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特表2024-523413ニューロパチーの治療のための併用療法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】ニューロパチーの治療のための併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/18 20060101AFI20240621BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 31/22 20060101ALI20240621BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
A61K38/18
A61P1/00
A61K38/17
A61K31/19
A61K31/22
A61K47/04 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577985
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 CA2022050955
(87)【国際公開番号】W WO2022261765
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】63/202,549
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523473648
【氏名又は名称】トランスフェルト・プラス・リミテッド・パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロドルフ・ソレ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・ピロン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4C076BB29
4C076CC16
4C076DD23
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA03
4C084BA21
4C084BA22
4C084CA28
4C084DB59
4C084MA60
4C084NA05
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZC511
4C084ZC512
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA02
4C206DB03
4C206DB43
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA80
4C206NA05
4C206ZA66
4C206ZC51
(57)【要約】
本出願は、有効用量のグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)ポリペプチド、及び酪酸などの短鎖脂肪酸を含む組み合わせの投与による、ヒルシュスプルング病(HSCR)などの腸のニューロパチー又は腸管神経節細胞僅少症に患っているヒト対象を治療するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腸のニューロパチーを患っているヒト対象を治療するための方法であって、前記対象に、有効量の(i)グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)ポリペプチド、及び(ii)短鎖脂肪酸(SCFA)、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒト対象に投与される前記有効量のGDNFポリペプチドが、仔マウスにおける約5μg~約20μgの用量に相当する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記SCFAが、C-CSCFAである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記SCFAが、酪酸である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記GDNFポリペプチド、及び/又は前記SCFA又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルが、薬学的に許容される担体を更に含む薬学的組成物中に存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記薬学的に許容される担体が、生理食塩水溶液又はゲル化剤を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記GDNFポリペプチド、及び/又は前記SCFA又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルが、浣腸を通して直腸内投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記GDNFポリペプチド、及び/又は前記SCFA又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルが、遠位結腸壁への注射によって投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記GDNFポリペプチド、及び/又は前記SCFA又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルが、1日に1回~最高4回投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記GDNFポリペプチド、及び/又は前記SCFA又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルが、少なくとも2日間連続して投与される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、前記対象における無神経節域又は神経節細胞僅少域の外科的除去の前に実施される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記方法が、前記対象における前記無神経節域又は神経節細胞僅少域の外科的除去の後に実施される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記無神経節域又は神経節細胞僅少域の前記外科的除去が、プルスルー手術を通じたものである、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記腸のニューロパチーが、腸管神経節細胞僅少症である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記腸のニューロパチーが、ヒルシュスプルング病(HSCR)である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記対象が、短域HSCRを患っている、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記HSCRが、コラーゲンVI関連HSCRである、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項22】
前記ヒト対象が、5歳未満である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記ヒト対象が、生後6ヶ月未満である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記GDNFポリペプチド、及び/又は前記SCFA又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルが、直腸及び/又はS字結腸に投与される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記薬学的組成物が、直腸S字領域に投与されるか、又は直腸S字領域への投与のためのものである、請求項29に記載の方法。
【請求項26】
腸のニューロパチーを患っているヒト対象の治療に使用するための組み合わせであって、(i)GDNFポリペプチド、及び(ii)SCFA又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを含む、組み合わせ。
【請求項27】
前記GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項26に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項28】
前記GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項27に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項29】
前記GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項28に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項30】
前記GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211を含む、請求項29に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項31】
使用される組換えGDNFポリペプチドの用量が、仔マウスにおける約5μg~約20μgの用量に相当する、請求項26~30のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項32】
前記SCFAが、C-CSCFAである、請求項26~31のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項33】
前記SCFAが、酪酸である、請求項26~32のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項34】
前記GDNFポリペプチド、及び/又は前記SCFA又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルが、薬学的に許容される担体を更に含む薬学的組成物中に存在する、請求項26~33のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項35】
前記薬学的に許容される担体が、生理食塩水溶液又はゲル化剤を含む、請求項34に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項36】
前記GDNFポリペプチド、及び/又は前記SCFA又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルが、浣腸を通した直腸投与のためのものである、請求項26~35のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項37】
前記GDNFポリペプチド、及び/又は前記SCFA又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルが、遠位結腸壁への注射による投与のためのものである、請求項26~35のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項38】
前記GDNFポリペプチド、及び/又は前記SCFA又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルが、1日に1回~最高4回の投与のためのものである、請求項26~37のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項39】
前記GDNFポリペプチド、及び/又は前記SCFA又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルが、少なくとも2日間連続した投与のためのものである、請求項26~38のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項40】
前記組み合わせが、前記対象における前記無神経節域又は神経節細胞僅少域の外科的除去の前に使用するためのものである、請求項26~39のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項41】
前記組み合わせが、前記対象における前記無神経節域又は神経節細胞僅少域の外科的除去の後に使用するためのものである、請求項26~40のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項42】
前記無神経節域又は神経節細胞僅少域の前記外科的除去が、プルスルー手術を通じたものである、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項43】
前記腸のニューロパチーが、腸管神経節細胞僅少症である、請求項26~42のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項44】
前記腸のニューロパチーが、ヒルシュスプルング病(HSCR)である、請求項26~42のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項45】
前記対象が、短域HSCRを患っている、請求項44に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項46】
前記HSCRが、コラーゲンVI関連HSCRである、請求項44又は45に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項47】
前記ヒト対象が、5歳未満である、請求項26~46のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項48】
前記ヒト対象が、生後6ヶ月未満である、請求項47に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項49】
前記GDNFポリペプチド、及び/又は前記SCFA又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルが、直腸及び/又はS字結腸への投与のためのものである、請求項26~48のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項50】
前記GDNFポリペプチド及び/又は前記SCFAが、直腸S字領域への投与のためのものである、請求項49に記載の使用のための組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2021年6月16日に出願された米国仮出願第63/202,549号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、概して、ヒルシュスプルング病(HSCR)及び腸管神経節細胞僅少症などの腸のニューロパチーの治療に関する。
【背景技術】
【0003】
腸の神経系(ENS)は、胃腸管全体に沿って延在し、感覚刺激に応答して腸の運動性、血流、及び上皮活動を制御する(1)。ニューロン及びグリアを含有する相互接続された腸の神経節は、出生前の発達の間に腸管を通って移動する神経堤由来前駆体から発達する。ENS前駆体による遠位結腸の不完全なコロニー形成は、5000人の新生児の1人に影響を及ぼす状態であるヒルシュスプルング病(HSCR)を引き起こす(2、3)。HSCRでは、ニューロンの神経節のない遠位結腸(すなわち、無神経節結腸)は緊張収縮したままであり、収縮を伝播せず、機能性腸管閉塞を引き起こす。HSCRの症状としては、便及び空気の滞留を伴う難治性便秘、腹部膨満、成長不全、時折の嘔吐、腸の炎症(腸炎)、並びに敗血症及び早期死亡を引き起こす血液中への細菌の移行のリスクが挙げられる(2)。
【0004】
HSCRは、臨床的に、短域型(S-HSCR)及び長域型(L-HSCR)に細分される(4)。症例のうちの>80%で発生するS-HSCRは、直腸及びS字結腸にENSが存在しないことを意味する。L-HSCRは、遠位腸のより長い領域が無神経節であることを意味する。HSCRの病因は、未だに完全には理解されておらず、多くの遺伝子が、HSCRリスクに影響を与える(2)。更に、遺伝子的にリスクのあるバリアントは、非遺伝的要因と組み合わさって、ENS前駆体による完全な腸内コロニー形成を阻害し得る(5)。正常なENS発達には多くのタンパク質が一緒に機能する必要があるので、この非メンデル遺伝が発生する。
【0005】
1948年以降、HSCRを有するほとんどの小児は、遠位無神経節腸の外科的除去によって命を救われている(16、17)。しかしながら、この手順は、理想とはかけ離れている。手術後の合併症は一般的であり、また長期間続く場合もあり、生存率(例えば、腸炎)及び/又は生活の質(例えば、便失禁又は閉塞症状)に影響を与える(18~20)。1つの有望なアプローチは、ENSを再構築し、手術の必要性を低減する「再生医療」であろう。このアイデアは、多くのグループが細胞移植に基づくHSCR療法を開発するきっかけとなった(21)。しかしながら、多くの有望な結果にもかかわらず、いくつかの困難が依然として存在する(22)。幹細胞の最適な供給源、移植前の理想的な増幅及び/又は分化戦略、細胞送達の方法、並びに移植後の細胞機能及び最終結果は、未だ十分に定義されていない。加えて、非自律的な細胞移植は、免疫抑制を必要とし得る。
【0006】
腸管神経節細胞僅少症としても知られる神経節細胞僅少症は、腸管壁の神経の数の低減を引き起こす障害である。腸管神経節細胞僅少症は、HSCRによく似ている場合があり、両方の状態を有する患者は、慢性便秘、腸管閉塞、及び腸炎(腸管の炎症)を提示し得る。また、神経節細胞僅少症の患者は、フェカローマ(結腸内での便の硬化)、腸管の出血又は穿孔、及び結腸の膨張から生じる呼吸障害を含む、重度の合併症を患っている場合がある。神経節細胞僅少症の正確な原因は、多くの場合、分かっていない。場合によっては、出生の時点で存在する要因(先天的)に起因するが、他の場合は、後天的な状態であると考えられる。単独の神経節細胞僅少症の管理は、概して、影響を受けている腸域を除去するための手術を含む。
【0007】
したがって、HSCR及び腸管神経節細胞僅少症などの腸のニューロパチーの代替治療、遠位結腸における神経新生を誘発し、とりわけ、HSCR及び腸管神経節細胞僅少症患者における遠位結腸の運動性を回復させることを目的とした治療に対する必要性が明らかに存在する。
【0008】
本記載は、いくつかの文献を参照し、それらの内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、ヒルシュスプルング病などの腸のニューロパチーの1つ以上の病理学的特徴の治療のためのGDNF及び短鎖脂肪酸の使用に関する。
【0010】
態様及び実施形態では、本開示は、以下の条項1~50に関する:
1.腸のニューロパチーを患っているヒト対象を治療するための方法であって、対象に、有効量の(i)グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)ポリペプチド、及び(ii)短鎖脂肪酸(SCFA)、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを投与することを含む、方法。
2.GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、条項1に記載の方法(図3A)。
3.GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、条項2に記載の方法(図3A)。
4.GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、条項3に記載の方法(図3A)。
5.GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211を含む、条項4に記載の方法(図3A)。
6.ヒト対象に投与される有効量のGDNFポリペプチドが、仔マウスにおける約5μg~約20μgの用量に相当する、条項1~5のいずれか1つに記載の方法。
7.SCFAが、C3-C5 SCFAである、条項1~6のいずれか1つに記載の方法。
8.SCFAが、酪酸である、条項1~7のいずれか1つに記載の方法。
9.GDNFポリペプチド及び/又はSCFAが、薬学的に許容される担体を更に含む薬学的組成物中に存在する、条項1~8のいずれか1つに記載の方法。
10.薬学的に許容される担体が、生理食塩水溶液又はゲル化剤を含む、条項9に記載の方法。
11.GDNFポリペプチド及び/又はSCFAが、浣腸を通して直腸内投与される、条項1~10のいずれか1つに記載の方法。
12.GDNFポリペプチド及び/又はSCFAが、遠位結腸壁への注射によって投与される、条項1~10のいずれか1つに記載の方法。
13.GDNFポリペプチド及び/又はSCFAが、1日に1回~最高4回投与される、条項1~12のいずれか1つに記載の方法。
14.GDNFポリペプチド及び/又はSCFAが、少なくとも2日間連続して投与される、条項1~13のいずれか1つに記載の方法。
15.方法が、対象における無神経節域又は神経節細胞僅少域の外科的除去の前に実施される、条項1~14のいずれか1つに記載の方法。
16.方法が、対象における無神経節域又は神経節細胞僅少域の外科的除去の後に実施される、条項1~15のいずれか1つに記載の方法。
17.無神経節域又は神経節細胞僅少域の外科的除去が、プルスルー手術を通じたものである、条項15又は16に記載の方法。
18.腸のニューロパチーが、腸管神経節細胞僅少症である、条項1~17のいずれか1つに記載の方法。
19.腸のニューロパチーが、ヒルシュスプルング病(HSCR)である、条項1~17のいずれか1つに記載の方法。
20.対象が、短域HSCRを患っている、条項19に記載の方法。
21.HSCRが、コラーゲンVI関連HSCRである、条項16又は17に記載の方法。
22.ヒト対象が、5歳未満である、条項1~21のいずれか1つに記載の方法。
23.ヒト対象が、生後6ヶ月未満である、条項22に記載の方法。
24.GDNFポリペプチド及び/又はSCFAが、直腸及び/又はS字結腸に投与される、条項1~23のいずれか1つに記載の方法。
25.薬学的組成物が、直腸S字領域に投与されるか、又は直腸S字領域への投与のためのものである、条項29に記載の方法。
26.腸のニューロパチーを患っているヒト対象の治療に使用するための組み合わせであって、(i)GDNFポリペプチド、及び(ii)SCFA、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを含む、組み合わせ。
27.GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、条項26に記載の使用のための組み合わせ(図3A)。
28.GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、条項27に記載の使用のための組み合わせ(図3A)。
29.GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、条項28に記載の使用のための組み合わせ(図3A)。
30.GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211を含む、条項29に記載の使用のための組み合わせ(図3A)。
31.使用される組換えGDNFポリペプチドの用量が、仔マウスにおける約5μg~約20μgの用量に相当する、条項26~30のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ。
32.SCFAが、C3-C5 SCFAである、条項26~31のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ。
33.SCFAが、酪酸である、条項26~32のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ。
34.GDNFポリペプチド及び/又はSCFAが、薬学的に許容される担体を更に含む薬学的組成物中に存在する、条項26~33のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ。
35.薬学的に許容される担体が、生理食塩水溶液又はゲル化剤を含む、条項34に記載の使用のための組み合わせ。
36.GDNFポリペプチド及び/又はSCFAが、浣腸を通して直腸内投与される、条項26~35のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ。
37.GDNFポリペプチド及び/又はSCFAが、遠位結腸壁への注射によって投与される、条項26~35のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ。
38.GDNFポリペプチド及び/又はSCFAが、1日に1回~最高4回投与される、条項26~37のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ。
39.GDNFポリペプチド及び/又はSCFAが、少なくとも2日間連続して投与される、条項26~38のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ。
40.組み合わせが、対象における無神経節域又は神経節細胞僅少域の外科的除去の前に使用するためのものである、条項26~39のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ。
41.組み合わせが、対象における無神経節域又は神経節細胞僅少域の外科的除去の後に使用するためのものである、条項26~40のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ。
42.無神経節域又は神経節細胞僅少域の外科的除去が、プルスルー手術を通じたものである、条項40又は41に記載の方法。
43.腸のニューロパチーが、腸管神経節細胞僅少症である、条項26~42のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ。
44.腸のニューロパチーが、ヒルシュスプルング病(HSCR)である、条項26~42のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ。
45.対象が、短域HSCRを患っている、条項44に記載の使用のための組み合わせ。
46.HSCRが、コラーゲンVI関連HSCRである、条項44又は45に記載の使用のための組み合わせ。
47.ヒト対象が、5歳未満である、条項26~46のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ。
48.ヒト対象が、生後6ヶ月未満である、条項47に記載の使用のための組み合わせ。
49.GDNFポリペプチド及び/又はSCFAが、直腸及び/又はS字結腸への投与のためのものである、条項26~48のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ。
50.GDNFポリペプチド及び/又はSCFAが、直腸S字領域への投与のためのものである、条項49に記載の使用のための組み合わせ。
【0011】
本発明の他の目的、利点、及び特徴は、添付の図面を参照してのみ例として与えられる、以下の特定の実施形態の非限定的な記載の閲読の際に、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付図面において、
図1A】ビヒクル、ブチレート(5mM)、GDNF(1μg/μl)、及びブチレート+GDNFの組み合わせの投与後のホモ接合ホルスタインTg/Tgマウスの生存を示すグラフである。
図1B図1Aに示される生存アッセイの統計分析を示す。
図1C図1Aに示す特定の時点当たりの生存率を示す。
図2A】GDNFを単独で、又は様々な神経栄養因子と組み合わせて投与した後のホモ接合ホルスタインTg/Tgマウスの生存を示すグラフである。
図2B図2Aに示される特定の時点当たりの生存率を示す。
図2C図2Aに示される生存アッセイの統計分析を示す。
図3A】ヒトGDNFアイソフォーム1のアミノ酸配列(UniProtKB受託番号P39905、配列番号1)を示し、シグナルペプチドに対応する配列(残基1~19)は下線が引かれ、プロペプチドに対応する配列(残基20~75)はイタリック体で、成熟ポリペプチドに対応する配列(残基78~211)は太字で示す。
図3B】ヒトGDNFアイソフォーム1をコードするcDNAのヌクレオチド配列(RefSeq受託番号NM_000514.4、配列番号2)を示し、シグナルペプチドをコードする配列(ヌクレオチド562~618)は下線が引かれ、プロペプチドをコードする配列(ヌクレオチド619~786)はイタリック体で、成熟ポリペプチドをコードする配列(ヌクレオチド793~1194)は太字で示す。
図3C】ヒトGDNFアイソフォーム1をコードするcDNAのヌクレオチド配列(RefSeq受託番号NM_000514.4、配列番号2)を示し、シグナルペプチドをコードする配列(ヌクレオチド562~618)は下線が引かれ、プロペプチドをコードする配列(ヌクレオチド619~786)はイタリック体で、成熟ポリペプチドをコードする配列(ヌクレオチド793~1194)は太字で示す。
【0013】
発明の開示
技術を説明する文脈において(特に、以下の特許請求の範囲の文脈において)、「a」及び「an」及び「the」という用語、並びに同様の指示対象の使用は、本明細書において別段示されないか、又は文脈に明らか矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を網羅するように解釈されるものである。
【0014】
「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」、及び「含有する」という用語は、別段注釈が付かない限り、オープンエンド用語(すなわち、「含むが、それに限定されない」を意味する)として解釈されるものである。
【0015】
本明細書に記載される全ての方法は、本明細書中で別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施され得る。
【0016】
本明細書に提供される任意の及び全ての実施例、又は例示的な言語(「例えば」、「など」)の使用は、単に特許請求される技術の実施形態をより良好に例示することを意図しており、別段特許請求されない限り、範囲の限定を提起するものではない。
【0017】
本明細書におけるいかなる言語も、任意の特許請求されていない要素を特許請求される技術の実施形態の実施に不可欠であることを示すものとして解釈されるべきではない。
【0018】
本明細書では、「約」という用語は、その通常の意味を有する。「約」という用語は、値が、値を判定するために用いられるデバイス若しくは方法の誤差についての固有の変動を含むか、又は列挙された値に近い値、例えば、列挙された値(又は値の範囲)の10%以内の値を包含することを示すために使用される。
【0019】
本明細書における値の範囲の言及は、本明細書中に別段の指示がない限り、単に、範囲に含まれる各個別の値を個々に参照する簡略方法として機能することを意図しており、各個別の値は本明細書に個別に言及されているかのように、本明細書に組み入れられる。範囲内の値の全てのサブセットもまた、本明細書に個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0020】
開示の特徴又は態様が、マーカッシュ群又は代替物の一覧の観点から説明される場合、当業者は、開示がまた、それによってマーカッシュ群又は代替物の一覧の任意の個々の構成要素又は構成要素の部分群の観点からも説明されることを認識するであろう。
【0021】
別段具体的に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解される意味(例えば、幹細胞生物学、細胞培養、分子遺伝学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、及び生化学における)と同じ意味を有すると解釈されるべきである。
【0022】
別段示されない限り、本開示において利用される組換えタンパク質、細胞培養、及び免疫学的技法は、当業者に周知の標準的な手順である。そのような技術は、J.Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning,John Wiley and Sons(1984),J.Sambrook et al.,Molecular Cloning、A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory Press(1989),T.A.Brown(editor),Essential Molecular Biology、A Practical Approach,Volumes 1 and 2,IRL Press(1991),D.M.Glover and B.D.Hames(editors),DNA Cloning、A Practical Approach,Volumes 1-4,IRL Press(1995 and 1996)、及びF.M.Ausubel et al.(editors),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience(1988,現在に至るまでの全ての改訂版を含む)、Ed Harlow and David Lane(editors)Antibodies、A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory,(1988)、及びJ.E.Coligan et al.(editors)Current Protocols in Immunology,John Wiley&Sons(現在に至るまでの全ての改訂版を含む)などの情報源における文献全体を通じて記載及び説明されている。
【0023】
腸のニューロパチー(例えば、ヒルシュスプルング病(HSCR))のマウスモデルを使用した本明細書に記載の研究において、本発明者らは、遠位結腸における短鎖脂肪酸(SCFA)ブチレートと組み合わせた組換えGDNFの投与が生存を有意に改善することを示す。ブチレート単独では生存にいかなる効果も示さなかったが、組換えGDNFの効果を有意に増強することが示された。これらの結果は、短鎖脂肪酸と組み合わせた組換えGDNFの投与が、腸のニューロパチー(例えば、HSCRなどのENS欠損)の治療、すなわち、ヒト患者における腸のニューロパチー及び/又は生存の病理学的特徴のうちの1つ以上の改善のために使用することができる証拠を提供する。
【0024】
したがって、第1の態様では、本開示は、腸のニューロパチー(例えば、ヒルシュスプルング病(HSCR)又は腸管神経節細胞僅少症)を患っているヒト対象を治療するための方法であって、対象に、有効量の(i)グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)及び(ii)短鎖脂肪酸(SCFA)、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを投与することを含む、方法を提供する。本開示はまた、腸のニューロパチー(例えば、ヒルシュスプルング病(HSCR)又は腸管神経節細胞僅少症)を患っているヒト対象を治療するための、(i)GDNF及び(ii)SCFA、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルの使用も提供する。本開示はまた、腸のニューロパチー(例えば、ヒルシュスプルング病(HSCR)又は腸管神経節細胞僅少症)を患っているヒト対象を治療するための薬剤の製造のための、(i)GDNF及び(ii)SCFA、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルの使用も提供する。本開示はまた、腸のニューロパチー(例えば、ヒルシュスプルング病(HSCR)又は腸管神経節細胞僅少症)を患っているヒト対象の治療に使用するための組み合わせであって、(i)GDNF及び(ii)SCFA、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを含む、組み合わせも提供する。
【0025】
本開示はまた、腸のニューロパチー(例えば、HSCR又は腸管神経節細胞僅少症)を患っているヒト対象における遠位結腸運動性及び/又は上皮バリアを回復させるための方法であって、有効量の(i)グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)及び(ii)短鎖脂肪酸(SCFA)、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを投与することを含む、方法も提供する。本開示はまた、腸のニューロパチー(例えば、HSCR又は腸管神経節細胞僅少症)を患っているヒト対象における遠位結腸運動性を回復させるための、有効量の(i)GDNF、及び(ii)短鎖脂肪酸(SCFA)、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルの使用も提供する。本開示はまた、腸のニューロパチー(例えば、HSCR又は腸管神経節細胞僅少症)を患っているヒト対象における遠位結腸運動性を回復させるための薬剤の製造のための、有効量の(i)GDNF、及び(ii)短鎖脂肪酸(SCFA)、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルの使用も提供する。本開示はまた、腸のニューロパチー(例えば、HSCR又は腸管神経節細胞僅少症)に患っているヒト対象における遠位結腸運動の回復に使用するための組み合わせであって、(i)GDNF及び(ii)SCFA、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを含む、組み合わせも提供する。
【0026】
本開示はまた、腸のニューロパチー(例えば、HSCR又は腸管神経節細胞僅少症)を患っているヒト対象の遠位結腸の無神経節域又は神経節細胞僅少域において腸の神経新生を誘発するための方法であって、有効量の(i)GDNF、及び(ii)短鎖脂肪酸(SCFA)、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを投与することを含む、方法も提供する。本開示はまた、腸のニューロパチー(例えば、HSCR又は腸管神経節細胞僅少症)を患っているヒト対象の遠位結腸の無神経節域又は神経節細胞僅少域において腸の神経新生を誘発するための、(i)GDNF、及び(ii)短鎖脂肪酸(SCFA)、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルの使用であって、組成物が、対象の遠位結腸への投与のためのものである、使用も提供する。本開示はまた、腸のニューロパチー(例えば、HSCR又は腸管神経節細胞僅少症)に患っているヒト対象の遠位結腸の無神経節域又は神経節細胞僅少域における腸の神経新生を誘発するための薬剤の製造のための、(i)GDNF、及び(ii)短鎖脂肪酸(SCFA)、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルの使用も提供する。本開示はまた、腸のニューロパチー(例えば、HSCR又は腸管神経節細胞僅少症)を患っているヒト対象の遠位結腸の無神経節域又は神経節細胞僅少域における腸の神経新生を誘発するのに使用するための組み合わせであって、(i)GDNF及び(ii)SCFA、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを含む、組み合わせも提供する。
【0027】
本明細書で使用される「短鎖脂肪酸」(SCFA)という用語は、酢酸(C2)、プロピオン酸(C3)、酪酸及びイソ酪酸(C4)、並びにバレリン酸、イソバレリン酸及び2-メチルブタン酸(C5)を含む、2~5個の炭素原子の脂肪酸を指す。薬学的に許容されるアセテート、プロピオネート、ブチレート、イソブチレート、バリレート、イソバリレート、及び2-メチルブタノエートなどのSCFAの薬学的に許容される塩も、本明細書に記載の方法及び使用において投与/使用され得る。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、遊離酸の生物学的有効性及び特性を保持する塩であって、生物学的に、又は他の方法で望ましくないものではない塩を意味するよう意図されている。これらの塩は、無機塩基又は有機塩基を有機酸に添加することに由来する。そのような塩には、ナトリウム、リチウム、及びカリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム及びマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、及びコバルト塩などの金属塩;トリメチルアンモニウム塩などのアンモニウム又は置換アンモニウム塩などの無機アミン塩;並びにクロロプロカイン塩、ジベンジルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン、ジエタノールアミン塩、エチルアミン塩(ジエチルアミン塩及びトリエチルアミン塩を含む)、エチレンジアミン塩、グルコサミン塩、グアニジン塩、メチルアミン塩(ジメチルアミン塩及びトリメチルアミン塩を含む)、モルホリン塩、モルホリン塩、N,N’-ジベンジルエンジルアミン塩、N-ベンジル-フェニルエチルアミン塩、N-メチルグルカミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、ピペラジン塩、ピペリジン塩、プロカイン塩、t-ブチルアミン塩、テトラメチルアンモニウム塩、t-オクチルアミン塩、トリス-(2-ヒドロキシエチル)アミン塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩、並びにL-オルニチン塩、L-アルギニン塩、及びL-リジンなどのアミノ酸塩などの有機塩基を有する塩が含まれる。そのような塩は、当業者であれば標準的な技術を使って極めて容易に形成することができる。実際、医薬化合物(すなわち、薬物)を塩に化学修飾することは、医薬化学者に周知の技術である(例えば、H.Ansel et.al.,Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(6th Ed.1995)at pp.196 and 1456-1457を参照されたい)。SCFAの塩は、例えば、SCFAを等量などの酸又は塩基と、塩が沈殿するような媒体中又は水性媒体中で反応させてから凍結乾燥することによって形成することができる。
【0028】
一実施形態では、SCFAの薬学的に許容される塩は、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、又はマグネシウム塩などの金属塩である。更なる実施形態では、SCFAの薬学的に許容される塩は、ナトリウム塩である。
【0029】
SCFAのエステルも、本開示の方法及び使用において投与/使用され得る。SCFAエステルの例は、SCFA(3つの分子)及びグリセロールから構成されるSCFAのトリグリセリドである。SCFAのトリグリセリドは、インビボで代謝されて、3つのSCFA分子を放出し、したがって、SCFAのプロドラッグとみなされる。SCFAのトリグリセリドの例には、トリアセチン、トリプロピオニン、トリブチリン、トリイソブチリン、トリバレリン、及びトリイソバレリンが含まれる。
【0030】
本明細書で使用される「腸のニューロパチー」という用語は、ENSの異常発達、例えば、ニューロンの数の異常(神経節細胞僅少症、無神経節症)、及び/又はニューロンの分化異常を含む、ENSにおける異常に関連する疾患を指す。腸のニューロパチーの例としては、HSCR及び腸管神経節細胞僅少症などの腸の神経節細胞異常が挙げられる。一実施形態では、腸のニューロパチーは、HSCRである。別の実施形態では、腸のニューロパチーは、腸管神経節細胞僅少症である。
【0031】
本明細書で使用される「腸の神経新生を誘発する」という表現は、ヒトGDNFポリペプチドを含む組成物での治療前と比較した、腸のニューロン及び/又は腸のグリア細胞の産生の増加を指す。腸の神経系は、腸の一次求心性ニューロン(enteric primary afferent neuron)(EPAN)、興奮性輪走筋運動ニューロン、阻害性輪走筋運動ニューロン、縦走筋運動ニューロン、上行性介在ニューロン、下行性介在ニューロン、分泌運動及び血管運動ニューロン、並びに腸管遠心性(intestinofugal)ニューロンを含む様々なタイプのニューロン、並びにニューロンに構造的支持を提供し、ニューロンの維持、生存、及び機能に寄与する腸のグリア細胞(EGC)を含む(Costa et al.,Gut 2000;(Suppl IV)47:iv15-iv19、De Giorgio et al.,American Journal of Physiology-Gastrointestinal and Liver Physiology,Vol.303,No.8:G887-G893,2012)。これらの細胞タイプのうちの1つ以上の産生は、本明細書に記載の組成物の投与/使用によって誘発され得る。
【0032】
別の実施形態では、本明細書に記載の組成物の投与/使用は、結腸(例えば、遠位結腸)における炎症細胞又は免疫細胞(例えば、好中球)の浸潤を低減する。別の実施形態では、本明細書に記載の組成物の投与/使用は、結腸(例えば、遠位結腸)における免疫細胞の割合を(部分的に又は完全に)回復させる。別の実施形態では、本明細書に記載の組み合わせの投与/使用は、上皮不透過性を回復させる。
【0033】
本明細書で使用される「ヒトGDNFポリペプチド」という用語は、天然成熟ヒトGDNFタンパク質、又は天然成熟ヒトGDNFタンパク質の生物学的活性、例えば、GDNF受容体(特に、「トランスフェクション中に再配列した」(RET)プロトがん遺伝子及び/又はニューロン細胞接着分子(NCAM)受容体)に結合し、GDNF受容体(例えば、RET及び/若しくはNCAM)を発現する細胞においてシグナルを引き起こす能力を保持する、機能的バリアント若しくはその断片を指す。天然ヒトGDNFタンパク質のアミノ酸配列(アイソフォーム1、カノニカル配列)は、図3A(配列番号1)に示され、成熟タンパク質(残基78~211)に対応する配列は太字で強調表示されている。GDNF前駆体タンパク質は、ホモ二量体として存在する成熟分泌型へと処理される。各GDNFモノマーは、鎖間ジスルフィド架橋に使用されるCys-101、及びシステイン-ノット構成として知られる分子間環形成に関与する他のものを含む、7つの保存的システイン残基を含有する。
【0034】
一実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドは、組換えヒトGDNFポリペプチドである。タンパク質又はポリペプチドに言及する場合、「組換え」という用語は、天然源(例えば、生物学的試料)から単離されていない、例えば、分子生物学的技法の手段によって作製される組換え核酸構築物から発現する、タンパク質又はポリペプチド分子を指す。したがって、核酸構築物を「組換え」と称することは、核酸分子が遺伝子工学を使用して、すなわちヒト介入によって操作されていることを示す。組換え核酸構築物は、例えば、形質転換(例えば、形質導入又はトランスフェクション)によって宿主細胞に導入され得る。
【0035】
天然成熟ヒトGDNFタンパク質の機能的バリアント又は断片は、天然成熟ヒトGDNFタンパク質と比較して1つ以上のアミノ酸置換、欠失、及び/又は付加を含み得、天然成熟ヒトGDNFタンパク質のものよりも低いか、同等であるか、又は高い生物学的活性を有し得る。一実施形態では、機能的バリアント又は断片は、天然成熟ヒトGDNFタンパク質のものと同等である(例えば、90%~110%)か、又はより高い(例えば、110%超)活性を有する。一実施形態では、バリアントは、1つ以上の保存的置換を含む。保存的アミノ酸置換は、当該技術分野において既知であり、ある特定の物理的及び/又は化学的特性を有する1つのアミノ酸が、同じ化学的又は物理的特性を有する別のアミノ酸と交換される、アミノ酸置換を含む。例えば、保存的アミノ酸置換は、別の酸性アミノ酸に置換された酸性アミノ酸(例えば、Asp-Glu又はその逆)、非極性側鎖を有する別のアミノ酸に置換された非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、Ala、Gly、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Valなど)、別の塩基性アミノ酸に置換された塩基性アミノ酸(Lys、Argなど)、極性側鎖を有する別のアミノ酸に置換された極性側鎖を有するアミノ酸(Asn、Cys、Gln、Ser、Thr、Tyrなど)であり得る。別の実施形態では、バリアントは、少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換を有する、天然GDNFタンパク質又はポリペプチドのアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、非保存的アミノ酸置換は、天然成熟ヒトGDNFタンパク質のものと比較して、バリアントの活性を向上する。一実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドは、RET受容体に結合する能力を有する。一実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドは、NCAM受容体に結合する能力を有する。一実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドは、GDNFファミリー共受容体アルファ(GFRアルファ)1~3に結合する能力を有する。
【0036】
一実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドは、成熟ヒト天然GDNFタンパク質からの少なくとも10、15、又は20個のアミノ酸(例えば、連続アミノ酸)を含む。一実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドは、配列番号1の残基153~167に対応し、NCAM受容体へのヒトGDNFの推定される結合ドメインである、配列ETTYDKILKNLSRNR(グリアフィン(gliafin))を含む(Nielsen et al.,J Neurosci.2009 Sep 9;29(36):11360-11376を参照されたい)。他の実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドは、配列番号1の残渣153~167を含む、成熟ヒト天然GDNFタンパク質からの少なくとも25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、又は100個のアミノ酸(例えば、連続アミノ酸)を含む。
【0037】
一実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドは、図3Aに示される配列(配列番号1)の残基78~211と少なくとも50%、60%、又は70%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドは、図3Aに示される配列(配列番号1)の残基78~211と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドは、図3Aに示される配列(配列番号1)の残基78~211と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドは、図3Aに示される配列(配列番号1)の残基78~211と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドは、図3Aに示される配列(配列番号1)の残基78~211と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドは、図3Aに示される配列(配列番号1)の残基78~211と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドは、図3Aに示される配列(配列番号1)の残基78~211と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドは、図3Aに示される配列(配列番号1)の残基78~211を含むか、又はそれらからなる。「同一性」は、2つのポリペプチド間の配列同一性を指す。同一性は、整列させた配列における各位置を比較することによって決定することができる。同一性パーセントを決定する方法は、当該技術分野において既知であり、アミノ酸配列を整列させ、EMBOSS Needle、ClustalW、SIM、DIALIGNなどを含む同一性のパーセントを決定するためのいくつかのツール及びプログラムが利用可能である。本明細書で使用される場合、特定の対象配列又はその特定の部分に関する同一性の所与のパーセンテージは、Smith Watermanアルゴリズム(Smith&Waterman,J.Mol.Biol.147:195-7(1981))によって、類似性測定値としてBLOSUM置換マトリックス(Henikoff&Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915-9(1992))を使用して生成される最大パーセンテージ配列同一性を達成するために必要であれば、配列を整列させ、ギャップを導入した後、対象配列(又はその特定の部分)におけるアミノ酸と同一の候補誘発体配列におけるアミノ酸のパーセンテージとして定義され得る。「同一性値%」は、一致する同一のアミノ酸の数を、同一性パーセントが報告される配列長によって除算することによって決定される。
【0038】
ヒトGDNFポリペプチドの共有結合修飾は、本開示の範囲内に含まれる。例えば、ヒトGDNFポリペプチドの天然グリコシル化パターンは、修飾され得(Beck et al.,Curr.Pharm.Biotechnol.9:482-501,2008;Walsh,Drug Discov.Today 15:773-780,2010)、米国特許第4,640,835号、同第4,496,689号、同第4,301,144号、同第4,670,417号、同第4,791,192号、又は同第4,179,337号に記載の様式で、ヒトGDNFポリペプチドを、多様な非タンパク質性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレンのうちの1つに連結し得る。ヒトGDNFポリペプチドは、プロテアーゼ耐性、血漿タンパク質結合、血漿半減期の増加、組織若しくは細胞内への透過などの、ポリペプチドに追加の生物学的特性を付与する1つ以上の修飾を含み得る。そのような修飾としては、例えば、脂肪酸(例えばC-C18)などのポリペプチドへの分子/部分の共有結合、アルブミンなどのタンパク質の結合(例えば、米国特許第7,268,113号を参照されたい)、糖/多糖(グリコシル化)、ビオチン化又はPEG化(例えば、米国特許第7,256,258号及び同第6,528,485号を参照されたい)が挙げられる。
【0039】
ヒトGDNFポリペプチドはまた、例えば、ヒトGDNFポリペプチドをオリゴマー化ドメイン又はオリゴマー化され得る分子(例えば、ストレプトアビジン上の4つの結合部位に結合し得るビオチン)に融合することによって、その多量体化又はオリゴマー化(例えば、四量体化)を誘発するための部分にコンジュゲートされ得る。ヒトGDNFポリペプチドはまた、例えば、遠位結腸からの細胞上に存在するマーカーに結合する抗体、抗体断片、又はリガンドを使用して、GDNFポリペプチドを遠位結腸又は遠位結腸の特定の細胞(例えば、シュワン細胞及び/又はその前駆体、腸のグリア細胞、周皮細胞)に標的化するであろう部分にコンジュゲートされ得る。
【0040】
ヒトGDNFポリペプチドはまた、1つ以上の治療剤又は活性剤(例えば、薬物、又は融合ポリペプチドを形成するための別のポリペプチド)にコンジュゲートされ得る。Hunter et al.(1962)Nature,144:945、David et al.(1974)Biochemistry,13:1014、Pain et al.(1981)J.Immunol.Meth.,40:219、Nygren,J.Histochem.and Cytochem.,30:407(1982)、及びHermanson,Bioconjugate Techniques 1996,Academic Press,Inc.,San Diegoによって記載されているそれらの方法を含む、ヒトGDNFポリペプチドを別の部分(例えば、活性剤)にコンジュゲートするための当該技術分野において既知の任意の方法が用いられ得る。ヒトGDNFポリペプチドは、直接的に又はリンカーを介して別の部分にコンジュゲートされ得る。
【0041】
一実施形態では、GDNFポリペプチド及び/又はSCFA(又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル)は、薬学的組成物に製剤化される。GDNFポリペプチド及びSCFA(又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル)は、同じ薬学的組成物又は異なる薬学的組成物に製剤化され得る。一実施形態では、GDNFポリペプチド及びSCFA(又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル)は、異なる薬学的組成物に製剤化される。一実施形態では、GDNFポリペプチド及びSCFA(又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル)は、同じ薬学的組成物に製剤化される。そのような薬学的組成物は、典型的には、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0042】
本明細書で使用する「賦形剤」という用語は、当該技術分野における通常の意味を有し、有効成分(薬物)自体ではない任意の成分である。賦形剤には、例えば緩衝剤、結合剤、潤滑剤、希釈剤、充填剤、増粘剤、崩壊剤、可塑剤、コーティング剤、バリア層製剤、安定化剤、放出遅延剤、及びその他の成分が含まれる。本明細書で使用する「薬学的に許容される賦形剤」とは、有効成分の生物学的活性の有効性を妨げず、対象に対して毒性がない賦形剤、すなわち、賦形剤の一種であり、及び/又は対象に対して毒性がない量で使用するための任意の賦形剤を指す。賦形剤は当該技術分野において周知であり、本組成物はこれらの点で限定されるものではない。担体/賦形剤は、例えば、静脈内、非経口、皮下、筋肉内、頭蓋内、眼窩内、眼科的、脳室内、嚢内、脊髄内、髄腔内、硬膜外、嚢胞内、腹膜内、鼻内、直腸、又は肺(例えば、エアゾール)投与に好適であり得る。治療用組成物は、所望の純度を有する有効成分を、1つ以上の任意の薬学的に許容される担体、賦形剤、及び/又は安定化剤と混合することにより、当該技術分野において既知の標準的な方法を用いて調製される(Remington:The Science and Practice of Pharmacy,by Loyd V Allen,Jr,2012,22nd edition,Pharmaceutical Press;Handbook of Pharmaceutical Excipients,by Rowe et al.,2012,7th edition,Pharmaceutical Press)。
【0043】
一実施形態では、GDNFポリペプチド及び/又はSCFA(又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル)は、経口投与のために製剤化される。経口投与に好適な製剤としては、(a)有効量の、水、生理食塩水、又はPEG400などの希釈剤に懸濁された活性剤/組成物などの、液体溶液、(b)各々が液体、固体、顆粒、若しくはゼラチンとして所定量の活性成分を含有する、カプセル、サシェ、又は錠剤、(c)適切な液体中の懸濁液、及び(d)好適な乳剤が挙げられ得る。錠剤形態は、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、微結晶セルロース、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、及び他の賦形剤、着色剤、充填剤、結合剤、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、防腐剤、香味剤、染料、崩壊剤、並びに薬学的に適合性の担体のうちの1つ以上を含むことができる。ロゼンジ形態は、フレーバー(例えばスクロース)中の活性成分、並びに活性成分を、活性成分に加えて、当該技術分野において既知の担体を含有する、ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシア乳剤、ゲルなどの不活性基剤中に含む芳香錠を含むことができる。
【0044】
一実施形態では、GDNFポリペプチド及び/又はSCFA(又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル)は、非経口投与(例えば、注射)のために製剤化される。非経口投与のための製剤は、賦形剤、滅菌水、又は生理食塩水、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、植物由来の油、又は水素化ナフタレンなどを含有し得る。生体適合性の生分解性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー、又はポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーは、化合物の放出を制御するのに使用され得る。他の潜在的に有用な非経口送達システムとしては、エチレン酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、移植可能な注入システム、及びリポソームが挙げられる。吸入のための製剤は、賦形剤(例えば、ラクトース)を含有し得るか、又は例えば、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、グリココレート及びデオキシコレートを含有する水溶液であり得るか、又は点鼻薬の形態で又はゲルとして投与するための油性溶液であり得る。
【0045】
一実施形態では、GDNFポリペプチド及び/又はSCFA(又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル)は、腸の送達、すなわち、腸管への送達のために製剤化される。これは、当該技術分野において周知の方法によって達成され得る。例えば、GDNFポリペプチド及び/又はSCFA(又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル)は、腸溶性剤又は腸溶性材料でコーティング又はカプセル化され得る。腸溶性剤は、例えば、ある特定のpHで、又は放出が所望されるGI管の特定の位置(例えば、小腸、大腸、又はその特定の領域)に特徴的に存在する分解酵素又は細菌の存在下で、放出を可能にする。一実施形態では、腸溶性材料は、pH感受性であり、胃腸管内で遭遇するpHの変化(pH感受性放出)によって影響を受ける。腸溶性材料は、典型的には、胃のpHで不溶性のままであり、次いで、下流の胃腸管(例えば、多くの場合、十二指腸、又は時には結腸)のより高いpH環境で活性成分の放出を可能にする。別の実施形態では、腸溶性材料は、下部胃腸管、特に結腸に存在する細菌酵素(例えば、グリコシダーゼ、多糖類リアーゼ、及び炭水化物エステラーゼなどの炭水化物処理酵素)によって分解される酵素分解性ポリマーを含む。そのような腸溶性材料としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸セルロースフタレート、酢酸トリメリト酸セルロース、及びカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース系ポリマー;好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸エチル、並びにEudragit(登録商標)L30D-55及びL100-55(pH5.5以上で可溶性)、Eudragit(登録商標)L-IOO(pH6.0以上で可溶性)、Eudragit(登録商標)S(pH7.0以上で可溶性、より高いエステル化の結果として)、並びにEudragit(登録商標)NE、RL、及びRS(透過性及び拡張性の異なる程度を有する水不溶性ポリマー)を含む、商品名Acryl-EZE(登録商標)(Colorcon,USA)、Eudragit(登録商標)(Rohm Pharma;Westerstadt,Germany)で市販されている他のメタクリル樹脂から形成される、アクリル酸ポリマー及びコポリマー;例えば、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル、酢酸ビニルフタレート、酢酸ビニルクロトン酸コポリマー、及び酢酸エチレン-ビニルコポリマーなどのビニルポリマー及びコポリマー;アゾポリマー、ペクチン、キトサン、アミロース、及びグアルガムなどの酵素分解性ポリマー;ゼイン及びシェラックが挙げられる。異なる腸溶性材料の組み合わせも使用され得る。結腸特異的薬物送達のためのアプローチは、当該技術分野において周知であり(例えば、Philip et al.,Oman Med J.2010 Apr;25(2):79-87;Lee et al.,Pharmaceutics.2020 Jan;12(1):68を参照されたい)、pH依存性の系(例えば、pH依存性ポリマーを使用する)、受容体によって媒介される系、磁気駆動系、遅延又は時間依存性の系、微生物が引き起こす薬物送達系(例えば、グルコロニダーゼ(glucoronidase)、キシロシダーゼ、アラビノシダーゼ、ガラクトシダーゼなどの結腸微生物叢によって産生される酵素によって分解され得る糖に基づくポリマーを含む)、圧力制御結腸送達カプセル(結腸で遭遇するより高い圧力によって誘発される薬物放出)、浸透圧制御薬物送達、並びにこれらのアプローチの任意の組み合わせ(例えば、pH依存性及び微生物が引き起こす薬物送達を組み合わせたアプローチを使用する、結腸標的送達系(CODESTM))が挙げられる。
【0046】
一実施形態では、GDNFポリペプチド及び/又はSCFA(又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル)は、腸溶性材料(腸溶性カプセル)で作製されるカプセルに製剤化される。
【0047】
一実施形態では、GDNFポリペプチド及び/又はSCFA(又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル)は、対象の遠位結腸への投与のために製剤化される。
【0048】
本明細書で使用される「遠位結腸」という用語は、結腸の最後の3つの区域、すなわち、下行結腸、S字結腸、及び直腸を指す。一実施形態では、薬学的組成物は、直腸及び/又はS字結腸に投与されるか、又は直腸及び/又はS字結腸への投与のためのものである。一実施形態では、薬学的組成物は、S字結腸の最後の部分及び直腸の始まりを含む直腸S字領域に投与されるか、又は直腸S字領域への投与のためのものである。当業者は、GDNFポリペプチド及び/又はSCFA(又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル)が、遠位結腸に直接投与され得るか、又は遠位結腸から離れた部位であるが、GDNFポリペプチド及び/又はSCFA(又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル)の遠位結腸への送達を提供する好適な手段を使用して投与され得ることを理解するであろう。例えば、製剤は、遠位結腸の条件(例えば、pH、酵素環境、細菌環境など)下で特異的に分解されるコーティングを含み得、したがって、製剤は、胃-腸管系の別の領域に投与され得るが、製剤が結腸、より具体的には遠位結腸に達した場合にのみ、GDNFポリペプチド及び/又はSCFA(又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル)は放出されるであろう。結腸特異的薬物送達のためのアプローチは、当該技術分野において周知であり(例えば、Philip et al.,Oman Med J.2010 Apr;25(2):79-87;Lee et al.,Pharmaceutics.2020 Jan;12(1):68を参照されたい)、pH依存性の系(例えば、pH依存性ポリマーを使用する)、受容体によって媒介される系、磁気駆動系、遅延又は時間依存性の系、微生物が引き起こす薬物送達系(例えば、グルコロニダーゼ(glucoronidase)、キシロシダーゼ、アラビノシダーゼ、ガラクトシダーゼなどの結腸微生物叢によって産生される酵素によって分解され得る糖に基づくポリマーを含む)、圧力制御結腸送達カプセル(結腸で遭遇するより高い圧力によって誘発される薬物放出)、浸透圧制御薬物送達、並びにこれらのアプローチの任意の組み合わせ(例えば、pH依存性及び微生物が引き起こす薬物送達を組み合わせたアプローチを使用する、結腸標的送達系(CODESTM))が挙げられる。
【0049】
直腸/遠位結腸投与のための製剤は、坐剤として提示されてもよく、坐剤は、対象組成物を、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、坐剤ワックス、又はサリチレートを含む1つ以上の好適な非刺激性担体と混合することによって調製され得、非刺激性担体は、室温では固体であるが、体温では液体であり、したがって、適切な体腔内で融解し、GDNFポリペプチド及び/又はSCFA(又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル)を放出するであろう。より近年では、液体坐剤が開発されている。液体坐剤は、典型的には、ポロキサマー、Carbopol(登録商標)(架橋ポリアクリル酸ポリマー)、アルギン酸ナトリウム、ポリカルボフィル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース、及びメチルセルロースなどの感熱性及び/又は粘膜付着性ポリマーを含有する。
【0050】
直腸/遠位結腸投与のための製剤はまた、直腸及び遠位結腸に注入される浣腸、液体薬物溶液、懸濁液、又は乳剤として提示され得る。GDNFポリペプチド及び/又はSCFA(又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル)が希釈される液体は、例えば、水、又は生理食塩水溶液若しくは懸濁液であり得る。
【0051】
直腸/遠位結腸投与のための製剤はまた、直腸泡沫又はゲルの形態であり得る。直腸ゲルは、粘性の一貫性を作り出すためにポリマーネットワーク内に捕捉された溶媒を含有する半固体製剤である。ゲルの粘度は、共溶媒(例えば、グリセリン及びプロピレングリコール)及び電解質の添加によって変更することができる。泡沫は、全体を通じて分布する、発泡剤を含有する親水性液体連続相及び気体分散相を含む。直腸投与に続いて、それらは、粘膜表面上で泡沫状態から液体又は半固体状態に移行する。発泡剤は、典型的には、泡沫の生成及び安定化に重要な両親媒性物質である。分子は、水相に可溶性である親水性構成成分と、ミセルを形成して水相との接触を最小限に抑える疎水性構成成分とを含有する。
【0052】
直腸/遠位結腸への投与は、医薬品又は液体の直腸投与又は遠位結腸壁への注入のために設計された現在利用可能な内視鏡又は専用カテーテルを使用して実施され得、繰り返し使用するために直腸内に安全に配置され、快適に保持され得る。
【0053】
GDNFポリペプチド及び/又はSCFA(又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル)は、任意の好適な投薬レジメンに従って、例えば、1日4回、1日2回、1日1回、週2回、週1回など投与され得る。治療は、所望の効果を達成するために、任意の好適な期間、例えば、1週間、2週間、3週間以上の間実施され得る。
【0054】
一実施形態では、ヒト対象に投与されるか、又はヒト対象への投与のための有効用量のGDNFポリペプチドは、仔マウスにおける約5μg~約20μgの用量に相当し、これは、本明細書に記載の研究において有効であることが示される範囲である。組換えGDNF溶液を含む10μlの浣腸を、仔マウスに投与した。10μlは、仔の遠位結腸及び直腸を満たすのに必要な体積に相当すると推定される。したがって、マウス(仔)における5μgのGDNFの投与は、0.5μg/μlのGDNF溶液を10μl投与することによって達成され、マウス(仔)における20μgのGDNFの投与は、2.0μg/μlのGDNF溶液を10μl投与することによって達成される。ヒト乳児の遠位結腸及び直腸を満たすために必要な体積は、以下の式を使用して推定することができる:10ml×乳児の体重(kg)。したがって、マウスにおける5μgのGDNFの用量は、ヒト乳児におけるkg当たり約5mgに相当し、マウスにおける20μgのGDNFの用量は、ヒト乳児におけるkg当たり約20mgに相当する。したがって、一実施形態では、ヒト対象に投与されるか、又はヒト対象への投与のための有効用量のGDNFポリペプチドは、1kg当たり約5mg~約20mg、好ましくは1kg当たり約10mg~約15mgである。一実施形態では、GDNFポリペプチドは、0.5mg/ml~2mg/mlの組成物(溶液又はゲル)を通じて投与されるか、又はそのような投与のためのものである。
【0055】
一実施形態では、治療剤(GDNFポリペプチド及びSCFA又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル)の組み合わせは、任意の従来の剤形で投与され得るか、又は(例えば、連続的に、異なる時間に同時に)同時投与され得る。本開示の文脈における同時投与は、改善された臨床転帰を達成するように調整された治療の過程における、2つ以上の療法の使用を指す。本明細書に記載のGDNFポリペプチドとSCFA又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルとの組み合わせは、他の治療法又は薬物、例えば、鎮痛剤又は抗炎症剤と組み合わせて使用され得る。
【0056】
一実施形態では、GDNFポリペプチド及びSCFA又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを含む組み合わせでの上述の治療は、手術(例えば、Swenson、Soave、又はDuhamelタイプのプルスルー手術)と組み合わせて実施され得る。特にHSCRを有する新生児の場合、臨床医は、多くの場合、手術前に毎日の浣腸治療の試験を試みることを推奨する。本明細書に開示のGDNF+SCFAの組み合わせを浣腸に添加することによって、HSCRを有する小児が手術前の浣腸療法に良好に応答する可能性が増加し得る。したがって、一実施形態では、GDNFポリペプチド及びSCFA又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを含む組み合わせでの上述の処置は、プルスルー手術前に実施される。生理食塩水浣腸はまた、一般的に、プルスルー手術後のHSCRを有する小児に使用される。HSCR患者の手術後の問題は、遠位腸、いわゆる「通過部」に残留する神経節細胞僅少症に少なくとも部分的に起因すると考えられる。したがって、GDNFポリペプチド及びSCFA又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを含む組み合わせを浣腸に添加することは、手術後の保持された遠位腸における神経節細胞僅少症及び/又は通過部におけるニューロンサブタイプ不均衡を是正するのに有用であり得る。したがって、別の実施形態では、GDNFポリペプチド及びSCFA又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル含む組み合わせでの上述の処置は、プルスルー手術後に実施される。
【0057】
一実施形態では、GDNFポリペプチド及びSCFA又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを含む組み合わせでの上述の治療は、HSCRの治療のために検討されているENS幹細胞に基づく療法と組み合わせて実施される。GDNFは、生着を促進するためのこれらの療法の有用な補佐役となり得る。
【0058】
HSCRは、臨床的に、短域型(S-HSCR)及び長域型(L-HSCR)に細分される。症例のうちの>80%で発生するS-HSCRは、直腸及びS字結腸にENSが存在しないことを意味する。L-HSCRは、遠位腸のより長い領域が無神経節であることを意味する。本明細書に記載の方法/使用は、S-HSCR又はL-HSCRを患っているヒト患者の治療のためのものである。一実施形態では、本明細書に記載の方法/使用は、S-HSCRを患っているヒト患者の治療のためのものである。一実施形態では、本明細書に記載の方法/使用は、L-HSCRを患っているヒト患者の治療のためのものである。
【0059】
HSCR患者は、成人患者又は小児患者であり得る。一実施形態では、HSCR患者は、小児患者、好ましくは、5、4、3、又は2歳未満の患者、より好ましくは、1歳未満又は生後6ヶ月未満の患者である。別の実施形態では、患者は、男性である。
【0060】
HSCRは、RET、EDNRB、SOX10、PHOX2B、及びZFHX1Bの変異、並びにダウン症候群又は21トリソミー(コラーゲンVI関連HSCR)に関連する。また、5対1ほどの高さの男女比で、有意な性差が存在する。一実施形態では、HSCRは、コラーゲンVI関連HSCRである。別の実施形態では、HSCRは、EDNRB変異関連HSCRである。一実施形態では、HSCRは、男性に偏在するHSCRである。一実施形態では、HSCRは、RET変異関連HSCR、例えば、遠位結腸からの細胞におけるRET発現及び/又は活性を低減する変異に関連するHSCRである。変異は、RET又はRETシグナル伝達に関与するタンパク質における変異であり得る。一実施形態では、変異は、RETタンパク質における変異である。染色体10q11.2上のRET遺伝子の変異は、HSCRの家族性症例のうちの50%及び散発性症例のうちの15~20%を占めることが示されており、そのほとんど(約75%)は、L-HSCRに関連していた。
【0061】
別の実施形態では、HSCRは、RET変異関連HSCRではない。
【実施例
【0062】
本発明は、以下の非限定的な例によって更に詳細に例示される。
【0063】
実施例1:材料及び方法
マウス。ホモ接合ホルスタインTg/Tgマウス(HolTg/Tg、Trisomy21[CollagenVI]関連HSCRのモデル)を、10μlのGDNF浣腸(1μg/μl)、又は10μlのGDNFを、5mMのアミノ-酪酸(ブチレート)若しくは1μg/μlの他の成長因子、又はビヒクル(1X PBS)と組み合わせて、対照として処理した。浣腸は、出生後日齢(P)4からP8まで1日1回投与され、マウスは、P60又は巨大結腸関連死まで毎日モニタリングされた。GraphPad Prismソフトウェアを用しいて生存グラフ及び統計分析を生成した。一元配置分散分析、続いて事後チューキー多重比較検定を実施し、有意水準をP<0.05に設定した。各コホートの生物学的複製の数(n)は、図に関連する場合に示される。
【0064】
実施例2:HolTg/Tgマウスの生存に対する神経栄養因子と組み合わせたGDNFの効果の評価
Trisomy21[CollagenVI]関連HSCRのマウスモデルにおいて、神経栄養効果を有することが知られている分子が、生存に対するGDNFの効果を改善することができるかどうかを試験した(39)。同じマウスモデルを使用した以前の研究では、神経栄養効果を有することが知られている3つの分子(ビタミンC、セロトニン、及びエンドセリン3)とのGDNFの組み合わせは、GDNF単独と比較してマウスの生存を改善しなかった(Soret et al.,Gastroenterology.2020 Nov;159(5):1824-1838.e17.doi:10.1053/j.gastro.2020.07.018.Epub 2020 Jul 17,Supplementary Figure 1Gを参照されたい)。
【0065】
本研究で試験した分子は以下のとおりである:骨形態形成タンパク質4(BMP4)、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、中脳星細胞由来神経栄養因子(MANF)、脳ドーパミン神経栄養因子(CDNF)、表皮成長因子(EGF)、ニューツリン(NRTN)、線維芽細胞成長因子2(FGF2)、ブチレート、及びレチノイン酸(RA)。これらの分子は、様々な条件下で神経栄養活性を示すことが報告されている(表1)。
【表1A】
【表1B】
【0066】
図1A図1Cに示される結果は、ブチレート単独では、マウス生存に影響を及ぼさないが(ビヒクルと同様に)、それが、GDNFの効果を有意に改善し、GDNF+ブチレートの組み合わせが、生存に相乗効果を示すことを示している。図2A図2Cに示される結果によって実証されるように、試験した他の神経栄養因子のいずれも、このマウスモデルにおいて、生存に対するGDNFの効果を有意に改善することができなかった。実際、GDNFを神経栄養因子のいくつかと組み合わせることは、GDNF単独の投与と比較して生存を低下させることさえある(図2C)。
【0067】
本明細書に提示される結果は、神経栄養活性を示すことが知られている他の分子ではなく、ブチレートが、GDNFと相乗的に作用して、HolTg/Tgマウスの生存を改善すること、及びしたがって、GDNFとブチレートとの組み合わせは、ヒトのヒルシュスプルング病などの腸のニューロパチーの治療に有用であり得ることを示す。
【0068】
本発明は、本明細書に上記の特定の実施形態によって説明されてきたが、添付の特許請求の範囲で定義される主題発明の趣旨及び性質から逸脱することなく、変更され得る。特許請求の範囲では、「含む」という単語は、「限定されないが、含む」という語句と実質的に等価である、オープンエンド用語として使用される。「a」、「an」、及び「the」という単数形は、別段文脈が明らかに指示しない限り、対応する複数の対象物を含む。
【0069】
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図1B
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図3A
図3B
図3C
【配列表】
2024523413000001.app
【国際調査報告】