(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】タバコフィルタ用リヨセル素材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D01F 2/00 20060101AFI20240621BHJP
D04H 3/013 20120101ALI20240621BHJP
D04H 3/02 20060101ALI20240621BHJP
D02G 1/14 20060101ALI20240621BHJP
A24D 3/10 20060101ALI20240621BHJP
A24D 3/06 20060101ALI20240621BHJP
A24D 3/02 20060101ALI20240621BHJP
A24D 3/14 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
D01F2/00 Z
D04H3/013
D04H3/02
D02G1/14
A24D3/10
A24D3/06
A24D3/02
A24D3/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577813
(86)(22)【出願日】2022-09-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 KR2022014137
(87)【国際公開番号】W WO2023054976
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0129846
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0118769
(32)【優先日】2022-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(71)【出願人】
【識別番号】519217032
【氏名又は名称】ケーティー アンド ジー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ジン,サン ウ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ジョン チョル
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン フン
(72)【発明者】
【氏名】ソ,スン ドン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ヨン ナム
(72)【発明者】
【氏名】ハ,ソン フン
(72)【発明者】
【氏名】マ,キョン ベ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジン チョル
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ボン ス
【テーマコード(参考)】
4B045
4L035
4L036
4L047
【Fターム(参考)】
4B045BA08
4B045BC02
4B045BC12
4B045BD50
4L035AA04
4L035BB11
4L035BB15
4L035BB60
4L035BB61
4L035BB66
4L035FF01
4L035FF08
4L036PA36
4L036RA04
4L036UA01
4L047AA08
4L047AA12
4L047AA29
4L047AB03
4L047AB07
4L047AB09
4L047CC12
4L047EA01
4L047EA22
(57)【要約】
本発明は、現在使用されるタバコフィルタであるCAと同等レベルのフィルタ物性を実現することができる、しわ(crimp)が付与されたリヨセルトウの最適繊度範囲を設定し、タバコフィルタ製造のための最適の工程性を確保することができ、生分解性にすぐれ、従来の廃棄タバコ吸穀による環境汚染要因を低減させることができるタバコフィルタ用リヨセル素材及びその製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S1)セルロースパルプ及びN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)水溶液を含むリヨセル紡糸ドープを紡糸する段階と、
(S2)前記紡糸されたリヨセル紡糸ドープを凝固させ、リヨセルマルチフィラメントを得る段階と、
(S3)前記得られたリヨセルマルチフィラメントを水洗いする段階と、
(S4)前記水洗いされたリヨセルマルチフィラメントを油剤処理する段階と、
(S5)前記油剤処理されたリヨセルマルチフィラメントをクリンピングし、クリンプトウ(crimped tow)を得る段階と、
(S6)前記クリンプトウを乾燥させる段階と、を含み、
前記クリンプトウを得る段階は、油剤処理されたリヨセルマルチフィラメントにつき、下記数式1によって計算されるクリンパドラフト比が1.01倍ないし1.3倍を満足するようにクリンプを付与する段階を含み、
前記クリンプトウは、25,000~45,000Deの太さ範囲を有する、タバコフィルタ用リヨセル素材の製造方法:
[数式1]
クリンパドラフト比=V1/V0
前記数式1で、V0は、Crimper M/Cに、油剤処理されたリヨセルマルチフィラメントを投入する直前の速度(V0)であり、V1は、油剤処理されたリヨセルマルチフィラメントの付与のためのCrimper M/Cのroller回転速度である。
【請求項2】
前記(S2)段階のリヨセルマルチフィラメントは、単繊度が2.0ないし2.8デニールである、請求項1に記載のタバコフィルタ用リヨセル素材の製造方法。
【請求項3】
前記リヨセルトウのクリンプ数は、25ないし50個/inchになるように形成される、請求項1に記載のタバコフィルタ用リヨセル素材の製造方法。
【請求項4】
前記(S5)段階は、クリンピング装置のスタッファボックスを介して遂行される、請求項1に記載のタバコフィルタ用リヨセル素材の製造方法。
【請求項5】
前記スタッファボックスは、スチーム圧力が0.1~3.0kgf/cm
2であり、クリンプ装置のプレスローラ(press roller)に付与される圧力が1.5~4kgf/cm
2であり、ドクターブレードの圧力が0.1~3.0kgf/cm
2である条件を満足するように制御される、請求項4に記載のタバコフィルタ用リヨセル素材の製造方法。
【請求項6】
前記(S6)段階のクリンプトウを乾燥させる段階は、105ないし135℃において、15分間ないし45分間連続乾燥装置を利用して遂行する、請求項1に記載のタバコフィルタ用リヨセル素材の製造方法。
【請求項7】
前記(S2)段階の凝固は、4~15℃の温度において、50ないし250L/m
3風量の冷却空気を紡糸ドープに供給して遂行する、請求項1に記載のタバコフィルタ用リヨセル素材の製造方法。
【請求項8】
前記(S1)段階のリヨセル紡糸ドープは、セルロースパルプ8ないし13重量%及びN-メチルモルホリン-N-オキシド水溶液87ないし92重量%を含む、請求項1に記載のタバコフィルタ用リヨセル素材の製造方法。
【請求項9】
前記セルロースパルプは、α-セルロース含量が85~99重量%であり、重合度(DPw)が600~1,700である、請求項1に記載のタバコフィルタ用リヨセル素材の製造方法。
【請求項10】
セルロースパルプ及びN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)水溶液を含むリヨセル紡糸ドープから紡糸されたリヨセルマルチフィラメントを利用して形成されたクリンプトウ(crimped tow)を含み、
前記クリンプトウは、25,000~45,000Deの太さ範囲を有するリヨセルトウである、タバコフィルタ用リヨセル素材。
【請求項11】
前記クリンプトウのクリンプ数は、25ないし50個/inchになるように形成される、請求項10に記載のタバコフィルタ用リヨセル素材。
【請求項12】
前記リヨセル紡糸ドープは、セルロースパルプ8~13重量%及びN-メチルモルホリン-N-オキシド水溶液87~92重量%を含む、請求項10に記載のタバコフィルタ用リヨセル素材。
【請求項13】
前記セルロースパルプは、α-セルロース含量が85~99重量%であり、重合度(DPw)が600~1,700である、請求項10に記載のタバコフィルタ用リヨセル素材。
【請求項14】
請求項10ないし13のうちいずれか1項に記載のタバコフィルタ用リヨセル素材を含む、タバコフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2021年09月30日付の韓国特許出願第10-2021-0129846号、及び2022年9月20日付の韓国特許出願第10-2022-0118769号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、タバコフィルタ用リヨセル素材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的なタバコフィルタは、木材パルプからセルロースを抽出してアセチル化させたセルロースアセテート(CA:cellulose acetate)トウ(tow)を含んでいる。
【0004】
また、該タバコフィルタは、タバコ製品に組み込まれて消費者に流通され、喫煙に提供され、最終的には、タバコの喫煙後に廃棄される。また、該タバコフィルタは、タバコフィルタ製造工場から製造残渣として直接廃棄されもする。それらタバコフィルタ廃棄物は、ごみとして回収され、その処理のために埋め込まれる。また、タバコの喫煙は、場合によっては、ごみとして回収されずに、自然環境の中に放置される場合もある。
【0005】
そのために、生分解性タバコフィルタを製造するために、セルロースアセテートの分解速度を増大させるために、生分解性ポリマーによってなる添加剤を添加するか、生分解性を増大させるための低置換度を有するセルロースアセテートを利用するか、あるいはフィルタトウ原料として、PHB(poly-hydroxybutyrate)/PVB(polyvinyl butyral)及び澱粉のような生分解性が強いポリマーの複合材を使用するというようなことが提案されてきた。
【0006】
また、最近では、自然環境保護と原価低減とのために、セルロースアセテートトウを親環境素材で代替する研究が進められている。例えば、セルロースアセテートとは異なり、セルロース自体を繊維化させたリヨセル(lyocell)繊維を利用したトウの開発が進められている。
【0007】
しかしながら、いまだに所望されるレベルに、環境汚染問題を低減させることができ、現在用いられているタバコフィルタ素材のCAと比較し、同等レベル以上のフィルタ性能を満足させる素材は開発されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一実施例は、リヨセル素材を活用し、タバコフィルタ性能を、現在用いられているCA(cellulose acetate)製品と同等なレベルで実現することができるタバコフィルタ用リヨセル素材及びその製造方法を提供するためのものである。
【0009】
また、本発明の一実施例は、前記CA吸殻の廃棄物による環境汚染要因を低減させることができるタバコフィルタ用リヨセル素材及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書においては、一具現例により、
【0011】
(S1)セルロースパルプ及びN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO:N-methylmorpholine-N-oxide)水溶液を含むリヨセル紡糸ドープを紡糸する段階と、
(S2)前記紡糸されたリヨセル紡糸ドープを凝固させ、リヨセルマルチフィラメントを得る段階と、
(S3)前記得られたリヨセルマルチフィラメントを水洗いする段階と、
(S4)前記水洗いされたリヨセルマルチフィラメントを油剤処理する段階と、
(S5)前記油剤処理されたリヨセルマルチフィラメントをクリンピングし、クリンプトウ(crimped tow)を得る段階と、
(S6)前記クリンプトウを乾燥させる段階と、を含み、
前記クリンプトウを得る段階は、油剤処理されたリヨセルマルチフィラメントにつき、下記数式1によって計算されるクリンパドラフト比が1.01倍ないし1.3倍を満足するようにクリンプを付与する段階を含み、
前記クリンプトウは、25,000~45,000Deの太さ範囲を有する、
タバコフィルタ用リヨセル素材の製造方法を提供する:
[数式1]
クリンパドラフト比=V1/V0
前記数式1で、V0は、Crimper M/Cに、油剤処理されたリヨセルマルチフィラメントを投入する直前の速度(V0)であり、V1は、油剤処理されたリヨセルマルチフィラメントのcrimp付与のためのCrimper M/Cのroller回転速度である。
【0012】
また、本明細書においては、他の具現例により、セルロースパルプ及びN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO:N-methylmorpholine-N-oxide)水溶液を含むリヨセル紡糸ドープから紡糸されたリヨセルマルチフィラメントを利用して形成されたクリンプトウ(crimped tow)を含み、
前記クリンプトウは、25,000~45,000Deの太さ範囲を有するリヨセルトウであるタバコフィルタ用リヨセル素材を提供する。
【0013】
また、本明細書においては、前記タバコフィルタ用リヨセル素材を含むタバコフィルタを提供する。
【0014】
以下、発明の具現例によるタバコフィルタ用リヨセル素材及びその製造方法について詳細に説明する。
【0015】
それに先立ち、本明細書において、明示的な言及がない限り、専門用語は、ただ特定実施例について言及するためのものであり、本発明を限定するということを意図するものではない。
【0016】
本明細書で使用される単数形態は、文言がそれと明らかに反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。
【0017】
本明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素及び/または成分を具体化させるが、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分及び/または群の存在や付加を除外させるものではない。
【0018】
本明細書において、「少なくとも一つ」または「1種以上」の用語は、1以上の関連項目から提示可能な全ての組み合わせを含むと理解されなければならない。
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0020】
リヨセル素材の製造方法
発明の一具現例により、
【0021】
(S1)セルロースパルプ及びN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)水溶液を含むリヨセル紡糸ドープを紡糸する段階と、
(S2)前記紡糸されたリヨセル紡糸ドープを凝固させ、リヨセルマルチフィラメントを得る段階と、
(S3)前記得られたリヨセルマルチフィラメントを水洗いする段階と、
(S4)前記水洗いされたリヨセルマルチフィラメントを油剤処理する段階と、
(S5)前記油剤処理されたリヨセルマルチフィラメントをクリンピングし、クリンプトウ(crimped tow)を得る段階と、
(S6)前記クリンプトウを乾燥させる段階と、を含み、
前記クリンプトウを得る段階は、油剤処理されたリヨセルマルチフィラメントにつき、下記数式1によって計算されるクリンパドラフト比が1.01倍ないし1.3倍を満足するようにクリンプを付与する段階を含み、前記クリンプトウは、25,000~45,000Deの太さ範囲を有する、タバコフィルタ用リヨセル素材の製造方法が提供されうる:
[数式1]
クリンパドラフト比=V1/V0
前記数式1で、V0は、Crimper M/Cに、油剤処理されたリヨセルマルチフィラメントを投入する直前の速度(V0)であり、V1は、油剤処理されたリヨセルマルチフィラメントのcrimp付与のためのCrimper M/Cのroller回転速度である。
【0022】
本発明は、生分解性にすぐれるリヨセルを適用したタバコフィルタトウを製造して、従来使用されるタバコフィルタ素材を代替することができるタバコフィルタ用リヨセル素材及びその製造方法を提供するためのものである。
【0023】
また、本発明においては、該リヨセル素材を活用し、生分解性にすぐれ、タバコフィルタ性能を現在用いられているCA(cellulose acetate)製品と同等なレベルで実現することができるタバコフィルタ用トウを製造するものである。
【0024】
具体的には、本発明は、リヨセルタバコフィルタトウの製造時、クリンピング工程において、クリンパドラフト比を調節することにより、現在使用されるCAと同等レベルのフィルタ物性を実現することができる、しわ(crimp)が付与されたリヨセルトウの最適繊度範囲を設定し、タバコフィルタ製造のための最適の工程性を確保することができる。
【0025】
発明の一具現例により、クリンピング工程において、 前記リヨセルタバコフィルタトウは、均一なしわ付与のために、フィラメントに1.01~1.3倍の工程ドラフト条件を適用することができる。
【0026】
前述のクリンピング時、クリンパにおけるドラフト比(crimper draft)は、以下の数式1によって計算されうる。
【0027】
[数式1]
クリンパドラフト比(crimper draft ratio)=V1/V0
【0028】
前記数式1で、V0は、Crimper M/Cに投入する直前の速度(V0)であり、V1は、油剤処理されたリヨセルマルチフィラメントのcrimp付与のためのCrimper M/Cのroller回転速度である。
【0029】
前記Crimper M/Cは、crimp machineを意味する。
【0030】
このとき、前記クリンパドラフト比が1.01倍未満であるならば、クリンパに投入されるフィラメントトウの張力が安定しておらず、不均一なcrimpが付与されるという問題があり、1.3倍以上であるならば、クリンパに投入されたフィラメントに過度なクリンプが付与され、物理的な物性脆化が生じるか、あるいはフィラメント幅変化により、トウの左右側辺部に均一なクリンプを付与することができないという問題がある。
【0031】
また、タバコフィルタの物性の実現のために、トウは、25~50個/inch(ea/inch)のクリンプ数の範囲を有する。
【0032】
付け加えて、最終的に、リヨセルトウは、最適のタバコフィルタ性能実現のために、25,000~45,000De太さ範囲(すなわち、繊度)を有するという特徴がある。
【0033】
このとき、前記リヨセルトウの太さが25,000デニール(De)未満であるか、あるいは45,000デニール(De)を超えるとき、タバコフィルタの工程性及び物性を確保し難い。そのようなリヨセルトウの繊度は、前記クリンパドラフト比の調節と共に、紡糸工程時、リヨセルマルチフィラメントの単繊度を2.0ないし2.8デニール範囲に調節して実現されうる。
【0034】
また、発明の一具現例によるタバコフィルタは、一般的に、レギュラタイプと超スリムタイプとに区分されるが、本発明は、レギュラタイプのタバコフィルタに適用することができる。
【0035】
前記トウを適用して製造されたタバコフィルタは、多様なタバコで要求される吸引抵抗の実現が可能であり、タバコフィルタに要求される物性(フィルタ円周、吸引抵抗)を均一に実現することができる。
【0036】
以下、本発明のタバコフィルタ用リヨセル素材製造方法につき、各段階別にさらに詳細に説明する。
【0037】
[(S1)段階]
本発明において(S1)段階は、セルロースパルプ及びN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)水溶液を含むリヨセル紡糸ドープを紡糸する段階である。このとき、前記リヨセル紡糸ドープは、セルロースパルプ8~13重量%、及びN-メチルモルホリン-N-オキシド水溶液87~92重量%を含むものでもあり、前記セルロースパルプは、α-セルロース含量が85~97重量%であり、重合度(DPw)が600~1,700でもある。
【0038】
前記セルロースパルプの含量が8重量%未満であれば、繊維的特性を実現し難く、13重量%超過であるならば、水溶液状に溶解し難い。また、前記N-メチルモルホリン-N-オキシド水溶液の含量が87重量%未満であるならば、溶解粘度が過度に高くなるため望ましくなく、92重量%超過であるならば、紡糸粘度が過度に低くなり、紡糸段階において、均一な繊維を製造するのに困難さが伴う。
【0039】
前記N-メチルモルホリン-N-オキシド水溶液において、N-メチルモルホリン-N-オキシドと水との重量比が93:7ないし85:15でもある。前記N-メチルモルホリン-N-オキシドと水との重量比が93:7超過である場合には、溶解温度が高くなり、セルロース溶解時、セルロース分解が生じてしまい、前記重量比が85:15未満である場合には、溶媒の溶解性能が低下され、セルロースの溶解が困難になってしまう。
【0040】
前述の紡糸ドープを使用し、それを平面状またはドーナツ状の紡糸口金の紡糸ノズルから吐出させる。このとき、前記紡糸口金は、フィラメント状の紡糸ドープを、エアギャップ区間を介し、凝固槽内の凝固液として吐出させる役割を行う。前記紡糸ドープを紡糸口金から吐出させる段階は、100ないし120℃でなされうる。
【0041】
また、前記(S1)段階は、リヨセルマルチフィラメントの単繊度が2.0ないし2.8デニールになるように、吐出量と紡糸速度とを調節して紡糸する。具体的には、リヨセルフィラメントを紡糸するとき、後述するクランパドラフトの比率調節と共に、リヨセルマルチフィラメントの単繊度、を前記範囲内で紡糸することが、タバコフィルタ工程性低下を防止し、業界で要求される物性の実現をさらに効果的に達成することができる。
【0042】
[(S2)段階]
本発明において(S2)段階は、前記(S1)段階で紡糸されたリヨセル紡糸ドープを凝固させ、リヨセルマルチフィラメントを得る段階であり、前記(S2)段階の凝固は、冷却空気を紡糸ドープに供給して凝固させるエアクエンチング(Q/A:air quenching)による一次凝固段階と、一次凝固された紡糸ドープを凝固液に浸漬して凝固させる二次凝固段階と、を含むものでもある。
【0043】
前記(S1)段階において、平面状またはドーナツ状の口金を介して紡糸ドープを吐出させた後には、それを前述の紡糸口金と、凝固槽との間の空間のエアギャップ区間を通過させることができる。そのようなエアギャップ区間には、平面状の口金である場合、口金の一方向から反対方向に冷却空気が供給され、ドーナツ状の口金である場合、内側に位置した空冷部から、口金の内側から外側に冷却空気が供給され、反対側または外側には、吸引(suction)機能も追加されうる。そのような冷却空気でもって紡糸ドープに供給するエアクエンチングにより、一次凝固されうる。
【0044】
前述の凝固時に使用される(S2)段階のリヨセルマルチフィラメントは、単繊度が2.0ないし2.8デニールである。
【0045】
このとき、(S2)段階で得られるリヨセルマルチフィラメントの物性に影響を及ぼす要素は、エアギャップ区間における冷却空気の温度及び風速であり、(S2)段階の凝固は、4~15℃の温度、及び50ないし250L/m3風量の冷却空気を紡糸ドープに供給して行うものでもある。
【0046】
前記一次凝固時、冷却空気の温度が4℃未満であるならば、口金表面温度が低くなり、リヨセルマルチフィラメントの断面が不均一になり、紡糸工程性も良好ではなくなり、15℃超過であるならば、冷却空気による一次凝固が十分になされず、紡糸工程性が良好ではなくなる。
【0047】
また、一次凝固時、冷却空気の風量が50L/m3未満であるならば、冷却空気による一次凝固が十分になされず、紡糸工程性が良好ではなくなり、糸切れが生じ、250L/m3超過であるならば、口金から吐出される紡糸ドープが空気によって揺れながら紡糸工程性が良好ではなくなる。
【0048】
エアクエンチングによる一次凝固後、前記紡糸ドープは、凝固液が入れられている凝固槽に供給され、二次凝固が進められうる。なお、適切な二次凝固進行のために、前記凝固液の温度は、30℃以下でもある。それは、二次凝固温度が必要以上に高くなく、凝固速度が適切に維持されるようにするためである。ここで、前記凝固液は、本発明が属する技術分野において、通常の組成に製造されて使用されるので、特段に限定されるものではない。
【0049】
[(S3)段階]
本発明において(S3)段階は、前記(S2)段階で得られたリヨセルマルチフィラメントを水洗いする段階である。さらに具体的には、前記(S2)段階で得られたリヨセルマルチフィラメントを牽引ローラに導き入れた後、水洗槽に導入させて水洗いする段階である。
【0050】
前記フィラメントの水洗い段階においては、水洗い後、溶剤の回収及び再使用の容易性を考慮し、0ないし100℃温度の水洗液を使用することができ、前記水洗液としては、水を利用することができ、必要によっては、その他の添加成分をさらに含めることもできる。
【0051】
[(S4)段階]
本発明において(S4)段階は、前記(S3)段階で水洗いされたリヨセルマルチフィラメントを油剤処理する段階である。
【0052】
前記油剤処理のためには、油剤がmake-upされたbathにフィラメントトウを浸漬させて排出する方式が使用されうる。
【0053】
前記油剤処理は、マルチフィラメントが油剤内に完全に浸漬される状態になるように行われ、油剤処理装置の進入ロールと放出ロールとに取り付けられた絞りローラにより、油剤がフィラメントに付く量を一定に維持させる。
【0054】
また、前記フィラメント塗布に使用される油剤は、一般的な繊維に使用される油剤とは異なり、リヨセル専用に開発されたものを使用することができる。
【0055】
望ましい一具現例によれば、前記油剤は、タバコフィルタトウの物性を均一に付与することができる潤滑機能、適正レベルの平滑性と抱合性とを付与し、フィルタ製造工程性を最適化させることができ、喫煙中、喫煙者の唾液により、フィルタ形態が変形され、フィルタ硬度が低下する現象を最小化させるために、本油剤は、唾液のフィルタ浸透を遅延させることができる疎水性を付与し、フィルタ硬度が低下する速度を遅くすることができる。また、一定量の油剤がタバコフィルタに残留しても、喫煙者の人体に無害な成分によって構成されうる。
【0056】
ただし、前記油剤は、フィラメントが乾燥ローラ及びガイド、クリンプの段階における接触時に生じる摩擦を減らし、繊維間のクリンプが良好に形成されるようにする役割を行うものであり、リヨセルフィラメント製造時、一般的に通用するものであるならば、その種類に特段の制限はない。
【0057】
望ましい一例を挙げれば、前記油剤は、潤滑成分、抱合(cohesion)成分、平滑(smoothness)成分及び疎水性成分によってなる群のうちから選択された1種以上を含むものでもある。
【0058】
前記油剤は、リヨセルマルチフィラメントに対する油剤含量が、2ないし8重量%の濃度、あるいは3ないし7重量%の濃度が維持されるようにしながら使用されうる。前記油剤含量が前記範囲を維持することが、クリンプ段階において、リヨセルマルチフィラメントがクリンプ段階で装置に接触するときに生じる摩擦を減らし、繊維間クリンプが良好に形成されるようにする役割を行うようにする。
【0059】
[(S5)段階]
(S5)段階は、前記(S4)段階で油剤処理されたリヨセルマルチフィラメントをクリンピングし、クリンプトウを得る段階である。
【0060】
具体的には、前記方法は、油剤処理されたリヨセルマルチフィラメントに対し、スチームと圧力とをかけてクリンピング(crimping)する段階であり、(S5)段階を経て、クリンプトウ(crimped tow)を得ることができる。
【0061】
本明細書全体にわたって記載される用語である「クリンピング(crimp)」とは、主に、繊維のバルク(bulk)感性を付与するために、フィラメントにしわを付与することを意味する。本発明における前記クリンピング工程は、プレスローラが具備されたスタッファボックス(stuffer box)を介して遂行されうる。前記プレスローラは、ニップローラでもある。
【0062】
本発明で提示されるタバコフィルタ用リヨセルトウは、最適のフィルタ物性実現のために、トウ製造工程において、crimper draft比の範囲を有する。
【0063】
望ましい一具現例により、クリンピング工程において、前記リヨセルタバコフィルタトウは、しわ付与のために、フィラメントに、前記数式1によって計算される1.01~1.3倍の工程ドラフト条件を適用することができる。
【0064】
また、クリンパドラフト(crimper draft)条件により、均一クリンプ付与のための装置(machine)の条件は変化され、変化因子は、クリンプ装置前段のスチームボックスに供給される圧力、クリンプ装置ロールに付与される圧力、及びドクターブレードの圧力条件を調節するものでもある。
【0065】
例えば、前記スタッファボックス前段には、フィラメントトウのスチーム処理のためのスチームボックス(steam box)が構成されており、該スチームボックスに供給されるスチーム圧力が0.1~3.0kgf/cm2であり、クリンプ装置のプレスローラ(press roller)に付与される圧力が1.5~4kgf/cm2であり、ドクターブレードの圧力が0.1~3kgf/cm2である条件を満足するように制御されうる。前記条件が制御されることにより、均一なクリンプが付与されうる。
【0066】
前記スチーム圧力が0.1kgf/cm2未満であるならば、フィラメントのモジュラスが工程に適するレベルに低くならず、クリンプが円滑に形成されず、3.0kgf/cm2超過し、過度に多量のスチームが供給されれば、フィラメントのモジュラスは、最小化されうるが、過度な含水率により、要求されるクリンプ数を均一に付与することができない。
【0067】
また、前記プレスローラを介して押す圧力は、1.5kgf/cm2未満である場合、投入されるフィラメントの厚みを均一に付与することができず、所望するクリンプ数が均一に形成されず、4kgf/cm2超過であるならば、押力が非常に強く、トウ(tow)内に存在する水分または油脂分の含量が急激に少なくなり、フィラメントがスタッファボックスを円滑に通過することができなくなる。このとき、併せて、前記プレスローラの間隔は、0.01~3.0mmに維持されることが望ましい。該プレスローラの間隔が0.01mm未満であるならば、ローラによるフィラメントの圧力が高くなり、クリンプ形成が不可能となるか、あるいは形成後、フィラメント表面摩擦により、損傷が生じてしまい、3.0mm超過であるならば、プレスローラ間におけるフィラメントスリップ現象が生じ、均一なクリンプ形成が困難ともなる。
【0068】
また、前記ドクターブレードは、プレスローラ通過後、均一なクリンプ付与のために、上下に動く役割を行う。そのようなドクターブレードの圧力が、0.1kgf/cm2未満であるならば、スタッファボックス内部の圧力により、上部プレートが固定されず、トウがスタッファボックス内に長期間滞留されながら、工程の連続性が維持されないか、あるいは適正な滞留時間を付与することができず、所望するトウのクリンプ数を調節することができず、3.0kgf/cm2超過であるならば、スタッファボックス内にトウが円滑に排出されず、クリンプ形態が不規則になってしまう。
【0069】
そのような条件において、クリンピングされたトウは、25ないし50個/inch、あるいは30ないし45個/inchのクリンプを確保及び維持することができる。また、それは、モノフィルタ径及び複合フィルタ径が24.2mm、24.5mmであるフィルタロッド(filter rod)に形成されたとき、KS H ISO 6565測定基準において、約240ないし590PD(mmH2O)の吸引抵抗を示すことができる。前記フィルタは、シガレット製品により、多様な吸引抵抗値が適用される。それにより、本発明のリヨセルクリンピングトウは、短時間内に生分解されて除去されるので、親環境的であるだけではなく、タバコフィルタに製造されたとき、要求される物性である吸引抵抗、フィルタ強度、フィルタ除去能などを従来よりもさらに効果的に満足させることができ、その効果を最大化させることができる。
【0070】
[(S6)段階]
(S6)段階は、前記(S5)段階で得たクリンプトウを、一定温度で乾燥させる段階である。
【0071】
具体的には、前記油剤処理槽(bath)において、均一にフィラメントトウに浸漬された油剤は、クリンプ工程において、均一なクリンプ数を付与することができるレベルにピックアップ(pick up)される。
【0072】
その後、連続乾燥装置を介し、クリンプトウ(crimped tow)を乾燥させれば、均一な量の油剤を含む最終リヨセルクリンプトウを製造することができる。
【0073】
前記クリンプトウを乾燥させる段階は、105ないし135℃において、15分間ないし45分間、あるいは110ないし130℃において、20分間ないし40分間、連続乾燥装置を利用して遂行することができる。
【0074】
前記乾燥温度が105℃以下であるならば、トウが完璧に乾燥されず、要求される水分率に調節することができないという問題があり、135℃以上であるならば、黄変現象により白色度が低くなるという問題がある。また、乾燥時間が15分未満であるならば、非規則的に乾燥されていない部分が生じ、45分以上であるならば、過度な乾燥時間により、トウ表面の損傷を引き起こし、黄変現象により、白色度が低くなるという問題がある。
【0075】
また、前記乾燥以後、最終的に製造されたトウは、タバコフィルタ用リヨセルトウが、25,000~45,000デニール(De)の太さ範囲を有しうる。
【0076】
このとき、前記リヨセルトウの太さ範囲が25,000De未満時または45,000De超過時、タバコフィルタの工程性及び物性を確保し難い。
【0077】
また、前記リヨセルトウの太さ範囲は、(S1)段階の紡糸工程において、リヨセルマルチフィラメントの単繊度を2.0ないし2.8デニール範囲に調節し、また前記(S5)段階のクリンパドラフト比を調節して得ることができる。
【0078】
タバコフィルタ用リヨセル素材
本発明の他の具現例により、セルロースパルプ及びN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)水溶液を含むリヨセル紡糸ドープから紡糸されたリヨセルマルチフィラメントを利用して形成されたクリンプトウ(crimped tow)を含み、前記クリンプトウは、25,000~45,000Deの太さ範囲を有するリヨセルトウであるタバコフィルタ用リヨセル素材が提供されうる。
【0079】
前記リヨセルトウのクリンプ数は、25ないし50個/inchになるように形成されうる。
【0080】
前記リヨセル紡糸ドープは、セルロースパルプ8~13重量%及びN-メチルモルホリン-N-オキシド水溶液87~92重量%を含むものでもある。
【0081】
前記セルロースパルプは、α-セルロース含量が85~99重量%であり、重合度(DPw)が600~1,700でもある。
【0082】
また、本発明の他の例により、前記タバコフィルタ用リヨセル素材をリヨセルトウとして含むタバコフィルタが提供されうる。
【0083】
前記タバコフィルタは、前記リヨセルトウを除き、その構成が制限されるものではない。
【0084】
例えば、前記タバコフィルタは、複数個のリヨセル(lyocell)繊維を含む円筒状の前記リヨセルトウ(tow)、可塑剤、硬化剤などが含まれるものでもある。
【0085】
前記複数個のリヨセル繊維は、硬化剤により、互いに連結され、繊維表面が硬化剤と接触する形態で相互接合された構造を示すことができる。
【0086】
前記硬化剤は、フィルタ硬度改善のために周知の物質が使用され、例えば、該硬化剤は、セルロース誘導体、ビニル系誘導体、ビニル系エマルジョン樹脂、アルギン酸ナトリウムを含む天然高分子、澱粉、澱粉誘導体のような高分子樹脂を含むものでもある。
【0087】
従って、本発明においては、現在用いられているタバコフィルタ素材であるCAと同等レベルのフィルタ性能(製造工程性、フィルタ物性)を実現することができるリヨセルタバコフィルタトウを提供することができる。また、本明細書には、現在用いられているCA吸殻(フィルタ)を、従来よりも親環境工法で製造することができる。
【0088】
また、前述の方法によって製造されたリヨセルトウを適用すれば、レギュラタイプのタバコフィルタを均一に製造することができ、要求物性(フィルタ円周、吸引抵抗)を均一に実現することができる。
【発明の効果】
【0089】
本発明によれば、現在用いられているタバコフィルタであるCAと同等レベルのフィルタ物性を実現することができるしわ(crimp)が付与されたリヨセルトウの最適繊度範囲を設定し、タバコフィルタ製造のための最適の工程性を確保することができる。
【0090】
また、前記リヨセルトウを適用して製造されたタバコフィルタは、多様なタバコで要求される吸引抵抗の実現が可能であり、その物性(フィルタ円周、吸引抵抗)を発現することができる。
【0091】
付け加えて、本発明は、親環境的な方法でリヨセルトウを提供することができるので、従来のCAタバコフィルタを代替し、廃棄吸殻による環境汚染要因を低減させることができる。
【0092】
すなわち、本発明は、生分解性、工程性及び物性にいずれもすぐれ、従来の一般的なタバコフィルタ素材を代替し、経済的な効果を示すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0093】
以下、実施例を介し、本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明の理解の一助とするためのものに過ぎず、それらにより、本発明の権利範囲が制限されるものではない。
【0094】
実施例1
重合度(DPw)820、α-セルロース含量93.9%であるセルロースパルプを、没食子酸プロピル含量0.01重量%であるN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)/H2O混合溶剤(重量比90/10)に混合し、濃度12重量%のタバコフィルタ用トウを製造するための紡糸ドープを製造した。まず、該紡糸ドープは、紡糸ノズルにおいて、紡糸温度110℃に維持され、フィラメントの単繊度が2.4デニールになるように、吐出量と紡糸速度とを調節して紡糸した。
【0095】
前記紡糸ノズルから吐出されたフィラメント状の紡糸ドープをエアギャップ区間を経て、凝固槽内の凝固液に供給した。このとき、前記エアギャップ区間において、冷却空気は、8℃温度であり、100L/m3風量で紡糸ドープを一次凝固させた。前記凝固液は、温度25℃、濃度は、水75重量%及びN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)25重量%であるものを使用した。このとき、前記凝固液濃度は、センサと屈折計とを使用し、連続してモニタリングした。
【0096】
牽引ローラを介して凝固されたフィラメントは、水洗い装置でスプレーされた水洗液によって水洗いされ、フィラメント内に残存しているN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)を除去した。
【0097】
その後、水洗いされたフィラメントは、油剤2重量%にmake-upされた油剤処理槽(bath)内部に浸漬させた。
【0098】
前記処理槽(bath)に浸漬されたフィラメントは、bathの排出部に設けられたニップローラ(nip roller)を使用し、2kgf/cm2圧力で処理された後、しわ付与のために、クリンプ装置(Crimper M/C)に投入された。
【0099】
このとき、クリンプ付与の比率、すなわち、クリンパドラフト比(crimper draft ratio)を1.1倍条件に設定し、steam boxにsteamを0.3kgf/cm2で供給し、crimp M/C roller圧力は、2.5kgf/cm2であり、ドクターブレード圧力は、1.0kgf/cm2に設定し、トウを製造した。製造されたトウは、120℃にsettingされた連続乾燥装置を通過し、乾燥されたトウ製品が得られた。
【0100】
得られたトウは、レギュラフィルタ吸引抵抗450±12% mmH2Oをターゲットにし、タバコフィルタ用フィルタを製造した。
【0101】
実施例2
単繊度2.6デニール、クリンパドラフト比を1.05倍に調節したことを除いては、実施例1と同一方法でもって、タバコフィルタ用リヨセルトウを製造した。
【0102】
実施例3
単繊度2.8デニール、クリンパドラフト比を1.2倍に調節したことを除いては、実施例1と同一方法でもって、タバコフィルタ用リヨセルトウを製造した。
【0103】
比較例1
クリンパドラフト比を1.0倍に調節したことを除いては、実施例1と同一方法でもって、タバコフィルタ用リヨセルトウを製造した。
【0104】
比較例2
クリンパドラフト比を1.35倍に調節したことを除いては、実施例1と同一方法でもって、タバコフィルタ用リヨセルトウを製造した。
【0105】
比較例3
クリンパドラフト比を1.5倍に調節したことを除いては、実施例1と同一方法でもって、タバコフィルタ用リヨセルトウを製造した。
【0106】
比較例4
単繊度3.0デニール、クリンパドラフト比を1.1倍に調節したことを除いては、実施例1と同一方法でもって、タバコフィルタ用リヨセルトウを製造した。
【0107】
[実験例]
実施例及び比較例のリヨセルトウにつき、以下の方法によってトウ物性を測定し、その結果を表1に示した。
【0108】
物性測定方法
(1)トウ繊度測定
測定するトウを2mサンプルとして採取し、温度20℃、湿度65%において、恒温恒湿のroomに24時間放置させる。安定化されたトウは、一端を固定させた後、反対側端に2kg荷重の錘を装着させる。荷重によって伸長した状態のトウを5秒間安定化させた後、90cmにcuttingして試料を得た後、重さを測定する。トウ繊度は、デニール換算法によって測定された重さ×10,000に換算される。
【0109】
(2)クリンプ個数測定
KS K 0326規格で測定し、クリンプが損傷されていない20筋の試料を取った後、事前に準備された光沢試片(空間距離25mm)を、セルロイド4~5%酢酸アミル接着剤でもって、単繊維1筋ずつ、貼り付け長さに対して25±5%延びるように貼り付けた後、放置して接着剤を乾燥させる。該試料に対し、クリンプ試験機器を使用し、1筋ずつ1De当たり1.96/1,000cN(=2mgf)に相当する初荷重をかけ、25mmのクリンプ個数を求めた後、その平均値を小数点を除いて示した。
【0110】
(3)クリンプ形態測定
クリンプ形態は、クリンプ個数測定と同一にサンプリングした後、光学顕微鏡を使用して均一度を肉眼で確認した。
【0111】
(4)タバコフィルタ製造工程性
タバコフィルタ製造工程性は、タバコフィルタ製造設備にトウを投入し、1バッチ(batch)のサンプルが全量消尽される時点までの工程維持性を確認した。
【0112】
(5)タバコフィルタの吸引抵抗及び円周の測定
前述の実施例及び比較例を介して製造されたトウを利用し、タバコフィルタロッドを製造し、KS H ISO 6565規格に基づき、吸引抵抗及び円周の測定器を使用し、ロッド別に吸引抵抗を測定した。
【0113】
【0114】
前記表1に記載されているように、実施例1ないし3の場合、トウ製造条件により、クリンプ数が均一に形成され、タバコフィルタ製造時、設備条件の設定によって製造されたトウは、タバコフィルタで要求される物性を実現することができた。
【0115】
しかしながら、比較例1の場合、トウ製造条件が適切ではなく、製造過程における条件設定によっても、トウを製造することができず、フィルタ性能を確認することができなかった。
【0116】
また、比較例2ないし4の場合、トウを製造することはできたが、製造条件の不合理により、均一なトウを製造するのに困難さが伴った。
【0117】
すなわち、比較例1ないし3は、本発明のクリンパドラフト比範囲を外れ、トウの製造が不可能であるか、あるいはたとえトウが製造されたにしても、クリンプ形態が不良であり、タバコフィルタの連続製造が不可能であり、それにより、吸引抵抗も、実施例より低下した。また、比較例4は、紡糸ドープを利用した紡糸時、フィラメントの単繊度が3.0デニールであり、本発明のフィラメント単繊度範囲を超え、トウの繊度範囲が4,000デニール(De)を超え、タバコフィルタの工程性と物性とが、実施例1ないし3より不良であることが確認された。
【0118】
従って、比較例は、製造されたトウを適用したタバコフィルタ製造時、トウの不均一さにより、工程性が維持され得ないことが確認され、トウの不均一により、フィルタ性能を実現するのに困難さが伴った。
【0119】
一方、実施例1ないし3は、リヨセルタバコフィルタトウの製造時、クリンピング工程において、クリンパドラフト比を調節し、最適のタバコフィルタ性能を実現することができる25,000~45,000Deの太さ範囲を有させることができる。それにより、本発明によれば、現在使用されるCAと同等レベルのタバコフィルタ物性を実現することができる、しわ(crimp)が付与されたリヨセルトウを提供することにより、タバコフィルタ製造のための最適の工程性を確保することができる。
【国際調査報告】