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特表2024-523391LONG COVID及び/又はSARS-COV-2感染急性期後後遺症(PASC)の処置の方法に使用するための抗BAFF抗体
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  • 特表-LONG  COVID及び/又はSARS-COV-2感染急性期後後遺症(PASC)の処置の方法に使用するための抗BAFF抗体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】LONG COVID及び/又はSARS-COV-2感染急性期後後遺症(PASC)の処置の方法に使用するための抗BAFF抗体
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240621BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 11/14 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 11/16 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240621BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20240621BHJP
   A61P 31/14 20060101ALN20240621BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P11/14
A61P11/16
A61P11/00
G01N33/68
A61P31/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577846
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2022066381
(87)【国際公開番号】W WO2022263551
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】63/211,686
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】313006784
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン インテレクチュアル プロパティ リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】324005466
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン インテレクチュアル プロパティ マネージメント リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘンダーソン,ロバート ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ソコロヴェ,ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】ファン マウリク,アンドレ
【テーマコード(参考)】
2G045
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
2G045DA36
2G045FB06
4C084AA17
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA601
4C084ZA621
4C084ZB331
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC21
4C085CC23
4C085EE01
(57)【要約】
本開示は、Long Covid及び/又はSARS-CoV-2感染急性期後後遺症(PASC)の処置に使用するためのBリンパ球刺激因子(BlyS:B細胞活性化因子、BAFF)アンタゴニストに関する。またウイルスの感染後に誘導される自己免疫状態の処置に使用するためのBlySアンタゴニストが回jされる。かかる自己免疫状態は慢性的であり、例えばLong Covidであり得る。ウイルス感染後に誘導される自己免疫状態を処置する方法であって、それを必要とする対象に、BlySアンタゴニストの治療有効量を投与することを含む方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Long Covid及び/又はSARS-CoV-2感染急性期後後遺症(PASC)の処置に使用するためのBlySアンタゴニスト。
【請求項2】
ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2による感染に起因するLong Covid及び/又はSARS-CoV-2感染急性期後後遺症(PASC)の処置に使用するためのBlySアンタゴニスト。
【請求項3】
BlySアンタゴニストが抗BlyS抗体である、請求項1又は2に記載の使用のためのBlySアンタゴニスト。
【請求項4】
抗体がベリムマブ又はそのバリアントである、請求項3に記載の使用のための抗BlyS抗体。
【請求項5】
バリアント抗体が、ベリムマブと同じエピトープに結合する、請求項4に記載の使用のための抗BlyS抗体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のためのBlySアンタゴニストを含む医薬組成物。
【請求項7】
それを必要とする患者に、初回ウイルス感染から少なくとも4週間後又は少なくとも8週間後又は少なくとも12週間後に投与される、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
呼吸困難及び/又は咳を有すると診断された患者に投与される、請求項6又は請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
その血液中に少なくとも2つのサブセットの自己抗体を有すると診断された患者に投与される、請求項6から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
リウマチ因子(RF)及び/又は抗好中球細胞質抗体(ANCA)に関して検査陽性である患者に投与される、請求項6から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
抗核抗体(ANA)及び/又は抗リン脂質抗体に関して検査陽性である患者に投与される、請求項6から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
その血液中にBlys、IFN-β、PTX3、IFNラムダ2/3及び/又はIL-6の1つ以上を有すると診断された患者に投与される、請求項6から11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
ヒトにおけるLong Covid及び/又はPASCを処置する方法であって、以下のステップ:
i)[場合により]前記ヒトからの試料を得るステップ;
ii)血清中サイトカイン、Blys、IFN-β、PTX3、IFNラムダ2/3及び/又はIL-6のレベルに関して試験するステップ;
iii)[場合により]ステップii)の結果のいずれかのレベルを健康な参照レベルと比較/決定するステップ;
iv)レベルが参照レベルより少なくとも2倍高い場合、Blysアンタゴニストの治療有効量を投与するステップ
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Long Covid及び/又はSARS-CoV-2感染急性期後後遺症(PASC)の処置に使用するためのBlySアンタゴニスト、例えば抗BlyS抗体、例えば抗体ベリムマブに関する。
【0002】
同様に、ウイルス、例えばヒトコロナウイルスSARS-CoV-2又はCOVID-19の感染後に誘導される自己免疫状態の処置に使用するためのBlySアンタゴニスト、例えば抗BlyS抗体も提供される。そのような自己免疫状態は、慢性的であり、例えばLong Covid及び/又はSARS-CoV-2感染急性期後後遺症(PASC)であり得る。同様に、それを必要とする対象におけるウイルス感染後に誘導される自己免疫状態、例えばLong Covid及び/又はSARS-CoV-2感染急性期後後遺症(PASC)を処置する方法であって、BlySアンタゴニスト、例えば抗BlyS抗体の治療有効量を前記対象に投与することを含む方法も提供される。
【0003】
同様に、ウイルス、例えばCOVID-19の感染後に誘導される自己免疫状態の処置のための医薬の製造におけるBlySアンタゴニストの使用、及びウイルス感染、例えばCOVID-19感染後に誘導される自己免疫状態の処置に使用するためのBlySアンタゴニストを含む医薬組成物の使用も提供される。
【背景技術】
【0004】
COVID-19は、2019年11月に中国で出現した後、2020年1月30日に国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態を宣言された。原稿作成時、1億6800万を超える症例が確認されており、世界全体で340万人を超える死亡が報告された。感染病原体は、ヒトからヒトへの伝播によって拡散することが可能なコロナウイルス(重度呼吸窮迫症候群コロナウイルス-2、SARS-CoV-2として公知であるもの、及び以前に2019-nCoV2として公知であるもの)であると同定されている。ヒトに対して病原性である他のコロナウイルスは、軽度の臨床症状に関連するが、2つの顕著な例外は、重度呼吸窮迫症候群(SARS)コロナウイルス(SARS-CoV)及び中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルス(MERS-CoV)である。
【0005】
コロナウイルスは、長さ26~32kbのエンベロープに包まれた一本鎖プラス鎖センスRNAゲノムからなる。コロナウイルスは、膜に結合したスパイクタンパク質を利用して宿主細胞表面受容体に結合し、細胞内への侵入路を獲得する。宿主細胞への侵入後、RNAゲノムは、宿主のリボソーム機構によって2つの大きいポリペプチドに翻訳される。ポリペプチドは、2つのプロテアーゼ、すなわちコロナウイルスメインプロテナーゼ(3CL-Pro)及びパパイン様プロテナーゼによって処理され、ウイルス複製及びパッケージングにとって必要なタンパク質を生成する。
【0006】
コロナウイルスは、系統発生的類似性によって4つのカテゴリーに分類される:α(例えば、229E及びNL-63)、β(例えば、SARS-CoV-2、SARS-CoV、MERS-CoV、及びOC43)、γ及びδ。SARS-CoV-2は、SARS-CoVと79%配列同一性を有することが報告されており、SARS-CoV-2ゲノムのある特定の領域は、SARS-CoVに対してより大きい又はより小さい保存の程度を示す。
【0007】
SARS-CoV及びSARS-CoV-2(及びαコロナウイルスNL63)のスパイクタンパク質は、同じ宿主細胞受容体、すなわちアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を共有する。これは、中でもII型肺胞細胞及び口腔(特に舌)の上皮細胞において高度に発現される。しかしながら、結合の性質は異なるように思われる。この証拠として、SARS-CoV-2のSエクトドメインは、SARS-CoVのSタンパク質と比較して10倍~20倍高い親和性でACE2に結合するように思われる。加えて、SARS-CoVの受容体結合ドメインに対する3つのモノクローナル抗体は、SARS-CoVの受容体結合ドメインに対して1μMで強い結合を実証したが、SARS-CoV-2の受容体結合ドメインに対する結合はこの濃度で検出できなかった。このことは、おそらく配列レベルでの差を反映している。SARS-CoV-2及びSARS-CoVの受容体結合ドメインは、73.5%の全体的な配列同一性を有する。さらに、ACE2に対する結合に関与することが公知であるSARS-CoV受容体の幾つかの残基は、SARS-CoV-2では保存されていない。
【0008】
SARS-CoV-2のゲノムは、世界中で多数の患者においてシーケンシングされている。今日まで、GISAID(インフルエンザ情報共有の国際推進機構(Global Initiative on Sharing All Influenza Data))は、8個の世界的な株(S、O、L、V、G、GH、GR、及びGV)を同定した。最初の2つの株は、L(Wuhanにおいて2019年12月に検出された元の株)、及びORF8の84位で観察される1つのアミノ酸変化(株Sではセリン及び株Lではロイシン)を有するS(最初の変異株)と命名された。ウイルスの他のバリアントとしては、英国アルファバリアント(VUI-202012/01、株GR、系統B.1.1.7)、南アフリカベータバリアント(20H/501Y.V2、株GH、系統B.1.351)、ブラジルガンマバリアント(系統P.1又はB.1.1.28.1、株GR)、インドデルタバリアント(系統B.1.617.2、株G/452R.V3)及びオミクロンバリアント(株GR/484A、系統B.1.1.529)が挙げられる。VUI-202012/01は、17個の変異のセットによって定義され、最も重要なそのうちの2つは、スパイクタンパク質におけるN501Y及びE484K変異である。南アフリカバリアントは、スパイクタンパク質の受容体結合ドメインに3つの重要なアミノ酸変異:N501Y、K417N、及びE484Kを含有する。系統P.1は、そのスパイクタンパク質にN501Y及びE484Kを含む10個の変異を有する。系統B.1.617.2は、そのスパイクタンパク質にE484Q及びL452R変異を有するいわゆる「二重変異体」と呼ばれている。N501Y変異は、スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン内にあり、その一部は、ヒトACE2受容体(ウイルスが宿主細胞に侵入するために使用する受容体)に結合する。したがって、スパイクタンパク質のこの部分の変化が、おそらく人々の間でより感染性となり、伝播性を増強するウイルスをもたらし得る。時間の経過とともに、さらなるバリアント及びサブバリアントが出現すると理解される。
【0009】
本来、COVID-19の処置の最大の焦点は、疾患の急性期に対してであるが、時間の経過とともに「long-Covid」又はSARS-CoV-2感染急性期後後遺症(PASC)と呼ばれる疾患の影響が出現している。この持続的な疾病はしばしば、入院を必要とする重度COVID-19を有する患者集団、特に高齢者において認められるが、最近では軽度の疾患を有する若年成人を含む、外来患者として最初に評価された人における増えつつあるSARS-CoV-2感染症においても認められている。
【0010】
現在利用可能な治療は、患者が高濃度酸素又は侵襲性機械的換気を必要とするCOVID-19入院患者のより重度又は急性期では、臨床上の利点は限定的である。今日まで、COVID-19又はlong-Covid又はSARS-CoV-2感染急性期後後遺症(PASC)からの回復の改善において十分な利益を有することが証明された標的化治療はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これらの疾患を処置することができ、患者が医療介入を必要とする時間を最小限にし、世界的な医療に対する逼迫の一部を軽減し、感染後の患者にクオリティオブライフを回復することができる医薬を発見することが肝要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明の第1の態様に従って、Long Covid及び/又はSARS-CoV-2感染急性期後後遺症(PASC)の処置に使用するためのBlySアンタゴニストが提供される。
【0013】
第2の態様では、ウイルス感染後に誘導される自己免疫状態の処置に使用するためのBlysアンタゴニストが提供される。別の態様では、Long Covid及び/又はSARS-CoV-2感染急性期後後遺症(PASC)の処置のための医薬の製造におけるBlySアンタゴニストの使用が提供される。
【0014】
別の態様では、ウイルス感染後に誘導される自己免疫状態の処置のための医薬の製造におけるBlySアンタゴニストの使用が提供される。さらなる態様では、Long Covid及び/又はSARS-CoV-2感染急性期後後遺症(PASC)の処置に使用するための医薬組成物であって、BlySアンタゴニストを含む医薬組成物が提供される。
【0015】
なおさらなる態様に従って、それを必要とする対象におけるLong Covid及び/又はSARS-CoV-2感染急性期後後遺症(PASC)を処置する方法であって、Blysアンタゴニストの治療有効量を前記対象に投与することを含む方法が提供される。
【0016】
さらなる態様では、それを必要とする対象におけるLong Covid及び/又はSARS-CoV-2感染急性期後後遺症(PASC)を処置する方法であって、例えばベリムマブであるか及び/又は本明細書に定義される抗BlyS抗体の治療有効量を前記対象に投与することを含む方法が提供される。
【0017】
さらなる態様では、Long Covid及び/又はSARS-CoV-2感染急性期後後遺症(PASC)を処置する方法であって、患者からの試料を採取すること、血清中サイトカイン、Blys、IFN-β、PTX3、IFNラムダ2/3及び/又はIL-6の少なくとも1つ以上の存在に関して試験すること、並びにレベルを健康な参照レベルと比較することを含み、試験したサイトカインレベルが参照レベルのサイトカインレベルより高い(例えば、2倍高いBLySレベル、又は6倍高いIFNレベル、又は2倍高いIFNラムダレベル)場合、患者をBlysアンタゴニスト、例えば抗Blys抗体によって処置することを含む方法が提供される。このように、一実施形態では、本明細書に定義される抗BlyS抗体又は組合せは、血清中サイトカイン、Blys、IFN-β、PTX3、IFNラムダ2/3及び/又はIL-6.13の存在に関して試験後の対象に投与される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】CR及びPASCコホートの間の正規化タンパク質発現(NPX)の差に関するボルケーノプロットである。調整されたp値≦0.05を有する標的を強調する。BLySレベルを丸で囲む。BLyS及び目的の他のタンパク質のアノテーションを提供する。
図2】表記の群の各患者に関する正規化BLySレベルである。(図2a)パンデミック前の健康な対照及び活動性SLEを有する非感染患者と比較した回復群におけるBLyS値の比較。水平のバー-平均値。(図2b)回復コホートとBLyS陽性カットオフとの直接比較を示した。パーセンテージは、BLyS陽性カットオフを超える患者のパーセントを示す。
図3】BLySとCOVID-19のバイオマーカーとの相関である。(図3a)CR及びPASC患者群の血漿中の正規化BLySレベルと正規化CXCL10レベルとの相関。(図3b)CR及びPASC患者群の血漿中の正規化BLySレベルと正規化ペントラキシン3(PTX3)レベルとの相関。
図4】高BLyS PASC患者と低BLyS PASC患者との比較におけるB細胞プロファイルのフローサイトメトリー評価である。(図4a)BlyS-PASC患者とBLyS+PASC患者との比較における総CD19+細胞の抗体分泌細胞頻度。(図4b)BlyS-PASC患者とBLyS+PASC患者との比較における総CD19+細胞の活性化ナイーブ細胞頻度。(図4c)BlyS-PASC患者とBLyS+PASC患者との比較における総CD19+細胞のダブルネガティブ2細胞頻度。(図4d)EF:GC B細胞活性の測定基準としてのダブルネガティブ2細胞とダブルネガティブ1細胞とのLog2変換比。
図5】PASCコホートにおける自己反応性を、31の臨床的に関連する自己抗原に対する反応性に関してExagen Incがスクリーニングした。患者の結果のヒートマップ。各縦列は、患者が示した自己反応性検査陽性の総数毎に群分けした1人の患者を表す。太字の枠は、検査結果の程度を示す色の深さによる臨床検査陽性を表す。各検査のスケールを、ヒートマップの下に記載する。
図6】BLyS-患者とBLyS+患者との比較におけるPASC患者の症状の分割表検定。P値は、Fisher正確確率分割表検定を表す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
疾患の免疫学的基礎を調査するプロセスにおいて、非標準的なB細胞活性化経路である濾胞外(EF)経路が、重度疾患における免疫応答の重要な構成要素として同定されている(Woodruff et al., Nat Immunol 21, 1506-1516 (2020); https://doi.org/10.1038/s41590-020-00814-z)。この経路は、全身性エリテマトーデス(SLE)などの活動性及び増悪性自己免疫疾患において以前に同定されており、自己反応性応答の発生に関係し、重度の疾患アウトカムと相関する。重篤なCOVID-19患者における循環中のB細胞は、SLEなどの自己免疫疾患を有する患者において以前に同定された濾胞外B細胞と表現型が類似である。興味深いことに、COVID-19患者における濾胞外B細胞の頻度は、中和抗体の高い力価の早期産生、並びに炎症バイオマーカー(例えば、C反応性タンパク質)及び臓器損傷と相関した。Woodruffらと一致して、Kanekoら(Kaneko, N. et al., Cell 183, 143-157.e13 (2020); https://doi.org/10.1016/j.cell.2020.08.025)もまた、COVID-19の死後リンパ節及び脾臓試料において濾胞外IgD-CD27-B細胞レベルが増加することを報告した。IgD-CD27-「ダブルネガティブ」B細胞は、「疾患関連」細胞であると考えられ、一般的に「濾胞外」として記載され、それらが胚中心反応に由来しないが、しばしばクラススイッチを受けて、肺中心に基づく選択を受けることなくT細胞依存的に誘導されているという特徴を有することを暗示する。データは、COVID-19における胚中心形成の非存在下では、長期間持続する保護ではなくより疾患に典型的なクラススイッチしたB細胞応答の濾胞外タイプが二次リンパ系臓器において多数を占めることを示している。重度/重篤なCOVID-19患者は、今では、抗核抗体(ANA)、リン脂質、I型インターフェロン、リウマチ因子(RF)、及び他の自己抗原に対する自己抗体などの臨床自己反応性を示すことが同定されている。自己反応性の存在は、血清中CRPレベルの増加と相関し得ることから、自己反応性は重度疾患の最も一般的な特徴として確認されている。重要なことは、追加の自己反応性を示す全ての患者が、ANA又はRFのいずれかに関して検査陽性であり、これらの2つの臨床検査が、広い寛容性の破壊に関して患者を効率よくスクリーニングするために貴重であり得ることを示唆している。迅速な細胞外抗原プロファイリング(REAP)を使用して、Wangら(Wang EY, et al., preprint at. medRxiv (2020); https://doi.org/10.1101/2020.12.10.20247205)は、重度COVID-19患者における抗体によって標的化される広範囲の自己抗原を同定した。これらは、自然の抗ウイルス応答に拮抗することによって抗ウイルス免疫の経過に直接影響を及ぼし、このように疾患の進行に影響を及ぼすサイトカイン、インターフェロン、ケモカイン及び白血球などの免疫調節タンパク質に対する抗体、並びに潜在的に抗体媒介性臓器損傷を引き起こし得る中枢神経系、血管系、結合組織、心組織、肝組織、及び腸管において発現される組織特異的抗原に対する抗体を含む。重要なことに、組織関連抗原を標的化する自己抗体は、COVID-19患者における疾患重症度及び臨床特徴と相関することが示された。縦断的REAP解析は、既存の自己抗体並びに感染後に誘導された新たな自己抗体の広いサブセットの両方が存在することを明らかにした。
【0020】
その上、感染の数ヶ月後にCOVID-19(Long Covid)及び/又はSARS-CoV-2感染急性期後後遺症(PASC)の長期間の症状を有する人々において自己抗体が見出されている。I型インターフェロンの誘導及びシグナル伝達は、致死性のCOVID-19の防止において重要な役割を有する。I型インターフェロンに対する中和抗体は、生命を脅かすCOVID-19に患者を罹りやすくすることが記載されている。1つの試験では、重度のCOVID-19を有する患者987人中135人(13.7%)が、IFNα、IFNω、又はその両方に対する抗体を有し、この知見は、別の試験によって後に確認された。これに対し、無症候性から軽度のCOVID-19を有する患者663人はいずれも、I型インターフェロンに対する自己抗体を有さず、健康なドナーでは自己抗体を有したのは1,227人中わずか4人(0.3%)であった。集合的に、これらの試験は、COVID-19におけるI型インターフェロンの欠如の壊滅的な結末を示すのみならず、疾患の経過に影響を及ぼす自己抗体の重要性も示す。その結果、及び小児における多系統炎症性症候群(MIS-C)における自己抗体構成要素の同定により、回復した患者の多数に出現する抗ウイルス免疫及び長期間のCOVID-19後後遺症の観察される臨床現象に及ぼすこれらの系の影響を考慮することは妥当である。BLySレベルの増加は、T細胞の非存在下であっても自己反応性B細胞の生存及び活性化を促進することが示されている。これらの知見は、SARS-CoV-2感染症が多様な自己抗原に対する自己寛容性の破壊をしばしばもたらすという考え方を支持するが、Blysレベル及びBLyS駆動性の自己寛容性の破壊の、1)免疫調節タンパク質に対する抗体の生成を通しての重度COVID-19感染症、及び2)病原性自己抗体の生成を通してのCOVID-19感染後の症状に対する正確な寄与はいまだ証明されていない。
【0021】
1つのクラスとしての抗リン脂質(aPL)抗体は、全ての自己抗体の最高頻度で報告され、重度症例の約半数において検出されており[Zuo Sci Transl Med. 2020;12(570)]、集中治療室(ICU)にいる人では最高であり、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)が延長したCOVID-19患者の最大91%に影響を及ぼす[Bowles New Eng J Med. 2020;383(3):288-90]。抗リン脂質症候群(APS)において血栓形成促進性である好中球細胞外トラップ(NET)の存在が、COVID-19患者におけるaPL抗体の高い力価に関連することが見出された。重度COVID-19患者から精製したIgG分画はさらに、マウスに注射した場合に、APSの他の試験において実証されたように、血栓を加速させることが示された。これらの知見は、COVID-19入院患者においてNET形成の促進を通しての血栓の増強におけるaPL抗体の潜在的役割を示している。
【0022】
これらの系路の活性化をもたらす免疫学的環境を理解すること、それらが新規自己反応性の新規形成及びCOVID-19後の症状の出現に関連するか否かを理解すること、及びCOVID-19に起因する急性及び長期的な症状の両方の処置のための潜在的治療標的を同定することが重要である。
【0023】
定義
「BlySアンタゴニスト」という用語は、本明細書で使用される場合、例えばBlyS又はBR3、TACI若しくはBCMA受容体に結合することによってBlyS活性を低減又は遮断する作用剤を指す。一実施形態では、BlySアンタゴニストは、小さい化学分子である。別の実施形態では、BlySアンタゴニストは、抗BlyS結合タンパク質又は抗BlyS受容体結合タンパク質である。一実施形態では、BlySアンタゴニストは、BlySに特異的に結合する。別の実施形態では、BlySアンタゴニストは抗BlyS抗体である。一実施形態では、抗Blys抗体は、ベリムマブ又はそのバリアントである。
【0024】
「抗体」という用語は、本明細書においてその最も広い意味で使用され、免疫グロブリン様ドメイン(例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、又はIgE)を有する分子を指し、モノクローナル抗体、組換え抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、二特異性抗体を含む多特異性抗体、及びヘテロコンジュゲート抗体;抗原結合性断片、Fab、F(ab')2、Fv、ジスルフィド結合Fv、一本鎖Fv、ジスルフィド結合scFv、ダイアボディ、TANDABSなど、並びに前述のいずれかの改変型(代替の「抗体」フォーマットの要約に関しては、Holliger and Hudson, Nature Biotechnology, 2005, Vol 23, No. 9, 1126-1136を参照されたい)を含む。
【0025】
「抗BlyS抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、BlySに結合してその機能に影響を及ぼすことが可能である、例えば本明細書に記載されるアンタゴニスト抗体の例では低減及び/又は遮断することが可能である抗体を指す。「抗体」という用語は、本明細書において以前に定義されたようにその最も広い意味で使用され、具体的にはモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体、及び所望の生物活性を示す抗体断片をその範囲に含む。
【0026】
本発明の抗BlyS抗体は、BlySに拮抗することが可能であり、BlyS誘導シグナル伝達を減少、遮断、又は阻害し得る抗体である。例えば、本発明の抗BlyS結合抗体は、BlySとその受容体との間の相互作用を壊す及び/又は遮断して、BlyS誘導シグナル伝達を阻害又は下方調節し得る。特に、非結合BlySタンパク質、受容体結合BlySタンパク質、又は非結合及び受容体結合BlySタンパク質の両方を特異的に認識することによってBlyS誘導シグナル伝達を防止する本発明の抗BlyS結合抗体を、本明細書に記載される本発明に従って使用することができる。本発明の抗BlyS抗体がBlyS誘導シグナル伝達を阻害又は下方調節する能力は、当技術分野で公知の技術によって決定され得る。例えば、BlyS誘導受容体活性化及びシグナル伝達分子の活性化は、免疫沈澱後のウェスタンブロット解析による受容体又はシグナル伝達分子のリン酸化(例えば、チロシン又はセリン/トレオニン)を検出することによって決定することができる。一実施形態では、抗BlyS抗体は、モノクローナル抗体である。別の実施形態では、抗BlyS抗体はヒト又はヒト化抗体である。
【0027】
一実施形態では、抗BlyS抗体は、配列番号1のCDRH1;配列番号2のCDRH2;配列番号3のCDRH3;配列番号4のCDRL1;配列番号5のCDRL2;又は配列番号6のCDRL3の少なくとも1つ以上を含む。一実施形態では、抗BlyS抗体は、配列番号1のCDRH1;配列番号2のCDRH2;配列番号3のCDRH3;配列番号4のCDRL1;配列番号5のCDRL2;及び配列番号6のCDRL3を含む。さらなる実施形態では、抗BlyS抗体は、配列番号1のCDRH1;配列番号2のCDRH2;配列番号3のCDRH3;配列番号4のCDRL1;配列番号5のCDRL2;又は配列番号6のCDRL3の少なくとも3つ以上を含む。別の実施形態では、抗BlyS抗体は、配列番号1のCDRH1;配列番号2のCDRH2;配列番号3のCDRH3;配列番号4のCDRL1;配列番号5のCDRL2;又は配列番号6のCDRL3と少なくとも95%、又は96%又は97%又は98%又は99%相同であるCDR配列を含む。
【0028】
別の実施形態では、抗BlyS抗体は、配列番号1のCDRH1;配列番号2のCDRH2;配列番号3のCDRH3;配列番号4のCDRL1;配列番号5のCDRL2;又は配列番号6のCDRL3に従うバリアントCDR配列であるCDR配列を含み、バリアントは、各CDRにおいて2以下又は1以下のアミノ酸変化を有する。
【0029】
一実施形態では、抗Blys抗体は、配列番号1のCDRH1;配列番号2のCDRH2;配列番号3のCDRH3;配列番号4のCDRL1;配列番号5のCDRL2;及び配列番号6のCDRL3の6つ全てを含む。
【0030】
なおさらなる実施形態では、抗BlyS抗体は、配列番号7と少なくとも95%又は97%又は98%又は99%相同性を有する重鎖可変配列、及び配列番号8と少なくとも95%又は97%又は98%又は99%相同性を有する軽鎖可変配列を含む。
【0031】
なおさらなる実施形態では、抗BlyS抗体は、配列番号7の重鎖可変配列及び配列番号8の軽鎖可変配列の少なくとも1つを含む。別の実施形態では、抗BlyS抗体は、配列番号7の重鎖可変配列及び配列番号8の軽鎖可変配列の両方を含む。さらなる実施形態では、抗BlyS抗体は、配列番号9の重鎖配列及び配列番号10の軽鎖配列を含む。なおさらなる実施形態では、抗BlyS抗体は、配列番号9の重鎖配列及び配列番号10の軽鎖配列からなる。なおさらなる実施形態では、抗BlyS抗体はベリムマブ又はそのバリアントである。なおさらなる実施形態では、抗Blys抗体は、ベリムマブと同じエピトープに結合する。
【0032】
「CDR」は、抗原結合タンパク質の相補性決定領域アミノ酸配列として定義される。これらは、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の超可変領域である。免疫グロブリンの可変部分には3つの重鎖及び3つの軽鎖CDR(又はCDR領域)が存在する。このように、「CDR」は、本明細書で使用される場合、3つ全ての重鎖CDR、3つ全ての軽鎖CDR、全ての重鎖及び軽鎖CDR、又は少なくとも2つのCDRを指す。同様に、「CDRH」は、重鎖CDR、例えば3つ全ての重鎖CDRを指し、及び「CDRL」は、軽鎖CDR、例えば3つ全ての軽鎖CDRを指す。
【0033】
本明細書を通して、全長の抗原結合配列内の、例えば抗体重鎖配列又は抗体軽鎖配列内の可変ドメイン配列及び可変ドメイン領域におけるアミノ酸残基は、Kabatナンバリングの慣例に従って番号付けられる。同様に、本明細書に記載されるアンタゴニスト抗BlyS結合タンパク質を定義するために使用される「CDR」、「CDRH1」、「CDRH2」、「CDRH3」、「CDRL1」、「CDRL2」、「CDRL3」という用語は、Kabatのナンバリングの慣例又はHuCAL(ヒトコンビナトリアル抗体ライブラリ)ナンバリングシステムに従う。さらなる情報に関しては、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 4th Ed., U.S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health (1987)を参照されたい。
【0034】
可変ドメイン配列及び全長の抗体配列におけるアミノ酸残基の代替のナンバリングの慣例が存在することは、当業者に明らかである。同様に、CDR配列に関して代替のナンバリングの慣例、例えばChothia et al. (1989) Nature 342: 877-883に記載される慣例が存在する。抗原結合タンパク質の構造及びタンパク質フォールディングは、他の残基がCDR配列の一部であると考えられ、当業者にそのように理解されることを意味し得る。当業者に利用可能なCDR配列に関するなお他のナンバリングの慣例は、「AbM」(University of Bath)及び「contact」(University College London)の方法を含む。Kabat、Chothia、AbM、及びcontactの方法の少なくとも2つを使用して最小重複領域を決定し、「最小結合単位」を提供することができる。最小結合単位は、CDRの下位部分であり得る。
【0035】
以下の表Aは、各CDR又は結合単位に関する各ナンバリングの慣例を使用する1つの定義を表す。Kabatナンバリングスキームを表Aに使用して、可変ドメインアミノ酸配列を番号付ける。CDR定義の一部は、使用される個々の刊行物に応じて変化し得ることに注意すべきである。
【0036】
【表1】
【0037】
医薬組成物、投与経路、及び投与量
BlySアンタゴニスト、例えば抗BlyS抗体(例えば、ベリムマブ)は、本明細書に記載される場合、様々な投与経路によって、典型的に非経口によって投与することができる。これは、静脈内、筋肉内、皮下、直腸、及び膣を含むと意図される。有効な投与量は、他の要因の中でも患者の状態、年齢、体重、又は他の任意の処置に依存する。投与は、投与される投与量及び患者の応答に応じて、様々なプロトコールによって、例えば毎週、2週間に1回、又は毎月行われ得る。
【0038】
一実施形態では、抗BlyS抗体(例えば、ベリムマブ)は、静脈内注射などによって静脈内(IV)に投与される。疾患のタイプ及び重症度に応じて、約1μg/kg~50mg/kg体重、又はより具体的には約0.1mg/kg~20mg/kg体重のベリムマブが、例えば、1回以上の個別の投与によるか又は連続注入によるかによらず、対象に投与するための候補初回投与量である。より具体的には、抗体の投与量は、約0.05mg/kg体重~約10mg/kg体重の範囲である。一実施形態では、抗BlyS抗体(例えば、ベリムマブ)が静脈内に投与される場合、推奨される投与量レジメンは10mg/kgである。このように、一実施形態では、抗BlyS抗体は、10mg/kgの用量で対象に投与される。
【0039】
一実施形態では、抗BlyS抗体は、週に1回投与される。別の実施形態では、抗BlyS抗体(例えば、ベリムマブ)は、2週間毎に投与される。このように、一実施形態では、抗BlyS抗体は、10mg/kgを2週間毎に投与される。さらなる実施形態では、抗BlyS抗体は、最初の3用量に関して10mg/kgを2週間間隔で投与され、その後4週間間隔で投与される。他の実施形態では、抗BlyS抗体は、毎週、2週間毎、又は3週間毎に投与される。一実施形態では、抗BlyS抗体は、2週間毎に投与され、このことは抗BlyS抗体が、例えば4週間の間に3用量を2週間間隔で、0日目、14日目、及び28日目に投与されることを意味する。さらなる実施形態では、抗BlyS抗体は、2週間毎に(すなわち、0日目での投与後)少なくとも4週間、少なくとも6週間、又は少なくとも8週間投与され、その後4週間毎に投与される。
【0040】
一実施形態では、抗BlyS抗体(例えば、ベリムマブ)は、皮下注射などによって皮下に投与される。そのような一実施形態では、抗BlyS抗体は、200mgの単位用量で対象に投与される。
【0041】
本発明の皮下注射は、用量全体が単一のショットとして投与され、用量の全容量が全て1回で投与される1回注射として投与され得る。単一ショット注射を複数回投与してもよい。単一ショットは、連続的投与又は滴定された投与、例えば投与が全用量に達するまで数分間、数時間、又は数日間かけて投与され得る注入とは異なる。
【0042】
一実施形態では、抗BlyS抗体は、200mgの単位用量で対象に投与される。さらなる実施形態では、抗BlyS抗体は、1週間に1回投与される。さらなる実施形態では、抗BlyS抗体は、200mgの単位用量で週に1回投与され、すなわち200mgの単位用量を毎週投与される。別の実施形態では、抗BlyS抗体は、主に同じ時点で週に2回投与され、例えば同じ時間内又は例えば同じ日に投与される。代替の実施形態では、抗BlyS抗体(例えば、ベリムマブ(belimimab))は、400mgの総用量で投与される。このように、さらなる実施形態では、抗BlyS抗体(例えば、ベリムマブ)は、400mgの単位用量で対象に週に1回投与される。一実施形態では、400mg用量を、1回より多くの注射によって提供してもよく、例えば200mgの単位用量を2回投与してもよい。抗BlyS抗体は、同じ又は異なる注射部位に投与されてもよいが、好ましくは異なる注射部位に投与される。さらなる実施形態では、抗BlyS抗体は、週に2回、逐次的又は同時に、異なる反応部位に投与される。なおさらなる実施形態では、抗BlyS抗体は、400mgの用量を4週間毎週投与され、例えば0日目、7日目、14日目、21日目、及び28日目に投与され、その後200mgの用量を週に1回投与される。別の実施形態では、抗BlyS抗体は、400mgの用量で毎週(すなわち、0日目に投与後)少なくとも4週間、又は少なくとも8週間、又は少なくとも12週間投与され、その後200mgの用量で週に1回投与される。
【0043】
さらなる実施形態では、抗BlyS抗体(例えば、ベリムマブ)は、皮下投与の前に静脈内(IV)に投与される。そのような実施形態に従って、初回IV用量は、皮下投与前のいわゆる「負荷用量」である。負荷用量は、抗BlyS抗体の約1μg/kg~50mg/kg体重であり得て、又はより具体的には約0.1mg/kg~20mg/kg体重の間である。具体的には、抗体の負荷用量は、約0.05mg/kg体重~約10mg/kg体重の範囲であり得る。一実施形態では、抗体は、10mg/kgの負荷用量で、皮下投与の前に少なくとも1週間静脈内投与される。
【0044】
さらなる実施形態では、BlySアンタゴニスト、例えば抗BlyS抗体は、さらなる治療剤と組み合わせて投与される。このように、一実施形態では、処置は、さらなる治療剤の投与をさらに含む。そのようなさらなる治療剤は、処置される疾患、実施される処置、及び/又はそれを必要とする対象における必要性の文脈において当業者によって認識され、及び明白であろう。例えば、一部の実施形態では、追加の治療剤は、抗ウイルス剤及び/又は抗生物質である。なおさらなる実施形態では、追加の治療剤は、ステロイド、コルチコステロイド、又は抗マラリア剤である。
【0045】
一実施形態では、さらなる治療剤は、CD20アンタゴニストである。このように、特定の実施形態では、BlySアンタゴニスト(例えば、抗BlyS抗体)は、CD20アンタゴニストと組み合わせて投与される。さらなる実施形態では、CD20アンタゴニストは、CD20結合タンパク質である。なおさらなる実施形態では、CD20アンタゴニストは抗CD20抗体である。例えば、一実施形態では、抗CD20抗体はリツキシマブである。
【0046】
リツキシマブは、キメラガンマ1抗ヒトCD20抗体である。この抗体の完全なアミノ酸及び対応する核酸配列は、米国特許第5,736,137号に見出され得る。
【0047】
リツキシマブは、様々な投与経路によって、典型的に非経口によって投与され得る。これは、静脈内、筋肉内、皮下、直腸、及び膣を含むと意図される。有効な投与量は、他の要因の中でも患者の状態、年齢、体重、又は他の任意の処置に依存する。投与は、投与される投与量及び患者の応答に応じて、様々なプロトコールによって、例えば毎週、2週間に1回、又は毎月行われ得る。
【0048】
一実施形態では、リツキシマブは、静脈内注入として投与される。
【0049】
別の実施形態では、リツキシマブは、1000mgの投与量で投与される。
【0050】
リツキシマブが投与され得る他の投与量は、500mgの投与量;375mg/m2の投与量のIVを1週間に1回を6ヶ月間隔で4用量、最大16用量;375mg/m2の投与量のIVを8週間毎に12用量、及び375mg/m2の投与量のIVを週に1回4用量を含む。
【0051】
一実施形態では、リツキシマブは、皮下注射として投与される。そのような一実施形態では、リツキシマブは、120mg/mlの濃度である。なおさらなる実施形態では、皮下投与を受ける患者は最初に、静脈内用量を受けなければならない。別の実施形態では、リツキシマブは、1400mgの投与量で投与される。
【0052】
一実施形態では、B細胞を枯渇することが可能な抗CD20結合抗体はオファツムマブである。
【0053】
オファツムマブは、ヒトモノクローナル抗ヒトCD20抗体である。この抗体の完全なアミノ酸及び対応する核酸配列は、米国特許第8,529,902号に見出され得る。
【0054】
オファツムマブは、様々な投与経路によって、典型的には非経口によって投与され得る。これは、静脈内、筋肉内、皮下、直腸、及び膣を含むと意図される。有効な投与量は、他の要因の中でも患者の状態、年齢、体重、又は他の任意の処置に依存する。
【0055】
一例として、オファツムマブは、静脈内注入として1000mgの投与量で投与され得る。オファツムマブは、300mgの初回投与量で投与された後、8日目に1,000mgを投与され得る(サイクル1)。オファツムマブはまた、2000mgの初回投与量を週に1回7用量を投与した4週間後に2,000mgの4週間毎に4用量により投与され得る。
【0056】
以前に確立されたように、B細胞を枯渇することが可能な他の任意のCD20結合抗体は、本発明の文脈における類似の投与レジメンスケジュールで等しく好適である。
【0057】
抗BlyS抗体及びさらなる治療剤、例えば抗CD20抗体は、同時に、並行して又は逐次的に投与され得る。例えば、抗BlyS抗体は、抗CD20抗体の前又は抗CD20抗体の後に投与され得る。このように、一実施形態では、抗CD20抗体は、抗BlyS抗体の後にそれを必要とする対象に投与される。
【0058】
さらなる実施形態では、抗CD20抗体は、抗BLyS抗体の初回用量の少なくとも2週間後に投与される。別の実施形態では、抗CD20結合抗体は、抗BLyS抗体の初回用量後2週間から20週間の間に少なくとも2回投与される。例えば、抗CD20結合抗体は、抗BlyS抗体の初回用量後少なくとも2週目及び20週目、4週目及び18週目、6週目及び16週目、8週目及び14週目、又は10週目及び12週目に投与してもよい。一部の実施形態では、抗CD20結合抗体は、抗BlyS抗体の初回用量後4週目及び6週目、6週目及び10週目、8週目及び10週目、又は8週目及び12週目に投与される。さらなる実施形態では、抗CD20結合抗体は、抗BLyS抗体の初回用量後8週目及び10週目に投与される。なおさらなる実施形態では、抗CD20結合抗体は、抗BlyS抗体の初回用量後4週目及び6週目に投与される。
【0059】
抗CD20結合抗体の追加の用量を、抗BlyS抗体による処置の開始後少なくとも24週目に投与してもよい。例えば、B細胞を枯渇することが可能な抗CD20結合抗体の第3及び第4の用量を、24週目及び48週目、又は24週目及び25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47又は48週目に投与してもよい。同様に、第4の用量を、抗BlyS抗体による処置の開始後少なくとも48週後に投与してもよい。例えば、第4の用量を、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71又は72週目に投与してもよい。
【0060】
一実施形態では、抗CD20抗体及びBlySアンタゴニスト、例えば抗BlyS抗体は、Long Covid及び/又はSARS-CoV-2感染急性期後後遺症(PASC)の処置に使用するための組合せとして、又は或いはウイルス感染後に誘導される自己免疫状態の処置に使用するために提供される。さらなる実施形態では、抗BlyS抗体ベリムマブ及び抗CD20抗体リツキシマブは、Long Covid及び/又はSARS-CoV-2感染急性期後後遺症(PASC)の処置に使用するための組合せとして、又は或いはウイルス感染後に誘導される自己免疫状態の処置に使用するために提供される。なおさらなる実施形態では、ウイルス感染後に誘導される自己免疫状態は、本明細書に提供される通りであり、抗BlyS抗体及び抗CD20抗体の組合せは、前記状態の処置に使用するために提供される。
【0061】
一実施形態では、抗BlyS抗体は、24週間の期間投与される。別の実施形態では、抗BlyS抗体は、52週間の期間投与される。
【0062】
Long Covid及び/又はPASC、又はウイルス感染後に誘導される自己免疫状態の処置に使用するためのBlySアンタゴニスト(例えば、抗BlyS抗体)及び/又は本明細書に定義される組合せの投与は、対象の免疫寛容性を増加させ、前記状態の長期間の寛解を誘導する。免疫寛容性のそのような増加及び/又は長期の寛解の誘導は、臨床評価若しくはバイオマーカー評価によって、又は好適な疾患重症度スコアを使用することによって測定することができる。別の実施形態では、抗BlyS抗体又は本明細書に定義される組合せは、対象において免疫寛容性及び/又は寛解が誘導されるまでの期間、対象に投与される。そのような投与は、組合せの投与が終了した後、又は抗CD20抗体の投与が終了した後の連続する期間の間、抗BlyS抗体が投与されることを含み得る。或いは、抗CD20抗体は、組合せの投与が終了した後、又は抗BlyS抗体の投与が終了した後の連続する期間、投与される。さらなる実施形態では、抗BlyS抗体は、抗CD20抗体の最後の用量後最大で6ヶ月間全身投与され、例えば抗BlyS抗体は、抗CD20抗体の最後の用量後、3ヶ月以下又は4ヶ月以下の期間、投与される。
【0063】
抗BLyS抗体後の抗CD20抗体の投与は、リンパ系組織からB細胞を動員する機会を可能にする。B細胞の動員が抗BLyS抗体の投与後1週間で起こることは公知であるが、抗BLyS抗体が抗CD20抗体を、バックグラウンド免疫抑制剤を与えられた患者に同時に投与することなく、有効となるために好適な期間を可能にするためには、注意深くバランスのとれた投与量レジメンが必要である。
【0064】
例えば、一実施形態では、免疫抑制剤は、4週間の抗BlyS抗体(例えばベリムマブ)処置後、抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ)の初回投与前の4週目に中止される。
【0065】
本発明の別の態様に従って、Long Covid及び/又はSARS-CoV-2感染急性期後後遺症(PASC)の処置のための、又は或いはウイルス感染後に誘導される自己免疫状態の処置に使用するための医薬の製造におけるBlySアンタゴニストの使用が提供される。なおさらなる態様では、Long Covid及び/又はSARS-CoV-2感染急性期後後遺症(PASC)の処置に使用するための又は或いはBlySアンタゴニストを含む、ウイルス感染後に誘導される自己免疫状態の処置に使用するための医薬組成物が提供される。容易に認識されるように、そのような医薬及び/又は医薬組成物は、本明細書に記載される任意の方法又は実施形態に従って、及び方法又は実施形態において使用、例えば投与され得る。
【0066】
そのような態様に従って、医薬及び/又は医薬組成物は、BlySアンタゴニスト、例えば本明細書に定義される抗BlyS抗体、及び1つ以上の薬学的に許容される賦形剤又は担体を含む。一部の実施形態では、医薬及び/又は医薬組成物は、治療有効量のBlySアンタゴニストを含む。典型的に、そのような医薬組成物は、公知の及び許容される薬学的実践に必要とされる薬学的に許容される担体を含む。そのような担体の例は、滅菌担体、例えば場合により好適な緩衝剤によってpH5~8の範囲内に緩衝された食塩水、リンゲル液、又はデキストロース溶液を含む。医薬組成物及び医薬は、本明細書に記載される場合、注射又は注入(例えば、静脈内、腹腔内、皮内、皮下、筋肉内、又は門脈内)によって投与され得る。そのような組成物及び医薬は、好適には目に見える微粒子物質を含まない。医薬組成物及び医薬は、BlySアンタゴニスト、例えば本明細書に定義され、本明細書において指定される抗BlyS抗体の量を含み得る。
【0067】
そのような医薬組成物及び医薬を調製する方法は当業者に周知である。医薬組成物及び医薬は、単位投与剤形でのBlySアンタゴニストの量を、場合により使用説明書と共に含み得る。医薬組成物及び医薬は、凍結乾燥(フリーズドライ)されてもよく、当業者に周知の又は当業者に明らかな方法に従って投与される前に再構成される。抗体がIgG1アイソタイプを有する場合、このアイソタイプの抗体の銅媒介性の分解の程度を低減させるために、銅のキレート剤、例えばクエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)又はEDTA又はヒスチジンを、医薬組成物又は医薬に添加してもよい。医薬組成物及び医薬はまた、溶解剤、例えばアルギニン、界面活性剤/抗凝集剤、例えばポリソルベート80、及びバイアルの上部空隙酸素を置き換えるための不活性ガス、例えば窒素も含み得る。
【0068】
COVID-19
原稿作成時、SARS-CoV-2は、China National Microbiological Data Centreにおいてアクセッション番号NMDC10013002として登録された配列のいずれか1つとRNAレベルで95%より高い配列同一性を有するベータコロナウイルスである。他の実施形態では、これは、China National Microbiological Data Centreにおいてアクセッション番号NMDC10013002として登録された配列のいずれか1つとRNAレベルで96%より高い配列同一性、97%より高い配列同一性、98%より高い配列同一性、又は99%より高い配列同一性を有する。定義は、L及びS株(S株は、8782位でTを有し、28144位でCを有する;L株は、8782位でCを有し、28144位でTを有し、ナンバリングは、SARS-CoV-2(NC_045512)の参照ゲノムに関連する)、並びにO、V、G、HG、GR、及びGV株を含むSARS-CoV-2の全ての株をその範囲に含むと意図される。ウイルスは、時間の経過とともに変化し得ることが認識され、新規分類が企図される。
【0069】
COVID-19は、SARS-CoV-2の任意の株に感染した患者が示す症状のコレクションを指す。症状は典型的に、咳、発熱、及び息切れ(呼吸困難)を含む。COVID-19と診断された患者のおよそ10~15%が、入院及び集中治療を必要とし得る呼吸器の問題を伴う重度の疾患を経験し、患者のさらに5%は、重篤な状態になる。年齢は、重度COVID-19疾患の有意な危険因子として広く認識されている。より高い疾患重症度及び死亡率の増加は、高齢の重度COVID-19肺疾患患者において一致して観察されている。米国疾病予防管理センター(United States' Centers for Disease Control and Prevention)によれば、入院のリスクは、年齢70~74歳の患者では5倍高く、75歳以上の患者では8倍に上昇する。これらの患者はしばしば、有意な酸素吸入又は機械的換気を含む呼吸介入を必要とする。COVID-19の重度の呼吸器症状は、体の免疫系が、ウイルスを除去するために過熱することによって引き起こされ、生命を脅かす合併症又は死亡すらもたらし得る。
【0070】
高齢患者が、COVID-19により罹りやすい理由は、部分的に、「免疫老化」又は「炎症老化」と呼ばれる加齢の際に起こる免疫系のリモデリングによると考えられており、老化した免疫系により、高齢患者はより悪いアウトカムに罹りやすくなり得る。COVID-19における適応免疫系の変化と組み合わせた単球の機能及び表現型の変化は、通常の加齢と共に起こる変化と類似することが提唱されており、高齢患者を重度COVID-19疾患に罹りやすくする潜在的機序であるという仮説が立てられている。高齢患者では、1型IFN及びナチュラルキラー細胞のサイトカイン産生の減少、慢性の低グレードの全身性炎症、炎症促進性単球の頻度、及び機能的に消耗して老化したCD4+及びCD8+T細胞の蓄積が認められる。感染前、高齢患者は、低グレードの全身性炎症(「炎症老化」)を有し、そのため感染後に顕著な炎症応答を発生させるリスクがより高い。さらに、高齢患者では、適応免疫系は作用しないか、又は増加するまで時間がかかる可能性があり、そのため自然免疫系に対する依存が高く、ウイルス感染の除去にあまり成功していない。
【0071】
今日まで、ほとんどの研究は、重度COVID-19のために入院した成人における症状の持続及び臨床アウトカムに重点を置いてきた。外来診療で検査した症候性の成人においてさえも、症状を寛解し、通常の健康を取り戻すためには数週間を要し得ることが文献に示されている。検査の2~3週間以内に通常の健康を取り戻さないことは、COVID-19患者のおよそ3分の1で報告された。年齢18~34歳の慢性的な医学的状態を有しない若い成人においても、ほぼ5人に1人は感染後3週間以内にその通常の健康状態を取り戻さなかったことを報告した。これに対し、インフルエンザを有する外来患者の90%より多くが検査陽性からおよそ2週間以内に回復する。
【0072】
急性期covidのより高い危険因子は男性及び高齢者及び基礎疾患を有する患者において認められるが、Long Covidは、基礎的な既存の健康状態が必ずしも存在しない女性及び若年齢群においてより蔓延しているようである。さらに、初回感染症の重症度はしばしば、Long Covid及び/又はPASC診断の決定因子ではない。
【0073】
一実施形態では、本発明は、対象が、対象から得られた標本のSARS-CoV-2のからのウイルスRNAの検出によって、SARS-CoV-2に感染していると同定される又は以前に同定された、処置に使用するためのBlySアンタゴニストを提供する。例えば、対象は、SARS-CoV-2に処置前約4週間又は約12週間、又は12週間より長く感染していると同定された場合。一実施形態では、対象は、SARS-CoV-2のL株に感染しているか又は以前に感染した。別の実施形態では、対象は、SARS-CoV-2のS株に感染しているか又は以前に感染した。別の実施形態では、対象は、SARS-CoV-2のO株に感染しているか又は以前に感染した。別の実施形態では、対象は、SARS-CoV-2のV株に感染しているか又は以前に感染した。別の実施形態では、対象は、SARS-CoV-2のG株に感染しているか又は以前に感染した。別の実施形態では、対象は、SARS-CoV-2のGH株に感染しているか又は以前に感染した。別の実施形態では、対象は、SARS-CoV-2のGR株に感染しているか又は以前に感染した。別の実施形態では、対象は、SARS-CoV-2のGV株に感染しているか又は以前に感染した。別の実施形態では、対象は、SARS-CoV-2のG/452R.V3株に感染しているか又は以前に感染した。別の実施形態では、対象は、SARS-CoV-2の英国バリアント、例えばアルファバリアント、特にB1.1.7に感染しているか又は以前に感染した。別の実施形態では、対象は、SARS-CoV-2の南アフリカ株に感染しているか又は以前に感染した。さらなる実施形態では、対象は、SARS-CoV-2のブラジルバリアントに感染しているか又は以前に感染した。なおさらなる実施形態では、対象は、SARS-CoV-2のインドバリアントに感染しているか又は以前に感染した。他のバリアントが出現するが、これらもまた、本発明の範囲内であることが認識される。
【0074】
COVID-19感染症は、その臨床症状、臨床徴候、及び潜在的治療が異なる、重症度が増加する3つのグレードに分類することができる(Siddiqi & Mehra J Heart Lung Transplant (2020); https://doi.org/10.1016/j.healun.2020.03.012)。
【0075】
ステージ1:これは、初期感染ステージであり、ほとんどの人々にとって軽度の症状、例えば倦怠感、高熱、及び乾いた咳に関連する。全血球カウントから、リンパ球減少症及び好中球増加症が明らかになり得る。このステージでは、ウイルスは複製し、宿主内、主に呼吸器系内でその存在を確立する。このステージ内に留まっている患者は優れた予後を有する。
【0076】
COVID-19患者のサブセットは一般的に、全身性エリテマトーデス(SLE)患者において以前に記載されている病的な濾胞外B細胞集団(IgD-/CD27-ダブルネガティブ、DN)の増大を示す。濾胞外B細胞は、SLE患者において、及びより最近ではCOVID-19患者のサブセットにおいても自己抗体の産生に関連している。このように、SARS-CoV-2感染の際の自己寛容性の破壊(SLEにおいて記載されている)は、濾胞外B細胞の増大及び多様な自己抗原に対する自己抗体によって明らかとなっている。
【0077】
BLySレベルの上昇が、SARS-CoV-2感染の際に観察されているが(MGH Emergency Department COVID-19 Cohort(Filbin、Goldberg、Hacohen)によってOlinkプロテオミクスにより提供されたデータ)、Blys/BAFFレベルは、急性感染の経過後に健康な対象のレベルへと戻ることが認められている。図3 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32668194/。BLySの過剰発現は、動物モデルではSLE様の自己免疫を促進し得ることが示されているが、ヒトではBLySレベルの上昇は、SLE疾患重症度に関連する;BLySの中和は、自己抗体陽性SLEの処置において有効であり得る。
【0078】
BLyS駆動性の自己寛容性の破壊は、高炎症性疾患、例えばSLEにおいて記載されていることから、高炎症性疾患とCOVID-19との間の共通の病原性の機序は、SARS-CoV-2が、自己免疫及び/又は自己炎症性調節不全の発症の誘発因子として作用し得ることを示唆し得る。さらに、既存の自己免疫状態を有する患者は、SARS-CoV-2感染の間又は感染後に増悪し得る。
【0079】
ステージ2:これは、肺におけるウイルス複製及び局所炎症が高い肺疾患相である。患者は、ウイルス性肺炎を発症し(2B相)、低酸素症(PaO2/FiO2<300mmHgとして定義される)(2A相)を示さないが、異常な胸部イメージング、高トランスアミナーゼ血症、及び低い/正常なプロカルシトニンを示す。さらなる症状は、発熱及び咳を含む。このステージでは、患者は通常、処置のために入院する必要がある。COVID-19が進行すると、さらなる肺及び末端臓器損傷を防止するために過剰炎症を抑制することが重要である。
【0080】
ステージ3:これは、肺外の全身性過剰炎症症候群として出現する過剰炎症相である。サイトカイン及びバイオマーカーは、有意に上昇し、T細胞数が減少し、このステージは、急性呼吸窮迫症候群、サイトカイン放出症候群を含む全身性炎症応答症候群、ショック、及び心不全にも関連している。これらの患者の予後は不良である。
【0081】
Long-COVID及び/又はPASC: Covid 19に感染した多くの患者が経験する重症度は異なるものの、長期間の影響は、病院に行く必要がある人にも、又はウイルスに最初に感染した場合にそれほど不都合を感じなかった人にも限定されない。
【0082】
LONG COVID
一実施形態では、状態は、Long Covid又はPASCである。本明細書を通して、「Long Covid」という用語が、本発明の実施形態及び特色において使用される場合、SARS-CoV-2感染急性期後後遺症(PASC)にも等しく当てはまると理解すべきである。Long-COVIDは、疾病の初回急性相を超えて数週間又は数ヶ月間持続するCOVID-19の影響を記載するために使用される。したがって、さらなる実施形態では、Long Covidは、任意の臨床的に許容される定義に従って使用される。
【0083】
臨床症例の定義に加えて、「Long Covid」は、急性期COVID-19後に持続する又は発症する徴候及び症状を記載するために一般的に使用される。これは、進行中の症候性COVID-19及びCOVID-19後症候群(以下に定義する)の両方を含む。
【0084】
「急性期COVID-19」という用語は、本明細書で使用される場合、最大4週間持続し得るCOVID-19の徴候及び症状を指す。
【0085】
「進行中の症候性COVID-19」という用語は、4~12週間存在するCOVID-19の徴候及び症状を指す。
【0086】
UKのNational Institute for Health and Care Excellence(NICE)及び世界保健機構は、Long Covidを、12週間より長く持続すると定義しているが、「Long Covid」は、8週間より長く持続する症状に広く起因する。CDCは、Long Covidを、感染後4週間より長く持続する症状として定義する。診断はしばしば、症状が代替診断によって説明されないためになされる。これは通常、しばしば重複する症状群を呈し、これは時間の経過とともに変動及び変化し、体における任意の系に影響を及ぼし得る。
【0087】
1つの群の共通の症状は、主に呼吸器であり、例えば咳及び息切れ感(呼吸困難)であるが、疲労及び頭痛も含む。第2の群の症状は、心臓、脳、及び腸を含む体の多くの部分に影響を及ぼす。例えば、心臓の症状、例えば動悸又は心拍数の増加、並びにピリピリとした痛み、しびれ、及び「ブレインフォグ」が一般的に報告されている。このように、認識されるように、Long Covidの症状の多くは、上記のCFS/MEと共通である。一実施形態では、Long Covid及び/又はPASC患者の処置に使用するためのBlySアンタゴニストの使用であって、患者が呼吸困難及び咳を有すると診断されている使用が提供される。多様な状態により慢性的な咳を有する患者において使用されている幾つかの咳関連クオリティオブライフスコアが存在する。最も一般的に使用されるものとしては、レスター咳質問票(LCQ)、咳特異的クオリティオブライフ質問票(CQLQ)、及び単純ビジュアルアナログスケールが挙げられる。咳はまた、咳計数デバイス又は24時間あたりの咳の回数を記録するアプリ、例えばレスター咳モニター及びVitaloJAKによって客観的に測定することもできる。したがって、一実施形態では、患者は、jtd-12-09-5207.pdf (nih.gov) A Review Article on the 3rd International Cough Conference “The present and future of cough counting tools" Hall et al.2020に記載される方法などの当技術分野で公知の任意の方法に従って、咳を有すると診断される。
【0088】
呼吸困難は、主観的症状であるが、機能的運動負荷試験、例えば6分間歩行試験は、何らかの客観的データを与えることができる。幾つかの呼吸困難スコアを使用することができ、最も十分に確立されたものの一部は、息切れによる機能障害を評価する1~5の単純尺度であるMRC息切れ尺度であり、0~12のスコアを付けられるベースライン呼吸困難指数(Baseline Dyspnea Index)もまた、追跡評価のために呼吸困難変化指数(Transition Dyspnea Index)と共に使用することができ、ボルグ呼吸困難スケールは、運動時の息切れを0~10(例えば、運動負荷試験の一部として)で定量するために使用される。一実施形態では、患者は、当技術分野で公知の任意の方法に従って測定した場合に呼吸困難を有すると診断される。
【0089】
セントジョージ呼吸器質問票は、全体的な健康/クオリティオブライフに及ぼす呼吸器疾患の影響を評価する十分に確立されたクオリティオブライフスコアである。これは、咳と息切れの両方に関する質問を含む。セントジョージ呼吸器質問票は、3つのコンポーネント、すなわち症状(呼吸器症状によって引き起こされる窮迫)、活動度(日常活動の障害)、及び影響(心理社会機能)を含む自己記入検査であり、これらを合計して全身健康状態の総スコアを生じる。これは、COPDにおける最も検証された健康状態ツールである。健康な成人の平均スコアは、およそ8~12である(Ferrer ERJ 2002, Weatherall ERJ 2009)。一般的に4ポイントの変化が、臨床的に重要な最小の差であると考えられる。幾つかの試験(例えば、Jones 2011、Wacker 2016、Kharbanda 2021)は、GOLDステージによって測定したCOPD重症度に関連する平均SGRQスコアを調べた。
【0090】
【表2】
【0091】
Wackerらの論文は、SGRQ、EQ5Dなどを含むCOPD重症度に関連するアウトカム測定の幾つかの詳細な比較を有する:Wacker BMC Pulm Med 2016。
【0092】
一実施形態では、患者はセントジョージ呼吸器質問票の測定に従って呼吸困難及び咳を有すると診断される。さらなる実施形態では、患者は、少なくとも25、例えば28~34.9、又は少なくとも35、例えば38.7~41.9、又は例えば少なくとも45、例えば48.6~55.1、又は例えば少なくとも55、例えば58.4~69.6又は例えば少なくとも60のSGRQスコアを有すると診断されている。
【0093】
Long COVID及び/又はPASCに関する2つの新規患者報告アウトカムの最近の発達及び初期検証は、症状負担質問票(SBQ-LC)を含み、有望な心理測定特性を有する17の独立したスケールは、Rasch解析(Hughes, Sarah E., et al. "Development and validation of the Symptom Burden QuestionnaireTM for Long COVID: a Rasch analysis." medRxiv(2022))、及びUKの地域リハビリテーションの状況及び26のNHS long COVID施設で現在展開されているCOVID-19ヨークシャーリハビリテーションスケール(C19-YRS)を受けている(O'Connor, Rory J., et al. "The COVID-19 Yorkshire Rehabilitation Scale (C19-YRS): application and psychometric analysis in a post-COVID-19 syndrome cohort." Journal of Medical Virology 94.3 (2022): 1027-1034)。
【0094】
なお、全てのLong Covid又はSARS-CoV-2感染急性期後後遺症(PASC)症状に影響を及ぼす単一の共通する機序経路は明確に同定されていない。Long Covid又はSARS-CoV-2感染急性期後後遺症(PASC)は、不均一な症候学を有する多様に定義された症候群であり、多くは、12週より長く持続する症状に焦点を当てているが、米国疾病予防管理センター(CDC)は、2021年にこれを、初回SARS-CoV-2感染後4週間以上人々が経験し得る一定範囲の新たな、再発した、又は進行中の健康問題として定義した。SARS-CoV-2ウイルスの存続、自己抗体形成、炎症の寛解の欠如、ミトコンドリア機能障害、潜伏ウイルス(エプスタインバーウイルス(EBV)、その他)の再活性化を含む少なくとも5つの推定の機序が同定されている。
【0095】
本明細書において以前に記載したように、重度/重篤なCOVID-19患者は、抗核抗体(ANA)、リン脂質、I型インターフェロン、リウマチ因子(RF)、及び他の自己抗原に対する自己抗体などの臨床自己反応性を示すことが同定されている。さらに、重篤なCOVID-19患者における循環中のB細胞は、SLEなどの自己免疫疾患を有する患者において以前に同定された濾胞外B細胞と表現型が類似であった。したがって、一実施形態では、Long Covid及び/又はPASC患者は、自己抗体の存在によって特徴付けられる。これらは、自然の抗ウイルス応答に拮抗することによって抗ウイルス免疫の過程に直接影響を及ぼすサイトカイン、インターフェロン、ケモカイン、及び白血球に対する抗体、並びに中枢神経系、血管系、結合組織、心組織、肝組織、及び腸管において発現され、抗体媒介器官傷害を潜在的に惹起し得る組織特異的抗原に対する抗体に対する抗体を含む。このように、ある特定の実施形態では、自己免疫状態は、新規免疫媒介炎症性疾患を駆動する潜在性を有する自己抗体の存在によって特徴付けられる。さらなる実施形態では、抗核抗体(ANA)及び/又は抗リウマチ因子(RF)抗体の力価及び/又はレベルは、全身性エリテマトーデス(SLE)で認められる力価及び/又はレベルである。そのような自己抗体は、対象の任意の臓器又は組織に存在し得るが、自己免疫状態に関連する潜在的な高いレベルにより、前記対象の血液中に見出される。このように、さらなる実施形態では、自己抗体は対象の血液中に存在する。
【0096】
なおさらなる実施形態では、自己抗体は、抗核抗体(ANA)、抗リウマチ因子(RF)抗体、抗二本鎖DNA(dsDNA)抗体、抗核外抗原(ENA)抗体、抗リボソーム-P抗体、抗RNP-70抗体、抗シェーグレン症候群関連抗原A(SS-A)及び/又は抗シェーグレン症候群関連抗原B(SS-B)抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体、抗前十字靱帯(ACL)抗体、抗ループス抗凝固因子(LAC)抗体、及び/又は抗ベータ2-糖タンパク質1抗体から選択される。一実施形態では、抗核抗体(ANA)の力価は、1:80より高く、及び/又は抗リウマチ因子(RF)抗体は、20IU/mLより高い。さらなる実施形態では、ANAの力価は1:80より高く、RF抗体の力価は20IU/mLより高い。さらなる実施形態では、処置される患者は、血液中の自己抗体の少なくとも2つ以上又は3つ以上のサブセットに関して検査陽性である。さらなる実施形態では、患者は、少なくとも抗核抗体(ANA)及び/又は抗リン脂質抗体に関して検査陽性である。
【0097】
Long Covid及び/又はPASCを有する患者は、本明細書において以前に言及したように、息切れ、胸痛、又は胸の苦しさ、慢性疲労、「ブレインフォグ」として公知である記憶及び集中に関連する問題、抑うつ、不安、及びストレスを含む幾つかの症状を経験する。状態は通常、しばしば重複する症状群として存在し、これらは時間の経過とともに変化し得て、体内の任意の系に影響を及ぼし得る。同様に、多くの人々が、全身疼痛、発疹、動悸、耳鳴り、及び耳の問題、めまい、手足のしびれ、関節痛、不快感、下痢、胃痛、食欲減退、嗅覚又は味覚の変化、持続する高熱、及び精神障害も経験し得ることに注目されたい。SRI、健康関連クオリティオブライフ(SF-36、幾つかの身体及び精神健康ドメインにおけるクオリティオブライフの変化を測定する)、及び慢性疾患治療(FACIT)の疲労に関する機能評価(疲労を測定する)などの測定を使用して、Long Covid患者を評価してもよい。体の疼痛、全身健康、身体機能、身体役割機能、社会的機能、及び活力の測定を含む、SF-36の身体及び精神構成要素のベースラインからの平均変化は、改善であると考えられ得る。このように、一実施形態では、本明細書に記載される処置、例えばLong Covidの処置はSF-36測定の改善を含む。さらなる実施形態では、処置、例えばLong Covidの処置は、FACIT-Fスコアの改善を含み、処置が疲労の症状を緩和することを示す。
【0098】
自己免疫状態
本発明の一態様では、本明細書に記載されるBlySアンタゴニスト、例えば抗BlyS抗体は、ウイルス感染後に誘導される自己免疫状態の処置に使用するために提供される。本明細書を通して、「ウイルス感染後に誘導される」という用語は、他の任意の非存在下で、医学的状態の悪化に関する誘発因子又は疑われる病原体としてのウイルス感染を指す。例えば、ウイルス感染は、これまで健康であった個体において自己免疫状態を発生させる、又は自己免疫状態を有すると以前に診断された個体を悪化又は増悪させる、自己反応性又は寛容性の破壊の原因である。
【0099】
一実施形態では、自己免疫状態は新規である。
【0100】
別の実施形態では、自己免疫状態は既存の状態、例えば、対象が以前に診断されている、又はウイルス感染前に対象において以前に同定されている自己免疫疾患又は障害である。この実施形態に従って、既存の状態は、ウイルス感染により悪化するか、又は対象が、既存の自己免疫状態から寛解状態にあると考えられる場合には再活性化される。そのような再活性化は、「増悪」又は「増悪する」としても公知である。一実施形態では、対象は、既存の自己免疫状態を有する。さらなる実施形態では、既存の自己免疫状態は、ウイルス感染前の対象において存在する。なおさらなる実施形態では、既存の自己免疫状態は、ウイルス感染時に改変され、例えば追加の/代替の自己抗体が対象において検出され得るように変化している。
【0101】
別の態様では、それを必要とする対象におけるウイルス感染後に誘導される自己免疫状態を処置する方法であって、BlySアンタゴニスト、例えば抗BlyS抗体の治療有効量を前記対象に投与することを含む方法が提供される。
【0102】
一態様では、対象におけるLong Covid及び/又はPASCを処置する方法であって、
i)場合により対象からの試料を得るステップ;
ii)試料を、血清中サイトカイン、Blys、IFN-β、PTX3、IFNラムダ2/3及び/又はIL-6のレベルに関して試験するステップ;
iii)場合により、ステップii)の結果のいずれかのレベルを健康な参照レベルと比較/決定するステップ;
iv)レベルが参照レベルより少なくとも2倍高い場合、Blysアンタゴニストの治療有効量を対象に投与するステップ
を含む方法が提供される。
【0103】
別の態様では、対象におけるLong Covid及び/又はPASCを処置する方法であって、
i)対象の血清中サイトカイン、Blys、IFN-β、PTX3、IFNラムダ2/3及び/又はIL-6のレベルを健康な参照レベルと比較するステップ;
ii)レベルが参照レベルより少なくとも2倍高い場合、Blysアンタゴニストの治療有効量を対象に投与するステップ
を含む方法が提供される。
【0104】
別の態様では、対象におけるLong Covid及び/又はPASCを処置する方法であって、Blysアンタゴニストの治療有効量を対象に投与することを含み、対象の血清中サイトカイン、Blys、IFN-β、PTX3、IFNラムダ2/3及び/又はIL-6のレベルが健康な参照レベルより少なくとも2倍高い方法が提供される。
【0105】
全体を通して使用される健康な参照レベルを使用して、当技術分野で周知の方法に基づいて、健康な患者を示すと医師が予測するレベルを定義する。
【0106】
本明細書の上記で及びSmattiら(Smatti, M. K. et al., Viruses (2019); https://doi.org/10.3390/v11080762)による論評に記載されるように、ウイルス及びウイルス感染症は、長い間自己免疫疾患及び状態に関与する及びこれらを改変することが示されている。このことは、遠位の無関係に思われる臓器及び組織においても、例えばA型インフルエンザウイルス感染後の1型糖尿病の発症などで起こり得る。
【0107】
一実施形態では、自己免疫状態は慢性である。別の実施形態では、対象は、慢性自己免疫状態を有することが疑われる、同定される、例えば診断される。そのような慢性状態は、急性相又は疾患の症状の終了後に一定期間、例えば長期間にわたって対象に影響を及ぼすと理解される。例えば、初回ウイルス感染及び前記感染の急性相の後、対象は、前記感染症の作用を感じ続け得るか、又は新規症状、例えば疲労及び/若しくは悪心を発症し得る。特定の実施形態では、自己免疫状態は、感染後4週間、又は初回感染後8週間若しくは12週間持続するか又は存在する。このように、一実施形態では、自己免疫状態は、ウイルス感染の4週間で存在するか又は4週間後に存在し、又はウイルス感染、例えばSARS-CoV-2感染後8若しくは12週間後に存在する。
【0108】
一部の実施形態では、自己免疫状態は慢性疲労症候群(CFS)又は筋痛性脳脊髄炎(ME)である。CFS/MEは、6ヶ月以上持続する極度の疲労によって特徴付けられ、疲労の症状が運動によって悪化し得るが、休息によって改善しない原因不明の複合障害である。CFS/MEは、原因不明であり、現在この状態の処置はなく、幾つかの症状は、自己免疫状態、例えば全身性エリテマトーデス(SLE)の症状と共通し、以下:極度の消耗;体力の回復が見られない睡眠;ブレインフォグ/認識障害;関節痛;炎症を有するリンパ節;持続的な喉の痛み;重度の頭痛;神経学的異常;完全な臓器系シャットダウン;並びに光、音、臭い、化学物質、食物、及び薬に対する過敏さを含む。
【0109】
このように、他の実施形態では、自己免疫状態は新規免疫媒介炎症性疾患、例えば、
・ 全身性エリテマトーデス(SLE):患者は、全米リウマチ学会(ACR)(1997)が改訂した改変版全身性エリテマトーデス分類基準(modified American College of Rheumatology (ACR) (1997) Revised Criteria for the Classification of Systemic Lupus Erythematosus)又は全身性エリテマトーデス国際臨床共同研究会(Systemic Lupus International Collaborating Clinics (SLICC))の全身性エリテマトーデス分類基準の11のうち少なくとも4つを満たす;
・ 抗好中球細胞質抗体関連血管炎(AAV):患者は、1990年改訂版多発血管炎性肉芽腫症(GPA)のACR基準(Revised 1990 ACR criteria for Granulomatosis with polyangiitis (GPA))、又は2012年Chapel Hill会議による顕微鏡的多発血管炎(MPA)の命名(2012 Chapel Hill Nomenclature for microscopic polyangiitis (MPA))を満たす;
・ 特発性炎症性筋疾患(IIM):患者は、成人及び若年性特発性炎症性筋疾患及びその主要なサブグループの2017年EULAR/ACR分類基準(2017 EULAR/ACR Classification Criteria for Adult and Juvenile idiopathic inflammatory myopathies and their major subgroups)を満たす;
・ 原発性シェーグレン症候群(SS):患者は2016年ACR基準を満たす;
・ 進行性全身性硬化症(PSS):ACR/EULAR 2013年分類基準を満たす;
・ 免疫媒介性腎疾患(IKD):疾患の存在は、免疫媒介性ネフローゼ症候群及び/又は糸球体腎炎と一致する腎生検の結果に基づく;
・ 小児多系統炎症性疾患(MIS-C)又は成人多系統炎症性疾患(MIS-A);
・ リウマチ性関節炎(RA):患者は、2010年ACR/EULAR分類基準を満たす;及び/又は
・ 非特定型全身性自己免疫症候群(SA-NOS):患者は、自己免疫疾患を有さないが、全身性自己免疫障害を示唆する自己抗体及び臨床的特徴の証拠があると特徴付けられる
である。
【0110】
このように、一部の実施形態では、自己免疫状態は、ウイルス感染後に誘導される又は悪化する。さらなる実施形態では、ウイルス感染症は、腸ウイルス感染症、ヘルペスウイルス感染症、インフルエンザ感染症、又はコロナウイルス感染症である。本明細書で以前に記載したように、及びSmattiらに記載されるように、そのようなウイルス感染症は、自己免疫状態の発症をもたらし得る又は発症に寄与し得るが、この基礎となる特定の機序は不明である。したがって、ウイルス感染症は任意のウイルスによる感染症であり得る。一実施形態では、ウイルスは、エプスタインバーウイルス又はそのようなウイルスの再活性化である。ある特定の実施形態では、腸ウイルス感染症は、コクサッキーBウイルス(CVB)又はロタウイルス感染症であり、インフルエンザウイルス感染症は、A型インフルエンザ感染症であり、又はコロナウイルス感染症は、SARS-CoV-2感染症である。特定の実施形態では、ウイルス感染症は、SARS-CoV-2感染症又はCOVID-19感染症である。一実施形態では、誘発因子は、潜伏ウイルスの再活性化であり、単なる初回感染ではない。
【0111】
一実施形態では、自己免疫状態は、女性対象における150ng/mLを超える血清中フェリチンレベル及び男性対象における300ng/mLを超える血清中フェリチンレベルによって特徴付けられる。さらなる実施形態では、自己免疫状態は、対象における10mg/Lを超えるC反応性タンパク質レベルによって特徴付けられる。なおさらなる実施形態では、自己免疫状態は、女性対象における150ng/mLを超える血清中フェリチンレベル又は男性対象における300ng/mLを超える血清中フェリチンレベル、並びに対象における10mg/Lを超えるC反応性タンパク質レベルによって特徴付けられる。別の実施形態では、自己免疫状態は、女性において150ng/mLを超える若しくは男性において300ng/mLを超える血清中フェリチンレベル、並びに/又はウイルス感染時に対象において10mg/Lを超えるC反応性タンパク質レベルを以前に有した対象によって特徴付けられる。
【0112】
COVID-19の処置
COVID-19(例えば、重度COVID-19肺疾患)、サイトカイン放出症候群、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、サイトカインストーム、又は骨髄細胞駆動性血管炎の処置は、例えば経時的な疾病重症度を測定するWHO委員会順序尺度(以下の表Bに与えられる)を使用して、疾患の症状の重症度又は持続の低減を指す。これらは全て、疾患の急性期の症状であると考えられる。
【0113】
【表3】
【0114】
WHO順序尺度は、COVID-19の試験において広く使用されており、同様にインフルエンザウイルス感染症を有する重篤な患者の試験においても過去に(2019)使用されている。
【0115】
一実施形態では、疾患の急性相の処置は、WHO委員会順序尺度に基づく疾病重症度の低減である。他の実施形態では、処置は改善を含む。別の実施形態では、処置は、症状の改善をもたらす。一実施形態では、疾患の症状は、正常レベルを超える全身性炎症の生物学的マーカーレベル及び酸素化障害を含む。別の実施形態では、改善は、対象のマスク若しくは鼻プロングによる低濃度酸素 (<15L/分)への移行、又は酸素療法なしをもたらす。
【0116】
或いは、疾患の急性相の処置は、ウイルス量の低減であり得る。ウイルス量は、患者からの標本の好適な定量的RT-PCRアッセイによって測定され得る。一実施形態では、標本は、上気道又は下気道(例えば、鼻咽頭又は中咽頭スワブ、喀痰、下気道吸引物、気管支肺胞洗浄液、気管支生検、経気管支生検、及び鼻咽頭洗浄液/吸引液、又は鼻汁吸引液)、唾液又は血漿からの標本であり得る。より特定の実施形態では、標本は唾液である。幾つかの定量的RT-PCRアッセイのプロトコールが、https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019/ technical-guidance/laboratory-guidanceに公表されている。加えて、Corman及び共同研究者は、そのようなアッセイに使用するためのプライマー及びプローブを公表した(Corman et al., European communicable disease bulletin (2020), https://doi.org/10.2807/1560-7917)。一実施形態では、COVID-19 RdRp/He1アッセイが使用される。これは、臨床標本について検証されており、ゲノムRNAに関して1.8 TCID50/ml及びin vitro RNA転写物に関して11.2 RNAコピー数/反応の検出下限を有する(Chan et al., J Clin Microbiol. (2020), https://doi.org/10.1128/JCM.00310-20)。ウイルス力価は、当技術分野で周知のアッセイによって測定され得る。
【0117】
別の実施形態では、ウイルス感染及び/又はLong COVID後に誘導された又は悪化した自己免疫状態の処置は、改善(amelioration)を含む。別の実施形態では、処置は、症状の改善(improvement)をもたらす。改善(amelioration)及び/又は症状の改善(improvement)は、疲労の低減、睡眠の改善、ブレインフォグ/認識障害の低減(頭痛の低減)、関節痛の低減、リンパ節炎症の低減、発熱/神経学的異常の低減、完全な臓器系シャットダウンの防止、及び/又は外部起源、例えば光、食品、若しくは薬に対する感受性の低減を含む。さらなる実施形態では、処置は、全身性炎症、例えば血液中の生物学的マーカーレベルの正常レベルへの低減を含む。なおさらなる実施形態では、処置は、SLEで認められる自己抗体の力価及び/又はレベル、例えば抗核抗体(ANA)及び/又は抗リウマチ因子(RF)抗体の力価及び/又はレベルの低減を含む。なおさらなる実施形態では、処置は、抗核抗体(ANA)力価の1:80未満への低減及び/又は抗リウマチ因子(RF)抗体の20IU/mL未満への低減を含む。さらなる実施形態では、処置後、ANAの力価は、1:80未満に低減され、RF抗体の力価は、20IU/mLに低減される。
【0118】
「改善」という用語は、本明細書で使用される場合、経時的な疾病重症度を測定する急性疾患の症例において、例えばWHO委員会順序尺度(上記の表2に記載)を使用した疾患の症状の重症度又は持続の防止又は低減である。改善は、疾患又はその症状の完全な回復又は完全な防止を含むが必ずしもその必要はない。
【0119】
「防止(予防)」という用語は、本明細書で使用される場合、疾患、例えばサイトカイン放出症候群、急性呼吸窮迫症候群、骨髄細胞駆動性血管炎、全身性炎症の生物学的マーカーの正常レベルを超える増加、又は酸素化障害の症状の完全な防止を指す。
【0120】
「サイトカイン放出症候群」(CRS)という用語は、本明細書で使用される場合、感染症及びある特定の薬物などの多様な要因によって誘発され得る全身性炎症応答症候群(SIRS)の一形態である。これは、免疫系が、炎症促進性サイトカインの制御されない及び過剰な放出を引き起こす場合に起こる。そのような大量のこの突然の放出は、多系統の臓器不全及び死亡を引き起こし得る。「サイトカイン放出症候群」はまた、症状が処置によるものであり、前記処置後数日間又は数週間まで遅れる状況も含む。一実施形態では、サイトカイン放出症候群は、顕著な炎症応答である。
【0121】
サイトカイン放出症候群を誘発し得る薬物は、免疫療法剤、例えばモノクローナル抗体、二特異性抗体、抗体薬物コンジュゲート、免疫チェックポイント阻害剤、T細胞結合一本鎖抗体構築物、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞及びT細胞受容体(TCR)T細胞を含む。一実施形態では、サイトカイン放出症候群は、免疫療法の結果である。
【0122】
CRSは、多数のリンパ球(B細胞、T細胞、及び/又はナチュラルキラー細胞)及び/又は骨髄細胞(マクロファージ、樹状細胞、及び単球)が活性化されて、炎症性サイトカインを放出する場合に臨床発現する。重要なサイトカインとしては、TNFα、IFNγ、IL-1β、IL-2、IL-6、IL-8、及びIL-10が挙げられる。IL-6は、特にCRSにおける毒性の中心的メディエーターとして出現する。CRSの症状は、発熱、悪心、疲労、頭痛、筋痛、倦怠感、悪寒、低血圧、予想外の酸素要求量、及び/又は酸素毒性を含む。呼吸器症状は、より軽度の段階では速い呼吸及び咳を含むが、呼吸困難及び低酸素血症を伴うARDSへと進行し得る。一実施形態では、ARDSはサイトカイン放出症候群の結果である。別の実施形態では、ARDSは免疫療法の結果である。
【0123】
「顕著な炎症応答」という用語は、本明細書で使用される場合、患者のサイトカインレベルが上昇しているがARDSで観察されるレベルではない、全身性炎症応答又はサイトカイン放出症候群を指す。一実施形態では、患者の血漿中のIL-6レベルは、6~170pg/mLである。
【0124】
「骨髄細胞駆動性血管炎」という用語は、本明細書で使用される場合、骨髄系列の細胞、例えば単球及び好中球によって炎症が引き起こされ、増大する血管炎症によって特徴付けられる一群の状態を指す。一実施形態では、骨髄駆動性血管炎は、主に肺に存在する。
【0125】
「サイトカインストーム」という用語は、本明細書で使用される場合、感染症及びある特定の薬物などの多様な要因によって誘発され得る全身性炎症応答症候群(SIRS)の一形態である。これは、免疫系が、炎症促進性サイトカインの制御されない過剰な放出を引き起こす場合に起こる。そのような大量のこの突然の放出は、多系統臓器不全及び死亡を引き起こし得る。
【0126】
「COVID-19肺炎」という用語は、本明細書で使用される場合、患者が肺炎の診断により入院するCOVID-19として定義される(COVID-19感染症と一致する胸部X線又はCTスキャン)。
【0127】
「重度COVID-19肺疾患」という用語は、本明細書で使用される場合、患者が酸素化障害を発症したCOVID-19肺炎として定義される。一実施形態では、「重度COVID-19肺疾患」という用語は、本明細書で使用される場合、患者が肺炎の診断により入院し(COVID-19感染症と一致する胸部X線又はCTスキャン)、酸素化障害を発症し、正常値の上限より高いC反応性タンパク質(CRP)の増加及び/又は血清中フェリチンの増加を有するCOVID-19として定義される。
【0128】
別の実施形態では、「重度COVID-19肺疾患」という用語は、本明細書で使用される場合、患者が肺炎の診断により入院し(COVID-19感染症と一致する胸部X線又はCTスキャン)、以下:
・ 室内空気及び高濃度酸素で93%未満の末梢毛細血管酸素飽和度(SpO2)、又は持続陽圧呼吸(CPAP)/二相性陽圧呼吸(BiPAP)、又は非侵襲性換気(NIV)、又は機械的換気
として定義される酸素化障害を発症し、並びに
・ 正常値の上限を超える増加したC反応性タンパク質(CRP)及び/又は正常値の上限を超える血清中フェリチン
を有するCOVID-19として定義される。
【0129】
別の実施形態では、「重度COVID-19肺疾患」という用語は、本明細書で使用される場合、患者が肺炎の診断により入院し(COVID-19感染症と一致する胸部X線又はCTスキャン)、室内空気中で末梢毛細血管酸素飽和度(SpO2)≦93%として定義される酸素化障害を発症し、患者が高濃度酸素 (≧15L/分)及び/又は非侵襲性換気(NIV、持続陽圧呼吸(CPAP)/二相性陽圧呼吸(BiPAP))又は機械的換気を受けており;及び正常値の上限を超える増加したC反応性タンパク質(CRP)及び/又は正常値の上限を超える血清中フェリチンを有するCOVID-19として定義される。
【0130】
「酸素化障害」という用語は、本明細書で使用される場合、室内空気中の末梢毛細血管酸素飽和度(SpO2)≦93%として定義される。別の実施形態では、「酸素化障害」は、本明細書で使用される場合、室内空気及び高濃度酸素下で末梢毛細血管酸素飽和度(SpO2)が93%未満として定義される。別の実施形態では、「酸素化障害」は、本明細書で使用される場合、持続陽圧呼吸(CPAP);二相性陽圧呼吸(BiPAP);非侵襲性換気(NIV);及び/又は気管挿管及び機械的換気などの介入を必要とすると定義される。別の実施形態では、「酸素化障害」は、本明細書で使用される場合、室内空気、高濃度酸素 (≧15L/分)及び/又は非侵襲性換気(NIV)下での末梢毛細血管酸素飽和度(SpO2)≦93%、持続陽圧呼吸(CPAP)、二相性陽圧呼吸(BiPAP)又は機械的換気として定義される。
【0131】
「高濃度酸素(high flow oxygen)」という用語は、本明細書で使用される場合、≧15L/分として定義される。
【0132】
C反応性タンパク質(CRP)及び/又は血清中フェリチンは、全身性炎症の生物学的マーカーである。一実施形態では、全身性炎症の生物学的マーカーは、C反応性タンパク質(CRP)である。別の実施形態では、全身性炎症の生物学的マーカーは、血清中フェリチンである。
【0133】
「正常値の上限を超える」という用語は、本明細書で使用される場合、類似の年齢の健康な個体のレベルより高い量として定義される。例えば、血清中フェリチンに関する「正常値の上限を超える」とは、女性で150ng/mLより高く、男性で300ng/mLより高く、及びC反応性タンパク質の「正常値の上限を超える」とは、10mg/L以上である。一実施形態では、C反応性タンパク質の「正常値の上限を超える」とは10mg/Lである。別の実施形態では、血清中フェリチンの「正常値の上限を超える」とは、男性患者で300ng/mg、又は女性患者で150ng/mgである。
【0134】
一実施形態では、C反応性タンパク質の正常レベルは、血液中で10mg/L未満である。別の実施形態では、処置前の血清中フェリチンの正常レベルは、男性患者の血液中で300ng/mg未満、又は女性患者の血液中で150ng/mg未満である。別の実施形態では、処置前のC反応性タンパク質レベルは、血液中で10mg/Lより高い。別の実施形態では、処置前の血清中フェリチンレベルは、男性患者の血液中で300ng/mgより高く、又は女性患者の血液中で150ng/mgより高い。別の実施形態では、処置後のC反応性タンパク質レベルは、血液中で10mg/L以下である。別の実施形態では、処置後の血清中フェリチンレベルは、男性患者の血液中で300ng/mg以下であるか、又は女性患者の血液中で150ng/mg以下である。
【0135】
「急性呼吸窮迫症候群」又は「ARDS」という用語は、当技術分野で周知であり、肺における広範囲の炎症の急激な発症によって特徴付けられる呼吸不全の一タイプである。
【0136】
骨髄細胞性血管炎
IL-6を含む一部の炎症性メディエーターのレベルは、COVID-19において上昇しており、典型的に急性呼吸窮迫症候群(ARDS)及び敗血症において報告されるレベルより10倍低いことが報告されており、他の要因がCOVID-19重症度において主要な役割を果たし得ることを示唆している(Thwaites R. et al., medRxiv (2020); https://doi.org/ 10.1101/2020.10.08.20209411)。プロスペクティブ多施設ISARICコホート試験を通してCOVID-19のために入院した患者619人から採取した連続血漿試料から収集したデータは、対照群と比較して入院患者においてD-ダイマー(フィブリン分解産物、血栓症を暗示している)、アンジオポエチン-2(内皮損傷のマーカー)、及び血栓形成促進性メディエーター、トロンボモジュリン、vWF-A2、及びエンドセリン-1レベルの上昇を見出した(Thwaites, et al. (2020))。
【0137】
動脈炎が、重度COVID-19患者の肺において同定されており、マクロファージ/単球系列の細胞の肺実質への流入と共に起こる単球/骨髄球に富む血管炎としてさらに特徴付けられている。その上、致死性COVID-19疾患における死後の知見は、高レベルのマクロファージ及び好中球からなる肺の炎症浸潤物を示している。
【0138】
COVID-19の死亡率と肺血管炎の間の関連の報告を考慮すると、当業者は、現在では内皮損傷がCOVID-19の特色であり得ると考えており、おそらく重度疾患において一般的な凝固及び血栓形成合併症を誘発する。
【0139】
肺血管における血栓は、SARS、ARDS及びA型インフルエンザウイルス感染症の致死例において報告されているが、COVID-19における頻度は、ARDSよりほぼ対数オーダー高いようであり、異なる内皮損傷経路が原因であり得る。
【0140】
さらなる治療的使用
一態様では、本発明は、重度COVID-19肺疾患、サイトカイン放出症候群(CRS)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、サイトカインストーム及び/又は骨髄細胞駆動性血管炎の処置又は防止に使用するためのBlySアンタゴニスト、例えば抗BlyS抗体を提供する。別の実施形態では、進行中の症候性COVID-19の処置又は防止に使用するためのBlySアンタゴニストが提供される。
【0141】
一態様では、本発明は、重度COVID-19肺疾患、サイトカイン放出症候群(CRS)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、サイトカインストーム、骨髄細胞駆動性血管炎、慢性自己免疫状態、及び/又はLong Covidの処置又は防止に使用するためのBlySアンタゴニストであって、疾病がコロナウイルスによって引き起こされるBlySアンタゴニストを提供する。一実施形態では、コロナウイルスはSARS-CoV-2である。
【0142】
一実施形態では、BlySアンタゴニストは、末梢毛細血管酸素飽和度(SpO2)が、室内空気及び高濃度酸素下で95%以下に達した場合に、それを必要とする対象に投与される。別の実施形態では、それを必要とする対象は、マスク又は鼻プロングによる低濃度酸素を与えられる。さらなる実施形態では、それを必要とする対象は、高濃度酸素、CPAP、BIPAP又は非侵襲性換気を与えられる。別の実施形態では、それを必要とする対象は、気管挿管され、機械的換気を与えられる。なおさらなる実施形態では、それを必要とする対象は、追加の心肺支持療法を伴う機械的換気を与えられる。
【0143】
別の実施形態では、BlySアンタゴニストは、対象がC反応性タンパク質(CRP)及び/又は血清中フェリチンの正常値の上限を超える増加を有する場合に、それを必要とする対象に投与される。このように、一実施形態では、BlySアンタゴニスト、例えば抗BlyS抗体は、150ng/mLを超える血清中フェリチンレベルを有する女性対象、又は300ng/mLを超える血清中フェリチンレベルを有する男性対象に投与される。さらなる実施形態では、BlySアンタゴニストは、10mg/Lを超えるC反応性タンパク質レベルを有する対象に投与される。なおさらなる実施形態では、BlySアンタゴニストは、150ng/mLを超える血清中フェリチンレベル及び10mg/Lを超えるC反応性タンパク質レベルを有する女性対象、又は300ng/mLを超える血清中フェリチンレベル及び10mg/Lを超えるC反応性タンパク質レベルを有する男性対象に投与される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるレベルは、対象の血液中のレベルである。
【0144】
他の実施形態では、COVID-19肺炎又は重度COVID-19肺疾患の処置は、肺炎の診断又は酸素化障害の発症により入院の24時間以内に開始される。別の実施形態では、処置は、肺炎の発症の24時間以内に開始される。さらなる実施形態では、処置は、酸素化障害の発症の24時間以内に開始される。なおさらなる実施形態では、処置は、ARDSの発症の24時間以内に開始される。
【0145】
一実施形態では、対象は、COVID-19肺炎を有する。別の実施形態では、対象は重度COVID-19肺疾患を有する。より特定の実施形態では、対象は、MuLBSTAスコア≧12、又はCURB-65スコア≧2、又はPSIスコア≧70を有する。他の実施形態では、対象は、以下の基準:脈拍≧125/分、呼吸数>30回/分、血中酸素飽和度≦93%、PaO2/FiO2比<300mmHg、末梢血リンパ球数<0.8×109/L、収縮期圧<90mmHg、体温<35又は≧40℃、動脈pH<7.35、血中尿素窒素≧30mg/dl、部分動脈圧O2<60mmHg、胸膜滲出液、及び/又は24~48時間以内の肺領域の肺浸潤物>50%の1つ以上を満たす。
【0146】
一実施形態では、COVID-19肺炎は、急性呼吸窮迫障害に関連する。別の実施形態では、重度COVID-19肺疾患は、急性呼吸窮迫障害に関連する。より特定の実施形態では、対象は、Murrayスコア≧2を有する。別の実施形態では、対象は、PaO2/FiO2比≦200mmHgを有する。より特定の実施形態では、対象は、PaO2/FiO2比≦100mmHgを有する。別の実施形態では、対象は、補正分時呼吸量≧10L/分を有する。別の実施形態では、対象は、呼吸器系コンプライアンス≦40mL/cm H2Oを有する。別の実施形態では、対象は、呼気終末陽圧≧10cm H2Oを有する。
【0147】
特定の実施形態では、患者は体外式膜型人工肺又は機械的換気、又は非侵襲性換気を受けているか、又は鼻カニューレ若しくは単純マスクを介して酸素補充療法を受けている。機械的換気を使用する場合、これは、低い一回換気量(<6ml/kg理想体重)及び気道圧(プラトー圧<30cmH2O)の使用を含む。酸素補充が鼻カニューレを介して行われる場合、これは、2~6L/分で送達され得る。酸素補充が単純マスクによって行われる場合、これは、5~10L/分で送達され得る。
【0148】
組合せ
一態様では、本発明に従って使用するためのBlySアンタゴニスト、例えば抗BlyS抗体(例えば、ベリムマブ)は、単剤療法又は他の治療との組合せで投与される。このように、一実施形態では、処置は、追加の治療剤の投与をさらに含む。一実施形態では、抗BlyS抗体は、標準治療の医薬、例えば高用量コルチコステロイド(HDCS)、シクロホスファミド(CYC)、アザチオプリン(AZA)及び/又はミコフェノール酸モフェチル(MMF)と共投与される。
【0149】
特定の実施形態では、対象は、抗ウイルス及び/又は抗生物質処置を受けている、受けたことがある、又は受ける予定である。このように、さらなる実施形態では、追加の治療剤は、抗ウイルス剤及び/又は抗生物質である。一実施形態では、対象は、抗ウイルス剤及び/又は抗生物質処置を受けている。より特定の実施形態では、対象は、抗ウイルス剤を受けている。別の実施形態では、対象は、抗ウイルス剤を以前に受けたことがある。さらなる実施形態では、追加の治療剤は、抗ウイルス剤である。さらにより特定の実施形態では、抗ウイルス剤は、オセルタミビル、レムデシビル、ガンシクロビル、ロピナビル、リトナビル、及びザナミビルから選択される。別の実施形態では、抗ウイルス剤は、アバカビル、スタブジン、バルガンシクロビル、シドフォビル、エンテカビル、アミブジン、マラビロク、アジドチミジン、アムプレナビル、ネルフィナビル、及びドルテグラビルから選択される。さらなる実施形態では、抗ウイルス剤は、レムデシビルである。
【0150】
一実施形態では、対象は、オセルタミビル(75mgを12時間毎に経口)を受けている。別の実施形態では、対象は、ガンシクロビル(0.25gを12時間毎に静脈内)を受けている。別の実施形態では、対象はロピナビル/リトナビル(400/100mgを1日2回経口)を受けている。別の実施形態では、対象は、レムデシビル200mgを1日目に静脈内投与後に100mgを9日間毎日受けている。別の実施形態では、対象は、レムデシビル200mgを1日目に静脈内投与後、100mgを4日間毎日受けている。
【0151】
一部の実施形態では、追加の治療剤は、ステロイド、コルチコステロイド、又は抗マラリア剤である。
【0152】
一実施形態では、対象は、ステロイドを受けている、受けたことがある、又は受ける予定である。別の実施形態では、対象は、ステロイドを受けている。このように、さらなる実施形態では、追加の治療剤はステロイドである。一実施形態では、ステロイドは、デキサメタゾン及びメチルプレドニゾロンから選択される。別の実施形態では、ステロイドは、デキサメタゾンである。別の実施形態では、ステロイドはメチルプレドニゾロンである。一実施形態では、デキサメタゾンは、0.1~0.2mg/Kgで投与される。別の実施形態では、メチルプレドニゾロンは、0.5~1mg/Kgで投与される。
【0153】
一実施形態では、対象は、回復期患者血漿を受けている、以前に受けたことがある、又は受ける予定である。このように、さらなる実施形態では、追加の治療剤は、回復期患者血漿である。別の実施形態では、対象は、BlySアンタゴニストの投与の少なくとも48時間前に回復期患者血漿を投与される。さらなる実施形態では、対象は、BlySアンタゴニスト処置前、約12週間前又は12週間以上、回復期患者血漿を受けている。
【0154】
一実施形態では、対象は、高用量コルチコステロイド(HDCS)及び広域スペクトルの免疫抑制剤を受けている、受けたことがある、又は受ける予定である。このように、さらなる実施形態では、追加の治療剤は、高用量コルチコステロイド及び広域スペクトルの免疫抑制剤である。第1選沢治療は、導入療法のためのシクロホスファミド(CYC)及びHDCSの後に維持療法のためのアザチオプリン(AZA)、又は導入療法のためのミコフェノール酸モフェチル(MMF)及びHDCSの後に維持療法のためのMMFを含む。
【0155】
一実施形態では、BlySアンタゴニスト、例えば抗BlyS抗体(例えば、ベリムマブ)は、導入療法のための高用量コルチコステロイド(HDCS)及びシクロホスファミド(CYC)と共投与された後、維持療法のためのアザチオプリン(AZA)を投与され、又は導入療法のためのHDCS及びミコフェノール酸モフェチル(MMF)と共投与された後、維持療法のためのMMFを投与される。
【0156】
さらなる実施形態では、導入療法は、抗BlyS抗体の初回用量の60日以内に開始される。
【0157】
別の実施形態では、抗BlyS抗体を、他の生物剤又は治療剤、例えば他の抗体又は治療剤、例えば抗CD20抗体、例えば本明細書で上記のリツキシマブと組み合わせてもよい。
【0158】
一態様では、本発明は、以下の番号を付けた段落に従って記載される。
【0159】
1. ウイルス感染後に誘導される自己免疫状態の処置に使用するためのBlySアンタゴニスト。
【0160】
2. 自己免疫状態が慢性であり、好ましくは状態が慢性疲労症候群、筋痛性脳脊髄炎(ME)及び/又はLong Covidであり、より好ましくは状態がLong Covidである、段落1に記載の使用のためのBlySアンタゴニスト。
【0161】
3. ウイルス感染症が、腸ウイルス感染症、ヘルペスウイルス感染症、インフルエンザ感染症、又はコロナウイルス感染症である、段落1又は段落2に記載の使用のためのBlySアンタゴニスト。
【0162】
4. 腸ウイルス感染症が、コクサッキーBウイルス(CVB)又はロタウイルス感染症であり、インフルエンザウイルス感染症が、A型インフルエンザ感染症であり、又はコロナウイルス感染症が、SARS-CoV-2感染症である、段落3に記載の使用のためのBlySアンタゴニスト。
【0163】
5. 自己免疫状態が、対象における自己抗体の存在によって特徴付けられる、段落1から4のいずれか一項に記載の使用のためのBlySアンタゴニスト。
【0164】
6. 自己抗体が、対象の血液中に存在する、段落5に記載の使用のためのBlySアンタゴニスト。
【0165】
7. 自己抗体が、抗核抗体(ANA)、抗リウマチ因子(RF)抗体、抗二本鎖DNA(dsDNA)抗体、抗核外抗原(ENA)抗体、抗リボソーム-P抗体、抗RNP-70抗体、抗シェーグレン症候群関連抗原A(SS-A)及び/又は抗シェーグレン症候群関連抗原B(SS-B)抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体、抗前十字靱帯(ACL)抗体、抗ループス抗凝固因子(LAC)抗体、及び/又は抗ベータ2-糖タンパク質1抗体から選択される、段落5又は段落6に記載の使用のためのBlySアンタゴニスト。
【0166】
8. 抗核抗体(ANA)及び/又は抗リウマチ因子(RF)抗体の力価及び/又はレベルが、全身性エリテマトーデス(SLE)で認められる力価及び/又はレベルである、段落7に記載の使用のためのBlySアンタゴニスト。
【0167】
9. 抗核抗体(ANA)の力価が、1:80より高く、及び/又は抗リウマチ因子(RF)抗体が、20IU/mLより高い、段落7又は段落8に記載の使用のためのBlySアンタゴニスト。
【0168】
10. 自己免疫状態が、女性対象における150ng/mLを超える血清中フェリチンレベル及び男性対象における300ng/mLを超える血清中フェリチンレベルによって特徴付けられる、段落1から9に記載の使用のためのBlySアンタゴニスト。
【0169】
11. 自己免疫状態が、対象における10mg/Lを超えるC反応性タンパク質レベルによって特徴付けられる、段落1から10に記載の使用のためのBlySアンタゴニスト。
【0170】
12. BlySアンタゴニストが抗BlyS抗体である、段落1から11に記載の使用のためのBlySアンタゴニスト。
【0171】
13. 抗体がベリムマブである、段落12に記載の使用のための抗BlyS抗体。
【0172】
14. 抗体が、配列番号1のCDRH1;配列番号2のCDRH2;配列番号3のCDRH3;配列番号4のCDRL1;配列番号5のCDRL2、及び配列番号6のCDRL3を含む、段落12に記載の使用のための抗BlyS抗体。
【0173】
15. 抗体が、配列番号7の重鎖可変配列及び配列番号8の軽鎖可変配列を含む、段落14に記載の使用のための抗BLyS抗体。
【0174】
16. 抗体が、配列番号9の重鎖配列及び配列番号10の軽鎖配列を含む、段落15に記載の使用のための抗BlyS抗体。
【0175】
17. 抗体が静脈内(IV)に投与される、段落12から16に記載の使用のための抗BlyS抗体。
【0176】
18. 抗体が10mg/kgの用量で対象に投与される、段落17に記載の使用のための抗BlyS抗体。
【0177】
19. 抗体が2週間毎に投与される、段落18に記載の使用のための抗BlyS抗体。
【0178】
20. 抗体が皮下投与される。段落1から16に記載の使用のための抗BLys抗体。
【0179】
21. 抗体が200mgの単位用量で毎週対象に投与される、段落20に記載の使用のための抗BlyS抗体。
【0180】
22. 抗体が400mgの単位用量で毎週対象に投与される、段落20に記載の使用のための抗BlyS抗体。
【0181】
23. 抗体が、400mgの用量で少なくとも4週間毎週の後に、200mgの用量で週に1回投与される、段落21又は段落22に記載の使用のための抗BlyS抗体。
【0182】
24. 抗体が皮下投与の前に静脈内投与される、段落1から23に記載の使用のための抗BlyS抗体。
【0183】
25. 抗体が、10mg/kgの負荷用量で、皮下投与の前に少なくとも1週間、静脈内投与される、段落24に記載の使用のための抗BlyS抗体。
【0184】
26. 処置が、追加の治療剤の投与をさらに含む、段落1から25に記載の使用のためのBlySアンタゴニスト。
【0185】
27. 追加の治療剤が、抗ウイルス剤及び/又は抗生物質である、段落26に記載の使用のためのBlySアンタゴニスト。
【0186】
28. 追加の治療剤が、ステロイド、コルチコステロイド、又は抗マラリア剤である、段落26又は段落27に記載の使用のためのBlySアンタゴニスト。
【0187】
29. 抗体が、ベリムマブであるか及び/又は段落14から16のいずれか1つに定義される抗体である、Long Covidの処置に使用するための抗BlyS抗体。
【0188】
30. ウイルス感染後に誘導される自己免疫状態の処置のための医薬の製造におけるBlySアンタゴニストの使用。
【0189】
31. 自己免疫状態が慢性であり、好ましくは状態が慢性疲労症候群、筋痛性脳脊髄炎(ME)及び/又はLong Covidであり、より好ましくは状態がLong Covidである、段落30に記載の使用。
【0190】
32. ウイルス感染症が、腸ウイルス感染症、ヘルペスウイルス感染症、インフルエンザ感染症、又はコロナウイルス感染症である、段落30又は段落31に記載の使用。
【0191】
33. 腸ウイルス感染症が、コクサッキーBウイルス(CVB)又はロタウイルス感染症であり、インフルエンザウイルス感染症が、A型インフルエンザ感染症であり、又はコロナウイルス感染症が、SARS-CoV-2感染症である、段落32に記載の使用。
【0192】
34. 自己免疫状態が、段落5から11のいずれか1つに定義される通りに特徴付けられる、段落30から33に記載の使用。
【0193】
35. BlySアンタゴニストが抗BlyS抗体である、段落30から34に記載の使用。
【0194】
36. 抗BlyS抗体が、段落13から16のいずれか1つに定義される抗体である、段落35に記載の使用。
【0195】
37. 医薬が、段落17から25のいずれか1つに定義される通りに投与される、段落35又は段落36に記載の使用。
【0196】
38. 医薬がさらなる治療剤をさらに含む、段落30から37に記載の使用。
【0197】
39. さらなる治療剤が抗ウイルス剤及び/又は抗生物質である、段落38に記載の使用。
【0198】
40. さらなる治療剤が、ステロイド、コルチコステロイド、又は抗マラリア剤である、段落38又は段落39に記載の使用。
【0199】
41. BlySアンタゴニストを含む、ウイルス感染後に誘導される自己免疫状態の処置に使用するための医薬組成物。
【0200】
42. 自己免疫状態が慢性であり、好ましくは状態が慢性疲労症候群、筋痛性脳脊髄炎(ME)及び/又はLong Covidであり、より好ましくは状態がLong Covidである、段落41に記載の使用のための医薬組成物。
【0201】
43. ウイルス感染症が、腸ウイルス感染症、ヘルペスウイルス感染症、インフルエンザ感染症、又はコロナウイルス感染症である、段落41又は段落42に記載の使用のための医薬組成物。
【0202】
44. 腸ウイルス感染症が、コクサッキーBウイルス(CVB)又はロタウイルス感染症であり、インフルエンザウイルス感染症が、A型インフルエンザ感染症であり、又はコロナウイルス感染症が、SARS-CoV-2感染症である、段落43に記載の使用のための医薬組成物。
【0203】
45. 自己免疫状態が、段落5から11のいずれか1つに定義される通りに特徴付けられる、段落41から44に記載の使用のための医薬組成物。
【0204】
46. BlySアンタゴニストが抗BlyS抗体である、段落41から45に記載の使用のための医薬組成物。
【0205】
47. 抗BlyS抗体が、段落13から16のいずれか1つに定義される抗体である、段落46に記載の使用のための医薬組成物。
【0206】
48. 段落17から25のいずれか1つに定義される通りに投与される、段落46又は段落47に記載の使用のための医薬組成物。
【0207】
49. さらなる治療剤をさらに含む、段落41から48に記載の使用のための医薬組成物。
【0208】
50. さらなる治療剤が、抗ウイルス剤及び/又は抗生物質である、段落49に記載の使用のための医薬組成物。
【0209】
51. さらなる治療剤が、ステロイド、コルチコステロイド、又は抗マラリア剤である、段落49又は段落50に記載の使用のための医薬組成物。
【0210】
52. それを必要とする対象におけるウイルス感染後に誘導される自己免疫状態を処置する方法であって、BlySアンタゴニストの治療有効量を前記対象に投与することを含む方法。
【0211】
53. 自己免疫状態が慢性であり、好ましくは状態が慢性疲労症候群、筋痛性脳脊髄炎(ME)及び/又はLong Covidであり、より好ましくは状態がLong Covidである、段落52に記載の方法。
【0212】
54. ウイルス感染症が、腸ウイルス感染症、ヘルペスウイルス感染症、インフルエンザ感染症、又はコロナウイルス感染症である、段落52又は段落53に記載の方法。
【0213】
55. 腸ウイルス感染症が、コクサッキーBウイルス(CVB)又はロタウイルス感染症であり、インフルエンザウイルス感染症が、A型インフルエンザ感染症であり、又はコロナウイルス感染症が、SARS-CoV-2感染症である、段落54に記載の方法。
【0214】
56. 自己免疫状態が、段落5から11のいずれか1つに定義される通りに特徴付けられる、段落52から55に記載の方法。
【0215】
57. BlySアンタゴニストが抗BlyS抗体である、段落52から56に記載の方法。
【0216】
58. 抗BlyS抗体が、段落13から16のいずれか1つに定義される抗体である、段落57に記載の方法。
【0217】
59. 抗BlyS抗体が、段落17から25のいずれか1つに定義される通りに投与される、段落57又は段落58に記載の方法。
【0218】
60. 段落30から40のいずれか1つに定義される医薬又は段落41から51のいずれか1つに定義される医薬組成物を投与することを含む、段落52から59に記載の方法。
【0219】
61. さらなる治療剤の投与をさらに含む、段落51から60に記載の方法。
【0220】
62. さらなる治療剤が抗ウイルス剤及び/又は抗生物質である、段落61に記載の方法。
【0221】
63. さらなる治療剤が、ステロイド、コルチコステロイド、又は抗マラリア剤である、段落61又は段落62に記載の方法。
【0222】
64. それを必要とする対象におけるLong Covidを処置する方法であって、抗BlyS抗体の治療有効量を前記対象に投与することを含み、抗BlyS抗体がベリムマブであるか及び/又は段落14から16のいずれか1つに定義される通りである方法。
【0223】
65. 対象がヒトである、段落1から28に記載の使用のためのBlySアンタゴニスト、段落29に記載の抗BlyS抗体、又は段落52から64のいずれか1つに記載の方法。
【0224】
[実施例]
[実施例1]計画された試験
B細胞刺激因子、BLySに特に焦点を当てたSARS-CoV-2に感染した患者の血漿中のタンパク質バイオマーカーを同定するために計画された試験を開示する。これらの試験は、B細胞の寛容性の喪失と相関するプロテオームシグネチャー、及びCOVID-19、例えばLong Covidにおける重度の長引く症状の存在を同定する目的で、現行の自己反応性検査と並行して行われる。この研究の結果は、Long Covid及び他のウイルス誘導自己免疫状態の処置におけるBlySアンタゴニスト、特にベリムマブの使用をさらに支持する。
【0225】
これは、2つの独立した患者コホートを使用して調査される。
【0226】
第1の計画されるコホート又は「後ろ向き」コホートは、高次元フローサイトメトリー、SARS-CoV-2特異的血清学、及び一部の例では、単細胞解析を含む、COVID-19の以前の試験において高度に特徴付けられている患者を含む。特に重要な特定の試料は、患者の回復後の血液中の持続的シグネチャーを同定するための縦断的時点を含む。
【0227】
第2の計画されるコホート又は「回復」コホートは、進行中の症状を示すCOVID-19回復クリニックから募集し、自己抗体の存在に関して予めスクリーニングした患者を含む。本発明者らは、これらのCOVID-19回復患者内の自己反応性コホートを同定し、縦断的試験を実施してCOVID-19回復後の自己反応性のタンパク質シグネチャーを同定する。
【0228】
コホート1-後ろ向きコホート(n=130):
1. COVID前の健康なドナー(HD)集団(人口統計学混合)(患者n=10);
2. 軽度/中等度COVID患者(急性期のコレクション)(n=20);
3. 重度/重篤なCOVID患者:
a.デキサメタゾン陽性(n=20),
b.デキサメタゾン陰性(n=20);
4. 活動性/増悪するループス患者(n=10);
5. 上記の急性期試料に結びつけられた縦断的試料収集(n=30);及び
6. 小児(MIS-C)患者(n=20)における多系統炎症症候群。
【0229】
コホート2-回復コホート(最大でn=210):
1. 自己反応性検査陽性の50人のCOVID回復患者:
a.受診時に収集、
b.6ヶ月間の追跡調査、及び
c.1年間の追跡調査;
2. 自己反応性検査陰性の20人のCOVID回復患者:
a.受診時に収集、
b.6ヶ月間の追跡調査、及び
c.1年間の追跡調査。
【0230】
相1は、コホート1からの試料のハイスループット(1536個の標的)プロテミクス解析を含む。結果を収集し、患者のメタデータ、フローサイトメトリー、及び自己反応性検査を含む対応のあるデータセットの文脈で解析する。
【0231】
相2は、相1の中間解析の終了時に実施する。コホート2からの患者を、自己反応性に関してリアルタイムで予めスクリーニングし、凍結試料をさらなる試験のためにバンクに保存した。それらを、自己反応性陽性を示す試料と、示さない試料に層別化する。相1解析からの結果に基づいて、次に、収集したコホート2試料を、ハイスループット(1536個の標的)、又はより方向性の標的化(96個の標的)解析パイプラインに供する。より標的化されたアプローチがより適切であるように思われる場合、コホートサイズを増大させてもよい。
【0232】
解析は、利用可能なフローサイトメトリー特徴付け、疾患アウトカム、患者メタデータ、自己反応性検査、疾患の特徴付け、及び利用可能な場合は炎症バイオマーカー(ICU患者の試験から)、SARS-CoV-2特異的血清学、及び自己抗体レベルとカップリングしたプロテオミクス結果の詳細な評価を含む。B細胞集団の単細胞RNAシーケンシングを通して得られた限定的な追加のデータを、単細胞トランスクリプトーム解析を通して得てもよく、利用可能な場合、含めてもよい。
【0233】
場合により、コホート2からの試料をその後のクリニック/試料収集場所への訪問時の幾つかの機会で収集する相3を、その後又は相2と並行して実施してもよい。そのような試料収集は、COVID-19回復後、長期間にわたって自己反応性のタンパク質シグネチャーに関する洞察を提供する。
【0234】
[実施例2]プロテオミクス試験
COVID-19に関連する多様な疾患状態(以下に記載する)から得た190人のヒト成人血漿試料を、血液プロテオミクス評価のために提出した。当初、2相試験を期待したが、全ての利用可能な試料の1回の解析を、1回の実行で実行し、以下の試料群:
HD:パンデミック前の健康なドナー(n=9)
SLE:高い疾患活動度を経験するループス患者(n=9)
軽度/中等度;入院を必要としない急性期COVID-19患者(n=15)
ICU:集中治療室(ICU)での治療を必要とする急性期COVID-19患者(n=30)
CR:長引く症状を有しないCOVID-19から回復した患者(n=28)
PASC: (Long covid及び/又はPASC)進行中の症状を有するCOVID-19から回復した患者(n=99)
に関してOlink Explore 3072プラットフォーム(768個の炎症マーカー、768個の心代謝マーカー、768個の神経マーカー、及び768個の腫瘍マーカーからなる3072個の異なるタンパク質マーカーを評価した)を通して全てのタンパク質マーカーを調査した。
【0235】
PASCに関する進行中の科学的調査は、症状出現に関する明白なカットオフポイントを明らかにせず、その代わりに初期回復相で始まる疾患の持続を反映する。この目的に関して、PASCコホート内の患者の大多数が、感染後12週間の回復期間の基準を満たし(61%)、有意な割合(39%)がまた、公式診断前の重要な生物学的準備期間も反映する。
【0236】
[実施例3]差次的タンパク質発現
完全なプロテオミクス解析に起因するデータセットを、品質管理目的のために評価し、タンパク質存在量マーカーのサブセットにおける急性相疾患血漿(軽度/中等度及びICUの群)における試料干渉の何らかの証拠を例外として、データセット全体は、信頼可能で十分に制御されているように思われた。一般的に、正規化タンパク質発現(NPX)分布は、適切に中心に集まって広がり、合併症を有しない回復(CR)患者ではPASCと一致する進行中の症状を有する患者と比較して差次的なタンパク質存在量を同定するためのプロテオミクスデータの使用において高い信頼性を生じる。
【0237】
差次的NPXの評価は、群の間で有意な存在量の差を有する600個を超えるタンパク質を明らかにした(図1)。タンパク質の同一性は多様であるが、同定されたタンパク質の多くは、IL-6及びCXCL10を含む感染急性期における疾患重症度に以前に関連したPASCにおける進行中の炎症プロセスを示唆した。炎症マーカー発現に関するこれらの知見を、PASCコホートにおける最も高度に濃縮された経路として、サイトカイン-サイトカイン受容体相互作用(p=4.97×10-20)、補体及び凝固カスケード(p=8.50×10-12)、アポトーシスシグナル伝達(3.60×10-10)、及びTNFシグナル伝達経路(p=1.23×10-9)において高度に有意に濃縮された差次的存在量のタンパク質のKEGG経路解析を介して検証した。
【0238】
回復コホートにおけるBLySタンパク質発現の特定の調査は、PASC患者のサブセットにおけるレベルの増加を示唆した(図2a)。重要なことに、CR群の患者は、パンデミック前の健康なドナーと類似の血漿中BLySレベルを示したが、これに対し、一部のPASC患者は、高い疾患活動度を有するSLE患者と類似の上昇したレベルを示した(図2a)。CR及びPASCコホートにおけるBLySレベルの直接比較により、PASCコホートにおける有意に増加したレベルが明らかとなったが(p値<0.05、例えば0.031のp値)、BLyS発現に関して不均一なPASCコホートを示唆し、PASC患者の27%が0.5 NPX(Log2スケール)より高いBLySレベルを示した(図2b)。重要なことに、回復コホートにおけるBLyS発現レベルは、重度の急性期COVID-19のマーカー、例えばCXCL10、並びにペントラキシン3(PTX3)を含むPASCの発生を示す最近同定されたマーカーの両方と有意に相関した(図3)。
【0239】
[実施例4]PASCにおけるB細胞応答
以前に、重度COVID-19疾患アウトカムに関連する免疫応答の同定に関する研究が、非標準免疫活性化経路である濾胞外(EF)B細胞経路を重篤な疾患との強い相互作用因子として同定された。ヒトにおける一次データはなおも増加中であるが、この経路は、例えば重度COVID-19に起因する環境などの、高い炎症環境に対して非常に応答性であるように思われる。免疫系選択の従来の機序を迂回することによって、EF経路は、まさに感染期間内で外来タンパク質に対する強力な抗体応答を生成することが可能である。しかし、自己免疫疾患の以前の試験を通して、この経路はまた、新規自己反応性及び末梢組織炎症の出現にも関連している。BLySは、これらの患者の多くにおいて上昇しており、及びBLyS中和は以前に、B細胞媒介性自己反応性疾患の制御において有効であることが示されていることから、類似のEF活性化は、高いBLySレベル(例えば、Log2スケールで、健康な対照と比較して0.5×正規化タンパク質発現レベル)を示すPASC患者において同定することができるか否かを理解することが重要であった。
【0240】
高次元フローサイトメトリーを利用して、40人のPASC患者(29人のBLyS陰性及び11人のBLyS陽性)のB細胞コンパートメントを、EF経路活性を示す異なるB細胞サブタイプの存在に関して評価した。興味深いことに、急性期COVID-19における以前の試験は、重度疾患と相関する抗体分泌細胞の有意な増大を同定し、CR及びPASC患者の両方が、HD集団における以前の知見と類似の低レベルのこれらの循環中の細胞を示した(図4a)。しかし、抗体分泌細胞分化の上流のEF経路の中間体である活性化ナイーブ(aN)及びダブルネガティブ2(DN2)B細胞はいずれも、PASCにおいて増加傾向を示した。EF B細胞活性の評価における重要な計量は、EF B細胞応答体と、より従来の胚中心由来サブセットとの比である。PASCにおけるこの計量の評価はまた、BLyS陽性患者においてEF応答の増加傾向を示したが、この時間は、有意性に近づいた(p=0.058)。全体として、これらのデータは、EF経路が活動性SLE及び重度COVID-19において今日まで同定された応答ほど非常に活性ではなかったが、それにもかかわらず、高レベルのBLySを示すPASC患者において強調されることを示唆している。
【0241】
[実施例5]PASCコホートにおける自己反応性
PASCと自己抗体レベルの間の関係を同定するために、PASC患者からの血漿試料を、Exagen Inc. AVISE病理学プラットフォームによる広い臨床自己抗体検査のために提出した。このプラットフォームは、SLE、リウマチ性関節炎、血管炎などを含む結合組織障害の広いアレイを標的とするFDAによって承認された臨床検査を利用する。全体で31個の抗原を試験し、検査陽性結果を図5に示す。重度COVID-19において同定された高レベルの自己反応性と同様に、スクリーニングにおいて試験した患者の80%が、少なくとも1つの臨床検査陽性を示した。これらの自己抗体反応性はランダムではなかったが、最も高い反応性は抗核抗原、カルバミル化タンパク質、及びリン脂質において同定された。重要なことに、高いBLySレベルを有する患者は、BlySが低い患者より3以上の反応性を示す可能性がより高く(表1)、リウマチ因子(RF)及び抗好中球細胞質抗体(ANCA)2つの反応性、は、BLyS陽性群に限って同定された。
【0242】
【表4】
【0243】
上記で言及したように、SLEにおけるEF応答経路の出現は、少なくとも高い疾患活動度を経験する患者のサブセットの原因である。加えて、新規試験から、出現する自己反応性応答の起源として、COVID-19において類似の機序、すなわちナイーブ由来EF応答の定着が同定された。PASCにおけるEF活性化傾向の指標として、自己反応性が症状の持続に関連するか否か、それらの症状を、他のBLyS標的化治療において以前に示されているように自己標的化抗体応答の低減を通して軽減することができるか否かを理解することは重要である。
【0244】
[実施例6]PASCコホートにおける症状の不均一性
BLySが、PASC患者の別個のサブセットと相関し得るという指標により、上昇したBLySレベルを有する患者が特定の臨床症状を呈するか否かを理解することが重要であった。この目的のために、進行中のPASC症状を詳述し、COVID-19回復クリニックの受診時の血液採取時に収集した患者の問診票を注意深く再検討して、BLyS状態に対する潜在的関連を報告した。興味深いことに、全体的なPASC患者コホートの10%より多くに報告された15個の共通する症状のうち7つは、BLyS陽性患者サブセットとBLyS陰性患者サブセットとの比較において少なくとも10%の増加した頻度で関連の増加を示した(表2)。
【0245】
【表5】
【0246】
特異的症状を特に強調して示し、呼吸困難及び咳はいずれも、分割表検定を通してBLyS陽性患者において有意により多く存在しているとして同定された(図6)。
【0247】
[実施例7]解析
全体として、COVID-19の進行中の後遺症を有する患者の広いプロテオミクス解析は、進行中の炎症事象が疾患の回復相まで持続することと一致している。BLySレベルの標的化解析は、疾患の急性相及び回復相の両方に関与する炎症マーカーと正の相関を示し、自己免疫疾患における疾患活動度と相関することが公知であるEF応答経路の持続において傾向を示す。コホートにおける広い自己反応性、及びBLyS陽性コホート内の特異的反応性は、進行中の症状の提示における自己反応性の潜在的関与を示唆している。BLyS陽性亜集団において有意な関連を有する特定の症状の同定は、BLySレベルが自己免疫様傾向を示すPASC患者の特異的サブセットにおいて上昇し得ることをさらに示唆する。
【0248】
配列表
配列番号1:ベリムマブ CDRH1
GGTFNNNAIN
配列番号2:ベリムマブ CDRH2
GIIPMFGTAKYSQNFQG
配列番号3:ベリムマブ CDRH3
SRDLLLFPHHALSP
配列番号4:ベリムマブ CDRL1
QGDSLRSYYAS
配列番号5:ベリムマブ CDRL2
GKNNRPS
配列番号6:ベリムマブ CDRL3
SSRDSSGNHWV
配列番号7:ベリムマブ VH
QVQLQQSGAEVKKPGSSVRVSCKASGGTFNNNAINWVRQAPGQGLEWMGGIIPMFGTAKYSQNFQGRVAITADESTGTASMELSSLRSEDTAVYYCARSRDLLLFPHHALSPWGRGTMVTVSS
配列番号8:ベリムマブ VL
SSELTQDPAVSVALGQTVRVTCQGDSLRSYYASWYQQKPGQAPVLVIYGKNNRPSGIPDRFSGSSSGNTASLTITGAQAEDEADYYCSSRDSSGNHWVFGGGTELTVLG
配列番号9:ベリムマブ重鎖
QVQLQQSGAEVKKPGSSVRVSCKASGGTFNNNAINWVRQAPGQGLEWMGGIIPMFGTAKYSQNFQGRVAITADESTGTASMELSSLRSEDTAVYYCARSRDLLLFPHHALSPWGRGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEV HNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号10:ベリムマブ軽鎖
SSELTQDPAVSVALGQTVRVTCQGDSLRSYYASWYQQKPGQAPVLVIYGKNNRPSGIPDRFSGSSSGNTASLTITGAQAEDEADYYCSSRDSSGNHWVFGGGTELTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
2024523391000001.app
【国際調査報告】