、AS03がこれらの応答を促進する分子経路は、依然として定義が不十分である。
【0005】
ワクチン接種に対する最初の免疫応答を高めることに加えて、AS03などを含むアジュバントは、また、結果として生じる免疫の寿命を改善することができる。いくつかのワクチン、特に天然痘又は黄熱などの生ウイルスワクチンは、生涯にわたる抗体応答を誘導することができるが、百日咳及びインフルエンザに対するものなどの他のワクチンは、経時的に減少する一過性応答及び免疫を促進するだけであり、その結果、保護の喪失及びブースターワクチンの必要性がもたらされる。体液性免疫に関して、長寿命の形質細胞は、持続的な抗体応答の主要な媒介物として特定されているが、堅牢な長寿命形質細胞分化及びワクチン接種に対する継続的抗体応答を駆動するために必要なメカニズムは、十分理解されていない。
【0006】
天然痘又は黄熱ワクチンなどの弱毒化生ワクチンは、生涯続くことができる持続的な抗体(Ab)応答を誘導するが、免疫の低下は、COVID-19に対するmRNAワクチン、並びにインフルエンザ、マラリア、百日咳ボルデテラ、腸炎サルモネラ菌血清型チフス、及び髄膜炎ナイセリア、及び他の病原体に対するサブユニットワクチンを含むいくつかのワクチンに関して報告されている。いくつかのワクチンは生涯保護を提供し、他のワクチンはわずか数ヶ月間しか保護しない理由は、依然として免疫学の大きな謎の1つである。現在、新しいワクチンの免疫保護期間は、ワクチン製品開発中に予測することが困難であり、「様子見」的アプローチによってのみ確認することができる。したがって、ワクチン学の大きな課題は、ワクチン接種から数日以内に誘導され、免疫応答及び保護の持続性を予測する血液中の初期シグネチャ(遺伝子シグネチャ又は細胞ベースのシグネチャ)を定義することによって、ワクチンが保護する期間を予測することができることである。
【発明の概要】
【0007】
ワクチンの開発及び検証のための方法が提供される。本明細書に開示される遺伝子シグネチャを使用して、ワクチン用アジュバントを含む、ワクチンの最適化、及び抗体応答の持続性の予測のための方法が提供される。方法は、候補ワクチン又はワクチンアジュバントの応答持続性、例えば、抗体応答の寿命の予測を含む。目的のワクチンには、例えば、生ウイルスワクチン、サブユニットワクチン、mRNAワクチン、ウイルスベクターワクチンなどが含まれる。
【0008】
方法は、免疫化後の短期間、例えば、約14日未満、約10日未満、例えば、7日まで又はそれを含む応答の持続性を予測する手段を提供する。この情報は、ワクチンの有効性の迅速なベンチマーク及び層別化を可能にし、評価に必要な時間を短縮するという大きな利点を提供する。
【0009】
一実施形態では、候補ワクチンに対する免疫応答の持続性を予測するための方法が提供され、方法は、アジュバントを含み得る候補ワクチンを哺乳動物に投与することと、免疫細胞、例えば、末梢血単核細胞(PBMC)からの初期遺伝子シグネチャを決定することと、初期遺伝子シグネチャからの応答の持続性を予測することとを含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、血小板を含む。いくつかの実施形態では、初期遺伝子シグネチャは、血小板からのmRNA含有量によって決定される。いくつかの実施形態では、初期遺伝子シグネチャは、免疫化の約7~約10日後に決定される。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、マウスである。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、非ヒト霊長類である。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。いくつかの実施形態では、血漿メタボロミクスの分析は、哺乳動物に対して行われる。いくつかの実施形態では、候補ワクチン又はアジュバントは、より長い抗体寿命を示す初期の遺伝子シグネチャを提供する能力に基づいて、開発のために選択される。
【0010】
一実施形態では、候補ワクチンに対する免疫応答の持続性を予測するための方法が提供され、方法は、アジュバントを含み得る候補ワクチンを哺乳動物に投与することと、ワクチン接種後にレシピエントにおける血小板のRNA含有量を決定することとを含む。いくつかの実施形態では、血小板のRNA含有量は、免疫化の約7~約10日後に決定される。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、マウスである。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、非ヒト霊長類である。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。いくつかの実施形態では、血小板RNA含有量の分析は、フローサイトメトリーによって行われる。血小板RNA含有量の倍数変化は、ワクチン接種前のベースラインレベルと比較することができ、持続的な免疫応答は、ベースラインと比較して少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍の増加に関連付けられる。いくつかの実施形態では、血小板は、CD3、CD8、CD20及びCD14細胞を除外した後のCD41CD61細胞として定義される。いくつかの実施形態では、候補ワクチン又はアジュバントは、より長い抗体寿命を示す血小板RNA含有量を増加させる能力に基づいて、開発のために選択される。
【0011】
他の実施形態では、候補アジュバントが標的高性能参照アジュバント、例えば、AS03によって特異的に誘導されるコア応答を提供するか否かを決定するための方法が提供される。これらの遺伝子のうちの3つ、TGM2、ANKRD22、及びKREMEN1の発現の1日目の変化を使用することによって、アジュバントの使用が予測された。いくつかの実施形態では、望ましい特性を有する候補アジュバントを選択する方法が提供され、方法は、候補アジュバントを含むワクチンを哺乳動物に投与することと、免疫細胞、例えば、末梢血単核細胞(PBMC)からのコア応答シグネチャを決定することと、発現における1日目の変化によって、候補アジュバントがコア応答を誘導するか否かを予測することとを含む。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、マウスである。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、非ヒト霊長類である。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。いくつかの実施形態では、候補アジュバントは、ワクチン接種後1日目に高性能コア応答を提供する能力に基づいて、開発のために選択される。
【0012】
アジュバントあり、又はなしで、ワクチンに対する細胞応答、転写応答、及び代謝応答の詳細なマルチオミクス分析が行われ、免疫細胞におけるアジュバントによって特異的に誘導される遺伝子の重要なセットが特定された。これらの遺伝子の経路分析は、アジュバント作用メカニズムにおけるアポトーシスの役割を示し、血漿メタボロミクス分析は、脂質及び脂肪酸代謝におけるアジュバント誘導性撹乱がアポトーシスシグネチャの発現と高度に関連していたことを示した。抗体応答長寿を首尾よく予測することができる初期遺伝子シグネチャは、ワクチン接種者のコホートにおいて得られた。その後の単一細胞プロファイリングは、抗体応答の細胞接着関連持続性を反映する、このシグネチャの主要な駆動因子としての血小板間のRNA含有量の違いを明らかにした。
【0013】
ワクチン接種後の差次的発現遺伝子(DEG)が決定され、大部分のDEGは、プライム及びブースト後の1日目に観察された。ワクチン接種に応答して活性化された特異的経路を特定するために、血液転写モジュール(BTM)のセットを使用して、ワクチン接種後の倍数変化によってランク付けされた遺伝子に対して遺伝子セット濃縮分析(GSEA)を行った。高レベルの機能カテゴリーに従ってBTM濃縮スコアを併合すると、アジュバントが、プライム後1日目及び7日目に、広範な先天性及び適応性免疫細胞及び経路の発現を増加させ、各免疫化後の初期時点で、単球及び樹状細胞(DC)の活性化に関連するBTMの強力な濃縮を伴ってワクチン接種を促進し、一方、7日目の応答は、主に、堅牢なB細胞及び形質細胞転写応答によって支配されていたことが明らかになった。
【0014】
継続的な抗体応答に関連する転写シグネチャに対して、100日目/42日目の残留抗体力価との相関によってランク付けされた遺伝子にGSEAを行った。プライム後7日目の細胞周期関連モジュール及びブースト後1~7日目の細胞接着/血小板活性化関連モジュールの発現は、継続性の増加と関連付けられた。具体的には、血小板活性化/アクチン結合モジュール内の遺伝子は、抗体継続性との相関において強い一致を示した。
【0015】
定量的及び定性的の両方の転写差は、アジュバントを用いたプライム及びブースト免疫化後の先天性免疫応答において観察された。アジュバントワクチン接種に対するより継続的な抗体応答に関連する細胞移動の血液転写シグネチャが特定され、抗体持続性を首尾よく予測するために使用された。CITE-seq分析は、減弱抗体応答者が、より継続的な応答者と比較して、第2のワクチン接種後の血小板RNA含有量のはるかに急激な減少を示すことを明らかにした。
【0016】
アジュバント及び非アジュバントワクチンデータセットのメタアナリシスを行うことによって、標的アジュバントによって特異的に誘導される共通の遺伝子セットが特定された。これらの遺伝子のうちの3つ、TGM2、ANKRD22、及びKREMEN1の発現の1日目の変化を使用することによって、アジュバントの使用が予測された。「コア」遺伝子の初期転写変化は、ワクチン接種の7日後の末梢における活性化Tfh細胞の頻度と強く関連しており、これらの遺伝子が免疫原性のメカニズムに関与していることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明は、添付の図面と併せて読む場合に、以下の詳細な説明から最もよく理解される。慣例に従って、図面の様々な特徴が縮尺通りでないことが強調される。逆に、様々な特徴の寸法は、明確にするために任意に拡大又は縮小される。
【0018】
図1】AS03は、ブースターワクチン接種後にブーストされる強力な初期転写シグネチャを誘導する。Aは、研究の概要を示す。21~45歳の合計50人の健康な対象を2:1で無作為化し、AS03アジュバントあり(n=34)又はなし(n=16)で投与された、21日間隔で2回の一価、分割ビリオン、不活性化H5N1クレード2.1 A/Indonesia/05/2005インフルエンザワクチンを投与した。図に示すように、生物学的試料を収集し、定期的な間隔で分析を行った(灰色の正方形)。Bは、アジュバント(オレンジ)及び非アジュバント(緑)対象におけるワクチン接種後のDEG数(p<0.01及びlogFC>0.2)。C及びDは、プライム(C)及びブースト(D)後の1日目(暗)及び7日目(明)の細胞型/経路別の平均血液転写モジュール(BTM)濃縮スコアを示す。Eは、プライム(上)及びブースト(下)後1~7日目のインターフェロン関連BTMの濃縮スコアを示す。Fは、プライムとブーストとの間の1日目のアジュバント対象におけるBTMの差次的発現(FDR<0.03)についての、1日目の倍数変化(x-プライム、y-ブースト)の散布図を示す。BTMは、凡例に示されるように色分けされる。GのBTM M111.1中の遺伝子;各「エッジ」(灰色の線)は、共発現関係を表し(Li et al.,Nat.Immunol.2014に記載の通り)、色は、プライム(左)及びブースト(右)の後の1日目の倍数変化を表す。Hは、プライムとブーストとの間の3日目のアジュバント対象におけるBTMの差異的発現(FDR<0.03)についての、3日目の倍数変化(x-プライム、y-ブースト)の散布図を示す。BTMは、凡例に示されるように色分けされる。IのBTM89.0中の遺伝子;各「エッジ」(灰色の線)は、共発現関係を表し、色は、プライム(左)及びブースト(右)後の3日目の倍数変化を表す。
図2】アジュバントH5N1ワクチン接種は、細胞移動の転写シグネチャに関連する持続性を有する保護性H5ヘッド指向性抗体応答を促進する。Aは、アジュバント(オレンジ色)及び非アジュバント(緑色)対象における、H5N1A/インドネシアワクチン株に対する、微小中和(MN)力価を示す。幾何平均は太い線で示され、一方、影は幾何標準偏差(SD)に対するものである。Bは、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定されたH5ヘッド:ステムIgG結合能比を示す。Cは、SPRによって測定された、H5ヘッド(左)及びステム(右)に対するIgG親和性における、ワクチン接種後42日目の倍数変化を示す。Dは、ワクチン接種後の活性が、H5N1+AS03(オレンジ)及びTIV(ピンク)ワクチン応答の両方における抗体継続性と関連するBTMのヒートマップを示す。遺伝子セット濃縮分析(GSEA、FDR<0.05;1,000置換)(Subramaniam et al.2004)を使用して、事前ランク付けされた遺伝子リスト内のBTMの陽性(赤)、陰性(青)、又は無(灰色)濃縮を特定し、遺伝子を、100日目の残留と42日目(H5N1+AS03)又は180日目と28日目(TIV)の抗体応答との相関に従ってランク付けした。E及びFのBTM M196における遺伝子;各「エッジ」(灰色の線)は、共発現関係を表し(Li et al.,Nat.Immunol.2014に記載の通り)、色は、7日目の遺伝子発現と100日目(H5N1+AS03、E)又は180日目(TIV、F)の抗体応答残量(陽性-赤色、陰性-青色)ワクチン接種との相関を表す。Gは、CCHIデータセットにおける実際の100日目の抗体応答残量対予測された100日目の抗体応答残量の散布図を示す。H5N1+AS03及びTIVデータセットにおいて、7日目の継続的な抗体応答の転写相関に対して訓練された線形回帰ベースのアプローチを使用して、予測される100日目の抗体応答残量を生成した。詳細については、方法セクションを参照されたい。Hは、7日目の発現が、H5N1+AS03及びTIVデータセットにおける抗体寿命(100日目又は180日目の応答残量)と有意に相関する、Gの予測モデルによって選択されるBTM由来の遺伝子の棒グラフを示す。バーは、両方のデータセットからのメタ相関係数を表す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001である。
図3】CITEseq分析は、抗体継続性の転写シグネチャのための血小板起源を明らかにする。Aは、手動でアノテーションされた細胞型によって着色された、全ての分析された試料(n=12、3人の「継続的」及び3人の「減弱」応答者、各対象からの21日目及び28日目の試料)からのPBMCのUMAP表現を示す。Bは、抗体継続性の予測シグネチャにおける全ての遺伝子(図2H)についての細胞当たりの発現の合計を示す、全ての分析された試料からのPBMCのUMAP表現。Cの左パネルは、継続的応答者及び減弱応答者の間の抗体継続性シグネチャの擬似バルク発現の箱ひげ図を示す。Cの右パネルは、所与の細胞クラスタが擬似バルク計算から除外されたときの抗体継続性シグネチャの擬似バルク発現における変化の折れ線グラフを示す。片側の対応がないt検定を使用して、群を比較した。Dは、第1のワクチン接種後21日目及び28日目の、継続的応答者及び減弱応答者における全細胞の血小板画分を示す。Eは、第1のワクチン接種後21日目及び28日目の、継続的応答者及び減弱応答者における血小板クラスタ内の総読み取りの割合を示す。Fは、ワクチン接種後28日目の形質芽細胞内の継続的応答者と減弱応答者との間のDEFの過剰提示試験(p≦0.05&fc≧0.25)による、有意に濃縮されたBTMBTM(FDR<0.05)の棒グラフを示す。Gは、M238、M219、及びM216(左)、M4.1(中央)、並びにM250(右)モジュール内の遺伝子のヒートマップを示す。色は、形質芽細胞内の平均発現の行ごとのzスコアを表す。
図4】活性化されたワクチン誘導Tfh細胞の血液循環は、中和抗体価及び抗体親和性成熟と相関する。Aは、CXCR5+CD4+T細胞集団内のPD1+ICOS+細胞のパーセンテージとして定義される、アジュバント(オレンジ)及び非アジュバント対象(緑)におけるワクチン接種後の活性化Tfh細胞の頻度を示す。Bは、活性化Tfh細胞頻度における28/21日目の倍数変化と、MN力価における42/21日目の倍数増加との相関を示す。Cは、活性化Tfh細胞頻度の28/21日目の倍数変化と、H5ヘッドに対するIgG親和性の42/21日目の倍数増加との相関を示す。Dは、非活性化(PD-1-ICOS-)Tfh1(x軸)及びTfh2(y軸)細胞に対する、活性化(PD-1+ICOS+)細胞における遺伝子の平均log倍数変化を示す。最大の平均絶対倍数変化を有する上位20個の遺伝子は、赤色で注釈される。Eは、CIBERSORTを使用した転写プロファイルのデジタルサイトメトリーに基づく、非活性化及び活性化Tfhにおける単球の推定頻度を示す。FのBTMは、活性化Tfh細胞対非活性化Tfh細胞において有意に濃縮された(FDR<0.05)。CIBERSORTxを使用して、ソートされたTfh転写プロファイルにおけるCD4 T細胞特異的発現を推定し、次いで、GSEA(Subramaniam et al.2004)を使用して、活性化Tfhと非活性化Tfhとの間のそれらの倍数変化によってランク付けされた遺伝子を用いて濃縮BTMを特定した。詳細については、方法セクションを参照されたい。Gでは、BTM M219中の遺伝子;各「エッジ」(灰色の線)は、共発現関係を表し(Li et al.,Nat.Immunol.2014に記載の通り)、色は、活性化Tfh対非活性化Tfhの倍数変化を表す。Hでは、BTM M4.2内の遺伝子;各「エッジ」(灰色の線)は、共発現関係を表し、色は、活性化Tfh対非活性化Tfhの倍数変化を表す。Iは、活性化Tfhと非活性化Tfhとの間の倍数変化による、上位40個の遺伝子のクラスタ化ヒートマップ。
図5】初期分子シグネチャは、ブースト後の免疫応答の複数のマーカーに関連付けられる。Aは、1日目の遺伝子シグネチャと、28日目の活性化Tfh頻度、42日目のH5ヘッドに対するIgG親和性、及び42日目の微小中和力価の増加との間の特定された関連を示す概略図を示す。Bは、活性化Tfh頻度(28日目)、H5ヘッドに対するIgG親和性(42日目)、及びアジュバント(オレンジ)及び非アジュバント(緑)対象における微小中和力価(42日目)の、ブースト後の倍数変化の3D散布図を示す。Cは、3つ全てのパラメータ(28日目の活性化Tfh、42日目のH5ヘッドIgG親和性、及び42日目のMN力価)と一般的に関連付けられているBTMの棒グラフ(FDR<0.05)を示す。GSEAは、各パラメータとの相関によってランク付けされた遺伝子に対して行われた。Dは、各免疫パラメータのブースト後の倍数変化との1日目のBTM関連性の3D散布図を示す。軸は、事前にランク付けされた遺伝子リスト内のBTMのGSEA濃縮スコアを表し、遺伝子は、各免疫パラメータとのそれらの相関に従ってランク付けされた。Eは、1日目の発現が3つ全ての免疫パラメータと有意に相関する(p<0.001)遺伝子のヒートマップを示す。色は、1/0日目の倍数変化を表す。
図6】インフルエンザワクチン試験のメタアナリシスは、末梢における活性化Tfh細胞頻度と相関するAS03特異的転写シグネチャを明らかにする。Aは、AS03特異的遺伝子シグネチャの特定を示す。本試験のプライム及びブースト用量の両方からのデータ、並びにAS03アジュバントH1N1ワクチン接種に対する応答の以前の研究からの公的に利用可能なデータを組み込み、複数のTIV試験からの遺伝子発現データとペアワイズで比較した。詳細については、方法セクションを参照されたい。Bは、AS03アジュバントインフルエンザワクチン試験と非アジュバントインフルエンザワクチン試験との間の全てのペアワイズ比較における、差次的に発現された遺伝子のヒートマップ((p<0.005及びlogFC>0.2)を示す。これらのうち、3つの「コア」遺伝子(ANKRD22、KREMEN1、及びTGM2)は、多数の共相関遺伝子を共有した。Cは、独立した試験における、アジュバント(オレンジ色)及び非アジュバント(緑色)ワクチンレシピエントの予測されたアジュバント状態を示す。人工ニューラルネットワークベースの機械学習分類アルゴリズムを、本研究内の「コア」AS03特異的遺伝子の1日目の発現データを使用して、ワクチン状態(アジュバント対非アジュバント)を予測するために訓練し、AS03あり、又はなしでのH5N1ワクチン接種に対する応答の以前に発表された研究からの発現データを含む独立したデータセットで試験した。ドットプロットは、10の無作為化ブートストラップ試験の結果を表示し、各ドットは、単一の試験内の分類子(1-アジュバント、0-非アジュバント)のアンサンブル票を表している。詳細については、方法セクションを参照されたい。Dは、本研究内で訓練され、2つの独立したデータセットに適用された「コア」AS03遺伝子分類子の分類精度を示す。詳細については、方法セクションを参照されたい。Eは、3つの「コア」AS03特異的遺伝子の22日目の発現と、活性化されたTfh細胞頻度の28/21日目の倍数変化との相関を示す。Fは、TMEM159遺伝子の1日目の発現と、MN力価の42/0日目の倍数変化との相関を示す。Gは、TMEM159遺伝子の1日目の発現と、AS03が一価H1N1ワクチンと同時投与された公的に利用可能なデータセットにおけるMN力価の63/-7日目の倍数変化との相関を示す。
図7】AS03ワクチン接種後の初期アポトーシスシグナルの生成は、脂肪酸代謝及び酸化の撹乱に関連する。A及びBは、ワクチン接種後1日目(A)及び22日目(B)のAS03+H5N1群対H5N1とTIVデータセット(ペアワイズ比較)との間の、アポトーシス関連経路(Reactomeデータベース)における差次的発現遺伝子(FDR<0.05)を示す。特定のアポトーシス部分経路に属する遺伝子は、緑色(内因性経路)、マゼンタ色(外因性経路)、青色(実行段階)、又はオレンジ色(調節)で色分けされる。Cは、0日目に対する、アジュバント及び非アジュバント対象の最初の2つの主成分に沿ったプライム後の代謝軌跡を示す。ここで、代謝軌跡は、主成分空間に投影された場合の時間経過(1~7日目)にわたる全ての差次的代謝産物特徴(p<0.01)にわたる存在量の変化に従う、各対象の軌跡を指す。Dは、21日目に対する、アジュバント及び非アジュバント対象の最初の2つの主成分に沿ったブースト後の代謝軌跡を示す。Eは、ワクチン接種後1日目に、アジュバント対象において有意に濃縮された代謝経路(p<0.05)を示す。丸のサイズは、経路内で検出された異常に豊富な代謝産物の数を表す。Fは、22日目の、アポトーシス遺伝子発現又はブースト後の免疫応答に関連する代謝経路のヒートマップを示す。Mummichogソフトウェアを使用して、アポトーシス遺伝子発現又は免疫応答と相関する代謝産物特徴(Spearman相関によりp<0.05)に基づいて、濃縮経路を特定した。色及び丸のサイズは、置換検定による有意経路濃縮(p<0.1)の-log10 p値を表す。示される経路は、少なくとも1つの特徴を有する濃縮<p値0.01を有するものである。
図8】Aは、1日目のアジュバント対象(x軸)及び3日目の非アジュバント対象(y軸)における全てのBTMの平均log2 FCの散布図を示す。Bは、3日目のプライムとブーストとの間の差次的BTMの動態を示す。線は、アジュバント対象間の平均モジュール倍数変化を表す。24日目に最大の倍数変化を有する10個のBTMがプロットされている(図1Gに標識されたものと同じ)。Cは、アジュバント(オレンジ色)及び非アジュバント(緑色)対象におけるH5N1A/インドネシアワクチン株に対する血球凝集阻害(HAI)力価を示す。幾何平均は太い線で示され、一方、影は幾何標準偏差(SD)に対するものである。Dは、異種クレード2 H5N1株に対するMN力価を示す。幾何平均は太い線で示され、一方、誤差バーは幾何標準偏差(SD)を表す。Eは、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定される、共鳴単位(RU)でのH5ヘッド及びステムIgG結合能を示す。中央値及び四分位範囲を箱ひげ図で示し、バイオリン図は試料分布を示す。Fは、H5ヘッドに対するIgG抗体結合の42/21日目の倍数変化と及びMN力価との相関を示す。Gは、H5ヘッドに対するIgG親和性の42/21日目の倍数変化と及びMN力価との相関を示す。
図9】Aは、H5N1+AS03及びTIVワクチン接種に応答するHAI力価の動態を示す。線は幾何平均を表し、影付き領域は幾何標準偏差を表す。TIV力価は、2010及び2011季節性インフルエンザワクチン(n=42)でワクチン接種された若年成人(<65歳)からのものである(Nakaya et al.,2015)。Bは、100日目及び42日目のHAI力価の相関を示す。Cは、アジュバント対象における形質細胞及び細胞周期BTMの平均log2 FCのヒートマップを示す。Dは、アジュバント対象におけるM156.0の28日目/21日目の平均log2 FC(x軸)対100日目/42日目HAI残量の散布図を示す。
図10】Aは、QCフィルタリング前の全ての分析された細胞のクラスタ当たりの細胞割合を示す。左パネルは、21日目及び28日目の試料からの各クラスタ内の細胞の割合を示す。右パネルは、各対象からの各クラスタ内の細胞の割合を示す。Bは、各対象についてのマイクロアレイを介した28日目のDEGのうちの28/21日目のFC(x軸)及びCITEseq(y軸)を介した擬似バルク推定値の散布図を示す。統計は、ピアソン相関を使用して生成された。Cは、細胞ごとの正規化された発現を使用して、各対象の抗体継続性シグネチャ遺伝子の血小板内の28/21日目のFCの箱ひげ図を示す。
図11】Aは、QCフィルタリング前のクラスタ別のセル当たりのQCメトリクスを示す。Bは、他の全てのクラスタと比較されたQCフィルタリング前の各クラスタ内のDEGを示す。Cは、QCフィルタリング前の各細胞におけるCITE-seq抗体存在量を示す。
図12】Aは、4つの異なるCD4+CXCR5+Tfh集団:静止Tfh1、静止Tfh2、活性化Tfh1、及び活性化Tfh2のソーティングのためのゲーティング戦略を示す。Bは、CIBERSORTxを使用したデコンボリューションの前に、ソートされた活性化Tfh細胞対非活性化Tfh細胞において有意に濃縮された(FDR<0.05及びNES>2.5)BTMのNES(Newman et al.2019)を示す。GSEA(Subramaniam et al.2004)を使用して、ソートされた活性化Tfh試料と非活性化Tfh試料との間のそれらの平均倍数変化によってランク付けされた遺伝子を使用して、濃縮BTMを特定した。Cは、CIBERSORTを介してソートされたTfh試料中の様々な免疫細胞の推定される相対的な細胞画分(Newman et al.2015)を示す。
図13】Aは、ワクチン接種後1日目又は7日目のTIV及びH5N1+AS03(プライム又はブースト)の両方に応答して一般的に濃縮された(FDR<0.001)BTMのヒートマップを示す。色はNESを表し、有意でないスコアはグレーの影が付けられている。Bは、AS03データセットにおいて独自に濃縮されたBTMのAS03データセットとTIVデータセットとの間の平均NESの差を示す。GSEA(Subramanian et al.,2005を参照されたい)を使用して、ランク付けされた遺伝子リストを用いてBTMの濃縮を特定し、ここで、遺伝子は、AS03及びTIVデータセットにおける1日目対0日目の倍数変化に基づいて、t統計学的に順序付けされた(図5A及び方法を参照されたい)。示されるBTMは、TIVデータセットではないが、全てのAS03データセットにおいて有意に濃縮されたもの(FDR<0.05)である。Cは、BTM M23中の遺伝子を示す。各「エッジ」(灰色の線)は、共発現関係を表し、色は、全てのAS03又はTIV研究における1日目の平均倍数変化を表す(図5A及び方法を参照されたい)。Dは、全ての「AS03特異的」遺伝子間の1日目の有意に相関するパートナー遺伝子(FDR<0.1)の重複係数を示す。Eは、アジュバント群についての、1日目の異なる細胞型における「AS03特異的」遺伝子の推定遺伝子発現を示す。
図14】ヒト、アカゲザル及びマウスの研究における、最終免疫化後7日目対0日目の血小板RNA含有量の倍数変化と抗体応答の継続性との間の正の相関を示す。Aは、季節性インフルエンザワクチン接種における血小板染色及びHAIアッセイの実験的タイムラインを示す。対象を、1回の用量のTIV(Fluzone(登録商標)、Sanofi Pasteur Inc.、2010~11のシーズン)でワクチン接種した。Bは、ワクチン接種した対象における全血小板のRNA含有量(RNA染料強度の中央値)及びRNA血小板の%の7日目/0日目のlog倍数変化に対する、180日目/28日目HAI残量の散布図を示す。Cは、AS03と混合されたRBD又はSARS-CoV-2スパイク免疫原の六量体で免疫化されたアカゲザルにおける血小板染色及び中和アッセイの実験的タイムラインを示す。Dは、血清中のSARS-CoV2019ウイルス中和抗体価の動態の折れ線グラフを示す。Eは、全血小板におけるRNA含有量及びアジュバント対象における%RNA血小板の28日目(d7)/ベースライン(d0)log2 FCに対する180日目/42日目のnAb残量の散布図を示す。Fは、R848又はMPL(TLR-4標的モノホスホリル脂質A)+R848と混合したHIV-1クレードC由来の1086.C gp140免疫原で免疫化したアカゲザルにおける血小板染色、中和アッセイ、及びEPISPOTの実験的タイムラインを示す。Gは、血清中の階層1A MW965.26 HIV-1疑似ウイルス中和抗体力価の動態の折れ線グラフを示す。H及びIは、アジュバント対象における、全血小板中のRNA含有量の第19週(d7)/ベースライン(d0)logFC対第42週/第20週のnAb残量、及び骨髄ASC数の散布図を示す。Jは、AS03と混合されたSARS-CoV-2(2019-nCoV)スパイク免疫原で免疫化されたC57BL/6Jマウスにおける血小板染色、ELISA、及びELISPOTの実験的タイムラインを示す。Kは、血清中の抗スパイク結合抗体力価の動態の折れ線グラフを示す。L及びMは、全血小板中のRNA含有量の7日目/0日目のlogFC対42日目/7日目の残量、及び骨髄ASC数の散布図を示す。
図15】A、D、F、及びHは、2010年の季節性インフルエンザワクチン接種におけるヒト対象の解凍されたPBMC中の無細胞血小板(A)、AS03と混合されたSARS-CoV-2スパイク免疫原で免疫化したアカゲザル(D)、R848又はMPL+R848と混合されたHIV gp140免疫原で免疫化したアカゲザル(F)、又はAS03と混合された2019-n-CoVスパイク免疫原で免疫化したB6マウスの新たに調製した血小板濃縮血漿中の無細胞血小板(H)のゲーティング戦略を示す。Bは、ゲーティングされた集団における0日目及び7日目の%血小板、並びに7日目対0日目の%血小板の倍数変化を示す。C、E、G、及びIは、対最後の免疫化の日(C、I)又はベースライン(E、G)に対する、最後の免疫化後7日目のワクチン接種対象における全血小板中のRNA含有量(RNA染料強度中央値)又は%RNA血小板の倍数変化を示す。
【0019】
(表1) この試験の2つの治療群に登録された50人の対象の人口統計情報を示す。
(表2) 非アジュバント群及びAS03アジュバント群の両方のHAI及びMN力価についての幾何平均力価(GMT)、95%信頼区間(CI)、及びセロコンバージョン率を示す。セロコンバージョン率は、ワクチン接種後、ベースラインレベルに対する力価の4倍以上の増加を有するワクチン接種者の割合として定義される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ワクチン接種後の初期時点における遺伝子発現の変化に基づいて、応答の質の持続性のための、特にワクチンアジュバントを含むワクチンの分類のための組成物及び方法が提供される。応答のパターンは、例えば、ワクチン接種後7日目を含む、ワクチン接種後1~10日の期間後に、目的の免疫細胞サブセット中のシグナルを定量化することによって得られる。応答のパターンは、参照アジュバントに対してベンチマークされた応答を有する傾向を示し、抗体応答の寿命が100日以上であることを示す。分類が行われると、それは、治療的使用のためのワクチンの選択及びベンチマークに使用され得る。分類は、薬剤又はレジメンの選択を更に含み得る。
【0021】
本発明の方法及び組成物を説明する前に、本発明は記載された特定の方法又は組成物に限定されるものではなく、それ自体が勿論、変化し得ることを理解されたい。また、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになるため、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためのものであり、限定することが意図されるものではないことも理解されるべきである。
【0022】
値の範囲が提供される場合、文脈が明確に別段の指示をしない限り、その範囲の上限と下限との間の各々の介在する値も、下限の単位の10分の1まで具体的に開示されていることを理解されたい。規定範囲における任意の規定値又は介在値と、その規定範囲における任意の他の規定値又は介在値との間のより小さい各範囲が、本発明に包含される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立してその範囲に含まれても、又は除外されてもよく、より小さい範囲に限度のいずれかが含まれる範囲、どちらも含まれない範囲、又は両方の限度が含まれる範囲の各々も、規定範囲内の任意の具体的に除外されている限度に従って本発明に包含される。記載された範囲が限界の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界のいずれか又は両方を除外する範囲も、同様に本発明に含まれる。
【0023】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の方法及び材料を、本発明の実施又は試験に使用することができるが、いくつかの潜在的で好ましい方法及び材料をここに記載する。本明細書で言及される全ての刊行物は、刊行物が引用されることに関連して方法及び/又は材料を開示及び説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合、本開示が、組み込まれた刊行物の任意の開示に優先することを理解されたい。
【0024】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含むことに留意されなければならない。したがって、例えば、「a cell(細胞)」への言及は、複数のかかる細胞を含み、「the peptide(ペプチド)」への言及は、当業者に既知の1つ以上のペプチド及びその等価物、例えばポリペプチドなどへの言及を含む。
【0025】
本明細書で考察される刊行物は、本出願の出願日より前のそれらの開示についてのみ提供される。本明細書のいかなる内容も、本発明が先行発明のために、そのような刊行物に先行する権利がないことの承認として解釈されるべきではない。更に、提供される刊行物の日付は、独立して確認する必要があり得る実際の刊行日とは異なる場合がある。
【0026】
「アジュバント」という用語は、一般に、個体の体液性又は細胞性免疫応答を増加させる組成物を指す。目的のアジュバントは、免疫系を刺激し、共投与抗原に対する応答性又は応答の持続性を増加させる。
【0027】
「対象」、「個体」、及び「患者」という用語は、応答について評価される哺乳動物を指すために本明細書において互換的に使用される。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。「対象」、「個体」、及び「患者」という用語は、限定されないが、疾患を有する個体を包含する。対象はヒトであり得るが、他の哺乳動物、特にヒト疾患についての実験室モデルとして有用な哺乳動物、例えば、マウス、ラットなども含む。本発明の方法は、獣医学的目的に適用することができる。
【0028】
本明細書で使用される場合、「セラノーシス」という用語は、1つ以上の治療剤の選択、用量レベルの変化、用量スケジュールの変化、投与様式の変化、及び製剤の変化を含むがこれらに限定されない、治療レジメンの選択、維持、又は変更を指示するための診断方法から得られる結果の使用を指す。セラノーシスを知らせるために使用される診断方法は、疾患、状態、又は症状の状態に関する情報を提供する任意の方法を含み得る。
【0029】
「療法剤」、「治療可能な薬剤」、又は「治療剤」という用語は、互換的に使用され、ワクチン及びワクチンアジュバントを含む、対象への投与にいくつかの有益な効果を与える分子又は化合物を指す。有益な効果は、治療的免疫応答の誘導、診断的決定の実行可能性、疾患、症状、障害、又は病理学的状態の改善、疾患、症状、障害、又は状態の発症の低減又は予防、並びに一般には疾患、症状、障害、又は病理学的状態の相殺を含む。
【0030】
本明細書で使用される場合、「治療」又は「治療する」、又は「緩和する」又は「改善する」は、互換的に使用される。これらの用語は、これらに限定されないが、治療的利益及び/又は予防的利益を含む有益な又は所望の結果を得るためのアプローチを指す。治療上の利益とは、治療中の1つ以上の疾患、状態、又は症状における任意の治療上関連する改善又は効果を意味する。予防的利益のために、組成物は、疾患、状態、又は症状がまだ発現されていない可能性がある場合でも、特定の疾患、状態、若しくは症状を発症するリスクがある対象、又は疾患の生理学的症状のうちの1つ以上を報告する対象に投与され得る。
【0031】
「有効量」又は「治療有効量」という用語は、有益又は所望の結果をもたらすために十分な薬剤の量を指す。治療有効量は、治療される対象及び疾患状態、対象の体重及び年齢、疾患状態の重症度、投与方法などに応じて変化し、これは、当業者によって容易に決定することができる。この用語は、また、本明細書に記載の画像化方法のうちのいずれか1つによる検出のための画像を提供する用量にも適用される。特定の用量は、選択される特定の薬剤、従うべき投薬レジメン、それが他の化合物と組み合わせて投与されるか否か、投与のタイミング、画像化される組織、及びそれが運ばれる物理的送達系に応じて変化する。
【0032】
「好適な状態」は、この用語が使用される文脈に依存する意味を有するものとする。すなわち、抗体と関連して使用される場合、用語は、抗体が対応する抗原に結合することを可能にする状態を意味するものとする。細胞への薬剤の接触に関連して使用する場合には、そうすることができる薬剤が細胞に侵入し、意図した機能を実施することを可能にする状態を意味するものとする。一実施形態では、本明細書で使用される場合、「好適な状態」という用語は、生理学的状態を意味する。
【0033】
「炎症性」応答という用語は、体液性(抗体媒介)及び/又は細胞応答の発達であり、細胞応答は、抗原特異的T細胞又はそれらの分泌産物、及び先天性免疫細胞によって媒介され得る。「免疫原」は、哺乳動物への投与時、又は自己免疫疾患に起因して、それ自体に対する免疫応答を誘導することができる。
【0034】
本明細書で使用される「ワクチン」という用語は、関連技術に従って定義され、病原体によって引き起こされる特定の疾患に対する個体の保護免疫を誘導又は増強する組成物に関する。理論に束縛されることを望むものではないが、保護免疫は、中和抗体の生成、又は免疫系の細胞傷害性細胞の活性化、又はその両方から生じると考えられる。保護免疫を誘導又は強化するために、ワクチンは、免疫原性抗原として、当該疾患を引き起こす病原体の一部又はこの免疫原性抗原をコードする核酸分子を含む。免疫原性抗原と接触すると、個体の免疫系は、免疫原性抗原を外来物として認識し、それを破壊するように誘発される。免疫系はその後、この免疫原性抗原との接触を記憶するため、疾患を引き起こす病原体との後の接触では、病原体の容易かつ効率的な認識及び破壊が確実となる。
【0035】
当該技術分野で既知であり、使用されるワクチンには、例えば、不活性化病原体ワクチン、弱毒化生病原体ワクチン、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン、サブユニット、組換え、多糖、及びコンジュゲートワクチン、トキソイドワクチン、並びにウイルスベクターワクチンが含まれる。不活性化ワクチンは、例えば、A型肝炎、インフルエンザ、狂犬病などの疾患を引き起こす病原体の死滅型を使用する。生ワクチンは、疾患を引き起こす病原体、例えば、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹(MMR併用ワクチン)、ロタウイルス、天然痘、水痘、黄熱の弱毒形態を使用する。mRNAワクチンは、免疫応答を誘発する病原体タンパク質、例えば、SRS-CoV2をコードする。サブユニット、組換え、多糖、及びコンジュゲートワクチンは、特定の病原体分子、例えば、Hib(インフルエンザ菌b型)、B型肝炎、HPV(ヒトパピローマウイルス)、百日咳ボルデテラ、肺炎球菌性疾患、髄膜炎菌性疾患、帯状疱疹ウイルスを使用する。トキソイドワクチンは、ジフテリア及び破傷風などの病原体によって形成された毒素を使用する。ウイルスベクターワクチンは、異なるウイルスの修飾バージョンをベクターとして使用して、病原体タンパク質をコードする配列を送達する。インフルエンザ、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、麻疹ウイルス、及びアデノウイルスを含む、いくつかの異なるウイルスがベクターとして使用されている。ウイルスベクターは、現在、SARS-CoV2ワクチン接種のために使用されている。
【0036】
本発明の目的のための「バイオマーカー」、「マーカー」という用語は、それらの関連する代謝産物、変異、バリアント、多型、修飾、断片、サブユニット、分解産物、要素、及び他の分析物又は試料由来の評価基準とともにタンパク質を指すが、これらに限定されない。マーカーは、目的の遺伝子の発現レベルを含む。マーカーは、また、時間的傾向及び差異を含む、前述の測定値のうちのいずれか1つ以上の組み合わせを含み得る。広く使用される場合、マーカーは、また、免疫細胞サブセットを指し得る。
【0037】
「分析する」ことは、試料中のマーカー(例えば、マーカー又は構成発現レベルの存在又は不在など)の測定によって試料に関連する一連の値を決定することと、測定値を、同じ対象又は他の対照対象由来の試料又は試料のセットにおける測定値と比較することとを含む。本教示のマーカーは、当技術分野で既知である様々な従来の方法のうちのいずれかによって分析され得る。「分析する」ことは、統計分析、例えば、データの正規化、統計的有意性の決定、統計的相関の決定、クラスタリングアルゴリズムなどを実行することを含み得る。
【0038】
本教示の文脈における「試料」は、対象から単離される任意の生体試料、一般には循環免疫細胞を含む試料を指す。試料は、体液、全血、PBMC(白血球細胞若しくは白血球)、組織生検、滑液、リンパ液、腹水、及び間質液又は細胞外液のアリコートを含み得るが、これらに限定されない。「血液試料」は、血液細胞、白血球細胞又は白血球を含む、全血又はその一部を指し得る。試料は、静脈穿刺、生検、針吸引、洗浄、掻爬、外科的切開若しくは介入、又は当該技術分野で既知の他の手段を含むがこれらに限定されない手段によって、対象から得ることができる。
【0039】
「データセット」は、所望の条件下での試料(又は試料の集団)の評価から得られる数値のセットである。データセットの値は、例えば、試料から評価基準を実験的に得て、これらの測定値からデータセットを構築することによって、あるいは代替的に、ラボなどのサービスプロバイダから、又はデータセットが格納されているデータベース若しくはサーバからデータセットを得ることによって得ることができる。同様に、「試料に関連付けられたデータセットを得る」という用語は、少なくとも1つの試料から決定されたデータのセットを得ることを包含する。データセットを得ることは、試料を得ること、及び試料を処理して、例えば抗体結合の測定、又はシグナル伝達応答を定量する他の方法を介して、データを実験的に決定することを包含する。この語句は、また、例えば、データセットを実験的に決定するために試料を処理した第三者から、データのセットを受け取ることを包含する。
【0040】
本教示の文脈における「測定すること」又は「測定」とは、臨床若しくは対象由来の試料中の物質の存在、非存在、若しくは濃度レベルを含む、そのような物質の存在、非存在、数量、量、若しくは有効量を決定すること、及び/又は対照、例えば、マーカーのベースラインレベルに基づいて、対象の臨床パラメータの値若しくは分類を評価することを指す。
【0041】
分類は、試料が所与のクラスに属する確率を決定するための閾値を設定する予測モデリング方法に従って行うことができる。確率は、好ましくは、少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%以上である。分類は、また、得られたデータセットと参照データセットとの間の比較が統計的に有意な差をもたらすか否かを決定することによって行うことができる。有意な差をもたらす場合、データセットが得られた試料は、参照データセットクラスに属さないものとして分類される。逆に、そのような比較が参照データセットと統計的に有意に異なるものではない場合、データセットが得られた試料は、参照データセットクラスに属するものとして分類される。
【0042】
モデルの予測能力は、特定の値、又は値の範囲の品質メトリクス、例えば、AUC又は精度を提供するその能力に従って評価することができる。いくつかの実施形態では、所望の品質閾値は、少なくとも約0.7、少なくとも約0.75、少なくとも約0.8、少なくとも約0.85、少なくとも約0.9、少なくとも約0.95、又はそれ以上の精度で試料を分類する予測モデルである。代替の評価基準として、所望の品質閾値は、少なくとも約0.7、少なくとも約0.75、少なくとも約0.8、少なくとも約0.85、少なくとも約0.9、又はそれ以上のAUC(曲線下面積)を有する試料を分類する予測モデルを指すことができる。
【0043】
当技術分野で既知であるように、予測モデルの相対的な感度及び特異性は、選択性メトリクス又は感度メトリクスのいずれかに有利となるように「調整」され得、2つのメトリクスは逆の関係を有する。上記のようなモデルの限界は、実行される試験の特定の要件に応じて、選択された感度又は特異性レベルを提供するように調整され得る。感度及び特異性の一方又は両方は、少なくとも約少なくとも約0.7、少なくとも約0.75、少なくとも約0.8、少なくとも約0.85、少なくとも約0.9、又はそれ以上であり得る。
【0044】
「親和性試薬」又は「特異的結合メンバー」は、本発明の遺伝子配列、タンパク質又はマーカーに選択的に結合するポリヌクレオチド、抗体、リガンドなどの親和性試薬を指すように使用され得る。「親和性試薬」という用語は、任意の分子、例えば、ペプチド、核酸、有機小分子を含む。いくつかの実施形態では、親和性試薬は、ポリヌクレオチドである。
【0045】
「抗体」という用語は、全長抗体及び抗体断片を含み、以下で更に定義されるように、任意の生物由来の天然抗体、操作された抗体、又は実験、治療、若しくは他の目的のために組換え的に生成された抗体を指し得る。例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、又は抗体の他の抗原結合部分配列などの当技術分野で既知である抗体断片の例は、全抗体の修飾によって産生されるか、又は組換えDNA技術を使用して新規に合成されたもののいずれかである。「抗体」という用語は、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を含む。抗体は、拮抗剤、アゴニスト、中和剤、阻害剤、又は刺激剤であってもよい。それらは、ヒト化され、グリコシル化され、固体支持体に結合され、他の変形を有することができる。
【0046】
本発明は、他の出願及びテキストに開示された情報を組み込む。以下の特許及び他の刊行物は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。Alberts et al.,The Molecular Biology of the Cell,4th Ed.,Garland Science,2002、Vogelstein and Kinzler,The Genetic Basis of Human Cancer,2d Ed.,McGraw Hill,2002、Michael,Biochemical Pathways,John Wiley and Sons,1999、Weinberg,The Biology of Cancer,2007、Immunobiology,Janeway et al.7th Ed.,Garland、及びLeroith and Bondy,Growth Factors and Cytokines in Health and Disease,A Multi Volume Treatise,Volumes 1A and IB,Growth Factors,1996。
【0047】
文脈から別段明らかでない限り、本発明の全ての要素、ステップ又は特徴は、他の要素、ステップ又は特徴と任意に組み合わせて使用され得る。
【0048】
分子生化学及び細胞生化学における一般的な方法は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Ed.(Sambrook et al.,Harbor Laboratory Press 2001)、Short Protocols in Molecular Biology,4th Ed.(Ausubel et al.eds.,John Wiley&Sons 1999)、Protein Methods(Bollag et al.,John Wiley&Sons 1996)、Nonviral Vectors for Gene Therapy(Wagner et al.eds.,Academic Press 1999)、Viral Vectors(Kaplift&Loewy eds.,Academic Press 1995)、Immunology Methods Manual(I.Lefkovits ed.,Academic Press 1997)、及びCell and Tissue Culture:Laboratory Procedures in Biotechnology(Doyle&Griffiths,John Wiley&Sons 1998)である。本開示で言及される遺伝子操作のための試薬、クローニングベクター、及びキットは、BioRad、Stratagene、Invitrogen、Sigma-Aldrich、及びClonTechなどの商業的ベンダーから入手可能である。
【0049】
本発明は、本発明の実施のための好ましいモードを含むように、本発明者によって見出されるか、又は提供される特定の実施形態に関して説明されている。当業者は、本開示に照らして、本発明の意図される範囲から逸脱することなく、例示される特定の実施形態で多数の修正及び変更を行うことができることを理解されたい。生物学的機能的等価性を考慮することによって、種類又は量において生物学的作用に影響を与えることなく、タンパク質構造の変更を行うことができる。かかる修正は全て、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。
【0050】
本発明の方法は、予防的又は治療的目的のために使用される。本明細書で使用される場合、「治療する」という用語は、再発の予防、及び既存の状態の治療の両方を指すために使用される。例えば、免疫の発達は、薬剤の投与によって達成され得る。治療が患者の臨床症状を安定化又は改善する、進行中の疾患の治療は、特に目的である。
【0051】
本発明の方法
免疫化に関連する免疫細胞遺伝子発現の変化の決定を得るために、個体から得られた細胞生物試料の単一細胞レベル又は複数細胞レベルでの分析が使用される。驚くべきことに、これらの免疫細胞の遺伝子発現における変化が、ワクチンに対する持続的な抗体応答を発達させる傾向を予測することが見出される。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、血小板である。
【0052】
試料は、1つ以上の細胞、好ましくは血液試料、PBMC試料、又はそれらの画分、例えば、血小板の分析を可能にする任意の好適な種類であり得る。試料は、個体から1回又は複数回得ることができる。複数の試料は、個体内の異なる位置(例えば、血液試料、骨髄試料及び/若しくはリンパ節試料)から、個体から異なる時間に、又はこれらの任意の組み合わせで得ることができる。一実施形態では、ベースライン、又は「0日目」試料は、免疫化前に得られ、試験試料は、免疫化後約7~約10日、例えば、約7日目、約8日目、約9日目、約10日目に得られ、約6日目~約11日目、約7日目~約10日目、約7日目~約9日目、約7日目~約8日目であってもよい。
【0053】
試料が一連のもの、例えば、その間に得られた一連の血液試料として得られる場合、試料は、最新の試料(複数可)の状態によって、又は個体の他の特性によって、又はそれらのいくつかの組み合わせによって決定される間隔で、固定された間隔で得ることができる。間隔は、サンプリングのための個体の可用性及びサンプリング設備の可用性に従って厳密ではなくてもよく、したがって、意図される間隔スキームに対応するおおよその間隔が本発明によって包含されることが理解される。一般に、最も容易に得られる試料は、流体試料である。いくつかの実施形態では、試料は、血液である。
【0054】
1つ以上の細胞又は細胞型、又は1つ以上の細胞又は細胞型を含有する試料は、身体試料から単離することができる。細胞は、赤血球溶解、遠心分離、溶出、密度勾配分離、アフェレーシス、親和性選択、パニング、FACS、Hypaqueによる遠心分離、結合抗体を有する固体支持体(磁性ビーズ、カラム内ビーズ、又は他の表面)などによって身体試料から分離することができる。特定の細胞型で特定されたマーカーに特異的な抗体を使用することによって、比較的均一な細胞集団を得ることができる。代替的に、不均一な細胞集団、例えば、循環末梢血単核細胞を使用することができる。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態では、混合細胞集団の試料中の特定の細胞集団(例えば、CD4T細胞のみ、血小板のみなど)を分析するために、異なるゲーティング戦略が使用される。これらのゲーティング戦略は、1つ以上の特定の表面マーカーの存在に基づき得る。以下のゲートは、死んだ細胞と生細胞とを区別することができ、その後の生細胞のゲーティングは、それらを、例えば、骨髄芽球、単球、及びリンパ球に分類する。二次元輪郭プロット表現、二次元ドットプロット表現、及び/又はヒストグラムを使用することによって、明確な比較を行うことができる。
【0056】
試料は、1つ以上の時点で得ることができる。単一の時点での試料が使用される場合、目的のシグナル伝達タンパク質の活性化形態の存在についての参照「ベースライン」レベルと比較され、これは、正常対照、1つの個体又は個体集団から得られた所定のレベル、エクスビボ活性化のための陰性対照などから得ることができる。
【0057】
必要に応じて、細胞は、例えば、好適なプロテアーゼ、例えば、コラゲナーゼ、ディスパーゼなど、及び同様のものを用いた酵素消化によって、単一の細胞懸濁液に分散される。適切な溶液が、分散又は懸濁に使用される。そのような溶液は、一般に、低濃度、一般に5~25mMにおける許容可能な緩衝液と併せて、好都合に、ウシ胎児血清又は他の天然因子を補充された、平衡塩溶液、例えば、通常の生理食塩水、PBS、ハンク平衡塩溶液などである。好都合な緩衝液には、HEPES1リン酸緩衝液、乳酸緩衝液などが含まれる。細胞は、例えば、3%のパラホルムアルデヒドで固定され得、通常、例えば、当技術分野において既知であるように、かつ本明細書に記載の方法に従って、氷冷メタノール、0.1%のサポニン、3%のBSAを含有するHEPES緩衝PBS、-200℃でのアセトンで2分間の被覆などにより透過される。
【0058】
一実施形態では、候補ワクチンに対する免疫応答の持続性を予測するための方法が提供され、方法は、アジュバントを含み得る候補ワクチンを哺乳動物に投与することと、ワクチン接種後にレシピエントにおける血小板のRNA含有量を決定することとを含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、血小板RNA含有量の分析は、一段階フローサイトメトリー分析、例えば、蛍光活性化フローサイトメトリーによって行われる。そのような方法では、試料、例えば、末梢血試料は、試料中の他の細胞から血小板を区別することができる試薬で標識され、RNA選択的染色で標識される。次いで、細胞の集団がフローサイトメトリーによって分析され、血小板集団にゲーティングされて、血小板のRNA含有量が決定される。細胞は、新鮮であっても凍結されていてもよく、分析の前に固定されていてもよい。
【0060】
そのような実施形態では、個体由来の試料が、血小板を区別することができるマーカーに特異的な、直接的又は間接的に標識された結合剤、例えば、標識された抗体の1つ又はカクテルと接触される。いくつかの実施形態では、結合剤はCD41及びCD61に特異的であり、血小板はCD41CD61である。いくつかの実施形態では、結合剤のカクテルは、CD3、CD8、CD14、CD19、CD20、CD56などのうちの1つ以上に特異的な薬剤を更に含み、これらのマーカーは、非血小板細胞を分析から除外するために使用される。例えば、染色のための抗体のカクテルは、検出可能な標識抗CD3、抗CD19、抗CD14、抗CD56、抗CD41、及び抗CD61抗体を含んでもよい。抗体の別のカクテルは、抗CD3、抗CD8、抗CD20、抗CD14、抗CD41、及び抗CD61抗体を含んでもよい。
【0061】
代替的に、血液試料が抗凝固されて、血小板が豊富な血漿が得られてもよく、血小板が豊富な血漿は、血小板を区別することができるマーカーに特異的である、直接的又は間接的に標識された結合剤、例えば、標識された抗体の1つ又はカクテルと接触される。いくつかの実施形態では、結合剤はCD41及びCD61に特異的であり、血小板はCD41CD61である。一部の実施形態では、結合剤のカクテルは、TER119を含むがこれに限定されない、赤血球マーカーのうちの1つ以上に特異的な薬剤を更に含み、このマーカーは、非血小板RBCを分析から除外するために使用される。例えば、染色のための抗体のカクテルは、検出可能な標識抗TER119、抗CD41、及び抗CD61抗体を含んでもよい。
【0062】
試料は、RNAに対して選択的である染料と接触される。この目的のための好適な染料、例えばRNASelect(商標)Stain(Invitrogen)が市販されており、これは、RNAに結合した場合に明るい緑色の蛍光を示す(最大約490/530nmの吸収/発光)が、DNAに結合した場合に弱い蛍光シグナルのみを示す。他のRNA選択染料、例えばLi et al.(2006)Chemistry and Biology13(6):615-623(参照により本明細書に具体的に組み込まれる)によって説明されるスチリル染料E36、E144及びF22、並びにLu et al.Chemical Communications215(83)によって説明されるチアゾールオレンジ及びp-(メチルチオ)スチリル部分と統合されたRNA選択蛍光染料が、当技術分野において既知である。
【0063】
次いで、試料は、CD41CD61血小板をゲーティングし、任意選択でRBC及び他の免疫細胞を除外し、血小板RNA含有量を決定することによって、フローサイトメトリーにより分析される。血小板RNA含有量の倍数変化は、ワクチン接種前のベースラインレベルと比較することができ、持続的な免疫応答は、ベースラインと比較して少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍の増加に関連付けられる。
【0064】
データ分析
シグネチャパターンは、例えば、以下に記載されるように、任意の好都合なプロトコルを使用して生体試料から生成され得る。読み出しは、平均値(mean)、代表値(average)、中央値、若しくは分散値、又は測定値に関連付けられた他の統計的若しくは数学的に導出された値、例えば、遺伝子発現、RNA含有量などであり得る。マーカー読み出し情報は、対応する参照又は制御パターンと直接比較することによって、更に精査され得る。シグネチャは、参照値と比較してデータマトリックスの任意の点に統計的に有意な変化があるか否か、変化が結合の増加又は減少であるか否か、変化が1つ以上の生理学的状態に特異的であるか否かなどを決定するために、いくつかの点で評価することができる。同一の条件下で各マーカーについて得られた絶対値は、生体系に固有の可変性を示し、個体間に固有の可変性も反映する。
【0065】
アッセイされる試料からシグネチャパターンを得た後、シグネチャパターンは、参照又はベースラインプロファイルと比較され、試料が得られた/由来した患者の応答に関する分類が行われ得る。追加的に、参照又は制御シグネチャパターンは、参照アジュバントの試料から得られるシグネチャパターンであり得る。
【0066】
ある特定の実施形態では、得られたシグネチャパターンは、単一の参照/対照プロファイルと比較され、表現型に関する情報が得られる。更に他の実施形態では、得られたシグネチャパターンは、2つ以上の異なる参照/制御プロファイルと比較され、より詳細な深度情報が得られる。例えば、得られたシグネチャパターンは、正及び負の参照プロファイルと比較され、確認された情報が得られる。
【0067】
試料は、個体の組織又は体液から得ることができる。例えば、試料は、全血、組織生検、血清などから得ることができる。また、この用語には、そのような細胞及び体液の誘導体及び分画が含まれる。
【0068】
プロファイルを識別するために、統計試験は、試験プロファイルと参照プロファイルとの間のマーカーのレベルの変化が有意であるとみなされるための信頼レベルを提供することができる。生データは、通常、マーカーごとに2回、3回、4回、又は5~10回の反復特徴で、各マーカーの値を測定することによって最初に分析することができる。試験データセットは、プロファイルのパラメータ値のうちの1つ以上が、事前定義された有意レベルに対応する限界値を超える場合、参照データセットとは異なるとみなされる。
【0069】
有意性の順序を提供するために、偽発見率(FDR)を決定することができる。まず、非類似性値のヌル分布のセットが生成される。一実施形態では、観測されたプロファイルの値は、偶然に得られた相関係数の分布のシーケンスを形成するように置換され、それによって相関係数のヌル分布の適切なセットを形成する。ヌル分布のセットは、全ての利用可能なプロファイルについての各プロファイルの値を置換すること、全てのプロファイルについての対ごとの相関係数を計算すること、この置換についての相関係数の確率密度関数を計算すること、及び手順をN回(Nは大きな数、通常は300である)繰り返すことによって得られる。N分布を使用して、所与の有意性レベルでの実験的に観察された類似性値の分布から得られた値(類似性の値)を超える相関係数値のカウントの適切な評価基準(平均、中央値など)を計算する。
【0070】
FDRは、予想される偽有意相関の数(ランダム化データのセットにおけるこの選択されたピアソン相関よりも大きい相関から推定される)と、経験データにおけるこの選択されたピアソン相関よりも大きい相関の数(有意相関)との比率である。このカットオフ相関値は、実験プロファイル間の相関に適用することができる。
【0071】
SAMについて、Zスコアは、データセット内の分散の別の評価基準を表し、XからXの平均を引いた値を標準偏差で割った値に等しい。Zスコアは、単一のデータポイントが正規のデータ分布とどのように比較されるかを示す。Zスコアは、データポイントが平均を上回っているか下回っているかを示すだけでなく、測定値がどれほど異常であるかを示す。標準偏差は、データセット内の各値とデータセット内の値の平均との間の平均距離である。
【0072】
前述の分布を使用して、有意性について信頼レベルが選択される。これは、偶然に得られたであろう結果を超える相関係数の最小値を決定するために使用される。この方法を使用すると、正の相関、負の相関、又はその両方の閾値が得られる。この閾値を使用して、使用者は、ペアワイズ相関係数の観測値をフィルタリングし、閾値を超えない値を除外することができる。更に、所与の閾値について、偽陽性率の推定値を得ることができる。個々の「ランダム相関」分布の各々について、いくつの観測が閾値範囲外にあるかを見出すことができる。この手順は、カウントのシーケンスを提供する。配列の平均及び標準偏差は、潜在的な偽陽性の平均数及びその標準偏差を提供する。代替的に、任意の好都合な統計的検証方法が使用され得る。
【0073】
データは、プロファイル間の関係を明らかにするために、教師なし階層的クラスタリングに供され得る。例えば、ピアソン相関がクラスタリングメトリクスとして採用される、階層的クラスタリングを実行することができる。1つのアプローチは、患者疾患データセットを「教師あり学習」の問題における「学習サンプル」とみなすことである。CARTは、医学への応用における標準(Singer(1999)Recursive Partitioning in the Health Sciences,Springer)であり、これは、任意の定性的特徴を定量的特徴に変換することによって修正することができ、達成された有意性レベルによってそれらをソートして、HotellingのT統計量のためのサンプル再利用法及び投げ縄法の好適な応用によって評価される。予測の問題は、回帰の質を評価する際に分類のためのGini基準を適切に使用することによって、予測を見失うことなく回帰の問題に変化する。
【0074】
使用され得る他の分析方法は、ロジスティック回帰を含む。論理回帰の1つの方法は、Ruczinski(2003)Journal of Computational and Graphical Statistics12:475-512である。論理回帰は、その分類子がバイナリツリーとして表示され得るという点でCARTに似ている。各ノードには、CARTによって生成される単純な「論理積」文よりも一般的な機能に関するブール文がある点で異なる。
【0075】
別のアプローチは、最近接縮小重心(Tibshirani(2002)PNAS99:6567-72)のアプローチである。この技術は、k平均に類似しているが、クラスタ中心を縮小することによって、(投げ縄のように)特徴を自動的に選択し、有益な少数の特徴に注意を集中させるという利点がある。このアプローチは、Microsoft Excel用のソフトウェア「プラグイン」であるマイクロアレイの予測分析(PAM)ソフトウェアとして利用可能であり、広く使用されている。更に2つのアルゴリズムセットは、ランダムフォレスト(Breiman(2001)Machine Learning45:5-32及びMART(Hastie(2001)The Elements of Statistical Learning,Springer)である。これらの2つの方法は、既に「委員会の方法」である。したがって、それらは、結果に「投票」する予測因子を含む。これらの方法のいくつかは、Stanford Universityで開発された「R」ソフトウェアに基づいており、継続的に改善され更新されている統計的枠組みを提供している。
【0076】
主成分分析、再帰的分割、予測アルゴリズム、ベイズネットワーク、及びニューラルネットワークを含む他の統計分析アプローチがある。
【0077】
これらのツール及び方法は、いくつかの分類問題に適用することができる。例えば、方法は、i)全ての症例対全ての対照、ii)全ての症例対非持続的応答、iii)全ての症例対持続的応答の比較から開発することができる。
【0078】
第2の分析アプローチでは、断面分析で選択された変数は、予測因子として別々に用いられる。特定の転帰、各患者が観察される時間のランダムな長さ、並びにプロテオミクス及び他の特徴の選択を考慮すると、応答性を分析するパラメトリクスアプローチは、広く適用されているセミパラメトリクスコックスモデルよりも良好となり得る。生存のWeibullパラメトリクスフィットは、ハザード率が単調に増加、減少、又は一定であることを可能にし、比例ハザード表現(Coxモデルと同様に)及び加速故障時間表現も有する。回帰係数及びそれらの関数の近似最大尤度推定量を得るために利用可能な全ての標準ツールは、このモデルで利用可能である。
【0079】
加えて、Coxモデルを使用することができるが、これは特に、投げ縄で共変量の数を管理可能なサイズに減らすことで分析が大幅に簡素化され、生存に対する完全なノンパラメトリクスアプローチの可能性が可能になるためである。
【0080】
分析及びデータベース記憶は、ハードウェア若しくはソフトウェア、又はその両方の組み合わせで実装され得る。本発明の一実施形態では、機械可読記憶媒体が提供され、媒体は、機械可読データで符号化されたデータ記憶材料を含み、機械可読データは、当該データを使用するための命令でプログラムされた機械を使用する場合、本発明のデータセット及びデータ比較のいずれかを表示することができる。そのようなデータは、患者モニタリング、初期診断などの様々な目的のために使用することができる。好ましくは、本発明は、プロセッサ、データ記憶システム(揮発性及び不揮発性メモリ及び/又は記憶要素を含む)、少なくとも1つの入力デバイス、並びに少なくとも1つの出力デバイスを含む、プログラマブルコンピュータ上で実行されるコンピュータプログラムで実装される。プログラムコードは、上記の機能を実行し、出力情報を生成するために入力データに適用される。出力情報は、既知の方式で、1つ以上の出力デバイスに適用される。コンピュータは、例えば、従来の設計のパーソナルコンピュータ、マイクロコンピュータ、又はワークステーションであり得る。
【0081】
各プログラムは、コンピュータシステムと通信するために、高レベルの手続き型又はオブジェクト指向のプログラミング言語で実装されることが好ましい。しかしながら、必要に応じて、プログラムは、アセンブリ言語又は機械語で実装されてもよい。いずれの場合でも、言語は、コンパイルされた言語又は解釈された言語であり得る。そのような各コンピュータプログラムは、好ましくは、本明細書に記載される手順を実行するために記憶媒体又はデバイスがコンピュータによって読み取られるときに、コンピュータを構成及び操作するために、汎用又は特殊目的のプログラム可能なコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体又はデバイス(例えば、ROM又は磁気ディスケット)に記憶される。システムは、また、コンピュータプログラムで構成されたコンピュータ可読記憶媒体として実装されるとみなすことができ、そのように構成された記憶媒体は、コンピュータを、本明細書に記載された機能を実行するための特定の事前定義された方法で動作させる。
【0082】
入力及び出力手段のための様々な構造フォーマットは、本発明のコンピュータベースのシステム内の情報を入力及び出力するために使用され得る。出力の1つのフォーマットは、信頼できるプロファイルと異なる程度の類似性を有する試験データセットを意味する。そのような提示は、類似性のランク付けを当業者に提供し、試験パターンに含まれる類似性の程度を識別する。
【0083】
シグネチャパターン及びそのデータベースは、それらの使用を容易にするために多様な媒体で提供され得る。「媒体」は、本発明のシグネチャパターン情報を含む製造物を指す。本発明のデータベースは、コンピュータ可読媒体、例えば、コンピュータによって直接読み取り及びアクセスすることができる任意の媒体に記録され得る。そのような媒体としては、以下に限定されないが、磁気ディスク、ハードディスク記憶媒体、及び磁気テープなどの磁気記憶媒体、CD-ROMなどの光学記憶媒体、RAM及びROMなどの電気記憶媒体、並びに磁気/光学記憶媒体などのこれらのカテゴリーのハイブリッドが挙げられる。当業者は、現在知られているコンピュータ可読媒体のいずれかが、本データベース情報の記録を含む製造物を形成するためにどのように使用され得るかを容易に理解することができる。「記録された」とは、当技術分野で既知の任意のそのような方法を使用して、コンピュータ可読媒体に情報を記憶するためのプロセスを指す。記憶された情報にアクセスするために使用される手段に基づいて、任意の便利なデータ記憶構造を選択することができる。多様なデータプロセッサプログラム及びフォーマットを、例えば、ワードプロセッサテキストファイル、データベースフォーマットなどを記憶するために使用することができる。
【0084】
「抗原」又は「免疫原」は、免疫応答を刺激する任意の物質を指す。この用語は、死滅した、不活性化された、弱毒化された、又は改変された生きた細菌、ウイルス、又は寄生虫を含む。抗原という用語は、また、個別に、又はこれらの任意の組み合わせで、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、組換えタンパク質、合成ペプチド、タンパク質抽出物、細胞(細菌細胞を含む)、組織、多糖、若しくは脂質、又はこれらの断片を含む。抗原という用語は、また、抗イディオタイプ抗体又はその断片などの抗体、及び抗原又は抗原決定基(エピトープ)を模倣することができる合成ペプチドミモトープを含む。
【0085】
「細胞免疫応答」又は「細胞媒介免疫応答」は、Tリンパ球又は他の白血球細胞、又はその両方によって媒介されるものであり、活性化T細胞、白血球細胞、又はその両方によって産生されるサイトカイン、ケモカイン、及び類似の分子の産生を含む。
【0086】
「乳化剤」とは、乳剤をより安定させるために使用される物質を意味する。
【0087】
「エマルション」は、一方の液体の小さな液滴が他方の液体の連続相に懸濁される2つの非混和性液体の組成物を意味する。
【0088】
対象における「免疫応答」とは、体液性免疫応答、細胞性免疫応答、又は抗原に対する体液性及び細胞性免疫応答の発生を指す。免疫応答は、通常、当技術分野で知られている標準的なイムノアッセイ及び中和アッセイを使用して決定することができる。
【0089】
「免疫原性」とは、免疫応答又は抗原応答を惹起することを意味する。したがって、免疫原性組成物は、免疫応答を誘導する任意の組成物である。
【0090】
「薬学的に許容される」とは、健全な医学的判断の範囲内にあり、過度の毒性、刺激、アレルギー応答などなしに対象の組織と接触して使用するために好適であり、合理的な利益対リスク比に見合い、かつそれらの意図される使用に有効な物質を指す。
【0091】
「反応原性」は、アジュバント、免疫原性、又はワクチン組成物の投与に応答して対象において引き起こされる副作用を指す。それは、投与部位で生じる可能性があり、通常、いくつかの症状の発症の観点から評価される。これらの症状には、炎症、赤み、及び膿瘍が含まれ得る。また、発生、持続時間、及び重症度の観点からも評価される。「低い」反応は、例えば、動悸によってのみ検出可能であり、目によって検出されない、又は短時間の腫脹を伴う。より重度の反応は、例えば、目に見える反応、又はより長い持続時間の反応である。
【0092】
「免疫刺激組成物」は、本明細書に定義されるアジュバントを含む組成物を指し、任意選択で抗原を更に含み得、その場合、より従来的にはワクチンと呼ばれ得る。対象への組成物の投与は、骨髄免疫細胞の応答性状態の増加をもたらす。治療上有効な組成物の量は、抗原の存在、アジュバント、及び対象の状態に応じて変化し得、当業者によって決定され得る。非抗原アジュバント組成物は、目的の疾患の抗原を含まない。
【0093】
アジュバント組成物
いくつかの実施形態では、アジュバント組成物は、使用又は更なる開発のために選択される。例示的なアジュバントは、水中油型エマルションであり、油相中のスクアレンを含み得る。例えば、AS03は、水中油型エマルション中のα-トコフェロール、スクアレン、及びポリソルベート80からなるアジュバント系である。MF59は、スクアレンエマルションを含む別の免疫学的アジュバントである。投与されるアジュバントの用量は、抗原が存在するか否か、それが使用される抗原、及び適用される抗原投与量に依存し得る。また、意図される種及び所望の製剤にも依存する。通常、その量は、従来アジュバントに使用される範囲内である。例えば、アジュバントは、典型的には、約1μg~約1000μg(これらを含む)の1mL用量を含む。
【0094】
アジュバント製剤は、均質化され得るか、又はマイクロ流体化され得る。製剤は、典型的には、1つ以上のホモジナイザーを1回以上通過させることによって、一次ブレンドプロセスに供される。任意の市販のホモジナイザー、例えば、Ross乳化機(Hauppauge、N.Y.)、Gaulinホモジナイザー(Everett、Mass.)、又はMicrofluidics(Newton、Mass.)を、この目的のために使用することができる。一実施形態において、製剤は、10,000rpmで3分間均質化される。マイクロ流体化は、市販のマイクロフルイダイザ、例えばMicrofluidicsから入手可能なモデル番号110Y(Newton、Mass.)、Gaulin Model30CD(Gaulin,Inc.、Everett、Mass.)、及びRainnie Minilab Type8.30H Miro Atomizer Food and Dairy,Inc.、Hudson、Wis.)によって達成され得る。これらのマイクロフルイダイザは、2つの流体流が相互作用チャンバ内で高速で相互作用してサブミクロンサイズの液滴を有する組成物を形成するように、高圧下で流体を小さな開口部に押し通すことによって動作する。一実施形態では、製剤は、200ミクロンの制限寸法チャンバを10,000+/-500psiで通過させることによってマイクロ流体化される。
【0095】
アジュバント組成物の投与経路としては、非経口、経口、経鼻、鼻腔内、気管内、局所などが挙げられる。注射器、点滴器、無針注射デバイス、パッチなどを含む任意の好適なデバイスを使用して、組成物を投与してもよい。使用のために選択される経路及びデバイスは、アジュバント、抗原、及び対象の組成に依存し、そのようなものは当業者に周知である。
【0096】
アジュバント組成物は、例えば、四級アンモニウム化合物(例えば、DDA)、及びインターロイキン、インターフェロン、又は他のサイトカインなどの1つ以上の免疫調節剤を更に含むことができる。これらの材料は、商業的に購入することができる。アジュバント組成物における使用に好適な免疫調節剤の量は、使用される免疫調節剤の性質及び対象に依存する。しかしながら、それらは一般に、用量当たり約1μg~約5,000μgの量で使用される。特定の例では、DDAを含有するアジュバント組成物は、抗原溶液を新たに調製したDDAの溶液と単純に混合することによって調製することができる。
【0097】
アジュバント組成物は、例えば、DEAEデキストラン、ポリエチレングリコール、並びにポリアクリル酸及びポリメタクリル酸(例えば、CARBOPOL(登録商標))などの1つ以上のポリマーを更に含むことができる。そのような材料は、商業的に購入することができる。アジュバント組成物における使用に好適なポリマーの量は、使用されるポリマーの性質に依存する。しかしながら、それらは一般に、約0.0001%体積対体積(v/v)~約75%v/vの量で使用される。他の実施形態では、それらは、約0.001%v/v~約50%v/v、約0.005%v/v~約25%v/v、約0.01%v/v~約10%v/v、約0.05%v/v~約2%v/v、及び約0.1%v/v~約0.75%v/vの量で使用される。別の実施形態において、それらは、約0.02v/v~約0.4%v/vの量で使用される。DEAE-デキストランは、50,000Da~5,000,000Daの範囲内の分子サイズを有することができ、又は500,000Da~2,000,000Daの範囲内であってもよい。そのような材料は、商業的に購入され得るか、又はデキストランから調製され得る。
【0098】
アジュバント組成物は、例えば、Bay R1005(商標)及びアルミニウムなどの1つ以上のTh2刺激剤を更に含むことができる。アジュバント組成物における使用に好適なTh2刺激剤の量は、使用されるTh2刺激剤の性質に依存する。しかしながら、それらは一般に、用量当たり約0.01mg~約10mgの量で使用される。他の実施形態では、これらは、用量当たり約0.05mg~約7.5mg、用量当たり約0.1mg~約5mg、用量当たり約0.5mg~約2.5mg、及び用量当たり1mg~約2mgの量で使用される。具体的な例は、「N-(2-デオキシ-2-L-ロイシルアミノ-β-D-グルコピラノシル)-N-オクタデシルドデカンアミドアセテート」という化学名の糖脂質であるBay R1005(商標)である。これは、水溶液中でミセルを形成する両親媒性分子である。
【0099】
免疫応答性を得ることができる疾患を引き起こす細菌のいくつかの例としては、例えば、Aceinetobacter calcoaceticus、Acetobacter paseruianus、Actinobacillus pleuropneumoniae、Aeromonas hydrophila、Alicyclobacillus acidocaldarius、Arhaeglobus fulgidus、Bacillus pumilus、Bacillus stearothermophillus、Bacillus subtilis、Bacillus thermocatenulatus、Bordetella bronchiseptica、Burkholderia cepacia、Burkholderia glumae、Campylobacter coli、Campylobacter fetus、Campylobacter jejuni、Campylobacter hyointestinalis、Chlamydia psittaci、Chlamydia trachomatis、Chlamydophila spp.、Chromobacterium viscosum、Erysipelothrix rhusiopathieae、Listeria monocytogenes、Ehrlichia canis、Escherichia coli、Haemophilus influenzae、Haemophilus somnus、Helicobacter suis、Lawsonia intracellularis、Legionella pneumophilia、Moraxellsa sp.、Mycobactrium bovis、Mycoplasma hyopneumoniae、Mycoplasma mycoides subsp.、mycoides LC、Clostridium perfringens、Odoribacter denticanis、Pasteurella(Mannheimia)haemolytica、Pasteurella multocida、Photorhabdus luminescens、Porphyromonas gulae、Porphyromonas gingivalis、Porphyromonas salivosa、Propionibacterium acnes、Proteus vulgaris、Pseudomnas wisconsinensis、Pseudomonas aeruginosa、Pseudomonas fluorescens C9、Pseudomonas fluorescens SIKW1、Pseudomonas fragi、Pseudomonas luteola、Pseudomonas oleovorans、Pseudomonas sp B11-1、Alcaliges eutrophus、Psychrobacter immobilis、Rickettsia prowazekii、Rickettsia rickettsia、Salmonella typhimurium、Salmonella bongori、Salmonella enterica、Salmonella dublin、Salmonella typhimurium、Salmonella choleraseuis、Salmonella newport、Serratia marcescens、Spirlina platensis、Staphlyoccocus aureus、Staphyloccoccus epidermidis、Staphylococcus hyicus、Streptomyces albus、Streptomyces cinnamoneus、Streptococcus suis、Streptomyces exfoliates、Streptomyces scabies、Sulfolobus acidocaldarius、Syechocystis sp.、Vibrio cholerae、Borrelia burgdorferi、Treponema denticola、Treponema minutum、Treponema phagedenis、Treponema refringens、Treponema vincentii、Treponema palladium、及びLeptospira種、例えば既知の病原菌Leptospira canicola、Leptospira grippotyposa、Leptospira hardjo、Leptospira borgpetersenii hardjo-bovis、Leptospira borgpetersenii hardjo-prajitno、Leptospira interrogans、Leptospira icterohaemorrhagiae、Leptospira pomona、及びLeptospira bratislava、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0100】
免疫応答性を得ることができる疾患を引き起こすウイルスの例としては、例えば、SARS-Cov1、SARS-Cov2、及び他のコロナウイルス、トリヘルペスウイルス、ウシヘルペスウイルス、イヌヘルペスウイルス、ウマヘルペスウイルス、ネコウイルス鼻気管炎ウイルス、マレク病ウイルス、ヒツジヘルペスウイルス、ブタヘルペスウイルス、仮性狂犬病ウイルス、トリパラミクソウイルス、ウシ呼吸器合胞体ウイルス、イヌジステンパーウイルス、イヌパラインフルエンザウイルス、イヌアデノウイルス、イヌパルボウイルス、ウシパランフルエンザウイルス3、ヒツジパラインフルエンザ3、牛疫ウイルス、ボーダー病ウイルス、ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)、BVDV I型、BVDV II型、古典的ブタ熱ウイルス、トリ白血病ウイルス、ウシ免疫不全ウイルス、ウシ白血病ウイルス、ウシ結核、ウマ感染性貧血ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、ネコ白血病ウイルス(FeLV)、ニューカッスル病ウイルス、ヒツジ進行性肺炎ウイルス、ヒツジ肺腺がんウイルス、イヌコロナウイルス(CCV)、汎親和性CCV、イヌ呼吸器コロナウイルス、ウシコロナウイルス、ネコカリシウイルス、ネコ腸管コロナウイルス、ネコ感染性腹膜炎、ウイルス、ブタ流行性下痢ウイルス、ブタ血液凝集性脳脊髄炎ウイルス、ブタパルボウイルス、ブタサーコウイルス(PCV)I型、PCV II型、ブタ生殖呼吸器症候群(PRRS)ウイルス、伝染性胃腸炎ウイルス、トルココロナウイルス、ウシ一日熱ウイルス、狂犬病、ロトウイルス、水疱性口内炎ウイルス、レンチウイルス、トリインフルエンザ、ライノウイルス、ウマインフルエンザウイルス、ブタインフルエンザウイルス、イヌインフルエンザウイルス、ネコインフルエンザウイルス、ヒトインフルエンザウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス(EEE)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、B型肝炎ウイルス、ライノウイルス、及び麻疹ウイルス、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0101】
免疫応答性を得ることができる疾患を引き起こす寄生虫の例としては、例えば、Anaplasma、Fasciola hepatica(肝臓寄生吸虫)、Coccidia、Eimeria spp.、Neospora caninum、Toxoplasma gondii、Giardia、Dirofilaria(犬糸状虫)、Ancylostoma(鉤虫)、Trypanosoma spp.、Leishmania spp.、Trichomonas spp.、Cryptosporidium parvum、Babesia、Schistosoma、Taenia、Strongyloides、Ascaris、Trichinella、Sarcocystis、Hammondia、及びIsopsora、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。Ixodes、Rhipicephalus、Dermacentor、Amblyomma、Boophilus、Hyalomma、及びHaemaphysalis種、並びにそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、ダニを含む外部寄生虫も企図される。
【0102】
油は、アジュバントの成分として添加されると、一般に、長く遅い放出プロファイルを提供する。本発明において、油は、代謝性又は非代謝性であり得る。油は、水中油、油中水、又は水中油中水エマルションの形態であり得る。
【0103】
本発明における使用に好適な油は、アルカン、アルケン、アルキン、並びにそれらの対応する酸及びアルコール、それらのエーテル及びエステル、並びにそれらの混合物を含む。油の個々の化合物は、軽炭化水素化合物であり、すなわち、そのような成分は、6~30個の炭素原子を有する。油は、石油製品から合成的に調製又は精製することができる。部分は、直鎖又は分枝鎖構造を有し得る。これは、完全に飽和していてもよく、又は1つ以上の二重結合若しくは三重結合を有してもよい。本発明で使用するためのいくつかの非代謝性油は、例えば、鉱物油、パラフィン油、及びシクロパラフィンを含む。
【0104】
「油」という用語は、また、「軽鉱油」、すなわち、同様にワセリンの蒸留によって得られるが、白色鉱油よりもわずかに低い比重を有する油を含むことが意図される。
【0105】
代謝可能な油は、代謝可能で非毒性の油を含む。油は、アジュバントが投与される対象の体によって代謝され得、対象に毒性でない任意の植物油、魚油、動物油又は合成調製油であり得る。植物油の源は、ナッツ、種子、穀物を含む。
【0106】
組成物の他の成分は、薬学的に許容される賦形剤、例えば、担体、溶媒、及び希釈剤、等張剤、緩衝剤、安定剤、保存剤、血管収縮剤、抗菌剤、抗真菌剤などを含み得る。典型的な担体、溶媒、及び希釈剤は、水、生理食塩水、デキストロース、エタノール、グリセロール、油などを含む。代表的な等張化剤は、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、ラクトースなどを含む。有用な安定剤は、ゼラチン、アルブミンなどを含む。
【0107】
界面活性剤は、アジュバント及び抗原の担体として機能するように選択されたエマルションの安定化を補助するために使用される。本発明で使用するために好適な界面活性剤は、天然の生物学的に適合する界面活性剤及び非天然の合成界面活性剤を含む。生物学的に適合する界面活性剤は、リン脂質化合物又はリン脂質の混合物を含む。好ましいリン脂質は、大豆又は卵レシチンなどのホスファチジルコリン(レシチン)である。レシチンは、粗植物油を水洗し、得られた水和ガムを分離して乾燥させることによって、ホスファチド及びトリグリセリドの混合物として得ることができる。精製製品は、アセトン洗浄によってトリグリセリド及び植物油を除去した後に残ったアセトン不溶性リン脂質及び糖脂質の混合物を分別することによって得ることができる。代替的に、レシチンは、様々な商業的供給源から得ることができる。他の好適なリン脂質は、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、カルジオリピン、及びホスファチジルエタノールアミンを含む。リン脂質は、天然源から単離され得るか、又は従来通り合成され得る。
【0108】
本発明で使用するために好適な非天然の合成界面活性剤は、ソルビタン系非イオン性界面活性剤、例えば、脂肪酸置換ソルビタン界面活性剤、ポリエトキシル化ソルビトールの脂肪酸エステル(TWEEN(商標))、ヒマシ油などの源からの脂肪酸のポリエチレングリコールエステル、ポリエトキシル化脂肪酸、ポリエトキシル化イソオクチルフェノール/ホルムアルデヒドポリマー、ポリオキシエチレン脂肪酸アルコールエーテル(BRIJ(商標))、ポリオキシエチレンノンフェニルエーテル(TRITON(商標))、ポリオキシエチレンイソオクチルフェニルエーテル(TRITON(商標)X)を含む。
【0109】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、任意の全ての溶媒、分散媒体、コーティング、アジュバント、安定化剤、希釈剤、保存剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤、吸着遅延剤などを含む。担体は、組成物の他の成分と適合性があり、対象に有害でないという意味で、「許容される」必要がある。典型的には、担体は、滅菌され、発熱物質を含まず、使用される投与様式に基づいて選択される。組成物を含む製薬学的に許容可能な担体のための好ましい製剤は、米国(US)農務省若しくは米国食品医薬品局、又は米国以外の国における同等の政府機関によって公布された適用可能な規制で承認された医薬品担体であることは、当業者に周知である。したがって、組成物の商業的製造のための薬学的に許容される担体は、既に承認されているか、又は米国又は外国の適切な政府機関によって承認されるであろう担体である。
【0110】
組成物は、任意選択で、薬学的ビヒクル、賦形剤、又は媒体として機能する、適合性がある薬学的に許容される(すなわち、無菌又は無毒)液体、半固体、又は固体希釈剤を含み得る。希釈剤は、水、生理食塩水、デキストロース、エタノール、グリセロールなどを含み得る。等張剤は、とりわけ、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、及びラクトースを含み得る。安定剤は、とりわけ、アルブミンを含む。
【0111】
組成物は、また、例えば、ゲンタマイシン、メルチオレート、又はクロロクレゾールを含む抗生物質又は保存剤を含有し得る。選択される様々なクラスの抗生物質又は保存剤は、当業者に周知である。
【0112】
キットが提供され得る。キットは、変換に備えて細胞を単離及び培養するために好適な細胞又は試薬、T細胞を培養するために好適な試薬、並びにワクチンアジュバントのエピゲノム効果を決定するために有用な試薬を更に含み得る。キットは、また、チューブ、緩衝液など、及び使用説明書を含み得る。
【0113】
実験
以下の実施例は、当業者に、本発明の作製及び使用方法の完全な開示及び説明を提供するために提示されるものであり、発明者が発明とみなす範囲を限定することを意図せず、また、以下の実験が行われる全て又は唯一の実験であることを表すことを意図するものではない。使用される数字(例えば、量、温度など)に対する正確性を確保する努力がなされているが、ある程度の実験誤差及び偏差が考慮されるべきである。別様に示されない限り、部とは重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧又はほぼ大気圧である。
【0114】
実施例1
AS03でアジュバント添加されたワクチン接種のシステム生物学的分析は、ヒトにおけるアジュバント性及び抗体持続性のメカニズムを明らかにする。
AS03がヒトにおいて堅牢で持続的な免疫応答を誘導する分子メカニズムを解明するために、ここでは、健康な成人のコホートにおいて、AS03あり又はなしでの、大流行前のH5N1トリインフルエンザワクチンに対する細胞、転写、及び代謝応答の詳細なマルチオミクス分析を行った。インフルエンザワクチンデータセットのメタアナリシスを介して、AS03によって特異的に誘導される遺伝子の重要なセットを特定することができた。これらの遺伝子の経路分析は、AS03の作用メカニズムにおけるアポトーシスの重要な役割を示唆する。更に、血漿メタボロミクス分析は、脂質及び脂肪酸代謝におけるAS03誘導性撹乱が、AS03特異的アポトーシスシグネチャの発現と高度に関連していることを明らかにした。H5N1+AS03ワクチン接種者の独立した盲検コホートにおいて、抗体応答寿命を首尾よく予測することができる初期の遺伝子シグネチャを確立することができた。その後の単一細胞プロファイリングは、この細胞接着関連寿命シグネチャの主な駆動因子として、血小板間のRNA含有量の差異を明らかにした。総合的に、これらの結果は、パンデミックアジュバントAS03がワクチン接種に対する強力で永続的な免疫を誘導することができるメカニズムに関する重要な洞察を提供し、将来のパンデミックに対するワクチンを改善するための新しいアジュバントの標的化された開発を導くために役立ち得る。
【0115】
AS03は、ブースターワクチン接種後に増強される強力な初期転写シグネチャを誘導する。我々は、21~45歳の合計50人の健康な対象を2:1の比で無作為化し、AS03アジュバントあり(n=34)又はなし(n=16)で投与された、21日間隔で2回の一価、分割ビリオン、不活性化H5N1クレード2.1 A/Indonesia/05/2005インフルエンザワクチンを投与した(図1A及び補足表1)。図1Aに示されるように、非アジュバントH5N1ワクチン接種に対する先天性及び適応性免疫応答の包括的な全体像を得るために、末梢血単核細胞(PBMC)対して遺伝子発現分析を行い、ワクチン接種の初日及びその後の一定の間隔でワクチン誘導B細胞及びT細胞応答の主要な免疫学的パラメータを測定した。
【0116】
我々は、PBMCにおける遺伝子発現に対するAS03の影響を調べることから調査を開始した。まず、アジュバント群及び非アジュバント群の両方において、ワクチン接種後の差次的発現遺伝子(DEG)を特定した。H5N1+AS03は、H5N1単独よりもはるかに堅牢な転写応答を誘導し、大部分のDEGは、プライム及びブースト後の1日目に観察された(図1B)。異なる時点での両方の群間のDEGにおける重複を調べることによって、プライム後3日目の非アジュバント群におけるピーク応答が、アジュバント群における1日目のプライム応答及びブースト応答と多くの遺伝子を共有したことが観察され(図8A)、これは、非アジュバント対象では応答の動態が遅延していることを示している。
【0117】
H5N1ワクチン接種に応答して活性化された特異的経路を特定するために、我々は、ワクチン接種後の倍数変化によってランク付けされた遺伝子に対して遺伝子セット濃縮分析(GSEA)を行った。この分析の基礎として、我々は、公的に利用可能なヒト血液トランスクリプトームの大規模なネットワーク統合を通じて、我々のグループによって以前に特定された一連の血液転写モジュール(BTM)を使用した。高レベルの機能カテゴリーに従ってBTM濃縮スコアを併合すると、AS03が、プライム後1日目及び7日目の広範な先天性及び適応性免疫細胞及び経路の発現をそれぞれ増加させ、ワクチン接種を促進することが明らかになった(図1C及び図1D)。特に、我々は、各免疫化後の初期時点での単球及び樹状細胞(DC)活性化に関連するBTMの強力な濃縮を見出したが、7日目の応答は、主に、堅牢なB細胞及び形質細胞転写応答によって支配された。一方、非アジュバント対象は、図1Eに詳述されるように、プライム用量の後に非常に少ない免疫活性化を示し、抗原提示及びインターフェロンシグナル伝達などの先天性応答の適度な濃縮を達成するためにブースト用量を必要とした。したがって、B細胞及び形質細胞モジュールは、プライムの7日後に非アジュバント群でのみ軽度に調節された(図1C)が、アジュバント群よりも程度が低いもののブースト後により強く調節された(図1D)。
【0118】
特に、遺伝子発現に対するAS03の効果を分析している間、アジュバントワクチンの各用量後に転写活性の有意な違いに気付いた。実際に、我々は、各用量後にAS03によって引き起こされる免疫応答の種類に全体的に広範な類似性があるにもかかわらず、ブースター投与後1日目(d22)において、プライム後1日目と比較してインターフェロンシグナル伝達及びDC活性化に関連するいくつかのBTMがより強く上方制御されることを見出した(図1F及び図1G)。しかしながら、3日目及び24日目の応答に対する遺伝子発現分析は、プライム免疫化とブースト免疫化との間のより多くの定性的な違いを明らかにし、複数のBTMは、第1の用量の後に負に濃縮されたが、AS03を用いた第2のワクチン接種の後に正に濃縮された(図1H)。重要なことに、顆粒球、単球、並びにIL-8及びHBEGFなどのマクロファージの動員のための重要な化学療法機能を有する分子をコードする転写因子PAX3の制御下にある遺伝子は、プライム後3日で下方制御されたが、ブースト後3日で依然として強力に上方制御されるようであり(図1I及び図8B)、したがって、H5N1ワクチン接種に対する先天性免疫応答の質、大きさ、及び持続性に関するAS03を用いたプライム-ブーストレジメンに対する以前に評価されていない含意が示唆された。
【0119】
アジュバントH5N1ワクチン接種は、細胞移動の転写シグネチャに関連する持続性を有する保護性H5ヘッド指向性抗体応答を促進する。AS03は、インフルエンザワクチン接種の文脈において、ヒトにおける抗体応答を増強することが以前に報告されている。したがって、AS03を用いた免疫後の全ての測定された時点で、H5N1A/インドネシア特異的微小中和(MN)力価の有意な増加が観察された(図2A)。ブースターワクチン接種は、HAI力価によって決定されたように、42日目までに70%のセロコンバージョン率をもたらした(図8C及び補足表2)。対照的に、非アジュバント群の対象は、MN及びHAI応答が有意に低いことを示し、ベースラインレベルに対するHAI力価の4倍の増加を達成したワクチンレシピエントはいなかった。AS03アジュバントワクチン接種は、ワクチン株に対する中和抗体の誘導に加えて、クレード2に属する3つの異種H5N1株、すなわち、クレード2.2.1 A/トルコ、クレード2.2.1 A/エジプト、及びクレード2.3.4 A/安徽(図8D)に対する広範なクロスクレード中和抗体を促進したが、クレード1A/ベトナム株に対しては促進せず、AS03が、系統的に近いが、遠くないH5N1ウイルスに対する広範な抗体媒介交差保護を誘導することを示した。
【0120】
更に、我々は、表面プラズモン共鳴(SPR)リアルタイム動態アッセイを使用して、ブーストH5N1ワクチン株に由来する組換えHA1(ヘッド)及びHA2(ステム)ドメインに対する総抗体結合及びポリクローナル血清抗体親和性を定量化した。SPR測定は、AS03アジュバントH5N1ワクチンを受けた対象が、非アジュバント群の対象と比較して、プライム及びブーストの両方の後、H5ヘッド及びステムサブユニットの両方に対して有意に高いレベルのHA結合抗体を示すことを示した(図8E)。重要なことに、両方のコホートは、プライム免疫化後に主にH5ステムドメインを標的とする抗体を生成したが、H5ヘッド:ステム抗体比は、2回目の免疫化後にAS03群で劇的に変化し、H5ヘッドドメインに対して向けられたポリクローナル抗体の濃度の実質的な増加は、経時的に継続し(図2B)、MN力価と相関した(図8F)。対照的に、H5N1を単独で受けた研究参加者は、ワクチン接種後にH5ヘッド特異的抗体の濃度のわずかな増加しか生じず、このワクチン群における抗体応答は、主にH5ステム特異的抗体価の中程度の増加に限定された。更に、抗原-抗体複合体の解離速度は、プライム後の非アジュバント群と同等であるが、H5ヘッドドメインに対する抗体親和性は、ブースト後のAS03群で有意に高く(図2C)、MN力価と相関する(図8G)ことを明らかにした。予測可能なことに、H5N1単独では、H5ヘッド及びステムドメインに対して限定的な抗体親和性成熟のみを誘導することができ(図2C)、したがって、抗体レパートリーのエピトープ拡散ではなく、記憶想起応答の再発を示唆していた。
【0121】
最近のCOVID-19危機により、パンデミック発症の初期段階のように、特に複数の流行波が発生し、ワクチンの需要が供給を上回る可能性があるシナリオで、長期的な保護を誘導し得るパンデミックワクチンを開発することの重要性が強まった。ここで、我々は、プライムH5N1+AS03ワクチン接種後42日目と100日目との間の幾何平均MN及びHAI力価の4倍の減少を観察した(図2A及び図8C)。H5N1+AS03に対する抗体応答とTIVに対する抗体応答との比較は、トリインフルエンザに対する抗体価が、ワクチン接種後数ヶ月以内に季節性インフルエンザ株に対するものと類似の大きさの減少を示すことを示した(図9A)。抗体応答の相対的継続性の評価基準として、我々は、42日目のHAI力価と100日目のHAI力価との間の線形適合から残量を計算した(図9B)。このアプローチは、最初の42日目の応答に対する100日目の力価の依存性を除去し、残量は、「正規化された」100日目の力価として見ることができ、正の値は、平均よりも持続的な応答を有する対象を示す。
【0122】
まず、我々は、28日目のHAI力価と相関することが示された季節性インフルエンザワクチン接種を用いた以前の研究で我々及び他の研究者により観察された7日目の「形質芽細胞シグネチャ」が、抗体応答の持続性と相関するか否かを決定した。季節性インフルエンザワクチンに関する我々の研究で以前に見られたように、これと持続性との相関は観察されなかった(図2C及び図2D)。
【0123】
継続的な抗体応答に関連する転写シグネチャを特定するために、我々は、100日目/42日目残量との相関によってランク付けされた遺伝子に対してGSEAを実行した(図2D)。濃縮されたシグネチャは、用量間で異なるように見え、プライム後7日目の細胞周期関連モジュールの発現及びブースト後1~7日目の細胞接着/血小板活性化関連モジュールは、継続性の増加と関連付けられている。我々は、これらの結果を、TIVワクチン接種における継続性の以前に特定されたシグネチャと比較し、有意な重複があることを見出した(図2D)。具体的には、血小板活性化/アクチン結合モジュールM196内の遺伝子は、両方の研究(図2E及び図2F)において、抗体継続性との相関において強い一致を示し、インフルエンザワクチン接種に対する長寿命抗体応答の発達における共通のメカニズムを示していた。
【0124】
更に、抗体継続性のこれらのシグネチャの堅牢性を検証するために、機械学習アプローチを使用して、独立し盲検試験セットで抗体継続性を予測することができる分類子を訓練した。簡潔に述べると、我々は、H5N1+AS03データを訓練セットとして、及び2010/2011TIVデータを検証セットとして使用して、100/42日目のHAI残量を予測するために、BTMレベルの特徴に基づいて線形回帰モデルを訓練した(詳細については方法を参照されたい)。28/21日目の遺伝子発現データを用いて、予測された100/42日目のHAI残量が、盲検試験セットで測定された残量と有意に相関するモデルを構築することができた(図2G)。特に、これらの予測モジュール内の遺伝子の分析は、抗体継続性と最も高い関連性を有するそれらの多くが、細胞接着/移動(CTTN、CDHR5、MYLK)に関与し、かつ/又は血小板(SELP、PROS1、PF4、PPBP)で高発現したことを示し(図2H)、AS03アジュバントワクチン接種に対する持続的な抗体応答の確立における細胞移動及び血小板の潜在的な役割を示していた。
【0125】
CITEseq分析は、抗体継続性の転写シグネチャのための血小板起源を明らかにする。我々の発見によって促されて、我々は、抗体継続性のこの新たに特定された転写シグネチャの細胞起源を調べようとした。これを達成するために、我々は、CITE-seq(配列決定によるトランスクリプトーム及びエピトープの細胞インデックス化)を行い、H5N1+AS03ワクチン接種に対する3人の「継続的」及び3人の「減弱」抗体応答者(それぞれ、100/42日目のHAI残量>0及び<0)から、21日目及び28日目にPBMCの単一細胞タンパク質及びトランスクリプトームランドスケープを構築した。最初の前処理後、我々は、62,789個の細胞についてのトランスクリプトームを得た。UMAP及びグラフベースのクラスタリングを介した次元削減(詳細については方法を参照)を介して、全ての試料及び時点に均等に分布した26個の異なるセルクラスタを識別することができた(図10A)。低品質細胞を除外するための細胞型アノテーション及び細胞ごとの品質管理処理(方法セクション及び補足図4A図4Cを参照)に続いて、我々は単一免疫細胞ランドスケープ(図3A)を構築し、予測シグネチャ(図2Hに報告されるように)における抗体寿命関連遺伝子が、バルクPBMC遺伝子発現分析によって以前に示唆されたように、血小板において、並びに単球及び血小板の両方の特徴を共有する細胞の小さなクラスタにおいて、実際に高く発現したことを見出した(図3B)。
【0126】
我々は次に、継続性応答者と減弱応答者との間の予測遺伝子シグネチャの違いが、単一細胞レベルでどのように出現したかを調査することに着手した。CITE-seq分析がマイクロアレイデータと同じ免疫応答ダイナミクスをキャプチャしたことを確認するために、マイクロアレイによって測定されたDEGの28/21日目FCをCITE-seqからの擬似バルク推定値と比較した(図10B)。この比較において、5人の対象は、2つの測定値の間に強い相関を示し、一方、1人の対象は、一致を示さず、したがって下流の分析から除外された。全体として、バルクPBMCマイクロアレイの結果に従って、継続性応答者は、減弱応答者と比較して、抗体持続性シグネチャの有意に高い偽バルク発現を有した(図3C、左パネル)。重要なことに、擬似バルク計算から一度に1個の細胞クラスタを除外することによって、我々は、分析から血小板クラスタを除外することが、継続性抗体応答者と減弱抗体応答者との間で観察される転写差のほぼ完全な喪失をもたらしたことを見出した(図3C、右パネル)。この「除外アプローチ」は、バルクPMBC分析で観察された持続性シグネチャがほとんど血小板に由来することを再び実証した。
【0127】
しかし、継続的応答者と減弱応答者との間で、血小板頻度に明確な差は見られなかった(図3D)。追加的に、血小板集団内の細胞当たりの正規化された発現を比較すると、2つの群間の28/21日目の遺伝子シグネチャに有意差は観察されなかった(図10C)。対照的に、我々は、21日目と28日目との間に、特に継続的応答者の間では生じなかった、血小板集団内の総読み取りの大幅な減少を記録し(図3E)、したがって、継続的応答者と減弱応答者との間の抗体持続性シグネチャに捕捉された転写差の主な原因として、血小板頻度ではなく血小板内のRNA含有量の減少が示された。
【0128】
予測抗体持続性シグネチャの細胞起源を特定することだけでなく、我々は、また、バルク発現測定によって最初に検出されなかった継続的応答者と減弱応答者との間の追加の細胞特異的差異を特定できるか否かを問うた。この目的のために、我々は、偏りがない比較を行い、各時点及び各クラスタ内での継続的応答者及び減弱応答者由来の細胞間のDEGを決定し、続いて、BTMに含まれる遺伝子の過剰表現分析を行った。ワクチン接種に対する抗体応答を担う一次細胞型として、特に興味深かったことは、スプライセオソーム及び電子輸送発現における形質芽細胞間の差異であった(図3F)。これらのモジュール内の遺伝子を比較すると、継続的応答者の形質芽細胞が、減弱応答者と比較して、小さな核リボ核タンパク質及びミトコンドリア呼吸電子輸送複合体をコードする遺伝子の発現の上昇を有することが観察された(図3G)。これらの結果は、B細胞の活性化及び形質細胞による抗体産生に必要な重要な代謝プロセスとしての酸化的リン酸化及びミトコンドリア再構築を示す最近の知見と一致する。
【0129】
血液中のワクチン誘導T濾胞ヘルパー細胞の頻度は、中和抗体価及び抗体アビディティと相関する。AS03によって促進されるH5抗原に対する高親和性を有する中和抗体の生成は、H5N1ワクチン接種の文脈におけるT濾胞ヘルパー(Tfh)細胞の役割を調査することを促した。Tfh細胞は、胚中心(GC)におけるB細胞の親和性成熟にとって重要であり、動物モデルにおけるAS03を用いた免疫化後に以前にモニタリングされている。ボーンファイドGC Tfh細胞は、末梢血において一般的に検出されないが、我々は、H5N1ワクチン接種の前後に、以前にGC Tfh細胞と機能的に類似していると説明された循環Tfh様CXCR5+CD4+T細胞の集団を測定した。我々は、H5N1+AS03による免疫化が、各免疫化後7日目に、活性化された、PD-1+ICOS+、血液Tfh細胞の頻度の増加をもたらすことを見出した(図4A)。驚くべきことに、ブースト後に観察された活性化Tfhの増加は一貫しており、MN力価(図4B)及びH5ヘッドドメインに対する抗体親和性(図4C)の両方の増加と相関していた。逆に、我々は、非アジュバント群において、ワクチン接種後の活性化Tfh細胞頻度の有意な変化を検出しなかった。
【0130】
ワクチン誘導血液Tfh細胞を更に特性評価するために、我々は、7日目及び28日目に、PD-1+ICOS+CXCR5+CD4+活性化及びPD-1-ICOS-静止CXCR5+CD4+T細胞をFACSでソートし、Clariom S技術を使用してそれらの遺伝子発現をプロファイリングした。追加的に、以前の研究では、B細胞ヘルパー電位に基づいて、末梢非効率的Tfh1(CXCR3+CCR6-)細胞及び効率的Tfh2(CXCR3-CCR6-)又はTfh17(CXCR3-CCR6+)細胞を区別するCXCR3及びCCR6マーカーの能力が説明されていたため(Schmitt et al.,2014)、我々は、Tfh細胞の分極が、免疫化後に2つのワクチン群間で観察された活性化Tfh頻度の違いを説明できるか否かを探求しようとした。
【0131】
図12Aに提示されるように)ソートされたTfhサブセットの遺伝子発現分析は、Tfh1及びTfh2の両方の集団で一貫していた、活性化Tfh細胞と静止Tfh細胞との間の有意な転写差を明らかにした(図4D)。活性化Tfhは、CD4+及びCD8+T細胞の両方によって構成的に分泌される自然応答及び適応応答の両方の重要な免疫調節因子であるフィブリノーゲン様タンパク質2をコードするFGL2遺伝子の発現を上方制御し(Marazzi et al.,1998)、また、その産物が細胞傷害能を有するリンパ球によって選択的に産生されるFGFBP2(以前はKSP37として知られていた)も上方制御した。驚くべきことに、我々は、また、通常骨髄細胞に見られるC型レクチン受容体CLEC7A、並びに単球に豊富に存在するS100カルシウム結合タンパク質S100A8、S100A9、及びS100A12に加えて、リゾチーム(LYZ)及びIL1βなどの自然免疫細胞に典型的な既知の抗菌特性を有するタンパク質をコードする遺伝子の強い調節に気付いた。したがって、DEGのGSEA分析は、単球関連BTMの有意な濃縮を明らかにし、そして、我々のソートした集団における血液Tfh以外の他の細胞型の浸潤の可能性を示唆した(図12B)。我々の目的は、異なる活性化状態における末梢CXCR5+CD4+T細胞サブセットの選択的単離であったため、これらの結果は明らかに予想外であった。これらの所見を更に調査するために、我々は、細胞型特異的遺伝子発現参照を使用して細胞型割合をデコンボリューションするために開発された計算方法であるCIBERSORTを使用した。我々のGSEA分析と一致して、CIBERSORTアルゴリズムは、活性化Tfh集団における単球特異的遺伝子の強力な濃縮を特定し(図12C)、したがって、活性化されたが静止していないソートされた血液Tfh細胞の間の単球の有意かつ選択的な存在を推定した(図4E)。最近の研究では、ヒト血液中のCD4+記憶T細胞-単球複合体の存在が初めて説明された。注目すべきことに、これらのCD3+CD14+T細胞-単球二重鎖は、従来のフローサイトメトリーを使用して観察された場合にライブシングレットゲートを追加し、活性免疫応答中に形成する。末梢循環におけるこれらの細胞会合の起源及び生物学的役割は、現在不明である。
【0132】
Tfh活性化に関連する転写メカニズムに対する我々の当初の関心を考慮して、我々は、CIBERSORTxを使用して、ソートされたTfh細胞におけるCD4 T細胞特異的発現を推定し(したがって単球成分を計算上除外し)、次いで、GSEAを実行して、活性化Tfh対静止Tfhで濃縮されたBTMを特定した。驚くことではないが、我々は、細胞周期及びエネルギー代謝関連転写モジュールにおける強力な濃縮を見出したが、これは、活性化Tfh細胞について、それらの静止した対応物と比較して、より高い代謝状態及び増殖の増加を示していた(図4F及び図4G)。我々の分析は、また、Tfh細胞の活性化プロセスが、T細胞の生存、分化、及び拡大を制御する主要なキナーゼの1つであるポロ様キナーゼ1(PLK1)を中心に展開する可能性があることを示唆している(図4F及び図4H)。最後に、ソートされたTfh細胞集団の遺伝子レベル分析、続いて教師なしのクラスタリングが、それらの活性化状態に基づいてTfhサブセットの分離に成功し、活性化Tfh細胞におけるヒストンタンパク質及びインターフェロン刺激遺伝子(IFN-γ産生を増強することで知られるISG15など)をコードする遺伝子の強い上方調節を強調した(図4I)。活性化されたTfh型(Tfh1対Tfh2)、又は異なる時点で活性化されたTfh(d7対d28)を区別することができる主な遺伝子発現クラスタは観察されなかった。重要なことに、AS03+H5N1は、H5N1単独と比較して、ワクチン接種後の循環活性化Tfhの有意に高い頻度を誘導したが、2つのワクチン接種群の対象から単離された活性化Tfh細胞間の転写レベルでの大きな差は見られなかった。総合すると、これらのデータは、非アジュバントワクチン接種と比較して、AS03アジュバントH5N1ワクチン接種がプライムワクチン及びブーストワクチンの両方の後に循環する活性化Tfh細胞のより高い頻度を促進することを示唆している。活性化Tfh細胞の頻度は、アジュバント群におけるH5ヘッドドメインに対する中和抗体及び抗体親和性と正の相関があり、したがって、B細胞親和性成熟及び抗体産生のAS03駆動T細胞依存性メカニズムを示す。
【0133】
初期の分子シグネチャは、増強後の免疫応答の複数のマーカーに関連付けられる。アジュバント群におけるワクチン接種後に測定された抗体及びTfh細胞応答の強力な誘導によって、我々は、AS03によって誘導される複数の適応免疫パラメータに共通する初期転写シグネチャ、具体的には、i)活性化Tfh周波数、ii)H5ヘッド指向性抗体親和性成熟、及びiii)中和力価の増加を特定することが可能であるか否かを問うことになった(図5A)。重要なことに、これらの3つの測定値だけで、図5Bに示されるように、ワクチン群によって対象を効率的に分離することができ、したがって、適応免疫の生成につながる生物学的メカニズムにおける実質的な分子及び細胞の違いを暗に意味している。3つのパラメータ全てとの相関によってランク付けされた遺伝子に対して行われたGSEAは、一般的に濃縮されたモジュールの最大数がプライム後1日目に生じたことを明らかにし(図5C)、ブースト用量に対するAS03によって誘導される堅牢な適応応答には強力な一次応答が必要であることを示唆している。プライム後1日目に一般的に濃縮されたモジュールの多くは、炎症性及びインターフェロンシグナル伝達、並びに単球及びDC活性化に関連していた(図5D)。これらの結果は、AS03アジュバントH1N1及びH5N1インフルエンザワクチン接種後24時間以内にインターフェロン調節及び単球活性化関連遺伝子が有意に上方制御されることが見出された、臨床環境におけるAS03を用いた以前のシステムベースの研究からのデータと一致する。興味深いことに、1日目のいくつかのT及びB細胞モジュールにおける強い下方調節も、調査中の3つの高度に相関する免疫パラメータと相関していた。
【0134】
遺伝子レベルでは、我々は、NLRP3インフラマソーム遺伝子の堅牢な1日目の上方調節が、AS03を用いたアジュバント接種によって誘導されるB細胞応答及びT細胞応答の両方と強く関連していることを見出した(図5E)。ミョウバン及びスクアレン系エマルションは、NLRP3インフラマソーム活性化を誘導することが以前に示されているが、適応免疫を促進するためのこれらのアジュバントに対するNRLP3の要件は依然として議論されている。追加的に、我々は、インターフェロン関連遺伝子IRF8及びATF3の過剰発現も、また、AS03によって促進される強力な適応性免疫特徴と正の関連があることに気付いた(図5E)。IRF8は、その機能が共通する前駆細胞からの単球及び樹状細胞の発達に不可欠である、骨髄細胞において高度に発現される転写及びインターフェロン調節因子である。骨髄細胞において、IRF8は、Bax及びFasの発現を調節して、アポトーシスを調節する。興味深いことに、最近2つの論文が、インビボで細菌感染を中和するためのNRLC4及びNRLP3インフラマソームの両方の活性化におけるIRF8の重要な役割を報告している。一方、ATF3は、多種多様な生理的ストレスによって誘導され、炎症イベント、代謝ストレス応答、及びアポトーシスプロセスから生じる多様なシグナルを統合する。ATPの生成に重要であり、低酸素誘導細胞死の予防における役割を有する代謝調節因子をコードする電子輸送鎖遺伝子SCO2も、また、AS03を用いたワクチン接種後に高度に上方調節され、分析におけるB細胞及びT細胞の特徴と正に関連していた。興味深いことに、AS03類似体であるスクアレン系アジュバントMF59は、そのアジュバント性のメカニズムについて、初期ATP産生及び細胞外放出に依存することが示されている。現在のところ、このプロセスにおけるSCO2の潜在的な役割は不明である。更に、免疫細胞におけるIFN-g及びIL-6を含む炎症性サイトカインのためのマルチリガンド受容体としても機能する一方で、脂質代謝を調節するtrans-Golgiネットワークのタンパク質トランスポーターをコードするSORT1の発現も、3つのAS03誘導適応性免疫パラメータの増加と並行している。最後に、1日目のTRAF1の下方調節は、Tfh活性化の増加、抗体媒介性中和、及び親和性成熟と負に関連付けられた。この遺伝子産物は、炎症の負の調節因子として機能し、TRAF2及びIAPと協力して、TNF受容体からの抗アポトーシスシグナルを媒介する。その抑制は、AS03注射後の炎症促進性、アポトーシス促進性環境の初期形成が、ワクチン接種に対するB細胞及びT細胞の適応性免疫応答の両方に有利であるという更なる証拠を提供する。
【0135】
インフルエンザワクチン試験のメタ分析は、末梢における活性化Tfh周波数と相関するAS03特異的転写シグネチャを明らかにする。本試験におけるAS03アジュバントH5N1ワクチン接種と非アジュバントH5N1ワクチン接種との間の直接比較は、AS03アジュバント性の細胞及び分子メカニズムに関する貴重な洞察を提供したが、我々は、ワクチン接種に対する免疫応答の調節におけるAS03アジュバントの独自の役割を更に解析するために、文献で利用可能な追加のインフルエンザデータセットに我々の研究を拡大しようとした。これを念頭に置いて、我々が取り組みたかった重要な問題は、H5N1+AS03に対する免疫応答が季節性インフルエンザ株に対する応答とどの程度共通しているかということであった。この目的のために、我々は、三価不活化インフルエンザワクチン(TIV)に対する応答を調べる我々の以前の研究からのデータを使用して、複数のインフルエンザの時期にわたる1~7日目のワクチン接種後の倍数変化によってランク付けされた遺伝子に対してGSEAを行った。両方のワクチンに応答して、特に1日目及び7日目に、濃縮経路間に高い程度の重複があった(図13A)。これらの結果は、非アジュバントH5N1ワクチンとAS03アジュバントH5N1ワクチンとの間の応答を比較した際に大きさ及び動態の両方においてはるかに大きな転写差を観察した、この試験における以前の所見とは異なり、そこから発展される。我々のデータは、ヒトが既存の免疫を持っていない鳥由来のインフルエンザ抗原に対するナイーブ免疫応答を高める一方で、免疫系の活性化状態を季節性TIVワクチン接種後に観察されたレベルに匹敵するレベルに迅速に上昇させるAS03の能力を反映している。
【0136】
H5N1+AS03及びTIVに対する応答は、広いレベルで非常に類似していたが、我々は、AS03に固有の転写シグネチャを特定することが可能であり、したがって、アジュバントが強力な免疫応答を誘導する特定のメカニズムを反映し得る季節性TIV又は非アジュバントH5N1による免疫後に通常存在しないかどうかを疑問に思った。この目標を達成するために、本試験のプライム用量及びブースト用量の両方からのデータ、並びにAS03アジュバントH1N1ワクチン接種に対する応答の以前の研究からの公的に利用可能なデータを組み込み、これを複数のTIV試験からの遺伝子発現データと比較した(図6A;補足方法も参照されたい)。AS03と季節性応答との間の平均t統計量によってランク付けされた遺伝子のGSEAは、複数の好中球関連モジュール、及びWNT/レチノイン酸受容体(RAR)シグナル伝達モジュール(図13B)を明らかにしたが、これは、季節性応答と比較してAS03アジュバントで有意な濃縮を示した(図13C)。
【0137】
我々は、また、このアプローチを、各季節的データセットと比較して、全てのAS03データセットにおいて差次的に発現した共通の遺伝子セットをペアワイズで特定することによって、遺伝子レベルに拡張した(図6A)。我々は、ANKRD22、KREMEN1、TGM2、KLF4、TMEM159、STRNなどのその多くがWNT/β-カテニンシグナル伝達に関与することが知られている11個の遺伝子のリスト(図6B)を得、これはAS03の作用メカニズムにおけるこの経路の可能な役割を示唆している。重要なことに、私たちの知る限り、これらの11個の遺伝子及びそれらの産物のいずれも、依然にAS03の作用メカニズムに関連付けられていないか、より一般的には、インフルエンザに対する免疫の生成に寄与すると説明されている。
【0138】
AS03アジュバントワクチン接種への応答中のこれらの遺伝子の状況を更に探索するために、全てのAS03データセットにおける有意に相関するパートナー遺伝子のセットを、各AS03固有DEGについて決定した。これらのパートナーセットは、DEGのうちの3つ、ANKRD22、KREMEN1、及びTGM2が互いに強く相関し、多数の共相関遺伝子を共有していることを明らかにした(図13D)。KREMEN1は、WNTシグナル伝達を負に調節するために、Dickkopf1(DKK1)及びLDL受容体関連タンパク質6(LRP6)と複合体を形成することが知られているが、この遺伝子は、カスパーゼ3活性化を誘導することによって、WNT非依存的な様式でプログラム細胞死を媒介する依存性受容体としても機能するように更に説明されている。免疫におけるANKRD22の機能についてはほとんど知られていないが、この遺伝子はいくつかのがん組織で高度に発現し、その産物は、がん細胞の代謝リプログラミングに有意に働くことによってがんの進行を促進することが報告されている。対照的に、免疫系におけるTGM2の役割はよりよく特性評価されている。この遺伝子は、プロアポトーシス及び抗アポトーシスの役割の両方を有するトランスグルタミナーゼに属する多機能酵素をコードする。DCにおいて、TGM2は、細菌LPSに応答して抗原提示細胞の成熟を媒介し、その阻害は、サイトカイン産生及びDC分化を著しく低下させる。TGM2活性は、また、マクロファージ及びDCへの単球分化にも重要な役割を果たす。これと一致して、我々の研究におけるデコンボリューション分析は、AS03を用いたプライムワクチン接種及びブーストワクチン接種の1日後のKREMEN1、ANKRD22、及びTGM2の強い上方調節が、リンパ球ではなく、骨髄細胞遺伝子発現、特にDC及び単球の変化にまでさかのぼることができることを示した(図13E)。
【0139】
AS03への初期応答の堅牢なマーカーとして使用され得る新規の遺伝子シグネチャの特定を確認するために、我々は、我々の研究から特定された3つの「コア」AS03特異的遺伝子、KREMEN1、ANKRD22、及びTGM2の発現データに対して訓練された人工ニューラルネットワークベースの機械学習分類アルゴリズムを使用して、AS03あり又はなしでのH5N1ワクチン接種への応答の独立した臨床研究からの発現データを含む3つの盲検試験セットにおけるワクチン状態(アジュバント対非アジュバント)を予測した(補足方法を参照されたい)。分類子は、ソートされた単球及び総PBMCからの遺伝子発現データで試験した場合に優れた予測精度(>90%)を達成したため、外部試験におけるこのAS03特異的シグネチャの再現性を検証した(図6C及び図6D)。
【0140】
注目すべきことに、KREMEN1、TGM2、及びANKRD22の増強後1日目の発現は、増強後7日目の活性化Tfh頻度と正の相関があり(図6E)、AS03誘導T細胞応答の調節におけるこれらの遺伝子の重要な役割を示唆している可能性がある。興味深いことに、これらの3つの遺伝子の発現は、MN力価と有意に関連していなかった(データは示さず)。これらの結果は、AS03が、複数の非重複メカニズムを介して強力なT細胞及びB細胞応答の生成につながった可能性があることを示していると思われる。したがって、AS03がインフルエンザ抗原と同時投与された、我々のAS03特異的シグネチャにおける1つの遺伝子、TMEM159の発現のみが、我々の、及び他の公的に利用可能なデータセットの両方において、MN力価と強く相関した(ただし、活性化Tfh頻度とは相関しなかった)(図6F及び図6G)。驚くべきことに、TMEM159の遺伝子産物の生物学的役割は、最近まで捉えがたいものであったが、Chungらによる的確な研究により、現在脂質液滴アセンブリ第1因子(LDAF1)と改名されたこのタンパク質が、セイピン(BSCL2遺伝子によってコードされる)と複合体を形成して、部位を決定し、小胞体(ER)における脂質液滴形成を触媒することが明らかになった。これらの知見に照らして、ワクチン接種後の最初の24時間以内のTMEM159のAS03誘導下方調節は、おそらくは、AS03アジュバントが主に構成されるコレステロールの天然前駆体であるスクアレン、及び免疫細胞のサイトゾル中の中性脂質の蓄積の結果として、新規の脂質液滴形成の阻害を示す可能性がある。これらのメカニズムは更なる調査を必要とするが、我々の結果は、TMEM159の下方調節の根底にある初期のAS03誘発生物学的現象が、数週間後に観察された強力な中和抗体応答の生成の決定要因を表す可能性があることを示唆していると思われる(図6F及び図6G)。
【0141】
AS03は、免疫細胞代謝経路の調節を通して免疫原性を高める。アポトーシスに関連する生物学的イベントにおけるKREMEN1及びTGM2を含むAS03「コア」遺伝子のいくつかの関与は、AS03アジュバントワクチンの作用メカニズムにおけるプログラム細胞死の潜在的な役割を探求することを促した。文脈上、B細胞及びT細胞の免疫原性の複数の測定値に関連する初期シグネチャのトランスクリプトームを解析しながら、我々は、IRF8、SCO2、及びTRAF1などの細胞死及び生存の調節に関与することが知られているいくつかの遺伝子を特定したが、これはAS03駆動の適応免疫の生成の重要な因子としてアポトーシスシグナルを示す可能性がある(図5)。
【0142】
これらのメカニズムを更に調査するために、我々は、アポトーシスの異なる段階に関与する遺伝子の正規のリストについてReactomeデータベースを検索し、非アジュバントH5N1又は季節性TIVワクチン接種の両方と比較して、AS03データセット内のDEGをペアワイズで探した。注目すべきことに、我々は、40個のアポトーシス遺伝子の発現の有意な変化を発見し、その多くは、ブースト後1日目(22日目)により強く調節され、AS03を用いたワクチン接種後に特異的に誘導されたが、非アジュバントワクチンの投与後には誘導されなかったため、プログラム細胞死に関連するメカニズムを誘発するアジュバントの固有の役割を主張した(図7A及び図7B)。興味深いことに、我々は、アポトーシスの内因性経路及び外因性経路の両方に関与することが知られている遺伝子の調節を観察したが、これは細胞内外からの複数の刺激がこのプロセスに寄与する可能性を示唆している。外因性アポトーシス経路の転写変化は、これらの遺伝子の強力な上方調節によって示されるように、細胞死受容体TRAIL(TNFSF10)及びTLR4/MD-2(LY96)軸を伴うように思われたが、ミトコンドリア制御下のアポトーシスの内在的メカニズムは、抗アポトーシス分子BCL-2、AKT2、及びAKT3をコードする遺伝子の下方調節、並びにプロアポトーシス分子BID及びカスパーゼ活性化因子シトクロムC(CYCS)の上方調節を伴った(図7B)。実行型カスパーゼ7をコードするCASP7も、また、非アジュバントデータセットと比較して、プライム及びブースト後の両方の1日目に、AS03+H5N1群において大幅により上方制御された。これらの所見に一致して、我々は最近、スクアレンベースの水中油型エマルションワクチンアジュバントMF59による免疫化が、マウスモデルのワクチン接種におけるMF59取り込み後のリンパ節に存在するマクロファージにおいて細胞死関連シグナル伝達を誘導することを報告した。更に、我々はここで、AS03ワクチン接種が、免疫プロテアソームに典型的な3つの触媒サブユニット、PSMB8、PSMB9、PSMB10(それぞれ、LMP7、LMP2、及びMECL1としても知られる)の全てを含む、プロテアソームタンパク質をコードする遺伝子(PSM-遺伝子)のはるかに強い上方調節を促進することを見出したが、これは、異なる免疫特性を有し、酸化ストレスの管理において確立された役割を有する非常に効率的なタンパク質分解メカニズムのアジュバント駆動型の関与を示唆している。
【0143】
これまでの文献では、ヒトにおけるインフルエンザワクチン応答性の陽性予測因子としてのアポトーシスのバイオマーカーが特定されている。我々の発見に照らして、我々は、免疫原性に寄与し得るAS03を用いた免疫化後に生じるプログラム細胞死シグナル伝達に関連する細胞イベントを調べようとした。主要な代謝プロセス、特に脂質蓄積及び代謝の制御におけるANKRD22、TMEM159、KLF4、及びTGM2などのいくつかのAS03「コア」遺伝子の関与を考慮して、AS03が免疫細胞代謝における重要な変化を促進し得ると仮定し、したがって、非標的高分解能メタボロミクスを通して血液メタボロームにおける撹乱を検出できるか否かを問うた。実際、mummichogソフトウェアを使用して得られた示差的に豊富な代謝物ピークの倍数変化値に関する主成分分析(PCA)は、AS03アジュバントH5N1ワクチン接種後と非アジュバントH5N1ワクチン接種後との代謝軌道の分枝を明らかにし、特に各免疫化後の最初の24時間以内に、ワクチン群間の実質的な代謝差を強調した(図7C及び図7D)。示差的特徴の濃縮分析は、図7Eに示されるように、脂質代謝並びに脂肪酸代謝及び活性化に関連する複数の経路におけるAS03誘導変化を明らかにした。重要なことに、我々は、アポトーシス経路における遺伝子発現変化と特定の代謝産物の存在量との間に有意な相関関係があることに気付いた(図7F)。特に興味深いことは、アポトーシス関連遺伝子と脂肪酸及びカルニチンシャトル経路における代謝撹乱との間の強い関連性を見出したことである。カルニチンシャトルは、ミトコンドリア膜に不透過性である長鎖脂肪酸がミトコンドリアマトリックスに輸送されてβ-酸化を受け、アセチル-CoAの形態でエネルギーを生成する(その後、クエン酸サイクルに入る)系を表す。一貫して、ペルオキシソーム酸化を含む飽和脂肪酸のβ酸化に関連する他の代謝経路とアポトーシス遺伝子シグネチャとの間の有意な相関も特定され、これはAS03がワクチン接種後最初の24時間以内に細胞脂肪酸代謝の急速かつ強い変化を誘導する可能性があることを示唆している。脂肪酸酸化は活性酸素種(ROS)の生成の主な原因の1つであることが知られているため、我々は、脂肪酸酸化の増加の結果としての過剰なROS産生は、AS03アジュバントがプログラム細胞死の免疫原性メカニズムを誘発する主なシグナルの1つを表す可能性があるという仮説を立てている。この仮説と一致して、脂肪酸活性化及び代謝におけるAS03誘導代謝変化は、ワクチン特異的中和抗体の生成と強く関連していた(図7F)。
【0144】
我々はここで、健康なボランティアのコホートにおいて、スクアレンベースのエマルションアジュバントAS03あり及びなしで投与された大流行前のH5N1トリインフルエンザワクチンに対する細胞、転写、及び代謝応答の詳細なマルチオミクス分析を提示した。公共のリポジトリに保管されている他のいくつかのAS03アジュバント及び非アジュバントインフルエンザ研究データセットに我々の分析を拡張することによって、我々は、ヒトにおけるAS03の使用に関する以前のシステムの生物学的報告を大幅に拡大することができ、いくつかの遺伝子シグネチャ、代謝ネットワーク、及びこれまで評価されていない生物学的プロセスを特定したが、AS03アジュバントを用いたワクチン接種後の最初の数日以内のそれらの独自の調節は、この臨床研究及び独立した臨床研究におけるワクチン免疫原性の1つ又は複数の評価基準に関連し、いくつかの場合には予測することができる。
【0145】
本研究における最初の知見の中には、AS03を用いたプライム及びブースト免疫化後の先天性免疫応答で観察される、定量的及び定性的の両方の転写差がある。一例として、これは、重要な化学誘引物質及び先天性免疫細胞の調節因子をコードする転写因子PAX3によって調整された遺伝子の場合であり、その上方調節は、プライム免疫化後の同じ時点と比較して、ブースト後により顕著であり、より長く持続した。「先天性免疫記憶」(又は「訓練された免疫」)という比較的新しい概念は、単球、マクロファージ、又はNK細胞などの先天性免疫細胞が、エピジェネティック修飾を介して内因性又は外因性刺激への以前の曝露を一時的に「覚える」ことができるという現象であり、したがって、それらの挙動を後続の免疫化に変更することは、AS03補助ワクチン接種戦略の文脈においてわずかに探求されているに過ぎない。しかしながら、以前の臨床研究では、類似のメカニズムが、AS01及びAS02などの他のアジュバント、並びに抗原にどのように適用され得るかが示されている。この文脈では、アジュバントを組み込み、経時的に保護を誘導し維持するために複数の免疫化を必要とする開発の後期段階にあるいくつかのCOVID-19ワクチン技術プラットフォームでは、訓練された免疫関連の現象がワクチン接種の結果に及ぼす影響を世界規模で体系的に探求し定義する前例がない機会がある。これらの研究は、臨床診療に情報を提供し、最適な相同又は異種プライムブーストワクチン接種レジメンを特定するために戦略的に重要となり得、したがって、より効率的なグローバルワクチン接種キャンペーンを可能にする。
【0146】
ヒトにおけるインフルエンザウイルスによる自然感染に対する免疫応答は、比較的広範かつ長寿命であるが、ワクチン誘導免疫は、主に、経時的に減少する傾向がある全身抗体応答を誘導する。我々の研究の主な目的は、ワクチン誘発持続性抗体応答の基礎となる分子メカニズムの調査であった。ここで我々は、AS03アジュバントH5N1ワクチン接種へのより継続的な抗体応答に関連する細胞移動の血液転写シグネチャを特定し、後に、同じワクチンを使用した独立した臨床研究で、盲目的な様式で抗体の持続性を首尾よく予測するために使用した。特に、CITE-seq実験は、この長寿シグネチャの細胞起源として血小板を特定し、したがって、これらの細胞がワクチン接種に対する長寿命抗体応答の形成において潜在的に役割を果たすことを示した。マウスにおける以前の研究は、血小板前駆体である骨髄に存在する巨核球が、形質細胞生存因子APRIL及びIL-6を相互作用及び産生することによって長寿命形質細胞の生成及び維持に重要である微小環境ニッチの機能成分を構成することを実証している。類似のメカニズムが、ヒトにおけるワクチン接種に対する長寿命抗体応答の生成に関与し得るか否かは、現時点では不明である。更に、CITE-seq分析は、減弱抗体応答者が、より継続的な応答者と比較して、第2のワクチン接種後の血小板RNA含有量のはるかに急激な減少を示すことを明らかにした。血小板は、ゲノムDNA及び新しいmRNAを合成する能力を欠いているが、それらは、末梢循環において新たに放出されるときに、前駆骨髄に存在する巨核球からmRNA及びリボソームを継承する。したがって、減弱抗体応答者で観察される血小板RNA含有量の全体的な減少は、より成熟した血小板表現型に有利な初期の巨核球特徴の進行性の喪失を伴う、細胞成熟及び老化のプロセスを反映し得る。しかしながら、血小板は、また、単球及び内皮細胞などの他の細胞にRNAを水平に移動させ、その後、レシピエント細胞の発現プロファイルを変化させて炎症及び血管恒常性を調節する能力を有する。血小板及び巨核球がヒトにおける長期にわたる抗体応答に寄与するメカニズムを明らかにするためには、更なる研究が必要である。
【0147】
最後に、AS03アジュバント及び非アジュバントインフルエンザワクチンデータセットのメタアナリシスを行うことによって、アジュバントの作用メカニズムに以前に関連付けられていなかったか、又はインフルエンザに対する免疫の生成に寄与することが知られていなかった、AS03によって特異的に誘導される共通の遺伝子セットを特定することができた。これらの遺伝子のうちの3つ、TGM2、ANKRD22、及びKREMEN1の発現の1日目の変化を使用することによって、90%以上の精度で外部試験におけるアジュバントの使用を予測することができた。注目すべきことに、AS03「コア」遺伝子の初期転写変化は、ワクチン接種の7日後の末梢における活性化Tfh細胞の頻度と強く関連しており、これらの遺伝子が免疫原性のメカニズムに関与している可能性があることを示唆している。文脈的には、経路分析は、AS03の作用様式におけるアポトーシスの内因性(ミトコンドリア)及び外因性経路の重要な役割を支持した。これと一致して、我々は以前、スクアレン系エマルションアジュバントMF59による免疫化が、マウスにおけるアジュバント取り込み後のリンパ節に存在するマクロファージにおいてアポトーシスシグナルを誘導することを見出した。重要なことに、汎カスパーゼ阻害剤及びMF59のインビボ同時投与は、アジュバントによって増強されたIgG抗体応答の産生を著しく抑制し、スクアレンエマルションアジュバントの作用メカニズムにおけるアポトーシス及びカスパーゼの重要な役割を強調した。DNA損傷、低酸素症、ROSの過剰産生、又は代謝機能障害などの内因性ストレスは全て、ミトコンドリアアポトーシスの潜在的な原因として確立されている。したがって、血漿メタボロミクス分析は、脂質及び脂肪酸の酸化及び代謝におけるAS03誘導初期撹乱が、ミトコンドリアアポトーシスに関与するAS03誘導遺伝子の発現、並びに数週間後の中和抗体価と非常に関連することを明らかにした。注目すべきは、我々は既に、脂肪酸代謝がインフルエンザワクチンに対する抗体応答の重要なオーケストレータであることを見出したことである。全体的に、我々の結果は、脂質代謝の変化の遺伝子シグネチャがワクチン接種後2時間以内に免疫化されたマウスのLNの排出において検出され得る、AS03を用いたマウスにおける以前の研究とも一致する。同様に、貪食性及び非貪食性細胞による他のスクアレン含有エマルションアジュバントのインビトロ取り込みが、細胞質脂質液滴の形態での脂質変化及び中性脂質の蓄積をもたらすことが以前に示された。
【0148】
結論として、我々の所見は、ヒトにおけるパンデミック前のH5N1ワクチン接種後のAS03アジュバント性及び抗体持続性に関連するこれまで評価されていなかった生物学的メカニズムを明らかにし、したがって、ワクチンの研究開発を加速するシステム生物学的アプローチの極めて大きな可能性を再び明確化した。
【0149】
実施例2
免疫応答の持続性を予測するための血小板の使用
結果
血小板RNA含有量は、ワクチン接種に対する抗体応答の継続と正の相関がある。我々のCITE-seq所見を検証するために(図3)、フローサイトメトリー分析を使用して、2010~11年のインフルエンザの時期の間にTIVで免疫化した対象由来の血小板中のRNA含有量を評価した(図14A)。解凍されたPBMC試料のFSC/SSCドットプロットは、CD41CD61血小板集団を示し、これは、低いSSC及びFSC値を特徴とし、サイズによってPBMCと容易に区別され得る(図15A)。これらの試料中の血小板の頻度は、PBMC全体と同等であり、TIVワクチン接種後0日目と7日目との間に差はなかった(図15B)が、これは、血小板の数が異なるのではなく、血小板内の固有の差異に起因して血小板のシグネチャが生じているという考えを裏付けている。重要なことに、ワクチン接種者における7日目対0日目の全血小板中のRNA含有量及び%RNA血小板の倍数変化(図15C)は、180日目/42日目残量(図14B)と正の相関があり、血小板RNA含有量とワクチン接種に対する抗体応答の継続性との間の関連性が確認された。
【0150】
この関連性の基礎となるメカニズムをより詳細に探求するために、我々は次に、アカゲザルにおけるAS03アジュバントSARS-CoV-2サブユニットSpikeタンパク質に対する応答を調べた(図14C)。ヒト試料と同様に、NHP試料のFSC/SSCドットプロットも、また、有意な血小板数を示した(図15D)。中和抗体応答は、42日目にピークに達し、次いで徐々に低下した(図14D)。ベースラインに対する7日目の全血小板中のRNA含有量及び%RNA血小板の倍数変化は、180日目/42日目残量と相関した(図14E及び図15E)。一貫して、R848アジュバントHIVサブユニットgp140(図14F~H、図15F、及び図1G)でワクチン接種されたNHP対象において、7日目の血小板RNA含有量の倍数変化と、42週目/20週目残量との間に正の相関が観察された(図14F~H、図15F、及び図1G)。長期抗体価は、骨髄に存在する長寿命形質細胞(LLPC)によって主に生成されるため、骨髄抗原特異的形質細胞の頻度は、持続的中和抗体応答の指標となり得る(Kasturi et al,2015,science immunology)。我々のデータは、7日目の血小板RNA含有量の倍数変化も、48週目の骨髄ASCの数と関連付けられることを示した(図14I)。ヒト及びNHPにおける我々の所見を裏付けるために、AS03アジュバントSARS-CoV2サブユニットSpikeでワクチン接種したマウスを用いて、血小板RNA含有量を評価し(図14J図14K図15H、及び15I)、7日目の血小板RNA含有量の倍数変化が、ブースト後42日目/7日目残量又は42日目のASCの数と相関することを見出した(図14L図14K)。
【0151】
マウスにおける以前の研究は、血小板前駆体である骨髄に存在する巨核球が、形質細胞生存因子APRIL及びIL-6を相互作用及び産生することによって長寿命形質細胞(LLPC)の生成及び維持に重要である微小環境ニッチの機能成分を構成することを実証している(Winter et al,2010,Blood)。我々の結果は、末梢血小板RNA含有量が、LLPC生存に寄与する骨髄における巨核球及び他のプロセスの状態を反映することができ、ワクチンに対する抗体応答の持続性を予測するためのバイオマーカーとして血小板RNA含有量を指摘することができることを実証している。
【0152】
方法
ヒト及びアカゲザル由来の事前に凍結保存されたPBMCを解凍し、PBSで1回洗浄し、1.5μMのSYTO(商標)RNASelect(商標)Green蛍光細胞染色(S32703、Invitrogen)を含む100μlのPBS中で、適切な抗体カクテルで室温で染色した。20分後、300μlの1%パラホルムアルデヒドを試料に直接添加した。同日に、FACS Symphonyフローサイトメータ(BD Biosciences)で細胞を分析した。血小板集団の可視化を確実にするために、FSC値の閾値を4000に設定した。フローサイトメトリーファイルの分析は、FlowJoソフトウェア(FlowJo,LLC)を使用して行った。解凍したヒトPBMC中のPBMC不含血小板の特定のために、抗CD3-BUV737、抗CD19-APC、抗CD14-BV605、抗CD56-PE、及び抗CD41-BV421、抗CD61-PE-Cy7抗体のカクテルを使用した。血小板は、CD3、CD19、CD14及びCD56細胞を除外した後のCD41CD61細胞として定義された。解凍したNHP PBMC中のPBMC不含血小板の特定のために、抗CD3-PE-CF594、抗CD8-BUV563、抗CD20-BUV737、抗CD14-BUV805、及び抗CD41-BV421、抗CD61-PE-Cy7抗体のカクテルを使用した。血小板は、CD3、CD8、CD20及びCD14細胞を除外した後のCD41CD61細胞として定義された。
【0153】
クエン酸デキストロース溶液(sc-214744、Santa Cruz Biotechnology,Inc.)で抗凝固させたマウス血液を、6~8:1の比率で、室温で150×gで10分間遠心分離し、血小板に富む血漿を得た。20μlの新たに調製された血小板に富む血漿を、0.6μlの抗TER119-PE、抗CD41-BV421、及び抗CD61-PE-Cy7抗体とともに、室温で20分間、1.5μMのRNASelect(商標)染料を含有する80μlのPBSと混合した。マウス血小板は、TER119赤血球を除外した後のCD41CD61細胞として定義された。
【0154】
参考文献
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【0245】
前述した内容は、本発明の原理を単に例示しているに過ぎない。当業者は、本明細書に明示的に記載又は示されていないが、本発明の原理を具現化し、その趣旨及び範囲内に含まれる様々な配置を考案することができることが理解される。更に、本明細書に列挙される全ての例及び条件付き言語は、主に、読者が本発明の原理及び当該技術を更に進めるために発明者が寄与する概念を理解することを助ける点を意図しており、そのような具体的に列挙される例及び条件に限定されないと解釈されるべきである。更に、本発明の原理、態様、及び実施形態を記載する、本明細書の全ての記述、並びにそれらの具体例は、それらの構造的及び機能的等価物の両方を包含することが意図されている。追加的に、かかる等価物は、現在既知の等価物及び将来開発される等価物の両方、すなわち、構造に関係なく、同じ機能を実施する開発される任意の要素を含むことが意図される。したがって、本発明の範囲は、本明細書に示され、説明された例示的な実施形態に限定されることを意図されていない。むしろ、本発明の範囲及び趣旨は、添付の特許請求の範囲によって具現化される。
【0246】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月15日に出願された米国仮特許出願第63/210,794号の利益及び優先権を主張し、その全体の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0247】
連邦政府による資金提供の記載
本発明は、National Institutes of Healthによって授与された契約AI090023下で政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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【国際調査報告】