(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】動脈管及び中隔導管インプラント、並びに関連送達システム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/89 20130101AFI20240621BHJP
A61F 2/966 20130101ALI20240621BHJP
A61B 17/00 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
A61F2/89
A61F2/966
A61B17/00 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577948
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(85)【翻訳文提出日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 US2022033872
(87)【国際公開番号】W WO2022266378
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523473213
【氏名又は名称】スターライト カーディオヴァスキュラァ, インク.
【氏名又は名称原語表記】STARLIGHT CARDIOVASCULAR, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】デューリグ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ジュラヴィック,マーク
(72)【発明者】
【氏名】レブリング,ヴラド ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】オルソン,キャサリン エイ.
(72)【発明者】
【氏名】タン,ビバリー
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160MM33
4C267AA44
4C267AA56
4C267BB02
4C267BB04
4C267BB06
4C267BB12
4C267BB18
4C267BB26
4C267BB40
4C267CC08
4C267GG16
4C267GG34
(57)【要約】
先天性心疾患を治療する為のステント及び関連送達システムの実施形態を提供する。本明細書に記載の器具は、血管ルーメンに挿入して導管の開存性を維持し、マイクロカテーテルを介した送達の為の可撓性と抵抗力のバランスを取るように構成される。本明細書に記載の器具は、クリンプ構成から拡張構成に移行するように構成される。クリンプ構成では、器具のクリンプ直径は約0.7mm未満である。拡張構成では、器具は、本体セクションで測定して約3mmを超える拡張直径を有するように構成される。本明細書に記載の器具は、拡張構成では1mmの圧縮で約0.20N/mmより大きい半径方向抵抗力を有するように構成されている。これらの特徴を有する種々の器具が本明細書に記載されている。
【選択図】
図3D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動脈管の開存性を維持する為に血管ルーメンに挿入する為の器具であって、前記器具は、マイクロカテーテルを介して送達されるように構成され、
拡張して第1の直径を有する近位面を規定するように構成された第1の複数のストラットを含む第1の端部セクションと、
拡張して第2の直径を有する遠位面を規定するように構成された第2の複数のストラットを含む第2の端部セクションと、
前記第1の端部セクションと前記第2の端部セクションとの間に延在し、第3の直径を規定する本体セクションであって、第3の複数のストラットを有する、本体セクションと、
前記第1の端部セクション、前記本体セクション、及び前記第2の端部セクションを通って延在する器具ルーメンであって、血液が前記器具ルーメンを通って流れるように構成される、器具ルーメンと、を備え、
前記器具は、クリンプ構成から拡張構成に移行するように構成され、前記クリンプ構成では、前記器具のクリンプ直径が約0.7mm未満であり、前記拡張構成では、前記器具は、前記本体セクションで測定して約3mmを超える拡張直径まで拡張するように構成され、
前記器具は、前記拡張構成では、1mmの圧縮で約0.20N/mmより大きい半径方向抵抗力を有する、器具。
【請求項2】
前記拡張構成では、前記近位面の前記第1の直径が前記本体セクションの前記第3の直径よりも約20%~約50%大きい、請求項1記載の器具。
【請求項3】
前記拡張構成では、前記遠位面の前記第2の直径が、前記本体セクションの前記第3の直径よりも約20%~約50%大きい、請求項1に記載の器具。
【請求項4】
前記拡張構成では、前記近位面の前記第1の直径は、前記本体セクションの前記第3の直径よりも約20%~約50%大きく、前記拡張構成では、前記遠位面の前記第2の直径は、前記本体セクションの前記第3の直径よりも約20%~約50%大きい、請求項1に記載の器具。
【請求項5】
前記近位面の前記第1の直径が前記本体セクションの前記第3の直径よりも約20%~約30%大きく、前記遠位面の前記第2の直径が前記本体セクションの前記第3の直径よりも約20%~約30%大きい、請求項4に記載の器具。
【請求項6】
前記第1の複数のストラットの各々が第1の長さを有し、前記第2の複数のストラットの各々が第2の長さを有し、前記第3の複数のストラットの各々が第3の長さを有する、請求項1に記載の器具。
【請求項7】
前記第3の複数のストラットの各々の前記第3の長さが約1mm~約2mmである、請求項6に記載の器具。
【請求項8】
前記第1の複数のストラットの各々の前記第1の長さ及び前記第2の複数のストラットの各々の前記第2の長さが約2.5mm~約4mmである、請求項6に記載の器具。
【請求項9】
前記第1の端部セクションの前記第1の複数のストラットが、1つ以上の第1のリングに配置されている、請求項1に記載の器具。
【請求項10】
前記第1の端部セクションの前記1つ以上の第1のリングが、第1の末端の複数のストラットを含む第1の末端リングと、第1の末端から2番目のストラットを含む第1の末端から2番目のリングと、第1の末端から3番目の複数のストラットを含む第1の末端から3番目のリングとを備えている、請求項9に記載の器具。
【請求項11】
前記第1の末端ストラット長が、第1の末端から3番目のストラット長より長い、第1の末端から2番目のストラット長より長い、請求項10に記載の器具。
【請求項12】
前記拡張構成では、前記1つ以上の第1のリングの各リングの隣接する第1のストラットが実質的に一定の角度を形成している、請求項9に記載の器具。
【請求項13】
前記実質的に一定の角度が約50度~約70度の間である、請求項12に記載の器具。
【請求項14】
前記実質的に一定の角度が約60度~約70度の間である、請求項13に記載の器具。
【請求項15】
前記1つ以上の第1のリングが2~5個の第1のリングを含む、請求項9に記載の器具。
【請求項16】
前記第1の端部セクションの隣接する第1のリングが3~9個の第1のブリッジを介して接続されている、請求項15に記載の器具。
【請求項17】
各第1のブリッジが約0.1mm~約0.25mmの間の第1の長さを有する、請求項16に記載の器具。
【請求項18】
前記第2の端部セクションの前記第2の複数のストラットが、1つ以上の第2のリングに配置されている、請求項1に記載の器具。
【請求項19】
前記第2の端部セクションの前記1つ以上の第2のリングが、第2の末端の複数のストラットを含む第2の末端リングと、第2の末端から2番目の複数のストラットを含む第2の末端から2番目のリングと、第2の末端から3番目の複数のストラットを含む第2の末端から3番目のリングとを備えている、請求項18に記載の器具。
【請求項20】
第2の末端ストラットの第2の末端ストラット長は、第2の末端から3番目のストラットの第2の3番目のストラット長より長い、第2の末端から2番目のストラットの第2の末端から2番目のストラット長より長い、請求項19に記載の器具。
【請求項21】
前記拡張構成では、前記1つ以上の第2のリングの各リングにおける隣接する第2のストラットが実質的に一定の角度を成す、請求項18に記載の器具。
【請求項22】
前記実質的に一定の角度が約50度~約70度の間である、請求項21に記載の器具。
【請求項23】
前記実質的に一定の角度が約60度~約70度の間である、請求項21に記載の器具。
【請求項24】
前記1つ以上の第2リングが2~5個の第2リングを含む、請求項23に記載の器具。
【請求項25】
前記第1の端部セクションの前記第1の複数のストラットが1つ以上の第1のリングに配置され、前記第2の端部セクションの前記第2の複数のストラットが1つ以上の第2のリングに配置される、請求項1に記載の器具。
【請求項26】
前記近位面の末端リングが、前記第3の複数のストラットの各々の第3の長さに対して約100%~約250%増加した第1の長さを各々が有する第1の末端の複数のストラットを含む、請求項25に記載の器具。
【請求項27】
前記遠位面の末端リングが、前記第3の複数のストラットの各々の第3の長さに対して約100%~約250%増加した第2の長さを各々が有する第2の末端の複数のストラットを含む、請求項25に記載の器具。
【請求項28】
前記第2の端部セクションの隣接する第2のリングが、3~9個の第2のブリッジを介して接続されている、請求項24に記載の器具。
【請求項29】
各第2のブリッジが約0.1mm~約0.25mmの間の第2の長さを有する、請求項28に記載の器具。
【請求項30】
前記第1の端部セクション及び前記第2の端部セクションが、夫々、前記本体セクションが動脈管に跨るように、大動脈口の少なくとも一部及び肺動脈口の少なくとも一部に前記器具を固定するように構成されている、請求項1に記載の器具。
【請求項31】
前記本体セクションの前記第3の複数のストラットが、前記拡張構成では、前記器具の長手軸に実質的に平行である、請求項1に記載の器具。
【請求項32】
前記第1の複数のストラットの前記近位面における末端サブセットが、前記器具の長手軸に対して近位角度を成す、請求項1に記載の器具。
【請求項33】
前記近位角が約30度~約110度である、請求項32に記載の器具。
【請求項34】
前記近位角が約45度~約90度である、請求項33に記載の器具。
【請求項35】
前記第2の複数のストラットの前記遠位面における末端サブセットが、前記器具の長手軸に対して遠位角を形成する、請求項1に記載の器具。
【請求項36】
前記遠位角が約30度~約110度である、請求項35に記載の器具。
【請求項37】
前記遠位角が約45度~約90度である、請求項36に記載の器具。
【請求項38】
抗血栓性コーティング、抗増殖性コーティング、及び摩擦低減コーティングの内の1つを更に含む、請求項1に記載の器具。
【請求項39】
前記器具が薬剤溶出性コーティングを含む、請求項1に記載の器具。
【請求項40】
動脈管の開存性を維持する為に血管ルーメンに挿入する為の器具であって、前記器具はマイクロカテーテルを通して送達されるように構成され、
拡張して第1の直径を有する近位面を規定するように構成された第1の複数のストラットを含む第1の端部セクションと、
拡張して第2の直径を有する遠位面を規定するように構成された第2の複数のストラットを含む第2の端部セクションと、
前記第1の端部セクションと前記第2の端部セクションとの間に延在し、第3の直径を規定する本体セクションであって、第3の複数のストラットを有する、本体セクションと、
前記第1の端部セクション、前記本体セクション、及び前記第2の端部セクションを通って延在する器具ルーメンであって、血液が前記器具ルーメンを通って流れるように構成された、器具ルーメンと、を備え、
前記器具は、クリンプ構成から拡張構成に移行するように構成され、前記クリンプ構成では、前記器具のクリンプ直径が約0.7mm未満であり、前記拡張構成では、前記器具は、前記本体セクションで測定して約3mmを超える拡張直径まで拡張するように構成されており、
前記拡張構成では、前記近位面の前記第1の直径及び前記遠位面の前記第2の直径の夫々は、前記本体セクションの前記第3の直径よりも約20%~約50%大きい、器具。
【請求項41】
前記器具が、前記拡張構成では、1mmの圧縮で約0.20N/mmより大きい半径方向抵抗力を有する、請求項40に記載の器具。
【請求項42】
前記拡張構成では、前記近位面の前記第1の直径及び前記遠位面の前記第2の直径の各々が、前記本体セクションの前記第3の直径よりも約1mm~約2mm大きい、請求項40に記載の器具。
【請求項43】
動脈管のルーメン内に器材を送達して前記動脈管の前記ルーメンの開存性を維持するシステムであって、前記システムが、
マイクロカテーテル及びプッシャーワイヤーを含む送達システムであって、前記プッシャーワイヤーが、前記マイクロカテーテルによって規定されたルーメンを通って前進するように構成されており、前記プッシャーワイヤーが、第1のハブ及びインプラント受容セクションを含む、送達システムと、
前記プッシャーワイヤーの前記インプラント受容セクションに装填された時に前記第1のハブによって押されるように構成されたインプラントとを備え、前記インプラントが、
拡張して第1の直径を有する近位面を規定するように構成された第1の複数のストラットを含む第1の端部セクションと、
拡張して第2の直径を有する遠位面を規定するように構成された第2の複数のストラットを含む第2の端部セクションと、
前記第1の端部セクションと前記第2の端部セクションとの間に延在し、第3の直径を規定する本体セクションであって、第3の複数のストラットを有する、本体セクションと、
前記第1の端部セクション、前記本体セクション、及び前記第2の端部セクションを通って延在するインプラントルーメンであって、血液が前記インプラントルーメンを通って流れるように構成される、インプラントルーメンと、を備え、
前記インプラントは、マイクロカテーテルから出る時に、クリンプ構成から拡張構成に移行するように構成され、前記クリンプ構成では、前記インプラントのクリンプ直径が約0.7mm未満であり、前記拡張構成では、前記インプラントは、前記本体セクションで測定して約3mmを超える拡張直径まで拡張するように構成され、
前記拡張構成では、前記インプラントは、1mmの圧縮で約0.20N/mmより大きい半径方向抵抗力を有する、システム。
【請求項44】
前記第1のハブが雌型コネクタを備え、前記インプラントの前記近位面が、前記第1のハブの前記雌型コネクタと相互作用するように構成された相補的な雄型コネクタを備えている、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
前記近位面が複数の放射線不透過性マーカーを含み、前記第1のハブが前記複数の放射線不透過性マーカーを押して前記インプラントを展開するように構成されている、請求項43に記載のシステム。
【請求項46】
前記プッシャーワイヤーが第2のハブを更に備えている、請求項45に記載のシステム。
【請求項47】
前記第2のハブは、前記インプラントの前記遠位面の内径と相互作用するように構成され、これにより前記プッシャーワイヤーは、前記インプラントの展開中に近位側に変位するように構成されている、請求項46に記載のシステム。
【請求項48】
前記第1のハブが、造影剤をそこから受容するように構成された1つ以上の開口部を規定している、請求項43に記載のシステム。
【請求項49】
前記送達システムが移送シースを更に備える、請求項43に記載のシステム。
【請求項50】
先天性心疾患の治療用に構成されたインプラントであって、前記インプラントは、マイクロカテーテルを介して送達されるように構成されており、
拡張して第1の直径を有する近位面を規定するように構成された第1の複数のストラットを含む第1の端部セクションと、
第2の直径を有する遠位面を規定するように拡張するように構成された第2の複数のストラットを含む第2の端部セクションと、
前記第1の端部セクションと前記第2の端部セクションとの間に延在し、第3の直径を規定する本体セクションであって、第3の複数のストラットを有する本体セクションと、
前記第1の端部セクション、前記本体セクション、及び前記第2の端部セクションを通って延在する器具ルーメンであって、血液が前記器具ルーメンを通って流れるように構成される、器具ルーメンと、を備え、
前記インプラントは、クリンプ構成から拡張構成に移行するように構成され、前記クリンプ構成では、前記器具ルーメンのクリンプ直径が約0.7mm未満であり、前記拡張構成では、前記インプラントは、前記本体セクションで測定した拡張直径が約3mmより大きくなるように拡張するように構成され、
前記インプラントは、前記拡張構成では、1mmの圧縮で約0.20N/mmより大きい半径方向抵抗力を有する、インプラント。
【請求項51】
前記先天性心患は患者の心臓の中隔欠損であり、前記インプラントは、前記患者の前記心臓の2つの心室の間の中隔管に送達されるように構成されている、請求項50に記載のインプラント。
【請求項52】
前記先天性心患は動脈管であり、前記インプラントは、前記動脈管の開存性を維持する為に前記動脈管に挿入されるように構成されている、請求項50に記載のインプラント。
【請求項53】
前記遠位面の1つ以上の末端クラウンは、前記本体セクションの長手軸に対して約30%~約110%の角度を有する、請求項50に記載のインプラント。
【請求項54】
前記近位面の1つ以上の末端クラウンは、前記本体セクションの長手軸に対して約30%~約110%の角度を有する、請求項50に記載にインプラント。
【請求項55】
心臓の心房中隔を介した連通を維持する方法であって、
ステント送達システムの遠位端を右心房に前進させ、前記ステント送達システムはマイクロカテーテルを含むことと、
前記ステント送達システムの前記遠位端を、中隔を横切って前進させることと、
ステントの遠位端セクションを左心房に展開して、前記左心房に面する前記中隔の壁に前記ステントの前記遠位端セクションを固定することと、
前記ステントの本体セクションを、前記中隔に展開することと、
前記ステントの近位端セクションを前記右心房に展開して、前記ステントの近位端セクションを、前記右心房に面する前記中隔の前記壁に固定することと、を含み、
前記ステントは、約1mmの圧縮で約0.2N/mm以上の半径方向抵抗力を有し、
前記ステントの前記近位端と前記遠位端の一方又は両方の直径は、前記ステントの前記本体セクションの直径よりも約20%~約40%大きい、方法。
【請求項56】
前記中隔を横切って前記ステント送達システムの前記遠位端セクションを前進させることが、前記ステント送達システムの前記遠位端セクションを、孔、心房中隔欠損、又は中隔切除部の内の1つを横切って前進させることを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記ステントの前記遠位端セクションを前記左心房に展開することが、前記ステント送達システムの近位端セクションに張力又は力を加えて前記ステントの前記遠位端セクションを前記中隔の前記壁に固定することを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記ステントの長さが約3mm~約10mmである、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記ステントの前記本体セクションの前記直径が約4mm~約5mmである、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
小児患者の動脈管開存を維持する方法であって、
マイクロカテーテルを用いて、自己拡張型ステントの遠位端セクションを、動脈管によって規定されるルーメンの第1の端部に展開することと、
前記自己拡張型ステントの前記遠位端セクションの遠位面の少なくとも一部を、少なくとも部分的に周方向に肺動脈口を覆うように固定することと、
前記マイクロカテーテルを用いて、前記自己拡張型ステントの前記本体セクションが、前記動脈管によって規定される前記ルーメンの全長を覆うように前記自己拡張型ステントの近位端セクションを展開することと、
前記自己拡張型ステントの前記近位端セクションの近位面の少なくとも一部を、前記近位面が少なくとも部分的に大動脈口を周方向に覆うように固定することと、を含み、
前記自己拡張型ステントは、展開されると、約1mmの圧縮で約0.2N/mm以上の半径方向抵抗力を有する、方法。
【請求項61】
プロスタグランジンを前記小児患者に投与して、前記小児患者の前記動脈管によって規定される前記ルーメンを拡張させることを更に含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
動脈管の直径がステントの本体セクションの直径より大きい小児患者の動脈管開存を維持する方法であって、
マイクロカテーテルを用いて、自己拡張型ステントの遠位端セクションを、前記動脈管によって規定されるルーメンの第1の端部に展開することと、
前記遠位面が少なくとも部分的に前記動脈管の前記遠位端を周方向に覆うように、前記ステントの前記遠位端セクションの遠位面の少なくとも一部を固定することと、
前記マイクロカテーテルを用いて、前記ステントの本体セクションが前記動脈管によって規定される前記ルーメンの全長内に在るように、前記ステントの近位端セクションを展開することと、
前記近位ステントの前記近位端セクションの近位面の少なくとも一部を、前記近位面が少なくとも部分的に、隣接する動脈口を周方向に覆うように固定することと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2021年6月17日出願の米国仮特許出願第63/211,768号の優先権を主張し、同出願の内容の全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
(参照による援用)
本明細書で言及される全ての刊行物及び特許出願は、個々の刊行物又は特許出願が参照により援用されることが具体的且つ個別に示されている場合と同じ程度まで、参照によりその全体を本明細書に援用する。
【0003】
本出願は、心臓血管インプラント、特に先天性心疾患向けに設計されたステントの分野に関する。
【背景技術】
【0004】
小児心臓血管医師(外科医及びインターベンショニストも同様)が直面する技術的課題は長い間無視されており、非常に特異的な解剖学的考慮を有する病気の赤子を治療する為に、成人及び異なる条件用に設計された器具を使用することを余儀なくされている。そのようなケースの1つが、全ての新生児に存在する生来の導管であるが、出生後まもなく閉鎖される動脈管の持続的な開通である。もう1つの例は、患者の健康の為に酸素化血液と脱酸素化血液の混合を起こす為に、心臓の2つの心室(例えば、左心房と右心房)の間の中隔に開口部、つまり中隔導管を作る、又は維持する必要性である。
【0005】
特定の先天性心疾患では、外科的インターベンション無しに新生児が生存する為には、管開存性の維持及び/又は右心房と左心房の間の中隔導管の提供を含めて、全身循環と肺循環を混合することが極めて重要である。多くの心血管系疾患に対処する為にステント様器具が存在するが、新生児の動脈管又は中隔導管の開存性を維持する為に特別に設計された器具は存在しない。その結果、現在の標準的治療による再インターベンション、罹患率、死亡率は容認できないほど高い。例えば、小児のインターベンショナル心臓専門医は現在、成人の冠動脈を管に再利用しており、全死因管再インターベンションは約47%である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、新生児の動脈管の開存性を適切に維持する器具に対する必要性が存在する。更に、肺循環に圧力緩和溶液を提供する方法として、自然に発生するASDのサイズを減少させる方法として、又は、重大な先天性心疾患(例えば、心房レベルの混合が適切である場合の)で生まれた小児における経中隔処置において、心房ステント留置と比較して罹患率及び死亡率を減少させるアクセスポートを減少させる方法として、右心房と左心房との間の連通を提供する器具に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、動脈管の開存性を維持する為に血管ルーメンに挿入する為の器具を対象とする。この器具は、マイクロカテーテルを介して送達されるように構成されている。この器具は、拡張して第1の直径を有する近位面を規定するように構成された第1の複数のストラットを含む第1の端部セクションと、拡張して第2の直径を有する遠位面を規定するように構成された第2の複数のストラットを含む第2の端部セクションと、第1の端部セクションと第2の端部セクションとの間に延在し、第3の直径を規定する本体セクションであって、第3の複数のストラットを有する本体セクションと、第1の端部セクション、本体セクション及び第2の端部セクションを通って延在する器具ルーメンであって、血液が器具ルーメンを通って流れるように構成される、器具ルーメンと、を備える。
【0008】
先の実施形態の何れかにおいて、器具は、クリンプ構成から拡張構成に移行するように構成されており、その結果、クリンプ構成では、器具のクリンプ直径は約0.7mm未満であり、拡張構成では、器具は、本体セクションで測定して約3mmを超える拡張直径に拡張するように構成されている。
【0009】
先の実施形態の何れかにおいて、拡張構成では、器具は、1mmの圧縮で約0.20N/mmを超える半径方向抵抗力を有する。
【0010】
先の実施形態の何れかにおいて、拡張構成では、近位面の第1の直径は、本体セクションの第3の直径よりも約20%~約50%大きい。
【0011】
先の実施形態の何れかにおいて、拡張構成では、遠位面の第2の直径は、本体セクションの第3の直径よりも約20%~約50%大きい。
【0012】
先の実施形態の何れかにおいて、拡張構成では、近位面の第1の直径は、本体セクションの第3の直径よりも約20%~約50%大きく、拡張構成にある場合、遠位面の第2の直径は、本体セクションの第3の直径よりも約20%~約50%大きい。
【0013】
先の実施形態の何れかにおいて、近位面の第1の直径は、本体セクションの第3の直径よりも約20%~約30%大きく、遠位面の第2の直径は、本体セクションの第3の直径よりも約20%~約30%大きい。
【0014】
先の実施形態の何れかにおいて、第1の複数のストラットの各々は第1の長さを有し、第2の複数のストラットの各々は第2の長さを有し、第3の複数のストラットの各々は第3の長さを有する。
【0015】
先の実施形態の何れかにおいて、第3の複数のストラットの各々の第3の長さは約1mm~2mmである。
【0016】
先の実施形態の何れかにおいて、第1の複数のストラットの各々の第1の長さ及び第2の複数のストラットの各々の第2の長さは、約2.5mm~約4mmである。
【0017】
先の実施形態の何れかにおいて、第1の端部セクションの第1の複数のストラットは、1つ以上の第1のリングに配置される。
【0018】
先の実施形態の何れかにおいて、第1の端部セクションの1つ以上の第1のリングは、第1の末端の複数のストラットを含む第1の末端リングと、第1の末端から2番目の複数のストラットを含む第1の末端から2番目のリングと、第1の末端から3番目の複数のストラットを含む第1の末端から3番目のリングを含む。
【0019】
先の実施形態の何れかにおいて、第1の末端ストラット長は、第1の末端から3番目のストラット長よりも長い第1の末端から2番目のストラット長よりも長い。
【0020】
先の実施形態の何れかにおいて、拡張構成では、1つ以上の第1のリングの各リングにおける隣接する第1のストラットは、実質的に一定の角度を成す。
【0021】
先の実施形態の何れかにおいて、実質的に一定の角度は、約50度~約70度の間である。
【0022】
先の実施形態の何れかにおいて、実質的に一定の角度は、約60度~約70度の間である。
【0023】
先の実施形態の何れかにおいて、1つ以上の第1のリングは、2~5個の第1のリングを含む。
【0024】
先の実施形態の何れかにおいて、第1の端部セクションの隣接する第1のリングは、3~9個の第1のブリッジを介して接続される。
【0025】
先の実施形態の何れかにおいて、各第1のブリッジは、約0.1mm~約0.25mmの第1の長さを有する。
【0026】
先の実施形態の何れかにおいて、第2の端部セクションの第2の複数のストラットは、1つ以上の第2のリングに配置される。
【0027】
先の実施形態の何れかにおいて、第2の端部セクションの1つ以上の第2のリングは、第2の末端の複数のストラットを含む第2の末端リングと、第2の末端から2番目の複数のストラットを含む第2の末端から2番目のリングと、第2の末端から3番目の複数のストラットを含む第2の末端から3番目のリングとを備えている。
【0028】
先の実施形態の何れかにおいて、第2の末端ストラットの第2の末端ストラット長は、第2の末端から3番目のストラットの第2の末端から3番目のストラット長よりも長い、第2の末端から2番目のストラットの第2の末端から2番目のストラット長よりも長い。
【0029】
先の実施形態の何れかにおいて、拡張構成では、1つ以上の第2のリングの各リングにおける隣接する第2のストラットは、実質的に一定の角度を成す。
【0030】
先の実施形態の何れかにおいて、実質的に一定の角度は、約50度~約70度の間である。
【0031】
先の実施形態の何れかにおいて、実質的に一定の角度は、約60度~約70度の間である。
【0032】
先の実施形態の何れかにおいて、1つ以上の第2のリングは、2~5個の第2のリングを含む。
【0033】
先の実施形態の何れかにおいて、第1の端部セクションの第1の複数のストラットは、1つ以上の第1のリングに配置され、第2の端部セクションの第2の複数のストラットは、1つ以上の第2のリングに配置される。
【0034】
先の実施形態の何れかにおいて、近位面の末端リングは、各々が、第3の複数のストラットの各々の第3の長さに対して約100%~約250%増加した第1の長さを有する第1の末端の複数のストラットを備える。
【0035】
先の実施形態の何れかにおいて、遠位面の末端リングは、各々が、第3の複数のストラットの各々の第3の長さに対して約100%~約250%増加した第2の長さを有する第2の末端の複数のストラットを含む。
【0036】
先の実施形態の何れかにおいて、第2の端部セクションの隣接する第2のリングは、3~9個の第2のブリッジを介して接続される。
【0037】
先の実施形態の何れかにおいて、各第2のブリッジは、約0.1mm~約0.25mmの間の第2の長さを有する。
【0038】
先の実施形態の何れかにおいて、第1の端部セクションと第2の端部セクションは、夫々、本体セクションが動脈管に跨るように、大動脈口の少なくとも一部及び肺動脈口の少なくとも一部に器具を固定するように構成される。
【0039】
先の実施形態の何れかにおいて、本体セクションの第3の複数のストラットは、拡張構成では、器具の長手軸に対して実質的に平行である。
【0040】
先の実施形態の何れかにおいて、第1の複数のストラットの近位面における末端サブセットは、器具の長手軸に対して近位角を形成する。
【0041】
先の実施形態の何れかにおいて、近位角は約30度~約110度である。
【0042】
先の実施形態の何れかにおいて、近位角は約45度~約90度である。
【0043】
先の実施形態の何れかにおいて、第2の複数のストラットの遠位面における末端サブセットは、器具の長手軸に対して遠位角を形成する。
【0044】
先の実施形態の何れかにおいて、遠位角は約30度~約110度である。
【0045】
先の実施形態の何れかにおいて、遠位角は約45度~約90度である。
【0046】
先の実施形態の何れかにおいて、器具は、抗血栓性コーティング、抗増殖性コーティング、及び摩擦低減コーティングの内の1つを更に含む。
【0047】
先の実施形態の何れかにおいて、器具は、薬剤溶出コーティングを含む。
【0048】
本開示の別の態様は、動脈管の開存性を維持する為に血管ルーメンに挿入する為の器具を対象とする。この器具は、マイクロカテーテルを通して送達されるように構成されている。この器具は、拡張して第1の直径を有する近位面を規定するように構成された第1の複数のストラットを含む第1の端部セクションと、拡張して第2の直径を有する遠位面を規定するように構成された第2の複数のストラットを含む第2の端部セクションと、第1の端部セクションと第2の端部セクションとの間に延在し、第3の直径を規定する本体セクションであって、第3の複数のストラットを有する本体セクションと、第1の端部セクション、本体セクション、及び第2の端部セクションを通って延在する器具ルーメンであって、血液が器具ルーメンを通って流れるように構成される、器具ルーメンと、を備える。
【0049】
先の実施形態の何れかにおいて、器具は、クリンプ構成から拡張構成に移行するように構成され、クリンプ構成では、器具のクリンプ直径が約0.7mm未満であり、拡張構成では、器具は、本体セクションで測定して約3mmを超える拡張直径まで拡張するように構成される。
【0050】
先の実施形態の何れかにおいて、拡張構成では、近位面の第1の直径及び遠位面の第2の直径の各々は、本体セクションの第3の直径よりも約20%~約50%大きい。
【0051】
先の実施形態の何れかにおいて、器具は、拡張構成では、近位面の第1の直径及び遠位面の第2の直径の各々は、1mmの圧縮で約0.20N/mmを超える半径方向抵抗力を有する。
【0052】
先の実施形態の何れかにおいて、拡張構成では、本体セクションの第3の直径よりも約1mm~約2mm大きい。
【0053】
本開示の別の態様は、動脈管のルーメンの開存性を維持する為に動脈管のルーメン内に器具を送達する為のシステムを対象とする。このシステムは、マイクロカテーテルとプッシャーワイヤーを備えた送達システムを含む。プッシャーワイヤーは、マイクロカテーテルによって規定されたルーメンを通って前進するように構成されている。プッシャーワイヤーは、第1のハブとインプラント受容セクションとを備える。インプラントは、プッシャーワイヤーのインプラント受容セクションに装填されると、第1のハブによって押されるように構成されている。インプラントは、拡張して第1の直径を有する近位面を規定するように構成された第1の複数のストラットを含む第1の端部セクションと、拡張して第2の直径を有する遠位面を規定するように構成された第2の複数のストラットを含む第2の端部セクションと、第1の端部セクションと第2の端部セクションとの間に延在し、第3の直径を規定する本体セクションであって、第3の複数のストラットを有する本体セクションと、第1の端部セクション、本体セクション及び第2の端部セクションを通って延在するインプラントルーメンであって、血液がインプラントルーメンを通って流れるように構成されている、インプラントルーメンとを備える。
【0054】
先の実施形態の何れかにおいて、インプラントは、マイクロカテーテルから出る時に、クリンプ構成から拡張構成に移行するように構成されており、クリンプ構成では、インプラントのクリンプ直径が約0.7mm未満であり、拡張構成では、インプラントは、本体セクションで測定して約3mmを超える拡張直径まで拡張するように構成されている。
【0055】
先の実施形態の何れかにおいて、拡張構成では、インプラントは、1mmの圧縮で約0.20N/mmを超える半径方向抵抗力を有する。
【0056】
先の実施形態の何れかにおいて、第1のハブは雌型コネクタを含み、インプラントの近位面は第1のハブの雌型コネクタと相互作用するように構成された相補的な雄型コネクタを含む。
【0057】
先の実施形態の何れかにおいて、近位面は複数の放射線不透過性マーカーを含み、第1のハブは、複数の放射線不透過性マーカーを押してインプラントを展開するように構成されている。
【0058】
先の実施形態の何れかにおいて、プッシャーワイヤーは第2のハブを更に備える。
【0059】
先の実施形態の何れかにおいて、第2のハブは、インプラントの遠位面の内径と相互作用するように構成され、これによりプッシャーワイヤーは、インプラントの展開中に近位側に変位するように構成されている。
【0060】
先の実施形態の何れかにおいて、第1のハブは、造影剤をそこから受容するように構成された1つ以上の開口を規定する。
【0061】
先の実施形態の何れかにおいて、送達システムは更に移送シースを備える。
【0062】
本開示の別の態様は、先天性心疾患の治療の為に構成されたインプラントを対象とする。このインプラントは、マイクロカテーテルを通して送達するように構成されている。インプラントは、拡張して第1の直径を有する近位面を規定するように構成された第1の複数のストラットを含む第1の端部セクションと、拡張して第2の直径を有する遠位面を規定するように構成された第2の複数のストラットを含む第2の端部セクションと、第1の端部セクションと第2の端部セクションとの間に延在し、第3の直径を規定する本体セクションであって、第3の複数のストラットを有する本体セクションと、第1の端部セクション、本体セクション及び第2の端部セクションを通って延在する器具ルーメンであって、血液が器具ルーメンを通って流れるように構成されている、器具ルーメンと、を備える。
【0063】
先の実施形態の何れかにおいて、インプラントは、クリンプ構成から拡張構成に移行するように構成され、クリンプ構成では、器具ルーメンのクリンプ直径が約0.7mm未満であり、拡張構成では、インプラントは、本体セクションで測定して約3mmを超える拡張直径まで拡張するように構成される。
【0064】
先の実施形態の何れかにおいて、インプラントは、拡張構成では、1mmの圧縮で約0.20N/mmを超える半径方向抵抗力を有する。
【0065】
先の実施形態の何れかにおいて、先天性心疾患は患者の心臓の中隔欠損であり、インプラントは患者の心臓の2つの心室の間の中隔導管内に送達されるように構成される。
【0066】
先の実施形態の何れかにおいて、先天性心疾患は動脈管であり、インプラントは動脈管の開存性を維持する為に動脈管に挿入されるように構成される。
【0067】
先の実施形態の何れかにおいて、遠位面の1つ以上の末端クラウンは、本体セクションの長手軸に対して約30%~約110%の角度を有する。
【0068】
先の実施形態の何れかにおいて、近位面の1つ以上の末端クラウンは、本体セクションの長手軸に対して約30%~約110%の角度を有する。
【0069】
本開示の別の態様は、心臓の心房中隔を介した連通を維持する方法を対象とする。この方法は、ステント送達システムの遠位端を右心房内に前進させることを含み、ステント送達システムはマイクロカテーテルを含む。この方法は更に、ステント送達システムの遠位端を中隔を横切って前進させることと、ステントの遠位端セクションを左心房に展開して、ステントの遠位端セクションを左心房に面した中隔の壁に固定することと、ステントの本体セクションを中隔に展開することと、ステントの近位端セクションを右心房に展開して、ステントの近位端セクションを右心房に面した中隔の壁に固定することを含む。
【0070】
先の実施形態の何れかにおいて、ステントは、約1mmの圧縮で約0.2N/mm以上の半径方向抵抗力を有する。
【0071】
先の実施形態の何れかにおいて、ステントの近位端と遠位端の一方又は両方の直径は、ステントの本体セクションの直径よりも約20%~40%大きい。
【0072】
先の実施形態の何れかにおいて、ステント送達システムの遠位端セクションを中隔を横切って前進させることは、ステント送達システムの遠位端セクションを、孔、心房中隔欠損、又は中隔切開の内の1つを横切って前進させることを含む。
【0073】
先の実施形態の何れかにおいて、ステントの遠位端セクションを左心房に展開することは、ステント送達システムの近位端セクションに張力又は力を加えてステントの遠位端セクションを中隔の壁に固定することを含む。
【0074】
先の実施形態の何れかにおいて、ステントの長さは約3mm~約10mmである。
【0075】
先の実施形態の何れかにおいて、ステントの本体セクションの直径は約4mm~約5mmである。
【0076】
本開示の別の態様は、小児患者の動脈管開存を維持する方法を対象とする。この方法は、マイクロカテーテルを用いて、自己拡張型ステントの遠位端セクションを、動脈管によって規定されたルーメンの第1の端部に展開することと、自己拡張型ステントの遠位端セクションの遠位面の少なくとも一部を、遠位面が少なくとも部分的に肺動脈口を周方向に覆うように固定することと、マイクロカテーテルを用いて、自己拡張型ステントの本体セクションが、動脈管によって規定されるルーメンの全長を覆うように自己拡張型ステントの近位端セクションを展開することと、自己拡張型ステントの近位端セクションの近位面の少なくとも一部を、近位面が少なくとも部分的に大動脈口を周方向に覆うように固定することを含む。
【0077】
先の実施形態の何れかにおいて、自己拡張型ステントは、展開されると、約1mmの圧縮で約0.2N/mm以上の半径方向抵抗力を有する。
【0078】
先の実施形態の何れかにおいて、方法は、小児患者にプロスタグランジンを投与して、小児患者の動脈管によって規定されるルーメンを拡張させることを更に含む。
【0079】
本開示の別の態様は、動脈管の直径がステントの本体セクションの直径よりも大きい小児患者の動脈管開存を維持する方法を対象とする。この方法は、マイクロカテーテルを用いて、自己拡張型ステントの遠位端セクションを、動脈管によって規定されたルーメンの第1の端部に展開することと、遠位面が動脈管の遠位端を周方向に少なくとも部分的に覆うように、ステントの遠位端の遠位面の少なくとも一部を固定することと、マイクロカテーテルを用いて、ステントの本体セクションが動脈管によって規定されるルーメンの全長内に在るように、ステントの近位端セクションを展開することと、ステントの近位端セクションの近位面の少なくとも一部を、近位面が、隣接する動脈の口を少なくとも部分的に周方向に覆うように固定することを含む。
【0080】
本発明の特徴は、後続の特許請求の範囲に具体的に記載されている。本発明の特徴及び利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を示す以下の詳細な説明、及び添付の図面を参照することによって得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図1D】大動脈から動脈管にアプローチすることによって管開存を維持する方法の一実施形態を示す図である。
【
図2D】肺動脈から動脈管にアプローチすることによって管開存を維持する方法の一実施形態を示す図である。
【
図3A】(一旦インビボで拡張された)ルーメン又は導管開存を維持するように構成された二次元(2D)クリンプ構成の例示的ステントの一実施形態を示す図である。
【
図3B】
図3Aの第1の端部セクションの拡大二次元図である。
【
図3C】
図3Aのステントの本体セクションの拡大二次元図である。
【
図4A】ルーメン又は導管開存を維持する為のステントの一実施形態を示す図である。
【
図5C】様々な管解剖学的構造の血管造影法例を示す図であり、
図5AはタイプIの管解剖学的構造を示す図であり、
図5BはタイプIIの管解剖学的構造を示す図であり、
図5CはタイプIIIの管解剖学的構造を示す図である。
【
図6】ヘアピンターンに適合するステントの本体セクションの別の実施形態を示す図である。
【
図7】ルーメン又は導管開存を維持する為のステントの遠位端の別の実施形態を示す図である。
【
図8B】第1の短縮構成(
図8A)及び第2の伸長又は延伸構成(
図8B)でルーメン又は導管開存を維持する為の例示的なステントを示す図である。
【
図9】試験ルーメン内に固定され、ルーメン又は導管開存を維持するように構成された例示的なステントの端部セクションの透視図である。
【
図10】2Dクリンプ構成のステントの端部セクションの別の実施形態を示す図である。
【
図11A】身体ルーメン又は導管内でルーメンの途中に固定されるように構成されたステントの一実施形態を示す図である。
【
図12】隣接するステントリング間又は送達システムのステントとハブ間のロック機構の一実施形態を示す図である。
【
図13】隣接するステントリング間又は送達システムのステントとハブ間のロック機構の別の実施形態を示す図である。
【
図14】2Dクリンプ構成のステントの端部セクションの別の実施形態を示す図である。
【
図15】2Dクリンプ構成のステントの本体セクションの別の実施形態を示す図である。
【
図16】2Dクリンプ構成のステントの本体セクションの別の実施形態を示す図である。
【
図17B】制御式展開及び/又は展開中のステントの伸長又は延伸を可能にする、夫々、ステントの雄型部分と送達システムの雌型部分とを示す図である。
【
図18】2Dクリンプ構成のステント本体セクションの別の実施形態を示す図である。
【
図19】ルーメン又は導管開存を維持する為のステントの端部セクションの一実施形態の側面プロファイルである。
【
図20】ルーメン又は導管開存を維持する為のステントの端部セクションの別の実施形態の側面プロファイルである。
【
図21】ルーメン又は導管開存を維持する為のステントの端部セクションの別の実施形態の側面プロファイルである。
【
図22】ステントをルーメン又は導管内に固定する為の拡張し膨出した本体セクションを有するステントの別の実施形態を示す図である。
【
図23】ステントをルーメン又は導管内に固定する為のフレア状又はフランジ状の端部セクションを有するステントの別の実施形態を示す図である。
【
図24】ルーメン又は導管開存を維持する為のステントの端部セクションの別の実施形態を示す図である。
【
図25D】マイクロカテーテルを通したステント展開の方法を示す図である。
【
図26D】中隔導管にステントを展開する方法を示す図である。
【
図27A】中隔導管内で展開するように構成されたステントの一実施形態の透視図である。
【
図28】本明細書に記載のステントの実施形態の何れかの為のプッシャーワイヤー、ステント、及びマイクロカテーテルを備えた送達システムの一実施形態を示す図である。
【
図29】ステント及び関連送達システムに関する様々な解剖学的考察を示す概略図である。
【
図30】本明細書に記載のステントの実施形態の何れかの為の送達システムの一実施形態を示す図である。
【
図31】本明細書に記載のステントの実施形態の何れかの為の送達システムの別の実施形態を示す図である。
【
図32】本明細書に記載のステントの実施形態の何れかの為の送達システムの別の実施形態を示す図である。
【
図33】本明細書に記載のステントの実施形態の何れかの為の送達システムのプッシャーワイヤーの一実施形態の部分図である。
【
図34】本明細書に記載のステントの実施形態の何れかの為の送達システムのプッシャーワイヤーの別の実施形態の部分図である。
【
図35】本明細書に記載のステントの実施形態の何れかの為の送達システムのプッシャーワイヤーの別の実施形態の部分図である。
【
図36】本明細書に記載のステントの実施形態の何れかの為の送達システムのプッシャーワイヤーの別の実施形態を示す図である。
【
図37】本明細書に記載のステントの実施形態の何れかの為の送達システムのプッシャーワイヤーの別の実施形態を示す図である。
【
図38】本明細書に記載の様々なステント設計の破砕試験データを示す図である。
【
図39】リング毎にクラウン数が代わる本明細書に記載の様々なステント設計の破砕試験データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0082】
図示された実施形態は単なる例示であり、本開示を限定することを意図するものではない。概略図は特徴及び概念を説明する為に描かれており、必ずしも縮尺通りに描かれている訳ではない。
【0083】
上述したことは要約であり、従って、必然的に詳細が限定される。以下、上述した態様、並びに本技術の他の態様、特徴、及び利点を、様々な実施形態に関連して説明する。以下の実施形態を含めることは、本開示をこれらの実施形態に限定することを意図するものではなく、寧ろ、当業者であれば誰でも、企図される本発明(複数可)を行い、及び使用できるようにすることを意図するものである。本明細書で提示される主題の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用してもよく、又、修正を加えてもよい。本明細書において記載及び例示されるような本開示の態様は、様々な異なる処方で配置、組合せ、変更、及び設計され得、これらの全ては、明示的に企図され、本開示の一部を形成する。
【0084】
本明細書では、動脈管開存及び中隔導管欠損等の先天性心臓欠損を処置する為に使用され得る方法、ステント、及び送達システムの種々の実施形態を記載する。本明細書に記載の種々の実施形態は、新生児又は小児患者を治療する医師が直面する技術的課題に対処するように設計されており、これには、適切なサイズの送達システム、欠陥の端から端までのカバレッジ(例えば、管又は導管)、蛇行した解剖学的構造を通るナビゲーション及び展開、拡張した管又は肉厚の中隔導管へのステントの固定、及び大動脈及び肺動脈又は心室へのステントの突出を回避する為の正確な配置が含まれる。この目的及び患者集団の為に特別に設計され、試験されたステントは、管依存性循環又は中隔欠損を有する患者の再インターベンション、罹患率、潜在的死亡率を減少させるであろう。
【0085】
本明細書で使用される場合、「使用者」は、医師、助手、医者、看護師、インターベンショニスト、医療提供者、技術者、放射線技師等を含み得るが、これらに限定されるべきではない。
【0086】
本明細書で使用される場合、「患者」は、胎児、新生児、小児、幼児、未熟児、赤子等を含むが、これらに限定されるべきではない。
【0087】
本明細書で使用される場合、「管」と「動脈管」は互換的に使用され得る。
【0088】
幾つかの実施形態では、本明細書で使用される場合、「管の全長」は、解剖学的画像化に基づいて、大動脈口から肺動脈口までの測定、第1の管端(例えば、大動脈の)から第2の管端(例えば、肺動脈の)までの測定、管湾曲の外縁に沿った測定、管湾曲の内縁に沿った測定、管湾曲の中心線を通った測定等が可能である。
【0089】
本明細書で使用する場合、「近位」及び「遠位」は、送達システムによるアプローチに依存する。例えば、大動脈から管にアプローチする場合、肺動脈は大動脈及び送達システムに対して遠位と考えられ得る。肺動脈から管にアプローチする場合、大動脈は肺動脈及び送達システムに対して遠位と考えられ得る。中隔導管の場合、右心房から中隔にアプローチする場合、左心房は右心房及び送達システムに対して遠位と考えられる。このように、場合によっては、第1の端部と第2の端部を近位端と遠位端の用語に置き換えて使用し、これらの用語の互換性と、実施されている手技の種類への依存性を説明する。
【0090】
導入
【0091】
先天性心疾患(CHD)とは、生まれつき存在し、患者の心臓の構造や機能に影響を与え得る病態のことである。CHDは最も一般的なタイプの先天性欠損症で、毎年アメリカで生まれる赤子の約1%が罹患している。CHDには2つのタイプが有り、(A)動脈管開存症及び(B)中隔欠損症(例えば、心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、又は房室中隔欠損症)であり、夫々について以下に順番に説明する。
【0092】
(A)動脈管開存症
【0093】
米国で生まれる赤子の内約2,000人が動脈管ステントの恩恵を受ける可能性が有り、管依存性肺循環患者と管依存性全身循環患者の2つのグループに分類される。本明細書に記載の器具、システム及び方法は、小児患者の管開存性を適切に維持する為の改善された方法を提供する。
【0094】
管依存性肺循環の患者は、典型的にはBTシャント術変法(MBTS)で処置されるが、この手技では、開胸して患者に心肺バイパスを行い(脳の発達に悪影響を及ぼす可能性がある)、プラスチック製導管を留置して全身循環と肺循環に流れを提供する。MBTSは、米国では罹患率7.2%、死亡率13.1%のリスクがある。別法として、管ステント留置術は、MBTSよりも高くない、潜在的には低い死亡率を示しており、優れている可能性が有り、心肺バイパスを必要とせずに管依存性肺循環を提供する。従来から使用されているクラウン動脈ステントを再利用(即ち、適応外使用)したステント留置術の場合、再インターベンション率は47%である。ステントが部分的又は完全に肺動脈まで伸びていて、肺動脈分枝の1つを留置している場合の再インターベンション率はより高く、これはクラウン動脈ステントを再利用したステント留置例の21.9%で発生する。動脈管開存性を維持する為に設計され試験されているステント及び送達システムは、患者を開腹手術からより侵襲の少ないアプローチに移行させることができ、MBTSと比較して死亡率が減少し、再利用クラウン動脈ステントと比較して再インターベンションが減少する。
【0095】
管依存性全身循環の患者は、典型的には左心低形成症候群(HLHS)である。HLHSに対する3段階緩和の最初の手技は、典型的には、生後2週間で行われる。管ステント留置術を含むハイブリッド手技は、このような患者をバイパスにする必要性を防ぐことができる。ハイブリッドI期緩和手技で良好な結果が得られている施設もあるが、結果は一貫性がなく、管内に再利用ステントを使用するという課題も残されている。本明細書に記載のステント、システム、及び方法は、HLHS患者集団に対処する。
【0096】
動脈管に再利用ステントを使用する慣例に関する問題点には次のようなものがある:1)適切な半径方向力を有するステントを選択する為の、管組織‐ステント相互作用に関する理解不足、2)二次元(2D)血管造影による三次元(3D)動脈管の測定が困難で、ステントのサイズ決定が難しい、3)ステントと送達システムの機械的特性により、管の蛇行度や長さが変化し、ステントのサイジングが更に複雑になる、4)周囲の動脈への突出を防ぐ為の正確なステント配置が難しい、5)送達システムは成人血管用に設計されている為、経皮的にステント留置位置にアクセスすることにより、より小さく脆弱な血管に損傷を与える危険性がある、6)送達システムは、アプローチ角度や蛇行した管解剖学的構造への展開には対応していない、7)プロスタグランジンの滴定でステント留置時の管径を正確にコントロールできない為、血流をコントロールする為に望ましいステント管径を固定することが困難である。
【0097】
管依存性肺循環における管ステント留置用に再利用される従来のクラウン動脈ステントはバルーン拡張型であり、閉塞性アテローム性動脈硬化性疾患を血管ルーメンから押し出すように設計されており、これは、薄肉で健全な血管でステントが機能する必要がある管ステント留置術の使用例ではない。血管ステント留置用に再利用されるバルーン拡張型クラウン動脈ステントには、血管ステント留置に最適とは言えない多くの制約がある。例えば、インプラントは一般に送達時にストレートバルーンの形状を取る為適合性が低く、弾性変形・反発できず、バルーンの展開に伴って前方へ短縮する為サイジングがより困難になり、追加の固定機構を持たないストレート設計である為、留置時にステントの直径を管直径と同じにする必要が有り、疲労に対する耐久性が低い。更に、送達システムは一般的にバルーン装着型ステントの為遠位端が硬く、血管攣縮を誘発することなく蛇行した解剖学的構造を通過することが困難であり、管を横断する為に4Fのシースを必要とすることが多く、血管の大きさに比べてシースのサイズが大きい為攣縮のリスクが更に高まる。更に、蛇行した解剖学的構造を通過する為に送達システムに装填された状態で十分な可撓性を有するステントは、一般にルーメンの開通を維持する為の半径方向力が不十分である。
【0098】
図5A~
図5Cは、管依存性肺循環で遭遇する3つの主要な管解剖学的構造を示している。
図5AはタイプIの管解剖学的構造を示しており、例えば実質的に直線状又は線形の短い管である。
図5BはタイプIIの管解剖学的構造を示し、例えば、より蛇行した長い管である。
図5Cは、タイプIIIの管解剖学的構造を示し、例えば360度より大きいカーブを有する管を示す。本発明は、蛇行したループ状の管を有するものを含め、より短い動脈管から長い動脈管までステント留置する為のシステム、器具、及び方法を有利に提供する。管の長さは約8mm~約28mmの範囲であってもよいが、患者の解剖学的構造に依存してより短くても長くてもよいことが理解されよう。更に、本明細書に記載の器具、システム、及び方法は、管の解剖学的構造に実質的に適合し、管の不自然な直線化又は長尺化の可能性を低減できる。例えば、
図6に示すように、本体セクション610は、開存ルーメンのヘアピンカーブに適合するように構成されている(このような特徴は、本明細書に記載のステントの何れかの本体セクションの特徴であってもよい)。このように、本明細書に記載のステント(又はその特徴)及び方法の何れか、特に
図1A~
図4B、
図6~
図25Dは、上記又は本明細書の他の箇所に記載された管解剖学的構造の何れかを治療するように構成され得る。
【0099】
(B)中隔欠損
【0100】
米国で生まれる赤子では毎年約20,000人に、何らかの形の中隔欠損症(SD;心房性、房室性、心室性)がある。現在、導管の大きさや重症度に応じて、導管を閉鎖して正常な血流を回復させる為に心臓カテーテル治療や開心術が推奨されている。しかし、特定の稀な症例では、流出閉塞による心室性高血圧の治療として中隔導管へのステント留置が用いられることがある。例えば、毎年生まれる16,000人に上る患者が心房中隔切除術の恩恵を受ける可能性がある。
【0101】
典型的な心臓では、心房は心臓の2つの上側の心室であり、心房中隔によって左心房と右心房に分かれている。健康な小児では、心房中隔は酸素化血液と脱酸素化血液の混合を防いでいる。2つの心房の間に自然に生じる穴、卵円孔開存は胎児循環に存在するが、出生後すぐに血行力学的に重要でなくなる。しかし、一部の先天性心疾患児では、左心房の圧力が高すぎ、酸素化血液と脱酸素化血液が心房レベルで混合する必要がある為、2つの心房の間に開口部を作る必要がある。卵円孔が早期に閉鎖する赤子もいる為、新しい導管を作る為に中隔切除器具が必要になることもある。中隔導管を形成することが有用な疾患には以下のようなものがある:左心低形成症候群(HLHS)、拘束性中隔を伴うその他の単心室、拘束性中隔を伴う大血管転位症(TGA)、小児肺高血圧症、体外式膜酸素化減圧術、肺静脈狭窄症。
【0102】
従来は、心房中隔をバルーンで横切り、バルーンを膨張させ、心房中隔を横切るように引っ張って裂き開ける。バルーン補助ステント留置術では、心房中隔の開口部の大きさをコントロールすることができない為、しばしば大きい穴が開いてしまい、その穴が閉じてしまうことがあるので、正確な穴の大きさが必要な患者には行われない。特定の患者が正確な穴の大きさを必要とする場合、バルーンで拡張可能なステントを心房中隔に亘って留置し、希望する直径まで拡張する。ステントは開口部の直径をコントロールし、確実な開口部を確保する。しかし、SD治療の為の現在のステントや送達システムには幾つかの問題がある。例えば、従来のステントや再利用ステントは移動したり長すぎたりすることがあり、血栓症のリスクや留置時の困難を引き起こす。従来の又は再利用ステントは、移動を防止する為に途中で結んで砂時計型にすることがあるが、そのような解決策は満足のいくものではない。更に、例えば、従来の又は再利用ステントは、小児患者集団の標的解剖学的構造に対して適切なサイズではない為、配置が困難であり、その結果、移動及び/又は血栓症のリスクも生じる可能性がある。更に、例えば、送達システムは、標的小児患者集団に対して適切なサイズでなく、十分な可撓性がない為、展開中に血管及び心臓に外傷を生じる。
【0103】
従って、SDの治療又は中隔導管の形成の為に特別に作製されたステントが、従来のステント又は再利用ステントの課題を克服する為に必要である。本明細書に記載のステント及び送達システムは、少なくとも以下の理由でこれらの課題を克服する:(1)ステントが中隔導管内に固定され得るようにフレア状である第1及び/又は第2の端部セクションを含んでおり、従って心房室内での移動及び/又は伸展を防止する、(2)ステントが、(本明細書の他の箇所に記載されるように、ストラット長、ストラット厚、ストラット幅、クラウンの数、ブリッジの数等を調整することによって)マイクロカテーテルを通して送達されるのに十分な直径までクリンプされるように構成されている、及び(3)ステントは、一旦拡張されると、十分な半径方向抵抗力を有するように構成される(本明細書の他の箇所で説明するように、ストラット長、ストラット厚、ストラット幅、クラウンの数、ブリッジの数等を調整することによって)。
【0104】
中隔欠損、動脈管開存、及び中隔導管開存を含むCHDを治療する為に、本明細書に記載の様々なステント実施形態及び送達システムが使用され得る。更に、本明細書に記載の種々のステント実施形態、送達システム、及び方法は、上記で特定した技術的課題を克服する。例えば、本明細書に記載のステントは、マイクロカテーテルを用いて送達可能である。マイクロカテーテルを用いると、クリンプ状態のステントのサイズに厳しい要件が課される。しかし、このようなステントは、拡張状態において、開存管又は中隔導管が閉じるのを防ぐのに十分な半径方向力をも有していなければならない。本明細書に記載のステントは、形状が固定され、従って自己拡張するように構成されたニチノールを用いて作製され得る。拡張状態のステントは、本明細書の他の箇所に記載されているように、調整された半径方向力を有する。更に、本明細書に記載のステントは、ルーメン又は導管の端から端までのカバレッジを提供する為に、管又は中隔導管に固定されるように構成されてもよい。このような固定は、本明細書の他の箇所に記載されているように、導管内にステント固定用の1つ以上の機構を含む近位及び/又は遠位端セクションによって達成され得る。
【0105】
本明細書に記載の様々なステントの実施形態は、拡張して第1の直径を有する近位面を規定するように構成された第1の複数のストラットを含む第1の端部セクションと、拡張して第2の直径を有する遠位面を規定するように構成された第2の複数のストラットを含む第2の端部セクションと、第1の端部セクションと第2の端部セクションとの間に延在して第3の直径を規定する本体セクションを含み、本体セクションも第3の複数のストラットを有する。
【0106】
第1の端部セクション及び/又は第2の端部セクションは、解剖学的構造に対してストラットを固定する為のフランジ又は固定機構として機能するように構成された列、ストラット、クラウン、及び/又はブリッジを含んでもよい。本明細書に記載の第1の端部セクション及び/又は第2の端部セクションは、約1mm~約3mm、約1.5mm~約2.5mm、約2mm等の長さを有してよい。各端部セクションは、約1~約5個のリング及び/又は約3~約9個のブリッジ又はコネクを含んでもよい。
【0107】
幾つかの実施形態において、ステントは、管依存性肺循環に対しては約3mm~約5mmの直径(0.5mm刻みで5つの直径)を有し、管依存性全身循環に対しては約5mm~約10mmの直径(1mm刻みで6つの直径)を有し、中隔導管に対しては約4mm~約5mmの直径を有する。ステントフランジ、フレア、又はカフ(第1及び/又は第2の端部セクションの)は、ステントを完全に壁と密着させる必要なく固定することにより、インンターベンショニストが、ステント移動のリスクを冒すことなく管や中隔導管より小さいステント径を選択できるようにして、最終的な管又は導管の大きさを最適化し、それにより、イプロスタグランジン注入停止後(動脈管の場合)、又は酸素化血液と脱酸素化血液の混合後(中隔導管の場合)の肺血流量を最適化する。
【0108】
本明細書に記載のステントはインサイチュで適応可能であり、予め成形された第1の端部セクション(例えば、第1のフランジ又は第1のフレア)の展開を可能にして、それでステントを遠位端(例えば、管依存性肺循環の場合の肺動脈の管口、又は管依存性全身循環の場合の大動脈、又は心室の中隔壁)に固定すると共に、近位端に第2の端部セクション(例えば、第2のフランジ又は第2のフレア)を固定する。近位端及び遠位端のフランジは、管又は導管の端から端までのカバレッジを確実にする。
【0109】
管ステント留置による臨床結果は、管依存性肺疾患患者の死亡率及び緊急インターベンションにおける有意な改善を示している。ステントが解剖学的構造に送達され、完全なカバレッジを提供する方式で配置された場合、ステントは安全且つ効果的であることが示されており、90%を遥かに超える最近の技術的成功率、高い生存率、及びプロスタグランジンの投与だけでは達成できない管閉鎖を予防する為の長期的な解決策を提供している。
【0110】
方法
【0111】
本明細書に記載のステントの何れかを展開する方法の一実施形態は、マイクロカテーテルベースの送達システムを管の遠位端まで移動させることと、肺動脈壁で管の口に係合する遠位端セクション(例えば、フランジ又はフレア)をシースから引き出すことと、軽い張力を加えてステントを管全体に亘り効果的に伸展させながらステントをシースから引き出し続けることと、近位端セクション(例えば、フランジ)を管の口に配置することで、管のどちらの側にもステントを突出させずに、端部セクション間の端から端までのカバレッジを確実にすることを含む。このようにステントと管の長さを3mm~5mm程度僅かに増大させることで、インターベンショナリストは、蛇行した3D管解剖学的構造の2D測定やステント留置中の管の長さの変更に起因して本来数ミリメートルは不正確な管の長さ測定を補正することが可能になる。端部セクション(例えばフランジ)間のこの長さ調整可能性により、僅か7種類のステント長で、約8mm~約28mmの最も一般的な管の長さのカバレッジが可能になる。例えば、
図8A~8Bは、約15mmの長さを有する第1の短縮構成のステント(
図8A)と、約20mmの長さを有する第2の伸長又は延伸構成の同じステント(
図8B)を示す。
図8Bに示すステントは(
図8Aのステントに対して)延伸され、管の長さの約5mmの差に対応している。
【0112】
幾つかの実施態様では、
図1A~
図1D及び
図2A~
図2Dに示すように、第1と第2の端部セクションに固定機構を有するステントを、遠位端セクションが管に隣接する肺動脈壁に係合した状態で、第1の管(肺動脈)の遠位端に部分的(約50%)に展開してもよい。インターベンショナリストは、ステントの後半部分を展開しながら張力を加えて、動脈管の長さを効果的且つ僅かに圧縮してもよい。このように管の長さを僅かに増大させることで、インターベンショナリストは、蛇行した3D管構造の2D測定やステント留置による管の長さの変更によって本来不正確な管の長さ測定を補正することが可能になる。遠位端セクション及び近位端セクションは更に、ステント展開時に壁を完全に密着させることなくステントを固定する機構を提供する。端部セクションの一方又は両方における固定機構により、ステントが下流に移動する危険性無しに、ステントの直径よりも大きい直径を有する管にステントを配置することが可能になる。
【0113】
図1A~
図1D及び
図2A~
図2Dは動脈管にステントを展開する2つの方法を示す。
図1A~
図1Dは本明細書に記載のステントの何れかを大動脈から肺動脈まで動脈管に送達する方法の一実施形態を示す。
図1Aは、送達システム130を大動脈100及び動脈管120を通って前進させて肺動脈110にアプローチする方法の一実施形態を示す。
図1Bに示すように、送達システム130はステント本体を拘束し、管120のルーメンの直径又はその一部まで外側に拡張する第1の、即ち遠位端セクション116を解放する。幾つかの実施形態では、ステントの直径は、例えば、本明細書の他の箇所に記載されているように、プロスタグランジン療法又はステントの選択されたサイズの為に、管によって規定されるルーメンの直径に対して過小サイズである。本明細書に記載のステントの実施形態の何れかの、
図3A~
図4B、
図7、
図9~
図14、
図17A~
図17B、
図19~
図25D、
図27A~
図27Bに図示した機構の内の何れか1つ以上を含み得る第1の端部セクション116は、少なくとも部分的に管ルーメンに固定され、及び/又は少なくとも部分的に肺動脈110の口を周方向に覆う。
図1Cに示すように、(マイクロカテーテルによって)拘束されたステント本体118は送達システム130から解放される。幾つかの実施形態では、ステント本体の拘束されたリングは個々に解放されるか、セグメント毎に解放されるか(各セグメントは1つ以上のリング又は複数のリングを含む)、サブセット毎に解放されるか(サブセットは1つ以上のセグメントを含む)、又は送達システムの遠位端から集合的に解放されて、管の全長が覆われるまで拡張される。第2の、即ち近位端部セクションが解放されて外側に拡張する。本明細書に記載のステントの何れかの、
図3A~
図4B、
図7、
図9~
図14、
図17A~
図17B、
図19~
図25D、
図27A~
図27Bに図示した機構の内の何れか1つ以上を含み得る第2の端部セクション122は、管120のルーメンに少なくとも部分的に固定され、及び/又は、
図1Dに示すように、大動脈100の口を少なくとも部分的に周方向に覆う。有利なことに、本明細書に記載の何れかのステントを送達するこの方法は、患者の肺循環を増加させる為に使用され得るが、全身循環を増加させる為にも使用され得る。
【0114】
更に、
図2A~
図2Dは、本明細書に記載のステントの何れかを肺動脈から大動脈まで動脈管に送達する方法の一実施形態を示す。
図2Aは、送達システム230を肺動脈210及び動脈管220を通して大動脈200にアプローチする方法の一実施形態を示す。
図2Bに示すように、送達システム230は、管220のルーメンの直径又はその一部まで外側に拡張する第1の、即ち遠位の端部セクション222を解放する。幾つかの実施形態では、ステントの直径は、例えば、本明細書の他の箇所に記載されているように、プロスタグランジン療法又はステントの選択されたサイズの為に、管によって規定されるルーメンの直径に対して過小サイズである。本明細書に記載のステントの実施形態の何れかの
図3A~
図4B、
図7、
図9~
図14、
図17A~
図17B、
図19~
図25D、
図27A~
図27Bに図示した機構の内の何れかを含み得る第1の端部セクション222は、管のルーメンに少なくとも部分的に固定され、大動脈200の口を少なくとも部分的に周方向に覆う。
図2Cに示すように、拘束されたステント本体218は送達システム230から解放される。幾つかの実施形態では、拘束されたリングは送達システムの遠位端から個々に解放され、管220の全長が覆われるまで拡張し、第2の、即ち近位のフランジ状端部が解放されて、外側に拡張する。本明細書に記載のステントの何れかの、
図3A~4B、
図7、
図9~14、
図17A~
図17B、
図19~
図25D、
図27A~
図27Bに図示した機構の内の何れか1つ以上を含み得る第2のフランジ状端部216は、管220のルーメンに少なくとも部分的に固定され、
図2Dに示すように、肺動脈210の口を少なくとも部分的に周方向に覆う。有利なことに、本明細書に記載の何れかのステントを送達するこの方法は、患者の全身循環を増加させる為に使用され得るが、肺循環を増加させる為にも使用され得る。
【0115】
図1A又は
図2Aの幾つかの実施形態において、本明細書の他の箇所に記載されたステントの何れかを送達する方法は、管を通してワイヤーを前進させることと、細長い本体(例えばマイクロカテーテル)をワイヤー上及び管を通して前進させることと、細長い本体のルーメンからワイヤーを除去することと、例えば、移送シースを使用して、細長い本体にステントを挿入することを含む。更に、
図1B及び2Bに関して、本方法は更に、例えば本明細書に開示されたプッシャーワイヤーの何れかを用いてステントを細長い本体のルーメンを通して前進させることと、
図1C~
図1D及び
図2C~
図2Dにおいて更に詳細に示されるように、ステントを展開することを含む。幾つかの実施形態では、展開することは、ステントの遠位端セクションを先ず肺動脈(又は代替的に大動脈)に展開し、次に細長い本体(マイクロカテーテル)及びプッシャーワイヤーを引き戻してステントに張力を加え、ステントを管の口に固定することを含む。展開することは更に、マイクロカテーテルを引き戻し続けてステントをシースから引き出して、展開することも含み得る。例えば、マイクロカテーテルとプッシャーワイヤーの両方を引き戻すことで、ステントの長さ及び/又は可撓性を調整できる。
【0116】
図25A~
図25Dは、マイクロカテーテル2700を介したステント展開を示す。ステントの遠位端セクション2710がマイクロカテーテル2700から前進され(
図25A)、1つ以上の端部セクションストラット及び/又は1つ以上の端部セクションリング2710が、ステントがマイクロカテーテルから前進されるにつれて徐々にフレア状になり(
図25B~
図25C)、ステントがステントの本体セクション2720を展開するように前進され(
図25D)、最終的に近位端セクションを展開するように、ステントは展開され続ける。幾つかの実施形態では、ステントの遠位端セクションが展開される際、送達システム(例えば、プッシャーワイヤー2730に対するカテーテル2700)を僅かに緊張させて、遠位端セクションを口に整列させてもよい。幾つかの実施形態では、ステントの本体セクション2720が展開される際に、送達システム(例えば、カテーテル)2700を前進又は後退させて展開中のステントの長さを調整してもよい。更に、カテーテルの遠位先端部又は遠位端セグメントは、ステントの近位端部セクションが展開される際に、血管の反対側の口又は中隔壁の反対側の壁と整列させてもよい。
図25A~
図25Dに示した一般的な方法、並びに
図1A~
図1D及び
図1A~
図1D及び
図2A~
図2Dに示した一般的な方法は、本明細書に記載のステントの実施形態の何れにも使用され得る。
【0117】
本明細書に記載の方法は何れも、動脈管を拡張する為に患者にプロスタグランジンを投与することを任意に含み得る。プロスタグランジンをステントに送達することで、患者の生命を脅かす状況である血管攣縮のリスクが大幅に減少する。管が拡張している間、送達システムは、本明細書に記載のステントの実施形態の何れかを動脈管内に拘束して展開するように構成される。幾つかの実施形態において、プロスタグランジンで拡張された時の動脈管の外径は、拡張された展開構成にある時、本明細書に記載の何れかのステントの外径よりも、約20%~約50%、約50%~約100%、約60%~約120%、約75%~約140%、約40%~約140%、約30%~約100%、約80%~約120%、約70%~約110%、約90%~約150%等の範囲で大きい。
【0118】
前述のステップの何れか1つ以上は造影剤が有りでも無しでも実施され得る。例えば、造影剤の注入は、シースとマイクロカテーテルとの間、空のマイクロカテーテルを通して、マイクロカテーテルの側壁の1つ以上の側孔を通して、プッシャーワイヤーのハブの1つ以上の孔を通して、及び/又はプッシャーワイヤー上の歯車形状のハブ(即ち、ハブは、その周囲に沿って、又はハブの外面に、1つ以上のカットアウト又は凹領域を含むか規定してもよい)を通して行われ得る。この歯車形状は、造影剤が流れる為の追加の空間を提供する。送達システムの様々な機構が以下に更に詳細に説明される。
【0119】
図26A~
図26Dは、中隔導管2630にステントを展開する方法を示す。
図26Aは、低形成左心室を有する例示的な心臓2600を示す。心臓2600は、大動脈2610、上大静脈2620、下大静脈2640、中隔欠損2630、動脈管2650、左心室2660、右心室2698、右心房2670、及び左心房2680を含む。
図26A~
図26Dに示されるように、中隔欠損を処置する方法の一実施形態は、
図26Aに示すように、ステント送達システム2690を患者の右心房2670内に前進させることを含む。前進させることは、大腿静脈又は別のアクセスポイント(例えば、橈骨静脈、頸動脈等)を介して血管系にアクセスすることを含み得る。前進させることは、ステント送達システム2690を、下大静脈2640を通して右心房2670に前進させることを含み得る。
図26Bに示すように、この方法はステント送達システム2690を中隔を横切って前進させることを含む。幾つかの実施形態において、ステント送達システム2690を中隔を横切って前進させることは、卵円孔、心房中隔欠損、又は中隔切除部を横切ることを含む。
図26Cに示すように、この方法はステント送達システム2690からステントの遠位端2692を左心房2680内に展開することを含む。
図26Cのステップは更に、ステントをステント送達システム2690の近位端に装填することと、ステントがステント送達システム2690の遠位端にアプローチするまでステント送達システム2690を通してステントを前進させることを含み得る。追加的に、又は代替的に、
図26Cのステップは、ステントが展開される際に送達システム2690の近位端に向かって張力又は力を加えて、遠位端2692を右心房2670と左心房2680との間の中隔壁に固定することを含む。
図26Dに示すように、この方法はステントの本体セクション2694を、ステント送達システム2690の遠位端から、中隔壁を横切って前進させて、ステントの近位端2696を右心房2670内に展開することを含む。
図26Dに示すステップは更に、ステントを中隔に固定することを含み得る。本明細書に記載のステントの実施形態の何れも、
図26A~
図26Dに示す方法と組み合わせて使用され得る。例えば、本明細書に記載したステントの何れかの本体セクションは、中隔欠損の治療に適用する為に延長又は短縮してもよい。更に、
図26A~
図26Dの方法は、低形成左心室を有する患者で示されているが、当業者であれば、同様の器具及び関連する方法が任意の中隔欠損を治療する為に使用され得ることを理解するであろう。
【0120】
器具
【0121】
本明細書に記載の各ステント設計は、約8mm~約28mmの最も一般的な管の長さのカバレッジを可能にし、例えば、管依存性肺循環の場合は約3mm~約5mmの間のステント直径、又は例えば、管依存性全身循環の場合は約5mm~約10mmのステント直径である。更に、本明細書に記載の様々なステント設計は、中隔導管のカバレッジを可能にする為に中隔導管に対して最適化され得る。例えば、本体セクションにおける中隔器具の直径は約4mm~約5mm、長さは約8mm未満であってもよい。
【0122】
本明細書に記載のステント設計が解決しようとする技術的課題は、マイクロカテーテルを通して送達できるように十分に小さく可撓性の直径にクリンプするステントを如何にして作製するかということであると同時に、導管又はルーメンの開存性を維持するのに十分な半径方向力を有するステントを如何にして作製するかということであった。ステント構造には金属を入れるスペースが限られている為、十分な可撓性を持ちながら小径にクリンプするステントで十分な半径方向力を達成するのは困難である。ステントに使用できる金属の量はクリンプ径によって決まる。その為、ストラットの長さ、幅、厚さ、リング当りのストラットの数(2で割るとリング当りのクラウン数になる)、及び本明細書に記載の隣接するリング間のブリッジの数が、このクリンプ直径を達成しつつ十分な可撓性と拡張時の半径方向力を実現する上で重要である。例えば、本体セクションのブリッジ数に対するクラウン数の比は、蛇行した血管系において十分な可撓性を達成すると同時に、能動的に閉じようとする開存血管又は導管を維持する為に必要な十分な半径方向力を維持する為に重要である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のステント実施形態について、本体セクションのクラウン数とブリッジ数の比は、約6:2~約12:8又は約6:3~約9:3であり得る。更に、例えばクラウンの数は、リング当りのストラットの数が約12ストラット~約24ストラットとなり、ブリッジの数は約3~約9となるように、約6クラウンから約12クラウンであり得る。このように、半径方向力には可撓性と送達能との間に厳しいバランスがある。
【0123】
以下の表1は、様々なストラット、クラウン、及びブリッジの数に基づく、ステントの可撓性及び送達能の定性スコアリングを示している。全被試験実施形態に亘る全てのストラットは、同じストラット厚を有し、各リングにおける隣接するストラット間の角度は同様であった。各実施形態におけるストラット長は、クラウン数及び/又はブリッジ数の変化に対応する為に僅かに変化させた。ストラット幅、ストラット厚、及びストラット長さは、
図3A~
図3Eに関して記載されている。表1に示されたデータは、約6:3~約9:3のクラウン対ブリッジ比が、マイクロカテーテルを介した送達の為に十分なクリンプ直径及び可撓性を達成しつつ、開存動脈管又は中隔導管を維持する為に十分な半径方向力を達成する為に重要であり得ることを示唆している。
【0124】
【0125】
表1の定性可撓性評価に構造強度の指標を加える為、半径方向抵抗力の代用として破砕試験を実施した。文献データによると、ステントの破砕試験は、少なくとも大部分のステントについて、ステントの半径方向抵抗力と良く相関することが示唆されている(ブラント‐ウンダーリッヒ、C他(Brandt-Wunderlich,C. et al.)著、「自己拡張型ニチノールステントのサポート機能‐半径方向抵抗力と破砕抵抗は同等か?(Support function of self-expanding nitinol stents-Are radial resistive force and crush resistance comparable?)、カレントディレクションズ・イン・バイオメディカルエンジニアリング(Current Directions in Biomedical Engineering)2019年;5(1)p465-468、同文献の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)。ステントは、平行プレート間で50%破砕され(各ステントの本体セクションは4mmの静止直径を有し、2mm破砕された)、各ステントは、その間に、HF‐5デジタルプッシュプルゲージフォースゲージHF-5Nを使用し、リニア治具(Baoshishan(登録商標)フォーステストスタンドハンドホイール操作式プッシュプルテストスタンド引張圧縮荷重試験機、デジタル変位スケール及びHJJ‐001クランプ×2付き)で配置された。結果を
図38に示す。
【0126】
図38に示すように、8クラウン対8ブリッジの比率を有するステントが、最も高い強度(例えば、ほぼ50g)を有したのに対し、ブリッジ数を8クラウン対4ブリッジの比率に減らすと、強度は僅かに低下した(例えば、約45g)。9クラウン対3ブリッジの比率を有するステントは、更に強度が低下したが、それでも約29gと有意な強度を示した。しかし、8クラウン:8ブリッジと8クラウン:4ブリッジ設計は、高い強度を示すものの、夫々可撓性に欠け(表1参照)、送達及び/又は位置決めが困難であった。対照的に、9クラウン:3ブリッジの設計では、強度が低下する一方、可撓性が増加する為、強度と可撓性のバランスを取ることで、導管を開存状態に維持するのに十分な半径方向強度を維持しながら、送達能と位置決めを向上させた。
【0127】
図3A~
図3Eは、先天性心疾患の治療の為のステントの一実施形態を示す。
図3A~
図3Eに示すステントは、後述の、及び本明細書の他の箇所に記載の様々なステント設計上の特徴に示されるように、上述の技術的課題に対する技術的解決策を提供する。
【0128】
図3Aは2Dクリンプ構成のステント310の一実施形態を示す。図示のように、ステント310は近位面308aを規定する第1の端部セクション312aと、遠位面308bを規定する第2の端部セクション312bと、第1の端部セクション312aと第2の端部セクション312bとの間の本体セクション314を有する。
【0129】
第1の端部セクション312aは、1つのリング、2つ以上のリング、又は複数のリングを含み得る。この実施形態に示すように、第1の端部セクション312aは、各々が長さ320Lを有する複数のストラット304aを備えた末端リング306aと、各々が長さ322Lを有する複数のストラット304dを備えた末端から2番目のリング318aと、各々が長さ323Lを有する複数のストラット304fを備えた末端から3番目のリング319aとを備えている。各ストラット304aの長さ320Lは、各ストラット304dの長さ322L及び/又は各ストラット304fの長さ323Lに実質的に類似していてもよい。好ましくは、長さ320Lは、長さ323Lよりも大きい長さ322Lよりも大きく、その結果、ストラット長は、本体セクション314から、第1の端部セクション312aへ、更に近位面308aに向かうにつれて増加する。他の実施形態では、長さ323Lは、長さ320Lよりも大きい長さ322Lよりも大きく、その結果、ストラット長は、本体セクション314から、第1の端部セクション312aへ、更に近位面308aに向かうにつれて減少する。更に繰り返すと、長さ322Lと323Lは実質的に同じであってよく、又は、長さ320Lと322Lは実質的に同じであってよく、又は、長さ320Lと323Lは実質的に同じであってよい。ストラット長320L、322L及び323Lは各々約2.5mm~4.5mmの間であってよい。好ましくは、各ストラット304aの長さ320Lは約1.9mm~約2.3mmであり、各ストラット304dの長さ322Lは約1.6mm~約2.0mmであり、各ストラット304fの長さ323Lは約1.3mm~約1.7mmである。
図3Dに示すように、第1の端部セクション312aの近位面308a(
図3Aに示す)は、本体セクション314の直径342よりも約110%~約180%、約120%~約170%、約130%~約160%、例えば、約150%、約155%、又は約160%大きい直径344(末端リング306aの末端クラウン316aで測定された)を有する。近位面308aは、1つ、1つ以上、又は複数の放射線不透過性マーカー336aを含む。或いは、放射線不透過性マーカー336aは、送達システム上の相補的機構(例えば、夫々雌型又は雄型コネクタ)と接続するように構成された雄型又は雌型コネクタ等の接続要素で置き換えられてもよい。リング306aと318a並びにリング318aと319aは、1つ以上又は複数のブリッジ302aを介して互いに接続される。
図3Bに示すように、各ブリッジ302aは、約0.1mm及び約0.25mmの長さ304Lを有する。約3~約9個のブリッジがあってもよい。
【0130】
第2の端部セクション312bは、1つのリング、2つ以上のリング、又は複数のリングを含む。本実施形態に示すように、第2の端部セクション312bは、各々が長さ328Lを有する複数のストラット304cを備えた末端リング306bと、各々が長さ326Lを有する複数のストラット304eを備えた末端から2番目のリング318bと、各々が長さ325Lを有する複数のストラット304gを備えた末端から3番目のリング319bとを備えている。各ストラット304cの長さ328Lは、各ストラット304eの長さ326L及び/又は各ストラット304gの長さ325Lに実質的に類似していてもよい。好ましくは、長さ328Lは、各ストラット304gの長さ325Lよりも大きい長さ326Lよりも大きく、その結果、ストラット長は、本体セクション314から第2の端部セクション312bへ、更に遠位面308bに向かうにつれて増加する。他の実施形態では、長さ325Lは、長さ328Lよりも大きい長さ326Lよりも大きく、その結果、ストラット長は、本体セクション314から第2の端部セクション312bへと、更に遠位面308bに向かうにつれて減少する。更なる変形例において、長さ328Lと326Lは実質的に同じであってもよく、又は、長さ328Lと325Lは実質的に同じであってもよく、又は長さ326Lと325Lは実質的に同じであってもよい。ストラット長326L、328L、及び325Lは夫々、約2.5mm~約4.5mmの間であってよい。好ましくは、各ストラット304cの長さ328Lは約1.9mm~約2.3mmであり、各ストラット304eの長さ326Lは約1.6mm~約2.0mmであり、各ストラット304gの長さ325Lは約1.3mm~約1.7mmである。
図3Dに示すように、第2の端部セクション312bの遠位面308b(
図3Aに示す)は、本体セクション314の直径342よりも約110%~約180%、約120%~約170%、約130%~約160%、例えば、約150%、約155%、又は約160%大きい直径346(末端リング306bの末端クラウン316bで測定された)を有する。遠位面308bは、1つ、1つ以上、又は複数の放射線不透過性マーカー336bを含む。或いは、放射線不透過性マーカー336bは、送達システム上の相補的機構(例えば、夫々雌型又は雄型コネクタ)と接続するように構成された雄型又は雌型コネクタ等の接続要素で置き換えられてもよい。リング306bと318b並びにリング318bと319bは、1つ以上又は複数のブリッジ302cを介して互いに接続される。
図3Bに示すように、各ブリッジ302cは、約0.1mm~約0.25mmの長さ304Lを有する。隣接するリングの各対の間に約3~約9個のブリッジがあってもよい。
【0131】
本体セクション314は、各々が複数のストラット304bを含む複数のリング334を含む。本体セクション314は、1個のリング又は1個以上のリング(例えば、中隔欠損の実施形態の場合)、又は2個以上のリング又は複数のリング(例えば、開存動脈管の実施形態の場合)を含んでもよい。例えば、約1個のリング、約2~約6個のリング、又は約3~約10個のリングが有り得る。本体セクション314の複数のストラット304bは、各々長さ324Lを有する。
図3Aに示すが、本明細書に記載のステントの実施形態の何れかにおいても、ストラット304bの各々の長さ324Lは約0.6mm~約1.6mm、好ましくは約0.8mm~約1.4mmであってよい。本体セクション314のリング334は、複数のブリッジ302b、例えば隣接するリングの各対の間に約3~約9個のブリッジ302bを介して接続されてもよい。
図3B~
図3Cに示すが、本明細書に記載のステントの何れについても、各ブリッジ302a、302c、302bは夫々約0.1mm~約0.25mmの長さ304L、338Lを有する。
【0132】
図3B~
図3Cに示すが、本明細書に記載のステントの実施形態の何れについても、ストラット304a、304b、304cは夫々約0.08mm~約0.1mmの幅324Wを有し得る。
図3B~
図3Cに示すが、本明細書に記載のステントの実施形態の何れについても、ストラット304a、304b、304cは各々約0.09mm~約1.1mmの厚さを有し得る。
【0133】
第1の端部セクション312及び第2の端部セクション312bのストラット304a、304cは、夫々、各リング内の隣接するストラット間の角度を実質的に一定又は同等に維持しながら、本体セクション314のストラット304bよりも長くなっていて、より大きい拡張に対応する。例えば、
図3Dに示すように、ストラット304aの長手軸330に対する角度332は、約50度~約70度、又は約60度~約70度、好ましくは約65度である。
【0134】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載のステントは、第1のセクション、本体セクション、及び/又は第2のセクションの隣接するリング間の距離が約0.1mm~約0.2mm又は約0.12mm~約0.16mmであるようなオープンセル設計を有する。
【0135】
図3Aに示すように、クリンプ構成におけるステント310の直径340は約0.5mm~約0.75mm、好ましくは約0.60mm~約0.70mmである。
図Dは、例えばマイクロカテーテルからの展開後の、拡張構成での
図3Aのステントを示す。拡張ステント300の本体セクション314の直径342は、標的ルーメンの直径に応じて、約3mm~約10mm、約3mm~約4.5mm、約5mm~約9mm、約6mm~約10mm等である。例えば、管によって規定されるルーメンの直径の少なくとも一部は約4mm~約8mmであり、ステントの本体セクションの外径は約3mm~約4.5mmである。更に、例えば、動脈管によって規定されるルーメンの直径の少なくとも一部は約5mm~約10mmであり、ステントの本体セクションの外径は約5mm~約9mmである。更に別の例では、管によって規定されるルーメンの直径の少なくとも一部は約5mm~約9mmであり、ステントの本体セクションの外径は約6mm~約10mmである。
【0136】
拡張構成では、ステント300は、約1mmの圧縮で、約0.20N/mmより大きい、約0.20N/mm~約0.35N/mmの間、約0.25N/mm~約0.31N/mmの間、約0.25N/mm~約0.27N/mmの間、又は約0.30N/mm~約0.31N/mmの間の半径方向抵抗力を有する。例えば、ステントが直径約4mm~約3mmに圧縮される時、半径方向抵抗力は約0.25N/mm~約0.27N/mmである。別の例では、ステントが直径約4mmから約2mmに圧縮される時、半径方向抵抗力は約0.30N/m~約0.31N/mmである。
【0137】
幾つかの実施形態では、
図3A~3Eに示すステントは、ステントの本体セクションの直径よりも約20%~約140%、約40%~約140%、約20%~約100%等大きい直径を有する血管内に固定されるように構成されている。
【0138】
更に、
図3A~
図3Dに示すように、ステント300は、ステント300が約4mm以上の曲率半径又は約2mm以上の曲率半径で捩れないようなオープンセル設計を含む。例えば、ステント300は約2mm以下の曲率半径で捩れることがある。
【0139】
図3Eは、少なくとも特定の寸法を有する特定の血管に対するステント300bの様々なパラメータの一例を示している。当業者であれば、標的血管のサイズに応じて寸法を拡大又は縮小する必要があることを理解できよう。拡張構成のステント300bは、長さの仕様に応じて、約6mm~約12mm、好ましくは約8mm~約10mmの長さ348を有する本体セクション314を有する。ステント300bは第1の端部セクション312a及び第2の端部セクション312bを有し、各端部は約3mm~約6mm、好ましくは約4mm~約5mmの長さ350を有する。本体セクション314の直径342は、標的血管の仕様に応じて、約3mm~約6mm、好ましくは約3.5mm~約4.5mmである。近位面の直径344又は遠位面の直径436は、標的血管の仕様に応じて、約6mm~約8mm、好ましくは約6.5mm~約7.5mmである。
【0140】
図4A~4Bはステント400の別の実施形態を示しており、ステント400を近位端に固定する近位面410を第1の端部セクション402に、又、ステント400を遠位端に固定する遠位面420を第2の端部セクション406に備えており、従って、ステントの長さに関係なく、管の端から端までのカバレッジを確実にする。第1及び第2の端部セクション402、406は、管全体がステントによって覆われるように管を僅かに圧縮するように構成され得る。更に、
図4Bに示すように、ステント400の固定機構は、近位面及び/又は遠位面の末端クラウン424で接合された隣接する末端ストラット426を含む。末端クラウン424で接合された隣接する末端ストラット426は、ステント400の長手軸422に対して約75度~約110度の角度425を成している。
【0141】
次に
図7と
図9を参照すると、
図7及び
図9は、夫々近位面又は遠位面を規定する第1の端部セクション及び/又は第2の端部セクションを有するステントの様々な実施形態を示し、ステント本体の長手軸に対して角度を成す末端クラウンで接合された隣接する末端ストラットを含む。
図4A~4B、
図7、
図9、
図11A、及び
図19~
図24に示すように、末端クラウンで接合された隣接する末端ストラットには様々な形状及び構成を取ってもよい。
【0142】
図7はステントの近位面又は遠位面を形成する花弁状端部セクション又はフランジを示す。例えば、花弁状フランジ700は、クラウン706で接合された第1の角度を成すストラット702及び第2の角度を成すストラット704を含んでもよい。隣接するストラット702、704間の角度708は約15度~約50度であってもよく、これによりフランジに花弁状の外観とオープンセル構造を与える。末端クラウン706で接合された末端ストラット702、704は、ステントの本体セクションの長手軸に対して角度を成していてもよい。例えば、その角度は、本明細書の他の箇所に示され説明されているように、約50度~約115度であってもよい。
図7に示すフランジ700とは対照的に、
図9に示すステントは、遠位端及び/又は近位端に1つ以上の星形フランジ900を備えており、試験ルーメン910への固定を容易にする。ストラット904は、隣接するストラット902、904の少なくとも一部に沿って、及びクラウン906で、隣接するストラット902に接合されており、その結果、隣接するストラット902、904間の末端領域912における角度が約5度未満となっている。
【0143】
次に、一実施形態によるステント1000の一部を拡大した二次元図である
図10を参照する。セクション1010は第1の端部セクション又は第2の端部セクションの何れかであり、末端リングを形成する複数の末端ストラット1012a、1012b、...1012nを含む。隣接する末端ストラット1012a、1012bは、末端クラウン1018で接合されている。本体セクション1010は、複数のリングに配置された複数のストラット1014も含む。末端ストラット1012a、1012bは、本体セクション1010内のストラット1014の長さ1022よりも長い長さ1020を有する。例えば、ストラット1012a又は1012bの長さ1020は、ストラット1014の長さ1022よりも2倍から約4倍大きくてもよい。例えば、ストラット1012a又は1012bの長さ1020は約2mm~約6mmであってよく、一方、ストラット1014の長さ1022は約0.5mm~約2mmであってよい。隣接するリングはブリッジ1016によって接続されてもよい。例えば、ブリッジは、少なくとも圧縮構成では、ステントの長手軸に対して角度を成してもよい。
【0144】
幾つかの実施形態では、第1及び/又は第2の端部セクションは、血管の端部、血管の口、又は中隔壁とは対照的に、ステントを血管の中間部に固定するように構成され得る。或いは、
図11Aに示すように、ステントは、例えば第1の端部セクション又は第2の端部セクションのように、一方の端部のみにフレア状又はフランジ状であってもよい。例えば、
図11Aにおいて、第1の端部セクション1100における末端クラウン1106の角度1102と第2の端部セクション1110における末端クラウン1108の角度1104とを、両方ともステント1150の長手軸1120に相対して比較する。第1の端部セクション1100の角度1102は約45度~約75度であり得るのに対し、第2の端部セクション1110の角度1104は約15度~約45度であり得、これにより、第1の端部セクション1100はステントを血管の口に固定するように構成されるのに対し、第2の端部セクション1110はステントを血管の中間部に固定するように構成される。第1及び第2の端部セクションの各末端リングにおける隣接するストラット間の角度は実質的に一定又は同様であってもよいが、長手軸に対する末端クラウンの角度は血管端部の固定又は血管中間部の固定の何れかに合わせて調整される。
図11B~11Cに示すように、末端リング、クラウン、ストラット等は依然としてステントを所定の位置に固定することができ、長さ(本体セクション及び第2の端部セクションで測定)を調整することを可能にする。
図11B~
図11Cは、約13mm(
図11B)~約16mm(
図11C)のステント長の調整を示す。
図11B~
図11Cに示すように、ステントの長さの測定値は、機能的長さ(血管から延びるフレアを含めず)に重点を置いているが、それは、血管中間部の固定ストラットは本体セクションの一部となり、それ故機能的長さとなるからである。以下により詳しく説明する
図23は、血管中間部に固定されるように構成され得るステントの別の実施形態を示す。
【0145】
図14~
図16及び
図18は、様々なステントの実施形態の端部セクション及び/又は本体セクションの様々なクラウン及びブリッジ構成を、切断したままの、拡張前の構成で2Dで示している。
図14は、ステントの端部セクション1420(近位又は遠位)におけるクラウン・ブリッジ構成の一実施形態を示す。隣接する末端ストラット1406a、1406bは内部クラウン1400で接合され、隣接する末端から2番目のストラット1408a、1408bはクラウン1402で接合される。内部クラウン1400とクラウン1402はブリッジ1404を介して接続されている。別の言い方をすれば、(近位面又は遠位面の外部クラウン又は面クラウンとは対照的に)全ての内部クラウン1400は、ブリッジ1404を介して末端から2番目のストラット1408a、1408bのクラウンに接続される。クリンプ構成又は非拡張構成では、末端1406と末端から2番目のストラット1408との間のブリッジ1404は、端部セクション1420の長手軸1403に実質的に平行である。この実施形態では、端部セクション及び末端から2番目のストラットは、約2mm~約2.5mm、好ましくは約2.25mmの長さである。幾つかの実施形態では、
図14のクラウン・ブリッジ構成は、約5mm~約6mm、好ましくは約5.5mmの直径まで、近位面及び/又は遠位面の拡張(対称的又は非対称的)を可能にするように構成される。
【0146】
別の実施形態を
図15に示す。
図15のステントは、1列当り9個のクラウンと、1列当り3個のブリッジを備えている。ブリッジ1504はセクション1500(本体セクション又は端部セクション)の長手軸1520に対して角度を成している。例えば、末端ストラット1506aは、内部クラウン1510で隣接する末端ストラット1506bに接合され、末端から2番目のストラット1508aは、クラウン1502で隣接するストラット1508bに接合される。内部クラウン1510は、ブリッジ1504が器具の長手軸に対して角度を成すように、クラウン1502に対してオフセットされている(圧縮構成、2D構成、又は他の非拡張構成では)。幾つかの実施形態では、この構造は可撓性を増加させる。
【0147】
図16はステントの接続領域の別の実施形態を示す。この実施形態では、本体領域のクラウンの数は一定であるが、各接続領域のブリッジの数は多い数と少ない数が交互になっている。例えば、接続領域1620は、隣接するリング1602、1604間に4個のブリッジ1610aを含み、接続領域1640は、隣接するリング1604、1608間に2個のブリッジ1606を含み、接続領域1630は、隣接するリング1608、1612間に4個のブリッジ1610bを含む。ブリッジの数は、各接続領域において、隣接する接続領域における接続領域の数に相対して交互になっている。リング間でブリッジ数を交互にすることにより、各ブリッジがステントの水平軸又は長手軸1650に実質的に平行になるように構成されている。幾つかの実施形態では、
図14のステントも同様に、クラウンの数が多いリングと少ないリング、ブリッジの数が多い接続領域と少ない接続領域が夫々交互になっている。リング当りのクラウン数及び/又はリング間のブリッジ数を交互にすることで、十分な可撓性を維持しながら強度を向上させることができる(例えば表1参照)。
【0148】
図39は、このような交互のクラウン及び/又はブリッジ数構造を有するステントについて、上述と同様のパラメータで実行した追加の破砕試験データを示している。9個のクラウン:3個のブリッジを有するステント(
図38~39に示す)の強度と比較すると、8個のクラウンと12個のクラウンを交互に配置し、各リングを4個のブリッジで接続したステントは、強度が増加し(例えば、約37g)、非常に可撓性である(表1参照)。6個のクラウンと9個のクラウンを交互に配置し、各リング間に3個のブリッジがあるステントは、8~12個のクラウン:4個のブリッジ設計と比較して、強度が更に増加し(例えば、約50g)、可撓性が僅かに低下する(表1を参照)。幾つかの実施形態では、交互のクラウン数及び/又はブリッジ数は、強度を同時に増加させながら、可撓性を少なくとも僅かに減少させる。このような設計は、可撓性と送達能と強度との間の十分なバランスとなり得る。
【0149】
図18はステントの接続領域の別の実施形態を示す。隣接するストラット1850は湾曲又はループ状のクラウン1860で接合され、その結果クラウン1860はブリッジ1820を介して隣接するリングに結合される(例えば、ステントの長手軸に対して平行又は角度を成している)。別の実施形態では、隣接するストラット1840は、実質的に平坦又は僅かに凹状の頂部を有するクラウン1810で接合される。凹状又は平坦なクラウン1810は、ブリッジを介して隣接するリングに接合されていても、接合されていなくてもよい。幾つかの実施形態では、この設計は、前進する時により多くの押し込み易さを与える可能性が有り、例えば、送達中に、リング1804がリング802に押し当たるか、又は、リング802がリング1804に押し当たる可能性がある。
【0150】
図19~
図21はステントの端部セクションの様々な概略図である。例えば、
図19~
図21に示す構成は、近位面を規定する第1の端部セクション及び/又は遠位面を規定する第2の端部セクションの一部であってもよい。
図19~
図21に示す構成は、本明細書の他の箇所に記載したステントの実施形態の何れに適用されてもよい。一実施形態では、
図19に示すように、ステントの端部セクションはステントの長手軸に対して(拡張構成で)角度を成していてもよい。角度1920は、末端ストラット1910の末端クラウン1900がステントの長手軸1950に対して実質的に垂直になるように、約80度~約100度、又は実質的に又は約90度であり得る。別の実施形態では、
図20に示すように、ステントの1つ以上の末端ストラット2000は、例えば円弧状経路2020に沿って徐々にフレア状になっていてもよく、ストラット2000の細長いセクションはステントの長手軸2050に対して約30度~約60度の角度2010を成している。別の実施形態では、
図21に示すように、ステントの1つ以上の末端ストラット2100は、細長いセクションがステントの長手軸2150に対して約70度~約90度の角度2110を成すように、徐々にフレア状になっていてもよい。
図19~
図21に示す実施形態は夫々、ステントの本体セクションのストラットよりも長い末端ストラットを有する。
【0151】
幾つかの実施形態では、
図22の概略図に示されているように、ステント2300の本体セクション2340は本体セクション2340の一領域に拡張したルーメン2310を含んでもよい。例えば、この領域は実質的に中央に位置するか、ステント2300の遠位端2320又は近位端2330により近接してもよい。膨出部又は突出部2310は実質的に円周方向に配置されていてもよいし、焦点状又はその他の形状であってもよい。
【0152】
更に別の実施形態では、
図23の概略図に示すように、1つ以上の末端ストラット2410は、長手軸2430に対するストラット2410の角度2420が約120度~約170度になるように、ステント2400の近位端2422に向かって折り返してもよい。
【0153】
図24は、カフ形状を有するステント2500の端部セクション2550の別の実施形態を示す。例えば、端部セクション2550は、本体セクション2560の長手軸2510に対する平行セクション2540を含んで、カフ状の外観を与えてもよい。更に例えば、ステント2500の遠位端2550は、ステント2500の本体セクション2560の直径2530よりも大きい(例えば、約5%~約50%大きい)直径2520を有する。
【0154】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載のステント設計の何れかの短いバージョンも、心臓の左心房と右心房、又は下静脈バッフル若しくは導管と右心房等の2つの心室間の連通を維持する(フォンタン穿孔等)為に使用され得る。例えば、これによって中隔切除部や卵円孔の開存性を維持できる。幾つかの実施形態では、
図27Aに示すように、短縮したステント2800は、第1の端部及び第2の端部の一方又は両方上に、フレア状端部セクション2820、2830を伴って本体セクション内に1つ又は2個のリング2810(例えば、ステントの長手軸に対して実質的に垂直な末端リング)を含んでもよい。この設計は、本明細書に記載のプッシャーワイヤーの設計の何れかを使用して、マイクロカテーテルを通して送達することもできる。
図27Bは、中隔導管として使用する、
図27Aのステントの側面図を示す。
図27Bに示すように、中隔導管2900は、1個のリング2910を有する本体セクション2940(但し、2個以上のリング又は複数のリングを有する本体セクションも想定される)と、第1の面2970を規定する第1の端部セクション2950と、第2の面2980を規定する第2の端部セクション2960とを備えている。第1の面2970はリング2930を含んでもよく、第2の面2980はリング2920を含んでもよいが、本明細書では、複数のリングを伴う端部セクションを想定している。実際、本明細書で説明するステント実施形態の何れも、中隔導管欠損の治療に使用する為に適合され得る。
【0155】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載のステントの何れもが、抗血栓性、抗再狭窄性の表面処理(複数可)又はコーティング(複数可)、抗増殖性コーティング、摩擦低減コーティング、又は当該技術分野で公知の任意の他のコーティング(複数可)を含んでいてもよい。更に、本明細書に記載のステントは何れも薬剤溶出ステントとして構成され得る。
【0156】
本明細書に記載のステントの実施形態の何れにおいても、本体セクション、第1の端部セクション、及び/又は第2の端部セクションの2個以上のリングを互いに繋止してセグメントを形成してもよい。隣接するリングを互いに繋止することで、展開中にリングの向きが反転して屈曲部でリングがスケーリングするのを防止できるが、それは、2個の非連結のステントリング又はセグメントが曲部で突出するスケールのように枢着して潜在的キンク点を形成する場合のことである。例えば、電気化学反応を利用して、2つの隣接するセクション間で結合セクションを分離してもよい。幾つかの実施形態では、フックシステムを使用して隣接するセグメントを結合し、展開カテーテルを捩ってセグメントを係合解除してもよい。更に、幾つかの実施形態では、次のセグメントを回転させてセグメントを係合解除できるように、セグメントを隣接するリングに入れ子にしてもよい。このような回転に依存する実施形態では、ステントが係合解除されずに(又は適切に配置された時にのみ係合解除されるように)蛇行した解剖学的構造を通ってステントを前進させることができるように、セグメントの係合解除時にのみ回転が望まれる場合がある。このように、係合解除時以外での回転を制限する為に、各セグメントの1つ以上の部分は、隣接するセグメントに接続しない場合がある。
【0157】
図12~
図13は繋止機構の様々な例を示している。
図12は、ステントの隣接するセグメント同士を繋止する為、又はステントを展開の為に送達システムに繋止する為に使用され得るロリポップ又はパドル構造を示している。例えば、1つのセグメント又はステントの第1の側部1202は雌型嵌合部1200を有し、隣接するセグメント又は送達システムの第2の側部1204は雄型嵌合部1210(例えば、パドル又はロリポップ)を有する。別の実施形態では、
図13に示すように、各セグメント1300、1310は、隣接するセグメントとの入れ子構造化又はステントを送達システムに繋止する為のバイアスカットパターンを含み得る。更に、当業者であれば、送達システムが雌型コネクタ1200を含む一方、ステントが雄型コネクタ1210を含み得ることを理解できよう。
【0158】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載のステントは、(1)直径が約3mm~約5mmまで0.5mm刻みで製造可能であり、(2)4Fシース又はそれより小さいシースを通して送達可能であり、(3)少なくとも平均径方向力と同程度の半径方向力が、1mm圧縮時の約0.20N/mm~2mm圧縮時の約0.3N/mmの範囲である。幾つかの実施形態では、ステントは追加的に、又は代替的に、管の解剖学的構造の大部分(例えば、管長が約8mm~約28mmの範囲にある開発モデルの6管中4管)を、大動脈又は肺動脈の何れにも約2mm~約3mmを超えて延びることなく、完全に覆うことができる。
【0159】
送達システム
【0160】
本明細書に記載のステントは何れも、マイクロカテーテルベースの送達システムを介して送達され得る。一般的な送達システムは
図28に示されており、ステント2860を送達するように構成されたマイクロカテーテル2840とプッシャーワイヤー2850とを備えている。本明細書に記載の送達システムは何れも、シース又は硬いバルーン拡張可能システムよりも小型で、可撓性が高く、管又は心室に対する外傷が少なくなり得る。例えば、インターベンショナリストは、2.7Fのマイクロカテーテルが、遭遇した管の解剖学的構造を100%横断すると主張するが、可撓性の低いバルーン送達システムは、その硬さの為に管をナビゲートできないことが多い。
【0161】
幾つかの実施形態では、マイクロカテーテルベースの送達システムは、標準的な編組構成よりも薄い壁、シームレスな移行ゾーン、及び低いキンク半径で高い可撓性を可能にするレーザー切断ハイポチューブ技術を使用してもよい。本明細書に記載のマイクロカテーテルベースの送達システムは、(1)約2.7Fの外径を有し、3.3F又は4Fのシース又はバルーン拡張型冠状動脈ステントと比較して交差プロファイルを低減して、3.3Fシースを通して適合して医原性の血管損傷を極減しながら、シースを通ったステント留置中に血管造影用の造影剤流下を可能にし、(2)小児患者の使い易さを考慮して、長さを過剰にせずに、大腿動脈、頸動脈、又は腋窩動脈から管にアクセスして必要な軌道を得る必要が有り得る為、それらの血管の何れかからのアクセスを可能にし、(3)既存の0.014”ガイドワイヤーに、2つ以上の完全360度回転を経る動脈管(例えば、
図5Cに示すように、III型管蛇行指数)に追従させることができる。
【0162】
幾つかの実施形態では、ステント及び送達システムは新生児動脈管ステント留置用に独自に設計されており、痙攣を起こす傾向がある小さくて蛇行した血管という解剖学的課題を克服する一方で、周囲の血管に突出することなく、管の端から端まで適切なサイズのステントを留置できるようになっている。
【0163】
図29は、ステント及び送達システムの設計における様々な解剖学的考察の概略図を示している。例えば、大動脈3050を通って管3060まで移動するマイクロカテーテル送達システムは、
図29に示すように、夫々独自の曲げ半径、長さ、及びデュロメータを有する複数のゾーンに区分され得る。
図29に示すように、大動脈3050から管3060にアプローチする時、カテーテルのゾーン3010は、約7mm~約8mmの曲げ半径と、約52cm~約59cmの長さと、約40~約90ショアAのデュロメータを有するように、下行大腿動脈3000を通って前進するように構成される。カテーテルのゾーン3020は更に、約4mm~約5mmの曲げ半径と、約4cm~約6cmの長さと、約40~約90ショアAのデュロメータを有するように大腿動脈3000を通って前進するように構成される。次にカテーテルのゾーン3030は、約1mm~約4mmの曲げ半径及び約20~約40ショアAのデュロメータを有するように、大動脈弓3050に近接した大腿動脈3000を通って前進するように構成される。カテーテルのゾーン3040は、約2.5mmの曲げ半径と、約0.5cm~約1cmの長さと、約20~約40ショアAのデュロメータを有するように大動脈弓3050をナビゲートするように構成される。カテーテルは更に、大動脈弓3050の下側部分をナビゲートし、約8mm~約28mmの長さを有する動脈管3060に入るように構成される。カテーテルの遠位先端部3070はステント3090を展開する。
図29は大動脈からの管へのアプローチを示すが、当業者であれば、肺動脈3080からの管へのアプローチも可能であることを理解する筈であり、両アプローチについては
図1A~1D及び
図2A~2Dで上記に示している。ステント及び/又は送達カテーテルは、各ゾーンの特定の要件に適合する可撓性を有するように同様に製造され得る。
【0164】
ステント送達システムの実施形態は、標準的な編組構成よりも薄い壁、シームレスな移行ゾーン、及び低いキンク半径でより大きい可撓性を可能にするレーザー切断ハイポチューブ技術で作られたマイクロカテーテルを使用してもよい。更に、編組又はコイル状の補強材と、可変デュロメータの外側ポリマージャケット及び/又はコイルのピッチ又は編組のインチクロス当り(PIC)の変化により形成された複数の移行ゾーンを備えたマイクロカテーテル送達システムをステントの送達に使用してもよい。送達システムは、医原性血管損傷を極減する為に4Fシースを通して適合するように構成され得る。幾つかの実施形態では、必要な軌道を得る為に大腿動脈、頸動脈、又は腋窩動脈から管にアクセスする必要がある場合がある為、送達システムはこれらの血管の何れかを介したアクセスを可能にする。送達システムは、360度以上回転する血管(III型管蛇行指数、
図5C)を通って既存のガイドワイヤー上を追従するように構成され得る。上述したように、ステント及び送達システムは、新生児血管ステント留置の為に独自に設計されており、小さくて蛇行した血管の解剖学的課題を克服する一方で、周囲の血管に突出することなく、適切なサイズのステントを管の端から端まで留置することを可能にする。
【0165】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の送達システムの何れもが、ステント(本明細書に記載の実施形態の何れか)、流量制限器、閉塞器、中隔導管器具(
図27A~27B)又はインプラントを含むがこれらに限定されない様々な器具を展開するように構成され得る。そのような器具のアレイは、本明細書においてインプラントと呼ばれ得る。
【0166】
幾つかの実施形態では、インプラントは、電圧を印加してインプラントと送達システムとの間のコネクタを解放することによって、溶解する1つ以上の糖部分を使用してインプラントを送達システムから分離することによって、より柔らかいハブ(例えば、シリコーン)を使用してインプラントの端部を圧縮して定位置に保持することによって、インプラント上のマーカーと送達システム上のハブを介したロック及びキー機構を有すること(例えば、
図31)によって、隣接するインプラントセグメント間にロック及びキー機構を有して、各インプラントクレストからバレーまでが可逆的に接続されてセグメントを入れ子に保つようにすることによって、セグメント間の長さを調整する為に捩り機構(例えば、捩れるように意図されたストラットが間に在る)を有することによって、及び/又は一方向展開を促進する設計を有することによって(例えば、インプラントが大動脈(又はアプローチによっては肺動脈)に向かって前進するにつれて後続のインプラントセグメントの直径が大きくなるようにすることで、一度に1つのセグメントを入れ子にして展開することも補助することによって)、送達システムから係合解除され得る。捩り機構の幾つかの実施形態において、捩り機構は、大動脈側(又はアプローチによっては肺動脈側)での展開の近位端の為に確保され得る。
【0167】
図30~
図37は、当技術分野で公知の任意の移送シース及びマイクロカテーテルと共に使用され得るか、又はそれらと共に使用する為に適合され得る種々のプッシャーワイヤーの実施形態を示す。
図30は、カテーテル送達システム内で本明細書に記載のステントの何れかを操作及び/又は送達する為に使用される第1のハブ3110及び第2のハブ3140を備えたプッシャーワイヤー3100を示す。
図30の実施形態は2つのハブで示されているが、当業者であれば、この実施形態がプッシャーワイヤーの近位端付近の単一のハブでも機能し得ることを理解するであろう。ハブ3110の外径は、マイクロカテーテルの外径と実質的に同様であってもよい。ハブ3110の近位端3110aはプッシャーワイヤー3100の近位端3150に向かってテーパ状になっており、ハブ3140の遠位端3140aはプッシャーワイヤー3100の遠位端3160に向かってテーパ状になっている。或いは、
図36に示されるように、プッシャーワイヤー3700の第1及び第2のハブ3710、3740は夫々、実質的に均一又は一貫した外径又は円周を有していてもよい(例えば、テーパ状でなくてもよい)。
図30に戻ると、インプラントは、インプラント受容セクション3120(
図36ではハブ3710、3740間のインプラント受容セクション3720として示されている)においてハブ3140、3110の間に配置されてもよい。
図30及び
図36に示すように、プッシャーワイヤー3100、3700の遠位端3130、3730は夫々、遠位ハブ3140、3740の遠位端3130、3770を夫々約5cm越えた、先導ワイヤーの軟質又は可撓性セグメントを含んでもよい。インプラントセクション3120は、その上に位置決めされたインプラント(例えば、クリンプステント)の内径とほぼ等しい直径を有する軟質ポリマー(例えば、約25D~約35Dデュロメータのポリマー又はシリコーン)を含んでもよい。インプラントセクション3120は、インプラントに係合し、展開中のインプラントの位置決めの制御を補助するように構成され得る。幾つかの実施形態では、遠位ハブ3140の直径3180は、マイクロカテーテル内に在りステントの下に配置されたクリンプステントの内径と実質的に等しいか類似している。遠位ハブ3140は、放射線不透過性マーカー等の、ステントの遠位端の1つ以上の機構と係合してもよく、ステントがマイクロカテーテル内で張力を受けることを可能にするか、又は展開中にステントを伸張させる。
【0168】
図31~
図32はプッシャーワイヤーの別の実施形態を示す。
図31に示すように、プッシャーワイヤー3200は、近位端3240、遠位端3230、及びマイクロカテーテル送達システム内でステントを押し込む為に使用されるハブ3210を含む。ハブ3210は、マイクロカテーテルの外径とほぼ等しいか、又は同程度であってもよい。
図31~
図32に示すように、ハブ3210は、インプラントの近位端に位置する1つ以上の機構と可逆的に嵌合するように構成された1つ以上の溝又はカットアウト3220を規定している。ハブ3210の機能は、インプラントの展開及び任意にインプラントの延伸又は位置決めを制御するように構成されている。プッシャーワイヤー3200の遠位端3230は、上記のように、ハブ3210の遠位端3250を越えた先導ワイヤーの軟質セグメント又は可撓性セグメントを含み得る。
【0169】
図32及び
図17A~
図17Bは、
図31の実施形態の様々な拡大図と、プッシャーワイヤーとステントとの間の相互作用を示す。
図17A~
図17Bに示すように、又
図12と同様に、ステントの近位端1700は送達システムコネクタ1710(例えば、雄型コネクタ、パドル、ロリポップ等)を含んでもよい。例えば、隣接するストラット1712、1714は、送達システムコネクタ1710に取り付けられる外部クラウン1716で接合され得る。送達システムコネクタ1710は、例えば、送達システムのハブの一部として、展開中にステントの伸長又は延伸を可能にする為の相補的コネクタ1720(
図17Bに示す)に結合されるように構成される。雄型コネクタはステント上に、雌型コネクタは送達システム上に示されているが、当業者であれば、雌型コネクタがステント上に、雄型コネクタが送達システム上にあってもよいことを理解するであろう。(送達システムコネクタ1710の)雄型部分の長さは約1.0mm~約2mm、好ましくは約1.5mmである。
【0170】
図32はステント3310に係合したプッシャーワイヤー3300を示す。プッシャーワイヤー3300はハブ‐ステントインターフェース3330でステント3310に結合されるハブ3320を含む。この実施形態に示すように、ステント3310はハブ3320の雌型コネクタ3350と相補的な近位雄型コネクタ3340を含む。プッシャーワイヤー3300は、ステントの解放及び/又は伸長を制御する為にプッシャーワイヤー3300上に配置されたステント3310の下に配置されるように構成された第2のハブ3360を任意に含んでもよい。プッシャーワイヤー3300の遠位端3370は放射線不透過性であってよく、ポリマージャケット及び/又は親水性コーティングを備えてもよい。プッシャーワイヤー3300の近位端3380は、例えばポリマージャケットを有するニチノール及び/又はステンレス鋼を含む可変剛性コアワイヤーを含み得る。
【0171】
図33は、送達システム内でステントを押し込む為に使用される2つのハブ3410、3440を備えたプッシャーワイヤー3400を示す。幾つかの実施形態では、一方又は両方のハブ3410、3440はマイクロカテーテルの外径とほぼ同じである。インプラントは、インプラントセクション3420においてハブ3410、3440の間に配置されるように構成されている。インプラントセクション3420は、クリンプステントの内径とほぼ同じである軟質ポリマーを含むか、又は軟質ポリマーで形成されてもよい。インプラントセクション3420は、インプラントと係合して、展開中にインプラントの位置を制御し易くするように構成されてもよい。ハブ3410、3440の一方又は両方は、1つ以上の開口3430を規定して、造影剤又は他の注入物が送達中にプッシャーワーヤー3400を通過することを可能にしてもよい。
【0172】
図34は、本明細書の他の箇所に記載されているように、1つ以上のハブ3510(例えば、第2のハブがハブ3510の遠位に配置されてもよい)及びインプラントセクション3520を備えたプッシャーワイヤー3500を示している。しかし、この実施形態では、ハブ3510は、1つ以上の凹部、溝、スリット、又はスロット3530を規定して、造影剤又は他の注入物が送達中にプッシャーワイヤー3500及びインプラントを通過することを可能にする。
【0173】
図37は、
図30の実施形態と類似しているプッシャーワイヤー3800の別の実施形態を示しているが、
図37の実施形態では、ハブ3810、3830の一方又は両方のテーパ状セクション3810a、3830aが、夫々、1つ以上の開口部3820を規定して、造影剤又は他の注入物が送達中にプッシャーワイヤー3800及びインプラントを通過することを可能にしていることだけは別である。本明細書に記載のハブの実施形態の何れもが、造影剤又は他の注入物を通過することを可能にする為に1つ以上の機構を有してもよく、又は1つ以上の開口部又はスリットを規定してもよい。
【0174】
図35は、遠位端セグメント3610を備えたプッシャーワイヤー3600を示す。遠位端セグメント3610は、平坦なリボン先端部、ポリマー先端部、又は無外傷で可撓性の先端部を作る為のコイルを含み得る。幾つかの実施形態では、遠位端セグメント3610は、ステント送達時にプッシャーワイヤー3600を分枝肺動脈内に停留させて管を通るワイヤー位置を維持できるようにする為に、送達時にステントの先端を越えて延在する。プッシャーワイヤー3600の遠位端セグメント3610は又、ニチノール製形状セット拡張要素を有してもよく、この拡張要素はプッシャーワイヤー3600を定位置に固定するのに役立つ。
【0175】
本明細書において、或る特徴又は要素が他の特徴又は要素「上」に在ると称される場合、それは他の特徴又は要素上に直接存在することもあれば、介在する特徴及び/又は要素も存在することがある。対照的に、特徴又は要素が他の特徴又は要素の「直接上に」存在すると称される場合、介在する特徴又は要素は存在しない。又、特徴又は要素が他の特徴又は要素に「接続されている」、「取り付けられている」、又は「結合されている」と称される場合、他の特徴又は要素に直接接続されている、取り付けられている、又は結合されているか、又は介在する特徴又は要素が存在してもよいことが理解されるであろう。対照的に、特徴又は要素が他の特徴又は要素に「直接接続」、「直接取り付け」又は「直接結合」されていると称される場合、介在する特徴又は要素は存在しない。一実施形態に関して説明又は図示したが、このように説明又は図示した特徴及び要素は、他の実施形態にも適用され得る。又、別の特徴に「隣接して」配置される構造又は特徴への言及は、隣接する特徴と重なる部分又は下になる部分を有し得ることも、当業者には理解されよう。
【0176】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する為だけのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。例えば、本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかにそうでないことが示されない限り、複数形も含むことが意図される。更に、本明細書で使用される場合、用語「備える(conprises)」及び/又は「備える(comprising)」は、記載された特徴、ステップ、操作、要素、及び/又は構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、ステップ、操作、要素、構成要素、及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではないことが理解されるであろう。本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、関連する列挙された項目の1つ以上のあらゆる組み合わせを含み、「/」と略記されることがある。
【0177】
「下(under)」、「下(below)」、「下部(lower)」、「上(over)」、「上部(upper)」等の空間的相対用語は、本明細書では、説明を容易にする為に、図に図示されているように、1つの要素又は特徴と別の要素(複数可)又は特徴(複数可)との関係を説明する為に使用され得る。空間的相対用語は、図に描かれている向きに加えて、使用中又は操作中の器具の異なる向きを包含することを意図していることが理解されよう。例えば、図中の器具が反転されている場合、他の要素又は特徴の「下(under)」又は「下(beneath)」と記載された要素は、他の要素又は特徴の「上(over)」に向けられることになる。従って、例示的な用語「下」は、上と下の両方の配向を包含し得る。器具は、他の向き(90度回転又は他の向き)であってもよく、本明細書で使用される空間相対記述は、それに応じて解釈される。同様に、「上向きに」、「下向きに」、「垂直に」、「水平に」等の用語は、特に別段の指示がない限り、本明細書では説明のみを目的として使用される。
【0178】
本明細書において、「第1」及び「第2」という用語は、様々な特徴/要素(ステップを含む)を説明する為に使用されることがあるが、文脈上別段の指示がない限り、これらの特徴/要素はこれらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、或る特徴/要素を別の特徴/要素と区別する為に使用されることがある。従って、本発明の教示から逸脱することなく、後述する第1の特徴/要素は第2の特徴/要素と称され得るものであり、同様に、後述する第2の特徴/要素は第1の特徴/要素と称され得る。
【0179】
本明細書及びその後に続く特許請求の範囲を通じて、文脈上別段必要とされない限り、「備える(comprise)」という語、及び「comprises」や「comprising」のような変形は、様々な構成要素が、方法及び物品(例えば、器具及び方法を含む組成物及び装置)において併せて使用され得ることを意味する。例えば、用語「comprising」は、記載された任意の要素又はステップを含むことを意味するが、任意の他の要素又はステップを排除することを意味しないと理解される。
【0180】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、例において使用される場合を含め、特に明示的に指定されない限り、全ての数値は、その用語が明示的に表示されない場合であっても、「約(about)」又は「ほぼ(approximately)」という語によって前置きされるものとして読まれ得る。「約」又は「ほぼ」という語句は、大きさ及び/又は位置を記述する際に、記述された値及び/又は位置が、値及び/又は位置の合理的な予想範囲内であることを示す為に使用され得る。例えば、数値は、記載値(又は値の範囲)の±0.1%の値、記載値(又は値の範囲)の±1%の値、記載値(又は値の範囲)の±2%の値、記載値(又は値の範囲)の±5%の値、記載値(又は値の範囲)の±10%等の値を有してもよい。又、本明細書で示される数値は、文脈上そうでないことが示されない限り、約その値、又はほぼその値を含むと理解されるべきである。例えば、数値「10」が開示されている場合、「約10」も開示されている。本明細書で言及されるあらゆる数値範囲は、そこに包含される全ての下位範囲を含むことが意図される。又、当業者によって適切に理解されるように、或る値が開示される場合、「その値以下」、「その値以上」、及び値間の可能な範囲も開示されることが理解される。例えば、値「X」が開示されている場合、「X以下」だけでなく、「X以上」(例えば、Xは数値である)も開示される。本出願を通じて、データは多くの異なる形式で提供され、このデータは、終点と始点、及びデータ点の任意の組み合わせの範囲を表すことも理解される。例えば、特定のデータ点「10」と特定のデータ点「15」が開示されている場合、「10」及び「15」を超える、以上、未満、以下又は「10」及び「15」に等しい、並びに「10」と「15」の間も開示されていると見做されるものと理解される。又、2つの特定の単位の間の各単位も開示されているものと理解される。例えば、10と15が開示されている場合、11、12、13、14も開示されている。
【0181】
様々な例示的な実施形態を上記に記載したが、特許請求の範囲によって記載される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態に対して多くの変更の何れを行ってもよい。例えば、様々な記載された方法ステップが実行される順序は、代替の実施形態においてしばしば変更されてもよく、他の代替の実施形態では、1つ以上の方法ステップが完全に省略されてもよい。様々な器具及びシステムの実施形態の任意の特徴は、或る実施形態には含まれ、他の実施形態には含まれないことがある。従って、前述の説明は、主に例示的な目的の為に提供され、特許請求の範囲に規定される本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0182】
本明細書に含まれる例及び図解は、例示であって限定ではなく、主題が実施され得る特定の実施形態を示す。言及したように、本開示の範囲から逸脱することなく、構造的及び論理的な置換及び変更が為され得るように、他の実施形態を利用し、そこから派生させてもよい。本発明主題のこのような実施形態は、本明細書において、単に便宜上、「発明」という用語によって個々に又は集合的に言及されることが有り、又、複数の発明が実際に開示される場合、本願の範囲を任意の単一の発明又は発明概念に自発的に限定する意図はない。このように、本明細書では特定の実施形態を図示し説明したが、同じ目的を達成するように計られた任意の配置を、図示した特定の実施形態と代えてもよい。本開示は、様々な実施形態のあらゆる適応又は変形を網羅することを意図している。上記の実施形態の組み合わせ、及び本明細書で特に説明されていない他の実施形態は、上記の説明を検討すれば当業者には明らかであろう。
【符号の説明】
【0183】
100 大動脈
116 遠位端セクション
118 ステント本体
120、220 動脈管
222 端部セクション
130、230 送達システム
304、702、704 ストラット
306a 末端リング
308a 近位面
308b 遠位面
310 ステント
312 端部セクション
314 本体セクション
318a 末端から2番目のリング
319a 末端から3番目のリング
400 ステント
802 リング
1016 ブリッジ
1018、1108 末端クラウン
1402 クラウン
1404 ブリッジ
1406 末端ストラット
1408a、1408b 末端から2番目のストラット
1502 クラウン
1508b ストラット
1510 内部クラウン
1520 長手軸
1602、1604、1608 リング
1610 ブリッジ
1620 接続領域
1650 長手軸
1804 リング
1820 ブリッジ
1840、1850 ストラット
1860 クラウン
2600 心臓
2610 大動脈
2620 上大静脈
2630 中隔導管
2640 下大静脈
2650 動脈管
2660 左心室
2692 遠位端
2694 本体セクション
2698 右心室
2670 右心房
2680 左心房
2690 ステント送達システム
2700 マイクロカテーテル
2710 遠位端セクション
2720 本体セクション
2730 プッシャーワイヤー
【国際調査報告】